●死を運ぶもの
スペースシップワールドの知られざる宙域、星々の名残と呼ばれるエリアがあった。
まだ星の痕跡があるのかと期待を抱かせる名だが、正確には異なる。
かつて帝国と戦い滅ぼされたもの。帝国側にて戦い撃墜された宇宙船。
そうした残骸、デブリが微弱な重力に惹かれ、揺蕩っているのがその名の由縁だ。
一見役に立たないガラクタも、コアマシンを用いれば再生可能な資源となる。
宙域の名も、利用価値を見出したサルベージ船の人々によって付けられたものだ。
普段は矮小なサルベージ船が集うだけのエリアだが、この日は違った。
巨大な白い方舟が現れたのだ。
方舟――正しくは研究船の内部、白い軍服に身を纏う男は、名をサイファーと言った。
「此処か。材料が漂っている宙域というのは」
猟書家幹部である彼は再編したばかりの帝国継承軍を軍事強化すべく、
過去の武装や船の残骸などを収集していた。
いうなればサルベージ船と変わらぬ目的だ――ある一点を除いては。
「死者を束ねるこの私が、元より血肉なき者を操るか。つまらぬ……が、使えるものは使うとしよう」
方舟の船上に現れた白い歩行戦車の、機体上部に鮮やかな緑の光が集結する。
光は一直線にサルベージ船を貫いた。船中の彼らがそれを目にできたのも一瞬だろう。
瞬く間に星間へ放り出された者がどうなるか、彼らが知らぬ筈はあるまい。
吐いた息は戻らず、血は沸いて凍り、人々は悍ましき形相のまま久遠の柩に囚われた。
「丁度良い。材料がひとつ増えた」
この忌まわしき研究船には、残骸はおろか人々の命さえも材料に過ぎぬ。
死したサルベージ船の者の魂を鳥籠に捕らえ、死の方舟は往く。
星々の狭間にて揺蕩う亡者を、オブリビオンの軍団として蘇らせる為に。
●禁忌の方舟を撃墜せよ
以上が事のあらましだ、とグリモア猟兵のユインは手短に告げた。
「憤る者もいるだろう。だがヤツは何とも思わない。それだけ情を宿さぬ男だ」
命ある者を材料としか捉えぬ、ネクロマンサーの男。
素性の知れぬ猟書家は、死の静寂に満ちたこの世界が肌に合ったらしい。
「さて、取るべき作戦はシンプルだ」
まずサルベージ船を護り、方舟攻略の足掛かりとする。
敵幹部を打倒すれば方舟は自壊するため、
船をすべて破壊されればグリモアベースに帰るまでの拠点がなくなる。
万一それまでに酸素が尽きれば、どうなるかは想像に難くない。
「尖兵として襲ってくるのは小型の戦車だ。中に乗っているのもオブリビオンのクローン兵だ、纏めて遠慮なく葬ってやれ」
歩行式の戦車は数々の兵器を操るが、猟兵達が全力を出せば難なく退けられるだろう。
「肝心の猟書家の男だが、こちらは少々厄介だな。古代兵器を呼び覚ましたらしい」
宙域に眠る残骸より抽出した、かつて存在した禁忌の兵器。
オービット……自律型の球体ビットは猟書家を守るように周回し、
こちらの動きを察知して出鼻を挫くようにレーザーを放つ。
「要は妨害型の小賢しい兵器という訳だ。単独では問題なくとも、強力な敵と同時に相手取る事の嫌らしさは想像できるだろう」
対策はないのか、と問われたユインは、考える素振りを見せる。
「サルベージ船の人々は古の物品の鑑定や再利用も行っていたと聞く。古の兵器の弱点や攻略法も、もしかすれば知っているかもしれんな」
交渉事は専門外だが、お前たちなら信を得るのも容易いだろう? と。
促すように、ユインは皆の顔を仰ぎ見た。
説明を終えたユインの掲げる杖より、グリモアのゲートが開かれる。
向こうに見えるのは船内の光景、窓に見えるは星々の輝き。
「門を抜ければ、休む間もなく戦いの準備だ。覚悟のできた者からくぐると良い」
護るべきサルベージ船の様子を映し、蒼白い光のリングが広がっていった。
晴海悠
お世話になっております! 晴海悠です。
此度はスペースシップワールドでの戦いとなります。
早期完結をめざし、サポート様の力もお借りしてサクサク進める予定ですが、当シナリオ宛てにプレイングを頂けた場合は喜んで筆を執らせて頂きます!
判定はゆるめですが、皆様のご活躍はしっかり描きたく思います。シチュエーションを楽しむ『ライト版』感覚で、お気軽にどうぞ!
『プレイングの受付』
各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。
また、シナリオ上部のタグやマスターページに受付期間のご案内を記載する事があります。よろしければご参照下さい。
『1章 集団戦』
かつて銀河帝国軍が開発した小型歩行戦車が、サルベージ船に襲い掛かります。
基本的に船上の戦いですが、宇宙空間を駆け、船への到着前に迎撃する事も可能です(戦果は高いものの、難易度もやや高めの選択肢です。具体的手段をご明記下さい)。
また皆様にはサルベージ船のクルーより、強靭な宇宙服と小型のジェットパックが貸し出されます。使い方のレクチャーもあります。戦闘で破ける事はないのでご安心下さい。
『2章 集団戦』
葬列の長サイファー。
幹部猟書家であり、死者を操るネクロマンサーでもあります。
彼は「オービット」と呼ばれる球体状の古代兵器を従えており、オービットは周回しながらこちらの動きに合わせて妨害レーザーを放ってきます。
厄介な相手ですが、サルベージ船の人々の信頼を得ていれば打開策が得られるかもしれません。
なお、戦場となる方舟内部には空気も重力も存在します。
プレイングボーナス(1・2章共通)……サルベージ船を守る/協力する
それではリプレイでお会いしましょう! 晴海悠でした。
第1章 集団戦
『小型歩行戦車』
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POW : インペリアルキャノン
【機体上部に装備されたビームキャノン】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : タンクデサント
【完全武装した銀河帝国歩兵部隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : サイキックナパーム
【機体後部から投射する特殊焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【搭乗者の念動力で操作できる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サルベージ船のクルーは突如現れた援軍に驚きこそすれ、
事態を把握すればすぐさま戦闘用の宇宙服を貸し出してくれた。
銀河帝国残党に追われていた時代の遺物が、久方ぶりに役立つ格好だ。
ハッチを潜り船外へ出た途端、近くを緑の光線が掠めた。
出所は、既に船体に取りついていた小型歩行戦車。
後からもノミが湧くようにまばらな友軍が方舟を離れ、
宇宙空間を渡ってこちらへ向かっている。
次のキャノンの照射は、船体ではなく猟兵の近くを過ぎった。
脅威と認識させれば、船でなくこちらへ攻撃を惹きつける事も叶いそうだ。
キミ達は改めて、敵の戦力を確認する。
機体上部に備えられた白緑のビーム砲。宇宙空間でも対象を燃やす特殊焼夷弾。
搭乗する歩兵を降ろし、白兵戦を挑む事もあろう。
こちらの出方に応じ敵は兵装を使い分けるが、予測が叶えば対策も立てられよう。
船体に取りついた機体を迎撃するか、取りつく前に打って出るか。
サルベージ船団の運命は、キミ達の手に委ねられた。
ナイ・デス
宇宙服は常備しています。大丈夫
ちょっと大きなことするので、覚悟しておいてください
それでは!
