大祓百鬼夜行㉕〜お前も永遠にしてやろうか
●グリモアベース:予知者、クイン・クェンビー
「……あのさ~」
少年は眉根をぐーっと寄せたまま、腕を組み、首を傾げに傾げて言った。
「愛しいから殺すってどーゆー理屈ー!? クイン、全然わかんないんだけど!」
どうやら、大祓骸魂のことを言っているらしい。
愛と殺意は表裏一体――そんな言葉は、このアホには少々縁遠いようだ。
さて、大祓百鬼夜行もいよいよ終局間近である。
スカイツリーゲイン塔を占拠した大祓骸魂は、その虞を一気に解放。
東京上空にカクリヨのごとき空間を生み出したのだというからたまらない。
これが一般人に「忘れられて」いない状況であれば、どれほど大変だったか。
究極妖怪として忘れられていたことが、こんな形でプラスに左右するとは。
「全然わかんないんだけど、大祓骸魂はとにかく世界を滅ぼすつもり満々だよ。
あとひと刺しをさせないためにも、みんなの力を貸してね! あ、でもー」
意気揚々と言ったクインだが、これまた眉をハの字にした。
「大祓骸魂は、これまですべての妖怪のあらゆる手段を使ってくるんだって。
虞の力で真の姿を晒させたり、あとは迷宮を生み出したり、他にも色々。
その手段に応じて有効な対策は変わってくるから、戦争の経験を生かしてみて!」
相手は腐っても究極妖怪だ。油断すれば命取りになるだろう。
……まあ、なんかトンチキすぎる攻撃もしてくるみたいだけども。
「え? お月見? ……あー! そういえばあれも攻撃手段なのかー!?」
クインはアホの顔で言った。とりあえず転移は始まったそうです。
唐揚げ
●プレイングボーナス
(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)
というわけで大祓骸魂、必要なさそうですが念の為の攻略追い上げ枠です。
完結最優先でリプレイを執筆してまいります。
完結前に祓が足りてたりしたら……まあその場合も完結優先で!
戦争も本当にあと一歩、いえあと半歩、いえ四分の……とにかくもう少し!
どの戦場のプレイングボーナス基準を適用するかは皆さん次第です。
どこかに該当戦場の番号を書いておいて頂けるとわかりやすいと思われます。
ご参加、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オリヴィア・ローゼンタール
⑮
この世を滅ぼす愛、か
その想い、成就させるわけにはいかない
王子との戦いで見せたセーラー服の姿に変身
我ら既に虞知らず、太刀筋が鈍ることはないと識れ!
飛来する刃の軌道を、強化された【視力】で【見切る】
念力で操作するなら、使い手の癖が存在する筈(情報収集・学習力)
数を出してくるというのなら、我が剣閃は一振りごとに冴えを増す!(鏖殺の魔剣)
斬り払い(受け流し)ながら駆け抜ける(ダッシュ)
誓ったのだ、施しの王子に
貴様を討ち、ふたつの世界を守り、勇気ある妖怪たちをすべて救うと!
極みに極まった無謬の剣閃で断ち斬る(切断)
●生と死の合間を抜けて
生と死を繋ぐもの(ヤマーラジャ・アイビー)。
大祓骸魂をして「なまくら」と言わせるその刃物の強みは、切れ味ではない。
その最大の力――それは、「あらゆるものを殺す力」だ。
世界さえも「殺す」刃は、一個の生命であれば即座に「殺して」みせるだろう。
ある意味で生命の祝福者たる猟兵にとって、もっとも危険な武器。
オリヴィア・ローゼンタールは膨大な虞と鈍ら刃のふたつの脅威に立ち向かう。
「この世を滅ぼす愛……その思い、成就させるわけにはいかないッ!」
スカートを翻らせ、粘ついた海のような見えざる虞のなかを勇敢に駆ける。
これまでの戦いで得た自信と、「虞知らず」の力。それが、彼女を突き動かす。
そこへ飛来する無数のヤマーラジャ・アイビー! オリヴィアは身をひねった!
「たとえどれだけ危険な武器だろうと、軌道さえわかれば……ッ!」
そこに大祓骸魂の意思が介在する以上、「くせ」というものがある。
オリヴィアはわずかな攻撃から敵の狙いと癖を見切り、ぐるりと回転して回避。
きりもみ回転の中から鏖殺の魔剣を繰り出し、風圧で刃を吹き飛ばした!
「猟兵――なぜ、私の愛を否定するのです? なぜ、永遠を否定するのです」
「そんな永遠を私たちは求めていない」
心底理解できぬといったふうの大祓骸魂の言葉に、オリヴィアは言った。
がきん、と音を立てて刃がぶつかり合う。火花が銀髪を照らした。
「そもそも、殺されて初めてなし得る永遠など、誰にとっても幸福ではない。
世界は未来に進むもので、私たち生きる人間が連綿と受け継いできた歴史だ!
永遠というものがあるとすれば、命と命が紡ぐ繋がりにこそあるはず!」
「けれど、そんなものは失われてしまう。神でさえも、妖怪ですら。それは哀しい」
「だとしても――!」
オリヴィアの背中を突き動かすもの。それは、誓いだ。
「私は誓ったのだ。施しの王子に。ふたつの世界と、勇気ある妖怪たちを護ると。
彼らが愛したがゆえに去ったこの世界と、彼らの新たな故郷を救ってみせる!」
ガキキキキキ――!
飛来する刃を払う! 払う! 払う! 払う!
「だから私は、貴様の愛を認めない。この剣にて、すべてを断ち切るッ!」
鏖殺の魔剣が、大祓骸魂に届いた。
「……理解、出来ない」
己を断ち切った斬撃を見下ろし、大祓骸魂は首を振った。
「いずれ終わるものを、なぜ、受け入れられるというの」
「終わらせることで成立する永遠は、ただの幻でしかないから」
オリヴィアの金色の瞳は、澄み渡った空のように輝いていた。
「私たちと貴様は決して相容れることがない。ゆえに、必ず滅ぼす」
限りある生の力強さを肯定するその姿は、まさしく生命の祝福者たる。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
お前は消え失せるまであと幾らあるのだろうな
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
・真の姿
能力行使時に僅か、背後に覗く亀裂の向こう
無限に広がる透明な空虚
真なる全が故の絶無こそ灰色の男の本質
己が本質を呼び込み境界を以て世界を染める
全ての原点たるが全なる空虚
如何なものでも塗り潰され意味を失い絶無しか残り得ぬ
これが俺故に俺は困らんが
消える気がないのなら全存在を賭けて抗うが良い
万一付近に味方があれば煌皇にて保護しておく
※ボーナスは④の暴獣形態で
※アドリブ歓迎
●亀裂の向こう
人智――否、神智を越えた虞は、ただ相対するだけでも相応の"格"が要る。
それこそ妖怪たちを束ねる親分並の、同じ虞が必要なのだ。
しかし虞とは時の重さ、積み重ねた年月だけが生み出し得るもの。
猟兵の多くはそれを持たぬ。ゆえに、虞知らずの力が対峙を可能とする。
それでもなお、虞は見えないガスのように心身を苛む。
狂い咲く彼岸花は葬送の象徴であり、その只中で大祓骸魂は嗤っていた。
「あなたにも永遠をあげましょう、猟兵よ。私の愛しい骸の海でお眠りなさい」
「断る。消え失せるべきはお前だ、オブリビオン」
アルトリウス・セレスタイトは無表情で言い放ち、"亀裂"を広げた。
光とも呼べぬ透明の空虚――絶無が、灰色の男をシルエットめいて照らす。
「前提としてお前は消え去る。お前の愛も、願いも、成就することはない」
彼岸花を、虞を染め上げ、全なる空虚がすべてを支配していく。
「これは――」
「全存在を賭けて抗うがいい。もっとも、存在を許すことなどないが」
虞さえも越えて、アルトリウスの無限に加速した拳が大祓骸魂に叩きつけられる。
究極妖怪すらも驚かせるその絶無こそ、灰色の男の本質。
双眸の青い燐光だけが、かろうじて彼が人の側にあるものであることを示していた。
その拳、否、根源的なる攻撃は、虞などでは止められない。
理解さえも超えた原理こそが、彼の力なのだから……!
成功
🔵🔵🔴
御狐・稲見之守
⑥『よその戦争を無視して宴会する!』
……ふふ、幽世に来て初っ端の出来事を思い出す。
さて、妖怪がこうして"祭り"に集まってやること
皆はわかるかな?
そうだね、酒盛りだね。
"宴会"の時間だオラッッッ!!!!
古来よりカミへの祈りや魂鎮めのため祭りはあった。
つまりここで酒を呑んでも良い。というか呑む。
我が今決めたが文句あんのか? あ?
ごちゃごちゃうるせーーーー!!!
ぁーそこの、大祓の。お前だお前。
お前なんか面白いことしろ。
●ここを宴会場とする!
「"宴会"の時間だオラッッッ!!!!」
「"!?"」
突然スカイツリーゲイン塔に殴り込んできた女に目を剥く大祓骸魂。
「何を、言っているのですか……? ここは決戦の場……」
「は? そんなこと関係ないが? 我が酒盛りつったら酒盛りすんだオラ」
「ひっ」
御狐・稲見之守のガンつけは、大祓骸魂ですらビビらせるほどである。
相手がどう攻めてこようが関係ない、全力で酒を飲む。全てを無視して。
カタストロフの幼生すらねじ伏せる猟兵の宴会パワーは大祓骸魂にも有効だ!
あ、虞知らずってそういうこと? まあたしかに知ったこっちゃねえ勢いだけども!
「――……ふふ、こうしていると、カクリヨに来て初っ端の出来事を思い出すな」
稲見之守はいーい顔で盃をガバガバ傾けつつ、シリアスな笑みを浮かべた。
やってることはシリアスぶち壊しにもほどがある愚か行為なのだが、
実際にそうやって解決された戦場がある以上、有効になっちゃうんだよね!
「古来より、カミへの祈りや鎮魂のため祭りはあった。
つまりここで酒を呑んでもいいということだ……わかるか? え?」
「た、たしかにそれはそうですね。けれど……」
大祓骸魂はびくびくしながら上告しようとした。
そもそもなんで虞を纏う自分が酌とかしてるのかはるかに謎だ。
だが、稲見之守の"圧"はそのぐらいだった。大祓骸魂だって女の子だもの。
「あ!? 我がいま決めたことに文句あんのか!?」
「今決めたと言いましたね!?」
「ごちゃごちゃうるせーーーーー!!!!」
パリーン! 稲見之守はそこらへんの壁に盃を投げつけた! コワイ!
一切道理の通じない相手に、大祓骸魂はもはやシリアスを保てない。
ネタって怖い。ノリに呑まれたほうが弱くなっちゃうんだもの。
「よしわかった。大祓の、面白いことをしろ」
「えっ」
「面白いことを、しろ。なんでもいいぞ、我が採点してやる」
挙句の果てに無茶振りを始めた! 一応戦争最後のシナリオなんだぞこれ!
別のシナリオでシリアス保ってるからってやりすぎじゃなかろうか!?
「そ、そんなことを言われて面白いことが出来るわけがないでしょう!?」
「いいからやれ! はよ! はい、大祓ののいいとこ見てみたい!」
「誰か助けてください、誰か……!」
大祓骸魂、意外と攻め攻めにされると弱い説がぶち上がった。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・多摘
③塔の中のトラップを解除する
逃しはせぬ。
ここで必ず討ち果たしてくれよう。
百霊鎮守塔…罠の塔か。
見るからに厄介なアスレチックになっておる。
確か飛行で上を目指すのは戻されるはずじゃから地道に進まねば。
UCで召喚した式神に先行させつつ祟り縄を探検家の鞭のようにして移動に使ったり、崩れる足場は空中浮遊で少し浮かび凌いだり。
しかしこれだけがトラップ…?とふと階段から下を見れば何かヤバそうなヒガンバナが下から上に広がってきている。
あれに呑み込まれたらヤバいと直感、高速思考活用しつつ全速でアスレチック突破目指す!
そして最上層についたら丁寧に灯籠を磨く。
これで大祓骸魂の力は削られた、か?
※アドリブ絡み等お任せ
●登れ、昇れ
百霊鎮守塔――竜神の山を護るその塔もまた、この地に出現していた。
おそらくはこの塔自体が、かりそめのカクリヨを維持する要のひとつなのだろう。
つまり罠を超えて塔を攻略すれば、敵の力を削げるはずだ。
ゆえに水鏡・多摘は、邪神討つべしと意気込んで塔に踏み込んだのだが……。
だが入るなり、多摘は喉から唸り声を漏らした。
「見るからに厄介なアスレチックになっておるな……罠もあろう」
飛行で一気に登りたいところだが、この塔の霊力(あるいは呪詛)がそうさせぬ。
それをすでに同じ戦場で心得ていた多摘は、式神を先行させつつ上を目指す。
「む!」
踏み足が乗った瞬間、がらがらと音を立てて足場が崩れた。
呪いを発動しない程度にわずかに浮かび、あわや落下の危機をかろうじて躱す。
そこで背後の壁から仕込み矢が飛び出した! 油断ならぬトラップの連鎖!
「ええい、邪魔な……! しかし、これならばまだ対処できんほどではないな」
多摘は神経を尖らせ、式神からの情報も活用してトラップをくぐり抜けていく。
……何かがおかしい。
直感でしかないが、違和感がある。多摘は何気なく下を見た。
すると……おお、階段を覆うように蔓延る、不気味な彼岸花の根と花々!
「あれは……まずいな。飲み込まれるわけにはいかん」
多摘は思考を高速化させ、全速力でアスレチックを突破していく。
巧妙に絡み合ったトラップは、挑戦者を油断させるブラフだったのだ……!
「大祓骸魂め、味な真似をする。だが、汝の存在は決して認めぬぞ!」
登れ、昇れ。彼岸花に絡め取られぬように。
追われるような業腹な気分に唸りながら、多摘はただただ上を目指す――。
……そして。
「やれやれ……これが例の灯籠じゃな」
なんとか最上階に辿り着いた多摘は、灯籠を丁寧に磨いた。
すると灯籠はぼんやりと輝きを放ち、充満する虞の気配が減じていく。
「ふん、罰当たりなことをするからこうなるのだ。次は直接燃やしてやろう」
多摘はその輝きを見て満足気にうなずき、塔から飛び立っていった。
大成功
🔵🔵🔵
ローザ・ブラッド
愛おしさ故に殺してしまえる気持ちは分かるわ
全てを永遠にできたなら、ずっと狂おしい心は満たされているから
でも…駄目よ
全てを壊すなど
死はとても冷たい
殺した過去は心に温もりを与えない
そんな儚くも哀らしい愛も素敵だけれど
私はどうせ永遠に愛するのならば、この手で愛おしい人を抱いて――喰らいたい…
真の姿
艶やかな真紅の長髪
血色の瞳に赤黒い薔薇を飾ったドレスを纏う薔薇の化け物と化する
貴方の愛はとても魅力的よ
噫、叶うならば貴方と愛を語り合いたかった
されど
それは叶わぬから
踊り明かしましょう?私と
貴方の世界への愛を教えて
UC
薔薇の花弁が舞う
貴方を逃がさぬよう
包み込んで花の刃で切り裂いて
私の全力の魔法でお相手するわ
●永久への想いを刹那に変えて
愛おしさゆえに、愛しいはずのものを殺してしまう――殺してしまえる。
その気持ちは、ローザ・ブラッドにとって理解できる感情だった。
「すべてを永遠にできたなら、ずっと狂おしい心は満たされるんだもの……」
陶然とした表情は、しかし哀れみめいた否定の色を宿している。
理解はできる――だが、和合は出来ない。彼女の思いには続きがあるのだから。
「でも、駄目よ。すべてを壊すなんて」
「……何故です? あなたは愛するものが永遠でなくともいいと?」
「そんなことはないわ。ただ、死はとても冷たいでしょう?」
ローザは訝しむ大祓骸魂に言った。
「殺した過去は、心にぬくもりを与えてはくれないのだもの。
……まあ、そんな儚くて、"哀"らしい愛も、素敵だけれど」
くすりと微笑んで、ローザは続ける。
「私は、そうね。どうせ貴方のように永遠に愛するならば……」
この手で、愛おしい人を抱いて――。
「喰らいたい」
銀色の髪が真紅に染まり、ふわりと風になびいた。
瞬いた赤い瞳はさらに血の色を増し、ドレスを彩るのは動脈血めいた赤黒い薔薇。
人ではない。怪物だ。薔薇の化け物がそこに生まれた。
「貴方の愛はとても魅力的よ。だから、噫――叶うなら、貴方と愛を語りたかった」
虚空より召喚された妖怪たちが、薔薇の化け物に襲いかかる。
ドレスを彩る薔薇がほつれまた芽吹き、花弁は嵐となって骸を染めた。
紅色。血の色。炎の色。はじまりでありおわりの色。
ローザが舞い踊るように指を滑らせ歩むたび、真紅の薔薇はすべてを包む。
いばらが骸魂を絡め取り、棘で戒め、紅色がすべてを洗い流す。
鋼よりもなお鋭き刃。虞さえも切り裂くその感情もまた……愛なのだろう。
「されど、それは叶わぬから――せめて、踊り明かしましょう?」
舞踏会の主賓のように、ローザは艷やかな表情で指を伸ばす。
「貴方の世界への愛を、私に教えて……?」
「……いいでしょう。ならば、あなたもまた永遠に」
紅色が乱舞する。大祓骸魂の虞が薔薇とぶつかり合い、散り、骸魂がまた滅びる。
切り結び、ぶつかり、離れては新たな力を生むさまは、まさに舞い。
どちらもが微笑んでいた。無尽の愛に染まった夢見る娘のようにあどけなく。
どちらの愛も、美しく――そして、おぞましい。
ただひたむきで純粋なことは、誰にも否定できるはずがなかった。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
⑧
後、出来たら真の姿解放
(愛しいから殺す
それは
常春桜の「そのときが来たら、私を殺して」の答えに当て嵌まる気がして)
一方的な約束されたが呑めず
顔が歪むが前見据え
大祓骸魂、お前の”愛”
通す訳には行かねェ
俺はこの世界を護る
秘める想いは亡き主へ
まぼろし橋で邂逅
”まぼろし”に逢う意味はあった
共に盃を交わした
(…本当は
俺を置いていって欲しくなかった
貴方は今でも俺が一番尊敬する
憧れのひと)
UC使用
複製の鏡で全部受け止め
真の姿解放
イラ参照
「余は器の玄程、甘くは無い
汝に何も感じぬ
創造主の命の為
仇為す者は塵一つ残さぬわ」
1枚の鏡に座り上空へ
剣使わず本体を使う(真の姿の俺は全能力使える
敵のあらゆる攻撃全てカウンター
●幾百年経とうとも
まぼろし橋でのわずかな憩いの時は、杜鬼・クロウに救いをもたらしてくれた。
剽げた好漢でも、敵も味方もからかう美丈夫でもなく。
あるじの子として過ごせた時間は、少なからず彼の心を癒やしてくれた。
……懊悩が消えたわけではない。
彼の心はいまだ常春の君のもとにあり、きっとそれは戻るまい。
いつかの言葉が脳裏に反響する――それは、邪神の在り方によく似ていた。
愛しいから、殺す。
永遠にしたいと想う。
留め置きたいという思い。理解できてしまうからこそクロウは渋面を浮かべた。
「……大祓骸魂」
クロウは懊悩を振り払うように、重々しい声で言った。
「お前の"愛"、通すわけにはいかねェ。俺は、この世界を護る」
決然たる宣戦布告――あるいは、駄々をこねる己に言い聞かせるような。
苦々しい思いも噛み締めて、クロウは戦場に立つ。ひとりの、男として。
――主。俺はよ、本当は……置いていってほしくなんて、なかったんだ。
腹の底に沈めた言葉は力のよすがとなり、曇りなき神鏡の写し身を顕現させた。
飛来した絶死刀、すなわち生と死を繋ぐものの刃を、疵なき黄金が受け止める。
……そしてクロウの姿もまた、常の濡羽色の男から大きく変じている。
「その姿……いえ、その力は――」
明らかに変質した力の気配に、大祓骸魂は目を眇めた。
神とは絶対的強者であり、それゆえに定命のものと超えられぬ隔たりがある。
ゆえに通常、大祓骸魂の表情は虫や路傍の石を見るようなものだ。
……だが少女が新たに浮かべた相貌の気配は、「同じもの」を見るもの。
「余は器の玄ほど、甘くはない。汝に何も感じぬ」
さきほどまでの人間らしい懊悩は消え失せ、超然とした声音でそれは言った。
「創造主の命のため、仇なす者は塵一つ遺さぬわ。……覚悟せい」
無数の黄金鏡を伴に、ふわりと宿り神の身体が空に浮かんだ。
生と死を繋ぐものの複製体が、それを矢衾めいて貫こうと全周囲から飛来する。
「小賢しい」
睥睨。あらゆるものを「殺す」刃は反転し、大祓骸魂を逆に襲った。
代償に砕けた鏡の欠片も加えた刃の嵐は、大祓骸魂の攻撃よりも大規模だ!
「……く……っ!」
荒れ狂う力は、永遠を求むる太古の邪悪をして顔を顰めさせるほど。
そのさまを冷たく見下ろしながら、クロウであるはずのモノは呟いた。
「永遠など、余も器もいささかとて信じてはおらぬ。そんなものは、在り得ぬのだから」
主は俺を置いていった。
創造主もまたもはや亡い。
愛も、哀も、いつかは風に曝された石のように磨り減り消えていく。
ならば、永遠も刹那も同じこと。そこに、意味などない。
(――だのに俺は変わらねェ……なンざ、おかしな話だな)
沈んだ意識の海で、男は皮肉げに嗤った。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
⑱
◆ニル/f01811と
やれって言われたらやれるけど
自分で選べって言われるのは難しいよな
……ああ、そういうこともあるだろうけど
よりにもよって俺の一番苦手な話じゃない?
お前が言うなら付き合うけどさ
【影装の牙】で銃を形作る
攻撃回数を増やすべきかな
防御は最低限でいい――ニルが守ってくれるから
足を止められた妖怪たちから撃っていくよ
不殺が必要ならそう対処するし、必要なければ効率を最優先
数減らしは一般人に危機がない範囲、道が開けるまででいい
結局のところ、首魁を墜とすのが一番早い解決策だ
恋うことを悪いなんて、今の俺には言えないけど
それで世界を壊されるわけにはいかない
俺の好きなひとは、そういうのを悲しむんだよ
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
匡/f01612と
⑱
……何でも良いって言われると、逆に困らねえ?
うーん……次の課題は選ぶの上手くなることか……
何でも使って来るってんなら
呼び出された妖怪たちが一般人を襲ってるってこともあるんだよな
ならそっちを止めて本体を叩こうぜ
天罰招来、【氷獄の処刑者】
上空を飛行して妖怪どもと大祓骸魂の足止めを
匡の盾になりたいのは山々だけど、あいつ守られるの嫌いだし
それなりにヘイト買うくらいにしとこうか
そいつはそう簡単には外れんよ
外したかったら大人しく帰ることだな――無理?ふはは!
ならばそこで待っているが良い
匡の弾丸が、今に貴様らを穿つぞ
愛、愛と煩いんだよ
神も人も怪物も、いつだってそれで身を滅ぼすのであろうに
●永遠の終わり
妖怪たちが溢れ返る。
その存在を忘れてしまった人々は、妖怪を知覚することが出来ない。
つまり、殺されるしかない――対処できるのは、虞を知らぬ猟兵たちのみ。
「それは見過ごせんなあ。そんなことをするために喰われたわけではあるまいによ」
オーロラめいて特殊空間の幻影が浮かぶ空を、ニルズヘッグ・ニヴルヘイムが飛ぶ。
その翼はブリザードのように白く染まり、羽ばたくたびに氷の粒を散らした。
きらきらと粒子が舞い散るさまは、夜闇もあって星のように思える。
――とはいえ、ニルズへッグが降らせるのは、星のような甘いものではない。
呪言。
この世ならざる呪詛の枷を生み、罪人を縛る絶対の戒め。
人々に襲いかかろうとしていた妖怪たちは、その身を戒められ身悶えした。
「そいつはそう簡単には外れんよ。外したかったらおとなしく帰ることだな」
ちらりと、竜人は大祓骸魂を見やる。
「まあ、貴様は例外だが。たとえ逃げようとしても、どこにも逃さんよ」
「……私の愛を、あなたたちに止められますか?」
「愛、愛か。ふはは!」
ニルズへッグはあざ笑った。空虚な笑みだ――彼は本質的に笑ってなどいない。
根底にあるのは嘲りではなく呆れと無関心であり、侮蔑ですらなかった。
ようは挑発のための演技のようなもので、実際は一笑に付す価値さえ感じない。
「神も人も怪物も、いつだって愛(それ)で身を滅ぼすのであろうに。
それとも太古の邪神とやらは、封印が長かったせいで耄碌しているのか?」
「…………」
「ともあれだ」
ニルズへッグは無表情に戻り、傲慢な竜らしく言った。
「無理なら無理で仕方あるまい。妖怪たちよ、そこで待っているがいい」
はるか空から見下ろすのは、まさに悪竜らしい在り方ではある。
「今に、恐ろしい弾丸が貴様らを穿つぞ」
予言めいたその言葉は、ほどなくして現実となった。
――BRATATATATA!!
「やっぱり、首魁を落とすのが一番早いな」
足止めされた妖怪たちの脳天に、鳴宮・匡の弾丸が突き刺さる。
影で作られた魔弾は、重なり合った骸魂だけを殺す。これはそういう殺意(もの)だ。
殺すことが得意ということは、殺さないことも得意ということ。
奪わなくていい命をわざわざ奪うほど、匡は殺戮に酔ってはいない。
大祓骸魂を護る敵、それと一般人に近い妖怪を、優先的に「殺して」いく。
防御は考えていない。仮に匡を狙う敵がいてもニルズへッグが対処する。
彼がそうできることを、匡は知っていて、信じている。これは油断ではない。
「私はただ、この愛を永遠にしたいだけだというのに――」
大祓骸魂は悲しそうな表情を浮かべるが、そこに人間的感情はない。
ニルズへッグや匡のような「人でなし」とよく似た、だがまた異なるモノだ。
本質的に生命と異なる残骸ゆえに、形は似ていても根底はまったく別。
むしろ人を真似ようとしているからこそ、逆にグロテスクにさえ見えた。
「……恋うことを悪いなんて、今の俺が言うつもりはないし、言えないよ」
匡はアサルトライフル型の影銃で、蔓延る彼岸花を散らした。
空からはニルズへッグの呪言がたえまなく降り注ぐ、妖怪を戒め続ける。
活路を駆ける。必殺の威力は距離の近さに比例するもの。
「それで、世界を壊されるわけにはいかないんでな」
複製されたヤマーラジャ・アイビーが飛ぶ。匡は避けない。
呪いの戒めが刃を地面に縫い止める。影の銃を殺傷力の高い形態へ。
「ならば、あなたには私よりもこの世界に対する愛があると?」
「いいや」
必殺の距離に到達した。大祓骸魂は生と死を繋ぐものを振るおうとする。
――その腕を、ニルズへッグの呪言が戒め、縛り付けた。
「!」
「言っただろう。愛(それ)が、神(きさま)さえも滅ぼすものであるとな」
冷たい瞳。路傍の石を見るような、憎悪も怒りさえもない瞳だ。
終わったものに心煩わされることはない。匡が来た時点で、決着はついている。
銃口が心臓を狙った。
「――俺の好きなひとは、そういうのを悲しむんだよ」
神を殺す理由など、その程度のものでいい。
影の弾丸が放たれ、邪神を貫き、少女めいた異物は断末魔をあげた。
「私の、愛しき、UDCアース――」
からん、とその手から鈍ら刀がこぼれ落ちる。
弾丸はもう一発。額を撃ち抜いた弾丸が、邪神を終わらせる。
「俺は、お前を認めないよ」
愛の反対は殺意であると人の言う。
神を終わらせたのは、殺意すら宿らぬ影の一撃だった。
大成功
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