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血に依りて

#ダークセイヴァー #第五の貴族 #異端の神々

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●かつての話
 かつて兄が言いました。
 必死に生きるその様は、なんて健気で貴いものだと。
 かつて弟が言いました。
 生にしがみつく在り方は、なんて無様で滑稽だろうと。

 かつて父が言いました。
 もう親ではいられないと。
 かつて娘が言いました。
 いつまでも貴方の娘だと。

 すべて、かつての。
 終わった話でございます。

●双子の悪鬼と鍵盤迷宮
「みんなはご家族とは仲がいいのかしら? 色んな人が居るだろうけど、今回戦う相手は仲良しさんみたい」
 世界を渡る猟兵たちが集うグリモアベース。
 今日もまた、彼らを求める予知を映したグリモアと共に待っていた人狼の少女が、緑の目を瞬かせて問いかけます。
「ダークセイヴァーの地下に存在する地底都市、そこを支配する『第五の貴族』を倒して欲しいのだけど……」
 『紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンと共に、ダークセイヴァーの地底に潜む強力なオブリビオンたち。
 その一角を打ち倒して欲しいと語るグリモア猟兵が、その表情を少しだけ曇らせます。
「……みんなは、『狂えるオブリビオン』に関してどれだけ知っているかしら。死した異端の神々に憑りつかれた、恐ろしいオブリビオンたちよ」
 彼女が語るのは、かの常闇の世界に蠢く超存在たちです。
 オブリビオンに殺害されようとも、その身体を乗っ取ってしまう事で蘇る狂気の神々は、第五の貴族と同じく、猟兵たちにとっての強敵であります。

「今回の予知はね、『狂えるオブリビオンが第五の貴族を襲撃して返り討ちに遭う』という内容だったの」
 それだけを聞けばオブリビオンの同士討ちであり、猟兵たちにとっては、都合の良い話のようにも聞こえます。
 しかし、少女の話を聞いた内の数人はその未来が辿る先を想像し、その表情を強張らせます。
「ええ、狂えるオブリビオンの身体は滅んでも、そこに憑依していた異端の神々は別よ。このままだと、『狂える第五の貴族』と呼ぶべきオブリビオンが生まれてしまうわ」
 紋章の力と異端の神々の力、その両方を併せ持つオブリビオンが誕生してしまえば、猟兵すらも正面からは倒せない極めて強力なオブリビオンとなるでしょう。
 そうなる前に、第五の貴族と狂えるオブリビオンの両方を倒すことこそ、今回の猟兵たちの役目でした。

「まずは第五の貴族から狙った方が良いわ。狂えるオブリビオンは、第五の貴族が作った迷宮で足止めされる筈だから、突破される前に勝負をつけてほしいの」
 第五の貴族とて、憑依されるのは不本意な事ですから、狂えるオブリビオンと出会わぬように対策を打っていました。
 『死の罠の迷宮』と呼ばれるソレは、地底都市に通じる道を封鎖し、訪れる者へ牙を剥くのです。
「と言っても、今回の迷宮に大した罠は無いのよ。トゲが飛び出してくるとか、火球が降ってくるとか……猟兵のみんななら、どうってことは無いわ」
 しかし、当然ですがオブリビオンの作り出した迷宮がそれだけで終わることはありません。
 ささやかな罠だけが用意されたその迷宮は、しかし迷宮そのものが死を招く罠と呼ぶべきものだったのです。
「今回の迷宮は、まさしく迷宮なの。壁が全部大きな鍵盤……あ、ピアノの白とか黒になってるあの部分ね? そういう変な形をしていて、常にピアノの音色が聞こえてくるわ」
 その音色は、迷宮を進む者の感覚を狂わせてしまうのです。
 知らず知らずのうちに来た道を戻ってしまったり、同じところを通っても、それに気づけなかったり。
 そうして延々と彷徨わせて疲弊した者が、取るに足らない筈の罠にかけられて命を落とすというのが、この迷宮の恐ろしさでした。
「対策は……音が危ないのだから、もっと大きな音を出してかき消しちゃったり、耳を塞いじゃったり。感覚が狂うと分かっていれば慎重に進むこともできそうだけど……狂えるオブリビオンに先を越されてはいけないから、早く突破する工夫も欲しいかしら?」
 勿論、他の手段で突破できるなら、どんどん使ってちょうだい! と、少女が猟兵たちへと呼びかけ、迷宮の先に待つものへと話を進めます。

「迷宮の先に居るのは、エボニーとアイボリーっていう双子の吸血鬼さん。彼らは二人一組のオブリビオンで、二人合わせての第五の貴族よ」
 黒白の翼をはばたかせて宙を舞う二人は、元より大きな力を持つオブリビオンです。
 しかし、二人に本来のものを越える力を与えているのは、その身に宿す『半月の紋章』でありました。
「単純に強くなっているのもそうだけど……この紋章も二つで一つ。二人が離れていてもすぐにワープして合流しちゃうから、攻撃を当てるには少し工夫した方がいいかもしれないわ」
 予知で見た攻略の糸口を伝えつつ、しかしグリモア猟兵はその表情を少しだけ曇らせます。

 第五の貴族の後に戦わねばならない相手、その情報について、少女は申し訳なさそうな様子で語るのです。
「……エボニーとアイボリーを倒したら、狂えるオブリビオンとの戦いになるのだけど。ごめんなさい、こっちの方は、予知にあまりはっきり映らなかったの」
 現地で相対してから対策を練ってもらわねばならないと、猟兵たちへと謝る少女が、しかしその表情を切り替えて笑顔で呼びかけます。
「でも、迷宮を突破する以上、なにか怪我だったり消耗してたり、万全の状態じゃない筈よ! みんななら、きっと勝てるわ!」
 そう語る彼女の手に握られたグリモアから、柔らかな光が放たれ始めます。
 第五の貴族と狂えるオブリビオン、いずれも強大な力を持つ強敵ですが、世界を守るためには彼らを打ち倒さなければいけません。
 そう、戦いへの決意を固めた猟兵たちは、一人、また一人と、光の中へと歩みを進めていくのでした。


北辰
 OPの閲覧ありがとうございます。
 ひゃあ、ダークセイヴァーの時間だ。北辰です。

 迷宮に第五の貴族に狂えるオブリビオンという欲張りセットをお届けします。
 状況的には猟兵vs第五の貴族vs狂えるオブリビオンという三つ巴ですが、第五の貴族と戦ってたら背後から狂えるオブリビオンが襲いかかってくるだとか、その逆はありませんのでご安心ください。
 なお、このシナリオが失敗した場合、『狂える第五の貴族』という厄ネタが1体追加されます。こちらはご安心しないでください。

 章構成としては、1章の迷宮突破の冒険フラグメントの後、ボスフラグメントの二連戦となります。
 特殊な判定が必要になる章はありませんので、どうぞお気軽にご参加ください。

 最後に、プレイングの受付期間についてですが、原則としてオープニング公開後から常に受け付ける予定です。
 ただし、各章の冒頭に攻略のヒントを含んだ断章の文章を記載する予定ですので、そちらをご確認いただいてからのプレイング送信をお勧めいたします。

 それでは、地底都市に造られた死の迷宮。
 そこに潜む家族たちを打ち倒すプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『死の罠の迷宮』

POW   :    防御力を活かし、強引に罠を突破する

SPD   :    罠を解除しながら迷宮を踏破する

WIZ   :    迷宮の隠し通路や仕掛けを暴く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷い倒れるその前に
 地底都市へと続く迷宮の入り口。
 そこへ降り立った猟兵たちは、自分が小さくなってしまったかのような錯覚に襲われます。
 猟兵たちを待ち受ける迷宮、その壁を作るのは白と黒の巨大な鍵盤だったのです。
 ですが、猟兵たちの感覚を惑わせるのは、迷宮の造形だけではありません。
 どこから響くのか分からない、いいえ、迷宮そのものから響くようなピアノの音色は、洗練された美しい響きの中に、どこかこの世のものではないような怪しげな音を含んでおります。
 鍵盤につけられたかがり火が迷宮の中を照らしてはくれますが、あまりに規則正しく設置されたその灯りは、迷宮の風景に単調な印象を与えて、その奥へと踏み入る者を容易く迷わせてしまいます。

 目に見える景色も、耳に入る音も、すべてが訪れる者を帰さぬための敵意で作られた鍵盤の迷宮。
 迂闊に入り込んだ者は、延々と彷徨い疲れ果て、子供だましのような小さな罠で命を落としてしまうのでしょう。
 けれど、此処に集った猟兵たちは、その程度の危険で歩みを止める事はありません。
 既に迷宮に侵入しているかもしれない狂えるオブリビオンが第五の貴族の下へとたどり着けば、より危険で恐ろしい存在が誕生してしまうのです。
 その未来を阻止する使命に背を押される猟兵たちは、オブリビオンが作りし死の罠の迷宮の奥深くへと進んでいくのでした。
エウロペ・マリウス
死の罠の迷宮、か
相変わらず、悪趣味なモノばかり創るね

行動 WIZ

まずは、音色対策だね
【狂気耐性】【環境耐性】【呪詛耐性】で対応するよ
それと……

「おいで。今日は、ここがキミ達の遊び場だよ。『妖精達の悪戯遊戯(ニンフ・マレフィキウム)』」

呼び出した妖精達に、支援をお願いするよ
悪戯好きなのが玉に瑕だけれど、迷宮探索は彼らの十八番
音に惑わされないように、応援をお願いしつつ、
迷宮の隠し通路の探索や封印解除、鍵開けをお願いするよ

性質上、ボクが強くなればなるほど魔力に誘われる妖精を数が増える、んだけど……ね
じゃれついてくる人数が増えると思うとかわいいものの、悪戯対象が迷宮かボクかになっちゃうのが悩みの種だね



●少し危険で、とても楽しい
「相変わらず、悪趣味なモノばかり創るね」
 絹糸のような白い髪、透き通るような白い肌。それを白の装束で飾り立てた少女は、迷宮の入り口で誰に聞かせるでもなく呟きます。
 雪の結晶を象徴するような杖を抱えて佇む彼女。その名を、エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)といいました。
 眼前に待ち構える鍵盤の迷宮を眺めるエウロペは、しかしその耳に届くはずの惑いの旋律には何ら動じた様子を見せません。
 これは、年若いながらも猟兵としての経験を積み重ねてきた彼女にとっては寧ろ当然のこと。『第五の貴族』本人ならまだしも、その手で造られただけの自動演奏などでは、彼女の精神を乱すなど到底不可能なのですから。

 侵入者を迷わせるピアノの音が通じぬのなら、死の罠の迷宮といえども大した脅威ではありません。しかし、今回に限っては、狂えるオブリビオンよりも先に迷宮を越えなければならないのです。
 当然、エウロペとしても急いで進む必要があるわけですが、焦りで動けば本来どうという事のない罠にかかる危険も生まれます。
 ですから……。
「おいで。今日は、ここがキミ達の遊び場だよ。『妖精達の悪戯遊戯(ニンフ・マレフィキウム)』」
 エウロペが選んだのは、罠に気付く目を、より良い道を開く手を増やす事でした。
 少女の言葉と共に現れるのは、少女とも少年とも判別のつかぬ姿をした、小さな妖精たちです。
 元々は、エウロペの膨大な魔力に誘われた彼らではありますが、すぐさまエウロペの意図を汲み、迷宮の探索へと乗り出していくのです。
 それはひとえに、エウロペの高貴な血や魔力に対する忠誠心……ならば、扱いは楽なのですが。

「こらこら、あまり髪を引っ張らないでおくれ」
 じゃれつくような振る舞いでエウロペにまとわりつく妖精たちに象徴されるように、彼らの思考の大半は悪戯や遊戯に占められているのです。
 一直線に迷宮を進んでいった一団は、あわやその首を撥ね飛ばさんばかりに襲い掛かった振り子の刃をひらりと躱し、ブランコにでも乗るかのような笑顔で鎖に飛びついていきます。
 エウロペが視線を下に落とせば、鍵盤の一部を取り外してしまった妖精が、新たに見つけた通路を誇らしげに仲間へ示しておりました。

 彼らにかかれば、この迷宮はちょっとスリルのある遊び場であり、エウロペは親切にもそこへ招き入れてくれた友人なのでしょうか。
 ふとそう考えたエウロペはその青の瞳を細めて、肩に乗って調子はずれの歌を歌う妖精を落としてしまわぬよう気を付けながら、迷宮を進み始めていきました。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…異端の神々。オブリビオンからオブリビオンへ憑依も出来るのね…

どうにか狂えるオブリビオンを飼い慣らす事が出来れば、
この世界から吸血鬼を一掃出来そうだけど…まあ、現実的では無いわね

"精霊石の耳飾り"に光の精霊を降霊して暗視能力を強化しつつUCを発動
迷宮に響く音色を超音波のオーラで防御して受け流し、
精霊の視界と反響定位を用いた第六感を頼りに罠の存在感を見切り、
音属性攻撃の超振動斬擊波を放ち罠を破壊しながら先に進むわ

…音の罠ならば、同じ音をぶつければ打ち消せる
感覚が狂わなければこの程度の罠、どうという事は無い

…後は異端の神が辿り着く前に第五の貴族を討ち果たすだけ

…時間の余裕はあまり無い。急ぎましょう



●刻限を睨み
 異端の神々と呼ばれる超存在に関して、分かっていることは多くはありません。
 通常のオブリビオンとは異なり未開の辺境を活動領域とする彼らは、討伐に来る猟兵以外の存在、すなわち不幸な現地住民であったり、あるいは他のオブリビオンと出会った例が極端に少ないのです。
 このダークセイヴァーの地において数多のオブリビオンと対峙してきた少女、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にとってもそれは同様であり、『オブリビオンからオブリビオンへと憑依する』という能力は、彼女にとっても初めて聞くものでした。

「どうにか狂えるオブリビオンを飼い慣らす事が出来れば、この世界から吸血鬼を一掃出来そうだけど……」
 しかし、大鎌を携えた歴戦の黒騎士は、そのような事で怯むことはありません。
 平然とオブリビオンを利用する企てを考え、流石に現実的でないと却下するリーヴァルディの耳には、虹のような輝きを放つ美しい装飾が揺れています。

 彼女の優れたる点は、迷宮に響く旋律の働きが、道を隠す事ではなく、見えている筈の正解を誤認させる事にあると素早く見破った事でしょう。
 精霊石に精霊を降ろして暗闇での視界を確保して、ユーベルコードの力を併用した超音波のオーラを纏えば、死の罠の根幹たる旋律も防ぐことは容易です。
 そこに加えて、精霊が捉えた罠へと音波を伴う斬撃を放ち壊してしまえば、僅かに影響を及ぼそうとした旋律は完全にかき消されてしまいます。
 勿論、常にユーベルコードを使い続け、大鎌を振るい迷宮を進むことは、リーヴァルディにとっても相応の負担が生まれます。
 ですが、罠を無力化し、強引に破壊してしまって進むこの方式なら、殆ど足止めを受けることなく、最短の距離を突き進むことが可能となるでしょう。

「……時間の余裕はあまり無い。急ぎましょう」
 最初の目的はあくまで、異端の神よりも先んじて第五の貴族へとたどり着き、これを討ち取る事。たとえ迷宮を突破しようとも、異端の神に先手を取られてしまっては意味が無いのです。
 そうして、異端の神が第五の貴族の身体と紋章を手に入れてしまっては、この常闇の世界は更なる危機にさらされる事でしょう。
 それを十分に理解しているリーヴァルディは、躊躇なく刃を振るい、音を斬り裂いて迷宮を進んでいくのです。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
幾度か『第五の貴族』と『異端の神』との諍いに介入しましたが…
この対立は世界の趨勢にどう影響を与えるのか

…気取るなら軍師では無く騎士でありたいもの
先ずは目の前の脅威への対処です

自己ハッキングで聴覚センサーをカットし音の悪影響排除
マルチセンサーでのレーダー測量や暗視
情報収集で迷宮構造見切り電子頭脳内でマッピング

音無き戦場…故郷では珍しくもない環境です

狂える~の消耗狙う為、迷宮の罠の破壊や作動は避けたいもの
天井にUC撃ち込み推力移動と体重移動で通路をロープワークで移動

…家族ですか
故郷の同型機を兄弟と当て嵌めるなら、兄弟殺しの経験はそろそろ三桁

感慨が湧きにくいのは、やはりヒトと違うからなのでしょうね



●フラトリサイド
 この地で、そして他の地底都市でも繰り広げられている第五の貴族と異端の神の争いは、世界をどのように変えてしまうのでしょうか。
 白い鎧騎士のような姿をしたウォーマシン、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は少しばかり考えてから、その思考を打ち消すかのように迷宮へと向き直ります。
 自分は騎士気取りであって軍師ではないのだと、自嘲半分に思い直したトリテレイアは、眼前の脅威を攻略するために意識を切り替えるのです。

「(聴覚センサーのカットは問題なし……問題はマルチセンサーに映らない純魔術性の罠ですが)」
 機械であるトリテレイアの強みの一つに、自分の感覚を自分の意思で遮断できるということがありました。
 聴覚に相当する機能を一時的に停止させた彼は、鍵盤が並ぶような迷宮の細部を、電波の反射であったり、赤外線の暗視機能を用いて確認していきます。
 迷宮には、耳を塞いで突破しようとする者を狙った、視覚で捉えにくい罠も存在しておりますが、極めて高度な機械技術による感知をも欺けるものではありません。
 あるいは、トリテレイアが静寂の中での行動に慣れていないのであれば油断することもあったかもしれません。しかし、彼の故郷は音を伝える大気すら限られた宇宙船の中にしか存在しない星の海。
 すみやかに罠の位置を把握し、電子の頭脳に詳細な三次元的マップまで作り出したトリテレイアに対して、死の罠が牙を剥くことなど到底不可能なのです。

 狂えるオブリビオンを消耗させるために、トリテレイアは敢えて罠を破壊せず、機械腕を利用した空中機動で迷宮を進んでいきます。
 その中で、戦う為に生み出された彼が思い出すのは、グリモアベースで聞かされたある概念について。
「……家族ですか」
 トリテレイアに血を分けた肉親というものは存在しませんが、彼と同じ設計の下で生み出された兄弟機でしたら、心当たりがありました。
 言葉を交わすこともなく破壊した兄弟の数は、そろそろ百に迫らんばかり。
 そして、そのことに対する感慨というものは、トリテレイアの中には殆ど存在しないものです。

 騎士気取りは、あくまでヒトとは違う存在という事なのでしょうか。
 あるいはそう考える時点で、彼はただ殺すだけの機械ではないのか。

 答えを示すものが、この死の旋律に包まれた迷宮に居るはずもなく。
 トリテレイアはただ、静寂の中を進んでいくのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーザー・ゴールドマン
成程、視覚的に迷わせるだけではなく、聴覚を持った存在に効果的な罠を重ねておくことで効果を増している訳だね。
なかなかよく考えているが、種が割れてしまえばどうということはないか。
予知というものは敵対する者にとっては厄介なものだね。

さて、私はどう突破するべきか。
……まあ、第五の貴族、狂えるオブリビオンと控えているのだから迷宮で遊ぶ必要もないかな。
(と『ハーデースの兜』を発動。不可視不可触の魔力となり、するすると迷宮を突破して、出口で姿を現す)

※今回はこの後の戦闘を楽しみにしており、迷宮には特に興味がない感じです。



●オードブル
「成程、視覚的に迷わせるだけではなく、聴覚を持った存在に効果的な罠を重ねておくことで効果を増している訳だね」
 迷宮の中、『誰も居ない筈』の空間から、男の声が響きます。
 声の主、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)もまた、オブリビオンと対峙すべく、この地に降り立った猟兵でありました。
 第五の貴族の下を目指して迷宮を進む彼は、しかしその姿はどこにも見えず、足音すらまるで立てません。
 それも当然のことで、ユーベルコードの力で不可視不可触の魔力体となったシーザーは、迷宮をのどかな小道でも歩くかのように突破していくのです。

 第五の貴族が作った迷宮は、シーザーの語る通り、複数の手段で侵入者を惑わせ罠にかける危険なものです。
 しかし、ダークセイヴァーで扱われる魔術であるならシーザーもよく知る所。『ピアノの音を聞かせる』ことを起点とした魔術のトラップならば、音すら素通りする身体には発動すらしないことを、彼はすぐに見破ったのです。
「……予知というものは敵対する者にとっては厄介なものだね」
 これで、シーザーが何も知らずに迷宮を訪れていれば、シーザーに通じたかはさておき、惑わしの魔術が発動すらしないことにはならなかったでしょう。
 結果として、あまりにも歯ごたえのない迷宮攻略となった現状に少しだけ思考を重ねたのち、シーザーはやはり不可触の術を維持して迷宮を進んでいきます。

 あるいは、迷宮を突破するだけの戦いなら、もう少し捻った攻略法を試してみても良いのですが、今回の本命は第五の貴族と狂えるオブリビオンであります。
 この退屈な迷宮攻略は、いわば劇における『間』であり、一種の焦らしといえましょう。
 城や宮殿においても、来客を移動させる通路にも工夫を凝らすものですから、迷宮を形作る鍵盤の壁も、似たようなものだと考えればいいのです。
「そう思えば、音を楽しめないのは勿体ないことをしているかもしれないが……それも含めて、家主の歓待を期待しようか」
 死の罠の迷宮の中には不釣り合いな、どこか呑気にすら思えるシーザーの呟き。
 しかし、それを聞くことのできる者が居る訳もなく、シーザーは悠々とオブリビオンの罠を超えていくのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

神埜・常盤
家族? 大嫌いさ
ひとだった、母以外はね

それにしても、変わった迷宮だねェ
黒と白のコントラストは
何処か清潔感すら感じさせるような
あァ、コレは鍵盤か
成る程なァ…

百鬼夜行で呼び出したる式神は
鈴のカタチの付喪神
しゃらり、破魔の音色を響かせて
怪しげな旋律を打ち消そう

去来する罠の類は
拡げた護符を盾としたり
啜溺の爪で弾き落としたり

問題はスピィドか
僕は余り足が速く無くて…
あ、そうだ

おいで、もふ
バディペットを懐から招く
この奇妙な毛玉は僕が命ずる侭
様々なカタチを取れるらしい
さあ、可愛いお前
馬になって僕を運んでおくれ

そうして四足歩行の
奇妙な毛玉が出来上がり

ウン…歩くよりは早いかな
さァ、気を取り直して行こうじゃないか



●奇妙な旋律、奇妙なもふ
 何時頃からあるのかも分からない、オブリビオンによる死の罠の迷宮。
 その壁を形作る白と黒の鍵盤には一切の曇りは無く、場違いなまでの美しさを誇ります。
 この奇妙な清潔感はどこか存在感を稀薄にさせて、嗚呼、これは事前に聞いていなければ鍵盤だと理解するのに時間がかかったかもしれないと、訪れた猟兵に思わせてしまうほど。
 そして、グリモアベースで聞いた話が、もう一つ。
「……家族? 大嫌いさ」
 唯一の例外までには口にせず。
 琥珀の髪を揺らす半吸血鬼、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は薄っすらとした笑みを浮かべて、ダークセイヴァーの地に降り立つのでした。

「それじゃあ、無粋な音にはご退場いただこう──我が名の下に来れ、無銘の神よ」
 常盤が扱うユーベルコードは、戦いに適した式神を呼び出すもの。
 たとえ製作者の姿なき迷宮であっても、戦いと定義して術を適用してしまうのは、陰陽師としての技量と呼んでよいのでしょう。
 しゃらりと涼やかな音と共に現れた付喪神は、鈴のカタチを象って。
 その邪を祓う音色が響き渡れば、常盤の耳に届く惑わしの旋律は急速にその力を失ってしまうのです。
 そうして迷宮の要ともいえる音の罠を抑えつけてしまえば、そのほかの簡単な罠など恐れるに値しません。
 火の玉が飛んでくるのなら護符を宙に浮かせて盾を作ればいいのですし、血で錆びついたなまくらの刃など、常盤の振るう爪で容易に引き裂ける程度のもの。
 ですが、そこに狂えるオブリビオンという競争者が存在するのであれば、もう少し手を考えなければなりません。
「問題はスピィドか」
 常盤は優秀な陰陽師ではありますが、足の速さには自信がありませんでした。
 無論、それを補う式神を呼び出せばよいのですが、現在の鈴の付喪神を引っ込めてしまえば、オブリビオンの術中に囚われかねません。
 常盤は少し、ほんの少し考えた後に。

「あ、そうだ……おいで、もふ」
 懐から、なんとも形容しがたい毛玉を取り出すに至りました。

 蠢いている綿毛のような何かとしか言えないソレは、主に呼び出されたのが嬉しいのか、常盤の足に纏わりつくかのように回っております。
 しかし、何を隠そうこのもふは、常盤の命ずるままに姿を変えてしまう不思議な毛玉でした。
 常盤が一声かけてやれば、もふは見る見るうちに膨れ上がり、馬の形へと変わっていきます。
「ウン……歩くよりは早いかな」
 ひらりともふの背に乗り、思わず漏れる正直な感想。
 ぱからぱからという蹄の音は望むまでもなく、もふもふまふまふとした気の抜ける感触に苦笑しながらも、常盤は迷宮を駆けていくのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

大門・有人
ヴァシリッサ(f09894)と
POW対応、諸々歓迎

音対策に爆音バイク。走りも速いし、いい案だな。
…道にアテはあるのか?勘?
壁に突っ込んじゃ大変だ。UC使用、回転弾倉式散弾銃で炸裂弾をぶっ放す。
ヴァシリッサや他の猟兵も巻き込まないように、どうしてもって時はもって造られた頑丈な体とバイクで破壊だ。
拳銃で壊せる罠はクイックドロウで迎撃、基本的にはヴァシリッサの壁になるように動くが、俺はそこまで勘の回るタイプでもないからな。罠がなさそうなら大人しく後ろをついてくぜ。

迷宮自体が人にとっては脅威か。全て終わればこれも粉砕してやる。
(髪を整え)難しい言葉はよくわからんが、潰すってシンプルな答えは大好物だ。


ヴァシリッサ・フロレスク
Mr.ダイモン(f27748)と
POW一択

二人共単車で吶喊
陰気なBGMなンざブッ飛ばす、イカしたエキゾーストノートを鳴らしてやるッてェ寸法サ

道?ハハッ!ハナから分かんねェのに悩むなンてナンセンスだろ?
見切り発車上等、こんなもン第六感と野生の勘だ

そうそう、邪魔なモンはUCで排除だ、迷ってるヒマ有ったら手前ェでブチ抜くまでサ♪

Mr.ダイモンのカバーのオカゲで道中は快適カイテキ♪

ああ、賛成だよ。御片付までがオシゴトだ。
発破は十八番サ

これもセンセーテキジエーケンってヤツだろ?

“過去”は潰す

ソレだけだよ

もう、終わっちまってンだ
その“リクツ”に迷ってるようじゃ、自分がドッチ側か、分かン無くなっちまうからネ



●一直線
 その日の迷宮では、いくつもの騒ぎが起きておりました。
 ある猟兵は音を消し、ある猟兵は耳を塞ぎ、来訪者を呑み込んでしまうはずの迷宮を次々に踏み越えていくのです。
 ですが、騒ぎの大きさという点では……。
「ヴァシリッサ! あの壁は俺がぶっ壊しちまっていいよなぁ!?」
「障害物だな! アタシの槍をぶっ放すよ、Mr.ダイモン!」

「「バ イ ク の 音 で 何 も 聞 こ え ね ぇ!!」」

 単車を乗り回す二人の猟兵、その奏でる轟音に勝るものはありませんでした。

 凄まじい勢いで迷宮を突き進む猟兵たち。きっちりと整えられたリーゼントが印象的な男の名は大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)、赤髪をはためかせて並走する女の名をヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)と申しました。
 旋律が人を惑わし、複雑な迷宮が道を覆い隠してしまうオブリビオンの備えに対して二人が出した回答はまさしく単純明快。
 妖しき旋律をかき消してしまうほどの轟音をたてるバイクにまたがり、壁も罠もすべてを粉砕しながら真っすぐに突き進むこと。
 どこに進めば第五の貴族がいるかもわからず、『地底都市に居るらしいからとりあえず下を目指そう』程度の純然たる直観を頼りに進む彼らに、しかし迷いの表情はありません。
 人に害なす迷宮も、過去たるオブリビオンも等しく打ち砕く――彼ら流に言えば、潰すでしょうか――決意だけは揺るがぬと、迷いなく猟兵たちは進んでいくのです。

「家族思いのオブリビオンねぇ……」
 唸るエンジンの轟音の中、ヴァシリッサはぽつりとつぶやきます。
 グリモアベースにて語られたその情報を呟く彼女の表情には、特筆すべき感情は浮かびません。
 彼女も家族なり血族なりついでにダークセイヴァーの貴族なりで色々あった身ではあるのですが、それはそれでこれはこれ。
 そもそも、自分の事を含めてすべては既に終わった話でしかありません。
 自分の立ち位置を見失わない為にも、“リクツ”をブレさせる気など彼女にはさらさらないのです。
「うおっと……やっぱ音さえ防げば大したことはねーな」
 そして、たった今抜き放った拳銃で飛び出してきたナイフを撃ち落とした有人の内心はより単純。
 この男、難しい言葉は分からないなどと自称してはおりますが、それ以前に家族というものをロクに覚えておりません。
 げに恨めしきは好き勝手に身体を弄繰り回したどこかの誰か。それ以前の記憶はまとめてどこかに捨てられたきり。
 覚えていないものに碌な感慨を抱けるわけもなく、ただただ正義の執行人として単車を駆るのです。

「Mr.ダイモン! 正面のデカい門めちゃくちゃ怪しくねェか!」
「聞こえないけど言いたいことは分かるぜ! ぶっ壊しちまおう!」
 背景は違えど、共に純粋にオブリビオンを打ち倒すべく迷宮を駆け抜ける二人。
 すべてを踏み越えて見えた扉へと、男が大きな銃を構え、女は無骨な杭で狙いを付けます。
 火薬が爆ぜ、金属の塊が飛来して強固なはずの扉を打ち砕く音が、単車が奏でる爆音すらもかき消して響きます。
 粉塵が舞い、一寸先も見えなくなった迷宮の中で、二人が単車を止め、ひらりと地面に降り立ちます。
 瓦礫が散らばる中で、運転は危険だと判断したのでしょうか。
 いいえ、この二人がその程度の障害で怯むなど到底あり得ない事。

 櫛を取り出した有人は、バイクでの疾走で乱れてしまったリーゼントを、手慣れた手つきで整えていきます。
 横に立つヴァシリッサは、猟兵の本懐を前にして、その特徴的で下手な笑みを深めて。
 二人の猟兵が、言葉もなく察した予感の通り。

 たどり着いた大きな広間には、彼らが目指した『敵』がおりました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『エボニー・アイボリー』

POW   :    黒鍵の天使
【アイボリーを求めること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【36の音の斬撃】で攻撃する。
SPD   :    白鍵の悪魔
【エボニーを求めること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【52の音の衝撃】で攻撃する。
WIZ   :    黒檀と象牙の調和
戦場全体に、【空間転移すら妨害】する【ピアノの鍵盤】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:つばき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はウラン・ラジオアイソトープです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒白の悪魔
「おや、アイボリー。僕らが用意した音楽を聞こうともしない、無粋な連中が来たようだよ」
「そうだねエボニー、頑張って試練を乗り越えた、健気な子たちだ」
 迷宮を抜けた猟兵たちの前に広がる、高い天井の大広間。
 薄暗い迷宮とは比べ物にならない程立派な燭台たちに照らされた豪奢な風景の中に、二人の少年の声が響きます。

 蝙蝠のような翼の形、白い悪魔のような姿をしたのが兄のアイボリー。
 鳥のような翼の形、黒い天使のような姿をしたのが弟のエボニー。
 あざ笑うように、祝福するように。猟兵たちへ笑みを向ける双子の吸血鬼。
 アイボリーがふわりと空を舞えば、次の瞬間、その隣には地上に居たはずのエボニーが。
 エボニーが音もなく地に降り立てば、その背後に寄り添うようにアイボリーが現れます。
 兄が弟の、弟が兄の下へと瞬時に現れる不可思議な力。
 そして、その根源となり、二人の胸元で不気味にうごめく寄生虫のようなオブリビオンこそ、二人を第五の貴族たらしめる『半月の紋章』でありました。

「今日は予定が立て込んでいるんだ、君たちの他にもお客様を迎える予定でね」
「だから、すぐに死んでくれると嬉しいよ。今を生きる者らしく、無様にね?」
 二人の吸血鬼が、オブリビオンとしての悪意を隠すこともなく、その笑みを深めます。

 一瞬で転移するような紋章の力は、連続して使用できるような扱いやすいものでは無い筈です。
 強大な第五の貴族であろうとも、つけいる隙はあるのです。
 何より、すぐに二人を倒さねばならぬ事は、猟兵とて同じこと。
 双子の悪魔の笑みを前に、猟兵たちは闘志を漲らせるのでした。
シーザー・ゴールドマン
成程、互いの身を標点とした転移能力か。仲が良さそうで結構なことだ。
ああ、私達以外にも来客の予定があるのだったね。
ハハハ、心配することはない。私達が君達に変わってもてなしておこう。
感謝はいらないとも。私と君達の仲だ。
だから安心して骸の海に還ると良いよ。

オド(オーラ防御)を活性化して戦闘態勢へ。
オーラセイバーを振るい、魔法を放って戦います。ある程度立ち回って双子の動きを見切り、双子の姿がシーザーから見て重なった瞬間、光速の魔弾によって二人同時に貫きます。(アララトの流星×貫通攻撃)
(可能であれば半月の紋章を狙って貫きます/部位破壊)

強力な力だね。次は光より早く発動できるように精進することだ。


トリテレイア・ゼロナイン
来客の準備の邪魔だと言われては、騎士として返す言葉も御座いませんね
ですが戦とは相手の都合を無視し、時に付け込むことも肝要
お付き合い頂ければ

物資収納Sから指と指の間に挟んで複数本
取り出したスローイングダガーを投擲、兄弟分断図り
黒鍵のエボニーの斬撃を大盾で受け止めつつ接近、剣を振りかざし…

動体を検知するセンサーでの情報収集と瞬間思考力でアイボリーの出現と攻撃を見切り攻撃中断、回避

成程、何方かを襲えば背後からもう一人、と

再度エボニーへ接近
…アイボリーの出現検知に対し背部装甲展開
UCによる●騙し討ちで紋章ごと切り刻み

…都合に付け込むと言った筈です!

脚部スラスター推力移動で加速
動揺したエボニーを一閃



●一射一閃
「ああ、私達以外にも来客の予定があるのだったね……ハハハ、心配することはない。私達が君達に変わってもてなしておこう」
「君ごときが僕とアイボリーの代役に? 冗談にしてもくだらないね」
 エボニーの敵意に満ちた眼差しを、シーザーは穏やかな表情で受け流します。
 オブリビオンが魔術の光弾を放ち、猟兵の身から溢れるオーラがそれをはじき返す様は、両者の美しい容姿を相まって、舞踏の前の挨拶を交わしているかのようですらあるのです。
「……来客の準備の邪魔だと言われては、騎士として返す言葉も御座いませんね」
「そう言われると悲しいな。出迎えに不備があるのは、ホストたる僕らの問題さ」
 一方で、柔らかい口調のアイボリーと対峙するのは、彼と同じく白い機体が印象的なトリテレイア。
 騎士然としたウォーマシンが装甲内部から取り出したスローイングダガー、それがアイボリーに襲いかかれば、吸血鬼は猟兵の目論見通りに片割れから離れる形で刃を躱します。

 二人を分断したその瞬間、シーザーとトリテレイアは同時に刃を振るいオブリビオンを狙いました。
 シーザーの振るう光剣がぐにゃりと曲がれば、鋭利な切っ先はそのままに大蛇のようなしなりを持ってアイボリーへと襲いかかります。
 そして、そのアイボリーと向き合っていたトリテレイアは素早く盾を構え、脚部のスラスターを用いる事で、予備動作も無しにエボニーへと突進を仕掛けます。
 共に歴戦の猟兵だからこそ可能な、奇襲的な攻撃相手の切り替え。如何に強大なオブリビオンであっても、それを防ぐのは容易ではありません。
「──アイボリー!」
 ですが、猟兵たちが相手にしているのは、紋章の力を手に入れた第五の貴族。
 エボニーの叫びと同時にアイボリーの姿が消失し、シーザーの刺突は虚空を貫きます。
 そして、エボニーに斬りかからんと接近していたトリテレイアが、センサーの警鐘に従い急旋回をすれば、直前まで彼がいた地点の床をアイボリーの翼が叩き砕きました。
「成程、互いの身を標点とした転移能力か。仲が良さそうで結構なことだ」
「……何方かを襲えば背後からもう一人、と」
 目の前でアイボリーの消失と出現を見ていたシーザーが笑みと共に能力を分析し、からくも奇襲を躱してみせたトリテレイアが静かに言葉を続けます。
「この手の戦術は転移の瞬間を予測して叩くか、意識の外から奇襲を仕掛けるのが定石ですが……」
「彼らもそれを狙われることは承知しているだろうね、それなら……」

「さて、これも戦。押し通らさせて貰いますよ!」
「……それでやる事がさっきの焼き直しなら、僕らが付き合ってやる理由もないだろう?」
 再び突進の構えをとるトリテレイアに対して、エボニーが動きを見せます。
 空中へと舞い上がった兄の方へしなやかな指を伸ばせば、どこからともなく聞こえるのはピアノの音色。
 先の迷宮よりも圧倒的な害意に満ちたその音色は、三十六の刃へと変じてトリテレイアへと襲いかかります。
 オブリビオンのユーベルコードにより猟兵の盾が、剣が、装甲が切り裂かれていきますが、ウォーマシンたるトリテレイアが怯むという事はあり得ません。
 いくつもの傷を受けながらも止まる気配のない相手に対して、エボニーが舌打ちをして上を見やれば、その視線を受けた白い悪魔が再び姿をくらまします。
 エボニーの言うように、先ほどの焼き直しかのようにトリテレイアの背後を取るアイボリー。
 その顔には、先ほどまでの柔和な笑みは無く。
 猟兵が出鱈目に突進を繰り返すわけもなく、何かを企んでいるだろう事は、オブリビオンである彼らにとっても重々承知の上なのです。

 武装を失ったトリテレイアの身体。
 その装甲の隙間から現れたワイヤーがアイボリーに襲い掛かり、しかし猟兵の奇襲を予期してたオブリビオンは腕や魔力でそれを受けて、急所や紋章への攻撃を許しません。
「く、なるほど、それが君たちの本命……なっ!?」
「ええ、『私の』隠し玉です」
 トリテレイアの奇襲を防いだと確信したアイボリーの身体が一気に宙へと持ち上げられます。
 ワイヤーの刺突は防いでも、それによって持ち上げられる事は予想外だったアイボリーが困惑の表情と共に床を見下ろせば、そこには愛しい弟の姿が。
 ですが、弟の視線は、アイボリーではなくその背後へと。
「予測して叩くか、奇襲を仕掛けるか──あるいは問答無用で撃ち抜くか、だね」
 それが当然とばかりにアイボリーよりさらに高い中空へ立っているのは、掌に紅い魔力弾を作り出したシーザーです。
 見下ろすのは、トリテレイアによって一直線に並べられた双子の吸血鬼。
 次の瞬間には、シーザーの放つ光速の弾丸が、知覚すら許さぬままに彼らの翼を射抜きます。
「ぎっ、あ゛あ゛っ!」
「アイボリー! くそ、よくも……!」
 ワイヤーに拘束され、背後から撃ち抜かれる形となったアイボリーへと、エボニーが呼びかけます。
 シーザーの姿を見ていたからこそ、反応できないまでも混乱の少ないエボニーは煮えたぎる憎悪を赤い半吸血鬼へと向け。

「……いいのかね? 騎士というのは、隠し玉を使わぬ方が手に負えないものだよ」
「──そうでありたいものですね」
 だからこそ。
 折れた剣を構え、真正面から突っ込んでくるトリテレイアの一閃を凌ぐ余力など、残されてはおりませんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
やァ、ご機嫌麗しゅう
仲睦まじい様子で何より

君たちを見ていると
大嫌いな弟を想いだすよ
感情を求めて人体実験に勤しむ
悪い吸血鬼だった

まァ、如何でも良い噺だ
己の掌を爪で裂けば
流れる赫をビフロンスへ捧げよう

さァ、伯爵
ありったけの亡霊を集めておくれ
そして、迷路中に解き放て

転移すら阻む迷路なら
あの双子とて逃げられはしない筈
逆に彼らを追い詰めてあげよう

もし蹴散らされようと問題ない
亡霊たちが消え往く先に
獲物は潜んで居るのだから――

亡霊たちに紛れて肉薄すれば
啜溺の爪で彼らの腹を刺し貫こう
ねェ、見送りたい?
それとも、見送られたい?

順番の希望位は聴いてあげるよ
どのみち二人とも直ぐに
彼岸へ旅立つことに成るだろうケド



●愛深き兄妹とそうではない男
「大丈夫かい、エボニー!?」
「どうにかね……それより次に備えよう、猟兵というのはいくらでも湧いてくるんだから」
 猟兵の攻撃によって傷を負ったエボニーが、アイボリーへと言葉を返しながら、新たな来訪者を睨みつけます。
 その視線の先。現れた優男風のダンピール、常盤の姿を見たアイボリーは、瞬時にユーベルコードを発動させるのです。
「おや、これは……成程、仲睦まじい様子で何より」
 先ほど突破した死の罠の迷宮と同様、ピアノの鍵盤で作られた迷宮の出現に対しても、常盤は焦ることなくその性質を分析します。
 それは、来訪者を惑わせ、罠にかけて殺める事を目的とした迷宮とは異なり、アイボリーたちも扱う空間転移すらも阻害する足止めの迷宮。
 口で語る以上の傷を負った様子のエボニーの為に、自分たちにも悪影響が及ぶのを承知でこの迷宮を呼び出したのかもしれません。
 だとすれば、それは兄としての弟への愛でしょうか。
 常盤にも弟はおりましたが、彼が傷つき蹲っていたとしても、常盤が兄として庇ってやることは無いのでしょう。
 そういう意味では、あのオブリビオンは常盤の知らない愛情を持っていると言えます。
 ……もっとも。
「──まァ、如何でも良い噺だ」

 半吸血鬼が自らの血で描いた五芒星が妖しく光ります。
 その赤い光に照らされながら現れた黒色の騎士こそ、死者を率いる悪魔ビフロンスでありました。
「嗚呼、その光から出ないでおくれよ、伯爵。召喚も転移だとか言われて、折角呼び出した君が強制送還なんて御免だからね」
 五芒星の力も借りて、オブリビオンのユーベルコードを誤魔化した常盤が優しく語れば、ビフロンスも無言で頷き、その言に従います。
 元々、この伯爵の真価は、死者を呼び出す力にこそ。
 数多の人々が命を落としたであろうオブリビオンの根城であれば、捧げられた血に見合うだけの軍勢は容易く用意できるのです。
「ただの亡霊じゃあ、あの双子には勝てないだろうけど……追い詰めて、場所を教えてくれるだけで十分さ」
 しゃらりと鳴る高い音は、常盤が揺らす凶爪がこすれる音。
 傷を負った弟を抱えた兄の居場所が分かったのなら、そこへと至る迷宮の道を、迷いなく進んでいきます。

「……見送りたいか、見送られたいはちゃんと聞いてあげないとね」
 仲睦まじい兄妹の情など、自分にはさっぱり分からないのだから。
 オブリビオンへと近づいていく常盤の呟きは、ぞっとするほど、何の熱も込められていない声色でありました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァシリッサ・フロレスク
Mr.ダイモン(f27748)と

ピアノソナタも嫌いじゃないケド気分じゃないネ
“管楽器《エキゾーストノート》”が足りないンだよ

Ya,
フリージャズだ

転移後の隙と敵UCの視認が必要な点を狙う

一方に集中、弾幕を張りバイクで吶喊
多少喰らうのも織込済み。敢えて流血し激痛耐性で凌ぐ
もう一方の動きも確りと追跡し情報収集
相手が転移し、反撃に出た所でカウンターを狙う

大門のバイクを盾に、更に自身の血を撒いて発火、一層視界を塞ぐ
こちらを捉える為、転移してくると見越し、その瞬間早業で見切りUCをブチ込む

コッチの“管楽器《ガンファイア》”もGigに参戦だ

レクイエムにゃチョイと騒がしいケド
アンサンブルと洒落込もうじゃないか


大門・有人
ヴァシリッサ(f09894)と
諸々歓迎

全開で行くか。
バイクに隠れてUC発動、敵の視界に映らないようにUC対策。
相手が転移してくるならバイクの裏しかない、はず。ガンバレーダーを使用、拳銃と散弾銃の二挺持ちで転移して来た所にすぐ撃ち込めるようにバイクを壁にしつつ背を預ける。
ヴァシリッサをアタッカーに足止め陽動、彼女のUC準備の際はかばう。
敵への攻撃に成功すれば、転移の再使用に時間がかかるという言葉を信じて激痛覚悟、スパイクカッターで突撃する。
頑丈さとパワーがウリだ。

教えてやろう。今を生きる俺の前に立つ以上、どんな存在でもそれは今を生きる者だ。
無様に死ね。例外は無い、正義の怒りをその身を刻め。



●重低音と破裂音
 彼女を知らぬ者には意外に思われることも多いが、ヴァシリッサという女性はピアノソナタが嫌いではありません。
 元々、相応の血の貴さを持って生まれた身。格式ばった芸術を解さない彼女ではないのです。
 ……けど、それはそれとして。
「嫌いじゃないケド気分じゃないネ。“管楽器《エキゾーストノート》”が足りないンだよ」
「くそ、またやかましいのが!」
 力強い排気音を響かせるバイクと共に現れたヴァシリッサに対して、苛立った様子のエボニーが叫びます。
 これで彼女が無防備に現れたのならユーベルコードで切り刻んでしまうのですが、侵入者の手に握られていたのは身の丈を超えるほどの機関銃でした。
 絶え間なく放たれる銃弾の嵐は、常人が受ければ血煙となって消し飛ぶほどの圧倒的な暴威。
 無論、オブリビオンたるエボニーたちには致命傷になるほどではありませんが、ガードを余儀なくされては敵に視線を合わせる余裕がありません。

 そして、ヴァシリッサと共に現れた猟兵がもう一人。
 彼女とは異なり、横滑りさせたバイクを停止させるや否や、それを盾にするように身をひるがえした男の身体が光に包まれます。
 血と肉が滴り、鉄のような匂いが立ち込める中、光は一秒にも満たない瞬きを終えて消え去ります。
 そこに居たのは、先ほどまでヴァシリッサと共に戦っていた大門・有人ではなく。
「さて、あれが第五の貴族……俺も、全開で行くか」
 敵の反撃に血を流す仲間に応えるように、変身の痛みを超えて現れたヒーロー。
 オブリビオンの居城に現れたガンバレイは、その赤い瞳で敵を見据えるのでした。

「まずい、キリが無いよ、エボニー!」
「分かってるアイボリー! 早く倒してしまおう!」
 反撃にもまるで怯まずに銃撃と吶喊を続けるヴァシリッサ。
 それに加えて、眩い光と共に現れたガンバレイの存在に気付いた双子はその焦燥を隠しきれません。
 一人飛び出してきているヴァシリッサを早く倒してしまわねばと、オブリビオンが彼女への攻撃を行おうとした瞬間、状況はさらに変化します。
「――とうっ! 待たせたな、ヴァシリッサ!」
「もうちょっとのんびりでも良かったぞ。まだ撃ち尽くしてないんだ、弾丸」
 突如現れたガンバレイ。
 なんという事はありません、盾にしていた自分のバイクを持ち上げた彼は、そのままヴァシリッサも庇う形でオブリビオンとの間にジャンプしてきたのです。
 強靭な外骨格を持つ彼でなければ、着地と同時に全身がひしゃげて死んでしまうような重量を誇る大きなバイク。
 それが突然目の前に現れた双子に生じた一瞬の隙を突き、ヴァシリッサが自分の血を大きくまき散らします。
 ブレイズキャリバーたる彼女の身体は、至る所から地獄の炎が噴き出す生きた兵器とでも呼ぶべき代物。
 その血もまた同じく、発火し燃え上がる炎は、猟兵の姿を完全に覆い隠してしまいます。

「やられたね……! 仕方ない、続いてくれ、エボ二ー!」
 視線が通らねばユーベルコードの大半が封じられる二人にとって、この目晦ましは極めて効果的です。
 だからこそ、アイボリーは覚悟を決めて、炎の中を突っ切り猟兵たちの側へと突撃していきます。
 勿論、そんな事をすれば彼の身体は焼けただれ、戦闘にも支障をきたすでしょう。
 しかし、自分だけでも敵の前へたどり着けば、紋章の力で転移できる弟は炎に焼かれること無く猟兵と対峙できるのです。
「そうか、お前も覚悟はしているという訳だ」
 白い翼は焼け焦げて、それでもガンバレイの言葉に笑い返すアイボリーの身体に蠢く紋章が輝きます。
 次の瞬間、現れるのは黒い天使たるエボニー。
 兄の献身を無駄にはしないと、すぐさまガンバレイへと視線を向けて、ユーベルコードによる斬撃を浴びせようとします。

「……だが、痛みを覚悟しているのは俺も同じだ!」
「なっ!?」
 しかし、オブリビオンめがけて突進してくるガンバレイを止めるには至りません。
 彼自身の肉体すら斬り裂いて現れる骨の刃は、エボニーとアイボリーを纏めて捉えて、身動きを封じてしまいます。
 捕まえられて、紋章による転移も使ってしまったばかりの二人はもがく事しかできず、そんな彼らに向けられる銃口が一つ。
「コッチの“管楽器《ガンファイア》”も混ぜてくれよ。レクイエムにゃチョイと騒がしいケド」
 ガンバレイを巻き込むわけにはいかないヴァシリッサの、自動拳銃に持ち替えての銃撃が二人へと浴びせられます。
 先ほどの機関銃よりも小さい口径の弾丸は、それそのものには大した威力はないでしょう。
 しかし、ガンバレイのバイクと彼女の炎が与えた数秒の準備期間があったなら。

「ぐ、ああああっ!?」
 弾丸から噴き出す、悪しきものを祓う浄火。
 それは、ガンバレイには触れず、オブリビオンだけを苛烈に焼き払うのでした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…奇遇ね。私も予定が立て込んでいるの
お前たちの他にも獲物を狩る予定でね

…だから、すぐに死んでくれると嬉しいわ。過去の残骸らしく、無様にね?

過去の戦闘知識と経験から敵の集団戦術を見極め、
空中機動を行う兄弟に"炎の精霊結晶"の銃撃や"黄金の楔"を投擲し、
紋章による転移を誘い敵が同一地点に揃った瞬間を見切りUCを発動

左眼の聖痕に異端の大神の力を降霊して魔力を溜め、
時間の連続性を切断して静止した世界に切り込み、
大鎌を連続でなぎ払い敵を乱れ撃ちした後、
避けられた結晶や短剣の方向に怪力任せに吹き飛ばし追撃する時属性攻撃を行う

…私の前に立った以上、お前達の運命は決まっている
消えなさい。この世界から、永久にね



●演奏打ち切り
 強力な第五の貴族といえども、同じくユーベルコードを有する猟兵たちとの連戦の中では、その傷は増すばかり。
 外見は華奢な少年のような双子が傷つく姿は、いっそ哀れですらあるのでしょう。
「……奇遇ね。私も予定が立て込んでいるの」
 しかし、その正体は数多の命を散らしたオブリビオン。
 そして、この後に控える狂えるオブリビオンとの戦闘も思えば、手心を加える理由など、何一つありません。
「……だから、すぐに死んでくれると嬉しいわ。過去の残骸らしく、無様にね?」
 故に、リーヴァルディの瞳に一切の揺らぎはなく。
 ただ静かに、手に握るマスケット銃の銃口を二人のオブリビオンへと向けました。

「くっ、アイボリー!」
「分かってるよエボニー!」
「ユーベルコード……にしては規模が小さいわね」
 敵の姿を見た双子の選択は、ユーベルコードによる迷宮の作成でした。
 しかし、迷宮の壁はリーヴァルディの背丈をわずかに越える程度の小規模なもの。
 既に消耗しきった彼らも、狂えるオブリビオンが迫りくることは承知の上。
 仮にリーヴァルディを倒せたところで此処に留まれば死んでしまうことは変わらないと、自分たちの動きを阻害しない程度の迷宮を作り、逃げ出す隙を伺う事を選んだのです。
 迷宮の上空を飛び回り、リーヴァルディの出方を見るオブリビオンに対して、彼女はマスケット銃の乱射で応えます。
 魔術的な機構により連射される結晶弾は、迷宮の壁や広間の天井に当たるたびに、激しい炎を噴き出して破裂します。
 加えて銃撃の合間に投擲される黄金の短剣は、敵対者の血を啜り変形する拷問具。
 一度でもまともに受ければ、今の双子では身動きは取れなくなるでしょう。
「まずい、エボニー!」
 その短剣の猛追に晒される弟へと兄が呼びかけ、転移を促します。
 強力な射撃武器を持っているとはいえ、猟兵自身は地上に留まったまま。
 このままなら逃げられると判断したエボニーが、紋章の力を解き放ち──。

「……私の前に立った以上、お前達の運命は決まっている」
 酷く静かで、冷たい世界でリーヴァルディが呟きます。
 彼女の左目に浮かぶ円と十字の紋様こそ、この『時の止まった世界』で思考する権利の証。
 手にした大鎌を吸血鬼たちの首に添えようと、その表情はぴくりとも動きません。
 刻み、穿ち、撃ち抜き、燃やし。
 彼らが回避した筈の弾丸や短剣の方に力任せに吹き飛ばしたのちに、彼女はユーベルコードを解除します。
 その瞬間、オブリビオンの身体には、それまでの攻撃が同時に襲い掛かり。
「消えなさい。この世界から、永久にね」
 その言葉も自分の最期も、認識すらもできず。
 断末魔すら許されない双子の貴族は、跡形もなくこの世界から消え去りました。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『子狼ロラと狂狼ミゲル』

POW   :    お父さんに何てことするの!?ぶっつぶれちゃえ!
レベル×1tまでの対象の【攻撃衝力をミゲルが受け止め、ロラが敵】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    人狼はみんな家族なんだよ……仲間になってくれる?
対象への質問と共に、【狂狼ミゲルの体内】から【狂呪の人狼病原体】を召喚する。満足な答えを得るまで、狂呪の人狼病原体は対象を【狂わす人狼病感染】で攻撃する。
WIZ   :    お父さんは絶対に守る、わたしの命にかえても!
自身が戦闘不能となる事で、【父ミゲルをかばう。怒り狂った父の暴走は】敵1体に大ダメージを与える。【父への愛】を語ると更にダメージ増。

イラスト:アオノマツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂気と狂気
「どうなってるのかな、お父さん」
「gruu……」
 第五の貴族を下したその直後、猟兵たちの耳に届いたのは幼い少女の声でした。
 声の方角を見やれば、そこに立っていたのは小さな人狼の少女と、とても大きな狼の姿でありました。
 小さな身体で迷宮を突破するのは至難の業だったのでしょう、消耗した様子の少女は、静かな怒りを持って猟兵たちを見据えます。

「初めまして、猟兵の人たち。私はロラで、こっちはお父さんのミゲル。私たち、第五の貴族様に会いたくて来たのだけど……」
 そこまで語ったロラは、広間に残る戦闘の跡に目を見やり、主であるオブリビオンの姿がどこにも見えない理由を知ります。
「頑張ったのに、紋章の力があれば皆私たちと同じ姿になるって私の中のカミサマが言うから、頑張ったのに……!」
 先を越されたことを理解したロラの声に熱がこもり始め、それに伴うようにミゲルも毛を逆立てて、戦闘の姿勢を取り始めます。
 彼女の言葉を信じるなら、異端の神に憑りつかれた『狂えるオブリビオン』はロラであり、迷宮で疲労した彼女の体力はあまり残っていないのかもしれません。
 彼女を倒してしまえば、猟兵たちの目的は達成されるのでしょう。

「Garu……woooon!!」
 しかし、その前に立ちはだかる父は当然それを許しません。
 神に憑かれた娘と、病に蝕まれた父。
 狂気に囚われた二人のオブリビオンは、猟兵たちにその牙を剥けるのでした。
シーザー・ゴールドマン
やあ、初めまして。ロラくんにミゲルくんだね。
私はシーザー・ゴールドマン。
第五の貴族の代わりに君達をおもてなししよう。
短い付き合いになるがよろしく頼むね。

オーラセイバーを顕現して振るい戦闘へ。

ふむ、君の言うカミサマが何を囁いたのかは知らないが、オブリビオンと化した君達の安らぎは現世にはない。骸の海に還りたまえ。
なに、迷わぬように送ってあげるよ。

敵WIZUC、暴走の一撃を『アイオーンの隔絶』で真っ向から全て受け止めて戦闘力に変換。

ふむ、この力。君達の愛は確かに本物のようだ。
君達が滅びた後もそのことは覚えておいてあげよう。

増大した戦闘力を以て魔力弾(全力魔法)を放ちます。



●一つ覚えて
「やあ、初めまして。ロラくんにミゲルくんだね」
 今にも喉笛に食らいつきそうな眼差しを向けるミゲルの威風に動じる事も無く。
 光を束ねて剣を形作る猟兵は、微笑と共に名乗りを返します。
「私はシーザー・ゴールドマン。第五の貴族の代わりに君達をおもてなししよう」
 短い付き合いになるが、と。一言だけ添えて。
 主を失ったばかりの広間であまりにも堂々としたその男へと、二人の人狼は飛び掛かっていくのです。

「そうだ、貴族様がダメなら、貴方の身体を奪えば……!」
「それも、『カミサマ』に言われたのかな? オブリビオンと化した君達にそれを為せる筈もない。君達の求める安らぎは、現世にはないのだよ」
 ロラの言葉に合わせて振るわれるミゲルの大きな爪による攻撃を、シーザーはその剣をもって受け止めます。
 怪物の爪と光の剣は、まるで硬い刀剣同士が擦れるような音を立てて、鍔迫り合いの形で硬直します。
「Gawッ!?」
 しかし、それも長くは続かず。
 力任せに腕を振り回すだけのミゲルに対して、脚から腰、そして腕から剣へと全身の力を伝えたシーザーの怪力が、巨狼の身体を宙へと放り投げてしまいます。
 空中に放り出されたミゲルに対して、シーザーの光剣の腹から棘のようなものが生えて、勢いよく撃ちだされていきます。
 ミゲルの心臓へと狙い撃たれたその魔弾は、狂気に囚われた哀れな人狼を還るべき場所へ導く為の救済の一刺しでもあります。

「……ダメェ!」
「──おや」
 そして、その救いを拒絶するのもまた人狼。
 小さな身体には見合わぬ勢いで割り込んだロラの肩を光の針が射貫き、弱っていても異端の神の力を宿したオブリビオンを貫いた魔弾は、直後霧散します。
「Gru、Lau……GaRuuuuuu!!」
 広間の床へと崩れ落ちる娘の姿を見て、吠え猛るミゲルが、それまでの比ではない速度を持ってシーザーの身体へと食らいつきます。
 狼の大きなアギトは、それに相応しい鋭い牙を勢いよくダンピールの肉へと突き立てるのです。

「……!?」
 しかし、その牙がシーザーの身体に傷をつけることは叶いません。
 『アイオーンの隔絶(デウス・アルムム)』と称される護りのオドでミゲルの牙を受け止めたシーザーは、しかしその顔にほんの僅かな驚きを持ってオブリビオンを見据えます。
 異端の神に憑かれたロラは、本来ならば自分の身を挺してまでミゲルを守りなどはしません。
 そして、人狼病が進行しきったミゲルも、傷つけられた少女が娘であるなど、認識すらできぬはずなのです。
「ふむ、この力。君達の愛は確かに本物のようだ」
 しかし、娘は父の為に血を流し、父は娘の為に渾身の怒りを込めてシーザーへと襲いかかりました。
 現世を去るべきオブリビオンであろうとも、その愛情だけは真実だったと、紅蓮の魔力を漲らせる公爵は心の片隅に記憶します。

「ああ、そのことは覚えておいてあげよう」
 シーザーの身に纏う魔力が、爆発のような膨大なエネルギーを解き放つその刹那。
 ミゲルの耳に届いたその言葉は、静かさの中に一つの慈悲が滲むような響きでありました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
その耳…その体躯、まさか…
(…人狼病)

その願いに至った過去を、私は知りません
その気持ちを理解する事も出来ぬでしょう

ですが、人々がそれを望みましたか?
仮に紋章が力が真実でも、それは悪しき欲求です、他者への侵害です
騎士として阻ませて頂きます…!

折れた剣を牽制として娘へ投擲
脚部スラスターの推力移動で狼に接近
怪力大盾殴打で殴り飛ばし格納銃器を展開
乱れ撃ちで追撃…!?

な…ガッ!?

盾受けで防御し致命を避け継戦能力で立ち上がり戦闘続行

(御伽の騎士なら…親子の孤独に、手を差し伸べられたのでしょうか)

咆哮
超重フレーム鉄爪展開

(なんて…無様)


爪牙躱し肉薄
前腕部伸縮機構を作動
眼球とその向こう側目掛け鉄爪貫手繰り出し



●狂った願いを抱く者たち
「その耳……その体躯、まさか……」
 この世界の外からやってきた者ならば、あるいは知らぬこともあるでしょう。
 少女が巨大な狼に呼びかける父というその名は、ある種の喩えのようなものだと思うのかもしれません。
 しかし、トリテレイア・ゼロナインは、このダークセイヴァーにおいても多くの命を救った歴戦の猟兵であるのです。
 彼は、言葉も忘れてしまったその狼が少女の実の親であると、そう信じるに足る、この世界に蔓延る災いを知っています。
「(……人狼病)」
 電子の頭脳に検出されたのは、命を削り理性を蝕む宿痾の名。
 トリテレイアは、折れた剣を握るその手が、ほんの少しだけ緩むのを感じていました。

 狼の巨大な爪と、同じく巨躯を誇るトリテレイアの盾がぶつかり合い、甲高い音を響かせます。
「お父さん! うう、邪魔しないでよ!」
「……その願いに至った過去を、私は知りません。その気持ちを理解する事も出来ぬでしょう」
 ロラが猟兵たちと邂逅したその時に語った言葉。
 自分たちと同じ姿というのは、恐らくは人狼病を広める事が望みなのでしょう。
 自分が、血を分けた肉親が理性なき怪物へと変貌していくその絶望、その中で生まれてしまった願いは、風邪も知らぬ機械の体であるトリテレイアには無縁のことかもしれません。
「──ですが、人々がそれを望みましたか?」
「Guru……!」
 “理解してやれぬ”ということを受け入れた騎士の力がさらに増し、ミゲルの巨体を押し返し始めます。
 トリテレイアは、御伽噺の騎士のように人々を守り、その望みの背を押してやる事を是とします。
 それでも、世界には叶えてはならない願いが、他者を侵害し、絶望を振りまく願いがあることも彼は知っているのです。

「そんなの、関係な、きゃあっ!」
 トリテレイアの言葉に返そうとしたロラを、投擲された剣が襲います。
 刀身の半ばから折れてしまったそれは、しかし小さなロラにとっては十分な脅威となる質量を持って飛来するのです。
 狂えるオブリビオンとしての本体であろうロラを牽制したトリテレイアは、そのままの勢いでミゲルを大楯で押しつぶし、身体の各部に備えられた銃器をもって一気に勝負を決しようと試みます。
「Gu、GaWuuuuuu!!」
「な……ガッ!?」
 しかし、ここでトリテレイアの予想を超え、ミゲルが恐ろしき怪力を発揮します。
 かろうじて牙を受けた盾はそのまま噛み砕かれ、トリテレイアの超重量を誇る身体は容易く吹き飛ばされます。

 衝撃による一瞬の思考の停止、そして再起動。
 その後にトリテレイアのカメラが映すのは、痛みに喘ぐ幼子と、それを背に庇い吠え猛る獣の姿。
「(御伽の騎士なら……親子の孤独に、手を差し伸べられたのでしょうか)」
 世界から拒絶されるオブリビオンとなり果てた親子の姿に、ありもしない幻想を抱き、即座にその思考を打ち切って。
 電子頭脳の全ての機能を戦闘に注ぐ戦争機械の、耳障りなノイズの咆哮と共に凶悪な鉄の爪が姿を現します。
 スラスターを全開で吹かせ、驚異の速度で肉薄するトリテレイアの襲撃を、ユーベルコードの力を使った直後のミゲルが躱せるはずもありません。
 その刺突が、巨狼を捉えるその刹那。

「(なんて……無様)」
 思考機能のすべてを戦闘に振り分けたはずのトリテレイアの脳内で、その言葉は確かに呟かれたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
うつくしい親子愛だ
僕の親父も君のお父さんみたいに
愛情深ければよかったのに

召喚するのは黒き紙人形たち
ぎょろりと目玉生やした彼らに
命ずる言葉はただひとつ

――往け

紙人形はロラの許へ
全身に貼り付かせ
その生命力を吸収させる

僕は耽溺の爪で狂狼の相手を
疵を受ければ狼の躰に牙を立て吸血
流れた血の分だけ、啜り返してやる

ロラの無力化に成功したら
紙人形を狼にも嗾けよう
敵が彼等の凝視に気を取られている間に
影縫を突き立てて
さァ、串刺しにして呉れる

オブリビオンにも
家族を想う気持ちがあるとはねェ
僕の親父はどんな気持ちで
家族を作り、自ら其れを壊したんだろうか

確かなのは
目の前の彼女と違って僕は
愛されていなかったということだけ



●そして最後に愛は負け
 オブリビオンとは既にこの世を去った『過去』であり、人によっては亡霊と呼ばれるのでしょう。
 そんな存在ですから、オブリビオンを恐れ、敵意を向ける者は沢山おりますし、ロラとミゲルもそのような認識の中でこのダークセイヴァーに在りました。
「うつくしい親子愛だ。僕の親父も君のお父さんみたいに、愛情深ければよかったのに」
 ですから、常盤の呟いたような言葉を向けられるのは、ロラにとって殆ど体験したことのないものでした。
「……親子だもの、当然でしょう?」
「元々猟兵とオブリビオンだけど、僕と君にはそれ以上の隔たりがありそうだね」
 これまでの戦闘で傷ついたミゲルに寄り添いながら、困惑と警戒を混ぜ合わせた声色で答えるロラへ、常盤が苦笑します。
 生者と死者であり生まれた世界も違う相手ですが、それよりもっと根本的な、その人そのものを形作る段階において、自分とロラたちは決定的に違うのでしょう。
「――往け」
 故に、それ以上の言葉を紡ぐことは無く。
 常盤は、呼び出した紅い目玉の紙人形たちに、ただ一つの命令を下すのでした。

「なに、これ……!」
「Guru……!?」
 呼び出された黒い紙の群れは、ぎょろぎょろとした目玉こそ不気味な存在感を放ちますが、直接的な傷を負わせるような力は持ちません。
 しかし、オブリビオンたちに纏わりつくそれは、張り付いてひたすらに視線を突き刺し、彼らが現世に留まる為の命そのものをすり減らしていくのです。
「さて、お父さんの相手は僕だよ」
 そうして、ロラの動きを封じた常盤が、鋭利な爪を持って狼へと斬りかかります。
 それに応じるミゲルの剛腕は、しかしそれまでの戦いと同じような絶大な膂力を見せることはありません。
 ミゲルの力は、ロラが決定的な危機に晒されて初めて、娘を守るために発揮されるもの。
 じわじわと足を止め、少しずつ命を削る紙人形にロラが囚われている状態では、十分な力は発揮できないのです。

「(オブリビオンにも家族を想う気持ちがあるとはねェ)」
 それは、即ち彼らの親子の絆が確かに存在する事の証左でもありましょう。
 精彩を欠く相手との戦いの中、常盤がぼんやりと思い出すのは自分の父のこと。
 家族を作り、そしてそれを壊した父は、はたしてどのような思いを抱いていたのでしょうか。
 オブリビオンでも失わぬような感情すら、あの男には無かったのか。
 あるいは、余人には推し量れぬような形で、それでも何かの情があったのか。
 親の心子知らずとはよく言ったもの。
 全身に傷を負い、追い詰められたミゲルの前で時計の針のような武器を取り出した常盤には、父の心は分かりません。
 ただ一つ、確かなことは。

「お父さん!」
 人形に囚われ命を吸われ、それでも父の危機に手を伸ばすあの少女と違って。
 常盤は、愛されてはいなかったのだろうということだけなのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
短命と満月の狂気に苛まれる…その在り方には同情するけどね

…だからといって周囲の人間を人狼病に罹患させるのを黙って見過ごす訳にはいかない

…お前達がどんな存在でどんな過去があるにせよ、今を生きる者達を害するならば私の敵よ

"闇の精霊結晶"を投擲して周囲を通常の暗視では見えない魔法の闇で閉ざし、
自身は闇の精霊を"精霊石の耳飾り"に降霊して闇を見通し、
全身を音や臭いを遮断する真空のオーラで防御して闇に紛れUCを発動

周囲の闇に血の魔力を溜め全周囲から無数の影槍を乱れ撃ち、
敵のUCによるカウンターは"写し身の呪詛"に武器改造を施し、
音や臭いを発する残像を囮にして受け流し影槍による追撃を試みるわ

…残念、外れよ



●還る者、滅びぬ者
「お、お父さん! しっかりして!」
 猟兵たちの攻撃により、深い傷を負ったミゲルにロラが駆け寄ります。
 元々、死の罠の迷宮によって消耗していたロラにとって、強靭な肉体を持つミゲルこそこの場における生命線。
 ですが、涙を浮かべ巨狼の傷に手を当てる少女の姿は、オブリビオンという怪物ではなく、ただ父を案ずる娘のようでありました。
 あるいは、そうであった“もしも”もあったのでしょうか。
「短命と満月の狂気に苛まれる……その在り方には同情するけどね」
 しかし、仮に病こそが彼女たちが歪んだ原因であったとしても、その歪みを他者へと振りまくことを許すわけにはいきません。
 怪物となった親子に、誰かが引導を渡してやらねばならないのです。
「……お前達がどんな存在でどんな過去があるにせよ、今を生きる者達を害するならば私の敵よ」
 だからこそ。
 リーヴァルディははっきりと、二人のオブリビオンの前に立ちはだかることを宣するのです。

「また次の猟兵、今度は何を……きゃっ!?」
 リーヴァルディの言葉に気付き、ミゲルを庇うように警戒を強めたロラの視界が闇に覆われます。
 夜闇に慣れたダークセイヴァーの住民でも見通せぬ程の深い暗闇は、リーヴァルディが精霊結晶に閉じ込めていたもの。
 彼女がそれを床に投げつければ、解放された闇は一気に辺りを覆って、オブリビオンたちの視界を奪ってしまいます。
 光なき暗闇の中で、唯一敵を見通すのはリーヴァルディ。
 耳飾りを通して、闇こそを見通す精霊の視界を借り受けた彼女は、ただ周囲を警戒するしかできない敵へと、ユーベルコードの照準を合わせます。
「……限定解放。影より来たれ、呪われし槍」
 己が血に秘めた力を解き放つ言葉も、腕を振り上げる僅かな音も。
 空気を遮断してしまうほどの技量を有する彼女にかかれば、ロラたちに自分の居所を隠し通すなど、造作もない事です。

「こうなったら……逃げよう、お父さん! 呪いを出して!」
「G、Guru……」
 目でも耳でも鼻でもリーヴァルディを見つけられないと悟ったロラは、傷ついた父の身体をさすり、ユーベルコードの使用を促します。
 それは、娘の望みを体現したかのような、病を振りまく力。
 もっとも影響の範囲が大きいこの力を用いて、リーヴァルディの動きを止めようというのです。
 娘に促された父親の口から漏れ出す瘴気のような病原体は、風に乗って闇の中の獲物を探しだします。
 そして、確かにそこに在る、人型の感触。
 それを見つけた途端に、狂気を呼び込む不治の病は、一斉に集結し襲いかかっていくのです。

「……残念、外れよ」
 それが、親子の聞いた最後の音になるのでした。

 闇が晴れ、第五の貴族の大広間に、リーヴァルディの姿が現れます。
 そこにあるのは、宿痾に蝕まれて朽ちた彼女の『写し身』と、おびただしい数の影の槍。
 猟兵の意志に従い、オブリビオン達を穿ち抜いた数多の槍は、一瞬で絶命した親子の後を追うように霧散していきます。
「──帰りましょうか」
 ロラに憑りついていた“なにか”の存在が離れる気配を感じつつ、リーヴァルディが呟きます。
 今日、猟兵たちは第五の貴族を打ち倒し、その身に宿りし紋章を滅ぼし、哀れな親子を骸の海へと還しました。
 けれど、第五の貴族が全滅したわけでも無ければ、狂えるオブリビオンを作る異端の神が滅んだわけでもありません。
 この夜の世界の災厄が終わる日はまだ遠いことを噛みしめながら、猟兵はこの迷宮から去っていくのでした。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年07月24日


挿絵イラスト