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山本親分と行く世直し道中~すすき野の怪異と焼き鳥屋~

#カクリヨファンタズム #戦後 #山本五郎左衛門

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「にゃふ〜っ、ふぁぁぁぁ。平和だにゃぁ~」

 ここはカクリヨファンタズム・サンモトのマヨヒガ。この世界を揺るがす大事件だった大祓骸魂との戦争が終結して、山ン本五郎左衛門はのんびりとした日々を過ごしていた。
 かの戦いにおいては彼女達妖怪親分が百鬼夜行側で為した貢献も大きかったが、彼女はそれを誇るでもなく、ただ返ってきたいつもどおりの日常を喜んでいた。

「猟兵さん達のおかげで大祓骸魂は祓われ、幽世も地球も救われた。儂もそろそろお役御免かもしれんにゃぁ……」
「大変です、親分!」

 が、そんな平穏は残念ながら長くは続かない。東方妖怪の顔役である彼女の元には今日も多くの妖怪がやって来る。単に世間話をしにきたり、酒や食い物を持ってきただけなら良いのだが、少なからぬ頻度で厄介事も抱えて。

「ムム、ニャンじゃ騒々しい……なに、すすき野で月が割れた? 焼き鳥屋の主人が暴走している? こりゃ一大事じゃにゃいか!」

 そして、そういう報告があれば山本は黙ってはいられない。幽世の安定のため、妖怪の平和のために一肌脱ぐのに迷いがない、だからこそ彼女は「親分」と呼ばれるのだろう。

「すぐに月見の準備をせい。酒と肴、それからお月見団子を山ほどにゃ!」

 長い尻尾をゆらり揺らし、獣の足で畳を蹴って。東方親分・山本五郎左衛門、ご出陣。
 不安定に揺らぎ続ける世界で、彼女にとっては当たり前の日常が此度も幕を開けた。


「先月は大祓百鬼夜行との戦い、お疲れ様でした。早速で申し訳ありませんが事件です」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「骸魂の元凶である大祓骸魂は消えたとはいえ、依然として幽世が不安定な世界であることは変わりません。小さなカタストロフの火種はあちこちに残っており、妖怪親分の方々も対応に追われているようです」
 これまでより頻度は下がるだろうが、戦後とて安寧が約束されたワケでは無いということだ。妖怪達はこれも日常のようなものだと笑って強かに生きていくのだろうが、彼らの負担を軽減するために猟兵にもできる事があるなら、力を貸す理由はそれで十分だろう。

「今回、皆様には東方親分『山本五郎左衛門』様に協力して、カタストロフの危機を阻止して貰いたいのです」
 先の戦争に参加した猟兵の中には実際に対峙した者もいるだろう。妖怪達が百鬼夜行となることで究極妖怪『大祓骸魂』の姿を炙り出す作戦の発案者であり、東方妖怪の顔役。戦前戦中を通して幽世に多大な貢献をなしてきた重要人物の一人だ。
「猟兵が幽世を訪れる前から、山本親分はいつ崩壊してもおかしくない世界を守っていました。彼女は戦うのではなく心のこもった言葉で妖怪を説得し、骸魂から分離させていたのです」
 山本は今でも、自分なりのやり方で地道にオブリビオンの説得を続け、カタストロフを阻止している。そんな彼女のスタンスには猟兵にとっても学ぶものがあるかもしれない。

「依頼の詳細ですが、まずは満月のすすき野に向かってください」
 幽世のあちこちにある真夜中のすすき野。そのひとつで骸魂の影響を受けて凶暴化した「満月」が割れ、その中から超巨大な『カタストロフの幼生』が誕生しようとしている。
「幼生の誕生を阻止するには『お月見』をするしかありません。みんなで賑やかに楽しくお月見をしていると、なぜかカタストロフの幼生は消滅するそうです」
 原理は相変わらず不明だが、それで世界の危機を救えるならやるしかない。お月見用のお団子や料理などの準備は山本親分がやってくれるので、猟兵はとにかく全力で食べたり踊ったりとお月見を楽しめばいい。
「割れかけの月がどうしても気になると思いますが、できるだけ気にせずお月見を満喫してください」
 まるで孵化する直前の卵のように、ひび割れた満月の中からぎょろりと巨大な眼が覗く――それがすすき野の満月の現状である。はっきり言って不気味だが、なんとかこれを美しい月だと思い込み、違和感をスルーして楽しむのが異変を終息させるコツだ。

「そして、無事に幼生を消滅させてもまだ終わりではありません。どうやらこのすすき野の近くでは、骸魂に取り憑かれた妖怪が焼き鳥屋の屋台をやっているそうなのです」
 夜中になるとどこからともなくやって来て、妖怪達がそこで一杯やるという謎の屋台。
 そのひとつである焼き鳥屋台の主人が、『口寄せの篝火』と呼ばれる骸魂に取り憑かれてしまった。オブリビオン化した彼女は「もてなし衝動」が暴走してしまい、誰彼構わず焼き鳥を食べさせようとする。
「口寄せの篝火が放つ言霊と炎には魅了の力があり、彼女はこれを使って目についた者を無理やり屋台に引きずり込み、凄まじい量の焼き鳥を食べさせようとします」
 焼き鳥そのものはとても美味しく、塩、タレ、ねぎま、かわ、つくね等、味付けも種類も豊富である。ただ、あまりにも量が多すぎる。このままでは幽世が焼き鳥で埋まってしまいそうな勢いだ。

「幽世を焼き鳥地獄にしてしまわないためには、猟兵が焼き鳥を食べ尽くすしかありません。食べれば食べるほど屋台のご主人の『もてなし衝動』も弱まり、骸魂にダメージを与えることができるようです」
 お月見で大騒ぎした直後の連戦となるため、もうお腹一杯の猟兵もいるかもしれない。そこをなんとか頑張って、あるいはお腹を空かせる工夫をして、焼き鳥を食べてほしい。やってる事はただの暴飲暴食かもしれないが、これも間違いなく世界を守るためなのだ。
「もちろん山本親分も協力してくれます。彼女はあまり暴力を好まない性格なので、こうした解決法は望むところでしょう」
 もしも屋台の主人との戦闘になった場合は、獣化して猟兵を援護してくれる。そこそこ強いが流石にオブリビオン化していた戦争当時のパワーは失われているので、期待しすぎるのも良くない。やはり平和的に解決できればそれが一番だろう。

「幽世らしい一風変わった依頼となりますが、やる事自体は簡単です。どうか山本親分と一緒にお月見や屋台を楽しんできてくださればと思います」
 戦争が終わっても幽世は相変わらず。だが、それでも妖怪は愉快に元気に生きている。
 そんなこの世界の日常風景も、慣れてみれば案外面白いかもしれません――そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、すすき野のお月見会場まで道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 戦争が終わってもカクリヨファンタズムではまだ事件が起きている様子。今回は直接戦闘に依らないふたつのカタストロフの危機を解決する依頼です。

 1章では満月の見えるすすき野でお月見をします。
 月の中から孵ろうとしている「カタストロフの幼生」を消滅させるためには、楽しくお月見をするのが必要なのです。ヤバい事になってるのは無視して全力で盛り上がることができれば、プレイングボーナスが付きます。

 2章では骸魂『口寄せの篝火』に取り憑かれた焼き鳥屋の主人を助けます。
 もてなし衝動が暴走しているご主人は、魅了の力で客を洗脳して焼き鳥を食べさせまくろうとします。魅了には抗っても抗わなくてもいいので、ご主人が満足するまで焼き鳥を食べてください。いっぱい食べればプレイングボーナスが付きます。

 この依頼では東方親分「山本五郎左衛門」が同行します。お月見のセッティング等は彼女がやってくれますが、もちろん猟兵が好きなものを持ち込んでも構いません。特にプレイングでの指定がなければ、彼女がリプレイに登場することはないです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『月割れてるけどお月見しよう』

POW   :    全力で月の美しさを褒め称え、「立派な満月」だと思い込む。

SPD   :    賑やかな歌や踊りでお祭り気分を盛り上げる。

WIZ   :    お月見にふさわしいお菓子やお酒を用意する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雛菊・璃奈
相変わらずの世界の危機だね…。

ラン達、メイド6人と仔竜達、演劇少女の蝶子さんや失敗作さん等を連れて参加…。

みんなでお月見を盛り上げるって聞いて、わたしの家族を連れてきたよ…。

…一応、気にならない様に月が正常に見える幻影をわたしの幻影術式【呪詛、残像、高速詠唱】で展開しておこうかな…。

ラン達が追加でお月見に合いそうなお弁当を持って来たから、良かったら親分さん達も食べて…(お月見団子もぐもぐ)

「和風!」
「洋風!」
「中華風!」

そういえば、碎輝とか他の親分さんや花子さん達は元気にしてるかな…?
戦争中、骸魂を払う為に傷ついた妖怪さん達もいっぱい出ただろうし…。



「相変わらずの世界の危機だね……」
 大祓骸魂という最大の脅威が消えても、今だに小規模なカタストロフが頻発する幽世。
 それを阻止するために雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)と仲間たちは、割れた月の浮かぶ夜のすすき野にやって来た。
「みんなでお月見を盛り上げるって聞いて、わたしの家族を連れてきたよ……」
「おやおや、これは大所帯で。賑やかになって良いですなあ」
 お月見の準備をしていた山本五郎左衛門も、思わず顔を綻ばせるほどの大人数。6人のメイド人形に3匹の仔竜、演劇少女の蝶子に、かつて失敗作と呼ばれた人形の少女など、様々な事件で璃奈と絆を結んだ者達が勢揃いしていた。

「今宵はどうか楽しんでって下さいな。まあ、生憎の空模様ではありますが」
 やって来た一人一人を歓待しながら、山本五郎左衛門は苦笑交じりに夜空を見上げる。そこに浮かんでいる満月はまるで孵化寸前の卵のようにひび割れ、亀裂の中から不気味な何かがぎょろり、とこちらを見ている。アレが予知にもあった「カタストロフの幼生」、その誕生を阻止するのが今回最初の依頼である。
「……一応、気にならない様にしておこうかな……」
 アレを見て見ぬ振りをしながら月見を楽しむのが「幼生」を孵らせない手段だと聞いた璃奈は、自らの幻影術式を展開して月が正常に見えるよう幻影を重ねる。あくまで外見を取り繕うだけだが、今にも割れそうに亀裂の走る月は、美しいまん丸お月さまになった。

「ラン達が追加でお月見に合いそうなお弁当を持って来たから、良かったら親分さん達も食べて……」
「ほう、これはこれは美味そうなご馳走ですにゃ。ありがたくいただきます!」
 璃奈が月に幻影を張り終えると、6人のメイド人形が料理の詰まった重箱を取り出す。ぱかりと蓋を開ければ顔を覗かせるバリエーション豊かな品揃えに、山本も配下の妖怪達も大喜びで目を輝かせた。
「和風!」
「洋風!」
「中華風!」
 自信たっぷりな笑顔でお弁当を会場に並べるメイド達。一方で璃奈は山本達が用意した月見団子をもうもぐもぐと口にしている。賑やかで和やかな雰囲気のまま、カタストロフを阻止するためのお月見はこうして始まった。

「そういえば、碎輝とか他の親分さんや花子さん達は元気にしてるかな……?」
 幻を被せた月を眺めつつ団子と料理を味わうなか、宴の話題となるのはやはり先の戦争に関することだった。あの戦いでは親分衆を始めとする多くの妖怪が大祓百鬼夜行として猟兵と戦った。死者は出ていないと聞いているが、やはりその後の安否は気になる所だ。
「戦争中、骸魂を払う為に傷ついた妖怪さん達もいっぱい出ただろうし……」
「お優しいですにゃ、狐のお嬢さん。ご安心あれ、皆もう元気いっぱいですよ」
 心配そうな璃奈の問いかけに、山本は穏やかに微笑みながら妖怪の近況を語る。碎輝は終戦を迎えても再び眠りにつく事はなく、自らの力を抑える別の方法を思いついた模様。その他の親分や妖怪達も、戦争前となんら変わりのない日常に戻っているそうだ。

「花子さんがやっとる給食屋台には儂もこないだ見てきましたが、お元気そうにしてましたにゃ。猟兵さん達には世話になった、またいつでも食べに来てと言っとりましたにゃ」
「そう……それなら、良かった……」
 戦争で出会った妖怪達が、みな無事にやっていると聞いて、いつも無表情な璃奈の表情がすこしだけ綻んだ。今だ危機の絶えない不安定な世界とはいえ、ここの住民達は陽気にたくましく過ごしているようだ。
「これもみんな猟兵さんのお陰ですにゃ。あ、このカラアゲもう一つ貰えますかにゃ?」
「あたしはこっちの煮物をちょうだい」
「「きゅぃきゅぃ♪」」
 お弁当をがっつく妖怪や、お月見団子に食いつく仔竜。様々な者が集うこのお月見は、そんな幽世を象徴しているようでもあった。自分の家族と妖怪達が一緒に楽しいひと時を過ごしているのを見ているうちに、璃奈の心にはふと温かいものが満ちるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
(割れている月を眺めながら)
カクリヨではこれが風情ある景色ということでしょうか
UDCアースに似た景色が多いですが、文化の違いというものを改めて感じさせられます
この経験は私の想像の幅を広げ、より良いダンスを生み出す糧となるでしょう
猟兵になれて良かったと改めて思います
(目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすと{絢爛の旋律}で『ダンス』を始める)
陽光ではなく月光ですが、照らされたすすき野の美しさに相応しいリズムです
割れた月とすすき野と輝く夜空に捧げるつもりで
全身全霊を込めてダンスすることでカタストロフの幼生を葬るとしましょう
(UC【蠱の一念】発動)



「カクリヨではこれが風情ある景色ということでしょうか」
 割れている月を眺めながら、かくりと首を傾げる播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)。まんまるく満ちた月の中から得体の知れない怪物が孵ろうとしている様は、ある意味芸術的と言えなくもないが、果たして風情あると言えるのかどうか。
「UDCアースに似た景色が多いですが、文化の違いというものを改めて感じさせられます」
 実際には妖怪達にとってもこれは異常な景色らしいが、彼女はしきりに感心している。
 世界に滅びをもたらす「カタストロフの幼生」を孕んだ満月に照らされるすすき野――他では見られない奇妙で美しい風景がインスピレーションを刺激する。

「この経験は私の想像の幅を広げ、より良いダンスを生み出す糧となるでしょう」
 猟兵になれて良かったと改めて思います――クロリアはそう言うと目を閉じ、すっと手を真横にピンと伸ばすとダンスを始める。手の動きやステップを踏む足の動きによって、奏でるのは「絢爛の旋律」。蒼天に輝く太陽と、陽光に照らされ輝く大地を表現した栄華のリズムだ。
(陽光ではなく月光ですが、照らされたすすき野の美しさに相応しいリズムです)
 そよそよと風にゆれるススキの中で、本能の赴くままに想いを込めて踊りに集中する。
 踊りから生まれた旋律は彼女の力となり、同時にそれらを心から愛する彼女の思いは、月から生まれようとする「カタストロフの幼生」を消滅させる儀式のピースとなる。

「いいぞお嬢ちゃん!」
「すっごくステキだわ!」
 お月見に参加していた妖怪達の中からも、クロリアのダンスに見惚れる者が続出する。
 躍動的で力強く、思いを全身で表現するような彼女の踊りは、感情を糧にする妖怪達にとって心地よいのだろう。宴はさらに盛り上がり、拍手や歓声があちこちで湧き上がる。
「これはリアですね」
 すすき野に満ちる豊かな色とリズムを「良い」と独自の造語で表現し、クロリアはさらに熱を入れてダンスを踊る。割れた月とすすき野と輝く夜空に捧げるつもりで、全身全霊を込めて一心不乱に。【蠱の一念】に衝き動かされた彼女の舞踏はより美しさを増した。

「見て! 月が……!」
 ふと、妖怪の一人が叫んだのを見て夜空に視線を上げると、今にも砕けそうだった満月のひび割れが小さくなっていく。クロリアの想いを込めたダンスと旋律、そしてお月見の盛り上がりが、カタストロフの幼生の力を弱めたのだ。
『グゥゥゥ……ッ』
 幼生は月の中から苦しげな呻き声を上げ目を細める。この調子でいけば、アレを完全に葬り去れるのも時間の問題だろう――蠱の踊り子はなおも集中を切らさず、踊り続ける。心から湧き上がるインスピレーションのままに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レア・リリシエル
ご飯を食べることが好きなので、マイペースに食べまくります。そして他の猟兵達にも料理などをお裾分けします。


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

戦争は終わったが、未だ世界の危機は消えずか
フッ、カクリヨらしい話だな

とは言え、見過ごす事は出来ない話だ
山本親分には戦争でも色々と世話になったし、この機会に一席設けるのも良いだろうな
UCを発動
宴席の料理を程々に楽しみつつ、ボリードポーチから日本酒を取り出そう

どうせ楽しむならと思ってな、中々の銘酒だ
まずは一献

山本親分に手酌をしながら、先の戦争での戦いなどを語り合うか
もちろん月を愛でる事も忘れずに、盃に月を映して月見酒と行こうか
この後の事もあるから、食事は少し控えよう

「月の恩恵」…なんて詩を書いたのはボードレールだったか
案外、あの月は皆との宴を楽しませるために出てきたのかもしれないな



「戦争は終わったが、未だ世界の危機は消えずか。フッ、カクリヨらしい話だな」
 この世界で起こる異変の数々にも慣れた顔で、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は笑みを見せる。大祓骸魂という最大の脅威が去っても、幽世の問題は尽きることがない。当の住人達はそれも日常の一部として半ば受け容れているようだが。
「とは言え、見過ごす事は出来ない話だ」
 視線の先に浮かぶのは割れた月。あれから「カタストロフの幼生」が生まれ落ちれば、こう呑気にしてもいられなくなる。折角守った世界を最後まで護り通すために、女傭兵はすすき野のお月見に参加する。

「山本親分には戦争でも色々と世話になったし、この機会に一席設けるのも良いだろうな」
 宴席についたキリカはそう言うと【シャンブル・ミニヨン】を発動し、ボリードポーチの中から日本酒の瓶を取り出す。彼女のポーチの中は様々な部屋や保管庫などの亜空間に繋がっており、見た目より遥かに多くの物を仕舞っておけるのだ。
「どうせ楽しむならと思ってな、中々の銘酒だ。まずは一献」
「おお、こりゃあ有り難い……んっ、いい酒ですにゃ。では儂からも」
 キリカが山本親分に酌をすると、親分はそれをぐっと飲み返してキリカに返杯を行う。銘酒に見劣りしないだけの肴も、月見に欠かせないお団子も、もちろん用意されている。二人はそれを程々に楽しみながら、先の戦争での戦いなどを語り合う。

「ここのご飯、美味しいです」
 その近くでお月見料理をぱくぱくと口に運んでいるのはレア・リリシエル(ヤドリガミのレトロウィザード・f33682)。まだ自我が生まれてから間もない彼女は、寝ることやご飯を食べること等の素直な欲求に根ざしたことが好きらしい。
「(もぐもぐもぐ……)」
 普段から口数の少ない彼女は、マイペースに食べるのに集中するとさらに無言になる。表情にも乏しいため傍目には分かりづらいが、宴を楽しんでいないわけでは無いようで、夢中で食べまくる料理の減り方がそれを物語っていた。

「良ければあなたもどうぞ」
「ああ、ありがとう」
 食べ比べるうちに気に入った料理を、レアは他の猟兵にもお裾分けする。キリカはそれを微笑んで受け取り、酒盃を傾けつついただく。甘めの味付けだが、意外と酒にもあう。
「だがこの後の事もあるから、量は少し控えさせてもらおうか」
 グリモアの予知によると月の異変を解決した後、オブリビオン化した妖怪の焼き鳥屋が現れるという。そちらでまた食事をするのを考えれば、ここで食べ過ぎないほうが良い。食事は酒のつまみ程度にして、そのぶん盃を並べた相手との語らいを楽しむことにする。

「あなたもどうですか?」
「勿論いただきますとも。おお、こりゃ美味いですにゃ!」
 一方のレアは食べることに夢中なのか食べられる量に自信があるのか、さして気にした様子もないペースで食事を続ける。山本親分もお裾分けをいただいて楽しそうに微笑み、酒に語らいにとお月見を満喫していた。流石はこの作戦の発案者である。
「ついこの間まで戦っていた方々と並んで飯を食い、酒を酌み交わす。あの月のように、じつに丸く収まったもんですにゃ」
「そうだな。こうして美味い酒が飲めるだけでも、あの戦いに意味はあった」
 しみじみと語る山本親分に調子を合わせ、キリカは盃に月を映して月見酒と洒落込む。
 宴はもちろん月を愛でる事も忘れない。カタストロフの幼生を孕んだ不気味な満月も、こうして皆で楽しみながら眺める分には、悪いものでもないように思えてくる。

「『月の恩恵』……なんて詩を書いたのはボードレールだったか」
 それは揺りかごの中にいる赤子を照らす月を母になぞらえて、その美しさを綴った詩。
 経緯や事情は異なれども、その詩情は今のこの光景にも似通ったものがある気がする。
「案外、あの月は皆との宴を楽しませるために出てきたのかもしれないな」
「はは、そうかもしれませんにゃあ」
「そう思うと、より楽しく感じます」
 月に盃を掲げるキリカに、からからと笑う山本親分、もくもくと食べながら頷くレア。
 他にも様々な妖怪や猟兵が、思い思いにお月見を楽しむ光景は、滅びの危機など無いかのように感じさせ――月のひび割れを塞ぎ、カタストロフの幼生を弱らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
お月見ね。この後の焼き鳥屋台でも人手が要りそうだし、以前の「給食屋台」同様、【虜の軍勢】で眷属総出(雪花、エビルウィッチ、ヴィラン隊、邪神のエージェント達、神龍教派のクレリック、閉幕のアリス、ハーベスター、光の断罪者、サーヴァントバニー、渚のパイレーツ等々)で召喚。

雪花「最近、おねぇさまは花子さんの給食屋台の常連になってるのー」

それは今は良いわ、雪花…新しく加わったシルキー(お裁縫妖怪/時間のほつれを修正せよ)や黒猫ちゃん(ドラゴンねこをなでろ)達もいるし、歓迎会と慰労の宴会にもちょうど良いわ。
みんなでお月見を楽しみましょう♪

親分と魔城から持参したお酒を酌み交わしたりしつつお月見を堪能するわ♪



「お月見ね。この後の焼き鳥屋台でも人手が要りそうだし、以前の屋台みたいに……」
 戦争中、オブリビオン化した花子さんが作った屋台グルメを食べまくった時と同様に、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は【虜の軍勢】で居城にいる眷属を召喚し、総出でお月見に参加する。
「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 雪女見習いの雪花を筆頭に、エビルウィッチ、ヴィラン隊、邪神のエージェント達、神龍教派のクレリック、閉幕のアリス、ハーベスター、光の断罪者、サーヴァントバニー、渚のパイレーツ等々。個性豊かな面々が、カタストロフを阻止するお月見に加わった。

「最近、おねぇさまは花子さんの給食屋台の常連になってるのー」
 戦争が終わってからのフレミアの近況を、お月見の席で語るのは雪花。戦時中は骸魂の影響でオブリビオン化していた「七不思議の花子さん」も、今はすっかり元通りになり、彼女が屋台で作る学校給食のメニューは変わらぬ好評を受けているらしい。
「それは今は良いわ、雪花……新しく加わったシルキーや黒猫ちゃん達もいるし、歓迎会と慰労の宴会にもちょうど良いわ」
「ご配慮に感謝致します、フレミア様」
『にゃーん♪』
 肩をすくめるフレミアの傍には、先の戦争の経緯で新たに眷属となった妖怪達もいる。妖怪バスに乗って「世界のほつれ」を修正する旅で知り合った、お裁縫妖怪のシルキー。竜人の霊山にてドラゴン化していた、愛くるしい「どこにでもいる黒猫たち」。どちらも今ではフレミアのかわいい忠実なるしもべ――この場合は使用人と飼い猫だろうか。

「みんなでお月見を楽しみましょう♪」
「「はーいっ!」」
 召喚に合わせて各世界で集めた食糧物資や名物を「魔城スカーレット」から取り寄せ、宣言するフレミア。嬉しそうな眷属達の声がそれに唱和し、すすき野はたちまち賑やかな宴会風景となった。
「これはこれは、楽しくやってくれているようで何よりですにゃ」
 そこへ様子を見に来たのは、東方親分の「山本五郎左衛門」。皆がきちんとこのお月見を楽しんでくれているか、自分も満喫しつつ見回っているらしい。カタストロフの幼体を退治するには重要な事だ。もっともここの主従については心配は要らなかったようだが。

「もちろん堪能してるわ♪ 貴女も一杯どうかしら?」
 そう言ってフレミアが山本親分に勧めるのは、魔城から持参したお酒。購入時の品質を魔力でそのまま保たれた、幽世の外ではヴィンテージ並の価値を誇る銘酒の一瓶である。
「おお、よろしいので? これは有り難い! では儂からも一献……」
 酒好きな親分は目を輝かせて勧めを受け取り、自分も持ってきた酒を返す。外見はまだ十代前半から中半ほどのフレミアだが、中身はしっかりと成人しており、酒を酌み交わすのに何の不都合もない。

「戦争の時に戦って以来だけど、元気そうで良かったわ」
「もうピンピンしてますにゃ。それも貴女がた猟兵さん達のお陰ですにゃあ」
 戦争の事や、その後の互いの近況などの話題を肴にして、盃を掲げるフレミアと山本。
 その周りでは眷属達がめいめいお月見を楽しみつつ交流を深めているようで、新参組のシルキーや黒猫達もすでに馴染みつつあるようだ。
「いいわね、こういうのも♪」
 彼女達にとってはもはや、月が割れているのなど些細な事のようだ。人数と銘酒の力で大いに月見を盛り上げる吸血姫とその眷属により、カタストロフの危機はまた遠ざかる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
ごきげんよう東方親分殿、御狐稲見之守である。
酒は呑むなと止められたがゆえシラフにて失礼する。
……ふふ、『そんな機会』が来たもんじゃナ。

大祓のと少し話をしてナ
故郷を守らんとし愛するお前さん達のことを
『愛おしいこと』――だとさ。
もっともその真意は測りかねるがナ。
嘲り笑って云ったのか、それとも。

にしても、やはり幽世は賑やかで良い。
前々からその喧騒にワシも加わってみたくてなァ。
さあて、シリアス面はここらで終わりにして

"宴会"の時間だオラッッッ!!!!

[真姿変身]さあ酒を呑むぞ、誰がこの我を止められるものか。
付き合え親分殿、約束通り化かし合い勝負もしてもらうからなあ?
酔いつぶれることは許さんぞ。



「ごきげんよう東方親分殿、御狐稲見之守である」
「おお、あなたはいつぞやの」
 すすき野のお月見会場に現れた御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)の顔を見て、表情を綻ばせる山本五郎左衛門。マヨヒガでは敵として本気の死闘を演じたこの二人は、そこで他愛のない「もしも」の未来を語らった仲でもあった。
「酒は呑むなと止められたがゆえシラフにて失礼する。……ふふ、『そんな機会』が来たもんじゃナ」
 "モノノ怪同士楽しく化かし合いなぞ如何か"と、以前の稲見之守は思った。あの時は戦時ゆえそのような場ではなかったが、互いに禍難を乗り越え生き延びた今であれば、もうそれは夢物語ではない。山本も実に嬉しそうに彼女を宴の席に招いた。

「酒が駄目なら茶はどうですかな。月見団子とご一緒に」
「これは有り難い。ひとつ頂くとするかナ」
 山本から勧められた湯呑みと団子を口に運びながら、割れた満月を見上げる稲見之守。
 その異様な風景もまた、先月の戦いのことを思い出させる。一月に渡った大祓百鬼夜行との戦争――その最終盤にあった出来事を振り返って、彼女はぽつりと語りだす。
「大祓のと少し話をしてナ」
「ほう」
 骸魂の元凶たる究極妖怪『大祓骸魂』。稲見之守はかの大いなる邪神と少しの間だが、電話で話をすることができた。超然として捉えようのない存在だが、受話器越しに聞いた彼女の声はとても穏やかなものであった。

「故郷を守らんとし愛するお前さん達のことを『愛おしいこと』――だとさ」
「――……ほう。それは、それは」
 かの邪神の口からそのような言葉が出たとは俄に信じられなかったか、動揺を抑えつつも山本が目を丸くする。彼女ら妖怪はそれこそ形振り構わずに大祓骸魂を討ち祓おうと、計を案じた立場。まさかその相手から「愛おしい」などという言葉を送られるとは。
「もっともその真意は測りかねるがナ。嘲り笑って云ったのか、それとも」
 ただ、稲見之守が聞いたものは幻聴の類ではなかった、それだけは確かである。骸の海に還っていった邪神から真意を解き明かす術はなく、全ては聞き手の解釈に委ねられる。
 山本親分は何か感想を口にすることはなかったが、どこかしみじみとした様子で湯呑に視線を落としていた。それを横目に見てから、モノノ怪神は割れた満月に視線を移す。

「にしても、やはり幽世は賑やかで良い。前々からその喧騒にワシも加わってみたくてなァ」
 口から出た声のトーンはそれまでよりやや高く。にやりと笑みを浮かべた稲見之守は、山本親分が「どうされましたにゃ?」と首を傾げるのをよそに、居丈高な調子で叫んだ。

「さあて、シリアス面はここらで終わりにして――"宴会"の時間だオラッッッ!!!!」

 その手にはいつのまにか湯呑ではなく盃がある。【真姿変身】により普段の童女姿から大人の姿に一瞬で变化した稲見之守はさっきまでのしんみりとした雰囲気はどこへやら、純然たる酒飲みのツラで山本親分に絡む。
「さあ酒を呑むぞ、誰がこの我を止められるものか。付き合え親分殿、約束通り化かし合い勝負もしてもらうからなあ?」
「な、なんと……」
 最初こそ面食らっていた山本だが、その表情はすぐに人を喰ったような笑みに変わる。
 そう、これこそが彼女が守る、彼女が愛する幽世の雰囲気だ。明日をも知れぬ不安定な世界でも、笑って騒いで飲んで食って歌って、モノノ怪たちが生を謳歌する"故郷"だ。

「なんと、この山本五郎左衛門に飲み比べを挑む愚か者がまだおったとは。猟兵さんでも容赦はしませんからにゃ?」
「ふふ、望むところよ」
 一体どこから出したのか、でっかい酒瓶をドンと席に置いて凄みをきかせる東方親分。
 そう来なくては面白くないと、稲見之守も笑みを深め――かくして酒の入ったお月見は盛り上がりのボルテージを加速させる。
「酔いつぶれることは許さんぞ」
「こっちのセリフですにゃあ!」
 飲み比べに化かし合い。モノノ怪同士愉快に陽気に馬鹿馬鹿しく、大騒ぎを繰り広げるふたり。その喧騒は周りの者にまで伝わり、ちゃぶ台をひっくり返したような大騒ぎに。
 明けぬ夜のすすき野にて、終わることを知らぬ宴はいつまでも騒がしく続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
カビパンさんと

ツッコミ役は苦手なのですが💦

大真面目に対応考えた詩乃はUCで降霊能力を上げ、塩●七生先生の霊を召喚し、黒柳カビパンに対抗できる存在、塩野詩乃になる。
(徹子の部屋に呼ばれた時、徹子さんに容赦無くツッコんでいた。)

「あなたは下手くそですね。ゼロからやり直す必要が有ります。」と容赦無くツッコみ、スパルタ教育(歌唱・楽器演奏)で何度もリテイク。
カビパンさんにはこの上なく厳しく、恐れ戦く山本親分さんにはこの上なく優しく(猫可愛がりして優しくモフる♪)。

カビパンさんを甘やかそうとする「カタストロフの幼生」さんにはジト目を向けて黙らせる。

最後は「月が綺麗ですね。」の一言で無理矢理締めます。


カビパン・カピパン
〜カビパンリサイタル〜
主催・招聘・制作 戌MS
出演 カビパン 詩乃 

お月見リサイタルのためにカビパンは、期待に胸を膨らませ会場であるカクリヨファンタズム・サンモトのマヨヒガに向かう。

しかしついに彼女は詩乃からのツッコミにより知ってしまうのだ。
実は自分の歌がとてつもない音痴なことに。

真実の次に待っていたのは悲しむ暇のない厳しい歌手修行の日々。恐れ戦く東方親分、詩乃をはじめとした一流の評論家(ツッコミ勢)たち。
忙しい日々の中、ズレた空気感、妖怪関係模様にカビパンは察する。
そして歌手にとって最も大切なものに気づき始めた時、良き理解者でもあったカタストロフの幼生との別れの日が近づいてくるのであった。



「さあお月見リサイタルの時間よ!」
 期待に胸を膨らませ、会場であるカクリヨファンタズム・サンモトのマヨヒガに向かうカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。その名のとおり月を見ながらリサイタルを行うつもりのようだが、果たして大丈夫なのだろうか。
「ツッコミ役は苦手なのですが」
 その後から若干自信なさそうに付いてくるのは大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)。ボケのカビパンの対となるツッコミ担当として呼ばれたらしいが、なぜ自分なのだろう。と、彼女は大真面目に対応の仕方を考えていた。

「これより神としての務めを果たします」
 いろいろ考えた末に詩乃は【神事起工】で降霊能力を上げ、さる小説家の霊を召喚し、【黒柳カビパンの部屋】に唯一対抗できる存在、塩野詩乃になる。これなら黒柳カビパンが放つ無茶振りにもプレッシャーにも耐え、容赦のないツッコミを返せるはずだ。
「リサイタルの前に言いたい事があります」
「あら、なにかしら?」
 今にも歌い出しそうな相手との距離をじりっと詰め、話を切り出す塩野詩乃。開演寸前で止められたカビパンはちょっと不満そうだったが、続く彼女の言葉はそんな不満も吹き飛ばすほど切れ味バツグンだった。

「あなたは下手くそですね。ゼロからやり直す必要が有ります」
「なんですって?!」

 今まで様々な世界でリサイタルを行ってきたカビパンは、ついに詩乃からのツッコミにより知ってしまった――実は自分の歌がとてつもない音痴なことに。一曲披露するだけで毎回精神攻撃級のダメージを周りに与えていたのに、どうも本人は無自覚だったらしい。
「このままではステージに上がるどころではありません。ビシビシいきますよ」
 真実の次に待っていたのは悲しむ暇のない厳しい歌手修行の日々だった。ちゃんとした歌唱・楽器演奏の技能を持つ詩乃は、カビパンのハチャメチャな歌に容赦無くツッコみ、スパルタ教育で何度もリテイクを叩きつける。まさに鬼、いやさ鬼神教師である。

「ひええ、おっかないですにゃあ……」
 ビシバシとした厳しいレッスンの様子には、かの山本親分すら恐れ慄く。しかし詩乃はカビパンにはこの上なく厳しくする一方で、なぜか山本親分にはこの上なく優しかった。
「山本親分さん、こっちですよ♪」
「え、何する気ですにゃ、うにゃぁ~っ」
 猫可愛がりされて耳や尻尾などふかふかした部分を優しくモフられる山本。親分の威厳も何もない扱いだが、詩乃のなで方が良いのか、満更でもなさそうに喉を鳴らしている。カビパンとの扱いの差はまさに雲泥の違いであった。

「どうしてこんなことに……」
 詩乃をはじめとした一流の評論家(ツッコミ勢)たちのダメ出しを受け、忙しい日々を送る中、周りとのズレた空気感、妖怪関係模様にカビパンは察する。ギャグはギャグでもツッコミ優勢という珍しい展開から、彼女は新しい何かを得ようとしていた。
『――……』
 そんな彼女を割れた満月から見下ろすのはカタストロフの幼生。ソレからすれば楽しいお月見の雰囲気をブチ壊してくれる可能性のあるカビパンリサイタルは大歓迎なわけで、今の音痴なカビパンのままでいて欲しいと甘やかしたいところだが――。

「駄目ですよ」
 カタストロフの幼生が何かする前に、詩乃がジト目を向けて黙らせる。作家先生の霊を降ろした彼女の神気とプレッシャーは強く、気圧された幼生は何も言うことができない。
 スパルタ教育は滞りなく進み、その中でカビパンは歌手にとって最も大切なものに気づき始めた。それは彼女の良き理解者でもあった幼生との別れの日の近付きでもあった。
「ありがとう詩乃さん、私分かりました!」
「分かってくれたのですね、カビパンさん!」
 歌手として一歩成長を果たした彼女を、詩乃は心からの喜びをもって褒める。願わくばこの成長が一歩進んで二歩下がるオチにならないで欲しいが、それはまた別の話である。周りにいた山本親分や妖怪達も、良かった良かったと和やかな雰囲気で拍手を送る。

「私、歌います!」

 こうして始まったカビパンのお月見リサイタルは、死者、気絶者、重症者ゼロという、記録的な結果を残すことになった。宴もたけなわで皆ほどよく酒も回っていたのもあり、なんとなく良い雰囲気のまま受け容れられたようだ。
「月が綺麗ですね」
 カビパンの熱唱が響き渡るすすき野で、詩乃はふっと夜空を見上げながらそう呟いた。色々あったけど最後には上手くいった――そんないい話っぽい雰囲気を醸し出しながら。ちょっと無理矢理感はあるものの、その一言に異を唱える者は誰もいなかった。

『ウゥゥゥッゥゥゥ――……』

 月の中にいた「カタストロフの幼生」がうめき声を上げ、月面の罅割れが直っていく。
 皆で盛り上げたお月見の賑わいが、悪しきモノの誕生を阻止したのだ。幼生は消滅し、後にはいつも通りのすすき野と満月が――キズひとつない「美しい満月」が戻ってくる。
 かくして猟兵達はカタストロフの危機をひとつ、未然に防ぐことに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『口寄せの篝火』

POW   :    甘美な夢現
【対象が魅力的と感じる声で囁く言霊】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の精神と肉体を浸食する炎】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    怨嗟の輩
【吐き出した妖怪の亡霊】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    蠱惑の怨火
レベル×1個の【口や目】の形をした【魅了効果と狂気属性】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエル・マリアージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵・妖怪共同で行われたお月見により「カタストロフの幼生」の誕生は阻止された。
 割れた満月は元に戻り、平和になったすすき野に妖怪達の喜びの声が溢れる――だが、今回の事件はまだこれで解決したわけではないと、猟兵達は知っていた。

「焼き鳥……いりませんか……」

 満月のすすき野にふらりとどこからともなくやって来たのは一軒の屋台。香ばしいタレの匂いを漂わせており、中では年若い少女の姿をした妖怪がくいくいと手招きしている。
 だが、その妖怪の足元には不気味な紅い球体の怪物がいる。アレは『口寄せの篝火』、屋台の主人に取り憑いて、その「もてなし衝動」を暴走させている邪悪な骸魂だ。

「美味しいですよ……タレ、塩、つくね、ねぎま……たくさん食べて下さい……」

 屋台の主人は魅力的な声で辺りにいる者達に囁きかけ、焼き鳥を食べるよう誘惑する。
 その言霊や彼女の周りに浮かぶ炎には魅了の効果があるようで、聞いているとだんだん焼き鳥を食べたくて仕方なくなってくる。そうやって客を集め、お腹がはちきれんばかりの焼き鳥を食べさせ、永遠にもてなし続けるのが今の彼女の望みなのだ。

「たくさん、たくさん……おかわり、自由ですよ……」

 このままでは幽世が焼き鳥で埋まってしまう。その前に店主の暴走を鎮めなければ。
 そのために必要なのは、彼女の屋台でとにかく焼き鳥を食べること。十分なもてなしができたと彼女が満足すれば骸魂の力は弱まり、やがて消え去るだろう。

 すすき野でのお月見から間を置かずにやって来た、今宵二度目のカタストロフの危機。
 これを乗り越え、罪なき妖怪を骸魂から解放するために、猟兵達は戦い(?)に挑む。
フレミア・レイブラッド
あら、こちらの子も可愛らしいわね♪
行きつけのお店がまた増えそうだわ。

1章から引き続き、【虜の軍勢】による眷属総動員(雪花、シルキー、どこにでもいる黒猫たち、異国の少女剣士、花魁猫又、エビルウィッチ、ヴィラン隊、邪神のエージェント達、神龍教派のクレリック、閉幕のアリス、ハーベスター、光の断罪者、サーヴァントバニー、渚のパイレーツ等々)で参加するわ♪

焼き鳥のレバー、癖はあるけど悪くないわ。お酒にも合うし。砂肝も良い触感で美味しい♪(吸血姫な為か血の臭み等は気にならない様子)

雪花「わたしは苦手なのー。ぼんじり美味しいの」

UDCアースやヒーローズアース、サムライエンパイア出身の子達は馴染み深そうね



「あら、こちらの子も可愛らしいわね♪」
 お月見から引き続き、【虜の軍勢】による眷属総動員で焼き鳥屋台を訪れたフレミア。
 年若い少女のような店主の容姿に惹かれているのは、おそらく『口寄せの篝火』が持つ魅了の力ではなく、本人の趣味だろう。
「行きつけのお店がまた増えそうだわ」
「ありがとう……ございます……」
 屋台の店主は無表情にぺこりとお辞儀をしつつ、じゅぅじゅぅと焼き鳥を焼いている。
 妖術でも使っているのかと思う程のペースで、あっと言う間に出来上がる焼き鳥の山。これを食べきって店主の『もてなし衝動』の暴走を止めるのが、今度の依頼である。

「それじゃあ皆、いただきましょうか」
「はいなの~」
「「いただきます!」」
 フレミアが前に出された肉の串を手に取ると、眷属達もそれに倣う。雪花、シルキー、どこにでもいる黒猫達をはじめ、相変わらず個性豊かな面々が焼き鳥屋に勢揃いである。
「焼き鳥のレバー、癖はあるけど悪くないわ。お酒にも合うし。砂肝も良い触感で美味しい♪」
 吸血姫な為か血の臭み等は気にならない様子で、モツ系をぱくりと口に運ぶフレミア。
 異常に量が多いことだけ除けば、この屋台の焼き鳥は味もレパートリーも抜群である。オブリビオン化しても店主の腕に衰えはないらしい。熱燗からお冷までしっかりと揃った酒類も、大いに彼女を喜ばせるものだった。

「わたしは苦手なのー。ぼんじり美味しいの」
 一方の雪花はレバー等は避けつつ、もぐもぐとレアな部位の焼き鳥を食べている。本来は値の張る希少部位でも今夜だけ特別に全てタダ。食べなければ勿体ないということで、夢中で食べまくる眷属も少なからずいた。
「手羽先おかわり! 今度は塩で!」
「あたしはささみが欲しいにゃあ」
「はい……ただいま……」
 眷属達の注文に合わせて肉を焼く店主の顔は、表情に乏しいもののどこか嬉しそうだ。
 逆に、彼女の足元にいる球体――『口寄せの篝火』の本体は元気がないように見える。依代の「もてなし衝動」が満たされれば、骸魂であるソレの力は弱まるのだ。

「皆楽しんでいるようで何よりだわ♪」
 自分でもレバーのお代わりを頂きつつ、フレミアは眷属達の食べている様子を見回す。
 ささみを頬張る花魁猫又や、肉を串から外して食べやすいようにしているヴィラン隊。日本酒のお猪口を傾けつつねぎまを食べる邪神のエージェントなど、皆思い思いに屋台を満喫しているようだ。
「UDCアースやヒーローズアース、サムライエンパイア出身の子達は馴染み深そうね」
「はい。ですが故郷のものとは少し違いもあるのが興味深いです」
「私達は始めていただく料理ですね……ですが、美味しいですわ」
 エンパイアにはなかったメニューにも果敢に挑戦する異国の少女剣士がいれば、未知ゆえに戸惑いつつも食べてみれば案外気に入ったらしい光の断罪者がいたりと、世界ごとの文化の違いによる反応の差こそあれ、ここの焼き鳥は誰からも好評なようだ。

