11
大祓百鬼夜行㉕〜その愛分かつこと能わず

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●愛
 それを愛と呼ぶにはあまりにも巨大だった。
 それを愛と呼ぶにはあまりにも独りよがりだった。
 それを愛と呼ぶにはあまりにも悲しかった。

 究極妖怪『大祓骸魂』は、かつて在りしUDCアースの大いなる邪神でもある存在であった。彼女の中にあるのはUDCアースに対する絶対なる『愛』であった。
 他者にとって、それは『愛』と呼ぶにふさわしいものではなかったことだろう。欺瞞であるし、独善であると謗る者だっているだろう。
「けれど、私の愛は揺るがない」

 もしも、この世に絶対があるというのならば、己の愛こそが絶対である。
 他に何も絶対はない。
「だから、私は帰ってきたのです」
 手にした懐刀『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』は鈍らであったけれど、時間をかければ誰でも何でも殺すことができる。
 それをもってUDCアースを殺す。
 彼女の愛は世界すら殺してみせるのだ。

「殺したものは過去となり、骸の海で永遠となる」
 ああ、と高鳴る胸はいつだって変わらない。
 あの日から、ずっと変わらないのだ。
 不変は己と共にある。愛という不変。変わることのない、変化のない今日という日を永遠に。

「愛するUDCアース。あなたを永遠にしたい。あとひと刺しで、それが叶います」
『大祓骸魂』の瞳が赤く輝く。
 輝きはユーベルコードの輝き。愛に輝き、愛のために灯され、愛のために消えゆく光。
 東京スカイツリー、最上部に設置された、アンテナを収容した巨大構造物『ゲイン塔』の上で彼女の手が天に向かって掲げられる。

「猟兵たちよ。止められますか」
 静かな言葉であり、宣誓でもあった。
 己の愛を、その強度を誇るように彼女は東京の空をカクリヨファンタズムが如き空間に変化させていく。
「電波塔の頂上であなたたちを待っています」
 無用の長物が重なり合った玩具のレースコース、ゲーミングカラーに輝く竹林、無限に続く踏切。
 忘れ去られたものの終着駅、死した想い人が現れる橋、連ね鳥居が繋ぐ道。
 それらが全て具現化し、電波塔の頂上を目指す猟兵たちを阻むだろう。

「電波塔の頂上であなたたちを待っています」
 己の愛が変わらぬことを。絶対であることを。
 証明するために、そして己の愛を絶対不変に変えるために彼女は『生と死を繋ぐもの』を振るうのだった――。

●大祓百鬼夜行・終
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。大祓骸魂との最終決戦……その道程は決して楽なものではありませんでした。皆さんの決意と妖怪の皆さんの覚悟があったからこそ、拓かられたみちでありましょう」
 ナイアルテの瞳は静かに物語っていた。
 これまで猟兵たちが戦ってきた戦場はどれもこれも一筋縄で行くものばかりではなかった。
 どこか懐かしい雰囲気のある戦場ばかりであったことだろうし、四人の親分たちとの戦いは、己の真なる姿をさらけ出さねばならなかった。

「その総決算ともいうべき戦いなのです」
 そう、東京スカイツリーの上空は今や『カクリヨファンタズムが如き空間』へと変貌している。
 究極妖怪『大祓骸魂』は『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』を持って、UDCアースそのものを殺そうとしている。

「スカイツリーの電波塔の最上部に設置された『ゲイン塔』へと至る道は容易ではありません。これまで皆さんが『大祓百鬼夜行』で経験してきたあらゆる障害が発生していますし、何よりも東方親分『山本五郎左衛門』さんをして言わしめた『バケモン』である『大祓骸魂』の放つ『虞』は、親分さんたち以上です」
 猟兵達はこれまで己たちが戦場で体得してきた全ての戦術や工夫、そして真の姿までも全てを活用して戦わなければならない。

 究極妖怪『大祓骸魂』とはそういう敵なのだ。

「困難なのは承知の上で申し上げます。『大祓骸魂』は救うことのできぬ存在です。これを打倒することでしか二つの世界、そして妖怪の皆さんを救うことはできないでしょう。そして、私は――祈ることしかできません」
 ナイアルテができるのは予知までである。
 彼女が戦いに赴くことはない。それは、どうしようもないことである。転移を維持し続けなければならない。
 だからこそ、彼女の瞳は言うのだ。
 妖怪たちの覚悟が猟兵たちを走らせたように。
 彼女の想いもまた託すものである。

「どうかご無事で。私は皆さんならばといつも思っています」
 だから、今回もどうかと願わずにはいられない。
 静かに頭を下げ、ナイアルテは大祓骸魂との最終決戦に赴く猟兵たちを見送るのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『大祓百鬼夜行』の戦争シナリオとなります。

『大祓骸魂』との最終決戦となるシナリオになっております。
 皆さんが目指すのは東京スカイツリーの最上部である『ゲイン塔』の頂上です。
 空には『カクリヨファンタズムが如き空間』が広がっており、これまで『大祓百鬼夜行』で皆さんが経験してきたであろう様々な戦場が障害となって道を塞ぐでしょう。
 ですが、皆さんはもうすでに数多の戦場を経験し、これを乗り越えてきた方々です。
『あらゆる手段』を行使し、『大祓骸魂』を打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)

 それでは、『大祓骸魂』との最終決戦。これまでの戦いの総決算となる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
273




第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月夜・玲
究極妖怪『大祓骸魂』…凄く興味深いね
妖怪でありその思想は邪神にも近い
頂を…神造りを目指す身としては、多くのデータを収集させて貰いたいね
それにその歪な愛、君も救いなんて求めてないでしょ?
なら、私の糧になってよ


EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
更に『天候操作』で追い風を発生させてターボ移動で駆ける!
騎乗したまま真の姿顕現
外装の腕に《RE》Incarnationと空の記憶を抜刀
バイクの前面に『オーラ防御』でシールドを貼りながら妖怪達を轢き逃げアタック!
そして【Code:T.S】起動
最大サイズで雷刃形成
ドリフトしながら外装の両剣で大祓骸魂諸共『なぎ払い』切り裂く!

暴走バイクは止められないぜー!



 東京スカイツリーの上空、その最上部に存在する『ゲイン塔』の頂きに究極妖怪『大祓骸魂』は座す。
 手にしたなまくら刀。
 名を『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』という。彼女にとって、愛とは不変なるものである。
 UDCアースを愛するがゆえに永遠にしたい。
「永遠にするのあらば、私はつなぎましょう。生と死が何もをも分かつというのなら、私は『生と死をつなぐもの』となりましょう」
 殺せば過去に成る。
 過去に成れば、骸の海へと行き着く。
 世界そのものを骸の海に沈め、彼女は彼女の愛をささやく。

「ああ、あともうひとふり。あとひとふりで私の愛は成就する」
『大祓骸魂』の周囲に集まった骸魂たちが百鬼夜行のごとく群がる。まるで百鬼夜行の主の悲願を叶えさせようとするように、猟兵たちの道を阻むのだ。
 しかし、その骸魂の群れを引き裂くようにして駆け抜ける雷光があった。
「――ああ、猟兵。猟兵が来た。世界の悲鳴を聞き届ける者。私の敵」
『大祓骸魂』は知っていた。
 わかっていたのだ。世界を殺そうとするのならば、必ず訪れる存在。生命の埒外にある者たち。

「究極妖怪『大祓骸魂』……凄く興味深いね」
 彼女は大いなる邪神である。
 ならばこそ、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は探求者としての性が湧き上がるのを感じていただろう。
 炎と雷。
 彼女が擬似的に再現し得た邪神の力。UDCを限定的に再現した模造神器は、彼女の研究成果の一つであった。
「妖怪であり、その思想は邪神に近い。頂きを……」
 そう、神造りを目指す彼女にとって、『大祓骸魂 は膨大なデータの塊であったと言ってもいいだろう。

「それでもあなたは叶わない。私の愛の前にいかなる願いも劣るだから」
 骸魂たちが玲へと迫る。
 凄まじい速度で飛び交う骸魂を躱すことは、あまりにも困難であったことだろう。
 けれど、彼女はこれまで戦ってきた経験がある。
 模造神器の運用補助ように開発された特殊バイクを駆り、玲は雷光の如く頂きを目指す。
 彼女の瞳に映る『大祓骸魂』は歪んで見えた。

「けれど、それでも興味深い存在だよね!」
 四振りの模造神器が抜き払われる。外装のアームデバイスと彼女の両手に蒼き光が灯る刀身が握られる。
 それこそが彼女の真なる姿であったことだろう。
 限定的とは言え、邪神の力を顕現させた力。遠き空に思いを馳せる再誕の詩が奏でられる。
 オーラを纏った特殊バイクと共に玲は『ゲイン塔』を駆け上がる。

 無数の骸魂など気に留めた様子もなく、弾き飛ばし、一直線に『大祓骸魂』へと迫るのだ。
「その歪な愛、君も救いなんて求めてないでしょ?」
「ええ。私は私の愛を完遂するためにいる。あとひとふりで。たった一振りで私の愛は不滅に成る。永遠に成る。それを喜ばしいことだと思わない者がいること事態が悲しいことなのです。
 微笑む姿はどこまでもいびつであった。

 これが邪神。
 玲にとって、それは虞でも畏怖でも哀切でもなかった。
 ただの興味だった。
「そこに救いなんていらないのです」
「なら、私の糧になってよ」
 駆け上がる玲の身体が『ゲイン塔』を遥かに越えて飛び上がる。
 手にした模造神器の刀身に浮かび上がるユーベルコードの銘はCode:T.S(コード・サンダーソード)。
「出力上昇、雷刃形成」
 極大にまで出力された雷刃が『カクリヨファンタズムが如き空間』となった空を引き裂く。

 凄まじい出力であった。
「暴走バイクは止められないぜ――!」
 二振りの模造神器が膨大なるユーベルコードの輝きを解き放ちながら、『大祓骸魂』ごと無数の骸魂たちを切り裂く。
 ドリフトのように後輪を滑らせながら、一瞬の旋回で切り裂き落とした骸魂の数は数百を数えるだろう。
 明滅し霧散していく骸魂たちと共に振り下ろされんとしていた『生と死を繋ぐもの』の一撃を玲は阻止する。

「救いのない愛なんていらないよ。世界にもね――!」
 外装のアームが束ねた二振りの模造神器が生み出す極大の雷刃は、さらに巨大な刀身へと姿を変え、一刀の元に『大祓骸魂』ごと、スカイツリーに雷鳴の一撃を轟かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴久名・紡
止めてみせる、必ず

それが敢えてあんたの軍門に下った彼らの……
その心意気に応える事だから

最後はこの姿で相手をしよう
UDCアースを護る為に邪神と戦い
これを滅するのは俺の血の半分の宿命だから

竜神形態の真の姿を開放
煉獄焔戯使用
槍状に変化させた神力を大祓骸魂に穿つ事で先制攻撃
同時に妖怪達が近づくのを阻止するため
天候操作で風雪を呼んでなぎ払い
念動力も使い確実に近付けさせない

敵の攻撃は見切りと空中機動で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
負傷は激痛耐性で耐え
以降の攻撃には生命力吸収を乗せていく

あんたが愛しているのはUDCアース(世界)じゃない
そんな自分が愛おしいだけだよ、大祓骸魂

だからもう、還って休みなよ



 極大なる稲妻のような斬撃の一撃がスカイツリーを真っ二つに両断するように放たれ、究極妖怪『大祓骸魂』の身体を引き裂かんとする。
 されど、『大祓骸魂』はたおやかに微笑んでいた。
 どれだけユーベルコードの一撃が彼女の身体を焼いたのだとしても、彼女は微笑み続ける。
「だって、私は私の愛を完成させるのだから。私の愛はUDCアースを必ずころす。『生と死を繋ぐもの』によって、必ず骸の海へと沈めてみせる。それが私の愛、私の不変、私の不滅、その愛を持って私はUDCアースを愛するのです」
 骸魂たちが周囲に群がる。
 その数は数百数千では言い表せないほどの数であったが、それでも鈴久名・紡(境界・f27962)は顔を見上げる。

 そう、巡り紡ぐ縁の果てにヒトがあるならば。
 己が戦わなければならないのだ。
「止めてみせる、必ず。それが敢えてあんたの軍門に下った彼等の……その個々小呂行きに応える事だから」
 紡の姿が竜神としての姿へと変貌していく。
 蒼き鱗。巨大なる体躯。それは彼の血の半分の宿命を伝えるものであったことだろう。

 この『大祓百鬼夜行』という大きな戦い。
 その最終決戦に彼は己の姿を曝け出して戦うのだ。真の姿。それがいかなることを意味するのか猟兵は理解しているだろう。
 窮地である。
 今まさに究極妖怪『大祓骸魂』の放つ『虞』は凄まじいものであった。
 四人の親分達の放つ『虞』を束ねてもなお、ありあまるほどの『虞』。だが、紡は恐れない。
 託されたものがあるからだ。
『虞知らず』とは良く言ったものである。

「欠片も残さず、灰燼に帰せ」
 彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 煉獄焔戯(レンゴクエンギ)。それは槍状に変化させた神力を解き放ち、まるで矢のように放った一撃であった。
『大祓骸魂』の先制を取り、放たれた槍は群がる骸魂たちを穿ちながら『大祓骸魂』へと突き進む。

「それでも私の愛には届かない」
 振るわれた『生と死を繋ぐもの』で神力の槍の一撃が振り払われる。しかし、紡はそれでも飛翔を止めない。
 ここで自分の足がとまったのならば、妖怪たちの覚悟が無駄になってしまう。それはどうしたってあってはならないことだ。
「あんたが愛しているのはUDCアースじゃない」
「なにを。私の愛は変わらない。あなたたちに謗られることはあれど、否定されるいわれなど無いのですよ」
 それは『大祓骸魂』の持つ価値観の一つでしか無かったことだろう。

 けれど、紡は知っている。
 妖怪たちが何故、決死の覚悟で二つの世界を守ろうとしたのか。
「愛を知っているという自分が愛おしいだけだよ、『大祓骸魂』」
 それは自己愛と言っても良いものであったことだろう。骸魂の群れをオーラで防ぎ、耐え忍びながら紡は竜神として空を駆け抜ける。
 煉獄の如き炎がUDCアースの空を煌々と照らし出す。
 無数の骸魂に邪魔をされながらも、それでも『大祓骸魂』へと迫るのだ。渾身の神力が巨大な槍へと姿を変えていく。

 漲る力は真の姿を晒したからではない。
 そう、彼の背中を押しているのは、これまで戦ってきた妖怪たちの覚悟である。彼等の覚悟が彼の背中を押し、痛みを、苦しみを、あらゆる艱難辛苦を克服させるのだ。
 彼がこれまで紡いできた縁が彼の神力をみなぎらせる。
「愛おしいと願うのならば、見送ることも、過ぎ去っていくことも必要なんだ。それが愛というんだ。変わらぬことが全てじゃあない」
 だから、もう。

 紡ぐの飛翔した身体が『大祓骸魂』を越える。
 神力漲る槍の一撃が振り下ろされる。炎が渦巻、解き放たれ、愛と呼んだ『大祓骸魂』の持つ不浄を清めるように紡ぐの一撃はその体を焼き払う。
「だからもう、還って休みなよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
最高級のヤンデレだね。気持ちはとってもよく解っちゃうから困るね。

だからあなたの愛が不変であることを否定はしないよ。
むしろ今でも絶対不変なんじゃないかな。

だけどUDCアースはあなただけのものではないんだよ。残念だけど。
わたしも、UDCに住むみんなも好きなんだよ。

だからわたしはあなたを止めるよ。
『御札射出装置』と『結界装置』を使ってね!

装置ならなにかしらの機械。それならパワーアップさせてもらおう。
連射速度と威力を極限まで高めて最上階を目指すね

最上階に着いたら……。
「愛は尊いものだと思うから、できれば叶えてあげたいけれど……」
『他の全てを犠牲にする愛』は真実が過ぎると思うから、今は倒させてもらうね。



 雷と炎が究極妖怪『大祓骸魂』の身体を引き裂き、焼き尽くさんと渦を巻く。
 しかし、手にした懐刀『生と死を繋ぐもの』の刃が、それらすらも引き裂くのだ。
 爛々と輝く赤い光。
 それは『大祓骸魂』の放つ『虞』でありユーベルコードの輝きであった。
「私の愛は変わることはないのです。私が私である以上、私の愛は変わらずUDCアースに。ああ、愛しているからこそ変わらないのです。不変なのです。不滅なのです。永遠を求めることのは、愛の宿命なのです」
 変わらず愛の頂きが続くことを望む。
 それは別段おかしいことではなかったことだろう。

 けれど。
 それでも愛が世界を滅ぼすというのならば、世界の悲鳴を聞き届ける者たちが来る。
 それをオブリビオンは猟兵と呼ぶ。
「最強級のヤンデレだね。気持ちはとってもよく解っちゃうから困るね」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、スカイツリーの最上部『ゲイン塔』に座す『大祓骸魂』を見上げてつぶやく。
 彼女にとって、それは理解できることであったからだ。
「あなたの愛が不変であることを否定しないよ」
 そう、誰もが持つ愛。
 それは変わることがないというのならば、否定することはできない。変えることはできたといしても、その胸に抱く愛は尽きることはないのだ。

「むしろ今でも絶対不変なんじゃないかな?」
「ええ、変わりません。私の愛は変わらないのです。だからUDCアースも変わってはいけないのです。私の愛が不変であるのならば、UDCアースも変わってはいけないのです」
 懐刀が宙に浮かぶ。
 輝く赤きユーベルコードの輝きと共に分裂し、空を埋め尽くす『生と死を繋ぐもの』。
 圧倒的な物量が理緒の目の前に展開される。
 凄まじい力。『虞』。
 けれど、理緒はひるまない。だって、これまで数多の戦いをくぐり抜けてきた経験が未だ彼女の心と記憶に残っている。

「だけどUDCアースはあなただけのものではないんだよ。残念だけど。わたしも、UDCアースに住むみんなも好きなんだよ」
 だからあなたを止めるよ、と理緒が手を掲げる。
 彼女の背後にあったのは百霊鎮守塔に存在していた『御札射出装置』と『結界装置』であった。
 彼女のユーベルコードが輝く。

 それは、モーター・プリパラタ。
 霊的防衛装置であれど、なんらかの機械であるのならば、理緒のユーベルコードこそが、それらの機能を整え、強化していく。
 空に浮かぶ圧倒的な物量の懐刀が雨のように降り注ぐが、理緒の手によって整備された『御札射出装置』から放たれる御札が次々と激突し、スカイツリーの空に閃光を迸らせる。
 極限まで高められた連射速度は圧倒的な物量にすら勝ち得るのだ。
 理緒は疾走る。
 頂きに未だ座す『大祓骸魂』を目指して。

 苦しいと思うことはある。
 なんでこんなことをしているのだろうとさえ思う。肺が爆発しそうなほどである。けれど、それでも前に疾走るのは何故か。
「愛は尊いものだとおもうから、できれば叶えてあげたいけれど……」
 それは『大祓骸魂』の抱える愛に対する解答であった。

 愛に生きて、愛に死ぬ。
 その生と死さえも超越したいと願う『大祓骸魂』の思いは誰にも否定できない。結界装置が結界を張り巡らせ、降り注ぐ懐刀の雨を防ぐ。
 理緒は真正面から『大祓骸魂』を見据えるのだ。
「ならば、何故不変たる愛を否定するのです? 私は私の愛を完遂したいだけ。数多ある世界の中の一つを私の愛で殺すことなど、かまわないでしょう?」
 そっとしておいてください、と今でも微笑む『大祓骸魂』に理緒は叫ぶ。

「『他のすべてを犠牲にする愛』は真実が過ぎると思うから」
 そう、たとえそれが真実であり、たった一つの愛であるのだとしても。
 それでも今、悲鳴を上げているのは世界そのものだ。猟兵である理緒の耳には今も聞こえている。
 世界がきしみ、そこに生きる人々の願いと叫びが、今も理緒を突き動かすのだ。
「今は倒させてもらうね。せめて、あなたの愛が間違っていない、それだけがきっとあなた自身の慰めになるだろうから――」

 手にした『御札射出装置』から放たれた御札がスカイツリーの頂上で光を明滅させる。
 空に浮かんだ懐刀の全てが撃ち落とされ、閃光が生まれては消えてを繰り返していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
⑤ 【Dragon Scale】の状況を利用

大祓骸魂よ。遂に汝の姿は我らにも捉えられるようになった
故に、ここで終いだ
我らが全力を持って討ち果さん!

連ね鳥居の中では
その大祓百鬼夜行が仇となる
狭い鳥居の道にそんなに居ては、まともに動けぬだろう?
そしてこの場では、強力に過ぎる汝にも弱点が出来る
後はそこを撃ち抜くだけだ!

天之浄魔弓(武器)より『清浄の矢』を放つ!
物理的な防御は無意味
誘導弾とスナイパーの技能も駆使し
敵に出現した逆鱗を貫いてやろう!

その虞、我が光をもって祓い給え!
(破魔117、浄化21、除霊10、神罰5)

●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG



 無数の御札が究極妖怪『大祓骸魂』を繭のように包み込み、その動きを止める。
 しかし、膨大な『虞』を持つ彼女は、それらを吹き飛ばすようにしてUDCアース、東京スカイツリーの上空に舞い降りる。
 確かに消耗している。
 それがわかるほどに疲弊してもなお、彼女の瞳は赤くユーベルコードに輝く。彼女の『虞』はあらゆる骸魂たちを従え、周囲に嵐のように吹き荒れるのだ。
「私の愛は、不変にして不滅。猟兵たちにも、何者にも邪魔することはできない。私はUDCアースを愛している。だからこそ、変わらないままで愛したいのです。必ず殺して、骸の海へと沈めましょう。それが私の愛の証なのだから」
 彼女の手のひらがスカイツリーに迫る猟兵たちへと振り下ろされる。
 集まった骸魂たちが上空から走り、『カクリヨファンタズムが如き空間』によって生み出された『連ね鳥居』を駆け下りていくのだ。

 猟兵達は、この鳥居を知っている。
 千本鳥居のように長々と続く道。
 この鳥居を一歩ではみ出してしまえば、猟兵は延々とさまよってしまう。
 それを知っているからこそ、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、この状況をこそ利用するのだ。
「『大祓骸魂』よ。遂に汝の姿は我らにも捉えられるようになった。ゆえに、ここで終いだ。我らが全力を持って討ち果たさん!」
 赤い鳥居の中は、骸魂でごった返しすし詰めのようになっていた。
 ともすれば、無限にも思える数の骸魂を相手取らねばならぬ。

 しかし、百々にとって、それは大した問題ではなかった。
 数こそが『大祓百鬼夜行』の強みであるというのならば、それこそが仇となり得るのだ。
「狭い鳥居の道にそんなに居ては、まともに動けぬだろう?」
 そして、この鳥居に存在する以上、逆鱗が生まれる。
「強力であることを逆手に取りますか。猟兵。さかしいとは言いませんよ。それら全てを持ってして私に相対するというのならば、それをことごとく私の愛で防ぎましょう」
「愛と語るか! 殺すことを! 世界を滅ぼし、骸の海に沈めることが!」
 ああ、そのとおりだと言うように『大祓骸魂』は微笑んでいた。

 彼女にとって、『生と死を繋ぐもの』があればこそ、世界さえも時間をかければ殺してみせる。
 死せる世界が行きつく先は骸の海である。
 それが彼女にとっての全てなのだ。愛するがゆえに変わらってはならないと詰め寄る。
 愛をささやきながら、殺す。
「それを愛と呼べるものか! 穢れしその魂、浄化してくれようぞ!」
 百々は願う、祈る。
 神聖なる祈りを込めた清浄の矢(セイジョウノヤ)は、神弓に番えられた。

 輝くユーベルコードの輝き。
 相対するは無数の骸魂に守られた『大祓骸魂』。しかし、彼女の放つ光の矢は物理的な障壁など意に介さない。
 放たれた矢は骸魂をすり抜け、『大祓骸魂』へと迫る。
「私の愛を穢れたと言いますか……それこそが傲慢と知りなさい。私は、私の愛を、完遂するしかないのですから」
 己の体に現れた逆鱗を隠すように手にした傘を重ねる。
 しかし、百々の放つ矢はそれらさえもすり抜け、肉体を傷つけず魂の穢れだけを討ち貫くのだ。
「その『虞』、我が光を持って祓い給え!」

 破魔の力が光となってほとばしり、『大祓骸魂』の逆鱗を然と貫く。
 その一射でもって、スカイツリーの上空に光が明滅するように広がっていくのだ。
「我らと、そして妖怪たちの覚悟を侮ったな! 愛に勝る物はないと思いながらも、自身の持つ愛しか信じぬ者よ。汝は、一つの愛ではなく、誰しもが抱く幾多もの愛の前に敗れるのだ――!」
 百々の言葉が響き渡る。

 そう、妖怪たちが決死の覚悟で骸魂と合体したように。
 二つの愛おしき世界を守らんとした愛によって、唯一つの愛は敗れ去るのだと言わしめるように閃光が空に疾走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
永遠にと願い、思うのはわかるけど。
そのままあり続けるっていうのはきっと歪な存在だわ。
だってきっとその想いも、長い年月で少しずつ変わってきた結果じゃないの?

真の姿:光の翼に顔を覆うベール

真の姿になり、念動力で自身を浮かし空中戦を挑みます。
第六感に従い相手の攻撃を回避し、行動範囲を空中も視野に入れる事でさらにその確立をあげます。空中機動でさらに念動力の精度も上げていけば。
神器鳴神を、私ができうるだけの複製を作って一斉に撃ち込みます。相手の攻撃をUCで相殺する事も一つの手ですがなるべく攻撃優先にして、私の身に迫った懐刀は青月で打ち払うようにします。
ええだって私は一度死んだ存在だもの。大丈夫。



 スカイツリーの上空では幾度も光が激突し、明滅している。
 その光景はまるで現実味のない光景であったことだろう。猟兵たちと究極妖怪『大祓骸魂』との戦いは苛烈を極めた。
 何度もユーベルコードが打ち合い、それでもなお強大な『虞』を纏う『大祓骸魂』は己の愛を信じて疑うことはなかった。
 彼女の愛は世界を殺す愛である。
 世界さえも殺してみせることで、彼女のUDCアースへの愛は完成する。愛するものを永遠にする。
 ただそれだけのために彼女は懐刀『生と死を繋ぐもの』を振るうのだ。

「永遠にと願い、思うのはわかるけど」
 夜鳥・藍(kyanos・f32891)は明滅する光の中を駆け上がっていく。
 膨大な『虞』が彼女の肌を焼くようであった。それほどまでに圧倒的な力の差がある。四人の親分達が放つ『虞』を合わせてもなお、『大祓骸魂』の放つ『虞』は凄まじいものであった。
 窮地に己が立つという自覚が藍の心から躊躇いを消すのだ。
 光の翼が背より噴出するように羽ばたき、顔を覆うベールの下にある表情は決して『虞』ではなかった。
「ならば、貴方も永遠を欲するでしょう。永遠の愛を。不滅の愛を。きっと思うはずです」

『大祓骸魂』の言葉がスカイツリーの『ゲイン塔』から降り注ぐと同時に複製された無数の『生と死を繋ぐもの』が雨のように藍に降り注ぐ。
「わかるけど、そのまま在り続けるっていうのは、きっと歪な存在だわ。だって、きっとその想いも、長い年月で少しずつ変わってきた結果じゃないの?」
 藍の言葉はきっと届かないだろう。
 彼女の言葉は、不変などないということを告げていた。
 誰もが変わっていく。時間さえも過去を排出して前に進んでいくのだ。どうして変わらずにいられると思うのだろう。

 降り注ぐ懐刀の雨を藍は光の翼を羽ばたかせながら飛ぶ。
「神器解放……! 無限複製……鳴神!」
 藍の持つ黒い三鈷剣が複製され、懐刀『生と死を繋ぐもの』と打ち合っては、消滅していく。
 力はやはり『大祓骸魂』が遥かに上である。
 しかし、此処で退く理由にはなっていないのだ。空を舞う藍の瞳が見据えるのは、いつだって未来だ。

 自分の体を守るために力を振るっては押し負ける。
「大丈夫。だって私は一度死んだ存在だもの。大丈夫」
 手にした打刀が描くは雷光の青白い光。迫る懐刀を打ち払いながら、光の翼の軌跡がスカイツリーの上空に描かれていく。
 傷つきながら、それでも飛ぶのだ。
 藍が何を思って戦うのかを識ることができるのならば、その真の姿の意味も識ることが出来たことだろう。

 しかし、『大祓骸魂』は知らないのだ。
 何故、猟兵が世界のために戦うのかを。妖怪たちが何故、決死の覚悟を持って百鬼夜行に連なったのかを。
 それを知らぬ者に猟兵の力は理解できないものであった。
「私の愛が、変わっていくなどあってはならないのに。変わらないために殺すのに。私の愛を――」
「変わらないものなんて無い。失われない生命なんてない。だから人は――」
 懸命に今を生きるのだ。
 そのために生命を懸けるのだ。

「一生懸命になるのでしょう」
 妖怪たちがそうであったように。誰かの覚悟が、誰かの背中を押す。藍はそれを理解していた。
 己の光の翼が噴出する背中を押す妖怪たちの覚悟を無駄にせぬようにと、懐刀の雨の中を突き進み、『虞』を切り裂いて青白い閃光の一撃が『大祓骸魂』へと打ち込まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
コイツが大祓骸魂・・・親分さんよりさらに虞の力を感じます!
(「なら真の姿を晒すまでよ!黒影!」と頭の中の教導虫が答える)
はい!せんせー!
(両手足が錆色の甲殻に覆われ真の姿へ変貌すると背中の翅を使って接近を試みるが妖怪の大群に阻まれる)
ちぃ!ならば
UC【光殺鉄道】発動!光学兵さん!光の刃で道を切り拓いてください!
その道を俺は『衝撃波』を使って突っ込み『浄化』の力を纏った一撃を奴に叩きこみます!
(「拓けてもすぐに敵に取り囲まれるわ!無謀よ!」)
カクリヨの皆さんが命を懸けて奴まで導いてくれたんです!
躊躇するわけにはいきません!
(「あぁもう!わかったわよ!やっちゃえ!」)
はい!せんせー!



 青白い光の見せた斬撃の一撃が究極妖怪『大祓骸魂』の体へと傷を刻む。
 噴出する『虞』は、それでも霧散することなくスカイツリーの上空にとどまり続けている。
 無数の骸魂たちが渦を巻くように『大祓骸魂』の為す百鬼夜行の如く集まってくる。
 ここに来て彼女の力の強大さを猟兵達は思い知るだろう。
 四人の親分たちの放つ圧倒的な『虞』を束ねてもなお、越えることのできぬ圧倒的な『虞』は、猟兵たちをして己たちが今窮地にいるということを自覚させるのだ。
「コイツが『大祓骸魂』……親分さんよりさらに『虞』の力を感じます!」
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、己の肌を焼く『虞』を前にしてもなお、意志をみなぎらせていた。

 そう、ここで退けない。
 退いてはならない。頭の中で教導虫『スクイリア』が言うのだ。
 どれだけ強大な敵であったとしても、やるべきことはかわらないのだと。
『なら真の姿を晒すまでよ! 黒影!』
 言葉を受けて、兵庫はうなずく。
 元気よく返事をする姿は微笑ましいものであったかもしれないが、彼の瞳には決意がみなぎっていた。
 両手足が錆色の甲殻に覆われ、真の姿へと変貌していく。背に負う翅はまさに虫のものであろう。
 いかなる虫のものであるかは窺い知ることはできない。

 しかして、その翅は虫の皇のものである。
 大地を蹴り、スカイツリーを駆け上がっていく兵庫を蹴落とさんと迫る骸魂の群れ。大群と呼んでも良いであろう数が彼一人に迫るのだ。
 いや、彼一人だけではない。数多の猟兵たちにも襲いかかる。
 けれど、兵庫は知るだろう。
 この場にいる誰もが、その程度では諦めることはないのだと。
「ちぃ! ならば! 光学兵の皆さん!サイコロステーキのようにしちゃってください!」
 兵庫の瞳がユーベルコードに輝く。
 光殺鉄道(コウサツテツドウ)。それは無数に展開された鉄道虫たちから放たれたレーザーであった。
 その一撃は光の刃となって骸魂たちを切り裂き、道を切り開いていくのだ。

 錆色の甲殻に覆われた足がスカイツリーの壁面を蹴って、最上部の『ゲイン塔』へと迫る。
『拓けてもすぐに的に取り囲まれるわ! 無謀よ!』
 教導虫が頭の中で警告する。
 それは事実であろう。
 しかし、それでも兵庫は飛ぶ。己の背には翅とカクリヨファンタズムの妖怪たちが生命を懸けてでも『大祓骸魂』へと導いてくれた覚悟がある。

「躊躇するわけにはいきません!」
「ああ、また一人。私の愛を邪魔するものが。何故です? 私は愛おしいUDCアースを永遠にしたいだけ。殺せば骸の海に沈み、過去になる。そうすれば、ずっとずうっと変わらぬままで居られるというのに」
 それが何故わからないのだと『大祓骸魂』は微笑みながらも、刻まれた傷跡を手で抑えて、飛び上がった兵庫を見やる。

「覚悟が俺の背中を押すんです。二つの世界を守って欲しいって願いが。だから、俺も決死の覚悟を持って戦うしかないんです!」
『あぁもう! わかったわよ! やっちゃえ!』
 それは教導虫に告げた言葉であり、『大祓骸魂』にも向けた言葉であったことだろう。
 兵庫は己の意志で。
 己の背中を押す数多の覚悟と愛を推進剤にするように飛び上がったまま錆色の甲殻に覆われた蹴撃を『大祓骸魂』へと見舞うのだ。

「はい! せんせー!」
 それは『虞』を切り裂いて、スカイツリーの上空さえも照らす覚悟の輝きであった。
 集められた鉄道虫たちの放つレーザーが束ねられ、骸魂たちを振り払って兵庫の一撃は、たしかに『大祓骸魂』を『ゲイン塔』に叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
●プレイング
※アドリブや他猟兵との連携はOKです。
【心境】
「ついにここまできました。親分さんを始め多くの妖怪たちの決意。無駄にするわけにはいきません。全力で…いきます。」



【真の姿】
封魂符を心臓に格納し、生前の姿で領主時代の豪華絢爛過ぎる正装姿で戦います。
実は割と不敬なんですけど、当時はそのことも知らない無知な娘でした。

【行動】
道術で強化した結界術で攻撃を防ぎつつ、破魔の霊符を投擲します。
骸魂によってオブリビオン化した妖怪達…あなた達の尊厳も、守って見せます。
宝貝「霧露乾坤網」を発動します。お師様、親分さん達お力をお貸しください!!
戦闘能力を強化し、このまま雷公鞭で雷撃で必殺の一撃です!



 猟兵の一人が放った錆色の蹴撃の一撃が究極妖怪『大祓骸魂』の体をスカイツリーの『ゲイン塔』に勢いよく叩きつける。
 ひしゃげた『ゲイン塔』の柱にうまるようにしていた『大祓骸魂』はゆっくりと体を動かす。
 そこにあったのは神智を超えた『虞』が噴出する瞬間。
 吹き荒れる『虞』はまるで質量を持っているかのように周囲に撒き散らされる。しかも、それらはヒガンバナへと姿を変え、狂ったように咲き乱れていくのだ。
『大祓骸魂』は微笑んでいた。
 猟兵達に追い詰められてもなお、その瞳に赤くユーベルコードが輝く。些かも損なわれてはいない。

 僅かにも奪えた気がしない。
 けれど、猟兵達は覚悟を決めている。どれだけ圧倒的な『虞』であろうとも退くことはしないのだ。
「ついにここまで来ました。親分さんをはじめ多くの妖怪たちの決意。無駄にするわけには行きません。全力で……行きます」
 董・白(尸解仙・f33242)は己の魂魄符を心臓に格納し、生前の姿でもって『大祓骸魂』と対峙する。
 互いの瞳に映るのは、決して相容れぬ存在同士。
 猟兵と大いなる邪神。

 互いに滅ぼさなければならない間柄なれど、白は己の生前の姿である真の姿を晒し、当時の記憶が脳裏を走り抜ける感覚に、こんなときであれど微笑んでいた。
 豪華絢爛過ぎる正装の姿。
 当時はこれが不敬な格好であると知らぬ無知な娘であった。けれど、それでもいいと思ったことだろう。
 過去は変わらない。
「過去に沈めば変わらないですむ。私の愛も、UDCアースも、不変で不滅のままでいられる。だというのに、それを止めるのですか」
 放たれる神智を超えた『虞』を白は結界術で防ぐ。しかし、道術で強化した結界さえも、『虞』は砕いていく。

 なんという威力だろう。
 凄まじいと言うには余りにも圧倒的過ぎる。
 しかし、それでも白は頭を振る。それがなんだというのだ。
「妖怪たちの尊厳も、守ってみせます。死ぬかも知れないという可能性だってあっても、それでとも決死の覚悟を持って私達を導いてくれた妖怪たちのためにも!」
 負けてなど居られないのだ。
 白の瞳がユーベルコードに輝く。

 どれだけ圧倒的な『虞』であろうと関係ない。
 白のユーベルコードが輝くのは何のためであろうか。妖怪たちの覚悟に報いるためだ。
 そのためにこそ彼女のユーベルコードは輝く。
「お師様、親分さん達お力お借りします」
 白の全身が清らかな水の結界で覆われる。
 。結界術が砕け、白の体を裂く『虞』の一撃。

 血が噴出する。
 しかし、即座にそれらのダメージは白の体から消え失せていく。それこそが、宝貝「霧露乾坤網」(パオペエムロケンコンモウ)。
 その負傷を受けて、白の身体が力を増していく。生命吸収能力を得た彼女の身体は『虞』すらも生命の輝きに変えて、その姿を生前のものと変わらぬ、あらゆるものを得た存在として降臨させるのだ。
「止めます! 止めてみせます! 親分さん達が願ったように。二つの世界が愛おしいと願い、祈り、想う妖怪さんたちのためにも!」

 誰かのために戦えることは誇らしいことであると同時に喜ばしいことである。
 全てを持っていた己。
 全てを喪った己。
 けれど、最後に残ったものがある。猟兵になったからではない。仙人へ成ったからではない。
 自分の意志で、誰かのために戦おうと願う心こそが、白の力を増幅させ、掲げた雷公鞭が何倍にも強化された極大なる雷撃の一撃を『大祓骸魂』へと振り下ろされるのだ。

 それは必殺の一撃と成って、スカイツリーを直撃し『大祓骸魂』の歪なる愛さえも切り裂くように轟くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
漸く姿を現したな、『大祓骸魂』ッ!かくれんぼはもう終いだぜッ!
「・・・この世界を殺させはしません。大祓骸魂、貴女を止めます。」
炎神霊装でいくぜ。心を燃やせ、相棒ッ!!
「転身ッ!!」
限界を超える力を引き出す。俺達の『真の姿』ってヤツだッ!

高速で飛翔して大祓骸魂まで目指すぜ。
途中飛んでくる敵の『生と死を繋ぐもの』の動きを見切って避けたり炎翼から炎刃を放って迎撃したりして大祓骸魂の所までいくぜ。

接近できたら生成した破魔の炎刀でぶった斬ってやる。
てめえのその御大層な愛とやらごと纏めて焼き祓ってやるぜッ!


【技能・限界突破、空中戦、見切り、破魔】
【真の姿『霊力をオーラのように纏っている』】
【アドリブ歓迎】



 雷撃の一撃がUDCアースの空を埋め尽くしていく。
 凄まじいまでの一撃は、究極妖怪『大祓骸魂』の身体を焼くが、その強大なる『虞』は未だ健在であった。
 なんという強大な『虞』であろうか。
 彼女は誰からも忘れ去られた存在であるにも関わらず、四人の親分たちの開放した『虞』全てを束ねたとしても勝ることのできない圧倒的な量を解き放っていた。
 その『虞』は手にした懐刀『生と死を繋ぐもの』を複製し、雷撃の一撃で明滅する空を埋め尽くさんばかりであった。

「私の愛が損なわれることはないのです。何故なら私の愛は不変のものであるから。不滅のものであるから。だから、私はUDCアースを愛しているのです。私の愛が世界を殺し、骸の海へと沈める。そうすれば、世界は変わらず。変わってほしくないという愛の元にUDCアースは、殺されるべきなのです」
 彼女の言葉は歪なるものであったことだろう。
 変わってほしくない、変えたくない。損なわれてほしくない。
 ただそれだけのために世界一つを殺さんとしている。

 それが愛だというのならば、何故世界は悲鳴を上げる。
 そして、猟兵は駆けつけるのか。
『漸く姿を顕したな、『大祓骸魂』ッ! かくれんぼはもうおしまいだぜッ!』
「……この世界を殺させはしません。『大祓骸魂』、貴女を止めます」
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と相棒の桜は毅然とした瞳を強大な『虞』纏う『大祓骸魂』へと向ける。
 どれだけ強大な『虞』であっても、凶津たちは怯むことはない。
 確かに強大な敵であったとして、猟兵である彼女たちは決してひるまないのだ。『虞』を勇気に変えることができるからこそ猟兵である。

『炎神霊装(ブレイズフォーム)で行くぜ。心を燃やすぜ、相棒ッ!!』
「転身ッ!!』
 限界を超える。
 それは言葉で言うには容易いものであったことだろう。しかし、凶津たちの瞳が重なる。ユーベルコードの輝きが重なる。
 二人の力が一つになって顕現させた炎翼纏う霊装から生み出される炎刀は、次々と迫る複製された懐刀を撃ち落とし、迎撃していく。

「如何に『虞』を振り払おうとも、人の心には恐怖がある。恐怖を乗り越えるためには、その心が必要になる。けれど、それはいつまでもずっと無限に在るものではないのです」
『大祓骸魂』の言葉のとおりであろう。
 無限にも思える心の力。
 けれど、それは決して無限ではない。身体が疲弊するように、心も疲弊するのだ。ならばこそ、限界は訪れる。

『大祓骸魂』を目指す凶津たちの身体が降り注ぐ懐刀の雨に撃たれて、失速する。
 炎の翼は散り散りにちぎれていく。
 だが、それでも二人の重なったユーベルコードの輝きは消え失せてはいなかった。絶対の愛を信じる『大祓骸魂』にとって、それは不可解な輝きであったことだろう。
 何故、とは問うまい。
「――ッ、押し負けるなど」
『てめえのその御大層な愛とやらごと纏めて焼き祓ってやるぜッ!』

 今ここで限界を越える。
 心の力が炎と変わるのならば、彼等二人の心は今一つになって炎へと変わっていく。一人が火であっても二人ならば炎。
 凶津のヒーローマスクとしての仮面から炎が噴出し、桜の瞳から放たれるユーベルコードの輝きは炎へと変わる。
 振り上げた炎刀が極大にまで膨れ上がり、身にまとった霊力のオーラを束ねて放たれる一撃は、『大祓骸魂』の『虞』すらも切り裂いて、一撃のもとに彼女を空より引きずり下ろすようにスカイツリーの『ゲイン塔』へと叩き落とす。

「これが――」
『俺たちの力だッ!』
 二人の声が重なり、極大の炎がスカイツリーに立ち上がるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ボーナス④

いよいよ決戦だね
世界や妖怪の為にもここまで頑張った皆の為にも
皆と協力して打倒を目指すよ

永遠不変
あいつみたいな事を言ってるなぁ
この世界で生きてる存在は
まだまだ変わり続けたいんだ
悪いけど変わらず見守ってくれる方が嬉しいな

あら、永遠については考え方が違いますの
私は輝かしい姿を維持したまま永遠にしますの

巻き込まれる方からすればどちらも大差ないからね

ずいぶんと違うと思いますの

邪神の領域を使用
妖怪達を固定し彫像に変えて保護しよう

この調子で永遠にしていきますの

いや、後で元に戻すからね

でも大祓骸魂は元に戻す必要はないし
目一杯権能をぶつけよう

この世界を愛してくれてるなら
そこで永遠に見守ってくれないかな



 立ち上がる極大の炎がスカイツリーの頂上部である『ゲイン塔』を煌々と照らし出す。
 そこに集うのは究極妖怪『大祓骸魂』の放つ『虞』によって何処からともなく集結する骸魂の群れであった。
 彼等は『大祓骸魂』の百鬼夜行である。
 彼女の力は骸魂が集まれば集まるほどにましていく。妖怪とはすなわちそのような存在なのだろう。
 己に連なる骸魂たちに守られながら『大祓骸魂』は叫ぶのだ。
「私の愛を邪魔する者。UDCアースを愛しているからこそ、私は――」
 必ずや世界を殺さなければならない。
 彼女にとって、それこそが己の愛を証明し、不変にし、不滅のものにする唯一の方法であったのだろう。

 それを悲しいとは言わない。
「いよいよ決戦だね。世界や妖怪たちの為にもここまで頑張った皆のためにも……」
 この決戦に集った猟兵たちと共に戦わなければならないと、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は決意を新たにした。
 見上げるスカイツリーの頂上部に座す『大祓骸魂』の言葉を晶は理解していた。
 同時に大いなる邪神である『大祓骸魂』と己の体に融合した邪神との共通点をも見出すことができたことだろう。

「永遠不変。あいつみたいなことを言ってるなぁ」
 別に受け入れたわけではない。
 理解ができると言うだけの話だ。けれど、それを踏まえた上でもなお、晶は言葉を紡ぐのだ。
「この世界で生きている存在はまだまだ変わり続けたいんだ。悪いけど――」
 晶の瞳がユーベルコードに輝く。
 これよりは、邪神の領域(スタグナント・フィールド)である。
 晶の周囲に停滞と固定の神気が満ち溢れていく。しかし、それは同時に自分の身体が封印により石化していくことを示していた。

 群がる無数の骸魂たちを固定し、彫像へと変えていく。
「邪神の力……」
「あら、永遠については考え方が違いますの。私は輝かしい姿を維持したまま永遠にしますの」
 邪神の分霊が言い放つ。
 同じ邪神であったとしても、考え方の相違が起こり得るのだろう。晶にとっては、どちらも同じである。
 だって、巻き込まれる方からすれば、災害と同じだ。

「輝かしい姿も、そうでない姿も愛の前には変わらぬこと。永遠に変わらぬことが一番であるのならば、私は必ず世界を殺してみせます」
「やはり随分と違うと思いますの」
 次々と骸魂たちを彫像へと変えていく神気。
 ユーベルコードの輝きは増すばかりであった。晶にとって、世界を愛するということは喜ばしいことであったかも知れない。

 けれど、彼女たちのやり方は決定的に違うのだ。
「なら、君が変わらずに見守ってくれていればよかったんだ。永遠に、なんて言わないで。変わっていく姿も愛でることができれば」
 何もかもが違っていただろうにと、晶は祈るように石像へと姿を変えていく。
 石化する速度が上がっているのだ。
 しかし、それ以上に晶の放つ神気は強大になっていく。そういうユーベルコードなのだ。
 百鬼夜行の如く集まってくる骸魂たちを彫像へと変え、固定していく。

 晶の放つ権能と『大祓骸魂』の放つ『虞』がスカイツリーの上空で激突して、せめぎ合っていく。
「私は、私の愛を貫くのです。たとえそれが間違っていると言われたとしても、それを決めるのは私なのです」
「この世界を愛してくれてるなら――」
 互いのユーベルコードが明滅し、激突しては消滅していく。

 譲れぬ想いがある。
 決して逸らせぬ未来がある。だからこそ、晶は叫ぶのだ。
「そこで永遠に見守ってくれ――!」
 滅びという名の停滞ではなく。
 未来という名の可能性を愛してほしいと、晶はそう願うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミアステラ・ティレスタム
愛の定義はひとそれぞれ
その形を否定するつもりはありません
ですが、それが他者を傷付けるとあらば話は別です
此度の戦いで皆の想いを、覚悟を受け取ってきました
その想いに報いることをわたしの愛と定義します
貴女とわたしの愛、強いのはどちらなのでしょうね?

想いは力、願いは未来への希望
世界を救うために、わたしは祈ります
真の姿≪静謐の守神≫解放
見目は変わらず、安寧なる世界を願い祈る守神

悪しき力は浄化の加護の水で流してしまいましょう
水流をもっと激しく、悪しきを洗い流して
そうしたら煌めく星の雨を呼んで
皆の想いを、願いの力をすべて受けてくださいませ

本体のアクアマリンの名に賭けて、世界を骸の海に沈ませたりなどさせません



 激突する権能と『虞』がスカイツリーの上空に明滅しては、さながら天変地異のような様相を眼下にあるものへと見せつける。
 神智を超えた『虞』はそれだけで周囲に狂ったように咲くヒガンバナでもって、赤く染め上げていく。
 その上に座す究極妖怪『大祓骸魂』の力は、数多の猟兵たちが立ち向かい、消耗させてもなお強大なものであった。
「私の愛は不変にして不滅。何度だって、何度だって私はUDCアースを愛するでしょう。だから殺すのです。殺して共に骸の海へと沈みたい。ただそれだけなのです」
 なのに何故邪魔をするのかと言うように『大祓骸魂』は、けれど微笑みを絶やさずに赤き輝きを持って、ユーベルコードの輝きとする。

 彼女の目的は唯一。
 世界を愛すること。すなわちそれは世界を殺すこと。
『生と死を繋ぐもの』と呼ばれる懐刀を振るい、必ずUDCアースそのものを殺し、共に変わることのない過去へと向かおうとしているのだ。
 それは無理心中というの値するものであったことだろう。
「愛の定義はひとそれぞれ。その形を否定するつもりはありません。ですが」
 ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)はさらりと流れる青滲む白髪を揺らしながら、水の色を湛えた瞳を持って『大祓骸魂』を見上げる。

「それが他者を傷つけるとあらば話は別です」
 ミアステラはこれまで戦いの中で見てきたのだ。
 妖怪たちが二つの世界を救うために生命を擲つ覚悟を。その想いの強さを知っているのだ。
 ミアステラにとって、その覚悟と想いに報いうることこそが、彼女自身の愛である。
 彼女の背中を押すのは、いつだって誰かの想いであったことだろう。
 世界を守りたい。
 そのために生命すらも厭わぬ彼等の想いが彼女の心を育んでいく。

「貴女とわたしの愛。強いのはどちらなのでしょうね?」
 輝く姿は『静謐の守神』。ミアステラの真成る姿であったが、見目は変わらず。されど、その祈りは世界の安然を願い守る神そのものであった。
「世界を愛する私の愛。それは不滅にして永遠。ならば、変わっていく者の愛など――」
 迫る神智を超えた『虞』。
 確かに圧倒的な『虞』であった。それに触れてしまえば、容易にあらゆるものが引き裂かれてしまうことだろう。

 痛みを伴うであろうし、生命を喪うかもしれない。
 けれど、ミアステラの瞳はユーベルコードに輝く。どれだけの痛みが、『虞』が襲おうとも彼女はくじけることはない。
「想いは力、願いは未来への希望。世界を救うために祈りを以て謐奏の時を齎しましょう――」
 奏でられるは、謐奏詩(メディテーション)。
 祈りをもって星降る雨のように浄化の慈雨が降り注ぐ。

 悪しき邪神の力を浄化する加護の水が溢れ、狂い咲く赤いヒガンバナを押し流していく。
 真の姿をさらし、開放した力は更に激しい水流となって浄化の力を強めていく。
「押し負ける……猟兵、私の力を超えているわけではないのに。私の愛を超えているわけではないのに、何故」
 これまでもそうであったのだ。
 絶対的な個体としての力は未だ『大祓骸魂』の方が強い。
 まともに戦えば、確実に個としての猟兵など問題にならないはずだ。なのに何故、こうも押し負ける。

「皆の想い。それがわたしたちに力を与えてくれる。妖怪の皆さんがそうであったように。わたしもまたわたしの名に懸けて、世界を骸の海に沈ませたりなどさせません」
 輝く星雨が降り注ぐ。
『虞』を切り裂く流星のような雨がスカイツリーの頂上に満ち溢れるようにして、『大祓骸魂』の『虞』を祓っていく。

 そう、妖怪たちの覚悟と想いこそが、『大祓骸魂』に猟兵たちが勝る唯一の武器。
 ミアステラは祈りを力に変えて、彼等の思いを届けるようにと未だ溢れる『虞』を抑え込み続け、世界を救わんとする者たちを繋ぐ楔となるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
「やっぱり、また会いましたね。」
いつの間にか大町吉乃が立っていた。

「あなたって未来視できましたっけ?」
微笑みで返される。
「(呆れた口調、でも口の端は少し緩んで)もう、折角来たのですから手伝って下さい。」と煌月を彼女に渡す。
護身の為と、私にスパルタ教育で武芸を叩き込んだ達人だから大丈夫な筈。

UC発動。
人々と世界を護る戦い、そして親友と共に戦う。
独占欲と妄執に満ちた愛に負ける気がしない。

多重詠唱による雷と光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で雷纏う巨大な光の槍を放ち、手下のオブリビオン達の壁に穴を開け、更に吉乃が武芸で払い除け、詩乃が高速で飛び込み、神罰を宿した雷月を大祓骸魂に突き立てます。



 スカイツリーの最上部『ゲイン塔』から眼下には『カクリヨファンタズムが如き空間』が未だに広がっている。
 猟兵たちにとって、その道程は究極妖怪『大祓骸魂』へと至るために必要なものであり、これまでの戦いで経験してきたものばかりであった。
 そして、ある猟兵の前には一つの橋がかかっていた。

 その名は『まぼろしの橋』。
 彼岸とこちらを繋ぐ橋であり、死せる想い人が現れると言われる橋だ。その橋の向こう側に立っている人物の名を大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は知っていた。
「やっぱり、また会いましたね」
 いつもの微笑みで大町吉乃が立っていた。
 変わらぬ微笑み。変わらぬ様子。変わらぬ言葉遣い。

 自分に影響を与えた少女の名前。
 あのときの言葉を忘れるにはあまりにも時間は短いものであったから。
「――あなたって、未来視できましたっけ?」
 微笑みで返される変じ。
 その様子に詩乃は呆れてしまう。でも、不思議と唇が緩んでしまうのは仕方のないことであった。
 だから、いつかのように少し拗ねたような。それでいて、どこか見透かされていることを喜んでいるように詩乃は手にした薙刀を吉乃に手渡すのだ。
「もう、折角来たのですから、手伝ってください」

 嘗て護身のためにと、自身にスパルタ教育で武芸を叩き込んだのは他ならぬ吉乃であった。
 達人と呼ばれる技量を持つ彼女ならば大丈夫。
「人使いが荒いんですから、相変わらず」
 なんて、微笑みながら吉乃は詩乃と共に疾走る。無数の骸魂が迫るスカイツリーを駆け上がっていくのだ。
 変わらぬ友人。それを喜ぶ時間もわずかであることを詩乃はわかっていた。

 だから戦う。
 彼女の瞳にユーベルコードが輝くのだ。
「人々を世界を護る為、全力でお相手致します!」
 危害ある全てを浄化消滅させる若草色のオーラが放たれ、迫る骸魂たちを消滅させていく。
 人々と世界を守るための戦い。そして親友と共に立ち並び戦う。
 ああ、と詩乃の心が満たされていくのを感じただろう。こんなにも誇らしい。自分ができないことは、吉乃がしてくれる。吉乃にできないことは自分がする。

 何一つとして失われていなかったことを詩乃は判っただろう。
「独占欲と毛質に満ちた愛に負ける気がしません!」
 多重詠唱による雷と光の乱舞がスカイツリーに集う骸魂を蹴散らしながら、雷纏う巨大な光の槍でもって、道を切り開く。
 其処へ飛び込んでいくのが吉乃であった。
 煌めく月の如き薙刀の斬撃を見舞い、詩乃と共にスカイツリーを駆け上がっていくのだ。
「今です――!」
 それはきっと再び別れの言葉であったことだろう。

 けれど、詩乃は振り返らない。吉乃も引き止めはしなかった。
「私の愛を独占欲と呼ぶ! 私の愛は変わらず不変であるというのに」
 目の前には究極妖怪『大祓骸魂』の『虞』纏う姿があった。けれど、詩乃はためらわない。
 神罰の力を宿した懐剣が煌めく。
 別れ難くもある存在が互いに在る。

 けれど、それを不変のものにしたいとは思わない。
「本当に出会った者には別れなんてこない。私はそれを知っているのです。だから、不変であることを望まない。彼女だって私にそれを望まないでしょう」
 だから、別れなんて来ないのだ。
 たとえ、生と死が二人を分かつのだとしても、決して詩乃と吉乃の間には、『生と死を繋ぐもの』など必要無いのだ。

 いつだって彼女たちの道はつながっている。
 束ねられている。共に並びたち、戦ったように。今日という日をまた思い出すことがある。
 そして、また新しく変わった互いを微笑みで持って称え合うことができる。
「だから、別れなんて来ない――!」 
 放たれた雷纏う懐剣の一撃が『大祓骸魂』の胸へと突き立てられ、スカイツリーの上空に凄まじい力の奔流を迸らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋山・軍犬
※番組の企画に全力で乗っかる

何か色んなグリモア猟兵さんがこの子救えないって
こんだけ口揃えて言ってるって事は…フラグ?

という訳で…
【大祓骸魂ちゃんと行くカクリヨ温泉グルメツアー】
(企画:秋山・軍犬)

…いや、どのプレボ選んでも良いって言うから
ほら、ギャグ方面に振り切れればワンチャン
ギャグ補正で…ね、分かるでしょ?

まあ、仮にこの冷静で的確なプレボで救えなくとも
それが、救いになるかは分からなくても
一緒に楽しくご飯を食べた奴を
軍犬は絶対に忘れない、それがフードファイター!

だから絶対に救えないとしても別の意味で
救えるかもしれん可能性にかけて
行ってきます温泉グルメツアー!
まずは駅弁食べながら話でもしようぜ!



『大祓骸魂ちゃんと行くカクリヨ温泉グルメツア~』
 一瞬懐かしいテンプレートのようなテロップが世界に顕現する。それは一体全体どういうことなのかまるで理解の出来ないものであったけれど、それがカクリヨファンタズムが如き空間へと変わったスカイツリーの最上部『ゲイン塔』が織りなす光景であった。
 勿論、そのグルメツアーのリポーターは秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)である。

 多くのグリモア猟兵達が口を揃えて究極妖怪『大祓骸魂』は救えないと言っていたことを彼は思い出していた。
 これだけ口を揃えて言うのならば、それは逆フラグというやつなのではないだろうかと彼は考えたのだ。
 それが正しいか間違っているかは問題ではない。
 彼にとって、それは関係のないことなのだ。
 己の信条と言ってもいい。

 これまで巡ってきた戦い。
 その中にはノスタルジックを感じさせる古き良き時代の番組に全力で乗っかることも含まれていたのだ。
 誰からも忘れ去られた存在。
 それが『大祓骸魂』である。誰からも忘れ去られたがゆえに誰からも知覚されない。
 それは軍犬にとって、悲しいことであったのだ。
「仮に救えなくとも。それが救いになるかはわからなくても」
 そう、それでも軍犬は進むのだ。

 番組進行なんて関係ない。
 ただ美味しく一緒にご飯を食べたい。その思い出を作りたい。
 そのためだけに軍犬は企画、制作進行、カメラ回しからアポイントメントまで全てをやり遂げるのだ。

 それがフードファイターとしての活動が実質、仙人としての修行と成るのだ。
 いわば、【パシッブスキル】仙人(パシッブスキル・センニン)である。
「何を言っているのです? 私にとっての救いは愛のみ。愛しいUDCアース世界を骸の海に沈めることだけが私の願いにして愛。不変にして不滅。だから、この『生と死を繋ぐもの』を振るうのです」
 彼女の周囲には無数の骸魂が群れをなすように渦巻いている。
 猟兵達によって消耗させられてもなお、有り余るほどの強大な『虞』である。
 しかし、軍犬はひるまない。

 だって、これからもっと楽しい番組が始まるのだ。
 美味しいご飯を食べるってことは幸せってことだ。幸せそうにご飯を食べる者の顔を見れば、それは食欲がわくし、生きる糧となることだってあるだろう。
「自分はそれしかできなっすから。けれど、それでいいんす。ワンチャンなんて思わなくっても。軍犬は忘れない。絶対に!」
 これが番組の企画であろうと、意図があろうとなかろうと。

 軍犬は突き進む。
 何故ならば。
「それがフードファイターだから! どれだけ多くの者が『大祓骸魂』、あんたを忘れてしまっても」
 この自分が忘れないのだと叫ぶのだ。
 番組のグルメツアーは進む。
 カクリヨファンタズムが如き空間に捉われるのは、猟兵だけではない。『大祓骸魂』だって同じだ。
 きっと同じなのだ。
 忘れ去られてしまうことは悲しいことだろう。
 それゆえに愛を求める。変わらぬものを、不滅なものを求めるのだろう。そこに彼女の救いである過去があるというのならば。

「それ以外のこともあるって教える! それがグルメツアーだし、まずは!」
 そう、グルメツアーと銘打つ以上これは外せない。
 駅弁である。
 土地土地のグルメを詰め込んだ宝石箱。
 景色とともに思い出す記憶。
 どれだけ人々に忘れ去られようとも、軍犬だけはきっと思い出す。

 それが救いであるかはわからないけれど。
「まずは駅弁食べながら話でもしようぜ!」
 対話不可能であったとしても、それを為してみせる。きっと軍犬は忘れない。忘れないということだって忘れてしまっても、口の中に広がる滋味によって思い出すのだ。

『大祓骸魂』という愛に囚われた究極妖怪の名前を――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
プレイングボーナス:連ね鳥居の中で戦い、敵の逆鱗を攻撃する

あたしの前に現れたのは、連ね鳥居、か。確かに戦巫女でもあるからね。不思議じゃない。
行こう、アヤメ。独りよがりの愛に酔った莫迦に、本当の愛を突きつけよう。

連ね鳥居の中を飛鉢法の鉄鉢に二人乗って進んでいく。
飛んでくる虞は、薙刀で「なぎ払い」、アヤメのクナイで迎撃するわ。
地形変化は、飛行してるから問題なし。あれの戦闘力が高まるのが面倒なところか。

ご機嫌よう、究極妖怪『大祓骸魂』。すぐに一人だけで骸の海へ蹴落としてあげる。

「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「浄化」「仙術」「道術」で紅水陣展開!
紅き世界に溶けて、果てなさい!



 猟兵達によって多くの『虞』が祓われた。
 しかし、未だ健在であることを知らしめるように狂ったように咲くヒガンバナが埋め尽くすスカイツリーの最上部『ゲイン塔』。
 そこに座す究極妖怪『大祓骸魂』は、一人つぶやく。
「私の愛は、愛そのもの。究極にして一つのもの。たった一つの変わらぬもの。私が無くしてしまったものなんてなにもないと言えるように。唯一つのことだけを私はほしいのです。それが私の愛」
 彼女にとって、それがUDCアースであったのだろう。
 けれど、時の流れは『大祓骸魂』の名前を忘れさせる。
 どうしようもないことなのだ。

 変わっていくのが世界の常であるというのならば、これほどまでに残酷なこともなかったことだろう。
 すべての人々から忘れ去られたからこそ、彼女は過去となって絶大なる『虞』を纏うのだ。
 狂い咲くヒガンバナの中を一歩、また一歩と踏みしめる。

 その先に連ね鳥居が立ち並ぶ。『カクリヨファンタズムが如き空間』の中にあっては、それは当然のように猟兵達と『大祓骸魂』へと影響を及ぼすのだ。
「また連ね鳥居、か。確かに戦巫女でもあるからね。不思議じゃない。行こう、アヤメ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は式神のアヤメと共に駆け上がっていく。
 再び連ね鳥居の中を疾走るだなんて、思ってもいなかったかもしれないが。
 それでも彼女たちは駆け上がっていく。
 赤いヒガンバナが咲き乱れていく。

 そう、それこそが神智を超えた『虞』である。
『大祓骸魂』もまた連ね鳥居の中を歩いているのだ。降りてくるように、迫る猟兵を薙ぎ払うように、彼女は赤い瞳をユーベルコードに輝かせながら一歩、また一歩と凄まじい『虞』と共にゆかりたちに迫る。
「独りよがりの愛に酔った莫迦に、本当の愛を突きつけよう」
「本当の愛とはなんでしょう?」
 地上に在りては、ヒガンバナの影響を受けざるを得ない。だからこそ、ゆかりは鉄鉢に乗って飛ぶ。
 しかし、荒ぶ『虞』は凄まじいものであった。
 どれだけ空を飛んだとしても『虞』はかまわず、ゆかりたちを叩き落さんと迫るだろう。

「ご機嫌よう、究極妖怪『大祓骸魂』。すぐに一人だけで骸の海へと蹴落としてあげるから、知る必要なんてないわ」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 互いの交錯は一瞬であった。
 けれど、それで十分だ。アヤメの放ったクナイが『虞』にぶつかって砕けていく。一瞬であっても、時間を稼ぐことができたのであれば、ゆかりのユーベルコードは十分であったのだ。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 神智を超えた『虞』が生み出すヒガンバナ。
 それが『大祓骸魂』に力を与えているのならbあ、全てを溶かす強酸性の雨を降らせる紅水陣(コウスイジン)でもって塗りつぶせばいいのだ。
 ヒガンバナも何もかもをも腐食させる赤い靄に包まれる連ね鳥居。
 鉄鉢にのって、『虞』を躱しながら、ゆかりは叫ぶ。

「紅き世界に溶けて、果てなさい! あなたの在りようは、世界を滅ぼすだけよ。その愛が愛だなんて私は認めない。全てを否定し、固定し、留めておくことが愛になるわけがない。互いの違いを認め合うことこそが愛でしょうが!」
 それがわからぬのならば、一人で溶けて消えて行けと、ゆかりのユーベルコードが輝く。
 赤い靄の中に沈む連ね鳥居の中、『大祓骸魂』の放つ『虞』だけが霧散していく。

 スカイツリーの上層部にありて、『大祓骸魂』は留め続けられる。
 最後の一太刀を振るうこともできず、されど己の愛だけを信じた彼女の慟哭の如き叫びが、ゆかりの耳を苛むように響き続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
真なる永久不変を謳うなら、わたくしも永久不変の『安寧』の為に戦いましょう
わたくし取る行動は『襲われている人々が、妖怪に殺されないようにする』。
UDCアースに顕現した以上、UDCアースの人々にも危害を加えられる可能性は高いでしょう
それを阻止する為に熾天使達を召喚して溢れ出る妖怪たちの群れから守り抜きます
襲われる人々は天使の降臨に驚くでしょうが、そこは『伝心』の加護でわたくしの意を伝えて落ち着かせ、スカイツリーから遠ざけていきます

そこに『虞知らず』の加護を用いて虞もヒガンバナも無力化し、『虞知らず』の加護による呪術を解き放って行きます



 紅い靄が包み込むスカイツリーの最上部『ゲイン塔』の中で究極妖怪『大祓骸魂』の慟哭が響き渡る。
 それは怨嗟でもなければ、苦しみの声でもなかった。
 慟哭のように聞こえるのは、彼女の愛が人に害をなすものであるからである。全てを越える神智の『虞』が絶えず噴出し続ける。
 周囲は全てが狂い咲くような赤いヒガンバナに覆われ、その地の上に立つ『大祓骸魂』の力は増大していくのだ。
「私の愛が間違っている? そんなことはないでしょう。不変永遠。いつだって人だって、誓うでしょう。私の愛はいつだって変わらぬものであり、捧げられるものであると。愛おしい人に捧げるように愛をささやくではないですか」

 それが世界か、人かの違いでしか無いと『大祓骸魂』は言う。
 けれど、と立ちふさがる猟兵がいる。
「真なる永久不変を謳うなら、わたくしも永久不変の『安寧』のために戦いましょう」
 フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)が願うのは『安寧』であった。
 心の安寧であるだろうし、争いのない日々のためでもあったことだろう。
 UDCアースは今や大いなる邪神である究極妖怪『大祓骸魂』によって、超常の現象に見舞われている。
 溢れるように連なる百鬼夜行の骸魂たちが、いつ人々に害を為すかわからない。

 ならばこそ、フレスベルクは戦うのだ。
 無辜の民である彼等に危害が及ばぬようにと、己の信念と戦う理由のために彼女はスカイツリーを駆け上がっていく。
「翼持ちて天を舞う御使いは、慈悲深き主の寵愛を受ける。これを以って彷徨える者達を舞踏する者達は救い給う」
 彼女のユーベルコードが曇天の空を切り裂き、蒼穹に舞うは、金色の主に愛されし熾天使達(ダンス・イン・ザ・セラフィック)たちを召喚せしめる。

 金色の神話武装を纏う熾天使たちが、骸魂の群れから人々を守るために空を舞う。
 唯一人の生命も失わせぬと空を舞う金色の鎧。
 それは剣であり盾であったことだろう。
 その光景はUDCアースの人々にとって、驚愕成る光景であったことは間違いない。けれど、フレスベルクの加護が彼等に安寧を与える。
「何も恐れることはありません。彼等はあなた方を守るための存在。決して危害を加えることはありません。必ずや」
 そう、必ず守ってみせる。
 彼女には今や『虞知らず』の加護がある。

 新し親分である『バズリトレンディ』が極意として伝えてくれた力である。
 数多の妖怪たちの覚悟があった。
 二つの世界を愛おしく想う心があった。
 それを受けてフレスベルクのユーベルコードは神智を超えた『虞』すらも降伏してみせるのだ。
「どれだけの愛が貴方にあろうとも。私は人々の『安寧』のために戦います。愛ゆえに、貴方は」
「私は狂ったとでもいいたいのでしょう。けれど、違いますよ。私は、私の愛のためにだけにUDCアースを、愛おしき世界を殺すのです。これ以上変わらぬように、これ以上滅びぬように」
 そのためだけに彼女は『生と死を繋ぐもの』を振るうのだ。

 どうやってでも。
 何がなんででも。必ずやり遂げるのだと、『大祓骸魂』の瞳に輝くユーベルコードに陰りはなかった。
 どれだけ『虞』を払おうとも、彼女は最大の壁である猟兵たちを薙ぎ払わんと力を振るうのだ。
「ならば、互いの永久不変のために――!」
 熾天使たちが舞い降りる。
 其の手にした『虞知らず』なる加護宿りし剣を振るい、『大祓骸魂』の纏う神智を超えた『虞』を振り払い、解き放っていく。

 吹き荒れる『虞』。
 振るわれる神話の再来の如き力の奔流。
 其の二つがスカイツリーの上空で激突し、明滅しては吹き荒れていく。互いに譲れぬというのならば、背負ったものの数だけが、互いの勝敗を決めるだろう。
 妖怪たちの覚悟と想いを背負ったフレスベルクは、きっと勝つだろう。
 それを証明するように、スカイツリーの上空を引き裂き蒼穹の輝きこそが、地上を照らし続けるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薙殻字・壽綯
おぞましいほどに、きらめく愛ですね。貴方のその感情は、好きです。私は頷きましょう。……喜ばしいと思うのは、本当ですから
……これまで、私は多くの再会と離別、……心中も、目にしてきました。家族、恋人、夫婦、友人。……何れもが、愛しくて。眩しくて。羨ましいから、愛でたかった

……愛しているから殺す。嫉妬しいから愛してる。殺したいから愛してる
だから憎らしい
僕は君を許さない。僕は君を野放しにしない
ズルいんだよ
ズルいんだよ
僕がしたいことを、僕の目の前でするなよ。僕が君を殺すんだ。君は僕に殺されろ

感情の深さも大きさも関係ない。ただ僕が君を排除したいだけだ。邪魔なんだよ。僕はまだ鈴谷を探している途中なんだよ!!



 曇天を引き裂いた蒼穹の輝きを持ってしても、未だ神智を超えた『虞』全てを振り払うことはできなかった。
 これが究極妖怪『大祓骸魂』。
 群がる百鬼夜行の如き骸魂の数は膨大すぎる。どれだけ振り払っても、即座に穴を塞ぐように何処かしこから集まってきて、『大祓骸魂』へと取り巻くようにして守るのだ。
 これが数多の猟兵たちがスカイツリーを駆け上がってもなお、彼女が健在である理由であった。
「おぞましいほどに、煌めく愛ですね。貴方のその感情は、好きです」
 薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は小さく頷いた。
 それは確かに愛であった。

 そう、愛なのだ。
 どんな形であれ、歪であれ、愛には変わりなく。だからこそ、壽綯はそれを喜ばしいことであると思ったのだ。
 それだけは本当のことだったのだ。
「……これまで、私は多くの再会と別離」
 そして、心中も目にしてきた。
 家族、恋人、夫婦、友人。
 どんな間柄であれ、関係性であれ。どれもが愛おしくて、眩しくて――羨ましい。
 だから、愛でたかった。

「ならば、私と同じですね。私と同じ。私がそうするように貴方も」
 この愛を理解できるのならば、と『大祓骸魂』はどれだけの傷、どれだけの消耗を受けてもなお、微笑んでいた。
 たおやかに微笑み、変わらぬ微笑みのまま愛をささやくのだ。
「……愛しているから殺す。嫉妬しいから愛してる。殺したいから愛してる」
 壽綯にとって、それは極彩の宵夜(コントラスト・エッジ)の如く情景であった。

「だから」

 そう、だからこそ。

「憎らしい」
 妬ましい。
 世界を殺すほどの愛。
 焦がれるほどの愛。永遠にしたい。不変にしたい。世界そのものを骸の海へと沈める行いは確かにあまりにも強大な愛であったことだろう。 
 誰も彼もが彼女に敵わないのもまた理解できる。親分達がそう言ったのもわかる。あれは化け物だと。

 だからなんだというのだ。己の嫉妬は、この程度で理解を示すほどやわではないのだ。
「僕は君を許さない。僕は君を野放しにしない」
 紡がれた言葉は正しく愛に対する嫉妬であった。
 ズルいんだよ。
 其の言葉が自然と口からこぼれ出た。膨れ上がる身体。それは感情の赴くままに、身を焼く『虞』に対する猟兵としての防衛本能であったのかもしれない。
 醜き獣と形容してもいいのかもしれない。彼の身体は今や変容し、怨嗟と嫉妬の炎に巻かれた姿へと変える。

 それが真の姿であると誰にも口にすることはできなかった。
 誰も見てないでほしい。誰にも見て欲しい。
 正面から、目をそらすなと咆哮するように彼は叫ぶ。
「ズルいんだよ。僕がしたいことを、僕の目の前でするなよ。僕が君を殺すんだ。君は――」
 世界で一番優しい危険な凶器である、刃物が情愛に染まった真青色の芙蓉花に変化し、『大祓骸魂』の『虞』すら切り裂いて打ち込まれる。

 それは外に排出しようとしても引き抜くことのできぬ絶対なる狂気であった。
「僕に殺されろ」
 感情の深さも、大きさも関係ない。
 ただ、在るのは『己が大祓骸魂を排除したい』というだけの感情であった。
 爆発するような感情の波に後押しされるように壽綯は叫ぶのだ。
 この愛を、この嫉妬を、この醜悪なる感情を。

 それを引き出した邪魔をする存在。
 ぎらぎらと輝く緑色の瞳が捉えるのは、赤い瞳をした『大祓骸魂』ではなかった。
「邪魔なんだよ。僕は――」
「ああ、貴方も探しているのですね。どうすれば、私のようにできるのかを。どうすれば、私の愛のように、求める何者かを」
 追い求めることができるのかを。

 壽綯は今度こそ凄まじい咆哮で持って、『大祓骸魂』の言葉を遮る。
 そう未だ彼は道半ばである。
「僕はまだ鈴谷を探している途中なんだよ!!」
 溢れ出る劇場のままにスカイツリーを走り抜け真青色の芙蓉花の花弁が吹き荒れる中を一匹の獣が、その牙をもって神智越える『虞』さえも切り裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
絶対の『愛』を纏うオブリビオン・フォーミュラ。
いつもそうでした。今回も困難な相手でしょう
だからこそ、【勇気】を胸に戦うまでですっ!

《真の姿を解放》することで挑みますわ!

集まる妖怪たちは光の【属性攻撃】を纏うラリアットで
【なぎ払い】、合わせて【衝撃波】を叩き込み蹴散らしますわ
大祓骸魂へと接敵して、
レスラーとして、組み付いて挑みましょうっ!

【功夫】かを生かしたプロレス式の打撃を打ちこみ、
【力溜め】たスープレックスで投げるっ
【ジャンプ】からの足を揃えたフットスタンプの
【踏みつけ】!

自慢のオーラを纏うプロレス打撃は効くでしょう
敵の反撃は【オーラ防御】で耐え、組み付いての
《トランスバスター》で投げますっ



 真青色の芙蓉花がスカイツリーの上空に咲き乱れ、骸魂の群れを引き裂く。
 それは一時の幕間のようなものでしかなかったのかもしれない。引き裂いた骸魂の群れは、即座に穴を埋めるように究極妖怪『大祓骸魂』の周囲へと集まってくるのだ。
「私の愛は不滅にして永遠。絶対の愛。私の愛は変わらないのです。だから、この戦いは無意味なのです」
 どうあっても殺す。
 世界を殺す。
 愛おしきUDCアースを過去にし、骸の海へと沈める。
 ただそのためだけに『大祓骸魂』は二つの世界すらも粉々に砕いてみせようとしたのだ。

「絶対の『愛』を纏う究極妖怪……いつもそうでした」
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は思い出す。
 いつだってそうだったのだ。オブリビオン・フォーミュラと呼ばれる強大なオブリビオン。
 彼等との戦いはいつだって、困難なものばかりであったのだ。
 今回だってそうだ。
 けれど、だからこそ、と彼女の瞳は輝く。

 どれだけの『虞』であっても、無数の壁となる骸魂の群れが道を阻むのだとしても。関係など無かったのだ。
「わたしには勇気がある。この胸に勇気がある限り、戦いをやめることなどありえません!」
 彼女は駆け出す。
 多くの骸魂が、彼女の進撃を阻もうと迫る。しかし、ことごとくを光放つラリアットの一撃で叩き伏せながら、ユーフィはスカイツリーを駆け上がっていくのだ。
 彼女を止めることができる者など、どこにもいなかったのだ。

「止まらない。私の愛を止める者の、歩みが止まらない。何故です? 私の愛は絶対にして不変。不滅にして、最高のものだというのに」
 なのに、何故。
 ユーフィは止まらなかった。
 だって、彼女の胸には勇気が灯っていたから。それを灯してくれたのは、他ならぬ妖怪たちであった。

 彼等の決死の覚悟があったかこそ、ユーフィたち猟兵は此処まで至ることができたのだ。
 猟兵と妖怪。
 彼等のどちらかが欠けても、『大祓骸魂』を止めることはできなかったことだろう。
「行きますよぉっ!これが森の勇者の、一撃ですっ!」
 群れる骸魂たちを押しのけて、ユーフィは『大祓骸魂』へと組み付く。
 レスラーとして、森の勇者として、勇気ある行動こそが彼女の足を進めさせるのだ。
 組み付いた手のひらから『虞』が伝わって、己の身体を引き裂かんばかりに噴出していく。
 血が噴出し、痛みが体中を駆け巡っていくが関係ない。

「一人の愛がみんなの愛に勝るなんて、そんなことなんて絶対にないのです」
 スープレックスで『大祓骸魂』を投げ飛ばし、さらに飛び込んでいく。
 両足を揃えたフットスタンプの一撃が『大祓骸魂』へと炸裂する。これがプロレスの打撃というものであると、彼女は彼女の愛を語る。
 身体全体でもって、己の全身全霊の愛と勇気だけで、『大祓骸魂』を圧倒せしめるのだ。
「『虞』なんて知りません! わたしの胸にあるのは勇気!」
『虞』が身体を引き裂いても、前に進むことをやめない。

 どれだけの痛みがあっても、苦しくても。
 それでも誰かのために戦える者にこそ、勇気は宿るのだから!
「トランスバスター!」
 踏み込んだ先にあったのは『大祓骸魂』の赤い瞳だけであった。驚愕に震えるでもなく、慄くでもなく。
 ただ、己の愛のためにだけ全てを滅ぼさんとする意志だけが宿る瞳。

 それを真正面から見据え、ユーフィは己の力の限りを振り絞って『大祓骸魂』をスカイツリーの最上部『ゲイン塔』に叩きつける。
 へし折れる『ゲイン塔』。
 其の残骸の上にユーフィは立ち、宣言するのだ。
「わたしたちは絶対に負けることなんてないのです――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「今回の戦争はつまんなそうだなぁって思ってたけど、やっと喰える敵さんが出てきてよかったよかった。」
…さァて愉しい楽しい殺り合いの時間だ。噛み砕いて吸い尽くして殺してやる。

真の姿を晒して戦う。
んでもって、UCで二振りの大鎌を複製。ついでに周囲にArgentaも放って槍と大鎌で戦場を覆い尽くし、全方位から敵をバラしにかかる。
敵の攻撃は複製した大鎌や槍で防いでいき、敵に近づく為に周囲の大鎌や槍を足場にして敵へ突貫し吸血を狙う。
切り裂いて串刺しにすれば、ワンチャン一噛み出来るだろ。

「愛だなんだは興味がねェんだよ、オレは。」
小難しい話は置いといて殺り合いを楽しもうぜ?



 叩きつけられた究極妖怪『大祓骸魂』の身体がスカイツリーの最上部『ゲイン塔』へと激突し、その鉄塔がへし折れる。
 その残骸に押しつぶされながらも、吹き荒れる『虞』は神智を超えたものであり、残骸を容易に吹き飛ばし、周囲に破壊を齎すのだ。
 ゆらりと立ち上がる『大祓骸魂』の表情は変わらぬものであったけれど、たしかに消耗している。
 追い詰めていると猟兵達に実感させるには十分なものであったことだろう。
「私の愛が敗れるなんてありえないのです。私の愛こそが唯一にして絶対。だって、そうでしょう? 私はこんなにもあなたを、UDCアースを愛しているのですから」

 それは妄執の如き愛であった。
 誰もが否定することができるが、誰もが否定のできぬ愛。
 誰もが抱える愛であったけれど、誰もが抱えきれぬ愛。
「今回の戦争はつまんなそうだなぁって思ってたけど、やっと喰える敵さんが出てきてよかったよかった」
 ぼんやりとつぶやくようにスカイツリーの最上部へと現れたのは、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)であった。
 彼にとって敵さんとはオブリビオンであり、吸い殺すことのできる相手である。
 己の身体を苛む常なる吸血衝動の代償として、彼は常に他のなにかで代用してきた。
 その衝動を開放できる唯一の相手がオブリビオンである。

 しかし、オブリビオンたちは元は妖怪たちである。
 彼等を傷つけ、吸血衝動のままに貪ることは莉亜にはできぬことであった。
 そのフラストレーションが溜まりに溜まったのかは定かではない。けれど、圧倒的な『虞』を前にして猟兵たちが窮地であると感じるように、莉亜もまた真の姿をさらけ出す。
 六翼の翼を羽ばたかせ、吸血鬼としての姿をさらけ出すのだ。
「出し惜しみなんてするもんかよ。愉しい楽しい殺り合いの時間だ。噛み砕いて、吸い尽くして殺してやる」
 その瞳がユーベルコードに輝く。

「ああ――バラバラにした方がいっぱい血が出るよね?」
 ユーベルコードによって複製された二振りの大鎌と無数の銀槍が空へと舞い上がる。対するは『生と死を繋ぐもの』と呼ばれる懐刀の複製。
 互いに数は十分過ぎるものであった。
 雨のように降り注ぎ、天へと放たれる大鎌と槍の致死舞曲(チシブキ)は、スカイツリーの空に激突する凄まじい火花を咲かせるのだ。
「それができるとでも。私の愛の前に、あなたは敗れるのですから」

 世界一つを滅ぼして永遠のものにせんとする『大祓骸魂』の想いは、たしかに凄まじいものであったのだろう。
 身にまとう『虞』がそれを証明しているようでもあった。
 けれど、莉亜にとって、それは関係のないことだった。だって、そうだ。自分は敵さんをオブリビオンを吸い殺したいのだ。
 世界が、とかなんてそんなことは関係ないのだ。

 空を舞う銀の槍を足場に莉亜は空を舞う。
 突貫する彼の身体を引き裂く『虞』と『生と死を繋ぐもの』。けれど、即座に再生しては、飛び上がっていく。
「愛だなんだは興味がねェんだよ、オレは」
 小難しい話でしかない。
 そんなものは、今この時間には必要無いのだというように莉亜の瞳がギラギラとした吸血衝動に輝く。

 手にした大鎌を振るい、『虞』を切り裂いて、切り裂いて、突き進む。 
 どれだけガードが硬かろうが、修復する以上の早さで切り裂けば関係などないのだ。
「単純な話ですよ、至極。あなたは愛を解さない獣……ならば、私には関係のないことです。あなたの愛を」
「だァからァ! 興味ねェっつってんだろう!」
 手にした二振りの大鎌が振るわれ、十字に切り裂かれる『大祓骸魂』の胸元。
 血が噴出し、その血の一滴が莉亜の口元に入り込む。

 その味は甘美なるものであったことだろう。
 けれど、瞬時に味が消えていく。消え去っていく。全ての人々から忘れ去られた極上なるひとしずく。
 けれど、それを形容する暇すらも与えてくれぬ後味。
 記憶から消えていく味を莉亜は張り合い味だと語るかもしれない。
「やっぱり愛だなんだの小難しい話なんてどうだっていい! 殺り合いを楽しもうぜ? なぁ――!」

 スカイツリーの上空で互いが激突し続ける。
 その絢爛なる剣戟の音は、いつまでも響き渡るように血風の中に消えていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
愛という言葉に対して特段思い入れもありませんし、あなたがそれが愛だというのであれば、否定はしません。
ただ、あなたがあなたのために事を成すのであれば、私は私のためにあなたを止めます。

【氷炎殺界】を使用、真の姿に変身し、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸と「ラグナロク」からの炎の弾丸の『乱れ撃ち』『弾幕』で複製された懐刀を撃ち落とします。

時間をかければどんなものでも殺せるという触れ込みの武器、それに対してこちらは時間をかければかけるほど理性がなくなり不利になる。
であれば、短期決戦しかありませんね。

ある程度懐刀を撃ち落としたら敵が操作する懐刀の中を突っ切り接近、零距離から炎と氷の弾丸を撃ち込みます。



「ああ、愛なくば人は生きられないというのに。それでもなお、猟兵は私の愛を否定する。私の愛が成就することを拒むのですね」
 究極妖怪『大祓骸魂』は嘆いた。
 己の愛を阻む猟兵は、どれだけ打ち払ったとしてもスカイツリーを駆け上がってくる。
 複製されていく懐刀『生と死を繋ぐもの』は未だ最後の一太刀を振るうことができず、UDCアースを殺すこともできない。
 鈍らであれど、時間さえかければ必ず世界すらも殺してみせる懐刀は猟兵達によってことごとくが防がれてきたのだ。

 なんとしても殺したい。
 世界を、愛おしきUDCアースを。そして永遠のものにしたいのだ。
「愛という言葉に対して特段思い入れもありませんし、あなたがそれが愛だというのであれば、否定はしません」
 スカイツリーを駆け上がってきた猟兵、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は『大祓骸魂』と対峙し、告げる。
 すでに多くの猟兵たちが『大祓骸魂』と戦い、彼女を消耗させている。胸居刻まれた十字傷や、祓われた『虞』の残滓が漂う中、無数の『生と死を繋ぐもの』が宙に浮かび、セルマを狙い撃つ。

 しかし、彼女はこの窮地に置いて真なる姿を晒す。
 氷と炎。
 二つの相反する力を振るう真の姿。
 耐火性のない衣類を脱ぎ捨て、炎と冷気を纏う真の姿。
「ただ、あなたがあなたのために事を為すのであれば、私は私のためにあなたを止めます」
 手にしたマスケット銃『フィンブルヴェト』と炎を放つ『ラグナロク』を構え、セルマは飛来する懐刀の雨を打ち払うのだ。
 弾幕を形成する炎と氷の弾丸は、スカイツリーの空に氷と炎の乱舞を見せつけ、懐刀を次々と落としていく。

 一部の隙もないほどの弾幕。
 互いに手数が勝負であることはわかっている。気を抜いた方が、押し負けた方が敗れ去ることは必定である。
 だからこそ、セルマは短期決戦を狙う。
 真なる姿は、それだけ己の理性を喪失させるのだ。相性が悪いと言ってもいい。けれど、それでもセルマの瞳はユーベルコードに輝き続ける。
「――ッ!」
 理性を喪ったセルマの瞳から氷と炎が噴出するようにスカイツリーの空に軌跡を刻み込む。

 懐刀『生と死を繋ぐもの』は時間さえかければ何でも殺してしまう。
 だからこそ、セルマは疾走るのだ。
 トリガーを引く指の重ささえも忘れ去ったように、セルマの理性は擦り切れていく。熱さも、寒さも、何もかも忘れ去ってしまう。
 感じない。
 けれど、彼女の脳裏に在ったのは、いつだって師の教えであったことだろう。

 どれだけ理性を喪ってもなお、彼女の体に染み付いたのは、あの日まで教えてくれた師の言葉であった。
 手にした銃を巧みに操りながら『大祓骸魂』へと迫るセルマ。
 突っ切るように走っていく彼女の視界に懐刀の群れはもう無い。
 氷と炎による空気の膨張によって宙を舞う懐刀は吹き飛ばされ、『大祓骸魂』へと一直線の道を生み出したのだ。
「あなたの愛が、あなたを走らせるのですね。けれど」
 それでも『大祓骸魂』は殺す。
 世界を殺すことをやめられなない。

「それが私の――」
 愛であるから。
 けれど、その言葉は紡ぐことはできなかった。理性を喪ってもなお、セルマの動きは獣じみていながらも人の動きであった。
 長年に渡って染み付いた人の練磨。
 その結実が今、『大祓骸魂』の手のひらを炎の弾丸が打ち抜き、ガードを跳ね上げさせるのだ。

「逃しません……あなたは、ここで殺す」
 振り絞るように言葉が紡がれる。
 セルマの突きつけた『フィンブルヴェト』の銃口が『大祓骸魂』の胸元にあてがわれ、ゼロ距離の躱しようのない氷の銃撃が、スカイツリーの上空に木霊し、鮮血を迸らせ、彼女の体を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫川・芙美子
彼女が愛の為に世界を殺すなら、私は正義の為に世界を守ります

装備に封じられた全妖怪の【封印を解き】放出。皆で行こう
「雲外鏡」の【情報収集】で道筋を調べ、全てを喰らう【大食い】の獣「饕餮」に乗り高速移動。邪魔物は食べて貰って突破
「影女」の力で【闇に紛れ】姿を隠しすり抜けたり、生死の境を操る「蝶化身」の【結界術】で死者の想いを退けたり手を尽くします

頂上に着いたら真の姿、獣じみた異形の子供に変化
同時に身体に封じられていた四体の鬼を放出。鉤爪による波状攻撃

本当は今の人間達の身勝手さは好きじゃない
だけど未来に向かって少しずつでも正しくなろうと努力してる世界は好き
だから私は正義の味方なの
未来を殺させはしない



 氷の弾丸が究極妖怪『大祓骸魂』の胸を貫く。
 赤き血潮が吹きすさびながらも『虞』が傷跡を埋めるように放出される。凄まじい激痛が彼女を襲っているであろうが、彼女の微笑みは絶えることはなかった。
「私の愛は、それでも止まらない」
 複製される懐刀『生と死を繋ぐもの』。
 それらが無数に宙へと浮かび上がっていく。どうしようもない数であった。
 多くの猟兵たちが集い、消耗させても、些かも陰ることのない愛。それが『大祓骸魂』を突き動かすものであったことだろう。
 止まらない、止められない。
 救うことすらできぬ存在。それが『大祓骸魂』であるというのならば、猟兵達は慄くだろうか。

 答えは否である。

「あなたが愛のために世界を殺すなら、私は――」
 そう、何度だって立ち上がる。
 何度だって立ちふさがる。世界の悲鳴を聞き届ける者がいる。そう、猟兵であり、姫川・芙美子(鬼子・f28908)であった。
「私は正義のために世界を守ります」
 彼女の身にまとう全てに封じられた全妖怪の封印を解き、放出する。
 出し惜しみなどできようはずもない。
 在るのは、ただ正義のために世界を守るという芙美子の意志だけであった。見据える先にあるのは『大祓骸魂』。
 しかし、無数の骸魂が群れを為し、さらには懐刀『生と死を繋ぐものが』が雨のように降り注いでいる。

 けれど、問題なんて無いのだ。
 すでに道筋は見えている。
「『雲外鏡』! 『饕餮』!行くよ!」
『大祓骸魂』へと至る道筋を見つけ出し、総てを喰らう獣である饕餮にまたがり、芙美子はスカイツリーを駆け上がっていく。
 邪魔者である骸魂の全てを食らい付くしながら、饕餮は駆け上がっていく。
 鈍らと呼ばれた『生と死を繋ぐもの』が無数に体へと突き刺さってもなお、饕餮は駆け上がることをやめなかった。

「『影女』! お願い……!」
 闇に紛れる饕餮と芙美子。
 どれだけ傷を追っても関係ない。それが強迫観念の如き、己の身から湧き上がる情動であったのだとしても芙美子は止まらない。
 だって、自分で決めたことなのだ。
 自分がそう在りたいと、正義の味方でありたいと願ったからこそ、今の自分がいるのだ。

 そこに誰かから言われたからとかではない。そうしたいと自分で決めたからこそ、彼女の身にまとうもの全てに封印された妖怪たちが応えるのだ。
「『蝶化身』!」
 死者の想いを退け、阻む者全てを破りながら芙美子はスカイツリーの最上部へと駆け上がっていく。
 『ゲイン塔』は激しい戦いでへし折れている。饕餮だって無数の傷を受けて、芙美子を最上部へと届けて、倒れ伏した。

「ああ、なんて。なんてことでしょう。それがあなたの愛ですか?」
『大祓骸魂』は嘆くようでもあったが、たおやかな微笑みは変わらなかった。彼女にとって必要なのは愛だけだ。
 己の愛だけがあればそれでいいのだ。
 だからこそ、芙美子の、妖怪たちが抱いた覚悟などどうでもよかったのだ。

「本当は今の人間たちの身勝手さは好きじゃない」
 芙美子の身体が変わっていく。
 獣じみた子供の姿。それが真の姿であることは言うまでもない。彼女はそれを恥じるだろうか。
 わからない。
 けれど、確かなことがある。どれだけ己の姿を謗られようとも、変わらぬ心に抱いた正義の心だけが彼女の足を突き進めさせるのだ。
 四体の鬼が放出され、芙美子と共に駆け出す。

 これが彼女の全部だった。
 彼女の妖魔夜行(ヨウマヤコウ)だった。渾身の力を振り絞り、芙美子は究極妖怪『大祓骸魂』へと迫る。
「だけど未来に向かって少しずつでも正しくなろうと努力している世界は好き」
 迸る思いが、彼女の力を増大させる。

 愛おしき世界を守らんとした妖怪たちの覚悟に後押しされるように芙美子は鉤爪を振るう。
 鬼たちが『虞』に振り払われても関係ない。
 彼女は目指すのは、ただの一撃である。
「だから私は正義の味方なの。未来を殺させはしない――!」
 裂帛の気合と共に放たれる鉤爪の一撃が、最上段から振り下ろされ、『大祓骸魂』の身体へと袈裟懸けに刻まれる。

 そう、芙美子は正義の味方なのだ。
 ただそれだけで、彼女は戦い続けることができる。未だ見ぬ未来を、取りこぼされてしまいそうな可能性を、それらを守るためにこそ、彼女は力を発揮するのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャム・ジアム
故郷と同じ地球の名を持つ世界
海岸で遊んだわ
カジノでも
どこでも、必死に生きる人がいた
妖怪たちも同じ

貴女の愛が世界と沈み、止め置くことなら
ジアムは嫌。あの人たちは過去じゃない

搭乗席に、幽世の幻朧桜がくれた花びらの包み。力を貸して
『疾影』と真の姿を解放し
『目黒さん』に『護り現』を纏わせ天へと
鬼に染まる妖怪に紛れ高く高く

『朱雷枝』へ切り裂く念の力を集めながら『紙牌』を放つ
虞に触れれば軌道が変わる きっと知らせて。レモンの蔦にもおまじないをかけたわ
貴女は素敵な世界をつくった
仮初めでも、彼らが生きられる世界
好きな人といたいのね、でも
ジアムは皆に進んで欲しい

桜と覇気纏う目黒さんの合図で、華と共に彼女を裂くわ



 愛おしき世界。
 その名をUDCアースと言う。似た名前を持つ世界、その世界に生まれ落ちたバイオモンスターであるジャム・ジアム(はりの子・f26053)にとっても、UDCアースは護るべきものであった。
 愛しているからこそ殺そうとする究極妖怪『大祓骸魂』とはまるで真逆であった。
 愛しているからこそ、護ろうと願う。
 数多の思い出亜が在った。
 海岸で遊んだ記憶がある。冷たい海水。春を知らせるような風。カジノでも楽しげに遊んだ。
 どんなときでも、ジアムは心のなかに楽しさを見出す。

 それはきっと世界に対する愛があるからこそであったことだろう。
 そう信じたいと願う心があったからかもしれない。そこが『大祓骸魂』とは決定的に違う点であったのだ。
「猟兵は、どうして私の愛を否定するのでしょう。何も変わらず、滅びず、ずっとずっと同じままに続く今日が在るというのに」
 愛とは、そういうものであると彼女は言う。
 変わらぬままに、愛する。変化することも、滅びることもない。ただ、同じ一日が過去に続くだけの世界。

 ジアムはそれを否定する。
「どこでも、必死に生きる人がいた。妖怪たちも同じ。貴女の愛が世界と沈み、止め置くことなら、ジアムは」
 嫌、とつぶやいた。
 それは否定の言葉であった。けれど、同時にジアムにとって愛する人々を肯定する言葉でもあった。
「あの人達は過去じゃない」
 疾影、と小さくつぶやいて、虚空より顕現するサイキックキャバリアのコクピットの中にジアムは思い出の幻朧桜の花弁が満ちるのを感じていた。

 あの楽しい日々は確かに過去かも知れない。
 けれど、今を生きる人々は過去じゃあない。だからこそ、この花弁はジアムに力を貸してくれるのだ。
『疾影』を駆り、ジアムは真の姿を開放する。
「ジアムは、みんなのために戦うの。人を過去にするなんてできない。世界を過去になんてさせない。たとえ、それが愛であったとしても――!」

 噴出するサイキックの力が翼のように『疾影』から噴出し、空高く飛び上がっていく。
 同時に放たれる神智を越える『虞』が襲いくる。
 あらゆるものを引き裂き、破壊し、亡き者にする力。四人の親分たちをして化け物と呼ばせた『大祓骸魂』の力は凄まじいものであったことだろう。
「愛であればこそ、私は殺すのです。何をしてでも。必ず殺すのです」
 そうすることで己の愛が完結するのだと『虞』がぶつかったスカイツリーの空間が狂い咲く赤いヒガンバナに染まっていく。

 ましていく重圧に『疾影』の身体が震えている。
 けれど、ジアムはコクピットの中でそっと呟くのだ。大丈夫だよ、と。天高く舞う鳥型ロボに纏わせた護り現が骸魂たちにまぎれて高く高く舞い上がっていく。
 手にした巨大なしなる柄を持つ白銀の大鎌が朱に揺れ、鞭のように骸魂を引き裂いて、『大祓骸魂』へと迫る。
「貴女は素敵な世界を作った。仮初でも、彼等が生きられる世界を」
 切り裂く白銀の大鎌が朱に染まっていく。
 コレクションデッキから、これまで紡いだ戦いの軌跡がジアムに力を与えてくれる。
『虞』に刃が触れた瞬間、伸びるレモンの蔦が、スカイツリーの周囲に這うように生い茂り、ヒガンバナを侵食していく。

 力がみなぎってくる。
 どれだけ『大祓骸魂』が強大な妖怪であったとしても、ジアムは関係ないと叫ぶのだ。
 だって、彼女の語る愛は、あまりにも寂しすぎる。
 それは誰かと共にいたいと泣く子供のようなものであったから。
「好きな人といたいのね」
 それは自分も同じだ。
 誰かと共にいたい。好きな人と語り合っていたい。いつまでも、いつまでも。それこそ永遠に届く時間であっても足りないとおもってしまうのだ。

 けれど。
 そう、けれど。それでもジアムは想うのだ。猛る毒蔦(タランテラ)が『大祓骸魂』の身体を締め上げ、固定する。
 わかるのだ。
 痛いほどにジアムの胸に伝わる『大祓骸魂』の愛。
 共に在りたい。忘れてほしくない。愛を、愛を、愛を、と叫ぶ彼女の心がジアムの思いを切り裂くようであった。

「それでもジアムは皆に進んで欲しい」
 桜の花弁が『疾影』の装甲のあちこちから噴出して、吹き荒れる。
 それはまるで桜花嵐のように『大祓骸魂』を取り囲み、空より舞い降りた『目黒』の合図と共に振り上げた大鎌の一撃が打ち込まれる。

「貴女の愛はジアムが覚えておいてあげる。それなら、きっと」
 寂しくなんて無いでしょう、とジアムは桜花嵐の中に切り裂かれる『虞』に別れを告げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・多摘
③霊的防衛装置を駆使して塔を守る

狂える愛は全てを壊し歪める。
世界を殺す愛であるならその愛を果たす前に滅ぼしてくれようか。

我が使用するは御札射出装置。
龍符に式神を降霊して我と装置の周囲に防衛結界を展開する補助を行わせつつ陰陽師として装置に細工。
装置から放たれるはずの札に破魔の霊力を追加で込めて向かってくるオブリビオンの群に射出して足止めさせる。
可能なら天候操作で季節外れの吹雪を起こし視界を封じた上で札を喰らわせ対処を困難にさせよう。
装置を起動し足止めしている間に仙術で霊力を練り上げつつUC起動。
氷の属性を込めた全力を込めたブレスを大祓骸魂に放ち抵抗力を削ぎ取ってくれようぞ。

※アドリブ絡み等お任せ



 桜花嵐に巻き込まれるようにスカイツリーの最上部である折れた『ゲイン塔』の根元に究極妖怪『大祓骸魂』は倒れ伏す。
 その傷は浅からぬものであったけれど、未だ身にまとう『虞』は凄まじいものであり、周囲に集まっってくる無数の骸魂は未だ百鬼夜行と呼ぶにはあまりにも強大であった。
 どうにもならぬほどの圧倒的な存在。
 それが世界を殺す愛だというのであれば。
「狂える愛は全てを壊し、歪める。世界を殺す愛であるなら、その愛を果たす前に滅ぼしてくれようか」
 水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は、かつてUDCアースで邪神たちを滅ぼした竜神達の一柱である。
 すでに民の信仰の力を喪ってこそいるが、それでもなお彼の心の中にあるのは、守れなかったものへの後悔と邪神たちへの根絶を誓うものばかりであった。

 ゆえに彼は塔、すなわちスカイツリーを護るために霊的防衛装置を駆使するのだ。
 龍符に式神を降霊し、多摘と防衛装置の周囲に防衛結界を張り巡らせる。
「いいえ、愛は必ず果たされるものです。滅ぼしきれるものではないからこそ、愛というのです。私の愛は、必ずUDCアースを殺す。愛おしき世界を、必ず、殺して私と共に骸の海へと沈むのです」
 立ち上が在る『大祓骸魂』の表情にあるのは、たおやかな微笑みだけであった。
 赤く輝くユーベルコード。
 瞳にあったのは、妄執の愛そのものであった。

 時が流れた今でも多摘は背筋に疾走る重圧を感じたことだろう。
 大いなる邪神。
 それが『大祓骸魂』である。四人の親分をして化け物と呼ばしめた『虞』。それを受けてなお、装置に群がる骸魂たちを放たれる御札に破魔の霊力を込める。
 打ち込まれた御札によって骸魂たちは足を止められるだろう。

 けれど、それだけでは止まらない。
「季節外れの吹雪じゃが!」
 竜神としての力の発露によって、天候が操作され、曇天を割り、覗いた蒼穹より降り注ぐのは猛烈なる吹雪であった。
 骸魂たちは視界を奪われ、『大祓骸魂』さえも多摘を認めることはできなかったことだろう。

「暴れるな。一層に苦痛が長引く」
 彼の瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、防衛装置である御札射出装置は時間稼ぎでしかなかったのだ。彼にとって、このユーベルコードの一撃こそが本命である。
 骸魂たちは邪魔をしようにも御札と吹雪によって駆けつけることはできないだろう。
 一直線に穿たれた道を彼は走り抜け、輝くユーベルコードによって放たれる悪霊龍の息吹(ドラゴンブレス)を『大祓骸魂』へと解き放つのだ。

 それは浸透する霊力と呪詛によって生命力を奪い、抵抗力をそぎ取る無数の黒き荊棘となって『大祓骸魂』の肉体をスカイツリーの最上部へと抑え込むのだ。
 さらに氷の属性のブレスによって、彼女の身体凍りついていく。
「ああ、それでも私は――」
 そう、それでも止まらない。
 世界を殺すことを諦めない。
 たった一つの愛のために狂える『大祓骸魂』は力を発露させ続けるだろう。

 多摘はわかっている。
 彼女が狂っていることも、その愛ゆえに全てを滅ぼさんとしていることを。
「だからこそ、止めねばならぬ。我々は人々の感情を持って生きるもの。ならばこそ、我らを必要としなくなった人の子らの成長を喜び、忘れられるべきなのだ」
 そこにオブリビオンの存在も、邪神の存在も必要無い。
 後悔を残さぬためにこそ、彼は戦うのだ。

 二度目を繰り返さぬために。
 愛と語る破滅を為さしめることのないようにと、嘗て在りし強く賢く偉大な龍神であった在りし日を幻視させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
愛は揺るがない、か。
構わないとも。その不変の愛を抱いたまま骸の海に還るがよい。
UDCアースも不滅ではない。遥かな未来、骸の海に行くこともあるだろう。
それまで待っていることだね。

真の姿へ。(といっても外見の変化は瞳の黄金が輝くのと身に纏う赤が深くなる程度です)

敵WIZUCに対して。
神智を越えた虞か……無価値だね。(『オージンの言詞』にて掻き消し)
とどめはステラ任せ。

大祓骸魂。君の愛が真実不変であるのであれば嘆くことはない。
骸の海で眠っていたまえ。何十億年の未来も過ぎてしまえば一炊の夢に過ぎないさ。

ステラ(f13273)と。


ステラ・リデル
殺すことにより完成される愛ですか。
気持ちは分かり……いえ、分かりませんね。私ならば殺されたい。
いずれにせよ貴女の愛を成就させるわけにはいきません。
この世界には貴女以外の愛も溢れているのですからね。

真の姿を晒します。(JC参照。神様モード)

シーザーのUCにより敵UCが無効化されたタイミングで『破剣乱舞』を発動。
消滅を齎す千の魔剣全てを全方位から大祓骸魂に放ちます。

さようなら、大祓骸魂。

シーザー(f00256)と。



 凍りつき、その身を荊でもってスカイツリーの最上部へと押さえつけられた究極妖怪『大祓骸魂』は、それでお諦めない。
 そう、愛の前にはすべてのことが些事である。
 己の身体も、己の生命さえも、彼女にとっては関係のないことであった。
 氷を砕くように無理に身体を動かすものだから、彼女の身体はひび割れたように傷跡が開いていく。
 かまわない。
 構ってなどいられない。一刻でも早く、愛おしきUDCアースを殺さなければならない。
 少しでも早く過去にしなければならない。骸の海へと沈め、不変のものに。不滅のものに変えなければならないのだ。
「私の身が何度滅ぼたって惜しくはないのです。私の愛が、不滅の、永遠のものであると証明されるのであれば、それでいいのです」
 彼女の震えるような慟哭を前に二人の猟兵が対峙する。

「愛は揺るがない、か」
 真紅のスーツに身を包んだ美丈夫がつぶやいた。
 それは哀れみでもなんでもなかった。ただの事実であった。揺るがぬ愛。真実の愛。
 言葉にすれば陳腐であるかもしれないけれど、『大祓骸魂』からシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)はたしかにそう感じたのだ。
「かまわないとも。その不変の愛を抱いたまま骸の海へと還るが良い」
 そう、UDCアースとて不滅ではない。
 どれだけ時間がかかるかわからないけれど、はるかな未来に骸の海へと落ちてくることもあるだろう。

 だが、それは今ではないのだ。
「それまで待っていることだね」
 彼の姿が変わる。
 いや、外見が変わったのではない。彼の瞳が黄金二輝き、身にまとう赤色が深くなっていくだけだ。
 生命の埒外である猟兵にとって、その変化は些細なものであったかも知れない。

 その隣でステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は理解ができないようであった。
「殺すことにより完成される愛ですか。気持ちはわかり……いえ、わかりませんね」
 私ならば、とつぶやく言葉はあまりにも物騒な言葉であった。
 そう、『私ならば殺されたい』。
 それは願いというよりも、祈りであったのかもしれない。
「いずれにせよ、貴女の愛を成就させるわけにはいきません。この世界には、貴女以外の愛も溢れているのですからね」
 その瞳が黄金にかがやく。

 確かに周囲に渦巻く『虞』は神智を超えたものである。
 しかしシーザーとステラは慄くことはなかった。
「神智を超えた『虞』か……無価値だね」
 その否定の言葉は、オージンの言詞(デウス・ウォカーブルム)である。
 彼のユーベルコードは否定の言葉を紡ぐことによって『虞」を無効化する。
 かき消した『虞』は、周囲に変化を齎すことなく霧散していくのだ。
「私の『虞』が消えていく……はらったのではなく、否定……それが貴方の力。私の愛をも否定しますか」
「ああ、そのとおりだ。私は言ったはずだよ。かまわないと。その愛を抱いているのを。けれど、そのまま骸の海へと還ることが最善だと想うがね。君が願う愛は、必ず骸の海へと落ちてくる。そこに救いがあるとは思わないかね」
 そう、嘆くことはないのだとシーザーは告げる。
 眠っていればいいのだ。

 そう、何十億年の未来も過ぎてしまえば一炊の夢に過ぎないのだと。
 必ず手に入るのだと。
 けれど、今を欲するのならば、シーザーは否定しよう。
「ステラ、任せた」
 シーザーの否定の言葉が『虞』をかき消した瞬間、ステラの瞳がユーベルコードにかがやく。
「終末に降り注ぐ、第二の騎士の刃、その身で受けなさい」
 それは触れたものを消滅させる魔力で出来た剣。
 無数に顕現した剣は、『大祓骸魂』を包囲し、千の魔剣でもって全方位からの飽和攻撃を敢行させる。

 それはまさに、破剣乱舞(ブレイド・ダンス)と呼ぶに相応しき光景であったことだろう。
 愛に生きて、愛に死ぬ。
 とても喜ばしいことだろう。
 一片の悔いも残らぬであろう。だからこそ、ステラは告げるのだ。別れの言葉を。
 再会することは最早ないだろうから。
「さようなら、『大祓骸魂』――」
 きっと望むものが骸の海で手に入りますように。

 その愛がきっと報われる時が来るようにと、放たれた千の魔剣が『大祓骸魂』を貫き、その身を砕く姿を見下ろす二柱が見送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
【勇者パーティ】
「『時間をかければ誰でも何でも殺すことができる』か……
あの懐刀を使えば、死ぬことの許されぬ不死の身体となった我にも、死をもたらすことができるかもしれぬな……」

これまで不老不死の呪いを解く方法を探して様々な世界を旅してきたが、ようやくその手段がみつかったかもしれぬ。
あれさえ手に入れれば、我も死ねるかもな……

「大祓骸魂よ、その懐刀を使わせるわけにはいかん!
その懐刀は我の呪いを断ち切るために使わせてもらう。
殺してでも奪い取ってくれるわ!」

箒に乗ってターボ移動しつつ、仲間と連携して【竜滅陣】で攻撃だ!

「って、何をするルクス!
懐刀がなくては、我、死ねぬではないか!」(ちょっと嬉しそう


シャイン・エーデルシュタイン
【勇者パーティ】
「『時間をかければ誰でも何でも殺すことができる』ですか……
あのナイフを使えば、神の定めし生と死の理を破り、この世に蘇ってしまった私にも罰を与えてもらうことができるかもしれませんね……」

仲間たちとの再会が懐かしくて、思わず越えてはならない一線を越えてしまった私ですが、そろそろあの世に戻る潮時かもしれませんね。
あのナイフを手に入れて自分に使い、神の御下に向かいましょう……

「大祓骸魂、そのナイフはいただきます!」

真の姿である悪霊となり、仲間と連携して【連鎖する呪い】で攻撃です!

「って、ルクスさん!?
これでは、これからも皆さんと一緒にいないといけないではないですか!」(ちょっと嬉しそう


サージェ・ライト
【勇者パーティー】
お呼びとあらば参じましょう

そう、私たちは戦い抜いてきました!

ハチヨン駆を開幕進路妨害で勝利し
黄金はくすねようとして失敗し
うっかりシャインさんが復活しました!
そして電話ボックスは壊しかけ
ターボ婆ちゃんは普通に戦った気がします!

そんな私たちが…あるぇぇぇ!?
フィアさんもシャインさんもこれまでのノリどーしたの?!
え?私のこと忘れた……?
ツッコミもできる胸の揺れるシーフ…
アッハイ、今日はシリアスですね

ではビシッと決めましょう!
真のクノイチ(真の姿)、解放です!!
【電光石火】で仕掛けます
ルクスさん、トドメは勇者のお仕事ですよ♪

なるほどこれがツンデレ'sってやつですねー(見守りクノイチ)


ルクス・アルブス
【勇者パーティー】

師匠? シャインさんまで、どうしました!?

いきなりテンションチェンジされてもですね?
こう、初出の設定とか多すぎて処理がですね?

あ、今回はそういう回なんですね。

ではでは戦う流れですし、
そうなるとここからは勇者のお仕事です!
「『大祓骸魂』、光の勇者の名において、あなたを倒します!」

わかりましたサージェさん!
ラスボスへのトドメは勇者の誉れ!

真の姿に変身したら【ルジェッリ】をとりだして、
【Canon】で破壊音波を発生させ、『大祓骸魂』にはダメージを、
そして懐刀は……砕いちゃいましょう!

師匠とシャインさんに懐刀使わせるわけにはいきませんからね。

あ、ついでに世界も救えたら、嬉しい、かな。



 あっ、今回はそういう回なんですね。
 アッハイ、今日はシリアスですね。
 なんてとぼけた雰囲気は何処かに吹き飛んでいた。だってそうだろう。今は究極妖怪『大祓骸魂』との最終決戦である。
 いくら勇者パーティの四人組が楽しげで愉快で若干ポンコッツな雰囲気をまとっているからと言って、時にはそういうときだってある。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はちょっと驚いていた。
 だって、サージェはツッコミもできる胸の揺れるシーフである。そういうとこやぞって誰かがツッコミを入れてくれないかなって想うほどにはシリアスな雰囲気はどんよりしていた。

 フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は不老不死の呪いを解く方法を探して様々な世界を旅してきた。
 だからこそ、『時間をかければ誰でも何でも殺すことができる』と呼ばれる『生と死を繋ぐもの』は、己の呪いを解き放つための唯一の方法であったのかもしれないのだ。
 だからこそ、彼女はそれを追い求める。
 あれさえ使うことができたのならば、死ぬことすら許されぬ不死の身体となった己にも死を齎すことができるのかもしれない。
 己も死ぬことができるのかも知れない。

 その思いだけが、今彼女を突き動かしていた。
 同時に仲間たちとの再会が懐かしくて思わず『まぼろしの橋』を踏み越えてしまった己に対する罰を欲していたシャイン・エーデルシュタイン(悪霊として蘇ったクレリック・f33418)も同様であった。
「あのナイフを使えば、神の定めし生と死の理を破り、この世に蘇ってしまった私にも罰を与えてもらうことができるかもしれませんね……」
 シャインにとって、それはあまりにも甘美なるものであったことだろう。
 神の御下に向かうことが、今の己がすることではないのか。
 そう考えているのも無理なからぬことであった。

「師匠? シャインさんまでどうしました!?」
 なんかいきなりテンションチェンジされても正直困る。そんな風に、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)はサージェと共に二人を止めるのだ。
 初出の設定とか多すぎて処理がちょっと困るんすよ、とは誰の言葉であったことだろうか。
 だってそうだろう。
 サージェとルクス、フィアにシャイン。
 四人でこれまで『大祓百鬼夜行』をがんばって戦ってきたのだ。
 ハチヨン駆を開幕進路妨害で勝利したし、黄金はくすねようとして失敗ししたし、うっかり八兵衛みたくシャインは復活したし、電話ボックスは壊しそうになった。
 ついでにターボばあちゃんはまあ、その普通に戦ったなぁってサージェは思い出していた。

 四人だからこそ楽しかったのだ。あ、ちょっと楽しいとは別ベクトルな感情もあったのは事実ですが、まあそこはその、ゴニョって感じでごまかしてくれると嬉しいです。
「そんな私達が……これまでのノリを忘れてしまうなんて! え? 私のことも忘れた……?」
 あるぇぇぇ!? とサージェの目の前でシャインとフィアが『大祓骸魂』の座すスカイツリーを駆け上がっていく。
「大祓骸魂よ、その懐刀を使わせるわけにはいかん! その懐刀は我の呪いを断ち切るために使わせて貰う。殺してでも奪い取ってくれるわ!」
「大祓骸魂、そのナイフはいただいます!」
 箒にのってターボ移動しつつ、フィアは駆け上がっていくし、シャインは真の姿である悪霊と成って、ユーベルコードである連鎖する呪いを解き放つ。

 大魔術である竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)が轟音を轟かせ、『虞』を吹き飛ばしていく。
「愛ゆえに。あなた方も、そうなのですね。不変を、永遠を……否定してでも過去になりたい。思い出のまま、美しいままに。嘗て願ったことを、それを否定するために必要とするのですね」
 複製された『生と死を繋ぐもの』が宙を舞い、四人を射殺さんとばかりに迫る。

 多くの猟兵たちが戦い消耗させた『大祓骸魂』の動きは精彩を欠くものであったが、それでもまだ脅威としては十分すぎるものであったことだろう。
「だめですってば! お二人共!『大祓骸魂』さん! 光の勇者の名において、あなたを倒します!」
「そのとおりです。ビシッと決めましょう! 真のクノイチ、開放です!」
 フィアとシャインが放ったユーベルコードよりも先駆けるのは、電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の如く駆け抜けるサージェであった。

 彼女の真なる姿は真のクノイチ。
 ん? ならさっきまでのクノイチサージェは真ではなかった? あれ? となるのもわからんでもないが、今回はシリアスである。
 そんなことかまっては居られないのである。
 サージェの放った電光石火の如き斬撃は飛来する『生と死を繋ぐもの』をことごとく叩き落とす。
 それはルクスの願いでもあった。
 
 確かにフィアとルクスが望むものであったことだろう。
 けれど、ルクスはどうしても受け入れられなかったのだろう。
「不協和音じゃないです! 魔法ですから!」
 取り出したバイオリンから生み出される不協和音による破壊音波魔法が『生と死を繋ぐもの』を粉々に砕いていくのだ。

「って、ルクスさん!?」
「って、何をするルクス!」
 二人にとって、それはあまりにも無体な仕打ちであったことだろう。
 彼女たちが抱える願望、自罰。その二つを満たすことのできる『生と死を繋ぐもの』はもう二度と手に入らないかも知れないのだ。
 けれど、ルクスはそれを破壊する。
「師匠とシャインさんに懐刀を使わせるわけにはいきませんからね!」
 ついでに世界も救えたら嬉しいかな、って思ったのは秘密である。

 けれど、それは言外に伝わったようであった。
 シャインとクルスはなんだか二人揃ってちょっとうれしそうな顔をしていた。わりとただ漏れだけどなーってサージェは二人のツンデレを見やりうなずく。
 余計なことは言わないでおこう。 
 だって、二人がこんなにも嬉しそうなのだ。
「さあ、ルクスさん、トドメは勇者のお仕事ですよ♪」
 サージェが切り開いた花道の如き、『大祓骸魂』へと至る『虞』は取り除かれた。

 まーだフィアとシャインは、これからも皆と一緒にいけないとけいないじゃないですかぁとか、懐刀がなくては我、死ねぬではないか! とか悪態ついているが、まあ、あんまり関係ない。
 だって本心はよくわかっているからだ。
「というわけで、成敗させていただきますね!」
 手にしたヴァイオリンを振り上げ、その一撃を『大祓骸魂』の脳天へと叩き込む。
 ヴァイオリンってそう使うものじゃないけどなーってサージェは思ったけれど、やっぱり突っ込まなかった。
 
 そう、今回はシリアス回だからね――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
これは、金平糖スター?(鎖付き鉄球状の駄菓子)

大盾構え怪力で操る鉄球で妖怪達を蹴散らし突撃
攻撃する度に巨大金平糖から小型金平糖が小玉花火の如く弾け威力増強

まさか…今まで私が巡ったカクリヨの力が金平糖に…!

忘れられる事は哀しきことです
私の故郷が大地で暮らす時代の文化を無くしたように
ですが重ねた歴史は確かに存在し、形を変え、受け継がれ『永遠』を形作ります

愛した現世に似せ貴女が拵えた幽世
多くの妖怪が救われ、綺羅星の如く今を生きています
形を変えた貴女の愛の証として!

貴女の愛を、貴女の愛が永遠である証左で阻みましょう!

鉄球でかち上げスターごと上空へ
剣をスターへ投擲
炸裂させ夜空へ大輪の綺羅星咲かせて



 スカイツリーの最上部である『ゲイン塔』はへし折れ、究極妖怪『大祓骸魂』は消耗しきって、倒れていた。
 だが、それでも彼女を取り巻く『虞』は消えない。
 消え失せることはない。
 何故なら、彼女の抱える愛は未だ消えることを知らなかった。必ずやUDCアースを殺す。
 どんなに時間がかかっても、どれだけの犠牲をはらっても、己の生命がなくなってしまったのだとしても、やり遂げねばならぬ。
 その凄絶なる覚悟はあらゆるものを凌駕するものであったのだろう。
 胸に穿たれた銃創。刻まれた斬撃の痕、ひび割れた四肢。
 それだけの傷を受けてもなお、彼女は愛を微笑みで持って語るのだ。
「私の愛は不滅にして永遠。私が此処に在り続けるのが、その証拠。ああ、私はきっとやり遂げる。あとひと刺し。ただそれだけ終わるのです。世界を殺せる。愛しきUDCアースを過去に沈めることができる!」

 溢れるようにして情動と共に骸魂たちが百鬼夜行のようにスカイツリーから迫る猟兵達に降り注ぐ。
「忘れられることは哀しきことです。私の故郷が大地で暮らす時代の文化を無くしたように。ですが、重ねた歴史は確かに存在し、形を変え、受け継がれ『永遠』を形作ります」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は知っている。
 機械騎士であるからこそ、知っているのだ。
 人の営みが途絶えたのだとしても、そこには連綿と紡がれる別のなにかがあるのだと。
 形を変えても残るものがあるのだと知るからこそ、『大祓骸魂』の前に立つのだ。
「いいえ、私は永遠だけではなく不滅もほしいのです。私だけのUDCアースにしたいのです。私の腕の中で抱かれるUDCアースこそが、私の愛」
 迫る骸魂の群れを前にしてトリテレイアは引くことはしなかった。
 その手にあったのは、鎖付き鉄球状の駄菓子であった。何故これが己の手の中にあるのかをトリテレイアは理解してなかった。

 いや、よくわからないということのほうが正しかったかも知れない。
 そう、その駄菓子の名は『金平糖スター』。
 今まで彼が巡ったカクリヨファンタズムのちからが金平糖へと姿を変えたのだ。それがいかなる意味を保つのか、トリテレイアは知っている。
 知っているということは力だ。
 忘れ去られた大いなる邪神『大祓骸魂』が忘れられたからこそ知覚できなかったように、知るということはそれだけで力を増すのだ。

 手にした金平糖スターを怪力で持って振り回しながら迫る骸魂を蹴散らすように突撃する。
 振るうたびに激突する骸魂と金平糖。
 瞬間、巨大金平糖から小型金平糖が小玉花火の如く弾け、骸魂たちを巻き込んで吹き飛んでいく。

 その威力は言うまでもない。
「愛した現世に似せ貴方が拵えた幽世。多くの妖怪が救われ、綺羅星の如く今を生きています。形を変えた貴女の愛の証として!」
 それだけでは足りないという。
 過去に歪んだ存在は、代わりのなにかでは決して納得などしない。
 愛を、愛をと叫ぶ彼女はすでに狂っているのだろう。世界を殺すことで、己の愛を完成させる。

 ただそれだけのために力を振るう姿はトリテレイアにとって、捨て置けぬものであったことだろう。
「貴女の愛を、貴女の愛が、永遠である証左で阻みましょう!」
 そう、彼が手にしている金平糖スターが、まさにそれである。
 カクリヨファンタズムが生み出した忘れられた過去の駄菓子。その力の結実こそが、今振るわれるものである。
 機械騎士の精密攻撃(マシンナイツ・プリセッションアタック)によって放たれる金平糖スターの一撃は『大祓骸魂』へと迫り、そのスターと共に身体を上空へと勝ちあげるのだ。

「永遠である証左……?」
「そのとおり。これこそが、貴女が生み出した幽世によって生み出された力。貴女が愛した永遠が見せる泡沫の夢であったのだとしても!」
 打ち上げた『大祓骸魂』と金平糖スターへとトリテレイアは剣を投擲する。
 一瞬の後に、上空で爆散する金平糖スター。
 それは大輪の綺羅星のような光景であった。

 咲く大輪の華。
 それはきっと、トリテレイアがカクリヨファンタズムで感じた想いと覚悟の結果であったことだろう。
 誰もが忘れ去られていく。
 誰もが永遠を信じられないでいる。

 けれど、その華こそが永遠の証左。
 形を変え、姿を変え、紡がれていく歴史こそが愛であるとトリテレイアは、夜空を見上げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(プレイングB選択:迷宮のように改造された団地を利用して戦う)
…うーん…愛の形は人それぞれとはいうものの…あれって愛か…?
…まあ…祓うとするか…それが愛だとしても見過ごすわけにはいかないからね…
…術式装填銃【アヌエヌエ】で牽制しながら大祓骸魂を団地空間へと誘導……「生と死を繋ぐもの」を団地のドアや格子…手すりを利用して張り巡らせた術式組紐【アリアドネ】で防ぎながら目的の物…消火器の傍に大祓骸魂が来たら破壊…一時的に視界を塞ぐよ…
…そして【アヌエヌエ】を【アリアドネ】で団地のドアに固定、トリガーを引いて遠隔発射…
…位置を誤認させて別の場所から【慈悲深き死神の手】で不意を討って急所を抉ろう……



 金平糖の星が咲かせる大輪の綺羅星の如き光がスカイツリーの上空で炸裂するのを、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、迷宮のように改造された団地の屋上から見上げていた。
 ここは究極妖怪『大祓骸魂』が生み出した『カクリヨファンタズムが如き空間』である。
 猟兵たちにとって、ここは障害でしかないけれどメンカルにとっては違う。
 打ち上げられた光が消え、『大祓骸魂』が落ちてくる。
 四肢はひび割れ、胸元に刻まれた傷跡は無数。しかし、それでも立ち上がる『大祓骸魂』の表情は未だ微笑みのままであった。
「愛は消えない。愛は滅びない。私の愛は必ずや完遂されるのです。必滅の存在であるからこそ、愛があるのです。必ず、必ず滅ぼしてみせます。私の愛おしきUDCアース」
 彼女の狂気はとどまるところを知らなかったことだろう。

 身にまとう『虞』は凄まじく、宙に浮かぶ懐刀『生と死を繋ぐもの』が複製され、全天を覆う。
「……うーん……愛の形は人それぞれというものの……あれって愛か……?」
 メンカルにとって、『大祓骸魂』の語る愛は、愛とは言えぬものであったことだろう。
 どう考えても愛ではないと思ってしまうのだ。
 けれど、たとえ己が知らぬ、理解できぬ愛であったとしても見過ごすわけにはいかないのだ。
 術式装填銃『アヌエヌエ』から炸裂する術式によって飛来する懐刀を撃ち落としながら、メンカルは改造された迷宮団地の中を走り抜ける。

 猟兵の存在は『大祓骸魂』にとって邪魔でしかない。
 彼女の目的であるUDCアースを滅ぼすことは、猟兵を排除しなければ敵わないのだ。
 だからこそ、ひび割れた四肢でもってメンカルを負うのだ。
「どこに行こうというのです。滅びは必定。なればこそ、愛をもって滅ぼさなければならないのです」
 飛来する懐刀は、鈍らと言うけれど、時間をかければ必ず誰も彼もものすらも殺してみせる凄まじき力である。
 メンカルはそれらの攻撃を躱しながら、団地のドアや格子、手すりを利用して、張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』で防ぎながら、目的の元へとはしるのだ。

 そう、彼女が求めたのは消化器である。
「今だよね……」
『大祓骸魂』が消化器のそばへと近づいた瞬間、術式装填銃の一撃で中身をぶちまける。
 それで彼女がどうにかなるわけではない。
 けれど、一瞬でもいいから視界を奪えれば良かったのだ。

「空なる孔よ、開け、閉じよ。汝は切削、汝は虚現。魔女が望むは世界切り取る虚空の手」
 メンカルの瞳がユーベルコードにかがやく。
 消化器の中身がぶちまけられたことによってメンカルの姿は『大祓骸魂』から見えなくなる。 
 遮られ、自分の姿を見失った『大祓骸魂』にこそ、このユーベルコードは絶大なる力を発揮させるのだ。

 だが、それだけでは気づかれてしまう。
 メンカルは抜かり無い猟兵である。
『アリアドネ』を引いた瞬間、設置していた『アヌエヌエ』のトリガーが引かれる。固定していた術式装填銃から放たれた弾丸が『大祓骸魂』の意識をメンカルからさらにそらすのだ。

「慈悲深き死神の手(クー・デ・グラース)――」
 放たれる空間術式。
 それは指定地点のみを削り取る凄まじきユーベルコードの一撃であった。不意打ちの一撃でなければ命中することのない一撃。
 けれど、不意を打つために重ねた手段は確かに『大祓骸魂』の意識を逸し、彼女の急所ともいうべき胸元をえぐり取るのだ。
 膨大な『虞』が彼女の身体から抜けていく。

 その『虞』に追いすがるようにして『大祓骸魂』は天に手を伸ばす。
 それはまるで、己が忘れ去られた過去を取り戻すように、慟哭のようにスカイツリーの上空に響きわたるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
では。やる気になってみようか

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給


★真の姿
能力行使時に僅か、背後に覗く亀裂の向こう
骸の海よりも外、無限に広がる透明な空虚
真なる全が故の絶無こそ灰色の男の本質

己が本質を呼び込み境界を以て世界を染める
あらゆる全ての元型たる全なる空虚に飲まれれば一切は絶無へ溶けるのみ
これが俺故に俺は困らんが
愛を貫くつもりなら全存在を賭けて抗うが良い

万一付近に味方があれば煌皇にて保護しておく

かの赤い瞳の姫には無理するなと怒られそうだが
手を抜けぬ故、勘弁願うしかあるまい

※アドリブ歓迎



 喪った『虞』の量は凄まじいものであった。
 これまで数多の猟兵たちが戦いを紡ぎ、究極妖怪『大祓骸魂』の力をそいできた結果であった。
 誰一人として欠けては彼女を此処まで追い込むことはできなかったことだろう。 
 大部分の『虞』を削り取られた『大祓骸魂』は天に手を伸ばしたまま、けれど、慟哭していた。
「ああっ! ああっ! 私の、っ、私の! 愛が!」
 こぼれ落ちていく。
 崩れ落ちていく。
 どうしようもなくなっていく。

 それは彼女にとって悲しみと呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
 けれど、世界の破壊を、世界を殺すことを望む彼女は愛おしきUDCアースの悲鳴を聞き届けることはできなかった。
 それができるのは唯一猟兵だけである。
「では。やる気になってみようか」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は蒼光と共に一歩を踏み出す。
 すでに状況は判っている。
 大幅に力を喪った『大祓骸魂』。あまりにも強大すぎるが、誰にも知覚することのできなかった存在。

 知覚できぬものを知ることはできず、妖怪たちの協力がなければ、きっとアルトリウスさえも止めようのない世界の破壊であったことだろう。
 だからこそ、彼は己の真の姿をさらけ出す。
 背後に除く亀裂の向こうはいかなる世界であったことだろうか。無限に広がる透明な空虚。
 それこそが真なる全がゆえの絶無この灰色の男の本質であった。
「拝せ」
 境界(キョウカイ)より溢れる淡青色の光の雪。
 それらは戦場全てを無限量の『全』で万象を呑む全なる空虚。
 狂い咲く赤きヒガンバナも、何もかもをも塗りつぶしていく。

 己の本質を呼び込み、境界を持って世界を染める力。そのユーベルコードの格子は、世界に亀裂を生み出すが、己は己ゆえに困ることはない。
「ああ、世界が、愛おしきUDCアースが」
 砕けてしまう。
 自分が殺したかったのだと言う。
 それが『大祓骸魂』の愛だ。愛しているがゆえに己が殺す。ただその目的のためだけに全てを破壊する。

「それがお前の愛の本質か。その愛を貫くつもりなら全存在を懸けて抗うが良い」
 ああ、とアルトリウスはため息をつくだろう。
 あの赤い瞳の姫には無理するなと怒られるだろうなという予感だけが在った。

 けれど、それでも手は抜けないのだ。
 世界を破壊しようとする者がいる。きっとわかってくれるはずだ。その世界に生きる人々のためにこそ、力を振るわなければならない。
 全なるものであるのならば、一を捨て置くことなどできない。
 放たれる全は万象を飲み込み、赤いヒガンバナさえも溶かして塗りつぶしていく。

 その光景は世界の終わりというよりも、『大祓骸魂』の持つ愛の終わりを告げるものであった。
 永遠に続く灰色の冬。
 きっと春は来ない。その愛は、愛ゆえに滅びを求めたのならば、必ずや愛ゆえに朽ちていくのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

厳・範
他世界見聞中のお爺、最終決戦ということで来た。

妖怪達の覚悟、受け取ってそのまま、というわけにもいかぬだろう?
そんなことをしたら、亡き親友にも叱られるわ。

さて、ここは確かまぼろし橋。狭き場所にて戦う…だったか。
なれば、【声焔】がよい。恐らく、橋全体に聞こえるであろうからな。

そして、だ。オブリビオン化した妖怪達が間にいることによって、大祓骸魂はこちらに来れぬだろう?
しかも、この炎はオブリビオン…骸魂だけ燃やすでな。元の妖怪に戻れば消えるし、橋にも延焼せぬ。大祓骸魂は燃え続ける。

おまけに、馬銜にした焦熱鎗から追加の浄化の炎出せるからな。
近づかれたら、それで燃やす。



 狂い咲くヒガンバナが塗りつぶされていく。
 神智を越える『虞』を大幅に喪った究極妖怪『大祓骸魂』は、灰色に塗りつぶされたスカイツリーの最上部にひび割れた四肢を震わせながら、それでも微笑んでいた。
 あらゆるものを喪った。
 名前を、存在を、力を、『虞』を。
 けれど、彼女にはたった一つの愛だけが残されていた。
 どうしようもないほどに狂ってしまった愛。愛おしき世界、UDCアースに対する愛だけが、必ずや世界すらも殺してみせると突き進んだ結果であった。

 虚を見せる胸元の穴。
 そこから溢れて溶けていく『虞』はもはや彼女には戻らないだろう。
 どうしようもないほどの傷跡を、猟兵達は数多の覚悟でもって刻み込んできたのだ。
 その結実が今である。
「妖怪たちの覚悟、受け取ってそのまま、というわけにもいかぬだろう?」
『大祓骸魂』が生み出した『カクリヨファンタズムが如き空間』にあったのは、一つの橋であった。
 彼岸にかかるという橋。
 死した想い人と相まみえることのできる橋において、厳・範(老當益壮・f32809)は彼岸に背を向けていた。

 橋の向こうからは骸魂の大群が迫っている。
 己たちの百鬼夜行に頂く『大祓骸魂』を守らんとしているのだろう。けれど、範は懐かしい声に微笑んだ。
 そうだ。
 そのとおりだと笑ったのだ。
 妖怪たちは己たちの生命が失われてしまうかもしれなくても、覚悟で持って命をなげうった。
 ならば、それに答えずしてなんとする。
 亡き親友の声が聞こえた気がした。

 それでこそ。

「瑞獣たる意味を教えよう」
 範の瞳がユーベルコードにかがやく。
 素の姿が黒麒麟の本来の姿へと変わっていく。その鳴き声は、千里離れていたとしても、たしかに誰しもの耳に届くものであり、同時にオブリビオンのみを燃やす炎であった。
 名を――声焔(セイエン)と言う。

「愛満ちた獣……私の愛をも救ってくださいますか? 私の愛は間違っていたのですか? 愛おしき世界。愛おしきUDCアース。あらゆるものが流れていく世界。変わっていく世界を、そのままにしておきたいという愛は、愛ではないというのですか?」
 骸魂が燃えていく。
 その先に立ちすくむ『大祓骸魂』の姿があった。

 胸元にぽっかりと空いた大穴。
 けれど、悲しむでもなく、嘆くでもなく、彼女は微笑みを崩さずに範に問いかけるのだ。
 この愛は間違いであったのかと。
 世界を滅ぼして、過去にする。
 己がそうであったように、同じ場所にただ居たいという悲痛なる願いは、愛ではなかったのかと。

「そうさな。わからぬでもないよ。だが、世界は誰一人の所有物ではない。ものですらない。手をのばすがいい、『大祓骸魂』。両手を広げ、腕を伸ばせ」
 範は黒麒麟の姿のまま微笑んだようであった。
 亡き親友がそうしたように、己の言葉ではないかもしれないけれど。
 いつかのどこかで告げられた言葉を彼自身が反芻するように告げるのだ。

「……――?」
「そうだ。それが世界だ。お前の世界が、その腕の広げた範囲である。それだけがお前の持つ愛を受け入れてくれる世界だ。両腕で抱えることのできる世界こそが、お前の愛を受けた世界。ただ一つの世界。お前が護るべき、お前と共にある世界」
 それだけでいいのだと諭すように範は言う。
 これが、と『大祓骸魂』は、呆然と。
 けれど、気づきを得たようにつぶやくのだ。

 たったこれだけ。
 けれど、一つの世界。
 他の誰のものでもない己の世界。愛おしき世界。
 慈しむように『大祓骸魂』は己の抱えた未だなにもない空間を抱きしめる。たったそれだけでよかったのだ。
 確かに彼女の愛は狂えるものであったかもしれない。

「それでも愛だ」
 範の馬銜から放たれた浄化の炎が、今にも砕けそうになった『大祓骸魂』の腕を燃やす。
 それは、破滅の炎ではない。
 浄化の炎である。彼女の愛で満ちる空間を砕ける腕のままに浄化する炎でもって、保ったまま。
 手向けるように範は炎でもって、足元から霧散していく『大祓骸魂』の身体を見送るのだ。

 何もかもが手遅れであったのかも知れない。
 誰からの記憶からも忘れ去られた究極妖怪。
 けれど、知るがいい。それもまた愛の一つの形である。誰からも知られぬものには、愛は訪れない。
 けれど、世界だけは彼女を識る。

 そして今、多くの猟兵達によって彼女の存在は識るところとなった。『虞』ではない『祓』でもって、彼女の名は浄化され、きっと彼女が抱えた両腕の中にある愛と共に、偽りの微笑みではなく。

 本当の微笑みでもって、言わしめるのだ。
 そう――。

 その愛分かつこと能わず、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月30日


挿絵イラスト