大祓百鬼夜行④〜オペレーション・スタンドアローン
●東方親分、決起
「この場に集った東方妖怪諸君! 儂らはこれから猟兵さんとの戦闘を行うにゃ!」
東方親分『山本五郎左衛門』は東方妖怪の軍勢を前に宣言する。
「正直なところ、儂らはこれまで猟兵さんたちにおんぶに抱っこ、結果として儂らはそれに甘えておったのではないだろうか! 少なくとも儂は今それを痛感しとるにゃ!」
カクリヨファンタズムにおけるカタストロフの危機は、これまで親分が中核となってこれを食い止めていた。しかしながら、猟兵がやってきてオブリビオンとの戦闘を引き受けて以来、カタストロフの解決は猟兵任せになってしまっていた事情がある。元々不安定な世界ということもあり、致し方無しと目をつぶってきていたが、ここへ来てそうも言っていられない事情が発生した。今回出現した大祓骸魂のような忘れ去られた妖怪には、猟兵が認識できないという問題があったのだ。敢えて骸魂を飲み込んで大祓骸魂の軍門に下り、猟兵達に大祓骸魂の存在を知らせるという緊急避難的な手段を講じたものの、そう何度も使える手ではない。
五郎左衛門はそれを強く反省していた。故にこそ、大祓骸魂に勝てるまでとは言わずとも、自分たちでカタストロフに立ち向かうだけの力は欲しいと強く願ったのである。
「儂らは自力でカタストロフを食い止めるため、力を付けなければならんにゃ。今の儂らは骸魂を飲み込んだことで、猟兵さんたちと戦えるだけの力をひとまずはつけたにゃ。後は……猟兵さん達の技を、力を、そして思いを出来る限り学ぶにゃ! 実戦の中で!」
おぉ、と集まった妖怪たちから鬨の声が上がる。ユーベルコードに目覚めていなくても、彼らには世界を超えた知識が、知恵が、技術がある。それらを学習すれば、妖怪たちにとって大きな力となるだろう。
「大祓骸魂は言ったにゃ。『誰も覚えていなくても、私があなたを覚えております』……儂らの存在もいつか猟兵さん達の記憶からすっ飛ぶ日が来ると思うにゃ。ま、記録には残して貰える……と信じたいけどにゃ。でも、儂らが猟兵さんの存在をしっかりと記憶に焼き付けておけば問題無しにゃ! 儂ら長期記憶に関しては誰にも負けんと思うがどうかにゃ。特に末代まで祟るとか時間差で恩返ししたいとか言っとるやつ……お前らにゃお前ら」
軽く冗談を飛ばすと、妖怪たちの間からも笑いが漏れる。笠地蔵が隣の妖怪に肘で小突かれて苦笑し、自覚があったのか雪女は照れくさそうにうつむいていた。
「猟兵さん達の存在を、儂ら自身にきっちり焼き付けるにゃ! やられても骸魂と一緒に記憶を落とすのはご法度! 良いにゃ?」
再び同意の声が上がり、東方妖怪の軍勢は猟兵達を迎え撃つ準備を整え始めた。
●記録と記憶に残すための戦い
「山本さんは配下の妖怪たちの力をつけるためにも、我々の戦いを学びたいとのことです」
ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/開発コード[Michael]・f29697)は五郎左衛門が今回戦いを挑んできた意図を説明する。
「カタストロフが起きたとしても、ある程度は自力で対処できるようにすること。そのために猟兵の戦い方を学び、糧としたいようですね」
実際のところ、ユーベルコードの有無を抜きにしても猟兵は戦闘経験が豊富である。故に、この機会を利用して妖怪たちにも戦術的な思考や磨き抜かれた技を学ばせよう、というのが五郎左衛門の考えらしい。
「それと、もう一つが猟兵の事をしっかりと記録と記憶に残すことですね。我々グリモア猟兵は『報告書』という形で戦いの様子を記録に残しますが、妖怪たちは自分たちで猟兵のことを覚えておきたい、そうすれば猟兵の存在は風化されない。猟兵の存在自体がカタストロフに対する抑止力となるならば、その存在を記憶するだけでもカタストロフを防ぐ一つの手段になるのではないか、ということです」
そこで、とジェイミィは人差し指を立てた。
「山本さんは東洋妖怪の軍勢を率いて我々を迎撃しますが、彼らに戦い方を実戦形式で教えてあげてください。実戦形式とは言え、殺してしまっては元も子もありませんから基本的には殺さないよう注意してくださいね。集団戦法に自信のある方は、山本さんに戦術指揮の指南をしてあげると良いでしょう。彼は統率力が高いですが、集団を率いての戦いに関しては貪欲に知識を吸収したいそうですしね」
つまり、あくまで殺さず、峰打ち程度に留めつつ戦いを繰り広げることで、妖怪たちの実戦経験を積ませるのが今回の作戦の目的となる。
「とはいえ、相手が相手です。油断しているとこちらが負けかねません。山本さんたちを相手にする時はくれぐれも注意しながら、我々の戦術をしっかりと学ばせてあげましょう」
そう言って、ジェイミィはグリモアを起動し、山本五郎左衛門が待つマヨイガへのポータルを開いた。
──大祓百鬼夜行、特別教導作戦「オペレーション・スタンドアローン」、開始。
バートレット
どうも、バートレットです。
今回は山本五郎左衛門率いる東方妖怪の軍勢との戦いとなります。この戦いは五郎左衛門が妖怪たちに実戦経験を積ませて、猟兵達の戦いを学びたいという目的の下で行われます。
今回のプレイングボーナスは以下のとおりです。
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プレイングボーナス……親分と妖怪軍団の両方と戦い、誰も殺さないようにする。
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実戦形式とは言え訓練も兼ねているため、殺してしまっては元も子もありません。注意しながら戦うようにお願いします。また、「妖怪たちに戦い方を教える」「山本五郎左衛門の意表をついた戦術を披露する」と、追加ボーナスが発生します。
強力な東方親分と配下の東方妖怪たちを対処しつつ、誰も殺さないようにするというやや難度の高いシナリオですが、上記を勘案したプレイングを心がけていきましょう。
プレイング募集開始は5/21 8:31~となります。募集状況はタグにてお知らせしますので、プレイング投稿前に一度タグをご確認ください。
それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『東方親分『山本五郎左衛門』威風形態』
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POW : どろん衆きませい!
レベル×1体の【東方妖怪のどろんバケラー 】を召喚する。[東方妖怪のどろんバケラー ]は【化術(ばけじゅつ)】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 獄卒衆きませい!
対象への質問と共に、【マヨヒガ(屋敷)のあちこち 】から【東方妖怪の地獄の獄卒軍団】を召喚する。満足な答えを得るまで、東方妖怪の地獄の獄卒軍団は対象を【嘘つきに対して威力増加する鬼棍棒】で攻撃する。
WIZ : 悪霊衆きませい!
自身が装備する【号令懐刀(ごうれいふところがたな) 】から【東方妖怪の悪霊軍団】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【妖怪憑依】の状態異常を与える。
イラスト:乙川
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神楽・鈴音
意表を付いた戦術ね
だったら、私は護身術でも教えてあげようかしら?
獄卒が現れたところで、こちらもUC発動
UCの効果で動きの遅くなった相手の攻撃を茶道具で冷静に捌きつつ、茶室刀(茶室に飾る短い木刀)で【怪力】使用の当て身を食らわせて気絶させるわ
「茶道の柄杓が堅いのは、突きの攻撃を受け流すため!
「茶道の扇子が頑丈なのは、攻撃を受け止めるため!
ある程度捌いたら、改めて護身の極意を教えてあげるわ
常日頃から有事を想定し、身の周りにあるもので賊を倒せるよう修練すること
それこそが護身の極意
自分が極めれば誰かを守るのにも役に立つし、反対にこれを極めた相手を倒したかったら、相手の流れに乗って隙を窺うしかないわね
●護身式茶道、その真髄
山本五郎左衛門が待ち構えるマヨヒガにて、彼とその軍勢に神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)が相対した時、五郎左衛門は早速獄卒衆を差し向ける。
「さぁ、どんな戦術を見せてくれるのかにゃ? 来ませい、獄卒衆!」
この問いかけに対して、鈴音は一言こう答える。
「護身術を」
そう言って取り出すのは茶道具。それを見た五郎左衛門はむむ、と首をかしげる。
「護身術と言いつつ何故茶道具……? 茶道は芸道と記憶していたがにゃ……」
「これからお目にかけるのは護身式茶道だからよ。茶道は究極の護身術であることを見せてあげるわ!」
鈴音が抹茶を点て始めると、襲い来る獄卒は突然、自身の身体に言いしれぬ重圧を感じた。
「こっ……これは!? 親分、妙に体の動きが鈍くなって……!」
「思うように動けない……!?」
それでも獄卒は嘘を言う相手を打ち据える棍棒を構える。
「茶道が護身なんて聞いたことが無い……! その答えはこの棍棒が知っている!」
「そうね、そしてその棍棒はこう答えるでしょう。確かに真実であると」
なんと、鈴音は棍棒から放たれた突きを柄杓で受け流す。
「茶道の柄杓が堅いのは、突きの攻撃を受け流すため!」
「っ!?」
突きを弾かれた獄卒は、ならばと今度は棍棒を振りかぶる。しかし鈴音は扇子に持ち替えてこれを受け止め、振り払ってしまう。
「茶道の扇子が頑丈なのは、攻撃を受け止めるため!」
「なんてことだ……ッ!?」
驚きのあまり硬直する獄卒に対して、茶室に飾る短い木刀の当て身を食らわせる鈴音。この一撃には獄卒も成すすべがなく、意識を手放してしまう。
「どっ……どういうことにゃ!? これが護身式茶道……!?」
「そも、護身の極意とは常日頃から有事を想定することよ。そして、身の回りにあるもので賊を倒せるように心構えを作っておき、修練を重ねること。それを体現したのが護身式茶道。精神を落ち着かせれば周囲の状況は把握できる。後は賊を返り討ちにするための技を適切なタイミングで繰り出すだけよ」
五郎左衛門はたった今目の当たりにした光景と、鈴音の言葉に対して圧倒的な説得力を覚える。
「確かに……日常生活を送る中でいつ何が起きるかわからんもんだにゃ。護身の精神とは奥が深いものだにゃ……」
「自分が極めれば誰かを守るのにも役に立つし、反対にこれを極めた相手を倒したかったら、相手の流れに乗って隙を窺うしかないわね」
「勉強になるにゃ」
ただただ感心する五郎左衛門。猟兵と手合わせ出来なかったら、こんな戦術を学ぶ機会すらなかっただろう。獄卒衆共々、護身の真髄を学ぶ貴重な機会を得た五郎左衛門なのであった。
成功
🔵🔵🔴
地籠・凌牙
【アドリブ連携歓迎】
あんたが言い出してくれなきゃ俺たちはこの世界を助けようとすることすらできなかったんだ。
その恩義に今こそ報いる時だな!
俺が教えられること……四面楚歌状態においての立ち回り方か?
俺運悪いからよくあるんだよな……
よし片っ端からかかってこい!全員いなしてやらァ!!
攻撃は【見切り・第六感】でなるたけ見極めて【スライディング・地形の利用・武器受け】とかで流して……
痛みは【激痛耐性・継戦能力・気合】で無理やり乗り切りって防戦と見せかけつつ、【フェイント】を交えた【カウンター】【指定UC】で一人ずつダウンさせる!
骸魂しか傷つかないから被害は……え、【怪力】すぎて痛い?
ごめん、それは我慢で。
●不運の中にあってこそ
続いて相対するのは漆黒の龍鱗を持つドラゴニアン、地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)。その姿をひと目見た五郎左衛門は、彼が宿すものを見抜く。
「む……どうやら骸魂以上に良くないものを溜め込んでいるようだにゃ。虞とも違う……お前さん、ひょっとして普段から良くない運気の中で過ごしているにゃ?」
「流石にお見通しか……いや、気にしないでくれ。こいつは俺の体質みたいなもんだ」
凌牙は東方親分が自身の中にある穢れを見抜いたことに内心で舌を巻きながらも、手合わせ前に一礼する。
「それよりも、一言礼を言わせてくれ、東方親分。あんたが言い出してくれなきゃ俺たちはこの世界を助けようとすることすらできなかったんだ」
「何、普段から猟兵さんたちにはお世話になっているからにゃ。これくらいしかできんのが心苦しいくらいだにゃ」
「十分だぜ。俺たちも恩義に今こそ報いる時だ、始めようぜ!」
凌牙が教えるのは四面楚歌状態においての立ち回り方だ。元々凌牙は運の悪さや生来の無鉄砲さも相まって、よく敵に囲まれやすくなるのだという。
「っつーわけで……片っ端からかかってこい! 全員いなしてやらァ!!」
「良かろう! どろん衆、来ませい! 包囲して一気に叩くにゃ!」
五郎左衛門の指揮の下、化術自慢のどろんバケラーたちが凌牙をあっという間に取り囲んでしまう。ネズミ一匹逃さない包囲網には流石の凌牙も舌を巻いた。とは言え、こうした状況は慣れたもの。相手の攻撃をその場その場で瞬時に見極め、最小限の動きでいなしていく。その体捌きには戦い慣れした凌牙の高い実力が現れていた。
とは言え、四方八方から繰り出される攻撃には全て対処できるわけではない。化術による幻惑効果も相まって、凌牙でも防ぎきれない攻撃を食らってしまう。しかしそれを気合一つで耐えてしまう当たりは、流石の耐久自慢と言ったところか。
「相手は防戦一方だにゃ! とにかく押せば乗り切れるにゃ!」
「そいつはどうかな!」
「むむっ、にゃんとォ!?」
次の瞬間、五郎左衛門は目の前の光景に思わず目をむいた。防戦一方と見せかけつつ、突如凌牙は僅かな隙を見極めて反撃に転じていたのだ。穢れを喰らう漆黒のオーラを纏った拳によるカウンターブローを喰らい、一人のどろんバケラーが吹っ飛ぶ。
「包囲戦の弱点は相手が同士討ちを恐れるあまり、攻撃が単調になりがちなとこだ。そこを突けば……この通りってやつだぜ!」
「かはッ……!」
また一人、アッパーカットをしたたかに受けたどろんバケラーがダウンする。すでに骸魂は体内から吸い出されてしまっていた。凌牙の穢れを喰らう力の賜である。
「流石、場馴れしているだけあるにゃ……」
「いててて……」
骸魂を失ったどろんバケラーの一人がよろよろと立ち上がる。
「普通に力も強いんだな、凌牙さん……」
「あ、怪力過ぎて痛かったか? ……わりぃ、我慢してくれ。あんまり手加減効かなくてな……」
「お前さん、色んな意味で不器用って言われたことないかにゃ。戦争が終わったらまたこのマヨイガに来ると良いにゃ……人生相談くらいならいくらでも乗ってやるにゃ」
「……そん時は世話になるわ」
五郎左衛門に心配されるほどの凌牙の不器用さ加減が露呈する一幕があったものの、凌牙は見事、妖怪たちを骸魂から解放しつつ、自分の戦い方や心構えをしっかりと妖怪たちに伝えていった。
大成功
🔵🔵🔵
エィミー・ロストリンク
【POW】
配下に訓練を施したいとか、すごい鬼軍曹染みているね!?
サンモトの親分さんのお願いなら仕方ないかー!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
義姉に用意して貰った電脳スタンガトリング弾を一斉斉射して東方妖怪の群れに対応
近づく敵には強烈なパンチといった格闘攻撃で対抗しながら親分への道を作る
途中で耐久力がまずくなってきたらUC「姫君の財宝を取り込みし巨神」によってアカハガネを巨大化
数で負けるならこっちは大きさで勝負だーー!
被弾覚悟で突っ込み、強烈な拳を親分に向けて放って、「虞」を砕くバーニングナックルを叩き込む
サンモトの親分、これがわたしの今の全力全開だよー!
大破寸前になったら無理せず撤退する
●マヨイガを揺るがす機械巨人
「配下に訓練を施したいとか、すごい鬼軍曹染みているね!?」
エィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)は五郎左衛門の行動に少なからず驚いていた。何しろこの状況を配下の妖怪たちの練度向上に役立てようというのである。東方親分のしたたかな一面が垣間見えた気がした。
「猟兵さんたちには迷惑のかけ通しで本当に心苦しいにゃ……それでも、常に猟兵さんたちを当てに出来るとは限らんし、そんな時は儂ら自らの手でなんとかするしかないにゃ。だからこそ、今はむしろ好機にゃ……手合わせを頼むにゃ」
「サンモトの親分さんのお願いなら仕方ないかー!」
申し訳無さそうに頭を下げる五郎左衛門に、あっけらかんと答えるエィミー。その天真爛漫を絵に書いたような表情に、五郎左衛門はかたじけない、と再び頭を下げる。
「して……お前さんはどんな戦術を見せてくれるのかにゃ?」
「これだよー! 行くぞー、アカハガネ!」
彼女がその名を呼べば、マヨイガに1機のキャバリアが飛来する。エィミー自慢の赤きメガリス・キャバリア、スーパーロボット「アカハガネ」。その威容に五郎左衛門配下の妖怪たちは戦慄する。
「こいつが……!」
「猟兵さん達が扱う巨大からくり人形……キャバリアってやつか!」
エィミーはアカハガネに乗り込むと、アカハガネは鉄の拳を打ち鳴らす。
「さぁ、どっからでもかかってこーい!」
「怯むでないにゃ! こいつを倒すには飽和攻撃あるのみにゃ! どろん衆、かかれぇい!」
鬨の声を上げてアカハガネを取り囲むのはどろんバケラーの集団。遠距離戦向きの化術を操る者を後方へ、接近戦と耐久力に優れた者を前方に配置し、多層的な包囲網を作り上げてしまう。
しかし、アカハガネは今回の戦争において有効と思われる装備を義姉・メイスンから託されていた。それこそが電脳スタンガトリング弾。これをガトリング砲に装填して一気にばらまき、弾幕を形成する。
「っ、これでは近づけない!」
「しまった、包囲網が突破されてしまう……!」
被弾した一部のどろんバケラーたちは感電して意識を失い、骸魂を吐き出してしまう。遠距離攻撃部隊も戦線が崩壊しつつある中、近距離戦部隊が意を決して弾幕を掻い潜りながら接近、包囲陣の再構築を図ろうとする。
「近づいてしまえば……こちらのものだ!」
「アカハガネには手があること、忘れてないかなー?」
「な……ぐはっ!?」
アカハガネは拳を固めて近寄るどろんバケラーの集団を殴り飛ばす。身体強化の化術をもってしても、アカハガネの拳の威力を完全に殺し切ることは出来なかった。
包囲網が突破されるのを防ぐため、飽和攻撃もより激しさを増していく。エィミーはコックピット内でコンソールが示すアカハガネの装甲が削られ始めているのを確認した。
「……っと、マズいかな? それならメガリス合体!」
次の瞬間、アカハガネにエィミーが持つ数々のメガリスがアカハガネを中心に合体を始め、アカハガネはさらに巨大化する。
「な、なぁっ!? さらにデカくなった!?」
「数で負けるならこっちは大きさで勝負だー!!」
その巨体を振り回すだけでどろんバケラーたちの包囲網は簡単に突破されてしまう。そのまま五郎左衛門の下へと疾駆するアカハガネ。
「喰らえー! バーニングナックルっ!!」
「ほ、包囲網をいとも簡単に突破するとは……! こりゃマズいにゃ!」
目の前に拳を燃え上がらせながら迫るアカハガネの巨体を前に、五郎左衛門は妖力による障壁を張り、防御態勢をとる。
「これでどこまで耐えられるか……っ!」
「サンモトの親分、これがわたしの今の全力全開だよー! どりゃーっ!」
拳が五郎左衛門の障壁とぶつかり合う。数秒間、障壁はアカハガネの拳を防いでみせたが、衝撃は殺しきれず大きくふっ飛ばされてしまう。
「流石にこれはきっついにゃ……!」
ぎりぎり耐えてみせたものの、五郎左衛門は肩で息をするほど疲弊してしまう。エィミーが駆るアカハガネの大暴れによって、五郎左衛門は大質量の攻撃の脅威を嫌というほど学ぶ羽目になった。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
訓練…か。
てことは、魔法で一気に眠らせるとかも、無しだな。
よし、俺も訓練兼ねて、しっかり戦うか!
杖をしまって、ダガーとエレメンタルダガーを装備しよう。
風の精霊様に頼んで、空気抵抗を減らして貰いつつ、追い風で加速をお願いしよう。
いっくぞー!
基本は峰打ちと、エレメンタルダガーに仕込んだ雷の精霊の電撃による[気絶攻撃、属性攻撃]で妖怪を倒していこう。
少し痛いかな?ごめんなさい。
[野性の勘、第六感]と風の精霊様からの[情報収集]で、敵の位置を把握して、囲まれないように立ち回れたらいいな。
ピンチなら[カウンター]でやり返すか、地の精霊様に頼んで、足元に電磁場を発生させて[オーラ防御]の電磁障壁を。
●風を捉えろ
息を整えた五郎左衛門が次に相対するのは一人の妖狐。その名は木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)。
「うむうむ、千客万来だにゃ。色々と学べて儂も嬉しいにゃ」
「光栄だ、親分。訓練だったよな? ってことは、魔法で一気に眠らせるのはマズいかな」
冗談めかして肩をすくめる都月に、五郎左衛門も愉快そうに笑う。
「いやぁ……恐ろしいこと考えるにゃ。でもそれだと訓練は難しそうだにゃ……できれば他の方法でお願いしたいにゃ。勝手ばかり言ってしまって申し訳ないにゃ」
それを聞いて、都月は頷く。
「わかった。そうだな、折角の機会だし、俺も訓練兼ねて、しっかり戦うか!」
そう言うと、都月は杖をしまう。代わりに両手に握るのは、ダガーとエレメンタルダガー、2本の短剣だ。
「ほほう、精霊の力を使うのかにゃ。ではこちらは霊には霊を、悪霊衆でお相手するにゃ!」
五郎左衛門が繰り出すのは配下の悪霊衆。取り憑かれてしまえばひとたまりもないだろう。
「親分! そろそろお声がかかると思ってました!」
「いやー待たせたにゃ。機動力はお前さんらがピカイチ、彼を翻弄して差し上げるにゃ!」
「へぇ、機動力勝負か。こっちだって負けないぞ!」
都月は機動力での戦いということで、風の精霊の力を借りる。その権能によって都月の身体から空気抵抗が減らされ、さらに常に都月の背後から風が送り込まれることで、追い風効果による加速がかかる。
「よし、始めるぞ!」
「さぁ、スピード対決だ! 行くぞお前ら!」
そうして始まるのは都月と悪霊たちによるドッグファイトだ。悪霊たちは驚くべき速さで宙を舞いながら、都月に喰らいつこうと空中機動を見せる。しかしこれを軽々とかわしていく都月。
「くっ、今のは惜しかった……! もう少しで手が届いたのに!」
「いや、確実に捉えてたな、今の攻撃。むしろどうやって避けたんだ?」
悪霊たちは都月の動きに次第に翻弄されていく。まるで背中に目があるかのような反応速度に、悪霊たちの攻撃は空を切り続ける。
「ううむ……なんかからくりがあるとしか思えんにゃ……くれぐれも注意するにゃ! 我が方が疲弊すればたちまち食われるにゃ!」
五郎左衛門は都月の反応速度の理由を探るべく、その動きを観察する。本当に、背中に目があるとしか思えない。
「背中に目……背後が見えて……まさかっ!?」
五郎左衛門は気づいてしまった。相手が精霊を使う以上、その可能性にもっと早く思い至るべきであったのだ。
「悪霊衆の皆、『追い風』には注意するにゃ!」
「……追い風? ……あっ!」
そう、都月の追い風は精霊が吹かせている。即ち、都月の背後には「精霊の目が届いている」。精霊が背後から迫る悪霊を察知して敵の位置を把握しているのだ。
「死角がカバーされているのか!」
「お、気づいたか! そうだよ、俺は風の精霊様に敵の位置を教えてもらっている。まぁ、他にも勘を研ぎ澄ませていたりもするんだけどな」
都月が得意げに明かすが、それを聞いた一人の悪霊が急速に都月に接近する。
「それなら死角のないところを探せば……!」
「ま、待て! 迂闊にゃ!」
五郎左衛門が静止した時には時すでに遅く、空中で制動をかけた都月の動きについていけず都月の前に飛び出してしまう。
「隙あり!」
「し、しまった!」
雷の精霊の力が籠もったエレメンタルダガーから放たれる電撃で足を止められ、ダガーによる峰打ちをしたたかに喰らい、飛び出した悪霊は昏倒して骸魂を蒸発させてしまう。
「それなら地面からなら……!」
「そっちも対策済みだよ!」
死角と見た地面から飛び出そうと急降下した別の悪霊は、地の精霊が予め地磁気を増幅させる形で仕込んでいた電磁障壁に囚われてしまい、身動きが取れなくなる。
「む、むむむぅ……! これは手こずりそうにゃ……!」
悪霊たちが攻めあぐねる中、都月は見事な空中機動を披露し続け、次々と悪霊に襲いかかりながら骸魂を手放させていく。
「少し痛いかな? ごめんなさい」
悪霊の一人を助け起こすと、悪霊は立ち上がりながら屈託ない笑みを浮かべる。
「気にすることはないですよ猟兵さん。いやーやられました」
スピード勝負は都月にも、悪霊たちにもよい訓練になったようである。こうして、都月も悪霊たちも双方ともに空中戦の経験を存分に積むことができた。
成功
🔵🔵🔴
伊川・アヤト
【ドウェルグ】
人格名『伊川』※アドリブ歓迎
いやはや妖怪の大軍勢とは圧巻だね!まるでキネマじゃないか。親分は他の方々にお願いするとして、とりあえずボクは大軍勢のお相手をするとしよう。
バイクに乗り軍勢の隙間を「悪路走破」で抜いて行って注目を集め、時々轢いたとしても「グラップリング」で安定性を確保。
その後バイクを降り、腕輪の「結界術」で杖剣を取り出す隙を無くし「蒼天ノ霹靂」を発動。
殆どは無力化しただろうけど残党の対処をアヤト宜しく
人格交代『アヤト』
戦闘服に「早着替え」バイクに乗り直し残党を発見したらMONOLITHで「捕縛」し気絶させて行く
此れを鬼哭啾々たる戦場と言うのでしょうね、嫌な景色だ。
エミリオ・カリベ
【ドヴェルグ】
僕たちの技や力、それに想いを学びたい、か。
これは五郎左衛門さんたちの期待……そして何より信頼に応えないといけないね?
誰一人の生命も奪うことなく、確りと僕たちの全てを伝えよう。
一冊の本を取り出しUCを発動。
光の様に白く繊細な意匠の外套を纏った星霊王の姿に。
【戦闘知識】【集団戦術】で妖怪たちに戦い方を指南。
ある程度形になったら五郎左衛門さんの所へ飛翔。
えと?こういう時は名乗りを上げるのかな?
僕は空中工房ドヴェルグの団長、エミリオ・カリベだよ。
それじゃいざ尋常に……
【高速詠唱】【多重詠唱】【全力魔法】【占星術】で魔法を放ちつつ
【魔力溜め】【2回攻撃】【見切り】【瞬間思考力】で杖術を披露
オッズ・チェイス
【ドヴェルグ】WIZ
「いいね、多いね!燃えてくるねぇ!」
▼行動/技能:マヒ攻撃、範囲攻撃、幸運
伊川と共に妖怪の大軍勢を相手するよ。
主にマヒ攻撃と範囲攻撃で動きを鈍らせようかね。傷を与えるだけが戦いじゃあないよ!
▼武器
ダイスの【ロウ】は投擲
カードの【ラストリゾート】は切断
ルーレットの【フォーチュン】は……ほぼ鈍器だね
これがアタシの三種の神器さ
実戦演習でも本気じゃなきゃつまらないだろう?
▼UC【インサイド・ベット】
アイシャにベットするよ!彼女の運命の数字は06524、偶数だ。
神の雷に打たれてもアタシは幸運だからね、大丈夫、急所にゃ当てないよ。
痺れはするだろうけど。
「勝負を楽しもうじゃないか!」
アイシャ・ソルラフィス
【ドヴェルグ】
五郎左衛門さん、漢気だなぁ。見た目はこんなに可愛らしいのに…
でもそれなら、そうだねエミリオくん!
その心意気を買わなくっちゃだよね!
行動指針:回復専念! 味方も、敵の妖怪さんたちも、だれも死なせません!
ユベコの範囲回復とか、[医術][救助活動][全力魔法][多重詠唱][高速詠唱][祈り]を組み合わせた『治癒魔法』を併用して、戦場の誰一人として死なせないよう回復に専念します
オッズさんが無差別(?)に雷を撃ってる…痛い…(涙)
も~しょうがないなぁ。(痺れている自分とみんなを治癒します)
ガイグさんも他のみんなも、やりすぎないようにね~(東方親分さんも治癒する構え)
ガイグ・ズーバ
【ドヴェルグ】
今までつちかっタ戦闘知識のフル活用ダ。
補助ハ仲間に任せル。
乱れが大きな集団を狙イ【引き裂く爪】から斬撃波で不意打ち。
武装を斬り飛ばしテ戦力低下を狙イ、手足を攻撃しテ機動力を削グ。
さらに隙を見つけたラ、咄嗟の一撃としテ【切り裂く爪】からの衝撃波を放ち気絶を狙ウ。
できることを最大限やルのガァ、戦いダ。
いくゼ親分さん。
切り裂くような勢いで切り込みUCを発動。……オレぁヨ、かっさばくことだけガ、取り柄でナァ。
叩き斬った金棒ヲかく乱にに利用シ、親分さんの反撃のみを切断しテ、【こま裂く爪】で一撃……加えるフリをすル。
本命ハ背後から忍ばせタ【カームの蟷螂】の峰でノ剛撃。
だましうちダ、悪く思エ。
ポーラリア・ベル
【ドヴェルグ】
ほわぁ!妖怪大戦争!その訓練なのね?
ポーラも冬妖怪みたいになって頑張る!やぱー!
UC発動。味方に護られながら【楽器演奏】で雪兎さんを操作。悪霊さんにゴーだよ!
わざと攻撃受けて憑依。と同時に冷気で氷塊に閉じ込め!
氷と氷の間にも雪兎差し込んで、氷同士でくっつかせて動けなくしちゃう!
味方にも、飛んでくる攻撃に雪兎を飛ばして相殺、重い氷にして動きを阻害するよ!
山本様ががら空きになったら、【怪力】に任せた雪兎の【重量攻撃】!
目標はその懐刀…と見せかけて足元…でもなくて、股間に雪兎をずどーん!
恥骨に当たると女の子でも痛いんだよ!怯んだ隙に【属性攻撃】で雪だるまに閉じ込めて、無力化狙っちゃう!
●総力戦──ドヴェルグVS妖怪軍団
猟兵達が集う蒸気飛行船、空中工房ドヴェルグ。そこに所属する猟兵たちの中で、特別教導作戦「オペレーション・スタンドアローン」の参加に同意した6名が、ドヴェルグを代表して五郎左衛門のもとへと足を運ぶ。
「僕たちの技や力、それに想いを学びたい、か。これは五郎左衛門さんたちの期待……そして何より信頼に応えないといけないね?」
ドヴェルグを率いる団長のウィザード、エミリオ・カリベ(星空と本の魔法使い・f07684)の言葉には、仲間たちも頷く。
「そうだねエミリオくん! その心意気を買わなくっちゃだよね!」
同意の声を上げるのはアイシャ・ソルラフィス(隣ん家の尚くんを毎朝起こす当番終身名誉顧問(願望)・f06524)。今回は誰の生命も奪うことはない。彼女はそれを実現するためにも、敵味方問わず回復に専念をする意思を固めている。
やがて見えてきた五郎左衛門の待つマヨイガ。そこには大勢の妖怪が大挙して猟兵達を待ち構えていた。
「おぉ、いっぱい集まってるよ! いいね、多いね! 燃えてくるねぇ!」
妖怪たちの軍勢を前に血を滾らせる賭博の神、オッズ・チェイス(賭博神・f33309)。知識欲の権化である人格「伊川」を表出させた伊川・アヤト(天蓋の探究者/蒐集家・f31095)も同感であった。
「いやはや全くだ! 妖怪の大軍勢とは圧巻だね! まるでキネマじゃないか」
大作映画さながらの光景に、伊川は思わず感極まって声を詰まらせてしまう。
「ほわぁ! 妖怪大戦争! その訓練なのね? ポーラも冬妖怪みたいになって頑張る! やぱー!」
冬の妖精、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)も来たる大規模戦闘に向けて気合を入れる一方、引き裂く爪の悪魔ことガイグ・ズーバ(鎌刃と鉤爪・f32915)は冷徹に見据える。
「訓練ってんなラ、今までつちかっタ戦闘知識のフル活用ダ」
これから始まるのは大勢の妖怪を前にした演習形式の大規模戦闘。とは言え、妖怪たちも本気でかかってくるだろう。
「誰一人の生命も奪うことなく、確りと僕たちの全てを伝えよう」
エミリオの言葉を受け、6人は策を練り、妖怪たちとの戦いに挑む。
一方、五郎左衛門側も迎撃の構えに入っていた。
「うむ、総勢6人でお越しとは! ではこちらも全霊でお相手するにゃ! 皆、陣形の再構築にゃ! 獄卒衆は前へ! どろん衆はその後方に布陣、獄卒衆と連動して足を止めるにゃ! 悪霊衆は後方から撹乱! まずはこの陣形を破ってみせるにゃ!」
五郎左衛門が号令懐刀を振りながら出す指揮に従い、整然と陣を組む妖怪たち。やがて、1台のバイクが妖怪たちの前に姿を現した。伊川が操り、オッズがタンデムするバイクが陣のど真ん中へと乗り込んでくる。
「ごきげんよう妖怪諸君! さぁ、まずはボクとオッズ嬢がお相手しよう!」
「アタシ達は2人、そっちは大勢、数的有利をどこまで活かせるかね? 勝負を楽しもうじゃないか!」
「おいでなすったにゃ! 迎撃開始! さっき教わった包囲戦の弱点に注意しながら戦うにゃ!」
妖怪たちは先の猟兵との戦闘で包囲戦の弱点をしっかりと把握する。そこで飛び出してきたのは悪霊の集団だ。散発的かつ不規則な攻撃を加えようと飛びかかる。
「おぉっとこれは厳しい! では、オッズ嬢!」
「あいよ! ハンドルしっかり頼むよ伊川!」
襲い来る悪霊たちの軍勢の隙間を見つけ出して、すり抜けながら走破を試みる伊川。時折獄卒やどろんバケラーを轢きかけるが、しっかりとバランスを取りながら走行を続け、陣形の撹乱を図る。接近する悪霊はオッズがダイスやカードをばら撒くことで対処しつつ、時折ルーレットを鈍器や盾代わりにして追い払う。
「くっ、陣形が崩れる!」
「今轢かれかかったとこはヤバいな……!」
「ご明察ダ、狙わせテもらウ」
陣形の崩壊が特に激しいところに、遅れてやってきたガイグが飛び込む。鋭い爪から放たれた斬撃波が獄卒達の不意をついて襲いかかり、手にした棍棒が吹き飛び、手足に傷を負って倒れ込んでしまう。
「しまった、強襲……!」
「落ち着いて対処するにゃ! 隙を見せたらそこから総崩れにゃ……!」
「そうだ、不意の襲撃が脅威になるのは最初だけだ。集団であることを活かしてカバーに入るんだ」
そこへやってくるのはエミリオ。光の様に白く繊細な意匠の外套を纏った星霊王の姿を取り、書物を手にしながら妖怪たちに助言する。
「傷を負った人たちはこっち! 回復するからね!」
アイシャは怪我をした妖怪たちを呼び寄せて、治癒魔法をかけていく。治癒魔法には祈りが込められており、その力は骸魂を除去させる効果が付与されていた。
「さぁ、雪兎さん軍団、ゴー!」
オッズと伊川に気を取られていた悪霊衆めがけて、ポーラリアの雪兎軍団が襲いかかる。とっさに悪霊衆が迎撃して憑依に成功するも、それはポーラリアの思惑通りであった。たちまち冷気が悪霊の身体にまとわりつき、氷塊と化した雪兎の中に囚われ、動けなくなっていく。
「数が多くてキリがないね! こうなったら一か八かの賭けといこう! ベットはアイシャだ!」
「うええ、私ー!?」
「運命の数字は……おっと、偶数だ、急所にゃ当てないよ」
ここでオッズは文字通りの賭けに出る。ルーレットを回して出た運命の数値をもとに、周囲に神の雷か幸運の光を降り注がせる。アイシャは不運にも神の雷を引き当ててしまったようだ。
「痛い……も~、しょうがないなぁ」
無差別に降り注ぐ雷に当たったアイシャは自分も含めて治癒。
「ガイグさんも他のみんなも、やりすぎないようにね~」
「オレを名指しするカ、アイシャ。少しハ信用してくレ。これでモ善処してるんダ」
アイシャに名指しで釘を刺されたガイグ、不満の声を上げながらも軍勢を切り抜け、本陣の五郎左衛門の下に迫っていく。それを見た伊川は後顧の憂いを断つべく、周囲の妖怪たちを一気に無力化する一手を打った。
「では、その力、封じさせて頂こうか!」
結界で身を守りながら星屑の杖剣を抜くと、暗青色の雷光の如き斬撃波が周囲に波紋のように広がる。たちまち動きを止めてしまう妖怪の軍勢。どろんバケラーも、獄卒も、悪霊も、皆等しくその場で動きを封じられる。その後、残敵を掃討すべく伊川はもうひとりの人格「アヤト」に交代し、戦闘服に着替えるとトランク型拡張兵装「MONOLITH」によって残敵掃討へと移る。
「此れを鬼哭啾々たる戦場と言うのでしょうね、嫌な景色だ。さて、ガイグさん、親分さんはおまかせしますよ」
ガイグはアヤトの言葉に頷く。こうして彼は五郎左衛門の下に難なくたどり着いてしまった。
「さぁ、いくゼ親分さん」
「むむ、あの軍勢を切り抜けるとは。戦線が崩壊していたとは言え大したやつだにゃ」
「ポーラもいるよー!」
ポーラリアも氷に閉じ込められた悪霊たちを切り抜けて五郎左衛門と相対した。五郎左衛門は頷くと、両手を広げる。
「さぁ、2人まとめてかかってくるが良いにゃ!」
「ではいきなりずどーん!」
雪兎を飛びかからせるポーラリア。その軌跡はいくつかのフェイントを挟み……五郎左衛門の股間にクリーンヒット。
「おぐぅ!? 恥骨狙いとはちょっとひどくないかにゃ!?」
「一応本気なんダ、酷いモ何モ無いだろウ……さて、オレぁヨ、かっさばくことだけガ、取り柄でナァ」
その隙を突いてガイグが懐に飛び込み、爪で一撃を加えようとする……が。
「……しまっ、こっちはフェイクにゃ!?」
「っと、気づくのガ一瞬遅かったナ、親分さん」
次の瞬間、背後から半透明の鎌の峰が五郎左衛門の背中にしたたかに打ち据えられる。肺の中の空気を吐き出してしまう五郎左衛門。
「ごはっ……!」
「おぉ、とっさニ当たりどころを調整したカ。だましうちダ、悪く思エ」
頭を振って体勢を立て直すと、五郎左衛門の目の前にはエミリオが。
「僕は空中工房ドヴェルグの団長、エミリオ・カリベだよ。最後はお互いのリーダー同士、一騎打ちにて決着をつけよう」
「にゃるほどにゃ、受けて立つにゃ。皆、手出しは無用にゃ!」
五郎左衛門とエミリオの戦いの場を作るべく、他のドヴェルグのメンバーや妖怪たちが周囲を空けて円形の空間を作る。
「それじゃいざ尋常に……」
「勝負にゃ!!」
エミリオの高速詠唱から放たれた全力の魔法と五郎左衛門の妖力を込めた妖術がぶつかり合う。どちらの威力が優れているかの勝負。だが、そこに気を取られすぎた五郎左衛門は、エミリオが魔法を「置いた」状態で接近することに気づけなかった。
「その全力の魔法がフェイクにゃ!?」
「そうだ! これで王手だ!」
杖術を披露し、その先端を五郎左衛門の喉に突きつける。
「……見事にゃ。お陰でいろんな戦術を見ることが出来たにゃ。それに陣形も良いように崩されっぱなしで……完敗にゃ。だからこそ、これを言って骸魂を手放すにゃ……『参った』」
降参宣言とともに、五郎左衛門は飲み込んでいた骸魂を手放す。ここに、両軍トップ同士の対決は決着した。
「しかし凄かったにゃ……色々と勉強になったにゃ」
「こちらこそ、いい経験をさせてもらったよ」
五郎左衛門とエミリオは握手を交わし、互いの健闘を称える。ドヴェルグの他のメンバーも、傷ついた者を助け起こしたり、握手を交わして互いをねぎらっていた。そんな様子を見て、五郎左衛門はうむ、と頷く。
「それでは、そろそろ締めるかにゃ。猟兵さん、此度の戦は見事であったにゃ! ここに、特別教導作戦……オペレーション・スタンドアローンの終結を宣言するにゃ!」
かくして、誰も死者が出ること無く、東方親分との戦いは幕を閉じ。
猟兵の意思と技術は、確かに伝達されたのであった。
大成功
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