兇弾狙うは、エースの亡失
●嘗て
喪われた生命がある。
だが、得られた時間がある。
ただ、それだけのことであるのに、それはとても誇らしいことであると、嘗ての『フュンフ・エイル』は言った。
「未来は選ぶものだ。恐怖を持って誰かを支配しようとする者を排して、初めて平和が在る。誰もが平和を願っている。誰もが幸せになって欲しい。そう願うことが、俺の役割だ。だから、俺は託す」
激突するキャバリア同士が激しく地上で火花を散らす。
青い騎士の如きキャバリア『熾盛』と黒鉄の狂戦士が如きキャバリア。
両者は互いに一歩も譲らぬようであったが、しかし青いキャバリアの動きは圧倒的であった。
如何なる操作によって挙動を為しているのか、誰にも理解することができないような動き。
言葉にするならば武道の達人の足運び。剣の達人が振るう太刀筋。狙撃の名手が引き金を引くように。
あらゆる動きが規格外であった。
「全ての人で幸せになろうというのだよ! そのためには!」
黒鉄のキャバリアのパイロットが叫ぶ。
「そのためにこそ恐怖がいる。人は愚かだ。繰り返す。お前の言葉は、すべての人に善意の灯火を燈さなければ叶えられぬ夢物語だと知れ。予言してやろう。百年後も平和は来ない。他ならぬお前が信じた人間の手で戦乱は続いているのだと!」
「だとしても、俺は――僕は!」
袈裟懸け振り下ろされた斬撃の一撃が黒鉄のキャバリアの左腕と右足を切断し、続けざまにコクピットブロックを切り裂く。
両断されたキャバリアが大地に沈んだ。
青いキャバリアは遠き異国の地、『八咫神国』に攻め込んできた『サスナー第一帝国』の将を打倒し佇む。
その機体に傷はなく。
そして、これより後にも改修は重ねられど、目立った破損なく眠りに就くまで、唯一つの破損もなかった。
けれど、パイロットである『フュンフ・エイル』は真の意味で平和の脅威を取り除けたことは、生涯において一度たりとてなかったのだった――。
●『八咫神国』
「懐かしいな。夢を見た」
「へえ、どんな夢だったんだい?」
「今際の際の夢だ。いや、記憶と言えばいいだろうか。『フュンフ・エイル』に敗れた時の記憶だ。私の――いや、俺の予言通りだ。やはり人は変わらない。百年の時を経ても何一つ変わってない。浪費し、奪い合い、殺し合う。生産性の欠片もない。この『八咫神国』だってそうだ。我が祖国は失われても、何一つ変わっていない」
その声の主は度し難いものを見るように、『八咫神国』の街を見下ろす。
変わらぬ営み。
平穏など程遠い世界にありながら、偽りの平穏を閉鎖的な街中に再現している。先日起こったクーデターの如き『希望の軍』も、己たちの宿敵に寄って阻止された。
「あれは惜しかった。己たちの行いによって如何に自分たちの目が外に向かっていない内向的なものであるかを知らしめるはずであったのに」
声の主は歯を鳴らすほどに苛立っていた。
『殲禍炎剣』を破壊すると言ってクーデターを起こした『希望の軍』。それを敢えて放置したのは、彼等がそれを為すことができないどころか、国の滅びを加速させるものであったからだ。
「停滞はいらない。必要なのは再生の前の破壊のみ。――であったというのに……!」
「ああ、表向きには『八咫神国』上層部が派遣した傭兵部隊ということになっているよだけれど……彼等は『猟兵』と言う。君は知らないかもしれないけれど、出逢えばわかるよ。そう、ひと目で見ればわかる。これが『自分』の敵だとね」
何処にでも居て、何処にもいないような声が苛立つ声に寄り添う。
甘やかな声であったし、苛立つ声の主を肯定するようであった。
「だから、力を貸してあげよう。そのための『シーヴァスリー』だ。あの国は、彼等を滅ぼすために作り上げた国だからね。存分にやるといい。百年越しだ。友よ」
その言葉に黒鉄のキャバリアが唸りを上げる。
四肢は全てが不揃いの機体の寄せ集めであった。まるでパッチワークをしたかのような容貌。されど、そのアイカメラに輝く紅い眼光は、まるで稲妻のように輝きを放ち続けていた。
「けれど、その前に鼠が一匹。失敗だったな。『アイン』が無事であったのは。そして、彼女たちに家族という概念があったのは。まさかこちらの計画を見越した上で介入してくるとは。少々彼女……『ツヴァイ』の能力を過小評価しすぎたかな。あれの処理を頼んでもいいかい?」
「ああ、存分にやらせてもらう。『フュンフ・エイル』が作り上げた偽り全てを破壊する!」
「頼んだよ――『敗残者の王』」
甘やかな声の主が見上げる黒鉄のキャバリア……否、オブリビオン『敗残者の王』がジェネレーターを唸らせながら立ち上がるのだった――。
●知ってしまった者
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア、『八咫神国』で起こります」
以前彼女が予知した『殲禍炎剣攻撃作戦』による滅びの光景。
それを猟兵たちが阻止したことは記憶に新しい。その時、『希望の軍』として立ち上がっていたのが『アイン・ラーズグリーズ』であった。
彼女の身柄は一時的に『八咫神国』が確保していたが、『グリプ5』において彼女はスパイ容疑とそれにまつわる事件によって指名手配されている人物である。
「『アイン』さんの身柄の受け渡しにやってきたのが『ツヴァイ・ラーズグリーズ』さん……『グリプ5』において、同じく皆さんの活躍によってオブリビオンマシンから解放された人物です」
その彼女が、今回ナイアルテが見た予知では、『八咫神国』の上層部である人物がオブリビオンマシンによって狂わされている現場を見てしまい、追われているのだという。
「『ツヴァイ』さんは『アイン』さんと共にキャバリアで逃走を開始していますが、無数のオブリビオンマシンに追われています。このままでは多勢に無勢でしょう。さらに悪いことに、『シーヴァスリー』と呼ばれる小国家のキャバリアも何故か『八咫神国』の中であるというのに、これを追ってきているのです」
猟兵がやらなければならないことは、『ツヴァイ』、『アイン』両名の安全確保と追手である『シーヴァスリー』の精鋭キャバリア部隊の撃破。
そして、『八咫神国』上層部……いや、国の主とも言うべき『帝』が駆るオブリビオンマシンの撃破である。
「どうやら以前から上層部である『帝』と呼ばれる人物はオブリビオンマシンによって思想を狂わされていたようです。以前から続く事件の影にちらついていたのは、『帝』なのかもしれません」
確証は持てないが、『グリプ5』に関わるオブリビオンマシン事件を考えるとそう考えられるのだという。
「時間はあまりありません……ですが、此処でお二人を失うことは、あまりにも痛烈な痛手です」
お願いします、とナイアルテは頭を下げ、猟兵たちの転移を見守るのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいてオブリビオンマシンによって思想を歪められた『八咫神国』の上層部、その国家元首とも言うべき『帝』を打倒し、追われる『グリプ5』の『ツヴァイ』と『アイン』を救うシナリオとなっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
冒険です。
この章では思想を歪められた『八咫神国』のパイロットたちがオブリビオンマシンに乗って『ツヴァイ』が駆り、『アイン』を載せたキャバリア『熾裂』を追っています。
『ツヴァイ』はエースですが、敵地で単身です。無数のオブリビオンマシンに囲まれては切り抜けることはできないでしょう。
彼女たちの安全を確保するために追手をどうにかしなければなりません。
また追手のオブリビオンマシンはそんなに強くはありません。
●第二章
集団戦です。
さらに追手の援軍として小国家『シーヴァスリー』の精鋭キャバリア部隊が、みなさんと『ツヴァイ』たちを包囲し攻撃してきます。
彼等は通常のキャバリアに乗っていますが、精鋭部隊です。
普通のオブリビオンマシンの集団と遜色ない強さを誇ります。
●第三章
ボス戦です。
今回の事件の中心にいる『帝』が駆るオブリビオンマシン『敗残者の王』が現れます。
これを破壊することで今回の事件は収束を見せます。
ですが、『敗残者の王』の実力は相当なものです。技量、機体共に強力そのもの。ともすれば『エース』級の力を発揮することでしょう。
『帝』は男性であり、『八咫神国』を代々治める血族の長となります。
元は清廉な人物であり、『グリプ5』と友好関係にあったのは、『フュンフ・エイル』とのつながりがあったからとも言われています。
ですが、今はオブリビオンマシンによって歪められています。これを倒さぬ限り、事件は収束しないでしょう。
それでは戦乱続く世界、クロムキャバリアにおける皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『企みを知ってしまった者』
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POW : 追手を向かい撃ち、蹴散らす
SPD : 情報収集して、行く手を察知する
WIZ : 変装して追手を引きつける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
一機のキャバリア『熾裂』が小国家『八咫神国』の大地を疾駆する。
それを追うのは無数のオブリビオンマシンたちであった。次々と銃弾が放たれ、ミサイルが弧を描いて空より飛来する。爆風の中を走る機体が軋むだけに留まっているのは、操縦するパイロットの技量があってのことだろう。
「――ッ、しつこいですね!」
「三時と八時から来てるぞ! 避けてみせろ、『ツヴァイ』!」
「耳元で叫ぶから!」
『ツヴァイ』の視線がミサイルを捉え、卓越した操縦技術でチャフをばら撒き、爆風の中を機体が走る。
しかし、その挙動を『アイン』はコクピットシートに捕まりながら不満げに言う。
「あの程度にチャフを使うな! ホーミングでもあるまいし」
「機体を身軽にしたいんですよ。わかっているでしょうに」
「どのみち追い込まれてることには変わりねぇだろうが! 奴らは自分たちのことなんぞ勘定には入れてねぇ! 捨て身で来られたら、それでおしまいだ!」
彼女たちは姉妹である。
数字で呼ばれた嘗ての『憂国学徒兵』のクローン。しかし、家族でもある。『アイン』、彼女には『グリプ5』においてスパイ容疑と、同じく兄弟である『ドライ』、『フィーア』殺害の容疑も掛けられている。
だが、同じコクピットの中で互いの死角を補いながら『八咫神国』から逃れようとしている二人の間に確執はなかった。
彼女たちの中ではすでに決着がついているのだろう。
自分たちが知り得ぬ戦乱の影に潜む存在。それをつかもうとした道程において、散った生命のために彼女たちは生きようとしていた。
「病み上がりのくせに、本当に……仕方のない人」
「けが人だからって加減してくれるんなら、世話はない。来るぞ!」
彼女たちは確かに『エース』だ。
けれど、包囲するオブリビオンマシンの数は徐々に増えていく。
この現状こそが『八咫神国』がオブリビオンマシンによる狂気に侵されていることを如実に示していた。
「私達がここで死ぬことが、きっと『ヤツ』の計画にとって既定路線なんだろうさ。だがよ――!」
「ええ、ここで死ぬわけには参りません。必ずや、『グリプ5』に戻らねば――!」
彼女たちが生き延び『グリプ5』に、友好国であった『八咫神国』の惨状を知らせなければならない。
今や『グリプ5』は滅亡した小国家『フィアレーゲン』の難民を抱え、同じく友好国であった『フルーⅦ』とも危ういバランスで繋がっている状態だ。
新興小国家である『シーヴァスリー』の脅威が、そこに加われば今の『グリプ5』は攻め落とされてしまうのだから――。
ユーリー・ザルティア
【心境】
「ヤレヤレね。次は一体どんな悪事を考えてるのやら。」
ツヴァイちゃんも色々大変ね
【行動】
判定:POW
レスヴァントに乗って出撃。
ARICAを乗せたパールバーティは『援護射撃』よろしくね。
さて、敵はボクにお任せってね。
通りすがりの傭兵さ。
ここは任せて先に逃げな。
地上スレスレを『悪路走行』『ダッシュ』で最大機動で動かし、攻撃を回避しつつ、ツヴァイちゃんたちに近い機体に接敵しアストライアの『制圧射撃』で撃破しつつ、そのまま突っ込んでいきディストーションブレイクで吹っ飛ばして行くよ。
撃墜より、行動不可を狙うよ。
ここは戦場じゃないしね。
小国家『八咫神国』の街中を駆け抜けるキャバリア『熾裂』。
それを追うのは『八咫神国』のオブリビオンマシンである。彼等にとって、物事の判断は重要ではなかった。
ただ命令を遂行する。
意志は狂わされ、物事の善悪を判別する力すら狂気に呑まれた。
放たれるミサイルの爆風の中を突っ切って走るオブリビオンマシンは、自機の損害など気に留めてもいなかった。
「何がそうまでさせるのかわからねぇが!」
「――そういうふうに信じ切っているのでしょう。それが!」
『アイン』と『ツヴァイ』が捨て身で襲いかかるオブリビオンマシンを躱しながら、遅々として進まぬ逃走に焦りをにじませる。
機体は旧式量産機。
状態も良好とは言えない上に多勢に無勢である。時間とともに機体はすり減っていくのは、如何に『エース』と言えど無理なからぬことであった。
しかし、どんな時にも希望は灯るものである。
「ヤレヤレね。次は一体どんな悪事を考えているのやら」
そのつぶやきとともに『熾裂』の真横をかすめるようにして飛ぶのは重力フィールドを纏ったユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)の駆る『レスヴァント』であった。
その攻防一体の重力フィールドがオブリビオンマシンを弾き飛ばし、『熾裂』の危機を救う。
「援軍……!」
「なわけないだろうが、あれは!」
「『ツヴァイ』ちゃんも色々大変ね。さて、敵はボクにおまかせってね!」
「なんで『ツヴァイ』だけが大変だって!」
『アイン』が通信でやけに騒ぐ。
自分だって大変なのだと言っているようでもあり、その様子にユーリーは苦笑する。それだけ元気ならば負傷していても問題はないと思った。
「ボクは通りすがりの傭兵さ。ここは任せて先に逃げな」
僚機である無人キャバリア『パールバーティ』から飛ぶ援護射撃がオブリビオンマシンを近づけさせぬと爆風を上げる。
ユーリーは『レスヴァント』でもって瓦礫が渦巻く地上を疾駆する。
常に彼女の機動は最大速度を持って行われる。並のパイロットであれば加速度Gでもって機体より先に肉体が保たない。
けれど、彼女にはその心配など無い。
「やれやれ、こー言う熱血は性に合わないんだけど…偶にはいいかな。んじゃ行くよ…レディッ!!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
先程もオブリビオンマシンを吹き飛ばした呪力フィールドが『レスヴァント』を包み込んでいく。
ディストーション・ブレイク。
それはユーリーのユーベルコードであり『レスヴァント』の攻防一体の突進である。
白き弾丸とかした『レスヴァント』がアサルトライフルから弾丸をばら撒きながら『熾裂』を追うオブリビオンマシンを蹴散らしながら、縦横無尽に駆け抜けていくのだ。
ミサイルの直撃すらも重力フィールドの前には遮られ、その威力を発揮できない。だというのに、アサルトライフルの弾丸は次々とオブリビオンマシンの関節やカメラアイを的確に貫き、敵の戦力を減らしていくのだ。
「ここは戦場じゃないしね」
背後に遠ざかっていく『熾裂』をみやり、ユーリーはつぶやく。
何もかもが敵の思惑に乗る必要など無い。
ユーリーは『撃墜女王』としての矜持をもって、『八咫神国』の街中を生命を奪うのではなく、オブリビオンマシンのみを停止させ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリッセ・トードゥ
援護に来たよ。そのまま進んで。
『熾裂』と併走し短く通信で伝えた後、迎撃に移る。
スラスターによる「推力移動」で地面すれすれを滑空しつつ街中を高速移動。「肉体改造」された体で高Gに耐える。
追手を引き付けつつ「重力波レーダー」で敵群を「情報収集」し把握。さて、反撃といこうか。
AIとの並列思考による【瞬間思考力】で全敵の位置とベクトルを瞬時に計算。
【フォースレイヤー】使用。「マルチプルミサイルランチャー」から多弾頭ミサイルを発射、数百に分裂したミサイルを思考波で操り、敵を確実に狙い撃つ【誘導弾】と化し【範囲攻撃】。パイロットは殺さない様に気をつけておこう。
彼女達は無事逃げられそうかな?援護を続けよう。
如何に『エース』と言えど、無数の敵に囲まれてしまっては孤軍奮闘も良いところである。
どれだけ技量が優れていたとしても、機体は万全ではないのだ。
動けば動くほどに摩耗し、消耗していく。
武装もそうだ。火器は弾丸を消費し、撃てなくなれば無用の長物と化す。けれど、敵の火力はこちらを上回り、逃げ道を塞いでいく。
「いつまでも躱しきれないと知りながら、飽和攻撃を仕掛けてくる……!」
「だから言っただろうが、敵は自分の安全を勘定に入れてないって!」
『アイン』と『ツヴァイ』が疾駆するキャバリア『熾裂』のコクピットの中で、弱まらず、却って包囲網を狭めてくる敵オブリビオンマシンの陣形に足を止める。
彼女たちにとって生き残ることこそが第一である。しかし、それをさせぬと迫るオブリビオンマシンの包囲は分厚いものであった。
「囲まれた……! 無理に突出するなよ。足をやられたら!」
『アイン』の言葉は尤もであった。
けれど、囲いを突破しなければこのままジリジリとなぶり殺しにされるだけだ。
一か八かと考えた瞬間、包囲の外側から爆炎が上がる。
「――……援護に来たよ。そのまま進んで」
通信が入り、それが己たちを逃がすために来た援軍であることを彼女たちは知る。
「『CZ-X』……!」
その白い機体が戦場に駆け込むように無数のミサイル群と共に包囲網に穴を開ける。爆炎の中、それらを切り裂くようにして地面すれすれを滑空するキャバリアを駆るのは、アリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)であった。
彼女は転移と同時に機体を転送し、凄まじい加速で持って『熾裂』を取り囲む包囲網を食い破り、通信を入れたのだ。
「あの動き……肉体改造されて!」
『ツヴァイ』の言葉通り、アリッセは肉体改造された猟兵である。
凄まじい加速度で体にかかる負荷を耐えうるように改造された半有機機械生命体の軍属キャバリア乗りである。
機体がミサイルと共に戦場を蹂躙していく。
通常のミサイルよりも威力や射程が伸びている分、彼女の放つミサイルをオブリビオンマシンたちは躱すことも迎撃することおmできないのだろう。
「ロックオン……ファイア!」
その瞳にはユーベルコードの輝きが灯っている。
彼女たちを死なせぬと、意志を持って放たれる攻撃は、ただ狂気に呑まれるだけのオブリビオンマシンに乗るパイロットたちを遥かに凌駕するものであった。
「念動……!」
マルチプルミサイルランチャーから放たれるミサイルは全てはが思考波で操られ、一つ一つが意志を持っているかのように空中を走り、次々とオブリビオンマシンを撃墜していく。
「これだけの範囲攻撃で敵パイロットは殺さねーかよ!」
『アイン』がアリッセの放ったミサイルで敵包囲網を食い破る光景をみやりながら、『ツヴァイ』が機体を走らせる。
「そういう方たちなんです。私達にとっては当たり前でも、あの方たちには、そうではない。その価値観が『フュンフ』に新たな道を示してくれた。それを喜びましょう」
アリッセは巧みに機体を操り、包囲網に穴を開け、『熾裂』とすれ違う。
その一瞬だけでよかったのだ。
これだけの敵オブリビオンマシンの数だ。アリッセが足止めしてもすぐにまた囲むだろう。
「でもね、私だけじゃあないんだよ。来ているのはさ!」
そう、次々と転移してくる猟兵がいる。どれだけの数のオブリビオンマシンが大挙しようとも、彼女たちを死なせない。そのために彼等は戦う。
だからこそ、彼女たちが無事に逃げおおせるまでアリッセは戦場にミサイルの雨を降らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
賀茂・絆
つまり…最大で三国に関わるお仕事な訳デスヨネ?
ビジネスチャーンス!
降臨するのデス!別雷大神!
ここで活躍して「キズナさん」の名前を宣伝するとしマショウ!
敵機1体に【先制攻撃】で掴みかかりオブリビオンマシンの魂に干渉!動きの支配権を【略奪】!木偶の坊になったその機体を武器として振り回し敵陣に突っ込みマス!
あっははははは!どうデス?技量も何もないただの【暴力】の味は!
そしてこんな素人同然の暴れ方をしているワタシが敵の攻撃に対応できているのはワタシの商品である入神導入剤で集中力を強化し【瞬間思考力】を底上げしているお陰デス!
そこの御二方!今ならお買い得デスヨ!緊急時大特価!2割引でご提供致しマス!
いついかなる時も賀茂・絆(キズナさん・f34084)は商機を逃さない。
それは例え世界が変わろうとも関係のないことである。
彼女はビジネスで動く商売人だ。そこに傷を負う者がいるのならば、薬を手配するのは己の仕事であるとばかりに数多の世界を股にかける猟兵なのだ。
こと、クロムキャバリアという世界において、彼女の商売は常に仕事に溢れている。戦乱だけが続く世界はそういう世界だ。
だからこそ、彼女は『グリプ5』、『八咫神国』、『シーヴァスリー』という小国家が入り乱れるクロムキャバリアの一地方の騒乱に目をつけたのだ。
「つまり……最大で三国に関わるお仕事な訳デスヨネ? ビジネスチャーンス!」
彼女は正しい。
しかし、一つだけ訂正するのであれば、この三つの国以外にもこの地方には後二つ小国家が残っている。
『フルーⅦ』、『ファン・リィゥ共和国』の二つだ。更に『グリプ5』においては滅亡した『フィアレーゲン』という国から派生した難民キャンプというお荷物まで付随しているのだ。
言わば、彼女にとってはまたとないビジネスの場であるのだ。
「降臨するのデス! 別雷大神!」
彼女の言葉とともに背後に降り立つのは雷を切り裂く大神とも呼ばれるオブリビオンマシンであった。
神霊が如き雰囲気をまとうオブリビオンマシンを彼女は完全に制御している。
「ここで活躍して『キズナさん』の名前を宣伝するとしマショウ!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
それは、巫術・木偶の坊(フジュツ・デクノボウ)。
魂に触れ、魂を支配し動きを拘束、そして魂を掴むことのできるユーベルコードである。
大地を疾駆し、キャバリア『熾裂』を追うオブリビオンマシンの一気に掴みかかり、その機体の支配権を強引に奪うのだ。
「逃がさないのDEATH!」
輝くユーベルコードと共に機体の制御権を奪い取った絆がしたのは、掴みかかったオブリビオンマシンを鈍器が如き武装として敵に叩きつけるという蛮族めいた戦いであった。
オブリビオンマシンである彼等にとって、本来の目的は『熾裂』である。けれど、目の前に立ちふさがるオブリビオンマシンは、己たちを遥かに超える規格外なる存在であった。
オブリビオンマシン同士がぶつかり合い、装甲の破片を撒き散らしながら破壊されていく。
機体が破損しても絆は即座にユーベルコードでもって別の機体へと掴みかかり、コクピットブロックを強制的に排出させながら、新たな鈍器を手に入れて叩きつける。
「あっはははは! どうデス? 技量も何もないただの暴力の味は! そしてこんな素人同然の暴れ方をしているワタシが敵の攻撃に対応できているのは!」
絆の機体の外部スピーカーが突如としてオンになり、その声を外に届ける。
一体何をとその場にいた者全てが訝しんだことだろう。
このような状況でオープンに回線を開き言葉を投げかけることなど、無意味であった。
けれど、大いに注目を集めた絆は叫ぶのだ。
「ワタシの商品である入神導入剤で集中力を強化し、思考を底上げしているお陰デス!」
「めちゃくちゃいいやがるな……」
キャバリア『熾裂』のコクピットの中で回線に割り込んできた絆の言葉に『アイン』がげんなりしている。
どう考えても怪しい感じの薬じゃねーか、と思っているのだろう。
「そこのお二方! 今ならお買い得デスヨ! 緊急時大特価! 二割引でご提供いたしマス!」
「2割引ですか!?」
『ツヴァイ』が若干食いついているのは、こういう商法に弱いからかもしれない。
どうデス!? と絆のセールストークはオブリビオンマシンを得物に敵へと叩きつけられ、装甲とフレームがひしゃげる音をBGMにするようにして回線に届けられるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
『アイン』さんと『ツヴァイ』さん、脱出したんだ。
ここはなんとか『フュンフ』さんに会わせられないかな。
そのためにもしっかり逃げ切ってもらわないとだね。
わたしは【ネルトリンゲン】で出撃。
早くは飛べないけど現地で空母出して間に合わせよう
【M.P.M.S】はチャフモード。
ジャミングをかけて『熾裂』の姿を敵から隠しつつ、
『熾裂』には誘導ビーコンを出して、こちらに収容をしたいな。
ここまで逃げてきたんだし、このあともあるし補給や整備、必要だよね。
収容できたら【モーター・プリパラタ】で補給とメンテ!
はじめまして、でよかったかな?
菫宮理緒って言うよ。
フュンフさんに縁のある感じなんだ。信用してもらえると嬉しいな。
ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』が『殲禍炎剣』の射程に入らぬギリギリの空をゆっくりと飛びながら小国家『八咫神国』の街を見下ろす。
そこにあったのはキャバリア『熾裂』と、それを追うオブリビオンマシンの群れであった。
「『アイン』さんと『ツヴァイ』さん、脱出したんだ。ここはなんとか『フュンフ』さんに会わせられないかな……」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『ネルトリンゲン』の中でモニターとデータをにらめっこしながら、戦場の状況を把握していく。
空を飛ぶ空母である『ネルトリンゲン』は、このクロムキャバリアの世界においては最大の速度を発揮できない。
常に空を暴走衛星『殲禍炎剣』によって抑えられているからだ。
しかし、追われる『アイン』と『ツヴァイ』は今も『八咫神国』のオブリビオンマシンに追い回されて包囲網を突破できずにいる。
彼女たちは『エース』であるが、無論彼女たちを救うのはそれだけが理由ではない。なぜならば、彼女たちは『フュンフ・ラーズグリーズ』の家族だからだ。
彼女たちの存在は『フュンフ』にとってかけがえのない存在。ならばこそ、失われていい理由など何一つないのだ。
「そのためにはしっかりと逃げ切ってもらわないと……ミサイルランチャーはチャフモード。ジャミングを掛けて……!」
理緒は『ネルトリンゲン』からチャフモードに切り替えたミサイルを放ち、オブリビオンマシンが放つミサイルの軌道をそらしていく。
「うう、早く飛べないってストレス貯まるね。でも、こっちに収容できないかな?」
理緒は『熾裂』に誘導ビーコンを出す。
彼女たちの機体をなんとか収容し、補給をしてから送り出す中継点としての役割をこなそうとしているのだ。
「誘導……? 何処の誰だよ」
「そういう言い方、失礼でしょう!」
『アイン』はともかく、『ツヴァイ』は『ネルトリンゲン』が幾度か『グリプ5』の動乱の際に現れ、協力してくれた空母であると理解しているのだろう。
出された誘導ビーコンに従って、ミサイルを躱しながら『ネルトリンゲン』のハッチへと入り込むのだ。
「ここまで逃げてきたんだし、この後のこともあるし補給や整備、必要だよね」
理緒は早速、モーター・プリパラタと呼ばれるユーベルコードに寄って瞬時に機体の状況を解析し、補給と修理を行っていく。
それはあまりにも人外じみた行いであったことだろう。
まうで魔法かなにかを見ているようでもあったのだ。『アイン』に至っては、自分が扱えるキャバリアがハッチの中にないかと頭をめぐらしてもいる。
「補給はありがたいが、どこのどいつだ、あんたは」
「はじめまして、でよかったかな? 菫宮・理緒って言うよ。『フュンフ』さんに縁のある感じなんだ。信用してもらえると嬉しいな」
「報告によりお名前だけは存じ上げております。この度のご助力ありがたく。しかし、この空母ではいずれ私達を抱えていては補足され、撃墜されてしまうでしょう。速やかに私達は……」
『ツヴァイ』はすでに理解しているのだろう。
『ネルトリンゲン』に自分たちが存在するかぎり、理緒の身を危険晒してしまうということを。
オブリビオンマシンの標的は唯一、『熾裂』である。
ならばこそ、この機体を抱えていては足の遅い『ネルトリンゲン』はオブリビオンマシンにとって格好の的だ。
そうなっては、撃墜されるのも時間の問題だからだ。
「うん、わかってる。だから、できるだけの補給はしておくよ。貴方たちの腕なら大丈夫ってわかってるから。だから、きっと生きて『フュンフ』さんの元に戻してあげるからね!」
理緒は頷き、再び『熾裂』をハッチから送り出す。
できることは多くはない。けれど、理緒は信じている。この戦乱の世界に繋がれてきた『エース』の絆というものを。
それがあればこそ、この局面もきっと彼女たちは乗り切れるはずだと信じているのだ――。
大成功
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村崎・ゆかり
生き証人の抹殺に、ずいぶんな数を繰り出してきたわね。
それにしても、いつからこの国はオブリビオンマシンに侵食されていたのかしら。
考えるのは二人から話を聞いてからでいいか。
黒鴉召喚で市街地の交通網を把握。
キャバリアでの逃走や包囲戦が出来るくらいの幹線道路、となると、ある程度の広さが見込める。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「地形の利用」で紅水陣展開。
悪いけど、この道は行き止まりよ。あなたたちが足を踏み入れれば紅い雨があなたたちを溶かす。
一所に長居は無用。次の地点に急いで回って紅水陣を設置しなきゃ。
黒鴉の目を頼りに、飛鉢法で全力の速度を出して。
敵の迂回ルート全部に絶陣を張ってやる。
『アイン』という存在は、生きているだけで『八咫神国』が『グリプ5』との友好に対して、背を向けていることを示す証左である。
そもそもが小国家同士。
このクロムキャバリアにおいて長距離通信は暴走衛星『殲禍炎剣』によって絶たれている。
連絡のラグはそれだけで不信を募らせる。
数日前までは友好的であっても、数日後には如何なるものになっているかわからない。その疑心暗鬼がクロムキャバリアの世界を百年以上も続く戦乱に陥らせているのだ。
「『八咫神国』……そもそも、救援によこしたキャバリアがオブリビオンマシンであったというところからしてきな臭いと思うべきだったわね」
そうつぶやいたのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
無数のオブリビオンマシンがキャバリア『熾裂』を追う。
ミサイルや銃弾が飛び交う街中は混乱に満ちている。もはやなりふりを構わず、生き証人である『アイン』を抹殺しようとしているのだろう。
「随分な数をまた繰り出してきたわね……もうあのときにはこの国はオブリビオンマシンに侵食されていたのかしら」
考えても答えはでない。
恐らくそうであったのだろうという憶測だけが、ゆかりの中にあるのみ。
ならば、その生き証人である『アイン』と『熾裂』を駆る『ツヴァイ』を助けて話を聞いてからでも遅くはない。
式神である黒鴉から送られてくる視覚情報を頼りにゆかりは、キャバリアの逃走や包囲戦が出来るくらいの幹線道路をさがしだす。
あの二人がその道を駆け抜ける瞬間を見計らって、彼女はビルの屋上から、その瞬間を見定め、ユーベルコードを発現させる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
輝く瞳が、紅水陣(コウスイジン)を展開させる。
走り抜ける『熾裂』の後を追おうとしていたオブリビオンマシンたちが一瞬で強酸性の雨に撃たれ、装甲を、フレームを腐食點せられて擱座していく。
「悪いけど、この道は行き止まりよ。あなたたちが足を踏み入れば、紅い雨があなたたちを溶かす」
ゆかりの目論見通り、複数のオブリビオンマシンたちが紅い雨に打たれて腐食し倒れていく。
けれど、オブリビオンマシンによって心を歪めさせられている者たちにとっては関係のないものであった。
倒れたオブリビオンマシンの残骸をまるで合羽のようにして靄の中を突っ切っていくのだ。
「そういう方法で通り抜けていこうとするのなら」
ゆかりはさらに陣を拡大していく。
どうあっても、彼等は靄の中を最短距離でもって突っ切ろうとする。どれだけの味方を犠牲にしても構わないという狂気こそが、この赤い靄の中に適応するのであろう。
「なら、行く先々に先回りして陣を張ってやるわよ!」
ゆかりは鉄鉢と式神である黒鴉との視覚情報を共有し、オブリビオンマシンが進む先へと先回りし、次々と紅水陣を張り巡らせていく。
彼等が消耗と自機の損失を恐れないというのならば、削れるだけ戦力を削りきってやろうというものである。
「破滅的な思考。それもまたオブリビオンマシンによって狂気に呑まれた証左であるというのなら、この『八咫神国』もまた確実に飲み込まれている……それも、根深いところまで」
ゆかりは感じる。
この狂気の源は、きっと国の中枢から生じるものであろう。
でなければ、オブリビオンマシンに乗る末端のパイロットたちをも取り込むことはできない。
すでにオブリビオンマシンの傀儡へと成り果てていることを感じながら、ゆかりは次々とユーベルコードを輝かせ、オブリビオンマシンの進撃を遅らせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『やれやれ、裏に潜む者は気になるが…今は二人を逃がすのが先だな…謎解きは後回しだ……こちら特空機1型スターインパルス、パイロットのガイ・レックウだ。君たちの援護に来た』
パルスマシンガンでの【制圧射撃】で敵を牽制しつつ、熾裂をカバーするぜ。
相手のキャバリアは操られてるだけなので【なぎ払い】や【鎧無視攻撃】、ユーベルコード【炎龍一閃】で脚部やスラスター、火器を攻撃して行動不能にする。
『裏に潜む悪意が何であれ、俺たち猟兵と人々をなめんじゃねぇぞ』
小国家『八咫神国』に潜むオブリビオンマシンの影は根深いものがある。
かつて小国家『グリプ5』と友好関係にあった小国家群は、もはや『八咫神国』だけであった。
『フルーⅦ』と呼ばれる小国家は機体データの盗用という疑惑に寄って亀裂が走り、その国は『グリプ5』と戦端を開き、猟兵に寄って退けられた。
そして『八咫神国』もまた、かつて救援を送ってくれたにも関わらず、その救援部隊そのものがオブリビオンマシンでもあったのだ。
ならば、導き出されれる答えは一つしかない。
小国家『八咫神国』は、その上層部がオブリビオンマシンによって思想をすでに歪められている。
偽りの友好によって忍び寄る影となった『八咫神国』は今、その証人たる『アイン』を乗せた『熾裂』を破壊しようと大量のオブリビオンマシンを投入していた。
「やれやれ、裏に潜む者は気になるが……今は二人を逃がすのが先だな……」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は己の機体を駆り、扇状と成った『八咫神国』の街中を疾駆する。
すでに多くの猟兵が『熾裂』を援護して、包囲網から抜け出そうとしている。
けれど、未だ包囲は分厚い。
「謎解きは後回しだ。こちら特空機1型スターインパルス、パイロットのガイ・レックウだ。君たちの援護に来た」
ガイは通信で『熾裂』に告げる。
彼女たちの逃走を助けるために包囲網をこじ開けてきたのだ。手にしたパルスマシンガンで面を制圧しつつ、牽制する。
敵は捨て身でこちらを破壊しようとしてくるのに対して、ガイたちは敵オブリビオンマシンのパイロットを殺さない。
それはこの非常時において、足枷でしかない。
「やっぱりそういうことかよ。あんたらは、そういう奴らってことだな」
『アイン』がつぶやく。
猟兵の誰もがオブリビオンマシンのパイロットを殺そうとはしていない。
敢えて機体だけを破壊していると理解しているのだろう。だからこそ、敵はそこを付いてくるのだ。
「敵は捨て身でくるぞ。言うまでもないがよ!」
「言ってわかるものではないが……!」
ガイは『アイン』の言葉に頷き、機体を交差させ、互いの機体を一瞬背中合わせにする。
操縦しているのは『ツヴァイ』であったが、彼女たちはアンサーヒューマンである。瞬時に思考を介して互いのことを理解し、その一手を操縦でもって仕上げんしてみせたのだ。
「さて、一手……仕掛けるか!!」
ガイの瞳がユーベルコードに輝き、同時にクロムキャバリアである『スターインパルス』のアイセンサーが輝く。
特殊超合金製の片刃剣が炎を纏い、機体が回転するのに合わせて円を描くようにして刃が炎龍一閃(エンリュウイッセン)の如く敵オブリビオンマシンへと放たれる。
薙ぎ払う一撃が、オブリビオンマシンの脚部を尽く溶断させ、機動力を奪う。
マシンは確かにオブリビオンである。
けれど、その機体に乗るパイロットたちは狂わされているだけだ。
「此処は任せて行け!」
「ご助力感謝いたします。ご武運を!」
『ツヴァイ』の言葉と共に『熾裂』が背中を離して包囲網の外に飛び出さんと大地を疾駆していく。
ガイの『スターインパルス』の目の前には未だ大挙する敵オブリビオンマシンの姿があった。
けれど、ガイは怯むことなく言うのだ。
どれだけの闇が、この小国家にうごめいていたのだとしても関係など無い。
「裏に潜む悪意がなんであれ、俺たち猟兵と人々をなめんじゃねぇぞ――」
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
【POW】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜…んでられるかー!!って感じのホットスタートですね!
繋ぎに繋いできたエースの証明、
再び守ってみせましょう!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
そして敵の前に着地しつつ
ファントムクォーツユニットでかく乱という
クノイチスタイルで!
隙を見てハウライトポッド射出!
見た目は小さなポッドですけど
それハンマーですので!
当たった敵を薙ぎ倒しつつ
敵の装甲に刺さったところからが本番です
「はい、シリカ、叫んでー!!」
実はそれスピーカーなんですよねー!
【VR忍術】大音響で行動阻害の術です!
それでも抜けてくるなら
フローライトダガーでお相手しますよ!
※アドリブ連携OK
「お呼びとあらば参じましょう」
その前口上は小国家『八咫神国』の街中に響き渡った。
なんだなんだ、と『熾裂』のコクピットシートの背後で『アイン』が周囲を見回していた。
一体何だと思ったのは、回線フルオープンにして垂れ流しにされている前口上であった。
「おいおい、何が始まるってんだ!?」
「この前口上――!」
『ツヴァイ』が顔を上げる。
その先にあったのは、『八咫神国』の高層ビルの屋上であった。
「私はクノイチ、世に潜……んでられるかー!! って感じのホットスタートですね!」
屋上で高らかに宣言したのはサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の姿であった。
彼女は屋上から飛び降りると、凄まじい勢いのまま地上へと落ちていく。
あわや地上に激突すると思われた瞬間、虚空より召喚されるのは白と紫を基調としたキャバリア『ファントムシリカ』であった。
「かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
サージェを包み込むようにして出現した白き残影の如き機体が一瞬で地上を疾駆し、『熾裂』を襲わんとしていたオブリビオンマシンを切り裂く。
さらに機体がまるで分裂したように幻影をばらまく。
その攪乱戦法はまさに忍びというに相応しいものであったが、『アイン』たちにとって、それは馴染みある幻影装置そのものであった。
「機体を多く見せて撹乱するっていうんなら」
「はい、クノイチスタイルですとも! シリカ、『ハウライトポッド』射出!」
『ファントムシリカ』より射出されたチェインハンマーを改造した無線通信用ポッドが敵オブリビオンマシンの装甲に突き刺さる。
ただの投擲武器であったのかと思われた瞬間、サージェが言うのだ。
「はい、シリカ、叫んでー!!」
凄まじいハウリングが戦場に鳴り響く。
無線通信用ポッドであるが、増幅されたシリカの鳴き声のようなハウリングがコクピットに存在するパイロットたちを無力化していく。
暫くは耳鳴りがやまぬであろうし、まともに機体を操縦するどころではないはずだ。
「これぞ、VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)! 大音響で行動阻害の術です!」
ふんす、とサージェが自信満々に告げるが回線で『アイン』がツッコミを入れてくる。
「そういうことやるんなら、僚機には一声掛けとけっつの! 鼓膜が死ぬところだったわ!」
「『アイン』、助けてくださるのですからもう少し言葉を選んで」
『ツヴァイ』がたしなめるが、確かにハウリングの音はスピーカーポッドから凄まじい勢いで放たれている。
目に見えぬ音響兵器ゆえに敵も味方も躱すことはほぼ不可能であったことだろう。しかし、それでも彼女たちは『エース』である。
瞬時に理解して防衛策を取ったのだろう。
「流石は繋ぎに繋いできた『エース』の証明! 護り甲斐があるというものです! おっと!」
サージェはそれでも抜けてきた敵オブリビオンマシンをフローライトダガーの緑色の残光を残して斬り裂き、動きを止める。
その動きはこれまで見せていた雰囲気とは一線を画するものであった。
「言うまでもないがよ、油断するなよ。助けに来た連中が死ぬなんてことは、目覚めが悪すぎる」
『アイン』の言葉にサージェは笑っていうのだ。
「クノイチですから。おまかせあれあれです!」
どこまでもサージェのペースで会話が続くことに『アイン』は少し呆れたように、けれど、信用のおける相手であると理解した。
『ツヴァイ』は援護に感謝しながら、包囲網を突破するために機体を走らせていく。
それを見送ってサージェは、フローライトダガーを構え、再びメモリをコンソールへとセットするのだ。
「メモリセット! チェックOK! 参ります!」
再び輝くユーベルコード。
サージェは、世に潜むことも忘れ、『八咫神国』の街中でキャバリアによる大立ち回りを見せつけ、快刀乱麻を断つが如く淡い緑色の光を走らせるのであった――。
大成功
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大町・詩乃
久しぶりに来てみれば大変な事態になってますね💦
アインさんもツヴァイさんも頑張ってお助けします。
焔天武后もやる気満々ですし。
UCにより(殲禍炎剣対策の)低空飛行で到着するや、焔天武后の武装であるレーザー射撃・一斉発射・スナイパーで、『熾裂』に迫るオブリビオンマシン達のコクピットを避けて撃ち抜いて無力化。
そのまま近接戦闘に突入。
大型化した雷月に雷の属性攻撃を宿して健在なオブリビオンマシンを(コクピットを避けての)なぎ払い・鎧無視攻撃で纏めて斬ります!
敵攻撃は軌道を見切り、大型化した天耀鏡の盾受けで弾く。
戦争を無くすのは至難ですが、悲惨さを減らす事は出来ます。
安易な解決方法に逃げちゃダメですよ。
久方ぶりのクロムキャバリア世界に降り立った大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)が見たのは、無数のオブリビオンマシンによって追いたてられるキャバリア『熾裂』の姿であった。
小国家『八咫神国』の街中を疾駆し、爆風を避けながら進む機体は煽られるようにして機体を傾がせる。
例え『エース』と呼ばれる技量を持つパイロットであったとしても、襲い来る無数の敵機を全てかわし切ることなどできなかった。
ミサイルが降り注ぎ、銃弾が飛ぶ。
オブリビオンマシンは心を狂わされたパイロットたちが己の身など顧みずに命令された『アイン』と『ツヴァイ』の抹殺のために捨て身の特攻さえ敢行してくるのだ。
「久しぶりに来てみば大変な事態になってますね」
詩乃は、彼女が契約したスーパーロボット『焔天武后』と共にシンクの装甲を燃え上がらせるように煌めかせながら大地に降り立つ。
アスファルトを割り、破片が舞い散る中、『焔天武后』の武装が展開され光線が一気に放たれ、オブリビオンマシンのコクピットを避けた一撃が繰り出される。
「今度はなんだ!? 馬鹿みたいな出力でレーザーなんか出しやがって……!」
『アイン』がコクピットシートの裏で呻く。
規格外の出力を持つ『焔天武后』のエネルギー効率に彼女は驚愕したのだろう。同時に放たれたレーザー射撃の精密さもまた、コクピットを避けた一撃出会ったことに気が付き、目の前のスーパーロボットを操る猟兵がまた、他の猟兵達と同じようにオブリビオンマシンのパイロットを敵とみなしていないことを知るのだ。
「『焔天武后』もやる気満々のようです。此処はおまかせを」
詩乃はそうつぶやいて、『熾裂』を背にかばいながら懐剣を抜き払う。
その刀身に集まるのは雷の力である。
輝く瞳はユーベルコードの光。煌めく力は詩乃の神力の発露であった。神力発現(シンリョクハツゲン)した『焔天武后』のアイセンサーが煌めく。
「世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
掲げた懐剣の切っ先から雷の刃が放たれ、敵オブリビオンマシンを尽く切り裂く。
その一撃は、如何なる装甲を持とうとも、内部フレームすらも寸断させ、擱座させていくのだ。
「あくまでパイロットは殺さずか……!」
「どうか、頼みます!」
『ツヴァイ』が詩乃に通信を入れ、『熾裂』がその場を後にする。その背中を見送りながら詩乃は鏡の如き盾でもってオブリビオンマシンの攻撃を防ぐ。
ミサイルの爆風が『焔天武后』の周囲に吹き荒れる。
「戦争を無くすのは至難ですが、悲惨さを減らすことはできます」
詩乃の瞳にはユーベルコード以上に輝く意志の光があった。
確かに戦乱は容易には静まらない。
人の心が乱れている限り争いは収まることをしらない。例え、収まったとしても、些細なきっかけで争いは勃発する。
繰り返される争いに人の心は益々荒んで行くことだろう。
けれど、詩乃は知っている。
それは安易なる道だ。いつだって正しいのは厳しく険しい長い道程だ。今まさに『グリプ5』を中心とした小国家群の動乱は、その過程にあると知る。
だからこそ。
「安易な解決方法に逃げちゃダメなんです」
輝くユーベルコードが雷の力を奔流として走らせ、オブリビオンマシンを打ち砕き、その神力でもって人々の心に光を灯すように詩乃は己の責務を果たすのであった――。
大成功
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ルイン・トゥーガン
はんっ、どうして追われているのかとかそんなんどうでもいいんだよ
アタシにとっちゃアンタらを助けるのが依頼で、それが金になるからやるだけさね!
だからこそ、依頼でケチが付かないようにさっさと行きな!アンタらに死なれたら金が入らないだろうが!
少数で多数を相手取るのはアマランサス・マリーネでは元から想定されてるさね
なんでわざわざサブアームで武器増やしてると思ってるんだい、強襲用は伊達じゃないよ
両手のビームアサルトライフルとバズーカ、サブアームのサブマシンガンと4門の武器で弾丸をばら撒くさね
でもって両肩のミサイルポッドから【スーパーナパーム】を発射するよ!
直撃せずともナパームの炎で敵の進路を塞いでみせるよ
「――はん」
鼻を鳴らすように笑う者がいた。
小国家『八咫神国』にも戦乱が渦巻く。仮初の平穏など薄皮一枚めくれば、其処に在るのは後ろ暗い闇である。
平穏を維持するために費やされたものは、果たして如何なる犠牲であったことだろうか。
しかし、ルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)は、それを鼻で笑うのだ。
「どうして追われているのかとかそんなんどうでもいいんだよ」
そう、どうでもいいのだ。
彼女にとって必要なことは依頼であり、金である。
徹底したリアリスト。傭兵風情と言われようが、彼女は気に留めることすらない。生きるために、それを恥じる理由があるのならば、そうもしただろう。
けれど、生きるためにそれは必要などないのだ。
彼女は己の機体『アマランサス・マリーネ』で『八咫神国』の街中を征くキャバリア『熾裂』を包囲するオブリビオンマシンの群れを食い破りながら、一気に躍り出る。
「――『アマランサス』! その機体は!」
『ツヴァイ』がルインの駆る機体を見て呻く。
彼女は報告を受けていたのだろう。かつて、『フィアレーゲン』の難民キャンプを受け入れる際に暴走した機体『アマランサス・ラピート』。
その姿に酷似した機体を見て、瞬時に判断したのだ。敵か、それとも味方か。
アンサーヒューマン同士の言葉は常人のそれとは異なる速度でかわされる。
「あれは『マリーネ』だ。勘違いすんな、アレは――」
『アイン』は、ルインの駆る『アマランサス』が敵でないことを知る。
「そんなのどうでもいいだろう。アタシにとっちゃアンタらを助けるのが依頼で、それが金になるからやるだけさね! だからこそ、依頼にケチが付かないようにさっさと行きな! アンタらに死なれたら金が入らないだろうが!」
瞬間的にルインは思考を切り上げる。
『アイン』と『ツヴァイ』が己の機体を見て何を思ったのかなんて、関係ない。己は己の仕事を為すだけである。
サブアームに構えられたサブマシンガンから弾丸が放たれ迫るオブリビオンマシンを蹴散らす。
都合四本腕の如き動きでルインはオブリビオンマシンの囲い込みを食い破って『熾裂』を逃がす。
その代わり、彼女が包囲される番であったが、彼女は不敵に笑う。
「少数で多数を相手取るのは『アマランサス・マリーネ』に想定されたもんなのさね! 強襲用は伊達じゃないよ」
二丁のビームアサルトライフルとサブアームに懸架されたサブマシンガンが嵐のような弾丸でもって、オブリビオンマシンを蹴散らす。
「はん、全部燃やしてやるさね!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝くと同時にアマランサスのアイセンサーが輝く。
放たれるミサイルポッドからスーパーナパームが放たれ、迫るオブリビオンマシンの足元でナパームが炸裂し爆風と炎を撒き散らす。
進路を塞がれたオブリビオンマシンたちは蹈鞴を踏むが、ルインはビルを蹴って変幻自在なる機動でもってオブリビオンマシンに襲いかかる。
「強襲用だって言ったろう!」
あくまでナパームの炎は足止めでしかない。
ならばこそ、ルインは攻める。足を止めてそれで、終いという雑な仕事はしないのだ。
頭上を取られたオブリビオンマシンたちに放たれる弾丸の嵐を躱す術など無く、次々と『八咫神国』の街中にかく座していく。
その姿を見下ろしながら、ルインは己に迫る新たなる敵の姿を認め、鏡写しの如き機体を見て、また……。
「はんっ!」
鼻を鳴らすように笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
(【聞き耳】でキャバリアの音に耳を傾ける)
……音が次々と聞こえてくる。相当の数がいるようだ。
精神を歪められているとはいえ、此処までするとはな。
■行
【POW】
地上から生身で迎撃するぞ。仕掛ける際はあえて姿がばれそうな
位置から攻撃し、「生身の人間がキャバリアを攻撃している」と
敵軍に認識させるのだ。
基本は敵が最も集まっている処に【早業】の抜刀から放つ
【空薙】を仕掛け、機体を真っ二つに【切断】するぞ。
名乗りを上げたら、奴等も敵と認識してくれるだろうか。
但し、万一ツヴァイ殿の機体が狙われていることが確認出来たら
至急援護し、退路を作る。
捕まえてぶん回してもバチはあたらんよな……?
※アドリブ歓迎・不採用可
戦場にあって音とは、常に鳴り響くものである。
音をかき消し、己の存在を如何に消そうとしても、僅かな音から存在は露呈するものである。
しかし、小国家『八咫神国』の戦場にあって敵であるオブリビオンマシンは己の存在をひた隠しにする必要など最早何処にもないというように相当な数でもって戦場と成った街へと繰り出していた。
彼等が追うのは一機のキャバリア『熾裂』である。
この小国家がオブリビオンマシンによってすでに歪んでいることを示す生き証人である『アイン』と彼女を確保し、『グリプ5』へと逃げ延びようとしている『ツヴァイ』を抹殺するのが彼等の目的である。
当然オブリビオンマシンに搭乗しているパイロットたちは皆、その心を狂気によって歪められているだけに過ぎないのだが、それでも脅威であることはいなめない。
「……音が次々と聞こえてくる。相当の数がいるようだ」
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は己の耳を打つ争いの気配に小さく頷く。
彼はキャバリアを駆る事無く生身単身でもってオブリビオンマシンを打倒する存在である。
彼にとってキャバリアとは巨人を相手取ることと大差のないことであった。
放つ斬撃は、その一撃だけであっても鋼鉄の巨人であるオブリビオンマシンの四肢を寸断するほどに強烈であった。
「精神を歪められているとは言え、此処までするとはな。人の心を歪めるのがオブリビオンマシンであるというのならば」
その瞳がユーベルコードに輝く。
「人!? 生身の人がキャバリアを切るっていうのか!?」
オブリビオンマシンのパイロットが呻く。
それもそのはずであろう。このクロムキャバリアにおいて争いの主戦力はキャバリアである。
それを運用するために人の手は必要であっても、人自身が決定的な戦力になることなどありえないのだ。
「空薙(ソラナギ)……」
しかし、見よ。
その空間さえも断ち斬るユーベルコードの斬撃を。
一刀のもとにオブリビオンマシンを両断せしめ、名乗りを上げる。
「兵の道を征く我こそは、愛久山・清綱。この太刀を前にして、これより先に進めるとは思わぬことだ」
その気迫を持ってオブリビオンマシンが止まるのであれば、無用なる争いなど怒らなかったことだろう。
生身であると侮っていたのかもしれない。
容易に排除できると。斬撃に寄って両断せしめたのは、何かしらの種があるのだろうとオブリビオンマシンのパイロットたちは思ったのかもしれない。
けれど、それらの全てが過ちであることを彼等は理解できない。
「愚かな」
心歪められた者たちに正しく物事を認識することができないように。
清綱の斬撃もまた彼等には見ることなどできなかったことだろう。
再び放たれた斬撃の一撃がオブリビオンマシンを一刀の元に両断させられ、その機体を大地に沈めさせる。
しかし、生身一つでは多勢を誇るオブリビオンマシンの進撃を止めることはできない。
一刀を放つ間にまた一機とオブリビオンマシンが通り抜けようとする。だが、それを押し留めていたのは、脚部のフレームを、尋常ならざる握力で持ってつかみ、通さぬとばかりに怪力を振るう清綱であった。
「――フンッ!」
気合一閃。
掴み上げたオブリビオンマシンを投げ倒し、さらに一撃を見舞う。
そこにあったのは生身の人間ではなく、超常の人であった。その事実を正しく認識するまでに要した時間はわずかであった。
しかし、その僅かな時間であっても清綱は己を押しのけ、逃げる『熾裂』を追おうとするオブリビオンマシンの尽くを切り捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
本当に妙な話だ
散々戦った奴らを今度は助ける事になるたーな
「不満?」
いーや?
美女を助けて後々楽しい時間を過ごす好機って奴だ
「だよねー♪」
【戦闘知識・情報収集・視力】
アインとツヴァイの状況と敵の陣形と機体構造
武装と攻撃パターンの把握
特にどう護衛すれば守り切れるかも見切る
UC発動
【属性攻撃・迷彩】
ダイウルゴス軍に光水属性を付与して光学迷彩で存在を隠す
よぅエース達
ヒーローなんぞ柄じゃねーが助けにきましたよ
生き延びたら感謝しやがれ
【弾幕・スナイパー・念動力】
念動障壁でアイン達を守りつつ砲撃兵装で念動光弾の弾幕
ダイウルゴス
【捕食・二回攻撃・切断】
複数でキャバリアに食らいつき分解
無力化していく
不殺徹底
嘗てクロムキャバリアにおいてオブリビオンマシンによって思想や心を捻じ曲げられたパイロットたちを再び救うことになるとはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は思ってもみないことであった。
同時に奇妙な縁を感じるようなものであり、散々に戦ったからこそ理解できるものもあったのではないだろうか。
『不満?』
そんなふうに自機である界導神機『メルクリウス』が己に告げる。
「いーや? 美女を助けて後々楽しい時間を過ごす好機って奴だ」
『だよねー♪』
そんなカシムと『メルクリウス』のやり取りを知ってか知らずか、キャバリア『熾裂』は敵オブリビオンマシンの包囲網を着々と突破し続けていた。
多くの猟兵が転移し、囲いを打ち破ってきたからこそ、『熾裂』を駆る『ツヴァイ』と『アイン』は今なお無事であった。
しかし、敵は小国家『八咫神国』のオブリビオンマシンである。
彼等はすでに多くが取り込まれ、心を歪めさせられている。物事を己で判断することも、例え判断できたとしても正しくはできないようであった。
だからこそ、己の身を捨てるような突貫めいた攻撃をも辞さない。
「やはり数が多いですね……!」
「もう泣き言かよ! ちったぁやるようになったのは見せてもらわねーとな!」
『熾裂』のコクピットの中で二人が言い合う姿をカシムは幻視したかもしれない。
彼女たちの間に最早確執はないのだろう。
「よぅ、『エース』達。ヒーローなんぞ柄じゃねーが助けに来ましたよ。生き延びたら感謝しやがれ」
カシムは軽口を叩くついでに帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)をきらめかせ、小型『ダイウルゴス』を召喚し、オブリビオンマシンの群れと激突する。
百を超える数の『ダイウルゴス』がオブリビオンマシンの囲いを一点突破で突き破り、『熾裂』を逃すのだ。
「言い方もっとねーのかよ。助かったのは事実だが、言い方!」
『アイン』の声が通信を介して聞こえてくる。
それだけ元気ならば何の心配もいらないだろうとカシムは『メルクリウス』の砲撃兵装で持って、念動光弾を弾幕としてばらまく。
そこへさらに『ダイウルゴス』たちがオブリビオンマシンに食らいつき、その機体を分解し無力化していくのだ。
「『アイン』! 貴方だって、その物言いが!」
「性分なんだ仕方ねーだろう!」
「仲良く喧嘩しなってヤツですね。言い合うのは勝手ですが、さっさと逃げといてくださいな」
カシムの言葉と共に『ダイウルゴス』たちが居並ぶ。
まさに障壁と呼ぶに相応しい光景で、彼女たちを追うオブリビオンマシンの追随を許さぬとばかりに、再び襲いかかるのだ。
「不殺は徹底していますがね。いつまた別方面から敵がくるかわからない。今のうちに距離を稼いどいてくださいな」
きっと敵は精鋭部隊を繰り出してくる。
そうなれば、彼女たちを護り通すには、今数を減らさなければならない。敵は多勢。そして、後に控えるオブリビオンマシンも強力。
ならばこそ、カシムは己が役目を全うするために『メルクリウス』と共に戦場を蹂躙するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん…
うーーん…
むう、芸が無い…
こう、多数を蹴散らす時の戦術の幅に芸が無い…
まいったなあ…これは…スランプ!
閃きが来ないのはこう、技術者としてもピンチ感ある…
まあ、いっか
こういう時は雑に行って憂さを晴らさせて貰おう
●
【Code:U.G】起動
飛翔して熾裂の近くまで移動しつつ、周囲の敵に重力照射開始
爆風は『オーラ防御』でガード
とりあえずコックピットとその周囲の重力は弱めにそれ以外の部位は最大加重を加えて『部位破壊』、一気に自壊させよう
自分の重みで壊れる恐怖、味わうと良いよ
けどあーあ、勿体ない勿体ない
でも今はちょっとバブリーだから、こんな勿体ない事しても心が穏やか
…嘘、ちょっと惜しいなって思ったり
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は一人唸っていた。
なぜ唸っていたのかというと、これには海よりもまだ深い理由があったのだ。
「うーん……う――ん……」
目の前に広がるのは小国家『八咫神国』の街中である。
無数のオブリビオンマシンが一機のキャバリア『熾裂』を追い、包囲網をジリジリと狭めている。
しかし、数多の猟兵たちが馳せ参じ、その囲いを破りながら『熾裂』の逃走をフォローしている。
それ自体はいいことなのだ。
何も悩む必要など無い。
けれど、彼女の頭の中は懊悩で一杯であった。
「むう、芸がない」
それは一体全体どれのことを指していっていることであったことだろうか。
オブリビオンマシンの策略のことか。
それとも度重なる戦乱の火種が弾けるようにようにして小国家の間にくすぶり続けていることであったか。
「こう、多数を蹴散らす時の戦術の幅に芸がない……まいったなあ……これは……スランプ!」
違った。
彼女が頭を悩ませているのは、そういうことではなかった。己が如何にして敵を蹴散らすのか。そのビジョンがあまりにも出し尽くした感があり、インパクトに欠けると考えていたのだ。
新たなひらめき、ビジョン。それを彼女は己が技術者であるからこそ、求めていたのだ。
ひらめき無き技術者など、ただの歯車でしかないのだから。
「まあ、いっか。こういう時は雑に行って憂さを晴らさせて貰おう」
切り替えた玲の瞳に輝くのユーベルコード。
「重力制御開始。地の理は今此処に」
彼女の身にまとったデバイスが重力制御形態へと移行していく。この鋼鉄の巨人が闊歩する戦場にあって、彼女は生身単身でキャバリアを撃滅せしめるほどの力を持つ超常の人である。
ゆえに、今の彼女は雑にオブリビオンマシンを蹴散らすことだけをする暴力装置そのものであった。
軽く大地を蹴って空へと舞い上がる。
重力で持って制御される彼女の体は、燃料を消費して飛ぶ飛行ではない。重力を制御し、己の力でもって空を舞う別格の技術。
それでもって彼女は重力を照射し、オブリビオンマシンたちを次々と圧潰させていくのだ。
「自分の重みで壊れる恐怖、味わうと良いよ」
玲が飛ぶ度に重力が放たれ、オブリビオンマシンたちは己の四肢でもって機体を維持できず、次々と大地にかく座し、潰れていく。
コクピット周りだけ重力を弱めているおかげでなかのパイロットが潰れることはないが、それでも機体の四肢さえ破壊してしまえば、後はどうとでもなるものだ。
普段の彼女であれば、もったいないと思ったことだろう。
戦場痕でキャバリアのパーツを漁ることを目的としている彼女にとって、本来であれば、無闇矢鱈と破壊することは避けるべきことであった。
けれど、今は違う。
別の世界でのことであるが、彼女は今バブリーな状態なのである。
「こんな勿体ない事しても、心が穏やか……」
ひしゃげていくオブリビオンマシンを見下ろしながら、玲は平静を保ったままであった。
いや、嘘である。
「……ちょっと惜しいな」
いい感じのパーツがあったら、あとでポッケにないないしようと考えながら、玲はやはり玲さんであったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
背部にUCユニット装備したロシナンテⅣに搭乗
向上している●推力移動性能と重心・推力方向制御●操縦技量で地を這う様に高速移動
これより離脱を援護します
後方よりの爆風への備えを願います
追撃部隊の鼻先へとミサイルを発射
爆風と煙幕による●目潰しと足止めを敢行
己とほぼ同等性能のⅣの●情報収集に優れたセンサー系頼りに突入
ミサイルコンテナ切り離しによる機動性活かし、装甲の間の腰部関節フレームを剣で両断してゆき敵機達を撃破し一旦離脱
お久しぶりです、ツヴァイ様
アイン様は療養後のお加減は如何でしょうか?
積もる話もあれど、先ずは離脱を
お二人への追っ手は、可能な限り減らしましょう
直ぐに追撃部隊へ向けて反転
「めちゃくちゃだな、やっぱあいつら!」
キャバリア『熾裂』のコクピットの中で『アイン』がつぶやく
圧倒的な戦闘力で持って自分たちを追うオブリビオンマシンの囲い込みを尽く食い破る猟兵たちの姿を見て、彼女は驚いたのだろう。
けれど、『ツヴァイ』はこれまでも何度も、その光景を見てきたし、報告でも見知っていた。
その違いでしかない。
けれど、それでもなお有り余る戦力であった。
オブリビオンマシンは『八咫神国』の街中の至るところから現れ、『熾裂』を逃さぬとばかりにミサイルや銃弾を放ってくる。
「ですが、彼等のおかげで――」
『熾裂』がオブリビオンマシンの待ち伏せを受けて、大きく迂回する。
このままではエネルギーインゴットが先に尽きる。そう思った瞬間、誘導兵装装備型突撃強化ユニット(エクステンションパーツ・タイプ・マイクロミサイル)を背負った白い騎士の如きキャバリアが『熾裂』の道を塞ぐオブリビオンマシンを突撃の一撃で持って排除する。
「何が――!」
「これより離脱を援護します。後方より爆風への備えを願います」
その無機質な通信に『アイン』と『ツヴァイ』が目を向けた先にあったのは、『ロシナンテⅣ』を駆るトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)の姿であった。
背部ユニットに背負われた装備から大量のミサイルを放ち、『熾裂』を追うオブリビオンマシンを次々と撃滅していくのだ。
「ミサイルコンテナ、パージ。これより接近戦を開始します」
トリテレイアは超高速戦闘においても、ウォーマシンたる所以を発揮していた。
ミサイルコンテナがパージされ、大地に重たい音を立てて落ちる。身軽になった機体がさらに速度をあげて、凄まじいスピードでオブリビオンマシンを翻弄していく。
どれだけ銃撃を加えられようとも、身軽に成った機体が捉えられることはない。
「お久しぶりです、『ツヴァイ』様。『アイン』様は療養後のお加減はいかがでしょうか?」
通信を入れながら、敵機を翻弄するトリテレイアに『アイン』は間髪入れずに言う。
「無事なように見えるってんなら、アンタらのお陰ってわけだ!」
「『アイン』! 申し訳ありません。今は……」
「ええ、了解しております。積もる話はあれど、先ずは離脱を。お二人への追手は、可能な限り減らしましょう」
トリテレイアは頷く。
『アイン』の様子を見るに、何の問題もなさそうである。
ならばこそ、トリテレイアは機体を反転させる。
彼女たちの機体が無事に囲いを突破するためには、敵の数を今は一機でも多く削っておかねばならない。
もはや『八咫神国』の街中全てが敵である。
オブリビオンマシンの根は深くまで入り込んでいる。例え、この国から今回オブリビオンマシンを全て排除したのだとしても、おそらく国としての体裁は保つことは難しいだろう。
「ですが、それさえもオブリビオンマシンの目論見の一部であるというのならば」
これを砕くことこそが、トリテレイアの使命である。
「騎士らしい戦いにも、ひと手間かける必要があるのは悩ましいですね」
トリテレイアは機体をまた追撃のオブリビオンマシンへと向き直らせ、剣でもって、その機体関節やオーバーフレームとアンダーフレームをつなぐ接続部を狙って切断していく。
パイロットが如何にオブリビオンマシンによって心を歪められようが、それでも彼等は失われていい生命ではない。
ならばこそ、トリテレイアは己の使命に準じるために剣をふるい、次々とオブリビオンマシンのみを破壊していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
依頼内容は逃走者二名の援護と追跡部隊の撃破。了解。
別段、敵兵の命に配慮する義理はありませんけれど。
数が多いならキャノンで粉砕するのが手っ取り早いでしょうし、
それなら胴装甲の裏側にあるコクピットは残るでしょう。
……たぶん。
索敵/ダッシュ/推力移動/第六感/見切り/操縦からの
砲撃/鎧無視攻撃/範囲攻撃/プラズマキャノン。
定格出力で撃っては粉々にしてしまいますから、
速射モードに落とす代わりの重連射でなぎ払いましょう。
エイストラの高速戦闘に付いて来るのは無理ですよ。
だからと言って、数で押し包むのはもっと無謀ですが。
指定UCの一発で手足がもぎ取れて擱座するのが落ちです。
戦場となった小国家『八咫神国』の街中をオブリビオンマシンが闊歩している。
彼等の目的はあくまでキャバリア『熾裂』を駆る者たちの抹殺である。それに関してだけ言えば、過剰戦力であると言わざるを得ないとノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は感じていた。
しかし、だからといって彼女は依頼内容に疑問を持つことはない。
「依頼内容は逃走者二名の援護と追跡部隊の撃破。了解」
起動したキャバリア『エイストラ』のコクピットの中でノエルはつぶやく。
依頼内容はすでに頭に入っているし、なんなら単純な内容であると言わざるを得ない。
「別段、敵兵の生命に配慮する義理はありませんけれど」
肩に取り付けられた大口径の粒子ビーム砲を『熾裂』に追いすがるオブリビオンマシンへと向ける。
彼女にとって敵兵の生命までを考えるつもりはない。
別に人助けをしたくて戦っているわけではないのだから。そこが他の猟兵とノエルの間にある違いであったのかもしれない。
引き金を引いた瞬間、プラズマキャノンの砲撃がオブリビオンマシンを粉砕する。距離を計算しても、コクピット周りの装甲は分厚いものであれば、オーバーフレームとアンダーフレームだけが破壊され、他は残るであろうとノエルは判断していた。
「敵機の無力化の迅速さ。それが依頼の成否に関わるのであれば、これが最善にして最速」
多分、と彼女がコクピットをわずかに案じる気持ちがあったかどうかは定かではない。
けれど、彼女の駆るキャバリア『エイストラ』の挙動に迷いというものは存在していなかった。
索敵と移動、そしてオブリビオンマシンの展開の仕方を読み切って彼女の砲撃は続く。
プラズマキャノンの砲撃が次々とオブリビオンマシンを擱座していく。その砲撃を前にオブリビオンマシンたちが取ったのは、『エイストラ』の補足であった。
常に動き回る高速戦闘。
それを成さしめるだけの機体性能が『エイストラ』にはあり、それを手繰るだけの技量がノエルにはあったのだ。
「『エイストラ』についてくるのは無理ですよ」
ノエルは冷静に告げる。
この機体を上回る速度を持つオブリビオンマシンが存在しないのであれば、オブリビオンマシンが取ったのは下策であった。
数で持って包囲網を広げ、『エイストラ』を取り囲む。
だが、それこそが無謀である。
「H・S・F、ラディエイション――数で押し包む。まさに下策、無謀」
ノエルの瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、全方位に超音速で放射される高硬度を誇る衝撃波が取り囲んだオブリビオンマシンへと放たれる。
凄まじい衝撃波がオブリビオンマシンの機体装甲を引き剥がし、手足を吹き飛ばしていく。
かろうじてコクピット周りだけが残る機体は、即座に戦力からただの鉄くずへと姿を変える。
「無駄です。意味のない戦力の消耗でした。ですが、そのお陰で目的は達せられました」
ノエルはモニターの端で移動する『熾裂』の機体を見やる。
彼女の目的はあの機体を逃がすこと。ならばこそ、敵戦力が無闇に己を包囲することこそが、本当の意味での無駄であったのだ。
彼等の目的を達することを優先するのならば、ノエルを無視すればよかったのだ。
けれど、彼等はそれをしなかった。
なぜならば、オブリビオンと猟兵は互いに滅ぼし合う関係でしかない。ノエルが猟兵である以上、オブリビオンは彼女を追わざるを得なかったのである。
次々とコクピットから這い出すパイロット達を見て、つくづくノエルは思うのだ。
悪運が強いことで、と――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
再生の前の破壊ね、再生できるのはいつになるのか
そもそも本当に再生できるのか分からないのに壊そうとするのか
どうか、2人で逃げ延びてくれよ
POWで判定
まずはAIと一緒に【情報収集】し狙撃しやすい場所に移動
それからUCを使用して攻撃
彼らの後方の敵は藍の災い:圧壊【重量攻撃】やを付与した弾丸を【スナイパー】【範囲攻撃】で撃ち込んで【時間稼ぎ】
前方にもいるようなら黄の災い:感電【マヒ攻撃】で同じように時間稼ぎをする
彼らが通り過ぎたら橙の災い:爆破【爆撃】の弾丸を使って攻撃する
再生とは破壊の後に訪れるものである。
ならば、再生の後に来るのもまた破壊であるのならば、人はそれを許容することができるであろうか。
「再生の前の破壊ね、再生できるのはいつになるのか」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は己の義眼が見つめる小国家『八咫神国』の街中の惨状を見やりつぶやく。
彼の瞳に写った光景は、とてもではないが、それを信じさせるものではなかった。
破壊の後に訪れるもの。
それが再生であるというのならば、人の生命もまた回帰するものであろう。けれど、現実に生命が戻ることはない。再生することはない。
失われるばかりの光景を見て、再生などというお題目をルイスは受け入れることなどできなかったのかもしれない。
「そもそも本当に再生できるのかわからないのに壊そうとするのか――オブリビオンマシン!」
ルイスの義眼が輝き、キャバリアである銀の銃兵と共に戦場に躍り出る。
彼の目的はキャバリア『熾裂』に乗った『アイン』と『ツヴァイ』を護り通すことである。
彼女たちは『エース』と呼ばれる技量を持っているが、あふれるように追いすがるオブリビオンマシンの数を考えれば、それが難しいことであることはルイスにもわかることであった。
AIが告げる。
「後方よりオブリビオンマシンです。数は5つ」
「メガリスと魔銃のリンク強化完了、発射!」
放たれるのは、強化属性弾射出(エンチャントバースト)によって藍色に輝く災いの弾丸である。
それは弾丸が敵機にあたった瞬間に凄まじい重量を発揮し、機体を地面に這いつくばらせるのだ。
「まずは一つ……!」
ルイスにとってオブリビオンマシンの撃破は問題ではなかった。
在るのは時間稼ぎだけである。『アイン』と『ツヴァイ』が逃げ延びるだけの時間を稼ぎ、彼女たちが安全圏に達することが本来の目的だ。
「前方にも敵影」
AIの警告が響き、ルイスは即座にメガリスの輝きを変える。
黄に輝くメガリスの力が周囲に雷撃を放ち、オブリビオンマシンの制御系を焼き切るのだ。
「敵の数が多い……やはり小国家規模で最早オブリビオンマシンに飲み込まれているっていうのか……!」
そう考えるほか無いほどに街中にはオブリビオンマシンで溢れている。
倒しても倒しても包囲網は元に戻っていく。
食い破るだけでは彼女たちを逃がすことはできない。
けれど、オブリビオンマシンを叩かなければ、敵の行動を助けるばかりだ。
ならばとルイスのメガリスの義眼が輝く。
「囲いを破る……せめて二人だけでも逃がす!」
あの二人さえ逃げ延びてしまえば、『八咫神国』の内情は『グリプ5』に伝わるだろう。そうすれば、オブリビオンマシンの影にある存在が描いた計画も破綻するはず。
そのためにルイスはメガリスを橙に輝かせ、爆破の弾丸でもってオブリビオンマシンが追いすがる道を塞ぐ。
「これで……! どうか逃げ延びてくれよ……!」
ルイスのはるか後方で『熾裂』が包囲網を脱する。けれど、これで終わりではない。『八咫神国』のオブリビオンマシンは多くの猟兵に寄って数を減らしている。
けれど、この事態に対して介入する小国家があるのだ。
赤いキャバリアが街中に侵入する。
其の速度は凄まじいものであり、まさに電撃戦の如く。
そう、その小国家の名は――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『アマランサス』
|
POW : BSビームライフル・RSダブルバズーカ
【ビームライフル】か【ダブルバズーカ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : BXビームソード
【ビームソード】が命中した対象を切断する。
WIZ : 一般兵用リミッター解除
【一般兵用の操縦系リミッターを解除する】事で【本来のエース専用高性能クロムキャバリア】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:御崎ゆずるは
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小国家『シーヴァスリー』――それは『グリプ5』周辺の地方において、最も新興なる小国家である。
しかし、その勢いと国力は凄まじい。
嘗て『フィアレーゲン』と呼ばれた力ある小国家すらも滅ぼし、今其の牙を『八咫神国』へと向けている。
その『シーヴァスリー』に属するキャバリアが『八咫神国』の街中を疾駆する。
猟兵達は知るだろう。
彼等はオブリビオンマシンではない。ただのキャバリアであり、至極まっとうな理性をもった軍人たちが操縦している。
けれど、彼等は『シーヴァスリー』の目的のためならば、如何なる命令をも実行するだろう。
その姿は嘗ての『フィアレーゲン』の人々を彷彿させただろう。彼等よりも統率が取れ、能力を使うことにためらいのない者達。
『アマランサス』を駆り、彼等がキャバリア『熾裂』を追う。
「『アマランサス』――! やはり『シーヴァスリー』……!」
『ツヴァイ』が呻く。
なぜならば、彼女が知る『アマランサス』とは、難民キャンプにて保護された少年『クリノ・クロア』が乗った『アマランサス・ラピート』のスペックそのものである。
かの鬼神の如き戦いを猟兵と繰り広げた機体が、量産体制に入っており、それが『シーヴァスリー』に配備されているということは。
「全部『ヤツ』の掌の上ってわけかよ」
『アイン』が歯噛みする。
モニターには『アマランサス』が一糸乱れぬ隊列でもってこちらを追っている。
その機体に乗るパイロットたちのどれもが精鋭そのもの。
これまでのオブリビオンマシンとはわけが違うことを知らしめる。
けれど、まだ諦めるには早い。
ここには今彼女たちだけではない。猟兵たちが存在しているのだから――。
アリッセ・トードゥ
先行してた彼女達に追い付く
あれ、まだこんな所にいたの
…って、この数はさすがの彼女でも無理か
仕方ない、倒すよ
ツヴァイ達の機体に通信を送る
突入して掻き回すから援護射撃お願いね
スラスター全開の【推力移動】で敵陣に突っ込む
AIからの『敵機、リミッター解除。私の性能じゃ勝てないよ』という警告に「問題ない。数に頼る連中に敗けはしないよ」と返し【一騎当千】使用
レーダーで【情報収集】した敵群の位置と動きを【瞬間思考力】で瞬時に把握
計算し同士討ちを誘う位置取りで攻撃を封じつつセイバーで【切断】しミサイルの【一斉発射】で仕留めていく
コクピットには当てない様に
昔の敵と共闘する事になるとはね
猟兵としての人生って面白い
クロムキャバリアにおいてキャバリアとは、戦術兵器であり、同時に戦場の主役である。小国家『八咫神国』の街中はオブリビオンマシンで溢れていたが、猟兵達によって排除されつつあった。
しかし、新たなる新興小国家である『シーヴァスリー』より現れたキャバリア『アマランサス』部隊はこれまでのオブリビオンマシンとは一線を画する実力を備えていた。
「こいつら……! リミッターを解除していやがる!」
キャバリア『熾裂』のコクピットシートの背後で『アイン』は、『アマランサス』の動きが通常のキャバリアのそれではないことを知る。
「機体駆動を限界まで……それではパイロットが保たないはず!」
『ツヴァイ』の言う通りであった。
一糸乱れぬ連携で『エース』の乗る『熾裂』でさえ追い込まれていく。それほどまでに機体の性能を底上げされ、パイロットもまた己の生命さえ顧みずに目的を達成しようと迫っているのだ。
「このままでは……!」
『エース』に技量が追いつかぬまでも、機体性能の限界を超えた機動でもって『エース』すらも食い物にする。それがクロムキャバリアであるというのならば、『アマランサス』こそが正しき姿であったことだろう。
「あれ、まだこんなところにいたのか」
その声は思いがけず『アマランサス』の囲いを突破してきたアリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)の駆る『CZ-X』から響いてきた。
アリッセからすれば『エース』である『ツヴァイ』の操縦技術であれば、とっくに囲いを突破しているであろうと思ったのだが、この状況を見て考えを改める。
「なるほど。これだけの数はさすがの彼女でも無理か。仕方ない――倒すよ」
アリッセは『ツヴァイ』へと通信を送る。
仕方ない、との一言で片付けられる相手ではないけれど、アリッセは不思議と恐怖を感じてはいなかった。
そこにあったのは不思議な感覚であった。
かつて戦った相手、『ツヴァイ』と共に戦場に立ち背中を預けているという状況。
これはなんともおかしみの在る光景ではないだろうか。
「昔の敵と共闘することになるとはね……」
「ええ、不思議な感覚です。ですが、それが私には頼もしい」
『ツヴァイ』の言葉にアリッセも同感だと頷く。
AIからの警告もなんのそのである。どうあがいても『リミッター解除』された『アマランサス』には機体性能で劣る。
そんなことわかっているのだ。
けれど、それでもアリッセの瞳にあったのは絶望ではなく、ユーベルコードの輝きであった。
「問題ない。数を頼る連中に敗けはしないよ」
「カバーを!」
互いに一瞬でコンタクトを取って動き出す。機体の性能で如何に劣るのだとしても、戦い用はいくらでもある。
瞬時に思考した考えは、アンサーヒューマンである『ツヴァイ』には正しく伝わる。
敵機の位置を巧みに利用し、同士討ちを誘う。
しかし、敵も精鋭である。同士討ちを誘うまでもなく、その射線を躱し、互いの位置を入れ替えていく。
「やる――! けれどね!」
アリッセと『ツヴァイ』の機体の位置がスイッチを入れ替えるようにして位置を入れ替える。
彼等の目的である『ツヴァイ』をお取りにしたアリッセの機体が振るうセイバーの一撃が『アマランサス』の腕部を切断し、ミサイルの一撃が叩き込まれる。
「コクピットは外す……! 逃げれるのなら逃げてよ!」
アリッセにとってオブリビオンに侵されていないパイロットであれば、それは倒すべき敵ではない。
如何に一機当千(サウザンドキル)であろうとも、その線引だけは踏み越えてはならない。
それは己が猟兵であるからという矜持にほかならない。
猟兵としての人生は面白いものだと彼女は感じていた。かつて戦った相手に背中を預ける。
それが頼もしいと思いながら、アリッセは『ツヴァイ』との連携でもって、踊るように機体を動かし、先刻のAIの言葉を否定するのだ。
そう、『機体性能など問題ではない』と。
アリッセにとって何が重要であり、何が損なわれてはならないのかを浮き彫りにする用に、戦場に舞い踊るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
賀茂・絆
今度の追手は正気…つまり!さっき以上のビジネスチャンス!
入神導入剤で【瞬間思考力】アップ!脱魂恍惚剤で【継戦能力】超アップ!
敵集団からの攻撃を(致命的なものは捌きつつ)受けてボロボロにされたとしても攻撃最優先!イエス!【暴力】!
飼い慣らしていたであろう恐怖という感情を久しぶりに新鮮な感覚で魂に植え付けてあげマス!
キズナさんのヤクの力はどうデスカ?このヤクがあれば文字通り死ぬまで最高のパフォーマンスで戦い続けることができるのデス!(基本的には医療用にしか卸してないデスけど)
お互いお仕事なんデス!ワタシは死ぬまで付き合ってあげマスヨ!遠慮しないで!さあ!さあ!さあ!全部終わったら商談しマショウネ!
賀茂・絆(キズナさん・f34084)にとって、この戦いはビジネスである。
戦場にありて転がるのは生命ではなくビジネスチャンスなのだ。これまでクロムキャバリアにおける戦いは、ほとんどがオブリビオンマシンとの激突ばかりであった。
それは猟兵としては当然のことであるが、商売人としてみれば、面白みのないものばかりであったことだろう。
いや、薬を扱う以上、医療品は戦場には必須だ。
けれど、今の絆は違う。
目の前に現れた小国家『シーヴァスリー』のキャバリア『アマランサス』のパイロットたちはオブリビオンマシンに乗っていない。
つまりは正気である。
「ならば、さっき以上のビジネスチャンス!」
彼女の瞳が爛々と輝く。
入神導入剤によって彼女の思考は果てしなくクリアであった。さらには魂を体から半分離脱させる薬によって、無理やり疲弊を感じていても肉体を突き動かすのだ。
ここまでやって見せて、絆は己の持つ商材の有用性を示してみせるのだ。
例え、リミッターを解除し、生命を削るまでの戦いをする『アマランサス』のパイロットたちであっても、絆の操る『別雷大神」は引けを取らぬ戦いを繰り広げる。
敵が機体の限界を超えるの出れば……。
「ワタシは己の肉体の限界を超えるのデス!」
『アマランサス』は精鋭部隊らしく見事な連携で絆を追い詰めていく。
けれど、関係ない。
彼女の戦いは宣伝と同じだ。己の扱う薬剤が如何に有用であるかを示すパフォーマンスでしかない。
機体がどれだけボロボロになろうとも、如何なる攻撃を受けようとも攻撃を優先させる動きは、まさに武力ではなく暴力そのものだえった。
「あなたたちの未来は! DEATH! DEATH!! DEATH!!!」
爛々と輝く瞳がユーベルコードにゆらめき続けている。
絆にとって、暴力を振るうことだけが優先事項であった。
叩きつける拳がどれだけひしゃげようとも振るわれる。
それは根源的な恐怖をもたらす光景でも在った。己の傷を厭わず、命令のみを実行するように訓練された精鋭部隊にとって、絆の戦い方は恐怖を与える行為そのものであった。
訓練によって制御されていた恐怖という感情を根底からほじくり返し、その恐怖でもって笑う行いそのもの。
「新鮮な感覚でショウ! その魂に植え付けてあげマス!」
それこそが絆の巫術・びびり屋(フジュツ・ビビリヤ)である。
植え付けられた恐怖は、『アマランサス』たちの一糸乱れぬ隊列を突き崩していく。
「キズナさんのヤクの力はどうデスカ? このヤクがあれば文字通り死ぬまで最高のパフォーマンスで戦い続けることができるのデス!」
基本的には医療用しか卸してはいないのだが、この際関係ない。
大切なのはやはり金である。ビジネスである。
そこに敵味方など関係ない。
絆の鬼気迫る戦いぶりに『アマランサス』は徐々に後退していく。
どれだけ恐怖を克服するのだとしても、生物である以上、その身には恐怖が備わっているものだ。
感情を押し殺したとて、完全になくなることはない。
絆の戦い方は、その僅かに残った恐怖さえも増幅させるのだ。
「お互いお仕事なんデス! ワタシは死ぬまで付き合ってあげマスヨ! 遠慮しないで! さあ!」
一歩前進する度に『アマランサス』が一歩後ずさる。
「さあ!」
絆は笑っている。どこまで笑顔のまま、己のビジネスのためににじり寄るように己が手繰るオブリビオンマシンの歩を進めるのだ。
「――さあ!」
絆の声は、彼等の感情をかきむしる。
どうしようもない生理的な嫌悪にパイロットたちはうめいたことだろう。己たちもまた国家に生命を捧げた者である。
だというのに。
「なんなんだ、こいつは――!」
彼等は絶叫した。
言いようのない恐怖に魂を震わせ、絆より距離を取ろうとする。
けれど、絆はまた一歩を踏み出す。
「全部終わったら商談しマショウネ!」
あくまでビジネスのために。彼女の暴力は未だ終わりを見せず、そのボロボロの機体と共に、見るもの全てに遍く恐怖を与えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『こいつらの機体……そうか、あの機体の同型いや、量産型か?・・・・あの件も黒幕の仕込みってことかよ……』
以前の依頼でアマランサス・ラピートと戦った【戦闘知識】で相手の動きを見極めながらも、【なぎ払い】と【制圧射撃】を叩き込んでいく
『おいおい、しかもこれはパイロットを無視した性能だな……だが!!』
相手の攻撃を【オーラ防御】で強化した武装で【武器受け】してガードしつつ、突撃
【属性攻撃】で炎をのせたシラヌイでの【鎧砕き】と【鎧無視攻撃】の連続攻撃からユーベルコード【突撃機甲戦術『天嵐』】へつなげていくぜ
『自らを省みない強さはもろいもの!!』
小国家『八咫神国』の街中に入り込んできたキャバリアの所属は、新興の小国家『シーヴァスリー』であった。
彼等は我が物顔で『八咫神国』の街中でキャバリア『熾裂』を追う。
もはや、ここに『八咫神国』という国の体裁はなかった。
あるのは形骸化した国の成れの果てでしかない。『フィアレーゲン』が滅ぼされたように『八咫神国』もまた滅亡への道を辿っていたのだ。
「こいつらの機体……そうか、あの機体の同型、いや量産型か?」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は一糸乱れぬ挙動でもって、戦場を闊歩する『アマランサス』の動きに姿形に見覚えが在った。
かつて『フィアレーゲン』から脱出し、『グリプ5』へと亡命しようとしていた一団に紛れ込んでいたオブリビオンマシンと酷似しているのだ。
その機体の名は『アマランサス・ラピート』。
『クリノ・クロア』少年が乗り込み、機体の狂気に呑まれた事件をガイは忘れてはいなかった。
これがすでに仕組まれていたことであるというのならば、この事件の裏にいる存在は、如何なる絵図を描いているのだろうか。
「あの件も黒幕の仕込みってことかよ……!」
ガイは特空機1型『スターインパルス』の背面ブースターを吹かせながら、『熾裂』と『アマランサス』の間に割り込む。
ビームソードを武装で受け止めるが、その一撃はオーラをも貫通して武装を切断する。
「チッ……! 武装もそうだが、パイロットを無視した性能だな……だが!」
ガイは知っている。
『アマランサス・ラピート』と戦った経験から、すでに『アマランサス』が、あれ以上の力を発揮することはないのだと。
本来の絵図であれば、あの『アマランサス』に搭載されている戦術データ、操縦データは『クリノ・クロア』の操縦データが使われる予定であったのだろう。
けれど、それは猟兵達によって完膚なきまでに叩き潰されている。
ならばこそ、その機体のデータは半端なものでしかない。機体の操縦をサポートするデータもなければ、精鋭部隊であるパイロットたちの技量だけが頼りであろう。
言う成れば『エース』の片鱗を見せた少年『クリノ・クロア』ほどの力を彼等が発揮することはない。
ガイは『アマランサス』よりも強い敵と戦ってきたのだ。その経験が今まさに生かされようとしている。
「そこに付け入る隙があるのならよ!」
アイセンサーが煌めき、モニターに突撃機甲戦術『天嵐』(トツゲキキコウセンジュツ・テンラン)の文字が浮かび上がる。
それは飛翔しながら搭載武装の一斉射を行う突撃戦術である。
「とっておきの戦術パターンだ。くらっていきな!!」
手にした特殊超合金製の剣を構え、地面を滑るようにして『スターインパルス』が飛ぶ。
その速度は『アマランサス』を上回り、斬撃の一撃を持って『アマランサス』のビームソードを持つ腕部を一瞬で切り落とす。
受け止めれば、ビームソードの威力に敗けてこちらの武装が溶断されるだろう。
だからこそ、受けるのではなく攻める。
それが彼の戦術パターンである。斬撃から繋がれた武装の一斉射が『アマランサス』のアンダーフレームを破壊し、続けざまに放たれた斬撃の一撃がオーバーフレームを切り裂く。
「自らを省みない強さは脆いもの!! どれだけ機体性能が上であろうとな――!」
負けるつもりはないと、ガイは『アマランサス』に競り勝ち、特殊超合金製の剣、『シラヌイ』に炎を乗せた一撃で持ってコクピットを強制的に射出させ、歪な経緯によって生み出されたキャバリアを爆散せしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
わたしは【セレステ】に乗り換えて、『アイン』さんと『ツヴァイ』さんを追うね。
って、足止めされてる! 追っ手の動きも速いね。
街中ってことだから、砲撃するわけにはいかないし、
ここは【セレステ】のVTOL&ホバーを生かした動きで攪乱しながら、
【E.C.M】を発動させて、全力で目潰しして動きを止めさせてもらおう。
今回は思いっきりいくからね。電子機器ショートさせるよ。
オブリビオンに操られていようがいまいが、街中で戦闘行為をするなら容赦なし!
『アイン』さんと『ツヴァイ』さんを逃がしたいのもあるけど、
そこに住んでる人たちに迷惑をかけるなら、許さないからね。
命令だからって、考えずに実行するのはなしだよ!
ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』より射出されるようにして飛び出したのは、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の駆る『リオ・セレステ』であった。
空母は、クロムキャバリアにおいては高速で空を飛ぶことができない。
高度にも気を配らねばならず、足の遅い空母は敵にとっては格好の的であった。ゆえに、理緒はガンシップである『リオ・セレステ』で『アイン』と『ツヴァイ』を追う。
しかし、『八咫神国』からの脱出をすでに果たしているであろうと思われた彼女たちは未だ街中にあって、足を止められていた。
それを為しているのが新興の小国家『シーヴァスリー』のキャバリア精鋭部隊であった。
『アマランサス』と呼ばれる量産型のキャバリアは、その卓越した操縦技術と機体性能によって『ツヴァイ』たち『熾裂』を追い詰めていく。
万全な状態にした『熾裂』と言えど、機体事態は百年前の旧式機体である。
この機体を彼女が持ち出したのは、最新鋭のキャバリアの殆どが稼働できぬ状態であるからだ。『グリプ5』に残されていた旧式の機体を駆り出さねば、防衛すらおぼつかないのだ。
「追手の動きも速いね……」
街中であるがゆえに砲撃するわけにもいかない。ならば、何をすべきかを理緒は理解していた。
己のガンシップは垂直機動を俊敏に行えるガンシップである。
ならば、機体特性を生かした動きで敵を撹乱するのだ。
「あの機体……! こちらの援護を」
『ツヴァイ』がモニターに映る『リオ・セレステ』を見やり、『アマランサス』たちからの猛追を躱す。
ガンシップ事態を初めて見たのだろう。
彼女たちにとっては馴染みのない兵器であるが、それを駆るのが理緒であることを知って、彼女たちは連携を始める。
「今回は思いっきり行くからね! オブリビオンに操られていようがいまいが、街中で戦闘行為をするなら容赦しないんだから! 潰させてもらっちゃうね」
理緒が叫んだ瞬間、『リオ・セレステ』に搭載された電波妨害装置がノイズジャミングとディセプションを放ち、『アマランサス』たちの電子機器を使用不能に陥らせる。
これだけの広範囲で放たれたE.C.M(イー・シー・エム)は『アマランサス』たちにとって予想外であったことだろう。
電子機器を一時的に使用不能に成った機体は、動きが止まる。
それを『ツヴァイ』が見逃すわけながない。
「動きが止まった。なら――」
「やっちまえよ、ツヴァイ!」
『アイン』が叫び、『熾裂』がビームブレイドを持って『アマランサス』を斬り裂き、機体を撃破しながら駆け抜けていく。
「足止めは任せておいて!」
理緒は駆け抜けていく『熾裂』を見送りながら、未だ撃墜されていない『アマランサス』たちと退治する。
確かに『アイン』と『ツヴァイ』を逃したいという思いもある。
けれど、それ以上に理緒の心のなかに在ったのは、『八咫神国』に住まう人々に迷惑を掛ける行いをする『シーヴァスリー』のキャバリア乗りたちに対する義憤であった。
「命令だからって、考えずに実行するのはなしだよ!」
彼等が如何なる命令を受けてきたのかは想像に難くない。
けれど、彼等は何も考えていない。オブリビオンマシンに歪められているわけでもなんでもない。そうあるようにと教育されてきた者たちだ。
これが、この絵図を描いた主謀者の画策であるというのならば、理緒はそれを赦してはおけない。
誰かを虐げることにしかならないからだ。
それを理緒は胸に抱いて、彼女の出来ることをやり続けるために戦場に存在するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
ヤレヤレ、やっと追いついたと思ったら厄介な新客だね。
【行動】
引き継続き、レスヴァント。ARICAはパールバーティで対応するよ。
ARICAはアインちゃんツヴァイちゃんの護衛に回って。ツヴァイちゃんの脱出を『援護射撃』しててちょーだい。
さて、ブースト!!
『肉体改造』されているボクの体がギリギリレベルの機動でもボクの『操縦』は完璧だよ。
地上スレスレを飛翔しつつもアストライアの『制圧射撃』で敵機のアウトフレームを破壊。
ビームソードは『瞬間思考力』で一瞬に間合いを見切って回避。
どんな見事な切れ味なビームソードも当たらなければどうということはないってね。
お返しにイニティウムで『切断』するよ。
小国家『八咫神国』の街中で行われている戦闘行為は苛烈を極めていた。
新興小国家『シーヴァスリー』の精鋭部隊が駆る『アマランサス』は『アイン』と『ツヴァイ』を追い詰めていた。
猟兵たちが常に距離を引き離そうと介入し、これを躱してきているのだが、それでもなお距離を離すことができないのは精鋭部隊であるがゆえであろう。
一機が撃墜されても、即座に編隊を組み直し、対応してくるのだ。
「ヤレヤレ、やっと追いついたと思ったら厄介な新客だね」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『レスヴァント』を駆り、学習型AIである『ARICA』が搭載された『パールバーティ』と共に『アマランサス』と『熾裂』が切り結ぶ戦場に飛ぶ。
「『パールバーティ』は『アイン』ちゃん『ツヴァイ』ちゃんの護衛に回って。援護射撃で経路の確保を!」
ユーリーは即座に学習型AIに告げ、『レスヴァント』とで『アマランサス』へと飛びかかる。
ブーストされた機体が特殊な粒子を帯び、凄まじい速度で戦場を走り抜ける。
『パールバーティ』は彼女の命令どおりに『熾裂』をかばうようにしながら『アマランサス』から放たれる攻撃を防ぎつつ、近づけさせぬようにと砲撃を続ける。
「ありがたい。こちらが離脱するまで時間を稼いでください!」
『ツヴァイ』の言葉に『ユーリー』は頷く。
今の猟兵たちにとって『アマランサス』を殲滅することよりも重要なのが彼女たちの無事であるからだ。
ゆえにユーリーの行動は迅速であった。一瞬の踏み込みの如きブーストに『アマランサス』の一機は反応すらできずにアサルトライフルの射撃の前に崩れ落ちる。
それは通常の人間であれば肉体が保たぬほどの速度であったが、肉体改造されているユーリーにとっては関係のないことであった。
地上スレスレを飛翔しつつ、空中で機体を翻す『レスヴァント』。その機体を『アマランサス』が銃口で持って捉える。
しかし、ユーリーの操縦技術が照準を合わせることを許さないのだ。
「腕は確かだろうけれどさ!」
互いの間合いを見切っているユーリーは、即座にキャバリアブレードを抜き払う。
この速度で銃撃を行うのは不利だ。
照準をシステムで併用しているのであれば、マシンがそれを決定する僅かな時間こそが戦場にあっては命取りに成り得る。
だからこそ、互いの距離を詰めて近距離戦闘に持ち込むのだ。
「思い切りも良いようだけど」
ユーリーと『アマランサス』のパイロットの判断は同じであった。しかし、ユーリーの瞬間思考の前には意味をなさない。
『アマランサス』が抜き払ったビームソードが凄まじい熱量を放つ。
あの一撃を受け止めることはできない。ユーリーは決断していた。受け止めるよりも躱す。
「どんな見事な切れ味なビームソードも当たらなければ、どうということはないってね!」
横っ飛びに地上スレスレをブースターでもって『レスヴァント』が跳ねる。
スラスターが噴出し、機体がぐるりと、その場で回転するように『アマランサス』のビームソードの斬撃を既のところで躱す。
ビームの熱量が装甲を溶解させるが、それは致命傷には至らない。内部フレームにも何も問題は起こらないだろう。
ユーリーはそのギリギリを見極め、躱し、『レスヴァント』の手にしたキャバリアブレードの一撃を持って『アマランサス』を両断する。
「場数が足りないから、予測不能な動きに惑わされる。ボクとは経験値が違うんだよ!」
オーバーフレームとアンダーフレームをつなぐコクピットの接続部分を切断された『アマランサス』が大地に崩れ落ちる姿をユーリーは見ること無く、次なる『アマランサス』へと躍りかかる。
一瞬たりとも同じ場所にとどまることはしない。
精鋭部隊である彼等を翻弄するには速度しかないのだ。それを理解しているからこそ、ユーリーは敵部隊を翻弄し、『パールバーティ』と共に『熾裂』の脱出を援護するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
――敵味方の距離が近すぎる。
オブリビオン化してないキャバリアは、キャバリア喰いの絶陣・紅砂陣で速攻で砂に出来るけど、ツヴァイ達の進行方向に陣取られると、陣を張ったら邪魔になる。
その上、敵味方を識別しないのよね。
仕方ない。プランBでいきましょう。
「結界術」「全力魔法」光と影の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」「道術」で金光陣。
この陣はちゃんと敵味方が区別出来るから、厄介なことにはならないわ。
『熾裂』と仲間の期待は目標から外して。
さあ、金光により生じた影達よ。己が実体に牙を剥きなさい。
『アマランサス』が影に反撃してダメージを与えれば、それは自身に跳ね返る。
最低限、混乱を引き起こすことは出来るでしょ。
キャバリア『熾裂』を追う新興小国家『シーヴァスリー』のキャバリア精鋭部隊は、猟兵達に妨害されながらも、即座に体勢を整えて追いすがる。
それはまるで猟犬の如き働きぶりであった。
彼等はオブリビオンマシンによって狂気に呑まれたわけでもなければ、理不尽を敷いられているわけでもない。
命じられるままに行動する心地よさを刷り込まれ、そうすることこそが正しいのだと教え込まれた者たちだ。
「――っ、しつこい! こいつら!」
『アイン』が未だ追いすがる『アマランサス』の姿に毒づく。
如何に『熾裂』が旧式の機体であるとは言え、『ツヴァイ』の操縦技術が『アマランサス』を駆るパイロットたちに劣るわけではない。
それに猟兵たちの介入もあるのに未だ引き離せずにいる。
その光景をみた村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は『アマランサス』のパイロットたちが敢えて、突貫するように距離を近づけていることに気がつく。
「――敵味方の距離が近すぎる」
オブリビオンマシンではなキャバリアは、これまでと同じように対処することもできた。
けれど、それは無差別なるユーベルコードである。
味方であり、逃すべき目標の『熾裂』すらも巻き込みかねない可能性を秘めているのならば、それは取るべき選択ではなかった。
それに己の張った陣が『ツヴァイ』たちの進路にかぶさってしまえば、却って足を引っ張ることになるだろう。
「仕方ない。プランBでいきましょう」
ゆかりの瞳が輝く。
彼女にとって必要なのは、敵味方を判別する攻撃である。同時に『アマランサス』の数を確実に減らす術策だ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。光り輝くほどに影はより深く。濁気に沈む愚人の影よ、克己せよ。汝らの現し身に牙を剥け。疾!」
輝く金光陣(キンコウジン)より現れるのは、ゆかりが放つ金光によって生み出された『アマランサス』の影であった。
「――! 影が動く……これは!」
『ツヴァイ』の瞳に映るのは、影でできたような真黒きキャバリアであった。
それこそ、ゆかりが生み出したユーベルコードの力である。
影のキャバリアは次々に『アマランサス』へと攻撃を開始するように飛びかかる。当然、『アマランサス』は手にしたビームソードでもって影を振り払おうとするが、その一撃は生み出された影の主である『アマランサス』本体へと偽物から放たれるのだ。
「どうなってやがる……連中、同士討ちを」
『アイン』にとっても初めて見る光景であったのだろう。
それがユーベルコードであり、猟兵という超常なる存在が生み出した術策である。
「さあ、金光により生じた影達よ。己が実体に牙を剥きなさい。影を傷つけることは、己を傷つけることと知るがいいわ」
ゆかりの言葉通りであった。
『アマランサス』が己の影を振り払おうとすればするほどに、その装甲に傷が刻まれていく。
「頃合いね。『アイン』、『ツヴァイ』、今のうちよ。連中が混乱をきたしているうちに離脱しなさい」
ゆかりの言葉に『熾裂』が『アマランサス』たちと距離を離すように疾駆する。
例え、影が『アマランサス』に致命傷を与えることができないでいたとしても、それで十分に部隊に混乱をもたらすことができる。
ゆかりは、混乱に陥った部隊を見やり、背を向ける。
この後に訪れるであろう本命。
あらゆる勝利者の影に存在する敗残者。その残滓が現在に牙を剥くのを止めなければならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
引き続き焔天武后を操縦してアインさんとツヴァイさんを護ります。
精鋭部隊が駆るエース専用機でリミッター解除までしますか、さぞかし精密かつ迅速な操縦が要求されるのでしょうね。
ならばとUC:神気遍満を使用。
ダメージよりも全パイロットに畏怖と途切れない全身痙攣の状態異常が肝。そんな状態での操縦は個々の動きも連携も確実に劣化します。
焔天武后の機体各所に備えたレーザー射撃・一斉発射・貫通攻撃・スナイパーでコクピットを避けて撃ち抜き無力化し、接敵してきたら雷月の切断属性攻撃・鎧無視攻撃でコクピットを外して斬って解体します。
敵攻撃は軌道を見切り、天耀鏡の盾受けで弾き、機体に纏ったオーラ防御で完全無効化です。
精鋭部隊である『アマランサス』は、確かに精鋭と呼ばれるだけの技量を有したパイロットたちだけで構成された部隊であったのだろう。
彼等は猟兵に妨害されても即座に立て直し、その機体でもって対処してくる。
それはまるで昆虫の群れのような規則正しさでもって、隊列を組み直し、脱落した機体をも利用して『八咫神国』の外へと脱出しようとしているキャバリア『熾裂』を追撃し続けるのだ。
「気色悪い連中だ。まるでゆらぎがねぇ……本当に人間か?」
『熾裂』のコクピットの中で『アイン』がつぶやく。
おおよそ人間であれば、機体操縦にゆらぎが出てくるものだ。
生身の人間が意志や精神状態に寄って、感情の高ぶりを見せるようにキャバリアパイロットもご多分に漏れずである。
「ですが、確実に人間です。それもオブリビオンマシンに侵されていない。自身の意志でもって戦いに参加している者たち……」
スーパーロボット『焔天武后』と共に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は駆け付け、『熾裂』と共に並び立つ。
精鋭部隊である『アマランサス』の機体は数を減らしているが、それでもなお、彼等が撤退する兆しはなかった。
『アマランサス』は言うまでもなく、かつて『グリプ5』へと亡命してきていた『フィアレーゲン』の難民キャンプにまぎれていた機体『アマランサス・ラピート』の量産型である。
その機体性能は言うまでもなく、高級量産機とでも言うべき機体であった。
技量の卓越したパイロットでなければ操縦することもおぼつかないもの。さらにリミッターまで解除しているというのであれば、その操縦は精密かつ迅速な操縦が要求されるものである。
「ならば――災厄を齎す者よ、世の為、人の為、私がお相手致しましょう」
詩乃の瞳がユーベルコードに輝き、『焔天武后』の機体装甲から若草色の神気が溢れ出る。
それは言わば、神威の顕現であった。
彼女が神性を宿した猟兵であるからこそ、発露される力。神気遍満(シンキヘンマン)である。
己に気概を為す存在を浄化消滅さえる神気は、戦場に満ち溢れ『アマランサス』のパイロットたちにも影響を及ぼす。
どれだけの訓練の果てに恐怖と意志を捨て去ったのだとしても、目の前に現れた神性は、それらを容易に覆すことだろう。
「そんな状態では、操縦はもとより連携にも支障をきたすことでしょう!」
『焔天武后』の機体各所の装甲が開き、一斉に光線が放たれる。凄まじい出力のレーザーが戦場を一直線に駆け抜け『アマランサス』の機体装甲を貫く。
狙いは正確であった。
レーザー射撃はコクピットを避けて『アマランサス』のオーバーフレームやアンダーフレームを貫く。
しかし、それだけで『アマランサス』が止まることはない。
機体の損壊が激しくとも、彼等は己達に課された命令を実現するまで、戦うことを止めないのだ。
「哀れな……己で道を選ぶことさえ忘れてしまったのですね」
抜き払った懐剣が『アマランサス』の機体を切り裂く。
「受けるな! 切り裂かれるぞ!」
『アイン』の言葉に詩乃は迫る攻撃を天耀鏡の盾でもって受け流す。ビームソードの一撃は受ければ、凄まじき出力でもって容易に溶断せしめるだろう。
それを『アイン』の言葉でもって知り、オーラを張り巡らせた力でもって受けるのではなく、流したのだ。
ビームソードの先端が街中のアスファルトを溶解させた瞬間、返す刃でもって『アマランサス』の頭部を落とし、動きを止める。
「助かりました。こちらは私がひきつけておきます。どうかお早く……敵の首魁が来ます」
詩乃は『アマランサス』部隊の背後より迫るプレッシャーの大元へと視線を向ける。
禍々しい雰囲気。
直視しなくてもわかる。己達を追うのは、過去よりの怨讐。それが実体を持ったかのような、強烈なる悪意。
それこそを詩乃は浄化しなければならぬと、『焔天武后』と共に向き合うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アンネリース・メスナー
ルインと微絡み。お互いに嫌い合っているので連携や通信はせず
どうやら間に合ったようですわね
こうもアマランサスのコピー機を量産して、故国をズィガ帝国を馬鹿にするのもいい加減になさい!
……あのマリーネタイプは、またあの戦犯ですか
いい加減、どこかで戦死でもしてくれないかしらね
リミッターを解除した機体を乗りこなした程度でいい気にならないことね
リミッターはコピー機に設けられたものでズィガ帝国のアマランサスには最初から付いていないわ
わたくしのラピートや戦犯のマリーネはおろか通常のアマランサスにもね
つまり、その程度はズィガ帝国のアマランサス乗りには当然の前提なのよ
だからこそ、わたくしに敗れるのも当然のことよ!
ルイン・トゥーガン
アドリブ歓迎
アマランサスか、正直ズィガ帝国の頃より傭兵になってからの方が見てきた数が多いんじゃないかい?
ところで知ってるかい?エース用のピーキーな操縦系にリミッターを付けて一般兵にも使えるようにしたのが複製機だ
つまりズィガ帝国製のオリジナルにはリミッターなんざ最初からないんだよ
あぁ?あの派手なラピートは親の七光りの姫さんか
チッ、相変わらず目障りだが、今は無視さね
依頼の報酬だけでなく保守整備部品まで得られるなんてツイてるね
さっさとジャンクにして部品取りさせてもらうよ
残念だけどお前達よりアタシとマリーネのが腕も性能も上なんでね
汎用型と海兵隊仕様の高機動強襲型じゃ機体出力も推力も火力も違うんだよ!
『アマランサス』――それはある猟兵たちにとっては別の意味を持つ名であったことだろう。
新興の小国家『シーヴァスリー』が如何にしてその機体をコピーせしめたのかを知る者は未だ居らず。そして、如何なる理由において機体を操るのかもまた知る者はいなかったのだ。
けれど、アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)はそれを赦しておけるほど寛容ではなかった。
「どうやら間に合ったようですわね。こうも『アマランサス』のコピー機を量産して……」
彼女の心は吹き荒れる嵐のように荒れ狂っていたのかも知れない。
彼女の故郷、故国、そのズィガ帝国にて運用されていた『アマランサス』をコピーした機体があるということ事態が己の出生を含めて、侮辱されたようなものであった。
「馬鹿にするのもいい加減になさい!」
アンネリースの駆る『アマランサス・ラピート』は彼女の専用機であり、親衛隊機体であることを示すようにエングレービングが施されていた。
その薄紫色の『アマランサス』が紅の『アマランサス』と戦場に相見えた瞬間、その雌雄を決するのは当然の成り行きであったことだろう。
「あぁ? あの派手な『ラピート』は――」
その声はアンネリースに届いたものではなかったが、不躾な視線に彼女は視線を巡らせる。
彼女にとって……いや、視線の主であるルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)においても同じ感情を抱くものであったが、それは言わぬが花であろう。
「親の七光の姫さんか。チッ、あいかわらず目障りだが、今は無視さね」
「……あのマリーネタイプは、またのあの戦犯ですか。いい加減どこかで戦死でもしてくれないかしら」
互いに吐き捨てる言葉は、相互理解から最も程遠いものであったけれど、お互いの本心を包み隠していないという意味では共通していたし、目の前の『シーヴァスリー』が繰り出した『アマランサス』を忌々しく思っていることについても同様であった。
「『アマランサス』か。正直、『ズィガ帝国の頃より傭兵になってからのほうが見てきた数が多いんじゃないかい?」
ルインは『アマランサス・マリーネ』を駆り、『八咫神国』の街中を駆け抜ける。
その正反対の方向へと『アマランサス・ラピート』が走り、奇しくもアンネリースとルインは『アマランサス』の精鋭部隊を挟撃するような形になっていた。
連携するつもりなど毛頭ない。
けれど、互いの目的は一致している。
「リミッターを解除した機体を乗りこなした程度でいい気にならないことね」
「ところで知ってるかい? 『エース』用のピーキーな操縦系にリミッターを着けて一般兵にも使えるようにしたのが複製機だ。つまり――」
アンネリースとルインの声が重なったのは偶然であったし、互いはそれを知らない。
けれど、その言葉が意味することは同じ『アマランサス』の名を冠する機体を操っていたとしても、彼女たちの機体と『シーヴァスリー』の機体が別物であることを示していた。
「最初からリミッターなんざないんだよ――」
「つまり、その程度はズィガ帝国の『アマランサス』乗りには当然の前提なのよ」
二人の瞳がユーベルコードに輝く。
機体限界を超えた『アマランサス』の機動がアンネリースの駆る『アマランサス・ラピート』に迫るも、彼女のサイキックセンスはまるで未来でも見てきたかのような直感によるサイキックカウンターを発動し、己へと敵意を向けた瞬間に反撃の一撃を打ち込む。
アサルトライフルから放たれた弾丸が『アマランサス』の頭部を打ち抜き、抜き放たれたナイトソードの一撃がオーバーフレームを切り裂く。
「だからこそ、わたくしに敗れるのも当然のことよ!」
アンネリースの言葉に『アマランサス・ラピート』のジェネレーターが唸るようにして咆哮し、コピーである『アマランサス』を振り払うようにして飛ぶ。
その一方でルインの駆る『アマランサス・マリーネ』はエースパイロットたる貫禄を見せつけていた。
機体性能の限界まで引き出した挙動は如何にリミッターを解除した『アマランサス』であったとしても追いつけることはない。汎用型である『アマランサス』と高機動強襲型である『アマランサス・マリーネ』では機体出力も推力も火力も違う。
一瞬の交錯で敵機を殲滅せしめる技量は、ルインの力を十全に引き出すことだろう。
「残念だけどお前達よりアタシとマリーネの腕も性能も上なんでね」
ルインは背中合わせに視線を交えることのない『アマランサス・ラピート』を尻目に笑う。
きっとあの親の七光の姫は、許さないだろうけれど。
いや、違うな。
『模造品の部品をありがたがるようでは』などと侮蔑の視線を送ってくるかもしれない。
それでもどうだっていいのだ。生き残るために誇りが邪魔をするように。
ルインは生きるためにどんな手段だって取ると決めているのだ。保守整備部品と報酬。それが彼女の今回の戦いに参じる最大の理由だ。
アンネリースのように故国を侮辱した何者かを誅せんと参じたわけではない。
互いの生き方を理解できなくても人生は続く。
また二人の道が交錯することもあるかもしれない。
その時は。
「――わたくしを見縊らないことね」
アンネリースは、視線すらくれることなく、互いの背中を合わせたまま、戦場へと舞い戻るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サージェ・ライト
引き続き、ファントムシリカに乗って参戦
いやーアインさんに怒られちゃいましたてへぺろ
ちょ、シリカ待って、爪ステイ?!
おちついてーおちついてー
よし、その怒りを敵キャバリアにぶつけましょう、うん
特殊能力があるキャバリアだと突っ込んで
Pシリカが壊れて私が怒られるパターンですが!
敵兵器がビームライフルとバズーカなら大丈夫なのでは!?
というわけでエンジェライトスラスター始動でーす♪
フローライトダガーを手にして突っ込みますよー!
直線的な機動ならスラスターの噴射の調整で回避可能!
あとは懐に飛び込んで仕掛けるのみ!
「手数こそ正義! 参ります!」
必殺の【疾風怒濤】でごーごーです!
※アドリブ連携OK
「いやー『アイン』さんに怒られちゃいましたてへぺろ」
なんて、お気楽なムーヴをしながらサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は茶目っ気たっぷりに舌を出して、愛嬌を『ファントムシリカ』のコクピットの中で振りまいていた。
外からは見えないから、その茶目っ気無駄ではないかと思われたかもしれない。
けれど、彼女にとって最も愛嬌を振りまき、最も信頼を勝ち得なければならない存在はコクピットの中にこそ存在している。
そう、それは『シリカ』である。
白猫又の『ファントムシリカ』のアバターである彼女は、また無茶なサージェの操縦に爪をにゅっとさせていた。
「ちょ、シリカ待って、爪ステイ?!」
おちついてーおちついてー、とサージェはシリカを宥める。
こんな狭いコクピットの中である逃げ場などない。いや、流石に怒られたのもまあ、理由はわからないでもないですけど、それでも無事に『アイン』や『ツヴァイ』を逃がすことができたのだから結果オーライじゃないですか、とサージェはシリカを説き伏せる。
「次やったらばりぃ、ですからね」
そんなふうに言われては、サージェはうなずかざるを得ない。ここで下手に言い訳でもしようものならば、再び爪とぎにされてしまうことはわかりきっているからだ。
「よし、その怒りを敵キャバリアにぶつけましょう、うん」
すでに多くの猟兵たちが新興小国家『シーヴァスリー』から来襲した『アマランサス』を駆る精鋭部隊とキャバリア『熾裂』の間に介入している。
精鋭部隊であることを示すとおり、彼等はオブリビオンマシン並のポテンシャルを持って、『熾裂』が『八咫神国』の外に出るのを防いでいた。
いつもであれば、特殊能力があるキャバリアに突貫して『ファントムシリカ』が損壊するのが常であり、あとでばりぃ、てやられるのがパターンなのであるが、敵の武装がビームライフルとバズーカであるのならば、大丈夫なのでは!? と油断しているのがサージェらしい。
「というわけで!」
『ファントムシリカ』の背面に備えられたスラスターが展開し、一対の羽のように煌めく。
起動したスラスターが天使の環のような光帯を生み出し、機体を一気に加速させる。
例え、相手が高性能キャバリアであったとしても速度で引けを取ることはなかった。
直線的な動きながら光の粒子を撒き散らしながら走る『ファントムシリカ』を『アマランサス』たちは捉えることができなかった。
ビームの光条やバズーカから放たれた砲弾が爆煙を上げる中、『ファントムシリカ』の残影だけが戦場に乱れ飛ぶ。
「手数こそ正義! 参ります! そにっくぶろー!!」
手にしたフローライトダガーが緑色の斬撃の軌跡を描き、バズーカの砲身を切り結ぶ。
しかし、それだけで終わらぬのが疾風怒濤(クリティカルアサシン)を旨とするサージェのクノイチとしての信条であり、それを体現した技量であった。
超連続攻撃は止まらない。
バズーカを斬り裂き、四肢を細切れにしても止まらぬ斬撃は、アンダーフレームとオーバーフレームをつなぐコクピット以外を残して全てがみじん切りのように切り裂かれる。
コクピットブロックを掴む『ファントムシリカ』が爆散する、かつてフレームであった残骸を背に天使の羽を羽ばたかせるように飛び、その場を後にする。
『アマランサス』はオブリビオンマシンではない。
けれど、パイロットはオブリビオンマシンに心を歪められたのと同じであるような盲信でもって猟兵に対峙している。
ゆえに、サージェは彼等の生命を奪うことはしない。
救われた彼等が何を思うのか、そして、また再び己たちに牙を剥くのであれば。
「何度でも打ちのめすのみです! さ、シリカ行きますよ、ごーごーです!」
そんなこと関係ないと言わんばかりにサージェは笑って戦場にまた舞い戻るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
これ以上、先には進ませない。彼女達は守る
オブリビオンマシンじゃなくて素なのが厄介になるとはな
SPDで判定
AIと一緒に【情報収集】し敵の攻撃の瞬間や位置、攻撃後の隙などを把握【戦闘知識】
攻撃をされれば風の【結界術】を使って防いだり、UCを使用して黄の災い:感電【マヒ攻撃】が付与された弾丸を【スナイパー】【全力魔法】で放ち、攻撃までの【時間稼ぎ】をする
隙が出来れば橙の災い:爆破【爆撃】を弾丸に付与して【スナイパー】【範囲攻撃】を使い有効範囲内にいるようyさ悪敵を攻撃する、
新興小国家『シーヴァスリー』より来襲したキャバリア『アマランサス』の紅の機体は、『八咫神国』の街中を我が物顔で闊歩していた。
もはや『八咫神国』は国としての体裁を保つだけで精一杯であった。
オブリビオンマシンが街中に溢れ、猟兵達はこれを蹴散らした。
けれど、目の前のキャバリア『アマランサス』はオブリビオンマシンではないのに、猟兵である己たちを正しく敵であると認識していた。
それは『シーヴァスリー』もまたオブリビオンマシンの傀儡として堕ちていることを示すには十分な証拠であったことだろう。
「これ以上、先には進ませない。彼女たちは護る」
己を生者の盾と認識しているルイス・グリッド(生者の盾・f26203)にとって、それは許しがたいことであった。
今を生きる人々を傀儡として操り、戦禍を広げていくだけのオブリビオンマシンを彼が討つ。それは『アイン』と『ツヴァイ』を護ることにもつながる。
「オブリビオンマシンじゃなくて素なのが厄介になるとはな」
『アマランサス』は精鋭部隊が扱っているのだろう。
その動きは一糸乱れぬものであり、まさしく精鋭と呼ぶに相応しい挙動であった。猟兵たちの介入により、連携を崩されても、僚機が撃墜されても、それでもなお『アマランサス』は即座に連携を立て直し、僚機などもとより存在していなかったかのように猟兵達と『熾裂』へと迫るのだ。
『敵位置補足。ビームソードの高出力を確認』
AIが告げる情報をルイスは聞き、頷く。
遠距離も近距離もこなす汎用型の『アマランサス』はルイスにとっては、脅威そのものであった。
とりわけ、あのビームソードの出力が厄介極まりないものであった。
受ければ、受けた部分ごと溶断してくる出力。あれが量産機であるというのが信じられないほどの高性能。
その数を揃えているという『シーヴァスリー』の国力は猟兵たちをしても脅威に感じるものであったかもしれない。
「だが、それでも。――銃を使わせて貰うぞ」
ルイスの瞳がユーベルコードに輝く。
キャバリアである銀の銃兵の魔銃の砲口が煌めく。彼の義眼のメガリスの力を受けた属性付与(エンチャント)の力が銃に流れ込み、引き金を引いた瞬間、『アマランサス』部隊を覆うのは黄の災い。
ほとばしる電撃が『アマランサス』たちを包み込み、その機体を一時的に足を止めさせるのだ。
「これで終るとは思っていないが」
如何に広範囲に感電の影響が出るとは言え、それは一時しのぎに過ぎない。
時間が経てば経つほどにこちらが不利になる状況は変わってなど居ない。
けれど、それでもルイスの義眼は橙に輝くのだ。
「隙ができたのなら!」
放たれた弾丸が広範囲に膨れ上がる爆風を持って『アマランサス』を退ける。
時間を稼ぐ事に特化した戦い方であった。
何も『アマランサス』を撃滅する必要はない。ルイスにとって必要であったのは時間だ。
『アイン』と『ツヴァイ』が逃げおおせるだけの時間。
電撃と爆破は、彼等の目を遮るためのものであった。必ず護ると決めた以上、ルイスは、必ずそれを成さねばならない。
彼が生者の盾を名乗るのであればこそ、それは違えてはならぬことであった。
『熾裂』が爆風に遮られた街中を疾駆する。
未だ道程は険しくとも、この戦乱だけの世界を生き抜こうとしている彼女たちの邪魔などさせはしない。
そのために己がいるのだと言うようにルイスは銀の銃兵と共に『アマランサス』たちの前に立ちふさがるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…オブビリオン並みの精鋭って…狂気に侵されてない分しゃれにならねーな
「それじゃどうするの?」
やる事はかわらねーが…あれがオブビリオンマシンじゃねーってなら
根こそぎいただきますか(にやり
【戦闘知識・情報収集・視力】
敵陣と地形の状況
特にツヴァイ達を防衛しやすい立ち位置を把握
更に敵機の機体構造を分析
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与して光学迷彩
水の障壁で熱源も隠蔽
【空中戦・念動力】
暴走衛星に捕捉されないように飛びながら静かに接近
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
たまぬき発動
鎌剣で武器を切断して強奪しつつ搭乗者の精神を強奪
気絶させ
後は機体丸ごと強奪確保
後で売り込むとしましょうか
界導神機『メルクリウス』のコクピットの中でカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はゆっくりと息を吐き出した。
小国家『八咫神国』の街中でオブリビオンマシンが溢れ出るのは、まだわかる。この小国家がすでにオブリビオンマシンの傀儡と成り果ててしまったことは、仕方のないことだ。
けれど、彼のため息の理由は新興小国家『シーヴァスリー』の精鋭部隊であるキャバリアが他国の街中に現れたとうことである。
「やれやれ……オブリビオンマシン並の精鋭って……狂気に侵されてない分しゃれにならねーな」
カシムにとって、もっとも危惧すべきことは、彼が正気のままにオブリビオンマシンの傀儡に成り果てることを是としていることであった。
その手合は何をするかわかったものではないからだ。
『それじゃどうするの?』
『メルクリウス』が呼びかける。
敵は精鋭。手強いことは言うまでもない。彼女自身カシムが何を言うのかわかっていたが、敢えて言葉にしていた。
「やることはかわらねーが……あれがオブリビオンマシンじゃねーってなら根こそぎいただきますか」
カシムが不敵に笑う。
街中に『メルクリウス』と共に疾駆し、崩れた建物や『熾裂』の位置を把握する。『アイン』や『ツヴァイ』を護ることが今回の戦いにおいて最も大切なことであるというのならば、その把握は急務であった。
「機体事態はオーソドックスなオーバーフレームとアンダーフレーム構成……汎用型ながらに高性能。いわゆる高級量産機ってやつ……」
ならば、己が為すべきことは一つであった。
光と水の属性を機体に付与し、光学迷彩によって姿を消し、『メルクリウス』は街中を飛ぶ。
熱源すらも水の障壁で隠蔽し、如何にサーモグラフィーでもって敵機を感知していたとしても『メルクリウス』を『アマランサス』は捉えることはできなかったことだろう。
「さて……万物の根源よ。我が手にその心をも奪い去る力を宿せっ…!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
たまぬき(ソウルスティール)と呼ばれるユーベルコードは敵の魂魄を奪う魔技である。
姿の見えぬ死角から一瞬で『アマランサス』のバズーカを切断し、ビームライフルすらも跳ね飛ばす。
武装を解除させた後、ユーベルコードの輝きが『アマランサス』のパイロットの精神を強奪し、気絶させるのだ。
コクピットハッチを開かせ、パイロットを外に放り出せば、機体自体を強奪せしめる。
「後で売り込むとしましょうか」
キャバリア一体。
それも高級量産機ともあれば、欲しがるところはいくらでもあるであろうし、金には困らないだろう。
いつだってお金とは生きるのに必要なものだ。
金で買えないものは、大抵の場合、金で買えるものでどうにかできるものだ。それゆえに、己の盗賊としての研鑽をやめることはない。
『強欲ー』
「悪いか? これくらいの見返りがあったって構わないだろう?」
オブリビオンマシンならば破壊するしかない。
けれど、キャバリアであるというのならば、話は別だ。
買い手がいるから売り手がいる。根こそぎ頂くとカシムは宣言したのだから、盗賊らしく全て奪っていくのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
(駆けつける瞬間、戦場一帯に現影投射術式【ファンタスマゴリア】で幻の濃霧を作り出して一時的にアイン達の機体を隠す)
…相手は試作を経て開発された量産機、と言ったところか…まともにやると強敵だな
(アイン達に)助けに来たよ……この霧が晴れたら相手は一時的に混乱するから…そのうちにまだ残ってる奴らを無力化しよう…
…霧を解除、私やアイン達の機体を幻で多数複製…
これを【浮かびて消える生命の残滓】で生命をもたせて…人間以上の知性を持って自己判断で動かすことで攪乱するよ…
…相手が本物を見分けようとしているうちに電撃術式でシステムダウンさせてアマランサスを無力化しよう…
小国家『八咫神国』の街中はすでに戦場であった。
国としての体裁を保つだけしかしない国家の上層部は新興小国家『シーヴァスリー』のキャバリアが乗り込んできたとしても機能することはなかった。
赤いキャバリア『アマランサス』は我が物顔で『八咫神国』の街中に来襲し、『熾
裂』を追う。
それは『アイン』と『ツヴァイ』にとっては予測できたことであったのかもしれないが、おおよそ考えられる内では最悪と言えるものであったのかもしれない。
「……これは思っていた以上だな。周りは敵だらけだぞ」
「わかっています。けれど、今の最善は私達が『グリプ5』へと帰還すること。とりわけ、『アイン』……姉さん、貴方が」
「今更そういう物言いをするんじゃねぇよ。今生の別れみたいな言い方を」
『アイン』と『ツヴァイ』の間にはもう確執はない。
けれど、彼女たちが置かれた立場は、戦場にあって危ういものであった。猟兵たちが介入してもなお、『アマランサス』は彼女たちを追うことをやめなかった。
だが、二人が絶望するにはまだ早い。
それを知らしめるように戦場に濃霧が満ちていく。一体何がと思う間もなかった。
『八咫神国』において、濃霧が発生するには時期が早い。
それに機体が隠れるほどの濃霧などそうそう起こるわけもない。ならば、これは何者かの仕業であることは明白だった。
「助けに来たよ……」
通信が入った瞬間、それが猟兵のものであることを彼女たちは知っただろう。
「……この霧が晴れたら相手は一時的に混乱するから……そのうちにまだ残っている奴らを無力化しよう」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は幻影投影術式『ファンタズマゴリア』でもって周辺を霧で包み込んでいた。
如何に彼女の術式が優れていたとしても、その術式の基点は己自身である。生身であれば、これほどまでの広範囲に術式を展開することは不可能であった。
ならば、何がそれを可能にしているのか。
それは試作型術式騎兵『ツィルニトラ』によって拡大された術式であった。
『アマランサス』は試作を経て開発された高級量産機である。ならばこそ、まともにやり合うのは避けたほうがいいとメンカルは理解していた。
ゆえに術式に寄って敵機を混乱に陥れ、濃霧にまぎれている間に己達の体勢を整えることを優先したのだ。
「何か手が……?」
「任せておいて。――造られし者よ、起きよ、目覚めよ。汝は蜻蛉、汝は仮初。魔女が望むは刹那を彩る泡沫の夢」
ユーベルコード、浮かびて消える生命の残滓(メメント・モリ)にて生み出されるのは、無数の幻影であった。
『熾裂』や『ツィルニトラ』の幻を多数複製し、そのそれぞれに人間以上の知性を持って自律行動を取らせるのだ。
霧が晴れた瞬間、幻影と言えど『熾裂』と『ツィルニトラ』に寸分違わず生み出された幻影たちが、それぞれの意志を持って動き出す。
『アマランサス』たちにとっては、悪夢そのものであったことだろう。
最重要目標である『熾裂』が複数に増えているのだから。
センサーにも寸分違わずの精度で映るからこそ、彼等は混乱した。どれを撃てばいいのかさえもわからなくなっているのだろう。
「混乱ってこれかよ! やることがえげつないだろう!」
『アイン』が笑っている。これほどまでの数であれば、紛れて動くことも可能であるろう。
その隙にメンカルは、幻影と本物を見分けようとしている『アマランサス』へと電撃術式を放ち、そのシステムをダウンさせて無力化させていく。
「さあ、今のうちに。敵が来る前に」
メンカルは幻影によって戦場を乱している向こうから、重圧を感じていた。
『アマランサス』とは比べ物にならない過去の遺物。
その怪物じみた存在の影を、彼女は見たのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
んん?
んー前どっかで見たような機体だ…
ベースは同じで量産機って所かー
無駄にヒロイックな角とか無いもんね、角とか!
●
さてと、敵が普通のキャバリアなら話は早い
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
街中の屋根の上から戦場の『情報収集』
【Code:A.M】起動
雷刃展開
熾裂には当てないように…狙うならやっぱり上半身かな
複数纏めて『なぎ払い』、1回だけだと不安だからおかわり追加の『2回攻撃』
普通の機体であるなら、何も戦闘なんてする必要ないや
回路を壊しOSを狂わせればそれでただの木偶の坊の完成っと
…街の機械類も一緒に壊れたかもしれないけど
後で有償で修理に行けば商売にもなってよし!
商売上手!
その赤いキャバリアの姿を月夜・玲(頂の探究者・f01605)は一度どこかで見たことがある思った。
「んん? んー前どっかで見たような機体だ……」
彼女にとっては、『アマランサス』とは『アマランサス・ラピート』と呼ばれる機種であったことだろう。
滅亡した小国家『フィアレーゲン』から『グリプ5』へと亡命しようとしていた難民キャンプに紛れ込んでいたオブリビオンマシン。
それが『アマランサス・ラピート』であった。
少年『クリノ・クロア』によって起動され、彼の『エース』としての資質でもって、脅威へと変わったオブリビオンマシン。
しかし、猟兵たちの活躍に寄って機体は破壊され、『クリノ・クロア』の操縦データは今目の前にある『アマランサス』に受け継がれることはなかった。
「ベースは同じで量産機ってところかー無駄にヒロイックな角とかないもんね、角とか!」
玲にとってヒロイックの象徴は角であったのかもしれない。ブレードアンテナに目が二つあったら、それこそ大喜びでジャンクにすべく飛んでいったかも知れない。
いや、流石にそれは、と言い切れないのが玲という猟兵であった。
「さてと、敵が普通のキャバリアなら話は早い」
オブリビオンマシンであれば、パイロットたちは狂気に呑まれている。けれど、目の前のキャバリアをオブリビオンマシンではないのだ。
ならば、如何にするか。
街中にそびえるビルの屋上から『アマランサス』と彼等が追う『熾裂』の姿を見やる。
手にした二振りの模造神器の刀身が蒼雷をほとばしらせる。
それはユーベルコードの発現であり、Code:A.M(コード・アンチマシーン)の生み出す特殊な稲妻とウィルスプログラムの奔流でもあった。
「蒼雷展開――」
玲の瞳にユーベルコードが輝く。
敵がオブリビオンマシンでないのならば、何も破壊しなくたっていい。
ただのキャバリアであるというのならば、無効化してしまえばいい。簡単なことだ。何も切った張ったをするだけが猟兵の戦いではないことを玲は知っている。
「普通の機体であるのならば、機械を殺す蒼き一閃を受けてみなよ」
玲の振るった二振りの模造神器が、屋上より天を突かんほどに伸びていく。
振り下ろされた瞬間、雷刃が迸り、『アマランサス』のオーバーフレームを舐めるようにして電子機器の尽くをウィルスプログラムでもって冒し、電子回路と制御プログラムを焼き切るのだ。
「これでただの木偶の坊の完成っと」
簡単じゃん、と玲は笑って屋上から飛び降りていく。
戦いはまだまだ続くし、大物が待ち受けている気配が彼女には感じられるのだ。けれど、彼女は街中を走っていて気がつく。
なんだか街中の全ての電気系統の機器が沈黙しているようなのだ。
「……」
あ、と玲は思い至る。特殊な稲妻で形成された雷刃。それは肉体を傷つけず、電子回路や制御プログラムのみを焼き切る力である。
だからこそ、建物などの遮蔽物を気にせず『アマランサス』を攻撃できたのだ。
けれど、彼女の振るった雷刃は透過した建物の中にある電子機器の類の全てをも焼き切ってしまったのだ。
「――……後で有償で修理に行けば商売になって」
ヨシッ!
じゃあない。よっ、商売上手! と囃し立てる者だっていない。
だって、これじゃあマッチポンプもいいところである。
しかし、玲は気にした様子もなく再び舞い込みそうなボーナスに小躍りするようにスキップ踏みながら戦場を飛ぶ。
けれど、後で実際に修理に行ったら細々したものばかりで実入りは少なく、手間ばかりがかかる骨折り損になるのは、また別の話であるし、可能性の一つに過ぎないのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
アマランサスのカテゴリーはクロムキャバリア
UC覚醒者にしか扱えない機種とその搭乗員をよくも揃えたものです
矢張り動きが良いですね
尤も、猟兵が駆る同機種と比べなければの話ですが
センサーの情報収集と瞬間思考力で包囲状況を常時把握
ロシナンテⅣの頭部、肩部格納銃器展開
サブアームのライフル乱れ撃ちスナイパー射撃でバズーカ撃ち落とし
銃口からビーム射線見切り大地、建物、時に敵機その物を蹴り宙へ機体踊らせ、空中では四肢稼働の重心移動と推力移動の微調整で実現する操縦機動で回避
近接戦の間合いへ
盾で銃口払い剣で解体
即座に離脱
他機体へ強襲仕掛け
皆様にも事情あれど、此方も騎士としての責務があります
お二人を追わせはしません
これだけの数の猟兵が戦場に介入しても新興小国家『シーヴァスリー』の『アマランサス』は精鋭部隊であることを示すように潰走することはなかった。
僚機が撃墜され、行動不能に陥っても、即座に陣形を組み直し、事態に対処する。まさに精鋭部隊と呼ぶに相応しい技量であるとトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は理解していた。
本来『アマランサス』のキャバリアとしてのカテゴリーは『クロムキャバリア』である。ユーベルコードを扱う者でなければ扱えない機種でありながら、その搭乗員は、必ずしもそうではない。
そのためのリミッターであるのだろう。
リミッター解除と同時にパイロットの生命を犠牲にしてでも、本来の『クロムキャバリア』としての力を発揮するように作られている。
『アマランサス』をよく知る者は、それを本来の『アマランサス』からは程遠いものであると断じたし、トリテレイアも同意見であった。
「ですが、やはり動きが良いですね。尤も――」
それは猟兵が駆る同機種と比べなければの話であるとトリテレイアは冷静に分析して『ロシナンテⅣ』と共に戦場を駆け抜ける。
センサーは戦局の情報をつぶさに収集し、状況を把握していく。
頭部から放たれた銃器が弾丸をばら撒きながら『アマランサス』の機動を阻害する。ほとんどの猟兵たちが『アマランサス』を無力化してくれたお陰で、トリテレイアも動きやすいものであった。
「ならば、後は彼女たちの道行きを阻むものを打倒するまで――!」
サブアームが展開し、ライフルから弾丸がばらまかれる。
『アマランサス』のバズーカが『ロシナンテⅣ』に狙いを付ける。
けれど、放たれるよりも早くスナイパーの如き精密射撃がバズーカの砲身に打ち込まれ、背面ユニットに誘爆し、機体が傾ぐ。
「肝要なのは現状を俯瞰的に捉える事、走らずとも止まらぬ事、射線から外れる事、その繰り返しの他は…騎士として危地に踏み入る覚悟です」
ビームライフルで狙いを着けられようが関係などなかった。
必ず銃口がこちらに向くのであれば、その射線を見切ることなど造作もない。
時に大地を蹴り、時に建物や敵機の残骸を蹴り機体を中に舞い上がらせる姿は、機械騎士の戦場輪舞曲(マシンナイツ・バトルロンド)と呼ぶに相応しいものであったことだろう。
「遅い……! さすがの練度であると言わざるを言えませんが、まだ足りませんね」
大盾がビームライフルの銃口を払い、剣が武装を持つ『アマランサス』の腕部を斬り裂く。
トリテレイアにとってキャバリアとは四肢の延長線上に過ぎない。
機械騎士であればこそできる芸当であったことだろう。
彼の動きはよどみなく、人型であること、戦術を操ることができるという兵器としての側面、その長所を十全に発揮し『アマランサス』の精鋭たちを翻弄し次々と彼等の武装を破壊していくのだ。
「皆様にも事情あれど、此方も騎士としての責務があります」
トリテレイアにとっては『アイン』と『ツヴァイ』の無事がそれだ。
彼女たちを失わせてはならない。
彼女たちが『エース』であるからという理由だけではない。
『憂国学徒兵』のクローンである『ラーズグリーズ』の性を持つ彼等にとって、互いの存在こそが支えになるとわかっているからだ。
「あのお二人は『グリプ5』にとって、いえ、彼女たち家族にとって必要な存在。それを二度と失わせてはならぬのです」
機械の己が人道を説くことがあっていいのかはわからない。
けれど、彼等の道行きに塞がる過去の幻影があるというのならば、それを取り払うことそこが己の責務である。
ゆえに、トリテレイアは街中より襲来する極大なる悪意の塊を見据え、彼女たちを騎士として護ることを誓うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
はあ。『エース専用高性能クロムキャバリア』ですか。
自分で言うのも何ですが、私のスコアって下手したら四桁ですよ。
(インクリーザーで大規模掃討した分があるため)
その私専用のエイストラより高性能とも思えませんけれども。
ともあれ熾裂のカバーに入り、先制攻撃/指定UC。
そちらの攻撃があたらない以上、何をやっても無駄です。
嘘だと思うならアインさんに訊いてみてください。
第六感/索敵/見切り/操縦/ダッシュ/推力移動/カウンター、
からの砲撃/範囲攻撃/キャノンもしくは貫通攻撃/ライフル、
至近距離ならばビームブレイド/切断という手もあります。
ミサイルは……経費が嵩むので封印ですね。
どうせそこまでは要りません。
はあ。と息を吐き出す音がコクピットの中に響き渡る。
目の前には『エース専用高性能クロムキャバリア』である『アマランサス』の姿。
高級量産機とも言うべき、リミッターを設けた上で運用されているキャバリアの姿にノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は息を吐きだしていた。
どれだけ高性能であろうとも、己の乗騎を超えることはないと彼女は冷静に分析していた。
数を揃え、高性能機でもって精鋭部隊が運用する。
それは確かに脅威であったことだろう。けれど、一機のキャバリア『熾裂』を未だ彼等が囚えることができていないのが現実だ。
猟兵たちが介入したとしても、これだけの時間を掛けてもなお囚えることができないのは、ノエルにとっては理解できぬことであった。
「自分で言うのもなんですが、私のスコアって下手したら四桁ですよ」
真面目に数えたこともないし、スコアを誇ることもない。
けれど、客観的に見て、目の前の『アマランサス』と己の駆る『エイストラ』よりも高性能とも思えないのだ。
「ラグのお時間です」
ノエルが静かにつぶやき、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
フォックストロット。
それは呼吸をずらした社交ダンスを踊るかのように、敵機の攻撃を予測し、回避するユーベルコードである。
どれだけ鋭い、大出力のビームソードであったとしても当たらなければ意味など無い。
無用の長物とかした『アマランサス』の腕部を『エイストラ』の脚部が蹴り上げる。
「そちらの攻撃が当たらない以上、何をやっても無駄です」
偽りなどではないし、誇張でもない。
なぜならば、現に『アイン』の駆るオブリビオンマシンも同様であったからだ。
近距離で踊るように蹴り上げたビームソードを手にした『エイストラ』が『アマランサス』の機体を切り裂く。
ビームソードのコンデンサが尽きれば、投げ捨て、次々とダンスパートナーを変えるように『エイストラ』が戦場を縫うようにして疾駆する。
その後に残るのは、『アマランサス』の残骸ばかりである。
「ミサイルは……経費がかさむので封印ですね。どうせそこまでは要りません」
不要な出費は抑えるべしと、敵機の武装さえも利用して『エイストラ』は『アマランサス』を蹴散らしていく。
数が減っていることもあるのだろう。『アマランサス』の連携も精彩を欠くようでもあった。
ならばこそ、ノエルはこれ以上の時間を掛ける必要がないと己の呼吸で持って『アマランサス』をビームブレイドで切り裂く。
「オブリビオンマシンでなくとも、オブリビオンマシン並……つまりは、私にとっては有象無象と一緒です」
大した脅威ではないと『アマランサス』を下し、ノエルは街中からあふれる悪意の塊の如き重圧に目を向ける。
性能だけを、技量だけを誇るのであれば、何も恐ろしくはない。
いつだってオブリビオンマシンとはそういうものだ。
けれど、過去の遺物と妄執が結合した場合、それが如何なる力をもたらすのかをノエルは、感じる重圧に視線を向けるも、表情を変えなかった。
「いかなる敵が来ても同じです」
己の機体の性能。
そして、技量。客観的に見ても、スペックで見劣りする気はない。残るは不確定要素だけである。
目の前に現れた巨魁。
その威容を前にしても、ノエルは取り乱すこと無く淡々とした表情を向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
異様な気配を感じない……オブリビオンマシンではないな。
つまり、乗り手達は『正気』か。
■前
なれば、此方が大いに狂ってやろう。
大太刀『空薙・剛』を【作剣】を用いて巨大化。
射程を5倍、攻撃回数を半分に。
■闘
巨大刀を片手に堂々と突撃し、此方の存在を認識させる。
そこから挨拶代わりに横薙ぎの太刀による【範囲攻撃】を
仕掛け、キャバリアの群を真っ二つに【切断】!
生身の白兵がキャバリアを近接戦で倒す異様な光景を見せて
【恐怖を与え】、撹乱するのだ。
銃口を向けられたら【残像】を伴う不規則な【ダッシュ】で
惑わし、敵がいる場所へ逃げ込み誤射を誘いつつ立ち回る。
隙が見えたら再び刀でばっさりと。
※アドリブ歓迎・不採用可
新興国家『シーヴァスリー』から来襲したキャバリア『アマランサス』を前にしても、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は異様な気配を感じぬことに首を傾げた。
己達猟兵に仇為すのは、いつだってオブリビオンである。
いかなる姿をしていたとしても、対峙し瞳で見るだけで目の前の存在が滅ぼさなければならぬ存在であるかどうかなど、即座にわかるものだ。
けれど、目の前の赤いキャバリア『アマランサス』は違う。
ただのキャバリアなのだ。語弊があるが高級量産機であったとしても、猟兵の敵に成りえない。
だからこそ、清綱は首をかしげたのだ。
「つまり、乗り手達は『正気』か」
オブリビオンマシンに乗るからこそ、狂気に侵されて人々は破壊の道、戦乱へと一気に踏み出す。
けれど、『アマランサス』のパイロットたちは違うのだ。
彼等自身の意志で、行動を行っている。
「なれば、此方が大いに狂ってやろう」
清綱の瞳が爛々とユーベルコードの輝きを放つ。
作剣(ツルギヅクリ)――それは己の大太刀を即席であれ鍛え上げ、望んだ形状に変形させるユーベルコードである。
不敵に笑う。
笑みがこぼれてしまう。どうしたって止められない感情は、まさに『正気』を疑われてもしかたのないことであったことだろう。
振るいあげた大太刀は人の身でもって振るうにはあまりにもナンセンスな刀身へと姿を変えていた。
身の丈を超える程度ではすまぬほのど刀剣。
言う成れば、キャバリアブレードを生身の人間が手にしているような状態である。いかなる膂力でもって、それを為し得ているのかさえ理解できぬ光景に『アマランサス』のパイロットたちはたじろいだかもしれない。
「まずは挨拶代わりといこうか!」
巨大なる大太刀を横薙ぎに振るい、その一閃でもって『アマランサス』の胴を薙ぎ払う清綱。
生身の人間がキャバリアを近接戦闘でもって倒すなど、異様そのもの。
それは現実味のない悪夢であったのかもしれない。
「ビームライフルというやつか!」
けれど、どれだけ恐怖を与えようとも『アマランサス』のパイロットたちは恐怖を飼いならす訓練を受けている。
反撃してくるのもまた当然である。放たれるビームの光条を清綱は残像を伴う不規則な疾駆でもって躱し、爆風が吹き荒れる中を大太刀でもって振り下ろし、一刀の元に両断するのだ。
「生身の人間であればこそ、的が小さかろう。如何に『正気』であったとしても、こちらのもたらす『狂気』に当てられれば人というものは――」
振り下ろした斬撃の一撃が最後の『アマランサス』を下す。
凄まじい質量を単身生身で操る清綱の姿は鬼神そのものであったことだろう。
けれど、それ以上の脅威が迫っていることを清綱は知る。
巨魁、悪意の塊。
過去と妄執が集積した存在が今まさに、戦場を蹂躙すべく、『八咫神国』の街中を征く。
その姿を捉えた清綱は『狂気』以上の『妄執』を感じ、己が為すべきことを見定める。
そう、オブリビオンマシンが人の心を歪めるのならば、それを正すのもまた兵の道である。
滅ぼさなければならぬ存在が今目の前にある。己の太刀を振るうに値する存在だ。
「ならば、斬る――」
己の信じる兵としての道。
邁進すべき道を、清綱は己の刃と共に突き進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『敗残者の王』
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POW : 果てし者よ、惰眠にはまだ早く
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【戦場で破壊されたキャバリアの残骸や武装】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD : 望む終わりは未だ来たらず
【戦場に散乱する残骸で補修した即席改造機体】に変身する。変身の度に自身の【武装】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
WIZ : 数多の敗北を識るが故に
【機体に刻まれた膨大な『敗北の記憶』から】対象の攻撃を予想し、回避する。
イラスト:御崎ゆずるは
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ユエイン・リュンコイス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『アマランサス』部隊が壊滅し、『八咫神国』の街中にはオブリビオンマシンの影もなくなる。
猟兵たちの活躍に寄ってキャバリア『熾裂』が『八咫神国』の外に出ることを阻む存在はいなくなった。けれど、猟兵達は戦いが未だ終わっていないことを知る。
「――助かりました。みなさん」
『ツヴァイ』が猟兵達それぞれに通信を入れ、礼を告げる。
彼女たちだけでは、この窮地を乗り切ることはできなかっただろう。そして、同時に彼女は理解する。
自分たちの存在が猟兵たちの足枷になることを。
ゆえに彼女は告げるのだ。ご武運を、と。
その言葉を証明するように現れるのは歪なパッチワークの如き機体。
もはや大元となった機体すら判別できぬほどに、異なる機種の腕や足、装備を付け足したボロボロの威容。
黒鉄の狂戦士が如きキャバリア――否、オブリビオンマシンが『熾裂』が去った戦場へと飛び込んでくる。
「――なるほど。かの御方の尖兵では抑えられんか」
黒鉄の狂戦士のようなキャバリアから聞こえる声は理知的であった。
けれど、オブリビオンマシンに乗る以上、そこには狂気をはらむものである。
搭乗者は『帝』。
この『八咫神国』を治める人物であるが、最早オブリビオンマシンの傀儡と成り果てた。
「私は『フュンフ・エイル』の後継。正しき血統。作り物の模造などではない。忌々しき『ラーズグリーズ』の名を持つ者たちとは違うと知れ。私こそが『フュンフ・エイル』の末裔。その力を思い知るがいい」
その言葉がどこまで真実であるのかはわからない。
『グリプ5』建国の父である『フュンフ・エイル』。その血縁であるというのならば、これまで『八咫神国』が『グリプ5』を友好国としていたのは、無理筋ではないように思えた。
血縁によるつながり。
百年を過ぎた後にまだ残る縁故であるのならば、友好もうなずけよう。
けれど、その瞳に在るのは妄執そのものであった。
「何が『エースの再来』だ。赦しがたし。我が血統を蔑ろにし、模造でもって私を謀ろうなど。許されてはならぬ」
静かな声であったが、ほとばしる怨念めいた言葉は、あらゆるものを断じるもの。
機体に宿る怨讐と、『帝』が持つ妄執とが混ざり合い、絶対なる悪意となって戦場に吹き荒れる。
そう、此処に座すは『敗残者の王』。
かつての敗北者でありながら、過去より舞い戻り、現在に牙むくオブリビオンマシンである――。
メンカル・プルモーサ
(引き続き試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
…なるほどねぇ…正統性の拘りが心の隙になってオブリビオンマシンに突かれたと言うところか…
…まあ勝手にクローン作られたら納得いかないのはわかるだけにこれはもう事故みたいなものだな…さっさとぶっ壊そう…
…【我が手に彩る傀儡舞】を発動…ツィルニトラからの術式砲撃に加えてこれまでの戦闘で機能停止したアマランサスの(機体の形を残した)残骸を操って連携して攻撃を仕掛けるよ…
…相手もエース…これぐらいは凌ぐだろうから…これらで注意を引くと共に誘導…
…『その辺に転がってるビームライフル』の射線に入ったら引き金を操って砲撃をして奇襲攻撃をしかけよう…
小国家『八咫神国』は『グリプ5』と百年来の友好を保ってきた。
事実、『グリプ5』がオブリビオンマシンの暴走と『第二次憂国学徒兵』の動乱によって疲弊したときも真っ先に救援の部隊を送ったこともある。
ならば、その『八咫神国』がすでにオブリビオンマシンによって上層部すらも傀儡と化していたのは、未だ姿を表さぬ主謀者の絵図の通りなのだろう。
『帝』と呼ばれる上層部の存在。
彼は確かに『フュンフ・エイル』の血族なのだろう。
しかし、それを証明する手立てはない。
あるのは紡がれてきた歴史という名の証明だけだ。
だからこそ『グリプ5』において嘗ての『憂国学徒兵』のクローンを持って『エース』を再来させようとする計画は、彼等の正当性を脅かすものであった。
「……なるほどねぇ……正統性の拘りが心の隙になってオブリビオンマシンに突かれたというところか……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は憶測する。
けれど、それは正しいことであった。
彼女の考えどおり、『帝』と呼ばれる人物が、己の正統性にこだわるのは当然である。その正統性こそが『八咫神国』を治めるのに必要不可欠なものであるからだ。
オブリビオンマシン『敗残者の王』が吠える。
その機体に刻まれた敗北の痕が『帝』の持つ妄執と混ざり合って、悪意の存在として戦場に座す。
「我が血統こそ正統。ゆえに民衆は私にひれ伏すのだ。それを脅かすものがいるというのならば」
『敗残者の王』がメンカルの駆る試作型術式騎兵『ツィルニトラ』へと襲いかかる。手にした鈍器の如きキャバリアブレードを振るい、黒鉄の狂戦士が己の敵を討滅さんと疾駆するのだ。
凄まじい加速。
パッチワークのような機体とは思えぬほどの速度にメンカルは、即座にユーベルコードを発現させる。
「物言わぬ躯よ、起きよ、踊れ。汝は木偶、汝は無命。魔女が望むは九十九綾取る繰繰り糸。我が手に彩る傀儡舞(ストレンジ・ストリングス)は……」
機体より放たれる魔力製の非実体の糸が戦場にある『アマランサス』の残骸い触れた瞬間、動き出す。
猟兵たちの攻撃に寄って動力は停止し、パイロットも脱出しているのにも関わらず、『アマランサス』が連携を持って動き出すのだ。
「傀儡とするか。だが、その程度の雑兵が私に叶うなど。思い上がるな」
キャバリアブレードが振るわれ、操られた『アマランサス』の残骸を尽く破壊する。
『敗残者の王』に刻まれた傷痕が明滅する。
それはユーベルコードの輝きであり、黒鉄の狂戦士に刻まれた敗北の記憶が、あらゆる状況を想定し、メンカルの操る『アマランサス』の連携を挫くのだ。
「……まあ勝手にクローン作られたら納得いかないのはわかるだけにこれはもう事故みたいなものだよ……」
どうしようもないことだ。
クローンは生み出され、『ラーズグリーズ』として新たな血統を証明する。
戦乱においてのみ、それが適応されるのならば、『八咫神国』の『帝』の立場など何処にもない。『憂国学徒兵』の再来こそが、彼等にとっての希望ではなく、脅威であったのだから。
「地盤が揺らぐのを忌避するのもわからないでもない……けれど」
「けれどなんとする。私の地盤が崩れるのは、国が揺らぐも同然。そうなれば民衆は惑い、慄くだろう。その恐怖を取り除こうというのだよ、私は」
相手『エース』であることをメンカルは知っている。
小手先のような『アマランサス』を手繰る攻撃など凌ぐであろうということも。ならばこそ、これはただの誘導。注意を惹きつける方策に過ぎないのだ。
「……民衆をというのならば、先ずは自分の持てるものを投げ打つ覚悟がないと……己の手には有り余るものを持っている人間に、誰がついていくと思う? 自分と同じだと、悲しみも苦しみも共有できるなどと嘯く人間の何を信じればいい」
メンカルは真っ向から『帝』の言葉を否定する。
他者を慮るふりをして、己の足元ばかり見る為政者に何がなせるのだ。
メンカルの手繰る魔力の糸が『アマランサス』ではなく、猟兵たちとの戦いによって散在し、大地に転がるビームライフルの引き金を引く。
これまでおおっぴらに『アマランサス』を操っていたのは、『敗残者の王』の死角に位置するビームライフルを隠すためであった。
引き金を引かれたビームライフルから光条が伸び、『敗残者の王』の頭部を破壊し、メンカルは言う。
「……そういうのは、さっさとぶっ壊すに限る。全てを失ってから立ち上がる強さこそ、人の強さなのだから――」
大成功
🔵🔵🔵
アリッセ・トードゥ
誰の子孫だろうと遺伝子がどうだろうと、今生きてる自分には関係ない…ってのは人造生命である私が言える事じゃないかな
破壊された機体の武装を使うか。だけど所詮は付け焼き刃。寄せ集めただけの機体なんかに負けはしないよ
【真理力】使用。無敵のサイキックフォースを想像から創造し機体に込める
私の機体は大破したサイキックキャバリアを徹底的に修理調整した、私とメカニック達の努力と愛情の結晶。その真の力を発揮すれば何者にも敗北は有り得ないと信じる
全装備の動力源たるサイキックエナジーをUCで強化。サイスラスターによる高速の【推力移動】で接近
敵の攻撃をサイキックバリアの【オーラ防御】で防ぎフォースセイバーで【切断】する
世界が一つではないように、生命もまた形の異なるものばかりである。
ゆえに寄す処とするものが必要であるのだろう。心を安らかにすることのできる大地のような揺らぐことのない何物かが生命には必要なのだ。
それが血統であったり、家族であったりと形はまた異なる。
だが、人に作られた生命であるアリッセ・トードゥ(BE-MADER・f30023)にとって、それは如何にして使うべきものであるかでしかない。
「私の存在を否定するか。猟兵。『敗残者の王』たる私を」
『敗残者の王』と呼ばれるオブリビオンマシンが穿たれた頭部をかなぐり捨て、首なしの機体となってもなお、対峙する猟兵を前にしても一歩も退くことはなかった。
搭乗者である『帝』にとって、血統とは正統性を謳うものである。
それだけが彼にとってのアイデンティティであったのかもしれない。彼の血統が保証されるだけで、小国家『八咫神国』の民衆は安堵を得るだろう。
『フュンフ・エイル』という名をいつかの誰かは『呪いの名』であると言った。
けれど、それだけではないのだ。
その名が平穏をもたらした事実もまた在る。
「誰の子孫であろうと遺伝子がどうであろうと、今行きてる自分には関係の無いことだろう」
アリッセはキャバリアを駆り、『敗残者の王』が放つ『アマランサス』から残された武装の数々を躱す。
バズーカが火を噴き、ビームライフルからは光条が飛ぶ。
さらにはビームソードがまるで投げナイフのように投擲され、アリッセの『CZ-X』へと襲いかかるのだ。
『帝』の言う言葉は、アリッセには届かない。
たとえ、どんな言葉を弄しようともアリッセは人造生命である。己が言えた義理ではないことはわかっている。
けれど、それでも確かな事が一つだけある。
「私は君には敗けない。なぜだかわかるか」
「何を。言葉遊びがしたいとでもいうのなら!」
踏み込んでくる『敗残者の王』。その頭部は失われているが、『エース』たる技量を持ってすれば、メインカメラが無くとも戦うことはできるだろう。
アリッセにとって『敗残者の王』はありあわせの付け焼き刃を持つ機体に過ぎなかった。
負ける理由にはなっていない。
「私の機体は大破したサイキックキャバリアを徹底的に修理調整した、私とメカニック達の努力と愛情の結晶」
『CZ-X』はリストア機である。
この形になるまで紆余曲折が幾度もあった。
サイキックキャバリアゆえに調整が難しく、アポーツ機能も不具合を出すこともあった。幻影装置だってそうだ。
現地で改修し、取り付け、なじませてきた。
だからこそ、アリッセはこの機体に対する信頼を些かも損なうことはない。
「これまで私が辿った道程が示している。揺るぎないものは己の足元にはないのだと。己の心で培ったものにこそ芽吹くものがある」
あふれるユーベルコードの輝きが、アリッセと共にコクピットから溢れて機体を包み込んでいく。
それは無敵のサイキックフォース。
真理力(トゥルーフォース)とも言うべき力が現出し、機体の出力を上げていくのだ。
「なんの、光だ」
『帝』には理解できないだろう。
己の足元ばかりを見ているからこそ、空に輝く満天の星を知らぬように。
彼は何も見てない。民衆を慮りふりをしているだけで、己の足元が、立場が揺らがぬことばかりを気にかけているものには。
「君にはわからぬ光さ。けれど、理解できないわけじゃない!」
サイキックエナジーがユーベルコードの輝きを受けて、スラスターから噴出する。その速度はまさに神速。
光の矢となった『CZ-X』とアリッセは、放たれるビームライフの一撃をサイキックバリアで弾き飛ばしながら飛翔する。
「この真の力が発揮されるのならば、何者にも私は敗けない。敗北はありえないと信じる」
その誰かを信じることのできる力こそが、アリッセの力だ。
噴出するサイキックエナジーがフォースセイバーから溢れ、『敗残者の王』に迫る。
放たれる光の刀身。
その一撃が、機体装甲を焼き、装備された盾を一撃のもとに切り裂く。
「馬鹿な、こんな力が――」
『帝』が呻く。
それは彼にとっては見知らぬ力であったことだろう。けれど、アリッセは言うのだ。
「『信じる想いが力になる』……戯言じゃない。世界の真理だ――!」
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「正直くだらない。エースかどうかは血統じゃなくて実力が言わせるんでしょうが。」
あなたもそーいわれたければ、ただ実力で示せば誰も貴方をエースと言ってたでしょうに…。
血統にこだわった時点で指をさして笑うわね。
【行動】
じゃあ、行くよッ!!
レスヴァントとパールバーティのコンデションは問題なし。そのままでいく!!
敵の機動を『瞬間思考力』で先読みし『操縦』テクでレスヴァントを回避させながら接近。
パールには『援護射撃』も頼むよ。
さて、いまだ!!ワルツ・オブ・キャバリア発動!!
アストライアの『制圧射撃』とイニティウムによる『切断』攻撃でコックピット付近以外を破壊するよ!
「――馬鹿な。こんなことがあってたまるものか。私の正統性が、血統が、何もかもが揺らいでいく。私は『フュンフ・エイル』の後継。こんなことがあってたまるものか」
頭部を撃ち貫かれ、盾すらも破壊されたオブリビオンマシン『敗残者の王』を駆る『帝』が狼狽えたように、コクピットの中で顔を覆う。
それをたしなめるように甘やかな声が聞こえた。
「そのとおりだ。在ってはならないことだよ。君こそが『フュンフ・エイル』の後継。正統なる王。だからこそ、君は負けてはならないんだ。かつての『フュンフ・エイル』がそうであったように」
その甘やかな声に導かれるようにして『敗残者の王』に宿る敗北の記憶が煌めく。
凄まじい力。
それを欲し、またそれを体現する部品たるパイロットをも手に入れた。なのに、嘗ての『フュンフ・エイル』のように他者を圧倒することができないでいる。
何故なのかと慟哭の如く咆哮するのは、『敗残者の王』のジェネレーターであった。
周囲に在った『アマランサス』の残骸が『敗残者の王』へと組み込まれ、失った頭部や盾を補強し、更に巨大な別の何かへと変貌していく。
その威容を前にしてユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は、くだらないと言い放った。
「ええ、正直くだらない。『エース』かどうかは血統じゃなくて実力で言わせるんでしょうが」
ユーリー自身も継承たる血筋を持つ身である。
けれど、『帝』と彼女の間には谷よりも深い溝があった。
生き方の違いとでも言えばいいのだろうか。
「あなたもそーいわれたければ、ただ実力で示せばよかったのに」
指を指してユーリーは笑う。
だってそうだ。いつだって欲しいものは自分で勝ち取る。ねだってはならない。戦って、勝ち取ったものにこそ、得られるべきものがある。
「じゃあ、行くよッ!!」
もとより持っていたものに興味はない。
巨大化した『敗残者の王』へと、ユーリーは『レスヴァント』と共に駆ける。『パールバーティ』も機体のコンディションに問題はない。
巨人の如き『敗残者の王』から放たれる攻撃はまるで、ハリネズミのようであった。
前身に備えられたビームライフルからは光条が迸り、敵を近づけさせぬとするかのようでもあった。
けれど、ユーリーは構わなかった。
「近づくなって言ってるようなものだよね。それだけ自分の足元に固執しているのなら!」
「私を侮辱するか。私の足元にあるのは、私の国だ。私が得ていたものだ。それを奪おうなど、揺らがせるなどあってはならぬ」
放たれるビームを『レスヴァント』は装甲をかすめながら飛ぶ。
瞬間思考で弾幕の如きビームの雨を躱すのだ。
速度が足らない。
ユーリーの決断は即決であった。
「ジャケットアーマーパージ。高機動モードへ移行。ぶっとべー!!ボクのレスヴァント!!」
『レスヴァント』の装甲が排され、ビームの直撃を装甲が防いで大空に飛ぶ。
高機動モードへと移行した『レスヴァント』の速度は、これまでの比ではなかった。
まさにワルツ・オブ・キャバリア。
輪舞曲を踊るように機体がビームの雨をかいくぐり、『敗残者の王』によって組み上げられた外装を取り払うようにアサルトライフルの弾丸が打ち込まれ、引き剥がしていく。
「自分の力を信じられないで、生まれて持ってきたものばかりを見ているから、それを成長させることができない。外に出ないから、自分の大きさもわからない。結局の所」
井の中の蛙大海を知らず。
この『八咫神国』という井の中にい続けたからこそ、『帝』はユーリーのように成長することができなかった。
ポテンシャルは凄まじいものがあるのだろう。
それこそ『フュンフ・エイル』の血統であることを示すように。けれど、彼はそれをしなかった。
籠の中、井の中でのぬるま湯に浸かり続けて、自分のことばかりを考えてきたのだ。
「そんなやつにボクが負けるわけがないんだよ!」
放たれるキャバリアブレードの一撃が『敗残者の王』のコクピット付近を斬り裂き、組み上げられた残骸を吹き飛ばす。
「その邪魔くさい囲いを全部取り払ってみなよ、空はこんなにも広いんだからさ!」
続けて放たれる一撃が『敗残者の王』のコクピットハッチを斬り裂き、その狭いコクピットから見える大空をユーリーは示して見せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
血筋で継承する王制。
安定しやすく流れる血も少なくなり易いですが、王と民衆の絆の元できちんと国が統治されてきた実績あってこそ。
血筋だけでは足りないのです。
貴方は血筋よりも御先祖様と民が積み重ねてきたものを継承し、それを誇りとすべきでした。
今からでも遅くありません、やり直しましょう!
周囲に衝撃波を放って残骸・武装を吹き飛ばして利用できないように。
結界術の防御壁と天耀鏡の盾受けで遠距離攻撃を防ぎ、近接戦を誘う。
第六感と見切りでタイミング読んで残像を斬らせ、「どうぞ♪」と雷月を目の前に投げて注意を引き付け接敵。
破魔・浄化・お仕置き属性を上乗せしたUCによる焔天武后の平手打ちで、帝の心に想いを届けます。
猟兵の駆るキャバリアの一撃が『敗残者の王』のコクピットハッチを切り裂く。
そこに見える『帝』と呼ばれる小国家『八咫神国』の上層部、国を治める存在の姿が顕になる。
亜麻色の髪。黒い瞳。
その姿がハッチの向こうに見えるも、未だその瞳は狂気を宿していた。
「まだだ。私の戦いは終わらぬよ。これしきのことで」
彼にとって、この戦いは己の正統性を証明するものであったことだろう。けれど、それ以上にオブリビオンマシン『敗残者の王』に宿る記憶は、怨讐に塗れていた。
あるのは、己を打倒せしめた『フュンフ・エイル』への怨念。
そして、その機体に乗るのは『フュンフ・エイル』の血統に固執する存在。それらが混ざり合い、一つの悪意として昇華する。
「血筋で継承する王制。安定しやすく、流れる血も少なくなり易いですが、王と民衆の絆の元できちんと国が統治されてきた実績在ってこそ」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)はスーパーロボット『焔天武后』を駆り、告げる。
彼女の言葉はきっと届かないだろう。
あの狂気に塗れた瞳を見ればわかる。どれだけ言葉を尽くしたとしても、オブリビオンマシンの影響によって、その言葉は届かない。
なればこそ、詩乃は己の神力の発露を持って『敗残者の王』へと戦いを挑むのだ。
「血筋だけでは足りないのです」
「私の存在こそが国。私が立つ地こそが、国だ。民衆など知ったことか。この戦乱の世界にあって、民衆の言葉など」
意味をなさぬと『敗残者の王』が瓦礫に塗れた街中を疾駆する。
互いに譲らぬ言葉。けれど、詩乃は言う。
「貴方は血筋よりもご先祖様と民が積み重ねて来たものを継承し、それを誇りとすべきでした」
詩乃にとって、重要なのは絆である。
人と人は完全に理解し合うことの難しい生命だ。
だからこそ、言葉と心でもって互いの心をつなぐ。それはとても面倒なことだ。言葉にするよりもずっと難しいことだ。
けれど、それらを面倒臭がらずに、一足飛びで飛び越えようとせず、踏みしめるように重ねていくからこそ、通じ合うものがある。
「誇りなど。何を意味するものか。そんなもので、盤石たる地位が築けるのならば」
争いなど怒らないのだと『帝』は言う。
詩乃は迫る『敗残者の王』を前にしても、己のあふれる神力でもって衝撃波を飛ばし、瓦礫を吹き飛ばす。
地形を、残骸をも利用して戦う『敗残者の王』にとって、この惨状こそが地の利である。だからこそ、詩乃は『焔天武后』と共に利用されぬようにと衝撃波と結界術の防御壁でもって攻撃を防ぐ。
「今からでも遅くありません、やり直しましょう!」
彼女の言葉は他者にとっては都合の良い言葉に聞こえたかも知れない。
綺麗事といわれてしまうかも知れない。
放たれた鉄塊の如きキャバリアソードが天耀鏡によって受け止められ、火花が散る。
「やり直すことなどあるものか」
「いいえ、あるはずです。あなたはそんな人ではないはずだから。オブリビオンマシンに乗ったからこそ、歪められただけ。確かに心に一点の陰りがあるのでしょう。けれど、それは――」
『焔天武后』の瞳がユーベルコードに輝く。
放たれた斬撃の一撃を残像でもって躱し、懐剣を投げつける。
「誰しもに存在する陰りです! だから!」
放たれた懐剣を『敗残者の王』が弾き飛ばす。けれど、それは注意を惹きつけるだけのためのものであった。
瞬間、『焔天武后』の掌に宿るのは破魔と浄化の力。
そして何よりも、お仕置きの力であった。
「悪い子には愛情を持って、心を鬼にして、この――改心の一撃(トテモイタイアイノムチ)を振るいましょう!」
詩の声が響き渡り、愛情の込められた張り手の一撃が『敗残者の王』へと放たれ、詩乃の思いを『帝』の心にまで響かせる。
それはきっといつの日にか実を結ぶこともあるのかもしれない。
詩乃は、その日が来ることを望みながら、元凶たるオブリビオンマシンに痛烈なる一撃を見舞ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『血統のみで己の力で勝ち取ろうともしなかったやつが…吠えやがる!!』
機体に【オーラ防御】を何層にも重ね、シラヌイを正眼に構えてスラスター全開で突撃する。
相手の攻撃は【戦術知識】で見極め、【見切り】で避けるぜ
【鎧砕き】と【なぎ払い】で攻撃しつつ、距離を詰めて、ユーベルコード【ドラゴニック・オーバーエンド】を叩き込むぜ!!
『目を覚ましな!世界はこんなにも広いんだからよ』
『敗残者の王』の頭部はすでに猟兵の一撃に寄って穿たれ、失われていたが、周囲に散財しているキャバリアの残骸を利用することに寄って新たな頭部が再生されていた。
その名こそ『敗残者の王』であるが、文字通りの存在ではないことを示していた。
ぎゅるりと生物的な動きをするアイセンサーが妖しくきらめいた瞬間、周囲にあった残骸が次々と『敗残者の王』の武装となって猟兵を襲う。
ビームライフルやバズーカ、ビームソードなど、あらゆるものが『敗残者の王』の武器であった。
「これしきのことで私が負けるとでも言うか。それこそ私への侮蔑である。断じて許せるものではない」
コクピットハッチが猟兵の一撃に寄って切り裂かれて、その内部より猟兵たちをねめつける『帝』の瞳は狂気に彩られていた。
あるのは己の血統に対する固執だけであった。
「血統のみで己の力で勝ち取ろうともしなかたやつが……吠えやがる!!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)が吠えた。
彼の駆る特空機1型『スターインパルス』の背面ブースターが火を吹き、高出力機体であることを知らしめるように凄まじい速度で持って飛ぶ。
機体の全面にオーラを何層にも重ね、特殊超合金でできた剣を正眼にかまえて突撃する。
放たれたバズーカの砲弾やビームライフルの光条が『スターインパルス』を捉える。
重ねたオーラを突き破ってくる攻撃は重たく鋭い。見極め、見切ろうとしても全方位から襲いかかる砲撃と銃撃、そして斬撃は容易に躱せるものではなかった。
引き剥がされるオーラが砕けていくのを横目に見ながらガイは恐れることなどなかった。
特殊超合金の剣が間合いを詰めた『敗残者の王』の放つ鉄塊の如きキャバリアソードと打ち合う。
軋む合金同士の刀身。
「血統だけが私の証明だ。力だけでは誰も後には続かぬ。血統とはそういうものだ。血の証こそ、人が、他者が、民が求めるものだ。その重みを知らぬ者がいうことか」
『帝』の言葉は、その重責を追ったことがある者にしか理解できないものであったことだろう。
ガイはそれを理解できなかった。理解するつもりもなかった。
互いの剣がきしみ、鍔迫り合いの後に互いの手の内から武装が弾き飛ばされる。
そこに飛ぶのは砲撃である。
『敗残者の王』によって利用されたキャバリアの残骸に残された武装が『スターインパルス』めがけて放たれたのだ。
「燃えよ!灼熱の炎!猛れ!漆黒の雷!」
『スターインパルス』の装甲が砕ける。けれど、フレームは生きている。それ以上に己の拳がまだ残っている。
ならばこそ、叫ぶのだ。
「――全てを……砕けぇ!!」
打ち込まれた拳から紅蓮の炎と漆黒の雷纏いし二頭のドラゴンが放たれる。
ドラゴニック・オ-バーエンド。
それこそがガイの切り札にして奥の手であった。輝くユーベルコードが満ち溢れる中、叩き込まれた炎と雷が『敗残者の王』の装甲を砕いていく。
「目を覚ましな! 世界はこんなにも広いんだからよ!」
ガイは告げる。
血統しか無いといった『帝』にも可能性は眠っている。自分で今は決めつけているだけだ。
自分にはこれしかないのだと。
そんな狭っ苦しいことを言うなと、ガイは拳に思いを乗せた。
何もかも失っても、残るものがある。それは血統でなく、確固たる己という存在だ。
「男なら、拳一つからでも、いくらでも立ち上がることが出来る。過去の傷痕なんざ、明日の糧にしてやる」
それくらいの気概で来い、とガイは『スターインパルス』の拳を天に衝き上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
賀茂・絆
第2章から引き続き薬2種服用。
宣伝もいい感じにできマシタし、黒幕の思惑とか比較的どうでもいいのでさくっと【先制攻撃】…あっはっはー!攻撃当ったんねーんデスけど!マジで!こりゃtueeeデスヨ!やっばい!!
…賭けに出マスカ。『フュンフ・エイル』って人が激強エースでこの相手とも縁が深いんデスヨネ?
ならイチかバチか『フュンフ・エイル』の霊魂を【降霊】してワタシに宿らせマス。完全な降霊でなくても残留思念のようなものだけでも呼べれば御の字。霊に相手に一撃当てる力があるかつ一撃当てるまで降霊が持てば…縛りをかけて【暴力】による【神罰】を下してやりマショウ。
正気に戻れたらお礼に八咫神国での販路くださいデス!
ある猟兵にとって、小国家『八咫神国』を巡る戦いの絵図を描いた主謀者、黒幕の思惑など構わないものであった。
そこにあったのは、ビジネスチャンスのみ。
商機を逃さぬことこそが全てであった。だからこそ、この戦いもまた己の扱う薬の宣伝でしかない。
賀茂・絆(キズナさん・f34084)にとっては、きっとそうであったのだ。
これまで己自身に使用してきた薬は二種類。
精神をトランス状態にするもの。
魂を肉体から半分脱魂させる薬。
どちらも如何にして長く戦うかに重きを置いた調合である。
満ちる集中力は、オブリビオンマシン『別雷大神』と共に絆を戦場へと走らせる。今ならばどんな攻撃も当てられるし、躱すこともできるような気さえしたのだ。
「宣伝もいい感じにできマシタし、黒幕の思惑とか比較的どうでもいいのでさくっと!」
放たれた一撃は雷を切り裂く一撃であったが、『敗残者の王』は、その一撃を容易く躱すのだ。
輝く数多の傷痕はユーベルコードに寄って、今まで加えられた猟兵達の攻撃を含めて、あらゆる攻撃を記憶している。
「あっはっはー! 攻撃当ったんねーんデスけど!」
どれだけ素早い攻撃を繰り出しても、その尽くをかわされてしまう。
当たれば、などと考えている時点で、『敗残者の王』には攻撃は届かない。絆は焦る。けれど、同時に薬剤に寄って増した集中力をもって頭をフル回転する。
どうすればアレに勝てるのか。
「私には敗北の記憶が刻まれている。数多の傷こそが、私にふれることを許さぬ。数多の傷痕こそが私の記憶そのもの」
オブリビオンマシン『敗残者の王』と搭乗者である『帝』は、もはやどちらがどちらなのかわからぬほど混ざりあった意識でもって猟兵を追い詰めんと瓦礫から引き抜いたキャバリアソードを『別雷大神』へと叩きつける。
たった一撃で機体が軋む。
「……賭けに出マスカ」
絆は一か八かで降霊術を行使する。
彼女が薬剤でもって半分、魂が抜けかけているからこそできる業であった。このクロムキャバリア、『グリプ5』周辺地方において『フュンフ・エイル』の名は英雄とも悪魔とも揶揄される名である。
絆にとっては、馴染みのない言葉であるが、何度も耳にしていれば、その存在がどれほどの力を持っていたのか推察できる。
だからこそ、その血統を自称する『帝』には、『フュンフ・エイル』の魂魄でもって相対するしかないと思ったのだ。
しかし、絆は気がつく。
「降霊できマセン!? じゃあ、これは残留思念……!」
絆の肉体に宿るのは、『フュンフ・エイル』の残留思念であろう。おぼろげな感触。魂ではないことは感覚でわかる。
それはつまり、一つの事実を示していた。
「――『フュンフ・エイル』って『此処』にはもういないってことなんデス!?」
魂すら世界に残っていない。他世界を知る猟兵であるからこそ出た言葉であった。
それでも宿る残留思念が己の身体を突き動かす。
機体を駆り、その超絶為る機動でもって『敗残者の王』に迫るのだ。
「その動き! 何故貴様が――!」
初めて『敗残者の王』がたじろいだ瞬間であった。黒鉄の狂戦士の如きオブリビオンマシンにとっては忘れがたき光景であったことだろう。
何せ、己を滅ぼした存在の挙動が再現されているのだから。
「巫術・ぶち殺す(フジュツ・ブチコロス)――死ねDEATH!!!」
放たれたユーベルコードの一撃が、ついに『敗残者の王』を捉える。
それはただの一撃であった。
けれど、致命的な一撃でも在った。
放たれた一撃は魂を縛る痛烈なる一撃。
その一撃を受けた存在は雷霆を引き裂くが如き圧倒的な暴力に見舞われることだろう。即ち神罰そのもの。
「『フュンフ・エイル』の何を恐れているのかわからねーデスガ! 彼はもう『此処』には居ないんデスヨ! そんなものを恐れるなんて」
オブリビオンマシンも案外大したことはないのデスネ、と絆は笑って『別雷大神』と共に圧倒的な暴力の一撃を叩き込む。
「あ、正気に戻れたらお礼に『八咫神国』での販路くださいデス!」
ちゃっかりそんなことを言っているが、国としての体裁を保てなく成った『八咫神国』は滅びるしかないだろう。
絆は、それでも構わないのだ。
国としての体裁がなくなったとしても、生きる人々は残る。ならばこそ、そこに商機はいくらでも転がっているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『帝』ご当人が、玉体を最前線へお運びなさるとはね。
終わってるわ、この国。
兵には兵の、将には将の役割があり、君主もまた然り。一切を擲って自ら前線へ出てくるなんて、己の兵を、民を信じていない証拠。信じていないから、見限られる。
いいでしょう。今日で八咫神国を終わりにする。
「高速詠唱」「全力魔法」「破魔」「浄化」で、不動金縛り法。
勝敗は兵家の常。それを殊更『敗者の王』? そんなに負けたのが悔しくて、いいこいいこして欲しいんだ?
甘ったれるな!
ここは戦場。あなたを笑わせる太鼓持ちはいない。あなたは勝敗以前に戦場に立つ覚悟が出来てないわ。
駄々っ子にはお仕置きね。羂索で縛り上げて不動明王火界咒で焼き上げる。
膨大な敗北の記憶が煌めくようにして『敗残者の王』の中にあふれる。
それは機体がパッチワークの如き、異なるキャバリアのパーツによって構成されているからである。
機体の装甲に刻まれた傷痕の一つ一つが敗北の記憶。
勝利の記憶はなく、その機体は敗北の証で溢れていた。けれど、それがなんだというのだ。
敗れても、敗れても、最後に己が立ってさえいればいい。
「そうだ。負けても構わない。私の血統は証明されている。いかなる敗北が積み重なろうとも、私の中に脈々と流れる血潮こそが、正統性を帯びるのだから」
『敗残者の王』を駆る『帝』の瞳には最早狂気しかない。
猟兵の一撃に寄って刻まれたコクピットハッチの傷から除くのは、そんな瞳であった。
「『帝』ご当人が、玉体を最前線にお運びなさるとはね。終わってるわ、この国」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)がそう吐き捨てたのも無理なからぬことであった。
兵には兵の。将には将の役割がある。君主もまた然りである。
ならば、君主たる『帝』が為すべきことは、前線に出てくることではなかったはずだ。
「私自身が正統性を証明しようというのだ。猟兵が役割を語るか」
「一切を擲って自ら前線に出てくるなんて、己の兵を、民を信じていない証拠。信じていないから、見限られる」
その言葉に『帝』の黒い瞳が細まる。
そう、最初から彼は何も信じていない。見限られたのではない。自身が見限ったのだ。己の国を、己の正統性を疑う民など必要ないと見限ったからこそ、彼は『敗残者の王』に乗っている。
「雑兵が吠える。私こそが『八咫神国』。私さえ残れば、『八咫神国』は続いていく。他の全てを犠牲にしても、私さえいればいい」
これまで猟兵達の攻撃は『敗残者の王』を消耗させているはずだ。けれど、周囲の残骸を利用し、己を修復していく姿は、パッチワークというよりはツギハギだらけの怪物そのものであった。
「――いいでしょう。今日で『八咫神国』を終わりにする」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
その瞳に在るのは、明確に『帝』を捉える。手にした霊符の白色が世界に輝く。
「ノウマクサンマンダ バサラダンセン ダマカラシャダソワタヤ ウンタラタカンマン」
霊符より放たれた不動明王の羂索が『敗残者の王』に迫る。
けれど、その全てがかわされてしまう。これまで敗北を喫した記憶が、羂索が伸びる端から距離を取られ、かわされてしまうのだ。
「勝敗は兵家の常。それをことさら『敗残者の王』? そんなに負けたのが悔しくていいこいいこして欲しいんだ?」
ゆかりにとって、そのオブリビオンマシンの全てが気に入らないものであった。
搭乗者である『帝』に対してもそうであった。
何もかも気に入らない
息を吸い込み、彼女は裂帛の気合のように叫ぶのだ。
「――甘ったれるな!」
此処は戦場である。
宮廷でもなれば、自身を褒めそやす太鼓持ちもいない。目の前の『帝』は勝敗以前に戦場に立つ覚悟すらないのだ。
だからこそ、オブリビオンマシンに頼る。
己の血統性を証明すると言いながら、自分では何かをなそうとしない。傷つくことばかりを恐れ、傷痕は誰かに押し付けようとしている。
ゆかりは駆け出し、手にした霊符を再び振るう。羂索を攻撃であると認識されるからかわされてしまうのだ。
ならば、と放った羂索を散財する瓦礫に放ち、『敗残者の王』の足元から掬うようにして引っ掛ける。
「駄々っ子にはお仕置きね」
わずかに引っかかった脚部から羂索が不動金縛り法(フドウカナシバリホウ)によって全身に伝播していくように絡みつき、『敗残者の王』の身体を縛り上げる。
「燃えなさい」
放たれた炎が、その怨讐と執着に塗れた装甲を焼き上げていく。まるで煌々と立ち上る炎が、歪んだ心を浄化するように――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
引き続き【セレステ】で動くね。
いまどき血統だけでどうにかなるって思ってるのが、
すでに『後継』としての資質に欠けてるよね。
心と実力、両方を持っていてはじめて、血統とか言えるんだと思うよ。
『エイル』さんは街中で戦闘させるようなことはしないと思うけどね。
ま、言って解るならこんなことしてない、かな。
【E.C.O.M.S】を展開してオールレンジ攻撃。
できるなら腕とか脚とか破壊したいところだけど、ま、こちらはめくらまし。
ユニットを囮に【M.P.M.S】を徹甲弾モードで斉射して、
駆動系狙いで行動不能にしていきたいな。
とりあえずオブリビオンにつけ込まれないように、
もういちどやり直してみたらいいんじゃないかな。
炎が噴出してオブリビオンマシン『敗残者の王』の機体を焼く。
けれど、その炎が装甲を引き剥がしたとしても、未だ『敗残者の王』は認めない。己の敗北を、己の正統性を。
『帝』と呼ばれた搭乗者は、『八咫神国』の上層部であり、この国を治める長なのだろう。
彼の瞳にあるのは血統に対する執着だけであった。
あふれる狂気は彼の心のなかにあった一点の陰りであったのだろう。それを増幅するのがオブリビオンマシンなのだ。
「私が負けることはありえない。どれだけの敗北を重ねようとも最後に勝てばいいのだ。私が最後に立っている。それだけで『八咫神国』は滅びることはない。国とは私自身であり、私自身が生きていることこそが重要なのだから」
確かに血統によって『グリプ5』と『八咫神国』は友好国であることを百年続けてこれたのだろう。
けれど、それは血統のみで行われてきたことではないことをガンシップである『リオ・セレステ』を駆る菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は知る。
弛まず行われてきた人の営み、多くの人の平穏を求める心が紡いだ結果なのだ。それをたった一つの血統だけが為し得ることなど、あり得ない。
「いまどき血統だけでどうにかなるって思ってるのが、すでに『後継』としての資質に欠けているよね」
「私を否定するか。それは国全てを否定することと知れ」
理緒の展開したE.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)、八角形のユニットが空を舞う。
無数に飛ぶユニットは『敗残者の王』を取り囲み、全方位からの飽和攻撃を敢行する。
「無駄だ。この程度の攻撃など」
『敗残者の王』の装甲に刻まれた傷痕の全てがユーベルコードに輝く。
それはこれまで刻まれてきた無数のパッチワークされたパーツに残る敗北の傷痕であった。
記憶として残る傷痕があらゆる方角から放たれるユニットの攻撃を躱し続けるのだ。
「心と実力、両方持っていてはじめて、血統とか言えるんだと思うよ。そんなのはただの言葉に過ぎないんだから。その言葉の意味を知り、力を感じる心があるからこそ、意味をなすものなんだよ」
理緒にとって血統事態に恐怖することはない。
どれだけ『フュンフ・エイル』が人々の強烈な印象を与えた英雄か悪魔であったのだとしても。
きっと彼女は思うのだ。
彼ならば、街中で戦うことはないだろう。全てを巻き込むような戦い方は決してしないだろうと、なぜだかそんなふうに思うのだ。
「ま、言って解るならこんなことしてない、かな」
ユニットの全てが『敗残者の王』に撃ち落とされ、またはキャバリアソードで叩き潰される。
けれど、それらの全ては目くらましでしかなかった。
「全方位飽和攻撃からの本命!」
ミサイルランチャーから放たっる徹甲弾が『敗残者の王』へと放たれる。彼女が狙っていたのは、駆動系。即ち脚部である。
関節のどこかに当たれば良いと考えていたのだが、脚部だけでも無数のキャバリアの残骸のパーツで構成されている。
全てが異なる作りになっているからこそ、狙いが定まらない。
「けれど、そんなアンバランスな機体じゃ、躱しきれないでしょう」
放たれたミサイルが右足の装甲を貫きフレームにまで到達し爆発する。
「まぐれ当たりを――」
誇るな、と『敗残者の王』のコクピットの中で亜麻色の髪と黒色の瞳をした『帝』が呻く。
猟兵の攻撃に寄って切り裂かれたコクピットハッチから覗くその姿を理緒は見ただろう。
「まぐれでも命中したことには変わりないでしょう。負け惜しみにしか聞こえないよ」
とりあえず、と理緒は告げる。
傾ぐ機体に向けてではなく、コクピットにいる『帝』に言うのだ。
「オブリビオンに付け込まれないように、もういちどやり直してみたらいいんじゃないかな」
何もかもが手遅れだなんてことはないのだと言うように、理緒は爆風吹き荒れる炎の中に消える『敗残者の王』の姿を見下ろすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アンネリース・メスナー
血筋、血統ですか
まぁ理解はできますわ。わたくしも皇族の血を引く身故に
ですが、血だけに拘るのは愚かですわ
その血が正しいと正当性を主張するのなら、それに見合った能力と言動が求められるわ
少なくともオブリビオンマシンの傀儡と化すようでは、ね?
それに帝の座乗機としては、その機体は少々品に欠けますわ
わたくしのラピートは親衛隊仕様機ですが、このぐらいのエングレービングは施すべきでは?
見た目通り泥臭い戦い方ですわね
経験則からの先読みなど、初見のものには無力と知りなさい!
サイコセンサーがオーバーロードする程の思念を発し、思念のオーラを纏い、オーラによって長大化したビームソードを振り下ろしますわ!
爆風の中から飛び出すオブリビオンマシン『敗残者の王』の機体装甲はもとより傷だらけであった。
これほどまでの苛烈な猟兵達の攻撃を前にして未だ原型を留めているのは、その機体に刻まれた傷痕の記憶があってのことだろう。
刻まれている傷痕は全てが敗北の記憶。
パッチワークのように機体を構成しているものは全てが同一のものはない。オブリビオンマシン、キャバリアの撃破されたという敗北の証だけが集積した存在、それが『敗残者の王』である。
その妄執と小国家『八咫神国』の上層部、その長である『帝』の執着が混ざりあったものこそが、今まさに猟兵達に迫る脅威の姿であった。
「私の正統性を覆すか。だが、それでも私の血統は証明される。敗北を重ねたとしても、最後に立つのが私であればいいのだ。それが何故わからない。貴様たちのやっていることは先延ばしに他ならぬというのに」
戦場に残骸が残っていれば、そこから機体を再生していく。
その恐るべきユーベルコードを有していることは猟兵たちにも理解できただろう。けれど、アンネリース・メスナー(元エリート親衛隊・f32593)は頭をふった。
「血筋、血統ですか。まぁ理解はできますわ。わたくしも皇族の血を退く身故に」
今はなき故国を思う。
失って初めて残るものがあるのならば、アンネリースの中にあるのは誇りであったことだろう。
「ですが、血だけにこだわるのは愚かですわ。その血が正しいと正統性を主張するのなら、それに見合った能力と言動が求められるもの」
互いに一歩も譲らぬ『敗残者の王』と『アマランサス・ラピート』の戦闘機動。
弾丸が、ビームの光条が戦場に撒き散らされながら、互いの機体が戦場を駆け抜ける。
「在ると言った、その力ならば」
「少なくともオブリビオンマシンの傀儡と化すようでは、ね?」
それが在るようには思えないのだとアンネリースは言う。
ビームを躱し、迫るアンネリースの瞳がユーベルコードに輝く。相対するは黒鉄の狂戦士。
しかし、大地を疾駆するは優雅なエングレービング施された親衛隊機。
アンネリースはそれを品性であると言った。
戦うのならば優雅に。
泥臭い戦い方など、経験則によるもの。少なくともアンネリースにとっては、それは最低限のことであり、誇るべきことですらないと切って捨てる。
「経験則からの先読みなど、初見のものには無力と知りなさい!」
輝くユーベルコードに瞳が見開かれる。
それはサイキックオーバーロード。思念のオーラが機体を包み込み、機体に備えられたサイコセンサーがあふれるサイキックの氾濫のよって、ビームソードへと流れ込んでいく。
出力を超えたサイキックは、オーラとなってビームソードを極大なる刀身へと変える。
「新たな敗北を此処に刻みなさい」
放たれるビームやバズーカの砲撃すらもオーラが弾き、『敗残者の王』へと振り下ろされるオーラの剣。
それは閃光のように戦場に走り、『敗残者の王』の左半身を切り裂く。
腕部が消し飛び、脚部に傷が刻まれる。
それはアンネリースの言葉通り、確かに新たな敗北の証であったことだろう。
けれど、それを以て再戦が果たされることはない。
何故ならば、此処で『敗残者の王』は終わりを告げる。己が振るった剣がそれを為すのだと言わしめるようにアンネリースはあふれるサイキックと共に『アマランサス・ラピート』の機体の中で優雅に微笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイン・トゥーガン
アドリブ歓迎
おや、国のトップ自ら御出陣かい
しかも、そんな継ぎ接ぎが帝の専用機とか、アタシの知ったこっちゃないが血統云々よりも国の威厳に関わるんじゃないかい?
まぁ今日此処で失墜するんだから関係ないかねぇ
はん、オブリビオンマシン関係の依頼は偶にこういうお偉いさんぶっ潰せる依頼があるのがいいねぇ
あ?チッ!アタシが貰う予定のアマランサスの部品使ってんじゃないよ!
帝の癖に手癖が悪いんだよ!
マイクロミサイルとサブアームのサブマシンガンで牽制して動きを止めたら本命を狙う撃つよ!
その場で補修しようがキャバリアに変わりゃしないんだ、ビームアサルトライフルでオーバーフレームとアンダーフレームの接続部を狙撃するよ!
極大なるオーラの刀身が放つ剣閃の一撃がオブリビオン『敗残者の王』の左半身を切り裂く。
左腕は消し飛び、脚部にもまた傷痕が刻まれた。
けれど、それでもなお『敗残者の王』はジェネレーターの方向と共に猟兵たちを禍々しき赤きアイセンサーの煌めきと共にねめつける。
「私に敗北を刻むなど。そんなことなどあってはならない。『フュンフ・エイル』の後継がこの地に在るという事実こそが、人の平穏だと何故わからない」
小国家『八咫神国』の上層部の長たる『帝』が言う。
彼の言葉は確かにこれまで百年続いた、曲がりなりにも平穏の証明であったのだろう。
だが、その平穏は破られるのだ。
他ならぬオブリビオンマシンの手によって。悪意に寄って書き割りの如き平穏は破られる。それを理解できぬからこそ、オブリビオンマシンによって思想を、心を歪められてしまうのだろう。
けれど、ルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)にとって、それはどうでもいいことだった。
「おや、国のトップ自らご出陣かい」
ルインは継ぎ接ぎだらけの機体を見やり、それが『帝』の専用機であるという事実に苦笑いをした。
国の権威であるというのならば、もっと然るべき機体があったのかもしれないが、そんなことはルインの知ったことではない。
そんな機体に乗っている事実こそが……。
「血統云々より国の威厳に関わるんじゃないかい?」
けれど、それもまた詮無きことである。何故ならば、今日此処で『八咫神国』は失墜する。
もはや体裁だけを取り繕うこともできぬほどに荒廃した街中は、かつての平穏が偽りであったことを如実に人々に見せつけるだろう。
「国の威厳など、私という存在がいれば如何様にも出来るというもの。人は権威を求める。そういう生き物だ。名を、血を、正統性を。それによって偽りであろうとも信じるだけの愚かさがある」
「はん、オブリビオンマシンが言わせているんだろうけれど、こういうお偉いさんぶっ潰せるのはいいねぇ!」
ルインの駆る『アマランサス・マリーネ』が強襲用機体である利点を生かして、半壊した『敗残者の王』へと迫る。
片腕を失った今が、攻め込む好機である。
だからこそ、強化された推力で持って地上を疾駆し、黒鉄の狂戦士へと迫るのだ。しかし、その動きが止まる。
『敗残者の王』が周囲に散在していた『アマランサス』の残骸を蹴り飛ばし、あまつさえは、それを巧みに利用して『アマランサス・マリーネ』の挙動を制限してくるのだ。
口ばかりではないということを証明したようでもあったが、それ以上にルインは頭に来ていた。
「あ? チッ! アタシが貰う予定の『アマランサス』の部品使ってんじゃないよ! 『帝』のくせに手癖が悪いんだよ!」
整備用や予備用のパーツを手に入れられる算段が付いていたというのに、戦いに利用されては後々に響く。
それが許せぬとマイクロミサイルとサブアームに懸架されたサブマシンガンから弾丸がばら撒かれ、『敗残者の王』にそれ以上『アマランサス』の部品を使われぬようにと牽制する。
「この地にあるもの全てが私のものだ。それを使って何が悪い」
放たれる残骸を躱し、ルインは言う。
「それはアタシんだ!」
マイクロミサイルの弾丸が地上に落ち、爆風を巻き上げ互いの視界を埋め尽くす。けれど、ルインは足を止めなかった。
足を止めたのは脚部を損傷している『敗残者の王』だけ。それが命取りになる。
「はん! 動きを止めたね、バカが!」
ルインの瞳がユーベルコードに輝く。
見据えるのは、損傷している左脚部。そこが今最も『敗残者の王』にとってのウィークポイントだ。
構えたビームアサルトライフルの銃口が左脚部へと放たれ、続けざまにオーバーフレームとアンダーフレームをつなぐジョイントを狙って放つハンティング・ショットの一撃が、『敗残者の王』に吸いこまれ、その機体を大きく傾がせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ノエル・カンナビス
全くこの世界は。どいつもこいつも。
後進は先人を超えて一人前。そうでなければ何も前に進みません。
先祖の血筋に縋りつき、先祖に並び立とうとすらしない。
そんな統治者が納める国は、先人の遺産を食い潰して衰退するのみ。
違うというなら、フュンフの名などに頼らず、己が名で立ちなさい。
機体も機体です。戦争は、権利の衝突を解決するための社会制度です。
他の手段が尽きた後も成立する最終手段であるから手放せないのです。
これを失くすには、戦争よりも優越する新たな最終手段が必要です。
恐怖は元を断てばおしまい。戦争が優越するので、代替たり得ません。
統治が解らぬ帝。戦争が解らぬ兵器。
少しはおかしいと思いなさい。
お仕置きです。
「全くこの世界は。どいつもこいつも」
キャバリア『エイストラ』のコクピットの中で、そう吐き捨てたのはノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)であった。
彼女にとって血統や正統性を説くことほど意味のないことはなかったのかもしれない。
レプリカントであれど、行進は先人を超えてい行くことこそが責務。
ならば、先人を超えてはじめて己という存在が一人前であると言えるのだろう。そうでなければ、何も先に進むことはできない。
時間が過去を排出して進むように、前に進むということをやめた時、生命としての命題は尽きるものであろう。
「先祖の血筋にすがりつき、先祖に並び立とうとすらしない」
歯噛みする思いであったのかもしれないし、それは端的に事実を述べているだけに過ぎないのかも知れなかった。
そこにあったのは、ただ一言で示すのならば小国家『八咫神国』の平穏を偽りだと断じるものであった。
「そんな統治者が治める国は、先人の遺産を食い潰して衰退するのみ」
「それを是としたのが民衆だ。大仰な看板を求め、その庇護を求める。自分では何もしないくせに求めることだけは覚えている。そんな民衆など、私の足場になるのは当然であろう」
己という存在を傘に雨露をしのごうというのだと、『帝』はオブリビオンマシン『敗残者の王』のコクピットから言う。
彼にとって民衆とは治めるべき存在ではないのかも知れない。
それがオブリビオンマシンによって増幅し、歪められた結果であるというのならば、誰しもの心にある疑念という点を染みのように広げられただけなのだろう。
「私は違う。私は食いつぶされる側になど回りたくはない」
『敗残者の王』、その黒鉄の狂戦士が如き威容でもって、左腕部を失いながらも、周囲に散財するオブリビオンマシンやキャバリアの残骸を持って『エイストラ』の追撃を躱し続ける。
戦場を疾駆する二機は、互いに交錯しながら次の一手を伺うようであった。
「違うというのなら、『フュンフ』の名などに頼らずに、己が名で立ちなさい」
放たれる弾丸とビームを『エイストラ』は高機動機である利点を活かして躱す。逆に『敗残者の王』は地形と残骸を利用して『エイストラ』の追撃を躱す。
そこに両者の違いがあったのかもしれない。
戦争とは権利の衝突を解決するための社会制度であるとノエルは言う。
たとえ、他の手段が尽きた後も成立する最終手段であるから手放すことを人間はできない。
ならば、なんとする。
戦争よりも優越する新たな最終手段が必要なのだ。
「恐怖は元を断てばおしまい。戦争が優越するので、代替足り得ません」
恐怖を淘汰するために争いが必要であるという矛盾。
それを理解しない上層部たる『帝』。戦争というものを理解しない『敗残者の王』
人と兵器。
それを前にしてノエルは息を吐き出す。
「少しはおかしいと思いなさい」
放たれたビームの光条をかすめる事無く『エイストラ』が残骸より躍り出る。
戦い方も知らぬ、どれだけ敗北を重ねたとしても、その敗北の起因すら理解しようしないのであれば、ノエルにとって彼等は恐れるに値しない。
「E・A、ディスチャージ――お仕置きです」
ビームブレイドの一撃が『敗残者の王』の胸に突き立てれられ、その機体に流れ込む電撃が胸部装甲を弾き飛ばす。
これで彼等が理解するともノエルは思っていないだろう。
けれど、敗北の後にあるのもを知ることが在るのならばあるいはと、その僅かな可能性にノエルは望むのだ。
己自身で気づきを得ることを――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
為政者にとって正統性の維持は死活問題
騎士として重々承知しております
ですが、平地に乱起こす域までのそれは乱心と同義なのです
狂気囁いた君側の奸…先ずはその機体、破壊させて頂きます
マルチセンサーで戦場を情報収集
瞬間思考力で敵の地形利用や残骸からの武装確保、使用の動向を見切って剣での切り結びや盾での防御で応戦
サブアームのライフルでのスナイパーUC射撃で敵武装破壊
相手の武装調達離脱と同時、此方もアマランサスの残骸からバズーカを確保
撃つだけが銃の用途ではありませんよ
バズーカを投擲しライフルで内部弾頭纏めて撃ち抜き爆破
Ⅳをハッキングし推力移動限界突破
爆風で体勢崩れた隙を逃さず接近し、近接攻撃で装甲継ぎ目狙い
左腕を失い、左腕部にもまた致命的な打撃を受けた『敗残者の王』の機体が雷の一撃を受けて胸部装甲を弾き飛ばされる。
傾ぐ機体は、けれど倒れることなく未だ立ち続けている。
装甲に刻まれた傷痕は数しれず。
その一つ一つが敗北の証であり、記憶であるというのならば、『敗残者の王』は、その名の通り一度の勝利も得ることはなかったのだろう。
それは今まで一度も戦うことなく己の血の正統性のみよって小国家『八咫神国』の平穏を維持してきた『帝』もまた同様であったことだろう。
敗北しか知らぬ存在と、戦いを知らぬ者。
妄執と執着が混ざりあった存在、それこそが猟兵が討たねばならぬ敵であった。
「為政者にとって正統性の維持は死活問題。騎士として重々承知しております。ですが」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は『ロシナンテⅣ』を駆り、『敗残者の王』へと迫る。
パッチワークの如き継ぎ接ぎの機体である『敗残者の王』は、間をおけば必ず周囲に存在するキャバリアやオブリビオンマシンの残骸からでも修復を始めるだろう。
それは言わば終わりのない戦いに猟兵たちが引きずり込まれることと同義。
ならばこそ、トリテレイアは、この好機を逃さぬと戦場を疾駆するのだ。
「ですが、平時に乱を起こす域までのそれは乱心と同義なのです」
「その平時こそ、私の存在に寄って齎されたと理解せぬ愚昧が言うことか」
『帝』の声が響く。
それはオブリビオンマシンによって歪められ、増幅させられた狂気であったことだろう。
確かに、その名前と血によって『八咫神国』は周辺国から攻め入られることは長らくなかった。
けれど、それは書割の如き平穏であると何故理解しなかったのか。
「狂気囁いた君側の奸……先ずはその機体、破壊させて頂きます」
『ロシナンテⅣ』と接続されたトリテレイアのマルチセンサーが、周囲に存在するキャバリアやオブリビオンマシンの残骸をスキャンする。
使用可能な火器や、障害に使われそうな部位を見定め、放たれる攻撃の尽くをトリテレイアは躱すのだ。
「私の傍に必要なものなど何があろうか。私一人で事足りるのだから」
放たれる鉄塊の如き斬撃。
それを剣と大盾で受け止め、トリテレイアは瞬時にサブアームにマウントされたライフルで鉄塊の如きキャバリアソードを打ち砕く。
「人一人で国が出来上がるということはございませんよ。その名を、その血を継ぐというのならば――」
トリテレイアの瞳がユーベルコードに輝く。
機械騎士の精密攻撃(マシンナイツ・プリセッションアタック)は、狙いを誤ることはない。
見据える先にある未来があるというのならば、そこに向かった最速にして最短で走る道を選ぶことができるのがウォーマシンである。
互いに機体が新たな武装を求め、廃墟と化した街中を疾駆する。
一瞬早くトリテレイアが手にしたのは『アマランサス』のバズーカであった。即座に電子ハッキングで武装の認証を詐称し、装填された砲弾のロックを外す。
「撃つだけが銃の用途ではありませんよ」
『敗残者の王』もまたバズーカを手にしていた。
しかし、それは構えて、引き金を引く、という一連のアクションの分トリテレイアのほうが早い。
投げ放たれたバズーカが質量兵器となって『敗残者の王』へと迫る。
けれど、それが致命傷に為ることがないのを理解するからこそ、『敗残者の王』は躱すことなく、返す一撃で『ロシナンテⅣ』を破壊しようとした。
それが間違いである。
サブアームに懸架されたライフルの銃口が火を噴き、バズーカごと内部の弾頭を打ち抜き、爆破する。
凄まじい爆風で『敗残者の王』の機体が傾いだ瞬間、『ロシナンテⅣ』は駆け込む。
「――出力、動作制御は私の得手。お望みなら何度でも再現してみせましょう。貴方がいつか真に『後継』としてふさわしき方になるその時まで」
放たれる剣の一撃が『敗残者の王』の構えるバズーカを切り飛ばし、返す刃でその機体に一文字の傷を新たに刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語
末裔だから偉いと思っているのか?それは大間違いだ
血は大事だろうが、だから実力があると思っているならお笑い種だ
POWで判定
まずはAIと一緒に周辺地域の【情報収集】を行う
指定UCで藍の災い:圧壊【重量攻撃】を放ち攻撃
外れてもいい、この攻撃の目的は周囲の地形や置かれた物品を破壊することにある
破壊できたら黄の災い:感電【マヒ攻撃】で動けなくした後、橙の災い:爆破【爆撃】で攻撃する
必要なら風の結界術で身を守る
猟兵たちとオブリビオンマシン『敗残者の王』の戦いは苛烈を極めた。
小国家『八咫神国』の街中は瓦礫に塗れ、キャバリアやオブリビオンマシンの残骸をひっくり返したよな有様になっている。
けれど、その戦場こそが『敗残者の王』のテリトリーである。
あらゆる残骸を、地形を用いて戦う姿は、これまで幾度もの敗北を経験してきたからであろう。
歪な継ぎ接ぎだらけの機体がそれを物語っている。
傷痕の一つ一つが敗北の証。されど、敗北を幾度重ねようとも、最後に立っている者が勝者であるというのならば『敗残者の王』は未だ敗れてはいないのだろう。
敗北を是としない者が叫ぶ。
「私の血筋を恐れぬものならば、私には必要のない存在だ。『フュンフ・エイル』という名の庇護を必要しないというのであれば、滅びていくだけである」
これまで『八咫神国』において平穏が仮初であったとしても保たれてきたのは、確かに絶対的な『エース』である『フュンフ・エイル』の名と血の証明であったのだろう。
人々は恐れ、そして、恐れるがゆえにその力の元に集まってくるのだ。
「末裔だから偉いと思っているのか? それは大間違いだ。血は大事だろうが、だから実力があると思っているならお笑い種だ」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は戦場をキャバリア、銀の銃兵とともに駆け抜ける。
その瞳が、メガリスの義眼が見ているのは、『敗残者の王』の威容である。
されど、その威容に陰りがある。
これまで戦ってきた猟兵たちが消耗させてきているのだ。左腕部は消し飛び、脚部や胸部、装甲の至るところに甚大なる傷痕が刻まれている。
たとえ、周囲のキャバリアやオブリビオンマシンの残骸でもって修復する力があるのだとしても、それを行わせぬと矢継ぎ早に攻撃を仕掛けているのだ。
「私を笑うか。私を否定するか。それこそが愚かであると何故理解しない」
キャバリアの武装の残骸を拾い、ルイスの駆る銀の銃兵の射線から逃れるようにして『敗残者の王』が戦場を走る。
「隠れていたとしても無駄だ。俺と『銀の銃兵』、そして〝Minerva〟の力があるのなら!」
輝く義眼がユーベルコードの光を湛えいている。
メガリスと銀の銃兵の持つ魔銃とのリンクを戦闘補助AIが強化し、己の義眼が放つ黄の災いの光を増幅させていくのだ。
「メガリスと魔銃のリンク強化完了、発射!」
頭上に掲げた魔銃の銃口が輝き、災の力を強化属性弾射出(エンチャントバースト)として打ち出す。
放たれた災い、電撃は周囲に散財していた瓦礫や残骸を物ともせず、『敗残者の王』ごと貫き、その動きを止める。
「そこか――!」
動きを止めた『敗残者の王』の姿を見る。
ルイスにとって、その姿は最早『王』と呼ぶには相応しいものではなかった。
もとより継ぎ接ぎの機体。
黒鉄の狂戦士の如き姿は、『帝』の器たり得ないだろう。オブリビオンマシンに心を歪められた結果であるとはいえ、彼の言葉は心の奥底にあったものだろう。
血筋を、その正統性を証明できなければ、己の立ち位置すら危うい状況。
それをルイスは推し量ることしかできない。
けれど、たとえ、オブリビオンマシンに歪められていたとしても、その言葉は誤りであることを知っている。
「何も残らなくても残るものがある。人ってのは、そういうものだろう!」
護るべき生命は、いつだって立ち上がることができる。
何も遅いことなど無いのだ。
ルイスの瞳が橙に輝き、続けて放たれた爆破の弾丸が『敗残者の王』を討滅さんと爆煙を街中に立ち上らせ、その身を焼き尽くし、新たなる門出への切符を用意するように、その重責から解放せんとするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
(引き続き『ファントムシリカ』に乗って参戦)
なんかもー面倒くさいですねー
もっとこう、良い方向捻じ曲げてくれないものでしょうか
ま、シリカの爪以上に怖いものなんて
アッハイスミマセンタタカイマス
最近特殊な機体が増えてきて
シリカの装備も考えないと
とか思いつつ、特攻しまーす♪
なるほど、威力と攻撃回数が3倍
活路は超接近戦しかありませんね(きらきらした目
セラフィナイトスピアを構えて一直線にとっつげきー!
ふふ、ただの特攻じゃありませんよ!
シンプルイズベスト!
地形を利用される前に懐に飛び込む作戦です!
攻撃はスピアの斥力フィールドでガード
そして接近からのー
「手数こそ正義!参ります!」
【疾風怒濤】で決めます!
オブリビオンマシンがいつだって捻じ曲げ、増幅させるのは一点の染みのように人の心にある闇である。
誰しも光だけを心に宿すものではない。
光があれば影あるように。人の心にもまた同様のものがある。それは理性であったり、倫理であったり、そうした何かで抑えられるものである。
だが、オブリビオンマシンが増幅した狂気は、人の手では如何ともし難いものだ。
「私自身を否定するか猟兵。この『帝』たる私を」
小国家『八咫神国』の長でもある『帝』があるオブリビオンマシン『敗残者の王』のジェネレーターが唸りを上げる。
それは怨讐があげさせた咆哮であったことだろう。
「なんかもー面倒くさいですねーもっとこう、良い方向に捻じ曲げてくれないものでしょうか」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はキャバリア『ファントムシリカ』のコクピットの中でつぶやく。
オブリビオンマシンが撒き散らすのは、戦乱の火種ばかり。
その度に自分たちが出張ってこなければならないというのは、猟兵の常であれど、いい加減に鬱陶しいものであったことだろう。
「ま、シリカの爪以上に怖いものなんてアッハイスミマセンタタカイマス」
にゅっと伸びた白猫又のアバターである『シリカ』の爪にサージェは面白いくらい顔面蒼白になって操縦桿を握る。
「本当にもうお姉ちゃんは」
仕方のない人ですね、とシリカは己の機体を操るサージェの尻を叩くのも楽ではないとため息をつく。
サージェは『ファントムシリカ』で戦場となった『八咫神国』の街中を駆け抜ける。
どこもかしこもキャバリアやオブリビオンマシンの残骸で溢れているし、『敗残者の王』にとっては、この上ないフィールドであることは言うまでもない。
特殊な機体がオブリビオンマシン化することが増えてきたことを顧みれば、そろそろ『ファントムシリカ』もアップデートを施すべきであろうとサージェは考えながらも、考えているとは程遠いほどに単純な答えを出す。
「瓦礫に隠れてたり、利用するっていうのなら、特攻しまーす♪」
違うそうじゃないと『シリカ』がなにか言っている気がするが、敵はユーベルコードによって残骸や廃墟を巧みに利用してくる。なればこそ、活路は超接近戦にしかない。
『ファントムシリカ』が穂先に斥力を発生させたアールシェピース、そのセラフィナイトスピアと呼ばれるキャバリアグレイヴを構える。
「踏み込みか、私の間合いに」
「ええ、ただの特攻じゃありませんよ。シンプルイズベスト! 地形を貴方が利用するというのなら、利用される前に懐に飛び込むまで!」
放たれた鉄塊の如きキャバリアソードは半ばから折れている。
しかし、『敗残者の王』は、その先端に半壊したキャバリアの機体を串刺しにして、鉄槌のように扱っているのだ。
「それを踏み潰すまでよ」
放たれた一撃はまさに質量兵器。
しかし、斥力を発生っせる穂先が鉄塊となったキャバリアの機体を押し上げて、握りしめる柄をきしませる。
「機体フレームを圧潰させようなんて、そうはさせません! またシリカに文句……じゃない、怒られて……じゃない、えっと心配されちゃいます!」
だから、とサージェの瞳がユーベルコードに輝く。
心配されないようにというか、また機体を壊してと爪の餌食にならないためには。
そう、疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如き連撃で敵を圧倒するしか無い。
踏み込んだ先に輝く『敗残者の王』のアイセンサーが揺らめく。
「手数こそ正義! 参ります!」
斥力フィールドが『敗残者の王』が放った鉄槌を振り上げて払い、滑り込んだ懐において超連続のセラフィナイトスピアの突きを繰り出す。
装甲を引き剥がし、フレームに至るまで斬撃が繰り出される。防御すら追いつかぬ連撃は、まさしく疾風怒濤の勢いで『敗残者の王』を追い詰めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
国の頭がこーなったらもうおしまいだなあ…
再来がどうだの後継がどうだの
しょうもな…
誰も彼も過去の威光をそんなに欲しがってどーすんのさ
ホント、歴史に名を残すのは嫌になるね
…言っても意味無いか
叩き潰すしか、薬は無いもんね
●
引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『オーラ防御』で周囲にシールド展開、遠距離攻撃はそれで逸らして回避
ギリギリまで接近して至近距離から『斬撃波』を上半身に当てバランスを崩させよう
【Load[Battle Log:5/31/21]】起動
生と死を繋ぐもの、疑似再現
剣にその力を乗せて一気に『なぎ払い』で一薙ぎ
時間さえかければ誰でも何でも殺せる力溜めさせて貰うよ
猟兵達の攻撃は、ついにオブリビオンマシン『敗残者の王』を追い詰める。
左腕は消し飛び、脚部には致命的なダメージが打ち込まれた。
装甲は焼け焦げ、剥離し、その殆どが最早形をなしていない。『敗残者の王』、その名に相応しい姿と成り果てたオブリビオンマシン。
されど、猟兵達は知る。
『敗残者の王』――その真価は敗北しながらも、敗北を認めぬ妄執にあると。
機体より吹き荒れるユーベルコードの輝きが、嵐のように周辺にあったキャバリアの残骸をかき集め、その姿をこれまで以上の巨躯へと変化させる。
もはや原型を留めぬ形。
黒鉄の狂戦士と呼ばれた機体の面影は何処にもない。
あったのは、妄執と執着の成れの果てたる巨人だった。
「私があればこその国。ひれ伏せばいいのだ。何もかも私の血に、私の血統に『フュンフ・エイル』の名を継ぐ私に!」
吠える『帝』の言葉に嘗て、『呪われた名前』だと評した月夜・玲(頂の探究者・f01605)は息を吐き出す。
「国の頭がこーなったらもうおしまいだなあ……」
もうどうしようもないところまで『八咫神国』は国としての体裁を取り繕えなくなっている。
たとえこの戦いに勝利したとしても、『八咫神国』は瓦解するだろう。
「再来がどうだの後継がどうだの、しょうもな……」
玲にとって、彼等が望むものは必要なかった。
オブリビオンマシンに狂わされているとは言え、その根底にあるものは変わらない。それが大なり小なりの問題でしか無い。
ならばこそ、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
抜き払った模造神器の刀身が蒼く揺らめく。迫る巨躯を生身単身で躱し、玲は戦場を駆け抜ける。
「誰も彼も過去の威光をそんなに欲しがってどーすんのさ」
「名の価値を知らぬ者が言うか。私の名を、血を、如何にして平穏が成されたかを!」
振り下ろされた腕が玲を襲う。
張り巡らされたオーラのシールドが鉄槌の如き一撃を受け止める。
刀身が蒼く煌めき、衝撃波でもって叩きつけられた腕部を吹き飛ばす。
「そんなに『フュンフ・エイル』の名前が――虞をもたらすっていうんならさ」
バランスを崩した巨躯を前に玲は駆ける。
瞳に輝くユーベルコードの光は、未だ消えず。一体そのユーベルコードがいかなる力を彼女にもたらしているのか、彼女以外何者も理解できなかったことだろう。
「解析するには充分のデータが取れた。データロード、疑似システム起動」
瞬間、『帝』は本能的に恐れたことだろう。
言いようのない虞。それを感じることができたのは、確かに『フュンフ・エイル』の血筋故であったのかもしれない。
しかし、見よ。
此処にあるのは『虞』の体現者。
一つの骸魂が玲の掌の上にある。その骸魂の名は『大祓骸魂』との膨大な戦闘データによって生み出された『疑似大祓骸魂』である。
「Load[Battle Log:5/31/21](バトルログ・エビルゴッド)――へえ、大いなる邪神の一柱を前にして、虞るだけで立ち竦まないか」
模造神器に備えられたエネルギーカートリッジが弾けるようにして消耗していく。
補給されたエネルギーの奔流が生み出したのは『生と死を繋ぐもの』。
「疑似再現だけどさ……時間さえかければ誰でも何でも殺せる力――」
あふれるユーベルコードの輝きが玲と共にある。
しかし、それは凄まじいエネルギーを消費するものである。時間をかければかけるほどにエネルギーカートリッジが秒ごとに消えて行く。
「馬鹿な……! 殺せる力などに、私が――!」
すくむ身体は仕方のないことであったのかもしれない。根源的な死のイメージ。血筋であるというのならば、『フュンフ・エイル』は最も、その死に近づきながらも、それを踏破してきた存在だろう。
死線をくぐり抜けてきたからこそ、たどり着いた境地。
それを『帝』は、『敗残者の王』は知らない。敗れ続け、戦いから逃れ続けてきたからこそ、感じることはできたとしても、それを乗り越えることを知らないのだ。
「ホント、歴史に名を残すのは嫌になるね……言っても意味ないか」
だって、と玲は擬似的に再現された『生と死を繋ぐもの』でもって、鉄塊の如き『敗残者の王』の巨躯を薙ぎ払う。
それはあらゆるつながりを断ち切り、魂にまで癒着したオブリビオンマシンの怨念と『帝』の魂を切り離す。
死して過去になった者が今を生きるものを繋ぐというのならば、その概念を繋いで一つにし、断ち切る者こそが『生と死を繋ぐもの』。
「叩き潰すしか、薬は無いもんね。そんな名前に意味はない。それがわかるまで何度だって、叩き潰してあげるよ。自分の名前があるように、自分の腕と足が君には付いているんだから」
彼女は知っている。
同じ名を持ちながらも、とらわれることなく自分の道を生きる少年を。
だからこそ、玲はその一撃で持って怨念めいた執着を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