大祓百鬼夜行⑱秘境眼鏡奇譚
●北の保養所の謎
——そこは、放棄された保養所であるという。
音楽家達や、国に貢献した人々の保養の為に創られたという施設は落雷事件により閉鎖された。不幸な事故であった、と告げる者は落雷による火災が起きた告げ。全ては仕組まれていたのだと告げる者は、音楽家を筆頭とした不可解な人選に意図を告げる。そしてある者は、それら全てが、洗脳実験の為にあったのだ、と告げた。
「ひとつの怪異を利用することにより! さぁ、やはり僕らは目指すべきだろう。北の保養所、眼鏡をかけていなければ入れない地に」
「ふ……スクエア眼鏡など邪道、この世は丸眼鏡が制す」
「甘いわね。片眼鏡の良さを知らない坊やたち」
——そんなこんなで、色んな眼鏡を推す人々が、そこを訪れようとしていた。
●眼鏡らしい
「うん、おにーさんもおねーさんも言いたい事が沢山あるだろうし、俺も何だろうなって思ってるけど話を聞いてくれるとうれしいな」
そう告げたのはユラ・フリードゥルフ(灰の棺・f04657)だった。
「大祓百鬼夜行、おにーさんもおねーさんもお疲れさま。それで、UDC-Nullについての話ってもう聞いてるかな?」
UDC組織に「UDC怪物ではないと証明されたもの」それは、単なる虚言の類とされる分類だった。
「けど、それは嘗て本当に実在していたんだ。ただ、忘れ去られていただけで、ちゃんとあった」
ユラはそう言って顔を上げる。
「妖怪達のことだったんだ」
骸魂と合体して、帰還した妖怪達が今「UDC-Null」として人類の前に姿を現そうとしている。例え、それが噂だとしても都市伝説の類いだとしても確かめに行こうとする人たちはいる。
「真実を確かめに、或いは会ってみたいと思って。そんな人たちが向かった先で、本当に現れたUDC-Null……ううん、妖怪達に殺されてしまうんだ」
向かうべき場所は北の保養所。落雷により不可解な事情で閉鎖された保養所で、実験施設だったという噂のある場所だ。
「その保養所には、特定の条件で開く秘密の隠し部屋があるって話でね。内側から開けてくれるって言うんだ」
そこには真実が隠されている——というお決まりのやつだ。
「そこは、眼鏡をかけた人しか入れない、ってそんな噂があったんだ」
勿論辿りつけた者もいれば、そうでも無い者もいる。そこから噂に尾びれがつき、どの眼鏡なら良いだとか悪いだとかの噂になり——今に至るのだ。
「眼鏡じゃないひとを食べるとか、永遠の眠りに誘うとかそういう」
大事になった。大分大事になったのだが——まぁ、妖怪が光り物が好きだったのかもしれないし、眼鏡に一家言あるタイプだったのかもしれない。
「でもまぁ、相手の気になるポイントが分かっていれば、戦いやすいと思うんだ」
つまり、眼鏡をかけて戦うのだ。妖怪の詳細な好みが分からない以上、とりあえずどんな眼鏡でも良いだろう。
「都市伝説の調査に来た人たちもいろんな眼鏡をつけてるみたいだけど……うん、何かアピールみたいのしたら、オブリビオン達はみんなの方を向くと思うんだ」
アピール、と眉を寄せた猟兵達に、にっこりと笑ってユラは誘いの杖に光を灯す。
「この放置してると、妖怪は「感染型UDC」に変異して更に増殖しちゃうんだ。だから、おにーさんおねーさん、オブリビオンを倒して妖怪を救って欲しい」
いってらっしゃい、と最期に告げて、少年は淡い光の中へと見送った。
秋月諒
秋月諒です。どうぞよろしくお願い致します。
そこだ眼鏡だ、と誰かの声が聞こえた気がしました。だいたい勢いだけのネタになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
このシナリオは戦争シナリオです。
1フラグメントで完結し、「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●プレイング受付について
オープニング公開時より受付〜15日いっぱい
状況によっては追加の受付日程をご案内させて頂きます。
導入追加はありません。
0時を過ぎる場合は翌日の8:31〜だと締め切り的にハッピーです。
完結を優先して運営となります。状況にもよりますが全員の描写はお約束できません。
予めご了承ください。
*成功度に関係なく、負傷描写あります。
ダメージ描写が苦手、したくない方はご注意ください。
●リプレイについて
一般人がオブリビオンに襲われている所からスタートです。
眼鏡かけてると、オブリビオンの視線を引くことが出来るようです。
(眼鏡をかけていくと開く部屋、には本来別の意味があったようですが、現在では不明です)
*フレーバー程度の雰囲気ですが、眼鏡の方が来るとオブリビオンくんのテンションがアップします。
*一般人について
どの眼鏡で開くかやってきた3人。猟兵の言うことは素直に聞きます。
*戦場について
保養所の玄関ホール。すごい広いです。廃墟でボロボロですが、建物が崩れるなどの被害は発生しません。
●プレイングボーナス
『襲われている人々が、妖怪に殺されないようにする』
●敵について
虹色夢の骨羊
嘗て獏や羊に纏わる何かであった存在だそうです。
●補足情報
カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
●同行について
キャパシティ上、複数の参加はお二人までとさせて頂きます。
プレイングに【名前+ID】若しくは【グループ名】を明記してください。
プレイングの送信日は統一をお願い致します。
失効日がバラバラだと、採用が難しい場合がございます。
それでは皆様、ご武運を。
第1章 集団戦
『虹色夢の骨羊』
|
POW : 夢が集まれば元の姿に?
全身を【喰らってきた夢】で覆い、自身の【喰らってきた夢の力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : かつての夢を見れるのか?
【強制的に眠りに誘う骨のガシャガシャした音】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : かつてはどんな姿だった?
戦闘用の、自身と同じ強さの【虹色骨獏】と【虹色骨山羊】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:ロクイチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レイラ・アストン
不思議な噂に惹かれる気持ちはわかるわ
私も幾度か調査に赴いたりしたもの
でも今回の件は突っ込みどころが多…
いえ、人命と世界の命運がかかっている以上、行くしかないわね
眼鏡はいつも掛けているから
敵の気を惹く条件は満たしているわね
度は入っていないけれど
念の為『オーラ防御』を展開し
移動はBroomyに乗った状態で
敵と一般人との間に
魔弾の雨を振らせ『範囲攻撃』
まずは私を脅威と敵に認識させましょう
一般人にこの場を離れるよう告げ
彼らと別方向に逃げて敵を『おびき寄せ』
敵が召喚UCを使用したら
【精霊と見る夢】にて対処
本体ごと『属性攻撃』に巻き込むわ
属性は花、呼び起こすは嵐
かつての姿を夢見ながら
永久におやすみなさい
●ドウシテメガネドウシテ
「……」
たっぷりと間をあけた後に、レイラ・アストン(魔眼・f11422)は薄く口を開いた。
「不思議な噂に惹かれる気持ちはわかるわ。私も幾度か調査に赴いたりしたもの」
ひとつ、放棄された保養所。
ふたつ、不可解な噂。突然の閉鎖には、人死にの噂が付きまとい、研究所として使用されていたのではないかと、洗脳実験の為にあったのではないかと噂があった。
みっつ、眼鏡をつけていけば開く部屋があるという。なんか、眼鏡つけてないと食べられると——……。
「でも今回の件は突っ込みどころが多……」
言いかけて、レイラはふるり、と頭を震った。
「いえ、人命と世界の命運がかかっている以上、行くしかないわね」
そう、なんか恐ろしい程に不条理で、だいたいなんで眼鏡で、どうして眼鏡比べしに来ちゃってるんだとか色々あるけれど。
「おい、あれは……」
「まさか、本当に真実の眼鏡検定員が現れたというのか!?」
「……」
本当に、色々あるけれど、とレイラは息を落とす。ため息はこれで最期だ。うん。魔法の箒に腰掛けて、前を——保養所の玄関ホールを目指した
「人命と世界の命運」
そう、全ては世界の為にあるのだ——突っ込みどころが、多すぎたとしても。うん。
「——君たち」
「メェエエエエエエ!」
告げるレイラの言葉と、オブリビオン達の鳴き声が重なった。カツン、と足音高く、蹄で床を叩くようにして威嚇の声を響かせれば、保養所に忍び込んでいた人々が、わぁ、と声を上げる。
「あれ、は——……!」
それがただの驚愕であればレイラとて、声の一つを掛けずにいただろう。彼らを落ち着かせる必要があるとそう思った。だが、その目が輝いていたら——話は、別だ。箒に乗ったまま、滑るようにレイラは骨羊の横を抜ける。
(「眼鏡はいつも掛けているから、敵の気を惹く条件は満たしているはず……」)
だからこそ、骨羊の視界に入るようにして、レイラは一般人達とオブリビオン達との間に滑り込む。カン、と高く床を踏む骨羊たちへと指先を向けた。
「魔弾よ」
「メェエエ……メェエ!」
パチン、と光が弾けると同時に魔弾の雨が骨羊たちへと降り注いだ。一撃で、僅かに骨が散り、虹色の光が零れる。その衝撃があれば——そう、彼らの気を惹くには充分だ。
「メェエ、メェエエエ!」
「なんだと、新たな眼鏡だと……!」
「……」
骨羊のテンションと、なんだか一般の人たちのテンションも上がったが——今は、そう、えぇ、世界の平和の為なのだし。
「君達は早くこの場から離れてね」
「メエエエエエエ!」
おびき寄せるように、レイラは身を翻す。召喚された虹色の骨獏と虹色の骨山羊たちが、廃墟の床を蹴った。
「メェエエエ!」
「ェエエエエ!」
高らかに響く鳴き声は、僅か彼岸を知る獣の悲哀と、取り込まれた妖怪の叫びに似る。ここにいると、告げるように響く鳴き声に、レイラは、大気に告げる。
「精霊よ。遊びましょう、貴方の夢を私に見せて」
歌声に、囁きに耳を澄ますように手を掲げる。零れ落ちるは優しき花びら。呼び起こすは嵐。娘の誘いに、その双眸に、トトン、と骨の獣たちが足を止めるのが見えた。
「かつての姿を夢見ながら、永久におやすみなさい」
幸いの向こうへ還り行けるように。
花の嵐の向こう、オブリビオンが倒されれば飲み込まれていた妖怪達が姿を見せることだろう。ほう、と一つ息をついて、レイラは戦場を見据える。残る骨羊たちをどうにかしなければ、——多分、そう。もっと突っ込みが追いつかなくなる気が、していたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
アマリア・ヴァシレスク
…えっと、確かに私も【眼鏡】をかけてるけど…そんなに気になる、ですか?
でもこの眼鏡は大切な物だし…それ以上に、一般の人に手出しはさせない…ですっ!
眼鏡に興味があるならそれを利用、です! 【存在感、おびき寄せ】でオブリビオンの注意をこちらに向けておく、です。一般人の人にはその隙に安全な場所に移動してもらう、です
できるだけ攻撃は回避したいけど、この体なら多少のダメージは【激痛耐性、継戦能力】で耐えられる、です!
それに…眼鏡をかけている身としては変だけど【視力、見切り】は自信あり、ですっ!
敵の動きを見極めて…《蒼穹閃撃θ》ラピッドモード、です!
【弾幕、制圧射撃、レーザー射撃】で一気に行きます、です!
●トテモメガネトテモ
「メェエエエエ!」
「まさか……まさかあれが、伝説の眼鏡チェッカーなのか? 都市伝説は本物だったのか?」
「そんな……真実の眼鏡だけが通れるという道が!?」
駆けつけた保養所は、なんというか——盛り上がっていた。
「……えっと」
ごく一般的な常識と知識を以てアマリア・ヴァシレスク(バイオニックサイボーグ・f27486)は思う。
「確かに私も眼鏡をかけてるけど……そんなに気になる、ですか?」
眼鏡自体は、視力の矯正やお洒落など色んな意味はあるのだが、これは——どういうことなのだろう、とアマリアは思う。
(「眼鏡をかけた人ではないと開かない部屋……確かに、不思議……、です」)
ただの都市伝説と、噂だとと言うことはできるが——何らかの理由があるとすれば、眼鏡が無ければ通れない、見れない何かがあるのだろうか。いや、あったとしても——今は、それ以上の状況が起きている。
「メェエエエエ」
「メェエエエエエ!」
先に入った猟兵に避難するようにと告げられたのだろう。保養所の廊下を駆け抜けてきた人々を前に、アマリアは息を吸う。
「でもこの眼鏡は大切な物だし……それ以上に、一般の人に手出しはさせない……ですっ!」
空気が、揺らぐ。ふつふつと湧き上がるようにオブリビオン達が滲み出す。保養所という空間が有している怪異となった彼らは、完全に消えるまで集団で襲いかかってくるだろう。だからこそ——たん、とアマリアは前に出る。足音高く、己の存在を告げる。
「こっち、です!」
眼鏡に興味があるのであればそれを利用する。敢えて身を晒すように、目立つように踏み込めば骨羊たちの視線がこちらを向く。
「メェエエ……メェエエ!」
「メェエエ!」
それはもう、なんだかとってもテンションアップな感じで。
「メェエエエエエエ!」
一際大きな鳴き声と共に、骨の羊たちが蹄を鳴らす。カン、カンカン、とこの地に満ちた夢を喰らうようにして——その身を浮かす。最早、地に足付くことが叶わぬ骨の身で、在りし日の姿を夢見る。
「メェエエ!」
その中にある、妖怪の思いと混ざり合うようにして。
「今、です。早く、皆さんは安全な場所に行ってください、ですっ!」
踏み込みが高く鳴った。骨羊のものだ。カン、と重く、硬く響いたそれと同時に加速する。浮いた体が滑るようにアマリアに向かってきた。
「——ッ」
その衝撃を、娘は受け止める。下手に回避をすれば、一般人に意識が向く可能性もある。何より——この体は、多少のダメージは耐えられるのだ。
「それに……眼鏡をかけている身としては変だけど、こう言う動きは自信あり、ですっ!」
手を前に出す。受け止め、ダメージを最小限に抑えるように軽く身を退く。衝撃を縮め、その上で、タン、とアマリアは床を叩く。正面、敵を受け止めた今であれば、選ぶのはラピッドモード。
「えっと、モード変更はここをこうやって……ですっ!」
一歩、後ろに飛んで、即座に構えた大型のレーザーライフルを放った。光が、骨の羊たちを撃ち抜く。虹色の光が弾け、ぱふん、と骨の羊たちが消えれば一度視界が開けた。廃墟の向こう、まだあやしい虹色の光は見えている。逃がした人々の為、アマリアは真っ直ぐにその光を見据えた。
「ここから先は通しません、ですっ!」
己が、どうして人体改造を受けたのかは分からない。けれど、この体が頑丈で——それでいて、この力が誰かを守ることが出来ると知っていたから。——だからこそ、その一言は覚悟を込めて、そして当たり前のように響いた。
大成功
🔵🔵🔵
リオネル・エコーズ
お世話になってるお兄さん達が
世の中には浅いようで深い世界、通称『沼』があるって話してたなぁ
襲われてる所へ歌姫と手を繋いで突入したら
自慢の大声でご挨拶
ストーップ!
この眼鏡の輝きに賭けて眼鏡っこは殺させないよ!
眼鏡っこですアピールしつつ
魔鍵で攻撃払うか、受け止めよう
そして俺の※サブ眼鏡掛けてもらった歌姫と一緒に
敵へ笑顔で横ピース
※セピアのスクエア細フレーム
あ、君達はクイッてやる方が好きかな?
なんて敵に言って、近くまで行って笑顔でブリッジをクイッと
眼鏡アクションのサービスで惹きつけてたら
一般人が逃げる余裕作れる筈
あと
隙も
眼鏡いいよねとか話しつつ
歌姫と一緒にガッと仕掛けちゃおう
これが眼鏡の力!
なんてね
●スーパーメガネシチュエーション
「メェエエエエエ!」
「これが伝説の地なのか!? やっぱり俺達は選定を受けていると?」
「そんな……フレームレス眼鏡だけが至高というの? オプションのスーツだって破壊力を持つのよ!」
その日、肝試しスポットとしてもちょっと有名だったりした、そこそこな事情がありそうな北の保養所は——盛り上がっていた。
「俺達だけじゃない。様々な眼鏡が集結している現状を見ろ! ——ふ、この状況、やはりあの噂は本当だったんだ!」
「……」
そうかぁ、とリオネル・エコーズ(燦歌・f04185)はオールドオーキッドの瞳を瞬かせる。
「お世話になってるお兄さん達が世の中には浅いようで深い世界、通称『沼』があるって話してたなぁ」
多分これが噂の『沼』というものなのだろう。オブリビオン達の群れに囲まれながらも尚、盛り上がり続ける人々のパワーが、お兄さん達の言う深い世界、なのだろう。
「まだ知らないことは色々あるね」
ねぇ、とリオネルは手を伸ばす。虚空へと、するりと青年の手が伸ばされれば、虚空より淡い影が触れた。ふわりと舞うのは白いドレス。落ちる影は纏う輝きが生んだのか。白薔薇のドレスを纏う歌姫は、虚空より舞い降りるようにして、そっとリオネルと手を重ねた。
「——歌姫」
やわく、リオネルはその名を紡ぐ。指先、重ねるようにして虚空から舞い降りた歌姫は、トン、とその足を床につけたか。ふわりと揺れたスカートが足先を隠してしまえば、繋いだこの手が全てだ。凜と輝く心を持つ歌姫が返す微笑みに、うん、と一つ頷いてリオネルは賑わいの方へと足を向けた。先に入った猟兵達に、避難するように言われたのだろう。ばたばたと走る人々の声と、骨の羊の声が耳に届く。
「骨だけど、鳴き声ってあるんだなぁ」
うん、と穏やかに一つ頷いて、リオネルは歌姫と手を繋ぎ、最後の一歩を踏み込んだ。
「ストーップ! この眼鏡の輝きに賭けて眼鏡っこは殺させないよ!」
大きく響いたその声に、骨の羊たちが驚くように顔を上げる。敵意に満ちた気配は、だが、きらりと光るリオネルの眼鏡を見つけた瞬間、変わった。
「メェエエエ!」
「エェエエエェエエエ!」
カコン、と蹄が床を叩き、虹色骨獏と虹色骨山羊が玄関に姿を見せた。高らかな鳴き声が——こう、なんだかとってもテンションアップしているような気がするのは、多分気のせいじゃない。
(「すごいなぁ、これが『沼』かぁ」)
お世話になっているお兄さん達に、深い世界を見たと帰ったらお土産話をしよう。
そんな気持ちになりながら、リオネルは飛び込んできた虹色の骨山羊を魔鍵で受け止める。トン、と衝撃を殺すように僅かに後ろにひき、歌姫、と声を上げた。
「これを」
「 」
差し出すのはリオネルのサブ眼鏡。とん、と突撃を払い上げ、二人一緒に立つ場所を作って——リオネルと歌姫は笑顔で横ピースを決めた。
そう、リオネルは金のオーパールタイプの眼鏡、歌姫はセピアのスクエア細フレームという二種の眼鏡で繰り出された笑顔とピースに、骨羊は、召喚した骨山羊と骨獏と共に一瞬、固まった。
「——メェエエエエ!」
噛み締める一瞬の後、響き渡った鳴き声は中身の妖怪君の心に響いちゃったりしたのか。
「あ、君達はクイッてやる方が好きかな?」
カツカツ、と青年は歌姫と共に戦場を歩く。虹色の光が零れる中、きらん、と光る眼鏡と共に骨羊の近くまで行くと、リオネルは笑顔を見せた。
「——!」
くいっと、眼鏡のブリッジを上げて。
「メ、ェ……ッ」
骨羊は震える。胸を押さえつけるだけの手があれば、思わず押さえただろう。口元を押さえるだけの手が——あるけど届けば押さえただろう。沼の果てにあるものは、息を飲むほどの衝撃だと。
(「それじゃぁ、今のうちに逃げてね」)
ぱちん、と逃げてきた一般人達にウインクをして、リオネルは骨羊へと一歩を進める。眼鏡いいよね、最近はどんなのが好み? とそんな言葉を口にして進めば、召喚された群れ達にまで動揺が届く。
「メェエエエエ!」
それでも、とやってきた突撃に、リオネルは手を伸ばす。歌姫、と誘いを唇にして、二人一緒に飛び越えれば——目指す先は、本体の骨羊。
「これが眼鏡の力! なんてね」
せーの、で一発、振り下ろす魔鍵の一撃が虹色夢の骨羊へと届いた。
「メ、ェエエ……」
なんだかちょっと、満足げだったと後に眼鏡な人々は語ったという。
大成功
🔵🔵🔵
八上・玖寂
眼鏡を掛けた人しか入れない部屋ですか……
簡単に入れるのだかなんだか……。
僕はいつもの伊達眼鏡を掛けて。
こんなところにやってきて、悪い子達ですね。
危ないですからさっさと逃げてください。
などと、一般人は適当に逃がしつつ。
暗器に『万天を断つ無明の星』を使用。
相手は飛ぶようですが、所詮は建物の中。
隙を見て暗器を投げつけ、攻撃します。
眼鏡がお好きならこちらに寄ってきたりしないでしょうか。
直接狙うのが難しそうなら、相手の行動を阻害するように
暗器を投げて、後を味方に任せます。
……まあ、何と言うか……
眼鏡は人とオブリビオンを狂わせるんですね……。
※アドリブ大歓迎です!
●スゴイメガネタイム
「メェエエエエ!」
「ふ、やはりこの怪異。一筋縄ではいかんな。これほどの眼鏡、これほどのタイプ。一堂に会しても、まだ! オンリーワンを決めないとは」
「あら、今こそ新時代の到来なのよ。あなたは眼鏡の神の目にする準備はできてるのかしら?」
北の保養所。放棄されたその地は、国に貢献した一部の人々の為に作られた施設であった。音楽家の保護、年老いた芸術家たちの終の棲家、創作の場——数多の言葉が用いられ、早々に不幸な事故と共に閉じられた地は、今、絶賛盛り上がっていた。
「最高の眼鏡が今! 決まる!」
「——成る程」
帰って良いんでしょうか、これは。
一応は口に出さずに、八上・玖寂(遮光・f00033)は静かに笑みを浮かべていた。
壁に残った汚れ、床板に残る血の跡。滴り落ちたそれを思えば、壁に残っているものとは別人だろう。弧を描いた先を思えば、身長程度、予測はできるが——そこそこの事が、在った場所が今、これ程の騒ぎの中にあるとは。
「眼鏡を掛けた人しか入れない部屋ですか……簡単に入れるのだかなんだか……」
そも、何の為にそんな部屋があったのか。部屋の存在自体もあやふやだ。
「最も、建物を見れば隠すほどの何かがあったとも言えますが。さて、今更でしょうか」
死者は全て土の下で眠り、肝試しスポット以上の都市伝説を孕んだ地は、怪異と妙な噂を同居させている。
「メェエエエエ!」
「ふ、来たか。選定の者よ、お前が真なる眼鏡を見極めに来たというのであれば、俺達の覚悟はもう決まって——」
「こんなところにやってきて、悪い子達ですね」
スパン、とそれはもう切れよく玖寂は眼鏡の一般人その1の口上をぶった切った。いつもの伊達眼鏡に、賑わいに足を踏み入れ、己の声を一つ響かせて——漸く、玖寂は保養所にコツン、と足音を残す。影のように濃いスーツで、薄闇から姿を見せた男は、つい、と眼鏡をあげて息をついた。
「危ないですからさっさと逃げてください」
白手袋は闇に映える。最も暗がり程度で、足の運びを迷う身でも無い。噂の確認に来た人々も、大分目が慣れていたのだろう。玖寂の言葉に顔を見合わせるようにして頷いた。
「あ、あぁ。分かった……すまない、眼鏡の同士よ!」
「メェエエエエ!」
「……」
さて、この場で最初に片付けるべきなのはどれになるのか。落とす息は一つだけに、軽く髪をかき上げた玖寂は、静かな視線を骨羊たちに向けた。
「メェエエ」
「メェエエエエ!」
怪異は湧き上がる。ふつふつと滲むように出てくるのは、嘗ての妖怪がさせるのか。オブリビオン達は骨の身で叫び、ついでにテンションを上げているのか。
「メェエエエ!」
蹄が、床を叩く音が大きく響く。二度、三度の反響の果てに眼前の群れが膨れ上がっていく。
「水は流れるものです」
その気配に、玖寂は白手袋から僅かに晒した手の甲に暗器で傷をつける。滴り落ちるように、滲むように零れた血が暗器の一つを変える。
「僕も貴方も」
「メェエエエエエエ!」
迫る気配に玖寂は後ろに身を飛ばす。視線は敢えて外さない。相手が眼鏡が好きならば、こちらに寄ってくる可能性も——在る。
「メェエエ!」
迫る圧に、玖寂は手を下げる。虚空を滑るように、空間を切り裂くように素早く腕を振り上げた。
「メェエエ!?」
本当に恐ろしいものは目に見えない。
暗器は不可視の刃に変じて在れば、間合いさえ遠く、手にした暗器では届かぬと思っていたのか、空中より滑り降りてきた骨の羊がぱふん、と消える。虹の光の向こう、続けて滑らせた不可視の刃が虹色夢の骨羊を切り裂けば、キラキラとした光だけが戦場に残る。
「メエェエ、メェエエエエ」
「……」
妙に、満足したように聞こえる声がなんとも慣れない。
「……まあ、何と言うか……、眼鏡は人とオブリビオンを狂わせるんですね……」
ほう、と玖寂は息をついた。
大成功
🔵🔵🔵
冴島・類
ほう、向かうは元実験施設で…
眼鏡?してないと食べる?
ええ、こわ
まあ、引き寄せれるなら
伊達でも許されるかな
正当なめがね人(?)でないとばれぬよう頑張ります
調達した伊達眼鏡をつけ、現場へ
襲われてる方々と骨羊の間に割って入るか
逆方向から薙ぎ払い仕掛け気を引いて…
今のうちに、巻き込まれぬ位置に下がっていてください
羊さんの相手は、こちらが
…眼鏡あぴーるいるかな?
店の人なんて言ってたかな
かじゅあるより
すくえあふれーむのちたんがお勧めだからそれを…
駄目だ、呪文だ
やはり浅い知識では
(あるのに慣れず位置くいっ)
あれ?こっち見たぞ
獏や山羊などの数対策は
瓜江手繰り捌き
本体の羊に向け糸で攻撃
しかし、手強い相手だった…
●メガネオア(マスト)ダイ
そこは、正しく廃墟であった。建物自体はそう古くは無いのだろう。だからこそ放棄された痕がまだ残っている。人々の痕跡と、庭から入り込んだ木々、蔦が這い、割れた壁を支えれば、保養所の名前が書き込まれた看板がキャッチコピーだけを残していた。
「癒やしの一時を約束します、かな?」
ゆっくりと紡ぎ落とした先で冴島・類(公孫樹・f13398)は辺りを見渡した。廃墟で、元保養所で、放棄された理由には人死にが出ているという噂があって。
「ほう、此処は元実験施設で……眼鏡? してないと食べる?」
お仕事に際し、情報の整理は大切である。
指折るように一つずつ確認し——そして、類は思った。
「ええ、こわ」
ひどく真っ当な意見である。それはもうめちゃくちゃ真っ当な意見である。怖い。何それ、何その不条理。眼鏡外人口どれだけいると思っているのだろう。まぁ勿論、眼鏡で挑めば良いのであれば眼鏡を用意すれば良いだけの話ではあるのだが——、まぁ、うん。
「こわ」
もう一度、類は息を零す。ややドン引きなヤドリガミに、寄り添うように瓜江が立った。淡く、衣で作られた影に頷いて、通りの先を見る。保養所の広い玄関ホール、そこでバタバタと足音が聞こえていたのだ。
「メェエエエエ」
「メェエエ、エエエエエエエ!」
「やはり聖戦は、全ての眼鏡を見なければ終わらないというのか……く、やはりこの都市伝説、本物であったか!」
「これ以上の眼鏡を見定める必要があるというのね。選定はまだ終わっていないと……」
「真なる眼鏡を見定める為の闘いが!」
——訂正、賑わっていた。
既に避難を告げられているのだろう。作られた道筋を駆け抜ける彼らを追いかけるように、オブリビオン達が湧き上がる。——そう、怪異と呼ばれるものは、この地に対して湧き上がるものだ。だが、それも永遠ではない。
「まあ、引き寄せれるなら、伊達でも許されるかな」
骨なのに元気に鳴いてるとか、羊らしいけど、微妙に違うの混じっているとかは、まぁ良い。群れに対して効果があるのならば、使うだけだ。伊達眼鏡をつけ、類は迷いなく戦場に踏み込んだ。
「今のうちに、巻き込まれぬ位置に下がっていてください」
強く入れた一歩。身を低め、一気に加速するようにして類は逃げてきた人々と追いかける骨羊の間に割り込んだ。
「メェエエエ!」
ガン、と強く蹄で床を叩いた骨羊達が威嚇するように鼻先を上げる。その意識はまだ、類の肩越しに見える一般人達にも向いているか。
(「やっぱり、正当なめがね人ではないとバレているかな」)
感づいているのか。或いは逃げる眼鏡を追うのか。
(「こちらが……眼鏡あぴーるいるかな? 店の人なんて言ってたかな」)
逃げる眼鏡と追う羊。冷静に考えれば大分おかしいのだが——否、目の前にある危機だ。ひとつ、二つ類は辿るように店の人の話を思い出す。
「かじゅあるよりすくえあふれーむのちたんがお勧めだからそれを……駄目だ、呪文だ」
く、と頭を振る。伏せた瞳は、僅か憂いを乗せていた。
「やはり浅い知識では」
そも眼鏡をかけることにさえ慣れていないのだ。目元に何かがあるのに慣れないまま、くいっと類は眼鏡をフレームごと持ち上げる。
「——メ」
瞬間、世界が止まった。
「あれ? こっち見たぞ」
「メェエエエエエ!」
鳴き声と共に、骨羊が床を叩く。二度、三度、力強い踏み込みに虹色骨獏と虹色骨山羊が姿を見せた。
「メェエエエ」
「ェエエエエ!」
その視線はもう、類しか見ていない。
「こっちを見たのであれば幸い。——瓜江」
手繰り、その踏み込みを散らす。ただ、突撃してくるだけであれば、この糸で捌ききれる。
(「後は——……」)
本体の骨羊だ。
たたん、と軽く後ろに引く。距離を以て視線を通す。ふ、と落とす息をそのままに、指先を類は骨羊へと向けた。
「燃えよ、祓え」
その手に瓜江が寄り添う。戦場に展開された絡繰糸が、ゴォオオと炎を呼び、骨羊へと届けば、ぱふん、と虹の光が散るようにして骨羊が姿を消す。
「メェ、エエ……」
ちょっとばかし、満足そうに。
オブリビオンを倒せば、妖怪も姿を見せることだろう。
「しかし、手強い相手だった……」
眼鏡恐るべし。ほう、とついた息に、労うような瓜江の指先が触れた。
大成功
🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
あー、えっと?
眼鏡オブ最高ってコトでイイのカシラ
一般人には安全な場所まで避難して貰うわねぇ
ハイハイ皆さん、ココは危険よ
あと議論は悪くないケド仲良くネ
まあ大体、素材が良けりゃナンでも決まるモノよ
一応戦闘に入っても巻き込まれナイか、庇うように注意しとくわ
いつもの眼鏡で
さあさ御注目
知的美人ってンなら他に負けなくてよ
もっとアタシを見て、コチラへいらっしゃい
一緒に遊びましょう
蠱惑的に笑み誘惑の呪詛
獏でも山羊でもどんどん召喚してもらおうじゃナイの
攻撃は見切り避けながら、範囲攻撃で【虹渡】
周囲の虹色に紛れさせ帯を広く拡げ、生命力を頂戴するわ
こうすれば沢山頂けてお得デショ
飽いたら帯の軌道を本体へ向け同様に
●パーフェクトメガネマスター
「メェエエエ!」
「見ろ、次々とやってくる……これこそ、真なる眼鏡を決める為の儀式。今日、俺達は歴史の証人となるのだ」
「ふ……、吼えるなよ。真の眼鏡は丸眼鏡に決まっているだろう?」
「嫌だわ。未だ開かない部屋を思い出して頂戴。この世は片眼鏡よ」
饒舌な敵と出会う事はある。賑やかな戦場も、だが——なんというか北の保養所は盛り上がっていた。
「あー、えっと? 眼鏡オブ最高ってコトでイイのカシラ」
ついでに、その部屋って実在するのカシラネ。
そんな素朴な疑問は、一先ず舌の溶かして飲み干しておく。入れる部屋が開かない部屋になったり、儀式になったりと都市伝説というものは妙に盛り上がるということだろう、とコノハ・ライゼ(空々・f03130)は思う。
(「マ、楽しそうにしてる所に水を差す必要もネ」)
まぁ、何よりこれ以上盛り上がられても困る、と言うところもある。猟兵達に避難するようにと言われて来たのだろう。保養所の通路を駆けながらも賑わう彼らには、ふつふつと湧き上がる骨羊たちの姿は怖がるようなものでも無いらしい。
怪異は、怪異であるからこそ、この場所に対して湧き上がるものだ。だからこそ、まるっと綺麗にオカタヅケをするには多少の手間がかかり、眼鏡をかけた一般人達が騒いでいればそこにも現れるのだ。
「メェエエエ!」
骨羊たちが。
「ハイハイ皆さん、ココは危険よ。あと議論は悪くないケド仲良くネ」
トン、と軽やかに一歩を踏み込んで、コノハは一般人達の前に立つ。足音は少しばかり高く響かせて、つい、と眼鏡のブリッジを上げた。
「まあ大体、素材が良けりゃナンでも決まるモノよ」
「——な! あぁ、確かに。確かにそうだ。眼鏡には眼鏡を生かすべき素材が必要となる。それこそ、必要なオーパーツだったのか!?」
——いや? とこの場で、真顔で言い切る者はとりあえず居なかった。最も何の話だと彼らに聞いたところで真面な返答など帰ってくる訳も無く——熱い握手はあるかもしれない——コノハも、走り去る背中は確認したが、まぁそれだけだ。
「メェエエエエ」
「追いかけるのはダメよ」
逃げるものを追うように鼻先を上げた骨羊たちへと、コノハは笑みを見せる。口元緩く上げるようにして、吐息を零すようにしてコノハは微笑んだ。
「さあさ御注目、知的美人ってンなら他に負けなくてよ」
いつもの眼鏡をつい、とあげて。ゆっくりと視線を骨羊たちへと向けた。
「もっとアタシを見て、コチラへいらっしゃい。一緒に遊びましょう」
誘いに指先はいらぬ。招く手もいらぬ。
ただ蠱惑的な笑みがひとつ、あれば良い。
「メェエ、メエエエエ」
「メエェエ、メエェエ、メェエメェエ……!」
誘惑の呪詛は、骨羊たちに届いた。——なんかもうどうしたってくらいに届き、虹色の光が溢れ出す。カツン、と荒く床を叩く蹄は、オブリビオンの奥にいる妖怪の荒ぶりか。く、と額をつけるようにして床に頭を落とし、だが、がばりと顔を上げた虹色夢の骨羊は、鳴いた。
「メェエエエエェエエエエエ」
長く、高らかに響く鳴き声と共に呼び出されたのは虹色骨獏と虹色骨山羊だった。色彩を増し、盛り上がりだした戦場に——だが、コノハはゆるり、と笑う。飛び込んできた一体を躱し、良いのヨ、と告げる。
「獏でも山羊でもどんどん召喚してもらおうじゃナイの」
一匹、二匹。数えて眠くなるには眩しすぎる。だが、その強い光にコノハは手を伸ばす。空に滑らせるようにして、放つは空を担う淡く広がる虹の帯。
「メエエエエエ!」
「メェエエ?」
その色彩が似ていれば、踏み込んだ虹色骨山羊には躱すこともできない。
「こうすれば沢山頂けてお得デショ」
ぱふん、と虹の光になって骨山羊が消え、その煌めきの中から、飛び込んできた一体が、浅くコノハの腕を掠る。チリ、という痛みも虹の帯が骨獏を撫でれば、頂き物で癒やされていく。
「ゴチソウサマ」
笑うように告げて、たんまりと骨山羊と骨獏を翻弄した青年は最後の一言を告げる。
「――じゃあネ」
飽いたから、と唇に乗せれば、それはそれで喜んだかも知れない骨羊は、虹渡に包まれて、ぱふん、と消えた。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
ダッシュで一般人を庇う様、オブリビオンとの間に回り込み…
眼鏡で争う…こんな悲しい事がありましょうか。
真に眼鏡を語るなら、先入観は廃するべき――
即ち!どの眼鏡も特別なオンリーワン!
そこに貴賎など無いのです…!
自分でも意味不明ですが。取り敢えず逃げてくださいという事で。ハイ。
ちなみに僕、常時眼鏡組(但し伊達)でして。
思い入れ(と書いて仕込有りと読む)バッチリ、20年以上の年季物です。
…なんて話で意識、此方に向けられますかね?
視線、軌道、技の兆しを視、
見切れた全てを攻守に生かし。
操る鋼糸。纏めて失礼を。
散り、貫け
――捌式
嘗ては骨のみでは無かったのでは…と思いはしますが。
同情も共感も出来ない性質でして
●ノーメガネノーライフ
「メェエエエエ」
「ェエエエエエエ!」
廃墟となった地が、これ程に盛り上がる瞬間は、果たして存在するのだろうか。賑わうことはあるだろう。人死にが出たという噂、研究所、奇妙な事件。都市伝説には似合いの地で、妙な噂とはいえ、眼鏡をつけていないと入れない部屋、というもの自体も、仕組みとしてはクロト・ラトキエ(TTX・f00472)にも想像がつく。
(「赤外線レーダーによる何らかのトラップ、或いは眼鏡を介してで無ければ確認できないような何かが存在する」)
理由など、いくらも思いつけはするのだ。だが——この盛り上がりは、少しばかり話が違う。
「く、まだやつらは姿を見せるのか……これは、やはり俺達の中に宣託を受けるものがいるのか!?」
「真なる眼鏡が、私達の中に? まさか……いいえ、ありえるわ。今日という日、私達はこの怪異に最高の眼鏡を問うのだから」
「ふ、はははは! やはりな。僕には分かっていたさ、丸眼鏡の素晴らしさに今日、世界が気がつくのだと。選定の眼鏡はやはり……これだとな」
盛り上がっていた。なんか良く分からない感じに盛り上がっていた。最早、眼鏡をつけていなければ開かない部屋そのものの事など、大分忘れられている気もするが——そもそも、彼らはこの地に出る怪異を利用するつもりで集まったのだ。
「メェエエエエ!」
そしてそこに、にじみ出る怪異は彼らの行動を肯定するように鳴き——、ついでに眼鏡が好きだから、なんか噛み合った。骸魂と合体して帰還した妖怪にとっても楽しい状況かもしれないが——そこに抑えきれない衝動があるのだとすれば、放置もできない。
「——」
最後、息を落としてクロトは行く。一歩、二歩、駆ける男の足音は保養所には響かず——だが、最後の一歩だけが、カツン、と高く響いた。
「——!? 君は」
「メェエエ!」
一般人と骨羊たちとの間に滑り込むようにして、クロトは踏み込む。飛び込むオブリビオン達が来訪者の姿に、ガツン、と威嚇するように蹄を鳴らした。
「メェエエエ!」
「ェエエエエェエエ!」
そこにあるのは威嚇と、強い興味だ。獲物をみるようなそれに息を吸い——クロトは、振り返る。
「眼鏡で争う……こんな悲しい事がありましょうか」
ふ、と僅か哀しげにクロトは瞳を伏せた。
「真に眼鏡を語るなら、先入観は廃するべき――
即ち! どの眼鏡も特別なオンリーワン!」
「——な」
ひゅ、と一般人達が息を飲む。己の眼鏡を押さえ、その姿を確かめるように眼鏡を外す。
「そこに貴賎など無いのです……!」
——大演説であった。
否、クロトとしてみれば、正直自分でも意味不明ですが。取り敢えず逃げてくださいという事で。ハイ。とそんな気分であったのだが、それは3人の眼鏡の民に深く、ふかく響いた。
「そう、眼鏡に貴賤など無い……」
「えぇ、この世全ての眼鏡が良いのね。みんな違って、みんな良い……眼鏡にスーツ、軍服……ヒール……」
「あぁ……くそ、僕らはそんな、初歩的なことさえ忘れていたというのか」
膝を、つくほどの衝撃があったのだろう。いや本当にそんな話だったのか、という冷静な思考をクロトは一応置いといてみた。響いたのならば、言葉選びには間違いは無かったのだし。
「ありがとう、眼鏡の神様! 俺達の目を覚まさせてくれて……! ノーメガネノーライフ!」
「ノーメガネノーライフ!」
「——……」
なんか、勝手に変な神様にされてしまったが。
「メェエエエエエエエエ!」
「メェエエエエ!」
「……まぁ、逃げて貰えたなら良しとしましょうか」
遠ざかる足音にクロトは息を落とす。ため息のそれよりは呼吸に似て、ふ、と落ちた息と共に骨の羊たちを見据えた。
「ちなみに僕、常時眼鏡組でして。思い入れバッチリ、20年以上の年季物です」
「メェエエエエ……メェエエ!」
「……」
どうやら、逃げる彼らよりこちらに意識を向けることはできたらしい。但し伊達で、思い入れという名の仕込みつきだが——まぁ、良い。
「メェエエエ」
「ェエエエエエエエエ!」
虹色夢の骨羊達が鳴く。高く、高く。古びた建物を震わせるような鳴き声に姿を見せたのは虹色骨獏と虹色骨山羊であった。
「ェエエエエエ」
「メェエエエ!」
羊の声が混ざったままなのは、因果によるのか。そも骨の身で響く鳴き声に深い意味も無いのか。勢いよく踏み込んでくる群れに、クロトは身を横に飛ばした。そのまま転がっていたソファーを飛び越え、踏み込みを躱す。指先、滑らせた鋼糸がキュルルル、と空間を舞った。
「纏めて失礼を」
「——メェエエ!?」
骨山羊がぱふん、と消える。虹の光の向こう、群れの中に立つ骨羊が鼻先を上げた。
「散り、貫け。――捌式」
虹の色彩が、散る。ぱふん、と核たる骨羊が寸刻の鋼糸に穿たれれば、獏と山羊も姿を消し、空間を滑る一撃は残る骨羊の全てを——散らした。
「メェエエエエエ!」
長く、長く鳴き声が響く。虹の色彩が散った戦場に、クロトは一人立つ。
「嘗ては骨のみでは無かったのでは……と思いはしますが」
ほう、と落ちる息さえ無いままに、つい、と眼鏡をあげた。
「同情も共感も出来ない性質でして」
メェエエ、と零れた声が妙に満足げだったのは気のせいか。やがて助かった妖怪達が姿を見せることだろう。
斯くして北の保養所に残された噂は消えた。眼鏡に貴賤無し、数多の眼鏡が集まった伝説の地だという——妙な話だけを、残して。
大成功
🔵🔵🔵