3
大祓百鬼夜行⑪〜水中バスと世界のほつれツアー

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#大祓百鬼夜行


0




●獺はほつれを結ぶ
 古びた停留所、古びたバス停の看板が川の近くにあった。
『やーれやれ。こっちで合ってるのかねえ』
 ぱたぱたと走ってくる一匹のカワウソ。背には大きな針を、腰には糸の裁縫道具を括り付けた彼は百鬼夜行で生じた世界のほつれを修復するお裁縫妖怪である。
 彼の到着から数十分、ぼんやり待つ彼の前に滑り込んでくる真っ白なボディのバス。胴に可愛らしい絵が描かれたそれは、どうみても幼稚園児の送迎用、全体的にはシロイルカをモチーフにしているようなそれは妖怪バスというもの。
 お裁縫妖怪は乗車すると窓から車外を見る。
 大きな災厄がこの世界を襲っているけれども、彼はやるべきことをやるだけ。ほつれが致命的なものにならないように補修するのだ。
 やる気に燃える彼にこたえるかのようにシロイルカの妖怪バスは目的の世界のほつれへと速度を上げていく。

 ――数十分後、彼は無理かもしれないと水中で諦めかけていた。
 最初の異常は水。バスが進むにつれて周囲に水が見え、そしてその推移は高くなっていった。
 目的地に近づけば近づくほど高くなってくる水位は今やバスの天井にまで届いている。
 呼吸の方はどうにかなっているけれども窓の外に見えるは大渦、横殴りに襲い掛かってくる大波の衝撃にバスが揺れてとても不安な気分になる。
 そして一際大きな波がバスにぶつかりバスがふわりと浮き上がる。
 お裁縫妖怪がそれに驚く間もなく、一度浮きあがってしまったバスは近くに発生した大渦へと吸い込まれ、そしてばらばらに砕かれてしまうのであった。

 グリモアベース。
「カクリヨファンタズムで今起こっている大祓百鬼夜行の事はもうみんな知ってると思うけども、それについてちょっと予知拾ったから力を貸してくれないかな」
 集まった猟兵達にシャチのキマイラのヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)にゆるい笑みを浮かべて問う。
「今回拾った予知ではカクリヨファンタズムのバス停、そして奇妙な妖怪バスが関係しているね。ぼんやりバス停で待ってるとどこからかやってくる妖怪バス、その一つにお裁縫妖怪っていう妖怪が乗り込むみたいなんだ。彼らは百鬼夜行でできた世界のほつれを修正してくれて、妖怪バスも自然に向かってくれるみたいなんだけど……ほつれに近づくにつれて困難、今回は天変地異がバスに降りかかるんだ。お裁縫妖怪だけじゃちょっとそれを乗り越えるのが難しいっぽい」
 だから彼に力を貸してほつれの修復を手伝ってきてほしいのだと、ヴィクトルは言う。
「今回の困難は海に関係するものと予知されている。ほつれに近づくにつれてバスが水の中を走るようになってきて、更に近づくと大渦や大波がバスをもみくちゃにしてこようとしてくる。一応バス自体は完全に水没した状態でも問題なく動くみたいだけど、渦に引き込まれたりすると危険だろうね」
 正しくバスが道を通っている間は大丈夫みたいだけど道から離れてしまうと危なくなるみたいとシャチは言う。
「護衛対象のお裁縫妖怪はカワウソのような姿で大きさは直立して1mあるかないかぐらい。性格は凄くマイペース、仕事熱心だけどちょっと危機感薄めなのが玉に瑕な感じだね。適当に気にかけないと溺れたり波にさらわれたりしてもおかしくないかも。あと妖怪バスの方は幼稚園の送迎バスみたいでベルーガモチーフ、いかにも水中もいけますって形してるみたいだよ」
 そこまで説明したヴィクトルはシャチの黒い手で首に掛けた鍵型のグリモアを手にし、転送の準備を開始する。
「それじゃお裁縫妖怪が待ってるバス停に転送するよ。骸魂との戦いじゃないからちょっと勝手は違うけど守らなきゃならない妖怪がいる分難しいかも。けれど皆なら何とかやってくれると信じてるよ」
 それじゃ頑張ってきてね、とヴィクトルは話を締め括り、世界のほつれに向かうバスへの転送を開始した。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 バスの護衛旅(水中)いかがでしょうか。

 このシナリオは妖怪バスで世界のほつれへと向かう『お裁縫妖怪』を守るシナリオとなります。
 世界のほつれへと向かうにつれバスが水没し(道は一応あるようです)、更に進むと大渦や大波などの海の天変地異がバスを襲います。
 これらにどうにか対処してバストお裁縫妖怪を守り抜いて世界のほつれに到着できれば成功となります。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

=============================
 プレイングボーナス……妖怪バスとお裁縫妖怪を、危険から守る。
=============================

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
84




第1章 冒険 『妖怪バスでほつれに向かえ』

POW   :    肉体や気合いで苦難を乗り越える

SPD   :    速さや技量で苦難を乗り越える

WIZ   :    魔力や賢さで苦難を乗り越える

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィッダ・ヨクセム
自由なバス停の好で協力してやるぜ?
大型自家用車(UCで喚び出す妖怪鬣犬=ハイエナ)と救助活動の手伝いだ。
困ッたコトにこいつもバスなんだよなあ…ワァ運命的ィ

バスに対して何か出来るとしたらそうなあ、後ろから頑張ッて押すか?
うん、単純にぐいぐいと運搬手伝うことにする
俺様の怪力だけじャあ足りないかもだが、……鬣犬に協力させるし

カワウソには裁縫道具でより集めた糸で引ッ張るためのロープ的なモン出来たりしねェか交渉するぜ
紐を噛ませてバスの先を鬣犬に無理に引ッ張らせるから

まあ難しい場合は俺様の得意な炎の魔法を爆発させて
水上歩行しつつ障害を消す為鬣犬のブレス攻撃で火球を打ち込み続ける
水と相性が悪いから、全力だ!


ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
ライドサーペントの蒼雷に【騎乗】して行動

世界のほつれ、二つの世界で必要な事なんだろう
しっかり護衛しなければな
水場ならお前の独壇場だ、頼りにしているぞ。蒼雷

SPDで判定
バスの近くを【水中機動】【高速泳法】で泳いでもらい、すぐに守れるように待機する
俺は【息止め】【素潜り】【深海適応】を使って耐える
まずはバスに向けて指輪の力で風の【結界術】を張って水の流れを反らし、波を防ぐ
そのまま【視力】【暗視】【聞き耳】で周囲の【情報収集】を行う
大渦が見えればそちらへ行き、風の【結界術】を応用し大渦の流れとは逆の流れをぶつけて相殺させて防ぐ


北・北斗
今回の感じとして、海を突き進むバスと言う感じかなと思っている。
カワウソだと、川の生き物だし、海は苦労するんだよねと見ていたりする。
『今回は、このバスを守るんだよね。だから、超能力で何とかするよ』
本人はバスの上に乗って見守っている。
まぁ、ほつれに近づくにつれ、異変が起きるんだけど、ここは、周囲に反重力のフィールドを展開することによって、波を押し返すようにする。
『下手なことにならないようにしないとね』
大渦など、ヤバイと判断したものにはマイクロブラックホールを打ち込んで消去する。
『カワウソさん、大丈夫ですか?』『よかったですよ。』



●妖怪バスと乗客一人、護衛三人の水中行
 バス停一つ、カワウソ一匹。
 薄暗い幽世の停留所でお裁縫妖怪は世界のほつれに向かう妖怪バスを待っていた。
 そこに二人の男、そして一匹のトドがやってくる。
『お兄さんたちも次のバスに乗るのかい?』
「ああ、自由なバス停の好でな。バスを守りに来たんだ」
 お裁縫妖怪の問いに応えるフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)、バス停のヤドリガミである彼がユーベルコードを起動すれば、青年の倍はある大型自家用車――もといその名を持つ妖怪ハイエナが召喚される。
『行きは怖くて帰りは分からず、途中下車お断りの旅をこの"バス"が護衛いたしましょう!』
「おい不吉な事を言うのはやめろバス」
 そのハイエナを窘めながら騎乗するフィッダはカワウソに問う。
「……ところでロープみてェなのは持ってねえか? バスが足止め喰らった時に引っ張んのに使いたいんだが」
 お裁縫妖怪の持つ裁縫道具、ほつれを繕うのだから糸のようなものもあるだろう。それを縒り合わせれば十分な強度があるだろうとフィッダは考える。
『太い糸なら出せるよ』
 魚籠のような籠からするすると伸びてきたのは十分太くハイエナ妖怪にも噛み応え十分そうなロープ。
 世界のほつれを繕う為に様々な種類の糸を幾重にも重ねて繕うのだと小さなカワウソは言う。
 ロープを軽く嚙んでゲラゲラ笑う妖怪ハイエナの反応を見ても十分そうだ。
 そこでレトロなライトがバス停を照らし、シロイルカをモチーフにした妖怪バスがお裁縫妖怪の前に滑り込んでくる。
(「困ッたコトにこいつも"バス"なんだよなあ……」)
 自分をバスと自称する妖怪ハイエナとシロイルカの妖怪バスの巡り合い。ワァ運命的ィ、等とフィッダは思いながら重力を無視したように浮き上がってバスの屋根の上に飛び乗るトドを見やる。
 そのトド、北・北斗(遠い海から来たトド・f20984)が巨体をべしゃりと広げて張り付くと屋根が悲鳴を上げたような音がしたが大丈夫だろう、きっと。
『お兄さんは乗らないのかい?』
 乗車しようとするカワウソが振り返ってもう一人の猟兵、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)に声をかける。
「ああ、俺はこっちの蒼雷でいい」
 そういうルイスはふわふわと浮遊しているライドサーペントに騎乗してバスの横に並ぶ。
 乗り込んだのはお裁縫妖怪だけで、猟兵達は全員バスの外。
 がたんと音を立てシロイルカの妖怪バスが世界のほつれに向かい発車した。

 山間の道路のような風景を進んでいくと道路上に水が混じり始め、いつの間にか周囲が拓けて凪の海のような風景に変わっていく。
 屋根の上の北斗がよくよく目を細めれば道路は変わらず続いている。世界のほつれは海の中にあるのだろうかと少々気になるトド。
 乗り込む前に窓から見えた気密を考えられてなさそうなバスの内装をやや不安に思いながら、彼は車内のカワウソの事を考える。
(「カワウソだと川の生き物で海は苦労するんだよね」)
 妖怪なので淡水海水の違いはあまり気にならないのかもしれないけれど、海の生き物である北斗は妖怪の事をつい心配してしまうのだ。
『今回は、このバスを守るんだよね。だから、超能力で何とかするよ』
 車内のカワウソを安心させるようにそんな思念を飛ばせば、驚いたような反応とお願いしますと畏まった感情が伝わってくる。
 バスが進めば徐々に水位が上がり、バスの下半分が水没して速度がやや鈍る。
 がくん、と衝撃。どうやら速度が落ちたことと水で視界が悪くなったことで車輪が窪みに引っかかったようだ。
 車輪が空転する中、フィッダと彼の騎乗する巨大ハイエナが手と首と肩を押し付け怪力でぐいぐい押し出し、そして車輪が路面を捉え進行を再開する。
 その真横を泳ぐ小型の海竜はこの場所こそが適正、多少の海の荒れ模様も気にせずに自在に泳ぎ回り周囲に警戒を向けている。
 何となく、死後の世界は水底にあるという話がルイスの頭を過る。
 二つの世界にまたがる大祓百鬼夜行の戦に突如生じた世界のほつれはどう考えても放置してはならないもの。
 それを修復する為に今このバスに乗車しているカワウソはしっかり護衛しなければならないだろう。
「水場ならお前の独壇場だ、頼りにしているぞ。蒼雷」
 騎乗しているルイスの言葉に蒼雷は速度を上げて応る。

 そして世界のほつれに近づくにつれ天変地異が生じてきて、凪の海は嵐へと徐々に変わっていく。
 とっくに天井まで水没している妖怪バスに、嵐の海の激しい波がシロイルカのバスに真横から叩きつけられて、バスの中のカワウソがうわーと間延びした声を漏らす。
 それでもバスが道から外れないのは北斗を中心にバスを覆うように展開された反重力フィールドの作用だ。
『下手なことにならないようにしないとね』
 実験による改造で身に付けたその能力は、北海の冬の荒波の如き波濤からバスを守り押し返していく。
 そしてすっかり水没したバスの横を泳ぐ海竜とルイス。彼は呼吸の為の浮上を最小限に抑えつつ、反重力フィールドに重ねる形で展開した風の結界で波を逸らしバスを守る。
 後方でバスに結び付けていたロープを握るフィッダと"バス"はその光景を眺めつつ周囲を警戒している。
 もしもバスやお裁縫妖怪が吹き飛ばされれば即座に救助にかかる体勢を取っているがこれなら――と考えたその時、フィールドと結界を突き抜けてよく分からないガラクタや瓦礫がバスに突っ込んでくる。
 それがバスに辿り着く前、バス後方からフィッダの炎の魔法と"バス"の火球のブレスが飛んできて吹き飛ばし燃やしていく。
 周囲は水に満ちてガラクタも湿っていて炎は相性が悪い地形だけれども、どうにか数で押し切れないことはない。
 相変わらずげらげら笑っている"バス"と共に、フィッダも全力で障害を吹き飛ばしていく。
 天変地異は激しさを増すが、猟兵達の護衛によりシロイルカのバスは順調に目的の世界のほつれへと進んでいく。

 ――ここは水中、だからこそ大きな音は大気中よりも速く伝わる。
 シロイルカの妖怪バスの周囲を護衛しながら注意深く知覚できる情報を集めていたルイスが最初にそれに気が付いた。
『ん、あれはちょっとまずいかも』
 屋根の上、元々海の住人で水の中の風景に慣れている北斗が僅かに遅れ遠く薄っすらと見えるその天変地異を視認する。
 大渦、それもバスの進路の左右に二つ。丁度間に流れ着いてきた巨大な板がいとも容易く破砕され、このままではこのバスが同じ運命をたどるだろうと猟兵達に予感させる。
 そしてバスの速度が上がっていく。妖怪バスもブレーキ、後退しようとしているようだけれども渦の引き込む力が強い。
 その以上を察知したフィッダと"バス"は即座にロープをしっかり掴み/噛みしめ、バスが吸い寄せられないように姿勢を低くし食いしばれば何とかバスは停止する。
 屋根の上、ごぽごぽ雄叫びのように泡を吐くトドの正面に黒の弾丸が生じる。
 北斗の操るサイキックの一つ『超重力』により強烈に圧縮した重力弾、それを渦の根本に向けて放つと重力弾と相殺され片方の渦は消滅。
 その重力弾と同時にルイスはもう片側の大渦に蒼雷を促し接近すると、銀の指輪のメガリスを輝かせて至近距離から風の刃を放つ。
 風の刃は渦を消滅させられない、けれど直後渦よりも大きな風の結界が生じ包み込むと、その内側に大渦の逆回転の衝撃波を絶え間なく放ち続ける。
 巨大な大渦もその逆回転の衝撃波の渦には相殺され、ほどなく道なりに生じていた二つの渦は跡形もなく消え去った。
『カワウソさん、大丈夫ですか?』
 屋根の上からの思念にカワウソ妖怪はもう慣れたもの、無事だと応ずるように強く念じて応た。
『よかったですよ』
 その思念を感じ取った屋根の上のトドもほっと一息。
 そして波と渦、水の天変地異の数々から猟兵達はシロイルカのバスを守りぬいて、やがてバスは再び陸地に浮上してバス停の前でその速度を緩め停止する。
 運賃箱にメダルを放り込みつつ開いたドアからカワウソが無事な様子で降車し、猟兵達もその近くに駆け寄る。
 バス停の前には水が溢れ出す空間の破れ目があった。
 これが世界のほつれなのだろうと猟兵達は理解する。
 カワウソはそのほつれを認めるや否や、背の針と魚籠から取り出した糸を以て修繕に掛かる。
 見る見るうちに世界のほつれは修繕されていき、溢れる水は停止して水が引いていく――。
 猟兵達が振り返ればあれだけ荒れていた嵐の海はすっかり消えて、代わりに美しい峡谷の風景が広がっていた。

『ここまで助けてくれて有難うございました!』
 ぺこりと丁寧にお辞儀をして礼を言ったお裁縫妖怪、けれどまだまだ仕事は応急処置らしい。
 残りの仕事は自分だけで頑張る気合十分なカワウソ妖怪に別れを告げた猟兵達は、次なる戦いの為にグリモアベースへと帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト