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銀河帝国攻略戦⑩~迅速に、されど密やかに

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #シリアス

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「み、みんな、聞いてっ……!」
 グリモアベースにて、わたわたしながら猟兵達に声をかけているのは、グリモア猟兵のコルネリア・メーヴィス(闇に咲いた光・f08982)だ。基本的に声の小さな彼女だが、事態が事態だけに頑張って声を張り上げているようだ。
「スペースシップワールドの、お話だよっ……!」
 彼女によれば、これまで戦線に参加した猟兵たちの活躍により、銀河帝国はその最終防衛ラインを『エンペラーズマインド』まで下げることになったのだという。つまり、猟兵たちは『エンペラーズマインド』へと突入する機会を得たというわけだ。
「えっとね、帝国軍の防衛戦力の殆どは、『解放軍』のスペースシップとの決戦に向かっているよ。だから今は、『エンペラーズマインド』周辺宙域の警戒は緩くなってるの。この隙に、少人数で『エンペラーズマインド』に潜入してほしいんだ」
 残念ながらグリモア猟兵の力でも、コア付近に猟兵達を転移させることはできない。その上エンペラーズマインド内部には数百以上の『巨大隔壁』があり、『エンペラーズマインド・コア』への道を塞ぐとともに守っている。
「どの隔壁が『当たり』なのか、現状予知ではわからないんだよ。だから、こっそりエンペラーズマインド内部に侵入したあと、内部を巡回する警備兵達に見つからないように、できるだけ重要そうな『巨大隔壁』を破壊してほしいの」
 コルネリアにも、結構無茶なことを言っている自覚はあるようだ。それでも、猟兵達に頼るしかない。
「警備兵達に見つからないようにして、より奥まで移動できれば、より重要な『巨大隔壁』が見つかるかもしれないね」
 つまり『警備兵に見つからないように隔壁を捜索すること』『より重要そうな隔壁を見つけて、あるいは目星をつけて破壊すること』が重要だ。
「隔壁を破壊すると、当然だけど警備兵がたくさん集まってきちゃうんだ。でも、破壊したあとのことは心配しないで。内部へ直接転移させることはできないんだけど、グリモアベースに強制撤退させることは出来るからっ……!」
 警備兵が集まってくる以上、ひとりで複数の隔壁を破壊することはできない。そして重要なものほど、奥にあるのは定石。ならばやはり、出来る限り奥へと向かうために警備兵の目を盗んでやり過ごす策が必要だろう。
「難しい注文がたくさんなのは承知だけど……みんなを信じてるからね」
 コルネリアはそう告げて、小さく手を振った。


篁みゆ
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、サイキックハーツでお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの最大の目的は、「巨大隔壁の破壊」です。
 破壊自体ももちろん大事ですが、どのように警備兵の目をかいくぐって、なるべく奥の隔壁にたどり着くかも重要になるかと思います。
 隔壁は破壊後は、コルネリアが強制撤退させますのでご安心ください。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様の行動がどのようなお話へと化学変化するのか、プレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『⑩エンペラーズマインド突入戦』

POW   :    密かに潜入し、POWのユーベルコードで巨大隔壁を攻撃する

SPD   :    密かに潜入し、SPDのユーベルコードで巨大隔壁を攻撃する

WIZ   :    密かに潜入し、WIZのユーベルコードで巨大隔壁を攻撃する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

白波・柾
ようやくお膝元というわけか
まだまだ油断はできないが……やっと、一段階進んだ実感があるな
潜入した以上は目立てない
隠密作戦である以上、いつも以上に慎重にかからねばならない

『目立たない』を利用して潜入
単体潜伏兵として行動
『ハッキング』を利用して近くのコンソールを操作、
重要そうな隔壁はどれか調査する
得た情報は全て他の猟兵と共有、協力
猟兵に有利な戦闘環境にできるように調整できたらいい
『ダッシュ』を使用して目的の隔壁まで迅速に移動し、
到着すれば仲間たちと協力して
隔壁の破壊を試みる

【正剣一閃】で隔壁を攻撃


ムルヘルベル・アーキロギア
隠密行動か、フフン。ならばワガハイに策がある!
いかにも、この【魔法迷彩】よ。原理は我らクリスタリアンのクリスタライズとそう変わらぬ。
だがこれはな、抱きつかずとも、この魔法の羽根ペン『コズミック・フォージ』で文字を描くだけで発動できるのだ!
……というわけで、なるべく物音を立てずに移動できそうなものにUCを使用する
ワガハイ自身も後に続くが、気配を消すのはあまり得意ではない
疲労もしてしまうゆえな、警備員の配置などを〈学習力〉と〈情報収集〉で丁寧に調べつつ、慎重に少しずつ進むとしよう
隔壁自体の破壊は、なに、ワガハイの〈全力魔法〉で吹き飛ばしてくれよう!
見つかったら? ……仲間を頼るのだ!!


トゥリース・リグル
アドリブ・連携歓迎。【SPD】を使用。

最近戦闘ばかりでしたし、こっちの腕が鈍ってないといいんですがね

移動の際は出来るだけ【目立たない】ようにしつつ【ダッシュ+忍び足】で出来るだけ静かにかつ速やかに行います
その際、【聞き耳】を立てて警備兵の足音等を探ります
【第六感】で何か嫌な予感がしたら一度足を止めて周囲を警戒
重要そうな隔壁に関しては可能なら【ハッキング】若しくは【情報収集】で内部を探ってみます
あとは警備兵の警戒度合いなどを見て【第六感】で当たりを付けます
破壊の際は【瞬きの刃】で出来るだけ遠距離から破壊


シエル・マリアージュ
【Garb of Mirage】の【迷彩】で【目立たない】ようにして【忍び足】で密かに探索。
曲がり角などでは蜘蛛型にした【アラクネの紅玉】を【目立たない】ように天井を移動させて【視力】【聞き耳】で安全を確認してから進む。
敵を発見したら【死は闇より来たれり】をその場で発動、敵の位置を把握して避けて移動、必要ならアラクネの紅玉に離れた場所で音をさせて敵を引きつけてその間に奥へと進む。
アラクネや自分が見聞きした敵の会話などから【情報収集】して、より奥深くにある隔壁を探していく。
隔壁を発見したら【鎧無視攻撃】の【ドラゴニック・エンド】で隔壁を貫き【衝撃波】でさらなるダメージを与えて隔壁を破壊して撤退。


トリテレイア・ゼロナイン
潜入しての破壊工作…騎士と振舞う身では正直不向きかもしれませんが、宇宙に暮らす人々の為に全力を尽くしましょう

「防具改造」で白い装甲を要塞内部に溶け込む都市迷彩に塗装、関節の駆動時の消音性能も向上させます

センサーで警備兵の足音や振動を検知して接近を「見切り」、物陰に隠れたり、隠し腕を天井に向かって放ち、ワイヤーを巻き取ることで上に逃れたりすることで要塞深部への侵入を試みます
どうしても発見が避けられそうにないなら「だまし討ち」による攻撃で速やかに警備兵を無力化しなければ…

隔壁を発見したら「怪力」による大盾殴打での「鎧砕き」で破壊します

……やはりこういった仕事は慣れる気がしませんね(苦笑しつつ)


ミスティ・ミッドナイト
なるほど。大規模な戦争においてゲリラ戦は有効ですね。恐らく帝国軍は目先の溝に気づかない。潜入は容易いでしょう。
お任せ下さい。

ステップ1:
【地形の利用】で隠れながら移動。進行上にいる敵はサプレッサー付きハンドガン(装備)を用い【先制攻撃】で【暗殺】を狙います。
ステップ2:
孤立している巡回兵等がいたら、急所を外して攻撃。【恫喝】及び【傷口をえぐる】で隔壁に関する【情報収集】を致しましょう。
ステップ3:
重要そうな障壁の目星を付けたら、グレネードランチャー(UC)で破壊を狙います。

