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生き地獄 晴らす光は 正義の刃

#サムライエンパイア #戦後

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#戦後


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●地獄再び
 そこはまさに、地獄絵図であった。
 無惨に殺された人々の骸、略奪し尽くされ放火された家屋。
 黒煙をあげて猛る焔は、理不尽に命を奪われた者たちの無念をあらわしているかのようであった。
「た、助けてーっ!」
 無論、命を永らえた者達もいる。
 家族を殺された哀しみを振り払い、着の身着のまま逃げる娘達だ。
 彼女達は運良く助かったのでない。
 略奪者たちによって、わざと殺されなかったのだった。
 逃げる娘の背を、好色そうに見つめる略奪者たち。
 いかにも賊でございといった出で立ちは、これから起こる惨劇が誰の目からも予想できるというものだった。
「はっはっはっ、逃げろ逃げろ!」
 哄笑とともに矢をつがえる賊。
 わざと娘たちを通り抜けるように、狙いを外す。
 それは、娘達の恐怖を煽るのに十分であった。
 裸足のまま、擦り傷をつくりながら、必死の形相で逃げる娘達。
 いくら賊たちでも、歩で追いかけては追いつけない距離まで逃げおおせた。
 そう、歩であるならばだ。
 次々と馬に跨り、賊徒は娘達のあとを追った。
「たまんねえ悲鳴だぜ、抉りながら嬲ったらどういう声で鳴くんだろうなぁ!」
「ははははは、頭の命令を忘れんなよぉ!」
 死者たちがあの世へと向かうのならば、生者たちは何処へ向かうのだろうか。
 少なくとも、ここにあるのはまさしく地獄であった。

●グリモアベースにて
「サムライエンパイアにて、村々が襲撃されている事件が発生しています」
 ここはグリモアベース。
 ライラ・カフラマーンは居並ぶ猟兵たちに深々と頭を下げていた。
 その背後に生じている霧には、さきほどの光景が幻となって現れている。
 頭を上げると幻は雲散霧消していき、周りの霧と溶け込んでいった。
 その表情は険しい。不快感を隠そうとせず、露骨に嫌悪感が浮かんでいた。
「襲撃している賊の首魁はオブリビオン……右衛門炉蘭でございます」
 ライラが肩を落とす。
 以前、サムライエンパイアにて討ち滅ぼした敵。
 それがどういうわけかまたこの世に舞い戻ったらしいのだ。
 しかも、以前より強固な力を身につけて。
「たとえ性懲りも無く復活しようとも、過去が現在に留まる理由無し。皆さんにおきましては、敵の居城へと向かい、彼の者を撃破してくださるようお願いします」
 ですが、とライラは続ける。
 杖を叩けば再び現れる幻の霧。
 その中に、息せき切って逃げ惑う女性の姿があった。
 見張りの隙をつき、逃げだすのに成功したのだ。
 しかし、見つかるのも時間の問題。
 彼女達はこのままでは追っ手に捕まり、再び囚われの身となってしまうだろう。
「砦に向かう道すがら、皆さんは彼女達の逃走を助けて欲しいのです」
 女性達の身柄を確保するか、それとも追っ手を追い払うか、それは各々の判断に任せるとのことだ。
「女性達の安全が確保出来れば、私が責任を持って彼女達の無事を保証します。皆さんは先を急ぎ、オブリビオンを再び骸の海へと送り返してくださるようお願いします」
 そう言ってライラは、深々とまた頭を下げたのだった。


妄想筆
 こんにちは、妄想筆です。
 今回の依頼は「一筆啓上地獄が視えた」の続編のようなものとなっていますが、別に前作を知らなくても問題ない展開になっています。
 ネタバレになりますが、前回出てきたオブリビオンとはユーベルコードが若干違います。
 また二章構成となっていますのでお気をつけください。

 一章では略奪地跡を進んで砦を目指す章となっています。
 野ざらしになった死体、鼻をつく異臭の中を進むことになります。
 途中、砦から逃げてくる女性達や追っ手に遭遇するでしょう。
 それらに対処しながら先へ向かってください。
 二章では砦のなかでオブリビオンと対峙することになります。
 相手はまともに戦おうとせず、逃げの一手を打って猟兵達から行く手をくらまそうとします。
 相手の足止めや追いつく手段などを考えないと対処は難しいかもしれません。

 依頼を通して娘さん達に暴行を加える表現があります。
 そういうのが苦手な方はご注意ください。
 参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『焼け野原』

POW   :    使命感に燃えて突き進む

SPD   :    速度に任せて幻を振り切る

WIZ   :    対抗策を練り慎重に進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 戦争は終わった、はずだった。
 だがこの光景は何なのだろうか。
 焼け落ちた瓦。
 焦げついた死体に浮かび上がる黒い血痕。
 煤けた木々の上には、人の形をした果実が鈴なりになっており、ゆらゆらと揺れて無念を訴えていた。
 鼻をくすぐる草いきれは、戦火の跡を如実に自分たちに知らせようとしている。
 遠くで女性の悲鳴が聞こえたような気がする。
 遠くで、外道共が嘲笑う声が聞こえたような気がする。
 一刻も早くこの地獄絵図を終わらせなければ。
 猟兵の使命感に駆られ、貴方は走りだした。
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
…これは、何
これも…これも、生きていた?
私とて民草の命など生前は気にもしなかった
でも…でも、こんなに生々しい死を目にしたことなんて…

愛馬Tenebrarumに騎乗し、吐き気を堪えつつ砦へ向かう
指定UCで召喚した白銀の鎧の騎士を傍らに伴って
「我が騎士よ」
外道共の姿を見つけたら、追い掛け、狩る様に騎士に命令
自身は追われる女性と敵の間に馬を駆り、女性をかばう位置でオーラ防御を展開

けだものがこの身に近く寄ることさえも許すまい
『黒薔薇忌』で怨霊を嗾け、敵が尚迫るならTenebrarumに踏みつけさせ蹂躙させる

「怖かったろう。もう大丈夫だよ。お行き」
馬上から女性の安全を見届ける
後はグリモア猟兵に委ねよう



 灼けた野原を黒馬が駆ける。
 周りの煤けた炭を凝縮したような馬体の上に、貴人が手綱を操って先を急ごうとしていた。
 馬も黒なら主人も黒。
 漆黒のヴェールに包まれて表情は窺いしれなかったが、ラファエラ・エヴァンジェリスタの声には些かの乱れがあった。
「これも……これも、生きていた?」
 馬上から見下ろす惨劇。
 どこを見渡しても、そこには人々の憐れな骸が転がっていた。
 ラファエラも猟兵の一員だ。
 人々の死に臨んだこともひとつふたつではない。
 だがこれほどの多く、死というものを眼前に近づけられるとは。
 吐き気がこみ上げてくる口を扇子で隠す。
 早くこの場所を抜けなければ。
 そう思うラファエラであったが、不意に手綱を取ってその場に動きを止める。
 辺りを見回して、背中越しに追従する騎士に向かって下知をした。
「我が騎士よ」
 その声に、貴人の護衛たる白銀の騎士は、ただ無言で立ちつくしていた。
 言葉は要らぬのだろうか。
 ラファエラが踵を返すのと同じくして、騎士も寸分違わぬ動作で彼女と同じ方向へと馬首を返し急ぐのであった。

 大きく肩で息をしながら走る娘。
 時々疲れで足がもつれそうになる。
 それでもなお、娘は逃げようとしていた。
 彼女が逃げていた方角から、馬を操って賊徒共が追いかける。
 人の足と馬の脚。
 どちらが速いかは比べるべくもない。
 彼らはこの逃走劇を楽しんでいた。
 わざと速度を落とし、娘が限界を耐えてなお逃げようとする喜劇を。
 やがてそれは、娘が派手に転んで終わりを告げた。
 疲れからか恐怖からか、賊が目前に迫っても娘は大声をあげることはしない。
 ただ首を横に振って、涙を流しながら後ずさりしようとするのみだ。
 その姿は、あまりにも弱々しい。
「そう邪険にすんなって」
 男が嗤う。つられて他の面々も。
「逃げた罰として俺たちを楽しませてくれりゃあ、命は助けてやるよ」
「もっとも、その前にお嬢ちゃんが壊れてしまうかもしれねえな?」
 がははははははっ。
 がははははははははっ。
 粗野な笑いが荒野に響く。
 そしてそれは、冷涼たる鈴の音によって水をさされたのだった。

 ちりん。
 ちりーん。
「あ?」
「なんだあ?」
 辺りを見回す賊たち。
 鈴の音が周りに響く。音の主は以前わからぬ。
 音に驚いたのか、烏が大勢何処へと飛び去って行く。
 不穏な空気。
 今度は賊徒共の胸中に、恐怖が膨らんでいく。
 その恐怖が伝染したのか、彼らの操る馬たちも怯え、暴れ始めた。
 突然の衝撃に落馬し、馬もまた何処へと去って行った。
「お、おい」
 一人が指を差す。
 その先に、異形の群れが現れていた。
 黒焦げになりながらも、しかと大地に立って彼らを睨みつける死体の群れ。
 そしてその中に、白銀の騎士が馬上にて彼らを見据えていた。
 誰だ、と尋ねる暇も無く、死霊のたちは賊へと襲いかかる。
「なああああーーーっ!?」
「なんだよ! なんなんだよ!」
 刀を、槍を振り回すが、いくら斬り伏せようとも彼らは向かってくるではないか。
 当然だ。
 死人を殺そうとは愚かな事也。
 そのことを考えられない愚者の頭を、騎士が白刃を煌めかせ胴体と別れさせた。
 その光景を、娘はただ呆然と見ていることしか出来なかった。
 だからいつの間にか、自分の横に人が立っていることも気づかなかったのだ。
 見上げれば、馬に乗った漆黒の人物が居る。
 目の前の殺戮を、自分から覆い隠すようにして。
「怖かったろう。もう大丈夫だよ。お行き」
 背中越しに、その人物は自分へと語りかけてくれた。
 顔を見ないでもわかる。
 この人達は、助けに来てくれたのだ。
 恐怖からではなく、安堵の涙を流す娘。
 賊徒を蹴散らして娘の安全を確保し、ラファエラ・エヴァンジェリスタは元凶を斃すために先を急いだのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
戦国の世は終わった、って聞いて育ったけどねー…略奪や蹂躙が忘れらんない下衆な連中もいるんだな
囮になって女は逃がし男を足止めして…場合によっては殺害もやむなし

死んだ娘さん達に協力して貰お。ごめんな?
周囲の死体から女物の着物を剥いで頭から被り【変装】
逃げる女達を砦から遠い方角を指して逃がし

>追っ手には
力尽き倒れた女のフリして気を引き
損傷少ない女の死体数体を【念動力】で同様に動かす

UCの下準備だ
【念動力/投擲】でそこらの武器の破片や尖った石を追う男達に狙い命中させUC発動
自分のごく近くに来た奴
UCを避けた奴はクナイで刺し斬る
多分…放って置いても何人かは死ぬか
悪いね
任を受けた忍びは薄情なんだ