電脳ゴーグルに触れ、バリアで全身を覆い外へ
彫像を召喚しばらまいて『文明守護領域』発動
みんな、一緒に戦いましょう
瞬間思考、船体のと箱舟からくる戦車を確認して
まずは、船の守りを!
残骸、デブリ、星間物質に竜となってもらい変形合体
宙域が、小さな竜の集合体、ダイウルゴスとなってサルベージ船と箱舟を隔て
群れが戦車を飲み込むように、サルベージ船の装甲となるように動く
今を蝕む、過去という侵略者から世界を守りましょう
ここに、フロンティア・ラインを!
攻撃も戦車も兵もまとめて、群れが光って生命力吸収
飲み込むように、過去へと還す
空気が漏れ出ぬよう幾重にも設けられたハッチを潜り、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)の体は宇宙空間へと放たれた。
電脳ゴーグルより展開した自前の宇宙服に身を包んでいても、小さな体は宇宙のみなしごのように思われた。だが当のナイは微塵も不安など感じさせない声で、通信機越しに周囲の味方へと呼びかける。
『ちょっと大きなことするので、覚悟しておいてください。それでは、いきます!』
虚空に喚んだ、宇宙空間と同じ色の彫像。ダイウルゴス、かつて別世界を侵略した帝竜と同じ名を冠する彫像は、ふわりと自律的に浮かび敵の元へと向かう。
『みんな、一緒に戦いましょう。まずは、船の守りを!』
ナイの声が響くと同時、像より球状の波紋が宇宙空間を駆けた。役目を失い星間を漂うデブリ、周囲の無機物に思念の波は働きかける。
めきめきと互いの重力で結ばれ形を成す、集合体。彫像と同じ竜の形態を取り、次第に牙や爪の形までを現していく。
明らかな敵性存在を認め、戦車より焼夷弾が放たれた。
機体後部より射出されたナパーム弾はサイキックの力により黒竜へと向かい、着弾すると同時に竜の表皮に爆ぜる炎を噴き上げた。
だがその延焼も、大事に至る前に食い止められる。黒竜の持つ周囲を取り込む力は炎をも飲み込み、籠められたサイキックエナジーを吸収して傷口を塞いでいく。
『今を蝕む、過去という侵略者から、世界を守りましょう』
途切れるように区切りながら話す、少年の声。操る人の言葉はまだ流暢でない時もあるが、ヤドリガミであるが故に、物の心は手に取るように感じられる。
宇宙の塵と化した「彼ら」も、かつては役割があった。人の手を介して道具あるいは船体となり、何かしらの仕事を得て眠りに就いたのだ。
もし彼らに意思が宿って言葉交わす事叶うならば、再び役立てる事を快く思ったに違いない。新生ダイウルゴスの放つ思念の波が戦車を飲み込み、船体を守る障壁へと変えていく。
『ここに、フロンティアラインを!』
呼びかける少年の声に応じ、思念の波は広大な宇宙空間へ拡がっていった。
成功
🔵🔵🔴
メルフローレ・カノン
宇宙空間で、宇宙服だけでは、自由が利きませんから、
ユーベルコードは【祝福の光】を選択しました。
船から船に飛ぶためでもありますが、
敵を殴るときに空間でもしっかり踏ん張るためでもあります。
まずは手近の船に張り付いている敵を
【怪力】【力溜め】の上でメイスで思い切り引っ叩きます。
また、足の部分を【なぎ払い】でへし折って動けなくし
頭頂部の砲身を【武器落とし】【部位破壊】で撃破です。
手足と兵装を失った戦車は殴り倒すなり虚空に投げ飛ばすなりします。
敵の攻撃は【盾受け】【オーラ防御】で防ぎますか。
近くの敵を一掃したら、船から船へ飛び回り、
サルベージ船に取り憑いた歩行戦車を駆逐して
人々を守りましょう。
サオササ・テセル
新しい猟書家…」
自分の命すら他人事にするような相手らしいという思いもそこそこに
連携の打ち合わせに加わる
SPD判定:他の方とのリプレイ参加希望
基本は【念動力】による子機の包囲陣形を展開後
【弾幕】【範囲攻撃】【爆撃】【スナイパー】で敵を掃討
敵攻撃への対応は【空中浮遊】【空中戦】【地形の利用】【ロープワーク】に【フェイント】を込め位置を読ませない軌道を展開
【学習力】【偵察】で敵弱点の把握
【メカニック】【武器改造】【援護射撃】【継戦能力】による友軍の支援も忘れず行う
軍対軍の体なら【戦闘知識】【集団戦術】による指示
【情報収集】で敵の動きなども把握できるかもしれない
戦いに喚ばれた黒竜の結合が解け、ひとつの船が救われた。だが依然として船団の合間にはレーザーの光がちらつき、交戦が続いている事を示している。
(「新しい猟書家……」)
サオササ・テセル(虚欠片の機精・f15384)は敵幹部の情報を脳内で整理し、ふと過去の戦いを思い返した。
漿船を乗っ取ろうとする者、クエーサービーストを捕らえようとする者。いずれも厄介な相手が多かったが、此度の猟書家は死者の魂を操るという。
(「生死に頓着しないのなら、自分の命すら他人事なのでしょうか」)
実際本人に聞いたわけでもなく、どのような思考の持ち主なのかは未だ不明だ。素直に聞いて答えてくれるとも限らぬ。
敵の素性に興味がないと言えば嘘になるが、ひとまずは思考を打ち切り、サオササは作戦の打ち合わせに加わった。
『よければ私が先鋒を務めますよ~。船に取りついてる戦車、メイスで思いっきりひっ叩いて壊しちゃいます』
そう提案する、メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)。一見非力にも思えるシスターの少女は、サオササの視線を感じると笑顔で十字架状のメイスを掲げた。
『大丈夫です。こう見えて、力には自信がありますから』
『わかった。なら、援護する』
メッセージボードで意思を伝え、サオササは背部ユニットより子機を展開する。策が決まったとあれば時間が惜しい、談笑は戦いを乗り越えてからの楽しみだ。
自らも熱線銃を構える備え万全の彼女を頼もしく思い、メルフローレは重力場を頼りに船体表面を駆ける。
(「宇宙空間で宇宙服を着ているとはいえ、それだけでは自由が利きません」)
短く十字架を切って祈りを捧げれば、ふくよかな胸の辺りから温かな光が広がった。聖者にのみ与えられる神の御加護。祝福の光は駆け行くメルフローレの全身を包み、行く先に光の足場を形成する。
(「まずは、手近な敵から」)
力を籠めたメイスを振り下ろす。宇宙服の袖を伝い、水中で聞くような撓んだ打撃音が響いた。もう一発は機体上部へ、今まさにビームを放たんとしている砲塔めがけて打ち据える。
手応えはあった。光の収束する歪んだ砲塔を見て、咄嗟にメルフローレは戦車の真下へメイスを差し挟む。
(「船を襲うなんて、させませんっ……!」)
テコで引っぺがすように宇宙空間へと放り出せば、行き場を失ったビームキャノンは膨れ上がり――自爆。インペリアルキャノン、皇帝の名を冠するご自慢の兵装は確かにその威力を示してみせた。
次なる戦車の足を奪いに駆けるメルフローレを、散発的にレーザーが襲う。戦車を破壊される前に手数で迎撃しようと、機体を降りた帝国のクローン兵たちが銃撃を試みていた。
子機に援護射撃を命じ、サオササが彼女の救出に向かう。船体の出っ張りを地形と見做せば、足掛かりとなる物は場に溢れていた。
ヴァリアブルウェポンの可変式ワイヤーを手足のように動かし、読めない動きで迫るサイボーグの少女。迎撃が間に合わず、手元を撃ち抜かれた歩兵が腕を押さえた。
照準が合う前に次のワイヤーを伸ばし、弾幕のように浴びせられるブラスターの雨。手数で勝る無口な少女に気取られていた帝国兵は、次の瞬間己等の判断を悔やむ事となる。
音なき宇宙空間において、異変を知らせるのは物理的な事象のみだ。従って兵士達は、後ろから爆ぜ散る戦車の破片に自らの敗北を悟る格好となった。
『まだまだ、他の船も救ってみせます……!』
既に目標を変えて跳び去るメルフローレを見送った後、帝国兵達はサオササの方へ恐れまじりの視線を向けた。
銃を構えるサオササの手つきは極めて事務的で、これから行う事も淡々とした事後処理に過ぎぬ。
冷静で情に流されぬこの少女に投降など通用しない事は、誰の目にも明白だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リオ・ウィンディア
宇宙船、なれていないのでアドリブ歓迎!
宇宙は未だ解明されぬ闇の物質で溢れているわ
府中服を借りて甲板に降り立ち遊撃する
音が聞こえない?問題ないわ
そもそもここは全てが闇に包まれた世界
無音という音楽だって可能でしょう
マルシュアスを取り出してUC発動
無機物を一部嵐化、同士討ちを招く
可能なら、ビームの起動も闇の嵐で軌道を歪ませて船を守るように戦うわ
穴が空いたら大変だもの
目標はここ。この私、さぁかかってらして?
ふむ、宇宙服はドレスとは違うから、ある意味機動力があるのかもしれないわね
まだ慣れぬ、身を包む宇宙服の硬い感触。死霊術士の少女、リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)はやや緊張した面持ちで船体表面へと降り立った。
この世界の冒険自体が経験として少なく、自然に慣れ親しんだ身としては大地を離れる事も若干寂しく思う。だが、目の前に広がる光景は空いた心を埋め尽くせる程には好奇心をくすぐってくれた。
(「宇宙は未だ解明されない闇の物質で溢れていると聞くわ」)
ダーク・マターとも呼ばれる未発見の物質。寂寥とした広大な無の空間にもそれが満ちているのだと知れば、音のない空間にも宇宙の音楽が聞こえるように思えた。
音が聞こえないのではなく、闇に包まれた世界が無音という音楽を奏でているのだと。少女の豊かな感性は捉え方を変え、現実を受け止めた。
防護パックに包んだ木製の魔楽器、手回しオルガンを取り出す。ハンドルをゆっくりと回せば、辺りに満ちる質量持つ『闇』は確かに呼応した。
『Bienvenidos! 闇のささやく静寂の舞台へ、ようこそ』
奏でる音階は暗黒物質を震わす嵐となり、遠く戦車の元まで伝わった。精神をかき乱す呪詛に蝕まれ、戦車の砲塔があらぬ方向を撃つ。
攪乱を得意とするリオを見て、二台目の戦車はナパーム弾を射出した。念力で着弾する焼夷弾ならば、中の操縦者が無事である限りは確実に少女を焼き焦がせよう。
『そうそう、そうよ。目標はここ、さあ頑張って?』
笑う響きすら含んでいそうな、可憐なリオの声は敵兵にまでは届かない。そして放たれたナパームも届かずに終わる――闇の嵐で軌道を曲げれば、コントロールを失った焼夷弾は哀れ宇宙の藻屑と化した。
次々と吹き荒れる、暗黒の波。敵を同士討ちさせる事までは叶わなかったが、操縦者を直接揺さぶったおかげで船体に被害は出ていない。
『ふむ、宇宙服も悪くないものね。身を守ってくれるおかげで、自由に動けるもの』
つまむ裾がないのが残念だけど、と軽く冗談めかして笑いをこぼし。リオはとどめとばかり、サラウンドスピーカーの如き音の嵐で戦車を包み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
他の猟兵もいますし、船団はもう大丈夫そうですね
なら次は、敵船から向かってきている戦車を
……そのまま、敵船まで殴り込みましょうか!
サルベージ船を黒竜の群れが覆い、敵から守り隠して
結合を解いた時、サルベージ船は1つ増えてる
見えない間に、連続発動して宇宙船のように大きくなった『文明守護竜』が
群体の特性で武器改造肉体改造
変形合体の組みかえで形を整え、迷彩能力で色まで確りサルベージ船そっくりになったもの
それが、方舟から渡ってくる戦車へ
取りつくのなら、こちらから狙えと近付いて
騙し討ち、表面の竜が取り込むように戦車から生命力吸収、分解消滅させ
ビームも飲み込みながら
方舟向かって急加速推力移動、光を放って
突撃!
ユディト・イェシュア
宇宙で戦うのは初めてですが…
レクチャーしてもらえるのはありがたいです
必ずこの船を守ります
みなさんもどうかご無事で
この船を守ることが第一
船に取りついている敵を優先的に狙い
こちらに引き付けまずは引き離しましょう
さすがに戦車…機械からはオーラを視ることはできませんね
中に乗っているのもクローンだそうですし
サルベージ船から敵が離れたのを確認し
UCで敵の装甲を打ち砕くように攻撃
心臓部を狙い撃てれば良し
無理でも脚部を狙い移動を阻害
注意深く敵の動きを観察し焼夷弾の投射位置や飛距離を確認
焼夷弾をUCで撃ち落とします
位置取りを上手くすれば
放たれた焼夷弾を別の敵に当てることも可能かと
全ての敵を倒すまで気を緩めません
ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、教わったばかりの宇宙服の機能を船内で軽く確かめた。技術の集大成だけあり、着用したまま戦うのに差し支えはなさそうだ。
「こうしてレクチャーしてもらえるのはありがたいです。何分、はじめての事ばかりなので」
ユディトの声には緊張も滲んでいたが、人々を安心させるべく笑顔を作る。命が懸かっているのだ、クルーの緊張は猟兵の比ではなかろう。
「必ずこの船を守ります。みなさんも、どうかご無事で」
救いを求める人がいるのならば、大地を離れようと使命は変わらず。この世界にも神の奇蹟を呼び起こすべく、ユディトは笑顔で手を振りハッチを潜った。
船外へ出た彼を出迎えたのは、先に戦いを繰り広げていたナイだった。
『おや……教わっている間に、だいぶ安全も確保できたようですね』
少なくとも近隣のサルベージ船には、戦火の上がる様子はない。ナイだけでなく、先行していた猟兵達の功績だった。
『まだ潜んでいる敵がいないとも限りません。探してこようと思うのですが、あなたはどうされますか?』
『船団はもう大丈夫そうですから、方舟から向かってくる戦車を何とかしようかと』
ユディトの問いにナイは宇宙服越しの笑顔でそう答える。頑張り屋の彼には連戦となるが、敵襲を未然に防げるのなら越したことはない。
『分かりました。では手分けを……どうぞ、お気を付けて』
頷きを交わし、船を離れるナイを見送った後。ジェットパックで推力を生みながら、ユディトは船の周囲を歩哨警戒に当たる。
何隻目かの船を見て回っていたユディトは、猟兵達の死角となる位置に砲塔が覗くのを見た。
(「……いましたね」)
注意深く様子を見た後、指先を向け神への祈りを唱える。宇宙の闇を超え、届く神の奇蹟。どこからか飛来した光が戦車を貫き、コックピットに孔を穿つ。
慌てて応戦する戦車を見て、ユディトは短く溜息をつく。
(「さすがに戦車……機械からはオーラを視ることはできませんね」)
幼き頃より、人を視る時はいつも色彩が視えた。人の持つオーラが視えていたなどと、幼いユディトが自覚できるはずもない。
人を見透かすユディトの視線を一部の人々は不気味に思った。誤解、いわれなき誹り。自然と抱く人間不信から彼が解き放たれたのはずっと後、環境の変化と自己受容を経てからの事だ。
今視界に映る、色なき世界を寂しく思わないわけではない。だがユディトのさっき言葉交わした人々はどうか。確かな色持つ彼らを思い、胸のロザリオを提げた辺りを軽く叩く。
(「……全ての敵を倒すまで、気は抜けないですね」)
宇宙空間へ誘導してサルベージ船から距離を取り、ユディトは再び戦車へ指先を向けた。
次第にまばらになる敵襲。敵の勢いにも翳りが見えた。発生源を断つべく一人先行したナイは、方舟から向かってくる戦車を発見する。
『……まずは、擬態して』
ダイウルゴスの彫像から再び複製体を生み、サルベージ船を黒竜の群れで一時覆い隠す。結合を解いた時、いつの間にかサルベージ船は一隻増えていた。
近づいてよく見れば、迷彩によって偽装した黒竜の群れだと判ったかもしれない。宇宙船サイズにまで膨れ上がった群体は、細かく形状を整えた上で体色を船体と同じ鈍色に変えていた。大胆な賭けにも等しい作戦だが、遠目に騙せればこちらのものだ。
『こちらです……ふふ』
船体へ取りつく敵の作戦を逆手に取り、接近したナイは黒竜に次の指令を送る。
念力で動く偽のサルベージ船は、戦車が近づくなり船体の一部を大きく顎の形に開いた。内部に取り込み、牙でかみ砕くように捕食する動き。激しく火花が散り間近でビームが放たれたが、体表近くの黒竜が果敢に戦い取り押さえていく。
一度目撃されては成り立たぬ作戦だが、敵の数が減っている状況が味方した。完全な奇襲を受け、戦車が沈黙するのは時間の問題だった。
敵戦車のまき散らしたナパーム弾が、光に撃たれて四散した。操作性に優れるユディトの力、注意深い観察力、くわえて後手に回った状況。戦車が彼に勝てる道理はなく、本体を貫かれて爆発する。
遠くを見れば、ナイが黒竜を駆り敵船へと向かうのが見えた。
『このまま、敵船まで殴り込みましょうか!』
勢いを得て、堂々と方舟へ向かうダイウルゴスの群れ。召喚した群体をそのまま次の戦いへ活かすつもりのようだ。
『どうやら、彼も快調のようですね』
笑って見送り、別の方角を見れば戻ってくる猟兵達の姿が見えた。手を振って出迎え、一同は再びサルベージ船上で合流する。
『急ぎましょうか。クルーの皆さんの安全を早く、取り戻すためにも』
ユディトを含めた一行が敵の古代兵器の情報を手にし、ナイを追って方舟へ向かうのは間もなくの事だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『葬列の長サイファー』
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POW : 存分に暴れることだ。死の獣よ
【外套に潜む異形が巨大な獣】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 生者よ、恐れたまえよ
【葬列の瞳】に覚醒して【ヴァンパイア】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : これぞ人の淀み。生者よ、贄となれ
自身が装備する【死者の鳥籠】から【召喚した死者の群れ】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【毒】の状態異常を与える。
イラスト:しおみず
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リオ・フェンブロー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大宇宙に浮かぶ、モノリス状の白き方舟。
搬出口からドックを通じて侵入したキミ達は、船内の探索を進める。
障害となるものが現れるより早く、幹部を探し出さなくては。
だが、そのような心配は杞憂に終わった。
天井の高い巨大な通路に、カツカツと冷たい靴音が響く。
現れた白い軍服の男は、ひと目で他のオブリビオンとは格が違うと判った。
この者が伝え聞く猟書家、葬列の長サイファーと見て間違いなかろう。
「お前たちか。私の計画を邪魔してくれたのは」
男の周囲には球状の兵器・オービットが周回し、名の如き衛星として付き従う。
ひと度踏み込めば熱線の嵐で手厚く歓迎してくれるだろう。
「まあいい。有用な兵器の回収も粗方終わったのでな」
ネクロマンサーの男は、用いられるものは何でも用いる主義だと聞く。
死者も兵器も区別なく、彼の前では『利用価値』として使い潰されるのだろう。
「それに」
乱れ飛ぶ熱線が、キミ達の立つ場所の近くを焼く。
「丁度『補充』をしたいと思っていた。出向いてもらえて嬉しいよ」
言葉の意味など、問うまでもなかろう。
この男の邪悪な意思を思えば、まっとうな意味であるはずがないのだ。
護りを固める敵は厄介だ。だがキミ達はクルーの者から聞いている。
かのオービットは確かにこちらの動きを感知して熱線を放つが、
矛先はより脅威度の高い方へ一斉に向く。
誰かが囮を務めるのもありだが、速く動くもの、熱や光を放つもの。
物体や攻撃を脅威と誤認させれば、猟兵が囮にならずに済む可能性すらある。
無論生半可な攻撃では通用しないだろうが、
例えば十二分に全力を籠めて飛び道具を放ち、それを囮とする事ができれば――。
試してみる価値はあるだろう。
軍服の男はマントの内より透いた異形の手を覗かせ、高らかに宣言する。
「では、直接体に聞くとしよう。お前たちが良き材料たりえるのかを」
狂える冷徹。冥府の番人にも似た思想。この者を外に出してはなるまい。
彼の後に広がるのは星々の静寂よりもおぞましき、亡者の王国だけなのだから。
ナイ・デス
補充、ですか
この船を壊して、もっと邪魔しようと思ったのですよ?
でも、壊すのは船が可哀想かなと思ったので
出向いてもらえて、嬉しいです
【勇気】邪悪そうな敵に臆さず、笑顔で同じような台詞を返して
外に残した黒竜の群れを【念動力】で動かし、方舟壊さぬよう掴ませ揺らして【体勢を崩】させようと
できても、できなくても
『ただ速く、もっと速く』
【第六感】で【見切り】避けながら
光を放ち【忍び足推力移動ダッシュ】
オービットや猟書家の攻撃を受けても
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】再生する
再生して、真の姿である「光」
敵が変身していれば苦手そうな、聖者の【浄化】の光そのものとなって一撃
【切断】
その後は囮になり
機があれば次を狙う
冷徹な声と裏腹に、男の眼は眠りの最中にあるように色を持たぬ。それは彼がオブリビオンである事以上に、生来の情の薄さが関与しているように思われた。
「補充、ですか」
男の言葉を反芻するナイ・デス、少年の傍らには先の黒竜の群れの姿はない。
「ホントはこの船を壊して、もっと邪魔しようと思ったのですよ? でも、壊すのは船が可哀想かなと思ったので」
方便でなく、ヤドリガミのナイには本心でもあるのだろう。邪悪な用途に用いられる研究船であっても、使われた物に罪はない。
敵の冷めた視線、態度。そのいずれにも臆せぬ笑顔で、ナイは重圧を押し返すように言い放つ。
「だから……出向いてもらえて、嬉しいです」
言葉の終わりを待たず、方舟が揺れた。ナイが竜を伴っていない理由はここにあった。
船外から渾身の力で揺さぶりをかける、竜の群れ。男は「成程」と短く冷静に受け止めたが、意表を突かれさすがに足元が乱れた。
だが、ナイはどうか。指令を出した者なら衝撃に身構える事もできよう。警戒の留守になった隙をつき、低く姿勢を屈めて一気に駆ける。
オービットより熱線が一斉に注がれた。構わない。避けきれないものが脇腹を掠めたが、振り切るように敵の元へと肉薄する。
(「――ただ速く、もっと速く」)
内へ呼びかける声は木霊となり反響し、ナイの心の奥底に眠る聖者としての姿を呼び覚ます。
「……それが、お前の力か」
葬列の瞳の力を得、死者を引き連れるヴァンパイアとなった男の振るうレイピアの切先。鋭い刺突がナイの喉を掻ききるが、『光』となった彼にそのような攻撃は通用しない。
穢されようと内から出づる光は瞬く間に傷口を塞ぎ、新たな肉体を作り上げる。
光纏う突進がヴァンパイアの身を焼いた。伝承通りなら陽の光を苦手とする吸血鬼、その特性によりサイファーの肌は大きく焼け爛れる。
「既に一度見た。次は通用せぬよ」
事象を見透かす瞳をもって、男は落ち着き払った様子で待ち構える。霊力をもって闇のマントを広げる彼の考えは明白、溢れんばかりの光で焼くなら上回る闇で呑みこむまでだ。
だが、果たしてそれは叶うか。答えは否。男は光の速度を勘案していない。
『たとえ、闇が際限なく濃くても』
空中駆け渡る光は貫く矛の形となり、男の操る闇の一点に収束する。
浄化の光が闇の帳を突き抜けた。音は、しなかった。
敵の腹を突き抜け反対側へと渡る、まばゆい条光。光の筋がようやく消えようという時、はじめてパァン、と忘れられた音が辺りに響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
リオ・ウィンディア
WIZ
いつもの服で身も心もスッキリ
で、あなたがネクロマンサー?ふむ(ライバルを見る目つきで
私はしがない楽士ですが、それなりに死霊の術も扱の
同士討ちを狙ってもいい心算でネクロオーブから死霊を召喚【精神攻撃・恐怖を与える】
状態異常は【浄化】を試みる
死霊の群れの【闇に紛れ】てダガーで交戦しつつ、肉薄し
サイファーに届いたらUC発動と同時に光【属性攻撃・結界術】を展開
死から学ぶものは多いけれど、それは今を生きるため
私が喪服を着るのは悲しみもあるけれども、今を強く生きるため
翼をはためかせて機動力で押す!
ダガーを【早技、2回攻撃】
【読心術・第六感】で不安を煽って隙を狙うわ
死の先に見えるのものは何ですか?
喪に服すような漆黒のドレスの裾が、薄い重力を帯びてスローモーションのように下りる。
着慣れた服の着心地に「やっぱりこれが一番だわ」と、リオ・ウィンディアは人心地ついた表情をした。
「で、あなたがネクロマンサー?」
「そのような名で呼ばれる事も、この世界にあっては稀だが、な」
エルフの少女の挑戦めいた視線を受けても、サイファーは身じろぎだにしない。自身の名や呼ばれ方すらも、男にとっては色褪せて興味を誘わぬのだろう。
「一曲奏でたら踊っていただけて? 私はしがない楽士ですが、それなりに死霊の術も扱うの」
掌にかざした宝珠から霧のように溢れる、無数の幽体。
「ほう。お前も死霊使いか」
サイファーは僅かに興味を示し、鳥籠の蓋を開く。永く孤独に捕われていた死者の群れが、外気と生者の魂を求め押し寄せる。
「手駒としては悪くない。我が葬列に馳せ参じよ」
方舟の廊下の天井までを埋め尽くす、死者同士の激突。中央は潮流の合わせ目の如く無数の魂がひしめき合い、互いの肉体をむしり取って貪る阿鼻叫喚絵図となる。
死者の齎す瘴気は人体には猛毒だ。吸い込みかけた瘴気を亡霊ラムプの光で中和し、リオは自身の喚んだ死霊の群れに紛れ込む。
(「死から学ぶものは多いけれど、それは今を生きるため。私が喪服を着るのだって、今を強く生きるため」)
墓場で歌う小さな歌姫は、何も死の喪失と悲嘆に暮れているわけではない。死を忘るなかれ――誰よりも死に近い場所で黒を纏う理由も、全て生きる原動力と変える前向きなものだ。
闇を伝い、気配を殺し、軽やかな靴音は死霊のせめぎ合いにかき消されて男の耳まで届かぬ。唯一勘付いた小癪なオービットが熱線を浴びせかけたが、それで止まるリオではない。
日頃魔楽器の匣の底に秘めた、精霊の加護宿す刃を振り抜く。そのまま喉を掻き切るかに思われたダガーは、しかしマントの内より伸びる死霊の腕に阻まれた。
「浅知恵が通用すると思ったか」
届かなかった刃にも驚く素振りすら見せず、少女は笑顔でダガーを握り直す。その理由はすぐに知れた。
「浅知恵かしら」
黒い喪服の背から翼が生えた。天使思わす対照的な真白の翼は、纏っていた黒を純白に染め上げていく。
羽ばたき散らす白の羽根、匣の底にあった希望。溢れんばかりの力で翼をはためかせ、ダガー握る彼女の背を深く押し出す。
「死の、先に。見えるものは何ですか?」
振るい、十字架を刻む少女の駆け抜けた後に。猟書家の男は僅かに呻きをあげ、切り裂かれた胸の傷を押さえた。
成功
🔵🔵🔴
メルフローレ・カノン
宇宙空間でなく地面がある状況で有れば
普段どおりに戦えますね。
相手も人型オブリビオンですし……
それでは、全力で行きますよ!
まずは、オービットを退かさなかければなりませんね。
【神の見えざる手】で念動力でビットを阻害です。
高速回転している物体は少し方向転換させるだけで迷走するでしょうし
1個か2個衝突なりビットを同士討ちさせれば機械は混乱するでしょうか。
その間にサイファーに肉薄して私が攻撃です。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
私の得物はメインがメイス、サブが剣です。
[怪力][力溜め]の上で、[2回攻撃][傷口をえぐる]で
敵に実体武器の攻撃をねじ込みます。
サオササ・テセル
淡々といつかと同じ言葉を告げる
戦闘段階・目標―猟書家」
怯える心を持たせ死して尚使い潰す軍勢の主
思う事はないけど死すら生ぬるい虚無を私は知っている
SPD勝負:他挑戦者との同行希望
基本【空中浮遊】【空中戦】【ロープワーク】【地形の利用】【足場習熟】で(敵が攻撃しにくいと予想する)一定距離を取りつつ【念動力】【集団戦術】で子機を使い包囲
自身も【スナイパー】+【各種攻撃技能】で攻撃を展開
【学習力】【情報収集】【戦闘知識】での敵弱点分析
【継戦能力】【援護射撃】【武器改造】【メカニック】【遊撃】での味方への支援も行う
緊急時には【見切り】【第六感】で感知後【ロープワーク】等での離脱を実行
死したる者ゆえか、受けた胸の傷からもさして血は流れぬ。
襟を正し、涼しい顔で立つサイファーの前に、二人分の足音が駆け込んだ。
「やっと地に足をつけて戦えますね……普段どおりが一番、です」
宝石をあしらった白いブーツの踵を鳴らし、メルフローレ・カノンは体が浮かび上がらない事を確かめる。住み慣れた大地より重力は少ないが、これならば何とか踏ん張りも効く。
(「相手も人間の姿のオブリビオンですし」)
相手を侮るわけではなく、単にやりやすさの問題だ。人の姿であっても男の強さは別格だが、機械や異形を相手取るよりは心の平静も保ちやすい。
メイスを握る彼女の隣、サオササ・テセルのバイザーの表面には幾何学模様や数字が浮かぶ。
「分析完了度72%――脅威排除を優先。戦闘段階」
兵器たる少女が如何な感情をもって敵と相対するのか、他の者には分からぬ。
特にこの半年、サオササはスペースシップワールドを狙う猟書家との戦いに明け暮れてばかりだ。何かが彼女を駆り立てているとして、語る為に少女が持つ言葉はあまりにも少ない。
(「怯える心を持たせ、死して尚使い潰す軍勢の主。死すら生ぬるい虚無を、私は知っている」)
無自覚の内、首飾りに指先が触れる。次に響く声には、僅かに人間味ある色が混ざっていた。
「目標――猟書家。共同戦線と、いきましょう」
彼女から聞こえる、意外な言葉。一瞬耳を疑いつつも、修道服の少女は口元を綻ばせる。
「ええ、一緒に。それでは、全力で行きますよ!」
先ほどよりも強く意志の籠もった靴音が、だん、と方舟の床を踏み蹴った。
◇ ◇ ◇
ワイヤーを駆使して接近を試みるサオササへ、オービットの熱線が降り注ぐ。
「……!」
咄嗟に天井の出っ張りにワイヤーをかけて牽引、熱線を躱すが、緊急回避の対価に敵との距離は遠のいてしまった。
(「まずは、オービットを退かさなければなりませんね」)
第一の障害を前に、メルフローレは神に祈りを捧げる。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
再び熱線を放とうとした球体兵器を、ふいに不可視の物体が阻んだ。それは信仰篤き者のみに見える、神の見えざる手。物理的な肉体の檻にて形を得た神性が、回転を続けるオービットをつまみ上げて発射部の方向を操作する。
互いに浴びせかける熱線に二基分の残骸が散らばった。残りも異変を感知して熱線を放つが、熱も光も持たぬ相手ではうまく的が定まらない。
隙に乗じ、サオササが読みづらい軌道で男の元へと迫る。
「ふむ。半機械の少女か。だが心はあるのだろう……怖れを呉れてやろう」
ばさりと翻るマントの内、ヴァンパイアの際限なく昏い瞳が覗く。切り裂かれる――咄嗟に軌道を変えて躱すサオササの判断は正しかった。
彼女のいた空間を貫く血塗られたレイピアに、メルフローレは決意を固める。
「接近戦はどうぞ私に任せて下さい」
片手でメイス、もう片方に剣を握り、修道女とは信じがたい質量の武器を振りかざす。当然だ。メルフローレの育ちは厳しい大地、人を救う為には信仰も武力も必要だった。
誰かが傷つく事で悲しむぐらいなら、盾となり戦え。修行を受け鍛えられてきた成果を、男の剣を弾き、見せつける。
「いい動きをする。さぞや良き贄となろう……喰らうてやれ」
潜ませた死の獣までを放ち、サイファーは外套の奥で葬列の瞳を輝かす。
こちらは二人で攻め入ったというのに、男の手数は一向に減らない。古代兵器の守り、死の獣、そして本体までもがヴァンパイアへと変じた。だがこれだけの力を行使すれば、必ずどこかに歪みが生じる筈なのだ。
ブラスターで応戦しながら敵の動向を探っていたサオササが、敵の行動パターンに気付く。
(「……これは」)
如何に強き者といえど、戦いながら配下に複雑な指令を出せるわけではない。故に、死の獣に下されたのはごく単純な『速く動く者を襲え』という命令のみ。
オービットと同じなら話は早いと、背部に隠し持った武装を高速で射出する。読みは当たった。熱線と獣がそちらに気取られた隙に、メルフローレが肉薄する。
「よく考えた。褒美だ――死を、馳走してやろう」
ヴァンパイアとして立つ彼の、レイピアの切先がギラリと光る。攻防一体の構えを解かせぬ限り、待ち受けるのは串刺しの末路のみ。
「神よ、どうかあと少し……私に世界の敵を討つ力を、お貸しください……!」
祈りは聞き届けられた。細い剣の刀身を弾く、神の殴打。
僅か驚愕に目を見開く男の眼前、轟音を立てて迫るメイスは既に避けられぬものとなっていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
風雷堂・顕吉
【ヴァンパイアハンター】
SPD
ヴァンパイアに対する約100年分の【戦闘知識】を存分に活かして戦ってみせよう。
葬列の長サイファーの「生者よ、恐れたまえよ(SPD)」に対し、ユーベルコード「吸血鬼封じ」で戦う。
「どうしたヴァンパイア。ヴァンパイアハンターと戦うのは初めてか?」
カグヤがエネルギー充填を完了させるまで【時間稼ぎ】を行う。
準備が整ったところで、吸血鬼殺しのパイルバンカーによる【貫通攻撃】でサイファーを【串刺し】にし、即座に距離を取る。
そしてカグヤの「ジャッジメント・クルセイド」を見届ける。
もしもとどめをさせるならヴァンパイアキラーで【浄化】する。
カグヤ・モンデンキント
【ヴァンパイアハンター】
WIZ
ヴァンパイアハンターの手伝いをしますわ。
風雷堂さんが葬列の長サイファーと戦っている間にこっそりと【エネルギー充填】を開始します。
サイファーが串刺しになったところを見計らって、主砲であるユーベルコード「ジャッジメント・クルセイド」を放ちます。
死者の群れとオービットもろとも消し飛ばします。
船ごと破壊したり、他のサルベージ船を巻き込まないように調整するのはちょっと難しいですが、信頼には応えて見せますわ。
槌に殴打された痕を押さえるサイファーへ、畳みかけるように二人の人物が立ちはだかる。
そのうちの一人、他の者を追って現れた男は、色味に乏しい白肌に白き髪を持ち合わせていた。生気に欠けるその風貌は半人半魔を思わせる――例えばそう、ヴァンパイアの血が流れるかのような。
風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)、ダンピールである彼は、吸血鬼殺しの技術に卓越していた。
「これまで数多くを狩ってきたが、成程。この宇宙世界にまで手を伸ばす者がいるとはな」
目の前の男が真にヴァンパイアであるか、力を借りただけかは定かではないが、吸血鬼狩りを自負する顕吉には名を騙った時点で紛れもなく討伐対象だ。
「微力ながら、お手伝いをしますわ。このような血塗られた男、私の愛する星空に相応しくはありません」
並び立つ十二単の女性、カグヤ・モンデンキント(天体娘・f31348)は、感情を悟られぬよう袖に覆い隠された手で口元を隠す。
カグヤもまた人間ではなく、その実体は廃棄された宇宙船。月の子を意味する名の植民艦に宿った魂が人の姿を得たヤドリガミである。
「恐れたまえよ、と言いたいが。動じぬその胆力、二人して長きを生きたのであろうな」
葬列の瞳を呼び覚ますサイファーは、身じろぎもせぬ二人を静かに評した。
「だがそれもここまでだ。以後は死人として歳を重ねるが良い」
爆発的な気を身に纏う猟書家の男にも臆せず、顕吉は腕部に禍々しいパイルバンカーを装着する。
ヴァンパイアの力に覚醒した男と顕吉、互いの距離は瞬く間に縮まった。レイピアの刺突で顕吉を貫かんとした男は、何かを嗅ぎ取り咄嗟に距離を取る。
「どうしたヴァンパイア。ヴァンパイアハンターと戦うのは初めてか?」
顕吉がマントの内より見せた物、魔除けの香草が敵の嫌う香りを立てていた。効き目があると見た彼は地獄の炎に香草をくべ、艦内に魔祓いの香気を充満させる。
ヴァンパイアの力を得たのならば、その特性までを引き継いでも可笑しくはない。
「……貴様」
サイファーが口元を覆いながら斬り結ぶ間、カグヤは動きを気取られぬよう静かに指先に月の魔力を溜める。
戦闘経験の少なさを補うには、不意を衝くのが良い。派手に立ち回る顕吉に内心感謝を告げ、渾身の一撃に備えて光を集中させる。
白木の杭が、腕のアタッチメントより射出された。捉え損ねて舞い戻るパイルバンカーにも落胆せず、顕吉は次なる一撃を見舞う。
「侮るな。たかが杭如きで私を倒せると思うか」
「思ってはいないさ。だから万全を期した」
腿を貫き、足の動きを奪う。そして顕吉は即座に身を退き、道を譲る。
「ありがたいですわ。ちょうど加減が難しいと思っていましたの」
カグヤの指先より迸る、目映き銀の光。天の裁きが猟書家の脇腹に風穴を開けたのを確かめ、顕吉は再び距離を詰める。
「とどめは譲る事になりそう、か。だが、もう一つ手土産くらいはくれてやろう」
懐より取り出したる、風の魔力宿す銀の短剣。振り下ろした刃先は腿の傷口をさばき、男の喉より苦しげな呻きが上がった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユディト・イェシュア
神話では命を運ぶ希望の方舟が…
これでは亡者の葬列です
俺も物のように扱われてきた過去があります
それは利用価値があったということなのでしょうが…
人としての感情と心を喪い
自分が生きているのか死んでいるのかもわからなくなった
だから俺は命を弄ぶ存在が許せない
ようやく人間らしい感情を抱けるようになった
だからこそあなたの企みをここで止める
ホーリースクロールジュエルを投擲し
光を発生させオービットを引き付けます
その間に破魔の力を籠めた浄化の攻撃を
相手の攻撃は武器受けと激痛耐性で耐え
怯むことなく全力で立ち向かいます
死者を冒涜するなど言語道断
そして俺たちは理不尽に抗うことをやめない
それは今を生きている証拠なのだから
腿と脇腹に深く刻まれた傷跡。サイファーは表情を変えぬまま、僅かにたたらを踏んだ。感情の読めぬ男だが、猟兵達の攻撃は確かに効いている。この攻め時を逃がす手はない。
「神話では命を運ぶ希望の方舟が……これでは亡者の葬列です」
命救う筈の方舟が、人々に死を運ぶ皮肉。方舟の用途も男の歪んだ意志も、聖職者たるユディト・イェシュアには認めがたいものだった。
(「俺も、物のように扱われてきた過去があります。それも利用価値があったということなのでしょうが」)
心に受けた傷はおいそれと癒えるものではない。人としての自身を尊重し、疑心暗鬼に陥らず生きられるようになるまで、どれ程の歳月を要したか。
他者も己も等しく愛し、ようやく人間らしい感情を抱けるようになった今だからこそ――許せない行いも出てくるのだ。
「俺は、命を弄ぶ存在が許せない」
「弄ぶとは妙な事を言う。適材適所、こうして丁重に扱い、用いているではないか」
違う、と反駁する代わりに首を振り、見据える。オブリビオンである以上に、この男とは決定的に違う。
「もういいでしょう。交わすべき問答は尽きた。あなたの企みを、ここで止める」
払暁思わせる眩き銀のメイスを手に、ユディトは敵へ向け駆け出した。
男にも最早余裕はない。眼帯をしていない左の瞳に、即刻葬列の輝きを宿す。
「観念したまえよ、生者。贄であれ、材であれ。お前たちの価値など有用かそうでないか、所詮その中でしか語れぬのだ」
圧倒的なヴァンパイアの力を呼び覚まし、青年を迎え撃つ。
駆け行く前方、迎撃の動きを見せたオービットに向かって、ユディトは白い宝石のあしらわれたスクロールを投げ付けた。
紐解かれる巻物の内より、光の柱が現れ機械たちを焼く。熱源の中心に向かってレーザーが交差するように放たれたが、実体のない光の柱を突き抜けて対岸の壁を溶かすのみだ。
持続する光の柱に機械が固執する間に、ユディトはメイスを振りかぶる。
レイピアの細い切先で器用に絡め、受け流す男。研究に没頭するばかりでなく、元々戦いにも秀でていたのだろう。すぐさま襲い来るレイピアの突きを、ユディトは身を捩り辛うじて躱した。
聖職服のさばけた裾が一枚貫かれた。仕返しに男の向う脛を打ち据え、避ける動きを封じた。互いの服を朱に染めながら、聖職者らしからぬ戦いを繰り広げる。
「俺には視えます……あなたの纏う色は宇宙の闇より冷たい、あってはならない色」
多少刺し傷が生まれようと踏ん張って耐え、致命傷だけは回避しながら相手の動きを奪っていく。
「死者を冒涜するなど言語道断。それに、俺たちはあなたの道具になどなりません。こうして理不尽に抗うこと自体、今を生きている証拠なのですから」
胴を庇う姿勢に即座に反応し、人体の要、腰骨を打つ。硬質な手応えが腕を伝う――今ので罅は入れただろう。
痺れたように動きを止める葬列の長。時は満ちた。鉄槌を振り下ろすのは、今。
「いい加減終わりにしましょう。あなたはここで潰えるのです」
頭蓋を打ち砕く一撃。自身の手まで痺れる、鈍い衝撃。如何に強き猟書家の男も満身創痍となっては、武闘派のクレリックに勝る道理はなかった。
●全てを有するもの
倒れ伏した葬列の長は静かに目を閉じ、疲れたため息と共に最期の言葉を吐く。
「解せぬ……ものよ」
同時に操られていた古代兵器も動きを止め、残骸として空しく床に散らばった。
男の体は機械群と共に、宇宙の闇に消えていく。
邪悪な意図で死者を操る者も、人の手に余る禁忌の古代兵器も。
星々の名残、残骸たちの眠る静かな宙域には無用なものだ。
役目を終えた方舟は彼らと同じく、オブリビオンとして消えるのだろうか。
それとも宙域を漂った後、やがては眠る彼らの隣に横たわるのだろうか。
船の行く末を見守るには残念ながら時間が足らないが、
少なくともこの船が邪悪な意図で用いられる事はないだろう。
丸いドーム状の窓の外、広大な宇宙の光景が覗く。
その中にはサルベージ船団の無事な姿もあった。
船に帰還すれば束の間だが、キミ達は命の恩人としてもてはやされる事だろう。
此処で戦いがあった事も、広大な宇宙の中は微々たるものだ。
宇宙は意志を持たぬ。何をも否定せず、在るがままを受け入れる。
サルベージ船内の喧騒も、彼らの人生も、猟兵達の冒険譚も。
全ては大宇宙の懐にあって平等、肯定すべきものだ。
そして皆、抱かれて生きていく――星々の静寂(しじま)に。
大成功
🔵🔵🔵