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銀河帝国攻略戦⑧~導きの烈火

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●理想と現実
 メインブリッジを慌ただしく人が行き交う。
「えぇと、私たちはどこの配置につけばいいの?」
「主砲、主砲! オレ、主砲を打ちたい!」
「馬鹿もん! まずはエネルギーチャージが先じゃ!!」
 若い女がいた。輪郭に丸みを残す少年もいる。叱咤しているのは、今にも腰が曲がりそうな細身の男だ。他にも老若男女が入り乱れ、定位置など見つけられないように忙しなくしている。
 戦いに不慣れなのは、一目瞭然だった。
 いかに『解放軍』に加わろうと、本来の役割は多くの民間人を乗せた移民船団の一隻。このような大いなる場に、馴染んでいよう筈もない。
 だのに、彼ら彼女らは。明日を生きる為に、希望の為に。
 心意気を最大の武器に、銀河帝国との決戦の地へ馳せ参じていた。

●対巡洋戦艦!
 さぁ、急いで急いで、と連・希夜(いつかみたゆめ・f10190)は猟兵たちを急かす。
 銀河帝国攻略作戦は無事に次フェーズへ移行した。だからといって胸を撫で下ろしている場合ではない。
「みんなには『エンペラーズマインド』の防衛艦隊と戦って欲しいんだ」
 猟兵らによって『カイザー・レイ』を破壊された銀河帝国は、帝国大要塞『エンペラーズマインド』を最終防衛ラインとし、『解放軍』を迎え撃とうとしている。
「エンペラーズマインドを攻略するにはワープドライブに頼らない『艦隊戦』でエンペラーズマインドのコアを破壊しないといけないからね。その為には何としても防衛艦隊を蹴散らさないと」
 作戦の主力は、解放軍のスペースシップだ。
 だが解放軍に加わったばかりの彼らは戦闘に慣れていない。
「つまり、開戦直後は大混乱してしまうと思う。そうなったら甚大な被害は避けられない。だから皆には解放軍のスペースシップに迫って来る帝国艦隊の前衛部隊叩きをお願いしたい」
 最初の混乱が収まり、ある程度の秩序をもって戦えるようになれば、解放軍も戦力差を活かして戦線を押し上げる事も可能だろう。けれどそうなる前に大損害を被ってしまえば、逃げ出すスターシップも出てくるに違いない。と、なれば戦線の崩壊も十分に考えられる。
 つまりこれは、解放軍の援護であると同時に、彼らをまとめ上げる為の戦いでもあるのだ。
「で、具体的な相手だけど……大きいよ?」
 悪戯めかして希夜が笑う。
「なんと『ディクタトル級巡洋戦艦』だ!」
 つまりは、敵戦艦。無論、容易く沈められる相手ではない。それでも希夜は沸き立つ高揚を隠さず、笑うのだ。
「猟兵のみんなには最新鋭の宇宙服が貸与されるから宇宙空間での活動も問題ないよ。とはいえ、個でぶつかっても厳しいだろうから、連携とかは大事だろうね」
 何故なら希夜は信じている。
 猟兵なら何とかできる。いや、何とかなると。
「心を一つにして、大技どーん! とか浪漫じゃない? 楽しそうじゃない? わくわくしない?」
 ――少年の心を全開に、言うのは易し。されど実践するとなれば、困難もあるだろう。必要になるのは、機動力。敵の攻撃を掻い潜り、至近距離から問答無用の高火力を叩き付けること。
「海で最強なのは体の大きなクジラじゃない……なんてね?」
 さぁ、行ってらっしゃい。
 おまけとばかりに手をひらり。どこまでも楽観的に、希夜は猟兵達を宇宙戦場へ送り出す。


七凪臣
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 というわけで、お世話になります七凪です。
 『エンペラーズマインド』防衛艦隊戦をお届けします。

●推奨
 二人以上、四人以下でのチームを組んでご参加頂くのをお勧めします。
 『連携希望』とソロ参加者さんのプレイングにあれば、その方同士をこちらでチームにすることも一応は可能です。

●執筆開始
 2月7日(8:30以降)に執筆を開始予定です。
 プレイングをお送り頂くタイミングの参考にどうぞ。
 当日か、翌日返却予定ですので、描写人数は最低限の可能性があります。

 機動力を如何に発揮するのか。しっかり考慮して頂く事も大事ですが、七凪的には浪漫も追及したいところ!
 ド派手に一発ぶちかまして頂けると幸いです。もちろん、無策はだめですよ?

