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銀河帝国攻略戦⑧ その星の海の壁を壊すのなら

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 そのグリモア猟兵は星の海に立ったまま漂い続ける。いつもと違う夢の中で、限りなく近い未来を見据えながら、その視線を厳しく向けていただろうか。
 スペースシップワールド。全ての居住可能惑星が銀河帝国との戦いで砕け散り、無数の巨大宇宙船が浮かぶ広大な無限の黒。日差しの光が届かないであろうこの場所を、悪くない、そう評価しながら足を進め、時にふわりと浮かび。
 では、何が緊急を要しているだろう。星の輝きが失われるか? いや、違う。そんなものではない、一刻を争うような事態。
「おらおらぁ、例の船を全力で守りやがれぇ! ちゃんとやらなきゃ、後で酷いんだからな♡」
 声が聞こえる。耳に届いただけで『うわキツ』音を上げてしまうような高いトーンと、数々の戦艦の群れが見える。視界に出てきた無数のそれは守っていたのだ、自称アイドルの宇宙海賊であるところのオブリビオンが『例の船』と呼ぶ何かを。
 男はその船の名を知っている。
「……エンペラーズマインド、かあ」
 性別の境界を思わず彷徨ってしまいそうな程の綺麗な水晶を思わせる、可憐な容姿の猟兵がクリアなトーンを零す。
 あれを壊したいと願い、しかしどうしても抑えるしかないこの状況に心がはちきれそうで。

「壊したいものが、た~くさんあるわぁ!」
 意識のカーテンを引き剥がして現実に心が舞い戻ってきたはずのグリモア猟兵。性別に似合わない美麗な動きで椅子から立ち上がり、猟兵たちを呼ぶその音。
 男――糸井・真海は今や、別の人格にその肉体を掌握されている。まうとまみ、二人が共にあるからこその一人の人間。
「あなたたちはもう、銀河帝国攻略戦に身を投じているのでしょ? だったらまみが、丁度いいものを見つけているの!」
 楽しそうに『まみ』が宣うには、銀河帝国の最終防衛ラインであるところのエンペラーズマインドと呼ばれる大要塞を攻め立てる機会が出来そうなのだという。大要塞は今や数々の防衛艦隊によって護られ、ワープドライブに頼らない艦隊戦を強いられるのだろう。
「でも、その中でまみは一人、目立つオブリビオンを見つけたわ…声の大きさや距離から考えても、あの子は人間大くらいのサイズだし、何より年齢がきつそうで嫌になっちゃう。まみもいつかああなっちゃうのかしら?」
 想像しつつ楽しそうに笑うこの猟兵。ではどうするだろうと考えて、まみが提案するのは――戦艦への突入。解放軍と共闘を組むからこそ行える、大胆な作戦。しかし解放軍は戦闘経験の不足から、開戦直後しばらくの間混乱してしまう可能性があった。
「戦艦の外壁の壊し方、外部からの攻撃の仕方…何でもいいわよ。中に押し入ってオブリビオンを倒せれば、少しは何か変わるかもね? どうもその子、指揮官みたいだし!」
 その敵の軍勢の堅固な連携が崩れる様は、どのように映るだろうか。希望か、安心か、驚愕や戦慄、あるいは――。
 ややあって、『まみ』が押し殺そうとした笑いを堪え切れず、ふふっと一つの弾む声。
「あなたは破壊を望む? それとも過去を過去に還す瞬間? 船ごとオブリビオンを沈めてしまうこともいいけれど、直接オブリビオンを始末してしまう方がやりやすい、まみはそう思うのよ」
 問題のオブリビオンは、アイドルを自称する宇宙海賊。ラブソングで周りの敵や防衛艦員のポテンシャルを底上げすることが可能で、その点から見れば中々厄介なものではあるらしい。そして極めつけがその可愛さ。可愛い決めポーズ、投げキッス、果てはウィンクと、可愛さ満点のハートが猟兵たちの勢いを削ぐのだ。
「……でも、それほど難しくないヒント、教えてあげる。その声は、少女であるに足る時間を過ぎている。だからこそ、それを利用して挑発してしまって?」
 年齢が不詳であるこの海賊。秘密にしておきたい乙女の秘密を簡単にこじ開けられた時に、冷静でいられる確率はかなり低いのだ。
 果たして、言うだけ言って、多重人格であるところのまみはにっこりと、素敵な笑顔を浮かべる。
「その舞台に押し入るための準備は、まみと『俺』が手伝ってあげる! その力、世界を護る為に存分に奮いなさい?」
 底知れぬ狂気を瞳に孕むその猟兵が、白銀に輝く右腕を伸ばし、指を鳴らすまでそれほど時間はかからない。


