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大祓百鬼夜行⑯〜狐狸さんのおつかい

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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●狐狸さんのおつかい
 UDCアースのとあるゴミ置き場。
 ゴミを漁っていた野良猫が、休憩にと身を預けたテレビがあった。
 ビリ、と。突然光る画面に、勢いよく飛び跳ねた猫はその場を後にする。
 残されたテレビに映る砂嵐が次第に薄れ。軈てそこに映し出されたのは――。
『ぽんぽこコーン!』
 愉快で元気な声をあげ、くるくると回る狐と狸の特徴を持った少女だった。
『はじまりました、狐狸さんのおつかい! 今日はどんな子たちがおつかいに出かけてくれるのかな?』
 気づけば貴方は、見知らぬ素朴な町の、素朴な家にいた。
 鏡に映る姿は小さな――幼い自分の姿。
 目の前に現れた着ぐるみのようなたぬきのお父さん、或いはきつねのお母さんは、さも当然のように貴方を我が子のように扱うだろう。そうしてこう口にするのだ。

 ねえ、おつかいに行って来てくれない?
 今手が離せないの――。

●大祓百鬼夜行
「ちっちゃい姿になって、おつかいに行くんだって!」
 小さな子供のように瞳を輝かせる男は、憂世・長閑(愛し秉燭・f01437)だ。
 UDCアースのゴミ置き場に打ち捨てられたテレビのひとつに、「存在しない筈のテレビ番組」が映し出された。今回長閑が予知で見た番組は「狐狸さんのおつかい」というものらしい。小さな子供が親から離れ、ひとり、或いは兄弟などでおつかいを初体験するという趣旨のもので、UDCアースに住んでいるの者なら何処かで覚えのある内容だろう。
 この放送を放置してしまえば、UDCアースの現実世界がテレビの中の世界に切り替わってしまう。それを防ぐ為、テレビ番組に挑戦して番組を取り仕切る妖怪を倒してほしいのだと、長閑は口にした。
 小さな子供の姿になった貴方は、今の記憶を持ったままの可能性もあるし、過去の記憶しかないこともある。知能や体力についても、どれくらい子供のものになるかは人それぞれのようだ。しかし。
「番組ではね。最初にきつねの姿をしたお母さんか、たぬきの姿をしたお父さんが、みんなにおつかいの内容を伝えてくれるよ」
 例えば『夕ご飯に作るカレーの材料を買ってきて欲しい』だとか、『お友達の家にりんごを届けてきて欲しい』だとか。内容は挑戦するひとによって様々。
 けれども、はじめてするおつかいに困難はつきものというもので。
「途中で買い物袋が破けちゃったり、犬が追いかけてきたり……買うものを忘れちゃったりだとか。この番組を取り仕切る狐狸、つかさが化術で悪戯をしてきたりするんだって」
 そうして幻術や毒霧などで、これが『はじめてするおつかい』という感覚になり、家族が恋しくなったり、突然泣きたくなったり。幼い言動や行動をしてしまったりすることもあるそうだ。
「でも、それに全力で乗っかって、しっかりきつねさんやたぬきさんのもとへ戻ると、戦わずにオブリビオンにダメージを与えられるみたい」
 だから出来れば、全力で企画を楽しんだらいいと思うな。
 信じているからこそ朗らかに微笑み、仲間たちを見送るのだった。


紗綾形
 紗綾形(さやがた)と申します。
 どうぞよろしくお願いします。

 こちらは、1フラグメントで完結する、カクリヨファンタズム『大祓百鬼夜行』のシナリオです。内容はOPの通りです。リプレイの一部はみなさんを見守るナレーション口調でお送りするかも……ですが未定です。

●プレイングボーナス
 番組の企画に全力で乗っかる。(戦わずともダメージを与えられます)

●同行者について
 グループ参加は2名様までとさせて下さい。
 関係性については兄弟や仲の良い友達、小さな恋人同士等、お好きな設定にして頂いて構いません。兄弟でない場合は親同士が仲良し、ということでしょう。

●受付期間
 お手数をおかけしますが、マスターページ、タグ等をご確認ください。
 達成最少人数で完結したい気持ちでいます。有難くも多くのプレイングを頂けた場合、内容に問題がなくとも採用を見送らせて頂く場合がございます。参加の際はご了承下さい。(執筆は先着順ではございません)
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第1章 ボス戦 『『狐狸』つかさ』

POW   :    どろどろどろん!
戦闘力が増加する【巨大なダイダラボッチ】、飛翔力が増加する【上に攻撃力も高い鎌鼬】、驚かせ力が増加する【百面相をする釣瓶落とし】のいずれかに変身する。
SPD   :    化術大迷宮
戦場全体に、【トラップ満載の、化術で変化した自分自身】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    三種の妖器
【宝珠の力による不動の呪い】【巻物から発動した幻術】【瓢箪から吹き出た毒霧】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セト・ボールドウィン

目線の低くなった世界は変な感じ
小さな手足。ほんとに子供になっちゃったんだ

えっと「ポストに手紙を出してきて」?
きつねの母さんに頷く。よし、おれにまかせろー!

手紙をカバンに入れて、きょろきょろしながら歩いてたら
のらねこと目があった
わあ。かわいーな
…あっ、まてまて。おれといっしょにあそぼーよ

――あれ。ここどこだ?まよっちゃったかも
どーしよ。ちょっとこころぼそくなってきた
…いやだ、まけたくない。いじでもなくもんか!

とりあえず。きたみちをもどろう
あっ、さっきのねこ
…もしかして、みちあんないしてくれるの?ありがとー

ポストに手紙を出したら、まっすぐ帰ろう
そんで母さんにほめてもらうんだ

な。おれ、すげーだろ!



●セトくんのおつかい
 トントンと響く、包丁がまな板を叩く軽快なリズム。
 見上げればいつもよりちょっぴり高く見える天井。
 広げた手のひらはいつもの自分のものより幾分も小さくて、何だかとっても変な感じ。
「(ほんとに子供になっちゃったんだ)」
 セトくんがそんなふうに考えていると、「あらいけない!」なんて声が響きます。
 慌てたようにセトくんの傍に寄ってきたきつねのお母さん。
 セトくんの視線に合わせるようにして、おっきな瞳を真っすぐと見つめました。
「ね、セト。ポストに手紙を出してきてくれる?」
 お母さん、今日中に出さないといけなかったお手紙を忘れてしまったみたい。
 ひとりでお外に行くのは初めてだけれど、大丈夫?
 不安げに尋ねるお母さんでしたが、セトくんは元気よく返事を返しました。
「よし、おれにまかせろー!」
 ぴょんぴょんと跳ねて、元気いっぱい。
 大切なカバンにしっかりとお手紙をしまって、さあ出発!
 きらきらした太陽に負けない、元気いっぱいのおつかいになりそうです!
 好奇心いっぱいの瞳は、きょろきょろと辺りを見回します。
 落ち着きがない子なの。なんてお母さんは言っていました。
 そんなことありません、今日は任せろって言ったんですから――。
 なんて思ったら、ぱちりと目が合った野良猫さん。
「わあ。かわいーな」
 にゃーにゃー! セトくん、動物がとっても大好きでした。
 にゃーにゃー! おいでおいで。
 けれども近づいていくのはセトくんの方で、猫さんは遊んでくれるつもりはないようです。
 君、おつかいの途中じゃニャいの?
 寄り道しちゃダメだニャ~!
「……あっ。まてまて」
 おれといっしょにあそぼーよ。
 てこてこ駆けて行ってしまう猫さんを、一所懸命に追いかけます。
 あらら。ポストはそっちじゃありませんよ。
「――あれ。ここどこだ?」
 見渡してもそこは、見たことがない景色。
 いえいえ、ちょっと戻れば大丈夫。よく見て!
 けれど、迷子になっちゃったかもしれないって、そう考えたら。
「どーしよ」
 ちょっと心細くなってきちゃいました。
 見上げたお空はなんだか遠くて――それでも。
「……いやだ。まけたくない」
 いじでもなくもんか!
 そうです。お母さんに任せろって言って来たんですもの。簡単には負けられません。
 ぎゅっと握った小さな拳を太陽に突き上げれば、なんだか勇気が湧いてくる。そんな気がしました。
「とりあえず。きたみちをもどろう」
 うんうん、それがいい。セトくんが振り返ったその時でした。
 にゃあと鳴くのは先ほどの猫さん。
「あっ、さっきのねこ」
 戻るならこっちニャ!
 セトくんを時折振り返りながら、ゆっくりと歩く猫さん。
「……もしかして、みちあんないしてくれるの? へへ、ありがとー」
 猫さんにしっかりお礼を告げて来た道を戻ります。
 それからは少し速足急ぎ足。
「まっかなポスト!」
 ポスト、こんなに近くにあったんです。
 よいしょと背伸びをしても中々届かなかったけれど、自分の手でしっかり手紙を入れることができました。
 今度は間違えません。ちゃんと真っすぐ帰ります。
 だって早く帰って、大好きなお母さんに褒めてもらいたいから!
「な、おれ、すげーだろ!」