 では皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
 宜しくお願い申し上げます。
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第1章 ボス戦 『ディクタトル級巡洋戦艦』

POW   :    主砲発射用意!
予め【主砲にエネルギーを充填しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    航空各隊、邀撃に移れ!
【両舷カタパルト】から【直掩艦載機】を放ち、【対宙迎撃】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    オール・ウェポンズ・フリー
【兵装使用無制限状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ベモリゼ・テモワンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

海月・びいどろ
こころを一つに…どーん…?
同じことを、いっしょにするという意味ではない、みたい…?

いっしょに戦った方が、一度にたくさん倒せるよね
いいよというヒトがいれば、連携をお願いしてみるよ

海月の機械兵士たちを喚び出して、迷彩を纏わせたなら
ふわふわ、敵の懐に潜り込ませるよ
マヒ攻撃で動きを鈍くしてみよう

くじらだって、口の中に海月の毒が入れば、痛いでしょう…?
その内になら、みんなの攻撃も当たるかな

フェイントを仕掛けて、敵の近くへ辿り着けたら、兵装使用の制限を解除
敵をおびき寄せたところで、いっきに行くよ
引きつけている内にも、攻撃をお願いするね

…こころはむずかしい、けれど。やってみるよ

明日のために
こころを、ひとつに


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【竜槍】

来たかヘンリエッタ……そちらのお嬢さんは、養子とか言っていた娘か?
まァ良い、二人とも怪我をするなよ。
勿論、私がまとめて守ってやるがな!

では一番槍は頂こう!
ヘンリエッタ、アンバー、少々そこで待っていろ!
槍となった蛇竜が、アンバーと鎖で繋がれたのを確認したら、私は槍を持ったまま【呪纏】で一気に接近する。
帝国の戦艦であろうが、【呪詛】を載せた槍で【串刺し】だ!
こいつを使って、アンバーとヘンリエッタを運ぶという塩梅である!
後は二人を巻き込まんように黒炎で焼いてやろう。
女子供にそうそう傷を負わせたりはせん。二人に攻撃が及びそうなら【かばう】としよう。
ふはは!図体だけで、竜に敵うと思うでないぞ!


ヘンリエッタ・モリアーティ
【竜槍】で行動。
ディクタトル級巡洋戦艦!さしずめ、鉄の鯨といった感じ、ね。
ええ、私の――養女です。立派な戦力になるわ。
二人が準備を進める間に【ブラッドガイスト】で【モラン】を槍に変える。
巨大な敵だわ、攻撃は纏めて行って大ダメージを与えたほうが――効率がいい。
道しるべに投げられた一番槍の感触を確かに。背中を、任せます、ニルズヘッグさん!
アンバーを左腕で抱えて、鎖で飛ぶ!
腕を離して、そのまま槍を煌めかせて重力に任せて落ち、装甲を貫こうとする二番槍の立派な背中。大切な世界で、生きていくために――、負けたくない!
ありったけの【怪力】を込めて【モラン】と共に装甲を砕いてあげるわ!
――砕け散れ、鉄屑ッ!!


アンバー・ホワイト
【竜槍】
戦艦…大きな船…くじら、か
そいつを沈めてしまえばいいんだろう
この広い広い星の海の、藻屑にしてやろう

ふふ、ニルズヘッグ、心配は無用さ
わたしをただの小娘と思うな?アンバー・モリアーティだぞ

蛇竜に向けて手加減をして星屑の鎖を使用、可能ならば爆破しないで
鎖で槍と自身を繋いで、ニルズヘッグに返す
難しいことは、全部任せた!わたしは、後に続くだけだ

投擲された槍を支点にして
ヘンリエッタと共に鎖にぶら下がりながら戦艦へ
さあ、わたしたちも続こう、振り落とされるなよ!

勢い良く弧を描いて、腕の中から飛び出して
遠心力の乗った槍で突き抜くかのように刺し
第二の槍、任せろ
竜の牙はくじらにだって喰らいついてみせるぞ!


セゲル・スヴェアボルグ
ルヴィリア(f01782)と共に出動だ。

別に手を繋ぐらい構わんぞ。減るものでもないしな。
おんぶも別に良いが、乗り心地は保証せんぞ?
(疲れる要素はあったか……?あぁ、ユーベルコードのせいか。)

それを抜きにすれば、こういう時に透明化は便利だな。
宇宙なら音も伝わらんし、多少の無理をしても問題はないか。
ばれた時は一気に距離を詰めればいい。
余りゆっくりもしていられんしな。

さて、艦に近付いたら俺の仕事だ。
デカブツのどてっぱらに狂飆の王をぶち込んで、穴をあけてやろう。
まぁそれだけでも致命的な気もするが、念には念を。
穴から朱竜回禄をお見舞いしてやろう。
敵に酸素が必要かはわからんが、それなりに効果はあるだろう。


ルヴィリア・ダナード
セゲルさん(f00533)と共に迎え撃つよ。
知り合いとの共闘なんて安心して戦えるね。
いろいろと期待してますよ。

大技をかますためにまずは接近しなくちゃね。
【GD:7636】を使って近寄る。
勿論、セゲルさんも連れていくよ。
お手をどうぞ、なんて冗談っぽく言ってみよう。
早いものに反応してそうだしゆっくり慎重にね。
ばれたときは一気にゴー!
疲れたらおぶってもらおう、そうしよう。

近付けたら穴をあけるのを傍で応援!
ごーごー。やっちゃえー!
穴が開いたら追い打ちで私はジャッジメント・クルセイドで更に広げる。
お得意の2回攻撃でダメージを少しでも増やすよ。


ヴィクトル・サリヴァン
連携希望

どれだけでかい鯨も息を封じられれば溺れてしまう、だね。
まあ今回はそんな持久戦は無理、なら群れで襲って力技で喰い殺すか。

海を泳ぐ感覚に似てるような違うような。まあ泳ぐ感覚で大体大丈夫。
周囲の仲間と連携、周りの仲間が攻撃しやすいよう直掩艦載機を迎撃したりして援護。
兵装滅茶苦茶にぶっぱし始めたら一旦速度落とすか、適当なデブリ等にUC発動し水鯱召喚、其方へ敵の攻撃誘導できないか試す。

可能なら主砲に十分エネルギーが充填された所にUC発動、主砲を狙い暴発させてみる。
小回りも苦手だろうし動きも見破り易くはあるはずだから分の悪い賭けではないはず。
主砲の中を狙って…銛をぶん投げる!

※アドリブ絡み等お任せ



●宙の海原
 嗚呼、まるで。
 大海原を往くようだとロマン主義の男――ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は撓らせた尾鰭で空を叩く。
 得た推進力に、縦にも横にも広いヴィクトルが漆黒の宙をゆく。
(「ほんものの、シャチみたい……?」)
 発艦が続く直掩機の群れを目指す男の背をゆらゆらと追い、海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)は電子の記憶の底から遠い『海』を掬い上げた。
 UDCアースにとって、海は生命の母だというらしい。
 だが似て非なるこの宇宙の海は、今、無数の命が火花を散らす。猛り狂う父神のように。
『罠を一つ、仕掛けるよ。流れ弾に当たらないよう、気を付けて』
 通信機越しのヴィクトルの合図に、びいどろは周囲に幾つも浮遊させた海月のぬいぐるみの力を借りて慣性の法則を殺す。
 体格の割に円らなヴィクトルの瞳は、近場のデブリを見ていた。構えられた三つ又の銛が狙うのも其処。
『どれだけでかい鯨も、息を封じられれば溺れて死んでしまう――けど、まぁ。今回はそんな持久戦は無理だし』
 ――さあ、追いかけて、齧り付いて。
『群れで襲って、力技で喰い殺すか』
 ――喰い千切れ!
 大気圏内ならば、きっと空気を鋭く裂く音がびいどろの耳まで届いたろう。だが、ここは宇宙(そら)。ヴィクトルの投じた銛は音を伝えず貫き翔け、水で象った巨大なシャチと成って直掩機一機ほどの岩の塊を粉砕した。
 飛び散る欠片に、直掩機が反応する。
『よし、上手くいったね。次、行くよ』
 直掩機の軌道が逸れたのを見止め、ヴィクトルがびいどろを促す。
 一人では、力及ばぬ事が知れた戦場。
(「これが、こころを一つに、という、こと?」)
 常人とびいどろを隔てる、思考回路のズレ。覚えのない言葉と感覚に、海月の少年はシャチの作る流れに身を任せる。
(「同じことを、いっしょにする……という意味では、ない、みたい……?」)
 分からない事だらけだ。
 それでも成さねば成らぬ事は解る。
(「さぁ、いって」)
 ゆらりふわりと漂うように宙を征き、びいどろは海月を模した機械兵器たちを直掩機へ向け放つ。

