●トラウマの根源は……。
薄暗い部屋の中、バロックメイカーの少女・エマが目に包帯をされたまま横たわる。
深い眠りの中、規則正しい寝息を立てる彼女を起こすのは……猟書家ドクター・ハデス。
彼の優しさに満ち溢れた声にエマは目を覚まし、今日もまた、何も知らぬままに暗闇の恐怖を味わうこととなる。
「さあ、今日も『遊ぼう』じゃあないか、エマ君」
ニヤリと笑うその笑顔は、彼女に見えることはなく。
ただ、連れてきた彼女をそのまま椅子に座らせる。
―――エマは過去に『遊び』で目を傷つけられた。
鋭利な枝を振り回していた子供達が、『遊び』でエマの身体を叩いて遊んでいたら……気づけば、彼女の目には大きな傷が残り、目を開けることは出来ても包帯が外せなくなってしまった。
『遊んでいただけだから』『避けなかったほうが悪い』とのたまう子供達は、彼女が逆に悪いと言い放って。
故に、彼女は『遊び』というものに酷く恐怖を抱いてしまっていた。
ドクター・ハデスはそんな彼女の目を治すどころか、彼女のトラウマを刺激する遊びを考案しては恐怖心を煽り立て、誕生するバロックレギオン達を利用してアリスラビリンスへの進行を考えている。
どんな些細な遊戯でも恐怖するエマから生まれるバロックレギオン達は、十分な力を持っているためにドクター・ハデスの戦力となっていた。
「だが……まだ足りない! さあ、もっと遊ぼうか、エマ君!」
今日もまた、ドクター・ハデスの研究所ではエマの悲鳴とバロックレギオンの唸り声が響いて、歪な笑い声が響き渡る……。
●遊びをトラウマにされた少女
「不愉快。実に不愉快ですねえ……」
苦言を漏らす金宮・燦斗(《奈落を好む医者》[Dr.アビス]・f29268)は集めた猟兵達に向けて、アリスラビリンスで発生した予知の内容について語る。
猟書家ドクター・ハデスによって囚われたバロックメイカーの少女・エマ。彼女が現在、トラウマを掻き立てられてバロックレギオンを生み出し、ドクター・ハデスの思うがままに操られはじめているという。
目が見えない彼女には何が起こっているのかはわからず、ただただ、ドクター・ハデスが『遊んでいる』状態だ。
遊ぶ、というのは比喩でもなんでも無い。本当にただ遊んでいるだけ。
ごっこ遊びを始めとした、目が見えない少女でも出来るような簡単な遊びを施している。
だが……それでも、エマにとってはトラウマとなっており、『遊ぶ』ということ自体に恐怖を抱いている状態なのだ。
「少女の頃から『遊び』に対してのトラウマを持ってしまうのは、非常に悲しいことです。特に目を傷つけられたとなれば、脳裏に焼き付いたその光景は一生忘れられないでしょう」
そこで、と燦斗は今回の事件での提案を示す。
バロックメイカーが作り出すバロックレギオンたちは、エマのトラウマがきっかけで生み出されるのだから、そのトラウマをどうにか慰めてあげることが大事だと。
幸いにも彼女は包帯を巻いているだけで、視力には問題ない。要は彼女の包帯を外す勇気がドクター・ハデスによって抑え込まれてしまい、外の世界を見る事が出来ないのだ。
「皆さんの言葉と、その力が頼りです。どうか、いたいけな少女を助けてあげてください」
よろしくお願いしますと、彼は猟兵達に頼みながら戦場へと送り届ける。
―――トラウマが巡り巡る、冥府の世界へ。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
3週間ぶりになります。遅くなりましたが戦争お疲れさまでした。
久しぶりのシナリオ提出になりますので、軽く猟書家シナリオを。
こちらのシナリオは2章構成となっております。
プレイングボーナスは「バロックメイカーをなぐさめ、トラウマを取り除く」ことです。
●エマについて
遊びで目を大きく傷つけられ、包帯を取ることが出来なくなったバロックメイカーの少女です。
彼女は『遊び』というものに大変恐怖を抱いており、遊ぶことでまた傷つけられたらどうしようという感情に飲み込まれています。
一応彼女は包帯をとって目を開くことが出来ますが、そこに至るまでの勇気がありません。
彼女に対し『遊び』が怖くないものであることを教えることで、プレイングボーナスが入ります。
●第一章:冒険シナリオ
バロックレギオンを倒しつつ、研究所の奥へと進むシナリオ。
エマに向けてかけた言葉はバロックレギオンを通じて全て聞こえますのでご安心を。
研究所は人が通れる一直線の通路になりますので、キャバリアは使用不可とします。
●第二章:ボス戦シナリオ
猟書家ドクター・ハデスとの戦いです。
ちょっと広めの研究室に、エマと一緒にいます。
その他構造については断章にて。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 冒険
『バロックレギオンと過去のトラウマ』
|
POW : バロックレギオンの攻撃を正面から受け止め、その過去のトラウマごと、バロックレギオンを殴り倒す
SPD : バロックメイカーのトラウマのヒントとなるような物を探しながら、バロックレギオンと戦う
WIZ : バロックレギオンの外見や言動、戦い方などから、過去のトラウマが何か推理しながら戦う
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
仕立屋・ギンキョウ
アドリブ、他◎
「御免下さい、お邪魔します!ちぃと通してくだしゃんせ!」
▼戦闘
武器:錦狩を用いて戦いつつ、防御は技能:残像による回避で行います
▼行動:UC【いつか誰かのおともだち】
応援や助言ができる彼らなら、彼女が恐怖で失った『遊びを楽しむ心』を探し出せるでしょうか……?
「あいや、突然すみません。恐がらずとも大丈夫ですよ」
ふわふわ柔らかなぬいぐるみ達は貴女を傷付ける事はできませんのでね。
よければ寂しがりの彼らと、お喋りや着せ替えごっこをして頂けませんかね?
あっしは仕立屋ですのでね!
着せ替え用のお洋服はたっぷり用意してありますとも!
●心を込め、心を探そう。
「御免下さい、お邪魔します!」
バァン! と勢いよく研究所の扉を開いた仕立屋・ギンキョウ(僵尸の仕立屋・f33333)。彼の大きな声とその出で立ちに、中でたむろしていたバロックレギオン達が一斉に振り向いた。
敵だ、敵だ、と反応を示す黒く濁ったレギオン達は皆、棒きれのような物を振り回してギンキョウへと襲いかかる。
「よっとっと、ちぃと通してくだしゃんせ! あっしはこの先にいるお嬢さんに御用がありますので!」
振り回す棒きれを軽々と回避し、時折レギオン達をくらますために残像を駆使しながら先へと進むギンキョウ。それでも邪魔をしてくるレギオン達は銀杏紋様の鍔が特徴的な太刀・錦狩で大きく2つに切り裂き、倒しながら道を切り開く。
そんな中で、ギンキョウにはレギオン達の動きに違和感を見出した。レギオン達は皆、1対1で襲いかかってくるのではなく、ギンキョウを取り囲むように円を作ってから襲いかかってきているのだ。
エマのトラウマである『遊ぶこと』がレギオン達にも反映されているとは言え、これでは遊ぶと言うよりも……。
「……ただの、いじめですねぇ……」
彼がたった今立たされている環境がエマが受けた『遊び』なのだとしたら。それはもはや『遊び』などではなく『いじめ』そのものだ。それでもエマが遊ぶことに対してのトラウマを持ってしまったのは、これを『遊び』だと称する者がいたからなのだろう。
ぐっと柄を握りしめたギンキョウは今一度大きく錦狩を一振りしてレギオン達を退け、先へ進む。今度はユーベルコード『いつか誰かのおともだち』を使い、心が込められたぬいぐるみやお人形達を呼び出して共に進み始めた。
突然現れたぬいぐるみやお人形達には、レギオン達もびっくりしてしまっておろおろとし始めた。この様子はエマにも見えているのだろうかと首を傾げつつも、ギンキョウはエマに向けて言葉を投げた。
「あいや、突然すみません。怖がらずとも大丈夫ですよ、エマさん。ええ、この子達は貴方を傷つけることは出来ませんのでね」
ぽんぽんと優しくぬいぐるみを撫でるギンキョウ。そんなぬいぐるみ達、人形達は心做しか寂しそうな表情をしているようにも見えた。エマには見えることのない表情なのだが、レギオン達の動きが徐々に遅くなっているのが見えた。
「ねえ、エマさん。良ければ寂しがりの彼らと、お喋りや着せ替えごっこをして頂けませんかね? あっしは仕立屋なので、着せ替え用のお洋服は準備致しますとも!」
―――それで貴方の心が救われるのであれば、いくらでも準備して差し上げましょう。
ゆるりと笑ったギンキョウはそのまま真っすぐ、エマの下まで走る。恐怖に打ち震える心を、必ずや心を込めたぬいぐるみ達と共に見つけ出してあげようと。
成功
🔵🔵🔴
ジーク・エヴァン
小さな子供の心の傷を抉るなんて、とんでもなく非道な猟書家だな
例えそれが遊びでも目を塞いだその子には辛いものなのは確かだ
一刻も早く少女の元に行こう
フリージアと一緒に猟書家と少女の元に向かおう
バロックレギオンはトラウマから来てるものなんだろ?
なら俺とフリージアに多重詠唱した結界術を施してレギオン達の攻撃を防ぎ、そのトラウマを見極めよう
レギオンの攻撃こそ、ヒントな気がする
エマちゃん、だっけ?
君は凄く怖い思いをしたし、誰も守ることができなかった
…だから、約束する
今度は俺達が、君を守る
君の痛みを、俺達が受け止めるよ!
【竜軍の軍勢】でレギオン達の攻撃を全て受け止めて押し返し、角砕きでなぎ払って道を拓こう!
フリージア・ノルン
ム・カ・つ・く~!
話を聞くだけで腹が立つわ!その変態猟書家!
小さい子を虐めて利用しようなんて!
そんな変態にはお仕置きが必要ね!
私はジーク(f27128)と一緒にエマちゃんの所へ向かうわ
ジークの結界もあるけど、もっと安全なジークの側を空中浮遊しながら相手の攻撃を観察してトラウマのヒントを探るわ
きっとこれがエマちゃんの一番の恐怖の筈
それにレギオン越しに声が聞こえるなら歌だって聞こえるわよね
【歌妖精】達を呼び、楽しい歌を優しく歌ってもらうわ!
エマちゃん、聞こえる?
私達、これから貴女の所へ歌と躍りを見せにいくわ!
きっと遊びよりずっと楽しいから!待っててね!(鼓舞)
レギオン達は、退いて!(大声、衝撃波)
●守護の軍勢と歌う妖精達と共に。
「……小さな子供の心の傷を抉るなんて、とんでもなく非道な猟書家だな」
「話を聞くだけで腹が立つわ! その変態猟書家!」
ジーク・エヴァン(竜に故郷を滅ぼされた少年・f27128)とフリージア・ノルン(生きることは素晴らしいと思いたい妖精・f27130)の2人は猟書家ドクター・ハデスへの感想を口にしながら通路を走る。
通路はバロックメイカーのエマが生み出したバロックレギオンで溢れかえっており、どれも彼らに向けて棒きれのようなものを振り回している。棒きれによる攻撃は威力も少なく、全てジークが2人にかけた結界術によって防がれているため、痛みもダメージも殆どないのが救いだ。
それでも、彼らにはレギオン達を倒す決定打となり得る一撃が与えられずにいた……。
レギオン達の動きに何かヒントになるようなものがなにかと、ジークの周りを空中浮遊で飛び回りつつ観察していたフリージア。攻撃の手法やレギオン達の足取りでエマのトラウマとなる原因を探そうと何度も何度もレギオンを観察するのだが、何か違和感が生まれたようだ。
「ねえ、ジーク。このレギオン達って、エマちゃんのトラウマから出来てる……の、よね?」
「トラウマを刺激して生まれているらしい。それが?」
「……うぅん……」
何かを考えながらジークの後をついて行くフリージア。しかしジークが突如足を止めたことでフリージアの思考も途中で断絶されてしまう。気づいた時にはジークもフリージアもレギオン達に周囲を囲まれており、一画を倒さなければ先へ進めない状況へと陥ってしまっていた。
「なに、これ……」
「……これじゃあ、まるで……」
この動きさえも、エマのトラウマの1つなのだろうか。そう考えた時にはレギオン達はじわりじわりと2人に近づき、棒きれを振り回す。何かを叫んでいるようだが、レギオン達の言葉は言葉にならずよくわからない。
これではもはや『遊び』で片付けられるようなものではない。れっきとした『いじめ』であり、大きくなれば『戦争』でも起こるものだ。それらをドクター・ハデスは刺激し続けているのだろう。
そんな目に遭ってしまったエマのことを思い、冷静に、しかし怒りを込めるように鉄塊剣・角砕きを握りしめたジーク。戦う前に自分の言葉がエマに届くように、気持ちを込めて大きく声を張り上げた。
「エマちゃん……だっけ? 君は凄く怖い思いをしたし、誰も守ることができなかった。……だから、俺は約束する!」
ユーベルコード『竜盾の軍勢』を発動させ、92に増えた竜眼の盾をバラバラに操作しながらレギオン達の攻撃を全て受け止め押し返し、約束事をエマに伝えた。『今度は自分達が守ってみせる』と。
「―――君の痛みを俺達が受け止める!!」
その言葉と同時に、レギオン達の動きがより一層激しくなってきた。ジークの言葉がエマに届いている証拠であり、ドクター・ハデスにも届いている証拠だ。どうやらドクター・ハデスはより激しくトラウマを刺激し始めたようだ。
一方で、ジークの言葉が届いているのならば歌も届くはずと考えたフリージア。ユーベルコード『不落陽の歌妖精』で歌が好きな妖精達を呼び出し、エマに対する応援と歌唱能力による支援を行って彼女に楽しむ心を取り戻させるように動き出した。
「エマちゃん、聞こえる? 私達、これから貴女の所へ歌と踊りを見せに行くわ! きっと遊びよりもずっと楽しいから、待っててね!」
くるりくるりと踊りながらレギオン達の攻撃を退け、エマに歌を届けるフリージア。楽しげな歌には癒やしの力を込め、彼女の心により『楽しい』という感覚を植え付ける。
トラウマを刺激されながらも楽しいという感覚が拭いきれないレギオン達。先程は何度かの攻撃で倒せるほどに強かったのだが、今ではジークの角砕きのなぎ払いのみの一撃で吹き飛ぶようになってきた。
この調子ならば、きっとエマも大丈夫。ジークとフリージアは確信に近い何かを感じ取り、レギオン達を倒しながら先へと進んだのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霧崎・紫苑
やれやれ、精神科は俺の専門外なんだがな
とはいえ、ドクター・ハデスとやらの所業、医師としては見過ごせんな
レギオンに対しては、【武装医療鞄】に内蔵された機関砲、電磁鞭を使用して攻撃
UCを使うことで鞄を適宜変形させて武装を変え、相手をこちらに近づけさせない
「エマと言ったな。お前が知っているのは『遊び』ではない、単なる『虐め』だ。お前はまだ、本当に楽しい『遊び』を知らないはずだ。ならば、それを今から教えてもらうためにも、俺がお前の邪魔をする存在を駆除してやろう
最後は【武装医療鞄】に搭載された榴弾で、一気に敵を蹴散らし突破口を開こう
●治療開始。
「精神科は俺の専門外なんだがな……」
少々ため息をついて研究所へと足を踏み入れつつ、今回の患者―――エマのカルテ内容を思い返す霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)。彼女のトラウマを刺激するドクター・ハデスの所業は、同じ医者としては見過ごすことができないようで。
彼が研究所に入り込んだことは既にレギオン達にも嗅ぎつけられているのか、棒きれのようなものを持ったいびつな人型のレギオンがぐるりと紫苑の周囲を取り囲む。その後棒きれを振り回しては何かを糾弾するかのように言葉を放つのだが、レギオン達の言葉は言葉に成らない音を発していた。
「……ふむ……」
エマの病状、もといトラウマは想像以上に根深いものだ。専門外と言えどそれだけははっきりと分かる。紫苑はまずこのトラウマの突破口を見出すため、武装医療鞄に内蔵された機関砲を展開させてレギオン達を吹き飛ばし、道を切り開いて先へ進む。
それでもなお、レギオン達は紫苑を取り囲んで棒きれを振り回す。ユーベルコード『可変式武装鞄』で内蔵された電磁鞭と切り替えながらレギオン達を吹き飛ばしているのだが、新たに現れるレギオン達によって彼は何度も何度も取り囲まれてしまう。
だが、紫苑はこれではっきりとトラウマの原因がわかった。どんなに崩しても取り囲むように作られる陣形、何度も振り回す棒きれ……それはまさしく『いじめの構図』そのものだと。
「エマ……と言ったな? お前のこのトラウマの原因、突き止めさせてもらったぞ」
これから治療開始と言うかのように電磁鞭でレギオン達をなぎ払い、切り開かれた道をゆっくりと歩いて病状の説明を開始する紫苑。
彼が言うにはエマが受けた『遊び』は本当の遊びではなく、ただの『いじめ』。故に彼女は未だに『本当の遊び』を知らない。だからこそ彼は、ドクター・ハデスにも向けて言うかのようにはっきりと言い切った。
「今から教えるにも、邪魔が多いのでな。俺が、お前の邪魔をする存在を駆除してやろう」
いい切った後に武装医療鞄に内蔵された最後の武器、榴弾を用いて周囲のレギオン達を一掃して突破口を切り開いて一気に研究所を駆け抜けた紫苑。
何度レギオン達に取り囲まれようと彼は止まることはなく、外科手術を行うかのように邪魔を全て切除し続けた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『ドクター・ハデス』
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POW : 行け、我が創造せし怪物よ!
無敵の【人造生命体】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 我がしもべに加えてやろう、光栄に思うがいい!
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【即席で改造し、意思なきしもべ】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : 進化し続けること、其れこそが我が天才たる所以!
【工具】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
イラスト:のはずく
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アイ・リスパー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
研究所の最奥では、目を隠したエマが椅子に座っている。
その隣では歪んだ笑みを浮かべ、『遊んでいる』ドクター・ハデスがいる。
ドクター・ハデスは簡単な遊びで彼女を痛めつけて。
エマは恐怖で打ち震えては耳をふさぎ、拒絶の意志を見せていた。
どんなに楽しい物事も、猟書家の手によって恐怖へと早変わり。
ただでさえ恐怖をばらまく存在が、人のトラウマを抉ることで更に恐怖を作り出す。
歪な形のバロックレギオン達がずるずると生まれ落ちては、ドクター・ハデスの言いなりとなって研究所を歩き回る。
このまま放っておけば、アリスラビリンスの侵攻は進んでしまう。
そうなる前に、エマを助けてドクター・ハデスを倒さなくては。
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プレイング受付:6/14 8:31~
プレイングボーナス:バロックメイカーをなぐさめ、トラウマを取り除く
猟書家『ドクター・ハデス』との戦いです。
研究所の最奥、キャバリアがギリギリ入るぐらいの広さの室内戦になります。
壁際の椅子にはエマが座っており、猟兵達の存在については音で知ります。
両者の攻撃がエマに当たることはありません。バロックレギオンが盾になります。
周囲にはバロックレギオンも数体存在していますが、戦闘行為は行いません。
壁や障害物として使っていただいてもOKです。
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フリージア・ノルン
見つけたわよエマちゃん!
約束通り、楽しいものを見せに来たわ!
…その前に、貴女で「遊んでる」悪~い奴をやっつけちゃうから、待っててね!
そこの陰険ロリコン変態なんちゃってサイエンティスト!さっさとエマちゃんから離れなさい!エマちゃんに変態がうつるでしょ!
あんたみたいな悪い大人には、私達がお仕置きよ!
風の属性攻撃魔法による突風と、マイクで拡声した音属性(大声)の範囲攻撃魔法で変態や人造生命体を怯ませてジークを援護するわ!
ジーク!頑張れー!(鼓舞)
ジークのUCに合わせて【花妖精】達を呼び、桃色の花弁を振り撒くわ
優しい花の香りはジークの傷を癒し、そしてあの子にも届く筈
目を閉じていても、心に花を届けるわ!
ジーク・エヴァン
見つけたよエマちゃん
俺も約束を守りに来た
君を、痛みから救いに来たよ
お前がドクター・ハデスか
お前の悪趣味も野望もここまでだ
結界術を多重詠唱、エマちゃんとフリージアに「包み込む」ように結界をかける
レギオンが守ってるっていっても奴の命令一つで状況が変わるし、何より「囲まれる」のはもう嫌だよな
無敵の人造生命体か
でも「生命」なら問題ないな
アスカロンは竜の魂と精神を斬る聖剣
精神のみ攻撃する斬撃波と衝撃波をハデスと生命体に放ち、生命体の攻撃は盾受けとオーラ防御で受け流す!
ハデスが俺を殺せず焦り出したら【討竜剣アスカロン】で生命体ごとハデスを焼き斬る!
どんな無敵の肉体でも、魂を焼き尽くす聖剣の前では無意味だ!
●守ってみせる。
「見つけたよ、エマちゃん!」
「見つけたわよ、エマちゃん!」
研究所の最奥へとたどり着いたジークとフリージア。目隠しをした状態で座っているエマと、その隣でエマに遊びと称した実験を行っているドクター・ハデスの姿を見て、フリージアは怒りで声を荒げた。
「ちょっと、そこの陰険ロリコン変態なんちゃってサイエンティスト! さっさとエマちゃんから離れなさい! エマちゃんに変態がうつるでしょ!!」
「いんっ……!? んんっ、いやいや、私はただただ彼女の精神状態を確認するためにだね?」
フリージアが責め立てれば様々な理由をつけて彼女の言葉に反論を示すドクター・ハデス。どうにかしてでもエマをこの場に引き止めておきたいという、卑しい考えが丸見えだ。
しかし並べ立てられた言葉対してジークが反論し、エマに対する治療などではない事を突きつける。……彼女を置いて逃げても無駄だと示すように。
「いいや。お前はただ彼女を痛めつけて、そのトラウマを抉っているだけだろう。お前の悪趣味も野望も、ここまでだ」
「ぐ……っ」
聖剣アスカロンを突きつけ、この場で確実に仕留めてやるという覇気を見せつけたジーク。しかし、その覇気はエマにも伝わってしまっているようで、彼女が身体を強張らせる様子が見えた。そこでジークとフリージアは先に伝えておいた『約束』を守りに来たよと、優しい声色で伝えた。
「え……?」
「言っただろう? 今度は、俺達が守ってみせるって」
「そうそう! 約束通り、あたし達は見せに来たの! あなたのために、ね!」
そう言ってフリージアは室内のバロックレギオンたちの間を縫うように奔り、素早くエマの下へ到着。それと同時にジークが多重詠唱で何重にも重ねた結界術をエマとフリージアにかけ、これから起こるであろう戦いによる被害と『囲まれる』不安を取り除く。
フリージアの寄り添いとジークの結界術は、思った以上にエマのトラウマを軽減する効果があった。自分を助けてくれる人がいる、『遊ぶ』だけに来た人じゃないという安心が彼女の心に安らぎをもたらしていた。
だがそうすると、バロックレギオンの創造効率はがくんと落ちる。そうなればドクター・ハデスの思惑は潰えるわけなのだから、それを彼が止めない理由など無い。
エマを取り返すためにドクター・ハデスは無敵の人造生命体を呼び起こして、まずは結界術で守られていないジークを目標にし始める。ジークを逃さないように壁へ追い込みつつ、腕や足を振り回してジークを追いかけ回した。
「無敵の人造生命体、か……『生命』ならば問題ないな」
相手の正体を掴んだジークは聖剣アスカロンを用いて、人造生命体の攻撃を掻い潜りながらその斬撃から生まれる衝撃波を放つ。生命体であれば精神・魂を斬ることが出来るアスカロンの一撃は、倒すことは出来なくともよろめかせることが出来るのだ。
衝撃波は人造生命体の身体ではなく精神を傷つけるため、人造生命体やレギオンの身体をすり抜けてドクター・ハデスの前までたどり着く。その衝撃波の正体に気づいたドクター・ハデスは追加の人造生命体を呼び起こして壁を作り、更にはレギオンの壁を利用し始める。
「ふははは! 私を視界に捉える事ができれば簡単だっただろうに! 残念だったねぇ!」
高笑いしているドクター・ハデス。それでもなお、ジークはアスカロンを振り下ろして衝撃波をドクター・ハデスに向けて放ち続ける。
勝ち誇ったように無駄だと嘲笑うドクター・ハデスだったのだが、ふと、身体が突風によって押し出されて一歩前に出てしまう。何が起こったと判断する寸前、衝撃波がドクター・ハデスの身体をかすめた。
「な、何だ今のは!?」
室内に訪れるはずのない突風の原因を探ろうと周囲を見渡すドクター・ハデスに、追撃の突風。それに加え、フリージアの花妖精のマイクから届けられた音属性の全体攻撃+アナウンスが室内の人造生命体、バロックレギオン、ドクター・ハデスの耳に入り込んだ。
「ジークが見えないのなら、あたしが押し出すだけよ! 思う存分、楽しんでいきなさい!」
「お、おのれェ……!!」
唇を噛み締めながらも突風に対処を取り始めたドクター・ハデス。しかし、ジークは次の一撃で最後を決めると宣言し、ユーベルコード『討竜剣アスカロン』の準備を始めた。
「来たれ! 竜に怒り、竜の魂を砕く聖剣よ!」
ジークの詠唱の言葉が聞こえると、フリージアもまたユーベルコード『花咲き誇らせる花妖精』を発動。自分の周りに花妖精達を呼び寄せ、戦っているジークの傷を癒やしてエマへの安らぎを更に高めた。
「わぁ……!」
優しく甘い香りの花弁がエマの鼻腔を、そして心をくすぐる。トラウマを完全に塗りつぶすことは難しいが、それでも今、この瞬間だけは『楽しくあれ』と願ったフリージアの取っておきだ。
身体の傷が癒やされたジークはフリージアに感謝の合図を送った後、人造生命体とドクター・ハデスもろともたたっ斬る。肉体には傷をつけない対象の生命エネルギーだけを攻撃するこの力に、ドクター・ハデスはバロックレギオンを幾重にも重ねた壁で乗り切ろうとしていた。
『生命』だけを攻撃するその力はバロックレギオンの壁によって威力の減衰は起きたために、ドクター・ハデスに多大なダメージを与えたものの倒すには至らず。
それでもなお、ジークは剣を振り下ろし、フリージアは風を巻き起こし、エマを救うために戦い続ける。
『必ず守ってみせる』。その約束を果たすために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
仕立屋・ギンキョウ
アドリブ他◎
「大丈夫ですよお嬢さん!いじめっこはあっしらが追い払いますんでご安心を!!」
眼鏡さんにも目的や理由はあるのでしょうが、まァ良い事ではないでしょうし全く興味ありませんね!
▼戦闘
UC【居合:一閃】武器【錦狩】
技能[残像][早業]を用い、レギオンからレギオンへ壁としながら近付きつつ、ヒット&アウェイ戦法
隙を見せた瞬間にUCによる居合斬りを繰り出します
▼行動
追い払った後には貴女の新たな一歩を祝して服を仕立ててしんぜましょう!
想像してみて下さい
新しい服を着てお散歩をしたり踊ったり……あぁ、お買い物に行くのも素敵かと
服を仕立て、笑顔のお手伝いをするのが仕立屋の務め、あっしの矜持でございます
●仕立屋の務め
研究所の最奥、バロックレギオンが生み出される場所にどどん! と乗り込んだギンキョウ。彼の登場はエマもドクター・ハデスも予想外だったようで、開かれた扉の方へ顔を向けた。
「大丈夫ですよお嬢さん! いじめっこはあっしらが追い払いますんで、ご安心を!」
彼の励ましの声に、エマはどこか安堵感を覚えた。ただギンキョウは笑顔でエマに声をかけただけなのに、この人ならば本当に助けてくれる……そんな気がしたのだ。
しかし、トラウマから生み出されるバロックレギオンが生み出されなくなるのはまずいと、ドクター・ハデスが反抗の意思を見せる。周囲に立ち尽くしたレギオン達を殺し、即座に改造を施して意思なきしもべに切り替えて戦わせはじめたのだ。
何処まで外道なのかと、ギンキョウはエマに聞こえないように呟く。素早く錦狩を鞘から抜き、残像と早業を用いてドクター・ハデスに一太刀与えると……素早くレギオンを壁にして隠れて、隙をを見せたら再び薙いでと、ヒット&アウェイの戦法を用いた。
「眼鏡さんにも目的や理由はあるのでしょうが、まァ、良いことではないでしょうね!」
「貴様のような輩には、我が研究の素晴らしさなどわかることはないのだろうな! さあエマ君、まだまだ『遊び』足りないぞ!」
そう言うとドクター・ハデスはエマに向けて、しもべ達を使った『遊び』―――かごめかごめのような囲い遊びを行い始めた。いじめによって芽生えた囲まれる恐怖はどんな感情にも上塗りしてしまい、エマは再び恐怖の渦に飲み込まれようとしていた。
これでは再びレギオンが生み出されてしまう。ギンキョウは同じようにヒット&アウェイ戦法でドクター・ハデスに攻撃を続けていたが、このままではエマの精神が持たないと判断。ユーベルコード『居合:一閃』で早業と残像の技術をより高めて、ドクター・ハデスに向けて居合斬りを放った。
「お嬢さんを痛めつけるのならば、まずはあっしをお相手してくだしゃんせ!」
収められた刀の、銀杏模様の鍔が鳴って……もう一度、鞘から引き抜かれて横一文字に薙ぐ。命令を下す者さえ倒してしまえば、エマに恐怖を与える者はいなくなるからだ。
ギンキョウは想像をしていた。彼女がこの恐怖を打ち払ったら、どのような素敵な世界が広がるのだろうかと。1人寂しくいてしまうのならば、せめて自分の仕立屋としての務めを果たしたいと、彼はエマに向けて言った。
「ねえ、お嬢さん。想像してみてください。新しい服を着て、お散歩をしたり踊ったりするところを。ああ、お買い物に行くのも、素敵ですねぇ」
「新しい服を着て……」
「ええ、そうです。服というのは自分を魅せるだけではなく、自分を変えることにも繋がりますから」
戦いの最中でも、ギンキョウは笑みを絶やさない。彼女の目はまだ隠されたままだったが、彼はエマがいつ勇気を出しても良いようにと笑顔を絶やさなかった。
「服を仕立て、笑顔のお手伝いをするのが仕立屋の務め、あっしの矜持でございます。……ですから、ええ、そこな眼鏡さんには早々にお帰りいただかなければなりません!」
必ず倒し、エマに新しい世界を、新しい服を仕立ててみせる。そう宣言したギンキョウの錦狩は、一際大きく輝いてドクター・ハデスに大きな傷を残していったのだった。
大成功
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霧崎・紫苑
貴様がドクター・ハデスか
多くは語らん、俺はこの世界の病巣を排除するのみだ
まずはドクター・ハデスに操られているバロックレギオンの排除を優先
先の戦いと同じく、武装医療鞄の各種武装を使って牽制しよう
「エマと言ったな。私は医者だ。お前のトラウマの原因は、私が除去してやろう……物理的にな!
敵が無敵の怪物を呼び出して来るなら、こちらは【メディカル・スキャニング・アイ】で中枢部を探り、そこをUCで破壊する
心臓、脳、脊柱、いかに無敵とはいえ活動を司る中枢は存在するはず
怪物を始末したら、残るはドクター・ハデス、貴様だ
俺はUCで貴様の肺を破壊する
呼吸に必要な器官を奪われ、己の業を悔いながら窒息死するがいい
●病巣は切除
多くを語らぬ医者達は、研究所の最奥という手術台で互いの技術を使い『病巣を切除』しようとしていた。
機械仕掛けの闇医者である紫苑と、猟書家であるドクター・ハデス。どちらの医者も己の診断を捻じ曲げることはなく、相手の診断が間違っていると言い張って攻撃を続けていた。
とはいえ紫苑はバロックレギオンを下手をすると増やされて圧迫してしまう可能性を考慮し、レギオン側に向けて武装医療鞄の装備全てを利用して牽制を行っていた。ドクター・ハデスに向けての治療はその後、と言った様子だ。
最奥ではエマが座っているのだが、紫苑が来たことで戦いが始まることを察知してしまい、緊張で顔を強張らせていた。彼女は自身が作り出したバロックレギオンのおかげで攻撃が当たることは無いが、それでも怖いものは怖いと身体全体で訴えている。
さて、どうしたものかと悩んだ結果、視界を塞いでいる相手には耳からの治療―――言葉での治療が必要だと紫苑は判断。エマを守り続けるレギオン以外を倒しながら、彼はエマに向けて言葉を投げた。
「エマ……と言ったな? 安心しろ、私は医者だ」
「お医者様……? お医者様、なんですか? そこにいたお医者様じゃなくて……?」
「ああ。お前のトラウマとなる原因―――この医者は私が除去してやる。……物理的にな!!」
紫苑が物理的にと言ったその瞬間、武装医療鞄から機関砲が起動してレギオン達を一掃。その拍子にドクター・ハデスにもいくらかの銃弾を与えようとしたが、それよりも前に無敵の人造生命体を盾に取られ、攻撃の嵐を上手く防がれた。
ならばと紫苑は自身の義眼として装着されている赤い瞳、メディカル・スキャニング・アイを使用して人造生命体を素早く解析。無敵とはいえ、活動を行うための中枢があるはずだろうとそれをを探り出す。
一時的に解析のために動きを止めたその隙に、ドクター・ハデスが人造生命体に命令を下して突撃させる。僅かでも掴めれば逆転へ至るだろうと思ってのことだった。
ほんの数ミリ、もう1秒あれば紫苑を掴んで骨を砕いて殺すことが出来る。そんな一瞬だったが……紫苑の解析は完璧に終わった。
くるりと身体を拗じらせて人造生命体の突進を回避し、中枢部を切除するためにユーベルコード『疑似心霊療法』を発動。先程解析した部分を睨みつける。
「幹部のみ摘出してやろう。……傷一つ、残さずにな!」
人造生命体の身体を掴み、右の胸を義手で一突き。本来であれば骨、筋肉、内臓といったものが内蔵されているというのに、この人造生命体にはそれらしきものは全く無い。想像から生まれた無敵というだけあって、残されているのは核となるものだけだ。
『無敵だというのに貫かれた』。この一連の流れは、ドクター・ハデスが人造生命体に疑念を抱く瞬間となり、壁となって守っていた人造生命体はあっけなく崩れ落ちてしまう。
「馬鹿な……馬鹿な……!!」
一瞬の狼狽え。その隙に紫苑は同じように義手をドクター・ハデスに突き立てて、今度は肺を摘出。べしゃりと抜き取ったモノを地に捨てて、呼吸が出来ずに崩れ落ちるドクター・ハデスを見下ろす。
「残るは貴様だけだ。己の業を悔いながら、窒息死するがいい」
彼が吐き捨てた言葉は呼吸の出来ないドクター・ハデスには届いていないのか、地面をかきむしる音だけが響いている。呼吸をしたいと訴えるかのように。
全ての切除が完了した紫苑は、エマに近づいて安全を示した。
●少女は勇気を出して、光を授かる。
猟兵達の活躍もあって、ドクター・ハデスの討伐が完了した。
しばらくはバロックレギオンによる侵略もなくなることだろう。
エマの手を取り、猟兵達は彼女をアリスラビリンスの何処か、柔らかな日差しの空の下へと連れ出す。
爽やかな風がエマと猟兵達の身体を駆け巡り、日差しが優しく身体を温める。
エマは助けてくれた猟兵達にお礼を言うと、ゆるく拳を握りしめる。
「助けてくれた皆さんのおかげで、私は……勇気が持てました」
楽しいことは悪いことではなく、とても良いことで。
アレは遊びなんかではなく、いじめだった。
本当に楽しいことは、まだまだこの世界のどこかに隠されているのだと。
その日、少女の目隠しは外される。
少しだけ傷の残った顔ではあるが、エマはそれでも目に光を受け入れた。
暗くなっていてはまた同じことの繰り返しになるのだから、今は、貰った勇気を胸に抱いて前へ進みたいと。
少女は前へ進む。
二度と同じ出来事が起こらないように、自分の意志をはっきりと示しながら。
大成功
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