隠密行動は時間が命。手早く済ませましょう。


亞東・霧亥
【SPD】
『忍び足』『目立たない』『地形の利用』『クライミング』『鍵開け』使用。

天井に通気ダクトがあるはず。
慎重に蓋を外して、静かによじ登る。蓋を閉めたら、腹這いで音を立てないようにゆっくり前進。

通路は『グラップル』『ダッシュ』『ジャンプ』『ロープワーク』。
壁や天井を伝い、時にはワイヤーフックを使って大胆なショートカットで奥へ奥へ。

これより先は、一人では難しい。ここで騒ぎを起こせば他の猟兵達の潜入の助けになるだろうか?

『鼓舞』『グラップル』『早業』『力溜め』『踏みつけ』『衝撃波』『鎧無視攻撃』+【激震脚】。

「派手にぶちかますぜ!」
巨大隔壁を全力で攻撃する。


月宮・ユイ
アドリブ・絡み協力歓迎

第一戦線突破、次はワープを妨害するコアか…まずは道筋を作るとしましょ

’秘匿兵装、補助兵装’として潜入用の警備探知・偽装道具等を用意’電脳デバイス’に収納しておく
出来るだけ仲間達とは情報を共有

”地形の利用もしつつ、暗殺の潜入技術で存在感”を消し、身を”隠し、目立たない”ように行動
必要なら【不可視化】も併用して、
”鍵開け、ハッキング、メカニック、破壊工作、戦闘知識、拠点防御、罠使い、第六感”等技能を駆使、警備システムを”見切り、目潰し・偽装、併せて情報収集”
可能な限り奥へ、そして警備の厳しい方へ進む

壁の破壊
”高速詠唱で2回攻撃”分の【破壊の理】を一つに纏め”力溜め、全力魔法”


ベルリリー・ベルベット
敵に見つからないように進まなきゃいけないだなんて
お忍びで遊びに行くみたいでドキドキするわね

念のため、警備兵に『変装』していきましょうか
こっそり潜入して、素早く奥まで進んでいくわ
障害物があればそこに隠れたり、『投擲』で別の場所に物を投げて音を立てたりしてやりすごしましょう
もしも姿を見られたら、見回りをしてる警備兵のふりをするわ
途中で鍵がかかってるところがあれば『鍵開け』で突破よ

可能な限り奥まで進んだら炎の『属性攻撃』を乗せた【早撃ちシンデレラ】で巨大隔壁を破壊するわ
ミッションコンプリート
これで後は送ってもらうだけね

◆絡みやアドリブも歓迎です


佐塚・陽霞
(他の方と一緒の行動、アドリブ歓迎します)
重要な隔壁はより奥の方に進めば進むほどある可能性が高いでしょう。となれば、必要なことは徹底した隠密行動ですね。
目配りは勿論ですが視認されたら厳しいですから一番気にするのは音。壁や床の振動にも気を使い、他の方が見つかった際に警備兵が来た方向がより重要部に近くなるはずです。
自分が早めに発見されてしまった場合には出来る限り多くの警備兵の気を引き、一人でも多く自分の方へ引き寄せ、近くの隔壁を破壊して離脱します。そうすることで他の方がより重要部まで侵入する助けとなればいいのですが。




 情報通り、確かにエンペラーズマインド周辺宙域の帝国軍の防衛戦力は薄くなっていた。その隙をついてエンペラーズマインドへと潜入した猟兵たち。だがさすがに『エンペラーズマインド・コア』を守護している以上、要塞内の警備はしっかりしており、その目をかいくぐるべく猟兵たちはそれぞれの方法で目的達成を目指して動いた。

 目当てのものを探しつつ、壁や柱、荷物などの障害物を利用し、目立たないよう忍び足で亞東・霧亥(冒険野郎若作りなおっさん・f05789)は動く。
(「あそこがいいか」)
 目をつけたのは天井にある通気ダクトの蓋。足音を殺しつつのダッシュで、その蓋の下方近くにある障害物へと近づく。
 カッ、カッ、カッ……規則正しい足音が近づいてくる。哨戒兵だろう。ちらっとダクトの蓋へ目をやる。だが今急いては、ここまで忍んできたのを無駄にするようなもの。息を殺し、障害物の向こう、近づいてくる哨戒兵の足音に耳を澄ませる。
 カッ、カッ、カッ、カツン。……カッ、カッ、カッ……。異常なしとみたのだろう、折り返して遠のいてゆく足音。それが十分遠のき、他に近づいてくる音や気配がないことを確かめたのち、霧亥が放ったのはワイヤーフック。ダクトの蓋付近の突起に引っ掛けたそれを、腕の力だけでのぼり行き、目的の蓋を慎重に外した。その間ももちろん、哨戒兵や他の乗組員たちの気配には注意を払っている。
 静かによじ登ったのち、開けた時と同様に慎重に蓋を閉め、腹這いのままゆっくりと進む。成人男性の霧亥の身体では、少々ここは狭苦しい。だが、音を上げるつもりはない。
 どのくらい進んだだろうか。眼前の蓋の下に気配を感じ、霧亥は蓋の隙間からそっと様子を盗み見た。
「このあたりはグリーンだ」
 壁についたセキュリティパネルのような装置の前で、兵士が呟いた。おそらく通信相手にだろう。
(「ここから先はセキュリティレベルが上がる、ということか。このまま進んでも――」)
 天井裏までどの程度のセキュリティが施されているかはわからない。だが仮にもコアを守る大要塞だ。このままセキュリティレベルが上の場所に入り、万が一にも検知される方がまずい。いくら、できるだけ奥の隔壁を壊すことが良いとはいえ……。
(「これより先は、一人では難しい。ここで騒ぎを起こせば他の猟兵達の潜入の助けになるだろうか?」)
 思案したのは一瞬。決断すればその動きは早い。兵士が離れたのを確認し、先と同じく慎重に蓋を外した霧亥は、ワイヤーフックを利用して、蜘蛛がその糸を使ってそっと降りるように静かに降り立った。
(「これが隔壁か」)
 対象を確認し、力を溜める。持ちうる限りの技能、力を総動員して繰り出すのは――。

「派手にぶちかますぜ!」

 全力の『激震脚』。衝撃波を伴うその踏みつけは、巨大隔壁にヒビを入れたかと思うとボロボロとその欠片をこぼさせる。
 同時に耳障りな電子音が、警告音がけたたましく響き、近づいてくるのは喧騒と足音。
「後は任せた」
 何者だ――姿を見せた兵士に問われたそれには答えず、霧亥は自身を包む強制撤退の力にすべてを任せた。


(「ようやくお膝元というわけか。まだまだ油断はできないが……やっと、一段階進んだ実感があるな」)
 単独で目立たぬように要塞内を移動するのは白波・柾(スターブレイカー・f05809)。
(「潜入した以上は目立てない。隠密作戦である以上、いつも以上に慎重にかからねばならない」)
 この任務の重要性と己がなすべきことははっきりしている。すでに理解しているそれを、改めて自分に言い聞かせながら近づくのはセキュリティ端末と思しきもの。それを利用して近くのコンソールの操作権を奪い、端末のモニターに映し出された情報を精査してゆく。

(「第一戦線突破、次はワープを妨害するコアか……まずは道筋を作るとしましょ」)
 あらかじめ『秘匿兵装』『補助兵装』として、警備探知や偽装道具などの潜入用用品を『侵蝕型電脳デバイス』へと収納した月宮・ユイ(死ヲ喰ラウモノ・f02933)は、自らの気配を可能な限り消し、なおかつ目立たないように心がけながら、柱や荷物などの障害物も有効に利用して、できるだけ奥へ奥へと進んでいく。

(「最近戦闘ばかりでしたし、こっちの腕が鈍ってないといいんですがね」)
 目立たないように、足音を抑えた上で素早く通路を横切って。聞き耳を立てて気づかれていないことを確認したトゥリース・リグル(刃を為すモノ・f00464)は、哨戒兵の様子に目を配る。
(「あちらの方が、警備が厚い気がしますね」)
 兵士たちの数や動きを観察してきたトゥリースの閃き。自身の『第六感』ともいえるそれが、無視できないものであることを彼女は知っている。そっと、そちらへと向かい始めた。

