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大祓百鬼夜行⑯〜みんなロリとショタになるついでに殺人事

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #挑戦者6名でしめきります

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●この中に犯人がいます
 ざぁざぁと砂嵐が混じるブラウン管の中、空色髪が目を引くメイドが声を弾ませる。
「このお屋敷『邂逅荘』では、わたくしワーズ・キュレイが真心籠めてお世話をさせていただきます」
 柔和と言うには禍々しい笑みだ。メイドはぴったんぴったんと妙に大きくて粘つく音を立てつつ続ける。
「でも何故か、集まる方はお互いに恨み辛みを抱えていらっしゃるのです。わたくしは哀しいですわ」
 ほうっと手のひらを頬にあて憂いの溜息。
「絶対に坊ちゃまとお嬢ちゃまを殺した犯人は、わたくしが見つけ出して見せますわ!」
 バン!
「ですので、今はワクワク推理ドラマ『邂逅荘』にでて下さる方を募集中でございます」
 まぁ妖怪がやってるけど、ちょっと奇をてらった程度の人狼ゲームモドキと思えばいいのかもしれない。
 ……なんてこたぁあるわけがない。
「ぐふふ……来て下さるお客様はどんな方かしらぁ。DV気質のマッチョな彼が虚弱な色白少年だったり、嫁いびりに奮戦するババア……おばあさまが愛らしい三つ編み幼女になったり……そうすれば世界は平和でございます」
 これは、妖怪がテレビの中から放送している、本来のUDCにはあってはならない番組だ。放置したらUDCアースの現実にすり替わってしまい、一大事なのだ。

●グリモアベースにて
「みんなどんな子供だったの?」
 興味あるなぁと九泉・伽(Pray to my God・f11786)は煙草を燻らせる。
「ワーズ・キュレイの番組だと、子供がバンバン死ぬんだってさ。いやぁ……俺の子供の頃はそういう番組は普通だったけどさぁ、今時の倫理観だと色々やばいよね」
 UDCアースの危機っちゃ危機なので、みんなには番組に乗り込んでもらいたい。
 具体的には、ラストシーンでワーズ・キュレイが得意満面で謎解きシーンをするのを、打ち負かして欲しいのだ。
「この番組さ、基本はヤラセなのよ。参加者にカードを引かせて『被害者』『犯人』『スケープゴート(+被害者)』『モブ』なんて役を振ってさ、脚本まであんのよ」
 つまんないよねーって紫煙を吐き出す伽は、気怠げに壁に凭れる。
「だからさ、みんなでのり込んでって『犯人』や『探偵』『被害者』『スケープゴート』その他もろもろ演じきって、台本より面白い『推理ショウ』にして鼻を明かして欲しいのよ」
 ワーズ・キュレイの『邂逅荘の犯人当て』番組に全力で乗っかって、クライマックスまでのっとり切って欲しい。ワーズ・キュレイを犯人や被害者に陥れてもいい。
「番組の推理お芝居がより面白くなったら、ワーズ・キュレイはダメージ喰らってくれるから、物理で戦わなくていいよー」
 成程、とりあえず好きな役回りで推理小説にありがちな『館での殺人』をしてくればいいわけだ。好きな人にはたまらないな。
「そうだ。ワーズ・キュレイから質問されたり、出された物を食べると少年少女になっちゃうから。あとは結局子供になっちゃうから」
 はい、POW、SPD、WIZの順番ですね!
 ……って、なんか大事な事を今まさにそっちに行きかけた寸前に言われた。
「ワーズ・キュレイを倒したら戻るからさ、そこも含めて愉しんできてよ、ね?」
 


一縷野望
●補足情報
カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。

●プレイングボーナス
 これに基づく行動をすると有利になる事をオープニングでお客様に説明し、実際にプレイングボーナスを与えてください。
=============================
プレイングボーナス……番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられます)。
=============================

●全力での乗っかり方
【設定】と【役】は必ずお願いします
【設定】例:実は借金取りから逃げてここにきた中年男、隠し子が50人いる
【役】例:犯人、被害者、スケープゴート、探偵、他推理マンガにでるようなものならなんでも

【事件】のネタも歓迎です。ベースにあるのは『邂逅荘』にみなが招かれた(紛れ込んだ)というものだけです。藤棚があって綺麗だそうですよ、首をつるのに最適ですね☆
【性格】【台詞】があると膨らませやすいです
【被害者フラグ】【怪しげな行動】【隠してること】などなどもお好きにどうぞ!

 ワーズ・キュレイはメイドさん役で探偵役でもありますが、スケープゴートや被害者にしたりしてもOKです

●ショタロリにされます
 子供ロールをしたいなら歓迎です
 精神まで若返ってもいいし、心は大人もOKです
 子供ロールはなくても構いません。ワーズ・キュレイが勝手に萌え転がります

●仕上がり
 プレイングを元にアドリブどかどか入れて一つの殺人劇を構築します
 全員まとめてのリプレイで、結構がっつり絡みます

●採用人数
 4人~6人
 戦争シナリオなので早めの完結を心がけます
 プレイングの文字数が少なかったり、上記の趣旨にあわないものは流します、ごめんなさい

 以上、よろしくお願いします
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第1章 ボス戦 『ワーズ・キュレイ』

POW   :    なりふり構わぬ奉仕の形
対象への質問と共に、【自身の歪んだ愛】から【対象を若返らせる触手】を召喚する。満足な答えを得るまで、対象を若返らせる触手は対象を【若返らせるガスの噴出と絡みつく事】で攻撃する。
SPD   :    人々を魅了する奉仕の形
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
WIZ   :    拒否権の無き奉仕の形
【無限に溢れる触手】を解放し、戦場の敵全員の【抵抗力と年齢】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はキルシ・キュマライネンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宵雛花・十雉
子供になっても中身は大人

【設定】
しがない自営業の青年
実は真犯人の生き別れの兄

【役】
ミスリード役
真犯人を庇い、疑いの目を自分に向けようとしている
そのため証拠隠滅を図ったり、偽の証拠を用意したり、1人になりたがるなど不審な行動をとる

【性格】
警戒心が強く、自分のことをあまり話したがらない
台詞も素っ気ない印象
しかし本当は心優しく、真犯人のことを大事に思っている

【台詞】
「馬鹿馬鹿しい……ただの事故(自殺)でしょう?オレは部屋に戻るから」
「探偵ごっこはそろそろお終いにしてくれないかな」
「アンタは覚えてないだろうけど……オレさ、アンタの生き別れの兄なんだ」
「あの日も、藤の花が綺麗だったね……」


森宮・陽太
要は一番美味しいシーンに全力で乗っかれと
いいぜ、やってやらあ
※事前に指定UCで美少年姿のセーレ召喚

【設定】仕事もせずフラフラしているチャラ男
【役】スケープゴート
【被害者フラグ】チャラ男という設定そのもの

俺自身は子供にされる気は…っておいそこの触手やめ(ry
…10歳程度の子供にされちまった
※精神は大人のまま

基本的にねーちゃんはナンパ、にーちゃんは邪険に扱いつつ
聞き込みを続けて真犯人を探るんだが
真犯人にバレて藤棚に首つられちまう
チャラい言動が災いして動機はいくらでも捏造できちまうよなあ
しかも都合よく凶器(リッパーナイフ)も隠し持っているからな

…ま、遠慮なくやってくれ
後でセーレに助けてもらうからよ


陽川・澄姫
POW

子供の頃は大人しくしてなさいって教育されましたから、控えめな性格だったでしょうか。
今は仕事柄そんなことなくなってしまいましたけどね。

番組の都合上被害者は多い方良さそうですし、スケープゴート(+被害者)役でもしましょう。
設定も、実は大資産家の隠し子である物見雄山好きな人物とかであれば、殺しも殺されもしそうですしね。

最初は一人でお風呂に入ったり藤棚を見に行ったりと観光をします。
遅くとも最初の事件後の聴取時には子供にされてしまうので、それからは大人しい子になって、アリバイも無いのでオロオロしてしまいます。
疑われた後、ある時に犯人の重要な手掛かりを見てしまって口封じされてしまう役どころですかね。


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

口調:演技(お嬢様っぽい感じ)+素
「まあ、演技する事そのものは嫌いじゃないから、やってみるかな」
偏見かもしれないけど高飛車なお嬢様ってこういうので被害者になりそうだし、それでいくかな。――こほん、いきますわよ。

【選択UC(強化スキル:演技)】で高飛車なお嬢様っぽい格好に【変装】。金髪ウィッグもつけてそれらしく。

「それじゃあ何!? この中に犯人がいるってコト!? そんな所になんていられないわ! 私は部屋に帰らせてもらいますわよ!」

と被害者フラグを雑に立てておきます。ざくり。

※子供ロール:心は大人を維持。ただし子供の演技を楽しむ模様。
「あれれー? これなにー?」


シャルファ・ルイエ
【設定】幼少時に生き別れた家族を探しに来た
【役】探偵助手兼被害者

メイドさんと髪の色が似ているみたいなので、家族かどうか確かめに来た設定にします。
性格は今のままで。

最初は家族を探している設定を伏せて、メイドさんについて色々聞いたり調べたり怪しげな行動をとってみますね!
他には、探偵助手役なので探偵さんのお手伝いをします。
被害者になったら、「最期に本当の家族に、会ってみたかった……です……」って言い残します。
偶に泣けるような展開が入るのは推理物のお約束だって何かで聞きました。
状況と展開次第では、実は死んでなかったっていうのも視野に入れておきますね。
最後のどんでん返しだって、推理物のお約束です!


ライラック・エアルオウルズ
【設定】
作家志望だが、上手くいかず
金を無心する為に親戚の居る邂逅荘へ
【役/性格】
被害者/狡賢く小心者

訪れる時は至って冷静
小説のネタが欲しくてね
邸で起こる噺にしようと、等
愛想笑いで胡散臭い挨拶

皆が叫声に駆け寄る隙
紛れて、引出を漁って
金目のものを探そうか
くそッ、何もないないじゃないか!
仕方ない、彼方を見に行くかね

死体発見後、解り易く脅え
後退り、壁に寄り掛かり
何だ此は、――嘘だろう!
はは、そうだ、嘘に違いない
三文芝居で揶揄いやがって
僕が出来損ないだからって!
悪態を吐き、人間不信へ

――ん、クライマックス?
こどもがしぬのはよくないなあ
せめてテディベアにしてくれ
小さな身で眉寄せ乍らも
台本の修正といこうかな



●『探偵マエストロ』キャスト
『邂逅荘』主の孫娘:紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)
主の甥:ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)
主の隠し子:陽川・澄姫(現世の巡回者・f30333)

主の遠縁:森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)

元執事(故人)の孫:宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)
孤児院出身の娘:シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)

主の三男であり智華の父:人形



『邂逅荘』管理者兼メイド:ワーズ・キュレイ



『邂逅荘』とは
 ある大富豪が晩年引きこもった山合いの洋館である。
 鉱山経営で一山当てた彼は、自身の兄弟や息子夫婦より財産を狙われる生活に厭気がさして、信頼のおける老執事とメイドを連れて俗世から姿を消した。
 老執事に続けて主も10年前に亡くなり、今はメイドだけが『邂逅荘』を財産と共に守っているのだ。


 藤の花が作るレースの向こう側、見事な山間の景色が広がっている。
 藤棚の元でベンチに腰掛けて、陽川・澄姫(現世の巡回者・f30333)は溜息をもらした。
「お父様とよくここからの景色を眺めたものです、変わらない。本当に懐かしい……」
 明日はその父親が亡くなって10年目。父が引きこもった晩年に生まれた隠し子の身故、正式な葬儀に出ることもなかったが……。
「この様なお手紙をいただいてしまいましたものね」

“生前のご主人様は「愛した子供は澄姫様だけ」とよく仰っていました。どうか10年の区切りの今日は弔いにいらしてください”

 送り主はメイドのワーズ……の筈だったが。彼女は何も知らないという。
「一体何が起るのでしょうね、お父様」
 ざぁざぁと吹き抜ける風が葡萄のようにだんだらと花咲く藤を揺らす。幻想的な世界の元で、澄姫の瞳は静謐の中に隠せぬ好奇の焔を宿している。


 キッチンをせわしなく動いて客人の食事を用意するメイドワーズの後ろを、シャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)はちょこちょことついてまわっている。
「ねえねえ、メイドさん。メイドさんはいつからここで働いてるんですか?」
 ひょこ。
 大鍋を覗き込むように近付いて話しかけるシャルファに対して、ワーズは内心の欲望を抑え込む。

 はい、ちょっとここから『推理番組仕掛け人』ワーズさんの本音入りまーす。
 ぶっちゃけこの水色髪の子、絶対ロリにしたらめっちゃ可愛いと思うのよ。妖精みたいにくりっとしたおめめでフワフワの白いレースのワンピースとか、ああその裾から見える華奢な足マジで萌死(以下略)
 しかし!
(「この子をロリにするわけには参りませんね」)
 シャルファに渡したのは『犯人役』のカードである。子供にしたら犯人ムーブが難しくなる。
 台本に記した動機は「祖父である老執事がらみの復讐で一族郎党を皆殺し」復讐内容は勘違いというやるせない王道オプションつき。
 お膳立てとしてお手紙もささっと2通ほど。
 シャルファの『実兄役』の人物へはメイドのワーズが出し、隠し子の澄姫は謎の人物=シャルファが誘い出したとの筋書きだ。
 あと20分で智華の父親役の人形が死体として現れる手筈。犯人のシャルファを1人にしないといけない。

「ねえ、シャルファさん。離れにある干し肉を取ってきてはくれませんか? 本日いらしているライラック様は大層あれで出汁を取ったスープがお好きで」
「え……」
 いつから働いているのかの質問をはぐらかされたとしょんぼり。
「ごめんなさい。失礼でしたか……あの…………」
 ――あなたが生き別れのお姉ちゃんかもしれないんです、とは言えないシャルファ。なんと、幼い頃の記憶は「兄ではなく姉がいた」と書き換わってしまっている。
「あら、失礼だなんてことはないですよ」
 にっこり微笑み鍋を混ぜるワーズの裾を引く。
「一緒に行ってはくれませんか? メイドさんともっとお話したくって」
「……」
 犯人役の演出か? 台本は渡してあるが役割さえ演じきれるならアドリブはOKとは伝えてある。
(「途中で私がはぐれればいいですね。そして彼女が犯人だと示唆する言動もして推理のネタにする」)
 完璧★
「わかりました。一緒に参りましょう」


 ボーン、ボーン……。
 シャルファとワーズが藤棚にさしかかりはぐれた頃、大広間で黄金色の振り子が揺れて午後の2時を告げた。
「あーあ、こんな辛気くせえとこに長居したくねぇんだけど!」
 ガラステーブルにのせた靴裏が周囲に不愉快さをまき散らすも一向に構わぬは森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)
「もらうもんもらったらそれでいいんだよ。なぁセーレ」
 チンピラめいた身なりの陽太に比べれば背筋を伸ばす美少年セーレはどのような関係か全くもって窺えない。
「その子はなんですの? 陽太兄様」
 目が醒めるような金髪の娘、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は美眉を持ち上げると辟易を隠さずに肩を竦める。
「お、智華ちゃん気になんのかよ? 大丈夫、俺はいつだって智華ちゃんラブだぜぇ?」
 厚かましく肩に回そうとする腕を弾くと、智華はふんっと鼻息荒くそっぽを向く。
 智華は主の三男の娘。主の長男の愛人が他の男とこさえた陽太と違い、正統な血族だ。
 血のつながりもないのになにかと金をせびりにくる陽太の厚かましさにうんざり。
「まぁまぁ、智華さん。いつもは寂しい邸が賑やかになっていいじゃないか」
 畳まれた新聞から覗いた面差しは40歳と書いて不惑。落ち着きを纏うライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、眼鏡越しの瞳を閉じて柔和に笑む。
 彼は主の妻の末弟の息子――名と、孫達の髪色からわかる通り、主の妻は西洋の血が入った大層美しい貴婦人であったそうな。
「陽太くんは、若いのに色々なことを経験してるようだし、面白い話が聞けると期待してるんだよ。ははは、小説のネタが欲しくてね」
「おっさん、タダで聞けると思ってんのかよ、出すもん出してもらわねぇと」
 人差し指と親指で丸をつくる陽太。
「ははは、ここは衣食住全て揃っているから生憎と身軽で来ていてね」
 出す物が出せるなら、そもそもここに来ちゃいない。金の無心に来ているのは陽太もライラックも同じこと。
 全て見透かしている智華は胡乱げな目つきを隠しもしない。
「もう! 今日は本当に最悪ですわ! お爺さまのご商売の関係だっていらしてるあの方だって、どうせお金の目当てでしょうし!」
「これは手厳しいね、お嬢さん」
 自営で身を立てる宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)は、紅目を眇め曖昧に笑んだ。彼は主との血縁はない。
「アナタなんで突然いらしたの? ワーズもなんでこんな身分のしれぬ男を通したのかしら!」
「ほほう。あなたは?」
 興味を示したライラックが好奇心露わで躙り寄るのにも余裕ある笑みで応える。
「宵雛花十雉と申します。こちらのご主人と直接お会いしたことはないのですが、親族が大層お世話になったそうで」
 ――これは嘘ではない。
 十雉は主に仕えていた老執事の孫にあたる。だが両親を亡くし孤児院育ち故に、幼い頃の1回以外は『邂逅荘』の敷居をまたいだことはない。
 本日彼が『邂逅荘』を訪れたのには理由がある。
(「シャルファ……」)
 引き取り親が現れた時の妹は実に3歳。シャルファと名乗る少女は、今はメイドについてキッチンにいる。
 当時9歳であった十雉は、この館でシャルファを一目見て妹に間違いないと確信した。

“生き別れた妹がこの一族に復讐を企てて、いる”

 そのような手紙が届き足を運んだ。
 しかし彼はまだ悩んでいる、妹の企みを止めるべきか、それとも本懐を遂げさせるべきか……。
 ちなみに、
 シャルファは兄ではなくて姉が居たと誤認してるわ『犯人役』放棄だわってのはさておき。
「僕は……」
「ああ失礼」
 十雉はライラックの紹介を遮ると唐突に席を立った。そして大凡10分程で息を切らして戻る。
 あ や し い。
「すまない。トイレに行こうとして迷ってしまってね」
「うちのメイドが到らず申し訳ない。それでは改めて、僕はライラック・エアルオウルズ。ネタ探しなんてのは口実でね、この館の主である伯父さんには世話になったから、区切りの10回忌にはせ参じたというわけだよ」
 愛想の後ろ側に金金金の欲目を隠し、ライラックは十雉へと話しかける。白々しい紳士面にとうとう我慢が出来ず、智華はとうとう黙ってられなくなった。
「嘘ばっかり! どうせお金が目当てなんでしょ?! お父様も仰ってましたわ、ライラックの本はいつまでたっても売れやしないって」
「……」
 ライラックの愛想笑いが一瞬削げた。生意気な娘に対し刺さるは恨みがましくも卑屈な眼差し。
「違いねぇや。おっさんの名前なんて聞いたことねぇしなぁ。本当に作家なのかよ」
 銃の形にした指をこめかみにくっつけて、陽太もべろりと舌を出しケタケタ笑って莫迦にした。
「まったく……親の顔がみたいもんだね。というか武はどうしたんだ」
「お父様なら明日の10回忌の準備で大わらわですわ。今頃…………」

 その時、絹を裂くような女性の悲鳴が響いた。

「外か? なんか悲鳴みたいだな……」
 智華にチャラチャラ絡んでいた陽太が真顔になる。同時に「だれかぁ……」と、今度は足音と共に近付いてくる、どうやらワーズのようだ。
 警戒に身を竦める智華。
「なにかあったのかもしれない」
 十雉が庭へと飛び出すのに続くべきか戸惑う陽太。すかさずライラックは叫ぶ。
「ここは僕が見ているから、皆はやく行ってくれ給え!」
 先程メイドと客人の娘が出て行くのを見たし、彼らを追い出せば館は無人。それが狙いだ。
 もくろみ通り外へと駆けていく2人の若者を見送ると、ライラックは長年に渡りひとつずつ持ち出してはつくった合い鍵を手に階段を駆け上がった。
 金だ、とにかく金だ。
 叔父の部屋へ駆け込むと、引き出しを引っかき回して金目のものを探し回る。
「くそッ、何もないないじゃないか! やはりメイドの部屋か?!」
 随分と経ったがまだ誰も戻らない。欲の皮が突っ張ったライラックはメイドの私室へ足を向ける。


「お父様ぁあああああ!」
 一方その頃、
 父親の死体を前に智華の慟哭めいた悲鳴が周囲を染め上げた。
「私が来た時には既に若旦那様は崖から落ちてらして……」
 おいたわしやと目を伏せるワーズは「あら」と崖へと目を向ける。
「この靴痕、誰かが後ろから押したのでは……?」
「あぁ本当だな。女か? なんか、あと2人ぐれぇきてたよな。黒髪の美人と、蒼い髪の可愛い……」
「馬鹿馬鹿しい!」
 陽太を遮ったのは苛烈な十雉の声だ。
「ただの事故でしょう?」
「まぁ、お父様が自殺なんてなさるわけないですわ! この中に犯人がいるってコトでしょう!?」
 反駁する智華は自分の言葉にゾッと背筋を冷やす。
「死亡時刻がわからないとなんとも言えないだろう」
「それでしたら……」
 ひょっこりと顔を出したのは湯上がり艶やかな澄姫である。
「私はつい30分前までこの藤棚にいましたから、その後ではないかと思いますよ」
 濡れ髪を拭き取りながらそう嘯く様は、妙に落ち着いている。
「じゃあ蒼い髪の子が……」
「あ、メイドさん、探しましたよ! 倉庫部屋がわからな……えぇ?!」
 道に迷っていたシャルファがただならぬ雰囲気と中央の死体に驚き飛び上がる。
「人が、死んでる……」
「アナタがお父様を突き落とした犯人ですの?!」
 智華につかみかかられてきょとんと瞬くシャルファ。割って入ったのは十雉だ。
「いい加減にしてくれないか。これは事故、もしくは自殺でしょう。聞く所によると、随分と事業で困ってらっしゃったとか」
 十雉、妹を庇う為に後半は口から出任せで捲し立てた。しかし智華が唇を噛んだ辺り本当のことだったらしい。
「でも……お父様が自殺だなんて……やっぱりあり得ないですわ!」
「この人が突き落とされたとしたら、30分の間ということでしょうか」
 犯人扱いされそうなシャルファだが案外冷静にメイドと自分を見比べて続ける。
「だとしたら、単独になってしまったわたしとメイドさんは残念ながら容疑者ですね。あと、そこのお姉さんも、お風呂の前に突き落とすことができます」
「まぁ……確かにそうですね」
 容疑者扱いにも澄姫は何処か楽しげに口元に弧を描く。
「うひゃあ、美人3人の内誰かが犯人ってことかぁ! 女は怖いねぇ……でも、そういうのでも俺はかまわないぜぇ?」
 馴れ馴れしく肩に手を回してくる陽太に、ワーズは眉を顰めた。
(「うざい!」)
 ぺちん★
 おっとつい触手が。
「な?!」
 刹那、陽太の身長が80センチほど縮み、ふてぶてしいチンピラフェイスは「きりっとして将来いい男になるわ、絶対」なやさぐれ児童に早変わり。
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
 いや、予知で聞いてはいたけど目の当たりにすると反応に困るなこれ。
 猟兵たちは固唾をのみ、てへぺろ★なワーズはぎゅうとショタ陽太を抱きしめてほおずり。
「やぁん♪番組に来た時から狙っていたのよ、絶対イケメンショタになるって。んふー、この生意気そうな面構えがたまらないわ~。大人だとただのふてぶてしいチンピラだけど!」
 あ、けっこー陽太傷付いた?
「うるせぇ、ババア」
「そうなのオバサンもうボクにメロメロなのよ~。いいわぁもっと罵ってぇええ」
 ダメだここで流されては! 番組を盛り上げなくては!
「やっぱりこの中に犯人がいるってコトじゃないの!」
 智華はぶんと腕を広げて女性3人を睨み付ける。
「そんな所になんていられないわ! 私は部屋に帰らせてもらいますわよ!」
 テッパン台詞を置き土産に皆に背を向け駆け出す智華、なんとか流れを戻した!
 そのお嬢様ぶりに不覚にもときめいてしまったワーズは、さらにしゅるんと触手を伸ばしてしまう。
 ぺちん★
 ぽふん、と智華の躰が弾け、そこには金髪ロリお嬢様という属性的に最強なのが現れた。
「あれれー? どうするんだっけー??」
 折角フラグを立てたのに、子供にしちゃったら収拾つかないではないか。どーすんだこれ。
「あぁん★金髪お嬢様ときたらやっぱ幼女でしょ~! んふふ、10歳は幼女じゃないって? だ・い・じょ・う・ぶ★あたくしストライクゾーンは広いの~。智華ちゃん、これからお部屋にかえってね、こ……ころ……ああん! 幼女の死体ぃぃぃ!」
(「なるほど、こうやって番組を成立しないようにしてるんですね」)
 探偵役が不在なので助手役のシャルファがもっともらしく頷くが、そもそもワーズの目的から外れてるんだよとか、つっこみたいのは生き別れのお兄さんな十雉だ。
「……とにかく警察に連絡をした方がよさそうですね。私が屋敷に戻りますね」
 そんな中でもあくまでマイペースな澄姫は、一足先に館へと足を向けるのである。


 思ったより皆が戻るのが遅く、ライラックは主とメイドの部屋を探し尽くせた。が、財布は一切膨らんでいやしない。
「ちっ……物取りに見せかけてあいつ等の部屋も漁るとするか」
 智華と父親の部屋を解錠しノブをひねった所で、ライラックは小さな足音に震え上がる。恐る恐る振り返ったら、疑わしげな目つきの澄姫と視線が合った。
「何をなさってるんですか?」
「……ッ、いや、こ、此は……違うんだ」
 言い訳不能な状況にドアに凭れたら、シャツが噴き出した汗で張り付き不快極まりない。
「あーーー! ライラックおじちゃま、なにしてるのー?」
 とてとてと戻った智華はあどけないながら疑いいっぱいで、ぷくっと頬を膨らませた。
「ああ、大変です。何者かにメイドさんとご主人の部屋が荒らされてます!」
 シャルファの素っ頓狂な声に鼻を鳴らしたのは十雉だ。
「成程、全てアンタがやったのか。彼女の父親殺しを含めて」
「そんな訳ある筈もないだろう! 無礼な疑いは止してくれ」
 ライラックに罪をなすりつけるルートに入るも、
「この方は外に出られてないですし、犯人ではないと思いますよ」
 邪魔をしたのはまたも探偵助手を気取る妹であった。
「そうだ! 外に出たというのならあなたの方が怪しいじゃないか!」
 ここにきて、十雉が自分に疑いを向けるべく最初に席を外したことが裏目にでる。
 十雉が黙るのに舌打ちした後で、ライラックは血走った目で全員を見回す。
「はは、そうだ、嘘に違いない。三文芝居で揶揄いやがって……ぼ、僕が出来損ないだからって!」
 此処で『ならば此を小説にして人気をかっさらってやる』と言えないところが、ライラックが売れない所以かもしれない。
 劣等感と被害妄想を散々まき散らした挙げ句、ライラックは自室に籠もりこれ見よがしに鍵をかけた。
「おじちゃまーー! もー……智華もお部屋かえるーー」
 ぱたん、と智華も閉じこもり。でもすぐにあけて。
「おなかすいたー、クッキーたべたいー」
 ぱたん。
 ここでワーズが居ればエクストリームな萌えが補給出来たろうに残念!
 さてさてと首を傾げるシャルファに対し、十雉はいっそ「お前が犯人ではないのか」と問いかけたくなるもグッと堪える。
「姉さ……ワーズさんと陽太さんが返ってきませんね。心配です」
「!!!」
 慌てて言い直すシャルファに対し、棒を呑まされたように驚愕に立ち尽くす十雉。それを曰くありげに観察していた澄姫はしたり顔で頷くと再び庭へときびすを返す。


 藤棚の元でワーズを漸く追い払えた陽太は、子供に不似合いな大仰な所作で溜息をついた。
「まさかなぁ……セーレ。お前にこんなことを頼むハメになるたぁ思わなかったわ」
 頭は大人のままの彼は、早々に底を見抜いてしまった。即ち――この物語には犯人が、いない。
 ハハ、と気が抜けた笑いは、喉に指がかかるに到って苦悩に満ちたものにに変じた。何者かの、否、セーレの手により縊られた躰は、滞りなく藤棚に吊された。
 犯人がいないのならば、あのメイドを犯人へと仕立て上げればよい。まぁ少しぐらいは混乱のタネは蒔いておこう。
 からん、と足元に血まみれのリッパーナイフが転げ落ちた。

「!! そんな……最後まで一緒にいらしたのはメイドさん。やはり犯人はメイドさんですか」
 藤棚に揺れる陽太を前に戦慄く澄姫。
「違います。来たらもう吊されていたんです。そして落ち着いてください、彼の足元に転がる血まみれのナイフを見て下さい」
 ――陽太はここで死んだふりで舞台から降りて殺し廻る、あ、これいけそうだわ♪ なんてワーズはいそいそと脳内で脚本を書替える。
「はやく知らせなければ。メイドさんを止めてくださ……きゃっ」
 ぺちん★
 ロリ化で証人の知能を下げるなんぞ証拠隠滅犯人ムーブでしかないのだが、そこはワーズ。誘惑には耐えきれなかった!
「黒髪幼女hshshshs! 清楚日本人形ロリ尊いー!!」
(「わわ、どうしましょうどうしましょう……」)
 シャルファは澄姫が探偵役だろうと期待して助手ここにありきと後につけたのだが……一部始終を見てしまいベンチの影で三角座り。
「! あなた!」
 つかつかつかつか。
 澄姫をおろし早足で近付くワーズはシャルファに耳打ち。
「あなたが犯人役でしょう? ちゃんと台本通りに殺ってくれないと困るります!」
「? 探偵役なのに全く調査をしないワーズさんに言われたくないです」
 こんな時の正論ほど人を苛立たせるものはない。
 怒り任せについ肩を押してしまう。するとシャルファは、蒼い髪を散らして崖を落ちていく。
 ちなみに、崖から5メートルは離れてた。おや、おかしーな??
「……?! わ、わたくしやってません!! あああ、ロリの素材を殺してしまうだなんて……わたくし呪われろ!」
 探偵役の筈なのにうっかり殺ってしまったと脱兎の如く逃げ出す。入れ替わり現れたのは十雉である。
「シャルファあああ!」
 危険を顧みず崖を駆け下り虫の息の妹の元に寄り添った。
「メイドさんに突き落とされちゃ……ました。やっぱり……本当のお姉さんじゃ……なかっ……」
「シャルファ、しっかりしろ。シャルファ……ッ」
 誰? と淡い口調で囁くシャルファの手を握る。風が吹き高台から流れ込む藤の仄かな香りが十雉の過去の記憶を暴き掻きむしった。
 あの日の藤も綺麗だった、残酷なまでに。
 老執事の娘である十雉とシャルファの母親が、借金を抱えた夫を亡くして『邂逅荘』の主人に助けを求めた日も藤が盛りだった。。
 祖父にあたる老執事は死亡済み。
 だからか主人は二人の母親になんの助力もせず、散々な罵りでもって追い出したのだ。
 母は孤児院前に二人を置き去りにし、河に身を投げた。
(「……そうか。こんな話、シャルファは知る訳ないし知らなくて良かったんだ」)
 妹の無実を漸く悟った兄の目の前で、シャルファは大きく一回痙攣をする。虚空に述べられた手のひら、だが瞳はもう誰も映せない。
「最期に本当の家族に、会ってみたかった……です……」」
「シャルファ……! 実は……オレが…………」

“アンタの生き別れの兄なんだ”
 真実の告白はシャルファの命に間に合わなかった。

「シャルファあああああ!」
 切々とした兄の慟哭が青々と茂る野山に響き渡る……。


 妹を藤棚に寝かせ館に戻った十雉を待ち受けていたのは、更なる死体であった。
 こたつに突っ伏す智華の傍らには山盛りのクッキーが皿に盛られている。
「あの……あの……金髪の子、死…………こわい……」
 澄姫はきゅうと目を手のひらで覆いメイドの触手の影に隠れた。先程までの物見遊山なしたたかさは鳴りを潜めている。
「くぅううう~、内気ロリちゃんが心のゲージいっぱいいっぱいで怯えてふるふるほっぺた揺らして泣くのを堪えるとか、なんというご褒美なのでしょう!」
 針飛びレコードの如く萌え萌え萌え萌え萌えしか言わないワーズ。
「ふ……ざけるなよ……此の……ッ」
 ぎぃと弱々しくあいたドアから転げ出てきたのは、一丁裏のスーツを真っ赤に染めたライラックであった、ちなみにダンディショタ。
 スープは真面目に美味しかった。だが毒入り。なので、紫色に変じた唇を怒りで震わせるも込みあげる内蔵物に耐えきれず嘔吐し苦しんだ。
 荒い息で這いずれば膿んだ内臓に痛みが走る。それでも最期の力を振り絞り、ライラックはワーズを糾弾せんと指さすのだ。
「此奴だ……此のメイドが、毒を……此奴のスープを飲んだら……嗚呼…………」
 ――差し入れを食べてしまったら、閉じこもった意味がないですよね? と、澄姫の頭に突っ込みが浮かんだが、少年ライラックが血まみれで迫る様は子供が悪魔なホラーあるある過ぎて怖い。だからぷるぷる震えるのみ。
「くそう、くそう……血族全員殺して……金を、独り占めする気……ッ、だな。巫山戯やがっ……」
 ぱたり。
 唐突にライラックの腕が落ちて事切れた。
「………………」
 こほん。
 ワーズは咳払いをすると、絵画を背にして作り笑いのカメラ目線。人差し指をたてて探偵ポーズ。意気揚々と画面の向こうに語りかける。

『視聴者の皆さん、今回は非常に難解な展開です。なんとわたくしが罠に嵌められて罪を着せられてしまいました!』
『皆さんは、やはりわたくしが犯人だとお思いでしょうか? それでは探偵マエストロにはほど遠いですね』
『ヒントは、陽太が持っていた血まみれのナイフ』
『さて、これより解決へ……』

「や……もう、やだ……こわいです……」
 ライラックの死に様の禍々しさにとうとう限界、澄姫が半泣きで逃げ出した。死体のライラックさん、怖がらせすぎたと胸が痛いです。
「待つんだ、1人になると危ない! 見失ったか。二手に別れて探そう」
 十雉が澄姫と逆の方に走り出したので、自然とワーズが幼女を追いかけることになる、役得!
「待って待って~、愛らしいロリちゃまぁ、メイドのおねーさんが守ってあげますわぁ!」
 階段の上で震える少女は、爛々と輝く瞳で迫り来るワーズに怯え動けなくなる。
「だからこっちに来て下さいな♪解決編にびっくりしたり泣いたりして花を添えてちょうだーい♪」
「こないで……きゃっ」
 メイドの手が掠めた刹那、もつれた足がバランスを崩し小さな体が階段を転げ落ちる。
 がだだだだだだだだん! とけたたましい音に慌てて折り返してきた十雉は、階下で首の骨があらぬ方向に曲がった澄姫の死体を認め憤怒を浮かべた。
「この殺人鬼が! 妹だけではなく館の全ての人間に手を掛ける気か……ッ」
 赦せない、と頭を振り、十雉は甲冑の像から剣の柄を掴んだ。
「違?! 今のもさっきのもわたくしじゃないし、あとその剣はダメ、やめて、スイッチ入っちゃ…………」
 ぶぅん……ッ! と風切り音が響いたかと思ったら、彼方より射出された矢が十雉を貫いた。

“『邂逅荘』みんな被害者だったどうしよう 完”







 さて、蛇足かもしれないが結果がどうなったかで〆ようと思う。

「これは、メイドさんが財産をのっとる目的で起こした犯行……と、いったところでしょうか」
 兄の躰を検死してしたり顔で頷くシャルファ、なんと生きている。
「最後のどんでん返しだって、推理物のお約束です!」
 そしてべこんっと大きな音をたてて、十雉の腰から胴体の形に歪曲する矢(大道具)を外した。
「おお、妹よ、無事だったんだね……」
「お兄様もお元気そうでなによりです」
 むくりと起き上がった十雉とシャルファで笑いあう、兄妹再会ほのぼの。
「俺も“実は生きていた”の一番ノリをやりたかったけど、先を越されちまったわ」
 ひたひたとワーズの頬をナイフで叩く。とっても甘い香りは苺ジャムだ。
「急に大人に戻るんだもんよ、首が絞まってホントに死ぬかと思ったぜ」
 縄の擦り後をなぞり陽太は苦笑い。番組終了の時点で子供化が解けたのだ。
「ははは、動機には“実はメイドは主人の愛人であり自分こそが正統な相続者だと信じている”を添えるのは如何でしょう?」
 普段の穏和な口ぶりでテディベアを抱えるライラック、それぞれが毒殺された場所にも愛らしいクマがぽてんとおかれている。
「折角フラグを立てたましたのに、いの一番に殺してくれくださらないなんて! 推理番組の構成作家失格ですわね!」
 なんて、智華は作った口調のままでワーズに指をずびしっとつきつける。
「いつもこんな風にグダグダだったんですか? よく番組が続きましたね」
 澄姫の追撃が的確すぎるぞ。

 ――そんな舞台裏でベコベコにされたワーズ・キューレは、視聴者の反応を検索し完全に心が折れてしまう。

 オチは何処に行ったという苦情が、脚本担当のワーズ・キューレへ殺到。
 それはそれとして、今回の役者達の迫真の演技は非常に面白かった。そう言えばいつもは棒読みで如何にもやらされてる感満載だったな、つまんないもの見せ続けやがってと、過去作品にまで遡りワーズ・キューレへの叩きとなる。
 最終的には番組の存続は不可能打ちきりと相成った。
 斯くしてテレビを通じたUDCアース乗っ取り作戦のひとつは猟兵達の手により潰えたのだ!

―終―

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月11日
宿敵 『ワーズ・キュレイ』 を撃破!


挿絵イラスト