青蝶繽紛(作者 南雲
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#ダークセイヴァー  #第五の貴族 


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#ダークセイヴァー
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#第五の貴族


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●水底のよりしろ
 それは青い蝶だった。
 地底へとなだらかに続く、ごつごつとした岩壁の広い洞窟。闇の濃い世界の中で、ひときわ闇に塗りつぶされた地下へと伸びる道だ。普通なら何の光源もないはずなのに、この洞窟の中はぼんやりと青い光がある。
 天井からは、氷柱のように垂れ下がった岩が嵐の前の静けさを以て幾千本も連なっている。そのつるりとした表面には、夥しい数の青い蝶が翅を休めていた。
 この蝶が、淡く光っているのだ。

 さらに先へと歩を進めると、突然岩の道は途切れた。
 あるのは、ゆらゆらと水面を揺らす地底湖だ。天から落ちる蝶の鱗粉が空間を仄青く照らし、その粉が落ちる水も淡く発光させている。
 水の上には、白と黄の菊のような花が蓮のようにそのまろい花のうてなだけで咲いている。
 奇妙な空間だ。
 行き止まりのように思えたが、地底湖は曲がりくねりながらまだ奥へと続いていく。水の上を渡れば進めそうだ。

 ――じゃらり。

 突然、後ろで金属のこすれる音がした。
 はっと振り返ると、重たそうな金の鎖を鳴らして、ひとりの女が“浮いて”いた。女は水際で佇むわたしに目もくれずに、浮いたまま水の上を進んでいく。彼女の目は、洞窟の奥へと続く青い天井を、何かに焦がれるように見つめていた。

 きらきらと、絶え間なく青い砂塵が降り注ぐ。ぐらりと、酩酊するかのようなふらつきを覚える。わたしは何かの気配を感じて周囲を見回す。
 すると、洞窟内の暗闇からずるりと何かが這い出てくる。
 なにか、とてもおぞましいもの。
 跫が迫ってくる。
 鼓動が早くなる。
 汗が噴き出る。
 これは――何度も悪夢で見たことのある、わたしの「恐怖」そのものだ。

 ぱしゃんと水音がはねた。
 はっとして音がした水の方へと目を向けると、先程の女が水に落ちている。白い腕を必死に天に向けて伸ばしている。その顔は恐怖にひきつっている。
 彼女が沈んでゆく。

 その躰が青へと完全に沈むと、水底から低い音が鳴り響き、水面が揺れ、波紋が幾重にも重なった。地底湖が、いや、この洞窟全体が、揺れている。
 烈しい水柱が吹きあがり、“何か”が洞窟の奥へとすさまじい勢いで飛んでいく。
 鋭い叫び声と、衝撃音、爆風。

 一呼吸おいて、けたたましい嬌声が頭を割らんばかりに響いた。


●青のほらあな
「――という、予知を見たのです」
 エンドゥーシャン・ダアクー(蓮姫・f33180)は首を傾げながら、そう告げた。

「ダークセイヴァーには、辺境に『異端の神々』がうごめいていて、それがオブリビオンに憑依して、『狂ったオブリビオン』と化しますよね。また、ダークセイヴァーの地下都市に『第五の貴族』が潜んでいるのもご存じかと思います」
 話しながら、エンドゥーシャンは自分でも整理するように指を用いて説明する。
 右手の人差し指が『狂ったオブリビオン』で、左手の人差し指が『第五の貴族』らしい。右の指をぴょこぴょこと跳ねさせてから、左の指へと覆いかぶせる。

「この『狂ったオブリビオン』が、私の夢に出てきた女性のようです。彼女は地底都市へと続く道を見つけ、どうやら『第五の貴族』へと憑依しようとしています」
 でも、『第五の貴族』も強いですから、とエンドゥーシャンは続ける。左の指は、覆いかぶさる右の指をぴんと跳ね飛ばす。

「それを察知した『第五の貴族』は、地下都市へと続く道に、『死の罠』を仕掛けました。それが、多分あの青い蝶なんだと思います。眠りのような、痺れのような……力が抜けて、「悪夢」のような幻影を見るようです。『狂ったオブリビオン』もこの罠に敢え無く敗れたかに見えたのですが…」
 『狂ったオブリビオン』は自らの肉体が果てても『第五の貴族』へと憑依を果たしてしまいそうなのだと言う。

「『第五の貴族』が憑依されると、『狂える第五の貴族』が誕生してしまいます。ただでさえ厄介なのに…この事態は避けねばなりません。ですので、皆様におかれましては『狂ったオブリビオン』に先んじて『第五の貴族』を殲滅し、その後『狂ったオブリビオン』を倒していただきたいのです」
 そのためには、洞窟に仕掛けられた死の罠を突破する必要がある。蝶の毒に対処しつつ、水の中を進む術を講じなければならない。

「わたしは、皆さまを地底湖の手前までお送りいたします。地底湖はかなり深いようですので、どうぞお気を付けくださいね」
 エンドゥーシャンの両手の中で、蓮のグリモアが咲きほころんだ。


南雲
 こんにちは、南雲(なぐも)と申します。
 お盆も過ぎて、夏も終わりますね。折角なので少しホラー風味でお送りしたいと思います。
 今回イメージする舞台は青の洞窟です。鍾乳洞のように涼しい空間。

●章構成
第一章(冒険)
 「第五の貴族」による、「狂えるオブリビオン」を倒すための「死の罠の迷宮」。
 洞窟内には地底湖が満ちています。OPにもありますが、先に進むには深い水を渡るための対処が必要です。
 蝶の毒が見せる幻惑は、「恐怖」です。ご自分の「怖いもの」や「怖い状況」「怖い思い出」など、そしてそれにどのように抗うかを教えてください。

第二章(ボス戦)「第五の貴族」
 地底湖の先に待ち構えています。プレイングボーナスが存在します。
 詳細は断章を差し挟む予定です。

第三章(ボス戦)「狂えるオブリビオン」
 「第五の貴族」を滅した後に追いついてきます。
 詳細は断章を差し挟む予定です。


●受付について
 全採用を心がけておりますが、まだまだ暑さも予想されるので人数によっては時間的・体力的に難しいこともあるかもしれません。
 〆切はハッシュタグにてお知らせします。
 いずれの章も途中参加を歓迎しております。
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第1章 冒険 『死の罠の迷宮』

POW防御力を活かし、強引に罠を突破する
SPD罠を解除しながら迷宮を踏破する
WIZ迷宮の隠し通路や仕掛けを暴く
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●青のほらあな
 ひんやりとした空気が満ちている。
 青白く発光する地底湖と、のっぺりと白い氷柱のような岩。そしてその岩の周りでゆらりと舞う青い蝶。
 水が岩にぶつかる音だけが静かに響いている。

 ふっと、あなたは耳元で何かの気配を感じる。
 それもものすごく、近くに。
 振り向いても、何もいない。
 
 何か得体の知れないモノがあなたを見ている――あなたの、一挙手一投足を。
ベンジャミン・ハオ
【紅幇】

尻尾が蛇になっている巨大亀「玄武」を召喚し騎乗、地底湖を渡る
娘が落っこちないようにいろいろ手を尽くすが
思春期真っ盛りでどうにも喧々してやがる
ああはいはい、パパはお前に弱いからな
言われても反論せず落ち着くまで話を聞いてやろう
怖いもの苦手だからな、ディリーは
…抱きしめているものを怖がらないのが不思議なんだけどなぁ

浮かび上がった姿に見惚れてしまう
――おまえ
銃弾に貫かれる最期の姿の再現
俺の商売敵がお前を殺したあの時の再現だ
何度も見る悪夢と同じ
馬鹿野郎しっかりしろ、俺は親父だ
自分をぶん殴って正気付く
ディリーをしっかり抱き寄せて
嗚呼いつの間にかこいつ、おまえにそっくりになってきてるんだな


コーデリア・ハオ
【紅幇】

「ほねりん」をぎゅっと抱きしめて「白縫」の炎であたしとパパにオーラ防御
これで鱗粉が触れても燃えて届かないと思う
まあ、パパは防御とか苦手だし
あたしが守ってあげないとね
あっもうやだ触らないで!平気だから!
パパはあたしを運んでくれればいいの!
あたし、こ、これでも結構強いんだからね?!
怖いものが見えるって聞いたから声が上擦っちゃう

ぼんやりと白い姿が浮かび上がる
ものすごい声を上げてついパパにしがみついちゃう
でも、よく見ればそれはあたしに似てる気がする
ねえ、パパ、もしかしてこの人
――ママ?
パパが泣いてる
これは――パパの恐怖なんだ
ぎゅっと抱きしめて
ねえ、パパ
あたしがいるよ


 水を掻き分ける音が、いやに大きく洞窟内に響く。
 ベンジャミン・ハオ(人間の戦場傭兵・f16752)とコーデリア・ハオ(氷姫・f17972)は、ベンジャミンの召喚した「玄武」に乗って、地底湖を渡っている。大きいボートのような亀は、のんびりとした動きで、それでも地上での動きよりは速くすいすいと水の上を滑っていく。
 コーデリアは白い火を喚び、自分と父の周りをふよふよと漂わせている。蝶の鱗粉が落ちて火に触れるたび、じゅっと音がする。その音が鳴るたびにびくっと肩を震わせるものだから、ベンジャミンは愛娘が落っこちてしまうのではないかとひやひやしている。

「おいディリー、もうちょっとこっちに寄れ」

 甲羅の端っこに座るコーデリアを、ベンジャミンは大きな手で抱えようと腕を伸ばす。小さい子を膝の上に乗せるような、無遠慮で、けれど大切なものを扱うような動作。その動きに、コーデリアは身を捩って抵抗する。

「あっもうやだ触らないで!平気だから! パパはあたしを運んでくれればいいの!パパは防御とか苦手だし!あたしが守ってあげるから!」

 吼える子犬のように、よく通るソプラノで喧々してしまうコーデリア。だってもう、15歳なのだ。膝に抱えられるような年齢ではない。

「ああはいはい、パパはお前に弱いからな」

 ベンジャミンは否定するでもなく、このままでは本当に落っこちてしまいそうなほど後ずさる娘を放っておくことにした。
 対するコーデリアは、「あたし、こ、これでも結構強いんだからね?!」と声を上擦らせながらまだぷりぷりしている。
 けれど、ベンジャミンは知っている。これは強がりだし、だからこそ言葉も態度も強く出てしまっているだけなのだ。

(「怖がりだからな、ディリーは」)

 裏街を守るために普段は鋭く光らせている碧眼に、柔らかな光を灯してベンジャミンは微笑む。陽の下ではうまくものが見えない、アルビノの娘。自分と、亡き妻の、最愛の娘。男手ひとつで育てるには様々な苦労があるけれど、コーデリアは立派に育っている。今も、父を守るために白い灯火を懸命に操っている。
 そして、その腕には何故か髑髏が。正真正銘の、骨である。何処から持ってきたのか、「ほねりん」と名付けて、コーデリアが大事にしているのだ。

「…抱きしめているものを怖がらないのが不思議なんだけどなぁ」

 ベンジャミンが「ほねりん」を見つめる目の方が、余程恐怖が現れているんじゃないだろうか。そんなことを考えながら、ベンジャミンは行く手に広がる地底湖の水を覗き込む。
 水はほんのりと青白く発光して、中までよく見える。水底は地上と同じようにごつごつとしていて、生き物はいないようだ。ぷかりと浮かぶ菊のような花が、流れてくる白骨のように見えて少しドキッとする。

「————パパ!」

 娘の囁くような叫び声に、ベンジャミンははっと顔を上げる。
コーデリアが白い指先で示しているその先にいたのは、ぼやぼやとした白い光。その光が形を変えて、明らかに女と分かる像を結ぶ。

「きゃああああああああ!」

 絹を裂くようなコーデリアの叫びが、洞窟内にこだましてわんわんと鳴り響く。コーデリアは思わず隣にいた父に飛びつくように抱きついて、それでもその白い女から目が離せずにいた。
 だって、なんだか、見たことがある気がしたのだ。
 あれ?幽霊を扱うからかしら?いや、違う、これは、この人は————

「————ねえ、パパ、もしかしてこの人」

 コーデリアは顔を上げて、すぐ近くにある父の顔を見る。その自分と同じ青い瞳からこぼれ、頬を伝い、父の服を掴む自分の手の甲にぽたりと落ちたのは——涙だった。

「————おまえ」

 ベンジャミンの震える唇から、かすれた声が落ちる。
 白い女は、その声に応えるように薄らと笑って————次の瞬間、何かに驚いたようにびくりとその身を反らした。ぺた、と胸に当てる手が触れたのは、穴。丁度銃弾ひとつ、その薄い体を貫いていった痕だった。
 これは、この光景は、あの時の再現だ。
 俺を狙った商売敵が放った銃弾が、愛しい妻を、貫いたときの。

「あ、あああ」

 ベンジャミンの口から、言葉にならない声が涙と一緒にこぼれてくる。
 神秘的なまでに透き通った青い瞳で、コーデリアはそんな父と白い女を交互に見る。

(「これは————パパの恐怖なんだ」)

 コーデリアは弾丸で貫かれた白い女をじっと見つめる。勝気そうな目のあたり。つんと尖った顎。他でもない、自分によく似た面差し。もうよく覚えてはいないけれど、きっとあの胸に抱かれたことがあったのだろう。
 でも。それでも、コーデリアはその懐かしいであろう人から目を逸らす。だって、今確かに自分の隣にいるのは、此処まで育ててくれたのは、パパだから。

「パパ」

 コーデリアは、涙を流しながら自分を通り過ぎて母の面影だけを見つめている父の首筋に、ぎゅっと抱きつく。
 ふたりで生きてきたじゃない。これまでも、そして、これからも。

「あたしがいるよ」

 柔らかく小さな、けれど大きい力。ベンジャミンははっとして、その腕の中にいる大切な娘の存在を思い出す。
 勝気で、負けず嫌いで、何よりも大切で愛おしい、娘。
 大切な妻と自分の、たからもの。
 ベンジャミンはコーデリアをしっかりと抱き返す。
 そして、目の前で朧に像を結ぶ亡き妻によく似た何かに、くしゃりと口の端を歪めて、笑って見せようとする。

「おまえにそっくりになっただろう」

 俺たちは、お前の分も頑張って生きているよ————その言葉は、声には出さずに心の中の妻に向けて言う。ほんもののあいつは、きっとこんなところにいないから。
 ことんと、何かが胸の中の在るべき場所に収まる。
 その音にびくりとしたように、白い何かは霧散して、消えた。
 しっかりと抱き合う父娘の上に降り注ぐ青い粉は、きらきらとして————どこか、涙のようだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ラファエラ・エヴァンジェリスタ
涼やかに行くよ、テネブレ
今年の夏は暑すぎる
愛馬に騎乗
氷属性攻撃で足元を凍らせながら悪路走破

蝶の毒に見るは、遠く炎のある夜闇
あの夜私は息を潜めて我が騎士を待った
暴徒から私が逃げる時間を稼いでくれた彼が
約束を違えたこと等ない彼が何故か待てども現れぬ
永遠にも思えた時の中で不安と恐怖に耐えかね
私は引き返してしまうのだ
…駄目なのに
嗚呼、ああ、この先は嫌
大理石の床に血の海
どうしてどうしてどうしてどうして…!

絶叫、激痛
愛馬が嘶いて後肢で立つ
私は折れた洋扇で己の腕を裂いていた

愛馬の首を撫でて宥めつ、彼を喚ぼうとして声が出ぬ
名を呼んでからの刹那の間さえ怖いのだ
…だってもしも今また、彼が現れなかったら、私は…


 岩壁を洗う水の音が、単調に同じ反復を繰り返す。
 青い鱗粉をたっぷり含んだ水は淡く発光し、目に涼やかなぶん、地下の空気をさらに冷たくするかのようだ。
 その青い水が、ぱきぱきと凍って道を作っていく。氷の魔法による密やかな凝固。次第に厚みを増していくそれは、白く浮かび上がる橋のようだった。

「行こう、テネブレ」

 ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)は滑らかな愛馬の黒毛を撫でて先へ促した。テネブラルムは恐れるでもなく背に乗せた主の命に従順に氷の端へと足を下ろす。
 静かだった。
 テネブラルムの蹄の音が聞こえなければ、孤独を強く感じてしまうほどに。

 暫く歩くと、洞窟の奥の方で何かがぼうと赤く揺らめいた。
 焦点を合わせてみれば、まず感じられたのは肌を炙るほどの熱。あれは、周囲にあるものを巻き込んで勢いを増す火の手だ。絢爛なる柱、凝った装飾の手摺、煌びやかなシャンデリア。そのすべてが、猛り狂ったように踊る炎に飲み込まれていく。庭師たちが美しく形作った薔薇のアーチは、もう見る影もないのだろう。
 遠くで民衆の叫ぶ声が聞こえる。
 この一齣は、紛うこと無きあの夜。
 婚儀を目前に控えたあの夜、今までその存在の影すら見せなかった革命が、産声を上げた日。城に暴徒が押し寄せ、あちこちに火をつけてまわり、声高に平等を叫んだあの日。

「————……これは」

 はっとして辺りを見回せば、闇に呑まれた草陰にあの日のラファエラがいた。周囲の草は夜の露にしっとりと湿っていて、ここにいればきっと安全だろうと分かる。
 けれど、不安と疲れと恐怖とで、あの日のラファエラのこころは破裂してしまいそうだった。この現実を受け入れられなかった。目を逸らして、眠りに落ちて、目覚めたらいつもの柔らかなベッドの上だと思いたかった。

 でも、それでも。
 待っていた。
 だって、彼は約束を違えたことなどないから。
 必ず来る。必ず。

 ————必ずその御身まで辿り着いて見せます

 うん、そうだ。そう言った。そう言って笑った彼は——利き腕に傷を負っていた。
 嗚呼そうだ、私を庇った時に負った傷。鮮血が滴り落ちて、見るからに深手とわかるほどの。
 彼の腕前はようく知っている。
 けれど、利き腕を怪我したままで、どれだけその実力が発揮できるものだろう?
 その鎌首をもたげた蛇のような不安に、今度はもう、耐えられなかった。
 脚に絡む白いネグリジェのレースの裾をはね上げながら、来た道を引き返す。

 近くへ。
 あなたの近くへ。
 今はそれだけが、考えられる唯一のこと。

 駆ける足が冷たい大理石の床を踏む。
 嗚呼、ああ、この先は嫌。

「駄目」

 小さな声が、ラファエラの唇からこぼれる。
 先へ行く過去の自分は、水音を立てて辺りを赤く染める血の海へ踏み入れる。
 嗚呼先へ行く己の真白いレースを染め上げる、その赤い血の持ち主は、あの金に輝く日向のような髪の毛は、私に約束をした、違うはずなど無かった、私と共に、逃げる、はずだった、

 鮮血が迸った。甲高い叫び声が、鋭い針先のように鼓膜をつく。
 すると遠くから、テネブラルムの嘶きが絶叫に重なった。
 傾斜する体の感覚、叫び声が自分の喉から発せられていることが朧げながら認識される。ひやりとした空気が、ここは氷上であることを思い出させる。
 後肢で立つテネブラルムの動揺を、ラファエラは首を撫でて宥めてやろうとして——己の手の中の折れた洋扇と、裂かれた腕から赤い雫が滴るのを見てとった。瞬時に激痛が走る。己の腕を、己で裂いたのだ。

「————……」

 彼の名を喚ぼうとして、掠れた音だけがラファエラの喉から漏れる。
 喚べない。呼べない。
 呼んだあとの、僅かな間でさえ。
 永遠に感じられてしまいそうだから。

 青が沈んだ湖の上で、ラファエラは独り立ち竦んでいた。
成功 🔵🔵🔴

エリザベート・ブラウ

たくさんの青い蝶
わたしの温室にいる蝶たちと同じようで、ちがう
それともこれも、囚われた魂なのかしら?
嗚呼 うつくしいわ

凍て蝶で地底湖を凍らせて道を作りながら進む
蝶の毒は装備する【鱗粉】の毒耐性で防げるかしら
わたしの薄い膚を覆うわたしの毒
ふふ 蝶の毒ならわたしも使うものだから

わたしの恐怖の具現は何かしら
嗚呼――紅茶とお砂糖の香りがする
ここはわたしの温室
窓が開け放たれてたくさんの蝶が空へ
駄目
駄目よ
わたしの大切なコレクション
その中でもいっとう朱く輝く大きな蝶
あの蝶は
あの蝶だけは逃がさない
腕を伸ばして
あと一歩のところで氷から踏み外してしまいそうになる
濡れた爪先にはっとして

――馬鹿ね
にいさまに怒られるわ


 青い宝石のような蝶が、すべらかな鍾乳石にまとわりついてその翅を休めている。
 何千、何万と、青い地底湖の淡い発光にその翅を煌めかせながら、蝶たちは自由気ままに空を遊んでいる。

「嗚呼。うつくしいわ」

 エリザベート・ブラウ(青の蝶・f20305)は舞う蝶へと、その白く華奢な腕を伸ばす。彼女にとって、蝶は愛おしいもの。アリスラビリンスにある自らの温室にも、たくさんの蝶を侍らせている。
 けれど――この蝶たちは、エリザベートの温室にいる蝶とは、違う。
 飛び方からして、本物の蝶のような生の躍動ではなく、まさに幽鬼のごとく朧げで、頼るところのない死んだもののような儚さだ。

「いい子ね」

 エリザベートの踵がかつんと音を鳴らしながら氷を踏む。彼女が喚び出す氷の蝶が、地底湖の水面を凍らせ彼女の為の道を作っていく。
 
 静謐。

 厳かなまでに静かな地の底で、エリザベートの鳴らす踵の音だけが響く。
 青い鱗粉が雪のように深々と降る中を、エリザベートは薄い黒のドレス一枚でゆったりと歩いていく。彼女の象牙のような白膚に、青い鱗粉がひとひら触れても未だ何も起こらない。
 エリザベートの肌を覆うのは、白い鱗粉。彼女の膚を覆う、彼女自身の毒。その毒がある限り、わずかな青い蝶の毒はエリザベートに効かないのだろう。

 再び、エリザベートの跫だけがこだまする。
 奥へ進めば進むほど、蝶の数は増え続け、落ちる鱗粉も篠突く雨のように降り注ぐ。視界を覆いはしないものの、腕を翳せば薄らと肌を青く染め上げるほどに。

 ふと、エリザベートの鼻腔をくすぐる香りが漂う。

「————紅茶とお砂糖の香りがする」

 只静かな死と水のにおいが満ちていただけの空間に、甘い香りが混ざる。
 天井から温かな太陽の光がこぼれる。白木に生い茂る緑、そして周囲に甘く咲く数多の薔薇。青い蝶はその姿を消して、代わりに黄色や黒の揚羽が優雅に舞っている。
 ここは、エリザベートの温室だ。彼女の、特別な居場所。

「あら…敵の罠に迷い込んでしまったかな?」

 エリザベートは頸を傾げながらも、見慣れた光景に足を止めて一息つく。
 ばたん。
 エリザベートの他に誰もいないはずの温室の扉が勢いよく開け放たれる。何かに吸い寄せられるように、一匹、また一匹と蝶たちが外へ飛んで行ってしまう。
 エリザベートははっとして扉を閉めようと足を動かすも、足は動かない。地面に磔にされたように、爪先を上げることができないのだ。
 蝶は次々と去っていく。
 その光景は美しく、けれどひとり取り残されていく焦燥感に、胸が焼かれるようだ。
 一際大きい朱の蝶が、エリザベートの横をふわりと過ぎていく。
 柔らかな翅がエリザベートの頬に温かな温室の風を送るが、その蝶が過ぎて行ってしまう傍から空気が急速に冷たくなっていく。

「駄目。駄目よ」

 あの蝶は。あの蝶だけは。
 あなただけは、逃がさない。

 常は落ち着いた色を浮かべるエリザベートの青い瞳が揺れて、その奥に潜む確固たる意志を露わにする。
 その華奢な腕を思いっきり伸ばし、朱い蝶の尾に指が触れる、その瞬間。爪先がひやりとした水に浸る。
 あっと小さな声を漏らして、エリザベートは寸でのところで腕を引いて重心を後ろに戻す。
 かつん、と。踵が氷を打つ音が響く。
 足元に目を遣れば、足先が地底湖の水に濡れていた。あと、ほんの少し。ほんの少し遅ければ、エリザベートは湖の底へ沈んでいただろう。
 小さな嘆息が、波紋のように青い空間を揺らす。胸の鼓動は早鐘のように、なかなか収まらない。

 あの蝶は、わたしを置いていったあの蝶は。
 ひとりでどこかへ行ってしまう、あの蝶は。

「————馬鹿ね」

 あの朱い蝶は幻に過ぎないのに。
 幻なんて追って水牢に閉じ込められて仕舞ったら————にいさまは、きっと怒るだろう。
 エリザベートは大切な、ほんとうの兄を心に思い浮かべて、深く息を吸ってから再び歩き出した。
成功 🔵🔵🔴

ヴェル・ラルフ

胸騒ぎがする
もしかして、もしかしてこの先にいるのは

青い地底湖の上を黒炎の蝙蝠になって飛んでいく
この姿ならば触れるものを焼きながら進んでいけるから
素早さを生かして鍾乳石を旋回したり急旋回したりして時折風を起こしながら

あるひとの、おぼろげな姿
銀すすきの長い髪をふわりと靡かせて
薄ら笑うそのひとは
――僕の、義姉さん
あの暗い世界で、小さな孤児院で、僕を守り慈しんでくれたひとの
今際の際の姿
唇から、首から
あかいあかい血を流して
それでもぞっとするほど美しい笑みで僕へと手を伸ばす
一瞬その手に触れたくて
黒炎を解いてしまいそうになるほど

嗚呼でも
喘ぐように、懸命に羽搏いて
ごめんなさい、ねえさん
あなたを殺したのは
僕だ


 しんしんと降り積もる青い鱗粉が、湖を青く染め上げる。淡くぼんやりと光る地底湖に照らされて、青い蝶たちはその身をさらに光らせながら、誘うように、戯れるように。一羽の黒炎の蝙蝠の周りを舞う。
 黒い炎の躰をめらめらと燃やしながら、蝙蝠はその炎に触れる蝶の鱗粉を飲み込むように燃やしていく。時折、俊敏な動きで方向転換して青い蝶を翻弄する。鍾乳石にぶつかると思いきや、螺旋を描くようにその先端から根本までをくるくると飛んでは蝶を散らす。素早い動きに生じた風が蝶を翻弄すれば、その後にぽっかり空いた暗闇の渦へと蝙蝠が飛び込んでいく。
 黒炎の蝙蝠の正体は、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)だ。彼はその身を変異させ、蝶の毒を燃しながら先へと進む。その姿は平素の人の姿とは異なり、けれど、ほんものの蝙蝠とも違って。黒い炎の只中にある赤い焔の微かな揺らめきが、青い洞窟内でひときわ映える。

(「胸騒ぎがする」)

 ヴェルは青い蝶の中を飛び舞いながら、心中穏やかではなかった。予知に現れたという、白い女の正体に、心当たりがあったからだ。

 もしかして。
 もしかして、それは。

 こころを啄む不安に逸るヴェルは、それでも冷静に目の前の青い蝶の塊を左へ避ける。洞窟はまだ先へと続いている。
 すると、右へ曲線を描く洞窟の壁に沿ってヴェルが羽搏く、その先に。青白く光る水面に、なにか朧げな光があった。

 ぽこり。

 青い水の雫を散らしながらその光る何かが徐々に上がってくる。するすると伸びて、花束があふれるようにふわりと広がる長い髪は、銀すすき色。白い二本の脚が、青白く光る水面に照らされて浮かびあがる。
 その足首に、金古美の鎖が音も無く揺れる。
 最初髪に隠れていた、奇妙なまでに白いその顔に、薄らと。
 女は笑みを浮かべた。
 その淡い姿の手前で、ヴェルは音のしない燃える翼を羽搏かせながら止まる。

(「————ねえさん?」)

 途端、白い女の後ろに小さいながらも堅牢な建物が浮かび上がる。ダークセイヴァーの小さな孤児院。ヴェルが、彼女と生活を共にした場所。
 二度と帰れぬと、思っていた場所。
 あまりの懐かしさに、ヴェルの黒い炎が頼りなげに揺れ、本来の赤色を取り戻しそうになる。変身が、解けてしまいそうになる。
 その動揺に笑みを深めて半月を描く女の唇から、つ、とひとすじ。赤い血がこぼれ落ちる。
 次いで、頸のぐるりから溢れ出るように血がごぽりと滴る。

 けれど、女は微笑っている。
 見ている者の心臓を締め上げるような、美しいのに、恐ろしい笑み。張り付いた笑みのまま、女はヴェルへと両腕を伸ばす。受け入れるように大きく広げられた、繊い腕。
 おかえり、と言っているかのような懐かしい腕。

「ねえさん」

 ざあ、と。
 黒炎の翼が漣のようにふるえ、その先端からヴェルの白い指先が現れる。
 ヴェルの躰は、元の姿へと変異し始める。伸ばされた女の腕に、自らの腕を伸ばすように。
 幼いあの頃のように。
 温かいその胸の中へ、ヴェルは身を投じたいと願い————けれど。
 ヒトになりかけたヴェルの、その夕暮れのような色合いの瞳が、揺れる。

 ————僕に、その資格はあるのだろうか。

 ひゅっと短く息を吸って、ヴェルはすぐさま黒炎の蝙蝠へと再び姿を転じた。そうしてもう何も見ないように、目を瞑ってがむしゃらに翼をはためかせて淡く白い女の横を振り切る。

(「ごめん、ごめんなさい」)

 胸の中でぐるりぐるりと渦巻く感情から逃れるように、ヴェルは懸命に羽をばたつかせる。
 喘いで喘いで。目を逸らして。
 自分の罪から、逃げるように。

 だって、あなたを殺したのは——

(「ごめんなさい、ねえさん」)

 僕なのだから。

 小さな黒炎の蝙蝠は、洞窟の更なる奥へとその姿を消してゆく
成功 🔵🔵🔴


第2章 ボス戦 『幻想術師『パラノロイド・トロイメナイト』』

POW ●記録■■番:対象は言語能力を失った。
【夢幻の眠りを齎す蝶の幻影 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD ●記録■■番:対象の肉体は既に原型を留めていない。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【数多の幻想が囚われた鳥籠 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ ●記録〓編集済〓番:〓編集済〓
対象のユーベルコードに対し【幻惑し迷いを齎す蝶の群れ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鶴飼・百六です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
●蝶のまぼろし
 青い蝶が奥から際限なく飛んでくる。
 洞窟の奥へと進んでいくと、地底湖の終わりが見えてきた。猟兵たちは地に降り立ち、蝶が飛んでくる方向へと歩を進める。

 そこには、異形のモノがいた。
 青い蝶は、かのモノが持つ鳥籠から無限に湧いてくる。

 これが「第五の貴族」――その手にある鳥籠には黒い蝶のしるしがついていた。そのしるしはぼわぼわと黒い蔦のようなものを伸ばして鳥籠に絡みついている。まるで生きているかのように、時折その黒い翅を羽搏かせている。
 「第五の貴族」は「紋章」と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを地上に放ち、吸血鬼を支配するという。蝶のかたちをしているしるしがついた籠から、人に恐怖を見せ、動きを制限する青い蝶が生み出されているのは、偶然ではないだろう。
 まず間違いなく、あの鳥籠が「紋章」だ。
 恐怖に打ち勝った猟兵たちは、その手に武器を取る。


【補足情報】
 「第五の貴族」は紋章を持っており、まともに戦っては勝ち目がありません。
 鳥籠は高さ20センチほどの小さいものです。
 「第五の貴族」は攻撃の要である鳥籠を護るように背に隠して戦います。

●プレイングボーナス
 「紋章」である黒い蝶にダメージを与える。

 
ラファエラ・エヴァンジェリスタ


ー…あ
ぼんやりしてしまっていた
これが先の幻を…?
…テネブレ、頼んだよ

喚ぼうとした名が未だ声にならない事実を振り払う様に
愛馬に騎乗し敵へと駆けながら
折れた「黒孔雀」を煽いでUCを使用
相殺されてもされなくても、UCに注意を向けさせる間に畳み掛ける様に愛馬に敵を踏みつけさせる
それはどちらも陽動として
本命は敵の背後や足元の影より鳥籠を狙う「茨の抱擁」
鳥籠も、黒い蝶のしるしも蹂躙せよ

オーラ防御で愛馬と我が身を守りつつ
一撃離脱の様にすぐさま敵から離れて距離をおく
…嗚呼
私にはこの程度で精一杯
己がろくに戦えぬことを忘れた訳でもないというのに
この期に及んで彼を呼べぬのは、蝶の群に心が惑うせいだと、思いたい


 氷の道が途絶える。
 土を踏む蹄の音が止んでも、ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)はぼうとしたまま言葉も発さない。
 テネブラルムの鼻を鳴らす音に、ラファエラはハッとする。

「――あ」

 テネブラルムは行儀よく、されど主人に語りかけるように、その濡れた黒い瞳でじっとラファエラを見つめていた。
 その首を撫でてやりながらラファエラが辺りを見回せば、周囲を舞うのは先程よりもより一層色濃く空間を埋め尽くす青い蝶の群れ。まるで海の中の小さな魚のように回遊するそれらの根源を辿ってみれば――“異形のモノ”と呼ぶにふさわしい青い何かがいた。

「これが先の幻を…?」

 ぐねぐねと、うねうねと。異形のモノは何本も伸びた足のような部位を動かして近づいてくる。足とさして変わらぬ、けれど上半身にあるから腕であろうと思われる部位の先には、今まさに青い蝶を無限に生み出している鳥籠があった。
 幻影を見せる蝶。その蝶を生み出す鳥籠。
 ならば、あの鳥籠を本体から切り離し、壊してしまえばいい。
 それを、できるものは。

「…――」

 ラファエラは唇をひらく。
 息を吸う、音。
 呼びなれた名を紡ごうとする喉が、舌が、まるで剝製になったかのように動かない。
 その名も、瞳も、腕も肩もしなるように振り下ろされる剣の動きですらまなうらに焼き付いているのに。

 その名を、呼ぶのが怖い。

 俯くラファエラの耳に、ぐるぐると低い音が聞こえる。喉を鳴らすような、優しい音。愛馬は、主人の逡巡の間もただ静かに寄り添っていた。

「…――テネブレ」

 名を呼べばテネブラルムの耳がピンと立つ。その瞳は、主人から命が下りるのを待っている。

「……頼んだよ」

 カッと蹄を鳴らしてテネブラルムが駆ける。鬣が風になびき、ラファエラのドレスの裾がばたばたとはためく。

 ――やるしかないのだ。テネブレは、私を信じて待っているのだから。

 折れて欠けた洋扇をひらけば、未だその薔薇の香りは健在で。その香りに喚ばれるように現れた黒き茨が、俊敏な鞭のようにしなって蝶たちを撥ねてゆく。
 蝶たちの苦戦を見てとった異形のモノが鳥籠から更なる蝶をどうと生み出す。その大砲の弾のごとき蝶の塊は、けれどしなる黒い棘鞭に微塵に散って。
 現れたのは目前にまで迫ったテネブラルムが高く上げる前肢。高い嘶きと共に振り下ろされるその脚に、異形のモノの足が水音を立てて微塵に押しひしゃがれる。鳥籠を庇うように伸ばされた青い腕がそれに届く前に、天から微かな声が落ちる。

「随分と大事そうだな」

 異形のモノの、その腕の影からずるりと這い出る黒き茨が鳥籠を攫う。その鳥籠の黒い蝶に、茨が触れた途端。
 爆発的なまでの勢いで、鳥籠から青い蝶があふれだす。

「っ…!」

 瞬時に茨が盾となって主人の視界を覆う。淡くラファエラとテネブラルムの身を包む護りもあるが、それでもなお弾き返されるほどの力。
 テネブラルムの肢が、耐えきれずに押し戻される。忠実な友の背から、恐怖の気配が伝わる。

「テネブレ…!」

 ばちんと何かが弾け飛ぶ音。巻き起こる風に乗るように、ラファエラはすぐさまテネブラルムの鼻先を変えて後方へと下がる。
 舞い上がる砂埃のの先で、異形のモノがずるりと取り込むように鳥籠を抱きしめていた。

「……嗚呼」

 青い蝶が再び空間を埋め尽くしてゆく。
 天井を覆うほどの蝶たちは、その優雅な羽搏きでラファエラの白い肩に青い雪のような鱗粉を落としてゆく。
 苦い思いに、埋められてゆく。

 彼ならば、見事にあの腕を叩き切っていたであろう。
 鮮やかに、速やかに。
 きっと、そうだ。
 きっと。
 だから。

「……――」

 けれど。
 ひらく唇は、音を紡げない。
 しんしんと、音も無く振り積もる鱗粉だけがラファエラを包んでいた。
成功 🔵🔵🔴

コーデリア・ハオ
【紅幇】

パパの後方支援に徹するわ
こ、怖いわけじゃないからね!

まあるい青玉の氷珈を翳してUC
呪詛を付与するのはできれば鳥籠、難しければ敵本体に
周囲の温度を下げて結氷させれば、蝶の動きも少しは鈍るかしら
突進するパパを援護するために死霊たちを歌で操る
ハイトーンのソプラノでアリアを
これは復讐の歌
怪物どもに虐げられた人間たちの叫び

あたしはこの世界しか知らないけれど
ずっとパパに守られて生きてきたけれど
苦しまなくてもいい人たちが苦しんできたのを知ってる
この世界を地下から牛耳っていたあんたらだけは赦せないわ


ベンジャミン・ハオ
【紅幇】

ディリーは後ろに下がらせて戦う
娘を怪我させたら一生後悔しちまうからな

アサルトライフルを構えて青い蝶を制圧射撃しながら突進
死霊たちが敵に喰らいついている隙に鳥籠を掴む腕みてぇなところを狙って飛刀を投げる
距離を詰めたら神鵬を構えてUC
さっきの洞窟で喰らったあの幻影
ちっと堪えたぜ
そのお返しにしちゃあ優しい方だろ
思い切り叩き割るように大剣を振るう

人間同士でも争いの絶えない馬鹿みたいな俺たちだけどよ
俺たちは間違いながらも歯を食いしばって生きていく
そのためには、過去から来たおまえらには消えてもらわなきゃらなねえな


 ぶわぶわと。ぼこぼこと。
 蝶の群れが、鳥籠からあぶくのように湧き出てくる。
異形のモノはそのひとつきりしかない目玉を瞑ったまま、幾本にも分かれる青い脚をひっきりなしにぺたぺたと動かして、猟兵たちと距離を取っている。
 ベンジャミン・ハオ(人間の戦場傭兵・f16752)は、娘のコーデリア・ハオ(氷姫・f17972)の前に片腕を上げて押しとどめ、肩越しに声をかける。

「ディリー、後ろに下がっとけ」
「わかった、パパの後方支援に徹するわ。……こ、怖いわけじゃないからね!」

 コーデリアは強気を装いながらも、大人しく後ろへと下がる。ベンジャミンは娘の強がりながらも素直に従う様子に、安心したように短く笑う。
 負けん気が強くても、戦う技術を身に着けていても、自分の大切な子どもなのだ。もしコーデリアが怪我をしたら、ベンジャミンは戦いどころではなくなってしまうだろう。
 ベンジャミンはその巨躯でコーデリアを庇うようにして、「L99改」と名付けたアサルトライフルを構える。
 対する異形のモノは、何を語るでもなく、ベンジャミンに向けて青いどろどろとした腕のようなものを伸ばした。途端、鳥籠に絡みつく黒い蝶の紋章がうねうねと急速な動きを示す。その動きは恐れているかのように絶えず小刻みにぶるぶると震え、それでいて怒り狂っているかのようにめきめきとその黒い腕を天に向けて振り回している。その動きに従うかのように、周囲を飛び回る蝶たちが巨大な塊となってふたりの方へと鋭く飛んでくる。
 だが、ベンジャミンは怯まずその群れに突っ込むように駆け出した。

「邪魔だ邪魔だ!」

 洞窟内に、機銃の音が鳴り響く。絶え間なく放たれる弾丸は雨のように蝶たちに降り注ぎ、次々と蝶を霧散させていく。
 短く連続する音が洞窟内の壁に反響してさらに重なり、激しい響きとなって地をも震わせる勢いだ。
 その轟音に怯むことなく、後方で冷静に戦況を観察していたコーデリアがその手にある青玉を掲げる。

「願いは必ず柵となり、祈りは必ず呪いとなる…!」

 氷珈を持つコーデリアの背後の地面から、ずわりと死霊がその姿を現す。白く透けた死霊たちは、言葉にならない呪言を繰りながら蝶へと躍りかかる。死霊が通る傍から周囲の温度が一段と下がり、通り過ぎた後には足元からぞくりとするほどの冷気がせりあがる。その冷気によって、ベンジャミンの行く手を阻む蝶たちの青い翅がぴきぴきと音を立てて白く濁っていく。

「喰らえ!」

 ベンジャミンは動きの鈍くなった蝶たちの塊をすり抜け、守りの無くなった異形のモノへと飛刀を投げつける。

 ばつん。

 異形のモノの、鳥籠を掴むその腕が本体から切り離される。小さな鳥籠が空へと放り出され、その勢いのまま回転するように、鳥籠が空を舞い——そこに、澄んだ高らかな声が鳴り響いた。

 ――いま 復讐の炎が燃え上がる
   死と絶望が 燃え上がる

 コーデリアの透き通るようなソプラノが、烈しいけれどこころを震わせるような哀しい調べを紡ぐ。蝶を砕いた死霊たちが、その声に呼応する。ゆらりと空中で動きを変えて、異形のモノへとその垂れるこうべを向ける。その朽ちかけた頬から、骨を露わにした顎から、雫がこぼれる。その涙する顔には、哀しみと、苦悶の表情が浮かんでいる。
 彼らは人間“だった”のだ。この常闇の世界でオブリビオンに虐げられた人間たちの、報われきらない魂なのだ。
 コーデリアは、父に守られた、安全なこの常闇の世界しか知らない。
けれど、この世界では大勢の無辜が殺戮されてきたのを、知っている。幼いころからの遊び相手だった霊たちが、哀しい想いを抱いていたのを知っている。
彼らの無念を知っている。

「あんたらだけは赦さないわ!」

 コーデリアの叫びに応えるように、死霊たちはその仄白いからだをしならせる。傷を負った獣の如く、異形のモノへと捨て身で突き進んでいく。
 鳥籠を掴もうとした異形のモノの伸びた腕が、死霊に喰われていく。異形のモノがその青い体をくねらせ、死霊たちを躱す、その隙に。
 目の前には、大柄の男が迫っていた。

「――よお」

 その頭上に振り翳されているのは巨大な剣。淡く青白い光を遮って陰になったベンジャミンの顔に、烈しい色を帯びた氷のような瞳だけが鈍く光った。

「あの幻影、ちっと堪えたぜ」

 ベンジャミンの心を掠める、青い洞窟の中で魅せられた亡き妻の最期。だがあれも、まやかしに過ぎない。もう、惑わされることは無い。
 今は、愛しい娘の声が、自分を包んでいるのだから。

 異形のモノの頭上に、大剣が振り下ろされる。
 一瞬、音が消えて無くなったかのようだった。
 振り下ろされた巨体が異形のモノの脚に触れ、触れたと思った瞬間にその部位からまるで煙になってしまったかのように細かい粒子へと変じ、その煙が激しい風となり地を這いながら周囲を壊滅していく。ぴかりと光を放つかのような散逸。物体を芥子粒ほどにまで破壊する、凄まじい力。
 遅れて轟音が洞窟内にこだまし、爆風に煽られた天井からも砂塵がバラバラと落ちる。
 直撃を免れ、けれど爆散した部位が痛むかのようにぐねぐねと激しく動く異形のモノに、ベンジャミンは大剣を突きつける。

「人間同士でも争いの絶えない馬鹿みたいな俺たちだけどよ。俺たちは、間違いながらも歯を食いしばって生きていくんだよ!」

 この先の、未来のために。
 愛しいもののために。
 男が向ける切っ先には、その覚悟の全てが乗っていた。
 対する異形のモノは、その覇気に気圧されたようにずるずると後退していく。
 その姿を追おうとするベンジャミンの大きな背中に、こつんと小さな衝撃。目だけで確かめれば、駆けてきたコーデリアが父の服の裾をぎゅっと引っ掴んでいる。
 その仕草に、ベンジャミンはふっと相好を崩す。
 守るべきものがあるというのは、他でもない、人間の特権だな、と。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヴェル・ラルフ
【約束】リズと

はやく、はやくと
逸る心も、隣に義妹がいるなら
その声が、この不安を吹き飛ばしてくれるから
僕は、兄だから

リズが作り出す氷の迷路の中で
青い蝶の攻撃はその動きを見切り残紅で叩き落し、受け流す
氷に反射する自分の姿や残像を利用して陽動
ナイフの投擲と、自らの傷口から溢れる血を火に変えて焼きながらダッシュ
一気に距離を詰めて螺旋熱情
蝶が際限なく生み出される鳥籠が最も早く動く標的となるだろうか

僕を囚う激情はなんだろう
後悔、焦り、悲しみ、憧憬、恋慕――
なにより自分を厭うこの感情
この身を流れる悍ましい血
全て力に変えてこの身を焦がす

リズの氷は冷たくて
内から灼かれる僕には心地よく感じられることだろう


エリザベート・ブラウ
【約束】にいさまと

にいさまにいつものように微笑んで
リズがいるわ
リズは変わらない
これまでも、この先も

逃げられるのが厄介ならば捕らえてしまえばいいのだわ
裹む蝶で氷の迷路を作り出す
鏡のように透き通る氷は目眩ましにもなるでしょう
時折氷を煌めかせて敵へだまし討ち
冷たい氷属性攻撃で動きを鈍らせて注意を逸らすわ

そして何より
変貌するにいさまの歯止めにもなろうというもの

離れたところでにいさまの燃え盛るお姿を見つめる
嗚呼
魂を燃やしながら闘う姿は閃光のよう
刹那の輝き、命の篝火

勿論
暴れまわるにいさまを正気に戻すのもリズの役目
頃合いを見計らって必要最低限の氷の迷路の拘束でにいさまを止める


 ぶるぶる震える千切れた足を引き摺って、異形のモノは洞窟の壁に身を寄せ、鳥籠をその背に隠す。己の身よりも、夢を魅せる鳥籠を護るようにして。

(「はやく」)

 ――はやく、ねえさんのところへ行かなくては。

 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は内側からぴしりぴしりと叩かれるように逸る心を鎮めるために、深緋の如意棒をくるんと一回転させ、構える。
 その白い肌に、ぱちぱちと火花が散るようで。
 隣に立つエリザベート・ブラウ(青の蝶・f20305)は、身の丈よりも大きな鉄槌を構えて、そっと声をかけた。

「にいさま、リズがいるわ」

 幼いころから変わらない、サファイアのような青い瞳でじっと義兄を見つめて。
エリザベートは、ふわりと笑う。
 これまでだってずっと、エリザベートは義兄を見つめてきた。ヴェルが姿を消した後も、決して諦めずにその姿を追った。

 そして、これからも。
 エリザベートは、変わらずヴェルの隣にいる。

 その揺るがぬまなざしに、柔らかな声音に、ヴェルの波立つこころは少しずつ凪いでくる。

「――うん、そうだね」

 エリザベートに柔らかに微笑み返したヴェルは、再び異形のモノへと相対する。その横顔は、もう先程とは違う。大切な妹を守る、兄の顔だ。
 エリザベートはその横顔に得も言われぬようなあでやかさで微笑んで、歌うように続けた。

「逃げられるのが厄介ならば、捕らえてしまえばいいのだわ」

 エリザベートのどこか楽しげな声に合わせて、空気中の水がぱきぱきと音を立てて氷の迷路を形作っていく。美しく透ける氷は、けれど堅牢で。一寸やそっとでは破壊されぬほどの硬度だ。
 異形のモノの動きが緩慢なうちに、エリザベートはそれを迷路の中へと取り込んでいく。

「ありがとう、リズ」

 ヴェルは背中を向けたまま妹に礼を言って、迷路の中へと飛び込んでいく。
 洞窟内が限られた空間であるためか、迷路の中はそう複雑な構造にはされていなかった。透ける氷は鏡面のように中に迷い込む者の姿を映し、翻弄していく。奥から飛んでくる青い蝶も、その数を増したかのように見えるが――ヴェルは氷に映る自らの姿も利用して蝶を分散させ、迫る蝶は残紅を振るうことで払い、叩き、受け流してゆく。そしてその勢いのまま、奥へとひた走る。

 幾度目かの蝶の塊を突き破ったところに、“それ”はいた。

 それは鳥籠をその背に隠し、ぞわぞわとふるえる腕を伸ばして蝶の群れを操っている。辿り着いたヴェルを追い払うようにぶるんと大きく腕を振り回せば、蝶の一群が二手に分かれてヴェルを飲み込まんと挟み撃ちを仕掛けてくる。
 けれどヴェルは足を止めなかった。右手から迫る蝶の塊にナイフを投げ分散させ、その間に片歯牙で親指の根元を噛み切る。傷口からあふれだしたのは、鮮紅の炎。ヴェルの体内を駆け巡る地獄の炎が顕現する。その火の手で以て左の蝶の一塊を焼き尽くす。
 そうしてそのまま、向かうは異形のモノ。

「哭く猩々緋、旋れ総身…!」

 唱うやいなや、左手から溢れる炎は一気にその勢いを増して渦巻くようにヴェルの身を包む。炎が凄まじい唸りを立てて、氷の迷路の中で反響する。
 まるで眠る獣の目覚めた咆哮のような、音。

 その只中にいるヴェルの瞳は、理性を失っていた。
 彼を突き動かすのは、その内側で這いずり焼き尽くさんとするような、激情。
 後悔、焦り、悲しみ、憧憬、恋慕――
 そして、強烈なまでの自己否定。

 ヴェルは唏く。
 捨てられた自分は、必要とされなかったのだ、と。
 愛をくれる人たちがいても、決して手に入らなかった生みの親からの愛。
 はじめから、持っていなかった。
 その“当たり前”が、静かに降り積もってゆく。

 ヴェルは泣く。
 己の身体を流れる血の半分は、この世界を牛耳る吸血鬼のものである、と。
 その鬼に苦しめられた人たちを、生まれてからずっと見てきた。
 吸血鬼さえ、いなければ。
 その想いが、巡り廻って己の血をも否定してゆく。

 ヴェルは哭く。
 最も大切な人をも傷つけたこの醜き血は、今やこうして地獄の炎と化している、と。
 人間にも吸血鬼にも成れずに、ひとからかけ離れてゆく己の命。
 僕は、なんなのか。
 なぜ、生まれてきたのか。

 抱えきれない哀しみと、だからこそ捨てきれない憧れ。
 そのすべてを、ヴェルは消し去らんとばかりに猛り狂う。
 異形のモノは、鳥籠ごと、その業火に蹂躙されてゆく。

 その光景を、兄の燃え盛る姿を、エリザベートは透き通る氷越しにじいと見つめていた。

「…――嗚呼。命の篝火……」

 怒涛の如く乱舞する炎の津波に、エリザベートは見惚れてしまう。
時間の感覚を失うほどの紅蓮の焔。刹那的なのに、それは永劫つづきそうな、命の叫び。
 恐怖さえ呼び起こしそうなその光景に、それでもエリザベートはすっくと背筋を伸ばして立ったまま、最後まで目を逸らさない。

 どんな姿になろうとも、誰かに詰られようとも。

 ――にいさまのためなら、リズはなんでもするわ

 エリザベートの瞳は揺るがない。
 この先に、ふたりで乗り越えた先に、さいわいがあると信じているから。

 異形のモノを鳥籠ごと焼き尽くした後も、ヴェルは止まらなかった。
 暴れまわるヴェルの炎の熱に、耐久力を誇る氷の壁も音を上げている。すでに、その半分も形を成していないのだ。エリザベートはすぐさま詠唱し、氷を紡いでゆく。生成する傍から融かされていく氷が、やっとのことでヴェルの傷口からあふれる炎を捉えた。
 ひんやりと冷たい氷の手枷が、未だ残る熱に溶けきる前に、ヴェルは正気を取り戻す。

「――…リズ。ごめん、ありがとう」
「いいのよ、にいさま」

 完全に溶けた氷の迷路が、しゅうしゅうと音を立てて蒸発してゆく。
 残った洞窟の地面は、黒く焼き焦げて。

 洞窟内には、未だ燻る煙が残っていた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴


第3章 ボス戦 『還らぬ天鵝』

POW ●「神々に…逆らうなど…愚か者…」
無敵の【異端の神々】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD ●「…此の手で…殲滅…」
【聖なる白い鳥の星霊】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ ●「もう…帰れない…」
【霊力】を籠めた【魔鍵】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【大切な記憶】のみを攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はヴェル・ラルフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花のあるじ
 使役者を喪った蝶たちが、ぽとり、ぽとりと水の中へ落ちていく。
 その淡い青は何処までも淡く、湖の中へと融けていく。
 青のほらあなはその青をよりいっそう深くするように、ただ静かに蝶をその中へ融かしていくのだ。

 その異なる存在を受け入れるように、その異形を赦すように。

 しんと静まり返った地の奥底へと、白い光がやってくる。
 操られたように緩慢な動きで猟兵たちの元へとやってくる。
 じゃらりと重い鎖の音が鳴る。
 死して尚、異端の神々に隷属したままの狂えるオブリビオン。

「————……」

 声を喪った天鵝は、その朧な表情に何かを探すような色を薄く刷いて——あなたを見つめる。
 ひらいた唇は虚しく、その赤い瞳から、同じように赤い涙がつうと流れ頬を伝う。

 声は届かない。命は還らない。
 せめて、その柵から解き放ってやるほかないのだ。


 
ベンジャミン・ハオ
【紅幇】

生み出されるのが異端の神ってのは穏やかじゃねえな
出てくる異端の神にUCで対応しながら説得
余裕はねえだろうから、少しでも弱体化できれば御の字だな
どんな敵が出てくるかはわからねえが、基本は飛刀を投擲して隙を窺いつつ、神鵬を盾代わりに使ったり怪力にかまけてぶん回して攻撃

なあ、異端の神ってのはあんたを操ってる奴らなんだろ
あんたは本当にこんなことがしたいのか?
お嬢さんよ
あんたにゃ恨みは無いが、俺たちはもう家へ帰らねえといけねえからよ
――あんたも、帰りたいんだろ
もう帰れないってことは、そういうことじゃねえか
なら諦めんなよ
辛いことも哀しいことも全部ひっくるめて、最後の最後に笑えりゃいいじゃねえかよ


コーデリア・ハオ
【紅幇】

パパってホント脳筋
仕方ないから、パパの援護をしながら弱体化を狙うわ
後方で拡声器を使って歌う
異端の神に効くかは分かんないけど…骸の海を放出するから、飲み込めるかも

この歌は、生まれる前に死にかけた、あたしの祝生歌
すべては表裏一体
すべてはやがて消えゆく定めなら
今この手にあるものだけは絶対離さないで生きていく

あたしも帰りたい
あったかい家であったかいご飯食べてあったかいベッドで寝たい
あんたも、帰りたいなら素直にそう言いなさいよ
我慢したって、後悔したって、過去には戻れない、戻るべきじゃないの
だってそれは、自分を否定することだから
自分を否定したら、自分を大切にしてくれる人のことも否定してしまうから


●いかまほしきは
 避けられぬ道を往かねばならないとしたら。

 生きていくからには、死を待たねばならない。
 誰かと共に歩むのならば、別れを思わねばならない。

 避けられぬ道を、それでも往くというのなら。

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 幾度も幾度も、繰り返し生まれては死んでゆく青い蝶たち。
 洞窟の天井を青く染め上げたその蝶たちが、次々に湖面に向かって力なく落ちて。淡く光に満ちたその翅が、うっすらと翳っては、湖の上へ重なってゆく。それぞれの最後の羽搏きが、未だ残る冷たい氷の薄重ねを砕き、じゅわりと沁みた水の中へと融ける。青の残骸はいちまい、またいちまいと堆積し、そのたましいはふかく、またふかく湖中へと消えてその中で折り重なる。
 その上で、天鵝はふわりと音もなく浮いていた。墨のような闇に染まっても尚淡く光るその表情には、僅かな色さえ無く。ただ蝶たちが落ちるのを何の感慨も無く見つめて、いっそ幼い無垢な少女を思わせる。

「お嬢さんよ。あんたにゃ恨みは無いが、俺たちはもう家へ帰らねえといけねえからよ」

 ベンジャミン・ハオ(人間の戦場傭兵・f16752)は大剣を肩に担いで、天鵝へと語り掛ける。娘に諭すように、少し乱暴だけれど、その内側に温かなものを包んで。
 目の前のオブリビオン――と称するには可憐すぎる白き姿は、けれどその言葉には首を傾ぐだけだった。理解できぬわけではない。だが、その声は本当の意味で届くことは無いのだろう。天鵝は、ゆるゆると何かを探すように首を巡らしては、金属の鎖が擦り合う音を響かせるだけだ。その姿に痺れを切らしたように、コーデリア・ハオ(氷姫・f17972)は「いーっ」と大きく口を横に開いて声高に叫ぶ。

「あたしも帰りたい!あったかい家であったかいご飯食べてあったかいベッドで寝たい!」

 娘の素直すぎる要求に、ベンジャミンはやれやれというふうに力なく笑う。そして同時に思うのだ。
 この素直さを分けてやりてえよ――こんなふうに、素直に笑っていたことが、きっと、おまえにもあるんだろう?

「――なあ、異端の神ってのはあんたを操ってる奴らなんだろ。あんたは本当にこんなことがしたいのか?」

 “異端の神”。
 その言葉に、びくりと目を見張る天鵝は、その小さな唇を薄く開いた。

「――神々に…逆らうなど…愚か者…」

 途端、洞窟内の黒闇から大烏のような影がぬおんと伸びあがる。その影は実体を伴って質量を増し、力強い羽搏きで湖面を揺する。

「こいつは穏やかじゃねえな…!」

 ベンジャミンは飛び散る水飛沫を物ともせず、飛刀を大烏へと投げつける。その飛刀は然し、大烏の濃い闇の中へと音もなく吸い込まれて。唖然とするベンジャミンに、コーデリアは円扇を取り出だして叫ぶ。

「パパってホント脳筋なんだから!仕方ないから、援護してあげる!」

 父に向けるのは小生意気な戯言だけれど、コーデリアの目は真剣で。一筋縄ではいかないであろう大烏の圧を、その肌で感じている。
 コーデリアが細く吐く息が、静かな旋律となって洞窟内にこだまする。それは、生まれたことを言祝ぐ歌であり、同時に、生まれた時から死に近しくあったコーデリアが、その時すでに感得した理の歌。
 朝露に濡れた花びらが一枚ずつひらいていくように、静かな始まりを告げるソプラノ。その花が光を浴びて次々と開いていくかのような音の重なり。

 この世界は残酷だ。光があれば影が生まれる。
 生まれたならば、必ず死が訪れる。
 すべては表裏一体で、いつかは必ず終わりが来るというのなら。


 ――あたしは、今この手にあるものだけは絶対離さないで生きていく


 強い意志が、歌に生の躍動を与える。そしてクレッシェンドで一気に花が咲き誇るように、コーデリアの声を受けた円扇から、宙の色した骸の海が大水となって大烏に押し寄せていく。
 けれど天鵝も黙ってはいない。大烏を庇うように前へ出て、その波を生み出すコーデリアに星の廻る魔鍵をぴたりと差し向けて。
 ちいさく、口をひらく。

「――わたしは、もう、帰れない」

 その瞳は昏く、紅い。
 はっとしたコーデリアのまなうらに、ちかりと光が明滅する。
 温かな燈。
 もうよく覚えていないけれど、確かにあったあの時。温かな腕に抱かれた感触。覗き込む優しい女性の面影。柔らかな微笑み。

「――ママ」

 その言葉をこぼしたコーデリアのこころから、蝋燭の火が吹かれて消えてゆくように、すうとその面影が薄れてゆく。
 ママ? ママって、誰だっけ――

 ぬうっと。コーデリアの瞳に、影が差す。その影は、娘を護るように立ちはだかるベンジャミンだ。父は、神鵬をぶるんと回転させながら天鵝と大烏へ向かっていく。

「そいつはやれねえ。大切な還る場所だからな。……――本当はあんたも、帰りたいんだろ」

 氷のように透き通る青い瞳が、天鵝を射貫くように真っ直ぐ見つめる。
 愛しいものを失った男。それでも、愛しいものを護ろうとする男。
 その覚悟が、男の瞳には、ある。

 墨に染まる天鵝はぐらりと傾ぐ。その動揺を受けて、大烏の影もぐしゃりと揺れる。揺れた大烏へ、ベンジャミンが神鵬を叩きつける。先ほどまでだったら屹度その刃を通さなかった。けれど、今なら。力の揺らいだ、今なら。大烏の巨体がゆっくりと、だが確実に割れてゆく。
 その隙を見逃さず、コーデリアは声を重ねる。

「あんたも、帰りたいなら素直にそう言いなさいよ!我慢したって、後悔したって、過去には戻れない、戻るべきじゃないの。だってそれは、自分を否定することだから――自分を否定したら、自分を大切にしてくれる人のことも、否定してしまうから」

 氷のような透明度で、結晶のような感光度で。ふたりの言葉が、真っ直ぐに天鵝へと降り注ぐ。
 ぱん、と弾けるような音がして。耐えかねたように、大烏が空中で霧散する。天鵝は、その虚ろな目に微かに波立たせて、ぎゅうとその身を抱く。まるで幼子のようなその姿に、ベンジャミンは一押しするように小さく言い聞かせる。

「諦めんなよ。辛いことも哀しいことも全部ひっくるめて、最後の最後に笑えりゃいいじゃねえかよ」

 ベンジャミンの言葉が、慈雨のように天鵝へと降り注ぐ。その言葉が、天鵝のこころに何かを芽吹かせていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ラファエラ・エヴァンジェリスタ


…何を伝えたい?
恨み言であれ遺言であれ聞いてやろうとも
疾く述べよ
長きを待つほどには今の私の機嫌は麗しゅうないゆえにな

愛馬に騎乗して対峙
言葉なき様を見届けて、であれば私が言葉を紡ごう
言葉にせねば伝わらぬと心を固めて
…たとえ震える声とて応えてくれよう
「我が騎士よ」
駆け行く白馬とその身を眩しく見守りながら
オーラ防御を授け、全力魔法で強化する

僅かに物思う
この敵は生前にどの様な存在であっただろうかと、柄になく
「黒薔薇忌」を振り鳴らし、怨霊達を嗾けつ
けれど魔鍵に傷つけられた記憶はー…脳裏に愛しい笑顔を見た気がするのにもう思い出せぬから
苛立ちと焦燥の儘に私は叫ぶのだ
「蹂躙せよ」
もう何も失いたくはないがゆえ


●そこと知るべく
 言葉にしてもいいのだろうか。

 人は時として、己の想いを言葉にしてもよいのか思い悩み、口を閉ざす。
 独り善がりになりはしないかと恐れ、こころに咲いた花を謙譲の氷で閉ざしてしまう。
 まことのこころが届くのだろうかと、またたく星を憂慮の闇で塗りこめてしまう。

 ましてや 己のこころにふかくふかく棲むひとへの想いとあらば。

------

 打ち鳴らされる鐘の音を聴いているかのように、天鵝の細い頤が上を向く。そのかんばせに閃くのは天啓だろうか。それとも記憶の扉を敲く音だろうか。

「…何を伝えたい?恨み言でも、遺言でも。あるのならば、疾く述べよ」

 愛馬テネブラルムに騎乗したラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)が、ちりりと火の花を散らしそうな声音で天鵝に尋ねる。
 その声にも動じず、天鵝はただ空を見つめる。ゆるりゆるりと下がる目線がやっとのことでラファエラを捉えるも、僅かにひらかれた唇からは掠れた音のみ。
 何かしら思うところはあるのだろう。天鵝の赤い瞳からは、ただつうと涙が流れては落ちる。
 滴る雫は地に落ちて、赤を散らして。その鮮明な赤を散らす天鵝の眉が、僅かに。ほんの僅かに、歪む。

 ――言ってはならぬのだ。言の葉を紡ぐことは赦されておらぬのだ。

 天鵝の様子は、そう思うに充分であった。
 ならば、私が言葉を紡ごう。斯様な心塞ぐ場所に長く留まるよりも、今は。
 今は、私の知る安寧の場所へと帰りたいのだから。

 ラファエラは声を喪った天鵝をひたと見据えて、唇をひらく。
 けれど、その唇は小さくふるえて、未だ音を紡がない。

 呼ばうなら、紡ぐなら。
 唯一つの名しかないのに。

 呼びたい。呼びたいのに、呼んでいいのかもわからない。
 呼んだら、来てくれるのか。呼んでも。
 傷つけないか。


 ――嗚呼 貴公はこんな気持ちなの?


 そこに相対するのは、骸の海より黄泉がえりし死者為れど――声を上げられぬのは、随分と辛そうで。相反するこころを行き来して、そのうちに迷子になってしまったのだろうか、と。柄にもなく思いを馳せたのは、在りし日の天鵝の姿。
 呼びたい名前を呼んだであろう、その姿。

 でも、ならば。
 呼ばうことのできなかった貴公が、そう在るならば。
 私はたとえ震える声でも、いま、その名を呼ぼう。

「――我が騎士よ」

 こころの中で響く洋鐘のごとき高らかな音は、口から出るころには震える鈴のように小さかったけれど。
 その鈴は、その声は。
 紛うことなきものの姿を目の前に顕現させてくれた。

 研磨された白銀の鎧。面。そこからふわりと、優しいあの金を靡かせて。
 灯りを失い暗がりゆくその中でも、目映いばかりに。
 確かにそこにいてくれる、ひと。

 物言わぬ騎士は一時の間をおいてくるりと背を向け、天鵝へと走りゆく。ラファエラはただまじりけのない想いでその背にあらん限りの守護と力を齎す。
 対する天鵝は、歪めた罅をあきらかに深くして。迫りくる騎士よりも術者たるラファエラへ、魔鍵を差し向ける。

 一閃。

 閃くはあの日の面影。
 ラファエラを照らす目映い光は、そのひとの顔に濃い影を作っている。
 光と闇のあわいに浮かぶ、瞳と唇の線。輪郭。
 柔らかなまなじりに刻まれた、その想いを、言葉を――ますます明らむ光が、隠してしまう。
 光にのまれてゆく。

 ――待って。

 引き留めるように挙げられた手には、金古美の鈴の音。振れば来てくれたのは、呼べば見ることができたのは、あれは。
 けれど、ふるえる鈴の音に集まるは繰り言呟く怨霊。先ほどこころを温めはずませた、あの色はとうに失われて影もなく。何か大切なことなのに、ずっと傍にあったのに。まっさらと塗りつぶされた、その奇妙な焦燥にこころは千々に乱れてラファエラは叫ぶ。
 返せ、とばかりに。

「――蹂躙せよ!」

 悪霊たちがその身を転めかして天鵝に纏わりつけば、ぶわり広がる薄墨に染まりかけの衣。その衣を、騎士の横一閃の一太刀が断ち切り――
 解放された白の綾絹の向こう。

 振り向く騎士の面の、さらにその奥にある瞳の色が見えたような気が、した。
大成功 🔵🔵🔵

アン・アイデンティファイ
【PCK】
テラさんだね。はじめまして、僕はアンという、どうかよろしく
魔法、少女? 知らないジャンルではあるけれど、映画に出演したことがあるとは〜〜だ

弔うか、僕の義姉はロマンチストのようだ。そういう考えは好ましく思うよ
僕は……唯々葬るとしよう

SPDで攻撃
視界不良でも相手が発光しているならおおよその位置は把握可能かな
避けられても防がれても、少しの隙を作れればいい
大振りな攻撃だけあって反撃は避けられないかな、それならそれでいい、僕に気を取られるなら好都合だ

人は狂う、簡単に壊れてしまう
君がとりわけ特別なわけではない
ただ……自ら死を選ぶことも出来ないのならその手助けはしようか


リオ・ウィンディア
【PCK】
テラねぇに夫を簡単に紹介
私の夫アンと私の姉テラ、どちらも大切な家族
アンとはよく映画鑑賞をしているわね
私は映画に詳しくないけれどもオールジャンルで色々見ているわ

あなた狂ってるの?さぁ、どちらが正解のの世界かしらね
もう一度死んで楽になれるんならいくらでも殺してあげる
それが死者の願いなら尚更ね
でも私の大切な心を傷つけることは許さないからUCは使わない
ダガーを握りしめて天鵝に肉薄
刃を切り返しての二回攻撃
第六感で回避しながら、これまた第六感で刃を振るうわ
だってあなた、私の大切なものを奪おうとするんだもの、楽に殺すなんて言ってないよ?
歌うように声をかけて、刃に呪詛をのせじわじわと切りつけていくわ


テラ・ウィンディア
【PCK】
え、ええと初めましてだな
おれはテラ
リオのお姉ちゃんだ!
えと…ご趣味は?

趣味は映画か
おれが好きな映画は魔法少女物かな
映画に出た事もあるぞ(どやっ

そっか…骸の海に送る事が弔う事なら
おれのできる事は唯一つ…我が武を以て挑むだけだ
【属性攻撃】
炎属性を全身と武器に付与
【戦闘知識】
その動きと癖を分析
【見切り・第六感・残像・空中戦・武器受け・オーラ防御】
高速で飛び回り残像を残しながら攻撃を回避
避けきれないのは剣と太刀で受け止め

【二回攻撃・早業・貫通攻撃】
剣太刀による連続斬撃から槍に切り替えての串刺しへ繋

上空へと飛び上
【重量攻撃・弾幕】
ガンドライド展開
銃撃で敵の動きを止め
メテオブラストぉ!
味わえっ!


●とどめてしがな
 死を、無に還ることを、救いと呼んでよいのなら。

 ひとはいったい何を求めてこの世に縋りつくのだろう。
 生をかなぐり捨ててでもとどめたいものを。

 何処に見るのだろう。

------

 奥で異形のモノが討たれた折。
 洞窟の入口にほど近い青蝶たちも、ほとりほとりと湖へ落ちてゆく。奥へ行けば行くほど灯りを失い闇が一層濃くなりつつあるその中を、不釣り合いに和やかなみっつの声が進んでいく。

「テラねぇ、紹介するわ。此方が夫のアン。アン、此方が姉のテラ」
「テラさんだね。はじめまして、僕はアンという、どうかよろしく」
「え、ええと初めましてだな。おれはテラ、リオのお姉ちゃんだ! ……えと……ご趣味は?」

 明るい中にほんの少しの戸惑いと緊張を含んだテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)の声が、洞窟の奥へと吸い込まれてゆく。一瞬の沈黙、そして古風な質問に、姉のこころのうちが察せられるようで。妹のリオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)がくすりと小さく笑みをこぼす。

「アンとはよく映画鑑賞をしているわね。私は映画に詳しくないけれども、オールジャンルで色々見ているわ」

 ね、と同意するようにリオは隣のアン・アイデンティファイ(デザイン・ベイビー・f33394)を柔らかく見つめる。そのまなじりに、テラはリオのアンへの信頼を見て取った。

 ――うん。嬉しい。

 素直な喜びに、テラの緊張もほぐれてゆく。

「映画か。おれが好きな映画は魔法少女ものかな。映画に出た事もあるぞ!」

 魔法、少女?
 あまり聞いたことのない単語の組み合わせに、アンは首をひねりながらも続く言葉に感心して。

「映画に出演したことがあるとは…銀幕のスタアとお近づきになれるなんて、光栄だね」

 アンの手放しの称賛にへへへと照れるテラ。そのふたりの交流を好もしく見るリオは、こころの何処かでほっと胸を撫で下ろす。
 柔らかな交流で深めた信頼を大切に胸にしまって。三人は狂えるオブリビオンが現れるという奥へと進んでいく。

------

 湖を渡った先、他の猟兵たちが対峙する天鵝の後ろ姿には、じゃらりと揺れるたいそうな鎖が揺れていた。
 浮かぶ天鵝の足は地を離れて、周囲を取り巻く光の鳥は高く高く空へと飛んでいけそうなのに。その身が地を離れ天翔けることを、鎖は赦さない。
 狂えるオブリビオンは、異端の神に操られている。

「そっか…」

 話には聞いていたけれど。その姿を見て、テラは小さく呟いた。
 自らの生きたいようにも生きられず、死すら束縛されて。その姿に、こころがきゅっと縮むような気持になる。

「骸の海に送る事が弔う事なら…おれのできる事は唯一つ。我が武を以て挑むだけだ」

 テラは星の力宿す宝剣グランディアと太刀を構えて、真っ直ぐと天鵝を見つめる。その姿に、アンは笑むではないけれど、好意を口の端に忍ばせて。テラの横へと進み出て、投擲用の暗器を指の間に複数挟んで構える。

「弔うか、僕の義姉はロマンチストのようだ。僕は……唯々葬るとしよう」

 その後ろで、リオは未だ背を向ける天鵝に開戦の冷たい声を浴びせる。

「あなた狂ってるの? もう一度死んで楽になれるんならいくらでも殺してあげる」

 幾度も廻り、廻っても廻っても苛む物思いを、一度の死で忘れられるなら。それが願いなら、叶えてやろうではないかという気概をにじませて。
 ゆるり振り向く天鵝の眼は、どろり鈍い赤に沈んで。差し向けられた腕が上がりきる前に、アンが先手を打って駆け出す。
 淡く発光するその姿に狙いを定めて、予め想定していた通りの動きで淡々と暗器を投擲してゆく。ちかりと冷たく光る刃が寸分の狂いもなく天鵝の身を裂いてゆく。それに抵抗するように召喚された白い星霊は、大きくふくらんではじけるように白い羽を飛ばす。その翅の一本一本が鋭く尖ってアンへと降り注ぐ。

「ぐっ…!」

 アンの身を裂き返した白羽が赤く染まるその横を、月色した長い髪を靡かせてリオが疾駆する。
 暗器に気を取られていた天鵝の手は間に合わない。
 リオの手に光るのは、ダガーのロータス。力を齎す水と風の精霊により、鋭く尖るその刃を握りしめて、リオは天鵝の腕を捉える。
 ぱっと散る、赤く染まった白の袖。

「楽に殺すなんて言ってないよ?」

 一度距離を取るために後ろに飛んだリオは、歌うような声で囀ってからもう一度切り返す。

「だってあなた、私の大切なものを奪おうとするんだもの」

 その目は、常になく爛々と燃えるようで。大切なものを傷つけた天鵝への赦せ得ぬ炎が見え隠れする。そして実際に――遠く背後で、炎が燃えていた。
 否、それは炎の如き光の翼。姉のテラの背に燦々と輝く紅きオーラ。
 ふわりと浮いたかと思うと、高速で移動し星霊の白刃も俊敏に避けていつの間にかリオの隣に現れて。鋭い剣戟を繰り出し妹が後ろへ下がる隙を作る。
 息する間もなく、その燃えるような身から出づるは槍の「廣利王」。赤々と燃える炎にテラの顔が浮かび上がる。

「もう無理に戦うなよ!守るものの無い戦いなんて、虚しいだけだろ!」

 その声も届かず、天鵝は次なる攻撃を仕掛ける。現れたのは黒い大烏の異端の神。先の戦いで一度ははじけ、再び現した姿は端から闇に融けるように朧だったけれど。槍に纏う炎を飲み込み、羽搏く風圧でテラを押し戻す。

「くそっ…!」

 腕で顔を覆うテラの脇を、銀に輝く光が後ろから過ぎて大烏へと刺さりゆく。

「テラさん、援護する!」
「テラねぇ、負けないで!」

 アンが投げる刃にリオが呪詛を乗せては放つ。ふたりの放つ刃は、ただテラを護るために威力を増してゆく。

「――…っありがとう!」

 ふたりの刃が大烏を圧す隙に、テラは洞窟の天井近くまで飛び上がる。飛び上がった先で空中に咲くのは浮遊する自走砲台群「ガンドライド」。すぐさま雨のように弾丸が撃ち出され、大烏は防御に息つく暇もない。
 その間に、テラは目を瞑って集中する。白い光がその身を包んで――カッと見ひらいた両目に宿るは、流星の力。

「味わえっ!メテオブラストぉ!」

 後ろに長い尾を引いて、テラは大烏へと迫る。超重力の一撃が、その脳天へと叩き落される。
 割れる大地。吹き飛ばされる砂岩。
 直撃は免れたものの、轟く音と共に巻き起こる爆風に煽られて後方へと天鵝が飛ばされてゆく。

------

 気づいたものはいただろうか、飛ばされゆくその唇が、僅かにひらいたのを。

「――わたしを、ゆるして」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

エリザベート・ブラウ


ねえさま
わたし覚えているわ
あの日あなたはわたしを護ってくれた

吸血鬼を愛してしまったあなたは
まさかあの吸血鬼がわたしの血を狙うなんて思ってもみなかった
絶望の中あなたは愛しいひとと刺し違えて共倒れ
噎せ返るほどの血の香りに
命の篝火を見た
未だ幼いにいさまが惹かれてしまったのは詮無いこと

恋を信じて盲目になって
周りを不幸にした愚かなねえさま
でも
もっと愚かなのは
あなたを憎み切れなかったわたし

もういいの
リズは、生き残れたから
最期までにいさまの傍にいられる
だから
あなたを赦すわ

あなたのその結び目を、ほどいたげる
どうか安らかに散って
プシュケであなたの罪の意識を刈り取る
あの柔らかだった薄紅色の瞳
わたしは覚えていてよ


●あけぐれの夢
 人には誰しも、忘れ得ぬ景色がある。

 遠く隔たれた向こうにあっても。ぼんやりとしか見えぬものになっても。
 永劫届かぬものになっても。
 だからこそ、恋しくて、恋しくて。

 その憧憬の、少しの罅が。
 大きな溝へとなりゆくことを、君はどう思うのだろうか。

------

「――わたし、あなたを覚えているわ」

 エリザベート・ブラウ(青の蝶・f20305)の瞳が、力なく地に堕ちた眼前の天鵝をひたと見据えて――どこか哀しげな声で、告げる。
 そのまなうらには、あの日の光景が一幅の絵のように描き出されていた。


 遥か昔――ひとりの女が恋に落ちた。
 はじめは淡雪のようにほろほろと降った恋は、逢瀬を重ねるほどにふかく積もって、遂に春の雪崩を起こした。

 男は、吸血鬼だった。

 常夜の世界で人間を支配し牛耳るオブリビオン。無論、誰にも祝福されぬ恋だった。
 それでも、女は信じた。
 愛しいものを、己のこころが赴くままに。
 たとえその想いが、両の目を塞ぐことになったとしても。

「愚かなひと……まさかあの吸血鬼が、わたしの血を狙うなんて思わなかったのでしょう?」

 愛していたものね、と小さく呟くエリザベートのかんばせは、寂しげで。
 対する天鵝のかんばせは、よりいっそう白く。その白肌につうと流れる赤だけが鮮明だった。

「でも、――あなたは、わたしを護ってくれた」

 あの日、吸血鬼に襲われ風前の灯火となったエリザベートを救ってくれたのは、他ならぬ“ねえさま”だった。
 大切な義妹のために振るった星廻る魔鍵は、夜天の下で恋人を貫いた。

 護るべきものの為に、愛するものの血を浴びた。
 そうして魔物に堕ちた愛するものに、自らも刺し貫かれて。
 血の海の中でふたりを繋ぐ、互いの武器と血濡れの口づけ。

 最期に流れた、紅い涙。

 ぼんやりとした意識の中でその光景を見ていたエリザベートは、あの噎せ返るような血の香りを思い出す。その香りは風に乗って、あの小さな孤児院の方へと流れていく。
 そして――帰ってこない妹を心配して探しにやってきた兄にまで届いて。
 初めて燃えた、命の篝火。朱い蝶のような、炎の化身。

 ――幼いにいさまが惹かれてしまったのも、詮無いこと

 エリザベートの美しい額に、鋭い罅のようなものが走る。顰められた眉は、自嘲するような昏い瞳を覆うように寄せられて。
 恋を信じて盲目になって、周りを不幸にした愚かなねえさま。

 でももっと愚かなのは――あなたを憎み切れなかった、わたしだから。

 エリザベートは、血涙流す天鵝へとその青い瞳を向ける。

「でも、もういいの」

 そこに、揺れていた瞳はもうない。

「リズは生き残れたから、最期までにいさまの傍にいられる」


 残されたふたり。愛するものを喪ったふたり。
 ――最期まで愛された、ふたり。

「だから ねえさまを赦すわ」


 荊に搦め捕られたプシュケをその双手に抱いて、エリザベートは素直にほどける花のように唇をほころばす。その面には、憎悪も、陰鬱も、悲痛もない。
 ただ、柔らかに。今を受け止めている。
 その想いに呼応するように、鉄槌に絡む紫の薔薇が淡く煌めいて。罪を、罪だけを毀す鉄槌は、使い手のこころに違わず寄り添ってゆく。
 鉄槌をふわりと天へ掲げて、エリザベートは天鵝をひたと見据える。
 天鵝は、罰を受け入れるかのように、――その鉄槌に救いを見たかのように。
 赤い両目をそっと閉じる。

「その結び目を、ほどいたげる」

 ざん、と。
 振り下ろされた鉄槌は、けれど天鵝のからだを傷つけなかった。淡く満ちる薄紫の光が、月光のようにその身を包む。
 毀されたのは、その罪だけ。
 天鵝のこころに凝る、罪の意識だけ。

 満ちた光が天鵝のなかへと収斂してゆく。墨に染まった衣が真白く見えるほどに光を放って、天鵝を捉えていた鎖がぱきんと割れる。


 再びひらいた天鵝の瞳は、柔らかな薄紅色だった。
大成功 🔵🔵🔵

ヴェル・ラルフ
ごめんなさい、ねえさん
ここにいるのが
僕で

僕が吸血鬼だったらよかったのに
ほんものの
貴女が愛した吸血鬼だったら

僕が人間だったらよかったのに
ほんものの
貴女に愛される人間だったら

でも今も尚
愚かな僕は貴女の口から溢れる血に惹かれてしまう
何よりも馥郁として甘美だから
種族の区別なくひとりを愛した
貴女の心が何より美しいと、識っているから


決して届かない、僕の初恋のひと


その腕の中に
幼いあの頃のように
帰ってもいいだろうか
あなたと共にみなそこへ沈みながら
僕の中のばけものを解き放つ

これが二度目
そして最期
──僕を赦して

貴女の恋を
愛を
僕のなかへ溶かして

あの東雲の中に消えてゆくのは貴女
さよならの袖さえ振れぬ対岸の黄昏に僕


●千代はゆずらむ
 この昏く沈んだ世界で、誰人が罪も犯さず生きてゆけると言うのだろう。
 生きることの理不尽さ、他人のこころの不可解さ、そして自らのこころの愚かさ。
 ひとというものに、己のいうものに。
 絶望しなかったものなどいるだろうか?

 だがひとは、様々な柵に囚われ乍ら、その柵の中でも自由になれる。

 ただひとえに 互いに生きることを 赦し合いながら。

------

 繽紛と飛びゆく青蝶が消えゆくごと、暗がりが増えてゆく。
 ひとつ、またひとつ。蝋燭の燈火がふつふつと消えてゆくかのごとく。
 終わりを告げてゆく。

 振り返れば、そのひとはそこにいた。薄紅の瞳と、柔らかな微笑みを取り戻して。白い鳥の星霊の灼かな灯りが、その身を包む。その衣や髪の端から飲み込まれるように沁みていた墨のような闇はすっかり落ち、まるで泥濘から咲いた一輪の蓮のような清廉さで、彼女はそこに在った。その姿は、星明かりに浮かび上がる降り積もった雪の純白の輝き。貧しくも温かな部屋の燈に照らされた、聖女の微笑み。
とうとい、あなた。

 あなたが好きだった。

 咲きほころぶ春の日、花に囲まれながら鳥と共に咲うあなた。
 煌めく夏の日、跳ねる水飛沫の向こうで無邪気に笑うあなた。
 色づく秋の日、実り豊かな大地への感謝に優しく微笑むあなた。
 眠りにつく冬の日、雪の明かりを受けて愛おしげに笑んでくれるあなた。
 季節が幾度廻っても変わらぬこの想いは、あなたを喪っても尚鮮やかで。
 ひりつくような熱と共に、まなうらに閉じ込めた。

 あの日。
 あなたとあなたの想い人が、血の海と骸の海と、別たれて沈んでいったあの日。
 只見えていたのは、あなたの赤い紅い血だった。
 美しい焔のような、狂おしいほどに馨しい、あなたの血。
 己の中の鬼が、その血を貪るのを。泣きながら見ているしかなかった。

 愚かな考えと分かっていても。
 吸血鬼になれればよいのにと幾度願ったことだろう。僕がほんものの吸血鬼だったら、あなたに愛されたかもしれないから。
 早く大人になれればよいのにと幾度願ったことだろう。あなたを護れるほどの大人だったら、あなたに愛されたかもしれないから。
 嗚呼、己の中に流れる血を、己を為す肉を、疎んじても離れられぬこの躰を、幾度憎んだことだろう。

 あなたが好きだった。

 野辺の緑を愛し、濁世を愛し、僕らを愛してくれたあなた。
 そのあなたが、命がけの恋をした。
 種族の別なくただひとりを愛したあなたの恋は、愛は。
 美しかった。


 決して届かない、僕の初恋のひと。


 ――ヴェル

 星降る音のような懐かしい声が、優しく耳朶を打つ。

「ごめんなさい、ねえさん」

 あなたを追って、こんなところまで来てしまった。
 あなたが愛したあの吸血鬼ではなく、あなたを殺した吸血鬼ではなく。
 半端ないきものの僕が。
 今も尚、あなたの口から溢れる血に惹かれてしまう、ばけものの僕が。

「──愚かな僕を、赦して」

 絞り出すような声は、本当に微かで。青蝶の水に落ちる音にすら負けてしまうほど、微かで。
 それでも、天鵝は、ねえさんは、咲って。
 あなたの頬を伝う雫は、この世のなによりも清澄だった。


 ――愚かなわたしを、赦して

 ただ、ただ。あなたがわたしを愛してくれたように。
 わたしは、あなたを。愛おしく思うわ。


 星霊が一羽、また一羽と青い水の底へと落ちてゆく。
 ぐらりと傾ぐ白いからだは、もう力も残っていない。
 後ろに倒れゆくそのからだを、ヴェルはとらえて。
 とぷんと。
 ふたりしずかに水底へと堕ちてゆく。

 清澄な水だった。何処までも深い青を溶かした微光漂う水の底。水はゆらぎ、手足の重さもわからなくなる。天を飛んでいるかのような錯覚を、口から出る歪な泡が否定する。水音もしない深いみなそこは、自分の躰も目の前の愛おしいひとの躰も、血も涙もすべてを溶かしてゆく。
 揺蕩う水の中で、ふたりは両の手を重ねる。
 薄紅色の瞳が真っ直ぐにヴェルを捉えて、ただひとつを伝えてくる。


 ――あなたを、赦して


 柔らかな首筋へ、ヴェルは尖鋭な牙を立てる。甘やかな恋が、愛が、その喉を通って肚へと堕ちる。

 最初の血は、命を終わらせた恋。
 そして最期の血は、いのちを赦す愛。

 ひととき青を染めたあかいろは、まるで黄昏時のそら。
 夜天のような水面から、夜のとばりのように降りる青の燐光。
 堕ちたはずの白い鳥の星霊が、水底から再び姿を現してねえさんの周りで囀る。蛋白石に煌めく半透明の羽をはたはたとはためかせて、まるで天に誘うかのようにみなもへと浮かんでゆく。

 こぽりと、最後の泡が唇からこぼれる。
 冷たくも柔らかな水があふれるほどにその喉を充たしてゆく。手足でさえも、柔らかい果実がたっぷりと蜜を含んでいくかのような、不思議な充足感に満ちて。

 ヴェルはまた、あの馨りを、全てのものへの愛を、感じながら――

 東雲のような青へと溶けゆくあのひとを、見送った。


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●大空をかよふ幻
 紺青の空に白金が尾を引いて流れてゆく。
 天上を自由に駆る星々に、彼岸と此岸の境はなくて。
 だからこそ、運んでいってくれと。ひとの願いを託されるのだろう。


 夕星の か行きかく行きするその想ひを 慰むべくもあらずして
 それ故 為すすべも知らねど
 かの人の 音のみ名のみを絶えず偲びゆかむ
 星の百敷まで


 そうしてきっと、大空をかよう星は見るのだろう。
 すべてを赦し、その身へとかしゆく、ふかい湖のようなかの人を。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年09月17日
宿敵 『還らぬ天鵝』を撃破!
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