 そんな姿を見ていたつかさは、前向きな姿に心を打たれた(ダメージを受けた)のでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

曲輪・流生

えーと…おつかいをするテレビ番組ですね。
分かりました頑張ります…!

(5歳くらいの姿になって狐おかあさんにお客さんさんに出すおまんじゅうを買ってくる様に言われ)
はーい、きつねおかーさん買ってきます!

(ぽてぽてと危なっかしく途中で洋菓子屋さんに誘惑されつつも和菓子屋さんにたどり付き)
おまんじゅうをください!
(お金を払っておまんじゅうを3つ購入)
(ふたたびぽてぽて帰る途中におまんじゅうを食べたい衝動にかられるもなんとか耐え)
おかーさん、買ってきましたよ!
えっ、ぼくも食べていいんですか?
ありがとうございます。
(三つのうち一つは自分だと聞き喜んでもぐもぐ)

…はっ!?えっと、ちゃんと出来てました?



●るせいくんのおつかい
「えーと……おつかいをするテレビ番組ですね」
 そういったものを目にしたことはなかった流生だけれど、企画をこなすことで救えるものがあるならば、全力で挑むのみ。
「分かりました、頑張ります……!」

 白く美しい髪に、紫水晶の大きな瞳。
 いつもよりもっと小さな、5才くらいの姿。
 普段から人を惹きつけるような見目をしている流生くんでしたが、それは小さくなっても同じ。小さな流生くんも、とっても愛らしい姿をしています。
 玩具をしまって、食器を運んで。少しだけ高い場所にある食器棚は開けるだけでも一苦労だけれど、今日もいい子にきつねお母さんのお手伝い。
「あのね、ちょっとお願いがあるの」
 流生くんは首を傾げます。改まってお願い何て、どうしたのかな?
 けれど、お母さんのお願いごとなら何だって叶えたいって。
 そんなきらきらした表情にも見えました。
「今日ね、お客さんがくるから、お客さんに出すお饅頭を買ってきてくれる?」
 お母さんはとっても忙しいこと、流生くんは知っています。
 だから自分がやらなきゃ。お母さんを助けなきゃって頷きました。
「はーい、きつねおかーさん」
 ぼく、買ってきます!
 とっても頼もしいお返事に、お母さんは心配な気持ちを隠して笑いました。
 大丈夫。流生くん、ちゃんとおつかいできますよ!
「いってきます!」
 小銭入れを首から下げて、ぽてぽて歩きます。
 転ばないようにね。ほらほら、そこは段差があるから――あっ。
 危なかったー! もう少しで転んじゃうところでした。
「おいしそうな香りです……!」
 流生くんの視線の先にあったのは、洋菓子屋さん。
 洋菓子屋さんを見ていたから、転びそうになっちゃったんですね。
 ガラス越しに並ぶケーキはどれも華やか。
 小銭入れをぎゅっと握りながら、入り口の前――。
「いらっしゃいませ」
 店員さんがにこりと笑いかけてくれます。
 ぴくっと肩を揺らして、はっとした表情。
 そうです、お母さんに買ってきてって言われたのはケーキじゃなくてお饅頭。
 ぶんぶんと首を横に振って、店員さんにごめんなさい。
 謝らなくてもいいんですよ、でも礼儀正しい流生くん。
 ぺこりとお辞儀をして、道を進んで――着きました、和菓子屋さん!
「おまんじゅうをください!」
「はい、お饅頭ですね。いくつ欲しいのかな?」
「みっつください!」
 さん! と指をみっつ立てて、上手に伝えられました。
 小銭入れからたどたどしく、だけどちゃんとお金、払えました。
 店を出ると、今度はお饅頭の袋をぶら下げて、ぽてぽて歩きます。
「……」
 途中で袋を覗く流生くん。おいしそう。
 でもすぐに首を振って、ぽてぽて前を見て歩きます。
 これはお客さんのお菓子だから。ちゃーんと持って帰るんです。
 ほらほら、もうすぐお家ですよ。きつねのお母さんが見えてきました。
「おかーさん、買ってきましたよ!」
 はいどーぞって、袋を差し出せば、すごいね、えらかったねってお母さん。たくさん褒めてくれました。そう、えらいです。だってちゃんとお母さんのお願いごと、叶えられました。
「それじゃあ手を洗って、おやつにお饅頭、食べましょ!」
「えっ、ぼくも食べていいんですか?」
 自分で買ってきたって、ありがとうございますってちゃんとお礼を言います。
 頑張ったご褒美。お味はいかが?
 にこにこ笑顔で頬張るお顔。感想を聞かなくたって分かりますね。

「……はっ!? えっと、ちゃんと出来てました?」
 不安げに尋ねる流生に、つかさはぐっと目頭を抑えた(ダメージを受けた)。
 感想を聞かなくたって分かりますね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

檪・朱希

私は子供の頃の記憶以外失われてしまうけれど、守護霊達のことは何故かぼんやり覚えている状態。
守護霊達は……姿だけ子供に。

はじめての、おつかい。こわいけどがんばらなきゃ。
お守りのタロットを握り締めて、おつかいの内容をしっかり復唱する。
わすれたら、きっとおこられるから。

まずは、ちゃんとあんぜんをかくにんしてからすすむ。
こわいものは、ないかな?

『はじめてのおつかいだから、ちょっと遠くから朱希をまもるぜ!』
『なんで僕らもこどもに……あ、朱希、そこはまっすぐ……大丈夫なようだな』

おつかいが終わって、帰り道、悪戯されてとっても怖くなったけれど、青い蝶と橙の蝶が励ましてくれて、何とか帰ってきたよ。ただいま!



●あかねちゃんのおつかい
 おつかいに行って来て欲しいの。
 それがきつねのお母さんの言葉でした。
 緩やかにだけ移り変わる朱希ちゃんの表情は、どこか少しだけ不安げ。
 だって、ひとりで出かけるのは初めてなんだもの。
 ちょっぴり怖いけれど、お母さんのお願いだから。
 こくりと頷いて、頑張ろうって前を向きます。
 朱希ちゃんの表情は何処か大人びて見えました。
 おつかいをこなして、こうして大人に一歩ずつ近づいていくのです。
「こむぎこ、こむぎこ。たまご、たまご」
 おつかいの内容はしっかり復唱。忘れたら、お母さんに怒られちゃうもの。
「こむぎこ、こむぎこ。たまご……」
 あれれ、朱希ちゃん。もうひとつ忘れちゃってます。
「はじめてのおつかいだから、ちょっと遠くから朱希をまもるぜ!」
 って、朱希! 砂糖、砂糖忘れてる!
 もどかしい気持ちで、声を掛けたくてもぐぐっと抑える燿くん。
 そう。とてとてと歩く朱希ちゃんの後ろには、朱希ちゃんを見守る守護霊さんが二人後を追いかけていました。
「燿、ちゃんと隠れて。気づかれる」
「こぎむこ、たまご。おさとう」
「思い出した! 朱希、流石だぜ」
 おっと。大きな声を出しそうになって、慌てて両手でお口を抑えます。
 なんだか今度はこむぎこがこぎむこになっちゃったみたいですが、そんなのは些細なこと。
 これだけ覚えていれば、きっときっと大丈夫です。
 目的のスーパーまではあとちょっと。
 信号だって、右をみて、左をみて。
 ちゃあんと手をあげて渡るんです。
「――あれ?」
「やっべー、今気づかれそうだった!?」
「だからちゃんと隠れていろと」
 信号を渡り終えたところで、朱希ちゃん、燿くんに気づきそうになっちゃったみたい。
「……気のせい、かな」
 慌てて隠れて、一安心。
 雪くんはむっとした表情で燿くんを見ました。
「というか今更だが、なんで僕らもこどもに……あ、朱希、そこはまっすぐ……大丈夫なようだな」
「雪だって心配してんじゃん!」
 ほらほら、ふたりとも! 言い争ってないで。朱希ちゃん、行っちゃいますよ!
 そんなこんなで、漸くスーパーに着きました。
「ばしょはどこかな」
 探そうとしたけれど、中々見つけることが出来なくて。
「あの――こぎむこ、たまご、おさとう、ください」
 店員さんにちゃんと伝えられました。分からなかったら聞けばいいんです。
 しっかり袋をぶら下げて、来た道を戻ります。
 おうちまでもうちょっと――ってところで、あらら!
 突然袋に穴が空いちゃいました。
「わ……」
 どうしようって考えたら、何だか急にひとりなのが怖くなったけれど。
 ふわりと舞う綺麗な蝶は、誰の分身だったのか。
 羽ばたいて、頑張れって応援してくれている気がしたから。
「よいしょ……よいしょ……」
 しっかり抱えて、一歩一歩。
 そうしておうちについたら、元気よく。
「ただいま!」
 ちゃんと帰ってこれたよ。
 褒めてくれたのはお母さんだけじゃありませんでした。
「すげーぜ、朱希」
「えらいな」
 それが誇らしくて。
 それからみんなでクッキーを作ります。
 自分で買ってきた材料で作るクッキーは格別に美味しくて。
 おつかいはばっちり、大成功でした(ダメージを与えました)!

大成功 🔵​🔵​🔵​

飛砂・煉月
【月陽】


かわいい妹の手をぎゅってして
シチューはオレも大好きメリーとのおそろいだ
初めてのおつかい
メリーはオレがまもるかんね
ハク待っててなとお留守番の白竜にいってきます

メリー、メリー
だいじょうぶだよ、メモなんてなくてもさ
ぽふりとなでて大粒の泪も服の袖で拭おうな

シチューはオレとメリーのすきなものでしょ?
ならふたりで思い出せばイイんだよ
だから泣くのはお終い
うんうん、メリーはいい子だね
いもにたまねぎ、とりにく
ね、ニンジンはわすれてない?
好き嫌いは、めっ
にんじん食べる時は兄ちゃんとせーので食べよ?

無事ぜんぶ買えたらおつかい大成功!
うん、かえろ
メリーとオレの家に
そしてオレが最初にほめるんだ
がんばったねって


メリル・チェコット
【月陽】


おにいちゃん、おにいちゃん
今日のごはんね、だいすきなシチューだって!
おにいちゃんとおかいものも、うれしいなあ
いってきまーす!

おかいもののメモはね、メリーがちゃあんとポッケにいれ…
……て、ない
おとしちゃった…?
ごめんなさい、かうもの、わかんなくなっちゃった…
兄に迷惑を掛けてしまう申し訳なさと
もうシチューが食べられないかも、という悲しみで
大粒の涙がぼろぼろと

…!
うん、うんっ
なかない!
えっと…おいもさんと、たまねぎと、とりにく?
ニンジン…は、なくってもいいかも
…だめ?
おにいちゃんとせーのなら、がんばる…

これだけあれば、きっと大丈夫!
おかいもの大成功、だね
えへへ、おうちかえろ、おにいちゃん!



●れんげつくんとメリルちゃんのおつかい
 煉月くんとメリルちゃんは、とっても仲良しの兄妹。
 今日も一緒におままごとをして遊んでいました。
 お母さんが家事で忙しい時には、煉月くんはしっかり妹のメリルちゃんの面倒をみています。とってもしっかり者で頼れるお兄ちゃんが、メリルちゃんは大好きでした。
「メリー、お兄ちゃんと一緒におつかいできる?」
「できる!」
 ふわふわあったかい髪を揺らして、元気いっぱい両手をあげるメリルちゃん。
「お兄ちゃん、よろしくね」
 お母さんの言葉に、煉月くんは任せろと言わんばかりににっこりと頷きました。
 やっぱり頼れるお兄ちゃんです。
「おつかい、何を買ってくればいいの?」
「今日の夕飯のシチューの材料よ」
 お母さんが手渡すのは、材料が書かれたメモ。
 これがあれば、買うものを忘れたりしなさそうです!
「おにいちゃん、おにいちゃん」
 今日のごはんね、だいすきなシチューだって!
 メリルちゃんがにこにこと声を掛けると、煉月くんは妹の手をぎゅっと握ります。
 シチューはふたりお揃いの大好物。初めてのおつかい。
「メリーはオレがまもるかんね」
 かっこいいお兄ちゃんに、メリルちゃんはへへと上機嫌。
 お兄ちゃんとお買い物、とっても嬉しいのです。だから元気いっぱいの声で。
「いってきまーす!」
 ぶんぶんと手を振って、行ってきます!
「いい子で待っててな?」
 相棒の竜にお留守番を任せて。
 さあ、ふたりのおつかいのはじまりです!

「ふふ」
 るんるんうきうき。握った手を揺らして。
 メリルちゃんがとっても嬉しそうだから、煉月くんもどこか嬉しそう。
「おかいもののメモはね。メリーがちゃんとポッケにいれ……」
 ごそごそ。ポケットにおててを入れて、ほら。良く探してみてっ。
 メリルちゃん、ちゃんとしまったはず。
「いれた、いれ……て、ない。お、おとしちゃった……?」
 ごめんなさい、かうもの。わかんなくなっちゃった。
 大好きなお兄ちゃんに迷惑をかけてしまう申し訳なさと、シチューが食べられないかもっていう悲しさで。大きな瞳はどんどん潤んで、大粒の涙がぼろぼろ。メリルちゃん、泣かないで!
「メリー、メリー」
 溢れる泪を自分の服の袖で拭う姿は、一人前の男の子。
「だいじょうぶだよ、メモなんてなくてもさ」
 そうしてぽんと妹の頭を撫でてあげました。
「シチューはオレとメリーのすきなものでしょ?」
 ならふたりで思い出せばイイんだよ。
 だから泣くのはお終い。
 な? とお兄ちゃんが笑えば、メリルちゃん。涙が漸く止まってくれました。
「……! うん、うんっ。メリー、なかない!」
「うんうん、メリーはいい子だね」
 そう、涙はしっかり拭って貰ったもの。それにお兄ちゃんの妹だから。

