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遺跡都市ヴェルニス~花祭りのヒポグリフ

#アックス&ウィザーズ #戦後 #遺跡都市ヴェルニス

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●鉄槌職人街・ドワーフからの依頼
「おお、掲示板の貼り出しを見てくれたのか、冒険者さん。悪いがちぃと頼みたいことがあっての」
 冒険者の酒場経由で依頼書を持って鉄槌職人街を訪ねると、迎え出てくれたのは鍛冶職人であるドワーフのオリスであった。
「この時期になると、遺跡のどこかで光の鉱石が発見されるんじゃが、生憎、鉱石自体が期間限定での。時期を逃すと宿る力が消えてしまうんで、是非とも期間中に手に入れたいんじゃあ」
 …………。手元の依頼書に再び目を落とす。
 モンスター討伐依頼となっている。
 ドワーフが言ったのは明らかに探索依頼である。依頼人を間違えただろうか、と思っていると「いやいや、討伐依頼であっとるんじゃぁ」とオリスは言った。
「ヒポグリフという、べらぼうに強いモンスターがこの時期に発見された場所で何故か光の鉱石が採掘できるんじゃが、このモンスターが今、遺跡の何処にいるのかを特定して討伐もお願いしたいんじゃ」
 つまり、この時期にヒポグリフが発見される=そこには光の鉱石がある(期間限定)=討伐してもらって安全にたくさん採掘したい。という、ドワーフの依頼。
「光の鉱石は仄かに雷の属性も宿っていて、なおかつ、魔耐性が爆上がりする鉱石なんじゃ。殺竜武器にも適しているのではないかと考えておる。この遺跡はモンスターが多いでの、強い武具は揃えておきたいんじゃ」
 難しい依頼かもしれんが、よろしく頼むぞ。


「と、いうドワーフさんからの依頼を皆さんにお願いしたいの」
 モンスターはオブリビオンだ。放っておくわけにもいかない。
 ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)がグリモアベースへとやってきた猟兵たちを誘い、説明を始める。
「皆さんに行ってもらうのは、アックス&ウィザーズの遺跡都市ヴェルニスよ。その名の通り、地下に巨大な遺跡群がある王都なの」
 ヴェルニスは遺跡探索に集まった者たちの宿場が起源で、建国王も冒険者の一人だったらしい。
「で、討伐対象のヒポグリフなのだけど、より力を持って、より良い光の鉱石を生み出す時期――『日』があるのだけど、皆さんにはこの『日』にヴェルニスを探索してもらいたいの」
 より良い鉱石が生まれる。たぶんその方がオリスたちドワーフの鍛冶職人も喜ぶことだろう。
「まあ、もっともどこかの『遺跡』にいると確定できるのがこの『花祭りの日』なのよね。外部の依頼だから私もあんまり予知的なものが見えないんだけど、なんとなくね。一番掴めそう」
 今の段階でも情報が散見しているがまだまだ少ない。
「光の鉱石が発掘されるのは、ヒポグリフが滞在した場所なのでしょうね。オリスさん情報だけど今までに、採掘場遺跡、地下神殿跡、古代墳墓遺跡、植物迷宮、海底洞窟遺跡で光の鉱石は発見されているみたい。鉱石の形状は様々よ。レリーフのような窪み模様のある石だったり、小さな果実のような石だったり、もちろん普通サイズの鉱石としてもあったみたいね」
 地下遺跡群だけあって、とてつもなく遺跡は多いし、広い。
「? ヴェルニスの地図を見ると、今までに鉱石が見つかった遺跡はおよそ西側の街に固まっていますね」
 気付いた猟兵に、そうなのよ、とポノ。
「不思議よね。何らかの依存性・由来性があるのでは、と思ったのよ。皆さんが行くこの日は都市の一画で花祭りが開かれているの。名所それぞれで花祭りの様子を見たり、人と話したり、何かを食べたりとすればヒポグリフがこの日にどの遺跡にいるのかが見えてくるのではないのかしらと思って」
 花祭りが開催されているのは、鉄槌職人街――伝説の殺竜武器の再現を目指す職人たちが住んでいる。採掘場遺跡がある。
 シャルムーン神殿――言葉の神シャルムーンを奉ずる神殿だ。地下神殿跡がある。
 遺跡市場――市場の商人があちこちに買い付けているのだろう、様々な品々があり、近くの古代墳墓遺跡で発見された品も頻繁に取引されている場所だ。
 大樹の囁き亭付近――大きな大樹が目立つ、冒険者の酒場がいくつか集う場所だ。近くには初心者向けの植物迷宮があるが故の宿場街だ。
 ヴェルニス港――都市南西にある港で、貿易や漁業が行なわれている。海底洞窟遺跡がある。
「光の鉱石は雷属性も含まれていて、そして破魔か護りの力も大きそうよね。オブリビオンと時期、何らかの影響が掛け合っているのかもね。それはそうと、各所に出店もあるし、食べ歩いたり、花祭りの様子を眺めたり、のんびり楽しみながら都市散策をしてみてね」
 散策すれば見えてくることもある。
 ご当地的な食べ物もあることだろう。
「一人で全部回るのは無理そうだけど、それぞれへ向かった皆さんが情報を持ち寄ればヒポグリフの居場所特定もできるんじゃないかしら。それじゃ、よろしくね!」
 そう言ってポノは猟兵たちを遺跡都市ヴェルニスへと送り出すのだった。


ねこあじ

 ねこあじです。
 今回は、2章仕立ての探索(散策)&オブリビオン討伐シナリオです。
 よろしくお願いします。

 訪れることができるのは、
「鉄槌職人街」「シャルムーン神殿」「遺跡市場」「大樹の囁き亭付近」「ヴェルニス港」のうち、一か所です。
 どこに行くかをプレイングで指定してください。
 花祭りの様子はちょっとずつ違っているようです。
 どこも出店あり。
 ご当地的なお遊びお菓子もあったりします。行ってのお楽しみということで。
 人は限られますが鉱石の形状を尋ねるもよし、どこかの屋台で料理を食べるもよし、花祭りの様子を眺めるもよし。ご自由に。
 キーアイテムはそれぞれの場所にあり、暮らしに溶け込んでいる場合もあります。
 迷ったら祭りの様子を眺めてみましょう。

 第2章の断章で皆で体験もしくは集めた情報の整理、ヒポグリフのいる場所を特定という流れになります。
 1章のみ参加も歓迎です。
 万が一、参加が多くなったり偏ったりの場合は再送のお願いをすることもあります。なるべくないようには頑張ります。
 締切はタグやマスターページ、Twitterでの告知。

 ではでは。
 いい感じにご自由にお過ごしください~。
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第1章 日常 『花祭りの日』

POW   :    全力で楽しみ尽くす

SPD   :    色々な屋台や催しをハシゴする

WIZ   :    少しの工夫で祭りをもっと楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 アックス&ウィザーズ・遺跡都市ヴェルニス。
 地下遺跡群の発見と共に生まれたこの都市は、散策していると迷宮の入り口を見つける。物々しく人の出入りを制限された場所、初心者冒険者向けの入り口、暮らしと共に存在する遺跡など。
 都市の造りは複雑で、案内板をよく見かける。

 さて、今日は都市の一画では花祭りなのだとか?
 市場で買い物もしてみたいし、食べ歩きもしてみたい。
 周囲を見回せば胸元に生花や造花を、模したブローチ、花を細工したアイテムを身につけている人が多い。
 花壇は満開、ガーランドフラッグには花の刺繍や絵が。
 港と花はあまり結びつかないが、きっと何かがあるのだろう。
 神殿は何か伝承が見つかるかもしれない。
 すべてが気になるが、一人では周り切れそうにはない。

 都市が賑やかなのは今日だけだろうか、それとも毎日なのだろうか。
 歩く石畳の下には遺跡。想像すると何となく歩む足も弾んでくる。

 さて、何処へ行こうか――。
サフィリア・ラズワルド
POWを選択

鉄槌職人街に行って聞き込みをします。
お話を聞かせてくれるなら良いものを見せますよ!

鉱石があれば見せてもらいますがなるべくヒポグリフの情報を聞きます、痕跡や好む食べ物やマーキングなど、過去いるとわかった様な情報が手に入ればいいのですが……。

良いものとはこれです!
ペンダントを竜殺しの槍に変えて置きます、これ人用じゃないから私もUCで竜化しないと重くて持てないんですよね。
なんとあの帝竜に一撃を入れた槍です!正真正銘の殺竜武器ですよ!

あ、大切なことを聞き忘れてました、ヒポグリフって食べられます?美味しいですか?

アドリブ協力歓迎です。



 トントン、トンカン、カンカンカン。
 たくさんの音があちこちから聞こえてくる鉄槌職人街は職人が集う地区。ひとつひとつの音に耳を澄ませてみればリズムが取られてるようにも思えた。
 鍛冶場の表通りには店が構えられており、サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は物の並びを珍しそうに眺め歩く。
 武器防具はもちろん、大工道具や生活道具、家具などの様々な物があり、その材質も樹木や皮、鋼と色々なものから作られている。
 今日は花祭りとあって、花をモチーフにしたらしき物がたくさん売られていた。鉄槌と花の刻印をよく見かける。
「鉄槌と花……どんな意味があるのかな?」
 サフィリアが呟けば、白い花を配り飛んでいた通りすがりのフェアリーが「それは!」と勢いよく応じた。
「戦神の一神、トールの鉄槌にちなんでいるんだよ! 冒険者さん、花祭り、楽しんで行ってね~」
 そう言ってフェアリーは白い花を渡してくる。
 思わず受け取ったサフィリアがあわあわとしているうちに、フェアリーは次の客人目掛けて飛んでいってしまった。
「あ、ありがとうー!」
「どーいたしまして~!」
 慌てて礼を言えば、人に紛れて見えなくなってしまったフェアリーの言葉だけが返ってくる。
 花を挿して歩いていると鉱石を売る露店を見つけたので、「こんにちは」とサフィリアは挨拶をしながら覗く。
「いらっしゃいませっ」
 売り子であるドワーフの女の子が、ぱっとサフィリアへと向き合った。
「何かお探しですか?」
「あっ、はい、光る鉱石を見てみたいなぁって思って」
「光る鉱石は今はないんですけど、そろそろ何処かで採掘できるらしいって噂ですねぇ――……あっ、そういえば光を失った石はあるんですけど。ちょっと待っててください」
 いつかまた光るかもしれないと置いてあるらしい。
 露店から離れ、路地へと走っていった女の子が直ぐに戻って来る。
「お父ちゃんが持ち帰った時、ちょうど効力が消えちゃったみたいで。でも採掘場遺跡では中々巡りあえないらしいんです」
 どうぞ、とサフィリアに渡されたそれは――。
「石、ですね」
「そう、石なんです」
 石だね。と、サフィリアと女の子が改めて再確認をしていると女の子の後を追ってきたのか、ヒゲが毛むくじゃらなドワーフがのっそりとやってきた。
「あ。お父ちゃん」
「あんた、オリスさんに頼まれた冒険者さんかい?」
「はい、そうです! ヒポグリフのことも調べないといけないのですが、何か知っていることってありますか?」
 ヒポグリフなぁ、とドワーフの親父が悩ましげに呟いた。
「お話を聞かせてくれるなら良いものを見せますよ!」
 竜殺しの槍なんですけど。
 とサフィリアが言えば、キランとドワーフの目が光った。


 鍛冶場へと案内されたサフィリアはドワーフに囲まれる。
「ヒポグリフはグリフォンの子供ちゅう話じゃのぉ」
「物を与えれば光の属性」
「ヒポグリフは大昔に絶滅したと聞いたがのぉ」
「羽根も爪も、その目玉も良質な材料になるらしいから乱獲されたんじゃよ」
 サフィリアを囲むドワーフたちが持っている情報を全てぺろりと吐いた。それほどに良い武器を見たいようだ。
「ひぇ。絶滅してしまった……かもな種族なんですか……」
 骸の海からやってくるオブリビオン。
 サフィリアは猟兵だからこそ過去から甦ったモノだと知っているが、ドワーフたちは希少種だと認識しているようだ。
「そういえば、植物迷宮にヌシのヒポグリフがいたっちゅう話を、聞いたことがあるなぁ。建国されたばかりの頃だったか」
「ナナカマドの前にいたんだったか」
 ナナカマドですか? とサフィリアが首を傾げれば、ああ、ほら、今挿している花だよと教えられる。
 サフィリアは小さな白い花が集うそれにそっと指で触れて。
 思考する彼女に、けれどもドワーフたちは待ちはしない。
「で、だ。お嬢さん。『良いもの』とは何だろうか?」
 わくわくとしたドワーフたち。その瞳や表情は童のようでもある。
「あっ、はい! 良いものとはこれです!」
 大粒のラピスラズリのペンダントをドラゴンランスへと変化させたサフィリア。途端にずしりとした重みが手、腕、肩から胴、脚へと伝わり、その重さに逆らうことなく床へとドラゴンランスを置いた。
「なんとあの帝竜に一撃を入れた槍です! 正真正銘の殺竜武器ですよ!」
 うおおおおおおお!!
「群竜大陸の!」
「猛者なるものの武器じゃの!!」
 床にバンッと手を叩きつけ、屈むドワーフたち。
「これ、人用じゃないから竜化しないと私も持てないんですよね」
 テーブルに置いたらテーブルが折れてしまう。
 苦笑しつつサフィリアが言うのだが、変化させた時から上がっているドワーフたちの雄叫びにその声はかき消されてしまっていた。
「凄い! 持ってみても?? ――あっ、これムリじゃぁ」
「うわ、めちゃ重じゃのー! これぶん回せると気持ちが良さそうじゃ」
「ドラゴニアンやバーバリアン向けの武器なのかのっ!?」
「綺麗な色だの~」
 尋ねておきながら自己完結するドワーフたち。
 いやあ、よいものを見せてもらった。
 みろ、この鱗の間に抉りこめそうな先端を。
 引っ掛け、剥がすことも出来そうじゃぁ。
 なるほど。殺竜武器の勉強になるのぉ。
 ――眺めて検証しては予測を立てる。職人らしい会話だ。使い方を訊かれたサフィリアも応じていく。
 と、その時。サフィリアはふと思い出す。
「あ、大切なことを聞き忘れてました。ヒポグリフって食べられます? 美味しいですか?」
「……おおう。儂らは実際には見たことがないが、冒険者さんが言うには胴が馬体らしいぞ」
「前半身は鷲だとか?」
「なるほど。食べられそうですね」
 ドワーフの言葉に、うん、とサフィリア。
「ああああぁぁ! 手に入るのならば羽根と目玉は儂らに売ってくれぇェ!」
「加工してみたい……!」
 そんな彼らの言葉に「はーい」と軽く応えながら、サフィリアは聞いたことをメモしていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
『遺跡市場』に向かいます

商人の人達は、仕入れの為に各地を周ったり、その分人との繋がりも多くて、情報もたくさん入ってくるはず
噂を集めるにはぴったりですよね

珍しい物、綺麗な物がいっぱいで目移りしちゃいます
お祭りの雰囲気に当てられて、要らないものまで衝動買いしてしまったり
それに屋台から漂う美味しそうな匂いも私を誘惑します…
これひとつください!

喧騒から離れた所で一息
いやぁ、いっぱい買っちゃったなぁ。お腹もいっぱいで幸せ~
…いやこんな事してる場合やない!鉱石鉱石!

たくさん買えば、お店の人も気を良くして何か良い事教えてくれるかもしれない
ギブアンドテイクです!

…ま、また荷物増えちゃった…っ



「いらっしゃい、いらっしゃい。今季限定、イェラ細工師のアクセサリーが入荷してますよっ」
「本日花祭りでしか卸されない物もありますよー、どうですか、商人さんっ」
 遺跡都市ヴェルニスでの遺跡市場はいつも活気で溢れている。
 海路、陸路と貿易の要所としても名高いヴェルニスではたくさんの物が仕入れされており、また各地へと捌かれていく。
 地下にある広大な古代墳墓で発見されたものも、品としてのレアリティがあるようだ。
「色んなものがあるんやねぇ」
 『with』を背に市場を歩む春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)。
「冒険者さん、今日は花祭りよ! さあ、お花をどうぞ!」
 と通りすがりのフェアリーから花を贈られる結希。
「わあ、ありがとーございます~」
「遺跡市場の花祭りはねっ、色んな花を繋げていくのよ」
 始まりは白い花から。それは精緻に編まれた造花だった。お次は好きな色を、やはり生花や造花で。赤や青、黄色といった濃淡ある花。
「何か謂れがあるんです?」
「うん、色は種族で、つながりは縁なの。モンスター使いって呼ばれた娘さんが始まりの白でね、縁はモンスターのものだったんだけど、今は各地の縁(つながり)として表現されてるんだ」
 ほら、この造花は東の地の物。
 こっちの造りは北の土地の物。
「市場には色んなものがあるしねっ、良い物を見つけてねっ」
 そう言ってフェアリーが花を配りに飛んでいく。
「えにし、かぁ」
 周囲を見回せば、確かに。地方色というものだろうか、同じような品でも露店によって違う。
 珍しい物から綺麗な物まで。
 細工師による花祭り限定は、つやつやとした白い石を花束風に加工したブローチ。
「ふふ、花芯が銀だったり金だったり。可愛い」
 職人の手によって祈りの込められた御守りだったり。
 木彫りのお守りは都市の神殿から卸されたものらしく、アックス&ウィザーズのたくさんの神様がモチーフになっていたり。
「これは何ですか?」
 綴じられた木板を見つけて不思議に思った結希が尋ねると、それは勇者の伝承の跡だと店のおばちゃんが言った。
「ほら、各地に色んな勇者の伝承が残っているでしょう? 紋章として残っているものをとある商人が集めたみたい」
 スタンプラリーのようなものなのだろう。
「そういえば、この都市には勇者っていたんでしょうか?」
「群竜大陸に向かった勇者も、いたかもしれないねえ。でも、ほら、王様も冒険者だったでしょ? この国、結構猛者揃いな気もするのよね」
「なるほど」
 先程のモンスター使いと呼ばれた娘もまた似たような『猛者』なのだろう。
 調べ始めると、ヴェルニスではそんな人物がたくさんいるのかもしれないと、結希は思った。
 さらに市場を見て回る。そんな中、やっぱり何処に行っても気になる定番の店たちがいた。
「しぼりたてのジュースはいかがですかー?」
「遺跡市場名物、レリーフ菓子もあるよ~」
 と、飲み物やお菓子。そして屋台グリルもあるようだ。美味しそうな匂いに、結希の足がついついそちらへと向かってしまう。
「おっ。お姉さん、うちの炭火焼きどうだい?」
「わ、美味しそう~! ひとつください!」
 お肉の炭火焼きはもちろん、串に刺されたお餅やリンゴなど、食材も豊富に。
 色んな物を買って、食べて、遺跡市場を満喫した結希は喧騒から離れて一息をつく。
「いやぁ、いっぱい買っちゃったなぁ。お腹もいっぱいで幸せ~」
 レリーフを模したお菓子も美味しかった。口の中で砕けていく食感が楽しいものだった。
 持った瞬間が石板みたいだったのに、と、思い出したところで、ハッと我に返る。
「……って、ああ! いやこんな事してる場合やない! 鉱石鉱石!」
 光る鉱石の情報を!


「そういえば、昔、すっごく質のいい光る鉱石が見つかったことがあるって話を、ドワーフから聞いたなぁ」
 武器防具を売る店の主人がそう答える。
「質が良い? それって、この鉱石の場合だと新鮮ってことです?」
 時間が経てば良質さが失われてしまう鉱石。
「そう。この地下……古代墳墓なんだけど、古代じゃない場所だったかなぁ」
「なん、ええ、そんなナゾナゾみたいな……!」
「まあ、今となっては墳墓のどこにあるのかも分からないんだけどね、守護者として眠っている人もいるらしいんだ」
 名のある魔法使い、モンスター使い、群竜大陸から帰還途中にここで息絶えてしまった勇者、などなど。
「そういえば、この花祭りの始まりになるんでしょうか? モンスター使いは娘さんやったと聞いたんですけど」
「ああ、そうそう。確か漁師の娘だったかな! でも雷の娘という異名もあるんだ」
「え、ええ~???」
 異名、あり過ぎでは? と、呟きながら結希は聞いたことを心の中でメモっていく。
 ありがとうございます。店の主人へと礼を言えば、なんの! と朗らかな声が返ってきた。
「品モン、色々買ってくれてこっちこそありがとな!」
「――ッ、ギブアンドテイクです」
 サムズアップを送られたので、ちょっぴり引きつった笑顔を返す結希。
(「……ま、また荷物増えちゃったけど……っ」)
 いやでも店の前に立つと、目新しいものがいっぱいで、ついつい。

「他の皆はどんな話が聞けたかなぁ? よーし、合流場所へ向かいながらまだまだお話集めてこ!」
 背負った『with』を揺らして、再び結希は歩いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・ゲーベンアイン
(ブラキエル討伐と猟書家対策の功を認められ、副王として侯爵位を授けられた
現在は北方の副王領にて『言論と表現の自由』を掲げてシャルムーン神殿の支持を受け、UDCアース等を参考とし革新的な政策を行う若き名領主としてヴェルニスでも名を馳せている)

貴族服って着慣れれば結構良いね
そう言ってゲーベンアイン候が王家や大手貴族も含めた要人がいる神殿に現れる
ヒポグリフの討伐にはわたしも参加する予定だけど、何か情報はあるかな?
そう言って信徒達と協力して遺跡の情報を得ていく

残った時間があればせっかくだし、侯爵らしく社交界に躍り出ようかな
領地のシャムルーンの信徒達から手ほどきを受けているから、所作はばっちりだよ



「よくぞいらっしゃいました。ゲーベンアイン侯爵様」
 女性の神官長に出迎えられ、リオン・ゲーベンアイン(四大副王北方担当『神弓侯』・f23867)は高貴なるものの所作で挨拶を返す。
 コルセットを着けた背はピンと張り、胴着はすらりと、一層細くなった腰からふわりとしたギャザースカートが広がる。レースをふんだんに使用したハイヒールで歩けば、ドレスの裾がひらりひらりと。滑らかな布地と刺繍は光沢があり、縫い止められたビーズの宝石が輝いた。
「貴族服って着慣れれば結構良いね」
「所作に慣れてきたのでございましょう」
 リオンの呟きにそっと傍らの貴族がそう応えた。
 一日枯れないように魔法の施された花を身につけ、神殿の花祭りに参加するリオンと貴族たち。
 大天使ブラキエルの討伐と猟書家への対策の功を認められ、侯爵位を授けられたリオンは、現在北方の領地を治めている。
 副王領となるそこで『言論と表現の自由』を掲げ、シャルムーン神殿の支持を受けているリオン。猟兵として他の世界を知る彼女は、他世界を参考にした政策を行う若き領主としてその名を馳せているさなか。いわば上昇気流にあった。
「言葉と表現は流れるもの、それは神の思考であります。穏やかであり、急流でもある神の加護を、ゲーベンアイン侯爵様へ」
 祝福の言葉を受け、リオンが礼をとる。
 続き、神官長から語られるのは世界樹の頂から発する霧と大地におちていく雫の話であった。横たわるように言葉の神が流れ、そこを渡ろうとする雷神。溢れんばかりの『言葉』に流されそうになった雷神へ、ナナカマドの樹木たちが助力する。
「『あなたを見守ります』そんな花言葉があるのです」
 と、神官長がリオンの挿す白花を見た。
「光る鉱石と雷神か。何か繋がりがあるのかもしれないね」
 ヒポグリフの討伐にはわたしも参加する予定なんだ、と儀式が終わって信徒たちへとリオンが言えば、
「ヒポグリフですか」
「そういえば、古代の神殿に絶滅しゆく予言の石板がありましたね」
「そこに、ヒポグリフも描かれていたかと」
 伝承としてはグリフォンと雌馬の仔として知られるヒポグリフ。
「予言の石板……」
「いまのところ、実在しているかも分からない種、まだ現存している種もありますので、その通りになるか否かは分かりませんが……」
 リオンの呟きに応える信徒。
 けれども今いるモンスターたちは骸の海から生まれたものたちだ、ということをリオンは知っている。それすなわち過去に生きたもの。ヒポグリフは絶滅したからこそこうやって現代に甦っているのだろう。


(「皆と合流するまで、まだ時間はあるかな」)
 せっかくだから、と社交の場へと赴くことにした。
 ガーデンパーティのように調えられた中央神殿の庭には貴族たち。
 世間話から、出資の話、遺跡群などの情報交換の場だ。
 ゲーベンアインとして、領主として、リオンは貴族と顔を合わせ、挨拶をし合って交流を広げていく。
 ヴェルニスという土地柄のせいか、今だ手の付いていない海底洞窟遺跡が特に話題としては顕著であった。
 革新的な領地運営を誇るリオンへ、調査の方法などの助言を請う言葉も出てくる。
 未解明の遺跡は誰もが浪漫を感じるものらしく、発せられる声は希望や夢に満ちたもの。
 それは土地の発展を願うリオンと同じ色の声。
(「なんだか心地がいいな――」)
 未来へ向かう彼らの声に、リオンは穏やかな笑みを浮かべて応じていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
※アドリブ歓迎

【ガーネット商会】の社員やクルーを連れて、ヴェルニスの港に入港。
シルバーホエール号を停泊させたら、早速《取引》に
必要な手続きを済ませよう。

怪物ヒポグリフに、謎の光る鉱石か。
まずはそれぞれに繋がる情報を集めないとな。
わが商会も港のバザーに参加して、品物を売りさばいたり、
《世界知識》を基に価値のありそうな商品を仕入れていこう。
船乗りたちには港のあちこちで噂話を仕入れてきてもらうぞ。
私も酒場で食事を摂ったり、買い物をしたりして商人から
話を聞いてみよう。
「海底洞窟の遺跡に挑んだ冒険者を知っていますか?」
「ドワーフが欲しているという、珍しい鉱石のことを知りたいんですが」



 遺跡都市ヴェルニスの港に大きな船が入港した。
「よーし、お前ら早速商売はじめっぞー!」
「いえっさ!」
 仕切りの船乗りが声を高らかに上げれば、あちこちから了解の合図。
 元気な彼らの声に、先に船から降り停泊の手続きを取っていたガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の表情が僅かに緩む。
「いやあ、それにしても立派な船ですねぇ!」
 ガーネットの手続きにあたっている港湾管理の一員が商船『シルバーホエール』号を見上げて感嘆の息を吐いた。陽の下であれば常に白く輝いているような船。
 世界を航海し、様々な品を扱うガーネット商会の働きぶりは目を瞠るものがある。
 船乗りたちひとりひとりの頑張りがあってこそなのだろう。
「ありがとうございます」
 ガーネットのその一言にはたくさんの想いがこめられていた。
 ――今日も商会は元気に商談を行っていく。


 船長、後はお任せを!
 と、仕切りの船乗りの声に背を押され、商会のバザー準備から離れたガーネットは港に立つ露店の道を歩く。
「ずいぶんと華やかだな」
 港というものはどこも活気があるものだが、本日は花祭りということで色とりどりの花があちこちにある。その中で、楚々とした、一見花とは思えないものが混ざっていることに気付いた。
「はい、冒険者さん、お花をどうぞ!」
 花を配っていたフェアリーの一人が、小さなブーケを差し出してくる。
 ここにも、だ。過ぎる初夏を思わせる白い花、鮮やかな黄色の花に混じって、花弁無く葉でも無い植物。
「どうもありがとう――何やら変わった花が混じっているようですね」
「あ、気付きました? ブドウの花なんですよ、これ!」
 花弁のないブドウは、小さな実のような場所からおしべとめしべが伸びているちょっと地味な花だ。
「船とブドウってなかなか切り離せないものなんですよね。地味~だけど、一応、港の花祭りはブドウの花がメインなんですよ」
 初めて訪れる旅の者に説明し慣れているのだろう。フェアリーはとあるおとぎ話を。
 それは狂気の神を網漁で魚と一緒に捕まえてしまった船乗りたちの話だった。
 狂気の神は狂気故に愉快に思い、船をブドウ酒で満たして神の『酒甕』へと変化させてしまった。
「船いっぱいの……ブドウ酒」
「そうそう。だから今日は、港の酒場でお酒が特別に振舞われているの!」
 フェアリーのオススメを聞いて、ブーケを持ったガーネットは次に酒場を訪れる。
 『本日のオススメ! +酒!』を頼んでみると、やってきたのは船型の杯に満ちたブドウ酒。
「なるほど。こういった趣向なのか」
「お姉さん、冒険者さん? ここの花祭りは初めてかしら?」
 料理を持ってきたウェイトレスが港料理の説明をしてくれる。ハーブ焼きの魚にはナナカマドのジュレが添えられ、酒杯にはよく見ればグリフォンの彫り。
「グリフォンは狂気の神の酒甕の守護をしていてね、あ、狂気の神の話は聞いた? グリフォンはそのまま船の守護もしてくれたっていうわけ」
 楽しんでね! そう言ってウェイトレスが離れていく。
 魚はふっくらと焼かれていて、お魚胡椒とハーブがピリリと効いている。苦みのあるジュレ。全体的に酒と合わせているようだ。
 美味しく頂きながら、そういえば、とガーネットはあることを思い出す。
「何かの本で読んだことが……確か、グリフォンと雌馬の仔がヒポグリフ」


 バザーで買い物をしながら聞きこみもする。海ならではの物が多く、その中で変わった鉱石を置く露店を見つけた。
 すみませんと声を掛ければ店主が「いらっしゃいませ」と、にこやかに応じてくる。
「ドワーフが欲しているという、珍しい鉱石のことを知りたいんですが」
「光の鉱石ですか? 生憎、今年はまだでして……」
「まだ?」
「はい。ちょうどウミホタルの時期、朝方に波打ち際に不思議と落ちているんですよ」
 効力を失くして、ただの石となった元光の鉱石が店主の指差す先にあった。
 石に粒々とした触覚。何故だかブドウを思い浮かべるガーネットだった。
 買い物を終えて商会の開くバザーへと帰れば、船乗りたちが待ってましたとばかりに「船長!」と近付いてくる。
「酒甕の話、聞きました?」「羨ましい!」「海に神様落ちてないかなぁ!」
「…………お前たち……」
 のびのびと、自由な船乗りたちの思考も分からなくはない。止めながらもガーネットは苦笑する。
「ああ、あと豆知識仕入れましたよ。水難・海難避けのお守りとして、船にナナカマドの木板を一枚どこかに用いると良いそうです」
 修繕時にでも、こんどやりましょうよ! と一人の船乗りが言う。
「海底洞窟遺跡は、海底にあるからあんまし探索の手も入ってないみたいですね~。どんなお宝があるのか、すっげぇ気になりますが」
 などなど。
 皆が仕入れた情報をガーネットへと伝えていく。
「ふむ……海底の洞窟遺跡の調査もいずれは進めてみたいところだな」
 海底へと挑む確かな一手が今のアックス&ウィザーズにはない。
 情報の後は仕入れた商品、ヴェルニスでの流行りの品、よく売れた物などの報告が入ってくる。
「あとでまとめて報告書を上げてくるように。港とあれば夜も栄える。私は一度猟兵たちと合流しなければならないが、このまま皆は、仕入れの品を売っていく者、新たに買い求める者と手分けしていこう」
「「「イエスマム!」」」
 ガーネットの声に、溌剌と応じる商会の船乗りたちなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
お祭りときたら、大道芸でしょう!
ということで、即興ライブ開始しますわ

黒いドレスに白い花を飾り付ける
TOPは大事ですもの
街の雰囲気を楽しむように小道具を買い足し
広場で歌を披露するわ

マルシュアスを奏、自身はソプラノで

こんな惨めな女にも 一輪の花は愛おしい
世界を涙で埋め尽くしても その薔薇が私の道標
あぁ、どこまで沈んだら私の足は底へ着くの

あの人は私を愛してくれなかったの?
伽藍堂のルーフの上で 一輪の薔薇が私の道標
あぁ、どこまで歩いたら私の足は底へ着くの

悲しい歌が得意なの
スカートの裾を持って観客に一礼
リクエストには応じるわ
フェスティバルにふさわしい華やかな歌もご所望であれば

実はラテンのノリも大好きです



 白い花、赤い花、色とりどりの花たちが飾られる花祭り。
 何かを飾るレースひとつ見ても、花の意匠。
 過ぎる初夏らしく、清楚な白の花が多く目立つ。
 甘やかな、爽やかな芳香が祭りの風を彩っていた。
 リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)もまた黒いドレスに白い花を。小さな黄緑の小花を白い髪に散らし、宿場が集う広場へと立った。
 広場には移動遊園地や冷菓子の屋台、即興の絵描き屋や、音楽を提供する一隊がいて、通り過ぎる者たちも思わず足を止めてしまう賑やかさ。
 楽しませる。そんな想いの集まる場所。
 リオは手回しオルガン式魔楽器・マルシュアスを奏で始める。
 リオの闇の魔力に反応して奏でられる音は果てなき海のように数多の彩を思わせて、それでいて深い。
 ゆっくりと沈むように、まろやかな音の世界へと導いていく。
 そして、一音。
 新たに加わるリオの声。
 柔らかな奏でが紡ぐは、意味ある言葉。

 ――こんな惨めな女にも 一輪の花は愛おしい
 ――世界を涙で埋め尽くしても その薔薇が私の道標

 マルシュアスの音が一瞬弾み、ノスタルジアな通奏低音が流れこむ。

 ――あぁ、どこまで沈んだら私の足は底へ着くの

 時折混じる一音は転換期。
 少しずつ、少しずつ、リオの音が変化する。声に感情がこもる。

 ――あの人は私を愛してくれなかったの?

 切なく、悲痛なカナリアが鳴く。けれども翼はあるよと僅かな、ほんの僅かな希望を含む風の揺らぎをみせて。

 ――伽藍堂のルーフの上で 一輪の薔薇が私の道標
 ――あぁ、どこまで歩いたら私の足は底へ着くの

 リオの澄んだ声はどこまでも果てなく世界を渡り、周囲は静寂が訪れている。
 聴衆の世界がリオの音に満ち、共に静かに歩んだかのように。
 一瞬、静寂のなか、ふつっと感情が湧く瞬間がある。ぱん、と弾ける手前のシャボン玉のような。
 弾けたのは街の皆々だった。
「……っすごい綺麗な声!」
「どうなっちゃうの、このあと!」
「お芝居みたいだったわ!」
 共感を得た女性たちの声、感心した年配者の声。彼らが紡ぐ言葉は、リオへと与えられる音だ。
 スカートの裾を持ち、観客に向かって一礼すれば、花をいっぱい持つ一人のフェアリーが近寄ってきた。
「歌姫さん、素晴らしい演奏と歌をありがとう! 私、感動しちゃったわ!」
 にこにことフェアリーは笑顔を向けてくるのだが、その瞳は潤んでいる。
「悲しい歌が得意なの」
 ひらりひらりと舞うフェアリーを視線で追いながら微笑むリオ。
「えへへ。歌姫さんにはおまけしちゃおっと!」
 そう言ってフェアリーは白と赤のミニ花束ブーケを贈る。
 そのブーケに鈴なりの花を挿しながらフェアリーはもじもじとしていた。ぱちっと目が合ったのでリオは頷いてみせる。
「リクエストには応じるわ。何か聴きたい歌はあるかしら?」
「え、えっ、いいの?? あのね、歌姫さんの声で踊れるようなものも聴きたいっ」
 ていうか踊っちゃう!
 リオの言葉に精一杯動きながらフェアリーが応えていると、お、いいねいいねと楽団が声を掛けてくる。
「お嬢さん、即興で華やかなものでもいかないか?」
 楽団の一人に、リオはこくんと頷きを返した。
「こういう音とか、どう?」
 弾ませた最初の音は簡単なもので一定のリズムは直ぐに音頭がとれるもの。娘たちがリズムを取り出し、石畳が軽やかな音を立てる。
「いいね、いいね!」
 そうして始まる即興ライブ。
 皆が音の呼吸を合わせて、音を飛ばしてもついてきたり受け止めたり。
 リオは紡がれる皆の言葉から、風のように踊る軽やかな歌としてのせて。

 遥かな空をゆく翼よ
 ひとときをこの地で舞わせて

 地に舞う翼よ
 いついつ空翔ける

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
光の鉱石とヒポグリフさんの滞在との関係…
確かに興味深い謎です

港へ向かいましょう
賑やかで人の出入りは多そうです
何かご存じの方がおられるかも?

お祭り中でしたら
辻で演奏してもよさそうでしょうか

お店や出し物の邪魔にならぬよう気を付けて
竪琴を奏で歌を披露しましょう

事前に下調べをしておいた
建国王の冒険譚とか

花祭りの由来があればそれも歌いましょう
(どんな由来だったのでしょう

演奏後に
光の鉱石について聞き込みを行います
海底洞窟遺跡についても詳しく教えていただきたいです
あとヒポグリフさんの習性とか

勿論お祭りも楽しみます
ぶらぶらと散策し
花々を愛でながら食べ歩いたり

新たな曲のヒントが得られるかも知れませんね♪



「海の匂いに花の香り、不思議な組み合わせですね~」
 遺跡都市ヴェルニスの港へとやってきた箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はケットシーのお鼻をひくひくとさせてこの地独特な香りを嗅ぐ。
 お祭りだけれども港の仕事は通常運行。でも皆の足取りは軽やかだ。
 外海からやってきた商会の者たちが感嘆の声を上げて港へと降り立っている。
 港でもバザーが開かれていて客の足は絶えることなく。
 酒場から漏れ聞こえてくる楽団の演奏は賑やかで、踊りを伴うもの。
「あっケットシーの冒険者さん! ここでの花祭りは初めて? お花をどうぞ~」
 花を配っているフェアリーが仄々の元へとやってきてミニブーケを渡す。
 過ぎる初夏にぴったりな白い花たち。そのなかには葉でも無い、実のようなものをつけた植物があった。
「おや、これは……これもお花なのでしょうか?」
 しょんしょんとおしべとめしべが飛び出している。仄々が尋ねれば「そうなの」と頷くフェアリー。
 興味深いおとぎ話をフェアリーから聞いた仄々がメモしていく。
「吟遊詩人が好みそうな歌になりそうですね」
「あっ、そうだね。面白おかしくだったり、ちょっと怖い物語風だったり、色々アレンジしてるかも」
「そうなのですね~。題材としてはとても面白いものだと思います」
 おとぎ話が一つでも詩人の手によって様々な彩で表現される。ふむふむと一度話の流れを読みこんで、仄々はカッツェンリートを手にした。
 段差のある石塀に登って音を奏で始める。
 歌うは船乗りたちのちょっとしたドタバタコメディだ。

 狂気の神を何故だか捕らえてしまった漁師たち。
 まさか人魚といっしょに神も網に引っ掛かるなんて思わなかったのです。
 たまたまおおらかな気分だった狂気の神は笑い、船をブドウ酒満たしてしまいました。……狂っています。
 狂気の神の酒甕を守るグリフォンが、さすがにこれはちょっとととりなします。けれどもその使命ゆえに、船も守ることになってしまったグリフォン。
 船には守りのまじないとしてナナカマドの板を一枚。
 効力を高めるために、自分の仔にナナカマドの木を守らせました。

「グリフォンさんは苦労人ですねぇ♪」
 ポロンポロンと奏で歌えば、聴衆となっていた港の者たちが頷く。

 さて、ナナカマドの守護を任されてしまったグリフォンの仔・ヒポグリフはとある娘と出会ったようですが……?

「この娘さんは何者なのでしょう~♪」
 仄々が尋ねるように歌い奏でれば、
「漁師の娘だってさ!」
「モンスター使いとも呼ばれてたね」
「料理研究家でもあったんだろう?」
「昔は、保存食とか大事だったろうからなぁ」
 と、港の人たちから合いの手が入る。
 てん、てん、てててん、ぴん、と弦を爪弾き、音を流して。
「娘と、縁を結んだモンスターたち。それが今日の花祭りのテーマさ!」
 人々の声に頷いた仄々は間奏から終わるための演奏へ。
 奏で終わって一礼をすれば拍手が送られる。
「面白い即興だったな!」
「楽しかったよ」
「――いえいえ、お話を教えてくださった皆さんのおかげですよ」
 感想に対して仄々はにこやかに応じた。
 さらなるお礼に奏でる一曲は、事前に仕入れてきた建国王の話。
 皆が好きなお話なのだろう。
 凱旋の歌あり、踊りあり、とても喜ばれた。

 演奏の後は喉を潤して、腹ごしらえだ。
「わあ、ゼリーっぽいものがあるとは」
 海藻のアガーを固めて、海色に着色されたぷるぷるゼリーは口に含めばぱちぱちと弾けるもの。散りばめられた魚や星の形の砂糖菓子が程よい甘さ、器の底では遺跡を模したものとなっている。
「海底洞窟遺跡はあまり探索が進められていないのですねぇ」
「海の底へ行く、ということ自体が難しいですからね」
 ゼリー売りの露店の主と話をしながら仄々は甘味を満喫する。
 それでも一番の引潮となった時に探索は決行されるらしい。
 過去、光る鉱石は時に波打ち際にも流れてくることもあるようだ。
「……ヒポグリフがグリフォンを探しに来ているのかもしれませんね」
 『父』を探しに。
 演奏のため、おとぎ話を読みこんだ仄々はそんな風に思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カネリ・カルティエ
破魔の力を宿す石ですか、呪具を扱う者として、一つ備えておくのも良いでしょう。

私は遺跡市場を散策しようと思います。
古代墳墓遺跡からはなにが出土しているのでしょうね。過去に採掘された光の鉱石があれば、色や形状を直接確認しておきたいものです。

花祭りで使われる花は特定の種だったりするのでしょうか? それとも、花だったら何でも良いのでしょうか。

市場の方にヒポグリフや光の鉱石のことを聞ければ良いのですが、商売に直接関わることですから、そう簡単には教えて下さらないでしょうし、催眠術・言いくるめを使うか、闇に紛れて業者の会話をこっそり聞くのもいいかもしれませんね。



 地下に多くの遺跡群が眠る遺跡都市ヴェルニス。
 そのうちの一区画、遺跡市場。
 毎日、何かのお宝が発見される場所は買い付けの商人が行き交い、掘り出し物の材料を求めて職人が通う市だ。
 古代墳墓遺跡から出土された物が調べられたのち、多くの物が売り物として遺跡市場へと回される――中には人の手をすり抜けて呪いの物が売られていたりも。
(「破魔の力を宿す石ですか、呪具を扱う者として、一つ備えておくのも良いでしょう」)
 そう考えて光る鉱石の手がかりを求め、カネリ・カルティエ(ブラックタールの探索者・f10978)が店を一つ一つ、丁寧に覗きこんで回っていると一人のフェアリーが「こんにちは」と声を掛けてきた。
「はい、冒険者さん! 花祭りのお花をどうぞ!」
 そう言って渡されたのは白い花。
「これはこれは、ありがとうございます。……おや、造花なのですね?」
 カネリへと渡された花は精緻に編まれた造花であった。ゆらりと繋ぐための捻り糸が垂れている。
「そうなの。遺跡市場の花祭りは色んな花が使われているのだけど、最初は白の造花から。これはモンスター使いって呼ばれた娘さんにちなんでなの」
 垂れた捻り糸部分へ好きな生花や造花を挿して、縁を繋いでいく
「娘さんが始まりの白でね、後の花はモンスターにちなんでだったんだけど、今は各地の縁(つながり)として表現されてるんだ」
 この造花は東の地の物。
 こっちの造りは北の土地の物。
「色んな物が集まる市場で、独特に変化してきた花祭りなのですね」
 と、カネリが言えばフェアリーは嬉しそうに頷いた。楽しんでね! と手を振って去っていく。
「……ということは、花祭り自体はモンスター使いの娘に由来したものなのでしょうね」
 受け取った白い造花をくるりと回してカネリが呟いた。
 そして手に入れる花たち一つ一つの由来を尋ねる。
 始まりの娘――白い花はナナカマド。一見花には見えないブドウの花はグリフォン。黄色の花はヒポグリフ。
「季節柄、白い花が多いようですね」
 フェアリーが動いているからか、暇そうな花の露店主と話をして気付いたことを言葉にすれば「そうだなぁ」と軽い頷きが返ってきた。
「白い花は魔除けにちなんでいることも多いからな、よく使われたりする。ほら、このスナップドラゴンなんかは枯れたら怖いぞ」
 花が枯れれば髑髏が咲く。そんな花だ。
 髑髏のような花殻も束で貰ってカネリは遺跡市場内を再び散策し始めた。
 鉱石屋を訪ねれば効力を失った元光の鉱石を見せてもらえた。それはただの石と化したがっかり具合であったが、その店にはヒポグリフの爪で作られた短剣があった。
 闇に紛れ、こっそり張り付いてみたカネリが職人街の遣り手同士の会話を聞くに、あれは売り物ではないらしい。鍛冶職人の手本となる品のようだ。
「大昔に造られたものだが、錆も無く色も褪せないこの輝きよ!」
 鉱石屋の主が自慢げに言う。
「大昔にヒポグリフは乱獲されたらしいからな。素材自体を見たことはないが、いつか扱ってみたいもんよ」
 職人も熱意に満ちた言葉を返していた。


 多くの時間が過去へと流れてしまっても、物は市場に溢れている。砕けてしまった何か、十字架、聖骸布、宝珠、羊皮紙のスクロール、石板に刻まれたレシピ。
「…………レシピ……」
 ジュレを作る色んな材料がそこには記されていた。何ともいえない声で呟くカネリ。
「これも古代墳墓遺跡から出土されたのですか?」
「ああ、それは古代じゃない墳墓遺跡から出土されたものでね。変わってるだろう?」
「――古代じゃないということは、何らかの墓所もあるということでしょうか」
「偉人を祀った場所があるらしいよ」
 この情報は商人に尋ねるより、実際に地下遺跡へと赴く冒険者たちに尋ねた方が良さそうだ。
 遺跡と共に発展してきたヴェルニス。
 拡張の仕方もそれぞれの時代によるのだろう。
「現在探索済みの遺跡地図も手に入れておいた方が良さそうですね」
 そう呟いて新たな目的をひとつ掲げ、カネリは市場内を行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クララ・リンドヴァル
易しめの採掘依頼かと思ったら、オブリビオンの討伐依頼でしたね。
でも、魔力を帯びた鉱石は使い道も多そうですし、街の人々の暮らしにも興味がありますから。
それにしても、賑やかですね。花祭り。

迷った末、「シャルムーン神殿」を訪れてみます。
地上の神殿は信徒が建てたのでしょうけど、地下の遺跡の方は、昔からこの街にある遺跡の一部と考えた方が、自然ですよね。
遺跡の由来その他を知るには、過去の伝承に当たった方が手っ取り早いでしょうし、この神殿はそういう話が出やすいのではないかな、と。

まずは神殿の人に、伝承に関する話を聞きましょう。その後は散策しつつ、周りに気になるものがないかを見ていきますね。

※アドリブ連携OK



(「易しめの採掘依頼かと思ったら、オブリビオンの討伐依頼でしたね」)
 仲間の猟兵たちと手分けしての情報収集。
 遺跡の採掘依頼だけならピクニック気分で楽しいものだったかもしれない、と、そんな風に思ってクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)は苦笑する。
 ヴェルニスには魔術廃棄迷宮というのもあって、いつかじっくりと腰を据えて探索したいと思わせる国の一つだ。
 大樹の囁き亭を背に歩けば左手の区画には遺跡市場、右手にはシャルムーン神殿へ続く大通り。
 道ひとつ通っただけで都市には複雑な歴史が刻まれているのが分かった。
 遺跡と共に発展してきた都市は、その拡張の仕方にも時代の色が反映されている。壁の造り、建物の造りが隣り合って異なる場所がある。一歩路地へ入ればそこは地下に進む階段があったり、炎竜広場へ直通する抜け道だったり。
「仮に住むとしても……慣れるまで時間が掛かりそうです」
 数多の商会のバザーが開かれているらしい市場も気になるが、悩んだ末にシャルムーン神殿へと向かうことにした。
「……それにしても、賑やかですね。花祭り」
 港の方へと走っていく馬車を横目に辺りを見回す。すると一人のフェアリーがクララに向かって飛んでくるのに気付いた。
「冒険者さんだ!? 花祭り、初めて!?」
 ようこそ! と生花を手渡してくる。
「わ、わ! あ、ありがとうございます?」
 小花の集まる白い花、そこから垂れるようにスナップドラゴンの赤色。
「こうやって胸に挿すといいよ~」
 すいっと胸元に花たちを挿せば赤の花がゆらゆらと揺れる。
「潰さないようにしますね」
 何か物を持った拍子にとか、転んだりとか、今日はしないように気を付けようとクララは思った。繊細な物を抱えている時に転んでしまった時のあの切なさったらない。
「楽しんでね~」
 そう言って飛んでいくフェアリーを見送って、ちょっと慎重な足取りになった少女はシャルムーン神殿へと入っていった。
 言葉の神シャルムーンを奉じ、契約書の発行などにも携わる大規模な神殿は厳かな雰囲気にも満ちていたが、隣の建物は事務仕事のような職場感があった。
「地上の神殿は信徒が建てたのでしょうけど、地下の遺跡の方は、昔からこの街にある遺跡の一部と考えた方が、自然ですよね……」
 地下へはやはり神殿の中から入っていくのだろうか。
 きょろきょろと辺りを見回しながら、参拝を済ませるクララ。
 神殿内部の端っこにも地図が掲示されていて、その観光的な順路を眺める。
「観光でございましょうか?」
 背後から神官に声を掛けられ、一瞬びくっと身を跳ねさせたクララは振り向いて「はい」と思わず頷いた。
「あ、いえ、伝承を調べに来まして……何かお聞かせ願えればと」
「私でよろしければお話ししましょう。そうですね――本日の神殿での花祭りは魔除けの祭りでもあります」
 国が建った頃、この地にはモンスター使いと呼ばれる娘がいた。
「様々な伝承と絡んだ娘にございます。まずは始まりからお話ししましょうか」

 樹木・トネリコの頂は白い霧を発し、水が谷間にしたたり落ちていく。
 谷間から流れた水は川となり、川は流れるもの――言葉の神となった。
 やってきた雷神が言葉の川を渡ろうとしても怒涛なる流れに、なすすべもなく。
 そんな雷神の渡りを助けたのはナナカマドの木であった。
 雷神は礼に川で汲んだ水を木に与えた。
 言葉の神水を内包したナナカマドを通し、知識を人々が得始める。

「水難避けとしてナナカマドの板を一枚、船に組みこむと良いとされていますね。木で作った十字架を戸口に掛けて魔除けとする家もあります。冬には実が燈火のように赤々とした色を魅せてくれます」

 あるきっかけでヒポグリフはナナカマドの木の守護獣となった。
 そこで植物迷宮に通う一人の娘と出会った。

「実際は様々な人が関わっていたとは思いますが、ほとんどのナナカマドの伝承にはその娘が出てきます」
 こちらへ、と案内された場所は神殿の前広場で開かれているバザーであった。
 ナナカマドの木やトネリコの木を彫ったお守り、魔除けのハーブ、枯花にスナップドラゴンの吊るしが露店で売られている。ちょっと髑髏が連なっているようで面白い。
「そのモンスター使いの娘さんと、ヒポグリフは……」
「ええ、仲良しだったそうですよ。寿命は人の方が早くに尽き、ヒポグリフは絶滅の途を辿るようですが――」
 娘は言葉の神の力が分け与えられたナナカマドの木を研究しながら、ヒポグリフとの交流を深めていったらしい。故にモンスター使いと呼ばれた。
 神官の話はそこで終わり、クララは丁重に礼を告げたのちに散策を再開した。


 木の実やハーブのジュレ、ジャムは苦みのあるものが揃っており、それがまたグリルされた食材と季節のフルーツジュースを引き立たせている。
 ひと休みがてらそれをいただきながら、クララはふと地面へ視線を落とした。コツンと踵打ち鳴らせば、微かな音が地下へと響くように。
「……ヒポグリフの動機に触れたような気がしますね……」
 呟いたクララの顔には優しい微笑み。
 そっと胸元に挿す花に触れた。
 ナナカマドの花言葉は――あなたを見守ります。
 応えるスナップドラゴンの言葉も、きっと娘にちなんだものなのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と「大樹の囁き亭付近」へ

大きな樹を見上げ
きらきら木漏れ日を追えば、地上に降り注ぎ花祭りの花達になったみたい
沢山のお花達
そぞろ歩くのは冒険者の皆さんが多い?
あ、待ってまつりん(追いかけて

メニューを吟味し、ん、わたしはオレンジレモンスカッシュのマンゴー添えなるものを
まつりんの質問を耳にじっくり味わう
ん、蕩ける美味しさ…

金キラ、このジュースの様な色合い
例えるなら黄色の風信子石
きらきらと花で溢れるその場所を求め
あちこち回ろう
まつりん、串肉とりんご飴もどうぞ

迷宮に人だかり
ふふ、初心者冒険者さん達
わたしも初めての依頼は緊張した
懐かしく思い出して
まつりんと一緒に手を振りお見送り


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と「大樹の囁き亭付近」へー。

こんちわー!
冒険者の宿はドコも元気でいいよね。
おっちゃん、果物ジュース!

ここの大樹さん、なんてお名前?
どんな依頼が多いのかなぁ。おいらでも受けられそう?
ふふふ、おいら強いよ?(ニヤリ)

姉ちゃん、ヒポ……なんちゃらってモンスター、知ってる?
金キラなんだって! 目立つし、知ってるかなって。

金色の……ヒマワリに似たお花もあるかな?
キンポウゲやヤマブキみたいなの!

金色のお花を追っかけて、お店を回り。
コロッケと燻製卵の串焼きを交互に齧りながら。
迷宮の前で、初級冒険者さんたちをお見送りしようー。

花祭りのご利益がありますように!
(柏手打ち、なむなむする)



「初めましてかしら、冒険者さん! お花をどうぞ~」
 遺跡都市ヴェルニス。大樹がある一帯はたくさんの冒険者で人が溢れかえっている。
 花配りのフェアリーが新しくやってきた冒険者――木元・杏(シャー・オブ・グローリー・f16565)へ白と桃色のミニブーケを渡した。
「ありがとう」
 ぱあっと頬を染め杏が受け取る。
「はい、君もね」
「わーい、ありがと~」
 次に隣を歩いていた木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)には白と黄色の組み合わせの花たち。
 楽しんでね! と去っていくフェアリーに手を振った双子は、行こう! とまた歩きはじめた。
 厳つい冒険者の歩みを避けて、ちょっと道の端に。
 ふう、と吐息を零す杏であったが、この付近はいつも涼やかな影が落ちている。
 見上げれば大きな樹。風に揺れた葉が踊り、光影を紡ぐ。
 きらきらな木漏れ日は石畳の模様の上で、まるで万華鏡のように踊っていた。それが時々花のようにも見えて杏は微笑む。
「アンちゃーん、こっちこっち~!」
 はぐれちゃだめだよーと兄の声が聞こえて、ぱっと杏は顔を上げた。
「あ、待ってまつりん」
 小走りで慌てて追いかける。
 ここにしよ! と祭莉がある建物を指差した。一階は食事処と入り口付近には小さなテラス。二階が宿となっている冒険者の宿。
 店の前ではジュース屋台が開かれていて、買い求めて喉を潤していく人が多い。二人のお目当てはこれだ。
「こんちはー!」
 と、祭莉が挨拶をした相手、露店に立つのは厳つくいかにも元冒険者な風貌の男だった。
「おうらっしゃい!」
「おっちゃん、宿のあるじ?」
「いやウェイターだ!」
 堂々とした物言いでウェイターが答える。元気がいい。
「へーそーなんだ。おっちゃん、果物ジュースちょうだい! おいら、オレンジにしよっかな~。アンちゃんはどれにする?」
 ぐいぐい行く兄に追いついた杏は、むむむ……と悩ましげな声。
「オレンジレモンスカッシュ、の――マンゴー添えなるものを」
「はいよ、マンゴーはくり抜くぞぉ」
 魔法使いの氷と一緒に入るマンゴー。にこーっと笑顔になった杏が満足そうにジュースを受け取った。
「ねえ、ここの大樹さんってなんて名前なの? シェルフワとかついてる?」
 ジュースで喉を潤しながら祭莉がおっちゃんや周囲の冒険者へと訊けば、おおん? と不思議そうな声があちこちから。
「エルフの大樹」
「囁きの大樹」
「おやじさん」
「…………コモリービエル・ユグドラシル?」
「いやそれ今適当に付けただろうが」
「…………自由なんだね」
 胡乱げな目で彼らを見上げる祭莉だった。
「そういやあボウズたちは見ない顔だが、冒険者デビューしたばかりか?」
「ううん、違うよー。ふふふ、おいらたち強いよ?」
 にやっと笑む祭莉に「ほ、ほほう?」と冒険者たちの身体がぴくりと動く。
「それじゃあもうモンスター退治とかご経験済みでいらっしゃると?」
「うん! ドラゴンとかね! いっぱい倒してる!」
 ここはどんな依頼があったりするの? と尋ねてみれば、依頼掲示板へと連れていかれた。
 モンスター退治依頼はあっちこっちに。
 騎士団による初心者訓練の依頼もある。
「食材調達も多いね?」
「この都市も人が多いからな。郊外の収穫が間に合わない時は植物迷宮に調達に行ったりもするな。まあ初心者の仕事よ!」
 一方、祭莉と冒険者たちのやり取りを聞きながら、まったりじっくりとジュースを味わう杏。しゅわしゅわふよふよとした食感になっているマンゴー。
「ん、蕩ける美味しさ……」
「おいらたち、ヒポ……なんちゃらっていうモンスター退治の依頼を受けたんだけどさ、どんなモンスターか知ってる?」
「ひぽ?」
「ヒポグリフじゃないかい?」
 割って入ったのは女冒険者の声だった。あーそれそれ、と祭莉。
「金キラなんだって! 目立つし、知ってるかなって」
「金キラ、このジュースの様な色合い」
 そう言って杏が持っていたジュースを掲げた。
「例えるなら黄色の風信子石」
 氷に映しこまれる黄色はキラキラとしている。
 聞けば、ヒポグリフには一部の冒険者の間で伝承があるようだ。
 それは植物迷宮のナナカマドの木の番人であるヒポグリフと漁師の娘の話だった。
 料理研究のためよく植物迷宮へと潜っていた娘と、心を通わせた物語。
「ヒポグリフはどうして木の番人になって?」
 杏が不思議そうに女冒険者へと尋ねる。
「そうねぇ、色々と説はあるけれど父から継がれた約束というのが一番しっくりくるね」
「おとうさんとの……」
「そう、ヒポグリフは今でこそ絶滅した種らしいけど、グリフォンと雌馬の仔って言われててね」
 グリフォンの役目である『王家を守るもの』『黄金を守る』『狂気の神の酒甕を守る』――いずれかを継いだのだろうとされていた。
「でもさ、植物迷宮には黄金も眠っているかもしれない! って可能性が残っているのがまたロマンよね!」
 そう言って女冒険者はからりと笑った。


「金色ってどんな感じなんだろうねー」
「ひよこみたいにふわふわな金色だと良い」
 話を聞いた双子は金色の花を探して散策へ。マリーゴールドやキンポウゲ、ヤマブキみたいな鮮やかな黄色はとても目立つ。
「あっヒマワリに似たやつー」
 と、祭莉はルドベキアを指して。
 けれども誘惑もとても多い散策。揚げ物屋台と燻製屋台も見つけた。
 割ればほくほくと湯気のたつコロッケ。
 燻製されたチーズや卵、分厚いベーコンの串を袋いっぱいに。
 祭莉が頬張っていると、杏もまた両手に串肉を持っている。
「炭火、タレ、塩の順番。はい、まつりん、おすそわけ」
 差し出せば「あ~ん」と祭莉の口が大きく開いた。アンちゃんもね、と差し出される燻製串に杏もかぶりつく。
「おいひい」
「うん、んまいねー」
 デザートは黄金纏うリンゴ飴。
 食べ歩いていると、目前を緊張しきった顔の冒険者たちが通り過ぎていく。
「あ、まつりん。あそこが迷宮の入り口?」
「そうみたいだね~」
 まだ身体の線が細い冒険者たちが、重々に装備を確認しながら不安そうな表情になっている。
「ふふ、初心者冒険者さんたち。わたしも初めての依頼は緊張した」
 初めての冒険、初めての戦い、何でも初めてに挑む時はうさみん☆を抱きしめて。
 最初の頃の日記には色々な失敗を綴った。
 成功したことはゆっくりと字を綴った。
 そんな日々を杏は懐かしく思い出して。
「アンちゃん、柏手!」
「ん」
 柏手を打ち、初心者冒険者たちの緊張の邪気を祓って。
 ――花祭りのご利益がありますように!
 そう二人でお願いをした。
 たくさんの冒険と出会いが、きっと皆を強くする。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

至る所に花が飾られてますね
さすが花祭り!

先ずは市場で情報集めです
皆さん花の飾りをつけてますね
私達もつけたい
ブローチなんてどうでしょう?
嵩張らない大きさで…可愛らしくて
あ!あのパンジーのブローチめちゃくちゃかわいい
色違いでお揃いのにしましょう
よく似合ってますよ

それじゃあ今度は腹ごなしですね
アヤネさんはお肉が食べたいんですね
おや?今川焼きみたいなお菓子が売られてる
A&Wにも餡子はあるのかな
中身が気になる!すみませーんと声をかけ二つ購入しつつ聞き込みも忘れない
食べてみましょう
甘くて美味しい!
中身は餡子ではなく薔薇のジャムですね
花祭りだからかな?

ひょえっ!アヤネさん!?
人前で恥ずかしいよー><


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

遺跡都市と呼ばれるだけあって地上に見えている建築物も歴史を感じさせるネ
この市場の石畳も迷宮につながっているのだろうか

花祭りでまず買い求めたのはお揃いの意匠のブローチ
パンジーを象った色違い
うんソヨゴ似合ってるネ

でもついつい食欲が優先
迷宮にちなんでドラゴンのしっぽステーキとかないかしら
肉類をメインに買い食いをしながら情報収集
古代墳墓遺跡で近頃光の鉱石に関する話は聞いてるかい?

さすがソヨゴ甘い物には目がないネ
イマガワヤキ?確か呼び名で戦争が起きるっていう噂の
匂いからしてあんこではなさそうな
おやこれは花のジャム?
薔薇なのね

ソヨゴはほらジャムがほっぺについてる
指で拭って自分の口に
うん甘酸っぱい



「わ~、華やかだっ。至る所に花が飾られてますね」
 わくわくとした明るい声で城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は言った。
 遺跡都市ヴェルニスの複数の区画で行われている花祭り。
 屋台や露店は造花や生花で飾られて、たくさんの商会も集う遺跡市場は他所の地域色が出ているところもある。
「あっ、アヤネさん、金魚草がいっぱいの場所がありますよ!」
 ひらひらとした金魚草――スナップドラゴンの彩豊かな花たちが飾られる屋台はよくよく見れば呪術的な物が売られている。
「枯れた後の殻が髑髏っぽいから? え、あれキンギョソウのなれのはてなの?」
「確かに怖い見た目ですもんねー」
 不思議に思ったアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)が尋ねてみれば意外な答えが返ってきた。
 あんなに可愛らしいのに、髑髏が鈴なりになっちゃうんだネ。――なんて会話をしながら散策。二人の手には市場に入った時に貰った造花が一輪。
「遺跡都市と呼ばれるだけあって地上に見えている建築物も歴史を感じさせるネ。この市場の石畳も迷宮につながっているのだろうか」
 たんっと踵で石畳を打つアヤネ。
 遺跡が発見されて以降、育ってきた国の建造物は時代の色が見える。
 周囲を見回す冬青はどこかソワソワとしていて、そのうちにくいっとアヤネの袖を引いた。
「皆さん花の飾りをつけてますね。アヤネさん、私たちもつけませんか?」
 花の髪飾り、手首にリボンと一緒に結んで、今は時期的に白や黄色が多いのだろうか。落ち着いた清楚な色を多く見かけた。
「いいネ。どんな飾りにする?」
「そうですね……ブローチなんてどうでしょう? 嵩張らない大きさで……可愛らしくて――」
 後半はやや呟きながら露店を見回すと早速目を惹くアクセサリーがいくつか。
「あ! あのパンジーのブローチめちゃくちゃかわいいですよ! 色違いで、お揃いのにしましょう!」
 こっちです、とアヤネの手を引いて冬青が行く。
「本当だ、可愛い~」
 黄や白、ピンクや青、紫の色をベースに少しずつ模様の違うパンジーを象るブローチは、花芯の部分にビーズが使われている。
 これだ! と思う色をそれぞれ手に取ってお買い上げ。お互いの胸に付け合いっこをしてみて、まずは冬青が「どうですか?」と立ってみせた。
「うん、ソヨゴ似合ってるネ」
「アヤネさんも! よく似合ってますよ」
 微笑み合って、ハイタッチ。そのまま手を繋いで歩く。
「えーと次は……っと」
「ソヨゴ、腹が減っては情報収集もできぬ、ってやつだよ」
「じゃあご飯ですね」
 グリル屋台へと向かっていけば、香ばしい匂いが満ちていた。
「あっ、すごいソヨゴ。ドラゴンのしっぽだって!」
 アヤネが発見した屋台はドラゴンの肉屋さん。
「いやあとっておきだよ! 本日限り! お祭り開店!」
 と焼いている店主が勧めてくる。モンスターが退治され、ここでも食べられる物は流通されるようだ。
「小型ドラゴンだけどね、ほら、焼きたて」
「ありがとう。いただきます」
 とアヤネが串に刺したドラゴン肉をゲットする。
 よく動くからか、ドラゴンの肉は深みのある味わい。歯ごたえもある。
「ジュレの苦味と合うネ。薬味みたい」
「ちょいと甘めなハーブ胡椒と合っているだろう? ナナカマドのジュレなんだよ」
 今回の花祭りの主役さ、と店主。
「私は何にしようかな……あれ? 今川焼きみたいなお菓子がありますね」
「え。イマガワヤキ? 確か呼び名で戦争が起きるっていう噂の――」
 ライバルはオオバンヤキだったっけ。と、アヤネ。
 アックス&ウィザーズにも餡子はあるのかな? と冬青が不思議そうに言い、屋台へと近付く。
「豆類はあるからえんどう豆の餡とか? うん、でもちょっと匂いが違う。中身が気になるなぁ」
 甘い香りに、少し清涼な匂いが混じっている。
「お嬢さん、食べてみる?」
「はい! ふたつください!」
 冬青が購入した今川焼きもどきの中身はなんと、
「……これは花のジャム? 薔薇なのね」
 ひとつ分けてもらったアヤネが頬張れば早速正体に気付いたようだ。
「うわあ、花祭りっぽい! 甘くて美味しいです!」
 良い香りだなぁと冬青がニコニコと頬張る。芳醇な香りが活かされた薔薇のジャムは上品な甘さ。
「ふふふ、良かったよ。酸っぱいベリージャムも、苦味のある実のジャムもあるからねぇ、食べたいのがあったら買ってみてね」
 屋台のお姉さんが言い添えた。
 改めて店のメニューを見た冬青が軽く頷き言葉を返す。
「ジャム、豊富なんですね」
「植物迷宮があるからね、結構植物系のレシピが強いのよ、うちの国」
「遺跡に潜るのも長期間になると、食糧調達の問題がありますしねぇ」
「そうなのよ。昔はモンスター使いの娘さんがモンスターの協力を得ながら、迷宮レシピや航海のための保存食を研究していったそうなの。料理研究は続けられていて、だからレシピ系が今豊富なのだけどね」
 一つのレシピ物語をお姉さんは教えてくれる。


 漁師の家の宿命として魚料理の種類を増やすこと。それがルナの趣味です。
 今日も植物迷宮で色んな素材を採取します。辛いもの、苦いもの、甘いもの。それは花だったり、果実だったり、葉だったり。
 迷宮で出会った一体のヒポグリフはナナカマドの木の前にずっといました。
 いつしか顔なじみとなった一人と一体は、少しずつ交流を始めます。
 そのヒポグリフは魚や肉の料理にナナカマドの実のジュレを付けたものが好物でした。


 お話をありがとうございました、と礼を言って二人は屋台を離れる。
「餌付けから交流していったんだネ」
「ヒポグリフはルナさんに懐いてたんですね」
 アヤネと冬青は市場の端に寄って、食べながら得た情報を話しあう。
 ――ふと、何かに気付いたアヤネが顔を上げ、じっと冬青を見つめた。するっと手が伸ばされる。
「ソヨゴはほらー、ジャムがほっぺについてる」
「ひょえっ!?」
 くいっとアヤネの指先が頬に触れ、一瞬ビクッとなる冬青。
 拭ったジャムの指先をアヤネは自身の舌で舐めとった。
「う~ん、甘酸っぱい」
「あ、あぁぁァアヤネさん!?」
 一歩分離れて冬青が身を震わせる――否、悶える。
(「人前で恥ずかしいよ~」)
 もはや、口の中の甘い味が掻き消えてしまっていて。
 味の分からなくなったそれを冬青はごくりと飲みこむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『光輪のヒポグリフ』

POW   :    光輪の乱舞
【黄金の光輪から無数の光線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    光輪の障壁
対象のユーベルコードに対し【障壁と化した光輪】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    光輪加速装置
【無数の光輪を召喚、高速機動モード】に変形し、自身の【動きの小回り】を代償に、自身の【攻撃力と直線速度】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガングラン・ガーフィールドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 照らさねばならぬ。
 何故ならば××に闇は似合わないから。
 たくさんのモノを伝え届けた××の魂を、ヒトはこんなところに閉じ込めた。
 花開く今、恩恵を受けるべきはこの娘。

 壊せこわせコワセ、ハカイシロ!!!!


「お疲れさま!」
「そっちの花祭りの様子はどうでしたか?」
 遺跡市場を出て、大樹の囁き亭へと向かう途中の広場で落ち合った猟兵たち。
 買い物をしたり、食べ歩いたり、好奇心赴くままにあちこちを覗いたり、音楽を披露したり。それぞれが祭りを満喫してきたようだ。
 聞いた情報を一度まとめると、
「ヒポグリフって大昔は、植物迷宮にあるナナカマドの木の守護をしてたんでしょ?」
「そこにいそうな気もする。でも……」

 主に港で聞いた『狂気の神の物語』。
 これは、狂気の神が何故だか網に掛かって水揚げしてしまった漁師たちのドタバタコメディだ。
 神の悪戯でブドウ酒に満ちてしまった船もまた、狂気の神の酒甕を守るグリフォンの守護範疇に入ってしまう。
 水難・海難避けとして船にはナナカマドの木板が一枚使われているわけだが、造船時に使われる呪術的な素材の守りをグリフォンは我が仔へと任せるのだった。

「これは恐らく役目や義務ですよね。骸の海から甦るにしても、この時節の限りというわけではない……」
 ヒポグリフ自体の動機が必要である。
 ヒポグリフについて分かったことは、グリフォンと馬の仔であり、既に絶滅した種であり、モンスター使いの娘に餌付けされたということ。
「モンスター使いの娘? こちらでは聞かなかったな」
「いくつか異名があったようですよ」
 漁師の娘であり、雷の娘。
「名前はルナさんでした」

 『漁師の家の宿命として魚料理の種類を増やすこと。それがルナの趣味です。
 今日も植物迷宮で色んな食材を採取します。辛いもの、苦いもの、甘いもの。それは花だったり、果実だったり、葉だったり。
 迷宮で出会った一体のヒポグリフはナナカマドの木の前にずっといました。
 いつしか顔なじみとなった一人と一体は、少しずつ交流を始めます。
 そのヒポグリフは魚や肉の料理にナナカマドの実のジュレを付けたものが好物でした。
 言葉が詰まっていてとても美味しいのだと。
 ヒポグリフはお礼にいつまでも輝く鳥の羽根と、知識をルナに授けました。』

「好物のナナカマドに関しては、神殿でこんな伝承がありましたね」

 『樹木・トネリコの頂は白い霧を発し、水が谷間にしたたり落ちていく。
 谷間から流れた水は川となり、川は流れるもの――言葉の神となった。
 やってきた雷神が言葉の川を渡ろうとしても怒涛なる流れに、なすすべもなく。
 そんな雷神の渡りを助けたのはナナカマドの木であった。
 雷神は礼に川で汲んだ水を木に与えた。
 言葉の神水を内包したナナカマドを通し、知識を人々が得始める。』

「魔除けのお守りとしても使われる木ですから、鉱石に破魔の力が宿っているのはこれで説明がつくかと」
 花が咲くのは今の時期だ。
 戦(雷)神の一神、トールといえば鉄槌なので、鉄槌職人街の花祭りは伝承を元にした部分もあるのだろう。
 植物迷宮への依頼掲示板に伐採・採取依頼もあった。
 そしてこの時期の花祭りの起源はモンスター使いの娘・ルナにあるという。
「恐らくここが時節の動機でしょうね」
 今、何処かにいるのだとしたら、きっとルナの近くだ。
「……そういえばレシピ石板なるものが出土されてましたね」
「古代じゃない墳墓遺跡から」
 ナゾナゾみたいな言い回しだが、偉人の眠る一帯なのだという。
 遺跡と共に発展してきたヴェルニスだからこそ。
 ヒポグリフは古代じゃない墳墓遺跡にいるかもしれない。
 頷き合って、猟兵たちは遺跡市場の地下へと向かった。


 ドン! と光の奔流が墳墓に轟く。
 手に入れた地図を使い、深く、地下へと入る猟兵たちが辿り着いた先は眩い世界であった。
 光輪から稲妻が翔け、遺跡の内部を撃つ。
 それでも大きな崩落もしない遺跡はとても頑丈なのだろう。
 威嚇する鷲の声が響き渡った。
 猛る赤の瞳は狂気に満ちている。
 自身が何ものなのか、過去も未来も忘却したオブリビオンが強く羽撃く。
 相手は今や荒ぶるモンスター。取り返しのつかない被害が出る前に倒さねばならない。
 光の嵐の中へと、猟兵たちは踏み込んだ。
箒星・仄々
心優しくて寂しんぼのヒポグリフさんなのですね
ルナさんもきっと心を痛めてお出ででしょう
ヒポさんへ静かな眠りを送らせていただきましょう


小回りがきかないのなら…
一射目を囮として
続けて上下左右の予想される回避先へ矢

これを繰り返し
炎水風の魔力で光や雷の力を相殺・弱体化

ヒポさんの突撃は風の魔力でふわっと避けます


光輪のヒポさん
花祭りはルナさんや貴方が示された
人とモンスターとの友情を
今も人や各地を結ぶものとして受け継ぎ
祝しているもの

貴方方のおかげですよ
ありがとうございます

ルナさんは海でお休みされていますよ
貴方を海へお送りいたしましょう

終幕
ヒポさんが消えた場所と
ルナさんのお墓へ献花
お二人の物語の歌を捧げます


城島・冬青
【橙翠】

もう自分が何者であるかもわからないんですね
ピポグリフのギラギラしている赤い瞳を見ると胸が痛む
思うことはありますが
悲劇が起こる前に倒さなければ
ごめんなさい、行きます

刀を構えUCで一気に飛翔
空中戦を仕掛ける

ピポグリフの周囲を飛び回り
此方にピポグリフの意識を惹きつけて
その隙を突いてアヤネさんに狙撃してもらう
もちろん陽動だけじゃなく私も死角から斬りつけてダメージ与えていく
わっ!アヤネさん、銃の組み立てめっちゃ早い

ピポグリフから少し離れて攻撃する際は衝撃波を使う
ほらほらこっちですよー
敵のUCはダッシュと遺跡にある遮蔽物を駆使して直撃は回避する

アヤネさんが祈りを捧げるのを見て一緒に手を合わせる


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
まばゆい光
照らされた遺跡の内部すら幻想的なのに
この綺麗な獣を倒すの?
事情がわかると討伐するのが惜しい相手だけど
オブリビオンであれば仕方ないか

間合いは遠目
ソヨゴ前は任せた
重いケースをどさりと地面に下ろし
SilverBulletを取り出し秒で組み立てる

飛行する機械兵器と電脳ゴーグルをリンク
相手の周囲に配置して動きを牽制
ソヨゴへの直撃は許さない

打てる弾数に制限はあるが
相手のUC発動の隙に一発目は翼の付け根を狙い撃つ

光の輪綺麗だネ
二発目は脚を狙う
三発目は長く苦しまないように頭部へ

愛した娘は其処にはいない
骸の海におかえり
ロザリオを手繰り
アーメン

ソヨゴは無事?
(僕はああはならない)
そっと抱きしめる


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
ん、ルナはお墓で眠っている
壊さないように注意(こくん)
灯る陽光からオーラ放出
皆と連携して声を掛け合い、守りの薄い場所にオーラを集め防御を固める

ヒポグリフ、ルナは土に還っただけではない
大地に眠り、大好きだった花達を地上へ導いている
そしてルナの傍らには今でもきっと、光がある
貴方の金色の羽が、暖かく包み込んでいる
だから、貴方も還ろう
ルナも貴方も、独りじゃない

【花魂鎮め】
ヒポグリフの注意を引きつけるように真正面から突進
光輪を灯る陽光で受け止め、光の壁を目眩しに、うさみん☆、GO
まつりんと息を合わせ、ヒポグリフにパンチ&キック

レシピの石板あるかな
レシピ、メモに写し留めたい


ガーネット・グレイローズ
さっきの店の料理。魚のハーブ焼きは絶品だったなぁ。
それにあのワイン。やはり昼間から飲む酒は最高…ん、なんでもない。

あれが光の嵐纏いし魔獣ヒポグリフか。
動きも素早いし、広範囲を攻撃する能力は厄介だな。
【裁断領域】を戦場に展開。触れればダメージを受ける
ワイヤー迷宮を張り巡らし、待ちの姿勢で戦おう。
ワイヤーは《念動力》で操って、ある程度自在に形を
変えることができる。小回りが利かなくなったヒポグリフには
効果てきめんだろう?
ダメージ覚悟で突破してくるならそれもよし、迷路攻略に
時間を要するなら、こちらも仲間と合流して共同作戦だ。
消耗したところを、クロスグレイブの《レーザー射撃》で
狙い撃ちだ!


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と食べ歩き後。

いたー、金色のヒポ。
父ちゃんの言い付け守ってるんだ。エラいね!
偉いケド、オブリビオンだから、還ってもらわないとだね。ゴメンね!

アンちゃんの上空に浮かび上がり、如意な棒からの衝撃波で牽制陽動。
ふるさとのうたを歌うよ。
楽しかった日々のうた。懐かしい日々のうたを。

近付いてきたら、ギリギリまで引き付けて、ひらりと避け。
すれ違いざまに、カウンター。
花輪を、ヒポの首に掛けてあげる。

骸の海に戻っても、もうだいじょうぶ。
花祭りはルナちゃんのためにやってるんだってさ。
だから、さみしくないよ?

この石、雷と光が合体してるんだね。
ルナちゃんとヒポが一緒にいる。
よかったね!


カネリ・カルティエ
いやぁ、眩しいですね。
(闇属性の魔術を扱う)私との相性は悪そうだ。

SPD【黒き鎖】に呪詛を込め、
相殺対策に催眠術で相手に幻覚を見せてから攻撃を行います。その大きな翼が邪魔ですね。

地縛鎖を使った地形の利用、結界術で相手の動く範囲を狭めることは可能でしょうか?

何をそんなに荒ぶっているのやら。
墳墓では、お静かに。


クララ・リンドヴァル
別れは悲しみです。残される側の寿命が長ければ、なおさらです。
いずれ先立つルナさんに対する、ヒポグリフの可愛がりようが目に浮かぶのは、勝手な想像でしょうか。
ですが、その想いがナナカマドの花言葉に託されているのだとしたら、私たちがしてあげられることは、一つですよね。

物理結界魔法、発動。
敵の動きが早いので、一発は外れると思います。
なのでそれを見越して、発生した地形に素早く避難します。
後は頑丈な本棚に身を隠し、光輪や突進を凌ぎながらUCで反撃すれば
どんどん私の陣地が広がって行きます。

ルナさんは、ヴェルニスに沢山のものを残していきました。
それを見てくれるなら、どんなに良かったでしょう。

※アドリブ連携OK


リオン・ゲーベンアイン
集めた情報から推察して作り上げた対UC装置を弓に装着
そうして障壁と化した光輪を攻略するべく組み上げられた矢が光輪を貫き、あるいは回避してヒポグリフを穿っていくよ

攻撃が来たらモードをチェンジして絶対防御バリアを展開
攻撃を防いでそこから【カウンター】として黒陰矢を放つ

過去を封じた後は語りかけていく

例え、躯の海から蘇った存在だとしても、ルナの元に居続ける思いは尊い
ワタシはそう信じている
だが、許してほしい
ワタシはアナタを躯の海へと返さなければならない
ゲーベンアイン侯爵として、この世界の冒険者として
そして、猟兵という頂点に座した者の責務として
そういって疾風を込めた一矢を解き放つ


リオ・ウィンディア
地下墳墓にまた来たかったの
アルダワで散々出向いたけれども、やっぱりこの空気が・・・
いやちょっと、かなりまぶしっ

ふむふむ、この鳥を退治してドワーフさんの依頼を完遂すればいいのね
おっと危ない【早業・第六感】で回避
さて、私の攻撃は・・・こうよ
ここは墳墓、幽霊さん出番よ!
ネクロオーブで大量の幽霊を召喚。さらにUC発動で幽霊を強化
物理攻撃はほぼ無効化
【呪詛・精神攻撃・2回攻撃】で挑むわ

そして私自身もダガーを構えて【属性攻撃:闇】で鳥の光を相殺
相手が直線で来るのなら私はそれを迎え撃つだけ
【オーラ防御】で踏ん張ってダガーを何度も突きつける
召喚した幽霊に紛れながら隙を狙ったり

さぁ、墓地の闇の呪詛はどんなお味?


春乃・結希
焔拳を叩き込むと同時に紡ぐ鎖
これで少しの間でも動きを封じられれば
みんなの攻撃のチャンスを作れるかも
それと、言葉を伝える時間も

ヴェルニスのヒト達はきっと、あなたの大事なヒトを閉じ込めようとしてるわけや無いよ
この街には、どこに行ってもあなた達の物語が残ってて
すごく大事に思ってるから、ずっと伝えたいから、こうしてお祭りも開いて
ここにお墓があるのも、ここなら街のみんなで守れるから、安心してねって事なんやないかな

ルナさんのお墓に、フェアリーから貰ったお花を供えたいです
海に還ってもみんなの心に残ってて
本当に素敵な、1人と1匹やったんやろうなぁ

…それであの…古代やない古代墳墓てなんですか…っ?(わかってない


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

友人だった人間の近くに……、残念ですが食べるのは止めます、目玉や内臓系の素材を採るのも止めます、友人の墓の近くでショッキングなことしたくありませんから。

【白銀竜の解放】で四つ足の飛竜になり青い炎で戦います、美味しそうな敵だといつも噛みついてるから食べないように戦うのって難しいなぁ。

あ、ドワーフさん達との約束はどうしましょうか……羽根は落ちてるのを集められるけど、代わりに私の抜け落ちた鱗とか牙とかでもいいかな?

アドリブ協力歓迎です。




 古代墳墓遺跡。
 篭った空気は重々しく静寂に満ち、冒険者たちの足を止めようとしたり追い出そうとする気配。
 一つ一つの区画が広く、または狭く。
 独特なこの雰囲気の中にして、けれどもリオ・ウィンディアの呼吸は落ち着いたものだった。
(「アルダワ魔法学園の地下墳墓も空虚としていたけれど」)
 広さと静寂は比例する。
 音一つが虚空を震わせ渡っていく様が好きだった。
 やっぱりこの空気が……、と思ったところで、辿り着く浅層の一区画。
 闇に覆われているはずの地下が、カッ!! とした雷気に迸り光が区画を照らし出している。
「……いやちょっと、かなりまぶしっ」
 思わず手を翳して避けてしまうリオ。
 怯んだ彼女に同意して頷くのはカネリ・カルティエであった。
「いやぁ、眩しいですねぇ」
 被る雑面を透かし通ってくる光に、カネリはフードを目深にする。そしてサッと周囲に目を走らせた。
 光輪のヒポグリフを中心に放たれている光が遮蔽物の影を長くしている。
 ヒポグリフが動くたびに影もまた左右に、長短に動く。
「私との相性は悪そうだ」
 けたたましく鳴くヒポグリフの声は鷲のものであり、馬のものでもあった。
 大きな黒爪が地を穿つ。
 光の獣でありながら、翼に映しこまれる影は濃淡の彩をなす。
 そのまばゆさにアヤネ・ラグランジェは目を細めた。
「照らされた遺跡の内部すら幻想的なのに、この綺麗な獣を倒すの?」
 その時、光輪の乱舞が遺跡内を揺るがした。
「もう自分が何者であるかもわからないんですね」
 ヒポグリフのぎらついている赤い目と一瞬目が合った気がして城島・冬青は心を痛ませた。
 花髑髏の柄に手を添えた彼女の肩をアヤネはぽんと軽く叩く。
「事情がわかると討伐するのが惜しい相手だけど、オブリビオンだというのなら仕方ない」
 アヤネの言葉に頷き、行きましょう、と冬青。
 箒星・仄々がカッツェンリートの弦を弾いた。
「心優しくて寂しんぼのヒポグリフさんなのですね……ルナさんもきっと心を痛めておいででしょう」
 事情を知り、だからこそ骸の海へと還さなければならない。
 仄々が音を奏でれば魔力が色を宿していく。
「ヒポさんへ静かな眠りを送らせていただきましょう」
「ん、ルナもお墓で眠っている。壊さないように注意。ね?」
 木元・杏が仲間へと言う。
 冬青の言った通り、相手は我を忘れたオブリビオン。けれどもその衝動を越えた根底にはきっと過去の願いが揺蕩っているのだから。

 彼我の距離を一定に保ち、動く後衛組。
 重いケースを地面に下ろしSilverBulletの準備をするアヤネと、初手に動くは結界魔法を発動させるクララ・リンドヴァル。
「別れは悲しみです。残される側の寿命が長ければ、なおさらです」
 楽しい時の流れの果てに訪れる別れの時。けれどもその一瞬一瞬を切り取った時間は、振り返ればかけがえのないものとなるだろう。
(「いずれ先立つルナさんに対する、ヒポグリフの可愛がりようが目に浮かぶのは、勝手な想像でしょうか」)
 戦術級開架図書防衛機構・書架障壁が墳墓へと現れるも、猟兵たちに気付いたヒポグリフが華麗に避ける。
 けれどもクララの防衛の術は流されることなくいつも場に在る永遠の闇に馴染み、光をクララの術に混じる雷気が絡めとって消えることは無い。
 杏のオーラによる飛光の援護を受け、クララが頑丈な本棚を遮蔽とした時、ヒポグリフは無数の光輪を召喚して力強く羽ばたいた。
「――ですが、その想いがナナカマドの花言葉に託されているのだとしたら、私たちがしてあげられることは、一つですよね」
 『あなたを見守ります』
 願いはきっと双方に。
 高速機動モードとなったヒポグリフの突進が仄々へと向かう。ポロンとした音とともに風が地面を叩き、ケットシー特有の身軽さで仄々はふわっと浮いて攻撃を回避した。
「よく動く。それなら絡めとってしまおうか」
 ヒポグリフの素早い動き、広範囲に渡る能力に、先を見据えて厄介さを感じたガーネット・グレイローズは念動力を発し、鋼糸を空間に渡らせていく。
 一本一本をクロスさせてあやとりのように糸を繰れば、仕上がり始めるワイヤー迷宮。
 本棚と本棚の間に張り巡らせる。
 それよりも高所、時に書架を足場に飛翔する冬青が花髑髏を振り、発生させる衝撃波でヒポグリフの高度を封じに掛かった。
「お見事です!」
 仄々の声が戦場に渡る。
 ヒポグリフの軌道範囲が一つ減ったことで、一手が狭まる。一射目の魔法の矢を囮に仄々は先回りする矢を放った。
「小回りがきかないのなら、堂々とぶつけるまでです!」
 炎、水、風属性の三色の矢とヒポグリフが正面衝突し彩なる光が弾けた。
 光幕を抜け、大きく旋回して地上へ突進していくヒポグリフ。敵を追うのはアヤネの銃弾だ。
 刹那的に光幕を裂く弾道は、敵を追う小型機械兵器と電脳ゴーグルによって計算されたもの。
「こっちだよ!」
 果敢に声を張ったリオン・ゲーベンアインが麗なる華にモードチェンジして絶対防御バリアと展開した。
 高らかな鳴き声を上げたヒポグリフの体当たりは重量級だ。ダメージは受けないもののふっ飛ばされたリオンは新たに立った書架で受け身を取り、刹那の滞空で射撃態勢を得た。
 射放った矢がヒポグリフを穿ち、過去を封じる傷を刻む。二の矢は外すが作戦のうちだ。ヒポグリフは僅かに軌道を変えた先に三の矢が到達した。
「っ、さすがに速いね」
 狂った獣は痛みも感じないのか、時々身が光に透過しているせいか、今のところヒポグリフは猟兵たちの攻撃に怯まない。それでもワイヤーに切られ散っていく羽根の光たちが確かに相手の力を削いでいることを証明している。
「足止めならお任せを!」
 そう言ったサフィリア・ラズワルドがその身を解放し、白銀竜へと変身する。
「サフちゃん、おいらも行く!」
 天地の綾帯を叩き、花輪をたすき掛けした木元・祭莉も空中へ。サフィリアの爪先を握り、あっという間に上空へと飛んだ祭莉が「ヒポ!」と声を掛けた。
「父ちゃんの言い付け守ってるの、エラいね!」
 敵の飛行先で如意みたいな棒を振るい衝撃波を放てば、空中進行阻害となりヒポグリフの身が僅かに仰け反った。
「偉いケド、オブリビオンだから、還ってもらわないとだね」
 ゴメンね! と言いながらもう一度如意な棒を振れば、クロスを描く衝撃波。
 その頭上からサフィリアが降下してくる。
 露わになった敵胴から首を四つ足で捕捉したサフィリアが、直近で青い炎を放った。光り輝くヒポグリフの身を青炎が嬲り……なんだかちょっと……。
「美味しそうな匂いがするね!」
「ぐっ」
 祭莉の声に唸るサフィリア。ほんのりと焼き始めた鳥肉の匂い。
(「美味しそうな敵だといつも噛みついてるから、食べないように戦うのって難しいなぁ」)
 噛み加減、焼き加減エトセトラ。
 ともあれ飛び回っていた敵を自重と攻撃が落としていく。

 グオォォォオオ!!

 獣じみた咆哮が空気を震わせた。
 強烈なハウリングに、けれども音感知に優れたリオの耳は即座にそれを捌いた。
「Bienvenidos! この世ならざるもの達よ!」
 呪われた宝珠で召喚した墳墓の幽霊たちが呪いが幾重にも重なるうねりで武装し、さらには首無しの幽霊をのせた巨大な一つ目が現われた。
 着地したヒポグリフをあっという間に飲みこみ攻撃する。
 陽炎の如き地上の闇にまぎれ、進み駆けるは春乃・結希。
 紅蓮の焔を纏った拳が神速でヒポグリフを打ち、羽毛の波を焔が駆けた。結希が拳を引きながら飛び退けば双方の間には輝く焔の鎖。
 相手の動きを封じる確実な一手。
 赤々としたヒポグリフの瞳に焔が映りこんだ。
 伝わるだろうか――いや、届くだけでもいい。そんな想いを胸に結希がヒポグリフへと声を。
「ヴェルニスのヒト達はきっと、あなたの大事なヒトを閉じ込めようとしてるわけや無いよ」
 ヴェルニスで見つけた、今日の話。
「この街には、どこに行ってもあなた達の物語が残ってて」
 根付いた、日々の話。
「すごく大事に思ってるから、ずっと伝えたいから、こうしてお祭りも開いて」
 歩き、知った時間は結希の心に降り積もる。
「ここにお墓があるのも、ここなら街のみんなで守れるから、安心してねって事なんやないかな」
 焔映る敵の瞳は輝いているようにも見える。
 再び飛び立とうとするヒポグリフに対し、結希が鎖を引く。
 両者の前を冬青が横切った。
 首を振って冬青を追うヒポグリフの動き。黄金の光輪が拡大した瞬間、翼の付け根にアヤネのUDC細胞炸裂弾が着弾した。

 ギイイィィィイイッッ!

 金切り声。
「何をそんなに荒ぶっているのやら――墳墓では、お静かに」
 しい、と僅かに指先を立て紡がれる呪文。
 リオの幽霊たちを繋ぐようにカネリが幻影の白花を咲かせれば、ヒポグリフの鳴き声が途絶え解き放たれた高音が墳墓の壁を叩く。
 大地から魔力を吸い上げる地縛鎖が虚空を翔け、ヒポグリフの屈折した片翼、先端の刃がもう片方の翼を貫き敵の羽撃ちを封じた。
 止まった瞬間は攻撃の好機。
 リオの呪詛が敵を蝕み、冬青が花髑髏の一閃を。
 ガーネットが鋼糸を急速に絞り込み翼を斬り刻めば、光の羽根を花弁のように散らし敵は翼を失くす。
 捕らえたものを失った地縛鎖は、カネリの詠唱によって地を這うように駆けた。
 遅く、立ち上がる敵の光の障壁がリオンの矢を飲みこみ相殺したのち、地を離れ円盤状となった。
「――来る!」
 杏が声を上げると同時に黄金の光輪から無数の光線が、空翔けるサフィリアと冬青、そして結希へと放たれて、杏は灯る陽光から光を飛ばした。敵攻撃の射線を阻み、三人の目前をオーラが通過していく。
 筋肉質なヒポグリフの脚が大地を叩いた。
 機動力は落ちたものの、その脚での突進攻撃。だが思うようには進めないようだ――仲間の動きに合わせてクララの書架障壁がヒポグリフの行く手を阻んでいた。
 迎え撃つのはマルシュアスからダガーを引き抜いたリオだ。
 敵のふらつく動線へ、背に死霊たちから放たれる風を受けながら突き刺せば、光輝く敵の体に闇が宿った。
 一度、二度。払うように引き抜けば、途中の手応えが軽い。透過部を裂き、そこには闇の切り口。
 踏ん張れば彼女の身体を覆うオーラが、過ぎようとするヒポグリフを弾き飛ばす。
「さあ、こちらですよ」
 クララが高低差のある本棚で段差を作り、巧みに誘導する先にはガーネットのワイヤーとカネリの地縛鎖が空に地にと敷かれている。
 幽霊たちに書架、地上は視界が通らないのだろう。ヒポグリフがあちこちに衝突し、減速していく。
 そこへ狙い撃つのはガーネットだった。
 クロスグレイブから撃ち出されたレーザーが、敵体をさらい、硬度ある本棚に叩きつける。
「サフィリア!」
 合図の声に応じて本棚の上に乗っていたサフィリアが迎え撃つ。
 四つ足でしっかりと土台を掴み、思いっきり青い炎で攻撃する。火炎が滝のように敵へと注がれた。
 うさみみ付きメイドさんの人形・うさみん☆を繰りながら、ヒポグリフの前へと回りこみ突撃していく杏。
 彼女が目にした敵体には青炎の残滓。そして結希の焔の鎖が絡み異なる光を作り出していた。
「ヒポグリフ、ルナは土に還っただけではない。大地に眠り、大好きだった花達を地上へ導いている――」
 花弁のようなオーラを纏う杏との刹那の対峙は金と白銀の邂逅だ。
 障壁と化した光輪が花魂鎮めを相殺しにかかる。白銀の光剣がそれを受け止めた。
「――そしてルナの傍らには今でもきっと、光がある」
 花を陽に翳せば、同じようで異なる色が宿る。
「貴方の金色の羽が、暖かく包み込んでいる」
 だから、貴方も還ろう。
 杏は言葉を紡ぐ。
「ルナも貴方も、独りじゃない」
 受け止めた障壁を逆手に取り、光を目眩しに杏が操るのはうさみん☆
 杏の横をヒポグリフが駆け抜けていく。――迎えるのは祭莉のふるさとのうただった。
 それは楽しかった日々のうた。懐かしい日々のうただった。
 大地を叩く敵脚が踏み込んだのは懐かしき時の中だったのかもしれない。
 今は失ってしまった翼の根が僅かに動く。
 うさみん☆が敵頭をキックすればぶれる突進。両の掌でヒポグリフを打ち、敵を軸にくるりと跳躍した祭莉が回避した。
「骸の海に戻っても、もうだいじょうぶ。花祭りはルナちゃんのためにやってるんだってさ」
 そう話しかける。ヒポグリフの首には、いつの間にか祭莉の花輪が掛けられていた。
「だから、さみしくないよ?」
 そうですよ、と仄々の声。
「花祭りはルナさんや貴方が示された、人とモンスターとの友情を、今も人や各地を結ぶものとして受け継ぎ、祝しているもの」
 風の矢がヒポグリフの雷気を払い、光を散らしていく。
「貴方方のおかげですよ。ありがとうございます」

 ビイィィイイ――!

 一音が激しく伸びる声を放つヒポグリフ。
 アヤネのUDC細胞炸裂弾が敵脚を穿つ。
 確実に侵食していく攻撃に、敵に宿る闇が呼応し、ヒポグリフから光を失わせていく。
 体を震わせ、光を揺らがせ、ヒポグリフの声が墳墓内に響き渡った。
「……あと少し」
 冬青が陽動と牽制、攻撃の手を緩めることはない。
 黒蘭の花弁を纏い飛翔する中で書架を一時的な台に、軌道をくるくると変化させる。
 ヒポグリフを中心に地面が闇に染まった。カネリの地縛鎖が敵の脚を拘束し、リオの召喚した幽霊たちが引き摺り込もうとしている光景。
 カネリとリオ、そしてクララの闇の術が展開している。
 地面に向かっての跳躍に要るものは水平にした花髑髏。速度と彼女全体が斬るための力であった。
 ヒポグリフの首から胴にかけて刃を通し、着地する冬青。弧を描く足捌きののち間合いから一気に抜けた。
 直後、銃声。アヤネの三発目の炸裂弾が頭部へ撃ちこまれたのだ。
 同時にリオンの黒陰矢がヒポグリフの胴を撃ち貫き、今の時から過去を封じていく。
「……例え、躯の海から蘇った存在だとしても、ルナの元に居続ける思いは尊い。ワタシはそう信じている」
 リオンは毅然とした口調で、倒れ伏していくヒポグリフへと話しかけた。
 だが、許してほしいと願いを伝え。
「ワタシはアナタを躯の海へと返さなければならない。ゲーベンアイン侯爵として、この世界の冒険者として」
 そして、猟兵という頂点に座した者の責務として――。
 そう言って、リオンは疾風を込めた一矢を放つのだった。


 仄々の竪琴とリオの手回しオルガン式魔楽器が鎮魂の曲を奏でる。
 歌はリオが広場で得たものを。
 恐らくは当時の彼らを歌ったものなのだろう。
 一人と一体、いや、二人の物語を歌にして捧げる。
 郷愁的なメロディはあたたかなものだった。

「あ、ドワーフさん達との約束はどうしましょうか……羽根は落ちてるのを集められるけど」
 友人だった人間の近くに……――ルナの近くなので、食べるのも目玉や内臓系の素材剥ぎ取りもナシの方向で。とサフィリア。
「友人の墓の近くでショッキングなことしたくありませんから」
 という彼女が何を聞かされたのか、見当のついたカネリがのんびりと言う。
「職人ドワーフは容赦がないですね」
 サフィリアがきょろきょろと辺りを見回しながら、杏と祭莉と一緒に羽根を拾い集める。
「羽根も何かの素材となるらしいので。あ、でも鱗や牙はどうしようかな……代わりに私の抜け落ちた鱗とか牙とかでもいいでしょうか?」
「サフちゃん、ドラゴンの鱗や牙も貴重だって、おいら冒険者のおっちゃんから聞いたことあるよ」
「スルーされてもよろしいかと……」
 若者を惑わす、まだ見ぬドワーフたちに『タンスの角で足の小指ぶつければいいのに』な呪詛を飛ばしながら、カネリがまあまあと軽く手を揺らす。
「でも鉱石は採取していきましょう。光のものを闇に染めて何か作れるかもしれませんので」
 鉱石を手にしたカネリに倣って祭莉もまた両手で持ってみる。
 触れてみればパチパチピリピリとしていた。
「この石、雷と光が合体してるんだね。ルナちゃんとヒポが一緒にいるんだ?」
 墳墓遺跡内の岩にヒポグリフの力が宿り、燈火のように輝いている。
「よかったね!」
 にぱっと笑う祭莉。
「ん。よかった」
 ほわりと微笑む杏。
「――そしてわたし、レシピの石板メモってくる」
 ぴっと挙手して杏。
 そのままぴっと向こうを指差すと、石碑と刻まれた文字。
 少し向こうには殺風景な墳墓の中で祭りの花が置かれている。
 今日のための花を猟兵たちは添えた。
「色々とレシピが伝わっているのだったね。さっきの店の料理。魚のハーブ焼きは絶品だったなぁ」
 と、ガーネット。
 お腹がすきました……とサフィリアが呟いた。
「ここを出たら食べに行こうか。それに私はワインも――……ん、まだ気になるものがあるし」
 ベーコンのハーブ燻製。
 素揚げに適したフルーツのリスト。
 そんなことが断片的に読み取れて、杏が書き写していく。


 ヒポグリフの体が少しずつ薄れていく。
(「愛した娘は其処にはいない――骸の海におかえり」)
 きっと待っているだろうから。
 ロザリオを手繰り、「アーメン」と小さく声を紡ぐアヤネ。
 そんな彼女を見て、冬青も一緒に手を合わせた。
 アヤネは身を寄せてそっと冬青を抱きしめる。
 縁や絆は、一種の愛なのだろうかと考えて。
(「僕はああはならない」)
 そんな決意を胸に刻んだ。


 献花し、黙祷するリオン。
 結希と仄々が花を置けば、一人、また一人と花が献じられて。
「海に還ってもみんなの心に残ってて……本当に素敵な、1人と1匹やったんやろうなぁ」
 結希の呟きに「そうですね」とクララは頷きを返した。
「ルナさんは、ヴェルニスに沢山のものを残していきました。それを見てくれるなら、どんなに良かったでしょう」
 今からでも見てくれるだろうか、海で。
「……この花が届けばいいんですけど……届くかなぁ」
「この時間が過去へと流れていくのなら、いつかは」
 気付かないだけで、本当は海の中でたくさんのものが咲くようにあるのかもしれない。
 猟兵たちの届けた言葉と行動がたくさんのものを繋いでくれるかもしれない。

「……それであの……古代やない古代墳墓てなんですか……っ?」
「中立時代かっこ古代かっことじ?」
「古代浅世墳墓?」
「古代時代もたぶん長い? のでその何処かでは??」
 なぞなぞめいた遺跡の呼称は、やはり謎を呼ぶのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月30日


挿絵イラスト