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アトラスの檻

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #『アズマ』 #神

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●破られた静謐
 大地の中核、センターオブジアース。
 かつてこの場所にまで踏み込んだ猟書家の男がいた。
 番人たる神を屠り、不死たる怪物の力を手にし、猟兵達と死闘を演じた男。
 激闘の末に彼は倒され、戦いは幕引きとなったように見えた。
 だが、この場所が安全になったとは言い切れぬ。意志を継ぐ者のいる限り。

 突如背後からの衝撃に門番が目を瞬けば、
 眼前に突き出した腕には脈打つ心臓が握られていた。
「な、に、を……」
 ぶよぶよと肥え太ったおぞましき腕。
 自身が邪悪な者の手にかかると判っても、最早逃れる術はない。
「リオ達の望みは一つです。ひとつになる事……そうしたら誰も、寂しくない」
 門番の後ろに立つ奇怪な姿の少女の淡々とした声が、却って恐怖と戦慄を呼ぶ。
 見た目こそ年端も行かぬ少女だが、
 胴体から枝分かれした『弟』を生やす彼女の本質は紛れもなく魔性の者であった。

「あなたもこれで、寂しくない」
 手にした林檎型の魔具から光を放ち、握り潰した心臓を体内へと吸収する。
 歪んだ合一、己の破滅的な思想の元に全てを不可分のものとするエゴこそ、
 この悪しき少女、ロンリーオンリー・リオが何者かを決定づける要素だった。

 崩れ落ちる亡骸をそのままに、魔術師の少女は封じられた怪物へと手を伸ばす。
「あなたも、ひとつに。この者達の肉体を檻とし、皆一丸となって同じ夢を――スナークの夢を見ましょう」
 唄うような声に、眠る心地を覚えながら。
 漂っていた不死の怪物の魂は、少女の配下たる騎士の体へと囚われていった。

●合一を図る者
 リグ・アシュリーズは呼びかけに応じたあなた達の顔を見、切り出した。
「ヒーローズアースに今すぐ、向かってもらえないかしら! 猟書家の後を継ぐオブリビオンが現れたの」
 戦って、止めてきてほしい。そう懇願するリグの声には、急くような感情が滲む。
「残念だけど、最初の襲撃には間に合わないわ。皆がたどり着くのは、門番が倒れた後になってしまうと思う。でも、このまま放ってたらもっと手に負えない事態になるわ」
 そこで一呼吸おいたリグは、恐るべき結末を口にする。
「彼女達は強大な怪物の力を得て、不死の軍勢を作ろうとしているの」
 もし、それを許せばヒーローズアースがどのような事態に見舞われるか。
 表情で伝わったのを感じ、リグは「お願いできるかしら?」と意思を確かめた。

 センターオブジアース。怪物を封じていた世界の中心では今、
 堕ちた騎士たちが地上へ攻め込む為の戦列を組んでいる。
 騎士たちに力を与えた怪物の名は『始原の巨人』。
 大地を下から支えた力ある巨人は、同時に欲深く傲慢であったという。
「神話の巨人を宿すだけあって、騎士たちは恐ろしい怪力を秘めてるわ。真っ向から力勝負を挑むのはお勧めできないかも。でも安心して、強力な助っ人がいるの!」
 助っ人とは、ヒーローズアースの神々。
 神話時代の生き証人、生命を創造した神ならば、巨人の弱点も熟知している筈だ。

 神々と共闘して騎士たちを倒せば、いよいよ猟書家の遺志を継ぐ少女との対面だ。
「リオって名乗る女の子、見た目で判断しちゃダメよ。体中から管を伸ばして血肉を啜ったり、精神攻撃を仕掛けてくるとんでもない相手みたい」
 リオは地球上の全存在との合一を図るという歪んだ思想に囚われている。
 全てとの融合を無上の幸福とするリオは、まともな会話の成り立つ相手ではない。
 超生物スナークの創造という猟書家の目的も、『全存在が融合したままスナークの夢を見る』という彼女独自のねじ曲がった解釈を得ていた。

「敵の狙いは地上への侵攻ももちろんだけど、『スナーク』の名を借りて世界に恐怖と疑心暗鬼の種を撒くこと。だから、いっその事ね」
 悪戯っぽく笑い、グリモア猟兵は言う。その名前、正義の側に奪っちゃえばいいんじゃないかしら! と。

 語るべき事を語り終えたとみて、リグはグリモアのゲートを開く。
 向こう側に覗くのは黄金の林檎の連なる神の園。本来戦火とは縁遠い、美しい光景だ。
「ヒーローズアースの神様、今は人間みたいな生活を送る方もいるって聞くわ。神話が遠い過去の話になったのも、ヒーローやヴィランの皆さんの平和を守る活動のおかげだと思うの」
 その前提に、立つのならば。
 神々の元に再び戦乱を持ち込む事など、彼の世界の人々が望む筈もない。
「いってらっしゃい、気を付けて! 悪いヤツなんてぶっ潰して、巨人さんを神話の世界に送り返しちゃいましょ!」
 明るい声に見送られ、あなた達は向かう。
 眼前には救援の手を待ち望む、緑あふれる楽園が広がっていた。


晴海悠
 お世話になっております! 晴海悠です。
 ヒーローズアースの中核、神々の園が襲撃を受けました。
 継がれた邪悪な意思。強き神といえど、完全に阻む事は叶いません。

 世界はいつだって、あなた達の力を必要としています。
 どうぞ皆様の思いの丈を、ぶつけて下さい。全身全霊のリプレイでお返しします!

『プレイングの受付』
 オープニング公開と共に受付開始します! 断章もプレイングにさほど影響が出ないものとなりますので、いつ送って頂いても大丈夫です。
 当シナリオは7/24(土)16:00以降の完結を予定しています。ヒーローズアースの戦いを優勢に持ち込む為にも、よろしければご協力下さい!

