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大祓百鬼夜行⑩〜しっとのからあげ

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#カクリヨファンタズム
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#大祓百鬼夜行


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●召し上がれ
「聞いてくださいよ店主! この間、付き合ってから一年の記念日だったんですけどね、彼がサプライズでプレゼントを用意してくれてたんですよ!」
「へえ、そいつはよかったねえ」
 カクリヨファンタズムの一角、屋台に並んで座ったカップルが、うるんだ瞳で見つめ合う。
「君には、もっと幸せになってもらいたいからね」
 はにかんだ笑みを浮かべる彼氏。そんな様子に口の端を上げた屋台の店主は、二人を祝福するように笑みを深めて、揚げていたそれをお皿に乗せた。
「いいねえ、それじゃこれは私からのサプライズだよ」
「わあ、ありがとうございます!」
「すいません、何だか気を遣わせちゃったみたいで」
 歓声を上げるカップルに、店主の笑みが、言いようのない迫力を帯びる。
「良いんだよ、幸せそうな人にはもっとサービスしてあげないとねえ」
 ほら、これも、これも、これもどうだい?
 サバの竜田揚げにコロッケ、カキフライにエビフライ、次々と揚がったそれが、お皿の上に積み上げられて――。
「え……?」
「いや、さすがにこんなには……」
 食べられないよ、という言葉は聞こえているのかいないのか。揚げ物の山は皿から溢れ、やがて世界を埋め尽くす。

●からっと
「感情は時に、炎に例えられるよね」
 左手の指先に、魔術の炎を一つ灯して、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が口を開く。ハートに火を点けて、なんて言葉が筆頭だろうか、灯る、燃え上がる、燻る、そして煮え滾る。
「それで、今回の骸魂はね、怨みや妬みを、実際に炎にしてしまうわけだよ」
 油菜女郎(あぶらなじょうろう)、横恋慕から火を点けられ、美貌を奪われ、失意の末に自殺して妖怪になったという、そんな逸話をもつ骸魂が、カクリヨファンタズムの妖怪を呑みこみ、オブリビオンと化してしまった。
 被害に遭ったのは、夜になると何処からともなく現れ、揚げ物屋台をやっているという謎の屋台店主だ。強力な妖怪でもあった彼は、オブリビオンになってもなお、同じように屋台を引いている。

 そこで、一つの奇跡が起きた。骸魂によって発生する、怨みや妬みの昏い炎。それがぐらぐらと煮え滾り、どろどろと燃え盛り、最高潮を迎えた時、唐揚げが最強に美味しく揚がったのだ――!

「ね、すごいでしょう?」
 にこにこと笑ったグリモア猟兵は、その素っ頓狂な話を平然と続ける。
「これだけなら『超美味しい揚げ物屋台ができました、めでたしめでたし』なんだけどねえ」
 どうやらそうはいかなかったらしい。
 オブリビオンと化した影響で、店主の『もてなし衝動』が大暴走、お客に無限に食べ物を出し続け、やがては世界を食べ物で埋め尽くすという恐ろしい力を得てしまった。
「このまま放っておくわけにはいかないよね。そこで、君達の出番だ」
 このオブリビオンを倒し、骸魂から妖怪店主を解放して欲しい、と彼は言う。
 方法は主に二つ。第一に、いつも通り戦闘して倒す事。この場合は敵の操る炎に注意する必要があるだろう。そして第二に、このオブリビオンの出す料理を食べまくる事。とにかく大量に出てくるであろうそれを食べる事で、暴走した『もてなし衝動』が満たされ、骸魂にダメージを与えるのと同様の効果が得られるのだ。
「その場合は、如何にたくさん食べるかの工夫が必要になるだろうねえ」
 提供されるのは唐揚げやトンカツ、フライ、串揚げなど揚げ物だらけ。種類は豊富だがいずれは飽きるかもしれないし、人によっては胸やけや胃もたれが酷い事になりそうだ。
 間に何か別のメニューを挟むとか、味を変えるとか、その辺りが有効だろうか。
「それからね、店主の妬みの心が燃え上がれば燃え上がるほど、カラッと美味しく揚がるらしいよ」
 逆に同情されたりすると、べちゃべちゃの揚げ物が出てくるようだが。まあ好みのものが出てきた方がたくさん食べられるものだろう。

「まあそういうわけだから、大変だと思うけど、任せたよ」
 ふっと指先の炎を消して、オブシダンは一同を現場へと誘った。


つじ
 こちらは大祓百鬼夜行の戦争シナリオで、一章構成となっています。

●油菜女郎
 普通に戦うか、プレイングボーナスを利用するかの二択です。
 屋台の店主である妖怪(男性)を呑みこんでオブリビオン化しているため、男女どちらの話も妬めます。

●プレイングボーナス
 屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
 たくさん食べるためにどういう手を打つかが重要になるかと思います。

●妬みの炎
 敵はUCで揚げ物を作っており、妬みの心が強くなればなるほど、炎はどろどろになり、逆に揚げ物はカラッと美味しく揚がります。何故かはわかりません。敵とは普通にお喋りできますので、幸せな様子や仲良しな様子を見せてあげれば勝手に妬みの心は増していくでしょう。
 妬みの心が最大になると、絶品『黄金の天麩羅』が大量に揚がるようです。

 なお、この辺りを刺激しなくても揚げ物は普通に美味しいです。

 以上になります。それでは皆さんのご参加、お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『油菜女郎』

POW   :    暴想
【燃え盛る程の恋慕を具現化した炎の渦】が命中した対象を燃やす。放たれた【呪詛を孕んだ】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    怨戯
攻撃が命中した対象に【行燈から放たれた炎による火傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【皮膚に広がる爛れ】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    醜艶
レベル×1個の【触れると激痛を伴う妬み】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠飴屋坂・あんかです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

藤・美雨
同居人の深(f30169)と一緒に

美味しいものを食べれば世界が救えるなんてお得すぎだね!
深を無理やり引っ張って屋台へゴー!

店主さん、どんどん揚げておくれよ
まずは唐揚げがいいな
最初はオーソドックスに、次はレモンで、おろしポン酢でリフレッシュもいいよね
他の揚げ物も含めどんどん食べてく
あ、キャベツもつけてくれると嬉しいよ

……でも、なんだか私ばっかり食べてないかい?
深もほら、カキフライとか美味しいよ?
魚介類がダメなんて子供みたいなこと言わないでよ
ほら、ふーふーして冷ましてあげるから。あーんして

……なんか店主さんの様子がおかしくない?
でも揚げ物がどんどん美味しくなってるからいっか!
えへへ、ごちそうさま!


呉・深
同居人の美雨(f29345)と一緒に

お得な依頼があるからと無理やり引っ張られて屋台に
本当に食うだけでいいのか?

美雨がどんどん唐揚げを頼むから一緒に食べる
もも肉だけだと飽きるから軟骨なんかも揚げてもらおうか
酒と合わせたくなるが、未成年が同行しているからここは我慢
お茶と一緒にいただこう

ん、俺があんまり食ってないんじゃない
美雨がめちゃくちゃ食ってるんだ
だから魚介類を避けているなんてそんな訳が……
しかし差し出されたら断るのも申し訳ない
カキフライも一口食べてみれば……なんだ、美味いな
今度家でも食いたいかもしれん

店主の様子には気付いているがスルーする
そうそう、美味いから問題ないんだ
ありがとう、ごちそうさま



●食わず嫌いはよくないよ
 月夜の晩――少なくともそう見えるカクリヨファンタズムの一角、屋台から漂う香ばしい匂いに向かって、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)が歩く。そんな彼女に連れ出された呉・深(星星之火・f30169)は、前方を行く彼女の方を見やり、先程からの疑問を口に出した。
「本当に、食うだけでいいのか?」
「そうそう、美味しいものを食べれば世界が救えるなんてお得すぎだね!」
 いやしかし、都合が良すぎないだろうか。自然とそんな事を考えてしまう深だけれど、美雨はそれに構わずぐいぐいと彼の手を引いていった。
「ああ、どうも……いらっしゃいませ!」
 物静かな雰囲気と、快活な接客態度、何やらちぐはぐな印象を受けるのは、骸魂のせいだろうか。間違いない、オリビオンが接客をしている、さすがにその様子を目の当たりにして、深は状況を受け入れざるを得ないと悟る。
「店主さん、どんどん揚げておくれよ」
「はぁいはい、少々お待ちくださいね」
 まずは唐揚げがいいな、と早速注文を始めた美雨に続いて席に着くと、油を満たしたそこに、店主が鶏肉を落としていく。狐色をした油から軽やかな音色が響いて、沸き立つ香りが食欲をそそる。
「最初はオーソドックスなのが良いよね。その次はレモンかなあ」
「もも肉だけだと飽きないか……?」
「おろしポン酢もあるって。リフレッシュに良いんじゃない?」
 あ、キャベツもつけてくれると嬉しい。そう最初から飛ばしていく美雨について、深もご相伴に預かることにする。あと軟骨とかも揚げてもらおうか。
「お兄さん、良いのが入ってるけど一杯どうだい?」
「ああ……いや、お茶をいただこう」
 店主のオススメにしばし考え、同行する未成年を一瞥し、自重を選んだ。
「遠慮しなくても良いのに」
「そういうのじゃない」
 つれない態度の彼の様子をにやにやと眺めて、美雨は皿の上を指差す。
「まあいいけど、なんだか私ばっかり食べてないかい?」
「俺があんまり食ってないんじゃない。美雨がめちゃくちゃ食ってるんだ」
 飽くまで論理的に返してはみるが、彼女にそういうのは効かないらしい。特に気にした様子もなく、新しく揚がったカキフライを摘まみ上げて。
「ほら、これとか美味しいよ?」
 魚介類がダメなんて子供みたいなこと言わないでよ、と逃げ道を塞ぐ美雨に、「そういうのじゃない」と今日何度目かの台詞を吐く。そう、別に魚介類を特別避けているわけではない。決して。
「ほら、ふーふーして冷ましてあげるから。あーんして」
 子どものような扱いには閉口するが、差し出されたものを断るのはさすがに申し訳ないか。そう考えた深は大人しくそれを口にした。
「……なんだ、美味いな」
「でしょう?」
 ぱっと華やいだ笑みを浮かべる彼女の横で、深は口の中のものを味わいながら頷く。
「今度家でも食いたいかもしれん」
「ぐ、ぐわァーッ、妬ましい!!!!」
「……今の何?」
「いえ、何でもありません。喜んでいただけて料理人冥利に尽きますよ」
「……」
 いま店主の様子がおかしかったというか、明らかに仰け反って悲鳴を上げたうえに揚げ物の炎がどろどろしてきているが、とりあえず二人は見ない振りをしておいた。
「まあ、揚げ物がどんどん美味しくなってるからいっか!」
「ああ、問題はない」
 嫉妬の炎が作る揚げ物は、何故だかどんどん味わい豊かになっていく。和気藹々と食事を進めて、店主が謎の出血に悩まされ始めたところで、二人のお腹はようやく満たされた。
「ありがとう、ごちそうさま」
「えへへ、ごちそうさま!」
「ええ、ええ。是非ともまたいらしてください」
 オブリビオンは、死にそうな笑顔で美雨と深を見送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九琉・りんね
【団地女子会】

なっ!?べっ、べつにそんなことはないですけど!!??
そんな雑な……あ、でも美味しそうですね揚げ物……コロッケもある……
薬袋さん……あっ、布静さんって料理も出来るんですか?
ほわ……一度その、食べてみたいですね、そっちも……

(やんややんやとやってる他三人をぽけ~っと見ながらコロッケをもふもふ)
ン゛ッ!!??うっへゲッホ!!ちょっ…な、なんでいきなり私なんですか!!??
そ、そりゃあちょっとは……気にならなくもないというかなんというか……
う、うう~~~……!!うるさいですよ!!!
もう!!!もう!!!黙ってくださいよ!!!もう!!!!


鎹・たから
【団地女子会】
とても強そうなメンバー紹介です
愛情が募るあまり、すきな人を日夜追いかけるのですか
硝子には晶が居るので安心ですね

たからは熱々は食べられませんが
冷めてもきっと美味しいでしょう
サクサクの揚げ物を目指します

八千代はいつも、布静のつくるごはんを美味しく食べるのですね
きっと布静も幸せに違いありません

さ、最近の彼とたから、ですか(ぽ
その、映画館に行ったり、フラペチーノを飲んだり
キスはまだです!早すぎます!(ぶんぶん

りんね、コロッケが顔についていますよ(拭き拭き
落ち着いて食べましょうね

…ところで串カツが全然冷めません
いつもはなびきが冷ましてくれるのに
(友達の為にただ揚げ物を揚げてもらうだけの羅刹


笹鳴・硝子
【団地女子会】

ストーカーにならない、これ重要ですよ
たからちゃんもりんねちゃんも気をつけましょうね
やっちーは……(するとしてもされるとしてもどうせ合意の上なので)まあいいでしょう

やっちーの惚気とたからちゃんの甘酸っぱい恋バナwith揚げ物をいただきに来ました
よしてくださいよ店主、同情などいりません
うちにはおねえちゃん大好きっこなベリキュートな弟がいるんですから
おねえちゃん超ハッピーですよ、ええ本当に
だから衣サックサクな帆立フライを下さい

ところでやっちー、初キッスが苺の味ってほんとですか(曇りなき眼)

(基本真顔・キスの味も知らないのは仕様です。大真面目です)


花邨・八千代
【団地女子会】
女子会だ!
イカれたメンバーを紹介するぜ!

最近恋人ができた花のJK、たから!
好みはストーカーにならないタイプの男、しょこ!
恋に夢見るお年頃、りんね!
超イカす団地妻、俺!
以上だ!

なんか知らんけど恋バナしつつ揚げ物食えばいいんだろ?
あ、この唐揚げうんまーい!
でも布静が作ってくれた方がもっとサクサクしてたなぁ
おう、俺の旦那の料理は世界一だぞ!

初ちゅーの味かぁ、レモンサワーの味だったな…

たからンとこは最近どう?ちゅーした?
えー、まだ~?
相変わらず甘酸っぺぇ恋してんなぁ

りんねもたからみてーな恋が気になる感じ~?
どんな奴がタイプなんだよ?年上とか?
白状しろy(口に熱々の揚げ物突っ込まれて死ぬ)



●女子会
 いいかお前等、これから始まるのは団地に住んでるやつらを集めた女子会だ! やたらと癖のある住人の中から厳選された、最強にイカれたメンバーを紹介するぜ!
「最近恋人ができた花のJK、たから!」
「え、まあ、はい」
「おめでたい話ですねえ」
 若干返答に困っている鎹・たから(雪氣硝・f01148)を他所に、九琉・りんね(おてんばまりおねっと・f00448)が頷いて、おめでとうございます、と店主がさらにそれに続いた。
「好みはストーカーにならないタイプの男、しょこ!」
「これ重要ですよ。たからちゃんもりんねちゃんも気をつけましょうね」
「はーい」
「愛情が募るあまり、すきな人を日夜追いかけるのですか……気を付けますね」
 笹鳴・硝子(帰り花・f01239)の言葉に、たからとりんねがそれぞれ返事を返す。もう一人はまあいいでしょう、やろうがやられようがどうせ合意の上でしょうし。
「続いて最年少、恋に夢見るお年頃、りんね!」
「なっ!? べっ、べつにそんなことはないですけど!!??」
「わかりやすい」
「そうなんですか?」
 きわめて適当な振りと合意が得られたところで、一番騒々しい最後のメンバー。
「超イカす団地妻、俺!」
 以上だ! そう言い切った花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)に、とりあえず周りのメンバーと店主がワーワー声援を送った。簡潔なご紹介ありがとうございます。
「とても強そうなメンバー紹介でしたね」
「そうだろー? 即席にしちゃ良かったと思うんだよな」
 満足気に頷きつつ、八千代はようやく席に着く。先に座っていた硝子は、紹介している間に用意された唐揚げの山に箸を伸ばし掛けていた。
「他にも仕込みとかあります?」
「いや。後はあれだろ? 恋バナしつつ揚げ物食えばいいんだろ?」
「そんな雑な……あ、でも美味しそうですね揚げ物……コロッケもある……」
 ざっくり言えばその通り。供されていく揚げ物達に視線を引かれたりんねに、店主はにこやかに笑いかける。
「ええ、ええ。皆さん仲がよさそうで何よりです。どんどん召し上がってくださいね」
「あ、この唐揚げうんまーい!」
 早々に嫉妬の兆候が見えているのか、衣の歯応えがやたらと良い。早速いくつか頬張る八千代だが。
「でも布静が作ってくれた方がもっとサクサクしてたなぁ」
「薬袋さん……あっ、布静さんって料理も出来るんですか?」
「おう、俺の旦那の料理は世界一だぞ!」
 イメージに合うような合わないような。でもそれよりも、この揚げ物を超える味なら、そっちも食べてみたいなあ。ほわわと考え込むりんねに対して、八千代の方はえらく誇らしげ。そんな様子を見つめて、たからはなるほどと頷いた。
「八千代はいつも、布静のつくるごはんを美味しく食べるのですね」
 きっと布静も幸せに違いありません。うんうん。この唐揚げはまだ熱いからしばらく置いておきましょうね。一度摘まんだそれを皿の上に戻した彼女に、今度は追及の手が伸びる。
「たからンとこは最近どう?」
「さ、最近、ですか」
 表情の変化は乏しいものの、頬がわかりやすく染まる。話題にすれば当然その時の事を思い出すことになるわけだが。
「その、映画館に行ったり、フラペチーノを飲んだり……」
「で、ちゅーした?」
「まだです! 早すぎます!」
 ぶんぶんと頭を振る彼女に、「えー、まだ~?」といつものように、にやにやと笑いながら返す。
「相変わらず甘酸っぺぇ恋してんなぁ」
「あ、甘酸っぱいと言えば」
 そこで、丁度竜田揚げを嚥下した硝子が口を開く。甘酸っぱい恋バナの続きも気になるけど、それはそれとして。
「やっちー、初キッスが苺の味ってほんとですか」
 こちらも表情の変化が薄いのでわかりにくいが、別段『まだ』と口走ったたからをからかう調子も無いようだ。無闇に瞳が真っ直ぐなので、もしかすると大真面目なのかも知れない。まじで?
「初ちゅーの味かぁ、レモンサワーの味だったな……」
 なるほど。それを聞くと今後レモンサワーを頼みにくくなるような、そうでもないような。参考になったと言うように頷く彼女の前に、そっと店主から心づけが差し出された。
「よしてくださいよ店主、何ですかこのべちゃっとしたフライは」
 同情は要りません。そう告げる彼女には、変わらず慈しむような目が向けられているが。それを察してか、硝子はもう一つ話を付け足す。
「良いんですよ、うちにはおねえちゃん大好きっこなベリキュートな弟がいるんですから」
 気負った様子もなく言う彼女の様子に、店主の頬が小さく引き攣った。
「硝子には晶が居るので安心ですね」
「おねえちゃん超ハッピーですよ、ええ本当に」
 たからの言葉に満足げに頷いた硝子は、新しく揚がった串揚げを口に運ぶ。良いですね、衣がサクサクになって来ましたよ帆立フライください。
 冷静に火加減調整までし始めた硝子の様子を感心したように眺めて、りんねはコロッケをもぐもぐと頬張る。衣はさくさくで中はやわらか。黙々と食を進めていた彼女の方に、八千代から矢が飛んだ。
「お、りんねもたからみてーな恋が気になる感じ~?」
「ン゛ッ!!??」
 奇襲を受けるのにコロッケは少々辛い。喉に詰まるし。
「うっへゲッホ!! ちょっ…な、なんでいきなり私なんですか!!??」
「りんね、コロッケが顔についていますよ。落ち着いて食べましょうね」
 飽くまでマイペースなたからがその口元を拭う。されるがままになりながら、りんねもしばし、彼女の顔に視線を向ける。デートの話をしていた時の口調や表情。それを思い返すと、こう。
「そ、そりゃあちょっとは……気にならなくもないというかなんというか……」
「ほらな~? で、どんな奴がタイプなんだよ? 年上とか? 白状しろy」
 ずも、とその口に揚げたてのジューシーなトンカツがぶち込まれ、うざ絡みモードになっていた八千代は死んだ。
「もう!!! もう!!! 黙ってくださいよ!!! もう!!!!」
 顔を真っ赤にして訴えるりんねと悶絶する八千代。でもまあこの羅刹は丈夫だからすぐに復活するだろう。変わらぬ表情でカツを齧っていた硝子は、改めて店主の方へと視線を向けた。こちらも平然を装っているが、拭った汗に疲弊が見える。良い感じに話が弾んで食が進み、消化された料理の分だけダメージを受けているようだ。
「こちらのことはお気になさらず。あなたもどうぞ召し上がってください」
「はい……」
 同じくその様子をじっと見つめていたたからは、にっこりと微笑む店主に従うように答える。
「……」
 きっと、この骸魂には悲しい来歴が在って、行灯から生じる炎にも、その情念が渦を巻いているはずなのだ。届かぬ無念、叶うことの無かった願い、それでも諦めきれぬ故の呪いが、ぐるぐると混ざり合い、燃え盛って、今は串カツを揚げている。
 彼女がそれをどこまで察せたかは定かでないが、少なくとも世の不条理の一端を感じることはできただろう。さっきから皿の上に置いていたそれを、おもむろに手にした彼女は。
「あふい……」
 一口齧りかけて止まった。
 炎が特殊過ぎるせいか、全然冷めてくれない。いつもならなびきが冷ましてくれるのに。若干涙目になりながら、たからは串カツをもう一度お皿の上に置いた。
 これもまた、ままならない世の不条理の一つである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戀鈴・シアン
【硝華】

とにかく沢山食べればいいんだな
食べ盛りの腕が鳴る
好きなのだけ食べて、残ったのは俺に回せばいいよ

店主を嫉妬させれば美味しくなるらしい
どうすればいいかな…
店主の目の前で口説いてみる?
……こほん
イト、今日も可愛いな
お前と一緒にいると世界が美しく……えっと、海老天の尻尾すらも麗しい紅百合のように見えるよ
だめだ、俺、下手過ぎない?

え、イトも?
……うん、なんかすごい照れる
ふふ、続きを食べようか

やっぱり食べさせ合いっこが鉄板かな
ほら、こっちの天麩羅、美味しかったよ
イトのも頂戴
…人前というのは少し照れが
二人の時ならいつでも、喜んで

黄金の天麩羅にありつけるといいけれど
十分に舌鼓を打たせてもらえたね


戀鈴・イト
【硝華】

ふふ、僕もシアンと同じ物を食べるよ
君と同じものが食べたいんだ
僕も食べ盛りだからね
任せておいて

……し、シアン
無理はしなくていいんじゃないかい?
赤くなった頬を指先で冷ましながら
…うれしかった、なんて
言えはしないけれど

僕もやってみよう
シアン、今日も綺麗だね
シアンの美しさは
よく揚がった海老天よりも
芸術的で…えっと…お腹が減るよ…?
だめだ、改めてってなると難しいね

そ、そうだね
食べさせあいっこも良いだろうな
あーん
ん、美味しい
シアンも、こっちの天ぷら美味しいよ
…人前じゃなければ、いつもあーんしていいのかい?
なんて

食べるたびにカラッと揚がっていって
お腹が幸せに膨らんでいく
臆、とても美味しかったね



●天ぷらみたいに輝く君と
「いらっしゃいませ、どうぞどうぞ、空腹を満たしていってくださいね」
 もてなしの心が暴走状態にあるためか、とても愛想の良い店主に勧められるまま、戀鈴・シアン(硝子の想華・f25393)と戀鈴・イト(硝子の戀華・f25394)は並んで座った。食材は一体全体どこから湧くのか、大量に積み上げられたそれを、妖怪店主は次々と鍋に収めていく。しゅわしゅわと音色を奏でて、少し待てば多数の揚げ物が二人の前に並べられることだろう。
「よーし、とにかく沢山食べればいいんだな」
 そう、とにかくたくさん食べられれば、戦うことなく世界を救うことが出来るのだ。食べ盛りの腕が鳴る、とシアンは意気込む。
「イトは好きなのだけ食べて、残ったのは俺に回せばいいよ」
「ふふ、僕もシアンと同じ物を食べるよ」
 気遣う言葉に首を横に振って、イトはシアンに微笑み返した。だって、君と同じものが食べたいから。
「それに、僕も食べ盛りだからね。任せておいてよ」
 言いつつ、早速揚がった天ぷらを齧る。軽い歯応えと、素材の味を引き立てる芳醇な香り、前評判通りの味に思わず表情も綻ぶ。まあ、既に炎が嫉妬の熱を帯びかけているせいもあるのだろうが。
「これが……より美味しくなるんだね」
 ちょっと信じられない話だけど、と呟きつつ、シアンは店主と、そしてイトへ順に視線を向ける。どうすればいいのか、と言えば答えは明白、一番わかりやすいのはここで口説いてみせることだろう。
 え? ここで? ほんとに? 逡巡しながらも、咳払いを一つ。
「イト、今日も可愛いな」
「……し、シアン?」
 冷静になってしまうから今話しかけられるとまずい。視線を巡らせたシアンは、皿に乗っていた天ぷらに目を止めて。
「お前と一緒にいると世界が美しく……えっと、海老天の尻尾すらも麗しい紅百合のように見えるよ」
 なんて? 他でもない自分でそう思ってしまい、シアンは思わず顔を伏せた。
「だめだ、俺、下手過ぎない?」
「え、えっと、無理はしなくていいんじゃないかい?」
 フォローするようにイトが言う。幸い俯いてくれたおかげで、頬が赤らんでいるのを気付かれずに済んだだろうか。言い回しは不器用だけど、それはそれとして嬉しいもの。それならこちらも、とイトもそれを真似て見ることにした。
「シアン、今日も綺麗だね。シアンの美しさはよく揚がった海老天よりも芸術的で……」
 まさか彼を海老天に例える日が来るとは思わなかった。もはや迷宮のようになった思考の中で、どうにか続けられる言葉を探す。
「えっと……お腹が減るよ……?」
「イト……」
「だめだ、改めてってなると難しいね……」
「うん、なんかすごい照れる」
 一緒に同じ恥ずかしさを味わった二人は、どちらからともなく吹き出し、笑みを交わした。
「ふふ、続きを食べようか」
「そうだね」
 いつの間にやら積み上げられていたさくさくの揚げ物を摘まんで、シアンは自然な流れでそれを差し出す。
「ほら、こっちの天麩羅、美味しかったよ」
「本当?」
 あーん。口説くのも良いが、やはりこの手の鉄板は食べさせあいっこだろう。
「ん、美味しい」
「イトのも頂戴」
「うん、こっちの天ぷらも美味しいよ」
 笑い合いながら食べ進める二人を、店主は「仲がよろしいんですねえ」といったにこにこ顔で見つめている。しかしながら油を熱する炎の方は、ぐらぐらと煮え滾っているようだが。
「……人前っていうのは、少し照れるね」
 そんなシアンの言葉に、イトは「おや」と面白がるように片眉を上げてみせる。
「人前じゃなければ、いつもあーんしていいのかい?」
「二人の時ならいつでも、喜んで」
 負けじとそう返すシアンの言葉に、店主の呪いの炎が最高潮を迎えた。
「ふふふ、見ている方が恥ずかしくなってしまいますよ」
 そろそろこちらも召し上がってください。表面上はにこやかな店主が鍋から上げた天ぷらは、先程のものよりも輝かしく、黄金の光を放つ――!

「臆、とても美味しかったね」
「そうだね、絶品だったよ」
 美味しいおかげで箸も進んで、お腹は幸せに満ち足りた。にこやかにごちそうさまを言う二人の背後で、油菜女郎は満足げに大ダメージを負っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【千宵桜】

揚げ物の屋台初めてだ
お腹空かせてきたし
沢山頼もう千織
串揚げなら結構いけそう、種類あるし
あ、エビフライも美味しそう…!
千織は何がいい?
天麩羅もいいね、俺はさつまいも好き
おすすめの野菜串揚げを渡し

しっとさせるって難しいけど
仕事中の油菜女郎の前で
語るはきみと出掛けた思い出話
次は何処に遊びに行こう?
夏はお祭りの出店巡りも良いね

あ、衣がさっくさく
合間に汁物やサラダも挟みつつ
お酒が飲めたら最高なのに
じゃあ今から予約しとこ

折角だからデザートも食べて味変
俺、ゆずシャーベットが良いな
しっとのダメ押しで
千織にあーんでもしてみようかな?なんて
俺も?ってぱくり

さっきの出掛ける約束
きみと本当に行けたら嬉しいよ


橙樹・千織
【千宵桜】

そういう屋台があるとは聞いていましたが
来るのは初めてですねぇ
ええ、ええ。沢山食べましょう
そうですねぇ…
天麩羅はある?無ければ鶏ささみのフライにしようかしら
ぁ…千鶴さん、お野菜の串揚げはありそうですか?

あの日は楽しかったですねぇ
お仕事中の店主さんの前でお出かけの話
ちょっと意地悪かしら?
お祭り?ふふ、それも楽しそう
何処から行きましょうか

ん、サクサク美味しいですねぇ
お茶を飲みつつ微笑み
お酒?
いつかその日が来たら一緒にどうですか?

デザート!ぜひ!
柑橘系はさっぱりしていいですよねぇ
はわ!?ぇ、えと…
しどろもどろになりつつ、ぱくり
…千鶴さんもいかがです?

あら…じゃあ、約束
きっと行きましょうね



●思い出と約束
 揚げ物の屋台。そういうものがあるのは知識として知っては居たが、訪れるのは初めて。宵鍔・千鶴(nyx・f00683)と橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は、今回の戦場となるその場所へ、連れ立って足を踏み入れた。
「お腹空かせてきたし、沢山頼もう千織」
「ええ、ええ。沢山食べましょう」
 既に何名か、他の猟兵達にも様々な揚げ物が供されている。それらの様子とメニュー表の間を目移りさせながら、千鶴は何を頼むか吟味を始めた。串揚げなら結構いけそう、種類あるし。あ、エビフライも美味しそう。
「千織は何がいい?」
「そうですねぇ……天麩羅はある?」
 無ければ鶏ささみのフライでも、という彼女に、「両方あるよ」と答えて。
「天麩羅もいいね、俺はさつまいも好き」
「ぁ…千鶴さん、お野菜の串揚げはありそうですか?」
「それじゃ、それもいくつか頼んでおこう」
 注文を終えると同時に、サービスですよと言わんばかりに山盛りになった皿が置かれる。もてなしの心が暴走状態にある店主は、どうやら注文してないものも大量に提供してくれるものらしい。
 それと戦うのは吝かではないが、まずは持ってこられる料理の味を上げておこうと、二人は作戦を決行する。事前の情報から、そのためには嫉妬心を煽れば良い事はわかっているので――。
「こうして二人で出かけるのも、何度目になるだろうね」
 そんな話を振る。苺を一緒に食べに行ったり、イルミネーションを眺めたり、語り合える思い出はいくつもある。
「あの日は楽しかったですねぇ」
「次は何処に遊びに行こう?」
 そうして、思い出だけでなくその先の未来に視線を移す。新たな場所へ、共に。そう考えれば互いに自然と笑みが浮かんで。
「何処から行きましょうか」
「夏はお祭りの出店巡りも良いね」
「お祭り? ふふ、それも楽しそう」
 来る季節へ思いを馳せて――そうした様子が功を奏したのか、そこから運ばれてくる揚げ物は明らかに質が上がって見えた。
「あ、衣がさっくさく」
「ん、サクサク美味しいですねぇ」
 二人で頼んだ串揚げを齧りながら、そんな言葉を交わす。
「お酒が飲めたら最高なのに」
「お酒。……またあの時のように、酔っぱらってしまいたいのですか?」
「それは言わない約束じゃなかった?」
 そういえばあれもカクリヨだったろうか、苦笑いを浮かべる千鶴の顔を見て、千織はくすくすと微笑んだ。
「いつかその日が来たら一緒にどうですか?」
「じゃあ今から予約しとこ」
 冗談めかしてそういった千鶴は、表情を引き攣らせている店主の方に、他のメニューについて問う。油物ばかり食べている舌をリセットするために、サラダに汁物、それからデザートも、と注文を重ねて。
「俺、ゆずシャーベットが良いな」
「柑橘系はさっぱりしていいですよねぇ」
 嬉しい事に意見の一致が見られた。ということで。
「それじゃあ――」
「はわ!? ぇ、えと……」
 はい、あーん。千鶴は匙で掬ったシャーベットを差し出す。それは予測していなかったようで、千織はしどろもどろになっているが。
 ようやく覚悟を決めてそれを口にし、お返しにとこちらも匙を手に取った。
「……千鶴さんもいかがです?」
「俺も?」
 こちらは平気な様子でぱくりと食べて、美味しい、と今日何度目かの感想を言い合う。
 ――ああ、そうだ。そこで思い付いたように、千鶴が口を開いた。
「さっきの出掛ける約束、きみと本当に行けたら嬉しいよ」
「あら……じゃあ、約束ですよ」
 きっと行きましょうね。それが叶う日を思い、今日一番の笑顔が花開く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シルヴィア・ジェノス
まあ、揚げ物!?わーい大好き!【大食い】だから綺麗に、でも際限なく食べちゃうわよ!
ニンニクのきいた鶏のから揚げ、分厚いトンカツ、野菜の天麩羅盛り合わせ!
大根おろしとかタルタルソース、ポン酢、ソースと味を変えて食べるわね
天麩羅はお塩で頂くのも良いわよね!

ん~おいしーい♪揚げたてはやっぱり最強だわ!しーあーわーせー!

ちょっと可哀想だけれどより美味しいものを頂きたいので
「恋人にも食べさせたかったわ、この揚げ物の数々!彼ってば不愛想で意地悪ばかりするんだけれどね、時々優しいし根は悪い人じゃないの。背も高くて格好良いのよ、なんのかんの私は彼にぞっこんで……なんてきゃー!はずかしー!」



●より美味しく
 カクリヨファンタズムの夜の出店、噂には聞いていたそこを、シルヴィア・ジェノス(月の雫・f00384)が訪れる。複数の屋台が思い思いの場所に出ており、美味しそうな匂いが混ざり合って、その一帯を包んでいる。
「どうだいお姉さん、食べてかない?」
「まあ、揚げ物!? わーい大好き!」
 店主の一人に誘われるまま、シルヴィアはその屋台――店主がオブリビオンと化した揚げ物屋へと飛び込んで行った。
 食欲旺盛、一言でいえば大食いの彼女にとって、今回の相手はお誂え向き。大根おろしにタルタルソース、ポン酢、ソース。それから忘れてはいけないのが天ぷら用のお塩。調味料をずらっと並べたシルヴィアは、万全の体制で敵の軍勢を迎え撃った。
 ニンニクの利いた鶏のから揚げ、分厚いトンカツ、そして野菜の天麩羅盛り合わせ。群れを為して迫るそれらを、彼女は綺麗に平らげていく。
「ん~おいしーい♪」
 満面の笑みを浮かべるその様子に、店主も上機嫌で揚げたフライを皿に追加する。そんな援軍も、シルヴィアにしてみれば文字通り美味しいご馳走だ。
「揚げたてはやっぱり最強だわ! しーあーわーせー!」
「いやあ、良い食べっぷりですねえ」
 舌を楽しませ、お腹を満たす至福の時間。けれど、とシルヴィアは口を開く。はぁ……と満足気な吐息に悩ましい響きも混ぜて、ちらりと店主に目を遣った。
 より美味しいものを食べるにはどうすればいいか、彼女は知っている。少し可哀想という思いもあるが、より良い味を求めないのはそれはそれで失礼というもの。
「恋人にも食べさせたかったわ、この揚げ物の数々!」
 ん、と店主の表情が強張るのを見逃さず、追撃。
「彼ってば不愛想で意地悪ばかりするんだけれどね、時々優しいし根は悪い人じゃないの。背も高くて格好良いのよ、なんのかんの私は彼にぞっこんで……なんてきゃー! はずかしー!」
 心の籠った惚気は、効果てきめんだったようで、店主の操る炎の色が、暗く淀んで鍋を炙る。けれどそれに反して出される料理は、どんどん美味しくなっていく。
 期待通りのそれに舌鼓を打って、シルヴィアは出された料理を引き続き――それこそ、店主が疲弊するまで食べ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
お供のおたまも連れ
いざ魅惑の食べ放題へ

伊織、伊織
俺はべちゃっとしたものより
からっとしたものが頂きたいです
――分かりますね?
(普段は生暖か~くスルーする嘆きを
今日はにっこり圧し)

という訳で、一肌脱いで男を見せてくださいねぇ
(伊織の前へうるうるきらきらと期待の眼差し向ける亀さん掲げ)

ふふふ
おたまも火傷に注意して食べるんですよ
はい、あーんして――良い子ですねぇ
幸せそうに食べる姿の何と愛らしい事
(一応箸休め混ぜつつもペース落ちぬ底無し食道楽)

俺は美味しいものなら幾らでも頂けますので
どんどんおかわりください
いやぁ、至福ですねぇ
(身も心もほっくほく――
お供と仲睦まじく二人の世界に入り込み色々堪能)


呉羽・伊織
【花守】
(何故か菊里に連れられお供の亀も一緒に!)

何この色んな意味で熱々の戦場
火に油を注ぐとは正にこの事…
(屋台の熱気と其を煽る方々に遠い目)
俺も女の子と仲睦まじくあーんとかしたいだけの戦いだった…
物理的にも精神的にも胸焼けしそう…!

(圧力笑顔にジト目返し)
…ワカッテルヨ
でも何でソコで亀が出てくるの??

ちょっ、亀に火をつけるだけつけて放置すんなー!
二人の世界に旅立つなー!

…(無言で亀と揚物を交互に見て、色々腹括り)
ウン、亀はお腹壊さないよーに亀用おやつにしとこーネ
ハイあ~んして!
(ヤケ――だが何やかんやで幸せそうな亀に和みつつ揚物に挑み)

あ~美味しい~
ケド、茶や野菜もちゃんと採れよー!(必死)



●ある種の天敵
 カクリヨの夜にはどこらともなく屋台が現れ、美味しい料理が食べられる。今宵のお客は猟兵ばかりで、それも店主に憑いた骸魂の特徴もあり、仲睦まじい様子の男女が結構な数出入りしていた。
「何この色んな意味で熱々の戦場……」
 芳しく、決してしつこくない油の香りと、それに伴う熱気。ただでさえ調理の熱を感じると言うのに、そのお客の中の良い様子が、正に火に油を注ぐという言葉の通り、店主の操る情念の火を煽り立てている。――ここに乗り込むのか。思わず呉羽・伊織(翳・f03578)は遠い目をする。
「俺も女の子と仲睦まじくあーんとかしたいだけの戦いだった……」
 始まる前から終わった表情をしている彼が席に着くと、早速お通し代わりにべちゃべちゃの海老天が置かれた。店主の同情が垣間見える一品、まああんなことを口にすれば当然そうなる。
「伊織、伊織」
 肩を落とした彼に、隣に座った連れ、千家・菊里(隠逸花・f02716)が声をかける。
「あなたのその嘆きはもう飽きるほど聞いてきましたが……」
 そして、いつもならばスルーするところですが、と前置きして、菊里は自分の前にもセットで置かれていたべちゃべちゃのかき揚げを、伊織の皿に移した。
「俺はこういうのよりからっとしたものが頂きたいです」
 ――分かりますね?
 いつもと同じように見えたが、今日はその裏にすごい圧力を感じる。何でこんなに本気なんだ。
「……ワカッテルヨ」
「はい、では一肌脱いで男を見せてくださいねぇ」
 ぎこちなく返事をする伊織の前に、菊里は亀を差し出した。うるうるきらきらと、その目は期待に輝いている。
「何でソコでこいつが出てくるの??」
「頑張ってください。こちらはこちらで楽しみましょうか、おたま」
「ちょっ、亀に火をつけるだけつけて放置すんなー!」
「はい、あーんして――火傷に注意して食べるんですよ」
「聞け! 二人の世界に旅立つなー!」
 良い子ですねぇふふふ、と自分のお供といちゃいちゃし始めた菊里から、伊織は諦めたように視線を切る。こうなったら聞きやしないだろう。何だよ、結局いつものやつか。
 さっきからずっと感じている期待の眼差しに、伊織はようやく腹を括り、向き合うことにした。
「わかったよ……ウン、でも亀はお腹壊さないよーに亀用おやつにしとこーネ」
 擦り寄ってくる亀に、持たされていたそれを与えて、伊織は溜息を吐く。
「ハイあ~んして!」
 喜んでそれに食いつく亀の様子を眺めて……まあ何やかんや幸せそうな姿を見れば、気持ちも和む。自暴自棄になった心を落ち着けながら、伊織は微笑みを浮かべて、自分も揚げ物を口に運んだ。
「……」
 べっちゃべちゃである。
「当たり前でしょう。もっと楽しまないと」
「くっ……!」
 いやあ、幸せそうに食べる姿の何と愛らしいこと。菊里の方は既にサクサクになった唐揚げを堪能しているようで。
「俺は美味しいものなら幾らでも頂けますので、どんどんおかわりください」
 それに負けぬよう素直に、少なくともそう見えるように笑顔を作って、伊織は可愛い亀にもう一度あーん、と餌を差し出した。
「いやぁ、至福ですねぇ」
「ケド、茶や野菜もちゃんと採れよー!」
 だんだんと、差し出される揚げ物の衣がカラッとしてきたような気がする。
 食感の変化も味わいながら、二人は骸魂がダメージを受けるまでたっぷりと、料理を堪能していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【金蓮花】

揚げ物ならクロウさんも食べれるもんね
えへへ、いっぱい食べようねー

唐揚げやトンカツは半分こしやすいね
あ、このクリームコロッケ美味しいよ
一口あげる

自然な素振りであーんと一口
食べてくれたらにこにこ笑顔で
ね、美味しいよね
クロウさんは何食べてるの?
わーい食べるー!(あーん)

定番のソース以外にも塩とか醤油とか
揚げ物は色んな調味料に合うから不思議
行儀良く食べるけど、たまに子供らしく口端にソースが

え?あ、ありがとう…
大人しく拭かれつつ、恥ずかしげに唇を尖らせ
むー、子供って言うなぁ

…でも甘やかされるのは満更じゃなかったりして…

分身も自分の一部だし
小さいから場所は取らないし
【指定UC】にも手伝わせるね


杜鬼・クロウ
【金蓮花】

だな。飽きねェように色んな種類交互に食ってこうぜ!
澪は小食だろ?あんま無理すンなよ
どう味か変わるか分からねェケド、
いつも通りの俺達でいけば何とかなる気ィする

助け合い精神見せつける
端から見ると男女の仲良しカップルに見えなくもない(実際は全然違う

お、どれどれ
絶品だなァ

澪から貰ってクリームコロッケぺろり
美味に自然と笑顔に

俺は鯵のフライ食ってた
澪も食ってみる?

熱々なので火傷しない様に冷まして渡す

口の横、ソースついてンぞ(ハンカチで拭き取り
やーっぱまだおこちゃまですねェ?(揶揄って頭ぽむ
流石に苦しくなってきたか
閃墨(八咫烏の名)、お前も食うの手伝ってくれ

シメに狙ってた黄金の天婦羅食べれたら上々



●距離感
 幾つもの戦争を乗り越えてきた二人だが、カクリヨファンタズムのそれもまた、一風変わっていた。ある種の慣れもあるのだろう、今度はとにかく食事をすればいいのか、とそれをあっさり受け入れて、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は揚げ物屋台を訪れた。
「揚げ物ならクロウさんも食べれるもんね」
「だな。飽きねェように色んな種類交互に食ってこうぜ!」
 いらっしゃいませ、とにこやかに告げる店主の様子を探り見つつ、二人は熱気と芳醇な香りの源を前に、席に着く。
「ああ、でも澪は小食だったよな? あんま無理すンなよ」
「大丈夫だよ、いっぱい食べようねー」
 気遣いにお礼を言って、えへへと朗らかに微笑み返す。一見は見目麗しい男女連れ、そんなやり取りだけでも店主の呪いの火は良い感じにぐつぐつ煮えてきているようだが。
「あ、このクリームコロッケ美味しいよ、一口あげる」
「お、どれどれ」
 はい、あーん。余りにも自然な流れで、澪はクロウへとそれを差し出す。
「なるほど、絶品だなァ」
「ね、美味しいよね」
 にこにこと笑顔を交わした二人に妙な緊張はなく、『いつも通り』。どうやらこの手の行為に固くなるタイプではないらしい。
「クロウさんは何食べてるの?」
「俺は鯵のフライ食ってた。澪も食ってみる?」
「わーい食べるー!」
 こちらからもお返しに。熱々のそれを冷ましてから差し出したクロウは、付近の気温が一段階上がった事をそれとなく察する。「仲が良くて羨ましいです」といった顔の店主だが、二人の狙い通り、妬みの火は強さを増しているようだ。
「唐揚げとトンカツも半分こしようか」
 こちらはそれを素知らぬ様子で、料理をシェアしながら澪は言う。定番のソースに塩や醤油、食事順以外にも飽きぬよう、味を変えられるよう見繕い、食べ進めていくが。
「口の横、ソースついてンぞ」
「え? あ、ありがとう……」
 ハンカチを取り出し、澪の口元を拭ってやる。しょうがねえな、とクロウはからかうように笑ってみせた。
「やーっぱまだおこちゃまですねェ?」
「むー、子供って言うなぁ」
 それに対し、澪は恥ずかし気に唇を尖らせる。ああ、しかし本心から嫌がっているわけではないのは、見ている方からも明らかで。
「……うぐっ!?」
 くぐもった悲鳴を耳にし、そちらに目を向けると、店主が頭を抱えていた。
「おう、どうかしたか?」
「大丈夫?」
「いえ、何でもありませんよ。ちょっと油の熱気に当てられただけで……」
 何でもないと言う割に、炎が不気味な色に変わってンだよなぁ。苦笑するクロウだが、次に鍋から上げられた天麩羅が黄金の輝きを放っているのを見て、追及は後に回すことにした。

 今までの揚げ物も絶品ではあったけれど、光を放つそれはまた別格。香りと味を堪能し、それを楽しんだ二人だが、いくら美味しくともお腹はやがて膨れてくるもの。
「どんどん召し上がってくださいねえ」
「あー……さすがに苦しくなってきたか」
「そうだねー……」
 頼んでもいないのに際限なくおかわりが来る。情報によれば、食べれば食べただけ敵にダメージを与えられているはず。そろそろ限界であるとしても、できればもう一息追い詰めておきたいところ。
 僕もそろそろ、と澪が溜息を吐くのを見て、クロウは閃墨を呼び出し、傍らに止まらせる。
「お前も食うの手伝ってくれ」
「あ、それじゃ僕も――」
 それを見た澪はユーベルコードを発動、自分とよく似た小型の分身をうじゃっとその場に召喚した。
 物量には物量で対抗。お皿の上に群がったミニ澪達と、カラッと揚がった天ぷらの戦いが、今始まる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネフラ・ノーヴァ
牙印(f31321)と共に。
うむ、香ばしい匂いが食欲をそそる。アツアツにするとより美味しくなるのか。
フフ、では戯れてみせよう。牙印の膝上に乗ったり食べさせあったり。
胃袋はそれなりに自信があるが、さすがに揚げ物ばかりは厳しい。
ああ、牙印のキャベツと大根おろしも良いな。頂こう。
持ち込んできたレモンサワーでさっぱりと乾杯だ。
食後のデザートは私かな?フフッ。
向こうがたまらず攻撃を仕掛けてくるならUC葬送黒血で反撃。アツアツに燃やしてやろう。


黒田・牙印
ネフラ(f04313)と共に

・あー、なんだって? ラブラブなとこ見せつけると火力が強化されて美味い揚げ物が出来る……? 何とも珍妙なことになっちまってるな。
ただ殴るのも芸がねぇし、ここは食うだけ食わさせてもらうか。

・揚げ物にはキャベツと大根おろしだな。持ち込み可ならリュックに詰めてできる限り持ち込んでおくか。交互に食べれば胃もたれにもならんさ。

・で、見せつける、ね。俺とネフラは互いの身が朽ちるまで共にあると誓い合った仲だが、それだけじゃ足りんか? なら膝の上に彼女を乗せて食べさせあいでもするか。
ほれ、ネフラ「あ~ん」だぜ「あ~ん」。ハ、たまには人前でイチャつく(?)のも悪かねぇな。



●誇示
 夜の幽世に降り立って、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)が周囲を見渡す。日が落ちる頃にどこからともなく現れるという屋台群の中で、お目当ての店はすぐに見つかった。吸い込む空気にも、漂う油の香りが混ざり込んできている。
「うむ、香ばしい匂いが食欲をそそる」
 向かう先は揚げ物屋台だ。そこの店主が骸魂に取り込まれ、オブリビオンと化し、奇妙な力を得たという話だが。
「アツアツにするとより美味しくなるのだったか……」
「ああ、何とも珍妙なことになっちまってるな」
 そうして頷いた黒田・牙印(黒ワニ・f31321)が、先導するようにして屋台に踏み込んだ。
「ただ殴るのも芸がねぇし、ここは食うだけ食わさせてもらうか」
「フフ、では戯れてみせよう」
 不敵な笑みを浮かべた彼女は、先に席に着いた牙印の膝に腰かけた。
「おいおい、いきなりかよ?」
「出し惜しみする理由があるか?」
 そんなやりとりを交わしながら、二人は早速、店主の出す揚げ物の山へと挑みかかっていった。さすが妖怪とでも言うべきか、開始早々その山は険しく、急峻で、上る者へと試練を与える。
 こと食べる量に関しては、ネフラも牙印もそれなりに自信がある。しかしながら、こう揚げ物ばかりとなるとそれも怪しくなってきてしまうが。
「だが、当然こういう場合の備えはしてある」
「ほう、さすがは」
 取り出されたのはキャベツと大根おろし。言うまでもなく胃もたれ胸やけ対策である。間にそれを挟むような順番を組むことで、『限界』を遠ざけることに成功する。
「ついでだ、『乾杯』といこう」
「おお、気が利くな」
 こちらはレモンサワーを持ち込んでいたネフラと盃を合わせ、二人は共に笑い声を上げた。
 豪快ながら、仲の良さそうな様子は当然店主にも伝わっている。「気持ちの良い食べっぷりですね」と笑うその表情が若干引き攣っているのを感じながら、牙印はさらに追い打ちをかけにかかる。
 普通なら人前での照れやらなにやらあるのだろうが、自分とネフラは互いの身が朽ちるまで共にあると誓い合った仲なのだ、何も躊躇う理由はない。
「ほれ、ネフラ「あ~ん」だぜ「あ~ん」」
「そういう趣向がお望みか? 仕方ないな」
 こちらも言葉の割には嬉しそうに応じて、ネフラは早速、食べさせあいっこに興じ始めた。
 店主の生み出す炎は徐々にどす黒く染まっていき、それに反して揚げ物はつやつやと輝き出す。
「ハ、たまには人前でイチャつくのも悪かねぇな」
「何だ、そっちが目的だったのか?」
 口の端を吊り上げる牙印の様子に、ネフラは片眉を上げてみせた。
「この調子だと、食後のデザートは私かな? フフッ」
 冗談めかしてそう笑って、彼の膝の上の時間を愉しむ。まだまだ、夜は始まったばかりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
【紅灰】

あや君、あげものじゃ!
やはりから揚げ…フライも串揚げもよい…
…迷う…
……あっ、メメ、火に近づいてはいかん
あれは食べたらだめじゃよ!
あの炎、相当おいしそうに見えるようじゃな…(わしの炎のほうがおいしいと嫉妬で尻尾をぶんぶん)

さてあや君、食べよか!
ふふ、ここはわしのおごりとしよう…!
という感じで、年上の兄貴分みを醸していく作戦

途中で野菜もはさんでいきたいの
キャベツはさむだけで十分いける
黄金の天ぷらも気になる
しかし妬み…

(作戦と気づき)
そうじゃろそうじゃろ!
もちろんここのもおいしいんじゃけどわしのおごる飯はうまいからの!
(調子に乗って尻尾ぶんぶん)

! あげものふえとる…!
天ぷらは…(さがす)


浮世・綾華
【紅灰】

あげものー!
いっぱい食うのは若干不安はあるケド
苦手ってわけでもないし何とかなるかしら

あ、ララも
ですねえ…揚げ物だけじゃなくて炎も美味しくなる…?
いやでもやっぱりお腹壊すかもだし…
って嵐吾さん?
嫉妬に燃える姿にくすり笑って

嵐吾さん、いつもありがとうございます

ですネ
揚げ物の野菜も食いたいな
妬み……

いやーほんとに此処の揚げ物は美味しい
つーか嵐吾さんと食べに行くご飯はいつも美味しいですし
最高なんで店主さんも連れてってあげたいくらいですよ
何より嵐吾さんは優しいしかっこいいし、一緒にダベるだけでも楽しいし
幸せ幸せ…
(仲良し&美味しいご飯に嫉妬させる作戦)

って、あ、そんなに盛…
黄金の天婦羅は…??



●目指せ黄金
「あや君、あげものじゃ!」
「あげものー!」
 童心に帰ったような謎のテンションで、終夜・嵐吾(灰青・f05366)と浮世・綾華(千日紅・f01194)は共に屋台に挑む。席に着く前の段階から明らかなのは、そこで扱うメニューの豊富さだ。ふつふつと油を泡立たせるそれの香りもさることながら、他の猟兵に提供されている皿の上は千差万別。これも妖怪の成せる業か。まあ、どれも衣がついているという点では同じだけれど。
「やはりから揚げ……フライも串揚げもよい……」
 早速注文に悩み始めた嵐吾を置いて、連れていた精霊がふらふらと進み出る。
「……あっ、メメ、火に近づいてはいかん」
「あ、ララも」
 揃って炎に惹かれていく彼等を「食べたらだめじゃよ」と押しとどめる。不満気な様子を見せられても、そこは譲らぬよう努めて。
「あの炎、相当おいしそうに見えるようじゃな……」
「ですねえ……揚げ物だけじゃなくて炎も美味しくなる……?」
 そんな馬鹿な、と思いつつも綾華は首を傾げた。しかし、あのぐらぐらと暗く燃え盛るそれが、自然の火と別物であろうことは予測できる。もしかしたら本当に、とは思うがあの色はどう見ても身体に良くなさそう。
「いやでもやっぱりお腹壊すかもだし……」
「うむ、食べさせるのは止めておこうかの」
 などと言っている嵐吾の尾が、「わしの炎の方がおいしい」と主張して揺れているのを発見し、綾華はくすりと微笑んだ。

「さてあや君、食べよか!」
 一悶着終えて、精霊たちを大人しくさせたところで、嵐吾は言う。そして、年上の大人の落ち着きを醸しだすように、ふと気取った笑みを浮かべてみせた。
「ふふ、ここはわしのおごりとしよう……!」
「嵐吾さん、いつもありがとうございます」
 兄貴風を吹かせるのはいつだって心地良い。ふふん、と自然に笑みが深まる。
「肉や魚も良いが、途中で野菜もはさんでいきたいの」
「ですネ」
 見たところ、唐揚げにトンカツ、竜田揚げなどメニューには肉類が目立つ。間にクッションを置いた方が、飽きも来ず多く食べられるのでは。その辺りについては共通見解が得られたようだ。
「ちゃんと野菜の串揚げや天ぷらもあるみたいですね」
「揚げ物を揚げ物のクッションに……?」
「あれ、ダメでした?」
「いやほら、キャベツとか、のう……?」
 これが若さかも知れんの、としみじみ思いながら。
「ところでわし黄金の天ぷらも気になるんじゃが」
「ハードル上げてきましたね……」
 ううん、と今度は綾華が頭を悩ませる。そうなると、美味しく食べるだけでなく相応の仕込みが必要になるだろう。ちらりと店主の様子を窺ってから、おもむろに彼は口を開いた。
「いやーほんとに此処の揚げ物は美味しい」
 おや、ありがとうございます。にこやかに言う店主に笑いかえして。
「つーか嵐吾さんと食べに行くご飯はいつも美味しいですし、最高なんで店主さんも連れてってあげたいくらいですよ」
 お、なんじゃなんじゃ褒められたぞ。突然の賞賛に胸を反らした嵐吾の背で、尻尾が自慢げに揺れている。
「そうじゃろそうじゃろ! もちろんここのもおいしいんじゃけどわしのおごる飯はうまいからの!」
「何より嵐吾さんは優しいしかっこいいし、一緒にダベるだけでも楽しいし。幸せ幸せ……」
 勿論、二人とも気付いているが、これは作戦である。美味しい料理に、仲良しアピール。嫉妬深い骸魂が食い付いてくるように仕込んだそれは、すぐさまその効果を表す。
「それは、是非ともご一緒したいですね」
 店主の反応は至極穏やか。しかしその操る炎は温度を上げたかのように燃え広がり、先程よりも淀んだ色に染まっている。
「それでも今日は、当店の揚げ物をご堪能ください」
「え、そんなに盛……」
「ふ、ふえとる……!」
 どさーっと皿の上に追加された揚げたての品々を見て、二人はその中から光り輝く逸品を探し出すべく、そして提供された料理を食することで骸魂にダメージを入れるべく、発掘作業に取り掛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵雛花・十雉
【波紋】

唐揚げが食べられるんだって、ティアちゃん
唐揚げって食べたことある?
鶏肉なんかを揚げるんだけど…

それにしても嫉妬に比例して美味しく揚がるなんて不思議だね
オレ?勿論するよ
独り占めしたくなる欲張りだからね
皆には内緒だよ

まずは鳥の唐揚げから
うん、噛むと肉汁が滲み出て美味しい
オレは白飯がないと揚げ物食べられないんだよね
胸焼けしちゃってさ
レモンを搾って食べる人もいるんだよ
ティアちゃんもレモンかけてみる?
オレは甘い方が好きかな

エビフライも好きなんだ
ソースとかケチャップとかタルタルとか、つけるものによって味も変わるしさ

ティアちゃんが美味しそうに食べてるのを見るとオレも嬉しいよ
好きなのどんどん食べよう


ティア・メル
【波紋】

んにー
食べた事あるような、ないような
すっかり忘れちゃってるや
だから十雉ちゃんと食べる今日を
初めての日にするよ

ねー不思議っ
十雉ちゃんは嫉妬ってした事ある?
ぼくはいっぱいするよ
お揃いだね
今この瞬間だけは十雉ちゃんを独り占め

鳥の唐揚げを一口、ぱくっ
肉汁がじゅわーって出てきて
味がしっかりしてて美味しいんだよ
レモンをかけても美味しいの?
ふふふーどうかなどうかな
あう!酸っぱいんだよ
十雉ちゃんは酸っぱいの好き?

タルタルソースのエビフライは
美味しいって聞いたよ
早速食べてみよう
十雉ちゃん、あーん

ぼくも十雉ちゃんが美味しそうに
食べてるのを見ると嬉しいし幸せだよ
わーい!いただきますっ



●人による
「唐揚げが食べられるんだって、ティアちゃん」
 今回の戦いの場となる屋台を前に、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)が連れの様子を窺う。唐揚げ、と反芻するティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)の様子から、まずは前提として情報が必要だと判断して。
「唐揚げって食べたことある? 鶏肉なんかを揚げるんだけど……」
 予想通りというべきか、ティアの方からは「んにー」と悩まし気な返答が出て来た。
「食べた事あるような、ないような……」
 すっかり忘れちゃってるや、と告げた彼女は、そんなことは慣れっこなのか、むしろ前向きに笑みを浮かべた。
「だから十雉ちゃんと食べる今日を初めての日にするよ」
「そうかい? それは光栄だね」
 そう笑って、席に着く。「いらっしゃいませ」とにこやかに迎えてくれた店主を密かに観察しつつ、十雉が口を開く。事前の説明に在った以上、今更の話題ではあるのだが。
「それにしても、嫉妬に比例して美味しく揚がるなんて不思議だね」
「ねー不思議っ」
 妖怪の仕業なのか、カクリヨファンタズムというこの世界に拠るものか、今のところは確認しようがない。
「十雉ちゃんは嫉妬ってした事ある?」
 ふと思いついたのであろうそれを、「ぼくはいっぱいするよ」と付け加えながらティアが問う。特にその辺りを隠そうともしない態度は、十雉の方も同様で。
「オレ? 勿論するよ。独り占めしたくなる欲張りだからね」
 皆には内緒だよ、と口元に指を立ててみせる。
「お揃いだね。じゃあ二人だけの秘密にしよう」
 含みの無い笑み。ティアは嬉しそうにそう答えた。そう、今この瞬間だけは、十雉ちゃんを独り占め。それって嬉しい事でしょう?

 それじゃあまずは鳥の唐揚げから。いただきますと声を揃えて、二人は同時にそれを一口。
「肉汁がじゅわーって出てきて、味がしっかりしてて美味しいんだよ!」
「うん、噛むと肉汁が滲み出て美味しい」
 こちらも共通の感想を交わしながら、箸を進める。序盤も序盤だと言うのに、店主からは異様な早さで揚げ物が供給されている、早々に山になった皿の上を見て、十雉は苦笑混じりに箸を止めた。
「オレは白飯がないと揚げ物食べられないんだよね、胸焼けしちゃってさ」
 とは言ってみたものの、踏み込んだ以上逃げ場はない。せめて味を変えたり工夫を、と思考を巡らせ。
「そうそう、唐揚げにはレモンを搾って食べる人もいるんだよ」
「そうなの? もっと美味しくなる?」
「好みによるんじゃないかな。ティアちゃんも試してみる?」
 興味深げに眺めるティアの前で、レモンを絞った。爽やかな香りで少しばかり気が楽になった、ような気がする。
「ふふふーどうかなどうかな」
 こちらは歌うようにしながら、ティアがたっぷりレモンを振った唐揚げを齧る。
「あう! 酸っぱいんだよ」
 かけすぎたかと顔を顰めたものの、これはこれで美味しい、と結論が出たらしく、彼女は次の唐揚げに箸を伸ばした。
「十雉ちゃんは酸っぱいの好き?」
「オレは甘い方が好きかな」
「じゃあ唐揚げにシロップかけたりする?」
「そういう人はいないんじゃないかな……」
 そう返してから、十雉は別のメニューへと目を向ける。そろそろ唐揚げ以外も欲しい。
「エビフライも好きなんだ」
 つけるものによって味も変わるしさ、と付け加えると、その中の一つはティアの記憶にもあったようで。
「タルタルソースかけると美味しいって聞いたことあるよ!」
 早速食べてみよう、といったところで、それを察した店主から揚げたてのエビフライが提供された。「仲良しのお二人にプレゼントですよ」という発言を裏付けるように、油を熱する炎はどろどろと嫉妬の色に染まっている。言及しないように目を逸らして、二人はやたらと美味しく揚がったそれを頂くことにした。
「ティアちゃんが美味しそうに食べてるのを見るとオレも嬉しいよ」
「ぼくも十雉ちゃんが美味しそうに食べてるのを見ると、嬉しいし幸せだよ」
「じゃあ、好きなのどんどん食べよう」
「わーい! いただきますっ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

美味しそうな揚げ物達だ
油が弾ける音に食欲が刺激される
先ずはどれから食べようか

差し出された唐揚げに瞳瞬き、意図を理解し頬染める
あ、あーん…噫、熱すぎて味など分からないくらい美味であるね
こっちの唐揚げは塩麹らしい、サヨに食べさせてあげる
奉仕してくれた巫女に報いねば
口を開けて

どんどん揚がる揚げ物共にテンションも上がる
噫、サヨ!和牛の串揚げも美味だよ
揚げたこ焼きもよい
海老フライに鶏天に
あらゆるものは揚げると美味くなると知った

さっぱりしたお茶を飲み干し
幾らでも食べられるよう幸を約す
サヨがどんどん食べさせてくれるのた
期待には応えねば

サ、サヨ!タルタルソースに感謝を捧げまた一つ頬張る

当分揚げ物は、よい


誘名・櫻宵
🌸神櫻

サクサクで美味しい揚げ物!
食べて食べて食べまくるわ

手始めに醤油味の唐揚げを頬ばる
あつ!でも美味しい
ほら、カムイも
あーんして
かぁいい私の神様に巫女が奉仕よ
美味しい?

私にも?
控えめに口を開きぱくり
塩麹の唐揚げ美味しい!

串揚げなら天使の海老が絶品でトンカツなら柔らかなヒレが良い
鯵のフライも美味
カムイのそれも頂戴

塩にソース、醤油…数多な調味料を試して、食べさせ合いっこ(主にカムイに沢山食べさせる)しながら食べていくわ
油こいものにあうお茶を飲みながら楽しむの

美味しそうに頬張るカムイの姿に癒される
タルタルソースかほっぺに付いてるわよ
仕様のない神様ね
指で拭ってぺろりと舐める

カムイ
もっともっとお食べ!



●お供え
 この不可思議な幽世のせいか、それとも骸魂や妖怪の仕業によるものか、皿の上に並んだ揚げ物は驚くほどに種類が多く、無闇やたrと量も多い。
「美味しそうな揚げ物達だ」
 目移りしてしまうな、と呟く朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)の横で、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は迷いなく箸を出す。
「さて……まずはどれから食べようか」
「これなんかどう?」
 スタンダードな唐揚げ。早速それを頬張った櫻宵は、「あつ!」と小さく悲鳴を上げるが。
「でも美味しいわ、ほら、カムイも」
 呼びかけられてそちらを見返せば、目の前には唐揚げがもう一つ差し出されていた。数度瞳を瞬いたカムイは、やがてその意図を察して頬を染める。
「どうしたの? かぁいい私の神様に巫女が奉仕してるだけよ」
「あ、ああ」
 改めて言わなくて良いから、と口を開いて、差し出されたそれを頬張った。
「美味しい?」
「……噫、熱すぎて味など分からないくらい美味であるね」
「もう、照れなくて良いのに」
 そう微笑んでみせる櫻宵に、今度はカムイが摘まんだそれを一つ。
「ほら、こっちの唐揚げは塩麹らしいよ」
「あら、私にも?」
 同じように差し出されたそれを、控えめに口を開けて齧る。
「美味しい!」
「だろう?」
 照れくさいことではあるが、こうして食べさせ合えば、より美味に感じるもので。胸を満たすあたたかな感情に、二人は改めて笑みを交わす。
「さ、食べて食べて食べまくるわよ」
「……ん?」
 また目の前に差し出されたそれ、竹輪の磯部揚げに、カムイが首を傾げる。どうやら余韻とか味わっている暇はないらしい。何にせよ、奉仕してくれた巫女には報いねばならないだろう。神らしい義務感にも背を押され、カムイはあーん、と口を開けた。

「さすが、どれもサクサクで美味しいわね!」
「噫、サヨ! 和牛の串揚げも美味だよ」
 次々と出される料理の山に、自然と食事のペースも上がっていたらしい。都度都度の食べさせ合いっこを挟みながらも、二人はそれを次々と消化していく。
「串揚げなら海老も絶品よ! こっちのヒレ肉もロースとはまた違って美味しいわ!」
「ははあ、この揚げたこ焼きというのも面白いね!」
「本当? 私にも頂戴!」
 エビフライに鶏の天麩羅、鯵のフライも美味しい。次々と供されるそれらを苦もなく食せるのは、先程からぐらぐらと嫉妬の炎を煮え滾らせている店主のおかげだろうか。いやしかし、あらやるものは揚げると美味しくなるのだな、と謎の感慨を胸にカムイはお茶を飲み干す。口の中の油が流れていくのを実感して、さっぱりした気持ちで一息ついた。
 先程は『苦も無く食せる』などと思ってしまったが、こうして落ち着いてみると、なかなか。
 美味であったのは事実だけど、と苦笑混じりの表情を浮かべるカムイの様子に、愛おし気に櫻宵は目を細める。
「カムイ、タルタルソースがほっぺに付いてるわよ」
 仕様の無い神様ね、とそれを指で拭って、ぺろりと舐め取る。
「さ、サヨ……!」
 さすがにそれは、一際照れくさい。またカムイが赤面したところで。
「お待たせしました、どうぞ!!!」
 割り込んできた店主が、やたらと光り輝く天麩羅を山のように置いていった。
「さあカムイ、また美味しそうなのが来たわよ! もっともっとお食べ!」
 多くないか? 素直な疑問がカムイの脳裏を過ぎるが、しかし。櫻宵に差し出されては断れない。期待には、必ず応えなくては。
 それは意地か想いか。何にせよどんどん食べさせに来られるそれに、カムイは強い気持ちで挑んで行った。

「はー、美味しかったわね、ご馳走様!」
「当分揚げ物は、よい」
 真に心の底から、カムイはそう答えた。


●お粗末様でした
 提供した料理の数に応じて、暴走した『もてなしの心』は収束していく。嫉妬の炎に身を焦がしながらも、お客を満足させたいという願いはかなえられたのか、やがて骸魂は消え去った。後に残ったのは、元通りになった店主のみ。
 こうして猟兵達の活躍により、一つの屋台と、無数の揚げ物に埋め尽くされて滅ぶ世界は、無事に平和を取り戻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月16日


挿絵イラスト