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大祓百鬼夜行⑯~死人に銭はいらない

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #一人称リレー形式

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●UDCアースにて
 どことも知れぬゴミ置き場。
 様々な粗大ゴミが野晒しとなっているが、それらの中で一際異彩を放っているのが古代文明の遺物のごとき旧式のテレビだ。足付きのキャビネットに内蔵され、室内用アンテナを戴き、ダイヤル型のつまみがついているという代物。もちろん、ブラウン管式である。
 突然、その丸みを帯びたブラウン管に砂嵐が映し出された。電源に接続されていないにもかかわらず。
 暫くすると、ザァーッという砂嵐の音に紛れて、妙に安っぽいコーラスが聞こえてきた。
「テレッテレェ~、テレッテレェ~、テレッテレェ~ッ♪ か、く、り、よぉ~♪ テレッテレェ~~~ビ、ショ~ッピングゥ~♪」
 そして、砂嵐が消え去った。
 代わって現れたのは、キョンシーらしき少女のバストアップ。肩の上には、キョンシー風の衣装を着たハムスターが乗っている。
「やっぱ、金よりモノでしょー!」
 モノクロの画面の中で少女は叫んだ。
「さあ! 財布が空っぽになるまで、銀行口座がゼロになるまで、買って買って買いまくろう!」

●グリモアベースにて
「UDCアースには、こういう形の牛乳パックに郷愁を覚える奴がいるらしいぜ」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちに三角パックの牛乳を見せていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 三角パックにストローを刺しながら、JJは本題に入った。
「UDCアース某所に旧式のテレビが捨てられていてな。もう動かないはずのそれが『かくりよテレッテレービショッピング』というダサいタイトルの通販番組を映し出したんだ。もちろん、そんなテレビ番組は存在しないぜ。骸魂に呑み込まれた妖怪――大祓百鬼夜行に協力して骸魂に憑りつかれたキョンシー娘が不可思議な力で放映しているんだよ」
『かくりよテレッテレービショッピング』は(ベタで安っぽいとはいえ)無害な番組に見えるが、さにあらず。それはUDCアースの現実世界を浸食する悪夢の番組なのだ。放映が続けば、UDCアースは『かくりよテレッテレービショッピング』的な世界と化してしまうだろう。
「通販番組的な世界ってのも、なんだかよく判らねえが……とにかく、世界に危機が迫ってることだけは間違いない。うん、間違いない。つーことで、番組を放映しているキョンシー娘をやっつけてくれ!」
 やっつけるといっても、戦いを挑む必要はない。『かくりよテレッテレービショッピング』の世界に入り込み、同じ土俵で勝負すればいい。
 つまり、通販番組の出演者として行動すればいいのだ。
「購買意欲を刺激しまくる魅惑的な商品を紹介するだけでキョンシー娘はダメージを受けるんだよ。キョンシー娘の琴線に触れる商品ならダメージがより大きくなるかもしれないが、そうじゃない商品でもOKだぜ。自分の愛用アイテムをお得な量産品のように紹介してもいいし、二束三文の品を限定レア商品としても紹介してもいい」
 商品を紹介する司会ではなく、絶妙のタイミングで相槌を打つアシスタント(旬を過ぎたタレント)、『えー!?』とわざとらしい感嘆の声をあげる観覧者のおばちゃん(いや、おばちゃんでなくてもいいが)、喜びの声を伝える購入者(サクラ?)などとして参加することもできるだろう。
「ただし、『かくりよテレッテレービショッピング』は白黒の番組だから、商品の色をアピールするのはあんまし効果ないかもしれない。その点には気をつけといてくれ。では、しゅぱーつ!」
 JJは意気揚々と転送の準備を――、
「おっと! これを飲むのを忘れてたー」
 ――始めるかと思いきや、三角パックのストローをくわえ、盛大な音をたてて牛乳を吸い始めた。


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 このシナリオは1章で完結する戦争シナリオです。執筆ペースがゆっくりめなので、スピードを重視されるかたは御注意ください。

●戦闘とプレイングボーナスについて
 骸魂と普通に戦うこともできますが、「『かくりよテレッテレービショッピング』に出演して商品を紹介する」という手段でも骸魂にダメージを与えることができます(けんけんキョンシーのキョンちゃんが好みそうな商品なら、ダメージが増加するかもしれません)。また、後者の手段で挑む場合、プレイングボーナスがつきます。
 オープニングでも言及されている通り、商品を紹介する司会者以外の立場(サクラとか)で出演することもできます。なので、チームやコンビでの参戦も大歓迎。

●敵について
 通常のカクリヨファンタズムのシナリオに出てくる骸魂と同様、「けんけんキョンシーのキョンちゃん」も「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。骸魂を倒せば、飲み込まれていたキョンシー娘は解放されます。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※オープニング発表と同時にプレイングを受け付けます。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 ボス戦 『けんけんキョンシーのキョンちゃん』

POW   :    けんけんの呪い
自身の【片足跳びの呪い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    あやかしメダル「けんけんキョンシー」
妖怪【けんけんキョンシー】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【両足を地面につけてはならない】効果を与え続ける。
WIZ   :    ハムキョンアタック
攻撃が命中した対象に【ハムキョンが飛びつき状態異常「うごめき」】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【ハムキョンが全身を駆け回るくすぐり攻撃】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬飼家・ヤング
バッカウケー、テレビショーッピング!

さーて本日ご紹介するのはこのエクササイズビデオ!
食べ過ぎてプクプクボデーになったあんたも
一日10分、リズムに合わせて踊れば美ボディをゲット!

(ムキムキマッチョに変身)
まずは「バカウケブートキャンプ」
本格的な軍隊式トレーニングでフンッ!ハッ!!

(続いてイケメン王子に変身)
マッチョが苦手なレディには「バカウケパラパラ」がオススメさ!
軽快なリズムに乗って上半身をスッキリ!

(最後にオネエ馬飼家に変身)
そしてラストは「バカウケベリーダンス」よ~ん♪
セクシーに腰をクネクネ♪ボンキュッボンとくびれちゃう♪

なりたい自分になれる今がチャンス! ……やでっ☆ (・ω<)b


ベルナデット・デメジエール
本日私がご紹介する商品はこちら!
メジエール家特製、『超強力サンスクリーン剤』!
わたくしのような吸血鬼に限らず、日光は苦手という妖怪さんは多いのではなくて?
そんな皆様にオススメなのがこの商品ですわ!
こちらいわゆる日焼け止めジェルですが、注目はその成分!
某国の承認基準など知ったことかと言わんばかりに有効成分を増量した結果、なんと紫外線をほぼカットする事に成功しましてよ!
まあ、成分がつよすぎて人間には有害ですが、妖怪なら問題ないはずですわ…多分
ともかくこれがあれば、憧れの日の光の下を歩く事も夢ではありませんわよ!
今なら30分以内のお電話で、なんと半額でご提供致しましてよ!お電話お待ちしておりますわ!



●かくりよテレテレッービショッピング
「やっぱ、金よりモノでしょー!」
 4:3のモノクロの画面が映し出しているのはキョンショーの少女のバストアップ。
 少女の下には『けんけんキョンシーのキョンちゃん』という手書き風のテロップが表示されている。それが彼女の名前であろう。
「さあ! 財布が空っぽになるまで、銀行口座がゼロになるまで、買って買って買いまくろう!」
 牧歌的なBGMが流れ出した。カメラが引き、バストショットアップからフルフィギュアに。
 そして、新たな出演者が左右からフレームイン。
「本日も素晴らしい商品を紹介してさしあげますわ」
 と、画面向かって右側から視聴者に語りかけたのは、褐色の肌の美女。魅惑的な肢体をゴシック風の衣装に包み、妖艶な笑みを浮かべている。
「いやいやいやいや! 『本日も』とか言うとるけど、今日が初回放送やから!」
 と、向かって左側からツッコミを入れたのは、タコヤキのような頭をしたテレビウム。縞模様のタイトな衣服を着て、同じく縞模様の円錐型の帽子を頭に乗せ、フグを模したバッグをたすき掛けしている。
「……え? あんたたち、誰よ?」
 きょろきょろと両隣に目をやるキョンちゃん。
 彼女の疑問に答えるかのように、美女とテレビウムの下にテロップが表示された。
『ベルナデット・フォンテーヌ・カルメン・ジャンヌ・リュクレース・デュ・メジエール』
『馬飼家・ヤング』
 後者の姓には『ばかうけ』というルビがわざわざ振られていた。

●ベルナデット・デメジエール(孤高なる夜の女王(自称)・f28172)
「ちょ、ちょっと待って! この番組の司会って、あたしじゃなかったの!?」
「まあまあ、落ち着いてくださいな」
 当惑頻りのキョンちょんとやらをわたくしがぐいぐいと押し遣っている間にヤングさんがスタジオの中央へと移動しました。
「最初のプレゼンターはこの馬飼家・ヤングやで! そんでもって、お勧めする商品は……てってれぇー!」
 自前の効果音とともに彼が掲げたのはビデオテープ。昔懐かしのVHSです。いえ、白黒放送の番組内においては懐かしいどころか、何十年も未来のアイテムなのかもしれませんが。
「ワイが監修したエクササイズビデオやぁー! 食べ過ぎてプクプクボデーになってもうたテレビの前のあんた! そう、そこのあんた! 一日たったの十分、このビデオを見ながら、リズムに合わせて踊ってみ? それだけで確実に美ボデーを取り戻せるでぇー!」
 びぼでー……。
 うーん。売り込んでいる当のヤングさんがまるっこい『プクプクボデー』ですから、説得力がゼロ。いいえ、マイナスのような気がしますわ。
 でも、ヤングさんは自信満々といった様子で――
「論より証拠や! あ、そーれ!」
 ――ちょいダサな音楽に合わせて踊り始めました。
「まずはバカウケブートキャンプ!」
 あ!? なんということでしょう! 踊っているヤングさんの輪郭がぐにゃりと歪み、プクプクボデーが八頭身のマッチョなボディに変化しましたわ!
 もっとも、顔はタコヤキ型のままですが……。
「マッチョが苦手なレディにはバカウケパラパラがお勧めさ!」
 音楽が軽快なものに変わり(でも、ちょいダサ度は変わってません)、ヤングさんの口調も変わり、マッチョなボディも八頭身を維持したままでスリムな感じに変わりました。
 それでも、顔はタコヤキ型のままですが……。
「そして、ラストはバカウケベリーダンスよぉ~ん♪」
 音楽がアラビア風に変わり(でも、ちょいダサ度は略)、口調がオネエっぽくなり、スリムなボディがわたくしのそれに負けるとも劣らぬボンキュッボンなものに変わりました。
 もちろん、顔がタコヤキ型のままであることは言うまでもありません。
 ヤングさんは扇状的に腰をくねらせながら――
「なりたい自分になれる今がチャンス! ……やでっ☆」
 ――タコヤキ頭の液晶画面にウインクの表情を映し出しました。

●馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)
 はい、終了!
 やりきったぁー!
 いい汗かいたー!
 八頭身(てゆーか、八タコヤキ身?)の美ボデーをデフォルトのまんまるボデーに戻して、ワイはスタジオの隅にハケた。
 で、ぽかーんとしているキョンちゃん(きっと、ワイの超セクシーなダンスに魅せられて声も出えへんのやろ)の横にいるベルナデットちゃんとタッチ交代。
 なんかベルナデットちゃんもちょっとぽかーんな感じやったけども、すぐに我に返って、スタジオの中央に躍り出た。
「さぁて、続きましては、この――」
 ベルナデットちゃんが名乗った瞬間、『名前、長すぎぃーっ!』ってツッコんだろ。テロップが出た時はツッコみそびれたしー。
「――ベルナデット・デメジエールがお送りしますわー」
 略すんかーい! もしかして、字数とか気にしてんの? 第六猟兵は尺に制限ないから、フルネームがどんなに長うても大丈夫やのに……って、メタいこと言うてすいまへん。以後、気をつけまーす。
「ヤングさんのエクササイズビデオで美ボデーを築くつもりでいる、テレビの前のあなた! それだけで満足してはいけませんわ。美ボデーはゴールではなく、スタートなのですから」
 お? ワイが紹介した商品に乗っかってきたで。それにしても、ワイに合わせて『美ボディ』を『美ボデー』と言ってるところがニクいねー。
「というわけで、美しさを維持するための商品を紹介しますわ」
 ベルナデットちゃんが取り出したのはお洒落な小瓶。なるほどー。コスメ系で攻めてきたかー。
「わたくしのような吸血鬼に限らず、日光は苦手という妖怪さんは多いのではなくて? そんな皆様にオススメなのがこの超強力サンスクリーン剤!」
 さんすくりーんざい?
「所謂、日焼け止めジェルなのですが、注目すべきはその成分!」
 ほうほう。
「某国の承認基準など知ったことかと言わんばかりに有効成分を増量した結果、なんと紫外線をほぼカットすることに成功しましてよー!」
 おおう!? なんやよう判らんけど、スゴそうやねー。頭に『超強力』が付くだけのことはあるわー。
「まあ、成分が強すぎて、人間には有害ですが……妖怪なら、問題ないはずですわ。たぶん……」
 怖っ!?
 なにそれ、怖っ!
 小声で『たぶん』って付けてるし!
「ともかく! これがあれば、憧れの日の光の下を歩くことも夢ではありませんわよ!」
 いやいや。いくら妖怪相手の商品とはいえ、怖すぎやろ。さすがのキョンちゃんもドン退きしてるんとちゃうか……と思って、チラッと見てみたら、めっちゃ食いつているぅ! 目ェ爛々輝かして体を乗り出してるやん! まあ、無理もないかもしれへんね。日の光に弱そうな肌色しているし。
「今から三十分以内のお電話なら、なんと半額でご提供いたしましてよ! 番号は――」
 ベルナデットちゃんが言葉を切ると、ママさんコーラスみたいな声がスタジオに流れた。
『ぜぇ~ろいっちいち、はっちにぃろくぅ~、ろっくよんきゅうよぉ~ん♪』
 なんで札幌の市外局番やねーん!
 てゆーか、どこぞのゲーム会社の番号やないかーい!
「お電話。お待ちしておりますわ!」
 ホンマに電話したらアカンよー。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バロン・ゴウト
UDCアースの現実を侵食する番組っていうのは恐ろしいけど、『かくりよテレッテレービショッピング』的な世界って一体どんな世界なのにゃ?

ボクはこの自慢の楽器、『小さな月琴』を紹介するのにゃ。
さあ本日紹介するのはこの小さな月琴、優しくて素敵な音色がする楽器なのにゃ。(得意の【楽器演奏】で短い曲を演奏するのにゃ)
このように素敵な音色だけじゃなく、見た目もまん丸で可愛いからお部屋のインテリアにも、小さいからアクセサリーとして身に着けるのもオシャレなのにゃ。
買うなら今、皆さんのお電話をお待ちしておりますのにゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。


木霊・ウタ
心情
妖怪たちの覚悟に胸熱だ
大祓百鬼夜行を止めるぜ

行動
ギターで弾き語り
ちなみに白黒TVだから白いギターに見える、かも
昭和っぽい歌謡曲を熱唱

一曲披露したらトークタイムだ

っと商品はこのギター、じゃないぜ
俺が売るのは弾き語り

誕生日とか結婚記念日とかに
曲をプレゼントってサービスな
交通費は実費で

モノより
お金より
誰か大切な人を祝う気持ちや時間は
プライスが上だろ?

ものは試しだ
さあ
キョンちゃんのリクエストは?

キョンちゃんの好みだと
子供番組の曲とか?

元々のキョンシー娘の心へ
少しでも響かせることができたなら
きっと骸魂から解放されやすくなるんじゃないか

事後
骸魂へ鎮魂曲を奏でる
安らかにな

キョンシー娘>
お疲れさんっと


自動・販売機
商品のプロモーションは古今東西何かを売るという事について回る大きなテーマである。
それは常にその状況による最善の手段を用いられて告知されるものである。

自動販売機もまたその状況を見逃さない。
まずこの機械が取り出したのは片手で使えるバッテリー駆動形掃除機。
これなら掃除も楽々、小動物から落ちた毛も簡単に処理できる。おまけに紙パックもいらない。
続いては業務用ミキサー。業務用と付くだけにそのパワーは計り知れない。大きなリンゴだってそのままジュースにできる代物、なんなら鰹節だってふりかけにできる。
最後はこれ、人間工学に即した椅子。研究の結果、座る時も立ち上がる時も余計な力がいらない。
いかがでしたか?



●かくりよテレテレッービショッピング
『バッテラ一番、メールは二番、零時の夜食は富岡堂♪』

 CMが明けると、番組の本来の司会であるキョンちゃんがフレームインした。片足でぴょんぴょんと跳ねながら。
「さっきは変な奴らに番組を乗っ取られたけど、こっからはあたしが……って、きゃあーっ!?」
「ちゅー!?」
 キョンちゃん(と肩に乗っていたハムスター)の悲鳴が響く。
 彼女を押し退けるようにして、三人の闖入者がフレームインしたのだ。
 一人は、額に傷のある少年。
 もう一人は、黒い被毛のケットシー。
 そして、コインの投入口と商品の取り出し口を体の前面に備えたウォーマシン。
 先程の二人組に勝るとも劣らぬその個性的な面々の下にテロップが表示された。
『木霊・ウタ』
『バロン・ゴウト』
『自動・販売機』

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 俺とバロンは(暴れるキョンちゃんを引っ張りながら)スタジオの端っこへと移動し、販売機だけがテレビカメラの前に残った。念のために言っておくと、『販売機』ってのはウォーマシンの名前だからな。本物の自動販売機が鎮座しているわけじゃないぞ。でも、そういう風にしか見えないかも。名前だけじゃなくて外見も自動販売機っぽい奴だから。
「さて、三番目のプレゼンターである私がご紹介するのは――」
 販売機は機械の体を『ガチャコン!』と震わせ、商品取り出し口から小振りなスティック型の掃除機を吐き出した。小振りといっても取り出し口の内径よりも大きいから、物理的に無理があるんが……まあ、気にしちゃいけねえ。耳なしネコ型ロボットの四次元だか五次元だかポケット的なやつだよ、たぶん。
「――こちらの掃除機です。バッテリー駆動のコードレス。片手で扱えるので、掃除も楽々。小動物から落ちた毛も簡単に処理できますよ。おまけに紙パックもいりません」
「にゃにゃ!」
 と、俺の横でバロンが声をあげた。こいつは子ライオンを連れて歩いてることがあるし、当人ももふもふ系種族だから、動物の抜け毛の処理ができる商品には惹かれるんだろう。
 キョンちょんも暴れるのをやめて、興味深そうに掃除機を見つめている。肩に乗ってる小さな相棒――ふかふかのハムスターの抜け毛に悩まされているのかもな。
「続いてはこちら」
 二度目のガチャコン!
 出てきたのは、通販番組の定番商品と言われてる(言われてないか?)ミキサーだ。
「業務用ミキサーです。業務用だけあって、パワーは尋常なものではありませんよ。大きなリンゴをそのまま入れてジュースにできますし、鰹節をふりかけにすることもできるんです」
「鰹節ふりかけ? すごいにゃー!」
 バロンがまたもや食いついてる。
「そして、最後はこちら」
 三度目のガチャコンで出てきたのは家電じゃなった。
 ただの椅子だ。
 いや、販売機ほどの商売上手(なんだよな?)がわざわざトリに持ってきたんだから、『ただの』なんてこたぁないか。
「最新の人間工学に即してデザインされた椅子です。余計な力を入れることなく、スムーズに座り、そして立ち上がることができるんですよ」
「おぉーっ!?」
 と、声をあげたのはバロンじゃなくてキョンちゃんだ。興奮のあまり、けんけんのテンポが速くなり、ジャンプもちょっと高くなってる。
 まあ、興奮するのも当然か。一本足でしか行動できないキョンちゃんにとって、楽に座ったり立ち上がったりできる椅子ってのは便利どころじゃない代物だろうから。

●自動・販売機(何の変哲もないただの自動販売機・f14256)
 私の紹介した商品はどれも好評だったようですね。キョンちゃんさんだけではなく、バロンさんにも。
 スタジオの隅のほうに退場した私に代わって、そのバロンさんが出てきました。リュートやマンドリンに似た小さな弦楽器を抱えています。
 バロンさんはカメラの前で一礼すると――
 「本日、ボクが紹介するのはこの『小さな月琴』にゃ」
 ――楽器の名前らしきものを口にして、丸い共鳴胴に張られた弦をポロンと鳴らしました。
「優しくて素敵な音色にゃ?」
 聴覚システムで捉えた波長を解析……ふむ。音楽のことはよく判りませんが、今の音色が多くの人型生物にとって『優しくて素敵』なものであることは間違いないようです。
「せっかくだから、もうちょっと聴いてもらおうかにゃー」
 バロンさんは本格的な演奏を開始しました。『優しくて素敵』な音色が重なり、楽曲が紡がれていきます。私の聴覚システムが自動的にノイズキャンセリングしなかったところから判ずるに、この楽曲もまた人型生物にとっては心地よいものなのでしょう。
『人型生物』にはけんけんキョンシーのキョンちゃんも含まれています。うっとりと目を閉じて耳を傾け、片足で飛び跳ねるテンポを(おそらく無意識のうちに)バロンさんの演奏に合わせていますよ。
 人型どころか本物のヒトであるウタさんも聴き惚れている御様子。体を揺らしながら、前面に抱えたギター(彼も楽器を売り込むつもりなのでしょうか?)の胴を指先で軽く叩いていますね。
「どうだったかにゃ? 楽器としてだけじゃなく――」
 バロンさんは演奏を終えると、弦楽器を少し掲げてアピールしました。
「――見た目もまん丸で可愛いから、お部屋のインテリアにもなるのにゃ。体の大きな妖怪さんなら、アクセサリーとして身に着けるのもオシャレなのにゃ」
 弦楽器型のアクセサリーではなく、本物の弦楽器のアクセサリーですか。ユニークな発想ですね。
「買うなら、今! 皆さんのお電話をお待ちしておりますのにゃー!」
 バロンさんがカメラに向かってにっこり微笑むと、どこからともなくコーラスが聞こえてきました。
『ぜぇ~ろいちいちぃ~、はぁ~ちにぃろくぅ~、ろぉ~くよんきゅうよぉ~ん♪』
 ヤングさんやベルナデットさんの時と同じ電話番号ですね。メロディは変わってますが。

●バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)
「最後のプレゼンターは俺だ」
 ボクと入れ替わりにカメラの前に立ったのはウタさん。インカムを装着してカッコいいギターを抱えたその姿は通販番組の司会というよりも歌番組のゲストといった感じだにゃ。『小さな月琴』を弾いてたボクも人のことは言えないけど。
 ウタさんはカメラをまっすぐ見据えて、商品の紹介を――
「羊ヶ丘で狐の嫁入りぃ、クラーク像も泣いているぅ~♪」
 ――始めるかと思いきや、弾き語りを始めたにゃ。な、なんで?
「二人で通ったぁ、月寒神社ぁ~♪ 大例祭で露店を巡りぃ♪」
 うーん。独特の節回しの歌だにゃあ。
 ボクは、横にいた販売機さんに尋ねた。
「この歌、知ってるにゃ?」
「いいえ。ただ、データベースを検索してみたところ、同じような雰囲気の楽曲がいくつも見つかりました。それらは『昭和歌謡曲』と呼ばれるUDCアースの音楽だそうです」
「ふーん」
 ショーワというのもカヨーキョクというのもよく知らないけど、なんだか懐かしい感じがする歌だにゃあ。
「嗚呼、豊平区、豊平区ぅ、豊平区エレジィィィ~♪」
 ウタさんが熱唱を終えたにゃ。ぱちぱちぱちぱちー。
 ボクらの拍手がやむと、ウタさんはちょっと照れくさそうに咳払いを一つして語り出した。
「さて、俺が売るのはこのギター……じゃなくて、今みたいな弾き語りだ。誕生日だとか結婚記念日だとかに曲をプレゼントするようなやつさ」
 なるほどー。素敵なサービスだにゃ。需要もありそうにゃ。
「モノよりも金よりも、大切な人を祝う気持ちのほうがプライスは上だろ?」
 ウタさんはカメラからキョンちゃんへと視線を移したにゃ。
「ものは試し……キョンちょんにもなにか歌ってやるよ。リクエストを聞かせてくれ」
「うーん」
 片足けんけんを続けながら、首を傾げるキョンちゃん。いきなり振られたので、思い浮かばないみたいにゃ。
 ウタさんはしつこく問い質したりせず――
「リクエストがないなら、俺が選ぶよ。そうだな……キョンちゃんは子供番組のテーマソングとかが好みっぽい気がする」
 ――また弾き語りを始めたにゃ。
 とても明るい歌にゃ。
 とても楽しい歌にゃ。
 ついつい吊られて、ボクも『小さな月琴』で伴奏しちゃったりして。
 キョンちょんもその歌が気に入ったらしく、体を揺らして……あ? いきなり倒れちゃったにゃ!? そして、黒い煙みたいなものが体からモワッと立ち昇ったにゃ。
「おい、大丈夫か!?」
 ウタさんが弾き語りを中断して駆け寄ろうとしたけど、その前に販売機さんがキョンちゃんを助け起こしたにゃ。
「どうやら、骸魂から解き放たれたのようですね」
 販売機さんがそう言ってる間に例の黒い煙みたいなものは完全に消滅したにゃ。たぶん、あれは骸魂だったのにゃ。
 普通のキョンシーに戻ったキョンちゃん――大祓百鬼夜行に協力するためにあえて骸魂に呑まれた勇敢な妖怪さんは目をぱちくりさせてるにゃ。ずっと憑りつかれていたから、まだ頭がボーッとしてるのかにゃ? でも、もう片足けんけんはしてないにゃ。ちゃんと二本の足で立ってるにゃ。
 そんなキョンちょんを見て、ウタさんが安堵の笑みを浮かべて――
「お疲れさん」
 ――サムズアップしたにゃ。

 こうして、UDCアースが『かくりよテレテレッービショッピング』的な世界になるという危機は防がれたにゃ(正直、『かくりよテレテレッービショッピング』的な世界というのがどんなのかよく判らないけど)。
 だけど、せっかくだから、番組をちゃんと締め括っておくにゃ。
 ボク、ウタさん、販売機さん、ヤングさん、ベルナデットさん、元に戻ったキョンちゃん、そして、キョンちょんのハムスター――横一列に並んで手を振り、テレビの前の皆様にお別れの挨拶にゃ。
「それでは、ごきげんようにゃー」



『この番組はバッテラ一筋三百年の富岡堂の提供でお送りしました』
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト