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美女を見捨てちゃ男が廃る

#アリスラビリンス #戦後 #探索 #NPC:ブライアン&ジュウゾウ #デスゲーム組 #愛情と生命の魔女『ケット・アヴァロン』

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#アリスラビリンス
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#戦後
#探索
#NPC:ブライアン&ジュウゾウ
#デスゲーム組
#愛情と生命の魔女『ケット・アヴァロン』


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●二人が危機に陥るワケ
 魔法のウサギ穴をくぐればそこは別の世界。ここは複数の小さな『世界』が繋がり合う不思議な迷宮、アリスラビリンス。

 ――ここは不思議の国のひとつ『美男美女の国』。
 この国にいる『愉快な仲間』は皆が美しい。
 しかしここはまだオウガの支配が残る場所。
 であれば、アリスラビリンスへ召喚されてしまった人間……オウガの餌、『アリス』と呼ばれる人間たちはここから早々に逃げ去るべきである。
 そしてまさに今、二人の男性の『アリス』がオウガの包囲から逃れるため中世風の石造りの建物が並ぶ街中を移動していた。

 この二人はかつてオウガによるデスゲームに巻き込まれて知り合った。
 他の生き残りとはウサギ穴をくぐる際にはぐれてしまったが、同じ場所に出た二人はその後もなんとなく協力しあい今はバカなスケベ会話をする位に打ち解けている。
 サバイバルベストを着たの茶髪の青年、ブライアンは周囲の様子を確認しながら文句を漏らしていた。
「まったく。せっかくおっぱい美女と仲良くなりたかったのにオウガに見つかっちまうなんてなー」
 その青年の後をサムライブレイドを身につけた和装の男、ジュウゾウがついていく。
「ははっ。おれも美女の膝枕の機会を伺いたかったが、こうなってはそうも言ってられん。お主の危機察知の勘所の良さが頼りだ、此度も頼むぞ」

 このままいけば今回も逃げ切れるはずだった……人質さえいなければ。

●がーっと守ってぱーっと敵を倒していくお話です
 グリモア猟兵の夕月・那由多(f21742)は生命を与えた創造物で人形劇をしながら先ほどの様なナレーションを入れた。
「こやつら現地民の警告も受けてたのに、美女見たさにギリギリまで滞在してこうなったみたいじゃな……」
 呆れを含む苦笑いを浮かべ、那由多は人形をとりあえず横に片付ける。
 そしてざっくりした街の地図を広げると、その上におはじきを並べて状況の説明に入った。

「さて、まずお主らが駆け付けるころにはこんな状況になっておる」
 そう言いながら那由多はオウガを示す赤のおはじきを沢山散りばめ、その中に『アリス』を示す青のおはじきを二つ置いた。
 そして、『愉快な仲間』を示す黄色のおはじきが二つ。
「この二人は逃げるのが上手く、なかなか包囲しきれぬゆえオウガも考えを巡らせてな。この大通りで複数名の美男美女の『愉快な仲間』を人質にすることで二人の足を止めた形じゃ」
 続けて示されるのは転送予定ポイント……問題の場所から離れているものの、全力で駆け付ければ間に合う距離だ。
「元より『アリス』の二人をおびき出すのが目的。この辺に今おるのは弱い奴らじゃ。そして侍の方が戦闘が得意ゆえ人質救出まではこやつらだけで行ってしまう」
 しかし、と那由多は続ける。
「問題は『その後』じゃ。『アリス』を捕らえるためさらに強い別の群れが後でやってくる」
 つまり猟兵の介入の目的は、この後の集団戦、さらにはボス戦も見越して早めに『アリス』の二人を守れる体制にすることにある。
 一通り説明を終えると、那由多はこう締めくくった。
「このままではこやつら二人はオウガに捕まり食われてしまうじゃろう。わらわ達の目的はオブリビオン……つまりはオウガを倒すことにあるが、ついでにこやつらも助けてやってくれぬか」

●オウガによる犠牲を防ぐため
「信用のほうは心配せんでいい。まあ気になるなら軽く名乗っておくくらいでいいじゃろ。いい感じに助けて継続して戦って敵を倒してくれたらOKじゃ。そしたらこの二人もオウガに喰われずに済むじゃろう」

 そうざっくり説明した那由多は袖口から小さな鳥居を取り出した。
 するとそれはみるみる大きくなり、猟兵を転移させるための門となっていく。
「準備ができたら飛び込むのじゃ。わらわは転移のため同行できぬ故、ここでお主らの吉報を心待ちにしておるぞ」
 那由多はそう言って微笑むと、猟兵たちを送り出した。


ウノ アキラ
 はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
 生活など落ち着きぼちぼち活動再開していきます。ウノ アキラです。
 このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。

●お得情報
 執筆は主に土日になるので、プレイングの受け付けは主に【毎週木曜の8時30分から土曜の昼頃まで】になりますことをご了承ください。
 他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。

●依頼について
 アリスラビリンスの戦後シナリオとなります。
 一章は冒険。二章は集団戦。三章がボス戦の三章構成です。
 全体的にギャグ寄りで考えています。アリス二人はOPで触れた通りの性格です。

 一章は冒険です。
 ぱーっと敵を倒したり、二章に備えて罠をはるなり『アリス』や現地民の『愉快な仲間』たちと交流するなどなどが出来ます。
 人質の数は決めてません、たぶん少数です。来たプレイングの内容に合わせて可変させるので人数は気にしなくて大丈夫です。

 二章は集団戦です。
 『アリス』捕獲のための本隊です。
 『ブギーマン』というカボチャ頭の怪人っぽいのが出てきます。
 鉈とか振り回します。

 三章はボス戦です。
 『ケット・アヴァロン』になります。
 以前に私のシナリオで出たものとは別個体の別人です。

 アリスの二人は次のユーベルコードを会得しています。ボスに対してはあまり効果が出ないことにご注意ください。

 ブライアン
 【タンクキャバリア】
 自身が操縦する【戦車】の【主砲威力】と【装甲】を増強する。
(※戦車を所持していないため、活用できません)

 ジュウゾウ
 【剣刃一閃】
 【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
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第1章 冒険 『防衛!我らが聖域』

POW   :    はっはっはぁ!くたばりなさい!オウガ共が!

SPD   :    キル斬るKILL…(無言で只管)

WIZ   :    保護しましょう保護。他意はアリマセンヨ?

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●覚悟の上
 大通りのど真ん中で檻に囚われていた『愉快な仲間』たちは、二人の『アリス』により解放された。
 この場にいたオウガは戦闘力が高くないタイプだったため、ここまでは易々と事が運んでいる。
「助けにきたぜ、さあ早く出るんだ」
 ブライアンは人質が檻から出る手助けをしていく。それに対し助けられた『愉快な仲間』たちは申し訳なさそうにしていた。
 それは、間を置かず再び周囲が囲まれてしまったためだ。この展開の早さはこれが罠であったことを物語っている。

 しかし二人に慌てた様子はない。
「そこの建物についたら中から鍵をかけてくれ。オウガの狙いは俺たちだろうし、そうすりゃ君らは助かる」
 そう伝えるブライアンの背後へ犬の様な獣が襲いかかるが、その牙はジュウゾウが阻む。
 サムライブレイドを振るジュウゾウは不敵な笑みを浮かべた。
「麗しき男女は目の保養だ。特に美女が居るとあれば、意地を見せるのが男子というもの」
 その言葉にブライアンも笑みを浮かべる。
「俺たちほんとバカだよなぁ。だけどジュウゾウだけなら今からでも逃げきれるんじゃないか?」
「何を言う。おれの方向音痴をなめるな?」
「そうだったな……ここまでの旅、楽しかったぜ。それじゃ最後にカッコイイとこ見せるとするかー!」
 救出した美男美女を連れ、二人は近くの建物を目指し始めた。
エドゥアルト・ルーデル
&&&

美少女あるところに拙者有り!
見た顔でござるな…確か…ブライト君!そっちは?ジョニー君でござるね?

戦車無しで役立たずなブランドー君には拙者が作り出した【架空兵器】の戦車に乗ってもらいますぞ!
何だねブラフマー君!これ本当に戦車なのかって?ヤーパンの神輿に足が生えてる見た目だが大砲がついてて装甲がある!立派な戦車やろがい!いいから乗り給えブラダマンテ君!!

とりあえずかっこいいとこ見せつつ敵を殲滅すっぞ!ジャスタウェイ君は遊撃!拙者は突撃すっから諸々後任せたでござるよ!カチコミの時間だオラァ!!(両手に銃と火炎放射器を構えながら)
オラッ美少女が見てるぞ!気合い入れて砲撃せんかビワハヤヒデ君!!!


黒影・兵庫
ヒーローみたいでカッコいいです!そう思いませんか?せんせー
(「こんな状況に陥る原因を聞かなければそう思えたかもね」と頭の中の教導虫が返事する)
大事なのは今です!
(「...まぁいいわ。で、どうする?」)
UC【蝗害】を発動して強襲兵の皆さんと一緒に『衝撃波』で敵を蹴散らします!
せんせーも『念動力』で瓦礫とかを敵にぶつけてサポートしてください!
(「OK!アリスの二人に説教する時間も欲しいしさっさと片付けるわよ!」)
はい!え?説教?
(「鼻の下伸ばして死にかけてるのよ?また似たような目に合うに決まってんだからそうならないようしっかり説教するわ!」)
アリスのお二人は命は助かりますが未来は暗そうですね...


陽殿蘇・燐
いろんな世界を実際に見て回ろうとしていたのだけれど、グリモア猟兵の人形劇が見えたものだから。

全力でいく必要があるのなら、【炎術:身転蝶】でいきましょう。
ふふ、蝶だと思って油断しないことね?間はすり抜けるし、炎を振り撒くのよ?
オウガも燃えるわよ?『ラスボス炎術士・燐』をなめないでね?

ごきげんよう、アリスたるお二人。
私は猟兵の陽殿蘇・燐よ。
…何だか盛り上がってるようだけれど、元気なのはいいことだわ。
ここにもっとたちの悪いオウガが来るようなのよ。…共闘できると嬉しいわ?


マリオン・ライカート
&&&

・心情
「武士道と云うは死ぬ事と見付けたり」…だね
動機は兎も角、無辜の民を救おうとする気概は称賛されるべきさ
まして、自らの命の捨て場所と見定めての行いなら猶更の事だね
だからこそ、死なせはしないよ
ボクの誇りに懸けて!

・行動
まずは合流しておかないとかな?
上手く合流出来たらアリスの二人に声を掛けるよ

二人共、久し振りだね
この前はすれ違った位だから覚えてないかもしれないけどね
無茶で無謀なのは考え物かもしれないけれど、それを悩んで反省するのはこの場を乗り切ってから、かな
でも、罠であっても君達が行動を起こさなかったら愉快な仲間たちも無事じゃなかったかもしれない

だから今度はボク達が君達を護る
共に生き残ろう


メラニー・インレビット
&&&
はぁ、美男美女の国でございますか。
アリス様は見目麗しい方がお好きなのですね。
…いえ、人の好みをとやかく言うつもりはございませんが、
何でしょう…このモヤッとした気持ちは

ともかく、まずは今いるオウガ共を手早く蹴散らし、次に備えると致しましょう。
まずは紅茶をどうぞ。
失礼ながら、お二人はこれから死ぬつもりのお顔をなさっています
誰かの為にその身を投げうつのは美談のようでございますが、
それがオウガ共の餌食になる事では奴らの思う壺。
ですからひとまず心を落ち着かせ、皆で生き延びる事を考えましょう

それから、あの…美女ではなく申し訳ないですが、
よろしければわたくしめも、その膝枕というのをいたしましょうか…?


卜一・アンリ
そういうの嫌いじゃないけれど。男の専売特許みたいな言い方は駄目ね。
今時はレディも銃を手にとって戦うものよ。

UC【黄金の雨のアリス】の【乱れ撃ち】で二人を【援護射撃】。
特にジュウゾウさんは構わず敵に斬りかかってもらって結構よ、今の私の魔弾は狙った所にしか当たらないわ。
ブライアンさんは周囲の【情報収集】をお願い。ご覧の通りの【クイックドロウ】なもので、どこに何があるか把握する時間も惜しいの。
逐次教えてくれると助かるわ。

さぁハンティングの時間よ。
狩るのはオウガではなく私たち『アリス』だけれどね。



●後のために
 中世風の石造りの建物が並ぶ街……この一帯は『美男美女の国』といい、そこに住む『愉快な仲間』は皆が美しい。
 そんな街中に、今は犬の様な獣が徘徊している。
 それはこの街中にいる餌……『アリス』と呼ばれる異世界から召喚された人間を逃さないため。
 この獣たちは標的を街から逃がさないための尖兵の様なものだ。
 しかしその獣たちは今、大量の虫の群れに襲われていた。

「強襲兵のみなさーん! 細かい路地はお願いします!」
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、ユーベルコード『蝗害』で呼び出した虫たちと共に街中の獣たちを攻撃していった。
 その虫たちの数は500匹を超えてあらゆる路地の隙間へと入り込んでは潜む獣を齧り取っていく……。
「これでみなさんが少しでも安全になれば良いのですが……」
 兵庫は『誘導灯型合金破砕警棒』を振った衝撃波で敵を吹き飛ばしながら大通りの方角を気にする。
 直行した猟兵が何人か居るため、周辺の敵の数を減らしていれば危険はないはずだが気になるモノは気になってしまう。
「それにしても身を挺して誰かを守るなんて、ヒーローみたいでカッコいいです! そう思いませんか? せんせー」
 兵庫のいう『せんせー』とは隣で念動力を操る『スクイリア』という存在(最も、その身体が本体ではない様だが)だ。
 スクイリアは兵庫の言葉に対し思考へ直接返答した。
(「こんな状況に陥る原因を聞かなければそう思えたかもね。アリスの二人に説教する時間も欲しいしさっさと片付けるわよ!」)
「はい! え? 説教?」
(「鼻の下伸ばして死にかけてるのよ? また似たような目に合うに決まってんだから、そうならないようしっかり説教するわ!」)
 スクイリアが念動力で投げ飛ばす物の数が増えており、非常にご立腹な様子が見て取れる。
 その様子に、兵庫はオウガとは別の脅威……時間をたっぷり使った説教に曝される二人の『アリス』の未来を案じるのであった。

●路地の掃除
 猟兵の登場により状況は一気に傾いていった。
 今頃は大通りの方にいる人質や『アリス』の二人もすでに安全が確保されていることだろう。
 逃げ回る『アリス』を誘い出した後に囲んで逃げられなくし、後により戦闘力の高い集団で確保する……というオウガ側の当初の目論見は早くも崩れている。
 加えて、この作戦の破綻はどうやらオウガの本隊には伝わっていない様だ。

 それは猟兵たちによる討伐が非常に速いという部分が大きいが……それだけでもなく――。

 メラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)の持つ『殺戮刃物』の刃が路地の闇に舞う。
 ユーベルコード『九死殺戮刃』が一体のオウガに九つの刺し傷を加え、血の華を散らした。
「伝令などさせるものか。貴様らの本隊にはこのまま間抜け面で来てもらう」
 メラニーは足を止めずにオウガを追うと、素早さを活かし次から次へと手早く仕留めていく。
(はぁ、美男美女の国でございますか。こちらのアリス様お二人は見目麗しい方がお好きなのですね)
 目の前の敵を処理しながらもどこか心ここに在らずという様子のメラニー。
 元よりオウガに対する憎しみは強いのだが……。
(……いえ、人の好みをとやかく言うつもりはございませんが、何でしょう……このモヤッとした気持ちは)
 今回は別の感情も混じっていそうだ。
(ともかく、まずは今いるオウガ共を手早く蹴散らし、次に備えると致しましょう)

 石造りの街の路地で、死神ウサギがぴょんと跳ねる。
 すると獣たちに指示を出していたオウガはそのたびに首を刎ねられていった。

●吉兆の黒揚羽
 襲い来る犬の様な獣を蹴散らしながら大通りを逃げる『愉快な仲間』たちと二人の『アリス』。
「とりゃあっ!」
 ブライアンは握りしめた鉄パイプで一体の獣を打ち倒した。
「ちくしょう、キリがないなこりゃ」
「だが、このままなら切り抜けられなくもないか」
 ジュウゾウのサムライブレイドがさらに獣を切断していく。
 目的の建物まであと数メートルだが、相手の数が多く思う様にたどり着けない。
「時間が無限にあればな! こいつらたぶん偵察用だ、のんびりしてたら追加がくるぞ」
 ブライアンは焦り始めていた。
 しかし、すでに猟兵たちは周辺に到着していた。

 ひらひらと黒いアゲハの群れが現れる。
 その群れはあっという間に『愉快な仲間』たちと二人の『アリス』を取り囲み……あたりの獣たちを燃やし始めた。
「ごきげんよう、『アリス』たるお二人。私は猟兵の陽殿蘇・燐よ」
 声と同時にクロアゲハの群れがひとつになって陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)がその姿を見せる。
(いろんな世界を実際に見て回ろうとしていたのだけれど、人形劇が見えたものだから)
 グリモアベースで見た人形劇に興味を惹かれてアリスラビリンスを訪れてみた燐。
 彼女はユーベルコード『炎術:身転蝶』により自身を炎を纏う無数のクロアゲハに変えると、その特性により地形を無視し真っ直ぐこの場にたどり着いていた。
「……何だか盛り上がってるようだけれど、元気なのはいいことだわ」
 燐はくすりと妖艶にほほ笑んだ。
 その姿は、彼女が称する様なゲームの悪女NPC(ラスボス)を実感させるカリスマ性を帯びている。
「……助かった、のか俺たち」
「敵では無いようだ」
 張りつめた糸が緩むように呆けるブライアン。
 対する燐は、淡々と説明と提案をするのだった。
「ここにもっとたちの悪いオウガが来るようなのよ。……共闘できると嬉しいわ?」

●再会
 燐に続いてマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)が光り輝く白馬と共に――ユーベルコード『白馬の王子様』で現れた。
「動機は兎も角、無辜の民を救おうとする気概は称賛されるべきさ。まして、自らの命の捨て場所と見定めての行いなら猶更の事だね――」
 マリオンは白馬を進めると、残る獣たちを阻みそのまま革命剣の『天光剣:Lumiere』を抜く。
「――だからこそ、死なせはしないよ。ボクの誇りにかけて!」
 白馬から飛び降りたマリオンは獣たちを次々と切り伏せた。
「さあ、まずは彼らを安全な場所へ」

 街中には戦闘音がしばしば鳴り響いており、この場以外でも猟兵たちによる戦闘が行われていることが察せられる。
 そんな最中に一同は『愉快な仲間』たちを安全な建物へ避難させた。

 現在、大通りの獣たちは、猟兵たちとの力量差もあってか取り囲もうとしているものの遠巻きに見ているだけの状態になっている。
「二人共、久し振りだね。最もこの前はすれ違った位だから覚えてないかもしれないけど」
 とマリオンは二人に語りかける。
 マリオンは、かつて地下迷宮の世界でデスゲームの主催者のオウガを倒す際に二人と顔を合わせていた。
「あの時は色々あったよなあ……不審な髭のおっさん(エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354))も居たし……」
 と、フラグを積み……もとい当時のことをしみじみと思い出すブライアン。
「けど、助かったぜ。いやあぶっちゃけ死ぬなーとは思ってたからな」
「うむ、お陰で旅を続けられる。ありがたい」
 ノリで命の危機に突っ込んでおきながら二人はどうも軽い。
 おそらく元の世界での生き方の時点で、自身の命の価値が軽かったのだろうか。
 その様子にマリオンはこう考えるのだった。
(「武士道と云うは死ぬ事と見付けたり」……ともいうけれど、無茶で無謀なのは考え物かもしれない)

●殲滅開始
「さ、人質も助けたし次は俺たちがここを離れる番か」
「雑兵であればおれたちも戦える。足手まといにならぬようにしよう」
「守られてばかりじゃ恰好つかないしな」
 とやる気を見せる二人。
 そこへ、もうひとり猟兵が合流した。
「そういうの嫌いじゃないけれど。守るのや命を張るのが男の専売特許みたいな言い方は駄目ね。今時はレディも銃を手にとって戦うものよ」
 そう言いながら、卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)が路地から歩み出てきた。
 纏う硝煙の臭いが先ほどまで戦闘を行っていたことを示している。
「もうちょっと早く着いていたけれど、こっちは大丈夫そうだったからそこの路地に溜まってたのを狩ってきたわ。他にも街中のオウガを狩ってる猟兵が居たし、いま大通りにいるので残りは全部だと思う」

 この後にやってくるオウガの群れのことを考えるなら――。
「なら、一息つくためにも全滅させておいた方が良さそうだね」
 マリオンは再び剣を抜いた。
 アンリも『悪魔憑きの拳銃』を構える。
「ジュウゾウさんは構わず敵に斬りかかってもらって結構よ、今の私の魔弾は狙った所にしか当たらないわ。ブライアンさんは周囲の情報収集をお願い。早撃ちを生かすためにどこに何があるか把握する時間も惜しいの。逐次教えてくれると助かるわ」
「承知した」
「わかったぜ!」
「さぁハンティングの時間よ。狩るのはオウガではなく私たち『アリス』だけれどね」

●シリアスからコミカルへの急転
 合わせて燐も『炎術:身転蝶』の準備を始めた。
「ふふ、全力でいくのなら私も遠慮はしないわ。『ラスボス炎術士・燐』を見せてあげる」
 燐が変異した炎を纏うクロアゲハが拡散し殲滅が開始されようとする、その時――。

 ――さっき登場フラグが立っていたエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が屋上から飛び降りてきた。
「美少女あるところに拙者有り! 見た顔でござるな……確か……ブライト君! そっちは? ジョニー君でござるね?」
「ブライアンだっての! ってうわああああああ、出たあああああああっ!?」
「ジョニー……? おれのことか?」
 疑問符を浮かべるジュウゾウと、オバケでも見たようなリアクションをとるブライアン。
 そのリアクションをスルーしたエドゥアルトはJOJO風の立ち方でブライアンを指さし言葉を続ける。
「戦車無しで役立たずなブランドー君には拙者が作り出した『架空兵器』の戦車に乗ってもらいますぞ!」
「戦車だって……!?」
 そう言いながらエドゥアルトはユーベルコードを発動させた。
 それは無敵の架空兵器を想像から創造するチカラ……。
 空間がぐにゃりとねじ曲がり、想像から兵器が創造されていく。
 その姿は……。
「いやこれ戦車じゃないだろ!?」
「何だねブラフマー君! ヤーパンの神輿に足が生えてる見た目だが大砲がついてて装甲がある! 立派な戦車やろがい! いいから乗り給えブラダマンテ君!!」
「へーこれ、ヤーパンの神輿っていうのか……じゃなくて、何処に乗るんだこれ!?」
 UDCアースのお神輿に大砲がつき、筋骨隆々な四本脚が生えた物体が創造されていた。
 加えて担ぎ棒にも人のような生物がワンセットでくっついている。
「「「ソイヤ! ソイヤ!」」」
 尚、『美男美女の国』仕様でみんな顔がイケメンな美形マッチョである。

 全員が状況に置いていかれる中、エドゥアルトは『マークスマンライフル』と『万能火炎放射器』を両手に吠えた。
「とりあえずかっこいいとこ見せつつ敵を殲滅すっぞ! ジャスタウェイ君は遊撃! 拙者は突撃すっから諸々後任せたでござるよ! カチコミの時間だオラァ!!」
「おい、おっさん待てってば!? あ、すみませんアンリさんこの屋根に乗ってもらえますか」
「えっ」

 ――ハンティングの時間が始まった。

●残党退治は速やかに
「「「ソイヤ! ソイヤ!」」」
 機械の足が生えて自走しつつもイケメンマッチョが担ぎ棒を担ぐというよくわからない物体が大通りを練り歩いていく。
 その先陣をマリオンとエドゥアルトとジュウゾウが切り開き、敵が固まったならブライアンによる砲撃が、そして散ればアンリの銃撃が次々と降り注ぎ敵を減らしていく。

「「「ソイヤ! ソイヤ!」」」
「右斜め方向に二匹。続けて一匹左に抜けた!」
「分かったわ!」
 ひと呼吸の間にアンリのユーベルコード『黄金の雨のアリス<<アリス・ザ・レインメーカー>>』が敵を撃ち抜いていく。
 この早撃ちにより前衛の攻撃を抜けた敵は次々と倒れていった。
「「「ソイヤ!! ソイヤ!!」」」
「また左、三匹。次は二匹!」
「このっ……!」
 神輿の屋根から放つアンリの銃弾が再び敵を撃ち抜く。
「「「ソイヤ!!! ソイヤ!!!」」」
「ああもう! うるさーい!! 揺れるのはともかく、うるさいのだけれど!?」
 アンリの抗議をものともせず戦車は大通りを練り歩いた。
 その神輿の進行とともに残る獣やオウガが殲滅されていく。
 加えて大通りから逃げ出そうと路地へ入ったなら……。
「ふふ、蝶だと思って油断しないことね? 間はすり抜けるから逃げられないわ。それにこの炎はオウガも燃えるわよ」
 そこには燐のクロアゲハが待ち構えていた。

 もしここがキマイラフューチャーであれば住民たちも避難先から出てきてこの神輿と共に練り歩いていただろう。
 そんな雰囲気の中、街中に展開されていた敵たちは全滅した。

●幕間
 ――敵の殲滅後。
 猟兵たちは住民たちに改めて避難してもらいつつも、敵の本隊が来るのを警戒しつつ待ち構えていた。

 そんな中、『アリス』の二人は美形マッチョが担ぐ神輿の中で説教を受けている。
 説教をするのは、兵庫の連れであるスクイリア。
 前半で『鼻の下伸ばして死にかけてるのよ?』と評していたように、スクイリアの中では二人の評価は低く、説教する時間のために戦闘に力を入れていたまである。
 出会った直後こそ、一度はマリオンによる「でも、罠であっても君達が行動を起こさなかったら愉快な仲間たちも無事じゃなかったかもしれない」というフォローが入り矛を収めたスクイリアだが……。
 住民である美男美女たちを避難誘導するマリオン、アンリ、燐という美しさが高まった光景をニコニコと笑顔で見ていたのが反省の色なしとされた形だ。

「ですから、お二人にはもっと自分を大事に――」
 それに付き添うのは、すべてにわたる『アリス』の従者たらんとするメラニー。
「まずは紅茶をどうぞ」
 と付き従いつつメラニーからも一言注意が入った。
「失礼ながら、お二人は死ぬつもりのお顔をなさっています。誰かの為にその身を投げうつのは美談のようでございますが、それがオウガ共の餌食になる事では奴らの思う壺」
 最初に合流した際にマリオンが感じ取った様に、元の世界で「そういう生き方」だったのかブライアンとジュウゾウはどうも自身の命に対して軽い。
 メラニーはそのことを懸念して勢いやノリで熱くならず、生き延びることを最優先にと提案をした。
「ですからひとまず心を落ち着かせ、皆で生き延びる事を考えましょう」
 そして――。
「それから、あの……美女ではなく申し訳ないですが」
 そのうつむきがちな上目づかいは、照れなのか自信の無さなのか。
 メラニーは遠慮がちにもうひとつの提案をするのだった。
「よろしければわたくしめも、その膝枕というのをいたしましょうか……?」
「「「――!?」」」

 この場がその後どうなったのかは定かではない。
 そんなこんなで次の戦闘が始まるまでの時間はおだやかに過ぎていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ブギーマン』

POW   :    惨劇の夜
自身の【カボチャのマスクの下の瞳 】が輝く間、【鉈】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    パンプキン・ウィップ
【どこまでも伸びるカボチャの蔦の腕 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    怨恨
自身が戦闘で瀕死になると【怨念で強化された自身の霊体 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●二章についてのお知らせ
 一章へのご参加、ありがとうございます。
 引き続き二章のプレイングの受付は予定通りに木曜の06月10日(木)からとなります。
 よろしくお願いいたします。

●本隊の到着
 この国の街に『アリス』が二人もいる――。
 その情報を聞きつけたとき、オウガたちは久々の食事にありつけると大賑わいだった。
 ひとり当たりの分け前は少ないだろうが、リンゴや菓子などで腹を膨らませるよりはずっとマシだ。
 ボスの関心もアリスの肉より命や魔力の方であるため、部下たちは『アリス』の肉にありつける可能性が高い。
 ――アリスを喰える。
 その一心で『ブギーマン』たちは駆け付けた。

 『アリス』が罠にかかり姿を見せたという情報を最後に現地から連絡が途絶えていることに疑問も持たず。
 ……猟兵によりすでに街が掌握されているとも知らず、彼らはやってきた。

(完全にこちらが先手を取れる状態です)
黒影・兵庫
(「さぁーて説教も終わったし、おもてなしの準備をするとしましょう」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!おもてなしの方法、思いつきました!
(「おっ早いわね。聞かせて頂戴?」)
はい!まずUC【光殺鉄道】で召喚した光学兵の皆さんを物陰に待機させ『目立たない』ようにした後
オウガの団体が来たら光の刃で不意打ちします!
敵が浮き足立ったら俺が『衝撃波』で追い打ちをかけるので、せんせーもさっきみたいに『念動力』を使って攻撃に参加してください!
(「うんうん、悪くないわね。OK、さっそく準備するわよ!」)
はい!きっと素敵なパーティになると思います!
(「アタシ達にとっては、だけどね」)


卜一・アンリ
あちらのお目当ては『アリス』のようだし躍り出てみせましょうか、ジュウゾウさん。
私、剣士の端くれでもございまして。
オウガ風情が鈍ら得意げに振り回すのを見ると、格の違いというのを見せつけたくなってしまうの。

物陰の【闇に紛れる】位置からの【ダッシュ】で接敵し退魔刀を居合抜き(【クイックドロウ】)、【指定UC】。
狙うは繰り出される敵UCの鉈。攻撃回数が何回だろうが根元から圧し折れたら切り付けようがないもの。それとも私の剣に追いつけるかしら?(【部位破壊】【武器受け】【武器落とし】)
敵の攻撃【体勢を崩す】ことが出来たら、ジュウゾウさんの追撃ないし私の拳銃による【零距離射撃】で各個撃破といきましょう。


陽殿蘇・燐
さて、こちらが先手をとれる状況…いいじゃない。
ああ、愚かなオウガたちね。帰してあげないわよ。
そう、ラスボスからは逃げられないのよ。
あなたたちのボスに、戦況情報なんてあげないわ。

カボチャに蔦…よく燃えそうだこと。
『紋黄揚羽』で『麝香揚羽』の幻覚属性強化。これで位置を誤認するようにするわね。
そして、炎属性を強化した『黒揚羽』で燃やしてあげるわね。

私の周りにいるのがただの黒い蝶(一匹だけ蛾)だからって、油断しないことね?
何匹かには、毒があるのよ。見分けがつくかしら?

それに、この芭蕉扇…強烈な風を起こせるのよ?
逃げられない以上、炎が燃え広がるに決まってるわよね?


エドゥアルト・ルーデル
&&&

今、拙者は冷静さを欠こうとしている
なに二人して良い思いしてるのかねジュン文学君…ブリランテ君……すぞ…

拙者の怒りが有頂天を衝く!…なに敵が来たの?これからOHANASHIの時間だってのに…ちょっとストレス解消に雑に強いUCで雑に突っ込んで雑に片付けてくるんでヨロシクゥ!
【流体金属】君と!拙者を融合!全身!合体!超!オウガメタルマン!
敵軍真正面へ全身キラキラ殴り込みでござる!イクゾオラァ!

防御など考えず、【鉈】を全く意に介さずひたすらにカボチャを叩いて砕く!流体に物理攻撃なんぞ効かないでござるからな!
なめてんじゃねぇぞコラッ!しゃあっ!戦術超・鋼拳ッ!!

ふう…スッキリした…


メラニー・インレビット
&&&

アリス様方はなるべく我々の後ろへ。
…いえ、決して足手まといなどという事ではありません。
オウガどもは一匹残さず排除致しますが、わたくし共の目を掻い潜って皆様の元へたどり着く敵がいるかもしれません。
そうなってしまった時に、わたくし共に代わって彼ら(愉快な仲間)を守っていただきたいのです。
お二人が背を守ってくださればこそ、皆、全力で戦いに臨むことができるのでございます。

アリス様の安全を確保できたなら
……ここからは狩りの時間。
『時間加速』を発動して増大した反応速度で蔦の腕を見切り、返す刃でその全身を切り刻んでやろう。
糞にも劣るオウガ共め、お前達にくれてやる物などない
飢えたまま時を終えるがいい!


マリオン・ライカート
&&&

・心情
「策士策に溺れる」とはよく聞く言葉だけれど…
こうも簡単に引っ掛かるのは問題かな
それだけ自信があったのか、それともそれすら考えられない程の飢餓なのか…
どっちにしても、思い通りになんてさせないけどね

・行動
アリスの二人や愉快な仲間たちを護りながら戦うよ
こっちには攻めるのが得意そうな猟兵も多そうだしね

普通に戦うだけじゃなくて『ガラスのラビリンス』を使って護りを固めておこうかな
こういう集団戦闘では敵が来る方向を限定するだけでも戦いやすくなるのさ
オウガはこの国を使ってアリスを罠に嵌めたつもりだろうけれど、今や立場は逆転しているんだよ

さあ二人共!
心を【鼓舞】して、この危機を乗り越えようじゃないか



●事前の準備を
「光学兵の皆さん! 配置についてくださーい」
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)はユーベルコード『光殺鉄道』でレーザーを放つ虫たちを召喚した。それらは石造りの壁や土に溶け込む迷彩色で立たない様に潜んでいく。
 これはオウガの群れを迎え撃つための準備だ。
 『アリス』二人へ「鼻の下伸ばして死にかけた」事への説教をしてスッキリした教導虫『スクイリア』こと兵庫の連れも、やる気十分。
(「さぁーて説教も終わったし、おもてなしの準備をするとしましょう」)
 スクイリアは兵庫の思考へと直接語りかけると兵庫のサポートを開始した。
「はい! きっと素敵なパーティになると思います!」
(「アタシ達にとっては、だけどね」)
 最も、このおもてなしパーティーとは先述したように迎え撃つためのもの。

 街中に配置した虫は同時に敵の接近を知らせる情報収集の役もこなすことだろう。
 万端の準備を進める中、兵庫は気がかりなことに目を向けた。
(……だれも突っ込まないけど、みんなの世界ではこの戦車が普通なのかな……)
 その視線の先にあるのは、前回エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)が創造した戦車――神輿に足と大砲が生えて担ぎ棒にイケメンマッチョがワンセットでくっついている奇妙な物体……。

●忘却からのノスタルジア
 一方で、そんな奇妙な物体もとい戦車の神輿の中……おそらくプレイングの文字数の関係でスルーされている存在の中にある、いい感じに休憩できる空間。
「アリス様、御加減は如何でしょうか」
 そう問いかけるメラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)の膝に、ブライアンは頭をのせて横になっていた。
 いわゆる膝枕というやつである。

「なんかこう、こんな妹が居たような安らかな感じだ……懐かしい感じがする……」
「この世界に迷い込んだ、おれらのような『アリス』は記憶の多くを失っているからな。もしかするとブライアン殿には元の世界で妹がいたやもしれぬ」
 ジュウゾウの言葉を受けたメラニーは小首をかしげて、しばし考えた。
「妹……でございますか。わたくしめでは代わりは務まらないかもしれませんが、僭越ながら……」
 あまねくすべての従者たらんとするメラニーは、従者としてベストを尽くすべくひとつの答えを導き出す。
「お兄さま……いえ、お兄ちゃん、の方がよろしいでしょうか」
「お兄ちゃんでお願いします」
「かしこまりました。お兄ちゃん」
 そんな二人のやり取りを、ジュウゾウはどこか遠い目で見つめるのだった。
「家族、か……」

「今、拙者は冷静さを欠こうとしている」
 エドゥアルトが天井から頭を出してこの様子をガン見していた。
「なに二人して良い思いしてるのかねジュン文学君……ブリランテ君……すぞ……拙者の怒りが有頂天を衝く!!!」
 ジュウゾウとブライアンの名を呟き呪いの言葉を吐くエドゥアルト。
 エドゥアルトが今まさにこの場を壊そうと飛び降りたその時だ。
 神輿の戸がガラッと開く。

 ガラッ!
「オウガたちが来たわ」
 陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)による敵発見の一報が差し込まれた。

●戦闘開始
「……なに敵が来たの? これからOHANASHIの時間だってのに」
 オブリビオンが出たなら倒すのが猟兵というもの。それがお仕事なので傭兵としても優先度は上である。
 そのためエドゥアルトは不満の表情をしながら神輿の外へ飛び出した。
 もちろん『アリス』に向けた害意のこもる視線と「OHANASHI(お話)」という不穏な発言からメラニーに睨まれつつである。
 そしてエドゥアルトが取り出すは流体金属君こと『オウガメタル・Spitfire』。
「ちょっとストレス解消に雑に強いユーベルコードで雑に突っ込んで雑に片付けてくるんでヨロシクゥ!」
 ユーベルコード『Innovator<<マタノナヲアタラシキモノ>>』によりエドゥアルトは流体金属と融合した。
「拙者の体を貴様に貸すぞ! 流体金属君と! 拙者を融合! 全身! 合体! 超! オウガメタルマン!」
 続けてぐにゃりと車輪のような……パンジャンドラムの姿になると、高速回転して大通りを爆走していった。

 その様子を見送った燐は話を続ける。
「今は街中に放っていた『麝香揚羽』で幻覚を与えて迷わせているところよ」
 そう伝えた燐は無数の蝶を従えて路地へ消えていった。
 遠方ではときどき上空へ放たれるレーザー光がちらりと見え、兵庫の『おもてなし』も発動している様も見て取れる。

 最前線での戦闘が始まった。

●揚羽蝶の迷宮
 肉だ! 久方ぶりの『アリス』だ!
 『ブギーマン』たちは嬉々として石造りの街へ乗り込んでいく。
 一刻も早くとらえて、ボスへ献上し分け前を貰う……貢献したら褒美として多めに肉を貰えるかもしれない。
 その一心で『ブギーマン』たちは足を急いでいた。

 しかし、何かがおかしい。
「こノ街こンなに広カッたカ……?」
「気ノせいダロウ、しかシ蝶がミョウにオオいな」
 街中のそこかしこに揚羽蝶がひらひらと舞っていた。それはどことなく妖しく、何かを誘っているかの様でさえあり……。
 揚羽蝶の一羽がひらひら近づくと『ブギーマン』の頭に止まると、それを払おうとした『ブギーマン』の頭が突如、火に包まれた。
「ギャアああ……!?」

 揚羽蝶が触れるたび『ブギーマン』が火に襲われる……。
「さて、こちらが先手をとれる状況……いいじゃない。カボチャに蔦……よく燃えそうだこと」
 燐が妖しく微笑みながらつぶやいた。
 彼女の周囲には色とりどりの揚羽蝶が群れを成しており、そこから一羽、二羽と周囲へ広がっていく。
 それらは、炎を纏う『黒揚羽』と幻覚を見せる『麝香揚羽』。そしてそれらの属性を強化する『紋黄揚羽』。
 加えて燐が事前に発動させていたユーベルコード『最後の敵『炎術士・燐』<<ラスボスカラハニゲラレナイ>>』により、燐を中心とする一帯に侵入した『ブギーマン』たちは運気を大きく奪われて揚羽蝶の群れから逃げることが難しくなっていた。

「ああ、愚かなオウガたちね。帰してあげないわよ」
 涼し気な顔で散歩でもするように姿を見せる燐。
 対する『ブギーマン』は攻撃を開始したが、幻覚で狙いは定まらず、伸ばす蔦も火で燃えて歯が立たない。
 燐は『芭蕉扇』を取り出すと一振りして風を呼んだ。
「ぐああ……火が!」
 風は炎を巻き込み路地に広がってさらに『ブギ―マン』たちを焼いていく。
 続けて燐は蝶たちに一羽だけ紛れ込む『揚羽擬蛾』を指に止まらせた。
「この蛾が見えるかしら? 蝶のうち何匹かは蛾で、毒があるのよ」
 その言葉は恐怖を加速させる精神への攻撃となり、心をへし折っていく。
「そう、ラスボスからは逃げられないの。あなたたちのボスに、戦況情報なんてあげないわ」
 燐は渦巻く炎の中で多数の揚羽蝶を纏いながら、絶望して這いつくばる『ブギーマン』たちを見下ろしていた。
 扇で口元を隠し微笑む様はまるでゲームの悪役の様でさえある。

●奇襲と急襲
「せんせー! 俺たちのとこに敵が来ましたよ」
(「それじゃ、おもてなしといきましょうか!」)
 兵庫が潜ませていた鉄道虫たちが不意打ちを始めた。
 足元から迫る急なレーザーの刃に対し、『ブギーマン』たちはなんとか避けようと踊る様にバタバタ動く。
「虫どモがっ!」
 『ブギーマン』は鉈を振り回して鉄道虫を切り裂こうとしたが、そこへ兵庫が飛び出していった。
「隙ありですっ!!」
「ぐッ!?」
 兵庫は物陰から飛び出すと『誘導灯型合金破砕警棒』を振り衝撃波を浴びせる。
 衝撃波でバランスを崩した『ブギーマン』には一斉に鉄道虫が襲い掛かった。
「ぎゃアアアッ!!」
 加えてスクイリアの念動力による投石がオウガたちの動きを制限する。上手く動けない敵に対し、兵庫は続けて衝撃波を放つのだった。
「まだまだ、ダンスパーティーは続きますよ!」
 衝撃波をやり過ごしてもレーザーと投石が絶え間なく繰り出され思う様に動けない。
 必死に動く『ブギーマン』たちはバタバタと踊り続けた。

 『アリス』たちを逃がさぬようにと路地から入った『ブギーマン』たちは、しかし路地に待ち構えていた猟兵たちの襲撃により大通りへ逃げ出した者たちも居た。
「話がチガうじゃないカ、アリスどころカ居るのは猟兵ダ!」
 なんとか逃げ延びた者達が大通へ集まっていくが、ここは隠れる場所が無い……。
 このまま逃げたところでボスの怒りを買ってしまうだろう。合流した『ブギーマン』たちが押すか引くかで逡巡する、そんなわずかな間に遠くから銀色に光るメタルは車輪がゴロゴロと走り寄って来た。
 ――流体金属と融合したエドゥアルトがパンジャンドラムの姿になった車輪だ。
「敵軍真正面へ全身キラキラ殴り込みでござる! イクゾオラァ!」
 エドゥアルトは『ブギーマン』たちの群れへ突っ込むと多数の『ブギーマン』を巻き込んで爆発。銀の雨となって降り注ぐと水たまりから小型のエドゥアルトがニョキニョキ生えて前進していく。
 人間やめてる感を代償に自身を強化するこのユーベルコードは、融合する流体金属の特性と相まってホラー度が高い気がする。
「なっ……なンだアッ」
 迫るミニエドゥアルトの群れに対し『ブギーマン』たちは鉈を振り回して抵抗するが流体金属と融合したエドゥアルトには効き目が薄い。
「流体に物理攻撃なんぞ効かないでござるからな!」
 グニャりグニャりと刃をめり込ませながら敵に接近すると、エドゥアルトたちは拳の形を固定させた。
「ひたすらにカボチャを叩いて砕く! なめてんじゃねぇぞコラッ! しゃあっ! 戦術超・鋼拳ッ!!」
「な二ッ」
 パパン、パン、と打撃音が鳴り響き『ブギーマン』の頭部にヒビが入っていった。

●オウガへの怨恨
「アリス様方はなるべく我々の後ろへ」
 最前線での戦闘が始まる頃、オウガを討つべくメラニーも神輿の外へ出る。
 するとブライアンが呼び止めた。
「待ってくれ、俺たちにも何かできないか。今ならこの戦車だってある」
「……いえ、決して足手まといなどという事ではありません。オウガどもは一匹残さず排除致しますが、わたくし共の目を掻い潜って皆様の元へたどり着く敵がいるかもしれません」
 メラニーは顔を見せずに返答をした。
 説明こそ理性的だが、言葉にはオウガに対する憎しみと狡猾さへの警戒が滲み出ている。
「そうなってしまった時に、わたくし共に代わって彼ら(愉快な仲間)を守っていただきたいのです。お二人が背を守ってくださればこそ、皆、全力で戦いに臨むことができるのでございます」
 『愉快な仲間』たちの改まった避難も終わり、守る場所は街の一画のみ。確かにこの案は理に適っているだろう。
 メラニーは説明を終えると、討つべき相手を求め駆けていった。
(……ここからは狩りの時間。糞にも劣るオウガ共め、お前達にくれてやる物などない。飢えたまま時を終えるがいい!)
 敵地へ歩むメラニーの瞳はオウガに対する憎しみに満ちている。

「……とは言っても、このまま大人しくしているつもりはないのでしょう?」
 残されたブライアンとジュウゾウに話しかけるのは、卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)。
 この場に残るのは『アリス』である二人と、猟兵の『アリス適合者』のアンリとマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)の合計四名だ。
 アンリの問いにジュウゾウが答えた。
「ああ。メラニー殿には悪いが、このまま守られるのは性に合わぬのでな」
「なら、あちらのお目当ては『アリス』のようだし躍り出てみせましょうか、ジュウゾウさん」
 アンリにとっては、ジュウゾウとブライアンの二人もオウガに翻弄された同じ境遇の仲間でもある。
 故に、オウガに人生を狂わされた『アリス』として共に抵抗しようと提案するのだった。

●『アリス』達の作戦
「ならばボクは守りに徹しよう。『愉快な仲間』たちが避難する一画を中心に『ガラスのラビリンス』を使えば、敵の来る方向をガラスの迷路で限定させて護り易くなるからね」
 続いてマリオンも案を重ねた。その案にアンリは頷く。
「それじゃ決まりね。最前線……とはいかなくても、私とジュウゾウさんで敵を引き付けてみるわ」
「心得た。それに思いのほか集まる様であれば、それこそブライアン殿の操る絡繰りの大筒の餌食であろう」
「ああ、任せろ。迷路の壁をよじ登るようなやつも狙い撃ちしてやるぜ」
 作戦が決まったところでブライアンは神輿の中にある操縦席へ入っていく。
 マリオンは『天光剣:Lumiere』を高々と掲げるとユーベルコード『ガラスのラビリンス』を発動させた。
「オウガはこの国を使ってアリスを罠に嵌めたつもりだろうけれど、今や立場は逆転しているんだ。さあ! 心を鼓舞して、この危機を乗り越えようじゃないか」

 やがてぽつりぽつりと『ブギーマン』たちが現れ始める。
 ここまでの猟兵たちの攻撃を潜り抜けてきたこともあり、非常にボロボロで生気がない。
「……どうやら本当に無策のまま来ていた様だね。それだけ自信があったのか、それともそれすら考えられない程の飢餓なのか……」
 ガラスの壁越しに見えるボロボロのオウガたちの姿をみて、マリオンは呟く。
 この場に見えるのは、猟兵だが同時に『アリス適合者』でもあるマリオンと、猟兵ですらないただの『アリス』のブライアンの二名のみ。
 餌を目の前に『ブギーマン』たちは飢えを思い出して活気づくのだった。

 けれどそれも束の間。
 近くの建物のドアが勢いよく開き、中からアンリが飛び出した。
 アンリの手にあるのは『幻朧桜の力の一片が宿る退魔刀』。納刀した鞘を片手に持ち、利き手で柄を握る。
 鯉口を切れば居合の剣筋が『ブギーマン』の一体を切り伏せた。
 しかし踏み込んだのは敵のただ中。
「こノまま囲んデ叩くゾ!」
 『ブギーマン』たちはアンリへ一斉に鉈を振り下ろした。

●狩られる立場の逆転
 アンリへ一斉に鉈が振り下ろされた。
 それに対し、アンリは――。
「秘剣抜刀――剛の型!」
 斬撃による乱舞で迎え撃つ。
 それは秒間に102回も放たれる断続的な斬撃……加えて受けたものを破壊する、ユーベルコード『××流秘剣・剛の型』。
「武器ガ……!」
「――私、剣士の端くれでもございまして。オウガ風情が鈍ら得意げに振り回すのを見ると、格の違いというのを見せつけたくなってしまうの」
 鉈を破壊するとアンリは即座にその場を飛び退いた。
 そこへ砲弾が着弾して『ブギ―マン』を吹き飛ばす。
 その隙に、アンリは再び刀を納刀すると『悪魔憑きの拳銃』で無理のない範囲で止めを刺しながら物陰へ再び隠れた。
「逃がスか!」
 『ブギーマン』たちはマリオンが作り出したガラスの迷路の攻略を諦め『アリス適合者』のアンリを追っていく。

「――剛の型!」
 入り込んだ物陰の多い路地の先で、『ブギーマン』たちは鉈を破壊されてなお蔦の腕を伸ばす。
 餓えた捕食者は目の前の餌に食らいつくことに必死だった。
 ――そして、必死過ぎてもうひとりの存在に気付かなかった。
「こうも隙が多くては斬りがいが無いな」
 『剣刃一閃』――『ブギーマン』の一体がジュウゾウによる一太刀で寸断される。
「これは命をやり取りする死合い故に。不意打ちの無作法は容赦願おう」
「……!?」
「よそ見をしている場合かしら?」
 意識の外からの追撃に気が動転した『ブギーマン』たち。
 そこへ、アンリによる至近距離からの銃弾がすかさず撃ち込まれる。

●襲撃の終わり
「な、あんだあいつら。幽霊になってこっちに来るぞ……!」
 ブライアンは慌てて指をさした。
 一度は倒れた『ブギーマン』のうち、何体かが霊体となり立ち上がったのだ。
 怨念で強化されたそれは、実態を持たないゆえにガラスの迷路をすり抜け真っ直ぐこちらへ向かってくる。
「落ち着いて。あのオウガはまだ消えていない……ということは。あの倒れているのを狙うんだ」
「お、おう! わかったぜ!」
 マリオンの指示に従い、砲撃を行うブライアン。
 その砲弾が瀕死の『ブギーマン』に炸裂すると霊体が消えた。
「この執念……余程の飢餓みたいだ。どっちにしても、思い通りになんてさせないけどね」
 マリオンは攻撃の瞬間の実体化を狙い『天光剣』を振るう。
 ブライアンもまた、『タンクキャバリア』を発動させ装甲を強化させた。
「「「フロント・ダブルバイセップス!!」」」
 担ぎ棒にくっついているマッチョたちが爽やかな顔でポージングを取り筋肉(装甲)を張りつめて鉈を弾く。
「「「アブドミナル・アンド・サイ!!」」」
 担ぎ棒の関係か少々ポーズに制限がある様だが些細なことなので割愛する。

 不意打ちを防ぐための守りの『ガラスのラビリンス』……その鉄壁の守りを、霊体対策のために解除するかという選択が迫られるその時。
「――お待たせしてしまいました。アリス様」
 周辺の殲滅を終えたメラニーが現れた。
 メラニーは爆発的なスピードと反応速度で、残った瀕死の『ブギーマン』たちを片付けていく。
 死の間際の抵抗で伸ばされる蔦さえ見切るその速度は、ユーベルコード『時間加速<<オーバークロック>>』によるもの。
「これで、オウガ共はすべて切り刻めたかと。残るは――」

 ――残るは、この街の何処かに居るボスのみだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『愛情と生命の魔女『ケット・アヴァロン』』

POW   :    愛しいからこそ奪われないように壊す…そうよね?
対象への質問と共に、【無意識の中】から【連想した愛しい存在】を召喚する。満足な答えを得るまで、連想した愛しい存在は対象を【絞首またはクラッキング】で攻撃する。
SPD   :    あなたには……これが効きそうね
【禁断の知恵の実】から【高次元を通して相手の情報を得る魔術】を放ち、【その知識を活用した魔術の行使】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    こんな魔術はどうかしら?
【生命の象徴のリンゴを、敵に見立て刺す事】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【命の脈動】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リサ・ムーンリッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●三章についてのお知らせ
 二章へのご参加、ありがとうございます。
 引き続き三章のプレイングの受付は予定通りに木曜の06月17日(木)からとなります。
 よろしくお願いいたします。

●美しいもの
「はぁ……つまんないの」
 この石造りの街で最も高い時計塔の上に『ケット・アヴァロン』は居た。
 彼女は望遠鏡で眼下の戦闘の一部始終を見ていた様だ。
「男のアリス二人旅……そんなのデキてる筈なのよ。だから、危機的状況で助け合う二人の尊い姿を見たかったのに……愛は同性同士でこそ尊く美しいの。ええ。女は女同士、男は男同士で愛し合うべきだわ」
 ……どうやら、この『美男美女の国』を支配するケットはそういう趣味らしい。
「もちろん個人的な趣味は増し増しなんだけど。でもねぇ、その友情を超えた愛の果ての死にこそ上質な魔力があるのよ」
 などと言いながら、ケットは望遠鏡を仕舞う。
「そんな二人の間に挟まるなんて、あいつ(猟兵たち)ら許せない! こうなったら私が直々に相手してあげる」

 時計塔を飛び降りながらヤドリギの杭を真下の地面へ刺す。
 すると、石造りの街のあちこちから木々が生えてきた。
 あたりは一気に森のようなうっそうとした木々に包まれていく……。
「ここは私の支配下の街。であれば準備は当然しているわ。結界増し増しの森のパワーで肉弾戦も問題なし。さあ、同性同士の愛の旅路に挟まる不届きものたち! 覚悟をしなさい!」

 森と化した街の中、猟兵たちの目の前に『ケット・アヴァロン』が降り立った。
(※結界による強化で殴り合いに普通に対応できる状態ですが、総合的な強さは普通のボスと同じくらいです)
マリオン・ライカート
&&&

・心情
…ええと、うん
趣味嗜好は人其々だけど、それを他人に求め強要するのは違うんじゃないかな?
それに挟まるというなら、君だって似た様なものじゃないか

だから…全力で止めさせて貰おう!

・行動
[真の姿を開放]し『ドレスアップ・プリンセス』にて変身する

アリスの二人や愉快な仲間たちを危険に晒すわけにはいかないな
【砲撃】による加速を加えた【ランスチャージ】で飛び込むとしよう

…時にケット・アヴァロン
君が見立てる事が出来る林檎は幾つだ?
仮に全員を見立てる事が出来ても、全員同時には刺せないだろう?
一気呵成に攻め立てる事で、私を止めるべきか、それとも他の猟兵を狙うべきかの択一を迫らせて貰おう
君はどちらを選ぶ?


陽殿蘇・燐
つまり、『百合に挟まる男絶許』と同じ考え方ね?(キマフュ出身なのでか、何となくわかる)
まあ、人の好みは否定はしないけれど。決めつけて当てはめるのはどうかと思うわ。

そして、厄介な魔術を使うのね?
命の脈動を覚えるのね…その『覚えて強くなった』という過去、『黒揚羽』で焼くわ。
ああ、その『黒揚羽』だけ攻撃しようとしても…見分けつくのかしら?擬態関係で『黒揚羽』『揚羽擬蛾』『麝香揚羽(姿のモデル)』『尾長揚羽』は似てるのよ?一種類は蛾だけど。
しかも、UCでクロアゲハ増えているのよ?暗くて見えないでしょう?
それで、他の攻撃も避けられる?

いっそ燃やす?燃やしちゃう?
何で燃料になる木を増やすのかしらね?


黒影・兵庫
(「あーゆーのをカップリング厨っていうのよ、黒影」と頭の中の教導虫が話しかける)
ありがとうございます!せんせー!
また一つ賢く…ならないですね!
(「さて森になったわけだけど、どうする?」)
オウガの森ならやることはただ一つ!
UC【煉獄蛍】で火計兵の皆さんを召喚し
この森ごとオウガを焼き払います!
もちろん味方には被害が及ばぬよう
延焼と温度調節を気を付けます!
そうやって敵を追い詰めて
『オーラ防御』で作ったオーラの檻で『捕縛』したら『衝撃波』攻撃で追い打ちです!
(「ついでに言葉責めしてやりましょ!このカップリングは絶対にありえない!それはない!って」)
え?やる必要あります?


卜一・アンリ
(「同性同士の愛」という単語を聞いてアリスの二人に)
……そういう関係なの?
あぁ、別に否定したいわけではなくてね?

UC【悪魔召喚「フォカロル」】。
魔術を施すのは私と、私の悪魔憑きの拳銃が発射する弾丸。

風を支配する翼を生やした弾丸の【クイックドロウ】で敵UCのリンゴを【武器落とし】。
上空へ【吹き飛ばし】たのを【ジャンプ】、【滑空】してキャッチ。
これでそちらのUCは発動できないわね?

この森も良い足場だわ、敵周囲の木々を跳ね回り(【地形の利用】【ジャンプ】【悪路走破】)、距離をとりながら【弾幕】で制圧してしまいましょう。

オウガの脚本のラブストーリーなんて願い下げだわ。
公演中止といたしましょう。


エドゥアルト・ルーデル
&&&

ホモよ!👉
ま、性癖は止められねぇんだって話ならわかる…

【質問されて連想した愛しい存在】…なんてこった目の前の猫耳美少女の幼女な姿が現れた!
首絞めされるーッ!それもまた格別…背がちっちゃくて抱きつきなってるでござるな!実に実にベネ!

無意識を読み取れるなら逆探はできる訳よ!なのでこの猫耳幼女にあーんな事やこーんな事する妄想を脳に直接送りつける!拙者もイケメンなのでアリよりのアリでござるネ!
因みに拙者アヴァロン氏自体のことも一向にそういった目で見てるが?

今幼女に抱きつかれてて忙しいから〆はブランドン君とジュビロ君でやるよろし
拙者と逆だったかもしれねぇメイドの土産に友情パワー発揮せんかい!


メラニー・インレビット
&&&
どどど同性同士の…!?
な、何を言っているのかは理解しかねますが、奴はきっとあらゆる意味で危険な敵でございます!
アリスさ…いえ、お兄ちゃん達はご自分の身を守る事に専念してくださいませ!

ハッ…我とした事が敵の言葉に心乱されるとは不甲斐ない…
覚悟しろ、だと?それは此方の台詞だ。
己の欲望の為にアリス様を玩ぶお前達こそ許されざる不届き者と知れ!

触れる事なく此方の生命を握るとは厄介な魔法だ…
ならば此方は高速詠唱と多重詠唱を行って大量に魔法弾を放ち、
その中に紛れ込ませた『時兎の刻印』を刻み付けてやろう
これでお前は急激に老いて死へと向かう…
我が生命の果実が潰れてしまう前に、その時間を終わりにしてやる!



●愛情と生命の魔女
 ――『同性同士の愛の旅路』。
 オウガ『ケット・アヴァロン』によるこの断言は一同に衝撃を与えた。

 その言葉に顔を赤らめ目をグルグルさせてフリーズしたのはメラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)。
「どどど同性同士の……!?」
 その横で卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は平然と二人の『アリス』へこう聞いた。
「……そういう関係なの?」
 立場や性別の先入観にとらわれないのはさすがモダンガール。
 この質問により呆然としていた二人――ブライアンとジュウゾウは我に返って否定をする。
「いやいやいや、アンリさん真に受けないで! 何言ってんのこのオウガのお姉さん!?」
「むぅ……おれに男色の嗜みは無いぞ」
「あぁ、別に否定したいわけではなくてね?」
「やっぱり誤解してるぅー!?」
 そんな中、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)はわざとらしい驚嘆のリアクションと共に二人を煽るのだった。
「ホモよ! 👉」

 降り立ったケットは穏やかに微笑みながらさらに言葉を続けていく。
「そうやって否定するところがますます怪しいわ……だって、見ず知らずの他人とふつう命を預け合うかしら? 同じ空間に二人いたらもうそれはカップルよ。この街で美女に目を奪われていたのは会話のきっかけにするためのカモフラージュ……きっとそう。そうだと言って?」
「いやほんと何言ってんのこのお姉さん!? 中身が残念すぎない!?」

 願望を垂れ流すケットと突っ込むブライアンの応酬が続く。
 ジュウゾウは渋い顔になり、アンリは武器に手をやりつつ緊張感のない状況に思わず様子を見てしまい、メラニーはまだ思考が帰るのに時間がかかりそうだ。
 そんな状況の中、エドゥアルトはぽつりとこうつぶやくのだった。
「ま、性癖は止められねぇんだって話ならわかる……」

●オウガによる被害
 ここまでのやりとりをじっと見ていた陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)はぽつりと呟く。
「つまり、『百合に挟まる男絶許』と同じ考え方ね?」
 その言葉は、このオウガの個体――この国を支配していた『ケット・アヴァロン』の特性を的確に表していた。
 ゲームなどの娯楽が豊富な世界出身である燐は、この手の趣味もよく知っている……その上で、燐はこのように否定もする。
「まあ、人の好みは否定はしないけれど。決めつけて当てはめるのはどうかと思うわ」
 先ほどケットが「同じ空間に二人いたらもうそれはカップルよ」と言い放った様に、これはケットの勝手な願望なのだ。
 そしてマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)に至っては戸惑いの割合が大きそうだ。
「……ええと、うん。趣味嗜好は人其々だけど、それを他人に求め強要するのは違うんじゃないかな?」
 マリオンの言う様に相手の心情を決めつけて強要する行為は見過ごせないだろう。

 一方で黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は連れであり指導の師でもある教導虫『スクイリア』から解説を受けていた。
(「あーゆーのをカップリング厨っていうのよ、黒影」)
 声に出さず兵庫の脳へ直接語りかけるのは何かしらの配慮だろうか?
「ありがとうございます! せんせー! また一つ賢く……ならないですね!」
 この件により兵庫の知識にひとつ新しい言葉が増えるのだった。

 一連の否定にケットが声を荒げる。
「はー!? 友情の次は愛でしょ! 生物的な義務がない純粋な愛じゃない! その果てに命を授かる神秘が世界の真理よ!」
 非難されているのは当人の意志を無視した決めつけなのだが……そこだけ耳に入っていない様子だ。
 恐らくこの『美男美女の国』も、ケットにより無惨に歪められているのだろう。

●開戦
「――ハッ……我とした事が敵の言葉に心乱されるとは不甲斐ない……」
 ここでメラニーの思考が帰ってきた。
「な、何を言っているのかは理解しかねますが、奴はきっとあらゆる意味で危険な敵でございます! アリスさ……いえ、お兄ちゃん達はご自分の身を守る事に専念してくださいませ!」
 メラニーはそう言うと『殺戮刃物』を手に一歩踏み出していく。
 まだ若干目がぐるぐるしているが、オウガ抹殺すべしモードに入れば余計な思考はクリアなものへ。
 ――オウガ死すべし。

 飛び掛かるメラニー。だがその刃物はケットに受け流される。
 森の結界で強化されているケットは接近戦にも難なく対応していた。
 そこに銃弾が頭上から降り注ぐ。
「この森は良い足場ね――オウガの脚本のラブストーリーなんて願い下げだわ。公演中止といたしましょう」
 木々の間を巧みに飛び移りアンリが『悪魔憑きの拳銃』で弾幕を張っていった――悪魔の力で弾丸を召喚できるこの拳銃にはリロードという行為が必要ない。
 ケットは魔術的な意味と効力を込めた木片を撒くとオーラの守りを高め、アンリの銃弾の威力を減衰させて防御する。
「うっとおしいわね!」
 ケットが頭上のアンリへ対応しようとしたその刹那。
「させるものか!」
「ぐっ……」
 マリオンによる斧槍の突進がケットを捉えた。
 真の姿を解放したマリオンの姿は王子様のソレから武人の姫へ……ユーベルコード『ドレスアップ・プリンセス』で得たドレスと茶色の髪をたなびかせ、ケットの防御へ斧槍『Saint-Esprit de Lune』を突き立てる。
「挟まるというなら、君だって似た様なものではないか!」
 オブリビオンに関する仕組みによって愛する者――リヒターを歪められたマリオンにとってこの手の介入行為は許し難い。
「だから…全力で止めさせて貰おう!」

●結界の崩壊
「この……っ!」
 ケットはメラニー、アンリ、マリオンの三人の猛攻に次第に押され始めていた。
(どういう事……? 私の結界の強化を上回る力だというの!?)
 多勢に無勢とはいえ、通常攻撃でここまで押されることに疑問を持つケット。
 その時、煤の臭いを鼻腔に感じた。
「――っ!?」
 気がつけば、付近のごく狭い範囲を残して周囲の森が燃えている――。
 石造りの街に生やした木々が、結界を繋ぎ止める楔が、燃えていた。
 足元から優位が崩れるその光景に、ケットは思わず足を止める……。

「オウガの森ならやることはただひとつ!」
 兵庫がユーベルコード『煉獄蛍』によってモノを燃やす蛍を召喚して指示を出していた。
 五百匹を超えるその蛍たちは森羅万象を着火させ延焼を制御することができる。
(「街は石造りだから大丈夫だと思うけど、中の家具が焦げない程度に温度は調整しましょう」)
「そうですね! せんせー! 気を付けます!」
 そして木々を燃やしていくのは蛍に限らない。
 黒揚羽もまた木々に火をつけていった。
「何で燃料になる木を増やすのかしらね? いっそ燃やす? 燃やしちゃう?」
 燐はそう言いながら芭蕉扇をひらりと仰ぐ――ユーベルコード『炎術:芭蕉扇』。
 すると炎を纏ったクロアゲハが放たれて結界の木は炎上していくのだった。

「や、やめなさい! 今すぐ火を消して!」
 事前に準備した場が崩されてしまい、ケットは叫ぶ。
 しかしそれに応じる者はいない。そこへ……。
「戦場でよそ見かよぉ!!」
 側面へ回り込んでいたエドゥアルトが路地から身を躍らせて『マークスマンライフル』を撃ち込んだ。
 ケットは咄嗟に回避行動をとるも肩に銃弾を受けてしまう。
「……痛っ!」
 結界が弱まったことで防御力も低下している……オウガから血が流れた。

●愛情と生命の魔術
「あまり手の内は見せたくなかったけれど……こうなっては仕方がないわ」
 ケットは魔術の媒体となるリンゴを取り出した。その実は魔術の性質上、愛と知恵と生命を象徴する。
「あなた達の愛しい存在は何? 愛し合う相手……心から思う相手は?」
 その質問は無意識に働きかけ、聞いた者に愛しい存在を連想させてこの世界に映し出す――。
 ――この術に絡めとられたのは、エドゥアルトと兵庫の二人。
「……なんてこった目の前に猫耳美少女の幼女な姿が現れた!」
「あっ、えっ!? イリスさん!? ……じゃない……!」

 召喚された存在が襲いかかっていく……その様子をケットは楽しそうに眺めた。
「愛しいからこそ奪われないように壊す……そうよね? 愛ゆえに、奪われないため、離れないようにと傷つける独占欲を彩って。そんな重たい愛をあなた達はどう受け止めるのかしら……?」
「首絞めされるーッ! それもまた格別……背がちっちゃくて抱きつきになってるでござるな! ぐえっ! 思ったより怪力だこれ! しかし実に実にベネ!」
「……ってそこの髭は何てものを想像してるのよ!?」
 ケットの幼い姿に締め上げられながら幸せそうなエドゥアルト。
 対する兵庫は彼女が偽物だと見抜いたものの苦戦している様だ。
 召喚された存在は、ケットが満足するまで幾度と現れては首を絞めようと迫りくる……。

 続けてケットはリンゴにナイフを突き刺した。
「こんな魔術はどうかしら?」
 するとメラニーの足に刺し傷が生まれ機動力を削ぐ。
「ん-? 心臓じゃなかったわ。すこし外したかしら?」
「くっ……触れる事なく此方の生命を握るとは厄介な魔法だ……」
「けれど、あなたの命は脈動はわかって来たわ。次は当てるわよ」
 そう言いながら、ケットは飛び退き距離を離した。
 そこへ飛翔するマリオンが精霊砲を推進力として再び斧槍で突進する。
「逃がすものか!」
「来たわね!」
 ケットは木片を撒くと、新たに樹木を生やしてマリオンの攻撃を防いだ。
 樹木に遮られたマリオンは、予想通りといった様子でケットに話しかける。
「……時にケット・アヴァロン。君が見立てる事が出来る林檎は幾つだ?」
「こいつ……!」
 その質問に、ケットの顔が歪んだ。

●魔術のカラクリ
 マリオンはケットへ確認するように話しかける。
「仮に全員を見立てる事が出来ても、全員同時には刺せないだろう? 全員を同時に見立てられるのなら、さっき全員を刺せばよかった。けれど君はそれをせず距離を離した」
 そんなマリオンの攻撃にアンリの銃撃が加わった。
「他にも制限がありそうね。だって、出し惜しみにしては回りくどいもの」
 アンリは隙を作らぬよう弾幕を張り続けた。
 ケットは樹木で盾を作っていくが、その樹木も兵庫が事前に放っていた『煉獄蛍』で燃やされてマリオンの斧槍の刃とアンリの銃弾を防ぎきれない。
 時おり再生を意味するオガム文字を刻んだイチイの枝に魔力を込め傷を癒しているが、防戦一方で反撃が出来ていなかった。
「さあ、私を止めるべきか、それとも他の猟兵を狙うべきかの択一を迫らせて貰おう。君はどちらを選ぶ?」
 アンリの援護を受けながら、マリオンは斧槍を振るって攻め立てていく。

「言わせておけば……!」
 逃げと防御に徹していたケットが立ち止まった。
 そしてヤドリギの枝を取り出すと地面へ投げようとする……しかしその時、燐が放つ蝶の群れが地面に落ちていたドングリを燃やした。
「オークの実が……!」
 再び森で結界を作ろうとしたケットの目論見……それは燐が阻止した。
 ケットの魔術はケルトの樹木信仰をベースにしており特に火との相性が悪い。
「厄介な魔術を使うのね? けれど、強力なぶん準備に時間がかかるのね」
 燐は続けて地面に撒かれていた木片を燃やしていく。
 ……それは予言を意味するオガム文字を刻んだブドウの木片と、知識を意味するオガム文字を刻んだブナの木片。
 加えて燐は『黒揚羽』『揚羽擬蛾』『麝香揚羽』『尾長揚羽』を舞わせてケットの視界を包み込んだ。
 蝶に包まれた先にあるのは、ユーベルコードの効果も加えた幻覚と暗闇の世界。
「――暗くて見えないでしょう?」
 暗闇に燐の声が響く。
「手あたり次第に魔術を使おうとしてもあまり意味はないわよ? だって、このクロアゲハは一時的だけれど過去も燃やせるもの。さっきの命の脈動を覚えたという過去も焼かせてもらったわ」
 それは炎を纏う黒揚羽の能力のひとつ。限定的ではあるものの、それは確実にケットの魔術の精度向上を無力化した。

●そして終焉へ
 暗闇に包まれたケットの足が止まるその時、アンリがユーベルコードを使用した。
「――『フォカロル』!」
 ユーベルコード『悪魔召喚「フォカロル」』……その力は召喚した悪魔に、魔獣の翼を与える魔術を行使させる。
「闇雲に使われて偶然当たっても困るし、そのリンゴ没収させてもらうわ!」
 魔獣の翼が生えた弾丸が跳ね上げる様に下からケットの手へ当たった。
 手から離れたリンゴは魔獣の翼が起こす突風によって上へと吹き飛ばされる。
 リンゴは宙を舞い、空中で翼を得たアンリの手に収まった。

 この間『時杖クロノス』をへ持ち替えたメラニーは攻撃の準備を進めていた。
「貴様、はじめに覚悟しろと言ったな。それは此方の台詞だ――」
 メラニーは高速で編み上げた、幾多もの魔法弾を放つ。
「――己の欲望の為にアリス様を玩ぶお前達こそ許されざる不届き者と知れ!」
 ケットが何かを取り出そうとしている。
 それは防御用の魔術の木片か、それとも反撃のための新たなリンゴか――。

 一方でこちらはケットが放った魔術を受け入れて猫耳幼女に締め上げられつつ幸せそうなエドゥアルト。
 身長差で本来の攻撃である絞首ができないので威力が低くご褒美の様になっている。
(魔術が途切れないということは維持するための干渉の経路があるということ……つまり逆探ができる訳よ)
 ちっちゃな抱擁を一通り堪能したエドゥアルトはおもむろにユーベルコードを使用した。
 それは『CCM<<サイバーカウンターアタック>>』……何かしらの干渉を感知および遮断しつつ逆探知をし、相手の脳へ干渉を仕掛ける電脳魔術。
 今回は遮断をせず逆探知のみを行い、そして……。
「見ぃつけた」
 エドゥアルトは気持ち悪い笑みを浮かべた。

●魔女の終わり
 ケットはメラニーが放とうとする魔術に対し、防御の結界を張ろうとした。
 何秒かは保つはず。その次はどうする?
 手持ちの触媒を全て用いて木々の壁を作れば逃げられるだろうか。
 ケットはそんなことを考えていた。

 その思考にノイズが走る――。
 差し込まれたのは、エドゥアルトが送った様々な妄想だ。……そして、同時にエドゥアルトの声が脳内に響いた。
 ――因みに拙者アヴァロン氏自体のことも一向にそういった目で見てるが?

「ヒッ!?」
 悲鳴と共に鳥肌を立たせたケットが固まる。
 この隙は致命的だ。
 メラニーの魔法弾が突き刺さり、ダメージと共にケットに死神の刻印が刻まれた。
「これでお前は急激に老いて死へと向かう……」
「く……しまった……」
 その刻印はユーベルコード『時兎の刻印<<ラピッド・シニリティー>>』。この刻印を付与されたものは急激な老化や劣化を受け続ける。
「この、小娘が……!」
 ケットは新たなリンゴを出すと、メラニーを睨みリンゴにナイフを突き立てた。
 しかし、メラニーは手足を切り刻まれながら魔法弾を放ち、死神の刻印を重ね続ける。
「我が生命の果実が潰れてしまう前に、その時間を終わりにしてやる!」
 それは防御を考えない命の削り合いだった。

 この時、ケットの攻撃を兵庫が止めた。
「これ以上、仲間は傷つけさせませんよ! ですよね、せんせー!」
(「こっちもオーラ防御で作ったオーラの檻で動きを封じるのよ!」)
 少し離れたところには緑髪の少女の偽物がオーラの檻で動きを封じられている。
 同じ手段を取るのだろう。
「はい! せんせー!」
 兵庫は『スクイリア』の補助を受けながら念動力とオーラでケットを捕縛した。
「これでもう抵抗はできませんね! 衝撃波で追い打ちです!」
(「ついでに言葉責めしてやりましょ! この二人のカップリングは絶対にありえない! それはない! って」)
「え? やる必要あります?」
 と兵庫と『スクイリア』がやり取りしているうちに、ケットの顔に小じわが現れてみるみる老い始めた。
 老いに抵抗する魔術にまわすための魔力が無くなったのだろう。

●オウガからの解放
 動けないまま年老い、しわくちゃになっていくケットの姿にエドゥアルトは悲しみを表した。
「今幼女に抱きつかれてて忙しいから〆はブランドン君とジュビロ君でやるよろし。拙者と逆だったかもしれねぇメイドの土産に友情パワー発揮せんかい!」
 その提案に戸惑うブライアンとジュウゾウ。
 とりあえず二人でサムライブレイドを持ってせーので振り下ろすことにした。
 老衰で命が尽きる間際、ケットはその光景をどのような気持ちで見たのだろう。

 ――こうして猟兵たちの活躍によりこの『美男美女の国』はオウガの手から解放された。
 この解放により自由を手に入れた『愉快な仲間』たちは猟兵たちに感謝の言葉を贈った。
 もちろん狙われていた『アリス』の安全も確保された。
 二人の『アリス』はもうしばらくこの街に留まり美女を狙ったナンパを試みるらしい……しかしフラれ続けた末に再び旅を再開することになるだろう。
 このアリスラビリンスに今日があり、明日が訪れる限り、二人にはアリスラビリンスのどこかで再び会える筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月20日


挿絵イラスト