2
大祓百鬼夜行㉒〜Jaeger Juggernaut

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




「猟兵諸君、大祓百鬼夜行の戦、ご苦労である」
 グリモア猟兵、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)──通称ギジィが、集った猟兵達を労う。
「未だ戦況は予断を許さぬが、一つ一つの戦を勝ち抜き、勝利へ一歩一歩邁進するとしようぞ。──さて」
 といった前置きを経て、ギジィは本題へと入る。
「此度諸君に依頼する任務であるが。諸君らに、TCG──トレーディングカードゲームをやって貰いたい」
 何?
 困惑する猟兵達に、ギジィが説明を行う。

 曰く。
 此度予知されたのは、妖怪親分が一角『新し親分』直属の強力な妖怪達。彼らはUDCアースの各地にデュエルスペースを構築し、『デュエリストブレイド』というTCGで勝負しようと猟兵達を待ち構えているのだという。
「このデュエリストブレイドというのは、新し親分が開発した『凄まじく複雑だが凄まじく面白いTCG』だ。あまりの複雑さゆえ、ルールを理解できない妖怪も多いが、かのデュエルスペースにいる妖怪達はルールを完全に理解している」
 極めて複雑なTCGではあるが、逆にあまりにも複雑ゆえに『思いつく戦術は全て完璧に実行できる』とも言える。
 低コストのモンスターを並べて手数で圧倒するも良し、大型モンスターのパワーで叩き潰すも良し。
 魔法カードや罠カードを使って直接ダメージを与えたり、相手のリソース削りやモンスター破壊でゲームをコントロールして勝つも良し。
 特定の条件を満たせばゲームに勝利する、という効果のカードも色々ある。
 まさに発想力次第でありとあらゆる戦術を取ることが可能、というのがこのTCGの魅力と言えよう。
「かの妖怪達は、まともに戦えば猟兵とて苦戦を免れ得ぬ強敵揃いだ。TCGで戦い、打ち倒すが良策だろう」
 妖怪は複数いるので、参加する猟兵それぞれが一人ずつを相手にする形となる。基本的にはルールに則り正々堂々勝負するべきだが、多少のイカサマもバレなければ問題ない、とのこと。
 いずれにせよ、対戦して勝利すれば、骸魂が抜け元の妖怪に戻るだろう、とギジィは予測する。
「それでは転送を開始する。諸君、デュエルに備えよ」
 説明を終えたギジィはグリモアを展開し、猟兵達を送り出す。
 決戦のステージへと。


五条新一郎
 基本的にクリーチャーで殴り合うのが好きです。
 五条です。

 大祓百鬼夜行、次なる戦いはTCGバトル。
 皆様の理想のデッキで華麗なる勝利を魅せてやりましょう。

●目的
 妖怪達とTCG『デュエリストブレイド』で対戦し勝利する。

●戦場
 UDCアースのどこかにあるデュエルスペース。
 一般的なカードショップに併設されているデュエルスペースを想像して頂ければ大体合ってます。

●プレイングについて
 OP公開後からプレイングを受け付けます。締め切りはタグにてご案内する予定。
「デュエリストブレイドで勝負する」ことでプレイングボーナスが得られます。
 ルールについては、既存TCGほぼ全てのルールが同時に存在しているものと考えて頂ければと。
 基本的には、デッキを構成する主要なカードを技能や装備で、切り札的なカードをユーベルコードで表現なされると良いかと思います。

●リプレイについて
 随時書いていく予定。遅くとも5/22(土)深夜には完結させる予定でおります。

 それでは、皆様の制止不能なプレイングお待ちしております。
199




第1章 冒険 『デュエルしようぜ!』

POW   :    魂のカードでデュエル!

SPD   :    速攻デッキでデュエル!

WIZ   :    コンボデッキでデュエル!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
ルールは違えど『猟書家』相手にTCGを経験しておいてよかったですぅ。

使うのは所謂『ステロイド』タイプ、低コストで戦力になるユニットに加え、加速能力の有るユニットから中&大型のユニットに繋げる形を軸に、[爆撃][砲撃][重量攻撃]等の火力系カードで相手ユニットを除去、場合により[カウンター]や[結界術]でユニットを守り、此方の攻撃を通していく形になりますぅ。
そして切札になるのが【至祷】、これを場に展開することにより、全ての味方ユニットの強化に加え『再生』が付与出来ますので、[範囲攻撃]→『再生』により、一方的な広域除去が行えますねぇ。

後は上手く行くか、頑張ってみましょう。


トリテレイア・ゼロナイン
札遊びはキマイラF関連の依頼で覚えあり
先ずは自分に合ったデッキ構築ですね

マルチセンサーやワイヤーアンカーでの情報収集やハッキングカードでデッキサーチ、相手手札やデッキのピーピング
手札の質と情報を元にマストカウンターを●見切り狙いすました(スナイパー)武器受け盾受けの札で相手の攻撃や戦略打ち消し

その間に怪力と耐久=かばうに長けたモンスターを召喚し戦線構築
(騎士っぽい見た目でデッキシナジーは微妙な趣味枠)

受動的な性質もあって盤面が硬直しますね
互いに重量級が睨み合うなら…
切り札のUC
相手モンスターのコントロール奪取し一斉攻撃


…例え勝率が下がろうと
やはり御伽の騎士の如き王道のデッキにするべきでした…!


空亡・劔
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!

でもデュエリストブレイドは遊ぶわ!

このあたしの神殺しデッキでね!

基本的に低コストの人間戦士カードを複数展開

何とか力を合わせるけど強烈な範囲攻撃と強力な魔法で殲滅され

マジックカード「人類の脅威認定」を使用!
このカードは此方の人間系モンスターが5体以上墓地に送られた時発動する!
是によりあんたの手札のモンスター全てに「人類の脅威」属性を付与!

そして同時に
「神殺しの大妖怪」を召喚!
此奴は人類の脅威に対して特効効果を持つ!
更に【天候操作】でフィールドを大雪にするわ
大妖怪の【弾幕】!【属性攻撃】の氷で強化された【二回攻撃】でモンスターを殲滅よ!



 転送を果たし、デュエルスペースへと足を踏み入れる三人の猟兵達。
「ルールは違えど、猟書家相手にTCGを経験しておいてよかったですぅ」
「全くですね。かの戦いでの経験が、よもや此度の戦争で活きようとは」
 歩みながら夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が漏らした一言に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が実感と共に頷く。
 キマイラフューチャーを侵略せんとしている猟書家の一人『忌火起・レッカ』。TCGをその手段とするかの敵との戦いを通してTCGに触れた、という猟兵も少なくはない。るこるとトリテレイアもまた同じく。此度のゲームである『デュエリストブレイド』とは異なるゲームであるとはいえ、その経験は確かな意味を持つことだろう。
「全く、この最強の大妖怪であるあたしを差し置いての大異変とは生意気よね!」
 一方、空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)は此度も変わらず己の最強アピールに余念が無い。とはいえ。
「でもデュエリストブレイドは遊ぶわ!」
 自分用に調整したデッキを収めたケースを掲げ、デュエルへの意気込みは充分である。
 そうこうするうち、デュエルスペース内に屯していた妖怪達が三人に気付く。妖怪達の中からも三名が進み出て、猟兵達に声をかけてくる。
「あんた達、デュエルしに来たんだろ?」
「はい、皆さんと勝負させて頂きたいなとぉ」
「ええ、勿論。その為に此方へ参上した次第です」
 問いに応え、るこるとトリテレイアもまた己のデッキを取り出してみせ。
「良いだろう。それなら――」
 三人の妖怪が並び、唱和する。
「「「いざ、勝負(デュエル)!!」」」

 六人掛けの長テーブルに、猟兵達三名と妖怪達三名が其々向かい合って座る。
 るこるの相手は地獄の獄卒と思しき青ざめた肌の青年。
 トリテレイアの相手は人狼っぽい小柄な少年。
 劔の相手は妙に露出の高い巫女風の女性。
 デッキを取り出し、其々に山札のシャッフルを行う。一旦デッキを相手と交換し、山札のカットを行いあい、再び互いへ返す。
 コイントスによる先攻後攻決めを経て、其々山札から初期手札として七枚のカードを引く。引いたカードを確かめる。
「……マリガンさせて貰う」
 獄卒の青年は初期手札が良くなかったらしい。マリガンを宣言し、手札を山札に戻して再度シャッフル。るこるにカットして貰った後、山札から六枚カードを引く。今度は問題ないようだ。

「それでは、よろしくお願いしますぅ」
「宜しくお願い致します」
「よろしくお願いね!」
「……宜しく頼む」
「よろしくー!」
「宜しくね」

 互いに挨拶を行い、いよいよデュエルスタートと相成った。

 るこる対獄卒の青年。先攻はるこる。
「まずは私のターンですねぇ。フィールドセット《森林》、《豊饒の使徒》を召喚しますぅ」
 カードの使用に必要なコストとなるエネルギーを生成するフィールドを設置し、モンスターを召喚する。
「ターン終了ですぅ」
「では俺のターン。開始時処理無し。ドロー」
 るこるがターン終了を宣言すると共に、青年が山札からカードを引く。最初のターンからドローが可能なのは後攻だけだ。
「フィールドセット、《地底湖》。ターン終了だ」
 青年はフィールドの設置だけを行いターンを終了する。序盤は積極的に攻めないデッキと思われる。
「私のターン、開始時処理無し、ドロー」
 続いてはるこるのターン。2ターン目からは先攻もドローが可能となる。
「フィールドセット《高地の樹林》、《森林》と《豊饒の使徒》を併せ計3エネルギーを使い《牛頭の強兵》を召喚しますぅ」
 先のターンに召喚した《豊饒の使徒》はフィールドカード同様にエネルギー生成能力を持つモンスター。これによってエネルギー基盤を素早く整え、早期に強力な中~高コストモンスターを召喚するのがるこるのデッキであるのだ。

 トリテレイア対人狼の少年。先攻は少年。
「僕のターン! フィールドセット《高地の樹林》、ライフを払って赤エネルギー生成、《血染めの猛犬》を召喚!」
 少年は序盤から積極的に攻めるデッキらしい。《血染めの猛犬》は各ターン可能な限り攻撃しなければいけないリスクを持つモンスターだが、その分コストに対し高い攻撃力を持つ。
「ターン終了だ!」
「それでは私のターンですね。開始時処理は無し。ドロー」
 少年からターンを受け取ったトリテレイアは開始時処理の確認の後ドローを行う。序盤は基本的に何も起きない開始時処理だが、ターン進行手順の正しい確認は重要だ。
「フィールドセット《海岸》。魔法カード《ダイレクト・ハッキング》を使用します」
 トリテレイアは手札から宣言したカードを公開する。相手の手札を確認した上でカードを追加で引ける魔法カードだ。
 効果に従い、少年が己の手札5枚を見せる。フィールドが2枚にモンスターが2枚、魔法カード1枚。
「ふむふむ、なるほど……ありがとうございます」
 向こう3ターン程の少年の動きは凡そ予想できた。少年に礼を述べ、追加の効果でカードを引きターンを終了する。
「よし、僕のターン! 開始時勝利無し、ドロー!」
 続いて少年のターン。カードを引き、そして。
「フィールドセット《活火山》、《血染めの猛犬》で攻撃!」
 早速攻撃を仕掛ける少年。場にモンスターを配置していないトリテレイアに守る術は無い。だがそれは承知の上。じっくりと戦線を構築していくのがトリテレイアのデッキであるからだ。

 劔対巫女風の女性。先攻は劔。
「あたしのターン! フィールドセット《草原》、《若き狩人》を召喚! ターン終了よ!」
 劔もまた序盤からモンスターを召喚し攻勢の構え。
「私のターンね。開始時処理無し、ドロー」
 巫女風の女性のターン。カードを一枚引く。
「フィールドセット《沼地》、《哀願する狂信者》を召喚。ターン終了よ」
 巫女の方も初手からモンスターを召喚するが、これは攻撃用ではない。
「あたしのターン! 開始時処理無し、ドロー!」
 続いて劔がカードを引き、早速動く。
「フィールドセット《山麓の砦》。《若き狩人》で攻撃!」
 攻撃を宣言する劔。巫女は先のモンスターで防御することも可能であったが。
「通すわ」
 敢えて防御せず、自身への直接ダメージを甘んじて受ける。無論、そこに意図があるのは確実だろう。
「それじゃ、あたしは《精鋭の槍使い》を召喚してターン終了よ!」
 追加のモンスターを召喚しターンを終える劔。それを見て巫女はほくそ笑む。
(成程、戦士系モンスターでの速攻という感じかしら)
 劔の戦術をそう予測し。その上で勝算を見ての笑み、と見えた。

 ゲームは進み、徐々に其々のデッキの動きが際立ってくる。
「魔法カード《炎の光線》を使用しますぅ。対象は其方の《夜霧の吸血鬼》で」
「……通そう。では此方の《夜霧の吸血鬼》は墓地へ送られる」
 るこるは手札から魔法カードを使用、戦闘では破壊されない能力を持つ青年のユニットを破壊する。
「では《牛頭の強兵》と《荒ぶるグリーグ》で攻撃しますぅ」
「……強兵は通す。グリーグを《脳齧りのネズミ》で防御だ」
 その上でモンスター達を攻撃させてゆく。青年は特に攻撃力の高いモンスターを小型モンスターで食い止めてダメージを抑え、反撃の為の時間を稼ぐ。

「僕のターン! 《唸るヴルゴラク》を召喚!」
「では、それへインタラプトを。魔法カード《攻性防御》。そのモンスターの召喚を打ち消します」
 トリテレイアは先程見た中で最も脅威が高いと見たモンスターを狙い、その召喚に対し手札にある打ち消し効果の魔法カードを使用。《唸るヴルゴラク》は敢え無く墓地へ送られる。
 相手の動きを見切り、脅威に対し的確に対処を重ねてゆくのがトリテレイアのデッキだ。守りを固めた上で動く堅実なデッキとも言える。
「私のターン。《誉高き聖騎士》を召喚してターン終了です」
 そしてトリテレイアにターンが回ると、彼は防御力の高い壁役モンスターを召喚。他のモンスターを庇いダメージを引き受ける能力も持つ防御的なモンスターだ。
(あれ、《誉高き聖騎士》? ……まあ、そういう好みもあるか)
 一瞬不思議そうな顔をした少年だが、気を取り直して自分のターンを進めてゆく。

「あたしは《駆け出し剣士》と《早馬乗り》を召喚してターン終了よ!」
 そして劔は、手札のモンスターを次々と召喚する。彼女の場には人間の戦士系モンスターが既に五体並んでいる。
「それじゃ私のターン。開始時処理で《鮮血の祭壇》の効果発動、ライフを減らしてカードを引くわ。続いてドロー」
 巫女はターン開始時にライフを失う代わりにカードを引き増しする継続魔法カードを設置していた。通常のドローと合わせカードを二枚引ける形だ。
 手札を確認し、薄く笑みを浮かべる巫女。そして動く。
「《哀願する狂信者》と《供儀の刃振り》を生贄に捧げ、《血祭りの悪魔》を召喚。全てのモンスターにダメージよ」
「!!」
 そのモンスターによって発生するダメージは、劔の場にいる全てのモンスターを破壊できる量。敢え無く全滅する、劔のモンスター達。
「じゃあ、ターン終――」
「その前に魔法カード発動よ!」
 だがそこで劔は動いた。手札から公開されたその魔法カードの名は《人類の脅威認定》。
「《人類の脅威認定》!? そ、それを使うデッキだったなんて……!」
 驚愕する巫女。何故なら、このカードの発動条件はかなり厳しく、積極的に使うプレイヤーが殆ど居ないからだ。
「ええ、『同一ターンに自分の人間系モンスターが5体以上破壊されたターンのみ発動可能』! これで、あんたのデッキのモンスター全てに『人類の脅威』属性を付与!」
 このカードの効果は、端的に言えばそれだけ。故に、この時点では明確な脅威ではない。ないが。
「そしてあたしのターン! 開始時効果でこいつを召喚するわ!」
 自分のターンが回ってきた劔は即座に動く。手札にあったそのカードを卓へと叩き付ければ、そのカードは。
「《神殺しの大妖怪》……!」
 それは高い攻撃力と防御力、更に『人類の脅威』属性を持つモンスターに対して更なる攻撃力を発揮する能力を持つが、それ以上に極めて重いコストの持ち主でもある。だが。
「ええ、此奴は『人類の脅威』属性を持つモンスターだけが場にいる時、コスト無しで召喚可能なのよ!」
 まさにこのカードを最大限に活かすべく組み上げられた『神殺しデッキ』。それが劔のデッキの正体だったのだ。
「更に魔法カード《ホワイトアウト》! 場を『大雪』状態にするわ!」
 続けて発動したのは、戦場の天候を変更するカード。通常は『晴れ』だが、こうした天候操作効果を持つカードがあれば天候を変更することも可能なのだ。
「《神殺しの大妖怪》の属性は氷。これで攻撃力は更にアップよ!」
 そして氷属性でないモンスターの能力は低下する。以て、劔が戦場を完全に制圧してみせた格好だ。
「それじゃ《神殺しの大妖怪》で攻撃!」
「《血祭りの悪魔》で防御……!」
 劔のモンスターの攻撃に対し、一方的に倒されるのを承知で己の切り札を足止めに回す巫女。そうしなければ、最早次のターンを迎えることも叶わない故に。
「ターン終了よ!」
「私のターン……!」
 巫女は《鮮血の祭壇》の効果と併せカードを二枚引く。そして引いたカードを確かめて――
「――投了するわ」
 カードを卓に伏せ、己の敗北を宣言した。

 一方、るこると獄卒の青年の対戦も終盤を迎えていた。
「《串刺し平野の伯爵》召喚。攻撃か防御を宣言したモンスターにダメージを与える」
 青年が召喚したそのモンスターを前に、るこるは眉根を寄せる。能力によって与えられるダメージは、るこるの場のモンスターの大半を一撃で仕留める程。耐えられるモンスターも《串刺し平野の伯爵》と戦えば討ち取られてしまうだろう。
 突破する手段が必要だ。青年がターン終了を宣言し、るこるが山札からカードを引けば。
「――来ましたねぇ」
 るこるの口元に笑みが浮かぶ。そして公開したそのカードは。
「魔法カード《豊饒の加護》を使用しますぅ」
「………!!」
 驚愕する青年。何故ならばその効果は。
「私がコントロールする全てのモンスターの攻撃力と防御力を強化、更に再生能力を付与しますぅ」
 という、まさに現状を突破するに相応しいものであった為だ。
 青年は己の手札と場を確かめる。この状況を乗り越えられれば勝ち目はある。《串刺し平野の伯爵》以外にも小型のモンスターが何体かいる、これらを総動員して守れば、次のターンに賭けられる――
「更に魔法カード《爆ぜる流星》も使いますねぇ。全てのモンスターにダメージですぅ」
 追撃とばかりにるこるが発動したそのカード。青年の場のユニットが減る。るこるのモンスター達は再生能力で復活する。拙い、と彼はるこると自分の場を何度も見比べて。
「では、全てのモンスターで一斉攻撃ですよぉ」
 ただでさえ強力なるこるのモンスター達が、更に強力になって襲ってくる。この脅威を乗り切る術を探し、思考すること暫し――
「……俺の負けだ」
 どう頑張ってもライフが0点を割る。青年の敗北は、最早避けようがなかった。

 一方、トリテレイアと少年の対戦は未だに続いていた。防御的に動き長期戦を旨とするトリテレイアのデッキの性質上、必然的に対戦時間は長くなるのだ。
「《満月に吠えるもの》召喚! このモンスターの召喚にはインタラプトできない!」
「くっ、ここでそれが出ますか……!」
 天敵と言うべきインタラプト不可のモンスターが出現し、唸るトリテレイア。相手の攻勢の合間を縫って少しずつ攻撃を重ねてきた彼だが、もう少しで少年のライフを削り切れると見た処に大型モンスターが現れ、戦況は再び膠着状態に陥る。
 否、厳密にはトリテレイアが不利だ。《満月に吼えるもの》を止められるモンスターはトリテレイアのデッキに存在しない。魔法カードと捨て石の防御を駆使して、かのモンスターを破壊できるカードを探し出すしか――
「よし! それじゃあターン終了!」
「私のターン、開始時効果はありません。ドロー」
 ターンが回ってきたトリテレイアはカードを引く。冑のスリットから覗く緑の光が、一瞬その輝きを増す。
「――そうか、この手がありましたね……!」
 言いながら公開したそのカードの名は《強奪戦法》。そのカード名を確かめた少年の表情が驚愕に彩られる。
「この効果によって、貴方の《月に吠えるもの》のコントロールを頂きます!」
 効果に従い、トリテレイアは自分の場に少年の《月に吠えるもの》を移動する。そして。
「更に攻撃も可能! ということで《月に吠えるもの》と《誉高き聖騎士》で攻撃します!」
「ぼ、僕の負けか……!」
 両者のエース級モンスターの同時攻撃によって、少年のライフは0となるのであった。

 そうして、三人の猟兵が全員がデュエルに勝利を収めた。
 獄卒の青年、人狼の少年、巫女の女性。全員の身体から黒く禍々しい気配が漏れ出し、やがてデュエルスペースの外へと流れ消えてゆく。骸魂のようだ。
「ふふん、TCGでもあたしは最強の大妖怪よ!」
 自信満々に胸を張る劔。
「トリテレイアさんも、お疲れ様でしたぁ。……おやぁ?」
 労いの声をかけんとトリテレイアに近づいたるこるだが、そこで違和感に気付く。
 トリテレイア、卓に座ったまま、己のデッキを片づけることもなく、一枚のカードを見下ろしていた。《誉高き聖騎士》。
「――このデッキの方が勝率が高いだろう、と思い組みましたが」
 漏れる声音は何処か複雑ば響きを帯びて。
「……やはり、御伽の騎士の如き王道のデッキにするべきでした……!」
 ウォーマシンとしての合理性と、騎士たらんとする者としての精神性との間で、日々煩悶しているトリテレイア。TCGにおいても、その苦悩はついて回るものであった――のかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
ぃよーしアタシも参戦だ!
ここまでルールが膨大だと、
ちょっとデッキを変えるだけでも偉く違うねぇ。
たまにはそうだねぇ、速攻を決めてしまうかな!

今回使ってみるのは黒の侵略天使系。
黒なのに天使ってのが変な感じだけど、まあいいか。
まずは小粒だけど打撃力のある天使系モンスターを並べて、
すぐにその1体をブレイク進化!
進化していないモンスターにはガードされない能力を付けて、
序盤から押すよ!
途中で更に、同勢力しかガードに回れなくなるステルスまで付与してペースを緩めない。
そうしてお互い乱打戦になったところで、
相手の残りライフを削り取る、亜空間な直接火力スペルでトドメさ!
……これ天使ってより宇宙人じゃねぇかな?


マリア・ルート
今回はターボデッキで行こうかしらね。
コスト軽めのモンスターを大量展開して相手プレイヤーやクリーチャーを直接殴りに行くわ。
(早業)でコストを軽減して、モンスターが一定人数以上の時(弾幕)で1ターンに2回攻撃できるように、(蹂躙)で罠などの影響を受けないようにする、とにかくモンスターが尽きることないように戦うデッキ。ターボで手札も補充し、怖いのはライブラリアウトくらいかしら。
相手の大型モンスターに攻撃されたら(援護射撃)で一時的にみんなの力を合わせて返り討ち。

切り札はUC!効果は単純、自分と相手の場のカードを全破壊!
これで相手の場を空っぽにしつつ私は止まることない速攻を再展開し押し切る戦略よ!


劉・明琳
ふむふむ、なるほど
このカードゲーム、麻雀とはかなり異なりますね
とはいえ、カード賭博の一種のようなものと考えると、私にできない道理はありません
我が天運にてこの博打勝たせていただきましょうか

デッキというのでしたか
引き札の山は自分で組み立てることができるのですね
ならば、僵尸やゾンビの軍団を、軍団を指揮する高位の不死者を、死者を生み出すコストの沼を効率的に配しましょう

そして私の【稲妻自摸】にかかれば、一切の無駄ヅモなしで的確に最短に大軍勢を召喚していきます
数は力です
そしてその数を最短で揃え、数の暴力で押し勝ってこの博打勝利させていただきましょう

無限に湧き出る死者の軍団、さぁ、いつまで耐えられますか?



 先にデュエルを開始した猟兵達に遅れること数分、更に三名の猟兵がデュエルスペースにやってきた。
「――ふむふむ、なるほど。このカードゲーム、やはり麻雀とはかなり異なりますね」
 デュエリストブレイドの説明書に目を通しながら、劉・明琳(天運博徒・f32795)が呟く。因みに説明書といっても某大作RPGの攻略本ぐらいの厚さがある。
「そうだねぇ、ここまでルールが膨大だと、ちょっとデッキを変えるだけでもえらく違ってくるよねぇ」
 それだけにデッキを組む楽しさもまた大きいのだけど、と笑うのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
「ルールもカードの種類も多い。それだけに、充分に強いデッキが幾つも作れる」
 作る楽しさだけじゃない、それらで遊ぶ楽しさも十二分だ、とマリア・ルート(紅の姫・f15057)もまた笑う。
 そうこうしているうちにデュエルスペースの一角、先に到着していた猟兵達が妖怪達とデュエルを行っている様子と、それを観戦する三名の妖怪達の姿が認められた。猟兵達は早速、観戦中の妖怪達へ対戦を求めて声をかける。

「ぃよーし、アタシも参戦だ! 一丁対戦どうだい?」
「おう、望むところだ! 良いデュエルにしようぜ!」
 多喜の対戦相手は、大柄な鬼っぽい東方妖怪の青年。
「対戦お願いできるかしら? あなたとなら楽しくなりそう」
「ん、わかった。楽しめるよう、頑張る」
 マリアの対戦相手は、悪霊なのだろうか陰鬱げな雰囲気の少女。
「では其方の貴女、私と対戦如何でしょうか」
「はい、喜んで。わたくし、負けませんよ」
 明琳の対戦相手は、淑やかな雰囲気の竜神と思しき少女。
 対戦相手が決まり、それぞれに卓へとついてゆく。

 デッキを取り出し、其々に山札のシャッフルを行う。一旦デッキを相手と交換し、山札のカットを行いあい、再び互いへ返す。
 コイントスによる先攻後攻決めを経て、其々山札から初期手札として七枚のカードを引く。引いたカードを確かめる。
「あら……マリガンさせてくださいませ」
 竜神の少女は手札が悪かったらしくマリガンを宣言し、手札を山札に戻して再度シャッフル。
(マリガン……そういえば、そういうルールもあるのでしたか)
 少女の山札をカットしつつ、明琳は考える。自分の初手も、カードを使うコスト源となるフィールドカードが二枚しか無かった。
(しかし。我が天運ならば、きっと)
 だが、己の豪運には自信のある明琳。それでも己ならば勝利できるという自信のもと、この手札で行くことを決意する。

 少女が改めて六枚のカードを手札として引けば、今度は問題ないようで。
「それじゃ、よろしくな!」
「宜しく頼むぜ!」
「よろしくお願いするわね」
「ん、よろしく……」
「宜しくお願いします」
「宜しくお願い致しますね」
 其々に挨拶を交わして。いざ、デュエル開始である。

 多喜対鬼風の青年、先攻は多喜。
「アタシのターン! フィールドセット《荒野》、《サーチャー・エンジェル》を召喚してターンエンドだ!」
 多喜が召喚したそのモンスターは、天使のようだが機械的な装備品が目立つ、何処かSF的なイメージを持つモンスターである。色も天使の定番である白ではなく黒だ。
「オレのターンだな! 開始時処理なし、ドロー!」
 鬼風の青年のターン。柄の悪そうな雰囲気の彼だが、ターンの進行手順はしっかりと守る。特に序盤は開始時処理が無いことが常の為、しばしば飛ばされがちになるものだ。
「フィールドセット《古戦場》、ライフを払って赤エネルギー生成。《命知らずの山賊》を召喚してターンエンド!」
 鬼青年もまたモンスターを召喚してターンを終える。再び多喜のターンだ。
「アタシのターン! 開始時処理なし、ドロー!」
 今度は多喜もドローを行い、メインフェイズへ。再びフィールドカード《荒野》をセットし、そして更に動く。
「《サーチャー・エンジェル》を《ウォーヘッド・デュナミス》にブレイク! でもって攻撃だ!」
 場に出ていた《サーチャー・エンジェル》に重ねる形で《ウォーヘッド・デュナミス》を出す。この《ウォーヘッド・デュナミス》は『ブレイク』という種別のカードであり、場にある共通の種族のモンスターに重ねて出すことで、元のモンスターが覚醒・進化した(ブレイクした)というニュアンスの下で場に出るモンスターである。土台となるモンスターが必要な分、コストに対して高性能なモンスターが多いのが特徴だ。
「ぐっ、防御できない……!」
 例えばこの《ウォーヘッド・デュナミス》は、ブレイクしていないモンスターには防御されないという能力を持つ。しかも攻撃力も高いため、青年のライフは2ターン目にして大きく削れることとなったのである。

 マリア対悪霊の少女、先攻はマリア。
「私のターン、フィールドセット《練兵場》。ライフを払って白エネルギー生成、《熱狂的なヘラルド》を召喚してターン終了よ」
 悪霊少女が眉根を寄せる。確かあれは、手札から召喚するモンスターのコストを減らす効果を持つモンスター。
「わたしのターン……開始時処理なし、ドロー……」
 懸念はひとまず置いておき、自分のターンを開始する少女。
「フィールドセット《彼岸花の園》。《すすり泣く少女霊》を召喚してターン終了……」
 マリアはふむ、と少し思案顔。このモンスター、攻撃力は低いが、破壊された時にプレイヤーのライフを回復する能力を持っている。時間稼ぎに向くモンスターだ。
「私のターン、開始時処理なし、ドロー」
 ともあれ自分のターンだ。マリアはカードを引き、フィールドカードをセット。
「《熱狂的なヘラルド》で攻撃。からの継続魔法カード《重ね響く呼び声》を発動よ」
 発動したその魔法カードは、全てのプレイヤーがカードを追加でもう一枚引けるようになるというもの。以て手数を増やす、ターボデッキと呼ばれる類のデッキだ。

 明琳対龍神の少女。先攻は龍神の少女。
「わたくしのターンですね。フィールドセット《雲の霊峰》。ターン終了です」
 此方の少女はモンスターを召喚せずにターンを渡す。比較的ゆっくりと動くデッキと思われる。
「私のターンですか。開始時処理なし、ドロー」
 他二人の対戦振りも参考にしつつ、明琳はターン開始手順を進めてゆく。
「フィールドセット《沼地》、《蠢く腐乱死体》を召喚します」
 カード名に違わぬグロテスクなイラストの描かれたカードを、事も無げに場に出す明琳。因みに、自分と相手の双方にライフを少し失わせるという召喚時能力がある。
「ターン終了です」
「わたくしのターン、開始時処理なし、ドロー」
 ターンが返り、龍神少女がカードを引く。この卓の立ち上がりは静かなようだ。

 そして数ターンが経過し、いずれの卓も攻防が本格化してくる。
「オレのターン! 魔法カード《火山砲撃》! 《ウォーヘッド・デュナミス》にダメージだ!」
 多喜の攻撃の主力であった《ウォーヘッド・デュナミス》を破壊し、攻勢を食い止めんとする鬼青年。だが無論、それで止まる多喜ではない。
「アタシのターン! 《アンバサダー》に装備魔法カード《ステルスユニット》をセットして攻撃だ!」
 自身と同属性のモンスターにしか防御されなくなる効果の装備魔法《ステルスユニット》を、自身と同じ黒属性のユニットからはダメージを受けないモンスター《アンバサダー》に装備して更に攻める。
 鬼青年もまた、次々とモンスターを召喚しては攻撃を繰り出す。この卓は壮絶な殴り合いの様相を呈してきた。

「継続魔法カード《波状攻撃》を発動。私の戦闘フェイズを追加で一回貰うわ」
 1ターンに二回攻撃を可能とする継続魔法カードを設置し、只管に手数で攻めたてんとするマリア。
「それじゃ追加分の攻撃を行うわね。《走り回る扇動者》の効果で山札から4枚公開……《路地裏の自警団》を手札に加えるわ」
 更に攻撃参加時に後続のモンスターを引き込む能力を持つモンスターも組み合わせ、次々とモンスターを召喚しながら攻撃を繰り返すが、その手札は尽きることが無い。
「わたしのターン……《病める霊魂》を召喚。開始時処理で、全てのモンスターにダメージを与える……」
 無論、悪霊少女も黙っていない。数の攻めに対抗できるモンスターを投入し、またライフ回復を伴う能力を持つモンスターを使い回すことで耐えている。
 マリアはちら、と己の山札を見る。大分薄くなってきている。毎ターン手札を引き増しし、更に山札を削る効果も多用しているのだ。山札の減りが早いのは必然であった。
 敵のライフと己のデッキ、どちらが先に削りきられるか。面白くなってきた、とマリアは口角を上げた。

「《奈落のリッチ》を召喚。能力により全てのゾンビの攻撃力と防御力を強化します」
 明琳はここまで的確に状況に適したゾンビを召喚し、更にここにきてそれらを指揮する高位アンデッドを召喚。彼女のデッキは、死者の軍団を以て敵を蹂躙するゾンビデッキであったのだ。
「わたくしのターン、《渦巻く龍神》を召喚。召喚時効果で全てのユニットにダメージです」
 一方の龍神少女は、中~大型多くのドラゴンを擁するデッキ。召喚と共にダメージをばら撒き、大量のゾンビを次々と蹴散らしてゆくが。
「何の、《奈落のリッチ》の能力発動。墓地から《大柄な僵尸》を戦場に戻します」
 一旦死んだものも蘇生は可能というゾンビならではの仙術、以て倒れるそばからゾンビ達を蘇生してゆく。此方の攻防もまた、熾烈さを増してゆく。

「アタシのターン……ドロー!」
 そんな対戦にも、やがて決着の時が近づく。多喜と鬼青年の対戦。幾度目かの多喜のドロー。
(ええと、相手の残りライフは……)
 改めて相手のライフを確認する。後一体でもモンスターの攻撃が通ればゼロに至る程度。しかし今の多喜の場にいるモンスターでは、恐らく攻撃は通せない。前ターンに《アンバサダー》を焼かれていなければ。
 だが、それでも決着をつけることは可能。今し方引いたカードを公開する。
「魔法カード《亜空間穿孔弾》! アンタに直接ダメージだ!」
 多喜のデッキは、序盤から高い攻撃力で攻め込めるブレイクモンスターと多彩な回避能力によってダメージを奪ってゆく速攻系のデッキ。それ故、モンスターでの攻撃を止められた際に最後のライフ数点を削り切る手段も擁している。それがこのプレイヤーへの直接ダメージ魔法だ。
「……オレの負けか! いやー、惜しかったなぁ」
 そしてそのダメージは、鬼青年の残りライフを削りきれる値。いっそ晴れやかなぐらいの表情で負けを認める鬼青年であった。

「《スパイトフル・ファントム》を召喚。あなたのモンスターの攻撃に、追加コストを要求する……」
 マリアに対しては、悪霊少女がその猛攻を抑制するモンスターを召喚し対抗してきた。元々軽量モンスターを大量投入する都合上、フィールドカードを切り詰めているデッキである。攻撃にコストを要求されれば、その攻勢は大きく削がれることになる。
「それはよろしくないわねえ。私のターン、ドロー!」
 この状況をどう打開するか。マリアは《重ね響く呼び声》の効果も併せ2枚のカードを引く。――それを確認して、笑みが漏れる。
「魔法カード発動、《破壊鳥の咆哮》。全てのモンスターを破壊するわ」
「……!!」
 それは敵味方双方、全てのモンスターを破壊する魔法カード。マリアも悪霊少女も、場のモンスターを全て墓地へと送る。
 一見、大量のモンスターを展開するマリアのデッキとは相性が悪そうに見えるこのカードだが、実際は異なる。
「続いて《逸る一番槍》を召喚。そして攻撃よ」
 元々マリアのデッキは展開力に秀でている。よって、敵の場が整いきり攻めきれなくなった場合は、全体破壊魔法で一旦リセットしてから再度展開することで、敵が戦力を立て直すまでの間再び攻めることが可能となるのだ。
「……もう、駄目。投了……します」
 そして、戦力を展開しきった処でリセットされれば、敵は立て直しがきかない場合もある。此度の悪霊少女は、まさにそれであった。

 多喜、マリアが勝利を収め、残る明琳も間もなく決着を迎えようとしていた。
「魔法カード発動、《死せる者達の黎明》。このターン、全てのゾンビの攻撃力を上昇します」
 明琳の場に並ぶ、何枚ものゾンビ系モンスター。その全ての攻撃力が上昇すれば、合計ダメージは凄まじいものとなる。
「それでは戦闘フェイズ、全てのモンスターで一斉攻撃です」
 明琳はここまで、一切無駄なカードを引くことなく、その場その場に必要なカードを引き続けてきた。このカードもまた、たった今引いてきたものである。
「うう、《残酷な黒龍》の能力で……いえ、それでも足りませんね……」
 この状況を切り抜けられぬかと苦慮を重ねる龍神少女。だが、その合計ダメージは初期ライフをすら削り切って余りある程のもの。既に半分以上のライフを失っている現状を乗り切るには、あまりにもリソースが足りず。
「……参りました。お見事です」
 結局、サレンダーせざるを得ない龍神少女であった。

 決着がついたことで、鬼風の青年も、悪霊の少女も、龍神の少女も。その身に憑いた骸魂が剥がれ、元の妖怪へと戻ったようだ。
「今回も快勝。やはりTCGは楽しいものね」
 此度も含め、幾度かデュエリストブレイドで戦う任務に赴いているマリア。都度異なるデッキを用いているが、それだけの幅広いデッキ構築が許されるこのゲームを楽しんでいる様子であった。
「麻雀とはまた異なる面白味があるものですね」
 対してTCGは初体験であった明琳も、未知の遊戯の楽しさに目覚めたようにも見えて。

 対戦を終え、後片付けを進める猟兵達と妖怪達。多喜はふと、己が先程まで使っていたデッキのカード――《ウォーヘッド・デュナミス》を見て思う。
「……これ、天使ってより宇宙人じゃねぇかな」
 事実、これら黒属性の天使達は、宇宙の彼方から地球の全生命を抹殺する為に送り込まれた宇宙人艦隊の一員という設定らしい。

 ともあれ、猟兵達の見事なTCGプレイングにより、新し親分配下の妖怪達は無事に骸魂から解放されたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月23日


挿絵イラスト