アドリブ可



「戦国の世は終わった、って聞いて育ったけどねー」
 鹿村・トーゴは悪態をつき頭を掻いた。
 生きる死ぬは世の常とはいうが、これはあまりに非道過ぎる。
 枯れ木と見まがう死体を踏まないよう注意して避けながら、鹿村は目当てのものをみつけた。
 着物が乱れ事切れた女性の死体。
 あちこちに殴打の痕があり、何が起きたのかは想像に難くない。
 そして自分は、そんな彼女から追い剥ぎをしようとしているのだ。
「これも悪党を倒すため……アンタの無念、オレが背負わせて頂きます」
 南無南無と手を合わせ、鹿村は着物を纏い身をやつした。
 これならば、奴らを騙せることだろう。
 女装した忍は、事を成すために跡も無くそこをたった。

 賊徒たちは辺りを見回しながら、逃げた女たちを追っていた。
 自分たちが追っていた一団は、運が良かったのかその足取りを掴めないでいた。
「手ぶらじゃお頭にどやされるぜ」
「まいったな……せめて誰かでもいりゃあな」
 悪態をつきながら、焼け焦げた木々の中を進む男達。
 するとその先に、地に伏す女を発見したのであった。
 助かった。
 息があれば、少し痛めつけて行方を吐かせることにしよう。
 死んでいれば、まあそれまでだ。
「おい、起きねえか」
 行き倒れを蹴り上げて、無理矢理仰向けへと起こす。
 ごふりと息を吐く声がした。
 良かった、生きている。
「おい、テメエ。他の連中はどこ生きやがった?」
「素直になるなら、生かしてやってもいいぜ~?」
 頭巾から覗かせる口元が、男達にむかってはっきりと告げた。
「……地獄さ」
 その唇が微笑むと、周囲に気配が現れた。
「こ、コイツは……!」
 賊たちが見たのは、確かに女たち。
 しかして追っていたのは、断じてコイツラでは無い。
 殴打の痕、斬られた痕、陵辱された痕。
 それらを見せつけながら、女性達の死体が賊徒を取り囲んでいるではないか。
 賊徒が引き起こしたのとは別の、地獄絵図。
 辺りに気を取られ男達が動揺した時、仰向けとなっていた女、変装していた鹿村は行動を起こした。
「がっ!」
「ぐっ!」
 そっぽを向いている相手に石つぶてを投げるのは実に容易い。
 だが如何せん数が多かったようだ。
「なんだテメエは!」
 投擲を免れた男が刀を振り上げて襲いかかる。
 遅い。
 振り下ろされるより速く側面へと回り、鹿村がクナイを首筋へと突き刺した。
「ぱっ」
 情け無い声が吐かれると同じく、刀がその両手が漏れ落ちた。
 そして追うように男もまた地へと伏す。
 血糊を拭い、鹿村がクナイを懐に収めた。
 悠々と歩を開始する。
 周囲では賊が地にのたうち苦悶の声をあげているではないか。
 つぶてには毒が塗ってあった。
 もはや男たちは起き上がれず、痛みに苦しみ逝くしか残されていないのだ。
「なんだい、まだいたのかい」
 ふと見れば、木々の間からこちらを不安そうに覗いている女性達の姿があった。
 鹿村は彼女達を助けるために、囮となって女装していたのであった。
「この先に仲間が待っている。そこまで行けば大丈夫さ」
 先ほどもそう言ったのだが、やはり追っ手の行方は気になるらしい。
 何度も頭を下げ、指さした方向にむかう娘達の姿が消えると、鹿村は男達を見下ろした。
 まだうめき声があたりに響き、息があるのがわかる。
 止めを刺す気は無い。
 既に彼らは終わっているからだ。
 助ける気も毛頭無い。
「悪いね、任を受けた忍びは薄情なんだ」
 任務はオブリビオンの撃破にあり。
 鹿村は再び音も無く、その場をたつ。
 あとにはただ、地に染みこむかと思うような、男達のうめき声があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽殿蘇・燐
今回のこれ、簡易活動報告に。配信は、視聴者を不快にさせるだけだもの。

私には私なりの『悪女のあり方』というのがあってね?
『健やかなる国と民』があるからこそ映える、と。
それに反するのよ、こいつらは。

現場に急行しましょう。
私を倒した主人公なら女性を助け、殺さない程度に外道共を懲らしめるんでしょうけれど。
前半までは一緒、後半は違うわ。
方針としては、足止めに近いかしら?
ふふ、武器が芭蕉扇だけだと思った?残念、あなたたちが見ているのは、『麝香揚羽』による幻。
『紋黄揚羽』で炎属性を底上げ、【炎術:芭蕉扇】の炎に焼かれなさい。

私が気に入らないから燃やすの。わかる?愛しの外道さま方?



「気にいらないわね」
 陽殿蘇・燐は大きくため息をついた。
 略奪。陵辱。悪道の限り。
 それらについてついてフツフツとした怒りが湧いてくるからだ。
 誤解しないで貰いたいが、燐は善を成す者では無い。
 悪人だからこそ彼らの行動に怒っているのだ。
 なぜならば。
「美学がないからよ」
 燐には『悪女のあり方』という信念があった。
 悪には悪なりの矜持というものがあると彼女は考えている。
 そして彼らには、それがない。
 致し方ないが、今回の配信は中止だ。
 無様な姿を視聴者に見せるのは良くないが、中途半端な悪逆ムーブを見せるのも、己の美学に反するからだ。
 よってこれより行なうのはただの八つ当たり。
 燐は鬱屈した気持ちを爆発させるために、現場へと赴くのだった。

「きゃああーーーっ!」
「へっへっへっ、逃げろ逃げろ!」
 わざと動作を大振りにしながら、男達が娘たちを追う。
 好色そうな顔。
 それらを見れば、捕まればどうなるかは明白だ。
 娘達もそれを知ってか、必死の形相で逃げようとしている。
 だが悲しいかな、その距離は少しずつ縮まっていく。
 その距離に、一人の人物が割り込んできて、男達の足は止まったのだった。
「はあ?」
 男達が素っ頓狂な声をあげる。
 行く手を阻んだのは一人の女性。
 漆黒の着物に紅い刺繍を施した器量よしだ。
 男たちは、その人物が陽殿蘇・燐ということを知らない。
 だがその出で立ちは、まるで焼け野原が人の形をとったかのような錯覚を覚えるに十分であった。
 扇によって顔半分を隠されてもなお、その美貌は色あせない。
 燐には悪人を惹きつけるカリスマがあったのだ。
 逃げる女性たちを、彼女は一瞥たりともしなかった。
 そういうのは主人公の仕事。
 嬲る犯すは悪人の業。
 中途半端な業の者達に、燐は己の力を魅せつけるのだ。
 扇が口元から離れる。
 現れた白面の唇は、紅鮮やかに彼らを嘲笑していた。
 扇がひらひらとたなびくと、つつましやかな風が起こる。
 やがてそれは熱気を帯び始め、辺りを包み始めるのだ。
 男達は動けない。
 まるで、幻に魅入られたかのように。
 扇を動かす燐の姿が、更に黒へと染まっていく。
 いつのまにか男達の視界は、闇へと覆われていた。
 何も見えない。
 ただ熱気による喉の渇きが、そこにあると自分たちの存在を証明していた。
 ぽう。
 ぽう。ぽう。
 暗闇に灯りがともる。
 それらはひらひらと風に吹かれて辺りに漂い火の粉をまき散らす。
 ぽう。ぽう。ぽぽう。
 火の粉同士が合わさって、やがて拳大の火と化していく。
 それは蝶であった。
 火の粉を纏わせながら灯る黒揚羽蝶。
 視界を覆う暗闇は、蝶の群れだったのだ。
 それに気づいた時、男達は悲鳴をあげた。
 いつの間にか自分たちは、炎につつまれていたのであった。

 すやすやと自分の掌で羽を休ませる紋黄揚羽に微笑み、燐は辺りを見返した。
 そこにあるは、のたうつ焔。
 炎に包まれもがき苦しむ賊共の姿であった。
「ぎゃああああああーーーー!」
「あちい、あついよおおお!」
 苦悶のBGMを聞きながら、目を細める燐。
 彼らの悲鳴を聞いて、幾分か溜飲は下がったようだった。
 そう、これは正義の行いではない。
 ただの八つ当たり。
「私が気に入らないから燃やすの。わかる? 愛しの外道さま方?」
 彼らが作り出した下らない地獄を、燐は新たな地獄に塗り替えて満足そうに微笑むのだ。
 彼らが炎の輪舞曲を踊り終えるのを止めるまで。

成功 🔵​🔵​🔴​

エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

やれやれ、相変わらず賊とは不愉快な奴らじゃな。
生きておっても害にしかならぬ者共じゃ、下衆には相応しい報いをくれてやるかの。
たかが賊に小細工は必要あるまい。
上空から大鷲に監視させ配置を確認した後、狼の群れを呼び出し包囲してしまうか。
徒歩は狼に任せてわしは騎馬へ対処するかの、狼達の圧力と【ビーストマスター】の力で馬達を操り賊共を落馬させるのじゃ。
上空からの監視もある事じゃ、馬の足さえ封じてしまえば取り逃がす事もあるまい。
戦闘は問題ないじゃろうが注意するべきは人質を取られることじゃな。
不埒な輩は死角から狼に襲わせて無力化しておくのじゃ。
後はお味方の猟兵に任せておけばよいじゃろう。


ルパート・ブラックスミス
右衛門炉蘭、か。つくづく呆れた輩だ。
追い回され達磨にされた程度では懲りないらしい。

道中、女性達と追っ手を発見したら【挑発】を兼ねて短剣【投擲】の【先制攻撃】と間に割って入り妨害。
【かばう】ように背にしつつ女性達に逃亡を促し、追手に立ち塞がる。
後は剣を振るう必要もない、UC【黒騎士が宣告する火刑】による【焼却】【範囲攻撃】。

いつぞやの海賊共と同じく【蹂躙】してくれよう。
生憎、此方は「オブリビオンでなければ」などと手加減したがる手合いではない。
地獄の道行きを築いたのだ、それに相応しい魔人が辿って来たるは至極当然。
貴様らに向けるべき正義があるというならば道理ではなく粛清だ。
相応の末路を迎えるがいい。



「やれやれ、相変わらず賊とは不愉快な奴らじゃな」
「然り」
 エウトティア・ナトゥアの愚痴にルパート・ブラックスミスも頷く。
 右衛門炉蘭。聞いた名だ。
 屠ったつもりであったが、どうやら地獄の業火は此奴を滅ぼすには火勢が足りなかったらしい。
 次は無い。
 己の不覚を恥じ大剣を握りしめるルパートへ、エウトティアは声をかける。
 エウトティアの腕へ鷲が舞い降り止まる。
 彼女が辺りに飛ばした斥候だ。
「今は娘御を助けるのが先決じゃ、お主の力頼りにしておりますぞ」
「承知」
 首魁を倒すのは大事だが、逃げる者達を助けるのもまた大事。
 こういうときに彼女の技は役に立つ。
 自分はその分、悪党共に力をふるってやろう。
 再び鷲は舞い上がり、大空を高く跳ぶ
 その嘴の先へと彼らは向かった。
 護衛対象へと向かうために。
 それを追う者たちをくいとめるために

 娘たちを追いかける賊たち。
 馬に乗っている者からは、逃げ切れる訳はなく、哀れ娘達は追いつかれてしまう。
「た、助けて……」
 少女の懇願。
 男達はそれを値踏みするかのようにじろじろと眺め、嗤った。
「さあて、どうしようかなぁ?」
「てめえたちの態度次第だぜえ?」
「ま、ちょっとお仕置きは必要かもな」
 ひゃっははははは。
 じりじりと、歩をつめる外道共。
 前にいた男が、その歩みを止めた。
「ひゅっ……」
 どう。
 前のめりに派手に倒れる男。
 仲間が驚き様子を確かめると、すでに事切れていた。
 その首に、短剣が深々と突き刺さっていた。
「お、おい……」
 男が怯えの声を漏らした。
 短剣が向かってきた方向。
 その先に、黒騎士が音も無く佇んでいた。
 轟々と、蒼白い炎を纏いながら。
 鬼火か、死霊か、はたまたアヤカシか。
 男達がおもわず二の足を踏んだ。
 周りから、自分たちを凝視する眼光が、いつのまにか取り囲んでいた。
 狼だ。
 狼の群れが、賊徒をいつの間にか取り囲んでいた。
 獣は、賊徒達と娘達を切り離す壁となって円陣を築いていた。
 ウォウ!
 ウォウウォウオゥ!
 狼たちの嘶きは、物言わぬ騎士の替わりに、男達にむかって叩きつけられる。
 その大喝に、男達より早く馬が怯え暴れてしまう。
 たまらず落馬する賊共。
 騎士は今だ、身動きせず。
 奮えるように、鎧の隙間から蒼白い炎を噴き上げていた。

「陽動成功じゃな」
 状況を掴めぬ娘達に、柔らかい声がかけられた。
 振り向けばエウトティアがそこにいる。
 自分はお主達を助けに来たと自己紹介し、狼たちに跨るように促す。
「一生懸命逃げに逃げて疲れたじゃろう? あとはわしたちに任せるのじゃ」
 娘の手を、狼がちろちろと舌を出して舐める。
 その温かさ。
 それに触れて、娘達はさめざめと泣いた。
「大丈夫、大丈夫じゃよ」
 ぽんぽんと背中を優しく叩いて、エウトティアは彼女達を慰める。
 無理も無い。
 年端もいかない少女達が、身に余るほどの恐怖を受けたのだ。
 今は感情を発露させてやろう。
 泣いて落ち着いたあとは、無事に彼女達を送り届けてやろう。
 それがここに来た、自分の目的なのだから。
 慈しみの目。
「さて……下衆には相応しい報いをくれてやるかの。」
 しかし顔をあげ賊を睨む目つきは、猟兵のそれであった。
 エウトティアの怒れる胸の内。
 それはルパート殿に譲るとしよう。

 ナトゥア嬢がいて助かった。
 なにぶんこの格好である。
 口も上手くないのは自覚しているし、余計な恐怖を与えてしまう心配があった。
 しかしああやって護ってくれるのならば、自分は遠慮無く力を奮うことが出来る。
 なにより今回は、猛り狂っているのだから。
「くっ」
 男が槍を構えて突進してくる。
 ルパートはよけない。
 乾いた音が響き、槍がへし折れた。
 その反動で、もんどり打って倒れる男。
 その身が、炎に包まれた。
「ぎゃあああああ!」
 蒼き炎に包まれもがき苦しむ男。
 仲間はその光景に怯えて後ずさりする。
 ルパートが、歩を一歩進めた。
 炎が男を乗り越えて、賊の群れへとその触手を伸ばす。
「ば、化物め……」
「左様」
 賊徒はこの世に、地獄を生みだした。
 なればそこに相応しいモノが現れるのも必然。
 ルパートが歩を進める度に、蒼炎は範囲を拡げ、無法者を捕らえ篝火と化していく。
 あたりに響き渡る悲鳴。
 それをルパートは当然のことと自覚している。
 彼らは他者に同じ事をしでかしたのだから。
 相応の報い。
 それを自分は、彼らに味合わせてやっているに過ぎない。
 炎に巻かれるより早く、仲間を見捨てて一目散に逃げる者もいた。
 後門の焔、前門の狼。
 男は、狼を選んだ。
「ちっくしょおおおお!」
 刀を振り回し、獣たちを蹴散らす。
 狼は刀の間合いに入ろうとはせず、軽やかに身を翻す。
 それに乗じて男は先にいく、武器を振り回しながら。
 だがそれも長くは続かない。
 息切れし、咳き込む賊。
 それを見計らって、獣たちがいっせいに飛びかかった。
「ぎゃああああああ!」
 牙と爪が、男を斬り刻んでいく。
 猛り拡がる蒼き焔。
 そしてそれを囲む狼たち。
 この二重円から逃れられる賊は現れず、次々と命を落としていったのであった。

 粛清が終わった。
 やや落ち着きを取り戻してルパートがエウトティアへと近づく。
「貴殿は大丈夫か?」
「ん? いや大丈夫じゃよ。自分は後ろの方で見ていただけじゃからな」
 ほれみいと、彼女が指を向けた先には、狼に乗る娘達の姿があった。
 恐る恐る跨ってはいるが、その目には希望が湧いている。
 助かる。その実感。
 彼女達はそれを掴もうと、しっかりと獣の首筋に腕をまわしていた。
「あとは兄弟達に任せれば、ライラ殿のところまで大丈夫じゃ。ちょっとした旅を楽しませてやろうかのう」
 屈託なく笑う少女の顔に、黒騎士は助かると頭を下げた。
「さてさて、それでは過去の決着をつけようとしようかの。お主もそれを望んでいるのじゃろう?」
 自分は右衛門炉蘭とやらには会ったことはないが、彼には思う処があるのだろう。
 先を促すが、ルパートは被りを振った。
「いや、もう一度斥候を頼めるか? まだ女人がいればそれを助けたい」
 敵を屠るは武人の役目。
 しかし淑女を護るのもまた、騎士の務め。
「なるほどなるほど」
 エウトティアが破顔する。
 ルパートの気持ちを受け取ったからだ。
 口笛を吹けば、大鷲が再び大空を泳いでいく。
「人助けはわしらの任務じゃからのう。遠慮無くこき使うが良いぞ」
「感謝する」
 エウトティアとルパート。
 二人の猟兵は刃を持たぬ物を助けるために、再び刃を振るいに向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ドミナトリクス
この状況、以前と同じオブリビオンで間違いなさそうですね。
断じて嬉しい縁とはいえませんが、居合わす限りは何度でも倒しましょう。

女性達を守りながらとなると隊を動員したいですが、敵は逃げの名手だったはず。
目立つ手段をとって勘付かれるのは避けたいですから、単身で応戦しつつ、彼女達は【茫洋捕牢】で保護しましょう。
居心地は悪い……というか、見た目でいえば逆戻りかもしれませんが、少しの間我慢していただきたいです。
(無論ですが女性達に罪はないので、牢からは自由に出られます)

賊もオブリビオンなら討つまでですが、生者でも法の裁きは受けるべきです。
斬るだけの刃でないと教えて差し上げましょう。(打擲モード/気絶攻撃)



 目を覆うような悲惨な光景。
 それに対して目を細めるでもなく、レジーナ・ドミナトリクスは冷静に状況を把握しようと務めた。
 思い出したくも無いが、見覚えはある。
 そして今回の討伐対象である敵、右衛門炉蘭の名にも聞き覚えがあった。
「更生は無理でしたか」
 それがオブリオンという性であるならば仕方が無い。
 何度でも骸の海へと送り返してやるだけだ。
 罪を犯す者とそれを罰する者。
 奇しき縁ではあるが、それが猟兵の任務であるならば、遂行するまで。
 深々と軍帽を被り直し、レジーナは微笑んだ。
 咎人を罰するという喜びに。

 逃げる娘達。
 彼女らを見つけたレジーナはすぐに行動に移す。
「御免なさいね」
「えっ?」
 がしゃり、と一人の首筋に手を伸ばし、首輪を嵌める。
 すると嵌められた者は一瞬のうちに消え去った。
 その光景に他の者もうろたえ、足並みが乱れてしまう。
 隙に乗じてレジーナはその場にいる娘達に次々と、首輪を嵌めていく。
 同じように、次々と姿を消していく娘達。
 茫洋捕牢。
 首輪を嵌めた者を異次元の牢へと強制送りにするレジーナお得意の技だ。
 元来犯罪者に使用するものであるが、今のような状況であれば、追っ手から彼女達を保護できる絶好の手段となる。
 少々荒っぽいやり方であるが、オブリビオンが自分の知っている外道ならば、彼女たちをこの世界から隔離するのは保険になる。
 いわばこれは布石という奴だ。
 ともあれ、いきなり送られた女性達は不安でいっぱいだろう。
 それに、流石に罪も無い者を捕縛するのは気が引けた。
「あとで説明するべきでしょうね」
 機械首輪を手際よくしまい、今度はフォースセイバーを取りだした。
 柄を捻ると鞭へと形状が変わる。
 その雷光を眺めながら、レジーナは唇を笑みに歪めるのだ。

「なんだ、てめえ?」
「ひょう、別嬪さんじゃねえか!」
「コイツでいいじゃんよ! 攫ってこうぜ!」
 好色そうな視線を涼やかに受け流し、レジーナは追っ手と相対する。
 自分の姿は相手にはどう映っているのであろうか。
 手弱女と考えているのならば、あまりにも愚か過ぎる。
「どうやらオブリオンではないようですね」
 おおかた、利用されるだけの賊であろう。
 しかしそれで彼らの罪が無くなる訳ではない。
 粗暴な面に向けて、レジーナは強烈な一打を放った。
 小気味良い音が耳に響く。
 顔を押さえる事も出来ずに男が倒れた。
 そのことが、周りの野郎を激昂させることになる。
「このクソアマがぁ!」
「抵抗すんなよ!」
 口だけは威勢が良いらしい。
 足を一歩詰め、その二歩目が土を踏む前に、気合い一閃の横薙ぎが二人を打ち据えた。
 武器を落とし、呻く賊たち。
 状況を理解したのか、他の賊共の顔が狼狽えた。
「安心しなさい、殺す意図はありません」
 彼らにはまだ更生の余地が残されている。
 そのことをたっぷりと理解させてあげよう。
 娘達を保護したのとは別の首輪を、蠢く男に向かって投げつける。
 男は吸い込まれ消えて行く。それを見て男達が悲鳴をあげた。
 罪人を収監出来る喜び。
 レジーナは彼らを見据えてにっこりと微笑むのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

網走・壘
「さて、悲鳴が聞こえる方に行ってみるかのう。」悲鳴の聞こえる方角へバイクを走らせる。
「おお!居た居た下衆共が!どんな声で鳴いてくれるかのう。たのしみじゃ。」鞭で相手を打ち、ナパームブレスで相手を焼く。「いい声じゃ!たまらんのう!サービスじゃ!」ファラリスの牡牛達が現れる。「そやつらに捕まったら焼かれるぞ、早よ逃げや。さあ!ステキな地獄を始めようかのう!



 焼けた地形を、バイクの駆動音が快調に走っていく。
 網走・壘はフルスロットルで飛ばし、目をらんらんと輝かせていた。
「さて、悲鳴が聞こえる方に行ってみるかのう」
 外道共に遠慮無く技を試せるとなれば、楽しいことこの上なし。
 得物は何処と、網走はターゲットを発見しようと疾走する。
 そして聞こえた、娘達の悲鳴。
「聞いたぞ! 行くぞ! 今行くぞ!」
 アクセルを吹かして荒れ地も何のその、直線を通って現場へと急行する。
 目の前には崩れた家屋。
 その傾斜した地形を利用し、彼女は飛んだ。
 放物線を描いて眼下を見れば、そこにいれば娘たちを追う人馬の群れ。
「おお!居た居た下衆共が!どんな声で鳴いてくれるかのう。たのしみじゃ」
 その馬の後続へと、一気に網走は着地した。
「な、なんだぁ!?」
 見慣れぬ鉄の馬に乗った乱入者に、とまどう賊たち。
 すれ違いざまに、呆けた顔に鞭の挨拶をくれてやる。
 落馬し、そのあおりを受けて何馬かも将棋倒しになっていく。
 追いつき追い越し、網走はバイクを駆って彼らの前方で停止した。
「なんだこのアマ!」
「やろう、痛い目みてえのか!」
 激昂し、襲いかかる賊徒。
 そいつらに向かって網走は大笑した。
「わしか、わしは網走よ! 下衆共よ覚えたか!」
 網走の口から、炎のブレスが彼らに向かって浴びせられる。
 受けた男達は悲鳴をあげてもがき苦しんだ。
 その光景、網走に胸のすくような気持ちが起こる。
「中々良い声で泣く! ほれほれこれはサービスじゃ!」
 鞭を打ち鳴らせば、そこに現れたのは十体の牡牛。
 バイクと同じく鉄製の品だ。
 しかもコイツは動くときている。
 ブレスの洗礼を免れた一人に向かって、牡牛は一目散に突撃した。
 跳ね飛ばしたショックで、牡牛についた蓋が開く。
 そしてその中へと、跳ね飛ばされた男はキャッチされ、蓋が閉まってしまった。
 愉快痛快。
 網走の気分が高揚するのに合わせて、牡牛は自らを赤熱化させた。
 くぐもった悲鳴が、牡牛の口より漏れ出でた。
「ハッハッハッ! そやつらに捕まったら焼かれるぞ、早よ逃げや。さあ!ステキな地獄を始めようかのう!」
 網走の哄笑に、男達は自分たちの置かれた状況を把握した。
 馬は逃げ去り自分たちの足で逃げるしか他ならぬ。
 逃げる者。そしてそれを追う者。
 立場を入れ替えながら、網走は再びバイクをかっ飛ばすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
臭うな。戦火と血煙だけではない。
なれば、やはり私が断たねばならん。

最優先は避難民の救助だ。
襲われるものあれば助けて、家屋に紛れるものあれば救う。
1人では足りなければ、UCを使い黒椿にも働いてもらう。
嗅覚と聴覚を駆使して娘達を見つけて速やかに報告をさせよう。
そして彼女達が避難するまで、護るようにも指示する。
軽口なども叩くまい。今の私の怒りを感じぬほど馬鹿ではないだろう。

賊に情けなどはない。
刀で斬るにも値しない。この拳にて。
下卑た物言いは三途の川の渡賃だと分からせてやる。

怒りこそあるが、自分でも驚くほど頭は冷えている。
ふん…この鼻につく匂い。皆半分の血潮の沸り。
今度こそ、決着をつけよう。


音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。

 略奪も凌辱も戦の世の常。
 しかして、今は泰平。
「捨て置くことはできませんね」
 印を結んで外道を放つ。
「砦への道の探索は任せましたよ」
 頭に掛けた面を被り、浄雲もまた駆け出した。
 道の探索は遣いに任せ己は民草の救援に向かおうという算段。
「外道を始末するのに術等不要。音羽衆が手練手管を御見せしましょう」
 そこにあるのは復讐者として猟兵となった者ではない、戦国の世を傭兵として駆け回った忍、音羽が一党の党首としての音羽浄雲であった。
 言葉は不要とばかりに謀り長慶を振るい、嘲笑う追手共の顔に貫き秀次を見舞い、詭り久秀で縊っていく。
「一人たりとも生かしては帰さぬ。外道葬るべし」



 昨日まで生きていた者が今日は死ぬ。
 それが戦国の世の習い。
 しかしエンパイアは平安の世、過去に戻るは錯誤というものであろう。
 ましてや民草が犠牲になるなどとはあってはならない。
「捨て置くことはできませんね」
 平時より乱世にて忍は輝く。
 しかし出来れば、無用の物であって欲しい物だ。
 過去幾度となく見せられた戦火の跡に、音羽・浄雲は目を細めて複雑な面持ちを浮かべていた。
「左様。この一件、肝心なのは民草の救助だ」
 花盛・乙女が逸る心を抑えるように、刀を握る手に力を込めていた。
 この惨状に、花盛も思う処はある。
 だが数々の場数が、猪のように飛び込む気持ちを静めてくれた。
 花盛に浄雲も頷く。
 二人の気持ちは一緒だった。
 首魁の砦など後回し、助けられる命から救い出す。
 猟兵というものは、民草によるものでなくてはならない。
「では道標がわたくしめが」
 浄雲が印を結べば、現れたるは式狐。
 先行し、砦への道筋を見つけ出すよう駆けていく。
「それでは私は娘御を見つけよう」
 刀を花盛が締め上げると、刀身はあやしき化生と化す。
 娘達を探せと命じ、アヤカシは何処へと消えて行く。
「では行こうか」
「御意」
 侍と乱波は、任を果たそうと駆けだした。

「ダンナココダゼ、オッチンジャウゼ」
 アヤカシ、黒椿は瓦礫に埋もれた一角を指し示した。
 減らず口が絶えない化生ではあるが、こういうときに鼻と耳は役に立つ。
 花盛では見つけにくい生存者をこうして探しだしてくれるのだ。
「良し」
 屋根の一角を掴み、花盛は両肩に力をいれた。
 日々の鍛錬。それに感謝する。
 気合いを発して掴みあげるとそれを無造作に放り投げる。
 はたして埋もれていた先から、人の姿があった。
 近寄りてみれば、弱々しいながらも息がある。
 花盛は安堵のため息をついた。
 まず、一人。
 思わず緩んでしまった頬であったが、それもやがて振り返る。
 こちらを見るは、賊徒の群れ。
 追っ手か、それとも追い剥ぎか。
 どちらでも良い。
「黒椿、その方を護れ。私が独りでやる」
 いつもなら軽口を返す化生も、このときばかりは大人しかった。
 その静かな声に、黒椿は確かな怒りを感じとっていたからだ。
 だが、そのような機敏も持ち合わせておらぬ愚者もいる。
「なんだ? 知らない女だな?」
「ここら辺じゃ見ない顔だな」
 ニタニタと値踏みするその顔。
 花盛はその顔の先に、倒すべき宿敵の姿を視た。
 努めて冷静に、言葉を返す。
「喜べ、刀などは用いぬ」
「あん?」
 女如きに挑発されたのが答えのが、賊が眉を歪めて刀を抜いた。
「テメエ、殺しながら犯ってやんよ!」
 袈裟斬りに放たれたその一撃は、何年も素振りを繰り返してきた花盛からすれば欠伸を堪えるほど遅い。
 避けるまでもない。
 そのまま腕を伸ばし、片手で受け止めた。
「なにぃ!?」
 片手で止めたこともさることながら、抜き身の刀身を掴みあげる所業。
 鬼人の如き膂力が、それを可能にしていた。
 押すも引くも出来ず狼狽える賊。
 引き際を計れぬ愚か者に対し、花盛は拳打を放つ。
 容赦のないその一撃は、賊の顔半分を吹き飛ばした。
 刀から手を離して崩れ落ちる男にむかって、花盛は掴んでいた物を放り投げた。
 それは傍らへと突き刺さる、まるで墓標のように。
 凄惨な光景に、男達がたちすくむ。
 無様。
 戦場、地獄にて死を覚悟せぬなどとは。
 未熟を理解させるために、花盛は棒立ちになっている賊徒に次々と襲いかかった。
 悪鬼。
 それをくい止める力は男達にはない。
 暴虐の風がおさまれば、そこに残っているは花盛ただ独り。
「怒りこそあるが、自分でも驚くほど頭は冷えている」
 辺りを見渡し返せば、そこは焼け野原の生き地獄。
 自分が生みだした地獄など、それに比べればさざ波程度しか無い。
「ふん…この鼻につく匂い。皆半分の血潮の沸り。今度こそ、決着をつけよう」
 この地獄に終止符を打つために、花盛は次の場所へと駆けていった。

 原を駆けていく賊の一団。
 獲物を見つけようと前方を見つめ、我が物顔で駆けていく。
 愚か。
 そんなことだから足下に張られた罠を見過ごしてしまうのだ。
 地表すれすれに張られていた鋼線が、馬の脚を引っかけなぎ倒す。
 投げ出される賊徒。
 そこへと、木々の上で忍んでいた浄雲が跳躍した。
「外道を始末するのに術等不要」
 両手に握るは手裏剣。
 彼らの無防備な背目がけて、それらを幾重にも放った。
 狙った先へと寸分違わぬ技量の冴え。
 忍の技がそこにあった。
「音羽衆が手練手管を御見せしましょう」
 声がした頭上を見上げるが、そこに浄雲の姿はもう見えず。
 代わりにその素首を刀の前に差し出した。
 首が飛び、血飛沫が飛んで周りの目隠しの役を立つ。
 襲撃者の姿が見えず、襲われ、混乱する男達。
 そこにはかつて傭兵として任を果たしてきた一党、音羽が妙技がそこにあった。
「ちくしょう! どこだ! 誰だ!」
 目に血糊を受けたまま、刀をやたらめたら振り回す。
 しかしそれは同士討ちを生むだけだ。
 斬られた者同士、互いに相手を攻撃しだす。
 斬られ苦しみ者に対し、浄雲は臓腑を抉って介錯を務めた。
 もし彼女を把握できた者がここにいたならば、面を被っていたことがわかったであろう。
 般若の姿で人を屠り、返り血を面で受けるその姿は、まさに鬼という他ならぬ。
 言葉を発せずただ淡々と、ただ殺めていく。
 男達の悲鳴だけが、次々と起こっていた。
 恐慌にかられ、仲間達の悲鳴から離れる者たち。
 しかしそれは愚かなこと。
 だからこそ二の舞を演じてしまうのだ。
「あわわわわっ!?」
 十重二十重に張り巡らせた蜘蛛の糸。
 それにかかりて無様を晒す。
「がっ!」
 したたかに身体を打ちつけた情け無い声。
 それは浄雲に居場所を教えるも同じ。
 忍び寄る影が、彼らを飛び越した。
 ヒュンッ。
 首に鋼糸を巻き付け、木の幹を利用して縊りあげる。
 目も見えず、声も出せずもがく賊徒たち。
 大声を出せば、助けてと懇願したのであろうか。
 笑止。
「一人たりとも生かしては帰さぬ。外道葬るべし」
 かつて彼らがそうしたように、浄雲は一切の情けをかけずに葬り去った。
 面を脱げば、汗もかいてはおらぬ白い美貌。
 忍が顔を見せるは完了の証。
 そこに立っていたのは、浄雲ただ独り。
 意識をたぐれば、式はすでに砦の道筋を掴んでいた。
「一端、花盛殿と合流すべきですね」
 一陣の風が吹く。
 そこに残るは、物言わぬ屍のみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『最悪鬼『右衛門炉蘭』』

POW   :    最悪鬼術【女体地獄回廊】
戦場全体に、【町や村からさらってきた全裸の女性達】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    毒鳥煙舞【鴆】
全身を【猛毒を周囲に振り撒く紫煙】で覆い、自身の【自分以外を犠牲にして生き延びるという意思】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    「攻撃をやめて、俺を逃せ、追ってもくるな」
【右衛門炉蘭の声かけ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花盛・乙女です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 陽も幾分傾きかけてきた。
 猟兵達が辿り着いたのは入り江の洞窟。
 波によって岩盤が削られ、年月を経て形成された天然の迷路。
 そこかしこに手を加えられ、砦へと変貌していた。
 灯り取りや吹き抜けの穴から、ちらほらと松明の明かりが見える。
 洞窟近くの波止場には、武装船や小舟も見える。
 だが人の姿は無い。
 猟兵達がすでに蹴散らしてしまっているからだ。
 洞窟内へと足を踏みいれば、人が棲んでいた跡があちこちに見える。
 そして、逃げ損なった人々の仏も。
 その亡骸から、どのような暴行を受けたのか想像に難くない、眉をしかめる骸の数々。
 外道達はすでにこの世を去ったが、まだ敵の親玉はこの先にいる。
 どれほど曲がりくねった道をのぼったであろうか。
 潮風が点々と穿たれた穴から吹きつけ、汗をすくう。
 上層へと辿り着いた猟兵達が見た物は、焼け焦げた玄室であった。
 火災でも起こったのであろう。
 広い室のあちこちは焼け焦げていた。
 そしてその先に、場違いなほど豪華な屏風を背に、男が嗤っていた。
 げへ、げへ、げへへへへ!
 嫌みたらしく煙管をふかすと、男は立ち上がってわざとらしく拍手する。
「ようこそようこそ、俺様の城へ」
 人の神経を逆撫でする声。
 猟兵達はこの者が、件のオブリビオンであることを瞬時に判断した。
「俺様の手下はお前らに殺されちまったなぁ……どうだい、自分より弱い者に力をふるうのはよぉ、楽しかったのかい!?」
 げっへげっへげっへ!
「お前らと俺の何処が違うってえんだい? 人より強い力をふるうことの何がいけない? 散々感情にかまけてぶっ殺してきたんだろ? 俺みてえに感情の赴くままに殺してきたんだろぉ!」
 オブリビオンは部屋全体に響くほどの大声で猟兵を挑発する。
 おかしくておかしくてたまらないといった不遜の態度。
 もう限界だ、と猟兵の一人が踏み込もうとしたとき、奴は飛び退いた。
 煙管からもうもうと煙がたちこめ、視界を曇らす。
 そしてそのさきから、右衛門炉蘭の哄笑がこちらに突きつけてくる。
「さあさあ殺しにきてみろよぉ! 顔真っ赤にしてきてよぉ! 嬲って犯して、俺と同じようにさぁ!」
 げっへげっへげっへ! げへへへへへへへへ!
 着物の裾を翻し、脱兎の如く距離をとる。
 
オブリビオン「最悪鬼『右衛門炉蘭』」は、一目散に逃走を試みるのだった。

※敵のユーベルコード【女体地獄回廊】は一章における猟兵の活躍によって不完全な迷路となっています(壁の一角が組み合わさっていない等)
※参加者全員まとめての描写になります
※戦闘勝利後、軽いエピローグを挿入します
※完全アドリブでよければ◎を 描写が必要なければ×を
※○~~~~~と記載あれば適宜アドリブを入れて描写致します
※プレイングは6/18(金)8:30~より送信してくださるようお願いします
レジーナ・ドミナトリクス
敵の手の内は凡そ知っているのです、先手を打たない理由がありますか。

【真の姿/覚醒態】
砦の外、洞窟の上から【迷罝不門】で内部を侵蝕するわ。
目的は他の猟兵の誘導や、何より回廊に捕らわれている女性達を可能な限り護ること。
奴のことだから盾にでもするのでしょう?
張り巡らせた根で覆ってしまえば、多少派手に戦っても傷を負わせることは防げるはずよ。
ご要望どおり、私自身は攻撃も追跡もしないであげましょう。
私の足下を存分に逃げ回るといいわ。

殺しは趣味でないのだけど、似たようなものね。
こうして他人を弄ぶのは楽しいもの。
だから、そういう者こそ肝に銘じなければいけないルールを教えましょう。
秩序を乱す者は裁かれるのよ!


鹿村・トーゴ
へぇ?あからさまに挑発してくれるねェ
アンタとの違いなんか真剣に考えるかよ
オレは殺したい奴を自分で決められる身分じゃねーが出来ればアンタの様な外道を殺りたいね

UCで全強化
代償は毒、敵UCの毒へ抵抗する為にも道具から解毒剤を含む
以降常時【毒使い/激痛耐性】

敵背後からは【野生の勘/追跡】し接近、クナイ数本でも狙い撃つ【暗殺/念動力/投擲】
敵の行く手を遮るか鉢合わせなど正面迎撃になれば敵の速さを逆手に取り
1章で拾った女着物に隠した七分割の七葉隠を突き出し【カウンター/串刺し】
一番の目的は敵の殺害

直接深手を与え難い状況なら敵逃走妨害に動き猟兵の居る方へ誘導出来るよう足止めでも体当たりでも試す

アドリブ可



エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎 ◎

くだらぬ御託はよい、敵を屠るのに理由はいらぬであろう。
ほれ、マニトゥに狼達よ、あの痴れ者を追い回してやるがよいぞ。
とはいえ、迷路を駆け回られては敵わぬ、密かに風の精霊を敵へつけて追跡しておくかの。
風の精霊を介して敵の様子や位置を把握して、お味方の猟兵へ情報提供、ついでに精霊術士の力で敵の周囲の精霊に働きかけて逃走の妨害をしてやるわい。
声かけによる言霊を使って悪さをしてくるようなら精霊と共有する五感のうち聴覚を遮断しておき、可能なら追撃中のマニトゥや狼達の遠吠えで敵の声をかき消してみるのじゃ。
この後は怪我人の治療や復興の手伝い等で忙しくなる、手早く済ませたいものじゃな。


ラファエラ・エヴァンジェリスタ

あれは、何を言っている?
嗚呼、あれは、我らを正義の味方気取りだと思っているのか
…私は単にいけ好かぬからあれの部下を殺めただけだよ

他の猟兵と連携
UCを使用しつつ
「茨の抱擁」で、敵の足元の影から茨を顕現させ、纏わりつかせて足止めと吸血を
我が愛馬も騎士の馬も悪路走破などお手の物
逃げるであろう方向に騎士を回り込ませながら、「黒薔薇忌」を振り鳴らす
敵の攻撃は馬が避けるか騎士がこの身をかばうか、いずれも叶わねばオーラ防御を

貴様を逃がせ、追っても来るなか
嗚呼、それはあまりにも難しいルールだな
無論破ろう
テネブレ、あれを踏みつけ蹴飛ばしておくれ
我が騎士よ、あれを蹂躙し尽くすが良い
…私はあれが嫌いなの


ルパート・ブラックスミス

貴様が続ける地獄を我らが終わらせる。
それ以外の意義を見出す必要はない。
"自分にとっては"、貴様は所詮その程度の存在だ。

UC【神・黒風鎧装】。漆黒の旋風を迷路内に拡散する【範囲攻撃】。
戦場である限り余さず効果範囲、ましてや不完全な迷路を覆うなど容易い。

このUCの【呪詛】は弱い意志や無意識から…つまり念頭に置いた行動以外を封じる。
俺から『逃走』するならばその間は咄嗟の『回避』も、他の猟兵への『索敵』もロクにできないというわけだ。
後は【集団戦術】による追い込み、【誘導弾】として爆槍フェニックスも放ち、他の猟兵の下へ【おびき寄せ】る。

トドメは…あの剣士に任せていいだろう。
それが貴様には相応の末路だ。


陽殿蘇・燐


楽しいはずがないでしょう?八つ当たりだもの。
中途半端な悪を見た、そのことへのね。

安い挑発ね。まあ、このまま逃がすつもりもないから、追いかけるのだけれど。
常にUC発動の気概でなくてはね。だって、ラスボスというのはそういうものでしょう?

『烏揚羽』による高速移動で追いかけるわね。
そう、毒煙…味方のことも考え、『そのUCを使った』という過去を『黒揚羽』で焼却した方が良さそうね?
それと『紋黄揚羽』での属性増幅は、私だけでなく他の方のもできるのよ?やったことがないだけで。

間違えないで欲しいのだけれど。私はね、正義ではなく悪なのよ。そう望まれた存在。
燃やすと決めたら、燃やすのよ。


花盛・乙女


笑うな、喋るな。耳障りだ。
力には責任が伴う。律する責任だ。それを果たさぬ貴様と同じと思うな。

二刀で旋風を起こし煙を払い追跡する。
冷静に。あの時と同じ轍は踏まない。
娘たちを、このような…!
傷付けずに救う事が出来ぬのであれば、追跡を最優先だ。すまない、必ず助ける。

対峙したとて堂々と立ち合いとはなるまい。
攻撃は捌き、仲間と連携し、一瞬でも時があれば神速の一閃【雨燕】を放つ。
足か妖術の源を見切り、狙う。
必ず私が、この手で地獄へ送り届けてやる。

我が名を聞け、炉蘭。
羅刹女、花盛乙女。
名など脳髄に刻まなくていい。だが家名に覚えあらば、己がばら撒いた業が刃を向けたと知れ。

今度こそさらばだ。忌まわしき、父よ。


音羽・浄雲
※アドリブ歓迎です。


感情の赴くままに。
復讐者として刃を振るった浄雲には少しばかり耳の痛い言葉だった。
「それでも、わたくしと貴方とでは違うのでしょう」
それは己に言い聞かせる様に。
血の滲む様な鍛錬と狂いそうな程の激情に身を苛まれて幾星霜。故にこそ音羽浄雲は此処に在る。
「決して逃げられぬものがあると教えて差し上げましょう」
あくまで冷静に、標的を逃さない為の選択を。
「随分と逃げ足に自信があるようですが、己の影から逃られますか?」
術を編む浄雲の身体は闇に溶け、時には縄の様に締め上げんと迫り、時には霞の様に躱す。
まさに千変万化。
「報いを受けよ」
かの者に奪われた者達の想いをのせ、影より放たれるは刃の一閃。



 オブリビオンが猟兵たちから姿を隠そうと奥へと逃げる。
 そうはさせじと敵が逃げた跡を追いかける猟兵たち。
 しかし独り、レジーナ・ドミナトリクスはそこへと残っていた。
 一目散と遁走を試みるあの姿は、彼女が予想した行動とほぼ同じ。
 ならば、これから奴が取るであろう行動も読み通りであろう。
「敵の手の内は凡そ知っているのです、先手を打たない理由がありますか」
 壁の方へと歩き、そっと手を触れる。
 レジーナがここへ来るのは初めてではない。
 オブリビオンを倒すために、仲間と一緒に来たことがあるのだ。
 あの時も敵は惨劇を作り出していた、そして今もこの地で拡げようとしている。
「奴のことだから盾にでもするのでしょう?」
 以前、奴は女性を盾に逃げようとしていた。
 性根が変わってなければ今回も同じように、卑劣な手段をあれこれと取り逃走を果たそうとするのだろう。
 そのことを知っていたレジーナは、女性達をあえて別次元の牢獄へと閉じ込める手段を使った。
 しかし完全ではない。
 策を万全にするために、レジーナは己の身体を変貌させていった。
 人型から、異形の姿へと。
 見る者によってはそれはカマキリに見えた。
 前脚の先からは鞭のように伸びる触手が幾重に分かれ、後脚からは茎の様なものが伸びていた。
 これがレジーナの真の姿。
 ふわりと浮かぶとそのまま砦の外へと飛び、全域を見下ろせる場所へと腰を落ち着ける。
 そこに大輪の花が咲いた。
 芽吹く、いや根付いたというのだろうか。
 レジーナの下半身は毒々しく色づく花へと変貌し、そしてそれは根を伸ばし徐々に拡がっていく。
 紫の花々と根が、砦を蝕んでいき絡みついていく。
 核となったレジーナに、浸食していった地形の情報が流れ込んでいく。
「ご要望どおり、私自身は攻撃も追跡もしないであげましょう」
 砦を己と同化させていくレジーナ。
 そしてその範囲が、どんどんと大きくなっていく。
 仲間のあとを、追いかけるようにと。

 猟兵から姿をくらまそうとする右衛門炉蘭。
 追っ手を避けるために幾つも枝分かれした、洞穴の逃走路。
 その影に漆黒が追いついた。
 陽殿蘇・燐は、まるで最初からそこにいたかのように、通路の先で悠然と佇んでいた。
 その背のうしろに烏揚羽がひらひらと飛んでいる。
「げへへ、ようやく追いついたか別嬪さんよぉ! 息切れして顔真っ赤かい?」
 安っぽい挑発。
 燐は語らない。静かに、彼女は怒っていた。
 挑発に乗せられたのではない。三下ぶりに呆れているからだ。
「間違えないで欲しいのだけれど」
 髪をかきあげ、冷ややかな眼で燐は炉蘭を射貫く。
「私はね、正義ではなく悪なのよ。だからこそアナタを許すことが出来ないの」
「ほう?」
 げへへへへへ。
 女の戯れ言と奴が嗤う。
 その言動、挙動、何もかもが鼻につき、そして確信する。
 右衛門炉蘭はラスボスに相応しき存在では無い。
 何もかもが中途半端、せいぜいチュートリアルに出てくるボスが精々だ。
 その結末はやられ役が似合っている。
 そう、これは八つ当たり。
 燐は正義の味方では無いのだ。
 膨らむ殺気。
 彼女を素通りしては逃れらぬと判断し、炉蘭は身構えた。
 煙管を構えての……蹴り!
 上に集中させての下からの攻撃。
 その足先が燐に当たる前に、炉蘭は自ら飛び退いた。
「ちぃっ!」
 舌打ちして脚を眺めれば、己の脚に火傷。
 いつの間にか、燐の周りを揚羽蝶たちが、護衛するようにひらひらと舞っていた。
「胡散臭えクソアマがぁ!」
「喋れば喋るほど格を下げるわよ」
 相手にせず燐は相手の後ろへと瞳を向ける。
 そこには追いついた仲間が一人。
 鹿村・トーゴがクナイを手に構えていた。
「くそがぁ……」
 既に炉蘭の背には数本クナイが刺さっていた。
 燐に集中していた炉蘭は、鹿村の奇襲を察知出来なかったのだ。
 悪党はしぶとい。
 二人から距離を一端とり、炉蘭は口の端を吊り上げた。
「これはこれはお仲間の登場だねえ、ご大層な挨拶痛みいるよ。俺を殺す気分はどうだい? それとも、哀れに思って助けてくれるのかい?」
 げっへへへへへ!
 空元気の空威張り。
 鹿村の眼はそうほざく奴を見据えて赤く光っていた。
「オレ、頭わりーからよ。アンタとオレとの違いなんてわかんねーわ」
 他者を殺めてきたのは事実。
 そして自分は、罪も無い人を殺めてしまったこともある。
 この力は何のためにあるのか悩んだこともある。
 しかし、もし正しきことの為に振るえるのならば。
「……アンタの様な外道、実に殺りたいね」
 挑発にのる愚か者と罵るなら罵れ。
 この場で、オブリビオンを葬る。
 鹿村の眼は本気であった。
 燐とは違う決意。
 この二人を避けては通れぬと思った炉蘭は、両腕をまろび出した。
 げへへへへへ……。
 両端を大きく吊り上げた炉蘭の口から紫煙が漏れ出し身体を包む。
 周囲に立ち込むもうもうとした煙。
 相手の策がいまだ読めずにいる二人は、煙の間合いから遠ざかる。
 離れても鼻腔をくすぐる異臭と痛み。
 鹿村はこれを毒であると即座に看破した。
「ちょうど良いぜ」
 腰元から丸薬をとりだし口にふくむ。
 解毒剤であるのだが、これを見抜いていた訳ではない。
 己の技の負荷を軽減するためだ。
「燐、オレは今からあそこへ突っ込む。毒だから近づくなよ!」
 同意の声を得られぬ内に、鹿村は煙の中へと飛び込んでいく。
 さすがの燐も視界を阻害する煙の中で戦う愚はしない。
 煙に包まれた中には、まだ幾重にも通路が見えていた。
 あいてはまともに戦う気はないのだろう。
 煙幕を張って逃げるに違いないのだ。
 毛頭、それをみすみす見過ごす訳も無い。
「逃がすと思って? ラスボスからは逃げられないのよ」
 掌をかざした燐から多彩な色の蝶が舞いだしていくのであった。

 もうもうと立ちこめる煙の中。
 常人であれば咳き込むだけではなく、血反吐をはいてもがき苦しむことであろう。
 だが疾走する鹿村には、その様子は見られなかった。
 クナイの投擲は、煙幕の中にあってもその精度に違和感を感じない。
 降魔化身法。
 己が身に化生を宿らせ肉体を強化する、高い代償を伴う荒技だ。
 毒を持って毒を制す。
 解毒剤をつかって押さえこまなければいけない程の強毒は、外から入ってくる毒を拒もうとしてくれた。
 あとは己の技の冴え。
 培ってきた忍びの業が、オブリビオンとの距離を確実に詰めていった。
「げへへへへへっ!」
 炉蘭が飛ぶ。
 三階四階建てを一足飛びに飛び越すような跳躍をみせて、炉蘭が逃げる。
 そうはさせじと鹿村も飛ぶ。
 クナイの一投、そして左右に分けての二投。
 相手の眉間を狙った一刀は身を捻られて躱される。
 だがそれでいい。
 見当違いの方向へと投げた他のクナイを、念動によって曲げる鹿村。
 体勢を崩した炉蘭の背中に、深々と命中させる。
「くそがぁっ! この……この大道芸野郎がぁ!」
 炉蘭を包む煙が伸びる。
 それは空中で凝固し台座をかたどった。
 そこへと敵は飛び、無理矢理軌道を変える。
 台座から台座へ、変速三角飛びの連続。
 力を使った鹿村が意識を集中するより速く、炉蘭の回転蹴りが強襲してきた。
 今度は鹿村が受ける番であった。
 蹴りを受け、高所から地へと叩きつけられてしまう。
「がはっ!」
 苦悶の声をあげた鹿村。
 身体が震え、身悶えしているではないか。
 それを見て愉悦の笑みを浮かべる炉蘭。
「げへへへ、俺様に刃向かおうとした罰だぁ……止めさしてやるぜ!」
 落下に己の加速を加え、弾丸のように獲物目がけて飛んでくる。
 鹿村は動かない。
 先の一撃が効いたのか。
 弱者をいたぶる、喜び。眼がランランと輝き色を濃くする。
 鹿村をまさに屠ろうとする刹那、炉蘭は確かに彼の声を聞いた。
「かかったな、阿呆が」
 鹿村の胸元でキラリと光る何かに気づいたが、加速がのった炉蘭に己を止める術はなかった。
 モズのハヤニエのように、炉蘭の身体に太刀が深々と突き刺さった。
「ぎゃああああああああああっっ!!」
 洞窟を越えて天まで貫くのではないかと思わせるような絶叫を聞きながら、鹿村が立ち上がる。
 敵を欺くにはなんとやら。
 あえて隙をみせることで攻撃を誘い、暗器によって仕留めあげる。
 七葉隠。
 刀身が透明であるこの太刀は、分割して五体に隠すことが可能であった。
 最初からクナイだけを使っていたのは、この時のためにある。
 ぐふりと口から漏れた血を拭いながら、鹿村が満足な笑みを浮かべる。
「釣果は上々……やってやったぜ」
 死闘は十分に役に立ったようだ。
 己の後方から、次々と仲間がやってくる気配を鹿村は感じるのであった。

「ようやく追いついたのう」
「どうやら初撃を与えたようだな」
 エウトティア・ナトゥアがマニトゥを、ラファエラ・エヴァンジェリスタが馬を駆ってやってきた。
 こういう場合、人より動物の感覚の方が役に立つ。
 天然の洞窟は一端身を隠されると非常に厄介だ。
 追いつき足止めしてくれたのはありがたい。
 ルパート・ブラックスミスと花盛・乙女もその後からやってくる。
「こうやって貴殿とここを駆けるのは二度目だな」
「ああ、だが三度目は無い」
 ここで、これで終わりにする。
 花盛の瞳に映る決意は固い。
 ルパートはそれを確かめ頷いた。
「決して逃げられぬものがあると教えて差し上げましょう」
 音羽・浄雲も静かな口調で同意した。
 次々とやってくる味方の増援に、鹿村は安堵した。
 深手を負わせたが自分も痛手を負ってしまった。
 少しは休ませて貰うことにしよう。
 息を整える鹿村であったが、炉蘭はそうはいかぬ。
 せっかくだ。せっかく拾ったこの命。
 路傍の露と変えては悪党が廃る。
 近づいてくる集団にむかって毒煙を放つ。
 ……はずだった。
「なにぃ!?」
 煙の中へと巻き込むはずだったが、吹き出す気配は無く。
 オブリビオンの目が驚愕に開かれた。
「運が悪かったわね」
 その無様な姿を見下ろして、仲間の後方から燐が微笑んだ。
 仲間に追随して、蝶の群れが舞う。
 広範囲は無理だが、仲間を守れる範囲なら。
 羽ばたく鱗粉が、敵の放つ毒煙を無効化していた。
 完全に、とはいえない。だがつかの間程度なら。
 その貴重な程度が、敵への距離をさらに追い詰めることに成功する。
 陸にあがった生きのいい魚の如く暴れる炉蘭。
 まな板の鯉なぞなりたくはない。
 その必死さ。
 とっておきを出さざるを得ない状況に、炉蘭は咆哮した。
「ちっっっっっくしょおおおおおお!!!」
 すると敵を護るように、壁が次々と出現した。

