18
大祓百鬼夜行⑪〜ぴよぴよ注意報!

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●天から降り注ぐ幾千のひよこ
 ガタンゴトトン、ガタガタゴトン。
 いつ壊れてもおかしくないくらい年季の入った古いバスが一台、危うげな音と共にのどかな田舎道を走る。
 今、このバスに乗っている乗客は一人だけ。サラリとした黒い絹糸のような髪をリボンで纏め、藤の花が描かれた着物を纏った若い女性が、物憂げな視線で窓の外を見つめていた。
 乗客の名前は千針。彼女だけが使うことが出来る特別な針と糸を使ってどんなものでも縫い合わせることができるお裁縫妖怪だ。
 そんな千針の仕事は、百鬼夜行でできた『世界のほつれ』を修正すること。
 今日は西の果て、明日は東の果てへ。
 バスに揺られるがまま、千針は今日も『世界のほつれを』を縫い合わすために目的地へと向かう。

(「優秀なお裁縫妖怪だから仕方がないとはいえ、毎日仕事に引っ張りだこね……」)
 物憂げな視線を窓の外に向けた千針だったが、その光景に思わず目を見張る。

「ちょ、ちょっとぉ! 一体なんなのよ、これはぁぁっっ!!??」

 見渡す限りを埋め尽くす、ふわふわとした黄色い物体。
 よくみると、それらにはくりくりとしたつぶらな黒い目と小さくて可愛らしい嘴がちょこんとついている。これは――。

 ぎょっとした千針は思わず手近な窓を開けると、躊躇う素振りもなく外へと手を伸ばす。すると、千針の手の上にぽふんとまんまるいふわふわとした生き物が落ちてきた。

「な、何でひよこが空から降ってくるわけ?」

 慌てて空を見上げる千針の疑問に答える声はなく。ただ、その頭上には、絶え間なくふわふわもふもふなひよこたちが降り注いでいたのだった。

●ぴよぴよ注意報!
「みんな、大変なの! 空からひよこさんが降ってくるのねー!」

 開口一番ユニの告げた言葉に集まった猟兵たちの目が点になる。
 UDCアースにおいても過去、実際に空から魚や蛙、オタマジャクシ等が降ってきたという原因不明の事象が起きたとされる記録はあったというが、ひよこが降ってきたという事例なんてあっただろうか?
 怪訝そうに首を傾げる猟兵たちを見て、ユニはちゃんと説明せねばと慌てて姿勢をピッと正した。そして、カチャカチャと慣れた手付きで手元の端末を操作すると、宙に浮いたモニターにカクリヨの世界が映し出される。

「みんなも知っての通り、今は大祓百鬼夜行の真っ最中! で、今回お願いしたいのはこの百鬼夜行のせいで出来てしまった『世界のほつれ』を直してくれるお裁縫妖怪さんを守ってあげてほしいのね」

 ユニ曰く。
 お裁縫妖怪さんを乗せた妖怪バスは世界のほつれに向かってのんびり運行中のようなのだが、その途中で大きな困難が彼らに襲い掛かることがわかったのだという。
 その内容こそが――大量のひよこたちが雨のように空から降ってくること、なのだそうだ。

「ちなみに、ひよこさんたちはごく普通のひよこさんです」

 大きさは掌にすっぽりと収まるくらいで、ふわふわもふもふな触り心地であることは言うまでもない。人懐っこく、好奇心旺盛で、ちょっとお腹もすいているのでご飯やお菓子をあげると喜んで寄ってくるそうだ。
 そんなひよこたちは妖怪バスに興味深々な様子とのことで、地上へと落ちてきた後、放っておくとどんどんバスへと寄ってくる。そんなひよこ達によって道が塞がれてしまい、バスが先に進めなくなるのは由々しき事態である。

「このままだとお裁縫妖怪さんが『世界のほつれ』に行くことが出来ないの。だから、みんなでバスが進めるようにひよこさんたちを何とかしてあげてくれないかな?」

 ようはひよこを退かしてバスが安全に先に進むことが出来ればよいわけで。
 餌で気を惹くもよし。遊びながら退かすもよし。その他の方法でもよし。
 もちろん、そのお礼にちょっともふもふさせてもらう権利はあるだろう。

「ユニのお話はこんな感じ! それじゃ、みんなをバス停にご案内しまーす」

 バス停で待っていれば、お裁縫妖怪を乗せた妖怪バスはすぐにやってくるはずだ。
 いってらっしゃい、と手を振るユニの手元で、グリモアがキラキラ輝いたかと思うと、その光が雨のように降り注いだ――。


春風わかな
 はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。

●プレイング受付について
 受付期間は【5月14日(金)8:31~23:59まで】です。
 成功度に達しなかった場合は延長します。
 受付期間外にいただいたプレイングは採用できませんのでご注意ください。

●このシナリオについて
 戦争シナリオです。一章のみで完結します。

 ・プレイングボーナス……妖怪バスとお裁縫妖怪を、危険から守る。

 ひよこたちを愛でてもふもふして遊んで癒されましょう! というシナリオです。
 お裁縫妖怪さんを構う必要はないですが、ひよこをモフモフするついでにちょっかい出すのは自由です。

●共同プレイングについて
 ご一緒される方のID(グループ名も可)を記載ください。
 また、失効日が同じになるように送信していただけると大変助かります。

●その他
 早期シナリオ完結を優先いたします。
 そのため採用人数が少数となり、問題のないプレイングであってもお返しする場合がございますことご了承ください。(執筆は先着順ではありません。)

 以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
90




第1章 冒険 『妖怪バスでほつれに向かえ』

POW   :    肉体や気合いで苦難を乗り越える

SPD   :    速さや技量で苦難を乗り越える

WIZ   :    魔力や賢さで苦難を乗り越える

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ガタンゴトトン、ガタガタゴトン。
 猟兵たちを乗せた妖怪バスは田舎道を進んで行く。
 だが、唐突に平和な旅路は終わりを告げた。

 ――ぽこん、ぽここん。

 何かがバスの屋根にあたる音。それは一つや二つの数ではない。
 正体不明の音にまだバスの運転手やお裁縫妖怪は気が付いていないようだけど、バスに乗り合わせた猟兵たちは互いに顔を見合わせると素早く視線をかわす。
 何しろ、彼らはこれから大役を果たさねばならないのだ。
 この妖怪バスとお裁縫妖怪たちを守るために、大量のひよこたちを何とかしなくてはいけないのだから――。
フリル・インレアン
ふわあ、ひよこさんでいっぱいです。
でも、このままでは妖怪バスさんが進めませんね。
さすが、アヒルさんです。
ひよこさん達の誘導を早速はじめています。

ふえ?アヒルさんが戻ってきました。
どうかしたんですか・・・って、ふええ、疲れたから休憩って、アヒルさんはガジェットですから疲れないでしょ。
それに私はアヒルさんの言っていることが何となくわかるだけで、ひよこさんとお話はできませんよ。
ふええ、アヒルさんと話していることで、その素質が目覚めつつあるって、本当ですか?

えっと、ひよこさん、ここは妖怪バスさんが通る道で危ないので、あっちの広い場所に行きませんか?
ふわぁ、本当です。私の後についてきました。




 空から降ってきた大量のひよこたちを前に、妖怪バスの運転手は慌ててバスを停めた。
「――何だ、ありゃ?」
 首を傾げる運転手に頼んでバスのドアを開けてもらうと、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は外に出る。そして、ぐるりと辺りを見回すと思わず「ふわあ」と声を漏らした。
 見渡す限り、ひよこ、ひよこ、ひよこたち。
 のどかな田舎道は黄色いひよこたちで埋め尽くされており、ついでにぴよぴよぴよぴよとひよこたちの鳴き声が絶え間なく響く。
「確かに、このままでは妖怪バスさんが進めませんね」
 困りましたと困惑を隠せないフリルだったが、ガジェットのアヒルさんは違った。フリルの頭の上からぴょんと飛び降りるとトコトコとひよこたちの方へと近づいて行き、早速ひよこたちを道から退くようにと誘導を始める。
「わぁ、さすがアヒルさんです。ひよこさんたちも後ろに付いていっていますね」
 相棒の頼もしい姿を見て嬉しそうに目を細めるフリルだったが、その後の予想をしていなかった展開に「あれれ?」と首を傾げた。なぜか、突然あひるさんがこちらに戻ってきてしまったのだ。
「ふえ? どうかしたんですか……って、ふええ、疲れたから休憩? アヒルさんはガジェットですから疲れないでしょ」
 何言っているんですか、と突っ込むフリルの言葉を聞き流し、アヒルさんはゴソゴソとフリルの頭上へと戻っていく。
「ちょっと、困りますよ。私はアヒルさんの言っていることが何となくわかるだけで、ひよこさんとお話はできないんですから」
 小さく口を尖らせるフリルだったが、アヒルさんからの返答は思いも寄らぬものだった。
「ふええ、アヒルさんと話していることで、その素質が目覚めつつあるって、本当ですか?」
 アヒルさんにはそう言われたものの、フリル自身には何か実感できるようなことはない。でも、アヒルさんが嘘を言うとも思えず、フリルは意を決するとひよこたちに向かって話し掛けた。
「えっと、ひよこさん、ここは妖怪バスさんが通る道で危ないので、あっちの広い場所に行きませんか?」
「ぴよぴよ?」
「こっちです。私の後に付いてきてください」
「ぴよっ!」
 ひよこたちは『わかった!』とでも言いたげに片方の羽をぴっとあげると、大人しくフリルの後に続いて歩き出す。
「ふわぁ、本当です。アヒルさんの言った通りです」
 驚いて赤い目をまんまるにするフリルを先頭に、ひよこたちはぴよぴよ歩いてバスから離れ始めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

狹山・由岐
松原さん(f09547)と

空へ手の平を向ければ
ふわもこが一羽二羽…たくさん
手乗りひよこを差し出して
撫でるくらいなら怖くないでしょう
挨拶と一緒に少しのスキンシップもどうですか

食べられそうな物をと思い
持参したのはほろ甘いポン菓子
パンも千切って細かくすれば大丈夫そうですよ
そしてこれ、普段は人が食べるお菓子なので
数粒は君への味見用に
甘いもの、またひとつ知れましたね

バスから離れ乍ら菓子を撒けば
まるで親鳥の後追う雛鳥の列が出来上がり

そういえば。
松原さんの髪と此の子達の羽根
少し似ていると思いませんか
掬い上げたひよこを君の頭の方へ
ぴよぴよご機嫌な声に笑みが零れる
…ほら。金のふわふわでお揃いだよ


松原・芳典
狹山(f31880)と

ひよこ、いっぱいおちてくる
ちっちゃい
にぎるとつぶしちゃいそうでこわいから
狹山の手の中にいる子にこんにちは
そうかな?
じゃあひとさしゆびでそっと
わ、ふわふわ…!

おれもパン持って来たよ
でもかたいから食べるのたいへん?
ちぎってあげるけどおいしいのは狹山の方みたい
あっちの子もほしいだって
え、おれも食べれるの?
ありがとうってぱくん
あまい、し、すぐ無くなった。ふしぎだ

ひよこの行進、かわいいね
狹山のことおかあさんだと思ってるのかな
ふふ

うん?
頭の上に乗ったふわふわ
動けなくてこまっちゃう
ぴよぴよひよこはうれしそう
おれのあたまぼさぼさだから巣だと思われないかな
ねちゃだめだよ、って言わなきゃね