●烈火
 ――お手をどうぞ?
 なんて洒落て差し出されたルヴィリア・ダナード(嘘つきドール・f01782)の手を、セゲル・スヴェアボルグ(ドラパラ・f00533)が厳つい竜人に似合いの気兼ねなさで握り返したのは少し前。
 手を繋ぐくらい、何てことはない。減るものでもないことだし。
 磊落な男の思考は豪快。だがそんなセゲルでさえ一応の忠告はしたのだ――乗り心地は保証しないと。
『――!! ――!!!』
 息を弾ませる音なきルヴィリアの悲鳴が、セゲルの心象世界に響き渡る。だが、構っている場合ではない。
『しっかりと捕まっておけ!』
 既にどちらが主導を握っているか分からぬ手に力を込め、セゲルは直掩機の狭間を踊るように飛ぶ。
 【GD:7636】――不思議な時間の始まりを告げるルヴィリアのユーベルコード。己が身と、己が装備と、手を繋いだ一人を透明化する技。
 外界に溶けた二人は、帝国軍の目を盗み敵ディクタトル級巡洋戦艦への接近を試みた。
 効果はあった……乱戦域を抜ける迄は。けれどそこから先は、熱を消せないという弱みを突かれた。
 熱センサーに引っ掛かったのだ。
 ――しかし。
「ここまで来たら、後は俺の仕事だ」
 直掩機に勝る機動力を存分に活かし、セゲルは縦横無尽に戦場を翔ける。弾丸のように突き進み、青き竜翼の羽ばたきで急停止しては方向を変え。
 どの機体も、セゲルには追い付けない。背中に張り付くルヴィリアにしてみたら、とんだ暴走タクシーだったに違いないが。
 けれど、不安よりも既知との共闘という安心感がルヴィリアの胸を高揚させる。
『ごーごー! やっちゃえー!』
 迫る黒い威容に、ルヴィリアは慎ましやかな聖職者の姿形に反した高らかな快哉を叫ぶ。
『任せておけ』
 元より、悠長さは戦況の敵。存在が明らかになったのを機に、一気に加速した男はその勢いのまま、冠する『斧』は名ばかりの鎚にも近しい鈍重なる得物を振り被った。
『重力がないというのは、少し物足りなくもあるがな――無理も通れば道理になる。その土手っ腹に風穴を開けてやろう!』
 放つのは、渾身の一打。重いだけが取り柄の、単純明快な一撃。
 豪快なインパクトに、分厚い筈の敵戦艦の装甲が戦慄いた。振動は波のように周囲へ伝わり――。
『やったー! セゲルさんまずは一つ。どんどん行くよー!』
 開いた風穴に歓喜を笑い、ルヴィリアも追撃をかける。
 如何なテクノロジーかは知らぬが、未だ目標ディクタトル級巡洋戦艦は健在。飛び交う猟兵らの向こう、激戦を具に見つめ続けるスペースシップへ合わせられた照準は、揺らがずにいた。
 だが戦いには必ず終わりが来る。
 無限に生み出され続けるものはない。
 気が付けば、打ち上げられた直掩機の殆どが新たなデブリとなり、大海原を悠々と泳ぐクジラのようだった敵戦艦も多くの機能を停止していた。
 ここに至るまでどれほどの時間を要したのか、一心不乱に戦い続けた猟兵たちに計る術はない。けれど無我夢中であっただけ、体感的にはあっという間の出来事だったろう。

 そして、遂に――。

 この宇宙で幾度か繰り返した手順を、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は黙々とこなす。
 黒い翼に、黒い尾を持つ白い肌の少女は、ニルズヘッグにとっては出会ったばかりに等しい相手。されど相棒であるヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)の養い子になったという彼女――アンバー・ホワイト(Snow・f08886)は最早『戦友』と呼ぶに相応しき存在。
 ――ふふ、ニルズヘッグ、心配は無用さ。
 ――わたしをただの小娘と思うな? アンバー・モリアーティだぞ。
 女と娘。男である自分がまとめて守ると誓う言葉に返された不敵さは尊大に非ず。重ねてきた今日の戦果を振り返り、ニルズヘッグは常に傍らに控える蛇竜が転じた槍の穂先をアンバーへ差し出す。
 その切っ先の邪魔にならぬよう、アンバーはしゃらりと夜色の鎖が絡ませる。
 支度は、整った。
『背中を、任せます。ニルズヘッグさん!』
 金の瞳の飛竜を己が血液を代償に槍へと形を変えて右手に、ヘンリエッタは左腕でアンバーを抱え込む。
 様々な顔を、人格ごとにみせるヘンリエッタの内側を占めるのは今は誰か。暴れたいだけの俺様か、それとも自由に生きる私か。
 少なくとも情けないだけの女の気配を感じさせぬヘンリエッタの声に、ニルズヘッグは『請け負った』と短く返す。
 その直後、ニルズヘッグは黒炎を吹き上げ加速した。
 加速して、加速して、加速して――槍を、放つ。
『一番槍は私の役目だ』
 帝国の戦艦であろうが、なかろうが。的として在るなら、貫き串刺すまで。
 定められた狙いが、敵戦艦メインブリッジだったのは偶然にして必然。機能を失いかけているコンソールを懸命に叩く敵兵の姿が見えた気がしたが、そんな事には歯牙もくれず、ニルズヘッグは黒炎で槍の軌跡を焼き払う。
 何故なら、ニルズヘッグの槍は一撃であると同時に、ヘンリエッタとアンバーを運ぶ翼でもあるのだ。
『わたしは、後に続くだけだ』
 外部を視認する窓に無数の罅が入ったタイミングで、鎖の結び目を支点にアンバーがヘンリエッタの腕の中から飛び出す。
『第二の槍、任せろ』
 竜の牙は、クジラにだって喰らい付いてみせる。
 遠心力まで糧にしたアンバーが、細かな装飾が施された銀の槍を、ニルズヘッグの一撃に重ねる。
 ちら、と。光が弾けるように、透明な欠片が無数に散った。
「巨大な敵だもの。攻撃は纏めて行った方が効率がいいわ」
 混乱に乗じて、無機物の床にヘンリエッタは降り立つ。
 路を開いた一番槍、幼い乍らも立派な背中をみせて導いてくれた二番槍。
「大切な世界で、生きていくために――、負けたくない!」
 言い放ち、跳ねる髪を振り乱し、ヘンリエッタは槍――モランを両手で握り締めた。
「――砕け散れ、鉄屑ッ!」
 止めに入ろうとした何者かが黒炎で消し炭になるのを横目に、ヘンリエッタはありったけの力で足元を割る。
 最初は小さな破砕音。そこから続く轟音は、帝国兵たちの視界を紅蓮に染めた。

●明日への導
 幾つもの爆発がそこかしこで起き、更に誘爆を繰り返す。
『終わったみたいだね』
 主砲を潰した銛を引き抜き、ヴィクトルはびいどろを肩に担ぎ上げる。
 既に離脱は始まっていた。此処まで来て、巻き込まれるなんて冗談じゃない。
 直掩機へのフェイントを任せていた海月たちを引き寄せ、びいどろは遠退いてゆく戦場――だったモノ――を振り返った。
 ――こころを一つに……した、結果?
 戦いより難解な疑問を、びいどろの思考回路が紐解くのは今に非ず。
 だが少年は、もうすぐ目にするのだ。
 歓喜に湧くスターシップの乗組員の面々を。彼等彼女等の顔つきが、変わっていくのを。

 重ねた心は、何より強い。
 導かれた者たちは、心を一つに新たな導き手と化す。
 ――明日の為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト