猟書家の侵略~禍殃呑天之秋
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東大寺の境内、南大門から大仏殿へ向かう参道の東側に青々と芝地が広がる。
日光をふんだんに浴びた芝を美味しそうに食む鹿を愛でていた蒔乃(マキノ)――盧舎那仏のヤドリガミは、ふと、晴朗の空に翳る何かに気付いた。
「鳥……? じゃない……」
陽光を遮る黒い影は球状をしていようか。
矢の如く降り注ぐ丸い何かが、只ならぬ妖気を帯びている事に気付いた蒔乃は、間もなく南大門の方へと落ちていく球体を目に追うと、その瞳に脅威の景を映した。
「!? 木が……消えた
……!?」
まん丸の物体が、青々とした木に触れると同時、木が丸ごと消えうせる。
吸い込まれたのだと気付いた彼女は、次いで続々と振り落ちて来る球体が、木という木を、鹿という鹿を吸い込んでいくのに驚き、慌てて鹿に呼び掛けた。
「とても嫌な予感がします! 遠くへ逃げて!!」
然し鹿は多く、境内のあちこちで自由に過ごしている彼等に呼び掛けるのは難しい。
その間にも丸い物体は次々と落ちて周囲の物を吸い込み、まるで境内を更地にしてしまわんほど。
「一体、何が起きて……っっ
………!!」
事態が飲み込めないまま、視界いっぱいに球体が迫る。
其は、赤や黄色の糸で美しい模様をかがった「手鞠」であった――。
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「クルセイダーの目論む江戸幕府の転覆を実現すべく、また一人、不穏な動きを見せる猟書家の幹部が見つかったの」
その名も、真柄十郎左衛門直隆。
燃えるような赤い髪を靡かせる男だと言を足したニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、かの男が「ヤドリガミの抹殺」を企んでいる事を説明する。
「幹部の狙いは、強力なオブリビオンを手勢に加えること。ヤドリガミを殺し、器物を破壊して、嘗ての主とヤドリガミの魂を合成した最強のオブリビオンを作ろうとしてるわ」
正倉院を管理する東大寺は、国宝級の器物から生まれたヤドリガミ達を保護している。
そこに目を付けた幹部猟書家が、手鞠型オブリビオンを使って彼等を探し、建物ごと器物を損壊して、嘗て彼等の「使い手」だった者の魂と、ヤドリガミの魂を合成しようと画策しているのだ。
「真柄十郎左衛門直隆は、クルセイダーの秘術『超・魔軍転生』を使って、部下のオブリビオンに魔軍将『風魔小太郎』を憑装させているの」
魔軍将が一人、百面鬼『風魔小太郎』。
エンパイアウォーでは風魔忍法『隕石落とし』を以て人々を脅威に晒した男が、今度は手鞠型オブリビオンの一つ一つに憑依して風魔忍軍を形成し、身ごと隕石のように落ちてくる。
敵は東大寺の境内を更地にして、ヤドリガミも、器物も、完膚なきまでに破壊しようとしているのだと柳眉を潜めたニコリネは、決してそんな事をさせてはいけないと、紫の瞳に光を讃える。
「東大寺の境内に行って、手鞠型オブリビオンと猟書家幹部をやっつけましょう!」
境内に居る参拝者を隕石から守りつつ、避難させる。
鹿せんべいや音を使う等して、鹿を戦場から誘導する。
敵より早くヤドリガミを探し、彼等を保護する。
正倉院に保管されている器物を隕石から守る。
とても広い境内にて、やらなくてはならない事が多いが、仲間を信じて己が仕事を絞るのが良いだろう、とニコリネは助言する。
「風魔忍軍による隕石落としが始まって暫くしたら、彼等を率いる幹部、真柄十郎左衛門直隆が現れるから、皆は彼がヤドリガミに手を掛ける前にやっつけて頂戴!」
幹部自身は憑装していないが、身の丈に迫る巨刀を自在に操る彼の戦闘力は凄まじく、鬼神の如く豪快に闘うほか、「ヤドリガミ殺し」という危険な技を使うので、ヤドリガミ達を巻き込まぬよう気を付けて欲しい。
全ての説明を終えた花屋は、ぱちんとウインクするやグリモアを召喚して、
「サムライエンパイアにテレポートします。隕石が落ちてくるなんて大変な状況だけど、皆なら何とかしてくれるって信じてるわ!」
と、温かな光に送り出すのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
こちらは、猟書家の幹部の一人『真柄十郎左衛門直隆』の侵攻を食い止める「隕石落とし再び」シナリオ(難易度:普通)です。
●戦場の情報
サムライエンパイア、大和国の東大寺周辺。
南大門から大仏殿、正倉院周辺の広い範囲を戦場とし、一帯には所々で鹿が幸せそうに暮らしています。鹿は鹿せんべいが大好きです。
境内には正倉院に収蔵された器物のヤドリガミが複数存在し、盧舎那仏のヤドリガミである蒔乃(マキノ)はその一人です。
●シナリオ情報(二章構成です)
第一章『蒐集者の手毬』(集団戦)
真柄十郎左衛門直隆の命令により、ヤドリガミと器物の捕獲に掛かる手鞠。
猟兵相手に精神攻撃を仕掛けて来る他、触れたものを吸い込んだりします。
今回は魔軍将「風魔小太郎」を憑装しており、風魔忍軍と化した手鞠の群れは、隕石のように空から落ちてきます。
周辺には参拝者も多く、鹿も多いので、一般人や動物の避難指示に専念しても構いません。
第二章『真柄十郎左衛門直隆』(ボス戦)
「凄え道具だったなら凄えオブリビオンになるだろ?」
ヤドリガミを殺して嘗ての使い手と合成し、最強のオブリビオンにしようと画策する幹部猟書家です。憑装はしていません(猟書家の力が制限される模様)。
ボスを倒せば風魔忍軍は烏合の衆となり、全ての手鞠を叩き潰す事が出来ます。
●プレイングボーナス『ヤドリガミ達と協力して戦う』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
蒔乃は猟兵ほど強くはありませんが、周辺の地形を熟知しており、また周囲の鹿と話す事が出来ます。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。
また、このシナリオに導入の文章はございません。オープニング公開後、すぐにプレイングをお送りいただけます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 集団戦
『蒐集者の手毬』
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POW : あなたと共に在るために
【自身がよく知る死者】の霊を召喚する。これは【生前掛けてくれた優しい言葉】や【死後自分に言うであろう厳しい言葉】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 理想郷にはまだ遠い
【自身と同じ能力を持つ手毬】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : いつか来る未来のために
小さな【手毬】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【全ての望みを再現した理想郷】で、いつでも外に出られる。
イラスト:にこなす
👑11
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マルコ・ガブリエル(サポート)
『初めまして、わたくしはマルコと申します』
『皆様を苦しめるのであれば、わたくしも情けは捨てましょう!』
『まあ、なんて美味しそう……! 宜しければ、一緒にいかがですか?』
笑顔が魅力的で朗らかな女の子です。実は故郷を滅ぼされて天涯孤独の身ですが、そうした悲壮感を仲間に感じさせることはなく、いつも明るく振る舞っています。
誰に対しても優しく、敵にさえ「できれば戦わず、穏便に事件を解決したい」と考えるような優しい性格ですが、無辜の人々を苦しめる悪い奴には心を鬼にして全力で攻撃をお見舞いします。
美味しいもの、特に焼肉をみんなで食べるのが大好きで、無事に事件解決した後はよく他の猟兵をご飯に誘おうとします。
城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
戦闘は確実性やオーバーキルより迎撃数を優先するので、全力魔法と範囲攻撃で少し広めに撃ってから時間差で仕留める。
もしくは単体攻撃にカウンターや鎧破壊攻撃を乗せつつ、連続して使って、一撃必殺を繰り返す。
「ここから先は行かせないよ、キリッ」
…ところで、なんでオブリビオン居るの?(前後の説明忘れた)
……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)
日留部・由穏(サポート)
「日留部由穏と申します。
これでも太陽神の生まれです。
いかなる世界であれ、オブリビオンの影に未来を曇らされる人々がいるのならば私が手を出さない道理はありませんね。
人の未来を照らし続けることが私の存在意義なのですから。」
好き:芸術全般、各世界の人間の生活の観察と学習
使命:人々の明るい未来を守る
【発言】隠居の太陽神、敬語、優しい、いつも笑顔、怒りや恨みや後悔の感情が乏しく時に人を理解しきれないこともある、神なので負傷を恐れない
【戦闘パターン】視力+暗視+マヒ攻撃+光線銃で銃撃戦、アート+式神使い+アイテム折り紙で撹乱、催眠術も併用し折り紙式神を猟兵やターゲットに思わせ誘導など
その他何でもさせてどうぞ
大空・彼方(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、UC詠唱変更、その他何でも歓迎です》
「はじめまして。今回バックアップに回る舞姫です。未熟者ではありますがなんなりとご用命ください。」
UDC組織に所属する新人猟兵。戦闘経験は豊富。
一人称:私
口調:敬語で機械的
性格はクールでマイペース。そしてドがつく程の面倒くさがり。一見、常識人で冷静沈着に見えるが、どこか天然なところがある。獲物は日本刀。
前衛であれば未来視を用いて舞うように敵の攻撃を引き付けながら隙を伺う。
後衛では異界召喚により援護と回復役をこなす。
UCは指定した物をどれでも使用可能。基本的に情報を収集し、慎重に行動。命令や指示には忠実に従い他の猟兵をサポートします。
八重森・晃(サポート)
『滅び<スクイ>がほしいのかい?』
ダンピールのウィザード×聖者、14歳の女です。
普段の口調は「母親似(私、君、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?)」、怒った時は「父親似(私、お前、言い捨て)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
晴朗の空より振り注ぐ手鞠ひとつひとつが、魔軍将『風魔小太郎』。
百面鬼率いる風魔忍軍が、身ごと隕石の如くして空襲を仕掛ける中、東大寺の境内ではほつほつと浮かび上がった光の睡蓮が花を開き、燦然の中から人影を暴く。
支援に駆け付けた猟兵だ。
「参拝者の皆樣は近くの建物の中へ! 手鞠に触れてはなりません!」
純白の翼を広げて避難を呼び掛けるは、マルコ・ガブリエル(焼肉天使・f09505)。
風と好相性のあるオラトリオならでは、翼の高機動力を以て広い境内を翔けた佳人は、非戰闘員を集める事で敵の進路を絞り、また猟兵の防衛範囲を狭めんと尽力する。
(「出来れば戰わずに解決したい所ですが、都市ごと滅ぼそうとするなら、人々を苦しめようとするなら……わたくしも情けは捨てましょう!」)
故郷を滅ぼされた天涯孤独の身には、嘗ての凄惨な記憶が甦生ろうか。
悲劇を繰り返してはならないと、琥珀色の麗瞳が凛然を帯びる。
佳脣を滑る金絲雀の聲は、戰場を同じくする猟兵を鼓舞して、
「笑い合える未来の爲に……今、出来る限りの事を!」
而して溢れるは、【天使の希望】(コール・オブ・エンジェル)――力強く發せられた聲援は、風に運ばれて仲間の元へ、オブリビオンに抗わんとする者達を強靭(つよ)く、精悍(つよ)く、奮い立たせる。
「ひぃぁぁっ、おっかねぇだよ……!」
「はやく天女さまの仰る通り、建屋の中に隠れんべ!!」
マルコに呼び掛けられた参拝者が、驚き慌てて大仏殿に駆け込む中、彼等の背後に迫る手鞠型オブリビオンを迎撃する者も居る。
冱刀『紅時雨』を手に立ち開かる、城田・紗希(人間の探索者・f01927)だ。
「ここから先は行かせないよ、キリッ」
彼女は続々と大仏殿に逃げ込んでくる参拝者を眼路の脇へと送りつつ、赫々たる緋瞳は真直ぐ前へ、空より振り落ちた後は彈みながら迫る手鞠を見据える。
神木やら石碑やら、諸有る遮蔽物を吸い込んで近付く球体の、凄まじい妖氣を察知した紗希は、拇指球を踏み込めるや抜刀して、
「……触れたものを吸い込むっていうなら、触れずに攻撃すれば良いよね?」
視界内に入ったものから、触れるより迅速(はや)く斬る――。
斬撃の軌跡ぐらいは考えると、そっと口角を持ち上げた佳人は、黑塗りの鞘より魚鱗の如き閃爍を暴くや、流れるような動きで斬撃を放ッた!
「變幻自在の不可避だよ!」
水平に薙ぎ払われた衝撃波が、波濤の如く起伏して天を搏つ――!
神氣滴る冱刃より放たれた【流水撃】(ナガルルミズノゴトク)は、手鞠に嚙みつくや球を両断し、身を包む邪氣ごと寸断して、漆黑の狭霧と散らした。
「プゥプゥプゥ……」
無論、聡い耳を持つ鹿も劔呑は察そう。
彼等は耳を四方に動かしながら、然し上空より振り注ぐ脅威には成す術もなく、青々とした芝を走り回るばかり。
その鹿の優れた聽覚に呼び掛けるは、日留部・由穏(暁天緋転・f16866)。
爽涼の風が吹き抜ける春日野園地に、ドクターコートを翻して降り立った麗人は、己の足許に籠盛りの鹿せんべいを用意すると、ヤドリガミの一柱たる蒔乃に吹き物を吹かせ、東大寺の風物詩「鹿寄せ」に掛かった。
「聽き慣れた音色に気付いて、集まって呉れれば良いのですが」
吹き物の鳴る方向には、大好きな鹿せんべいがある。
由穏が見守る中、祈るように音色を響かせば、その想いが届いたか――耳をヒクヒクと動かした鹿が遠くから集まってきた。
斯くして鹿が好物にありついた瞬間には、由穏が血塗れた犬型UDC【這いずる赤い犬】(ピュールピュライ)を召喚し、鹿たちに力強い音の波動を打ち付けると同時、彼等を元の棲み処へと轉送する。
塒巣(ねぐら)に帰れば一安心か、由穏は怪我を負わせる事なく鹿を送り届けたUDCをそっと撫でると、
「よしよし、後でお散歩に連れて行ってあげますからね」
と、穩やかな聲で勞うのだった。
「ピィピィピィ……」
由穏が用意した鹿せんべいに、わらわらと群がる鹿たち。
この間にも風魔忍軍――手鞠型オブリビオンは隕石の如く墜下するが、悲劇を結ぶ軌跡を断たんと、更なる猟兵が支援に出る。
「はじめまして。今回バックアップに回る舞姫です。未熟者ではありますが、風魔忍軍の排撃に尽力します」
鈴振るように美しくも、何處か機械的な敬語。
聲の主は、大空・彼方(眠れる神の巫女・f33087)――コードネーム“舞姫”。
真赭に煌めく麗瞳に、手鞠型オブリビオンの軌跡を見極めた巫女は、神導の家宝が一つ『夜守』を抜き払うと、【略式・落花の舞】――眠れる神の眷属を降ろし、神をあやす舞を踊り始めた。
佳脣を滑る聲音は淸冽なる水の如く、
「神は再び眠りに落ちる――」
流れる樣に祝詞を紡ぎ、手にした神刀で妖氣を祓いながら舞い踊る。
間もなく視界に手鞠が迫るも舞姫は冷靜沈着、射干玉の黑髪に艶を彈きながら踊れば、その身に帯びゆく神性は「手鞠が地上に落ちる」という現実を改変し、「ヤドリガミ達が蒐集される」という未来を掻き消していく。
「猟書家が思い描く未来には至らせません」
而して彼が踏む大地に衝撃は無し。
境内の鹿たちは恐怖に竦む事なく、好物に向かって集まっていくのだった。
参拝者らは大仏殿に避難を始めている。
鹿たちは塒巣に轉送を開始した。
そして両者が安全に避難するに、猟兵が其々の場所で手鞠型オブリビオンの墜下を食い止めている――。
「……後は正倉院周辺だね」
ヤドリガミ達の命が其處に在る、と東大寺大仏殿から北北西へ、正倉院正倉を目指した八重森・晃(逝きし楽園の娘・f10929)は、大銀杏を過ぎた頃に上空を過ぎる手鞠に、烱々たる星眸(まなざし)を結んだ。
これらが全て正倉に着彈するというなら、軌跡も見極め易いと紫瞳に光を湛えた晃は、須臾に二丁拳銃『ルクバト&アスケラ』を構えると、【踊れ致死の舞】(バレット・ヘル)――炎属性の魔彈を撃ち出す!
「こういうのはシンプルだからこそ應用が効く」
尚且つ殺意が高いのだとは、彈速も彈道も自在にできる操作性にあろう。
魔石が組み込まれた拳銃は、晃の厖大な魔力を幾条の赫奕に分け、宙空で手鞠と結び合うように射線を一にすると、灼熱の炎に包んだ。
「そのまま蒼穹で全部、熾えて仕舞えばいい」
校倉造の宝物庫に火が移ってはならぬと、熱は全て手鞠に注いで。
而して美しい紋様も妖氣も灼かれた手鞠が、灰燼ひとつ残らず空で果てれば、晃は更に銃爪を引き、不断に降り注ぐ手鞠の牽制を続けるのだった。
成功
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鹿村・トーゴ
大仏さん縁の土地荒らすって?今更だが罰当たりな連中だ…
UCで鳥を喚ぶ『時間稼ぎ』
三割は鹿の警戒声を真似させ鞠の降る範囲より避難させるよ
幾らか警戒させればあとは仲間同士で連携して逃げるだろーし
混乱した人の方が厄介だぜ
マキノさん?今の時点でどの辺なら避難できそ?
ヤドリガミの薪乃にも確認をした上で鞠の範囲外を見当付け【情報収集/視力】
残り七割の鳥は人の言葉で避難を促す
『鞠に触れないで!
『そっちダメ、こっち、こっちに
鞠に触れねーのはオレも同じか
【念動力/追跡】で軌道を変え害の無い箇所に落とす
難しければ
勿体ないが消耗品だ…クナイや手裏剣【投擲】と
避難させ終えたUC鳥を向かわせ囮、相殺など狙う
アドリブ可
鹿と仲の良い蒔乃が呼び掛ければ、彼等も避難に應じようが、何せ境内は広い。
焦眉の急に間に合うかと、早鐘を打つ胸に手を宛てた蒔乃は、須臾、颯ッと頬を掠める爽涼の風――百を超える鳥の群れに目を瞠った。
「ピャッ! ピィィイイ!!」
鋭く短く發せられる甲高い聲は、鹿が警戒を示す時のそれ。
この季節に見掛けるオオルリやキビタキらが、鹿の聲を囀るとは――と、不思議そうに翼を追った蒔乃は、これら夏鳥の羽搏きを自在に操る青年の存在に気付いた。
「彩織り、音の羽、沙謡の鳥……喚び掛けにお應えありがとよ」
「鳥を使って鹿に危険を伝えるなんて、そんな事が……ありがとうございます!」
「幾らか鳴き聲で警戒させれば、鹿なら仲間同士で連携して逃げるだろ」
警急にあっても沈着を崩さぬは、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)。
彼は【鳥寄せ“沙謡鳥”(サヨドリ)】にて喚んだ鳥に鹿を避難させると、戰闘圏外へと走る獣を視界の脇に、橙の虹彩は真直ぐ、恐慌して逃げあぐねる参拝者を映した。
「マキノさん? 今の時点で参拝者達はどの辺なら避難できそ?」
「混乱した人の足で遠くに逃げるのは困難です。それなら大仏殿が安全かと……」
「慥かに目印としては大きいし、落下地点に仲間の猟兵も居るしな」
分かった、と聲を置いたトーゴは、指先ひとつで鳥の群れを分け、三割は鹿の避難に、残る七割は進路を變えて参拝者の影を追い、人の言葉を囀って誘導を始めた。
『手鞠に触れないで! 逃げて!!』
「ひえっ! と、とっとと鳥が喋ってらぁ
……!!」
『そっちダメ、こっち! こっちにおいで!』
「うんうん、分かった! もう何でもござれだ!」
人々が驚き慌てながらも方向を得たなら、トーゴも大仏殿の八角灯篭まで駆け走って、此方へと射線を結ぶ手鞠に烱眼を結ぶ。
「大仏さん縁の土地を荒らすって? 今更ながら罰当たりな連中だぜ……」
美しい紋様を縢(かが)りながら、禍々しい邪氣を帯びる手鞠に溜息をひとつ。
而して己も触らぬ方が良かろうと佳脣を引き結んだ彼は、片腕を掲げるや『燈ノ護』より念動力を放ち、捕捉した手鞠の軌跡を變え、人も鹿も居ない所に落下させた!
其は仏罰を知らぬ者への救済にも見えよう。
「大仏さんが怒る前に、骸の海に帰っとけ」
そう冷ややかに囁いたトーゴは、轟然と迫る手鞠にクナイや手裏剣を投擲して楔打ち、更には避難誘導を終えた沙謡鳥を向かわせ、翼の機動力と推進力で空襲を相殺する。
空中で攻撃を阻まれては、仏の御座は荒らせまい。
風魔忍軍は仏罰が下りるより先、トーゴに戒められて霧散するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
盧舎那仏!
確かに何かこう福福しいというか
徳?があるというか…
まぁ
敵は引き受けたから
逃がしてやってくれよ
あんたにとっちゃ庭みてぇなもんだろ?
落ちてくる鞠を衝撃波や蹴りで弾き飛ばしつつ
しっかしよくよく狙われるよな東大寺って…
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
身を守るように衝撃波撒き散らしつつ残像纏いダッシュで接敵しグラップル
拳で殴り吹き飛ばし
同士討ち狙い
廻し蹴りで範囲攻撃
片っ端から片付ける
追跡されんなら逆に好都合だ
全部引き付けられんだからな
UC起動
発見出来なくても数撃ちゃ当たるし
衝撃波周囲に展開し迎撃
そもそも落ちて来る前に片付けりゃいいだろ
天翔け
落ちるだけなら倒すの簡単だな
蹴りの乱れ撃ち
隕石の猛威は止まぬが、其を食い止めんとする猟兵が来てくれた。
まだ希望はある、と胸を震わせた蒔乃は、背に迫る手鞠に気付くのが僅かに遅れたが、刹那、刃の如く鋭い陣風が邪影を断つ――その余波に颯ッと髪を巻き上げる。
波立つ黑髪の間からは、爽涼の風にオレンジの髪を梳る青年が見えよう。
「こいつ等は引き受けたからよ。参拝者や鹿を逃がしてやってくれ」
あんたにとっちゃ庭みてぇなもんだろ? と――。
背中を向けた儘、肩越しに烱眼を注ぐは陽向・理玖(夏疾風・f22773)。
手鞠が蒔乃を吸い込むより速く射線を割った彼は、鞭の如く撓る蹴撃を一閃! 斬撃に似た衝撃波を叩き付けると同時、内なる魔軍将の魂をも切り裂き、手鞠を霧散させた。
彼は蒔乃の無事を確かめるや、その姿を二度見し、
「盧舎那仏! 確かに何かこう福福しいというか、徳? があるというか……」
薄ら後光が視えるような……と、彼女に金堂の本尊のご尊顔を重ねた所で、かの大仏が積み重ねた歴史、数々の激動を思い起こす。
同情が零れるのは、大和國の歴史を識る者ならでは、
「しっかしよくよく狙われるよな東大寺って……」
「光明の遍照ならざる……力及ばぬ身を嘆くばかりです」
「いや、地形的にも情勢的にも重要だから仕方無い。特に今回は狙う奴が悪い」
そうキッパリと言ってのけた理玖は、龍珠を彈いて握り締め、『ドラゴンドライバー』にセット! 夕焼色と夕闇色のオーラを澎湃と迸發(ほとばし)らせる。
「變身ッ!」
忽ち全身を鋼に覆った彼は、斯く言う間にも迫り来る手鞠に『龍掌』を突き合せると、その圧倒的拳威に吹き飛ばし、後続より飛来する別の個体にぶつけて相殺したッ!
途端、手鞠が分体を召喚して軌跡を同じく、理玖に照準を集める。
己を的に絞ったかと、動きを読んだ彼が口角を持ち上げたか分からない。
「追跡されんなら逆に好都合だ。全部引き付けられんだからな」
残像を纏って駆け走った理玖は、リミッターを解除して【閃光烈破】(アクセラレート・エリミネーター)! 走りざま彈ッと踵を蹴るや、一気に10,400km/h、マッハ8を優に超える神速で宙空の隕石群に肉薄し、薙ぎ払うような蹴りに衝撃波を放ッた!
「抑も、落ちて来る前に片付けりゃいいだろ」
水平に放たれた衝撃波が、墜下してくる手鞠を順番に平等に嚙み殺す。
晴朗の空に放射状に爆発が広がるのを見た理玖は、更に逆足で廻し蹴り! 間隙許さぬ亂れ撃ちで片っ端から手鞠を駆逐し、地上の者に塵一つ被らせない。
「数撃ちゃ当たるって簡単だな」
而して零れるテノール・バリトンに、呼吸の亂れは一縷と無かった。
大成功
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荒谷・つかさ
巨大な鞠が天から降ってくる、ねぇ……
いつから私の故郷はアリスラビリンスみたいな所になったのよ?
器物の収められた建物の守護に特化して立ち回る
広い範囲を動き回るのはちょっと苦手だけど、定点防衛は大得意
守ると決めた範囲に降ってくる鞠にのみ狙いを絞り、「怪力」フルパワーの【螺旋鬼神拳】を真下から叩き込む
トンチキな隕石には宇宙(そら)の果てへお帰り願うわ
私のよく知る死者というと……多分、妹の守護霊化してるお爺様
偽物が来るか、私の記憶の中の幻影が来るかはわからないけれど
上等よ、孫の成長っぷりを見て驚愕していきなさいな
どういう反応が来ようとも、私は唯々奮起するのみよ!
東大寺大仏殿から北北西へ、正倉院に至る。
此處こそヤドリガミの本体たる器物が多く収められている――謂わば生命線なのだと、正倉の前に立った荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は、真赭と耀く麗瞳を空に結んだ。
目下、佳人の虹彩にも、陽光を遮る黑い球体が視えよう。
「巨大な鞠が天から降ってくる、ねぇ……。事情は理解ったけれど、いつから私の故郷はアリスラビリンスみたいになったのよ?」
手鞠がヤドリガミを吸い込もうとしているなど、まるで不思議の國のデスゲームだ。
無論、そんなキテレツな悲劇を許す訳には往かぬと、碧落より迫る脅威に烱眼を結んだつかさは、ここに鬼神の如き闘氣を滾々と横溢(あふれ)させた。
「広い範囲を動き回るのはちょっと苦手だけど、定点防衛は大得意よ」
来なさい、と立ち塞がる大和撫子の鋭気には、南大門の金剛力士も敵うまい。
全き本能で手鞠の落下速度や射線の軌跡、守備範囲への到達時間を見極めたつかさは、赤い鼻緒を踏み込むやッ、華奢で小柄な躯に秘める筋肉という筋肉の強靭を引き出しッ、怪力(A+)フルパワーの正拳突きを放ッた――!!
「トンチキな隕石には、宇宙(そら)の果てへお帰り願うわ」
閃華ッ、【螺旋鬼神拳】(スパイラル・オウガナックル)――ッッ!!
引いた拳を突き出す間の僅か半回転。其こそ螺旋を描く程の拳圧を生み出す秘訣とは、拳に纏える闘氣の渦の懸瀑幾丈なるが示そう。
飛瀑を駆け上る龍の如く真下から衝き上がった拳威は、手鞠に噛み付くや中心を穿ち、内に宿せる百面鬼の魂をも噛み砕いて霧散させたッ!!
後続に迫る手鞠が、つかさが佳く知る死者の霊魂を呼び寄せるが構わない。
佳人は、ザ☆筋肉! という感じの精悍な巨漢を仰ぐや、「お爺様」と零し、
「孫の成長っぷり、篤とご覧あれ!」
一縷と躊躇わぬ【螺旋鬼神拳】をもう一閃ッ
!!!!!
眼前に現れた筋骨隆々の人が本当に祖父なのか、記憶が創り出した幻影かは解らぬが、荒谷流の使い手に遠慮は無し、寧ろ全身全霊を絞るべきと威を増していく!
握り込めた拳と受け止めた掌は、言葉を交さずとも佳く語ろうたろう。
「妹の守護霊化なさったお爺様。姉の心配は不要と、今ここに――!」
示す! 印す! 刻む!
守ると決めた範囲には何者も侵入させぬと、その気概を拳に叩き付ければ、身長2.5m超の霊魂は満足気な笑みを浮かべて消え、而して影を残した手鞠が粉々に砕かれた!
祖父の幾許か喫驚した表情と、次いで滲み出た頬笑に、つかさは唯々奮起し、
「いくらでも来なさい。私の足許には塵一つ落さないわ」
と、手鞠を宙空で粉砕ッ! 玉砕ッ! 大・爆・砕! していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
風魔――これで襲来も何度めか。
もはや猟書家たちの得物扱いであっても、禄寿応穏の志を忘れた者に慈悲はかけますまい。
◆
私は正倉院近辺に陣取り、ヤドリガミ達の本体を守りましょう。
【風鬼来】にて配下の忍び達を呼び寄せ、手分けして手鞠を墜としつつ、内部に侵入されぬよう警戒させます。
私も刀の【斬撃波】で鞠を切り落としつつ、参拝客やヤドリガミがいれば避難するよう呼び掛け。
途中、見知らぬ老人の姿を見れば――師か、肉親か。私ではなく忍び達の縁者を招いたようですね。
彼らに動揺が広がらぬ内に素早く接近し、【早業】で斬り捨てましょう。
……非情な真似ですが、彼らも刃の下に心を抱く者たち。
すぐに任務へ戻ってくれましょう。
寛永三方ヶ原の戰いからエンパイアウォー、そして猟書家の侵略と、激動に搖れる故郷と共に在る鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、空より降り注ぐ手鞠に何を視よう。
目下、正倉院近辺に陣取った竜胆の士は靜かに囁(つつや)いて、
「風魔――これで襲来も何度めか」
かの手鞠に宿せるは百面鬼『風魔小太郎』の魂。
嘗て魔軍将の一人として徳川を脅かした巨魁も、今や猟書家たちの得物扱いとなれば、寂寥や惻隠の情も過るが、青藍の麗瞳は色を揺らして幾許、而して烱々と光を湛える。
「――もはや禄寿応穏の志を忘れた者に慈悲はかけますまい」
云って、共に死線を越えてきた『濤景一文字』を抜く。
此度はヤドリガミ達の本体を守り抜かんと、正倉を背に絢爛たる濤乱刃を暴いた彼は、【風鬼来】――配下の忍び達を呼び寄せると同時、彼等に周辺の警備を命じた。
「凡そ戰は、正を以て合い奇を以て勝つ。奇正の變は勝げて窮むべからざるなり、と」
景正の聲を掠めつつ、風魔忍者は風の如く疾って、一人は参拝者達に避難を呼び掛け、一人はヤドリガミを警護し、別なる一人は間もなく飛来する手鞠の排撃に掛かる。
骸の海を潜りし風魔忍軍に相対するも風魔忍者とは因果なもの。
風魔忍法『隕石落とし』の着彈点に滑り込んだ彼等は、素早く投擲した手裏剣の射線を軌道上に結び、邪氣を楔打たれた手鞠は、絲を乱し、霊魂を散らせて霧と果てた。
「内部に侵入されぬよう、すべて宙空で霧散させましょう」
斯く云う景正も刃鳴一閃、荒波の如き威を放って手鞠を斬り落としつつ、今も避難する参拝者やヤドリガミの導線を断たぬよう努める。
天地に戒心を巡らせる彼は、配下の一人が踵を付いて止まるのと、彼が視線を結ぶ先、見知らぬ老人の霊が何か言葉を掛けてくるのに目を留めた。
老いてなお威嚴を失わぬ老爺は、或いは。
「――師か、肉親か。私ではなく忍び達の縁者を招いたようですね」
影響力を鑑み、己が疾る。
射干玉の黑髪を風に梳きながら一気飛躍した景正は、老爺の霊魂を袈裟斬りに別つと、その衝撃波で手鞠を両断し、双方を同時にかき散らした。
動揺が広がる前に斬り捨てる――非情にも見えようが、彼等に縁者を殺めさせるより、知らぬ己が斬れば良かろうと、断ち分かれた冷たい霊気を受け取る景正。
佳脣を滑るテノール・バリトンは冷艶として、
「……彼らも刃の下に心を抱く者たち。すぐに任務へ戻ってくれましょう」
而して主の一太刀に想いを受け取った忍び衆が、再び機動力を取り戻す。
以後も続々と振り落ちる手鞠が風魔の縁者を呼び寄せるが、彼等は心を亂すことなく、今ある生命の爲に刃を突き立てていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
隕石ではなく、手毬とはなんとも……
まずは鹿達を誘導しましょう
月夜ノ御使イにて春暁、東雲を呼び出して鹿を戦場から離れて貰います
……ましゅまろも貴方も頑張りますか?
おっとりしているのか考えが読み難いのですが今回はやる気がありそうです
では、頑張ってくださいね
私と倫太郎は周りに声を掛ける程度にして手毬へ向かいましょう
倫太郎が放った鎖で動きが止まった手毬から攻撃
鎧無視となぎ払いにて斬り落としていきます
斬撃を使う手毬となれば私と同等の物
ですが……同等であれ、私は一人で戦っている訳ではありません
武器受けで凌ぎながら倫太郎の術の援護から動きが止まった所で反撃
手毬に連携は出来ません、よね?
篝・倫太郎
【華禱】
隕石じゃないんだからさぁ
手鞠に降られても困るっての……
烈!しょこら!
安全な方向に向かうように、鹿を追って避難させてくれな!
出来るよな?
念の為に人には避難するよう声を掛けてから
俺らは被害が出ないように手鞠撃破と往こう
拘束術使用
LoreleiとHoldaを起動させて落下地点を算出しながら
範囲内の敵に鎖での先制攻撃と拘束
避難してる人の元へ落ちようとするものを最優先
ついでに召喚された手鞠も熱や空気の動きを算出し
場所を明確にしたら夜彦と情報共有
手鞠を拘束したら
斬撃波を乗せた華焔刀でなぎ払い
召喚された死者は先代
先の戦争での、つかの間の邂逅があるから
攻撃はオーラ防御で防ぎ、咄嗟の一撃で受け流して対処
先の大戰を経験した月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は知っている。
百面鬼『風魔小太郎』が風魔忍法『隕石落とし』を以て徳川方を大いに脅かした事を。
そして、侍の國を故郷とする篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)も佳く知っている。
手鞠は女童の手にも収まる玩具で、主に手鞠歌を口遊みながら下へつき、彈ませて遊ぶものだと言う事を――。
故に、驚然の聲が重なる。茫然の溜息が重なる。
「隕石ではなく、手毬とはなんとも……」
「手鞠に降られても困るっての……」
目下、東大寺の参道の東に位置する「春日野園地」に降り立った二人は、百面鬼の魂を彈に大胆な空襲を仕掛けてくる猟書家と、最早、連中の道具と成り果てた魔軍将の凋落に幾許かの思いを過らせよう。
蓋し同情を注いだのはそれまで。
「まずは鹿達を誘導しましょう」
「――だな。せめて避難方向を示してやらねぇと」
轟々と呻る空に怯えるばかりの鹿が不憫と、大地に星眸(まなざし)を結んだ二人は、先に夜彦が【月夜ノ御使イ】を――艶のある美しい茶色のイヌワシ『春暁』と、黒い鬣を持つ赤毛の馬『東雲』を呼び出し、
「幹部の狙いは東大寺の庇護にある宿神です。鹿たちを戰闘圏外へ誘導して下さい」
「烈! しょこら! 安全な方向に向かうように、鹿を追って避難させてくれな!」
出来るよな? と、信頼を置く倫太郎の傍には、金の瞳を烱々とさせる牡狼『烈』と、己が翼が役立つ時が来たと奮起するラビットグリフォンの『しょこら』。
より鹿に近しい者達が、無辜の命を救わんと凛々しい表情を見せれば、様子を見ていた『ましゅまろ』が――真っ白なラビットグリフォンが、夜彦に額を擦り付けてくる。
おっとりした佇まいにて考えは読み難くも、主にヤル気が伝わろう。
「……貴方も頑張りますか? 分かりました。では、気を付けてくださいね」
ふわふわの体毛を一撫でした夜彦は、それから仲間たちと手分けして鹿の群れに向かう白翼を送り出す。
然れば彼等は大活躍!
鷲の翼が超低空飛行で浮雲園地へ向かえば、駿馬の力強い蹄音は茶山園地へ、共に鹿の群れに避難方向を示して遣り、牝狼は鋭い吼え聲を活かしつつ、鹿らを追い立てるように境内の外へと向かわせる。
そして二匹のラビットグリフォンは、大きな翼をはたはた動かしながら鏡池の方向へ、全き害の無い表情で鹿たちを安心させつつ、直ぐにお友達となって避難を促した。
大きな信頼と、幾許の心配を寄せるのが親心か。
「……皆しっかり者で、頼りになりますね」
「吸い込まれないように、手鞠に気を付けるんだぞー!」
夜彦と倫太郎はそう聲を掛けつつ、青々とした芝を駆け出す。
二人が向かう先は、漸う参拝者が集まる東大寺大仏殿(金堂)。
其處は仲間の猟兵が避難先にと呼び掛けている場所で、夜彦と倫太郎も周囲に聲を掛けながら、彼等の進路を守らんと、上空を飛ぶ手鞠の射線を追った。
「ヤドリガミや器物を探しているのか、軌跡を變えて追跡しているようです」
「扨て、俺らは人々に被害が出ないように手鞠撃破と往こうか」
南大門を抜けた處で、碧落を過ぎる手鞠に相對する。
夜彦が愛刀『夜禱』に手を掛ける隣、バイザーゴーグルLorelei [ RKS ]及びサイバーアイHolda [ RKS ]を起動した倫太郎は、手鞠の落下速度や進入角から着彈点を算出し、可視化した軌跡に割り入るように【拘束術】を仕掛ける――!
「夜彦、俺が止めたヤツから斬っていってくれ」
「心得ました」
避難する人へ目掛けて落ちる手鞠を最優先に不可視の縛鎖が絡んだなら、捕われた獲物を前に夜彦が抜刀一閃ッ、空を舞う花弁さえ斬り裂く一振りに其を両断する。
斬ッと別たれた手鞠が霧散すれば、次々に後続が迫るが構わない。
手鞠が持つ熱や空気の動きまで計算した倫太郎は、冷靜に華焔刀 [ 凪 ]を差し入れ、己に近しい死者の霊が召喚されても、烱眼に湛えられた玲瓏の彩は一縷と揺れまい。
「へぇ、先代の姿を見せてくれるのか……其も“蒐集”の爲か」
先の戰争で束の間の邂逅を得た倫太郎の心は亂れず。
鏡の如く澄み渡る斬撃で薙ぎ払った彼が、断ち分れた冷ややかな風を受け取ると同時、傍らの夜彦もまた斬撃波を追うように身を滑らせ、眼前の手鞠を素早く斬り捨てる。
同等の能力で對抗してくるとは無論、覚悟していよう。
後続の手鞠を映した翠玉の瞳は、眼路の際より伸びる不可視の鎖を信じており――、
「斬撃を使う手毬となれば私と同等の物、ですが……同等であれ、私は一人で戰っている訳ではありません」
時に刹那。
予想した通りに動きを止めた手鞠に、凄絶なる一太刀を浴びせる。
美しい紋様を縢った手鞠も、其に宿れる百面鬼の魂をも両断した夜彦は、音もなく着地した己を小気味佳い流眄に迎える倫太郎に微咲(えみ)を置いて、
「手毬にこのような連携は出来ません、よね?」
「――噫、出来やしない」
而して返る聲も心地好かろう。
二人は塊麗の微笑ひとつ結ぶと、続々と迫る手鞠を冱刃に斬り落としていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
蒔乃と協力して参拝者や動物の避難を行うよ
現地に着いたら状況確認
木や建造物でさえ吸い込むのなら見通しの良い広い場所を避難した方が良さそうだ
UCを発動し黒隼をひとり又は一頭につき一羽留まらせよう
彼らの張る結界は上方に厚く展開させ手毬の直撃を防ぐ
蒔乃には先導して貰い少しでも安全な場所へ避難を頼む
俺は殿を務めよう
得物は馴染んだ黒槍ではなく〈火焔放射器〉
上空へ向かって炎を噴射し[なぎ払い]、手毬を[焼却]する
自前の炎だからある程度調整もできる
建物や木、そしてヤドリガミ達に被害が行かないように注意しつつ殲滅を
残った黒隼には逃げ遅れ等で孤立した者がいないか空から確認させる
助けるならひとりでも多い方がいい
「あと少しの辛抱です! 金堂に行けば御仏が守ってくれますから!」
「はぁはぁ……もう無理でんがな! ワテはもうおっ死にまんがな!」
参拝者は鹿のように境内の外まで逃げる足は無い。
せめて金堂に避難して欲しいと、参拝者と並走していた蒔乃は、参道を北進して幾許、南大門を潜ろうとした時、紺青の炎を立ち昇らせる門番に目を瞠った。
金剛力士と見紛う男の正体は、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)。
両側の仁王より凄まじい鬼氣を漲らせた彼は、諸有る物を吸い込む手鞠を相手取るに、広い参道を望める門前に立つと、黑手袋をした手を胸元から突き出した。
「……仮の主の頼みを聽いて呉れるか」
ひとり又は一頭につき一羽、守って欲しいと。云えば無数の羽搏きが應えよう。
目下、艶帯びた黑翼を煌かせるは【芥火鶻】(アクタビハヤブサ)――冥府の炎を掠めて飛び立った計104羽の黑隼は、無辜の命の上に華蓋と留まるや結界を張り、手鞠の直撃を禦いだ。
結界は更に上方に、広く厚く展開させれば、穹窿型の天蓋となろうか。
相馬は怪我を追う事なく走り来た蒔乃に聲を掛け、
「このまま金堂まで先導を頼む。皆々の助けになってくれ」
「はいっ、私はこの方を仏の御座までお送り致します!」
「俺は殿を務めよう」
参道を走り来る参拝者は金堂へ通しつつ、脅威は通さぬと南大門に立ち塞がった彼は、此度は手に馴染んだ『冥府の槍』でなく、重厚なる携行兵器『火焔放射器』に冥府の炎を流し込むと、内部機構で増強・苛烈化した焦熱を上空に向かって噴射したッ!
「触れたものを吸い込む。ならば宙空に在る裡に焼いた方が良いだろう」
佳脣を滑るテノール・バリトンは冷嚴と、而して碧落に噴き上げる炎は烈々と。
重量のある火器を全き怪力で持ち上げた相馬は、紺青の炎の奔流に蒼穹を薙ぎ払うと、間もなく迫った手鞠を灼熱に包み、内に宿せる百面鬼の魂ごと滅却した。
「助けるならひとりでも多い方がいい」
自前の炎なれば調整も出来るか。護るべきに被害が行かぬよう注意しつつ炎を浴びせた相馬は、現在も滞空する鳥の目に逃げ遅れた者や孤立した者が居ないか確認させながら、少しの命も取り零さぬ気概で手鞠の殲滅に掛かった。
「随分と健啖な樣だが、喰い荒らされては困る」
建物も木も、ヤドリガミも器物も、お前たちの餌では無いと。
美しい紋様を縢(かが)る手鞠を吃ッと睨める金瞳の鋭く犀利なるは、手鞠を操る黑幕をも見据えんとするか――軈て羅刹の烱眼は、炎の踊る空の向こうに、手鞠を足場にして空より來たる邪影を捉えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)。
ヤドリガミさんを第一にとは考えますが…!
どうしても逃げている参拝客さんと鹿さんが気になります。
だからヤドリガミさんは他の猟兵さん達に任せます。
毬は【伏雷】を使用した『国綱』の一刀で屠りますね。
何時ものように身体強化し限界突破と多重詠唱を。
速度の維持は継戦能力で。破魔と貫通攻撃を付与。
走りこんで一息に複数の毬をことごとく斬りましょう。
勿論。毬の数が多いのでロベルタさんと連携し効率よく。
…しかし気になることが一つ。
毬を斬った場合は吸収された鹿さんや参拝客さんは…?
まさか毬と共に斬られることはないとは思いますが。
吸い込んだ空間に置き去り…とか?…うーん?
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。
墨ねーが毬から参拝客さんや鹿を護るなら避難誘導をするよ。
で。誘導先を塞ぐ毬がいるなら愛剣二刀で斬り伏せるじょ~。
『プリンチペッサ・ロッソ』と『ミスティルテイン』で戦う。
「邪魔っ♪」
毬は【軍神の剣術】利用しスパパパパパンって斬り刻むよ♪
「こっちが安全だよ♪ 慌てずにねぃ」
誘導しながら毬の相手をする。
鹿さんは…自分達で危機を…ってゆーのは難しいかぁ~。
避難誘導しながら鹿さんもは難しいけどやる!
視認して鹿さんと参拝者さんを極力確認。位置の把握。
逃げてる人と鹿さんはそのまま逃げて貰えばいいから除外。
襲われてる人達を優先的に護る。もしくは道塞いでる毬。
此度の猟書家の目的は、ヤドリガミと器物の破壊だ。
最強のオブリビオンを作る爲に、嘗ての器物の使い手とヤドリガミの魂を合成せんと、追跡・吸引能力を持つ手鞠を使って“素材”を蒐集しようとしている。
浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)も其は心得ていよう。
然し参道沿いの鏡池付近に降り立った佳人は、南北に伸びる参道で狼狽える参拝者や、東西に広がる芝を逃げ回る鹿達の恐慌を見過ごすほど非情にはなれない。
「ヤドリガミさんを……第一に、とは……考えますが……! どうしても……逃げている参拝客さんと、鹿さんが……気になります……」
「墨ねーはやさしいもんね! 困っている人を放っておけないんだじょ♪」
そこが墨ねーの魅力なのだと、ソプラノを彈ませて主張するは、今日も元気いっぱいのロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)。
墨が望む事は叶えてやりたいと、少女は莞爾と頬笑んで、
「墨ねーが毬から参拝客さんや鹿を護るなら、僕も避難誘導を手伝うよ?」
「お願いします……ヤドリガミさんは、他の猟兵さん達に……お任せして……」
幸いにして境内には多くの仲間が居る。
正倉院で器物を守る者あれば、ヤドリガミを保護する者も居ると、聡い視覚や聽覚から戰場の状況を読み取った二人は、自分達は別なる役儀を預ろうと凛然を萌す。
そうと決めたなら、二人は走りながら言を交して、
「足の速い鹿さんは……戰闘圏外に……逃げた方が、良いでしょうか……」
「そうだねぃ、方向を示してあげれば走ってくれそう!」
「でも、参拝者さんは……速く長く走る訳には、いきませんよね……」
「近くの建物に避難してもらったらいいとおもう!」
脚力も持久力も異なる両者を同じ方法で誘導するのは難しい。
なれば参拝者は、大仏殿の防衛に当たっている猟兵に任せて建物の中に避難して貰い、鹿は境内の外へ、塒巣(ねぐら)に帰って貰ったら良いと作戰を立てる。
墨は逃げ回る鹿の群れを見つけるや、東塔の方角へと駆け出し、
「八雷の名の元に……屠ります……」
疾風を連れ立って地擦り一閃【伏雷】――!!
芝地を走る最中にも詠唱を重ねた身は、風より速く、更には影を置き去りに駆け抜け、宛ら蒼白い霹靂の如くジグザグと地を縫う。
美し光の軌跡を描いた墨自身も電気を帯びて烱々煌々。
一気に東塔まで疾駆した墨は、駆け樣に天然木黒呂塗の鞘から乱れ刃文の刃を暴くと、今にも鹿の群れに落ちんとする手鞠めがけて閃爍一条を放った!
「落ちるより先に……斬れば……!」
落とさない。触れさせない。
宙空にある裡に斬れば宜しいと、上空に放たれた斬撃が手鞠を捉えるや、鋭い衝撃波が球体に嚙み付き、その身に宿せる魔軍将『風魔小太郎』の霊魂をも両断する。
後続の手鞠が彼女を「敵」と認識したなら、数を増やして追跡に掛かる其はロベルタが斬り伏せ、
「邪魔っ♪」
輕やかに一閃、そしてもう一閃!
間隙許さず手鞠を斬るは、幾重に魔術式をあしらった『プリンチペッサ・ロッソ』と、ロベルタの意志力を蒼白い火に顕した『ミスティルテイン』。
魔法劔がスパンッと水平に薙いだなら、上下に気持ち良く別れた手鞠の縢り紋様には、焼き切ったような痕が疾り、推進力を失った手鞠は絲を解れさせた後に霧散する。
鹿達を避難させるに進路は塞がせぬと、愛劔二刃を以て手鞠を斬り伏せたロベルタは、【軍神の剣術】(マウォルス)――未来へと立ち向かう超絶技にて、スパパパパパンッと道を切り開いていった。
劔筋は鋭いが、佳聲が帯びる精彩は變わらず、
「こっちが安全だよ♪ 慌てずにねぃ」
「おおっ……おおきに!! お嬢も気ぃ付けてぇな!!」
「鹿さんはこのまま、まーっすぐゴー! だじょ♪」
「プィー、プィプィー」
と、参拝者や鹿らに朗らかに聲を掛けて誘導していく。
高速で駆けながら、避難対象の位置や手鞠の座標、落下地点や速度を逐一把握するのは難しかろうが、少女は空色の瞳をくるくると動かし、見事に戰場を立ち回った。
「……しかし、気になることが一つ……」
「う?」
時に、西塔方面へ疾った墨は、周囲の木立を次々に吸い込んでいく手鞠の群れに一閃、一息で複数を斬り伏せると、狭霧と消える邪影を凝乎(ジッ)と見詰める。
「既に吸収された鹿さんや参拝客さんは……? まさか、手鞠と共に斬られることはないとは思いますが……吸い込んだ空間に置き去り……とか? ……うーん?」
而して答えは眼前に示されよう。
一たび吸い込まれた木や鹿は、手鞠が霧散した正にその地点で排出され、鹿は喫驚して逃げ去っていくも、木は根を剥き出しに横臥わり……再び植え直すしかあるまい。
墨は切揃えの前髪の奥でぱちくりと瞬(しばた)いて、
「……ロベルタさん……後で、庭師の方を呼びましょう……」
「う! ちょっとハダカが恥ずかしいかもだけど、暫く我慢しててねぃ♪」
傍らのロベルタは幹をポンポンと撫で、元気いっぱいの笑顔に慰めるのだった。
大成功
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鷲生・嵯泉
性懲りも無く同じ事を何度も繰り返す愚かさには
呆れるを通り越し唯々不快が募る
だが何度来ようが結末も同じだ
空より振り落ちて来るなら、先ずは遮蔽物を挟むが常道
完全に防ぐ事は敵わずとも時間は稼げる
宿神の御仁には、屋根の在る場所への避難誘導を頼むと同時
私には逆に出来るだけ拓けた場の情報を貰う
引き付ける的には其の方が好都合だ
――破群領域、的と化せ
此の眼に映るならば1体たりとも逃しはせん
避難先へと落ちようとする物を優先的に叩き潰してくれる
あの男は既に迷いを絶った……お前達如きに呼べる筈も無い者の言葉なぞ届きはせん
否、寧ろ容を盗んだ其の行為、骨の髄から後悔させてくれよう
欠片すら残さぬ程に木端微塵に砕けるがいい
此度の猟書家は、ヤドリガミの抹殺と器物の破壊を目論んでいる。
嘗ての使い手の魂と合成して、最強のオブリビオンを作らんとしていると云うのだが、連中の陰謀を悉く潰して来た鷲生・嵯泉(烈志・f05845)には空理空論に過ぎぬ。
目下、東大寺の参道に降り立った彼は、鏡池の騒めく水面に烱眼を結んで、
「性懲りも無く同じ事を何度も繰り返す愚かさには、呆れるを通り越し唯々不快が募る」
何度来ようが、誰が来ようが。奴等が結末を違える事は無い。
その執拗さも愚の極みと、水面に映れる邪影を――蒼穹より迫る手鞠を睨めた嵯泉は、時に、南大門から参拝者を連れて走り来る蒔乃に聲を置いた。
「宿神の御仁。屋根の在る場所への避難誘導を頼めるか」
「はいっ、私はこの方々と金堂(大仏殿)へ参ります」
「仏の御座か。信心深い者を護って呉れよう」
飛来物への対処として、先ずは遮蔽物を挟むが常道。
完全に脅威を凌ぐ事は敵わずとも、時間は稼げようと首肯を置いた彼は、言を足して、
「境内でも出来るだけ拓けた、敵に見えやすい場所は在るだろうか」
「! 自ら的になると仰るのですか」
「引き付ける的には其の方が好都合だ」
唯だ落ちて来るだけの隕石では無い。
かの手鞠は“素材”を蒐集する爲に追跡・吸収能力を持つオブリビオンにて、己一人に的を集めた方が良いのだと云えば、彼の義気に触れた蒔乃は「八角灯篭」を指差す。
創建以来、焼失や損壊の難を逃れる音声菩薩の加護があるでしょうと云う彼女に從い、灯篭を背に立ち塞がった嵯泉は、宙空で己に射線を結び始める隕石群を前に抜刀した。
「――破群領域、的と化せ」
瞳に映るひとつの手鞠も逃しはしないと、黑鞘より暴かれた『秋水』は刀身を伸ばして長く長く、而して鞭の如き柔軟性を得るや、大いに撓って手鞠に嚙み付くッ!
高威力の鞭刃に断たれた手鞠が、身に宿す百面鬼の魂ごと一瞬で霧散すれば、後続隊が「嵯泉がよく知る死者の霊」を召喚して動揺を誘うが――其こそ悪手。
隻眼の男は、柘榴の如き赫き虹彩を熾々と燃やすと、冱刃を振り被って一閃ッ! 更に凄惨な斬撃を叩き付けた。
「あの男は既に迷いを絶った……お前達如きに呼べる筈も無い者の言葉なぞ届きはせん。――否、寧ろ容を盗んだ其の行為、骨の髄から後悔させてくれよう」
彼の容姿を模した輕率を罰する。我が心の深淵を探った浅薄を誅する。
威風堂々と屹立した嵯泉は、次々と降り注ぐ邪影を薙ぎ払い、叩き落して、
「欠片を残す事すら許さぬ。木端微塵に砕けるがいい」
冷嚴の言葉が示す通り、その足許に塵一つ落とさぬのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『真柄十郎左衛門直隆』
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POW : 太刀嵐
【太郎太刀】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD : 戦場こそが我が死に場所
【防具】を脱ぎ、【戦を求める鬼】に変身する。武器「【次郎太刀】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ : ヤドリガミ殺し
【道具やヤドリガミ目掛けて、気合】を籠めた【太郎太刀】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【使い手や本体の命】のみを攻撃する。
イラスト:つばき
👑11
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時に、猟書家の幹部が一人『真柄十郎左衛門直隆』は空を飛んでいた。
嚴密に云えば、百面鬼『風魔小太郎』が発動した風魔忍術『隕石落とし』の一つに紛れ宙空を飛翔していた彼は、その瞳に人の流れや鹿の動きを聢と視ていた。
「へぇ……鹿は境内を出て塒巣(ねぐら)へ帰って、足の遅い人間共は建物に避難して、器物を収めた正倉やヤドリガミには警護が付いてる、と……随分と手際が佳い」
突然の脅威にこれだけは動けまい。
目下、定点に留まる影は「猟兵」――異世界を往来する埒外の者達が肩入れしたのだと合点した男は、然し表情を變えず、東大寺の境内を見渡す。
「扨て、何處に堕ちて遣ろうかね」
貴重な器物を収蔵する正倉院正倉か。
沢山の仏像を安置する法華堂(三月堂)か。
屈強な金剛力士を揃える南大門か。
視線を動かして暫し思案した直隆は、矢張り「大きくて」「逞しい」ものが強かろうと口角を持ち上げると、黄金色の烱眼を大仏殿(金堂)へと結ぶ。
「廬舎那仏をぶっ壊して、そのヤドリガミも抹殺するか」
かの大仏を破壊したなら、サムライエンパイア随一のオブリビオンが作れようと喜色を現した男が、巨刀を振り被る。
彼は颯然の風に髪を梳って、
「止められるなら、止めてみろ! 猟兵!!」
広い境内に散ばっている猟兵に先んじるべく、手鞠の落下速度を加速するのだった。
七星・桜華(サポート)
『天魔流免許皆伝、更なる高みへと!』
『一か八かの勝負?必要無いね!私達の勝ちだね!』
『後は派手に騒ぐんだ!誰も倒れないようにね!』
とある隠れ里に伝わる『天魔流』の免許皆伝。
派生流派も含めても免許皆伝は一人
残像を攻防の両方に使い、腰に挿している6振りの刀と扇子を使い戦闘する。
闘う姿は舞っているかの如く空中戦もできる。
第六感や野生の勘と言う直感も鋭く見切るまでも早い。
先手後手問わず。
殺気や覇気が残像にまで残る程濃密。
常に最善を最短で気づき勝ってきた。
防御を無視した内部破壊を息をするかの様に行う。
消耗の回復に生命力を吸収する。
優れた第六感で賭け事も強い。
意外と家事も万能。
※アドリブ絡みR12行動OK
朝霞・蓮(サポート)
●キャラ
人間の竜騎士 × 探索者 18歳 男
口調:(僕、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?)
●戦い方
至近:アイテム『百膳』を使用して切り結んだり、竜言語で身体強化して格闘したり
近中:槍投げしたり銃で射撃。その時に機動力を求められるなら竜に騎乗
遠:攻撃手段がないので接近
●その他できること
錬金術でいろいろ
●長所
探索者として狂気に免疫があるので逆境に強く、恐怖と威圧に動じない
●短所
詰めが甘く、天然
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用
多少の怪我は厭わず積極的に行動
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ミロ・バンドール(サポート)
大人向けな依頼は不採用にしてください
口調はステシの基本通り
強がって一匹狼を気取った態度ですが、連携にはきちんと応え
最善の結果のために努力します
いわゆるツンデレ
基本的な戦闘スタイルは敵の力を削ぎ、次の味方の行動へ繋げるサポート役で
次いで重視する行動が敵の押さえです
技能の各種耐性(これは先制攻撃ボスにも適用)や
武具改造を活かし、戦場の状況に合わせたスタイルを模索します
保護対象には耐性技能を利用して盾になり
UCは誰かが望まない犠牲になるときは差し控える傾向
*備考
・精神攻撃にはとても弱い(ヘタレると寝言時の口調)
・ギャグ展開に巻き込まれやすい、弄られOK
※キャラぶれ気にしないので、お気軽に弄って下さい
四王天・焔(サポート)
『こんにちは、焔だよー。』
妖狐の人形遣い×ガジェッティアの女の子です。
普段の口調は「無邪気(自分の名前、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、家族には「甘えん坊(自分の名前、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
無邪気で感情の起伏が激しい性格の少女、
武器はからくり人形とドラゴンランスを主に使います。
植物、特に花が好きです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ベッジ・トラッシュ(サポート)
◆戦闘時
戦うのは怖い!
なのでボス戦ではだいたい逃げ回っている。
(味方の手助けになる行動や、囮になるなどの功績を得ることはあるがだいたい無意識)
「こ、ここ…怖いのではないゾ!ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」
手の届かない相手にはパチンコで苦し紛れに絵の具弾を飛ばすこともある。
◆冒険時
基本的に好奇心が強く、巻き込まれ体質。
敵味方関係なく、言われたことには素直に従う。
怪しいような気がしても多少なら気にしない。
後先考えずに近づいて痛い目を見るタイプ。
◆他
口癖「ぎゃぴー?!」
お気に入りの帽子は絶対にとらない。
食べ物は目を離した隙に消えている系。
(口は存在しない)
性能に問題はないが濡れるのは嫌い。
広い境内の至る處に空襲を仕掛けたのは、戰力を散らす爲だったか。
各所で防衛に当たっていた猟兵は、空より降り落ちる手鞠が軈て一点に集められる事に気付くと同時、直ちに大仏殿へと爪先を彈く。
間に合うか――いや、不安は無い。
彼等が到着するまで首魁を抑えんと、新たな猟兵が支援に出たのだ。
「真柄十郎左衛門直隆……越前國の豪傑か」
黒鹿毛の駿馬に跨るでなく、手鞠に乗って現れたかと上空に烱眼を結ぶは、七星・桜華(深紅の天魔流免許皆伝・f00653)。
一乗谷の戰は知っていると、強敵を前に滾り立つ闘氣に白と黒の羽織を翻した麗人は、柳腰に差したる六振りの刀のうち『天魔冥滅・天之羽々斬』と『妖刀草薙之剣』を抜き、その凄まじい劔威を暴いた!
「天魔御剣流……一乃奥義・封絶虚空閃!!」
桜華は唯有る隠れ里に伝わる『天魔流』の唯一の免許皆伝。
彼女しか放つ事の出来ないその絶技は、須臾に鋭い突きを、払い斬りを、更に横一文字に斬撃を放ち、直隆の周囲を固める手鞠(風魔忍軍)を蹴散らしたッ!
虚空から繰り出る不可視の冱撃は、軌跡を一に結ぶ彼等には躱せまい。
桜華は次々と霧散する邪影を見ながら更に一閃ッ、
「後ろに護るべき人が居るなら、尚更倒れる訳にはいかないね!」
と、赫緋の麗瞳を煌々と輝かせながら、晴朗の空に放射状に爆発を広げるのだった。
周囲の手鞠を駆逐すれば、軍勢に隠れた首魁も見つけられよう。
五尺三寸の太刀『太郎太刀』を握る者の影を捉えた朝霞・蓮(凌駕の先・f18369)は、漆黑の麗瞳に烱々と光彩を湛えると、腰を落とし、拇指球を踏み込め、呪いを帯びるAF(アーティファクト)『百膳』を抜く。
刀身を現せば、冷ややかな霊氣が白皙に触れよう。
蓮は眼路いっぱいに脅威が迫るも冷靜沈着、刃に滿てる怨嗟を炎と熾え上がらせると、蒼穹に目掛けて一閃したッ!
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、と言いますから。手鞠を狙います」
膳の月を食みて善と為る――其はAF〈月蝕〉(ツキハミ)。
己の存在に気付いた直隆が太郎太刀を振り被るより速疾く、怨嗟の炎を籠めた斬撃波を放った蓮は、軌跡を違えず真直ぐに、直隆が乗る手鞠を真二つに別ッた――!
『ッ、ッッ……足場を失ったか
……!!』
「あとは落下するのみです」
態勢を崩された直隆の斬撃は、逸れて蓮の頬を掠めるのみ。
彼はツ……と滴る赤い一筋を手の甲に拭いつつ、垂直に降下する敵影を見るのだった。
而して落下地点に控えるは、ミロ・バンドール(ダンピールの咎人殺し・f10015)。
「真柄直隆……姉川の戰いで破れた者が、徳川幕府に仇成そうとしているのか……」
彼が打倒徳川を訴えるクルセイダーに与したのは理解る。
然し東大寺を丸ごと犠牲にするのは、生前の彼なら命を懸けて回避した悪手だろうと、墜下する邪影を仰いだミロは、吊り篭『揺籃回帰』を僅かに傾け、動いた。
「裁きの時は来たれり、汝の罪を贖うべし」
間もなく着地する直隆を迎えるは【執行】(エクスキューション)――!
悪魔の外套が万色を彩る炎焔を搖らしたのも一瞬のこと、ミロは巨大劔『正義の柱』を固定台と變形させるや、鐵鎖に拘束に掛かり、ギロチンの刃を振り下ろし、拷問具一式による処刑儀式を執り行わんと間隙無き連続攻撃を仕掛ける。
「罪を肉体に刻み、激痛を以て魂を浄え」
『ッ、ッッ……最強を求めるこの身に、罪など……ッ!』
直隆が咄嗟に拘束台から逃れ、『次郎太刀』を噛ませて鐵鎖を彈くが構わない。
この場を押える事が己の役儀と麗瞳を煌々と輝かせたミロは、更に注射器を突き入れて直隆の掣肘に掛かるのだった。
仮令(たとえ)直隆が拷問儀式から逃れられたとしても、大仏殿の参道に着地した彼は其處から踏み進む事は出来まい。
少し離れた場所では、大きな狐耳をピンと立てた四王天・焔(妖の薔薇・f04438)が、直隆の挙措や太刀筋を音に拾いつつ、彼の動きを制さんと紫苑の麗瞳を輝かせている。
玲瓏の彩はその意志を光と湛えよう、
「正倉院や鹿園の方へ向かった猟兵さん達が揃うまで、敵を足留めればいいんだよね!」
凛然を萌した佳人は、青き蓮の意匠が凝らされた拳銃型魔導兵器『青蓮』の銃口を直隆に向けると、狙いを定めて銃爪を引いた。
「無数の剣よ! 敵を取り囲み、切り刻めー!」
淸澄のソプラノが銃聲に交じり、精確精緻に彈丸が繰り出る。
美し彈道を描くは【閃剣蒼華】(サウザンド・エナジーソード)――冱彈が直隆の左肩を彈いた瞬間、燦然の光に紡がれた無数の劔が嵐の如く吹き荒れ、大いなる渦動に進退を阻まれた直隆が歯切りする。
『ッッ、次から次へと
……!!』
「ここから先へは行かせないよ!」
可憐にも慥かな口調が狂邪を楔打った。
金堂には避難した参拝者が居る。
更には此度の狙いであるヤドリガミも居れば、最大の器物たる大仏もあろう。
直隆が持つ『太郎太刀』も『次郎太刀』も、その場から大仏殿ごと破砕できる高威力の獲物にて、油断は出来ず――更なる猟兵が牽制を仕掛けた。
気の弱い、お調子者のベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)である。
戰うのは怖い上に強敵が現れたのだから、ベッジは大きな大きな魔導師のトンガリ帽子のブリムを両手で引っ張りながら、あっちこっちに逃げ回っていたのだが、視野は広く、アンテナもバッチリな彼は、猟兵の包囲網を解かんとする邪刀の閃きを気取った。
「こ、ここ……怖いのではないゾ! ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」
然う、全て計算済み(?)。
電子音聲を震わせながらパチンコを構えたベッジは、カラフルな絵の具彈を飛ばすと、直隆が太刀を振り被った瞬間、その刀身にアーティスティックな色彩を広げた!
「ズバリ命中デス!」
『ッ、ッッ……我が愛刀を愚弄するか
……!!』
「ぎゃぴーー?!」
苦し紛れに飛ばした絵の具彈が挑発となったか、直隆がギロリとベッジを睨めたなら、彼は【怖がりの集大成】を発動し、蠢く絵の具が及ぼすダメージを加増していく!
『なっ、くっ……重い
……!?』
「いまデス!」
而して、目下。
シュピッと強靭な脚力で逃げ出すベッジと入れ違いに、複数の跫が大仏殿に至った。
「――間に合ったようだな」
「良かった、幹部の刀はまだ届いていないようですね」
彼等は、広い境内のあちこちで防衛に当たっていた猟兵たち。
全速力で門を駆け抜け、大仏殿前の参道に勢揃いした仲間達が、参拝客やヤドリガミが見守る中、直隆と戰闘を開始するのだった――。
成功
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火土金水・明
「猟書家の計画の邪魔をし、その世界の平和を守ることが猟兵のつとめです。」「そちらが太刀を使うのなら、こちらは剣で戦いましょう。」
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の一撃】で、『真柄十郎左衛門直隆』を攻撃します。相手の攻撃には【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
「良かった、幹部の刀はまだ届いていないようですね」
大仏殿の無事を確認し、先ずは安堵の息をひとつ。
各所に散った猟兵が集まるまで、首魁を抑えてくれたサポートメンバーに謝意を示した火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、彼等が取り囲む中央に居る男を見る。
「真柄十郎左衛門直隆……北國の雄が東大寺に何用ですか」
『最強のオブリビオンを作る爲の“素材”集めだ』
太刀に塗り込められた絵の具を、怪腕の一振りで払って答える直隆。
己が目的が大仏殿にあると顎でしゃくって見せれば、かの方向に漆黑の烱瞳を合わせた明が、命を傷付ける事は許さないと頭(かぶり)を振る。
佳脣を滑るソプラノは淸冽なる水の如く凛として、
「猟書家の計画の邪魔をし、その世界の平和を守ることが猟兵のつとめです」
云って、直隆の正面に立つ。
黑きウィザードハットのブリムから鋭い視線を注いだ明は、巨魁が手にする五尺三寸の太刀を見ると、『銀の剣』を抜いて云った。
「そちらが太刀を使うのなら、こちらは劔で戰いましょう」
『――はっ、そんな花車な劔で凌げるかよッ!』
明の姿を映したかのように繊麗な耀く劔を一笑し、直隆が『太郎太刀』を巨大化する。
尋常なら持ち上げられもせぬ其を全き剛腕で薙ぎ払った彼は、轟ッと風を呻らせて一閃すると、【太刀嵐】――嵐の如き斬撃を放つ!
『掻き消してやらァッ!』
「どうぞ、それは残像ですから」
『ッ、ッ!!』
風の呻る音に紛れ、涼しげな金絲雀の聲が擦り抜ける。
巨大な刀を一振りした直隆は、舌打ちして更に一閃ッ、今度こそ明を真二つに両断せんと薙ぎ払うが、これだけ大振りな攻撃では、動きを見切った佳人は捕えられまい。
明はまたも残像を斬らせながら、ローブの下から『金の翼』を羽搏かせると、神々しい黄金色のオーラを全開に一氣躍進ッ! 巨刃を切り返さんとする直隆の腕に【銀色の一撃】を疾らせ、幾重に渦巻く大嵐を風と散らしたッ!
『なッ、ん……ッッ!!』
疾ッと迸った血潮が花片と躍り、直隆が瞠目する。
豈夫(まさか)あの瀟洒な銀の刃が己を傷付けようとは、と喫驚を露わにする彼の前、黑く艶帯びたポニーテールを揺らした明は、間隙許さず爪彈く仲間に気付いて、
「少しでもダメージを与えて次の方に」
と、己と擦れ違う爽涼の風に次撃を託すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
……へぇ。
鍛え上げられ無駄なく引き締まったその肉体と、大剣を軽々振り回す剛力。
いいじゃない、とても私好みよ。
私が何者かって?
荒谷流戦闘術、当代正統継承者――荒谷・つかさ。
貴方こそ、私を止められるものなら止めてみなさい!
大剣「零式・改三」を構えつつ【荒谷流剣術・真伝『零』】発動
剣には防御重視で「土」属性を付与、「怪力」と併せて敵の巨大化した太刀を真っ向から受け止め、弾きに行く
そして結果がどうあれ全力の突きをお見舞い
この剣はあらゆる隙間を貫く剣
防御などさせるものですか!
それにしても、オブリビオンなのが残念ね……そうでなければ、叩きのめして里へ持ち帰って婿にしたかもしれないわ。
而して次撃を預るは荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)。
須臾すら埋めんと、大劔『零式・改三』の鋩と共に疾駆した佳人は、宙空に踊る血潮を潜って突貫――ッ! 身ごと冱刃の如くして巨魁に迫る!
『ッッ!! いい踏み込みだが……読みの範疇だッ!』
己も然うしたろうと、眉間に迫る鋩を『太郎太刀』に受け流して危機を凌ぐ巨邪。
目下、火華を散して擦れ違ったつかさは、振り返るなり僅かに口角を持ち上げた。
「……へぇ。大振りかと思えば、咄嗟に刃を盾に出す機転も速さもある、と――」
鍛え上げられた武技。無駄なく引き締まった肉体。
大劍を輕々振り回す剛力、そして、最強を求める気概。
「いいじゃない、とても私好みよ」
中々の逸材だと、大劍の鋩を向けて云う彼女の劍技こそ卓抜していよう。
其處に尋常ならざる鍛錬を見た『真柄十郎左衛門直隆』は、何者かと名を問うて、
『名を告げよ。其の頸をクルセイダー樣に捧げ、我が誉れとしよう』
「私は荒谷流戦闘術、当代正統継承者――荒谷・つかさ」
片や五尺三寸の太刀を巨大化させ、片や三度目の再誕を果たした巨劍を構える。
緊張の中、佳人は明鏡止水の心境で【荒谷流剣術・真伝『零』】(インフィニティ)を発動すると、手に握る劍に堅守の證たる「土」属性を付与し、真ッ向勝負を仕掛けた。
「いざ――!」
鼻緒を踏むなり戰鎚の如く迫る鬼氣(すごみ)が凄まじかろう。
嘗ての戰亂の昂奮を呼び覚ました直隆も之に應じて、
『あくまで止めに掛かるか……その心意気、気に入った!!』
「貴方こそ、私を止められるものなら止めてみなさい!」
角逐――ッ!!
猛将の剛力と羅刹の怪力が鈞ッと切り結び、閃爍を挟んで睨め合う。
巨大な太刀より繰り出る圧倒的な斬撃を受け止め、彈いたつかさは、鋭い衝撃の余波を頬に掠めつつ、我が損耗を惜しまず全力の突きを見舞った。
「この劍はあらゆる隙間を貫く劍……防御などさせるものですか!」
ギィンッと音を嚙ませて突き進んだ刃が、直隆の首の皮一枚を切って鮮血を滴らせば、彼は流血をその儘に、好戰的に咲みながら巨刃を返すッ!
武の極みに至った者達の劍戟は、小気味佳い会話を連れ立って、
「惜しい、惜しいな! 骸の海を潜れば、お前も永遠に鍛錬を積めように!」
「貴方もオブリビオンなのが残念ね……そうでなければ、叩きのめして里へ持ち帰って、婿にしたかもしれないわ」
と、互いに惹かれ合うよう百刃千合し、熾烈な闘争を繰り広げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
真柄直隆――二年ほど前に刃を交えた事がありますが、往時とは随分に様相の異なる。
猟書家と化して新たな姿を得たというのか……。
否、それは後で考えましょう。
◆
蒔乃殿に助力を願いましょう。
あの大太刀の間合、闇雲に突進するのは危うい。
能うなら身を隠しつつ一気に接近したい所ですが、それに適した場所――例えば南大門や大仏殿の屋根などへの案内をお願いしたく。
うまく位置に付ければ、真柄の不意を打つ形で強襲。
太刀で迎撃されれば、刀で受け止めつつ【怪力】で堪え、間合いを詰める勢いのまま体当たりを。
吹き飛ばしざまに間髪入れず【天暁不露】にて一撃を食らわせましょう。
真柄殿、御身の名を汚す企みなど成就させられぬ。
――扨て、各所に散ばっていた猟兵が続々と大仏殿に集まる中、正倉院から駆けて来た鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、廻廊を通って金堂へ、仏の御座にて参拝者を励ます蒔乃に助力を請うた。
「!! お武家さま、凄まじい剣戟が響いておりますが、皆様はご無事でしょうか」
「ええ、今は。然し数で押せる手合に非ず、虚を衝ける場所へ案内をお頼み致し度」
あれだけの大太刀の間合、闇雲に突進しては危うい。
接敵するまで身を隠しつつ、而して一気に接近が叶う高所が望ましいと云えば、蒔乃は矗然(すっく)と立ち上がり、こっそりと奥に招いた。
「私は大仏殿の屋根を葺く宮大工の登り方を見ております。道なき道で構いませんか」
「勿論。後に続きましょう」
凛乎と星眸(まなざし)を結び、二人、隠密に屋根の上へ上がる。
傾斜はきついが、その高さからは参道で戰う猟書家が聢と窺えよう。
景正は蒔乃と共に身を隠しつつ、青藍の烱眼にその形姿を捉えて云った。
「真柄直隆……かの豪傑とは、二年ほど前に刃を交えた事がありますが、往時とは随分に様相の異なる。猟書家と化して新たな姿を得たというのか……」
「二年前……というと、織田との大きな戰が終わった頃でしょうか?」
「ええ、あの時は黑き面頬をした、今よりも人間に近い男でした」
宿場町での戰いは克明に憶えている。幾合と交した一太刀すらも。
骸の海を潜れば記憶が浄われると聽くが、魂に刻まれた徳川への恨みは消えぬか、倒幕を掲げるクルセイダーの呼び掛けに應えたのか知れず――。
「……否、それは後で考えましょう」
今は唯、北國の猛将の不意を打つに、巨大化した『太郎太刀』の太刀筋や五体の動き、初動の兆しや呼吸の全てを見極めんと集中した景正は、太郎太刀が振り下ろされる瞬間に飛び降り、宙空から直隆の側面を強襲したッ!
『――ッッ、空から来た俺に空から仕掛けるとは皮肉が利いてる!!』
初撃は躱せず、右肩に『濤景一文字』の刃撃を受け取った直隆は、其が骨肉に沈む前に大太刀を一閃し、景正を引き剥がさんとする。
轟然と繰り出た斬撃波を怪力いっぱい、己が刀で受け止めた景正は、その余波を肌膚に掠めつつ、更に間合いを詰めんと前へ、前へ――勢いのまま体当たりした!!
而して息を呑む間も無い。
吹き飛ばされた直隆が態勢を立て直すより速疾く、大上段から【天暁不露】を振り下ろした景正は、襟の開けた右胸に朱々と血花を咲かせる――!
『ぜァ……ッッ!!』
「真柄殿、御身の名を汚す企みなど成就させられぬ」
返り血を白皙に受け取りつつ、蒼瞑の劍鬼が冷嚴の聲を置いた。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
UCで強化しつつ駆け付け
代償の殺戮を唆す呪縛を初手に溜め
敵を目視後、呪縛を戦意へ転化
足止めも兼ね手裏剣【投擲】
あんたが罰当たりな鞠の親玉か
大仏さんをどうするつもりだい
…聞いても碌な事無さそーだけど
悪いけど足止めさして貰う
接近戦を想定
敵UC理性抜きの攻撃は【野生の勘】で躱し被弾時【激痛耐性】で凌ぐ
軌道を活かし刺突、暗殺
体勢低く地を蹴り【忍び足/スライディング】最接近と同時に手にしたクナイを防具の薄い箇所へ【串刺し/暗殺】
刺されば【念動力】で体内へ押し込み【傷口をえぐる】
外れたら別のクナイで正面から飛び込み斬り付け
外れて落下したクナイを背後から念動で足の腱など狙い突き刺す【だまし討ち】
アドリブ可
『ぜァ……ッッ!!』
右胸に血華を咲かせた直隆の視界が朱に染まる。
牡丹の花の舞う如く鮮血が躍る――美しくも凄惨な色彩が広がった、刹那、赤の世界を切り裂くように、妖氣を帯びた手裏劍が飛び込んだ。
「北國の豪傑、真柄十郎左衛門直隆。あんたが罰当たりな鞠の親玉か」
鋭刃と共に邪を楔打つ、冷艶のテノール・バリトン。
聲の主は鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)。
無数の手鞠が大仏殿へ軌跡を揃えるのを視た彼は、【降魔化身法】にて己を超強化し、神速で駆け付けると同時、代償として負う“殺戮を唆す呪縛”を初手に反撃を断つ。
彼の血筋に憑く化生は、橙色の烱瞳に熾々と戰意を輝かせよう。
目下、トーゴは腕に突き刺さった手裏劍を抜く直隆に問うて、
「大仏さんをどうするつもりだい」
『あのデケェの破壊してヤドリガミを殺し、倒幕の一手とする』
幾年の霊氣を帯びた宿神の魂と、廬舎那仏に関わった者達の魂を合成する。
而して作った最強のオブリビオンを配下に、徳川の治世を潰す。
其こそ姉川の戰いで散った己が本懐と、防具を脱いで戰鬼と化した直隆が云ったなら、トーゴは須臾に迫る『次郎太刀』の鋩を大跳躍して躱し、宙空から溜息を零した。
「……聞いても碌な事無いと思ったけど、やっぱそうだった」
『ッ、上か!』
動くもの全てを斬り裂かんと理性を棄てゆく直隆が、返す刀に大太刀を突き上げるが、優れた戰闘勘で斬撃を躱したトーゴは、弱まらぬ余波を頬に掠めつつ距離を詰める。
「骸の海から出てきたとこで悪いけど。その本懐、止めさせて貰う」
『止められるものか!!』
「相應の代償は負うよ」
稀代の豪傑を無傷で討ち取れるとは思っていないと、痛苦は既に負う彼である。
体勢を低く石畳を蹴ったトーゴは、地を這わんばかり低さで直隆の足許に接近すると、『編布の外套』より取り出したクナイを洋靴に突き刺し、足の甲を貫いた!
『!? ぉぉおおっ!!』
トーゴは颯然と背後に擦り抜けるが、鋭利く突き立てたクナイは念動力で更に深部へ、傷口を抉りながら靴底まで貫通せんと沈んでいく。
防具を脱いだ折に、防禦の薄い箇所を攻めるが小気味佳かろう。
その場に縫い留められた直隆が片足で反轉するより速疾く、背後から急接近した彼は、地に落ちていた――初手に投擲して直隆が抜いて棄てた――クナイを摑んで刺突!
「これでもう大技は使えない」
と、動くにも踏み込むにも要となる足の腱を切り裂くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
何でまた還ってきた?
いや…あん時のあんたとは別人か
ヤドリガミは…道具じゃねぇ
好きにはさせねぇ
覚悟込め
変身状態維持
衝撃波目晦まし代わりに飛ばしつつ
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
あんただってごつい武器持ってんじゃねぇか
それ
大事にしてねぇのかよ
てか…
大事にしてたとしたら
その太刀出しはしねぇよな
UC起動
理性がなくなりゃ好都合だ
ヒット&アウェイ
暗殺用い死角から接敵
蹴りで吹き飛ばし更に追い打ち
地上だけでなく空からも多角的にフェイント
攻撃見切られぬよう攻める
怖ぇ怖ぇ
鬼さんこちら、だ
それはあんたの得物じゃねぇだろ
いくら戦闘力が上がろうが道具に使われてるようじゃ
俺はやれねぇ
拳の乱れ撃ち
あれは二年程前――エンパイアウォーを経て暫く立った頃だったか。
或る宿場町で真柄直隆と邂逅を得ていた陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、再たしても骸の海より掬い上げられた豪傑の魂に、疑問を抱かずにはいられなかった。
「何でまた還ってきた? いや……あん時のあんたとは別人か」
骸の海を潜れば記憶が浄われると聽く。故に眼前の男は己を知るまい。
徳川の打倒を呼び掛けるクルセイダーに唆されたか知らないが、猟書家となって甦った直隆の所業は、直隆を忠臣と知る理玖には、矢張り、理解出来るものでは無く――。
彼は變身状態を維持した儘、拳をギッと握り込めて云った。
「ヤドリガミは、大仏は……道具(モノ)じゃねぇ。あんたの好きにはさせねぇ」
嘗て彼を戒めた拳で、此度も止める。
覚悟を決めた理玖は、先ずは『龍掌』の拳打に目晦ましの衝撃波を撃ち出すと、一気にダッシュして敵懐を目指した。
(『ッ、速疾い――ッ!』)
須臾に振り下ろした『次郎太刀』が斬ったのは、理玖の残像。
其より二歩も三歩も先行した鋼鐵のヒーローは、返す刀に飜る直前の巨刃を手に摑み、至近距離でギチギチと抗衡した。
「あんただって、こんなゴツい武器持ってんじゃねぇか」
『くっ、動かぬ……この細腕の何處にこれだけの力が……ッ!!』
「大事にしてねぇのかよ。てか……大事にしてたとしたら、出しはしねぇよな」
大事だったら、幾度と脅威に見舞われても、あんな風に屋根で覆ったりするものだと、理玖が護る背には大仏殿が見えよう。
両者の相剋を力いっぱい彈いた彼は、【閃光烈破】(アクセラレート・エリミネーター)――超高速戰闘プログラムを解放し、二の撃が閃くより先、直隆の視界から消えた!
『ッ!? 何處だッ!!』
此處だ、と應えるは死角から飛び込む蹴撃。
大仏殿とは逆の方向に吹き飛ばされた直隆は、直ぐに反轉して斬撃を繰り出すが、其處にも理玖の影は無く――冷艶のテノール・バリトンがヒヤリと鼓膜を震わせるのみ。
「おっと、怖ぇ怖ぇ。鬼さんこちら、だ」
四方は勿論、空からも多角的に。折にフェイントを混ぜてヒット&アウェイ。
理性がなくなりゃ好都合だ、と更に加速した理玖は、軈て太刀と五体の乖離しゆく隙に拳を亂れ撃ち、
「それはあんたの得物じゃねぇだろ。幾ら戰闘力が上がろうが、戰狂いの鬼になろうが、道具に使われてるようじゃ……俺はやれねぇ」
而して遂に、次郎太刀が纏える鬼氣を霧散させるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
篝・倫太郎
【華禱】
大きいと強い!の理屈?
実際のとこ、器物のサイズって関係なくない?
簪のヤドリガミの夜彦の方が多分、大仏より強いよ?
なんて思いつつ、敵に教えて遣る必要もないし
勿体ないから思うに留めて
何にせよ、いつも通りに、だ
拘束術・真式使用
詠唱と同時にダッシュで接近
斬撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払いの先制攻撃
真式は太刀を揮う腕ごと繋げられたら僥倖
目的は太刀筋の制限
止められるなんざ思っちゃいねぇし
三回攻撃してくるのも判ってる
それでも、動きを読み易くすれば対処しやすい
敵の攻撃はオーラ防御で防いで凌ぎ
負傷は激痛耐性で耐え
以降の攻撃には生命力吸収を使用
また、繋いだ鎖が断ち切られる前に好機があれば重ねて使用
月舘・夜彦
【華禱】
刀といった武器の方はそうかもしれませんが
私は武器ではありませんのでなんとも……
ですが、やはり鍛練が大事です
はい、相手が何者であれ斬るのみ
同族を狙うとなれば見過ごす訳にはいきません
戦う理由としては、充分
倫太郎と共に駆け出して接近
太刀に警戒しながら、2回攻撃と武器落としにて
攻撃を弾きながら仕掛ける
太刀の巨大化に警戒
巨大化した際には速やかに後ろへと跳んで距離を離す
避けきれない場合は武器受けにて凌ぐ
倫太郎の術に併せて二刀流剣舞『襲嵐』にて反撃
一撃目は太刀に当たっても構いません
この技は最初さえ当てられれば良いのですから
ユーベルコード発動後は間髪入れず再び接近して攻撃の繰り返す
猟書家『真柄十郎左衛門直隆』曰く、凄い器物だったなら凄いオブリビオンになる。
より巨大で強靭な器物を素材にすれば、最強のオブリビオンが生成できる、と――。
而して其を聽いた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は思う。
「大きいと強い! っていう理屈? でも実際のとこ、器物のサイズって関係なくない? 簪のヤドリガミの夜彦の方が多分、大仏より強いよ?」
果して男が渇仰する「最強」が作れるのか、と――。
この至極真っ当な疑問を聽き拾った月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、端整の横顔に淡く苦笑を滲ませて、
「……若しか刀といった武器を本体になさる方はそうかもしれませんが、いかんせん私は武器ではありませんので、なんとも……」
直隆の理論を打ち砕く心算(つもり)は無い。
然し、矢張り鍛練が肝だろうとは、修練を積んだ者ならではの言にて、「そうだろう」と強く頷いた倫太郎は、事實を教えて遣る必要も無しと佳脣を引き結ぶ。
敵に告ぐのは勿体無いという思いもあろう。
或いは夜彦が狙われてはいけないという想いもあろう。
彼の「盾」を務める倫太郎は、ちょうど『次郎太刀』に纏える鬼氣を霧散させた直隆に向き合うと、彼奴が『太郎太刀』を構えると同時、我が「刃」に呼び掛けた。
「……何にせよ、いつも通りに、だ」
「はい、相手が何者であれ斬るのみ」
今までも然うしてきた。そして此度もやる事は變わらない。
直隆が徳川の打倒を掲げるクルセイダーに与したと云うなら、泰平の世を希求む我等が立ち塞がるのみと凛然を萌した二人は、間もなく踏み出る北國の豪傑を迎え撃った。
『いざ、参る――!』
向かいざま、五尺三寸の太刀が更に巨大化するが、倫太郎は冷靜沈着。
彼は轟然と迫る圧倒的斬撃より、大太刀を振るう腕こそ注視して、
『我が野望、止められるなら止めてみろ!』
「何も無傷で止められるなんざ思っちゃいねぇよ」
烈々たる【太刀嵐】を闘志のオーラに相殺し、或いは肌膚を切らせつつ耐えた麗人は、同時に【拘束術・真式】――不可視の鎖を斬撃の渦に滑らせると、直隆の大太刀を握れる両手首を絡め取ッた!
『ッ、腕が……ッッ!?』
「どれだけ巨大化しても、支点は、手首は變わんねぇよな」
狙いは、『太郎太刀』の太刀筋の制限。
これだけの巨刃を振り回すに、両腕の、手首の可動域が必須となろうと見極めた彼は、己と直隆を結ぶ鎖の緊張を保ちつつ、絶えず華焔刀 [ 凪 ]より衝撃波を放ち続ける。
『ッッ、なれば……視えぬ鎖を断ち切る!!』
直隆も鬼の形相で縛鎖を見切らんとするが、目下に接近する夜彦の方が視えていよう。
お陰で太刀の軌跡も五体の動きも読み易いと、倫太郎に感謝しつつ邪に肉薄した彼は、二刀流劍舞【襲嵐】――! 夜天に移す銀月の如き『夜禱』と、蒼銀の刃が美しい霞瑞刀 [ 嵐 ]を抜くや、玲瓏と煌めく刃撃を叩き込んだッ!!
蓋し佳脣を擦り抜ける科白は冷艶と冴えて、
「同族を狙うとなれば、見過ごす訳にはいきません」
『ぬッ、くッッ
……!!』
「戰う理由としては、充分」
二刀を抜くに充分な大義が在る、と。
凛冽を帯びて疾った斬撃は、直隆が盾と構えた『太郎太刀』にキィンッと嚙み付くと、其處から無数の刃の煌きを躍らせた――!
而して夜彦も、巨大化した太刀に一撃目を阻まれるとは想定していたろう。
「初撃は太刀に当たっても構いません。この技は最初さえ当てられれば良いのですから」
『――ぉぉぉおおおおっ!!』
この場合、一度当たれば追撃が定まる巨盾は格好の「的」だ。
大太刀が防禦から攻撃へと転換する瞬間こそ、後方へ飛び退いて距離を取った夜彦は、広い視界に斬撃を躱しつつ、直隆が巨刃を振り下ろした刹那に再び接近し、美しき劍舞を披露した。
加えて、須臾を埋める連携も妙々。
夜彦は流れるように動きながら、比翼を成す倫太郎と一瞥を交して、
「既に周辺の手鞠は駆逐されております。刃を振るうに躊躇いはないかと」
「ああ、複数回攻撃してくるのも判ってる」
「大仏殿に当たらぬよう掣肘を続けましょう」
「そうだな、“手綱”は締めておく」
奴に連撃を許してはならぬと、倫太郎は縛鎖を断ち切る動きを見れば直ぐに重ね掛け、彼と疾走を揃えた夜彦は、範囲を絞られた太刀筋を難なく躱して二刀を振るう。
直隆が荒ぶるほど二人は怜悧に呼吸を合わせ、
「朝倉氏の客将、真柄直隆。貴方は他の命を素材に最強を手にする男では無い筈です」
『噤めッ! 超・魔軍転生なくして徳川は滅ぼせぬ!!』
「その荒業を駆使して散ってった奴を、俺達はごまんと知ってる」
いつも通り、その一人に加えるだけ。
骸の海を潜って忠心を忘れた男の、嘗ての名を穢すまいと、そと流眄を結んだ二人は、クルセイダーに狂わされた魂を浄うべく、刃を振るい続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
止められるものなら……だと?
矢張り愚か者には如何な帰結が訪れるかすら解らんと見える
お前の謀り事なぞ既に潰えていると知れ
其の身に悉くが無意味だと教えてやろう
――伐斬鎧征、血符にて為さん
元は武人
理性を失えども……否、失えばこそ動きは反射で身に染みた型を擦ろう
視線に切っ先、体捌きから戦闘知識で攻撃方向と起点を計り読み
カウンターで衝撃波を咬ませて潰してくれる
致命と動きを阻害するものさえ対処出来れば些少の傷等構いはせん
一瞬でも隙が視えたなら素っ首刎ね飛ばしてくれる
物とは云えど、其処に生じた心も命も他と変わらず貴ぶべきもの
過去の残滓なぞに呉れてやれる様なものではない
無手の侭、骸の海へと還るがいい
敵味方を問わぬ斬撃と、理性を手放す戰狂いの戰法。
目下、各所より集った猟兵らと大亂闘を繰り広げる猟書家『真柄十郎左衛門直隆』は、鮮烈な朱に染まりつつ、鏘々たる劍戟叫喚に大聲を發した。
『我が太刀、我が野望!! 止められるものなら止めてみろ、猟兵!!』
「止められるものなら……だと?」
時に、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が片眉を吊り上げる。
己が猛進を盲進と知りつつ、他者が其を止める事を希求むかのような――未だ戰亂の世の思考に在る北國の豪傑を前に、澎湃と闘氣を漲らせた嵯泉は、赫緋の隻眼を烱々煌々、懐から黑々と塗り潰された紙片の束を取り出した。
「矢張り愚か者には如何な帰結が訪れるかすら解らんと見える」
『知った口を。ならば其を解らせられるか!』
「お前の謀り事なぞ既に潰えていると知れ」
其の身に悉くが無意味だと教えて遣ろう、と――。
怜悧に睨める裡に『秋水』の切羽の象嵌を覗かせ、僅かに出た刃に指を切り付ける。
而して赤き血を滲ませた嵯泉は、其を『黑符』に染ませると、ゆうらと立ち昇る霊氣を纏うや神速で疾駆したッ!
「――伐斬鎧征、血符にて為さん」
『ッ、ッッ――!!』
疾い、捷い、駛い!!
絶影の機動を追うに理性は不要と、直隆は防具の重みを捨てて『次郎太刀』を振うが、彼奴こそ生粋の武人にて、理性を失えばこそ動きや反射は身に染みた型を擦ろう。
そして武の型を佳く識る嵯泉は、男の視線・太刀の鋩・体捌きから、攻撃方向と起点を見極めると、其を上回る速さで刃鳴一閃し、衝撃波を被せて相殺する。
「些少の創痍流血は構わん。だが一瞬でも隙が視えたなら素っ首刎ね飛ばしてくれる」
『ッッぉぉおお雄雄乎乎ッ!』
理性無き戰鬼に嚙み付くも鬼氣迫る刃撃。
両者の間で爆ぜた衝撃が波動となって大地を駆け抜けるが、その相剋から更に踏み出た嵯泉は、余波を肌膚に掠めつつ、二指に挟める『黑符』を戰鬼に叩き付けたッ!
其はユーベルコードを破砕する氣につき、直隆の戰狂いを解いていこう。
「物とは云えど、其處に生じた心も命も他と變わらず貴ぶべきもの。未だ復讐心が浄えぬ過去の残滓なぞに呉れてやれる樣なものではない」
『ずっ……ァア嗚呼ッ……ッッ……!』
「無手の侭、骸の海へと還るがいい」
手を離れた次郎太刀が可藍ッと地を打つと同時、冷嚴の科白が時を止めるようだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタ(f22361)さん。
真柄さんまで駆けつつリミッター解除と限界突破で身体機能上昇を。
目前で『兼元』の刃に貫通と重量と鎧砕きに鎧無視攻撃を乗せてから。
武器ごと真柄さんの四肢を斬る想像で【黄泉送り『彼岸花』】の斬撃。
雑念は太刀筋と切れ味を鈍らせるので一切考えずただ無心で行きます。
太郎太刀で受けられるかもしれませんがそれも気にはしません。
この刀はそれほどやわな造りをしていませんから。
真柄さんの攻撃はロベルタさんがなんとかしてくれるので心配しません。
切れ味のことだけを考えすぎて余波で周囲が凄いことになるかもですが…。
してしまった後で思いきり後悔します。…やりすぎてしまいました…。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。
墨ねーが先行したけどすぐ追いつくから気にしないよ♪
封印解いてパフォーマンスを上げて限界突破の多重詠唱!
準備が出来たら継戦能力で維持し【雷神の大槌】発動だじぇ。
墨ねー追い越して真柄にーちゃんの目の前に現れたら驚くかな?
一瞬でも僕への対応が遅れたら…いいんだけどな~。難しいかな。
超高速が付いた蹴りに鎧防御無視と重量攻撃を乗せて脇に一撃する。
回避か受け止められたら身体を捻って腹部を突くように全力で蹴るよ。
二度目の蹴りには零距離射撃とスナイパー技能を追加付与しておく。
もし事前に気配とか察知されたら見切りと第六感や野生の勘で回避。
回避後に二度目の蹴りと同じ追加付与で蹴るねぃ~♪
無数に振り落つ手鞠が軌跡を一つに、大仏殿へと集まるのを見た浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、直ぐに爪先を彈いていた。
「真柄十郎左衛門直隆……北國の豪傑が……騒擾を起こそうと、している……?」
慥か彼は姉川の戰いで散った武将だ。
先の大戰で織田方に付く事は無かったようだが、骸の海を漾って幾許、徳川への恨みを澱ませたか――倒幕を掲げるクルセイダーに与したか掬われたかは判然らない。
とまれ彼の『太郎太刀』に掛かっては、これまで数々の危難を乗り越えてきた東大寺も廬舎那仏も危ういと佳脣を引き結んだ墨が駆ければ、傍らのロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)も直ぐに後を追った。
「墨ねー、はやっ! 今回の猟書家がそれだけ強いってこと?」
長い銀の睫をぱちくりと瞬き、而して踵を鳴らす。
おいてけぼりは気にせず、ふわりポニーテールを揺らしたロベルタは、【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)――颯然の風を纏って一気に疾駆すると、先行していた墨に追いつき、追い越し、遂には『次郎太刀』を落した直後の敵前に現れた!
「真柄にーちゃん! えへへ、驚いた?」
『ッ、ッッ――!!』
一瞬でも対應が遅れたらと思っていたが、表情を見れば歴然。
会敵後、更に蹴り出して前進した少女は、大仏殿に至るまで詠唱を重ねて威力を増した超光速の廻し蹴りを放ッた!
「これも驚いてくれたら……いいんだけどな~?」
雷轟を喊びつつ閃く蹴撃は宛ら斬撃の如く――!
可憐な脚から繰り出たとは思えぬ冱撃に瞠目した直隆は、息を吞みつつ『太郎太刀』の峰に彈き、猛然と角逐した衝撃と威風に仰け反るが、ロベルタは其も想定済み。
「脇……が空いたら、胴!」
宙空で繊麗の躯を捻った彼女は、体幹を軸にして右脚を振り上げると、回轉力を加えた蹴撃をもう一回ッ! 今度は腹部を突くように全力で蹴り落した!!
『ぐァァァアアッッ!!』
腹部に防具は無し、精確精緻に放たれたキックに臓腑は悲鳴を上げよう。
強烈な一撃に目を白黑させた直隆は、内臓を掻き亂す激痛を払うように『太郎太刀』を薙ぎ払うが、其の先にロベルタの姿は無し――。
『!? 何處へ行った!!』
「……次撃は、預ります……」
『――!!』
代わりに迫るは墨――!
天に在りては比翼の鳥の如く、地に在りては連理の枝の如く、阿吽の呼吸でロベルタと入れ替わった墨は、二尺三寸三分の大刀『真柄斬兼元』を抜きながら、駆ける勢いの儘、黄泉送り【彼岸花】――ッ! 森羅万象を別つ究極の斬撃を放つ!!
「散れ……」
雑念は太刀筋と切れ味を鈍らせる。故に一切を考えず、ただ無心で行く。
その純然たる刀の閃き、美し月白の一条には直隆も時間が止まるほど。
(『……なんと、いう
……!!』)
此處に来る迄は、墨も五尺三寸もの大太刀の間合いを潜れるか、その長物に受け止められてしまうかと考えていたが、直隆を前に雑念は消えた。
(「この刀は……それほど……柔弱(やわ)な造りを、していませんから……」)
共に死線を潜り抜けてきた『兼元』を信じている。
そして、我が刀と同じく歴戰を共にしたロベルタが、此度も敵の攻撃を掣肘して呉れると信じた墨は、正に瞬刻、袈裟に払われた邪悪な斬撃へと射線を結ぶ蹴撃に、大きな信頼を感じ得た。
「う! 墨ねー、思いっきりやっちゃえー!」
「……ありがとうございます……行きます……!」
身を低く地を滑るように、低空で駆け寄ったロベルタが『太郎太刀』を彈く。
霹靂閃々、光を散らして衝き上げられた巨刃は鋩を泳がせ、上に、上に――其を握れる直隆の怪腕をも彈いて、脇を、隙を抉じ開ける。
刹那、眞一文字に刀を振るった墨は、疾風と駆け走る斬撃が直隆の脇腹に喰らい付き、鋭い切れ味で一筋を走らせると、そこから赤黑い血潮を繁吹かせた!
『ずァアア嗚呼ッッ!!』
森羅万象を断つ太刀は、骸の海を潜った邪とて逃れられまい。
牡丹の花の散る如く血斑を広げた石畳に、直隆はガクリと膝を付く。
『……見事……也
……!!』
嘗て向坂三兄弟が彼を討ち取った時に用いた太刀は『真柄斬り』と名付けられ、名刀の一つと成ったと言うが、此度、猛将に一太刀を呉れたのも『真柄斬兼元』とは奇縁。
直隆が嘗ての記憶を甦らせる傍ら、その脇を駆け抜けた墨はと言うと、
「墨ねー?」
「……はっ……」
切れ味の事だけを考えすぎていた。
慥かな手應えに意識を呼び戻せば、斬撃の余波で周囲の廻廊には亀裂が疾り――、
「……これ、は……やりすぎてしまいました……」
「庭師さんと、あとは宮大工さんを呼ぼうねい!」
ロベルタがケロリと云う隣、墨は花車を縮こめ、ぺこぺこと頭を下げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
●POW
盧舎那仏――ああ、蒔乃の
それは困るな
〈冥府の槍〉を手に応戦
あの太刀をまともに受け続けては消耗するだろう
[怪力で武器受け]する際に角度をつけることで威力を逃がしていきたい
蒔乃には俺の後方、奴の視界に入る位置にいて貰おう
この場にいる存在――猟兵或いはヤドリガミだと解る筈だ
彼女を攻撃しようと俺から意識が逸れた一瞬を捉えUCを発動
本体が破壊されない限り無事とはいえ蒔乃には怖い思いをさせることになる
後で謝らないとな
奴の振り被りに合わせ巨大化した槍で[なぎ払い]攻撃を相殺しよう
3回攻撃だろうが俺のUCの効果時間内であれば対応できる筈
人の想いが込められた器物をみだりに壊すな
罰が当たるぞ、こんな風に
ぼたぼたと牡丹の花の散る如く石畳に血斑が染む。
前刻(いましがた)閃いた斬撃に膝を付いた狂邪、猟書家『真柄十郎左衛門直隆』は、激痛を呻いて猶も俯かず――破壊対象たる大仏殿を睨め続けている。
其處に執念を見るは、南大門より來たる鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)。
「盧舎那仏――ああ、蒔乃の。それは困るな」
手に握る『冥府の槍』が、未だ潰えぬ野望に反應して煌々と炎を滾らせると、その熱を掻き消さんと『太郎太刀』が巨大化し、怪腕が力任せに振り回した。
直隆は血に滑る柄を聢と握りつつ喊ぼう、
『何が何でもッ、あの大仏は毀させて貰う!』
「戰力を得ると共に、民々に無力感を味わわせる心算(つもり)か」
『そうだ、我々は徳川の世に築かれた偽りの泰平を暴く……!』
「豊臣なら、クルセイダーなら叶うとも思えん話だ」
答える相馬は紺青の炎が滾るほど怜悧冷靜に、かの巨刃を眞面に受けては消耗すると、角度を付けて往なし、逸らし、巧みに斬撃の威力を逃す。
金堂の屋根から降りて来た蒔乃を、直ぐに我が背に隠す立ち回りも見事で、
「蒔乃は俺の後方、奴の視界に入る位置にいて貰おうか」
未だ野心を光らす眸には、この場にいる存在――猟兵或いはヤドリガミと解る筈だと、冱ゆる金瞳を真直ぐ邪に結んだ儘、振り返りもせずに告ぐは果して酷か。
「本体が破壊されない限り無事とはいえ、怖い思いをさせることになる」
「いいえ、門衛さまの背に在って不安はごさいません」
寧ろ共に在る事に奮い立ちましょう、と――。
合點(こっくり)と頷く姿は見えないが、返る聲の凛々しさに蒔乃の覚悟を受け取った相馬は、幾度と政爭に巻き込まれて長らえた強さを尊びつつ、強く前へ踏み込む。
(「――後で謝らないとな」)
怖くない筈が無いと、眼路いっぱいに迫る大太刀『太郎太刀』の巨刃を視る。
その鋩と軌道が蒔乃を狙った瞬間、『冥府の槍』が迸る紺青の炎を膨張させた相馬は、【悪食喰らい】――巨大な口だけの化け物となった炎を巨刃に喰らい付かせたッ!
「お前の因業、そのまま返してやろう」
『なッッ……悪魔の舌のように……炎が、太刀を呑んで
……!!』
善悪の因縁によって禍福吉兆の果報を受く、因果應報とは仏語であったか。
直隆が振り被るに合わせ、同等に巨大化した槍を嚙み合せた相馬は、104秒間に繰り出た全ての刃撃を相殺すると同時、其を上回る焦熱に直隆ごと丸呑みにしたッ!
『ぐッ、ア嗚呼ッッ
……!!』
空をも呑まんばかり炎焔に蒔乃が息を飲んだのも一瞬のこと。
凄まじい灼熱を受け取った直隆が絶叫し、血濡れた石畳に轉輾(のたう)つ。
而して彼を組み敷いた相馬は、冷嚴たるテノール・バリトンを降らせて、
「人の想いが込められた器物をみだりに壊すな。罰が当たるぞ」
こんな風に、と――。
受肉した躯や野望が灰燼と化すまで、聢と見届けるのだった。
斯くして東大寺は、創建以来何度目かの危難を逃れる。
邪の気配の去った後には鹿らも戻り、広大な境内では、のびのびと草を食む平和な姿が見られるようになったという――。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年07月04日
宿敵
『真柄十郎左衛門直隆』
を撃破!
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