 ぽこん、ぽこんと空から黄色いふわふわもこもこした丸い生き物が降ってくる。
「ひよこ、いっぱいおちてくる」
 その光景を見た松原・芳典(かんなぎ・f09547)は思わず呟きを漏らすが、ひよこたちへ手を出そうとはしない。ひよこたちはとても小さくて、芳典が少し握っただけでも潰してしまいそうで――怖い。
 遠巻きにひよこを見つめる芳典の不安な心を察したのか、狹山・由岐(嘘吐き・f31880)は空に向かって掌を向け、一羽、二羽……と落ちてきたひよこを受け止める。優しく包むようにして受け止めてあげれば、ひよこは安心したように由岐の手の中でぴよぴよと鳴いた。
 由岐はちらちらとひよこを見遣る芳典に向かって、掌のひよこを差し出して声をかける。
「撫でるくらいなら怖くないでしょう? 挨拶と一緒に少しのスキンシップもどうですか」
「そうかな? ……じゃぁ」
 こんにちは、とひよこに声をかけながら、芳典は人差し指でそっとひよこの背を撫でた。ひよこに触れた人差し指からほんのりぬくもりを感じ、芳典は小さく声をあげる。
「わ、ふわふわ……!」
 綿毛のようなふんわりとした感触。芳典がもう一度ひよこを撫でると、ひよこは嬉しそうに「ぴよ」と鳴いた。

 ひよこたちが食べられそうなものをと思い、今回由岐が用意してきたものは甘いポン菓子。
「松原さんも何か持ってきた?」
 由岐の問いに芳典はコクリと頷き、パンを取り出した。
「でも、かたいから食べるのたいへん?」
 芳典は心配そうな表情で手に持ったパンとひよこを交互に見つめるが、由岐は大丈夫だと微笑み答える。
「パンも千切って細かくすれば大丈夫そうですよ」
「そっか」
 由岐の言葉に安心した様子で芳典はパンを細かく千切り、ひよこたちへと振舞うが、どうもひよこたちには由岐のポン菓子の方が人気のようだ。
「ひよこ、おいしいのは狹山の方みたい。あっちの子もほしいだって」
 芳典が指差した方にもポン菓子をばら撒きながら、由岐は「ところで」と話しかける。
「これ、普段は人が食べるお菓子なので。数粒は君への味見用に」
 どうぞ、と差し出されたポン菓子を見て芳典は「え?」と驚きの声をあげた。
「おれも食べれるの?」
 笑いながら頷く由岐に、芳典は素直に「ありがとう」と礼を告げると、躊躇うことなくぱくんと口に放り込む。甘くて軽い食感のポン菓子は、すぐに口の中でとけて消えていった。
「あまい、し、すぐ無くなった。ふしぎだ」
 パチパチと目を瞬かせる芳典を見て、由岐は嬉しそうに言葉を紡いだ。
「甘いもの、またひとつ知れましたね」

 バスから離れながらお菓子を撒けば、餌につられてひよこたちもついてくる。
「ひよこの行進、かわいいね」
 芳典が言うように、ひよこたちはお菓子を撒く由岐を先頭にして、ずらりと並んで歩いていた。まるで親鳥の後追う雛鳥の列だな、と思わず由岐も苦笑する。
「ひよこ、狹山のことおかあさんだと思ってるのかな」
 ふふと笑みを零す芳典に、由岐は「そういえば」と先程から思っていたことを告げた。
「松原さんの髪と此の子達の羽根、少し似ていると思いませんか」
 思い掛けない由岐の言葉に、芳典は自分の髪を指で摘まみ、足元のひよこたちと交互に見遣る。
「……そうかな?」
「ええ、似ていると思いますよ」
 ほら、と由岐は近くにいた一羽のひよこをひょいっと掬い上げると、そのままぽふっと芳典の頭の上に乗せた。
「金のふわふわでお揃いだよ」
 思いがけぬ頭上の温もりに、芳典は思わず身体を固くする。――ひよこが落ちてしまったら、一大事だ。ひよこのことを想って身動きのとれなくなった芳典だったが、当のひよこはというと、芳典の心配など露知らず、ぴよぴよとご機嫌な声をあげていた。
「おれのあたまぼさぼさだから巣だと思われないかな」
「どうでしょう……ひよこは居心地良さそうですよ」
「む。ねちゃだめだよ、って言わなきゃね」
 由岐と芳典は顔を見合わせ、どちらからともなく、くすりと笑う。芳典の頭のひよこも、嬉しそうに「ぴよっ!」と鳴くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【紅穂】
ひよこさんっ
真似て抱きとめ
ふふ、もふふわっ
クレナイの頭の上、いごこちいいみたい
自分の頭の上にも乗せてみる

バスの道をあけなきゃね
ガジェットショータイム
ひよこさんの雨ならカサをさそう
つるっと落ちちゃわないように、向きはこうだよっ

逆向きにした傘にひよこを集め
頭にも肩にもぴよぴよ乗せて
わっとっと

すごい、きかんしゃだっ
集まった子たちをクレナイの機関車へ
ぽっぽー♪
ごうかな寝台列車だよっ
ほら、ランチのご試食いかが?
クレナイと振りまきながらしゅっぱつしんこーっ

おいしい? ならいっしょにいこう
旅はすてきがいっぱいだよっ

寄ってくる子をすくいあげながら後ろを見れば
連なるもふもふに笑み
ひよこ列車のお通りだーっ


朧・紅
【紅穂】
ひよこさんの雨~
降ってくる子を両手広げ抱きとめて
もふふわですオズさん!
頭にも降ってきたので髪を結い上げ鳥の巣に
オズさんの頭も気持ちよさそう

でもバスが大変

ひよこ傘かわい~
雨よけじゃなく雨よせ傘っ
僕も傘やオズさんに乗せちゃいます♪
むむオズさん満員に
そうです乗り物好きのひよこさんなら

空想造血
僕らも乗れちゃう子ども蒸気機関車どーん
ひよこさんのごはんとふかふかベッドもありますよっ
ぽっぽーって鳴らして興味を引く
ひよこさんご案内♪
寝台へもどうぞっ

みんな乗ったですか?では
出発しんこー
ぽっぽー
ゆっくりバスから遠ざかる
振り撒くごはんにつられて列車の後ろにも行列が
頭のひよこも上機嫌っ
拳を上げて
お通りです~っ




 空から雨のように降ってくるひよこたちを見つめ、朧・紅(朧と紅・f01176)は嬉しそうに天に届かんばかりにぐっと手を伸ばす。そして、空から落ちてきたひよこを一羽、広げた両手で上手に受け止めた。
 そんな紅の様子をキトンブルーの瞳をキラキラさせて見つめていたオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)もまた、彼女を真似て楽しそうに両手を広げると空から降るひよこを抱き留める。
「もふふわですオズさん!」
「ひよこさんっ、ふふ、もふふわっ」
 ひよこを抱え、紅とオズは顔を見合わせて二人同時にふふっと笑みを零した。
 そんな二人の頭の上にもぽこん、ぽこんとまたひよこが空から降ってくる。紅は赤い長い髪をくるくるっと器用に結い上げると、即席の赤い鳥の巣を作ってみせた。その真ん中にちょこんと座るひよこを見て、オズは羨ましそうに呟きを漏らす。
「クレナイの頭の上、いごこちいいみたい」
 どうかな、とオズも抱えていたひよこをひょいっと己の頭の上に乗せてみせた。
「オズさんの頭も気持ちよさそう」
 寛いでいるようなひよこを見て紅は朗らかな笑みを浮かべたが、すぐにキリリと表情を引き締める。
「でもバスが大変」
 紅が見つめていたのは、ひよこたちによって道を塞がれ、立ち往生している妖怪バス。彼女と同じ思いであるオズもまた神妙な面持ちでこくりと頷いた。
「バスが通るための道をあけなきゃね」
 言うや否や、オズの手にはひよこを模した黄色い傘が現れる。
「わぁ、ひよこ傘!?」
 かわいい~とアメジストのような瞳をキラキラと輝かせる紅に、オズは嬉しそうに答えた。
「ひよこさんの雨ならカサをさそう。でも……」
「でも?」
 ちょこんと首を傾げる紅に向かってオズはパチッとウィンクを一つすると、くるりと傘の向きを逆にする。普通に傘をさしていたのでは、空から降ってきたひよこたちはつるっと落ちてしまう。ひよこたちを受け止めることが出来るようにと逆向きにした傘をさすオズを見て、紅は楽しそうに手を叩いた。
「雨よけじゃなくて、雨よせ傘っ」
 そして、二人は逆向きの傘の中に次々とひよこたちを集めていく。すぐに傘の中はいっぱいになってしまい、オズの頭やら肩やらにもひよこたちがぴよぴよ乗っていた。
「わっとっと」
 ひよこを落とさないように腕を広げてバランスをとるオズを見て、むむっと紅は口を尖らせる。
「オズさん満員になってしまいました」
 オズに乗せきれなかったひよこを抱えたまま、紅は暫く考えていたが。
「そうだ♪」
 パッと名案が閃いた。
「そうです乗り物好きのひよこさんなら……」
 ドーンッ! と紅の想像力によって創り出されたのは、紅たちも乗れる子ども用の蒸気機関車だった。
「すごい、きかんしゃだっ」
 オズのはしゃいだ声に、ひよこたちも興味を持ったのか皆一斉に機関車に視線を向ける。
「ほら、ひよこさんのごはんとふかふかベッドもありますよっ」
 ポッポーと汽笛を鳴らしてさらにひよこの気を惹く紅。
 乗って見たそうにうずうずとしているひよこたちを、オズは優しく機関車に乗せた。
「みてごらん、ごうかな寝台列車だよっ」
 ひよこたちは嬉しそうにぴょこん、ぴょこんと機関車に乗ると興味深そうにあちこちをツンツンと嘴で突く。
「ほら、ランチのご試食はいかが?」
 紅とオズが気前よく振りまくごはんをついばみ、その味に満足した様子のひよこたちは、この快適な機関車の旅を早く初めて仕方がないようだ。
「みんな乗ったですか? では出発しんこー」
 ポッポーと再び汽笛を鳴らし、ゆっくりと蒸気機関車は走り出した。機関車の運転手は紅で、車掌はオズ。安全運転で進む蒸気機関車は、ゆっくりと妖怪バスから離れていく。
「あ、クレナイ、みてみて」
 嬉しそうにオズが指差す先には、先程のごはんにつられたひよこたちが列をなして機関車について歩いていた。機関車に連なるひよこ達の行列を見て、紅は嬉しそうに顔を綻ばせる。
 オズは機関車に寄ってくるひよこたちを順番にすくいあげては乗せてやって大忙し。でも、黄色いもふもふの行列を見ていると嬉しくなって笑顔を浮かべた。
 「ひよこ列車のお通りだーっ」
 「お通りです~っ」
 おー! と紅が声にあわせて元気よく拳をあげると、彼女の頭上にいたひよこも嬉しそうに「ぴよ!」と声をあげて応える。
 紅と、オズと、ひよこたちを乗せて。ひよこ列車はのどかな田舎道をシュッシュ、ポッポと走っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

泉宮・瑠碧
ひよこ…!
何という、楽園…
…でも
運行の妨げもそうですが
バスに寄る事自体、危ないですね

近くで座り
ひよこ達と動物と話すで挨拶
こんにちは
皆、お腹が空きませんか
あちらで、御飯にしましょう?

御飯に持って来たのは
皆でつつける様に、刻んだ小松菜です
少し離れた所へひよこ達を呼びましょう
御飯ですよ、おいで

食べる様子を、ときめきつつ見守り

食後にバスへ戻らない様に
ひよこの給水も兼ね
雫や霧状の水できらきらと形を作ってみます
魚、大根…と次々に形を変えて

おねむになればお昼寝で寝かし付けを
ふわふわな子達を撫で…可愛いです
一名に失礼して、頬を寄せ…ふわぁ…幸せ

千針も、触れてみませんか
お仕事もお疲れ様
頑張ってくれて、ありがとう




 バスから降りた泉宮・瑠碧(月白・f04280)の眼前に広がっていた世界――それは、ふわふわもふもふな愛らしい黄色いひよこたちがぴよぴよしている世界だった。
「こ、これは……」
 瑠碧にとって『楽園』と言っても過言ではない、夢のような世界。うっとりとした面持ちで瑠碧がひよこたちを見つめていたのも束の間、すぐに現状を想い哀しげに目を伏せる。
 お裁縫妖怪を『世界のほつれ』に届けるという妖怪バスの運行の妨げも問題だが、そもそもこのひよこたちがバスに近寄ってしまうこと自体がとても危なく、心配だ。
 瑠碧はひよこたちを驚かせないようにそっと近づいていくと、静かに彼らの傍に腰を下ろす。そして、にこりと微笑むと、優しくひよこたちに話しかけた。
「こんにちは」
「ぴよぴよ」
 瑠碧に興味を持ったひよこたちがぴよぴよと徐々に集まってくる。
「皆、お腹が空きませんか。あちらで、御飯にしましょう?」
「ぴよっ!」
 瑠碧の提案にひよこたちは嬉しそうに鳴くと、彼女の案内に従って、ゆっくりとバスから離れて歩き出した。
 安全でバスの運行の邪魔にならない場所までひよこたちを連れて行くと、瑠碧は用意しておいた餌を取り出す。今回用意した餌は、刻んだ小松菜。皆で好きなだけつつける様にと多めに持ってきていた。
「御飯ですよ、おいで」
「ぴよっ!」
 用意した小松菜を我先にとついばむひよこたちを見て、瑠碧は慌てて声をかける。
「急がなくて、大丈夫ですよ。皆の分、ちゃんとありますから」
 それでも美味しいからいっぱい食べたいという様子のひよこたちを前に、瑠碧はキュンとときめく心をおさえながら、嬉しそうに口元を綻ばせた。
 御飯を堪能するひよこたちを見守っていた瑠碧だったが、食事の時間が終わろうとしていることに気づき、ふとこの後のことについて考える。食後、またひよこたちがバスの近くへ戻ってしまっては、せっかく安全な場所へ連れてきた意味がない。
(「そうだ……」)
 瑠碧は水の精霊の力を借りると、雫や霧状となった水で魚、大根、花……と様々な形を作り始めた。
「ぴよ?」
 何だろうと興味津々のひよこたちは瑠碧の傍を離れない。時折、パラパラと降り注ぐ水がひよこたちの給水も兼ねられたようで瑠碧はほっと胸を撫で下ろした。

 お腹いっぱいで眠たくなってしまったひよこたちを寝かしつけながら、瑠碧はそのふわふわな背中をそっと撫でる。
 瑠碧の手の中で眠ってしまった一羽のひよこに優しく頬を寄せてみれば、ふんわりとした毛が瑠碧の頬にふわっとあたった。
(「ふわぁ……幸せ……」)
 うっとりとした表情を浮かべる瑠碧だったが、背後から向けられた視線に気づき、ゆっくりと振り返る。
 いつの間に外に出たのか、お裁縫妖怪の千針が少し羨ましそうな様子で瑠碧を見つめていた。
「千針も、触れてみませんか」
「……あなたが言うなら、ちょっとだけ」
 照れ臭そうにひよこに手を伸ばす千針だったが、ふんわりとした毛並みに相好を崩す様を見て瑠碧も嬉しくなる。
「千針、お仕事もお疲れ様。頑張ってくれて、ありがとう」
「な、何よ急に……! 私は優秀なお裁縫妖怪なんだから、そんなに頑張ってなんていないけど!?」
 思い掛けない労いの言葉に思わず狼狽える千針だったが、手の中で眠るひよこを見つめ、照れ臭そうに口を開いた。
「『世界のほつれ』の修復は私に任せて。……大丈夫、全部縫い合わせて見せるわ」
 頼もしいお裁縫妖怪の言葉に、瑠碧はしっかりと頷く。

 猟兵たちによってひよこたちは退けられ、バスが通れる道がひらくとともに、何事もなかったかのように、妖怪バスは走り出した。
 そして、おもむろにバスは静かに停まると、クラクションが響き渡る。
 それは終点『世界のほつれ』に無事到着した合図だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月17日


挿絵イラスト