180分、死線を越えよ
●???分前 名前のない島にて
「……いや…!」
少女は囁くように叫ぶしか出来なかった。
掴んでいた手は無情に引き剥がされ、愛する家族がケモノの爪と牙で肉の塊となっていく。
――雲海に落ちて死んでいた方が、まだマシだったのだろうか?
――よりによって飛空艇が不時着した先が、ケモノしかいない屍人帝国の成れの果てだったなんて。
私たちは逃げただけ。
不安定な大陸から安全なところへ連れて行ってくれる艇に乗っただけ。なのにどうしてこんな目にあわないといけないの?
此処に神様はいないの? 私たちはあのまま、沈むのを待っていた方が良かったの?
濡れた音がする。ケモノが咀嚼する音だ。
私の家族を引き裂いて、引き千切って。
「いや、いや……! やめて……!」
ギャア、と鳥が鳴いている。私にもくれというように。
不時着した船から鳥の脚で引きずり出されて、気付けば大きな城の中にいた。
一目でまともな城ではないと判った。だって、血の跡と骨がたくさん散らばっていたから。
――まるでケモノの巣のようだ。
其れは誰が言ったのか。果たして其の通りだったのだ。此処はケモノの縄張り。私たちが来てはいけなかった場所。
私たちの、終わりの場所。
誰か助けて。誰か。誰か!
濡れた音がする。
ケモノが咀嚼している。時折ばちり、と雷のような音を立てながら。
●10分前 グリモアベースにて
「飛空艇が屍人帝国に不時着する」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は端的に切り出した。
天使核に異常が発生したか、艇の造りの問題か。其れは判らないが、問題は其処ではないという。
「屍人帝国といっても、ヒト型のオブリビオンは殆どいない。いるのはケモノ型のオブリビオンと、機械のようなオブリビオン。ケモノ型は縄張り意識が強いから、オブリビオン同士で牽制し合ったのかもね」
其処へ不幸にも不時着してしまうのは、とある島へ避難しようとしていた人々の乗る飛空艇だ。大陸の天使核が不安定になったため安全な大陸へと移動している最中にトラブルに遭い、屍人帝国の島へと不時着したらしい。
「まあ、墜落ではなく不時着だったのは――幸せだったのだろうかね。不幸だったのかもしれない。飛空艇は直ぐにオブリビオンに見つかって、人員は島中央の城へ集められる。島のヌシへの捧げものになる訳だ。お前たちには彼らを迅速に救出して貰いたい。……といっても、何人残っているかは判らない。不時着自体を防ぐ術はないからね」
言うと、ヴィズは懐から懐中時計を出して時間を確認する。
「この屍人帝国の島はちと特殊でな。飛空艇で乗り付けると其の時点で天使核の汚染が始まる。まともに飛べるぎりぎりまではおよそ180分。……其の間にお前たちは、敵の守りを蹴散らし、島のヌシから獲物たちを取り返し、更に追撃の手を払って飛空艇に戻らなければならない訳だ。タイムアタックだよ」
飛空艇と勇士たちは既に手配してある、とヴィズは言って、グリモアを展開する。
「――言っておくが。帰還に間に合わなかった者は置いていくことになる! 二階級特進は期待するな、お前らは猟兵だからな! 無事に戻って勇士たちに酒でも奢ってやれ! ……武運を祈る!」
key
こんにちは、keyです。
今回はブルーアルカディアでのシナリオとなります。
既に犠牲者が出ています、万々歳とはいかないかも知れませんが…
●目的
「避難民の生き残りを救助せよ」
●プレイング受付
タグ・マスターページにてお知らせ致します。
●このシナリオについて
「ヌシの取り巻きとの戦闘」
「ヌシとの戦闘、人員の救出」
「敵の追撃をかわして飛空艇へ」
となります。3章通して戦闘、2章はボス戦となります。
部隊は人間型オブリビオンが殆どいない屍人帝国の島です。勇士たちは猟兵を送り届けた後、3時間(180分)だけ貴方達を待ってくれます。
其の間に第三章まで駆け抜けるというシナリオになります。
(普通に戦って帰還すれば問題ないようになっています)
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
今回は戦闘フラグメントが続きます。単独描写をご希望の方は「✨」を頭に付けて頂けると助かります。
●
此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『ブレイドホーク』
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POW : テイルブレイド
【尾の先端の刃】が命中した対象を切断する。
SPD : ホークフェザー
【羽ばたきと共に、刃の如く鋭い羽】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ホークウインド
【力強い羽ばたき】によって【強風】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
イラスト:青空皐月
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●状況開始
君たちは勇士の飛空艇に乗り、屍人帝国の浮遊大陸へと向かう。――遠目から見ても古びた都の様相だった。
近付けば近づくほど、其の都に人気がない事が判る。此処はヒト以外のものの楽園だ。
「グリモアの人から言われてると思うけど、180分経ったら容赦なく艇を出すよ」
女船長が試すような目で言う。
「其れまでに救えるモン全部救って帰ってきな。なァに、すし詰めにはなるけど人の命には代えられんだろ? あっは! ……、悪いね。もっと良い天使核が手に入ってたら、もっと長く待っていられたんだけどねェ」
はは、と笑った女船長は、しかし敵影を見逃したりはしていない。ずっと君の肩越しに、近付く影を見ていた。
「じゃあ行ってきな! 艇の守りは気にしないで良い、精鋭が揃ってるからね!」
影は徐々にギャアギャアという音を連れて来る。――其の足で獲物をヌシに献上しようとやってきた、鋭い羽の鳥型オブリビオンの鳴き声だ!
鏡島・嵐
勝負するんは敵とだけじゃなくて時間ともってわけかよ。
……なんか「戦うんを怖がってる場合じゃない」って釘刺された気分だ。
……言われなくてもわかってるさ。怖ぇけど、頑張らねえとな。
相手が空を飛んでるし、こっちも飛び道具で対抗だ。
《二十五番目の錫の兵隊》を呼び寄せて、敵を撃ち落とすのに専念させる。
おれは《錫の兵隊》が狙撃に専念できるように敵の気を惹きながら〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉で敵の動きを止めたり、《錫の兵隊》の攻撃に合わせて〈援護射撃〉でサポートしたり。
敵の攻撃はなるべく〈第六感〉を働かせて躱す。
もし他の味方が近くにいるなら、そっちにも適宜〈援護射撃〉を飛ばして支援する。
※連携・アドリブは適当に
●
「勝負するんは敵とだけじゃなくて時間とも……って訳かよ」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は参ったと髪をくしゃくしゃに撫ぜる。しかし此処へ来た。180分限りの戦禍へと飛び込まねばならぬと、脚を震わせながら来たのだ。
――戦うんを怖がってる場合じゃない、って釘さされた気分だ。
――此処に来たからには戦えって。言われている気分だ。
判ってるさ、判ってる。怖ぇよ、脚の震えが止まらん。だけど、来ちまったんだよ。頑張らねえとな。
「なあ、そうだろ?」
ざく、と大地を踏む音がする。嵐の後ろに現れたのは、武装した兵士だ。特徴的なのは、其の片足の義足。脚を失っても、命を失っても尚。彼は戦う。
「そんじゃ……行くぜ!」
嵐が一気に走り出す。ブレイドホークが嵐と兵士を狙って尾を振り回し、脚爪を向ける。兵士は向けられた尾をばらり、と銃剣の一薙ぎで払い、銃を回転させた銃床で容赦なく殴りつける。
嵐は走りながらスリングショットで応戦する。ただの……等と侮るなかれ。石ころから癇癪玉までなんでもかんでも彼の弾。兵隊が一つの動作で多くのオブリビオンを薙ぎ払えるように、ブレイドホークの脚を止める。其れは僅かなタイミングだが、嵐は其れを見事に読んで見せた。
――が。後方のオブリビオンが羽ばたき、仲間を活性化させる強風を放つ。両腕で飛び散る砂塵を防いだ嵐の目に映ったのは、ブレイドホークの鋭い、銛のような尾!
「……ッ! でええ!!」
貫かれた、と気付いた時には炎が燃えるように脇腹が熱かった。熱いと思ったら其れはあっという間に痛みに変わり、血液の流れるリズムに合わせて嵐を責め立てる。
咄嗟に後ろに跳んだのが幸いして、凶刃は身体から抜けたものの、ごろごろと嵐は大地を転がる。
――この大地も、浮いてんだよな。
そんな感慨が浮かぶくらいには、現実逃避したかった。でも、でも。でも! 嵐はもう逃げる訳にはいかないのだ。父母が見た光景を見るために。恐ろしいを克服しなければ、前には進めないから!
「……一人に頑張らせちゃ、立つ瀬がないしな……!!」
ちょうど兵士が義足でもってブレイドホークを殴打したところだった。
起き上がり、再び嵐は駆ける。其の速度が先程より遅くても、彼は止まる訳にはいかない。走らなければならない。少なくとも、時計の長針より速く。
大成功
🔵🔵🔵
月白・雪音
…刻限は180分。余裕を持てるとは言い難い時間です。
全てを助け出す事は叶わねど、未だ我々の手が届く命あらば、
立ち止まる暇は御座いませんね。
UC発動、残像の速度にて城へと向かう
敵の攻撃は野生の勘、見切りにて読み取って躱す、
或いはカウンターも交え、羽を掴み取り投げ返すことで敵を撃墜
殲滅速度が足りないようであればアイテム『氷柱芯』を相手に巻き付け
怪力にてそのまま振り回し周囲を一掃
…獣と機械という異なる種のオブリビオンの生息する島でありながら主への捧げ物の概念を有するとあらば、
島の主はそれらの存在にある程度の社会性を形成させ得る知性、ひいては力を有する個体という事です。
気を入れて臨まねばなりませんね。
●
月白・雪音(月輪氷華・f29413)には、魔術の才はない。
雪原で育ち、人間に拾われた虎は、ただただ人間の肉体で為し得る事のみを体得しながら育った。
だから雪音には、魔術の才はないが体術の才がある。
「は……ッ!」
短い気合裂帛の声と共に、ブレイドホークが放った羽の弾幕をすり抜けていく。鍛えぬき薄い雪音の身体だから出来る事。直接足にて攻撃を仕掛けようものなら、逆に其の足に絡みつくワイヤーアンカー“氷柱芯”。凶刃な羽は時に諸刃の剣となる。ユーベルコードで強化された雪音の膂力で思い切り振り回されれば、オブリビオンは仲間を切り裂き打ち据える凶器となった。
「……一向に減りませんね……数が多い」
氷柱芯を緩めて息絶えたオブリビオンを放ると、樹へと素早く登り、雪音は一息を付く。葉が生い茂る此処なら少し休息が取れるだろう。
――ケモノと機械。異なる種のオブリビオンが生息する島でありながら、ヌシ、そして捧げものという概念がある。ならば、島のヌシとやらはそれらの存在にある程度の社会性を形成させ得る知性、ひいては力を有する個体ということ。
「或いは知性が発達しているならば……私たちの救出戦も視野に入っているのかも」
そうして全部、ぱくりと食べてしまうつもりなのだろうか?
……そんな事はさせない。この猛虎の手足を持って、全てを打ち破るのみ。ヌシを破り、避難民を救出して、必ず帰るのだ。皆で。
「……」
拳を握って、開く。大丈夫だ、まだ戦える。
「行きましょう」
枝を蹴り、再び雪音は大地を駆ける。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
180分かぁ。遊ぶには十分。盗むべくモノが無くとも気晴らしと言うのは大切だからねぇ。どれ、手作り羽毛布団の材料を自給自足と行くかぁ。
狂気の禁癒を使って高速で飛び回るとしよう。翼が羽ばたく方向に気を付けつつ、傷の癒えぬ防御不能の銃弾で各個撃破と行こうかなぁ。
いやぁ、仲間の鳥も容赦のない無差別攻撃、巻き込まれる鳥は無視して安全そうなところに居るやつから撃ち落として毟ろう。
……とまぁ、今の今までそう思ってたんだけどねぇ。こんな鋭い羽根じゃ布団にしても気持ち良くなさそうだ。さっさと命を盗むから、もうなるべく傷の数少なめにとは期待しないで貰いたい。一匹一匹ハチの巣にしてやるさぁ。
●
「180分かぁ」
遊ぶには充分だねぇ。霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は艇から降り立つと、いつも通りそう言って笑う。盗むべきモノは城の周りにはなさそうだけれど、気晴らしというのはいつだって大切だ。そうだろう?
「手作り羽毛布団というのも乙だよねぇ。さ、自給自足といくかぁ」
トカレフ銃をおもちゃのように両手でパスして遊ぶ。彼が悠長としている間にブレイドホークは獲物を取り囲み――永一に一斉にとびかかった。
「はは、遅い遅い」
けれど、輪の中心に既に永一はいないのだ。何処にいてもとばかりにブレイドホークが鋭い羽を放つが、仲間を切り裂き傷付けるばかり。
――成る程? 其の辺の知能は獣並みってことかぁ。
100x100という恐ろしい速度で飛び回りながら、永一は狙いを定める。様々な方向から猟兵が攻め立てているためか、ブレイドホークが幾つかの群れになっているのが上空からは確認できた。そのうち自分を囲んでいた群れの最後方、一番羽をむしりやすい奴から。
一発、二発。放つ。音はしない。銃声もなく、着弾音もない。ただ鳥たちの鳴き声の中、静かに急所に風穴を開けられて墜ちるオブリビオンが一羽いるだけ。
其れを枝の上で永一はキャッチ。ぶちりと羽をむしって見聞する。
――とても鋭いし、触ってみると硬くてごわごわしている。これは布団にしても気持ちよくなさそうだ。
「仕方ない」
ぽい、とオブリビオンの死骸を投げ捨てると(大地に着く前に死骸は青黒い灰になった。成る程、やっぱり布団には使えない)、永一はトカレフを構える。
「命くらいしか盗めるものがなさそうだ。さっさと盗むから、おとなしくしててくれると嬉しいなぁ」
そうしたら余り痛くなく蜂の巣になれるからさぁ。動くと痛いだけだよ?
再び黒い影が飛び立つ。其れはまるで大鴉に似て――次々と無音の魔弾を放ち、オブリビオンの命をするりと盗んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
速く行かなくちゃ、もうこれ以上犠牲者は出さないよ!
でたねオブリビオン、今回はゆっくり相手してるヒマはないんだ、一気にかたずけさせてもらうよ
チタノ私は明日が欲しい
空にいるなら先手必勝で引きずり下ろしてあげる
動けないでしょ?なんせオマエ達には周りより強い重力を掛けているからね
後は蒼焔で一気に焼き払ってこのまま進むよ!
チタノ、どうか生き残りのヒト達に反抗の加護と導きを
夜鳥・藍
古い都。こんな状況でなければ、オブリビオンの巣でなければ観光がてら散策も楽しそうな場所ですけど、核の汚染がある以上やはり厄介な場所ですよね。
神器鳴神を複製し攻撃する事で道を切り開きましょう。
初めから全力で行ってもいいのですが、後で息切れしても困りますし様子を見ながら攻撃していきましょう。
できれば多くを倒して帰りが楽になるようにしたいですが、ここで時間をかけても無意味になりかねませんから。
本当はこの腕がちぎれても、より多くを抱えたい。遺骸もつれて帰り助けたい。
そう思うけど私の腕はそこまで長くない。そこまでの力も持ってない。
無茶無謀は勇気じゃない。自分に言い聞かせないと、共に自滅しそうで怖い。
千束・桜花
角がありますが、タカ……でしょうか
もっとじっくり見たいところですが時間がありません、急ぎ駆け抜けましょう!
飛んでいる相手を、足を止めて狙っていては時間がもったいないですね!
斬撃の遠当てならば進みながらできるでしょうか!
桜の花びらを刃に纏わせて、闘気を込めて空を斬ります
斬って、走って、また斬って!
敵の攻撃には遠隔斬撃をぶつけて相殺します
その翼も、風も、私の剣で悉くを斬り捨てて差し上げます!
●
反抗の時は来た。
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は破けたセーラー服を風に靡かせながら強い眼差しで島の中央に聳える城を見詰める。
「速くいかなくちゃ」
「ええ! 時間がありません、急ぎ駆け抜けましょう!」
鞘から“サクラブレェド”を抜き放ちながら、千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)が力強く頷く。
「ところで、どうして其の服は破れていらっしゃるので?」
「ん、……研究所のひとの趣味かな」
「随分と破廉恥な趣味ですね。こちらをどうぞ!」
桜花は言うと、外套を脱いでニクロムの肩にそっとかけ、しっかりと留め紐を結ぶ。こうすれば激しく動いても彼女の動きを阻害する事はないだろう。
「……。ありがとう」
「いえ!」
「ふふ。そうですね、此処はオブリビオンの巣。薄着だと危ないですから」
夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が少しだけ笑う。フードを被って顔を陰にしてはいるが、余りに二人が微笑ましかったから。
「――森に、城。オブリビオンの塒でなければ観光がてらの散策も楽しそうな場所ですが」
藍のそんな呟きは、ギャアという鳥の鳴き声に掻き消された。
群れが、死の前触れが飛んでくる。三人は向き直り。
「来ましたね! アレは……角がありますが……タカ、でしょうか? じっくり見ていたい所ですが時間がありません!」
「うん、いこう」
「……はい」
ニクロムは祈る。己を導いてくれる反抗の竜“チタノ”に。
チタノ、私は明日が欲しい。私だけじゃない、此処にいる人、お城で死に抗っている人たちも明日が欲しい。
――羽で飛んでいるのは決してアドバンテージじゃない。先手必勝で引きずり降ろしてあげる。
チタノ。チタノ。どうか……答えて!
ニクロムの影から蒼い竜炎が立ち上る。其れは竜のシルエットを為して、一つ吼えた。ずずん、と地面が一段低くなったような感覚がして、鳥たちが地面に叩き付けられる!
「ギ……!? ッギイィ……!」
「動けないでしょ? オマエ達には周りより強い重力をかけているからね」
「これは良い! 俄然斬りやすくなりました! 足を止めずにいきましょう! ……遠当てならば進みながら出来るでしょうか!」
試しに一歩進みながら剣を振るってみる桜花。斬り裂き貫け千桜、桜吹雪を纏った彼女の花弁による遠当ては、見事に地面に張り付いた鳥たちを両断する。
「……いけそうですね! さあ皆さん、進軍です!」
「ええ、じゃあ私も……鳴神、……貫け……!」
藍もまた、己の三鈷剣を複製する。それらは鳥たちが二度と起きて来られないように心の臓を過たずに貫き、青黒い灰へと返す。
「行く先にもっといると思う! ボクとチタノじゃ押さえきれない分がいたら気を付けて!」
「承知しました! 問題ありません、将校たる私が斬り捨てましょう!」
「……」
藍は三鈷剣の本体を手に、考えていた。
――本当は、この腕が千切れてでもより多くを抱えたい。遺骸も連れ帰り助けたい。でも、私の腕は其処まで長くはなれなくて、其処まで力がある訳でもない。
無茶無謀は勇気じゃない。そう言い聞かせていないと、遺骸さえ抱えてしまいそうで、……
「……あの」
三人は駆け抜けながら。桜花は藍に話しかける。
「……? 何でしょう」
「全員を助けたいという気持ちは、此処に駆け付けた皆が同じだと思います」
「……」
心を見透かされた気がした。
全員を助けたいという、欺瞞にも近い自分の想いが。――途端に烏滸がましくて恥ずかしくなって、藍はフードを深く被り直す。
「そんな、私は」
「いえ! ……私も同じことを考えているから、判るんです」
「ボクもだよ。本当なら、全員連れて帰りたい。でも、其れは出来ない。……僕たち自身を護るためにも、選ばなきゃいけないんだ」
チタノの重力範囲外に出る。鳥の尾を狙って桜の花弁を放ちながら桜花は唇を噛む。
「助けられる人を助ける! 其れが、私たちに今出来る全てなんです!」
「……」
見れば、ニクロムも悔し気な顔をしていた。きっと自分も、さっきまで同じ顔をしていたのだろう。
……そうだ。悔しくない人なんていないんだ。助けられない命が悔しい。選ばなければならないのが悔しい。そうじゃない人なんて。
「……はい!」
ならば、と藍は前を向く。三鈷剣を飛翔させ、こちらを狙って来るブレイドホークの翼を両断した。
選ぶために、行かなければならない。三人の少女達は悔しさを振り払うように、疾く疾くと駆ける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天海・虎徹
鳥風情が、俺を獲物とでも思ったのか?
面白い。どっちが獲物か、その体に教えてやる。代金はお前の命だ!
ホークフェザーで広範囲を攻撃されたら、覚悟を決めてオーラ防御で羽を弾きながら進み、手が届く範囲に来たら、フェイントで相手をだまし、左手で翼をつかんだら握りつぶし、足だったら石を叩きつけるように殴り付ける
可能なら、遮蔽物を使って移動し、先制攻撃を仕掛ける
「やれやれ。こんなんじゃ、自分の現在位置を知ることさえできない。雑魚に用はないんだよ」
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK!
【POW】
……無視はできないね、ぼくもいくよ、天使核は欲しいけど、人の命には代えられない、そうでしょ?
時間勝負なら、相手を無力化して進むのが一番かな。
ぼくの弾丸は対精神にも作用のある鎮静化弾薬、当てて堕ちたところを武器の尻尾や羽ばたきに必要な羽を的確に撃ち抜いておこう。
時間があれば、刈り取りたいけど、そうは言ってられない。
フロヲトバイ紅路夢の機動力で、空中からの急襲に対応できるように、こっちも空中戦でうまく立ち回っていこう。
残り時間は……。
(懐の懐中時計を見て)
まだ焦るような時間じゃない。
●
――鋭い羽が舞う。
ブレイドホーク、其の名前の所以たる鋭い鉄のような羽が、天海・虎徹(睡虎・f19245)の身体を切り裂いていく。
「鳥風情が……! どっちが獲物なのか、其の体に教えてやる!」
オーラ防御をすり抜けて切り裂いていく羽を無視して、虎徹は進む。己が傷付いてでも、助けなければならない命がある。お前は俺が獲物だと思っているのかもしれないが、俺もまた、お前を獲物だと思っているのだ。其の体に手を伸ばした……がしかし、嘲笑うようにブレイドホークはさらに高くまで飛び――
「甘いよ!」
紅い色が割り込んで、其の勢いでブレイドホークを撥ね飛ばした。吹っ飛んだ鳥の身体を虎徹は逃がさず掴み、近くの石に叩き付けて無力化する。
「……何だお前は」
「ぼく? ただの天才さ! というかキミは無茶しすぎ! さっきから見てたけど敵の攻撃全部受けちゃって」
「うるさい。これが俺のやり方だ」
「はー……兎に角、此処は出会ったもの同士協力しよ? ぼくが鳥を撃ち落とすから、君は彼らが動けないようにしてよ」
「お前の命令には従わない」
「うーん……」
「が……」
「が?」
「俺は現在位置が判らない。お前には判るか?」
「現在位置? もっちろん! このフロヲトバイには不可能はないよ!」
「……成る程。なら、同行させて貰おう」
「おっ、契約成立かな? じゃあ……」
天才パーラーメイドのすごいとこ、見せちゃおっかな!
国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)はフロヲトバイ――紅路夢を駆り、双式機関銃ダスラで周囲にいる鳥たちに弾丸を放つ。虎徹には其れが攻撃的なものには見えなかったが、鳥たちは呆気なく落ちていく。
何か仕掛けがあるのだろう。彼女の提案に乗るのは癪だったが、時間がない。迷って城に辿り着けないよりは、今だけでも組んでおいたほうがマシだろう。
墜ちてきた鳥の脚を掴み、もう二度と誰も連れていけないように脚を握り潰して地面に叩き付けながら、虎徹は冷徹に計算していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
露木・鬼燈
今日のお仕事もなかなかハードそうなのです。
戦いを楽しみたいところなんだけど…
時間がないから手早く狩らせてもらうですよ!
化身鎧装<与一>
これなら空を飛ぶ相手でも問題ない。
むしろ障害物のない空にいるから最大射程を活かせるからね。
敵の射程外から一方的に射ることができる。
今回は戦いではないからね。
卑怯とは言うまい、なんてね。
とゆーことで、近くのは他の猟兵に任せるですよ。
役割分担も大事なのです。
それでは…連射性能と命中率を重視して射るですよ。
竜殺之剛弓ならヘッドショットで一撃っぽい!
それがムリなら翼かな?
飛行能力を奪えば十分な仕事。
飛べない鳥を狩ることは容易いだろうからね。
こんな感じでイケルイケル!
サンディ・ノックス
時間との戦いならこいつらとはあまり遊んでいられないな
できることなら全部殺して魂を喰らって、核を勇士へのお土産にしたかったんだけど…
進路上の敵を先制で殺して進路に核が転がるって幸運があれば持って帰る、くらいの気持ちでいよう
それよりも一人でも多くの命を救う方が喜んでくれそうだし
何度か攻撃を受けてしまうだろうけど痛みに耐えつつ、彼らの運動能力を観察し動きを見切る
見切ったら躱しながら先へ行こう
走りながらUC伴星・傲慢な飛輪を発動
魔力により肉体を変異させてたくさんの飛輪にし、進むのを妨害する敵を切り刻みながら突き進む
俺は進むの優先、運が良かったね
しつこく攻撃してくる敵はなんだろう、死にたいのかな?
●
「いやー、今日のお仕事もなかなかハードそうですな!」
露木・鬼燈(竜喰・f01316)はのんびりと呟く。周りではギャーギャーと鳥が鳴いていて、まるで鴉のように鬼燈の上空を回って飛ぶものもいる。完全に獲物として意識されてますね。
しかし、羅刹たる鬼燈にとっては好環境。周りが殆ど敵って、逆に燃えてこない?
「戦いを楽しみたい所なんだけど……」
「時間がないって言ってたろ」
傍にいたサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)がツッコむ。おお、と鬼燈が頷く。
「そうだったそうだった。では近くの奴は任せるよ。遠くの奴は任せて」
一方的に近くの敵をサンディに押し付けると、鬼燈は纏っていた“化身鎧装<型無>”を“<与一>”に変化させる。ナノレベルで組み替えられた鎧装は、弓取の如き軽装だ。更に竜殺之剛弓を取り出し、氣で編み込んだ弓矢を連続で放つ。首を一突き――とはいかないが、遠くで羽搏こうとしていたブレイドホークの翼を一気に刈り取った。揚力のバランスを崩したオブリビオンが、もがきながら大地に墜ちる。
「ぽいぽい。このように遠くは任せて欲しいっぽい!」
「はあ。……じゃあ俺はこの近くの奴を……っと!」
咄嗟に右に身体をひねるサンディ。さっきまで脇腹があった箇所を、ブレイドホークの尾が突き抜けていく。
「油断は禁物だな。……出来るなら全部殺して、核をお土産にしたいけど……」
此処は急がなければならない。こいつらより強い敵と、護らなければならない人が待っている。偶然ころりと落ちているのを期待するしかないだろう。
「進みながらいくよ!」
「了解っぽーい!」
二人は進みながら、目の前の邪魔な鳥だけを確実に葬っていく。
サンディは肉体を魔法物質から漆黒の飛輪に変化させ、尾と足で狙ってくるブレイドホークを輪切りにする。
一方鬼燈も、氣と剛弓を利用した長距離弓術にてサンディの進軍を援護する。竜種をも射殺すと言われる剛弓だ、翼を狩り取るくらいお手の物。更に命中率と連射性能を重視して射る弓だ、急所を何度も素早くえぐられるようなもの。オブリビオンにとってはたまったものではない。
「俺たちが進むのを優先して、運が良かったね」
「そうだね! まあ、もう飛べないのもいるけどさ、運が良かったよね」
どっちみちオブリビオンなのだ、飛んでもらっては困る。
底抜けに明るい鬼燈と、冷静に見えて底冷えのするようなサンディは、二人森を進んでいく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で参加連携
鳥の巣への戦闘捜索はに初ですが…
負傷者の事を考えても迅速第一。
多少派手でも手早くいかないとだめですね
自身の装甲車を展開しつつ、局長達の動きに連携して
機銃で(援護射撃)し敵の狙いを引いてなるべく自然に誘導し集め
仲間の敵包囲への突入に合わせ、指定UCで無人爆撃機より
誘導型の燃料気化爆弾を投下、集めた敵集団直上で炸裂させて、
酸素を奪いつつ熱と衝撃波を与え、敵の集団統制と羽や風を利用した
攻撃能力をマヒさせ、仲間の突破経路確保を狙います。
確保後は自身も車両を進行。
メンカルさんに主対空戦を引き継ぎつつ
機銃座による対空射撃(見切り・スナイパー)で
仲間に随伴し防御支援する
アドリブ歓迎
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDの面々と共に行動
※アドリブ及び他者との絡み歓迎
まぁ制限時間付きってのがちょいとシビアだが・・・ま、要は普段俺達がやってるコトと大差ない。行って助けて帰ってくる、それだけさ。そんじゃま、ピクニックに出かけようぜ。
もし車両を使って移動する場合は、誰か他のSIRDメンバーの車両に便乗。
UKM-2000Pを使用して敵を迎撃。当然、狙うのはこちらを攻撃できる距離にいる、近づいてきたヤツから狙っていく。倒さなかったとしても、弾幕を張って接近を阻止する。
まったく、次から次へと湧いて出てきやがる。キリがねぇな。このまま鳥共といつまでも遊んでいられねぇ。目的地の城とやらにはまだ着かねぇのかよ。
シャルロット・シフファート
SIRD
SIRDのメンバーと救助対象を乗せるためにグレムリンの運転をして浮遊大陸の大地を駆けるわ
SIRDのメンバーと共同で協力しながら救助対象を発見してはグレムリンに押し込み、内部を空間属性で拡張した空間で救助対象に食料を与えて心を癒やすわ
局長の炎の精と私の電脳精霊術で各自の能力を増幅させてブレイドホークを燃やし尽くすと同時にこちらのUCを起動
光速突破速度を持って特殊相対性理論を崩壊させ、因果律を破壊して縦横無尽な光属性魔術をブレイドホークに叩き込むわ
皆!魔術狙撃は任せて!
そう言って光弾をオブリビオンに叩き込んで支援射撃を行っていくわ
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
今回の任務は、不時着した飛空艇の乗員乗客の救出。現在、生存者が何名いるのかも不明。敵を排除しつつ、これを可能な限り救出し連れ帰るのが作戦目標となります。尚、我々を運んできた飛空艇が待機できるのは約180分。時間との勝負となります。各員、時計合わせ・・・行動開始。
可能ならば、装備にある車両を使用して城まで移動。
UCの炎の精を召喚して我々の周囲に壁となる様に展開させて迎撃し、一定距離に近づいてくる敵を優先して攻撃。雑魚を相手にしている暇はありません。いちいち倒している時間的余裕もないでしょうから、目的の城へ到着するのが最優先に行動します。
アドリブ・他者との絡み歓迎
メンカル・プルモーサ
SIRDで参加。
改造装甲車【エンバール】に搭乗
…さて…時間との勝負だから取り巻きぐらいはさっさと処理しないといけないね…
…まずはまっすぐ城を目指すとしよう…
…そうすれば当然ブレイドホークが迫ってくるわけだけど…
相手に地の利を与えておく理由もなし……と…
(仲間に)じゃあ、あれ全部空から叩き落すから後処理よろしくね…
…【星を堕とす大地の手】を発動…飛んでこっちに向ってくるブレイドホークを全て地面へと叩き落すとしよう…
…あとは地面に縫い付けられて動けなくなったブレイドホークを【エンバールで】跳ね飛ばしながら先を急ぐとしようか…
●
SIRDの面々は素早く艇から降り立つと、各々の腕時計を確認した。
「制限時間付きってのがちょいとシビアだが、ま、普段俺たちがやってる事と大差ない。行って助けて帰って来る、それだけさ」
ミハイル・グレヴィッチ(スェールイ・ヴォルク・f04316)が軽口を叩く。其れは歴戦の戦士だからこその余裕。いつもやっている事を、いつもやっているようにすれば、脅威などない。
「各員時計合わせ……行動開始」
ネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)の指示で皆が時計を12時00分に合わせる。つまり3時がリミットだ。
「車両のないものは?」
「俺だけだな」
「ではミハイルはシャルロットの車に」
「オーケイ。相乗りさせて貰うぜ」
「燃料代払ってくれる? 結構高いのよ」
「おいおい、此処は“別に他意はないけど無料なんだからね”とか言ってくれるところだろ? 其れが仲間ってもんだ」
「仲間である事は認めるけど、其れで燃料代が浮くなら夢のようだと思わない?」
軽口を叩き合いながら、ミハイルはシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)の装甲車に同乗。
シャルロット・灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)・ネリッサ・メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はそれぞれの車両で浮遊大陸の大地を駆け抜ける!
ギャア、と鳥が鳴いた。動き出したエモノを追って、宙を滑空する。其の数は――数えるのも面倒だ。
「炎壁を展開します。雑魚を相手にしている暇はありません」
愛車のハンドルを握りながらネリッサが炎の精を放つ。彼らは大いなる旧き神、生ける炎の傍仕え。それぞれの車の前に炎の精を展開させると、自らが手本となるように――愛車ごと真ん前から突っ込んできたブレイドホークに突っ込んだ!
尾で乗り手を切断しようとした鳥は哀れ、半ば焼鳥となって車の横手に跳ね飛ばされる。ケモノは車という概念を知らない。つまりバードストライクも知らないという訳だ。可哀想に。
「真っ直ぐ城を目指すとしよう……途中に生存者がいたら、誰かお願い……」
「判ったわ! こっちは二人だし、頼んだわよミハイル!」
「俺かよ! まあ別に良い……が! 喰らえ鳥ども、鉛弾ならお代わり自由だ!」
シャルロット側からの応答に、メンカルは頷く。鳥は横から前から後ろから、装甲車を狙ってくる。其の数はまさに無数と言っていい。なら、ちょっとくらい減っても怒りはしないよね……?
背後でミハイルのUKM-2000Pがうなりを上げている。上空の鳥たちが力なく落ちてきて、ネリッサを先頭とした車たちに跳ね飛ばされた。成る程、弾丸が効く。これは有用な情報だ。
そんな事を考えていると、灯璃の声が聞こえた。
「メンカルさん、聞こえますか」
「……うん。何?」
「私の爆撃機で、空中で無酸素状態にします」
「……成る程。じゃあ、其れを叩き落とす」
「ええ、お願いします」
極めて事務的な会話だが、これが自分たちというものだ。ケモノの巣といえども侮れない。仔細は話さず、概要だけ。
現在、ネリッサを先頭として森の中を走るのは、前からシャルロットとミハイル、メンカル、灯璃の車たちだ。
灯璃は装甲車に装備された機銃でブレイドホークを掃射している。近付こうとした鳥たちが穴だらけになって大地に落ちる。が、其の数は無数。気付けば灯璃の車に鳥の大半が集まっていた。
「……」
ネリッサも、メンカルも、誰も何も言わず、助けない。彼女の狙いを判っているから。
――灯璃はブレイドホークが十分に集まったのを確認すると、“其れ”を呼んだ。其れは鉄の翼を持つもの。破壊するしか出来ない、悲しい翼。雄々しき翼を持つもの。……無人爆撃機!
「Bombs away!」
一つ、鉄が墜ちてきた。
鉄の塊は中空――ブレイドホークたちのド真ん中で炸裂し、爆音と爆風をまき散らす。唯一改造車を操るネリッサの髪が激しく揺れたが、彼女は身じろぎ一つせず運転に専念している。
……鳥たちが力なくもがく。何を落としたのかって? 燃料気化爆弾さ。気圧の変化で鳥たちは巧く飛ぶ事も敵わず落ちていく。其処をメンカルは見逃さない。
「――全員へ」
メンカルが呟く。
「あれ、全部“叩き落とす”から……後処理宜しくね……」
ブレイドホークが次第に幾つかの集団を形成するようになっていた。刃の羽を舞わせるもの、其の凶刃な脚で装甲に食らいつくもの。尾で装甲のガラスを突き破ろうとするもの。
けれどそんな事に構わずメンカルは“全ての鳥を狙った”。――重き力よ。
「掴め、落とせ。汝は重圧、汝は天墜、魔女が望むは――」
――其処より出でし昏き腕。
どおん、と重い音がする。
空にあるものはみな等しく、見えない腕で叩き潰されたかのように、一瞬で落ちた。羽を舞わすものも、脚で喰らいついていたものも、尾を振り回していたものも皆等しく落ちた。
そしてそれらは等しく装甲車のエサとなる。メンカルの“エンバール”で引き潰され、続く灯璃の装甲車と、装備された機銃によって末期の叫びをあげた。
「……ヒュウ! これだから魔法ってのは怖いねえ」
「あら、ミハイルにも怖いものがあったのね」
「そりゃそうさ。怖いものがなけりゃこんな商売やってねえよ」
ミハイルが口笛を吹く。意地悪そうな顔をしたシャルロットは、
「じゃあ、もっと怖いものを見せてあげるわ」
思い切りアクセルを踏み、あっという間にネリッサの車を追い越す。
「ごめんなさいね局長! ちょっと――“光を越える”わ!」
「ええ、どうぞ」
「光を越える? シャルロット、俺は大丈夫なのか?」
「大丈夫な事を期待してなさい! 行くわよ……!」
――過ぎたる叡智と技術は即ち、魔の法の域に達するものなり!
加速する。加速する、加速する!!
一気に加速した改造済みの装甲車は、あっという間に光の速度を超える! あらゆる理論が破壊され、因果律をも破壊せしめ、縦横無尽に光が駆け抜ける!
ブレイドホークは光の前では亀も同然だ。光に貫かれ、身を焼かれ、羽を叩かれて落ちていく。
「うおお……! 鳥と光が遊んでやがる!」
「いい眺めでしょ! 特等席で見せてあげるんだから感謝しなさい! ……其れにしても」
「ああ」
――生存者の姿が見当たらない。生存者の保護はシャルロットの第二目標であったが……血の跡はあっても、其の果てには何もない事が連続していた。
UKM-2000Pを唸らせながらミハイルが観察したのだ、間違いない。再び愛機から銃弾を吐き出させつつ、光弾を打ち出しつつ、彼らは考える。
「全員ヌシの城に連れていかれたって事かしらね」
「其れが一番可能性としては大きいと思います」
「……飛空艇の落下地点に行く暇は、ないよね……」
「そうですね。まずは本拠地に乗り込み、生存者を救助した上で聞き取りをした方が良いかと」
何より忘れてはならないのは、時間制限がある事だ、とネリッサは言う。
其れは局長としての冷徹な判断である。猟兵としての自分の仕事は、生存者を確保する事。局長としての自分の仕事は、部下を置いていかない事。
――両立してみせる。
ネリッサの決意と共に、4台の装甲車は真っ直ぐに城へと向かう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
「180分喰い放題か、悪くねェな」
UDCの液体金属を纏い、黒い獣の姿になる
助ける相手は中央の城、ってことは他の猟兵はそっち目指すだろ
ならオレは外周を通って城の反対側に回り込むように動くぜ
そっちなら獲物も残ってるだろ
(救助と帰還もお忘れなく)
(わーってるよ、置いてかれたら飛んで帰るし)
意識の内でロキに言葉を返して、弾丸のように飛び出すぜ
一応上空から城の位置だけ確認しておく
群れを見つけたら突っ込んで行き、雷を放ってマヒ攻撃
すれ違いざまに喰い殺す
っと、他にも獲物がいるんだっけか。そっちにも行かねェとな。
群れの半分は絞めてから虚空に開いた亜空間に放り込んで、先に進むぜ
●
生きる事とは、食べる事。
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――其の内に在する人格の一つ「アノン」はそう考えている。つまり、
「180分喰い放題。悪くねェな」
こうだ。
UDC“ケルベロス”を纏い、黒き獣になったアノンはまさに捕食者であった。――助けを求めている者は城にいるという。ならば他の猟兵は其処を目指すはず。
アノンは城の外周を回り、反対側に回り込むように行くことにした。
すると、ふとブレスレットの宝玉が輝いて。
「(救助と帰還もお忘れなく)」
お節介なロキが忠告する。
「(わーってるよ、置いてかれたら飛んで帰るし)」
「(飛んで帰れる距離だと良いんですけどねぇ)」
「(うるせえ)」
内在人格というのもなかなかどうして。面倒臭い時には交代出来るという利点があるが、こうしてお節介に忠告されるのはどうにかならないものか。
ああ面倒だ。食事の事だけ考えよう。黒き獣は鬱憤を晴らすかのように、弾丸のように森から空へ飛び出した。上空から観察すると、鳥が幾つか群れになっている箇所がある。
――美味そうだ。
べろりと舌なめずりをしたアノンは群れを上空から急襲する。雷を放って麻痺させ、ブレイドホークが振り返る前に其の喉笛を食い千切る。血の濃厚な香りとオブリビオン特有の何とも言えない味が食欲を刺激する。
やっぱりこれが最高だ。
「(あのね、だから救出と帰還を)」
「(うるせえよ)」
嗚呼、全くうるせえったらありゃしねえ。
麻痺したブレイドホークは、虚空に開けた亜空間へポイ。後から取り出しても良いし、取り出さなくてもまあ……大丈夫だろう。
そうして黒き獣は、次の獲物を求めてまた上空へと飛び出した。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
天使核機関に軽微な異常…確かに長時間航行は危険ですね
このケースでは頼れる積載量を誇り、改装済みとはいえ…早々に贈り物を実戦で酷使する事になろうとは
飛空艇ドゥルシネーアを駆り侵入
遠隔操作機構●ハッキングで●飛空艇操作
己一人での操艦…ワンマンオペレーション実現
マルチセンサーで動体反応●情報収集で照準
艦載砲●乱れ撃ち砲撃で敵群攻撃
幾匹か突破…
退くべきでしたよ
この艇最大の威力と精度誇る武装は、私なのですから
脚部スラスターの姿勢固定用パイルで舳先に静止(移動力半減)
SSWウォーマシン特殊部隊用剛弓を●怪力で引き絞りスナイパー連射
(回数5倍)
生存者はどれ程か…
いいえ、一人でも多く騎士として救い出すまでです
●
「ふむ、天使核機関に軽微な異常……今は問題ない程度ですが」
上空に飛空艇が浮かんでいる。其れは猟兵たちを最初に送り届けた女船長のものではない。白銀が美しく陽光を照り返す其れは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の飛空艇「ドゥルシネーア」だ。
其の計器が動くのを見ながら、確かに長時間航行は危険だと頷くトリテレイア。汚染は既に始まっている。戦いの行方如何では、何処かで新たな天使核を入手する算段も立てなければならないだろう。
――並び立ちてなお交わらぬ黒と白。其の“黒色の彼女”からの贈り物である白き艇。十分な改装を済ませ、避難民を収容するのにも最適な積載量を誇るとはいえ、贈り物を早々に実戦で使う事になったのは悩ましい所。
「なるべくなら、余り汚したくはないですが」
言いながらもトリテレイアの手は止まらない。遠隔操作機構をハッキングする事で遠隔操作へと切り替え、己一人での操艦を可能とする。
更にマルチセンサーで動体反応を走査――するまでもなく、飛空艇の周囲にはブレイドホークが集まりつつあった。不審な飛行物を異物だと判断したのだろう。
「餌をくれてあげましょう」
――鉛玉ですがね。
艦載砲が唸りを上げる! 砲撃の乱れ撃ちは照準定かとせず、オブリビオンの翼をへし折り、頭を撃ち抜き、胴を蜂の巣にする。
しかし群れの強みは仲間を盾と出来るところにある。オブリビオンが何体か仲間の身体をすり抜けて突破、飛空艇の甲板に立つトリテレイアへと肉薄した。
「……退くべきでしたよ。この艇最大の威力と精度を誇る武装は私なのですから」
トリテレイアの脚部スラスターからパイルが伸び姿勢制御、舳先に身体を固定する。そうしてトリテレイアは弓を取り出した。この世界では誰も見たことがないだろうそれは、由来となる宇宙世界でも希少なもの。ウォーマシン特殊部隊用の剛弓でもって、オブリビオン達を葬送しよう。
機械ならではの精密射撃、更に怪力による剛弓の連射。先に逝った同胞たちの後を追うように、先に逝った同胞たちよりも無惨に、矢を受けたオブリビオンは一瞬で弾け飛んだ。
「……少々汚れてしまいましたか」
帰ったら洗わなければね。彼女に怒られるかもしれません。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
回点号に搭乗、操縦。
グラビティカノン、エネルギー充填を開始。
「人員の救出。一刻も早く…ぐずぐずしている暇は、ないッ!」
目的を頭に叩き込んで、ブースター稼働、推力移動。
そしてUC【電磁絶叫】発動、電属性攻撃!
「落ちろ!!」
麻痺で鈍るオブリビオン達をパルスマシンガンの制圧射撃で撃ち落し、
瞬間思考力、進行方向にいたオブリビオンを、サイキックシールドを纏った回点号の躯体で叩き、払いのけながら、敵群の密集状態を確認。
「邪魔だ、邪魔だ!オブリビオン!!」
グラビティカノンの充填が完了した瞬間に、空中機動、空へ跳び、大砲を展開、重量攻撃。
「……壊れろ!!」
極大の重力球を敵群へ放ち、纏めて圧殺に掛る!
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は戦争の亡霊である。ただし、本人は気付いていない。小さな国家で量産され、低コスト故に使い潰される運命が引っ繰り返っても、戦場は彼女をなおも呼んでいた。そうして小枝子は其れに応えた。敵がいるならば戦おう。どちらかが潰れてしまうまで!
「回天号ッ!」
キャバリアが舞う。陸海空全てに順応した小枝子の愛機は、ブースターを唸らせて彼女の叫びに応える。
目的、人員の救出。時間制限、あり。
「……ぐずぐずしてる暇は……ないッ! 墜ちろぉッ!」
小枝子の戦闘本能に応えるように、突如空に雷霆が満ちた。晴れた空から雷が落ちる。其れは怒りを、義務感を、誇りを乗せてオブリビオン達を貫いていく。焼かれて墜ちるものが半分、痺れて揚力を失うものが半分。
「邪魔だ! 邪魔だ! オブリビオン!」
小枝子は戦う。避難民の為に? 己の存在意義のために? 何かを忘れるために? 何かを焼き付けるために? ――判らない。ただ、ただただ、小枝子は戦う。回天号がサイキックシールドでもって、尚もとびかかって来るブレイドホークを薙ぎ飛ばした。
――何のために戦っているかなんて、知らない。其れよりも計器の数値を見る方が数倍大事だから。
重力波の計器がもう十分だと告げた。小枝子はキャバリアを空へと導く。鳥のように舞い上がった白銀のキャバリア、其の胸部ががこんと開き砲台を露とした。
「……壊れろッ」
食い千切るような呟き一つ。極大の重力球をくれてやる。
大地へ墜ちる球に巻き込まれたオブリビオン達は、白銀を追いかける事叶わず……大地に堕ちて、ひしゃげて、青黒い灰となって霧散した。
「行かなきゃ」
――助けなければ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『召喚獣『ヴァジュラ』』
|
POW : 電磁結界
【雷の尻尾】から、戦場全体に「敵味方を識別する【レベル回の雷撃と超電磁場】」を放ち、ダメージと【電磁力反発による近接攻撃不可】の状態異常を与える。
SPD : サンダー・レールガン
【超電磁場と雷の拡散】によりレベル×100km/hで飛翔し、【超電磁場の強さ】×【雷エネルギー】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ : 雷電の支配者
【戦場を覆う超電磁場と雷の奔流】を放ち、戦場内の【金属の物品、および電気】が動力の物品全てを精密に操作する。武器の命中・威力はレベル%上昇する。
イラスト:shirounagi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アイン・セラフィナイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●45分後
「やめて……!」
城に突入した猟兵たちを待っていたのは、悲鳴とおぞましいほどの血の香りだった。
正面玄関を破ると、大きな広間が待っている。
あちこちに赤黒いものが飛び散っていた。時間が経って黒ずんでいるもの。そして今しがた飛び散ってまだ新鮮に赤いもの。
其れは、巨躯にいかづちを纏っていた。
藍色の体、蒼いたてがみに白い稲妻。
其れは場所が場所、立場が立場であるなら神の使い――いや、神であるとあがめられていたかもしれない。
其れは、爪と牙を赤く染めていた。
小さく悲鳴を上げる女児が、小さな男児を抱きしめて震えている。
彼らを筆頭に子どもが数人、部屋の隅に固まっているのが見えた。護る大人はいない。あるのは、内臓を空っぽにして、太ももを噛みちぎられて捨てられた“ヒトだったもの”だけ。
入り口近くに腕が落ちていた。其の腕はナイフを握っていた。銀色に煌めくナイフは半ばで折れてこそいたが、抵抗しようとする人の意思、抵抗出来なかった絶望を如実に物語っていた。
其れは、君たちに振り返ると喉を鳴らした。
君たちを敵だと認識したのだろう。食事は運動の後が丁度よい。
いかづちを纏う尻尾を振りかざし、彼は――金剛杵の名を纏う召喚獣は咆哮を上げた。
※※※
(子どもたちを護らず、戦闘に専念しても問題ありません。ヴァジュラは最優先で猟兵を狙ってきます。勿論子どもたちを保護・移送するプレイングもOKですが、城の外にはまだブレイドホークがおり、更に城の中にはまだ多数のオブリビオンの気配がします(2章には登場しません))
天海・虎徹
やめろ、やめろ、やぁぁぁぁめろぉぉぉぉ!
墜ちた獣王、お前にもう誇りはないんだな
戦う術も、力もない者をなぶる久しぶりにキレそうだ。あぁ、分かってる。これはただの八つ当たり。それでも、俺はお前みたいな奴が許せない!
サンダー・レールガンで飛翔して、超速度で体当たりしようとして来たら、急制動、急旋回はできないと賭けて、オーラを前面に集中して覚悟を決めて防御し、左手で角を掴んで握り潰すほど力を込め、相手の勢いを利用して背後に全力で叩きつけ、角をへし折る
「弱者をなぶる奴を俺は許さない。意思の無い力を振るう奴はみんな俺が叩き潰す!」
●
――やめろ。やめろ!
「やめろぉおぉぉぉおお!!」
虎徹は吼える。子どもたちが怯えている。一番前、恐らく次の晩餐となるはずだった彼女は、必死に弟らしき子どもを抱きしめていた。
「お前にもう誇りはないんだな……久しぶりにキレそうだ」
藍色の獣はまだ赤い牙を剥きだしにして唸る。ばちり、ばちり。周囲に電磁波が広まって、オブリビオンが数歩下がる。怖気づいた訳ではない……其れを虎徹もいやという程感じている。
「判ってるさ。これはただの八つ当たりだって事くらい! お前を斃したって喰われた人は戻ってこない……其れでも、」
――俺は、お前みたいなやつが許せない!
虎徹が叫ぶのと、ヴァジュラが駆けだすのは同時だった。超電磁場と雷エネルギーで己を弾丸と変え、獣が虎徹に突貫する。
これだけの速さだ。急旋回が出来たら其れこそ化け物だ。虎徹は覚悟を決めた。其処から動かず――ヴァジュラを受け止める事を選んだのだ。
雷の弾丸と化した雷獣が虎徹に突っ込む。――目の前が白んだ。衝撃はいっそ優しく、其れよりも雷の衝撃が体中を駆け抜け、筋肉を硬直させた。
「……か、っは……!」
呼吸もままならない中で、虎徹はしかし“掴んで見せた”。ヴァジュラの角……雷放つ其の一角を。
何処かが焼けた香りがする。体中が痛くて何処なのか判別できない。オーラの防御すら突き抜けた雷。少しずつ、少しずつ削るんだ。お前の其の力を、俺たちで!
「おぉおおおらぁッ!!」
虎徹は思い切り力を込めて、ヴァジュラの角を捻り折る。横倒しにされたヴァジュラはすぐさま立ち上がるが、半ばから折れた角からだくだくと血が零れ落ちていた。
「弱者を嬲る奴を俺は許さない……意思のない力を振るう奴は、みんな俺が、叩き潰す……!」
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
★
子供ばかり
大人は子供を守ったんだ
それが大人の役目
…俺は大人に自分を守らせなかった嫌な子供…
思うことはあるけど戦いに集中しなくてはと思考から追い出す
すると次に湧き上がるのは悪意
これだけのことをした奴を嬲り殺してやる
それだけのことをしたのだと
軽く頭を振ってそれも抑える
時間との戦いは終わっていないから
指定UC発動
敵の操るものに水晶をぶつけて喰らわせる
魔力を全て攻撃に回してしまうのは怒りが抑えきれていないからか
止め切れなかった攻撃を受けても痛みはまるで別世界のことのよう
こいつを屠る、それで頭がいっぱいなんだ
俺の気持ちに呼応するように水晶は敵にも襲い掛かって突き刺さり
触れたところから喰らおうとするよ
ニクロム・チタノ
★
なんて、なんてこと・・・最初任務内容を聞いた時覚悟してた、だけどっ、わかってる、今は目の前の敵を倒さないと
く、この大きな体でなんてスピードで動くんだ、少しでも隙を見せたらやられる
電撃?うわー
まだ、まだだよ!反抗の一撃を!
電磁力反発で飛ばされた所に爪での追撃をもろにくらう
な、弾かれた?
く、ここまでなの?みんなゴメン・・・
く、意識が薄れて、何か聞こえる、チタノの羽ばたく音?いや、みんなの反抗を諦めない声、そうだ、まだ戦わなくちゃ!
重力を操るほどの体力は残ってない、なら!
燃えてボクの鮮血
ブレイズフレイム
片翼を燃やして飛行能力を奪うよ
ボクに出来るのはここまであとは頼んだよ
みんな、信じてる
夜鳥・藍
★
状況を確認したとたんカッとなる衝動のまま鳴神を投擲し攻撃します。
ええ、その行動自体は発作的なものです。少なくとも咄嗟的に行動しましたが後悔はしておりません。
ですが頭に血が上ったままでは勝てる戦いも勝てなくなる。目先の事だけでは未来は見通せない。それは実家で学んだことなのだから。
一気に冷静さを取り戻し次の行動に移ります。
一度避けられても念動力で操作し確実に当てていき、竜王を召喚、雷撃で追加攻撃します。
相手の攻撃は天候操作で雷撃を逆に操作し回避しやすく、かつ第六感で回避も行います。回避しきれないならしょうがありません、オーラ防御で何とかダメージ軽減を試みます。
●
「……ッ!!!」
藍は其の光景を目にした瞬間、三鈷剣“鳴神”を思い切りヴァジュラに投げ放っていた。
怒りで目の前が真っ赤になって、けれど剣は叩き落とされて、からからん、と大地を鳴らした。
「……落ち着いて。敵は強い、怒りで我を忘れたら相手の思うつぼだ」
サンディの言葉はもっともだ。冷静にならなければ相手は倒せない。……藍はすう、はあ、と数度深呼吸して、平静さを取り戻す。
「……大人は子どもを守ったんだね」
サンディが呟く。大人は大人の役目を果たしたのだと。
「でも、……もっとボクたちが速ければ……!」
ニクロムが悔し気に呟く。サンディはいいや、と頭を振る。
「其れを言っても仕方ないよ。兎に角、相手を弱らせることに集中しよう」
「ッ……判った」
歯噛みしてニクロムが頷く。けれど、冷静に指示しているサンディの心もざわめいていた。相手を嬲り殺してやりたいという悪意が渦を巻いては、理性に解きほぐされていく。奴は其れだけのことをしたのだ。そしてもう少し自分たちが遅ければ、いとけない子どもたちにも其の凶刃が伸びていたのだ。
「――行こう」
「はい」
「うん!」
ヴァジュラの尾がくるりと円を描く。其れは徐々に大きくなり、広間の天井に広がる。ばち、ばちり、といかづちの音がして、やがて其れは、墜ちた。
落雷。落雷、落雷、落雷!
行こうと決めた猟兵たちを嘲笑うかのように、彼らの前方を雷撃が塞ぐ。
「うあああッ!」
最初に悲鳴を上げたのはニクロムだった。運悪く、雷撃を直に喰らったのだ。猟兵の身とはいえ、火傷の痛みは免れない。痩躯は弾かれたように震え、思い切り後方に打ち飛ばされて、毬のように2度3度弾んで横たわる。
「――!」
呼ぶ名をサンディも藍も持っていない。そして、名を呼んで振り返る暇などない。大人たちが使っていたであろう武具――折れた剣やナイフが浮き上がり、一斉にサンディと藍を狙った。
「随分と器用な獣ですね……ッ!!」
「全くだ…!」
「竜を呼び、天候を操作してみます! 少しは弱められるかも……!」
――ニクロムは、遠く其の声を聴いていた。
身体が熱い。重くて、痺れている感じがする。
霞む視界に映る人影、其の一つが弾かれたようにくず折れた。
誰かが傷付いている。
……戦わなくちゃ……
ニクロムは手に力を籠めるけれど、巧く起き上がれない。鉛のように体が重くて、手に力が入らないのだ。
「踊れ鳴神――捉えました! 竜王招来!」
聞こえたのは、チタノの羽搏きだろうか。
反抗せよとニクロムに教える、偉大なる竜。
「左右に分かれよう! 俺の水晶にはくれぐれも――」
誰かが叫んでいる。
そうだ、戦わなくちゃ。でも、どうやって? 重力を操るほどの体力は残っていない。……今、ボクの身体は傷だらけのはず。……なら……!
「――左右に分かれよう!」
サンディが叫ぶ。
「俺の水晶にはくれぐれも触れないで!」
「判りました、ご武運を……!」
藍が招来した竜王とヴァジュラが、雷をぶつけ合っている。ヴァジュラの権能は天候ではなく、かといって他の雷光を邪魔するものでもない。宙を舞う剣とナイフが、サンディと藍を絶え間なく襲う。そんな中の事だった。
「燃えて、ボクの鮮血!」
血を吐くような叫びと共に、後方に横たわっていた小さな体から赤い業炎が噴き出した。紅蓮色した決意の炎は逆巻いて、ヴァジュラの翼に燃えかかる。
「……!?」
予想外の反撃。消火できない其の炎は、ヴァジュラの片羽を燃やして灰に変える。消失の痛みにヴァジュラが悲鳴を上げ、操られていた武器たちが落ちる。
藍とサンディが思わず振り返ると、ニクロムがしてやったりと微笑んでいた。
「……ボクに出来るのは、此処まで……」
ニクロムが小さく呟いた。
「あとは、頼んだよ……信じてるからね……」
「――ッ!」
サンディが黒水晶を放つ。抑えきれない怒りを乗せてヴァジュラに向かった水晶は、その鋭い尾によって数本が撃ち落とされたが、数本は突き刺さった。ぱりぱりと音を立てながら広がる水晶。……だが、其の程度ではとヴァジュラが吼える。片羽を千切られ角を折られてもなお、雷帝は健在であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
★引き続き、回点号に搭乗、操縦
子を守る為に、抗ったか……。
小枝子は、そうとった。彼等への敬意は眼前の敵への破壊衝動となった
RSパルスマシンガンの制圧射撃を行いながら、UC【吶喊弾雨】で100km/hで飛翔、接近。
BXサイキックシールドで雷撃をオーラ防御。環境耐性、超能力で電磁力の反発を抑える
「自分を!、見ろッ!!」
闘争心で加速し瞬間思考力と動体視力で動きに対応、空中機動で戦い、激突を繰り返す。
「この、獣ガァッ!」
突き出した両腕に集めたシールドでシールドバッシュ、激突から静止した瞬間、念動力、BXS-Bウィングキャノン・サイキック砲を展開
壊れろッォォ!!!
カウンターの呪殺弾零距離射撃を叩き込む!
●
大人は勇気を振り絞り、子どもたちを守ろうと剣を振りかざしたのだろうか。
キャバリアに乗って入り口を大きく破った小枝子は、腕が死して尚持っているナイフを見下ろして僅かに考えた。
――貴方達のお陰で、子どもたちは生きているよ。
僅かに目を閉じて沈黙し、開いた時には戦士の顔。キャバリアの装備をありったけ解き放つ。
パルスマシンガンが唸りを上げる。ヴァジュラは其れを身軽にかわし、時に鋭い尾で弾丸を打ち払った。
互いに機を伺っている。先に動いたのは小枝子の方だった。
「自分を! 見ろッ!」
加速する。加速する、加速する、加速する……! ヴァジュラは一方で動かなかった。超電磁場の生成を維持しているようだ。だが小枝子は止まらない。止まれない。
「この、獣がァッ!!」
一気に肉薄し、シールドバッシュを叩き込む。……其の筈だった。
「……!? っぐ……!?」
キャバリアが、まるで後ろからワイヤーで引かれるように止まった。バヂバヂと雷の音がする。操縦桿を一気に前へ倒して前進を促しても、動いてくれない。
――近接攻撃不可の超電磁結界。
敢えて尾から雷を放たなかったのは、超電磁場の力を増幅させていたからか。
「くそ、このっ……! 回天号! 回天号ッ!!」
ヴァジュラが近付き、長い尾をくゆらす。迷いなくさくり、と鉄鎧のあわいに尾を突き立てた。
「……う、あ」
小枝子の脇腹に、雷纏う尾が突き刺さっていた。
「あ、が、あああああ……!!」
傷口が瞬く間に焼け爛れていく。両手で尾を掴んでも、ぎりぎりとねじ込まれる。
痛い。熱い。痛い。痛い! けれど、この距離なら!!
「喰らえ……!!!」
カウンターにはならなかったが、装填は十分。キャバリアの腹部でサイキック砲が開き、超圧縮された呪殺の弾を吐き出した。
ヴァジュラがたまらず吹き飛ばされて、小枝子の腹から尾が抜ける。がは、と無意識に止めていた息を吐きだした。
「……ッ」
小枝子は其れでも敵を見ていた。しかし吹き飛ばされたヴァジュラは大地を滑り、後ろ足でバランスを取って踏み止まる。
――化け物め。お前なんか、壊れてしまえ!
小枝子は心中で悪態をついた。
成功
🔵🔵🔴
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK!
【厭穢欣浄】
残念だけど、もうおしまいだよ。
君にどんな理由があっても、超えちゃいけない一線があるんだよ。
……聞いてないかな?食事前の運動って顔してるしさ!
子供達は……流れ弾が嫌だし、向こうも気遣いしないだろうね。
なら、ちょっと力は使うけど、ユーベルコヲド『厭穢欣浄』ぼくの理想世界再構築型ハイカラ後光を戦場に展開!光の届く範囲なら、改変させられる!
ヴァジュラの電磁場も領域で相殺、本体にも電気の絶縁化で制御を不能に、流れ弾も地形を改変させて壁として守ろう。
防禦機能や電撃耐性はあるけど、まだ敵の気配がするから、消耗は避けよう。
露木・鬼燈
★負傷OK
帰りのことを考えると時間に余裕がない。
ここは攻撃全振りで短時間討伐を目指すべきかな。
あまりよろしくない戦い方だが…仕方ないねっ!
呪法<朧火>
エネルギーを燃やす呪炎なら相性は悪くない。
生成した呪炎の半分を射撃で運用。
残り半分は結合と圧縮を繰り返して魔剣に纏わせる呪法剣で。
射撃で作り出した隙を呪法剣で攻める。
エネルギーを削るの攻防一体の攻撃。
まぁ、ダメージ効率を考えると…
うん、リスクを負ってでも強力な一撃を加える必要がある。
いつも通り死んでなければセーフってことで、ね。
相打ち上等のカウンター。
柄まで徹れと魔剣を深く突き刺してから呪炎を開放。
荒れ狂う呪炎で内部から破壊してぶっ殺すっぽい!
●
「残念だけど、もうおしまいだよ」
鈴鹿は静かに、ヴァジュラに語り掛ける。
いかな理由があろうとも、越えてはいけない一線があるのだと。君は其の一線を越えてしまったのだと。
「……なんて、聞いてないかな?」
「ああ、食事前の運動って顔をしてる」
鬼燈が笑って、魔剣オルトリンデを肩に担ぐ。二人は並び立ち、ヴァジュラへと鋭い視線を向ける。
「じゃあ、さっき話した通りに」
「ああ!」
鬼燈が駆け出す。指を軽く唇に当てると、ふう、と息を鋭く吐いた。それらは瞬く間に呪いの炎となって、鬼燈の魔剣に宿るもの、ヴァジュラへと斉射するものへと役割を分担していく。
「燃えろッ!」
だが、実際に燃える訳ではない。燃えるのはヴァジュラの中――無尽蔵とも呼べるほど蓄えられている体力だ。傷は追わずエネルギーだけを削られて、ヴァジュラがよろめく。けれどオブリビオンも負けてはおらず、片羽を羽搏かせ唸り、咆哮を上げた。
「ひ……っ」
子どもたちが怯えて身を縮こまらせる。彼らを守らなければと、鈴鹿は天に掌を翳した。
「今から此処は、ぼくの領域だよ!」
閃光が走る。其れはヴァジュラが放つ稲光でもなく、鬼燈が放つ呪いの炎でもなく、世界のルールを変える奇跡の光。彼女の後ろでぼんやりと輝いていたハイカラさん光が一気に輝度を増し、周囲に満ちた!
「“雷なんてへっちゃら”――今だよ!」
「おうともさ!」
肉薄した鬼燈が、魔剣を一気に振りかざす。ぎりぎりまで打ち放っていた炎弾に紛れるように切りかかる。
袈裟懸けに頭へ振り下ろした剣はぎりぎりのところでヴァジュラに避けられる。ヴァジュラは相手が剣を振り下ろした隙を付いて雷撃を……放てなかった。
ぱち、とオブリビオンの周囲でいかづちになりそこねた音がする。
「言ったでしょ、此処はぼくの領域だって。君のいかづちはこの領域には要らない」
鈴鹿が宣言する。高らかに。
「……かみさま……?」
ぽつり、と避難民の少女が呟いた。後光を周囲に展開する鈴鹿はまるで、天から光纏い降りてきたかみさまみたいで。
「はっ……!」
鬼燈とヴァジュラは肉弾戦を繰り広げていた。
雷を封じられても、ヴァジュラには生来の素早さと強さがある。鬼燈の突きを爪で弾き、噛み付こうとしたところに顔面にもろに炎弾を喰らい後退る。
「結構削ってると思うんだけどなぁ……! 其れでこれってどんだけ化け物なんだ!」
鬼燈の顎を汗が伝う。炎でエネルギーを削っても削っても底が見えない。――これはやっぱり、アレしかないか。
アレってなんだい? カウンターさ。
命を懸けた、必殺の一撃さ!
ヴァジュラが牙を剥く。尾をくねらせて槍のように鬼燈へ突き出し、彼が其れを払ったところに鋭い爪を振り下ろした。
――血が飛沫く。
鬼燈の身体に大きな裂傷が刻まれ、ヴァジュラは笑うように唸って……けれど。
「勝ったと思ったら!!」
大間違いッぽい!
隙を見せたオブリビオンに、鬼燈が吼える。オルトリンデの切っ先が其の腕の付け根を捉えて、勢いよく突き刺さる。
オルトリンデに宿っていた呪炎が暴れだす。内側からオブリビオンの筋繊維を、神経を、痛覚をひっかき乱して、傷を広げながら引き抜かれる。
オブリビオンが悲鳴を上げた。今度は確実に、痛みと苦しみによる悲鳴だった。鬼燈はオルトリンデを杖にして、ぼだぼだと落ちる己の血を見ながらも――そして鈴鹿は其の様を見ながら、ガッツポーズを一つ作って――
「「ざまあみろ、だ」」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャルロット・シフファート
成程、電脳魔術士の天敵ということね…
だけど、残念だったわね
私は只の電脳魔術士じゃなく『電脳精霊術士』
故に、精霊術のみにリソースを割いて異能を行使する事で電脳無効化には対処出来る!
そういってUCを起動
A&Wの力を体得し、ワームというより上位の電撃使いたるオブリビオンの力を用いて電磁場を上回る!
私こそが世界の全て…今だけは、あの愚者の言うとおりに言ってあげるわ
瞬間、何故か竜でなく青色のかったドレスが顕現し、オウガ・オリジンとは異なる世界改竄能力を獲得する
…理解出来ないわね、ここまでの力を持っておきながらちっぽけなプライドの為に滅茶苦茶をするなんて
そう呟きながら世界改竄の力を宿す電撃を放っていく
●
「成る程、差し詰め電脳魔術士の天敵という所かしら」
シャルロットは髪をさらりと後ろに流して言う。彼女自身電脳魔術士であるが、危機感は何処にもない。何故なら、彼女は“電脳精霊術士”。電脳を介さず精霊術のみを行使する事でヴァジュラの雷に対処可能なのだ。
「征服者の王笏、黄泉返りの禁呪。見せてあげるわ!」
シャルロットの手に、地球儀じみた嘗ての幻影が現れる。其れは戦で剣を交えた敵の首魁が持っていたものと酷似している。
ヴァジュラは警戒したようだ。負傷した脚を庇いながら、咆哮を上げて電磁場を展開する。
「無駄よ。ワーム……と言ってもアンタには通じないでしょうけど」
シャルロットの背後に影が現れる。其れはヴァジュラと同じく電撃を扱う者の影。骸の海から僅かな間だけ掬い上げられた影。
其れが僅かな唸り声をあげると、似たような電磁場の輪が現れて、ヴァジュラの電磁場と真正面から激突、相殺した。
「……私こそが世界の全て。今だけは、あの愚者の言う通りに言ってあげるわ」
シャルロットは糸を手繰るように場を握る。ワームは更に電磁場を展開し、逆に其の場に落ちていた武器の指揮権を奪う。武器が持ち上がり、ヴァジュラへ向かって射出される。
だが、其れで怯むヴァジュラではない。武器と武器の間を抉るように駆け抜けて、場を手繰るシャルロットへと距離を詰めていく。
――いつの間にか、シャルロットは青色がかったドレスへと衣を替えていた。そうして知る。自分は今、世界を変える事が出来る。思うがままに全てを左右する事が出来る。
「……理解出来ないわね」
そう、力を得た今だからこそ。ヴァジュラの爪と牙をかわし、落雷で距離を開けながらシャルロットは呟く。
――此処までの力を持っておきながら、ちっぽけなプライドの為に滅茶苦茶をするなんて。
其れは、誰に向けて呟いたものだったのか。
大成功
🔵🔵🔵
灯璃・ファルシュピーゲル
SIRD一員で連携
降車と同時に指定UCで
・グラスファイバー製の軍用長弓
・樹脂製薬莢の焼夷榴弾付きの矢
を電磁対策に作成し榴弾を頭部に向け牽制射(スナイパー・先制攻撃)、炎で出鼻を挫いて仲間の攻撃を支援
自身は(見切り)で雷の予兆を把握して回避し動き回り攻撃しながら随時に分厚いベークライト壁で覆った砂満載のヘスコ防壁を指定UCで作り出し仲間と子供達の遮蔽物を設置していきます
敵が味方の攻撃で子供達から注意が完全に逸れてる場合は
UC:Wild Jagdを使用し周囲の遺体を狼兵に変え、子供達を救助させて全力で味方や安全な装甲車の方に避難させます。
申し訳ないですが‥今は生きている人が最優先です。
アドリブ歓迎
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
・・・全員を救出するというには、手遅れだった様です。しかしこれ以上の犠牲を出す訳にはいきません。時間的にも猶予があるとは言えない状況ですから、残った生存者を可及的速やかに救助するには、あの怪物の気を生存者から可能な限り引く必要がありますね。
ハンドガンのG19Cで牽制射撃を行いつつ、UCを使用して攻撃。イタクァの放つ絶対零度の吹雪と氷柱なら、水程ではないものの、多少は誘電率もあるでしょうから、敵の電撃による攻撃を弱められる筈です。
同時に、可能な限り生存者のいる地点から敵を引き離す様に立ち回り、他のメンバーが人質に接触するのを容易にします。
アドリブ・他者との絡み歓迎
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDの面々と共に行動
※アドリブ及び他者との絡み歓迎
(目の前の凄惨な光景に眉一つ動かさず、舌打ちし)間に合わなかったか。とはいえ、まだ生きてるヤツがいただけでも僥倖だ。まぁ助けるには、あのライオンみてぇなの倒さないとな。
他の連中の攻撃などに気が向いてるうちに、気づかれない様に迂回。上手く背後を取ったら、UCで攻撃。念のため、敵のUC対策として、使用するRPGは大雑把に分解して携行し、射撃直前になったら素早く組み立てる。
やれやれ、敵前でフィールドストリッピング紛いなコトするハメになるとはな。
(RPGを構えて狙いを定め)ケツにデカいのブチ込んでやるぜ。覚悟しな。
※アドリブ及び他者との絡み歓迎
メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバーと共に行動
(引き続き改造装甲車【エンバール】に登場)
んん…これはまた近代戦メタな能力持ちだな…
…このエンバールは金属装甲でも無ければ電気動力でもないから問題無いけど…
…援護のために【崩壊せし邪悪なる符号】で雷電の支配者を相殺してしまうとするかな…
…そして現影投射術式【ファンタスマゴリア】によりヴァジュラの視界を塞ぐように濃霧を出して攪乱…
そして術式組紐【アリアドネ】を展開…ヴァジュラに絡ませて動きを封じてしまおう…
…動けないうちに子供達をエンバールの荷台に格納して…
…あとはヴァジュラのUC引き続き相殺して仲間の援護をするとしよう…
●
「……全員救出、とはいかないようですね」
SIRDの面々は荒れ果てた広間に辿り着くと、二秒と経たずにすべてを理解した。残っている子どもたちは依然ヴァジュラの後方におり、動けずにいる。
「猶予は一刻もありません。引き付けるものと仕掛けるものに別れましょう」
「俺はあいつのケツを4つに割って来るが、誰か一緒にいく奴はいるか?」
「……。臀部を4つに割る趣味はありませんが、私が行きます」
灯璃がこめかみを押さえながらもミハイルの申し出に挙手する。
「ん……私は子どもたちの救出に回るよ……ついでにあいつの足止めも試してみる……」
「判りました、では私もミハイルさん、灯璃さんと共に引き付けに回ります。行きましょう」
合図には其の一言で十分だった。
ネリッサがハンドガンの引鉄を躊躇いなく引く。牽制であることを判っているかのように、ヴァジュラは尾をぐるりと回して電磁場を展開した。
「……ある程度は知恵があるようですね……」
――風に乗りて歩むものよ。
ネリッサの願いに、大いなる白き沈黙が応える。其の数数百とも思える氷柱がヴァジュラを取り囲み――そこでやっと、オブリビオンは駆け出した。
――ドォンッ!
炸裂音。
「Was nicht ist, kann noch werden.」
ヴァジュラの巨躯がぐらりとよろめく。ネリッサの背後で灯璃が榴弾を頭部に向けて撃ったのだ。グラスファイバーの弓と樹脂製薬莢で造られた榴弾は電磁場の影響を受けない。見事にオブリビオンの鼻っ面に一撃をお見舞いし、勢いを殺して見せた。
獣が咆哮する。尾を中心として放たれる雷はしかし、相手を“取り囲んだだけ”のネリッサの氷柱が受け止め、融解せしめた。水程の誘電率ではなくとも、この数ならば雷を受け止めるには十分だ。
「其処からでは私たちに届きませんよ。“もっと前に出てみては?”」
ネリッサが言う。応えるかのようにヴァジュラは駆け出した。灯璃とネリッサが武器を構え、踊るように獣との鬼亊に興じる。
「見切ったよ」
其処に一つ、声が割り込む。メンカルだ。邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消――!
ヴァジュラは獲物を追う。其処は大人を食い散らかした箇所。見れば鉄の武器がたくさん落ちている。…尾でくるりと円を描いて、彼らを操る電磁場を――展開、出来なかった。何事か、と己の尾を見る。何も変わっていない。変わったのは、内側だ。先程聞こえた呪文のようなもので、己の業が封じられたのだ……!
「メンカルさんですね」
「ええ」
ネリッサに灯璃が頷き、再び二人はヴァジュラへの射撃を再開する。魔女の援護は終わらない。周囲に濃霧が立ち込め、しゅるりと後ろ足に何かが絡みついて動きを阻害する。
苛立たし気に獣が唸るが、メンカルは敵の嘆きに耳を貸すタイプではない。
其の頃、子どもたちの傍に一つの影が近付いていた。
「……っ」
子どもたちの先頭にいる女児が、男児を抱えて警戒する。
「ストップ、ストップ。クールにいこうぜ。大丈夫だ、俺はお前らを助けに来たあのおっかねえねーちゃんたちの仲間だよ」
ミハイルだった。子どもに好かれる顔ではないと自覚はしているが、あからさまに警戒されると少し悲しい。
「おじさん、仲間なの?」
「お兄さんな。そうさ、今からちょっと五月蠅くするけど我慢してくれよな」
言うとミハイルは子どもたちの傍で何か鉄のパーツをばらばらと出して、其れを手慣れた様子で組み立てていく。
「おじさん、其れ何?」
「おに、……まあいいか。これはな、あのライオンちゃんをびっくりさせるためのモンだ。お前らには一生縁がない……そうだったら良いんだがな」
ミハイルが組み立てたのはRPGである。成る程、確かにこんなものと子どもは縁がない方が良い。子どもたちは初めて見る武器というものに瞬きをして――いや、今までもずっと見た事のないものばかりが乱舞していたのだけれども――ミハイルが其れを構えるまでを見ていた。
「そうだ。ちょっと耳塞いでてくれよな。五月蠅ぇからよ」
「う、うん」
子どもたちが耳を塞いだのを見届けると、ミハイルは再び狙いを定める。メンカルが撒いた濃霧越しにも目立つ、オブリビオンの尾から放たれる電光。其れを辿り、予測して……
「ケツにデカいのブチ込んでやる。覚悟しな」
とても子どもに聞かせられない言葉と共に、どおん、と音を立ててRPGが炸裂した。
「グギャッ……!!」
「!」
初めてオブリビオンが悲鳴らしい悲鳴を挙げて、前のめりに倒れ込んだ。
「臀部を4つに、でしたね」
極めて冷静にネリッサが言う。彼は、ミハイルは其の通りにしてみせたのだ。ネリッサ達は追撃を試みるが、闇雲に振り回される雷光纏う尾によって弾かれてしまう。
「局長」
「メンカルさんとミハイルさんが救助を行うでしょう。其の間に退路からオブリビオンをどけます。出来ますね?」
「はい」
灯璃の返答には迷いがなかった。子どもたちの救出支援に回る用意もしてあったが、遺体を変化させては泣いて拒否する子どももいるかもしれない。心にしまっていた案はそっと闇の中へ。ネリッサと灯璃はよろよろと起き上がるオブリビオンに向けて、弓と銃を構えたのだった。
「まあ、これだけ弱っているのなら――」
「……轢き殺せそうだけど……」
「あ? 何か言ったか?」
「……別に」
一方メンカルとミハイルは子どもたちの救出に取り掛かっていた。メンカルが操縦する「エンバール」に子どもたちを収容していく簡単な作業、の筈なのだが。乗らないと言う子どもが一定数いる。何故だろう、とミハイルは頭を掻いた。
「あのなあ、此処は危ないから、お兄さんたちが安全な場所へ……」
「幾つかに分かれて載った方が良いです」
ミハイルとメンカルに声をかけたのは、先程子どもたちの最前にいた女児だった。
「幾つかに?」
「このお城にも、化け物がいるんです。……おじさん達をあのライオンが食べてる時、其の余りを……食べてました」
少女の声は震えていた。或いは肉親を喰われたのかもしれない。そんな彼女がその場面を思い出し、情報として提供する事にどれだけ勇気を割いたか。
「……成程な。じゃあ俺たちは半分連れて行きゃあいいよな、メンカル」
「……そうだね……救助を考えている猟兵はきっと他にもいるし……彼らと私たちで分担して避難民を運ぶ方が、リスクは下がる」
「OK。で、勇気あるお嬢ちゃんは乗るかい?」
「……いいえ。私は最後に。その代わり、弟を連れて行ってください」
少女は自分の服を掴んでいる幼い男児を視線で示した。不安そうに見上げる男児に大丈夫だと頷いて。
「お姉ちゃんは別の人と一緒に行く。泣かないで待っていられるよね?」
「……」
「うん。良い子」
「じゃあ、その子は預かるよ……大丈夫、エンバールは頑丈だから……」
「この姉さんの言う通りだ。こいつはな、鳥さんたちの爪でも傷一つ付かなかった代物なんだぜ」
「……お願いします」
少女の表情が僅かに明るくなる。其れは信頼の笑みだった。
メンカルは静かに頷き、ミハイルはウィンクで応える。
「……全員に伝達。子どもたちの収容を確認した……これから各員を回収して城を出るよ……」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
★
ドゥルシネーアから機械飛竜ロシナンテⅢに騎乗し発艦
玄関から侵入しⅢ据え付けのランス持って飛び降り召喚獣に立ち塞がり
遅れて申し訳ございません…!
物資収納Sからナイフを複数戦場に投擲
ナイフに格納銃器UC乱れ撃ち射撃
急速冷却された金属の電気抵抗が極限まで下がる…超伝導をご存知でしょうか
抵抗ゼロのナイフの避雷針で電撃を誘導し電磁場攪乱
近接攻撃可能に
脚部スラスターの推力移動で接近し怪力ランスと盾の防御で肉弾戦
ハッキング遠隔飛空艇操作
衝角より防御力場展開した艇を城内へ捨て身の一撃で侵入
艇へ、走って!
遠隔操縦機械飛竜に子供の回収行わせつつ、煙幕手榴弾で敵を目潰し
飛竜に騎乗
機関限界突破した飛空艇離陸させ離脱
●
「ロシナンテ、緊急発進!」
白き艇から其れは飛び出した。其の様はまさに竜騎士。文字通り竜に乗った騎士――トリテレイアは、恐るべき速さで城へと辿り着く。扉の壊され方からして、既に数名の猟兵が戦闘を行ったようだ。
「遅くなり申し訳ありません……!」
生き残りは子どもたちだけ。其の惨状に思考回路が赤く染まりそうになったが、頭を振るって耐える。戦闘した猟兵たちが誰かを収容してくれたのかもしれない。しかし、全員連れて行かなかったのは何故……?
考えている暇はない。傷だらけのヴァジュラが子どもたちに目もくれず、トリテレイアへと尾を振るう。
「相手は手負いの獣――しかし油断はならないとみました!」
応えるようにトリテレイアはナイフを戦場に投擲する。カカ、と気持ちいい音を立てて突き立つナイフに、今度は格納していた銃器から“ナイフに向けて”銃弾を乱れ討つ。銃弾の弾頭に込められた薬剤が、ナイフを凍らせる。
「……ガァウッ!!」
オブリビオンが鳴いた。尾を振るい、雷を機械仕掛けの騎士へと降らせたが――雷がかくんと曲がって、ナイフに向かって落ちる。
「超電導というものをご存じでしょうか」
騎乗竜――ロシナンテⅢに据え付けられていたランスを構え、更に背負っていた大型の盾を構える。其の様はまさに騎士である。
「急速冷却された金属は、電気抵抗が極限まで下がる……避雷針の理屈の一歩先と言えば良いでしょうか。貴方の雷はもう通じません」
「グルルル……!」
「つまり、此処からは力と力の勝負……! いざ!」
脚部スラスターが唸る。大地を滑るように駆け抜けると、ヴァジュラにランスを突き出す。オブリビオンは其れを横に飛んでかわすと、尾を槍のように突き出した。トリテレイアは其れを盾で受けるが、尾が纏う雷でびりり、と腕に痺れが走る。
「くぅ……ッ!」
放たれる雷はナイフが受け止めてくれるけれども、こうして直接流し込まれるとなると話は別だ。……盾で尾を受け流す。ダメージ自体は軽微だが、蓄積すればどうなるか……其の前に、子どもたちを避難させなければならない。
「私が引き付けている今のうちに……!!」
ず、ご、ご、ご。音がする。巨大なものが近付いて、広間にかろうじて届いていた陽光を隠す。其れは大きくて、白い……
――ドォォォンッ!!
轟音を立てて広場に“乗り込んで”来た! 不時着ではなく意図的なものだ! 其れはトリテレイアの飛空艇「ドゥルシネーア」の衝角!
防御力場を展開したとはいえ、捨て身の着陸ともなれば飛空艇にもやや傷がついている。嗚呼、これは本格的に彼女に謝らなければ。
「艇へ! 急いで!」
ロシナンテⅢが動いた。子どもたちを追い立てるように、翼をはためかせる。リーダー格らしき少女が騎竜と共に子どもたちを誘導し、飛空艇へと走っていく。
――全員乗りましたね。
尾を幾度となく盾で受け、ランスで振り払いながら、トリテレイアは子どもたちの回収を確認する。
「失敬。……私には、護るべきものが出来ました!」
ロシナンテⅢが持ちうる最高速度で主へと急接近する。ナイフの超冷却もそろそろもたない頃合いだ。ランスを思い切り其の場へ突き立てて片手を空けると、盾の影から小さな手榴弾をヴァジュラへ放つ。
小さな爆音と共に、目暗ましの煙幕がもくもくと立ち込める中――トリテレイアはタイミングを合わせてロシナンテⅢに乗り込み、飛空艇を急発進、後退させる。
城の中にオブリビオンが残っていて、追撃を受けたとて、飛空艇に乗っていればきっと子どもたちは無事でいられるだろう。
トリテレイアはそのまま、後続の猟兵に敵の撃破を任せて大広間から離脱した。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
★
成程成程、こんな猛獣とも命懸けで触れ合えるとは素晴らしいサファリパークだねぇ。とはいえ人の手には余る訳で……うーん、哀れ残骸。
まぁいいか、やるとしよう。
飛べるうえに速くて雷まで。当たったら木っ端微塵の消し炭さぁ。
という訳で狂気の墜落でも使うとしよう。せっかくだから発動の媒介はさっき拾った折れた銀色のナイフが良いかな。さぁ戦場全体に拡散しろ
不公平で申し訳ない、俺は一方的に盗みたいんだよねぇ。飛ぶ力も、その速度も盗ませて貰うよ。ほら、地に堕ちろ。
さて、鈍間になったところで銃で追撃を……っと、いたた、うっかり近付きすぎたなぁ。電撃とパワーそのものは盗んだわけじゃないし。
もう少し離れて安全に撃とう
●
「成る程成る程? こんな猛獣と命懸けで触れ合えるとは素晴らしいサファリパークだねぇ」
とはいえ、この猛獣は人の手には余る訳で……うーん。哀れ残骸。南無三。
永一は獣だけとなった大広間で、手を合わせる事もせず心中のみで遺骸に祈った。せめて普通に成仏してね。じゃないとまた面倒な事になるからさぁ。
ヴァジュラは尾を振り、電磁場を展開する。ばち、ばち、と弾ける音がして、たてがみが逆立つ。
「怖いねぇ。飛んだり跳ねたり痺れたり。当たったら木っ端微塵の消し炭さぁ」
永一は遺体から折れたナイフを一本失敬する。武器としては使えないが、術の媒介としては申し分ないだろう。遺骸から盗み取った、という事で。
「俺は一方的に盗みたいんだよねぇ。跳ぶ力も、其の速度も」
獣が足に力を溜めている。其の長さは欺瞞かな? 其れとも、一撃で仕留めてやるぞっていう意気込み? 結構。だけど、全部無駄になるなら何にもしない方がましさぁ。
永一が武器を翳す。其処から黒い波紋がぽぉん、と広がって……今まさに電磁砲の速さで駆け出そうとしたヴァジュラが身動ぎをした。
「……ッ……!?」
「ほら、地に墜ちた」
ヴァジュラは盗まれた。飛行能力は片羽を失っていたために殆どないに等しかったが、動く脚すらも盗まれてしまった。電光石火の動きは失われ、身に落ちて来る重さに耐えながらよろよろと立つだけの獣となる。
「不公平で申し訳ないけど、さっきも言った通り、俺は一方的に盗みたいのさぁ。まだ立ってられるだけ凄いと思うよぉ? いやぁ怖い怖い」
ナイフを持つ手とは逆の手で、永一は銃を取る。さて、頭を撃ったら死ぬのだろうか。どうだろう? これだけのオブリビオンだ、頭を撃ったくらいでは……
「あっ、いてて」
精彩を欠いた動きではあるが、尾がびたりと手を弾いて電撃を受けた。尾そのものは痛くなかったが、電撃の所為でナイフを落としてしまう。まあ、もう要らないけど。
「もう少し離れたところから撃つかぁ」
そうのんびりと言うと、永一は数歩下がってトカレフを構えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
★
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
裏口を怪力でぶち破って城内へ。血の臭いを辿って広間まで行き、そのままヴァジュラに体当たり。
電撃は野生の勘で避けれるだけ避ける
「……?うまく近づけねェ」
(全身金属ですからね。魔銃で解除を―)
触手を床に突き刺して力と勢いで飛び掛かる。すれ違いざまに噛みついてそのまま反発で入口側に飛ばされる
「あァくそ、痺れる」
喰い足りねェが仕方ねェ、近づけねェのは向こうも同じ。雷は液体金属で避雷針の用に受け流し、磁力を解除しての接近に警戒しつつ周囲のヒトの残骸や遺品を回収して亜空間に放り込んでおく
(食べないでくださいよ)
わーってるよ
……少しくれェなら――
(ダメですからね)
●
轟音と共に裏口をブチ破った者がいた。怜悧――アノンである。
「……すっげぇ血の香りだな」
「(もう犠牲が出ているのでしょう。或いは猟兵のものであれば良いのですが)」
「お前も結構イイ性格してるよな」
血の香りを辿れば広間まで辿り着く。其処にはただ一匹残され怒りをあらわにするオブリビオンがいた。
苛立たし気に尾を振るえば、燭台に似た尾からばちりばちりと雷光が煌めく。
「オラァァ!」
アノンは余り深く考えずに、ヴァジュラに体当たりをしようとした――が。其の前にヴァジュラが大きく咆哮し、雷撃の雨が降り注いだ。
「うおっ……!?」
獣の勘といえども、雨を避けるのは至難の業だ。体当たりを仕掛けようとした前脚を踏ん張り、筋肉のばねで一気に後退する。
金色の瞳がぎょろりとアノンを見た。身体はよく見れば裂傷に銃創、水晶のようなものが背中を覆い、片方の前脚は赤く染まっている。
どう見ても重傷。しかし手負いの獣ほど恐ろしいものはない。
「……巧く近付けねェ」
「(貴方、全身金属ですからね。まずは魔銃で解除を――)」
ロキは話が長い。アノンは長話が終わる前に触手を床に突き刺し、力と勢いで飛び掛かる。だが、そんな格好の獲物をヴァジュラが逃がす訳がない。噛み付こうとしたアノンの肩口に逆に噛み付き――
「が、アァァアアアァッ……!!」
近距離を阻む電磁場が、噛まれた傷口以上の痛みを全身に伝える。離れなければ。離れたい。離れられない! 其れはまるで、熱した鉄板に押し付けられているかのような痛み。
やがて、ぽい、とヴァジュラに捨てられるように解放された。少しの間、アノンはべったりと地に伏して。
「く、っそ……痺れる……」
「(だから言わんこっちゃない。今すぐ離脱した方が賢明だと思いますが)」
「う、るせェ……」
俺には、やらなきゃならねェ事があるんだよ。
アノンはそういうとよろよろと立ち上がり、ヴァジュラではなく遺体の方へ歩き出した。遺骸を一つ拾い上げると、亜空間に投げ入れる。遺品の剣やナイフも、同様に。
ある程度其の動作を繰り返すと、アノンはヴァジュラに背を向けた。全身を金属で覆っている自分では、勝ちにも負けにもならないだろう。何より、じくじくと痛む身体を引きずってあの召喚獣への勝ち目があるとは思えなかった。
ならばせめて、後の猟兵が後腐れなく戦えるように。
成功
🔵🔵🔴
鏡島・嵐
……ここまで45分。最善を尽くしてこの結果か、それとももっと速く駆け付けられたんか。
……考えるのは後だ! 今はこの恐怖を、なんとかしねーと……!
《我が涅槃に到れ獣》起動。出番だクゥ、力を貸してくれ……!
クゥの背に〈騎乗〉して、〈スナイパー〉ばりの精度でスリングショットを撃って〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉を狙い、一瞬でも動きが止められたらクゥに突撃させてヒットアンドアウェイで攻撃。
向こうのスピードが速過ぎるからこっちの攻撃当てるんも向こうの攻撃躱すんもおれの〈第六感〉が頼みの綱になるな。
多少のダメージは覚悟の上で、なんとか足を止めてえトコだ。
もし近くに他の仲間が居るんなら、〈援護射撃〉で支援する。
千束・桜花
なんて大きくて、凶暴な雷獣!
本来ならば千束の剣は相手を傷つけるためのものではないのですが……そんなことを言っている場合ではなさそうです!
私の剣術でもっとも殺傷力のある技でお相手しましょう!
とはいえ、こちらから攻めるには些か素早いですね
相手から寄ってきたその瞬間に斬り込む、後の先を取らせていただきます!
四太刀入らば、私たちの勝ちです!
相手が撒き散らす雷は、刃で受けて地に流します!
無敵の将校に、飛び道具は通じませんよ!
●
嵐は時計を確認する。――45分。此処まで来るのにかかった時間。
最善を尽くしてこの結果か、其れとももっと早く駆け付けられたんか……
「考えるのは後です! さあ、正念場ですよ!」
桜花が剣を抜く。将校としての彼女の声は、嵐の中に眠る戦意を呼び覚ましてくれる。戦うのは怖い。脚が震えて、武器を持つのも怖い。けれど、戦わねばならない。少なくともこの島を出るまでは。
「判った! クゥ、力を貸してくれ……!」
嵐が願う。己の内に眠る獅子を呼び起こし、黄金の背に騎乗する。
「本来ならば千束の剣は相手を傷付けるためのものではないのですが……そんな事を言っている場合ではなさそうです! 私の剣術で最も殺傷力のある技でお相手しましょう! 心強い嵐殿という仲間もいます、手負いの獣相手でも負ける気はしません!」
心強い。
そう言われて、嵐は少し面映ゆい感じがした。こんなにも戦いに怯えている自分なのに。
「なんて、そう思ってる場合じゃない……!」
銃創に、裂傷。黒い水晶が身体を蝕み、己の物ではない雷光に身体を焼かれ。片足は使い物にならず、片羽は跡形もない。角も無惨に折られ、――其れでも、ヴァジュラの戦意は衰えてはいなかった。寧ろ後がないからこそ、高揚していたのかもしれない。せめてこの二人を仕留めると、尾がくるりと円を描いて雷光が弾けた。
ヴァジュラが駆け出す。狙いは桜花だ。
「おっと……! さすが雷に連なるもの、素早いですね! ですが!」
「させるかよッ!」
嵐がスリングショットで麻痺弾を打ち込む。即効性はないが、少しなら足を止められる!
果たして、ヴァジュラは僅かに速度を落とした。更に其処にクゥと嵐が体当たりを仕掛けた。怖かった。近付きたくなかった。でも、仲間を傷付けられる事に比べたら……!
「嵐殿、どうか無理はなさらず!」
桜花は其れを知ってか知らずか、刃を振るう。――後の先。相手が突っ込んできた所に切りつける。一撃、二撃。傷付いていない方の前脚を狙い、桜花のサクラブレェドが奔る!
「ガァッ!!」
切りつけられて怯んだ所に獅子の体当たりを食らって、ヴァジュラが横倒しに倒れる。直ぐ様に立ち上がり、今度は獅子に向かって尾を伸ばした。
「嵐殿!」
「大丈夫! これなら……! 桜花は攻撃に専念してくれ!」
動きは早くても真っ直ぐなら……! クゥはタイミングを合わせ、真横に飛んで尾を回避する。ばちりと奔る雷光が身体をかすめて、黄金の毛並みが漕げる。ずきり、と生命力を共有する嵐の腕にも痛みが走るが、あの攻撃でこの程度なら掠り傷だと言っていいだろう。
「あと二撃入れれば私たちの勝ちです! どうか其れまでは!」
「ああ!」
ヴァジュラは死の予感というものを、初めて感じていた。
いや? どうだろう。骸の海に潜る前に、一度既に感じていたかもしれない。其れは、ヴァジュラの与り知らぬところ。
黄金の獅子が、機械の竜が、機械の箱が、機械のヒトが、自分を責め立てる。
炎の弾が、鉛の弾が、良く判らない爆裂が、氷柱が、自分を襲う。
そして誰もが“こいつを倒す”という目で自分を見ていた。……懐かしい目だ。今統べている全てのオブリビオンが、かつては自分をそういう目で見た。
だが、ヴァジュラは彼らを力で従えてみせた。雷光で焼き、ショートさせ、実力でこの島の頂点に立って見せた。
其れからは迷い込んだニンゲンを喰らって過ごした。暇なときには外に出て、未だに納得のいかなそうな奴を見つけては八つ裂きにした。
其れが、今はどうだ?
ヴァジュラはずっと孤独だった。援軍だとか、集団戦だとか、そういうものを知らなかった。其れが、彼の敗因だったのだろう。人は群れると強いのだと、其れを知らなかった事こそが――
「これで四撃目です! さあ、御覚悟を!」
誰かが煙幕弾を放ち、ヴァジュラの視界を塞ぐ。高らかに宣言するニンゲンの女の声と共に、眉間を奔る刃の感触がした。
どくん、と心臓が鳴る。其れは終焉の鐘の音。
両足から力が抜け、どうと横に倒れ伏した。ああ。機械の音が聞こえる。己が死んだ事で“彼ら”は活性化するだろう。戦いはまだ終わらないのだ。
ぐる、ぐる、ぐる。
まるで笑うように何度か喉を鳴らして……尾がくるりと円を描いて、ぱたりと落ちた。
呆気なく、ヴァジュラは死んだ。猟兵の出立から2時間と15分後の事であった。
「……終わりましたね」
「ああ……ん? クゥ、どうした?」
金色の獅子は、城に満ちる新たな音に顔を向けた。
きりきり、かりかり。そんな音がするのだけれど、オブリビオンの気配がするのだけれど、主に伝える術はない。
「嵐殿、どうかしましたか?」
「いや、クゥが落ち着かなくってさ……」
「恐らくこの雷獣を倒したことで島の生態系が変わろうとしているのかもしれません。油断はせず、一先ずは飛空艇に戻りましょう!」
「そ、そうだな。まだ終わってないんだな……」
雷獣は死んだ。
後には青黒い灰の山が残るのみ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『蒼雷の機精』
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POW : ブリッツストライク
【出力最大にした雷属性のエンジン 】によりレベル×100km/hで飛翔し、【自身の重量】×【スピード】に比例した激突ダメージを与える。
SPD : ライトニングフラッフ
【掲げた手のひら 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【雷の粒子】」を放ち、ダメージと【感電】の状態異常を与える。
WIZ : サンダーボルトシージ
【甲高いサイレン 】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【仲間と共に組んだ編隊】で囲まれた内部に【仲間の人数に比例した数の雷】を落とし、極大ダメージを与える。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●135分後
見事に敵の首魁を討ち果たした猟兵たち。
しかし彼らには凱旋の暇さえ与えられなかった。
――認識コードV-001の消滅を確認
――敵性反応多数アリ
――機精は小隊を組み出立、侵入者を排除せよ
其れは機械なのか、精霊なのか。
白い飛空艇から見ている子どもたちの一人が、思わず「綺麗」と呟いた。城から次々に飛び立っていく青白い機精たち。其れは大変美しい光景であったが――同時に、猟兵にとっては脅威の再来でもあった。
元はヴァジュラの手下だったのか。
其れすらも、もうヴァジュラがいない以上判らない。
ただ、同じく雷の技を扱う機精たちは猟兵を追う。この島から逃がさないとでも言うように。
――小隊を崩さず行動せよ
――了承 敵空挺を確認、攻撃しますか?
――拒否 まずは敵を各個撃破せよ
――了承
「……何か出てきたねェ」
猟兵の帰りを待つ女船長は、オペラグラスで其の様を確認していた。
おびただしい数の青白い何かが城から飛び立つのを見ている。
「頭ァ! 天使核の汚染度がいよいよヤベエッ!」
「時間は!?」
「2時間と15分!」
「ならあと45分は持つ!! ぎりぎりまでもたせるんだ、汚染された箇所を削るでもなんでもしな!」
「流石に削ったら落ちちまう! 畜生、畜生! だがアンタに言われちゃやるっきゃねえ! 俺らが此処にいるって信じてるやつらの為に!」
※(子どもたちは全員猟兵の手によって退避済みです。二手に分かれて避難しています。子どもたちを退避させるプレイングを2章で提出された方は、子どもたちを護る事も念頭に置いておくと良いでしょう。ただし、機精は積極的に子どもたちを狙う事はありません)※
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で緊密に連携
獣の次は妖精ですか…盛大な見送りはご遠慮したい処ですね
言いつつ装甲車を子供達の艇への乗船の盾になるよう停車し
同時に指定UCで仲間の造る迷宮の上空・通路を覆うよう黒霧の煙幕を展開し敵の視界と集団連携を妨害。
更に各所に伏兵として狼達を展開配置、突入してきた敵をゲリラ攻撃させて一気に敵が後続突入できない様に仲間の迎撃部隊と連携して圧力を掛ける
自身も動き回りつつ敵の腕とエンジンを狙撃(スナイパー)し遅滞戦闘しつつ、敵の動きを監視(見切り・情報収集)サイレン・雷撃の兆候を確認したら即時にUC:ウロボロスアーセナルで耐電ゴムとガラスの壁を生成、子供達と仲間を防御する
アドリブ歓迎
シャルロット・シフファート
SIRD
今度は時間稼ぎってことね……なら、アリス適合者としての権能を見せてあげるわ
そう言うと同時にUCを以てオブリビオンを滅ぼす四大元素で出来た迷宮を展開
その迷宮は追ってくるオブリビオンと此方を遮るように壁を作り、迷う様に迷宮を構築していく
これで大分時間は稼げたわ。後は迷宮を突破したオブリビオンの迎撃を任せるわ!
そういう私も四大元素魔術を用いて飛来してくるオブリビオンを撃墜し、戦闘に加わっていく
これでゲームオーバー……無論の事、アンタ達オブリビオンがね!
不条理なる雷の体現者!原初の荘厳と共に砕け散りなさい!
ミハイル・グレヴィッチ
SIRDの面々と共に行動
※アドリブ及び他者との絡み歓迎
おーおー、見送りがわんさか出てきやがる。俺達が帰るのが名残り惜しいってよ。だが悪いな、こちとら救出したガキ共送り届けなきゃならねぇ。家に帰るまでがミッション、ってか?
殿の車両に同乗し、そこでUCを使用、敵の遅滞防御に努める。召喚したスペツナズ隊員は降ろさずにヘリに同乗したまま周囲の敵を射撃させる。
そっちが数でくるなら、こっちも数で対抗だ。
また、召喚したヘリの何機かは先行させて飛空艇周辺に展開、ランディングゾーン及び飛空艇の安全を確保させ、飛空艇が無事俺らを収容して離陸し、この空域から離脱するまで護衛させる。
さっさと終わらせて一杯やろうぜ。
ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動
理由は定かではありませんが、どうやら防御システムが作動した様です。数も多い。恐らく数から見て、まともに相手をしていたら時間が経過してしまいます。いずれにせよ潮時です。速やかに撤収します。
子供達を乗せた車両を中央に配置して、前後に護衛の車両を配置した縦隊を取り、このまま全速で飛空艇を目指します。先頭は私が担当。UCの炎の精を召喚して楔形の陣形を取らせて車列を守る様に配置し強行突破。炎の精を突破してきた敵はハンドガンで対応。追撃してくる敵に関しては、他のメンバーが対応してくれるでしょう。
(腕時計を見やり)ここからは、時間との勝負ですね・・・
アドリブ・他者との絡み歓迎
メンカル・プルモーサ
SIRDの面々と共に行動
(改造装甲車【エンバール】に子供達を乗せている)
…沢山出て来た…時間も無し、まともに相手しては居られないね…
子供達を載せていることだしまずは飛空挺まで全力で移動するとしよう…
…【彩り失う五色の魔】を発動…電撃耐性を高めてアクセル全開…
…現影投射術式【ファンタズマゴリア】で装甲車の幻影を多数出して散らすことで攪乱…
…後は耐性とVBA装甲に任せて雷の粒子を突っ切って…他の攻撃を運転技術で回避しながら全力で飛空挺まで移動するよ…(子供達に)少し揺れるかも知れないからどこかに捕まっててね…
…仲間達の遅滞戦闘に感謝しながら車ごと飛空挺に入るとしよう…
●
「おーおー、見送りがわんさか出てきやがる」
城から僅か離れた森。倒木が音を立てて装甲車に跳ね飛ばされた。SIRDの面々は子どもたちを保護したメンカルの車両を中心として、其の前後にネリッサ、灯璃、シャルロットが位置した縦陣で飛空艇を目指す。殿を引き受けたシャルロットの車に同乗したミハイルが、其の様を見ていっそ笑った。
後を追うのは青きいかづちを纏う機精たち。数体ずつが固まり合い列をなして、車両を追う。
――敵性体発見
――敵性体発見
「今度は時間稼ぎ? よっぽど私たちを逃がしたくないみたいね」
『道は私が拓きます。皆さんは最低限の敵を払って下さい』
通信機越しに、ネリッサの声が入って来る。彼女は一番前、改造車で突っ走っている。シャルロットとミハイルは其れを聞き、頷き合う。
「判ったわ。じゃあ出来るだけ追っ手を減らしてみる」
「上空は任せな。俺のオトモダチが頑張ってくれるからよ」
『シャルロットさんを援護します。メンカルさんは躊躇わず飛空艇に乗り込んで下さい』
『……わかった……出来る事はやってみるけど……』
……フォーマルハウトに住みし火炎の王
……其の使いたる炎の精よ
ネリッサが願う。願いは赤き星へと届いたか、己の内のユーベルコードを呼び覚ますのか。炎の精がぶわっと彼女の影から湧き出すと、車に添うように飛行し始めた。隊列を組み、まるで赤い矢じりのような陣形を成す。
――火炎反応
――火炎反応
機精たちが上官へ指示を求める其の一瞬を突いて、ネリッサの車両――矢じりが機精たちを貫き抉る! 兎に角今は後ろにいるメンカルのために道を拓かねばならない。……意地でも前進する。其れがネリッサの役目だった。
「悪いけど……電撃ならさっきのでもうこりてるから……」
メンカルは出来るだけ優しく、出来るだけ大胆に装甲車を運転しながら術式を編む。――幻影投影術式“ファンタズマゴリア”にて、己の装甲車の幻影を多数召喚する。其れはばらばらの速度で走り、ばらばらの方向に散っていく。
――敵性体増殖
――サンダーボルトシージ充填開始
――小隊は散開し各個撃破せよ
――了承
メンカルたちを追う機精たちの隊のうち幾つかが、幻影の装甲車を追っていく。
「……ごめんね……少し揺れるけど、何処かに掴まってて……」
「うんっ……! みんな、掴まってって!」
勇気のある男の子が、メンカルの指示を他の子どもたちに伝える。数秒後……ふぉおん、とサイレンのような音がして……轟音と共に右方から眩い光が溢れ出した。恐らくは機精が幻影を捉えたのだろう。幻影ならば痛くも痒くもないが、其の威力に内心で舌を巻く。
「……この車が狙い直される前に、頼むよ……」
其れは誰にともなく、メンカルが呟く。
「あれは幻影がやられたのよね?」
シャルロットがハンドルを切りながらミハイルに問う。
「位置からしてそうだろうな。あの嬢ちゃんが攪乱のためとはいえ、隊列を外れるとは考えにくい」
「なら良いわ。――じゃあ、展開するわよ。手筈通りにね!」
「イエス・マム、ご命令通りにってな」
ミハイルが空を見上げた。
ばらばらばら、と音がする。其れは機精の飛行音ではない。或いは召喚獣の羽搏きでもない。人類の叡智、空を駆けるヘリの音! 開かれたヘリのドアから銃口が突きだして、一行を狙うオブリビオンへと射撃を開始する。
――敵性体
――敵性体増加
――射撃武器を所持
「頼んだぜ、Товарищи(野郎ども)!」
ミハイルに応えるようにヘリの機関砲が吼えて、機精たちを蜂の巣にした。
ばらばらと音を立てながら、多数召喚された戦闘ヘリのうち幾つかは飛空艇のある方へと向かう。飛空艇が絶対安全とは言い切れないからだ。少なくともこの島を離れるまでは、随伴艦があった方がいいだろう。
いかづちと鉛玉が飛び交う戦場。シャルロットは其処に想像する。迷路が出来る様を。地水火風、オブリビオンを滅ぼし得る元素をもって出来上がる迷路を。――かくて其れは作り出される! 機精たちの前に聳えたつ壁は、触れれば殺すといわんばかりにばちばちと音を立てた。
――進行不能
――上空より降下せよ
――了承
「やらせると思いますか?」
敵味方を識別する青い粒子を放ちながら天空へ昇る機精たちは美しいの一言に尽きる。だが、其れは攻撃的な美しさだ。
オブリビオンが上空にのぼって見たものは、黒い靄だった。
「お見送りは結構な事ですが、此処まで盛大なものは要りません」
灯璃だ。“戦意を抱いた”オブリビオンは其の靄の中に機械的に突き入り……靄の中に潜んでいた獣たちに食い千切られる。こいつは食いでがないぜ、とばかりにばらばらに捨てられる機精。全ての光は闇に呑まれ、上空から迷路を攻略するのはおよそ不可能。
オブリビオンは迷路を迷いながら、灯璃のユーベルコードによって生み出された光呑む狼に食い殺されるばかり。雷は靄のような身体の狼をすり抜けて、其の姿を僅かに散らすだけだ。
「これで少しは時間稼ぎになるでしょうか」
迷路はあっという間に遠ざかっていく。装甲車のアクセルを踏み込んだら、自然そうなる。灯璃は其れでもまだ追ってくる機精がミハイルのヘリに応戦するのを見上げながらも、止まっていられないとアクセルを更に踏み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
天海・虎徹
ち!まだいたのか
子供を抱えながらの戦闘はできない。なら、三十六計逃げるに如かず!
ちょっと荒っぽく行くけど、振り落とされないよう掴まってなよ!
ライトニングフラッフを展開される前に霹靂一閃を連続で使用して一気に距離を離す
一直線に船に向かって移動し、子供を落とさないようしっかりと抱き締め、背負いながら移動する
移動線上に木があったら、側面を蹴り方向を変え、他の木を蹴って方向を修正し、駆け抜ける
「しっかり掴まりなよ。一気に船まで突っ走るから」
鏡島・嵐
残り、45分。急がないといけねえな。
……ここまで来たら、もう怖いのなんだの言ってる場合じゃねえ。
おれの戦いってのは、無事に生還するまで、だからな……!
体力が続く限り〈ダッシュ〉で駆けずり回りながら、〈援護射撃〉で手近な味方をサポートしたり、敵の攻撃に合わせて〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉を合わせて妨害したりして、自分や味方が撤退しやすくするように努める。
敵編隊はとにかく頭数を減らす。〈スナイパー〉で射撃制度を上げて、ダメージが蓄積して相なのを優先的に狙う。
向こうの攻撃は〈第六感〉を活かしてなるべく躱す。
わかる範囲で味方や逃げ遅れが居ないってわかったなら……《翼の銀靴は宙の彼方に》でずらかるまでだ!
夜鳥・藍
ええ本当に。息つく暇もありませんね。
さて城の外に出たならUC星乙女で光の翼を持つ真の姿になり飛翔します。
大きくなる事でより敵の注意をこちらに引きつけられればと思います。また救出者や仲間の猟兵の方々に邪魔にならないように、動く事を基本としましょう。
光線の攻撃優先は、撤退先の進路の邪魔をするもの、次点で敵が密集してる場所に。
敵の攻撃に対してはうかつに避けて他の方の邪魔になるぐらいなら、激痛耐性で耐えます。
多少身体が大きくなってるので、ある意味打点の拡散ができてると思いますので、一撃一撃は痛みは小さくなってると思いたいです。また大きい分、いい的ではあるとは思いますが耐えられる限りはそのままで。
●
「くそっ!」
虎徹は駆ける。機精が静かに其れを追う。森の木々の中に入っても、センサーが付いているのか的確に追ってくる。
「まだいたなんてな……! 兄ちゃんにしっかり掴まってなよ!」
抱えているのは子どもだ。避難しそびれてしまったのだろうその子を抱えて、虎徹は走る。
「三十六計逃げるに如かずってな……!」
機精が掌から青い粒子を散布する。それらは味方には何の害もないが、敵には関電を与える裁きの雷である。いや――裁きなどというのはおこがましいだろう。オブリビオンには、誰かを裁く権利などない。
もっと、もっと早く。轟音のような音を立てながらいかづちの如く高速移動する虎徹。木々の幹に足跡を刻みながら走る其の背に粒子が迫り、……ばちり!
「ぐあ!」
一度受ければ二度、三度。せめて子は守らねばならぬと抱えて護る虎徹の背に蒼い粒子が舞い落ちて、雷を落とされたかのようなダメージを与える。
このままじゃやられる、と思っても、反撃するには手が空いていない。かといって子どもを見捨てて行くことも出来ない。どうすれば……
「おい! 大丈夫か!?」
霞む視界の中で声がした。男の声だ。同時にがが、と機械のノイズのような音がして、ガシャンと何かが落ちる。
「子どもを抱えてるのか……! 立てるか?」
「あ、ああ……」
嵐だった。機精が虎徹に気を取られている隙を狙って、麻痺弾をスリングショットで打ち込んだのだ。
「大丈夫ですか」
嵐に同行していた藍が子どもの様子を確認して、大丈夫だと二人に頷く。ただ、恐怖で気を失ってしまったらしい。
「俺らが此処は食い止めるから、お前はこのまま飛空艇へ走るんだ。絶対振り返るなよ」
「……わ、かった」
「大丈夫です。私が盾になります」
「時間までには俺たちも艇に戻るよ。また其の時に会おう」
そうして虎徹を送り出した嵐と藍。
嵐は走り出す。機精の群れがまたやってくる気配を感じたから。スリングショットに粉入りの弾を仕掛け、一気に機精へ接近すると放つ!
ぼふんっ、と音がして、オブリビオンの鼻先で粉が炸裂した。古典的な目潰しだが、彼らの繊細なセンサーを潰すにはちょうど良い。
不意に、森がずずん、と揺れた。
「おお……?」
嵐が振り返ると、其処に影が差す。20mはあろうかという乙女の姿が其処に在った。其れは森から立ち上がり。ふわり、と重さを感じさせない浮遊をすると真っ直ぐに機精へ向かっていく。
「あれは……さっきの人……だよな」
ヴェール越しに見える、藍の面影を残した其の横顔に、ぽかんとして嵐は呟き……こうしてはいられないと頭を振った。
そう、あれは藍。其の真なる姿。背には光の翼を生やす、美しきクリスタリアン。
――大型敵性体確認
――狙撃及び突撃の許可求む
――了承 状況を開始せよ
機精たちが乙女に向かっていく。エンジンから青い粒子を散らしながら、真っ直ぐに躊躇いなくスピードを上げ……どおん、と音を立てて乙女へと突撃を敢行した。
其の音は数回鳴り続く。
「おいおい……! あんなの受け止め続ける気か……!?」
時間を確認しながら嵐が慌てる。大きいとは女性は女性。的にさせ続けるなんて出来ない。
「………」
流石に少々痛い、と藍は柳眉を顰める。が、突撃して来てくれたお陰でどの方向に密集しているのかは分かった。生み出した魔法陣から真白の光線を放ち、敵を一掃する。
「くそっ! 無理はすんなよ、危ないと思ったら直ぐに元の姿に戻るんだ!」
光線から逃れた個体に麻痺弾を撃ちながら、嵐は叫ぶ。
……こんな姿の私の事も、心配してくれるのですね。藍は其の優しさに心中で感謝する。きっと困っている人は放っておけないのだろう。
けれど、まだ大丈夫。まだ戦える。子どもたちを護るためにも、全員で生きて帰るためにも、少しでも数を減らさなければ。
藍と嵐は森の中、ぎりぎりまで戦闘を続ける。嵐のとっておき、ユーベルコードによってテレポートした巨大な藍に飛空艇の面々が面食らうのはまた後の話。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(飛空艇内の子供達に)
揺れるやもしれません
しっかり掴まっていてくださいね
…大丈夫、騎士としてお約束しましょう
必ず、安全な場所まで送り届けると
UCを装着しロシナンテⅢに騎乗
ハッキング遠隔飛空艇操作し離脱を図るドゥルシネーアから離陸し迎撃へ
子供達を想えば、遣り切れるものではありませんが
あの魔獣の所業も己が本能に従った結果やもしれません
ですが、編隊を組む知能持つあなた方なら話は別です
…邪魔立てするなら容赦は致しません
飛空艇砲座を旋回操作、砲撃で編隊散らし
UCで向上した空中戦機動で強襲
瞬間思考力で飛行コース見切り、照準レーザー乱れ撃ちスナイパー射撃
重力波叩き付け全機撃墜させ、飛竜口部砲やランスで止め
千束・桜花
大物は討ち取ったというのに、まだ戦いますか……!
時間も差し迫っているというのに、厳しい戦いになりそうです
空を舞う複数の敵を剣で追うのは無謀ですかね
けれどただの光線銃で撃つには数が多い
ならば銃口を増やさせていただきましょう!
攻撃回数を5倍、装甲を半分にして撃ちまくります!
弾丸のあめあられを浴びせかけて敵の進行を遅らせましょう!
下がりながら撃ち続けて船へと向かいます
敵の突進が厄介ですけど……退魔刀を盾にして逸らすように弾きましょう
重さでも雷でも手が痺れますが、これくらいなんのその!
●
「少し揺れるやもしれません。しっかり掴まっていて下さいね」
「はい、騎士様」
トリテレイアにはっきりと答える女児を先頭とした数人の子どもたちは、不安そうに、けれど確かにはっきりと頷いた。
飛空艇の甲板へ出たトリテレイアは、心中で誓う。必ず安全な場所まで送り届けると。
換装する。頭部にはレーザー照準、背部に大型スラスターと二門のキャノン型グラビティガン。其の様は最早騎士というより、銃士と呼んで差し支えないだろう。
「ドゥルシネーア、戦線離脱を」
ハッキングで遠隔操作した飛空艇がゆっくりと動き出す。トリテレイアは再びロシナンテⅢに騎乗し、空中から機精に強襲をかける。
…或いは、あの召喚獣の所業は己の本能に従った結果だったのかもしれない。己の縄張りに入り込んだ食事を喰うという本能。
けれど、編隊を組み知能を持つあの機精たちは明確な敵意を持っている。ならば容赦はしない、こちらも敵意をもってお相手しよう!
「子どもたちは全員無事、敵の首魁も倒した筈ですが、まだ戦いが続きますか…!」
桜花は森の中を駆けていた。目印ならある。誰の者かは知らないが、真っ白な飛空艇が見えるのだ。アレはきっと味方のものでしょう。ならばあの飛空艇が向かう場所に向かえば、私たちが乗ってきた艇に乗れるはず!
――しかし、そう簡単にはいかない。城から無数に表れた機精たちが、桜花へ向けていかづちを浴びせ続けている。
「あの艇を狙わせるわけにはいきません……! ある程度方向は読めました、此処で仕留めましょう!」
足を止め、機精に向き直ると光線銃を向ける。――銃口は一つでは足りない。ならば増やせば良い!
「ミラージュレェザァ、機巧変形!」
幻のような銃口が、実際の銃口を囲むように5つ現れる。それぞれが別タイミングで攻撃を放てば、エンジンを撃ち抜かれた機精がバランスを崩し、頭を撃ち抜かれた機精がぐったりと糸の切れた人形のように大地に墜落する。
「光線銃の雨あられ、受けられるものなら受けてみなさい!」
――突撃準備
――突撃準備
しかしオブリビオンは仲間の死に微動だともしない。感情そのものがないのかもしれない。エンジンをふかすような、風の音のような清かな音と共に一気に桜花に肉薄する。
「……ッ!」
片手で退魔刀を手にし、多少のダメージを覚悟した桜花だったが――
「させません!」
がぁん、と何かが硬いものにぶつかるような感触と共に、桜花の前に誰かが現れる。盾にしようとした退魔刀と光線銃を手に持ったまま、桜花は誰か――敵の突進を盾で受け止めたトリテレイアを見上げた。
「貴方は」
「失礼、レディ。お怪我はありませんか」
「ありません! この通り、健康体です!」
「ならば結構です。私はトリテレイア、このようななりをしていますが……騎士です」
「成る程! では先程の行動は騎士道というものですね! あぶない!」
上空から突進を仕掛けようとしたオブリビオンに、桜花が地上から光線銃の対空砲火を浴びせる。
「感謝します、レディ。……戦えますか?」
「無論ですとも! 私は将校として、弱きものを助け、邪なものをくじくために来たのです!」
「成る程。素晴らしい信念です。では……」
――私も行きましょう。貴方をお守りします。
かくして、光線の乱舞が始まる。
大成功
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朱鷺透・小枝子
継戦能力、激痛耐性、先の戦いのダメージを無視
機体損傷、問題無し…まだ動ける。まだ戦える。
回点号でスラスター推力移動、瞬間思考力で敵を視界に納めながら後方へ下がり、RSパルスマシンガンやウィングキャノンでの制圧射撃
少しでも自身へ引き付け、味方への負担を減らす
【戦場の怪談】発動
戦場からサイキックエナジーを放出し第六感、敵を感知、念動力で動きを止め敵集団を無力化。やや朦朧としつつも闘争心そして、念動力(霊障)で引き付けた敵編隊を一纏めにして、
「壊れろ、壊れろ、こわれろぉああああッ!!」
機体の銃火器で弾幕射撃。可能な限り打ち滅ぼす!
…これ以上は勝てない。撤退する
UC限界時間まで無力化を継続、距離を稼ぐ
●
小枝子のキャバリアは城から飛び立つ。無数の機精に囲まれながら。
先の戦いでのダメージは小さくない。けれど小枝子は激痛に耐える。機体の損傷は問題ない。問題があるとすれば、コクピットへの入り口に少々いびつな孔が空いた事くらいだろう。
回天号は着地するとスラスターでの推力移動を開始する。
小枝子は計算する。弾数、スピード、敵の数……傷がずくずくと熱く疼くごとに、思考が冷静を極めていく。まだだ、まだ死は遠い。近くてたまるか、私はまだ……!
マシンガンとキャノンの爆音を遠く感じながら、発射のボタンを押し続ける。少しでも多く私に寄って来い。そうだ、もっと来い。其の間に仲間がより飛空艇に近付けるように。少しでも多くの命を救えるように。
「……今ッ!」
小枝子がユーベルコードを発動する。ぽん、と波紋のようなものが周囲に広がったかと思うと、機精たちのエンジンから散布されていた青い粒子が消失する。
――エラー、制御不能
――エラー、原因不明
――エラー、継戦不能
機精がエラーを吐き続けている。ポンコツ共にはいい薬になったようだ。血を流しすぎてくらくらしながらも、小枝子は笑い、回天号は重火器を構えた。
「壊れろ」
撃つ。
「壊れろ!!」
撃つ。
「壊れろぉぉあああッ!」
撃つ。
タイムリミットは100と7秒。其れを過ぎれば自分は死ぬ。……死ぬのか! 私が!? 死ぬもんか!
残弾の数を見た瞬間、兵としての自分が撤退を己に命じた。すう、と頭の芯が冷えて行く。そうだ、悪戯に敵機を撃墜している訳にはいかない。自分にはまだ“生きる”という任務がある。
ぎりぎりまでユーベルコードを維持しながら、回天号は前線から撤退、森の中に消えた。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
おぉ、メインディッシュの後にデザートも残ってたらしい。最後くらいは食べさせてやるかぁ。デザートは別腹ってことで……じゃ、任せるよ《俺》?
『ハハハハッ!そう来なくっちゃなァ!』
狂気の戦鬼を発動
高速移動しようがウザってぇ事に戦場全体に攻撃しやがる。なら必要なのは回避じゃねェ、攻勢オンリー!高速移動は敵への接近のみの使用だ!
発動の鍵になってやがる手を特に狙って衝撃波で吹き飛ばす!てか胴体や頭フッ飛ばしてぶっ殺した方が早えかァ?
あんま飛空艇から離れねぇが、近けりゃ連中に飛び乗ったり衝撃波の勢いで空中戦もやるとするぜ!遠くからちまちまするだけは柄じゃねぇからよ!
オラッ、俺様を満たす為に断末魔あげて死ね!
●
おや、メインディッシュの後にデザートも残ってたらしい。
眼鏡の位置を直しながら、永一はそんな事を思う。デザートといっても量は凶悪。ビュッフェでも開けるんじゃないかってくらいだ。
……そういえば食べ放題が好きな奴がいたなァ。まあ、たまには食べさせてやるかぁ。
「という訳で、任せるよ? “俺”」
永一が一言そう呟くと、俯いて……がばりと勢いよく顔を上げた。
「ハハハハッ! そう来なくっちゃなァ!」
永一は多重人格者である。いつもは永一が身体の主導権を握っているが、時折気紛れに別人格に任せる事がある。今がまさにそうだ。別人格はまさに凶暴、戦好き、そしてちょっと運が悪い。運が悪いというより、主人格にていよく使われている事が……いや。彼の名誉のためにここは黙ろう。
別人格は寿命が削れようがお構いなしだ。敵である機精を認めるとまずは一撃、抉り取るかのような衝撃波をお見舞いした。
ざっくりと機精が両断され、大地におちる。ガシャン、と音がした。機械だからだろうか。オブリビオンとはいえ命を奪ったという実感が永一をぞくぞくとかき立てる。
「ハッハァ! レッツ・ロックだ!」
いかづちを飛ばして来る機精だが、そんな直線の攻撃当たるかよ! 高速移動で近付いて跳躍、機精の肩に乗ってやる。他の機精が掌から青い粒子を放ってきたので、衝撃波を脚から放って椅子になっていたオブリビオンを両断しながらさらに跳躍する。同士討ちするかと思ったがそうだった、あれは敵と味方を識別するんだった。アー……ウゼェ。
「まだ満たされねェ、全然だ! 断末魔上げて死ね!」
連中の中心から放った衝撃波。オブリビオンはふぉん、とエンジンから断末魔のように青い粒子を放ち、墜ちる。まだ食い足りないと永一は舌なめずりをした。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
どのくらい時間が経っただろう
勇士は限界まで待ってくれるだろうけど、早く戻ったほうが不安も少ないよね
今回も先に進むの優先だな
先頭を行き露払いする同業者がいなければその役を務める
いるならその者にメインは任せ、手が足りない部分の補助をする
UC伴星・強欲の両鎌槍を発動
胸部を起点に(必要ならば走るために必要なところを残し使い切るつもり)身体を魔法物質に変換し両鎌槍を大量に作り、飛び回らせて敵を牽制・群れに穴を開ける
倒せればベストだけど先に進めさえすればいい
ん、なにか隊列を組もうとしている?
機械的な性質から想像して、おそらく統率力に優れた連中だし、させないよ
即座に両槍鎌を敵が一番集まっている場所に撃ち込む
露木・鬼燈
いよいよ撤退戦ですか。
追手は大量。
こちらは負傷者多数で一般人を抱えている。
これは楽しくなってきたね。
とは言え…気力はあれど体はついてこない。
剣を手に大立ち回りとはいかないか。
それならできる方法で戦おう。
生身がムリならキャバリアで、ね。
アポイタカラを召喚!
ライフル&マシンガンに散弾を装填。
弾丸をばら撒きながらの空中戦で足止めするですよ。
さらに<機械鳥之宴>で支援戦闘機を召喚。
ここは人の住む地ではないから派手にやってやるっぽい!
全てを灰燼に帰す勢いで破壊を振りまく。
アポイタカラの機動力なら直ぐに帰還できる。
ギリギリまで粘って足止めするですよ。
殿こそ戦の華ってね!
最後に一暴れするっぽーいっ!
●
――出立してから、どのくらいの時間が経っただろう。
サンディは冷静に身体を魔法物質に変えながら、そんなことを考える。1時間? 2時間? いや、もうタイムリミットが近付いているのは間違いない。
勇士たちはきっと、自分たちを限界まで待ってくれるだろう。けれど、早く戻れるに越した事はない。
先に進まなければ。
「――させないよ……!」
編隊を組もうとしていた機精たちの中心に両鎌槍を撃ち込んで散らす。そして、
「散らばった敵は任せろっぽーい!」
空を舞う鬼燈のキャバリアが火を噴いて、機精たちをやたらめったらに蜂の巣にする。
撤退戦だった。だが勝ちの撤退戦だ。お前らが、この島がどうあろうと知るものか。此処には人が住んでいないから。
「どんどん派手にやってやるっぽい! おにーさんも続いて続いて!」
「はは、君ほど派手にはなれないんだけどね……」
実際はサンディは鬼燈より年下なのだが、其れは置いておいて。
鬼燈は更に機械仕掛けの鴉を呼び出すと、いってくるっぽい! と送り出す。其の間にエンジンをふかして突撃してきた機精はサンディの両鎌槍によって両断される。
何もかもが流星のようだった。空を舞うキャバリア、鴉……支援戦闘機が放つ誘導性ミサイル、青い粒子を放ちながら編隊を組もうとするオブリビオン、――そして自分の放つ両鎌槍。スピード勝負だった。一歩でも速く、一歩でも多く艇に進む必要があった。
「ぽいぽい! おにーさん、そんなに大サービスしちゃって大丈夫?」
「大丈夫だよ。そっちこそ弾数は?」
「まだまだいけるっぽい……けど、敵の数が減ってきたからそろそろ艇に向かった方が良いかもね!」
「同感だ!」
ふぉん、ふぉん、ふぉん。機精のエンジンがたてるさやかな音がよく聞こえる。
此処で足止めを食う訳にはいかない。
「おにーさん、乗って! アポイタカラは速いっぽい!」
鬼燈の言葉にしたがって、サンディはキャバリアに飛び乗る。二人乗りではないので少々きついし、絶え間なく飛来するオブリビオンに編隊を組む隙を与えてしまうけれども、其れでもサンディは、鬼燈を信じた。
――ふぉーん、ふぉーん……
サイレンのような音がする。
アポイタカラは青白い炎をふかしながら、最大速度でその場を離れる。
「あの音、やばいっぽい!」
「囲まれてる……!
二人が包囲網を抜けるのと、機精たちが巨大な雷を大地に落とすのはほぼ同時だった。後ろからの爆風にキャバリアの脚部が少し浮いて……再び大地に着く。
「……」
「……」
思わず顔を見合わせる二人。どちらともなく笑いだして、笑い声はしばらくやまなかった。
艇まであと少し。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
アレも喰えるケド…時間がねーな
重力属性の触手を手足に纏い、勘で攻撃を躱しながら飛空艇へ向かう
頭上の雷は雷属性の触手で受け流す
何度も痺れてたまるかよ
船に乗ったら船長と交渉だ
「部屋貸せ。交換条件で色々出してやる」
鳥から抉った核をいくつかと、水属性の触手から出る飲み水
重力属性の触手で一時的に船体を軽くして、風属性の触手で加速を手伝う
部屋に遺品を置いて、遺体は木属性の触手から出した葉で覆う
氷属性の触手で冷却措置。あとは置いてくから好きにしろ
(ヒトの気持ちはわかりましたか?)
わかんねー。腹減った
着くまでぼーっと、ヒトの様子を眺めておくぜ
ホントにヒトはヒトを喰わねェんだなァ…
●
アレも喰おうと思えば食えるケド、時間がねーな。
怜悧の人格の一、アノンはそんな事を思う。ならば出来るのは逃げる事のみ。
重力属性の触手を手足に纏い、ふわりと飛ぶように森の中を駆ける。途中にある青黒い灰は、侵攻する時に討ち取ったブレイドホークのものだろうか。
高く跳び、飛ぶ。機精が編隊を組みアノンを囲もうとするが、重力をものともしない彼はなかなか捕まらない。
時折放たれる雷は雷属性の触手で受け流す。二度同じ手は喰わない。もう痺れてたまるかよ。
「お、帰ってきたね」
艇につくと、眼鏡に太っちょの船員がアノンを最初に捉えた。木の板に紙を乗せたものを差し出す。其処には今回の依頼に参加した者の名が連ねてあった。
「自分の名前の横にピンして」
「おう。船長は何処だ?」
言われるままにチェックを付け、アノンは開口一番船長の居場所を聞く。船員はくい、と親指で船首を示して見せた。女船長は島を見ている。
「おい」
「あ? ああ、お帰り。お疲れさん」
「部屋貸せ。交換条件で色々出してやる」
「部屋ァ? 別に何もいらないよ、アンタらは命を救った、其れだけで十分だ」
「借りを作るのは嫌なんだよ。交渉しろ」
「こっちこそ作るのは嫌なのさ。今これ以上ないほど借りてるってのに」
……とまあ、押し合いへし合い問答して、幾つかを船長は受け取った。アノンがブレイドホークから回収した小さな天使核を幾つかと、触手による船への加護である。
その代わりにアノンは部屋を一つ借り受けた。扉を開くと亜空間を開き、部屋に遺品を置いていく。木属性の触手から出した木で、ばらばらになった遺体を覆うように隠す。
そして、ベッドにぼすんと倒れ込んだ。
「(ヒトの気持ちは判りましたか?)」
ロキが問う。わかんねー、とアノンは素直に答えた。
判らない事だらけだった。
どうしてヒトは、ヒトを喰わないのだろう。どうして――
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK!
【一掃】
本当にしつこいね。
でも、ここまで来れば、『全力』を出せる!
ユーベルコヲド・超万能制御式・付喪!呼び出すのはスカイクルーザー・ヨナとキャバリア阿穹羅!砲撃で一掃するよ!ヨナのダミーバルーンボム(残像)で撹乱!
阿穹羅の対空レーザーとエアバスター(対空戦闘&レーザー射撃&砲撃)で撃退していこう!
遠隔操作できる範囲で後退して、脱出できればぼくらの勝ちだ!
待っていてくれた船の天使核だけど、ヨナにエネルギーバイパス繋げる?ヨナのシステムに組み込んだ浄化システムで汚染を食い止められないかな?(うまくいけば、ヨナがクジラの潮吹きのようにキラキラの綺麗な粒子にして出してくれるはず)
●
「本当にしつこいね……! 自分たちが新しいヌシだって言ってるのかな!」
鈴鹿は城から飛び立つ青い機精たちに追われながら悪態をつく。…でも。
「でも、此処まで来れば――子どもたちが安全なら、全力を出せる! ヨナ、阿穹羅、来て!」
かくて天才パーラーメイドが呼び出すのは航空巡行艇とキャバリアだ。巡行艇は鯨を意匠された愛らしいデザインだ。鈴鹿は阿穹羅とヨナへ己の思考を繋げると、機精たちが自分に追い付く前に牽制射撃、距離を取る。
更に“ヨナ”からダミーバルーンボムで敵を攪乱して足止め、阿穹羅の対空レーザーとエアバスターで敵を確実に撃破していく。
其の間にも彼女は走る。時間がない。懐中時計を見ればあと5分の所へ迫っていた。遠隔操作も何処までの距離で出来るのか。彼らが止まってしまえば、機精は再び自分を追って来るだろう。……そうすれば最悪、飛空艇の位置がバレてしまう! それだけは出来ない!
「おおーい! 嬢ちゃん、こっちだあー!!!」
駆け抜ける! ――キャバリアたちの召喚を一旦解除しながら、鈴鹿は肩で息をしていた。パーラーメイドは激務とはいえ、此処まで全力で走ったのはいつぶりやら。
「はい、名前の横にピンして」
船員が差し出したファイルを見て、言われるがままにピンをする。見れば多数の猟兵の名前の横にチェックが付いており、新たな名前が10と数名程足されていた。
「君で最後ね。船長、終わりましたァ!」
「アンタ達、出向だ! 幸いにも護衛がいてくれる、其の間に出来るだけこの島から離れるんだよ!」
女船長の芯のある声が響き渡ると、勇士たちがあちこちへと走り出す。艇を繋いでいた綱をほどき、一瞬沈む感覚と共に飛空艇が出立する。周りにはヘリが飛んでいて、飛空艇を守ってくれていた。
「……あの」
甲板で島を見据えていた船長に鈴鹿が近付く。
「何だい」
「天使核のことなんだけど」
「ああ、……気にしなくて良いよ。また適当に狩って調達するまでさ」
「ううん、あのね、他の船にエネルギーバイパス繋げる? ヨナ…僕の艇のシステムに組み込んだ浄化システムで汚染を食い止められないかなって」
「おや! ほんとかい!? アタシは詳しい事は判らないから、技術屋を呼ぶよ! ちょっと! 誰かブライアンを呼んできな!」
●178分後
空にふうわりきらきらと美しい粒子が舞う。鯨を模した愛らしい船が、穢れを美しい粒子に変えていく。其れでもこの天使核はもう使い物にならないかもしれないが――もう、子どもたちは不時着の恐怖を味わう事はない。
猟兵たちは確かに、救えるだけの最大限の命を救って見せたのだ。
――Mission Complete!
大成功
🔵🔵🔵