「嬉しいです……もっとめしあがれ……」
「ええ、もちろんよ。お酒のおかわりも貰えるかしら?」
 フレミアと眷属達が焼き鳥を食べれば食べるほど、店主は喜んで焼き鳥を作り続ける。
 だが、積み重なった山の量は確実に減っている。このペースでいければ無事に完食し、暴走する「もてなし衝動」を鎮めることができるだろう――『口寄せの篝火』の本体が、焦ったように火の粉を散らすのを見て、吸血姫はくすりと笑いながら砂肝を口に運んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
困りましたね・・・焼き鳥は好きですが
私の胃袋はそんなに大きくはない・・・
あっそうか、別に私一人で食べなくてもいいんだ
私の踊りでもっと大勢の妖怪の皆さんを惹きつけて
大繁盛させればもてなし衝動も収まることでしょう
(微笑みながら翅をゆっくりと震わせ軽い足取りでステップを踏んだ後{桃花の旋律}で『ダンス』を始める)
人を惹きつけるならこのリズムがうってつけですね
後は人を増やして・・・
(UC【蠱の人】を発動しクロリアの周りに頭と手が花で体が茎の人型が出現すると{桃花の旋律}を踊り始める)
さぁさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい
カクリヨいちの焼き鳥ですよー
満月と踊りを愛でながら食べると最高の焼き鳥ですよー



「困りましたね……焼き鳥は好きですが、私の胃袋はそんなに大きくはない……」
 目の前に用意された大量の焼き鳥の山を見て、クロリアは眉をハの字にして苦笑する。
 これほどの量を一人で消化しようとすれば、途中でお腹がはち切れる。どうしたものかと首を傾げるが――ふと近くで食べている他の猟兵の様子を見て、あることに気付く。
「あっそうか、別に私一人で食べなくてもいいんだ」
 一人で食べ切れないなら十人でも二十人でも人を集めて、みんなで食べ尽くせばいい。「もてなし衝動」が暴走している店主も、お客さんが増えて喜ばないことは無いだろう。そうと決まればとクロリアは屋台の店先に立ち、得意のダンスの構えを取った。

「私の踊りでもっと大勢の妖怪の皆さんを惹きつけて、大繁盛させればもてなし衝動も収まることでしょう」
 微笑みながら翅をゆっくりと震わせ、軽い足取りでステップを踏んだ後「桃花の旋律」に合わせて踊り始めるクロリア。香しいそよ風と心安らぐせせらぎ、心地よいふかふかの大地を表現した誘惑のリズムに合わせて、華麗で軽快なダンスが見る者を魅了する。
(人を惹きつけるならこのリズムがうってつけですね)
 その効果は『口寄せの篝火』が発する魅了の力より強かったのか、近くを通りすがった妖怪達が「おや、なんだい?」「きれいな踊りだね」と続々集まってくる。効き目は覿面と判断したクロリアは笑みを深め、より熱をこめてダンスを披露する。

「後は人を増やして……」
 さらにクロリアは【蠱の人】を発動し、自分の周りに頭と手が花で体が茎の人型の集団を出現させる。ダンスで生み出した旋律の力が実体化した存在である彼らは、本体と同じ桃花の旋律を奏で踊り始めた。
「さぁさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。カクリヨいちの焼き鳥ですよー」
 蠱の人をバックダンサーのように従え、ひらひらと翅を震わせながら、呼び込みの口上を口にする。まず踊りに惹かれてやって来た妖怪達は、次に美味しそうな匂いに誘われ、用意された大量の焼き鳥に驚くことになる。

「うわあ、なんだこの沢山の焼き鳥?!」
「これ、食べていいの? ぜんぶ?」
「はい……もちろん……」
 目を丸くして驚いたり、目を輝かせて喜んだり、あるいはもう食べ始めていたり。様々な反応を見せる妖怪達を、屋台の店主は嬉しそうに受け入れる。もてなす相手が増えれば増えるほど、彼女の衝動は満たされやすくなる。オブリビオン化の解除も早まるだろう。
「満月と踊りを愛でながら食べると最高の焼き鳥ですよー」
 クリロアは呼び子兼踊り子として屋台の宣伝役となり、夢と誘惑のリズムを舞い踊る。
 やがて屋台の周りにはダンスに誘われた人だかりができ、彼女の望んだとおりに大繁盛の様相になってきた。五十人、七十人――もしかすれば百人以上いるかもしれない。

「すっげえうまーい! おかわり!」
「お姉ちゃん、他の踊りも見せて!」
 妖怪達は山ほどの焼き鳥を思う存分味わいながら、クロリアのダンスと月を鑑賞する。
 満月の晩に訪れたひとときの贅沢。それは皆の腹と心が満たされる幸福な時間となり、それを演出した者と屋台の店主の心にも、深い満足感がもたらされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
『今宵は召しませ御狐さん』
うた:おきつね・いなみのかみ

おめめがギラギラ 吐息がはぁはぁはぁって!
ちっちゃな女の子 DA☆DADA大好きなんでしょ?
ほらほら『生きてるだけでごめんなさい』って
ちゃんとごめんね言えたね(えらいね)

さあ犯罪(こい)をしましょしましょ
さわってこやこや 胸がキュンキュン
キミの病気(すき)を いっぱい教えてね

乙女心の扉を コンコンKNOCK!
触っていじって CLICK!CLICK!CLICK!
クソザコ(検閲削除)じゃ物足りないよ
今宵は召しませ御狐さん!(Yeah!)

えへへっ おにいちゃんのみんなっ
いっぱいいーっぱい 食・べ・て♪
(※焼き鳥のことです)



「賑やかになってきました……ですが、もっと……」
 屋台を訪れた猟兵達と彼女らが連れてきたお客によって、焼き鳥屋は大繁盛していた。
 しかし屋台の店主はまだ満足しきっていない。骸魂に憑かれた彼女の「もてなし衝動」を発散させるには、もっと沢山焼き鳥を食べる必要がありそうだ。
「ふむ、ではここはわしも一肌脱いでやろうかナ」
 そこで名乗りを上げたのは稲見之守。より多くの客を呼び込んで焼き鳥を食わせる方針に決めた彼女は、屋台の前で服の袖をひらひらと揺らしながら踊り、そして歌い始めた。

 おめめがギラギラ 吐息がはぁはぁはぁって!
 ちっちゃな女の子 DA☆DADA大好きなんでしょ?
 ほらほら『生きてるだけでごめんなさい』って
 ちゃんとごめんね言えたね(えらいね)

 現代的なポップなリズムに合わせ、甘いキュートなボイスで奏でられる電波風ソング。
 曲名は『今宵は召しませ御狐さん』(うた:おきつね・いなみのかみ)。特定の趣味層をガッツリ狙い撃ちにしたとしか思えないソレは、年端も行かぬ童女姿(実年齢は秘密)の稲見之守が歌うことで破壊力がアップする。

 さあ犯罪(こい)をしましょしましょ
 さわってこやこや 胸がキュンキュン
 キミの病気(すき)を いっぱい教えてね

「こっ……これはぁ……ッ!?」
 だんだん怪しくなっていく歌詞と、彼女の本性を知る者なら耳を疑うような激甘ボイスを聞いて、全身に電流が走る妖怪多数。興奮した視線でギラつくように稲見之守を見る。
 そもそも古来から現代に至るまで、妖怪やお化けの目撃証言は子供の例が少なくない。大人になると失われてしまう感受性の強さや先入観に染まらない心が、不可思議なモノを視やすいのだろう。そしてお化けが視える子供は妖怪達にとっても好ましい者のはずだ。
「なんだ……この胸の奥から湧き上がる熱い気持ちは……!」
 つまり、妖怪にはロリコンが多い――と断言してしまうと一般妖怪の皆さんから抗議を受けそうなので止めておくが。ともかく稲見之守のパフォーマンスがブッ刺さった妖怪が少なからずいたのは事実だった。

 乙女心の扉を コンコンKNOCK!
 触っていじって CLICK!CLICK!CLICK!
 クソザコ(検閲削除)じゃ物足りないよ
 今宵は召しませ御狐さん!(Yeah!)

「はぁはぁ……御狐ちゃんかわいいよ御狐ちゃん……」
「ッフー! フーワッフーワッ!」
 ますますヤバみを増していく挑発的なソングに、おめめギラギラさせる妖怪さんやら、特徴的な掛け声や合いの手を入れる妖怪さんやら。全体的にノリが古めなのはここが幽世だからだろう。どこぞの某新し親分みたいな例外を除いて最新の流行には疎いのである。
「御狐ちゃんマジ天使、じゃなかった妖狐」
 もはや『口寄せの篝火』が何かするまでもなく、稲見之守の【魅了の術】はバッチリ効きまくっていた。妖怪達をすっかり自分の傀儡にしてしまった彼女は、ちっちゃなおててをひらひら振って、飴玉にハチミツをまぶしたような声色で囁く。

「えへへっ おにいちゃんのみんなっ。いっぱいいーっぱい 食・べ・て♪」
「「たべりゅううううううううううううう!!!!!!」」

 自分の容姿を最大限に活かして甘えた仕草を見せる稲見之守に、妖怪達が野太い歓声を浴びせる。千切れんばかりに腕を振り目を血走らせる、その熱狂はある種の崇拝に近い。
 ちなみに食べるのは当然焼き鳥のことであって、いかがわしい意味は一切ない。健全。
「焼き鳥十本! いや百本くれ!」
「ならこっちには二百本!」
「え、あ……はい……」
 推しへの愛を証明するために、争うように焼き鳥を食べまくる妖怪達。これには店主も若干困惑していたが、何であれ客が増えるのは嬉しいらしく口元がちょっと綻んでいる。
 かくして稲見之守は焼き鳥屋台の異変解決に一役買っただけでなく、新たな信者の獲得にも成功したのだった――魅了の術が解けても、性癖の歪んだ妖怪が一定数いそうだが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レア・リリシエル
一章と同じ感じでマイペースに焼き鳥を食べます。そして途中から自分のポシェットに入っている蜂蜜(故郷の森から出てきた時に手に入れた物)を掛けて食べます。その蜂蜜掛けの焼き鳥を猟兵の皆さんに配ろうとします。