川内主将
 どうも、川内主将です。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 今回相手にしていただくのは防衛艦隊を指揮するオブリビオンです。是非ともうわキツとラブコールをかけてあげてください。
 ガンガン敵船を殴ってオブリビオンを船ごと撃破するもよし、直接外壁を破壊しぶん殴るなど、試みることのできる選択肢は様々です。
 この依頼が是非とも銀河帝国攻略戦の助けとなりますよう、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『キャプテンラブリーマリー』

POW   :    今、乙女に対してなんて言ったオメェ?
【年齢を言われる等してガチギレモード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ラブリー♡スレイブショット
【ウィンク♡】【投げキッス♡】【可愛いポーズ♡】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ラブリー♡オンステージ
【渾身の自作ラブソング】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は暴星・メテオです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ムルヘルベル・アーキロギア
ワガハイな、こやつと戦ったことがあるのだ
ゆえにこやつの逆鱗はようく知っておる、ワガハイ前衛とかできぬゆえ出来るだけ虎の尾は踏まぬようにsうわキツ!
どうしてこのオブリビオンはまいどまいどこうなのだ!
化粧も仕草もなにもかもキツすぎる! 身の程を考えよこの愚か者め!!

あっヤバい。
ええい、こうなれば禁書を用いて彼奴の馬鹿力とタフネスをコピーしてくれよう!(【贋作のススメ】
ワガハイに扱いきれるかはわからぬが、もうボコボコにされるのは我慢ならんのだ!

……ん? これ一度喰らわねばいかんのだよなたしか。
オイオイオイ、ワガハイ死ぬわ。だ、誰か助けてくれぬかー!?


春日・釉乃
こっちも奥の手を使うしかっ!

あたしは機械鎧『鶴姫』を着込んで鎧装騎兵姿となり、背部に接続した『ヴァリアブル・エクシード・ブースター』の[ダッシュ2]の力で一気に踊り出て、一撃離脱の戦法でユーベルコードの【蒼き清浄なるセカイのために】を使用。
機械鎧用の核バズーカを発射して、[鎧無視攻撃3]の破壊力で敵を一網打尽に追い込む!

「ミディア・スターゲイザーの理想を掲げる為に…! 銀河帝国攻略戦、成就の為に…! エンペラーズマインドよ!私は帰って来た!」

ある程度の損害を与えられたら、救済の炎を沈下させ…後続の友軍に残存戦力の掃討を任せて宙域から離脱するね。
あ…モチロン、他の方との連携やアドリブはOKだよ!


煌天宮・サリエス
司令官は直接捕縛して倒すのが王道。さっさと、船に乗りこみますか。周囲の戦闘力を強化されてもめんどくさいですし。
「なんと、随分と麗しいアイドルがいたものです。決めポーズとか見せてくださいよ?」
と、穏やかな微笑みと共に本心にない言葉で褒め称えます。
褒め称えている裏で闇の鎖を用意し、準備ができたら全身をぐるぐる巻きにして捕まえようとします。捕縛出来たら銃で攻撃しながら
「なんと、これはとても酷い姿だ。本当はアイドルもどきでしたか。ちょっと、アイドル名乗るには色々きつすぎませんか?」
と、穏やかな微笑みから反転して蔑みに満ちた笑みを言葉とともに投げかけます。
……ラブソングは、もっと若くなってからやってね。


御宮司・幸村
【作戦】挑発しちゃうよ
L!O!V!E!ラブリーマリィィィ!
マリーちゃーーーん、み・な・ぎ・る~~~!
あっ、でもマリーちゃん…センスがおじさんの若い頃流行ったセンスだね?
なんつーの?古くさいというか、おっぱい以外に良いトコないし
よく見たら肌も荒れてるし、結構トシ?

と、ガチギレモード誘発
パターンがあるなら、対処は簡単
早く動く囮を召喚すりゃあ良い
出てこい『Invader's!』
俺のLVだと80体、一撃でやられるけど囮には充分でしょー

他の猟兵さん方、あのおばさんwは俺が引きつける!
今の内に攻撃は任せた!

仲間の誰かがボスを倒せば俺たちの勝ち、これ、マルチプレイの極意な?


アネモイ・エンドア
《アドリブ協力可》

あの顔つき、声色、肉体年齢……
犯罪データベースから照合したところ、どうやら長年活動を続けてきた歴戦の宇宙海賊みたいであるな。
他の猟兵にも活動年数や推定年齢のデータを送っておくのである。

さてと、戦艦である私にはこちらの方が性に合うのでな。
エンドア級戦艦13番艦アネモイ、これより敵指揮艦への砲撃を開始する!

私の本体である宇宙戦艦から【支援砲撃(連装ビーム砲斉射)】と共に
本体の艤装から砲撃やミサイルを『一斉発射』することで
敵の艦に対して『2回攻撃』の『範囲攻撃』を行う。
『誘導弾』を使用し他の猟兵を巻き込まぬよう、砲撃し続けるぞ。
敵艦からの反撃は『激痛耐性』で戦闘終了まで耐え切る。


エリカ・ブランシュ
(アドリブ等歓迎)

■ラブリーマリー
挑発すれば……アタシに気を向けさせやすくなるの……よね?
アイツの気がアタシに向けばその間に他の猟兵の攻撃チャンス作れそうだし……やってみましょうか!
「うわキツ……。さすがにそろそろ年相応の身に振り方を覚えた方がいいと思うわよ?ホント……色々キツイし。」
挑発って……こんな感じでいいのかしら?

■戦闘
アイツの攻撃は【盾受け】と【オーラ防御】を駆使して、防ぎまくってやるわ!
味方への攻撃も盾受けとかで【かばう】ようにして護りたいわね。
アイツが危険な攻撃してきた時はAigisで完全に防いでやるんだからっ!
「アンタの力はその程度なのね?やっぱりもう年なんじゃない?」


オリガ・ホーリエル
うわキツ…。あれはないわ…。あれをどうにかしなきゃ…っていけないいけない、お嬢様口調が!

あたしは戦闘能力があまりないから後方支援。でもあの年増が歌で敵のポテンシャルを高めると言うのなら、あたしにも対抗手段はありますわ!

相手が自作ラブソングを歌って来たらこっちも歌で対抗!あの年増と同じ効果のユーべルコード、共鳴する行進歌で味方の猟兵達を支援しますわ!歌唱とシンフォニックデバイスを使って年増の歌声に負けぬよう、この宙域にあたしの歌を響かせてやりますわよ!
「そんな見せかけだけの姿と歌じゃ、誰の心にも届きませんのよ!」


江戸川・律
OK…
件の宇宙海賊が「また」沸いたんだって
分かったちょっと待って直ぐに消し炭にしてくるから
(万年筆で頭を小突きつつ心底嫌そうな顔をしながら現場へ向かいます)

(いつもの様子に溜息を吐きつつ禁句を口にします)

クソばばぁ!!
いい加減に辺境惑星で隠居してろや!!!

「早業」「高速詠唱」の合わせ技でUC(緋の射手座)を発動

125発の火球を「念動力」「衝撃波」「操縦」で操り
マリーの周辺を高速で移動させながら
「今、乙女に対してなんて言ったオメェ?」で理性を失っている
マリーの無差別攻撃を火球へ誘導
仲間が攻撃するスキを作ります

I'll be backと指を立てるマリーに対して
今度こそ復活しないように止めを刺します


佐之上・権左衛門
(江戸川・律(f03475)とチーム組んで参加。アドリブ可)・・・あれ、こいつ何回か見・・・やっぱないわー(と心底げんなりした表情でこれいつまで続くのかなぁと思いつつも)。とりあえずお帰り下さい。つーか帰ってくれ、『おばさん』。
と「挑発・おびき寄せ・釣り」を使い、こちらに気を引き付ける。逆上してこっちにきたら「カウンター」キャンセル「グラップル」してそのまま「なぎ払い・傷口をえぐる・怪力・鎧無視攻撃」という名前のジャイアントスイングしつつ「投擲・吹き飛ばし」をした挙句、空中で受け身がとれない状態でUC【揺らめく人型の何か】で更にぶっとばす。



 幾条もの光と、衝撃で壊れた船の一部分の破片がデブリとなり漂う宇宙空間の中。猟兵たちが前衛の防衛艦隊の中に一つの指揮官船を認める。
「あれが件のクソばばぁの船ってわけか…OK、今すぐにでも消し炭にするわ」
 江戸川・律が万年筆でこめかみを小突く音が聞こえるかどうか。如何せん船は既に射撃の準備が出来ており、予断を許さない状態。
「やいや~い、お前らはお呼びじゃないったら! 引き返さないとデブリにすんぞ♡」
 その船の中、警告を発するハイトーンが響く。時間の流れを一気に感じさせるような声をBGMに、アネモイ・エンドアがちらりと春日・釉乃を見るのだ。
「釉乃殿、と申したか。あの船、どうする? …とは言っても、選択肢は一つしかないのだったか」
「だね。あたしにも奥の手があるよ」
 纏え機械鎧『鶴姫』。凱装騎兵は背部にヴァリアブル・エクシード・ブースター
を接続し、予想もつかない速度で正面に飛び出せ。
 エンドア級戦艦13番艦はといえば、自分のはるか上に浮かぶ本体の宇宙戦艦と共に往き、悠々と貌、音声、肉体年齢から犯罪データベースを参照し、目標の活動年数や推定年齢を割り出し、皆と共有する。
「犯罪データベースから照合したところ、どうやら長年活動を続けてきた歴戦の宇宙海賊みたいであるな…まあ、無駄話は置いておくか? エンドア級戦艦13番艦アネモイ、これより敵指揮艦への砲撃を開始する!」
 放たれる支援砲撃。指先が示す先へ、連装ビームや砲弾、ミサイルの軌跡を描け。負けじと敵船からも無数の砲撃。かち合う光と光の中で。
 「ミディア・スターゲイザーの理想を掲げる為に…! 銀河帝国攻略戦、成就の為に…! エンペラーズマインドよ――私は帰ってきたッ!!」
 釉乃が掲げるミディアの理想。大成させんが為の、核バズーカの一撃。それは戦略級の報復兵器。
「ちょ、そんな物量あるわけ!? ふやあああっ!」
宇宙海賊は何をしようとしていたのだろう。声を発する前に、数多の砲撃についていけず。断続的な破壊音が響く後に、砲弾こそ止まないが、大きく砕けたボディの奥底で、アイドルの慌てる姿がある。他の船もいくらか巻き込まれて一網打尽になっただろうか。
「よし、後は任せたよ!」
 幾条もの熱の流れ星と踊るように、宙域を離脱しながら救済の炎を沈めた釉乃。激痛を耐えようと望むエンドアに、猟兵たちにサムズアップを送る。応えるように仲間たちは、警報のなり続ける船のもとへ。

 着地する7名の勇者たちはゆっくりと立ち上がりて、次にこう述べる。
「「「「「うわキツ」」」」」
 奏でよ5色のハーモニー。あまりの共鳴にゲーマーの御宮司・幸村は吹き出し、聖者の煌天宮・サリエスは苦笑を浮かべ。
「ああん!? 乙女に向かってなんてこと言うんだてめー!」
 張り上げる非難には批判を与えよ。
「だってないわ、こんな年増で、こんな!」
 オリガ・ホーリエルはお嬢様を置き去りに。
「うむ、ワガハイも虎の尾は踏まない様にしておったが我慢できん! どうしてこやつは毎度毎度こうなのだ! 化粧も仕草もなにもかもキツすぎる! 身の程を考えよこの愚か者め!!」
 前にもこのアイドル関連での前例を有するムルヘルベル・アーキロギアは安全を投げ捨て。
「さすがにそろそろ年相応の身に振り方を覚えた方がいいと思うわよ?ホント……色々キツイし」
 控えめながらエリカ・ブランシュでさえ匙を投げ。
「何回も見てたけどやっぱないわー…これいつまで続くんだ?」
 佐之上・権左衛門の疑問には律が溜息を吐くなど、今や猟兵たちは言いたい放題だった。
「ぐ、ぐぬぬぬぬ――」
 歯を食いしばる音をさらに観察眼が割って掻き消す。
「まー確かにね。今活動年齢とかも見てみたんだけど、やっぱトシだ。お肌も良くない。古臭くもあるけれど、今からでも頑張ればどうにかなるんじゃない?」
 ほら、おっぱいあるし、と宣った次に…。
「L!O!V!E!ラブリーマリィィィ! マリーちゃーーーん、み・な・ぎ・る~~~!」
 この有様。耐えきれず堪忍袋を引き千切るオブリビオン曰く。
「ああああ本当にこいつらぁ!! マジで全員ここでぶっ飛ばしちゃうからねっ♡」
 軽い口調と底知れぬ怒りは対比の上に。危機感を感じた宝石賢者がその体力と馬鹿力を模倣すべく禁書のページを開こうとして、手を止めたのは。
「……オイオイオイ、ワガハイ死ぬわ。誰か助けてくれんか?」
 一度その報復を受けねば、起点が創れないため。ならばとゲーマーは。
「大丈夫、あのおばさんwは俺が引き付ける! 皆も頼んだ。仲間の誰かがボスを倒せば俺たちの勝ち、これ、マルチプレイの極意な?」
 呼び出せ80体の侵略者。ドット絵を飛ばし、歌を歌わせる前にステージを埋め尽くせ。
「やぁんっ、何これ、邪魔っ!」
 動くものを振り払う隙に乗じ、緋の射手座は125にも灯る炎を念動と衝撃波で以てアイドルを旋回させるように操縦し。
「そのまま踊ってろ、ずっとな!」
 張り上げる怒声を好機と受け取り、しばらく踊りまくる彼女に時間を置いて声をかける権左衛門。
「ま、とりあえずお帰り下さい。つーか帰ってくれ、『おばさん』」
 再度の逆上。今度は侵略者も火の玉も追いつかなくなる程の勢いで男に迫る。しかして、それを防ぐもの在り。
「させないわっ!」
 迸る気を幸せな愛の盾に纏わせ、ちょうどハートマークの衝撃波が生まれるだろうか。押してくる圧倒的な力に声を漏らしながらも、エリカの目は決然と光る。
「仲間はアタシが絶対に、護るんだからぁぁぁ!!」
 爆ぜろ魔法。爆発的に生まれる無敵の護る力は、確かにラブリーマリーの拳を跳ね返した。だがただでは終わらずに、アイドルは踏み込んでもう一度腕を引くなり、
「扱いきれるかはわからぬが、もうボコボコにされるのは我慢ならんのだ!」
 前に躍り出たムルヘルベルにそれを防がれる。食い込む異常な力。しかし、『文化遺伝子劣化論』の記載は素晴らしく。
「ぐぅっ……これはまことに愚かな禁書であるが、時には!」
 超絶なタフネスと圧倒的パワーを得て繰り出せ、一度切りの傑作。贋作のススメは正しく本物に追いつくのだ。
「がふぁ、あうっ…! まだまだ、こうなったらっ♡」
 一瞬のうちに態勢を立て直したマリーの、愛の歌は瞬く間に宇宙に響く。次々とアネモイに屈する防衛艦隊の船々を元気づけるべく。
 届いてしまったら、どうなるだろう。しかし予想するよりも早く、お嬢様は勢いよく行動を起こす。次のポテンシャルへと届く為に。
「そんな見せかけだけの姿と歌じゃ、誰の心にも届きませんのよ!」
 さあ高らかに歌え、共鳴する行進歌を。誰よりも綺麗で強く通る歌声を、シンフォニックデバイスにより実行される拡大に乗せて。
(もっと響く! まだまだ行けるはずですわよ!)
果たしてここら一帯には、真っ直ぐで熱いビートが響いた。愛を上回り、猟兵たちの絆の力で越えていけるのなら。
「おいおい、なんで、なんで乙女の歌が――?」
 愛はやがて届かなくなり、敵勢にも脆弱性が僅かに見え始め。狼狽するラブリーなアイドルは、無差別にまた攻撃を行おうとしたところ、
「それを俺に聞かないでくれよ……」
 カウンターを超えて入るはずの拳は、動作を中途に切り替えたサイボーグに掴まれ。振り回せ、怪力の許すままに。風を薙ぎ、傷を抉り、体力など置き去りにして宙に放り投げた後に。
「あ、上に投げすぎた。なら奥の手を使わせて貰おうか」
 人型に蠢く何かはそのまま宙の海賊まで届き、さらに強烈な蹴りを加えていくのだ。さらに放り出され、船の天井に頭でもぶつけるのかと思った時に。
「ですがああしても見るとやはり麗しいアイドルだ。大変ではありますが、決めポーズの一つや二つでも見せてくれると信じましょう」
 穏やかな笑みはマリーを貫く。調子に乗りながら海賊の見せる、キラキラな決めポーズから生じるハートマークがサリエスに衝突することは無かった。代わりに織られるは、救済式から生じ、呪いの武具より出でし闇の鎖。地に叩きつけられバウンドしたアイドルを結び、全身を巻いて捕縛せよ。
「なんと、これはとても酷い姿だ。本当はアイドルもどきでしたか。ちょっと、アイドル名乗るには色々きつすぎませんか?」
 今更のように聖呪天司は嗤う。羊馬の煌銃より浄滅と呪いを等しくぶちまけて、散々に狙い撃て。
「……ラブソングは、もっと若くなってからやってね」
 そして後に、最後の力を振り絞って鎖を砕こうとするアイドル。しかし息が長く続くわけでなく、満身創痍である様を見たエリカが零す呆れの一言。
「アンタの力はその程度なのね? やっぱりもう年なんじゃない?」
 もはや年齢の問題でもなくなっているような気がするが、それはそれとして虚勢を張ろうとしたオブリビオンの前に。
「いい加減、しつこいんだよ」
 心底嫌そうな顔のこの男。もう一度、今度は目の前で、過去を過去に還す為に、また復活しないことを祈り。
「辺境惑星で――隠居してろや!!!」
 力ある文字がまた、乙女をその肉体ごと焼き焦がす。生命を引き剥がされた宇宙海賊の、I'll be backを表す親指の立つのが見えて、後はそのまま。
 過去は過去へ。防衛艦隊の攻勢も、指揮官船の一つを失った為にその隊列が乱れ始めている。
 それでも宇宙は未だ、戦いの続く音をそのままに星々の輝きで転々と輝いている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト