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食卓から生まれし懐旧は時計ウサギの夢を描くか

#アリスラビリンス #戦後 #マイ宿敵

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●彼岸花の日記:1ページ目
 目が覚めた時、私の目の前には見知らぬ世界が広がっていました。
 私は確かにあの時、愛しい子らの目の前で死を迎えたハズ。
 ここが常世?いいえ、違うのでしょう。
 だって死んでいるのなら、こんな空腹感は覚えないもの。
 どうしましょう、ひとまず近くで何か食べられるものはないかしら?


 ここはどうやら獣人の方?が住む国のようです。
 ひとまず手当り次第、食べられそうなものを手に私は国の方々にお願いしました。

 「お料理を作る為の厨房を置く場を、貸してくださいますか?」

 恐らくいきなりで不躾だったのでしょう、とても怯えていらしたけれど許しを得られたので私は急いでご飯を作ることにしました。
 すると国の方々もお手伝いくださるというのです。まあ、なんて優しいのでしょう?
 お言葉に甘えて、一緒にお料理することにしました。
 せっかくですから、この方々ともお食事しましょう。みんなで賑わいながら食べるご飯はとってもおいしいですものね。
 まるで孤児院にいた頃を思い出して、気持ちが暖かくなってきました。


 彼女は決して気づかない。
 自分が持ってきた食材がそれはとても生き物が食べるものではないことに。
 そして、自らがオウガとして蘇り、愉快な仲間たちを脅しているも同然の言葉を吐いていることに――!

●グリモア猟兵、今まで以上に心境複雑な模様?
 戦後のアリスラビリンスでオウガの動きを予知したというので招集された猟兵たちはグリモアベースにやってきたのであるが当のグリモア猟兵、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は四つん這いになって項垂れていた。
 何かぶつぶつ言っているが、気づけばすぐにいつもの調子に戻るだろう。

「……あ、ああ、すまない。集まってくれてありがとう、予知した内容について説明するよ」

 さて、オウガ・オリジンが討伐され支配体制が大きく揺らぎつつあるアリスラビリンスだが、未だにアリスは生まれ続けている。
 さらにそんな中でさらに幸先よろしくない予知を陵也はしてしまった。
 オウガ・オリジンがかつて持っていた「現実改変ユーベルコード」に僅かながらも覚醒した新種のオウガが誕生したのである。

「そのオウガ……名前は地籠曼珠と言う。彼女はどうやらオウガである自覚が全くないようだが、生まれたばかりで飢餓状態にある。
 だから、近くにあった不思議の国にたくさんの材料と厨房を持ってきて、自分と愉快な仲間たちとで料理を作って食べている。食べているんだが……まあ、察して欲しい。かつて迷宮災厄戦でもオウガ・オリジンに料理を振る舞ったことがあるなら、特に」

 つまり、迷宮災厄戦で腹を好かせていたオウガ・オリジンと同じ用に、とんでもない劇薬や鉄製品等を調理しておいしく食べているらしい。
 そしてそれと同じならば、弱点も同じである――そう、至って普通においしく健全な料理を食せば勝手に倒れるのである。
 見た目を良くすれば食べずにはいられないのだ。
 しかしただ倒せば終わるというワケではない。

「自覚のない曼珠はきっと食べれば満足して倒れていくハズ……なんだが、オウガとしての本能はまた別に違いないだろう。
 きっと倒れると同時に現実改変の力を使って死の間際にイマジンモンスターを生み出す。当然、通常のオウガより強力なものを」

 イマジンモンスターが生まれた直後はまだ現実改変力が国に残っている状態となる。
 倒す為には猟兵たちも想像力を膨らませ、イマジンモンスターに変身することで力を上回ることができるそうだ。
 何でもいいので「ぼくが考えるさいきょうのそんざい」になって、そのイマジンモンスターも撃破すれば一件落着となる。

「まあ、料理が苦手な人もいると思う。
 そういった人は料理ができる人の手伝いをするとかしたり、その間曼珠と話をするなりで時間を稼ぐなりするというのもありじゃないかな」

 とにかくおいしい料理を作って倒して最後っ屁に出したものをさいきょうになってぶっ倒せ、という至ってシンプルな依頼だ。
 あまり考える必要はないからな、と言って陵也は転移陣を展開し猟兵たちをアリスラビリンスへと送り届ける。

「……こう、今回ばかりは俺が行けないのが大変申し訳無いんだが頼む。なんとか止めてくれ……!」

 何故かはわからないが、全員が送り届けられるまで陵也は大変申し訳なさそうに何度も頭を下げていたという……。


御巫咲絢
 ※このシナリオはトンチキと見せかけて実は真っ当な感じでお送りする予定です。
 えーボスが片方手前味噌で大変すいません!!!と先に謝罪しておきます。
 どうも一ヶ月ぶりです、初めましての方は初めまして御巫咲絢です。
 当シナリオをご覧頂きありがとうございます!初めての方は一応MSページもお目通し頂けると幸いです。

 アリスラビリンスの戦後シナリオをお届けします。
 OPは割とトンチキな風味ではありますが、心情描写重視でお送りする予定でございます。
 全章ボス戦になりますが、両方にプレイングボーナスをご用意致しておりますのでご参照ください。
 以下各章概要です。

●第1章
 『『揺り籠の母』地籠曼珠』は自身がオウガであるという自覚がない為、性格"は"非常に友好的です。攻撃は行ってきません。
 むしろ猟兵の皆さんの話を喜んで聞きたがるまであるかもしれません。お手伝いをしたいと言われたら上手いこと断ってください(無自覚に毒薬とか混ぜ始めるので)。
 綺麗で安全でおいしいご飯を食べたらちゃんと死にます。
 こちらに関しては戦闘苦手な方でも比較的ご参加頂きやすいような描写を目指して参ります。
 プレイングボーナス:皆で食卓を囲みながら語らい合う。

●第2章
 イマジンモンスター『『時繋穴の番兎』クロノス』との戦闘です。
 過去を懐かしむ懐旧の感情から生み出されたイマジンモンスターになります。
 放置しておけば大変なことになりますので、迷わず倒してください!
 こちらはいつものお馴染みボス戦シナリオとなります。
 プレイングボーナス:ぼくの考えるさいきょうの存在に変身して戦う。

●プレイングについて
 7/5(月)に断章を投下してから受付開始予定です。
 それ以前に頂いたプレイングは全てご返却させて頂きますのであしからずご了承ください。もしお気持ちに変わりなければ失効を以ての返却後、ご再送頂きましたら執筆させて頂きます。ご検討くださいませ。

 片方のみの参加、途中からの参加どれも大歓迎です!皆様のプレイングを心よりお待ち致しております!
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第1章 ボス戦 『『揺り籠の母』地籠曼樹』

POW   :    だいちのゆりかごのおうち
小さな【孤児院の玄関相当のサイズのドア 】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【懐かしさを感じさせる家で、一晩泊まる事】で、いつでも外に出られる。
SPD   :    安らぎの楽園
【心が安らぐ懐かしい香り 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ   :    「疲れたでしょう、ゆっくりしていってね」
【手作りのお茶菓子(毒はない) 】を給仕している間、戦場にいる手作りのお茶菓子(毒はない) を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:kai

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠地籠・陵也です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●見た感じはとても微笑ましい食卓
「なる程、ここはそういう場所なのですね……」

 件の現場では食卓を囲みながら、今回の騒動の中心にいるオウガ・地籠曼珠が愉快な仲間たちから世界の情勢を聞いていた。

「いきなりこの世界に放り込まれて、化け物に追われてしまうなんて……可哀想に。ご両親もいきなり子供がいなくなってさぞ悲しんでいるでしょうし……」

 眉を八の字に下げながら、曼珠は全く無自覚に作った劇薬物をぱくり。
 愉快な仲間たちは一つも手をつけていないが、お腹が空いていないと言えば、

「あら、そうだったんですね?ごめんなさい。お腹が空いていないのに無理に食べて戻してしまってもよくないものね」

 ……と、素直に応じてくれたものだから非常に困惑した様子でこのオウガと応対していた。
 どうやら本当にオウガとしての自覚がないようだ。とはいえやってることがやってることなのでまあ、そういうことなのだが。
 従わなければ殺されると思って一緒に料理を作ったのにいざ食卓を囲むと、それこそこの世界に外からやってきた存在――アリスや猟兵と変わらない接し方をしてくるとなればどうすれば良いかわかったものではないだろう。
 その上アリスや猟兵の話をしても全く「食べたい」の一言も出ないのだから驚きだ。
 そう会話をしている間に、再び皿の上のものはすっからかんに

「あら、もう食べてしまったわ。新しいのを作らなきゃ……」

 先程から何人分になるかわからぬ程の食事をしているというのに未だに空腹感が拭えない曼珠は再び食事を作ろうと厨房へ向かうべく席を立つ。
 びく、と愉快な仲間たちは震えた。
 当然だ、今はこのように穏やかでもいつオウガとしての本性を現すかと怯えるのが至極当たり前の反応である。

「あら、またお手伝いくださるの?ありが――」

 猟兵たちが訪れたのは、まさにそんな時だった。
 突然何もないところから転移陣で姿を現した猟兵たちに、あらと曼珠は首を傾げる。

「まあ、何もないところから突然……もしかして貴方がたはこの方たちがお話してくださった方かしら?」

 しかし天敵たる猟兵を前にしても、自覚のないオウガは普通の人間と変わらぬような接し方である。

「今お食事を作ろうとしていたところだったんです。よろしければ皆さんもいかがですか?」

 このまま彼女に料理を作らせれば劇薬物塗れ間違いなしである。
 が、この調子なら自分たちが作ると言えば素直に応じてくれそうなのは間違いない。
 猟兵たちはこの毒塗れになってしまった厨房を浄化する勢いで調理を決意するだろう――!
アリス・フェアリィハート
アドリブ等歓迎

オウガさんを止めなきゃ…
でも
曼珠さんは…

胸を痛めつつ
食卓へ

『お茶会ですか?…お料理は私達がお作りしますから…』

作るお料理は
『フェアリーケーキ』

それ程お料理は
得意ではないけど
レシピも見つつ
【料理】で
心を込めて作ります

『えっと…生地の材料をボウルで混ぜて…次にバタークリームのアイシングは…』

曼珠さんが手伝いを申し出たら
丁重に断り

『あ…いえ…自分の手で、作って差し上げたいんです…』

(曼珠さん…まるでお母様みたいに優しいです…)

出来たら
皆で食卓を囲み
語らい

『これは…妖精のケーキって言われてて…見た目も可愛くて私も好きなんです』

そして
曼珠さんに
ケーキを振舞います…

…ごめんなさい…曼珠さん…



●ケーキは甘く、罪悪感はほろ苦く
「(オウガさんは止めなきゃ……でも……)」

止めなければならない。
討伐する必要がありそれが覆ることは決してない。
だが、自覚がないオウガの人格そのものに対しある意味では騙し討ちをするようなものである。
アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)はそれ故に胸を痛めた。

「まあ、貴女も猟兵さんなの?」
「あ、は、はい……」
「まだ小さいのに立派にお仕事しているのね。とっても偉いと思うわ。しっかり者さんなのね」

 いざ対峙すれば、曼珠は視線を合わせるようにしゃがんでアリスの頭を優しく撫でる。
 まるで母親が娘を褒めるかのような光景、とても猟兵とオウガの対峙とは思い難く彼女の手の優しさとぬくもりに偽りは一切感じられなかった。
 故にアリスの胸にちくり、ちくりと罪悪感の針が突き刺さる。
 けれど彼女を放置してしまっては再びアリスラビリンスが脅威に晒されてしまうのだ。
――選択肢は、ない。

「お名前は?」
「アリス・フェアリィハート、です……」
「アリスちゃん、素敵なお名前ね。こうしてあったのも何かの縁だし、一緒にいかがかしら?」
「お茶会ですか?……はい、喜んで……お料理は、私たちがお作りします」

 作りたいものがあるので、と念押しも兼ねて伝えれば、曼珠は快く承諾してくれた。
 本来のオウガであれば普通抵抗がてら何かしら口添えをするものだが、自覚がないとこうも猟兵に対してすら友好的になるものなのであろうか。それは誰にもわからない。

「もし困ったことがあったらいつでも言ってね、お手伝いするから」
「ありがとうございます……でも、自分の手で、作って差し上げたいので……一人で、頑張ります」

 料理は得意か、と言われると否だ。だが全く作れないというワケではないし、レシピを見ながらその通りに再現することはアリスにとって難しいことではない。
 何よりも、"心を込めて作る”ことこそが一番の旨味を引き出すスパイスと教わった。
 得意と自信を持って言うことはできずとも、心を込めて作ることであれば誰にも負けないと調理を行う。

「えっと、まずは……生地の材料をボウルで混ぜて……」

 レシピを見ながら、卵2個とグラニュー糖を50~60度程度のお湯で湯煎しながら混ぜ合わせる。
 温めることで卵は非常に泡立ちやすくなるとはレシピのワンポイントアドバイス。
卵の温度が40度程になったら湯煎から上げてさらにかき混ぜ、生地を垂らした後が消えなくなる程度の固さになったらミルク、薄力粉を加えてゴムベラでさっくりと混ぜ合わせる。
それからケーキ型に生地を流し入れ、表面を鳴らして170度のオーブンで焼き上げればスポンジは完成。冷めたらスポンジを三枚に切ってシロップを塗っておけば完璧だ。

「次に、バタークリームのアイシングは…………あっ」

レシピを見ようとしてうっかり手を滑らせて落としてしまうアリス。多分料理中に時たまあるハプニングではあると言えるだろうか。
 踏み台から降りて拾おうとしたら――

「はい、どうぞ」

 曼珠がレシピを拾ってくれていたようで、そっと差し出してくる。

「あ、ありがとうございます……」
「ごめんなさいね、どうしても近くで見たくなっちゃって」
「いいえ、そんなことは……頑張って、作りますね」

 にこやかな微笑みで、本当に手をつけることなく曼珠はアリスを見守っている。

「(曼珠さん……まるでお母様みたいに優しいです……)」

 先程から自分を本当の子供のように可愛がってくれているようにアリスには感じられてならず、時々表情が曇る。
 だがそれを見せてはならない。
俯いていたらそれこそ心配な顔をして親身に話を聞いてくれるだろうことがわかってしまったから。
 倒さねばならないと割り切る為、アリスは自分の気持ちに少しばかりの蓋をして調理を続け――


「おまたせしました……」

 そうして出来上がったケーキは、見栄えからしてとても綺麗で可愛らしいものであった。
 シロップを塗り込んだスポンジにいちごを初めとしたケーキにメジャーなフルーツを贅沢に挟んでおり、ふんわりとしたバターフルーツで塗り固められたその上にウサギの形に切ったオレンジやリンゴを乗せている。
 曼珠がまあ、とその可愛らしさに目を輝かせるだけでなく、不安そうに見守っていた愉快な仲間たちからも感嘆の声が上がった。

「これは……妖精のケーキって言われてて……見た目も可愛くて、私も好きなんです」
「本当、とても可愛らしくて素敵なケーキね!うさぎさんが乗ってるからより一層可愛らしく見えるわ」

 切り分けられたケーキを目の前に食べるのが勿体ないわ、と曼珠は頬に手を当てて嬉しそうに笑っている。

「あ、この薄切りのリンゴは妖精の羽根の形に切っているのかしら?」
「はい……妖精のケーキ、なので」
「まあまあ、こんなに綺麗に作れるなんて、アリスちゃんはお料理がとても上手なのね。こんな素敵なケーキを作ってくれてありがとうね」
「はい……どうぞ、召し上がってください……」

 自覚のあるオウガであればここまでに何かしら抵抗をしたものであるが、自覚のないオウガである曼珠は何の疑いもなくフォークを手に取っている。
 それが美味でありながらも自らを死に至らしめる猛毒に等しいことも知らず、早速一口味わって――

「んん~♪とてもおいしいわ!フルーツの酸味とバタークリームの甘みの相性が抜群だわ……!隠し味にチョコも使っていらっしゃるの?」
「あ、は、はい……バタークリームを作る際の材料に、ホワイトチョコレートが……」
「なる程、とても優しい味なのはホワイトチョコを使っているからなのね……いえ、きっとアリスちゃんの優しさもたくさん詰まっているのかも。いくらでも食べられちゃうわ。ふふ、昔子供たちが頑張ってケーキを作ってくれた時のことを思い出すわね……」

 曼珠は昔を思い出し、懐かしみながらぱくぱくと食べていく。
それが力を奪っていることにすら自覚がなければ気づかないのだろうか、表情に変化は見えない。
 愉快な仲間たちも――一部見た目的にフルーツやチョコレートは大丈夫なのかどうかとかいう心配はあるが――おいしい、おいしいと喜んで食べている。
 アリス自身も口にして味わうことで、納得の行く出来だと感じた。
だが、それでも拭えぬ罪悪感は蓋をしたところでこじ開けてくる。

「……ごめんなさい……曼珠さん……」

 誰にも聞こえぬように呟いた謝罪が、美味しさに喜ぶ声が響く食卓の中に消える。
 しかしながら気取られぬよう振る舞う為、アリスは目の前のオウガであるハズの女性を含めた皆でケーキを食べながら歓談を続けた。
 こんなに喜んでくれているからこそ、真意を知らぬまま、楽しい思い出として彼女の中で終わってほしいと願って――

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロス・フレイミー
※アドリブ・連携歓迎
【WIZで判定】

え、ああ…どうも初めまして。通りすがりの者です。
これからお食事ですか?簡単なものなら作れますので、せっかくですし作りましょうか?
普通のだと味気ないのでナッツ入りのクッキーを作りましょうか。

オーブンを貸していただければそれで大丈夫です、はい。

(…さすがにおいてある小麦粉とかに毒混じってないよな…いや…。)
(と考えつつこっそり材料に【浄化】を使って対策。)

(身の上話を振られたら)
ああ、ただの旅人ですよ。両親に先立たれてしまったので、剣術の修行も兼ねて旅をしているのです。まだ見ぬ猛者を求めてといった感じでしょうかね。そんなところです。



●追憶と紅茶とクッキーと
「え、ああ……どうも初めまして、通りすがりの者です」
「初めまして、綺麗な黒い羽根をお持ちなのね」
「ありがとうございます……?」

 クロス・フレイミー(狭間の剣士・f31508)は首を傾げながら頭を下げた。
 近づく敵は叩き切るだけであるが、近づいた敵はよりにもよって敵意ゼロ。
 やることはわかっていてもさてどうしたものかと思ってはしまう。

「これからお食事ですか?」
「ええ、せっかくですから黒い羽根の天使さんも一緒にいかがかしら?」
「ではお言葉に甘えて……簡単なものなら作れますのでせっかくですし作りましょうか」
「まあ、よろしいの?じゃあ、私もお言葉に甘えちゃうわね。お手伝いはいるかしら?」
「いえ、オーブンを貸して頂ければそれで大丈夫です、はい」

 無事キッチンに一人で立つことに成功したワケであるが、こうも疑わずにすんなり通されるとやはり調子が狂うものである。
 いくら何でも人が良すぎるのだ。
 こちらの言葉を一切の疑いなく受け入れてしまう様は、相手がオウガである故に余計に裏があるのでは――と、これまでの戦いの経験が邪推を促してくる程に。

「(自覚がないとはある意味では厄介だけど……知らないまま終わるのも幸せということもあるのか?)」

 自らの餌も同然であるアリスでさえ気にかける程だ、仮に今生まれたばかりでなくアリスを恒常的に喰らっていたならば――と、思考しかけたところで無意味であることに気づいてクロスは考えるのをやめた。

「(普通のだと味気ないので、ナッツ入りのクッキーを作りましょうか)」

 ナッツもどれか一種類に絞るのは味気ないので無塩のミックスナッツを使用――というところでふと頭を過る一つの可能性。

「(……流石に置いてある小麦粉とかに毒混じってないよな……?)」

 自覚なく到底人の食べるものではないものを持ってきたのだから否定はできない。
「(いや……入っていたとしても何とかできるか)」

 念の為材料を浄化することで憂いを取り除けば何も問題はなかった。
 改めて調理再開である、先に用意したミックスナッツを粗めに刻んでおき、次に常温に戻した無塩バターを柔らかくし、ふるいにかけた粉糖と混ぜ合わせ、さらにその後牛乳を三回に分けて入れて混ぜ合わせる。
 バニラビーンズの種も入れてさらに混ぜたら薄力粉とアーモンドプードルをふるい入れ、切るように混ぜ合わせたらここで先程刻んだミックスナッツを投入。生地が白っぽくなったらラップで包んで冷蔵庫で1時間寝かせた後打ち粉を振るって練り棒状にまとめ、再びラップに包んで冷蔵庫で固めた後、厚めに切ってグラニュー糖をまぶし、170度のオーブンで20分。
 せっかくだし紅茶も淹れてしまうかと、焼いている間にカップを温め、茶葉をお湯で蒸らすと曼珠がそれを楽しそうに眺めていた。

「紅茶を淹れるのも上手なのね」
「もう少しで完成しますよ」
「ああごめんなさい、急かしてるワケではないの。誰かが料理をしているのを見るのが好きで……」
「なる程?」

 料理にしろ何にしろ、物出来上がるまでの過程というものは不思議と視線を向けずにはいられないものである。
 クロス自身も経験したことはあった。今は最早彼方の記憶、暖かな思い出の中であるが……

「気持ちはわからないでもないですね」
「わかってくださる?ふふ、やっぱり子供ってお母さんが作っているのを見たくなるものね。私の子供たちもそうだったし……」
「――っと、焼けましたね。続きはテーブルで聞きましょうか」

 綺麗な狐色となったクッキーと紅茶を囲んで話は続く。

「うーん、ナッツの香ばしさとクッキーの甘さが絶妙でとってもおいしいわ!紅茶もとってもいい香り……お店でもやっていらしたの?」
「ああ、ただの旅人ですよ。両親に先立たれてしまったので、剣術の修行も兼ねて旅を」
「そうだったの……ごめんなさい、不躾な話をしてしまったみたいね」
「いえ。親を早くに亡くす子は決して珍しいことではありませんから」

 それはまるで、自分に言い聞かせるかのように聞こえたのだろうか。その言葉を聞いて曼珠はこう言った。

「確かに、ご両親を早くに亡くしてしまった子は多い……でもその悲しみは珍しいと言って片付けても良いものではないと私は思うわ。
ご両親をなくした原因によっては怒りを覚えることもあるでしょう。けれどその怒りは正当なものよ。それでどの道を選ぶべきかなんて偉そうなことは言う資格はないけれど、気持ちの全部に蓋をする必要はないんじゃないかしら」
「いえ、別に蓋をしてもいないので安心してください」
「あ、あらそう?ごめんなさいつい……」
「いえ、気にしていませんので」

 と返しつつもやはりクロスは調子が狂うな、と思わずにはいられなかった。
 目の前にいるのは敵であるのは間違いないし、あの紅の翼の天使に対しての復讐心が揺らいだことだって一度もない。
 猫を被ることは覚えたが、自分の想いの根幹に嘘をついたことは一度もないので、事実を返しているのは確かである。
 だが、この眼の前の女性の姿をしたオウガの、この言葉に限っては真なのだろうと直感した。
 生前多くの子供たちを見てきたからこそ言えるのだろうという、漠然としながらも確信に似た印象を覚えて。

「私の上の子供が今丁度貴方と同じぐらいだから気になっちゃって……本当にごめんなさいね」
「謝るようなことを仰っていたようには思えませんが」
「そう言ってくれると助かるわ」

 着実に弱まっているのか、カップを握る手が震え始めているのを見ながらクロスは目の前のオウガの話をただ静かに聞いていた。
 ――ああ、やっぱり調子が狂うな……と、心の中で呟いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エスターテ・アレグレット
味覚が死んでる僕ですらわかる。彼女の料理はヤバい。
これで無自覚とか恐ろしいっすね。

「お腹空いてるなら、僕が作りますよ。これでも料理人なんでね」
と、調理を申し出る。
美味しく作りたいから、レシピは必須。

「僕のことは手伝い不要っすよ。一気にパパーッと作っちゃうんで」
【元気に、生き生きと】を発動。パスタやピッツァ、カルパッチョなど、得意のイタリア料理を中心に、短時間で多くの料理を作成する。
敵さんが入る隙を与えない。

「もし、どうしても手伝いたいってんなら味見をお願いします」
僕、自分で作った料理の味、知らないんすよね。というか、わからんというか……。
まあ、不味くはないはず。



●味覚は死すとも真心は
「今お食事を作ろうとしていたところだったんです。よろしければ皆さんもいかがですか?」

 と、曼珠がにこやかに話をしながらも台に置いていたものを、エスターテ・アレグレット(巻き込まれる男・f26406)は確かに見た。
 見た目は真っ白なごく普通の茸ではあるが、アレは記憶に間違いがなければ毒キノコの中でも屈指の危険度を誇り、破壊の天使等という仰々しい二つ名を持つあの茸。

「(味覚が死んでる僕ですらわかる。彼女の料理はヤバい)」

 そもそも普通の人間が食ったら死にかねないものを喜んで調理して食べる時点で味覚以前の問題にも程がある。

「(これで無自覚とか恐ろしいっすね……)」

 全く以てその通りである。
むしろオウガとしての自覚があり、愉快な仲間たちに致死量の毒で料理をしろと強いている方がマシなのではとすら思った。
 愉快な仲間たちもびくびくしながら調理を手伝うワケである。
 超級料理人としてこれ以上毒々しい料理が作られてしまう惨事は避けなければならない――エスターテは手持ちのレシピを手に前に出た。

「お腹空いてるなら、僕が作りますよ。これでも料理人なんでね」
「料理人さんなの?凄いわ!持っているのはもしかして貴方が考えたレシピ?」
「まあ、そんなとこっすかね」
「まあまあ……!凄く腕の立つ料理人さんなのね!」

 嘘も方便という奴である――料理人であってもレシピを見ることがあるのは当然なので間違ってもいないのだが――。

「ああ、先に言っておきますけど僕のことは手伝い不要っすよ。一気にパパーっと作っちゃうんでもし……」
「ええ、料理人さんですものね。素人が手を出してしまうのはよくないわよね」
「どうして、も……あ、ああ、まあそうっすね。そうしてもらえると助かります」

 敵が入る隙を与えまいと先手を打つつもりだったのがすんなりと聞き入れられてしまうとどうも調子が狂う。普段の猟兵とオウガの関係性を考えるとどうしても拍子抜けしてしまうというか何というか。
しかし、エスターテは自身で作った料理の味を知らないし、これから知る可能性も今のところは皆無だ。
見た目と味が両立しているか自分で確認できないのは料理人として大きなハンデである。
不味くないか否かの指標は当然必要になってくる――まあ、不味くはないハズだが、と思いつつ。

「ただ……どうしてもってんなら味見をお願いします」
「味見?」
「ええ。せっかく作るなら自分だけでなく振る舞う相手もおいしいと思える料理でなきゃね」

 料理は真心が基本、と最初に言ったのは誰であろうか。
 例えどんなに手を抜いた料理であっても、美味しく食べたい、あるいは美味しく食べて欲しいという心を込めて振る舞うことこそ料理人の基本。例えそれが自分たちが食べる用の賄いだとしても……
エスターテはユーベルコード【元気に、生き生きと(アニマート)】を発動する。
レシピに忠実に作り上げたパスタ、ピッツァ、カルパッチョ等……彼の得意とするイタリア料理を初めとした、何人前になるかわからぬほどのフルコース料理。
それがテーブルに次々と並ぶ様は実に壮観で、見ていた愉快な仲間たちも、曼珠も、思わず感嘆の声を上げた。

「まあまあ、本当に凄いわ!まるで時間を止めてその間に作っているみたいにあっという間にお料理が出てくるなんて。料理人さんは手品師さんでもあるのね!」
「その表現は大げさじゃないっすか?悪い気はしないっすけど。じゃ、味見お願いします」

 スプーンに少量のボロネーゼソースを盛って小皿に置き、曼珠にそれを差し出す。
 それを受け取った曼珠は早速口にして、よく味わうように、味を確かめるように咀嚼して……

「んん~~♪」

 その味に感動したようで、ふにゃふにゃと柔らかい笑顔を浮かべた。

「お野菜と牛肉のコクがいい具合に混ざっていて……それと牛肉の食感も凄く感じられたわ。わざと合挽きにして食感を楽しめるように仕上げていらっしゃるのね」
「一口でよくわかるっすね……」
「うふふ、だって本当においしいんですもの。貴方のお料理を食べられる方は幸せ者だわ。
 早速お料理も頂いていいかしら?」
「勿論。お腹空いてるんでしょう?」
「うふふ、じゃあ早速頂くわね。ありがとう、料理人さん」

 曼珠が席についてからの食べっぷりはそれは凄まじいものであった。
 女性としての最低限の淑やかさとテーブルマナーは守りながらもあっという間に平らげていく様は、現在オウガとして飢餓状態であることを嫌でも突きつけてくるかのような様で。
 エスターテはグラスに注いだ水を口にしながらその光景を見る。
78品にも及ぶ料理は当然自分では食べきれない量であり、それを次々食べている様は見ている側もお腹いっぱいになるような気分である。
愉快な仲間たちもそれを見て呆然としている様子だ。

「んぐっ……私ばかり食べちゃいけないわよね。皆さんもよかったら一緒に食べましょう?こんなに美味しいお料理ですもの、みんなで食べたらもっとおいしいわ」

 曼珠の一言でテーブルについていることを思い出したかのように、愉快な仲間たちもエスターテの料理を次々口にしては皆彼女と同じように顔を綻ばせた。
 おいしい、おいしいと声が上がれば上がるほど広がる笑顔の連鎖、それを見ながらエスターテも自らの作ったカルパッチョを一つ口にする。

「……」

 当然、味は感じられない。
強化人間となった代償に奪われた味覚は例えどんなに願ったとしても蘇らないのだが……

「……ま、中々悪くない出来になったっすね」

 周りに咲き誇る満開の笑顔から、納得の行く仕上がりであることは間違いないと確信したエスターテの口元は綻んでいたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノラ・ヘルブラウ
🌺🌺🌺

時間を操作すると言われる
神器を持つ白き狐ノラ

死者への手向けなのか
その姿はすごく落ち込んでいる様子で

🌺🌺🌺

御嬢さん……ボクと一緒にお茶していきませんか?
ボクにはね…。少し特殊な能力が備わっていてね。"過去" に行く事ができるんだ――。
ここは一つ不思議な体験をしてもらうよ。

🌺🌺🌺

UC『白霧』を発動して
ほんの少しだけ、彼女に過去を体験して貰う

「キミの逢いたい人達に会えるだろう――。」
(アドリブでお願いします)

🌺🌺🌺

「どうだったかい?」
そういってノラは現代に帰ってきた彼女に
暖かいハーブティーを提供するのでした

🌺🌺🌺

"甦えり"というのは本当に正しい事なのだろうか…。



●懐旧・記憶を累積せし運命の天秤
「あら?どうかしたの?」

 曼珠は心配そうな顔で目の前の少女の顔を覗き込む。
 ノラ・ヘルブラウ(奇蹟探究のちいさな白狐『ネメシスティリア』・f32770)の表情は暗く、ひどく落ち込んでいるように見える。
 だが同時に、死者を悼み手向ける為の祈りを捧げているようにも見えて、曼珠はこのアリスラビリンスという世界の成り立ちと現状を思い出した。

「……」

 曼珠はアリスと言われる少女たちが、何の罪もないのに放り込まれ、化け物に喰われてしまうという事実に心を痛めていた。
 今は自分もその立場になっているということも知らずに。故に彼女は、ノラと共に死者へと手向ける為の祈りを捧げる。
 静かな黙祷の時間が数十秒程流れた後、ノラはゆっくりと顔を上げて口を開いた。

「お嬢さん……ボクと一緒にお茶していきませんか?」
「あら、お嬢さんだなんてお上手ね。喜んでお付き合いさせて頂くわ」
「ありがとう。じゃあ――」

 ノラの前に、一つの天秤が浮き上がる。
 それは時を操ることができるとされる神器にして彼女の力の根源。何れ襲いかかる運命に対して抗う為の力、呪いという名の祝福。
――運命天秤『ユースティミス』。
 秤がゆらゆらと揺れれば、妖しげな輝きと共に白い霧がじんわりと広がっていく……

「あら……?」
「ボクにはね……少し特殊な能力が備わっていてね。"過去"に行くことができるんだ――」
「過去に……?」
「ここは一つ、不思議な体験をしてもらうよ」

 キミの、逢いたい人たちに会えるだろう――。
 その言葉と共に曼珠の視界は真っ白い霧に包まれた。


 視界が晴れれば、目の前には忘れるハズもない家があった。

「ここは……」

 忘れるハズもない、愛しの我が家。
 身寄りのない子供たちと共に貧しくとも毎日が輝いていた、掛け替えのない思い出の場所。
 惨劇が訪れる前の、子供たちとの笑い声が耐えなかった、あの時の――

『あっ、先生!先生が帰ってきたー!』
『せんせー!おかえりなさーい!』
『ねえねえ先生、聞いて!ボクこの前先生に教えてもらった魔術、ボク一人でもできるようになったんだあ!』

 ドアをくぐれば、愛しい子供たちが我先にと集まってくる。

「(ああ、ああ――)」

 曼珠の瞳から大粒の涙がぼろぼろと溢れる。
 この笑顔たちをまた見ても良いというのですか。神よ。
 私はこの子たちを護れなかったというのに。

『先生?先生、どうしたの?どこか痛いの?』
『せんせー、なかないで!』
『大丈夫だよ、先生が泣くのいつものことだもん』
「うう……ごめんね、みんなのお話ちゃんと全部聞いてあげたいのに体が一つで耳が二つしかない先生でごめんねぇぇ……!!」

 曼珠は愛しい子供たちを抱きしめてわんわん泣いた。
 子供たちは「いつものだー」と笑って、あるいは苦笑してハグを受け入れる。
 暖かな温もりが伝わって――


 ――そこで夢のような時間は終わった。
 ぼろぼろと瞳から涙を零したまま、曼珠は椅子に腰掛けて前を見ていた。

「どうだったかい?」

 ハーブティーを注ぐ音と共に、ノラは優しく話しかける。
 運命天秤ユースティミスには時を操る力があり、これから放たれる白い霧は対象を過去に飛ばすことができる。
 長く使えばノラ自身が死に至る故に、時間は88秒程と短い間しか使うことができないが――眼の前のオウガとして蘇ってしまった女性には、それで充分だったようだ。

「ええ……とても、良い経験をさせてもらったわ」

 眼から溢れる涙を拭い、曼珠はノラからハーブティーを受け取り口にする。
 カモミールティーの香りと優しい味は、じんわりと彼女からオウガとしての生命力を奪うと同時に、奇跡のような時間の暖かさを残すかのように広がって。

「とてもおいしい。ありがとう、貴女も一緒にいかが?」
「では、お言葉に甘えて。

 感謝を告げる曼珠の顔は、涙で赤くなりながらも晴れやかな笑顔を浮かべていて。
 その表情にノラも口元を綻ばせて自らの分のハーブティーを注ぐ。
 静かに、だけど楽しく語らいが続く中でノラは思考の片隅で考える。

「("甦り”というのは、本当に正しいことなのだろうか……)」

 時間とは質量を持つ物質であり、骸の海とは今まで自分たちが消費してきた時間、即ち過去の集積体。
 そこから滲み出た過去として――オブリビオン、オウガとして現代に舞い戻ることになるのは、過去の存在が一人だけ現在に置き去りにされることと同義にも等しいのではないだろうか。
 過去の存在が過去にすら置き去りにされてしまっても、甦るということは間違いではないと言うのだろうか?
 その答えは当然、そう簡単に出るものではない。
 運命の天秤は来たるべき時がくるまで、ただ黙してそのバランスを保つのみである――

大成功 🔵​🔵​🔵​

土御門・泰花
※アドリブ等歓迎

オウガの自覚が無い敵ですか。
ならば、幸福に包まれたまま息絶えていただきたいものです。

「あらあら、賑やかなお声が。初めまして、土御門泰花と申します。」

ふらり現れ、優雅に一礼。そして、話の流れでまだ召し上がったことの無かろうお料理を作ります。

「私の故郷でよく食されている、握り飯とお味噌汁です。1人で作れますし直ぐにできますゆえ、少々お待ちください。」

握り飯には食欲増進の梅干し。
味噌汁には定番のわかめとお豆腐。

「お待たせしました。握り飯は、所謂白米で作った『さんどいっち』に近しいものですよ。」

解説しつつ、今だけは曼殊さんに友の様に接します。UCによる効果で友好的な雰囲気を盛り上げて。



●幽玄なる白揚羽は湯気に舞う
「ふう、いっぱい食べさせてもらったり素敵な経験させてもらったり、優しい方がたくさんいらっしゃるのねえ」

 曼珠はにこにことしながら、定期的にふぅ、と深く息を吐いていた。
 これまでにたくさんもの綺麗でおいしい料理を平らげてきたことによりオウガとしての生命力は着実に弱まってきていた。
 本人はきっと段々お腹がいっぱいになって眠くなってきただろう、ぐらいのノリでいるが。
とはいえ、未だにオウガとしての自覚に目覚める気配はないし、このまま安らかに逝かせてやれるのならそれが良いだろう。

「あらあら、賑やかなお声が……」

 ひらひら、ふわふわと舞う白い揚羽蝶と共にふらりと姿を現したのは土御門・泰花(風待月の菫・f10833)。

「あらこんにちは。貴女も猟兵さん?」
「仰る通りにございます。初めまして、土御門泰花と申します」
「これはご丁寧に。地籠曼珠です」

 互いにぺこりと一礼し、顔を上げると白い揚羽蝶が曼珠の肩に止まる。
 螺鈿細工のような輝きを湛えたそれはとても綺麗で幻想的な様相を醸し出しており、自然と感嘆の息が漏れる。
 自覚のない曼珠はこの蝶が泰花のユーベルコードによる式神であるということに気づく気配はない。

「(抵抗も一切なく……このまま、幸福に包まれたまま息絶えて頂きたいものです)」

 世には知らぬ方が良いこともある。
少なくとも泰花には、目の前のオウガはオウガであるという自覚を持たぬまま骸の海に還ることがきっと幸せだろうと思った。

「こちらでお茶会をしていらしたのでしょうか?」
「ええ、皆さんとても素敵なお料理を振る舞ってくださって、大分お腹いっぱいになりました」

 それはもうとてもおいしいものばかりだったと曼珠は泰花に嬉々として語り聞かせる。
 サムライエンパイア出身の泰花にはとんと聞いたことのない料理の名前が次々出てくるが、多種多様な世界故にそういったこともよくあるもの。
何より聞かせてくれる話の内に出てくる調理技術等は聞いてて今後の参考にしたいような技術もあり、気づけば紙と筆を手にちょこちょこメモまで取っていた……!

「なる程なる程……そのような調理法は生まれてから一つも耳にしたことがありませんでしたね……」
「お住まいによっても調理法が違いますものね。私も初めて見たことが多かったんです、今度ご飯作る時の参考にしようと思ったわ……あ」

 ぎゅう、とそれなりに大きく腹の虫が鳴いた。もちろん曼珠のである。

「あらやだ、ごめんなさい。お料理のお話をしていたらお腹が空いてきちゃったみたいで……さっきたくさん食べたばかりなのにねえ」
「うふふ、そういったこともありましょう。腹が減っては何とやらと申しますからね。でしたらちょうど小腹に良いお料理がありますから、拵えて参りますね」
「あら本当?今日はたくさんの人にお料理作ってもらっちゃってありがたいけど申し訳ないわね。今度私もお返しするわね」
「ふふ、ではその日を楽しみにさせて頂きますね」

 恐らく生前は彼女もちゃんとした料理を作っていたのだろう、と泰花は思った。
 オウガとして骸の海から蘇ってしまった上、自覚がない故にこんな逆にひどく歪なことになってしまっただけで。
 とはいえ、やるべきことは変わらないのだが。泰花は早速厨房を借りてサムライエンパイアの定番料理の調理に入る。
 木綿豆腐をサイコロ状に切り、ネギも小口切りにしてスタンバイ。
 出汁はもちろん鰹節と昆布から取ったものだ。丁寧な手順を経て濾し布で濾した出汁の美味しさに勝るものはないだろう。
 だし汁に豆腐とわかめを投入し、火が通ったら一度止めてから味噌を溶き入れ、沸騰する直前で火を止めて味噌を溶き入れる。
 温めている間に炊きたてのご飯に塩をまぶし、梅干しを挟んでぎゅ、ぎゅと握り、皿に乗せる。お椀に注いだ味噌汁の上からネギを散らせば出来上がりだ。

「お待たせしました」
「まあ!お味噌のいい香りがすると思ったら」

 サムライエンパイアの定番にして現在もUDCアース日本等で広く愛されている握り飯と味噌汁のセット。

「おや、ご存知でいらっしゃいましたか」
「ええ、私もよくおにぎりとお味噌汁は作ったわ」
「然様ですか。握り飯は、所謂白米で作った『さんどいっち』に近しいものですよね」
「確かに言われてみれば、そんな感じよね。軽食にうってつけというか……早速頂いてもいいかしら?」
「ええ、どうぞお召し上がりください」

 炊きたての白米で作られたおにぎりを曼珠は早速一口。
 白米の甘みと塩の絶妙なハーモニーに加え、梅干しの酸味がそれらを引き立てる最高の味わいに思わず顔がふにゃふにゃと幸せに綻んでいく。
 味噌汁も出汁が効いており、豆腐とわかめとネギのみというシンプルな定番の具だからこそよりじんわりと沁みる暖かさだ。

「ああー、凄く懐かしい味……これがおふくろの味って言うのかしら、とってもお料理上手で羨ましいわ」
「大したものでは……生きる上で必要な術故、自然と身につけただけです」
「ふふ。謙虚な人なのね、泰花さんって。でもそれを自然と身に付けられるまでに繰り返すってとっても大変なことでもあるもの。とっても努力家さんなのね」
「まあ、そのような……恐縮です」

 握り飯と味噌汁の暖かな湯気が登る空を、螺鈿の白い揚羽が飛んでいく。
 憩いの時が流れる中、泰花は今だけ曼珠を友と思って接し続ける。
 最期の時が訪れても幸福なままで終われるように――猟兵としてできることはそれだけなのだ。

「そういえば、お召し物からして泰花さんは巫女さんか何かなのかしら?」
「はい、私は――」

 オウガでなければ、本当に友人になれただろうか――?
話しながらも頭に一瞬だけ過ぎった思考を、泰花はすぐに心の奥底にしまい込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

半吸血鬼の私を唯一愛してくれた、亡き母を思い出すわ。
故郷は食糧難で親孝行も出来なかった。
今だけ私のママになって【料理】を振舞わせて?

【早業】の包丁捌きでキャベツ・人参・玉葱・ソーセージを切り
水・コンソメと共に鍋に入れ
美味しくなぁれの【祈り】を籠めて中火で煮て
塩胡椒で味を調え、野菜スープ完成

「ママへの手料理は自分の力で作りたいの」と手伝いを断るも
「私、誕生日にもケーキを食べた事が無いの」とおねだり。
【毒耐性】に加え『猟書家六重奏・狩人の章』の乳房の口を
守護霊の【ドーピング】で強化すれば金属も噛み砕ける

食後は膝枕されながら
懐かしい香りで眠りに落ちるまで
彼女の手を握り【生命力吸収】



●Dear Mother
ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の脳裏に過るは、今は亡き愛しき母の面影。
半吸血鬼である彼女の生まれは凄惨なものであった。生まれる前から父に捨てられ、周りからは吸血鬼の血を引くという理由で疎まれた。
お前なんか生まれてこなければ――そう何度も石を投げられた彼女という存在を唯一望み、愛したのが他の誰でもない彼女の実母。
ドゥルールを愛してくれた唯一の人間の面影を、彼女は目の前のオウガに重ねたのだ。

「……ママ」

無意識に口にした言葉が聞こえたのか、曼珠は振り向いてこちらに歩いてくる。

「お嬢さん、どうかしたの?親御さんをお探し?」
「あ、……いえ、母と雰囲気が似てたから、つい」
「あら、そうなの?」
「ええ……母も貴女のように優しく包んでくれるような人だったの」

 どんなに周りに蔑まれようとも、母は自分を抱きしめて愛していると言ってくれた。
 故郷は酷い食糧難で、ロクに食事もできないなんてザラで。
 それでも母は、自分の空腹等お構いなしに手に入った僅かな食糧を与えてくれていた。
 いつか必ず恩返しをしたい、親孝行をしたいと思っていたのにそれもできぬままにこの世を去ってしまった。
 今からやることでその代わりになるとは思わないし、相手にとっては失礼なことかもしれない。だけど――

「――いきなりこんなことを頼むのも不躾だけど、お願いがあるの」
「お願い?何かしら」
「……今だけ。今だけ私のママになって、私の料理を振る舞わせて?」

 曼珠は少しばかり目を丸くする。

「故郷は食糧難で、親孝行もできなかった。失礼だとはわかっているけど、お願い。今だけ……」

 そう告げるドゥルールの表情は、本人はそのつもりはなかったのだろうけれど泣きそうに見えたのだろうか。
 曼珠はそっとドゥルールの頭を優しく撫でる。

「したいことをしてあげられなかった後悔が残るのは辛いわよね……私でいいなら、喜んでそのお願いを受けましょう」
「……ありがとう」

 ドゥルールは柔らかく微笑む。
 それは紛れもなく、母に対して笑いかけるあどけない娘のそれであった。


 それからドゥルールは張り切って調理に取り掛かった。
 母親への孝行ができる喜びからか、その動きは気合がいつも以上に入って最早神業とも言えるレベルの早業である。
 キャベツと人参、たまねぎ、ソーセージが最早目にも止まらぬ速さで刻まれ、まるで一瞬にしてバラバラになったかのように程よいサイズに切り揃えられた。
 それを水とコンソメと共に入れ、じっくりコトコト、旨味が全体に行き渡るまで中火で煮込む。
 おいしくなあれと祈りを籠めて、今までにないあどけない笑顔を浮かべてドゥルールはスープを煮込む。

「ルルちゃん、お手伝いしようか?」
「大丈夫!ママへの手料理は自分で作りたいの」

 付け合せのロールパンの焼け具合を確認しながら笑顔で返した後にでも、とドゥルールは振り向いて。

「私、誕生日にもケーキを食べたことがないの」

 だから、ママの作った誕生日ケーキが食べたいな――そう無邪気に笑って。

「まあ、それは大変だわ。腕によりをかけて作らなくちゃ」

 母親代わりとなった曼珠はふんす、と腕を捲る。
 もちろん、どんなものが出来上がるかはドゥルール自身百も承知である。それでも彼女は食べたいと言ったのだ。当然考えがあってのこと。
 元々毒に強い耐性を持っているし、劇薬の一つや二つ混ざったところでそこまで酷い症状に陥ることはないし、金属だって綺麗に平らげるように準備をしている。
 料理を作りながら、彼女の従える守護霊たちが彼女と融合することで生来の毒耐性を高めている他、ユーベルコードで猟書家『レディ・ハンプティ』の乳房の口を再現させるにまで至っているのだ。

「(せっかくママが作ってくれるんだもの、残さず全部食べきりたいわ)」

 嬉々としてケーキの形をしたモノ――ドゥルールに取っては唯一の誕生日ケーキを作る曼珠の姿を一瞥して、ドゥルールはスープの味を整える為に塩と胡椒を手に取った。


「さ、ママ。召し上がれ」
「まあ、美味しそうなスープ。いただきます」

 そうして出来上がった野菜スープを、二人で仲良く口にする。
 野菜の旨味がまんべんなく行き渡り、塩と胡椒で整ったコンソメの味わいが染み渡る優しい味に曼珠はまたもへにゃりと顔をほころばせる。

「とってもおいしいわ、ルルちゃん。ありがとう」
「よかった。ママの為に頑張って作ったのよ!」
「ええ、ルルちゃんが頑張ったのがよーくわかるわ」

 そう笑顔で返す曼珠の姿は、紛れもなくドゥルールの思い出の中の母親の微笑みと何ら変わらない。
 きっと母が生きていたなら、同じように言ってくれただろう――そういう実感が持てたドゥルールの胸に暖かなものがこみ上げた。
 何気ない話をして、ご飯を食べ終えたなら次はデザートだ。

「うふふ、先生……じゃなかった、お母さんも頑張って作っちゃったのよ~」

 皿の上に乗っているのはケーキ――の、形をした、ナニカ。
 本人はケーキのつもりで作っており、確かに体裁はそのように整ってはいるが。
 蝋燭代わりになっているのは針であるし、中のスポンジは毒物が混ざっているからかほんのりと薄紫の様相を醸し出している。

「誕生日おめでとう、ルルちゃん」
「ありがとう!とてもおいしそうだわ」

 針を上から溶かしつつある炎を一息でかき消して、早速フォークを手に。
 すくい取ったそのケーキを、【猟書六重奏・狩人の章(ビブリオマニアセクステット・ウィズダムプレデター)】で変化させた乳房の口に放り込む。
 フルーツ代わりに剣山が挟まれていようと、その口はおいしそうにもぐもぐと咀嚼する。
 オウガとしての認識が狂っているからか、曼珠にはドゥルールが普通に食べているようにしか見えないが。

「ん~♪おいしい!とってもおいしいわ、ママ!」
「本当?よかったわあ、ケーキを作るのは久しぶりだったから」
「うふふ、やっぱりママは料理が上手ね。私も見習わなきゃ」

 自身が母になることなどないのだろうけれど。
もし、もし、その日がきたら。
あるいは、今の自分のようにその時だけ自らの母になることを望むオブリビオンの子に会ったならば。
自らの母のように。そして目の前のオウガの彼女のように、目の前の存在を何の別け隔てもなく包み、愛せるように。
そうして、世界から否定された人たちを愛していきたい。
この邂逅は、ドゥルールの中のその決意をさらに強くした。


「ごちそうさま。お腹いっぱいになったから眠くなってきちゃった」
「あらあら。じゃあお昼寝しましょうか」
「うふふ、ママの膝枕もーらいっ!」

 ドゥルールはそう言って曼珠の膝に頭を乗せ、彼女の手を握る。
 オウガであっても自分と変わらず、暖かで柔らかいその感触は堪らなく心地良いものだ。
 懐かしさを感じさせる香りがドゥルールを眠りに誘っていく。うとうととしながらも、決して曼珠の手を離そうとはしない。
 ひっそりと、苦しくないように少しずつ生命力を吸い取っていく。
 曼珠はにこりと笑って、すやすやと寝息を立て始めるドゥルールの頭を撫でる。
目の前ですやすやと眠る少女に、自分の大事な子供たちの面影を重ねながら。

「……あの子たちにも。もっとこういうこと、してあげたかったなあ」

 ぱたぱたと、鳥が空を羽ばたく音がした頃には――自覚なきオウガにして、揺り籠の母だったその女性の姿は、どこにもなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『時繋穴の番兎』クロノス』

POW   :    時絶ち鋏~タイムストップ・シザー~
【切断した物の時間を停止させる『時絶ち鋏』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    時繋穴~タイムリープ・ホール~
【時間の流れが異なる『時繋穴』の出口 】を向けた対象に、【先制攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    時経ち鋏~タイムパス・シザー~
命中した【時間経過を操作する『時経ち鋏』 】の【取っ手に絡みついたリボン】が【対象に複雑に絡みつく形状】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。

イラスト:むぐ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【MSより】
第一章ご参加ありがとうございました!
第二章は7/12(月)に断章を投下した後プレイング受付を開始致します。
断章投下前のプレイングはご返却致しますので、お気持ちに変わらなければ失効の後ご再送をお願い致します。
途中参加も大歓迎です!
●それは願う。"時よ止まれ、君は何よりも――"
 自覚なき哀れなオウガは息絶えた。
 だが、これで終わりではない。
 彼女が覚醒していたオウガ・オリジンの能力の残滓、現実改変のユーベルコードがその死と同時に発動されるのだ。
 途端に空が不気味な色を描き、空間を捻じ曲げる。
 今まで聞こえていた風のそよぎが、小鳥の唄声が、愉快な仲間たちの談笑が消えていく。まるで時間が止まったかのように、木々の葉すら動かない。
 猟兵たちだけが、"時間に取り残されたかのように"動くことができた。

「"子供たちをもっと愛してあげたかった""護ってあげたかった"」

 ねじ曲がった空間から、巨大な挟を持った少女の姿をしたオウガが姿を現した。

「しかし現実では叶わない。既に子供たちは過去のものとなり、思い出も薄れていくでしょう。
 それが薄れていかぬようにするにはどうしたら良い?

 簡単なこと――"時を止めてしまえば良い"。そうすれば過去が廃れることはない。時間に取り残されることもない。故に私は今ここにいる」

 最後に曼珠が残した子供たちへの未練を利用し、オウガとしての本能で死の間際に生み出したイマジンモンスターは、時間そのものを操る存在であった。
 その大きな鋏で一度斬られれば時間が止まる。そうして全ての時間を絶ち、過去を永遠のものに……つまりは、そういうことなのだろう。

「私の名はクロノス。私を生み出した"願い"の下、世界の時を止めましょう」

 時絶ち鋏の取っ手に絡みついたリボンが不思議の国を覆わんと広がっていく。これが曼珠のイマジンモンスター、彼女の想った最強の存在。
 だがそれはオウガとしての本能が、彼女の人としての残滓を利用したに過ぎないとも言えるだろう。
 想いを歪めて生まれたオウガを、決して野放しにしてはならない。
 猟兵ら諸君にも過去への未練はいくらでもあるだろう、だがそれでも時間を消費して前に進まねばならぬ理由があるからこそ今ここに立っている。
 過去を乗り越え、今を、未来へと生きる意志の力を、ここに証明する時だ――!


◆追加プレイングボーナスを提示致します。
 「今や未来への展望を膨らませてイマジンモンスターになる」
 尚展望は希望でも欲望でも何でも構いません。最初に提示したプレイングボーナスのみでも勿論大丈夫です。
ノラ・ヘルブラウ
アドリブ苦戦描写歓迎です

🌺🌺🌺

死者が現世に留まり溢れ還ってしまうと、現在と過去が混ざり合いセカイは簡単にパンクする
時間干渉の影響で、未来世界で生きるヒトは突然隣人が消えてね…?
人類(カレラ)はそこでやっと自身の犯した罪と愚かしさを知るんだ
簡単に時間を操るものではないとね

そんなセカイが出来たら、とても愉快だと思わないかい?
ふふっ……

🌺🌺🌺

ノラの思い描くイマジンモンスター
それは、かつて在った真の姿…

ノラの手元には【簒奪者の鎌】が握られていて…
【白い霧】が周囲に広がって……UCを扱います
しかし…
「あれ?死者の泉が、泉が出てこないよ?うそ?嘘だろう…?」

あなたの真の姿は無力化されています!


アリス・フェアリィハート
アドリブ連携等歓迎

【WIZ】

オウガさんとはいえ
優しい曼珠さんを
騙す様な事をした
私は…本当にひどい子です…

世界を護るなんて…
おこがましいのかも…けど…

曼珠さんの様な
哀しい存在を生み出さない
未来にしたい…!

お母様から
寝物語に聞いた
強く優しい
姫英雄様のお話…

光輝く鎧を纏い
背に六枚の純白の翼の
強大な
【白の姫英雄】に変身

手にした
『無敵の怪物等をも斃す剣』で
『時間』の【属性攻撃】【なぎ払い】
等の剣戟や
剣の【斬撃波】で攻撃
UCは
『時間』の【属性攻撃】を乗せ
彼岸花の衝嵐を発動

『彼岸花は…天上の花ともいいます…』

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避

『曼珠さん…温かかった…』



●泉沸き立たぬ地面に落ちる動揺と涙、そして決意
「世界の時を止め、全てが同じになれば。もう誰も置いていかれるものも、過去となって思い出の彼方に消えることもない。

 ――それは、とても幸せなことではないのでしょうか?」

 クロノスは目の前の猟兵に問いかける。

「……死者が現世に留まり溢れかえってしまうと、現在と過去が混ざり合いセカイは簡単にパンクする」

 ノラ・ヘルブラウ(奇蹟探究のちいさな白狐『ネメシスティリア』・f32770)はまるで喜劇を語り聞かせるかのように答えを紡ぐ。

「すると――時間干渉の影響で、未来世界で生きるヒトは突然隣人が消えてね……?人類(カレラ)はそこでやっと自身の犯した罪と愚かしさを知るんだ。

 ……簡単に時間を操るものではないとね」

 物質として消費された時間が現在に留まった場合、何が一番影響を受けるのか?
 言うまでもない、この先の未来そのものだ。
 過去の残留によって現在の時間が歪めば、ノラが語るように未来を生きる人が消える……即ち、未来に生まれているハズであろうその人が生まれるまでの過程そのものがなかったことになる可能性もある。
 時を止めるにしても同様だ。未来に描かれるであろうものが描かれなくなる、それはその歴史の消失を意味するにも等しい。

「そんなセカイができたら、とても愉快だと思わないかい?」
「愉快……?その表現に同意も否定もしかねます。時間を操ることに後悔や、未来への懸念を抱く余裕のない者もいる――私はその人たちの為に時を止めるだけですから」
「ふふっ……そうか」

 問答は終わりを告げ、ノラの手に簒奪者の鎌が握られる。白い霧が周囲に広がり、彼女の思い描く姿を描き始める。
 それはかつてあったノラ自身の真の姿。
 死者の泉を呼び出し、時空を操る力にて悪しき者に制裁を下す神器の力を解放する。

 ――だが、異変はすぐに生じた。

「あれ……?死者の泉が……泉が、出てこない……?」

 確かに正確に、かつてあった真の姿を思い描いたハズだ。
 なのに、死者の泉は一向に出現しない。その泉の水の一滴すら滴ることがない。

「うそ?嘘だろう……?」

 現実改変ユーベルコードは、確かにオウガ側の持つ能力ではある。
 だがその効力が及ぶ範囲は戦場全体であり、猟兵たちも同じようにイマジンモンスターを描くことは可能なのだ。
 ならば何故――?そう思考を回転させる暇はなかった。
 目の前にいる敵がそれを与えるハズがないのだから。

「うっ……!?」

 戸惑うノラの肩をクロノスの持つ巨大な挟が斬りつける。
 まるで突然穴から出てきたかのような圧倒的速度に当然防御する暇すら与えられず、真紅の血が肩から滴り落ちる。
 クロノスは鋏で空間を切り、異なる流れの時空の穴に飛び込み消えていくかと思いきや、今度はノラの背後から飛び出して同じように斬りつける。
 同時に偶然にも足を滑らせたことが幸いして大きな傷を負うことはなかったが、クロノスは手を止めることはない。
 何度も何度も、その『時繋穴』に潜り込んでは攻撃し、また潜り込んでは――とヒットアンドアウェイを繰り返す。

「うう、っ……どうして、何で死者の泉が……!」

 いくら思い描けども真の姿になれないノラの負傷は重なり最早体力的にも限界が近い。
 あと一発当たれば本当に危ういという思考にすら至れない程に、自身の真の姿が無力化されていることへの動揺が強く、クロノスの最後と言い放った一撃を避ける余裕すらなくなっていた。

「ここまでです」

 時空穴からクロノスが飛び出し、最後の一撃とその巨大な時絶ち鋏の刃を振るったその刹那。

「!」

 巨大な刃を、幼き少女の持つ剣が受け止める。
 割り込んだのはアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)。
 自らの想像力で思い描いた『無敵の怪物等をも斃す絶対の剣』を手に、その時絶ち鋏で時空を絶たせまいと押し留めるその顔は俯いている。

「……子供でありながらこの力、ですか」

 それは願いの下となった女性の思考の残滓故か。このまま押し切るのを躊躇ってクロノスは距離を取る。

「お下がりなさい。一度刃を交えるというのであれば、子供であっても容赦はできません」
「……」

 アリスは答えない。剣を持つ手も、肩も震えている。
 それは怖いからか?いや、違う。
 先程まで押し込めていた罪悪感が心の底からこみ上げているのだ。

「……オウガさんとはいえ、優しい曼珠さんを騙す様なことをした私は……本当に、ひどい子です……」

 大粒の涙となった罪悪感が、アリスの頬を濡らす。
 だがそれでも無敵の剣を握り締め、目の前の敵に立ち向かう意志の炎を消しはしなかった。

「世界を護るなんて……おこがましいのかも……」

 徐々に剣が光を放ち、それは握り締める手から少しずつアリスを包み込む。

「けど……けど……!

 私は……私は!曼珠さんの様な哀しい存在を生み出さない未来にしたい……ッ!!」

 決意と共に、涙は拭わずとも前を向いたアリスを包む光が花開くように弾ける。
 六枚の純白の翼は未来へ向かうかのように大きく広がり、輝く鎧を身に纏ったその姿は正しく『姫英雄』と呼ぶに相応しい姿だった。
 かつてアリスが母から寝物語として聞いていた、強く優しい英雄の姫の物語――その姿を思い描いたアリスは目の前のクロノスを見据え、剣を構える。

「……立ちはだかることをやめはしないのですね。ならば仕方ありません」

 クロノスの時絶ち鋏、その取っ手に絡んだリボンが伸び、どこまでもアリスを追いかける。
 アリスはその軌道を見切り、無敵の剣で薙ぎ払う。
 当然、リボンはそれでもその幼い体に絡みつこうと走るが――無敵の姫英雄と化したアリスを捉えるのは至難であった。
 一度絡みつき、そのまま捉えるつもりだったものは陽炎のようにふっとかき消える。

「残像……くっ」
「あなたは、倒させてもらいます……!!」

 一気に接近したアリスの無敵の剣と、クロノスの時絶ち鋏の鍔迫り合いが再び始まる。
 想像力で強化されたアリスの膂力で振るわれるそれを受け止めるには、クロノスの膂力では足りず。
 ならば不利に見せかける為にわざと力を抜き――アリスをついにそのリボンが捉える。

「あ……っ!」

 結界術とオーラの幕により、アリス自身に絡みつくことは阻止される。
 だが結界を解除すればすぐに絡みつき、その動きを封じるであろう状態に持ち込んだのだ。
 すぐに薙ぎ払い、反撃に出ようとした時に既にクロノスは時繋穴を経由してアリスに一太刀見舞う距離にいる。成功するかどうかは博打といった緊迫する状況であったが――

「”権能解放!降り注げ、魔連撃『時雨』”!!!」

 上空から降り注ぐ、魔術で生み出された時計の針の雨がクロノスを直撃する――!
 アリスによって窮地を脱したノラのユーベルコード【『時雨』】による援護攻撃だ。

「子供に、任せっきりにするワケにはいかないからね……!何故泉が出なかったのかは、後で考えるとするさ……!」

 とはいえ、完全に不意を打ったからこそ今の消耗した体力での詠唱が間に合ったに過ぎない。
 だがそのたった一回こっきりの援護攻撃で十分な程にアリスの勝機は作られた――!

「ありがとうございます……!」

 ノラに感謝を告げ、アリスは結界術を解除しユーベルコードを発動する。

「彼岸花は……天上の花ともいいます……”――もの言う花たちの噂話は……あらゆる世界に広まっていくのです……”!」

 【フラワリーズ・フェイトストーム】が、アリスの描いた無敵の剣を彼岸花の花弁に変え、衝嵐を発生させる。
 不意打ちを食らったクロノスではあるが、即座に体勢を整え時繋穴に逃げることで回避を試みたが――

「……穴が開けない!?この嵐、時空を歪ませて……――っ!!」

 彼岸花の衝嵐に呑まれ、クロノスは上空へとその身を打ち上げられ――地面に墜落する。

「曼珠さん……温かかった……」

 自らが倒されようとしているにも関わらず、優しく我が子のように接してくれたことをアリスは決して忘れないだろう。
 もう二度と彼女のような存在を生み出さない為に。
 クロノスは当然まだやる気のようだが、手負いのノラの治療を優先しアリスは追撃を諦める。
 次なる猟兵に託し、二人はグリモアベースへと帰投するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・シフファート
未来、未来ね…
それを願うのは『わたくし』があの日…■■■に■■■れた時以来から変わらない
…!私の記憶、かしらこれは…?
いえ、私がどうありたいかなんて今は関係ない
私…『アリス・オリジン』は、遍く理不尽を打ち砕く!

そう叫んでUCを起動
空間を火炎に変換し、万象が炎で構築された異世界を展開していく
更に、空間と時間は密接な関係がある
故に、空間を火炎に変換するこのUCの前ではアンタのUCのリボンは同位階となって、燃やし尽くされる!

さぁ、今こそ『アリス・オリジン』の力を刮目しなさい!
私の足の周りの空間を火炎に変換して足を燃やさず纏い、火炎蹴りを見舞うわ



●ALICE ORIGIN
「――未来、未来ね……」

 クロノスと対峙すべく、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)は未来への想いを膨らませる。
 そう、それを願うのは……

「『わたくし』があの日……■■■に■■■れた時以来から変わらない」

 それは意識して口にしたものではなかったのか。シャルロットの脳裏にある光景が過る。

「……!」

 正しく今無意識に呟いた通りの光景が、ほんの一瞬ながらも鮮烈に焼き付いていく。
 だがそれは少なくとも、今のシャルロットの記憶にはなかった光景であった。

「私の記憶、かしら……これは……?」

 記憶の欠落があるシャルロットには、これが本当に自分自身が経験したことなのかどうかはわからない。
 だが、目の前にいるイマジンモンスターはそんなことに思考を寄せて勝てる相手ではない。

「記憶の欠落も、過去が排斥されるが故に発生する事象に他なりません。記憶を取り戻さぬことが幸せなこともありましょう――ですが、貴女は果たしてそうでしょうか?」

 シャルロットに揺さぶりをかけるかのようにクロノスの時絶ち鋏のリボンがうねる。
 記憶の欠落というものは人によって捉え方が様々ではある。そしてそれを取り戻すことを望むか否か――果たして本当に取り戻せるかもわからないもの。だがその間にも記憶が欠落していくことがあるかもしれない。
 ならば、欠落しないようにその記憶の器に鍵をかければ良い。時を止めるという鍵を。
 だが、その程度の揺さぶりで揺らぐようなシャルロットではなかった。

「――いえ、私がどうありたいかなんて今は関係ない」

 今重要なのは、この想いを歪めて生まれたイマジンモンスターが世界に広げようとする理不尽を止めること。
 この世界に迷い込み、アリスの一人として不思議の国のデスゲームを生き延びたからこそ。これ以上自身のように理不尽にもてあそばれる人々を増やしてはならないのだ。

「覚悟なさい。私……『アリス・オリジン』は、遍く理不尽を打ち砕く!!」

 シャルロットの決意が想像力となり、力を与えたその刹那、周囲を瞬く間に火炎が包み込んだ。
 【万象を灼す未踏級の理たる聖火世界(バーニング・ナインワールド・レーヴァテイン)】――邪炎にして聖火、創造と終焉を司る神話の起源。
 万象が炎の属性で構築される異界の炎が、空間の全てを火炎にする。

「固有結界能力ですか――ですが、この時絶ち鋏からは逃れられは――……!?」

 空間を鋏が切り裂くも、現れるのは炎だけ――否、その時繋穴という一つの"空間"も、この固有結界の中では火炎の海と化したのだ。
 それだけではない。先程までうねりを上げていた時絶ち鋏に絡みつくリボンもその身を灰へと変えていく。

「うっ……!」

 その火炎と化したリボンを経由し、時絶ち鋏は一時的に異常な熱を放ってクロノスの手を阻む。
 空間全体が炎と貸せば、金属は急激に温度を変化させる――そう簡単に溶ける代物ではないが、熱を通す故の火傷は回避不可能だ。

「空間と時間は密接な関係がある……故に、空間を火炎に変換するこのユーベルコードの前では、アンタのユーベルコードのリボンは同位階となって燃やし尽くされる!」

 そして時絶ち鋏を一度でも手から落とした今こそ絶好のチャンス。
 シャルロットは勢いよく駆け出し、クロノスに肉薄。飛び上がり――

「さあ、今こそ『アリス・オリジン』の力を刮目しなさいッ!!」

 脚に火炎が集う。
空間を変換させて纏ったそれはシャルロットの脚を傷つけはせず、同時に重力加速補正が加わりさらに強まった火力を伴っての渾身の一蹴が、クロノスの腹へと強く撃ち込まれる。

「か……は……ッ!」

 万象が炎がクロノスの腹部を焼き尽くす。
勢いよく吹き飛ばされて、空間を変換した炎の壁にその身を打ち付けた。
アリス・オリジンの名に相応しい威力を誇る渾身の一撃は、確かに目の前のイマジンモンスターに確実なダメージを与えたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

土御門・泰花
※連携・アレンジ等歓迎

「『時を止めてしまいたい。』そう思ったことなど私にも幾度もあります。ですが、本当に時を止めてしまえば、やがて訪れるはずの希望さえも否定することとなるのですよ。」

曼殊さんの人としての願いを悪用して生まれた敵に【義侠心】からの義憤を覚えます。

まずは白揚羽の式神で【結界術】【オーラ防御】を展開、守備を固めます。

敵のUCは、黒蝪蝶の式神を【早業】で放ち【カウンター】攻撃で切り裂きつつ、自身も【軽業】【早業】にて回避。

「人の願いを歪曲して侵略に利用しようなど、許し難いものでございます!」

【忍び足】で敵の死角に入り、一瞬の隙をついてUC発動。さらに【多重詠唱】で容赦なく畳み掛けます。



●竜巻の如き義憤の翅
 クロノスはふらつきながらも時絶ち鋏を手に立ち上がる。
 未だその取っ手に通った熱は冷めず、皮膚が焼けるような音がするが、それを気にもとめず、影響をさも受けてないかのように構えている。その表情は決して退くつもりはないようだ。

「この程度で私が止まると思い上がらないでもらいましょう……猟兵」

 強気に言い放つが、顔色からダメージが蓄積していることがわかる。
だが、それでも決して後には退かぬと新たに前に立つ猟兵に敵意を向けるクロノスに対し、土御門・泰花(風待月の菫・f10833)は静かに口を開いた。

「『時を止めてしまいたい』――そう思ったことなど私にも幾度もあります。ですが、本当に時を止めてしまえば、やがて訪れるハズの希望さえも否定することとなるのですよ」
「誰しもがそのいつかの希望に想いを馳せることができる程強くはありません。そのいつかを待つ前に崩れてしまうかもしれないものもいくつもある――その者たちを見捨てて前に進むことはできません」
「……」

 その言葉には確かに一理あるものだと、納得できはする。
 しかし、果たして曼珠はそうだったのだろうか?
……否。
絶対に違うと泰花は確信にも似た想いを抱いていた。
でなければ、例え最後までオウガとしての自覚がなくとも、殺されようとしていることに気づいてなくとも、あのような笑顔を最期まで浮かべることはないだろう。
例え猟兵とオウガという関係性に気づかずとも、誰にでも気さくに話しかけるようなことはなかっただろう――それは泰花の中で彼女は違うと言い切れる根拠となるには十分で。
故に、彼女の願いを、想いを悪用して生まれた存在に心からの義憤の感情を覚えてならない。

「最早話すことはございません。貴女はここで倒します」

 淡々と言い放つ泰花、彼女の意思に呼応するかのように白揚羽の式神が主を護る為の結界とヴェールを展開する。

「それはこちらとて同じこと――!」

 クロノスの時絶ち鋏をあしらうリボンが再びうなりを上げ、泰花を貫かんと走るのを黒蜴蝶の式神がその翅を刃として切り刻み、道を遮る。
 リボンを飛ばしながらクロノスもまたその巨大な鋏の刃を振るうが、ダメージの累積故かその動きは鈍い。軌道を見切るには容易く、泰花は軽々と回避。
 いざ捉えられたとしても白揚羽の式神の護りの前にはクロノスの攻撃は無意味にも等しかった。
 人の願いを捻じ曲げて、未来を断ち切らんとする所業……それに対する怒りは、この眼の前のイマジンモンスターとして生まれたオウガの力を凌駕する程の力と変わるには十二分だったのである。
 そして、クロノスが再び大きく振り下ろしたそのタイミングで泰花はついに本格的な攻撃に映る。
 刃が地面に突き立てられる頃には彼女の姿は既に無く、死角に回り込まれたことに気づいた時には当然、クロノスになす術はなかった。

「人の願いを歪曲して侵略に利用しようなど、許し難いものでございます!!」

 刹那、泰花の周囲に彼女の義憤から生まれし呪詛の黒き揚羽が怒涛の勢いで羽ばたいた。
 ユーベルコード【黒揚羽の猛追】を多重詠唱で重ねに重ね、最早漆黒の竜巻も同然となったそれが怒涛の勢いでクロノスに雪崩込む――!

「く……!」

 時繋穴に逃げるクロノスであるが、黒揚羽は義憤の対象を決して逃しはしない。
 クロノスがその穴を閉じるよりも素早く中に入り、閉じた頃には揚羽のほとんどが時繋穴の中へと入り――それからどうなったかは言うまでもないだろう。
 再び時繋穴が開かれたその時、クロノスは地面に叩きつけられるかのように倒れたのだから。
 だが泰花の怒りが生み出した黒揚羽は、一度倒れただけで済ませはしない。
 それ程までにこのイマジンモンスターは、土御門・泰花という温厚なる女性を怒りに染め上げたのだ。
 人の想いを捻じ曲げた存在が潰えるまで、黒揚羽の呪詛はクロノスを執拗に置い続け、その身を蝕み続ける。
 決して怒らせてはならぬ存在を怒らせてしまったことに気づくのは、恐らくその身が完全に滅ぶ間際のことであろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜二一・クロノ
「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」

 時空の守護神の一柱、あるいは祟り神として参加します。
 時の糸を紡ぎ、歴史の布を織る者にとって、好き勝手に時間を遡る行為は織り直しを強要するので害悪です。
 そのような、猟兵やオブリビオンの事情とは無関係な動機で祟ります。

 時間を操るユーベルコードを以て、敵の時間を操るユーベルコードを完封します。

 神の摂理に反する者には神罰を。

 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。

※時間操作と無関係なオブリビオンにはただの八つ当たりをします。
※時間操作を行う猟兵は見て見ぬふりをします。できれば同時には採用しないでください。



●神罰顕現
「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」

 女性の声が時の止まりつつある空間に響き渡る。
 何者、とクロノスが時絶ち鋏を構えれば、それはふわりと天より舞い降りる。
 彼女の名は卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)、混沌を喰らい、時の糸を紡ぎ、歴史の布を織りなす時空の守護神が一柱。
 正常に時を紡ぐことが役目であるトニーにとって、好き勝手に時間を遡る行為は歴史の布の織り直しを強要する存在は人間、オブリビオン関係なく害悪以外の何者でもない。
 故に彼女は、猟兵とオブリビオンが持つ関係性や事情等は一切関係ない動機で目の前のオウガに相応の神罰を与えるべくここに顕現したのである。

「徒に時の調和を乱す輩を、私は赦さない――時に干渉することが如何に罪重きことかを理解せよ」
「私は過去を繋ぎ止める為にここにいる。過去を亡き者にしようとするならば例え神が相手であろうと退きはしません」

 クロノスの時絶ち鋏の切っ先が向けられるも、トニーは冷酷さすら想起させる目でそれを見下ろし、くい、と指を動かす。
――そこまで抜かすなら傷を与えてみせよと言いたげに。
クロノスは言われなくともと言葉で返す代わりに大きく鋏を掲げ、そのリボンを再び伸ばす。
トニーはただ黙してそれを見やるだけ。
絡め取られても決してその表情を崩すことなく、目の前の害悪たる存在を見据えている。
 その姿に不気味さすら感じながらも、ここでやらねばやられると直感したのかクロノスは攻撃を止めようとしなかった。
 時絶ち鋏を大きく開き、その胴体を真っ二つにせんと突進する。
 だが――

「!」

 いざ捉え、その鋏を閉じようとしても体が動かない。
 まるで見えない何かに拘束されているかのように、クロノスはぴたりとその場で動きを止めたのである。

「動か、ない……?何故……!」

 ふと視界に一瞬だけ何かが煌めいた。
 ――糸だ。
 どこからか糸がクロノスの体に巻き付き、その動きを止めたのである。

「く……!」

 なんとかして糸を振り解こうとするも、切る為の手段はこの時絶ち鋏のみ。
 それを自らで動かせないとなると脱する術はないに等しかった。
 いつの間にかリボンの拘束から逃れたトニーが手を向けると、どこからともなく猟犬が姿を現す。

「神の摂理に反する者には神罰を」

 時空や因果を超越する86頭もの猟犬、それらが牙をむき出しにして時を歪めし罪人を鋭く睨みつけ――一斉に飛びかかった。
 糸に絡まれ、動きが取れぬクロノスに獰猛なる猟犬たちが喰らいつく。牙が、爪が、跡形も残さんとばかりに蹂躙する。

「時を止めし罪、その生命を以て以外償うことは不可能と知れ」

 その様を一瞥した後、時空の守護神は静かにその場を去るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロス・フレイミー
※アドリブ・連携歓迎

親玉登場、と言ったところでしょうかね?

過去に思いを馳せることは…人の事言えないので、否定はしませんよ。
ただ、それ以上に大事なのは…「今、この時」ではありませんか。
どう足掻いたって過去は戻らないんです。だから強くなるために「今を生きる」んです。

…御託はここまでにしましょう。
『ここで、全力で貴方を打ち倒します』。

【指定UC】で真の姿に変身して【妖刀・一閃】に【魔力溜め】、【滑空】と【空中機動】で空からスピードを付けて【妖刀・一閃】で【切断】致します。
鋏による攻撃は【受け流し】で防御しましょう。
確実に切れなくても刀に纏った雷で【マヒ攻撃】になるはずですし、足止めにはなるはずです。



●今を生きてこそ
「……何故、何故です。何故そこまで未来への希望を抱いて生きることができるのです」

 理解できない、と言いたげにクロノスはふらふらと、時絶ち鋏を杖代わりにしてでも立ち上がる。

「未来がどうなるかはわからないというのに。今この時すらもどうなるかわからないというのに、何故そこまで展望し続けることができるのですか?」

 時絶ち鋏の切っ先を向けながら、クロノスは問い――クロス・フレイミー(狭間の剣士・f31508)は淡々と口を開いた。

「過去は戻りませんから」

 例えこれ以上記憶が薄れぬよう今に留めたとしても過去は過去でしかない。
 失った命も、無くしたものも、決して、二度と、戻ってこない。

「過去に想いを馳せることは……人の事は言えないので否定はしませんよ」

 クロス自身何度も今は亡き両親と暖かな日々に想いを馳せている。
 過去を思い返すこと自体は何も罪のある行為ではない――例え平穏な日常を歩み平和に健やかに育った者であったとしても過去を振り返ることはあるのだから。

「ただ、それ以上に大事なのは……「今、この時」ではありませんか」

 今この時すらもどうなるかわからないとクロノスは言った。
 それは確かにその通りだと肯定することはできる――だが、それで行おうとしている世界の凍結という行為は決して許されることではない。

「どう足掻いたって過去は戻らないんです。今、この時すらもどうなるかわからない――それはその通りですよ。
 でも、だからこそ。強くなる為に「今を生きる」んです」

 クロスは父の忘れ形見でもある愛刀を静かに鞘から解き放ち、構え――

「……御託はここまでにしましょう。『ここで、全力で貴方を打ち倒します』」

 黒い雷が刀身から迸り、クロスの身を包み――天と魔の間に生まれし狭間の剣士の真なる姿を描き始める。
 クロスは強くなる為に今を生きる。自身の力の根幹たる紅き天使への復讐の為に。
 故に最早言葉で語る必要はない。

「――【【解放】混ざり者はかく語りき(エレティコス・ティダスカリア)】」

 そのユーベルコードの名の通り、彼は自らの刀を以て信念を示す。
 黒雷を纏いし狭間の剣士は、一瞬にしてクロノスに肉薄し――刀と鋏の刃が交わる。
 『妖刀・一閃』と時絶ち鋏による激しい剣戟、しかし鋏を持つ時計ウサギの体力は既に消耗しきっており、そう長く続けられるものではなかった。
 段々と鋏を持つ手に力が入らなくなっていく……

「く……っ!」

 剣戟を繰り広げる度に衝撃と共に伝わる電流がクロノスの神経系を刺激し、電気信号を狂わせる。
 魔力を込めることにより黒き雷を帯びる父の忘れ形見、『妖刀・一閃』。それを時を斬ることのできる鋏とはいえ、金属で受け止めれば当然伝導率に比例した量の電流が流れ込んでくるのは当然の帰結。
 現状の負傷具合からしてもクロスが圧倒的に有利である事実は変わりはしない。
 クロスは再び飛び上がり、空中機動によるスピードで勢いをつけてもう一太刀打ち込み――ついにクロノスの手から時絶ち鋏を引き剥がす。
 勢いよく空を舞い、ぐさりと地面に突き刺さる時絶ち鋏。
 取りに行こうにも相手に背を向けると同義であると同時に、いち早く到達できる程の余力がクロノスには最早残されていなかった。

「――覚悟」

 静かに、かつ強く、斃すという意志を口にして。
 真紅と蒼玉の双眸は真っ直ぐに斃すべき敵を見据え、迷いなくその太刀を振り下ろした。
 黒い羽根と共に真っ赤な血が宙を舞い、クロノスはその場にがくんと膝をつき、狭間の剣士はその刀を鞘に収めて踵を返す。

「……貴方が生まれた経緯がどうであろうと、俺のやることはただ一つ。

 ――近づく敵は叩き斬る。それだけです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

ああ、よく寝た♪
母の温もりで【気合い】充分!
今日の私は強いわよ!!

天使の翼を持つ聖母のイマジンモンスターとなり
守護霊の憑依【ドーピング】で更に戦闘力を高めつつ
時間操作の【戦闘知識】を得て
相手の先制攻撃を【第六感・見切り】で回避

時間に干渉できるのは貴女だけじゃないわ

『無情なる刻』で21.6秒の時止め。
相手も静止した世界を認識できるだろうけど
動けるのは私だけ

私が時を止めたの。
貴女達オウガを救済(アイ)する為なら
どんな世界にだって入門するわ。
曼珠の想いも、貴女も、私が永遠にしてみせる

効力の増した【誘惑・催眠術・全力魔法】の睦言と
抱擁からの愛撫による【慰め】で魅了しつつ【生命力吸収】



●願いの継承、否定されし彼女らに捧ぐ無償の救済(アイ)
「うう……っぐ……」

 地面を這いながら、クロノスは時絶ち鋏へと向かう。
 その巨大な鋏は、何度も猟兵たちと刃を交えても尚折れず、地に突き刺さり静かに佇んでいる……
 ちく、たく、ちく、たく――鋏の中心についた時計の針の動く音。

「……っ……止め、なければ……」

 突き刺さる鋏を支えに立ち上がり、再びそれを握りしめ。引き抜こうとしたその時。

「ふぁ……ああ、よく寝た……♪」

 背後で少女のあくびが聞こえ、はっと振り返る。
 背伸びをして体をほぐし、ゆっくりと立ち上がる一人の猟兵――それは曼珠が骸の海に還る前に、彼女を母代わりに叶えられなかった願いを叶えた少女。
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は今まで以上に気合いと力がみなぎっていた。
 例えあの時だけで自分の願いを叶えてくれただけとはいえ、母娘としての時を過ごし、母の温もりに抱かれて眠る……それはドゥルールの永いこれまでの半生の中でも何よりも充実し、心地よく眠ることができた瞬間だった。

「く……まだ、邪魔をしますか……!」

 最早問答をしている余裕すらクロノスにはなく、時絶ち鋏を残る力を振り絞って引き抜き、時繋穴を経由して斬りかかろうと試みた。
 が、それはあっけなく躱されて終わった。
 限界に近いクロノスの動きは、今のドゥルールからしたら子供がてちてちと歩いているようなもの。彼女が時繋穴を経由している間に守護霊を憑依させ、彼らの持つ時間操作の知識を借りて着弾地点を予測し回避したのだ。

「なっ……時繋穴の時間の流れは違うというのに……!?」
「ふふ……今日の私は、強いわよ!!」

 そう高らかに叫ぶドゥルールの背から大きく広がったのは天使の翼。
 空間にある現実改変ユーベルコードの力を使い、ドゥルールが思い描いたイマジンモンスターがそこにいた。
 これまでの妖艶でありながらも少女らしいあどけなさを残した雰囲気とは一変し、穏やかで包容力に溢れた慈しみ溢れる黒き髪の聖母。
 しかし纏うオーラ並大抵のオブリビオンではそれだけで塵となってもおかしくない程のエネルギーも同然の輝きを放つ。
 その圧倒的な希薄に、クロノスの体が思わず震える。

「強い……確かにそのようですね……だがそれだけで私を止められると思い上がらないで」
「そうね、貴女はとても強いものね。……でも、時間に干渉できるのは貴女だけじゃないわ」
「何を世迷い言を――……っ!?」

 再び時繋穴を開くべく鋏を振り上げようとした腕――動かない。
 脚も同様で、視線はそらすことすらままならない。
 何故?そう問おうとしてすぐに結論は出た。

「私の、時間が……止められている……!?」

 だが時間操作はクロノスの得意とする管轄。
 こんなもの自身の力を使えばすぐに覆せる――そう、思っていたが力を出すことすらできない。

「バカな……どうして……!」
「言ったでしょう?時間に干渉できるのは貴女だけじゃないって」

 焦りを隠さないクロノスに、ドゥルールは穏やかに微笑みながら歩み寄る。

「私が時を止めたの」

 ユーベルコード【無情なる刻(クルーエル・クロック)】。
 僅か21.6秒という間であるが、ドゥルールの身に纏う衣装に宿った時間操作の魔力を解き放つことであらゆる存在の時間を止めることができる。
 想像力によりイマジンモンスターとなったことにより、その魔力は従来を遥かに超える量へと増幅され、クロノスのような時を操る存在をも容易に上回る程の効力を出したのだ。
 そしてクロノスは度重なる猟兵たちの猛攻により最早風前の灯に近い状態――ならば、どちらの力が上回るかは自ずと答えが出てくる。
 このままではやられる――そう直感するも為す術がない。
 勝てないと、クロノスは悟らざるを得なかった。

「……ここまで、ですか……私の、願いは」
「いいえ」

 天使の翼が二人を包み込むように優しく閉ざされる。
 クロノスが事を把握したその時にはもう、彼女はドゥルールの腕の中にあった。
 優しく抱きしめる体温はボロボロに傷ついた体には非常に暖かく感じられる。
 ――正確にはそう思わせるようにドゥルールが催眠術をかけているのであるが、これも彼女を苦しまずに一度骸の海に還し、その上で受け入れる為。
 彼女を生んだ願いの下となる女性と同じように、安らかに眠ってもらう為なのだ。

「貴女の願いは、私が受け継ぐ」
「何、ですって……?」
「貴女たちオウガを救済(アイ)する為なら、どんな世界にだって入門するわ。
 そして曼珠の想いも、貴女も、私が永遠にしてみせる……たくさん戦って疲れたでしょう?今はゆっくり休んで」

 耳元で優しく囁くその言葉は、ドゥルールの信条にして決意の現れ。
 催眠術や誘惑の幻術は、それをよりわかりやすく伝える為の手段に過ぎない。
 彼女の掲げるオブリビオンの救済という目標は決して飾りでも何でもなく、今回の件を経てより強固な願いとなった。
 大事なモノを過去にしたくない――その願いは、敢えて猟兵という立場を選んだ自分でなければできない。

「…………その言葉、信じましょう。
 ――どうか、過去が消えゆく恐怖に、潰れる人たち、を……救……」

 最後までその言葉を言い放つことはできず、クロノスの体は光に溶けて消えた。

「ええ、救ってみせるわ。貴女が救おうとした者たちを。そして、貴女たち全てのオブリビオンを」

 その光の欠片をぎゅっと握りしめ、ドゥルールは空を仰いだ。

●エピローグ
 ――世界の時間は再び動き出した。
 自覚なきオウガが齎すところであった誰も――そう、オウガ本人さえも――望まぬ悲劇は無事に回避されたのだ。

「おかげで助かったよ、ありがとう!……でも」

 感謝を告げると同時に、疑問に思ったのか愉快の仲間の一匹が首をかしげた。

「オウガってみんなアリスや僕らを食べる怖い連中だーって思ってたけど、違うのかな?」

 それは純粋な疑問。そして猟兵にはそれに首を縦にも横にも振ることはできなかった。
 何せ、今回のような事例は滅多にないことであったが故に……
 だが、こう答えることはできた。
“君がそう思うのなら、きっとそうかもしれないよ"、と。
 愉快な仲間の一匹はそういうものなのかな、と再び首を傾げるも、答えのでないモノであるのをわかっていたのかそういうことにするよ、と頷いた。

 今回のような事案が二度とあるとも、ないとも限らない。
 だが、誰かが過去が消えゆくのを恐れて時の停止を願うならば。曼珠でなくとも新たに時を止めようとするオウガは現れるだろう。
 そしてそれを止める為、猟兵はまたアリスラビリンスへと降り立ち、自らの信じるものを力に変えて戦うのだ。
 いつか訪れる平和の為に――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月17日
宿敵 『『揺り籠の母』地籠曼樹』 を撃破!


挿絵イラスト