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大祓百鬼夜行⑮〜王子の幸せのために

作者：黒代朝希

　――西洋親分『しあわせな王子さま』は名前通り、幸せだった。
「まだ、分からないけれど……未だ、彼ら猟兵は可能性を見せてくれる。これなら、皆は助かりそうだ……」
　そう、胸を撫で下ろす西洋親分。
　ただ一つ、気がかりなのは自分たち親分の決断に巻き込んでしまった配下の妖怪達――
「彼らも、無事に骸魂が解除されると良いけれど……」
　それが、唯一の気がかりだとして……『しあわせな王子さま』の意識は、闇に溶けた。

　その悲劇の終焉（エンディング）を、君は赦せるか。

「赦せる筈が無いよね！！」
　そう、強く叫んでレーヴァ・アークルージュ（超学園級の烈焔魔導士・f29627）はグリモアベースに集まった猟兵達に訴えかける。
「西洋親分『しあわせな王子さま』の戦場はいよいよ制圧に近づいているよ。ここを落とせばかなり楽になる筈」
　そう告げてレーヴァは虚空に狐火を灯すと同時、『しあわせな王子さま』の画像を表示したホログラフを炎属性の魔力も用いて灯していく。
「今回戦う西洋親分『しあわせな王子さま』は骸蝕形態、つまりは理性を飲まれちゃっているんだけど……それは、僅かに残っている『しあわせな王子さま』の理性に訴えかければ弱体化することにも繋がっていくと今回の予知の戦場では判断されたよ」
　彼の優しさ、その者に訴えかける手段等を取って行けばかの西洋親分の猛攻を弱めることが出来る。それが分かっていれば攻略の仕方も考える必要があるはずだ。
「今回の戦争は二つの世界が掛かっているけど……それ自体に意味はないよ」
　何かが、喪われる悼みと痛みに格差などない。
　それを覆す為にも。
「必ず、明日には『しあわせな王子さま』を救ってきて！」
　そのレーヴァの叫びと同時に、炎のゲートが顕現したのであった。

第1章 ボス戦 『西洋親分『しあわせな王子さま』骸蝕形態』

POW   :    骸蝕石怪変 自身の【黄金の剥がれた部位 】を【異形の姿】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。 SPD   :    部位崩壊弾 レベル分の1秒で【切り離した体の部位（遠隔操作可能） 】を発射できる。 WIZ   :    崩落の呪い 攻撃が命中した対象に【崩落の呪い 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【対象の皮膚や装甲が剥がれ落ちること】による追加攻撃を与え続ける。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

「ご助力いただき感謝するであります、千雨殿！」
「骸魂。意に反して戦いを強いられるなんて……」
　そうして、戦場に参戦したのはバルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）と飛・千雨（偽神宝貝の使い手・f32933）の二名だ。
「王子殿をこれ以上苦しめるのは忍びないデース」
「……ええ、そうですね。憐れむのは、妖怪の皆様の覚悟を損なうこと。戦いを厭うからと、看過することは最早できません」
　かつてコンキスタドールに故郷を滅ぼされ、偽神兵器が適合して戦闘奴隷となった過去を持つ千雨。
　バルタンも幼き頃から15年間戦場で過ごした人生を有するサイボーグ。
　だが、今二人は優しき心を持ちながら骸魂を取り込んで全てを救おうとした西洋親分『しあわせな王子さま』を救うべく、武器を取る。
「いざ、救助活動に参りマース！」
「微力ながら、助勢させていただきます」

「狙うは王子殿を侵している骸魂！剥がれた部位諸共、洗い流して見せマショー！――『骸式兵装展開、朱の番！』」
　そう叫んでオブリビオン再現機能発現ユーベルコード『模倣様式・木阿弥大津波（イミテーションスタイル・バーミリオン）』を用いてメリー・バーミリオンの姿と彼女のユーベルコードを再現するバルタン。
　その自分の姿を見て、バルタンはある仮設を抱く。
「どうやら、骸式兵装は真の姿に関する機能のようデスネー！」
　これ以上の奥の手である七大海嘯『邪剣』ピサロ将軍を再現するユーベルコード『模倣様式・八艘飛び（イミテーションスタイル・フランシスカ）』をも所有するバルタン。
　それが、彼女の真の姿であるならば――

「……ああ、王子さま、そのように気配りなど……あなたが彼らを想うように、彼らもあなたを想っているはずです。ですから、気をしっかり持って……」
　と、語り掛けていく千雨。
「……」
　だが、一瞬沈黙する。
「……ああ、もう、まどろっこい！王子、テメェにはまだツレが残ってんだろうが！ぐだぐだ湿気てねぇで、んな骸魂なんざカっ飛ばして面上げろやオラァ！活がタンネェってんなら、まとめてブッ叩いてやるよっ！」
　と、『素』の自分に戻った千雨。戦いを好まないのは事実だが、頭に血が上るとこう言った自分が出るのもあるのかもしれない。
　ともかく、『素』――『真の姿』を曝け出した千雨は周囲に偽神兵器を用いた無差別攻撃を放つ。
「……すみません。カッとなって、真の姿で無差別に……」
「問題ありまセーン！」
　そこへ、バルタンが大津波を率いて強襲していく。
「王子殿！、伝言デース！『アンタの大事な配下たちも順調に解除されて』いマース！『さっさと会いに行って、元気な姿を見せて安心させてあげな！』との事デース！」
　メリーの人格に口調と性格が引きずられながらも、バルタンはその瞳に映った悲劇の終焉（エンディング）を破壊するべく――
「悲劇の終焉など、ワタシたちがブレイクしてやるぜ、であります！」
　千雨をお姫様抱っこして避難させた直後、戦場一帯を積極性のみを傷付ける大津波で飲み込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　ここからは、大津波が西洋親分『しあわせな王子様』を飲み込んだ後の戦後処理を語って行こう。

「大分飲み込んだけど……『積極性のみを飲み込む大津波』と言うのは伊達じゃあないわね。殆ど施設跡などの戦場には傷はないようね」
　長い黒髪を毛先で纏めた妖狐――妖狐らしくない外見だが、妖狐とのことは藤堂・こずゑ（一閃・f23510）。
　前髪で隠した右目を何とか見せない、見ない様に振舞いながら西洋親分『しあわせな王子様』がどこにいるかを散策していく。
「と、ここにいたようね。殆ど溜め込んだ骸魂もさっきの大津波で浄化しているみたいね……立てる？」
　手を差し出し、『しあわせな王子様』が立てるように引き上げるこずゑ。
「こちら、藤堂・こずゑ。西洋親分『しあわせな王子様』は私が保護したわ」
　無線機を用いて他の猟兵達にもその旨を伝えていく。
　やがて、二人の猟兵がこずゑと『しあわせな王子様』の元へと現れる。

「西洋親分の保護、お疲れ様です」
　そうこずゑに敬礼をした後、火奈本・火花（エージェント・f00795）は『しあわせな王子様』を介抱するべく片膝をつく。
　UDCエージェントとして各UDC案件を解決してきた火花は当然ながら治癒に纏わる物事も納めている。
「本来は演説を介して回復させるのですけどね――『UDCスピーチH（アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ・ヒール）』」
　ユーベルコードの銘を世界に唱えると同時、『しあわせな王子様』の傷が癒えていく。
　回復系ユーベルコードを用いた治癒であり、本来危険なUDC案件に出撃、または関わる際にUDCエージェントを激励すると同時に回復するユーベルコードなのだが、それを応用すれば治癒の効能を演説時に発現する性能ではなくとも、効果を発揮させることは可能だ。
「更に、UDCアースは私の護るべき世界ですかからね」
　――発見・捕獲・収容。それを以て世界――『UDCアース』を守るのがUDCエージェントとしての存在理由。
　ならば、UDCアースを守るために骸魂を身に宿して百鬼夜行に身を投じた親分たちを労わるのは当然であった。

「……浄化すると同時に、西洋親分の戦場に溶けましたか……ですけど、もうすぐ解放されますね」
　そう呟きながら、今回の戦場に駆けつけたグリモアベース団長エリカ・グランドール（サイボーグのシャーマン・f02103）はそう予見する。
「もうすぐ戦場⑥、コードネーム『幻朧桜の麓にて』の制圧が完了されます。それならば今回の『大祓百鬼夜行』の全戦場の戦力が減らせることが予見されています」
　それならば、この戦いを終えたことで西洋親分『しあわせな王子様』の戦場は制圧されるだろう。
「カクリヨファンタズムの戦争、『大祓百鬼夜行』も終盤戦に入ります。気を引き締めていかないといけませんね」
　そう呟くと同時、レーヴァの炎のゲートがエリカの近くに顕現する。
　グリモアベース団長はそのゲートを潜って帰還していった――

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2021年05月20日