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大祓百鬼夜行㉕〜雲の道行け虞を知らず

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●愛は全てを救わない
 愛しきUDCアース。
 あなたを思う 私の愛は揺るがない。
 だから 私は帰って来たのです。

●幽世の幻影
「諸君! 時は来た!」
 ゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)が指を指す。その先にあるものはUDCアース、東京スカイツリー。
 最上部に設置された、アンテナが収納された高さ約140mの巨大構造物、それがゲイン塔。大祓骸魂が、遂にその姿を現わしたのだ。
「もはや多くは語るまい。カクリヨファンタズムを、UDCアースを救うために奴を討つ! それだけだ!」
 大祓骸魂は、その膨大な「虞(おそれ)」によって、東京上空を「カクリヨファンタズムが如き空間」に変化させている。
 そして、今回の戦争に存在した「あらゆる手段」を行使して襲いかかってくるのだ。
「諸君は知っているはずだ。これまでの戦いの中で、攻略の効力の糸口を見つけているはずだ。諸君が経験した「あらゆる手段」を用いて、その虞を祓う! それこそが、この大祓百鬼夜行の終わりにふさわしい!」
 強大な虞を前に、猟兵は真の姿を晒すかもしれない。
 忘れられた怪異を鎮める、おまじないを見つけ出すかもしれない。
 死の誘いを振り払い、駆け抜けるかもしれない。
 時に猟兵ではない者の力を借り、目的を果たすかもしれない。
 集った仲間との連携が、その力を無限に高めるかもしれない。
 お金で買えるものが、大きな力になるかもしれない。
 この戦争で経験したもの。その全てが猟兵の力になる。
「見事大祓骸魂に勝利し、二つの世界を救ってくれたまえ! 期待しているぞ!」


納斗河 蔵人
 お世話になっております。納斗河蔵人です。
 大祓百鬼夜行㉕、大祓骸魂との最終決戦です。
 今回は以下のようにプレイングボーナスがあります。どこのボーナスを使うかは番号で指定いただけると。

 プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)

 この戦場に行きたかったけどいきそびれたな、とかもう一度このボーナスでプレイングを書いてみたいな、といった要望に応えられるように頑張ります。
 日常や冒険も相手が大祓骸魂ともなればまた違った雰囲気をみせるでしょう。
 ぜひ今回の戦争で得たものをぶつけてください。

 それでは、プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
あれ…ふむ…
んー…もしかしてこれあり?
ものは試しだ、やってみよう

まずは予備の携帯電話を妖怪軍団に渡して大祓骸魂に渡して貰うように伝える
これから電話かけるから取るように伝えて!
という訳で、今回は大祓骸魂さんにインタビュー
えーとりあえずはジャブ、お好きな物は何ですか?
いや何かもう大体答えが分かる気がするけどさ、そう2番目に好きな物とか!
いやーっていうかさ、私邪神研究してるからこういう風に話が出来る機会があるのは非常にありがたいんだけど…ねえ聞いてる?
そう、趣味とか好物とか…無いの?
ちょっと!妖怪達!ちゃんと答えるように言ってよね!

まあいいや【Code:T.S】起動
最大サイズで諸共『なぎ払い』攻撃!



 東京スカイツリー、ゲイン塔。ついにその姿を現した大祓骸魂。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は決戦の地へと続く雲の道の先を見据え、ふとつぶやいた。
「あれ……ふむ……」
 大祓骸魂はここまでの戦いに存在したあらゆる手段を用いる。そして、こちらも同様にあらゆる手段で対抗することが必要になる。そのように聞いていた。
 ならば目の前に広がる光景を打破する手段はなんなのだろうか?
「んー……もしかしてこれあり?」
 見えてきたのは、大祓骸魂の姿ではなく、ひとつの電話ボックス。歴史の流れの中で見ることも少なくなった。追憶の遺物。
 思い当たるのはひとつ。今、大祓骸魂は。電気を操りUDCアースの通信網に潜り込んでいるのだ。
「ええと、そうなると……」
 このタイプの妖怪達はメリーさんの電話にアクセスすると実体化していた。勿論そうやって戦う手段もあるだろう。
 しかしもう一つ、強大なオブリビオンフォーミュラとの戦いには似つかわしくないようにも思える手段が存在していたはずだ。
「物は試しだ、やってみよう」

「もしもし。私、大祓骸魂」
 正直マジかよ、と思わなくもない。数回のコール音の後、聞こえてきた声は予兆で聞こえたあの声だった。
「ドーモ、月夜・玲です」
 だが、勝算はある。虞とは未知だ。故に、知れば知るほどその力は薄れていくもの。
 ならばこれしかない。インタビューだ。
「えーとりあえずはジャブ、お好きな物は何ですか?」
「私の愛 それはUDCアース」
 玲は思う。でしょうね、と。何かもう大体答えはわかっていた。
 だがそれでは理解にはつながらない。もっと答えを引き出さなくては。
「えーと、じゃあ、そう! 2番目に好きな物とか!」
「私が二番目に好きな物 それはUDCアース」
 が、返ってくる答えはただ一つ。その後も趣味や好物を尋ねるが
「趣味 それはUDCアース 好物 それはUDCアース」
「ちょっと! ちゃんと答えてよ!」
 と、この調子である。私の愛は揺るがない。
 はぁ、とため息がでる。
「いやーっていうかさ。私邪神研究してるから、こういう風に話が出来る機会があるのは非常にありがたいんだけど」
「……」
 これは正直な気持ちだ。だからこそ根気よく、こうして話を続けているのだ。
 だが、遂に電話の向こうからは声が返ってこなくなってしまう。
「……ねえ聞いてる?」
「……」
 沈黙は続く。しかし回線は確かにつながっている。
 訝しむ間もなく、玲は気付いた。彼女に近づく無数の気配に。
 
「聞いているわ 愛しきあなた 私は大祓骸魂 今あなたの後ろにいるの」
 
 バチン、と雷が弾けた。
 瞬時に『Code:T.S(コード・サンダーソード)』を起動。
「出力上昇、雷刃形成」
 視界に映るのは、大祓骸魂と付き従う大祓百鬼夜行。その一切を一太刀でなぎ祓う!
 
「愛しきあなた お話しできて楽しかった あなたを永遠にしたい」
「後ろの妖怪達はそうは思ってなかったみたいだけどね」
 そうでなければ、こんな容易に勝利はできなかったに違いない。
 大祓骸魂はその姿を薄れさせていく。理解できたかはわからない。しかし、得るものはあった。
 まだまだ戦いは続く。玲は雲の道を行き、次の戦いへと歩を進めていくのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
使用ボーナス:㉑👿

竜神親分に託されたのだ。必ず世界を救えと。

青く燃える鉛の翼展開。
敵出現地点に最寄りのUDC組織と合流。

今より敵に特攻する。支援を願いたい。
例の超常光線砲ないし上空への射出装置があれば重畳。
何もないなら各自に渡す短剣の刃に触れてくれ。【生命力吸収】で翼に回す火【力溜め】る。

UC【異界駆け往く鉛背】起動!
バリアの強度と推進力を【限界突破】した【空中機動】力で【ダッシュ】!
敵UCによる妖怪たちの集合を【衝撃波】による【吹き飛ばし】で妨害しつつ体当たりでの【捨て身の一撃】!

貴様には解るまい、これが未来への道行く者たちの力!
我らは今日を越え明日に進む!貴様だけが、昨日に砕けて散れッ!



「本当にあんなところに敵が?」
 一人のUDC職員が疑問符を浮かべた。
「ああ、やはり自分達にしか見えていないようだ」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)にははっきりと見えているが、猟兵ではないUDC職員達にはそれを視認することはできない。
 大祓骸魂の前に立つことができるのは、ここまで大祓百鬼夜行を駆け抜けてきた者だけ。
「うちに侵入してきた奴もそうでしたからね。試作品だけでも間に合って良かった」
 だが、彼らにもできることはある。
 例えばそう、『超常光線砲「U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)」』――その力を完全にするには時間が足りなかったが、一時的に虞を祓う
効果は発揮できる。
 ルパートはその力を借りて大祓骸魂との決戦に臨もうというのだ。
「今より敵に特攻する。支援を願いたい」
「了解です。タイミングは任せますよ」
 たなびくマントが青く燃える。鉛の翼がその背にある。
 目指すは東京スカイツリー、ゲイン塔。雲の道を抜けて、彼の体は猛烈なGと共に決戦の地へと空を駆ける。

「愛するUDCアース あなたを永遠にしたい 猟兵よ 止められますか」
 大祓骸魂は無数の妖怪達を従え、永遠を願う。
 だが、そんな事を許すわけにはいかない。
「竜神親分に託されたのだ。必ず世界を救えと」
 戦いの中で受け継いだものがある。託された願いを果たし、未来へと進む。
 それこそがきっと、本当の永遠だ。
「我が命運は闇夜にこそ在りて。されど……我が騎士道は万理へと延びる!」
 カクリヨファンタズムとUDCアース・ふたつの世界の命運を背負ってルパートは大祓百鬼夜行を突き抜ける。
 狙いは大祓骸魂ただひとり。鎧の中でバリアバンクルを活性化させる。
 青く燃える炎が東京の上空で線を描いた。
 勢いのままに突進。抱きとめるように受け止められたが、構うものか。ここにあるのは『異界駆け往く鉛背(バリアブーストブラスト)』!
 強引に宙を駆け、やがてルパートと大祓骸魂は虞の作り出した雲を突き抜ける。
「私は止まらない あなた一人の力では」
「そうか、だが俺は一人ではない」
 眼下に広がるのはUDCアース。そして。
「来たぞ、U.D.C.照射!」
 猟兵とはまた違った手段で、世界を救うべく戦う者たち。彼らの作り出した光が大祓骸魂を照らした。
「愛するUDCアース あなたが私を拒んでも 私の愛は揺るがない」
「貴様には解るまい、これが未来への道行く者たちの力!」
 超常を打ち砕く力が、大祓骸魂の虞を薄れさせていく。猛烈な光の奔流の中で、ルパートは叫ぶ。
「我らは今日を越え明日に進む! 貴様だけが、昨日に砕けて散れッ!」

 天より降りし青い炎が大地を揺らす。UDC職員達が慌てた様子で駆け回り、黒騎士の鎧を取り囲む。
「やりましたね! 私たちにもわかりましたよ、あなたが戦っていた敵が消えていくのが!」
 はっきりとしない意識の中で、ルパートの耳にそんな声が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール

アドリブ連携歓迎

フン…愛ゆえに、か
なんとも厄介な愛を引き寄せた者だな、我が故郷は

複製された敵の懐刀をシガールQ1210の乱れ撃ちで撃ち落としつつ
懐から駄菓子を複数取り出す
チョコレートでコーティングされた丸いカステラの菓子だ

ふむ…食べるのは久々だが、こんな味だったか
いかにも駄菓子らしい味だな

この駄菓子の別名を「UFOチョコ」と呼ぶ
UCを発動
百機以上にも及ぶドローンを召喚、UFOチョコで強化させて空飛ぶ円盤へと変形する
敵の懐刀を円盤からの怪光線で次々と破壊させる
更に全機合体させて、巨大UFOへと変化させたら敵に一斉射撃を行う

世界を殺す程の愛か…フッ、止めてみせるさ
私も、この世界を愛しているからな



「フン……愛ゆえに、か」
 東京、浅草。そびえるスカイツリーのゲイン塔を取り囲む強大な虞を見上げ、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)はつぶやいた。
 大祓骸魂はUDCアースへと帰ってきた。その全てを永遠とするために。愛故に。
「なんとも厄介な愛を引き寄せたものだな、我が故郷は」
 雲の道を駆け抜け、決戦の地へ。眼前に広がるのは駄菓子屋迷宮。
 その中心で、この世を滅ぼす究極妖怪は彼女を待ち受ける。
「待っていました 猟兵」
「そうか」
 懐刀「生と死を繋ぐもの」を抜き放ち、大祓骸魂は壁に掛けられたくじ引きガムをむしり取った。
 ふたつの世界を巡る戦いがこの迷宮で始まる。

「フン、甘い」
 鋭い刃のように撃ち出されたガムを機関拳銃でなぎ払い、身を隠す。
 飛び込んだ先で棚からつかみ取った駄菓子兵器。
 それはチョコレートを纏った円盤状のカステラであった。
「フム、これは……久しぶりだな」
 一口含んでみる。食べるのは久しぶりだが、こんな味だっただろうか? 
 子供の頃の記憶というものはあてにならない。もっと甘かったような気もする。商品名は……
「そう、UFOチョコだ」
 考えを巡らせる。幼い想像力を思い起こす。これを兵器とするならばどう使う?
 答えは見えた。
「展開せよ、ドローン」
 命ずると、彼女の周囲に『シアン・ド・シャッス』――水陸両用ドローンが漂い始めた。
 元々戦闘能力を持つ機体だが、駄菓子兵器と組み合わせればそれ以上の効果も期待できるはず。
「世界を殺す程の愛か……フッ、止めてみせるさ」

「猟兵 あなたも永遠にします このヤマラージャ・アイビーで」
 大祓骸魂はその懐刀を無数に増殖し、展開する。
 対するキリカのドローンはUFOと融合し、その姿と機能を大きく変えていた。
「お前がカクリヨへと去った頃に、こういうのは流行っていたんじゃないか?」
 命を持たぬドローンが生と死の狭間を飛翔する。回転しつつ虹色に輝けば、光の中へと懐刀は消えていく。
 しかし大祓骸魂も同様に、複雑な動きで刀を操りUFOを墜落させている。
 一進一退の攻防。キリカの方が優勢に見えるが、元々展開していた数は大祓骸魂の方が多い。
 そこでキリカは勝負に出た。
「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、速やかに眼前の獲物を狩れ」
 指示と共にUFOが合体していく。刻まれた数字はみるみるうちに大きくなり、サイズもそれに比例して巨大化していく。
「死があなたに届きます 数を減らせば防ぎきれない」
「その前にお前を倒すさ!」
 UFOが落としきれなかった懐刀がキリカへと迫る。
 だが大祓骸魂も言っていたようにこれはなまくらだ。永遠となる前に、終わらせればいい!
「宇宙からの来訪者達よ、幽世の幻影を打ち砕け!」
 UFOの外装を光が巡る。甘い香りが漂い、収束されたエネルギーが大祓骸魂を貫く。
「それでも私は愛しています この愛は幻影などではない 必ず最後に 愛が勝ちます」
「ならばこの結果は必然だ……私も、この世界を愛しているからな」
 キリカを取り囲んでいた刃が地に落ち、消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
⑦妖怪軍団を逆奇襲する。
真夜中で満月のすすき野へと変化した空間。

「揺るがない愛、自分も、壊れ得ぬ意志で、戦おう!」
ディスポーザブル02に搭乗操縦から、UCを発動。
出血を代償に、キャバリア、ディスポーザブル02群を

「戦え、ディスポーザブル……!」
透明化迷彩で持ちこんでいた、搭乗機体以外のディスポーザブル02群を実体化させて戦わせる。自身は逆に透明化し、他の02群に紛れる。

継戦能力で、闘争心で大量のキャバリアを戦わせた代償を誤魔化し、
02群が大祓骸魂からオブリビオンを引き剥がした所に、
接近し、重力制御で威力を増した貫手で重量攻撃!

「燃え尽きろ!オブリビオン!!」
メクサラを展開、灼熱の光剣で属性攻撃



 がさり、とこすれる音がする。
 大祓骸魂の虞によって作り出された空間。月光に照らされて露わになるのは広大なすすき野だ。
「……」
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は背の高いススキの群れの中で息を潜めていた。
 ここは既に敵地。大祓骸魂は数多の妖怪を従え、その大祓百鬼夜行もまた何処かに潜んでいる。
 迂闊に踏み込めば不意を討たれ、敗北は必至。しかしこの状況は、小枝子の過去にとって日常とも言えるほどのものだ。
 ゆっくりと身を起こし、周囲を探る。コンソールに映し出される反応は、透明化させておいたディスポーザブル02の群れだけ。
 そのまま、傍らに待機させておいた自分用の機体へと乗り込む。
 すう、と息を吸う。敵は大祓骸魂。必要な情報はそれだけだ。
 そして小枝子は、自らの腕に刃を突き立てた。溢れ出す血がぽたりと足元を染める。
「戦え、ディスポーザブル……!」
 この血が流れる限り、戦意が途絶えぬ限り。『狂わし機(カヤルハマブイ)』達は戦うことをやめない。

「来ましたね 猟兵」
 すすき野に潜んでいた妖怪達は大祓骸魂の命令により一斉に動き出す。
 姿を晒して飛翔するオブリビオンマシンの群れに向けて、死角から無数の攻撃が放たれた。
 槍を、石を、呪いを。そこにある幻想は巨大なマシンを大きく揺るがし、地へ落とす。
 背の高いススキの中へ誘い込めばこちらのもの、とばかりに妖怪達は纏わり付き機動性を奪っていく。
「諦めぬ意思 それも愛おしい ですが私の愛は揺るがない」
 百鬼夜行は潰えない。何体倒されようともすすき野の影から新たな妖怪が現れ、ディスポーザブル02を取り囲む。
 そんな大祓骸魂の言葉を、小枝子は透明化した機体の中で聞いていた。
 流れた血は目を覆わんばかりの惨状で、彼女自身の限界も近い。だが、沸き上がる闘争心が倒れることを許さない。
「揺るがない愛、自分も、壊れ得ぬ意志で、戦おう!」
 戦意ある限り、決して壊れえぬ躯体を突き動かし大祓骸魂の背後へと接近する。
 正面から仕掛けさせたのは全て囮だ。全ては、この一撃のために。
 ぐん、と音が歪むほどの重力を纏い、大祓骸魂へと向けてディスポーザブル02の手を突き立てた。
「不覚 あれほどの数を自らの意志で操る しかしあなたの命も尽きようとしている」
 半身を抉られながらも、生と死を繋ぐものが機体に向けて振るわれる。小枝子を永遠にするべく、じわりじわりと押し込んでいく。
 その度に、口の中が鉄の味で満たされる。
 だが小枝子は血を吐き捨て、叫ぶ。
「いいや、この意志は尽きはしない! 燃え尽きろ! オブリビオン!!」
 月明かりに照らされたススキの中に紅が生まれた。BX-Aメクサラ。灼熱の光が、究極妖怪の全身を焼き尽くす!
「灼かれても裂かれても 愛は尽きない 私は――」
「戦って、戦い続ける。この意志が潰えぬ限り――」
 黒く焼け焦げたすすき野の中心で、一人の少女が瞳を閉じた。
 魂は返る。何処へ? まだ続く戦場へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
⑧狭い橋の上でうまく戦う

この橋が狭い以上、一度に襲いかかってくる敵は限られる
だが、此方は無理な突破は難しい。有利でもあり不利でもあるか

加減を出来る戦いでもなし。黎の型【纏耀】を発動して神気を身に纏う
限界を越えて強化された身体能力を使い、助走から大きく跳躍。妖怪たちの身体を分で連続跳躍
一気に大祓骸魂まで接近。最後の一歩で高く跳び、落下の勢いを乗せて大祓骸魂へと刀を振り下ろす

着地後即座に、周辺全方位をなぎ払うように神刀を振るって斬撃波を放つことで隙間を作り、更に自身を中心に浄化の神気を巡らせて骸魂(妖怪)を遠ざける
大祓骸魂と集中して戦えるようにしたなら、自身の身体能力と剣技で正面からぶつかるのみ



 きぃん、と高い音が響いた。
 膨大な虞が作り出した空間の真ん中で、刀を振るう男が一人。
 その名は、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。
 彼は迫り来る大祓百鬼夜行を狭い橋の上で迎え撃つ。
 無数の妖怪であろうと虞の川に落ちればひとたまりもない。
 この多勢を切り抜けるには、一度に襲いかかってくる敵が限られるこの状況はうってつけと言えた。
(……だが)
 苦しいのは鏡介も同じ。大祓骸魂を討たぬ限りこの戦いは終わらない。
 一気に勝負をつけたいが無理な突破は困難だ。
(有利でもあり不利でもあるか)
「猟兵よ 私の愛はあなたをも飲みこみます」
 今は迫り来る敵を討ち、機を伺うのみ。

 そうして戦いが続くうち、鏡介は一分の隙を見つけ出した。
 だが、それはか細い糸。ひとたび道を誤れば、己の身を危険に晒す修羅の道。
「もとより加減を出来る戦いでもなし」
 それでも躊躇いなく鉄刀を鞘に納め、神刀【無仭】を抜き放つ。凜とした空気の中で、刀身から神気が溢れ出した。
 瞬時に彼の目つきが鋭くなる。じり、と足を引き『黎の型【纏耀】(レイノカタ・テンヨウ)』の構えを取る。
「幽冥を越えて暁へと至る」
 体を低くかがめ、向上した身体能力で一気に加速。橋の上で行く手を阻む妖怪達の頭上を跳躍する。
「グゲッ!」
 一足では足りぬ。群れに呑まれる前に踏みつけ、踏みつけ、踏みつけ。
 狙うは大祓骸魂、ただ一人。遥か遠くにいたはずのその姿を認め、鏡介は高く跳んだ
「黎の型【纏耀】」
 高く掲げた剣に重力を乗せて一気に振り下ろす。
 その一撃は大祓骸魂の懐刀に受け止められるが、問題はない。狙いは彼女を取り巻く大祓百鬼夜行!
 溢れ出す神気に妖怪達が吹き飛ばされた。

「猟兵よ 止められますか」
「無論」
 迫り来る「なまくら」を刀の背で払い鏡介は間合いを詰める。
 チラリと視線を巡らせれば、妖怪達は巡らせた神気に阻まれ戦いの行方を見守るだけ。
 大祓骸魂と百鬼夜行を切り離した以上、もはやその能力も万全とは言えぬだろう。
 それでもオブリビオンフォーミュラの名は伊達ではなく、決定打には至っていない。
 この型は鏡介にかかる負担も大きい。じわじわと体力が削られていく。
 しかし焦りは禁物だ。
 己の体と、身につけた剣技を信じるのみ。
「猟兵よ その生と死を繋ぎましょう」
 大祓骸魂が懐刀を掲げた。誰でも何でも殺すことができるというこの刀を受ければ、鏡介は『永遠』となるだろう。
 しかし一呼吸。ゆっくりと彼は息を吸い込んだ。
「この一刀で総てを断つ」
 袈裟懸けに神刀を振り下ろす。大祓骸魂の軌跡を器用にすり抜け、その切っ先は虞を祓う。
 そうして、道が開けた。ふたつの世界を救い、未来へと続く道が。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
㉓お金で買えそうなもの

SSWの騎士の御伽噺の稀覯本
なにせ星があった時代の文化的遺物です
考古学的な意味合い含め現存する物の価値は計り知れません

…失われ、忘れ去られた物も多いでしょう
ですが騎士の文化は形を変え息づいています
確かに其処にあった証として

貴女は愛しき現世に似せ幽世を拵えた…
いわば、この世界と住まう妖怪達は貴女の愛の証でもあるのです
だからこそ、貴女が確かに存在した証たる幽世を、現世ごとその手で壊させる訳にはいかないのです!

強化膂力で大盾を地面叩き付け地形破壊
隆起と崩落で妖怪達分断
脚部スラスター推力移動で大祓骸魂に接近
UCを剣に載せて

(消えゆく書へ)
中身を読む時間が無かったのが惜しいですね…



「命みじかし、恋せよ乙女とは言いますが」
「猟兵よ UDCアースは永遠となります」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は大祓骸魂の姿に嘆息する。
 愛を語る彼女は、確かに乙女なのだろう。
 莫大な虞を放ちながらもその手にあるのはUDCアースで古くから読み継がれてきた恋物語。
 書もまた、人の心に何かを残し永遠となるもののひとつ。
 こうして猟兵に追い詰められながらも態度を変えぬ彼女の有り様は、確かに”恐ろしい”。
「ならば私も永遠を語り継ぎましょう」
 虞知らずの術。新し親分の示した、大祓骸魂への対抗策。
 トリテレイアが思い浮かべるもの、それは。

 汝、須く弱き者を尊び、かの者たちの守護者たるべし。
 汝、怒りではなく、平静に剣を取れ。
 汝、いついかなる時も正義と善の味方となりて、不正と悪に立ち向かうべし。
 遙か昔。と、いっても彼の故郷、SSWにとってのことだ。
 宇宙船で長い時を生きてきた彼らがまだ惑星にすんでいた頃。人々の憧れとなった存在がいた。
 それこそが騎士。その志を記し、語り継いできたお伽噺が、トリテレイアの手にあった。
「なにせ星があった時代の文化的遺物です。考古学的な意味合い含め現存する物の価値は計り知れません」
 ぱらり、とページをめくる。彼にとってもこの本は『憧れ』だ。
 あるべき己の指針。目指すべき場所。
「……失われ、忘れ去られた物も多いでしょう。ですが、騎士の文化は形を変え息づいています」
 自身を紛い物とうそぶきながらも、理想を追い求める。
「確かに其処にあった証として」
 そうでなければトリテレイアはトリテレイアになれなかった。
 永遠とは、そこにあるものではなく、受け継がれるもの。
「貴女は愛しき現世に似せ幽世を拵えた……いわば、この世界と住まう妖怪達は貴女の愛の証でもあるのです」
 大祓骸魂は答えない。変わらぬ微笑で遠くを見つめるばかり。
「だからこそ、貴女が確かに存在した証たる幽世を、現世ごとその手で壊させる訳にはいかないのです!」
 御伽噺の稀覯本は確かに彼に力を与えた。振り上げた大盾が軽い。
 強化された膂力で振り下ろせば、衝撃が大地を揺らす。隆起した土塊に弾かれて妖怪が吹き飛び、裂けた地割れに呑み込まれていく。
 一点だけを見つめ、トリテレイアは脚部のスラスターにエネルギーを送った。

 剣の切っ先は正確に大祓骸魂の喉元を貫いた。
『戦場の騎士(ナグレリャナンデモイイ)』として剣に籠められたパワーは、彼自身が破壊した大地をものともせずに突き抜けたのだ。
 姿を薄れさせながらも彼女の表情は変わらなかった。
「愛しきUDCアース 永遠に」
 その後に続けようとした言葉はなんだったのだろう? 考えても詮無きことだが……
「む」
 と、トリテレイアは気付く。その手にあったはずの書もまた、その姿を薄れさせていたことに。
 やがて重みも消え去り、全ては幻想となる。
「中身を読む時間が無かったのが惜しいですね……」
 騎士の現実は厳しい。それでも彼は追い求めるのだろう、お伽噺に語られるような騎士の姿を。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィランサ・ロセウス
【⑲踏切が終わらない】
貴女の狂おしいまでのこの世界への想い、妬けちゃう位素敵だわ!
でも残念だけど、貴女の想いは遂げられる事はないわ。だって――

まずは向こうの攻撃をよく観察して【見切り】、【武器受け】で被弾を抑えながら、線路の近くへ誘い込む
多少のダメージも狂人ゆえの【呪詛、激痛、恐怖への耐性】とUCによる強化で持ちこたえ
チャンスが来たら大祓骸魂にフックシューターを放ってワイヤーで絡め取り
うまく捕まえられたら、そのまま力任せに踏切の中に投げ入れる!

だって――私も貴女を“好き”になっちゃったから!
だから貴女が世界を永遠にする前に、私が貴女を永遠にするの!
私のこの想い、しっかり受け止めてね♥



 カン、カン、と踏み切りの音が響く。
 線路の向こうにもう一つ。その向こうにはさらにもう一つ。
 駆け抜ける妖怪列車の向こう側で、大祓骸魂が不気味に微笑む。
 その姿を見つけ、フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)は愛をこめて語った。
「貴女の狂おしいまでのこの世界への想い、妬けちゃう位素敵だわ!」
 己の身を抱きしめるように彼女は笑う。
 愛しているから殺して、永遠のものとする。これぞ愛。愛だからそうなるの、よーくわかっちゃう。
「で・も」
 くるん、と指先を回す。にい、と口角をつり上げる。その吸い込まれそうな瞳で大祓骸魂を見つめる。
「残念だけど、貴女の想いは遂げられる事はないわ」
 だって――
「私も貴女を“好き”になっちゃったから!」

 ゆっくりと大祓骸魂は歩を進める。その足元にはヒガンバナが咲き誇り、周囲を赤く染め上げていく。
「猟兵よ どれほど遠く離れても虞はあなたを離さない」
 神智を越えた虞は、踏み切りの向こう側からでも強いプレッシャーとなってフィランサへと届く。
 常人であれば一瞬で気を失うほどの圧力。たとえ猟兵であっても平静ではいられない。
 しかし彼女は、そんな膨大な虞のなかで恍惚とした表情を浮かべていた。
「もうっ、そんな風にされたら……もっと“好き”になっちゃう♥」
 フィランサもまた愛故に。『燃ゆる恋の炎(センスサルデレ)』はますます燃え上がる。
 隔てるものはカクリヨファンタズムとUDCアース、そして大祓骸魂とフィランサ。
 この踏み切りが上がったら、すぐ会いにいきます。

 だが、何度妖怪電車が通過しても踏み切りは上がらない。
 フィランサの周囲に漂う桃色のオーラはその濃さを増し、彼女自身も待ちきれないとよだれを垂らす。
 焦がれる想いも素敵だけれど、待ってばかりじゃ乙女じゃない。花の命は短いのだ。ヒガンバナも摘み取ろう。
「あはっ……」
 考えるよりも先に体が動いた。フックシューターから撃ち出されたワイヤーが真っ直ぐに大祓骸魂へと飛んでいく。
 涼しげな顔で大祓骸魂は懐刀を振るった。その先端が一瞬だけ絡みつく。
 それと同時に妖怪電車が走り抜け、猛烈な勢いでワイヤーを一気に引き寄せた。
「わたし、キミがお人形さんみたいに飛んでる姿みたいな♥」
 ワイヤーは切れずにその懐刀を弾き飛ばす。これで大祓骸魂を守るものはない。
 フィランサは踏み切りをへし折り、線路の中へと駆け込んだ。
「貴女が世界を永遠にする前に、私が貴女を永遠にするの! 私のこの想い、しっかり受け止めてね♥」
 次の妖怪電車はすぐにやってくる。だが、それよりも早く、伸ばした手は大祓骸魂へと届いた。
 引き寄せると同時、すさまじい衝撃が二人を襲う。
 宙を舞い、抱き合うように転がった。
 フィランサは血を吐きながらもますます強くなる桃色のオーラに守られている。
 しかし、大祓骸魂は。線路に咲いたヒガンバナは妖怪列車によって踏み荒らされ、彼女の能力を強化できていない。
「愛しきUDCアース 私はあなたと――」
 UDCアースの方を向きながら大祓骸魂は糸の切れた人形のように動かなくなった。
 フィランサはそんな彼女へうつろな瞳で口づけ、そのまま気を失う。
 愛するあなたを永遠にしたい。この踏み切りでそれが叶いました♥ 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リステル・クローズエデン
お前の行動を否定する


プレイングボーナス…… 真の姿を晒して戦う


真の姿
青白い肌と青い仮面の姿。

戦闘
視力、聞き耳で得た情報を高速思考で処理し
第六感もあわせて攻撃を見切り、
軽業、足場習熟、ダッシュや
迷彩、残像を組み合わせ、
受け流し、盾受け、武器落としで
かわし、弾きながら間合いをつめます。

オーラ防御で
かわせないものは受けるしかないか。

途中でユーベルコードを発動し加速。
【氷結呪縛の吹雪】を目潰しと武器落としを目的として放ち。

刀で鎧無視攻撃の斬撃をうちこみます。

攻撃後も即座にダッシュで離脱。
【氷結呪縛の吹雪】をもう一度、放ち。
浮かぶ懐刀を凍てつかせ、
他の猟兵への援護とする


それは、永遠ではなく。
終焉とよぶ。


梟別・玲頼
愛するから壊すってのが訳解んねぇ…
そうして自分独り占めのつもりか?
させねぇよ…!

UC発動と同時に真の姿へ
アイヌ民族衣装纏い、翼と化した腕に蹴爪の足の半人半鳥へ
刀を手に風と共に奴に向かって距離詰める

私と貴殿は似ている
人々に忘れ去られ、消えかけた存在として
そしてこの地を、この世界を愛している事も
ただ決定的に違うのは、私はこの世界を護りたいと願う事…!

百鬼夜行に集いし同朋達よ、抗え!
其方達は愛しき故郷を滅ぼす事を望むのか?
叫び、僅かでも意思統一が妨げれば僥倖
獲物に飛びかかる梟の如く、奴を蹴爪で捕らえ、我が刃にて斬りかかる
負傷は鑑みぬ
何があれど私は此奴を滅ぼさねばならぬ

最早貴殿を忘れる事など出来ようか



 膨大な虞が周囲を取り巻く。
 無数に並ぶ大祓百鬼夜行を従え、大祓骸魂は生と死を繋ぐものを手にする。
「愛するUDCアース あなたを永遠にしたい」
 世界を滅ぼす究極妖怪。その根源は、愛だ。
「愛するから壊すってのが訳解んねぇ……」
 梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)がボリボリと頭を掻く。
 オブリビオンの思考など理解できるようなものではないのかもしれないが、その言葉に繋がりは見えない。
「いいえ UDCアースは永遠となる 骸の海で変わることなく」
「そうして自分独り占めのつもりか?」
 どちらにせよ、話は通じない。カクリヨファンタズムとUDCアース、ふたつの世界を救うためには虞を祓う以外の方法はない。
「お前の行動を否定する」
 そう、リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)が言うように肯定することはあり得ないのだ。
「UDCアース 今こそ永遠に」
「させねぇよ……!」
 だから、止める。その力の全てを振り絞って。
「この身は刃……凍てつく青き呪いの刃……」
「森の守護者の名において、害為す存在は退けよう」
 凍てつく風が周囲に吹き荒れた。
 莫大な虞の中、二人の猟兵は真の姿をさらけ出す。
 リステルがその顔を青い面で覆うと肌は青白く染まり、見るものを震え上がらせる冷たき刃の如き気配が溢れ出した。
 玲頼が翼となった腕を広げると、邪悪を拒む暴風が吹き荒れる。
「私達は決して忘れない この世界を愛しているから」
 大祓骸魂に従う妖怪達が続々と武器を掲げ、彼女自身も生と死を繋ぐものを掲げる。
 懐刀が無数に現れ、猟兵達の命を断たんと宙を舞った。
 無数の軍勢と刃。立ち向かうは二人。奇しくも共に手にするのは刀。それぞれが刃を手に空を駆けた。 

「私と貴殿は似ている」
 玲頼――いや、コタンクルカムイ「レラ」は戦いの中で大祓骸魂の言葉を噛みしめる。
 彼自身も妖怪の一人。人々に忘れ去られ、消えかけた存在である。
 そして、この地を、この世界を愛している事も同じなのだ。
 振り抜いた刀が骸魂と融合した同胞を斬った。
「決定的に違うのは、私は、彼らは。この世界を護りたいと願う事……!」
 レラは『祈リシ森ノ守護(ニタイ・ノミ・エプンキネ)』を纏い、暴風の結界をより強めていく。
 大祓百鬼夜行の力は意志の力。その願いを引き寄せるのだ。
「百鬼夜行に集いし同朋達よ、抗え!」
 レラは護る者である。その矜持を胸に、叫ぶ。
「其方達は愛しき故郷を滅ぼす事を望むのか?」
 そんなはずはない。ふたつの世界を救うため、あえて軍門に降った者達。
 そう、大祓骸魂に従ってはいるが彼らはむしろ自分と同じ志を持つ者なのだ!
 
 生と死を繋ぐもの。大祓骸魂の懐刀は嵐のようにリステルへと襲いかかる。
 しかし風を切る音を良く聞き、その眼で切っ先を捉えれば攻めてくる瞬間は肌で感じ取ることができる。
 時に空を駆け、地を駆け、生と死の狭間を駆け抜ける。
 そうして戦う内に気付いた。百鬼夜行の動きに乱れが生じたことに。
 彼女は知る由もなかったが、レラの叫びが骸魂に飲まれつつあった本来の意志を僅かに呼び覚ましていたのだ。
「彼が何かやったのか」
 これは好機。大祓骸魂を仕留めなければこの戦いは終わらない。ならばその隙を見逃すわけにはいかない。
「呪力……解放! アクセルモード!」
 その身に纏う青き呪いのオーラがその力をさらに増す。
 命の力を代償に、『呪力解放・瞬撃斬空形態(ブルーバースト・アクセルモード)』を解き放つ。
 突きつけた切っ先の向こうには大祓骸魂が居た。
 嵐の吹き荒れる戦場は冷気を含み、吹雪となる。氷結呪縛のエネルギーが大祓骸魂の動きを鈍らせていく。
「たとえ凍てつく嵐の中でも 私の愛は燃えさかる」
「今ッ……!」
 眼前に迫った懐刀をたたき落とし、リステルは一気に距離を詰める。
 一閃。この一太刀はかわせない。狙いを違わず呪われし刀は大祓骸魂を捉えた。
 すれ違いざまに二の太刀で『生と死を繋ぐもの』を狙う。鈍い音と共に、腕が跳ね上がる。
 落としきれなかった。だが問題はない。既にもう一人の猟兵は動きだしていた。
「おおおおおっ!!」
 叫びと共にレラの蹴爪が大祓骸魂を捕らえる。その姿はまるで梟が如く。
 リステルの巻き起こす吹雪をものともせずに、体を凍てつかせながら突き抜けてきたのだ。
「併せよ、何があれど私は此奴を滅ぼさねばならぬ!」
「わかった、僕も力を尽くそう」
 カント・エムシ。「天空の刀」を意味する太刀。
 呪刀・消銘。呪いの影響で一時的に妖刀と化した無銘の刀。
 ふたつの刃が今、生と死を繋いだ。
 
「私は決して忘れない この愛しきUDCアースを永遠とする」
「それは、永遠ではなく。終焉とよぶ」
 リステルは薄れゆく大祓骸魂へと吐き捨てるように言った。
 世界全てが過去となり、未来を失う。
「最早、貴殿を忘れる事など出来ようか」
 そんな事を企んだ忘れられし究極妖怪は猟兵達の記憶に刻まれた。その名を、愛を、狂気を。忘れるものなどいないだろう。
 レラは絞り出すようにつぶやいた。
 その願いの終焉と共に大祓骸魂は永遠となるのだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月01日


挿絵イラスト