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大祓百鬼夜行㉕〜ゆらめく面影

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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●決戦の刻
「御機嫌よう、今回も集まってくれた皆に感謝を。……大祓百鬼夜行にもいよいよ決着を付ける時だ」
 グリモアベースにある作戦会議室、招集に応じた猟兵たちをカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は常通りの一礼で出迎えた。
 カクリヨファンタズムのみならずUDCアースの存亡をも賭した戦い。今回予知したのはその元凶、究極妖怪『大祓骸魂』との決戦であると彼女は告げる。

 猟兵たちの奮戦の甲斐あって遂に開けた大祓骸魂に至る道。
 スカイツリー最上部のゲイン塔、敵の操る虞(おそれ)によって幽世同様の空間に変化した東京上空が戦場となる。
 また、いわゆる絶対先制能力の類は確認されていない。絶大な力を振るう強敵だが、此方も最初からユーベルコードを活用して対抗する事が出来る。

「ただ……今回の戦場の特異性として。死者の霊の実体化が予知に見えた」
 現れるのは猟兵が強い想いを抱く死者の幽霊のようだ。掛け替えの無い大切な相手かもしれないし、不倶戴天の敵意を向けた宿敵かもしれない。
 如何な形になるかは猟兵次第だが、幽霊との決別を示せればそれは祓(はらい)となり大祓骸魂を倒す力になる。
「また、この幽霊は異界化した戦場に渦巻く莫大な力を宿している。味方になるか敵になるかはキミたち次第だけど、その点は気を付けてほしい」
 そうして一通りの説明が済めば、有翼の人狼は改めて集った猟兵たちを見渡す。
「これまでの戦い、妖怪たちの協力……その全てに報いる為にも。どうか、無事の勝利と帰還を祈っているよ」
 此度もこれまでと同じように勝利を願って。変わらぬ言葉で締め括り、豪奢な装飾の施されたゲートが開いた。


ふーみー
 当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
 大祓百鬼夜行も遂に最終決戦!
 今回のプレイングボーナスは“あなたの「想い人」を描写し、夜が明けるまで語らう”事。
 大祓骸魂は構わず襲い掛かってくる為、今はもう居ない大事な人と一夜の共闘を演じたり、嘗ての仇敵と背中合わせに戦ったり、大祓骸魂と一緒に襲い掛かってくる怨敵の亡霊を迎え撃ったりしてください。いずれのパターンでもプレイングボーナスは適用されます(不利になる事はありません)。
 それでは皆様の健闘をお祈りしています。
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●―― 究極の妖怪、窮極の愛、そして ――
「ようこそ、猟兵たち」
 異界へと変貌した空、旧き邪神は慈愛の微笑を以て猟兵たちを出迎える。
「ああ……生命の輝き、意思の炎、その全てがいじらしく愛おしい。殺しましょう。殺しましょう。世界も、あなたたちも。私と共に、骸の海で永遠となりましょう……」
 童女めいた姿で愛を謡えど、最早そのような上辺で取り繕える存在ではない。
 妖怪親分たちのそれさえ上回る虞を従え、正気を圧し拉ぐ狂気を撒き散らす。
 混沌と絶望渦巻く戦場――不意に。
 もう会う事など無かった筈の、誰かの声があなたを呼んだ。
亞東・霧亥
『ああ、兄様。お久し振りです。』
闇からヌルリと現れたのは愚妹の姿をしたナニか。
変わる前は瓜二つだったが、今や右半身は腐り骨が剥き出しで、左眼は爬虫類の瞳を宿している。
竜化に失敗した成れの果て。
『愛しい兄様。殺し合いましょう。』

2度目の引導を渡してやろう。
『武器改造』でクリエイトフォースを粉末状のプリズムに変化させ、戦場に散布する。
光の屈折は実像の隣に高度な『残像』(虚像)を結び、視覚に頼る攻撃は悉く虚像を貫く。

『毒使い』で作った聖水を吹き矢の針に仕込み、【UC】。
虚像を捉えられても、実像を掴まれている訳ではない。
それは見付かっていないのと同じ事。
急所に狙いを定め、放つ。



●1st Round ― 二度目の葬送 ―
「ああ、兄様。お久し振りです」
 大祓骸魂と対峙する亞東・霧亥(夢幻の剣誓・f05789)――その前に闇が渦巻き、ヌルりと這いずるようにナニかが現れた。
 かつては霧亥と瓜二つだった姿。今や腐敗したその右半身は剥き出しの骨を晒し、左の眼窩には瞳孔の縦に裂けた竜眼が狂的な思慕にぎらついている。
 竜化に失敗した成れの果て。
 かつてこの手で殺めた愚妹。
「愛しい兄様。殺し合いましょう」
 求めるものはただ一つ。世界も何もかも眼中に無く、無邪気に笑う。

「……二度目の引導を渡してやろう」
 一度も二度も大差は無い。あってはならない。この期に及んで揺らぐなど、かつての選択を否定する事に他ならないのだから。
「仲睦まじい事です。私も混ぜて頂きましょうか」
「誰ですか、あなた。邪魔です」
 動き出す大祓骸魂の【生と死を繋ぐもの】、複製された数多の懐刀を片手で薙ぎ払う。
 生前と比べてさえ遥かに上回る膂力。ふわりと身を躱した邪神には目もくれず、霧亥へと叩き付けられた一撃は純粋な威力のみで空間をも粉砕する。
 空振り。
 成り損ないの瞳に映るのは霧亥が生み出した虚像のみ、息を潜めた暗殺者を捉える事は叶わない。
 虚像を見破ろうとも、大祓骸魂の戯れに操る懐刀をして霧亥の実体には届かないのだ。如何に強大な力を振るおうと、隔絶した差が縮まる事は無い。
 ――このような存在に成り果てた意味など、初めから。

「ははは、あはははははははッ! ええ、兄様は昔から手品がお上手でしたね! どこに隠れていらっしゃるのかしら? 見事捕まえた暁には、いっぱい褒めてくださいね?」
「……だから貴様は愚妹だと言うのだ」
 伸ばす手の触れる事は無い。声は届かず、もはや心の通う事も無い。
 破壊を撒き散らす醜悪な化け物。
 幸せそうに笑う、愚かな妹。
 あれは今回も、自分がいつ死んだかも気付かぬまま息絶えたのだろう。
 【黙殺】――致命の急所を正確に捉えた、彼女を葬る為の一射。
 亡霊の消滅は祓となり、大祓骸魂そのものを構成する虞を削り取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
ああ、やっぱお前か。
黒い髪、金色の瞳、快活な笑み、筋肉質なデカイ体格は食料の乏しい狂った俺の故郷じゃ珍しかった。
呆然と現れる親友の姿に思わず笑いを漏らした。
死んだ人間に可笑しな言い方だが…元気そうだな。

力、貸してくれるんだろ?デカイ体格に不釣り合いな小振りなナイフ。――思えば背中合わせは初めてか。
懐刀の雨を掻い潜り、【クイックドロウ】で撃ち落とす。当然、俺だけじゃなく、親友の背中も護るぜ。
二度は死なせねぇ。俺がお前を殺した過去は消えねぇけど。雪ぐことも出来ねぇけど。
他の誰かの零れる命くらい救ってみるのも悪くないだろ?

開けた道に大祓骸魂目掛けてUCで【串刺し】。
だから。――また会おうぜ、親友。



●2nd Round ― 贐 ―
「ああ、やっぱお前か」
 呆然と現れた亡霊の姿に、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が零したのは納得の声。今も強い想いを抱く死人となれば、心当たりはそう居ない。
 黒い髪に金色の瞳、当時すでにヴァンパイアの手に落ちていたダークセイヴァーには珍しい筋肉質な身体。その全てが記憶の中にある彼の面影と同じ。
「死んだ人間に可笑しな言い方だが……元気そうだな」
 お前もな、とカイムの挨拶に返ってくるのはあの頃のように快活な笑み。目の前に立っているのは自分を殺した相手だというのに、向けられる信頼には一点の曇りも無い。
 手にするは大柄な体格には不釣り合いな小振りのナイフ。行こうぜ、と誘うように佇む邪神へと切っ先を向ける。

「既に死した身で……あなたも抗うと? いいでしょう。その想い、見せて頂きます」
 邪神に人間の心は分からない。理解できぬ輝きを味わおうとするように両手を広げれば、【生と死を繋ぐもの】――優に百を超え分裂した懐刀が自在軌道を描き襲い掛かる。
「――思えば背中合わせは初めてか」
 念力の制御は呆れる程に正確で、状況は統率された軍勢を相手取るに等しい。
 戦場に渦巻く力を宿したナイフが先陣を切り進み、巨体の死角から迫る凶刃を二丁銃の早撃ちが墜とす。一度受けるごとに死の近づく凶刃の雨、掻い潜り駆け抜ける二人の顔には揃って不敵な笑みが浮かんで。

(二度は死なせねぇ)
 今生、もう見る事は無かった筈の姿を見ながら強く思う。
(……俺がお前を殺した過去は消えねぇけど。雪ぐことも出来ねぇけど)
 この共闘こそ証拠だ。
 忘れる事など無い。これからもきっと、何度も思い出すのだろう。
 それでも。
「他の誰かの零れる命くらい。救ってみるのも悪くないだろ?」
「……男を上げたな」
 短い声に込められた想いは万感、ナイフの一閃が最後の道を切り拓く。
 金色の眼差し。それ以上に強く背を押すものなど他にあるか。
「最高の褒め言葉だな。――また会おうぜ、親友」
 宙に鮮やかな軌跡を残した【紫雷の一撃】は紛れもない最高速。
 大祓骸魂を貫く姿を見届ければ、安心したように親指を立てて……
 朝日に夢の覚めるように、無二の友は去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
さて、決着をつけよう。
生と死を繋ぐ力とやら、見せてもらうぞ。

現れる幻影は自身の実母。銀河帝国との戦いの中で命を落とした彼女は
ブラスターガンナーであり、宇宙船技術者でもあった。
幻影だとわかっていても、やはり故人と対面するのは
奇妙な気分だな。

【パイロキネシスα】を発動。《念動力》で火球を操り、
ヒガンバナを焼きながら戦うぞ。
大祓骸魂の虞にも動じることなく、クロスグレイブによる
《レーザー射撃》で母と共に連携攻撃だ。

あなたが遺した宇宙船、ステラマリアは私が受け継ぎました。
宇宙の民を新天地へ導くために、私はこれからも旅を続けます。
だから、これからも宇宙のどこかで見守っていてください。



●3rd Round ― 灰薔薇の血統 ―
「さて、決着をつけよう。生と死を繋ぐ力とやら、見せてもらうぞ」
「いいでしょう。存分にご堪能下さい」
 【虞神彼岸花】――襲い来るは神智を越えた虞、真紅の長髪を揺らし身を躱したガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の視界に映るもう一人の姿。
 ガーネットとよく似た面影を持つ女性、嘗て銀河帝国との戦いの中で命を落とした先代グレイローズの顔はすぐさま戦士のそれへと切り替わる。
「幻影だとわかっていても、やはり故人と対面するのは奇妙な気分だな」
「ましてどちらの故郷からも遠き異境の地とは。世界広しとなれば斯様な事もあるか」
 少しは年の差も縮まったからだろうか、ともすれば同じ人物同士の会話とも錯覚しそうな会話は不思議と噛み合ったもの。二人の麗人は同時に討つべき敵を見据える。

「さぁ……染め上げましょう。此地を。世界を。私の愛は、永遠に」
(ちっ、正面から受ける類の代物ではないな……だが)
「私の前に立ち塞がるものは、すべて焼き払ってやろう――燃え上がれ!」
 もはや砲撃めいて放たれる虞を冷静に躱し、そのまま戦場全体を制圧せんとする彼岸花の侵蝕をサイキックエナジーの炎で食い止める。
 ガーネットの構えるクロスグレイブ、巨大な十字架を模した携行型ビーム砲塔デバイスより放たれるレーザー射撃の出力は折り紙付き。彼女の母の援護射撃もまた、戦場に渦巻く力を宿し凄まじい威力で敵の逃げ場を奪う。
 激しい反撃、大祓骸魂は焼け残った彼岸花の上で地の利を得ようとその身を浮かべ――
「――甘い!」
「っ……?」
 それはグレイローズ家秘伝の一撃。相手を単なる射手と見誤った邪神に弧を描くサマーソルトを躱す術など無く、小柄な身体は地上へと叩き落とされる。
 アイコンタクトさえ不要と呼吸を合わせ放たれたレーザーに更なる射撃が重なり、邪神の核たる骸魂は此処に撃ち抜かれる。

「……あなたが遺した宇宙船、ステラマリアは私が受け継ぎました」
 この攻防の趨勢は決し、戦場たる東京上空の異変もまた薄れていく。
 夢の覚めるように姿を薄れさせていく母の姿に、ガーネットは静かに語り掛ける。
「宇宙の民を新天地へ導くために、私はこれからも旅を続けます。……だから」
 娘の言葉に頷き、静かに耳を傾ける。
 戦時とは別種の威厳を纏い、しかし穏やかに包み込むような母の姿。
「これからも……宇宙のどこかで、見守っていてください」
「体が滅びようと魂は不滅。骸の海になど落ちずとも、灰色の薔薇はいつまでも共に」
 ――ガーネット――私の娘。私の誇り。
 触れ合ったのは僅かな間……幻のような抱擁の感覚が最後に残った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

播州・クロリア
(自分をダラキュちゃんと呼ぶ蜂の触覚と翅を生やした白衣の女を睨みつける)
死んでからもアタシに纏わりついてんじゃねぇよ!クソババァ!
・・・大祓骸魂、私の心を揺さぶるつもりでアレを呼んだのであれば間違いです
溢れんばかりの殺意を冷静に対処する方法はすでに習得済みですので
(肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こした後{紅焔の旋律}で『ダンス』を始める)
天を焦がさんばかりに膨れ上がった、殺したいと願う欲望の炎
そこのクソババァと貴女と呼んだ妖怪の皆さんでちゃんと受け止めてくださいね
(UC【蠱の翅】を発動し黒い炎のオーラを纏うと『衝撃波』を巻き起こしながら敵に向かって突撃する)



●4th Round ― “ダラキュ” ―
「――死んでからもアタシに纏わりついてんじゃねぇよ! クソババァ!」
 その怒声が播州・クロリア(リアを充足せし者・f23522)のものだと、気付ける者がどれ程居るだろうか。
 本来怒りを抱いてさえ口調を大きく崩す事は無い彼女、その殺気に満ちた眼光の先――蜂の触覚と翅を生やした白衣の女は事も無げに笑顔で手など振ってみせる。
「ふふっ、照れ隠しもカワイイわダラキュちゃん。呼んでくれたのはそちらでしょう? 今もずっと想ってくれてるなんて、カ・ン・ゲ・キ☆」
「黙れッ!」
 叫び、強く足元を踏みつける。大きく息を吸って吐き、女の存在を視界から外す。
「……大祓骸魂、私の心を揺さぶるつもりでアレを呼んだのであれば間違いです」
「?」
 垣間見せた激情は押し込める。諸悪の根源たる邪神さえも我関せずと小首を傾げる、その仕草が益々腹立たしい。
 ……構わない。溢れんばかりの殺意を冷静に対処する方法は既に習得している。
 肩幅ほどに足を開き、両手で太ももをなぞりながらゆっくりと上体を起こす。
 実のところ押し込めるという表現は正しくない。蠱の翅が生み出すは闇より猶暗く悍ましい黒炎、紅焔の旋律は踊り手の全身を使った殺意の表現。尽きぬ憎悪を動きに変換し、冷徹に無機的に思考を保つ。

「あらぁ、面白い芸を覚えたのね? さっすがワタシの傑作! それ、もっとよく見せてちょうだいっ!」
「踊りのお相手を呼びましょう。今時はこう言うのでしたか――大祓百鬼夜行、きませい」
 子供のようにはしゃぎながら、心底楽しそうに笑う女の目だけが何の感情も示さない。タチの悪い事にクロリアの力をもっと見たい、その一点で大祓骸魂とも利害は一致するようで――歌うような呼びかけに惹かれ、骸魂によってオブリビオン化した妖怪達たちが戦場へと集まってくる。
「……いいでしょう。今度こそ、完全にケリを付けてあげます。さぁ――」
 殺意の黒炎は無限とさえ思える程にどこまでも燃え盛り、火炎に耐性を持つ筈にクロリア自身をも焼き焦がす。強いられ襲い掛かる有象無象、飛んで火にいる夏の虫とばかりに触れる事さえ叶わないのは何の皮肉か。
「そこのクソババァと貴女と呼んだ妖怪の皆さんでちゃんと受け止めてくださいね」
 初めから最高熱の最高速度、衝撃波と共に駆けるそれは意思持つ災厄に他ならない。
 限界を超え猶も飽き足りない殺意の具現を叩き付けようとして、
「それが揺るがない心? やっぱり、ワタシの可愛いダラキュちゃんね」
「―――――――――――――ッ!!!」
 黒炎が爆ぜる。
 冷静だ。有り得ない程に跳ね上がった火力を制御して正確に敵を消し飛ばす。
 最期まで哂っていた忌々しい女も、撃破目標の邪神も、跡形さえも残らない。
 最低限の身体機能を維持した焦げ臭い身体が転がり、荒い呼吸を繰り返す。
 過去の消え去った上空に猟兵が一人。
 張り裂けるような叫びが虚ろに響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リステル・クローズエデン
正念場ですね。

想い人
リステル博士
眼鏡をかけ白衣を纏ったリステルそっくりな女性。

邪神への復讐と対抗のためにリステルを造った。

今回の戦争でリステルは博士から
事実を語られ。彼女はそれを受け入れた。

今回は、リステルを
調整することで援護してくれる。

いってきます…………母さん………



戦闘
視力、聞き耳で得た情報を高速思考で処理し
第六感もあわせて攻撃を見切り、
かわし、弾きながら間合いをつめます。

ユーベルコードを鎧無視攻撃と共に
放ち
敵の骸魂を切り裂いていく。

正気に戻ったのなら退避か協力を、
でも無理はしないでください。



この世界の行く末を決めるのは、
少なくともお前じゃない。

後からでてきたお前じゃない



●5th Round ― その刃は誰が為に ―
「正念場ですね。……来てくれると、思っていました」
「ええ。来ない訳にはいかないでしょう」
 リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)の傍らには眼鏡をかけ、白衣を纏ったリステルそっくりな女性の姿。彼女のルーツ……遺伝子提供者であり、邪神への復讐と対抗を目的として彼女を製造した博士。
 交わす言葉はそう多くない。語るべきはあのまぼろしの橋で語り、想いは通じ合った。
 全機能最適化、出力向上。サイボーグであるリステルの身体をこの博士以上に理解した者は居らず、この戦場に渦巻く力をも彼女を通じてリステルに流れ込む。
「貴女に託すのは、これで二度目ですね」
「はい。いってきます…………母さん………」
 青い光の軌跡を残し、託された願いは飛翔する。

「お話はもう十分ですか?」
「わざわざ待ってたのか。気が利くんだ?」
 微笑を崩さぬ究極妖怪との間に立ち塞がるは【大祓百鬼夜行】、骸魂に呑まれた妖怪たち。大祓骸魂の力を受けた質ばかりでなく、その単純な物量一つをして押し流し捻じ伏せる暴力たり得るだろう。
「……呪剣覚醒。幻影の刃、切れずの太刀」
 剣閃が舞う。次々と襲い掛かる攻撃を最適解で捌き、足を止める事なく突き進む。
「――真に斬るべき存在(モノ)のみを断つ」
 【呪剣覚醒・幻影ノ太刀・破魔呪滅撃】――その力は肉体を傷つけること無く、骸魂のみを斬り裂き妖怪たちを解放する。
「正気に戻ったのなら退避か協力を。でも無理はしないでください」
 手短に掛ける声。邪魔にならぬよう離れる妖怪も居れば、その背後を支えるように後に続く妖怪も居る。無謀にも見えた突撃は、確実に大祓骸魂の喉元へ迫っていく。

 ……母が復讐を望んだ邪神と眼前のそれは同一ではないのだろうけれど。
 復讐。邪神を討つ。恐ろしい殺意から成る製造目的、それを果たすこの時に。
 単なる殺戮ではなく……救う為に刃を振るえる事。
 それが何より誇らしい。

「……行きなさい、リステル」
 戦場の後方、娘の背に向けて祈るように囁く。
 幻影の刃が、遂に大祓骸魂の元へ辿り着く。

「この世界の行く末を決めるのは、少なくともお前じゃない」
 青白い光を帯びた呪剣を迎え撃とうと懐刀が動く。鈍などと自己申告していたが、それを振るう邪神の腕は見掛けには有り得ないほど速く、荒々しい。
 ――それがどうした。容易く見切り払い除ければ、童女めいた顔が初めて驚いたように目を丸くする。
「後からでてきたお前じゃない」
 揺るがぬ意思を込めた一閃。
 すべての狂気を断つように、その刃は邪神の骸魂をも斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼面坊・羅剛
「よりによって貴様が来るか。死してなお、刃を振るうか」

出会った幽霊は己の仇敵、百鬼殺しの征士郎
かつてこの首を撥ね、郎党どもを皆殺しにした武士
機械の如く刃を振るう様は生前と全く変わっていない

憎悪が湧き上がる
悪霊としての未練が「こいつを殺せ」と喚き叫ぶ

だが、それを黙殺する

「己は鬼面坊羅剛、幽世の守護者である」
「手を貸せ、人の世の守り手よ」

目下倒すべきは大祓骸魂
その点においてのみ
己と貴様は共闘できるはずだ

神智を越えた虞には己が御仏の光で対抗する
攻め手については仇敵に一任しよう
あの刃の切れ味は己が身をもって知っておる

「さあ征くぞ」

大祓骸魂よ、覚悟せよ
守護者がここにいる限り
世界が滅ぶことはないと知れ



●Final Round ― 双ツ世の守り手 ―
 二つの世界の存亡を賭けた決戦、その大舞台となる異界化した東京上空。
 童女めいた邪神の片腕が宙を舞い、大祓骸魂は意表を突かれた様子で突風を巻き起こし狼藉者を払い除けた。
「……よりによって貴様が来るか。死してなお、刃を振るうか」
 低く唸る鬼面坊・羅剛(幽世の守護者・f29378)の視線の先には忘れ得ぬ仇敵の姿。
 その時初めて気付いたとばかり、武士の視線が羅剛に向けられる。よもや覚えの無い筈もない癖に、鉄面皮は憎らしいほど反応らしい反応を示さない。
 百鬼殺しの征士郎――今しがた邪神の片腕を奪ったように、あの時も。顔色一つ変えぬまま羅剛の首を撥ね、彼の率いた郎党を皆殺しにしてのけたのだ。

 殺せ。殺せ。殺せ!
 大祓骸魂の存在さえ意識の外へ追いやる程に湧き上がる憎悪。
 まさしく死んでも死にきれぬほどの無念。殺しても殺し足りぬ程の怨嗟――悪霊と化した自分自身、その腹の底で喚き叫ぶ声を黙殺する。

「己は鬼面坊羅剛、幽世の守護者である」
 錫杖を手に見据えるは腕を再生させた大祓骸魂。二つの世界を脅かす大悪の邪神。
「手を貸せ、人の世の守り手よ」
「……是非も無い」
 無骨な野太刀を構え、無造作に足を踏み出す。百鬼殺しの背が無防備に晒される。
 守るべきものの為、相容れぬ二つの在り方が一時だけ重なる。

「解せません。それ程の殺意を抱えたまま、肩を並べるというのですか」
「そうだ、我らより奪わんとする邪神よ。貴様には分かるまい……!」
 【虞神彼岸花】――指さす動きに従うように押し寄せる神智を越えた虞。もはや砲撃に等しいそれを、錫杖より放たれる光が真っ向から迎え撃つ。
「――オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン……!」
「……無理はなさらぬ事です。存在そのものが燃え尽きてしまえば、骸の海に落ちたとて復元が叶うかどうか」
 邪神の身動きさえ縛る【御仏の威光】、その反動として降りかかる痛みは生きながらにして総身を焼かれるに等しい。
 大祓骸魂が眉を顰め、しかし羅剛は罅割れる程強く地面を踏みしめる。
 この男の前で膝を屈するなど許せるものか。
 幽世の守護者として、一歩たりとも退けるものか……!
「さあ征くぞ」
 前を行く武士は振り向きもしない。羅剛の守りが貫かれる可能性など想像だにしていないように迷いなく、真っ向から切り込んでいく。
 ……それでいい。
 あの刃の切れ味は、己が身をもって知っている。
「大祓骸魂よ、覚悟せよ。守護者がここにいる限り――世界が滅ぶことはないと知れ」
 錫杖より放たれる光が輝きを増す。
 束の間、究極妖怪の動きが完全に封じられ……冷徹に、確実に。百鬼殺しの刃は、此度も討つべきを斬り捨てた。

「………………」
「……どうした。邪神の首一つでは、死出の駄賃には足りぬか」
 大祓骸魂が消え、悪夢の覚めるように異界と亡霊は薄れていく。百鬼殺しの武士、その鉄面皮が満身創痍の鬼面坊を無表情に見つめて。
「――達者でな」
「………………は。はは、ハハハハハハハハッ!」
 僅か一言、呆気にとられた一瞬で仇敵は姿を消した。
 どの面を下げて、何を思ってそのような言葉を遺すというのだろう。憤怒ゆえか、愉快ゆえか、痛みさえ忘れて涙の滲む程に大笑する。
「言われずとも! おお、今度こそ己は守り抜くぞ!」
 豪快にかっ喰らう勝利の美酒は、五臓六腑に染み渡る旨さだった。


―― 大祓骸魂、撃破 ――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月02日


挿絵イラスト