「これは……!?」
 エウトティアの表情が変わった。
 周囲に形成された壁の数々。
 行く手を阻むように囲まれたその眺めは。
「まるで迷路だな」
 ラファエラの声。
 彼女が言う通りに、自分たちを取り囲むこの状況は、迷路というほかにならない。
 だがこれを造った建築家はよほどの悪趣味らしい。
 壁は人体で出来ていた。
 腕や脚をあらぬ方向へと曲げさせられた娘達が、複雑怪奇に組み合わさせられていた。
 あちこちから吐息が漏れ聞こえる。
 彼女たちはまだ生きているのだ。おそらくは攫われた娘達であろう。
 物言わぬ土塊であるならば、破壊して先に進むことも出来る。
 だが、ましてや、利用された人であるならば。
「どうするべきなのじゃ……?」
 戸惑い、追うのをやめて助けるべきか。
 猟兵とはいえ年端もいかない少女。
 同じ女性の悲惨をつきつけられては無理もない。
 目の前でささくれた木片のようにこちらへと手を伸ばす女性達の姿が、我が身のように感じ心が締めつけられる。
 躊躇するエウトティアの耳に、ルパートの叱咤が届く。
「ここで奴を倒す。逃げられれば更に人が死ぬぞ」
 非常な決断。
 だが、重要な決断。
 しかし彼女はやはり猟兵であった。気持ちを切り替えようと深呼吸する。
 見ればラファエラはひとつ先をかってでて進んでいるではないか。
「お味方の足手まといには……なりませぬぞ!」
 呼び笛を口につけ、大きく息を吹く。
 自分を鼓舞するために、同胞を呼び寄せるために。
 一人では立ちすくんでいたかもしれない。
 だが自分には仲間がいる。
 これまでのことを歩んできた、動物たちがいるではないか。
 エウトティアの呼びかけに応じ、狼たちが群れなして先を行く。
 複雑怪奇な迷路であるが、これほどの数で攻めれば、二度迷うことはない。
 ところどころで遠吠えが聞こえる。
 彼女には理解出来ていた。
 それが地形を知らせる同胞達の、心強い咆哮だということ。
「わしはサポートじゃ。お味方がたよ、頼みましたぞ」
 両目を閉じて、エウトティアは祈る。
 精霊が、彼女に応えて先を行く。
 風が迷路を突き抜ける。
 狼たちが知らせてくれたその先へと。
 吹きだまりの無い、風の通り道へと。
 その先はきっと出口、オブリビオンが逃げた先。
 それを仲間達に知らせれば、敵に追いつけるのを手助けできるだろう。
 娘達の困憊、精気の無さ。
 風が人壁を突っ切るたびに、そういった情報までもが、少女の身に伝わってくる
「絶対に、逃さぬのじゃ」
 すがるように、エウトティアは杖を力強く握るのであった。

 幼き少女にああ言えど、物言わぬ兜の中で、ルパートは恥じていた。
 眼前に拡がる人の壁、それを救わぬ自分自身に。
 騎士を嘯く不甲斐なさを罵るが良い。
 人道にもとる行い。
 本質は奴と同じでは無いのか?
 否。
 断じて否。
 ルパートの内から焔が盛り、鎧の隙間から溢れ吹き出していく。
 奴が続ける地獄を我らが終わらせる。
 それ以外の意義を見出す必要はない。
 汚名は、任務を完遂することで雪ぐ。
 ならばここは、あえて淑女の涙を振り払おう。
 己に対する憤りと、オブリビオンに対する怒りが、内なる炎を更に燃えさからせ、背を突き抜け噴きあがっていく。
「逃さぬ。絶対にだ」
 罪を浄罪の焔で焦がしながら、炎はルパートに大いなる蒼い翼をもたらした。
 蒼炎の翼がはばたけば、漆黒の意志が周囲に拡散していく。
 それは迷宮の壁を突き抜け、オブリビオンの背に迫ろうとしていくのだ。
「自分の手は既に朱に染まっている。なれば行け、ニクス!」
 太槍フェニックスを放り投げれば、それは少女の祈りの風に乗って先を飛ぶ。
 噴きあがる炎槍は道灯り。
 闇夜を照らし、自分を誘わんかとする導きの光。
「地獄の騎士が、地獄へと貴様を連れて行く!」
 両翼を勢いよく羽ばたかせると、ルパートは敵の後を追った。

 ルパートの憤り。
 それと同じく、花盛も憤りを感じていた。
 両脇に拡がる、人壁の無惨な様。
「娘たちを、このような……!」
 膂力で娘達を引き剥がすのは容易い。
 だがそれでは敵の思う壺であろう。
 非情。
 ぎりりと憤怒を噛み殺し、花盛は足を早めた。
「すまない、必ず助ける」
 この不甲斐なさは、奴を屠ることで必ず晴らす。
 息を整え、娘達の様をこの目に焼きつける。
 それが自分の咎だから。
 始末は、必ず片をつける。
 無理矢理にと息を整え、花盛も味方の後を追うのだった。

 馬を駆ってラファエラは先を行く。
 あれは、何を言っていた?
 手綱を操りながら、ラファエラはオブリビオンが口にしていた言葉を反芻していた。
 嗚呼、そうだ。思い出した。
 あれは自分たちを正義の味方とほざいていた。
 愚かな。
 もとより正義の味方など自称はしておらぬ。
 ただ気に入らぬ故に殺めただけ。
 誰にでも好嫌はある。それは当然のことだ。
 別に誇るも蔑む必要が無い。
「その通りだな」
 目の前でご高説を垂れ流した右衛門炉蘭。
 その姿を思い返せば、ラファエラの胸中に一つの感情が膨らむ。
 嫌悪。
 それ以外にどんな感情がある?
 感情の赴くままに殺してきた。その通りだ。
 だからこそ、この感情の赴くままに奴を屠ろう。
 さすればあの外道も、笑って逝けるかもしれない。
 愛馬テネブレを駆る手綱に力がこもる。
 その黒き影に混じり、また別の影が潜行し先をいく。

 障壁を造り、ひとまず時を稼いだオブリビオン。
 だが逃しはしない。逃してはならぬ。
 炉蘭の影がぬるりと動いた。
 起き上がった影は人の姿を取り、先へと飛んで彼の行く手を阻む。
「随分と逃げ足に自信があるようですが、己の影から逃られますか?」
 人影は静かに忍刀を構え、逃走路を防ぐ。
 音羽忍法「影女」、影から逃れられぬ者など無し。
 浄雲はこちらを睨む敵の眼を、真っ向から受け止める。
 かつてあのような眼で、凶刃を振るった過去があった。
 殺戮の刃。
 殺めた数でいえば、奴と違いはないのだろうか。
 感情のままに、そう言われれば返す言葉も見つからない。
 元来口が上手いわけでもない。
 だが、それでも。
「それでも、わたくしと貴方とでは違うのでしょう」
 この刃はかつてのように、言われるがままに、復讐のままに振るうに非ず。
 今の自分は、獣のような此奴ではない。
 言葉ではなく、行動で示す。
 疾風のように浄雲が動いた。
「うろちょろとうぜえ奴らばっかだぜえ!」
 勢いよく、身体に刺さっていた太刀を投げつけてくる。
 だが朱に染まった七葉隠はすでに透明にあらず。
「主が違えば、宝も持ち腐れですね」
 簡単にそれを躱し、飛んだ。
 普段なら、地形を利用し敵に迫るだろう。
 だが人壁を蹴って事を成すなど今は必要無し。
 避けられる恐れの手裏剣も投げる必要無し。
 我が身一つで事を成す。
 虚空へと飛ぶ忍びの姿。
 オブリビオンの目が大きく飛んだ忍びの姿に釘付けとなった。
 それが瞬時に、炉蘭の視界から消え去った。
「どこだ!?」
 驚愕する炉蘭。
 辺りを見回すが、浄雲の姿は見えない。
 完全に見失った。
 その虚の瞬間を突き、地に伏していた七葉隠が勢いよく跳ねる。
「報いを受けよ」
 そこから浄雲が勢いよく飛び出し、太刀でオブリビオンを一閃した。
 片腕が、おおきく跳ね飛んだ。
 影女。
 その名の通り、忍びは影に潜む。
 地に横たえた太刀、それがこさえた僅かばかりの影であっても。
「あ……ぐあああああっっ!!」
 だれが見てもわかる致命傷。
 傷口を押さえて絶叫あげる炉蘭。
 転げ回りながらも、必死で猟兵から距離を取る。
 その片腕は、迷宮の壁へと。
 この人体迷宮は、オブリビオンが造り出した空間だ。
 だから構造を思い通りに造り直すことも可能。
 ……だったはずだった。
 壁に手をついた炉蘭に木々の根が食い込んでくる。
「なっ!?」
 オブリビオンの眼が逆立つ。
 今や迷宮は彼の思い通りにはいかなかった。
 その証拠に、根は炉蘭の身体にがっちりと食い込み、彼を掴んで離さない。
 そして迷宮が、敵の意のままとは別の形で、構造を変えていくのだった。

「ようやく根を張り終えました」
 仲間たちより遙か遠く、砦の天辺で妖しく華を咲かせながら、レジーナは月夜を見上げた。
 半身より生ぜられし根の数々は、砦全体を覆い尽くし木々の山と化していた。
 今や居城は我が身体の一部。
 その中での動きは、手に取るように分かる。
 木々の先、根の壁に嵌ったオブリビオンの動揺が、遠くレジーナの意識に伝わってくるの。
 糸に絡まって藻掻く獲物の振動を感知する蜘蛛のように、その微動をレジーナは味わっていた。
 こうやって、弱者を弄ぶ感覚はわからないでもない。
 所詮奴と自分は同じ穴の狢なのかもしれない。
 だがだからこそ、そういう者こそ肝に銘じなければいけない掟という物がある。
「秩序を乱す者は裁かれるのよ!」
 砦が蠕動する。
 その足下、迷宮が姿を変えていく。
 人壁を覆って攻撃から回避するために。
 壁がかき分けられ、オブリビオンの道を造るために。

 道は示された。
 みよ、彼方より漆黒の馬を駆りて、貴人がやってくる。
 それに先駆けるように蒼槍もやってくる。
 それは鬼火を従えて、死期を伝えにやってくるヴァルキリエのよう。
 黒手袋が指を鳴らせば、オブリオンの足下に茨が生まれ絡みつき、無理矢理壁からその身を引き剥がす。
 今度は茨に絡まれて藻掻く敵。
 その胴に深々とルパートの太槍フェニックスが突き刺さった。
「あ……がぁっ……」
 血反吐吐いて吹き飛び、投げ出される炉蘭。
 傷口を、地獄の業火が罪を悔いろと焦がしていく。
 何も出来ずに放り出され、喚いて叫ぶ。
 それは慈悲か、罵倒か。
 その呪詛がラファエラへと到達しようとしたとき、清浄なる風が彼女を追い越した。
 巫女の祈りを受けて、迷宮を駆け抜けてきた一陣の風。
 その風に乗って、揚羽蝶の群れがキラキラと羽ばたいていた。
 柔らかな空気がラファエラを包む。
 悪鬼の呪詛。
 それは貴人の耳に届く前に雲散霧消していった。
 しかし、もし届いても、彼女はどうということはなかったのかもしれない。
「……よく戻った」
 ラファエラの前に駆けるは、いつの間にか現れたる白き騎士。
 敵の悪意を受け止めて、ラファエラを護って武器を握る。
「我が騎士よ、あれを蹂躙し尽くすが良い……私はあれが嫌いなの」
 鼓舞と、蹂躙された者への鎮魂。
 それをこめてラファエラは手鈴を鳴らす。
 主の意を受けて、騎士は剣を掲げて突進する。
 もはやよけること叶わず。
 袈裟斬りに、騎士はオブリビオンをたたっ斬った。
 足りぬ。
 その一撃では、陵辱された者たちへの供物とは出来ぬ。
 遅れてやってきたラファエラの愛馬、テネブレが勢いよくオブリビオンを蹴り跳ね上げる。
 憐れ、弱者を蹂躙し続けてきた悪鬼外道、右衛門炉蘭は大きく大きく跳ね飛ばされ、切れた凧のように飛んでいった。

「ご……ふ……」
 喉につまった血反吐を吐き散らし、右衛門炉蘭が息を吸う。
 よろよろと起き上がり、周囲を確かめ笑みを浮かべた。
 満身創痍、だがこうして生きている。
 猟兵の姿は見えない。
 跳ね飛ばされた衝撃は大きいが、行方を眩ますのに一役買ったようだった。
 逃げ切った。
 そう思い、弱々しくも大笑しようとした炉蘭の笑みが凍り付いた。
「無様だな」
 凜とした声が、炉蘭の耳に突き刺さる。
 花盛・乙女が、己を冷ややかに見据えていた。
「お……」
「喋るな、嗤うな。耳障りだ」
 炉蘭の声を、花盛の声が遮る。
 一切の容赦も無い、そんな迫力があった。
 オブリビオンの目が泳ぐ。
 だが弱り、力を失った今の自分では、退路を見つけるのは難しい。
 キョロキョロとあたりを見回し、狼狽える姿はまるで小動物のようだった。
 一切の憐憫も感じさせない声で、花盛が吐き捨てる。
「力には責任が伴う。律する責任だ」
 二振りの一刀を放り捨て、花盛が続ける。
「腹を切って詫びを入れろ。介錯してやる」
 冷ややかに、そう言い切った。
 相手と刀を見つめる炉蘭。
 ぜいぜいひゅうひゅうこふこふと、ただ息の音がそこに残る。
 どれほどの時間が経ったであろうか。
 いや、実はわずかばかりの時間であったのかもしれない。
 炉蘭は、たどたどしくも、刀を握った。
 そして、口に溜めていた紫煙。
 ぼう!
 毒の煙を花盛に吹きかけて、斬りかかってきたのであった。
 卑怯。
 だがそれは、彼女の予測するところであった。
「感謝するぞ」
 花盛は静かに呟いた。
 感謝。
 最後の最後まで人非人、悪鬼外道でいてくれて。
 情で刀を渡したのでは無い。
 武士の情け。
 侍の意地として、花盛は刀を渡したのだ。
 人としてかける情けは、毛頭も残ってはいない。
 刀を切り上げる。
 それは煙を振り払い、勢いの無い敵の刀を弾き上げた。
 刀が地面につく前に、返す刃で腹を割く。
 もがき苦しむ悪鬼の耳に唇を近づけ、花盛は囁いた。
「我が名を聞け、炉蘭。羅刹女、花盛乙女。名など脳髄に刻まなくていい。だが家名に覚えあらば、己がばら撒いた業が刃を向けたと知れ」
「あ……がぁ……」
 炉蘭が何かを言おうとした。
 だが、聞く耳は無い。
 くるくると、弧を描き返ってくる一振りを受け止め、花盛は止めの一撃を呻く炉蘭へと叩きつけた。
 両刀を左右に振り払い、鞘へと収める。
 そして、右衛門炉蘭の身体が真っ二つに左右へと裂けた。
「今度こそさらばだ……忌まわしき、父よ」
 大きく息を吸って吐いた。両肩が伸び、下がる。
 終わった。
 これで、本当に終わった。
 しばし眼を瞑っていた花盛であったが、やがて仲間たちの元へと歩み出していった。

●それから~

 咎人は討たれた。
 再びサムライエンパイアに平和が戻る。
「ひとまずは安心という処ですね」
 犠牲になった人は多い。だがそれでも少なからずの人々を助けることが出来たのは僥倖といえよう。
 オブリビオンを倒した今、ここに留まる理由はないとレジーナは感じていた。
「次なる地へ、更生を求めて赴きましょう」
 この地で囚人として捕らえた賊たち。
 彼らは今もなお次元牢で隔離されている。
 この地の法で裁くために引き渡そうか、それとも自分の手で更生に導くか。
 しばし悩み、レジーナは笑みを浮かべた。
「まずは解放した娘さんたちの様子を巡回しましょうか」
 非常時とはいえ、牢の中へと閉じ込めてしまった非を詫びるべきであろう。
 コートを翻し、レジーナはこの地をたつ。
 荒野となった野原に敬礼をとり、軍服の女傑は背をむけたのであった。

 無縁仏たちの塚の前で、鹿村は手を合わせていた。
 犠牲になった人を野ざらしにはしておけない。
 そう考える猟兵達が力をあわせ、せめて眠れる場所をと墓地を築いたのだ。
 その中の一つに線香をあげて、そっと着物を置く。
「アンタの物だ、お世話になりました」
 破れたほつれた部分は綺麗に直し、仏さんへときっちり返す。
 まだ受けた傷は少々痛むが、こうして自分は生きている。
 この人は、死んだ人達は何を思っていたのであろうか。
 こうして拝むのも、ただの自己満足なのかもしれない。
「死んだ人は返ってこねーしな」
 拝む彼の腕に、バサバサと鸚鵡が身を休ませ鳴いた。
「トーゴ、ハラヘッタ、ハラヘッタ」
 その声に鹿村は苦笑する。
 寒々としていた胸中に響くように、そういえば腹が減った。
「色々あったしなぁ……」
 まずはこの腹の中を埋めよう。
 腹いっぱいに食べよう。
 そう思いながら、鹿村は墓地をあとにするのであった。

「よし、良いぞ。引っ張るのじゃ!」
 エウトティアの号令にあわせ、狼たちが紐を加えて引っ張る。
 瓦礫が動き倒され、細かくなった破片を民が運んで荒れた田畑を直そうとしていた。
 オブリビオンの脅威は去った。しかし爪痕はこの地に残っている。
 エウトティアはそれを見過ごしてはおけず、復興の手助けをしていた。
 この地はあらかた整地された。次は他の場所を手伝おうか。
 そう考えながら休憩するエウトティアの元へ、握り飯が差し出された。
 差し出された手は、開墾によってあれている。
 しかしその目に宿る生気は、まだ失われてはいなかった。
 生きていれば、まだ何とかなる。
 そういう決意を共にもらい受け、エウトティアは飯を頬張った。
 遠くで、子供達が遊んでいる姿が見える。それを咎める者などはいない。
 脅威は去ったのだ。時間はゆうにある。
 ひとときの安らぎを楽しむのは誰にでもあるのだ。
「うむ、美味いのじゃ!」
 その光景を眺めつつ、エウトティアは舌鼓を打つのであった。

 悪鬼は地獄に堕ちた。
 因果応報。報いはあるべき場所へと還ったのだ。
 ルパートは肩の荷が下りたような気持ちになった。
「再び生きてこの世に戻れば、また死に戻るとは業の深き存在よ」
 オブリビオンという物はつくづく理解に苦しむ存在である。
 だが猟兵とい存在の自分は、そのような者とこれからも幾度となく相対するのであろう。
「生き地獄、か」
 無に帰し安ひとときの平穏を得る悪鬼と、戦いに明け暮れる業を背負う騎士の残骸。
 はたしてどちらが幸福か。
 考えても詮無き事。
 人々を苦しめる存在を討ち果たした。
 そして助かった無辜の人々がいる。
 たったそれだけの、その程度の存在。
 人々を救える力があるからこそ、救うのだ。
 それこそが、存在出来る意義。
 がらんどうの鎧の中に、奴のような肉体が生まれれば、少しは欲というものが生まれるか?
「まさかな。それこそ、堕落した騎士よな」
 余計な気持ちを振り払い、休憩を終えたルパートは、人々のために復興の助力をするのであった。

 平和は戻った。平穏は人々の手に。
 乱世へと見間違えたかと思う今回の騒動は、ひとまず解決へと。
 だが、死んだ者達は帰ってはこない。
 諸行無常。世とは儚きもの也。
 生を掴んだ者達の今後は、これからどうなるのか。
 それは浄雲にはわからない。
 しかし願わくば、自分のように負の感情に支配されないように願いたいものだ。
 依頼を果たした忍に、この地に留まる理由無し。
 しかし、浄雲は去ろうとはしなかった。
「まだ、やるべき事が残っています」
 音羽の忍として成すべき事を成した。
 ならば今度は、猟兵として成すべき事を成そう。
 他の猟兵は、人々の復興に手を貸している。
 同じ猟兵である自分も、そうなれば手を貸すべきであろう。
 なぜなら自分は復讐に狂うた鬼などでは当になく、彼らと同じ人であるからだ。
 偽善なのかと、人は言うのかもしれない。
 それでも。
「それでも、わたくしと貴方とでは違うのでしょう」
 後ろ髪を引かれながら、浄雲は人々の輪へと混ざっていくのであった。

 取り戻した平和。
 しかし、その中にあって花盛は浮かない顔をしていた。
 右衛門炉蘭。かつて屠った宿敵。
 しかしなんの因果か、再び復活して惨劇を生みだしてしまっていた。
 ぐびりと、お銚子を口に含む。
 自分は未練を振り払ったと思っていた。
 オブリビオンというのは、過去の蓄積だ。それがにじみ出てこの世へと現れる。
 もしかしたら自分の未練が、悪鬼をこの世へと呼び覚ましたのではないか。
 そういう不安が浮かびあがってくるのだ。
 もちろんそんなはずは無い。
 過去はこの手でたたっ斬った。
 じい、と手を見る。
 何もない手。空っぽの手。
 悲願を果たして目標を失った虚ろな心が、他愛のない疑念を生むのであろう。
「まだまだ修行不足、だな」
 鍛錬。日々是鍛錬。
 まずは、戦火に襲われた人々の復興を助けよう。
 そう決心した花盛は、酔い納めとばかりにぐいと杯をあおるのであった。

「はあ……」
 おおきく肩を落とし、燐は嘆息する。
 下らない。
 終わってみれば当然の結末。
 場末の悪党が討たれ、世は平和となっただけのこと。
 それに配信はお蔵入りと来たものだ。
 骨折り損のくたびれもうけ、何も得る物は無いとくれば、疲労もひとしおである。
 八つ当たりで多少の鬱憤は晴れたものの、やはり無駄骨というものは、こう心にくる。
 他の猟兵達は、人々のなかに混じっているが、自分はその気にはなれない。
「私は正義ではなく悪なのよね」
 独り荒野で、こうやっているのが相応しい。
 誰もいない荒野に、傾きかけた陽が差し赤みを増す。
 それはこの地で起きた惨劇を再び浮かびあがらせたのようだった。
「まあ、こういった景色もラスボス映えするかもね」
 動画は取りやめるとして、この景色は記録として残しても良いかもしれない。
 掌から蝶たちがひらひらと舞い落ち拡がっていく。
 誰もいない、自分だけの無人の野。
 両腕をひろげながらクルクルと、蝶の群れと一緒に燐はしばし舞うのであった。

 月光を受けながら、ラファエラは身体を休めていた。
 夜露が染み入る夜更け。辺りに人気はとうに無く。
 荒れ地に独り、ラファエラは夜の散歩を楽しんでいた。
 死体は片付けられてはいるが、寒々とした気配は、その惨劇をまざまざと思い起こさせてくれる。
 彼らは、彼女らは、無惨にも殺されたのだ。
 ラファエラは確かに人を救った。しかし救えぬ者もいる。
 両手で水をすくいあげ、手から零れるのと残るものの違いは如何ほどか。
「なればこそ、私は正義の徒では無いのだろうな」
 人々の活気、復興。
 それは自分には似合わぬ。
 この荒涼とした地こそ、自分に相応しいと感じてくる。
 まるで、世界に自分独りだけだと錯覚させうるような。
 そんな錯覚を馬の蹄音がかき消した。
 見ればテネブレが永居を心配してやってきたようだ。
「どうやら心配させてしまったようだ」
 優しくたてがみを撫でて、ラファエラは馬へとまたがった。
 少しこのまま、夜風にあたっていよう。
 そう思いながら、ラファエラは馬の気が向くままに走らせるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月21日
宿敵 『最悪鬼『右衛門炉蘭』』 を撃破!


挿絵イラスト