大祓百鬼夜行㉕〜其れは天空にて待つ究極妖怪
●UDCアース・東京スカイツリー
愛しきUDCアース
あなたを思う 私の愛は揺るがない
だから 私は帰って来たのです
この懐刀「生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)」は
鈍(なまくら)だけれど 時間をかければ
誰でも 何でも 殺すことができる
殺したものは過去となり
骸の海で永遠となる
愛するUDCアース あなたを永遠にしたい
あとひと刺しで それが叶います
猟兵たちよ 止められますか
電波塔の頂上で あなたたちを待っています
●UDCアース某所・ゴミ捨て場
――ザザッ、ザザッ。
壊れたはずのブラウン管テレビに、スカイツリーの頂上と、その上で待ち構える大祓骸魂の姿が映し出された。
「おいおい、なんでスカイツリーが?」
「誰? あの子」
あり得ざる光景を目にし集まる一般人が目撃する中、テレビの中のスカイツリーは大きく変貌し始める。
地上450m地点「天望回廊」からさらに上空へ伸びる電波塔、通称「ゲイン塔」をぐるりと取り囲むように、連ね鳥居と石階段が出現し、彼女への道を繋ぎ。
さらに、彼岸花が咲く小さな雲が、ゲイン塔を覆い尽くすように無数に現れた。
一般人たちがブラウン管テレビに気を取られる中、周囲にゆっくりと星空が染み出し、空間を塗り替え始める。
周囲は古き良き家屋の集合体から、無数の彼岸花の雲が浮かぶ星空へ。
地面は青々しい草むらから、無機質なクロームの床へ。
――ヒュゥゥゥゥゥゥ……。
突然、吹き込んだ強風に煽られ、一般人たちはバランスを崩しクロームの床に尻餅をつく。
「な、ナニコレ!?」
「どこなんだ、ここは!!」
床の冷たさと周囲の開放感に、ようやく状況を把握した一般人たちが悲鳴をあげる。
――いつしか、テレビの周辺は、スカイツリー上空へと変貌していた。
●最速でゲイン塔を駆け登り、大祓骸魂と邂逅せよ!
「飲みながらで良いので聞いてほしい。骸魂の元凶かつ邪神でもある究極妖怪『大祓骸魂』がスカイツリー・ゲイン塔に現れた」
グリモアベースの片隅で飲み物を振る舞いながら、グリモア猟兵藤崎・美雪は己がグリモアが齎した予知を語り始める。
「この時、ある地域に捨てられていたブラウン管テレビから『スカイツリー・ゲイン塔の頂上で「自分を殺してくれる人」を待っている大祓骸魂の姿』が流され、それを見ていた一般人が、ブラウン管テレビの世界に取り込まれるようにスカイツリー上空へ転送されてしまったらしい」
幸い、大祓骸魂に一般人を害する意図はないため、落下防止策のみ取れば安全は確保できるが、大祓骸魂を討たない限りはUDC組織の救助の手は期待できない。
「そこで、あえて大祓骸魂の意図に乗り、彼女の下へ向かうべくゲイン塔を駆け登って向かってほしい。頼めるだろうか」
頭を下げる美雪に、猟兵達は其々の想いを以て頷いた。
「さて、彼女は自分を『猟兵に殺される悲劇のヒロイン』と見立て、我々を待っている」
設定の是非はさておき、『テレビ番組の実体化』であるならば、それに全力で乗ってやれば良いことは、これまでの戦いで判明している事実。
「今回、グリモアで転送できるのは、地上から450m地点のスカイツリー天望回廊の真上まで。そこから上のゲイン塔は自力で登ってほしい」
ゲイン塔の頂上まで登る方法は、2通りあるという。
「ひとつは、転送直後から1時間だけ出現している『連ね鳥居の石階段』を全力で駆けあがる方法」
連ね鳥居の外に出なければ障害はほぼないが、螺旋階段の如き石階段を延々と登るのはなかなか骨が折れる作業。
加えて、時間内に辿り着けなければ石階段が消失し、最悪地上まで600m近い距離を落ちることになるため、スピード勝負となる。
「もうひとつは、今回の番組の舞台装置たる『彼岸花の咲く雲』に飛び移りながら頂上まで到達する方法」
こちらは足場となり得る雲が無数に存在し、時間経過で消失することもないが、飛び移るためにはある程度のジャンプ力が必要となる。
……空を飛んだ方が早いのではないか?
そう言いたげな猟兵の視線を受け、美雪はコホン、と咳払いひとつして。
「ああ、連ね鳥居や雲を利用せず、一気に飛んで向かった場合は、一撃入れるより先に大祓骸魂に叩き落とされて登り直しになるようだ」
テレビ番組の再現である以上、無理に抜け道を探らず、用意されたギミックを用いて全力で乗っかるのが、最も近道という事になるということだ。
「大祓骸魂の下に辿り着いたら、どんな方法でもいいので一撃を入れてほしい」
――そこまで果たして、初めて「再現」を果たしたと言えるのだから。
「何の意図があってこのような状況を求めるかはわからぬが、最終的に討たねばならぬことに変わりはない。くれぐれも忘れないでほしい」
では頼んだよ、と美雪は傍らのグリモア・ムジカから回せた無数の音符で猟兵達を取り囲み。
――スカイツリー天望回廊の真上へと、猟兵達を誘った。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
スカイツリー・ゲイン塔に、究極妖怪『大祓骸魂』が現れました。
悲劇のヒロインのようにスカイツリー・ゲイン塔の頂上にて待つ『大祓骸魂』の下に辿り着き、彼女を討って下さい。
ラスボス戦につき、やや厳しく判定致します。
それ相応の準備をした上で、ご参加願います。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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状況は全てオープニングの通り。
今回は冒頭の追記はありません。
●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
以下のいずれか1つを満たせば、プレイングボーナスを付与します。
1:連ね鳥居を最速で駆け抜ける。(⑤千本鳥居を駆け抜けろ~Way of Death)
2:番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられます)。(⑯TVショーへようこそ〜King of Media)
本シナリオでは「大祓骸魂の下に辿り着けるか否か」に重点を置き判定。
確りと辿り着く術を記載いただければ、戦闘は1行程度のプレイングとユーベルコードの指定のみでOKです。(2を選んだ場合も便宜上指定願います)
ちなみにギミックを用いず空中飛翔のみで向かった場合、一撃入れるより先に大祓骸魂に叩き落とされます。
●プレイング受付期間
オープニング公開直後から受付開始。
受付締切はマスターページとTwitterにて告知致しますので、送信前にマスターページをご一読願います。
●【重要】プレイングの採用について
「5月31日集計後」にカタストロフが回避されていなければ、必要最小限のみの採用で完結させ、6月1日の集計に間に合わせます。
カタストロフが回避されていれば、失効までに書けるだけ採用する方針で運営致します。
いずれの方針の場合でも、全採用の保証はできませんので、ご了承ください。
シナリオの性質上、連携プレイングの採用は難しいので、【おひとり様】での参加をお願い致します。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●【重要】プレイング採用方針のお知らせ(5/31 16:20)
5月31日の集計で「カタストロフ回避(戦争勝利)」となりましたので、本シナリオは【失効までに書けるだけ採用】方針で運営させていただきます。
できるだけ全採用を目指しますが、やむを得ず採用数を絞る場合、『大祓骸魂戦(㉕)に参加されていない方、ないしは参加回数が少ない方』を優先し採用させていただくことがございます。
予めご了承の上、ご参加いただけますと幸いです。
プレイング受付の締め切りは、別途マスターページ及びTwitterで告知致します。
締め切りまでの間に万が一プレイングが失効しましたら、再送いただけますと幸いです。
――それでは、良き天空での邂逅を目指して。
政木・葛葉
ふぅん、石段走りに雲跳び……番組って映像で流れるってことでしょ?こんなのやってたんだね、普通の人じゃできっこなさそうだけど。
流れの巫女だから石段は数えるのも嫌になるくらい登ったけど、その程度じゃ速さがたりないね。
【天翔・荼枳尼天】で神獣の白狐さんをお借りして背中に【騎乗】して駆け抜けよう。白狐さんは飛ぶこともできるけど、鳥居の石段の方が馴染み深いはず。速さは折り紙付きだよ。
上がってすぐ骸魂がいるなら、そのままUCで出る狐火を【なぎなた】に集中させて【騎乗突撃】するつもり。
●妖狐は白狐と共に一筋の風となって
――時折風が吹き荒れる、地上から450m地点「天望回廊」の真上にて。
「ふぅん、石段走りに雲跳び……」
螺旋階段の如く天まで伸びる朱塗りの連ね鳥居と石階段を眺めながら、政木・葛葉(ひとひら溢れし伝説の紙片・f21008)は軽く首を傾げていた。
「番組って、映像で流れるってことでしょ?」
UDCアースではこんなのやってたんだね、と、葛葉は呆れ半分、感心半分。
――普通の人じゃ、できっこなさそうだけど。
葛葉の脳裏に過った言の葉は、しかし怪奇現象に巻き込まれた一般人の前では決して口に出さぬ様、かろうじて呑み込む。
天空に連なる石階段を走って登るにしても、彼岸花の咲く雲を足場にジャンプしながら登るにしても、ただ無暗に突っ込むだけでは、猟兵ですら登り切れるかどうか、極めて怪しい。
石階段は一定時間経過で消えるから、なおさらだ。
そんな『クリアさせる気のないアトラクションに挑ませる』ような番組が、果たして実在するのだろうか?
葛葉は少し考え……何か納得したかのように一つ頷いた。
「あ、存在しない番組なら……無茶な設定もあり得るわね」
そもそも、一般人たちが目撃した「スカイツリーと大祓骸魂が映し出された光景」は、壊れてゴミ捨て場へと捨てられていたブラウン管テレビから流れた番組。
――すなわち、究極妖怪たる『大祓骸魂』が流した『現実には存在しない番組』。
そして、戸惑う一般人が右往左往しているにも関わらず、大祓骸魂が一般人に手を出す気配は、一切ない。
――彼女が求めているのは、困難な状況を突破し辿り着く猟兵なのだから。
ならば乗ってやるか、と己に気合を入れ直し、葛葉は連ね鳥居と石階段に目をやった。
「流れの巫女だから、石段は数えるのもいやになるくらい登ったけど」
……おそらく、あたしの足で走って登っていては、速さが足りない。
そう踏んだ葛葉は、そっと神獣の白狐をお借りするための言の葉を声音に乗せた。
「お借りします。オン キリカク ソワカ!」
言の葉に応じて現れた白狐に、伝承の荼枳尼天を模した衣装を身に纏い、なぎなたを手にした葛葉もまたがり、一緒に連ね鳥居の入口へ向かう。
白狐も時速500km近い速度で飛べるが、連ね鳥居の石階段を走ってもらう方が馴染み深そうだから。
「白狐さん、頼むね」
首筋撫でつつお願いする葛葉に、白狐は一つ頷いて連ね鳥居の入口へとその身を運び、身を大きくたわめた後、全速力で駆け登り始めた。
ゲイン塔をぐるりと囲むように天に連なる石階段を、白狐は全力疾走しながら駆け登ってゆく。
白狐にまたがる葛葉には、白狐が久々に全力疾走できる喜びが伝わって来るけど、同時に螺旋階段をぐるぐる回る辛さも伝わって来て。
走れど走れど朱塗りの鳥居ばかりが続くなら、白狐さんの慣れた地なのでまだ楽なのだが、石階段が連ね鳥居ごとゲイン塔を取り囲むような螺旋階段になっているから、またがるだけの葛葉も目が回って辛いのは、確か。
少しでも外の風景を楽しもうと、連ね鳥居の外に目を向けようにも、肝心の連ね鳥居に視界を妨げられてしまい、ほとんど何も見えない。
(「そもそも石段が螺旋階段になっている時点で、おかしいのだけど」)
他の報告書では、花見や屋台、団地すら再現されているとあった以上、奇怪さを指摘するのは野暮だろう。
――げに恐るべきは、大祓骸魂の膨大な「虞」と、あらゆる状況を再現する力か。
距離も目も辛い状況ではあったが、それでも葛葉は白狐さんの脚力あって、石階段が消える前に何とか昇り切った。
石階段を登り切った葛葉たちの目の前に佇むのは、紅の番傘片手に同じ色の瞳をたたえる女の子――大祓骸魂。
『辿り着きし白狐と荼枳尼天よ さあその刃を この身体に』
神智を越えた虞を放ちながら葛葉たちを誘う大祓骸魂に、葛葉も狐火を刃に纏わせたなぎなたで虞を切り払い霧散させつつ、駆け登った勢いのまま白狐と共に突撃。
お互いの身体が交錯したその瞬間、葛葉は虞すら切り裂くなぎなたを真っ直ぐ振り抜いた。
――ザシュッ!!
床と水平に真っ直ぐ薙がれたなぎなたの刃は、大祓骸魂の胴にするりと食い込み、切り裂く。
『ああ ああ この痛みは……』
久しく感じていなかった痛みに身を震わせながら、大祓骸魂はにこり、と微笑んでいた。
成功
🔵🔵🔴
御園・桜花
「貴女は、此の泡沫の世が繋がると示して下さった。大正の御代から幽世へ、そしてアースにも幻朧桜が導けると示して下さった。私の夢を叶えて下さった貴女に、親愛と感謝を捧げたい…それでも。此の泡沫の世から全ての命を滅しようとする貴女に、従うことは出来ません。親愛と感謝と拒絶を届ける為に、私は貴女に会いに行きます」
UCで距離が不足した分雲を引き寄せたりジャンプした自分を押して貰ったりしながら彼岸花の雲の上を進む
ルートは第六感や見切りで選択
大祓骸魂の元に辿り着いたらUCで大祓骸魂を切り裂く
「貴女の愛がどんなに深くても、私は貴女を拒絶します。そして…何時か共存出来る迄、何度でも貴女のお還りをお待ちします」
●泡沫に現れし幻朧桜は、一途な愛を否定して
――貴女は、此の泡沫の世が繋がると示して下さった。
――それでも、全ての命を滅しようとする貴女に、従うことはできません。
吹き荒れる風にめくれそうな着物の裾を桜色の髪を必死に押さえながら、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はスカイツリー・ゲイン塔の頂上に目をやった。
桜の精たる桜花は、いつか己も幻朧桜になる前身だと何となく思っている。
一方、己に命を与えてくれた幻朧桜は、大正の御代……サクラミラージュにしか咲かぬものだと思っていた。
しかし、幽世から溢れ出した百鬼夜行を追うに連れ、縁も所縁もないはずの幽世に、幻朧桜が『魂と精神を癒す桜』としてしっかりと根付いていたことに驚かされ。
そして、大祓骸魂がUDCアースに出現した際、膨大な虞と共に空間が幽世へと塗り替えられるとともに……再び幻朧桜が現れたことにも、また驚かされた。
一見すると目を疑う光景ではあるのだけど、桜花自身も直接赴き、確かに幻朧桜であったと確認している。
――しかしなぜ、幽世に幻朧桜が根づいていたのか?
その理由は判らずじまいだし、それがUDCアースに現出した理由もわからないけど。
――あれは幽世という世界の特異性が齎す、一時の夢だったのかもしれない。
しかし、あの時咲き誇っていた幻朧桜の姿かたちは、今は見当たらない。
ゲイン塔周辺の環境が目まぐるしく変わるからか、あの時あった幻朧桜が何処に消えたのかは定かではないが、代わりにあるのは、無数の彼岸花が咲き乱れる雲とゲイン塔をぐるりと囲む連ね鳥居。
それでも、桜花は一時ながら夢を叶えてくれた大祓骸魂に、親愛と感謝を捧げたかった。
……だが、それでも。
己が偏愛から、此の泡沫の世のいのちを全て、骸の海で永遠に留めるとの名目で滅そうとしている大祓骸魂に従うことは、できない。
親愛と感謝、そして拒絶を届けるために……桜花は風に舞った。
「森の妖精、風の精霊。私の願いを叶えておくれ。代わりに1つ、お前の気ままに付き合おう。おいでおいで、シルフィード」
おっとりと、だが明瞭に風の精霊に呼びかけた桜花の身体に、ふわりと風の精霊が纏いつく。
桜花はその力を借りて空を舞い、燃え盛るような赤を空にたなびかせる雲から雲へと飛び移りながら、ゲイン塔を登っていった。
次の雲への距離が足りなければ精霊に頼んで雲を引き寄せ、風に乗るように飛び移り。
時には精霊に桜花自身を押してもらいながら、無数にある雲の中から最適な道程をとれそうな雲を己が直感をも交えて選び取り。
袖に桜をあしらった桜色の着物を空にたなびかせながら、桜花はふわりと空を舞うように最短距離で雲を飛び移っていった。
――それはまるで、幻朧桜が東京の空に一筋の希望を描き出すかのよう。
やがてゲイン塔の頂上に辿り着いた桜花は、待ち構えていた大祓骸魂の前にそっと着地するも、紅の番傘差した童は同じ色の瞳を向け桜花に微笑むのみ。
「さあ貴女も その桜と一緒に 永遠へ向かいましょう」
愛を以て桜花を受け入れようとする大祓骸魂の手を、しかし桜花は決して取らない。
――此の泡沫を骸の海にて永遠に留めようとする限りは、決してその手は取れない。
「貴方の愛がどんなに深くても、私は貴方を拒絶します」
桜花は言の葉に強い拒絶の意思を籠めながら風の精霊に命じ、全てを切り裂く風の刃を放つ。
――ヒュンッ!!
「ああ ああ あなたも……」
不可視の刃に百鬼夜行ごと切り裂かれた大祓骸魂は、立て続けに襲う鋭い痛みに呻き続ける。
桜花は、一途な愛を抱きし童が風の精霊の刃に次々と切り裂かれる光景を、じっと目に焼き付けていた。
――貴女が一方通行の愛に拘る限り、その手を取ることはできないけど。
――何時か共存できるようになるまで、いつでも還りは待っているから。
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
2:⑯雲飛びを選ぶ
自分を殺されるひろいんに配するのかー
(相棒の鸚鵡が肩で首かしげ『女心は、ふくざつ』
恋い焦がれたUDCで殺されりゃ自分もUDCアースの物になる、と思うのかな
どの道あの姫さんは死にたがってるように思えて不憫だねェ
ウッカリ巻き込まれた一般人には落ちないようにな、としか言えねーな
これは失神して当然の高さだ、下は見んなよ?
てかオレも落ちたら彼岸行きな不定型になりそ
が!
これも修行と思えば
『羅刹は脳筋ね』
まーね
【野生の勘/地形の利用/軽業】雲の高さ距離を目視し跳ぶ
雲の動きも【追跡】して
念の為縄付きクナイを【ロープワーク/念動力】
来たぜ姫様
…後追い心中の幽鬼を降ろす技でお相手するよ
アドリブ可
●孤独の愛は時に蟲毒となりて
「自分を殺されるひろいんに配するのかー」
彼岸花の咲く雲に囲まれるスカイツリー・ゲイン塔を見上げながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は頂上にて待ち受けるであろう究極妖怪『大祓骸魂』の意図を測り兼ねていた。
『女心は ふくざつ』
トーゴの肩に止まりながら首を傾げる相棒の鸚鵡・ユキエに同情するように、トーゴも軽く首を傾げてしまう。
「恋焦がれたUDCで殺されりゃ、自分もUDCアースのものになる、と思うのかな」
とはいえ、トーゴには大祓骸魂が死にたがっているように思えて仕方がないのだけど。
「あの姫さんは死にたがっているように思えて不憫だねぇ……」
ならば、一刻も早く介錯……と考えた、その時。
「ひ、ひぃぃぃぃぃい……!」
「こわ、こ、こ、こ……」
トーゴの耳に、一般人の悲鳴が届いた。
悲鳴の先にいたのは、うっかり下を覗いてしまったか、腰を抜かし動けない一般人が数名。
「これは失神して当然の高さだ、下は見んなよ?」
トーゴは動けない一般人に駆け寄って手を貸し、できるだけゲイン塔に寄らせるように誘導する。
「は、はいぃぃ!!」
強風の中、一般人たちはトーゴの誘導に従い、できるだけ下を見ぬように移動し、ゲイン塔に寄りかかった。
この真下のフロア「天望回廊」からも下を見降ろせるとはいえ、ガラスと鉄骨に守られた展望室から下を見るのと、強風ふきっ晒しの状態で命綱なしで下を見るのとでは、身に感じる恐怖はケタ違い。
――落下の恐怖は、それだけで足を竦ませ、判断を鈍らせる。
トーゴの「下は見んなよ?」の助言は、短くとも十二分に効果があった。
とはいえ……この高さから落ちたら命がないのは猟兵も同じ。
(「オレも落ちたら彼岸行きな不定形になりそ」)
おそらく、地面に叩きつけられ不定形になる前にグリモア猟兵が回収してくれるとはいえ、それでも虚空で手足を泳がせてもどうにもならぬ落下の恐怖は、1度身に沁みたら容易に拭えるものではない。
だが、その恐怖に打ち克たねば、おそらく大祓骸魂の下へは辿り着けまい。
「が! これも修行と思えば!」
『羅刹は脳筋ねー』
「まーね」
呆れるユキエに、トーゴも同意しつつ苦笑いを浮かべていた。
一般人の安全を確保し、軽く準備体操をしたトーゴは、ゲイン塔を足掛かりに彼岸花の咲く雲へと飛び移り始める。
野生の勘を駆使し、ゲイン塔の縁をも利用して、雲の流れを読みつつ高さや距離を目視で測り、飛び移れそうな雲を探しながら。
的確に間隔を読みつつも、一方で己が脚力を決して過信せず、テンポよく軽々と雲と雲の間を飛び移るトーゴの動きには、全く無駄がない。
それでも、時折1度のジャンプでは届かぬほど、雲が離れていることもあるのだけど、すかさず縄付きのクナイを念動力でゲイン塔や雲に引っかけ、縄を掴んで己が身体を引き寄せる。
飛び移れなかった時のフォローも万全に、時には曲芸師と見間違おう身のこなしで軽やかに、時には縄付きのクナイを頼りに大胆に飛び移るトーゴが、うっかり足を踏み外すことは、なかった。
――スタッ。
軽やかにゲイン塔の頂上に辿り着いたトーゴの目に入ったのは、衣装を斬られながらも番傘を手に優雅に待ち受ける究極妖怪『大祓骸魂』。
トーゴは懐に隠し持った平凡な棒手裏剣に手をやりながら、痛みを滲ませながらも慈愛を湛えた笑みを浮かべる大祓骸魂をじっと見据えた。
「来たぜ姫様。……後追い心中の幽鬼を降ろす技でお相手するよ」
――“降りて隠形呼ぶ細声の糸を辿れや爪月の”
「……追って貫け隠形鬼」
トーゴが懐から投げつけた棒手裏剣は、大祓骸魂が咄嗟に翳した番傘と百鬼夜行の護りを貫き、彼女の胸に突き立つ。
痛みに顔を顰める大祓骸魂の胸に、棒手裏剣の後を追うように毒を纏う幽鬼を宿した地味な毒針が突き立った。
「ああ ああ ああ……」
毒が少しずつ蝕んでいるのか、胸をかきむしる様に蹲る大祓骸魂の姿は、恋という名の蟲毒に苦しむ少女のようにも見えた。
大成功
🔵🔵🔵
魔女・ウィッチ
②
我は偉大なる魔女じゃぞ!?魔女と言えば、箒に乗って飛ぶ物じゃろう!何故、我が自分の脚で走ったり跳んだりせねばならぬのだ……!
登り切ったら、呪詛を込めて武器改造した毒使いの毒リンゴを念動力で空中浮遊させて口にねじ込んでやるわ……!
魔女果実に齧り付き、薬品調合した大量の栄養剤で流し込んで大いなる体力を得る。魔女導書を開き、身体強化魔法も高速詠唱全力魔法で掛けておくのじゃ!
奥の手の一つだけど、揮杖の精霊と魔女宝珠の使い魔数体と式神使いの技能で融合。猫のしなやかな身体能力を得た上で、更に化術で黒猫そのものへ変化。猫のジャンプ力は凄いのよ!
落ちそうになったら結界術で空中に足場を生成して元の道に戻るわ!
●偉大な魔女も場のルールには逆らえず
「我は偉大なる魔女じゃぞ!? 魔女と言えば、箒に乗って飛ぶものじゃろう!」
幽世に塗り替えられた空に、偉大そうな魔女が憤慨する声が響く。
その声の主は、漆黒の魔女装束を羽織り、箒を手にした魔女・ウィッチ(偉大なる魔女のサーガ・f33446)。
事前にグリモア猟兵から『連ね鳥居や雲を使わず向かったら、大祓骸魂に叩き落とされる』と説明を受けた時から、己が矜持を否定された気がしてどうにも納得できず、思わず叫んでしまったのだ。
「何故、我が自分の脚で走ったり飛んだりせねばならぬのだ……!」
ウィッチは憤慨したまま、箒で一気にゲイン塔の頂上まで飛んでみるが、彼岸花の雲は彼女の邪魔を一切しなかった。
妨害されなかったならこのままいけるのでは、とウィッチが魔法の鏡を取り出そうとした、その時。
『哀れな妖怪 あなたに用は ありません』
大祓骸魂が優雅に番傘を一振りすると、箒はあっという間に浮力を失った。
「え?」
ウィッチが拍子抜けした瞬間、箒が引力で地面に引っ張られ、そのまま真っ逆さまに地表に向けて落下する。
本来なら、この時点でグリモア猟兵が緊急回収しそうなものだが……。
――ぽすっ。
運よく彼岸花の咲く雲に引っ掛かって受け止められ、ウィッチは事なきを得た。
(「命拾いしたのじゃ……」)
本来ならば、究極妖怪であれ、オブリビオン・フォーミュラであれ、己が使い魔にしたいところだが、この状況では難しいか。
「登り切ったら、毒リンゴをその口にねじ込んでやるわ……!」
憎々し気に呟くウィッチを、大祓骸魂は番傘と同じいろの瞳で見下ろしていた。
箒に頼れぬと判明した以上、己が脚のみで登るしかない。
ウィッチは魔女果実にかじりつき、さらに大量の栄養剤を口に流し込んで体力を増強。
さらに魔女導書を開いて身体強化魔法を全力でかけ、体力と身体能力を大幅に向上させる。
「ええいっ!!」
己が能力を強化したウィッチは、気合を入れていざ飛ぶも、高さも距離も次の雲に飛び移るには全く足りず、脚は次の雲に届かない。
結果。
――びたーん!!
ウィッチは雲に着地し損ねて天望回廊まで落下し、足を強打した。
「アイタタタ……」
魔女果実を齧りながら痛めた脚をさする、ウィッチ。
助走をつけずに体力と身体能力のみを頼りに飛ぼうとしたらどうなるか、嫌という程思い知らされたが、ここで諦めるわけにもいかず。
「ああ、こうなったら奥の手よ!」
スックと立ち上がりつつ、本来の少女の口調に戻したウィッチは、魔女揮杖に宿る黒猫姿の闇の精霊と魔女宝珠に封じてある使い魔のうち数体を、式神使いの権能を用い己に融合し、闇の精霊と使い魔の能力を己が身に取り込み、黒猫が持つしなやかな身体能力を得る。
さらに化術で己が身をも黒猫にやつすことで、猫そのものとして動けるように。
奥の手のひとつではあり、もう少し温存しておきたかったのだが、やむを得ない。
(「猫のジャンプ力は凄いのよ!」)
黒猫姿のウィッチは、何度かその場で軽くジャンプした後、一気に頭上の雲へと飛び移る。
ウィッチ自身の体力や身体能力が強化され、猫としての動きを融合した闇の精霊から教わった今なら、多少離れていても飛び移れるはず。
――ヒュンッ!
――スタッ。
今度は狙い通り、うまく雲に飛び移った。
(「これならいけそうね」)
そのまますぐに手近な彼岸花の雲に飛び移ったウィッチは、その後も次々と雲を渡り、登ってゆく。
時折、黒猫と人間の違いから生じる視野の差から、次の雲までの距離を読み違えて落ちかけたこともあったが、今度は展開した結界を足場代わりにしてすぐ雲に戻り、事なきを得た。
なんとか頂上まで登り切った黒猫姿のウィッチを出迎えたのは、先ほども邂逅した大祓骸魂。
『懲りずによく 来ましたね』
「みゃみゃーっ!!(今度こそ毒リンゴをねじ込んでやるわ!)」
叩き落とされることはないと見たウィッチは、放たれる神智を越えた虞を避けつつ、魔法の鏡から生成した毒リンゴを念動力で大祓骸魂の口に直接ねじ込み、食べさせる。
『ああ ああ このちのいろ……』
『美しいものを殺したい』との願いが籠った毒リンゴを無理やりねじ込まれた大祓骸魂は、うっかり一口齧ってしまい、顔を青ざめさせていた。
成功
🔵🔵🔴
イネス・オルティス
:プレイングボーナス:
連ね鳥居を最速で駆け抜ける
ビキニアーマーの女戦士のちからを見せてあげるわ
【薄衣甲冑覚醒 弐】を使用して『連ね鳥居の石階段』を高速移動で一気にダッシュして進む
石階段のふちが欠けていたり滑りやすくなっている場所の回避は
私の野生の勘に任せておけば大丈夫
それに石階段を通っていれば道に迷う心配もないし何も問題ないわね
大祓骸魂のところにたどり着けば、ダッシュの勢いそのままに捨て身の一撃を食らわせるわ
恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿の存在感で、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません
●人を救いし戦女神は、一陣の風となりて
「ビキニアーマーの女戦士のちからを見せてあげるわ……っと」
スカイツリー・ゲイン塔を前に入念に準備運動を行うイネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)の背中に、ゲイン塔に寄って安全を確保している一般人の男性たちから視線が注がれる。
猟兵はどの世界に向かっても、どんな外見でも違和感を与えることはないのだが、イネスの故郷の隠れ里以外では明らかな露出過多になってしまうビキニアーマーを着用していては、さすがに違和感は隠し切れないらしい。
しかし、イネスにとってこの鎧は一人前の。決して脱ぐ訳にはいかない。
その前に、露出過多な容姿に奇異な視線を向けられるのには慣れているから、公衆の面前で指摘されない限りは気にも留めないのだが。
……それでも、注がれる視線の多さは流石に気になる。
(「この状況なら、むしろ見られている方が好都合かもしれないわね」)
その視線に若干の怯えが含まれることに気が付いたイネスは、あえて声をかけず放っておくことにした。
――一般人達は、未だ高所にいる恐怖と戦っている。
だが、イネスに視線を注ぐということは、注いでいる間はスカイツリーの『下』を気にせずに済むため、高所に居る恐怖だけに思考を縛られることはおそらくない。
無意識に誘惑されてしまった一般人がイネスに近づくことはあるかもしれないが、それはそれで天望回廊の縁から遠ざけることになるので問題ない。
つまり、一般人の視線をイネスに集めるままにさせておけば、そのまま一般人の安全も確保し続けられることになる。
もし、イネスの容姿に恥ずかしさを覚えた一般人がいたとしても、目を逸らすよりは目を覆い隠すほうが早いため、それはそれで下を見ずに済む。
どちらにしても、イネスがこの場にいる限り、一般人をより安全に待機させておけるだろう。
そう考えたイネスは、あえて一般人には声をかけないまま、連ね鳥居の入り口に足を踏み入れた。
「今、伝統の鎧を依り代に伝説再誕」
イネスは一族伝統の鎧に宿りしビキニ鎧の戦女神のオーラを呼び出し、身に纏う。
そして、石階段の1段目に足をかけ、一気に踏み込み石段を駆け登り始めた。
オーラを纏いし高速移動で、イネスは石階段をぐんぐんと駆け登っていくが、息を切らす様子は全くない。
戦士として鍛え上げた体力と、戦女神の加護で強化された脚力があれば、高速で石階段を駆け登るのは然程難しくなかった。
それでも、古き良き連ね鳥居ゆえ、時々石階段の縁が欠けていたり、苔むして滑りやすくなっている箇所もあるのだけど。
「おっと!」
足裏に伝わる違和感と鍛え抜かれた野生の感で、イネスは縁の欠けや石畳の剥がれ、さらに苔の生え具合を察知して即座に避けつつ、ひたすら走り続けた。
連ね鳥居が消失するまでの時間制限はあるものの、鳥居を潜り続ける限り迷う心配がない安心感がイネスの身体から余分な力を抜かせ、足運びも軽快に駆け登らせていた。
もっとも、連ね鳥居は螺旋階段のようにゲイン塔の周囲をぐるりと取り囲んでいるため、登るたびに目が回りそうになる。
(「それでも、雲をつたっていくよりは早くいけるわね」)
しかしイネスは、戦士として鍛え抜かれたバランス感覚を以て視界の歪みを補正しながら、一気に頂上まで登り切った。
連ね鳥居が消失するより早く登り切ったイネスをゲイン塔の頂上で待ち受けるは、番傘を差した『大祓骸魂』。
『異世界の女戦士よ あなたも わたしを』
「聞く耳持たないわ」
懐刀『生と死を繋ぐもの』を百本単位で虚空に浮かべつつ、まるでイネスが何者かわかっているように呼び掛ける大祓骸魂の声が、イネスの耳に届く。
しかしイネスは一切耳を貸さず、ダッシュの勢いを維持したまま、手にした巨獣槍とともに振り向こうとする大祓骸魂の背に体当たりした。
――ドンッ!!
――カラン……ッ。
『か、はっ……』
胴に衝撃を受け肺から空気が一気に押し出され、大祓骸魂は苦悶の表情を浮かべる。
念力で浮かべていた懐刀は、一瞬意識が飛んだせいか、全て音を立てて床に転がった。
『ああ ああ これもまた……』
そっと視線を下げた大祓骸魂の目に焼き付いたのは、己が腹を突き破って現れた、血にまみれた巨獣槍。
その穂先に慈愛の視線を注ぎながら、己がいのちを少しずつ奪ってゆくそれをそっと撫でていた。
大成功
🔵🔵🔵
アルフレッド・モトロ
1:連ね鳥居を最速で駆け抜ける。
「連ね鳥居を最速で」か
スピード勝負なら十八番だ、行くぜ相棒!
【怪力】と【力溜め】で助走をつけてスタート【ダッシュ】だ。
アイテム【反重力サーファー『ヘルカイト』】と
UC【爆走飛鱏ヘルカイト】を使って一気に階段を駆け上がるぞ!
しかし階段をヘルカイトで上る、となると
若干浮かぶ仕様とは言え、機体へのダメージと揺れが凄そうだが…
そこは【気合い】と【サーフィン】のテクで耐える!
頂上までどうか耐えてくれ、相棒……ッ!!
上り切ったらそのままのスピードと勢いで【咄嗟の一撃】!
骸魂に一撃お見舞いしてやるぜ!
●スティングレイは連ね鳥居を駆け抜けて
「『連ね鳥居を最速で』か」
スピード勝負なら十八番だ、とニヤリと笑うアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)の小脇に抱えられている薄いトビエイ型の板は、相棒たる『反重力サーファー『ヘルカイト』』。
一見、トビエイの形をしたサーフボードに見える『ヘルカイト』だが、反重力を発生させる機構と変形機構が組み込まれている。
「さて、と……」
相棒とも言える『ヘルカイト』を床に置いたアルフレッドは、『ヘルカイト』のスイッチを入れ。
「おらァ! 退いた退いたァ! ……行くぜ、相棒! フルスロットル!!」
アルフレッドが檄を飛ばすと『ヘルカイト』に搭載されている反重力エンジンがうなりを上げ、石階段を登りきるためのエネルギーを事前にチャージし始める。
やがて、十分なエネルギーを蓄積した『ヘルカイト』が床から僅かに浮かび上がった。準備万端だ。
アルフレッドは右足をトビエイのヒレに乗せ。
「いっくぜえ!!」
己に気合を入れながら左足で思いっきり床を蹴り。
――ゴウッ!!
一気に加速した『ヘルカイト』とアルフレッドは、一陣の風のように連ね鳥居の石階段へと突入した。
最高のタイミングでスタートを切ったアルフレッドと『ヘルカイト』だったが、数秒たたないうちに、反重力サーファーで石階段を登る辛さを思い知ることになった。
なぜなら、『ヘルカイト』の底面が、頻繁に石階段に接触するのだ。
――ガタガタガタッ。
――ガツッ、ガキッ!
(「石階段にぶつかった時の揺れが凄いぜ……持つか?」)
揺れの激しさに、予想していたアルフレッドも一抹の不安を抱かざるを得ない。
そもそも、高速で飛翔する物体は、外部からほんのわずかな衝撃を受けただけでも激しく揺れ、バランスを乱される。
それは『ヘルカイト』であっても例外ではない。
反重力サーファーたる『ヘルカイト』は、若干地表から浮くことで全体の揺れを抑える仕組みになっているが、階段のように段差が続く場所を高速で飛翔すると、地表の形状を検知し浮き上がろうにも間に合わず、結果、階段に反応して浮き上がる前に接触してしまう。
必然的に『ヘルカイト』に乗るアルフレッドは何度も激しい揺れに襲われ、耐えることになるが、それ以上に厳しかったのが、石階段が螺旋を描きながら登っているため、常時遠心力に耐えなければならないこと。
少しでも遠心力に耐えきれなければ、アルフレッドが『ヘルカイト』から転落するか、あるいは『ヘルカイト』ごとコースアウトし連ね鳥居の外に放り出されるか。
いずれにせよ、1度コースアウトすれば時間内に再度石階段を踏破するのは難しくなるため、アルフレッドは気合とサーフィンで培ったテクニックで揺れと遠心力に耐え続ける。
正直、『ヘルカイト』が登り切るまで壊れることなく持つかどうかは、わからない。
(「頂上までどうか耐えてくれ、相棒……ッ!!」)
頻繁に接触する相棒が壊れぬことを祈りつつ、アルフレッドは相棒のコントロールに集中し、ただひたすら石階段の上を飛ぶように駆け続けた。
それでも、全行程の3分の2ほど駆け抜けたところで、『ヘルカイト』が煙を噴き始める。
度重なる衝撃に重要なパーツが破損したらしく、もはやいつ壊れてもおかしくない状況にはなっていたが、それでもアルフレッドはスピードを落とさない。
(「今まで持ってくれたんだ、最後まで持つよな、相棒!!」)
相棒に全幅の信頼を置いた今、アルフレッドの壊れるなとの祈りは、壊れぬとの信頼へと変化していた。
その甲斐あってか、アルフレッドは『ヘルカイト』が完全に破損する前に石階段を登り切っていた。
閉鎖的で変わり映えしない連ね鳥居を潜り続けてきたアルフレッドと『ヘルカイト』の眼前が、突然開ける。
頂上に辿り着いたアルフレッドの目に飛び込んできたのは、巨大な満月と東京の街並み。
そして……紅の番傘片手に街並みを見下ろしている大祓骸魂の姿。
『ああ ああ もうすぐ……』
(「今だ! 骸魂に一撃お見舞いしてやるぜ!」)
大祓骸魂に気づかれ懐刀を突き立てられる前に、アルフレッドは速度を維持したまま大祓骸魂に突撃、『ヘルカイト』ごと体当たりする。
――ドガッ!!
『ああっ……』
エイのヒレで強打された大祓骸魂の胴が鈍く重い音とともにくの字に曲がり、番傘が手から離れる。
風に乗り東京の空を舞う番傘を、大祓骸魂は名残惜しそうに眺めていた。
大成功
🔵🔵🔵
シリン・カービン
大祓骸魂はこの世界を愛していると言った。
愛するUDCアースを永遠にしたいと。
…もう、忘れられたくないのですね。
誰からも、世界からも。
彼岸花の咲く雲を飛び移りながら上空を目指します。
飛べるところは自力で。距離のあるところは宙を踏んで。
地上を駆けるかのように、最速で大祓骸魂に向かいます。
あなたのことは大親分たちが覚えていた。
そして今は私たちも覚えている。
この世界を犠牲にしなくても、
もう忘れられることは無い。
彼岸花は風で揺らすのみ。
一本たりとも踏みにじること無く、駆け抜けます。
最後の一跳びと共に銃を構えます。
あなたは私に殺されるヒロインなどではない。
「あなたは、私の獲物」
狩った獲物を、私は忘れない。
●存在を記憶に留める意味
――大祓骸魂は、この世界を愛していると言った。
――愛するUDCアースを永遠にしたい、と。
「……もう、忘れられたくないのですね」
スカイツリー・ゲイン塔を見上げつつ、マントを風になびかせながら、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は独りごちる。
UDCアースの人々はおろか、邪神たちからさえもその存在を忘れ去られた、骸魂の元凶にして邪神の一柱たる究極妖怪『大祓骸魂』。
この世界を愛する、邪神の一柱でもある究極妖怪は、しかしこの世界の人々や邪神から存在を忘れられている。
そもそも、妖怪たちは人間から怒りや喜びなどの感情を向けてもらい、生きる存在。
文明や科学の進歩と共に存在そのものが人々の記憶から消えた妖怪は、人間達から感情を向けられなくなり、生きる糧を失い、やがて消滅に至る。
だからこそ、妖怪たちはいのちあるうちにカクリヨファンタズムに向かい、追憶と共に生き永らえるのだが、辿り着く前に死して骸魂と化す妖怪も少なくはない。
――おそらく、大祓骸魂もまた、人々や邪神から忘れられたことで、幽世へ向かったのかもしれない。
しかし、幽世で蘇った大祓骸魂は、UDCアースを愛する故に、誰の記憶にも存在しない世界に戻ることを選んだ。
……愛する世界を骸の海に送り、その存在を永遠に留めるために。
だが、世界ごと骸の海に送るということは、すなわち世界の破壊を意味する。
そうはさせぬ、とシリンは風の精霊の力を借り、彼岸花の咲く雲に飛び移りながら、スカイツリー・ゲイン塔の頂上を目指し始めた。
雲と雲の間を自力で飛び移れそうな場合は、自力で飛び移り。
精霊の力を借りねば届かぬほど距離があるところは、宙を踏みながら飛び移り。
その上で、彼岸花を一本たりとも踏み躙ることのないよう、慎重かつ大胆に足場を選びながら雲を辿ってゆく。
空を舞い、雲を辿りながら、シリンは思う。
(「大祓骸魂、あなたのことは大親分たちが覚えていた」)
――完全に存在を忘れ去られていたわけでは、なかった。
(「そして今は、私たちも覚えている」)
――大親分たちが道を切り開き、知らしめてくれたから。
(「この世界を犠牲にしなくても、もう忘れられることは無い」)
――世界そのものの犠牲は、もはや不要なのだから。
だが、「犠牲にする必要はない」と伝えたとしても、骸魂……オブリビオンである大祓骸魂の考えは変わらず、大祓骸魂を止めるしか世界の犠牲を回避する術はないだろう。
だからこそ、シリンは想いを胸に留めながら雲を駆け、最速で頂上へ向かう。
無数の雲から乗るべき足場を選びつつ、時に宙に足場があるかのように踏み込み、まるで雲を駆け抜けるかのように次々と飛び移り、徐々に頂上へと近づく。
雲に咲き乱れる彼岸花は、シリンが駆け抜けると激しく揺れるが、それでも折れることはなく、踏み躙られることもまた、なかった。
最後の雲を踏みしめ、宙に身体を躍らせると同時に、シリンは風の精霊の弾丸を籠めた精霊銃を構え、呼びかけた。
「大祓骸魂」
『あなたも 私を 殺しにきたのですか』
シリンに呼びかける大祓骸魂の手に番傘はなく、衣装は所々裂かれているが、優雅な姿勢は崩していない。
――彼女は最後まで、悲劇のヒロインを演じるつもりなのだろうか。
シリンは脳裏をかすめた疑問を振り払うかのように軽く首を振り、精霊銃の引き金に指をかけた。
「いえ、あなたは私に殺されるヒロインなどではない」
――あなたは、私の獲物。
その言の葉とともに射出された精霊弾は、大祓骸魂の首筋を貫き、風の精霊力を解放。
大祓骸魂は、首筋を貫かれた衝撃と荒れ狂う風の精霊の力で遥か後方へ吹き飛ばされながらゲイン塔から落下し、消滅した。
永遠の愛を求めた究極妖怪『大祓骸魂』。
その存在を、シリンが忘れることはないだろう。
なぜなら……狩人は、狩った獲物を忘れないから。
――究極妖怪『大祓骸魂』、撃破。
大成功
🔵🔵🔵