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荒野に舞い散る無数の塵

#アポカリプスヘル #ストームキャラバン #7/10シナリオ公開

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#アポカリプスヘル
#ストームキャラバン
#7/10シナリオ公開


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●壊滅するストームキャラバン
 アポカリプスヘル。茫漠たる荒野に吹き荒れるオブリビオンストームのまっただ中で、とあるストームキャラバンが絶体絶命の危機に陥っていた。

「デカイ上に数が多すぎるぜ……」
「コイツら、不死身かよ」
「完全に囲まれてる……もう逃げられないぞ!」
「もうダメだ! 俺たちこれでお陀仏だぜ……」
「うわぁあああ! 死にたくないよぉぉ!」

 彼らは総勢100人で構成されるストームブレイドの軍団「サウザンド・トラッシュ」。
 オブリビオン相手でも常勝を誇る彼らは、今日も意気揚々と敵を蹴散らし、大量の戦利品をいただくはずだった。
 ところが、今回は思惑通りにはいかなかった。敵の数が多過ぎたのだ。

 気づいたときには囲まれていた。
 嵐の中から次々と現れる異形の怪物の姿は、100体を優に超えているだろう。
 それでも彼らは怯まずに自慢の偽神兵器や銃火器を駆使して応戦するも、またたく間に劣勢に立たされ、気づいたときには為す術がなくなっていた。
 撤退しようにも360度包囲され、鼠一匹逃げ出す隙間もない。
 乗ってきたバイクやバギーは怪物たちによって破壊されスクラップ同然だった。

「お前ら、うろたえるんじゃないよ。こういうピンチのときこそ冷静に打開策を考えるんだ!」
 リーダーのビアンカは声を張り上げたが、その声は恐慌状態の仲間たちには届かない。彼女の言葉に反応したのは、最年少のシェリルだけだった。
「そうだよ。人生は最後まで諦めちゃダメだ!」
 一人気勢を上げ、シェリルはボロボロのオフロードバイクを跨ると、サイドカーに座るハスキー犬に視線を向ける。
「切り込み隊長のアタシが、突破口を作ってみせる! 行くよ、レイジ」
「姫のなすがままに!」
 レイジの背中には大口径のガトリング砲。シェリルの左手には長柄の戦斧。大群と戦うには心もとない装備だが、それでも二人は気合十分で敵陣に向かっていく。
 ところが、決死の突撃は即座に敵陣に阻まれる。
 四方八方から飛んでくる触手。筋肉で膨れ上がった上腕から繰り出される強烈な打撃。
 地に倒れ伏す大型犬の前で、長身の女性を触手で拘束した怪物たちは、その四肢を無造作に引きちぎり、荒野に絶叫が響き渡る。
 そして、屍となった女の頭部はボールのように投げ返され、ビアンカの足元に転がった。その無慈悲な虐殺を目の当たりにした団員たちは、憤怒の形相で敵を睨む。
「シェリル、すまない。私が不甲斐ないばかりに……こうなったらアイツらに一矢報いてやるよ! みんな、私について来な!」
「うぉぉおぉおお!」
 リーダーの呼びかけに応じて、一同の鬨の声が上がり、勝ち目のない戦いに赴くサウザンド・トラッシュの面々。
 死ぬ前に一体でも多く、アイツらを屠る。そんな悲壮な決意を胸に抱いて彼らは最後まで戦い、荒れ果てた大地に散っていくのだった。

●グリモアベースにて
 グリモア猟兵の紡木原・慄(f32493)は、招集に応じてくれた猟兵たちに頭を下げ、口を開く。
「ストームキャラバンの壊滅を予知したの。皆さんには今すぐアポカリプスヘルに向かっていただきます」
 ストームキャラバン。体内に埋め込んだ偽神細胞でオブリビオン・ストーム喰らい、戦う力に変える「ストームブレイド」のみで構成される凄腕の奪還者たちの集団である。
 彼らは移動する拠点で旅をし、オブリビオン・ストームから出現するオブリビオンを倒して物資を奪うことで生活の糧を得ている。
 当然、オブリビオンとの戦闘は日常茶飯事であり、荒廃した大地での生存戦略に長けた彼らが簡単に壊滅することはありえない。
 つまり、通常なら起こらないアクシデントが発生したというわけである。
「彼らが壊滅させられた原因は、まず出現した敵の数が多すぎたことにあるわ。そして、怪物の群れを統率するボスの存在ね。それから、キャラバンのリーダーの統率力に疑問が残るわね。その結果、想定外の事態に直面した団員たちが冷静さを失い、打開策を見失ったというところかしら……」
 慄は沈鬱な表情で予知の内容から推察される状況を淡々と述べる。
「……というわけで、まずキャラバンに接触して共闘を申し込み、彼らと共にオブリビオン・ストームから発生するオブリビオンを殲滅することが今回の依頼よ」
 アポカリプスヘルでは、猟兵は凄腕の奪還者とみなされている。共闘を申し出れば快く受け入れてくれるだろう。
 キャラバンとの接触後、オブリビオン・ストームの発生までは自由時間となる。
 その時間を使ってキャラバンの面々と積極的に交流し、親睦を深めるのもよいだろう。もちろん、戦いに備えて食事や武器の手入れに時間を使っても構わない。
「ストームキャラバンはオブリビオンと渡り合える希少な奪還者よ。彼らを救うことができれば、今後の戦いで彼らの助力を得られるかもしれない……過酷な戦闘になるとは思いますが、よろしくお願いします」
 慄は神妙な顔で話を終えると、猟兵たちをアポカリプスヘルの荒野へと送り出すのだった。


刈井留羽
 こんにちは。刈井留羽です。ご覧くださってありがとうございます。
 今回のシナリオは、オブリビオンストームを追いかけて移動拠点で旅をする『ストームキャラバン』の全滅を阻止することが目的となります。

 第一章では、猟兵たちのためにキャラバンのメンバーが歓迎の宴を開いてくれます。
 彼らは凄腕の奪還者なので、物資や食糧は潤沢です。気兼ねせずに、飲んだり食べたり遊んだり自由に楽しんでください。
 (注:未成年には紅茶やコーヒーが供されます)
 なお、フラグメントは宴での行動となっていますが、宴に参加せずに自由に行動することも可能です。

●人物紹介(NPC)
 ・リーダーのビアンカ(36)
 人間の女性。酒好き。感情で動くタイプ。
 ・自称切り込み隊長のシェリル(19)
 人間の女性。無鉄砲で負けず嫌い、本能で生きるタイプ。
 ・ハスキー犬のレイジ(年齢不詳)
 賢い動物(♂)。騎士道精神を重んじる。

 ・闇医者のサイモン(45)
 医術に心得のある男性。冷静沈着。キャラバン随一の知性派。普段は戦闘には関わらない。
 ・料理長のハンナ(32)
 料理が上手い女性。気さくで話しやすい。
 ・ガンスミスのハリー(30)
 銃器の製造・修理を担当する男性。
 ・メカニックのラルフ(28)
 偽神兵器や乗物の製造・修理を担当する男性。

 第一章では彼らが交流相手として登場します。プレイングの内容応じて勝手に話しかけてきますが、名前を指定していただけば積極的に交流することも可能です。

●ご連絡
 第一章の断章投稿後、プレイング受付開始。
 第二章以降も断章投稿後の受付となります。受付状況はタグをご確認ください。
 それでは、皆様の血気盛んなプレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『ささやかな宴』

POW   :    料理や酒を楽しむ

SPD   :    皆でゲームを楽しむ

WIZ   :    歌や踊りを楽しむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●宴
 アポカリプスヘルの荒野に降り立った猟兵たちは、早速、ストームキャラバン『サウザンド・トラッシュ』に接触した。
 迎え入れられたのは、複数の大型装甲車が牽引する広大な台車の上に築かれたドーム型テント。
 それは遠くから見ると陸亀の甲羅のような形状をしていることから「トータス・シェル」と呼ばれていた。

 テントの内部は中央が円形のホール。その外周は厚い皮の幕で細かく仕切られ、団員たちの個室になっていた。
 共有スペースとして利用されているホールに通された猟兵たちは、リーダーのビアンカに強敵を大量に出現させるオブリビオン・ストームが近くに発生する旨を伝え、共闘を申し入れる。
 この世界では猟兵たちは凄腕の奪還者として認識されている。各地で活躍する猟兵たちの噂も耳に届いているようだった。
 キャラバンの団員たちへの簡単な意思確認の後、ビアンカは猟兵たちとの共闘を快く受諾する。
「私らはアンタたち歓迎するよ。今宵は歓迎の宴を催そう。戦の前に思う存分食って飲んで楽しんでくれ!」
 リーダーの号令がかかり、ホールで宴の準備が始まる。
 簡素なテーブルと椅子、バーベキューコンロが運び込まれ、キッチンでは料理長のハンナが腕を振るっていた。
 今日はアポカリプスヘルならではの代替肉のバーベキューとワイルドワームカレー(?)が振る舞われるようだ。
 酒好きのリーダーに命じられ、酒瓶も次々と運ばれてくる。日本酒、ワイン、ビールなど酒の種類も豊富なようだった。
「ガンシューセットを持ってきたよ。みんなでやろうよ〜」
 優男風のハリーが荒廃した玩具店から調達したという、VRガンシューティングゲームを設置し始める。
 それはソーラーパネルで発電した貴重な電力を用いるため、宴のときにだけ許可されるゲームだった。
「今夜は騒がしくなりそうですね……私は医務室にいるので、食事はそこに運んできてください」
 闇医者のサイモンは宴に参加するつもりはないらしい。彼は人付き合いが苦手らしく、部屋で読書をして過ごすことが多いようだ。
「よーし、今日は思いっきり歌って踊るよ!」
「カレーの大食いなら負けへんで!」
 切り込み隊長のシェリルはCDラジカセ片手に踊り出す。大食漢のラルフはおかわり自由のカレーが出される宴にテンションが上がっているようだった。

 こうして、終始賑やかな雰囲気で準備が行われ、猟兵たちを歓迎する宴が始まるのだった。
荒珠・檬果
この世界に来るのは二回目で、しかも前回はクリスマスでサンタだったんですよねぇ。
でも、やれることはやりませんと。

ちょっと私に憑依できる人が伝えたいことがあるようなので、闇医者のサイモンさんへ会いに。

他世界の物を持ち込むと危ないです(今回はあまり関係ない気はします)が、この世界の物でできることならば問題はないんですよね。
ですから、『華佗』殿の医術知識を伝えましょう。応用が効くはずですし。『華佗』殿、この世界の現状に心を痛めてまして(他の人ももちろん、心痛めてますが)。
そして、気づけば医術ディスカッションになっていて…?
どうしよう、私の方がついていけません。



 サイモンは医務室の机に向かい、医学書を読み耽っていた。
 彼は元々生物工学の研究者であり、医師ではなかった。
 臨床医学を独学で学び、外科治療の技術を習得したのは、過酷な世界を自分一人で生き抜くためだ。
 医療を行使するのは生活の糧を得るため。医師として患者を救おうという使命感も一切なかった。
 その考えはビアンカたちのキャラバン「サウザンド・トラッシュ」に出会い、医務室を任されるようになって180度変わった。
 
 命を削って過酷な戦いに身を投じ、怪我の絶えない生活を送るストームブレイド。
 大勢の命を預かる立場となった彼は、生来の生真面目さを遺憾なく発揮し、医療の充実に励むになった。
 それはサイモンが長い放浪の旅の末に得た、「自分の居場所」を守るための戦いでもあった。 
 サイモンは憮然とした表情で医学書を閉じ、肩をすくめる。
「この本は役に立ちませんね。潤沢な薬剤と設備が揃っていてこその治療法だ。私が求めているのは、容易に入手できる薬剤と最小限の設備で実現可能な、実用的な医療……」
 課題を整理するかのようにつぶやくサイモンの前に現れたのは、シャーマンズゴーストの荒珠・檬果(f02802)だった。
「客人の方ですね。私に何か御用でしょうか?」
 サイモンは医務室の入口に立ち、話しかける機会を伺っていた檬果に事務的な口調で尋ねる。
「お忙しいところ失礼しますね。お医者のサイモンさんですよね。少しお話があるのですが、お邪魔してもよろしいですか?」
 柔和な笑みを浮かべ、物腰柔らかに尋ねる檬果に怪訝な顔で応じるサイモン。
「私に話とは酔狂な方ですね……わかりました。うかがいましょう」
 サイモンは檬果を医務室に迎え入れると、患者用の椅子に促す。
 椅子に座った檬果は簡単な自己紹介を済ませると、早速本題を切り出す。
「実はお話があるのは私ではないのですよ。それでは華佗殿、お願いします!」
 檬果の求めに応じ、一人の英雄の霊が降りてくる。
 数秒の沈黙の後、檬果の柔和な雰囲気が、厳粛なものへと変化する。
 彼女に憑依したのは、古代中国・後漢時代に神医将と讃えられた名医『華佗』の霊だった。
 檬果を通じてアポカリプスヘルの過酷な現状に心を痛めていた華佗は、この世界の医師に伝えるべき医術があると悟り、降臨したのだった。
「この世はまさに乱世。医師として為すべきことを遂げるには、相応の知識が必要であろう。私がおぬしに、医術の真髄を伝授しようぞ!」
 華佗を憑依させた檬果は威厳たっぷりの口上を述べ、サイモンに向き合う。
 華佗が伝えるのは、この世界でも西洋医学が進歩し定着する前に用いられていた古来の医術だ。
 野に生える草花を採取し、薬として利用する生薬方の基礎知識。
 怪我や病気治療に有効な生薬の種類や、薬効成分を抽出するために生薬を煎じ、保存のために粉末化する応用技術。
 さらには、鍼灸治療の実践的な手法まで、広範な医術が伝授されていく。
「生薬治療、鍼灸…・…東洋医学ですね。特に『麻沸散』は、麻酔の代替としてすぐに活用できるかもしれません。詳しい説明、ありがとうございました」
 講義が終わると、サイモンは興奮したように早口で礼を言った。
 東洋医学は彼が今まで目を向けていなかった分野だった。
 荒野にもまだ野生の草花は残っている。薬効のある植物に着目し有効成分を抽出できれば、様々な治療に応用できるだろう。
 新たな治療法の確立に光明が差したことに気を良くしたサイモンは珍しく饒舌になり、現在自分が研究中の医術について語りだす。
 華佗も若き医師の話にしばらく相槌を打っていたが、現代医学の専門用語をふんだんに使って話すサイモンに唖然とし、檬果の体からスーッと退散してしまう。
 そんなことは露知らず、サイモンは嬉々として一人でディスカッションを続ける。
「……というわけで細胞にアポトーシスが起こり……それから、食作用により……偽神細胞が……」
(アポトーシスとは何ですか? 食作用? どうしましょう。今度は私のほうがついていけません)
 檬果はサイモンに暇を告げる機会を完全に逃してしまっていた。
 彼女は専門用語のオンパレードに目を回しながらも、小一時間ほど、サイモンの話を聞き続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
悲劇は…起こさせない、絶対に

交流相手:同世代のシェリルさんが一番話しやすそうかな?他の方とも交流は大歓迎だけど

共闘するなら打ち解けておくのは連携を取るうえで大事な事
人柄も互いに知っておくといいだろうしね
食事は遠慮なくいただくよ!【大食い】が発動しそうだ!

