ナイト・オブ・ナイツ
●騎士王
首なしの吸血鬼がダークセイヴァー『地底都市』に存在する一つの屋敷の外にまるで頭を垂れるように膝をつき、居並ぶ。
その光景は己たちの主の号令を待ちわびているようでも在った。
彼等は『首無しヴァンパイア』。元は上級に匹敵する力を持っていたヴァンパイアであるが、その全てが首を落とされている。
何故そのようなことになったのか。
その経緯を識るものはただ一人しかいない。
理性すらなく、弱体化しているとは言え、その胸に輝くのは『番犬の紋章』である。かつて地上世界において『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアですら一撃のもとに屠ることができるほどの力をもっているのだ。
「――……」
彼等を従えているのは、この屋敷の主である『赤錆の騎士』だ。
その胸に輝くのは『騎士王の紋章』――言うまでもなく寄生虫型オブリビオンを装着し、彼は待ってる。
ただひたすらに待っている。
吸血鬼との戦いに破れ、吸血鬼化させられた騎士。
すでに理性はなく。
そして、かつて掲げたであろう矜持も朽ちた。彼が護りたかった者たちの返り血によって騎士の鎧は赤く錆びた。
無念しか無い。
守れなかったどころか、守りたかったものにさえ剣を振るった。
殺してくれと願う心は、身体を錆びつかせるが、彼の吸血鬼化した身体は止まらない。もはや歯車でしかない。
「……私を超えろ。私を。『時』は君達の『味方』だ。私は錆び続ける。錆び続けていく。今は『できなくても』必ず『できるようになる』――……」
その言葉は誰に向けられた言葉であっただろうか。
ただ、その赤錆の鎧に覆われた奥に輝く眼光だけが鋭く虚空を見据える。
未だ見ぬ己を打倒する何者かを待ちわびるように――。
●折れた聖剣
立ち上がらなければならないと願う心があれど、身体は動かない。
もはやこれまでかと思う心が、膝を折る。
「――……だがッ!」
そう、己が立たねば誰が力なき者たちを護るというのだ。
己は騎士である。手にした聖剣に誓ったのだ。必ずや、守り通すと。ひび割れた騎士鎧から力が溢れ出す。
諦められない。
必ずや、かの敵を、ヴァンパイアを、吸血鬼を一体でも多く屠らねばならぬと、その瞳は輝く。
周囲には無数の上級ヴァンパイアが首をはねられている。
全て己がやったことだ。けれど、それさえも問題にならぬ圧倒的な上位存在がいる。
「無駄だ。全て無駄だ。意味のないことだ。お前の生も、お前が護ろうとした生命も。全てが無意味だ。だから、少しでも有意義にしよう。無駄にならぬように」
何を、と思った瞬間、聖剣は折れ、背に負った光翼は霧散し消え去った。
血の味がした。
一瞬の一撃。それによって己は絶命したはずだった。けれど、声の主が言うのだ。
「その技量も、意志も、何もかもが無駄にならぬように。我が命を受けよ。答えは一つしかない。拒否はない。ただ鏖殺せよ。『殺し続ける』ことこそが、お前の至上命題なのだ――」
●第五の貴族
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はダークセイヴァー。ヴァンパイアの支配する闇の世界に存在する空洞世界……『地底都市』にある一つの屋敷に住まうヴァンパイアを打倒して頂きたいのです」
ナイアルテは、言葉を紡ぐ。
そう、ヴァンパイア支配盤石たるダークセイヴァー世界。
地上とは別に存在する地底世界である『地底都市』には『第五の貴族』と呼ばれる支配者階級のヴァンパイアが存在しているのだ。
彼等が恐らく『辺境伯の紋章』などを地上世界の吸血鬼たちに配り、支配していたのだろう。
言うまでもなく危険な相手である。
「はい……まずは『第五の貴族』の屋敷の外を護る『番犬の紋章』を宿した強力なオブリビオンの群れと戦わなければなりません」
しかし、多くの猟兵たちが知っているように『番犬の紋章』を持つヴァンパイアは『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアをも一撃で打倒する存在である。
それが群れで存在しているというのは、あまりにも現実味がない。
「まともに戦い続けることは難しいでしょう。ですので、奇襲によってある程度の打倒を確認の後に屋敷へと突入してください。相手の体勢を崩す、ということが大前提にあります」
屋敷の中には『第五の貴族』であるヴァンパイア、『赤錆の騎士』がいる。
このヴァンパイアの持つ『騎士王の紋章』の力は支配階級であることからもわかるとおり、『番犬の紋章』よりも強大なものである。
数、質共に勝る存在に如何にして勝てというのだろうか。
ナイアルテの瞳が輝いている。そう、グリモアの予知である。
「『騎士王の紋章』――その弱点は『長時間の戦闘に向かない』ということです。戦いが長引けば長引くほどに、その強大な力に『赤錆の騎士』事態が耐えられなくなっていくのです」
無論、戦いを長引かせることができればの話である。
紋章である『寄生虫型オブリビオン』によって、強大なヴァンパイアと化しているのだ。そもそも戦いを長引かせること事態が困難なのである。
「しかし、やらねばなりません。ダークセイヴァー世界に生きる人々のためにも、この強大なヴァンパイアは打倒しておかねばなりません。私の見た紋章の弱点……これを突くことができれば、必ずや皆さんならばと信じております」
ナイアルテはうなずく。
彼女の見た紋章の弱点の予知。それを信じ、猟兵達は『第五の貴族』を打倒するしかない。
「ですが……それだけでは終わらぬのが『第五の貴族』たる所以でしょう。私の予知の及ばぬ事態が起こり得るかもしれません」
全てを完璧に予知することができたのならば、とナイアルテは頭を下げる。
「『赤錆の騎士』はヴァンパイアに殺され、ヴァンパイア化された過去の化身。その無念を晴らすことができるのは皆さんだけなのです」
どうか、と彼女は猟兵達に願うことしかできない。
どれだけ危険な戦いであるかは承知しているからこそ、だからこそ見送らねばならない。死地に送り出す身として、それだけは目をそらしてはならないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はダークセイヴァーに存在する『地底都市』へと向かい、支配者階級である『第五の貴族』を打倒するシナリオとなります。
●第一章
集団戦です。
『第五の貴族』の屋敷の外に存在する『番犬の紋章』持つ強力なオブリビオン『首無しヴァンパイア』の群れと戦わなければなりません。
あまりにも強いため、まともに戦うことはできないでしょう。全滅させることは難しく、あくまである程度倒して、敵の大勢を整えさせぬままに屋敷に突入することを優先するのが良いでしょう。
●第二章
ボス戦です。
『第五の貴族』の屋敷の中で『第五の貴族』と呼ばれる『赤錆の騎士』と多々居ます。
『騎士王の紋章』を持つ、まともに戦っては皆さんでも勝ち目のない強敵です。
ですが、予知された弱点である『長時間の戦闘に向かない』という事実から、この弱点を突くことでプレイングボーナスを得ることができるでしょう。
●第三章
ボス戦です。
第二章で打倒した『赤錆の騎士』の身体から別の『紋章』が這い出し、全く別の姿となって蘇ってきます。
この紋章の弱点は予知できていません。
しかし、必ず弱点があるはずです。オープニングや断章から得た情報から弱点を推測し、突くことでプレイングボーナスを得ることができます。
それでは、地底都市を支配するヴァンパイア、『第五の貴族』を打倒し騎士としての無念を晴らすために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『首無しヴァンパイア』
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POW : 影移動
【血肉を求め、相手の影から自らの身体】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
SPD : 影蝙蝠
自身が装備する【再生能力を有する蝙蝠】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 復元再生
自身の装備武器に【驚異的な再生力】を搭載し、破壊力を増加する。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『第五の貴族』の屋敷の周囲には、『首無しヴァンパイア』たちが膝をついたまま動く気配はなかった。
それは周囲に敵が存在しないからであり、敵――すなわち猟兵が転移してくれば即座に動くことだろう。
彼等の胸に装着された紋章、『番犬の紋章』は言うまでもなく彼等が凄まじい力を持つオブリビオンであることを示している。
一体一体が、強敵。
その事実はあまりにも、この戦いが困難であるかを知らしめる。
「――……」
しかし、彼等は理性無き者たちである。
猟兵達はわかっている。彼等を操る支配者である『第五の貴族』さえ打ち取れば、この戦いは猟兵達に傾く。
それはすなわち、ダークセイヴァーにおける人々の開放に繋がるのだ。
なればこそ、猟兵達に恐れはない。
次々に転移し、戦いの中へと飛び込んでいく。いつだって、勇気だけが猟兵たちを前に進ませるのだ――。
ニノマエ・アラタ
錆び、ねえ。腐食してたら終いだが、さてどうかな。
確かめに行くか。
真の剣ならば簡単に折れない。
それを吸血鬼にわからせてやろう。
眼の無ェ相手が勘づくとなりゃ、気配に対してだろうと思うが。
暗殺の要領で俺の存在を悟らせないように、息を潜める。
遮蔽物があればその後ろに隠れ、妖刀解放で奇襲をかける。
敵が吸血鬼なら膝狙い、蝙蝠が追ってきたなら翼狙いで。
身体の可動域を潰し、敵を動けなくしておいて、
その隙に屋敷まで駆け抜ける。
集団で来られたら体勢を崩させるつもりで衝撃派をとばす。
攪乱できれば、なお良い。
無駄な戦いはせずに、後に力を温存しておく方向で。
遊んでるほど余裕は無ェ。
こっちも突破の一瞬に命かけてるからな。
ダークセイヴァー世界の地下に広がる空洞世界。
『地底都市』はヴァンパイア支配が地上よりも強力なる場所である。そこに存在するヴァンパイアたちは『紋章』と呼ばれる『寄生虫型オブリビオン』を装着し、尋常ならざる力を発揮している。
これが人類の敗北した力であると言わんばかりのすさまじい戦闘力は猟兵たちをしても容易には突破できない存在であったことだろう。
首のないヴァンパイア。
『首無しヴァンパイア』たちは、その気配を感じ取って身体を持ち上げる。
頭を垂れるように『第五の貴族』の屋敷に居並んでいたが、己たちの敵である猟兵の転移を知って、続々と立ち上がるのだ。
彼等の胸に輝くのは『番犬の紋章』である。
地底都市の門番を任されていたヴァンパイアたちが身につけていた紋章であり、その力は『辺境伯の紋章』をも軽々と凌駕するものであった。
それらが数を持って猟兵たちを圧する。
「錆、ねえ。腐食してたら終いだが、さてどうかな」
確かめに行くのも良いと、ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は転移して即座に行動を開始する。
息を潜め、己の存在を悟らせぬようにと行動する。
地底世界は日の刺さぬ世界である。地上である世界も同様であるが、ここはさらに日が刺さない。
しかし、そんな世界にあっても彼の瞳はユーベルコードに輝く。
手にした妖刀の宿怨をもって、彼の妖刀解放(ヨウトウカイホウ)されし力は凄まじい速度で持って奇襲の一撃を可能とするのだ。
「眼の無ェ相手が勘づくとなりゃ、気配に対してだろうが! 感知されないほどの速度ならばどうだよ!」
疾風のようにアラタは戦場を疾走る。
閃光のように妖刀がきらめいて、羽ばたくコウモリを次々と切り捨て、『首無しヴァンパイア』へと迫るのだ。
ここでまともに彼等を相手取っていては、質、数ともに勝る『首無しヴァンパイア』たちにすり潰されるのは自分たちの方である。
だからこそ、アラタは目的を違えない。
どれだけ彼等が強靭な再生能力を持っていたとしても、身体の可動域を潰してしまえば、再生するまで動けないはずである。
「圧倒的な速度ならば」
疾風のように駆け抜けた彼の斬撃は、狙い過たずに『首無しヴァンパイア』たちの足や腕を切り刻み、その動きを止める。
あくまで狙いは『第五の貴族』だけである。
ここで余分に力を使って消耗することは避けなければならない。何故なら、これより戦う『第五の貴族』は、『番犬の紋章』を持っている彼等よりも遥かに強い危険な相手なのだ。
「遊んでるほど余裕は無ェ」
一点突破に力を込めて、アラタは疾走る。血風が荒ぶ戦場にあっても、見据えるのは『第五の貴族』の屋敷だけである。
お行儀よく正面玄関からなんて言っていられない。
アラタはゴシック様式の屋敷の窓を蹴破りながら、屋敷の中に飛び込んでいく。
一瞬、一瞬の生命の煌めき。
それに己は生命を懸けているのだ。
「どれだけ質、数共に勝っていようが。大将首さえ取れれば、敵は瓦解する。戦いなんてのは、いつだってそんなものだ」
だからこそ、疾走るのだ。
己の日常は戦いの中にこそある。常在戦場。
彼にとっては当たり前のことである。暗闇の中に妖刀『輪廻宿業』の輝き怪しく煌めき、そして、己が定めた敵を探して、一層アラタは気力をみなぎらせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
相手の攻撃力もさることながら、異常なまでの再生能力…
まともな勝負にならない相手だというなら…、相手の動きを封じる!
敵の攻撃は【瞬間思考力】で攻撃の軌跡を【見切り】、回避試みる
最悪は刀に【オーラ防御】を纏わせつつ【武器受け】で敵の攻撃を受け流すがまともに戦えばこちらに勝ち目はない
本当に最悪の場合のみにする
【破魔】の力を付与した波動の【範囲攻撃】を敵集団に放ちつつUC『破邪顕正』を発動させる
行動不能を敵集団に付与し敵陣の陣形を崩す
刀に【破魔】の【属性攻撃】と【継続ダメージ】を付与し相手を一閃、【貫通攻撃】
多数を相手にしてもじり貧になるだけなので、一体に集中し攻撃を浴びせる
『番犬の紋章』が煌めき続けている。
それは『首無しヴァンパイア』たちを元上級であったとしても、理性無き下級ヴァンパイアとなった身体を、さらなる力で強化せしめる凄まじき力であった。
『寄生虫型オブリビオン』と呼ばれる個体は、『番犬の紋章』であれば『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアすらも一刀のもとに屠ることのできる力を持つ。
その強敵がまるで雑兵のように駒として使われているのが『地底都市』の恐ろしさであり、ダークセイヴァー世界の闇の深さを教えるには十分なものであったことだろう。
猟兵たちが転移し、即座に行動を起こしたことにより、多くの『首無しヴァンパイア』は関節などの可動域を潰され機先を削がれていた。
その隙に『第五の貴族』の屋敷へと突入する猟兵の姿もあったが、未だそれだけでは『第五の貴族』に対抗するだけの戦力が突入できたとは言い難い現状であった
そして、『番犬の紋章』輝く『首無しヴァンパイア』たちもまた尋常ならざる再生能力で持って、即座に傷を癒やし、首のない顔を転移してきた猟兵へと向けるのだ。
「相手の攻撃力もさることながら、異常なまでの再生能力……」
まともに戦っては勝負にすらならないと、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、肌でその実力差を実感していた。
けれど、退く理由にはなっていない。
「なら、相手の動きを封じる!」
襲いくる『首無しヴァンパイア』の攻撃は鋭いものばかりであった。
速度、威力共に大地をえぐる腕は、それだけでひりょに致命傷を与えるものであったことだろう。
けれど、彼等が頭を喪ったことによって理性を無くしていることが、この戦いの趨勢を決める。
考える。
考え続ける。断続的に続く『首無しヴァンパイア』の放つ攻撃を如何にして躱すかという選択肢の連続。
それは通常の人の脳では処理しきれぬほどの怒涛なる連撃の数々であった。
けれど、それでもひりょは考え続けるのだ。
どれだけ脳の神経が焼ききれるほどの選択を迫られたとしても、止まることはない。
「皆の笑顔を守りたい……そのためには!」
自分ができることをやり続ける。
振り下ろされた腕をオーラ纏う刀で受け止め、受け流す。
受け流さなければ、刀ごと自分が両断されていただろう。これが最悪の選択であることをひりょは理解していた。
けれど、同時にそれは最善に至るために一手でもあるのだ。
「幾多の精霊よ、かの者に裁きを…破邪顕正(セイナルイマシメ)!」
輝く瞳にユーベルコードが発露する。
退魔の力を帯びた拡散波動が受け止めた刀から放たれ、『首無しヴァンパイア』たちの動きを止める。
それは一瞬に満たない時間でしかなかったことだろう。
ひりょは受け流した刀を返し、目の前の『首無しヴァンパイア』の一体を両断し、霧散させる。
まずは一体。
けれど、これ以上はかまっては居られない。両断した『首無しヴァンパイア』を捨て置き、ひりょは『第五の貴族』の屋敷へと駆け込む。
「なりふりかまっていられない……! ジリ貧になる前に突破する!」
追いすがるように迫る『首無しヴァンパイア』たちを振り払い、ひりょは屋敷の扉を刀で切り刻み、走り抜ける。
どうあっても『首無しヴァンパイア』たちを倒しきれないというのならば、振り払うしかない。
常闇の世界、ダークセイヴァーに己の放つユーベルコードの輝きが希望の灯火に成るようにと、ひりょは『第五の貴族』を目指す。
それが小さな一歩にすぎないのだとしても、踏みしめた大地はきっと、諸悪の根源へと必ずや至ることを確信させるのだ。
「行くぞ、『第五の貴族』……必ず、必ず倒してみせる!」
その咆哮は号砲のように『地底都市』に響きわたるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
羽々・一姫
最近運動してなかったし、たまには真面目に戦うのもいいかな。
それにしても『番犬の紋章』をつけたオブリビオンの群れとはね。
さすがに出し惜しみしていたらこっちがやられてしまいそう。
転移直後から【血統覚醒】を発動させて、【タルタロスの鍵】で【切り込】んで、
相手が体勢を整えきる前に初撃を入れ、有利に戦っていきたいわ。
その後の攻撃は、一点集中。【傷口をえぐ】らせてもらおうかな。
首なしがわたしをダンピールにしたってことはないと思うけど、
『第五の貴族』なら可能性はあるもの。『お話し』聞きにいかないとね。
とっくに忘れた理由をいまさら思い出したくなったっていうのも、
なんだか妙だけれど、なんとなくそんな気分なのよ。
『番犬の紋章』輝く『首無しヴァンパイア』の群れを突破し、次々と『第五の貴族』の屋敷へと突入していく猟兵たち。
彼等の目的は一貫して『第五の貴族』だけであった。
質と数共に猟兵たちを上回る『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』は単体での勝利が望めるものではあったが、数が揃えられている。
屋敷の周囲を取り囲むように防衛する彼等を全て打倒することは現実的ではなかった。
ゆらり、ゆらりとうごめく影は彼等のユーベルコードであろう。
首無しの身体であっても、理性はなくとも、ただ本能的にわかっているのだ。猟兵をこれ以上屋敷の中に侵入させてはならないと。
どれだけ己たちの主が強大な存在であったとしても、猟兵達は数で押し切ってしまうかもしれない。それが彼等も本能的に理解しているのだろう。
だからこそ、奇襲を受けての大勢が決するまえに猟兵たちを止め置くことこそが、彼等にとっての最善であったのだ。
「最近運動してなかったし、たまには真面目に戦うのもいいかな」
転移した直後、その真紅の瞳をユーベルコードに輝かせながら、羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は『地底都市』に舞い降りる。
彼女は極度の面倒くさがりである。
仕事を早く終わらせれば、サボることができるというモチベーションの元に迅速なる結果を導き出すことで知られる猟兵であるが、目の前に存在する『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちを素早く全滅させることは無理であると、即座に判断していた。
血統覚醒によるヴァンパイアへの変身。
それは彼女の寿命を削るものであったが、手にした死神の大鎌の如き『タルタロスの鍵』を振るい、自身の影より現れた『首無しヴァンパイア』たちの放ったユーベルコードを膾切りにして、駆け出すのだ。
「不意打ちをするなんて、とは言わないけれど」
スマートではないよ、と彼女は瞳を輝かせ飄々とした雰囲気のまま駆け出す。
ダンピールとして天性の身体能力を有している彼女にとって、たとえ元上級ヴァンパイアであっても遅れを取る理由はない。
ただし、それは個としての力であることを彼女はわきまえていた。
他の猟兵たちが突入し、薄くなった『首無しヴァンパイア』たちの防衛網を素早く突くのだ。
「体勢を整えられる前に、初撃で決める」
走り抜ける一姫は、先行した猟兵たちが刻んだ『首無しヴァンパイア』たちの再生しきらぬ部分をえぐるように大鎌を振るい、その身体を霧散させていく。
傷を負わぬ相手を打倒するよりも、こちらのほうが素早く防衛網に穴を穿つことができるし、何より――。
「――楽ちんだからね。サボりたいわけじゃないわ、本当よ」
誰に対して言い訳しているわけでもないけれど。
一姫は考える。
自分がダンピールである理由。首無しのヴァンパイアが自分をダンピールにしたわけではない。
だが、『第五の貴族』ならば可能性はある。
自身の出生。
ダンピールとしての存在。
そのあらゆる理由を一姫は知りたいのだ。『話』をしたいとさえ思うのだ。
「とっくに忘れた理由を、今更思い出したく成ったっていうのも、なんだか妙だけれど」
大鎌を振るい、真紅の瞳の残光が戦場に走り抜ける。
振るう刃の一撃が重たくなってくる。『首無しヴァンパイア』たちの再生能力が斬撃の重さを上回ってきているのだ。
頃合いか、と一姫は層の薄くなった『首無しヴァンパイア』たちを蹴散らしながら、屋敷の中へと突入する。
「なんとなくそんな気分なのよ」
知りいたい。自分が何故ダンピールであるのか。
その理由を。それを知って初めて彼女は、きっと生きることを面倒臭がることを忘れるだろう。
今はそれで十分だが。生きるためにと願った結果が、いかなる因果を結ぶのか。それを知りたいと、彼女は己の血統へと対峙すべく、走り続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK
POWで
光あってこその影だとは思うけれど
どうだろう
強すぎる光に影が生まれるかどうか……翔んでる間に襲われるかどうか、確かめてみるのも悪くないね
継続戦闘が非推奨ということなので突破に集中するとしましょう
上手く事が運べばいいのだけど、遠距離攻撃されないとも限らないから気を付けないと
黒剣を剣状で構えつつ光熱で範囲攻撃の焼却
UCの飛翔力で体当たり突入を狙うね
もしまだ突破を狙う人が居たら、そっちのフォローを優先して送り出そう
……私ってば、そんなに強くないんだからさ
こういう、囲んで叩くなんてイジメ、止めてほしいね
「光あってこその影だとは思うけれど」
そうつぶやいたのは、肆陸・ミサキ(ダンピールの精霊術士・f00415)であった。
彼女もまたダンピールである。
出生がどうであれ、彼女はダークセイヴァーを救うためには自らを顧みず、単身死地へと飛び込んでいく。
その無謀な戦い方をしてもなお、彼女は生傷絶えず、次々と戦場を転じていくのだ。
この常闇の世界、ダークセイヴァーにおいて、光はない。
あるのは永遠に続くかのような闇ばかりである。
それは空洞世界である『地底都市』をしても変わることはない。
ヴァンパイア、オブリビオン支配盤石である世界において、猟兵が戦うとはそういうことである。
白夜(オールライトナッシング)の如く白い灼光を纏うドレスと日輪が彼女の全身を覆っていく。
際限なく上昇していく体温は、彼女の身体を内側から溶かしていくようでもあった。自虐的とも取れる戦い方であったが、『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』に打倒するためには、こうするほかないのだ。
彼等の戦闘力は言うまでもない。
『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアですら、一刀のもとに屠る力を持つ『番犬の紋章』のヴァンパイアが無数に存在している事自体が、まともに戦うことがナンセンスであることを告げる
「強すぎる光に影が生まれるかどうか……私自身が光を放つのならば、私の影を移動することは出来ない」
彼女の身体が飛翔する。
『第五の貴族』を打倒することこそが、今回の目的である。
『番犬の紋章』を持つ彼等を全て打倒することは現実的ではない。
「すべてを焼き尽くそうか」
放たれる日輪の輝きをもって、『首無しヴァンパイア』たちの身体が焼けていく。しかし、その端から肉体が再生していくのだ。
凄まじい再生能力。
これを打倒するのはあまりにも時間がかかりすぎる。
ミサキはそう判断し、扇状となった『第五の貴族』の屋敷周辺を自由自在に飛び回る。
未だ全ての猟兵たちが『第五の貴族』の屋敷に突入できたわけではない。
「なら、私が最後まで殿を務める。行くよ――」
ミサキは最後まで残るつもりなのだ。
多くの猟兵たちを送り出すフォローをする。ただそれだけのために彼女はユーベルコードの輝きに満ちた白い灼光を放ち続け、『首無しヴァンパイア』たちを焼く。
倒しきれなくても、動きを止めるだけでいい。
しかし、そんな彼女を取り囲む『首無しヴァンパイア』たち。
「……私ってば、そんなに強くないんだからさ。こういう、囲んで叩くなんてイジメ、止めてほしいね」
日輪の輝きに身を包みながら、ミサキは『首無しヴァンパイア』たちを振り払って飛ぶ。
数は増すばかりである。
けれど、それでも彼女のおかげで多くの猟兵たちが隙を突くことはできたことだろう。
例え、常闇の世界であっても日輪はは輝く。
それを知らしめるようにミサキは飛ぶ。
哀れなる首を喪ったヴァンパイアに負ける道理など無い。彼女は、彼女が為せることをもって、ダークセイヴァーを救う。
そのために、傷を負うこともいとわずに戦う。
傷が刻まれ、血潮が噴出してもミサキは止まらない。
彼女の瞳に見据えるは『第五の貴族』の屋敷だけであった。
「物語にはハッピーエンドが必要さ。そうだろ?」
だから、己は戦うのだとミサキは白き灼光のままに屋敷の壁面を吹き飛ばしながら、突入するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
俺が強ければ全てを喰らえたものを
口惜しいですが狩るべきものを狩るためです。耐えましょう
ただ屍さらさば我等が怨念は贖えぬ
悉くを喰らうためなれば、この餓えもまた怨念滾らす熾火となろう
【行動】POW
戦闘知識を活かすため五感と第六感+野生の勘+瞬間思考力で周囲の状況を把握、敵行動を予測
先制攻撃+UCの範囲攻撃で敵集団を牽制、炎の影に隠れフェイント+ダッシュ。倒れずとも怨念の炎で蝕まれるようにしておき敵UCの影を感覚だけでなく炎の揺らぎでも察知できるようにする
回り込んだ先を塞ぐ集団にも怨念の炎を纏った武器でなぎ払い+範囲攻撃
敵足元を狙って体勢を崩し、早業+夜砥で敵同士を括るように捕縛。後続への障害物に
猟兵達が『地底都市』の『第五の貴族』が住まう屋敷へと転移した時、すでに『首無しヴァンパイア』たちは臨戦態勢であった。
それもそのはずである。
彼等にとって猟兵とは滅ぼすべき存在である。
確かに彼等は『番犬の紋章』によって、強大な力を宿したオブリビオンである。しかし、一体ずつであれば猟兵たちも打倒することは可能であった。
だが、数が問題なのだ。
「俺が強ければ全てを喰らえたものを」
そうつぶやいたのは、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)であった。
彼の心にあるのは殺意と狂気であり、それを受けた赤い瞳が爛々と輝く。
彼にとって、ヴァンパイアは狩り殺す存在でしかない。怨念が身体の内側から渦を巻いて、噴出するように狂気と殺意を開放するのだ。
疾走る姿は、赤い残光を纏った狂戦士であった。
ああ、口惜しい。
織久はそう思った。そう思わないわけがない。
何故なら、ヴァンパイアは狩らなければならない。己の至上なる目的であり、怨念を晴らすための行為でしかない。
しかして、屍を晒せば、織久の怨念は贖えない。
飢えだけが、彼の殺意を迸らせる。熾火となった飢えは、彼の怨念をたぎらせるのだ。
「――……」
瞬間、彼の背後に音もなく現れたのは、『首無しヴァンパイア』であった。
そう、それが彼等のユーベルコードである。
影を渡るユーベルコード。彼等は瞬時に距離を詰めることができるのだ。影が生まれる以上、常に彼等は敵の背後を取れるのだ。
だが、それ以上に疾いのは、織久であった。
彼の第六感が一瞬で状況を把握し、彼の身に宿る怨念と殺意の炎が噴出し、黒い炎となって背後に迫った『首無しヴァンパイア』を燃やし尽くすのだ。
「我等が怨念尽きる事なし」
その瞳がユーベルコードに輝く。
殺意の炎(サツイノホノオ)が燃え上がるように彼の身体から次々に噴出し、『首無しヴァンパイア』たちを牽制していく。
炎が生み出した影に紛れ、織久は疾走る。
その殺意の炎によって『首無しヴァンパイア』たちが一撃のもとに倒れるとは思っては居ない。
すぐさま、彼を襲わんと影から迫る『首無しヴァンパイア』たち。
しかし、その意図はもうわかっている。一芸しかできぬかのように迫る背後のからの追撃を織久はもうわかっていた。
「無駄だ。我等の殺意と怨念が、単調な殺意を感じ取れぬと思ったか」
腕を躱し、大鎌を振るい、槍を突き、大剣を振るう。
それらは炎というよりも暴風そのものであったことだろう。
織久の攻撃は全て『首無しヴァンパイア』たちの上半師を狙っていた。防御の意識をそこに惹きつけるような動きであった。
確かに此処で彼等を全て滅することはできないだろう。けれど、その必要はないのだ。
「無念の死を遂げた者たちの怨念を撚り合わせたものの強靭さを知れ」
超極細の糸が目にも留まらぬ速度で張り巡らされ、一瞬で『首無しヴァンパイア』たちを絡め取り、捕縛するのだ。
無論、それで打倒できるとは思っていない。
織久の怨念宿る瞳が見たのは、『第五の貴族』の屋敷である。彼は向かわねばならない。
そこに己たちの怨念を晴らすべき敵がいる。
極細の糸を引きちぎらんと己たちの肉体すらもいとわず『首無しヴァンパイア』たちが迫る。
まるで自動的であった。
それを哀れとは思うまい。織久は、目もくれずに疾走る。たった一つの目的のためだけに、彼の怨念をさらなる熾火へとくべるように――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さてと、まあ随分と大層なお出迎えだね
首無しの騎士か…
ま、分かりやすく化け物だから遠慮無しにぶち飛ばせるし楽ではあるね
さてと、じゃあちょっと突破させて貰おうかな
●
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
左手に《RE》Incarnation、右手はハンドル
片手運転は行儀が悪いけどまあそこはまあまあ
そして【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】起動!
108体のうち30体は上空より『ブレス攻撃』で敵の蝙蝠諸共に攻撃!
残りは低空飛行しつつ翼でヴァンパイア達を切り裂いて道を切り開く!
その道を私は行こう
『悪路走破』で走り辛い道もなんのその
不死鳥達が処理しきれなかった敵は私も剣で迎撃
そしてそのままダイレクトエントリー!
『地底都市』は言うまでもなく支配者階級のヴァンパイアの支配が強烈な場所である。
すなわち、そこには『紋章』をばらまいた上位存在いるのだ。
此処は死地そのものであった。
『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアの力は一軍を率いるに十分な実力を持った強力な存在であった。
しかし、その『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアすらも一撃のもとに屠る事のできる存在『番犬の紋章』を持つヴァンパイアを無数に従える『騎士王の紋章』を持つ『第五の貴族』は現状の猟兵たちをしても危険な相手と呼ぶにふさわしい存在であったことだろう。
『首無しヴァンパイア』たちが転移してきた猟兵たちを迎え撃つように凄まじい力を持って、消耗した肉体を再生していく。
それは例え、腕を喪ったとしても一瞬で生やすほどの再生能力であり、猟兵たちが全てを打倒することは現実的ではないと判断するには十分な力であった。
「さてと、まあ随分と大層なお出迎えだね。首無しヴァンパイアか……ま、わかりやすく化け物だから、遠慮なしに――」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は模造神器の運用補助用の特殊バイクにまたがりながら、手にした再誕の詩を奏でる青い刀身を抜き払い告げる。
その瞳が輝くのはユーベルコードである。
「ぶち飛ばせるし楽ではあるけどね! 偽書・焔神起動。断章・不死鳥召喚の章、深層領域閲覧。システム起動」
断章・不死鳥召喚〈超越進化〉(フラグメント・フェニックスドライブ・エクステンド)。
『地底都市』の天井を埋め尽くすかのようなすさまじい数の蒼炎によって生まれた不死鳥。
その数実に百を越える。
羽撃く翼は全てを切り裂く蒼炎の翼である。放たれるブレスが『首無しヴァンパイア』たちを吹き飛ばす。
しかし、超絶為る再生能力を持つ彼等にとって、それらは皮一枚を焼かれたにすぎないものであった。
蒼炎から飛び出す『首無しヴァンパイア』たちは、召喚主である玲を打倒せんと飛ぶ。
「まあ、そうくるよね。だから、こうなる」
玲の手が振り降ろされる。
空に舞う蒼炎の不死鳥たちが一斉に低空飛行で玲の道を阻む『首無しヴァンパイア』たちを両断していく。
胴を両断された『首無しヴァンパイア』たちは即座に足を再生させ、玲を追うがもう遅い。彼女の駆る特殊バイクの速度はすでに加速を終えている。
十分な加速させ得られれば、如何に『番犬の紋章』によって強化されているとはいえ、容易には追いつけないだろう。
「道は拓けたし、私はさっさと行かせてもらうよ。ばーい!」
悠長に時間を懸けていられるほど『番犬の紋章』を持つオブリビオンは容易い相手ではない。
現にユーベルコードを持ってしても、打倒しきれぬ再生能力でもって玲を追ってくる。
しかし、それすらも玲は振り払う。
特殊バイクは模造神器の出力を回して、加速していく。
張り巡らせたオーラは衝角のように立ちふさがる『首無しヴァンパイア』をも弾き飛ばしていく。
「ダイレクトエントリーと行こうか!」
特殊バイクと共に玲は地底都市の荒野を走り抜ける。目指すは『第五の貴族』の屋敷のみである。
蒼炎の不死鳥が切り開いた道を一直線に疾走る。
『首無しヴァンパイア』たちが迫るも、模造神器の斬撃の前に近づくことはできないだろう。
放つ斬撃波の一撃が『第五の貴族』の屋敷の壁面へと激突し、亀裂を走らせる。
「わぉ、思った以上にかったーい」
けれど、関係ない。
此処で止まっては、『首無しヴァンパイア』たちの餌食になるだけだ。ならば、このまま突っ込んでやるのが礼儀というものである。
轟音を響かせながら、ひび割れた壁面にぶつかっていく玲はオーラの力で瓦礫を弾き飛ばしながら、屋敷の中を疾駆するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ただの手駒に『番犬の紋章』か。大した戦力だこと。これだけの戦力で闇の救済者を攻められたら、持ちこたえられないわね。
とにかく、狙いは『第五の貴族』。首無しどもに用はないわ。『第五の貴族』を討滅して余力があれば遊んであげる。
いくわよ、アヤメ。
黒鴉召喚で戦場の敵配置を把握して。
「全力魔法」「範囲攻撃」「浄化」「破魔」の浄玻璃紫微宮陣を展開。
首無しを分断して、交戦を最小限度にして、領主館の入口に出口を接続。
出来るだけルート上に首無しがいないよう。
遭遇したら、アヤメとのコンビネーション(「式神使い」)で戦う。
薙刀で「なぎ払い」『番犬の紋章』を「串刺し」にして。あたしが引き付けてる間に、アヤメはよろしく。
ダークセイヴァー世界を支配するヴァンパイアたち。
彼等の中でも『紋章』を扱う者たちは確実に支配者階級であると言えるだろう。彼等の目的は盤石なる支配であろうが、それでも彼等が用いる『紋章』の力は絶大であった。
『番犬の紋章』を装着したオブリビオンは、単体であっても多くの猟兵たちの力を持ってして打倒せしめる存在である。
それを証明するように次々と振り払って突入していく猟兵達は、『首無しヴァンパイア』を消耗させるか、もしくは消耗したヴァンパイアの何体かを霧散させることしかできないでいた。
これが『番犬の紋章』の力である。
「これがただの手駒だっていうんだから。大した戦力だこと」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は考える。
これだけの軍勢でもって地上に侵攻を開始されれば、いかなる悲劇が生まれるかを。
今、地上では『闇の救済者』達による反抗作戦や、砦などが建設されている。しかし、この軍勢で大攻勢を懸けられば、ひとたまりもないことは言うまでもなかった。
「とにかく狙いは『第五の貴族』。首無しどもには用はないわ。いくわよ、アヤメ」
式神のアヤメと共にゆかりは戦場へと走る。
多くの猟兵たちがそうであったように、ゆかりもまた戦況を把握する。すでに多くの猟兵たちが屋敷へと突入しているが、『騎士王の紋章』を持つ『第五の貴族』は危険な相手である。
無駄な消耗を避けつつ、多くの戦力で持って、これを打倒しなければならないのだ。
「数は十分にして、まだまだ消耗しきっていないのなら――急急如律令! 天に坐す北辰と傅く二十八の星宿を今この大地に降ろし、星界の彷徨のいや果てに、不浄を清め天の高みへと昇らしめん!」
詠唱と共に張り巡らされるのは、浄玻璃紫微宮陣(ジョウハリシビキュウジン)であった。
玄妙な霊気が漂う清浄な星空の破魔結界が地底都市に張り巡らされる。それは迷路へと姿を変え、多くの『首無しヴァンパイア』たちを閉じ込める。
その強度は如何に『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちと言えど破壊することは出来ない。
必ず出口を目指さなければならないのだ。
ゆかりは、その出口をこそ『第五の貴族』の屋敷の入り口へと接続する。彼女たち自身もまた迷路へと飛び込んでいく。
「首無しどもを分断して、交戦を最小限に。アヤメ、あたしが引きつけてる間によろしくね!」
段取りを決め、アヤメと共にゆかりは迷宮の中を走る。
『首無しヴァンパイア』たちは理性無き存在であるがゆえに、迷宮のような場所であれば、迷路を解くという考えすら浮かばないだろう。
こうして大多数を迷路の中へと閉じ込めれば、大半が無効化されるであろうし、他の猟兵たちが突入するチャンスを作ることにも繋がるだろう。
「なるべく消耗は避けるべき……この先に『第五の貴族』がいるのなら、なおさらね……」
迷路の出口が近づいてくるほどに感じる重圧。
それは言うまでもなく『第五の貴族』と呼ばれるヴァンパイアの放つプレッシャーであったこととだろう。
『番犬の紋章』を持つヴァンパイアたち以上の強敵にして難敵。
弱点はあれど、その力が弱まることはない。
冷や汗が噴出するほどであったが、隣を行く式神のアヤメが手を握る。
たったそれだけで、汗は引く。
戦うことを決めた以上、後退なんてしていられない。
ゆかりは、一歩を踏み出す。死を意識するほどの強烈なオブリビオンを前にしても、彼女は後ずさることをしない。
必ずや打倒してみせる。
常闇に今も生きる『闇の救済者』たちのために、己が戦わねばと奮起するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…確かにまともに相対すれば苦戦は免れないでしょう
だけど私は正々堂々と戦う騎士でもなければ、戦士でもない
…どれだけ強化されようが、理性無き獲物に遅れを取る道理は無いと知れ
事前に"影精霊装"に魔力を溜め全身を影のオーラで防御して覆い、
周囲の第六感に干渉して小石のように存在感を消して闇に紛れ、
UCを発動し敵陣の死角から弾丸のように呪詛を込めた"雷の精霊結晶"を投擲
敵の全身を雷属性攻撃の乱れ撃ちで捕縛して敵陣の中央に切り込み、
敵の胸の高さで大鎌をなぎ払い全周に斬擊波を放ち紋章を切断する
…強化されたお前達の再生能力なら、この術でも足止めにしかならない
だけど、一瞬でも動きを止める事ができれば、それで十分よ
『番犬の紋章』を持つヴァンパイアと戦ったことのある猟兵であれば、それがいかなる存在であるかを識るだろう。
その存在が個として猟兵を凌駕していることも。
そして、その『番犬の紋章』を持つヴァンパイアが無数にうごめく『地底都市』と、それらを統括する『第五の貴族』がどれだけ危険な存在であるかを。
けれど、それは理由にはなっていないのだ。
猟兵の誰もが危険を承知で転移していた。
「……確かにまともに相対すれば苦戦は免れないでしょう」
だけど、とリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、その瞳に不退転の決意を宿す。
そう、後退なんてしていられないのだ。
地上では多くの人々がヴァンパイア支配から逃れようと立ち上がっている。彼等のために自分ができることをしなければならない。
「私は正々堂々と戦う騎士でもなければ、戦士でもない」
『首無しヴァンパイア』たちは理性無き獣と同じである。
そんな彼等に遅れを取る道理など、リーヴァルディにはないのだ。
陽光を遮断する『影精霊装』に魔力を込め、影のオーラを纏い、闇に紛れて彼女は『第五の貴族』の屋敷へと迫るのだ。
むやみに戦う必要はない。
ある程度の数が減らせればいいのだ。『第五の貴族』は、消耗したまま戦える相手ではないことはすでにわかっている。
だからこそ、リーヴァルディは消耗を避けて進む。
すでに多くの猟兵たちが戦い、『第五の貴族』の屋敷周辺は混乱に満ちていた。
「……我が手に宿れ雷の理。彼の者に雷霆の呪縛を与えよ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
影纏う彼女は闇に紛れ、狙い撃つ狙撃手そのものである。吸血鬼狩りの業・縛雷の型(カーライル)によって放たれた縛雷の呪詛を込めた精霊結晶が乱れ打たれる。
それは一瞬で『首無しヴァンパイア』たちの動きを止める。
しかし、それは致命傷にはならない。
彼等のもつ尋常ならざる再生能力は即座に傷を埋めていく。
「けれど、そのまとわりつく雷は振り払えないでしょう」
敵陣深くに切り込んだリーヴァルディが大鎌を振るう。その旋風の如き斬撃波の一撃は、胸に輝く『番犬の紋章』諸共『首無しヴァンパイア』たちを両断せしめる。
それは一撃であったけれど、致命に至る一撃であったことだろう。
彼女の周囲で『首無しヴァンパイア』たちが次々と霧散していく。
しかし、それ以上に彼女を取り囲む『首無しヴァンパイア』の数は勢いを増す。これだけ打倒してもなお、数でもってリーヴァルディを苦しめるのだ。
これがヴァンパイアの支配が地上よりも強い地底都市の力である。
「この術でも足止めにしかならない。だけど、一瞬でも、そして一陣でも打倒できるのならば、それで十分よ」
リーヴァルディは加速するように影を纏って、走る。
手にした大鎌と雷の呪詛でもって道を切り開くのだ。多くの猟兵たちが転移して即座に足並みをそろえ、『番犬の紋章』持つ『首無しヴァンパイア』たちを打倒していたことが、彼女の進撃を後押ししていた。
「これなら……」
十分に届く。リーヴァルディは粉砕された屋敷の扉へと飛び込んでいく。
一歩を踏み出した瞬間に、怖気が走るほどの重圧が彼女の身体を襲うだろう。闘気か、はたまた殺気か。
その重圧を肌で感じながら、それでもリーヴァルディは走る。
彼女の瞳の先にあるのは『第五の貴族』。
『番犬の紋章』を持つヴァンパイアをも従える『騎士王の紋章』を持つヴァンパイアの存在を、たしかに彼女は感じたのだ。
「――…………灰は灰に。塵は塵に。過去が私の前に立たないで」
その純然たる意志を持って、リーヴァルディは己の前に立つ過去に大鎌の切っ先を向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
素早く駆け抜けるなら、私の出番なんですよねー。
さて、内部の三人…防御の方は頼みましたよ。
即刻【四悪霊・『解』】を発動。少しでも不運をあちらに、幸運をこちらへ。
ええ、治りきってないところへ漆黒風を投擲したりしてねー。
まあ、蝙蝠は内部三人による三重結界術で弾きましょう。
今はいかに素早く切り抜けるか、ということですからねー。
第六感と戦闘知識活用したダッシュで、できたけ隙をつくように駆け抜けましょうねー。
さあて、この先に待つのは、誰なのやら。
影で出来たような蝙蝠の群れが一斉に『地底都市』の空を飛ぶ。
それはまさに黒雲のように群れを為して、転移してきた猟兵たちを襲わんとしている。
彼等『首無しヴァンパイア』はたしかに元上級ヴァンパイアであったが、首を喪い理性をも喪っている。
与し易い相手であると思えることだろう。
しかし、その胸に輝く『寄生虫型オブリビオン』である『番犬の紋章』があるのならば、話は別である。
彼等の力は個であっても『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアすらも一撃のもとに屠ることができるほどの力を持っているのだ。
それはどうしようもないほどの純然たる力量の差を示している。
『騎士王の紋章』を持つ『第五の貴族』とは、さらにその上を行く危険な相手である。
しかし、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱である『疾き者』にとっては、関係のない話であった。
いかなる相手であってもオブリビオンであれば打倒するしかないのである。
「さあて、この先に待つのは、誰なのやら」
『第五の貴族』。
打倒するためには、まずは『番犬の紋章』を持つヴァンパイアたちを躱し、素早く駆け抜けなければならない。
ならばこそ、己の出番である。
「さて、内部の三人……防御の方は頼みましたよ……悪霊なり」
つぶやく言葉は力強いユーベルコードの輝きに変わって、四悪霊・『解』(シアクリョウ・ホドキ)によって、己達が封じてきた呪詛を開放する。
それは戦場にある『首無しヴァンパイア』たちの運気や霊力、生命力を奪い去り、不幸を与えるユーベルコードである。
同時に『疾き者』が奪った総量に応じた幸運をを得ることができる。
そう、今の『疾き者』は他者の不幸によって底上げされた己の幸運で持って、『首無しヴァンパイア』と己たちの間にある質と量の差を埋めようとしているのだ。
「不幸はそちらに。幸運はこちらに」
走る。
その名のとおり、『疾き者』は、疾風のように戦場を駆け抜ける。
他の猟兵たちのフォローも受けながら、互いに連携して駆け抜けていくのだ。『第五の貴族』の屋敷に到達する猟兵が多ければ多いほどに、この戦いの趨勢は猟兵に傾く。
ならばこそ、ここで多くの『首無しヴァンパイア』を打倒できれば、それだけ猟兵たちがたどり着くことができるのだ。
「ええ、治りきっていないところへ……」
この通りにと『疾き者』は漆黒の棒手裏剣を投げ放ち、その動きを止める。
迫る蝙蝠の群れを内部の三柱たちの三重結界によって弾き飛ばしながら、するりするりと戦場の合間を縫って、駆け抜けていく。
戦いの中にあって、真っ向勝負だけではないことは言うまでもない。
己の名を示す。
『疾き者』。
それは伊達でも酔狂でもないのだ。
まさに一陣の風のように戦場を横断するのは、理性を喪った『首無しヴァンパイア』たちにとって理解し難いものであったことだろう。
攻撃を当てようとしても、するりとかわされていく。
それが隙を突く動きであるとさえ、理解できない。
「さあ、敵は直ぐ側……ええ、わかりますとも」
身を焼くような重圧を感じる。
これが『第五の貴族』と実感できるだろう。
一歩を踏み出せば、即座にそこが戦場となり、死地となり得るだろう。
ひりつく感触を覚えている。戦いとはすなわち、こういうものであると思い出すことだろう。
何度も、幾度となく感じた重圧。
されど、此度の敵はさらなる重圧でもって己達に迫る。難敵にして強敵。
『疾き者』は、しかし重圧に負けることなく一歩を踏み出すだろう。
例え、死地であったとしても。
オブリビオンは滅ぼさなければならない。それが己たちの身を焼く怨念と呪詛なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ほほう、ここが、強大なヴァンパイアに支配された暗黒の世界ダークセイヴァーか。
ここなら借金取りたちも追っては来るまいて」
それに漆黒の魔女たる我にぴったりな雰囲気だしな。
『第五の貴族』とかいう吸血鬼の領地を奪って我のものとし、『ふぃあふぃあ帝国』を建国しちゃうとするか!
「では、まずは雑魚どもの露払いよな。
ふん、再生能力が高い程度で不死の我に楯突こうとは片腹痛いわ!
その程度の再生能力ではルクスの殺人級料理に耐えられるものか」(片腹痛いって腹痛の意味!?
我の大魔法【極寒地獄】で敵を凍りつかせて動きを封じてくれよう!
氷の彫像に成り果てるがよい!
「ルクス、サージェ、シャイン、今だっ!」
シャイン・エーデルシュタイン
【勇者パーティ】
「ダークセイヴァーに来るのは初めてですが、邪悪な吸血鬼などに世界を支配させるわけにはいきません」
え、悪霊の台詞ではない?
いいのです、この身は悪霊だとしても、心まで悪になったわけではありません。
そこで『ふぃあふぃあ帝国』とか言ってる魔女と違って!
「ほら、馬鹿なこと言ってないで、しっかりお仕事してくださいね、フィアさん」(ハリセン持って
フィアさんが敵の動きを止めたところに、サージェさんとルクスさんに突入していただきましょう。
私は後方支援として敵に【ジャッジメント・クルセイド】を放ち神の裁きを与えていきましょう。
「ほら、サージェさん、拾ってきたかぐや姫はちゃんと面倒みるんですよ?」
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
師匠でも来たことのない世界があったんですね。
たしかにここまで取り立てにはこなさそうです。
あれ?
サージェさん、その子……。
おまわりさんk……ちがう?
あ、依頼の時の子でしたか。よかったです。
そして師匠の帝国ですか!
名前といきなり赤字なことを除けば、いい考えだと思います!
3日くらいはいけるんじゃないでしょうか!
そうなるとわたし宮廷料理人……って、師匠!?
とっても聞き捨てならないことが聞こえたんですが!?
わたしの料理そんなにダメですか?(うるるる)
え?あ、はいっ!?ご、極寒地獄?
な、なら、メニューは火鍋とかでいいでしょうか!
違う?あ、戦うんですね。
それでは勇者ルクス、いきまーす!
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
ダークセイヴァーって私もあんまり来たことないかもー
ここまで暗いと気が滅入りますねー
(ゲーミングちまかぐや姫だき抱えながら)
ん?この子ですか?
この前の戦争で手懐けました!
さらに特訓により色と明るさが自由自在に!
ふぃあふぃあ帝国の国民にどうでしょうか!?
そんなわけでちまっとかぐや隊出撃です!
集団戦にも負けないくらいの数で
闇の中で輝いて目潰しお願いします!
はーいフィアさんの魔法に巻き込まれる前に撤収撤収
フィアさんの魔法が氷漬けにしたら
ルクスさんと一緒に前に出ます
「シーフのサージェ、参ります!」
しゅぱっとさくっとカタールで切断していきますね
ちゃんとお世話してるもんっ!
※アドリブOK
数多の世界を識る猟兵であっても、初めて訪れる世界は存在する。
多くの場合、新しく発見された世界であることが常であろうが、勇者パーティの面々にとって常闇の世界ダークセイヴァーは、初めて識る世界であったことだろう。
「ほほう、ここが強大なヴァンパイアに支配された暗黒の世界ダークセイヴァーか。ここなら借金取りたちも追っては来るまいて」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は日々、何かしらの事件や騒動に首を突っ込んで首が回らないほどの借金やら損害賠償やらを抱えている魔女である。
彼女にとっては、事件を解決するために手っ取り早い方法、すなわち、ぶっぱをしただけであるのだが、どういうわけか追われる身にとなってしまうのだ。
「師匠でも来たことのない世界があったんですね。確かにここまで取り立てにはこなさそうです」
彼女の弟子であるルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)もまた、師匠の騒動に巻き込まれる側の猟兵である。というか、飯スタントである。
フィアの胃袋をがっちり掴んで離さぬ姿は、もう勇者って名乗っていいのかもちょっとわからんなぁって思うものであるが、まあ、勇者である。
「ダークセイヴァーに来るのは初めてですが、邪悪な吸血鬼などに世界を支配させるわけにはいきません」
そんな二人の傍らにある悪霊である、シャイン・エーデルシュタイン(悪霊として蘇ったクレリック・f33418)は意気込んでいた。
いや、悪霊のセリフではないなと誰かがツッコミそうなものであるが、何を隠そう彼女こそがこのパーティのツッコミ役である。
ツッコミがボケた時、誰もツッコめぬボケ殺しが始まるのである。いや、別にそこまでふざけているわけではないのだが、フィアがまた変なことを言い出すのだ。
「それに漆黒の魔女たる我にぴったりな雰囲気だしな。『第五の貴族』とかいう吸血鬼の領地を奪って我のものとし、『ふぃあふぃあ帝国』を建国しちゃうとするか!」
「師匠の帝国ですか! 名前といきなり赤字なことを除けば、いい考えだと思います! 三日くらいはいけるんじゃないでしょうか!」
案外ルクスのほうが乗り気というか、いやさらっと今ディスったな、師匠のこと。
フィアは自分の考えに一人で感銘を受け、何やらとてもやる気である。『第五の貴族』の屋敷の防衛は硬いが多くの猟兵たちが転移し、乱戦に陥っている今ならば、容易に隙を突くことができるだろう。
「ほら、馬鹿なこといってないで、しっかりお仕事してくださいね、フィアさん」
シャインがハリセンを持って手にぱしんぱしんさせている。
しかし、ここまでで何故か一人静かなものがいる。
そう、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)である。
そうなると自分は宮廷料理人かな、とか思っていたルクスは静かなサージェに気が付き、なんでそんなに静かなのかと思えば、何やらちんまいゲーミングかぐや姫を抱きかかえながら、サージェはご満悦である。
「ってあれ!? サージェさん、その子……おまわりさん、こっちです!」
「いや、違いますよ!? この子は前の戦争で手なづけました! さらに特訓により、色と明るさが自由自在に! ふぃあふぃあ帝国の国民にどうでしょうか!?」
妙な売り込み方をするサージェ。
いいのかな。クノイチ的に、そういうゲーミングカラーに輝き続けるかぐや姫を抱えているのって。
ものすごく忍べてないけど。あ、元から? というツッコミは受け付けない。
クノイチの沽券に関わるので!
ちまっとかぐや隊!(ゲーミングカグヤヒメトアソボウ)とかそんな漫画かアニメがありそうな雰囲気のままにサージェとゲーミングちまかぐや姫たちが整列する。うお、まぶしっ、となるくらいの輝きを放ち『首無しヴァンパイア』たちに目潰しを敢行するのだ。
彼等は首がない。つまり顔がない。けれど、猟兵を知覚しているということは、何かしら別の知覚手段があるのだろう。
ゲーミングカラーに輝くちまかぐや姫たちがぎゅんぎゅん乱舞する中、フィアは集中していく。
「では、まずは雑魚どもの露払いよな。ふん、再生能力が高い程度で不死の我に楯突こうとは片腹痛いわ! その程度の再生能力では、ルクスの殺人級料理に耐えられるものか!」
え、そっちの意味で片腹痛い……てコト!?
ルクスが聞き捨てならない言葉を聞き、ガーン! とショックを受けている傍らでフィアのユーベルコードが輝く。
氷壁が生み出され、『首無しヴァンパイア』たちを極寒地獄(コキュートス)が如き迷宮の中にフィアは落とし込む。
凍りつかせ、その動きを止める。
尋常ならざる再生能力を持つというのならば、その再生をさせなければいい。凍りつかせ、動きを止めてしまえばいいのだ。
生かさず、殺さず。
こういう時には頭が回るのだな、とシャインはなんとなく失礼なことを考えたが口には出さなかった。
言わぬが華という言葉だってあるしね。
動きを完全に止められた『番犬の紋章』輝く『首無しヴァンパイア』たちであったが、フィアのユーベルコードをしても動きを止められたのは、僅かな時間であった。
氷漬けにされた己の身体をひび割らせながら、即座に再生して氷壁の迷宮の中をさまよい始めるのだ。
「なんという再生能力……これが『紋章』の力ですか……ですが、神の御力で」
シャインが放つジャッジメント・クルセイドの一撃が裁きとなって『首無しヴァンパイア』たちを討滅していく。
それでも未だ完全に霧散しないところを見るに、『首無しヴァンパイア』の個体としての力は凄まじいものであることがわかるだろう。
さらにサージェが氷壁の迷宮を掛け受けていく。
ゲーミングちまかぐや姫たちと共にカタールを構えるのだ。
「ほら、サージェさん、拾ってきたかぐや姫はちゃんと面倒みるんですよ?」
ねぇ、飼って飼って! ちゃんとお世話も躾もするからぁ! というやりとりがあったかどうかは不明であるが、サージェは良い笑顔で頷いた。
かわいいはせいぎである。
「シーフのサージェ、参ります!」
しゅぱっとさくっとカタールで『首無しヴァンパイア』たちの身体を切断していく。
ちゃんと一人でお世話してるもんっ! とはサージェの言である。
シーフとしての役割も果たしているし、勇者パーティの道を切り開くべく奮戦しているのだ。これでちゃんとしていないとは言わせないのである
しかし、彼女の背後でルクスだけが未だうるうるした瞳で師匠であるフィアに詰め寄っている。
え、なにしてんのあの勇者とサージェは思わず思ったが、ちょっとした修羅場である気配を感じて、さくさくカタールしていることにした。
あれに関わっては、またなんかろくな事にならんと学習しているのだろう。
「師匠! わたしの料理そんなにだめですか?」
ルクスのうるうるした瞳はちょっとフィアにともってヤバイところである。
いやまあ、殺人級料理といっても腹痛程度で済んでいるから、殺人はいいすぎかなって思わないでもない。
「いや、そのな……」
「はっ! なら今日のメニューは火鍋とかでいいでしょうか!」
「だから、そういう問題じゃなく……」
「ルクスさん、そろそろ……」
「早くしてくださーい! シーフっていっても前衛職じゃないんですよー!」
シャインたちの言葉を受けてルクスはうなずく。
今日のメニューも決まったし、師匠の明日の胃はどっちだ状態であるが、勇者としての役目は果たさねばならぬ。
彼女の瞳が輝き、眩いまでの光でもって地底都市を照らす。
その輝きは、まさに光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)とでも言うべきか。
「それでは勇者ルクス、いきまーす!」
ユーベルコードによって強化されたルクスを戦闘にパーティ全員が『第五の貴族』の屋敷へと突入していく。
『首無しヴァンパイア』たちを蹴散らし、目もくれずに他の猟兵達によって破壊された入り口を吹き飛ばしながら、飛び込んでいく。
だが、その快進撃もここで止まる。
そう、一歩を踏み出しただけで怖気が走るような重圧が彼女たちにのしかかる。これまでほんわかしていた空気が張り詰め、まるで少しでも動けば砕けるような気配させ感じることだろう。
突然のシリアス。
ギャグ時空を捻じ曲げるほどの圧倒的な存在が、今まさに彼女たちの目の前に現れるのであった――。
大成功
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セルマ・エンフィールド
……仕方ありませんね。
最終的に見逃すことはあり得ませんが、今回は第五の貴族を優先しましょう。
あの吸血鬼達の目的は屋敷の防衛。居場所も分かっているのですからわざわざ目の前に姿を晒す必要もありません。
首のない体でどうやって知覚をしているのかは分かりませんが、【氷の狙撃手】の射程は10km超、敵がこちらを知覚するより先に仕掛けることはできるでしょう。それが吸血鬼だろうと、スコープの向こうにいるのは獲物だけです。
『視力』で狙いを定め、『スナイパー』の技術でヴァンパイアを撃ち抜きます。ヴァンパイアがこちらに対して蝙蝠を放って来たらチャンスですね。蝙蝠を念力で操っている隙に屋敷へと侵入します。
ダークセイヴァー世界出身の猟兵にとってヴァンパイアとは仇敵、怨敵であろう。
必ず滅ぼさなければならない。
それがヴァンパイアである。隷属を強い、生命を生命とも思わぬ扱いを受けてきた者たちにとって、ヴァンパイアは恐怖の対象であると同時に憎悪の対象でもあったことだろう。
だが、全ての者たちが強い感情を持ってヴァンパイアに当たることができるわけではないことは言うまでもない。
けれど、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は違う。
吸血鬼に支配された街で生まれ育った少女である。
手にしたマスケット銃『フィンブルヴェト』を握りしめる手が白く染まるほどの強い感情をいだきながらも、彼女の表情は冷静そのものであった。
彼女の育ての親の教え故であった。
もしも、彼女が未熟であったのならば、激情にかられて飛び出していたことだろう。
今回の戦いはあくまで『第五の貴族』の打倒である。
ならばこそ、『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちの掃討は後回しにしなければならない。
スコープの中を覗く。
首無しとなったヴァンパイアの姿に哀れという感情は湧き上がらなかった。
あくまであのヴァンパイアたちは屋敷の防衛に重きを置いている。
他の猟兵たちの戦いによってかき乱されてはいるが、それでもなお防衛の層は分厚いと言ってもいいだろう。
「『紋章』の力……俗に群れと呼ばれるヴァンパイアであっても、個があれほどの力を持つ……」
セルマは冷静に分析していた。
地上世界において猛威を振るっていた『辺境伯の紋章』を持つヴァンパイアですら一刀の元に屠ることのできる『番犬の紋章』を持つヴァンパイアが、ただの手駒でしかないのだ。
それはこの地底都市に存在するであろう上位存在がどれほどの存在であるかを推して知ることができる。
「……仕方ありませんね。最終的に見過ごすことはあり得ませんが……今回は『第五の貴族』を優先しましょう」
わざわざセルマが姿を晒す必要もない。
彼女は、氷の狙撃手(アイシクル・スナイパー)である。
ユーベルコードに輝く瞳が見据え、手にしたマスケット銃の射程は今や10kmを越える。
超長距離射撃と呼んでも差し支えのない彼女の射撃の腕は、恐らく随一であろう。
「逃しません」
ただ、それだけのことだ。
ヴァンパイアは狩り尽くす。ことごとくを滅ぼす。それだけがセルマの理由であったことだろう。
一瞬で放たれた氷の弾丸が『首無しヴァンパイア』の胸に抱く『番犬の紋章』を貫き、その体を霧散させる。
突如として霧散した『首無しヴァンパイア』に周囲の個体が気がつくのだ。
狙撃されている。
何処だ、と見回すも遅い。
セルマの放った氷の弾丸が次々と『首無しヴァンパイア』たちを霧散させていく。
わざわざ姿を晒す必要はない。
そう――。
「―――スコープの向こうにいるのは獲物だけです」
冷静に。努めて冷静に。秘める激情はそのままに。けれど、冴え渡る頭で考えるのだ。
瞳に映る者は全てが獲物であると。
「漸く気が付きましたか。『番犬の紋章』で強化されていても、その程度の思考。やはり理性なき力は、ただの力に過ぎませんね」
セルマの位置を漸くにして感知した『首無しヴァンパイア』たちが、闇に紛れる蝙蝠たちを召喚し、彼女へと襲いかからせる。
しかし、伸びに伸びた戦いの線は、それだけ距離があれば薄くなるものである。
「そこが狙い目です。防衛戦を長く伸ばせばどうなるか……例え、どれだけ強大な個体であろうとも」
もろくなった防衛ラインを突破し、セルマは走る。
あの屋敷の中に『第五の貴族』が存在している。
ヴァンパイア。
全てを奪い、全てを死に至らしめる存在。人の生命を生命とも思わぬ存在がいる。他の猟兵達によって破壊された壁の瓦礫を飛び越えて、セルマは見ただろう。
その重圧の正体を。
これまで相対してきたヴァンパイアのことごとくを凌駕する圧倒的な存在感。
強敵と呼ぶにはあまりにも生易しい危険な敵の存在を――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
『第五の貴族』の屋敷への襲撃は幾度目か
此度も速やかに侵入させて頂きましょう
毎度のことですが、あの番犬達が屋敷内へ追ってこないのは僥倖ですね…
警備の首無し達に格納銃器の乱れ撃ちスナイパー射撃
UCを撃ち込み凍結で拘束しながら脚部スラスターの推力移動で一気に敷地内を移動
予測通りですが、やはり凍らせただけでは仕留めきれませんね
……私に騙し討ちが簡単に通じると思わぬことです
マルチセンサーでの情報収集で自身の影からの出現を瞬間思考力で見切り、素早く身を翻して回避
振り抜く剣盾や怪力で放つ蹴りで吹き飛ばしつつ、肩部格納銃器を旋回砲塔の如く回頭
振り向きもせず態勢を整える前にUCを撃ち込み凍結
屋敷の壁を粉砕し突入
日の差さぬ常闇の世界であるダークセイヴァーの地上の下……空洞世界に存在する『地底都市』ヴァンパイア支配盤石なるダークセイヴァーにおいてなお、彼等の力の強大さを知らしめるには十分すぎるほどの魔境であった。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『第五の貴族』の屋敷へと強襲を仕掛けるのがこれで何度目であるのかを数えていた。
「此度も速やかに侵入させて頂きましょう」
猟兵たちが次々と転移しては波状攻撃のように『第五の貴族』の屋敷に張り巡らされた『番犬の紋章』をもつ『首無しヴァンパイア』たちをかいくぐり、屋敷へと侵入していく。
それは波状攻撃であるがゆえに、『首無しヴァンパイア』たちの連携を阻害し、徐々にその数を減らしていた。
とは言え、此度の戦いにおいて彼等の存在を全て打倒するのは現実的ではない。
速やかに屋敷へと侵入し『第五の貴族』を打倒することが肝要なのだ。
「毎度のことですが、あの番犬たちが屋敷内へ追ってこないのは僥倖ですね……」
ただでさえ『番犬の紋章』を持つヴァンパイアは強力な個体なのだ。
それが群れをなしているという時点で、戦いの難易度は跳ね上がる。彼等が振り切ってなお、屋敷の中まで追いすがることになれば、猟兵達は『第五の貴族』と『番犬の紋章』を持つ彼等とに挟撃されてしまうだろう。
その心配がないことは、まさに僥倖そのものであった。
「氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
トリテレイアは、大地を疾駆しながら格納重機による超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)の斉射でもって『首無しヴァンパイア』たちを牽制する。
彼等の力は言うまでもなく個としても猟兵の上を行く。
これまで多くの猟兵たちが彼等を消耗させなければ、この防衛網はさらに分厚いものであったことだろう。
スラスターを吹かせ、特殊弾等に封入された薬剤が噴出し、分身運動を低下させ、急速凍結に至る現象によって氷漬けにされた『首無しヴァンパイア』たちの真横を走り抜けていく。
このまま一気に屋敷に突入しようとして、トリテレイアのセンサーがアラートを鳴り響かせる。
まさに瞬間移動ともいうべき凄まじい速度でトリテレイアの背後をとったのは『首無しヴァンパイア』であった。
新しい個体ではなく、先程トリテレイアの放った弾丸によって凍結した個体たちであった。
「予想通りですが、やはり凍らせただけでは仕留めきれませんね」
だが、不意を打ったであろう『首無しヴァンパイア』たちの影を渡るユーベルコードは、トリテレイアには通用しない。
彼はウォーマシンである。
マルチセンサーによって人ならざる知覚を持っているのだ。不意打ちなど、彼には通用しない。
「私にだまし討が――」
身を翻し、振り抜いた剣が『首無しヴァンパイア』たちの胸元に装着された『番犬の紋章』を一瞬で切り裂く。
霧散し消えていく『首無しヴァンパイア』たちにトリテレイアは告げるのだ。
「簡単に通じると思わぬことです」
剣と盾で『首無しヴァンパイア』たちを打倒し、吹き飛ばす。さらに肩部格納重機が旋回砲塔の如く乱れ打たれ、振り返ることもなく体勢を整え、再び彼等を凍結せしめるのだ。
その手際は見事というほかなかった。
彼の迅速な突撃は、『第五の貴族』の屋敷を護る『首無しヴァンパイア』たちの防衛網に大きな穴を開け、後に続く猟兵達を更に助けるだろう。
屋敷の壁目掛けて振るわれた剣の一撃が大きく亀裂を走らせ、そこに大盾を叩きつけて、瓦礫とともに屋敷の中に突入する。
「――……幾度目かの突入。ですが」
そう、トリテレイアのマルチセンサーがアラートを鳴り響かせる。
それは人であれば重圧と呼ぶものであったことだろう。
己は騎士である。
ならばこそ、目の前の『第五の貴族』が如何なる存在であるかをトリテレイアは知るだろう。
御伽の騎士を目指し、現実と理想の間においてジレンマを持つ存在。
同時に相対する『第五の貴族』もまた敗北と魂の虜囚にて、己の存在を錆びつかせる者。
されど、強敵にして難敵たる『第五の貴族』である。
その重圧を真っ向から受けて、トリテレイアは己の電脳が警告するのを感じるのだった――。
大成功
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陽殿蘇・燐
仕方ないわね。配信する暇もないわ。
…まあ、事後報告でもいいでしょう?
さて、『麝香揚羽』で幻覚を見せて隊列崩しね。
ちっ、影からくるのね。その『過去』を『黒揚羽』で焼いてあげるわ。
ほどよく乱れたら、【炎術:身転蝶】で蝶になって突破するわね。
…本当に。他配信を見ている視聴者から教えられてたけれど、こんな世界があるなんてね。
悪女のしがいもない。できるだけ焼いてあげるわ。
炎まとう黒蝶がダークセイヴァー世界の『地底都市』に舞う。
その陽炎の如き光景は、まさにエモーショナルな光景と呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
仮初の生命を得て猟兵と成ったバーチャルキャラクターである元悪女のNPCである陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)は、初めて見る世界に驚きを隠せないでいた。
「……本当に。他配信を見ている視聴者から教えられてたけれど、こんな世界があるなんてね」
麝香揚羽と呼ばれるジャコウアゲハが見せる幻覚は、『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちであっても、その知覚する世界を狂わせるのだろう。
彼等はこれまで多くの猟兵たちが転移し、防衛網をかき回し、打倒してきたおかげで、層が薄くなっていた。
それでも『辺境伯の紋章』を持つ強力なヴァンパイアすらも一撃のもとに屠ることができる力を持つ『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』の群れは、一体であっても猟兵にとっては脅威そのものであった。
彼等とまともに戦うのは得策ではないと考えた燐は幻覚を見せて、伸びに伸びた防衛網の層を更に薄くさせる。
「仕方ないわね。配信する暇もないわ」
まあ、事後報告でもいいだろうと燐は、自身が操るジャコウアゲハたちの見せる幻惑によって、『首無しヴァンパイア』たちを混乱に陥れる。
だが、強大な力を持つ『首無しヴァンパイア』たちにとって、それは一時凌ぎでしかなかった。
瞬時に影を渡るユーベルコードに寄って燐の背後に伸びた影から飛び出し、その腕を振るう。
鋭い爪が燐の身体へと振り下ろされ、その身を刻もうとした瞬間、炎を纏ったクロアゲハが爪を受け止める。
「ちっ、影からくるのね。その『過去』を焼いてあげるわ」
噴出する炎が『首無しヴァンパイア』の体を焼く。けれど、それで打倒できるわけではない。
足を止めるので精一杯であるが、それで十分なのだ。
そう、彼女が目的としていたのはあくまで『首無しヴァンパイア』たちの打倒ではなく、隊列を乱すことである。
「ああ、こういうこともできるのよ?」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
に行く対の一部が風にも水にも強い炎を纏う、無数のクロアゲハへと変じていく。
それは奇しくも『首無しヴァンパイア』たちが使う蝙蝠にも似た力であったことだろう。
かき乱され、層の薄くなった彼等では無数のクロアゲハとなった燐を止めることはできない。
次々と炎まとうクロアゲハたちが飛び、『首無しヴァンパイア』たちを振り払って『第五の貴族』の屋敷へと突入していく。
「悪女のしがいもない。できるだけ焼いてあげるわ」
燐のユーベルコードが生み出す炎が『首無しヴァンパイア』たちの肉体を焼いていく。
この暗闇しかない世界ダークセイヴァーに、色濃い影を生み出す炎は、煌々と輝き、『首無しヴァンパイア』たちを霧散させていく。
ひらりひらりとクロアゲハが舞い飛び、『第五の貴族』の屋敷へと足を踏み入れ、燐は元の姿へと己を変える。
しかし、彼女は感じたであろう。
ここからが本番であると。冒頭からの配信はできなかったが、此処から先こそがまさに死地。
どれだけのことができるかわからない。
けれど、それでも肌を焼くようなヒリヒリとした殺気と重圧が己の体に重くのしかかるのだ。
油断もならず、ましてや侮ることもできぬ強敵にして難敵が存在している。
そう、この重圧の持ち主こそが『第五の貴族』なのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
地底都市、第五の貴族、そして『紋章』。
道が切り拓かれるに連れて、謎も次々と増えていく。
これらの謎が解き明かされるのは、何時のことか。
■闘
『番犬の紋章』は相当な力を持っている……
ここは闇雲に関わろうとせず、切り抜けることを優先しよう。
先ずは敵がある程度密集している場所目掛けて【祟封】による
【範囲攻撃】を仕掛け、一瞬石化させることで時間を稼ぐ。
目的は突破ではあるが、数体でも倒せれば万々歳か。
攻撃を与えたら咄嗟に【ダッシュ】し、すぐさま離脱するぞ。
その際は辿り着かれる前に追手の足元目掛けて【斬撃波】を
放ち、バランスを崩させて距離を取る。
今は只、前に進み続けるのだ……
※アドリブ歓迎・不採用可
ダークセイヴァー世界を猟兵達は新たに発見された世界よりも長く知っている。
多くを知り、多くの謎を解き明かし、多くの人々を救ってきた。
数多の事件が巻き起こり、その都度ヴァンパイアを打倒してきてなお、道が開かれるたびに謎がまた増えていく。
「これらの謎が解き明かされるのは、何時のことか」
愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は胸中に浮かぶ『地底都市』や『第五の貴族』、そして『紋章』に思いを馳せる。
しかし、それは今ではない。
戦いは既に始まっており、転移した瞬間から『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちの攻勢は凄まじいの一言に尽きるものであった。
多くの猟兵たちが転移し、『第五の貴族』の屋敷の防衛網をかき乱しているとは言え、全てを打倒せしめることは難しいと言わざるを得ない。
確かに『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』の個としての力は、どの個体であれど猟兵たちを凌駕している。
まずは数体でも倒せれば万々歳であると清綱は考えていた。
「闇雲に関わろうとせず、切り抜けることだけを優先するべきだな。ならば」
その瞳がユーベルコードに輝く。
己の手にした刀から邪な力を封じる青白い波動が溢れるように放たれる。それは猛禽の翼を持って舞い降りた清綱に殺到した『首無しヴァンパイア』たちを中心に次々と波紋のように広がっていき、その肉体を石化させていくのだ。
「海底より蘇りし穢を石巌に封ず 還り去れ……祟封(タタリフウジ)」
そのユーベルコードは石化と灰化を齎す力であったが、再生能力をもつ『首無しヴァンパイア』たちにとっては、一瞬の足止めでしかない。
しかし、それでいいのだ。
一瞬であっても『首無しヴァンパイア』たちの行動を阻害することができたのならば、清綱にとっては無限の時を得たのと同じようであった。
走る姿は一瞬であったが、交錯した合間に放った斬撃が『首無しヴァンパイア』たちの『番犬の紋章』を切り裂き、その体を霧散させていく。
「これだけ打倒してもなお、まだ数を誇るか……だが、今は只、前に進み続けるのだ……」
そう、ここで『第五の貴族』を打倒することができなければ、『地底都市』において隷属を強いられる人々を助けるどころではない。
ともすれば地上世界に生きる『闇の救済者』たちにも累が及ぶかもしれない。
そうなってしまえば、ダークセイヴァー世界をオブリビオン支配から解き放つことなど夢のまた夢である。
「ならばこそ、此処は捨て置くのみ」
全てを打倒する必要はない。
『第五の貴族』の首さえとれば、理性を喪っている『首無しヴァンパイア』など烏合の衆である。
斬撃波を放ち、『首無しヴァンパイア』たちの足元をなぎ、雷鳴のように大地を踏みしめ、清綱は走り抜ける。
すでに多くの猟兵たちが屋敷へと突入し、その血路を開いてくれている。
その破壊のあとへと飛び込み、清綱は知る。
『第五の貴族』と呼ばれるヴァンパイアが如何なる存在であるかを。
姿を見せずとも屋敷の中に吹き荒れるような重圧が教える。
これこそが、上位存在。この圧倒的な力を持つ者と今から猟兵達は戦わなければならない。
弱点がわかっている、ということが些細に感じるほどの力量を前に清綱は慄くのではなく、きっと笑うだろう。
窮地にあってこそ、笑みを浮かべる。
それが清綱という猟兵であるからこそ、彼は戦うのだ。誰かのために、己の生命を厭うことなく、弛みない練磨の果てにこそ、己目指す境地があるのだと知る。
ゆえに一歩を敢えて踏み出すのだ。
その線を越えてしまえば、其処から先は死地。
されど、己の中にある何かがいうのだ。
戦わなければいけないと。
己の刃はそのためにあるのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『赤錆の騎士』
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POW : 強撃
【瞬時に間合いを詰め、二刀の剣】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 致命へと繋がる
【剣による打ち払い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 切り裂き詰める
対象のユーベルコードに対し【超常すら切り裂く斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:善知鳥アスカ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『第五の貴族』。
それは『番犬の紋章』を持つ存在の、さらに上位の存在であることは言うまでもない。
屋敷の中に突入した猟兵達は知るだろう。
赤錆びた騎士鎧に包まれた過去の化身ともいうべきヴァンパイアの胸に輝く『騎士王の紋章』が、これまで戦ってきたどのヴァンパイアよりも強大な存在であり、その力を持って己たちを死へと追いやることを。
重圧は肌を焼き、迫る死の気配に、足は後退するかもしれない。
けれど、この場に降り立った者たち全てが、それをしないだろう。
彼等は知っている。
かの『騎士王の紋章』はたしかに強大な力を持っている。
「『時』は君達の『味方』だ。君達が私を殺すことのできる存在なのかは問うまい。だが、心するがいい。加減も、手心もない。今の私はきっとそう……」
『赤錆の騎士』が言う。
かつては守護者であったが、今は違う。
ただの殺戮者である。
自動的であり、抗うことも自死を選ぶこともできない傀儡。
己の滅びを望んでも、己の身体がそれを許さないのだ。
噴出する力の奔流は剣技となって放たれるだろう。ただの剣技がユーベルコードにまで昇華した技量を持って、猟兵たちを追い詰める。
しかし、持久戦こそが『赤錆の騎士』を追い詰める唯一の方法である。
強大な『騎士王の紋章』の力に身体が保たないのだ。これまで彼と戦った者たちは、そこまで保つことができなかった。
だからこそ、彼は『地底都市』に君臨し続けたのだ。
けれど、今回は違う。
猟兵達はつなぎ、紡ぐ戦いをする者たちである。
戦い続け、消耗させ、時間を稼ぎ、その強大な力によって自壊を誘うしかない。
「私は歯車。そして、君達は紡ぐ者たち。さあ、死合おう。生命燃え果てるまで。私の身体が崩れ去るまで――」
ニノマエ・アラタ
……。アンタ、「心」って言葉を何回使った?
心なんぞ気にしないなら、そんなこといちいち言わねェ。
だからこそ問う。
アンタの心は錆びの果てに腐っているのかと。
おっと、言葉はいらないぜ。
……剣で応えてくれ。
紋章から強大な力を引きずり出し、消耗させればいいってことだ。
ならば、俺自身が最大限の力を出す強敵となる必要がある。
……大技を使わせ、かつ、俺自身も大技で返し打撃を与える。
死を忌避する自動傀儡と、死を賭けして突っ込み勝負だ。
俺は、俺の腕が動けばいいんだ。
その範囲でアンタの強撃を避けて一撃を返し、還すよ。
狙いは、紋章。
痛みなど神経回路のどこかを切ってしまえばいい。
今、この瞬間。
救うために、力を解き放て!
極限まで削ぎ落とした心には業が宿る。
ならば、その刃はいかなるものであったことだろうか。
『第五の貴族』――『赤錆の騎士』はきしむように肉体を動かしながら、『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちの防衛網を突破してきた猟兵たちを見やる。
「何もかもが消えゆく定めならば、君達の心は厭うことをしなくていい。此処にあるのは心なき残骸にすぎない。過去の幻影に心などありはしないのだ」
彼はそう言って、二刀の刃を抜き払う。
その棋士鎧は赤錆に覆われている。
彼がかつて守りたいと願った者たちの返り血によって錆びついた騎士鎧は、そのまま彼の後悔と慚愧に堪えない心が生み出したものであったのかもしれない。
ぎちぎちと音を立てる鎧と関節。
しかして、その身体から放たれる重圧の凄まじさは言うまでもなく、彼が装着した『騎士王の紋章』故であろう。
凄まじい力を発露させる紋章の力は、『赤錆の騎士』の肉体すらも破壊していく。
一瞬で間合いを詰め、その手にした剣による斬撃は一瞬の内に二撃。
「……」
ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は太刀で、その二連撃を受け止め、問いかける。
「アンタ、『心』って言葉を何回使った
心なんぞ気にしないなら、そんなこといちいち言わねェ。だからこそ問う。アンタの心は錆の果てに腐っているのかと」
受け止めたアラタの腕がきしむ
それほどまでの膂力であった。骨の髄まで叩き折られそうなほどの一撃であったのだ。
あの二連撃を受け止められた事自体が奇跡であったかもしれない。妖刀であったからこそ、受け止められたのかも知れない。
「おっと、言葉はいらないぜ……剣で応えてくれ」
互いに距離を取るように鍔迫り合いの後に距離が離れる。あの二連撃は距離を詰めなければ使えない。
そして、『騎士王の紋章』の弱点は『持久戦に向かない』ということであるのならば、その紋章の力を引きずり出し続けて消耗させればいい。
だが、言うことは簡単である。
つまるところ、最大限の力を引きずり出すということは、常にその攻撃を受け止めなければならないからだ。
大技を使わせ、かつ、自身もまた大技で返し打撃を与える。
それは生命を賭した勝負そのものであった。
「君は、死ぬつもりなのか」
問いかける言葉にアラタは笑ったかも知れない。そのつもりなど毛頭あるわけがない。
生きて、生きて、生き抜く。
それがアラタがこれまで歩んできた道程であろう。
だからこそ、手にした妖刀『宿業輪廻』が手にあるのだ。
全ての業を絶ち、彼岸へと導く力。
彼の瞳がユーベルコードにか輝く。
「俺は、俺の腕が動けばいいんだ」
再び激突するアラタと『赤錆の騎士』。斬撃を受け止めるので精一杯である。かわそうとしても衝撃波でもって、続く二撃目で仕留められてしまう。
だから、アラタは受け止め続けるしかない。
受け止めた太刀を握る腕から血が噴出する。
とうに限界を越えた斬撃の嵐にアラタは、今もなお抗う。瞳に輝くユーベルコードは未だ輪廻宿業(リンネシュクゴウ)を断ち切ってはいないと光を放つのだ。
曰く、その妖刀は『この世界に存在するための因』のみを断ち切る。
銘を『宿業輪廻』。
宿した業を断ち切る斬撃はきっと、救いの一撃であったことだろう。痛みなど忘れた。
今目の前にしている『赤錆の騎士』が剣で応えるだろう。
躊躇うなと。
どれだけ彼の心が錆びついていたのだとしても、彼の心は腐っては居ない。
すでにもうないと言った心。
ならば、己が剣を介して感じる思いはなんだ。アラタは咆哮する。
痛みなど神経回路の何処かを切ってしまえばいい。
いつだってそうだ。己が戦う理由は一つだ。
救うために戦う。
今この瞬間を生きて、必ずや勝利を収めるのだ。それだけが己が妖刀を手にした理由だ。
アラタは咆哮する。
それは獣の咆哮ではなく、人の心が見せた救うための咆哮であった。
轟く輪廻宿業(リンネシュクゴウ)の斬撃の一撃が『騎士王の紋章』へと放たれる。
「……諸共に――救うために!」
力を解き放った妖刀の一撃は、『騎士王の紋章』にヒビを入れる。
未だ足りぬ斬撃。
しかし、その斬撃は踏み込みが足らなかったわけではない。そう、噴出する力は勢いを増している。
自壊だけが、かの『赤錆の騎士』を倒すことのできる唯一であるのならば、アラタはその一撃を持って、彼の心を解き放つために己のユーベルコードを一刀に懸けたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
陽殿蘇・燐
何という重圧…!
猟兵になって浅い私では、到底敵わない。一人では敵わない。そう、一人では。
知ってるのよ。猟兵の戦いは紡ぐ戦いもあるって。
だから、私も紡ぐ戦いを。…『ラスボス炎術士・燐』らしくはない戦い方だけれどね。
ここに来た以上、やれることはやらないと。それこそ『ラスボス炎術士・燐』らしくないのよ。
【炎術:芭蕉扇】での状態異常で、継続ダメージを積ませるわ。毒と炎にまみれ、暗闇をさ迷いなさい。
『烏揚羽』による一時的高速移動で敵の攻撃を避け、さらに『紅紋揚羽』による超重力で簡単には動けないようにするわね。
…私を倒した主人公なら、ここに立ち続けるのでしょうね。
それはらしくない戦い方であると言わざるを得ないものであった。
もしも、この戦いを彼女、陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)の配信を常に見ている視聴者が見たのならば、きっとそう言うはずだった。
けれど、まだ配信の準備は整っていない。
手にした芭蕉扇をはためかせ、燐は屋敷の中を走る。
すでに先行して『第五の貴族』と戦っている猟兵が激突した風が彼女の頬を撫でた。
一瞬の内に放たれる痛烈なる二連撃の斬撃は、衝撃を生み出す。
返す猟兵の一撃が、たしかに『騎士王の紋章』に打ち込まれ、さらなる力の放出を強めたのを燐は見ただろう。
この『騎士王の紋章』を持つ『第五の貴族』――『赤錆の騎士』に勝つための方策は唯一つ。
そう、力の放出によって自壊する『赤錆の騎士』の自滅を待つという『持久戦には向かない』という紋章の力を逆手に取ることであった。
「何という重圧……!」
猟兵に成って日が浅い己では到底敵わないと思わせるには十分であった。
一人では勝てない。
そんなこと彼女は絶対に口にはしないが、内心はそれを認めざるを得なかった。
超常の一撃すらも斬撃に寄って切り捨てるまでに昇華された技量。
それをユーベルコードと呼ぶのであれば『赤錆の騎士』の力が如何程のものであるかを知るには十分であった。
けれど、燐は知っているのだ。一人では勝てない。そう、一人では、だ。
「知っているのよ。猟兵の戦いは紡ぐ戦いでもあるって」
だからこそ、燐は倣うのだ。
先に戦いを繋いだ者たちの意志を、想いを次に伝え、紡ぐために。
『ラスボス炎術士・燐』らしくはない戦い方ではあるけれど、ここに来た以上、やれることはやらないといけない。
「この体は、たしかに自壊する。けれど、君達がそれまで保つことができるのかを私は知らない。君達はどうする。逃げ惑うだけか。それとも」
それとも立ち向かうと言うのかと『赤錆の騎士』が燐へと肉薄する。
一瞬で距離を詰めてくる踏み込みの速度は凄まじいものであった。芭蕉扇から放たれた炎をまとったクロアゲハが、『赤錆の騎士』と飛ぶが、そのことごとくを超常を切り裂く剣の斬撃に寄って霧散していく。
「消される……! だけど此処でやらないと、それこそ『ラスボス炎術士・燐』らしくないのよ」
迫る斬撃で燐は一撃のもとに打倒されるだろう。
しかし、燐のユーベルコードは未だ輝いている。
その瞳に不屈の精神があるかぎり、どれだけ敵が兄弟であっても、心が折れることはないのだ。
何故ならば、己をラスボスと定義するバーチャルキャラクターならばこそ、立ち向かってくる者に背を向けることもなければ、戦いを拒むことだってないのだ。
炎術:芭蕉扇(エンジュツバショウセン)はそういうユーベルコードだ。
例え、超常切り裂く斬撃であったとしても、放たれたクロアゲハたちは、次々と炎を『赤錆の騎士』に降り注がせ、猛毒と視界を奪う暗闇でもって彼を消耗させるのだ。
「炎術……いえ、炎蝶術の基本よ」
燐は『鳥揚羽』の力によって速度を増し、視界を奪われた『赤錆の騎士』が放つ斬撃を躱し続ける。
それは綱渡りのような戦い方であった。
一撃でもまぐれ当たりが通れば、きっと燐は倒れてしまう。
ヒリヒリと肌を焼く重圧が燐の心をざわつかせる。けれど、引くことはできない。何故ならば――。
「……私を倒した主人公なら、ここに立ち続けるでしょうね」
ラスボスである己が退くことなどできるわけがない。
ゆらりと舞うベニモンアゲハが『赤錆の騎士』の肉体に超重力で持ってのしかかり、その動きを止める。
対する『赤錆の騎士』は、その超重力に抗おうと、『騎士王の紋章』をさらに輝かせる。
それは自壊へのタイムリミットを早めさせるのは十分すぎる出力であった。
「猟兵の戦いは紡ぎ、繋ぐ戦い。なら、私もそうしましょう。今だけはラスボスじゃあなくって、一人の猟兵として」
振り払う超重力の力をもってしても『赤錆の騎士』を止めることはできなかった。
けれど、それで十分だったのだ。
噴出した力によって、負荷の掛かった『騎士王の紋章』が一撃を受けた上で、さらにひび割れていく。
燐はそれを見やりうなずく。
今はこれで十分だと。
自分が主人公を気取るわけではないけれど。いつかのどこかできっと自分の前に立った誰かの瞳が今、まさに彼女の瞳に輝くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』
なるほど、時間稼ぎしつつ、避ける必要がありますねー。
では、私で。得意ですからねー。
【四悪霊・『解』】を続けて使用。今回の場合は、生命力吸収による自壊早めですよー。
その打ち払いに当たるわけにはいきませんのでー。
攻撃としては、遠くからの漆黒風投擲ですねー。ついでに風属性攻撃ついてますー。
まあ、万一は内部三人による三重結界術も続いてますのでねー。固いですよ?
ついでに、結界にも生命力吸収つけてますのでね?
呪いは悪霊の十八番なんですから。たちが悪いでしょう?
『騎士王の紋章』は『第五の貴族』である『赤錆の騎士』の強大な力を裏付ける『寄生虫型オブリビオン』だ。
相対するだけでわかるのだ。
一瞬でも気を抜いたが最期であると。四柱の複合型悪霊である馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)をして、その肌を焼く重圧。
しかし、やるべきことは変わらない。
そう、『騎士王の紋章』には致命的な弱点がある。
それは『持久戦には向かない』という点である。
強大な力を放ち続けるがゆえに、寄生したヴァンパイア事態の身体が保たないのだ。これまで、『赤錆の騎士』がそこまで追い込まれたことはない。
持久戦には向かないという弱点は、圧倒的な力の放出によって瞬時に勝負の決着を付けることによって解消される身体。
「なるほど、時間稼ぎしつつ、避ける必要がありますねー」
四柱の一柱『疾き者』がうなずく。
それこそが己の名の由来でもある。得意ですからねーと、その瞳にユーベルコードを輝かせる。
四悪霊が封じてきた呪詛を開放し、『赤錆の騎士』から運気や霊力、生命力といった力を奪っていくのだ。
「すでに他の猟兵の方々が『騎士王の紋章』に傷をつけてくれていますからねー。力の放出が止まらないんじゃないんですかー?」
『疾き者』の見立て通りであった。
そう、たしかに『騎士王の紋章』を装着した『赤錆の騎士』の力は凄まじいものである。
けれど、度重なる猟兵の攻撃に寄って、ブレーキが効かない状態に陥っているのだ。
消耗を避けるために力の放出を弱めようとしても、弱めることができない。
加速度的に上がっていく力の奔流は、徐々に赤錆の浮いた騎士鎧すらもひび割らせていく。
「確かにそのとおりだ。けれど、君達が私の攻撃を躱せると決まったわけではない。それこそ――」
そう、それこそ、偶然、幸運が重ならない限りはと『赤錆の騎士』はいう。
けれど、むしろ、そうだからこそ四悪霊・『解』(シアクリョウ・ホドキ)は力を発揮するのだ。
奪った運気によって『疾き者』は己の運気を上乗せする。
幸運を纏う足さばきに寄って、棒手裏剣を投げ放ちながら己に攻撃を惹きつけるのだ。
投げは成った棒手裏剣の投擲を剣で叩き落としながら刺突の構えでもって『赤錆の騎士』が迫る。
その速度は圧倒的であったが、目の前に展開された三柱分の障壁である結界が剣の切っ先を押し止める。
「無駄だ。どれだけ受け止めようとも、私の剣は全て貫く」
当たった以上、その結界すらも打ち砕く刺突の一撃は、結界を破壊して『疾き者』に迫る。
だが、その刺突の切っ先が揺らぐ。
何をと、『赤錆の騎士』は思ったことだろう。
腕に力が入らないのだ。
未だ紋章の力による強化は続いている。だというのに、握力が弱まっているのだ。
「――……これは」
「ええ、生命力を奪う力も着けていますのでね? 呪いは悪霊の十八番なんですから」
そう、只で結界を破壊されたわけではない。
『疾き者』、そして残りの三柱による生命吸収の結界。
二重に構えた段取りでもって『赤錆の騎士』を絡め取ろうというのだ。
振るわれる斬撃が衰えているが、未だその一撃を受けるわけには行かない。『疾き者』は、その名の通り、疾風のように『赤錆の騎士』を翻弄しながら、屋敷の中を縦横無尽に駆け巡る。
戦いの残滓がまるで旋風のように吹き荒れ、屋敷のあちらこちらを破壊する。
けれど、目に見えて『赤錆の騎士』の動きが悪くなっているのは変えようのない事実であった。
「たちが悪いでしょう? 基本、呪いませんよー? けれど、あなた方は別です。呪い、祟り、そして弱体化させる。必ずや、その心を救いましょう」
亀裂の走る鎧。
それが自壊の兆候であることを認め、『疾き者』は果ての見えた持久戦をさらに引き伸ばし、『騎士王の紋章』を輝かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
あれが『第五の貴族』――『赤錆の騎士』。間近に相対すると、すごい重圧ね。
でも、隣にアヤメがいるから戦える。
始めましょう。村崎ゆかり、陰陽師。参る!
戦場に「結界術」「全力魔法」砂の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」「道術」「破魔」「浄化」を乗せた紅砂陣を展開。
命無きもの、悉く紅砂に至れ。
足に絡む流砂に、視界を塞いで吹きすさぶ砂嵐。これがあたしの遅滞戦術。その武具も紅砂にしたかったけど、さすがにそうはいかないか。
でも、あなたが纏う武具の重さは、流砂が飲み込むのに十分よ。
そして、砂も嵐も剣では斬れない。
アヤメはクナイで牽制を。あたしは紅砂陣の威力を上げていく。
あなたもその魂の牢獄から解き放たれなさい。
個としての力は確かに『第五の貴族』の方が遥かに上であろう。
『寄生虫型オブリビオン』である『騎士王の紋章』によって強化された『赤錆の騎士』の身体能力は生命の埒外である猟兵をして圧倒するものであった。
しかし、度重なる攻撃が『騎士王の紋章』に亀裂を走らせる。
ひび割れた紋章から溢れる力はまるでブレーキの壊れた車のようであった。暴走状態に陥っていると言っても過言ではない。
そのすさまじい戦闘力の強化を代償に『赤錆の騎士』は己の力によって自壊していく。
けれど、彼が自壊するまでの時間に猟兵たちが退けられれば、元の木阿弥である。全てが水泡に帰す。
だからこそ、猟兵達は果てが見えると言っても果てしなく遠い持久戦へと『赤錆の騎士』を引きずり込むのだ。
「あれが『第五の貴族』――『赤錆の騎士』。間近に相対すると、すごい重圧ね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はわずかに己の手が震えるのを感じた。
いや、自分の震えではなかったかも知れない。
隣に立つ式神アヤメの震えであったかもしれない。
どちらにしても、今此処にゆかりが立っていられるのは、彼女がいるからだ。彼女がいなければ、自分は此処には居ないし、戦えない。
だから、二人はうなずき合う。
これよりは死地である。互いの力を持って、互いを助ける。それによって、敵を打倒せんとするのだ。
「君は、君達は戦うのだな。時にそれは尊いものだけれど」
『赤錆の騎士』が迫る。
暴走状態に陥った紋章の力によって、でたらめな速度で踏み込んでくるのだ。剣はあらゆる超常を切り裂く斬撃へと昇華している。
それが如何なる修練と練磨の果てに至った境地であるのかわからない。
けれど、ゆかりはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
「始めましょう。村崎ゆかり、陰陽師。参る!」
戦場に結界術と砂による仙術と道術を組み合わせた破魔の力と浄化の力がほとばしる。
しかし、そのことごとくを『赤錆の騎士』は切り裂く。
どれだけ超常の力を生み出したとしても、今目の前に迫る『赤錆の騎士』は問題にすらならない。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。貪欲なる紅砂よ、万物全ての繋がりを絶ち、触れるもの悉くを等しく紅砂へと至らしめん。疾!」
力を乗せた、紅砂陣(コウサジン)がゆかりの周囲にある無機物全てを急速に風化させる紅い流砂と砂嵐に変えていく。
いくら超常の力を切り裂く斬撃があろうとも、次々と風化させる力は鎧を、剣を砂に変えていく。
そのたびにほとばしる紋章の力によって再構成されていくのだ。
「再構成……! やっぱり、その鎧も剣もあなたの力の一部ってわけね……けれど、その武具の重さは――!」
アヤメのクナイが飛び、『赤錆の騎士』をその場に留まらせ続ける。
離脱されては、このユーベルコードの効果の外に逃げられてしまう。ゆかりたちは『赤錆の騎士』を凌駕する必要はない。
もとより、個としての力は遥かに『赤錆の騎士』が上だ。
だからこそ、紋章の力による暴走と自壊を狙う。
そのための遅滞戦術である。
「どれだけあなたが超常を切り払う業を持っていようとも、無限に再構成を続ければ、力を消耗するし、紋章の力は引き出され続けるでしょう」
「そうだ。それでいい。『時』こそが君達の『味方』だ。感謝する。私はもう自分では止まれない。歯車のように、欠けるのを待つしかない」
その姿を哀れとは言うまい。
ヴァンパイアに敗れ、己もまたヴァンパイアにされた騎士。
かつての姿はもう無く。在るのは、人としての尊厳も誇りも、何もかもをも奪われた自動機械の如き存在意義。
「あなたもその魂の牢獄から解き放たれなさい」
ゆかりにできることはそれだけだ。
戦いはいつだって残酷だ。勝者と敗者がいて、敗者は勝者に全てを奪われる。
戦いの常であると言うことができればいい。
けれど、それさえも言えぬのならば、ゆかりは己のユーベルコードの荒ぶ砂嵐の向こう側に、かつての魂を縛る牢獄を追いやるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
羽々・一姫
あなたの実力が圧倒的なことはわかるけれど、
『死にたがり』につきあうほど、わたし勤勉じゃないのよ?
だけど滅びたいというのであれば、止めはしないわ。
自らの意志すら通せないのなら、意志があることすら苦痛だものね。
時間を稼げ、というならわたしはのんびりいかせてもらいましょう。
攻撃はせず、回避に専念しながら【奈落召喚】で咎人の霊を召喚。
今回はヘカトンケイルに戦ってもらうことにしようかな。
「百腕の巨人よ、わたしの喚びかけに応えなさい」
『赤錆の騎士』を倒しきる必要はないわ。
攻撃は受け、流しなさい。狙うなら紋章だけね。
それが、かつて『守護者』だった者への、せめてもの手向け。
心ゆくまでその剣技を振るうといいわ。
砂嵐の向こう側から『第五の貴族』――『騎士王の紋章』を輝かせる『赤錆の騎士』が迫る。
超常の全てを切り裂き、あらゆるユーベルコードをも切り捨てる凄まじい力は、今や暴走状態であった。
そう、亀裂の走った『騎士王の紋章』はすでに『赤錆の騎士』の意志では止めることができないのだ。
それこそが、強敵である『赤錆の騎士』の持つ弱点に他ならなかった。個としての力で劣る猟兵たちが取れる選択肢は多くはない。遅滞戦術でもって、『赤錆の騎士』を自壊させるほかないのだ。
「私はまだ壊れない。認めよう。君達は確かに素晴らしい。けれど、まだ足りない。私ではどうしようもない。止めることも、とどまることもできない」
『赤錆の騎士』が剣を振るった瞬間、周囲に渦巻いていた砂嵐が霧散して消える。
それこそが超常すらも切り裂く斬撃にまで昇華した彼のユーベルコードである。
「あなたの実力が圧倒的なことはわかるけれど、『死にたがり』に付き合うほど、わたしは勤勉じゃないのよ?」
羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)はけだるげな雰囲気のまま、『第五の貴族』の屋敷において戦いに赴く。
滅びを望む存在に懸けてやれる情をそう多くは持ち合わせていないと彼女は嘯く。
けれど、ならば何故この場にいるのかと問われることもあるだろう。
ただ放ってはおけないのだ。
滅びたいと願う存在がいて、それを止める理由がなく。
そして、己の意志すら通せぬ存在へと成り果てた『赤錆の騎士』を慮ったのだ。
「意志があることすら苦痛だものね」
「私の苦しみなど喪われた生命に比べれば、大したことではない」
迫る『赤錆の騎士』はもはや自動的な機械であった。
目の前の猟兵を打倒する。そのためだけに身体を駆動させる歯車じみた動きであった。多くの猟兵たちがそうしたように、一姫もまた遅滞戦術を取る。
時間を稼げというのならば、一姫はまたけだるげに言うのだ。
「わたしはのんびりといかせてもらいましょう。門に囚われし咎人に命ず」
彼女の瞳がユーベルコードに輝き、その輝きを鍵として、門が開くのだ。
奈落召喚(ゲート・オープン)により、タルタロスに幽閉されている者……一姫の命により顕現するは百腕の巨人『ヘカトンケイル』であった。
咎人の霊を召喚せしめるユーベルコードより、振り下ろされた拳を『赤錆の騎士』は剣で受け止める。
サイズ差など物ともしない技量。
吹き荒れる衝撃波が屋敷をきしませる。
「百腕の巨人よ、わたしの呼び掛けに応えたのならば――攻撃は受け、流しなさい」
勝つ必要はない。
打倒する必要はない。
狙うは『騎士王の紋章』のみである。
騎士と巨人の戦いなど、御伽噺そのものである。けれど、これは現実の戦いだ。騎士によって巨人は打ち倒されるのがストーリーであるというのならば、一姫が紡ぐのは、非常なる現実である。
己の意志なく。傀儡として生きているように死んでいる彼を。
かつて『守護者』であった者への、せめてのもの手向けでもって送らねばならない。
「感謝しよう。君の言葉に。君の行いに」
斬撃が嵐のように百腕の巨人と打ち合い、剣戟の音じみた響きだけが奏でられていく。
一姫はけれど、言うのだ。
そう、これはかつての『守護者』のためなんかじゃないと。
「わたしが楽をしたいだけだよ」
ぶっきらぼうに言った言葉は、けれど『赤錆の騎士』には別の意味で捉えられたことだろう。
どこか楽しむように剣の業が冴え渡る。
もはやどこにも行けない騎士の慰めになるようにと。百腕の巨人は全ての攻撃を受け止め、流しながら押されていく。
「心ゆくまでその剣技を振るうといいわ」
それがせめてもの救いに為るようにと、一姫は己の力が続く限り、ヘカトンケイルの召喚に力を費やすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
攻防一体の攻撃で時間を稼ごう
絶対死守の誓いを発動
貴方をここで止める為に、俺は戦い続ける!
恐らく相手に俺のUCが相殺されてしまうかもしれない、だが…
相手に襲い掛かる光の波動を【武器改造】で改良施しておく
敵にUCが切り裂かれた途端に光の破片が敵の周囲へ散り【継続ダメージ】の雨を降らせる仕様へ手を加えておこう
間合いを詰められたら接近戦での【決闘】を想定
敵の攻撃を【第六感】で感じ取り【見切り】回避、カウンターとして【破魔】付与した刀で【なぎ払い】の【貫通攻撃】を叩き込む
畳み掛けられるわけじゃない、相手の方がずっと上手なのだから
【フェイント】も混ぜつつヒット&アウェイを心掛ける
百腕の巨人ヘカトンケイルの身体が崩れていく。
それは猟兵の召喚した存在であり、今の今まで『第五の貴族』である『赤錆の騎士』を押し留め、持久戦へと引きずり込んでいたのだ。
しかし、『騎士王の紋章』を輝かせる『赤錆の騎士』の力は未だ衰えず。
暴走状態に陥っているとは言え、未だ自壊には遠い。
ゆえに、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は恐れることなく、間髪入れずに飛び込んだ。
その瞳に輝くのは、絶対死守の誓い(ヒカリトヤミノシエン)であった。
「光と闇の疑似精霊、力を貸してくれ!」
己の力だけでは、あの『赤錆の騎士』には及ばない。
けれど、戦わない理由にはなっていないのだ。
闇の疑似精霊が放つ闇の波動と光の疑似精霊の放つ光の波動に寄って、攻防一体の力を得たひりょは振るわれる超常すらも切り裂く剣技を持つ『赤錆の騎士』の一撃を受け止めて叫ぶのだ。
「貴方をここで止める為に、俺は戦い続ける!」
闇の波動を切り裂く『赤錆の騎士』の一撃を見やる。
なんたる絶技。
この業を持ってしても、ヴァンパイアの上位存在には勝てぬのだ。今や暴走しつづける『騎士王の紋章』は、彼の自壊を待つことでしか打倒できぬのをひりょは理解していた。
「その意気や良し。けれど、間違えるな。君は君の誓いのために戦い給え。決して私の為ではなく。他の誰かの。生きる誰かのために戦うのだ」
静かな声は、それが全てを諦めているからにほかならない。
どれだけの絶望が彼を襲ったのか。
ひりょは理解しようとしても足りないことをわかっている。けれど、だからこそ諦めないのだ。
切り裂かれた光の波動が砕け散り、破片となった光が『赤錆の騎士』へと降り注ぐ。
それは微々たるダメージにしかならないだろう。
けれど、それでいいのだ。
『赤錆の騎士』を一時でも長くこの場に留めて置く。
確かにひりょは『赤錆の騎士』に勝てぬだろう。しかし、これは個としての戦いではない。猟兵の戦いだ。常に紡ぎ、繋ぐ戦いであればこそ、彼は太刀を振るう。
「それでも、俺は――!」
その叫びは、誰のためでもない。
かつての『赤錆の騎士』へと向けたものだった。
今、ひりょが戦うのは非業の死を遂げた『赤錆の騎士』の魂に報いるためである。
彼が守りたかったものは既に喪われているだろう。
けれど、それを歪な存在だとは言わせはしない。ひりょは、畳み掛けられる斬撃を躱し、太刀を振るう。
破魔の力を宿した斬撃を受け止められながら、ひりょは膂力でもなければ、ユーベルコードのちからでもない、己の想いの力のままに『赤錆の騎士』と鍔迫り合いを繰り広げるのだ。
「俺もかつての貴方のように。皆の笑顔を守りたい。そのためには!」
きしむ腕はどちらから響いたことだろうか。
確実にひりょから響いている。けれど、それがなんだというのだろうか。ひりょはかまわない。
彼の魂がどれだけ摩耗させられたのかを知っていれば、己の腕が悲鳴をあげることなど、構いやしない。
咆哮がほとばしる。
ああ、と溜息をつくような声が耳元で聞こえたような気がした。
ありがとうとも、聞こえたような声。
その声を受けながらひりょは渾身の一撃を『赤錆の騎士』の胸へと一撃を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK
連戦で休む間もないなぁ
とはいえ持久戦が敵の弱点と言う以上、攻め続けないと
まあ、私もそんなに、体力のある方じゃないから……
一秒でも長くしがみついておこう、私とお前と、先に死ぬチキンレースだ
戦闘は黒剣を槍形態で間合いを取り、光熱線の範囲攻撃で牽制
敵の剣に警戒して間合いに踏み込ませない様に立ち回る
という風に見せて、深く踏み込んでくる敵のUCを狙おう
刺突は喰らっても致命傷は避けて、近付いたら腕ごと胴体に抱き付こう
腕が使える様に部位の負傷は気を付けて、UCで締め付ける
長く拘束して時間を少しでも稼ぐよ、仲間の助けにもなるかもしれないしね
破魔の力を宿した一撃が『第五の貴族』である『赤錆の騎士』の胸元に打ち込まれる。
しかし、その一撃をもってしても『赤錆の騎士』を打倒せしめることは敵わない。『騎士王の紋章』の力は絶大そのものである。
致命傷であろう一撃を受けてなお、その身体を自動機械の如く動かせ続けるのだ。
「私は歯車のようなものだ。容赦はいらない。手心はいらない。君達が生きることだけを考えてくれ。そうしなければ――」
全てが無駄になってしまうと『赤錆の騎士』が言う。
彼にとって、魂はすでに摩耗しているものである。
あらゆることに疲れ、己の生死すら自由にできぬ存在へと貶されたのだ。
それを悲しいと思う暇すら、残酷な現実は与えてはくれない。
「連戦で休む間もないなぁ……」
肆陸・ミサキ(ダンピールの精霊術士・f00415)は『番犬の紋章』を持つ『首無しヴァンパイア』たちを最も長く相手取り、多くの猟兵たちの突入をフォローすべく力を行使し続けてきた猟兵だ。
疲弊しているのかと問われれば、その通りであると応えるほかない。
けれど、それでも戦わなければならない。
彼女だって体力があるほうではないのだ。
「私とお前と、どちらが先に死ぬかチキンレースだ」
その瞳が不退転の覚悟に煌めく。
そう、遅かれ早かれ結果は同じだ。ならばこそ、攻め続けなければならない。いつだって後退して事態が好転したことなど終ぞないのだ。
ならばこそ、前に進み続けなければならない。
戦いとはいつだってそういうものなのだ。
槍の形をとった武器とともにミサキは斬撃の一撃を受け止める。
ただの一撃がミサキの身体を、骨という骨をきしませる。相手にとっては牽制の
一撃に過ぎないのだろうが、こちらにとっては絶命の一撃にもなり得る威力なのだ。
「臆病者とは呼ぶまい。君達の戦いに対する決意は、伝わる。どうしようもない、埋めようのない力の差を、埋めようとしている」
それに敬意を表すると『赤錆の騎士』は自動機械の如き正確な斬撃をミサキに見舞うのだ。
光熱線の一撃で牽制しても、尽くが躱されるか防がれる。
あの剣の一撃は絶対に受けてはならない。肌がひりつくような重圧を受けながら、ミサキは息を吐き出す。
けれど、槍を打ち払った剣がユーベルコードに輝くのをミサキは見た。
直近に感じる死の気配。
抗いがたい運命が其処にはあった。
打ち払った剣の次に放たれるのは刺突の一撃である。
その一撃を受ければ、己の絶命は免れぬ。
息を吐き出す時間すらもゆっくりとしたものへと変わっていく。集中する。痛みは一瞬である。
この戦いは勝利を目指せど、敵の打倒に寄って相成るものではない。
なればこそミサキは歯を食いしばる。
その瞳に輝くのは、ユーベルコード。
「――ッ!!」
声にならぬ声が刺突の果てに響きわたる。
肩を貫く剣の一撃を受けてなお、ミサキは前に進む。それは、持て余したモノ(ザ・パワー)によってのみ為し得る凄まじき怪力であった。
刺突によって貫かれてもなお、ミサキは前に進む。
その前身に寄って、彼女は絶命を免れ『赤錆の騎士』へと組み付くのだ。
肩を貫かれていても関係ない。
この腕がつながっている以上己が為せることは一つである。
「痛くするけど、いいよね」
答えは聞かない。
聞いた所で意味はないし、ここから先はチキンレースではなく我慢比べだ。鯖折りのようにミサキは両腕を『赤錆の騎士』の腕ごと掴むように回し、凄まじき怪力でもって拘束するのだ。
鎧がひしゃげ、骨が砕ける音が響きわたる。
少しでも長く。
一瞬でも長く。
それが他の猟兵達の手助けになる。
ミサキはそうすることで、『赤錆の騎士』の自壊に至る時間を大幅に削る。
「見事――。君の決意、覚悟。私をしても振りほどけぬものであったよ」
『赤錆の騎士』が微笑んだような気がした。
今はそんなの必要無いんだとミサキはいうかも知れない。
けれど、ミサキの稼いだ時間は貴重な時間そものであった。
一つも無駄なことなんてない。ミサキは、ひしゃげた『赤錆の騎士』の鎧ごと吹き飛ばし、鮮血に濡れる腕を掲げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…かつての人類の守護者が今や第五の貴族とはね
救世を誓う者として、その境遇には同情するけれど…だからこそ、容赦はしない
…お前を討ち果たし人類を、この世界を救済する
…さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい
救世の誓いを胸に闘争心を賦活して重圧を弾きUC発動
対吸血鬼用戦闘知識から敵の未来の残像を暗視して行動を見切り、
多少の負傷は自身の生命力を吸収する事で治癒しながら攻撃を受け流し続け、
第六感が危険を感じたら魔力を溜めた大鎌をなぎ払い迎撃を試み、
"黄金の楔"を怪力任せに突き刺して捕縛して動きを止める早業のカウンターを行う
…っ。確かに強い。だけど、それだけ
骨子の無い思想で振るう剣で、私が斬れると思うな
ひしゃげた騎士鎧を復元する『騎士王の紋章』の力はすでに暴走状態であった。
際限なく力を引き出し、徐々に魂すらも自壊に近づく『第五の貴族』――『赤錆の騎士』は微笑んでいるような気配すらあった。
もうすぐ終ることができる。
あれからどれだけの月日が流れたことだろうか。
己が敗北し、己が守りたかったものすらも切り捨てたあの日から、どれだけの時間が流れただろうか。
傀儡となって魂すらも、己の生死すらも何一つ自由にできぬおぞましき日々。
生命を奪うだけの歯車へと成り果てた己を笑う者すらいない地底都市で、ただ粛々と殺し尽くしてきたのだ。
「けれど、それも終る。君達が私の終わり。ああ、どうか」
どうか、君達が死ぬことのないようにと祈らずにはいられなかった。
自動機械の如き身体は猟兵が存在する限り、自壊するその時まで戦い続けるだろう。
だからこそ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、その胸に救世の誓いを持って闘争心を賦活する。
例え、『赤錆の騎士』が己を上回る力量を持つ存在であったとしても、その重圧に負けてなどいられないのだ。
「……かつての人類の守護者が今や『第五の貴族』とはね。救世を誓う者として、その境遇には同情するけれど……」
憐憫の情すら湧き上がるかもしれない。
けれど、だからこそである。リーヴァルディと『赤錆の騎士』の瞳が交錯する。わかっていることだ。
そうするのが一番であると。
救世を誓うのであればこそ、今目の前にいる強敵は乗り越えなければならぬ存在である。
これだけの力を有していてもなお、その上位存在がいる。
容赦はしない。
必ずや止める。止めてみせる。湧き上がる闘争心がリーヴァルディの足を跳ね上げさせる。
「……お前を討ち果たし人類を、この世界を救済する」
「私に成せなかったことであるけれど、背負う必要などない。君は君の道を往きたまえ。それだけが私の願いだ」
踏み込みは一瞬であった。
互いに踏み込みは神速。けれど、リーヴァルディはその瞳に未来を視ただろう。その残像を。
どう動き、どう剣を振るうのかを。己の振るう大鎌を如何にしていなし、躱し、返す刃で剣を突き立てるのかを。
一瞬の攻防であった。
吹き出す血潮はリーヴァルディの肩口からであった。
受け流すこともできなかった。力で押し負ける。第六感によって危険を感じ、身を捩ることが精一杯であった。
「……っ。確かに強い。だけど――」
「私の剣はそれだけだ。魂すら乗らぬ刃に、君達は負けない」
骨子のない思想で振るう剣。
それにリーヴァルディが敗れるわけにはいかない。
魔力を込めた大鎌の薙ぎ払う一撃が、必殺の刺突を迎撃する。
しかし、力で勝る『騎士王の紋章』が輝き、その一撃すらも吹き飛ばすのだ。
リーヴァルディは視た。
返す刃が己の首元へと振るわれる未来を。数瞬の後に起こる現実を。
けれど、その現実すらも捻じ曲げるのが、彼女のユーベルコードである。
「吸血鬼狩りの業(カーライル)を知るがいい」
確定した未来すら捻じ曲げる力。
手にした黄金の楔を持って、リーヴァルディは怪力に任せて刺突放つ剣と激突させる。
火花が散り、切っ先同士がぶつかって剣を砕きながら黄金の楔は、『赤錆の騎士』へと叩き込まれる。
一瞬で『赤錆の騎士』の血液を吸い込み、かの騎士の身体を拘束する。それは超硬の拷問具であった。
未来を捻じ曲げるほどの闘争心でもって、リーヴァルディは己の首に振るわれるはずだった一撃を真っ向からねじ伏せ、『赤錆の騎士』を捕らえ、止められぬ紋章の力による自壊を持って、押し留め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
いいでしょう。それがあなたの望みなのであれば。
あなたが倒れるまでお付き合いさせていただきます。
ただの人間がこの世界で生きるために身に付いた技、お見せしましょう。
「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸の『乱れ撃ち』『威嚇射撃』で牽制して容易に接近されないようにしつつ、剣での攻撃を【絶望の福音】で『見切り』回避、あるいは銃剣で『武器受け』し防ぎます。
技量も膂力も私より遥かに上、動きが読めようと近接戦ではいずれ追いつめられるでしょうが、私には私の戦い方があります。
接近されても『零距離射撃』および「デリンジャー」の『クイックドロウ』を駆使し、足止めすることで再び距離を離し、時間を稼ぎます。
血を啜り変形して『第五の貴族』、『赤錆の騎士』の身体をねじ伏せていた黄金の楔が弾け飛ぶ。
凄まじいまでの重圧を放ち、輝く紋章の名は『騎士王の紋章』。その名に恥じぬ力を示す輝きは、しかして暴走状態に陥っている証である。
確かに『赤錆の騎士』の技量ともに力は個としての猟兵を凌駕するものであったことだろう。
だが、それでも猟兵たちが勝利するための道筋はある。
暴走状態になった紋章の力はいわばブレーキの効かぬ状態である。
力を抑え、己の肉体を慮る事ができない状態だ。その状態を維持し続ければどうなるかなど、明白だった。
猟兵たちが強大なヴァンパイアに打倒するためには敵の自壊を待つ持久戦へと持ち込まねばならぬのだ。
「これほどとはな。さすがは私に滅びを齎す者たち。肌で感じているよ。私の、この狂った生涯に幕を下ろしてくれるために遣わされた者たち。私の歯車としての身体は未だ動きを止めない」
吹き飛ばした黄金の楔を振り払って、『赤錆の騎士』は一歩をまた踏み出す。
ただそれだけで重圧がセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の肌を焼く。
「私を滅ぼしてくれ。もう二度と私が立ち上がらぬように」
その言葉を受けてセルマはうなずく。
「いいでしょう。それがあなたの望みなのであれば。あなたが倒れるまでお付き合いさせて頂きます」
彼女の瞳に輝くのは決意の光であった。
例えどれだけ力量差が離れていようとも、セルマは諦めることはない。退くことはない。
これまで連綿と紡がれてきた猟兵達の戦いの軌跡がまた彼女へと繋がうr野田。
「ただの人間がこの世界で生きるために身につけた技、お見せしましょう」
マスケット銃の銃口が『赤錆の騎士』へと向けられ、氷の弾丸が飛ぶ。
乱れ打たれる弾丸は威嚇射撃と呼ぶものであった。敵は二刀の剣を自在に扱う騎士であれば、接近されることこそがセルマにとって最も避けなければならないことである。
技量、膂力ともに勝る相手に接近戦を仕掛けられることこそ、セルマは避けなければならない。
しかし、『騎士王の紋章』が輝き、踏み込む速度は恐らく氷の弾丸よりも疾い。
一瞬で距離を詰めてくる踏み込みの深さは氷の弾丸を受けても止まらない。ならば、と銃剣『アルマス』が剣の一撃を受け止めるが、その一撃すらも返す刃で振り払われる。
銃剣としてマスケット銃に装着していなければ、その時点でセルマは斬撃の前に倒れたことだろう。
もしくは彼女が剣を扱う猟兵であったのならば、その時点で敗れるものであった。
けれど、彼女は違う。
彼女は射手だ。
「躱せ――」
神速の突きがセルマに迫る。
その光景をセルマはすでに見ていた。鳴り響くは絶望の福音か。それとも――。
瞬間、セルマはまるで未来を見てきたかのように神速の突きすらも紙一重で躱す。それはあまりにも非現実的じみた動きであった。
まるで、そう来ると判っていたような動きであった。見てから動いたのではない。その動きはまるで未来視そのものであった。
「私の動きを――」
「はい、みていました。私には私の戦い方があります」
セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
10秒先を見通す未来視の瞳。今までのようにマスケット銃から放つ弾丸で距離を離すことは最早できない。
ぴったりと距離を詰める『赤錆の騎士』を離すことは容易ではない。
瞬時に自身の獲物を手放し、外套を翼のように広げ、セルマは腕を交錯させる。それは奇術めいた動きであったけれど、その手にあったのはデリンジャーであった。
一瞬の早撃ち。
装填数の劣るデリンジャーであれど、放たれるゼロ距離からの弾丸を『赤錆の騎士』は躱すことはできない。剣で受け止めるか叩き落とすかしかできないだろう。
「初めて防戦一方に成ってくれましたね」
デリンジャーを投げ捨て、セルマの蹴撃が『赤錆の騎士』を蹴り飛ばし、距離を放つ。
投げ捨てたマスケット銃『フィンブルヴェト』を手にしセルマはスコープを覗く。
「あなたの望みのままに。滅びを与えましょう。かつてのあなたはもういないのだとしても」
それでも確かに紡がれたものがあるのだというようにセルマは引き金を引く。
氷の弾丸が放たれ、その一撃が騎士兜を貫き、はじめて鮮血を迸らせたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
え? なんですかこの嫌な感じ……。
これが有名な『プレッシャー』ってやつですか!?
でも、それならばこそ! 退くわけにはいきません!
『赤錆の騎士』
その矜持ゆえに滅びを求めるのなら、
『光の勇者』として、それを与えてあげましょう!
攻撃は師匠やシャインさんメインのほうが良さそうです。
サージェさん、わたしたちは前でお二人の援護を!
魔法少女に変身したら、
【オーラ防御】に身を包み、
師匠やシャインさんを【かば】いながら、
【ピーターイートン】を構えて、【クラリネット狂詩曲】で、
みなさまにヒールのかけっぱなしで援護です!
時が剣になるのなら、最大限活用させてもらいますね!
タイムアウトも立派な勝利です!
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、影より悪を討つ者なり!!(開幕【威風堂々】)
プレッシャーもなんのその!
シリアスもいけるクノイチ、サージェ参ります!
ルクスさんわかりました!
態勢が整うまでは、変身バンクの時間は
私が前を預かりましょう
【VR忍術】炎纏いの術!
カタールに炎を纏わせてヒット&アウェイ
攻撃にはカタールの武器受け&ジャストガードで対応
態勢が整ったら援護に回ります
援護なら……こう!
【VR忍術】影縛りの術!
ぺたん魔女いそいでー
ふぃあふぃあ砲が整ったらVR忍術解除
巻き込まれないように飛び退りながら
漆黒竜ノ牙を投擲しつつ【VR忍術】影縫いの術です!
シャインさん、今です!
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ほほう。なかなかのプレッシャーだな。
半人前のルクスが怖気づくのも無理はない」
ならば、こちらも本気で相手をするとしようか。
『時』を味方につけた不死の魔女。貴様の相手にはうってつけだろう。
「ルクス、サージェ、時間を稼げ!
我が魔力を集中させる!」
精神を集中させて【魔力増幅】で極限まで魔力を高めていこう。
防御のことは気にせず、全力でだ。
敵が二刀で斬りかかってきても決して引かぬ。
そう。我は仲間に守られているのだからな。
「さあ、準備は整った。
極限まで高めた我の魔力、見るがいい!」
死霊術師たる我が持つネクロオーブから魔力が放たれ――
「シャイン、我の全力の魔力、受け取れい!」
シャイン・エーデルシュタイン
【勇者パーティ】
「赤錆の騎士ですか。
神の御下にもいけず、可哀想な方ですね。
この世への未練、この私が断ち切ってあげましょう」
私の肉体は悪霊のもの。
聖剣ならいざしらず、そのような錆びた剣程度で切れるとでも……
「なっ!?
私の身体を……斬り裂きました!?」
ルクスさんとサージェさんに助けていただかなければ危ないところでした。
回復ありがとうございます、ルクスさん。
「ですが、どうやらフィアさんの準備が整ったようです」
フィアさんから膨大な魔力を受け取り、それを指先に集中し――
【ジャッジメント・クルセイド】を放ちます!
「地底都市の岩盤すら貫く天空からの裁きの光、その身に受けて錆びて消え去りなさい!」
放たれた氷の弾丸が、遂に『第五の貴族』である『赤錆の騎士』の鎧兜を貫き鮮血を迸らせた。
今まで流血することのなかった彼の体に限界が近づいていることを告げる兆候そのものであった。
これまで『騎士王の紋章』によって強大な力を暴走状態に陥らせることはできても、猟兵達は持久戦によって自壊を待つしかなかったのだ。
けれど、次第に限界を維持する力すらも喪われてきた『赤錆の騎士』のヴァンパイア化した肉体にもまた滅びが近づいているのだ。
「見事。見事だ。私の肉体が血を流すなど、私の身体がヴァンパイアの傀儡となってから、終ぞなかったことだ……」
『赤錆の騎士』はそれでも未だ放ち続ける重圧の凄まじさを持って、彼が『第五の貴族』と呼ばれるヴァンパイアの上位存在であることを知らしめる。
圧倒的な技量がユーベルコードの領域にまで昇華した存在。
その力は言うまでもなく打倒しきれるものではなく、敵の自壊を持って打倒するほかないと言わしめるものであった。
「え? なんですかこの嫌な感じ……」
これが有名な『プレッシャー』ってやつですか、とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は己の肌が粟立つのを感じていたことだろう。
冗談でも言わないと立っていられないような、圧倒的な重圧を放つ『赤錆の騎士』を前にして彼女は震えを隠すことが背いっぱいであったことだろう。
けれど、ならばこそ退くわけにはいかないのだ。
彼女の背にあるのは己の仲間たちである。
ルクスの肩を叩き、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)はいう。
「ほほう、なかなかのプレッシャーだな。半人前のルクスが怖気づくのも無理はない」
フィアは己もまた本気で相手をする他ないと胸を張る。張るくらいのものはないだろうというツッコミは控えておく。
『時』を稼ぐ持久戦に引きずり込むのであればこそ、『不死の魔女』と呼ばれたフィアこそがうってつけの相手である。
「『赤錆の騎士』ですか。神の御下にもいけず、可哀想な方ですね。この世への未練、この私が断ち切って上げましょう」
シャイン・エーデルシュタイン(悪霊として蘇ったクレリック・f33418)もまた悪霊として世に戻った存在である。
彼女の肉体は悪霊。
ならばこそ、聖剣ならばいざしらず、赤錆びた剣で断ち切られる道理などないのだ。
「ルクス、サージェ、時間を稼げ! 我が魔力を集中させる!」
フィアの号令にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)が威風堂々と戦場へと走り抜ける。
「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、影より悪を討つ者なり!!」
放たれる重圧など物ともせずにサージェは疾風のように走り抜ける。
シリアスもいけるクノイチとはサージェのことである。そんな彼女の雰囲気に背中を押されて、ルクスが叫ぶのだ。
「『赤錆の騎士』、その矜持ゆえに滅びを求めるのなら、『光の勇者』として、それを与えてあげましょう!」
サージェとともにルクスは走る。
攻撃を当てる当てないではない。今回の戦いは圧倒的な力を前に時間を稼がなければならない。
ならばこそ、彼女たちがやらねばならないのはフィアとシャインを護ることだ。
VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって生み出された炎纏いの術によってカタールに炎をまとわせたサージェが『赤錆の騎士』と切り結ぶ。
剣戟の音が響き渡り、けれど素早い連撃をして敵を圧倒するサージェすらも手玉に取るように『赤錆の騎士』の剣は、二刀でもって彼女を追い詰めるのだ。
「こ、これが……! わっ!」
サージェは防戦一方であった。手数こそが正義であるというのならば、今の彼女は圧倒的に手数で負けていたのだ。
互いに二刀。
されど、威力も連撃の数も『赤錆の騎士』が上であった。
カタールで一撃を上手く受け止め、衝撃を逃さねば己の身体は容易に吹き飛ばされていたことだろう。
「サージェさん、此処は私におまかせを」
シャインの声が響きわたる。彼女の見は悪霊である。ならば霊体を切り裂くことなどできはしないと、魔法少女へと姿を変えるルクスの間を保つために走って前にでたのだ。
「だめだ。それは――」
そう、『赤錆の騎士』の剣は超常すらも切り裂く斬撃である。
それがユーベルコードであれ、通常ならば切り裂けぬものさえ切り裂くのが『赤錆の騎士』が練磨し、昇華させた技量なのである。
サージェがとっ者にシャインの服を掴んで後ろに引かねば、シャインの身体は両断されていたことだろう。
「なっ!? 私の身体を……斬り裂きました!?」
それは驚愕為る事実であったことだろう。
そこに走り込むルクスの魔法少女姿。二人と未だ魔力を練り上げていくフィアをかばい、光の勇者あらためフューチャリング魔法少女となったルクスが立ちふさがる。
クラリネットを構え、奏でられるはクラリネット狂詩曲(クラリネットキョウシキョク)。
その音色は切り裂かれたシャインの傷跡を縫い上げるようであり、同時にサージェの受けた打撃もまた癒やしていく。
ただ、ちょっとその、演奏と呼ぶには些か語弊があるような音色であったが、ともあれ二人の身体は回復していく。
「時が剣となるのなら、最大限活用させてもらいますね! タイムアウトも立派な勝利です!」
ルクスとサージェのユーベルコードが輝き続ける。
二人のユーベルコードは常に『赤錆の騎士』を前にして、その場に留めるものであった。
影縛りの術で動きを止め、傷ついた肉体は音色で癒やす。
その間も、魔力増幅(マナ・ブースト)によって練り上げられた極大なる魔力がフィアの頭上に集まっていく。
防御のことなど気にしていない。
何故なら、フィアには頼もしき仲間たちがいる。守られているのだ。
「ぺたん魔女いそいでー!」
「ぺたんいうな! ともあれ準備は整った。極限まで高めた我の魔力、見るがいい!」
死霊術師であるフィアの持つネクロオーブから魔力が放たれ、その極大なる魔力を受け取ったシャインの瞳がユーベルコードに輝く。
「見事な連携だ。互いを信じているのだな。独りで戦うのではなく、誰かに背を預けるのもまた立派な戦い……敬意を」
『赤錆の騎士』は自動的な動きで、フィアへと迫る。
しかし、その動きはサージェの放った影縫の術によって動きを止める。これまで猟兵たちが紡いできた戦いがなければ、きっと即座に動きを止める影すら振り払われたことだろう。
けれど、今は違う。
力は暴走し、その肉体は自壊へとひた走る。動きを止めた『赤錆の騎士』が見上げた先にあったのは、シャインの放つ裁きの光であった。
指先に集まった極大の魔力を持ってシャインは解き放つ。
天より放たれる裁きの光。
「その身に受けて錆びて消え去りなさい!」
シャインのユーベルコードが地底都市の空に輝く。
フィアが練り上げ、ルクスとサージェが時を稼いだ。その連携に寄って生み出されたジャッジメント・クルセイドの一撃は『赤錆の騎士』を討ち貫き、常闇の世界に鮮烈なる光の奔流を持って、煌々と照らし、闇を振り払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
西院鬼・織久
我等が流す血肉もまた怨念滾らす糧なれば
互いに血肉を流し喰らい合う事こそ我等が本分
果てるは何方か、存分に死合うとしよう
【行動】POW
五感と第六感を働かせ、戦闘知識+瞬間思考力を活かして僅かな隙や予兆を見逃さず敵行動を予測
先制攻撃+UCで捕縛。爆破と同時にダッシュすると見せかけ残像+フェイントを囮に敵側面に回り込み、なぎ払い+切断で敵に怨念の炎を付与し蝕む
敵が反撃に出る前に繋がった影の腕を怪力で振り回して叩きつけ
体勢を立て直す瞬間蝕まれた箇所を狙ってダッシュ+串刺し、傷口にUCを流し込み爆破
敵攻撃を体術と武器を利用して受け流し、損傷は殺意と呪詛に満たした精神と各耐性で無視してカウンターを狙う
極大なる裁きの光が『第五の貴族』、『赤錆の騎士』を撃つ。
その光は常闇の世界ダークセイヴァーの地底都市を煌々と明るく照らす篝火のようでもあった。
しかして、その滅びの光をしても『騎士王の紋章』輝く『赤錆の騎士』は倒れない。いや、倒れないだけで消耗していることは見て取れる。
赤錆びた騎士鎧はひび割れ、力の放出が止められないのか、まるで力の奔流に翻弄されるように身体は自動的に動くばかりである。
噴出した血が騎士鎧の亀裂のあちこちから流れ出て、まるで川のように流れ出している。
「此処まで追い詰めてくれるとは……君達が、君達が私の滅び」
待ちわびた滅びである。
ヴァンパイアによって傀儡とされた『赤錆の騎士』にとって、もはやそれだけが救いである。
「我等が流す血肉もまた怨念滾らす糧なれば。互いに血肉を流し、喰らい合う事こそ我等が本分」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は、『赤錆の騎士』の前に立つ。
漸く此処まで追い詰め、自壊への道を辿る『赤錆の騎士』。
彼が求める滅びとは即ち救いである。
長く足を止め、その強大過ぎる紋章の力によって、自壊をもたらし、滅ぼす。
なんとも消極的な戦いであろうか。
けれど、織久にとって、それは問題ではなかった。互いの血肉を持って戦いと為すのであれば、彼はそれこそが己たちの戦いであると知る。
「果てるは何方か、存分に死合うとしよう」
どちらともなく駆け出す。
踏み込みは一瞬であっても、その最中に繰り出される意識の応酬は数千。
蓄積された戦いの知識と瞬間的に行われる戦いの最善手を取り合う思考の戦いは、僅かな隙であれ、それが互いの命運を分かつと知るものである。
織久は知るだろう。
これが滅びを待ち、望む者の戦い方であるのかと。
生前の彼の、『赤錆の騎士』のユーベルコードにまで昇華した技の練磨を知る。
だからこそ、彼は全力死力を尽くすのだ。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
その瞳がユーベルコードに輝き、放たれた黒い影が『赤錆の騎士』の鎧を砕かんばかりの威力で持って爆破する。
さらに互いを影の腕でつなぐ。
「影面(カゲツラ)……これよりは死合。存分に」
敵の動きが鈍くなっていると織久は本能的に理解していた。怨念の炎をぶつける取捨選択の思考の最中、本来であれば『赤錆の騎士』はフェイントや残像を囮にしても、こちらの手を見透かしてきただろう。
けれど、『騎士王の紋章』の力に寄って自壊へと至る彼の身体は最早限界に近づいている。
そう、どれだけヴァンパイアとして上位存在であれど、あれだけの数の猟兵を相手どったのだ。
消耗していないはずがない。
「畳み掛けるのならば、今だ」
『赤錆の騎士』の言葉に織久は走る。体勢を整えられる前に肉薄し、爆破した騎士鎧の亀裂へと黒い影を叩き込み、再び爆破する。
二刀の剣が織久に振るわれ、彼の肉を引き裂く。
血が噴出し、その白い肌を赤く染めてもなお、織久は止まらない。止まれなかった。
だって、そうだろう。
未だ彼の中には怨念の炎が滾っている。
許してはおけない存在が目の前にいるのだ。どれだけ擦り切れたとしても、目の前の『赤錆の騎士』は滅びを望んでいる。
ならば与えなければならない。
望むままに、そして己の胸に渦巻く怨念のままに力を振るわねばならない。呪詛の言葉が痛みを越える。
「我等が怨念尽きる事なし」
赤い瞳が輝き、振り抜いた黒い影の一撃が『赤錆の騎士』の胴を貫き、凄まじい爆破でもって、その肉体を破壊する。
穿たれた大穴から噴出する血潮を浴びて、織久は砕けた己の腕を殺意と呪詛でもって贖い、『赤錆の騎士』を見送る。
未だ自壊には至らぬ。
けれど、一時の救いとなっただろうか――などとは、考えられないかもしれない。
彼の怨念の炎は未だ戦いが終わらぬことを告げている。
そう、未だ消えぬ炎。
それは、新たなる戦いを予見させるには十分なものであったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
まるで倒してくれと言わんばかりじゃない
美味い具合に利用されてるみたいで、気に食わないなあ
それでもこっちもお仕事だからね、仕方がない
さあ、始めようか
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【神器複製】起動
4本1組で運用
赤錆の騎士の前方、上下左右から複製剣を斬り込ませ対処させる
その隙に私は『忍び足』でササっと移動しつつ背後を取って斬り込み『吹き飛ばし』てヒット&アウェイ
壁を背に出来ると思わないでよ?
時間を稼げって言うなら、波状攻撃で稼がせて貰おう
同じく二刀使いとしては真正面からやりあっても良いんだけど…
まあ、小細工も好きだし…そっちも文句は無いでしょ?
それとも今更騎士道を語る?
胴に穿たれた大穴から噴出する血潮。
本来であれば『第五の貴族』である『赤錆の騎士』は即座に鎧さえも再構成させて、猟兵たちとの戦いに挑んだであろう。
しかし、度重なる泥沼のような持久戦に『騎士王の紋章』は暴走状態から終ぞ戻ることはなかった。
自壊していく己の肉体を感じながら、『赤錆の騎士』は微笑むようでもあった。
漸くにして終ることができる。
永遠かと思われた己の戦いも此処に終る。
魂が擦り切れたとしても終ることのない煉獄の如き日々に終止符を打つ存在が今、目の前にいるのだ。
蒼き光を放つ刀身。
抜刀されし二振りの模造神器を持って、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は未だ立ち上がる『赤錆の騎士』を前に立つ。
「まるで倒してくれと言わんばかりじゃない。うまい具合に利用されてるみたいで、気に食わないなあ」
彼女の懸念は現実のものと為るだろう。
わかっている。
これだけの強敵との戦い。そして、倒れることが前提であるかのような『騎士王の紋章』という自壊することすら厭わぬ力の奔流。
どう考えてもおかしいと玲が感づかないわけがない。
「それでもこっちもお仕事だからね、仕方ない。さあ、始めようか」
起動されるのは、神器複製(コード・デュプリケート)。
複製されし模造神器の蒼き刀身が残光を伴って、地底都市の空へと舞い上がる。
上下左右、四対一組の複製模造神器が『赤錆の騎士』へと切り込んでいく。
それらの尽くを二刀でもって打ち払い、刺突でもって破壊していく姿は、あまりにも強烈な姿であったことだろう。
屋敷はすでに戦いによって半懐し、瓦礫だけが渦巻くように積み上げられている。
騎士としての戦いなどではもはやなかった。
あるのはオブリビオンと猟兵の戦いだ。
「瓦礫を背にできるとは思わないでよ?」
玲は全天から襲いくる模造神器の群れを持って『赤錆の騎士』の背後に回り込み、斬撃を打ち込む。
即座に離れ、距離を離しながら模造神器の複製によって壁を作り出す。
「時間を稼ぐ戦い……見事だ。波状攻撃……どれもが必殺。互いに得物は二刀。惜しいと思う感情が私にもまだあったとはな……」
『赤錆の騎士』が笑ったような気がした。
これがこんな出会いでなかったのならば、と嘆くようでもあった。
けれど、それは叶わない。
絶対に叶うことなどないのだ。
「まあ、小細工も好きだし……そっちも文句はないでしょ?」
「ああ、今更騎士道を語る資格など私にはない。悪逆に堕ちた者として、私を討て」
気遣いは不要だと蒼き刀身煌めく模造神器が乱舞する。
嵐のように、炎のように輝く蒼き光とともに、玲は一定の距離を保ちながら、踊るように戦い続ける。
それが『赤錆の騎士』が願い、『騎士王の紋章』を攻略するための唯一であるというのならば、それを躊躇う理由など無く。
その躊躇いこそが、『赤錆の騎士』への侮辱だと知る。
わかっているよ、と玲は言葉にせずとも己の振るう二刀でもって『赤錆の騎士』を留め続ける。
紋章の力が溢れ出し、再生する余裕も、再構成する力もなくなりつつある騎士を打倒し続ける。
打倒し、切りつけ、吹き飛ばす。
慰めなど要らないのかもしれない。
玲だって、そのつもりはない。だって仕事だ。そういうものなのだ。
だから。
「だから、これは私の研究成果のお披露目の機会だよ」
謗るのならば己を謗れ。
言外の意図を汲み取るように『赤錆の騎士』は蒼き残光の元に切り伏せられるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
承知した。一介の卒として、喜んで力になろう。
八江山隠流、愛久山清綱……いざ参る。
(多分に我流混じりとは流石に言えないか)
■闘
『心切』に【破魔】の力を込め、戦闘に入る。
序盤は間合いを取ってくる瞬間に備え、相手の動きを
【見切る】ように注視する。その間は此方から仕掛ける
ように見せる【フェイント】を見せ、攻撃を誘おう。
一瞬でも姿が見えたら【残像】を伴う動きで射程距離から
逃れ、剣を【武器受け】し押し返す。
好機が来たら敵意を含めた全ての雑念を振り払い
破魔の力を最大限に込めて真正面から【夜見・慈】を
放ち、その荒ぶる魂を【浄化】して進ぜよう。
誉れ高き兵(つわもの)に、誇りある最期を!
※アドリブ歓迎・不採用可
蒼き残光の乱舞によって『第五の貴族』、『赤錆の騎士』は胴に穿たれた大穴から血を吹き出し続けながら『騎士王の紋章』の暴走による自壊の一途を辿る。
騎士鎧はひび割れ、血に塗れていない部分はない。
二刀の剣を手にしたまま、それでも未だ立ち続ける姿は、かつての『守護者』としての矜持が未だ魂が擦り切れても、なお残っているからであろうか。
全てを奪われ、全てを己の手で奪った。
修羅に堕ちた騎士にとって、今はただの地獄の最中であろう。
生きているように死んでいるしかない。
その中に現れた猟兵達は、真に救済の光であったことだろう。己が望む死を、滅びの運命を、彼は今享受できるのだ。
「私は、もうすぐ。滅びる。終る。終ることができる。頼む、今一度」
滅びない。
まだ身体が滅びないのは、己をヴァンパイア化させた上位存在の力が、未だ身体の中に流れているからだ。
その言葉を受けて、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)はうなずく。
「委細承知した。一介の卒として、喜んで力になろう八江山隠流、愛久山清綱……いざ」
己の太刀に破魔の力を込める。
序盤などとは最早言うまい。
対する『赤錆の騎士』はすでに死に体。
されど、未だ死にきれぬ、彷徨う魂そのものである。擦り切れた魂がどれだけの年月を持って此処に至るのかを清綱は知ろうとした。
踏み込んでくる『赤錆の騎士』を前に清綱は半歩足をずらして、駆け引きをする。
己のもてる全てでもって相対せねば、無作法である。
我流なれど、それでも己は今、兵として騎士に相対しているのだ。
残像を残すほどの速度で清綱は振るわれた斬撃の一撃を躱す。いや、躱したつもりであった。
しかし、その斬撃は一瞬のうちに放たれる二連撃。
噴出する血潮が清綱の肩から胸に刻まれ、頬を濡らす。されど、かまわない。痛みも、雑念も何もかも振り払う。
死地にこそ活路を見出すことが、彼の信条であればこそ、今こそが決定的な好機であると知る。
如何に神速の二連撃を持つ二刀であったとしても、その後は一瞬の空白が生まれる。
「……――参る」
その瞳がユーベルコードに輝く。
痛みを与えぬ斬撃の一撃。
敵意はすでにない。
己が相対するのは兵である。
そこに敬意あれど、敵意は存在しない。そのあらぶり、すり減った魂を浄化せしめんと、清綱はユーベルコードに輝く、己の抜刀でもって知らしめるのだ。
「秘伝……夜見」
夜見・慈(ヨミ)。
それは霊力を込めた一撃である。
「誉れ高き兵に、誇り在る最期を!」
しかし、それはあまりにも残酷なものであったことだろう。
すでに誇りは奪い去られた。そして、今振るわれる斬撃の一撃もまた、吸いこまれるようにして『赤錆の騎士』へと放たれ、袈裟懸けに振るわれた太刀はたしかに『赤錆の騎士』を穿つ。
だが、その紋章が未だ輝くのだ。
『騎士王の紋章』。
それを与えた悪辣なる存在がほくそ笑むのを清綱は感じただろう。途方も無い悪意が、目の前の『赤錆の騎士』の身体を取り巻いている。
それを切り捨て、清綱は願うのだ。
どうか、誇り高き最期をと。
そのためならば己はなんだってするだろう。こんな結末があっていいわけがない。
奪われ、根こそぎ奪ってもなお、足りぬと人の尊厳を踏みにじる行為を許してはおけぬと、清綱は裂帛の気合でもって自壊する『赤錆の騎士』を打倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
…その慚愧、余人に推し量れるものでは無いでしょう
ですが、同じ騎士の道を志すモノとしてその願い、承りました
三日三晩でも渡り合ってみせましょう(継戦能力)
『点』の攻撃の銃器は間合いの関係で効果低
接近に此方も距離詰め、緩やかな歩法で間合いを幻惑
剣が放たれる時と場所を誘導し見切り、怪力剣盾で防御
舞踏の如き間合いの制御と斬撃と盾の殴打で長期戦
この相対の時間が、その剣の一振り一振りが
為した善行、犯した罪
誇りと悔恨
貴方の歩んだ道程を想う縁(よすが)となる事を願います
自壊の機を逃さず剣を武器落とし
私が本来行える役目ではありません
ですが…貴方には必要です
紋章へ一閃
罪は裁かれました
どうか、誇りを胸にお眠りください
悪意を切り裂く斬撃の一撃が『第五の貴族』、『赤錆の騎士』を穿つ。
大穴の開けられた胴。
ひしゃげた鎧。
ひび割れたあちこちから血に塗れた姿は、もはや死に体である。
しかし、未だ『騎士王の紋章』は輝き、『赤錆の騎士』が滅びることを許さない。猟兵たちが唯一着ける弱点である『持久戦に持ち込む』という選択肢は正しかった。
今にも砕けそうな身体を持って、『赤錆の騎士』は最期の騎士の前に立つ。
「よくぞ、よくぞ此処まで……私の、不手際で迷惑を掛けた」
後悔しかない。
護るべき者であったことすら、今は遠く。
思い出も、尊厳も、矜持すらも擦り切れた彼にとって、今はあまりにも恥じ入る時間であった。
生きながらえたとも言えない。
生き恥を晒したとしか言えない。
そんな彼にトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はいう。
「……その慚愧、余人に推し量れるものではないでしょう。ですが、同じ騎士の道を志すモノとして、その願い、承りました」
そう、三日三晩の死闘もじさぬ。
己の力は己が一番理解している。他の何よりも疲れを知らず、傷であったとしても、それは損壊でしかない。
ならばこそ、トリテレイアは戦うのだ。
生身ではない、機械の騎士。
カラクリじかけの騎士であるからこそ、できることがある。
――機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)が今此処に幕を開ける。
戦術モードを最適なものへと変更し、『赤錆の騎士』の踏み込みを、トリテレイア自身も踏み込むことによって潰す。
緩やかな歩法は間合いを幻惑させ、剣の放たれる場所を誘導する。
しかし、されど相手も『騎士王の紋章』を戴くものであればこそ、その初動をすでに見切っているのだ。
斬撃の軌道が変わる。
二刀による神速の二連撃。
大盾で一撃は防げたとしても、二撃目がトリテレイアの脚部装甲を切り裂く。
一瞬の判断さえも誤ることの出来ない戦い。
輪舞曲と呼ぶにはあまりにも危険極まりない戦い。
「私の予測演算で何処まで踊れるか……」
されどやらなければならない。
舞踏の如き間合いの制御と斬撃、そして盾を使った殴打で長期戦を見据えたトリテレイアは火花をちらしながら剣と激突するのだ。
火花が散るたびにトリテレイアは知る。
為した善行。
犯した罪。
誇りと悔恨。
そのどれもが、トリテレイアが知る由もないことだ。電脳がエラーをはじき出す。これは己が感じたことではないのだと。
けれど、互いに騎士。
ならば、通じるものだってある。例え、それがヴァンパイアとウォーマシンであったとしてもだ。
「貴方の歩んだ道程を想う縁となることを願います」
アイセンサーが煌めき、連撃の一瞬をかいくぐり、大盾が『赤錆の騎士』の剣を押し上げて、一撃を腕に見舞う。
しかし、それでも剣を落とさない。
それでこそ騎士の矜持であるというべきであったことだろうか。
「私が本来行える役目でではありません。ですが……貴方には必要です」
「ああ、最期が君でよかった」
放たれた一閃は、その剣を堕とすためではなく。
その身を縛り続ける『騎士王の紋章』へと放たれた。
一撃のもとに砕け散った紋章は、まさに罪の在り処であったことだろう。
その魂は、すり減ったのだとしても。
残るものが在る。残されたものがあったのだ。だからこそ、今日に至るまで、彼は騎士のままでいられたのだ。
例えそれが赤錆び、朽ちるものであったとしても。
「罪は裁かれました。どうか、誇りを胸にお眠りください」
トリテレイアは、それだけが望みであった。
どうか、安らかに。
それだけが騎士に望む全てであった。
けれど、そのささやかな思いすらもせせら笑う者がいる。
切り裂いた紋章が砕けたと思った瞬間、その奥より――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『深淵に沈みし騎士』
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POW : 蝕まれし聖光の剣
【聖剣の力を解放し、極光放つ聖剣のなぎ払い】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を崩壊させながら深淵が広がり】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 闇に翳る残光
レベル×5本の【破魔の光】属性と【深淵の闇】属性の【朽ちた聖剣から剣閃】を放つ。
WIZ : 今は歪みし聖裁
【触れたすべてを蝕む深淵の闇】が命中した対象に対し、高威力高命中の【闇に蝕まれた者を滅する聖なる光】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:ハギワラ キョウヘイ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠アルトリンデ・エーデルシュタイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『騎士王の紋章』は砕けて散った。
猟兵達は長く苦しい持久戦を制し、『赤錆の騎士』を打倒せしめたのだ。
「ありがとう」
それが、彼の最期の言葉――。
ではなかった。そう、これが最期の戦いなどではなかった。消耗しきったのは、『第五の貴族』だけではなかった。猟兵たちも死力を尽くして戦ったのだ。
そうして得た勝利は仮初のものでしかなかった。
砕けた『騎士王の紋章』の奥より這い出るように現れた宝石型の『寄生虫型オブリビオン』が嗤うように輝きを放ち、赤錆の鎧に色を取り戻していく。
二刀であった剣が合わさり、一振りの聖剣へと姿を変える。
「久方ぶりの姿。私の悔恨。私の後悔。そして――私の憎悪」
『赤錆の騎士』は、その生前の姿を持って、再び猟兵達に相まみえる。
清廉なる鎧。
美しい輝きを放つ光翼。
そして、決して折れぬ聖剣。
それはまさにかつての『守護者』であったことだろう。
『他者を護る』ことで力を十全以上に発揮させる力。されど、ここには最早、それはない。
「『時』はたしかに君達の『味方』――だった。けれど、すまない。私の意識は、もうない。終わった。君達が終わらせてくれた。だから」
これよりは、己の不手際を猟兵達に押し付けなければならないのだと、彼は侘びた。
鎧がひび割れ、砕けていく。
美しい輝きを放っていた光翼は堕ちた。
そして、決して折れぬ聖剣は砕け、折れた姿をさらけ出す。
「『護る者』はもうない。私の身体の力は、『護ることで発揮される』が、『時』を経る毎に増していく。手がつけられなくなる前に」
押し切ってくれ、と膨れ上がっていく力のままに黒き光が翼と成って、瓦礫とかした屋敷を吹き飛ばし、更地にする。
超絶為る力。
けれど、彼の意識が奪われる前に告げた言葉が知らしめる。
『短期決戦』にて『死力を尽くす』。
それこそが彼を、打倒する唯一。
覗く瞳はすでに彼のものではない。
「予定外であったが、滅ぼそう。猟兵。我は、この男のように甘くはない。遊びはない。忌まわしき猟兵を名乗る者たちよ。今こそ滅ぼしてくれる」
『深淵に沈みし騎士』は、その瞳の奥に底知れぬ悪辣なる邪悪を輝かせ、猟兵たちを抹殺せんと迫るのだった――。
羽々・一姫
あなたが『第五の貴族』の本体?
「わたしに見覚えはあるかしら?」
聞いてはみるけれどお話しできない感じかな。まださっきまでのほうがお話しできたかしら?
それならできるようにするしかないわね。
【血統覚醒】で戦闘力と【集中力】も限界まで高めたら、
相手の攻撃は【第六感】を使って【ダンス】を踊るように【見切】っていきましょう。
躱せないときは【武器で受け】るわ。ダメージ、もらいそうだけどね。
攻撃は【フェイント】を入れた【切り込み】で【2回攻撃】
【切断】できるといいけれど、無理でも傷くらいはつくわよね。
傷ができたら一点集中で【傷口をえぐ】っていこう。
あ、そうだ。最後に教えてあげる。
遊びのない人生は、負け確定よ?
かつて彼女は言った。
生きるためにダンピールとなったが、その道を何故選んだのかを、理由を忘れてしまったと。
別にそれでいいと思ったのだろう。
忘れてしまう程度の理由でしかなかったのだと。けれど、どういうわけか忘れてはならないことを忘れているような気がするのだ。
自分がダンピールである理由。
それを今知りたいと願う自分がいることが、きっと誇らしいし、今の自分の生きる理由であり、歩みを止めぬ理由でも在ったのだろう。
例え、己の前にどれだけ強大な存在が立ちふさがろうとも、それだけは関係がなかったのである。
「わたしに見覚えはあるかしら?」
羽々・一姫(Gatekeeper of Tartarus・f27342)は、『深淵に沈みし騎士』の前に立ちながらいう。
当然ながら解答は否である。
もしかしたのならばという一縷の望みがあったのだが、それは容易く消える。
「知らぬ。我が知るは我が殺した存在のみ。今を生きるお前を知る理由など、これから作るしかないのだから」
構えた折れた聖剣から極光が溢れ出す。
それはかつて『守護者』であった騎士の持つ力であったが、今は『深淵に沈みし騎士』と紋章の力よって、生前以上の出力を持って放たれる地形すらも破壊する薙ぎ払う一撃。
極大の一撃が一姫に放たれる。
問答無用に一撃であった。
対話も、何もかも不必要というように放たれる力の奔流を前に、一姫の瞳が真紅に輝く。
それは、血統覚醒。
ヴァンパイアへと姿を変え、己の寿命をも削って戦うユーベルコードである。
軋む身体が痛みを訴えるが、気にしない。
気にしたって無駄だ。もしかしたのならば、これ以上の痛みを己は負うかもしれないのだ。なら、今なすべきことをなさねば、どちらにしたって生命まで取られてしまう。
極限まで高められた集中力でもって一姫は薙ぎ払われた極光の一撃を躱す。
力の奔流が熱波となって彼女の肌を焼くが、その痛みすら集中力を高める一因でしかない。
手にした『タルタロスの鍵』を振るい、一姫はフェイントを交えた斬撃を放つ。
その一撃を聖剣で受け止められる。
「フェイント入れたつもりだったけど……まださっきまでのほうが」
強かった。
有無を言わさぬ二連撃。
ヘカトンケイルと互角以上に戦い、その尽くを退け自壊を待つしかなかった『赤錆の騎士』を思い出す。
確かに今目の前にいる存在の方が力量としては上なのだろう。
けれど、一姫にとって恐ろしいと思うのは前者であった。決して後者などではない。その身体を操るだけの存在、人の尊厳を、誇りを、矜持を弄びすりつぶすだけの存在など。
「――怖くなんてない」
あの連撃をなぞるように放たれた大鎌の二撃目が『深淵に沈みし騎士』の胴を薙ぎ払う。
ひび割れた鎧の隙間を縫うように放たれた斬撃は、その身の内に潜む悪辣なる何者かを切り裂く。
ごぷりと血が吹き出しながらも、それでも互いに打ち合う。
遊びなどない。
猟兵を狩るためだけに人の生命を弄ぶ存在が嗤った。
「だが、遊びは終わりだ。お前達のやることなど児戯に等しい。圧倒的な力の前に」
倒れ伏すがいいと振るわれる極大なる極光の一撃を一姫は躱す。
荒れ果てた地底都市の大地が砕け、破片が飛び散る。
圧倒的な攻撃力の前に誰もが恐怖するだろう。
けれど、一姫はいうのだ。
「あ、そうだ。最期に教えてあげる」
何をと、訝しむ気配があった。
圧倒的な力の差を見せられてもなお、猟兵は、一姫は笑っていうのだ。どんなに苦しくても笑う。
その理由を未だ知らず。けれど、たしかにその胸にいつかはあったのだというように笑うのだ。
「遊びのない人生は、負け確定よ?」
その言葉と共に一姫の放った『タルタロスの鍵』の一撃は、『深淵に沈みし騎士』打倒の道をこじ開けるように一文字に振るわれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
陽殿蘇・燐
押しきるのね。つまりは短期で決着を、ということ。
言っておくけれど。『ラスボス炎術士・燐』はね、炎の術や蝶だけでなく、そこそこ武器も扱えるのよ?
『黒揚羽』を刀に変形させて、炎纏う刀に。
愛しの騎士さま?お覚悟よろしくて?
【炎術:催眠蝶】で、炎をあげるわ。催眠は、かかればいいなくらいで。
数が多いから、全てを一度に片付けるは難しいでしょう?
なぎ払いは見切りたいのだけれど…いいわ、負傷覚悟よ。この刀で受け止めてあげる。
ちなみにこの刀、生命力吸収するからね。
ああ、本当に。かつて対峙した主人公みたいな動きじゃないの、私。
配信してなくてよかったわ。
一文字の斬撃が『深淵に沈みし騎士』のひび割れた鎧を一刀の元に両断せしめる。
だが、これで終わりではない。
消耗したとしても、即座に肉体を繋げるは悪辣なる意志。
人の尊厳と矜持を弄ぶだけの存在が『寄生虫型オブリビオン』である『紋章』の力を引き出し、その力の発露として堕ちた光翼を羽ばたかせる。
ただそれだけで対する猟兵達は知る。
圧倒的なまでの力量差。
これがダークセイヴァー世界を人類からオブリビオン支配盤石なる世界にした所以であると。
「調子が出てきたな。身体がに我の意志が馴染むのに時間がかかるのが、難点であるが」
軋む音が響くのは、ひび割れた鎧が立てる音か、それとも肉体すらも奪われ魂を牢獄の中に囚われたかつての『守護者』の悲鳴か。
どちらにしても、陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)のやることはかわらない。
「押し切るのね。つまりは短期で決着を、ということ」
そう、単純な理屈だ。
今まで戦っていた『赤錆の騎士』は持久戦に持ち込まねば勝てぬほどの存在であった。
けれど、今新たに現出した紋章を持つ『深淵に沈みし騎士』は違う。
如何なる理由からかはわからないが、最大の力を発揮するまでに長い時間を要するのだ。
ならば、力を十全に発揮される前に打倒するしかない。
「言っておくけれど。『ラスボス炎術士・燐』はね、炎の術や蝶だけでなく、そこそこ武器も扱えるのよ?」
クロアゲハを刀に変形させ、炎を纏う。
その炎のゆらめきは、妖しく煌めくのだ。ゆらり、ゆらりと一点を見つめさせるような炎に『深淵に沈みし騎士』は何を思っただろうか。
「愛しの騎士さま? お覚悟よろしくて? ――炎の揺らめきにて、堕ちなさい」
燐は揺らめく炎纏う刀と共にかけだす。
ユーベルコードに輝く瞳のままに、彼女の力が発露する。
炎術:催眠蝶(エンジュツサイミンチョウ)。
それが彼女の召喚した炎纏うクロアゲハの正体である。炎と催眠の力を持つクロアゲハの群れが『深淵に沈みし騎士』を取り囲む。
「数が多いから、全てを一度に片付けるのは難しいでしょう?」
「だが、問題になどならない」
そう言った『深淵に沈みし騎士』は拳を振る。
折れた聖剣を振るうまでもないと横薙ぎに振るった拳にぶつかってクロアゲハたちが霧散していく。
それはあまりにもあっけないものであった。
ただの拳すらも必殺の一撃に近しい威力を持ち、群がるクロアゲハを振り払うのだ。
「あら、たくましいこと。けれど――」
どこを見ているのかしら、と燐が微笑む。
そう、クロアゲハが見せる催眠の影。『深淵に沈みし騎士』は、その催眠攻撃に寄ってあらぬ方向に拳を奮い続けている。
今彼が見ているのは幻影そのものであった。クロアゲハの見せる影は、彼にとって鬱陶しい敵の攻撃に他ならない。
それを振り払うためにあらぬ方向へと攻撃を放ち続けているのだ。
「たしかにな、埒が明かない。ならば――」
折れた聖剣が極大なる極光の輝きを放つ。
それは滅びの光であり、生前彼が上級ヴァンパイアを屠り去ってきた力である。その力が猟兵達に向けられるのは、皮肉でしかない。
けれど、燐にとっては違うのだ。
己がラスボスであると定義するからこそ、その攻撃は己に向けられるのにふさわしい。
躱せるとは思っていない。
受け止められるとは思ってもいない。
痛みを負うことなど既に覚悟の上である。走る燐の周囲にクロアゲハたちが飛ぶ。
群れ為す姿は、たしかに彼女がラスボスであることを知らしめるようでも在った。共に飛ぶクロアゲハはまるで夜行のように群れをなして、一直線に『深淵に沈みし騎士』へと迫るのだ。
「無駄だ。全てが無駄だ。無意味だ。お前たちは滅びる。滅ぼしてみせる。猟兵が我等を尽く滅ぼそうというのならばこそ、我は抗う」
振り抜かれる極光の斬撃。
薙ぎ払われるようにした一撃を燐は受け止める。クロアゲハが変じた刀がきしみ、己の肌を焼く極光の輝き。
けれど、燐は進むのだ
そう、どれだけ強大な敵であっても恐れずに進む。彼女の瞳に幻視するのは、己に立ち向かってきた者の瞳の色であった
そこに恐れはあったか。
答えは否である。
あったのは勇気だけだった。だからこそ、彼等は主人公と呼ばれるのだろう。
ああ、本当に。
ため息のように燐は言葉を紡ぐ。
これでは自分が主人公みたいだと自嘲したのだ。
「本当に、配信しなくてよかったわ。こんなにらしくない。そんな姿見せられないじゃないの」
生命吸収の力を持つ刀によって極光の輝きが失せていく。
かつて誰かを守ったであろう聖剣はすでに折れている。
極光光が霧散した瞬間、燐は駆け抜け一閃を『深淵に沈みし騎士』へと振るう。
それは奇しくもかつて己に対峙した主人公が放った一撃と似通ったものであり……同時に懐かしさをも感じながら、燐はその一撃を持って『深淵に沈みし騎士』を背後にして、炎まとう蝶と共に駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
一撃の重さだと…ええ、お任せしますー。
人格交代『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
こういうとき、便利なのよな、わしらという存在は。
その攻撃は受けることすら危ういと見た。なれば、四天流星を視認させて位置の錯誤を。
このとき、こっそり陰海月を出しておいて。
そして、それでなおわしに意識を集中させよう。
この槍の炎は、成長するようになったからの。目立つ。
さて、追い詰めたと思っておるお主。背中ががら空きぞ?
※
陰海月、こっそり背後から忍び寄る所存。攻撃には指定UCついている。
普段から浮いてるので、地形崩壊関係なく。
ただいま、食べ過ぎたの(月見花見の影響)で運動頑張る。ぷきゅう。
決して折れぬ聖剣は折れた。
それはかつての『守護者』にとって己の敗北を意味するものであったが、同時に彼にとって最大の汚辱そのものであった。
折れる剣は己の力が至らぬばかりであるためである。
それは良い。
己が如何様に侮辱されようが構いはしない。
けれど、その肉体を持って己が守らんとした者たちを手に掛けた絶望は伺い知ることなど誰ができようか。
どれだけの悲鳴をあげようとも、喪われた生命は戻らない。
「ゆえに我が滅ぼす。滅びは必定にして絶対。我が齎すものは破壊。あらゆるものを破壊しよう。人の矜持も、誇りも、尊厳も全てをだ」
猟兵達によって傷を負わされた『深淵に沈みし騎士』は折れた聖剣を振るいあげる。
その輝きが見せる力の奔流は天を引き裂かんばかりであり、地底都市の天井をも照らし出す凄まじき力であった。
言うまでもなくまともに受け止めれば、きっと身体が持つまいと馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は、『侵す者』と切り替わる。
手にした黒色槍を振るい『侵す者』は嘯く。
「こういうとき、便利なのよな、わしらという存在は」
おまかせしますーと『疾き者』が複合悪霊たる彼の身内でいう。わかっておると、『侵す者』は吹きすさぶ力の奔流を前にして前に進む。
後退するということは即ち、的につけ入る隙を与えるということである。
ならば、己は前に出るのだ。
「お前が光を増大させるというのならば、わしは炎を持って相対しよう」
構えた槍の炎が噴出し、篝火の如く極光の前に立ちふさがる。
投げ放った鏢は認識錯誤の呪詛が滲み出し、己の立ち位置を誤認させる。己の影に潜んだ陰海月をまた潜ませ、『侵す者』は声を張り上げた。
「無駄だ。炎で光はかき消せまい。我が振るう一撃を持って消し飛べ、猟兵」
オブリビオンにとって猟兵とは滅ぼし、滅ぼされる関係でしかない。
己が道具として扱うかつての『守護者』の肉体さえも駒の一つに過ぎない。
そのための紋章なのだ。
振るわれた聖剣の一撃が極光を放ち、その一撃は大地を抉りながら『侵す者』へと迫る。
認識錯誤の呪詛があれど、その一撃は熱波と成って『侵す者』を襲うだろう。
「ぐっ……! これほど、か……!」
荒野をえぐるほどの極光の一撃。
それをもってしても打倒できぬ上位存在があり、同時に紋章の力を齎す者がいる。
事実、それは確かなものであったのだろう。
力量差も、何もかもが『深淵に沈みし騎士』に劣る。
だが、ここに在るのは武の天才である。
武とはなにか。
即ち、戦いに長けた者であろう。ならば、その武の天才である『侵す者』にとって、己の存在さえも戦いの駆け引きの手駒に過ぎない。
「さて、追い詰めたと思っておるお主。背中が――」
がら空きぞ? と『侵す者』がつぶやいた瞬間、陰海月の巨体が『深淵に沈みし騎士』の頭上から振り下ろされる。
それはまさに火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)。
月見花見の影響で食べ過ぎたがゆえの巨体。
少しは運動を頑張らねばならぬという意識があるのだろう。まるで鉄槌のような勢いで落ちた陰海月の巨体に寄るプレスの一撃は『深淵に沈みし騎士』を一撃のもとに大地へと叩きつける。
「ぷきゅう」
可愛らしく鳴く姿に『侵す者』は笑うしかないだろう。
帰ったらもう少し運動をしなければならないなと笑うのだ。
単純で重たい一撃。
それは如何なる奇跡をも押しつぶす物理の一撃であったことだろう。全力で己たちの得意分野を押し付ける。
ユーベルコード同士の激突において当然の帰結であった。
地底都市に陰海月の地響きが鳴り響き、圧砕するように地面をえぐらせ、『侵す者』と陰海月は人の尊厳を弄ぶ上位存在へと己たちの力を示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
これが、『騎士王の紋章』の正体? 難なのよ、一体!?
「全力魔法」「呪詛」で化血陣展開。
あら、アヤメはバニーガール?
ま、いいわ。
さあ、Q&Aタイムよ! あたしが今、このトランプの束から引き抜いたカードは何?
(正答は白紙)
何度答えてもいいけど、当てない限り怨霊があなたを襲うわ。そして、そのままぬいぐるみになってしまいなさい。
聖剣も闇の翼も封じた今のうちに、『深淵に沈みし騎士』を叩けるだけ叩くわよ。もふもふしてる暇なんてない。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」「浄化」の不動明王火界咒を叩き付ける。
アヤメも追撃お願いね。
反撃したくても、その身体じゃ戦闘は出来ないわ。その間にたっぷり叩いてあげる。
凄まじい衝撃波が『地底都市』に鳴り響く。
圧倒的な物理的重量でもって叩きつけられた一撃は『深淵に沈みし騎士』の身体を大地へと沈めさせる。
しかし、背に負った闇に染まった光がほとばしり、その体を立ち上がらせる。
皮肉にもその光は破魔の力を宿し、折れた聖剣から放たれる剣閃が闇を宿し、周囲を吹き飛ばし続ける。
そこにあったのは怒りでもなんでもない。
ただの憎悪であった。
「煩わしいな。猟兵。此処まで煩わされるとは。我を前にして絶望しない。その瞳が忌々しい。貴様たちの皮という皮を剥ぎ落としても飽きたらぬ」
乱雑に放たれる剣閃に見えて、その一撃一撃は、須らく計算され尽くした斬撃であった。
破魔の力を宿した光が乱舞し、猟兵たちを近づけさせない。
新たに現れた紋章の力は『時間が経つほどに十全』になっていく。この攻撃は計算高く放たれたものであった。
十全な力を発揮するまでの時間稼ぎ。
これまで猟兵たちが『赤錆の騎士』を自壊させるためにとった持久戦を、たった一人でやろうというのだ。
それができるだけの存在だと村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は即座に理解した。
「これが、『騎士王の紋章』の正体? なんなのよ、一体!?」
溢れる重圧にゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。これなるは遊興の知ろしめす世界。生死も運命の振る賽に過ぎぬ。ここにて運を消尽し果てよ。疾!」
戦場全体が賭博場へと変えさせるユーベルコードの名は、化血陣(カケツジン)。
賭博遊戯で破産した賭博師の怨霊を召喚させる。
「あら、アヤメはバニーガール? ま、いいわ」
彼女の趣味だろうか。
そんな風に考える余裕は今はない。
そう、目の前の重圧を放つ『深淵に沈みし騎士』を打倒しなければならない。あの攻撃を受けては、こちらも僅かな時間も保たない。
全力でもって相対する以前の問題だ。
次に繋げられない。
矢継ぎ早に猟兵達は攻撃を繋いでいかないといけないのだ。
「さあ、Q&Aタイムよ! あたしが今、このトランプの束から引き抜いたカードはは何?」
じりじりとした重圧がゆかりを苛む
答えは勿論白紙だ。
答えなど無い。けれど、その答えが正答するまで『深淵に沈みし騎士』は人形に変わる呪詛でもって動き制限される。
ならば、あのやっかいな聖剣の剣閃も放つことはできないのだ。
「戯言を。我を謀るか」
なんと答えても答えにならないのならば、彼の身体はぬいぐるみへと変わる。
ユーベルコードの効果が切れるまで、そのぬいぐるみになった身体を叩けるだけ叩きつけるのだ。
「答えは白紙よ! 反撃したくても、その身体じゃ戦闘はできないでしょう。その間にたっぷり叩いてあげる」
覚悟しなさいと、ゆかりの瞳がユーベルコードに輝き、全力の炎による浄化の炎を放つ。
抵抗の出来ないぬいぐるみになった『深淵に沈みし騎士』は、炎を受け止めるほかないだろう。
けれど、その肉体は焼けるばかりで霧散する気配がない。
いや、違う。
自力で呪詛を破り始めているのだ。ぬいぐるみが徐々に元の姿に戻っていく様は、おぞましさしか無かったことだろう。
「呪詛返しなど」
造作もないと叫んだ『深淵に沈みし騎士』が咆哮する。
賭博師の怨霊を破魔の光で吹き飛ばし、その衝撃波がゆかりに到達するまえに式神のアヤメがゆかりの身体を抱えて飛ぶ。
「危ないですって!」
「ごめんごめん。だけど、もう一撃は叩き込む!」
放った白紙のトランプは答え代わりであると言わんばかりに投げつけられ、バニーガールと共に浄化の炎を放ちながら、ゆかりは『地底都市』の空を飛ぶ。
あれが『紋章』の出どころであろうか。
その力の圧倒的な差を見せつけられ、ゆかりは未だ己たちがダークセイヴァーに巣食う闇の深さを一端しか知らぬことを認めるしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
彼がかけてくれた感謝の言葉、その思いに応えるためにも今度こそ決着をつけよう!
敵の初撃に要警戒だな
触れれば蝕まれるというのなら、触れないようにすればいい
人間サイズに縮小したロボットチョコを念動力で操作
ロボットチョコを囲うように【結界術】で結界を生成
この結界はロボットチョコを偽装するための物
結界内にいるのが俺と認識阻害させるように調整しておこう
敵の一撃で砕け散った結界はそのまま敵に降り注ぎ視界を【ハッキング】する布石としよう
【ハッキング】で俺の位置が正確に把握出来なくなっていれば敵の攻撃を恐れる必要は一切ない!
UC【疑似精霊の加護】を自身に付与し攻撃力特化
【破魔】付与の刀で一閃
『赤錆の騎士』の言葉を鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は聞いた。
あの感謝の言葉が今もひりょの胸の中で残響していた。
その思いが、無念が、寂寞を持って彼の心を支配しただろう。誰もが笑顔でいて欲しいと願う彼にとって、それはあまりにも寂しいものであった。
慚愧に絶えぬ無念。
己が守るべきものたちを守れなかった悔恨。
守るべきものたちを切り捨てた過去が形作ったのが、目の前で炎に包まれながら咆哮する『深淵に沈みし騎士』である。
かつての姿。
本来の姿は深淵に沈んでいる。その闇は触れる者全てを引きずり込むであろう。
「ああ、煩わしい。煩わしいぞ。我の邪魔をする。我の道に滅びを引きずり出す猟兵たちが!」
肉体は『赤錆の騎士』のものであろうが、その身を操る糸は別の存在であった。
それが上位存在であるかどうかはわからない。
けれど、ひりょの瞳はユーベルコードに輝くのだ。
「彼がかけてくれた感謝の言葉、その想いに応えるために今度こそ――」
その光は疑似精霊の加護(ギジセイレイノカゴ)。
彼の輝くユーベルコードが周囲に在りし疑似精霊たちの声を持って顕現していく。
震える心は怒りであったかもしれない。
人の心を弄んだ者たち。
彼等の力を恐れる理由など無い。今、ひりょの心を突き動かすのは、かつての『守護者』の想いであった。
「守らねばならないと願った人が、誰方のために戦える者が、お前たちのような存在に扱われていい理由なんてない。決着をつけよう!」
放たれる深淵をひりょの念動力で操作されるロボットチョコが受け止める。
侵食する深淵は如何なる存在でも触れてしまえば、そこで終いである。しかし、張り巡らせたひりょの結界術が防ぐのだ。
『深淵に沈みし騎士』からすれば、決壊の中にいるのはひりょだと思われることだろう。
認識齟齬に寄って、『深淵に沈みし騎士』から己を視界から消す。
「煩わしいといった!」
放たれる深淵が決壊すら砕いて破片をばらまく。
ひりょにとっては、それが狙いであった。キラキラと煌めく結界は光となって『深淵に沈みし騎士』の視界を奪う。
「……ッ! 猟兵ではない!? どこだ――!」
ひりょは思う。
誰かの笑顔のために戦う。
それはきっとかつての『守護者』も同じであったのだろう。赤錆びた騎士鎧は、返り血によって蝕まれた結果であろう。
確かに力なき者には何も得ることはできないだろう。奪われるばかりである。
だが、人間は、人は優しさを持っている。
誰しもが凶悪な、乱暴な感情を持っているが、同時に優しさだって持っているのだ。
「優しさなど。心など必要無い。人間など、隷属しているだけでいいのだ。家畜に心などいるものか」
紋章によって『深淵に沈みし騎士』が咆哮する。
果たしてそうだろうか。
力なきものをは無価値か。
「いいや。そうじゃない。精霊達よ力を貸して!」
ひりょうは叫ぶ。
己の手にした太刀で己の腕を斬りつける。瞬時に疑似精霊たちの力が体に流れ込んでくる。
それが彼のユーベルコードの力である。一時的であるが、彼の戦闘力は跳ね上がる。劇薬のようなブーストであったことだろう。
肉体を改造するほどのユーベルコード。
されど、ひりょはためらわない。
人は強くなければ生きていけない。
けれど。そう。けれど、と叫ぶ心があるのだ。かつての『守護者』がそうであったように。踏みにじられてしまった誇りと、矜持をひりょは受け取って叫ぶのだ。
「優しくなければ生きる資格すらない。それがわからないっていうんなら、お前の力など恐れるものかよ――!」
裂帛の気合と共に放たれる破魔の力ほとばしる一撃が『深淵に沈みし騎士』が放った深淵すらも切り裂いて、その身を袈裟懸けに斬撃で持って打ち倒す。
優しはきっといつか芽吹く笑顔のように。
それを信じてひりょは、己の信念でもって、深淵を切り捨てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK
……踏ん張り時を間違えた気がするぜ
まあでも、ここから残りカスを絞り出すしかないから、分かりやすいといえばわかりやすいか
敵の闇に触れると私は死ぬなこれ
その前にこちらの攻撃を当てなきゃだ
黒剣を斧形態にして全力でぶん投げよう
大回転範囲攻撃ってやつだ
当たるにしろ、避けられるにしろ、受けられるにしろ、その行動の瞬間は隙があると思うから、光熱で直撃を狙い撃とう
私のUCが発動すればそれで一気に攻めて……反撃で沈まない様に逃げよう、うん
死に体なんだから優しくしてほしいね、全く
間違えた、と最初に肆陸・ミサキ(ダンピールの精霊術士・f00415)は思った。
『第五の貴族』である『赤錆の騎士』との戦いで彼女は出し尽くしていた。
持久戦による敵の自壊を狙う戦いで力を出し尽くしていた。けれど、彼女は強がりである。弱虫だけれど。
それに意地っ張りだ。寂しがり屋だけれど。
けれど、彼女の瞳は不屈に輝く。
どれだけ相手が強大な存在であっても関係ない。彼女ができることはまだある。
確かに踏ん張り時を間違えたのかもしれない。
けれど、限界を越える時、人はいつだってからっけつのガス欠状態からこそ、信じられない力を発揮する。
自分の限界は自分が決める。
誰かに決められることではないのだと、怨嗟の如き咆哮を放つ『深淵に沈みし騎士』へと一歩を踏み出した。
「あれに触れると私は死ぬなこれ」
すでに体のあちこちが悲鳴を上げているが、『深淵に沈みし騎士』は、回復を待ってくれそうにもない。
ならばこそ、畳み掛ける。
死に体であるミサキを見て、『深淵に沈みし騎士』は嗤った。
「ボロボロだな。そんな体で何をするというのだ、猟兵。わざわざ我に殺されにきたか!」
すでに体だけの存在となったかつての守護者の体を傀儡にした『紋章』の上位存在が笑う。
嗤ったのだ。
それがどうにも気に食わない。だから、ミサキは軋む己の体に鞭打ち、斧へと姿を変えた一撃を投擲する。
それは破れかぶれの攻撃のように思われたことだろう。
実際、そう思われても仕方のない攻撃であった。当たるにしろ、避けられるにしろ、受けられるにしろ、その行動を選択する以上『深淵に沈みし騎士』に隙が生まれる。
余裕があるだろう。
こちらとの力量差を知っているからこそ、油断する。
いつでも自分を殺せると思っているのだ。それが例え、事実であったとしても、それは正しくない。
真実ではないのだ。
「まあでも、ここから残り滓を絞り出すしかないから、わかりやすいと言えばわかりやすいけども」
確かに残り滓であろう。
けれど、それは世界最高の残り滓だ。ミサキの己を顧みない戦いが紡いだ軌跡そのものであった。
誰がそれを笑うことができようか。
ダークセイヴァーを救う。
その一点だけで彼女は戦ってきた。傷が癒えても、癒えなくても、彼女はただひたすらに前を向いて歩いてきたのだ。
その身に刻まれた傷跡が物語っている。
彼女こそ、全生命に注がれる陽光(バーンアウト・ロストライブ)である。
「無駄だ。無駄な攻撃を――ッ!?」
『深淵に沈みし騎士』は見た。
放たれた大斧の一撃を折れた聖剣で受け止め、薙ぎ払って、ミサキの首を跳ねようと迫った瞬間に見たのだ。
在りえぬ光景を。
燦然と輝く印を。
その印が己の胸に輝いている。何をと、思う時間もなかった。
生み出されたのは二つの巨大熱球であった。
「死に体なんだから優しくしてほしいね、全く。けれど――」
加減などするつもりはない。
例え、己の身体が燃え尽きたとしても、『地底都市』にあって絶対に見ることの出来ぬ……いや、ダークセイヴァー世界にあって見ることができぬ二つの陽光の如き輝きが放たれるのだ。
「生まれ落ち、幾多の朝を昇り、数多の夜を見送る。重ねた時間を振り返り、今終わりを痛感しろ。空を仰げ、地に伏せろ。それを、私は灼く」
ミサキの瞳がユーベルコードに輝いていた。
一気に迫る膨大な熱球の光は、『深淵に沈みし騎士』の肉体を焼く。
その穢れを、人の尊厳を踏みにじる悪辣を、そして同時に囚われたかつての『守護者』の魂を解き放つために己の持てる力を振り絞ってユーベルコードの放つ輝きで持って、その肉体を焼き続け、ミサキは生命の煌めきを持って、理不尽を打倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…良いでしょう。『護る者』のいないお前に敗ける訳にはいかないもの
過去の戦闘知識から敵の行動を見切り先制を取り、
銃擊を乱れ撃ちしつつ怪力任せに大鎌を投擲して牽制し、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して魔力を溜めUC発動
…真っ向勝負よ。この一撃で決着をつける
…来たれ、この世界を覆う大いなる力よ
我が身に宿りて聖光を呑み込む闇となれ…!
肉体と同化した"闇の炎"に武器改造を行い、自身を黒炎鳥に変化して突撃
聖光のなぎ払いは黒炎のオーラで防御しながら空中機動の早業で切り込み、
限界突破した黒炎の大爆発を起こす闇属性攻撃を行う
加減は無しよ。残された全ての魔力を、ここで解放する…!
…骸の海に還るがいい、騎士の残骸
二つの白色熱球が『地底都市』の空という名の天井を焼き焦がす。
その光の凄まじさは猟兵の抱くダークセイヴァー世界を救わんとする意志の強さであったのかもしれない。
『深淵に沈みし騎士』の鎧は焼け焦げ、その身を焼く。
身体は再生しても、力は消耗していく。
それが猟兵たちの放った渾身の攻撃ともあれば、当然の帰結であった。
時間をかければかけるほどに十全なる力を発揮していく『深淵に沈みし騎士』にとって、現状は歯がゆいものであったことだろう。
「この体の力が十全であったのならばとは言うまい。これが人のままならぬところ」
だが、それでも『紋章』の力を得た過去の化身には、些細な問題であったはずなのだ。
なのに、猟兵たちを未だ一層できていないことに『深淵に沈みし騎士』は苛立つ。
何故滅ぼせないのだと。
それに応えるのは、一つの影であった。
「……良いでしょう。教えてあげる。『護る者』のいないお前に敗ける訳ないもの。それがわからぬからこそ、過去の化身」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は飛ぶように荒野を駆け抜ける。
『深淵に沈みし騎士』の持つ極光を湛える折れた聖剣は、たしかに威力は尋常ならざるものだ。
外れたとしても大地を抉り、深淵に沈ませる力はそれだけで彼の優位なる状況を生み出す。
それに肉体だけだとは言え、かつて『守護者』であった存在の力量は猟兵をも上回る。
ならばこそ、リーヴァルディは先手を取らせるわけにはいかなかったのだ。銃撃を乱れ打ち、手にした大鎌を投擲して、その一手を遅らせる。
全てが全力の攻撃であった。
それであってもなお牽制の領域にしか達せぬことを知っている。それは『深淵に沈みし騎士』も同様であった。
「無駄だ。この程度の牽制でなんとなる。お前たちの滅びは決まっている。抗うことは無意味だと何故わからない」
『深淵に沈みし騎士』が嗤う。
銃撃も、大鎌の投擲もあまりに無駄と嗤うのだ。しかし、リーヴァルディにとって、その牽制によって生み出された時間こそが重要であった。
己の生命力を持って魔力を溜め込む。
吸血鬼化した己の肉体を持って力を開放する。
「……真っ向しょうぶよ。この一撃で決着を着ける」
その瞳がユーベルコードに輝く。
限定解放・血の魔装(リミテッド・ブラッドポゼッション)。理性を喪うであろうユーベルコードであったが、己の力を吸血鬼化し、届かぬ領域にまで手をのばす力の開放そのものであった。
吹き荒れる闇色の炎が、リーヴァルディの身体を飲み込んでいく。
大いなる炎となった彼女の身体を極光が迎え撃つのだ。
「……来たれ、この世界を覆う大いなる力よ。我が身に宿りて聖光を呑み込む闇となれ……!」
黒炎鳥へと変じたリーヴァルディの身体が矢のように飛ぶ。
折れた聖剣から放たれる薙ぎ払うような極光の一撃は、その黒炎鳥を叩き落さんとしている。
空中で体勢を変えたリーヴァルディであったが、その極光の熱波は彼女の肌を焼くだろう。
凄まじい威力。
躱したと思っても、熱波と深淵が彼女を蝕むだろう。失墜するように黒炎鳥は大地へと激突する。
破片が飛び散り、リーヴァルディの一撃は無に帰したかのように見えた。
「加減は無しよ。残された全ての魔力を、ここで解放する……!」
諦めてはならない。
立ち止まってはならない。
血の宿業が、己の足を止めることを拒むのだ。己は炎である。闇色の炎。聖なる光が己の身を焼くのだとしても、炎は形を保たず、いかなる形にも変じ、己の意志が息吹と成れば再び舞い上がる。
大地を蹴ったリーヴァルディが飛ぶ。
それはまさに不死鳥のごとく。
放たれた裂帛の拳は『深淵に沈みし騎士』の騎士鎧を突き破って、その肉体へと突き立てられるのだ。
「……――ッ! 死に損ないッ、が!」
「……骸の海に還るがいい、騎士の残骸」
拳に込められた黒炎の魔力が『深淵に沈みし騎士』の鎧の中で弾け、凄まじまでの大爆発を引き起こす。
ひび割れた鎧の隙間から黒炎が立ち上り、互いに衝撃に寄って吹き飛んでいく。
しかし、リーヴァルディは見ただろう。
己は大地に立ち、けれど『深淵に沈みし騎士』は『地底都市』の大地に沈む、その姿を。
どれだけ強大であっても、闇は必ず払われる。
それを知るからこそ、リーヴァルディはダークセイヴァーを救わんと己の血の宿業と共に歩むのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
シャイン・エーデルシュタイン
【勇者パーティ】
「そうですか、それこそ貴方の本当の姿なのですね。
かつての聖剣の遣い手よ」
かつては守護者として讃えられたであろう騎士。
ですが、オブリビオンとなったその姿、放置できません。
「残念でしたね、神の御使いたるクレリックの私には、聖剣など通用しませんっ!」
メイスを手にして殴りかかりますが、聖なる光を浴びせられ。
「フィアさんならともかく、邪な心のない私に聖なる光が通じるとでも……
って、聖なる光で身体が浄化されて……っ!?」(注:悪霊です
あやうく天上界に召されそうになりながら膝を付きます。(半分透き通ってる
「くっ、ならばこちらも反撃ですっ」
【連鎖する呪い】を放ちます。(やっぱり悪霊っぽい
フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「ほほう、ようやく本当の姿をみせおったか。
ならば、我が最強魔法でふぃあふぃあしてくれよう!」
【竜滅陣】の呪文を詠唱しよう。
敵が聖剣から破魔の光を放とうと、この我には……
「って、我、悪魔と契約した漆黒の魔女だから、破魔とか天敵ではないかーっ!?」(浄化されて焦げる
っていうかシャインも昇天しかかっておるし!?
なんか、こやつ、うちのパーティの天敵じゃないのか!?(注:勇者パーティです
「くっ、よくもこの我に傷を与えてくれたな……
反撃の竜滅陣を受けるがいいっ!」
最大威力で魔法を叩き込み。
「ルクスよ、あとは任せたぞ……
我が屍を乗り越え、勇者としての力を見せるのだ……」(注:死んでません
ルクス・アルブス
【勇者パーティ】
『深淵に沈みし騎士』ですか。
誇り高い『真の騎士』だった『赤錆の騎士』の姿を借りる資格など、
あなたにはありません。
それがたとえ朽ちていても、です!
『赤錆の騎士』の想いはわたしたちが受け継ぎます。
最後に残してくれた言葉を信じ、短期決戦でいきますよ!
目を閉じ、自分の心の中を探って音叉を取りだしたら、
みなさまありがとうございます。
あとは任せてください!
光の勇者に聖剣の力は効きませんよ!
わたしの勇者としての全てであなたを倒します!
【世界調律】を発動させて、
みなさまの『負』を吸収し巨大化した光の音叉で、
全力で殴りかかりますね。
世界を乱すものよ、骸の海に還れ!
輝きと振動で、周囲ごと殲滅です!
サージェ・ライト
【勇者パーティー】
くっ、ここまでシリアスとは…
うちのパーティー大丈夫?
トドメは勇者のルクスさんにお任せして
「参ります!」
残像を作り出す速度でかく乱しながら
漆黒竜ノ牙を順次投擲でフェイント
間合いに踏み込んだらカタール二刀流による
【乾坤一擲】で初撃必殺勝負!
これで決まるとは思えませんけど鎧に穴くらいは!(貫通攻撃
反撃……は受け切れない、かなー!
武器受けしてもダメージは避け切れそうに…
って人がシリアスに戦ってるのに何浄化されかかってるのツッコミ僧侶ー!!
ってぺたん魔女もかー?!
ルクスさん急いでー!!
私もちょっと持ちそうにないです!
くっ私はここまで…後はルクスさんお願い、って勇者ー!?
音叉の使い方ー!
極光と黒炎が激突し、凄まじい爆発を伴った衝撃波が『地底都市』に炸裂する。
地響きのような揺れが大地を震わせ、そこに立つ者たちの身体を揺らす。それは戦いの激しさを物語るものであり、同時に猟兵とオブリビオンとの苛烈なる滅びを駆けた戦いを知らしめるものであった。
戦いはいつだって勝者と敗者を生み出す。
けれど、力の強弱だけが勝敗を分かつものではないということを『紋章』を持つ『深淵に沈みし騎士』は理解していない。
いや、『赤錆の騎士』であったかつての『守護者』であれば理解していたことであろうが、その肉体を傀儡とする上位存在にとっては理解できぬことであったことだろう。
黒炎の中より深淵纏い這い出る『深淵に沈みし騎士』が咆哮する。
「何故だ。何故ここまで追い込まれる。未だ十全ではないからか。この力がまだ本調子ではないからか?」
答えは否である。
そう、十分に力が高まっている。全てを引き出したとは言い難いものであったが、そもそも出現した時点での力はすでに個としての猟兵を上回るものであったのだ。
だというのに猟兵たちを滅ぼしきれないのは何故か。
「そうですか、それこそ貴方の本当の姿なのですね。かつての聖剣の遣い手よ」
シャイン・エーデルシュタイン(悪霊として蘇ったクレリック・f33418)は小さく頷いて瞳を伏せた。
かつては守護者として讃えられたであろう騎士。
それが『赤錆の騎士』の本来の姿であったのだろう。だが、オブリビオンとなった時点ですでに捨て置くことなどできないのだ。
彼が齎す殺戮と絶望を、その肉体のかつての持ち主は望んでなど居ない。
いつだって誰かのために戦う『守護者』たり得たからこそ、その力は発揮されるのだから。
「『深淵に沈みし騎士』ですか。誇り高い『真の騎士』だった『赤錆の騎士』の姿を借りる資格など、あなたにはありません。それがたとえ朽ちていても、です!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は叫ぶ。
彼女は『赤錆の騎士』の思いを受け継いで、最期に残された言葉を信じtて戦うのだと決意していた。
その純然たる覚悟は、彼女の師であるフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)にも伝播していたのだろう。
「ほほう、ようやく本当の姿をみせおったか。ならば、我が最恐魔法でふぃあふぃあしてくれよう!」
あ、最期にシリアスになりきれないところが、うちのパーティらしいなぁと、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思ったけれど、空気を読んで押し黙った。
やる気に水を差す必要なんて無いけど、うちのパーティ大丈夫かなぁってそういう危機感だけはあるようだった。
けれど、三人がやる気に溢れているのならば、止める理由はない。
そして、自分がやることも。
「参ります!」
サージェが駆け抜け、シャインが続く。後方ではフィアが魔力を充填するように詠唱を続けていく。
目の前には極光を湛える折れた聖剣があった。
「無駄だ。無駄だ。お前達では――」
横薙ぎに払われる極光の斬撃。サージェの初撃である乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)を受けて、斬撃がわずかにずれるも、その熱波と聖なる光の衝撃波がサージェと、シャイン、そしてフィアに襲い来る。
「反撃は受けきれない……かなー!?」
サージェをしても、その極光の薙ぎ払う一撃は凄まじいものであった。堪えきれない一撃をカタールで受け止めるが、身体が吹き飛ばされてしまう。
しかし、その前に現れたのはシャインであった。
「私の後ろに、サージェさん。残念でしたね、神の御使いたるクレリックの私には聖剣など通用しませんっ!」
サージェは思った。
これはフラグってやつでは? メイスを手にして極光の薙ぎ払いに立ち向かうシャインの背中。
確かにクレリックとしての力があれば、聖剣の一撃も受け止められたかも知れない。
けれど、聖なる光は悪霊である彼女の肌を焼く。
じり、と皮膚を焼く痛みにシャインは驚き慌て、ふためいた!
「フィアさんならともかく、邪な心のない私に聖なる光が通じるとでも……って、聖なる光で身体浄化されて……っ!?」
あ、やっぱりとサージェは思わずには居られなかった。
「シャインも昇天しかかっておるし!? って、我、悪魔と契約した漆黒の魔女だから、破魔とか天敵ではないかーっ!?」
フィアもやっぱり破魔の光に浄化されかかっている。
やっぱりなーとサージェはどこか予想はしていたのだ。
こっちがシリアスな雰囲気に空気を読んでも、これである。あのツッコミ僧侶も、ぺたん魔女も同様である。
染み付いてるんだ。ギャグに流れる要素ってやつが。
「って、いや、本当にやばいです!? ルクスさん急いでー!! 私もちょっと持ちそうにないです!」
「なんかこやつ、うちのパーティの天敵じゃないのか!?」
「危うく天上界に召されそうになりましたが!」
「合わせろ、シャイン! 反撃の竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)を受けるがいいッ!」
練り上げられた魔力が炸裂するように放たれ、極大なる魔法が極光と激突し、激しい衝撃波を生み出す。
相殺したと、思ったが次なる一撃を『深淵に沈みし騎士』は構えていた。
次に一撃を叩き込まれれば、フィアもシャインも、そしてサージェもまた耐えきることはできないだろう。
ならばこそ、シャインは懸けるのだ。己を悪霊たらしめる、連鎖する不幸でもって、『深淵に沈みし騎士』の足元をぐらつかせる。
あれだけ派手に破壊の力を奮ったのだ、大地はひび割れ足を取られることだろう。体制を崩した『深淵に沈みし騎士』が踏ん張るように足を留めた瞬間、音叉の音が響きわたる。
「みなさまありがとうございます。後は任せてください!」
ルクスの手にあったのは、自分の心の中を探って取り出した音叉であった。
それは彼女が勇者たる所以である世界調律(セカイチョウリツ)を可能とする巨大音叉であった。
これまで己の仲間たちが受けた重圧、傷、その全てを受け止め力を増していく音叉の共鳴は、世界すらも塗り替えていく。
「光の勇者に聖剣の力は効きませんよ! わたしの勇者としての全てであなたを倒します!」
ルクスが駆け出す。
これまで多くの猟兵たちが受けた重圧、傷、その全てを受け止めた輝く音叉は、それに比例するように巨大化する。
「ルクスよ、あとは任せたぞ……我が屍を乗り越え、勇者としての力を見せるのだ……」
「ルクスさんならできます……頼みましたよ」
「って、おーい! 何二人して死んだ感じだしてんです!?」
背後で三人のコントみたいなやり取りが聞こえた気がしたが、ルクスは聞いていなかった。
響く音叉が彼女の使命を持って背中を押すのだ。
巨大化した音叉。その光の音叉が振り上げられる。
「世界を正しき姿に! それが光の勇者の役目です!」
振り上げた音叉は圧倒的な質量で持って『深淵に沈みし騎士』へと振り下ろされる。
「って、勇者ー!? 音叉の使い方ー!」
サージェがツッコむ。
ツッコまざるを得なかった。だって、そういう使い方なんだとは思いもしなかったのだ。
というか、最後には物理である。やはり物理で殴るのが最強なんです? とサージェは思わずには居られなかったが、その威力は折り紙付きである。
「世界を乱すものよ、骸の海に還れ!」
放たれた巨大質量なる一撃は『深淵に沈みし騎士』を叩き伏せ、大地をかち割る威力となって、悪辣なる存在を許してはおけぬと振り抜かれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
内から別の個体が食い破られるような変異は確認していましたが
生前の再現、このようなことが起こり得るとは…
……其方が猟兵の滅びを謳うのであれば
私はかの騎士の為に、貴方を討ち滅ぼしましょう
それが、せめてもの手向けです!
(武装の消耗は大、ならば…)
聖剣の極光へ大盾を投げ盾受け
砕いて迫る光をUCの力場纏わせた貫手で武器受けし引き裂きながら突撃
腕が消し飛ぼうとも…!
光を超え接近
先の一撃で剣を振るう動作を見切り、再度放たれるなぎ払いに対し此方の剣を怪力で●投擲
関節部に噛ませ発動を遅延
剣が無かろうと手は二つ、信念で戦うのが騎士なれば!
超重フレームの鉄爪展開、前腕部伸縮機構作動しリーチ伸長
残った腕で貫き
巨大質量の一撃を受け止め、軋む『深淵に沈みし騎士』の身体。
それは生前の『赤錆の騎士』の姿であることは疑いようがなかった。清廉なる騎士であったのだろう。
その力の発露の仕方を見ていれば、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はかつての『守護者』であった騎士が真に騎士であったことを知る。
「内から別の個体が食い破られるような変異は確認していましたが……生前の再現、このよなことが起こり得るとは……」
彼にとって『第五の貴族』との戦いは、これが初めてではない。
だからこそ、『紋章』の力の凄まじさ、そしてそれを撒き散らす上位存在の力の強大さに呻く。
しかし、うめいている時間もなければ、かつての『守護者』の矜持も誇りも踏みにじる悪辣なる存在を確かめる時間もない。
そう、時間が経てば経つほどに『深淵に沈みし騎士』の力は十全に近づいていく。
今はまだ十全には程遠いのだろう。
だが、それをしてでも、この強大さである。
猟兵たちの多くが全力の攻撃を打ち込み続けてもなお、倒れぬ異様さ。これがダークセイヴァーの支配者階級の力であると知らしめるように、折れた聖剣が輝きを放つ。
「……其方が猟兵の滅びを謳うのであれば、私はかの騎士の為に、貴方を討ち滅ぼしましょう。それが――」
そう、それこそがせめてもの手向けである。
しかし、トリテレイアもまた『赤錆の騎士』との激闘で消耗している。
持久戦の後に来る短期決戦は、多くの猟兵がそうであったように苦しい戦いになることは言うまでもない。
けれど、限界を振り絞り、そして戦ってきた者たちの軌跡をトリテレイアは知る。
アイセンサーが煌めき、極光の一撃が薙ぎ払われるのを確認して大盾で受け止めるのだ。
「無駄だ。どれだけ言葉を紡ごうとも、言葉は言葉だ。おまえたちのやっていることは粉飾に過ぎぬ。どれだけ飾り立てようとも、言葉で力は贖えぬよ」
確かに極光の一撃は凄まじいものであった。
地形が破壊され、周囲は深淵に沈んでいく。大盾もひび割れ、砕けていくのをトリテレイアは感じていた。
だが、それで諦めて言いわけがない。
己が憧れ、己の胸に抱く騎士道物語が言う。
諦めとは、最も騎士道から遠いものである。潔さが良しとされども、守らねばならぬ矜持があるのならば、例え泥のまみれようとも突き進まなければならない。
「奥の手……の一つに過ぎませんが!」
トリテレイアの前腕部伸縮機構が動き、自身に残った残存エネルギーが無色透明な防御力場として貫手となったマニュピレーターに集約される。
砕け散った大盾の向こうから迫る極光の一撃をその一撃で持って切り裂くのだ。
「防げるものか。この騎士の、いや、我の紋章の力が――!」
軋む。
装甲が砕け、フレームがきしみ、腕部のあちこちからエラーメッセージが電脳に走り抜ける。
だが、関係など無いのだ。
「例え――腕が消し飛ぼうとも……!」
切り裂く貫手の一撃と共にトリテレイアの脚部からスラスターが噴出し、一気に戦場を駆け抜ける。
極光にうまる戦場を引き裂きながら、突撃するトリテレイアは己を槍に見立てたことだろう。
力場を放った腕部が砕けて散った。
「無駄だと言った。一撃で終わらぬからこそ、我の深淵は」
あらゆる勇者を打倒してきたのだと『深淵に沈みし騎士』は咆哮し、再度折れた聖剣を振りかぶるのだ。
再びほとばしる聖剣の輝きをトリテレイアのアイセンサーは見極めていた。
一度見た動き。
ならば、機械騎士である己に見抜けぬ道理などない。
喪った腕はもう使い物にならない。けれど、己の腕はもう一本残っている。ジェネレーターが唸りを上げ、懇親の一撃となった剣の投擲が『深淵に沈みし騎士』へと放たれ、振り上げた折れた聖剣を握りしめる肩へと突き刺さる。
「剣がなかろうと、手は二つ」
そう、己は機械騎士である。
剣がなくば戦えぬ身ではない。それが生身の騎士との違いである。いや、どちらが優れているかではない。
その身に宿した騎士としての矜持があればこそ、トリテレイアは懸けるのだ。己の身命という名のすべてを持って、かの騎士のためにと願う心が炉心に火を灯す。
爆発的に放たれた超重フレームの鉤爪が展開された腕部が抜き放たれる。
しかし、間合いは読まれている。
背後に飛ぶ『深淵に沈みし騎士』。
「バカめ。攻撃の手を知るものがお前だけだとおもう――ッ!?」
だが、その瞳が驚愕に見開かれる。
そう、前腕部伸縮機構が作動し、一瞬の間に満たぬまでも、飛び退る『深淵に沈みし騎士』を捉えるのだ。
それはいわば、鋼の手槍(スピアハンド・オブ・スティール)。
放たれた一撃は、信念の一撃。
「信念で戦うのが騎士なれば!」
其の一撃が剣が突き立てられた肩へと放たれる。貫手の一撃はすでに防御力場を喪っている。
残存エネルギーを絞り出しても生み出されない。けれど、突き立てられた剣がある。
それを押し込み、肩ごと『深淵に沈みし騎士』の片腕を吹き飛ばすのだ。
「私の……いえ、私『達』の一撃を受けていただきましょう――!」
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
あなたがどこの誰かは知りませんが、滅ぼしたいのはこちらも同じです。
手が付けられなくなる前に、ということでしたね。ならば……
【ニヴルヘイム】を使用、99秒以内で終わらせましょう。
向上した身体能力と『スナイパー』の『視力』で放たれる剣閃を『見切り』回避しながら「フィンブルヴェト」からの絶対零度の弾丸で深淵に沈みし騎士を狙います。
この99秒の間でも少しずつ強化されていっている……となれば、時間ギリギリまで使おうとするのは悪手ですね。
剣閃を避けながら相手の懐に飛び込みます、多少の負傷は『覚悟』し、『激痛耐性』で耐えましょう。
懐に入り込んだら銃剣での『串刺し』からの『零距離射撃』を。
鋼鉄の貫手の一撃に『深淵に沈みし騎士』の片腕は消し飛んだ。
だが、構える聖剣は折れていても、片腕を喪ってもなお立つ姿は、今はなき『赤錆の騎士』の持つ矜持と誇りの残身であったことだろう。
惜しむのならば、その身体はすでに傀儡で、空虚なる器でしかないことだろう。
かつての『守護者』はもういない。
けれど、その魂を開放するのが猟兵の責務であるというのならば、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は戦場に立つ。
「あなたがどこの誰かは知りませんが、滅びしたのはこちらも同じです」
彼女の瞳に合ったのはヴァンパイアという隷属の象徴に対する感情であったことだろう。
この瞬間において、彼女の体に刻み込まれた隷属の歴史は消え失せる。
感情が肉体を、魂さえも凌駕するのだ。
例え、目の前の『深淵に沈みし騎士』が時間が経てば経つほどに力を十全に発揮するのだとしても、関係ないどない。
手がつけられなくなる前に、とうことであったが、セルマの瞳はニヴルヘイムのユーベルコードに輝く。
これより1分39秒の間、彼女の身体能力は人のそれを越える。
自身の周囲には絶対零度の霊気が満ちる。それは如何なる者にも止めようのない圧倒的な力であった。
「ぬかせ。我が敗れるわけがない。敗北など是としない。我は、いつだって」
勝利を得てきたのだ。
その腐敗は支配者としての絶対条件であったことだろう。
人は隷属するものである。
弱者は人で、強者こそが己である。あらゆる者全てが己の手足であり、利用されるべきものであり、消費されるべきものであるのだ。
「我が支配者だ」
放たれる剣閃がセルマに迫る。
だが、彼女の視力はそれらを完全に見切っていた。
一瞬の交錯。
セルマの身体が飛ぶように隻腕となった『深淵に沈みし騎士』の直ぐ側を駆け抜けた。
瞬間、絶対零度の弾丸がマスケット銃から放たれ、その肉体を氷漬けにする。
足場を凍りつかせ、動きを固定する。
だが、それは一瞬のものでしかない。
凄まじい音を立てて、大地毎踏み抜いた『深淵に沈みし騎士』の脚力が、氷の破片を撒き散らしながら折れた聖剣から次々と剣閃を放つのだ。
それは縦横無尽に世界を埋め尽くす斬撃であったが、セルマには最早関係のないものであった。
彼女の瞳にはユーベルコードが輝いている。
「私が限界を迎えるのが先か、あなたが斃れるのが先か……勝負といきましょうか」
だが、越える。
例え、限界を迎えたのだとしても、今のセルマなら越える。
其の限界の先さえも見るだろう。
放たれた剣閃は網目のようにセルマへと迫り、躱しようのない剣閃の一撃が彼女の肌を斬り裂き、血を噴出させる。
痛みが己の体に隷属の時代を想起させる。
だが、それが何だというのだ。
「関係などありません。今私の瞳に映っているのは、『あの時』でもなければ、『その時』でもない」
苦しみと悲しみに彩られた記憶を捨てることはしない。
忘れることはしない。
いつだって、それらがあったからこそ今の自分を作り上げている。
それをなかったことになんてしてはならない。
悲しみも苦しみも力に変えるからこそ、彼女は今という限界を越えていくのだ。
「馬鹿な……人ごときが、我の間合いに入る、など!」
「滅ぼす。必ずヴァンパイアは滅ぼします。今の貴方は私の敵ですらない」
そう、彼女の瞳が捉えるのはいつだって獲物でしかない。
相対する騎士がかつての『守護者』であったのだとしても。
今は違うのだ。
傀儡へと堕とす悪辣なる存在が操る人形でしかない。その糸を断ち切るためにセルマは『フィンブルヴェト』に装着された銃剣『アルマス』を『深淵に沈みし騎士』の胸元に突き立てるのだ。
「ま、――ッ!」
待て、と『深淵に沈みし騎士』が言った。
けれど、待つことはない。引き金は誰だって引ける。赤子だって引ける。
躊躇いなんてあってはならない。ゼロ距離で放たれた氷の弾丸が絶対零度の冷気を伴って放たれ、その一撃を持って『深淵に沈みし騎士』の胸に氷の華を咲かせる。
それは今はもういない『守護者』に対する手向けの華となるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
ふーん
ま、御託はいいや
かえってやりやすくなったし
つまり、一撃で落とせば良いんでしょ君を
それじゃ、やろうか
●
引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
『エネルギー充填』開始
敵の懐まで一気に接近して正面からの近接戦闘開始
敵のなぎ払いを『武器受け』して切り払い、余波は『オーラ防御』でガード
本当はわざわざそっちの懐まで飛び込む必要は無かったんだけどね、折角だし一太刀付き合おうかと思って
でももうこれでおしまい
【Code:T.S】起動
最大サイズ、最大威力で雷刃形成
2つの雷刃で『2回攻撃』
一気に敵を切断する!
これなら、彼と正面から斬り合った方が良かったかな
それじゃあさよならだ!!
胸に咲いた氷の華。
隻腕となった『深淵に沈みし騎士』は呻くようでもあり、咆哮するように、その苛立ちを発露していた。
個で己に劣る存在に此処まで追い込まれたことに対する憤怒。
それが『紋章』輝く『深淵に沈みし騎士』にとっての最大の屈辱であったことだろう。
かつて『守護者』であった肉体。
この肉体の力は確かに個として猟兵に勝るものであったが、十全に力を振るうためには『時を経て』いかねばならなかった。
けれど、猟兵達は其の弱点を突くように、全力の攻撃で『深淵に沈みし騎士』を打倒し続けた。
隻腕になっても折れた聖剣が奮えぬわけではない。
けれど、確実に十全には程遠い状態へと追い込まれていく。
「こんなことがあっていいわけがない。我の紋章の力が、此処まで……」
「ふーん。ま、御託はいいや。かえってやりやすくなったし」
その言葉に『深淵に沈みし騎士』の身体が振り返った。
一瞬震えたような気がしたのは、気のせいかな? と言葉の主、月夜・玲(頂の探究者・f01605)が首をかしげる。
そう、どれだけ十全に近づこうとも、そこまで行かねば力を奮えぬというのならば、その前に倒しきってしまえばいい。
簡単な話だ。
みなぎるユーベルコードの力は、彼女が抜きはらった二振りの模造神器の蒼き刀身が見せる輝きとなって発露していた。
「つまり、一撃で落とせば良いんでしょ君を」
それは擬似的とは言え、大いなる邪神の力を引き出す隔絶された技術体系の集積。
瞬時に『深淵に沈みし騎士』は構えた。
隻腕であれど、折れた聖剣に集まる極光の輝き。その最大出力の上限は、数多の猟兵との戦いで引き上げられている。
初撃で放った一撃とは比べ物にならぬほどの力の発露を感じながら、玲は笑った。
「それじゃ、やろうか」
隻腕となった『深淵に沈みし騎士』は懐に己を潜り込ませぬように立ち回ろうとするだろう。
収束していく極光による薙ぎ払いの一撃は、如何なるものをも深淵に飲み込んでいく。
ならばこそ、躱すのではなく受け止める。
「無駄だ。受け止めたとしても――!」
薙ぎ払うように横薙ぎに振るわれた極光の一撃を玲は二振りの模造神器の刀身で受け止める。
熱波が彼女を襲うが、オーラの力でガードし、その力の全てを受け止める。
「本当はわざわざそっちの懐まで飛び込む必要は無かったんだけどね、折角だし一太刀付き合おうかと思って――」
けれど、そんな必要なかったと玲の瞳が言う。
そう、正直に言ってしまえばがっかりだった。
『赤錆の騎士』の斬撃のほうがまだ歯ごたえがあった。重みがあった。もはや、目の前の『深淵に沈みし騎士』の斬撃に重さもなければ、恐ろしさもなかった。
人の意志が宿るからこそ、剣には重みが加わる。
それはきっと物理を越えた力なのだろう。
だからこそ、玲は冷めたのだ。
「でももうこれでお終い。出力上昇、雷刃形成」
生み出されるは疑似邪神の力。
――Code:T.S(コード・サンダーソード)。
天なき地底の空を仰ぎ見よ。
雷鳴届かぬ地底世界にあって、その雷刃の二振りは誰も知らぬ極大なる刃。
極光を集め、しかして虚ろなる刃に雷刃を防ぐ術などありはしないのだ。
「最大出力――一気に両断する!」
放たれた模造神器の雷刃の一撃が極光の光を砕いて大地をえぐり取る。さらに横薙ぎに振るわれたもう一撃が、還りつく道筋を照らすように、虚ろとなった肉体に指し示す。
再誕を願う詩があれど、しかして生命は回帰しない。
喪われた生命は戻らない。
だからこそ、玲は己の輝くユーベルコードによって黄泉路を照らすのだ。
「これなら、彼と正面から斬りあった方がよかったかな。それじゃあさよならだ!!」
十字に刻まれた雷刃は、まさに墓標のようになって、地底都市に刻まれる。
今はもういない『守護者』を見送るように玲は蒼き雷の十字に背を向けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
愛久山・清綱
詫びられることではない。俺は何時如何なる時でも、
好きで面倒事に関わってきたのだからな。
俺にとっては、これこそが『平生』よ。
■前
戦闘に入った瞬間【神宿】を発動し、超強化だ。
代償は【激痛耐性】があれば事足りる。
■闘
【早業】の手つきで『空薙・剛』を素早く、勢いよく振るい
無数の剣閃を纏めて【武器受け】しつつ【ダッシュ】で接近。
受け止めきれないものは【オーラ防御】を纏って少しでも
ダメージを軽減。
如何なる事があろうとも、脚を止めてはならん。
距離が縮まったら【破魔】の力を最大限に込め、【残像】を
伴う高速の一閃で深淵の闇とかすかに残った光を同時に断ち、
その魂を『在るべき海』へ還すのだ。
※アドリブ歓迎・不採用可
十字に刻まれた雷刃の一撃は、地底都市を煌々と照らし出す。
胸に氷の華を戴き、隻腕となった『深淵に沈みし騎士』は立つ。未だ消滅するわけには行かぬと妄執と執念にもって、その虚ろなる身体を動かすのだ。
あったのは悪辣なる存在のみ。
もはや、そこに高潔なるかつての『守護者』の魂はない。
時が経つほどに十全なる力に近づいていく『深淵に沈みし騎士』は、しかして猟兵たちの全力の攻撃に寄って、追い詰められていた。
事実、彼の力は十全に近づいていたのだ。
けれど、それらを尽く凌駕する猟兵たちの一撃に彼は遂に膝をつく。
「あり得ない。あってはならない。こんな無駄なことがあってはならない。猟兵たちを滅ぼさなければならぬと言うのに、我が滅ぼされるだと?」
これまで己が奪う側であったのだ。
一度たりとて、奪われる側になったことなどない。
それが強者というものである。
この肉体だってそうだ。過去の化身であるからこそである。
意識が途切れる前に『守護者』は侘びたのだ。肉体が残るからこそ、不手際であると。
だが、愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は頭を振る。
侘びられることではないと。
これこそが己の『平生』であると。
「俺が好きで面倒事に関わってきたのだからな。これからもそうするさ。これが最後ではないのが、惜しいが」
その身に宿るは天空舞う剣神。鬼の如き鍛冶神、雷を司る蛇神。
それら三柱の神の御霊を宿したユーベルコードの輝きが、清綱の身体を超絶為る力らでもって、戦場を駆け抜けさせる。
まさに神宿(カミヤドシ)。
その踏み込みは神速そのもの。
己の肉体にはすでに流血が起こっている。それは強化の代償であるが、些細なことである。
痛みなど関係ないのだ。
どれだけ痛みがあろうとも、長きにわたる年月、魂を繋ぎ止められていた『守護者』の苦しみに比べれば大したことではないのだ。
「如何なることがあろうとも、足は止めてはならん」
放たれる剣閃は一撃一撃が凄まじい威力を伴っていたが、それでも清綱は歯を食いしばる。
痛みは己の意識を覚醒させる。
距離を話そうとしているのだろう。わかる。かの『紋章』が己たちを恐れていることがはっきりとわかるのだ。
「来るなッ――!!」
手数の多さが、その証拠である。
残像が戦場に生まれるほどの神速の踏み込み。みなぎるは破魔の力である。放たれた深淵の闇すらも一瞬の光共に切り裂く斬撃。
「その魂を『在るべき海』へ還すのだ」
そう、どんな存在も過去になることを止められない。
時が過去に排出されて、今から未来へと進むように、止められないのだ。
だからこそ、生命は懸命に生きるのだ。そうあるべきなのだ。
ならばこそ、その魂をつなぎとめる行いこそが、摂理に背く行いである。それを許しては桶主、その悪辣なる存在を捨て置くこともできない。
きらめく剣閃は破魔の力を宿して、一瞬の内に『深淵に沈みし騎士』が放った深淵毎、その肉体を切り裂く。
鎧も肉体も関係がない。
斬撃の音が後から遅れて聞こえてきた。
「さらば。その魂が開放されることを望むばかりだが……」
最後まで侘びたかの騎士を思って清綱は、己の兵の道をひた走る意味を見出す。
そう、救える魂は必ず救う。
それこそが彼の信じる道なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ニノマエ・アラタ
おまえより赤錆のが強えよ。
赤錆を喰って、利用して、力にしてるだけに見える。
俺には、な。
人の心を踏みにじって糧にする、おまえを滅ぼす。
赤錆の心と魂を解放するために今一度戦う。
彼の折れない聖剣に誓い、真正面から。
目潰しされないよう、なぎ払いの軌跡を見切る。
崩壊する地形の間を時に飛びながら走り抜け、紋章野郎の懐へ。
護りになんて入らせねェし、力の温存も許さねェ。
全力だ。
俺も殺し奪うことで生きてきた。
数多の宿業で妖刀を磨き鍛えながら、な。
蝕まれていようとも、おまえの手にあるのは聖剣。
どちらが先に往くか決めるのは、この一閃だけでいい。
足場がなんだ体勢がなんだ痛みがなんだ
俺の心が、俺を動かし!
妖刀が、断つ!
数多の力が『深淵に沈みし騎士』を穿つ。
鮮烈なるユーベルコードの輝きが、何度も『地底都市』を照らし続けた。
それは長きにわたる支配の歴史において一瞬の光でしかなかったのかもしれない。力なき者は奪われ殺されるしかない。
ダークセイヴァー世界は、そんな世界だ。
弱者とは即ち人であり、強者とは即ちヴァンパイアである。
自然の摂理と言ってもいい。
淘汰されていくだけだ。隷属するしか生きる道はない。
ならば、人は人ではいられなくなる。けれど、何時の時代だって存在していたのだ。誰かのためにと戦う『守護者』が。
それが『赤錆の騎士』であったのだろう。
けれど、その騎士もまた『深淵に沈みし騎士』へと堕すのだ。
「何故だ。何故我が敗れる。この肉体をもってしても、敗れるというのか。我が賜った力であっても」
その胸に輝く『紋章』は『寄生虫型オブリビオン』である。
傀儡と化した『赤錆の騎士』に肉体を操り、深淵に沈めた存在が呻くように、けれど、最大の輝きを持って『地底都市』を極光に染め上げた。
折れた聖剣であっても、この出力。
これまで全力で力を叩き込んできた猟兵達であったが、それでもなお後ひと押しが必要だった。
誰もが死力を尽くした。
此処まで追い詰めたことなどなかったであろう。それはひとえに猟兵たちが胸に抱いた一つの想いによって結実したものであった。
それを無駄にはせぬと走る影があった。
「おまえより赤錆のが強えよ」
その言葉は、ニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)より放たれたものであった。
手にした妖刀が妖しくきらめく。
そう、目の前の存在は『赤錆の騎士』を喰らい、利用し、力を当てにしているだけにしかすぎないのだ。
彼にとっては、であるが、この場に居た猟兵の誰もが感じていたことだろう。
確かに『赤錆の騎士』は強かった。
その重圧は多くの猟兵が感じ、圧倒的な強者として認識させるには十分であった。
けれど、目の前の『深淵に沈みし騎士』からそれを感じることはなかった。
「人の心を踏みにじって糧にする、おまえを滅ぼす」
それは宣言であると同時に決定事項であった。
覆ることのない未来であった。今を紡ぐ時間の中にありながら、アラタの見据える未来に、『深淵に沈みし騎士』はいない。
かつての『守護者』であった騎士が携えた折れぬ聖剣に彼は誓うのだ。その心と魂を開放するために戦うと。
「真正面から来るか! バカ正直な男だ!」
極大の光が輝く。
折れても聖剣の力は陰ること無く。それどころか、紋章の力を持ってさらに強大な極光へと膨れ上がっていく。
凄まじい輝きだ。
目がくらみそうに為る。
けれど、アラタは突き進む。真正面から突き進むのだ。愚直だと言われてもいい。
駆け引きもなにもない。
護りにはいらせないし、力の温存などさせはしない。
砕けていく大地を駆けていく。
彼の背を押すのは己の思いだけではなかった。この場に挑んだ猟兵達全ての思いを乗せて走る。
連戦に次ぐ連戦で疲弊している足がはちきれそうであった。腕はきしみ、構えた妖刀を肩で支えることでしか、固定できない。
けれど、走る。
全力だ。
己もまた殺し、奪うことで生きてきた。
数多の宿業で妖刀を磨き、鍛えながらである。それが彼の生き方だ。そうしなければ生きていることさえできなかったかもしれない。
目の前に迫る極光を放ったのは、折れた聖剣だ。蝕まれたとは言え、かつての『守護者』が振るった剣だ。
輝かしい輝き。
「どちらが先に往くか決めるのは、この一閃だけでいい――!」
体中から血が噴出する。
あらゆる身体の筋が、骨が、肉が絶たれていくような感覚がアラタの足を掴む。
けれど、この身体は己だけの思いで動くものではない。
「俺の心が、俺を動かし!」
踏ん張る。斃れるべきは、今ではないと背を押す猟兵たちの思いを受けて、走るのだ。
背に負った妖刀『輪廻宿業』が煌めき、極光を剣刃一閃(ケンジンイッセン)の元に切断する。
光が割れて、膨大な力の奔流全てを斬り裂き、それでもなおアラタは疾走った。
渾身の力を込めて大地を蹴る。
「妖刀が、断つ!」
そう断ち切らねばならない。
つなげと叫ぶ心がある。
輪廻宿業が断ち切るのならば、宿業輪廻は繋ぐ。
どれだけ摩耗した魂であっても、磨かれたのならば、次なる生命へとつながればいい。
生命は回帰しない。
ならばこそ、その妖刀はあらゆる穢れを断ち切るだろう。
「ばかな……! 我の力が及ばぬなど」
在ってはならぬと叫ぶ。
もうその声は己には届かない。何故なら、それはかつての『守護者』の言葉ではないからだ。
そう、騎士の中の騎士であったかつての『守護者』の魂を縛る煉獄の如き世界は終るのだ。
「それを俺が為す」
極光を切り裂いて迫るアラタの渾身の一撃が『深淵に沈みし騎士』の楔を解き放つように斬り裂き、その魂の牢獄から、哀れなる……されど、高潔なる騎士の魂を開放する。
霧散し消えていく騎士。
最期の言葉はない。
けれど、それでも猟兵たちの心に去来するものがあったことだろう。
戦いの激しさを今は語るまい。
今語るべきは、かつての『守護者』の安寧のみである――。
大成功
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