大祓百鬼夜行㉕〜あなたを、あいしています
●愛は世界を
『猟兵たちよ 止められますか』
スカイツリーの最上部、ゲイン塔で究極妖怪は囁く。
『電波塔の頂上で あなたたちを待っています』
世界ひとつ、いやふたつをまるごと滅ぼしてしまう、揺るがぬ――愛。
大祓骸魂の名を与えられた大いなる邪神は、懐刀を愛おしげにさする。
今、東京上空は幽世のごとき姿に変貌し、猟兵たちを待ち構えている。
おそれよ、はらえよ――今こそ、決戦の刻である。
●救うか、滅ぼすか
「勝ったなガハハとか思ったけど、万が一もあるからね」
猟兵たちの往来もいよいよ激しくなったグリモアベースの一角で、ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)が六花のグリモアを片手に口を開く。
「みんなも把握済みだとは思うけど、いよいよ残すところは『大祓骸魂』をぶっ倒すのみとなったわ。助けようだなんて情けは無用だし、無駄よ。叩き潰すつもりでお願い」
うっすら額に汗を浮かべながらも、ミネルバは不敵に笑う。
「相手はね、今回の戦争に存在した『あらゆる手段』を行使して襲いかかってくるわ」
真の姿を晒す、他の猟兵と連携する、カード弾幕をかわすなど……。
思えば、花見や月見をしろという嘘みたいな対抗策もあったものだ。
「色々あったわよね? みんなも今回の戦争で体得した『あらゆる手段』で対抗して、大祓骸魂を圧倒しちゃいましょう」
そう、相手が好き勝手してくるというのならば、こちらも好き勝手に対抗できるということに他ならない。
振り返ってみればとんでもねえ戦い方……というか、もはや戦いですらない勝利条件もあったけれど、それすら受け入れるというのだから大祓骸魂も大したものである。
「そういうルールで戦うって決めたのはあっちよ、恨みっこナシ。みんならしく、全力で挑んできて頂戴。それがきっと、二つの世界を救う決め手になるって信じてるわ」
六花が輝き、はらはらと雪が降る。
その向こうに続く景色は――スカイツリー最上部、ゲイン塔。
敵は懐刀を手に、微笑みながら、猟兵たちを待ち受けていた。
かやぬま
愛するものの永遠を望んで、何が悪いのか。
はじめまして、もしくはお世話になっております、かやぬまです。
二つの世界を守るべく、最後の戦いに挑みましょう。
●プレイングボーナス
「全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます」
※お手数ですが、プレイング内で選択したプレイングボーナスが分かるように何らかの記載をお願い致します。
●ご案内
キャラクター様がキャラクター様らしく戦えるプレイングボーナスで挑んで頂ければと思います。
方針としては「頂戴したプレイングの中から、イイ感じに化学反応を起こした方々」を優先的に採用して、最小人数での完結を予定しています。
早期決着を目指しますので全採用の確約は出来ませんこと、平にご容赦下さいませ。
●プレイング受付期間につきまして
5/29(土)8:31より受付を開始させて下さい、OP公開がそれより後になった場合は公開直後より受付と致します。
〆切はプレイングの集まりを見つつ、追ってMSページやタグ、お知らせスレッドにてご連絡致します。
早期の〆切もあり得ますので、ご検討下さる際はお早めにお越し頂けますと幸いです。
●補足情報
大祓骸魂を救うことはできません。
それでは、仕事を選ばない大祓骸魂さんとゲイン塔でガッチリ握手!
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
氏家・禄郎
忘れられた神はなおも世界を愛するというのだね
『プレイングボーナス:妖怪と電話で話す』
携帯電話を投げ、もう一つの電話越しに勝手に会話を開始
さあ、ギムレットの時間だ
電波塔をヒガンバナで満たす中、君は世界を愛すると言った
永遠のものにすると言った
永劫なる命を持った骸魂たる君ならそれは可能だろう
けれど、世界はそれを望んではいたかな?
もしそうだったら、君は忘れられなんてしなかった筈だ
どんなに深い愛でもどんなに尊い想いでも
一方通行じゃあ、結局は届かないのさ
もし違うと思うなら一度耳を傾けてごらん
……どちらにしても、私は君と戦わない
君に此方へほんの僅かでも意識を向けさせる
それが私の『推理』だ
隙は作った
後は任せた
●禄郎おにいさんのいきなり電話相談室
――スカイツリー。
普通に考えれば、到達するべき場所はどんなに高くても天望回廊までのはず。
それを遥かに超えた高み、地上六百三十四メートルの最上部、ゲイン塔と呼ばれる場所を決戦の場に選んだ『大祓骸魂』の思惑たるや、いかばかりなものだろう。
「忘れられた神は、なおも世界を愛するというのだね」
世界中で、一番高いところから。
たとえ己が忘れ去られようと、邪神は一途な愛という名の狂気を向ける。
それに対抗しうるのは、埒外の存在たる猟兵たちだけ。
己を人間と謳う氏家・禄郎(探偵屋・f22632)であっても、例外ではなかった。
電波塔の上で邪神と対峙した禄郎は、無造作に何かを邪神目掛けて放り投げた。
『……?』
懐刀で手が塞がる中、不思議な力で『それ』を宙で受け止める大祓骸魂。
「使い方は分かるね? さあ、ギムレットの時間だ」
『……』
大祓骸魂が、優雅な所作で指を伸ばしたのは――携帯電話。スマートフォン。
禄郎の声は、板切れ一枚にも見える精密機械より発せられていた。
『聞きましょう 猟兵』
その代わり、私の『虞』にも耐えてもらいます。
そう言わんばかりに、電波塔の内外が逃げ場もないほどにヒガンバナで満たされる。
むせかえるような花の匂いは、まるで狂気じみた愛のよう。
『私の愛を あなたは否定できますか』
「『愛』、そうだね……君は世界を『愛する』と言った。『永遠のものにする』と言った」
電話越しに言葉を交わす、大祓骸魂と禄郎。
『そうです 共に永遠となれば いつまでも一緒にいられます』
「……永劫なる命を持った『骸魂』たる君なら、それは可能だろう」
戦の始まりにしては、とても静かな――対話であった。
「けれど、世界はそれを望んではいたかな?」
『……』
「もしそうだったら、君は忘れられなんてしなかった筈だ」
愛するのは良い。
だが、相手からも愛されていなければ、そこにあるのは――。
電話越しに返事が返ってこないのを良いことに、探偵屋は言葉を続ける。
「どんなに深い愛でも、どんなに尊い想いでも、一方通行じゃあ、結局は届かないのさ」
皮肉にもここは電波塔、一見電波を一方的に飛ばしているかのように思える場所。
けれども届けられる映像や音声の中で、人々は確かに双方向のやり取りをしている。
『わたし は』
そんなはずはない。
これだけ愛しているのに、受け入れられぬはずがない。
そう言いたいのに、動くのは唇ばかりで、言葉が伴わぬのはなぜだろう。
「もし『違う』と思うなら、一度耳を傾けてごらん」
君が愛する、このUDCアースが、君をどう見ているか。
――いいや、そもそも『見てさえいない』のだけれども。
『…… ……』
赤い朱いヒガンバナが、徐々に薄れて消えていく。
それを気配で確認した禄郎が、一瞬だけ視線を背後に向けた。
「……どちらにしても、私は君と戦わない」
『言葉を弄することが あなたなりの戦いだったのでしょう』
「どうかな、君に此方へほんの僅かでも意識を向けさせる――それが私の『推理』だ」
今頃、ゲイン塔を目掛けて増援の猟兵たちが転移を受けて向かっている最中のはず。
(「隙は作った、後は任せた」)
――鉄塔を上り来たる、複数の足音が聞こえる。
己の役割は果たしたと、探偵屋は通話を開始した時と同じように、一方的に通話を終了させた。
ああ、邪神と電話でお話なんかして、どうして正気でいられるのかって?
――そりゃあ、私にとってこの世で最も恐ろしいものは、生きた人間だからだよ。
成功
🔵🔵🔴
クロム・エルフェルト
【あなたの「想い人」を描写し、】夜が明けるまで語らう。
他の猟兵と【連携して戦う。】
郷の中でも優秀な妖術師だった母
例え幻影でも、亡き人の助力を賜る事が出来るなら
あの日、蝶舞う闇冥にて再開した母にお願いしたい
かかさま。どうか今一度、私の傍に。
星の精霊様――と紡ぐ、かかさまの声
黒曜石の蝶が舞い、懐刀の念力を▲切断
▲浄化の力で虞を祓う紫水晶の雨の中
「流水紫電」の足捌きで敵に肉薄しUCで斬り結ぶ
過去の者が今を往く子達に許される愛は
思い出と見守りだけ
貴女の謳うそれは唯の執着
大祓骸魂を諭すような、かかさまの声
逆上して攻撃が苛烈になれば好機、癖と弱点が益々顕になる
拍を合せ▲カウンター、胴薙ぎに斬り捨てる
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
世界をふたつも、まるごとだなんて……豪快で羨ましくさえある
嗚呼、戦いなど心得ぬというのに、私が、つい心惹かれて出向いてしまうほどに
プレイングボーナスは⑧
想い人を描写し、夜が明けるまで語らう
UCを使用して想い人を召喚
彼は白銀の鎧を纏う騎士
常は叶わぬが今この環境下であれば言葉を交わせるのだろう
この私になまくらを向ける者がいるのだよ
私に仇なすものゆえに、排除しておくれ……いつも通りに
貴公が否と返すこと等ないと知っている
私は愛馬Tenebrarumに騎乗し、後方に控えたい
「黒薔薇忌」で怨霊を嗾けたりする他は防戦
此方への攻撃は騎士がかばうか、馬が避けるか、いずれも叶わねばオーラ防御を
アレンジ、アドリブ可
●想いを携えしものたち
かん、かん、かん。
かたや駆け足で、かたや優雅な歩調でと聞いただけで分かる鉄を踏む足音が響く。
『来ましたね 猟兵たち』
電波塔の頂上で、大祓骸魂の名を与えられた究極妖怪は懐刀を手に口の端を上げる。
『あとひと刺しだというのに それの何と遠いことか』
忌々しい状況であろうというのに、小娘の見た目を取るソレは笑ってみせるのだ。
刺すのは己か、それとも刺される側に回るか。
愛に狂う娘は、立ちふさがる最後の試練を楽しんでいるかのようにさえ思えた。
――『想い人』を、思い描け。
――『想い人』と、語り合え。
クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)とラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)が携えた『ひと刺し』は、この戦い方であった。
クロムは想い描く、郷の中でも優秀な妖術師だった母――『かかさま』のことを。
ラファエラは想い描く、自らの為にその身命を賭した、白馬に乗った騎士団長を。
『素敵なことです あなたたちにも 想う人がいるのですね』
ほう、と心底うっとりするような吐息と共に大祓骸魂が言えば、想像を絶する怖気を伴う『虞』が放たれるのを二人の猟兵は感じ取る。
(「例え幻影でも、亡き人の助力を賜る事が出来るなら」)
クロムは「刻祇刀・憑紅摸」を抜刀せずにかき抱いたまま、願う。
その瞳が向けられた先には、確かにあの日蝶が舞う闇冥にて再会を果たした母の姿が。
(「『かかさま』。どうか今一度、私の傍に」)
あなたのようには、あれなかった。
生来の妖力薄弱で、爪弾きにされた恨みは消えねど。
裡に秘めたる鬼さえも飼い慣らすと決めた、今の私にどうか、どうか少しだけ――。
放たれたのは『虞』だけではない、無数の懐刀が宙に浮かんで此方を睨んでいた。
(「ああ、何と恐ろしい」)
貴婦人たるラファエラには、あまりにも苛烈な戦場であろうか?
――否、むしろ。
(「世界をふたつも、まるごとだなんて……」)
その、豪快で羨ましくさえある大祓骸魂の在りように。
(「嗚呼、戦いなど心得ぬというのに――私が、つい心惹かれて出向いてしまうほどに」)
貴腐の薔薇は、引き寄せられて今この場に舞い降りたのだ。
青鹿毛の愛馬「Tenebrarum」に横座りで優雅に騎乗したラファエラが喚んだのは、白銀の鎧を見に纏いし白馬の騎士。
白と黒の視線が交錯し、常なれば言葉を交わすことも指先ひとつ触れることも叶わぬ相手に、今ならば言葉が届く。許される。
「この私に、なまくらを向ける者がいるのだよ」
「……」
「私に仇なすものゆえに、排除しておくれ」
……いつも通りに。
貴公が、否と返すこと等ないと知るがゆえに。
「……」
甲冑のすり合う音こそが合図、騎士は静かに邪神へと向き直り、抜刀する。
その隣には、妖狐の乙女が母と慕う女性が佇む。
『いいでしょう どちらの想いが強いか 試してみましょう』
先が切れている赤い糸が結ばれたのは、左の薬指。
あざやかで、むなしくて、けれどもそれだけ想いの強さを感じさせるソレを撫で、大祓骸魂は持てる虞を解き放ち、懐刀を無数に複製し、猟兵たちへと迫った。
「星の精霊様――」
クロムの『かかさま』がそう紡げば、黒曜石の蝶が舞い踊り、次々と飛来する懐刀を操作している念力そのものを『切断』していく。
「……」
負けじと白銀の騎士が剣を振るえば、迫る虞が押し返される。ラファエラも華奢な金古美の手振鈴を響かせて、鎮魂を騙り怨霊どもをけしかけ援護をする。
眼前の敵が強大であることは理解する。
けれども『傅かれる身』たる黒薔薇は譲らない。
この身に触れることなど許しはしない。騎士よ護りたまえ、名牝よ嘶きたまえ、それでも迫るというならば、虞などにも負けぬ気高き薔薇の咲き誇るさまを見よ――!
ラファエラと白騎士が虞を祓うに乗じ、クロムと母はさらに精霊の力を行使する。
黒曜石に次いで召喚された紫水晶の雨に込められしは浄化の力、なおも迫る虞を祓いながら「流水紫電」の足捌きで大祓骸魂へと肉薄する。
が、きいぃぃん!!
大祓骸魂の懐刀本体が、クロムが放った【仙狐式抜刀術・彼岸花】と斬り結ぶ。
「過去の者が今を往く子達に許される愛は」
ひとつ。
「思い出と、見守りだけ」
ふたつ。
「貴女の謳うそれは、唯の執着」
みっつ、刃を交え火花が散り――ずっと、笑んでいた邪神が初めて顔を歪めた。
『――知った 口を』
その、一瞬の逆上こそが好機であった。
クロムは一斉に向けられた懐刀ごと、思い切り胴薙ぎに大祓骸魂を斬り伏せる――!
馬上のラファエラは、無意識に己の首元に手を添えた。
皮肉にも紅の色をした刃の名残と同じ、紅を見たから。
「……究極妖怪、大いなる邪神。それでも、その血は赤いとは」
『……』
腹を押さえ、たたらを踏んだ大祓骸魂の流した血は、確かに赤かった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リューイン・ランサード
◎
プレイングボーナス:真の姿となります。
愛する世界とそこに住む生命を殺してしまう…すごく身勝手で危険な愛ですね。
こういう時に返す言葉を以前学びました。
「愛などいらぬ!」…じゃなくて、ええと、「キサマの愛は侵略行為。当方に迎撃の用意あり。」です。
放たれる虞は第六感で予測して、翼による空中戦と見切りで躱します。
生み出されたヒガンバナは(除草の)毒属性攻撃+全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で枯らして相手のUC効果を消し去り、こちらのUCで生み出した1000本以上の流水剣の複製で大祓骸魂を包囲殲滅します。
僕がどれほど判っているか自信はありませんが、相手を思いやり、いざという時には護るのが愛だと思います。
●竜つながりでシグルドだったかも知れないと思いつつ
「愛する世界と、そこに住む生命を殺してしまう……」
愛しいひとと共に戦場に立つ姿がよく見受けられるリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)は、今はただひとりゲイン塔の頂上で大祓骸魂と対峙していた。
「すごく、身勝手で危険な愛ですね」
『分かってもらおうとは 思っていません』
究極妖怪はリューインの言葉に動じず、ただ微笑むばかり。
ならば、もはや互いの主張を譲らずにぶつかり合うだけだ。
「こういう時に、返す言葉を以前学びました」
赤い翼は虹色へ、そして二対に増え。
勇ましく明かされるのは、リューイン・ランサードの――真の姿!
「愛などいらぬ! ……じゃなくて、ええと」
『まあ 間違ってはいないと 思いますが』
「ダメです! 『キサマの愛は侵略行為。当方に迎撃の用意あり』です!」
『覚悟完了 でしたか』
何かそれとなくネタが通じているのかいないのか、ギリギリのラインで言葉を交わす。
『それはそれとして あとひと刺しなのです 邪魔をしないで下さい』
リューイン目掛けて、大祓骸魂の強大な『虞』が放たれる!
(「来ると思っていました、そしてそれは、ヒガンバナを咲かせるために地を這うと」)
ならば、と。リューインは虹色の翼で世界一高い場所からさらに舞い上がる。
(「……これが、大祓骸魂の愛」)
狂おしく咲き誇るヒガンバナを見下ろして、リューインは思う。
誰かを愛すること自体は、決して罪ではないだろう。
けれど、自分が言い放った通り。それが相手を、ひいては他者をも害するというのならば、それを見過ごす訳には行かない。
「その愛、阻ませてもらいます……っ!」
指に挟んだ護符に込めたのは、草花を根絶やしにする毒の力。
愛しの精霊寵姫には及ばずとも、それをずっと見てきたリューインなりの全力で術式を行使し、あたり一面に咲いたヒガンバナを次々と枯らしていく。
『ああ なんという 私の愛が』
「愛、ですか」
繰り返される『愛』という言葉に、リューインは思うところがあった。
「僕がどれほど判っているか自信はありませんが……」
手にした「流水剣」を、天高く放り上げる。
「相手を思いやり、いざという時には護るのが、愛だと思います」
相手を手に入れたいと願うばかりの想いは、まさに『侵略行為』。
故に、リューインは抗う。千本以上の流水剣の複製で天を埋め尽くし――。
「覚悟してください……っ!!」
ゲイン塔を埋め尽くしていたヒガンバナは消え失せ、代わりに墓標のごとく無数の青く光る剣が突き立てられた。
成功
🔵🔵🔴
御桜・八重
◎
トントンと桜ぽっくりのつま先を突き、
花疾風の襷をきっちり締め直す。
おいっちにー、さんしー、と準備体操も入念に。
なぜなら【連ね鳥居を最速で駆け抜ける】から!
先日駆け抜けた時は、霊気が人のトラウマを
突っつきまくってくれたけど。
でも、もう大丈夫!
なぜなら「胸囲が増えた」から!
…1㎝でも成長は成長だもん。
「さあ、行っくよーっ!」
桜色のオーラをたなびかせ、大祓骸魂の元へ全力で駆ける。
彼女は助けられないって言うけど、あの愛を無碍にはしたくない。
せめて一言、届けたい。
鳥居を抜けたら【花筏】でオーラを纏う髪飾りを飛ばす。
進路を塞ぐ懐刀を弾き飛ばし、彼女の元へ全力疾走。
突撃しながら大きな声で、
「待たね!」
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎
★他の猟兵と連携する
止められるかだと?誰にモノ言ってやがる
止められるから、わざわざ来てやったんじゃあねえか
ま、お前を直接殺りに来たわけじゃあないんだがね
俺は繋げるだけさ、勝利への道にな
そら、懐刀を出せよ
幾らでも飛ばしてこい
【第六感】と【見切り】で軌道を見切りながら、【ダッシュ】で駆け抜ける
通り抜けても戻ってくる懐刀があるだろう
しっかり後ろも警戒する
…ま、全部避け切れるなんて思ってない
多少被弾しても、死に切らなきゃいい
──さて、そろそろだな
野郎ども、行こうぜ!『Heroes』アクティベート
これだけの攻撃能力がありゃ、一気に叩き潰せるだろ
俺の仕事はこれで終いだ
お前の愛がここで沈むサマを、見てやる
●いつか、赦されるその日まで
大いなる邪神に、傷をつけたものがいる。
飛び散った鮮血はたちまち並び立つ連ね鳥居となって、猟兵たちの前に立ちふさがる。
大祓骸魂へと続く道はいまだ遠く、電波塔を進む道はひどく険しく思えたが――。
とん、とん。両足に履いた「桜ぽっくり」のつま先を突いて感触を確かめるのは御桜・八重(桜巫女・f23090)。
次に八重は「花疾風」の襷をきっちり締め直すと、大きく腕を振っておいっちにー、さんしーと準備運動も入念に。
何故なら八重は、最初から『連ね鳥居を最速で駆け抜ける』心積もりで来たのだから。
(「ちょっと前に駆け抜けた時は、霊気が人のトラウマを突っつきまくってくれたけど」)
ああ、思い出すだに頭を抱えてしまう、あの事件。
コンプレックスを解消すべく自分なりに努力した結果が、あんなことになるなんて。
(「でも、もう大丈夫!」)
もう『あのこと』であれやこれやは言わせない。何故なら――。
――『胸囲が増えた』のだから!
そう、それがたとえ1cm単位の話ではあっても、これは確かな、大いなる前進だ。
立派な成長である、相手が邪神だろうがとやかく言わせるものか。
鳥居の果てに佇む大祓骸魂がどんな顔をしたかは定かではないが、八重の意志は固い。
「『止められるか』だと? 誰にモノ言ってやがる」
意気軒昂たる八重の後ろから現れたヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、鳥居の向こう側にいるであろう大祓骸魂へと言い放つ。
「止められるから、わざわざ来てやったんじゃあねえか」
紫色のゴーグル越しに、高速演算で鳥居をスキャン。探りを入れても、小細工は見当たらない。恐らくは、この狭い道中に懐刀をけしかけてくる心算であろう。
きょとんとこちらを見てくる桜の巫女をチラと見遣り、ヴィクティムは笑う。
「――ま、お前を直接殴りに来たわけじゃあないんだがね」
その『役割』は、この気合十分の八重に託そうではないか。
(「俺は繋げるだけさ、勝利への道にな」)
鳥居を見れば、人ふたり程度ならば十分に並走できそうな大きさであった。
そこでヴィクティムが提案したのは、自身が八重を徹底的に援護すること。
手厚いバックアップの申し出に最初は八重もぎょっとしたけれど、ヴィクティム・ウィンターミュートという男が『そういうもの』と理解すれば、話は早かった。
「……じゃあ、お言葉に甘えちゃおう、かな」
「そうしてくれ、それが俺の本懐ってヤツだ」
電脳魔術士と桜巫女とが並び立ち、連ね鳥居の入口を同時に蹴った。
――速い! 二人とも、恐ろしく速い!
『驚きました これでは あっという間にたどり着かれてしまいますね』
「そら、懐刀を出せよ。幾らでも飛ばしてこい」
駆けながら、ヴィクティムが挑発じみた台詞で攻撃を誘う。
果たして、鳥居の向こうからは複製された無数の懐刀が迫り来る!
「あわわわわ!? わ、わたしにもオーラはあるけど、あの量は……!」
「落ち着け、軌道が見え見えだろう」
どんな弾幕にも安全地帯が存在するように、落ち着いて見切ればどうということもない。
告げる直感に従って懐刀の軌道を見切り、後方へとやり過ごして行くヴィクティムに従って八重も何とか凶刃を回避していく。
その間にもぐんぐんと鳥居をくぐって突き進んでいく二人の前に、出口が見えた。
「ヴィクティムさん、見えた――っ!?」
「……っ」
あと一歩というところで、男が片膝をついた。
背に刺さるのは複数の懐刀。なんたることか。
(「通り抜けても、戻ってくる懐刀があるだろうとは思ってたさ」)
それを見越して、背後への警戒も怠らなかった。
だが、流石にその全てを避け切れるだなんて甘い考えはなかった。
「……多少被弾しても、死に切らなきゃいい」
こみ上げてくる鉄の味を無理矢理に呑み込んで、代わりに言葉を放つ。
――さあ、そろそろだ。
「行こうぜ、お嬢さん! 『Heroes』アクティベート!」
勝負はこれからだと言わんばかりに、八重のオーラをさらに強固にする守護結界が施され、空気を読まずに飛来した懐刀をひとつ難なく弾き飛ばしてみせた。
「す、すごい……!」
「これだけの攻撃能力がありゃ、一気に叩き潰せるだろ」
暗に『俺の仕事は、ここで終いだ』という言葉を含めて、ヴィクティムは前を見た。
八重は無言で頷き、遂に目視で捉えた大祓骸魂を見た。
「さあ、行っくよーっ!!」
強固なオーラをたなびかせ、桜の巫女は全力で駆ける。
(「彼女は『助けられない』って言うけど、あの愛を無碍にはしたくない」)
それが、どんなに救い難い、許されない愛の形だとしても。
(「せめて一言、届けたい」)
その一心で、遂に八重は鳥居を完全に抜ける。
同時に【花筏】を発動させ、髪飾りを複製して進路をなおも塞ぐ懐刀をことごとく弾き飛ばし、大祓骸魂の元へと猛然と迫る!
(「お前の愛がここで沈むサマを、見てやる」)
桜の髪飾りと共に吶喊する八重を、そしてそれに圧倒される大祓骸魂を、ヴィクティムはしっかりと見届ける。
「――またね!!」
八重の叫び声が、聞こえた気がした。
大いなる邪神に、究極妖怪に、オブリビオンに、果たして『次』はあるのだろうか?
ああ――あるいは、幻朧桜舞うかの地なれば、あるやも知れぬ。
桜の巫女はそれが当然とされる世界の身、そうであれば納得も行く。
いつか、また。
この愛が、許されるかたちで叶いますように。
だから今は、その歪みきった愛を――沈めよう。
大成功
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