 そうしてふたり仲良く進んでいくと、いつもお母さんと行っているスーパーに着きました。
 さてさて、シチューの材料ですよ。ちゃんと買えるかな?
「じゃあクイズ! いつもシチューに入ってるのは?」
 クイズ! 煉月くん、素敵な名案です!
「クイズ、クイズ! えっとね、えっとね」
 おいもさんと、たまねぎと、とりにく?
「正解! ね、でもニンジン忘れてない?」
「ニンジン……は、なくってもいいかも。……だめ?」
「好き嫌いは、めっ」
 すっかりお兄ちゃんにのせられて、メリルちゃんもいつもの調子を取り戻してきました。
 そうそう、好き嫌いは、めっ。ですよ~!
「にんじん食べる時は、兄ちゃんとせーので食べよ?」
「おにいちゃんとせーのなら、がんばる……」
 少しだけしぶぅい顔をしている気もするけれど、お兄ちゃんとせーので、ちゃんと食べましょう。ニンジンも買い物かごにいれて、後はレジでお会計をするだけ!
「これだけあれば、きっと大丈夫!」
「おつかい大成功!」
「大成功、だね。あ、メリー、袋持つ……!」
 よいしょと袋を持とうとするメリルちゃんでしたが、全部は少し重いみたいで。
「メリー、ちょっとだけ貸して?」
 小さな袋に、じゃがいもだけ入れて。それを手渡してあげました。
 重い方はお兄ちゃんの役目。
「半分こ!」
 本当は半分こじゃないけれど、お兄ちゃんだもの。
 それでいいんだってしっかり袋を持ちました。
「えへへ、おうちかえろ。おにいちゃん!」
 その笑顔が見られれば、嬉しいんです。
「うん、かえろ」
 そうしてお家に帰ったら、煉月くん、一番に言いたいことがあるんですって。
 お母さんより、誰より先に。
「メリー、がんばったね」
 そう言って、褒めてあげるんだって。

 兄妹愛の素晴らしさに、勿論つかさはダメージを受けました!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
💎🌈

関係性:幼馴染

なんだーみゆ?
えーー!前もやったじゃーん!他のしようぜ他の!ひーろー(魔術師)ごっこーとかさー!!
ママも何度もやってんじゃん!!

おやつを買い忘れた事を聞かされ、世界の終りのような顔して切望顔
そ、そんな…おやつが無いのか!?それじゃあ遊んだ後のおやつタイムが無いじゃァないか!?

え、おれさまそんな事言ったっけ!?
わーーー!?

半ば強引に連れまわされつつも駄菓子屋さんへ

ほんとだなみゆだんいん!突撃だ―!

何にしようかなー…ってそれ全部みゆが好きなのじゃん!
おれ様のも少しは入れてくれよー!!

我儘に振り回されつつもどうにか購入

あぁ、いっぱい買えたな!みゆ!

手を繋ぎつつ笑顔で帰路につく


音海・心結
💎🌈

関係性:幼馴染

れーじ、れーじ
きょうはおままごとしよ!
だーめ
きょうこそはママになるっ

遊ぶ二人の元へお母さんが
今日のおやつなんだけど買い忘れたとのこと

お、おやつがない

がびーんと明らかに落胆

じゃ、じゃあ、みゆがかいにいく!
れーじもついてきてくれるって!

半ば強引に誘い、お小遣いを貰って駄菓子屋さんへ

れーじだんちょー!
おかしがいっぱいあります!
とつげきー!

瞳がきらきら
迷わずチョコ菓子へ行って

これにする!
あと、これとこれ!
……それはいらない
そのかわりこれにしよ?
やーだー
これがいー

等と我儘を言い、ほぼみゆ好みのお菓子を購入

えへへ
おうちにかえったらいっしょにたべよ?
たのしみ

手を繋ぎ帰路に帰るのでした



●れいじくんとみゆちゃんのおつかい
 それは良く晴れた初夏の日のことでした。
 今日は幼馴染の二人にとって特別な日。
 けれどそんなこととは露知らず、二人はいつものように仲良く遊んでいます。
「れーじ、れーじ」
「なんだー、みゆ」
 零時くんが尋ねると、心結ちゃんは可愛らしいフリルのエプロンをつけ、くるりと回って見せます。
「きょうはおままごとしよ!」
「えーー! 前もやったじゃーん! 他のしようぜ他の! ひーろーごっこーとかさー!!」
 今日は、という言葉が引っかかった様子の零時くん。
 零時くんがやりたかったのは、ヒーローごっこ。
 ちなみに零時くんの言うヒーローというのは、魔術師のこと。
 全世界で最強最高の魔術師になるのが、零時くんの夢なのです。
 けれど心結ちゃんも簡単には譲れません。
 だーめ。お口の前で、ぶぶーとばってんを作ってから、ずいと零時くんに詰め寄ります。
「みゆ、きょうこそはママになるっ」
「ママも何度もやってんじゃん!!」
 ばしっとつっこみが決まったところで、きつねのお母さんが二人の元へやってきました。
 そう、今日するのはおままごとでも、ヒーローごっこでもありません。
 二人には、大変な試練が待ち受けているのですから。
「ごめんね、今日のおやつ、買い忘れちゃったの」
 お母さんはとっても申し訳なさそうに伝えました。
「そ、そんな……おやつが無いのか!?」
「お、おやつがない……」
 がびーんと目に見えて落胆する心結ちゃんに、世界の終わりのような切望顔をする零時くん。
「それじゃあ遊んだ後のおやつタイムが無いじゃァないか!?」
 そうです、このままだと、ふたりの今日のおやつはなし。
 でも、お母さんのお話は終わっていませんでした。
 おやつが食べたいなら、自分たちで買ってこられる?
「ふたりで……?」
 その通りって頷くお母さんに、ふたりは顔を見合わせます。
「じゃ、じゃあ、みゆがかいにいく!」
 自分たちで食べるおやつ。
 ばっと手をあげて、先陣を切ったのは心結ちゃんでした。
 零時くんは――。
「れーじもついてきてくれるって!」
「え、おれさまそんな事言ったっけ!?」
 零時くんが答える前に、心結ちゃんが答えちゃいました。
 おやつは食べたいけれど、はじめておつかいに行くのはちょっぴりだけドキドキして。
 でも心結ちゃんはお構いなしです。
 お母さんから預かったくまさんの小銭入れを首から下げて、れいじくんの背を押します。
「いくよー!」
「わーーー!? いってきます!」
 半ば強引にも見えるけれど、一緒なのは嫌じゃないって分かります。
 初めてふたりだけで歩くお外は、なんだかとっても新鮮で。
 景色は壮大で、色鮮やかに見えました。
「わんちゃんだ!」
「かわいいな――って、そっちじゃないって」
「おはなきれー!」
「今度はそっち!?」
 好奇心いっぱいの心結ちゃんに振り回されるけれど、ほんと、綺麗だな、なんて。
 零時くんだって、可愛いわんちゃんも、綺麗なお花も嫌いなわけじゃないから。
 少しの寄り道も、楽しい時間。
 そうして進んでいくと、漸く目的地の駄菓子屋さんが見えてきました。
「れーじだんちょー! おかしがいっぱいあります!」
「ほんとだな、みゆだんいん!」
 ふたりとも、大きな瞳をきらきらさせちゃって、もうお菓子のことで頭がいっぱい!
「とつげきー!」
「突撃だー!」
 がらがらと戸を開ければ、店主のおばあちゃんがいらっしゃいと声を掛けてくれます。
「こんにちは!」
「こんにちは! 何にしようかなー……」
 しっかりと挨拶をして、どのお菓子にしようかと目移りしている零時くんの傍ら。
 あれ、心結ちゃんは――。
「これにする! あと、これとこれ!」
 真っ先にチョコ菓子を手に取って、他にも大好きなお菓子をふたつ、みっつ。
「それ、全部みゆが好きなのじゃん!」
 おれさまのも少しは入れてくれよー!! これとか!
 零時くんも手に取ったお菓子をカゴに入れようとしますが……。
「……それはいらない。そのかわりこれにしよ?」
「一個くらいいいだろ!」
「やーだー、それかったらこれ、かえない。これがいー!」
 あれはやだ、これはどう? これがいい、それはだめ。
 おばあちゃんは二人のやりとりを微笑ましく見守ります。
 その後もしばらくやり取りは続きましたが、結局ほぼ零時くんの意見は通りませんでした。
 零時くんが選べたのは、自分と心結ちゃんが二人とも好きなお菓子ひとつだけ。(半分こする条件付き)
 それでもいいんです。ちゃあんと欲しいものを買えたんですから。
 零時くんの交渉は、ちゃんとうまくいきました。それに。
「えへへ、おうちにかえったらいっしょにたべよ?」
 買ったのは好きなものでも、独り占めはしません。
 心結ちゃん、本当はとっても優しい子だって、零時くんも知っています。
「あぁ、いっぱい買えたな! みゆ!」
「たのしみ」
 たくさんのお菓子が詰まった袋をぶら下げて、帰りは仲良く手を繋いで。
 おうちに帰ったら、お楽しみのおやつタイム。
 ふたりで頑張って買ってきたお菓子のお味はきっと格別に違いないので――。
 しっかりとつかさにダメージを与えることに成功したのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
おつかいなどしたことがない
むぅ、みなりはちいさくなったが、心はそのままか
む…ひとりではこっぱずかしいのでこんこんにもきてもらお
こんこん…いつもよりおおきいの

きつねさんにお願いされたのは『巻きずしのおつかい』
なになに、たまご、かにかま、きゅうり
ふふん、らくしょうじゃよ!

店まで歩いて
あれっ、こんこん?どこじゃ?
…ここはどこじゃろ?
…まいご…!

うろうろ、心細くなり
ぐぬぅ…こんこん…おった!
どこいって…ばか!
わしを置いて…あっ、まつんじゃ!
にげあしがはやい…!
…ここお店じゃ!

買い物したらあとは帰るだけ
がっ、がっ、とへんなおと
!? た、たまご!
地面にあたってひとつ割れとる…
だいじにかかえて、お届じゃよ!



●らんごくんのおつかい
「(むぅ、みなりはちいさくなったが、心はそのままか)」
 心がそのままであるからこそ、ひとりではどうにも恥ずかしい気持ちがあって。
 だから嵐吾くん、大切な相棒を手招きます。
「こんこん……」
 もふもふ尻尾の仔狐。いつもなら、難なく抱き留めることが出来るのですが。
 今日はぽふんと尻餅をついて、けれどもちゃあんとこんこんを受け止めます。
「こんこん、いつもよりおおきいの」
 いつもより大きなこんこん。
 今の嵐吾くんにとっては、何だかとても頼もしく思えて。
 けれども、ほっと一息ついていたのも束の間。
 きつねのお母さん、嵐吾くんのもとへやって来て言いました。
「今日の夕ご飯、巻き寿司を作ろうと思ってるの」
 だけど大変。お父さんに買ってきてもらおうと思っていた材料。
 急なお仕事が入ってしまって、支度に間に合わないんだって。
「なになに、たまご。かにかま、きゅうり――」
 こくりと頷いて、抱きしめていたこんこんを下ろし。
「ふふん、らくしょうじゃよ!」
 わしにまかせろとばかりに胸を張る姿は、とっても頼もしく映りました。
 この調子なら、きっと大丈夫。お母さん、安心して嵐吾くんに任せられそうです!
 いってくるんじゃよー!
 見送るお母さんにひらひらと手を振って、マイペースに出発進行。
「ふたりのおでかけははじめてじゃね」
 青空の下、ふたりだけの冒険は、わくわくどきどき。
 お店の場所はしっかり覚えています。道もそう難しくはありません。
 だからゆっくり、車に気を付けて進んでいきます。
「店、もうすぐ……あれっ」
 嵐吾くん、どうしたんでしょう。
 さっきまでの落ち着いた様子はなくなって、辺りをきょろきょろと見回します。
「こんこん? どこじゃ?」
 こんこん、いなくなっちゃいました!
 ぱたぱたとわき道を覗いて、空き地を見渡して。
「こんこん……」
 ぽつりと落とした言葉。もう一度辺りを見回せば――。
「……ここはどこじゃろ?」
 大変です。夢中になってこんこんを探すうち。
「……まいご!」
 迷子になっちゃいました! 本当はこころは大人のはずなのだけれど、この世界の魔力のせいなのか。うろうろあわわと辺りを歩いて、どんどん心細くなってしまいました。
 どうしよう、このままこんこんに会えなかったら。おうちに帰れなかったら。
 そんなふうに考えて、瞳が潤みそうになった時でした。
「! こんこん、おった……!」
 泣き出しそうな嵐吾くんのもとに、こんこんは慌てて飛びつきます。
 尻餅をついたってもう気にしません。
「どこいって……ばか! こんこんのばかっ」
 わしを置いて――そう続けようとした時、腕の中から飛び出すこんこん。
「あっ、まつんじゃ!」
 もうひとりになるのはごめんだと、嵐吾くん、慌ててこんこんを追いかけます!
「にげあしが、はやい……!」
 けれど、まてーと追いかけた先には。
「――ここ、お店じゃ!」
 こんこん、嵐吾くんを道案内してくれたのです!
 無事辿り着けたお店で、しっかりとお買い物。後はおうちに帰るだけ!
 袋をぶら下げ、るんるん歩く帰り道――あれ、足元で変な音が。
「!? た、たまご!」
 道の橋で中を確認すれば、たまごがひとつだけ割れてしまっていました。
 でも大丈夫です、1個だもの。残りは全部、ちゃんと使えるんですから。
 残りは地面につかないように、今度は大事に抱えて。
 おうちに帰ったら、美味しい巻き寿司、ご褒美にいっぱい食べましょうね。
 嵐吾くん、しっかり企画をこなしたので、地面で割れてしまったたまごくらい(?)、つかさはダメージを受けたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五条・巴

おつかい?
"お母さん"は家族で毎日飲んでるお茶を買ってきて欲しいという
…ぼくひとり?

小さくなったせいか、1人で動くのは心細く感じる
でもお母さんが困ってるんだ
がんばる
ライオンリュックを背負って、いってきます

お店は直進、右折、さら直進、左折すると見つけられる

まっすぐと、みぎと、まっすぐ…呟きながら歩くけど、段々不安になってきちゃった

えっと、まっすぐ?ん、みぎ?
どっちだろう
十字路の先はどこも似てて、
うろうろ困ってたら猫さんがにゃあって呼んでくれた。
多分こっちだよって言ってるんだ

ここを、みぎ…
あとはまっすぐと、ひだり…あったあ!
おねえさん、お茶ください!

ついた。やったあ。お買い物して、早く帰ろ。



●ともえくんのおつかい
 太陽がきらきらと明るいお昼のことでした。
 お昼ご飯を食べ終えた後、居間でじぃっと絵本を見つめる巴くんの隣。きつねのお母さんが座り込みます。
 どうしたの? 不思議そうに顔をあげる巴くん。
 お母さん、巴くんにお願いがあるみたいです。
「毎日みんなが飲むお茶、お昼に飲み切っちゃったの」
 夜の分がないと、きっとお父さんも悲しむわ。
 困った様子のお母さんに、巴くんは言います。
「それじゃあ、買いに行こ?」
 お父さんが悲しむのは困るから、今すぐ一緒に行こうって。
 でもね、巴くん。今日はお母さんは一緒じゃないんです。
「おつかい」
 ……ぼくひとり?
 ひとりだって聞いたら、何だかとっても心細くなって。
 さっきまでの愛らしい笑顔は何処へやら。
 表情はとても不安げに揺れたけれど。
 でも巴くん、困っているお母さんに、我儘なんて言いません。
 本当は不安だけど、大切なライオンさんのリュックをえいと背負って。
「ぼく、がんばる」
 こくりと頷いて玄関を出ると、ぶんぶんとお母さんに手を振ります。
「いってきます!」
 とことこ、歩道を歩いて行きます。
 お母さん、一番わかりやすい道を教えてくれたから、忘れないように。
「まっすぐと、みぎと、まっすぐ……」
 真っすぐ進んだところを右。右はこっちって、お母さん、リュックのショルダーにお月さまのバッヂをつけてくれました。
「みぎは、おつきさま!」
 ちゃんと覚えてます。右、と指さして、そちらへとことこ。そこから真っすぐ進んで――。
「えっと、まっすぐ……? ん、みぎ?」
 どっちだろうって十字路の周辺を見回して、うろうろ。
 こっちかな、でも違うかも……あっちかな――違うかも。
 道、分からなくなっちゃった――不安な気持ちで困っていると。
 にゃあ。
 俯きかけた視線の先に、可愛らしい猫さんがいました。
「ねこさん」
 かわいいねって近寄ろうとしたら、たたたと歩いて、たまに後ろを振り向いて。
 巴くんを気にしているみたい?
「ねこさん、こっちなの?」
 多分、こっちだよって言ってくれてるんだって、巴くんはそう思ったみたい。
 猫さんにありがとうってお礼を言って、そうしたら後は。
「ここを――おつきさまとぎゃくの、ひだり……あっ」
 あったあ!
 ありました! スーパー!
「へへ、ついた」
 巴くんにもにこにこ笑顔が戻ってきたようです。
「お買い物して、早く帰ろ」
 そうです、お母さん、きっと心配して待っています。
「おねえさん、お茶ください!」
 お茶の場所を聞いて、お会計。重いお茶は、お姉さんがリュックに詰めてくれました。
「ライオンさん、かっこいいね」
「うん、かっこいいでしょ」
 お買い物、しっかりできたから。ちょっぴりだけ得意げに言っちゃいます。
 でもしっかりありがとうって伝えることも忘れません。
 そうして来た道を辿って、お家へ。
 お母さんも、お仕事から帰ってきたお父さんも。
 家族みーんなで、巴くんが買ってきたお茶を美味しく頂いた(ダメージを与えた)のでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
まどかさん/f18469


まどかの家におよばれ
畑でとれたおやさいももってくんだ
こ、こんにちは
なれないお家はまだちょっときんちょうする

たのまれたのはおにぎりにいれるおみそ
おにぎり…たのしみ
わっ
あ、まってまどか

はしるまどかにひっぱられて
小さな歩幅が追い付かない
あっ(どてっ)
──いたい

うっ…
じわじわいたいのがやってきて
ぽろぽろなみだ
まどかおこってる…とおい…

ぐすっ、ひっく
さみしくてよけいになみだが止まらない
ごめん、ね…ごめんなさい…

つながれた手に安心してごしごしなみだをふいて
がんばる
ぎゅっとにぎり返す

ただいま…!
いっしょにつくったおにぎり
おおきいのとちいさいのばらばら
でも、どれもとってもおいしいんだ


旭・まどか
くろば/f10471


きょうはくろばがいえにくる
おにわでとれたおやさいもってくるんだって
くろば!

あそぼうっておもってたらおみそがないっておつかいたのまれた
いいよ!いこくろば!

おててつないであそこのしんごうまできょうそう!
よーいどんではしったら
ひっぱりすぎてくろば、ころんじゃった
だってくろばはしるのおそいんだもん
まどかわるくないもん

ないてるくろばとはなれてあるく
いっしょなのにとおくてやなきもち

もう!くろばなきむしなんだから!
まどかもごめんね

いっしょにがんばろってもいっかいおててにぎって
こんどはゆっくりあるく
だってくろばがまたないちゃうからね!

ただいま!
いっしょにつくったおみそのおにぎり
おいしいね



●まどかくんとくろばくんのおつかい
 今回のはじめては、仲良しのお友達同士。
 お母さんたち、こっそり打ち合わせをしました。
 黒羽くん、おうちで採れたお芋を持って、すぐそこのまどかくんのお家に遊びに行きます。
 少しだけ高いところにあるインターホンも、つま先立ちでぐぐっと背伸びすればちゃあんと届きます! ぴんぽーん!
「こ、こんにちは」
「くろば!」
 待ってたよって、誰よりも先に駆け寄ってくるまどかくん。
 だって黒羽くんが来るのを心待ちにしていました。
 お野菜を持ってきてくれるのも嬉しかったけれど、それよりも黒羽くんと一緒に遊べるから。
「まどか」
 慣れないお家は少しだけ緊張するけれど、黒羽くんだって、まどかくんと遊べるのはとっても嬉しいのです。
「まどか、なにしてあそぶ……?」
「えっとね」
 それじゃあって玩具を取り出そうとした時でした。
 きつねのお母さん、ふたりのもとへやって来て、あるお願いごとをします。
「おにぎりにいれる、おみそ」
「……おにぎり」
 それが今日、ふたりがはじめてする、おつかいのお願い。
「いいよ! いこくろば!」
 はじめてだって平気。だって一緒なんですから。
 お金を預かって、玄関から元気よく飛び出して、いってきます!

「おにぎり……たのしみ」
 食いしん坊の黒羽くん、おにぎりを食べるのがとっても楽しみみたい。
 頑張れば、美味しいおにぎり、いーっぱい食べられますよ!
 そうして仲良くおててを繋いで、のんびり楽しくお散歩気分――、かと思ったら。
「くろば、あそこのしんごうまできょうそう!」
 それじゃあ、いくよ。よーいどん!
 まどかくん、黒羽くんのお返事を聞く前に走り出しちゃいました。
「わっ! あ、ま、まってまど」
 まどか。
 まどかくんの、少しだけ大きな歩幅に、小さな黒羽くんの歩幅が追い付きません。
 名前を呼びきる前に繋いだ手が逸れて。
 黒羽くん、どてんと躓いて転んでしまいました。
(「――いた、い」)
「くろば、おそいから」
「うぅ……」
 黒羽くんが転んでしまって、まどかくん、ちょっぴりどうしたいいか分からなくなっちゃいました。
「だってくろばはしるのおそいんだもん。まどかわるくないもん」
 本当はそんなこと、思ってません。
 でも、まどかくんが怒っていると思った黒羽くんの瞳からは、大粒の涙がぽろぽろ。
 ぷいと背を向けるまどかくんがどんどん遠くなっていきます。
 折角一緒におつかいに来たのに、これじゃあひとりよりもっと悲しくて。
(「いっしょなのに、とおくて。やなきもち――」)
 痛くて、友達はどんどん離れていって。寂しくて涙が止まらなくなります。
「ぅ、……まど、まどか」
 ぐす、としゃくりあげながら名前を呼びます。
 痛くて寂しいけれど……ううん。痛くて、寂しいのは嫌だから――。
「まどか、まどか……っ、」
 声が聞こえて、気になるけれど、素直になれなくて、でも。
「ごめん、ね……ごめんなさい……っ」
 そんな言葉が聞こえたら。
「もう! くろば、なきむしなんだから」
 とてとてと駆け寄って。まどかもごめんねって。
 ちゃあんと謝れるんです。だから、これで仲直り。
 黒羽くん、いつまでも泣いてちゃダメだって、ごしごしと涙を拭います。
「いっしょにがんばろ」
 その言葉は、ぎゅっと握ってくれる手は、とっても優しかったから。
「がんばる」
 頷いて、もう一度。今度は転ばないように、ゆっくり。
 だって、くろばがまたないちゃうからね!
 そうそう、一緒に。その方がまどかくんも、悲しくならないものね?
 お味噌が買えたら、仲良く来た道を戻って、おうちへ。
「ただいま!」
「ただいま……!」
 元気に戻れば、お母さんも安心した様子で、ふたりをいっぱいいっぱい褒めました。頑張ったんですもの、このくらい褒めてもらわなきゃ!
「みて、まどかのつくったおにぎり」
「じょうず……!」
「ふふ。くろばもけっこうじょうずだよ」
「……! へへ」
 一緒に作ったおにぎりは、大きいのと小さいのと、形もばらばらだったけれど。
 頂きますって頬張れば、その味は格別で。
「おいしいね」
 まどかくんの言葉に黒羽くんもこくこく頷いて、おなかいっぱい。
 ふたりのおつかい、大成功です(ダメージを与えました)!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【箱蛸】

え、おとーさん
グリンピースと玉子と玉ねぎ買ってこい?
買うものおおくね?それにグリンピースはいらない
しかたねぇ、買ってくるよ

みやび、今日のご飯はオムライスだぞ!
行くぜー!

ぜぇぜぇ、みやび
ちょ、まって

――ぎゃ!石に躓き転ぶ
べ、別に痛くねーし!
こんなのツバ付ければ治る

うごほっ!みやび!水、水!
へへ、にぎった方が転ばないもんな!ぎゅっ

よし、買い忘れたものないな
早くかえるぞ…ってあー!!
グリンピースがぁ!袋から出てきてるー!
やべーやべー!どうしよう

全部拾って袋に入れ直し
おとーさんにおこられるかな
そ、そうか!言わなければいいんだな!

オムライス楽しみ
え、いいのか?!トマト好きだぜ!

みやびーこっちだ!


筧・清史郎
【箱蛸】

まぶだちのきよしと、おつかいだ

オムライスはすきだ
では、まいろう(たったか~

!大丈夫か、きよし
おれは水のかごをうけし箱
なした水で傷を洗い、たこさん絆創膏をぺたりはってやろう
幼いゆえに手元くるって
きよしの顔に、水がぶしゃっとかかったらすまない
もうころばぬよう、手をつないでやろうか?

おやつは、かわないのか?(じー
…そうか、では帰ろう(しょぼん

!きよしのグリンピースが…きよしのが地に(勝手に
これで全部だな(UCのさめさめ達に手伝わせ
言わなければ、わからないのでは?(悪知恵

オムライス楽しみだ(るんるん
ところできよし…トマトとグリンピース、こうかんこしないか(悪知恵

…おうちは、どっちだろうか(迷子



●せいしろうくんときよしくんのおつかい
 とある良く晴れた日のこと。
 清史郎くんはお友達のきよくんのおうちに遊びにきていました。
 二人はとっても仲良し。
「ロケットパンチだ」
「うわ~、やられた……! なあみやび、おれも次はロボットやりてぇよ!」
「では次は代わろう」
 ロボットの玩具を持った清史郎くんと、怪獣の玩具を持ったきよしくん。自分も次は正義のヒーロがやりたい、ときよしくんがお願いをすれば、清史郎くん、ちゃあんと交代してあげます。
 けれど、役を交代して遊びを再開しようとしたところで。
 たぬきのお父さんが、二人の元へとやって来ました。
「今日の夕飯はオムライスなんだが」
「オムライス! やった。今日のご飯はオムライスだぞ! みやびも一緒にたべよーぜ!」
「いいのか? オムライスはすきだ」
 しかし、盛り上がる二人には試練が待ち受けています。
「買ってきて欲しいのは、グリンピース、卵、それから玉ねぎだ」
 手が離せない自分の代わりに、二人に材料を買ってきて欲しいというのです。清史郎くん、きよしくん、一体どう答えるんでしょう?
「え、おとーさん。おつかい? ぐ、グリンピースに、たまごに、玉ねぎ……? 買うものおおくね? それにグリンピースはいらない!」
 きよしくん、グリンピースが苦手でした。でも好き嫌いはいけませんよ。色んなものを食べて、バランス良く栄養取らなくっちゃ大きくなれません。
「きよしとおつかいか」
「しかたねぇ、買ってくるよ」
 お友達と一緒に、はじめてのおつかい。清史郎くんは何処か嬉しそう。駄々をこねていたきよしくんだったけれど、清史郎くんが一緒に行ってくれるって考えたら、少しだけ楽しみになってきたみたい。
「では、まいろう」
「行くぜー!」
 二人元気に行ってきます!
 目的のスーパーまでは少しだけ距離があるけれど、一緒ならきっとすぐです。
「なんか楽しいな!」
 にへへと笑うきよしくんに、清史郎くんもああと頷きます。
 楽しい気持ちになって、たったかたったか。弾むように歩く清史郎くんだったけれど――。
「……み、みや」
 ぜぇぜぇ、ぜぇぜぇ。
「みやび、ちょ、まって」
 清史郎くんのペース、きよしくんには少しだけ速かったみたい。
 どんどん離れていってしまう距離に不安になったきよしくん、慌てて走ろうとしますが。
「――ぎゃ!」
 石に躓いて転んでしまいました。
「! 大丈夫か、きよし」
「べ、別に痛くねーし!」
 こんなのツバ付ければ治る。
 清史郎くんが駆けよれば、膝小僧からは血が滲んで、強がるきよしくんの目にはじんわり涙が浮かびます。
 ツバじゃきっとダメだって思ったから。
 自分は水の加護をうけた箱。だから水を生み出すことが出来るって。
 きよしくんの膝に向けて、力を解き放てば――解き放ったつもりが。
「うごほっ! みやっ、みやび!」
 みず! つめてーつめてー!
 幼い故に少しだけ手元が狂ってしまって、顔に向かって水がぶしゃっとかかってしまいました。きよしくんは大げさに地面に転がりますが――なんだかちょっぴり楽しそうに見えたのは気のせい?
「す、すまない」
「ふー。いいんだ、ありがとな、みやび!」
 自分の為にやってくれようとしたことだもの。
 たこさんの絆創膏も貼ってくれて、だからきよしくん、怒ったりしません。清史郎くんも、もう転ばないようにって。
「手をつないでやろうか?」
「! へへ、にぎった方が転ばないもんな!」
 そうしてまた仲良く、今度は手を繋いで歩きはじめました。

 そうしてスーパーへと辿り着いた二人。
 しっかりと頼まれたものをカゴに入れました。
「きよし」
「なんだー、みやび」
「おやつは、かわないのか?」
 じーと見つめられれば、きよしくんの決意も少し揺らぎました。
「おやつ……おやつは頼まれなかったからなー」
 自分も買いたい。でも、今日はおやつは頼まれませんでした。
 しょぼんとする清史郎くんに、きよしくんの良心が痛みます。どうしようと考えていると、嗚呼、そうだって。きよしくん、何か思いついたみたいです!
「――! みやび、うちにおやつ、いっぱいあるぜ! 甘いのも、いっぱいだ!」
「! そうか、ならば早く帰らねばだな」
 きよしくん、清史郎くんが甘いものが大好きだって知っていたから。
 おうちに呼んだ時、ちゃあんとお母さんたちと準備しておきました。
「よし、買い忘れたものはないな。早く帰るぞ」
 元気を取り戻した清史郎くんと、しっかりお会計を済ませて、さあ後は帰るだけ!
 上機嫌で袋をゆらゆらして歩いていると、ころんころん。
 緑色の粒が足元に転がっているのに気づきます。
 きよしくん、清史郎くん! グリンピース、零れていますよ!
「あー!! グリンピースがぁ! 袋から出ててきるー!」
「! きよしのグリンピースが……きよしのが地に……」
 清史郎くんがきよしくんのグリンピースって言っていても、きよしくん、大慌てで気づきません。
「やべーやべー! どうしよう」
 とりあえず慌てて拾って、使い魔のさめさめにも手伝って貰って。
 みんなで地道に袋に詰め詰め。
「これで全部だな」
「おとーさんにおこられるかな」
「言わなければ、わからないのでは?」
「そ、そうか! 言わなければいんだな!」
 言わなくても多分気づいちゃうと思うけれど。
 でも、一生懸命二人で買って来たんですもの。
 お父さん、そんなことで怒ったりしませんよ。
「オムライス楽しみだ」
「楽しみ!」
「ところできよし……トマトとグリンピース、こうかんこしないか」
「え、いいのか?! トマト好きだぜ!」
 こうかんこ! って二人で約束。
 それくらいはきっとお父さん、目を瞑ってくれるでしょう。
「……あれ。おうちは、どっちだろうか」
 うきうき歩いていたら、おうちがどっちか分からなくなっちゃった!?
「みやびー、こっちだ!」
 大丈夫だよって笑って、二人なら、ちゃあんとおうちまで帰れるはずです!
「つーかみやび! おれはきよしじゃねー!」
 それに他のどこかでも、ずっときよしと呼ばれている気がしたきよしくん。気のせい気のせい。

 そんなこんなできっちりとおつかいをこなし、二人はつかさにダメージを与えることに成功したのでした!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荻原・志桜
🎲🌸
姿も記憶も昔に戻り
にゃんこポシェットを下げて出発!

えと、えっとね
たぬきぱぱがきつねままにね、おかしぷれぜんとするんだって!
しおたちがかいにいったら、ままもよろこぶんだよっ

わあっかわいい!
おはなのかたちと、にゃんこさんもいる!
おだんごもおいしそーっ
あれ。そういえばどれかうんだっけ?

べしゃっと転べば菓子が放られて
あーーっ!
せっかくかったのに、ぱぱにおねがいってされたのに
ままないちゃう、ぱぱもかなしんじゃう
どうしよ、でぃいくん

おはなのゆびわだ!かわいいねぇ
でぃいくんありがとう!
ぱぱとままにもつくるー!

ゆびわはね、けっこんしたいひとからもらうのよ
でぃいくんは、しおのみらいのだんなさまだもんっ


ディイ・ディー
🎲🌸

記憶は曖昧
昔のように人間への興味が薄い
けれどこの子が大好きなのは変わらない

そーか、じゃあいくぞ
しお、あんまり走るな
お菓子は逃げないからな

いちご大福とげんていの桜カステラだったかな
おつりでにゃんこ菓子もかおう
おれは欲望のままに動くのさ

……ん、しお?
(放られたお菓子を拾う)
へいきだ、中身はつぶれてない
だれも泣かねーからおちつけ
よしよし、ケガしてないか

そうだ、待ってろ
そこにシロツメクサが咲いてるからさ
くるっとまるくして、ほら
やるよ、お花の指輪

狸おじさんと狐おねえさんにも
おそろいの花冠をつくって帰ろうぜ

みらい?
いますぐにでもよめにしてやるよ
だってさっきのはこんやく指輪だから
手、繋いでかえろ



●ディイくんとしおちゃんのおつかい
 自然豊かな小路をてこてこと歩く小さな二人がいました。
 ディイくんと、しおちゃんです。
 二人は誰から見ても、とっても仲良し。
 道行く人も、二人が歩く姿を微笑ましく眺めます。
 肩から下げたにゃんこさんのポシェットは大のお気に入り。
 他人には大して興味を懐かないディイくんでしたが、傍らの志桜ちゃんだけには違いました。ディイくんは、志桜ちゃんのことがとても大好きなのです。
「おつかい、何たのまれたんだ?」
「えと、えっとね。たぬきぱぱが、きつねままにね。おかしぷれぜんとするんだって」
 しおたちがかいにいったら、ままもよろこぶんだよっ。
 ディイくんが質問すると、志桜ちゃんはあのねと嬉しそうに答えます。
「そーか、じゃあがんばらないとな」
 志桜ちゃんのお母さんとお父さんが喜ぶのなら、ディイくんだってとっても嬉しい。
 でも本当はね、そんなパパとママをみて、志桜ちゃんが嬉しそうにする姿が。ディイくんはきっと、何よりみたいんです。
 ディイくんにも同意して貰えたのが嬉しくて、がんばろうって走りだしてしまう志桜ちゃん。
「しお、あんまり走るな」
 お菓子は逃げないからな。
 そうです、ディイくんの言う通り、お菓子は逃げたりしませんよ。
 志桜ちゃんも、しっかり者のディイ言葉を受けて、こくりと頷きました。
 二人だけで歩くお外は何だかとても新鮮で、わくわくして。
 ――そして何だか少しだけ、ドキドキもして。
 もう少しだけ歩いていたかったって思うくらい、和菓子屋さんまではあっという間でした。
「よし、着いたな」
「わあっ、かわいい! おはなのかたちと、にゃんこさんもいる!」
 いらっしゃいませ、という店員さんに、元気よくこんにちは! って挨拶をする志桜ちゃんと、傍らで軽く会釈をするディイくん。
「おだんごもおいしそーっ……あれ。そういえば、どれかうんだっけ?」
 てこてこ店内の可愛らしいお菓子を見てはしゃいでいたら、何のお菓子を買うか忘れちゃったみたい。大丈夫かな?
「いちご大福と、げんていの桜カステラだったかな」
「! それっ。――へへ」
 ディイくん、ちゃあんと覚えていてくれました。
 それがとっても頼もしくて、嬉しくて――何でか誇らしくて。
「おつりでにゃんこ菓子もかおう」
 おれは欲望のまま、動くのさ。
 なんて言うけれど。それはさっき、志桜ちゃんが可愛いって気にしていたから。ディイくん、ちゃんとみてました。
「にゃんこさん! わーいっ」
 志桜ちゃんの表情から笑顔が途絶えることがないのは、きっとディイくんのおかげ。
 しっかり買い物を済ませたら、後はお家に帰るだけです。
 来た道を戻る足取りは軽くて――でもほら、志桜ちゃん。
 そんなに急いだら――。
 とてとてすてん。
 転んだ拍子に、お菓子が放られてしまいます。
「あーーっ!」
「……ん、しお?」
「せ、せっかくかったのに……ぱぱにおねがいって、されたのに」
 大きな眸はうるうると潤んで、今にも涙が零れそう。
「ままないちゃう、ぱぱもかなしんじゃう」
 ――どうしよ、でぃいくん。
 ぺたんと膝をついて見つめてくる志桜ちゃんに、ディイくんは拾ったお菓子を確認して、伝えます。
「へいきだ、中身はつぶれてない」
 大丈夫だよって、そんな顔をしてほしくなかったから。
「だれも泣かねーからおちつけ」
 前にしゃがみこんで、よしよし。
「ケガしてないか?」
 ディイくんは志桜ちゃんの髪を優しく撫でてあげました。
 すると志桜ちゃん、ちょっぴり落ち着いたみたいで、こくりと頷きます。
「そうだ、ちょっと待ってろ」
 ディイくん、どうしたんでしょう。
 少し歩きだしたところで振り返って。
「そこにシロツメクサが咲いてるからさ……」
 摘んできた花を、志桜ちゃんの傍で。
「くるっとまるくして、ほら」
 ――やるよ、お花の指輪。
 志桜ちゃんの指にはめてあげます。
「! おはなのゆびわだ!」
 ぱあと表情を輝かせる志桜ちゃん。
「かわいいねぇ」
 もうすっかり涙は引っ込んで、指にはめられたお花の指輪をお空に翳して嬉しそうに笑いました。
「でぃいくん、ありがとう!」
 その表情をみたら、言葉を聞いたら、ディイくんも一安心。
「狸おじさんと狐おねえさんにもおそろいの花冠つくって帰ろうぜ」
「わあ、うんっ。ぱぱとままにもつくるー!」
 志桜ちゃんはお父さんに。ディイくんは、志桜ちゃんのお母さんに。
 それぞれ花冠を一所懸命作りました。もしかしたら少しだけ不格好かもしれないけれど、それでもきっと喜んでくれるはずです。

「ふふ」
「どうした?」
「あのね、ゆびわはね。けっこんしたいひとからもらうのよ」
 でぃいくんは、しおのみらいのだんなさまだもんっ。
 嬉しそうに指輪を眺めて歩く志桜ちゃんに、ディイくんは少し不思議そうにします。
「みらい?」
 そう、未来じゃなくたっていいんです。
「いますぐにでもよめにしてやるよ。だってさっきのはこんやく指輪だから」
 最初からそのつもりだったよって当たり前みたいな表情をするディイくんに。
 驚いて、嬉しくて。志桜ちゃんの頬、桜みたいにピンク色!
「手、繋いでかえろ」
「――うんっ」
 そうしてふたりは、仲良くお家に帰って、お菓子と。
 それから花冠を二人にプレゼントしていっぱいいっぱい褒めて貰ったのでした。

 猟兵たちがそれぞれ企画に向き合い、おつかいをこなしたことでテレビの電源はぷつんと落ち、骸魂が飲み込んだ妖怪を救出。テレビ番組による浸食のひとつを防ぐことに成功したのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月15日


挿絵イラスト