 三人がそれぞれの場所で動いていたその時。
「……!」
「!!」
「!?」
 耳障りな電子音が響き、警告メッセージが流れる。兵士たちがざわめき、そしてメッセージの告げる区画へと走り出した。
 それぞれいったん身を隠した三人は、近くの端末からハッキングによる情報把握を試みる。
(「あの区画か」)
 いち早く事態を把握したのは、既にコンソールの権限を奪い、要塞内のセキュリティ配置を精査していた柾だ。警告メッセージが告げた区画に、非常を知らせる文字が点滅している。
 潜入した猟兵の誰かが隔壁を破壊したことは容易に想像できた。そしてその位置から、その猟兵の『意図』も。
(「更に猟兵達に有利な戦闘環境に調整するには……」)
 柾が下した判断は、現在非常事態となっている区画側を『捨てる』こと。他方からも兵たちが集結しつつあるあちらへ向かうのは、リスクが高いと踏んだのだ。近くの区域のセキュリティを操作し、ダミーの『非常事態』を発生させようとしたその時。
「……!」
 今まさに弄ろうとしていた区画のセキュリティが、非常事態を知らせたのだ。誰かがそこで隔壁を破壊した? いや、これは――。
 高い技術を持つ柾は、セキュリティの動作を確認し、それが何者かに操作されたことを突き止めるまで数秒。その間にまた、同方面で非常事態が発生したと画面が知らせる。そちらも同様に確認してわかったのは、操作した者ふたりの位置。

 ――これから向かう。その付近で身を隠せ。

 メッセージを送ったのち、架空の『非常事態』をいくつか起こして、柾は端末から離れた。ふたりの位置は、彼が目星をつけていたいくつかの方向のうち、ひとつと近い。
「こっちです」
 非常事態の相次ぐ区画へと向かう兵士たちをいくらかやり過ごしたのち、柾の前に姿を現したのはトゥリースだ。
「あなたがメッセージをくれた人ですね?」
 その問いに頷きつつ、先を促す柾。彼に倣って通路を駆けつつ、トゥリースは経緯を聞き、考えをすり合わせる。
「最初のアラートの時に比べて、かなりの数の兵士が奥から移動していきました」
 つまりこの奥には、たくさんの警備が必要なものがある、ということだろう。
「最初のアラートの時、この先の警備を疎かにするわけにはいかないって他の兵士だけを行かせた兵士がいたのよ。だから、もっと事が大きくなれば、その兵士も駆けつけざるを得ないと思ったのだけど」
 明らかに帝国軍の兵士ではないふたりを確認して、ユイは『不可視化』を解いた。最初のダミー発生者はユイだ。
「人員が足りないのね、さすがにあなた達が来る前にはその兵士もあちらへ向かったわ」
「では、俺たちはここから一番近い隔壁へ向かおう。他の猟兵達との情報の共有を」
「任せて」
 柾の言葉に素早く電脳デバイスを操作するユイ。
「この先、警備兵や哨戒兵はいないようです。ただ、僕たちが隔壁を破壊すれば、こちらにも兵は駆けつけるでしょう」
 通路の先の様子を伺っていたトゥリースが告げる。隔壁を破壊する以上、仕方のないことだが。
「そこはどうしようもないわね。でもあちらのほうが大規模だし、こちらに戻るまで時間もかかるはずだから」
 揃って隔壁へと向かいながら、ユイが告げる。
「近くに他の猟兵達がいるみたいだから、きっとすぐに駆けつけてくれるわ」
「見えたぞ」
 柾の言葉で立ち止まるユイとトゥリース。
「行きますね」
「ええ、全力で」
 距離を保ったまま、視認されることを否定するような速さでトゥリースは『”トゥリース”』を振るう。発生した真空の刃、『瞬きの刃』が、隔壁に迫る――。
 ほぼ同時にユイは、高速詠唱で二回分の『破壊の理』による炎を合体させて。強化されたそれは、破壊の概念を具現化したもの。放つ先は、もちろん――。
 真空の刃と破壊の炎は、足を止めなかった柾を追い越して壁へと迫る。柾は『大太刀『星砕丸』』を手に、それらを追うべく速度を上げて。

「俺の一刀―――受けてみろ!」

 刃と炎の到着から一拍ののち、研ぎ澄まされたその一撃が、隔壁を斬りつける。
 派手な、けれども鈍い音達が隔壁の破壊を告げる。
 耳障りな電子音と、警告メッセージが流れる中、他の猟兵達に後を託す形で三人は強制撤退の力に身を任せた。


 ――なるほど。大規模な戦争においてゲリラ戦は有効ですね。恐らく帝国軍は目先の溝に気づかない。潜入は容易いでしょう。お任せ下さい。
 そう告げて潜入したミスティ・ミッドナイト(霧中のヴィジランテ・f11987)。彼女の予想通り、潜入は容易かった。柱や荷物などの障害物に身を隠しつつ、向かう方向を決め、その行き先を阻む兵士に向かい、姿を隠したままサプレッサー付きハンドガンを構えたその時。
「!! 非常事態だと!?」
 耳障りな電子音と警告メッセージに反応した兵士は、慌ててその場を離れてゆく。
(「誰かが隔壁を破壊したのでしょう」)
 複数の猟兵が潜入しているなら、先に隔壁を破壊した者が現れるのも当然のこと。そしてそれによって自身が向かう方向が手薄になるのなら、幸いだ。
 警戒を解かず、隠れながら通路を進むミスティ。どうしても邪魔な兵士は、気づかれる前に射殺した。隠密行動は時間が命。手早く済ませるに越したことはない。だが、兵士の骸をそのままにしておいては、この付近を怪しんでくれといっているようなもの。物陰に骸を隠し、ミスティは先をゆく。

(「重要な隔壁はより奥の方に進めば進むほどある可能性が高いでしょう。となれば、必要なことは徹底した隠密行動ですね」)
 視覚のみならず聴覚にも頼りつつ要塞内を進んでいた佐塚・陽霞(透徹の瞳、闇夜の礫・f01151)は、他の猟兵達より共有された情報を元に進んでいた。鳴り響く警告音。気を張れば、こちらに近づいてこようとしている振動が感じ取れて。とっさに周囲を見回し、身を隠せそうな物陰へと潜む。
「急げ!」
「遅れをとるな!」
 ダダダダダ、音だけでなく振動を伴う勢いで、兵士たちが陽霞の隠れる物陰付近を通り過ぎてゆく。
(「あちらから兵士たちが来たということは、情報通りにあちらへ向かったほうが良さそうですね」)
 多くの兵士たちが警告メッセージの告げる区域がある方角へと向かったのならば、この先は手薄になっているはず。もちろん注意は怠らないが、できるだけ素早く陽霞は行く。
 道中、床に微量の血痕を発見したが、ざっと見たところその源は見つからない。急いでいたため兵士たちはこれに気づかなかったのだろう。
(「これは……恐らくこの先にお仲間がいますね。早く合流しましょう」)
 陽霞は走る――。

「さて、他に知っていることは?」
 走った先で陽霞が見たのは、動けない兵士に掴みかかり、傷口をえぐりながら隔壁について問い詰めているミスティの姿だった。兵士は急所をわざと外されているのだろう。今すぐ命の危険があるわけではなさそうだが、その拷問に近い行為に怯え、疲弊しているようだ。
「こ、これ以上、は……」
 自分には権限がないからわからない、そう告げた兵士。けれども『非常事態』の重なる区域に向かわなかったということは、この兵士が警備していた場所は、それなりの重要度がある場所であることがミスティにも、話を漏れ聞いた陽霞にもわかった。
「他の猟兵から、情報の共有がありました」
 急ぎミスティに駆け寄り、兵士の耳に入らないように小声で伝え聞いた内容を告げる陽霞。
「そうですか。ならばこの先に進んで間違いは――」
 兵士から聞き出した情報と、他の猟兵から共有された情報、それを合わせて考えれば、方向的に合っているという確証は得られた。敵を掴んでいた手を無造作に離し、ミスティが言葉を紡いでいるその最中。

 ドゴォッ……ガラ、ガラガラガラ……。

 比較的近い距離から響いてきたそれは、明らかに陽動用の『非常区画』からではない。続いて響く、アラート。
「急ぎましょう」
「はい」
 ミスティと陽霞は、共に床を蹴って奥へと向かう。もともと向かおうとしていた方角から、その破壊音は聞こえたのだ。
 辿り着いてみれば、そこは破壊されてまだそう時間が経っていないと思しく、兵士たちも辿り着いていない。けれども程なく、多数の兵士たちが駆けつけてくるだろうことは想像に難くない。だから、言葉も交わさずにふたりは、破られた隔壁の奥へと走る。
「破壊しましょう」
 遠目に確認できた別の隔壁。ミスティが『携帯式擲弾発射器』を発動させる。陽霞もまた、ほぼ同時に『春夏秋冬』を発動させていた。
 グレネード弾と舞い散る花札――。一見ミスマッチに見えるそのふたつは、非常に高い威力で隔壁を破壊する!
 けたたましい警告音が重なる。遠くに聞こえる足音と声は、兵士のものか、それとも仲間のものか――それを確かめる前に、ミスティと陽霞は強制撤退を終えた。


(「潜入しての破壊工作……騎士と振舞う身では正直不向きかもしれませんが」)
 それでも宇宙に暮らす人々の為に全力を尽くす、そう決意して防具を改造したトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)がムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)と早期に合流できたのは僥倖と言えよう。
「隠密行動か、フフン。ならばワガハイに策がある!」
 気配を消すことをあまり得意としないムルヘルベルは、隠密行動に向いた手をきちんと用意してきていた。もちろんトリテレイアも白い装甲を都市迷彩に塗装し、関節駆動時の消音性も向上させていた。だが。
「ここをこうしてこうすると、っと」
 ムルヘルベルが手にした『コズミック・フォージ』でトリテレイアへと魔法の文字を書き込むと――発動した『魔法迷彩』がふたりの姿を隠した。物音や体温を消すことはできないが、他の猟兵たちの動きで騒ぎが起きている今、多少のごまかしはきくだろう。なによりも、アラート音がうるさいのだから。
「行きましょう」
 トリテレイアが先導し、センサーで兵士の足音や振動を検知してはぶつかられぬよう物陰へと隠れ、あるいは天井へ放った『隠し腕』を利用して、ムルヘルベルを抱えたままワイヤーを巻き取ることで天井付近へと逃れてやり過ごす。
「情報通りならば、あちらであろう」
 『魔法迷彩』の使用中ゆえに徐々に疲労を蓄積させてゆくムルヘルベルは、事前に共有された情報と実際にその目で見ている内容をすり合わせ、進行方向を示す。
 そうしてふたりは兵士たちが混乱する中、奥へ奥へと向かった。

「……」
 シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は『Garb of Mirage』による光学迷彩で身を隠しつつ、なおかつ目立たないようにとしのび足で要塞内を進んでいく。他の猟兵がもたらした情報はあるが、現場での調査を怠ることはできない。蜘蛛型にした小型ドローン『アラクネの紅玉』を操り、安全を確認してから進む。
「え? 何だって? 敵の姿が見えない? 手伝いに来い?」
 恐らく、他の猟兵が陽動を施した区画からの通信を受けているのだろう兵士の姿を『アラクネの紅玉』が捉えた。敵の姿が見えないのも当然だろう。恐らく『本当にその場で動いた者』は既に強制撤退しているはずだからだ。
「そんなこといっ――!?」
 兵士が何か言い返そうとしたその時、近くの区画で破壊音が聞こえた。次いでけたたましいアラート音。瞬時にシエルは動いた。
 発動させた『死は闇より来たれり』が、通信中の兵士を襲う!
「……」
 倒れ伏した兵士の代わりに通信を切る。そして自分が来たのとは別の道の物陰に視線を移した。

(「敵に見つからないように進まなきゃいけないだなんて、お忍びで遊びに行くみたいでドキドキするわね」)
 それでも遊びではないことは、ベルリリー・ベルベット(ルーナフラウ・f01474)もよく分かっている。哨戒兵に変装し、素早く進んでいく。万が一見つかっても言い訳ができるように変装はしているが、見つからないならそれに越したことはない。柱や荷物などの物陰に隠れながら、ゆく。
 すでに他の猟兵たちの行動により、兵士たちは最初の持ち場から移動をしていた。だが完全にいなくなったとは断言できないため、警戒は怠らない。
「え? 何だって? 敵の姿が見えない? 手伝いに来い?」
「!」
 気配より先に声が響いてきた。素早く物陰に身を隠し、ベルリリーは声の主を探す。声の主は通信中と思しき兵士だった。
(「あの横道にでも何か投げて、気を逸らさせようかしら?」)
 ベルリリーがそう考えたその時。近くの区画で破壊音が聞こえた。次いでけたたましいアラート音。そして兵士を襲う、影からの一撃――。

 陽動区画ではない、トリテレイアとムルヘルベルが向かっている方角から聞こえたのは、二度の破壊音と重なるアラート音。最初のアラート音で駆けつけた兵士たちは、柾達三人が破壊した隔壁付近で敵の姿を探している。その間にミスティと陽霞が破壊した隔壁付近まで辿り着いたトリテレイアとムルヘルベルだったが、後方から兵士たちの足音が近づいてくる。
 その時、前方の横道から姿を現したのはベルリリーだった。次いで飛行物体が彼女が出てきた方向へと入ってゆく。
「仲間であろうな」
「そのようですね」
 彼女を追いかけるふたり。ムルヘルベルが魔法迷彩を解くと、突然現れたふたりの姿にベルリリーは少々驚いた様子だったが。
「さすがに立て続けに二度、目にするとちょっと慣れたわね」
 と呟いて「急いでね」と付け加えて走りゆく。
 彼女に従って向かったそこには、隔壁が立ちはだかっていた。これを破壊するつもりなのだろう、トリテレイアもムルヘルベルもその意図は理解できた。ただ、後方から迫りくる兵士たちと破壊とどちらが早いか――そう思案したその時。

 ビーッ、ビーッ、ビーッ!!

 突如響いたアラート音。
「鍵が開けられてるぞ!」
「敵はどこだ!?」
 兵士たちの気が逸れたのは、ちょうどベルリリーが姿を現した通路の辺り。
「彼女が鍵を開けた部屋で、ドローンに工作を命じました」
 迷彩を解いて姿を現したシエルが淡々と告げる。その様子と言葉で目の前の隔壁を破るための時間が作られたことを悟り、トリテレイアとムルヘルベルは隔壁の破壊体勢へと移った。
「ワガハイの全力魔法で吹き飛ばしてくれよう!」
 ムルヘルベルの全力をこめた炎の矢の群れ。追うように隔壁を目指すのは、炎属性をもったベルリリーの『早撃ちシンデレラ』。
 シエルの『尖竜槍キルシュヴァッサー』が隔壁を貫き、『ドラゴニック・エンド』の発動と衝撃波によって隔壁に大きなヒビを作った。それが隔壁全体に広がりゆくのに合わせて、隔壁に接近したトリテレイアが身の丈ほどもあるシールドを打ち付ける。
 渾身の力が籠められた大盾での殴打は隔壁の崩壊を早めることになり、重なり合う機械音。
「これで後は送ってもらうだけね」
「……やはりこういった仕事は慣れる気がしませんね」
 ミッションコンプリート、と紡ぐベルリリーの。トリテレイアは強制撤退の力に包まれながら、苦笑した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト