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大祓百鬼夜行㉕〜新しい記憶を以て世界を救え

作者：黒代朝希

　2021年5月28日17：00——
　その日、東京にて大異変が起きた。
　まず、スカイツリーの上に更なる塔が現れた。
　それを基点として、東京上空が『異界』の如き空間へと変容していく。
　……これは、私が現在進行形で東京の異変を書き綴っている。
　もしかしたら、即座に私は死ぬかもしれない。
　だが、この大事変に居合わせた者として……後世に伝える価値と意味があるなら、私は命を賭してこの大異変の詳細を命尽きるまで書き続けると決めた。

「皆！『大祓骸魂』の元へ辿り着いたよ！」
　その言葉に、グリモアベースに待機していた全ての猟兵が騒めき立つ。
　戦争はオブリビオン・フォーミュラを一か月以内に撃滅できるか否かが勝利と敗北の条件となる。
　そして、5月の28日にようやくカクリヨファンタズムのオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』の元へ辿り着くことが出来たのだ。
　最早日数的な余裕はない。
　だが百鬼夜行に身を投じた妖怪達を猟兵達追った結果、虞は最低限に抑えられている。
　そして、攻略が出来るならば……特に、このように危機が迫っている場合、猟兵は真価を発揮する。
　勝利回数は20。それを満たす為にグリモア猟兵はそれぞれ予知を見ようとしている。
「今回は、新し親分の力で自分だけのオリジナルの『メモリ』を作って闘ってもらうよ！」
　そんな中で、レーヴァ・アークルージュ（超学園級の烈焔魔導士・f29627）は新たなる予知を掴み取る事に成功した。
　今回、新し親分が『虞知らず』の亜種として『メモリ』を猟兵達の為に作り出してくれるとの事だ。
　前の新し親分との闘いで『メモリ』を得た者はその得た『メモリ』を使うのもいいかもしれない。
「虞は最低限に減らせている。速攻で仕掛ければ勝ち目は十分あるよ！頑張って！」

第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行 【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と［骸魂によってオブリビオン化した妖怪達］の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。 SPD   :    生と死を繋ぐもの 自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。 WIZ   :    虞神彼岸花 【神智を越えた虞（おそれ）】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「メモリ？パワーアップアイテムみたいな物でしょうか」
　そう呟きながら藍色のかったブロンズのメモリを手にする藍沢・織姫（紺碧の歌姫・f03959）。
「では、この……敵をアホみたいな速さで瞬殺する、という「TASメモリ」！」
　そう言って『TASメモリ』を起動する織姫。
　運動能力系技能が底上げされ、寿命と引き換えに強化される系統のユーベルコードの効果を発現させる『TASメモリ』の力。
　それはただ複数のユーベルコードを総括しているだけではない。
　――「寿命を削る」効果を「翌日の筋肉痛が凄い」に読み替えた副作用が存在するのだ。
「おおっ、怒涛の勢いで回避行動と攻撃を交互に連発！これで敵の攻撃をかわしながら一方的に殴れます！」
　叫ぶと同時、織姫は炎の弾丸を『大祓骸魂』に叩き込んでいく。
　そうして、吸血鬼退治に行くARPG（プレミアの付いた激レアなゲームの一つ。定価の100倍以上出さないと買えない）を参考として『TASメモリ』の力を引き出していく織姫。
「……既に、尋常ではない筋肉痛が明日に待っているのですが……まあ、既に戦争最終日直前なので行っちゃいましょう」
　この報告書が上がったのは戦争終了後なのだが、『大祓百鬼夜行』には既に勝利しているので問題はなかった。

「御隠居を眠らすためにメモリすか……こんなん？」
　そうして、自身のユーベルコードで『メメントモリ』と表記されたメモリを作成したのはラモート・レーパー（生きた概念・f03606）。
「メモリの中身は自分自身に関して……言うなれば『死とそれに対する恐怖』」
　そう呟いてラモートはメモリを用いてユーベルコードを合わせて発動する。
「『悪霊の償い』」
　瞬間、籠の中の骸魂を代償として1〜12体のオブリビオンを召喚するラモート。
「UDCアースとサクラミラージュでの僕……いっそこちらがカタストロフ起こす気で行く」
『いや、それは止めてくれない！？』
　即座にレーヴァがグリモア猟兵としての通信を用いてラモートに突っ込む。
「わかった、やめる……」
　メモリを起動して相乗効果で呼び出したオブリビオンを使役していくラモート。
　そんな中、ラモートは呟く。
「御隠居。夢の続きはまた眠ってから見ましょうや。そうでないと私達の故郷が保たない……」

「や、バズりん♪『マトリクス・メモリ』ありがと♪」
『あーい。ワイちゃんもその『マトリクス・メモリ』はお気に入りなんやー♪』
　蒼き量産型キャバリアをスカイツリーの地上部分に待機させ、キャバリア使いの闇医者リーゼロッテ・ローデンヴァルト（リリー先生って呼んでよ・f30386）は新し親分に笑いかける。
　それと同時、黒とクリアグリーンの外殻を持つUSBメモリのような存在を白衣の懐から取り出す。
　――金色の端子を持つ、特別製のそれは『マトリクス・メモリ』という。
「この『マトリクス』の能力……『発生源』の記憶を内包したこれは、『あらゆる物理現象を再現する』……お陰で色々面白い事ができる様になったよ」
　メモリの端子を首左側に接触させ、『マトリクス・メモリ』を体内に取り込んでいくリーゼロッテ。
「親分衆４人全員との記憶を妖力の発生源として、アタシと機体が疑似妖仙化する様に……」
『あ、それ大丈夫何？』
「あ、怪人にはならないから大丈夫♪で、今回欲しいのはメモリの『アップデート』装置さ」
　そうして、新し親分の領域型ユーベルコード『バズリトレンディ御殿』を用いて作成された『アップデート』装置が作り出される。
　受け取ったリーゼロッテは一度体内から『マトリクス・メモリ』を取り出し、『アップデート』装置を取り付けて再度挿入する。
「大祓自身は滅ぶけど懐刀の一側面を形見兼墓標に……その布石にね？」
　そう呟いたリーゼロッテは、武装複製ユーベルコードを用いて発現させた対オブリビオン用の防御破砕術式――それを複製した『生と死を繋ぐもの』に付属させて切り込んでいくのであった。

「この世界にも幻朧桜があるとは……そしてこの『メモリ』……本当になんでもアリですね」
「『U.D.C』に『メモリ』って、組み合わせ次第で楽勝ちゃう？」
　薄緑色の花を咲かせる桜の精である蒼月山・翡翠（恋焦がれし翡翠桜の娘・f25306）と笑いの力で人々の前向きな心を護るテレビウムのお笑い芸人、熊猫丸・アカハナ（花咲かコメディアン・f23154）は二人して『メモリ』を用いて『大祓骸魂』と対峙していく。
「生まれ育った世界は違えど、同じ幻朧桜なら桜の精として共に戦わなくては……！」
　咲き誇る幻朧桜が舞うスカイツリーの上空、それを見上げながら翡翠は清水と神鋼で鍛え上げられた、もみじの装飾が施された退魔の霊刀である【翠玉椛】を構えて突貫していく。
　その上空から突き出す幻朧桜の樹木を傷付けないよう【翠玉椛】を振るっていく翡翠。
　桜の精である翡翠にとって幻朧桜の樹木は自分と誰かの母体に等しい存在。それを、傷つけられることが出来ようか。
「そして……このメモリを使いましょうか」
『Flute！！』
　転移前にUDCアースから来たという人物から聞いた『正義の鬼達が音の力で妖怪退治をする物語』を思い出した翡翠は、『Flute』メモリで篠笛を召喚する。
　演奏される旋律は破魔の力を宿している故、幻朧桜を傷つけずに大祓骸魂や取り巻きの妖怪達にダメージを与えていく。
「アカハナさん、後はお任せします！」

「あっ、紹介するで！こいつが前に助けたUDC-Pのつちねこ「パスカル」や！よしよし、危ないから下がっててな」
『え？はぁ、どうもニャ……』
　そうして、東方妖怪達を引き連れてカクリヨファンタズムから推参してきた山本につちねこを紹介するアカハナ。
『ところで、何のメモリを選んだん？』
　そこに新し妖怪を引き連れてきた新し親分が、アカハナに訪ねてくる。
「わしが選んだのは……『Wisteria』や！！」
『『Wisteria』……どうしよう、儂の配下の内に英語分かる奴いるかニャ……？』
『ちょい待ち、今スマホで……Wisteria、と』
　Wisteria――英語で、『藤』を意味する言葉。
『あー、にゃるほど。藤か……魔除けとしてはぴったりニャ』
『あ！メモリの力で魔除けの藤棚が展開されていく！インストにあげとこ！』
　スゲェ綺麗な藤棚だったのでかなりバズったそうな。
「それだけやない！」
　そこへ現れるのは黒い服を着たエージェント風の人物たち。
「UDC-Pか……？特にその、女性らしき二名は強力な力を得ているようだが……？」
「とにかく、我々UDCの援軍となるなら、この際構わない！」
　UDCエージェント。この大一番において『U.D.C』の完成に至ったのだ。
「あ、新し親分さん！」
『アイよ！』
　そこに、UDCエージェントにもメモリを提供するアカハナと新し親分。
　更に的確な指揮を行える東方親分の加勢もあって、順調に『大祓骸魂』を浄化していく。
「しかし、なんでここにパスカルが来てんのやろ？」

「虞知らずの力自体凄そうだが…メモリってのにもなるんだな！」
　そうキラキラとした目で『メモリ』を見つめるのは兎乃・零時（其は断崖を駆けあがるもの・f00283）。
「だったら作ってもらいたいメモリは…今後に役立たせるためにこの三つ！」
　そうして、三つのメモリの案を出す零時。
　――『分析者(アナライズ)』、『動物(ビースト)』、『宝人(クリスタニアン)』
　その三つのメモリが、零児の懐へと現出していく。
「良し……この三つがあれば！」
　そうして、蒼きクリスタニアンは本来激痛を伴うユーベルコードを起動させていく。
「『動物』で成る姿は宝石兎！」
　まず、『動物(ビースト)』のメモリで獣化の力を得ると同時に『分析者』のメモリをカメラっぽいガジェットに装填して敵の弱点を見抜いていく。
「え？このガジェットは新し親分のお金で買ったぜっ！！」
　……やっぱり、新し親分。対応力で言えば親分中最高だなぁ……
「『宝人』ありゃこの姿でもクリスタリアンの力が使いやすいはず！」
『宝人(クリスタニアン)！！』
　宝石兎へと変化した零時は念動力で敵抑えつつも兎の脚で距離を詰めていく。
「行くぜ……」
「『分析者(アナライズ)』、ロゴスイグニッション！」
「『動物(ビースト)』、ロゴスイグニッション！」
「『宝人(クリスタニアン)』、ロゴスイグニッション！」
　三つのメモリのエネルギーを迸らせながら強化の魔法陣も三つ顕現させる零時。
「――『クリスタリアンラビットトライセル』！！」
　そうして、三つのメモリを媒介とした宝石兎の魔術が『大祓骸魂』を打ち砕いていく――

「……『メモリ』は二つ使ってもいいのでしょう？」
　――上空に展開された幻朧桜を見つめ、卜一・アンリ（今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623）は独り言ちる。
　仕立ての良いハイカラな服の懐から取り出すのは、先日得たとあるシルバーメモリ――『サージャンメモリ』、『執刀』の記憶を内包したメモリだ。
「そこに、この新たなメモリを……」
　取り出すのは、『cherry blossom』のスペルが掛かれたメモリ――『チェリーブロッサムメモリ』、『桜』のメモリだ。
「『サージャン』の『物質・非物質を問わず対象の任意部位の切除』、そして……幻朧桜、つまり『チェリーブロッサム』の『霊魂を鎮め導く』能力を用いて、『大祓骸魂』という存在を、浄化して切除する！」
『サージャン！！』
『チェリーブロッサム！！』
　起動する二つのウィスパー音。
　『執刀』と『桜』の記憶を内包したメモリを用いて、アンリは幻朧桜の力を宿す刀の霊魂のみを斬る斬撃波を放つ。
「貴女の棲家……それは骸の海だし、ましてやUDCアースではあり得ない！」
　放射される神智を越えた虞は『サージャンメモリ』の力で『切除』され、追撃として放たれたスカルペルに込められた『チェリーブロッサム』の転生の力で浄化されていく。
「この世界はもう貴女が見えない、もう貴女の記憶はない。在るべき過去へと還りなさい、大祓骸魂！」
　即座に『大祓骸魂』に差し向けられるスカルペルの群れ。それは転生の力を以て『大祓骸魂』を浄化していく――

「OK！四人の親分たちの思いを込めて、レッツトライ！力を貸してくだサーイ！」
『にゃー！』『持っていっておくれ』『行くぜー！』『心を燃やすで！』
　何か、『メモリ使い』と言うよりは『主人公が女子だったら確実に乙女ゲーな第八』っぽいノリで『カクリヨメモリ』なるメモリを起動させるのは、バルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）。
「本来の用途はどなたか一つを選択するのデスガ。今回は全部載せマス！」
『カクリヨメモリ、ロゴスイグニッション！』
『『『『！？』』』』
　おい武装サイボーグメイド、妖怪達の親分が困っているぞ……凄い字面だ。
　それはともかくとして、バルタンは四柱の親分の力それぞれを複合させていく。
「王子殿と碎輝殿の力をフュージョン！黄金と雷が合わさり……ゴールデン！」
『あれ、意外と悪くないね……』
　ちなみに、サングラス装備だそうな。
『アウトだ馬鹿！金太郎だ！』
『ハハハ、何言っているんだい。金太郎はサングラスを装備していないよ』
「まだまだ行きマース！！山本殿とバズリ殿の力を融合！軍勢を率いる猫と流行りと言えば……ひ●にゃん！」
『『アウトォォォォォ！！！』』
　そう絶叫しながら、二人の女傑は何とかバッタもんだとシラを切れるような塩梅の絶妙に可愛くない何課に再統合される。
「我儘言わないでくださいデース。猟兵を信じる前に信じられた親分として在ってくだサーイ」
　そうして、音声があるなら丁度サビに入る頃な感覚でバルタンは叫ぶ。
「奴に最も効果的なロゴスイグニッションデース、ゴールデンとひ●にゃんを、ジョイント＆プログレス！」
『『『『字面がひどすぎる！！』』』』
『ゴールデン！ひ●にゃん！ベターマッチ！』
『『『『メモリですらなくなった！後ベストじゃ（にゃいのか！？）（ないの！？）（ねぇのか！？）（ないんかい！？）』』』』
　そうして、創り出された存在こそ――
「完成、アヤカシオヤブンバルタンモン！」
　なお、あらゆる意味で筆舌に尽くし難い――この報告書ではそう記述するしかなかったとここで記しておく。
「行きマスヨ、必殺！マサカリ・ツマヨウジ・ギリ！」
『『『『センス無い！！』』』』
　なんだかんだで強力だったその一撃は、カクリヨファンタズムのオブリビオン・フォーミュラ『大祓骸魂』を骸の海へと追儺することに成功したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年06月02日