交流しながらメインで戦闘を行うだろうシェリルさん達の人柄を把握しておこう
俺はどちらかというと人をフォローするのが好きな方だから、合わせる事は出来ると思うが、どういう人なのかは事前にわかっていた方がいい

今までの武勇伝なんかを聞いてみるのもいいのかな?
俺はお酒は弱いのでお酒以外を飲もう、シェリルさんは未成年だからちょうど良さそうかな?



 宴で賑わう大ホール。テーブル席の一角で、鳳凰院・ひりょ(f27864)は先割れスプーンを握り、皿の上をじっと見ていた。
 ワイルドワームカレー。名前でいろいろ察せられる名物料理がそこにあった。
 普通のカレーライスの上に、大きな芋虫のような形をしたフリットが3つ乗っている。女子なら逃げ出すようなワイルドな絵面の料理だった。 
「これ、やっぱりアレだよね……」
 食欲をそそるカレーの匂い。問題のフリットは仄かにガーリックの匂いがしているが、見た目は完全にアレだ。
 たとえこれがアレだとしても、せっかく出してもらった食べ物を残すわけにはいかない。
 ひりょは意を決してフリットを先割れスプーンで突き刺し、頭からカブリと齧る。
 半分残されたフリットの断面から黄色味がかかった液体がドロリとこぼれ落ち、ひりょは目を見開いた。
(これは!)
 口内の物体を咀嚼して飲み込み、断面を確認する。
 それは芋虫ではなく、ガーリックパウダーと塩コショウで程よく味付けされた代替肉でチーズを包んだものだった。
「美味しいけど……なんでこの形をしてるんだろう……」
 残りのフリットを食べながら素朴な疑問がこぼれる。すると、ちょうどそばを通りかかった長身の女が口を開いた。
「昔は本物のワイルドワームを使ってたんだよ。でもキャラバンが軌道に乗って、ハンナさんが今さら芋虫を食べる必要はないよねって、美味しくアレンジしたの。アタシは昔のも好きだったんだけどね!」
 女はシェリルと名乗り、人懐っこそうな目で初対面の青年を見つめる。
 ひりょも自己紹介すると、シェリルは彼にカレーも食べるように促す。
「美味しいでしょ? このカレーいくらでも食べられるよね!」
「はい、すごく美味しいです」
 同意するひりょにシェリルは口元を緩める。
「よし! キミ、大食いタッグマッチに出てみない? アタシ、舐めプ男のラルフに一泡吹かせてやりたいんだ!」
「むぐ?」 
 ひりょはカレーを頬張りながら首をかしげたが、シェリルはそのまま強引に話を進めるのだった。

 荒野はすっかり夜気に包まれ、空には満点の星が瞬いている。
 移動拠点「トータス・シェル」の外周を取り巻くテラスに設置されたテーブル席で、ひりょとシェリルは祝杯を上げていた。
「ありがとね。ひりょくんのおかげで大勝利だったよ。アタシ、あれ以上食べられなかったからさ」
「いえ、俺のほうこそ10皿が限界でしたよ。半分はシェリルさんのおかげです」
「ふふっ、じゃあ二人の大勝利だね。二人の勝利を祝してカンパーイ!」
 ノンアルコールの炭酸飲料が注がれたグラスを掲げるシェリル。ひりょも自分のグラスを差し出し、軽く当てる。
「ラルフも思い知ったみたいだし、次は相方を変えるだろうね。ふふっ、次の宴はもっと楽しくなりそうだなぁ」
 大食いタッグマッチ。二人一組で参加し、30分間でカレーライスをどれだけ多く食べられるかを競う大食い大会だ。
 これまではメカニックのラルフの独壇場だった。相方はいつもキャラバンで最も少食な男・ハリーだ。
 要するに「舐めプ」しても勝てるということである。シェリルはそれに納得がいかず、一度は苦杯をなめさせてやりたかったのだという。
 そして、今回の大会でひりょとシェリルは10皿ずつ食べ、一人で18皿をたいらげたラルフと1皿でギブアップしたハリーのチームに勝利したのだった。

 大食い大会を経て二人はすっかり打ち解け、シェリルはキャラバンの人々について嬉々として語りだす。
 話の内容は他愛のないものだったが、彼女がキャラバンの人々を本当の家族のように思っているのが伝わってくる。
 しかし、ひりょがこれまでの武勇伝について尋ねると、彼女は表情を曇らせた。
「武勇伝かぁ……ゴメン。アタシ、そういうのはないんだ。いつも必死に戦って、なんとか勝って、生き残れてよかったなって思って、それ以上は考えないようにしてるから……」
「考えないように……してる?」
「うん……アタシは今でも戦いに出るのが怖いんだ……だけど、家族を失うほうがもっと怖い。だから、アタシはみんなを絶対に死なせないために戦い続けるんだ!」
 シェリルは数年前、オブリビオン・ストームから現れたゾンビの襲撃によって家族を失ったという。
 そのときにサウザンド・トラッシュに救われた彼女はキャラバンの一員としてオブリビオンと戦う生き方を選ぶ。
 シェリルはこのキャラバンで思春期を過ごし、成長した。キャラバンのみんなは自分が寂しいとき、辛いときに支えてくれた大切な家族。家族をもう失いたくない。彼女が「切り込み隊長」を名乗って前線で戦うのは、その思いの強さ故のことなのだろう。
 シェリルの身の上話を聞き終えたひりょは、テーブルの下で拳を強く握る。
(悲劇は……起こさせない。絶対に!)
 グリモア猟兵の予知ではシェリルは仲間に先んじて敵の群れに突っ込み、最初に虐殺される運命にあった。その直後に彼女の大切な家族たちも無残に玉砕する。
 そんな悲劇は起こさせない。そのために俺たちはここに来たんだ。
 ひりょは強い使命感を胸に秘め、オブリビオンとの戦いに臨むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコリス・ガレシア
元気いっぱいで心優しき旅人の少女。困った人は見逃せない性格。
戦闘時はクールな鬼(ただし、酒好きなので酒を前にすると表情豊かに饒舌になる)の人格に切り替わる。

白い帽子が風で飛ばないように手で抑えながら、いっぱいの料理に目を輝かせる
「美味しそう!」「その土地の名物を食べられるのは、旅の醍醐味なのです!」
酒が近くにあると、体の内に潜む鬼の少女が話しかけてきます。
(主よ。少しくらいなら)「ダメなのです。わたしの体はまだ未成年なのですよ」(むぅ……)
酒好きな少女との話を打ち切り、キャラバンの人達と交流します。
もし、戦えるのか心配されたら、自信たっぷりに胸を張り
「大丈夫なのです!わたし達に任せるのです!」



 どこまでも続く荒野。太陽はすっかり西に傾き、空は燃えるような茜色に染まっていた。
 移動拠点「トータス・シェル」の外周に設けられたテラスに佇み、ドーム型テント内で宴の準備が終わるのを待っていたリコリス・ガレシア(f28348)は、風で飛ばされそうな白い帽子を手で押さえながら美しい景色を堪能する。
 こうした一期一会の風景を見れられるのも旅の醍醐味なのだ。
 黄昏時の穏やかな時間が流れ、香ばしい匂いが漂ってくる。
 宴の準備ができたらしい。リコリスはテラスに面した窓から宴の会場のホールをのぞき見て、目を輝かせる。
「美味しそう!」
 テーブルの上にはたくさんのご馳走が並び、横一列に並べられた3台のバーベキューコンロの前には大勢の人だかりができている。
 どんな料理が食べられるのだろう。リコリスは好奇心に胸をときめかせ、宴の喧騒の中へと足を踏み入れる。

 ジュージューと肉が焼ける音。食欲をそそるBBQソースの匂い。
 バーベキューコンロの上に並んでいるのは、円形の肉が三つずつ刺さった串焼きだった。
 それは一見して本物の肉にしか見えないが、大豆粉を主原料とする「代替肉」と呼ばれるものだ。
 アポカリプスヘルでは畜産業が壊滅状態にあり、天然物の肉を入手するのは容易ではない。
 その一方で、大豆粉は港湾の倉庫に備蓄されていることが多く、奪還者なら比較的入手しやすい食材だった。
「食べてごらん。下ごしらえに手間暇かけてるから、本物と遜色がないくらい美味しいはずよ」
 料理長のハンナが焼きたての串焼きを自信満々に差し出す。
 リコリスはお礼を言って受け取るとさっそく一口食べてみる。
「わぁ……すごく美味しいのです!」
 リコリスは思わず感嘆の声を上げる。
 代替肉は本物の肉のようにしっとりとしていて適度に歯ごたえがある。
 噛むたびに肉汁のような旨味のある液体スープが染み出し、肉を包み込むBBQソースは香辛料が控えめでフルーティな味わいだった。
「ありがとね。そんなに喜んでもらえると料理人として嬉しいよ。もっと食べるかい?」
 ハンナはニコニコ顔で料理を食べるリコリスを気に入ったようで、串焼きをもう一つ差し出すのだった。

「代替肉の串焼き、美味しかったなぁ。その土地の名物を食べられるのは、旅の醍醐味なのです」
 旅の楽しみを再認識し、次なる料理を探して周囲を見回すリコリス。
 すると、テーブル席で酒を飲んでいたリーダーのビアンカがよく通る声を張り上げる。
「串焼き二本追加で頼むよ! ワインも一瓶、持ってきてくれ!」
 しかし、周囲には給仕を担当する者はおらず、ハンナも手がふさがっているようだった。
「リコリスちゃん、悪いけど、これリーダーに持っていってくれる?」
 ハンナは串焼きの皿とワインの瓶を載せたトレイを、リコリスに差し出す。
「はい、わかりました。お給仕するのです!」
 リコリスは快く了承してトレイを受け取る。
 すると、彼女の内に潜む「鬼の少女」が目覚める。眼前に大好きなお酒を差し出されて我慢できなくなったのだ。
(主よ。少しくらいなら……)
「ダメなのです。わたしの体はまだ未成年なのですよ」
(むぅ……)
 リコリスは酒好きの少女を正論でたしなめると、ニッコリと微笑んでビアンカに給仕する。
「客人なのに悪いね。ハンナは人使いが荒いんだよ。でもアンタ、ずいぶん若いみたいだけど本当に戦えるのかい?」
 ビアンカは戦いとは無縁そうなリコリスを心配しているらしい。
「大丈夫なのです! わたし達に任せるのです!」
 リコリスは自信たっぷりに胸を張る。
 彼女には「鬼の少女」を初め、三人の頼もしい仲間がいる。戦闘に対する不安などないのだ。
 だが、自信の理由を知らないビアンカは、おかしな解釈をしてしまう。
「そっかぁ。若いのに健気に頑張ってるんだなぁ。お姉さん、ギュッとしちゃう!」
「わわっ、突然、どうしたのですか!?」
 突然、抱きつかれて戸惑うリコリス。ハンナが慌てて駆け寄ってくる。
「ごめんね。リーダーは酔うと『抱きつき魔』になるの。ほらリーダー、リコリスちゃんが困ってるから離れてください!」
「やだぁ。この子、健気で可愛いからお姉さんが抱きしめてあげるのぉ」
 完全に駄々っ子だった。周囲に人だかりができ、ビアンカは結局三人がかりでリコリスから引き剥がされる。
 ようやく解放されたリコリスは、ホッと胸をなでおろす。
 周囲にはキャラバンの人々が集まってきていた。酔っぱらいに絡まれた「犠牲者」に謝罪といたわりの言葉をかけるためだ。
 リコリスは次々に声をかけてくる優しい人々に笑顔で応じ、一人ひとり丁寧に言葉を交わしていく。
 そして、宴がお開きになるころには、リコリスはキャラバンの一員のように馴染んでいるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「キャラバンなら、問題なくこの子で参加できますものね、うふふ」
改造したケータリングカー撫で

「今回の奪還行に参加させていただく御園桜花と申します。よろしくお願いします」
「私も食材を提供します。楽しい宴にしましょう」
寸胴鍋で大量にポトフ作り振る舞う

ある程度皆が打ち解けお腹も膨らんだ辺りでUC「花見御膳」使用
精神安定作用のあるココア配りながら聴取
「ところで、此方は随分大所帯ですけれど。小隊毎のリーダーはいらっしゃるのですか?」
「百人規模だと、分離行動も分断された時の対処方法も予め決めておいた方が安全だと思うのです。リーダー不在時のサブリーダーや小隊毎のリーダーが居る方が安全性が高まると思うのですが」



「今回の奪還行に参加させていただく御園桜花と申します。よろしくお願いします」
 パーラーメイドの御園・桜花(f23155)は、宴の料理を取り仕切る料理長のハンナに丁重に挨拶し、宴の会場となる巨大ドーム型テントの中にケータリングカーを収容してもらう。
 宴の料理を提供したい。桜花の申し出はキャラバンの皆に歓迎され、そのままお店を開けるように取りはからってもらえたのだ。
 そして、宴の会場となる大ホールの端にケータリングカーを停車させた桜花はキッチンに立ち、仕込みを始める。
 じゃがいも、キャベツ、人参、玉ねぎ、ブロッコリー。ビタミン豊富な野菜をたっぷり入れてつくる優しい味のポトフ。
 大所帯のキャラバンの全員に行き渡るように大きな寸胴鍋を持参し、準備万端だ。
 桜花は軽快な包丁さばきで具材を適度な大きさに切り、寸胴鍋に投入すると水とコンソメを入れて煮込む。
 シンプルな料理だが、具材の旨味を少しずつ抽出するために火加減を調節し、丁寧に時間をかけてつくる。
 そして、桜花のポトフが完成したとき、料理長のハンナがあらわれる。
「進捗はいかがです?」
「お味見をお願いできますか? 皆さんのお口に合えばいいのですが……」
 桜花は持参した食器に出来たてのポトフを盛り付け、ハンナに手渡す。
 ハンナは色鮮やかな野菜たっぷり入ったポトフに目を丸くした。
「お野菜がこんなに……本当に助かります。最近は新鮮な野菜がほとんど手に入らないので……」
 アポカリプスヘルではオブリビオン・ストームの影響で農業が壊滅的な打撃を受けていた。
 被害を受けていない農場も多少は残っているが、生鮮野菜の価値は高騰している。
 奪還者として荒稼ぎする彼らも頻繁に新鮮な野菜を食べられるわけではなく、ビタミン不足にも陥りやすかった。
 桜花がポトフを選んだのもそうした気遣いなのだろう。
 そして、ハンナはスプーンでスープを掬い、口の中に入れる。しばし目をつぶり、ため息が漏れる。
「あぁ、美味しい……すごく懐かしい味……子供の頃、母が作ってくれたポトフを思い出します……」
 平穏だった頃の思い出を懐かしむように遠くを見つめ、ハンナは瞳に涙を浮かべながらポトフを口に運んでいく。
「ごちそうさまでした。このポトフなら、みんな喜ぶと思います。宴はもうすぐ始まりますので、よろしくお願いします」
「はい、楽しい宴にしましょう」
 こうして桜花の出張パーラーは開店し、いよいよ宴が開幕する。

 桜花のパーラーは最初こそ客足は少なかったものの、美味しくて郷愁を誘うポトフが評判を呼び、やがてケータリングカーの前には長蛇の列ができる。
「おい、俺が先だぞ。割り込みすんな!」
「お前二杯目だろ。一杯目の人を優先するのが筋だろうが!」
 順番を巡って時折小競り合いが起こるも、桜花のポトフを食べれば心も体も温まり、皆がホッとした表情に変わる。
 喧嘩していた男たちもすぐ表情が緩み、ポトフを仲良く食べ始める。
 桜花はキャラバンの人々がポトフを食べて顔をほころばせる光景を満足げに眺める。
「ありがとう。うまかったぜ!」
 ポトフを食べ終えたキャラバンの面々は、桜花の元にやってきては二言三言、声をかけていく。
 そして、ポトフは小一時間ほどで底をつき、桜花のパーラーは大盛況のまま閉店となった。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
 お客様に感謝の言葉を告げる桜花は満ち足りた表情をしていた。

 さて、営業時間が終わった後は、猟兵のお仕事の時間だ。
 桜花は食後のココアを集まった人たちに振る舞いながら、さりげなく聞き取り調査を行い、キャラバンの問題点を浮き彫りにしていく。
「ところで、此方は随分大所帯ですけれど、小隊毎のリーダーはいらっしゃるのですか?」
「リーダーは一人だけだろ。何人も決める必要があるのか?」
「俺ら軍人じゃねぇから、小隊を組むとかチマチマしたことはしねーよ」
「みんなバラバラに戦ってるな。仲間と連携して戦ってる奴もいるけどな」
 驚くべきことに、サウザンド・トラッシュの面々は戦略的な戦い方を全くしていなかった。戦場ではメンバーの自己判断に任せ、必要に応じてリーダーが号令をかけて共闘する程度だった。
 精鋭のストームブレイドで構成され、曲者揃いの集団では、規律で縛らずに個人の判断で思う存分戦わせたほうが、実力を発揮できる。サウザンド・トラッシュの面々は、リーダーのビアンカを初め、そんな考えが根底にあるようだった。
(このままでは予知の通りになってしまいます……)
 危機感に駆られた桜花は、ほろ酔い加減のビアンカのところに赴くと、今回の戦いの過酷さを説き、小隊単位で動くことを提案する。
「百人規模の集団となると、戦場では個々で動くよりも常に10人程度の小隊で動き、分離行動も分断された時の対処方法も予め決めておいた方が安全だと思うのです。それから、リーダー不在時のサブリーダーや小隊毎のリーダーがいる方が安全性が高まると思うのですが……」
 桜花の提言を受けたビアンカは真剣な目になり、手元にあったコップの水を頭からかぶって酔いを覚ます。
「私もわかってはいたんだけどね。このままじゃ危ないってさ……アンタ、これから一緒に来てくれるかい? これから作戦会議を開くから」
 サウザンド・トラッシュの酔いどれリーダーはようやく重い腰を上げる。
 そして、作戦会議には桜花とともに多くの猟兵たちがアドバイザーとして参加し、急造の小隊がつくられ、策が練られるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
依頼内容はオブリビオンの殲滅。了解。

なんだか「キャラバンを護れ」って声が聞こえた気が
しますけれど、気のせいでしょう。たぶん。
それですと、キャラバンの方を追い払うのが手っ取り早く
なってしまいますしね。

共闘も、別に必要ないのですが。
急場に慌てさせてもなんですし、丁重に名乗っておきましょう。
キャバリア傭兵、ノエル・カンナビスです。よしなに。

後はコンバットキャリアの横に椅子を置いてのんびりします。
作戦前に慣れないものを食べて体調を崩しても困ります。
強敵の大群が来ますのに、お酒入れちゃってまぁ……。

整備台で寝ているエイストラは、上体を起こして周辺警戒。
別段、統合センサーが頭部にあるわけでもありませんが。



 ストーム・キャラバンは目的のポイントに到着し、野営地をつくる。
 「トータス・シェル」と呼ばれる移動式のドーム型テントでは、大勢の人間が宴を楽しんでいることだろう。
 一方、そこから少し離れた野営地の片隅には、キャバリア整備台を積んだ戦闘車両『コンバットキャバリア』が停まり、キャバリア猟兵のノエル・カンナビス(f33081)が一人、戦いの時を待っていた。
(依頼内容はオブリビオンの殲滅……了解)
 ノエルは脳内で依頼内容を確認しつつ、コンバットキャバリアの隣に置いた椅子に腰掛け、荒野の上空に広がる星空を眺める。雲ひとつない空に散りばめられた光の粒が緑色の瞳に映り、瞬く。
(そろそろ栄養補給でもしましょうか)
 ノエルは袋から食べ物を取り出し、食事の用意を始める。
 今日のメニューは戦場での栄養補給に適した軍事糧食。加熱せずに食べられる缶詰とレトルト食品、密閉包装されたパンがパッケージングされた食品だ。それをノエルは淡々と食していく。
(作戦前に慣れないものを食べて体調を崩しても困ります)
 他の猟兵たちはキャラバンの宴に参加し、そこで食事をしている。だが、ノエルは体調管理を優先させ、マイペースに作戦前のルーティーンをこなすことにしたようだった。
 そして、食事を終えたノエルは椅子の背もたれに体を預け、コンバットキャバリアの整備台の上に寝ている「エイストラ」を見上げる。
 すると、エイストラは上体を起こし、荒野に視線を向けた。それはだだの「警戒のポーズ」に過ぎなかったが、ノエルは遠隔操作でエイストラの統合センサーシステムを作動させ、抜け目なく周辺を警戒していた。
(誰か来ます……)
 センサーが捉えた微かな音をノエルは受信し、暗闇の中に意識を集中する。
 ほどなくして暗闇から現れた人影はキャラバンのリーダーのビアンカだった。
 彼女は酔い覚ましに夜の散歩をしていたようだが、明かりに気づいてやって来たのだ。
「……ん? アンタ、誰だ?」
「キャバリア傭兵、ノエル・カンナビスです。よしなに」
 ノエルは会釈をし、丁重な挨拶を済ませる。
「なんだ、客人だったのか。私はビアンカ、一応、このキャラバンのリーダーをしている……」
 ビアンカが声を発するたびにアルコールの匂いが漂う。ノエルは無表情で彼女を見つめる。
(強敵の大群が来ますのに、お酒入れちゃってまぁ……)
「ああ、酒くさいよね。ごめんね。自分でもわかってるさ、大事な戦闘の前に深酒なんて馬鹿のすることだって……」
 ビアンカはノエルの冷たい視線を苦笑いで受け流し、一人で話し続ける。
「私もリーダーの器じゃないってわかってるんだ。最初は小さいチームだった。私と数人だけのその日暮しの共同体さ。だけど今はこんなに大所帯になって、手に負えなくなっちまった……私、視野が狭いし、我が強い連中をまとめていくなんて、到底無理なのさ……」
「……」
 ノエルは表情を全く変えずに無言でぼんやりと空を見上げている。相手の話を聞いているのか、聞いていないのかすらわからない。
 それでもビアンカは話し続け、やがてすっきりしたように笑顔を見せる。
「ありがとね。話を聞いてくれて……戦いに備えてそろそろ寝るよ。おやすみ……」
「……」
 ビアンカを無言で見送ったノエルは一つため息をつき、椅子に座って再び星空を眺める。
 そして、宴がお開きになり、ようやく訪れた静寂の中でノエルはのんびりと過ごし、戦闘に備えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『改造屍人『インテグラルアーム』』

POW   :    暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD   :    マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オブリビオン・ストーム発生
荒れ果てた大地に夜明けが訪れる。
曙光が地平線を輝かせ、東の空に太陽が昇り始めた頃、穏やかだった大気の流れが一変する。
 ストームキャラバンの野営地の前方、3km付近を中心に突如発生した暗黒の竜巻。
 荒野に強風が吹き荒れ、土埃が舞い上がる。
 その直後、野営地の特殊車両から警報音が鳴り響いた。
 レーダーがオブリビオン・ストームの発生をキャッチしたのだ。

――オブリビオン・ストーム発生! オブリビオン・ストーム発生!

 警報を受け、戦闘に備えて休息を取っていた猟兵たちとサウザンド・トラッシュの面々は、即座に臨戦態勢を整える。
「私も同行しましょう。後学のためにこの方たちの戦闘を見ておきたいのでね」
 闇医者のサイモンが珍しく同行を申し出る。彼は予知では戦闘に参加せず、死を免れたメンバーの一人だった。
 専ら後方支援を請け負うサイモンだが、戦場でも沈着冷静で戦闘力は他のメンバーにも劣ることはない。
 彼がいれば戦場で負傷者が出ても即座に対処できるだろう。
 猟兵たちの介入により、サウザンド・トラッシュの未来は着実に変わっているのだった。

●ヒトだったモノの群れ
 オブリビオン・ストームから次々に出現する黒い大きな影。
 それはヒトの形をしていたが、ヒトとはかけ離れた存在だった。
 
 筋肉細胞が異常増殖し、膨れ上がった肢体は鉛色に変色していた。
 頭髪も皮膚もなく、眼窩に嵌った眼球は剥き出しになり、残忍な光を放っている。
 触手化した右腕は幾重にも絡み合いながら上腕部を形成し、前腕部の触手を鞭のように振り回す。

 人間の殺意と悪意が凝縮されたようなおぞましき怪物は、狂気の科学者たちによって創り出された改造ゾンビだ。
 倫理観も人間性も捨て去った科学者たちを惨殺し自由を得た憐れな屍人の群れは、地響きのような唸り声を上げながら新たな獲物を求め、荒野を進軍するのだった。

●補足情報
【戦場】
 第二章・第三章はオブリビオン・ストームが吹き荒れる荒野が戦場です。
 暗黒の竜巻の影響で上空では乱気流が生じているので、上空からの攻撃は不可能でしょう。

【オブリビオン】
 出現する改造ゾンビの数はおよそ200体。身長は2メートル。防御力も高く、残忍で痛覚もない手強い相手です。

【共闘】
 第二章・第三章は、ストームキャラバン「サウザンド・トラッシュ」のメンバーと共闘することになります。
 彼らは威力の高い「偽神兵器」を振るい、オブリビオン相手の戦闘でも役に立ってくれますが、死者を出さないために気遣ってあげる必要があるかもしれません。
 共闘に関して何も指定がなければ、各猟兵の近くにいる無名NPCが率いる小隊が邪魔にならない程度に援護します。

【サウザンド・トラッシュについて】
 総勢100人から成るストームキャラバンです。
 猟兵たちの助言により、今回の戦闘では10人程度の小隊を編成し、それぞれの小隊に1人ずつリーダーを置くことにしたようです。
 これにより、戦力を分断されにくくなり、組織的な動きも可能となりました。
 
 彼らは猟兵たちに一目置いているので、指示を出せば小隊単位で従ってくれます。
 装備は近接戦闘用の偽神兵器と後方支援用のアサルトライフル。偽神兵器は棍棒、槍、戦斧などの形状をしています。

【NPCの支援】
 以下のNPCはそれぞれ得意分野を持っています。指定すれば必要に応じて支援を受けられます。

・ビアンカ
 すべての小隊長に連絡できる無線機を持っています。人望はあるので、連絡係としては有能です。
・シェリル
 小隊長を任せられています。相棒のレイジが常にガトリング砲で援護します。
 キャラバンのムードメーカーなので、仲間を鼓舞して士気を上げることができます。
・サイモン
 解毒剤(麻痺毒も治療可)、鎮痛剤、麻酔薬などの薬剤を携帯し、薬剤を注入するダート(注射筒)を打ち出す特殊な銃を装備しています。
・ハンナ
 お腹が空いたら携帯食を振る舞ってくれます。
・ハリー
 後方から仲間とともに煙幕弾、催涙弾、グレネード弾などの特殊弾を放ってくれます。
・ラルフ
 後方支援用の大型車両に乗っており、壊れた乗物を修理してくれます。
 必要ならバイクやバギーを貸してもらえます。

◎補足は以上です。途中参加も大歓迎です。第二章もよろしくお願いします!
ノエル・カンナビス
空から来られたら厄介でしたが……飛べないんですか。

身長が三倍になってようやく対等、キャバリアに麻痺毒を
吐いても意味がない、というのも大穴ですけれど。
触手にしても、狙って放ったのでは無駄なんですよ。
戦う前から勝負付いちゃってません?

とりあえず敵の真正面、キャラバンから離れて先制攻撃/指定UC。

あとは貫通攻撃/なぎ払い/プラズマライフルの連射だけで
大概吹き飛びますが……念を入れてキャノンも一斉発射し、
範囲攻撃/鎧無視攻撃で粉砕しましょう。

貫通粒子ビームと範囲粒子ビームを同時に重連射、というのも
滅多に出来ない芸です。正面から来る敵は軽々蒸発しますね。
なんなら半径数㎞くらいは粉砕できると思いますよ。



 オブリビオン・ストームをレーダーでキャッチし、暗黒の竜巻の発生ポイント付近に駆けつけた猟兵たちとキャラバンの面々は、異様な光景を目の当たりにする。
 暗黒竜巻から発生した『改造屍人・インテグラルアーム』の群れがまるで騎士団のように密集陣形を組み、少しずつ前進してくるのだ。
「なんだありゃ? ゾンビが隊列を組んで歩いてきやがる」
 野生のゾンビではありえない統率がとれた動き。その違和感にストームブレイドたちに動揺が走る。
「あれは、なんとか分断しないと戦いにくいぞ……」
 誰かからそんな声が上がったとき、いち早く動いたのはノエル・カンナビス(f33081)の搭乗する「エイストラ」だった。
 彼女はその声を聞いて動いたのではないのだろう。
 しかし、一同の目には先陣を切って敵の群れに単機で突撃するノエルの姿が、戦端を開く嚆矢のように映っていた。
「客人に続け! 俺たちの力を見せてやるぜ!」
「うぉおおおおお!」
 キャラバンの血気盛んな男たちから鬨の声が上がり、猟兵たちとストームキャラバン「サウザンド・トラッシュ」の連合軍が進軍を開始する。

 先行するノエルは、突然、背後から上がった声に小首をかしげながらも、敵陣を見据える。
(任務はオブリビオンの殲滅……任務を遂行します)
 目標は敵陣のど真ん中。ノエルはフットペダルを踏み込み、エイストラを加速させる。
 その刹那、敵陣の両翼が不自然に膨らみ、中央の屍人三体がガードの体勢のまま大地を踏みしめる。
(エイストラの攻撃を受け止める気ですか……甘すぎです)
 さらに加速したノエルの機体は中央の屍人三体に近接し、右腕のビームブレイドでまとめて薙ぎ払う。
 光の刃に両断された三つの首が吹き飛び、断末魔の悲鳴を上げる暇もなく、三体の屍人が霧散する。
 障害物を排除したノエルはそのままエイストラを直進させ、敵の群れへと突っ込んでいくも、そこには敵がいなかった。
(これは一体……)
 見ると、密集陣形が崩れ、ノエルのエイストラはポッカリと空いた空間の中央に導かれていた。
 周囲には右腕の触手を威嚇するようにうねらせる屍人の群れ。敵は巨大な機体で突っ込んでくるノエルに包囲攻撃を仕掛けるべく、素早く隊列を変えたのだ。
 三体の屍人を犠牲にして注意を引きつけ、その間に陣形の両翼を開き、敵を迎え撃つための空間をつくる。容赦のない決断と、統制の取れた行動は異様なほど迅速で、練度の高い軍隊そのものだった。
 ノエルは粗野な怪物たちの想定外の戦術に、眉を僅かに動かす。
(所詮、小手先の戦術です……包囲しても攻撃が当たらなければ意味がありませんよ……)
 ノエルはモニターに映る屍人の群れを冷ややかに見つめながら、ユーベルコード【フォックストロット】を発動し、知覚を加速させる。 
 包囲しても攻撃を当たらなければ意味がない。
 その言葉どおりにノエルはリンケージヘッドによって同期したエイストラの機体を、自らの手足のように繊細に動かし、ダンスのステップを踏むように敵の攻撃を回避していく。
 対する屍人の群れは統制のとれた攻撃でその動きを封じようとする。
 細かくタイミングをずらし、四方八方から触手を放つ攻撃は不規則かつ複雑だ。
 伸縮自在の触手は攻撃範囲もわかりにくく、すべて避けるのは至難の業。
 だが、ノエルはその攻撃をすべて予測してことごとく回避し、反撃にプラズマライフルのトリガーを引く。
 高密度の粒子ビームが正面にいた二体の屍人の胴を貫くと、即座に機体を反転させて背後から迫る触手の束をビームブレイドで薙ぎ払い、返す刀で眼前の屍人の首を切り落とす。
(余裕ですね……負ける要素は一切ありません。もう終わりにしましょうか……)
 ノエルは敵の攻撃を完璧に回避して見せると、肩部のプラズマキャノンの砲門を開く。
 照準は正面から押し寄せてくる敵。密集陣形が崩れ、一定の距離を取っているようだが、広範囲攻撃の射程に入っていた。
 ノエルはトリガーを操作して群がる敵に向かって砲撃を放ち、範囲外に逃げ出す敵にプラズマライフルを連射する。幾筋もの粒子ビームが広範囲の敵を焼き払い、十数体の屍人が瞬時に絶命し、黒煙を上げて骸の海に還っていく。

 まさに一騎当千。圧倒的な力の差を見せつけるようにノエルはエイストラとともに敵陣の中で舞い踊り、屍人の群れを葬っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
(目がグルグルしている)
サイモンさんが同行するのは、心強いんですよね。ほら、負傷原因わかってれば、適切な処置も早くなるというか。

さて、集団はあれですか…あ、ビアンカさんにお願いがあるんです。
全小隊に『今から濁流いくけれど、気にせず戦え。濁流は我らの味方』とお伝えください。

七色竜珠を合体させて白日珠へ。白日珠は竹簡形態に。
そして【十二秘策・水】にて、敵味方を区別する濁流が!
纏わりつく水って、行動制限できるんですよ。
たとえ防御力高かろうと、鈍ればそれまで。
小隊の皆さん、アサルトライフル放てー!

動き鈍い触手は、避けるのも容易いですよ。まだ濁流はありますしね。

『深密将』とは私がつけました。



 荒野を猛烈な勢いで進軍する改造屍人『インテグラルアーム』の群れは目前まで迫っていた。
 実力者揃いの猟兵たちに率いられるように、ストームキャラバン『サウザンド・トラッシュ』の小隊は敵に向かっていく。
 ほどなくして戦闘が始まり、体長2メートルの巨躯を誇る屍人の軍団は威嚇するような唸り声を上げながら襲いかかってくる。

「コイツら、見かけによらず動きが速いぞ」
「腕力も凄いぞ、殴られないように距離を取れ!」
「この触手、絡みついて来やがる。足を取られないように注意しろ!」

 アサルトライフルを連射して後続の屍人を牽制しながら、近くの屍人に偽神兵器を振るうストームブレイドたち。善戦してはいるが、変幻自在の触手攻撃と、予想以上の膂力に苦労しているようだった。

 小隊に同行していた荒珠・檬果(f02802)は、味方と屍人の群れとの戦闘を俯瞰し、敵を分析していた。
(意外と動きが速いですね……身体能力がかなり高いようです……それに触手攻撃も厄介です)
 そして、檬果は策を思いつくと、七色竜珠を合体させて白日珠を作り、リーダーのビアンカに小隊長たちへの言伝を頼む。
「お安い御用さ」
 ビアンカは檬果の依頼を快諾し、無線機を持つ小隊長たちに一斉に伝言を伝える。
「今からそっちに濁流が流れていくが、そいつは味方だ。お前らに襲いかかることはない。気にせず戦いな。追い風はお前らに吹いてるよ!」
 よく通る自信に満ちた声に、無線機の向こうの仲間たちの士気が上がる。

(それでは参りましょうか。荀攸殿、お願いします!)
 
 檬果はユーベルコードを発動させ、英雄の魂を自らの体に降霊させる。
 彼女に憑依したのは古代中国・後漢時代、曹操の軍師として活躍した荀攸。
 さらに荀攸の魂に呼応して檬果の手中の白日珠が淡く輝き、その形状を「竹簡」へと変える。
「行け、濁流よ! 敵を束縛し、動きを妨げよ!」
 荀攸を降臨させた檬果が、紐で束ねられた竹簡を敵に向かって突き出すと、竹簡の先から濁流が噴出する。
 堰を切ったように噴き出す濁った激流。それは乾いた大地を猛然と這い進み、敵陣へと迫る。
「うわっ、水が流れてきたぞ!」
 前線で戦うキャラバンの男が慌てて声を上げたが、濁流は敵と味方を識別し、味方の間を縫うように突き進む。
 そして、敵陣に到達した濁流は屍人たちの足首に絡みつき、その巨体を這い上がっていく。
「ぬぐぉぉおお!」
 体表に纏わりつく不快な水の帯を振り払おうと全身をわななかせる屍人の群れ。
 だが、水の帯は執拗に四肢に纏わりつき、その動作を制限していった。
 十二秘策・水。荀攸を体に宿すことで発動できるこの技は敵を完全に拘束するほどの力を持たないが、広範囲の敵の動きを鈍らせ、劣勢の戦況を確実に好転させていく。

「小隊の皆さん、今です! アサルトライフルを放て!」
 水の束縛を受けて動きが鈍麻した敵軍に、アサルトライフルによる一斉射撃が始まる。
 為す術なく弾丸の雨を全身に浴びた屍人の軍団は全身に傷を負い、動きを止める。
「このまま畳み掛けましょう! 接近して制圧!」
 檬果の指示を受け、ストームブレイドたちが近接武器に持ち替え、一斉に飛びかかる。
「うぉおぉお!」
 偽神兵器の痛烈な打撃を受け、改造屍人インテグラルアームは一体、また一体と屠られていく。
 戦況が優位になり「軍師」としての役目を果たした檬果は荀攸とともに満足げに微笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコリス・ガレシア
押し寄せてきた敵を見て、覚悟を決めた顔で帽子を脱ぐ
「わたし達がみんなを助けるのです!」
漆黒に染まる長髪、赤く染まる瞳、彼岸花模様の着物、帽子の代わりに般若の面を斜めに付けた少女に変化する
「出番か」
右手で左腕を掴み抜刀すると、左腕が天叢雲剣に変化
「主の命、そして貴重な食料を頂いた恩義もあるのでな。本気で行こうか」
UC使用。八匹の大蛇を召喚
「お前達、敵味方は分かるな?」
命令に従い、キャラバンの人達を守るべく戦場に散る
「如何に頑丈な肉体とはいえ、猛毒の牙ならどうかな?」
蛇達の指揮を執りつつ、戦場を縮地で駆け抜け、鬼の怪力で振るう隻腕の右手の神剣で敵を薙ぎ払う
「助けに来た。安心しろ、あの大蛇は味方だ」



 オブリビオン・ストームが吹き荒れる荒野。
 改造屍人「インテグラルアーム」の群れは戦場を我が物顔で進軍してくる。
 迎え撃つストームキャラバンの面々は、その苛烈な攻撃に苦戦を強いられていた。

 荒野を迫りくる屍人の群れを目の当たりにしたリコリス・ガレシア(f28348)は、キャラバンのみんなとともに戦場に立つ覚悟を決める。
 「わたし達がみんなを助けるのです!」
 決意を口にしたリコリスが帽子を脱ぐと内に秘めた人格が浮上し、密やかに姿が変わる。
 明るいピンク色の長髪は漆黒に染まり、瞳は憂いを宿した赤色に変わる。
 側頭部には鬼女を象徴する般若の面がもう一つの顔であるかのように掲げられ、黒い着物に描かれた彼岸花は血のように赤く、その凛とした立ち姿は、冷たくも美しい氷の花を連想させた。
 鬼の少女。左腕を形成する神器「天叢雲剣」に宿る少女の人格である。
「出番か」
 鬼の少女は静かにつぶやくと、右手で左腕を強く掴んでためらいなく引き抜く。
 欠損部位を補完していた左腕は淡い光を放ち、またたく間に神器「天叢雲剣」へと戻り、美しくも鋭い刃を顕現させる。
 さらに赤い瞳が煌めき、隻腕の右手で掲げた天叢雲剣から出現する八匹の大蛇。
 それはユーベルコード【眷属召喚-大蛇-】によって召喚された眷属だった。
「お前達、敵味方は分かるな?」
 敵を攻撃し味方を守れ。そう命じられた眷属たちは戦場に放たれ、改造屍人の群れに苦戦するキャラバンの小隊の元へと散っていく。

「うわっ、蛇、蛇だ!」
 屍人と苦戦する小隊の前に現れた大蛇に驚くキャラバンの男。
 だが、大蛇の攻撃の矛先は屍人のみ。極太の胴体を使って脚部を締め上げるように絡みつくと、牙の生えた大きな口で太腿にかぶりつく。筋繊維を断ち切られ、体勢を崩す屍人。
「ぐおぉぉぉおお!」
 屍人は野性的な雄叫びを上げ、丸太のように膨らんだ左腕を大蛇に向かって振り下ろす。
 だが、大蛇は咄嗟に飛び退き、拳を躱された屍人は、縮地で一気に距離を詰めてきた鬼の少女の神剣に斬り伏せられる。
「助けに来た。安心しろ、この大蛇は味方だ」
 大蛇を見て悲鳴を上げていた男は安堵の表情を浮かべる。
 鬼の少女は男に大蛇が味方であることを他の者に伝えるように頼むと、次なる救援へと向かう。

 鬼の少女は大蛇の指揮を執りつつ戦場を疾風のように駆け巡り、次々に屍人の軍団を薙ぎ払っていく。
 そして、何度目かの救援に向かった先で、危機的な状況に陥った小隊を発見する。

「くそっ! 捕まっちまった……」
「うわぁあああ! 助けてくれ!」
 二体の改造屍人。それぞれの右腕の触手には、一人ずつキャラバンの男の体が拘束されている。
 その近くの地面には触手から噴き出す麻痺毒にやられたと見られる男たちが4人ほど倒れている。
 10人編成の小隊のうち6人が戦闘不能。
 残る4人も、触手に掴まれた仲間を盾にされ、為す術がないようだった。
 しかし、残された仲間の一人、三叉の矛の形をした偽神兵器を構えた女が前に出てくる。
「二人を離しなさい。でないと、アンタたちを夕飯の食材にしちゃうからね!」
 それは宴で料理を振る舞っていたハンナだった。

「あれは昨日の……主の命、そして貴重な食料を頂いた恩義もあるのでな。本気で行こうか!」
 まずは人質に取られている二人を無事に助ける。
 敵を倒すのはそれからだ。鬼の少女は屍人の触手に狙いを定める。
 (まずは、あの触手を切り離す!)
 二体の改造屍人。相手の死角となる側面から狙う。標的は触手の生えた右腕の付け根だ。
鬼の少女は素早く判断すると上段に構え、急加速して間合いを詰める。
「はっ!」
残像を残すような俊敏な接近から、気合を込めて上段から神剣を振り下ろし、一体目の腕を切断。
だが、すぐに二体目が触手で掴んだ人質を盾にしたまま殴りかかってくる。
(卑怯者が!)
鬼の少女は敵を鋭い眼光で睨み、振り下ろされた拳を難なく躱して懐に潜り込むと、そのまま下段に構えた神剣で斬り上げ、右腕を両断した。
二本の右腕が根本から切り離され、人質に取られていた男たちが触手から解放される。
二人とも大きな怪我はないようだが、すぐには立てずに転がるようにして敵の側から離れる。
人質が逃げるのを横目で確認した鬼の少女は、隻腕となった二体の改造屍人を危なげなく斬り捨てた。
すると、無事だった仲間とともにハンナが駆け寄ってくる。
「ありがとう。助かったよ。あれ? あなた、どこかで……」
 ハンナは礼をいい、何かに気づきかけたようだが、鬼の少女はその前に踵を返す。
「負傷した仲間を連れて一旦引け。これ以上は足手まといになる」
 去り際に声をかけ、それ以上は何も言わずに立ち去る鬼の少女。
 みんなを助ける。主の意思のままに、鬼の少女は再び戦場に飛び込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

連携NPC:シェリル

元より皆を死なせない為に赴いたわけだけど、シェリルさんの人となりを知った今、よりその気持ちは強くなった
シェリルさんはもっと家族の皆と幸せな時間を過ごすべき人だ
こんな所で死なせちゃダメだ、絶対に!
だから、俺は絶対に守り抜くよ

レイジさんの援護があるみたいだから、遠距離からの支援は任せよう
シェリルさんが切り込むなら、俺も【破魔】付与した刀を手に追従し共に戦う
光と闇の疑似精霊、シェリルさんを守り抜く為にも君達の力を借りるよ!
UC『絶対死守の誓い』を発動させる
俺は【毒耐性】を持っているから麻痺毒は効かない
シェリルさんが麻痺毒を喰らいそうになったら【かばう】



「アタシたちは、敵の分断、味方の援護、怪我人の救護なんでもやるよ! この戦場で仲間は絶対に死なせない! アタシたちはそのためにこの戦場を自由に駆け回るんだ!」
「うぉおおおお!」
 小隊のリーダーを任されたシェリルの言葉に鼓舞され、隊員たちは拳を天に向かって突き上げる。
 彼らはキャラバンの中でも勇猛果敢な20代前半のメンバーで構成された『遊撃部隊』だった。 
 鳳凰院・ひりょ(f27864)も隊列に加わり、隊長の演説を神妙な顔で聞いていた。
 昨日の宴の席でひりょはシェリルの人となりを知り、彼女とともに戦うために同行を申し出た。
 絶対にシェリルさんを死なせない。ひりょは強い決意を胸に秘め、出撃するのだった。

「まずはあの群れを分断するぞ!」
 正面には30体以上の『改造屍人インテグラルアーム』。まずは敵を分断し、各個撃破を狙う。目標を定め、シェリルを先頭に部隊は敵陣に突撃する。
「姫、まずは拙者にお任せを!」
 ハスキー犬のレイジが敵の群れに照準を合わせ、偽神兵器のガトリング砲で大量の弾丸をばら撒くと、他の隊員たちもアサルトライフルを乱射する。
 ガトリング砲とアサルトライフルの制圧射撃を受け、屍人の群れが真っ二つに割れ、屍人たちは弾丸の雨から逃れようと左右に散っていく。
 ひとまず分断は成功。シェリルは大量の弾丸を浴びて手傷を負った中央の屍人たちを見据え、偽神兵器の戦斧を構える。
「すぐに中央の群れを潰すよ!」
 間髪入れずにシェリルは先陣を切る。
 その猪突猛進の戦いぶりにたじろぐ隊員たちを追い越し、ひりょはシェリルの後を追いかける。
「うりゃっ!」
 射程距離まで近づいたシェリルは、巨大な戦斧を振り回し一体目の屍人の首を跳ね飛ばす。
 すると、シェリルの背後で大きな体を丸めるようにして蹲っていた屍人がムクリと起き上がり、触手を放った。
 危ない!後方の隊員たちが声を上げようとした瞬間、割って入ったのはひりょだった。
 すかさず破魔刀を抜き放ち、煌めく刃で触手の束を切り払うひりょ。さらに触手を放った屍人を破魔の斬撃で斬り捨てる。
「シェリルさん、一人で突っ込みすぎです!」
 シェリルはしばし呆然とし、バツの悪そうな顔をひりょに向ける。
「ひりょくんって意外と足が速いんだね。あははは……」
「笑いごとじゃないですよ。あんな速さで敵に突っ込まれたら、俺以外はついて来れませんから!」
「俺以外か……ふふっ、キミならアタシについて来れるってわけだね。それなら……」
 不満顔のひりょに背を向け、シェリルはニヤリに笑う。
「アタシの背中はキミに任せた! 一緒に思いっきり暴れるよ!」
 一方的に決めてしまうと、正面の屍人に向かって斬り込んでいくシェリル。
 背中を任せられたひりょは、家族を守ろうと奮闘する儚げな背中を急いで追いかけるのだった。

 戦場を縦横無尽に駆け抜けるシェリルは、彼女の身を案じるひりょとレイジの手厚い援護を受け、危なげなく偽神兵器の戦斧を振り回し、屍人たちを次々に屠っていく。
 ところが……。

――助けてくれ!

 救援を求める声が無線機から響き、すぐに駆けつけた遊撃部隊が遭遇したのは屍人の軍団に囲まれる小隊だった。
 地面には何人もの仲間が倒れており、触手に掴まれている者もいる。
 幸い、死者はいないようだが、負傷者は多数出ているようだった。
「アタシが絶対に助ける! みんな、死ぬんじゃないぞ!」
 惨状を目の当たりにしたシェリルは頭に血が上り、独断専行で飛び込んでいく。
 しかし、脇目も振らず全力疾走で仲間の救出に向かうシェリルは、自分が罠にかかっていたことに気づいてはいない。
 隊長に続こうとするひりょと隊員たちの前には、伏兵の屍人の群れが立ち塞がり、足止めされてしまう。

 孤立してもシェリルは仲間を助けるために戦斧を振るい、戦場を駆け回りながら屍人の触手を戦斧で寸断していく。だが、彼女は触手から射出される粘液のことを失念していた。
 射程を読み、伸びてくる触手をバックステップで躱すシェリル。その直後、触手の先端から大量の粘液が発射される。
(しまった!)
 シェリルは反射的に目を閉じる。しかし、彼女の身には何も起こらない。
 目を開けると、目の前には自分をかばうように両手を広げる青年の背中があった。
「ひりょくん!?」
 ひりょは全身に粘液を浴びながらも立っていた。
 麻痺毒は効かなくても、粘液を浴びた箇所が焼けるように痛む。
 それでもひりょは正面の敵を破魔刀で斬り伏せると、呆然とするシェリル向かって叫ぶ。
「シェリルさんはもっと自分を大事にしてください! あなたが死んだら、隊員の皆さんが仲間を死なせることになるんですよ!」
 仲間を死なせない。その思いは隊員たちとも共有していた。
 しかし、シェリルは指摘されるまで気づいていなかった。
「そうか……アタシ、本当にバカだね。そんな当たり前のことも気づかなかったなんて」
 シェリルは落ち着きを取り戻し、武器を構え直す。
 だが、戦況は芳しくはなかった。10体を超える屍人が二人を取り囲み、虎視眈々と獲物を狙っている。
 地面には怪我をした別の小隊の仲間が倒れており、治療を必要としていた。
 遊撃部隊の隊員たちの救援も期待できない。
 彼らは足止めに現れた屍人の軍団に苦戦しながらも、シェリルを助けるためにひりょを送り出したのだから。
「シェリルさんは俺が絶対に守り抜く!」
 ひりょの口から秘めたる思いが溢れ、困難な戦況を打開すべく、起死回生のユーベルコードが発動する。
 
 空間が歪み、虚空に顕現する光と闇の疑似精霊。
 闇の精霊は闇の波動で敵の軍勢にダメージを与え、光の精霊は光の波動で倒れた仲間を癒やしていく。
 闇と光の疑似精霊の力で戦況は好転し、ひりょは闇の波動で弱った屍人たちを見据え、先陣を切る。
「まずは道を切り開きます。ついてきてください!」
 シェリルは自分を絶対に守り抜くと誓った頼もしい青年の背中を慌てて追いかける。
 仲間は絶対に死なせない。だけど……これからは自分のことも大事しよう。
 彼女は自分の心に生じた変化に戸惑いながらも、今はただ眼前の敵を見据えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「複数の班で前衛と後衛に別れて、後衛が制圧射撃等で触手を止め、その間に前衛が偽神兵器で敵の首と触手を刎ねるのはどうでしょう?3班でローテーションなら弾込めの時間も充分取れるのではないでしょうか」

UC「願いの桜吹雪」使用
ストームキャラバン構成員の怪我を癒しつつ再行動の機会を与えることで敵への対応の手数を増やす
自分もUC使用の合間に高速・多重詠唱で銃弾に破魔と浄化の属性与え制圧射撃
敵へのダメージ累積と行動阻害を試みる

「慌てなくても手数は此方が上です。麻痺した方をドクターの所へ連れて行ったらまた自分の班に戻って下さい。大丈夫です、此方の継戦能力は敵に劣っていませんから」
味方を鼓舞しながら戦闘する



「さあ、出撃しましょう! 私たちが力を合わせれば怖いものはありません!」
 御園・桜花(f23155)は3つの部隊を集めた最終ミーティングを終え、出撃の号令をかける。
 宴の後の作戦会議で、桜花はキャラバンの人々に集団戦での戦術の大切さについて訴えた。
 それに感銘を受けた3つの小隊のリーダーに請われ、三部隊合同による作戦の指揮官を任されていた。

 戦場に出撃した桜花の部隊は、間もなく『改造屍人インテグラルアーム』の群れに遭遇し、交戦することとなった。
 相手は5体で構成される改造屍人の群れ。当然こちらが数で勝るが、屍人は2メートルの巨漢である。
 全身が硬い筋肉の鎧で覆われていて身体能力も高い。さらに厄介そうなのが右腕で不気味に蠢く触手である。

 桜花は敵の姿から攻撃方法を予測し、事前の打ち合わせ通りに指示を出す。
「初期配置は、第一部隊が前衛、第二部隊が後衛、第三部隊は弾を込めて待機。敵の触手に捕まらないように、後衛はアサルトライフルで制圧射撃。触手を破壊したところで前衛が偽神兵器で首を刎ねてください!」
 指示に従い、後衛の第二部隊がアサルトライフルを構え、一斉射撃を始める。
 ダダダダダッ。多数の銃撃音が重なり、無数の弾丸が容赦なく銃口から吐き出される。
 やはり敵は頑丈だった。アサルトライフルの制圧射撃にも耐え、太い両脚は大地を力強く踏みしめている。
 だが、制圧射撃が無駄だったわけではない。敵の全身は傷だらけで、柔らかい触手部分は弾丸の雨に弾き飛ばされていた。
 次は前衛の第一部隊の出番だ。彼らは偽神兵器の大剣を持って一気に距離を詰め、動きが鈍った敵と交戦し、その首を次々に刎ねていく。
 そして、最初の屍人の群れをすべて葬り終えると、後方に控える第三部隊の隊員から歓声が上がる。
 初陣の勝利で士気が上がり、桜花の率いる部隊は各部隊のポジションをローテーションで入れ替えながら、襲い来る屍人たちを効率的に撃破していく。

 ところが、屍人の軍勢もただやられてばかりではなかった。
「待機中の皆さん、迎撃お願いします!」
 指揮を取る桜花の視線の先には、部隊の側面を狙って突進してくる二体の改造屍人。
 その標的は制圧射撃を担当する後衛の部隊だ。
 待機部隊が慌ててアサルトライフルで足止めを狙う。
 だが、改造屍人は足元に飛んでくる弾丸を避けるように跳躍すると、そのまま拳を振り上げ、無防備な後衛に飛び込もうとする。
 ガガガガガガッ。唐突に軽機関銃の銃撃音が劈き、無数の弾丸が空中の屍人に叩き込まれる。
 それは指揮官の桜花が放った「破魔」と「浄化」の力が籠められた弾丸。
 屍人は激しい銃撃に吹き飛ばされ、事なきを得る。
「危なかったですね。私も機を見て攻撃に参加します。それから待機部隊を後衛の周囲に配置し、周辺を警戒することにしましょう」
 桜花は作戦を修正し状況の変化に対応するも、次第に屍人の軍勢もこちらの戦術に慣れてきているようだった。
(もしかして、向こうにも指揮官がいるのでしょうか?)
 桜花はふと気づくも、それ以上、思考を巡らせている余裕はなかった。
 今度は屍人の群れが周囲から集まり、攻勢を強めてきたからだ。
 桜花は落ち着いて部隊を指揮し、着実に敵の数を減らしていくも、戦いは苛烈さを増し、怪我人も出始める。
 そして、桜花は怪我人が続出する戦況を打開するためにユーベルコード【願いの桜吹雪】を発動させた。
 桜花の背後に巨大な幻朧桜の立体映像が浮かび、戦場に桜の花びらが舞い踊る。
 花びらは戦場で負傷した者に舞い降りるとその傷を癒やし、再起の意思を取り戻させていく。
「やれる! 俺たちはまだやれるぞ!」
 負傷兵たちは戦力として復帰し、部隊の戦意が高揚する。
 対する敵軍は、触手の先から粘液を噴出させて応戦する。
「なんだ。この汁は…うぎっ!」
 改造屍人の粘液に触れた隊員が突然倒れる。
 倒れた隊員は体が痺れ、動けないようだった。
「うわぁああ! ダメだ。コイツらやべぇ」
「どうしよう。こんなの聞いてないぞ!」
 麻痺毒が引き金となり、隊員に不安と動揺が広がる。
 桜花は柔和な笑みを崩さず、隊員たちに言葉をかける。
「慌てなくても手数は此方が上です。大丈夫です、此方の継戦能力は敵に劣っていませんから!」
 指揮官の自信に満ちた言葉に隊員たちは安堵し、落ち着きを取り戻す。
 さらに桜花は彼らに麻痺した仲間を回収し、部隊を一時離脱してドクターのところに連れていくように頼む。
「俺たちには守護神がついている! 絶対に負けないぞ!」
 隊員たちが神秘的な幻朧桜を見上げ、気合を入れる。
「最後の仕上げです。一気に勝負を決めましょう!」
 桜花も軽機関銃を持ち、制圧射撃に加わると友軍の攻撃力は飛躍的に高まり、敵の猛攻を押し返していく。
 そして、桜花が率いる3小隊連合部隊は、幻朧桜の庇護の下で懸命に戦い抜き、残存する改造屍人を討ち滅ぼしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『クローン将校部隊』

POW   :    将校級軍隊格闘術
【将校級の軍隊格闘術】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    暴走したクローン製造機
レベル×5体の、小型の戦闘用【の自身の劣化コピーの増援】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    将校級制圧術
【死角からの自身もしくは味方からの不意打ち】が命中した対象に対し、高威力高命中の【同一思考による味方からの連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:慧那

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●クローン戦争
 猟兵たちの活躍によってストーム・キャラバンの士気も上がり、屍人の軍勢を次々に撃破していった。味方に大きな被害はない。このまま押し切れば、今回の依頼は無事に終わるだろう。猟兵たちにそんな安堵感が広がっていく。だが、まだ戦いは前哨戦に過ぎなかったのである。

 戦場の遥か後方に、二体の軍服姿のオブリビオンが姿を現す。
「改造屍人部隊のおよそ8割が壊滅。敵軍の損害……軽微。少佐、このままでは全滅は必至かと……」
 改造屍人『インテグラルアーム』に埋め込んだ小型カメラの映像を携帯端末で確認していた下士官が報告を終えると、少佐は自らの頭部を覆うヘッドマウントディスプレイ型の装置を忌々しげに外し、憎悪に満ちた瞳を虚空に向ける。
 狂気の科学者たちに創り出された改造屍人『インテグラルアーム』の脳には、脳波で自在に遠隔操作するためのチップが埋め込まれていた。
 少佐が使っていた装置は、研究者たちを惨殺した改造屍人たちとともに研究所から消えた「脳波コントローラー」である。
「所詮、私が命令を与えてやらねば何も出来ぬ『でくのぼう』よ……だが、最後くらいは役に立ってもらうぞ!」
 少佐は脳波コントローラーの側面にある「赤いボタン」を5秒間押し続ける。

――リミッター解除、完了しました。バーサーカーモードに移行します。

 そして、少佐は表情一つ変えることなく指示を出す。
「全軍出撃だ! 総力を挙げて敵軍を殲滅する。人間大砲も全部出せ。圧倒的な物量で圧搾してくれるわ!」
 こうして出撃命令が下され、軍服姿のオブリビオンの軍勢は進軍を開始する。
「人類は倫理を逸脱し、我らの命を弄んだ仇敵だ! 絶対に殲滅せねばならない!」
 少佐の瞳には人類を殲滅せんとする強固な意志が宿り、その笑みは狂気に歪んでいた。

●混沌たる戦場
「うわっ、こいつ、いきなり巨大化しやがった! 応援を頼む、俺達じゃ手に負えねえ!」
 突如として『改造屍人インテグラルアーム』が巨大化して暴れまわる中、クローン将校の進撃が始まる。
「なんだあの数は、多すぎるぞ!」
「軍服女が飛んでくるぞ。なんとかしろ!」
「やべえ! やべえよぉおお!」
 巨大化するゾンビ。絶望的な大軍勢。低弾道で続々と飛来する軍服女。
 容赦のない総攻撃に、動揺が広がっていく。
 そんな中、一人だけ場違いな反応をする者がいた。闇医者のサイモンである。
「まさか……あいつらはクローン将校なのか?」
 沈鬱な表情でつぶやいたサイモンは、かつてクローン将校の生産に関わる施設の研究員だった。
 しかし、彼は倫理観を逸脱した研究に没頭する者たちに疑問を抱き、職を離れた。
 オブリビオン・ストームで施設が壊滅したと聞いたのは、その数カ月後である。
 運良くサイモンは命拾いした形になったが、かつての職場で起こった凄惨な事件は彼の心に暗い影を落としていた。
「サイモン、どうかしたのか?」
「何の因果かわかりませんが、あいつらは私の元職場でつくられたクローン兵のようです。ビアンカ、無線機を貸してください!」
 サイモンはリーダーから無線機を借り、仲間に向けて警戒を呼びかける。
「クローン兵は一体一体が驚異的な身体能力を持ち、軍隊格闘術の達人です。見た目に惑わされてはいけません。中身は人類の殲滅を目論む悪魔です。決して油断しないでください!」
 さらにサイモンは前線で戦う猟兵たちにも伝えてほしいと前置きし、重要な情報をもたらす。
「奴らは上意下達の軍組織を形成しています。一般兵はただの『駒』に過ぎません。隊長を狙ってください。隊長を倒せば一般兵への指示が途絶え、部隊の士気が大幅に下がるでしょう」
 そして、彼は敵軍についての詳細な情報を伝えると、無線を切る。
 厳しい戦闘が予想されたが、彼らはもう後戻りすることはできず、戦禍に身を投じるしかなかった。

●補足情報
◎第三章はクローン将校の進撃を食い止め、事態を終息させるのが目的となります。

・敵部隊の数は総勢1000体以上。倒せば倒すほど増援が来ますが、いつか枯渇します。
・敵陣後方の「移動式人間大砲」でクローン将校を次々に射出してきます。乱気流を避けて低空で飛来するので弾道が見えやすいです。

・改造屍人インテグラルアームの数はかなり減っていますが、「脳波コントローラー」によって無理やりユーベルコード(POW)を発動させられ、巨大化(体長約6m)&凶暴化しています。
 敵味方区別なく近づいた相手に襲いかかるバーサーカーとなり果てているので、逃げるなり、戦うなり、戯れるなり自由に扱ってください。

【戦場】
・第二章と同じオブリビオン・ストームが吹き荒れる荒野です。乱気流により、上空からの攻撃は困難です。

【クローン将校の基本情報】
・冷酷非情なオブリビオンで、個を犠牲にしても軍の勝利(敵の殲滅)を優先させます。
・俊敏な動きが特長で、近接戦主体の攻撃をしてきます。
・痛覚を麻痺させる薬物を投与しています。痛がりもせず多少の怪我では止まりません。
・遺伝子操作により感情が抑制されています。仲間が死んでも怯んだりもしません。
・クローン将校のレベルは50くらいです。
・隊長、一般兵ともに第六感的な技能で瞬時に意思疎通ができます。

【敵軍の詳細】
・50人規模の部隊に、それぞれ隊長が1体ずついて部隊を指揮しています。
・隊長は一般兵の戦意を高揚させる技能を持っています。
・一般兵は隊長の指示のままに動く忠実な「駒」です。
・大隊長の「少佐」はどこかに隠れて各隊長に指示を出しているようです。劣勢になれば姿を現すかもしれません。
・少佐は赤い軍服、隊長は青い軍服、一般兵は黒い軍服を着ているようです。

なお、クローン将校・敵軍に関する情報は闇医者サイモンの証言によるもので、このシナリオのみの設定です。

◎カオスな戦況ですが、明確なボスが不在の集団戦なので、一人ひとりが自分のやり方で貢献し敵軍を撃退していく場面をリプレイで描写していきます。
 ですので、敵陣への突入、前線での援護、後方支援、仲間の救援など自由なプレイングでOKです。
 第二章に引き続きサウザンド・トラッシュの小隊やNPCとの共闘(詳細は第二章断章参照)も可能です。
 途中参加も歓迎です。第三章もよろしくお願い致します。
ノエル・カンナビス
軍隊アリみたいですね。

軍隊格闘技って、素手で戦車かち割ったりするんです?
そのくらいでないとキャバリアの相手は出来ませんが……。
それはなんか、もう格闘技とは違うサムシングではないですか。

何にしろ、クロムキャバリアをも易々と粉砕する硬衝撃波に
耐えられるとも思えません。味方から離れて悠々と前進しつつ
指定UCを連打しましょう。
50人程度の集団でしたら余裕で全部射程内でしょう。
同時に2回攻撃/範囲攻撃/キャノンも連打、
役職持ちが見つかればスナイパー/ライフルで。

味方が近づくと諸共に消し飛ばしてしまいますから、
そうならないように連絡はしておきます。
一発目を見た時点で誰も近付かなかろうとは思いますが、一応。



「軍隊アリみたいですね」
 ノエル・カンナビス(f33081)は、エイストラのコクピットの中で、モニターに映るクローン将校の大軍勢を眺め、静かにつぶやく。
 
 暗黒の竜巻から続々と出現するクローン兵団は規律正しく一定の間隔を空けて陣形を組み、ゆっくりと進軍してくる。
 自陣では残った改造屍人の群れと、人間大砲で次々に飛来するクローン兵の対応に追われていた。
 そんな中、キャラバンのリーダーのビアンカは無線機を使い、小隊長たちを必死に叱咤激励していた。
(あの人、確か自分がリーダーだと言ってましたね……)
 ノエルはエイストラで近づくとコクピットを開け、何事かと見上げるビアンカを無表情で見つめる。
「私が敵陣に先行します。巻き添えにならぬようにと、一応、皆さんに連絡を……」
 ビアンカはその申し出を了承し、神妙な顔でノエルを見上げた。
「ありがとう。アンタみたいに肝が据わった子がいてくれて助かったよ。これで仲間たちの士気も上がるだろう。よろしく頼むよ!」
 ビアンカは謝意を伝えると最後に「昨夜は酔っ払って変な話を聞かせてごめんな」と付言し、ノエルを見送る。
(昨夜の話……何のことでしょうか?)
 ノエルは首をかしげながらコクピットを閉めると敵陣に向けて出撃するのだった。

 ノエルのエイストラは敵陣に向け、強風が吹く荒野を疾駆する。
 だが、体高5メートルの機体は遠方の敵に目視され、移動式人間大砲の照準が一斉にエイストラに向けられる。
 ドーン、ドーン、ドーン。大砲の派手な砲撃音とともに射出される人間砲弾。
 だが、ノエルは表情一つ変えずに目視で弾道を見切り、フットペダルと操縦桿を巧みに操作して砲弾を躱すと、ブースターの出力を上げてさらに加速する。
 そして、敵前衛の部隊が射程に入った直後、ノエルの瞳が微かに煌めく。
「オブリビオン、射程内に確認。H・S・F、ラディエイション!!」
 ユーベルコードの発動とともに、エイストラの装甲から高硬度衝撃波が放射される。
 大気が震え、猛烈な風切り音さえも置き去りにした超音速の衝撃波は、前衛のクローン兵、数十体をボーリングのピンのように薙ぎ払う。
 軍服女たちは宙に弾け飛び、何事が起こったのか理解する前に黒い煙を上げて骸の海へと還っていく。
 それは圧倒的な破壊力の攻撃だった。
 しかし、クローン兵団も即座に動く。潮が引くように敵陣が後退し、ユーベルコードを一斉に発動。黒い軍服の一般兵が自らの模造品を吐瀉物のように召喚する。
 それは本体の半分ほどのサイズで高度な知性を持たない「劣化コピー」過ぎなかった。
 だが、その数は桁外れに多かった。またたく間に大量の模造品が生み出され、大河川が決壊したかのような奔流を成す。
「ジンルイセンメツ! ジンルイセンメツ! ジンルイセンメツ!」
 呪詛のような叫びを発しながら、四方八方からエイストラに迫る劣化コピーの群れ。それはまさに「軍隊アリ」だった。
 そのおぞましさにノエルは眉を僅かに上げるが、冷静に肩部のプラズマキャノンの砲門を開く。
 周囲の軍隊アリは高硬度衝撃波で吹き飛ばす。衝撃波の射程外に逃げようとする軍隊アリの親はプラズマキャノンで砲撃。
 ノエルの思考は迷いなく動いていた。
 エイストラもノエルの思考をなぞるように動き、衝撃波で劣化コピーの群れが瞬時に消滅。さらに粒子ビームの射線上の敵部隊が蒸発する。
 だが、敵はいくらでも代替が利く一般兵である。
 倒しても倒しても、統率の取れた動きで新たな兵士が前に出て模造品を吐き出し、物量でエイストラの足止めを狙ってくる。
 こちらの優勢は変わらないが、このままでは無意味な消耗戦が続くに違いない。
(数が多くても、所詮は軍隊アリ。このまま強引に突破して一網打尽に……)
 ノエルは消耗戦を避けようとフットベダルに足をかけようとした。そのとき、モニターの端に青い軍服がよぎる。
(青い軍服……あれが隊長ですか)
 隊長を狙う。ノエルは即座にプランを変更し、プラズマライフルの照準を青い軍服に合わせてトリガーを引く。
 直進する粒子ビームの光の束が青い軍服を貫き、軍隊アリの供給が突然止まる。
 指揮官を失った一般兵たちが混乱し、攻撃を中断したのだ。
 ノエルはその機を逃さず、エイストラを発進させて敵陣に突っ込み、高硬度衝撃波を放つ。
 不意を突かれた前衛のクローン部隊が全滅。間髪入れずエイストラの砲門から広範囲の粒子ビーム放たれ、後衛の部隊も消滅する。
 さらにノエルは新たな青い軍服を発見しプラズマライフルで狙撃する。
 ビームが命中し、隊長が不在になった部隊は統制を失い、四方八方、バラバラの方角に散っていく。
(……敵の行動パターンを把握。任務はオブリビオンの殲滅。任務、続行します)
 ノエルは淡々と頭の中で今回の任務を反芻し、次なる部隊の殲滅に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴上・冬季
空中から眼下眺め
「遅参した分、良い戦場に巡り会えたようです。鏖殺可とはなんと素晴らしいッ」
「この戦場なら100m級で充分でしょう…行け、黄巾力士!」
降下し巨大化した黄巾力士に四つん這いに近い体勢取らせ高度10m程度を敵後方からゆっくり飛行し接敵
全身から飛来椅の鎧無視の無差別攻撃で敵集団を蹂躙
同時にクロールのように手足をバタつかせ敵や砲塔叩き潰す
近辺の龍脈から地の気吸い上げ攻撃力増強し継戦能力高めオーラ防御で敵の攻撃防ぐ
「他の猟兵やキャラバンが敵と接する戦端よりこちら側10m迄が私達の戦闘空域です。100や200程度残れば、あちらも充分でしょう」
自分も高度10m程度を飛行しながら雷公鞭と仙術使用



「遅参した分、良い戦場に巡り会えたようです。鏖殺可とはなんと素晴らしいッ」
 今回の戦いは大軍勢との過酷な戦いになるらしい。そんな噂を耳にし、急いで駆けつけた鳴上・冬季(f32734)は、思う存分、敵を蹂躙できる戦場に胸を躍らせる。
 敵は暗黒の竜巻から洪水のように溢れ出し、人海戦術で人類の殲滅を目論むクローン将校の大軍勢。ここは彼の力を存分に発揮できる戦場だった。
 そして、冬季は戦場に赴くべく、ユーベルコード『真・黄巾力士』を発動する。
「この戦場なら100m級で充分でしょう……行け。黄巾力士!」

 クローン将校の兵団は整然と隊列を組み、進軍を続けていた。
 この数なら絶対に負けない。指揮官はそう思っているに違いない。
 だが、その自信を覆す脅威は目前に迫っていたのである。
「雲が降ってきた!? 総員、一旦停止しろ!」
 突然出現した巨大な黒い影に陽光が遮られ、兵団の歩みが一斉に止まる。
 ところが、頭上にあるのは雲ではなく、高度10メートルを低空で飛行する全長100m超の巨大な機体。
 それはまるで砂漠に鎮座する古代文明の人面ライオン像のような威容を示し、低空飛行をしていた。
「なんだあれは!? 敵の爆撃機か? 迎撃するぞ!」
 クローン部隊を率いる隊長は突然現れた敵を爆撃機と認識し、迎撃態勢を整えるのだった。

 一方、巨大化した「黄巾力士」の頭上では、冬季が敵の軍勢を俯瞰するように眺めていた。
 敵の数は1000を越えてもまだ増え続け、軍勢は地平線を覆い隠すほどに横に広がり、急激に厚みを増している。
(予想以上に広範囲に敵が展開していますね。それなら私達の戦闘領域は、味方がまだ到着していない戦場の東側全域としましょう)
 戦闘領域を定めると、冬季は黄巾力士に搭載した『宝貝・飛来椅』を作動させ、ソニックウェーブを放つ。
 激しい音波振動の攻撃を受けたクローン兵の一団が弾き飛ばされ、黒い煙を上げながら霧散していく。
 敵陣に穿たれる多数の大穴。だが、甚大な被害を受けても敵の兵団は怯まず、統率の取れた動きで散開し、迅速に反撃を開始する。

 反撃の狼煙のように、人間大砲から次々と発射される人間砲弾。
 地上ではクローン兵たちがユーベルコードで『劣化コピー』を大量に召喚し、大地は軍服女で埋め尽くされる。
 劣化コピーのサイズは本体の半分程度。知能も低く、一撃で破壊されるほど脆いが、その俊敏さは本体に匹敵する。しかも小さいので礫のように投げつけることも可能だった。
 そして、敵軍は劣化コピーで動きを封じようと「爆撃」を開始する。
 空爆を担うのは人間大砲で飛来するクローン軍団。劣化コピーを空から大量にばら撒き、地上の部隊もそれに負けじと、劣化コピーを礫のように投げつける。
 運良く黄巾力士に張り付くことに成功した小さなクローン兵は、装甲を激しく叩き、砲門を塞ぎ、関節部を破壊しようと暴れまわる。

 だが、苛烈さを増す敵の攻撃にも、冬季は怯むどころか歓喜の笑みを浮かべていた。
 「行けぃ。黄巾力士! 我が敵を完膚なきまで滅し尽くせ!」 
 本性を露わにした冬季の声とともに、『宝貝・劈地珠』が龍脈から吸収した気が大量に注ぎ込まれ、黄巾力士が強化される。
 同時に機体の周囲にオーラシールドが展開。劣化コピーの礫を悉く弾いていく。 
 そして、敵の攻撃を完封した冬季は民の生殺与奪を握る暴君のように地上を見下ろすと、攻撃命令を下す。
 
 敵の兵団の蹂躙。命令を受けた黄巾力士は巨大な腕を大地へと振り下ろす。
 その軌道は綺麗な弧を描き、地上に群がる敵を根こそぎ削り取る。
 直撃を受けたクローン軍団は水飛沫のように宙に放り出され、そのまま黒い煙を上げて蒸発し、骸の海へと還っていく。
 さらに反対の腕も振り下ろされ、多数のクローン兵と人間大砲の砲塔が弾け飛ぶ。    
 そして、冬季は眼下の敵を屠り尽くすと黄巾力士を発進させた。

黄巾力士は散開する敵の群れを追尾するように低空で移動し、四肢を振り回して大地をガリガリと削りながら音波振動を周囲に放ち、クローン兵団を掃討していく。
「ハハハハハハ! これほど爽快な気分は久々だな!」
 冬季は高笑いをしながら黄巾力士とともに低空飛行し、雷公鞭で雷を次々に落としていく。その攻撃には全く容赦がなかった。
 だが、クローン兵団の増援も尽きることがなく、その数は増え続けているようだった。
 倒せば倒すほど楽しみが増える。冬季の至福の時間はまだまだ続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
人間砲弾…初めて見ましたよ…。

痛覚麻痺してるなら、まあ水でもよいのでしょうが…クローンが素早いんですよね。

ならば、白日珠を長剣にして【禍は大気に満ちれども、恵雨あり】。対象は敵だけに…死病を。
死病は総じて、肉体を衰えさせますからね。痛覚麻痺してるなら、病からくる痛みも気づかないでしょうし。
というか、大砲で勝手に突っ込んでくるんですよね。

死角にいっても、そこには赤兎馬がいたりします。ドカンと蹴ってますね。

それでも来るのなら、長剣にてお相手を。あなたは動きづらいでしょうがね。

『慈狼将』とは、私がつけました。
最期の形から、このUCになったんですよ。病はときに、戦をも止めてみせるのです。



 オブリビオン・ストームが吹き荒れる荒野の戦場。
 クローン将校の大軍勢に対し、猟兵たちは一騎当千の活躍を見せていた。
 ストームキャラバンの皆も、猟兵たちに感化されて士気が上がり、奮戦している。
 だが、クローン兵の数はいっこうに減る気配を見せなかった。

「人間砲弾……初めて見ましたよ……」

 赤兎馬に乗って前線に赴いた荒珠・檬果(f02802)は、荒野の空を飛翔する軍服姿の女を呆然と見上げる。
 檬果の前方には、クローン部隊と戦うキャラバンの男たち。
 そして、赤兎馬から降りて救援に向かおうとする檬果の耳に入ってきたのは、男たちの驚愕の声だった。

「やべっ、こいつら瞬発力の鬼だぜ。銃の射線からすぐに逃げやがる!」
「弾丸が命中しても倒れない? 奴ら、痛みを感じねぇのか!」

(敵は俊敏で痛みを感じない。ならば、このような戦術はいかがでしょうか?)

 檬果の戦術は一瞬のひらめきで決まり、その体に一人の英霊が音もなく降臨する。
 彼女に憑依したのは古代中国・後漢時代の政治家・司馬朗。
 さらに司馬朗の魂に呼応して檬果の手中の白日珠が淡い輝きを放ち、長剣へと姿を変えた。
 そして、司馬朗を体に宿した檬果が長剣を掲げると、荒野の戦場に密やかに「瘴気」が漂い始める。
 瘴気が運ぶのは死に至る病。「病は気から」ならぬ、「病は瘴気」からというわけだ。

 死病の瘴気は味方の間を軽やかにすり抜け、クローン将校へと忍び寄ると、その体にあっさりと侵入してしまう。
 どんなに体を鍛えた屈強な者でも、不治の病には勝つことはできない。
 生物を構成する細胞よりも小さい物質によって命を奪われる理不尽。
 無遠慮に、無慈悲に、無情に、その細胞一つ一つを蝕み、死へのカウントダウンを刻んでいく。
 そして、異変は唐突に起こった。
 最初に瘴気の侵入を許したクローン兵が突然、前のめりに倒れ、痙攣を起こす。
 そのまま動かなくなり、その体は軍服ごと黒い煙を上げて蒸発し骸の海に還っていく。

 死病の症状は様々だった。
 高熱に見舞われる者。全身に皮下出血が起こり斑点状の痣ができる者。目や耳から出血する者。
 筋肉繊維が断ち切れ、骨が軋み、内蔵が壊死し、動くことがままならなくなっても、クローン兵たちが死病の感染に気づくことはなかった。
 生物は痛みによって自らの体の異常を認知する。
 しかし、クローン兵たちは戦闘に邪魔な痛覚を麻痺させていた。それが災いしたのだ。

 最初の一人を皮切りに、体内に瘴気が侵入したクローン兵がバタバタと倒れ、骸の海に還っていく。
 そこでようやく敵の指揮官が異変に気づいた。
 ここには何か得体の知れない「毒素」が充満している。
 早くクローン兵たちを避難させなければ。
 上意下達の命令が下され、クローン部隊は戦闘を放棄して離脱しようとした。
 だが、敵を逃がさんと即座に動いた者がいた。
 檬果の乗ってきた赤兎馬である。一日で千里を駆けるといわれる健脚。その特性を遺憾なく発揮し、逃亡を図るクローン兵たちを追いかけては、瘴気が充満する領域へと蹴り飛ばしていく。
 
 そして、クローン兵たちは退避を諦め、目前の敵を道連れにしようと攻撃を開始する。
 だが、死病に罹ったクローン兵の動きは鈍く、キャラバンの小隊の銃撃を受けて次々と斃されていく。
(病は悲しみを運んできますが、病はときに、戦をも止めてみせるのです……ともあれ、この戦術は成功のようですね)
 やぶれかぶれに向かってくるクローン兵たちを長剣で薙ぎ払いながら、檬果は戦術の成果を実感する。
 こうして一つの戦いを終えた檬果は再び赤兎馬に乗り、次なる戦いに赴くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

引き続きシェリルさん達と共に戦おう
絶対に皆で生還するんだ、誰一人欠ける事無く!
相手は改造屍人の残りやら、追加でこちらへやって来る軍服の女の子達か

数が多いな…なら、これだ!
UC『破邪顕正』!敵を片っ端から行動不能にしてやる!
指揮官らしき存在を見掛けたら、行動不能の隙を突き一気に肉薄
【破魔】付与した刀の一閃で切り伏せる
指揮系統さえ乱せば、後は烏合の衆
油断さえしなければ皆で連携すれば絶対に皆で勝って生還出来る!

シェリルさんと共に皆を【鼓舞】し最後まで気を抜かず、戦い抜く

自分の負傷は後でどうとでもなる
周りの皆が致命的な一撃を受けないよう、そんな状況を見掛けたら間髪入れずに【かばう】



 一騎当千の猟兵たちが最前線でクローン将校の大軍勢と交戦する中、自陣は大混乱の渦中にあった。巨大化した改造屍人と人間大砲で次々に飛来するクローン将校。クローン将校は地面に落下すると狂ったように暴れだし、キャラバンの後方支援部隊の手を焼かせていた。
 そんな混沌たる戦場でシェリル率いる遊撃部隊に同行する鳳凰院・ひりょ(f27864)は奮闘していた。
「シェリルさん!」
 巨大化した屍人の触手をひりょが破魔刀で薙ぎ払うと、隙を伺っていたシェリルが戦斧を持って突っ込み、その首に刃を叩き込む。
 ザンッ。首を刎ねられた屍人は、血を流すことなくバタリと倒れ、黒煙を上げて蒸発する。
「ふぅ、とりあえず一段落ついたかな……あ、無線が鳴ってる」
 シェリルは無線機を耳に当て、表情を曇らせる。
 無線は前線へと救援に向かっていた仲間の部隊からだった。
 銃撃音。味方の叫び声。そして、助けを求める切迫した声が響く。

――助けてくれ。突然大群が現れた。早く、早く救援を……ひぃっ、無線を取られた! うわぁあああ!  

 無線はしばらく沈黙し、敵の隊長の冷淡な声が聞こえてくる。 

――我ら人間大砲部隊は、お前たちを殲滅するために潜伏していたのだ! 覚悟するがいい!

 ブツッ。乱暴な切断音が聞こえ、無線機が沈黙する。
 人間大砲で発射されたクローン将校の大部分は荒野に潜伏し、虎視眈々と後方支援部隊を狙っていた。
 自陣で暴れるクローン将校は陽動のための捨て駒。
 前線での戦闘が激化し、後方支援部隊と分断されたところを大軍勢で攻め込む。そんな作戦だったのだろう。

 無線の電波を探知し、救援に駆けつけた遊撃部隊は、敵の大軍勢の前で倒れている仲間たちを発見する。彼らは両足を骨折させられ、無残に放置されていた。
「仲間はまだ生きてる。ここはアタシが……」
 シェリルは反射的に言いかけた言葉を飲み込む。
 そして彼女は悔しげに唇を噛み、傍らに立つひりょを見つめた。
「ひりょくん……アタシたちに力を貸して。みんなで生き残るためにはキミの力が必要なの!」
 かつてのシェリルなら独断専行で突撃していただろう。
 だが、今回は感情を抑えて自分が仲間とともに生き残る道を必死に探り、最善の選択をしたのだ。
 ひりょはシェリルの横に並び、僅かに震える肩にそっと手を乗せた。
「わかりました。みんなで絶対に生き残りましょう!」
 そして、ひりょは部隊の先頭に立ち破魔刀を正眼に構えると、迫りくるクローン軍団を見据え、ユーベルコードを発動する。
「幾多の精霊よ、かの者に裁きを……破邪顕正!」
 周囲を取り巻く疑似精霊の光。その光は破魔刀に集束し退魔の力を宿らせる。
「俺が敵陣を崩します。シェリルさんたちは負傷者の安全確保をお願いします!」
 シェリルたちがうなずき、周囲に散開すると、ひりょは破魔刀を敵軍に向けた。
 すると、退魔の力を帯びた拡散波動が敵軍に襲いかかり、中央に密集していた敵部隊の前衛がなぎ倒される。
(このまま敵を負傷者から引き離す!)
 ひりょは前進しながら続けざまに拡散波動を放ち、クローン将校たちを戦闘不能に追いやっていく。
 だが、敵部隊も即座に動く。仲間が斃されながらも、俊敏な動きで四方八方に散らばり、射程外に逃れてしまう。ひりょは追撃を諦め、一息つく。
 むやみに追撃して仲間と分断されるのは避けるべきだろう。 
 それでも敵陣の分断は成功し、敵の軍勢もかなり減らした。キャラバンの後方支援部隊も到着して負傷者の救護も進む。
 ひとまず安心だが、まだ危機が去ったわけではない。

 周囲を警戒しながら戦況を確認していたひりょは、敵部隊と交戦するシェリルの遊撃部隊を見つける。
 その戦いぶりは目を見張るものがあったが、それ故に敵部隊が周囲に集まり、集中攻撃を浴びようとしていた。
(ここは俺が囮になって敵を引きつける!)
 ひりょは皆を守るために身を挺する覚悟を決め、敵の密集地へと突撃する。
 隊長を倒して指揮系統を乱せば残りは烏合の衆。一人でも勝機はある。
 ひりょはクローン将校部隊の巧みな連携攻撃を受け流しながら、隊長に肉迫すると破魔の刃で一閃。さらに隊長を失い、連携が乱れた一般兵たちを次々に斬り伏せる。
 対する敵の軍勢はひりょを潰そうと、配下のクローン兵を次々と差し向けてくる。
 敵軍の矛先が変わり、これで思惑通りとなったが、敵軍の攻撃は想像以上に激しかった。
(自分の負傷は後でどうとでもなる。絶対に皆で生還するんだ、誰一人欠ける事無く!) 
 強い決意を胸に秘め、破魔刀を振るい続けるひりょ。
 だが、敵軍の攻撃は一層激しさを増し、背後からクローン兵の渾身の一撃が迫る。 
 ザシュッ。ガガガガガガッ。背後の敵が一閃され、接近する敵部隊にガトリング砲の制圧射撃が放たれる。
 そして、ひりょの背後には、シェリルが背を向けて立っていた。
「ひりょくんは凄く強いけど、無茶しちゃダメだよ。キミが死んだら悲しむ人がたくさんいるんだからね!」
 シェリルはなんだか得意げに言い放つと、最後に「アタシもその一人だよ」と小声で付け加える。
 ひりょには最後の一言が聞き取れなかったが、それでも言いたいことはわかった。
 仲間は絶対に死なせない。シェリルや隊員たちとっては既にひりょも大切な仲間の一人なのだ。
「みんな! アタシがひりょくんを援護するからこっちは大丈夫! アタシたちは絶対に負けない! 全員でこのまま戦い抜くよ!」
「俺たちの後に続いてください! 皆で連携すれば絶対に皆で勝って生還出来る! このまま油断せずに戦いましょう!」
 シェリルとひりょが仲間たちを鼓舞し、鬨の声が上がる。
「うぉおぉおお!」
 こうして過酷な荒野の戦場で一致団結した遊撃部隊は、最後まで誰一人欠けることなく、戦場を駆け抜けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「皆さんは固まって交替しながら制圧射撃を!なるべく敵を近付かせないようにして下さい!私は車の武器を取りに行きます!」

第六感や見切りで敵の妨害躱しケータリングカーに辿り着いたらUC「出前一丁・弐」
アクセル目一杯踏み込み地上1mの高さを音速飛行で敵陣に突っ込み敵を縦横無尽に撥ね飛ばす
「車の重量だけなら止められるかも知れませんけれど…今はマッハで飛べますの。全員撥ね飛ばして差し上げます」
敵を効率良く撥ね飛ばせるよう第六感や見切り使用しながら操縦
「マッハ仕様でシャシーも強化済みです…銃弾ばらまく程度じゃ止まりません」

戦闘後
キャラバン人員を医療で治療後あるだけ食材提供しBBQ
死者への鎮魂歌はこっそり歌う



●疲弊する隊員たち
「くそっ、敵が多すぎる!」
「ひぃぃ! 弾が当たってるのに突っ込んでくる!」
「うおっ、動きが速いぞ。射線から逃げやがる!」
 洪水のように押し寄せてくるクローン将校の大軍勢。
 キャラバンの精鋭たちと言えども、平常心ではいられない脅威が目の前にあった。
「焦らないで、冷静に対処すれば大丈夫です。皆さんは固まって交替しながら制圧射撃を! 相手は接近戦が得意なようですから、なるべく敵を近付かせないようにして下さい!」
 3つの小隊の指揮官を務める御園・桜花(f23155)は、隊員たちをなんとか宥め、攻撃の指示を出す。
 だが、隊員の疲弊は激しかった。このまま消耗戦を続ければ、いずれ弾薬も底をつき、怪我人どころの騒ぎではなくなるだろう。
 桜花はしばし黙考し、起死回生の方策を思いつくと、部隊の小隊長の青年に声をかけ、車を取りに一旦野営地まで戻ることを告げる。
「よろしくお願いします。桜花さんがいない間、ここは僕たちが持ちこたえてみせますから!」
 小隊長の青年は心強い言葉で送り出す。彼は桜花に助言を受け、指揮官として成長していた。
 だからこそ、厳しい戦況で自分たちが長くは持ちこたえられないことも、薄々気づいていたのだ。
 話がまとまり桜花は青年に礼を言うと、踵を返す。
 車が置いてある野営地まで大分距離がある。急がなければ間に合わない。
 背後では交戦中の激しい銃撃音が響き、必死に指示を出す小隊長の叫び声も聞こえてくる。
(できるだけ早く戻ってきます。皆さん、それまでご無事で……)
 桜花は背後を振り返りたい衝動を抑えながら、クローン将校の追撃をくぐり抜け、先を急ぐのだった。

●ケータリングカー、発進!
 荒野を駆け抜け、ようやく野営地に戻ってきた桜花はピンク色に塗装されたキュートなケータリングカーの運転席に腰を据える。
 だが、桜花がエンジンをかけると、甲高い駆動音が混じった独特のエンジン音があたりに響く。
 そう、ケータリングカーはただの移動型店舗ではない。
 ジェットエンジンに匹敵する特別製のターボエンジンが搭載され、ボディやシャシーには耐久性・耐熱性が非情に高い特殊な合金が使用されている戦闘車両だ。
 疲弊するキャラバンの人々を救う起死回生の策。それはケータリングカーによる敵軍への突撃だった。
 桜花はシートベルトをしてハンドルを握り、一度深呼吸をして呼吸を落ち着かせると敵陣へと出発する。
(ケータリングカー、発進します!)
 そして、桜花は敵陣が見えてくると、アクセルを目一杯踏み込みながらユーベルコード『出前一丁・弐』を発動させる。すると車体が地上1メートルまで浮かび上がり、エンジンが爆音を上げて猛烈な推進力を生み出す。
 桁外れの速度で加速するピンク色の車体は、音速の壁を瞬時にぶち破ってソニックブームの衝撃音を轟かせ、さらに加速しながらクローン兵団に突撃する。
「車の重量だけなら止められるかも知れませんけれど……今はマッハで飛べますの。全員撥ね飛ばして差し上げます!」
 桜花の言うとおり、低空飛行で弾丸のように飛翔する車体は、音速を遥かに超えていた。
 これにはクローン将校たちもびっくり仰天。すぐに避けられずに車体に激突し、驚愕の表情のまま宙に跳ね飛ばされる。激突されたクローン将校は既に致命的損傷を受け、落下とともに黒煙を上げながら骸の海へと還り、残された黒い塵は強風にさらわれていく。
 
 さらに桜花は敵陣を真っ直ぐ突っ切った後に空中で方向転換し、再び敵陣を強襲する。
 音速のマシンを操るのは至難の業だが、桜花は身につけた技能で仲間を巻き込まないルートを瞬時に選択し、敵軍を駆逐していく。
 対するクローン将校の軍勢は思い出したように懐から護身用のオートマチック拳銃を取り出し、一斉に撃ち始めた。
 タタタタタッ。軽快な発砲音を鳴らし、毎秒1000発、2000発と打ち込まれる弾丸。それでも空飛ぶ暴走車両はびくともしなかった。
「マッハ仕様でシャシーも強化済みです……銃弾ばらまく程度じゃ止まりません」
 桜花のケータリングカーは防弾性能もバッチリ。こうなれば敵軍にはなす術はない。ケータリングカーは縦横無尽に荒野を飛翔し、クローン将校の軍勢を滅ぼしていく。

 ちなみに、桜花が指揮していた部隊の面々は、ケータリングカーの雄姿を呆然と見守っていた。
「あの車、桜花さんだよな。あの人やっぱスゲーよ。破天荒過ぎる……」
 敵軍の指揮官が対応に追われ、各部隊の指揮系統も乱れているようだった。
 そして、クローン部隊の連携が崩れた隙になんとか敵部隊を押し返し、彼らはようやく安堵するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコリス・ガレシア
敵の大群を見て
「無闇に力を使えば不利だな」
仲間の猟兵たちが各々の作戦へ移るのを察知し
「なら、俺はこのまま防衛に専念するか」
独り言をつぶやき、戦場を駆け大蛇たちへ指示する
「我が同胞よ。敵対者を殲滅し、我らが力を示せ!」
「キャラバンの子らを守り抜くのだ!」
自身も戦場を駆け、追い詰められているキャラバンの部隊があれば増援に向かう。
「待たせたな。後は任せろ」
鬼の怪力の隻腕の右手で天叢雲剣を振るうと暴風を纏った斬撃で敵を真っ二つにしていきます。
「痛みを感じないのなら、一撃で動けなくすればいいだけだ」
大蛇たちもそれぞれ散らばせます。
「敵には大将がいる。見つけ次第、伝えろ」
残像を生み出す高速移動で襲撃する。



●出陣
 巨大化した改造屍人の群れの討伐を手伝い、少し遅れて最前線に合流したリコリス・ガレシア(f28348)は、友軍と交戦するクローン将校の大軍勢を憮然とした表情で眺める。
 リコリスは既に左腕の神器に宿る人格、『鬼の少女』に変化していた。
 つややかな漆黒の長髪、憂いを帯びた赤色の瞳、側頭部の般若の面が印象的な和装の少女。
 左腕から神器は既に引き抜かれ、神剣・天叢雲剣は右手にしっかりと握られている。
「この数なら俺たちにとっては多勢に無勢ではないが、無闇に力を使えば不利だな」
 力の使い過ぎは体力の消耗を早める。持久戦になりそうな戦場で、無闇に力を行使するのはできるだけ避けるのが定石だろう。
 歴戦の武人である鬼の少女は沈着冷静だった。
 さらに戦場を見回し、攻勢に出ている猟兵が多いことを察知すると、守りが手薄になりそうだと判断する。
「なら、俺はこのまま防衛に専念するか」
 鬼の少女は独りつぶやくと大地を蹴り、天叢雲剣を掲げた。
「我が同胞よ。敵対者を殲滅し、我らが力を示せ!」
 ユーベルコード・眷族召喚-大蛇-。
 鬼の少女の求めに応じ、神剣より放たれたのは8匹の大蛇。大蛇たちは彼女に従う忠実な同胞である。
「キャラバンの子らを守り抜くのだ!」
 指示を受けた大蛇たちは敵を屠り、味方を守るべく乱戦模様の戦場へと散っていく。
 そして、鬼の少女は赤い瞳を眼前のクローン部隊に向け、出陣するのだった。

●暴風を纏う刀
 私達がみんなを助ける。心優しき主の想いを背負い、鬼の少女は戦場を疾風のごとく駆け抜ける。そんな彼女の耳に救援を呼ぶ声が届く。
「ちっ、弾もねえし、もう俺ら、ダメなのか……」
「わぁああ! 誰か助けてくれぇえええ!」
 クローン部隊に追い詰められた小隊長から絶望の声が漏れ、パニックを起こした隊員が発狂する。
「うるせえ! 黙れ!」
 ガツン。小隊長がゲンコツで殴り、隊員は半べそをかきながらおとなしくなる。
 彼らは10人。対するクローン将校は50体。数にして5倍の差があった。
 アサルトライフルの弾も撃ち尽くした。この状況を打開する術は思いつかなかったのである。
 そして、大ピンチの彼らの前に、鬼の少女が救援にあらわれる。
「待たせたな。後は任せろ」
 十人の命を一人で背負い、少女は敵を見据える。 
 敵は多いがあの程度なら脅威ではない。クローン将校は痛みを感じないようだが、一撃で倒せばいいだけだ。
 そう判断した鬼の少女は単身で突入すると、驚異的な腕力でクローン将校たちを薙ぎ払い、両断していく。
 だが、一対一で勝てないと悟ると、敵部隊は素早く隊列を整え、鬼の少女を取り囲む。
(対応が早いな。だがその程度では俺は倒せんぞ!)
 鬼の少女は赤い瞳に殺気を宿し、僅かに腰を落とし下段構えで待ち構える。
 すると、クローン将校たちが動く。
 8方向から8体同時に地面を蹴り一気に距離を詰めてくる。さらに後方から8体のクローン将校も続く。
 仲間が何人斬られてもいい。誰かが攻撃を直撃させ、そのまま後方の追撃部隊で押し潰す。
 配下は捨て駒。そんな考えが根本にあるのが透けて見える捨て身の戦法だった。
 対する鬼の少女は目を閉じると、右手の天叢雲剣に風の力を宿す。
 すると彼女を軸にして気流が生じ、足元に小さな渦が生まれる。
 そして小さく息を吐くと、鬼の少女は上半身を捻り、静止する。
 瞬時に張り詰める空気。一斉に飛びかかってくる敵兵。鬼の少女はその場で旋回しながら、神剣を振った。
 シュン。風を切る音が鳴り、円弧を描く神剣の軌跡が捨て身の敵兵を次々と真っ二つにし、斬撃とともに生じた旋風が敵の死骸を宙へと舞い上げる。「おおっ」と背後の味方がざわめき、十数体の死骸が虚空に黒い塵だけを残し、消滅した。
 避ける気がない敵など、瞑目してても斬り伏せられる。
 敵をすべて葬り、ようやく目を開いた鬼の少女は、部隊を指揮する青い軍服の女を冷ややかに見つめる。
(所詮、お前も捨て駒か……やはり大将を討ち滅ぼさねばならぬな……)
 鬼の少女は残る敵を斬り伏せ、味方の小隊の安全を確保すると、大蛇たちに命令を下す。
「敵には大将がいる。見つけ次第、伝えろ」

●追い詰められるクローン将校
 クローン将校の大軍勢との戦いは終盤を迎えていた。
 猟兵たちの活躍で敵の増援部隊は既に枯渇している。
 敗色濃厚の戦況に、クローン将校の兵団を率いる「少佐」は側近の部隊を引き連れ、退却を始めていた。

 少佐の退却部隊は岩場に隠れながら匍匐前進で進む。
 敗北者が地面を舐めるような屈辱だが、手段を選んではいられない。
 一旦引いて態勢を立て直せば、逆襲は可能だ。
 今度はもっと強い同胞を呼び寄せる。クローン兵士どもも今回の倍は用意しよう。
 自分さえ生き残ればすぐに再決起が可能なのだと、少佐はほくそ笑むのだった。

●発見
 大将の捜索を命じた大蛇から、戦場から逃亡を図る怪しげな部隊を発見したとの報せを受けた鬼の少女は、岩陰に隠れて移動の隙をうかがっている赤い軍服姿のクローン将校の部隊を発見する。
「見つけたぞ。お前が大将だな」
 見つかった。その瞬間、少佐は素早く後方に下がり、鬼の少女に差し向けられた前衛部隊から劣化コピーが大量に放たれる。
 劣化コピーは小型サイズのクローン兵。その召喚速度は高速で、瞬時に濁流のような流れを形成し、行く手を阻む
 少佐を逃がすための時間稼ぎ。捨て駒の前衛部隊の目的は明らかだった。
 だが、鬼の少女は地面を蹴ると、その流れの中へと身を投じた。
 最小限の道を作ればそれで充分。鬼の少女は残像ができるほどの高速移動をしながら、神剣を振るって劣化コピーの群れを薙ぎ払い、敵大将との距離をぐんぐん縮めていく。
 そして、前衛のクローン部隊を跳躍して飛び越えた鬼の少女の目前には、少佐に寄り添い、保護するように移動する後衛部隊。
 後衛部隊は咄嗟に懐から護身用のオートマチック拳銃を取り出して連射する。 
 少佐を逃がすための窮余の策なのだろう。だが、鬼の少女は止まらなかった。
 残像を残すほどの高速移動で照準から逃れながら前進し、正面から飛んでくる弾丸を神刀で弾く。
 さらに、鬼の少女は拳銃を持つ後衛部隊を薙ぎ払うと、拳銃の引き金を引こうとする少佐に近接する。
「遅い!」
 ザシュッ。敵将の首を取る。その言葉のままに、鬼の少女はすれ違いざまに少佐の首を刎ねる。
 そして、鬼の少女は背後で黒い塵と化し、骸の海へと還っていく憐れな軍人を振り返ることなく、戦場へと再び戻っていく。
 大隊長を斃された退却部隊のクローン兵たちは持っていた拳銃で自分の頭部を撃ち抜き、骸の海に還るのだった。
 
===========================================================

●終戦
 長きにわたる戦いは終わった。
 クローン将校の大軍勢は駆逐され、荒野にはその残滓と思われる無数の黒い塵が舞い散っていた。
 猟兵たちは無事任務が成功したことに、ホッと胸をなでおろす。 
 
 ストームブレイドたちは気力を出し尽くし、その場にへたり込んだ。
 自分たちが今、生きているのは夢なのではないか。
 その呆けた顔にはそんな現実感のなさがありありと浮かび、過酷な戦いだったことを如実に物語っていた。
 いずれにせよ彼らは猟兵たちの活躍により、誰一人欠けることなく、生き残ったのである。

●宴
 広い荒野では、太陽が沈もうとしていた。
 夕焼けに染まる野営地にはテーブルと椅子が並べられ、屋外での「勝利の宴」が開かれていた。
 テーブルの上にはキャラバンの料理長が存分に腕を振るった料理が並んでいる。
 そして、ピンク色のキッチンカーの前には長蛇の列ができ、柔和な笑みを浮かべた女性がバーベキューを振る舞い、大盛況のようだった。

 宴には戦いの勝利に多大な貢献を果たした猟兵たちの姿もあった。
 現地の料理をたっぷり味わい、キャラバンの人々と談笑する者。
 偉人たちとともに、キャラバンの人々に様々な知恵を授けて回る者。
 マイペースに帰り支度をしつつ、夕日をぼんやりと眺める者。
 そして、戦いを通じてキャラバンのメンバーたちと絆を深めた者もいた。
「アタシはもっともっと強くなる! いつかキミみたいになれるようにね!」
 キャラバン最年少の女性は、親しくなった猟兵の前でさらなる成長を誓う。
 彼女だけでなく、「サウザンド・トラッシュ」のストームブレイドたちは猟兵たちに出会い、多くのことを学び、成長したことだろう。 
 猟兵たちは今回の任務で、苛酷な世界を生きる彼らに目に見えない「財産」を残したようだった。

 宴が終わり、キャラバンのリーダーが代表して猟兵たちに感謝の言葉を述べる。
「ありがとう。今、私たちが生きているのアンタたちのおかげだよ。この恩はいつか必ず返す。何か困ったことがあったときには声をかけてくれ!」 
 こうして無法地帯のアポカリプスヘルで心強い協力者を得た猟兵たちは、キャラバンの皆と別れを告げ、帰路につくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月29日


挿絵イラスト