大祓百鬼夜行㉕〜全てを賭けて、究極に挑め
「大祓百鬼夜行の攻略に参戦していただき感謝します。リムは戦況を報告します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は戦場を現す大きなマップを広げると、淡々とした口調で語りだした。
「カタストロフの到来を目前にして、戦況は最終盤を迎えています。大祓百鬼夜行のみならず、全ての骸魂の元凶である究極妖怪『大祓骸魂』の所在がついに判明しました」
あらゆる知的生命体に忘れられたがゆえに、誰も姿を見ることができず、グリモアの力すら及ばない『大祓骸魂』を捉えるために、命懸けの作戦を立てた妖怪と、それに応えた猟兵。地球と幽世、ふたつの世界を守る戦いはいよいよ最終局面を迎えようとしていた。
「大祓骸魂は東京スカイツリーの最上部に設置された、アンテナを収納した高さ約140mの巨大構造物――『ゲイン塔』で猟兵が来るのを待っています」
神智を超えた存在である大祓骸魂の行動や意志を理解するのは難しい。ただ目的だけは明らかだ。彼女はUDCアースに対する絶対なる「愛」の元、世界を滅ぼさんとしている。
「大祓骸魂の懐刀『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』は、時間をかければ何でも殺すことがます。彼女はこの刀で世界そのものを『殺す』つもりなのでしょう」
殺されたものは過去となり、骸の海で永遠となる――それが大祓骸魂の望みらしいが、彼女以外の者にとってそれは未来なき破滅に他ならない。またUDCアースと骸の海の狭間に浮かぶ幽世も同時に滅びることになるだろう。考えうる限り最悪のカタストロフだ。
「既にゲイン塔を中心とした東京上空は、大祓骸魂の放つ膨大な虞(おそれ)によって、カクリヨファンタズムのような異空間に変化しています。彼女はそこから今回の戦争中に確認された『あらゆる手段』を行使して猟兵に襲い掛かります」
たとえば周囲の空間を団地化し、その地形を利用した「団地闘法」を仕掛けてきたり。竹林からかぐや姫の群れを召喚したり。駄菓子兵器で武装したり。妖怪バスに乗ったり。非実体化して通信網の中を移動したり。カードの弾幕を放ったり。戦場を橋の上や鎮守塔や連ね鳥居に変化させたり。もはや何でもありではないかと思うくらい戦術多彩である。
「ですがこれは逆に言うと、こちらが大祓百鬼夜行との戦いで経験したあらゆることが、大祓骸魂を倒すための手段に繋がる、ということでもあります」
今回の戦争で、猟兵達は妖怪が引き起こす様々な事件に立ち向かい、その対処法を確立させてきたはずだ。その経験は既出の手段を駆使する大祓骸魂との戦いでも有効となる。
敵のまとう膨大な虞を利用して真の姿に変身する。妖怪団地やら踏切迷宮やらの特殊な環境に対応する。電話ボックスで敵を呼び出す。仲間と連携で一気にダメージを与える。バズリトレンディ御殿のお金を消費してパワーアップする――エトセトラ、エトセトラ。
「他にも屋台グルメを食べまくったり、幻朧桜の丘でお花見をするといった、攻撃以外の手段でも大祓骸魂にダメージを与えられます」
正確にはそれらの行動が虞を打ち破る祓(はらい)となり、大祓骸魂を倒す力となる。
これまでに協力してくれた妖怪達やUDC組織のエージェントなどに今一度助けを求めて共に戦ってもいい。ふたつの世界が滅びるかどうかの瀬戸際だ、誰も否とは言うまい。
「この決戦は、皆様が戦いを通じて培ってきた『全て』が試されることになるでしょう。そしてこれは大祓骸魂の軍門に降った妖怪達が作ってくれたチャンスでもあります」
もしも百鬼夜行となった妖怪達がいなければ、猟兵は大祓骸魂を見つけられなかっただけでなく、倒す手段も分からなかっただろう。大祓百鬼夜行との戦いが結果的に大祓骸魂を倒すための予行演習になっていたのは、おそらくただの偶然でなく、運命的な必然だ。
「ここが正念場です。全力をもって大祓骸魂を祓い、妖怪達に吉報を持ち帰りましょう」
リミティアはそう言って手のひらにグリモアを浮かべると、スカイツリー・ゲイン塔への道を開く。大いなる邪神が一柱にして究極妖怪『大祓骸魂』との決戦が、遂に始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
ついに大祓百鬼夜行との戦いもクライマックス。いよいよ今回は究極妖怪『大祓骸魂』との最終決戦です。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)
戦場となるスカイツリー・ゲイン塔及び東京上空は、大祓骸魂の虞により異空間に変化しています。そこでは今回の戦争中に存在したあらゆるシチュエーションが発生します。それに対応して大祓骸魂の能力や行動も変化したり、一般人や一般妖怪が迷い込んできたりします。
シチュエーションが同じなら、対処法も同様です。これまでの戦場からお好きなプレイングボーナスを選んで(リプレイでは、戦いを挑むタイミングで丁度そのシチュエーションに戦場が変化したことになります)作戦を立ててください。
必ずしもその猟兵が過去に参加したシナリオの戦場である必要はありません。グルメやお花見やTCGなど、戦闘以外のプレイングボーナスも利用可能です。
補足情報として、大祓骸魂はこれまでの骸魂に取り憑かれた妖怪のように救うことはできません。ふたつの世界のために、撃破に全力を注いでくだされば幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
……予兆を聞く限り、大祓骸魂が世界を愛しているというのは確かなのだろうが、やろうとする事はいただけない
世界を滅ぼすなんて見過ごす訳にはいかないし、止めさせてもらおうか
――って、こいつはバズリトレンディ御殿で購入したのと同じ大型バイク
まさかこいつが出てくるとは思わなかったが丁度いい。こんな戦場だ、使えるものは使わせてもらおう、とバイクに騎乗して鉄刀を抜く
バイクで走り回って集まった妖怪達の攻撃を回避したり、すれ違いざまに骸魂を斬って妖怪を解放してやりつつ、大祓骸魂へと突貫
いっそバイクで大祓骸魂へ体当たりしながら自分は跳躍。落下の勢いを乗せて、参の型【天火】による渾身の一刀を叩き込む
「……予兆を聞く限り、大祓骸魂が世界を愛しているというのは確かなのだろうが、やろうとする事はいただけない」
UDCアースを心から愛し、それ故に死という永遠の滅びを与えんとする『大祓骸魂』。
彼女の計画を阻止すべく、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は東京スカイツリーの頂上、決戦の舞台であるゲイン塔に足を踏み入れた。
「世界を滅ぼすなんて見過ごす訳にはいかないし、止めさせてもらおうか」
「ようこそ 猟兵たちよ 私は あなたたちを歓迎します」
古風な白装束をまとったその女妖怪は、艶やかに微笑み好意的な視線で鏡介を見やる。
彼女の放つ膨大な虞によって、周囲の空間は歪み、幽世に似た異界に変じていく――。
「――って、こいつはバズリトレンディ御殿で購入したのと同じ大型バイク」
気づけば上空には、新し親分「バズリトレンディ」の住んでいた御殿によく似た建物が浮かび上がっていた。そこでは大量のお金が雨のように降り注ぎ、お金で買えるモノなら何でも入手できる――という戦場の特性まで完全に再現されているようだ。
「まさかこいつが出てくるとは思わなかったが丁度いい」
こんな戦場だ、使えるものは使わせてもらおう――そう言って鏡介はバイクに騎乗して鉄刀を抜く。対する大祓骸魂は骸魂によりオブリビオン化した【大祓百鬼夜行】の妖怪達を自身の元へ呼び寄せ、応戦の構えを取った。
「さあ 始めましょう」
究極妖怪の号令一下、煌びやかな御殿と化したゲイン塔を大祓百鬼夜行が攻め上がる。彼らもお金を消費することで強い装備を買い揃えており、戦力は軒並み強化されている。
だがそれは全て既知の相手との戦い。鏡介はバイクのエンジン音を唸らせて走り回り、妖怪達の攻撃を躱し、時にはすれ違いざまに骸魂を斬って解放してやる。
「ああ。勝負だ」
本命は大祓骸魂ただ一人。敵陣を切り開きながら突貫する彼の視線は、百鬼夜行の中心にある虞の主に向けられている。あの元凶さえ祓うことができれば、幽世と地球と妖怪は骸魂の脅威から解放される。長かった戦いに終止符を打つ、まさに正念場だ。
「そうだな、いっそこのまま突っ込むか」
鏡介は踏んだアクセルを緩めずに、バイクの速度と質量を武器に体当たりを仕掛ける。
高いお金で得たものを使い捨てる、実にバブルパワー全開の攻撃。だが大祓骸魂も同様にお金を消費して防御壁を出現させ、その突撃を防ぎ止める。
「この程度 ですか」
まるで拍子抜けだと言わんばかりに、余裕の笑みを浮かべる大祓骸魂――だが、防壁に衝突し大破したバイクに、鏡介は乗っていなかった。寸前で跳躍した彼は壁を飛び越え、敵の頭上から強襲を仕掛ける。
「剛刃一閃――参の型【天火】」
上段の構えから力強く振り下ろす剛力の太刀。落下の勢いを乗せた鏡介渾身の一刀が、邪悪を斬り伏せ――不意をつかれた大祓骸魂から、ぱっと華が咲くように鮮血が散った。
「痛い ああ 驚きました」
誰からも忘れられた存在である自分に敵意を向け、あまつさえ傷つけられるモノがまだこの世にあったとは。傷を負いながらも笑みを絶やさない大祓骸魂の態度には、大いなる邪神が一柱にふさわしき不気味さがあった。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
㉑UDCエージェント達と協力して戦う
アドリブ連携歓迎
フン…世界を滅ぼすほどの愛情か
愛の形は多々あるが、なんとも厄介な愛を引き寄せたものだな、私の故郷は
骸魂によって強化されるなら、事前にそれらを排除すればいい
武装したUDCエージェント達に攻撃を指示
私も装備銃器で共に一斉射撃を行い、集まった妖怪達を速やかに排除しよう
よし、あらかた片付いたか…
協力を感謝する、後は私に任せろ
妖怪達を退けたらUCを発動
地面を蹴りつけた反動で文字通り残党を蹴散らしつつ敵に切り込み
そのまま強烈な蹴りを叩き込む
どんな物も、過ぎ行く時の中でいずれ「過去」となる
その時を骸の海で待ち続けるといい…お前の愛した物に、また逢える時をな
「フン……世界を滅ぼすほどの愛情か」
忘却の底より帰還を果たした大いなる邪神『大祓骸魂』、その狂おしいまでの愛慕と虞を感じて、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は口元を皮肉げに歪める。
「愛の形は多々あるが、なんとも厄介な愛を引き寄せたものだな、私の故郷は」
愛しい世界を永遠にするために滅ぼす。なんとも身勝手ではた迷惑な、歪んだ愛情だ。
そんな独り善がりにこの世界を犠牲にさせるわけにはいかない。故郷たるUDCアースを守るために、彼女は大いなる邪神に銃口を向ける。
「愛しきUDCアース あなたを思う 私の愛は揺るがない」
淑やかな娘の姿をした邪神は、詠うような口上とともに【大祓百鬼夜行】を招集する。
骸魂によってオブリビオン化した妖怪達は、骸魂の元凶である彼女の手足として猟兵に牙を剥く。大祓骸魂の周りで群れなす彼らを見て、キリカは鋭い眼差しのまま。
「骸魂によって強化されるなら、事前にそれらを排除すればいい。頼むぞ」
「「はいっ!」」
彼女の指示の直後、この決戦のために集まったUDCエージェント達が攻撃を開始する。
大いなる邪神の脅威から地球と人類を守る、それがUDC組織の存在理念だ。己の本分を果たすべく立ち向かうことを決めた彼らの一斉射撃は、過たず百鬼夜行を捉えた。
「いいぞ、そのまま攻撃を続行だ」
キリカは妖怪を目視できないエージェントに指示を飛ばしつつ、自らも神性式自動小銃"シルコン・シジョン"と強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"で攻撃を仕掛ける。聖句と秘術により強化された銃撃が浴びせられ、妖怪達に取り憑いた骸魂を浄化していく。
「「グワァァァァァァッ!!!」」
一ヶ月に渡る戦争を戦い抜いてきた彼女に、もはや有象無象の妖怪は相手にならない。
UDCエージェント達との的確な連携もあって、集まった妖怪達は速やかに排除された。
「よし、あらかた片付いたか……協力を感謝する、後は私に任せろ」
「了解しました……よろしく頼みます!」
妖怪達を退けたキリカは【サバット】の構えを取って、エージェント達を下がらせる。
ここから先の戦いは普通の人間には荷が重い。期待の視線を背中に受けて、見据えるは百鬼夜行の元凶。両脚に履いた「アンファントリア・ブーツ」で地面を強く蹴り込むと、爆発的な衝撃が生まれ、その反動により彼女の身体はロケットのような勢いで前進する。
「吹き飛べ」
「「グワーーーッ!!」」
妖怪の残党を文字通り蹴散らしつつ、一気に大祓骸魂の懐に切り込む。相手に迎え撃つ構えを取らせる前に、最速かつ全力の一撃を――ブーツの機能により運動能力と身体能力を極限まで高められた今、彼女の脚力はひと蹴りで戦艦すら轟沈せしめる威力に至る。
「どんな物も、過ぎ行く時の中でいずれ『過去』となる。その時を骸の海で待ち続けるといい……お前の愛した物に、また逢える時をな」
手向けの言葉とともに叩き込まれた強烈な蹴りが、妄愛に狂った百鬼夜行の主を討つ。
鞠のように吹き飛ばされた大祓骸魂は、ゲイン塔の床を何度かバウンドし、最終的には壁に叩きつけられた。人型に大きくめり込んだ破壊の痕跡が、その威力を物語っている。
「ああ 待ちきれない もう 待てないのです」
それでも――大いなる邪神がまとう虞は強く。その唇はひたすらに世界への愛を紡ぐ。
狂乱たる彼女の愛を骸の海に還すには、まだ足りないかと。キリカは表情を引き締め、蹴撃の構えを取り直すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
斬断・彩萌
大祓骸魂…あんたが親玉ね
覚悟を決めた親分や妖怪たちのためにも
UDCとカクリヨ、二つの世界の為にも
あんたには退場してもらうわ!
さて、じゃあ戦いましょうか
確かTCGの戦場があったはず、その力を借りるわよ!
周囲に漂い満ちる虞を生け贄に、上級モンスターを召喚!
一気に叩き潰しちゃいなさい
罠を張り巡らせて、敵の攻撃は極力受け流す形に
相手が何かするより先に、こっちのやりたい事をやって勝つ!
あっ、手札が良い感じ
では夢の浪漫コンボを喰らいなさい
手札を全て捨て魔法カード『穢れなき魂』を発動!
効果は…あんたが纏う穢れの分だけ、あんたはダメージを受ける!
どう?立っていられるかしら
自分のダメージが増えてきたらUCで回復
「大祓骸魂……あんたが親玉ね」
ついに相まみえた大祓百鬼夜行の主に、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)は鋭い視線を向ける。ここまで来るために、多くの妖怪が危険を冒して道を作ってくれた。それも全ては愛するふたつの故郷を守るため――彩萌ら猟兵を信じてのこと。
「UDCとカクリヨ、二つの世界の為にも、あんたには退場してもらうわ!」
「ふふ 追い返せますか あなたたちに」
信頼に報いるべく毅然と言い放つ彼女に対して、大祓骸魂は妖しくも艶やかに微笑む。
この世界を「殺し」、宿願を叶えるまであとひと刺し。刻一刻と迫るタイムリミット、あなたたちに止められるのかと、大いなる邪神は問うていた。
「さて、じゃあ戦いましょうか。確かTCGの戦場があったはず、その力を借りるわよ!」
虞の影響により変化する戦場において、彩萌が臨んだのは「見えざる闘技場(デュエルスペース)」。新し親分バズリトレンディが開発したTCG「デュエリストブレイド」のプレイ会場であり、ここでの戦闘はカードゲームに則って行われる。
「TCG 面白い遊戯ですね 私が眠っている間に こんなものができていたなんて」
いつの間にやら大祓骸魂も、自分のデッキと手札を用意している。大いなる邪神は知能すらも神智を超えるのか、滅茶苦茶複雑なこのTCGのルールをもう理解しているようだ。
もちろん彩萌もルールの把握とデッキの構築に抜かりはない。東京上空634mを舞台に、世界の命運をかけた神性なる決闘(デュエル)が始まった。
「周囲に漂い満ちる虞を生け贄に、上級モンスターを召喚!」
手札から場に出されたモンスターカードが実体化し、塔を揺るがす程の咆哮を上げる。
彩萌の「一気に叩き潰しちゃいなさい」という命令を受け、召喚モンスターは大祓骸魂のフィールド上にいるモンスターに襲い掛かり、蹂躙する。
「『ミヅチ』のカードに 骸魂をセット 『ヤマタノオロチ』に進化させます」
「そうはいかないわよ! リバースカード、オープン!」
大祓骸魂は自軍のモンスターを強化して反撃してくるが、彩萌は予め張り巡らせていた罠カードで攻撃を受け流す。カードパワーによるゴリ押しタイプの敵のデッキに対して、彩萌のデッキはカード同士のシナジーやコントロールを重視した内容になっていた。
(相手が何かするより先に、こっちのやりたい事をやって勝つ!)
自分のデッキへの理解度とプレイスキルを武器に、丁々発止の戦いを繰り広げる彩萌。
戦いが長引くにつれ自身のダメージも累積していくが、適時【ドラッグ・バレッド】を自分に撃ち込んで回復する。もちろんイカサマだが咎められるような審判はいない。
「あっ、手札が良い感じ」
激しいバトルの行方を最終的に決定づけたのは、プレイヤーのわずかな運の差だった。
大祓骸魂が必勝の布陣を整えるよりも先に、彩萌の手札には必要な手札が揃っていた。あるいは世界を守るために戦う者に、運命の女神が味方したのかもしれない。
「では夢の浪漫コンボを喰らいなさい。手札を全て捨て魔法カード『穢れなき魂』を発動!」
豪快なリソースの消費により解禁される彩萌の切り札。これで決めるという決意の元にフィールドに出されたそれは、大祓骸魂に対するメタカードとでも言うべき代物だった。
「効果は……あんたが纏う穢れの分だけ、あんたはダメージを受ける!」
「なんですって ぐぅっ !」
膨大な虞と穢れをその身に溜め込んだ究極妖怪にとって、その効果はあまりにも重い。
カードから放たれる光――清らかなる魂の輝きを浴びて、大祓骸魂の表情が変わった。
「どう? 立っていられるかしら」
「なかなか やりますね」
がくりと膝を突く大祓骸魂。世界の命運を賭けたTCGバトルの軍配は彩萌に上がった。
空模様はデュエルスペースから次の戦場に変わりつつあるが、それで受けたダメージが消えるわけではない。痛打を負った邪神の虞は、徐々にではあるが弱まりつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
リステル・クローズエデン
愛とは………
一方的なものであってはならない
………はず
プレイングボーナス…… 真の姿を晒して戦う
真の姿
青白い肌と青い仮面の姿。
戦闘
視力、聞き耳で得た情報を高速思考で処理し
第六感もあわせて攻撃を見切り、
軽業、足場習熟、ダッシュや
迷彩、残像を組み合わせ、
受け流し、盾受け、武器落としで
かわし、弾きながら間合いをつめます。
オーラ防御で
かわせないものは受けるしかないか。
途中でユーベルコードを発動。
刀で鎧無視攻撃の斬撃をうちこみます。
攻撃後も即座にダッシュで離脱。
浮かぶ刃な対応し、他の猟兵の援護とする。
愛とは、互いに与え受けとるもの。
「愛とは………一方的なものであってはならない………はず」
世界に対して己の愛を押し付けようとする『大祓骸魂』の所業を、リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は静かに糾弾する。記憶を失い、故郷を探して彷徨う彼女には、故郷に焦がれる敵の気持ちが全て分かるわけではないが――これは、異常だ。
「あなたは 私の愛を 否定するのですか」
大祓骸魂は変わらず微笑んでいたが、その表情には微かに陰がさしたようにも見えた。
だが矮小なる人の子に咎められたところで、大いなる邪神が考えを変えるはずもない。目前となった宿願を果たすために、彼女はすっと懐刀を抜いた。
「では あなたも永遠にしてあげましょう」
大祓骸魂はそう言って懐刀【生と死を繋ぐもの】を無数に複製し、襲い掛かってくる。
念力でばらばらに操作されたそれらの刃は、複製品と言えどもオリジナルと同じ性能を持っている。危険を感じたリステルは、五感と第六感をフル活用して回避行動に移った。
「何百本でも………凌いでみせる」
真の姿を晒した彼女の肌は青白く、顔は青い仮面に覆われている。人工物に置き換えられた赤い瞳は爛々と輝き、聴覚と合わせて得られた情報は脳髄にて高速処理され、最適な回避パターンが導き出される。これがサイボーグとしての彼女の「性能」の一端だ。
(かわせないものは受けるしかないか)
軽業めいた身のこなしに、高所の足場でもバランスを崩さない走破力。さらに迷彩機能なども組み合わせ、リステルは颯爽と戦場を駆ける。避けきれない刃は「呪刀・消銘」で弾くか、左腕の「オーラディフェンサー」から生成されるオーラの盾で受け流す。
「すばらしい ですが まだまだです」
残像が生じるほどの速さで迫る青のサイボーグに対して、大祓骸魂はまだ余裕の表情。
真の姿を解放してもなお彼我の実力差は大きい。飛び交う無数の「生と死を繋ぐもの」を突破し、敵に刃を届かせるためには――こちらも全力をぶつける他にない。
「この身は刃……凍てつく青き呪いの刃……」
詠唱とともにリステルの体は冷たき刃の如き、青き呪いのオーラを纏い、刀には凍気の刃が宿る。それは現在のモードの基本戦術である、サイボーグの機能と呪いの複合強化。
「呪力……解放! フリージングモード!」
【呪力解放・凍刃冷装形態】を起動した彼女は、飛躍的に高まった速度と呪いのオーラで戦場を駆け抜け、一気に大祓骸魂との距離を詰める。さながら一陣の吹雪の如き疾走、さしもの邪神も反応が遅れたか、構えに僅かな隙が見える。
「愛とは、互いに与え受けとるもの」
リステルの赤い双眸は、その隙を決して見逃さない。オブビリオンのみを識別する呪いの刃が、青い凍気の軌跡を描き――彼女は瞬速を保ったまま大祓骸魂の脇を切り抜ける。
「うけ とる あたえる ?」
瞬時に凍てついた傷口を押さえながら、困惑する大祓骸魂。やはりヒトならざる邪神に正常な愛のカタチは理解できないのか、或いは彼女の「愛」は根本的に意味が違うのか。
いずれにせよ、ただ一方的に侵すだけの愛はここで終わらせる。渾身の斬撃を見舞ったリステルは即座にダッシュで間合いから離れ、今だ周囲に浮かぶ刃を叩き落としていく。
(これも、他の猟兵の援護となるはず)
止めを刺すのは自分でなくていい。最終的に誰かが敵を祓い、世界が救われればいい。
静かな、かつ揺るぎのない決心のもと、青きサイボーグは己の努めを果たすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メイスン・ドットハック
【WIZ】
神智を超えた虞? 何するものじゃのー
そんなものよりクエーサービーストみたいなでかいやつの方が厄介じゃからのー!
PB:真の姿を晒して戦う(🔴は不要)
真の姿:アメジストの宝石が侵食し、電脳魔術リソース増大
揚陸艦ロストリンクに搭乗して参戦
神智を越えた虞を雷雲のシールドを展開して受け、さらにUC「未知の夢よ、それは踏破する為にある」を発動して、電脳虚数体に変身して直撃するのを避ける
ロストリンクはとにかく距離を詰める為に被弾覚悟、ヒガンバナに満たされても止まらないように電脳魔術リソースを流し続ける
十分に距離を詰めたら、空間振動・圧縮・断絶を順番に叩き込んでいく
こっちも覚悟決めておるんじゃー!
「神智を超えた虞? 何するものじゃのー」
全ての骸魂の元凶たる究極妖怪を前にしても、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は余裕の言葉を口にした。ふたつの世界を股にかける強大な邪神だろうと、彼女の故郷たる宇宙にはもっと面倒な脅威がはびこっているのだ。
「そんなものよりクエーサービーストみたいなでかいやつの方が厄介じゃからのー!」
ワダツミ級強襲揚陸艦「ロストリンク」に搭乗してスカイツリー・ゲイン塔上空に到着した彼女は、堂々たる調子でそう言い切った。真の姿を晒したその体はアメジストの宝石の侵食が進み、引き換えに彼女の電脳魔術のリソースを大幅に増大させている。
「虞知らず ですね」
揚陸艦の艦橋から見下ろす少女に対し、大祓骸魂は怖気をふるうような笑みを見せる。
その身から神智を越えた虞が放たれると、辺り一面に真っ赤なヒガンバナが狂い咲く。それはかの狂気じみた愛を宿す【虞神彼岸花】。この世にあってはならぬ彼岸の花だ。
「それじゃちょっとばかし、遊ぶとするかのー。空間把握開始じゃ」
あの調子でどこまでも拡がっていく虞に、こちらの艦を侵食・破壊されては堪らない。
メイスンは雷雲のシールドを艦の周辺に張って虞を受け止め、さらに【未知の夢よ、それは踏破する為にある】を発動して電脳虚数体に変身する。
「とにかく直撃だけは避けんといかんのー」
この形態となったメイスンはあらゆる環境を高速遊泳する能力を得る。虞の影響により目まぐるしく変化する戦場の模様にも即座に対応して、押し寄せる虞の波濤を回避する。
一方で、彼女が操艦するロストリンクはとにかく敵との距離を詰める為に、被弾覚悟で前進する。無限竜ワームの力を利用した雷雲のシールドでも、徐々に防ぎきれなくなった虞が艦体を侵食し、ついには艦内にまで狂愛のヒガンバナが咲き始める。
「あなたも この世界と一緒に 愛してあげます」
「それは御免被りたいのー。押しが強すぎるのはちとのー」
艦の設備や機能に次々とエラーが生じる中、懸命に電脳魔術リソースを流し続けて操艦を維持するメイスン。ここで艦が止まれば敗北は必至、確実に攻撃を決められる距離まで何としてでも近付かなければ――。
「ほんとうに 虞知らず ですね」
笑顔に驚きと感心が入り混じったような表情で、上空より迫る艦を見上げる大祓骸魂。
今やロストリンクの外観は咲き乱れる花びらの色で真っ赤に染まり、艦内のスペースも大半がヒガンバナに満たされている。それでも艦は止まらず、さらに操艦者本人は無傷。
「こっちも覚悟決めておるんじゃー!」
恐れてはいない、されど侮ってもいない。幽世と地球を守るためにこちらも全力だ。
十分に距離を詰めきると、メイスンはアメジストを輝かせながら攻勢に打って出た。
この戦場の空間解析は既に終わっている。電脳魔術によるハッキングでそれを制御し、攻撃手段とする。たとえ大いなる邪神が相手だろうと、この力から逃れる術はない。
「これがあなたの覚悟 とても強い 愛おしいです」
空間振動による衝撃。空間圧縮による握撃。空間断絶による斬撃――三種の攻撃が連続して敵を打ちのめし、握りつぶし、切り裂く。大祓骸魂が負ったダメージは相当だろう。
それでも彼女は笑っていた。虞が弱まり、揚陸艦に咲いたヒガンバナの花が散っても、不気味なほどに妖しく。その瞳の奥に宿る輝きは、どこまでも未知なる深淵であった。
大成功
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バレッタ・カノン
真の姿を晒して戦う【④東方親分・暴獣形態】
真の姿:遺伝子に眠る漆黒の悪魔と融合し大人化。百足状の尾を持つ
【spd】
UDCには私の借家がある。勝手な愛如きで消されては困る
滅ぶなら勝手に消えろ
『PP-P1』を服用し最初から【怪力】全開で接近
【地形の利用】をして尾で不規則に跳躍、『HMG』で【制圧射撃】
サンモトと同じような一撃、いやそれ以上の攻撃もあり得る
『障壁ユニット』が貫通される覚悟も必要だな、痛そうだ
タイミングを見切り、UCで弾丸のように飛び込み『結晶杭』による【貫通攻撃】
脆い結晶の槍だが鋭く折れる
ポケットの中にはビスケットが1つ、叩けば2つ
お代わりの槍を喰らえ【2回攻撃】
アドリブ、共闘大歓迎
「UDCには私の借家がある。勝手な愛如きで消されては困る」
縁のある世界に厄介事を持ち込んだ狼藉者に、バレッタ・カノン(バレットガール・f11818)はぶっきらぼうに言い捨てる。誰が何を愛そうが興味もないが、その愛情表現が関係のない連中まで巻き込んでの無理心中じみた行為となれば話は別だ。
「滅ぶなら勝手に消えろ」
彼女は注射器に入った「PP-P1地獄門活性剤」を服用し、体内の人造臓器『地獄門』の力を引き出して真の姿に変身する。それは遺伝子に眠る漆黒の悪魔と融合した、百足状の尾を持つ異形。背丈やスタイルも大人に急成長し、その姿は悍ましくも妖艶であった。
「行くぞ」
初手から全力を開放したバレッタは凄まじい怪力で大地を蹴り、一歩目からトップギアで戦場を駆ける。その速さはまさに【電光石火】、俊足の神が如き一陣の風。常人ならば接近までまばたきする暇もあるまい――それに反応できたのは、神智を越える邪神の業。
「ここがあなたの住処なら ともに永遠にしてあげましょう」
大祓骸魂は手にした懐刀【生と死を繋ぐもの】を複製し、疾走する魔人に向けて放つ。
見てくれはただの短い刃物、それも一目で鈍だとわかる代物だ。悪魔と融合した肉体を切り裂けるような業物には見えないが、さりとて警戒を緩めるのは愚の骨頂。
(サンモトと同じような一撃、いやそれ以上の攻撃もあり得る)
先に対峙した山本五郎左衛門から感じた威風。今、目の前の相手から感じる虞はそれを上回る。予知によればあの懐刀は時間をかければどんな相手も殺せるという情報もある。複製品だろうと相応の威力は想定しておいたほうがいい。
(障壁ユニットが貫通される覚悟も必要だな、痛そうだ)
歴戦の傭兵であるバレッタが、ここまでの判断に要した時間は刹那。飛んでくる懐刀の軌道を見極め、百足の尾を地面に叩きつけて跳ぶ。同時に重機関銃「Stingray2A1/HMG」を構え、適当に照準を合わせるとトリガーを引いた。
「これだけ多ければいちいち狙わなくてもいいな」
火を噴く銃口から14mmの大口径弾が超高速で飛び出し、複製された妖刃を吹き飛ばす。本来なら接地して使用することを前提とされた重機関銃を、バレッタはまるで携行火器のように軽々と取り回し、不規則に飛び跳ねながら反動も苦にもせず銃弾をばらまく。
「まるで野獣のような 荒々しい戦い方ですね」
制圧射撃に巻き込まれぬよう大祓骸魂は後退しつつ、弾幕の隙を縫うように刃を放つ。
威力こそは折り紙付きだが、バレッタはあまり射撃が得意ではない。弾幕の中に生じる濃淡の差と、跳躍直後の隙を突かれ、ついに一本の刃が彼女を捉えた。
「やるな、お前」
咄嗟に内蔵ユニットから展開された障壁術式のお陰で、妖刃は肌に浅く刺さったのみ。
だが、それでも苦痛で強張るほどのダメージが全身を襲った。障壁のコストとして消費される生命力も馬鹿にならず、次に同じ攻撃を食らえばただでは済まないだろう。
「防がれましたか でも次こそは あなたも永遠にして ?」
だが。これで気後れするかという大祓骸魂の予想に反して、バレッタは逆に前に出た。攻撃が命中したことで敵が気を緩める僅かなタイミングを、彼女は見逃さなかったのだ。
「遠くで撃ち合うより、わたしはこちらのほうが得意だ」
長い尾を振って体勢を立て直し、弾丸のような速度で敵の懐に飛び込む。機関銃を投げ捨てたバレッタの手には、鮮血を塗り固めたような「アカトキクイの結晶杭」があった。
回避の間など与えない。電光石火の早業で突き放たれた矛先が、大祓骸魂を貫通する。
「いた い これは 毒?」
脆い結晶の槍はすぐに折れ、標的の体内に刃を残す。血液に溶けたそれは強腐食性の毒となり、邪神の肉体を蝕んだ。すました顔で笑っていた大祓骸魂の表情が、苦痛に歪む。
「ポケットの中にはビスケットが1つ、叩けば2つ」
敵が腐食に苦しんでいるうちに、バレッタは槍を構え直す。穂先は折れてしまったが、その断面はむしろより鋭く尖っており、多少不格好にはなったが殺傷力に衰えはない。
「お代わりの槍を喰らえ」
「あ う いた い っ」
追撃の一突きは過たず初撃と同じ箇所に突き刺さり、邪神が受けた傷をより深く抉る。
身体の芯まで沁み入るような激痛に、大祓骸魂は苦しげに身じろぎし、悲鳴を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
④真の姿で戦う
邪神の一柱で、忘れられた妖怪
それが愛のためにこの世界を殺そうとしてる
……妖怪の経緯を考えれば当然の気持ちなのかも
でもここを譲るわけにはいかないし
何故、待ってたんだろう
だから、全力で戦う
この姿をさらしても
※真の姿
人間のカタチを失っていく影と銀の鍵が変じた大剣
どちらが本体?
これが虞、呑まれかけてグラっと揺らぎながらも
進む、【覚悟】は揺らさない
【鍵開け】するように膨大な虞の弱い部分を抜けて
―――……邪神の一柱なら、これは効く筈でしょ
銀の光を束ねて鎖を撃ちこむ
UDCへの縛め、そう簡単に解かせない!
もしかして
オブリビオンになってもまだ、どこかで
……なんて、きっと感傷なのだろうけど
それでも
「邪神の一柱で、忘れられた妖怪。それが愛のためにこの世界を殺そうとしてる……妖怪の経緯を考えれば当然の気持ちなのかも」
その想いは酷く歪んではいるが、理解できる余地もある――愛する世界に「死」という永遠をもたらそうとする大祓骸魂に、祇条・結月(銀の鍵・f02067)は同情的な視線を投げかけた。
「でもここを譲るわけにはいかないし」
同時に結月の内心には(何故、待ってたんだろう)という疑問もあった。自身の宿願を阻む者がやって来るのを待つ必要など無いはずなのに。だが、いずれにせよ地球や幽世に生きる者達のことを思えば、このまま彼女が世界を殺すのを放置はできない。
「だから、全力で戦う。この姿をさらしても」
決心を固めるのと同時に、虞の影響を受けた結月の身体は人間のカタチを失っていき、銀色に輝く影となる。同時に彼が所持していた神器「銀の鍵」は禍々しい大剣に変じた。
これが結月の真の姿。本体となるのは影と剣のどちらなのか、本人にすら分からない。ヒトよりも邪神に近いとさえ言える異形の姿に、大祓骸魂が優しげな微笑みを見せた。
「あなたも この世界を愛するものですか ?」
問いかけとともに放たれる邪気。妖怪親分がまとっていたものよりさらに強大な虞が、足元から戦場を、そして空間を歪め、狂気じみた愛を宿す【虞神彼岸花】が咲き乱れる。
「これが虞……」
神智を越えた虞に呑まれかけ、一瞬グラっと揺らぎながらも、結月は意を決して進む。
相手がどれほど強大な存在でも、覚悟は揺らさない。狂愛の思念とヒガンバナの花弁が渦巻く中、彼は鍵開けをするように膨大な虞の弱い部分を抜けて、少しずつ敵に近づく。
「さあ いらっしゃい」
大祓骸魂は動かない。ただ絶大な虞によって全てを侵食し自らの狂気に呑み込むだけ。
あるいはこれも彼女なりの「愛」なのかもしれない。だがそれは通常の知的生命体には決して受け容れがたきもの。その真意がどこにあれ、やはり彼女はオブリビオンなのだ。
「―――……邪神の一柱なら、これは効く筈でしょ」
その余裕あるいは傲りの隙を突いて、結月は大祓骸魂に迫り【鍵ノ悪魔・封】を発動。鍵の大剣と自らの影から放たれる銀の光を束ねて、硬く強靭な一本の鎖にして撃ち込む。
「あら あら あらあら ?」
それは魔物を封じる銀の縛り。邪神に由来する力だからこそ、邪神の領域を隔てることもできる。存在すら忘れされれていたいにしえの邪神相手でも、その効果は覿面だった。
「私の 虞が」
鎖と錠をかけられた大祓骸魂の虞が弱まる。何もかもを狂わせてしまいそうなものが、せいぜい妖怪親分達と同等のレベルに。咲き乱れていたヒガンバナの花も急速に枯れて、くすんだ花びらが風に散っていく。
「UDCへの縛め、そう簡単に解かせない!」
結月は自らの全霊を込めて、この封じを維持することに全力を注ぐ。これで大祓骸魂の異能を弱め続ければ、味方は優位に戦えるはず。いつまで保たせられるか自信はないが、せめて一分一秒でも長く抑え込んでみせる。
(もしかして、オブリビオンになってもまだ、どこかで……なんて、きっと感傷なのだろうけど)
最初に抱いた疑問の理由。勝手な憶測だとわかっていても、それでも、と結月は思う。
答えはきっと誰にも分からない。けれどもしかしてと考えるのは勝手だ。世界のため、人と妖怪のため、そして彼女のために、UDCアースは滅ぼさせない。
「きれいな 目 まっすぐで うつくしい」
もはや瞳や顔の位置などわからないはずの結月の姿を、なぜか大祓骸魂はそう評した。
銀の鎖にて力を大きく減じられても、その表情は愛おしいものを見るかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
カビパン達は決算報告のためにゲイン塔に和気藹々ながらぞろぞろ向かった。
オレタチガンバッタヨナー
イッパイオシウリシタ‐
ホメテホメテ
押し売り百鬼夜行の不可解すぎる行動に、大祓骸魂は唖然。
この時、思った事は「何だこの馬鹿は」
神智を超えた存在である大祓骸魂でもカビパンの行動や意志を理解するのは難しく、困惑していた。
絶対なるカビパンの「ツッコミ」の元、世界はギャグと化した。
こんな感じでしばかれた↓
カビパン→_O O ←大祓骸魂
ノ\/・’ヽ∵.
│ _ノ ヽ
〉
押し売りして食べさせたカレーうどんの味は世界そのものを『殺す』味だったという。
「強い想い 強い力 あなたたちはそうまでして 私を止めたいのですね」
スカイツリー・ゲイン塔にて、世界を殺さんとする自身に全力で立ち向かう猟兵達に、大祓骸魂は笑う。傷ついてもなお優雅に、まるでこの世の全てが愛おしいと言いたげに。そんな彼女を止めるために奮闘する猟兵達だが、そこに毛色の異なる乱入者が現れた。
「オレタチガンバッタヨナー」
「イッパイオシウリシタ‐」
「あら あなたたちは ?」
それはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)に率いられた百鬼夜行の妖怪達。大祓骸魂の軍門に降り、大いなる邪神の力を弱めようとする者達とは異なり、カビパンが運営する「悩み聞くカレー屋」のカレーを押し売りするだけの連中である。
「ホメテホメテ」
「なにをですか ?」
一月に渡る押し売り活動を終えたカビパン達は、決算報告のためにゲイン塔に和気藹々としながらぞろぞろとやって来た。その不可解すぎる行動に、大祓骸魂はただただ唖然。
この時、彼女が思った事は「何だこの馬鹿は」。神智を超えた存在である大祓骸魂でもカビパンの行動や意志を理解するのは難しく、困惑していた。
「何ぼんやりしてるんですか? これから決算報告ですよ?」
カビパンはさも当然の如く話を始めているが、聞けば聞くほど意味が分からなくなる。
そもそも決算と言ったところで、彼女ら押し売り百鬼夜行は出会った妖怪に片っ端からカレーうどんを食わせていただけで、代金はまったく取っていない。彼女の店で出てくるメニューは全て0円なので、決算だって計算するまでもなく0円である。
「あなたたちは なにをしに ここに」
「だから決算だって言ってるでしょーが!」
なんとかこの奇天烈な連中を理解しようと試みる大祓骸魂だったが、カビパンの返答は無慈悲な「ツッコミ」だった。【ハリセンで叩かずにはいられない女】にバシーンと彼女がシバかれた瞬間、この戦場はギャグの世界と化した。
「そんなに不満があるんですか? だったらあなたも食べてみれば分かります」
ギャグ化した間の戦場において、ボケとツッコミに特化したカビパンは絶対者である。
とにかく場の空気そのものが彼女のほうに合わせるため、それ以外の者はただただ翻弄されるばかり。シバかれた大祓骸魂が目を白黒させているうちにも、事態は進み続ける。
「さあ、召し上がれ」
押し売り百鬼夜行の本領発揮とばかりに、カレーうどんを強引に押し付けるカビパン。
大祓骸魂はシリアスから空気の急激な変化に適応できず、ついつい流されてそれを口にしてしまう。それが絶対にやってはいけない選択だとも知らずに。
「! ! ! ! ?」
ひたすらに不味さを極めた「悩み聞くカレー屋」のカレーうどん。それは世界そのものを『殺す』味だったという。人が食べるのは勿論のこと、神の供物としても劇物過ぎる。
とんでもない逸品を食わされてしまった大祓骸魂は、ゲイン塔でじたばたと悶え苦しむことになり――結果として彼女の威厳や虞には少なからずダメージが入る羽目になった。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
選択プレイングボーナス:カードの弾幕に対処する。
独善ですね。
こちらの意を汲まず自分の感情のために滅ぼすというなら、私たちも生きるためにあなたを滅ぼす、それだけです。
「フィンブルヴェト」の銃剣による『武器受け』で防御重視の近接戦闘を行いながら、オブリビオン化した妖怪達の立ち位置を誘導し大祓骸魂からのカードの弾幕から『敵を盾にする』ようにして身を守ります。
オブリビオン化した妖怪達がカードの弾幕に巻き込まれないよう遠距離戦を選んだら逆にチャンス、「デリンジャー」を『クイックドロウ』し、『威嚇射撃』で妖怪達を牽制しつつ、カードの弾幕を『見切り』回避しながら大祓骸魂に接近し【アイシクル・エンド】を。
「どうしても止めるのですか 私はただ この世界を愛しているだけなのに」
「独善ですね」
愛ゆえに世界を滅ぼさんとする大祓骸魂の動機を、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は切って捨てた。いくら愛してると言ったところで、その世界の住人達の意志を聞きもせず滅ぼす行為に、何の正当性があると言うのか。
「こちらの意を汲まず自分の感情のために滅ぼすというなら、私たちも生きるためにあなたを滅ぼす、それだけです」
改造マスケット銃「フィンブルヴェト」に装着した銃剣を突きつけ、彼女は宣言する。
この世界の人々の生命と未来を奪わせるつもりはない。死による永遠など願い下げだ。明確な拒絶の意志を受け止めて、大祓骸魂はどこか寂しげな笑みを浮かべた。
「そうですか なら 勝負ですね」
虞の影響でゲイン塔上空の風景は「見えざる闘技場(デュエルスペース)」に変化し、大祓骸魂の手元にTCGのカードが出現する。彼女はそれを弾幕のように投げ放ちながら、幽世より呼び寄せた【大祓百鬼夜行】の妖怪軍団を猟兵にけしかけた。
「負ける気はありません」
セルマは銃剣付きのマスケット銃を槍のように構え、オブリビオン化した妖怪達の攻撃を受け止める。リーチの長さを活かして牽制しながら、相手の立ち位置を誘導。大祓骸魂のカード弾幕の射線と自分の間に百鬼夜行が重なるように仕向ける。
『ギギギ、覚悟シロ猟兵……グワッ?!』
正面の獲物にばかり気を向けていた妖怪達は、背後からの弾幕を浴びて足並みを乱す。
元より連中は軍団と呼べるような統制の取れた集団ではない。意思統一ができていれば強いのだが、実のところ動きはバラバラ。だからこうしてセルマに弾除けの盾にされる。
「貴方達とはこの一月ずっと戦ってきましたからね」
『グヌヌ、舐メルナッ』
涼しげな顔のセルマを憎々しげに見つつ、骸魂妖怪達はカードの弾幕に巻き込まれないよう遠距離戦に切り替える。だがそれは大祓骸魂を狙うセルマには逆にチャンスだった。
「道を開けてくれて助かります」
セルマは素早くスカートの中からデリンジャーを抜き、距離を取った妖怪達が攻撃してくる前に早撃ちで牽制しつつ、飛んでくるカードの弾幕を避ける。彼女は別の戦場で既にこの攻撃を経験しており、避け方についてもとうに見切っていた。
「爆発しない分、今回のほうが楽かもしれませんね」
1デッキ64枚分のカードを躱しながら、じりじりと大祓骸魂との距離を詰めるセルマ。
大祓骸魂の手札がなくなった丁度そのタイミングで、彼女は銃剣の射程に敵を捉えた。
「そこです」
氷のように研ぎ澄まされた銃剣「アルマス」の刺突が、大祓骸魂の腹部に突き刺さる。
直後にセルマはトリガーを引き絞り――氷の弾丸の零距離射撃【アイシクル・エンド】が炸裂する。
「いた い つめたい ああ っ」
どてっ腹に直接弾丸を撃ち込まれた大祓骸魂は、その衝撃で大きく後方によろめいた。
刻まれた弾痕の周りは凍傷で壊死しており、ダメージの程度を物語っている。反応こそ淡白ではあるものの猟兵達の攻撃は確実に、この大いなる邪神を追い詰めつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
※真の姿
愛だの何だの、鬱陶しいぜ
愛されてもないのにいつまでも愛すことが、どれだけ虚しいか分かってねえもんかね
…俺が沈めてやるさ その愛の全てを
虚無という名の、海の底にな
Void Link Start
今日の獲物はかなりの上物だぜ
フォーミュラ相当の怪物だからな
オイオイ、刃物を飛ばすとかあぶねえな
暴力的な女は嫌いだ──『Distortion』
過去干渉システムにより、命中したという過去を破却する
つまりは、後出しで『死に近づいた事実』を消去できるわけだ
おう、2発目は無しだ…発動そのものを消し去る
ナイフに分厚く虚無を纏わせて接近
過去そのものである大祓骸魂には、過去干渉が良く効くだろう
その命、ここで終いだ
「愛だの何だの、鬱陶しいぜ。愛されてもないのにいつまでも愛すことが、どれだけ虚しいか分かってねえもんかね」
狂ったように――事実、人から見れば狂気としか呼べない愛を唱え続けるバケモノに、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は吐き捨てるように言う。とうに忘れられた相手に執着し続け、頼みもしないのに永遠とやらを押し付ける。邪神の「愛」は誰かを幸せにすることはなく、どこまでも迷惑で悪質だ。
「……俺が沈めてやるさ その愛の全てを。虚無という名の、海の底にな」
百鬼夜行の主が放つ虞の影響を受けて、彼は漆黒の虚無を身にまとった真の姿となる。
その力は過去より来たりて過去を喰らい、使い手すらも蝕む危険な異能。大いなる邪神の虞と愛を凌駕するには、この程度のリスクは許容せねばなるまい。
「今日の獲物はかなりの上物だぜ。フォーミュラ相当の怪物だからな」
Void Link Start――手にした武器にも虚無を纏わせて、敵に接近するヴィクティム。
対する大祓骸魂は妖しく微笑みながら、懐刀【生と死を繋ぐもの】の複製を創造する。
「あなたが 私の愛を受け止めてくれるのですか」
複製された無数の懐刀は鈍い輝きを放ちながら、邪神の念力を受けて自在に宙を舞う。
その切っ先が向けられる対象はただ一人。ぐるりとヴィクティムの周りを包囲すると、四方八方から一斉に襲い掛かった。
「オイオイ、刃物を飛ばすとかあぶねえな」
だが、時間さえかければ世界すら「殺す」という妖刃を向けられても、彼は動じない。
避けるような素振りも見せずに、無数の刃に全身を貫かれるかに思われた、その瞬間。
「暴力的な女は嫌いだ──『Distortion』」
ヴィクティムの一言で事象は改竄され、過去は歪み、結果は変わる。致命傷を負うはずだった彼は、攻撃を受ける直前と比べて何ひとつ変わらない、無傷の状態で立っていた。
「なにを したのですか」
まるで狐狸や物怪に化かされたような光景を見て、大祓骸魂がきょとんと首を傾げる。
確かに「生と死を繋ぐもの」は標的を捉えた。複製ゆえに本物ほどの威力はなくとも、無傷では済まない。だがヴィクティムは虚無の権能がもたらす過去干渉システムにより、攻撃が命中したという過去を破却したのだ。
「つまりは、後出しで『死に近づいた事実』を消去できるわけだ」
過去を変えることで現在にすら影響をもたらす、その力がどれほど強大で危険な事か。
大祓骸魂も脅威を察したらしく、すぐに新たな複製で追撃を仕掛けようとするが――。
「おう、2発目は無しだ……」
ヴィクティムは再び虚無の権能を行使し、今度は大祓骸魂の「ユーベルコードの発動」そのものを消し去る。無かったことにされた複製が消滅していき、敵はまた首を傾げる。
連続での過去改竄の代償は、使い手の寿命を大きく削る。だが彼はそんな事に構わず、完璧な勝利を目指して走り出した。その手には分厚く虚無を纏わせたナイフを握って。
(過去そのものである大祓骸魂には、過去干渉が良く効くだろう)
サイボーグ化と虚無の力で強化された身体能力を以て、黒い疾風のように標的に接近。
回避、防御、反撃。あらゆる抵抗を許さず、漆黒に染まった刃を渾身の力で振りきる。
「その命、ここで終いだ」
「――……!!」
ヴィクティムの漆黒の斬撃を受けた直後、大祓骸魂はかっと目を見開いて崩れ落ちた。
見ればナイフに切られた部位が、削ぎ取られたように消滅している。「過去」に対して絶大な効果を発揮する虚無の権能は、忘れ去られし邪神に不可逆の傷をもたらしていた。
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・多摘
⑫迷宮のように改造された団地を利用して戦う
これまでの戦いを力に変える事ができる、か。
一つ一つ乗り越えてきた我らが力、憎き邪神に叩きつけてくれる。
この場所は…団地闘法か!
統率された妖怪達が使うのは厄介じゃが…甘い。
空中浮遊と空中機動、念動力で飛行し狭い通路へと飛び込む。
同時祟り縄を伸ばし網のように通路を塞いで結界を展開。
この場ではその数を活かして戦うのは無理じゃろう。
そしてUC起動し氷属性のブレスを吹き付け黒き荊で抵抗力を削ぐ。
逃げ場はないぞ。
オブリビオン達を蹴散らしたら大祓骸魂にUCで氷のブレスを吹き付け足止め。
更に崩壊の呪詛を込めた龍符の束を念動力で飛ばし貼り付け攻撃。
※アドリブ絡み等お任せ
「これまでの戦いを力に変える事ができる、か」
スカイツリー・ゲイン塔を中心として、東京上空に渦巻く膨大な虞。その影響を受けて変化する景色に見覚えのあるものを幾つか捉え、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は目を細める。この決戦はまさに百鬼夜行との戦いで培ってきた経験の集大成となろう。
「一つ一つ乗り越えてきた我らが力、憎き邪神に叩きつけてくれる」
ふたつの世界を守るための戦い。目の前には古代からの怨敵たる邪神。竜神の悪霊たる彼が奮い立つ理由は揃いすぎるほどにあった。普段の思慮深く冷静な態度はなりを潜め、荒魂の気質が表に出る。其はまさにいにしえの偉大なる龍神の再臨であった。
「懐かしい殺気 昔を思い出すようです」
大祓骸魂もまた古代の戦いを思い出したのか、すうと目を細めて酷薄な笑みを見せる。
身にまとう虞はかなり弱まっているものの、今だ凄まじい威圧感を誇り。それに誘われたように【大祓百鬼夜行】が姿を現し、戦場の風景が変化していく。
「この場所は……団地闘法か!」
ずらりと立ち並んだ建物が形作る複雑怪奇な迷宮。その光景に多摘は見覚えがあった。
この団地をナワバリとし、複雑な地形に適応した闘法を操る妖怪集団「団地武装団」。このタイミングで呼び出された百鬼夜行も、恐らくは同様の技を習得しているのだろう。
「行きなさい」
大祓骸魂の命に応じて、オブリビオン化した妖怪達が殺到する。単独の戦力では猟兵に劣るものの、団地の地形を利用した集団殺法にはハマれば格上を食いかねない力がある。
「統率された妖怪達が使うのは厄介じゃが……甘い」
多摘は念動力を用いてふわりと浮かび上がると、空を泳ぐような機動で団地を翔ける。
まずは戦略的後退。逃がすものかと追ってくる大祓百鬼夜行の気配を背後に感じつつ、追撃をひらりと躱して狭い通路へと飛び込む。
『待テッ!!』
敵は勢いに乗って通路の中まで追ってくる。それを確認した多摘は「仕置き用祟り縄」を伸ばし、網のように通路の前後を塞いで結界を展開する。彼は逃げていたのではない、自分が有利に戦える場所まで敵を誘導していたのだ。
「この場ではその数を活かして戦うのは無理じゃろう」
『シ、シマッタ……!?』
広い場所でこそ数の優位は活きる。逆に隘路では味方が邪魔で動きを制限されるうえ、一度に戦える人数も限られてしまう。対する多摘からすれば敵を一網打尽にする好機だ。
「逃げ場はないぞ」
動揺する百鬼夜行に襲い掛かるのは、氷属性を付与された【悪霊龍の息吹】真冬の吹雪を思わせる極寒のブレスが吹き付けられ、芯まで凍える冷気が妖怪達の体温を奪い取る。
「暴れるな。一層に苦痛が長引く」
『グ、グゲゲ……』
さらに息吹に含まれる多摘の霊力と呪詛は、標的に浸透すると無数の黒き荊に変化し、抵抗力を削ぐ。寒さと痛みですっかり戦意を喪失した百鬼夜行は、その場にうずくまったきり動かなくなった。
「流石 この程度では相手にもなりませんか」
「次は汝の番だ」
オブリビオン妖怪達を蹴散らした多摘は、今度は大祓骸魂に氷のブレスを吹き付ける。
これしきで旧き邪神を倒せるとは思っていないが、足止めになれば十分。冷気と黒荊が敵の動きを鈍らせている隙に、彼は手製の「龍符」の束を取り出す。
「我が怨みと怒り、その身で味わうがよい」
数多の邪神を打倒する為、一枚一枚に龍の力を込めた呪いの霊符。竜神の念動力により宙に浮かび上がったそれらば、真っ白な紙吹雪となって大祓骸魂のもとに降り掛かった。
「ああ これはいけない 私が壊れて しまう」
大祓骸魂の身体に龍符が貼り付くと、その部位が砂の塊のようにボロボロと崩壊する。
旧き竜神が悪霊となってなお練り上げた邪神を滅ぼすための呪詛は、古代より目覚めた大いなる邪神にとっても致命的な毒となり、その身を蝕んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
プレボ:真の姿を晒す
いよいよ大詰めですね。
2つの世界を救う為、妖怪達の覚悟を無にしない為にも、ここで討ちます、大祓骸魂!
フォーミュラ級の虞なら
フォーミュラクラスのもなんとか取り込める筈!
UC発動しヴァルギリオスの幻影を実体化
背中に竜首が生えた竜人の姿に擬人化し
マスク形態で装着し合体
真の姿扱いとします
属性複合盾、オリジナル展開!
雷+土+光の『電磁シールド』!
刀であるなら不可避の鋼
磁力発生で刀を弾いたり
操作して刀同士で衝突させ
残った刀は◆炎属性ブレスで◆焼却融解させます
シュヴァルツヴィアイスの未来予測演算で動きを◆見切り
◆早業で◆操縦したロミンの鎖で◆捕縛
そこを8属性収束ブレスで狙い撃ちします
「いよいよ大詰めですね」
カクリヨファンタズムとUDCアース、二つの世界を跨いで繰り広げられた激闘の数々。
その決着となる場にやって来たシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は、ゲイン塔の頂上に佇む大いなる邪神と向かい合う。
「2つの世界を救う為、妖怪達の覚悟を無にしない為にも、ここで討ちます、大祓骸魂!」
「やれますか あなたたちに 面白い」
シズホの決意の言葉に、大祓骸魂は妖しき笑みで応じる。愛する世界をこの手で殺し、永遠のものにするという宿願の達成まであと僅か。両者ともに譲る気など一切無かった。
「では 参りましょう」
滅殺の懐刀【生と死を繋ぐもの】の複製品を周囲に浮かべ、攻撃態勢を取る大祓骸魂。
ここまでの激闘で相当に弱まっているとはいえ、彼女が放つ虞はどの妖怪よりも強い。しかし強大に過ぎる虞の発露は、猟兵にとって有利な影響ももたらす。
「フォーミュラ級の虞なら、フォーミュラクラスのもなんとか取り込める筈!」
敵の虞を利用する形で、シズホは【幻影装身】を発動。所持するからくり人形の中から過去に倒してきたオブリビオン――その中でも普段なら強大すぎて制御できないであろうオブリビオン・フォーミュラの幻影を出現させる。
「これは ?」
東京上空に現れたのは、絶大なオーラを身にまとった八ツ首のドラゴン。幻とは思えぬ凄まじい存在感に大祓骸魂も思わず目を丸くする。かの者こそ「帝竜ヴァルギリオス」、かつて群竜大陸に君臨せし偉大なるドラゴンの長である。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
シズホはその幻影を実体化させ、背中に竜首が生えた竜人の姿に擬人化し、自らは全身スーツからマスク形態に変身。ヒーローマスクである彼女の真の姿は、何かに装着・合体することで完成する。その相手が持つ力を、一時ではあるが行使することができるのだ。
「異世界の竜ですか 面白い」
大祓骸魂はかつて竜神と死闘を繰り広げた邪神の一柱。帝竜の力に興味を持った様子で「生と死を繋ぐもの」の複製を放つ。対して竜人ヴァルギリオスの幻影を己が肉体としたシズホは、かの帝竜がかつて見せた【スペクトラル・ウォール】を応用して行使する。
「属性複合盾、オリジナル展開! 雷+土+光の『電磁シールド』!」
刀であるなら素材に鋼を含むのは不可避。三属性複合により発生した磁力が刀を弾き、あるいは軌道を操作して刀同士を衝突させる。その刃にどんな致命的な効果があろうと、触れさせもしなければ問題はない。
「残りはこれで!」
複製品の数がだいぶ減ってきたところで、シズホは背中の竜首から炎のブレスを放ち、残った刀をまとめて焼却融解させる。これで本体を攻撃するための邪魔者はいなくなった――だが即座に動かなければ、敵はまた新たな複製を用意してくるだろう。
「まだまだ 終わりではないですよ」
「いいえ、終わらせます!」
大祓骸魂が次の動きを見せる前に、シズホは鉄鎖拘束人形『ロミン』から鎖を伸ばし、敵を捕縛する。未来予測演算機能を持つ人形『シュヴァルツヴィアイス』による先見が、彼女に先手を奪わせたのだ。
「これは ただの鎖ではないですね」
メガリス『鉄鎖ドローミ』の力を宿したロミンの鎖には、対象のユーベルコード効果を弱らせる能力がある。バラバラになった複製品の残骸が消滅し、虞の力が弱まっていく。
その好機を逃さずシズホは八本の首に八属性の力を収束し、全力のブレスで狙い撃つ。帝竜が誇る炎水土氷雷光闇毒の【ヴァルギリオス・ブレス】、その再現が解き放たれた。
「骸の海に還りなさい!」
「――……!!」
虞すらも祓い散らすような絶大なエネルギーの奔流が、拘束された大祓骸魂を捉える。
これが猟兵と異世界の竜の力の融合。想像を超える威力に驚嘆しながら、大いなる邪神は吹き飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
⑯⑧
裁判所
長に大祓
検事はもう一人の己
まさか法廷番組の如く量刑を…
検事が罪状読み上げる
騎士として悔いる数多の罪
死刑が求刑され
待ちなさい
アレクシア様!?(給食、鬼女依頼登場)
被告は私の殺害により帝国から離反…戦機として発狂し責任能力を喪失しています
な…!
あの時以来の命令ね
過去を否定し無罪でもって骸魂を祓え
裏コードで強制受諾実行
何故!?
憎いのよ
私の愛を、想い人を殺めた貴方が
せめて二つの世界を護りなさい
彼女が去り
地獄が始まった
言いくるめの自己弁護
騎士としての道程が
責任が
誇りが
罪が
己が
己の口で否定されてゆく
あの方が瞋恚を抱え
骸の海に微睡んでることが哀しい
無罪を得、壊れも出来ず
演算限界迎えた刹那
そう思った
「――……此処は?」
大祓百鬼夜行戦も大詰めを迎える中、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は何故か法廷にいた。正面を見れば、裁判長の座る位置には大祓骸魂がいる。
先程まで自分はスカイツリー・ゲイン塔で彼女と戦っていたはず。ふいに上空の景色が変わったと思うと、どこからともなくテレビが現れ、その画面に自分は吸い込まれ――。
「まさか法廷番組の如く量刑を……」
UDCアース側で起きていた事件に、確かそのようなものがあった。ここは妖怪の力で作り出されたテレビ番組の世界なのだ。それも悪いことに自分が立っている場所は被告人の位置――どうやらこれは、機械騎士がその罪を裁かれる筋立てらしい。
「静粛に」
カンカンと木槌を叩く大祓骸魂。番組の内容に合わせて厳粛な雰囲気を漂わせている。
このまま番組の企画に乗っかったままで良いのか。トリテレイアは困惑しつつも好機を待つことにし、どこか居た堪れない法廷の空気に耐える。
「それでは検事 被告人の罪状を」
『はい、読み上げさせていただきます』
だが、検事席から聞こえてきた覚えのある声に、彼は少なからず動揺することになる。
そこに座っていたのはもう一人の自分。彼の罪を誰よりもよく知る人物。幻か複製か、いずれにせよソレは冷徹な視線を被告人の自分に向けながら、無機質な口調で語りだす。
「被告人はこれまでに、数え切れないほどの罪を犯しております」
読み上げられる罪状は、トリテレイアが騎士として悔いる数多の罪。他ならぬ彼自身が自覚し、忘れることなく刻みつけてきたもの。騎士道にもとる行為の数々、救えなかった人々、その手にかけた人々――語られるたびに古傷をこじ開けられるような痛みが襲う。
「被告人 何か言葉はありますか」
「……ありません」
申し開きなどできるはずもない。成程、検事として「自分」が呼ばれるのはこの上ない適任だ。このテレビ番組の世界は大祓骸魂の虞によるものだが、どこかで裁かれることを望んでいた自分自身の心が、この状況を作ったのかもしれない。
「以上の罪状を鑑みて、私は被告人に死刑を求刑し――」
「待ちなさい」
だが。無慈悲に刑罰が確定されそうになる寸前で、今度は弁護人の席から声が上がる。
それはトリテレイアのメモリーの奥底に眠る、ある女性の声と同じだった。とうに故人のはずであり、UDCアース出身ですらない。だがそこに立っているのは間違いなく――。
「アレクシア様!?」
トリテレイアの設計者である銀河帝国時代の天才科学者は、被告人席に一瞥もくれずに弁護を始めた。ただしそれは、トリテレイアがまったく考えすらもできなかった論法で。
「被告は私の殺害により帝国から離反……戦機として発狂し責任能力を喪失しています」
「な……!」
心神喪失による責任無能力。これが認められた場合、被告人は無罪の判決が下される。
ただしそれは被告人トリテレイアのこれまでの行動が全て「狂気により錯乱していた」と判断されるということ。すなわち彼の騎士道そのものの否定に等しい。
「あの時以来の命令ね。過去を否定し無罪でもって骸魂を祓え」
さらに弁護人アレクシアは彼の電子頭脳に隠された裏コードを用いて【銀河帝国量産型ウォーマシン・非常時越権機能行使】を強制受諾させる。自分の言葉で、自分の弁論で、自分自身を救ってみせろ――その結果、己の信念と責任を否定することになるとしても。
「何故!?」
「憎いのよ。私の愛を、想い人を殺めた貴方が」
驚愕と絶望に苛まれながらも命令に逆らえないトリテレイアに、彼女は冷淡に告げた。
カクリヨファンタズムの川には、死んだ想い人の幻影が現れる「まぼろしの橋」が時折掛かるという。今ここにいる彼女も恐らく似たようなもの。だが語られる言葉は現実だ。
「せめて二つの世界を護りなさい」
憎んでも憎みきれぬ――まさにそんな深い情念を遺し、アレクシアの幻は去っていく。
そして、トリテレイアにとっての地獄が。言いくるめの自己弁護の時間が始まった。
「被告人 何か申し開きは」
「あります」
電脳の演算機能をフル回転させて、トリテレイアはつらつらと弁護内容を述べ立てる。
裏コードにより解放された、弁論術や法律知識などを含む膨大なデータ。これがあれば法廷闘争に勝利するのは容易い。どんななクロもシロに変えて無罪をもぎ取れるだろう。
内心の懊悩とは裏腹に、彼は淀みなく命令を実行する。騎士としての道程が、責任が、誇りが、罪が、己が、己の口で否定されてゆく。その苦しみも、絶望も、全て無視して。
「……以上になります」
トリテレイアの自己弁護は完璧だった。法律的に彼の罪状を問える余地はもはやない。
裁判長である大祓骸魂はかすかに眉をひそめた後に、カンカンと再び木槌を叩いた。
「判決 無罪」
責任能力の喪失認定。責任のない者の罪は避難する事もできない。それが判決だった。
自分自身を否定して無罪を得、されど壊れも出来ず、演算機能の限界迎えた刹那――。
(あの方が瞋恚を抱え、骸の海に微睡んでることが哀しい)
トリテレイアがそう思ったのを最後に、法廷番組は終了し、まぼろしの世界は消える。
これは勝利だ、間違いなく。だが、彼が大祓骸魂の虞を祓うために負った代償は大きかった。
大成功
🔵🔵🔵
御狐・稲見之守
20『妖怪と電話で話す』
霊と繋がるってのは地球じゃよくある話らしいが。
愛しの世界愛しの者達と共に骸の海に心中。
なんともまあ。ふふ。
なに、少し話をしてみたくなっただけのこと。
今宵は宴、これくらいのハメ外しもよかろうて。
幽世はまッことに楽しいところであるよ。
此度の馬鹿騒ぎも変な戦場ばっかりでナ。
この馬鹿騒ぎでお前さんがこしらえた幽世…
そこに住む彼等はお前さんを見せようと随分がんばってくれたゾ。
お前さんが愛するように彼等もまた愛しておるのじゃろう。
地球と、幽世を。
なんにしろ骸魂は討たねばならんが
幽世の生み親に礼のひとつでも云うべきかと思うてナ。
素敵な世界をありがとうなんじゃ。
それでは、ごきげんよう。
「ああ とどかない あと少しなのに 届かない」
この世界を永遠のものにするという宿願を何度も阻まれ、大祓骸魂は嘆きを口にする。
傷ついた彼女の身体を覆うのは膨大な虞。それは絶えず周囲の空間を歪め、様々な光景を映し出し――それが、どこかにある電話ボックスを映した瞬間、ルルルルと音が鳴る。
『霊と繋がるってのは地球じゃよくある話らしいが。愛しの世界愛しの者達と共に骸の海に心中。なんともまあ。ふふ』
緑色の受話器から聞こえてきたのは幼い童女のような、しかし齢経た雰囲気のある声。
どこか楽しげな御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)の声が、大祓骸魂に届いた。
「あなたは だれですか」
「なに、少し話をしてみたくなっただけのこと。今宵は宴、これくらいのハメ外しもよかろうて」
今回の戦争では暴走する妖怪を鎮めるために、電話ボックスによる通話を試みるケースがあった。骸魂を浄化するという観点で見れば、大祓骸魂に対しても同じ手段が用いれるはず。ただ稲見之守の本音としては、本当にただ話がしたかっただけかもしれないが。
「幽世はまッことに楽しいところであるよ。此度の馬鹿騒ぎも変な戦場ばっかりでナ」
大祓骸魂が眠っていた間、恐らくは彼女も知らない幽世での出来事を稲見之守は語る。
地球と骸の海の狭間に浮かぶ不安定な世界、いつ滅びるやも知れぬ泡沫のごとき世界。それでも、忘れ去られた者達はそこを拠り所とし、第二の故郷と呼ぶほどに愛した。
「この馬鹿騒ぎでお前さんがこしらえた幽世……そこに住む彼等はお前さんを見せようと随分がんばってくれたゾ」
親分を始めとする多くの妖怪が、あえてオブリビオン化する危険な決断をしなければ、自分達は大祓骸魂に相見えることもできず、こうして言葉を交わすこともできなかった。滅ぼすためとはいえ、彼らの尽力で大祓骸魂は「忘れ去られた者」ではなくなったのだ。
「お前さんが愛するように彼等もまた愛しておるのじゃろう。地球と、幽世を」
「そうですか それは 可愛らしく 愛おしいことです」
受話器を手にとって大祓骸魂は応える。紡がれる言葉が真意であるかどうか、稲見之守には分からない。モノノ怪神と虞れられし彼女にも、神智を超えた存在は理解が及ばぬ。
ただ、受話器越しに聞こえてくる声はとても穏やかで、口元には微笑が浮かんでいた。
「なんにしろ骸魂は討たねばならんが、幽世の生み親に礼のひとつでも云うべきかと思うてナ」
「お礼 ですか」
稲見之守がそう言ったときの大祓骸魂は、きょとんとして不思議そうな反応を見せた。
彼女は猟兵が自分を止めようとしていることを知っている。世界を滅ぼそうとしている自分に、まさか猟兵がお礼を言うとは流石に予想外だったのだろう。ヒトがカミの思惑を推し量れぬように、カミにもまた定命の者達の心は計り知れぬ。
「神智を超えたモノとて、驚くことはあるのじゃナ」
その反応がおかしくてくつくつと笑いながら、稲見之守は受話器を通じて囁きかける。
含みのない感謝を。そして別れを。忘却の淵よりいでし望郷の荒魂に、鎮めの言葉を。
「素敵な世界をありがとうなんじゃ。それでは、ごきげんよう」
プツンと音を立てて通話が切れ、ゲイン塔に現れた電話ボックスは幻のように消える。
大祓骸魂は電話機のあった場所で、しばし何も言わず、何も動かず、ただ佇んでいた。稲見之守の送った言葉はしかと刻みつけられ――彼女の身にまとう虞が、鎮まってゆく。
大成功
🔵🔵🔵
秋山・軍犬
大祓骸魂、UDCアースを殺したいなら
何故、猟兵を待っている?
…あんた、UDCアースを殺したいと想うと同時に
殺したくないとも想って、自分でも分からない
くらい深く愛に優しさに狂ってるんじゃねっすか?
…自分の勝手な妄想っすけどね
後は、戦場⑥🏠Mankai=Enkaiで
戦争なんざ無視して拳で
ただの、あんたの愛と自分の意地の
喧嘩祭り(宴会)しようぜ!
あんたがただの悪とは思わん
だが救う事は不可能と言われてる
…あんたをここで撃破するのは確定だ
だがこの戦場なら億が一、兆が一
転生の可能性があるかもしれん
可能、不可能は関係ない
ただ、自分の全てを賭けるなら
究極のハッピーーエンドに全賭けの方が気合が入るだけだよ!!
「大祓骸魂、UDCアースを殺したいなら、何故、猟兵を待っている?」
東京スカイツリーの頂上で呆と佇む大祓骸魂に、声をかけたのは秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)だった。世界を殺したいならさっさと殺せばいい、だのに猟兵を待っていたのはまだ機が熟していないからなのか、それとも――。
「……あんた、UDCアースを殺したいと想うと同時に、殺したくないとも想って、自分でも分からないくらい深く愛に優しさに狂ってるんじゃねっすか」
狂気に等しい愛が生んだ自覚のない感情、それが猟兵を此の地に招いたのではないか。
わざわざ「待っています」と、予兆を通じて猟兵に語りかけたのも、全てはこの世界に対する無限の愛がさせたことではないのか。
「……自分の勝手な妄想っすけどね」
証拠と呼べるような事実はなにもない。キマイラの自分にカミサマの考えが理解できるとも思わない。ただ自分はそう感じたというだけの話。大祓骸魂は軍犬の話を否定せず、さりとて肯定もせず、妖しく微笑みながら答えた。
「私にもわかりません それが答えになりますね」
軍犬の「妄想」が正しいのなら、その狂愛を制御することは彼女自身にすらできない。
揺るがぬ愛のままに、この世界を永遠のものとするために、殺す。その行動と結果は、彼女の本性がどうであれ変わることのない事実だった。
「ま、そうだよな。言ってみただけっす」
言いたいことを言い切った軍犬はどこかすっきりした様子で、ぐっと拳を握りしめる。
その上空に映し出されるのは季節外れの満開の桜。大祓骸魂の虞が、幽世に咲いていた幻朧桜をこの戦場に呼び寄せたらしい。ならば、ここで彼がやることはひとつだった。
「戦争なんざ無視して拳で! ただの、あんたの愛と自分の意地の喧嘩祭りしようぜ!」
宴会、乱闘、馬鹿騒ぎ。世界の命運のことも一時忘れて、ただ想いの丈をぶつけあう。
きょとん、と驚いたような顔を見せる大祓骸魂に、軍犬は意気揚々と殴りかかった。
「喧嘩ですか 武器を使ってはいけないのですか」
「おいおい、刃物なんて野暮なもんはなしっすよ!」
いきなり殴られた大祓骸魂はあまり祭りの意味が分かっていないようだったが、やがて「わかりました」と持っていた懐刀をぽいと放り、軍犬の頬をぺちんと平手ではたいた。
格闘の心得などないだろう、腰の入っていないただの平手打ちだが、虞をまとった一撃はそれだけで威力がある。じんじんと沁みる痛みを感じながら、負けじと殴り返す軍犬。
「あんたがただの悪とは思わん。だが救う事は不可能と言われてる」
骸魂を祓えば救出できた妖怪とは違い、骸魂の元凶である大祓骸魂を救う余地はない。
どうであれ倒さねば世界が滅びることは、彼も重々承知している。だからこの行為は、彼が自分の心に折り合いをつけるための、一種の儀式だ。
「……あんたをここで撃破するのは確定だ。だがこの戦場なら億が一、兆が一、転生の可能性があるかもしれん」
幻朧桜は転生を司る花。悲惨な過去に傷ついた影朧の魂と肉体を癒やし、転生させる力を持つ。それがこの邪神にも適応されるかは不明だが、不可能と断じられる者はいない。
「可能だと 思っているのですか」
「可能、不可能は関係ない」
技を使わず我武者羅に殴り合いながら、軍犬は大祓骸魂の問いかけに迷いなく答える。
そう、成否の問題ではないのだ。たとえ可能性が那由多の果てだとしても、誰にも否定できない希望がそこにあるのなら――握った拳に、いつもより力が籠もる。
「ただ、自分の全てを賭けるなら、究極のハッピーーエンドに全賭けの方が気合が入るだけだよ!!」
意志の力の高まりに応じて、軍犬の全身は黄金のオーラに包まれて燦然と輝きだした。
文字通りの全身全霊を込めた拳が、大祓骸魂を打ち据え――同時に幻朧桜から花吹雪が散る。彼の覚悟を讃えるように、その意志の強さを祝福するように。
大成功
🔵🔵🔵
一那・龍子
ボーナス:真の姿を晒して戦う
大地に還る事を由とせず
己の盲愛に溺れ果てた、忘れられた存在か……
主どの往くぞ、決着をつける
例えあれがかつての同胞であろうと……良いな?
あれは現世にいてはならぬものだ
己を鼓舞し、いざ最後の戦いへ
頭の花飾りが肥大化し
名状し難い化物じみた真の姿を曝す
さあ見せてみよ、お主の真なる姿も
手にした骸兼光で切り込んで
肉の迷彩を盾にして
八度目迄の攻撃を大太刀にて弾き返す
そのまま距離を詰めて九度目
化物の肉の中より自らの姿を曝し
捨て身で一太刀入れてくれよう
刺青じみた焔縁呪の紋様に包まれ
浄華光を放ちながら、一押し
生まれ変われるならば
骸の海から逃れられるよう願って
さあ幽世へ帰りましょう、神様
「大地に還る事を由とせず、己の盲愛に溺れ果てた、忘れられた存在か……」
幽世から現世に現れた百鬼夜行の主、その境遇に一那・龍子(一なる古・f31180)は同条めいた眼差しを向けるもすぐに気を引き締め、その手に野太刀「骸兼光」を構える。
「主どの往くぞ、決着をつける。例えあれがかつての同胞であろうと……良いな?」
語りかける相手は『古きもの(オールドワン)』――彼女と契約を交わしたいにしえの怪異。その原点を辿れば邪神に親しく、現世に居場所を失い幽世に去ったという点でも、大祓骸魂との共通項は多い。だが、それでも。
「あれは現世にいてはならぬものだ」
己を鼓舞し、いざ最後の戦いへと赴いた龍子の頭の上で、赤い花飾りが肉々しく蠢く。
戦場に吹き荒れる虞を浴びたそれは肥大化し、名状し難い化物じみた真の姿を曝した。
「さあ見せてみよ、お主の真なる姿も」
同時に【九死殺戮刃】を発動した龍子の瞳は爛々と輝き、殺人鬼の宿業を露わにする。
二心一体の怪異なる殺人鬼は三尺越えの野太刀を構え、ぬらりと獲物に斬り掛かった。
「あなたたちも 私と同じはずなのに 私の愛がわかりませんか」
咲き乱れる花々の如き降魔の威光を背に、鬼気迫る勢いで切り込んでくる龍子に対し、大祓骸魂は妖しき笑みと【生と死を繋ぐもの】で応じた。時満ちれば世界すら殺す懐刀、その複製品が次々と矢のように放たれる。
「分かるからこそだ。お主の妄執、全てとは言わぬが」
龍子は『古きもの』の肉の迷彩を盾としつつ、目にも留まらぬ早業で野太刀を振るう。
降りしきる妖刃の雨を二度三度と弾き返し、前に前にと距離を詰める。前髪の隙間より覗く翠の瞳が見据えるは、斬るべき大いなる神ただ一柱。それ以外のものは眼中になく。
「この現世に、もはやお主の居場所はないのだ」
「だとしても 私は変わらずこの世界を愛します」
邪神の攻撃を切り払うこと八度。遂に一足一刀の間合いまで踏み込んだ龍子は、化物の肉体より自らの姿を曝すと、肉の中から飛び出すように九度目の斬撃を仕掛ける。同時に大祓骸魂も「生と死を繋ぐもの」の真作を構え、妖艶たる笑みのまま突き掛かった。
「――……っ」
野太刀が邪神の肩口を捉え、懐刀がいくさ人の腹に刺さるのは同時だった。はらわたを抉られる痛みが電流のように全身を巡る中、龍子はぐっと歯を食いしばり、握り締めた柄にさらなる力を込める。
(生まれ変われるならば、骸の海から逃れられるように)
表情なき貌の裏側に秘めた願い。強き思いが怪異との契約の証たる「焔縁呪」を浮かび上がらせる。龍子の全身は刺青じみた紋様に包まれ、咲き乱れる「浄華光」は輝きを増し――五尺二寸の肉体に宿った百人力が、邪神の肩にかかった刃を押し進ませる。
「さあ幽世へ帰りましょう、神様」
「いいえ 私の帰る場所 は」
言葉を最後まで言い切らせず、龍子渾身の一太刀は大祓骸魂を袈裟懸けに斬り伏せた。
鏡のように研ぎ澄まされた刀身が、返り血に赤く染まっていく。盲愛と虞ごとその身を断たれた旧き神は、力なく崩れ落ちるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
残念だけど、その愛を認めるわけにはいかないのよ。
どちらの世界も大切な世界だからね
真の姿を解放(UC発動)
自身に【念動力】と【結界術】の防御幕を張り、高速飛行で戦場を飛び回りながら、真祖の魔力と高速移動を用いた魔力弾や広域魔力砲撃【高速・多重詠唱、全力魔法、砲撃、誘導弾】を放ち、時に魔術で吹き飛ばし、魔槍でなぎ払い百鬼夜行を殲滅。
百鬼夜行の相手をしながら魔槍に【限界突破】するまで全魔力を【力溜め】し、後はもう自身を神槍とする様に全魔力を集中し、残った敵を蹴散らしながら相打ちも覚悟で突進し、零距離での【神槍グングニル】を叩き込むわ!
※真の姿はUCで解放するのと同じ
※ボーナス:真の姿を解放して戦う
「私の 私の愛は止まらない 私の愛は揺るがない」
「残念だけど、その愛を認めるわけにはいかないのよ」
譫言のように世界への愛を語る大祓骸魂を、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が遮った。かの者の狂える愛を放置すれば、幽世と地球には滅びがもたらされる。それを許すことは断じてできなかった。
「どちらの世界も大切な世界だからね」
そう言ってフレミアは【吸血姫の覚醒】を発動、己が血に眠る全ての力を目覚めさせ、真の姿を解放する。17~8歳程の外見に成長した彼女は4対の真紅の翼を広げて東京上空に舞い上がり、魔槍「ドラグ・グングニル」を突きつける。迷いなき決意の視線と共に。
「分かってはもらえませんか ならば止めてみせなさい」
虞を解き放つ大祓骸魂の周囲から、骸魂によってオブリビオン化した妖怪達が現れる。
邪神の走狗と化した【大祓百鬼夜行】が牙を剥いて襲い掛かる一方、フレミアは自身に念動力と結界術による防御幕を張り、瞬間移動と見紛うほどの速さで戦場を飛び回る。
「ええ、止めてみせるわ」
その強固な守備は生半可な攻撃や妖術を寄せ付けず。さらに彼女は真祖の魔力を弾丸に変えて上空から放ち、魔力の弾幕を百鬼夜行に浴びせる。仕組みは単純な魔力弾と言えど真の姿を見せた今ならば、その威力は折り紙付きだ。
『グワッ?!』
『オノレッ!』
魔弾の嵐に撃ち抜かれながらも、妖怪達は怯まずフレミアに殺到する。飛行できる者が空路を阻み、妖術に長けた者が惑わし、力自慢の者は礫を投げつける。様々な個性を持つ妖怪達が統一された意志の下で動けば、個々の力は弱くとも厄介な軍団となる。
「貴方達の強さと覚悟も、よく知ってるわ」
だからこそフレミアも全力を以て挑む。時に地上にいる妖怪を魔術で吹き飛ばし、時に近付いてきた妖怪を魔槍でなぎ払い。全身から爆発的にあふれ出す魔力を砲弾に変えて、広域砲撃で敵陣を一掃する。
「道を開けなさい!」
『グワーーーッ!!』
大祓百鬼夜行を殲滅するフレミアの視線は、その先にいる大祓骸魂に向けられている。
妖怪達の相手をしながら魔槍には魔力を溜めていき、必殺の一撃を放つ準備を進める。真祖の力を限界以上に注がれたドラグ・グングニルは、紅い輝きで戦場を照らし始めた。
「その光で 私を討つつもりですか」
「まだ……まだよ!」
フレミアはそこで魔力の圧縮を止めず、自らの身体ごと全ての魔力を槍に集中させる。
東京上空に浮かぶ一等星の如く、天に輝く吸血姫。翼を畳み突撃姿勢を取った彼女は、自分自身を一本の槍とするかのように、猛烈な勢いで大祓骸魂に突進した。
『ト、止メロ……ギャァッ?!』
止まらない。残った敵を進路上から蹴散らしながら、吸血姫は一直線に標的に向かう。
相打ちも覚悟での捨て身の突撃。大祓骸魂もそれを察してか、あるいは逃げきれないと悟ったか、懐刀「生と死を繋ぐもの」を手に迎撃の構えを取る。
「あなたも愛してあげましょう」
時満ちれば世界すら「殺す」刃が、防御幕を破ってフレミアの身体を抉る。だが同時にフレミアの槍も大祓骸魂を捉え、魔力をたたえた穂先が胴体に深々と突き刺さっていた。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……。消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」
限界を超えて極限にまで圧縮された魔力の神槍が、大いなる邪神の零距離で炸裂する。
絶大なる光の爆発が、東京の空を真紅に染め――その後には、腹に大きく風穴を開けた大祓骸魂が立っていた。なぜ生きているかも分からぬほどの傷、だが彼女は笑っている。
「神殺しの槍とは なるほど そうまでしてあなたたちは 私を止めようと」
その笑みの意味は感嘆か挑発か。定かではないものののダメージの大きさだけは事実。
大祓骸魂と百鬼夜行との戦いに決着がつくその時は、もう目前に迫りつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
真の姿を解放し【巫女媛】へ変化…。
また、周囲がまぼろし橋に変化したところで、橋に現れる死した大切な想い人…姉、雛菊・桜花へお願い…。
姉さん、わたしにみんなと世界を守る力を貸して…!
無限の魔剣の斉射を行い、強化したアンサラーで反射…
巫女媛の力で強化した神殺しの神太刀に自身の全てと姉さんの力を込めた究極の【ultimate】を発動…。
この一振りで彼女を断つよ…!
神太刀は神を断つ刀…故に神太刀…。
わたし達の全てを込めて、貴女を討つ…!
最後に…貴女の、本当の名前は…?
ボーナス:真の姿を晒して戦う
※真の姿
濃密な呪力のオーラを纏い、尻尾が九尾に変化
※雛菊・桜花
璃奈の姉。「忘れがたき死人の村」で(幻が)登場
「私は まだ 愛しい ああ 愛しい あなたを」
満身創痍となった大祓骸魂の身体から、涙のように虞があふれ出す。それは周囲の空間を歪め、幽世のいずこかに流れる川と、その彼岸に渡る「まぼろしの橋」を映し出した。
渡った者を黄泉に送ると謂われる橋が、このタイミングで現れるのは皮肉だろうか――そして橋の真ん中に佇む邪神の前に、ひとりの猟兵がやって来る。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……」
呼びかけるような詠唱とともに真の姿を解放し【九尾化・魔剣の巫女媛】に変化した、その猟兵の名は雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。世界を殺さんとする邪神の前で、一振りの妖刀を抜き放ち、構える。研ぎ澄まされた刀身にも、銀の眼差しにも曇り無く。
『来たのね、璃奈……』
決戦に赴いた魔剣の巫女に、橋の向こう側から誰かが声をかける。彼岸の暗がりから姿を見せたその人影は、璃奈と同じ妖狐の娘。物腰は柔らかく穏やかで、けれど眼差しには芯の強さを秘めた――今も記憶に残る大切な想い人に、璃奈は呼びかけた。
「姉さん、わたしにみんなと世界を守る力を貸して……!」
『ええ。そのために待っていたのだから』
ここは此岸の者が彼岸の幻に会う橋。ならば猟兵に縁ある者が現れても不思議はない。
璃奈の姉、雛菊・桜花は大切な妹の願いに応え、彼女の持つ妖刀にそっと手を添えた。
「死者と生者が想い合う とても美しいものです」
死でも分かつことのできない姉妹の絆を見て、大祓骸魂は血に濡れた唇を笑みに歪め。
その身に残された全ての力を絞り出すように、虞を放って【虞神彼岸花】を乱れ咲く。
「ならば妹を殺せば あなたたち姉妹の愛も永遠になる」
「させない……わたしは死なないし、みんなも世界も殺させない……!」
狂気の愛を宿したヒガンバナが咲き乱れる中、璃奈はそれに負けぬ強い心で言い返す。
九尾の巫女媛となった彼女からは莫大な呪力があふれ、無数の魔剣となって顕現する。それを一斉に解き放てば、ヒガンバナは鮮血のような花弁を散らして切り祓われていく。
『私の力、全てあなたに委ねるわ』
戦う璃奈の傍に寄り添いながら、桜花は己の力を妹に与える。一族に受け継がれてきた魔剣の巫女の力――適性では妹よりも低いとはいえ、彼女にも同じ血と力が流れている。
「ありがとう、姉さん……」
「どうして 拒むのですか」
璃奈の握る妖刀に呪力が集まっていく中、大祓骸魂はなぜと問いかけながら虞を放つ。
骸の海で永遠となれば、もう二度と姉妹が分かたれることも無いのに――そんな独善的な「愛」を込めた虞を、魔剣の巫女は魔剣「アンサラー」を抜いて切り払った。
「貴方の愛は、わたし達には必要ない……」
巫女媛の力で強化されたアンサラーの魔力は、虞の奔流を大祓骸魂本人へと反射する。
跳ね返ってきた虞に呑まれた邪神が体勢を崩す、その隙を突いて璃奈と桜花は動いた。
『さあ、璃奈……!』
「うん、姉さん……この一振りで彼女を断つよ……!」
神殺しの力を宿す妖刀・九尾乃神太刀に自らの全てと姉の力を込め、璃奈は究極の一刀を顕現させる。溢れていた莫大な呪力が集約され、全ての妖刀・魔剣の力が一つになる。そのユーベルコードの名は――【ultimate one cars blade】。
「神太刀は神を断つ刀……故に神太刀……」
姉妹二人の力を束ねることで、真なる「究極」に至った神殺しの太刀を璃奈が掲げる。
力の全てを預け渡したために、ゆっくりと消えていく姉に見守られながら――言葉通りの全身全霊を賭した乾坤一擲の太刀を、彼女は大いなる邪神に振り下ろした。
「わたし達の全てを込めて、貴女を討つ……!」
斬――見惚れるほどに美しく閃いた刃が、大祓骸魂にぱっと大輪の彼岸花を咲かせた。
白装束を染めていくその紅花を、彼女はじっと見つめ「ああ」と終わりの吐息を零す。
「叶いませんでしたか 私の愛は」
宿願果たされぬことを悟りながら、笑みを絶やすことのない邪神。最期まで超然とした佇まいを見せる彼女の前で、璃奈は静かに妖刀を鞘に収めると、ひとつの問いを発する。
「最後に……貴女の、本当の名前は……?」
「私の 名前? 私の 私は……――」
あらゆる者から忘れられた存在。それは本人ですら例外ではなかったのかもしれない。
吐息を紡ぐその唇が、真の名を告げる前に――「大祓骸魂」と呼ばれた一柱の妖怪は、まぼろし橋の向こう側に渡るように姿を消した。
虞とともに異界の風景が消え去り、スカイツリー・ゲイン塔が本来の景色を取り戻す。
返ってきた夜の静寂が、猟兵の勝利を――そして大祓百鬼夜行の終焉を物語っていた。
大成功
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