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知の底に潜むもの、知を求め狂うもの

#ダークセイヴァー #第五の貴族 #異端の神々

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「ダークセイヴァーにて事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「異端の神に憑依された『狂えるオブリビオン』の一体が、『第五の貴族』が治める地底都市に侵入しました」
 吸血鬼が支配する闇の世界ダークセイヴァー。此の地には大きな脅威が二つ存在する。
 ひとつはオブリビオンに力を授ける「紋章」を作り出し、地の底から世界を支配する『第五の貴族』。もうひとつが荒野等の未開の辺境にうごめく超存在『異端の神々』だ。

「かつてヴァンパイア達は軍勢を率いて神々が支配する辺境の制圧に乗り出しましたが、その尽くが失敗に終わりました。異端の神々はたとえ殺されても、自身を殺したオブリビオンに憑依し、その肉体を奪い取る力を有していたためです」
 異端の神に憑依された彼らは「狂えるオブリビオン」と呼ばれ、一切の理性を持たず、誰にも制御する事のできない災厄そのものだ。そんな彼らのうちの一体が何らかの手段で『第五の貴族』の存在に気づき、その肉体を奪おうとしているとリミティアは予知した。
「強大な第五の貴族が、もし狂えるオブリビオンと化してしまえば、まともな手段で太刀打ちする事はもはや不可能です。これまでに遭遇した中でも破格の脅威となるでしょう」
 狂える異端の神に憑依された第五の貴族が何をしでかすかは未知数だが、生きとし生けるもの全てに災いしかもたらさぬことは間違いない。何とししても阻止する必要がある。

「今回、異端の神に狙われた第五の貴族の名は『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公。読書を趣味とする吸血鬼で、その性格は自分の脚で立って歩くことすら億劫がるほどの、出不精で面倒臭がりだと言われます」
 彼女は己の趣味を充足させるため、恐るべき力を秘めた魔導書を大量に所蔵している。性格的に率先して人々を苦しめるタイプではないが、人間の命など一顧だにしない無慈悲な貴族の一人に違いはなく、魔導書と「紋章」の力を使いこなす強大な魔術師でもある。
「アンフェールは狂えるオブリビオンの侵入を察知しており、自身が治める地底都市までの道程にある防衛設備『死の罠の迷宮』を作動させ、敵を罠で仕留めようとしています」
 これはアンフェールの怠惰な性格もあるが、直接出向いて戦えば、たとえ勝てたとしても異端の神に憑依されてしまうため、こうした間接的な手段に訴えざるをえないようだ。

「しかしリムのグリモアは、狂えるオブリビオンが迷宮を踏破し、アンフェールと交戦。最終的に殺害されるものの、逆に憑依して肉体を奪い取る光景を予知しました」
 迷宮に仕掛けられた罠だけでは、異端の神に憑依された「狂える第五の貴族」の誕生という結末を覆すことはできないらしい。未来を変えるためには猟兵の介入が必要となる。
「無論ですが人々を苦しめる吸血鬼を守る道理もありません。狂えるオブリビオンよりも先に迷宮を攻略し、異端の神に憑依される前に第五の貴族を始末すればいいのです」
 こと迷宮の探索や攻略という分野においては、神々より猟兵のほうが得意分野だろう。狂えるオブリビオンが罠で足止めされている間に、迷宮最深部にある第五の貴族の屋敷に辿り着き、アンフェール女公を討つのだ。

「アンフェールの迷宮は本と本棚で構成された図書館のような見た目をしており、様々な魔術的な罠が仕掛けられています」
 踏むと作動する魔法陣の罠や、本の中から怪物が飛び出してくる仕掛け、重たい本棚が突然倒れ込んでくるなど、どれも「死の罠の迷宮」の名に相応しい致死的なものが多い。だが強敵との戦いが控えているのを考えれば、少ない消耗で迅速に攻略したいところだ。
「無事に死の罠の迷宮を踏破できれば、最深部にいるアンフェールとの戦闘になります。第五の貴族である彼女は『全知の紋章』という独自の紋章で自らを強化しています」
 この紋章はアンフェールが読書を通じて得た膨大な知識を強化するもので、これにより彼女は自身に対するあらゆる敵対行動を「予め知っていたように」回避する。剣も魔法もユーベルコードも、全知の力の前ではあらゆる攻撃が無効となるのだ。

「ただし、この紋章とアンフェールの知識はあくまで『この世界』に限定されています。つまり彼女が知らない『異世界の知識や技術』を絡めた行動には対処できません」
 この点、様々な世界を渡る猟兵達は非常に有利と言えるだろう。自分が知らない知識に触れたアンフェールは激しく動揺する。強大なる第五の貴族の唯一にして最大の弱点だ。
「紋章の恩恵がなくとも彼女が強大な魔術師であることは変わりませんが、逆に言うなら『ただ強い』だけの出不精な吸血鬼、今の皆様の実力なら勝てない敵ではないはずです」
 これまでに猟兵達が挙げてきた戦果を知るゆえに、リミティアははっきりと明言する。
 闇の世界を支配する第五の貴族でさえ、幾多の経験を重ねてきた猟兵にとっては絶対的な脅威では無いのだ。

「ですがアンフェールの討伐に成功してもまだ安心はできません。今回の事件の元凶といえる狂えるオブリビオン――『世界の真実を知るもの』カターニアが残っています」
 この吸血鬼は異端の神に憑依される以前は、アンフェールにも負けず劣らずの本好きとして知られていた。この世界では貴重な本を、特に世界の歴史に関する書物を片っ端から集めてはコレクションするのが趣味で、人間は読書のおやつ程度にしか思っていない。
「狂えるオブリビオンと化した現在、彼女の理性は失われ、説得の余地もありませんが、その旺盛な知識欲は衝動として残っているのでしょう。アンフェールの肉体を狙ったのもその辺りが関係していると思われます」
 ここまでの作戦が順調にいけば、カターニアは猟兵達から遅れて迷宮を踏破してくる。非常に強大なオブリビオンだが、死の罠に満ちた迷宮を強引に突破してきたため、身体のどこかに何らかの小さな「傷」を負っている。それが彼女を打倒するカギになるだろう。

「以上が今回の依頼になります。死の罠の迷宮を踏破し、第五の貴族を討ち、遅れてきた異端の神も倒す。過酷な作戦になりますが、皆様ならやり遂げられると信じています」
 危険に満ちた迷宮を抜けた先での強敵との連戦。一瞬たりとて気は抜けないが、最凶の敵の誕生を阻止するために成し遂げなくてはならない。リミティアは期待と信頼を込めた眼差しで猟兵達を見つめながらグリモアを手に浮かべ、死の罠の迷宮に通じる道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはダークセイヴァーにて、地底都市に侵入した異端の神の野望を挫き、「狂える第五の貴族」の誕生を阻止する依頼です。

 1章では第五の貴族が起動させた「死の罠の迷宮」を攻略します。
 本と本棚がずらりと並ぶ巨大な図書館めいた迷路には、数々の危険な罠が仕掛けられています。内容の一例についてはオープニングをご覧ください。
 この迷宮を抜けた先に第五の貴族が治める地底都市があるので、同じく第五の貴族を狙う「狂えるオブリビオン」よりも先に踏破してください。

 2章は第五の貴族『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公との戦闘です。
 読書以外に興味のない怠惰な吸血鬼ですが、読書を邪魔する者には容赦しません。
 紋章の創造者であるアンフェールは「全知の紋章」という独自の紋章を自らに寄生させ、強大な力を得ています。その内容と弱点はオープニングの通りですので、うまく弱点を突くとプレイングボーナスが入ります。
 ちなみにオープニング上にいるイラストの女性は彼女です。

 3章は異端の神に憑依された『世界の真実を知るもの』カターニアとの戦闘です。
 元はアンフェールと同じく本好きの吸血鬼で、その知識欲は今も旺盛なままです。
 完全に狂えるオブリビオンと化しており、理性はなく説得も通じません。強敵ですが迷宮を突破する際にどこかに傷を負っており、そこを推理して攻めるとプレイングボーナスが入ります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『死の罠の迷宮』

POW   :    防御力を活かし、強引に罠を突破する

SPD   :    罠を解除しながら迷宮を踏破する

WIZ   :    迷宮の隠し通路や仕掛けを暴く

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…状況は同族殺しの時と似ているけど、今度は私達が追われる立場になるのね

…まさか第五の貴族まで憑依する事ができるなんて思いもしなかったわ

侮っていた訳ではないけど、異端の神々の力がこれ程とは…

UCを発動し対吸血鬼用戦闘知識から"吸血鬼が仕掛けた罠"を暗視して見切り、
"光の精霊結晶"に武器改造を施した"吸血鬼には見えない光の粉"で、
後続への警告を残しつつ罠を避け慎重に先に進む

第六感が危険を感じたらその場から離脱するか、
"写し身の呪詛"の残像を囮に攻撃を受け流し大鎌のカウンターで迎撃する

…例えそれが何であれ、吸血鬼の造った物ならば私の眼から逃れる事はできない

…罠を警戒している猟兵ならこれで十分でしょう



「……状況は同族殺しの時と似ているけど、今度は私達が追われる立場になるのね」
 同族殺しに並んでこの世界のオブリビオン達が危険視する「異端の神々」。その暗躍を阻止するために、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は地底に築かれた迷宮――「死の罠の迷宮」に足を踏み入れた。
「……まさか第五の貴族まで憑依する事ができるなんて思いもしなかったわ」
 彼女は実際に、辺境で狂えるオブリビオンと化した異端の神々を討伐したこともある。憑依した相手の肉体を乗っ取ることのできる神々の能力も知ってはいたが、ことに強大な「第五の貴族」すら一度憑依されれば抗えないとは――流石は神、と言うべきだろうか。

「侮っていた訳ではないけど、異端の神々の力がこれ程とは……」
 危険性をこれまでより一段深く改め直した上で、リーヴァルディは急ぎ足に先に進む。
 目的は異端の神が第五の貴族の元に到達する前に、此方の手で第五の貴族を討つこと。そのためには彼奴よりも速くこの迷宮を踏破しなければならない。
「……こちらも気は抜けないわ」
 アンフェール女公が手掛けた迷宮に立ち並ぶのは無数の書架。この中に書物と共に納められたのは死の罠。侵入者を追い返すでも捕えるでもなく、徹底して排除するための悪意がこの場所には満ちている。一歩油断すれば自分達が神よりも先に命を落としかねない。

「……ここにも仕掛けてあるわね」
 だが。闇を見通すリーヴァルディの眼は、迷宮に仕掛けられた罠を一つも見逃さない。
 それがどこにあり、どんな形をしていても。まるで未来を覗いているかのような精度で罠を見切り、慎重にそれを避ける。
「……例えそれが何であれ、吸血鬼の造った物ならば私の眼から逃れる事はできない」
 彼女が修めた【吸血鬼狩りの業】と膨大な対吸血鬼用戦闘知識は"吸血鬼が仕掛けた罠"を回避するのにも役立つ。一つ罠を見つけるたびに、彼女は光の精霊結晶に改造を施した"吸血鬼には見えない光の粉"を撒き、後続に向けた警告とする。

「……罠を警戒している猟兵ならこれで十分でしょう」
 地下迷宮の中で不自然に光る粉を見つければ、敏い猟兵はその意味を理解するはずだ。
 罠の在り処を示すメッセージを残しながら、リーヴァルディは慎重に先に進み続ける。その第六感は研ぎ澄まされ、あらゆる危険に対する警戒網は一瞬たりとて緩まない。
「……そこね」
『グギャァッ?!』
 不意に、本棚に収められた書物の中から怪物が飛び出し、背後から襲い掛かってくる。
 だが怪物が食らいついたのは"写し身の呪詛"で創られた残像。本物のリーヴァルディはそれを囮にして攻撃を受け流し、怪物のさらに背後からカウンターの一撃を見舞った。

「……まだまだ先は長そうね」
 大鎌"過去を刻むもの"に切り裂かれた怪物が消えていくのを見届け、リーヴァルディは書架迷宮の先を見据える。地底の深淵へと続く本棚の道は、今だに終わりが見えない。
 だが、攻略法自体はすでに掴んでいる。あとは敵よりも先に踏破するだけだと、彼女は変わらず慎重に、かつ迅速に死の罠の迷宮を突き進むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

第五の貴族に異端の神…バラエティが豊かな事だ
お互いが潰し合えば少しは楽になるんだが…フン、そう簡単にはいかないか

UCを発動
召喚したドローン達を迷宮内に放ち、マッキナ・シトロンを通じて情報収集を行い瞬間思考力で分析
罠と危険の少ない適切なルートを割り出そう

死の罠の迷宮の名の通り、どれもこれも恐ろしい罠ばかりだが…
ふむ、これは使えるかもな

目的地までの道が割り出されたら残ったドローン達と進入
途中設置されてる罠は、ドローン達との連携攻撃で吹き飛ばすが、なるべく最小限で済ませる
未発動の罠を多く残せば、後から来るカターニアへのダメージも増えるだろう
せっかくの機会だ、最大限に利用させてもらおう



「第五の貴族に異端の神……バラエティが豊かな事だ」
 この世界に蔓延る脅威の名を数えて、皮肉げに肩をすくめるキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。長い反抗の成果が実りはじめた今でもまだ、闇を支配する者達の脅威は多く、そして強大である。
「お互いが潰し合えば少しは楽になるんだが……フン、そう簡単にはいかないか」
 ならば各個撃破するまで。「狂える第五の貴族」という災厄の誕生を阻止するために、彼女は召喚した106機のドローン部隊――【シアン・ド・シャッス】と共に迷宮に挑む。

「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、探索を開始せよ」
 キリカの命令により放たれたドローン達は、複雑に入り組んだ本棚の迷宮を飛び回り、行き止まりでない道や仕掛けられた罠を探り出す。見つかるのは致死性の魔術トラップや本の中に潜む怪物など、迂闊に嵌まれば猟兵でも命が危ういものが大半だ。
「死の罠の迷宮の名の通り、どれもこれも恐ろしい罠ばかりだが……ふむ、これは使えるかもな」
 通信機能を備えたマシンブレスベルト「マッキナ・シトロン」を通じて、ドローン達の調査結果を分析するキリカは、この迷宮を創り上げた第五の貴族の殺意を強く感じつつ、逆にそれを利用できないかと考えた。

「まずは、私達がここを突破しなければな」
 目的地までの罠と危険の少ない適切なルートを割り出すと、キリカは残ったドローン達を連れて自らも迷宮に進入する。一歩間違えば命を奪われる死の罠も、入念な情報収集と対策があれば過剰に恐れる必要はない。
「この辺りだったな……行け『猟犬』よ」
 道中に設置された罠は、作動する前に武装したドローン達との連携攻撃で吹き飛ばす。
 ただし、その数はなるべく最小限に済ませる。避けられるものはそのままにしておき、罠の除去よりもルートの攻略を優先する。そこには敵に先んじて迷宮を攻略したい意図に加えて、迷宮の罠を敵の足止めに利用したい目的もあった。

(未発動の罠を多く残せば、後から来るカターニアへのダメージも増えるだろう)
 異端の神が憑依した吸血鬼『世界の真実を知るもの』カターニア。狂えるオブリビオンと化した彼女も猟兵達とほぼ同時期にこの迷宮に入ったはずだ。だが正気を失った彼女は猟兵のように罠を避けて進むような理性的な判断ができず、力ずくで攻略するしかない。
 ゆえに迷宮に仕掛けられた死の罠が多いほど、敵が受ける「傷」も増えるという訳だ。耳を澄ませば彼方から聞こえてくる破壊の音、あれは恐らく敵が罠に掛かった証だろう。

「せっかくの機会だ、最大限に利用させてもらおう」
 敵の罠で敵の力を削げるならしめたもの。キリカはにやりと笑いながら、数々の死の罠をあえて放置する。自分や味方が引っかかる危険のあるものはドローンや銃撃で処理するが――大部分はそのままに、「死の罠の迷宮」の呼び名にふさわしい状態を保っておく。
「せいぜい異端の神にも苦労してもらうとしよう」
 自分達にばかり死の罠を攻略させて、後から楽々と迷宮を突破などさせるわけがない。
 迷宮の罠は全ての侵入者に牙をむく。その脅威が異端の神をも脅かすことを期待して、キリカは迷宮の深部を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
そもそもヴァンパイアの連中が異端の神々に手を出さなけりゃこんな事態にはならなかったのに・・・
(「文句を言ってもしょうがないわ。共倒れが狙えない以上、できるだけ罠を壊さずに進むわよ」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!
乗っ取られたヴァンパイアに少しでも多くの傷を負わせるためですね!
(「その通りよ。さてどうするか」)
UC【正道虫】で召喚した衛生兵さんに俺が触れ
病院に転移された状態で衛生兵さんに迷宮を進んでもらえれば
踏むと作動する罠や倒れる本棚は回避できるはず!
飛び出る怪物は俺が飛び出して迎撃すればOK!
『衝撃波』を推進力にした『ダッシュ』で一気に駆け抜けましょう!



「そもそもヴァンパイアの連中が異端の神々に手を出さなけりゃこんな事態にはならなかったのに……」
 地底に向かって続く書架の迷宮を見渡しながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は文句を口にする。辺境制圧などという野望のせいで、神々は狂えるオブリビオンとなり暴走を始めた――今回の事件は言ってしまえば吸血鬼共の自業自得。自分達はその尻拭いをさせられているようなものだ。
(文句を言ってもしょうがないわ)
 不満げな彼を宥めるのは教導虫「スクイリア」。寄生した頭の中から話しかける彼女の言葉は、理知的に今やるべき事を教え諭す。異端の神が「第五の貴族」という新たな肉体を手に入れてしまう前に、いち早くここを突破して敵の元に向かうのだ。

(共倒れが狙えない以上、できるだけ罠を壊さずに進むわよ)
「はい! せんせー! 乗っ取られたヴァンパイアに少しでも多くの傷を負わせるためですね!」
(その通りよ。さてどうするか)
 この「死の罠の迷宮」に仕掛けられたトラップは猟兵にとっても脅威だが、本来は侵入した異端の神を迎撃するために起動されたものだ。敵同士で争い傷つけあってくれるならありがたい――ではなるべく敵を罠に嵌めつつ自分が罠に掛からない為にはどうするか。
「衛生兵さん! 急患です! お願いします!」
 解答として兵庫が召喚したのは、白い体に赤い斑点を持つテントウムシ――【正道虫】の群れだった。そのうちの一体に指先で触れると、彼の姿は斑点の中に吸い込まれるように消え、じめじめして薄暗い地下迷宮から、広くて清潔感のある病院へと移動していた。

「ここに転移された状態で衛生兵さんに迷宮を進んでもらえれば、踏むと作動する罠や倒れる本棚は回避できるはず!」
(なるほどね、悪くないわ)
 ユーベルコードにより転移したこの病院内は医療機器や医療従事者が完備されており、中にいる間の安全は保証されている。兵庫を収容した正道虫の群れは翅を震わせて迷宮に飛んでいき、その小ささと飛行能力を活かして罠をすり抜けていく。先行した猟兵の誰かが残していった、罠の位置を示すマーキングも攻略の役に立った。
(でも、衛生兵だけでは対処できない罠もあるでしょう? それはどうするの?)
 スクイリアの危惧する通り、迷宮のトラップには設置式のもの以外に、能動的に侵入者を襲うものもある。言っている傍から近くの書架に収められていた本がカタカタと震え、中から異形の怪物が正道虫に飛びかかってきた。

「飛び出る怪物は俺が飛び出して迎撃すればOK!」
 すかさず兵庫は「誘導灯型合金破砕警棒」を構えて病院から迷宮へと再転移し、襲ってきた敵をしたたかに殴りつける。まさか虫の中から人が出てくるとは思わなかったろう、怪物は顔面に警棒を叩き込まれ、その衝撃で吹っ飛んだ。
『ギャンッ!!?』
 息の根は止まっておらずとも、すぐには追ってこれないだろう。そして止めを刺す必要もないと兵庫は判断する。先も言った通り彼らの方針は「敵に多くの傷を負わせるため、できるだけ罠を壊さずに進む」というもの。この怪物も生かしておけばきっと役に立つ。

「一気に駆け抜けましょう!」
 兵庫は警棒から衝撃波を放ち、それを推進力にした猛ダッシュで危険地帯を走破する。
 もちろん正道虫の群れも連れてだ。本の怪物を撒いたあとは再び自身は病院内に戻り、探索は彼らに任せる。もしも罠でダメージを受けても治療体制はこのとおり万全だ。
(順調ね)
「はい!」
 警戒こそ緩めないものの、今のところ兵庫とスクイリアと正道虫の手に余る罠は無い。
 第五の貴族が住まう地底都市に向かう彼らの探索行は、極めて順調と言って良かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
アンフェール…引き籠ってるだけならマシな方だけど…彼女が所蔵してる魔導書は興味があるわね。
見つけ次第、回収して行こうかしら♪

【ブラッディ・フォール】で「黒竜を駆る者」の「ドラゴンテイマー」の姿(テイマーの黒衣と剣を装備し、翼が生えた姿)へ変化。

【文明侵略】で本や本棚を黒竜へ変換。
魔法陣の罠や本の怪物を生み出した黒竜に対処させ、勢力を増やしながら迷宮を進んで行くわ。
黒竜の数が増えれば増える程、人海戦術で迷宮の把握も手早く進むしね♪

後はこの迷宮に面白い本とか貴重な本(魔本やこの世界の歴史書等)があると巻き込むかしらと思ったけど…。
元々迷宮として利用される場所だし、貴重な本は最初から無さそうね。



「アンフェール……引き籠ってるだけならマシな方だけど……彼女が所蔵してる魔導書は興味があるわね」
 ぎっしりと本の詰まった書架がずらりと立ち並ぶ様を見つつ、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はそう呟いた。この迷宮を見ても分かるように、今回の「第五の貴族」は相当な本の虫らしい。その権勢に物を言わせて世界中の魔導書を集めているのなら、他では滅多に見られないような稀覯本を持っている可能性もある。
「見つけ次第、回収して行こうかしら♪」
 城の宝物庫にまた新たな財宝が増えることに期待しつつ、死の罠の迷宮に入る吸血姫。
 単なる宝探し気分で挑めば火傷では済まない場所だが、彼女には攻略の秘策があった。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 発動するのは【ブラッディ・フォール】。過去にキマイラフューチャーの戦争で倒した「ドラゴンテイマー」の力を纏うことで、フレミアの真紅のドレスは黒衣に変わり、背中には翼が生え、手元には赤く禍々しい剣が現れる。
「ここなら勢力を増やす素材には困らないわね」
 黒竜を駆る者の力を得た彼女はさらに【文明侵略(フロンティア・ライン)】を発動し、周囲の無機物を黒竜「ダイウルゴス」の群れに変換していく。本や本棚がねじれ、歪み、漆黒のドラゴンになって咆哮を上げるさまは、迷宮が彼女の力に侵食されていくようだ。

「露払いは任せたわよ、貴方達」
 フレミアは迷宮に仕掛けられた魔法陣の罠や本の怪物を、生み出した黒竜に対処させ、自らはその後から悠々と進む。容赦のない死の罠に掛かれば黒竜の中にも犠牲は出るが、彼女はそれ以上に新たな黒竜を【文明侵略】で創り上げ、勢力を増やしていく。
「数が増えれば増える程、人海戦術で迷宮の把握も手早く進むしね♪」
 群れなす黒竜の数はあっという間に百を超え、複雑に入り組んだ迷宮を各個に飛び回ることで正しいルートを見つけ出す。必要ならば壁を変換して新たな道を作ることもできるドラゴンテイマーの能力は、この迷宮攻略において極めて相性が良かった。

「後はこの迷宮に面白い本とか貴重な本があると巻き込むかしらと思ったけど……」
 ただひとつこの作戦の問題点として、魔本やこの世界の歴史書等、価値のある書物までダイウルゴス化してしまう懸念はあった。だが文明侵略を免れた本の一冊を開いてみて、フレミアはどうやらその心配はいらないと察する。
「元々迷宮として利用される場所だし、貴重な本は最初から無さそうね」
 少なくとも彼女の蒐集心を惹くほどの価値ある本は見当たらない。恐らくそうした貴重品は屋敷のほうに収められているのだろう。ここにあるのはアンフェール女公にとって、最悪壊されても惜しくないような読み飽きた本ばかり、ということか。

「だったら、尚更ここを速く攻略しないとね」
 所蔵する魔導書ごと、狂えるオブリビオンに第五の貴族の肉体を奪われては堪らない。
 知に狂った異端の神に先んじるべく、フレミアは黒竜を率いて探索のペースを上げる。いかなる罠も本の怪物も、地の底に向かうその歩みを止めることはできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

罠かぁ
踏むのは、UCの飛翔で気を付けるし、倒れてくる棚は私の力ならなんとか押さえられるかな
本の怪物ってのが、まあ、困り者だけど……
うん、先に広い範囲を焼却してしまおうか、光熱で焼くというよりは炭化させる感じなら、火事にもならないで済んでくれる
と、いいのだけど

他にも罠がありそうだし慎重に――と行きたいけど、後手に回ると私の場合悪手になりそうだし一気に翔んでいきたいところだね



「罠かぁ」
 侵入者の命を奪う様々な危険に満ちた「死の罠の迷宮」。そこに足を踏み入れた肆陸・ミサキ(独りの・f00415)は、ずらりと本と本棚の並ぶ異様な光景に目を細めつつも、落ち着いた様子で前に進む。
「踏むのは飛翔で気を付けるし、倒れてくる棚は私の力ならなんとか押さえられるかな」
 【白夜】を発動した今の彼女は、白い灼光を纏うドレスと日輪に身を包み、重力の軛を無視して宙を舞う。さながら小さな太陽のように地底の迷宮を照らし、隠された罠を暴き出しながら、その対処法についてひとつひとつ考えていく。

「異端の神に遅れるわけにはいかないね」
 神と吸血鬼を嫌う少女は、双方が邂逅を果たす前にここを踏破すべく、やや急ぎ足にて迷宮を進む。地面に描かれた魔法陣の罠を飛び越え、横を通りがかった本棚が突然倒れてきても、白夜の力と人外の膂力で受け止める。この程度の罠は彼女の障害にはならない。
「本の怪物ってのが、まあ、困り者だけど……」
 予知で伝えられた情報の中でミサキが懸念するのは怪物の奇襲。本の中から不意打ちを仕掛けられれば、相手の強さによっては思わぬ不覚を取りかねない。先に見つけられればいいのだが、迷宮内に無数に存在する本から怪物が出てくるものを探すのは困難だ。

「うん、先に焼却してしまおうか」
 少し考えた後にミサキは倒れてきた本棚を押しのけ、全身を覆う白夜の輝きを強める。
 太陽神の血を継ぐ彼女の異能は、体温の上昇に比例して際限無く高まり続ける。灼光が辺りを白く染め、本棚に収蔵された本をことごとく焼き尽くす。
『ギエエェェェェェッッ』
 その中に紛れて聞こえてきた悲鳴は、おそらく書に潜んでいた怪物の断末魔であろう。広い範囲を瞬時に焼き払える白夜の輝きをもってすれば、奇襲を受ける前に敵を虱潰しにすることも可能というわけだ。かなりの力技だが、吸血鬼の眷属相手に遠慮はいるまい。骨の髄まで燃え尽きろと言わんばかりに、過剰なまでの熱量で息の根を止める。

(光熱で焼くというよりは炭化させる感じなら、火事にもならないで済んでくれる、と、いいのだけど)
 唯一不安だった、迷宮内で火災が起こるかもしれない危惧。それもミサキの想定通り、燃え上がるよりも一瞬で焼き尽くすことで防止できていた。彼女が飛んでいった後には、本や本棚の形をした真っ黒な炭か真っ白な灰か、そのどちらかしか残らない。
「他にも罠がありそうだし慎重に――と行きたいけど、後手に回ると私の場合悪手になりそうだし」
 迷宮探索においても彼女は攻めの姿勢を崩さず、地の底に向かって一気に翔んでいく。
 目指すは第五の貴族アンフェールが住まう地底都市。その身に流れる血と白夜の光が、闇に潜む敵の元まで彼女を導いてくれる。

