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燎原

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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 街が燃える。
 歴史も、財産も、想いも、命すらも巻き込む炎は止まらない。
 一人の男の狂気の火は、国家の妄執という風に煽られて勢いを増してゆく。
 リュテス第五共和国海軍総司令部を擁する東部最大の要衝、トゥリオン軍港は業火の中に失陥しつつあった。
 制圧された東部沿岸地域一帯を奪還するべく立案された共和国防海軍の大反攻、ラファール作戦はその目的を果たしつつある。戦線をトゥリオンのみに限定し、敵戦力を可能な限りトゥリオン市街に誘引した後に東海岸全域で発動した逆上陸。
 主力本隊をトゥリオン攻略に傾けていた聖王国軍は、多国籍軍の支援を受けて勢いを増した共和国防海軍を阻むことはできず、ほぼ全ての戦線で壊滅的打撃を受け敗走した。
 東部における共和国軍優勢は、これにより決定的になったと言えるだろう。
 だが、共和国防海軍司令部は聖王国第八騎士団を、眼前の敵を過小評価し、過大評価していたのだ。
 第八騎士団の練度は異常である。彼らは量産機の一機でさえ、一対一で共和国の精鋭クロムキャバリアを圧倒する。東海岸の奪還後、トゥリオン救援のため集結する多国籍軍の到来まで十分に耐えられる筈だった要塞化された市街地とベテランを中心とした精鋭キャバリア隊は、もはや半数以上が灰に帰した。
 第八騎士団の思考は狂っている。戦線が瓦解した今、トゥリオンを攻略したとて戦略的な価値は無に等しい。すぐにでもトゥリオン奪還を掲げて押し寄せる多国籍軍を防ぎ切ることは不可能だ。一時はトゥリオンを支配下におけるだろうが、すぐさま敗走するのは火を見るよりも明らかである。
 マトモな指揮官ならば、これ以上損害が増える前に聖王国支配領域まで後退するべきであるというのはすぐに解るはずだ。
 仮に共和国海軍司令部を抹殺したとしても、もはや対聖王国で挙国一致を敷く共和国はすぐさま落ちた首の次を据え戦争を継続するだろう。
 踏みとどまり、街を焼くことに意味はない。意味は無いはずなのに、第八騎士団は止まらない。自身の命すら顧みず、より多くを破壊し、より多くを殺戮する為に戦う騎士たちの前に、決死で戦う共和国の防衛線は次々と崩壊してゆく。
 彼らは燎原の火の如く破壊を伴い前進するのみ。その炎は止まらない。


「仕事の時間だ」
 出撃準備を整え、集合した猟兵たちを前に、ユーレアは淡々と普段どおりに向かうべき戦場を、為すべき任務を通達する。
「作戦地域はリュテス第五共和国領、トゥリオン軍港。目的は同軍港を破壊している聖王国第八騎士団の撃退だ」
 状況は最悪に近い。第八騎士団の犠牲を顧みない攻勢に、少数で防衛線を展開していた共和国海軍のキャバリア隊はすでに壊滅に近い損害を受けている。それどころか彼らを支援する対キャバリア歩兵を狩り出す為に、第八騎士団は都市区画ごと焼き払う徹底的な殲滅戦を展開しているという。
 本来であれば守備隊と協働して聖王国軍を挟撃するはずであった多国籍軍の救援は間に合わない。
「守備隊は共和国海軍の戦力の数パーセントにも満たない少数部隊だ。司令部も万一に備えて後事を託せる者をすでに選定している。戦略的には見捨てたとしても、今後の対聖王国戦に影響の無い者達ではあるが……」
 切り捨てても問題はない。冷たいがそれも一つの選択肢である。だが、物理的な距離を無視して直接現地に跳べる猟兵ならば彼らを救うことが出来る。
「何より、オブリビオンマシンを……第八騎士団長機を放置すれば、あれの強力な精神干渉で聖王国第八騎士団は文字通り全滅するまで共和国領を焼き尽くすだろう」
 だから今、確実に討てるこの好機であれを討ち果たす。さもなければ、凄惨な戦場はトゥリオンだけで終わらない。
「今ここで第八騎士団を完全に無力化しなければいけない。これはお前たちにしか出来ない任務だ。無事の成功を祈る」


紅星ざーりゃ
 おはようございます。紅星ざーりゃです。
 アポカリプスヘルでの戦争中ですが、こちらもクロムキャバリアでの戦争をお送りします。
 ゆったりめの進行になると思われますので、アポカリプス・ランページの片手間にでもお楽しみいただければと思います。

 このシナリオはリュテス第五共和国を舞台とした一連のシナリオに含まれます。
 前回のラファール作戦の陽動として敵主力を引きつけていたトゥリオン軍港駐留部隊が窮地に陥っている為、これを救援する作戦となります。
 既にトゥリオン市街地はほぼ聖王国軍の支配下にあり、共和国の防衛線は寸断され各地で守備隊の残存戦力が孤立している状況です。
 聖王国は彼らを殲滅するべく手段を選ばない殲滅戦を展開しています。
 第一章では市街地に展開する聖王国軍の掃討部隊を排除し、孤立した共和国部隊を救助してください。
 十分な戦力が生き残れば、再編成された共和国軍が再び防衛線を引くでしょう。
 第二章、第三章では第八騎士団長および彼の直属精鋭部隊との交戦となります。極めて危険かつ強力なオブリビオンマシンを擁する聖王国最強格の部隊ですので、油断することなくこれを撃破してください。

 それでは、皆様のご武運をお祈りしております。
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第1章 冒険 『日暮れの市街地戦』

POW   :    パワープレイ(強硬突撃、強引な突破、性能差を見せつけるなど)

SPD   :    スピードプレイ(高速機動、迂回戦術、側面攻撃など)

WIZ   :    頭脳プレイ(搦手、策を弄しての戦闘、トラップなど)

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵がトゥリオン海軍総司令部前に展開したとき、時刻はすでに17時を回り日は地平線の向こうに沈みかけていた。
 陽光が翳り薄暗い街を照らすのは、人が息づく日常の灯ではなく生命を焼き尽くす破壊と殺戮の火だ。
 ラファール作戦発動に先駆け敵を引き込む事が決定した時点で開始された、トゥリオン市民やここに逃げ込んだ共和国東部各都市からの避難民を満載した船団の脱出が間に合ったのは不幸中の幸いと言うべきだろうか。今なお続く聖王国軍による守備隊掃討によってトゥリオンの町並みをこれ以上破壊させぬよう、彼らが帰る場所を少しでも守らねばならない。
「援軍? どこの部隊……猟兵の皆さん!?」
 戦意を新たに、未だ交戦中の部隊が取り残されるトゥリオン市街地に突入しようとした猟兵たちの耳に、味方機――かろうじて防衛線を維持する共和国軍機からの通信が飛び込んだ。
「こちらはトゥリオン守備隊、アリア・クーベル中尉です。来てくださったんですね!」
 発信源は海軍司令部を守る城壁のように、街道にその身を横たえ座礁した陸戦巡航艦、その甲板に陣取り攻め寄せる聖王国軍のセレナイト・タイプを狙撃する一機の重キャバリア――識別では機体名を"コルセスカ"というらしい――は、機体の全高をも上回る大型の電磁投射砲を速射してあの白い騎士型量産機が持つ無敵の盾を機体もろとも問答無用に叩き割る。
 その機体の傍らには、いつぞやクーベル中尉に預けた元避難民の駆る蒼い新鋭機――聖王国の策謀の標的となっていた、複座型キャバリア"ミストラル"の姿もある。
「よかった、救援が間に合ってくれたんだな!」
「クラウス、余所見しないで! クーベル中尉、次を捕捉します!」
「わかってる! 中尉、タイミングを合わせます!」
 喧しく言い合いながら二人で一機の機体を操るパイロットもどうやら、成り行きでミストラルに乗り込み、猟兵に助けられ聖王国の追撃を逃れたあの日から変わらず、クラウス・ウェイガンとエミリ・サルバニエリ――第八騎士団によって制圧された街からの避難民だった青年と少女のままのようだった。
 コルセスカが電磁投射砲を放つ直前、ミストラルから青い風が吹くのを猟兵は見た。
 それに触れたセレナイトの盾がサイキックの加護を失い、ただの鉄とセラミックの装甲と化して超音速の弾体に貫徹されるのも。
 サイキックキャバリアの権能を無力化する――ミストラルの能力とは、なるほど聖王国が騎士団長クラスを投じて破壊しようと躍起になるのも理解できる秘密兵器だ。ミストラルに盾を無力化され、コルセスカが必殺の一撃でそこを撃ち抜く。二機の連携は聖王国を寄せ付けず、また彼らを支援する同小隊のキャバリアも見事な連携とパイロットの腕前で、コルセスカの砲身冷却の隙をフォローしている。
「このエリアは私達で死守します! 皆さんは市街地で孤立した部隊の救援に向かってください!」
 次弾発射に向けて給電を開始したコルセスカから、トゥリオン市街のマップデータとこの戦いで得られた交戦記録、防衛戦開始時点での共和国軍の陣形や部隊編成を細かに記した資料が送信される。軍事機密もいいところの情報だが、それを託してでも猟兵に頼らねば多くの命が失われると、そういう状況にまで追い込まれているのだと猟兵たちはクーベル中尉の焦りの滲む声からその意図を汲み取れた。
 任せろ、と誰が言ったか。猟兵達の機体は、コルセスカとミストラルの援護射撃を受けてこじ開けられた敵陣の穴を強行突破してトゥリオン市街に突入する。
 クーベル中尉が託した情報を元に、既に全滅したことが分かっている部隊を配置図から消していけば、救うべき生き残りは大きく分けて三つ。
 一つはドックや倉庫の立ち並ぶ港湾地区で孤立するマルセール大隊の残存部隊。指揮官であるマルセール少佐が無事なおかげで最も戦力を温存し、組織立って抵抗しているが反面これを殲滅せんと聖王国も相当数の戦力を割いて重包囲を敷いている。救援は正面から包囲網を打破するパワープレイが必要となるだろう。
 もう一つは地下鉄網を機動しつつどうにか友軍との合流を目指しているであろう第552機械化歩兵中隊。高機動の装甲戦闘車を装備した同中隊を撃破するべく地下鉄構内に進入した聖王国が封鎖線を狭めており、逃走する552中隊が捕捉されるのは時間の問題だ。交戦を可能な限り避けつつ迅速な合流を目指さねば、もし聖王国に先んじられ対キャバリア戦を強いられた時点で装甲車に勝ち目はない。
 そして最後に商業区に展開しているはずの"アンベルセ"部隊。対キャバリア戦のためにロケット砲やトラップで武装した歩兵部隊だが、聖王国の建物ごと焼き払う戦術の前に被害甚大で、状況の確認も出来ぬまま通信が途絶えた部隊だ。敵の掃討から身を隠し、どうにか息を殺し潜伏している可能性もあるが、その規模も、そもそも本当に誰か生き残っているのかさえも不明だ。もし彼らを探すならば、キャバリアの目を盗んで建物の中に侵入できる小型のパワードスーツや、危険を承知で生身での行動が必要になるかもしれない。
 加えて敵は聖王国正規部隊の例に違わずセレナイトを主力とするキャバリア戦力が中核である。
 セレナイトはサイキックを纏った盾による攻撃反射が手強いが、飛び道具を持たないため側面や背後からの攻撃であればミストラルのあの奥の手のような専用兵器がなくとも対処可能だ。これが都市掃討装備として火炎放射器や対人散弾銃を携行しているらしい。
 また、パラティヌス型――騎士をモチーフとしながら、ミサイルやマシンガンで武装したより実戦的で機動兵器としての色の濃い、聖王国では珍しい機種だ――も少数。
 状況は決して良くはない。猟兵が参戦して好転するという保証もない。
 だが、それでも行かねばならぬ。猟兵たちは各々の向かうべき戦場を見据え、救うべき人の下へと散開する。
ノエル・カンナビス
依頼内容は友軍の救助、そののち敵軍の殲滅。了解。

では地底人の恐ろしさを思い出させて差し上げましょう。
地下施設での高速戦闘は慣れたものです。
なんでしたら超音速で飛べますよ。

ま、今はそこまで必要ありません。
バイブロジェットで推力移動/空中機動/操縦/軽業、
先制攻撃/指定UC。

敵が何であろうが範囲攻撃/キャノンと貫通攻撃/ライフルの
2回攻撃で背後から蹴り飛ばしてそのまま通り抜けます。
地下鉄構内くらいの広さでしたらキャノンで一網打尽ですね。
ライフルは念のためと、敵の残骸が障害物になった場合に
排除する用意です。

552中隊を発見したら踵を返して敵の殲滅へ。
零距離高速射撃戦で片端から張り付いて撃ち抜きます。




「依頼内容は友軍の救助、そののち敵軍の殲滅。了解」
 供与されたマップデータを元に、列車の搬入用ゲートから地下鉄路線に突入するモノトーンのキャバリア。
 悠長に主脚歩行していては先行突入した聖王国に追いつけないが、閉所での高速機動は危険が伴う――それ故に誰もが諦めかけていた第552機械化歩兵中隊の救出にノエルは自ら志願した。
 地下世界で生まれた彼女は閉鎖空間での活動に慣れている。ならば単独であっても自分が向かうのが最適であろうというのは、彼女がレプリカントであるがゆえの合理的判断だろうか。
「超音速飛行は……やめておきましょう」
 路線二つ分のスペースは、ノエルにすれば十分に超音速での機動を行えるだけの空間である。だがこの閉所でそれを行えば、生じた衝撃波は逃げ場を失い辺り一帯に殺人的な威力を持って噴き付けるだろう。救うべき552中隊はキャバリアや戦車のような重装甲に守られているわけではない。勢い余って彼らを巻き込むわけにはいかない以上、出せる速度はある程度限定されてしまう。
 それでもノエルの駆るエイストラの高速機動は並のパイロットには不可能な――それこそ曲技飛行隊にでも所属しているような一握りの精鋭でようやく実現できるレベルのものだ。
 そして552中隊の装甲戦闘車を追って地下トンネルに突入した聖王国の追撃部隊は、当然そのような高速飛翔体が自分たちの後方から急接近していることなど想定できるはずもない。
 前方に機影。二機のセレナイトがサーチライトでトンネル内を照らしながら前進する背中が見えるなり、エイストラは二本の脚をレールに載せて火花を散らして滑走しながら背部の単砲身プラズマ・キャノンを展開する。
 取り回しの良さと威力を重視した砲は、砲撃戦用キャバリアの持つそれと比べれば精度の面では劣る。だがノエルの技量と回避を許さないこの地下鉄構内という地理条件が合わされば、多少の精度不足など問題にもならない。
 足裏とレールが擦れて生じたけたたましい金属音にセレナイトが振り向き、盾を構えようとするその時には既にノエルの指はトリガーを引き絞っていた。
 プラズマ化したビームの渦が解き放たれ、二機のセレナイトの陣列の中央を通過する。施設への被害を考慮し出力を絞ったそれでも、セレナイトの複合セラミック装甲を溶融させ貫通するには十分。一機は受けた姿勢が悪かったか、被弾した破孔から覗くコックピットブロックを赤熱させて沈黙し――あれでは中のパイロットも無事ではないだろう――もう一機はセレナイト最大の武装たる盾を持つ左腕を付け根から失いたたらを踏む。
『共和国が単騎風情でェ!』
「まさか、反撃に移るとは。精鋭部隊という評価は伊達ではないようですね」
 隻腕のセレナイトがショットガンを構え、狙いをつける間もなく散弾をぶちまける。
 エイストラのプラズマキャノンが威力で以て回避を封じるならば、セレナイトの散弾砲は攻撃範囲で以て回避を封じるセオリー通りの閉所戦闘装備だろう。
 剣による白兵戦を好む傾向の強い聖王国のセレナイト乗りながら、セオリーをずらしてくるこの辺りの柔軟な武装選定も実戦部隊らしく手強い相手だ――とはいえ、ノエルの敵ではない。
 ショットガンのトリガーが引かれたその時には、身を低く屈めたエイストラは銃身の下に潜り込んでいる。何も一発で殲滅出来ると驕っていたわけではないのだ。それが十分に可能であると認識していたが、出来なかった場合どう動くかもノエルは始めから考えていた。
 ゼロレンジ。頭上でショットガンが跳ね、吐き出された散弾がトンネルの壁を穿ちレールを引きちぎる。エイストラももろにあれを受けていればズタズタになっただろうが、その危機は既に脱している。ビームライフルの銃口をセレナイトの胸部に押し当て一撃。敵機を貫通したそれがセレナイトを完全に無力化すると、残骸を隅に蹴飛ばしてエイストラは再び飛翔する。
 552中隊を包囲する聖王国軍の一角は崩れた。後は中隊を発見し、確保した脱出路に導くだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
狂信者に金の亡者、挙句に戦況を顧みない狂戦士の群れ……本ッ当に何なんですか聖王国騎士団って!?
こないだの死にたがりの騎士さん達がマトモな部類だなんて絶対に色々おかしいですよ!?
とにかく、救出を急がないと!

「ステラ」に搭乗し商業区へ
低空を目立つように浮遊して移動し、敵部隊を発見次第正面から二丁拳銃での銃撃戦を仕掛ける
最優先目標は火炎放射器装備のセレナイト、拳銃弾では威嚇にしかならないでしょうが「空」へ目を引き付けられればそれでOKです
本命は【風と大地と草木の精霊兵団】で召喚した111体のゴーレム軍団
瓦礫に偽装した彼らに生存者の捜索及び救助、護衛を行ってもらいます

ここから先は、わたしが相手ですっ!




 街の惨状にひかるは息を呑んだ。
 きっと戦争が始まる前は多くの市民で賑わっていたのだろうショッピングモールのあちこちには共和国防海軍の守備隊が設置したのだろう、土嚢やコンクリートブロックで急造された防御陣地が点在し、機関銃陣地としてモールを防衛拠点化していた。
 アンベルセ部隊が装備していたという対キャバリアロケットや地雷、爆薬を用いたワイヤートラップなどを組み合わせれば容易には破れない堅固な要塞だったであろうそれは、しかし既に炎上し、半分ほどは炭化した瓦礫の山になっている。
 低空を浮遊しながらアンベルセ部隊の生存者を探すひかるは、その瓦礫の山から突き出した黒い棒きれに五本の指があったような気がして、不吉な想像を追い払うように頭を振った。
 都市区画ごと焼き払うことで、市街戦での最大の脅威となる建物に潜む対キャバリア歩兵を撃破する。戦術としては確かに理にかなっているが、理性と知性で戦闘を実施するべき現代軍の採るべきそれではない。
 さきのヒェイル半島上陸戦で交戦した第四騎士団のハルバリ提督が味方ごと多国籍軍を殲滅することを厭わなかったように、第八騎士団もまたオブリビオンマシンの狂気に侵され常軌を逸しているのだろう。
「狂信者に金の亡者、挙句に戦況を顧みないどころかこんなことまでする狂戦士の群れ……」
 眼下の道路に投げ出され、焼け焦げ煤けているぬいぐるみはきっと玩具屋かなにかの商品が戦闘の余波で外に転げてきただけなのだ。逃げ遅れた避難民の子供が諸共に焼かれたわけではない――そう信じたい。でも、それでも日常の象徴だったであろうそれが無残に焼けた姿を晒すのを見て、ひかるの胸中には怒りが湧き上がる。
「本ッ当になんなんですか! 聖王国騎士団って!!」
 騎士を名乗っていながらに、開戦は卑怯な騙し討ちで。進軍はこんなふうに無慈悲な殲滅戦を厭わず、自己の欲望のために味方すらも危険に晒す。
 オブリビオンマシンに歪められた軍隊の末路だと言ってしまえばそれまでなのだろうか。だが、それでもひかるは怒らずにはいられない。
 明らかに異常な行動を取る部隊が居るならば、自国軍で責任を持って対処するべきではないのか。それを野放しに共和国領に解き放った結果がこれだ。
「この間の死にたがりの騎士さんたちがマトモな部類に思えるだなんて……あんまりにもおかしいですよ!?」
 あのフィガロ隊の騎士たちも同じ第八騎士団の騎士だった。確かに彼らも戦闘狂ではあったが、それでも兵士としての良識があった。それがどうだ。より厳しく統制されているはずの主力本隊が率先してこんな惨劇を生み出しているなどと。
「あなたたちみたいな人が戦争を拡げるんです!!」
 ひかる操るステラが二挺拳銃を構えて撃ち降ろせば、建物に火を放って回っていたセレナイトがその直撃を受けてバランスを崩し、炎上するビルに頭から突っ込んで停止する。
 キャバリアですら瞬く間に過熱を起こして機能に異常を来すような超高温の炎だ。生身の人間があんなものを浴びればタダでは済むまい。
 見つけた一機に襲いかかってみれば、その機体が不測の事態に遭遇したことを嗅ぎつけて次々に敵機が集まってくる。
 火炎放射器を装備したセレナイトが複数に、護衛としていくらかのパラティヌス。炎の精霊の加護を請えばある程度の高熱には耐えられるステラであるから、より脅威となるのはパラティヌスだろうが――そちらにかまけてせっかくおびき寄せた寄せたセレナイトが殲滅戦に戻っては本来の目的であるアンベルセ部隊の救助はできまい。
『おいおい、単騎で来やがったぜ。なんとも英雄的で涙が出るなぁ?』
『ばぁか、アレは英雄的じゃなくて頭に血が昇っただけだぜ』
『見ろよコイツ、自分で点けた火に蒸し焼きにされてやがる。情けねぇ!』
 ゲラゲラとオープンチャンネルで品のない嗤いを――今しがた機能停止した味方機すら嘲笑っている――垂れ流す第八騎士団機をキッと睨みつけて、ひかるは操縦桿を握りしめる。
「この人達……ッ! ここから先は、わたしが相手ですっ!!」
 二挺拳銃からの弾幕はセレナイトの、あるいはパラティヌスの盾に阻まれて貫通しない。ライフルならばあるいはパラティヌスの盾を貫けたかもしれないが、キャバリア戦技に関して特別優れたエースパイロットではないひかるには戦闘態勢に入ったセレナイトを単独でどうこうするのは至難の技だ。
 だが、彼女にはキャバリア戦の技能よりも優れた無二の才がある。
「わたしが騎士団を引きつけている間に、どうか生き残った人を見つけ出して……!」
 業火と砲弾が飛び交う戦場を迂回するように、ひかるの願いを受けた精霊の宿る瓦礫の人形が静かに都市を駆け巡る。
 精霊術によって生まれた土塊の兵団は、主の稼ぐ千金にも等しい時間を一秒たりと無駄にせぬよう迅速に、たとえ燃え盛る建物の中であろうと決して諦め見過ごすことなく飛び込んで、きっと息を潜めて隠れているであろう生存者を探し出すのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
マルセール大隊へ合流

包囲している敵の背面や側面を突ける事を利用し、敵部隊に可能な限り接近した時点で、UCで対軍殲滅仕様に二機を瞬間換装。

二機による大火力による奇襲を仕掛け、敵がリフレクターを展開したり、反撃行動に移る前にミサイルやガトリングの【弾幕】による【一斉発射】と大出力ビーム砲の照射によるなぎ払いで可能な限り敵部隊に被害を出す様にして一気に敵の数を減らし、大隊を支援。

後は包囲の内側の大隊と挟撃する形で敵包囲に穴を開けて大隊と合流。
大隊を支援しつつ、敵部隊を殲滅するよ。

緋瑪「アリア中尉やクラウス達の無事が確認できて良かったねー」
瑠璃「あの三人を支援したいけど、他の部隊も守らないとね」




「大隊司令部、ここはもう保たない! 二次防衛線に戦力を回してくれ! 我々は最後まで敵の遅滞に務める!」
「大隊司令部より第11小隊、了解した。貴隊の挺身で防衛線が突破される最悪の自体は避けられ――待て、第11小隊。間もなく援軍が到着する、15秒待て」
 絶望的な物量をどうにか押し止めるため、マルセール大隊はただでさえ消耗した戦力をさらに細分化して防衛線を構築していた。
 戦力比は単純なキャバリア数の比率で1:3。それもマルセール大隊は損傷機や弾薬を欠乏し、近接白兵装備しか持ち合わせないような機体も数えてのそれだ。
 その状況でも持ち堪えているのは、マルセール少佐が構築した幾重にも重なり、前衛が消耗するとすぐに後方から次なる部隊が急行するよう誂えられた防衛ラインと、たとえ死すとも最後まで敵を誘引し、友軍を守らんと奮戦する将兵の士気の高さ故。だがそれも終わりの見えない波濤のような攻勢に徐々に綻び始めていた。
 もはやこれまで――誰もが諦めかけていた。それでも自分が死ぬその瞬間まで使命を果たすのだと、生還を諦めても戦友や家族を守るのだと決意していた。
 だからこそ防衛線は崩れず、だからこそ猟兵は間に合った。
「瞬間換装!」
「オーバーアームド装備、一気に殲滅するよ緋瑪」
 最大戦速で今まさに突破されんとしていた防衛線の一角を目指す二機の機影。戦場への緊急展開を鑑みて高機動形態にあったそれ――ジェミニオンが、一気に全身に装備した重火器を展開して地上に降り立つ。
 突破攻勢を仕掛けんと盾を構え方陣を組んだ聖王国騎士団の陣の中心に、盾を掲げるセレナイトを踏み潰して背中合わせに降り立ったジェミニオン。
「わかってるよ、瑠璃! リフレクターを構えられる前に、だね!」
 この戦争に緒戦から関わり、聖王国騎士の戦術は嫌というほど見てきた瑠璃と緋瑪は、彼らの厄介さを共和国軍将兵以上に承知している。
 そしてそれは、盾を構えて意識を集中するという条件を満たせなければミストラルのような特殊装備なしでも打ち破れる程度の、無敵の盾などというものでは決してありえないということも。
 背中合わせの二機が両腕に構えた大型ガトリング砲が回転し、凄まじい勢いで砲弾を吐き出した。
 秒間数百発もの発射速度で撃ち出される焼夷徹甲弾だ。意識外からの奇襲攻撃に混乱した騎士たちの方陣は、一瞬のうちにズタズタに引き裂かれて壊滅する。
 これでひとつ――だが、眼前の共和国部隊、マルセール大隊第11小隊の損耗著しく、ここを突破口と嗅ぎつけた聖王国の増援が次々に押し寄せてくる。
「次が来るよ、緋瑪」
「わかってるよ! ミサイル全弾発射、行くよ!」
 緋瑪機が斉射し、街道の向こうから突進する騎士の隊列に頭上から降り注ぐ誘導弾。空中で爆裂したそれが殺人的な衝撃波を叩きつければ、隊列のうちリフレクターシールドを持たないパラティヌス型が叩き潰され誘爆する。
 友軍機の誘爆で背中や側面から薙ぎ倒されたセレナイトは、瑠璃のジェミニオンからのビーム照射でトドメを刺されて沈黙した。
「これで全部、かな?」
「ここに攻めて来てたのは、ね」
 ほう、と一息を吐いて弾薬を撃ち尽くした火器をパージすると、ボロボロに損傷した共和国軍機がジェミニオンの傍らに近づき装甲を殆ど纏っていない――被弾して歪み、可動を妨げるために取り外されたのだ――腕で共和国海軍式の敬礼を送る。
「君たちが援軍か。まさか我々の方に増援を送って寄越す余力があったとは。それとも多国籍軍の先遣隊か?」
 疲れ切った顔に笑顔を浮かべて、この絶望的な防衛線がもうすぐ終わるのではないかという淡い望みの込めて問いかける小隊長の少尉に、瑠璃たちは苦い顔で愛想笑いするしかない。
 まさか援軍が少数の猟兵だけだと正直に伝えれば、彼らの胸に芽生えた希望が今まで戦意を奮い立たせていた覚悟をも巻き込んで崩れ落ちてしまうかもしれない。
 だから。
「そうだよ、すぐに多国籍軍の主力がくるよ。だから指揮官の……マルセール少佐に繋いでほしいな」
「うん、わたし達が大隊と連携して包囲を敷いてる敵を挟撃するからさ」
 死にゆく彼らに優しい嘘を。叶うならば、その死を齎す者にこそ死を。
 ズタズタの第11小隊がマルセール大隊の部隊内通信コードを託し、後続部隊と後退して申し訳程度の補給を受け再出撃するため退がっていくのを見送って、瑠璃と緋瑪は再び戦場に目を向ける。
「……守らないとね。この人達も」
「だね、瑠璃。アリア中尉とクラウス達だけ無事じゃ駄目だよ」
 顔を、声を知ってしまった。もう、戦場で消費される数字として彼らを見ることはできない。
 殺しを愛する殺人姫だからこそ命の重さを知る少女たちは、次なる敵を屠るべくフットペダルを踏み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライ・ガブリエル
マルセール大隊の援護に行くか
セレナイトにパラティヌスか、コイツ等も俺の報酬に加えてやるぜ!

UCで複製した量産型キャバリア(前回手に入れたアマランサス・ラピート)を召喚。
自立機動の無人機だが、合計92機の大部隊だ。
1対1で勝てなくても、数と戦術で補えば良い!

20機ずつ4隊に分け、リーダー機のみ3機合体。
残り12機は俺の直衛として展開。
3隊はビームライフルやソード等の基本武装で3方向から敵を逆に包囲する形で攻撃。
残り1隊は対地潜水装備(対地ミサイル等)で海側から奇襲だ!
敵の装備が都市装備が主なら水中からの襲撃には対応仕切れねェだろ

本隊の俺は各部隊の指揮を出しつつ、直衛を引き連れて遊撃を行うぜ


赤城・晶
M、アドリブ、連携OK

クラウスとエミリ、二人でようやく一人前か。ま、将来が楽しみだな!さて、情報ももらったし、俺は倉庫群のお仲間さんを助けにいくか。しかし、やだねぇ~戦争狂は。ほんと、いやだ

さてウィリアム、移動しつつ情報整理。目的地まで整理しといてくれ。ミラージュ装甲展開【迷彩】、レーダー【索敵】、包囲網の側面に隠密で接近。油断した最高のタイミングで【ジャミング】をフルパワーと同時にUC発動。識別認識を妨害し、幻影を展開。
常に状況を把握、更新してくれ

ブースター【滑空】【ダッシュ】による高速ヒット&アウェイだ。狙うは手足と頭。武器はビームダガー【先制攻撃】とビームライフル。




「クラウスとエミリ、二人でようやく一人前ってとこだな。ま、将来が楽しみってことだ!」
 彼らが生き残るために、晶自ら指導した相手が一端の戦士の顔をしつつある。喜ばしいことだと笑ってヴェルデフッドを跳躍させる。
 光学迷彩を展開したヴェルデフッドを捉えるならば、電子戦機が必要だ。そして聖王国第八騎士団の主力本隊は、都市殲滅に拘るあまり電子戦機の護りを疎かにしている。
 共和国軍の守備隊が火力で以て都市を守ろうとしたことが晶に幸いしたとも言うべきか。ともかく電子戦らしい電子戦がトゥリオンでは行われなかったことで、光学、電磁、熱源――ホログラムによるデコイすらも駆使した複合的な迷彩を発動するヴェルデフッドを認識しうるほど索敵性能に優れる機体はトゥリオン攻略に投入されていないのだ。
 となれば、よほどのへまをしなければ戦場の全ては晶の思うがままだ。
「ウィリアム、移動しつつ情報整理。敵味方の配置を可能な限りトレースし続けてくれ」
 補助AIからの簡素な了解の返答とともに、供与されたマップデータに反映されていく光点。
 赤が敵で、青は味方か。殆ど完全に不可視化したヴェルデフッドだからこそ敵に接近し、得ることができた最新の情報を見遣って、晶は暗号通信のキーコードをコンソールに打ち込んだ。
「つーわけだ、ライ。俺がお前らの目になる。戦争狂どもの横っ面にキツいのを浴びせてやれ!」
「おう! セレナイトにパラティヌス、コイツらも俺の報酬に加えてやるぜ!」
 威勢のいい応答とともに、マップに突如出現する百機近い大部隊。ライのユーベルコードによって復元、複製された元第八騎士団フィガロ隊所属機のアマランサス・タイプが戦場に押し寄せる。
 一塊の部隊は分化し、いくつかの中隊に分かれ、その中でも指揮官機が僚機を取り込む形で自身を強化して聖王国の部隊に襲いかかったのだ。
「おかげさまでテメェらの動きも筒抜けなんだよ!」
 不可視の観測手として聖王国軍の反応を一挙一投足に至るまで見張り、リアルタイムで共有するヴェルデフッド。その支援を受けて、ライの指揮する無人キャバリア三個中隊は共和国軍を強襲せんとする聖王国騎士団の横面を強かに殴りつけ、その大火力でもって粉砕してゆく。
 まるでこちらの手の内を読んでいるかのような各個撃破。所属不明機の襲撃で尽くに失敗する防衛線への突破攻勢。聖王国側は圧倒的優位が一気に覆った事に混乱する様子を見せるが、それでも退かなかった。
 督戦隊でも背負っているわけでもあるまいに、頑なに前線にへばり付き共和国軍を攻撃し、そして襲撃を仕掛けたアマランサス隊を捨て身の反撃でじわりじわりと削ってゆく騎士たち。
 直掩機を連れて、無人機部隊の手の回らないエリアで孤立しかけていた共和国軍機を救助していたライは、次々に墜ちてゆくアマランサスと、それ以上の損害を受けながらも決して撤退するどころか、後退して体勢を立て直すことすらしない敵部隊に言い知れぬ気味の悪さを感じ始めていた。
「ヒェイルで戦った部隊とは違う、この気持ち悪ィ感じはなんだ……? まるで……」
「ああ。やつらまるで虫だぜ。蟻やら蜂みたいに、末端の兵がいくら磨り潰されても気にも留めちゃいねぇ。やだねぇ戦争狂は、ほんと、いやだぜ」
「戦争狂ってレベルじゃねぇだろ。こりゃ、オブリビオンマシンに頭ヤラれちまってる軍隊の動きだ。アキラ、テメェもそろそろ前に出やがれ! コイツら幾ら雑兵を潰しても止まらねぇぞ、全部潰すか頭を潰すかだ!」
 分散させた無人機部隊を集結させ、共和国軍を襲う敵の攻勢に対する防波堤として配置しながらその戦場に向かおうとする敵部隊を叩いて回るライ。とっておきの切り札である四個目の中隊、水中発射型対地ミサイルで武装し、海中に潜伏させていたそれをも投入して押し寄せる聖王国軍を阻止しようとするが、物量をも上回る個々の練度を前に立ち向かえるのは強化した指揮官機とライ本人の駆るシュテル・リッターのみ。
 リニアライフルの速射で牽制しながら、損傷機から順に機体を統合して強化を試みるが、
「やべぇ、押し負ける……! 何やってんだよアキラ、ここを抜かれたら共和国のやつらがマズいぞ……!」
「分かってる、今着いたところだ!」
 頭上からのビームが、ライの構築した防衛線を今まさに突破しかけていたセレナイトの両肩を撃ち抜き戦闘力を奪い去る。
 次いで見えざる何かが急降下し、土埃を巻き上げながらビームダガーを一閃。パラティヌスの首が飛ぶ。
「このまま俺が撹乱する! その間に立て直して反撃に出るぞ!」
「チッ、遅ぇんだよアキラ! 任せとけ、これ以上は一歩も進ませねぇ! 全員俺のコレクションにしてやる!」
 終わりの見えない防衛戦。あるいは、マルセール大隊が体勢を整えて反撃に出ることが出来るならば、その時間を稼ぐための戦いだ。
 敵がオブリビオンマシンを頂点とした群体と成り果てているならば、こちらも全軍――市街地に取り残された全ての部隊を結集した統合的な反撃作戦でもって敵部隊を封じ込め、元凶である指揮官機を討たねばなるまい。
「ちっとキツい仕事だが、ここで俺たちが踏ん張らにゃ坊や達にカッコが付かねぇからな!」
 斯くて、猟兵の奮闘により港湾地区の重包囲戦線を展開していた聖王国の大部隊はただ一点へと戦力を集中していく――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎

ただの学生が今では軍人か。まったく嫌な世の中だ。
…ここで死ぬなよクラウス、エミリ。

■方針
※552中隊救出

さぁ仕事の時間だ
Henryを使いマップデータから情報収集、各部隊の行動を予測
敵の展開部隊の主体がセレナイトとすれば速度から行軍範囲はある程度絞れる
そして、その追撃を避けて552中隊が合流を目指しているのであれば…

Henryのまとめた情報と自身の戦闘知識を瞬間思考力でまとめ
中隊の凡その位置を予測する

他猟兵にも情報を伝達
予想した位置へ推力移動/限界突破で一気に移動し捜索
敵部隊とはなるべく交戦しないように
もし合流が出来た場合は鼓舞とUC発動
中隊と協力して地下鉄鋼から脱出を目指す




「つまり俺は、先行のお嬢ちゃんが選ばなかった分岐路を当たればいい訳だ」
 戦術支援AI、Henryが大尉もいよいよ痴呆ですか、などと辛辣なコメントを寄越すのをいつもどおり黙殺して、ヴィクターの駆るT-55プレケスが地下鉄構内を進軍する。
 先行するもうひとりの猟兵のように閉鎖空間で高速移動する芸当は――ヴィクターにも出来なくもないが――彼女のような専門家がやるのと違って体力や精神への負担が大きい。出来ることならばやらないに越したことはないと、通常の戦闘速度でプレケスをホバーさせながら地下施設を奥へ奥へと突き進む。敵機は先行機が始末してくれているおかげで、道程は静かなものであった。
「ただの学生まで今じゃ軍人か。あいつらが准尉だってよ。まったく嫌な世の中になっちまった」
 思い出すのは、父が戦死していたことを聞かされて失意と絶望、そして聖王国への憎悪の中で泣いていた少女の姿。その光景が、ヴィクターに嫌な想像をさせる。
「……ここで死ぬなよクラウス、エミリ」
 地下に入ったことで地上との通信は途絶しているが、それでも呟かずにはいられない。復讐に駆られて軍に志願した新兵の末路は、あまり明るいものではないとヴィクターは知っている。クラウスがブレーキになってくれればいいが、と感情移入してしまうのは彼らの兄貴分として共に怒り、戦ってやるには歳を取りすぎたからだろうか。
「何にせよ、まずは552中隊を救出するぞ。Henry、聖王国の包囲網が今どのくらい狭まっているか解るか? 中隊が逃げ回りながら友軍との合流を目指しているとすれば――」
 必ず何処かで地上に出ようとするはずだ。猟兵が突入したことで包囲の欠けたこちら側に向かっているならばよし。そうでないなら、包囲の中心に近い地上への接続地点を目指しているはず。
 552中隊がどのような動きをしているかに依らず、目指すべきは包囲の中心に最も近い地上への門。
 そこはかつて商業区に多くの人々を送り出していたであろう、大型商業施設直通の地下鉄駅だ。
「駅と真上の複合商業施設の見取り図を出してくれ……ビンゴだな、搬入用のエレベーターがある。装甲車ならそのまま乗り入れられるな」
 この状況下で、唯一の命綱にも等しい装甲戦闘車を放棄する決断というのは難しい。兵士というのはたとえ敵の火力の前には無力なものであっても、装甲に守られているという安心感を捨てることに抵抗を覚えるものだ。劣勢であるというならなおさらに。
「十中八九中隊はその近くに居るはずだ。先行の嬢ちゃんにも共有、あっちのルートから同じ駅を目指して貰おう」
 二方向から進入すれば、仮に駅からの脱出ではなく包囲の薄い方への突破を試みているとしてもどちらかが中隊に気付けるはずだ。
 指揮官の経験と勘を頼りに552機械化歩兵中隊の行動を予測し、プランを練り上げたヴィクターは、共に地下に在る猟兵にもその予想を伝えた上で駅まで急行する。
 果たして、552中隊はそこに居た。70ミリ砲を搭載した機動戦闘車二輌に砲口を突きつけられたヴィクターは、敵ではないとプレケスに両手を挙げるジェスチャーをさせながら共和国軍の通信コードで語りかける。
「こちらはヴィクター・ホリディ大尉、司令部守備隊の依頼で貴隊を捜索していた。それから、このクソッタレな包囲網からの脱出を支援する。部隊はそれで全員か?」
「こちらは共和国防陸軍、第552機械化歩兵中隊B分隊、臨時指揮官のフレドリック・ユンク軍曹だ。救援に感謝する。……他の連中は地上から別ルートで司令部との合流を試みる手筈だった。むしろそちらの方で彼らの無事は確認できていないのか?」
 無精髭のいかにも叩き上げといった風のユンク軍曹がトランシーバーを握りしめて問う。眼前の中隊の生き残りは、装甲戦闘車が二輌、軽武装の四輪駆動車が三台、そして随伴の歩兵が二個小隊ほど……中隊と呼ぶには少ない戦力だが、残りはそもそも地下に逃げ込まなかった――地上ルートでの撤退を試みたということだった。
「……残念ながら。司令部は地下鉄構内で552"中隊"を捜索しろと仰せだった。あまり言いたくはないが……」
「そうか。……いや、覚悟はしていた。了解だ大尉、我々はすぐにでも行動できる。聖王国のクソ野郎どもがそこまで来てるんだ、地上までのエスコートをよろしく頼む!」
「ああ、時間はあまりなさそうだ。急ぐぜ、少し乱暴な手だが振り落とされないようしっかり掴まっててくれよ」
 トンネルを反響して聞こえてくる戦闘音は、先行する彼女が追撃部隊を食い止めている音だろうか。ともあれ、ようやく見つけた生き残りを無事に防衛線に再編するべく、ヴィクターは歩兵たちを車両の上にデサントさせ、プレケスで抱えて巨大な搬入用エレベーターに積み込んでゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『MCK04SC-パラティヌス・スローター』

POW   :    BSフレイムガン&RS-Sグレネードランチャー
【耐熱塗装を施した機体が装備する銃火器】から【対人用の広域火炎放射】か【対装甲榴弾】を放ち、【酸欠と火傷】もしくは【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    RBXSランスライフル&Sマイン&EPジャミング
【連射ビームと共に対人殺傷用鉄片と妨害電波】を降らせる事で、戦場全体が【情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場】と同じ環境に変化する。[情報封鎖されたキャバリアによる虐殺現場]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    RSレッグガン&RS-Fポイズンソー
自身の【脚部対人機銃を掃射、精密狙撃の精度】を代償に、【複数の対人・対キャバリア用無人ユニット】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【対装甲機械刃と自爆、戦場に散布する毒ガス】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵の参戦により、市内各所で危機的状況にあった共和国軍残存部隊は迫る窮地を脱しつつあった。
 港湾区の包囲網を突破したマルセール大隊の残存キャバリアは守備隊本隊に合流し、共和国軍抵抗の象徴たるトゥリオン海軍司令部の守りはより盤石となった。
 地下鉄網に潜伏していた第552機械化歩兵中隊の生存者は、貴重な装甲戦闘車を抱えて商業区より地上へと帰還する。
 だが、最後のひとつ――対キャバリア特技兵を擁する歩兵部隊、アンベルセ部隊だけは未だに連絡を絶ったままであった。
 猟兵が捜索してもなお、遺体のひとつも見つからぬ――それは彼らが無事で聖王国の追跡を逃れている証拠か、あるいは痕跡すら残さず抹殺されているが故の静寂か。
 アンベルセ部隊を救出するべく商業区に向かう猟兵の脳裏に、焦りとともに嫌な想像が過る。
 その時であった。
「――ちらは――ルセ部隊――ラン少尉だ。我々は現在トゥリオン貿易センタービルにて――至急救援を――」
 妨害されているのかノイズのひどい通信は、確かに共和国軍の暗号化コードを使用している。おそらくはアンベルセ部隊からの通信だ――どうにか聞き取れたランドマークをマップデータに照らし合わせ、猟兵たちが各々の場所からその塔を見上げる。商業区に聳えるトゥリオン軍港で最も高いビル、トゥリオン貿易センター。
 有事に備えて頑健に造られたその巨大建造物の内部ならば、アンベルセ部隊の兵士たちが身を隠すには最適だ。
「――マルセール大隊指揮官、ジャン・マルセール少佐だ。アリア・クーベル中尉より守備隊の指揮権を継承した。こちらは我々で支える。猟兵諸君にはアンベルセ部隊の救出を頼みたい。貿易センタービルの図面を直ちに送信する、よろしく頼む……!」
 マルセール少佐からの通信に、言われずともと市内各所に散った猟兵たちが動き出す。
 目指すはトゥリオン最大の塔。第八騎士団のキャバリアでは――これは猟兵の機体もだが――構造的に1Fから4Fを結ぶ吹き抜け状のメイン・ホールまでの侵入しかできまい。
 で、あるならば。まだアンベルセ部隊が無事である可能性は十分にある。
 決して手遅れなどではない――一人でも多くを無事に帰すべく、猟兵達の駆るキャバリアが加速する。

『共和国の蛆虫どもめ。厄介な場所に立て籠もる……! ECMで喧しい救援要請は潰しておけ!』
 トゥリオン貿易センタービルを包囲する聖王国部隊は、決して数が多いとはいえない。規模にして中隊定数を割る程度。二桁に及ぶかどうか、といったところであった。
 されど彼らこそ聖王国第八騎士団の精鋭。聖王国第八騎士団の名を、嫌悪と畏怖でもって知らしめる皆殺しの騎士たち。
 騎士団長フェリペ・サンドーサ直属の騎士たちは、"テルミナドル"、抹殺者の称号を持つ対人の名手たちだ。
 キャバリアとの戦いを誉れとする正道の騎士から外れ、人を狩ることに特化したテルミナドルの騎士たちが駆るはパラティヌス型のスローター・カスタムである。対キャバリア戦では目くらまし程度にしかならぬ対人兵装を満載した機体はしかし、アンベルセ部隊の周到な迎撃によって数機が失われていた。
 防衛線の堅守ではなく、罠を仕掛けながらの撤退戦で逃げ回りながら抵抗していたアンベルセ部隊。簡易式の自動砲台や、逃走ルート外にも予め用意されていた罠によって一般部隊を市街全域の掃討に回さざるを得なかった騎士たちは、しかし少数の手勢でようやくアンベルセ部隊を貿易センタービルまで追い込むことに成功したのだ。
『もはや袋の鼠だが、な。忌々しい蛆虫め、直々に踏み殺してやりたいところだがキャバリアが入れぬとなると……』
 騎士の頬が吊り上がる。
『そういえば、第七騎士団長が負傷した件の戦い、風のうわさに共和国共がBC兵器を持ち出したとか』
『ああ、共に出陣した第一騎士団は否定していたが……そうだな、疑われるような何かがあったというだけで罪深いことだ』
 くつくつと喉を鳴らして騎士たちは、いかにして自身を愚弄した兵士たちを抹殺するかを談じていた。
『真偽はともかく我らにとってガスを持ち出したのは共和国が最初ということだ。聖人の逸話にもあるだろう、しぶとい邪竜は自らの毒で死ぬものだとな。全機、ガスの封印を解除! 対人ドローンへの充填開始! ははは、久々のお楽しみだからと操作を誤るなよ……!』
 時は、市街地で戦う猟兵をアンベルセ部隊が発見し、救援を求む通信を発したのと同じ頃。
 聖王国でも指折りの悪意が、殺戮のために再び動き出す――
ノエル・カンナビス
対熱処理(環境耐性/火炎耐性)くらいは当たり前に
施してありますし、NBC防御(毒耐性)は猶更です。

榴弾や爆風くらいはオーラ防御(と称するガーディアン装甲の
近接防御機能)でカウンター/衝撃波/吹き飛ばしてしまえば
クリアです。

HEのような低速の実体弾はあまり意味がありませんよ。
ま、数が揃うと手間ですので、内懐に飛び込んで乱戦にして
しまいましょう。
乱戦に撃ち込んで来ても吹き飛ぶのは敵機だけですし。

索敵/ダッシュ/推力移動/第六感/見切り/操縦/軽業/空中機動/
範囲攻撃/マヒ攻撃/指定UC、
動きが鈍ったところで二回攻撃(二回目)で貫通攻撃/ライフル、
範囲攻撃/キャノンないしブレイド/切断で粉砕します。


ライ・ガブリエル
勢い込んで仕掛けたが、自在に飛び回り襲い来る無人ユニットに翻弄され、奮戦するも追い込まれ…ってフリをして敵の油断を誘うぜ。

追い込んだと思ったら実は追い込まれてた気分はどうだ?
テメェ等腐ったカスには効果的な演出だろ。

俺のUCによる魔術と電子的な二重【ハッキング】で無人兵器の制御(及び敵機の機能の一部)は乗っ取らせて貰ったぜ。
俺様の電脳魔術は人の意識すら操る。無人兵器なら朝飯前だ。

敵のランスやランチャーをライフルやミサイルで潰し、無人ユニットで敵機をダルマにして、後はユニットに任せるぜ。
コックピットを機械刃で開いて刃で八つ裂きか自爆か毒ガスか…

テメェ等が虐殺したヤツ等の恐怖、少しは感じて逝くんだな




「クソ野郎ども! ふざけた真似してんじゃねぇぞ!」
 微かに届いた救援要請を辿って訪れたトゥリオン貿易センタービル。その巨大な塔を包囲する聖王国軍のパラティヌスタイプの背部コンテナから覗く装備に、ライは激昂した。
 対人用の致死性ドローン。高い対人感知能力を持つそれは、小さく薄い形状を活かして地形を問わず飛び回ると、外縁部に装備された回転式の鋸刃で装甲や防壁を切り裂き毒ガスの散布、あるいは自身を自爆することで確実に歩兵やキャバリアパイロットを殺傷する極めて効率的な兵器だ。
 が、それは多くの国家で人道に反する兵器だとして条約に縛られているし、なによりキャバリア戦というある種の誇りある戦争をただの殺しに変えてしまう許されざるモノだ。
 ライにとってすれば、優れたポテンシャルを持つパラティヌスを母機としてこのような外道の兵器を運用する思想そのものが許せない。キャバリアを愛するからこそ、キャバリアを貶める兵器を阻止するためにシュテル・リッターはパラティヌスから分離した直後のポイズンソー・ドローンを撃ち落とす。
「人殺しの機械が!」
『キャバリア乗りがそれを言うか!!』
 抜刀したシュテル・リッターがドローンの誘爆で体勢を崩したパラティヌスに躍りかかる。奇襲同然の一刀を倒れ込みながらのブーストダッシュで躱したパラティヌスは、姿勢制御しながらの脚部対人機銃での牽制で応射。頭部センサーを正確に狙う射撃を腕で防ぎながらライフルで追撃――しようとした所に、既に射出されていたドローンが唸りをあげて飛来する。
「キャバリアとこんなモンを一緒にすんじゃねぇ! クソ、チョロチョロ飛び回りやがって!」
 コックピットを執拗に狙うドローンから一撃でも受ければ、損傷した装甲の隙間から致命的な毒ガスが流入してライを死に至らしめるだろう。直径一メートルにも満たず、そして事実上の前面投影面積たる厚みはそれ以上に小さなドローンが不規則な乱数機動を交えながら多数で襲いかかるのだ。シュテル・リッターは貿易センタービルへの誤射を避けるため、刀を振り回してドローンを寄せ付けないよう抵抗するのでやっとであった。
『威勢ばかりは良かったが、死にに来ただけではなァ!』
 下手な機動を行えば死角からドローンが飛びかかってくる。じりじりと追い詰められてゆくライにトドメを刺すべく、パラティヌスが手にした火炎放射器からちろちろと炎を垂らしながらゆっくりと接近してくる。
 恐怖を煽るように火炎を見せつけ、愚かにも単身で挑んできた若い――否、青いと言うべきか。正義感に溢れたパイロットを後悔と絶望の中で殺傷せんとするテルミナドル隊の騎士。その火炎放射器の先端がシュテル・リッターを捉えたその時、一陣の風の如く白い機体が割り込んだ。
「エイストラよりシュテル・リッター、母機はこちらで対処します。あなたは自身の作戦を遂行してください」
『援軍だと? だが一機増えたところで死体の数がひとつ増えるだけだなァ!』
 発射された火炎を浴びて泡立ち溶ける塗装。だが、耐熱処理を施された装甲はその内側にまで殺意の熱を徹すことはない。
「……ありがてぇ! そのまま一分でいい、ヤツの相手を頼む! ユイ、あのキャバリアがクソ野郎を抑えてるうちにドローンを仕留める! その間の迎撃は任せたぜ!」
 身を挺してシュテル・リッターを庇うエイストラ――ノエルが十分にパラティヌスの攻撃に耐えうると判断したならば、ライはドローンの迎撃を支援AIに委ねてパイロットではなく電脳魔術師としての戦場に意識を集中する。
 いまは少しずつ追い込まれている、そう見せている。だが彼の電子の魔法が成ったとき、状況は一気に逆転するのだ。
「この程度の火炎であれば30分は耐えられます。所詮は対人用の兵装、エイストラの耐熱処理装甲を突破するには火力不足でしょう」
『だったらァ!』
 強力な火炎放射を浴びてなお揺るがぬエイストラを前に、バックステップで距離を取るパラティヌス。
 すかさずエイストラのプラズマライフルが低出力モードで発射されるが、サイドブーストによる強引な並行移動によって無理矢理に回避。パラティヌスの背後で商業ビルの一棟が流れ弾を受けて赤熱、貫通する。
『そんなモノをバカスカ撃てるのかい、猟兵がァ!』
「っ……!!」
 ノエルとて理解している。エイストラの装備では市街戦を行うには火力が強すぎるのだ。故に百発百中を狙わなければならないが、テルミナドル隊の騎士はノエルをして互角と言わざるを得ない手練である。そう都合よく一撃必殺できる相手ではない。
『撃てないよなぁ! 外せばお前のせいで共和国の兵が死ぬかもしれん!』
 背後の貿易センタービルを盾に取って肩部グレネードキャノンを展開するパラティヌス。榴弾で装甲を損壊させてしまえばあとは炎なり毒ガスなりで如何様にでも仕留められると嗜虐的な笑みを貼り付けた騎士は、その悪意を込めて引き金に指を掛け――
「それならば、近接戦闘で粉砕します」
 発射。命中した榴弾が爆ぜ、エイストラを破壊――否。着弾の直前、自ら炸裂した装甲板が榴弾を空中で破壊する。ライフルを投げ捨て、機体前面で開いた爆炎を突き抜けてパラティヌスに組み付き火炎放射器を持つ左腕を抑え込むエイストラ。
『はっ! そう来るとは思ったよりやるようだな猟兵ィ!』
 だが、至近距離でも騎士の余裕は消えない。パラティヌスに組み付いたということは、同時にエイストラ自身も動きを止めたということだ。
『そのままバラバラになっちまいなァ!』
 四方八方から飛来するドローンが、エイストラに襲いかかる――いいや、その背を越えてパラティヌス自身の両腕を斬り落とす。
『なっ……んだと、クソが……!』
「はっ、追い込んだと思ったら実は追い込まれてた気分はどうだよ。テメェみたいな腐れカスには効くだろ?」
 驚愕に目を見開いた騎士が、エイストラの肩越しに見るのは自機の眷属であるはずのポイズンソー・ドローンを従えるシュテル・リッターの姿だ。
「俺は電脳魔術士だぜ? この程度の無人兵器の掌握、朝飯前なんだよ」
「だ、そうですよ。ここで投降するか、無理やり無力化されるか。選んではどうですか」
 殺人ドローンに囲まれ、エイストラとシュテル・リッターに睨まれた状態で騎士は冷や汗を流す。
『ち……ッくしょうがァ!』
 だが、彼が選んだのは投降ではない。状況が殆ど詰みであろうと、彼は命乞いをする弱者の側に降ることを拒んだのだ。
 脚部の機銃をエイストラに浴びせ撃ちながら、スラスターを最大で噴かしてのタックル。もつれ合うように激突した二機は密着していて、ドローンによる攻撃ではエイストラをも巻き込みかねない。
『死ぬならテメェも道連れだ……! 独りでは死なんぞ、俺ァ独りで死んでやるものかよ……!』
 ノエルを巻き込み自爆するつもりだ――その声音から騎士の画策するものを推測した二人。だがライにそれを阻止する術はなく、ノエルも離脱する動きは見せない――なぜならば。
「問題ありません。このまま鎮圧しますので。シュテル・リッター、集音マイクを暫く切ることを推奨します」
 むしろ密着状態は都合がいいとばかりに、エイストラの外部スピーカーが低く響く、あるいは甲高い――どちらにせよ人間の耳には音として捉えがたい波動を放つ。
 それは装甲を伝って機体を、そしてコックピット内部の人体を振動させて騎士の意識を刈り取った。
 操縦桿を押し込む腕の力が抜け、減速して停止するとエイストラに転がされるパラティヌス。そこへ、自律モードで獲物を見つけたドローンが殺到して機体をバラバラに引き裂いてゆく。
「テメェ等が今まで殺してきた奴らの恐怖、少しは感じて逝けば報いだって言ってやったんだが」
「パイロットの意識はありません。敢えて救出する必要も感じませんが……敢えて苦痛を与えてあなたまで"あれ"と同程度に堕ちる必要もないでしょう」
 複数のドローンが集り、自爆して吹き飛んだパラティヌスには目もくれず、二機のキャバリアは包囲の一角を崩して兵士たちが脱出する一縷の望みを繋ぐことに成功する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
【クリエイト】で周囲の残骸を用いて、レーダー・熱感知を無効化隠蔽するマント状増加ステルス装甲と通信・レーダーを無効化するジャマー、コンピュータウイルスを仕込んだニードルガン装備(他、通常の大鎌とパイル)のステルス奇襲用装備へ変換・換装。

センタービル周辺の市街の建物やビルに隠れつつ接近。
瑠璃と緋瑪でそれぞれ別機を物陰からニードルガンで奇襲を掛け、敵機をウイルス感染。
対人ドローンのコントロールをウイルスで無力化し、逆に自機に攻撃を仕向け、混乱している敵機をパイルや大鎌で無残にコクピット潰して殲滅するよ。

緋瑪「確かに自らの毒(兵器)で死ぬのが似合いだね」
瑠璃「人狩りの名人も死神からは逃れられないよ」




「だってさ、瑠璃」
「そう、人狩り部隊なんだ」
 道すがらに捕らえたセレナイトのパイロットからアンベルセ部隊を追う聖王国第八騎士団の精鋭、テルミナドル隊の情報を聞き出した二人の殺人姫。
 曰く彼らは人殺しのプロフェッショナルである。キャバリアを駆り、時に迎撃態勢を敷く対キャバリア歩兵の陣地を、時に聖王国に反抗的な占領地の市民を殺戮する、聖王国最悪の部隊にして第八騎士団最強の騎士たち。
 騎士団長フェリペ・サンドーサ直々の教練を経たというのだから、その実力は並の騎士より頭一つは抜きん出ているだろう。
 ――だが、関係ない。如何に人殺しとして有能であろうが、兵士として秀でていようが、四季乃の殺人姫の前では狩られる獲物に過ぎないのだ。
 かろうじて人間として生きていられるような状態で情報を絞り尽くされた騎士を地面に転がすと、セレナイトを解体して装甲の内側から引きずり出した機材やカーボン製の人工筋肉を丁寧に分解してゆく二機のジェミニオン。
「弱者を嬲って良い気になってる人狩りに思い知らせてあげようよ」
「うん、本当の人殺しがどんなものなのか、しっかり理解させてから殺そうね!」
 セレナイトのパーツをユーベルコードで再構成したカーボン繊維製のマントを被り、ECMを起動してビルの狭間に消えてゆく二機のジェミニオン。
 入り組んだ迷路のような町並みを分岐散開して突き進む彼女たちは、それぞれがほぼ同時に今まさにドローンを放出せんとするパラティヌス・スローターと遭遇した。
 くつくつと喉を鳴らして嗤いながら、共和国の兵士たちを嬲り殺すための殺戮機械を放つパラティヌス。
 その背後へと音もなく忍び寄る機影がある。ステルス性を付与するマント、そして機体を電子的に隠匿するECMによってパラティヌスの目を封じ、そして持って生まれた殺人姫のセンスで以て騎士の視界から自らを隠し続けて肉薄したジェミニオンは、それぞれの眼前に立つパラティヌスへと示し合わせることもなく同時にニードルガンを向け、その引き金を引く。
 ガス圧で射出された鋼鉄の針はパラティヌスの背部に装備されたドローンコンテナへと突き刺さり、ドローンを制御する通信システムと結合した。
 さすればどうなるか。針に内蔵されたチップから、まずは被弾を隠蔽するための虚偽の情報が流し込まれ、続いて悪意を殺意で上書きするコンピューターウィルスがパラティヌスを冒す。
『……あ? 今一瞬なにかぶつかったか?』
『はッ、大方窓から共和国の連中が豆鉄砲でも撃ったんだろうよ。効きやしないのに涙の出ることだぜ』
 ははは、と嘲り笑い、ドローンに攻撃命令を下す騎士たち。
 果たしてその命令に忠実に従って、ドローンたちはその殺意を行使する。回転刃から火花を散らして飛翔する円盤は、ビルの窓を割って内部に突入し、息を潜める共和国兵士たちを殺戮――しなかった。
『あ? なんだ、バグってやがるのか?』
『強制停止コードも受け付けないぞ! クソ、何なんだ!』
 ドローンたちが狙ったのは自らの主であった。瑠璃たちが送り込んだコンピューターウィルスによって、敵味方の識別機能を狂わされたそれらはパラティヌスに纏わり付き、装甲に鋭利な歯を立てる。
 突然発狂したとしか思えないドローンの凶行に混乱しながらも、騎士たちは適切に――新しい命令も、強制停止も受け付けぬとなれば破壊する他にない――対人機銃でドローンを迎え撃つ。が、いかんせん数が多い。
 共和国兵を一人たりと残さず狩るべく惜しみなく投入されたドローンは、撃ち落としても撃ち落としてもきりのない群となってパラティヌスを襲うのだ。
 そうなれば否が応でも騎士たちの意識はドローンに向く。その瞬間を、練達の殺人姫達が見逃すはずもなかった。
「いくよ、瑠璃」
「いこう、緋瑪」
 マントを脱ぎ捨て、今まで断っていた通信を開くと全く同じタイミングで躍り出る二機のジェミニオン。パラティヌスが振り返り、ランスを振り抜くがそれを緋瑪機はパイルバンカーで、瑠璃機は大鎌で跳ね除ける。
『お前だな! やってくれるじゃねぇか!』
『ステルス機ごときが正面戦闘用の機体に敵うってか!?』
 白兵武装による打撃を防がれ、すかさず肩部ランチャーの砲口を向けたパラティヌス――だが、殺人姫たちのほうが一手早い。
 大鎌の刃が、杭の先端が、パラティヌスのコックピットのすれすれを刳り抜いた。
「人狩りの名人だろうと、死神からは逃れられないよ」
「あなた達は自分の毒で死ぬのが似合いだね」
 ジェミニオンが武器を収めると同時に、毒ガスを吐き出しながら唸りを上げて回転するドローンが損傷部からパラティヌスのコックピットへ殺到する。
『あ、ぁあッ……!』
『ぼ、防毒マスクだ、防毒マスクを――ああぁああぁあ! 腕、俺の腕ェ!!』
 殺戮に興じた騎士たちは、自ら放った悪意によって死に至る。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤城・晶
M、アドリブ、連携OK

マンハント、じわじわ嬲る胸糞悪いタイプの機体って感じだな。久しぶりにやりがいのある戦闘だ。冷静に詰めていくぜ【UC発動】

ウィリアム、ミラージュ装甲展開【迷彩】、レーダー【索敵】、【ジャミング】をフルパワー、識別認識を妨害し、幻影を展開。
常に状況を把握、更新してくれ。

索敵した情報等は逐一味方に送信。
デコイとしてキャバリア以外にも人間サイズの幻影も図面と照らし合わせ、部屋や死角に展開。
撹乱させつつできた隙にビームダガー【先制】やビームライフルで攻撃。
常に移動しつつ、味方の援護もする【援護射撃】

油断も慢心も無しだ。徹底的に完膚なきまでに封殺するぜ。
集中していくぞ、ウィリアム!


ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携大歓迎・M

対キャバリア特技兵を追い込む事が可能な部隊
第八の抱える部隊でそれができる部隊…人狩の獣ども、テルミナドルか
クソ、よりにもよってだな

■方針
相手の行動を逆手に取る
獲物を追い詰めて涎をたらしてる連中のな

これだけ大きな商業区であれば施設同士も地下鋼繋がっているはずだ
地上からではなくそこから奇襲しかける

情報収集、地下鋼をからのルートを算出してUCを発動
味方に作戦を伝え、地下鋼から奇襲をしかける

援護、制圧射撃で敵の動きを制限し、上層部に攻撃が至る前に弾幕で無人ユニットを潰す
敵機に対しては重量/貫通攻撃/部位破壊で確実に落とす

「お前達を救えるのはもう神だけだ。祈れ、地獄の底でな」




「対キャバリア特技兵を追い込むことができる部隊……第八の抱える部隊でそれだけの対人技能を持った連中と言えば……」
 友軍を脱出させるための足として車両を向かわせるべきと判断した第552機械化歩兵中隊を護衛するべく随伴するプレケスのコックピットで、ヴィクターは悪名高き鏖の第八騎士団の中でも特に忌み嫌われる部隊を思い出す。
 プレケスの情報支援AI、ヘンリーが表示した該当部隊のデータをちらと横目に確認して、医師でもある軍人は自身と対極に位置する存在が此処に在ることを確信した。
「だろうな、ヘンリー。この辺り構わず火を付けて回る手管、あの人狩りの獣共……テルミナドルが出張ってる。クソ、よりにもよってだな」
 忌々しい無法者どもの気配に苦虫を噛み潰していたヴィクターらがエレベーターを登りきり、地上にある商業施設から外へと出たとき、突如唸りを上げて飛翔する毒々しい紫色の円盤が飛来した。
「――全車停止! 対空防御!」
「駄目だ止まるな! 牽制しながらエレベーターまで後退!!」
 それを見たことのない共和国軍の兵士たちは車両を停止させ、車載機関銃で迎撃しようとするがヴィクターは鋭い声でそれを咎めて後退を指示する。
 これに反応できたものとできなかったもので、彼らの明暗は分かたれた。
 踏みとどまり、機関銃座に着いた兵士を円盤はまるで野菜でもスライスするように両断する。あるいはフロントガラスを突き破って社内に突入すると、運転手を引き裂きながら自爆して後席に座る兵士たちを焼き払う。虎の子の装甲戦闘車であっても、ドローンの刃に装甲を引き裂かれてたちまちのうちにスクラップと化した。
「チッ……何台やられた!? 何人死んだ!! クソ野郎ども……!」
 ショットガンから散弾をバラ撒き、後退する車両を追うドローンを牽制しながら自身もエレベーターへと退がってゆくヴィクター。
 重々しく閉じてゆく鉄扉までは流石に破れぬようで、追撃が止まった事にほうと安堵の息を吐く――払った犠牲は小さくはないが。
 二輌の装甲戦闘車の片方が破壊され、非装甲の四輪駆動車は三分の一近くが地上で行動不能。そしてそれらに搭乗していた兵士たちもまた、もう生きてはいまい。
「なんなんだあれは……あんなものが居るのでは、アンベルセ部隊の救助などとても……」
「あいつらは対人ドローンだな。キャバリアならともかく車両じゃ、まして生身じゃ分が悪すぎる。だが――」
 ヴィクターはあれの弱点を知っている。多くの地獄をくぐり抜けてきた男は、あの悪意の塊のような兵器への対処法を心得ている。
「幸いにもこの街の地下鉄網は発達している。大丈夫だ、俺たちで死んじまった連中の分まで仕事を果たすぞ」
 ヘンリーに命じて再度トゥリオン市の地下鉄路線図を引っ張り出すヴィクター。地下であれば、母機からの無線誘導で群体を形成し、戦術的な機動を実施するあのドローンは十全に動けない。閉所で無秩序に飛び回る少数の機体ならばプレケスの火力で制圧可能、故に。
「このまま地下を経由して貿易センタービル直下のステーションに向かう。搬入エレベーターみたいな利口な設備はないが……軍用車両なんだ、階段を駆け上がるくらいは出来るだろ?」

「胸糞悪い機体だぜ。じわじわ嬲って殺す、マンハント特化型の機体かよ」
 ビル街の屋上を静音を意識した跳躍機動で渡るヴェルデフッド。光学迷彩を展開し、ジャミングで飛び回るドローンのセンサーを欺瞞する機体に気付くものは居ない。
 そのコックピットで晶はスローター・タイプのパラティヌスが発する禍々しい気配、設計思想からも滲む悪意に嫌悪を示す。だが、一方でこの胸糞の悪い部隊を排除することへのやりがいを感じる自分も居る。
 傭兵として常に死地にあった。生き残るために手段は選ばなかった。
 だが、最後の一線だけは守り徹した自負がある。しかし眼下の騎士たちは――否、もはや騎士という肩書で呼ぶことすら相応しくない殺戮者たちは、そんなかつて地獄のような戦場で嗤いながら自分を追い詰めた側の存在だ。それでいて、彼らは晶が守り抜いた一線を遥か向こう側に越えてしまった者たちでもある。
 生きるためという言い訳に呑まれ、良識を見失っていたならば、ともすれば晶もあのように醜悪な姿を晒す側に居たかもしれない。そんな過去の象徴、あるいは選ばなかった未来の自分。
「ステルスで身を隠して闇討ち上等、なんてスタイルの俺だが……ああも外道に墜ちちゃいねえ。だろう、ウィリアム」
 苦楽を共にしたAIに問うが、彼は敢えて黙して語らぬ。それが否定ではなく、あれらと晶を比較することすら拒む信頼の証であると、晶は分かっている。
「ありがとよ、ウィリアム。友軍もすぐに駆けつけるはずだ、常に状況を更新、味方を見つけ次第索敵情報は逐一共有してくれ。傍受には気をつけてくれよ。……さて」
 貿易センタービルのいくつか存在する出口を封鎖している敵の分隊を真下に見下ろし、晶はヴェルデフッドの幻惑機能を立ち上げる。
 投影するのは共和国軍の軍装に身を包んだ歩兵と、マルセール大隊機を模倣したキャバリアの映像。地上を進撃するキャバリアに呼応してビルの窓から攻撃を試みる歩兵隊というシチュエーションを展開してやれば、その任務の性質上騎士たちはこれを無視できまい。
 晶の予想通り、まずキャバリアに反応したパラティヌスは歩兵の存在を認めると、すぐさまビルに向けて対人機銃を掃射し、窓から対人散弾地雷を放り込む。
 幻影に喰い付いたその瞬間が好機だ。ビルから飛び降りたヴェルデフッドは、光学迷彩を解きつつ空中でビームライフルを撃ち下ろす。
『歩兵は陽動、本命は奇襲か! だが単騎で来たところで!』
 槍に据え付けられたビームガンの速射で降下するヴェルデフッドを迎え撃ちつつ、地上を滑走して上方からの狙撃を回避するパラティヌス。
 やはり技量は優秀である。が、それはもとより承知。奇襲一撃目で一機落とせれば御の字だが、精鋭相手にそううまく事が運ぶと確信するほど晶は楽観論者ではない。
「だろうな、初撃でやれるとは思ってないさ。油断も慢心もなしだ、此処から先は徹底的に完膚なきまでに封殺するぜ」
『やってみろよ、出来るなら!』
 空中でスラスターを噴射しての回避機動。地上スレスレでビルを蹴飛ばし着地点をずらして、すぐさまビームダガーを抜刀。強制的な噴射姿勢制御で機体を強引に動かし、肉体が軋むほどのGを浴びながらパラティヌスに斬りかかる。
 一方のパラティヌスも通常考えられないような機動からの斬撃を油断なくランスで受け止め、二機は拮抗状態に陥る――否、ここにはヴェルデフッドと切り結ぶ機体の他にもう一機パラティヌスがある。一機がヴェルデフッドを食い止める中、その機体は火炎放射器をゆっくりと擡げて――
「そうはいかんぜ、騎士さんよ。お前達は地獄の底に送り返す。神様に助けてもらえるように祈るんだな」
『なっ、ぐぁ…………ッ!?』
 背後、地下鉄駅への下り階段から猛烈な機銃掃射。肩部の榴弾砲の弾倉が誘爆し、姿勢を崩したパラティヌスは火炎放射の照準を大きく外した。そこに飛びかかる黒い機体が、エネルギーフィールドを纏った拳でその胸を貫いた。
「よう、ご同輩。そちらからの情報のおかげで最高のタイミングで上がれたぜ」
「そいつは何よりだ。後から来た仲間にいい所を掻っ攫われっぱなしで居られるかよ、集中していくぞ、ウィリアム!」
 地下鉄からの強襲で瞬く間に一機を仕留め、仲間の仇討ちを果たし、生きている仲間を助け出すべくて貿易センタービルに次々飛び込んでゆく552中隊の車両を護衛するヴィクターに負けていられぬと奮起した晶が、ビームダガーと競り合うパラティヌスの腹にライフルの銃剣を突き立てる。
 続く射撃を叩き込む前にパラティヌスの騎士が退く――想定通り。それを逃さぬとばかりに密着して追えば、長柄のランスは用を成さぬだろう。
『だがこの距離、散弾だろうと!』
「させるか……ッ!」
 槍が駄目ならば、全身に懸架する対人散弾地雷を起爆させる。この至近距離で爆発を浴びれば、お互い無事では済むまい。
 騎士が起爆トリガーを引き、その信号が地雷に伝わり爆発するまでの一秒以下の刹那。ウィリアムの補助を得た晶の振るう、ヴェルデフッドのビームダガーが僅かにそれより疾かった。
 胸部に光の刃を突き立てられた、血染めの騎士が爆散する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
因果応報と言うには、相手が違い過ぎます……と言ったところで、口実に過ぎない以上無意味でしょうね。

拳銃を向けまずは警告
対人兵器の展開中止と、撤退の勧告
ええ、聞くような奴らじゃないのはわかってます
これは「警告はした」という、わたしへの免罪符に過ぎません

聞くなら見逃しますが聞かなければ即座に【本気の炎の精霊さん】発動
合計1120本の炎の槍を生成、敵機と無人兵器へ向けて一斉射
命中して数が減る毎に順次新たな炎の槍を生成し射出
矢鱈滅多に放火してくれたお陰で炎の精霊さんの力は汲み上げ放題です
逃げようとするなら執拗に追いかけて焼き貫く
今更命乞いを聞くつもりもありません

その悪意、せめてこの炎で清めて逝きなさい。


ルイン・トゥーガン
アドリブ歓迎

あぁやっぱり、あの時のツケが回ってきたねぇ
ヴェノムダガーだったか、あいつらが国境超える前に止められなかったアタシらの落ち度だねぇ
チッ、仕方ないね。今回は報酬額を負けといてやるよ

ふん、対人特化部隊ねぇ?
装備に依存してるようじゃ甘いさね
情報封鎖なんてアタシには慣れっこさね
第一ジャミングとドローンなんて嚙み合わせの悪い装備を同時に使えるのかい?
はん、まぁいいさ。こんな虐殺を楽しむような二流軍人に特務隊の戦い方を教えてやるさね!
カモフラージュコートと敵のジャミングを逆手に取ったキャバリアによる都市ゲリラ戦ってやつをね、御代はアンタらの命でいいさね
殺戮は感情じゃなく理性でやってこそ軍人だよ!




「ああ、やっぱりあの時のツケが回ってきたねぇ……」
 ルインのぼやきにひかるは眉根を寄せた。
「これを因果応報と言うには、相手が違いすぎます」
「そりゃそうさ。これはヴェノムダガーだったか、あいつらが国境を越える前に止められなかったアタシらの落ち度だ。アタシらが払うツケだよ」
 やれやれ、これじゃ今回の報酬額は負けといてやるしかないね、と苦笑して操縦桿を握るルインに、ひかるはそれも違いますと首を横に振る。
「あの時、わたしたちは全員が最善を尽くしました。それに彼らだって、本気であの時の報復がしたいわけじゃない。あんなのは口実です」
 たとえあの日の戦いでヴェノムダガー隊を共和国領内で秘密裏に処理できていたとしても、この光景は変わらなかっただろう。テルミナドル隊の騎士たちはどんな理由を付けても、この醜悪な殺人兵器の投入を強行したはずだ。トゥリオンの惨状をこの目で見てきたひかるには、その確信がある。
「ハッ! さすが悪名高い第八騎士団、アンタみたいなお嬢さんにそうまで言わせるかい! だったら――」
「ええ、止めます。ここで、なんとしても……何をしてでも!!」
 ステラとアマランサス、二機のキャバリアが塔の根本へと、殺戮の騎士たちの下へと駆け抜ける。
 迎え撃つは聖王国第八騎士団、騎士団長直属の人狩り部隊テルミナドル。パラティヌス・スローターを装備する彼らは、新たな敵影を認めてただちに迎撃態勢を取る。
「はン! 虐殺を楽しむような二流が粋がって! 殺戮は感情じゃなく理性でやるもんさ、アタシが本物の軍人の戦い方ってやつを――」
「待ってください!」
 いざ戦端を開かんとビームアサルトライフルを構えたアマランサスを制するステラ。訝しむルインにお願いします、と画面越しに目配せをして、ひかるが一歩前に出る。
 相手は外道だ。気を抜いていい相手ではない。だからステラのハンドガンを突き付けて、しかし引き金には指を掛けない。
「――警告します」
『警告だと? この状況でか。正気か?』
 騎士からもひかるの正気を疑う声。ランスライフルの先端がステラを捉えるが、構わずひかるは言葉を続ける。
「ただちに対人自律兵器の展開を中止し、トゥリオン市……リュテス第五共和国領から撤退してください。この警告が受け入れられない場合、わたしたちはあなた達を実力で排除します」
『何を今更。ああ、何を今更! 開戦した以上はそれは無いぞ、無いだろう! あるのは殺すか殺されるか、それだけだ! そして殺すのは我々、殺されるのは貴様らだと証明してやろう!』
 その回答は敵意に満ち、融和を拒むもので。それを残念だと思う気持ちはひかるの胸には湧かなかった。
「ええ、わかってました。警告を少しでも聞き入れてくれるような奴らじゃないなんて」
 だから、これは自分への免罪符に過ぎない。自分の意思で人を殺めることへの、ささやかで自分勝手な赦し。
「――ルインさんも、わがままに付き合ってもらってすみません」
 構わないさと笑顔で肩を竦める彼女にいくらか救われたような、しかしそれを救いと取っていいのかわからない気持ちも確かに抱えて、ひかるは邪悪を睨みつける。
「炎の精霊さんたち! あれがあなた達を喚び、憎しみを生むものです!」
 ――街が震えた。
 テルミナドル隊だけではない。対人装備で出撃した多くの第八騎士団所属機が放った炎。トゥリオンの町並みを焼き尽くさんとしていたそれらが、一斉に空へと舞い上がり収束して炎の槍となる。
「命乞いを聞くつもりもありません! あの悪意を全て焼き尽くして、あなたたちの炎でせめて少しでも清めて!」
 それは未だに市内で戦闘を継続している第八騎士団機を含めて、全ての悪意に等しく降り注ぐ。
 キャバリアも、ドローンも、車両も歩兵も関係なく、この破壊と殺戮に関与した聖王国の悪意全てにまるで天罰の如く炎が落ちた。
 多くはそのまま焼かれて果てたが、しかしテルミナドルの中でも眼前の騎士は指揮官級、最精鋭である。
 炎の槍を榴弾の爆発でかき乱し、無尽蔵に降り注ぐそれを迎撃しながら貿易センタービルのエントランスホールへと機体を退避させてのけたのだ。
 街を焼く炎から無尽蔵に火槍を生み出せるひかるも、救うべき共和国将兵ごと敵を焼くことはできない。
「アンタはよくやったよ。だからここからはアタシに任せな」
「…………っ、お願いしますっ!!」
 少女がその細い身体には重く大きすぎる怒りと殺意を以て聖王国軍を殲滅したならば、生き残った厄介なヤツの相手は大人の仕事だとルインが燃え盛る街を突き抜けて、パラティヌスを追いアマランサスをビルへと突入させる。
「頭ァ低くして車両か壁の向こうに隠れな! 巻き添え食っても文句は言わせないよ!」
 アンベルセ部隊の生き残りと、彼らを救出するべく突入した552中隊の兵士たちがパラティヌスに銃火器を向けるのを視界の端に、手を出すなとルインは叫ぶ。
「ご自慢のドローンは全滅、装備に甘えたアンタらにキャバリア戦は荷が重いんじゃないかい!」
『抜かせよ女郎が! アマランサス如きで!』
 屋内にもつれ込んだ二機が激しく格闘する。パラティヌスのランスが鋭く突き込まれれば、アマランサスは身にまとった迷彩のマントコートで機体の輪郭を惑わしこれをすり抜ける。
 アマランサスのライフルがパラティヌスを捉えれば、強烈なジャミングがロックオンを強引に外す――目視照準での射撃は友軍誤射のリスクが大きい――互いに決定打を欠く死闘。
 ルインは騎士を二流と挑発したが、騎士もまた亡国の特務軍人である彼女に拮抗しうる傑物であった。人格さえ高潔であったならば、一廉の軍人になっていただろうに――ルインはそのことを惜しく思いつつも、しかし道を踏み外し外道に墜ちた男に容赦はしない。
「アマランサス"ごとき"だって? 言ってくれるじゃないさ! だけどね、そんな悪趣味なカスタマイズ、上等なパラティヌス"様"がブサイクになっちまって可哀想で見てらんないよ!」
『よく吠える雌犬だ! いよいよ死に様の断末魔はどんな声で鳴くのか楽しみになってきたぞ! ほうら、次だ!』
 幾度目かの激突。閉所での戦闘経験は都市ゲリラの経験のあるルインが一手上回るが、至近距離での格闘戦では機体特性の差でパラティヌスが僅かに有利。互角――だが、騎士はここで確実な一手に至る。
 機体に括り付けられた散弾地雷の一斉起爆。この閉鎖空間ではそれを回避するは至難。だが遮蔽を取ろうにも、その遮蔽には既に共和国兵が退避している。
 彼らを蹴飛ばしてまで自ら助かることはできない――むしろアマランサスを盾にして、散弾の飛散や跳弾による友軍の被害を抑え込まねば――ルインは一瞬のうちに決断すると、逆に機体をSマインに押し付けるように体当たりしてパラティヌスを抑え込む。この距離ではいくら対人用の散弾地雷とてキャバリアの装甲を貫き致命的な損害を与えるだろう。
「だけど知ったこっちゃない、アタシの請け負った仕事は友軍の救出だからね……!」
 それでも、とルインは機体のパワーを上げる。たとえ一人だって、共和国兵にこれ以上の犠牲を出さないために。
「――そのままだ! そのまま8メートル押し込め! その後反転離脱、できるな!?」
 決死のルインの耳に飛び込んだのは誰の声だったか。共和国軍の通信回線で聞こえた声に、彼女は半ば無意識に応えた。
 出力差で勝るアマランサスがパラティヌスを8メートル押し込めば、エントランスホールの端にたどり着く。そこですぐさま踵を返してバックブースト、兵士たちが身を隠す装甲車の盾になるように機体を動かす。
 直後、爆発音が連続して響いた。一つはパラティヌスの対人散弾地雷がほぼ同時に炸裂した音。もう一つはもっと重い――
『ぬ、お、あ…………ッ!』
 それはビルに予め仕込まれていた爆薬が起爆した音。綿密に計算された位置に寸分の狂いなく設置された爆薬は、パラティヌスが押し込まれた地点の床を地下に落とす。
姿勢を崩したパラティヌスの散弾は吹き抜けの遥か上、天井の照明カバーのガラスを砕いてキラキラと炎色のガラス片が降り注ぎ、電灯が破壊されたエントランスは薄暗い廃墟のような色を得る。
 そして、瓦礫ごと地下に――貿易センタービル直下の地下鉄駅に通じるトンネルに落ちた騎士を、追い打ちのように地下にも仕掛けてあった爆弾が襲う。
「キャバリア"如き"、一個小隊だろうが吹っ飛ばす量の爆弾だ。地獄に落ちなクソ野郎」
「……ハッ、アタシを使うなんざいい度胸じゃないさ。アンタは?」
 敵機を無理やり罠に嵌めるための最後のひと押しとして利用されたことを咎めるように、しかし爽快な笑顔で問うルインに、通信の主はアンベルセ部隊の工兵だと名乗った。
「おかげで助かった……とは言わないよ。あんなピンポイントな罠、どう使うつもりだったんだい」
「そりゃ、俺達自身が囮になっておびき寄せるつもりだったさ。そうなりゃ何人か死んだろうがな。お前さんのおかげでそうはならなかった。おかげで助かったよ、感謝する」
 斯くて悪逆の騎士は討ち取られ、最後の生き残りは一人と欠けること無く救い出された。
 ――しかし、最大の悪意がまだこの街に蠢いている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『敗残者の王』

POW   :    果てし者よ、惰眠にはまだ早く
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【戦場で破壊されたキャバリアの残骸や武装】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD   :    望む終わりは未だ来たらず
【戦場に散乱する残骸で補修した即席改造機体】に変身する。変身の度に自身の【武装】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
WIZ   :    数多の敗北を識るが故に
【機体に刻まれた膨大な『敗北の記憶』から】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ユエイン・リュンコイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 共和国軍アンベルセ部隊の救助完了。第八騎士団の対人戦部隊テルミナドル壊滅――猟兵の尽力によって、失われる筈だった命の多くが救われた。
 そして市街地の殲滅戦に参加していた第八騎士団主力の多くも討たれた今、状況は共和国軍勝利と言えるだろう。
 猟兵からの報告で、総司令部を防衛する共和国防海軍マルセール大隊、およびクーベル小隊の面々は歓喜の声を挙げた。
 ――勝ったのだ。絶望的な苦境を乗り越え、聖王国最大にして最悪の戦闘集団たる第八騎士団を撃滅せしめた。
「こちらはマルセール大隊、大隊長マルセール少佐だ。諸君、よく耐え抜いた! 猟兵、諸君らの協力にも軍を代表して感謝の意を――」
「少佐! 接近する熱源1、IFFレッド! 敵の生き残りです! 二機続け、死に損ないを制圧する!」
 マルセール少佐からの感謝を告げる通信の最中、新たな敵の襲来を告げる声。
 共和国軍のキャバリアがたった一機で接近する聖王国の生き残りを今度こそ仕留めるべく小隊で包囲を敷き、そのライフルを突きつける。
「武器を捨て機関を停止せよ! 貴様の本隊は既に壊滅している、たった一機で出来ることなどなにもないぞ。我々は貴様ら野蛮な王権主義者と違って国際条約に則った捕虜待遇を約束しよう、投降しろ!」
 まずは投降を促す共和国軍機を歯牙にも掛けず、聖王国のキャバリアは歩みを進める。
「武装解除して機関を停止せよ! さもなくば貴機を破壊する!」
『くく……勝ったつもりか共和国。まだ騎士団を壊滅させた程度だぞ』
「な、なにを……? 部隊が壊滅した以上、貴様に勝ち目など残っていない! 命令に従え、さもなくば――」
 聖王国の機体は止まらない。夕日に照らされた機影は歪で、セレナイトのようにもアマランサスのようにも、あるいはナイトゴーストやアークレイズ、パラティヌス型のようにも見えた。
 聖王国軍が保有するあらゆる機体のツギハギ。醜いフランケンシュタインの怪物めいた機体は共和国兵の勧告を一切無視するどころか嘲笑して、海軍総司令部に向けてまた一歩。
「威嚇射撃! 停止しなければそのまま破壊しろ!」
『遅いんだ貴様らは。威嚇など悠長なことを言わずに殺せ! でなければ――』
 ライフルに指を掛けた共和国小隊を一喝、異形のキャバリアは瞬時に小隊長機の懐に飛び込みナイフをコックピットハッチに突き立て、装甲ごとパイロットを保護する鋼板を跳ね飛ばすと、カービンの下部にマウントされた火炎放射器を生身のパイロットに浴びせかけた。
「ひ、やめ――」
「し、小隊長! ドーセット中尉!!」
「クソ聖王国野郎、少尉をよくも……ッ!」
 隊長機を撃破――否、隊長を殺害されて動揺した小隊の二機が発砲するが、それをコックピットで火達磨になってのたうつ小隊長を見せ付けるように小隊長機を盾にして聖王国機は弾き返すと、ナイフを投擲して二機のうち片方のコックピットを串刺しにする。
「ゲクラン! うわああああ! 何なんだ、何なんだよお前は! 大隊長、マルセール少佐、助けてくだ」
 がごん、と重たい銃声。カービンから吐き出された砲弾が最後の一機の胸を貫き、血まみれの破片を背中から撒き散らして共和国軍機が倒れ伏す。
 そうして不要になった盾――小隊長機を無造作に放り捨てて、異形のキャバリアは再び歩みだす。
『死ぬことになる。戦場で殺すこと以外を考えるからだ。戦場に立つ以上は殺すか死ぬかだけだと貴様らごときには理解できんか』
 男の名はフェリペ・サンドーサ。"燎原"の異名を持つ聖王国第八騎士団の長にして、聖王国軍最悪の戦争狂にして殺人狂。
『まあいい。戦争を愉しむ資格のないクズでも、断末魔は変わらん。俺が殺されるまでに何人殺せるか。競争と行こうじゃないか、猟兵!』
 悠々と歩いていた異形に火が灯る。バランスなど無視したかのように重なる背面のスラスターが唸り、この燎原最後の炎が加速する。

「――撃て! 迂闊に近寄るな、距離を維持して迎撃!」「駄目です、弾が当たらない! 何だあの機動性は……うわっ!!」「また一機喰われた! 相手はたった一機なんだぞ!?」「96ストリートに誘い出せ! ミストラルとコルセスカの射線に誘い出す!」「猟兵が来るまで足止め出来ればいい! ヤツを封じるにはクーベル小隊のレールガンが必要だ!」「中隊長、後ろです! 危ない!」「なっ、がはッ!!」
 無線越しに聞こえる無数の絶叫。共和国将兵が決死の覚悟で挑む抵抗を食い荒らす者がいる。
 それがこの戦いにおける最大の悪意そのものなのだと、猟兵達は直感するだろう。
「あの機体もセレナイトの部品を使ってるなら、私達で止められるはずよクラウス!」
「ああ、分かったエミリ! タイミングは君、に……」
 その悪意がクーベル小隊の下に辿り着いたことを、
「クラウス!? しっかりしてクラウス! そんな、バイタルが危険域!? 被弾はしてないはずよ!」
「サイキックキャンセラーの使いすぎだ! パイロットの生命力を食い潰す装備だと理解していなかったのか!? そのための複座機だろう!」
 クラウスが危険な状態にあるということを、
「そんな、私そんなこと聞いてないわ! クラウスは何にも言ってなかった!」
「口止めされていたけれど、本来なら二人で均等に背負う負荷を彼は自分だけに回すようにしていたんです。ともかく貴女一人じゃ戦えないわ、マルセール少佐、前衛をお願いします! 一瞬でも動きが止まれば、なんとか狙撃を当ててみせます!」
「了解した! 全機ミストラルを抱えて後退、コルセスカの射線を空けろ! 猟兵が間に合わない場合は命を懸けてそこの若者を守り抜け!」
 エミリが錯乱状態に陥ったことを、クーベル中尉とマルセール少佐がたった二人でサンドーサと交戦していることを、猟兵は無線機越しに知るだろう。
 急がねばならない。速度を上げ、各々にできうる最速で戦場に駆けつけた猟兵達。
 その眼前に現れたのは、剣を槍を斧をナイフを突き立てられてなおサンドーサを抑え込むマルセール少佐機の上半身だけの残骸と、
「すみません少佐、皆さん……」
 電磁投射砲をマウントした右腕を根本から失い、全身から白煙を噴き出すクーベル中尉のコルセスカ。
「少佐を、少佐の遺体を盾にされて……撃てませんでした。どうか、仇を……!」
『麗しきかな戦場の絆。だから死ぬ! だから殺せない! 来たか猟兵、お前たちはどうなんだ、あぁ? お前たちは戦争のやり方を知っているか、人の殺し方を心得ているか! 見せてみろ!』
 マルセール少佐機の亡骸を投げ捨て踏みつけに、コルセスカの電磁投射砲を撃ち抜いたカービンを肩に担いでサンドーサが猟兵に問う。
 猟兵がようやくサンドーサを捉えた。否、ヒトの形をした戦場の狂気がついに猟兵を捉えたのだ。
ライ・ガブリエル
現地改修機か?
様々な機体を継ぎ接ぎしてる割に良い性能してやがンな、クソがッ!

UCで複製したアマランサス・ラピート(通常白兵戦仕様)を召喚!
闇雲に数増やしても意味ネェ事は解ってる!
計95機を30機ずつ合体しいざとなれば【リミッター解除】や合体。
更に今回は完全無人制御じゃなく、YUIによる戦闘指揮操作だ!
少しはマシになんだろ!

残り5機はクーベルの回収、離脱支援だ。
猟兵には甘いヤツも多い。盾や人質にくらいは更に平気でやるだろうからな。

俺様は遠距離からリニアライフルとミサイルで援護しつつ、敵機に電脳魔術で【ハッキング】だ。

即席の改修機なら、無理矢理バランス取って制御するソフトが必要だ。そこを突けば…!




「なンだこいつ、ライブラリー該当なしだと!?」
 先行突入させた自律型の複製セレナイトが盾の上から真二つに両断され、あるいは奇怪な機動で側面に回り込まれてコックピットブロックを撃ち抜かれる。
 構わない、共和国軍の精鋭部隊でさえ歯が立たなかった相手だ。それをけしかけたライとて木偶の量産機で一矢報いる可能性などゼロだと承知している。
 だが、その木偶人形に稼がせた時間で得られた貴重な情報は、敵機の正体が全く不明であるというそれだけ。
 火力も、推力も、機動力も、装甲の強度も、何一つとして推測できる要素が得られない。
 支援AIであるYUIもその処理能力をフル稼働させて敵機の素性を暴こうとしているが、いくつもの候補機を選んでは不一致で再度選定するというループに陥りかけている。
「原型が無くなるまで弄った現地改修機か……? だってんなら正体を考えるだけ無駄だな……ッ!」
 一個大隊、四十機弱の数を投じたセレナイトが為す術もなく壊滅するのを渋面で受け入れ、ライは敵機の正体に迫るための思考を一旦放棄する。
『どうした、もう雑兵は打ち止めか? 無人機は殺した気になれん、つまらん! つまらん戦いを持ち込んだ貴様は死ね!』
「――ッ、ユイ! セレナイトじゃ手に負えねぇ、アマランサスをお前が直接指揮しろ! 自律機よか多少はマシになんだろ!」
 了解の意を示して召喚された複製アマランサスは僅かに三機。YUIによる直接制御を考慮して、最大限に演算能力を反映しつつ連携行動が取れる最小限の数だ。
 ビームソードを展開してサンドーサに斬りかかるアマランサス。シュテル・リッターを襲撃せんと迫るツギハギの戦鬼はその一撃を大鉈で切り払い、後続によるライフル射撃をこちらもカービンの単発射撃で盾を構えさせることで阻止する。
『動きは良くなったが所詮は無人機だなァ! 教本をなぞるような動きで!』
「それでも四対一だぜ、いつまでも驕っていられるかよ!」
 ライ自身もカービンの射程外からのリニアライフルの狙撃とミサイル斉射で援護を挟むが、三機のアマランサスの捨て身の猛攻を受けながらもサンドーサはその尽くを回避し、あるいは撃ち落とす。
『確かに猟兵、貴様は共和国のカスのような兵隊より強い。だがまだ甘い!』
「俺が甘いだ? ンなわけねぇだろ!」
 アマランサス隊の包囲射撃を跳躍で飛び越え回避するサンドーサ。その着地の瞬間を狙い放たれた狙撃がコックピットブロックに吸い込まれるように飛翔し、しかしその射線上に割り込んだ鉈の腹で受け止められる。砲弾は砕け、鉈の刃は折れた。
 が、その半ばより圧し折れた大鉈をサンドーサが投擲したその先には、大破した機体を引きずるように後退するクーベル中尉の機体がある。
「しま……ユイ!」 
 故に、ライは伏せていた札を切った。中尉の撤退支援をさせるべく、あくまで念の為に伏せていたアマランサスを盾に、コルセスカを庇い――そのために僅かにYUIの思考リソースが割かれた、その僅かな綻びにフェリペ・サンドーサは喰らいついた。
 ビームソードを振りかぶるアマランサスの単眼にナイフが突き刺さる。――まず一機。
 ついで、二機目のアマランサスのライフルの速射を機体を左右に揺さぶりながら回避、肉薄して蹴り倒し肩を踏み砕く。
 そのまま三機目をカービンでズタズタになるまで撃ち抜き、踏みつけにした二機目に一機目の死骸からもぎ取ったビームソードを突き立てる。
 一瞬であった。YUIが直接制御するアマランサス三機が瞬く間に撃破された。これが聖王国における戦争最強、"燎原"フェリペ・サンドーサの戦闘か。
『あれを伏兵に使えばまだマシにやれただろうよ。だがお前はそうしなかった。死に損ないを守ることを考えながら戦争をしていた! そんな奴が俺を殺せるものか!』
 背筋を嫌な汗が流れ落ちる。一対一では機体相性が悪すぎる。シュテル・リッターの狙撃が必殺の威力を発揮し得ないならば、近接白兵戦に持ち込まれるリスクは高い。YUIの制御する機体を圧倒するエース相手にそれは、
「ヤベェ……が、何もてめぇを撃ち殺すだけが俺の仕事じゃねぇんでな! ブサイクな継ぎ接ぎ野郎の弱点は大方予想は付いてんだよ!」
 後に続く猟兵に繋ぐために、アマランサスによる時間稼ぎを経てライは敵機のシステムに介入する糸口を掴んでいた。
 重要区画に侵入するには時間が足りぬ。ここでヤツを自爆、それができないならばせめて火器管制システムをロックさせてやれればよかったのだが、生憎とそうは行かなかった。
 だが、浅い侵入でもサンドーサに致命傷となるだろう傷は与えられる。
「バランサーの制御ソフトを狂わせてやったぜ。クソ野郎はクソ野郎らしく地べたを這いずってな!」
 ゆらりと傾くサンドーサの機体。カービンから放たれた砲弾は、姿勢制御装置の異常が故にコックピットから大きく狙いを外してシュテル・リッターの肩を貫く。
『は、は、は! これが貴様の狙いかよ! ああ、そうだ! 搦め手でもなんでも使って相手を殺す! そういう執念がないと殺す甲斐がない!』
 サンドーサの高笑いを背に、歴戦の古強者に痛手は与えたぞとシュテル・リッターは伏せていたアマランサスの僅かな生き残りに支えられて後退してゆく。
 その背と入れ替わりに戦友の誰かが戦場に切り込んでいくのをライは見送った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
……はぁ。
(最早怒りを通り越し、呆れて冷酷になっていく)
クーベル中尉、生存者を連れて後退してください。
この場に居ると……間違いなく、巻き込みますので。

ステラ、お願い。
アレを消すのに、力を貸して。
(優美な鎧のような装甲が内側から破られ、悪魔のような異形の「オブリビオンマシンとしての真の姿」を晒す)

まずは【幻想精霊舞】発動まで時間を稼ぐ
装甲排除で軽量化した機体特性を生かし、炎を纏った爪で近接高機動戦闘を挑む
ただし基本的に回避とカウンターが来るものと考え、深追いはせず回避重視し纏わりつくように立ち回る

【幻想精霊舞】は「炎」と「大地」の合わせ技で「マグマ」を生み出す
ギリギリまで地上には出さず、地下を十分に埋め尽くして絶対に逃れられない状況を作り出してから噴出させます

戦争、人殺し、どちらも下らない。
お前はただ、大自然の力に呑まれて死ぬのです。
――その命、星に還しなさい。




 その男は醜悪という言葉の表すそのものであった。
 殺意の塊。理由なき殺人欲求の正当化のために戦争を求める歪んだ殺人狂。そしてその狂気に呑まれ、第八騎士団は、そして共和国東部方面軍の多くの将兵は命を落としたのだ。
 たった一人の、エゴイスティックな狂気がために。
「…………はぁ」
 怒りに煮えたぎる脳が、急速に熱を失っていく。
 これの、こんなもののために人が死んでいった。街は焼かれ、共和国市民の多くが土地を追われ家族と離れ離れになった。到底許せなかっただろうが、それでもその蛮行にどこか納得できる理由があるのだろうとひかるはまだ心の片隅で期待していた。信仰のために。正義のために。あるいは利益の、または聖王国の誰かのために。認めてはいけないなりに確固たる意思があって、それが彼にとっての正しい行いなのだと、その信念を正面から受け止め打ち破ることが自らの役割なのだと思っていた。
「…………わたしが間違っていたみたいです」
 しかし目の前の男は、ただ歪んだ欲求を満たすために戦火を拡大する狂ったモノにすぎない。戦争のために戦争を行い、殺人のために人を殺す。どこで彼の魂がこうも歪んでしまったのかには、今更毛ほどの興味もない。
 ただ、ひかるが願うのは――
「ステラ、お願い。アレを消すのに力を貸して」
 自身の喉から出たとは思えない、氷のように冷たい声音。それに呼応して、愛機が機関出力を加速度的に増加させて唸りを上げる。
『くく、くはは……! いいぞ、いい殺意だ! 俺を殺したいと、殺してやると憎め!』
 姿勢制御システムの異常を復旧せんと片膝を付いた姿勢のまま、サンドーサのキャバリアがカービンを構えてステラを撃つ。
 共和国海軍の主力機を正面から貫徹可能な高速徹甲弾が飛来し、それをひかるは冷めた頭でくぐり抜ける――弾道は見えている。何処を照準され、何処を狙って砲弾が飛んでくるのかはわかっている。
 だがそれでも避けきれない。キャバリア戦の経験値が、彼とひかるでは圧倒的に違う。
 装甲が穿たれ、衝撃がステラを、そのコックピット内のひかるを容赦なく襲う。だが、ひかるは止まらない。足を止めれば致命傷を負わされることは理解できている。被弾を厭うて時間をかければ、必ずあの殺人狂は姿勢制御装置を欠いたままでも戦闘機動に復帰するだろうことも。
「頼まれたってお前を憎んでなんてあげません。ただ、お前は存在してはいけないモノ――だから消す、それだけです」
『憎しみもなく人を殺す? それは狂人の思考だぞ! ハハハハッ、お前も俺と同じ側の人間だ! 人間などに心底関心のない、俺の同類だ!!』
「一緒に――するなッ!!」
 砲弾がステラの鎧を穿ち、ひときわ大きく搭乗者を保護する役割を担う胸部装甲が弾け飛ぶ。
 それを引き金に、ステラの機体が崩壊を始めた。崩れ落ちるように剥離していく傷だらけの純白の装甲。大型のスカートアーマーが脱落し、頭部や背部の羽根を模したスタビライザーが抜け落ちるように散ってゆく。
 そうして装甲を脱ぎ捨てたステラが炎に呑まれる。推進剤への引火か、弾薬の誘爆か、それはステラの全身を飲み込むと、目まぐるしく色を変え――どこか邪悪さをも感じる黒へと色を変えた。
 その黒い炎をも脱ぎすてて、悪魔じみた異形のキャバリアがサンドーサに飛びかかった。
『何処が違う! 何が違う! 個人の感傷で殺しを選ぶお前と! オブリビオンマシンなどを従えるお前と俺と! どう違うか言ってみろ!』
 斬りかかったステラの燃え盛る爪を大振りのナイフで受け止め、サンドーサ機が頭部内蔵式の機関砲を浴びせ撃つ。
 それを装甲を排除した分軽快な運動性を得たステラはすぐさま飛び退き回避し、追いすがる火線を躱して回り込む。が、サンドーサも歴戦の兵。その人格はこそ下衆外道であろうと、実力は一国の主力軍を率いる将帥にふさわしい。バランサーがイカれているならばと強引な推力操作で姿勢を絶えず変更しながらステラを追尾し、機関砲による牽制を加えながら時折の斬撃をナイフで見事に往なしてカービンの致命的な応射でステラを圧倒する。
「くだらないお前のものさしでわたしを測るな! 戦争も人殺しも興味なんてない、わたしはただお前の命を星に還すだけです!」
『この期に及んで取り繕う! 殺意を剥き出しにできないならお前は期待ハズレも甚だしい!』
 幾度目かの交錯。炎の爪がナイフを絡め取り、刃が天高くに舞い上げられる。獲った――などと迂闊に踏み込めばそれは罠だ。警戒し、フェイントを掛けて後退したステラのコックピットブロックがあった場所をめがけて突き込まれた小型のパイルバンカーが空中に杭を打ち出して薬莢を吐き出す。
「勝手な期待をしないでください! ……トゥリオンの皆さん、ごめんなさい」
 互いに決め手を欠く――ひかるはサンドーサの技量に有効打を阻まれ、サンドーサはひかるの警戒心と先の交戦で受けた機体の不調故に圧倒しきれぬ――激突の終焉は、ひかるのそんな謝罪とともに。
 鉄道網や地下街が網目のように張り巡らされたトゥリオン直下、大地の精霊によって隆起した岩塊を炎の精霊が溶融させた燃え盛る岩漿がその地下施設を勢いよく流動し、触れたすべてを焼き尽くしながらサンドーサの真下より噴出したのだ。
『――やはりお前は俺と同類のようだな! こんなモノを操って人を殺せるお前は!』
 ブーストジャンプで離脱を図るサンドーサを蹴落として、マグマの湖に墜ちゆく機体を見下ろしてひかるはただ首を横に振る。
「…………違います。わたしはあなたのようにはなりません。絶対に」

成功 🔵​🔵​🔴​

ルイン・トゥーガン
アドリブ歓迎

はん、そんなツギハギでよくもやる!
だがねぇ?……戦争のやり方?人の殺し方?誰にモノを言ってるんだい!
あぁ!?そんなオレは知ってるみたいな物言いがイラつくんだよ!
そういうのはアタシみたいにNBC兵器全部使ってから言ってみな!
さっきも使ってたし毒ガスは使ってそうだが、アンタに核を使った経験は?それとも潜伏期間の長い疫病をわざと自国の街に流行させて敵軍に占拠させたことは!?
アタシから言わせりゃアンタは軍人じゃないね!ただ争いと人殺しは好きで得意なだけで、国に雇われてるテロリストだよ!

マイクロミサイル48発放ってミサイルポッドをパージして突っ込むよ
ビームアサルトライフルとサブアームのサブマシンガン2門で牽制して高機動とビルを利用した立体機動で翻弄しながら距離を詰めるよ
弾切れのマシンガンをサブアームから捨て、ライフルも投げつけつつ身軽になって腕部ビームガンを撃ちつつ懐に潜り込んで、
両腕のビームガンをビームソードにして斬りかかるよ!空になったサブアームで敵の腕を抑えながらね!




「流石に死んだ……ってのは、ちょっと楽観しすぎかねぇ」
 煮え立つような岩漿に満たされた地下構に叩き落されたサンドーサを視認しても、ルインはあの男が死んだとは思えなかった。
 あれは大人しく死んでくれるような物分りのいいタマではない。どれほど醜くみっともなかろうとも、地べたを這い血反吐を啜りながら最期まで道連れを求める類の悪鬼羅刹だ。
 都市構造を焦がす煙と蒸気に向けて油断なく銃を向けて警戒する彼女の予感を裏付けるように、その煙を切り裂いて対人ドローンが飛来した。
「やっぱりね! ――こんなオモチャを今更飛ばしたってさ!」
 脇から回り込むように展開した副腕がサブマシンガンの弾幕を展開すれば、この異様な熱気にセンサーを狂わされただまっすぐ飛翔するしかないドローンはあっという間に蜂の巣にされて爆散する。相手は獣じみた怪物だ、後手に回ればそれだけ対処が困難になる。ルインはすぐさまドローンの飛来した方向に、曲射の弾道で撒き散らすようにミサイルを無誘導斉射する。
 カーテンのように煙の尾を引いて飛翔したミサイルは、果たして全弾が岩漿の超高熱によって誘爆するが撒き散らされた破片がその奥に潜むであろうサンドーサの機体を襲ったはずだ。
 牽制にはなった。そう信じてルインはミサイルポッドを強制排除し突撃する。ホバー能力を持つアマランサスであれば岩漿の上でも多少の作戦行動は可能だ。が、見ての通りミサイルの炸薬は熱せられて誘爆しかねなかった。それを見越して、最大級の火力を持つそれを贅沢に牽制に使い切る判断は正解だった。
 煙を突破しすり鉢状に抉れた地下構に駆け下りたルインの眼前には、大破したセレナイトの腕を全身から生やしその全てでシールドを構える異形。そのコアとなっているキャバリアは紛れもなくサンドーサの駆るツギハギの機体であった。
「リフレクターシールドをホバーの代わりに使ったってのかい。はん、そんなツギハギでよくもやる!」
 地獄のようなトゥリオン地下に待ち構えていたサンドーサ機は、喪失したバランサーを補うように全身に纏うセレナイト型のリフレクターシールドの反発を利用して宙に浮かび、かつルインの放ったミサイルの斉射を凌いでいた。
 もともと無かった副腕が至るところに接続されているのを見るに、大破した第八騎士団機の残骸をあの一瞬のうちに回収したか、あるいはあのオブリビオンマシンにそれらを引き寄せる異常機能でもあるのだろう。あの分では猟兵の与えたダメージのいくらかも修復されたかもしれない。
「でも無敵ってわけじゃあないさね! 使える残骸が無くなるまで攻撃し続ければいつかは墜ちる!」
『できるか、貴様に! 甘っちょろい猟兵如きに俺を殺し続けることが!』
 副腕の構える盾の隙間からパラティヌス型のランスライフルが突き出される。鏡写しのようにアマランサスもビームアサルトライフルを構え、同時に巴を描くように互いの側面を取るべく回り込みながら銃撃戦が開始された。
「できるさ! だいたい気に入らないんだ、そんな俺だけが戦争のやり方を、人の殺し方を知ってるみたいな物言いがさ! イラつくってんだよ!!」
『……はッ、貴様に何がわかる! 戦争の何たるを貴様が語れる!』
 互いの砲撃は機体を掠め、冷え固まり始めた溶岩を再び僅かに熱するのみ。機体をほぼ剥き出しに機動戦を挑むアマランサスに対し、幾重にもシールドに守られたサンドーサの方がやや優勢であろうか。
「わかるさ、アンタより何倍もね。アタシみたいにNBC兵器全部使ってからほざきな!」
 急減速からの反転加速。ドリフトめいて滑りながら、サブマシンガンを照準もなしに乱射するアマランサス。 突然の行動にサンドーサの対応がほんの少しだけ遅れ、シールドの表面を弾丸が叩く。
 念動制御――思念に感応する操作系統であろうサブアームが収縮し、降り注ぐ弾丸を阻むべく盾を密集させた。視界が盾に遮られる一瞬、ルインはライフルとサブマシンガンすらも投棄してサンドーサとの距離を一気に詰める。
『アマランサス乗りの……貴様、ルイン・トゥーガンか! 俺と同じ穴の狢が、猟兵だと!? 笑わせる、失望させる、巫山戯るなよ!』
「アンタなんかと一緒にするんじゃァないよ!!」
 分厚い盾の護りの上から強かに蹴りを叩き込めば、サンドーサ機は突然の衝撃に姿勢を制御しきれず吹き飛ばされる。
 シールドのリフレクション機能で未だ高温を保つ地面に叩きつけられることこそ防いだが、狂ったバランサーの復旧を後回しにしたためか起き上がるまで時間がかかるだろう。それでも並のパイロットより遥かに早く立て直しを図るサンドーサに腕部ビームガンを浴びせ撃ちながら、ルインは激昂する。
「アンタに核を使った経験があるのかい!? わざと自国の街に疫病を流してから敵に占領させたことは!? それが……それが任務だから、唇を噛んで従ったことが!」
 ルイン・トゥーガンは優秀な軍人"だった"。だったがゆえに、表沙汰にできない汚れ仕事に従事し、その果てに祖国に捨てられた。
 それでも彼女は軍人であろうと、あの行いの責任を背負い続けて生きることを覚悟した女だ。
 サンドーサとは違う。目の前のこの男はただの殺人の快楽に溺れた狂人だ。少なくとも今はそう成り果てている。
「アンタは軍人なんかじゃあない。ただ争いが好きで、それがたまたま得意だっただけの男さ。アタシに言わせりゃそりゃ国に飼われたテロリストっていうんだよ!」
『はは、ははははは! ああ、そうさ認めよう。俺は殺しを楽しんでいる。貴様が後生抱えて悔やんでいるような汚い仕事も、俺ならもっと上手く、もっと大勢巻き込んでやれた! 後悔だってしなかっただろうさ! この汚物のような世界をブチ壊してやるには大勢殺すのが近道だからな!』
 連続で被弾したダメージに耐えかね、ついにシールドを構えるセレナイトの腕が次々砕けて機体から脱落する。ほぼ同時にサンドーサが立ち上がり、ランスライフルを刺突の構えで突き出した。
 いつの間にか、彼我の距離は白兵の間合いに至っていた。
 起き上がりざまに突き出された槍に怯まず、ルインは更に前進する。脇の隙間を抜けていく切っ先、ダメージにならぬと判断して即座に槍を引き戻すサンドーサにさせるものかとアマランサスのサブアームが槍の先端を掴んで抵抗する。
 これで最大の武装は封じた。ルインは腕部ビームガンから展開したビーム刃を、同じ戦争犯罪者でありながら決して相容れることのない男の機体へと叩き込む――!

成功 🔵​🔵​🔴​

メアリーズ・エリゴス
アドリブ&絡み歓迎

アハァ、同類の気配を感じて来ましたよぉぉ!
防衛及び救出作戦には向いていないと引き止められていましたが、制止を振り切ってロートガルで転移/戦域侵入しました

えぇ、えぇ!敵の殺し方、すなわち敵の愛し方!私なりの愛を教えてあげますよぉぉぉ!
乱入早々に生体CPU用薬物を投与して、挨拶代わりに念動誘導式のマイクロミサイル&ビットでの包囲爆撃ですよぉ!
そこにすかさず胸部メガビーム砲にロングビームライフルなど、市街地での使用は不向きの大火力も、敵機の周辺地域ごと吹き飛ばす勢いで躊躇わずに撃っちゃいますよぉぉ!
きひっ!近づけばどうにかなるとでも?ビームアックスソードと隠し腕ビームサーベルで接近戦にも対応してますぉぉぉ!
首から提げたT型サイコマテリアルで増幅した殺意(アイ)の念を、サイコ・コントロール・システムが機体に伝えて性能以上の能力を発揮した機動で翻弄し、念動誘導兵器で追い詰めて、念の力で異常強化されたビームでトドメですよぉぉ!
くひっ!私の殺意(アイ)、受け取ってくださいねぇぇぇ!!




 捩じ込まれたビームソード、それを発振するキャバリアの腕部を肘から斬り落とせば、刃を消失させた紅の腕が地に落ちる。
 装甲をえぐり取る一撃はサンドーサの異形のキャバリアに痛打を与えたが、狂える戦士はそれが致命傷でないならば取るに足らぬと落ちた腕を踏み砕く。
 サンドーサは満身創痍だ。だが、それでも彼は死んでいない。死んでいないならばまだ戦える。まだ殺せる。まだ本懐を果たすことができる。
『く、く、く、は、は、は、は……! 猟兵ども、狂気に浸る覚悟もない連中に俺が殺せるかよ……!』
「アハァ、だったら私ならあなたを[愛す/殺す]ことができますかぁぁ?」
 全身に内蔵した推進器から箒星のような尾を引いて、狂愛に満ちた叫びを伴って、血のように赤い重キャバリアがサンドーサめがけて飛来する。
『チッ、しつこさだけは評価に値する連中だ……ッ』
 飛翔しつつ切り離した念動誘導弾が、あるいは思念制御式の機動飛翔砲がサンドーサ機に包囲殺到した。
 バックブーストでミサイルの爆風の致死圏内から脱出し、追撃するビットを頭部の機関砲で牽制するは流石聖王国最強騎士の一角たるサンドーサ。並の騎士であれば一個小隊が消し飛んだであろう攻撃を凌いで、その発生源たる赤いキャバリア――メアリーズの操るロートガルを睨めつける。
「いひっ、同類の気配を感じて来ましたよぉぉ!」
『この圧力、壊れた強化人間の類か! 紛い物が俺の狂気を語るなッ!』
 直後、ロートガルが放った強烈なビームが都市区画を薙ぎ払った。本来であれば宇宙戦闘を前提とする、超長距離艦隊戦に備えたロートガル最大最強の火力たる胸部メガビーム砲と携行するロングビームライフルによる掃射である。
 ミサイルとビットによる飽和爆撃が多数の敵機を迎撃、破砕するためのものであるなら、これは強固かつ強大な存在を撃滅するための切り札。
 宇宙戦艦であろうと貫通、撃沈可能な一撃を、サンドーサは流石に受けきれぬと判断すると推力に物を言わせた大跳躍で無理矢理に火線の上を飛び越えて回避する。
「あははぁ……! 避けられちゃいましたぁ! あれっ、町中じゃ使っちゃ駄目なんでしたっけぇ。まあいいでしょお、このまま躊躇わずに撃っちゃいますよぉ!」
『イカれ人形が……俺の戦場を汚しやがる! 貴様如き、出来損ないがッ!』
 市街地への被害をお構いなしに強力なビームを乱射するロートガルに対し、頭上で小刻みに噴射機動制御を敢行しながら装甲内部に隠し持っていたショートプラズマガンを撃ち下ろすサンドーサ。
 メアリーズの強攻は空中で機敏に回避機動を行うサンドーサの機体を掠めて炙るのみ。一方でサンドーサの反撃もロートガルの分厚い装甲に阻まれて有効なダメージと言うにはいささか弱い。
「さっきから出来損ないとか壊れてるとかひどいじゃないですかぁ! 私はただあなたを[殺し/愛し]てあげたいだけなのにぃ!」
『ほざけ強化人間ッ! 戦場で愛だのと戯言を!』
 ゆえの接近戦は必然であったろう。サンドーサ機が急加速して地表に降り立ち、加速そのままロートガルに激突する。続けざまに抜刀されたプラズマソードがロートガルの装甲を引き裂くが、紅の巨体はその程度のダメージも物ともせず手斧めいたビームの刃を握りしめてサンドーサに振り下ろす。
 ビームとプラズマが、それぞれを刃の形に留める力場が干渉しあい鍔迫り合いが始まった。
 馬力で圧倒的に勝るロートガルがバランサーを欠き不調のサンドーサを押し込むが、一方でサンドーサも巧みに機体の姿勢を操り、力を受け流して押し切らせぬ。
「きひっ、近づけばどうにかなると判断しただけのことはありますねぇぇ! でも、ロートガルは接近戦が不得手というわけじゃありませんよぉ!」
 がぱ、と開いた装甲の隙間から、細く簡素なマニピュレーターアームが這い出してくる。その先端には小型のビームサーベル。
『中身と同じで気色の悪い……!』
「気色悪いだなんてひどいじゃないですかぁ、私はこんなにあなたを[愛してる/殺したい]のにぃ!」
『薄気味悪い濁った殺意を垂れ流す……! 貴様を強化した輩はよほど趣味が悪い……ッ!』
 節足動物めいてうごめく隠し腕がサンドーサ機にビームサーベルを突き立てるが、サンドーサも頭部機関砲で隠し腕の基部を撃ち抜いて破壊する。
 だがその僅かな拘束で、僅かな攻防による足止めでメアリーズには充分であった。
「くひっ! 第八騎士団長フェリペ・サンドーサさん! あなたの[殺意/愛]、感じましたよぉ! だから、きひっ……私の[愛/殺意]も、受け取ってくださいねぇ……!」
 胸部のビームキャノンが、本来の出力を上回る急速なエネルギー充填を受けて煌々と輝いて――閃光がサンドーサの機体を飲み込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
S~M

緋瑪「殺す事、戦争以外知らないんだね。昔のわたし達みたいに」
瑠璃「貴方は生きてちゃいけない。同類として、ここでキッチリ殺してあげるよ」

オーバーロード!

最初は合体せず、二機で連携して戦闘。
緋瑪機と瑠璃機でミサイルを僅かに時間差つけて【一斉発射】。
敵が回避・迎撃でミサイルに時間を掛ける間に緋瑪はソードライフル連射しながらスラスター全開【推力移動】で接近し、大鎌とソードで攻撃。
同じく瑠璃もソードライフルで敵の動きを妨害する様に撃ち込みつつ、ヴェスバーの【エネルギー充填】

緋瑪が大鎌で敵の武器・ガードを引っかけて崩し、ソードライフルによる斬撃。
追撃で至近距離でボムを炸裂させると同時に瑠璃がヴェスバーを叩き込んで距離を開け、緊急で【双神合体】発動。

合体後は【限界突破】フルブーストによる加速とバリアで敵の迎撃を強引に掻い潜ってぶつかり、全速全力のパイルをそのコクピットに叩き込んで貫き、更に【零距離射撃】でヴェスバーを放つよ!

緋瑪「オマエは本当の強さを知らない!」
瑠璃「だから貴方はここで死ぬんだ」




 それはもはや死骸であった。
 装甲は溶融して癒着し、関節可動部からは火花を散らす。
 銃火器は尽くが弾薬や機関部の誘爆によって崩壊し、辛うじて留めた人型もゆらゆらと不安定に揺れている。
 だが、その死に体にあってなお彼の者の――戦士と死者の王の狂気は欠片と衰えず。
『……まだだ、まだ死ねん。俺は……俺はまだ死なん!』
 まるで蘇るかの如く、朽ちた装甲を脱ぎ捨てるオブリビオンマシン。その周囲を護るように、瓦礫の街から這い出してきた聖王国のキャバリアが陣を組む。
 彼らのいずれもが死者であった。この短時間でオブリビオンマシンとして骸の海より蘇った騎士たち。それはかの敗残者の王が為し得た奇跡か、あるいは死者の王の狂気が引き寄せた災厄か。
『このクソのような世界をブチ壊す……それまで止まらんと、俺は誓った……! そのために貴様らの生命だろうがなんだろうが使い潰す! ――我に続け!』
 アラートの鳴り止まぬコックピットで荒々しく覆面を剥ぎ取るサンドーサの顔には罪人を示す刺青が痛々しく刻まれていた。
 その凶相を狂気に歪めて、死人を率いる王者が再び進撃を開始する。そこにめがけて降り注ぐミサイルの雨は、時間差を付けて迎撃を至難にした四季乃瑠璃/緋瑪の駆るジェミニオンによる迎撃。
 死者の軍勢を吹き飛ばす数多の誘導弾による爆撃を受けてなお、サンドーサと彼に付き従う冥府の騎士たちは歩みを止めぬ。
 敗残の王たるサンドーサ機に至っては、側を行進する僚機の首を鷲掴みに、ミサイルへの盾に使ってこれを凌いでみせた。
『また一つ覚えの長距離砲撃か! 死を恐れる臆病者に殺されてやりはせん!』
「死を恐れる? どっちが!」
 緋瑪の駆る赤いジェミニオンがソードライフルを乱射しながら飛び出し、一気に肉薄する。その接近を阻止しようと剣を槍を携え割り込んだ第八騎士団の亡者を飛び越え踏みつけ、それでも切り抜けられない相手は――
「お願い、瑠璃!」
「任せて、緋瑪」
 後方に控える誰よりも信頼できる"自分"の狙撃が道を切り拓くに委ね、殺人姫姉妹の片割れが敗残の王へと迫った。
『腕はある。度胸もある。だが――執念が足りん!』
 振り下ろされた大鎌が、死者の王が掲げ持つセレナイトの死骸に深く突き刺さり――その向こう側から、死骸越しに突き込まれた刃がジェミニオンの装甲を削り取る。
「ぐっ……まだまだ!」
 大鎌を手放し、突き出された刃の衝撃に身を任せることで深く貫かれることを避けて弾き飛ばされたジェミニオンがソードライフルを振りかぶり、銃把を握るマニピュレーターをくるりと回して刃を叩きつける――両断されたセレナイトの向こうに覗く敗残の王のカメラアイが禍々しく輝き、両者突き出した銃口が同時に砲炎を吐いた。
 ジェミニオンのソードライフルは敗残の王の頭部を吹き飛ばし、敗残の王の手首に仕込まれたニードルガンの放った徹甲スパイクがジェミニオンの、先の刺突に削り取られた肩部装甲の傷にそって突き刺さり片腕の機能が失われる。
『首の一つや二つくれてやるよ!』
 続けざまに両断されたセレナイトの上半身を叩きつければ、片腕を失い防御の不完全な緋瑪機はその大質量による打撃に弾き飛ばされた。
「強い……でも、殺すこと、戦争のやり方しか知らないんだね」
 戦争に最適化された男の強さは、あくまで駒としての強さだ。自身が最強の駒であり、周囲の軍勢もまた感情や個性を考慮しない駒としての運用に特化している。それ故の狂気の感染機構なのであろう。遍く狂った軍団は皆均一に、怯えすくむことのない狂戦士の集団として王の意のままに動くのだろうから。
 だがそれは、極めて脆い薄刃の強さに過ぎないと緋瑪は知っている。
 かつて自分たちもそうであったから。殺ししか知らぬ殺人姫だったから、サンドーサの脆さを、仲間を信じ託すということができない弱さを誰よりも理解できる。
「オマエは本当の強さを知らないんだ! ――瑠璃!」
 追撃せんと殺到するセレナイトやパラティヌスの群れを決死で捌きながら緋瑪が叫ぶ。その時には、彼女の信じるもうひとりの自分、誰よりも近く、自分ではない自分であるがゆえに決して究極の理解に至ることのできない他者は照準を敗残の王へと合わせている。
 射線上の邪魔な屍兵は緋瑪自身が囮となって引き剥がし、砲撃を阻むものはなし。
「まかせて、緋瑪。貴方は生きてちゃいけない、元同類としてここできっちり殺してあげる」
 瑠璃の細い指がトリガーを引き絞り、大型のビームライフルが閃光を放つ。
 貫徹力に特化した収束ビームが、ほぼ同時に放たれたニードルガンの杭を巻き込み消滅させながら敗残の王の肩口から抉り取るように腕部を引きちぎる――
『首も! 腕も! いくらでも換えはある! わかったような口を利く不愉快なガキどもめ、貴様らこそここで死ね……!』
 手近なパラティヌスの腕をもぎ取り強引に接続して、無理矢理のブーストダッシュで瑠璃機に迫るサンドーサ。
「緋瑪、合体を!」
「今行く、瑠璃!」
 そこに屍兵の重包囲をどうにか突破した緋瑪が割り込み、二機のジェミニオンが一つに重なる。
 合体によって出力の向上したジェミニオンが瞬間的な加速で敗残の王と激突すれば、ランスライフルがジェミニオンのバリアを貫通してその腹に突き刺さり、パイルバンカーが敗残の王の胸に――わずかにサンドーサを掠めて、コックピットブロックを逸れた位置に突き刺さる。
『は、は、は! 誰も俺を殺すことはできん! 俺を裁くことはできん! 俺が、俺だけがこの世界を、お前たちを裁く権利を――』
「うるさいよ、弱虫」
「貴方はここで死ぬんだ」
 他者を殺すことに固執するサンドーサの狂気、その裏に潜む自身の死に対する恐怖を感じ取った殺人姫たちは、ひどく冷酷に言い放った。
 こつりとビームライフルの銃口が敗残の王のコックピットハッチを叩き、そして――

大成功 🔵​🔵​🔵​



 焼け焦げた血と肉の臭い。
 嗅ぎなれたそれは、しかし男自身の肉体から発されていた。
 コックピットブロックを貫通したビームに半身を貫かれ、ほとんど死に体で融けゆく破孔から空を仰ぐ目は、それでいて黒煙が揺れる空を見ていない。

 ――男は罪人であった。異端の子に産まれたというそれが罪であるならば、生まれながらにして男は世界に許されざる罪人であった。
 司祭だった父は権威主義に傾倒し、教義を曲解し教化の名のもとに戦火を煽る中央大聖堂の方針を公然と批判し、異端として火に焚べられた。
 敬虔な信徒だった母は浄罪のためと連行され、帰ってきたのは藁束のようにかさついた一握りの遺髪だけだった。
 そして罪人の子は罪人の刺青を入れられて、その生涯を罪を贖うためだけに消費するモノとされた。
 神はそう仰った。ならばその時より、すべてを奪われた罪人の子にとって神は憎むべきものでしかなかった。

 そうして罪に縛られた男は戦場に流れ着く。
 中央に睨まれた、印入りの罪人を雇う場所など、そういう連中を集めた肥溜めのような懲罰部隊くらいしかない。そして当時の第八騎士団はそういう場所だった。
 男――その時はまだ少年だった彼は、そこでこの世の地獄を経験する。
 充分な準備もないまま、ただ宗教的正当性――それも嘘や方便で塗り固められた、内側に向けてのみ整えられたひどく滑稽で薄っぺらなハリボテ――を掲げた侵攻の先駆けとして敵地に進軍し、損耗度外視のカナリアとして威力偵察に使い潰される。
 支援砲撃なしで隣国国境の要塞線に玉砕めいた特攻を仕掛けるくらいならばまだいい。戦友は皆一撃で五体をバラバラにされ、苦しむ暇もなく死んだはずだ。だが、それでも無意味な死を強いた祖国への怒りと憎しみは確かに彼の胸に芽生えていた。
 補給の望めない状況で敵国深くに侵攻した挙げ句、飢えや病気でじわじわと身体を蝕まれて死んでいった連中は酷かった。そんな環境でも神に祈り、救いを乞いながら力尽きた奴らを彼は憐れみ、あのようなものにだけは成り果てたくはないと誓った。
 そしていくつかの地獄を乗り越え、少年が青年となり部隊でも最古参の一人となった時、彼は上官をその手に掛けた。
 この手で上官を殺し、そのキャバリアを奪い、咎めようとした仲間たちも皆殺しにして。仲間の血に塗れた手で同士討ちに気づき攻勢に打って出た敵の一個中隊を殺し尽くした時、男は自らの戦争の才に気づいた。
 英雄のように華々しいそれではない。名将のように鋭利なそれでもない。 ただ何処までも土に塗れて血腥い殺しの延長線上にある、敵を殺す才をいくつも重ねた結果の戦争の才覚。
 それを自覚した時、男の中ですべてが一つに繋がったのだ。
 戦争。戦争。戦争。殺して殺して殺し尽くし、何もかもが灰燼に帰するときにこそ、ようやく己の魂は安んじることができるのだと。
 男に敵意と殺意を向ける敵国も、男を罪人として蔑んだ聖王国も、世界のありとあらゆるすべてを燃やし尽くす。それが己の撒いた炎によるものであったならば、両親を奪い己の人生すらも奪っていったくそったれの神への最高の復讐であろう。

 そして男は憎しみを増幅させる機構となった。
 聖王国の望む戦乱に、誰よりも早く烈火の如き威勢で斬り込み、そして容赦のない苛烈な攻勢で敵を滅ぼし尽くす。いつしか第八騎士団の長となった彼は、その権威を用いて戦争を演出することに執心する。
 懲罰部隊であったはずの第八騎士団は聖王国中の戦争狂や傭兵すら飲み込み、男の下で最精鋭と持て囃された。聖王国は第八騎士団が連日齎す大戦果に熱狂し、敵は常に最前線に在り、軍民関係なく無慈悲で残虐に振る舞う第八騎士団を聖王国という国家そのもののアバターとして憎む。
 いつか第八騎士団への憎悪が聖王国を蝕み滅ぼす業火に燃え上がる日を、男は刺青を隠す覆面の下で望んでいた。

 ――だから。
 ――ああ、だから。
 ――この炎は、こんなところで燃え尽きていいものではない。

 憎しみが足りぬ。狂気が足りぬ。絶望が足りぬ。
 ここで死ねば、せっかく撒いた火種も小火のまま燻り消えてしまう。
 糞に塗れた神が作り給うた、反吐の出るようなこの世界を焼き尽くすその時を見ずして死ねるものか。
 燃えカスのような炭化した身体で死に瀕した男は、怨念だけでこの世にしがみつく。その存在はもはやオブリビオンそのものに等しい。
 ――ああ、その時男は正しく敗残者の王として、この世を憎み死より蘇りしオブリビオンとして再誕したのだ。
 死にゆく敗残者の王を葬送するかのごとく両脇に並ぶ、死せる第八の騎士たちが一斉に各々の剣を槍を高らかに掲げる。
 そうして、剣を持つものは己の胸に。槍を持つものは向かい合う僚機の胸にその刃を突き刺して、死後の死を以て王の復活を祝ぐのだ。

『あァ』
 金属が擦れて軋むような声。焼けただれた声帯の代わりに、大破寸前の機体がその鳴動によって声を発している。
『おれの』『戦争は』『まだ』『おわらん』
『おれの憎しみが』『おれへの憎しみが』
『世界のすべてを』『焼き尽くす日まで』
 自決し、あるいは同士討ちで死んでゆく第八騎士団の屍兵を取り込んで、敗残者の王はそのかたちを変えてゆく。
 ある男の憎悪がこの世に顕現したかのごとき、禍々しく異形に歪んだ機体が猟兵たちの前に立つ。 
ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・L

状況は最悪。なるほど、いつも通りって事だ。
いいさ、お前の戦争をここで終わらせてやるよ"燎原"

■方針
UCを発動し、敵機の情報収集を開始
推進移動で距離をとり、武装の制圧射撃/弾幕で動きを牽制
ここに来るまで、そしてここで見た共和国軍の機体の損壊情報
戦闘中に得た情報を、戦闘知識/瞬間思考力でまとめる

「銃撃それよりも近接兵装での損壊が目立つな。
 …そんなに自分の手を汚したいのか殺人狂。ならその悪意に付き合ってやる」

情報収集完了後
敵機の間合いに入り込み、近接戦を誘う
敵の攻撃をショットガンもしくは機体の片腕で受け、至近距離のミサイルで弾幕をはる
これで落とせるなんて思っちゃいない、体勢が一瞬でも崩れてくれればそれでいい

継戦能力/限界突破/推進移動で損傷・衝撃に耐え、そのまま加速
使える腕のダインスレイフの重量/貫通攻撃/部位破壊を叩き込む

「煉獄の炎じゃお前はもう救われない、戦争の続きは地獄の悪魔とでもやっていろ」


赤城・晶
L、アドリブ、連携OK

一部は同意だがお前には、戦争を楽しむお前には言われたくないわな。休息がある、平和を願うから、生きて共に人生を歩むからこそ、楽しい。

まあ、こういう輩は何を言っても無駄だな。なら、結果で見せつけるだけだ。行くぜ!ウィリアム!今回はマジのガチだ!!
そして、あの坊や達に説教しないとな!

ウィリアム、ミラージュ装甲展開【迷彩】、レーダー【索敵】、【ジャミング】をフルパワーだ。幻影を展開。
常に状況を把握、更新してくれ
一人ではなく、即席だが連携を重視する。
相手の有利な立場にさせないように幻影で残骸や武器を、攻撃を、仲間を投影したり、全ての手段を使って全力で立ち回るぜ。

ブースター【滑空】【ダッシュ】による高速ヒット&アウェイだ。狙うは急所。武器はビームダガー【先制攻撃】とビームライフル。隙を見極め、あいつの近くでUCを使うぞ!
武器が、手足がもげようと生きて倒せれば最上だ!チャンスをものにする!

何が何でも勝って、二人で生き抜くぞ!ウィリアム!


ルージュ・リュミエール
出遅れたと思いきや、凄いのがいやがるね
あぁ、こいつはぁ……
怨みと憎しみの念で、復讐心でヒトを捨てちまったか
昔に似たようなもんを見たことがあるね、サイキックキャバリアが暴走した先にある負の側面、その具現化
古代魔法帝国時代で、たまにあったとはこの時代じゃ初めて見たよ

ちょっと見ただけの弟子だが、あいつらがまた無理して出張らないよう、此処で終わらせてやらないとね
いくよ、ソルフレアっ!
インクルシオンから炎が上がって、ソルフレアを召喚するよ

もう復讐の炎を燃やすのはやめな、アンタはもう負けたんだよっ
だから、アタシが浄火してやるから、いい加減に燃え尽きて眠りな!
必殺ぅ!バーニングエンド・スラッシャァァァァ!!




「殺しても死なないってのが喩え話じゃないとはな……」
 ぶちまけた散弾が敗残者の王の機体を穿って抉り取るが、その度にやつは転がる残骸を取り込んで損傷を修復していく。
 ダメージが通らないわけではない。ならば決して不死ではないはずだ。だが、そうあってくれという願いを踏みにじるように彼のオブリビオンは不滅であった。
「いくらなんでも数機のキャバリアでやり合う相手じゃないな。かといって――」
 後退したマルセール大隊残存はボロボロ。552機械化歩兵中隊の装備ではアレの相手をするには酷。対キャバリア戦に特化したアンベルセ部隊の火力であればアテにできようが、そもそも彼らは生身の歩兵だ。アレに近づくだけでも自殺行為なのだから、それをやってくれと頼むのは本当に後が無くなった時だけ。
 となれば、
「俺たちだけで仕留めるか、多国籍軍連中が来るまで此処に奴を足止めするか。なかなか状況は最悪だぜ」
 やれやれとぼやき、一旦後退してよれた煙草を一本取り出し咥えるヴィクター。これが最期の一服になるかもしれないのだ。コックピット内で煙を出すなと文句を言う支援AIを無視して火を点ければ、肺いっぱいに煙を吸い込んだ。
「ま、いつも通りって事だ。ヘンリー、今までのデータは役に立たん。改めてあいつの情報を収集しろ」
「そういうことなら俺にも一枚噛ませてもらうぜ」
 刻一刻とその機体形状を変質させていく敵機に対して、共和国軍がその生命と引換えに得た情報はもはや役に立つまい。優秀な兵士たちの遺したものを捨てることに後ろ髪を引かれる思いが無いではないが、相棒の演算能力をフルに利用するためにはこれを捨てて思考のスペースを確保する必要がある――そう判断しかかったところに割り込んだのは、晶の駆る電子戦機ヴェルデフッドだ。
「ヴィクター、あんたの相棒と俺のウィリアム、二機のAIを接続してあいつの解析をやり直す。そうすれば必要な時間は半分以下で済むはずだ」
 晶の提案は互いに益がある。共和国軍残存の戦力に期待できず、また多国籍軍の来援まで耐え切るにはこちらの損耗も激しい。たった二機でこの戦場を切り抜けるには、最大効率でサンドーサをもう一度殺す他にない。そのための最短ルートを選ぶならば、ウィリアムとヘンリーの接続による情報の並列処理は必須に近い。
 だが、同時に晶はこの提案が受け入れがたいものであることも承知している。
 傭兵にとって、自身の生命を預けるキャバリアの、その中核でもある支援AIを他者の前に晒す――それどころか他のAIへの接続を許すというのは危険な行為だ。今は味方同士の晶とヴィクターも、いつかどこかの戦場では敵同士で再会するかもしれない。その時相手にこちらの機体中枢へアクセスした経験があるというのは極めて大きなリスクとなる。
 ヴィクターの機体は多少の通信能力補強を施されているとはいえ、あくまで突撃戦闘型の指揮官機。最初から強行偵察仕様として電子戦能力を重視しているヴェルデフッドが相手ならば、AI同士の電子戦に於いては晶にアドバンテージを奪われるだろうことは想像に難くない。
 戦場を知る"まっとうな"傭兵であれば難色を示すだろう提案に、しかしヴィクターは紫煙を吐きながらニヤリと笑って頷いた。
「そいつぁ頼もしい。ヘンリー、ポートを開け。お客さんと喧嘩するなよ?」
「おいおい、俺が言うのもなんだが正気かよ!?」
「極めて正気さ。"燎原"の野郎を殺してやるのに手段を選ぶ余裕はない、だろ?」
 それはそうだが……などと逡巡する暇は与えられなかった。
 "燎原"フェリペ・サンドーサの成れの果てが、そのツギハギの朽ちかけた見た目から想像もできない速度で地上を噴射滑走して大型のバスタードソードを振り払ったのだ。
「チッ! ウィリアム、ヘンリーのサポート! 今回はマジのガチだ、さもなきゃどっちかが死ぬ……!」
 間一髪で散開したヴェルデフッドとプレケス。それを追撃するようにショートソードがナイフのように投擲され、装甲を掠めて砕く。
「投げ物でこの威力かよ……!」
 ヴィクターが驚愕に声を漏らす。突撃戦闘型であるプレケスの装甲は辛うじて貫通を拒んだが、ヴェルデフッドは直撃を貰えばそうはいくまい。
「……仕方ないか。俺が前に出る。アキラ、牽制と妨害を頼めるか?」
「了解、だが二人で生きて帰るんだぜヴィクター。あの坊やたちに説教してやらなきゃいけねぇしな!」
 わかってるよ、と頷いて、隻眼の古参兵は地獄の炎そのもののように狂い燃え盛る燎原の火、敗残者の王の間合いに再び飛び込んでいく。
「手荒い歓迎だな!」
 迎え撃つバスタードソードを受け止める左腕。ギリギリのタイミングで展開の間に合ったエネルギーフィールドが、単純な質量と馬力に押し切られてバチバチと明滅する。
 これでサンドーサの剣と何合も打ち合えるものではない。このままサンドーサの間合いでやり合って勝ちを拾えるかは五分を切るだろう。
 それでも退くわけにはいかない。一歩でも下がれば、サンドーサはその分の間合いを瞬時に詰め寄りさらなる一歩後退を強いるだろう。そうして何度も下がった先にはヴェルデフッドと、退却した共和国軍のトゥリオン守備隊がいる。
「いつぞやを思い出すぜ。あの時のケリを着ける日がようやく来たようだな」
『この機体……そうか』『貴様か、ヴィクター・ホリディ!』
 いつかの過去、ヴィクターが祖国を失ったあの災害の場にもこの男は居た。
 聖王国からの人道支援部隊。国内に無尽蔵に溢れ出すオブリビオンマシンを封じ込め、生存者を救出するという名目で派遣されたサンドーサ率いる第八騎士団は、オブリビオンマシンに汚染された疑いがある者に国境線を跨ぐこと許さぬと一方的にヴィクターの同僚と彼らの守る難民キャンプを焼いた。
「何度も夢に見たぜ。銃撃より近接兵装を好むお前のやり方……!」
 ヴィクターの小隊が現場に到着したときには、火炎放射で焼き払われた避難民のテントの燃えカスや刀剣でコックピットを叩き潰された友軍キャバリアの残骸が、そしてその中心で佇むサンドーサの指揮官型セレナイトだけがあった。
 ――聖王国騎士団は友軍である。我々はこの虐殺行為の現場を直接視認したわけではない。
 故にあのときヴィクターは、明らかに第八騎士団による虐殺行為が行われたという証拠が揃っていながらに、政治的判断を優先してサンドーサを見逃した。あの時あの状況で、"友好国"の非道な行為を糾弾したならば。
 民意は聖王国すらも敵と見做し、誠実に救援活動を実施してくれていた第三や第六騎士団の撤兵、悪ければ国内にオブリビオンマシンという敵を抱えたままでの聖王国との開戦まであった。
「だがそれでも、お前はあの時あの場所で殺しておくべきだった」
『戦争にたらればはない』『その程度のこともわからんか!』
「分かってるよ、そのくらいな!」
 腕力で劣るならば機体全体を動かし、体重移動で敗残者の王の膂力に対抗する。
 欲張ってはいけない。やや劣勢であっても、対抗できているという現状を維持することが重要だ。そうすれば背後で光学迷彩に身を隠し機を伺う晶が必ず必殺のタイミングを見出してくれる。
 何度目かの大剣の一撃を剣の横腹を殴りつけて無理やり逸らして、ヴィクターはその瞬間まで死神と踊るのだ。

「騎士団長級、前にやり合ったのは第五騎士団だったか……どいつもこいつも、そんだけ強いクセにオブリビオンマシンなんぞに呑まれやがって……!」
 ブイレストからの避難民を追撃した第五騎士団バルトアンデルス。そしていま眼前で死せども現世にしがみつき、死と闘争を振りまこうとする第八騎士団フェリペ・サンドーサ。いずれもパイロットとしては一流の人間だった。
 あれが味方であったならば。挑みかかるヴィクターの通信越しの横顔を見るに、サンドーサに関しては"ああなる"以前から人格的に問題のある屑や外道の類であったろうが――オブリビオンとの戦いに大きく寄与したことだろう。
 光学迷彩で身を隠し、ヴィクターが稼ぐ貴重な時間を使って仕込みを進めていく晶。
 あの大破した機体で、おそらく物理的には損壊著しく原型を留めていないであろう肉体で、サンドーサが如何にして外界を認識し戦闘を続けているかが不明である以上効果があるかはわからないが、自身の姿を隠しつつ電磁的にも光学的にも精巧なダミーホログラムのヴェルデフッドをビルの屋上や物陰に狙撃姿勢で展開しながら回り込む。
 晶自身にはサンドーサとの因縁はない。だが、あの男が野放しになれば教え子であるクラウスたちが死ぬだろうというのはわかる。
「一遍面倒見ちまったからな。むざむざ死なせちゃ寝覚めが悪いんだよ……!」
 だから殺す。恨みはないが、情を抱いた人間を殺させないために殺すしかない。――そのためならありとあらゆる手段を使い、自身の生命すら賭け金にしてでもやるしかない。
「ウィリアム、ヤツの解析は!」
 ヴィクターは徐々に追い込まれ、互角であった戦況は押し負けつつある。これ以上は待てないぞ、という焦りとともに相棒に問うたが、返るのは未だ八割ほどという回答。
「ウィリアムとヘンリーの並列処理でもまだ八割かよ……! くそ、このままじゃヴィクターが死んじまうぞ!」
 コックピットをブチ抜こうと押し付けたプレケスのショットガンが、トリガーを引く前にそれを握る右腕の肩ごと砕き斬られるのが見えた。
 隻腕で抵抗するヴィクターの、通信から漏れ聞こえる声には普段の飄々とした余裕が消えつつある。
 ――九割。解析完了まで残り数十秒。ここで晶は賭けに出る。
「ウィリアム、最悪の場合お前の解析完了したデータを全部ヘンリーに押し付けろ。諸共壊れるのだけは避けるんだ」
 ビームダガーを抜き、身を屈めて敗残者の王の背を睨みつける。
 ここまでくればヘンリーの独力でも残りの解析を終えられよう。そのための時間を、今度は晶が命がけで作り出す。
 光学迷彩を脱ぎ捨てながらブーストダッシュで突撃。ビームダガーを構えて出現した刺客にサンドーサが反応すれば、ホログラムの狙撃兵がビームライフルを撃つ動きを見せる。
『偽の狙撃手を伏せての突撃』『機転の利く優秀な戦士だ』『が、死ね』
 ダガーの刺突をあっけなく躱され、狙撃手もまた偽物と見破られた。
 最小の動きでダガーを受け流すと、そのまま突撃の勢いにぶつけるように敗残の王のバスタードソードが晶の視界いっぱいに飛び込んでくる。
 咄嗟に回避姿勢を取るが、オーバーフレームに深々食い込んだ刃がコックピットブロックの外殻を滑りながら上半身を轢き潰して削ぎ落とす。
「ぐあっ……上半身まるごとかよ! でもな、チャンスは貰ったぜ――ウィリアム、ヘンリーとの接続解除! EMP最大出力だ!」
 だが、肉薄できれば晶の狙いは果たされる。機体の電子戦装備が機能喪失する寸前、最大出力で放射された強力な電磁波は物理的な威力すら伴って敗残の王を焦がす。
『ぐ、ォァ……ァ!!』『クソが……ッ!!』
 電装系が弾け飛び、全身から火花を散らす敗残者の王。
 それでもヴェルデフッドに食い込んだ刃を引き抜き、今度はコックピットを叩き潰すべく上段に構える。
「俺を忘れるなよ。なあ、お前の戦争をようやく終わらせてやれるぜ"燎原"」
 その脇腹からコックピットの残滓にめがけて捩じ込まれる、エネルギーフィールドを纏ったプレケスの左拳。
「獲った……!」
 間一髪、EMP攻撃の直前で完了した敗残の王の再分析。その結果を基に突き出された必殺の一撃が、今度こそサンドーサの魂を現世に縛るオブリビオンマシンの中枢を穿った。
 ――――だが。
『おれは』『おれは、神を』『世界を、ブチ壊すまで』
『――――――死ねるか!!!!』
「…………なっ!!」
「まだ動きやがるのか!?」
 確実に仕留めたはずで、完全に機能を喪失したはずの敗残者の王が再びカメラアイを炎の如き赫に染めて動き出す。

「――出遅れた、と思ったんだけどね」
 執念だけで再起動を果たした怪物。それを睨みつけて、炎のように紅い髪の女が呟く。
 上半身を失ったキャバリアが蹴り倒され、トドメを刺さんとする剣からそれを庇うべく割り込んだ黒銀のキャバリアが無事な左腕をも砕かれ完全に戦闘力を喪失する。
「あぁ、こいつがまさかこの時代にも湧いちまうとはね」
 かつて古の時代、キャバリアが兵器ではなく権威であり神威に近い圧倒的な力を持った古代魔法帝国の世で、時折こういうモノが現れた。
 彼女はそれをその目で見て、その手で討ってその存在を知っている。
 負の想念を取り込みすぎたサイキックキャバリアが、ある一定の条件下で操縦者を取り込んで至るモノ。
 魔神であるとか、邪神であるとか、その呼び方は数あれど。
「怨みと憎しみでヒトを捨てちまったモノ、サイキックキャバリアの成れの果て……こいつは敵意と殺意だけじゃ殺せないよ」
 女は腰に佩いた剣に手を伸ばし、二機のキャバリアに引導を渡さんとする成れの果てに歩み寄る。
「ちょっと見ただけの弟子に、軽く組んだだけの顔見知り。友人ってほどの仲でもないけどね、こんなモノにやられて死なすには惜しすぎる奴らさ。だから……」
 剣を鞘から引き抜けば、刀身はひとりでに炎を纏う。
 サンドーサが振りまく燎原の炎が殺意と悪意に満ちた炎ならば、彼女の纏う炎は慈悲に満ち満ちた浄化の炎である。
「いくよ、ソルフレア! あいつの復讐の炎を浄火してやるんだ!」
 刀身から溢れる炎が機神の形を作り出し、その炎の内より銀のサイキックキャバリアが踏み出した。
 ヴェルデフッドとそれを庇うプレケスを狙うバスタードソードをインクルシオンの刃が受け止める。
『不快なヤツが……』『おれの邪魔を、するッ……!』
「アンタはもう負けたんだ、いい加減燃え尽きて眠りな!」
 燃える刃と重い鉄塊の刃が何度も切り結ぶ。実力は伯仲、一進一退の戦いを終わらせたのは、もはや戦闘能力は喪失したと思われていたキャバリアだった。
「その機体、ルージュか! 待ってろ、今援護する!」
 晶がほとんどの機能を喪失したヴェルデフッドのコンソールを操作すれば、ダミーホログラムの狙撃手に紛れて仕込まれていた本物のビームライフルがソルフレアと剣戟を繰り広げる成れの果ての背中を撃つ。
 貫通はしない。与えたダメージもすぐに再生されるだろう。だが被弾に気を取られた一瞬を、歴戦の魔法騎士は浄化の炎を纏う刃を、歴戦の傭兵隊長がこじ開けた成れの果ての脇腹に開いた破孔めがけて深く突き刺した。
 剣を伝い、清き炎が成れの果ての全身を循環して穢れを禊ぐ。
『おれは』『おれは、まだ……』
 振り上げた剣を握る指先から、ぼろぼろと崩壊を始める成れの果て。
 崩れていくその頭部にソルフレアがそっと五指を添えてやれば、醜いツギハギの装甲の下からセレナイトの白い顔が現れる。
 それは涙を流すかのように、センサーガードの隙間から一筋の炎を溢して粉々に砕け散った。
 ――"燎原"フェリペ・サンドーサ、あるいはその最期の妄執だったものはその時ようやく炎の中に消えていったのであろう。
「罪を重ねたお前は煉獄の炎じゃ救ってやれん。俺が行くまで地獄の悪魔と大好きな戦争の続きをやってろ」
 ヴェルデフッドとプレケス、そしてソルフレア。満身創痍のキャバリアを回収するべく、同じくらい疲弊した共和国軍が駆けつける足音を、そしてトゥリオンの北側からようやく駆けつけた多国籍軍のキャバリア隊のスラスターが奏でる駆動音を聴きながら、ヴィクターはもうそこに居ない男の魂へと語りかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月18日


挿絵イラスト