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大祓百鬼夜行㉕〜骸禊

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#カクリヨファンタズム
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#大祓百鬼夜行


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●愛は世界を縛る
 少女は世界を愛し、それは揺るがない。
 何者からも忘れられようと揺るがぬ愛は、歪み果てている事と変わりなく。
 愛するものを永遠にするために、終わらせる。
 なまくらで何度も何度も愛を込めて刺して、刺して、刺して。
 究極妖怪『大祓骸魂』の希望まであと少し、それを止めんと猟兵達は挑むのであった。

「……決戦だ。『大祓骸魂』への道が繋がっておる」
 集まった猟兵達にいつにも増して重々しく語る龍神は水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)。
「彼奴は東京スカイツリーの最上部、アンテナが収納された高さ約140mの巨大構造物である『ゲイン塔』に現れた。最早一刻の猶予もない。直ちに向かい、あの真なる邪神を打倒してきてくれぬか」
 彼が説明するには現在東京上空は大祓骸魂の纏う膨大な虞により『カクリヨファンタズムが如き空間』に変化しているのだという。
「大祓骸魂はこの空間を利用し今回の大祓百鬼夜行に存在したあらゆる手段を駆使して猟兵達を排除しようと襲い掛かってくる。外に踏み出せば元の場所に戻れぬ連ね鳥居や狭く隔離した橋の上での戦闘等はもちろん、真の姿をさらけ出させる程の膨大な虞やかぐや姫の大群なども使ってくるだろう」
 しかし、それらはこれまでの戦いを潜り抜けた猟兵達には逆に有利に働くこともあると龍神は言う。
「一月にも渡る長き戦いを我ら猟兵は乗り越え攻略する為の手段を学んできた。その知識を活用すれば十分に渡り合うことはできると我は信じている。……転移も望む戦場に向けてできるよう、全力で務めさせてもらう。だから」
 勝利を、と願う様に多摘は言う。
 そして彼は宝珠のグリモアに魔力を込め、転送の為の陣を描き出し転送を開始した。

 景色が揺らぎ、移り変わる。幽世のようなUDCアースのような不明瞭な場所。
 足場はしっかりしているが、おそらくは上空なのだろう。
 ――鈴の音が鳴る。
 世界を愛し呪う為の最後の障害を排除する為に、大祓骸魂がやってくる。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 いよいよ大祓骸魂との決戦です。

 このシナリオはUDCアースのスカイツリーゲイン塔で『大祓骸魂』と戦うシナリオとなります。
 強敵です。
 ただし、これまでの大祓百鬼夜行に登場した全シナリオのプレイングボーナスの中のどれかを明記した上でボーナスを得るプレイングがあればそのボーナスを得る事が出来ます。
 複数の組み合わせも大丈夫です。
 下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

=============================
 プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)
=============================

 それではご武運を。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
邪神だ邪神!
新鮮な邪神だ!
データ収集のチャンスだおらー!!
これで私の模造神器は更にステップアップ出来るぞ!
さあ、やろうじゃないか!


先ずは真の姿、解放
外装展開
リミッター解除!
四神器抜刀…そして全部折る!
もう完璧に折る!
うらー!!採算度外視じゃい!
修理代請求するからな!

条件はクリア
【決戦兵装:建御雷神】起動!
外装変形、合成神剣・天召喚!
バーニア点火…フルスロットルでターボ移動!

前面に『オーラ防御』で円錐形シールド展開
大祓骸魂の元に集まった妖怪達を轢き『吹き飛ばし』ながら一直線に大祓骸魂向かう!
そしてその勢いのまま一閃!
更にターンして再度一閃の『2回攻撃』!
名付けて、暴走族アタック!

アドリブ等歓迎



●邪神狩りのはじまり
 東京上空には空にカクリヨファンタズムを映し出したかのような、異様な光景が広がっていた。
 その基点はスカイツリー・ゲイン塔。その地に降り立った大いなる邪神、大祓骸魂は愛に濡れた瞳で地上を見下ろしていた。
『もう一刺し、もう一刺しで永遠にできる――』
 うっとりと呟く大祓骸魂、だが背後に感じた気配に彼女が振り向くと、そこには猟兵がいた。
「邪神だ邪神! 新鮮な邪神だ!」
 大祓骸魂の莫大な虞に恐れず、興奮を隠さぬ彼女の名は月夜・玲(頂の探究者・f01605)。
 UDCの力の再現を目指し模造神器を改良し続ける彼女にとって、邪神とはデータ収集の対象である。
 それも大いなる邪神という桁違い相手ならステップアップする事も不可能ではないだろう。
『――私を止めようとするのですね』
 ゆらりと景色が揺らぎ、忘れ去られ放棄されたような駅が周囲に像を作り、そこから妖怪達――骸魂に憑かれたオブリビオンの群れが出現する。
「外装展開、リミッター解除!」
 その膨大な虞により玲の姿は真の姿、と言っても彼女自身は普段とさして変わらない。
 身に纏う模造神器の名を冠したガジェットが四振りの刃を操る為の機械腕を伸ばしている事が変化か。
「さあ、やろうじゃないか!」
 高らかに玲が宣言、統率された妖怪達が一斉に襲い掛かる。
 四神器を抜刀した玲、向かい来る妖怪達を迎撃――、
「うらー!!」
 ばきっと。
 徐に取り出した必殺の兵器のような刃の全てを、玲はへし折ったのだ。
 それはもう完璧に。木の棒をへし折るような豪快さで実は安物だったのではないかと思う程。
「採算度外視じゃい! 修理代請求するからな!」
 高級品だった。オブリビオン達、そして大祓骸魂も彼女の勢いにちょっと引いているように見える。
 傍から見れば邪神の狂気にあてられたかのような彼女の行為だが、それはユーベルコードを起動する為に必要な代償。
 模造神器四振りを代価に起動し。纏う模造神器は【決戦兵装:建御雷神】へと変形していく。
「外装変形……合成神剣・天召喚!」
 外装の変化と共に一振りの刃が形成され、それを玲は手に取る。
 瞬間、背部バーニアが点火し急加速する。
 真っすぐ大祓骸魂へと加速した玲を阻止すべく、即座に妖怪達が意思を統一し割込み防壁を形成する。
 しかしそれだけでは足りない。玲は前面に展開した円錐型のシールドでガードしつつ速度を上げる。
 決戦兵装の出力はそれだけで途中に割り込んだ妖怪達を吹き飛ばし周囲の駅構内の壁に激突させていく。
 速度の乗り切った玲が神県を大祓骸魂に振るう。鈍の刃はそれを阻むも、その細腕は真上に弾かれる。
 そして大祓骸魂の脇を通り過ぎた瞬間玲が反転、強烈な重力加速度に耐えながら背後からもう一度合成神剣を一閃。
 代価の分強化された殺傷力は大祓骸魂を容易く斬り裂き、ぱっと朱色が散って白無垢が朱に染まる。
「名付けて、暴走族アタック!」
 反撃に出た妖怪達を躱し神剣で斬り払いながら玲は得意げにそんな事を言う。
 しかし一撃を貰ったにも拘らず究極妖怪は相変わらず艶然と微笑んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩永・勘十郎
【⑮真の姿を晒して戦う(🔴は不要)】

「妖怪たちの思いを背負って、2つの世界を救わんとあかんらしい。
 お前さんに恨みはないが、斬らせてもらう」

マントを脱ぎ棄て、右手に刀、左手に槍の本気の姿で戦う。
敵は妖怪たちを引き連れて襲ってくる。もちろん攻撃を受けるつもりはない。勘十郎もUCを発動し敵に斬りかかる。

敵の攻撃を【第六感】で感知し、五感では得られない、まるで先に見てきたかのような動きで【見切り】回避する。そして【残像】が残る程の速度で敵の間合いに一気に入り込み、槍と剣同時の大振りで敵の大祓百鬼夜行の効果、事象、そして敵の魂その物を斬り裂く。【幸運】もきっと味方してくれるはずだ。



 そして先の猟兵が妖怪達に追われ、一旦離れた次に大祓骸魂の前に現れたのは岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)。
 黒く膝丈まであるマントを羽織った彼は、大いなる邪神の虞とオブリビオンの群を前にしても動じない。
「……妖怪たちの思いを背負って、二つの世界を救わんとあかんらしい」
 この一月、彼はこの大祓百鬼夜行で多くの戦いを乗り越えてきた。
 その時に縁を繋いだ妖怪や親分達、彼らの想いを感じ背負いながらようやく元凶の元に辿り着く事が出来た。
「お前さんに恨みはないが、斬らせてもらう」
 黒マントを脱ぎ捨て刀を抜き、左には片鎌槍を構える。
 ――この邪神を討つには全力で挑まねばなるまい。
『ええ、ええ。なら私は斬られる前に刺しましょう。なまくらの扱いには慣れていますから』
 骸魂によりオブリビオンと化した妖怪達に大祓骸魂が号令すれば、忘れられた駅舎より出でし妖怪達が一斉に襲い掛かる。
 統率の取れた動きに真正面からの突破は困難と勘十郎は即座に思考し、ユーベルコードを起動し戦闘の妖怪を斬りつける。
 仙力により鋭さを高めた太刀に斬られたオブリビオンに傷はない。だが憑りついている骸魂は仙力による干渉を受けて妖怪の体から追い出されている。
 倒れ伏す妖怪に構わず数を頼りに勘十郎を抑え込もうとする妖怪達だが、勘十郎の研ぎ澄まされた感覚からくる危機回避はまるで超常の感覚で先に未来を見てきたかのよう。
 どこか既視感のあるオブジェを足場に、或いは盾にしながら剣士はその真の姿の力を存分に発揮しオブリビオンを翻弄する。
 残像を砕かれ貫かれながら、幸運にも勘十郎は傷一つなく。崩れた隊列の隙を見切って一気に大祓骸魂の間合いに入り込み、両の手に持つ槍と太刀に仙力を込め同時に交差させるように薙いだ。
 その刃は大祓骸魂を通り抜け、その魂そのものにダメージを与える。
 だがこの大祓百鬼夜行そのものを上書きするには相手が強大過ぎたようで一撃では足りなかったようだ。
 大祓骸魂は僅かに驚いたような表情をしたのち、その鈍の懐刀で勘十郎を弾き距離を取る。
 強大な相手だがダメージ自体は確実に通っている。
 それを確信しつつ、勘十郎は風景が揺らぎ始める中で再び襲い掛かってきた妖怪達との交戦を再開する。

大成功 🔵​🔵​🔵​

隠神・華蘭
⑲の『踏切と妖怪電車を利用して戦う』を使います。
力負けしているのは百も承知、ならばわたくし以外にとどめを刺してもらうだけです!
さぁおいでなさい踏切迷宮と妖怪電車!

こちらは彼女の視界に入らないよう化術で線路下の石に化けて紛れておきます。
さらに化術にて手持ちの木の葉を固めて偽物の妖怪電車に見せかけ彼女の周りを念動力で動かし混乱を誘います。

小石のまま今のわたくしのLvと同じめーとるだけ本物の踏切との距離が離れるまでころころ念動力で転がりまして、
距離が来ましたらUC使用、偽の汽車と化して彼女に突撃です!

わたくしのUCが踏切目前で解除されるなら前の彼女はその中です!
本物に跳ね飛ばしてもらいましょう!



●駅より出で、死出の線路へ
 ゲイン塔の景色が揺らぎ、景色は忘れられた駅から駅から踏切へと移り変わる。
 複雑に伸びる線路を走る妖怪列車と開かずの踏切、それは隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)も見た事のある踏切迷宮の光景。
 踏切の向こうに恐ろしき虞を纏った邪神の姿、その周囲に無数の懐刀が浮かんでいるのを華蘭は認識する。
「あ、まずいですねコレ」
 即座に華蘭は大祓骸魂から逃れるように駆け出し踏切を渡ると、彼女を追うように致死の刃の群れがさくさくと道路や線路に突き立っていく。
『鬼ごっこ、ですか。なら捕まえて愛して永遠にしてあげましょう。この世界のように』
 そんな物騒なことを言いながらゆっくりと追いかける大祓骸魂。
 しかし、踏切を横切る妖怪電車で一瞬視界を塞がれ、その間に忽然と華蘭の姿が消えうせた。
 首を傾げる大祓骸魂、どうにも近くにいる気配は感じるようだがその姿を完全に見失っているようだ。
 そんな大祓骸魂に妖怪電車が突っ込んでくる。線路上でもないのに突っ込んでくるそれは、華蘭が木の葉を固めて変化させた偽物だ。
 だが本物の妖怪電車走るこの場では、本物と偽物の見分けはつきにくい。向かってくる脅威を一先ず大祓骸魂は踏切の手前で躱す事に専念する。
(「なんとかなりましたねえ」)
 一つの小石が踏切、そして大祓骸魂の視界から逃れつつころころ転がり離れていく。
 得意の化術で小石に姿を変えた華蘭。妖怪電車が線路を走る電車である以上、本物が来ても線路下の敷石までは轢かれる事はない。
 ――大祓骸魂は強大だ。真っ向勝負では力負けしてしまうのは百も承知。
(「ならばわたくし以外にとどめを刺してもらうだけです!」)
 目方で百メートル、念動力で転がり大祓骸魂を挟み込みつつそれだけの距離踏切から離れる事が彼女の作戦の準備。
「急には止まれないとはこれのこと!」
 タイミングを計り、ユーベルコードを起動した華蘭は実物大の汽車へと姿を変え、猛スピードで大祓骸魂に突っ込んでいく。
 偽の妖怪電車に攪乱される大祓骸魂の反応は遅れ、周囲に舞う懐刀を操作する間もなく突き飛ばされる。
 そして偽の汽車への変化が解けたその場所は妖怪電車の踏切の手前、突き飛ばされた大祓骸魂は丁度線路の上。
 その時華蘭の狙い通りにかんかん、と線路に規則正しい音が響いてくる。
「さぁおいでなさい妖怪電車!」
 華蘭の言葉から間も無く本物の妖怪電車が大祓骸魂に突っ込んできた。
 力が足らぬなら力があるものに攻撃させる――それが華蘭の狙い。
 強烈な衝撃に跳ね飛ばされた大祓骸魂は、そのまま電車と共に線路の彼方へと消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キルシ・キュマライネン
最初から全壊で行きましょう!真の姿です!!

電波塔の上に居るなら好都合!溢れる神威で天変地異のプレゼントですわ!
地震はスカイツリーをさぞ揺らしましょう、本来逆に当たらないイカヅチの槍は良く電波塔に突き刺さるでしょう。下で宴会してる親父の皆さんは…。スルーですわ。そしてあなたのSNSは今絶賛大火事のハズですの。

スカイツリーの上を旋回させつつ魔法の火球とイカヅチの槍で相手の虞と殴り合いです。回避しても地形効果は発揮されないインテリジェンスメイド殺法なのですわー!


(アドリブ連携歓迎です)



●路線に微睡み、空の御殿へと
 電車に跳ね飛ばされた大祓骸魂の周囲の景色がぐるりと回り、本来のスカイツリーによく似た高さの風景が建物の窓の向こうに見える。
 だがその建物は塔ではなく、流行の終着点でもあるバズリトレンディ御殿。
 矢鱈と派手なその場所に少し驚いている風な大祓骸魂だが、その前に一匹のアザラシ――いや、アザラシの皮を被った女が飛び出してくる。
「最初から全壊で行きましょう!」
 この場に現れた彼女、キルシ・キュマライネン(海生押しかけメイドモドキ・f28170)は全開で全壊の大惨事を起こす気満々だ。
 ――セルキー、西洋の妖精或いは妖怪の一種。
 アザラシの姿で陸に上がるときにアザラシの皮を脱ぎ人型になるという妖怪の混血である彼女は真の姿を解放していて、更に行使するユーベルコードは彼女の身を単なるアザラシの域に留まらせない。
「アザラシはそして空へ……」
 身に纏うアザラシの皮のマントで全身を包み込んだキルシがユーベルコードを起動すれば、瞬間巨大な毛皮の壁が大祓骸魂の眼前に出現する。
 ――ゲイン塔の長さの半分を超える92メートルのスペース・アザラシへと、変身したのだ。
『――なんと大きな海豹、星辰の彼方よりいらしたのですか』
 愛しまsがと大祓骸魂は動じず、神知をも超える虞を巨獣に向けて放つ。
 だが、スペース・アザラシの速度は見た目以上に速い。宇宙の力で飛翔する巨体がゲイン塔の空間を縦横無尽に飛翔すれば、溢れ出す神威によって天変地異が生じ始める。
 ぐらり、とスカイツリーが揺れる。局地的な揺れはスカイツリー全体の構造で高い場所であればある程に増幅され、頂上のゲイン塔を塗り替える形で繋がっていた異空間が大きく揺さぶられた。
 同時に出現した雷雲は異空間とほぼ同じ高さに湧き出、空間全体に雷を降り注がせて大祓骸魂を撃つ。
 電波塔故に本来は当たらない筈の雷の槍もこれだけ雷雲が近ければ容赦なく突き刺さっている。
 更に地上では天変地異と上空に突如出現した巨大アザラシとを撮影する為に集まってきた人々がカメラを向け、SNSに投稿して喧々諤々の大炎上と大流行を引き起こせば、その横でこの世の終わりだとばかりに自棄になった中年男性方が宴会を繰り広げていた。
 天変地異、すなわち地震雷火事親父、コンプリート。
 最後の親父はスルーしつつバズり力を得たスペース・アザラシはスカイツリーの上空、雷雲の上から魔導カンテラを触媒にした火球とイカヅチの槍で大祓骸魂の放ったおぞましき虞を迎撃している。
 この場所なら回避したとしても地形を塗り潰し向こうに有利になる事はない、インテリジェンスメイド殺法の活用である。
 そして火球が虞を相殺し、同時にキルシが雷雲より雷槍を作り出して大祓骸魂へと放つ。
 地震により足元もおぼつかなくなっていた大祓骸魂はその槍を躱せず直撃を受ける。
 感電し纏う祝祭も損傷している大祓骸魂、それでも彼女はまだ立ち上がり、笑みを崩さない。
『まだ、私の愛は果たされておりませんので』
 そんな事を言葉にすれば、再び空間が揺らぎ、また異なる幽世の地形が異空間に形作られていく。

 ――なお、突如東京上空に出現した天変地異を招いたスペース・アザラシの噂は、暫くUDCエージェントを悩ませたとのこと。

成功 🔵​🔵​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
選択プレイングボーナス:⑫と㉔Highway Star

…これが、団地?
なぜここに…って考えるのはやめだ
今は何が現れてもおかしくない状態だからな

狭い団地の中でターボ移動するのは反則だ!
指定UC発動後「地形の利用、ダッシュ」+高速移動で必死に追いすがりつつ「視力、暗視、世界知識」で団地の構造を覚える
構造を覚えたら進路を妨げるように投擲用ナイフを「投擲」し
徐々に袋小路へ追い込もう

懐刀に貫かれれば俺も死にかねないが
それすら厭わぬ「覚悟」を胸に「オーラ防御、武器受け」で積極的に懐刀を叩き落とし
「咄嗟の一撃、切り込み」で踏み込んで一気に胸を切り裂く!
骸の海に還るのは…貴様だ!



●御殿より落ち、団地へ至りて
 そして、次に出現したのは次の猟兵達の目の前に出現した光景は薄暗い迷宮の如き団地。
 靴音を響かせ団地を駆ける館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は切り替わった景色を訝しみつつも、邪神の異空間なら何が起きてもおかしくないと思考を切り替える。
 今必要なのは究極妖怪、大いなる邪神を討つ為の思考だ。
 なのだが。
『今度は猟兵が 鬼ですか』
「ターボ移動は反則だ!」
 狭い道が連なり迷宮のようになった団地を恐ろしい速度でかっ飛んでいく大祓骸魂、
『愛に 反則はありませんよ』
 そんな事を言って複製した懐刀『生と死をつなぐもの』の群れを念力で操り後方から追い縋る敬輔へと放つ。
「喰らった魂を、力に替えて!」
 叫び、自身の黒剣がかつて喰らった魂を纏い移動速度を敬輔が強化。そして姿勢を低くしつつ速度を上げれば、彼を狙った懐刀の群は急激な加速に追いつけず空を切る。
 しかし大祓骸魂の方も加速、その動き難い衣装のどこからその速度を出せるのかと言いたくなるほどの速度で直角の曲がり角を駆け抜けていく。
 強化した上で速度に圧倒的な差がある。これでは普通に追いかけても追いつけない。寿命を削る代償もある分、敬輔が圧倒的に不利である。
 だが、ここは団地である。複雑に入り組んだ構造という要素は速度の差を埋めるには十分有効である。
 通路の向こうに見える分岐路に差し掛かった大祓骸魂の右肩に向け無骨な投擲用ナイフを投げつける。
 当然のように軽く躱されるがそれは狙い通り、ナイフの狙いと逆の左側へと大祓骸魂は曲がっていく。
 ここまでの追跡で周囲の地形は既に敬輔の頭に叩き込まれている。
 追いかけ分岐路を左に曲がり進めば、そこには止まった大祓骸魂。
 彼女の見ている先は三方壁に囲まれている、行き止まり。
 どんな速度も逃げ場がなければ効果は発揮できない。もし敬輔の横を突破しようとしても――その時は間合いに入った瞬間に斬る。
『窮地 ですね』
 にこりと微笑みながら、その懐刀を複製する大祓骸魂。 
 貫かれれば死へと導かれる恐るべき刃の群は、狭く後方以外に逃げ場のない敬輔へと放たれた。
 己の死から目を逸らし逃げ出したいという感情――これは黒剣に取り込まれた魂の感情の汚染か。
 だが、そんな感情などないかのように敬輔は一歩、また一歩踏み込み加速。
 闇に溶け込むような刃の群もしっかとその眼に捉え、身に纏うオーラで防ぎつつ黒剣を振るい叩き落し弾いていく。
「骸の海に還るのは……貴様だ!」
 ――覚悟なき所に勝機なし。
 致死の刃の群をその覚悟で正面から踏み込み斬り払い、そして黒剣の間合いに飛び込んだ騎士は驚いた表情の大祓骸魂の胸にその黒剣を一閃した。
 斬撃に伴う衝撃波が究極妖怪の体を弾き、その胸の深い傷からは鮮血が零れ落ちる。
『複雑な場所は やめましょうか』
 そんな言葉を究極妖怪が呟けば、暗い団地の風景が揺らぎ霧に包まれたようにぼやけてしまう。
 霧の晴れた後にはまた異なる景色が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィランサ・ロセウス
⑦ 👾月に狩り(Hunters' Moon)
はぁ…♥狂しいまでの貴女のその想い、素敵よ♥
だけど余所見しちゃ嫌。ちゃんと私の事を見て?

見渡す限りのススキ野こういう【地形の利用】して戦うのは得意分野よ♥
あれほどゾクゾクするオーラを出してたら、痕跡を探すのは難しくないはず
位置を特定したら【聞き耳】を立てて足音も探り、適当に刈り取ったススキを身に着けて【迷彩】代わりに。
【闇に紛れる】ように、【目立たない】ように【忍び足】で【追跡】
充分に距離を詰めたら【不意打ち】のUCを思いっきりぶつけて、壊(あい)してあげるね♥

貴女をこの世界には渡さないわ!だから私の心の中で永遠にしてあげるからね♥



●団地の向こうは芒の原
 先程までの窮屈さを感じる戦場とは真逆の芒野原が広がっていた。
 ぽつんと一人、この地に現れた大祓骸魂は骸魂を憑りつかせた妖怪達を猟兵達の攻撃に備えるように集める。
『私の愛はもう少しで届きます。それまでの僅かな猶予を』
 血塗れのかんばせをほころばせながらそんな結末を夢見る大祓骸魂を、芒に隠れ一人の猟兵が同じように愛に焦がれた表情で見つめていた。
(「はぁ……狂しいまでの貴女のその想い、素敵よ」)
 フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)。強化人間である彼女の精神は身体能力の強化の代償に損なわれている。
 彼女の感覚を動かすもの全ては好意の対象であり、だがその愛情表現は大祓骸魂とかなり似通ったものとなっている。
(「だけど余所見しちゃ嫌。ちゃんと私の事を見て?」)
 莫大な虞は遠目に見てもゾクゾクするもので、痕跡を辿る必要もない。
 流石に伏せさせた妖怪の居場所はその虞にかき消されてしまっているが、聞き耳を立てれば十分にわかる。
 ハンティングナイフで刈り取ったススキを身に付け愛情を示すためにフィランサは闇に紛れ大祓骸魂の元に向かっていく。
 音を消し、気配を隠し、虞を目印にストーキング――ならぬ追跡を愚直に行って、オブリビオン達に気づかれぬように大祓骸魂へと接近する。
 恋路は遠いもの、愛の道も然り。だが狂える愛はその距離と苦労すら気にしないのは大祓骸魂を見てもわかる通りだ。
 だからフィランサは十分な距離に気づかれずに接近する事ができた。逆奇襲をかけるのであるならここしかないという絶好のタイミング。
「私の想い、しっかり受け止めてね」
 ――愛を、捧いだ。
 人それぞれではある愛のカタチはフィランサにおいては鈍器の如く、完全に不意討ちのタイミングでそれを叩きつけられた大祓骸魂はまるで交通事故にあったかのよう。
 ススキもその一撃の叩き潰され衝撃波になぎ倒され、ぽっかり開いた中心に息も荒いフィランサと立ち上がった大祓骸魂だけがぽつんと居て。
「貴女をこの世界には渡さないわ! だから私の心の中で永遠にしてあげるからね」
『ええ ええ 愛を捧げて くれるのですね』
 嚙み合っているようで噛み合っていない強化人間の少女と大いなる邪神の一柱。
『だから私も愛を届かせたいのです 永遠に したいのです』
 完璧なタイミングで奇襲を受けた大祓骸魂は満身創痍だけれども、無傷の配下のオブリビオン達は襲撃者へと殺到する。
「……あなた達も好きよ!」
 愛を邪魔されたという怒りもフィランサは好意に変換してしまう――故に、その愛という名の暴力は周囲に集まってきたオブリビオンに向けられる。
 意志を統一された妖怪達が狂愛を受け食い止める中、大祓骸魂はいつの間にか姿を消していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
④:威風形態

愛は特に人を狂わせるなんて話も聞くが、それは妖怪もまた然りって事かな
とにかくその狂気で世界を殺すなど、許すわけにはいかない


加減できる相手ではないと神刀の封印を解放。神気によって、限界を越えて身体能力を強化
配下の妖怪達はあくまで骸魂によってオブリビオン化しただけ……であれば元より殺すつもりはない

妖怪達に刀を直接当てないように、肆の秘剣【黒衝閃】を使用。浄化の力を込めた衝撃波によって、彼らに取り憑く骸魂のみを祓う

妖怪達をある程度行動不能にしたなら大祓骸魂へと切り込む
まずは基本の剣術で、慎重に攻撃を受け流しながら機を伺い、隙を作って大きく跳躍。【黒衝閃】の刃による一撃を直接叩き込む



●芒の原を渡り、古きマヨヒガへ
 姿を消した大祓骸魂が次に現れたのはマヨヒガのそれによく似た景色。
 東方親分のマヨヒガによく似ているが、実際のその場所とは異なり通路や部屋に所狭しと屋台が並んでいる。
 店主や客としての妖怪――骸魂に憑かれたオブリビオンもいるようで、熱々の屋台料理や摘まみやすい料理が食欲を誘う香りを漂わせていた。
 この妖怪がどこから来たのか、そんな風に疑問を持つ居合わせた黒髪の猟兵を他所に、この場所の大祓骸魂を討ちに来た夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は大祓骸魂の事を考える。
(「愛は特に人を狂わせるなんて話も聞くが、それは妖怪もまた然りって事かな」)
 出会ってきた妖怪達には人間味があるものも多く、なら同じように狂気に陥る者がいてもおかしくないだろう。
「……とにかくその狂気で世界を殺すなど、許すわけにはいかない」
 そして鏡介は普段の無銘の鉄刀ではなく、神刀【無仭】へと手をかけ封印を解いた。
 加減などできる相手ではない。溢れ出す神気はその神刀が尋常のものではない為封印していなければならないものであると雄弁に示している。
 神気による身体能力の強化を感じながら、屋台の方はもう一人の猟兵に任せつつ鏡介はオブリビオンの群へと飛び込んでいく。
 神刀を振るう事はない。それは真に斬ると決めた大祓骸魂のみの為に振るうものだから。
 骸魂によりオブリビオン化しただけの妖怪を直に切ってしまうような事は、殺す事に繋がってしまう恐れもある。
「神刀解放。剛刃に依って地を穿つ――肆の秘剣【黒衝閃】」
 故に鏡介は足元の床に神刀を振り下ろし、その破壊の余波による衝撃波で周囲のオブリビオン達を吹き飛ばす。
 神刀の神気による浄化の力を纏った衝撃波は妖怪達に取り憑いた骸魂を祓い、元の姿に戻していく。
 その一撃で視界が拓け、血塗れの白無垢の少女の姿が見えた。
 あれが大祓骸魂と確信した鏡介は妖怪達が究極妖怪の元へ集う前に限界の速度で飛び込み、基本に忠実に斬りかかる。
『もう少し お待ちくださいませ』
 だが、その一撃は懐刀に防がれた。この細腕でどれほどの力を、と思いながら後退する鏡介に、大祓骸魂が周囲のオブリビオンに号令をかけ間を阻むよう立ちはだからせた。
 妖怪達の攻撃を受け流し機を伺う鏡介、あまり時間をかけても周囲からオブリビオンを呼ばれて数で押されてしまうだろう。
 しかし突然横合いから黒髪の女が妖怪達の軍団をすり抜け大祓骸魂の足元に飛び込み奇妙な金属の刃で斬りつける。
 その一撃に表情を歪め体勢を崩した大祓骸魂――オブリビオン達の統率が乱れた。
 今が好機、眼前のぬりかべオブリビオンを踏み台に鏡介はマヨヒガの天井近くまで跳躍。そして神刀を上段に構え、大祓骸魂に向けて真っすぐに切り下ろす。
 単純で重い、地を穿つ一刀は大祓骸魂でも防ぎきれず僅かに逸らす事が限界。
 左肩をほぼ両断される程に深々と切り裂かれ鮮血が飛沫く。
 そして地を割る一刀はそれに留まらず廊下を破壊し崩壊させ、下の階層へと猟兵達と大祓骸魂を落下させた。

成功 🔵​🔵​🔴​

忠海・雷火
PB:屋台グルメを食べまくる&親分と妖怪軍団の両方と戦い、誰も殺さないようにする


人格変更なし
妖怪軍団、今回は敵UCの軍団なのかしら
ともあれ、直接の攻撃は一度だけ。それで行きましょう

一先ず屋台の配置地形を利用、閉所で固まった軍団そのものを盾にし攻撃から逃げつつ、屋台から食べ物を攫い食事
最初は簡単に食べられる串物、妖怪達の動きが鈍ったら焼きそば等に着手
胃もたれ覚悟済み、痛もうが耐性で抑え込み大食い発揮
飲料は極力飲まない等の大食い知識も活用

余裕が出たら破魔の短刀を妖怪へ掠らせて骸魂のみ弱らせ
軍団が動けなくなった所で大祓骸魂に接近、足へ刀を振るいUC使用
継続ダメージこそ入るけれど、これで死ぬ事はないわ



●古きマヨヒガに屋台の香り
 一方。
「……この妖怪軍団はどこから呼んだのかしら」
 立ち並ぶ屋台と客? のような妖怪――骸魂に憑かれたオブリビオン達を見て忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)は首を傾げた。
 この景色にそっくりのマヨヒガでは東方親分に忠実な配下の東方妖怪達がいたはずだが、ここには西洋妖怪や新しい妖怪達もいるように見える。
 おそらくはこの大祓骸魂自身が骸魂を憑かせてこの異空間に引き込んだ妖怪達を集めているのだろう。
 狭いマヨヒガに集ったこれら全てを殺さず骸魂を祓い妖怪に戻し、大祓骸魂のみを討つ――何とも難しい話だ。
 できるとして、直接の攻撃を一度喰らわせる位だろう。
 そう決めた雷火はオブリビオンの群れに飛び込んでいった怪奇人間の青年とは別に行動を開始する。
 手近な屋台に飛び込んだ彼女、串カツ鳥串ねぎまに蒲焼の串を注文する。
 手早く焼き上がった鳥串をまず味わえば、炭火でいい具合に焼かれて皮はカリっと中はやわらかな極上の風味が口に広がる。
 さくさく焼き上がる屋台の串に舌鼓を打ちつつ、一区切りつけて次の屋台へと視線を巡らせる。
 狙いは串、とにかく手軽に食べられるもの。部屋と廊下に所狭しと立ち並ぶ屋台は大軍勢が動くには手狭。
 思うように動けないオブリビオンの群から上手く逃れつつ、雷火は次々に屋台の料理を味わいその胃袋を満たしていく。
 どうやらこの場所の屋台は元となった屋台グルメの妖怪と同様にもてなし衝動を増幅されているようで、屋台に入りきちんと食べているなら攻撃されない。
 食べれば食べる程に妖怪達にダメージが蓄積し、動きが鈍っていく。
 しかしまだまだ足りない。次は焼きそば等のややボリュームのあるものへと挑んでいく。
 胃もたれ上等、飲み物は極力避けるのが大食いのコツの一つだ。
 そんな雷火を小柄なカマイタチのオブリビオンが屋台の仲間で追ってきて、そしてその鎌で彼女を斬り裂かんとする。
 だが、鉄板の付喪神のような店主に掴まれ阻止されてそのまま席に座らされ、熱々のたこ焼きを口にねじ込まれた。
 そんな光景をキャベツ焼きの野菜とソースの甘みを味わいつつ雷火は見、そしてすぐに完食して次の屋台へと向かう。
 道中阻もうとする活きのいいオブリビオンには、破魔の力を宿せし銘なき短刀を掠らせ骸魂のみ浄化しつつ、通路の隅へと放り投げる。
 丁度その時、怪奇人間の青年の斬撃による衝撃波で、屋台の店主以外のオブリビオンが浄化されつつ吹き飛ばされて、ぽっかりと道が開いた。
 その先に見えるは大祓骸魂、十分食を堪能した雷火は部屋から部屋へ屋台の間を伝い、彼とは別の方向に回り込む。
 妖怪達の動きは最初に比べ明らかに鈍っている。店主のみならずこの場のオブリビオン全員に屋台グルメによるダメージが重なっているようだ。
 回り込んでいる間にオブリビオンの軍勢が青年の前に壁のように立ちはだかり、大祓骸魂の後方の守りが薄くなる。
 その機を見極めた雷火は蛇のように身を低くし、刀を抜きながら大祓骸魂へと飛び込んでいく。
 思わぬ奇襲に動揺するオブリビオンを次々にすり抜け大祓骸魂を間合いに捉えた雷火はユーベルコードを起動。
「喰まれる痛みに身を捩れ」
 白無垢の足を【骸刀『焔喰』】――帝竜の一体である垓王牙を幾度も斬り殺した事で変質した刃を振るい斬り裂き、赤熱する金属生命のUDCの破片を剥落させ傷口に残す。
 傷口より侵入したそれは大祓骸魂の体を高熱で焼きながら喰らい成長、痛みに大祓骸魂は一瞬怯む。
 その瞬間、妖怪達を足場に跳躍した怪奇人間の青年が真上からその全力で刀を振り下ろし、究極妖怪の左肩を斬り裂く。
 同時、その衝撃で廊下の床が崩れ周囲一帯が崩落。
 それに巻き込まれつつ、雷火は周囲に視線を遣って屋台や倒れた妖怪達が崩落に巻き込まれていない事を確認する。
 恐らくは一体たりとも妖怪は死ななかっただろう、その事に安堵しつつ重力に任せ落下していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルキヴァ・レイヴンビーク
ツンデレ…って奴デスかね
愛するが故に殺したくなるメンタル、理解はしマス
ワタシも好きなモノ程、壊したいし殺したい
しかし、ユーのラブは巻き添えが多すぎて頂けない

征きナサイ、我が眷属達
喚び出した鴉達で向こうの放つ刀に対抗
出来る限り嘴で捕獲し、蹴爪で掴めれば
自分に来る分は対の片鎌槍にて防ぎ
合間見て眷属と共に斬りかかりマス

そろそろ頃合いデスかね
気が付いてマス? 地面に刺さった刀の描くモノに
五芒星…魔除けのおまじない
ワタシが使えば結界術デスがね

真の姿たる巨大鴉に変化
私は忘れられる事を恐れ、人々の記憶に己を刻みつけてきました
愛したいなら愛される努力もすべきでしたね

最後の襲撃を
Nevermore――悲しき方よ



●迷い落ちて、畳の広間
 崩落した通路の下には畳の広間が広がっていた。
 家主が来客を出迎える為にあるような、閉じた障子に囲まれたその間に落ちてきたのは大祓骸魂のみ。
 動ける妖怪達に猟兵達を押しやらせ、血みどろの邪神は一息を――、
 その時、障子を開く音が響く。
 部屋に現れた妖魔の名はルキヴァ・レイヴンビーク(宵鳴の瑪瑙・f29939)。
 一対の片鎌槍を両手に持つワタリガラスの妖魔を睨む大祓骸魂の目に、諦念はない。
『愛しましょう 永遠にしましょう 殺す事が 私の愛なのですから』
「ツンデレ……って奴デスかね」
 好意を抱いた相手に厳しく当たり、時には傷つけてしまうという概念をルキヴァは思い出すが、きっとそれは別物だと思われる。
 "ツ"だか"ヤ"だかはともかく、何にせよこの大祓骸魂の所業はUDCアースへの愛から成り立っているのは間違いないだろう。
「……理解はしマス。ワタシも好きなモノ程、壊したいし殺したい」
 ――愛するが故に殺したくなるというメンタルは、ルキヴァも理解はできる。
(「しかし」)
 その根幹にある理由はルキヴァと大祓骸魂とでは同じとは限らない。
 例えば、在るから移ろい好きから変わってしまうのなら、壊して殺して終わらせてしまうだとか。
 或いは、壊して殺せば相手に自分を永遠に終わらせたものとして刻み込めるだとか。
 そのような違いがあると考えた上で、ルキヴァが大祓骸魂の行動を止める理由を告げる。
「ユーのラブは巻き添えが多すぎて頂けない」
『そうですか けれど 私の愛は止まりません』
 だから止める。両手の片鎌槍を構えるルキヴァに、大祓骸魂はその愛を遂げる為の懐刀を数百複製して念力で周囲に舞わせ。
「我が眷属達、力を貸して下サイ」
 そして究極妖怪に対抗するよう妖魔がユーベルコードを起動すれば。85羽のワタリガラスの群が召喚される。
「征きナサイ、我が眷属達」
 そして宙舞う刀と黒き凶鳥が激突する。
 嘴に阻まれ蹴爪で畳に抑え込まれていく懐刀の群、だが地力から数は圧倒的に懐刀が上。黒羽の隙間を縫ってその召喚主たるルキヴァへと刃は飛来する。
 それらを器用に片鎌槍の刃で受け止め流しつつ、切り込んでいくが大祓骸魂は表情を変えずに懐刀を戻し突破を許さない。
 畳の上を飛び回りつつ懐刀の群を躱して弾きながら、ルキヴァは大祓骸魂の様子を観察すれば、戦いが始まって一歩も動いていない事に気づく。
 恐らくは足の負傷が原因なのだろうと推測しつつ、動いていないかららこそここまで順調に下準備ができたのかとも思い。
「――気が付いてマス? 地面に刺さった刀の描くモノに」
 ルキヴァの言葉に初めて大祓骸魂の表情が変わり、周囲の畳を見回す。
 ワタリガラスに地面に抑え込まれ突き立てられた懐刀、それらを結ぶと正確な五芒星が描かれていたのだ。
 それは現代でも魔除けに使われるおまじない――ルキヴァが使うのなら結界術か。
 ワタリガラスを介し魔力を流せば、五芒星の結界が展開され、懐刀を操る念力が失われ畳へとばらばらと墜落していく。
「愛したいなら愛される努力もすべきでしたね」
 忘れられることを恐れ、行く先々で主人を得ながら人々の記憶に彼自身を刻み付けてきたルキヴァ。
 彼はその真の姿たる巨大なワタリガラスの姿を晒し、一方的な愛を向け続けるだけの大いなる邪神を見据え、黒き羽を羽ばたかせ眷属と共に一斉に襲い掛かる。
 嘴と鋭き爪の群が白き肌を裂き、白無垢を朱色に染め上げる。
「Nevermore――悲しき方よ」
 ルキヴァの憐みの言葉は囁くように空気を振るわせ――それでも、まだ邪神は滅びない。
『まだ まだです もう少しで 諦めるなんて』
 できない、と。
 途端、畳の間の風景が歪み何かに弾かれる感覚を巨大なワタリガラスの妖魔が感じて。
 そして景色が戻った時には夥しい血を畳に散らしながら、大祓骸魂の姿は忽然と消え失せていたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

空亡・劔
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!

真の姿を晒す
赤き太陽を背にした姿

神殺しの魔王発現
この力の高まり…あんたはやはり脅威なのね
ならば…あんたを止めるのがきっとあたしの在り方
対百鬼夜行
【天候操作】で猛吹雪を引き起こし視界も悪くして集まりを妨害
【結界術】で己と大祓骸魂の周囲に結界を張り他の妖怪を近づけさせず

超高速で飛び回
【戦闘知識】でその動きを【見切り】
【残像】を残して回避
避けきれない時は【念動力】による障壁で致命を避
【属性攻撃】で氷属性を武器に付与しつつ氷弾で【弾幕】を展開し動きを封鎖

二刀による【2回攻撃】による【切断】!

撃破後
【天候操作】で太陽を昇らせる
百鬼夜行の終焉よ


久遠寺・遥翔
【真の姿で戦う】
この世界は俺の愛する人が暮らす世界だ
身勝手な愛で永遠になんてさせるものか

イグニシオンに【騎乗】
真の姿となりUCを起動
装甲を犠牲に攻撃特化の形態をとる

【戦闘知識】による予測を【視力】による観測と【第六感】で補正した心眼で敵軍の動きを【見切り】
【残像】を織り交ぜて回避
避けきれない部分は【オーラ防御】を【結界術】でコーティングした多重防御壁で受け薄い装甲を補いつつ
被ダメージは結界で受けた敵の攻撃から【生命力吸収】で回復

【空中戦】で碧き劫焔を纏った両掌による【斬撃波】【範囲攻撃】でその統率を乱つつ骸魂だけを【焼却】していくぜ

数が減り弱体化したら本体を焔の太刀で断ち切る
さよならだ



●黒羽に追われ、封印の洞へ
 景色がぐるぐると変わっていく。
 塔のような光景、橋のような光景に桜咲く景色――カクリヨファンタズムの光景を次々に映しながら、最後に拓けた地に風景が固定される。
 竜神親分の封印されていた最弱封印の洞によく似たこの場所は拓けていて、そして寂しい場所。
 オブリビオン達を呼び寄せた大祓骸魂の前に、二人の猟兵が現れる。
「この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!」
 現れた一人、空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)が大祓骸魂に二振りの刃を向ける。
 その姿は既に真の姿、彼女自身の姿は普段とほぼ変わりはないが、血のように赤い太陽を後光のように背負っている。
 湧き上がる力は相応、この大いなる邪神の死に水を取るには十分な程。
 そしてもう一人、バイクに乗りエンジン音を吹かせているのは久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)。
「……この世界は俺の愛する人が暮らす世界だ。身勝手な愛で永遠になんてさせるものか」
 そして彼も真の姿――白銀の騎士の如きその姿を晒しながらユーベルコードを起動する。
 異界の技術で作られたフェンリルという名のバイク型アームドフォート、それをオーバーフレームとする形で再設計したクロムキャバリアの装甲をパージし、黒焔の神剣に宿りし骸魂から引き出した黒焔を纏わせた攻撃特化形態【イグニスモード】。
 そんな彼に続き剱もユーベルコードを起動。
「我が身、我が存在……今こそ、その意義を果たす時! 我が名は空亡剱! 世界の脅威を滅ぼす者なり!!」
 熱のない――凍てつくような赤き太陽の如き輝きでその身を覆い、敵対者の特定の性質に比例した戦闘能力の強化を図る。
「この力の高まり……あんたはやはり脅威なのね」
 その特定の性質とは人類や世界を滅ぼす危険度、この大祓骸魂の性質を考えれば最大限に強化されてもおかしくはない。
 その可能性は考えていたが、実際に強化されてみると如何に恐るべき存在であり、止めねばならぬ存在であるかを実感してしまう。
「ならば……あんたを止めるのがきっとあたしの在り方」
『止まりません 永遠にして 愛を果たすのです』
 剱の言葉に大祓骸魂は返し、懐刀を猟兵達に向け妖怪達に号令をかける。
 それと同時、二人の猟兵は行動を開始した。
 剱は飛翔し天候を操作、周囲一帯に雪がちらつき直後猛吹雪へと移り変われば、黒焔を纏った白銀のクロムキャバリアは妖怪軍団に切り込んでいく。
 吸血鬼が蝙蝠を舞わせ、グールがキャバリアに食らいついてくるが、遥翔はそれらの動きを予測と優れた感覚で読み切り回避。
 その手の漆黒の機神太刀で飛来する水球や弓矢を弾きつつ遥翔は地上を駆け回り陣形を乱していく。
 視界の悪い吹雪の中、その巨体が目立ち攻撃を集中させられているにも拘わらず、巨体のキャバリアは残像を貫かれるのみで本体は無傷のままに攪乱していく。
 一方の剱は空より敵軍の様子を観察していた。
 この意思統一された大群を視界の拓けたこの場所で捌き切るのはいかに強化され高速で飛行できる状態であっても不可能に近い。
 まずは分断する為に彼女は吹雪の中、高速で飛び回り攪乱にかかる。
 火車の火炎とヤマミサキの風が吹雪を突っ切り剱を貫くもそれは残像、悪化した視界では高速で飛行する彼女を捉えるのは困難だ。
 ならばと、狐の妖怪が上空広範囲に瘴気を放ってくる。それを念動力による障壁で弾きつつ高速で突っ切る事でダメージを最小に抑え込む。
 向かう先は大祓骸魂本体、だがまだ守りは固いようで恐ろしい数の弾幕が地上から彼女に向けて放たれていて攻め込むには少々手間取りそうだ。
 地上で攻撃を躱しながら攪乱するキャバリア、一瞬方向転換の為速度を緩めた瞬間に地を這うように大蛇が絡みつき足を取った。
 抵抗で動きの鈍ったその瞬間に妖怪達の総攻撃がキャバリアに向けられる。
 攻撃特化のイグニスモードは守りに回ると酷く脆い、その欠点を熟知している遥翔は即座にオーラ防御の上から結界術でコーティングした多重防御壁で周囲を囲み攻撃を凌ぐ。
 そして空へと飛翔、絡みついたままの大蛇から生命力を奪い力を弱めた隙をついて振りほどき、その両掌に碧き焔を纏わせる。
 裂帛の気合と共に地上のオブリビオン達に向けて斬撃波として放つ。
 統率されているからこそ、広範囲の攻撃で狙うのはとても容易い。碧き劫焔は妖怪達に憑いた骸魂のみを焼却し、元の妖怪の姿へと戻していく。
 そして炎に焼かれた妖怪の間、大祓骸魂の姿が見える。
 隙を見逃さず、黒焔纏いし白銀のキャバリアは空より大祓骸魂へ突っ込んでいく。
 迎撃する為の妖怪の弾幕だが、それは飛来した氷弾の弾幕に相殺される。
 剱が上空より武器に纏わせた氷の如きオーラを弾丸として射出したそれの援護を受け、キャバリアが黒焔纏わせた機神太刀を大祓骸魂に叩きつけるが、懐刀にその刃を阻まれる。
 だが、その斬撃の余波で生じた衝撃波が妖怪達を吹き飛ばすと、ぽっかりと空いたスペースに大祓骸魂と遥翔、そして飛び込んできた剱の三者のみが残った状況が作られる。
 妖怪達が大祓骸魂の救助に飛び込もうとするが、障壁に弾かれる。
 それは剱が展開した分断の為の結界。この数の攻撃を抑え続けるのは困難だろうが、今この一時を防げれば十分。
 飛び込んできた勢いで剱が双刀を振るう。それは四度大祓骸魂を切り裂き大祓骸魂は懐刀を取り落とす。
 そして黒焔の機神太刀が振るわれ、
「さよならだ」
 大祓骸魂の体はキャバリアが太刀に両断された。
「――百鬼夜行の終焉よ」
 ぱちん、と刀を納める音と共に周囲のオブリビオン達から骸魂が抜けていく――。

●夢の終わり
 忘れられた大いなる邪神の妄執に等しき愛は果たされず、こうして世界は守られた。
 多くの猟兵、そして妖怪達が戦いを終えて各々疲れを癒していく。誰一人死なず、己が身を犠牲にしようとした親分達すら守り抜いた完全勝利を味わいながら。
 長きに渡る大祓百鬼夜行はここに終わりを告げ、その事を示すかのように太陽が昇りゆき、守られた二つの世界をやわらかに照らし出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月05日


挿絵イラスト