「このまますぐに攻略してみせるよ」
 死の罠の迷宮を焼却しながら、地底を翔ける白夜の少女。その進路と双眸に迷いなく。
 その手に携えた魔器「DeicidaMan」の刃は、標的の血を吸う時を今かと待っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「これもアンフェール女公の蔵書なのでしょうか。じっくり調べたい所ですが、時間を無駄にはできませんか。惜しいことです。クックック」

【行動】
wizで行動です。
私も魔術師の端くれ。魔法陣や魔術を使った罠ならばある程度は見分けることができます。とはいえこの世界特有の魔術方式などあるかもしれませんし、世界知識の技能を用いて見極めましょう。
物理的な罠に対してはホワイトカーテンの防御魔術を展開し、オーラ防御の技能も用いて対抗しましょうか。

「全てが終わったらたっぷりと調べさせていただきましょうか。全てが終わるまで蔵書が残っていれば、ですが。クックック」

【アドリブ歓迎】



「これもアンフェール女公の蔵書なのでしょうか」
 死の罠の迷宮を形作る本棚の列に、隙間なく収められた大量の書物。黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)は研究者としてその内容に興味を抱いていた。この世界を支配する第五の貴族の蔵書となれば、人の目に触れえぬ知識が記されていても不思議ではない。
「じっくり調べたい所ですが、時間を無駄にはできませんか。惜しいことです。クックック」
 前向きに考えるとすれば、真に価値のある蔵書は破損の恐れがある迷宮よりも、屋敷の中に収められているだろう。期待はそちらに託すことにして、今は迷宮攻略に集中する。

「私も魔術師の端くれ。魔法陣や魔術を使った罠ならばある程度は見分けることができます」
 アンフェールの築いた迷宮の罠が魔術に偏っていたのは、闇慈にとって運が良かった。
 どんなに殺意の高い罠でも――むしろ込められた殺意が強いほど、魔力の反応も顕著になる。魔術的に不審なものを見定め回避するだけなら、彼にはそう難しい事ではない。
(とはいえこの世界特有の魔術方式などあるかもしれませんし、慎重に見極めましょう)
 新たな魔術を追い求めて世界を渡り歩いて得た、豊富な知識は彼の武器の一つである。
 地面の魔法陣や本棚の書に紐付いた術式など、迷宮の様々な場所に仕掛けられた罠を、彼はひとつひとつ見抜き、時には興味深そうに記憶しつつ対処していく。

「こちらは本から怪物を召喚するというより、本の内容を実体化させているようですね。こちらの魔法陣は見たことのない様式です、なかなか興味深い」
 魔術の探求者にとって、ここは蔵書以外にも知識欲を刺激するものに満ち溢れていた。
 軽く調べたあとは引っかからないよう回避し、あるいは罠が発動しないように封じる。大半はそれで処理できたが、しかしこの迷宮には魔術に依らない罠も一部だが存在する。
「この調子で出口まで行けると良いのですが……おや」
 闇慈が順調に地の底へと進んでいると、ふいにギギギと音を立てて本棚が倒れてきた。ぎっしりと詰まった本も含めたその質量は、魔力と関係ない致死的な威力を秘めている。

「物理的な罠に対してはこちらで対抗しましょうか」
 闇慈はすかさず懐から白いカードを取り出し、魔術障壁「ホワイトカーテン」を起動。自らの魔力のオーラも合わせて強固な防御魔術を展開すると、本棚の倒壊を受け止めた。
 バタンと大きな音を立てて、倒れた本棚の破片や本が辺りに散らばる。だが直撃を受けたはずの闇慈は白い結界に守られており、身体には傷一つない。
「問題ありませんね」
 探求の為なら危地にも赴く彼が、物理的な脅威への対策を疎かにするはずがなかった。第五の貴族が作った死の罠といえど、不意を突かれなければ十分に防御可能なレベルだ。

「全てが終わったらたっぷりと調べさせていただきましょうか。全てが終わるまで蔵書が残っていれば、ですが。クックック」
 口元に怪しげな笑みを浮かべつつ、闇慈は防御障壁を展開したまま迷宮探索を続ける。
 自分以外にも数多くの猟兵に加えて、狂えるオブリビオンまでもがこの迷宮を攻略していることを考えれば、この後どれだけの本が原型を保てているかは確かに怪しいものだ。
 そちらは程々に期待することにして――本命となる敵の屋敷には着実に近付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
いつでもこの世界は不穏の気配が消えんな

迷宮内の構造や状況は『天光』で逐一把握
手近に味方があれば知り得た情報は伝えておく

踏破に時間を掛ける意味もない
時の原理を以て自身を無限加速
文字通り瞬きにも満たぬ間で抜けようか

避け得ぬ罠や攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
その際、手が届く範囲の罠は打撃で処理
万象一切に終わりを刻む破壊の原理を乗せ完全に潰しておく
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

こんなものは前哨戦ですら無い
油断なく迷いなく終わらせる



「いつでもこの世界は不穏の気配が消えんな」
 ひとつ脅威を刈り取ればすぐに新たな事件が起こる、今だ闇の深いダークセイヴァーでアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は溜息をつく。文句を言ったところで始まらないのは百も承知だが、解決すべき困り事が絶えないというのは厄介なものだ。
「まあいい」
 彼は冷たい声でそう言い捨てると、第五の貴族が築いた「死の罠の迷宮」に侵入する。
 どれだけの殺意がここに満ちていようと、いつものように冷静沈着に対処するだけだ。

「この辺りの構造は概ね把握した」
 迷宮内を疾駆するアルトリウスの周りを漂うのは、淡青に輝く『原理』の光。彼のみが行使できるこの異能は、時に敵を討つ力となり、時に万象を見通す瞳となる。全知の原理たる顕理輝光『天光』を以てすれば、迷宮内の状況を逐次把握するのも容易な事だった。
「踏破に時間を掛ける意味もない」
 さらに彼は時の原理たる顕理輝光『刻真』を以て、自らに流れる時を無限加速。物理的な制約や限界を無視した加速にて、文字通り瞬きにも満たぬ間で迷宮を駆け抜けていく。

「何処にあるか分かっていれば、罠も恐れる必要はない」
 天光にて全ての罠を把握しているアルトリウスは、その大半を刻真の加速で回避する。
 どうしても避け得ぬ罠や、書物の中に潜んだ怪物の攻撃に対しては『煌皇』にて対応。身に纏う十一の原理を無限に廻転させ、刃にして鎧と成す。
『ギギャッ?!』
 惑星のように巡る淡青の光輝に触れたものは、尽くが阻み、逸らし、捻じ伏せられる。
 本の怪物は断末魔の悲鳴を上げて捩じ切られ、倒れてきた本棚はバラバラに吹き飛ぶ。生半可な攻撃や敵では、原理を纏った彼に触れることすらできない。

「ついでだ、完全に潰しておく」
 さらにアルトリウスは手が届く範囲の罠は光輝で防がず、自らの打撃で直接破壊する。
 その拳に乗せるのは万象一切に終わりを刻む破壊の原理、顕理輝光『討滅』。砕かれた罠はもはや二度と作動せず、いかなる手段においても修復・復旧は不可能となる。
「これで後続も少しは楽になるだろう」
 様々な原理の連発で迷宮を攻略していくアルトリウスだが、その顔に消耗の色はない。創世の原理たる『超克』が"世界の外"より尽きぬ魔力を常時供給し続けているためだ。

「こんなものは前哨戦ですら無い。油断なく迷いなく終わらせる」
 その言葉に違わぬ迷いのない疾走で、迷宮の最深層に向かって突き進むアルトリウス。
 彼が唯一足を止めるのは、道すがら他の猟兵に出会った場合のみ。知り得た情報を味方同士で共有し、より最適な攻略経路を導き出すと、感謝を述べてすぐに攻略を再開する。
 その身に纏う淡青の光は、蛍火のような尾を引いて、迷宮の暗闇を照らすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
なんで図書館に罠仕掛ける必要があんだよ?……って思ったけど、見た目がそれっぽいってだけで、図書館じゃねーんか。
魔導書に興味は無えけど、狂えるオブリビオンと吸血鬼は放っておけねえか。

罠ばっかりの迷宮でも、安全に進める路は絶対ぇあるはず……と信じて、迷宮踏破を試みる。
《残されし十二番目の贈り物》で〈第六感〉を強化して、罠のありそうな場所や逆に安全に進めるルート、隠し通路の場所とかを探りながら進んでいく。
うっかり罠を発動させちまったら〈逃げ足〉働かせてトンズラするか、〈オーラ防御〉でダメージを防ぐか、種類次第で耐え方を変える。
可能なら、帰り道も安全に戻れるよう、何かマーキングとかしときてえな。



「なんで図書館に罠仕掛ける必要があんだよ? ……って思ったけど、見た目がそれっぽいってだけで、図書館じゃねーんか」
 ずらりと並んだ本棚の列が複雑な迷路を形作る、第五の貴族謹製の「死の罠の迷宮」を眺める鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)。その外観が図書館に似ているのは製作者の嗜好によるが、あくまで目的は本の閲覧ではなく侵入者の排除・抹殺にあるようだ。
「魔導書に興味は無えけど、狂えるオブリビオンと吸血鬼は放っておけねえか」
 一方だけでも人類にとって非常に危険な存在が、もし一つになるような事態になれば、もたらされる災厄は予想もできない。最悪を想像するだけで彼の身体には震えが走るが、事の重大性を知るその足が後ろに下がることは無かった。

「罠ばっかりの迷宮でも、安全に進める路は絶対ぇあるはず……」
 そう信じて、迷宮踏破を試みる嵐。侵入者の排除が目的とはいえ、完全に全ての路を罠で塞いでしまえば管理に支障をきたすだろう。どこかに必ず正解のルートはあるはずだ。
「占いの真似事なんてガラじゃねえけど……茨の迷宮、百歳の夢、其を切り拓く導を此処に!」
 彼は【残されし十二番目の贈り物】で持ち前の第六感を強化し、罠のありそうな場所や逆に安全に進めるルート、隠し通路の場所などを探りながら進んでいく。高名な占星術師である祖母から教わった占いの我流アレンジ、使うべきタイミングは今だろう。

「こっちの路はだめか……なら、こっちだな」
 研ぎ澄まされた感覚と占術を頼りに死の罠を回避し、迷宮の最深部に近付いていく嵐。ひとつ間違えれば生命の危険があるからこそ油断はしない。戦いを恐れる臆病な性格は、この状況においては慎重さとなり、警戒心を強めるプラスの要素となっていた。
「帰り道も安全に戻れるよう、何かマーキングとかしときてえな」
 そう考えた彼は近くに転がっていた石ころや破片等を使って、本棚に傷をつけておく。本と棚ばかりで一見どこにいるか分からなくなりそうな迷宮だが、こうして目印があればぐっと位置を把握しやすくなる。引き返さざるを得なくなった時も参考になるだろう。

「しっかし長い迷宮だな……どこまで続いてるんだ?」
 気が付けばかなりの距離を歩いたにも関わらず、迷路の終わりはまだ見えない。着実に地下深くに向かって進んでいる実感はあるのだが――慎重を重ねててきた嵐の意識にも、ほんの僅かにだが気の緩みが生じる。
「っと、しまった……!」
 その一瞬の緩みと不運が重なってしまい、気づくのに遅れた罠が彼の近くで起動する。
 ギギギと木材が軋む音にはっと振り返れば、本がぎっしりと詰まった重たそうな本棚が倒れ込んでくる。これはオーラで防御するのは得策ではないと一瞬で判断を下した彼は、全速力でその場から飛び退いた。

「危ねえ!」
 ずしんと音を立てて倒れる本棚。あと少し判断が遅れたら今頃は下敷きだっただろう。
 だがこれで危機が去ったわけではなく、今度は棚から散らばった本の中から怪物が出てきて、侵入者を抹殺せんと襲い掛かってくる。
「一度発動させちまったらこうなるのか。面倒だな……!」
 改めてこの迷宮の殺意を思い知りながらも、嵐は得意の逃げ足を働かせて猛ダッシュ。本の怪物が追いつけないほどのスピードで、あっという間にその場からトンズラする。
『ギギギ……!』
 あまりの逃げ足の速さに怪物はすぐに追跡を諦めたらしく、ひとまずの危機は去った。
 だが、ここからはより慎重に、安全第一で探索を進める必要があるだろう――彼はそう肝に命じた上で、迷宮攻略を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
強大な災厄の誕生阻止、そして第五の貴族討伐。
いずれもこの世界を取り戻す為に必要な事。
私も力をお貸しします。

罠に満ちた迷宮の突破。
UCにて眷属神達を召喚し、透明になったり虫として行動したりで詩乃の進行方向上にある罠と思しきものを調査し、情報を詩乃に連携。

詩乃はUCで得た迷宮内の情報と第六感を組み合わせて安全そうな進路を決め、空中浮遊しつつ自身への念動力行使で地面を踏まずに、ふよふよと移動(落とし穴や魔法陣対応)。

奇襲は自分に施した結界術の防御壁で防ぎ、風の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱で斬り裂いて対処。
倒れる本棚は衝撃波で吹き飛ばして対応。
念の為、常に天耀鏡を周囲に滞空させ、オーラ防御を纏います。



「強大な災厄の誕生阻止、そして第五の貴族討伐」
 どちらか片方だけでも依頼が出されるレベルの脅威がふたつ。これまでに無いタイプの困難な依頼を請けて、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は「死の罠の迷宮」に赴く。
「いずれもこの世界を取り戻す為に必要な事。私も力をお貸しします」
 夜闇に包まれたこの世界を支配から解放するためなら、自分も協力を惜しみはしない。まずは死の罠に満ちた迷宮を突破すべく、彼女は【神使召喚】にて眷属神達を召喚する。

「アシカビヒメの名によって召喚す、我が元に来りて命を受けよ」
 植物と活力を司る神である詩乃の呼びかけに応じたのは、昆虫の姿をした小さな神々。
 彼らは主神の目と耳として迷宮を先行し、進行方向上にある罠と思しきものを調査し、情報を連携する。虫サイズの小ささに加えて透明にもなれる彼らは偵察にうってつけだ。
「罠が少ないのはこちらですね」
 詩乃は神使達の協力で得た迷宮内の情報と自らの第六感を組み合わせ、安全そうな進路を決める。移動の際には念動力を自身に行使し、地面を踏まずに空中を浮遊してふよふよと進む。落とし穴や魔法陣など、足元に設置された罠に対応するための策だ。

「この辺りには本の怪物が潜んでいるようですね」
 ある程度先に進んだところで、詩乃は奇襲に備えて結界術で防御壁を張り、念のために周囲には常に「天耀鏡」を滞空させる。その直後に本の中から怪物が飛び出してきたが、神力の壁と神鏡の盾の前では歯が立たない。
『グ、グルッ?!』
「残念でしたね」
 お返しとばかりに放たれたのは風魔法。鋭く研ぎ澄まされた不可視の刃に切り裂かれ、本ごとバラバラになって倒れる。神使の先行偵察あっての事とはいえ、この程度の敵では彼女を抹殺することはできないようだ。

「次は……本棚が倒れてくる罠ですね」
 ふよふよと迷宮を進み続ける詩乃の横から、前触れもなく倒れ込んでくる大きな本棚。これも既に察知していた彼女は、身に纏う神気のオーラを衝撃波にして放ち、迎え撃つ。詰まった本ごと大質量を押し返すほどの圧力が、本棚を逆方向に吹き飛ばした。
「もし潰されていたらぺしゃんこだったでしょうね」
 仕掛けられているのは拘束や撃退ではなく殺害を目的とした罠ばかり。それでも詩乃を仕留めるには至らない。彼女は神使をさらに迷宮の奥に飛ばし、この先の情報を集める。

「異端の神がここを踏破する前に、急がないと」
 猟兵と同じように今頃は狂えるオブリビオンも迷宮を攻略しているはず。理性を備え、罠の対策も講じられる自分達のほうが有利だが、だからとてぐずぐずしてはいられない。
 詩乃は慎重に、かつ迅速に調査と攻略を並行して進めながら、迷宮の最深部を目指して進み続ける。第五の貴族アンフェールが住まう地底都市までの道程は、まだ長いようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
第五の貴族を狙う異端の神…。
今回の第五の貴族自体はあまり人に被害を及ぼすタイプじゃないみたいだけど…。
これ以上の悲劇が起きるなら、放っておけないね…。

ミラ達と依頼に参加…。
ミラ達に協力して貰って、【影竜進化】でミラ達を影竜に進化させて影の中に入って罠を掻い潜り、迷宮の出口ルートを探知術式【呪詛、情報収集】で探知して進んで行くよ…。

影の中まで感知したり、影響を及ぼせる罠なんて存在しないだろうしね…。
逆に後から来る異端の神の足止めやダメージを与える為に時折影から出て呪力の縛鎖や【呪殺弾】が放たれる呪符を張ったりして罠を追加しておこうかな…。



「第五の貴族を狙う異端の神……」
 これまで辺境を自らの領域としていた神々の新たな動きに、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は警戒を強める。もしこの企てが成れば「狂える第五の貴族」という、かつて無いレベルの脅威がこの世界に誕生する事になる。
「今回の第五の貴族自体はあまり人に被害を及ぼすタイプじゃないみたいだけど……。これ以上の悲劇が起きるなら、放っておけないね……」
「「きゅい!」」
 死の罠の迷宮を越えて第五の貴族を討ち、しかる後に狂えるオブリビオンも撃破する。一緒について来た仔竜のミラ、クリュウ、アイも、可愛らしい鳴き声でそれに同意した。

「我が家族たる竜達……闇の衣を纏いて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
 璃奈は3匹の仔竜に【呪法・影竜進化】を使い、影を自在に操る力を持った影竜に彼らを進化させる。隠密行動や奇襲、そして勿論迷宮の攻略にも影竜の能力は非常に役立つ。
「影の中まで感知したり、影響を及ぼせる罠なんて存在しないだろうしね……」
 3匹の影竜と一緒に影の中に入った魔剣の巫女は、そのまま影から影伝いに先に進む。
 暗い地下に築かれた迷宮では、潜める影にも事欠かない。床や本や本棚に仕掛けられた死の罠をことごとくスルーされるのは、これを築いたアンフェール女公も予想外だろう。

「出口に近いのはあっちの道かな……」
 影竜達のお陰で安全な移動手段を得た璃奈は、影の中で呪力による探知術式を起動し、迷宮の出口ルートを調査する。罠を抜きにしても迷宮の内部は複雑に入り組んでいるが、この手の探知にも慣れている彼女の術式にかかれば、活路を見出すのは難しくはない。
「次は向こう……ん、今の声は……?」
 順調に迷宮を進んでいた彼女は、ふと何処かから遠雷のように響く誰かの声を聞いた。
 探知術式の反応を辿れば、彼方に猟兵とも普通のオブリビオンとも異質な反応がある。恐らくこれは「狂えるオブリビオン」――異端の神に取り憑かれた吸血鬼が、罠に掛かりながら迷宮を彷徨っているのだ。

『アアァァァァァァァ―――!!!』
 無数の本棚の向こうから聞こえてくる叫びは、激しい狂気と悪意と怒りに満ちていた。
 順調そのものなこちらとは対照的に、あちらは迷宮攻略にかなり苦労しているらしい。理性を失った脳では罠を見つけて回避することもできないのだから、それも当然だろう。
「あの調子だとまだ当分出られそうにないね……」
 咆哮の距離から異端の神とはまだ相当の差があることを確認した璃奈は、何か思いついた様子でひょいと影から出てくる。彼女の手には呪力を込められた何枚かの符があった。

「この辺りに罠を追加しておこうかな……」
 後から来る異端の神の足止めやダメージを与える為に、適当な本棚や床に呪符を張る。敵がこれに近づけば、符に込められた呪力が作動し、縛鎖や呪殺弾が放たれる仕掛けだ。
 最終的には倒すことになる相手に、今のうちに少しでも傷を負わせておくのは大事だ。元から迷宮にある罠と連動するようにしておけば、その効果はさらに増すだろう。

「これでよし……じゃあ、行こうみんな……」
「「きゅぅ、きゅぅっ!」」
 それからも璃奈は時折影から出て呪符の罠を追加しつつ、迷宮の出口に向かって進む。
 その後を追う形になる異端の神が、一体どれだけの罠に引っかかったのか――彼方から断続的に聞こえる悲鳴や絶叫が、断片的にその効果のほどを物語っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
これ程の蔵書量、この世界の騎士に纏わる御伽噺も大量に収められていそうですね
かの第五の貴族と異端の神を討ち果たした後で蔵書目録を回収して…

……

いけませんね、発想が盗人か強盗のそれです
『異端の第五の貴族』誕生阻止に注力しなくては

魔力的な罠と私のセンサーとは些か相性が悪い迷宮ですが、罠を仕掛けた相手の仮想敵から外れれば良いのです

UC纏い本棚を踏み台に跳んで触手を天井へ射出
吸盤でヤモリか烏賊の如く貼りつき移動

…!
(そう上手くはいきませんか)

情報収集した物音で怪物の出現見切って移動停止、隠蔽機能作動
天井から忍び寄り、落下攻撃騙し討ち
喉笛を剣で一息に貫き、即座に天井へ

この罠のパターンは覚えておきましょう



「これ程の蔵書量、この世界の騎士に纏わる御伽噺も大量に収められていそうですね」
 迷宮の壁として立ち並ぶ本棚、そこに収められた無数の本を見て、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそんな期待を抱く。訪れた世界の各地で御伽噺や騎士道物語を収集するのが、御伽噺の騎士を理想とする彼の趣味なのである。
「かの第五の貴族と異端の神を討ち果たした後で蔵書目録を回収して……。…………」
 早くも戦後のことを考えだした彼は、途中で言葉に詰まり自問自答する。悪しき貴族を討伐するまではいいが、その者が収集した「宝」と呼べるものを根こそぎ持ち去るのは、果たして騎士に相応しき行いと言えるだろうか――?

「……いけませんね、発想が盗人か強盗のそれです。『異端の第五の貴族』誕生阻止に注力しなくては」
 浮かれかけた己を戒めて、トリテレイアは今為すべき事に集中する。まずは異端の神が第五の貴族との邂逅を果たす前に、この「死の罠の迷宮」を踏破する。第五の貴族が直々に手掛けた迷宮だけあって危険度は相当なものだが、攻略の目算はある。
「魔力的な罠と私のセンサーとは些か相性が悪い迷宮ですが、罠を仕掛けた相手の仮想敵から外れれば良いのです」
 【特殊潜入工作用試作型隠蔽外套】を装備した彼は、手近なところにある本棚に手と足をかけてよじ登り、それを足場にして跳び上がる。そして外套の下からイカのような触手状ワイヤーを射出し、迷宮の天井に吸盤を貼り付けた。

「構造からしてこの迷宮は、侵入者が地面を歩いて進むことを想定されている筈です」
 ならばとトリテレイアが選択したのは、地に足を付けない経路。吸盤を備えた複数本の触手でヤモリかイカのごとく天井に貼りつき、そのまま移動するのだ。足元に設置された魔法陣や倒れてくる本棚などの罠は、これで回避できるはずだ。
「後はこのまま出口まで……」
 搭載されたマルチセンサーで周辺地形を把握しつつ、静粛性にも優れた試作装備の性能をフルに活用して先に進む。見てくれは少々奇妙ではあるが、理に適った攻略法である。このまま何事もなく最深層にたどり着けるかと思われたが――。

「……!」
 ふと聴覚センサーに妙な物音を聞きつけたトリテレイアは、移動を停止して外套の隠蔽機能を作動させる。カメレオンのように天井の模様に溶け込んだ彼が地上を見下ろすと、異形の怪物が獲物を求めて辺りを嗅ぎ回っていた。
(そう上手くはいきませんか)
 本の中から怪物が現れるのに気付くのが、あと少し遅れていたら危ないところだった。
 だが間一髪で出現のタイミングを見切れたおかげで、これは逆に好機となる。彼は擬態を維持したまま音もなく天井から忍び寄り、敵の頭上に位置取ると不意打ちを仕掛けた。

『――……グギッ!?』
 トリテレイアの接近にまったく気付いていなかった怪物は、天井から落下してきた彼に取り押さえられ、喉笛を剣で一息に貫かれて絶命する。実に鮮やかな暗殺劇――血の泡を噴いて倒れ込んだ異形の骸を捨て置いて、彼は即座にするりと天井へ戻った。
「この罠のパターンは覚えておきましょう」
 ただ天井を行くだけでは回避できない罠があることは分かったが、一度把握すれば対策は立てられる。今の行動を電脳内のメモリーに記憶して、機械騎士は迷宮のさらに奥へ。
 最深部に近づくにつれて危険な罠も増えるが、情報収集と学習を続ける彼を止められる脅威は何一つとして無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
異端の神が辺境から出てくるとは……

聖槍に風の魔力を纏う(トリニティ・エンハンス)
防御力を高めると共に、空気の流れを読み取り、出口を探る(情報収集)

【悪路走破】【地形耐性】で【ダッシュ】の速度は鈍らない
走っていればだんだん慣れてきますし(足場習熟)

倒れてくる本棚は【怪力】で押し返して対処
魔法陣は聖槍の穂先に宿る魔を破る(破魔)の力で打ち消す
吊り天井に落とし穴、種々様々な魔法生物……身体能力(ジャンプやスライディング)と聖槍の力で突破する

攻略スピードは大事……しかし消耗も避けねばならない
時々休憩をはさみ、携帯保存食を食べたり、簡易救急セットで負傷を治療したり(医術)

さて、そろそろ出口も近そうですね



「異端の神が辺境から出てくるとは……」
 これまでに無かった異常事態に、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は危機感を露わにする。強大なる「第五の貴族」の肉体は異端の神にとっても魅力的なのだろうか。そもそも如何なる方法でかの者が地底都市に気付いたのかも謎だ。
「……不明な点は多いですが、今はやるべき事をやりましょう」
 今優先すべきは迷宮の攻略と第五の貴族の打倒。彼女は【トリニティ・エンハンス】を使って「破邪の聖槍」に風の魔力を纏う。防御力を高めると共に、迷宮内の空気の流れを読み取り、出口を探るのが狙いだ。

「では参りましょう」
 風の流れが外へ抜けていく方角に向かって、聖槍を手に走り出すオリヴィア。地下空洞を改造して築かれた迷宮は必ずしも走りやすく舗装されているわけではなく、剥き出しの地面が脚に負担をかけるが、それしきの事で彼女の速度は鈍らない。
「走っていればだんだん慣れてきますし」
 事実として足を進めるほどに彼女の歩調は軽快になり、素晴らしい速さで迷宮の足場に習熟していると分かる。このペースなら万に一つも敵に先を越されることは無いだろう。

『ギギギッ!』
 そんなオリヴィアの行く手を阻むように、本の中から怪物が飛び出す。罠の一種として第五の貴族が作り出した魔法生物、と考えればそれなりに脅威なのだが、生憎今の彼女はそんなものは眼中にない。
「邪魔です」
『ギエッ!?』
 速度を落とさぬまま、破邪の聖槍を一閃。黄金の穂先が疾風とともに怪物を切り裂き、吹き飛ばす。止めを刺せたかに興味はなく、邪魔が消えればそのまま走り抜けていった。

「罠の手数は多いですが、この程度で私は仕留められません」
 その後もオリヴィアは迷宮に仕掛けられた死の罠を次々に突破していく。本棚が倒れてくれば怪力で押し返し、魔法陣は聖槍の穂先に宿る破魔の力で打ち消す。吊り天井の下をスライディングですり抜け、落とし穴をジャンプで飛び越え、本から飛び出す種々様々な魔法生物をなぎ払い――いかなる罠も、彼女の身体能力と聖槍の力には抗し得なかった。
(攻略スピードは大事……しかし消耗も避けねばならない)
 快調に攻略を進めつつもオリヴィアは決して焦らず、罠のない場所で時々休憩を挟む。
 持ってきた形態保存食を食べて体力を回復し、簡易救急セットで負傷を治療。負うのは精々かすり傷程度だが、この先の強敵との戦いにはなるべく万全の状態で挑みたかった。

「さて、そろそろ出口も近そうですね」
 何度目かの休憩を終えた頃、オリヴィアは周囲の空気が変わってきているのに気付く。
 さほど意識を集中せずとも、聖槍の穂先から風の流れをはっきりと読み取れるほどに。同時によく身に覚えのある禍々しい気配――邪悪なヴァンパイアの気配も近付いている。
 ここから先は、より一層の警戒が必要となるだろう。気を引き締めて立ち上がった彼女は深い闇に覆われた迷宮の最深部を見据え、また力強い足取りで走り出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
ラヴ・ラビリンス〜愛の迷宮〜
製作総指揮 戌MS
出演者 セフィリカ 魔剣シェルファ カビパン

温厚誠実な女教皇は、カレー屋として成功しつつ死んだり生き返ったりと過ごし、店員かつ友人のセフィリカ達とも良好な関係を維持しながら順調に仕事をこなし、平穏な日々を送っていた。

しかし葛藤や友情、恋の悩みが多いこの年代。そういえば既に死んでいるカビパンは唐突だが『愛』とは何か?を悟り、その謎を解明するため、錯綜するそれぞれの思いを胸に抱いてアンフェールの迷宮へと向かった――

物語終盤、カビパンはセフィリカとシェルファにノリで別れを告げ、天国へと旅立ってゆこうと思いきやあの世から拒否られそのまま迷宮をゴールした。


セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃん(f24111)と行動

コレが脚本?

愛、を求め彷徨う猟兵達…

主題は愛だが、笑いと感動もなくては名作にはならない
終盤のカビパンの旅立ちを彩る感動のBGM!(歌:魔剣シェルファ)

見所はアクションも
全ての罠を魔剣一つで切り抜ける美少女セリカ!

…って、マジで仰ってる?
脚本間違ってない?

スタントなし!予算なし!
トラップには天然の本物を使用!

お金をかけなくてもヤバイ!
極大の臨場感を君に
〜この夏、あなたは愛の意味を知る〜

煽り文喧しいな?!

ま…やってやれないこともないかな

『その前に一ついいかしら。ラヴラビリンス要素って何処?というか歌???は???』
魔剣には脚本が一切理解できなかったのであった



「はい、これ読んどいて下さいねセフィ姉」
「コレが脚本? どれどれ……」
 危険に満ちた迷宮の入口で、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)とセフィリカ・ランブレイ(蒼剣と姫・f00633)は本日の演劇の打ち合わせをしていた。
 何故こんな所で劇をやるのかは不明である。強いて言うならやりたかったからだろう。セフィリカがカビパンから渡された脚本には『ラヴ・ラビリンス~愛の迷宮~』という題がでかでかと書かれ、出演者の欄にはセフィリカと彼女の姉貴分である魔剣シェルファ、そしてカビパンの名前が記されていた。

「愛、を求め彷徨う猟兵達……主題は愛だが、笑いと感動もなくては名作にはならない」
 脚本を読み上げるセフィリカの頭の上に、次第にクエスチョンマークが浮かび上がる。
 あらすじを解説するとこうだ。温厚誠実な女教皇カビパンは、カレー屋として成功しつつ死んだり生き返ったりと過ごし、店員かつ友人のセフィリカ達とも良好な関係を維持しながら順調に仕事をこなし、平穏な日々を送っていた。
「しかし葛藤や友情、恋の悩みが多いこの年代。そういえば既に死んでいるカビパンは唐突だが『愛』とは何か? を悟り、その謎を解明するため、錯綜するそれぞれの思いを胸に抱いてアンフェールの迷宮へと向かった――」
「どうです? いい出来でしょう?」
「いや、それはちょっとどうかしら……」
 得意げな笑顔を見せるカビパンだが、対するセフィリカとシェルファの反応は芳しくは無かった。主役カビパンがやたら死んだり生き返ったりするのは事実だから良いとして、『愛』に疑問を抱くくだりが本当に唐突すぎる上に迷宮に向かう理由にも繋がってない。

「あとこの『終盤のカビパンの旅立ちを彩る感動のBGM!(歌:魔剣シェルファ)』とか『見所はアクションも。全ての罠を魔剣一つで切り抜ける美少女セリカ!』……って、マジで仰ってる? 脚本間違ってない?」
「あらあらセフィ姉、私がマジじゃなかった事なんてありましたか?」
 どれもこれも初耳だらけの無茶振りには、セフィリカも流石にツッコまざるを得ない。
 しかしカビパンの自信満々な顔を見るからに、どうやら脚本の間違いではないらしい。その後のページにはキャッチコピーに使うつもりなのか、次のような文句が並んでいる。

 スタントなし! 予算なし!
 トラップには天然の本物を使用!

 お金をかけなくてもヤバイ!
 極大の臨場感を君に
 ~この夏、あなたは愛の意味を知る~

「煽り文喧しいな?!」
 タイトルといい煽りといい、とにかく本作が愛推しであることはひしひしと伝わった。
 ツッコミ所はもう数え切れなくなったが、本作が昭和の特撮もビックリの体当たり撮影なのも分かった。そのための「死の罠の迷宮」、そのための猟兵キャストということか。
「ま……やってやれないこともないかな」
 ひととおり文句を言い終えてから、セフィリカの表情は自信ありげに変わる。ここまで話を進められて「ごめん、できない」と言うのは、本人のプライドにも関わるのだろう。魔剣一つで罠を切り抜けろとの要求も、彼女の剣才と魔剣の力を鑑みれば無謀ではない。

「そう言ってくれると思っていました」
 共演者の承諾を得たカビパンはにこりと微笑み、ぶっつけ本番の準備に入る。無数の罠に満ちたアンフェールの迷宮を三人で突破する、この物語の大きな山場のひとつである。
『その前に一ついいかしら。ラヴラビリンス要素って何処? というか歌??? は???』
 なお、セフィリカの腰に吊るされた魔剣シェルファには、脚本が一切理解できなかったのであった。残念ながらやる気になってしまった残り二名の役者にその疑問は届かない。

「シェル姉がついてきてくれなくても、私は行くよ」
『あんた、そのセリフここで使うのやめなさい??』
 キリッとした表情で格好よさげに魔剣を構えて、死の罠の迷宮に突入するセフィリカ。
 【ハリセンで叩かずにはいられない女】ことカビパンも、バシンバシンとハリセンの音を地底に響かせながら後に続く。ここはもうすっかりギャグに支配された彼女の世界だ。
「ナウなヤングにバカウケな感じでひとつお願いします」
「はいはい。ゆらりゆらりとね、流していこっか?」
 次々と襲い掛かる罠に対して、セフィリカは受けを重視した剣術で凌ぎ、反撃の魔剣で切り払う。膂力の弱さを見切りと速度で補う立ち回りは可憐にして華麗、どこを撮っても絵になるようで、求められた配役にはまさにうってつけであった。

「流石ですセフィ姉、シェル姉……ですが私はここまでのようです……」
「そんな、カビィちゃん?!」
 そして物語(迷宮攻略)も終盤に差し掛かってくると、唐突にカビパンはノリで別れを告げた。ここまで来るとセフィリカもだいぶ慣れてきた様子で良いリアクションをする。魔剣シェルファは相変わらず話についていけなかったが。
「私は既に死んでいる身……天国に旅立つ時が来たのです……」
 そういえば序盤の脚本にそんな事が書いてあった気もするが、にしても唐突な急展開。聖人っぽい雰囲気を漂わせて迫真の演技をするカビパンの裏で、セフィリカとシェルファは「ほらシェル姉、歌わなきゃ」『無茶言うんじゃないわよ!』とやいやい騒いでいた。

「それでは皆様、さようなら……」
 キラキラとセルフで「女神の加護」の光に包まれて、天国に旅立とうとするカビパン。
 セフィリカとシェルファは涙ながらにそれを見送るのが脚本の流れになっているが――一瞬消えたかと思ったハリセン女教皇は、すぐにひょっこりと戻ってきた。

「と思ったけどあの世から拒否られてしまいました」
「『なにそれ!!』」

 蒼剣とエルフ姫のツッコミが共鳴する中、カビパンはしれっとした顔で迷宮のゴールに向かう。どうもグダグダな流れになってしまったが、悪いのは製作総指揮のせいである。
 ともかく、残された二人も遅れて後を追いかけ――『ラヴ・ラビリンス~愛の迷宮~』はかくして感動(?)のエンディングを迎えたのであった。愛の意味とは?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
ふむ、これは難儀な迷宮よナ。
いやしかし、術がかりの罠であればやりようはある。
[結界術]にて呪文感知しながら先へと進み、
[UC呪詛殺し]で呪文の罠は解除していくこととす。

からくり仕掛けの罠があるなら、まあ、気合で。
時に漢探知が必要な時もあるもんじゃ、ワシ女じゃけど。
念の為、薙刀を十尺棒代わりにして進もうか。

ふむ、にしても図書館というのはちょうどよい。
いくつか面白げな本をみつくろってもろて行こうぞ。
高位呪文の巻物や呪文書があれば云うことないナ!

さて、マッピングマッピング……おや、何処かズレたか?



「ふむ、これは難儀な迷宮よナ」
 どこを見渡しても本、本、本。まるで図書館のようで奇妙な「死の罠の迷宮」を前に、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は呟く。第五の貴族が異端の神の撃退用に発動した迷宮と聞けば、その危険性と製作者の殺意のほどは窺えよう。
「いやしかし、術がかりの罠であればやりようはある」
 彼女も故郷ではモノノ怪神と虞れられ、今は現人神と畏れ敬われる身。魔術や妖術の類には知見も心得もある。幼気な容姿に自信ありげな笑みを浮かべ、いざ迷宮攻略に挑む。

「ほう、あちこちから怪しいにおいがするナ」
 結界術を用いて稲見之守が呪文感知をしてみると、あるわあるわ。本や本棚を含む迷宮のあちこちから魔術的な罠が検知される。避けられるものは避けるとして、先に進むうえで邪魔になるものは解除していったほうが無難だろう。
「呪詛でも霊力でも魔力でも、理を崩せば象を成さぬよ」
 呪文の罠めがけて解呪の霊符を放ち【呪詛殺し】のユーベルコードを唱える。符に籠めた呪力が罠の魔力と相殺し、地面に描かれていた魔法陣が消える。危険を排除した彼女は悠々とその上を歩いて迷宮の奥に進んでいく。

 ――だが、この方法で発見・解除できるのは呪的な罠だけだとは本人も理解している。
「からくり仕掛けの罠があるなら、まあ、気合で」
 念の為、持ってきた薙刀を十尺棒の代わりにして、とんとんと地面を叩きながら進む。
 怪しい場所や進む先を長いものでつついて、罠が仕掛けられていないか調べる。迷宮に挑む冒険者に伝わる古式ゆかしい探索法であり、効果のほどは歴史的に実証されている。
 が、それだけに迷宮を造る側にもこの対策は知られており、本の虫であるアンフェール女公が承知していても不思議ではない。であれば、その対策の対策もありえることだ。

「ふむ、第五の貴族もやるものよ。よもや十一尺先に罠を仕掛けておくとは」
 そんなわけで見つけ損ねた罠の洗礼を受ける稲見之守。急に本棚が倒れ込んできたり、天井から瓦礫や大岩が降ってきたり、なかなか殺意高めな仕掛けが襲い掛かってくるが、しかし彼女は怯まない。本人も言っていたように、迷宮探索は気合が肝心である。
「時に漢探知が必要な時もあるもんじゃ、ワシ女じゃけど」
 あえてヤバそうなところにも踏み込み、作動した罠を薙刀で切り払い、結界術で防いで強引に突破する。一度は罠に掛かっても二度掛からなければ、それは実質的に罠を発見・解除したのと同じこと。頑丈な猟兵にはうってつけの攻略法だ。

「ふむ、にしても図書館というのはちょうどよい」
 そんな具合に呪詛殺しと漢探知で罠を踏み越えつつ、稲見之守は迷宮の様子を見回す。
 ここにずらりと並んだ本も、第五の貴族アンフェールが収集した蔵書の一部。最も価値あるものは置いていないにしても、探せば掘り出し物も何点か紛れているかもしれない。
「高位呪文の巻物や呪文書があれば云うことないナ!」
 罠を調べるための呪文感知を応用すれば、魔力の宿った本を見つけるのは造作もない。
 迷宮探索なら宝探しも外せないだろうと、幾つか面白げな本を見繕っては貰っていく。文句を言いそうな迷宮の主は、これから倒す予定なので何の問題もない。

「さて、マッピングマッピング……おや、何処かズレたか?」
 つい本探しに夢中になって、書いた地図が実際と合わなくなるなんて一幕もありつつ。
 危険に満ちたはずの迷宮を攻略する稲見之守は、かなり満喫しているようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ふむ…一風変わった迷宮だね…
…これは魔法的な罠が中心かな…物理罠もそれなりにありそうではあるけど…
…取り合えず11フィート棒を取り出して基本通りに床や壁…本棚だな…を叩いて調べながら進もうか…
…本は…持っていきたいけどこの手の迷宮の本って同じ内容だったりするからな…まあ何冊かは持っていこう…
…見つけた罠の類は解除…本棚が倒れてきそうになったら【未だ至らぬ賢者の石】で壁を作って本棚の支えを作って回避…
…怪物が飛び出してくる仕掛けは本ごと鋼鉄の箱を作って閉じ込めて回避…
…この辺りはいつもの迷宮だな……ふむ…マッピングした限りこの罠の配置だと…
…先に進むの道はこちらの方向か…行くとしよう…




「……ふむ……一風変わった迷宮だね……」
 一般にダンジョンと聞いて連想するのとは違う、無数の本棚がずらりと並んだ光景を、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はまじまじと観察していた。
「……これは魔法的な罠が中心かな……物理罠もそれなりにありそうではあるけど……」
 異世界を股にかけて魔法や技術の研究を行う彼女は、大迷宮で名高いアルダワ魔法学園の出身でもある。その豊富な知識と経験はこの「死の罠の迷宮」においても活かされる。

「……取り合えず叩いて調べながら進もうか……」
 取り出したのダンジョン攻略の定番アイテム、11フィート棒。10フィート棒よりも遠くのものを調べられる、この便利なただの棒で床や壁(今回は本棚だが)を叩きながら進むのは探索の基本である。
「……本は……持っていきたいけどこの手の迷宮の本って同じ内容だったりするからな……まあ何冊かは持っていこう……」
 魔導書蒐集家でもある第五の貴族・アンフェールの作り出した迷宮なら、こんな所にも珍しい書物が紛れているかもしれない。罠が仕掛けられていないかを慎重に確かめつつ、表題や最初の数ページで気になったものを適当に見繕い、回収する。

「……と、こんな所にも罠が……」
 探索を進めるメンカルの前に立ちはだかるのは、第五の貴族が仕掛けた死の罠の数々。
 油断すれば即座に生命を落としかねないデストラップも多々あるが、彼女はその全てを持ち前の知識と術式で解除していく。
「万物の素よ、変われ、転じよ。汝は霊薬、汝は真理。魔女が望むは焦がれ届かぬ秘奥の技」
 本棚が倒れてきそうになれば【未だ至らぬ賢者の石】で壁を作り、斜めになった本棚の支えにして下敷きになるのを回避する。さらにその本棚で怪物の飛び出してくる仕掛け本を見つけた彼女は、同様の術式を行使して本が収まるサイズの鋼鉄の箱を作り出す。

「……これで出てこられないな……」
『ガウ、ガウッ?!』
 頑丈な鋼鉄の箱に本ごと閉じ込められた怪物が、中でガタガタと暴れる音が聞こえる。
 それをスルーしてメンカルは先へ進み、ここまでの探索で書いた地図を改造タブレット【アルヴィス】に表示する。
「……この辺りはいつもの迷宮だな……ふむ……マッピングした限りこの罠の配置だと……」
 踏破範囲はまだ半分もないが、それでも彼女にはこの迷宮の全体像が見え始めていた。
 造り手や世界、あるいは構成する素材が変わっても、迷宮には攻略のセオリーがある。
 罠の配置や通路の分岐等から、製作者が侵入者を進ませたくない正解のルートを探る。この辺りは実際に迷宮に潜った経験の数がものを言うシーンだ。

「……先に進むの道はこちらの方向か……行くとしよう……」
 似たような景色ばかりが続く迷宮で、ともすれば現在地すら見失いかねない状況でも、メンカルは迷いなく歩いていく。数々の罠も入り組んだ路も彼女を惑わすことはできす、第五の貴族アンフェールが住まう最深層はすぐ近くまで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
どちらかに手助けをしてどちらかを残せ……と、そんな作戦にはならなくて良かったです。この世界で人が生きるためには、どちらも邪魔なだけですから。

一瞬のミスや気の緩みが命取りになる死の罠。いかにも吸血鬼らしい迷宮ですが……この世界でただの人間が生きるためには、そんな吸血鬼に対抗する必要があった。それ故に生まれた力も当然あります。

【絶望の福音】を使用。
罠が発動するよりも先に罠があることを察知し、重たい本棚が倒れてくるなど回避できるものは回避、怪物が飛び出してくるなどこちらからの攻撃でどうにかなるものは「デリンジャー」の『クイックドロウ』で対処、魔法陣は罠が発動しないよう踏まずに進みます。



「どちらかに手助けをしてどちらかを残せ……と、そんな作戦にはならなくて良かったです」
 第五の貴族と異端の神々。どちらの脅威もよく知るセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、その両方を討伐せよとの今回の依頼を受けて、難易度に頭を悩ませるより寧ろ安堵を感じていた。
「この世界で人が生きるためには、どちらも邪魔なだけですから」
 たとえ一時の事だとしても、倒すべき敵に加担するなど業腹だ。吸血鬼に支配された街で生まれ育ち、その脅威を肌で知る彼女だからこそ、クールな表情の裏に秘めた敵愾心には並々ならぬものがあった。

「一瞬のミスや気の緩みが命取りになる死の罠。いかにも吸血鬼らしい迷宮ですが……」
 図書館のようにずらりと並んだ本棚に、静謐に包まれた地底の空気。侵入者抹殺の為に第五の貴族が築き上げた書架迷宮の中を歩きながら、セルマは誰にともなく言葉を紡ぐ。
「この世界でただの人間が生きるためには、そんな吸血鬼に対抗する必要があった。それ故に生まれた力も当然あります」
 それは彼女が最初に会得したユーベルコードのひとつ【絶望の福音】。未来を見てきたかのように敵の攻撃を予想する危機回避の技。それは至る所に仕掛けられた吸血鬼の悪意を見破るのにも最適な能力だった。

「この程度の攻撃、吸血鬼との戦いではいつもの事です」
 セルマが数歩ほど通路の脇に移動すると、直後に重たい本棚が彼女のいた位置にバタンと倒れ込んでくる。後少し遅ければ下敷きになっていただろう――しかし、彼女がそれを回避できたのは偶然でもなんでも無い。
『ギュエッ!?!』
 さらにスカートの中から抜き射ちで放たれたデリンジャーの弾丸が、本から飛び出した怪物を撃ち抜く。出てくる場所とタイミングが分かっていなければできない、完璧な応射を食らった怪物は悲鳴を上げて倒れ伏した。

「どれほど危険な罠でも、あると分かっていれば恐れることはありませんね」
 罠が発動するよりも先に罠があることを察知し、対処する。絶望の福音が見せる未来を最大限活用して、セルマは死の罠の迷宮を攻略する。力強く前に進むその両足は、地面に仕掛けられた魔法陣の罠を踏まぬよう、慎重ながらも迷いのない足取りで。
『グギャッ!!』
 時折響く銃声と怪物の悲鳴を除けば、迷宮に響くのはこつこつと規則正しい少女の足音のみ。それは彼女の探索が順調であり、不測のトラブルが一切起き得ぬ事を示していた。

「もう随分歩いたはずですが……と」
 そうして延々と続く本棚の路をひたすらに歩いていると、ふいに前方の視界が開ける。
 現れたのは光苔の灯りに照らされた都市と、ここが地底であることを忘れてしまいそうな程に豪奢で荘厳な邸宅。あれこそが第五の貴族・アンフェール女公の屋敷に違いない。
 ついに死の罠の迷宮を踏破したセルマは、より気を引き締めてその先へ進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公』

POW   :    魔導書(物理)―オンスロート・エッジ―
【苛立ちに任せて振り回した分厚い魔導書の角】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    自著魔典―エレメンタル・スプレッド―
レベル×1体の、【様々な色の表紙をしたギリシャ文字で背表紙】に1と刻印された戦闘用【の表紙の色に応じた属性魔法弾を放つ魔導書】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―
戦闘用の、自身と同じ強さの【重厚な鎧と楯、鋭い槍を携えた重戦士の霊達】と【後方で魔法で砲撃と回復を行う魔術師の霊達】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はモリオン・ヴァレーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 死の罠の迷宮を攻略した猟兵達は、異端の神よりも先に第五の貴族の拠点に辿り着く。
 その権威をひけらかすが如く、迷宮の最深部に建てられた荘厳かつ豪奢なゴシック調の屋敷。その奥で待ち構える強大な魔力を感じながら、突入する一同。

「……あら? 異端の神かと思ったら、とんだ珍客がやって来たものね」

 果たしてその先に居たのは、椅子に腰掛けて本を読み耽る、青い髪の女吸血鬼だった。
 よく見れば彼女の座る椅子は床から僅かに浮いており、彼女を乗せたままくるりと猟兵の方に回転する。恐らく魔法だろうが、普通に立ち上がればいい事にわざわざ魔力を浪費しているあたりに、その性格の一端が垣間見える。

「悪いけれど、招かれざる客を歓迎する趣味はないの。今すぐ帰るか、死んでくれる?」

 『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公は、本の染みを見るような目で猟兵達を見る。
 彼女にとって他者の存在などその程度のもの。地の底に築いたこの屋敷で、読書に耽る怠惰な時を過ごせればそれで良いのだ。外界に対する興味など、せいぜい珍しい魔導書や本の噂を聞きつけた時くらいしか無い。無知なる定命の者共など、それこそ塵芥同然だ。
 他の貴族と比べればその怠惰さ故に比較的危険度の低いアンフェールだが、それは彼女が無害な訳ではない。死の罠の迷宮を突破されてもまるで動じていない様子からも、その自信のほどは窺える。

「貴方達のことはもう『知っている』。戦ったところで時間の無駄よ、諦めなさい」

 第五の貴族であるアンフェールの実力を支えるのは、言うまでもなく『紋章』の力だ。
 その身に寄生した『全知の紋章』は彼女に比類なき知識を授け、あらゆる攻撃を叡智を以て無効化する。本人の膨大な読書量も合わさって、限りなく無敵に近い能力である。
 だが、猟兵達はその力の弱点を知っている。アンフェールと紋章がカバーしているのは「この世界」の知識だけ。ダークセイヴァー以外の異世界の知識までは知り得ないのだ。

 かりそめの全知が及ばぬ異界の知識や技術こそが、アンフェールに勝利する鍵となる。
 無論、全知の力を差し引いても彼女が優れた魔術師であることは変わらない。そして、狂えるオブリビオンが死の罠の迷宮を突破して来るまでに決着をつけなければならない。

「警告はしたわよ。さあ、どうするの?」

 周りに幾つもの魔導書を浮かべるアンフェールに対し、猟兵達は戦いの構えを取った。
 知の底に潜みて叡智を読み漁る、怠惰なる『第五の貴族』に今こそ引導を渡す時だ。
黒影・兵庫
(「どうするの?って倒す以外の回答ある?」と頭の中の教導虫が話しかける)
ありません!俺もせんせーの意見に賛成です!
(「さて黒影、この世界の事なら何でも知っている敵に対して何で攻撃する?」)
もちろん虫さんです!
さぁ電子兵さん!存分に暴れまわってバグらせちゃってください!
(UC【F.E.C】を発動すると掲げたスマホからプログラムコードでできたムカデが出現する)
ちなみに電子兵さん達の攻撃はパソコンの基本的な知識があれば簡単に対策できるぜ!
(『オーラ防御』で展開したバリアで身を護りながら『浄化』の力を込めた『衝撃波』で重戦士と魔術師の霊たちを攻撃する)
この世界で一番賢いアンタなら何秒で解けるのかな!?



(どうするの? って倒す以外の回答ある?)
「ありません! 俺もせんせーの意見に賛成です!」
 頭の中から話しかける教導虫の問いに、迷いなく即答する兵庫。退けば見逃すと言っているように今回の敵は好戦的な輩ではないようだが、それはこちらを塵芥としか見做していない「第五の貴族」の傲慢というもの。此処まで来て撤退する理由は皆無だ。
「愚かね……勝てるとでも思っているのかしら」
 兵庫の意思を知った『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公は、ふうと面倒くさそうにため息をつくと、魔導書の一冊を手元で開く。『全知の紋章』の叡智がある限り、自身に敗北はあり得ないと、疑いなく確信している態度だ。

(さて黒影、この世界の事なら何でも知っている敵に対して何で攻撃する?)
「もちろん虫さんです!」
 叡智の吸血鬼を前にしてのスクイリアの問いに、今度の兵庫の答えはシンプルだった。
 彼の出身世界はUDCアース。その大海に浮かぶ彼の故郷は、独自の進化を遂げた虫達が統治する島だ。彼が使役する様々な戦闘用の虫も、元はその島で生み出されたのである。
「さぁ電子兵さん! 存分に暴れまわってバグらせちゃってください!」
 兵庫がスマホを掲げて【F.E.C】を発動すると、画面からプログラムコードでできたムカデの群れがうぞりと這い出してくる。電子機器の発達していないこの世界において、その存在は間違いなく「未知」の塊であろう。

「なに、その虫は……? 本には書いて無かったわよ」
 案の定、始めて電子虫を見たアンフェールは動揺を隠せないようで、ざわりと屋敷を這い回るソレに忌避の表情を見せて【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】を発動する。
「嫌だわ、近付けないで」
 重厚な鎧と楯、鋭い槍を携えた重戦士と、後方支援に優れた魔術師の霊達が姿を現し、前衛と後衛に分かれて陣形を組む。これだけの軍を瞬時に召喚できるという事は、やはり彼女は優れた魔術師なのだろう。だが残念なことに相手の事を「知らなすぎた」。

「所詮虫けらが、何をしてこようと……っ?!」
 亡霊の軍団と激突した電子兵の群れは、その身体を構成するプログラムコードによって敵にエラーを引き起こした。本来は召喚主の意思に従うはずの挙動が乱れ、バグったAIのように不自然なループ行動をその場で繰り返す。
「ちなみに電子兵さん達の攻撃はパソコンの基本的な知識があれば簡単に対策できるぜ!」
 逆に言えばどんなに頑丈な鎧や盾を装備していても、電子的な攻撃に対しては無力だ。
 兵庫はオーラで展開したバリアで身を護りながら、電子虫がかき乱した敵陣に向かって警棒を振るう。浄化の力を込めた衝撃波がその軌跡から解き放たれ、獣戦士と魔術師の霊を消し飛ばした。

「この世界で一番賢いアンタなら何秒で解けるのかな!?」
「ばそこん……? なんなのよそれは??」
 兵庫の煽りを受けたアンフェールは困惑と動揺を増すばかり。この世界の事なら知らぬものは無い彼女の博識さも、異世界のテクノロジーや知識に関してはまったく通じない。
 何か毒(ウイルス)のようなものを流し込まれている、という所までは察せられても、対応する薬を作り出せる訳でもなく。跳梁する電子兵に彼女の軍は次々と蝕まれていく。
「拍子抜けだな、アンタ!」
「っ……なんだっていうの……!」
 そうこうしている内に兵庫が放つ浄化の衝撃はアンフェール本人にまで及び、亡霊軍の崩壊は決定的となる。未知なる虫の侵攻に対処できずに狼狽する『魔典の虫』の様子は、在る種滑稽ですらあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「貴女は未知の魔導書の存在を知ったら是が非でも読んでみたいクチでしょう?私も同じですよ。故に引くことはできないのですよねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
相手も魔術師。属性を扱う知識はあるでしょう。しかし、この世界にはかつてA&Wで戦った帝竜ほどに属性を巧みに操る知識はあるのでしょうかねえ。
相手の攻撃にはホワイトカーテンの防御魔術を展開し、オーラ防御の技能も用いて詠唱時間を稼ぎます。
全力魔法、属性攻撃、範囲攻撃、多重詠唱の技能を用いてUCを使用します。重戦士の霊も、魔術師の霊も、まとめて消し飛ばして差し上げましょう。

「貴女も知らぬ獄軍の虹を、どうぞご堪能あれ。クックック」

アドリブ歓迎



「貴女は未知の魔導書の存在を知ったら是が非でも読んでみたいクチでしょう?」
 退くか死ぬかの選択を突きつけるアンフェールに、闇慈は杖を手に交戦の意思を示す。
 ここには『第五の貴族』がその権勢を利用して世界中から集めた魔導書の数々がある。怠惰なアンフェールが唯一興味を示し、熱心に蒐集を続けてきた蔵書の集大成だ。
「私も同じですよ。故に引くことはできないのですよねえ。クックック」
 これだけの叡智の宝庫を前にして諦める事を、彼の探究心と知識欲は承知しなかった。
 さらなる魔術の研究と収集の為に、笑みを深めて闘志を露わにする彼を止めることは、誰にもできないだろう。

「悪いけど、猟兵風情に読ませてあげられる本なんてここには無いわ」
 相手が自身の収集物に手を出そうとする者だと知れば、アンフェールも容赦はしない。
 膨大なる蔵書のひとつ【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】から獣戦士と魔術師の霊を再召喚し、不埒な盗人を始末せよと命じる。亡霊の軍団は今度こそ一糸乱れぬ動きで槍と杖を構え、進軍を開始した。
「抵抗は無駄よ。潔く死になさい」
「さて、それはどうでしょうか」
 対する闇慈は迷宮攻略にも使用した「ホワイトカーテン」の防御魔術を展開し、オーラの防壁で敵の攻撃を凌ぐ構え。だが死の罠よりもさらに殺意を増した『第五の貴族』直々に率いる霊達の攻撃は苛烈で、長くは持ち堪えられないであろうことは明白だった。

「相手も魔術師。属性を扱う知識はあるでしょう。しかし、この世界にはかつてA&Wで戦った帝竜ほどに属性を巧みに操る知識はあるのでしょうかねえ」
 突き掛かる槍衾や降り注ぐ砲撃魔法の嵐になんとか耐えつつ、魔術の詠唱を行う闇慈。
 防壁は詠唱が完了するまでの時間だけ保ってくれればいい。彼が唱えるのは様々な世界で収集した知見を基に編み出した術。八つもの属性を多重複合展開させたそれは、かつて群竜大陸で権勢を奮った『帝竜ヴァルギリオス』を彷彿とさせる。

「獄軍の轍、烈壊の城壁、回天せよ森羅万象。戒炎・號氷・禅風・玉岩・塔雷・嚇樹。欠ける黒点、満ちる白原、天地一切滅せぬ者のあるべきや」

 炎・氷・風・岩・雷・樹・光・闇。八つの魔力が魔術杖「メイガスアンプリファイア」により増幅され、一つに束ねられていく。詠唱を重ねるにつれて無限に高まっていく力の波動を感じ取って、アンフェールの顔色が変わった。
「なに、その魔術は……知らないわよ、私は……!」
 膨大な読書量と『全知の紋章』を持つ彼女は、およそこの世界のあらゆる魔術に関する知識を有している。だからこそ、今闇慈が詠唱している魔術が自分の知識にないものだと分かった時の驚きは大きかった。一瞬の思考の空白、それが彼女の最大の隙となる。

「貴女も知らぬ獄軍の虹を、どうぞご堪能あれ。クックック」
 動揺の隙を突いて発動する【八獄総軍】。砕けかけた防御魔術の中から放たれた八属性の極大魔力砲撃が、前衛の重戦士も後衛の魔術師も、亡霊軍を指揮するアンフェールも、まとめて一直線に貫いた。
「――……!!!!」
 闇慈が積み重ねてきた知識と技能を結集させた大魔術は、全知の紋章でも対処不可能。
 霊達が消し飛んでいくのを目の当たりにした直後、アンフェールは炎氷風岩雷樹光闇の奔流に呑み込まれ――座っていた椅子もろとも、屋敷の壁にしたたかに叩きつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
陰陽術で取り扱う呪ってヤツは面白くてナ。
ワシに云わせればヒトを、モノを、そして世界を化かす力よ。

類感呪術や感染呪術と呼ばれるその原初的な有り様は
ヒトが事物に意味、或いは想いを与うことで象を成す。
それは名を与えることで事物に在り方を定めるだとか
本来空っぽであるモノをヒトに見立てるだとか。

お前さんがたのガッチガチな術式とは違った
人意を介するがゆえの面白さよ。
もっとも、間違えば悪しき想いから鬼が生まれることもあるが。

さて、『話を聞かせる』と云うのもひとつの呪である。
フットインザドア、なんてナ。

[UC眩惑の術]
怠惰なる魔典の虫・アンフェール
"汝、動くことなかれ"

さて、それでは本を幾つか頂戴して行こう。



「陰陽術で取り扱う呪ってヤツは面白くてナ。ワシに云わせればヒトを、モノを、そして世界を化かす力よ」
 叡智を授ける紋章を宿し、ダークセイヴァー上に存在するあらゆる魔術を網羅している『怠惰なる魔典の虫』への対抗策として、稲見之守が選んだのは故郷のまじないだった。
「陰陽術……それは何? ただの呪いとは違うの?」
 己が知らない術の存在をちらつかされては、アンフェールも興味を抱かざるを得ない。
 相手が話に食いついてきたのを見ると、稲見之守は鷹揚な笑みと手振りを交えながら、故郷にて伝承されてきた旧きまじないについて軽い講義を始めた。

「類感呪術や感染呪術と呼ばれるその原初的な有り様は、ヒトが事物に意味、或いは想いを与うことで象を成す」
 それは名を与えることで事物に在り方を定めるだとか、本来空っぽであるモノをヒトに見立てるだとか。「斯くあれかし」という思いによって曖昧模糊とした物に形を与える、あるいは既にある形を変容させる。それらが呪のもっとも基本的な作用のひとつである。
「お前さんがたのガッチガチな術式とは違った、人意を介するがゆえの面白さよ」
 理性と論理によって行使される術法と比べれば、想いや感情の強さにも左右される呪は再現性にも乏しく、原初的とは翻せば洗練されているとは言いがたいという事でもある。最もそれも稲見之守に言わせれば「味な真似」という事になるだろうか。時に呪い師にも予想のつかない爆発的な効力を発揮するのも、呪の妙味である。

「もっとも、間違えば悪しき想いから鬼が生まれることもあるが」
 『モノノ怪神』『魂喰卿』『人喰い魂呑みの外道』『斯くあれかしと願われるがゆえのカミ』『夢と現つの水面に立つ者』――様々な呼び名を与えられ呪われてきた稲見之守がそれを口にする意味は重い。呪は時としてヒトの手に負えぬ神やアヤカシさえも形作る。逆に、そうしたモノをヒトに益するモノに祀り上げるのも呪の一種であるのだが。
「――……」
 気が付けば、アンフェールはすっかり稲見之守の話に聞き入っていた。読書家であり、魔導書の収集癖もある彼女にとっては確かに興味深い内容だったろう。だが戦いの最中に敵の言葉を聞く態度にしては、あまりに熱心と言うか――一声すら発さないのは異様だ。

「さて、『話を聞かせる』と云うのもひとつの呪である」
 フットインザドア、なんてナ――と、一通り話し終えたところで稲見之守は種明かし。
 わざわざ自分の手の内を明かすような真似をしたのも、全ては敵を呪にかける仕込みの内だった。いつの間にか彼女の瞳は妖しく光り【眩惑の術】をかける態勢に入っている。
「怠惰なる魔典の虫・アンフェール。"汝、動くことなかれ"」
「――…………!!」
 名を呼び、そして命じる。最も基本となる最後の行程を経て稲見之守の呪は完成する。
 いつしか口を開かないのではなく、口を開けなくなっていたアンフェール。魔導書から術を発動することはおろか、椅子の上で身じろぎすることもできず、強烈な呪は呼吸さえ戒める。苦しげに表情を歪めながらも、吐息を漏らすことさえ彼女には許されなかった。

「さて、それでは本を幾つか頂戴して行こう」
 敵の動きを封じたところで、稲見之守は屋敷に置かれている本棚に目を向ける。ここにあるのは死の罠の迷宮にあったのとは違う、真に価値のある蔵書の数々。世界中から蒐集された魔導書が、一目で分かるほどの恐るべき魔力を発している。
「これとこれと、あとこれも良いナ」
「……! ………!!」
 眩惑の術と呪が解けるまで、アンフェールにできるのは抗議の視線を向ける事だけだ。
 目ぼしい巻物や呪文書などを確保して、ほくほくと笑みを浮かべる稲見之守であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃんと(f24111)

編集と演出大事
最高の一瞬を切り出し昇華させる
ラヴラビ、与太の域を超えた!

『自分の作品への贔屓目よ』

で、次の台本…
主役は奇跡の美貌を持つ女公!?


愛は美しい物語ばかりではない
悲しみも、憎しみも……また愛だ

今明かされる女公の過去!

『唐突に知らない過去を真実のように語られるのただの恐怖よ』

本の読みすぎで悲劇なんて予想できなかった

悲しみに満ちた真実に全米が泣いた

悲しみを断ち切る為、自らを捧げる決意の女公
これぞ愛であると……

『今そういうの流行るの?』

私は女公をいい感じに上げつつ最後に華を持たされる悪姫かあ
ま、編集で何とかなるかその辺!

『ここだけ別の理が働いてる。止められない』


カビパン・カピパン
カビパンは最高にハッピーでご機嫌であった。
『ラヴ・ラビリンス~愛の迷宮~』の完成度に感動。
セフィリカと「やっぱりあの方に任せて良かったわね!」と製作総指揮を褒め称え、嬉しくて仕方なくて顔をにやけさせながら屋敷を転がりまわっていた。

理解不能な異分子を持つカビパンは恐らく製作総指揮でも理解が困難であり、ギャグ世界の知識を垣間見たアンフェールは精神が崩壊。

さぁ、一緒に演劇しましょ!
↓渡した脚本

アンフェールはいい人だった。
彼女の死を無駄にしない為にも、私達は今後も良作を作るぞ。
おー!
とか言って、この屋敷から去っていく一同。

ラヴ・ラビリンス〜アンフェール女公と真の愛〜 完

本当にありがとうございました。



「いやあ、本当に素晴らしかったわね!」
「うん、まさかの最高の出来だった!」
 地の底の屋敷で猟兵と吸血鬼が戦いを繰り広げる中、カビパンとセフィリカは自分達の出演した『ラヴ・ラビリンス~愛の迷宮~』の完成度にいたく感動し、興奮気味に感想を語りあっていた。
「編集と演出大事。最高の一瞬を切り出し昇華させる。ラヴラビ、与太の域を超えた!」
「やっぱりあの方に任せて良かったわね!」
 ぐっと拳を握って力説するセフィリカに、最高にハッピーでご機嫌な様子で製作総指揮を褒め称えるカビパン。特にカビパンは嬉しくて仕方ないらしく、顔をにやけさせながら屋敷を転がりまわっていた。
『自分の作品への贔屓目よ』
 唯一、魔剣シェルファだけは客観的でまともな見解を持っていたが、彼女のツッコミはテンションの上がった二人には届かない。感想戦を繰り広げるだけでなく、もう次回作の構想まで勧めている有り様だ。

「な、なんなのこいつらは……???」
 この二人、特に「理解不能な異分子」を持つカビパンは先程の『ラヴラビ』製作総指揮でも理解が困難であり、『全知の紋章』を宿したアンフェールの知識すら及ばなかった。ギャグ世界の知識を垣間見てしまった彼女の精神は崩壊し、重度の混乱状態に陥る。
「さぁ、一緒に演劇しましょ!」
 そんな彼女にカビパンはひょいと脚本を配る。早くも完成していた『ラヴラビ』次回作には、アンフェールも役者として参加するらしい。もちろん拒否権などはなく強制参加。このゴリ押しをうまく断れる知識は、彼女の全知の中にも存在しなかった。

「で、次の台本……主役は奇跡の美貌を持つ女公!?」
 同じ本を受け取ったセフィリカが、ぱらぱらとページを捲ってその内容を読み上げる。
 続編での突然の主役交代はだいたいコケるのだが、これを書いた人間は相当自信があるらしい。愛の意味をテーマとした前作とは、また違う切り口からの「愛」が物語られる。
「愛は美しい物語ばかりではない。悲しみも、憎しみも……また愛だ。今明かされる女公の過去!」
『唐突に知らない過去を真実のように語られるのただの恐怖よ』
 シェルファのツッコミも冴えるが、一度動きだしてしまった企画は坂を転げるが如し。
 すでに【寒風にも負けぬモノ】により観客も召喚され、俳優達の演技に合わせて小気味よい笑い声を上げるためにスタンバっていた。

「本の読みすぎで悲劇なんて予想できなかった。悲しみに満ちた真実に全米が泣いた」
 さらに台本を読み進めるセフィリカ。映画ではよくある煽りだが、ダークセイヴァーに米国はない。同じ脚本を受け取ったアンフェールのほうも「コレはどういうことなの?」と頭の上に疑問符を飛ばしまくっている。
「悲しみを断ち切る為、自らを捧げる決意の女公。これぞ愛であると……」
『今そういうの流行るの?』
 もしシェルファが人間態であれば首を傾げていただろう。現代の流行は分からないが、少なくともこの作品はソレ以前の問題のような気もする。仮にも敵の貴族のはずなのに、勝手に身を捧げることにされて向こうは納得できるのだろうか。

「なんなのよこれは……?!」
 もちろん納得できる訳がなかった。アンフェールが押し付けられた脚本のラストには、妙に雑な感じのある書き方で、本作のクライマックスとエンディングが記述されていた。
『アンフェールはいい人だった。彼女の死を無駄にしない為にも、私達は今後も良作を作るぞ。おー! とか言って、この屋敷から去っていく一同』
「ラヴ・ラビリンス~アンフェール女公と真の愛~ 完……って、私死んでるわよ?!」
 勝手に出演させられた挙げ句勝手に殺されて、本当に主役なのかと疑うばかりの扱い。
 猛抗議を行うもカビパンはスルー。セフィリカは台本を読み込むのに忙しい。唯一冷静なシェルファも残念ながら手も足も出ない状態である。

「私は女公をいい感じに上げつつ最後に華を持たされる悪姫かあ。ま、編集で何とかなるかその辺!」
 自分の役を把握したセフィリカはやる気満々で魔剣を構える。明らかに本気で戦う時の構えだが、ようは編集されるなら全力でボコボコにしても問題はない、という事らしい。
「ちょっとそこの魔剣、振り回されてないで止めなさいよ……!」
『ここだけ別の理が働いてる。止められない』
「なによ別の理って――……」
「隙あり」
 動揺の止まらないアンフェールの機先を制して【神薙ノ導】で斬り掛かるセフィリカ。
 強力な踏み込みで一気に間合いを詰め、全力の一撃を振り下ろす。見事に虚を突かれた敵はばっさりと切り裂かれ、真っ赤な血飛沫がドレスを汚した。

「あっごめん、手元が狂っちゃった」
「今のはどう見てもそういうレベルじゃ……!」
 セフィリカは抗議するアンフェールの戦闘技能や行動の癖を把握し、追撃を叩き込む。
 この技は彼女が修めた夕凪神無式剣術の基礎にして奥義のひとつなのだが、演劇でそれを使う時点でかなり殺る気である。シェルファのほうはやる気なさげだが、さりとて魔剣の切れ味が衰えるわけでもない。
「やめなさい、やめてったら……痛ぁっ?!!」
 どんな叡智も及ばぬギャグと理不尽の世界に巻き込まれ、ひどい目に合う第五の貴族。
 本当に「華を持たせる」気はあるのだろうかと疑問になる一方的な展開の裏で、観客はパチパチと拍手を送り、カビパンが誰にともなく一礼する。

「本当にありがとうございました」
「やかましいわよ!」

 局所的な好評を得た『ラヴラビ』の第二作目が、どう評価されるかはまだ分からない。
 ただ、この劇が完成する頃にはアンフェールは生きていないであろう事は確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
全を称するには随分と不足しているようだが

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

『煌皇』を以て高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全方向へ斉射
それを間断なく無限回実行
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす

防御も回避も余地がなければ、対応に悩まずとも良かろう
創世し最古の理に例外はない
阻むことも逃れることも叶わぬ
尽く消え失せるのみと知れ

※アドリブ歓迎



「全を称するには随分と不足しているようだが」
 『全知』と名付けられたアンフェール女公の紋章を、冷ややかな視線を投げかけるのはアルトリウス。原理という大いなる力を用いる彼からすれば、たかが寄生虫の、一世界に収まる程度の『全知』など、名前負けもいいところだ。
「言ってくれるわね……」
 視線を侮蔑と受け取ったか、アンフェールは【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】から重戦士と魔術師の霊達を召喚し、一斉に攻撃に掛からせる。怠惰な彼女が戦闘の代行に托むほどの精鋭揃いだが、果たしてその叡智は原理の前では通用するものか。

「戦況は把握している」
 迷宮攻略虫と同じように『天光』にて戦いの経過を見通してしていたアルトリウスは、敵意が自らに向けられたのを悟ると即座に『煌皇』を展開。盾にして刃となる十一の原理を無限に廻し、降り注ぐ魔術の砲撃や、突き掛かる重戦士の槍を阻み逸らし捻じ伏せる。
「っ……なに、その光は……魔術ではない……?」
 世界という枠組みの外側に位置する原理の法則は、やはりダークセイヴァーの既知のみを扱う『全知の紋章』では知り得ぬ事だったらしい。明らかに狼狽しているアンフェールを見て、アルトリウスはため息をひとつ――直後に反撃に転じる。

「行き止まりだ」
 紡ぐは【破界】。廻転する『煌皇』を以て無限に加速・循環する詠唱が、数瞬のうちに天を覆う数の魔弾を生成する。それらは蒼い光を放ちながらアルトリウスの周囲全方向へ斉射され、押し寄せる亡霊の軍団を掃討する。
「防御も回避も余地がなければ、対応に悩まずとも良かろう」
「な………ッ!!」
 その言葉通り、蒼光の魔弾は重戦士が装備する重厚な鎧や楯をかき消すように貫通し、射線上にいる敵を排除する。この輝きはあらゆる障害を無視し万象を根源から消去する、創世の権能が顕す力。全ては創世の記憶に飲まれ溶け消えるのだ。

「創世し最古の理に例外はない。阻むことも逃れることも叶わぬ」
 アルトリウスは『煌皇』による高速詠唱と『超克』による魔力供給によって同様の手順を間断なく繰り返し、戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす。これでは味方にも被害が及びかねないように見えるが、攻撃の対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動に設定されており、それ以外は「障害」として無視されるが故に影響は皆無だ。
「尽く消え失せるのみと知れ」
 蒼光に塗り潰されるように亡霊の軍団が消えていく。魔術ではないより根源的な力が、オブリビオンの存在を否定する。それは第五の貴族・アンフェールとて例外は無かった。

「最古の理……? 知らないわ、そんなもの……!」
 己の全知が及ばぬ事象への動揺を露わにしながら、宙に浮かぶ椅子に乗って逃げようとするアンフェール。だが今や魔弾の軌跡は屋敷中を満たしており、逃れる場所は皆無だ。
「ッ――!!」
 魔弾がかすめた肉体の箇所が消失し、澄ました美貌が苦痛に歪む。自慢の『紋章』の力を十全に発揮する機会に恵まれぬままに、怠惰なる魔典の虫は窮地に追いやられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
「知っている」か
半端に小賢しい奴が陥りがちな万能感だ
「知らない」だろうから教えてやる
そういうのを、余所の世界では井の中の蛙、と言うそうだ(挑発)

そして、このような戦闘用衣装があることも知らないだろう
【狂乱の斬り裂き兎】でバニーガールの姿に大真面目に変身

兎の脚力を活かした疾走(ダッシュ)と空間を足場にした跳躍(ジャンプ)で三次元走法で縦横無尽に駆け巡る
告死の大鎌に死の呪力を纏い(属性攻撃)、重戦士の鎧の隙間を狙って【切断】、大振りで【なぎ払って】【斬撃波】を放って魔術師の首を斬り飛ばす
術の威力は大したもの……だが、重戦士の身のこなしがお粗末
この手の召喚は使い手自身の強さも重要と識れ



「『知っている』か。半端に小賢しい奴が陥りがちな万能感だ」
 地の底に引きこもったまま全てを知った気でいる怠惰で傲慢な吸血鬼に、オリヴィアは嫌悪と蔑みの情を隠そうともしない。たかだか一世界の知識を網羅しただけで『全知』を称するなど、異世界を渡り歩く猟兵からすれば見識が浅いとしか言いようがないだろう。
「『知らない』だろうから教えてやる。そういうのを、余所の世界では井の中の蛙、と言うそうだ」
「――……ッ!!」
 痛烈な皮肉を交えた挑発。怠惰なれども貴族としてのプライドは高いアンフェールは、この罵倒を看過することができなかった。怒りに形相を歪めて魔導書のページを捲る――よりも速く、オリヴィアはすでにユーベルコードを発動させていた。

「そして、このような戦闘用衣装があることも知らないだろう」
「……?! は、え、何よその格好は……??」
 【狂乱の斬り裂き兎】に変身したオリヴィアの衣装を見て、アンフェールが困惑する。
 それは俗にバニーガールと呼ばれる格好で、本来は戦装束では無いはずだが、着ているオリヴィアは大真面目だ。スタイルの良さがこれでもかと強調される衣装に、武器として持った赤い大鎌の組み合わせが背徳的なまでにアンバランスである。
「し、知らない……一体その格好が戦いで何の役に立つというの……?!」
 至極当然にも思える疑問を口にしつつ、アンフェールは【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】から配下の軍勢を再召喚する。強壮なる重戦士と英邁なる魔術師の亡霊軍団に敵意を向けられて、バニーガール一人では為す術は無いかに思われた。その瞬間までは。

「天来せよ、告死の大天使。月の神秘と魔術の秘奥、そして魂を狩る大鎌を与え賜え――!」
 高らかに謳い上げながら、オリヴィアはたんっと床を蹴って走り出す。ただ姿を模しただけではない、脚力さえも兎相当に強化された彼女の疾走は風よりも速く、空間を足場にした跳躍で空を翔けることさえ可能とする。
「なっ、疾い……嘘でしょう?!」
 アンフェールが困惑する刹那に敵陣に切り込んだバニーは、重戦士の鎧の隙間を狙って死の呪力を纏った「告死の大鎌」を振るう。重装備の戦士ではその動きについて行けず、楯で防ぐ間もなくその身を切断された。

「っ、何をしているの、早く仕留めなさい!」
 引きつったアンフェールの号令のもと、後衛の魔術師達が魔法による砲撃を連発する。
 だが床や壁や天井、さらには空間を足場にした三次元走法で縦横無尽に戦場を駆け巡るオリヴィアにただの砲撃では当たらず、的を外した魔法は屋敷を破壊するばかり。
「術の威力は大したもの……だが、重戦士の身のこなしがお粗末」
 斬り裂き兎は砲撃を避けつつ鈍重な前衛の隙間をすり抜けて後衛と接敵し、大鎌による大振りの一撃を見舞う。斬撃の衝撃波が敵陣をなぎ払い、魔術師共の首を斬り飛ばした。

「この手の召喚は使い手自身の強さも重要と識れ」
「くぅ……ッ!!」
 采配が杜撰だと皮肉を突きつけられ、アンフェールの表情が屈辱と怒りでさらに歪む。
 だが、たった1人のバニーガールにこうも自軍を翻弄されては返す言葉もないだろう。頭の兎耳カチューシャをぴこぴこと揺らしながら、オリヴィアは全知を謳う愚者に迫る。
「これが、異世界の戦闘用衣装の力だというの……?!」
「ひとつ知識が増えたようだな。それを活かす機会は与えないが」
 新たな知見を得た代償は、彼女自身の生命。告死の大鎌にて一瞬のうちに切り裂かれたアンフェールは信じられないという驚愕の思いのまま、自らの鮮血に塗れるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
警告はありがたいけど…。
標的にされた貴女には悪いけど、これ以上の悲劇は食い止めないとね…。

【九尾化・天照】封印解放…!

わたしの力や呪術・術式はこことは違う世界…サムライエンパイアの技術…。
この世界の事を知り得たとしても、わたしの全てを知る事は不可能だよ…。

この子達も異世界(A&W)出身だしね…。

「キュ~!」(ブレスで援護して魔導書を落とす仔竜達)

天照で光速化し、光を操作したレーザーで牽制を掛けながら、光速で駆け回り、【呪殺弾】や呪力の縛鎖が発動する呪符を敵の周囲に展開…。

展開が済んだら凶太刀と神太刀による光速攻撃で敵を呪術トラップへ追い込み、一斉起動…。
術式で追い込み、二刀で仕留めるよ…



「警告はありがたいけど……」
 退くか戦うかの選択を突きつけられるまでもなく、璃奈の行動は決まっていた。狂えるオブリビオンが迷宮から迫る現在、異端の神に第五の貴族の肉体を奪わせないためには、ここで彼奴を討ち果たす他に方法はない。
「標的にされた貴女には悪いけど、これ以上の悲劇は食い止めないとね……」
「できると思っているの……? 無知で愚かなあなた達がこの私に……ッ?!」
 対峙するアンフェールは第五の貴族らしい傲慢な態度で応じるが、その言葉は最後まで続かなかった。璃奈の体が突如として目も眩むほどの光に包まれ、視界を遮ったからだ。

「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 璃奈が発動したのは【九尾化・天照】の力の解放。銀色の髪は金に染まり、妖狐の尾は九尾となり、燦然たる太陽の光を――この世界からは失われて久しい輝きを身にまとう。その姿はアンフェールを瞠目させるに足るものだった。
「わたしの力や呪術・術式はこことは違う世界……サムライエンパイアの技術……。この世界の事を知り得たとしても、わたしの全てを知る事は不可能だよ……」
 『全知の紋章』でも知りえない異世界の術法。それを見せつけられた相手の表情は酷く動揺している様子だった。なまじ知恵と知識が豊富なだけに、それが及ばない猟兵の技術や魔術の数々に理解が追いついていないようだ。

「っ……だったら解明してやるわ……今、ここで!」
 アンフェールは様々な色をした【自著魔典―エレメンタル・スプレッド―】を展開し、属性魔法弾による弾幕攻撃を仕掛ける。自分が知らない魔術など存在してはならないと、その反応はヒステリックでさえあった。
「驚いているね……それとも焦ってる……?」
 璃奈は天照の封印解放によって得た光速化の能力で、目にも留まらず戦場を駆け回る。
 魔法弾の嵐の中をかい潜り、光を操作したレーザーで牽制を掛けながら、巫女装束から呪符を取り出して敵の周囲に配置していく。冷静さを欠いたアンフェールはまだ、彼女の仕込みに気付いていないようだ。

「この子達も異世界出身だしね……」
「キュ~!」
 さらに璃奈が連れてきた仔竜達も、ブレスによる援護で魔導書を落とし、彼女の戦いをサポートする。幼いとはいえドラゴンのブレス、その威力は決して侮れるものではない。
「異世界の竜……? なぜそれが猟兵と行動を共に……?」
 アンフェールが困惑と動揺の度合いを深めている内に、魔剣の巫女による呪符の展開は完了していた。攻め時と判断した璃奈は妖刀「九尾乃凶太刀」並びに「九尾乃神太刀」で二刀の構えを取り、光速の歩法にて一気に間合いを詰める。

「さあ、仕留めるよ……」
「っ、舐めないで……!」
 光速の攻撃にさえ辛うじて反応できたのは、第五の貴族の面目躍如と言えるだろうか。
 浮遊する椅子を操作して、妖刀の刃を躱すアンフェール。だが逃れた先にあったのは、すでに配置された呪術トラップの真っ只中だった。
「掛かったね……」
「なッ?!」
 敵を予定したポイントに追い込んだところで、璃奈は展開した呪符を一斉起動。迷宮で仕掛けたものと同様の呪殺弾や呪力の縛鎖が符から飛び出し、四方八方から襲い掛かる。予想外かつ未知の攻撃にアンフェールは撃ち抜かれ、移動手段ごと全身を拘束される。

「これで終わり……」
 エンパイアの術式に追い詰められた敵に、璃奈は最速かつ渾身の二刀を振り下ろした。
 いずれ劣らぬ呪力を秘めた光速の斬撃を受ければ、第五の貴族とて無事では済まず――屋敷を赤く染める鮮血と、絹を裂いたような悲鳴が辺りに飛び散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
ごきげんよう、アンフェール女公。
わたしの事も「知っている」みたいだけど、わたし達猟兵は数多の世界を渡り戦っているわ。本当に全てを知ってるのかしら?

貴女に教えてあげるわ。本では知り得ない強大な存在フォーミュラーもいるってコトを。

【ブラッディ・フォール】で「帝竜ヴァルギリオス」の姿(魔力で帝竜の姿を再現構築し、外殻として纏った姿)へ変化。
【スペクトラル・ウォール】を展開して重戦士を寄せ付けず、魔術師の魔法も防御。【ヴァルギリオス・ブレス】で霊達も敵本体もまとめて吹き飛ばすわ

その後、再度【ブラッディ・フォール】で「大祓骸魂」の姿(衣装)へ変化。
世界すらも殺す【生と死を繋ぐもの】で紋章を狙い殺すわ



「ごきげんよう、アンフェール女公」
 第五の貴族に名を連ねる女吸血鬼に、フレミアは真祖の血を継ぐ令嬢として挨拶する。
 礼節に則った振る舞いをしつつも、その表情は謙遜ではなく自信に溢れている。たとえ全知を称する力が相手だろうと、恐れる必要はないと言わんばかりに。
「わたしの事も『知っている』みたいだけど、わたし達猟兵は数多の世界を渡り戦っているわ。本当に全てを知ってるのかしら?」
「…………っ」
 戦う前なら「当然よ」と迷いなく答えたかもしれない。だが今のアンフェールは無言。激戦により傷ついた体が、『全知の紋章』を以てしても識れぬ猟兵の力を証明していた。

「貴女に教えてあげるわ。本では知り得ない強大な存在(フォーミュラー)もいるってコトを」

 堂々たる宣言と共にフレミアは【ブラッディ・フォール】を発動。群竜大陸の長にしてアックス&ウィザーズのオブリビオン・フォーミュラ「帝竜ヴァルギリオス」の力と姿を我が身を依代として顕現させる。
「なッ……なに、このドラゴンは?!」
 魔力で再現構築された八つ首の帝竜の姿を前にして、アンフェールは驚愕を隠せない。
 このような魔物は彼女が読んだどの文献にも記されていなかった。異世界の竜の中でも最上位に座する、かつて世界を滅ぼしかけた存在。それがこのヴァルギリオスなのだ。

「こ……こんなもの、虚仮威しに決まっているわ」
 怖気づきかけた己を怒りで奮い立たせ、【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】から亡霊達を召喚するアンフェール。だが重厚な鎧と楯で武装した重戦士達も、強力な魔法を操る魔術師達も、帝竜の威容の前ではひどくちっぽけに見える。
「虚仮威しかどうか、確かめてみればいいわ」
 フレミアの本体は外殻として纏ったヴァルギリオスの再現体と、八つの属性による三重のバリア【スペクトラル・ウォール】に守られている。その防御力は槍を携えた重戦士の突撃を寄せ付けず、魔術師の魔法も弾き返す。触れることすら叶わぬ鉄壁の護りだ。

「効いていない……?!」
「今度はわたしの番よ」
 亡霊の軍団がまるで歯が立たないのを見て動揺するアンフェールに、フレミアは反撃の【ヴァルギリオス・ブレス】を放つ。八本の首から撃ち出される炎水土氷雷光闇毒の八属性ブレスは、かつて多くの猟兵達を苦しめた帝竜の大技である。
「消し飛びなさい!」
 戦場に吹き荒れた属性の息吹が、霊達と吸血鬼をまとめて吹き飛ばす。天災にも等しいその威力を受けて原型を保てる者は少なく、惨状の跡地にはアンフェールだけが残った。

「く、ぅ……やってくれたわね……」
 少なからぬダメージを負いながらも、アンフェールはまだ高圧的な振る舞いを見せる。
 しかし、それはもはや貴族の余裕ではなく虚勢に過ぎない――追い打ちをかけるべく、フレミアは再度【ブラッディ・フォール】を発動し、白い着物姿に変身する。
「特別よ。貴女にはもう一つ、フォーミュラーの力を見せてあげる」
 その姿は幽世とUDCアースを危機に陥れた究極妖怪『大祓骸魂』のもの。その手に携えた懐刀【生と死を繋ぐもの】には、時満ちれば世界すらも殺す妖力が秘められている。

「その自慢の紋章、ここで『殺す』わ」
 複製された懐刀が宙を舞い、アンフェールの体に寄生した『全知の紋章』を狙い撃つ。
 その一振りが見事標的に突き刺さった瞬間、凄まじい痛みに女吸血鬼の表情が歪んだ。
「な……ぐぅッ!!!?」
 第五の貴族の権勢の象徴であり能力の源である『紋章』。そこに直接ダメージを受けるのが致命傷に繋がることを猟兵達は知っている。椅子の背もたれに体を預け、ぐったりと項垂れるアンフェールの様子を見ても、それは間違いないようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…随分な御挨拶だな
だがまぁ安心しろ、私とてここに長居するつもりはないさ

UCを発動
パワードスーツを召喚、装着する
敵が展開した魔導書の群れにグレネードランチャー付きビームライフルの銃撃を浴びせる
さらに背部ブースターを噴かせ、レーザーブレードで切り込んで行く

さて、私の事を『知っている』と言ったが…
もっともっと理解を深めてもらおうじゃないか

敵の魔法弾をパワードスーツの装甲で防御したら、カウンターで肩部レーザーガトリング砲の乱れ撃ちを行う
魔法とは違った指向性エネルギー兵器を存分に味わうと良い

新しい知識を得る事は快感だろう?
礼はいらないさ…ゆっくり知識を深めていくと良い、骸の海の底でな


肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

悪いけれど、帰るのも死ぬのも却下ね
お前を殺して神も殺さなきゃ行けないから、賢しら顔で『知った風な事』を囀ずるの止めて、骸の海に還りなよ


……とはいえ、私の手段は九割この世界のモノだから参ったね
譲り受けたこのシャリオだけが頼りって訳だ
UDCアース製のバイクなら、少しは虚を付けるだろう
騎乗してエンジン全開、黒剣は槍形態で
やってることは騎馬と同じ事だから対処法を思い付かれてしまうかもしれないから、召喚から攻撃までは最速、最短で

出来れば他の仲間と連携したいね、私は弱いから
仲間の隙を突くか、それとも仲間の為に隙を作るのか、それは臨機応変にいこう



「フン……随分な御挨拶だな」
「悪いけれど、帰るのも死ぬのも却下ね」
 いかにも貴族らしい傲慢を絵に描いたような敵の態度に、キリカとミサキは冷ややかに応じる。死の罠の迷宮を踏破してここまで来た彼女達が、今さら手ぶらで帰る訳が無い。
「だがまぁ安心しろ、私達とてここに長居するつもりはないさ」
「お前を殺して神も殺さなきゃ行けないから、賢しら顔で『知った風な事』を囀ずるの止めて、骸の海に還りなよ」
 ここで第五の貴族を討つのは、災厄の誕生を阻止する過程にすぎない。先を見据えた上で戦闘態勢を取る二人に、『怠惰なる魔典の虫』アンフェールは苛立ちを隠せなかった。

「どいつもこいつも、この私を虚仮にして……調子に乗るなッ!」
 余裕と優雅をかなぐり捨てたアンフェールが展開するのは、百を超える魔導書の群れ。それぞれ表紙の色が異なる【自著魔典―エレメンタル・スプレッド―】から様々な属性の魔法弾が放たれ、二人の猟兵に降り注いだ。
「その全てを蹂躙してやろう……Viens! Conquérant!」
「嘶け! 轢き裂け! 踏み砕け! 来い、街路の騎馬!」
 対するキリカはパワードスーツ【コンケラント】を召喚・装着し、ミサキは大型二輪車【Chariot】を召喚・騎乗する。どちらもUDCアースのテクノロジーが生み出した兵器の力、この世界の水準をはるかに上回る科学の力だ。

「さて、私達の事を『知っている』と言ったが……もっともっと理解を深めてもらおうじゃないか」
 漆黒のパワードスーツに身を包んだキリカは、分厚い装甲で敵の魔法弾を防御すると、肩部レーザーガトリング砲によるカウンターを行う。驚愕の勢いで乱射される光の矢が、浮遊する魔導書に次々と突き刺さった。
「頼むよシャリオ、君のスピードを見せる時だ」
 一方のミサキは黒い影を纏ったバイクを巧みに操り、弾幕の中を縦横無尽に駆け巡る。
 荒馬の嘶きを連想させるエンジンの唸り、屋敷の床に刻まれるタイヤの轍。騎馬に似てはいても明確に違うその存在は、ダークセイヴァーの吸血鬼を動揺させた。

「なんなの、その鎧と馬は……そんなの私は知らないわよ?!」
 この世界の叡智の外にある、未知のテクノロジーに驚愕するアンフェール。あっさりと露呈した『全知の紋章』の限界に乗じて、二人の猟兵はすかさず防御から攻勢に転じる。
(……とはいえ、私の手段は九割この世界のモノだから参ったね)
 うまく虚を突けたものの、ダークセイヴァー出身のミサキにとってこの敵が厄介なのは違いない。やっていることは騎馬と同じである以上、対処法を思い付かれてしまう可能性もある。ゆえに仕掛けるのは最速、最短で――敵が動揺から立ち直る前に仕留める。

(出来れば他の仲間と連携したいね、私は弱いから)
 バイクを駆りながらミサキがちらっと視線を送ると、その意図はキリカにも伝わった。
 彼女は手に持ったグレネードランチャー付きビームライフル「Colère(憤怒)」の銃撃を魔導書の群れに浴びせ、敵の攻撃を牽制しながら背部ブースターを噴かし突撃する。
「魔法とは違った指向性エネルギー兵器を存分に味わうと良い」
「ッ、魔力を感じない……この光は何なのっ!?」
 魔法でもないのにこれだけの威力を持つ光線を撃てる機械とは、完全にアンフェールの理解を越えていた。疑問と困惑が思考を鈍らせているうちに、二人は距離を詰めていく。

「不味い……ッ」
 危機を悟ったアンフェールは【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】から肉壁となる重戦士の霊達を召喚するが、その対応はもう遅きに失していた。彼らが楯を構える前に、切り込んできたキリカがレーザーブレード「黄泉返太刀(ヨミガエシノタチ)」を振るう。
「新しい知識を得る事は快感だろう? 礼はいらないさ……ゆっくり知識を深めていくと良い、骸の海の底でな」
 閃光の刃が敵陣をなぎ払い、敵将に通じる進路を切り開かれる。キリカはスーツの下で冷笑を浮かべながらアンフェールに告げ――直後に、彼女の背後から一騎の影が駆ける。

「君の喚き声は聞き飽きたよ。後がつかえてるんだ、退場してもらおう」
 キリカが作りだした勝機を突いて、エンジンを全開にして爆走するミサキ。いとおしき恋人から譲り受けた愛騎は彼女の意思に応え、これまで以上のスピードで戦場を駆ける。
 その手に携えた「DeicidaMan」は黒槍の形態を取り、さながら槍騎兵のような構えで、彼女はバイクの速度、質量、膂力、鋭さの全てを活かしたランスチャージを放った。
「ッ、がはぁッ――!!!」
 勢いの乗った猛烈な一撃が、避ける間もなくアンフェールの胸を深々と串刺しにする。
 体に風穴を開けられた彼女はそのままバイクに追突された衝撃で吹き飛び、屋敷の壁にしたたかに叩きつけられると、鮮血の跡を引きながらずるずると床に倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

嵐さんがアンフェールさんに有効な手段で攻撃してくれますので、私は前衛で彼女や魔導書の攻撃を防ぐ盾役となり、魔導書を破壊します。

UCにて、かつて見て触れた物品、ブラキエルが着用した『絶対物質ブラキオンの鎧』を創造して着ます。
そして第六感と見切りで相手の攻撃を読んで、鎧で防ぐ。

弱点である隙間を攻撃されない様に鎧にオーラ防御を纏い、天耀鏡でも盾受け。
嵐さんに攻撃が行きそうになれば、かばいますよ。
アンフェールさんには未知の物質ですから、なぜ攻撃が弾かれるのか判らないでしょうね。

煌月に神罰と炎の属性攻撃を籠め、衝撃波を伴うなぎ払い・範囲攻撃にて魔導書を纏めて燃やして粉砕します。


鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

えーと、ここに来る前に、この前の戦争でお世話になった妖怪博士に相談して、メモを貰ってきたんだ。
いざとなったらこの質問をぶつけろって。

「カクリヨファンタズムにおける妖怪の感情摂取とその影響について、『UDCアース』『信仰心』『概念消化吸収』『人間の記憶』以上4つのワードを用い、400字以上で論じよ。既存の論文より引用する場合は論文名とその著者、引用箇所を明記のこと」
って質問を《真実を知る叡智の鏡》に乗せて答えさせる。

ちゃんと答えねーと、その鏡像、アンタが一番苦手なやり口で攻撃してくっから、頑張れよ。
(覚えのある魔術ばかり――故にこそ回避も防御も難しい攻撃を容赦なく放つ鏡像)



「第五の貴族アンフェール。この世界を取り戻す為に貴女を討ちます」
 神力を籠めたオリハルコンの薙刀を突きつけて、詩乃は怠惰なる魔典の虫に宣言する。
 それは彼女の本心からの宣戦布告であると同時に、敵の注意を引き付ける策でもある。今の詩乃には迷宮の攻略中に合流を果たした仲間が――渡り鳥の嵐がいる。
(嵐さんがアンフェールさんに有効な手段で攻撃してくれますので、私は前衛で盾役となりましょう)
 敵の攻撃を一手に防ぎ止めるという危険な役割。だが彼女はそれを進んで引き受けた。それだけ守りに自信があるとも取れるが、同時に仲間への信頼なくしてはできない事だ。

「猟兵如きが調子に乗って……貴女達のすることなんて全てお見通しなのよ!」
 度重なる苦渋を味わったことで、アンフェールにもはや余裕はない。吸血鬼の傲慢さを露わにして叫ぶと、展開した【自著魔典―エレメンタル・スプレッド―】より属性魔法の弾幕を放つ。手負いとはいえ、魔術師としての強大な魔力は今だ健在なようだ。
「我が意を以って、此処に存在を具象します」
 詩乃は【神意具象】を発動、かつて見て触れた物品の中から、アックス&ウィザーズに降臨した猟書家、大天使ブラキエルが着用した『絶対物質ブラキオンの鎧』を創造する。

「そんな鎧、粉々にして――なッ?!」
 詩乃を打ちのめす筈だった魔術の弾幕は、彼女が着用したブラキオンの鎧に弾かれる。
 本気で攻撃を仕掛けたにも関わらずキズ一つ付いていない鎧の強度に、アンフェールは激しい動揺を見せた。
(アンフェールさんには未知の物質ですから、なぜ攻撃が弾かれるのか判らないでしょうね)
 未知の単一原子で製作されたこの鎧は、どんな攻撃でも絶対に破壊されないと言われるほどの防御力を誇る。本来なら大天使ブラキオンのみが授けることのできる代物、いくら第五の貴族でも知るすべは無いだろう。

「何、その鎧は金属? いえ、それともまったく別の素材で……?」
 未知の物質を目の当たりにしたアンフェールの思考は、混乱と疑問でいっぱいになる。いかに強固とはいえ鎧として成形されている以上、関節などの隙間が弱点になるのだが、そこまで頭が回らないほど狼狽している。
「その程度ですか? 『全知』も大したことはありませんね」
 詩乃は念を入れて鎧の上からオーラの護りを纏い、盾として「天耀鏡」を滞空させる。
 そして研ぎ澄まされた第六感と見切りのセンスを活かして魔導書からの攻撃を読んで、もっとも防御が厚い部分で防ぐ。いかなる属性の魔力弾も、絶対物質の前では無力だ。

「くっ……アレを破壊するにはどうしたら……」
「あー、熱くなってる所悪いけど、ちょっといいか」
 詩乃の守備を突破できずに業を煮やすアンフェールに、ふと横から声をかけたのは嵐。
 盾役の相方に対して攻撃を担当する彼は、その割に大仰な武器を構えるわけでもなく、ごそごそとポケットの中を漁っている。
「えーと、ここに来る前に、この前の戦争でお世話になった妖怪博士に相談して、メモを貰ってきたんだ。いざとなったらこの質問をぶつけろって」
「ヨウカイ博士? 質問? いったい何の話をしているの?」
 あったあった、と彼が取り出したのは小さく折りたたまれたメモ用紙。何をするつもりなのか読めずに困惑するアンフェールに、異界の知識と理論に基づいた質問が放たれる。

「カクリヨファンタズムにおける妖怪の感情摂取とその影響について、『UDCアース』『信仰心』『概念消化吸収』『人間の記憶』以上4つのワードを用い、400字以上で論じよ。既存の論文より引用する場合は論文名とその著者、引用箇所を明記のこと」

「…………は? えっと、今なんて?」
「だから、カクリヨファンタズムにおける妖怪の感情摂取とその影響について……」
 繰り返し質問文を読み上げる嵐。だが何度聞かされてもアンフェールは理解できない、できるはずもない。そもそもカクリヨファンタズムとは何処なのかも知らず、妖怪というヒトの感情を糧として生きる種族について聞いたことも無いだろう。
「制限時間はねーけど、答えるまで逃さないからな」
 嵐は問題と同時に【真実を知る叡智の鏡】を発動し、屋敷のガラス窓からアンフェールにそっくりの鏡像を召喚する。ソレは虚ろな眼差しで本物を見つめると、文字が鏡写しになった魔導書を展開し――属性魔術による弾幕で本物を攻撃し始めた。

「なっ……!?」
 自分の鏡像に自分とまったく同じ手段で襲われるという、予期せぬ事態がアンフェールの混乱に拍車をかける。飛んでくるのは覚えのある魔術ばかり――故にこそ回避も防御も難しい攻撃パターンばかりを容赦なく放ってくる。
「ちゃんと答えねーと、その鏡像、アンタが一番苦手なやり口で攻撃してくっから、頑張れよ」
「だ、だったら貴方を倒せば、この偽物だって消えるでしょうッ」
 鏡像とまともに戦ったところで、攻撃手段が同じでは無駄に消耗するばかり。さりとて質問には正解する糸口すら見つけられない。アンフェールに残された活路は術者である嵐を倒すことしか無かったが――。

「できるとお思いですか?」
 魔力の弾幕に狙われた嵐を、詩乃が割り込んでかばう。攻撃の矛先を変えたところで、ブラキオンの鎧を纏う彼女の護りを突破する手段がなければ通用しないのは同じことだ。
「その危険な本は焼き清めます!」
 絶対物質の鎧と神鏡で弾幕を受けきった詩乃は、薙刀「煌月」に神罰と炎の力を籠め、反撃に一閃。刃から放たれた衝撃波が熱風を巻き起こして、魔導書を焼き払っていく。

「私の本を?! よくも……ッ!」
 大事な蔵書を焼かれたアンフェールはこれまでにない怒りを見せるも、再度反撃を行う余裕はなかった。攻撃の起点となる魔導書を失った彼女を見て、鏡像がここぞとばかりに攻撃の苛烈さを増したからだ。
「ほら、おれはまだ答えを聞いてねーぞ。400字以上でな」
「そんなの、分かるわけないじゃない! あぐっ?!」
 後ろのほうでしれっと様子を見ている嵐に、怒りの叫びを叩きつけるだけでも精一杯。
 攻守ともにピタリと嵌った二人の連携に翻弄され続け、じわじわと追い詰められていくアンフェールであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
歩行と脚部スラスター推力移動織り交ぜ接近
剣握る手首関節を360度高速回転
グラインダーの如く切り刻み

ウォーマシンは…やはりご存知ではないようですね

貴女の不勉強では断じてありません!
技術の発展の方向が違うだけなのです
時と機会があれば知識を修めることも出来るでしょう

…それを与える気は毛頭ありませんが

格納銃器の騙し討ちで魔導書握る手に衝撃与え武器落とし
すかさず英知対策で持ち込んだUCをジェット噴射で射出し叩き込み

(第五の貴族故に弾頭が貫通せず浮かぶように壁に磔)

非常に申し上げにくいのですが、これは武器ではなく…
発破用の爆弾なのです

半径1mに設定し起爆
爆風盾受け

(蔵書目録は…譲って頂けないでしょうね)



「何なのよ、こいつらは……ッ!」
 次々に繰り出される「未知」の連発に、アンフェール女公はすっかり翻弄されていた。
 様々な世界から集った猟兵が、おのおの磨き上げた知識や技術を叩き込んでいるのだ。『全知の紋章』の力を以てしても、理解が追いつかないのは当然のことだった。
「トリテレイア・ゼロナイン、参ります」
 そこに切り込んできたのはトリテレイア。歩行と脚部スラスターによる推力移動を織り交ぜた独自のステップで迫り、剣を握った手首の関節を360度高速回転。グラインダーの如く円の軌道を描く刃が、動揺するアンフェールの身体を切り刻んだ。

「痛ッ……今度は何なの、こいつはッ?!」
「ウォーマシンは……やはりご存知ではないようですね」
 こちらの動きを見たアンフェールの反応から、トリテレイアは確信を得る。彼の種族はそれ自体が異世界の技術の結晶――古代銀河帝国時代に量産された人型戦闘ロボット軍団の生き残りなど、この世界の住人の知識はおろか想像すら超えた産物だろう。
「貴女の不勉強では断じてありません! 技術の発展の方向が違うだけなのです」
 慰めになるかは定かではないが、狼狽する女吸血鬼に機械騎士は伝える。魔法や魔物、異端の神々といった超常存在が跋扈するこの世界では、科学の発展が立ち遅れるのは当然のこと。支配層である第五の貴族でも科学知識の理解が浅いのは仕方がない部分もある。

「時と機会があれば知識を修めることも出来るでしょう……それを与える気は毛頭ありませんが」
 かりそめの全知が異世界の知識すら網羅した、真の全知になりうる未来はここで詰む。
 人体では不可能な動きにアンフェールが戸惑っているうちに、トリテレイアは魔導書を握る手に照準を合わせ、格納銃器による騙し討ちを仕掛ける。
「こいつ……きゃッ?!」
 苛立ちに任せて魔導書を叩きつけようとしていたアンフェールは、騎士の装甲の中から突然飛び出してきた銃身に驚き、至近距離で撃ち込まれた弾の衝撃で本を取り落とした。

(魔術師が物理に訴えるとは、相当に追い詰められている証左でしょう。今が勝機です)
 すかさずトリテレイアは今回の戦闘用に持ち込んだ、長くて太い杭状の装備を構える。
 先端部がドリルとなったそれは後端部のジェット噴射で射出され、巨大な槍か矢のように標的に叩き込まれた。
「あぐぅッ!!!?」
 第五の貴族の高い耐久力故にか、弾頭はアンフェールの身体を貫通せず、射出時の勢いのまま壁際まで追い詰める。半ば宙に浮いた状態で磔にされた彼女は、苦痛と怒りに顔を歪めながら杭を引き抜こうとするが――。

「心臓を杭で貫けば吸血鬼が死ぬとでも思っているのかしら。御伽噺の読みすぎよ!」
「いいえ。非常に申し上げにくいのですが、これは武器ではなく……」
 もがくアンフェールの様子を確認しながら、トリテレイアは重質量大型シールドを前方に構える。その巨体が隠れるほどの大盾を壁に、まるで何かに備えるかのようにしつつ、宇宙の知識を持たぬ女吸血鬼に彼は種明かしをする。
「……発破用の爆弾なのです」
 元は惑星級の超巨大宇宙生物に対抗するために用意された【小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置&起爆制御装置】。その杭が武器どころか兵器ですらない事実が明かされた直後、設定された起爆タイマーが作動する。

「――――ッ!!!!!!?」
 二次被害を抑えるべく半径1mに爆破範囲を制御された杭状爆弾の爆風と爆炎は、球状の炎となってアンフェールを呑み込んだ。小惑星すら破壊する膨大な熱量を受けた彼女の体は焼けただれ、全身の骨がバラバラになるような衝撃を味わいながら吹き飛ばされる。
(蔵書目録は……譲って頂けないでしょうね)
 余波の爆風を盾で受け止めながら、トリテレイアは思考の隅でそんな事を考えていた。
 ここまでされた相手が、目録どころか紙片一枚すら譲ってくれるとは考えがたいが――仮に断りなく「回収」するとしても、文句を言うであろう相手の命運は尽きつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…他の猟兵達が見せた知識を随分と警戒しているみたいね
全知と宣いながらあの体たらくでは無理も無い話だけど…

【吸血鬼狩りの業】を用いた"写し身の呪詛"の残像や"黄金の楔"の投擲、
降霊した大鎌による呪詛の斬擊波や、
"精霊結晶"の乱れ撃ち等を敵に防がせて油断を誘う

これも防がれるなんて…っ

…認めるわ、どうやら私とお前の相性は最悪だと…

だけど、だからといって屈する訳には…!

敵の反撃は積み上げてきた戦闘知識を頼りに致命傷を避け、
第六感が敵の油断を捉え好機と判断したならばUC発動
太陽の魔力を溜めた宝石を召喚して光属性攻撃の光線を放つ

…この瞬間を待っていたわ

最小の輝きですら世界を照らしうる……ご存知、太陽の光よ



「ッ、クソ……調子に乗らないでよ、人間共が……!」
 手負いの獣のような形相で、肩で息をしつつ猟兵達を睨めつけるアンフェール。もはや余裕の一片さえ感じられない様相は、それだけ彼女が窮地に立たされている証明だった。
「……他の猟兵達が見せた知識を随分と警戒しているみたいね。全知と宣いながらあの体たらくでは無理も無い話だけど……」
「煩いッ!!」
 ここまでの戦いの模様を観察していたリーヴァルディの指摘に、彼女は眉をつり上げて一喝する。地の底で読書を通じて得た膨大な知識が、猟兵相手にはまるで通用しなかった事実に、あるいは肉体の傷以上にいたくプライドを傷つけられた様子だ。

「それなら貴女の力も見せてみなさい、ダンピールッ!」
 怒りのままに【自著魔典―エレメンタル・スプレッド―】を展開し、属性魔術の弾幕を放つアンフェール。リーヴァルディは"写し身の呪詛"から創造する残像を囮にして回避しようとするが、魔力弾の照準は常に本物のみに向けられていた。
「私達ヴァンパイアを殺すために最適化された技術。全部知っているのよ!」
 幾多の吸血鬼とその眷属共を葬ってきたリーヴァルディの【吸血鬼狩りの業】。しかし『全知の紋章』を宿す彼女には通じない。刺されば拷問具に形を変える"黄金の楔"の投擲や、死者の霊を降ろした大鎌による呪詛の斬撃波――手を変え品を変え攻撃を仕掛けてみても、尽く回避されるか魔術によって無効化される。

「これも防がれるなんて……っ」
 呪術以外の手段ならばどうかと取り出した"精霊結晶"の乱れ撃ちも、結晶ごとに対応した魔力弾で撃ち落とされる。あくまで「この世界」の事象に限るのであれば、敵が全知を謳うのもただのフカシではないことを、リーヴァルディは実感する。
「……認めるわ、どうやら私とお前の相性は最悪だと……」
 ダークセイヴァー出身であり、猟兵としての主な活動範囲もこの世界である彼女には、他の猟兵達のような異世界の技術・知識に根ざした攻撃手段に乏しい。吸血鬼狩人として洗練された技が、この第五の貴族には通用しないというのは皮肉な事実であった。

「だけど、だからといって屈する訳には……!」
「無駄よ、さっさと諦めなさい」
 降り注ぐ反撃の魔力弾を、積み上げてきた戦闘知識を頼りに回避するリーヴァルディ。どうやら調子を取り戻してきたのか、魔導書を操るアンフェールの口元には笑みが戻る。
 攻撃手段を全て見切られている状態では、致命傷を受けないようにするだけで精一杯。打つ手は思い付かず、防戦一方のまま無駄な足掻きをするしかない――。
(……と、思っているのでしょうね)
 ここまでの展開は全て敵を油断させるための布石。リーヴァルディの第六感が、全知に傲った女吸血鬼が気を緩めた隙を捉える。それを好機と判断した彼女は【変成の輝き】を発動し、ずっと温めていた本命の攻撃を仕掛けた。

「……この瞬間を待っていたわ」
「ッ!?」
 リーヴァルディの手元に召喚される一粒の宝石。その輝きは闇に包まれた地底の戦場を明るく照らしだす。常に夜が支配するこの世界では、たとえ地上でもこれほどの明るさに見舞われる時はないだろう。
「この光は、まさか……ッ!!」
「最小の輝きですら世界を照らしうる……ご存知、太陽の光よ」
 吸血鬼にとっては天敵となる、太陽の魔力を溜めた宝石。これを召喚したのは吸血鬼狩りの業とは系統を異にする、親友から贈られたユーベルコード。アンフェールにとっては既知でありながら未知であり、どうあがいても対策の練りようのない攻撃だった。

「太陽の力を宿した宝石? そんなもの、私は知らない……!」
「……己の無知を嘆くといいわ。引きこもりの吸血鬼」
 それまでの慢心が嘘のように狼狽えだす第五の貴族に、リーヴァルディは太陽の宝石から光線を放つ。陽の力を集束させた閃光が、隙だらけのアンフェールの胸を撃ち抜いた。
「ぎぃぃッ!!!?」
 貴族の体裁も何もない獣のような悲鳴を上げ、灼けた傷の痛みにもがくアンフェール。
 世界の全てを知り、支配した気でいる慢心、油断、傲慢――彼女を窮地に陥らせたのはリーヴァルディがよく知る吸血鬼の心理であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…本で読んだ知識か…こんな状況でもなければ色々語り合いたいところなんだけどな…
…知識を実践しないでどうするのか、と言う点が知識性の違いなんだろう…共同研究とかしたらこのあたりが原因で解散しそうだ…

……さて……重戦士の前衛と回復と砲撃を行う後衛…基本ながらも手堅い布陣だね…
…現影投射術式【ファンタスマゴリア】で魔法の霧の濃霧の幻影を出して霊達の視界を制限しよう…ついでに多数の何かの影(わりと適当)で警戒させて…
…膠着状態で時間を稼いでアルゴスの術式ソナー機能で位置を把握…【空より降りたる静謐の魔剣】で霊達を無視して女公を氷の魔剣で攻撃するよ…
…私の術式がこの世界の本に書かれてるはずも無いな…



「……本で読んだ知識か……こんな状況でもなければ色々語り合いたいところなんだけどな……」
 膨大な蔵書を読み耽りながら長い時を生きたヴァンパイアの魔術師が、どれほどの知識を蓄えているかについてはメンカルも興味があった。ただし、研究者である彼女と完全な趣味人であるアンフェールでは、馬が合うとも思えなかったが。
「……知識を実践しないでどうするのか、と言う点が知識性の違いなんだろう……共同研究とかしたらこのあたりが原因で解散しそうだ……」
 アレはただ知識を溜め込むだけで、そこから新たな何かを生み出すわけでも、積極的に活かすわけでもない。もしそうでないのなら『全知』などという袋小路に己を追い込み、未知に対してあんな無様に狼狽えることは無かっただろう。

「なにをぶつぶつ言っているの……まだ終わっていないわよ!」
 満身創痍のアンフェールは【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】の魔導書から亡霊の軍団を喚び出し、それを見たメンカルも術式制御用の黎明剣【アウローラ】を構える。
「……さて……重戦士の前衛と回復と砲撃を行う後衛…基本ながらも手堅い布陣だね……」
 恐らくは重戦士の固い楯と鎧で攻撃を防がせ、その間に魔術師に自身を回復させる作戦だろう。明快である故に正攻法で突き崩すのは難しい。ならばとメンカルは現影投射術式【ファンタスマゴリア】を起動、搦め手での敵軍の無力化を図る。

「……まずは霊達の視界を制限しよう……」
 メンカルが指揮棒のように剣を振ると、どこからともなく真っ白な霧が発生して彼女の姿を覆い隠した。これはあらゆる感覚器・センサーを欺く魔法の幻影。霧はそのまま霊達とアンフェールも包み込み、その視界を大きく制限する。
「くっ、どこへ行ったの……お前たち、私を守りなさい!」
 自分の手元や足元すらよく見えない程の濃い霧の中では、敵味方の識別も困難となる。
 重騎達はアンフェールをかばうように陣形を整えるが、連携は万全とは言い難かった。

(……ついでに多数の何かの影で警戒させて……)
 敵軍の動揺を観察しつつ、メンカルはさらに複数の幻影を霧の中で動かす。造形はわりと適当だが、この状況下で不自然な動きをする何かを見れば、敵は警戒せざるを得ない。
「なんなの、この魔術は……解析できない……!」
 じわじわと陣形がかき乱されていくのに、アンフェールは有効な対策を打てずにいた。
 蒐集したどの魔導書にもこんな魔術は記されていなかった。『全知の紋章』が及ばない叡智の力を目の当たりにした彼女は、ただただ無力であった。

「……私の術式がこの世界の本に書かれてるはずも無いな……」
 メンカルの術式はアルダワ・アックス&ウィザーズ・スペースシップワールドの三世界の技術を統合したオリジナルの代物であり、その研究と開発は今も続けられている。所詮一世界のみに偏った知識量では、原理の一端にすら触れることはできないだろう。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 戦況が膠着する中、彼女は電子型解析眼鏡【アルゴスの眼】の術式ソナー機能を用いてアンフェールの位置を把握すると、他の霊達を無視してただ1人に集中攻撃を仕掛ける。
 唱えるのは【空より降りたる静謐の魔剣】。凍てつく魔力を宿した数百本の氷の剣が、屋敷の上方より一斉射出された。

「な……きゃああああああっ!!!?」
 不規則な軌道を描いて霊達の隙間を縫った魔剣は、霧を目眩ましにしてアンフェールに突き刺さる。その刃に宿った魔力は命中箇所から標的を凍結させ、命の熱を凍えさせる。
 絹を裂くような悲鳴が上がり、亡霊の軍団が消えていくのと同時、メンカルは霧の中でばたりと倒れ伏す女の影を見た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
自分が絶対者であると疑わない。その傲慢が隙であり命取りです。

私の手持ちだと……デリンジャー、ドローン「ペレグリーネ」がこの世界では未知の技術のはずですね。

ドローン「ペレグリーネ」を起動、本棚や柱の陰などに隠れながら迂回してアンフェールに近づかせ、機銃で狙わせます。
ペレグリーネがアンフェールの元に辿り着くまでは回避に重点を置き戦闘。重戦士たちを2丁の「デリンジャー」からの『威嚇射撃』で足止めし、魔術師たちによる砲撃からの盾にするように立ち回ります。

ペレグリーネの機銃によりアンフェールが傷を負い召喚が解除されたなら【ヘイルバレッジ】を。氷の弾丸の連射で撃ち抜きます。



「自分が絶対者であると疑わない。その傲慢が隙であり命取りです」
 真冬よりも冷たい眼差しを向けて、セルマはアンフェールの敗因を端的にそう述べた。
 強大な力に胡座をかき、己が『全知』であるなどと嘯いた、傲慢で怠惰な第五の貴族。その生命は今や風前の灯であり、流れた血とともに虚飾は剥がれ落ちていた。
「認めないわ……私が負けるなんて、そんなの……!」
 地の底で自分だけの楽園を築き、知に耽溺してきた彼女には、己を脅かしうる外敵など想像さえできなかっただろう。だがこれが真実だ。怠惰なる女公の命運はここで尽きる。

(私の手持ちだと……デリンジャー、ドローン「ペレグリーネ」がこの世界では未知の技術のはずですね)
 セルマは索敵兼援護射撃用のドローンを起動、本棚や柱の陰などに隠れながら迂回して敵に近付かせる。この世界ではまだ遠く及ばない水準の科学が生みだした、機械の使い魔とでも言うべきそれは、アンフェールにとって未知の脅威のはずだ。
「私が知らないものなんて、この世にあってはいけないのよ!」
 まだドローンの動きに気づいていないアンフェールは、ヒステリックに喚き散らしながら【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】を発動。重武装の戦士と杖を持った魔術師の霊達が現れ、主君の敵を滅ぼすべく進軍を開始した。

(ペレグリーネがアンフェールの元に辿り着くまでは、回避に重点を置きましょう)
 前衛の重戦士達が槍で突き掛かってくるのに合わせて、セルマは2丁のデリンジャーを抜き撃ちする。楯や鎧の隙間を狙って撃てば、この口径の拳銃弾でも威嚇射撃にはなる。敵の足が止まれば槍の矛先から身を躱し、その上で距離が開きすぎない間合いをキープ。
「これなら迂闊に魔法も撃ってこれないでしょう」
 重戦士を魔術師による砲撃からの盾にする、防御主体の立ち回り。何十体もの敵を相手に全く譲らず、クールな顔のままデリンジャーを乱れ撃つ。銃弾飛び交う彼女の守備圏内には誰も踏み込むことができなかった。

「ッ、なんなのあの銃は……あの小ささで連発可能? ありえない!」
 ダークセイヴァーの武器開発はマスケットが最新レベルであり、デリンジャーのような高性能な銃はまだ発明されていない。未知に戸惑うアンフェールの意識はセルマに集中し――その間に「ペレグリーネ」は誰にも気付かれることなく狙撃ポイントに到達する。
「何をやっているのお前達、早くその小娘を殺して……ッ!?」
 死角となる屋敷の物陰から、タタタッと乾いた銃声とともに放たれる弾丸。不意打ちを受けた女吸血鬼の身体から鮮血が舞い、【戦術指南書―ウォーゲーム・ガイド―】の効果が解除される。

「なによそれは……ッ、しまった!」
 ドローンという未知の兵器に驚いている暇はない。術者が傷を負ったことで亡霊の軍団は退去し、防戦に徹していたセルマに反撃の機会が訪れた。すかさず彼女は開けた射線に照準を合わせ、必殺の【ヘイルバレッジ】を仕掛けた。
「邪魔です」
 左右のデリンジャーから矢継ぎ早に放たれる氷の弾丸。それを浴びたアンフェールの体が着弾箇所から凍結していく。腕が、足が、胴が、そして最後には脳や心臓も凍りつき、敵は物言わぬ氷像となって息絶えるだろう。

「ま……待って……!」
 命乞いでもするつもりか、アンフェールは必死に口を開く。だが凍えきった舌はうまく言葉を紡げず、セルマにそれを聞いてやるつもりは無かった。弾倉に収まった最後の氷弾が標的の眉間を撃ち抜き、血の混じった赤い氷の華を咲かせる。

「終わりです」
「そん……な……馬鹿…………な……」

 銃声が鳴り止んだ後の戦場には、歪んだ形相のまま凍りついた女吸血鬼の骸があった。
 かくして、第五の貴族の一角たる『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公は滅ぼされ、偽りの『全知』が見通せなかった勝利を猟兵達は掴み取ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『世界の真実を知るもの『カターニア』』

POW   :    その展開、知ってるもん!
【読書で得た見識の広さで、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    想像の翼を広げちゃえ!
戦闘力が増加する【空想上の獣】、飛翔力が増加する【空想上の獣】、驚かせ力が増加する【空想上の獣】のいずれかに変身する。
WIZ   :    そのアイディア、いただきっ!
【自信が持つ本】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自信が持つ本から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はティフラム・ラルフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全知の紋章の弱点を突いて、怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公を討伐した猟兵達。
 これで異端の神が彼女の肉体を奪い「狂える第五の貴族」になるという、最悪の未来は阻止された。だが、この戦いはまだ終わってはいない。

「まあ、まあ、まあ! 本がこんなにたくさん!」

 主が不在となった屋敷に響く、場違いなほどに明るい声。はっと振り返った猟兵達は、青いドレスをまとった少女の姿を見る。一体いつからそこにいたのか、直前までまったく気配を感じ取れなかった。

「ステキ、すてき、すてき。本、知識、秘密がいっぱいね!」

 彼女こそ異端の神に取り憑かれた狂えるオブリビオン。名は『世界の真実を知るもの』カターニア。かつては世界の歴史に関するものを始めとした様々な貴重な本をかき集め、コレクションする事を趣味としていたが、今やその蒐集欲は完全に狂ってしまっている。

「あなたたちも、本、持ってる? よませて、よませて、ヨマセテ!」

 第五の貴族の所蔵する知を求めてここまでやって来たカターニアは、彼女がもう亡いと知るや猟兵達に興味の矛先を向ける。自分がまだ知らない新しい本を持っている可能性があれば、この狂えるオブリビオンはどんな手を使ってでもそれを蒐集する。

「どんな本があるのかな。ふふっ、タノシミ、楽しみっ!」

 可憐な笑顔と仕草でも隠しきれないほどの狂気を瞳に宿して、それは神気を解き放つ。
 この世界の支配者である吸血鬼すら手を焼くほどに、異端の神の力は凄まじいものだ。
 しかし「死の罠の迷宮」を突破してきたカターニアのドレスはよく見ればボロボロで、身体のあちこちに小さな傷があった。

 流石に神と言えども肉をまとう者、第五の貴族が仕掛けた罠に無傷とはいかなかった。
 同じ迷宮を攻略する過程で、猟兵達はどんな「死の罠」が仕掛けられていたかを知っているはずだ。そこで敵が負った傷を推察したうえで攻めれば、勝算は十分にあるだろう。

 叡智に溺れる第五の貴族を倒した後に現れたのは、叡智を求める狂えるオブリビオン。
 邪なる者共からこの世界の叡智を守るために、猟兵達は今宵最後となる戦いに挑む。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…知識を得ようと狂気に浸ったその精神で理解できるか怪しいものだ
もっとも、奴はもう、その事も理解できないのだろうけどな

パワードスーツを脱ぎUCを発動
軽業で飛び回り、敵の攻撃を見切りで避ける
その間に瞬間思考力を働かせ、敵の身体に付いた傷の状態を観察する

思った通りだ…道中で本から出てくる怪物の罠に出会っているな
だが、こちらへ急ぐあまり強引に突破したのだろう
背中側に攻撃された傷が残っている
オーヴァル・レイを手足のように操り、傷口へビーム砲の雨を降らせてやろう
同時にシルコン・シジョンで追撃も行う

先に逝ったアンフェールと存分に語り合うがいいさ
お前が満足するまで、知識を与えてくれるだろう



「フン……知識を得ようと狂気に浸ったその精神で理解できるか怪しいものだ」
 異端の神に憑依された吸血鬼を冷たい眼差しで見て、吐き捨てるようにキリカは言う。
 ソレは衝動的に知を求めはするが、知を活かすことは決してない。この世界にまつわる知識や秘密をただ蒐集し、秘匿するだけ――知識欲だけが残ったブザマな怪物だ。
「もっとも、奴はもう、その事も理解できないのだろうけどな」
 憐れむ気持ちなど一切湧きはしないが。彼女はそう呟きながらパワードスーツを脱ぎ、【オーヴァル・ミストラル】を発動。アンフェール戦から一転して身軽で動きやすい格好となり、周囲に浮遊砲台「オーヴァル・レイ」の複製体を展開する。

「おしえて、オシエテ!」
 カターニアは狂った笑みを浮かべて【想像の翼を広げちゃえ!】と叫び、空想上の獣に変身してキリカに襲い掛かる。獲物を引き裂く鋭い爪と牙、さらには天を翔ける翼までも備えた、現実のいかなる生物とも異なるその姿はまさに魔獣。
「ほう、内面に見合った姿になったな」
 対するキリカは軽業めいた身のこなしで屋敷を飛び回り、獣の爪牙を見切って避ける。
 同時に瞬間思考力を働かせ、敵の身体を観察する――どんなに姿を変えようと、それがダメージを回復する能力ではない以上、刻まれた傷の状態は変わらないはずだ。

(思った通りだ……道中で本から出てくる怪物の罠に出会っているな)
 果たしてその吸血鬼の身体には、獣に齧りつかれたような傷がはっきりと残っていた。キリカは「死の罠の迷宮」を探索する際に見つけた罠はなるべく解除せず残していたが、どうやらそれは功を奏し、後続のカターニアに牙を剥いたようだ。
(だが、こちらへ急ぐあまり強引に突破したのだろう。背中側に攻撃された傷が残っている)
 やはり狂気に汚染された頭脳では、効率的な迷宮の攻略法など考え付きもしないのか。彼女の集めた書物には「急がば回れ」という文字は載っていなかったのか。強さにものを言わせた強行突破のツケは、小さくはあるが、確実な傷を彼女に残していた。

「その傷、付け入らせて貰おう」
 敵の弱点を見極めたキリカは百個以上に増えたオーヴァル・レイを手足のように操り、背中の傷口を狙って集中攻撃を仕掛ける。卵のような形をした浮遊砲台の中心部が輝き、強烈な粒子ビームの雨が戦場に降り注いだ。
「きゃッ?!」
 魔獣と化した口で少女が悲鳴を上げ、ビームで射抜かれた傷口から焦げた悪臭が漂う。
 激痛がカターニアの攻撃の手を緩めさせた瞬間、好機とばかりにキリカは追撃に移り、VDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"のトリガーを引く。

「先に逝ったアンフェールと存分に語り合うがいいさ。お前が満足するまで、知識を与えてくれるだろう」
 洗礼を施された銃身から、聖書の箴言を込めた弾丸が飛び出す。"聖歌隊"の異名を持つそれは高らかに銃声を響かせながら、狂神に取り憑かれた邪悪な吸血鬼の肉体を貫いた。
「きいぃぃぃぃッ!!!?」
 身の毛もよだつような絶叫とともに、元の姿に戻ったカターニアは床をのたうち回る。
 知に耽溺した「第五の貴族」と、知を求める「狂えるオブリビオン」。お似合いだろうとキリカは皮肉げに口元を歪め、銃弾とビームの雨を降らせ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
本が読みたいならばここの主に聞いてみるが良い。
さっき死んでしまったばっかりであるが
ふふ、まあ些細な問題である。

[UC傀儡符]
怠惰なる魔典の虫・アンフェール
我が勅命により死した命を以て陏身せよ。

……さてアンフェールちゃんよ、全知なんじゃろう?
あれが何処に傷を負っているかは知っているよナ。
それでは本好き同士仲良くしてやれ。

予知通りならばアンフェールちゃんが負けてしまうが
あれの負った傷を教えてくれれば十分。
その後、霊符を撃ち込みこれを攻撃せむ。

あ、盗んだ本返せ? 知らんナ。



「本が読みたいならばここの主に聞いてみるが良い」
 はるばる地の底まで新たな本を求めてやって来た異端の神に、稲見之守はそう告げる。
 今だこの屋敷に遺された大量の蔵書。それを蒐集した第五の貴族・アンフェールの肉体を奪うことが、異端の神の目的であったはずだ。
「さっき死んでしまったばっかりであるが……ふふ、まあ些細な問題である」
 ならばと趣向を思いついた彼女は、死者を己の手駒に変える【傀儡符】を取り出した。
 丁度いいことに今回は敵の遺骸も凍りついた状態でそのまま残っている。吸血鬼らしく灰燼に帰してしまわなかったのは、もっけの幸いと言うべきか。

「怠惰なる魔典の虫・アンフェール。我が勅命により死した命を以て陏身せよ」
 稲見之守が傀儡符を貼り付けて命を告げると、アンフェールの亡骸は今一度動き出す。丸一日過ぎれば解けてしまう仮初めの命ではあるが、能力と知識は生前に準じたものだ。
「まあ、死体が動いたわ! おもしろい、オモシロイ!」
 カターニアはそれを見るとキラキラと目を輝かせ、狂った笑みを浮かべて襲い掛かる。
 何のために彼女がここまで来たかを考えれば、猟兵よりもアンフェールが優先して標的にされるのは当然だろう。

「……さてアンフェールちゃんよ、全知なんじゃろう? あれが何処に傷を負っているかは知っているよナ」
 敵が飛び掛かってくるのを見つつ、小悪魔のように微笑する稲見之守。わざわざ死者を叩き起こしたのは、そいつが持つ「全知の紋章」の力に期待してのこと。まだ腐り果てる前の脳髄には、生前に溜め込んだこの世界のあらゆる知識が詰め込まれていよう。
「それでは本好き同士仲良くしてやれ」
 傀儡符に操られたアンフェールに拒否権はない。凍った指先で魔導書のページを捲り、向かってくる異端の神を迎撃する。色とりどりの光を放つ魔力の弾幕には、カターニアが「死の罠の迷宮」で負った傷を的確に抉る軌道と属性が付与されていた。

「いたい、いたい、アハハハハ、イタイ! そのアイディア、いただきっ!」
 容赦ない魔弾の嵐に打たれながらも、カターニアは自身が持つ本から魔弾を撃ち返す。
 どのようなユーベルコードであっても即座にコピーする、「世界の真実を知るもの」の異名に相応しい力。扱う術が同じであれば、戦いは必然的に地力の勝負となる。
(予知通りならばアンフェールちゃんが負けてしまうが、あれの負った傷を教えてくれれば十分)
 正確には「返り討ちにするが、肉体を奪われて負ける」というのが、グリモアの見せた未来だった。今のアンフェールは死体であり異端の神に憑依されることはないが、傀儡化に伴い生前より戦闘力が落ちている。どう転んでも敗北という結果は覆せないだろうが、それを見越したうえで策を講じるのが、稲見之守の鬼謀である。

「あっはははっハハハハハッ!」
 カターニアの放つ魔弾は次第にアンフェールのそれを圧倒し始め、狂気に満ちた笑い声が屋敷に響き渡る。傀儡の力で抗えるのはここまでか――そう思われた瞬間、稲見之守が霊符を放った。
「見定めご苦労。そこじゃナ」
「ッ――……!?!!」
 符はカターニアが「死の罠の迷宮」で負った傷口にピタリと貼りつき、籠められた呪力を解き放つ。アンフェールの放った魔弾は、敵の弱点を主人に伝えるためのマーカーでもあったのだ。傀儡が文字通り身を挺して作り出したチャンスを、彼女は逃さなかった。

「死体に留まった残り滓のような魔力よりは、よほど効くであろうよ」
「い、いたい、イタイ、いぎぃッ!?」
 稲見之守が手ずから力を注いだ霊符は、見事弱点を捉えたこともあり相応のダメージを標的に与えた。弾幕戦に興じていたカターニアは血相を変えて、甲高い声で喚き散らす。
 一方、その戦果を挙げるためにボロボロになったアンフェールは糸が切れたように床に倒れ込むと、恨みがましい視線で稲見之守を睨む。
「あ、盗んだ本返せ? 知らんナ」
 その眼に込められた意思を彼女は察していたが、そ知らぬ顔で屋敷から回収した書物を隠す。どうせ1日足らずでソレはまた死体に戻るのだ――あとは同じ本を狙う異端の神を始末すれば、持ち出しを咎める者はいなくなるという寸法であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
興味を満たす余裕があるとは限らんぞ

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

絢爛を起動
起点は目の前の空気
破壊と因果の原理を以て戦域の空間を支配
範囲内全てを隙間なく破壊の原理の刃で斬断する
因果の原理を以て「オブリビオンとその武装・行動」のみを討つ

終焉へ導くのは世界より古き、即ち世界を編んだ理
飛来するのではなくその場を直に絶つ斬撃が隙間なく同時に瞬刻で現れる
俺と同じモノでないのなら受けるも躱すも不可能。一切逃さず斬滅するのみ

※アドリブ歓迎



「興味を満たす余裕があるとは限らんぞ」
 この屋敷の主に向けたのと同じ冷たい視線を、狂える異端の神に向けるアルトリウス。
 戦況は引き続き『天光』にて把握済み。アンフェールと同様に蒐集した本の知識を武器に戦うオブリビオンのようだが、ならば未知なる原理の法則が脅威となるのも同じ筈だ。
「煌めけ」
 起動するのは【絢爛】の権能。目の前の空気を起点として周囲の空間を支配下に置く。
 起源の詠唱により制御された原理の法則は、その空間そのものを敵を討つ刃に変える。

「ッ?!」
 本を求めて戦いを繰り広げていたカターニアの身体から、ふいに血飛沫が吹き出した。
 誰かに攻撃されたのでも傷が開いたのでもない。突如としてその部位に傷が「現れ」、前触れないダメージが彼女を襲ったのだ。
「終焉へ導くのは世界より古き、即ち世界を編んだ理」
 それを成し得たのはアルトリウスが紡ぐ破壊の原理。この戦域の空間を支配した彼は、範囲内ならばどこにでも原理の刃を生じさせられる。飛来するのではなく、その場を直に絶つ斬撃が、隙間なく同時に瞬刻で現れるのだ。

「俺と同じモノでないのなら受けるも躱すも不可能。一切逃さず斬滅するのみ」
 戦域に隙間なく配された原理の力が、見えざる刃となりカターニアの全身を切り刻む。
 それでいて味方を巻き込まないのは、同時起動した因果の原理『天冥』の作用によるものだ。漂う淡青は運命を紡ぎ、オブリビオンとその武装・行動のみを討つ未来を見定め、手繰り寄せる。標的がどんな動きを見せようとも、原理の刃は的確にそれのみを断つ。
「見えない刃なんてフシギ。そのアイディア、いただきっ!」
 カターニアのドレスはたちまち血で赤く染まっていき、寸刻毎に新たな傷が刻まれる。
 だが彼女は初めて見る『原理』という未知の力に歓喜し、その力を擬似的に再現する。一緒に切り刻まれた本から淡青の光が放たれ、周囲の空間を支配し返していく。

「原理の模倣か。大それた真似をする」
 他ならぬ己の能力だからこそ、アルトリウスは次にどんな攻撃が来るか分かっていた。
 即座に『煌皇』を展開。纏う十一の原理を鎧と成し、空間に出現する原理の刃を阻む。
「あれれ? 切れない?」
 不可避のはずの攻撃がどうして届かなかったのか、カターニアには理解できなかった。
 無限に廻る原理の輝きの内側は、アルトリウスの支配が最も強い領域。空間を支配下に置けなければ、模倣した【絢爛】による攻撃も不発となる。

「ただのコピーでは応用に欠けるようだな」
 相手が見せた使い方しかできないのならば、真の意味で原理を使いこなすアルトリウスに猿真似が敵わないのは道理。彼は『超克』から供給される魔力で防御を維持しながら、【絢爛】による攻撃の密度をさらに増す。
「あれ、あれれ、アレレ? いたい、ドウシテ、いたいっ!」
 原理を盗んだ本がバラバラになり、カターニアの全身から噴水のように血が吹き出す。
 世界の真実を知るものにすら理解が及ばぬ原理の力――世界が構成される前の法則が、狂えるオブリビオンを攻め立てる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
カビィちゃん(f24111)と

レビュー:ラヴラビ3

金ドブ
超展開の見本市
戦闘シーンは見れる
ジャンルを混ぜるな
カビパンとは?愛とは?
罰ゲームでラヴラビ一気見が成立するレベル
不条理ギャグものとすればギリ有
役者は及第点
カターニアたんの苦しみ方ガチすぎ

★☆☆☆☆

公開されたラヴラビの評価で私は現実に帰った

だよね!
『でしょうね以外にないわね』

アクション、台詞、全てに私の完璧を叩きつけた
カターニアも強く、最高の鍔迫り合いが出来た
私の危機に投入される熱い主題歌とロボ!

『異物でしょ』
全て情熱の日々だった…
それが評価されるかはまた別問題という話

所でどの辺りに愛が有ったの?
『脚本の人それ考えてないと思うわ』

そっかー!


カビパン・カピパン
アンフェールの犠牲からラヴ・ラビリンスは暗闇に包まれていた。カビパンもこの世を去った。彼女は破壊と殺戮を繰り返すカターニアをボケで止める為に戦い散っていった。しかし、皆の残した希望が今はこの手にある。

魔剣シェルファ

ツッコミの名を冠する、セフィリカの持つ伝説の魔剣である。

何がいけなかったのか。何を間違えてしまったのか。
あのラブ・ラビリンスで出会ったことが間違いだったとは思わない。笑い合える結末だってあった筈なのに、私達は何処で道を間違えたのだろうか?
ふと考えてみる。けれどそんな事を考えるのは無意味だった。ここに存在するのは愛という名の迷宮を彷徨う人しかいないのだから。

カーット!チェック入ります。



「うーん、今回は芳しくなかったね」
 カビパンやアンフェールと共に「ラヴ・ラビリンス」続編を演じ終えたセフィリカは、なんだか難しい顔をしていた。演技中はかなりノリノリだった彼女を現実に帰したのは、公開直後から同作に寄せられた評価の数々である。


 レビュー:ラヴラビ3

 金ドブ
 超展開の見本市
 戦闘シーンは見れる
 ジャンルを混ぜるな
 カビパンとは?愛とは?
 罰ゲームでラヴラビ一気見が成立するレベル
 不条理ギャグものとすればギリ有
 役者は及第点
 カターニアたんの苦しみ方ガチすぎ

 ★☆☆☆☆


「だよね!」
『でしょうね以外にないわね』
 こうして客観的意見を叩きつけられるとグウの音もでない。魔剣シェルファも同意見。
 一体どうしてこうなってしまったのか。それには時を巻き戻し、撮影当時の様子を語らねばなるまい。猟兵達が狂えるオブリビオンとの死闘を繰り広げる中、便乗して謎の演劇に情熱を燃やしていた、彼女達の(ある意味)死闘の時間を。


「ナウなヤングのハートをバッチリ掴んで、大ヒット飛ばしましょう!」
 ラヴ・ラビリンス第三弾の監督は、前作と前々作でも重要な役割を果たしたカビパン。
 メガホンの代わりにハリセンをバシバシ叩いて、キャストに檄と指示を飛ばしまくる。そんな彼女自身は前作でほぼ役目を終えてしまったため、今作の出演はちょい役である。
 本作においてスポットが当たるのは、これまであまり報われなかった「彼女」だった。
「こちらが今回の脚本になります」
 アンフェールの犠牲からラヴ・ラビリンスは暗闇に包まれていた。カビパンもこの世を去った。彼女は破壊と殺戮を繰り返すカターニアをボケで止める為に戦い散っていった。しかし、皆の残した希望が今はこの手にある――。

 魔剣シェルファ

 ツッコミの名を冠する、セフィリカの持つ伝説の魔剣である。
『いつから私がそんなの冠したっていうの』
「まあまあシェル姉、これで最後だから」
 言うまでもなく不本意なシェルファ、しかしノリにノッているカビパンとセフィリカの勢いを止めることはできなかった。救いがあるとすれば、本作の撮影は主にバトルシーンなので、普通に敵と戦うだけでもある程度見れる画にはなるという事だろうか。
「よし、行くよ!」
『ああもう、さっさと終わらせるわよ』
 というわけでカビパン監督の脚本に従い、異端の神に取り憑かれたカターニアに挑む。
 散っていった者の想いを背負い、愛と希望で世界を救うかもしれない超大作、いよいよ最後のクライマックスである。

「カターニア、覚悟!」
「アハハハハハハ! あなたたちのアイディアも見せて!」
 アクション、台詞、全てに自分の完璧を叩きつけて、迫真の演技を見せるセフィリカ。
 受けて立つカターニアも強く、これまでコピーしてきた魔術やユーベルコードを本から出して戦う。魔剣と魔術による鍔迫り合いは演出面でも非常に見栄えがよく、贔屓目抜きにこれまでで最高の出来だと言っても過言ではなかった。
「もっと、モット、もっと見せて! あはハ!」
「くっ、強い……私達負けちゃうの、シェル姉、カビィちゃん……」
 やがて哄笑するカターニアの狂気に押し負け、セフィリカは危機に陥る。向こうは演劇の事など知らずにガチで殺す気で襲ってきているため、わりと冗談抜きでピンチである。
 このまま彼女は狂神の餌食となってしまうのか。愛は、希望は失われてしまうのか――絶体絶命のまさにその時、どこからか熱い音楽が流れだし、地震のように辺りが揺れた。

「七虹一番の伊達役者! 蒼天勇者ガイレツオー! みんなの明日を守って!」

 魔剣を高々と天に掲げて叫ぶ、セフィリカの気合に応えて降臨するは【蒼斧の武者】。
 屋敷の天井と床板を破壊してズシンと現れた、強く、硬く、遅い、重厚感のある武者。地球のアニメに感銘を受けたセフィリカが作った、ロマン重視の戦闘用ゴーレムである。
「なに……これ?」
 思わず狂気も引っ込んで素の反応を見せるカターニアに、ガイレツオーが巨大な戦斧を振り下ろす。その一撃は標的がとっさに身を躱したため外れるが、代わりに粉砕した大地に音源を設置し、情熱的な主題歌を大音量で流し始める。

「私の危機に投入される熱い主題歌とロボ!」
『異物でしょ』
 単品で見れば燃えるシチュエーションかもしれないが、それまでの流れを通して見ると無茶苦茶な超展開である。だが、敵が困惑している今この時こそ反撃の好機なのも事実。
「全て情熱の日々だった……」
 心に火を灯すような主題歌をバックに、魔剣シェルファを手に立ち上がるエルフの姫。
 その情熱が評価されるかはまた別問題という話だが、背景では彼女の心境とこれまでの物語がモノローグ調で語られ始める。

 何がいけなかったのか。何を間違えてしまったのか。
 あのラブ・ラビリンスで出会ったことが間違いだったとは思わない。
 笑い合える結末だってあった筈なのに、私達は何処で道を間違えたのだろうか?
 (モノローグ担当:カビパン)

 ふと考えてみる。けれどそんな事を考えるのは無意味だった。ここに存在するのは愛という名の迷宮を彷徨う人しかいないのだから。答えを得るには、出口を目指すしかない。
「私はみんなの希望の上に立っている! だからここで立ち止まるわけにはいかない!」
 今日一番の大見得を切って、真っ向勝負を仕掛けるセフィリカ。彼女が振るう魔剣と、ガイレツオーが振るう巨大戦斧が、狼狽するカターニアに叩きつけられる。
「わ、わけがわからな……ギャーーーッ!!!?」
 世界の真実を知るものの理解さえも超えた超展開パワーが、闇を切り裂き邪悪を断つ。
 カターニアは真っ赤な血飛沫を撒き散らしながら耳をつんざくような絶叫を上げると、自らが作った血溜まりにばったりと倒れ伏した。

「カーット! チェック入ります」
 そのタイミングでパシーンッ! とハリセンを鳴らしつつ叫ぶのは【ハリセンで叩かずにはいられない女】カビパン。渾身の一撃を決められて満足そうなセフィリカは、指示に応じてガイレツオーと共に前線から後退する。
「所でどの辺りに愛が有ったの?」
『脚本の人それ考えてないと思うわ』
「そっかー!」
 結局最後まで「愛」の意味は不明なままだったが、彼女はあんまり気にしてない様子。なんなら答えは観客の心に委ねられるとか言っとけば、なんかそれっぽく纏まるだろう。


 こうして完成してラヴラビ3作目にして最終作の評価は、最初に語られた通りである。
 一体何やってたんだろうと、我に返ったセフィリカとシェルファが首を傾げる一方で、カビパンが本作の評価をどう受け止めていたのかは――本人のみぞ知るところであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「私も魔導書を持つ身ではありますが、そうおいそれと渡せるものではありませんねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
さて、相手は迷宮を踏破した際に傷を負っているそうですが……迷宮の罠は足元の魔法陣や、上から倒れ込んでくる本棚でした。ということは、狙うべきは頭部や脚部ですねえ。
高速詠唱、全力魔法、の技能を用いてUCを使用します。頭部を狙うと本で防御されるかもしれませんので、足元を狙いましょう。頭部は一つですが、足は二本ありますのでね。

「これから女公の蔵書を検分したいものでして、貴女の相手をしている時間は一分一秒でも惜しいのですよねえ。クックック」

【アドリブ歓迎】



「私も魔導書を持つ身ではありますが、そうおいそれと渡せるものではありませんねえ。クックック」
 一端の魔術師にして研究者として、ここで第五の貴族の蔵書を譲る訳にはいかないと、闇慈は低く笑う。狂えるオブリビオンなどに渡すには、あれは勿体ない知識という宝だ。
「ヤダヤダ! ヨマセテ、読ませて!」
 無論敵もはいそうですかと引き下がりはしない。子供のような駄々をこねたカターニアは自身の本の表紙を広げ、ページの紙片を散らしながら襲い掛かってくる。珍しい書物を求める彼女は、本を持っていそうであれば猟兵だろうと略奪の対象は選ばない。

(さて、相手は迷宮を踏破した際に傷を負っているそうですが……迷宮の罠は足元の魔法陣や、上から倒れ込んでくる本棚でした)
 襲ってくる敵との距離を測りつつ、闇慈は冷静に分析を行う。力押しで死の罠の迷宮を突破するような輩だ、実力は確かなのだろう。だが、その強行突破は相応のダメージとも引き換えだったはず。仕掛けられていた罠の傾向も考慮した上で――。
(ということは、狙うべきは頭部や脚部ですねえ。頭部を狙うと本で防御されるかもしれませんので、足元を狙いましょう。頭部は一つですが、足は二本ありますのでね)
 魔術杖を突きつけて詠唱を行うと、杖が無数の銀色の花びらとなり主なき屋敷を舞う。
 【銀嶺に舞え斬翔の花弁】。この魔術により変換された花びらは、銀のように冷たく、雪のように激しく敵を切り裂く液体銀の刃である。

「咲き誇れ致死の花。血風に踊れ銀の花。全てを刻む滅びの宴をここに。シルヴァリー・デシメーション」

 ざあっと音を立てて戦場に吹き荒れた銀の花吹雪は、床を這うような低い軌道で標的の足元に襲いかかる。より正確には、標的の足に刻まれた迷宮での「傷」に狙いを定めて。
「きゃッ?!」
 受け止めたユーベルコードをコピーする能力を持つカターニアでも、自在に舞う花びらに防御を合わせるのは容易ではなかった。子鹿のように細い足を切り裂かれ、開いた傷口から血がしぶく。それで少女の表情が変わったのを見るに、どうやら効いているようだ。
 相手が右足を防御しようとすれば左足を。左足を下げようとすれば右足を。闇慈は巧みに斬翔の花弁をコントロールして敵の動きの先を読み、ダメージを刻みつけていく。

「これから女公の蔵書を検分したいものでして、貴女の相手をしている時間は一分一秒でも惜しいのですよねえ。クックック」
 闇慈の興味はすでに、アンフェール女公がこの屋敷に遺した大量の蔵書に移っている。全知を自称した第五の貴族が世界中から集めた魔導書の中には、彼にとって未知の魔術もあるに違いない。普段通りに振る舞ってはいても、知識欲と探究心は燃え上がっていた。
「ひとりじめなんて、ズルいわ……ッ!!!」
 カターニアは抗議の声を上げるものの、彼女がこれまでにしてきた事を考えれば、その発言はただのブーメランでしかない。乱れ舞う銀の刃は血に染まり、足元は赤く染まる。一枚一枚は小さな傷でも、その蓄積が着実に彼女を追い詰めつつあるのは事実であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……む、本を狙うオブリビオンか…さっきアンフェール女公の書庫で拾った(ルビ:勝手に奪っていった)本が狙われてるなこれ…
…このまま本を餌にカターニアを引きつけて……【戦術構築:奸計領域】を発動…
…傷がついてるという事は途中までの罠に有効な物があったという事…
…迷宮の罠を利用して引っかけつつ反応から『有効な罠』を調べよう…
…その罠を判別したら…まあ普通に誘導しても引っかからないだろうから…
更に逃げながら現影投射術式【ファンタスマゴリア】で周囲の地形を偽装…
『有効な罠』をカターニアの目から隠して引っかけよう…
…引っかかったところに術式装填銃【アヌエヌエ】で追い打ちしてダメージを与えていくよ…



「……む、本を狙うオブリビオンか……」
 アンフェールの討伐から間を置かずして現れた『世界の真実を知るもの』カターニア。メンカルはその狂気が自分にも向けられているのに気付き、その心当たりに手を添える。
「……さっきアンフェール女公の書庫で拾った本が狙われてるなこれ……」
 拾ったという発言をより事実に即した言葉に置き換えるなら「勝手に奪っていった」になるが。元の所有者は骸の海に還っており、狂えるオブリビオン如きに譲ってやる理由は欠片もない。だが、敵の本に対する異常な執着心は利用できるだろう。

(……このまま本を餌にカターニアを引きつけて……)
 メンカルがわざと退くような素振りを見せると、案の定カターニアは追いかけてくる。これ見よがしに拾った本の表紙をちらつかせてやると、より効果的なようだ。異端の神に憑依されてなお失われなかった知識欲と蒐集欲、それが彼女の行動原理を固定している。
「待って、マッテ、待って! その本、ちょうだい!」
 子供のように無邪気に笑いながら瞳には狂気をたたえて。【想像の翼を広げちゃえ!】と空想上の獣に変身して襲い掛かってくるカターニアを、メンカルは巧みに屋敷の外まで誘導する。創造主たるアンフェール亡き後でも、「死の罠の迷宮」は今だに稼働中だ。

(……傷がついてるという事は途中までの罠に有効な物があったという事……)
 メンカルは一度攻略した経験を元に敵を罠のある場所まで誘い込み、引っかかった際の反応から『有効な罠』を調べる。床の魔法陣や倒れてくる本棚、怪物の飛び出す本など、迷宮には様々な罠があふれているが、その中で最もカターニアに効く罠とは――。
「あら? この本面白そう……きゃーっ?!」
 本を持つ者を追いかけている最中、カターニアはふと本棚に収められた本に目移りして手に取ろうとする。だが、いかにも読書家の興味を引くような題やレイアウトを施された本は須らく罠。中から飛び出してきた怪物に噛みつかれ、彼女は小さな「傷」を負う。

「この地形なら……これが効果的か」
 それを見たメンカルは【戦術構築:奸計領域】を発動、自身の使用する術式と罠を強化する戦術を組み立てる。有効な罠さえ判別できたなら、後はそれを利用して戦うだけだ。
「……まあ普通に誘導しても引っかからないだろうから……」
 彼女はさらに逃げながら現影投射術式【ファンタスマゴリア】で周囲の地形を偽装し、怪物の本をカターニアの目から隠す。いくら狂えるオブリビオンでもついさっき掛かった罠に連続で掛かることは無いだろうが――こうして罠の所在を欺いてやれば。

「待ってってば……あぎゃッ?!」
 ここにはあの本はないと油断したカターニアの足に、飛び出してきた怪物ががっぷりと噛み付く。追跡が止まった好機を逃さず、術式装填銃【アヌエヌエ】を構えるメンカル。
「……思ったよりすぐ引っかかったね……ちょろくて助かった……」
 威力強化の術式を込めた弾丸が連続で撃ち出され、罠に引っかかった標的に追い打ちをかける。魔女の奸計に見事に嵌められたカターニアは、傷口を撃ち抜かれ悲鳴を上げた。
「あぎぃッ?! い、いた……ッ!!」
 罠と術式弾によって蓄積するダメージから、異端の神の動きが徐々に鈍くなっていく。
 有効打を確認したメンカルは、そのまま弾倉が空になるまで弾を撃ち続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
なんという猛攻…!
まさか私の持つ本を欲しているのですか!?

蒐集への我欲にこのような形でしっぺ返しを喰らうとは…

迷宮の道中で目撃した猟兵に向けた目印の"光の粉"
その内の一つは床に撒かれ、傍には本棚…トラバサミで捕らえ押し潰す二段仕掛けの物の筈

裾から覗く足首は…

ええ、ご推察の通り
世界を巡り蒐集した御話を私は纏めております

例えばサイキックキャバリアと呼ばれる鉄巨人駆る騎士達の物語
古代魔法帝国時代の逸話は今日では御伽噺となり、とある国の建国神話となって…

未知の物語で注意を曳いてUC騙し討ち
傷口に電流流し拘束
剣を一閃

騎士の所業とは…いえ、これも世の為に必要で…
(ジレンマ逃避目的に)
…御話を集めたいですね



「あははハハハははは! 本、本、本が読みたいの!」
「なんという猛攻……! まさか私の持つ本を欲しているのですか!?」
 地の底での戦闘も佳境に差し掛かる頃、トリテレイアはカターニアからの激しい殺意と攻撃に晒されていた。吹き荒ぶ紙片の刃、本より解き放たれる魔術。彼女がこれだけ執着を見せる理由は、機械騎士がこれまでに世界各地で収集した物語の本にあった。
「おもしろい本、持ってるんでしょう? わかるんだから!」
 無数の騎士道物語や御伽噺を書き記すうちに、電話帳サイズになったその本は何時しか魔力を宿すようになった。もっとも持ち主は気付いていないのだが、それが誘蛾灯のように異端の神の興味を惹きつけているのは間違いない。

「蒐集への我欲にこのような形でしっぺ返しを喰らうとは……」
 思わぬ形でヘイトを買いつつも、儀礼剣と大盾で異端の神の攻撃を凌ぐトリテレイア。猛攻を受ける一方で、彼には敵の様子を間近で観察する機会もあった。死の罠の迷宮にて敵がどのような罠に掛かり、傷を負ったのか。それを見定める事が反撃の糸口に繋がる。
(迷宮の道中で目撃した猟兵に向けた目印の"光の粉"。その内の一つは床に撒かれ、傍には本棚……トラバサミで捕らえ押し潰す二段仕掛けの物の筈)
 少女の姿をした異端の神の、裾から覗く足首にその"光の粉"が付着しているのに彼は気付いた。ある猟兵が後続への警告として罠のある場所に残しておいたものだが、吸血鬼には見えないそれは、敵が掛かった罠の種類を推測する手掛かりにもなっていた。

「ええ、ご推察の通り。世界を巡り蒐集した御話を私は纏めております」
 勝機を見出した機械騎士は滔々と語りだす。自身が数々の世界で集めた物語の一片を。
 本にこれだけの執着を示す相手なら、たとえ狂気に陥っていても知らない本の内容には耳を傾けるだろう。案の定、彼が話し始めるとカターニアの攻撃の手が緩まった。
「例えばサイキックキャバリアと呼ばれる鉄巨人駆る騎士達の物語。古代魔法帝国時代の逸話は今日では御伽噺となり、とある国の建国神話となって……」
「なにそれ、そんな展開知らない!」
 読書による広い見識を持つ彼女でも、結末の読めない未知の物語。心躍るキャバリアの伝説にすっかり注意を曳かれている隙に、トリテレイアは【腰部稼働装甲格納型 隠し腕(対UC拘束モード)】を起動する。

「失礼、この続きはまたの機会に」
「きゃッ?!」
 騙し討ちを食らったカターニアが悲鳴を上げる。ワイヤー制御の隠し腕は足首に付着した"光の粉"を目印に標的を掴まえ、トラバサミの罠が付けた傷に特殊電流を流し込んだ。
「あ、れ? からだ、うごかな……きゃぁぁっ?!!!」
 感電により敵の動きが止まり、無防備となる一瞬。最大の好機を逃さずトリテレイアは儀礼剣を一閃する。研ぎ澄まされた剣戟が唸り、真っ赤な血飛沫と悲鳴が戦場に散った。

(騎士の所業とは……いえ、これも世の為に必要で……)
 狂える神を討つためとはいえ、話術と装備を用いた騎士らしからぬ奇襲に最も懊悩していたのはトリテレイア自身である。騎士道にふさわしい正々堂々の戦いをしたい望みはあれど、世界の命運のために必勝を期するのであれば他に手はないのも事実だった。
「……御話を集めたいですね」
 このジレンマから逃避するために、機械仕掛けの騎士は血に染まった長剣を携えながら本棚のほうを見やる。この戦いが終わった後、無聊を慰めてくれる物語があの中に収められていることを期待して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あら、可愛らしい神様ね。
単に本を読みたいだけなら放っておいてあげたいトコなのだけど、そうもいかないのよね。
そうね…最後に貴女を上回る程の知識の持ち主を紹介するわ。

【ブラッディ・フォール】で「氷界に君臨せしは「書架の王」の「ブックドミネーター」の力を使用(服装へ変化)

【蒼氷復活】で更に彼女に有効な強大な直接戦闘能力を持つ「猟書家『サー・ジャバウォック』」を召喚。
傷は【時間凍結】で回復し、【……あれは使わない。素手でお相手しよう】(能力名に反して自身は魔槍だが)で自身を強化しておじさま(ジャバウォック)と共にお相手するわ。

本が好きな貴女にはアリスラビリンスの猟書家達が相応しいでしょう



「あら、可愛らしい神様ね」
 魔槍を片手に次なる敵を待っていたフレミアは、迷宮から出てきた可憐な見た目の少女に微笑みを浮かべる。最もそれは憑依された吸血鬼カターニアの肉体であり、異端の神が本来どのような姿をしているのかは誰にも分からないのだが。
「単に本を読みたいだけなら放っておいてあげたいトコなのだけど、そうもいかないのよね」
 知識欲と狂気が混じり合った結果、あの異端の神は本を収集する過程で数多くの犠牲を出すだろう。それを顧みる事すらない危険な存在を、このまま野放しにはしておけない。

「そうね……最後に貴女を上回る程の知識の持ち主を紹介するわ」
 せめてもの慈悲か敬意か、三度目の【ブラッディ・フォール】でフレミアが顕現させたのは『書架の王』ブックドミネーターの権能。オウガ・オリジンの力を簒奪し、異世界を侵略する猟書家の首魁、書を司る者にして全ての書を扱う、時間凍結城の主である。
「なに、その姿は……? 知らない、知らないわ!」
 蒼い氷の翼を纏い、服装も変化した彼女の姿を見て、カターニアは驚きの声を上げる。
 猟書家の侵略の手が伸びぬこの世界では、異世界で斃れたかの王の名を知る術もない。膨大な知識を持つ者ほど未知に戸惑うのは、アンフェールとの戦いで見たばかりだ。

「本が好きな貴女にはアリスラビリンスの猟書家達が相応しいでしょう」
 フレミアはブックドミネーターが持つ【蒼氷復活】の力で、さらに強大な直接戦闘能力を持つ猟書家『サー・ジャバウォック』を召喚する。書架の王を除けば猟書家幹部の中で最も強い彼の純粋な戦闘力は、技をコピーする敵には最も有効だと判断してのことだ。
『よもやこのような形で現世に呼び戻されるとは。不思議な事もあるものです』
 青白き斬竜剣ヴォーウパル・ソードを振るい、異端の神に斬り掛かるジャバウォック。カターニアは本を盾にして刃を受け止めるが、武芸の差は歴然であり、間髪入れぬ追撃に身体を切り裂かれた。

「氷で死者を復活させる……そのアイディア、いただきっ!」
 だが、その攻防からユーベルコードを理解したカターニアは、同じ【蒼氷復活】を用いて、先程ここで倒されたばかりの『怠惰なる魔典の虫』アンフェール女公を復活させる。
『死後もこき使われるなんて、不幸な我が身を呪うわ』
 女公は気だるげに本のページを捲り、宙に浮かべた魔導書から属性魔法の弾幕を放つ。
 敗北したとはいえ腐っても第五の貴族、その魔力は死してなお計り知れず。咄嗟に防御の構えを取ったフレミアとジャバウォックを、魔弾の嵐が撃ち抜いていく。

「やるわね。けど、この程度で書架の王は倒せないわよ」
 フレミアは本人以外には聞き取れない「零時間詠唱」で【時間凍結】を発動し、自身が受けた傷を瞬時に回復させる。さらに全身を時間凍結氷結晶で覆い、目にも留まらぬ速さで敵に急接近を行う。
「……あれは使わない。この槍でお相手するわ」
 真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」の穂先が唸り、カターニアの横腹を抉る。召喚主の危機を見たアンフェールは援護しようとするが、その寸前にジャバウォックが踏み込み、剛速の剣技で魔導書を斬り捨てた。

「わたしとおじさまの連携、凌ぎきれるかしら?」
 召喚したジャバウォックと共に、異端の神と第五の貴族を相手取る書架の王フレミア。一度刃を交えた相手だからこそ、その呼吸はよく覚えている。一糸乱れぬ連携に攻め立てられるカターニア達は、まるで自分たちの動きが全て見知られているような錯覚に陥る。
「猟書家……こんなヒト達がいたなんて……!」
 もしここにいる猟書家達が生きた存在であれば、未知なる知識を求めて嬉々として肉体を奪いにかかったかもしれない。だが、蒼氷による仮初めの復活に憑依する余地はなく。目の前にありながら手の届かない叡智に、異端の神は追い詰められていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
…単純に本を求めるだけなら、【共に歩む奇跡】で無害化する事もできるかもだけど…異端の神に憑かれて狂化してる状態だと…。

【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…。

無限の魔剣を放って牽制を行いつつ、凶太刀と神太刀の二刀で高速戦闘を実施…。
無限の魔剣を放って撃ち込み、敵を拘束しつつ呪力で侵食…。
そのまま呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱、全力魔法】で捕縛し、呼びかけを行って【共に歩む奇跡】が使えるか試すよ…。

【奇跡】がやはり難しい様なら、巫女媛の力で神太刀の神殺しの力を強化し、彼女の神核を斬り裂くよ…。

これ以上、新たな脅威を増やすわけにはいかない…。
ごめんね…貴女は、ここで止める…!



「……単純に本を求めるだけなら、【共に歩む奇跡】で無害化する事もできるかもだけど……異端の神に憑かれて狂化してる状態だと……」
 用意してあった小さな呪符を、璃奈はぎゅっと握りしめる。相手に抵抗の意思がない事を前提としたこのユーベルコードで、狂えるオブリビオンを救うことはできるだろうか。そもそも本を求めるだけと言っても、相手は人を読書のおやつ程度にしか思わない輩だ。
「……我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 迷いを抱いた少女の口から紡がれるのは【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印を解く詠唱。
 全身に莫大な呪力を纏い、周囲に無限の魔剣を顕現させ、二振りの妖刀で構えを取る。

「なんとか話が通じれば……」
 璃奈が妖刀の切っ先を異端の神に突きつけると、無限の魔剣が矢のように飛んでいく。
 カターニアはそれを踊るようなステップで躱し、あるいは手に持った本で受け止める。狂気に染まった笑みを満面に浮かべ、傷と鮮血に塗れながらも愉快そうに。
「あはは、アハハハハ! そのアイディアもいただくわ!」
 未知の宝庫である猟兵との戦いは、彼女の知識欲を充足させる。戦いの中で狂気と欲望を加速させ、悪意と殺意を撒き散らすその様に、もはや救済の余地はないかに思われた。
 それでも――一縷の望みにかけて、璃奈は魔剣の牽制に合わせて駆け出した。巫女媛の封印を解いた彼女は、所持する魔剣や妖刀の力を最大限発揮できる。加速の呪力を秘めた九尾乃凶太刀が、音速を遥かに超えるスピードを使い手に与えた。

「わっ……?!」
 カターニアがまばたきをする一瞬のうちに、璃奈はその目の前まで距離を詰めていた。
 驚く相手にそのまま二刀で斬りかかり、稲妻の如き高速戦闘を披露する。敵がその対処で手一杯となれば、本で防げないタイミングを見計らって、魔剣という楔を撃ち込む。
「どうか私の話を聞いて……」
「ア、う? なに、ナニコレ?」
 突き刺さった魔剣はカターニアの身体を縫い止め、さらに強化された呪力で侵食する。
 そのまま璃奈は呪力の縛鎖を編み上げて彼女を捕縛し、完全に動きを封じ込めたところで呼びかけを行った。

「もし、貴女が人を襲わず、本を読みたいだけなら命は取らない……」
 もし彼女がこれ以上人間に危害を加えないのであれば、【共に歩む奇跡】による共存の道が開ける。璃奈の元には実際にそうしてかけがえのない家族になった者が何人もいる。
 どうか応じてほしいと懸命に呼びかけるが、呪力の縛鎖に捕らわれてなお、カターニアは抵抗を止めようとしなかった。
「あはは、なにこれドウナッテるの? オモシロイ、面白い!」
 自らを縛る異世界の呪術に興奮し、書き留められないのがもどかしそうに指を動かす。果たして璃奈の話をきちんと聞いているのかどうか。異端の神の狂気は根深く、人の言葉でその心を揺さぶることは難しい。言葉を尽くせば尽くすほど、その事実は明白となる。

「どうしても、共に歩む気はない……?」
「あはは! どうしてわたしが誰かに配慮しなければいけないの? 欲しい本があったら奪えばいいじゃない!」
 哀しげな璃奈の呟きに、ケタケタと笑いながら返すカターニア。もはや彼女がこの世界の人間にとって脅威である事実は揺るがしようが無かった。もしここで手心を加えて見逃せば、彼女は再び地上で本を漁り始めるだろう。それを所有する人々を犠牲にしながら。

「これ以上、新たな脅威を増やすわけにはいかない……」
 やはり共存は難しいと悟った璃奈は覚悟を決め、拘束を解かれる前に妖刀を構え直す。
 神々や超常の存在の不死性を封じる九尾乃神太刀、その神殺しの力を巫女媛の力で最大まで強化し――ありったけの力を込めた渾身の一刀を振り下ろす。
「ごめんね……貴女は、ここで止める……!」
「――……ッ!!!!!?
 膨大な呪力を帯びた刃は憑依された吸血鬼の肉体ごと、異端の神の神核を切り裂いた。
 真っ赤な鮮血が花びらのように舞い散り、耳をつんざくような絶叫が地下に反響する。カターニアの胸に付けられた傷は癒えることなく、深く、深く、心の臓まで迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
詩乃(f17458)と

真打ち登場か。迷宮でケガしたんなら、無理しねーで帰ればいいのに。欲張りなこった。
……そこまで執念深ぇ奴と戦うってのも怖ぇ話だよな。
ともあれ、出会っちまったからにはどうにかしねーとな。

知識や想像力は大したモンだけど、勝負運の方はどうなんかな……!

予め《忠義貫く犬の祝福》で作ったメダルを詩乃と自分に配っておく。
向こうの攻撃は〈第六感〉を交えて〈見切り〉、隙を見て〈援護射撃〉で詩乃の攻撃をサポートするなり、向こうの攻撃を〈目潰し〉や〈武器落とし〉〈マヒ攻撃〉を狙った一撃で妨害するなり。
反撃は〈スナイパー〉ばりの精度で、ダメージの重なってる部位に狙って撃ち込む。


大町・詩乃
嵐さん(f03812)と

相手は迷宮で本を得ようとして、本に隠れていた怪物の奇襲で負傷した筈。
ドレスの裂け目とその下の傷がその証拠。
その傷を狙う。

嵐さんからメダルを受け取り、「ありがとうございます♪」と笑顔に。

UC使用して飛翔。
相手の攻撃は見切りで躱すか、オーラ防御を纏った天耀鏡で盾受け。

読心術と第六感で彼女の考えを読み、予想の裏を突く。
①神罰と光の属性攻撃を籠めた煌月で上段から斬ると見せて軌道を変え、足の傷を斬る。
②多重詠唱による2回攻撃の1回目で炎の属性攻撃を放ち、防がせた直後に、2回目の氷の属性攻撃・高速詠唱・全力魔法で作った氷柱をスナイパーで傷口に放つ。
等、嵐さんと連携して追い詰めます!



「真打ち登場か。迷宮でケガしたんなら、無理しねーで帰ればいいのに。欲張りなこった」
 新たな知識と肉体を求めてはるばる辺境から地底まで来た敵に、嵐はため息を吐いた。わざわざ痛い思いをしてまで本を欲しがるその心理は、彼にはまったく理解ができない。もっとも異端の神の狂気を理解することは誰にも不可能だろうが。
「……そこまで執念深ぇ奴と戦うってのも怖ぇ話だよな。ともあれ、出会っちまったからにはどうにかしねーとな」
「はい。この世界の人々の安全を守る為にも、この方を地上に返すわけにはいきません」
 恐怖を抱きながらも勇気を奮い立たせる嵐に、「煌月」を構えた詩乃もこくりと頷く。
 ともに神と呼ばれる存在ではあるが、彼女とあの異端の神はまるで違う。己が知識欲と狂気のために厄災をばらまく禍津神、世界を守護するために討たねばならぬ敵だ。

「そうだ詩乃、これを付けててくれ」
「ありがとうございます♪」
 戦いを挑む前に嵐は予め、自分と詩乃に「禍福の忠犬シロ」の描かれたメダルを貼る。このメダルに宿った【忠義貫く犬の祝福】は所有者には幸福を、敵対者には不運を齎す。それを受け取った詩乃はにこりと笑顔を返した後、自らもユーベルコードを発動した。
「人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
 【神性解放】を発動した詩乃の身体は若草色のオーラに包まれ、柔らかな輝きで地底を照らす。そのまま彼女はふわりと宙に浮かび上がると、薙刀で異端の神に斬りかかった。

(相手は迷宮で本を得ようとして、本に隠れていた怪物の奇襲で負傷した筈。ドレスの裂け目とその下の傷がその証拠)
 その傷を狙うと定めた詩乃の攻撃は、神罰の光を籠めた「煌月」による上段からの斬り下ろし。対するカターニアは読書から得た見識の広さを武器に、その攻撃を先読みする。
「わたしの知らないカミサマ? でもこの展開は知ってるもん!」
 彼女の知識量は第五の貴族アンフェールにも劣らず、簡単に裏をかくことはできまい。
 しかし詩乃には幸運と仲間がついている。薙刀を振り下ろす寸前、刃に反射したオーラの光が、偶然にも相手の目に当たった。

「きゃ、まぶし……ッ!!」
 思わずカターニアが目を瞑った隙を狙って、詩乃は薙刀の軌道を変えて足の傷を斬る。
 読心術と第六感を駆使して相手の考えを読み、予想の裏を突く。幸運の助けもあって、神罰の斬撃は腱のあたりに付いていた傷をより深く抉った。
「イタイわっ! もう、なにをするのっ」
 不慮のダメージを負ったカターニアは怒りに眉をつり上げ、反撃の術を放とうとする。
 だが、そのために彼女が本を手に取ろうとした瞬間、ひゅっと飛んできた礫の弾丸が、手元から本を弾き飛ばした。

「知識や想像力は大したモンだけど、勝負運の方はどうなんかな……!」
 妨害の礫を放ったのは嵐。メダルが齎す幸運と自らの技量を信じて、スリングショットの紐を引き絞る。放たれた反撃の弾丸は熟練の狙撃手のような精度で、詩乃が抉ったばかりの傷に命中した。
「あぎぃッ?!」
 同じ部位に何度もダメージを重ねられるのは、異端の神でも堪えるようだ。獣のような悲鳴を上げたカターニアは足を押さえてうずくまり、そこに詩乃が更なる追撃を加える。

「災いをもたらす者に浄化の炎を」
 詠唱により出現するのは煌めく劫火。人々や世界を護りたいという詩乃の想いに応じてその熱量は高まっていき、危害ある全てを浄化消滅させる神罰の炎として解き放たれる。
「う……本が燃えちゃうから、火はイヤ!」
 カターニアはやむなく本を盾にして炎を防ぐが、その対応は詩乃の読みの範疇だった。
 彼女の呪文は多重詠唱となっており、炎の直後に生成された氷柱が再び足の傷を狙う。

「いっっだぁ!? お、おんなじところばっかり……!」
 ナイフのように鋭い氷柱が傷口に突き刺さり、涙目になるカターニア。苦痛は怒りへと転換され、膨大な魔力が逆襲のために昂ぶるが、感情に任せた雑な攻撃など詩乃と嵐には容易く見切られるだろう。
「このっ……きゃぁっ?!」
 さらに炎の熱が氷柱を溶かし、水浸しになった床がカターニアの足を滑らせる。これもメダルがもたらす不運の影響か。バランスを崩したせいで大きく狙いの逸れた魔法弾は、予め第六感を研ぎ澄ませていた二人にひらりと躱される。

「このまま追い詰めます!」
「サポートするから、遠慮なくやってくれ」
 行動の先読みと巧みな連携に翻弄され、さらには運にまで見放された異端の神を、詩乃と嵐は容赦なく攻め立てる。目潰しやマヒを狙ったスリングでの援護射撃に、神罰の光をまとう薙刀の一閃。知識量や想像力だけでは埋めきれない勢いの差がそこにはあった。
「う、ううう……ッ」
 特に傷の深い足をひきずりながら、後退を余儀なくされるカターニア。知識を求めた先で待っていたのは想像を絶する天敵であったと、骨身に染みて思い知らされるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(「さて黒影、どう戦う?」と頭の中の教導虫が尋ねる)
はい、せんせー!
敵の状態と性格と道中の死の罠の迷宮の構造から推察した結果
本またはそれに準ずるものを使った不意打ち攻撃が有効と思われます!
というわけでスマホにダウンロードした電子書籍のアプリを餌にして
スマホの画面に夢中になっているところをUC【F.E.C】で召喚した
電子兵さんに奇襲をかけてもらい、同時に俺も『衝撃波』で一斉攻撃を仕掛けます!
(「良い作戦ね。じゃあ早速やりましょうか」)
はい!
(敵にスマホの画面を見せながら)
本ならこの機械の中に数十、いや数百とあるぜ!
見てみるか?使い方教えてやるよ!



「さて黒影、どう戦う?」
「はい、せんせー!」
 頭の中から尋ねる教導虫の声に、淀みなく応じる兵庫。まさしく教師と教え子のような関係のふたりは、異端の神に取り憑かれた吸血鬼を前にしても、正しい解答を導き出す。
「敵の状態と性格と道中の死の罠の迷宮の構造から推察した結果、本またはそれに準ずるものを使った不意打ち攻撃が有効と思われます!」
 本を求めてこんな所までやって来るような知識欲と執着心、逆手に取らない手はない。
 というわけで兵庫はおもむろにスマホを取り出すと、ダウンロードしてあった電子書籍のアプリを起動する。小さな薄い板に詰まった膨大な情報は、カターニアの興味を引く餌としては最適だろう。

(このアプリを餌にして、スマホの画面に夢中になっているところを電子兵さんに奇襲をかけてもらい、同時に俺も衝撃波で一斉攻撃を仕掛けます!)
(良い作戦ね。じゃあ早速やりましょうか)
(はい!)
 脳内で教導虫と作戦会議を終えた兵庫は、敵によく視えるようスマホを見せびらかす。彼の故郷においてはごく当たり前の内容も、この世界においては全て未知の情報となる。
「本ならこの機械の中に数十、いや数百とあるぜ!」
「えっ、なにそれ、ナニソレ! 読みたい読みたい!」
 案の定、カターニアの視線はスマホの画面に釘付けになり、誘蛾灯に惹きつけられた虫のようにフラフラと近寄ってくる。正気をなくしても失われなかった本への執着は歯止めのきかない狂気となり、たとえ罠だと分かっていたとしても彼女は手を出しただろう。

「見てみるか? 使い方教えてやるよ!」
 力ずくでもスマホを奪い取る気まんまんの敵を、兵庫はぎりぎりの所まで引き付ける。
 死の罠の迷宮で見かけた怪物の本と同じだ。興味を持ってそれを読もうとした時点で、そいつは罠に嵌っている。開いたページの中にどんな怪物が潜んでいるかも知らずに。
「いいの? 見せてミセテミセテ!」
 カターニアは子供のように無邪気な、そして狂気的な笑みを浮かべながら手を伸ばす。
 その指先がスマホの画面にタッチしようとした瞬間、満を持して兵庫は号令を上げた。

「今です! 電子兵さん! バグらせちゃってください!」
 【F.E.C】起動。第五の貴族アンフェールの軍すらも喰い荒らしたプログラムコードのムカデ達が、画面から一斉に這い出してくる。至近距離から奇襲を受けたカターニアは、その大群の中に飲み込まれて目を丸くした。
「きゃっ?! なに、なになにナニコレっ?!」
 そのまま包囲攻撃を仕掛ける電子兵に齧られ、彼女の混乱はいや増すばかり。本を振り回して払いのけようとするが、プログラムの牙はそれさえバグらせて崩壊を引き起こす。心理的にも物理的にも無防備になった隙を突いて、さらに兵庫が追撃の一打を叩き込む。

「引っかかったな!」
「あぐぅッ?!」
 振り下ろした警棒より激しい衝撃波が放たれ、カターニアの小柄な身体を吹き飛ばす。
 ボールのように床を跳ね、屋敷の壁まで叩きつけられた彼女は、血の混じった咳と悲鳴を絞り出しながら倒れ伏す。兵庫が虫達と立てた作戦は、見事に図に当たったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…察するに、他の書物に気を取られて罠にかかったか、本その物に罠が仕込まれていたか

…いずれにせよ、先の戦闘で魔力や手持ちが心許ない以上、長期戦は悪手ね
次の一手に残された全てを賭けるわ

UCを発動して全ての魔刃に幻属性攻撃の魔力を溜め、
空中機動を行う魔刃の集団戦術で戦場全体を使った幻術魔法陣を形成

…刃に満ちよ、夢幻の理。我に背く諸悪の悉くを欺き給え

死の罠の迷宮の図書館の残像を暗視させる呪詛を掛けて敵の注意を引き付け、
幻の闇に紛れて死角から切り込み大鎌を怪力任せになぎ払うわ

…術者としての力量ならばお前の方が上でしょう
だけど、お前の心の隙は知悉しているもの
その隙を突けば、多少の力量差は関係ないわ



(……察するに、他の書物に気を取られて罠にかかったか、本その物に罠が仕込まれていたか)
 猟兵の前に現れた時点で、敵は既に負傷していた。リーヴァルディはどういった経緯でその傷が付けられたのかを推察し、強大なる異端の神を討ち滅ぼすための作戦を考える。
(……いずれにせよ、先の戦闘で魔力や手持ちが心許ない以上、長期戦は悪手ね)
 第五の貴族討伐からの連戦は、少なからぬ消耗を彼女にも強いている。万全とは言いがたい状態、それでも最善を尽くすために、吸血鬼狩人は残された魔力と体力を振り絞る。

「……次の一手に残された全てを賭けるわ」
 発動するのは【吸血鬼狩りの業・魔刃の型】。リーヴァルディの周囲に100本を超える魔力結晶刃が召喚され、蛍火のように辺りを照らす。この魔刃には武器としての用途だけではなく、召喚者の術行使を補助する魔法増幅能力も備わっていた。
「……刃に満ちよ、夢幻の理。我に背く諸悪の悉くを欺き給え」
 空中を機動する魔刃の群れは、戦場全体をキャンバスにした大きな魔法陣を描き出す。
 その全てに込められた魔力属性は"幻"。リーヴァルディの詠唱に沿って完成した陣は、敵を大規模な幻術に引きずり込んだ。

「あら、あら、あら? またこの場所なの?」
 怪しげに光る魔刃の動きを目で追っているうちに、カターニアは気づけば死の罠の迷宮にいた。図書館のようにずらりと並んだ本棚が複雑な迷路を形作る、彼女にとっては抗いようのない誘惑に満ちた場所。戦いの最中だと分かっていても目移りしてしまう。
「この本、まだ読んだことなかったわ。あっ、この本も!」
 言うまでもなく、この光景はリーヴァルディの魔法が作り上げたもの。被術者にとって都合のいい幻を見せつけているに過ぎない。だが幻とはいえその出来は真に迫っており、異端の神をもってしても容易に見破ることはできなかった。

(……術者としての力量ならばお前の方が上でしょう。だけど、お前の心の隙は知悉しているもの)
 この狂えるオブリビオンの興味と執着は全て、新たな本の蒐集のみに向けられている。正攻法では苦戦する相手でも、歯止めを失った知識欲にうまく付け入れば、こうも容易く術中に嵌められる。
(……その隙を突けば、多少の力量差は関係ないわ)
 図書館の幻像に敵が夢中になっているうちに、リーヴァルディは幻の闇に紛れて死角に回り込んだ。疲労を堪えて大鎌を握りしめ、宣言の通りこの一撃に全てを賭ける覚悟で、大きく力強い構えで振りかぶり――。

「……眠りなさい、狂える神よ」
 力任せに振り切られた"過去を刻むもの"の一閃が、狂えるオブリビオンをなぎ払う。
 寸前まですっかり本に注意を引き付けられていたカターニアに、防ぐ術などあるはずがない。胴体をばっさりと斬り伏せられ、手にしていた本を血飛沫で真っ赤に染め上げる。
「あ……い、いた……ッ!?!!」
 そこでようやく彼女は、自分がリーヴァルディの術に惑わされていたのに気が付いた。
 迷宮の幻影は蜃気楼のように消え去り、元の風景が戻ってくる。手に入れたはずの本も全てなくなってしまったことに、カターニアは悲嘆に暮れながら血溜まりに膝をついた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
ただ本と知識を求めるだけの存在であれば討つ必要はありませんが、蒐集欲と知識欲に狂い、その狂気を伝播させる異端の神。あなたもまた、この世界で人が生きるには邪魔な存在です。

ドレスを着た状態であれば破れた個所から傷口が分かりやすかったのですが、変身しましたか……
ですが強引に突破してきたのならおそらく死の罠の迷宮を攻略する上でも何度か変身はしたことでしょう。この姿になっても外傷はあるはず。

「フィンブルヴェト」を手に最初は銃剣で『武器受け』防御に徹し、敵の動きから違和感のある箇所やかばっている箇所を大雑把に『見切り』、『視力』で傷口を見つけたら『スナイパー』の技術で狙い、【凍風一陣】を撃ち込みます。



「ただ本と知識を求めるだけの存在であれば討つ必要はありませんが、蒐集欲と知識欲に狂い、その狂気を伝播させる異端の神」
 オブリビオンの肉体を纏い、紛うことなき災厄と化した神に、セルマは銃口を向ける。
 アレは信仰を捧げれば応えてくれるような善良な神ではない。ならば自分が最も得意とする銃撃の作法をもって討ち払うのみ。
「あなたもまた、この世界で人が生きるには邪魔な存在です」
「邪魔? それはあなたたちよ! わたしは本が読みたいのっ!」
 カターニアにとっても、もはや猟兵は蒐集の邪魔をする目障りな存在でしかなかった。読書の最中に虫がたかってくれば目障りだろう。それと同種の怒りが猟兵を"敵"と認識させる。それがあまりにも遅く、そして傲慢で筋違いな怒りだとしても。

「想像の爪で引き裂いて、空想の牙で食べてあげる!」
 怒りのままにユーベルコードを発動したカターニアの姿は、可憐な少女から空想上の獣となる。分厚い毛皮、鋭い爪牙、強靭な四肢――これまでとは違う戦闘力に偏った姿に、セルマはすっと目を細めた。
(ドレスを着た状態であれば破れた個所から傷口が分かりやすかったのですが、変身しましたか……)
 彼女にとっては単純な戦力の増加より、負傷箇所が見えづらくなった事が問題だった。獣の毛皮は傷口を覆い隠し、体型も大幅に変わっているため変身前に見た傷の位置も当てにはならない。相手は意図していないだろうが、面倒な偽装工作だ。

(ですが強引に突破してきたのならおそらく死の罠の迷宮を攻略する上でも何度か変身はしたことでしょう。この姿になっても外傷はあるはず)
 敵のユーベルコードはあくまで変身能力であって、ダメージを回復させる効果はない。そこに期待をかけて、セルマは襲ってくる空想の獣をマスケット銃「フィンブルヴェト」で迎え撃つ。
「がうがうっ!!」
 大振りなナイフほどのサイズのある爪牙を、銃の先端に取り付けた銃剣「アルマス」で受け流す。射撃戦や狙撃を得意とするセルマだが、防御に徹するのであれば近接戦闘でも遅れは取らない。マスケットの長い銃身を槍のように巧みに操り、リーチの差を活かして敵の攻撃を牽制する。

「もう、はやく食べられちゃってよ!」
 思うように攻めきれず、苛立ちをつのらせるカターニア。感情の揺れ動きは肉体の動作にも顕著に表れ、ふとした瞬間に見せる違和感のある動きや、痛みを堪えたりかばうような仕草がセルマの目に留まるようになる。
(正気も理性もないとの話でしたが、なるほど獣と同じですね)
 獲物を狙う狩人の観察力で、傷を負っている箇所を大雑把に当たりをつけると、攻撃を捌きつつ目を凝らす。狙撃手として鍛えられた彼女の視力は、獣の毛皮に隠された傷口を遂に見つけ出した。

「そこですね」
 どこを狙うべきか分かれば、あとはただ撃ち抜くだけ。至近距離で激しく動く標的に、セルマは淀みなく照準を合わせる。流血の代償と引き換えに、撃ち込むは【凍風一陣】。
「『寒い』と思う暇も与えません」
 撃ち出されれる弾丸の威力、貫通力、速度は大幅に高められ、その名の通り一陣の凍風のように標的の傷口に突き刺されば、その反対側まで突き抜けていく。そして弾丸に付与された絶対零度の冷気は、空いた風穴から血が吹き出すよりも早く標的を凍結させる。

「あ、ひッ……!!!?」
 ほんの一瞬で何をされたか理解が追いつく前に、カターニアの全身は凍りついていた。
 焼け付くような痛みと、芯まで沁みる寒気が相殺し、途方もない虚無感と虚脱感だけが残る。それは彼女に残された生命の灯火が消えていく感覚だった。
「わ、たし、は……」
 獣の口から紡がれる少女の声。それをセルマは油断のない眼差しで見下ろしていた。
 恐らく必要となるのはあと一撃。長かった戦いにも終止符を打つ時が迫りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
衣装の中でこれを選んだのは、何もただのインパクト重視ではありません
迷宮を踏破するまでに受けた傷、それを我が魔眼で見極めんがため

獅子の牙やら熊の爪、馬の脚に蛇の尻尾……繰り出されるそれを強化された【視力】で【見切る】
あれもこれもと強欲に求め、詰め込んだ獣、か
貴様の狭い見識では空想だが、世界を渡れば普通にいる……かもしれない
空想と断じ、使い方を突き詰めていない、そんな攻撃に当たるものか!

アンフェール、彼女の放つ魔法は確かに強力だった
まともに受ければ異端の神とて痛手を免れまい
異端の神、変身能力で表面上の傷の深さは当てにならない
【死睨の魔眼】で本当に致命の箇所を見抜き、大鎌で斬り裂く
そこだ――!



「ぐるるるるる……いやだ、しにたくない、しにたくない……」
 猟兵達の猛攻に追い詰められ、今や満身創痍のカターニアは、空想上の獣の姿で唸り声を上げる。神としての威厳など端からそこにはないが、どれだけ変身しても変わることのない狂気が、今だその瞳には宿っている。
「だってまだ読ンでなイ本があるもの……もっトモっと、わたしは本がヨみたいのッ!」
 もはやそれは人の言葉なのか獣の咆哮なのか判別不可能だったが、敵意だけはひしひしと伝わってくる。蒐集の邪魔を排除せんと、彼女は残された力を振り絞って牙を剥いた。

「獅子の牙やら熊の爪、馬の脚に蛇の尻尾……あれもこれもと強欲に求め、詰め込んだ獣、か」
 手負いの神を迎え撃つのはオリヴィア。本人の精神性がそのまま反映されたような異形に冷淡な視線を向け、繰り出される攻撃を強化された視力で見切る。バニーガールの格好のまま、本物の兎以上の機敏さで身を躱すさまは華麗ですらあった。
「貴様の狭い見識では空想だが、世界を渡れば普通にいる……かもしれない。空想と断じ、使い方を突き詰めていない、そんな攻撃に当たるものか!」
 歴戦の戦士であるオリヴィアから見れば、獣に変身したカターニアの動きには機能性や合理性の欠片もなかった。獣ならば獣なりに、狩りのために最適化された所作があるというのに。どれほど鋭い爪牙も、強靭な体躯も筋力も、これでは恐るるに足らずである。

(衣装の中でこれを選んだのは、何もただのインパクト重視ではありません。迷宮を踏破するまでに受けた傷、それを我が魔眼で見極めんがため)
 獣の猛襲を躱し続けながら、オリヴィアの瞳は金色に輝く。このバニーの姿でのみ使用可能な【死睨の魔眼】は、対象の死に易い箇所を観測し、致命的な一撃を食らわせるためのユーベルコードだ。
「アンフェール、彼女の放つ魔法は確かに強力だった。まともに受ければ異端の神とて痛手を免れまい」
 あの第五の貴族が趣向を凝らして創り上げた迷宮を、此奴は強引に突破してきたのだ。そこで受けた負傷には必ずや致命に繋がるものがあるはず。確実に見極め、そして断つ。赤い大鎌を握る両手に、ぐっと力が籠もった。

(異端の神、変身能力で表面上の傷の深さは当てにならない)
 だがダメージ自体が消えたわけではないのなら、どれだけ隠そうとも傷はそこにある。
 オリヴィアは見せかけの姿に惑わされず、魔眼の力を以て本当に致命の箇所を見抜く。
「そこだ――!」
 刹那に繰り出される渾身の一閃。大鎌が赤い円弧の軌跡を描き、異端の神をなぎ払う。
 その切っ先は狙い過たず、毛皮に覆ってまで彼女が隠したがっていた、致命的な傷口を捉えていた。

「ぁ――……」
 直後、カターニアの動きがぴたりと止まり、空想上の獣から少女の姿へと戻っていく。
 自発的に戻ったというより、変身を維持するだけの力を維持できなくなったのだろう。ぺたん、とその場に崩れ落ちた少女の全身の傷から、堰を切ったように血があふれ出す。
「嘘……わたし、が、しぬ、なんて……――」
 最期の瞬間まで信じられないといった顔のまま、少女の肉体は塵となって消えていく。
 そして、その肉体に取り憑いていた異端の神も――新たな器を得ることなく、消える。



 かくして狂えるオブリビオンと化した『世界の真実を知るもの』カターニアは斃れた。
 異端の神の暗躍を阻止できたことで、猟兵達に託された依頼はここに全て果たされる。
 狂える第五の貴族という災厄の誕生は阻止され、人々を脅かす敵はまたふたつ減った。今だダークセイヴァーの闇は深いが、それでも世界は少しずつ未来に前進していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月23日


挿絵イラスト