雛菊・璃奈
引き続き、ラン達、メイド6人と仔竜達、演劇少女の蝶子さんや失敗作さん等を連れて参加…。

もも、鳥皮、せせり、ぼんじり、手羽先、ハツ、軟骨、砂肝、ねぎま、えんがわ…。
焼き鳥の種類もいっぱいだね…。

ラン達
「アレンジ!」
「ちょい足し!」
「食べ方工夫!」

ミア達
「タレに卵をつけたり、スパイスつけたりするだけで味の変化が出ます」
「メイドは考えます。白米は至高だと」
「白米に乗せて焼き鳥丼や親子丼にするのも美味しいです」

メイド6人で親分さん達含め、みんなで飽きが来ずにたくさん食べれる様に出された焼き鳥を更に一工夫したりとサポートを実施…。

更に口がさっぱりする烏龍茶等のお茶も完備…。

そのままも勿論美味しい…もぐ…



「もも、鳥皮、せせり、ぼんじり、手羽先、ハツ、軟骨、砂肝、ねぎま、えんがわ……。焼き鳥の種類もいっぱいだね……」
 お月見から引き続き、ラン達メイド6人と3匹の仔竜達、演劇少女の蝶子や失敗作のドール等を連れて屋台を訪れた璃奈は、ずらりと並ぶ焼き鳥の種類の多さに感心する。同じものばかり大量にあっても飽きてしまうが、これなら食べ比べる楽しみもありそうだ。
「みんなで飽きが来ずにたくさん食べれる様にしたいね……」
「「まかせて!」」
 そう考える璃奈の気持ちを汲んで、立ち上がったのはメイド達。主人やお客の喜びの為に奉仕するのはメイドの本分とばかりに、皆が食事を楽しめるようサポートを実施する。

「アレンジ!」
「ちょい足し!」
「食べ方工夫!」

 出された焼き鳥を更に一工夫加えたり、アレンジのレシピを考えたりと励むメイド達。
 ラン、リン、レンの三名は食が進まなくなってきた妖怪達の元に向かっては、元気よくアレンジを披露したり、一緒になって焼き鳥を食べたりしている。
「さっきのお月見料理も美味しかったですが、こちらも美味しいです」
 そんなメイド達の工夫ぶりを見つつ、ゆったりと焼き鳥を食べるのはレア。お月見の時から相変わらずマイペースな様子で、本体である黒薔薇を模した杖を傍に置き、ねぎまにつくねにささみ等、色んなメニューを食べ比べるように口に運ぶ。

「タレに卵をつけたり、スパイスつけたりするだけで味の変化が出ます」
「メイドは考えます。白米は至高だと」
「白米に乗せて焼き鳥丼や親子丼にするのも美味しいです」

 その一方でミア、シア、ニアの三名は、前者三名のメイド達より理知的な口調で新たな食べ方を提案する。単品で考えるのではなくトッピングやご飯等の合わせ方にも工夫を。ねぎまの卵かけご飯や、ネギを多めに乗せてみたりと、様々なレシピが続々出来上がる。
「うみゃいっ! いやあ、ご飯が進んで止まりませんにゃあ!」
 これには山本親分もいたく気に入った様子で、マイ箸を取り出してもしゃもしゃと丼をかき込んでいる。彼女が率いてきた妖怪達も、お月見中に食べすぎてしまったと言う者が少なくなかったのだが、メイド達のサポートのお陰でまた食が進んでいるようだ。

「たしかに美味しいです。でも、もうすこし」
 屋台の賑わいをよそに、レアはもくもくと焼き鳥やメイド達のアレンジレシピを味わっていたが、ふと物足りなさそうに手を止める。まだお腹一杯になったわけではなく、口に合わなかったのでもなさそうだが、もうひと工夫が欲しいようだ。
「そうだ……これがありました」
 彼女がおもむろに【備えありの隠しポシェット】から取り出したのは蜂蜜の瓶。故郷の森から出てきた時に手に入れた物で、甘いものが大好きな彼女には手放せない必携品だ。

「これをこうして……」
 レアはその蜂蜜をタレのように焼き鳥に掛けて食べる。一見すると奇妙な味付けだが、とんでもない甘党の彼女にはピッタリだったようで、よく見ると口元がほころんでいる。
「良かったら皆さんもどうぞ」
「え……美味しいのかな……?」
 彼女はその蜂蜜掛けの焼き鳥を、屋台にいる他のお客や猟兵にも配ろうとする。同じく甘いものが好きな璃奈はそれを受け取ったものの、流石にこの組み合わせには首を傾げ、まずは味を見るように慎重に一口――。
「あ、思ったよりいけるかも……」
 元からかかっていた焼き鳥のタレに蜂蜜の甘さとコクが加わることで、甘辛くいい塩梅に仕上がっている。実際にタレの隠し味として蜂蜜を使う焼き鳥屋はあるらしく、意外と相性は良いのかもしれない。

「これならもっと美味しくできそうですね」
「改良!」「工夫!」「新メニュー!」
 メイド達もレアの蜂蜜掛けというアイデアに刺激を受けたようで、楽しそうに新レシピの開発に勤しむ。メニューや食べ方のレパートリーが増えれば増えるほど、飽きも来なくなって全体的な食事量も増える。店主の「もてなし衝動」を鎮めるには良い傾向だ。
「そのままも勿論美味しい……もぐ……」
「豪華な食べ放題ね」「おいしい~」「きゅ~♪」
 そんな彩り豊かになっていくテーブルを眺めながら、璃奈は普通の焼き鳥をもぐもぐ。更に口がさっぱりする烏龍茶等のお茶も完備されており、食べすぎでもたれる事もない。蝶子や失敗作や仔竜達も楽しそうに舌鼓を打ち、大盛りの山は徐々に小さくなっていく。

「よかった……です……」
 皆が喜んで自分の焼き鳥を食べているのを見て、屋台の店主は嬉しそうに目を細める。
 それと共に足元にある『口寄せの篝火』の本体はぶるぶると震えながら縮んでいき――ソレから発せられる邪悪な妖気が弱まりつつあるのを、猟兵達は感じ取っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

来たか…酒肴が
世界が焼き鳥で埋まる前に、食べきらなくてはな

UCを発動
山盛りになった焼き鳥を食べつつ、早業でポーチへ密かに保管する
正面から行けば腹が破裂しかねん
しかし、どれも絶品だな

ねぎま、軟骨、セセリにハツ…タレも塩も絶品だ、酒にも合うしな
特に、この鶏冠は素晴らしい

ともすれば下手物に見られがちだが、かつてはフランス王妃も愛した由緒ある食材の一つだ…まさか此処で食せるとは
塩とレモンで頂こう
…焼き立てはやはり最高だ
クニっとした面白い触感に、あっさりとした味わいが塩レモンによく合う
そして口内の脂を日本酒で洗い流せば…フフ、幾らでも入りそうだ
ポーチにも保存しつつ、おかわりをしていこうか



「来たか……酒肴が」
 山ほどの焼き鳥を乗せてやって来た妖怪屋台を見て、キリカはふっと笑みを浮かべた。
 この時のためにわざわざお月見の間は食事を控えていたのだ。腹具合にはまだいい感じに余裕があり、迎撃準備は万全と言ったところ。
「世界が焼き鳥で埋まる前に、食べきらなくてはな」
 大いに食べて飲んで楽しんで、それで世界を危機から救えるなら願ってもないことだ。
 暖簾をくぐった女傭兵を、年若い少女の姿をした妖怪――骸魂『口寄せの篝火』に取り憑かれた屋台の店主が出迎える。

「いらっしゃいませ……どれにします?」
 暴走する「もてなし衝動」に衝き動かされるままに、店主は大量の焼き鳥を振る舞う。
 キリカは山盛りになったそれを食べつつ、その一部を相手に気付かれないほどの早業でボリードポーチの中に放り込む。
(正面から行けば腹が破裂しかねん)
 【シャンブル・ミニヨン】を発動させたポーチの中は亜空間の保管庫に繋がっており、大量の物資を保管可能になっている。腹は空かせておいたとはいえ一度にこれだけの量を食べきるのは難しい、だから密かに取っておいて後から食べようという作戦だ。

「しかし、どれも絶品だな」
 ポーチのことが店主にバレないよう気を遣いつつ、キリカはお世辞抜きで称賛を送る。
 異常な量をさておけば、ここの焼き鳥は種類が豊富で味もよく、付け合わせのメニューや酒類も揃っている。オブリビオン化しても店主の腕前ともてなし力は健在なようだ。
「ねぎま、軟骨、セセリにハツ……タレも塩も絶品だ、酒にも合うしな。特に、この鶏冠は素晴らしい」
 キリカが特に気に入ったのは、ニワトリの部位の中でも特徴的な、あのトサカだった。
 一般にはあまり食べるイメージがないかもしれないが、実はニワトリは殆ど全ての部位を余すことなく食べられる家禽で、この鶏冠もイタリア、スペイン、フランス、中国など様々な国で食材に使われている。

「ともすれば下手物に見られがちだが、かつてはフランス王妃も愛した由緒ある食材の一つだ……まさか此処で食せるとは」
「喜んで貰えて……嬉しいです。どんどん召し上がれ……」
 感嘆するキリカに店主は微笑みを返し、新しい鶏冠を次々と焼きあげる。本来なら一羽から取れる量の少ない希少部位だが、一体これだけの量をどうやって調達したのだろう。幽世らしい独自の仕入れルートがあるのかもしれないが、今は気にする必要はないか。
「塩とレモンで頂こう……焼き立てはやはり最高だ」
 クニっとした面白い触感に、あっさりとした味わいが塩レモンによく合う。肉とも内蔵とも異なる独特のそれは、一度口にあえばやみつきになる魅力を秘めている。それを値段も量も気にせず食べ放題なのは、間違いなくここでしかできない贅沢だろう。

「そして口内の脂を日本酒で洗い流せば……フフ、幾らでも入りそうだ」
 お猪口をきゅっと傾けて、満足そうに笑みを深めるキリカ。まだまだ腹具合には余裕があり、気持ちのいいほろ酔い加減がさらに食を進ませる。また味わいたいがために一部はポーチにも保存しつつ、皿が空になればすぐにおかわりを要求する。
「ご店主、鶏冠をもう一串」
「はい……ただいま……」
 良い食べっぷりを見せてくれるお客には作るほうも好印象を持つらしく、屋台の店主は喜びを雰囲気に醸し出しながら焼き鳥を焼き続ける。彼女の「もてなし衝動」が鎮まり、屋台が平常の営業に戻るのも、もう間もなくのことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
「これから執筆です」と作家先生の霊は帰ったので、素で頑張ります💦

焼き鳥を喜んで食べそうな肉食系(狼とか狐とか蛇とか龍とか)の眷属神さん達を召喚。
普段の労いも籠めて食べて貰う。

視線を感じて振り向けばカビパンさんと目が合う。
(何で見ちゃったの私のバカバカ!)と後悔するも、放っておけず店主渾身のカレーうどんを食する事に。

焼き鳥屋が盛り上がり、眷属神達による神社建築が進む横で食べ進め、骸魂消去を祝う皆の歓声が響く頃に食べ終わる。
和やかな雰囲気を慈愛溢れる表情で眺めた後、店主に。

「カレーうどん、とても不味かったです💢」
いい笑顔でサムズアップする店主とカレー屋を真冬の様に冷たい風が吹き抜けていった。




カビパン・カピパン
満月のすすき野にやって来たのは一軒の屋台。だが、その雪女の手には不気味な料理。アレは『カレーうどん』邪悪な食べ物だ。
「不味いですよ~カレーうどん~たくさん食べて下さい」

雪女は音痴歌で辺りにいる者達に囁きかけ、カレーうどんを食べるよう誘惑する。その言霊や彼女の歌には何の魅力もないようで、聞いていると別のモノ――だんだん焼き鳥を食べたくて仕方なくなってくる。
そうやって客を散し、生死に関わらんばかりのカレーうどんを食べさせ、永遠に嫌がらせし続けるのが今の彼女の望みなのだ。

「無料ですよ…」
店主はガン無視されていた。閑古鳥。

天と地の差で対照的に焼き鳥屋は大繁盛しており、雪女はチラチラと詩乃を見ていた。



「ここからは素で頑張ります」
 作家先生の霊が「これから執筆です」と帰っていった後、すすき野に残った詩乃は自力で妖怪屋台の対処を求められることになった。不安なのか汗を飛ばしつつも、山のように積まれた焼き鳥をどうやって食べきるかの方法については、すでに考えがあった。
「アシカビヒメの名の元に、此処に集いて我が命を受けよ」
 自然神である彼女の【神使集結】の命に応じて、どこからともなく獣の姿をした眷属神が次々と現れる。狼に狐、蛇に龍――いずれも焼き鳥を喜んで食べそうだからという理由で選ばれた肉食系のメンツである。

「今日は好きなだけ食べていいですよ」
 普段の労いも籠めて詩乃がそう告げると、眷属神達は喜んで焼き鳥の山に飛びついた。
 主神のためにいつも頑張っている彼らとて、たまには羽目を外したい時もあるだろう。前足や尻尾を器用に使って串を掴み、もぐもぐむしゃむしゃと焼きたてにかぶりつく。
「狼さんや狐さんは……ネギ、だめでしたね……ねぎま、外しておきます……」
 店主である妖怪の少女は、彼らの食べっぷりを快く見守りながら焼き鳥を焼き続ける。お客に合わせて柔軟にメニューを変える気配りともてなし力は、生来のものなのだろう。これまで沢山焼き鳥を食べてもらったお陰で、衝動の暴走もだいぶ鎮まっているようだ。

(この調子ならじきに問題も解決しそうですね)
 そう思いながら様子を見守っていた詩乃だが、ふと屋台の外から誰かの視線を感じる。振り向けばそこには見覚えのないもう一軒の屋台と、見覚えのある雪女カビパンがいた。
「悩み聞くよ、カレーあるよ」
 雪女の手には不気味な料理。アレは『カレーうどん』邪悪な食べ物だ。満月のすすき野にやって来た「悩み聞くカレー屋」出張版が、今宵もお客(犠牲者)を求めて動きだす。

「不味いですよ~カレーうどん~たくさん食べて下さい」
 カビパンは持ち前の音痴な歌で辺りにいる者達に囁きかけ、カレーうどんを食べるよう誘惑する。さっき下手くそだと指摘されたばかりなのに、へこたれないのは彼女らしい。だがスパルタ教育で多少マシになったものの、その歌や言霊には何の魅力もないようだ。
「カレーうどん? そんなのよりあっちの焼き鳥のほうが美味そう」
 逆に彼女の歌を聞いているとだんだん別のモノ――焼き鳥を食べたくて仕方なくなってくる。焼き鳥屋台に客が集まる一方で、カレーうどん屋台の周りからは人が消えていく。
 そうやって客を散し、生死に関わらんばかりのカレーうどんを食べさせ、永遠に嫌がらせし続けるのが今の彼女の望みなのだ。

「無料ですよ……」
 気が付けばカビパンはすすき野にいた全ての妖怪達からガン無視されていた。閑古鳥。
 天と地の差で対照的に焼き鳥屋は大繁盛しており、せめて誰か一人くらい来てくれないものかと、彼女は知り合いの詩乃にチラチラと見る。視線に気づいた向こうと目が合ったのは、こうした経緯があってのことだった。
(何で見ちゃったの私のバカバカ!)
 と後悔するも、お人好しなところのある詩乃は知人の苦境(八割方自業自得なのだが)を放っておけず、眷属神達を焼き鳥屋に残してカレー屋に移動する。口元では微笑みつつ目が若干死んでいる彼女を、カレー屋の店主が満面の笑顔で出迎えた。

「みなさん……ありがとうございます……私の焼き鳥、たくさん食べてくれて……」
 一方の焼き鳥屋の盛況ぶりは衰えることなく、詰めかけた猟兵と妖怪達からは引っ切り無しに注文が飛び交い、夜を通しての盛り上がりを見せる。たらふく焼き鳥を食べて気分の良くなってきた眷属神達などは、屋台の隣にアシカビヒメ神社を建築し始めるほどだ。
「嬉しいです……すごく……しあわせです……」
 店主の少女は心から満足した笑顔を浮かべ、周りから『口寄せの篝火』が消えていく。
 皆の頑張りが「もてなし衝動」の暴走を鎮めるのと同時に、骸魂も消え去ったようだ。カタストロフの危機が去ったことを祝う皆の歓声が、すすき野中に響き渡った。

「無事に世界は救われましたね……」
 そんな和やかな雰囲気に満ちた焼き鳥の屋台を、詩乃は慈愛溢れる表情で眺めていた。
 その手元には空っぽになったどんぶり。店主渾身のカレーうどんを気力で食し、何度かの「リバースの衝動」を抑え込み、そして奇跡的に食べ終えた彼女は、店主に。
「カレーうどん、とても不味かったです💢」
 その顔は笑っていたけど笑っていなかった。後ろにゴゴゴって感じのオーラが出てる。
 怒れる女神にいい笑顔でサムズアップする店主とカレー屋を、真冬の様に冷たい風が吹き抜けていった。



 ――かくして幽世を襲った二つのカタストロフの危機は去り、世界は平穏を取り戻す。
 これからもこの世界では様々な異変が起こり、そのたびに滅びの危機に瀕するだろう。だが猟兵と妖怪の弛まぬ尽力さえあれば、それが決定的な破滅に繋がることは無い。
 東方親分・山本五郎左衛門と行く世直し道中――今宵はこれにて一件落着である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月20日


挿絵イラスト