『1章 集団戦』
 デュランダル騎士。
 オブリビオン化した事で思想を歪められ、ヒーロー虐殺の為に集った元ヴィランの騎士団です。
 彼らは徒党を組んで戦うほか、一人一人が『始原の巨人』の力を有します。魔剣の一撃は大地を真二つに割り、魔槍が当たれば暫くは動けぬほどと、強化された膂力は異常とも呼べるものでしょう。

『2章 ボス戦』
 ヴィラン『ロンリーオンリー・リオ』。
 猟書家『アズマ』の遺志を継ぎ、センターオブジアース襲撃を企てた魔術師の少女です。巨人の力は宿していませんが、おぞましき魔術や異形の肉体を用いて襲い掛かってきます。
 リオを倒せば巨人の力は解放され、神々の手によって再度封印されます。

『プレイングボーナス』
 全章を通し、下記のいずれかの行動をとる事で成功率が上がります。
「神々と共に戦う」
「猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗って戦う」

 前者は超強い神々の力を借り、巨人の持つ弱点を教わっての戦いとなります。
 後者は敵が『スナーク』の名を騙る前にこちら側で名を奪い、人々に恐怖が伝播するのを防ぐ行動となります。
 参加者全体でどちらかに偏っても不利や不都合は生じませんので、お好みの方を選んで下さい。

 それではリプレイでお会いしましょう! 晴海悠でした。
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第1章 集団戦 『デュランダル騎士』

POW   :    デストロイブレイド
単純で重い【量産型魔剣デュランダル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ケイオスランサー
【魔槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【仲間のデュランダル騎士との怒濤の連携攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    不滅の刃
【量産型魔剣から放たれる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。

イラスト:弐壱百

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 地に噴き上げる炎、木々に生る黄金の林檎。
 荒々しくも原初の姿を留める神々の楽園には、今魔の手が迫っていた。
 纏う甲冑の重く鈍い輝き。
 眼前に隊列を成す騎士は紛れもなく猟兵達の仇敵、オブリビオンだ。

 魔術師の手により始原の巨人を宿した騎士団は、
 明らかに人智を越えた力を手に入れていた。
 地響きを伴う、騎士団の軍靴の音。
 漆黒の槍と魔剣・デュランダルは、本来それが持つ以上の重量を伴う。
 一撃一撃が必殺級とあれば、生半可な覚悟で受け止めるわけにはいくまい。

 だが、あなた達には心強い味方が存在する。
 男神女神、姿形も様々な神々は、この地に不死の怪物を封じた張本人なのだ。

 立ち向かうべき敵を前に、あなた達は歩みを進める。
 眼前には恐れを知らぬ、漆黒の騎士団が迫っていた。
ユーイ・コスモナッツ
宇宙騎士ユーイ、
義によって「秘密結社スナーク」に助太刀します!

剣と盾を構え、正面から受けて立ちます
『真っ向から力勝負を挑むのはお勧めできない』という、
リグさんの言葉を忘れたわけではありません

しかし、相手は騎士
オブリビオンになってしまったとは言え、
相応の作法に則って戦わねばなりません
産まれた世界は違くても、
私も騎士ですので!

身体の底から力が湧いてくるのを感じるけれど、
それでも腕力は向こうが上
ならば身軽さで勝負するまでです

デストロイブレイドを飛び越えながら間合いを詰め、
鉄兜めがけてユーイキック!!
怯んだ一瞬を逃さずに、
渾身の力でクレストソードを叩きつけます

さあ次!
何人でも相手になりますよっ


火土金水・明
「私は猟兵組織『秘密結社スナーク』の一員、『魔法少女ブラックマルス』。」「猟書家に従うオブリビオン達を滅ぼす者です。」
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の一撃】を【範囲攻撃】にして、『デュランダル騎士』達を纏めて攻撃します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 騎士団の前に突如現れたその人物は、戦いの幕開けを告げるように宙に魔法陣を描いた。
「私は猟兵組織・秘密結社スナークの一員、魔法少女ブラックマルス」
 ブラックマルスこと火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、高らかに名乗りを上げながら銀の剣を手元に喚ぶ。
 先んじて名乗りを上げた事により、正体不明のスナークという名は猟兵を指すものとして認知された。より多く意思が集うほど、スナークは正義の味方を指す概念として広まるだろう。
「猟書家に従うオブリビオンは私達が滅ぼします」
 この場に駆けつけたのが自分一人でない事を示すように、明は隣の空間を空ける。その頭上、高台に立った人物が声を張り上げた。
「騎士の誇りのもとに!」
 重力加速度を我が物とするかの如き跳躍。颯爽と地面に降り立った少女、名をユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)という。
「宇宙騎士ユーイ、義によって秘密結社スナークに助太刀します!」
 騎士と魔法使い、童話から飛び出たような取り合わせの二人にも、眼前に控える騎士たちが動じる様子はない。彼らは身も心も闇に堕ち切った者、即座にこちらを排除する動きを見せた。

 量産型の魔剣、デュランダルを掲げてこちらへ押し寄せる軍勢。彼らに向け、まず明が銀の剣で迎え撃つ。
「ただの剣と侮っては痛い目を見ますよ」
 剣に籠めるは、敵の魂魄のみを削り取る魔力。疾風の過ぎるが如く振るえば刃は鎧を突き抜けた。押し寄せる敵の剣をオーラの盾で受け止め、できるだけ長く戦えるよう策を講じていく。
「私の役目は少しでもダメージを与えて次へ繋ぐこと。これしきではまだまだ、倒れませんよ」
 明は善戦していたが、敵の軍勢は一人で阻み切れるものではない。彼女を無視し、残る騎士たちが後方に押し寄せる。
 その身に宿すは巨人の膂力、真っ向から勝負しては苦戦を強いられる難敵。だが、ユーイはあえて彼らの前進を阻むよう正面に立った。
(「言葉を忘れたわけではありません。ですが、私にも譲れないものがあります」)
 緊張を紛わすように、特注の靴の踵を踏み鳴らす。盾と違い、目の前の騎士たちは大人しくはしてくれぬが、うまく行くだろうか。
「オブリビオンになってしまったとは言え、騎士は騎士。ならば相応の作法に則って戦うべきでしょう」
 不安を飲み込み、代わりに決意を言葉に乗せる。身体の底から熱く、血潮が全身を駆け巡る感覚。止めどなく溢れる勇気の源を、ユーイは未だ知らない。
 腕力では敵わぬ相手でも、身軽さならユーイの方が上だ。
「私も騎士ですので!」
 魔剣の一撃が地面を捉え、爆砕の音と共に炎が噴き上げた。騎士はすぐに反応して真上を見たが、高々と跳躍したユーイに刃先を向けるには至らない。
「ユーイキック!!」
 鉄兜の顎を跳ねあげる軽やかな月面サマーソルト。素顔が露わになった騎士へ、即座に剣を振りかぶる。
 天馬の紋章が光の弧を描き、ガシィンと響く硬質な音。騎士の視界に火花が散り、すぐさま意識を手放し昏倒する。
 乱れた隊列の合間を縫い、宇宙騎士の少女は往く。密集陣形を組んだ騎士は思うように剣を振るえず、軽やかに舞う乙女に翻弄されるのみ。
 やがて明を捉え損ねた剣が地面を打ち、明は一度言ってみたかったセリフを敵へと言い放つ。
「残念、それは残像です」
 すれ違いざまに剣を振り切れば、銀の剣は音もなく敵の体をすり抜けた。名誉の負傷という言葉もあるが、騎士たちは勲章とできる刃傷もないままに意識だけを刈り取られていく。
 倒れた前衛の騎士たちに蹴躓き、後続の騎士たちの勢いが削がれた。
「そろそろ、ですね。私たちも一時退却しましょう」
 この後の本命を見越した明の進言にユーイが頷く。並み居る騎士たちの相手を仲間に託し、二人は態勢を立て直すべく後方へ退いていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニクロム・チタノ
ブラキエルが倒されても他の世界はまだ猟書家の脅威に晒されているね、だけどそんな時だからこそボク達猟兵がみんなを安心させなきゃ!
ボクは猟兵組織スナークから来た反抗者だよ、キミ達の好きにはさせない!
どれだけ強い敵がどれだけ多くいても覚悟はある私は戦う、反抗の妖刀を開放する
かなり負担はかかるけど仕方ない、相手の強化を上回るにはこれしかない
開放された反抗の妖刀は超重力を生み出す、攻撃してきた瞬間に重力を掛けて動きを封じカウンターで先鋒を切り裂く、重力が乗った攻撃なら硬い鎧も切り裂ける!
驚いて動きが止まった他の敵も重力に慣れる前に出来るだけ倒しておきたいね
さてこれ以上体が悲鳴をあげる前に倒さないと


リオ・ウィンディア
神様・・・あなた方のお力を是非にお借りしたく
私はしがない楽士ですが、死者を冒涜する同名のオブリビオンとなればそれは見過ごせないわ

ディランダル、真っ向勝負は無理ね
あなた方が光の武器を使うなら私はそれに負けない闇を放とう
剣も無機質に違いない
私はそれを闇の嵐に変えて、呪詛で持って立ち向かおう
死者のなんたるかを
無限の命などないのだという絶対的な闇を

私はギターでもって嵐の中で歌う、奏でる
この哀愁の音色こそ私の武器
この悲しみのコードこそ私の調べ

精神を侵略する奇怪な言霊
闇よ轟け
呪いを撒き散らし
私はギターを爪弾く

神様ならわかってくれるかしら
私の魂に刻まれた圧倒的な悲しみと、それにもひけも劣らぬ希望の光を



 悪に堕ちた騎士は味方の死にも頓着せず、屍を踏み越えて押し寄せる。
「ブラキエルが倒されても、他の世界はまだ猟書家の脅威に晒されているんだね」
 ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は顔半分を覆う仮面を装着しながら、異様な姿の騎士を睨むように目を細めた。
 これまでも各地で戦い続けてきたが、猟書家の侵攻は未だ衰えを見せない。一つの世界しか持たず、猟兵たちの救援を待つ人々の心細さを想う。
 だが同時に、この世界の随所で見かけた広告や映画のポスターを思い出す。猟兵たちはいまや人々の憧れであり希望なのだ。
「こんな時だからこそ、ボク達猟兵がみんなを安心させなきゃ!」
 ニクロムの決意に押されるように、居合わせた神々もまた各々の武器を構える。
 世界を生み出した神々は力と責任感を持つが故に、敵へも勇猛果敢に突き進むだろう――たとえ刺し違える事となっても、だ。
「神様……あなた方のお力を是非にお借りしたく」
 リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)の呼びかけに、一人の神が歩みを止めた。時に無邪気な顔も見せる墓場の歌姫は、しかし今日この場では硬い表情をしていた。
「儂……か。無論、力は貸そう。むしろ儂らの方が助力を請う側だがな」
「ありがとう、心強いわ。私はしがない楽士ですが、死者を冒涜する同じ名のオブリビオンとなれば見過ごせないもの」
 奇しくも同じ名の敵。それだけの事で別人の彼女を人々が謗る事はあるまいが、同じ名の者が凶行に及ぶのを捨て置けるほど、少女の自尊心は安くない。
「必ず、止めてみせましょう」
 鈴のような少女の声が、再びの開戦の合図となった。

   ◇    ◇    ◇

「ボクは猟兵組織スナークから来た反抗者だよ。キミ達の好きにはさせない!」
 反抗の妖刀を構えたニクロムは、妖刀の力を解放しかけて僅かに悩む。
 一対一での戦いならそれもいい。だが、妖刀そのものには重力操作の力がない故に、多数を相手取るには別のユーベルコードを展開しなければならない。
 同時に二種の力を使う事は困難を伴い、精度を欠く可能性もある。
(「動きを止めるには妖刀だけじゃ足りない……なら、ここは」)
 迷った末、ニクロムはまず敵の足止めに力を割く事を決意した。
 水晶の涙が空より降り注ぎ、あたりを超重力の力場で包み込む。膝をついた敵の鎧ががちゃりと音を立て、同時に自身の脚からも骨の軋む感覚がこみ上げた。
 重力波の影響を受けぬよう体を反抗竜の力で防護し、妖刀を手に敵へと向かう。
「重力を乗せれば、硬い鎧だって切り裂ける……!」
 騎士の重々しい剣を躱して妖刀を振り下ろせば、鎧を裂く一撃にまず一人の騎士が倒れた。
「デュランダルの騎士……真っ向勝負は無理ね」
 楽器の底に刃こそ忍ばせていたが、リオの持つ武器で正面から渡り合えるものはそれだけだ。ならばと始祖鳥の彫られたギターを抱え、小さな爪で弦をかき鳴らす。
「あなた方が光の武器を使うなら、私はそれに負けない闇を放とう」
 満ちるのは十八番ともなった闇の調べ。呪詛の音色は無機物――即ち騎士の握る剣へと伝播し、音の嵐へと変換していく。荒れ狂う不協和音、心乱す旋律。金属鎧は音を反響させ、騎士の耳元へと直に届けた。
 苦し紛れに振るわれた騎士の剣を躱し、ニクロムは改めて戦況を見渡す。
「このままできるだけ倒しておきたい……と思ったけれど」
 戦線を立て直すべく、騎士の一人が魔剣を掲げた。禍々しい光を放つ剣は持ち主の活力を代償に、周囲の騎士の身を闇の力で癒していく。
「そうはさせないよ。ボクには覚悟がある、キミ達はどうかな?」
 癒しを得た直後、振り下ろされる妖刀の一撃。首根っこを的確に捉え、ニクロムは敵の意識を刈り取っていく。
 重力と呪詛の二重苦に呻き跪く騎士へ、リオは容赦なく音の嵐を浴びせていく。
「思い出すといいわ、死者の何たるかを。無限の命などないのだという事を」
 間もなく演奏はフィナーレを迎える。彼女の音楽に拍手喝采を送れるのは立って聞き届けられた強者だけだ。
「――闇よ、蠢け」
 精神を侵す呪詛の言霊は、騎士たちに喉を掻きむしるような痛苦を与えた。バタバタと騎士の倒れ伏すのを見届けたリオは、まだ汗の浮いた顔で隣の勇ましき男神を見上げる。
「神様ならわかってくれるかしら。私の魂に刻まれた悲しみ……そして引けを取らぬ、希望の光を」
「……ああ、無論よ。汝の音色には、生の持つ影の側面が凝縮されておる」
 共に戦い、剣を振るっていた神はかくも言う。故に、汝の歌は狂おしくも美しいのであろう――と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジェット・アームストロング
神々には遠く及ばない非力な身だが、悪を見過ごす訳にはいかない!正義の為、助太刀させてもらおう!

全身を覆う「ジェットフォース」で大気を操り【推力移動】で宙に舞い上がる。敵の攻撃を一撃でも食らえば致命的だ。高速の【空中戦】で敵の攻撃範囲から逃れつつ攻撃の隙を狙う。
神々に奴らの弱点を聞き、そこを狙おう。正面からの攻撃では反撃は必至。ならばこれでどうだ。
拳に正義の魂を【エネルギー充填】し、急降下の勢いを加えて大地を殴り付ける。UC【Energy Geyser】!敵達各々の足元から撃ち放たれるエネルギーで弱点を狙い撃つ。
改めて名乗ろう!私の名はヘビーセット!正義の秘密結社スナークの一員だ!


テラ・ウィンディア
何だか…気になる名前、だよな

共闘
まず弱点について把握

【戦闘知識】
敵陣の動きと連携の癖やパターンの把握

…洗練されてないか?

【属性攻撃】
炎属性を剣と太刀に付与
【見切り・第六感・残像・空中機動・武器受け・オーラ防御】
オーラを身にまとい高速で飛び回りながら敵の猛攻を残像を残して回避
避けきれない攻撃は武器とオーラで受け止め致命を避け
何より戦いながらも騎士達と他の猟兵の斬撃全てを記憶の刻む
【二回攻撃・早業】
剣と太刀による連続斬撃
【弾幕・貫通攻撃・重量攻撃】
ガンドライドとドリルビット展開
重力弾の弾幕とドリル攻撃で動きを封じ斬撃濃度の高い空間に閉じ込め

消えざる過去の痛み発動
(斬斬斬斬斬斬斬!!
我が痛みにて散れ



 猟兵の波状攻撃が効いたと見え、さしもの騎士団も指揮が乱れ、数もまばらになりつつある。
 歯抜けになった前衛を埋めるよう歩み出る騎士。その進軍を阻むように、巨漢の男が舞い降りた。
「そこまでだ! とうっ!」
 降り立つこの男、ジェット・アームストロング(f32990)とは世を忍ぶ仮の姿。全身をくまなく覆う黒のスーツは正義の証、彼こそは法と秩序のヒーロー・ヘビーセット!
「神々には遠く及ばない非力な身だが、悪を見過ごす訳にはいかない! 正義の為、助太刀させてもらおう!」
 勇ましく名乗り出た男に続くように、剣を手にした少女がなだれ込む。
「おれも力を貸すぜ!」
 妹を追って駆け付けたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は、剣のスイングで牽制しながら今回の襲撃を企てた敵の名を思い返す。
(「やっぱり……気になる名前、だよな。放っておけないのも無理はないか」)
 どうやら妹は敵の軍勢をかき分け、先へ向かったらしい。彼女と合流する為にも、まずはこの騎士団を打ち倒さねばなるまい。
 こちらが打って出ると同時、騎士団は即刻応じる動きを見せた。統率のとれた彼らの手際の良さに、テラは感心するように目を見開く。
「……随分洗練されてるな?」
 纏め上げていた騎士の賜物か、彼らの動きには無駄がない。恐らくオブリビオンになる前から騎士としての練度も高かったのだろう。
「それだけ強いのに、もったいないな」
 独り言ちるように言い残し、テラは刃を手に駆けて行った。

   ◇    ◇    ◇

 星の剣、無銘の太刀。二振りの刃が熱を帯び、炎を纏う。情熱色の刃を両手に引き下げて駆けるテラは、そのまま自身の体にまで温かなオーラを伸ばした。
 高速で駆け回りながら敵の目を欺き、避けきれない太刀筋は武器でいなして致命傷を避ける。防戦一方、騎士の剣を回避するばかりだが、彼女の狙いは太刀筋を『視る』事にあった。
(「敵も、味方も。このまま全ての斬撃を視てやるっ」)
 空中に刻まれる無数の剣閃。それらを記憶に留めながら、テラは次々と来る攻撃を躱すことに専念する。
「行くぞ! ジェットフォース!」
 全身を覆うオーラを竜巻状に練り上げ、大地に放つヘビーセット。噴き出す風は推力を生み、中年男の恰幅のいい肉体を宙へと浮かべる。
 眼下の地面に騎士の破壊剣が炸裂、大地より噴き上げる炎が男を襲った。間一髪でそれを躱し、ヘビーセットは果敢に空中戦を挑む。
「悔しいがその剣は一撃たりとも受けられないのでな! だが、私なりの真っ向勝負を見せてやろう!」
 騎士の軍勢を引き連れたヒーローの向かう先は、これまで猟兵たちを支えてくれた神の友軍。
「世界を守る神々よ! これも悪に立ち向かうため、どうか彼らの弱点を教えてほしい!」
 意思を聞き届けた女神が深く頷き、厳かに言葉を返す。
「怪力と巨体を誇るが故、巨人の関節は存外に脆い。かの騎士共も同じとは言い切れぬが、あの鎧の重量。狙ってみる価値はあろう」
 言葉と共に加護を授ける女神に感謝を告げ、ヘビーセットは改めて騎士たちに向き直る。
「なあ、そろそろカタをつけないか? 協力してくれるなら心強いぜ!」
 地上で戦いを繰り広げていたテラが、空を行くヒーローの男へと呼びかける。
「勿論だ、戦友よ! 私が隙を作る、一気呵成に攻め込むといい!」
 言うより早く正義のヒーローは力を溜め、球状の光に拳を包む。
「行くぞ、Energy Geyser!」
 急降下と共に、敵の軍勢の足元を狙い撃つ。大地を粉砕するパワーは亀裂を生み、激しいエネルギーの奔流が騎士たちを飲み込む。
「改めて名乗ろう、私の名はヘビーセット! 正義の秘密結社、スナークの一員だ!!」
 力の源はカロリーにあり。燃やして力に変えるとは羨ましくも聞こえるが、脂肪も本来人の生きるのに必要なもの。使い過ぎては命に関わるそれのギリギリを見定め、ヘビーセットは騎士たちの足を挫くようエネルギーを投射していく。
「よっしゃ、助かるぜ! あとは……」
 自走砲台と二対のドリル、本来機神の武器でもあるマシンを用い、テラは包囲を狭めていく。追い込む先は幾度となく戦場となった場所、この空間は斬撃を憶えている。
 手にする剣が赤の輝きを帯び、力の発現を予告する。時は、満ちた。
「これは、おれが知る恐るべき刃だ。我が痛みにて、散れ……!」
 虚空より現れる無数の刃は、振るわれた時と寸分違わぬ経路を辿り、敵の喉元を深く裂く。凶刃を振るった事を悔やむ前に、騎士たちの意識は刈り取られていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

バーン・マーディ
……
我はバーン・マーディ
猟兵組織スナークに協力する者なり

神々との共闘は了承

…頼みがある
奴らに対する処置は我らに任せてもらいたい

そして弱点も確認する
【オーラ防御】展開
【戦闘知識】
己の記憶とこれまでの騎士達の戦い方とその差異を把握

騎士団招来

我が同胞よ
お前達に本来の在り方を思い出させよう

騎士団
【集団戦術・二回攻撃】
陣形を取り敵に対し三騎で集中して撃破
常に連携し弱点を狙い
【属性攻撃】
炎を鎧と武器に付与
紅炎の姫よ
その力を借りるぞ

【武器受け・カウンター・怪力・鎧砕き・鎧無視攻撃】
敵の強大な一撃を車輪剣で受け流し
カウンターで粉砕

倒した騎士達は須らく回収する

お前達をこのままにはさせぬ

その為に我は此処に来た



 際限なく思えた黒騎士の軍勢。荒々しき大地を埋め尽くしていた黒色も、今や大多数が地に伏している。
 押し通り首魁の元へ駆けるだけならば、深追いする必要はないのやも知れぬ。だが此処に一人、誰よりもその選択を善しとしない者がいた。
「……」
 寡黙な男は、眼前に控える騎士団と似通った鎧を着込んでいた。居合わせた神にその意味が悟れぬ筈はなかったが、無闇に言及する程人心を知らぬわけでもない。
「……頼みがある」
 闇黒騎士は静かに眼を開き、神々へと語りかける。
「彼らに対する処置は我らに任せてもらいたい」
 感情の滲まぬよう努めた声。神々は訴えの裏に潜む痛切な思いを汲み、頷く。
「心得た。敵は度し難き者ばかりなれど、汝の戦いを邪魔する意図はない」
 言質は確かに賜った。男は敵の騎士団へと、足元の砂利を踏み鳴らし静かに向き直る。
「我はバーン・マーディ。猟兵組織スナークに協力する者なり」
 バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は重々しく名乗りを上げる。覚悟など、此処へ来る前からとうに決めていた。

 敵の騎士団の最後の者たちが、各々の武器を手にバーンへと吶喊する。群れである事を武器に、敵は統率のとれた動きで攻め入ってきた。
 禍々しい覇気を放つ、黄金の柄の魔剣。如何に手に入れたのか、一兵卒の手にするには過ぎたる造りの代物ばかりだ。
 オーラの護りの上からでも伝う、剣の衝撃。一人が押さえに回り、一人が首を刎ね――効率よく命を狩る動きは明らかに殺戮に特化していた。
 余りに洗練され過ぎている。救う為に集ったのではなかったのか。記憶と異なる躊躇のなさに、バーンは武を以て知らしめる必要性を改めて認識する。
「我が同胞よ。お前達に本来の在り方を思い出させよう」
 大地に突き立てた魔剣より、巨大な門が出て扉を開く。現れたのは騎士の軍勢――彼らもまた敵の騎士と似て、されど誇りを失わぬ者の集まりだった。
「三騎で当たれ。分断し確実に仕留めよ」
 敵の連携を阻んで孤立させ、神々から聞いた弱点を狙いうつ。動き侭ならぬ敵を一人ずつ打ち倒す間に、バーンは炎色の魔法石に指先を触れる。
「紅炎の姫よ。その力を借りるぞ」
 勇者の力を借り受け、車輪剣と鎧が紅蓮の炎に包まれた。襲い来る敵よりも深く勢いよく踏み込み、敵の大振りの剣を舵切るように車輪剣で受け流す。
 がら空きになった胴に叩き込む一撃。鎧はへしゃげ、騎士は物言わぬ身となって崩れ落ちる。
 やがて剣戟の音が収まる頃、厳かな騎士の男はまだ転がる敵の騎士へと声を投げかける。
「お前達をこのままにはさせぬ……その為に我は此処に来た」
 斃れた騎士たちの体は虚空へと運ばれた。敵も味方も同じ、一度は死したる身なれば、やがては心ひとつに駆ける事も叶うだろう。
 一つ仕事を成したバーンは仲間たちの向かった大地の中核、不死の怪物を封じた座を見遣る。光り輝ける座には既に何者かの姿があり、一触即発の気配がこちらにまで漂っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴィラン『ロンリーオンリー・リオ』』

POW   :    ウィー・ニード・ユー
【孤独や寂しさ】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【髪に潜む数多の目玉】から、高命中力の【血肉を吸収する肉管】を飛ばす。
SPD   :    オーディナリー・マイ・ワールド
【融合した魔術師の力】を籠めた【林檎型の魔具から放たれる光】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【“一つ”になることへの嫌悪や恐怖心】のみを攻撃する。
WIZ   :    カム・アンダーン
【悪魔の如き角と翼を持つ、幼く凶暴な弟】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:もりさわともひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はデュラン・ダグラスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 センターオブジアース、封じられた怪物の座。
 先の『巨人』もこの地に封印されていたのだと、同行する神は語った。
 光球に包まれる巨亀、茨に閉じ込められた魔女。
 封印の形は様々であったが、いずれも解き放たれては敵わない者ばかり。
 何せ神でも殺せぬ不死の者だ、触れる事自体が禁忌なのも頷ける。

 先を急いでいた猟兵の一人が物陰から伸びる魔の手に気付き、身を躱した。
 醜き肉管。その主こそ、あなた達が探していた少女であった。

 猟書家の目的を継いだ少女は侵略蔵書を持つわけではない。
 だのに、髪の裏に蠢く眼球、剥きだしの血管、肉体より生やした『弟』。
 彼女の持つ部位は何れも、猟書家の後継と納得させるおぞましさを秘めている。

 ロンリーオンリー・リオ。
 生来ヴィランであった彼女は、オブリビオン化して歪な思想に拍車がかかった。
「リオ達の望みは一つです。皆ばらばらでは寂しいと分かっているはずなのです。それなのにどうして拒むのですか」
 自身の目的が正しいと微塵も疑わぬ無垢さ。
 ある点では純粋で、同時に少女はあまりにも盲目だ。
 融合する相手の想いや尊厳を踏み躙る事にすら、少女は思い至らない。

「心配は、いりません。リオ達のところへ来て下さい」
 手にした林檎型の魔具が紅き光を帯び、
 髪裏の虚空に浮かぶ目玉からは血肉を恋しがる肉管が見え隠れする。
 相手の同意を得る事もなく、少女は魔の手をすぐにでも伸べるだろう。

 だが、あなた達は見てきたはずだ。
 はるか地上、ヒーローとヴィラン、異なる者同士が共に生きる社会を。

 神の慈愛に満ちてなどいなくとも、坩堝のように全てを内包する。
 世界はどこまでもモザイクで不透明だ。
 差異あるが故に諍いを生み、熱を生み、社会を突き動かす。

 ヒーローやヴィランがこの場にいればそうしたように、
 あなた達は武器を構える。
 諦め果てた末の統合など、この強き世界には不要だ、と。
ジェット・アームストロング
君の思想は、自由と尊厳を害するものだ!認める訳にはいかない!
私は秘密結社スナークが一員ヘビーセット!君を倒す!

既に体脂肪をギリギリまで消費し、体は痩せ細っている。これ以上のエネルギーの放射は生命に関わる。
問題ない。私にはまだ燃える正義の魂がある。

少女に向かって突撃。
バラバラでいる事は寂しい、と言ったな。それは違うぞ。自分と異なる他人と認め合い互いを尊重する事で、人々は一つになれるのだ。それこそが法と秩序に基づく正義!私はその正義を守る!
【オーラ防御】で攻撃を凌ぎ至近距離から【怪力】のパンチを打ち込み、更なる連打からフィニッシュの全力パンチを叩き込む。

God bless justice!



 魔術師の少女・リオの掲げる、無垢にして邪悪なる理想。
 それはヒーローズアースに住む者には受け入れ難く、ジェット・アームストロング――ヘビーセットの理念にも大きく反するものだった。
「君の思想は、自由と尊厳を害するものだ! 認める訳にはいかない!」
 啖呵を切る彼の体は、訪れた時に比べやせ細っていた。先の戦いで空を飛ぶ為に脂肪を燃やし、これ以上の無理は命に関わる。
 だが、ヘビーセットは尚も吼え猛る。
「私は秘密結社スナークが一員、ヘビーセット! 君を倒す!」
 空元気でなく、奥の手。肉体が限界なら、魂を燃やすまで。
 勇ましきヒーローは戦いの先陣を切る事に、微塵の躊躇も見せなかった。

 髪に潜む数多の目玉の凝視が、駆け行く男に注がれる。
 理解できぬのは向こうからも同じなのだろう。まっすぐな彼の意思に戸惑うかのような声を響かせる。
「どうして嫌がるのですか。リオ達は一つになれるはずなのに」
 敵の言葉に緩く首を振り、元警官の男は柔らかな否定を示した。
「バラバラでいる事は寂しい、と言ったな。それは違うぞ」
 脂肪燃焼により引き締まった顔の、口元目元に刻まれるは鉄の意思。そのまま拳を握り固め、呼気を吐き出すと共にエネルギーの練度を高める。
「自分と異なる他人と認め合い互いを尊重する事で、人々は一つになれるのだ。それこそが法と秩序に基づく正義!」
 たとえ点と点でしか理解し合えずとも、人は異なるからこそ分かち合える。告げる男の眼は、悪への断罪でなく正義を示す事に燃えていた。
 伸びる肉管の束を躱し、後ろから舞い戻る管に追いつかれる前に肉薄する。握り込んだ拳に宿る正義の輝き。腹の奥、魂の底から声を出し、裂帛の気合と共に叩き込む。
「世界の側に立つヒーローとして! 私はその正義を守る!」
 突き立つ肉管の束。背部をオーラの護りで塗り固め、そのまま掌打のラッシュに集中する。
 屈んだ姿勢からのボディブロー。現れた『弟』の手に阻まれるが、ヘビーセットの猛追はそれしきでは止まらない。
 払い除けるフック、ねじ込むボディ、正義の魂を燃やし続けて息もつかせぬ猛撃を見舞う!
 がら空きになった魔術師の腹部へ、拳に正義しろしめす輝きを一気に集め。
「大人しく観念するのだ……God bless justice!」
 ヒーロー名に冠するが如く、重量級のフィニッシュブローが少女の身を揺らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
一つになることへの嫌悪感が薄らいでいく
このまま流されてしまいそう、
だけどそれも悪くないかなぁ……

……いや!
尊敬する仲間が授けてくれた言葉のUCで、
自分に言い聞かせるようにして対抗します!

「人間は皆寂しさを抱いているのだから、
いま感じる嫌悪などは無視しても良い」
という議論は本当に正しいのでしょうか
確かに一つになることで解消する寂しさもあるのだとしても、
そのことと、
一つになることで永遠に失うものがあるという事実は
まったく矛盾しないはずです
ならばどちらを優先するか?
私は自分の魂と、この世界を守りたい!

――以上、考察終了です
答えはでました
もう惑わされたりなんかしない!
さあ、いざ尋常に勝負勝負!


ニクロム・チタノ
キミの言いたいことはわかる、ボクも研究所からお義母さんがいなくなった時はすごく寂しい思いをしたから、でも自分の考えを押し付けて無理やり融合するなんてそれは自由を束縛する圧政だよ
ボクは反抗するよ、チタノ私は明日が欲しい
これがキミの弟?まるで悪魔じゃないか・・・これがキミ達の理想なの?
悪いけど容赦しないよ、重力を掛けて動きを封じて蒼焔でダメージを与える、そのまま弟クンを切り裂くよ
コイツを倒せば後から来る猟兵が有利に戦えるはず
これより反抗を開始する
悲しい妄執に、孤独な悪夢に反抗の救済を



 林檎の魔具が禍々しい光を放ち、直後上がるかすかな呻き。ユーイ・コスモナッツの意識は瞬く間に、泥濁った負の感情の奔流に飲み込まれた。
「っ……あ……」
 ユーイの体を取り巻く赤き光の呪縛。先程まで感じていた一つになることへの嫌悪は薄らぎ、敵の考えを違和感なく受け入れてしまいそうになる。
(「このまま流されてしまいそう、だけど……それも悪くないかなぁ」)
 自我は体を離れて鳥の視点で自身を見下ろし、弱気になるのを自覚しても何ら手出しをする気さえ起きない。

 仲間を襲う明らかな異変。傍で一部始終を目にしたニクロム・チタノは、震える拳を握ってこみ上げる感情を押し殺す。
「こんな……自分の考えを押し付けて無理矢理融合するなんて」
「押し付けてなんていません。リオ達は本当の気持ちを解放しただけです。個々に分かたれたまま寂しく生きる宿命、リオ達はそれを善しとはしません」
 破綻した考えを言葉に乗せる、少女の様子には一切の躊躇いがない。
 どこで道を違えたのか――少女の境遇に思いを馳せながら、ニクロムは僅かばかりの譲歩をみせる。
「キミの言いたいことはわかる。ボクも研究所からお義母さんがいなくなった時は、すごく寂しい思いをしたから……でも」
 想いに寄り添う事はできても、敵の少女のすべてが許せるわけではない。
「これじゃ自由を束縛する圧政だよ」
 ニクロムの瞳が険しい光を宿す。事情はどうあれ、他者に考えや生き方を強いるのならば、ニクロムにとっては反抗すべき相手にほかならない。
 水面下から息継ぎをするような、ユーイの咽込む声。魔力による誘惑から逃れんとして、宇宙騎士の少女は震える喉で言葉を紡ぐ。
「……負けま、せん……」
 呼び覚ますは仲間の声。脳内に再生される頼もしき言葉。
 ――良いか、よく覚えておけよ。言葉は時に武器になるんだぜ。
 彼の言う事は、本当に的を射ているとユーイは思う。だって、この魂はこんなにも彼の声を憶えている。誘惑に抗う、武器にもなる。
 懸河の弁――男は、決して器用とは言えないユーイに策を授けた。止めどなく出てくる言葉のみに集中し、自身に向けて語り聞かせる。
「人間は皆寂しさを抱いているのだから、いま感じる嫌悪などは無視しても良い……本当に?」
 たとえ誰かと一つになることで寂しさが消えるとしても。代わりに永遠に失うものがあるならば、ユーイにとって受け入れられる選択ではない。
「融合して得られるもの、融合して失うもの。私一人である寂しさ、一人の私である喜び。二者択一、同時に成し得ないならばどちらを優先するか――決まっています」
 そこまで言い切った後に息を吸い、決意に拳を固める。
「私は! 自分の魂と、この世界を守りたい……!」
 張り叫ぶ少女の声があたりに響き、赤き光を打ち破った。

 言葉の力のみで誘惑を断ち切ったユーイに、魔術師の少女は眉根を寄せた。
「……以上、考察終了です。答えは出ました、もう惑わされたりなんかしない!」
 武器を構える騎士の少女。最早魔術による誘惑は叶わぬとみて、打つ手を変える。
「なら、あなたを倒して融合する事にしましょう。順序が変わるだけ、リオ達の計画に変更はありません」
 言葉は途中から二重に分裂し、少女の体から生える異形の『弟』が魔物じみた醜悪な声を響かせる。
「これがキミの弟? まるで悪魔じゃないか……これがキミ達の理想なの?」
 ニクロムが自身に宿る守護竜を呼び覚まし、霊体化したチタノが重力を放つ。
「悪いけど容赦しないよ。チタノ、来て! 私は明日が欲しい!」
 辺り一帯の地面を陥没させる超重力の力場。更に重ねるように蒼の焔を投げかけ、敵の少女と同化した『弟』の身動きを封じる。
「コイツを倒せば後から来る皆が有利に戦えるはず……!」
 守護竜の加護で重力の枷を振り切り、ニクロムは敵へと駆ける。隣を見ればユーイが反重力シールドに乗り、突撃槍を構えて敵へと迫る。
「私も加勢します! 押さえますので、その隙に!」
 一足先に向かったユーイが槍の穂先を突き入れ、少女の身動きを封じた。
 今が好機。飛び上がるようにして妖刀を振り上げ、『弟』めがけて振り下ろす。
「悲しい妄執に、孤独な悪夢に反抗の救済を!」
 重力により速度を増した刀は、深々と異形の身を引き裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テラ・ウィンディア
ウィンディア
…辛いな
リオと同じ名前のお前がそんなに悲しい事を言うのが

対POW
…おれには…ライバルでもある姉と…守るべき妹がいる
いや…二人ともおれを支えてくれている
それに…ヘカテ(キャバリア子猫)もいる
だから…寂しくはないよ
【戦闘知識】
その動きと癖を見切る
【見切り・第六感・残像・空中機動・武器受け・オーラ防御】
飛び回りながら攻撃を回避しつつ
【重量攻撃・弾幕・貫通攻撃】
ガンドライド&ドリルビット展開
重力弾の弾幕とドリル攻撃で蹂躙
【二回攻撃・早業】
二刀による高速斬撃

リオの支援を受けて高まった力で斬撃展開
他の参加者の斬撃と己の斬撃は心に刻む

斬撃濃度が高まった時
消えざる過去の痛み発動

味わえ

(斬斬斬斬斬斬


リオ・ウィンディア
◆ウィンディア
リオの名前は安くはないの
私にはある意味凶暴な姉がいるの
えぇ、とっても頼りになるお姉ちゃんが二人もいるの
今日はテラねぇと一緒だよ
それにね、大好きな人もいるから私も寂しくなんかないよ

【楽器演奏・歌唱・呪詛・精神攻撃・恐怖を与える】のマルシュアスを奏で
相手の動きを鈍らせる
姉妹の絆は負けないんだから

でテラねぇの攻撃に合わせて旋律を奏でる
隙間を見て楽器の底に忍ばせているダガーを握り
いくよ
これが私の希望の姿!
UC発動
【光の属性攻撃早技・2回攻撃】で一気に攻めるわ
「同化など望まない
私たちはそれぞれに個性があって
お互い離れてても信じてる道がある
だから迷ってなんかいられない
私の道は私が作る!」



 妖刀の刃に裂かれ、ぐずぐずと崩れかける異形の『弟』。
 そのような形でも愛情はあるのか、本体より魔力の施しを受け異形は再び形を取り戻す。
「どうして皆、拒むのです。リオ達は世界を正しき姿に戻すだけなのに」
 オブリビオンの少女の言葉を聞き届け、テラ・ウィンディアは耐え難いと言うように表情を曇らせた。
「……辛いな。リオと同じ名前のお前が、そんなに悲しい事を言うのが」
 リオ――ただの偶然といえ、眼前の少女は傍にいる妹、リオ・ウィンディアと同じ名だ。些細な縁かも知れぬが、それだけに道を違えてしまった事が悲しく思えた。
「おれには……ライバルでもある姉と、守るべき妹がいる」
 二人ともよく、テラを支えてくれている。姉妹だけではない。いまは黒猫の姿となった神機、ヘカテもテラを守ってくれる大事な存在だ。
「だから……寂しくはないよ」
 相手の言葉をはねのける、強い眼差し。姉の言葉に背中を押され、妹のリオもまた思いを口にする。
「私も寂しくなんかないよ。ある意味凶暴な姉が二人もいるの」
「凶暴って……まあいいか」
 リオの言葉はどちらを指した者か。この場に居ない姉も戦い方は近接寄りと聞く、守る者のため戦う姿を思えばあながち間違いでもないだろう。
「今日はテラねぇと一緒だよ。それにね、大好きな人もいる」
 偽らざる思い。リオの声は唄い、夢見るように軽やかで。
「皆に大事にされてるの。だから……あなたみたいな人にあげられるほど、リオの名前は安くはないわ」
 毅然と明るい声で告げる、訣別の言葉。言葉の真意の通じぬ相手なれど、明確な拒絶の意思は伝わった。
「なら、その皆とも一つにしてあげます。そうしたら、仮初の希望に染められる事もないはずです」
 風もないのに舞う髪。はためく髪の裏側、無数のおぞましき単眼がテラを見据える。
 血肉を啜らんとして伸ばされる肉管。だが、これまでの戦いを見ていたテラは敵の放つ攻撃にパターンを見出だしていた。
「その肉管。素早い動きには対応できないんだろ!」
 ギリギリまで引き付け進路を変えて回避し、テラの居た所を肉管が音を立てて空しく過ぎる。舞い戻る管に追いつかせまいと、残像を残す勢いで駆けながら速度を上げていく。
 戦う姉を援護しようと、妹のリオが手回しオルガンのハンドルを握る。
 リールから漏れ出づる旋律は恐怖煽る調べとなり、呪詛に満ちた歌声と合わさって敵の身動きを鈍らせた。
 肉管の迫る速度が落ちたのを見て、テラはすぐさま攻勢に転じた。
 自走砲台と二機のドリル型ビット、本来は愛機の兵装であるそれらを呼び出し、走る自分のすぐ横に展開する。
「おれの斬撃に、ついてこれるか……!」
 テラ自身は二振りの刃を携え、目にも留まらぬ速さで敵と斬り結んでいく。
 敵の少女の胴体より再び姿を覗かせる『弟』。対抗すべく、リオはオルガンの底にしまったダガーを取り出す。
「いくよ! これが私の希望の姿!」
 纏う夜を突き破り、リオの背から白き翼が生えた。それを合図としてリオの体は白く透いた天使思わせる衣装に包まれていく。
「同化など望まないわ。私たちはそれぞれに個性があって、お互い離れてても信じてる道がある……だから、迷ってなんかいられない」
 白く煌めく光をダガーに宿し、リオは駆ける。
 背に吹き付ける、リオの追い風。爽やかな風に気持ちの面でも背中を押され、テラは刀を握り直す。
 空間に刻まれた数多の太刀筋、斬撃濃度は十分。かけ声と共に、場に溢れる斬撃の記憶を一気に解き放つ。
「味わえ!」
「私の道は、私が作る!」
 入り乱れる黒刃と白刃のコンチェルト。光と影の織り成す景色の中に、再び斬り刻まれた『弟』の姿がかき消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バーン・マーディ
…我が騎士団を利用せしものよ

我はヴィラン

貴様の在り方はヴィランの未来の消失に外ならぬ
何より…それで「貴様の孤独は癒されない」

叛逆の英霊達発動
一章で倒された我が騎士達全員を復活させる

…我はバーン・マーディ
スナークに協力せし対神組織「デュランダル」が首魁なり

【戦闘知識・集団戦術】
弟と姉の動きの癖と性質の看破
騎士団
デストロイブレイドによる猛攻と回避されても地形破壊で動きを制限
他がケイオスランサーで貫き
反撃は後衛が不滅の刃で回復

首魁の元
息を合わせ乱れぬ連携による蹂躙

【オーラ防御】展開
【属性攻撃・怪力・二回攻撃・鎧無視攻撃・鎧破壊】
魔剣と車輪剣による連続斬撃

眠れ…
貴様の悪夢は此処で終わる



 自慢の『弟』の再生も満足に叶わず、胴体に残るは歪な肉塊。千切れた髪の裏の眼は疲れに血走っていたが、眼球の奥底にある敵意だけは衰えていない。
「……我が騎士団を利用せしものよ」
 かつての部下を利用した敵の少女へ、バーン・マーディは怒鳴る事もせず厳かに語りかける。
「我はヴィラン。貴様の在り方はヴィランの未来の消失に外ならぬ」
 自らを正義とは対極、悪の側だと定義する男にも、決して履き違えられぬ信念があった。
 悪とは独自の信念をもって歩む者。力をもって正義の成し得ぬ事を成す。それ故に、ただの正義の敵、世界の敵に成り下がっては悪は務まらぬのだ。
「……何よりも、だ」
 やがて男の声は、諭すような響きを得る。
「それで貴様の孤独は癒されない」
 押し黙るような間があった。それまで感情を見せる事のなかった少女の喉は、紡ぐ声をわずかに震わす。
「あなたに……あなたにリオ達の何が、わかるのです」
 言葉はそれきりだった。崩れかけていた『弟』へ無理やり魔力を投じ――空虚さを埋め合わせるように歪に膨れ上がらせた少女は、遂に『弟』の身を切り離す。
 動けなくなった少女に代わり、自立して這いまわる『弟』。腐汁を垂らす魔性の者を、騎士の男は落ち着き払った様子で出迎えた。
「……我はバーン・マーディ。スナークに協力せし対神組織『デュランダル』が首魁なり」
 呪われた外套を翻せば、そこに闇があった。闇は次第に形を成し、見覚えのある姿の者達を戦場に呼ぶ。
 彼らこそは叛逆の英霊達。一度は斃れたデュランダルの騎士が、かつての首領のもと一堂に会していた。
「死は、終焉ではない。お前達の怒り、慟哭――今こそ『叛逆』を成してみせよ」
 黒の騎士団は此度こそ、正しき目的の元に刃を振るった。
 闘気を籠めた破壊剣の一撃が大地を穿ち、暴れまわる異形の者の行き場をなくす。ユーベルコードの成せる奇蹟にも限度があるのか、騎士も全ての動きを再現できはしなかったが、手負いの姉弟には破壊剣のみで事足りるだろう。
 次々と蹂躙され、成す術なく崩れる異形の者。
 本体であるリオが最後の抵抗として、黒魔術の行使を試みる。
「リオ達は……世界を在るべき姿に……」
 かき消えそうな声と共に放たれる呪詛の塊。車輪剣の先でかき消し、一刀のもとに散らす。
 そのままバーンは、剣を振るった。轢き潰す車輪剣の直後に突き入れる魔剣、完膚なき迄に仕留める太刀筋は彼なりの慈悲か。
「眠れ……貴様の悪夢は此処で終わる」
 朱よりも暗い赤が散り、魔術師は絶えた。地を転がる歪な林檎が最期の脈を打つよう不規則に揺れ、程なくして動きを完全に止めた。

●満ちる命
 神々の協力を得て、巨人の力が座に帰る。
 神話に語られる古代、大地を支えた始原の巨人は、
 その傲慢さ故に封じられたという。
 溢れんばかりの膂力。
 此度垣間見えたその力も、不死の怪物の力の一端に過ぎぬ。

 だが、同時にあなた達は識っている。

 力で勝る相手に真っ向勝負を挑める、護る者の強さを。
 抗う者の強さ、絆の強さ、
 悪道に堕ちてなお本懐を遂げる人間の強さを。

 世界はどこまでも灰色だ。
 多様性に満ちるが故にいがみ合い、同じ理由で分かち合う。

 神すらもその多様さの一部となった今、唯一つ言えること。
 絶対唯一の存在などありはしない。
 仮にあったとて、この世界に生きる数多の命にとり。

 ――その肉体を、彼らの魂の檻とするには狭すぎる。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月28日


挿絵イラスト