大祓百鬼夜行⑯~七不思議ホラーショウ
――ざざ、ざざざあぁ。モノクロームの砂嵐がブラウン管を埋め尽くすなかで、ちらちらと何かが見え隠れします。
(「――……か、誰か……!」)
ノイズがひとつ、またひとつ消えていくと、やがて古い校舎の壁が映し出されていきます。廃校となった小学校でしょうか――木造の廊下がぎしぎし鳴る音に合わせて、切羽詰まった声が聞こえるものの、声の主の姿は見えないようでした。
(「助けて、助けてくれっ!」)
危機感を煽るアングルのまま、カメラは一気に階段を駆け上がっていきます。妙に映像がぶれているのは、カメラを持ったまま移動しているからかも知れません。ふと教室の窓から見えた人影らしきものは、虚ろな表情でこちらを睨みつけているように見えました。
(「うわあああああ!!!」)
がしゃん、がしゃんと次々に窓ガラスが割れて、慌てて逃げ込んだ理科室では、埃っぽい人体模型が「がたーん!」と倒れてきます。そこへ「ポロロン」と優雅に響き渡ったのは――音楽室のピアノのようです。ああ、さっき誰もいないことを確認したのに! どうして!
(「七不思議の呪いは、本当にあったのか……!」)
上りと下りで数が違う階段に、渡り廊下にある大鏡――深夜にそれを覗けば、鏡合わせの世界に吸い込まれて二度と帰って来られないのだとか。
(「助け、て――」)
『タスケナンテ、コネェヨ』
鏡に映った、声の主――その背後で、ニヒルな仕草で顔を覆った河童が、ニタリと嗤いました。
「妖怪さんが放送している、存在しないテレビ番組……それを放っておけば世界の危機に繋がりますのー!」
勢い込んで拳をぶんぶん振って、そう力説するのはレイン・ドロップ(みずたま・f14853)です。テレビと聞けば黙っていられなかったのでしょうか、今回レインが猟兵たちにお願いするのは、妖怪たちのTVショーを止めて欲しいと言うものでした。
打ち捨てられたテレビに映る妖怪番組は、現実を浸食して――やがて怪異が当たり前の世界へと、チャンネルを切り替えてしまうのだそうです。
「番組は、『本当にあった!? 旧校舎の七不思議を追え!』――心霊スポットでわいわいロケを行う、悲鳴あり笑いありの肝試しツアーなのですわ!」
もしかしたら、あなたの学校でも不思議なことが起きるかも? なんてキャッチフレーズの番組は、ジュニア層をターゲットにした、アイドルや霊能者も交えての華やかなものをイメージすれば良さそうです。
「番組を作っている妖怪は、なんか格好良くポーズを決めた河童のようですのよ。七不思議の主として、旧校舎で怪奇現象を次々に起こしてきますから、皆さんは全力でそれに乗っかっていって欲しいんですのー!」
――そりゃもう、大げさに驚いたり七不思議を捏造しちゃったり。七つ以上不思議があっても何の問題もないのです。いきなり体育館で百物語を始めたりなど、アドリブもどんと来いです。青春とか恋愛ドラマを、ちょこっと忍ばせても面白そうですね。
ふふふ、悪霊を退治するのが我が使命……なんて、退魔師アイドルに扮したり、奇抜な霊能者を演じるもよし。制服を着て「ここの学校の生徒でーす」とリアルな演技で攻めるもよしです。そうしてどんどん番組を盛り上げていくと、戦わなくても「ぐふっ」と河童さんがダメージを受けますので、思う存分弾けてしまうのが吉です。
「むふふ、素敵な番組になるようにファイトですのよ。イッツ、ショータイム!」
さあ、レインの頭上でカチンコを鳴らす、かえるのけろちゃんの合図に合わせて――ふしぎな番組が始まりますよ。
柚烏
柚烏と申します。こちらは『大祓百鬼夜行』の、『TVショーへようこそ~King of Media』のシナリオとなります。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。なお、下記の内容に基づく行動をすると、ボーナスがついて有利になります。
※プレイングボーナス……番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられます)
●『本当にあった!? 旧校舎の七不思議を追え!』
とある小学校の、使われなくなった旧校舎にまつわる七不思議。それを全て知った者は、もう生きて帰れない……ほら、あなたの後ろに河童が。そんな感じの心霊ロケ番組となります。役とか台本とかを自由に決めて、肝試しをきゃーきゃー楽しむ感じで参加してみてください。
大まかな流れは『番組を全力で楽しむ』→『河童さんがやられる』→『大・成・功!』となりますので、戦い方には触れなくても大丈夫です。
●シナリオの補足
カクリヨファンタズムのオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。
●プレイングにつきまして
シナリオ公開がされたと同時に、プレイングを送って頂いて大丈夫です。今回は『5月7日一杯』までの受付とさせてください。
戦争シナリオと言う特性上、シナリオの完結優先でリプレイを執筆していきます。採用は成功度に必要な人数ぶんを予定しており、それ以上は不採用と言うことも出て来るかと思います(内容に問題がなくても、人数次第では返金の可能性があります)ご了承のうえで参加頂けますと幸いです。
オープニング文章のような、ゆるっとした童話っぽいリプレイになると思います。ほのぼのかコメディか、はたまたシュールな感じになるかは皆様のプレイング次第になりそうですが、どうぞよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『鬼の骸魂に憑りつかれた河童』
|
POW : 誰か助けてくれっ!』『タスケナンテコネェヨ!
【無意識に持っていた鳥居】が命中した対象の【口】から棘を生やし、対象がこれまで話した【気休めやその場しのぎの嘘】に応じた追加ダメージを与える。
SPD : 止めろ!この酒は』『サケハノムタメニアルンダヨ!
骸魂【鬼】と合体し、一時的にオブリビオン化する。強力だが毎秒自身の【社務所に保管していた神酒】を消費し、無くなると眠る。
WIZ : せめて最後に私のコレクションを誰かに…』『エッ?
【『河童を助けたい』『骸魂を倒したい』】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【社務所の奥に通じる空間の揺らぎ】から、高命中力の【対象に似合いそうな制服】を飛ばす。
イラスト:りょうま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「雛月・朔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
琴平・琴子
肝試し番組の子供代表です、か…
い、いえ全然怖くない…怖くないですってば!
(本当は暗いところが怖い)
猟銃を抱え、輝石ランプをかざしながら校舎の廊下を歩いて行く
七不思議の一つ「足音が一つ多く聞こえる」でしたっけ
そんなものあるわけ…ひっ!
(ひたり、ひたり後ろに何か付いてきてる気がして勢いよく振り向く)
…誰もいないじゃないですか驚かせないでくださ…
…河童?
え
何で河童が此処にいるんですか
だって河童って海とか河とかそういうところに…
しかも服着て…
(一周回って冷静に)
いやこの際どうでもいい
驚かせたことに対しての怒りが募るばかり
驚かせないでくださいませ!もう!
ぜ、全然怖くなかったです
ほ、本当ですってば!
臥龍岡・群青
せっかくだから普段出来そうにない役をやってみよう
わしは心霊ライターだ!
このオンボロ旧校舎に七不思議があると聞いて駆けつけてきたぞ!
スマホ構えて撮影しとけばなんかそれっぽくなるだろう!
レッツ調査だ!
七不思議の内容は……例えば音楽室の肖像画の目がぎょろぎょろするとか
理科室に置かれっぱなしの人体模型が動くとか
そういうオーソドックスなものだな
だが、どの七不思議を確認しに行っても何も起こらん
なーんじゃつまらん
七不思議なんぞ嘘っぱちだったんだな!
そう思った瞬間――背後から迫るイケ河童!
ぎゃーっと叫びながらスマホでいい感じにボヤケた感じに撮影!
七不思議の正体は河童だった……!?
そんな感じでフェードアウトだ!
ぼうぼうに伸び放題の雑草と、お化けみたいな木々に抱かれた旧校舎は、昼間でも薄暗くて「嫌な感じ」がするのだと言います。
それが、ひとの気配が絶えた夜ならば尚更のこと――何処からか聞こえてきた犬の遠吠えに、びくりと肩を竦めた琴平・琴子(まえむきのあし・f27172)は、その愛らしい碧の瞳をきゅっと細めました。
「い、いえ全然怖くない……怖くないですってば!」
あたたかな光を灯す輝石ランプが、琴子の進む道を照らしてくれます。旧校舎の七不思議を追う怪奇クラブのメンバーとして、逃げ出すわけにはいかないのです。
「ふふふ、流石である琴子隊員。わしも特別顧問として力を貸そう」
――そんな琴子と共に探索を行うのは、臥龍岡・群青(狂瀾怒濤・f30803)で。廃墟となった校舎が珍しいのか、彼女はさっきから興味津々といった感じで辺りを見回しています。
「は、はい。皆さんの代表として頑張りますっ」
「うむ、レッツ調査だ!」
今回のロケは、七不思議の噂を確かめるべく子ども達がクラブ活動を行うと言う体のもの。顧問役の群青は、オカルト知識を分かりやすく視聴者に説明する、心霊ライターとしての参戦のようでした。
「では最初に、七不思議について簡単におさらいするとしよう――」
せっかくだから普段出来そうにない役を、と言う気持ちで「おほん」と咳払いをする群青は、どこか楽しそうで――琴子のランプに合わせて揺れるスマホは、なんかそれっぽい感じで夜の校舎を撮影していきます。
「どこの学校でもまことしやかに囁かれる噂だが、大体怪異が起きる場所は決まっているのだ……例えば、」
「……うううっ」
がらがらがら――音楽室の扉を開けた群青に続いて、灯りを翳す琴子の唇から、押し殺した感じの悲鳴が漏れました。本当は暗い所が怖い。微かな光の下で見え隠れする何かが、自分に向かって手を伸ばしてくるようで――。
「――音楽室の肖像画の目が、ぎょろぎょろするとか」
「大丈夫ですね……画鋲が刺さっているとかもないようです」
「理科室に置かれっぱなしの人体模型が動くとか」
がらがらがら――続いてやって来た理科室でも、特に異変は起きません。
「そういう、オーソドックスなものだな……なーんじゃつまらん」
『内臓くん』と、あんまりすぎるネーミングの人体模型を見て、ふぅーと溜息を吐いた群青でしたが、琴子にはまだ確かめたいことがありました。
「私が聞いた七不思議……『足音が一つ多く聞こえる廊下』は、どうでしょう」
――ぎし、ぎしり。年季が入った木造校舎の中でも、その廊下は痛みが激しいのか、一歩足を踏み出すたびに悲鳴のような音を立てます。
「だが、普通だな……音が大きいだけで。なーんだ、七不思議なんぞ嘘っぱちだったんだな!」
「ですよね、そんなのあるわけ……ひっ!」
ぎし、ぎし、ぎし――ふたりぶんの足音に混じって、妙に湿っぽい気配が琴子の背後にくっついてきている気がしました。
「どどど、どうした琴子隊員」
嫌な予感に、すぐさま後ろを振り向いた琴子でしたが、輝石ランプが照らした廊下には誰も、
「……誰もいないじゃないですか驚かせないでくださ、」
否、――河童、が。
「え」
ひたり、ひたり――よくよく見れば神主っぽい格好をした河童が、草履を履いているのに生っぽい音を立てて、琴子たちに迫っていたのです。
「ぎ、ぎゃあああああああああああ!!!」
「か、河童が……何で河童が此処にいるんですか!!」
『ウオオオオオオオオオ、声デカスギルダロウガアアァァァ!!!』
――反射的に悲鳴をあげた群青と、意外と冷静にツッコミを入れた琴子。反応はそれぞれですが、共通していたのは――二人とも声がすごく大きい、と言うこと。
「え、え、だって河童って海とか河とかそういうところに……」
「いや、わし竜神だけど、海に河童は居らんかったぞ!? それに妙にイケ河童だし!」
「しかも服着て……」
「それより頭の皿から角が生えてて、痛くないのかあれは!」
防犯ブザーみたいにわあわあ悲鳴をあげる琴子と群青に押されて、袴を踏んづけた河童さんが「どしーん!」と後ろ向きに倒れました。
「あああ、いやこの際それはどうでもいいんです!」
そうこうしている内に、一周回って冷静さを取り戻した琴子は、暗がりで驚かせたことに対しての怒りが募ってきたようです。手にしていた猟銃を振り上げて――えっ、何で小学生が銃を。七不思議の主を物理で殴るの。
「驚かせないでくださいませ! もう!」
『ギャアアアアアアアァァァァ!!!』
――銃のストックで強烈な一撃を食らわせた琴子を見上げながら、ごろごろと階段を転がり落ちていくイケ河童。その最期をスマホでいい感じに、ボヤけた画像で撮影した群青は、シリアスな表情で番組の締めに入りました。
「七不思議の正体は河童だった……!?」
「ぜ、全然怖くなかったですねっ」
――本当ですよ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミリアリア・アーデルハイム
校庭にある、体育の子の像知ってますか?
今まさにボールを投げようとしている性別不明の石像なんですけど。
あ、あれです。
あの隣に、30年前の卒業生が自分たちで友達の顔を彫った円柱形のモニュメントがあって…
顔がたくさん張り付いた直径2mばかりの円柱はそれだけでもちょっと薄気味悪い
満月の夜にぐるぐる回るんですって
既に亡くなった友達の顔は血の涙を流すらしいですよ
月が雲から顔を出す
円柱を見つめていると バンバンっと音がして
体育の子の像が凄いドリブルをしながら校庭を走り出す
…目が、合った?
像はドリブルを続けながらこちらに向かって走って来る
そして、いつの間にか円柱がぐるぐる回りながら不気味な笑い声を立てていた
「校庭にある、体育の子の像を知ってますか?」
――テレビの向こうの「誰か」に語りかけるようにして、柔らかな女性の声が暗闇に木霊します。
「今まさにボールを投げようとしている……性別不明の石像なんですけど」
性別不明、と言うところがいきなり恐怖を誘いますが、七不思議の語り手として登場したミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)の話は、ここからが本番のようです。
「あ、あれです。……あの隣に30年前の卒業生が、自分たちで友達の顏を彫って、」
ロケのカメラが、すーっと旧校舎の校庭に寄っていくと、風化した石像がぼんやりと浮かび上がっていきました。恐らくあれが体育の子の像で、その近くにあるのは――卒業生が寄贈したオブジェのようです。
「顔がたくさん張り付いた、円柱形のモニュメントがあって……」
――30年前、この学校で一体何があったのでしょうか。前衛的を通り越して嫌がらせに近いモニュメントを、意味ありげに見つめるミリアリアは「直径2メートルばかりありますね」と、更に恐ろしい情報を口にしました。
「……それだけでも、ちょっと薄気味悪い」
――ちょっとどころの話ではない気がします。
「満月の夜にぐるぐる回るんですって」
――フォークダンスでもしているのでしょうか。
「それと……既に亡くなった友達の顔は、血の涙を流すらしいですよ」
その友達がどうして亡くなったのか、理由を聞いてはいけない感じです――そんなこんなで、さらさら流れるミリアリアの黒髪が大きく波打つような気配がすれば、雲間から顔を出した月が、冴え冴えとした光を投げかけていました。
「あら、今日は丁度満月なのですね」
――じぃっと円柱を映し続けるカメラに、不吉なノイズが過ぎったのは、その直後です。
バン、バンッとラップ音のような、何かを叩きつけるような音がすると同時に、ミリアリアの声が遠ざかっていきます。
「――……れ、あれは」
バンバン、バンッ――! リズミカルなその音には覚えがありました。バスケのドリブルです。体育の子が体育の授業を始めたのか、凄いドリブルを披露しながら校庭を走り出したのです。
(「……目が、合った?」)
河童のディフェンスを一瞬で振り切って、こちらに向かって走って来ます――何で河童が居たのかは気にしないことにして、ミリアリアは七不思議の目撃者となるべくカメラを回し続けます(転倒した河童が痛みにのたうち回っていましたが、見ない振りをします)
「石像……の、向こう……、円柱……が……」
画面一杯に、石像の顏が映し出される寸前――月明かりに照らされた校庭では、顔が沢山張りついたモニュメントが、ぐるぐるぐると楽しそうに回転していたのでした。
(「はっはははは、ははははははは……!」)
――不気味な笑い声と共に、石像の顏が血のように赤く染まって。そこで映像は唐突に終わりました。
大成功
🔵🔵🔵
浮世・綾華
【暁】
俺らはこの学校の卒業生なんだ
やっぱり真意は確かめたいだろ?
な(ぽんと肩を叩く
うるさ
大丈夫だろ
カッパならセンセで見慣れてんじゃん
まあそれは確かに
だいじょぶだいじょぶ
そもそも妖怪ならきよしの仲間だし
そんなバカな
だって妖怪図鑑に載ってたぞ
あ、鏡ってこれじゃねえ?
出てくるって何が?
何ともないぞ。ほら、覗いてみ
あれ…今笑ったか?
すげぇニヒルな笑み浮かべてたぞ
お前あんな顔してた――
!?
きよしーー!!
なんで鏡のなかに…
やべーぞ、そこからはもう出てこられねえ…ってあれ
こっちにもきよしが??
こっちのきよしの方がうるさくなくていいかもしんねえ
よし、決めた
お前回るの嫌がってたろ
この先はきよしツーと行ってくるわ
砂羽風・きよ
【暁】
…え、もう卒業したからよくね?
(こえーなぁ、こえーよ)
んぎゃあぁぁ!なんで肩ポンしたんだ?!
怖くねーけどよ!
いやいや、全然ちげーわ!もっと先生可愛いぞ!
まぁ、怖くねーけど!
嘘だろ?!
確かに!俺の仲間って思えば――
って俺は普通の人間だわ!
あ、綾華ぁどこから行くんだ?
鏡?!鏡とか絶対出てくるよ!やべーよ!
げっ、覗かなきゃだめなのか?!
う、後ろから覗かせてくれ!
なんだなんだ?!やめろよ!!
笑ってねーよ!怒ってるわ!
つかこんなニヒルに笑わねー…え? マジで笑って――
うぎゃー!
綾華ぁ!綾華ぁ!!(ドンドン)
おいおい、隣にいるやつ誰だよ!
つか、なんでそんな平気な顔してんのだ?!
置いてかないでくれぇ!
はっはははは、ははははははは――旧校舎の校庭でぐるぐる回る、顔が沢山張りついた謎のモニュメント。30年前の卒業生が製作したというそれを見つめながら、遠い目をした浮世・綾華(千日紅・f01194)が思い切って口を開きます。
「俺らは、この学校の卒業生なんだ」
「……え、もう卒業したからよくね? あと、30年前の、じゃねーよな?」
「やっぱり真意は確かめたいだろ?」
「おい、質問に答えろよ! あの円柱マジでこえーんだけど!」
あの顔の中に、自分のものが無いことを願いつつ――ぶるぶる震える砂羽風・きよ(タコヤキカレー・f21482)は、相棒の着物の袖をぎゅうっと掴みました。
「な、きよし」
「んぎゃあぁぁ!」
――ぽん、と肩を叩いた綾華に対し、もの凄い悲鳴で応えるきよ。「うるさ」と顔を顰めますが、彼の分かりやすい反応に、綾華の口角がにやりと上がります。
「なんで肩ポンしたんだ?! こ、ここ怖くねーけどよ! あときよしって言うな!」
「大丈夫だろ、七不思議の主は河童だって言うケド、カッパならセンセで見慣れてんじゃん。きよしじゃん」
「いやいや、全然ちげーわ! 俺の名前は『きよ』だっての!」
学生時代と変わらぬやりとりを交わしながら、きよが取り出したのはあやかしメダルです。そこに描かれたカッパの妖怪は、彼を強くする為に先生となったのだとか。
「もっと先生可愛いぞ! まぁ、怖くねーけど!」
「そうそう、だいじょぶだいじょぶ。……そもそも妖怪なら、きよしの仲間だろ」
「確かに! 俺の仲間って思えば――って、俺は普通の人間だわ!」
「そんなバカな。だって妖怪図鑑に載ってたぞ」
絶妙なボケとツッコミが旧校舎の廊下に響き渡り、肝試しの夜を盛り上げていきます。そうしている分には楽しくて、妖怪図鑑と称して綾華が取り出した卒業アルバムも、古き良き思い出のひとつなのでしょう。『きよし』とアルバムでも誤植されていたことに涙を堪えつつも、きよは綾華の背を追いかけて階段を上がります。
「……あ、綾華ぁどこから行くんだ?」
「渡り廊下にある大鏡かな。あ、これじゃねえ?」
「鏡?! 鏡とか絶対出てくるよ! やべーよ!」
窓から射し込む、仄かな月明りに導かれて――ふたりがやって来たのは、異世界に閉じ込められると言う大鏡の前でした。ずいぶんと埃を被っていますが、アンティークっぽい木枠はがっしりしています。
「……出てくるって何が? 何ともないぞ」
粉雪のようにふわふわと舞う埃の向こう、鏡を覗き込んだままの綾華が手招きをしました。ほら、と場所を譲る為に鏡越しに見つめたきよの表情は、何だか普段と違う――嫌な感じのするもので――。
「あれ……今笑ったか?」
「これって、俺も覗かなきゃだめなのか?! ……んん? 笑ってねーよ! 怒ってるわ!」
「え、だって、すげぇニヒルな笑み浮かべてたぞ」
脅かしっこは無しだと言わんばかりに、ずずいと身を乗り出すきよですが、鏡で「にやり」と笑う誰かが居る場所は、間違いなく今自分が立っている場所なのです――。
「お前、あんな顔してた――!?」
「つか、こんなニヒルに笑わねー……え? マジで笑って――」
――どくん。鼓動が跳ね上がり、思わず瞬きをしたその直後、きよを取り巻く世界が一変していました。現実感の希薄な校舎で、鏡の向こう側だけがきらきら輝いているようです。
「うぎゃー! 綾華ぁ! 綾華ぁ!!」
「きよし――!!」
もしかして、自分は鏡の世界に囚われてしまったのでは――必死に鏡を叩いて異変を知らせるきよですが、古びた鏡はうんともすんとも言いません。
「やべーぞ、そこからはもう出てこられねえ……ってあれ、」
慌てて辺りを見回す綾華の方は、さっきまできよの居た場所に立つ、何者かの姿を認めて声を上げます。
「こっちにもきよしが??」
「おいおい、隣にいるやつ誰だよ!」
クックック――ニヒルな笑みを浮かべ、顔に手を当てて佇むもう一人のきよ。髪も金色に染めているし、ちゃんと『きよし』の名札もつけているので、きっと彼で間違いないのでしょう。
「……こっちのきよしの方が、うるさくなくていいかもしんねえ。よし決めた」
――どうやらロケの時間が押してきているようだったので、綾華の決断はちょっぱやでした。
「お前回るの嫌がってたろ。この先は、きよしツーと行ってくるわ」
「え、何。なんでそんな平気な顔してんのだ?!」
偽物、頭に皿が乗っているんですけど。きよしと呼ばれても突っ込まないんですけど。肌が緑色なんですけど――! どう見ても河童が変装したきよしツーと肩を組み、旧校舎ツアーを再開する綾華に向けて、鏡の向こうから悲痛な声が延々と響いていました。
「待って、戻って来てくれ! 置いてかないでくれええぇぇぇ!!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
疎忘・萃請
暗がりにぼやりと立ち尽くし、カメラに映り込む
怪談を語ったりして怖がらせる方をやろうか
そも、学校は怖いところだ
暗がりが幾つもあり、あやかしが潜む場所がたくさんある
そら、耳をすませてみろ
悲しげなぴあのの音が聞こえるだろう
古き作曲家達がずらりと居るあの教室
さて、幾つの怨念が眠っているか
ふふふ、と笑って暗がりへ消えよう
ふわり、ふより、鬼火を灯して怖がらせる
そもそも、怖い話があるのは
子供を危険な目に合わせぬ為
その為に我らは怪異を起こすのだ
なんだか懐かしいな、昔を思い出す
しぃんと静まり返ったら
轟音を伴う落雷でも落とそか
怖がる子らは愛しくて
つい笑いが漏れ出てしまう
……おや、この声でも怖がらせたか?
川谷・茉莉
こういう番組だと、寧ろ脅かす側なのよね私。
というわけで、お化け担当として参加してみようと思うわ。
といっても、番組的には直接的に何かするべきではないわね。
時々カメラにちらっと映るような感じで、現れては画面外に去っていく…というのを繰り返すわ。
もし探索役の子が女子トイレに来るなら、三番目の個室で待機。扉を開けたところに全力の薄ら笑いで【恐怖を与える】コトにしましょう。
その後は、ユーベルコードで呼んだメリーさんの出番。
暫くの間、探索役の子をつかず離れずで追いかけていって貰うわ。定期的に電話をかけてもらうのも忘れずにね。
最後は「今あなたの後ろにいるの」からの対面→狂った笑いと共に飛び去る、のコンボで。
――旧校舎を探検する集団に紛れ込んで、恐怖を味わわせてやろうと企む七不思議の主。カツラと制服で変装した河童はどう見ても不審者でしたが、暗闇が味方しているのか意外に気づかれていません。
『ククク、ククククッ……』
さぁ、どうやって驚かせてやろうかと、相変わらずニヒルに微笑む彼ですが――さっきからどうも、視界の端にちらちらと何かが過ぎるような気がします。
――おかしいなあ、仕掛けはもう少し先にあった筈なんだがなあ。撮影用に設置しておいたビデオカメラを、がさごそ弄って確認する河童さんは、もはや小学生を狙う盗撮魔にしか見えません。
(「ふふふ、ふふふ――」)
故に、子ども達の守護者が立ち上がったのでした。変質しゃ――もとい、七不思議の主の笑い声を遮るように、少女の妖しい声が暗がりから響いてきます。
『ッッ!?』
録画されていた映像にも、そんな声が聞こえる箇所がありました。誰も映っていないのに、声だけがする。かと思えば、音声がないのに人影が入り込む。
(「……七不思議。学校で囁かれる、不吉な噂ね」)
(「そも、学校は怖いところだがな」)
突如、耳元で囁かれたような声に驚いて、河童の手からがしゃんとカメラが転がり落ちます。ほんの一瞬、画面の向こうに見えたのは、通学帽を被った女の子で。それと、時代がかった服装の子も居たような気がします。
『ヒィッ!!』
間髪入れずに、彼の周囲で巻き起こる怪異――ふわり、ふよりと宙に漂う蒼白い炎は、人魂なのでしょうか。熱を持たない炎にカツラを焦がされながら、逃げ惑う河童の向かう先で、亡霊のように立ち尽くす疎忘・萃請(忘れ鬼・f24649)が、くつくつと肩を揺らします。
「暗がりが幾つもあり、あやかしが潜む場所がたくさんある――そら、」
――ひととは思えぬほどに白い、彼女の指先が示したのは、半分開いたままの音楽室でした。
「耳をすませてみろ」
ポロロ、ポロロン。悲しげなピアノの音に混じって「ピロリン」と鳴り始めたのは、河童の懐にあったスマートフォン。突然何だ、と非通知の着信に出てみれば、スピーカーの向こうで無邪気な笑い声がしました。
(「もしもしメリーさん? あなた何処に居るの?」)
(「わたしメリー。今、肖像画の近くに居るの」)
『???!!』
一方的に会話を続けている、川谷・茉莉(n番目の花子さん・f32951)の声に怯える河童は、ふと音楽室に飾ってあった作曲家の額縁へ目を向けて――見なきゃ良かったと後悔します。
ふよふよ浮かぶ西洋人形が、虚ろな瞳でこちらを見つめていました。そのまま、すーっと近づいてきました。
「さて、幾つの怨念が眠っているか。随分と新しいものも居るようだな」
『ギャアアアアァァァ!!』
――驚かせぬようにと鳴らす下駄の音も、今の河童さんにとっては死刑宣告のようなもの。茉莉のメリーさんが非通知の呼び出しを続ける間にも、呪詛のごとく迫る萃請の囁きは、じわじわと河童の心臓を締め付けていくのです。
「そもそも――怖い話があるのは、子供を危険な目に合わせぬ為」
『ヤメテエェ、脅カサレルノハ嫌アァァ!』
(「わたしメリー。今、女子トイレの前に着いたわ」)
――鬼火に誘い込まれるようにして、彼がやって来たのは女子トイレ。もう言い逃れは出来そうにないですが、他に逃げ場はないのです。
「その為に、我らは怪異を起こすのだ」
『ウゥッ不整脈ガッ』
(「今、三番目の個室の前よ」)
コン、コン、コン――ノックは三回。そうすれば、七不思議のひとつである『トイレの花子さん』が出て来てくれるのだとか。
「……なんだか懐かしいな、昔を思い出す」
はーなこさん、あそびましょ。鈴の音を思わせる萃請の声がちいさな空間に木霊していくと、鍵のかかっていなかった扉がぎぎぎと軋んで――。
「はぁい――なんて。こういう番組だと、寧ろ脅かす側なのよね私」
「ふふ、怖がらせ役も、もう少し必要であろう?」
やがて顔を覗かせたのは、うすら寒い笑みを浮かべた茉莉で。腰を抜かしてへたり込む河童と、そのまま萃請たちが見つめ合うこと暫し。
――ぐわっしゃあああああああああん!!!!
しぃんと静まり返ったトイレの外に、轟音と共に激しい落雷が直撃すると、背後に迫っていた影が「にたり」と嗤ったようでした。
(「わたしメリー。今、あなたの後ろにいるの」)
「きゃは、ははははは、あははははははは」
『アアアア、アアアアアアァァァァァ!!!』
駄目押しのメリーさんによって、河童さんの精神はついに限界を迎えてしまったらしく――骸魂が半分飛び出た状態で、あたふたと逃げ出していったのでした。
「男子トイレは隣だからねー」とひらひら手を振る茉莉は、素っ気ない表情の中にも笑顔が見え隠れして。そう、怖がる子らは愛しくて、つい笑いが漏れ出てしまうのだと萃請は言います。
「ふふふ、っ――……おや、」
――この声でも、怖がらせたか?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三岐・未夜
たから(f01148)と
実年齢姿で、制服着用
ホラーは雰囲気でビビるだけで意外と冷静なタイプ
そもそもホラーより人の方が怖い
学校大っ嫌いだけど、まぁ、たから居るし……いやだってほら、この状態のたからひとりに出来ないでしょ、と参加
たからを気にして一緒に手伝って残っていた生徒役
遅くなっちゃったし、早く帰らないとねぇ
たから、何か詳しくない……?
いや、怖いのに何で今思い出したの?
大体、こんな時間なのに思い出すとか、……え、ちょっ、たから後ろ!!
わ、わ、待って待ってたから待っ、あーもう流石羅刹ガチで速いな!?
な、泣かないで泣かないで僕がなびきに怒られる!ほ、ほら大丈夫大丈夫しっぽだよほらー!(全力であやす)
鎹・たから
未夜(f00134)と
どうして皆わざわざ作り物のお化けを見たがるのです(ぷるぷる
※ホラー大嫌い、実物は倒せるから怖くない
たからは真面目な生徒役なので
先生の雑用も引き受けます
引き受けすぎてこんな時間ですが
…未夜、未夜はこの学校の七不思議を知っていますか
理科室で実験中に顔が爛れてしまった女生徒
音楽室でひとりでに鳴るピアノ
踊り場の鏡の前で三回まわると現れる人面犬…!
たからが詳しいのではありません…実際に学校の友達がこの手の話に詳しく…え?後ろですか?
ぴゃう(無表情で硬直後ダッシュ
たからはえらいので怖くありません怖くありません怖くあ(ぼろぼろ泣く
犬が人の顔をしていたら怖いでしょう!?
しっぽ…しっぽ…
草木も眠る丑三つ時――そんな言葉がぴったりな、しぃんと静まり返った夜の校舎を、制服姿の男女がそろそろと歩いています。
「……先生に頼まれた雑用を引き受けていたら、こんな時間に」
小柄ながらも、きりりとした佇まいの少女は鎹・たから(雪氣硝・f01148)で、真面目なクラス委員長の役がぴったりです。
「随分ブラックな先生だよね……遅くなっちゃったし、早く帰らないとねぇ」
その隣にふらぁりと、微睡むような足取りで付き添う三岐・未夜(迷い仔・f00134)は、ちょっぴり問題を抱えた不良生徒と言った役どころで――だけど、色々と世話を焼いてくれる委員長を放っておけないのでしょう。
「ま、一緒に手伝ったし、これで雑用は全部終わった――……って、たから?」
「……未夜」
と、特別教室の並ぶ棟に差し掛かった辺りで、不意にたからの足が止まりました。感情の窺えないその顔は、色白を通り越して蒼白です。随分と思いつめた様子で、ぷるぷる震えながら何かを告げようとする彼女の姿に、未夜の狐耳がぴくんと揺れました。
「未夜は、この学校の七不思議を知っていますか」
「え」
――何故、此処でいきなり怖い話なのか。ホラー系は駄目っぽいのに。なのに、カンペを丸暗記してきたと思しき口調で、たからは旧校舎の七不思議をすらすらと挙げていくのです。
「理科室で実験中に顔が爛れてしまった女生徒、音楽室でひとりでに鳴るピアノ……」
「たから、何か妙に詳しくない……?」
「踊り場の鏡の前で、三回まわると現れる人面犬……!」
「え、いや、怖いんだろ? 何で今思い出したの?」
理科室、音楽室、そして踊り場――すたすたすた、と競歩のようなスピードで校舎を駆け抜けていくたからの背を、未夜は追いかけていくのが精一杯です。
そうして――ようやく昇降口が見えてきた辺りで、たからは大きく息を吐き、くるりと未夜の方を振り向いたのでした。
「たからが詳しいのではありません……実際に学校の友達が、この手の話に詳しく、」
「大体、こんな時間なのに思い出すとか」
「うっ」
――ロケ番組であるとは言え、やっぱり夜の校舎を歩き回るのは怖いのです。いかにも何かあると言う雰囲気は未夜も苦手なのですが、そのうち冷静になってきて、辺りを見回す余裕も出てきました。
「……どうして皆、わざわざ作り物のお化けを見たがるのです」
実物は倒せるから怖くないけど、でも――悟りを開いたように遠い目をして、たからが呟きます。鬼気迫る彼女の方が怖い、とは間違っても口にしてはいけない雰囲気でした。
そもそも、ホラーとか幽霊よりも、人の方が恐ろしいと言うのが未夜の考えです――陰湿ないじめなどを知っていれば、お化けの存在なんか可愛いものです。
(「学校大っ嫌いだけど、まぁ、たから居るし……」)
こんな風に学校生活を送れたのなら、自分も少しは変わっていただろうか。そんなことを思う未夜が、落ち着きを取り戻してきたたからに声を掛けようとした、その瞬間。
「……え、ちょっ、たから後ろ!!」
「え? 後ろですか?」
くるりと彼女が振り向いてみれば、暗闇で揺れる尻尾がちらりと見えて。其処で恨めしそうなおっさんが「ほっといてくれ」と悪態を吐くと、その顏に続く犬の胴体が月明かりに照らされました。
「――ぴゃう」
無表情のまま、ちょっぴり可愛らしい悲鳴をたからが上げて――不意に硬直。そのまま、ずさささっとダッシュで逃走していく彼女には、妖怪テケテケだって追いつけないな、と未夜は思いました。
「わ、わ、待って待ってたから待っ、あーもう流石羅刹ガチで速いな!?」
手を伸ばそうにも残像が凄すぎて叶わず、校門の辺りまで走ったところでようやく捕まえます。途中で河童を轢き潰したようにも見えましたが、地面にしゃがみ込んだたからは、ぼろぼろと涙を流していました。
「たからはえらいので怖くありません、怖くありません怖くあ」
「あああ、な、泣かないで泣かないで!」
「犬が人の顔をしていたら怖いでしょう!?」
にこやかに微笑む彼女の保護者が、黒い怒りに滾る姿を想像して、何とか泣き止ませようと未夜が動きます。こんな状態のたからを、ひとりには出来ないと言う気持ちはずっとあったから――ふさふさの尻尾を揺らして、彼女に笑顔を届けるのです。
「ほ、ほら大丈夫大丈夫しっぽだよほらー!」
「しっぽ……しっぽ……」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
居神・ヲリヒメ
制服に憧れてたんだよなー。
ブレザータイプの制服を着てロケ現場に乗り込むぜ(成人女子妖狐の意気込み)
せっかくだし『気弱な女子』の体でいってみるか。こほん……。
「ここが理科室……確か、実験に失敗して亡くなった生徒の霊が、夜な夜な現れて自分と同じ犠牲者を探してるって話よね……」
ボッ!
「きゃっ!? 火の玉!?」
(UC【フォックスファイア】で自作自演)
「噂は本当だったのね!? こ、来ないで、そんなに近くに寄られたら……!」
(ばっ、とブレザーを脱いでいつものライダースーツスタイル)
「退魔師オリヒメの血が騒ぐわ!」
(かっこよく手を振って狐火を消す自作自演)
「どう? 退魔師ヲリヒメの活躍! 次も期待してね!」
がらがらがら――旧校舎にある古びた扉を、ひとりの女子生徒がゆっくりと開いていきます。
「ここが理科室……」
暗闇でも目立つ紅い髪に、ぴょこりと覗いた狐耳はもっふもふ。扉越しに異変が無いかを確認して、そっと真夜中の教室に忍び込んだ居神・ヲリヒメ(折紙使い・f28587)は、利発そうな眉を困ったように顰めて呟きました。
「確か……実験に失敗して亡くなった生徒の霊が、夜な夜な現れるのだとか」
その気弱な性格は、番組の為のキャラ作りのようです。いつもの癖で、つい堂々と歩きそうになるところを「こほん」と咳払い――ブレザーの裾を摘まんだヲリヒメは、瞳を潤ませつつも探索を開始します。
「薬品を被ったか、火災に巻き込まれたとかで顔が爛れたんだったかしら? そうして、自分と同じ犠牲者を探してるって話よね……きゃっ!?」
彼女の行く手に立ち塞がったのは、人体模型の『内臓くん』。微妙にゆるい顔が可愛く思えたものの、女子生徒らしく悲鳴を上げてみました。
「あ、あれは……火の玉!?」
人体模型をそっと押しやり、薬品棚の方へ向かおうとしたその時――ボッと立ち昇った狐火が、恐怖に慄くヲリヒメを照らします。
「噂は本当だったのね!? こ、来ないで、」
ゆらゆらと妖しく燃えるその炎に紛れて、アルコールランプを手にした河童も近づいてきたようでしたが、迫真の演技を魅せるヲリヒメは、感極まったような声で叫んだのでした。
「そんなに近くに寄られたら……!」
――ばばっ。ブレザーの制服を一瞬で脱いで、その下から現れたのはクールな黒のライダースーツです。
「退魔師ヲリヒメの血が騒ぐわ!」
決め台詞とともに格好良くポーズを取り、しゅっと構えた手を一振りすれば、辺りを舞う狐火が一瞬で掻き消えていきました。自作自演と言うなかれ、CGでは無いのです。
――その間に狐火がランプに引火して、河童さんが火だるまになっていましたが、ロケ中の事故として済ませておきます。
(「ああ……オレ、制服に憧れてたんだよなー」)
やがて――遠い目をした成人女子妖狐の回りで、ゆめかわな感じの折紙がふわりと舞う中、何処からか番組のエンディングテーマが聞こえてきました。
あ、そろそろ彼女の出番が終わりそうです。ならば正義のヒロインとして、次回予告もきちんとやらなければいけないのでしょう。
「どう? 退魔師ヲリヒメの活躍! 次も期待してね!」
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
f11024/花世
古今東西の物語や民俗学と
河童の伝承は切り離せない浪漫
是非とも遭遇してみたいものです
河童と言えば水辺
水辺と言えばプール
プールの七不思議と言えば
足を引っ張る異形の怪!
胸躍らせつつプールサイドに立ち
出でよ怪異!と両手を掲げたなら
どぼんと飛び込む囮の影
あ、罠に掛かりましたね
花世の手を掴み助けつつ
水中の妖しの姿を確かめれば
…誰ですかあなた
どう見ても幽霊っぽい何か
嘗て溺死した生徒とか何とか
コレジャナイ、と再挑戦
何度潜れど本命が登場しない
――いや、
そこは河童が引き摺るべきでしょうよ
職務怠慢絶許です
皿割りますよ
幽霊を叱咤したところで
草葉の影からこそこそ物音
月明りに煌く皿の気配
おーまーえーだー
境・花世
綾(f01786)と
こちらは巷で噂のイケメン陰陽師
話題性抜群の! 綾せんせいです!
やんやと番組を盛り上げながら
ふたり向かうは深更のプール
暗い水面に引きずり込まれたら、
もう二度と 浮き上がっては来られない――
はーい、餌いっきまーす!
飛び込む冷たい水のなか
纏わりつく七不思議たち
綾の手に助けて貰ってはい一匹目
え? 幽霊じゃだめだった?
河童かあ、了解了解、もう一回ね
ざぶんどぼんと繰り返しても
本命はどうやら隠れたままらしい
ところできみ、河童への熱意がおかしくない??
首を捻りつつ見やる月光の下、
怯えたふうにぺたぺた逃げるあの影は
よし先生、ここは陰陽師のなんかすごい技で!
ヒエッ 綾の顔がいちばんホラー……
ポロローンと雅な琴の音とともに場面が切り替わり、学園退魔帖は二ノ巻へと続いていきます。
舞台は深更、冷たい風が吹きつける屋外プール――微かに漂う塩素のにおいに導かれ、錆びついたシャワーの間を抜けていくと、やがてプールの飛び込み台が見えてきました。
「古今東西の物語や民俗学と、河童の伝承は切り離せない浪漫――」
ミステリアスな声が怪異へ誘えば、闇色の水面がゆらりと揺れて。ばさっと翻る狩衣に合わせるように、五芒星の描かれた霊符が宙を舞います。
「嗚呼、是非とも遭遇してみたいものです……!」
「はーい、こちらは巷で噂のイケメン陰陽師、話題性抜群の! 綾せんせいです!」
プールを見据えて仁王立ちする都槻・綾(絲遊・f01786)が、優美な笑みを浮かべつつ口上を述べれば――アシスタント役の境・花世(はなひとや・f11024)は、やんややんやの喝采を送りました。
「河童と言えば水辺、水辺と言えばプール」
「ですねぇ、水辺には霊も集まると言いますからね」
――綾のトークに相槌を打ちながらも、プールサイドに落ちた符をせっせと回収していく花世の傍には、きゅうりの入った籠も置かれているようです。
「そして……プールの七不思議と言えば、足を引っ張る異形の怪!」
「嗚呼、暗い水面に引きずり込まれたら、もう二度と浮き上がっては来られない――」
どんどん番組は盛り上がり、もうお化けも出て行かざるを得ない状況になってしまえば、頃合いと見た綾せんせいが、飛び込み台の上で「がばっ」と両手を掲げます。
「出でよ怪異!」
――胸躍らせつつ、首にかけられた勾玉にも祈りをこめて。すると意図を汲んだ花世が「はーい」と挙手して、プール開きより一足先に、どぶーんと水のなかに飛び込んでいったのでした。
「餌いっきまーす!」
――え、アシスタントのおねーさん、餌役もやるんですね。まだまだ夜は冷えますが、命知らずにぶくぶく潜水していく花世は何だか楽しそうです。
おや、プールの様子がちょっと変に。水に紛れて纏わりつく何かが、月夜のなか不気味に蠢くような気配がして――。
「……あ、罠に掛かりましたね」
――ああ、綾せんせいも、花世おねーさんを罠扱いしていました。プールサイドで手を引っ張る彼に助けられ、ぷかりと浮かんだ花世に続いて、まず一匹目の妖しが姿を現します。
「……誰ですかあなた」
「え? 幽霊じゃだめだった?」
花世がおんぶしているその妖怪は、どう見ても河童には見えなくて、たぶんプールで溺死した生徒辺りだろうなあと綾は当たりをつけました。
「コレジャナイ」
「河童かあ、了解了解、もう一回ね」
恨めしそうな顔で此方を見上げてくる幽霊を、ぐぐっとプールに押しやりつつ――溜息を吐いた綾に、手で大きくマルを作って応える花世です。
「むむ、はずれですね」
「今度はどうだろ」
「あ、……逃げた」
――ざぶん、どぼん。何度囮を繰り返してみても、本命の河童は登場しません。どうやら彼はずっと隠れたままのようで、はずれの幽霊ばかりが引っかかります。
「ところできみ、河童への熱意がおかしくない??」
プールから逆さまに足を突き出した、殺人事件の犠牲者みたいな幽霊をリリースしつつ、だいぶ素に戻った花世が首を傾げました。
「――いや、そこは河童が引き摺るべきでしょうよ」
ちょっぴり目が据わってきた綾のほうは、さっきからぼりぼりときゅうりを齧っていて、河童が出て来るまでロケを続行するつもりのようです。
とは言え、陰陽師路線で攻めるつもりが、もはや釣り番組みたいになってきているので、花世としてもどうにかしたいところなのですが――。
「職務怠慢絶許です、皿割りますよ」
――ドスの効いた綾の声が、しぃんと静まり返ったプールに響き渡った直後、こそこそと物音がする草葉の陰。首を捻りつつ花世がそちらを見やれば、怯えたふうにぺたぺた逃げていく何者かが見えました。
「よし、先生、ここは陰陽師のなんかすごい技で!」
月明りに煌く皿の気配――やけっぱちになった綾が呪詛に満ちた声を上げて、河童と思しき影へと襲い掛かります。
「おーまーえーだー」
ああ、綾の顔がいちばんホラー――そんな花世の呟きとともに、場面が暗転しました。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
呉羽・伊織
【花守】
(怯える女生徒の為に格好良く悪霊退散☆
――みたいな感じで行く筈が、アレ?
何でまた野郎二人で肝試し??
肝心の女子不在の恐怖!
とか別方向に震える心を何とか引戻し)
…家庭科室?何かあったっけ?
えっ、何その神隠し
まさか、ソレは――
一瞬目を離せば最後、何処からともなく不穏な手が伸びてきて…
忽然と食物が消えてく恐ろしいアレか…!
(ごくり、と息を飲み
――隣から何か違う意味でごくりと聞こえたのはきっと気のせいだネ)
知ってる…この現象は…狐の仕業…!(※大体目の前の犯人せい)
何て恨み深い狐なんだ…(真顔)
ところで何で酒まで持ってんの?
嗚呼…こんなトコにも哀れな犠牲者(神酒奪われ寝た河童)が…!(ふるり)
千家・菊里
【花守】
(昼は教師
夜は霊媒師
学舎と生徒の為に駆ける怒濤の24時が今――
的な形でいざ
謎の恐怖に涙目気味の連れは生暖かくスルーし)
さぁ、問題の家庭科室ですよ
おや、こんな噂を耳にした事は?
食材が謎の失踪を遂げる
神隠しの七不思議――
二人前の筈の料理が
完成時には何故か一人前に――
(と、不意に伊織の携帯おやつに伸びる魔の手が――ぱくりごくり
摘まみ食い?いいえ怪談です)
ええ、狐――こっくりさんに憑かれると、手が勝手に動くと言いますし(捏造)
食物(先日伊織にとられたプリン)の恨みは恐ろしいとも言いますしね
(序でに神酒もごくりと)
あ、これは途中でお清め用に拝借してきました
(寝る河童に合掌――南無&御馳走様です)
夜の校舎に木霊する、絹を裂くような女生徒の悲鳴。
暗がりに潜む物の怪が、仲間を求めて彷徨うも――悪霊退散の声ともに、ふたりの男が立ち上がる。
――昼は生徒に人気の教師。而して夜は霊媒師。
学舎と生徒の為に駆ける怒濤の24時が今、幕を開ける……!
「――みたいな感じで行く筈が、アレ?」
弁士の読み上げるナレーションが、すすすすっと遠ざかっていくのに合わせて、残酷な現実を突きつけられた呉羽・伊織(翳・f03578)が、きょろきょろと辺りを見回します。
「女子はどこ? 何でまた野郎二人で肝試し??」
ああ、怯える女子生徒の前に、格好良く現れるシーンは何処へ行ったのか――いきなり涙目になっている伊織ですが、収録が押していた為にスルーされたようです。
「……さぁ、到着しましたよ。って、いつまでぷるぷる震えているんですか」
「だって、肝心の女子不在の恐怖が! あああ!」
――悪霊退散のポーズだって、あんなに何度も練習したのに。不良教師っぽい伊織に対して、千家・菊里(隠逸花・f02716)のほうは笑顔の似合う、ちょっぴり腹黒なS教師と言ったところでしょうか(主に連れに対して)
「はいはい、問題の家庭科室ですよ」
「いやー、生暖かい目で見ないでー。……え、此処って何かあったっけ?」
あらぬ方向を彷徨う伊織の心ですが、菊里によって何とか現実に引き戻されて『家庭科室』と書かれたプレートを確かめます。
「おや、こんな噂を耳にした事は?」
伊達眼鏡をくいっと押し上げて尋ねる、菊里先生曰く――それは、神隠しの七不思議。調理実習で使われる食材が、ある時ふっと謎の失踪を遂げるのだそうです。
「え、何その神隠し。まさか、ソレは――」
――人参、じゃがいも、玉葱、豚バラ肉。黒板に書かれたままのレシピは、恐らくカレーでしょう。気楽に構えていた伊織も、七不思議の恐ろしさに思い至ってごくんと息を呑みます。
「一瞬目を離せば最後、何処からともなく不穏な手が伸びてきて……」
「ええ、二人前の筈の料理が、完成時には何故か一人前に――」
「忽然と食物が消えてく、恐ろしいアレか……!」
カレーって鍋で煮込んでいるぶん、気づきにくいですよね。一人前になるならまだしも、肉だけ無くなっていたりしたら嫌ですよね。
(「――ごくり」)
(「――ぱくり、ごくり」)
再度、伊織が息を呑む音に合わせて、そろりそろりとその懐に伸びる手――『おやつ』と書かれた袋のなかから、たまごボーロがぽろぽろ零れて一気に消えていきます。
(「ん?」)
――伊織の隣から、何か違う意味でごくりと聞こえたのは、きっと気のせいだネ。菊里の指にたまごボーロの滓がついているのも、きっと妖怪のせいだよネ。
「……摘まみ食い? いいえ怪談です」
「知ってる……この現象は、狐の仕業……!」
のらりくらりと笑顔で伊織の追及をかわす菊里は、そう言えば妖狐だったりするのでした。それに、狐――こっくりさんに憑かれると、手が勝手に動くのだと彼は言います。
「食物の恨みは恐ろしいとも言いますしね。先日とられたプリンとか、プリンとか……プリンとか」
「な、何て恨み深い狐なんだ……」
今度は真正面からおやつ袋に手を突っ込み、餡子たっぷりのどら焼きをもしゃもしゃ食していけば、伊織に横取りされたプリンも浮かばれると言うものです。
――そうして、お口直しに抹茶クッキーも頂いたところで、菊里は手にしていた神酒をぐいっと傾けました。
「……ところで、何で酒まで持ってんの?」
真顔のままで呆然と、家庭科室で寛ぐ菊里を眺めていた伊織が、其処でようやく口を開きます。
「あ、これは途中でお清め用に拝借してきました」
「ええと、学校だよなここ。社務所とかあったっけ……?」
――と、調理場の向こうで、誰かが倒れているのが目に入ってきます。厭な予感がした伊織がすぐさま向かうと、其処では何者かに神酒を奪われたと思しき河童が、死んだようにぐっすりと眠っていたのでした。
「嗚呼……こんなトコにも哀れな犠牲者が……!」
骸魂との合体が解かれて、寝る河童に合掌。やがて背後から聞こえてきた犯人のメッセージとともに、番組は無事に終わりを迎えました。
(「――南無&御馳走様です」)
『夜回り先生24時~酒は飲む為にあるんだよ!』 おしまい
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