5
大祓百鬼夜行㉕〜揺るがぬ愛を砕くもの

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0





 その日、東京スカイツリーを見上げた全ての人々が夢まぼろしのような光景と出会った。
 ゆらゆら揺らめく蜃気楼。その向こうに見える、どこか懐かしい世界。
 その中央に立っていたのは何処かあどけない、けれど艶やかな顔立ちの少女だった。

 少女は眼下に広がる世界を眺め、うっとりと目を細めている。
「愛しきUDCアース。あなたを思う 私の愛は揺るがない。だから 私は帰って来たのです」
 愛する世界を殺すために。
 この世界を過去にするために。
 この愛を永遠にするために。
 少女は――忘れられた存在は、虞を引き連れこの世界へと舞い降りたのだ。

「あとひと刺しで 私の願いが叶います。猟兵たちよ 止められますか」
 握りしめた懐刀の刃をつぅ、と撫でて笑う少女はあまりにも美しく残酷だった。
 私の愛と埒外の力。果たして勝つのはどちらだろうか。
 その答えを示すため――大祓骸魂は、決戦の地で猟兵達を待ち侘びる。


「集まってくれてありがとう。いよいよ大祓骸魂との決戦だね」
 グリモアベースに集った猟兵達の姿を確認し、花凪・陽(春告け狐・f11916)が言葉を紡ぐ。その声色からは重い緊張感が漂っていた。
「大祓骸魂……骸魂の元凶たる究極妖怪にして、UDCアースの大いなる邪神。彼女は東京スカイツリーの頂上で、私達を待ち受けているよ。彼女の凄まじい虞(おそれ)は東京上空を包み込んで、カクリヨファンタズムが如き空間を作り出しているみたい。そこに乗り込んで、大祓骸魂を倒してきて欲しい」
 大祓骸魂を倒さなければ、UDCアースとカクリヨファンタズムの双方に大きな破滅が齎されるだろう。それを阻止するためにも、一刻も早く現場へと向かわなければならない。

「大祓骸魂について分かっていることも伝えておくね。彼女は骸魂に取り憑かれた妖怪に、懐刀『生と死を繋ぐもの』、そして神智を越えた虞によって攻撃をしてくるみたい」
 オブリビオン化した妖怪達が集まれば多くの敵の対処に気を取られ、更には大祓骸魂そのものも強化されてしまう。
 懐刀『生と死を繋ぐもの』は一本一本は大した威力はないが、斬りつけられれば斬りつけられるほど、その対象は生死の境を切り裂かれ死に近付いてしまう。
 神智を越えた虞そのものも強烈な呪いではあるのだが、仮に攻撃を回避したとしても同じような呪いを含むヒガンバナが周囲を埋め尽くしてしまう。
「どの攻撃も厄介だけれど、必ず対処方法はあると思う。これまでの経験も活かして、全力で挑んで欲しいよ」
 幸いなことに、相手は先制攻撃を行わない。
 そこにも攻略の余地はあるだろう、と陽は付け加えた。

「それから……私が予知した空間はね、西洋親分や東方親分、それから竜神親分との戦場みたいにとても膨大な虞が漂っているみたいなの。だから現地の影響も同じ――窮地にならなくても真の姿になれる、そんな空間になっていると思われるよ」
 親分達も凄まじい虞を身に纏いつつ、猟兵達のために道を切り拓いてくれていた。
 その想いに、今こそ報いる時だろう。
「だから皆も真の姿を解放して、全力で大祓骸魂と戦って欲しい。これが最後の決戦だもん、思いっきりやっちゃおう!」
 相手がどんな強敵だろうと、猟兵は何度も立ち向かって、そして勝ってきたのだ。
「皆ならきっと大丈夫。二つの世界を救うため、今回も頑張ってきてね。そして……無事に帰ってきてね」
 陽はそう話を締めくくり、転移ゲートを開いていく。
 その向こうは東京スカイツリー最上部――決戦の地、ゲイン塔だ。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 エゴとエゴのぶつかり合い。

 当シナリオの難易度は『やや難』です。頑張っていきましょう。

●プレイングボーナス
 真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。

 真の姿はイラストがある方はそれを元に描写します。
 イラストが無い方やイラストとは違う真の姿を使用したい場合、或いは補足が必要な場合はプレイングに内容を記載して下さい。

●『大祓骸魂』
 究極妖怪であり大いなる邪神です。
 全力で戦いましょう。

 戦場は開けた空間になります。特にギミック等はない純戦になります。
 技能を沢山並べるより、どの技能をどう使うか、どんな想いを籠めて戦うかを聞かせて頂けると幸いです。


 オープニングが出た時点でプレイングを受付開始します。断章の追加はありません。

 シナリオの進行状況などに関しては戦争の詳細ページ、マスターページ等も適宜確認していただければと思います。
 また、プレイングの集まり次第で不採用が出てしまうかもしれません。ご了承下さい。

 それでは今回もよろしくお願いいたします。
172




第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リステル・クローズエデン
僕の歩む道は、僕が切り開く
だから
ここでこの世界を終わらせるわけにはいかない


真の姿
青白い肌と青い仮面の姿。

戦闘
視力、聞き耳で得た情報を高速思考で処理し
第六感もあわせて攻撃を見切り、
軽業、足場習熟、ダッシュや
迷彩、残像を組み合わせ、
受け流し、盾受け、武器落としで
かわし、弾きながら間合いをつめます。

オーラ防御で
かわせないものは受けるしかないか。

途中でユーベルコードを発動し加速。
【氷結呪縛の吹雪】を目潰しと武器落としを目的として放ち。

刀で鎧無視攻撃の斬撃をうちこみます。

攻撃後も即座にダッシュで離脱。

ついでに【氷結呪縛の吹雪】をもう一度、放つ。




 広がる異空間を見上げ、リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は静かに息を吐く。
 遠くに見えるのは大祓骸魂。彼女は揺るぎない愛を以て、世界を滅ぼそうとしている。
 このままあの妖怪を放っていては――僕の行く道も閉ざされてしまう。
 僕の歩む道は、僕が切り開く。だから、ここでこの世界を終わらせるわけにはいかない。
 決意と共にリステルの肌は青白いものへと変わっていき、まだどこかあどけなさを感じさせる顔は青い仮面に覆われていく。
 真の姿に転じたのなら――あとは全力で飛ぶだけだ。


「待っていました 猟兵よ。『生と死を繋ぐもの』にて あなたの命を断ちましょう」
 大祓骸魂も飛来するリステルには気付いたようだ。彼女が握りしめた懐刀をそっと撫でれば、ゲイン塔の周囲は凄まじい呪力に包まれ始めた。
 そこから現れるのは、無数の『生と死を繋ぐもの』の複製だ。
 それら全てが、リステルへと向け一斉に刃を向ける。まるで雨のように迫る刃を、リステルは仮面の奥から見つめていた。
(全部を避けることは難しそうだな……やれるだけ、やってみるか)
 刃の迫る音、きらめき、呪いの気配。身体中の感覚すべてで攻撃を察知しつつ、リステルは少しずつ大祓骸魂との距離を詰めていく。
 回避できないものは呪刀でどうにか切り払うが、それでも敵の攻撃は圧倒的だ。
 オーラで出来る限り損害を減らそうと試みるも、相手の呪いは強烈だった。切り裂かれた箇所が死に近づき、激痛が身体を襲うけれど――それでも、進むことだけは絶対にやめない。

 そんなリステルの様子を見降ろしつつ、大祓骸魂はゆるりと笑う。
「あなたは 何故私を止めようとするのですか?」
「この世界を壊されたくないからだ。ここがもしかしたら、僕の故郷かもしれないって思うからかもしれないが……」
 それ以上に、進むべき道を閉ざされることが許せない。
「お前に、この世界を好き勝手にする権利はないからな!」
 怒りと決意を呪力に変え、青いオーラとして纏えばリステルの身体は更に加速していく。
 その勢いで放つのは、氷結呪縛の吹雪だ。
 凍てつく青き呪いの刃は迫る懐刀を一気に薙ぎ払うと、大祓骸魂への道を真っすぐに切り拓く。
 相手が再び力を展開するより早く――リステルは敵の眼前へと躍り出た。
「呪力……解放!」
 再び、一閃。
 その刃は究極妖怪の身体を大きく切り裂き、呪力を少しずつ削っていく。
 攻撃の勢いで後退しつつ、大祓骸魂の顔を見やれば――余裕の笑みも少しは崩れたようだ。
 戦いの始まりを制したのは、猟兵だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
真の姿ver.2『雪解鬼(21/1/3納品)』

…私にもありましたか、鬼の姿が
ええ、我が執念にて至る可能性のあった姿、ではありますが

早業で、四天結縄にある私に対応した封印を解き、天候操作で雪降る地へと。防御を兼ねた凍れる雪の厄災ですよ
そして、虞を打たれる前に、こちらの先制攻撃で一の矢【四天境地・『雪』】を、二の矢に破魔+水属性の霊力矢を撃ちましょう
そう、大いなる虞を纏うあなたには、破魔はよく効くはずですからね

私は負けるわけにはいかないのですよ
この一連の戦いで、いろいろと考えることが増えましたのでね




 ゲイン塔の周囲に漂う凄まじく濃い虞の気配。
 それに触れた瞬間、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)を構成する悪霊の一人、『静かなる者』は大いに驚くことになった。
 自分の姿が、鬼へと化していたからだ。
「……私にもありましたか、鬼の姿が」
 これが執念にて至る可能性のあった姿であることは理解出来ている。名付けるならば『雪解鬼』が相応しいだろうか。
 ならばこの執念を以て、世界を壊さんばかりの愛に立ち向かおう。
 青白く輝く『白雪林』を握りしめ、義透は静かに空を見上げる。
 大祓骸魂を、倒すために。

 あの究極妖怪はすぐにこちらを認識し、攻撃を仕掛けてくるだろう。
 ならばそれより早く動くだけだ。義透は『四天結縄』の結び目を一つ手に取り、素早く封印を解除しだした。
 次の瞬間溢れたのは、世界を凍り付かせんばかりの冷気と呪力だ。
 それを自らの力に変え、義透は天候操作の術式を展開していく。
 するとゲイン塔の周囲はみるみる雪に覆われていき、初夏も近づく頃合だというのに真冬の如き光景を作り上げた。
「私の愛しき世界に 何をしようとしたのですか」
「凍れる雪の厄災ですよ。あなたの虞すら飲み込む、呪いです」
 義透の言葉を受け、大祓骸魂の美しい顔が微かに歪む。挑発を受けたことも気に食わないのだろうが、それ以上に見下ろしていた世界に干渉されたのが不愉快だったのだろう。
「その言葉を 後悔しなさい」
 ぶわり、今までよりも濃い虞が周囲を包む。
 このままあの虞が振り下ろされれば、真の姿に転じているとはいえ義透もただでは済まないだろう。
 だから、それよりも早く――あの妖怪に、一矢報いるのだ。

「私は負けるわけにはいかないのですよ。この一連の戦いで、いろいろと考えることが増えましたのでね」
 想いを籠めて構えるのは『白雪林』だ。
 矢には氷の霊力を宿し、狙うはただ大祓骸魂ひとり。
 静かに放たれた矢は雪に包まれつつ分裂し、展開された虞ごと貫いた。
 衝撃が大祓骸魂を揺らしたのを確認し、義透はすぐに二の矢を放つ。
 最大級の破魔の力を籠めた、全力の霊力矢を。
「そう、大いなる虞を纏うあなたには、破魔はよく効くはずですからね」
 言葉の通り、放たれた矢は妖怪の胴を貫いて、虞をどんどん打ち払っていく。
 世界を壊す愛よりも強い想いを、『静かなる者』は示したのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
心情)その目に映すものすべて、愛で殺すってかィ。その思考は知ってる。ヤンデレってェやつだろう。ヒトでもよく見るさ。いいンでねェかい。《過去》たァ言え、それも"いのち"のあり方さ。
行動)切られたら死に近づくそうだぜ、眷属ども。ああ、ちょうどいい。お行き。《獣》はネズミの群れ。《鳥》はツバメの群れ。《虫》は蚊の群れ。億万の病毒を抱え運び、どんどんと増えて雪崩こめ。切られ死に近づくならば、抱える病毒の威力も上がるだろう。理性なんて気にすンな、どうせなくなりいる前に死ぬ。あの娘っ子を食い荒らせ。俺もいっしょに突撃するよ。お前さん、この世界を愛してるそうだが。俺ァ、他の世界も赦(*あい)してるンでね。




 猟兵達からの攻撃を受け続けていることも構わずに、大祓骸魂は愛しい世界を見下ろし続けている。
 そのまなざしに宿る色を見遣り、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はくつくつと嗤い声を零していた。
「その目に映すものすべて、愛で殺すってかィ」
 所謂ヤンデレという思考だろうか。ヒトでもよく見られるその考えを、大いなる邪神で究極妖怪である存在が抱いているのは何処か滑稽な感じがした。
「いいンでねェかい。《過去》たァ言え、それも"いのち"のあり方さ」
 ならば彼女の在り方も、呑み込んでしまおう。
 逢真は周囲に自身の眷属達を呼び出して、共に大祓骸魂を見つめた。無数の瞳に見詰められ、大祓骸魂が返したのは緩やかな笑みだった。
 同時に凄まじい虞が周囲を包めば――逢真の姿は、大きな朱色の鳥へと転じた。

「恐ろしき神とその眷属 けれど『生と死を繋ぐもの』ならば 殺すことができるでしょう」
 大祓骸魂は自らの呪力を以て、無数の懐刀の複製を生み出したようだ。
 その刃に籠められた呪いの気配を感じ取り、逢真の嘴は笑みの形へとにぃと歪んだ。
「切られたら死に近づくそうだぜ、眷属ども。ああ、ちょうどいい。お行き」
 赦しているよ。だから思い切り切られてくるといい。
 主の声が朗々と響けば、眷属達は次々に姿を変えていく。
 ネズミの群れが、ツバメの群れが、蚊の群れが単なる動物の仮面を脱ぎ捨て、神の《仔》へと転じていくのだ。
 彼らは億万の病毒を抱え運び、大祓骸魂との距離を詰めていく。
 その最中に懐刀が小さな身体を切り裂くが、少し掠れたくらいで《仔》は決して止まらない。
 分裂し、数を増やし、病の波が世界を覆いつくしていく。

「理性なんて気にすンな、どうせなくなりいる前に死ぬ。切られ死に近づくならば、病毒だって強くなるだろうさ」
 逢真の推測通り、生半可な攻撃は《仔》の力を強めるだけだ。
 何故なら大祓骸魂へと迫っているのは終焉そのものなのだから。
 とうとう妖怪へと辿り着いたネズミが、牙を突き立てる。ツバメが肉を啄む。蚊はひたすらに病を広める。
 愛しい《仔》らが作り上げた道を進みつつ――とうとう朱色の鳥も、邪神の眼前へと飛び込んだ。
「お前さん、この世界を愛してるそうだが。俺ァ、他の世界も赦(*あい)してるンでね」
 だから、お前さんも赦してやろう。
 逢真の嘴が、牙が柔らかくなった少女の身体へ突き立てられれば、死そのものといっても過言ではない病毒が彼女を大きく蝕んだ。
 苦しみ叫ぶ少女の顔を見る逢真のまなざしは――世界を眺めていた彼女のように、愛しさが含まれているようだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

岩永・勘十郎
「お前が大将か、なら斬らせてもらう」

そう言って羽織っているマントを脱ぎ棄て、本気の姿として戦う。
その目には、まるで猛禽類のような敵に【恐怖を与える】【殺気】が燃え上がり。

「ワシは根競べが大嫌いだ。さっさと終わらせる」

敵が集中する前に倒さないと面倒な事になる。故に最初からUCを発動。敵の攻撃を仙力を合わせ、そして今回の戦争で鍛え上げえた【第六感】を駆使、五感では得られない“見えない物が見える仏の境地”で【残像】が残る程の超速度で【見切り】回避していく。そして敵の大祓百鬼夜行の効果や事象、敵の魂その物を斬り裂くべく、大きく振りかぶり今まで倒した者たちの思いを胸に叩き斬る! きっと【幸運】も味方する




 猟兵達から受けた傷を虞の力で癒しつつ、大祓骸魂は次なる猟兵を待ち受ける。
 その余波だろうか。漂う虞が頬を掠めれば、背中がどこかぞくりと来るような感覚があった。
 けれど構わず、岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は笑う。
「お前が大将か、なら斬らせてもらう」
 宣戦布告と共にバンカラマントを脱ぎ捨てれば、勘十郎の纏う気迫はより一層研ぎ澄まされたものへと変わった。
 彼は本気だ。ここまでの長い戦いを終わらせるべく、ここまで会得してきたすべてを振るうつもりだ。
 赤い瞳に宿る殺気は獲物を狙う猛禽類のように獰猛で、そして鋭い。
 大祓骸魂が返す笑みは緩やかなものだが、その身が一瞬小さく身じろいだことを勘十郎は見逃さなかった。
「恐れを知らない 猟兵よ。ならば 百鬼夜行にて導きましょう」
 優雅な所作で大祓骸魂が手を振るえば、東京中から凄まじい咆哮が響き渡った。
 オブリビオンと化した妖怪達が、ゲイン塔へと集まろうとしているようだ。

「ワシは根競べが大嫌いだ。さっさと終わらせる」
 無数に集まる妖怪達と切り合うなど面倒だろう。
 それなら――これまでのすべてを以て、相手を切り伏せてしまうまでだ。
 今回の戦争で戦ってきた数多くの妖怪達に親分達。
 彼らとの手合わせが勘十郎の血肉となり、全てを断つための力を与えてくれている。
 五感では得られない『見えない物が見える仏の境地』とも言うべき第六感を冴えわたらせて、勘十郎は勢いよく地を蹴った。
 同時に小銃兼正を抜刀し、瞳はただ敵の姿を確りと見据える。大丈夫、見えている。
「その頼りない刃で 私を斬ろうというのですか」
「そちらの懐刀の方が鈍に見えるがな。それに――斬るのはお前さんだけじゃない」
 大祓骸魂が放つ呪力を直感で回避しつつ、勘十郎は自分の内に宿る仙力を高めていく。
 斬るべきは大祓骸魂の魂に大祓百鬼夜行そのものだ。それら全ての概念を、事象を斬り裂くことが、自分ならばきっと出来るはず。
「ここまで導いてきた皆の想い、ワシが確かに受け取った。だから……」
 最後の一撃を振るうべく、勘十郎は目を伏せ静かに呼吸を整えていく。
 そんな彼に大祓骸魂の呪詛が直撃しないのも――きっと、皆の力が自分を支えてくれているからだろう。
「――万有を返す!」
 放つは斬撃、六道・龕灯返しの太刀。
 その刃は大祓骸魂と大祓百鬼夜行を切り裂き、存在ごと叩き斬る!
 研ぎ澄まされた一閃は、大いなる存在すら超えていったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤原・忠重
【POW】

「何が愛だ、笑わせる。お前のそれは侵略行為ッ」

「させねえよ。世界も、俺たちも、思い出にはならねえ」

真の姿を晒しながらUC発動、藤色の発光体と化し【捨て身の】突撃。
オーラの【誘導弾】を従えながら飛翔し【空中戦】に臨む。

百鬼夜行はあらゆる道理を超え、骸魂のみを撃ち砕く【弾幕】にて除く。
大祓へは不定形の体で懐刀のみ回避、その他は無視して【継戦】。

「ああそうだ、お前の心情なんぞ知ったことか!」

「俺は俺の故郷を守る、俺の現在と未来を守るッ」


「お前が、お前の都合で世界を殺すなら!」

「俺は! 俺の都合でお前を殺すッッ!!」


吼えて【気合い】と自尊心を追加注入、強化倍率を跳ね上げ更に【捨て身の】突撃。




 切り離された身体を虞で再生しつつ、大祓骸魂は未だに世界を見下ろしている。
 その眼差しには揺るがぬ愛が宿っているが――だからこそ、藤原・忠重(じぶんだいじに・f28871)は猛る。
「何が愛だ、笑わせる。お前のそれは侵略行為ッ」
 忠重の言葉に呼応して、虞が広がる。これは大祓骸魂の怒りだろうか、それとも別の意思表示かもしれない。
 何にせよ、彼女は己の愛に従う行為を止めたりはしないつもりなのだろう。
 世界を殺し尽くす愛を虞として広げ、それで全てを呑み込むつもりなのだろう。
「そっちがそのつもりなら……させねえよ。世界も、俺たちも、思い出にはならねえ」
 相手の虞すら取り込んで、忠重は埒外の力を高めていく。
 拳を高く天に突き上げ、睨むは大祓骸魂ただ一人。
 彼女を討つために、忠重はこの地へやって来たのだ。
「煌く己を誇り掲げろ――夜天に燃える星のようにッ」
 次の瞬間、忠重は瞬く藤色の発光体へと転じ、力強く地を蹴飛ばす。
 それこそ、地上から発つ星の如く。

「あなたの愛は 私の愛を超えられますか。私の百鬼夜行を 超えられますか」
 藤色の星を見遣りつつ、大祓骸魂はゆるりと手を振るう。
 それに合わせて集まりだすのはUDCアースに顕在した、オブリビオンと化した妖怪達だ。
 彼らは主を護る壁と化し、ゲイン塔の上空を埋め尽くそうとしている。
 けれどこの程度の理屈など、押し通してしまえばいい!
「俺の道を邪魔するなッ!」
 周囲に展開したオーラの誘導弾を弾幕に変え、忠重は妖怪達を薙ぎ払う。
 その熱は骸魂だけを消し飛ばし、往くべき道を切り拓いてくれた。

 快進撃の様子を見遣り、大祓骸魂の表情が微かに歪む。
「そこまでして 私の愛を否定するのですか」
「ああそうだ、お前の心情なんぞ知ったことか!」
「その愛は 利己的なものではないのですか」
 投げかけられる言葉を笑い飛ばし、忠重は更に敵との距離を詰める。
 確かに忠重にとって一番大切なことは己自身だ。けれど、だからこそ外へ向くものにだって重みが宿るのだ。
「俺は俺の故郷を守る、俺の現在と未来を守るッ」
 猛る想いはより強い輝きへと変わり、揺らめく世界を藤色へと染め上げる。
 エゴとエゴのぶつかり合いなら決して負けるつもりはない。それに足るだけの理由が、あるのだから。
「お前が、お前の都合で世界を殺すなら!」
 大祓骸魂が握る懐刀の動きにだけ注意して、精一杯肉薄したなら――振るうは最大級の一撃だ。
「俺は! 俺の都合でお前を殺すッッ!!」
 気合と自尊心をエネルギーに変え、放つのはオーラを纏った重い拳の一撃だ。
 その衝撃は大祓骸魂の小さな身体と大きな愛を、そして世界をも揺るがしていく。
 それはまさに――忠重の、彼の誇りの証明だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
大祓骸魂さんが……オブリビオンとなる前のあの人が愛した世界は、生きて、変化し続ける世界だと、私は思うのです

世界を滅ぼさせては、あげられませんが……
それを愛と、いうのなら

せめて、愛された世界の一部として
愛し、祓いたいと思いました

一緒に、戦ってください

真の姿「光」が中枢となって、新生ダイウルゴスに
【生命力吸収】の光、フロンティアライン。侵略ではなく、守護する側として
願い、一時的に竜となってもらい、一部に
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】耐えながら、光を放ち
百鬼夜行の、骸魂を飲み込んだ妖怪さん達にも、願う。可能なら、一緒にと

力をかりて高めた【浄化】の光で
救えないけど、せめて優しく葬れたらと
虞を、撃ち祓いに




 戦いはどんどん苛烈になっているが、それでも大祓骸魂の愛は揺るがない。
 そんな彼女の姿を見遣り、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は赤い瞳に寂しげな光を宿していた。
 あの独りよがりな愛を抱く少女が、オブリビオンになる前だったら――この世界をどう思っていたのだろう。
 きっと彼女が愛していたのは、生きて、変化し続ける世界だったのではないか。
「世界を滅ぼさせては、あげられませんが……それを愛と、いうのなら」
 せめて、愛された世界の一部として。愛し、祓いたいと思う。
「……一緒に、戦ってください」
 ナイの想いは祈りと変わり、そしてそれが夜を切り裂く光と化す。
 光がナイの身体を包み込めば――中から姿を現したのは、黒く輝く新生ダイウルゴスだ。
 ナイ自身を中枢とするその竜は文明を侵略するものではなく、守護するものとして東京の空へと駆け抜ける。
 そんな彼を出迎えるように空に広がるのは――大祓百鬼夜行だ。

 オブリビオンと化した妖怪達は、飛来するナイを迎撃しようとそれぞれが攻撃の構えを取る。
 けれどナイは分かっていた。ここに集う妖怪達も、元々は故郷を救うために骸魂をその身に宿したのだ。
「皆さんの、力が必要です。だから私は、願います――可能なら、一緒に」
 妖怪達からの攻撃を全身で受け止めつつ、ナイは眩い光を放つ。
 痛みすら乗り越えて、ただひたすら祈りのために。
 光が妖怪達を包み込んでいけば、彼らに憑いた骸魂だけを吸収しているようだ。妖怪が救われる度にダイウルゴスは再生していき、その力もどんどん強まっていく。
 妖怪達を直接大祓骸魂の元までは連れていけない。けれど彼らの想いは連れていける。
「大丈夫です。任せて下さい」
 光を通じて感じ取った妖怪達の想いを胸に、ナイは更に力強く飛翔する。
 目指すは、ただ一人の少女の元へ。

「あなたも 私の愛を否定するの」
「いいえ、大祓骸魂さんが世界を愛しているのは……本当のことだと、思います」
 ぽつり呟く少女へ向け、ナイが返したのは優しい声色だ。
 彼女を救えないことは分かっている。けれど、手を伸ばすことはできるから。
「だから、せめて……大祓骸魂さんを、世界の一部にしたい。そう願います」
 ナイの想いと呼応して、光は更に強まっていく。
 その輝きは広がる虞ごと大祓骸魂を飲み込んで、彼女の力を大きく吸い取っていった。
 そこから感じ取れたのは――少女の持つ、世界へ向けた重い重い愛情。
 それすらも背負って、進んでいく。ダイウルゴスの中枢で、ナイは静かにそう決心していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・リデル
愛を永遠にですか。
気持ちは分からなくもありませんが、成就させてあげる訳にはいきませんね。
命の危険を惜しまず貴女への道を切り開かせてくれた妖怪たちの想いも貴女に劣るものではないでしょう。

真の姿を晒します。(JC参照。神としての姿)
『青い光の衣』を纏います。
虞神彼岸花の神智を越えた虞、その全てを敢えて受け止めて自らの魔力に変換。全ての虞を浄化の力に変えて大祓骸魂に放ちます。
(全力魔法×範囲攻撃×浄化)

愛が揺るがないというのであれば。いつか遠い未来。UDCアースが天命を終えるその時まで骸の海で待ち続けなさい。




「愛を永遠にですか」
 青い瞳で東京の空、浮遊する大祓骸魂の姿を見遣り、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はぽつりと呟く。
 気持ちだけなら理解は出来るが、かといって彼女の願いを成就させてあげる訳にはいかないだろう。
 何故なら、ここに至るまでの道行きを、ステラはよく知っているから。
「命の危険を惜しまず貴女への道を切り開かせてくれた妖怪たちの想いも、貴女に劣るものではないでしょう」
 だから、今度は自分達がその想いを引き継ぐ番だ。
 ステラは少しだけ目を伏せて、虞の力を全身で感じていく。
 それに呼応するように彼女の瞳は金色に輝き始め――神的存在としての姿を現した。

「――覆え」
 全身を青く煌めく魔力障壁で覆い尽くし、ステラは改めて大祓骸魂の姿を見た。
 ゆるりと笑う大祓骸魂の瞳に在るのは、重い重い情念の色だ。
「私はこの世界を 愛しています。その想いは きっとあらゆる愛より強いでしょう」
 世界を滅ぼす情念は神智を越えた虞と転じ、東京の空をどろりと塗りつぶしているようだ。
「私の揺るがぬ想い あなたに受け止められますか」
 虞を収束し、大祓骸魂は放つ。
 たった一人、ステラを殺すためだけに。
 けれどステラはその虞から決して目を逸しはしなかった。
 相手の想いがいくら強くても――妖怪達の想いを背負った自分なら、受け止めきれると信じているから。

「ええ、敢えて受け止めましょう。あなたの放つ、その全てを」
 降り注ぐ虞を魔力障壁で受け止めつつ、ステラはしっかりと地を踏みしめる。
 障壁は虞を次々に吸収すると、それをステラの力へと変換し始めた。
 溢れる力を以て放つのは、全力の浄化の魔法だ。
 眩い光が大祓骸魂を射抜く瞬間も、金の瞳は決して見逃さない。この結末を見届けるのもきっと自分の役割だ。
「あなたの愛は理解出来ました。ですが……」
 薄れゆく虞と骸魂の気配の向こう側、見えるのはどこか悲しげな表情でこちらを見つめる少女の姿だ。
 あれは自分の愛情が否定された故の悲しさか。それとも愛情が足りなかった故の寂しさか。
 そんな彼女へ向けてステラが告げたのは、一歩進んだ考え方だ。
「愛が揺るがないというのであれば。いつか遠い未来。UDCアースが天命を終えるその時まで骸の海で待ち続けなさい」
 待つことだって、愛情を示す手段のひとつだろう。
 そうやって言葉を紡ぐステラの瞳には、どこか優しい光も宿っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
愛を語り愛を騙って世界の理を乱す存在が永遠を願うか
では此処でその愛諸共尽きるといい

真の姿となることで天の傀儡と化し自我を失いつつある己
その中に僅かに灯る王子との戦い、そして約束
継いだ想いを昇華する時だ

開けた空間ならば[継戦能力]を活かし妖怪達を〈冥府の槍〉で途切れることなく[範囲攻撃]、殲滅を
大祓骸魂の強化も防げる
敵の攻撃は己の持つ[戦闘知識]や五感を駆使、[結界術]の障壁を纏う[武器で受け]る

愛しいものを永遠にする為殺し時を止める
ならば悪魔に代わり俺がお前の魂を回収しよう
彼女の攻撃を受けると同時に[怪力]で跳ね飛ばしてUCを発動

ここは天に近く見晴らしも良い
王子にもこの炎は届くだろう




「愛を語り愛を騙って、世界の理を乱す存在が永遠を願うか」
 未だ虞を纏う大祓骸魂の想いは、彼女が骸の海へと送られる時まで変わらないのだろう。
 空を舞う恋する乙女を見上げつつ、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は冥府の槍を握りしめる。
 紺青の炎を纏う穂先を天に向け、宣言するのはたったひとつ。
「では此処でその愛諸共尽きるといい」
 その言葉が空へと響いた瞬間、相馬の姿は天獄の力をその身に宿す。
 冥府の槍に灯る炎も白金色に転じ、夜を裂くように猛りだした。
 天の傀儡と化し薄れゆく自我の中、相馬が思い出したのは――しあわせな王子さまと交わした約束。
 その意志を、こころを継ぐと。その想いを、今こそ昇華する時だ。

「その力は 何なのでしょう。私の愛を否定するほどでは ないのでしょうが」
 相馬が纏う気配に何かを感じたのだろうか。大祓骸魂の眉がぴくりと動く。
 その僅かな違和感、不快感を払拭するように彼女が呼び出したのは――空を埋め尽くさんばかりの大祓百鬼夜行だ。
 次々に自分へ向けて殺到する妖怪達を見る相馬の瞳は、驚く程無感情だった。
「……邪魔をするな」
 真の力を解放した今ならば、ただのオブリビオンなど恐るるに足らない。
 相馬が冥府の槍で周囲を薙ぎ払えば、煌めく炎があっという間に妖怪達を飲み込んでいく。
 捌きの炎が滅するのは骸魂だけだ。倒れ伏す妖怪達の間を駆け抜け、狙いを定めるのは大祓骸魂ただ一人。
「何者だろうと この懐刀なら殺せます」
「ああ、知っている――だが、所詮は鈍だ」
 すかさずこちらへ向けて向けられる少女の刃は、槍でしっかりと受け止めた。
 一撃くらいならば槍に傷をつけることも難しいだろう。相手の動きが止まった瞬間を見極め、相馬は一歩足を前へと踏み出した。

「愛しいものを永遠にする為殺し時を止める。ならば悪魔に代わり俺がお前の魂を回収しよう」
 槍で大祓骸魂の身体を押し返せば、彼女の身体はあっさりとバランスを崩したようだ。
 さあ、あとはやるべきことをやろう。
「裁定は下った」
 相馬の身体から、槍から放たれる超高熱の白金炎は、大祓骸魂の身体を次々に飲み込んでいく。
 彼女の情念を、虞を糧に、東京の夜空には凄まじいまでの炎が立ち上る。
 ここは天に近く見晴らしも良い。これだけの炎が燃え上がるというのなら――。
(王子にも、この炎は届くだろう)
 果たした約束を胸に、相馬はただ裁きを下すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鍋島・小百合子
WIZ重視

幽世と現世の二つを救わんがために・・・いざ決戦の地へ参らん!
肥前が女武者・鍋島小百合子、お相手いたす!

真の姿たる黒鋼甲冑に身を纏い、UC「勇者乃武器」に己が勇気を込めた薙刀を片手に大祓骸魂に決戦を挑む
敵の懐刀をこの身に受けぬよう薙刀で武器受けし、隙を見れば破魔と神罰と祈りを込めた武技で鎧砕きの勢いを持って一閃す
虞に対しては軽やかな足取りと戦に恐れを見出さない覚悟を持って回避し、足元が彼岸花で満たされれば周辺をなぎ払いては吹き飛ばし散らす

・・・邪神なぞなにするものぞ
猟兵としての修羅場をいくつも経験したわらわにあるは心に灯せし勇気の心!
それがわらわの持つ力なり!




 境界線を失いつつある二つの世界。その中心――ゲイン塔から、鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)は大祓骸魂の姿を見た。
 圧倒的な虞に思わず身体が震えるが、これはきっと武者震いだろう。
「幽世と現世の二つを救わんがために、肥前が女武者・鍋島小百合子、お相手いたす!」
 名乗りをあげた瞬間、小百合子の身体は黒鋼甲冑に覆われていく。
 真の姿を解放し、発動するのは『勇者乃武器』だ。
「我の心に灯す勇気の心と共に! ……いざ決戦の地へ参らん!」
 勇気を文字通りに力と変えて、『竜王御前』へと籠めればその輝きは夜空を割って瞬いた。

「勇ましき女武者よ 私の虞を超えられますか」
 小百合子の宣戦布告を受け、大祓骸魂が展開してきたのは神智を越えた虞の波だ。
 ただ周囲を漂っていただけでも恐ろしかったその気配。殺意をもってこちらへ向けられたとなれば――その脅威はずっと大きく感じられるだろう。
 けれど、小百合子は決してこの状況から逃げ出さなかった。
「……邪神なぞなにするものぞ。猟兵としての修羅場ならいくつも経験してきたのじゃ」
 覚悟を胸に駆け出せば、虞の動きだって見極められる。
 特に気配の濃いところを避けるように足を進め、着弾地点に咲き誇るヒガンバナは刃の一閃で薙ぎ払う。
 道が拓かれたのなら、進むことができるのだから。

 ぐんぐんと距離を詰める小百合子の姿を見遣り、大祓骸魂は微かに眉を顰めているようだ。
「あなたの虞知らず 見事なものだと讃えましょう。ならば私の懐刀が あなたを殺します」
 虞では止められないと悟ったのだろう。大祓骸魂は懐刀を構えると、迫る小百合子へと鋭く刃を差し向ける。
 確かにあの刃に恐る呪力も恐ろしい。けれどそれより小百合子が恐れたのは――自分の勇気が消え去ってしまうことだ。
「わらわにあるは心に灯せし勇気の心! それがわらわの持つ力なり! 此度の戦いだって、きっと乗り越えてみせる!」
 振るわれる刃の振り下ろしを、竜王御前にてどうにか受け止めて。
 舞い散る火花が頬を掠めたことも気にせずに、小百合子は自身の身体に力を籠める。
「幽世も現世も、貴様の好きにはさせぬ!」
 その勢いのまま懐刀を押し返し、放つは勇気の煌めきを纏う刃の一撃だ。
 破魔と神罰の祈りを籠めたその一閃は、虞を纏う邪悪なる神にはよく効くだろう。
 世界を揺るがす愛よりに、小百合子の確かな勇気の方が打ち勝ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

メリー・ブラックマンデー
(アドリブ連携歓迎)
虞の力は満ちている。何時でも真の姿を解放できる。
でも…まだよ。まだ姿は変えない。
神器『ラケシス』で停滞する時間の中、時針剣を翳し続ける。翳す対象は妖怪達。
あの軍勢は骸魂によって変じた者達。骸魂は縁のある妖怪と合する。
つまり、その妖怪の過去を知ることは骸魂…弱点を知ることに繋がるもの。
できるだけ多くの弱点を知って、妖怪達を解放するの。
彼らは体を張って二つの故郷を救おうと決めたのだから…!

…さあ、行くわよ!【万象総て我と在り】!
我が真の姿、翼持つ蛇竜の姿を此処に!
把握した骸魂を祓えるよう調整した『神言』で妖怪達を解放した後は…
大祓骸魂、貴女も<破魔>の『神言』で打ち破る!




 ここまでの戦いを経て、大祓骸魂が纏う虞はかなり減ってきているようだ。
 だからこそ――彼女は最後の力を振り絞り、その虞で世界を覆う。
 その強烈な気配を、メリー・ブラックマンデー("月曜日"がやって来る・f27975)は小さな身体で受け止める。
 これだけ濃厚な虞に触れれば、すぐに真の姿へと転じることは出来るだろう。
 でも、まだだ。まだ変身する訳にはいかない。
 空を見上げれば、膨大な虞に引き寄せられた百鬼夜行が夜を埋め尽くしているようだ。
 確かに今の彼らは恐ろしいオブリビオンだろう。けれど――同時に彼らは、世界を救おうと立ち上がった妖怪達なのだ。

「……大丈夫。あなた達の想いはしっかりと受け止めるわ」
 静かな決意と共に翼を広げ、メリーが取り出したのは分針剣『ラケシス』だ。
 長針を模った刃を天に掲げれば、発動するのは刻の力。まるで時計の針を止めたかのように世界は静まり返り、ただメリーだけがその中を動き出す。
「始まりから終わりまで、万物は時間と共に在る――さあ、貴方の重ねた時を見せて?」
 詠唱と共に刃を妖怪達へと翳していけば、彼らの過去がメリーの中へと流れ込んできた。
 縁あるものに取り憑く骸魂。それによって転じた妖怪達。
 彼らは皆、危機の真っ只中にある二つの世界からやってきた存在だ。そして――彼らはずっと、大祓骸魂と共にあったはず。
 読み取った過去から見える様々な情報は、メリーに様々な力を与えてくれた。
「彼らは体を張って二つの故郷を救おうと決めたのだから……私だって応えるわ。皆を未来へと連れて行く!」
 さあ、時は満ちた。メリーがラケシスを振り下ろすと同時に、世界は再び進んでいく。
 その進みだした時の中を舞い上がるのは――翼持つ蛇竜だ。

「竜の神 私の天敵よ。私の愛を 百鬼夜行を止められますか」
「当然よ。みんなの過去が私をここまで導いたんだもの」
 邪神との距離を詰めながら、メリーは大きく息を吸い込む。
 そのまま解き放つのは――歌の形の『神言』だ。
 妖怪達に伝えるべき言葉は十分に理解していた。
 大丈夫、あとは私に任せて。そんな想いを乗せた声色が夜に響けば、妖怪達は骸魂から解放されていく。
 そして――大祓骸魂に向けるべき言葉だって、妖怪達が教えてくれているのだ。
「大祓骸魂、この世界を過去になんてさせないわ。今週も来週も、私はヒトの元に訪れるのだもの。だから――」
 全力の、破魔の『神言』を。
 空を貫く歌声は、残った虞を全てかき消し大祓骸魂をも呑み込んでいく。
 そして残響が消え去る頃には――残ったのは、猟兵達と妖怪達だけ。

 こうして揺るがぬ愛は打ち砕かれ、世界は続いていく。
 誰も彼もが命を懸けた戦いが、終わったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月01日


挿絵イラスト