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大祓百鬼夜行⑯〜死殺興行

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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 真っ二つになった妖怪の死体が、どちゃり、と血の海に沈む。
「他愛ないねェ」
 返り血で全身を朱に染めた女は、つまらなさそうに呟いた。
「どうせならもっと手強い相手が欲しいよ。情念を籠めた殺意の持ち主が。
 その方が殺し合いってのは盛り上がる――なァ? あンたもそう思うだろう?」
 女が語りかけるのは、カメラの先――誰も見ていないはずのテレビの向こう。
「殺し、死に、また殺す。それが一番盛り上がるよねェ!?」
 妖怪たちは震え上がる――だが、拒否権はない。
 この空間は、女剣鬼……『彼岸花のおゆう』の支配する修羅場と化したのだから。

●グリモアベース:予知者、白鐘・耀
「UDCアースのゴミ捨て場にね、テレビが捨てられてるわけよ」
 耀は不愉快そうな顔で、黒い髪をかきあげた。
「そこに映る番組は、妖怪が作る「存在しないはずのテレビ番組」。
 で、今はそれをオブリビオンが乗っ取って、好き放題してるってわけ。
 このまま放っておくと、UDCアースが「テレビの中の世界」に切り替わるわ」
 ゆえに、そうなる前にオブリビオンを叩かねばならない。
「このテレビ番組の中は特殊な力が働いてて、その企画に乗っかるのが有効なの。
 もちろん普通にオブリビオンを叩きにいっても、今回は難しいでしょうね――」
 その、テレビ番組の企画が問題なのだ。
「リアリティ・ショーって知ってる? ほら、カップル成立番組とかあるでしょ。
 ……あれのもっとエグい版よ。オブリビオンが放送してる番組ってのは。
 早い話が、参加者同士がマジの殺し合いをしてるの。そう、妖怪同士がね」
 その企画に乗るということは、つまり。
「――あんたたちには殺し合いをしてもらうことになるわ」
 どこかで聞いたような台詞を、耀は心底嫌そうに言った。

 といっても、本当に殺し合いをしていてはあまりにも被害が大きい。
 耀いわく、このからくりには「番組であること」に抜け穴があるという。
「番組ってことは、つまりより盛り上がったほうが勝ち……ってことでしょ?
 だから相応に盛り上げることが出来れば、本当に死んだかどうかは関係ないわ」
 リアリティ・ショーが、なぜ発明以来テレビプログラムの主流足り得るか。
 それは、参加者たちが「本当(リアル)の感情を見せる」からだ。
 そうした番組の多くは、当然のように「リアリティ」を演出している。
「ようは、できるだけ派手に、ドラマチックに、盛り上がるように殺し合えばいい。
 やり方はあんたたち次第よ。ホラー映画みたいに追いかけ回してもよし、
 この際だからお互いに思ってることでもなんでも吐露してもいいかもね。
 それかまあ、シンプルに本気で殺し合うだけでも迫力はあるでしょうけど……」
 つまり盛り上げることが出来れば、殺した「ふり」で事足りるのだ。

「さっきも言ったとおり、殺し合いの中には妖怪やオブリビオンも入ってるわ。
 妖怪を相手に指定することで、殺したふりをして助け出してもいいわね。
 直接オブリビオンと殺し合って叩いてもいいけど……こいつ、マジで強いわ」
 こんな番組をたったひとりで仕切っているのだから、当然だろう。
「私たち猟兵で番組を盛り上げていけばいくだけ、オブリビオンの支配率は減る。
 それはそれで相手の力を削いでいくことが出来るから、どうするかはお任せよ。
 ……「ふり」のつもりが本気で殺しちゃいました、なんてのは勘弁してよね」
 そう言って、耀は火打ち石を鳴らした。
「それにしてもこの番組、趣味が最悪ね」
 その声には、ありったけの嫌悪が籠もっていた。


唐揚げ
 イクラ丼です。シリアスにもネタにもなるシナリオをお届けします。
 まず、今回のシナリオのプレイングボーナスは以下の通り。
『番組の企画に全力で乗っかる(戦わずともダメージを与えられる)』

 ここからは、番組内容の再説明と参加上の補足です。
 剣鬼・おゆうが仕切っているのは、ずばり「殺戮のリアリティショー」。
 妖怪同士、あるいはおゆうを相手に殺し合うというシンプルなやつです。
 形式も様々で、ホラー映画みたいにキラー側が追いかけ回すことも、
 いわゆる決闘のように一対一で殺し合うことも、ロワイヤル形式もあります。
 幸いまだ妖怪たちに犠牲者は出ていません。OPの描写は「在り得る未来」です。
 ただしおゆうは非常に強く、まともな殺し合いで妖怪たちに勝ち目はありません。

 参加上の補足。
 この番組はあくまで「リアリティショー」であることがキモになります。
 耀の言うとおり、番組が盛り上がれば実際の生死は関係ありません。
 なので、本当に相手を殺したりする必要はありません。
 ただ、あまりにも細工がわかりやすいと盛り下がってしまうでしょう。
(一部種族やジョブの方は殺されてもなんとかなりそうですが!)
 どのように番組を盛り上げるかは皆さん次第です。
 冷酷無慈悲な殺人鬼として犠牲者を追いかけ回しても、
 恋人や親友・悪友など関係ある方と思いをぶつけあっても、
 シンプルに驚天動地の戦いを繰り広げてもいいでしょう。

 このような性質のため、本シナリオは合同参加を【強く推奨】します。
 推奨というだけですので、もちろん単独でのご参加も問題ありません。
 いずれにせよ、ご参加いただく場合以下の点を明記してください。

 1:単独or合同(合同なら普通に相手がわかる記述があればOK)
 ex)単独参加の場合、同時採用OKかもご明記ください。
 2:殺し合う方法(以下に一例です)
 『決闘:1vs1や2vs2など対等に殺し合う』
 『追跡:追いかけたり追われたり。合同の場合どちら側か明記を』
 『乱闘:妖怪やオブリビオン含む大人数でのロワイヤル』
 3:勝敗結果の指定orお任せ(合同のみ。お任せ時は判定結果で決めます)
 ex)単独参加かつ同時採用OKの場合、「自身の敗北の可否」をご記入ください。

 と、こんな感じです。
 リプレイの執筆は5/9から着手する予定です。ご参加おまちしています。
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第1章 ボス戦 『剣鬼『彼岸花のおゆう』』

POW   :    悪鬼剣『彼岸花』
【血を滴らせた大太刀『三途丸』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    悪童の爪
【鬼としての力を解放した左手】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血の臭いと味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    鬼神妖術『羅生門』
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【血で作られた紅の斬馬刀】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガイ・レックウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シエナ・リーレイ
■アドリブ・同時採用可
わたしと遊びましょう!とシエナは『お友達』候補に突撃します。

『お友達』を求めて彷徨うシエナ、溢れんばかりの好意(殺意)を向けてくる『お友達』候補と仲良くなる為に親愛と好意に満ちた笑みを浮かべ突撃します

まだまだ遊び足りないよ!とシエナは訴えます。

『お友達』候補との楽しいお遊戯はシエナの気分を瞬く間に高揚とさせて普段は呪詛を纏い始めます
呪詛を纏ったシエナは敵味方を区別する事無く身の毛もよだつ凶行に及び始めます

気分が高揚としたシエナが止まるとしたら遊び疲れて永遠の眠りについた『お友達』候補を『お友達』に迎える時か猟兵によって鎮圧されて拘束された時のどちらかでしょう


空亡・劔
同時採用OK

この最強の大妖怪を差し置いてこんなホラーな異変を起こすなんて
上等じゃない!

あたしは真体である剣と体が同時に破壊されなければ基本大丈夫な筈

決闘
人数不問

戦う以上このあたしは本気を出す!
神殺しの大妖怪発現
防御強化
【見切り・残像】で攻撃は避けつつ防御強化で切り裂かれても耐える
あたしは最強の大妖怪だけど斬られたら痛いんだけど!
でも泣き言は言ってられないわね(血塗れになり傷だらけになりながら闘争心は消えず

血反吐を吐いて内臓をぶちまけても最後まで闘争心は消さず戦い続ける

まだ…あたしは戦える…(寧ろ周囲がドン引きする勢いで
血が抜けたんだから体が軽くなって…

結果
お任せ
振りなんだから口惜しくないもん



●血闘
 類は友を呼ぶ――いや、この場合は血の匂いが同種を呼んだというべきか。
「……あれがあたしの相手ってわけね」
 自称"最強の大妖怪"空亡・劔が睨み据えるのは、ひとりの少女。
 見た目は可愛らしい、外見だけで言えば年頃は10かそこらの乙女だ。
 だが、隠しきれない血の匂いと……常軌を逸する笑みが、本性を知らせる。
「こんにちは! と、シエナは元気に挨拶します」
 その少女――シエナ・リーレイは、奇妙な客観的口調でぺこりとお辞儀した。
 劔は訝しむ……奇矯さではない。シエナの目が異様に爛々と輝くことに。
「わたし、ずっと探し回っていたの! と、シエナは『お友達』候補に言います」
「お友達候補、ですって? このあたしが?」
「そうよ! わたしはお友達がほしいの! と、シエナは笑顔で言います」
 お友達……微笑ましい響きだ。言葉の響きだけは。
 だが、それが醸し出す言いようのしれない不気味さに、劔は顔をしかめる。
「……なるほど、そういうこと。いいわ、上等じゃない」
 同じ猟兵同士とはいえ、此度の目的は殺し合いのふりをすることにある。
 それを差し引いても、シエナの狂気は異常だ。いや、これはもはや狂気ですら。

「わたしと遊びましょう! とシエナは『お友達』候補に突撃します」
「!!」
 先手はシエナが仕掛けた。そもそも彼女の本質はヤドリガミである。
 それもただの人形ではない。怨念と呪いを宿した、殺戮の人形!
 彼女の『お友達』とはすなわち、同じような死体になることを意味する!
「この最強の大妖怪が、そう簡単にホラーの犠牲者になると思ったら大間違いよ!」
 対する劔は、猛然と迫るシエナを真っ向から迎え撃った。
「新しい妖怪」である彼女もまた、もともとはヤドリガミであった存在だ。
 魔剣の化身たる性質ゆえに、本体である剣が残っていれば命は繋がる。
 もちろんシエナはそれを知らないし、知っていても手加減するかどうか……。
(戦う以上、本気で行かないと……これは、ヤバいわね)
 劔はユーベルコード『神殺しの大妖怪』を発動し、自らを強化。
 呪いが服を着て歩いているようなシエナは、まさに『人類の脅威』である。
 人類の脅威を討ち果たすために最大の力を振るえる劔にとっては、格好の相手だ。

 シエナの身体から湧き上がるどす黒い呪詛が、触手のようにうねった。
 柔軟でありながらそれらの先端はナイフめいて鋭く、そして……疾い!
「どんな風に遊ぶ? かくれんぼ? それとも鬼ごっこ? とシエナは『お友達』候補に語りかけます」
「く……ッ!」
 劔は咄嗟に攻撃を見切って回避しようとしたが、闇の触手はなお疾い。
 一歩後ろに飛び退いたはずが、先端の斬撃は劔の身体とくに脇腹を裂いていた。
「あたしは最強の大妖怪だけど、斬られたら痛いんだけど!?」
「そう! おままごとがいいのね! とシエナは『お友達』候補に言います」
 呪詛が新たな形を取る――カトラリーめいた形の拷問器具の数々!
「あたしを腑分けしようっての? いい度胸じゃない!」
 次々に飛来する闇のカトラリーを、劔は切り払う、切り払う、切り払う!
「ぐ、ううう……ッ!!」
 だが数が多い。そのうちの3、4割が防御を抜け、劔の身体を引き裂き貫いた。
 人間であればとうに立てなくなっているであろう重傷だ。しかし!
「あたしは、この程度じゃ! 倒れない!!」
 全身を朱に染めながら、劔は叫び、シエナの呪詛の織を切り裂いた。
 深く切り込めば切り込むほど、闇色の殺意は彼女の身体を貫き蝕む……!
「踊りましょう! ダンスは楽しいわ! とシエナは『お友達』候補に手を差し伸べます」
 無自覚に凶行を重ねるシエナもまた、『お友達』候補との楽しい『遊び』に耽溺していた。
 終わりが来るとすれば、それは『お友達』候補が"遊び疲れて"眠ってしまった時。
 もちろんその場合は、シエナの新たな『お友達』になることを意味する。
 さもなくば、ここで鎮圧され物理的に動けなくなるかのどちらかだろう。
 手加減は出来ない――劔はも一度痛感する。そして闘争は加速する!
「う、ぁああああああッ!!」
 叫ぶ劔の胴体を、闇色の呪詛がぞぶりと貫き、臓腑をかき混ぜた。
「がは……ッ!!」
 シエナは満面の笑み。劔の吐いた血が、少女の相貌をべったりと穢す。
 勝負あったか――否、まだだ! 劔の目は死んでいない!
「あたしは……まだ、戦える……!!」
「まだ遊べるのね? 嬉しいわ! とシエナは喜びを表現します」
「遊びじゃない――これは、闘いよ!!」
 なんたることか。劔は自ら身体を強引に動かし、切り裂かれた脇腹の側をさらに裂くことで触手の拘束から逃れた。
 おぞましい量の血と臓物がぶちまけられる。酸鼻という言葉はまさにこのためか。
(血が抜けたから、身体が軽い。意識を失う前に、終わらせる……ッ!)
 闇色の触手が劔を縫い止めようとする。劔はその猛攻をかいくぐった。
「もっと遊びましょう、もっともっと! とシエナは高揚を表現します」
「これで――終わらせるッ!!」
 懐に潜り込んだ劔は、不滅たる魔剣を横薙ぎに振るう――!

「……はぁ、はぁ、はぁ……」
 あたりはもはや、血の池じみた有様と化していた。
 立っている……いや、剣を支えにかろうじて倒れていないというべきか……のは、劔である。血の海に沈むシエナの身体は、四肢があべこべに曲がっている。
 人形のヤドリガミゆえに、修復は出来るだろう。それに、こうするしかなかったのだ。
「残念だわ。もっと遊びたいのに。とシエナは悲しそうな顔をします」
「……出来れば、もう御免だわ……最強の大妖怪でも、しんどすぎるもの……」
 凄惨極まる戦いは、かろうじて劔の勝利という形で幕を下ろす。
 狂気と凶気と血臭が混じり合い、妖怪でさえ直視できぬ有様だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
1:単独(同時採用X)

……馬鹿馬鹿しい。人の命を、何だと……
終わらせましょう。この最低の茶番を。

救うべきは沢山の妖怪達。ならば当然、狙うはアナタ1人。
さあ、おゆう様。わたしと決闘していただけるかしら?

相手は強敵。速攻でUCで発動し更に限界まで出力を上げて立ち向かう。
無数の斬馬刀の軌道を見切り、躱し、受け流し、庇い守って凌ぎ切る。
動きに踊りを取り入れ魅せる事も忘れず隙を見て斬りかかる!

本当は、嘘でも殺し合いらしくした方がいいんでしょうね。
でもね、そういうのわたし性に合わないから。
誰も殺さない、殺させない。妖怪達も、アナタの中の妖怪も、全員救う。
どれほど無謀で無茶でも、諦めるわけにはいかないのよ!



●最低の茶番劇、その終演のため
 バカバカしい。
 狂っている。
 腹立たしい。
 フェルト・フィルファーデンが抱く想いは、それですべてだ。
 それ以外は何もない。喜びなどあるはずもない。純粋な嫌悪と怒りがある。
 ゆえに彼女は、たったひとりで多くを救える選択肢をとった。
 ――すなわち、バトルロワイヤルへの乱入だ。

「……あぁん?」
 妖怪たちを相手に傲然と振る舞っていたおゆうは、異なる気配に振り返った。
 そこには見慣れぬ妖精――つまり、フェルトが浮かんでいる。
「さあ、おゆう様。わたしと決闘していただけるかしら?」
「へえ……あンた、猟兵かい。あたしの番組をぶち壊しにきたって?」
 おゆうはにたりと笑う。それだけで、じっとりと空気が重みを増した。
 濡れた布が肌にまとわりつくように、不快な殺気がフェルトを包み込む。
 これは、合理的な判断ではない。相手は、只者ではないのだ。
「……ええ、そうよ。アナタには、誰も殺させない」
「これは殺し殺されるためのショーだよ? 何を寝言言ってンのさ」
「それでも、よ。わたしは、そんなくだらない茶番劇には付き合わない!」
 おゆうは笑みを深めた――狩猟者の笑みだ。
 瞬間足元の影が赤く染まり、彼岸花の形になってすさまじい速度で成長。
 咲き誇る花はザクロの実のように爆ぜ砕け、飛沫が無数の斬馬刀に変じた!
「だったら、あンたから死になァ!!」
「……ッ!!」
 フェルトは即座にユーベルコードを発動し、同時に人形たちを展開する。
 その術式の名は――『不撓不屈の逆転劇(ジャイアント・キリング)』!!
「わたしは殺さない、だれも殺させない。妖怪たちも、本当のアナタも全員救う!」
「寝言をォ!! 言ってンじゃあないよォオオオッ!!」
 嵐の如き斬撃をくぐり抜け飛び出したおゆうが、妖精騎士たちを惨殺切断!
 バラバラになった人形たちの残骸を隠れ蓑に、フェルトは踊るように斬撃を躱す。
 剣圧と吹き荒れる風がその身をずたずたに斬り裂こうとも、諦めずに!
「あっはははは! どォしたい! やられっぱなしじゃ――あ?」
 おゆうは気付いた。破壊されたはずの人形の刃が己に届いたことを。
 脇腹に刺さったランスを無造作に引き抜き、おゆうはフェルトを睨んだ。
「……どれほど無貌でも、無茶でも……わたしは、諦めるわけには、いかない」
 人形たちがさらに飛び出す! 繰り出された矢を斬馬刀が撃墜!
 おゆうは鬼神の如き形相でフェルトを追う。捕まれば、即・死だ!
「どんな世界でも、どんな相手でも! わたしは最高の大団円を諦めない!
 たとえそのために命を賭けてでも――わたしは、勝利を掴んで帰るのよ!」
「こォの甘ちゃんがァアアアア!!」
 鬼だ。鬼が迫る。フェルトは本能的な恐怖に気圧されかけた。
 だが彼女は退かぬ。必死に、健気に、歯を食いしばって踊り続ける。
 殺戮という名の茶番劇を、最高のハッピーエンドで否定するために。
 どれほど傷つこうとやめはしない。その姿は美しく、だが滑稽だ。
 おゆうは彼女の愚かさをせせら笑った。しかしフェルトの愚かさは愚直と云う。
 ひたむきに明日を目指す彼女は、どんな悪意にも負けはしない!
「必ず、アナタも――アナタの中の妖怪も、救い出してみせるわ!」
「……!!」
 血まみれでなお輝くフェルトの双眸に、おゆうが気圧された。
 浅葱色に輝く護身剣が、たたらを踏んだおゆうの身体を――斬り裂く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
白いのと決闘/f18631
心情)今回はガチに俺が相手か。つっても前よか条件はゆるい。ひ・ひ、せっかくだ。あンときの分まで遊んでやるよゥ。そォさな、魔王と勇者ごっこでどうだい。
行動)穢れのコロン、病毒のヴェール。骸の海をコートに編んで、呪憎悪意で飾り立てよう。魔王らしィく身なり整えたら、口上いっぱつかまそうか。
『汝、色失せし不死 忘却に彷徨う者よ』
『私は死 私は穢れ 私は命すべての敵』
『旅終えたくなくば いざ抗ってみせよ』
サ・楽しくヤろうぜ白いのよ。この状態の俺にカラダ砕かれりゃア、さすがのお前さんも数週は動けん。甘ったるい恐怖心垂れ流してねェで、ガチで抗い生き残ってみせなァ。


茜崎・トヲル
かみさま(f16930)と決闘、結果おまかせ!

ふふ、かみさまと殺し合うのひさしぶりじゃんね?
盛り上がればおっけーだって。それならおれたち余裕じゃんね!
遊んでくれるの?!やったー!いいよ、おれ本気の全力するよ!

えっ……あれ、かみさまなの?
そっか……あはは、体が竦むなんていつぶりだろね

スー、ハー……頬叩いて、よし!
脳みそも体も改造して強化!リミッター解除!
かすめただけでやばい!再生しづらい!でも死なないなら動ける!
アサルトウェポンで遠距離から攻撃!
体から作った暗器ぶん投げて魔力爆弾!
ハンマーで直接ぶっ飛ばす!溶けたら化術で修復!
教えてよかみさま!おれに!忘れちまった、死の恐怖ってやつをさあ!



●死を運行するもの、死を忘却したもの
 殺し合い――という言葉が、ここまで縁遠いふたりも居まい。
 朱酉・逢真と茜崎・トヲル。
 死の化身と、死の嫌われ者。
 死を運行するものと、死を忘れたもの。
 黒と白。
 非生命と過生命。
 つまりは対極で交わらざる水と油であり、何故か不思議とつるんでいる。
 そのふたりが、殺し合いのためにわざわざここへ来たのである。
 酔狂ここへ極まれり、と呆れるべきか。
 あるいは――死なせられない男と、死ねない男をともに憐れむべきか。

「ふふ」
 ふたりきりの場。そこはオブリビオンの力で生まれた特殊な迷宮。
 赤錆めいた血反吐がこびりつく、殺風景で不気味で「似合い」の場所だ。
「かみさまと殺し合うの、ひさしぶりじゃんね?」
 そんなところに立って、おそろしいものに相対して、トヲルは笑っていた。
 ……なにせ、この男は白雉だ。不死の代償として知恵を失ったけだもの。
 笑う以外の顔を知らず、だが小賢しくも言葉をしゃべる――しゃべれてしまう。
「あンときゃお互いに、分身みてェなモンが相手だったが――」
 じわり、と。男のカタチをした何かの顔半分が、黒に揺らいだ。
「今回は、ガチに俺が相手だ。前よか条件もゆるいし、小細工はいらねェだろ」
「んだね! 盛り上げればおーけーなんて、おれたち余裕じゃんね!」
「……ひ、ひ」
 逢真は意味深に喉を鳴らす。不気味な笑み。
「せっかくだ、あンときのぶんまで遊んでやるよゥ、白いの」
「遊んでくれるの!? やったー! なら、おれも本気の全力――」
 無邪気に両手を上げるトヲル……の笑みが、ぴしりと固まった。
 もうそこに、逢真などという人間の名を持つ宿はどこにもなかったからだ。

 ――そォさな、魔王と勇者ごっこでどうだい。定番だろゥ?

 声だけは人間めいている。それが、なおさらに恐ろしい。
 恐ろしい――そう、恐ろしい。トヲルは本能的恐怖を感じていた。

 ――だからよ、楽しむヤろうぜ、白いの。お前さんらしく楽しみゃいい……。

 穢れの芳香(コロン)を纏わせ、赤黒い病毒のヴェールをふわりと着る。
 ここは「近い」……それゆえに、死は骸の海を編んで外套とした。
 呪い。
 憎しみ。
 悪意。
 "ただしくないもの"を宝石めいて散りばめて、生まれるは「魔王」。
 魔とはヒトならざるものを指す。ヒトに仇なし、神を否定するもの。
 つまりは、魔がそこに居た。触れ得ざるもの、触れてはならぬもの。忌むべきもの。

「――……はは」
 トヲルは恐怖していた。はたして、こんな感情はいつばかりか。

 ――汝、色失せし不死、忘却に彷徨う者よ。

「魔王」は、それらしいことを囁いた。わかりやすく、示威的に。
 戯れなのだから、当然だ――それが恐ろしい。"あれ"は、戯れなのだ。
 "あれ"ほどのモノに成り果てることさえ、かのものにとっては、児戯であると。

 ――私は死。私は穢れ。私は命すべての敵。

 ならばおのれもまた、戯れてみせよと。……"あれ"を、相手に?

 ――旅終えたくなくば、いざ。抗ってみせよ。

「…………は、はははっ」
 身体が竦む。萎んだ脳の代わりに、全身の細胞が喚起していた。
 死だ。死がそこにある。生命が忌避すべきもの、おそろしいものが!
「……よし」
 深呼吸して、頬を叩き、トヲルは意気込んだ。
 めきめきと全身が音を立て、頭蓋が針めいて突出し脳をかき混ぜる。
 ヒトの形を保ちながらヒトの域を超える。ありえるべき組成すべてを改竄する。
 骨がいくつもの節を持ち、肉は数千にまで筋を整え、肥大し、窄まった。
(かすめただけでやばい。再生しづらい。多分喰らえば何十日も動けない)
 だが、死なないならば――それが唯一つの突破口。
「勇者が相手だ、魔王!!」
 せめての戯れ事のために戯言を吐き捨てて、愚かな男は跳んだ。
 死は暖かく受け入れるように手を伸ばした。それが一番恐ろしかった。

 あいにくと、トヲルに死を否定し消し去るような異能はない。
 炎を飛ばすことも、雷を堕とすことも、氷を起こすことも彼は出来ぬ。
 そもそんなことが出来たとして、"あれ"にどれほどの意味がある?
 燃える火山に火の玉を落としたところで、それはただの無駄だ。
 嵐渦巻く黒雲を切り裂いたとて、嵐そのものを殺せはしない。
 海原に少しの毒を蒔いたとしても、別に海は死にはしない。
 概念は殺せない。ましてや、それが死という終わりそのものならば。
「うおおおおおッ!!」
 トヲルは片腕を銃器めいて変形させ、骨の弾丸を放った。
 死は一歩動いた――それだけで制空権が侵食されたようである。
 打ち出された骨は骸の海の外套に触れ、それだけ。塵にすらならぬ。
『――いじましき』
 死が身を沈めた。瞬間、トヲルは銃器化した腕を引きちぎり離脱した。
 弾丸射出の反動だけを残し、受け取り、それを利用して横っ飛び。
 直後、死は一直線に、巨人が一歩を踏み出すようにして前に進んでいた。
 残された腕が「呑まれた」。それだけでこの世から消える――終わる。
「ふ、は! はは、はははははっ!!」
 こみ上げた笑みは、忘却がもたらす白雉からではない。
 全身の細胞が恐怖し、発狂し、痙攣の一環として吹き出しただけのこと。
 狂気は恐怖で塗りつぶされ、滅殺された脳細胞を血の涙として吐き捨てる。
 ぼん、と死の身体がたわんだ。取り込んだ腕は魔力爆弾と化していたのだ。
 物理的干渉が出来る――それはあちらから触れられるということでもあるが。
 トヲルはそこを無理矢理に利点と捉え、再生した片腕をもう一度放り投げた。
 放り投げた、というよりも、片腕を限界以上の力で「振る」のである。
 ボールを投げるように――すると、当然のように肩がちぎれる。
 つまり胴体のねじりで肩から先を「飛ばす」。ありったけの魔力を籠めて。
 もう片腕も同じように。死は身構えた……それはおそらく防御に当たる動作だ。
 常人100人を合わせても足りぬほどの過剰生命力=魔力を宿した肉塊が破裂。
 死の対極は生命である。交わらぬ水と油とて、水が大量にあれば油は流せる。
 ようはそういう強引な理屈で、死を斥力めいて押し留める。
『甘ったるい恐怖心だ。心地よし』
「甘ったるい、ね」
 トヲルはひくつく口元を強引に笑みに歪めた。
「なあかみさま、教えてよ」
 再生した両腕で、500キロを超える戦槌を担いだ。
「おれに! 忘れちまった恐怖(もの)を――失くした死(もの)をさあ!!」
『頭を撫でてやろう』
 死が目前に迫っていた。トヲルはひ、と喉から悲鳴を漏らす。
 身体が反射的に退きかけ、理性でそれをねじ伏せ、槌をふるった。
 頭部をねじ切る「腕』に戦槌を叩きつける。とろりと、槌頭は融けた。
『抱きしめ、口づけ、囁やこう。愛し仔よ』
 強引に金属部を再生。関節を摩擦で滅却させる勢いで叩きつけ続ける。
 子どもがいやいやをするように。死は、眼らしき部分を細めた。
「う、お、おおおおあああああああッ!!」
 嵐が生まれた。死の腕が、解けた――ほつれ、砕け、削れた。
「ああああアアアアアアッ!!」
 獣の咆哮。破壊/崩壊/再生/破壊/崩壊/再生/破壊/崩壊/再生/破壊/崩壊/再生!
「お・れ・はッ!!」
 いのちが、死を食らっている。抱きしめられ壊死し崩れながら!
「おれは――」

 理由など、忘れてしまったが。

「……死ぬわけには――」

 死に方も、忘れてしまったが。

「い、か……な……いッ!!」

 それでもこのときだけは、心からそう叫べた。
 "死ねない"ではなく、"死にたくない"と。
 多分それは、白に染まったものにとっての幸福であり、慰みであり、慈悲だった。

 ヘドロのように、闇がどくどくと床を染めていた。
「……ひ、ひひ」
 破壊された《宿》の、頭部があった首の断面から声がする。
「やられちまったよゥ、思ったよりやるじゃねェか。白いの」
 《宿》の崩壊は彼にとって大したことでなく、これは終わりなどではない。
 勝利とも敗北ともいい難い――戯れ事と言ったのは彼であり、それは事実。
 あえて言うなら、勝った負けたは「魔王」と「勇者」の話である。
「……で、どうだい。白いの」
 優しい声だった。
「久方ぶりに思い出した恐怖(モン)の味は」
 多分、そいつは――それは、へへ、といつもどおりに笑ったのだろう。
 トヲルもまた、片目、片腕、両足、内臓……多くを穢されていた。
 再生など出来るはずもない。死そのものが触れたのだから。
「――……」
 再生しようとする声帯から発せられたのは、ごぼごぼという不明瞭な音だけ。
 ただ、神はその音を波で感じて、ぴゅうぴゅう血を吹き出す喉がひくついた。
 おそらくは笑みである。そして、肉の塊はどしゃりと倒れた。
「…………ありがと。かみさま」
 ほつれた声帯も、かろうじてそれだけは発せられた。
 男は久方ぶりに思い出したものを噛みしめるように、しばし崩折れていた。
 煮え立つ黒い死の残滓が、それを優しく受け止め、見守ってくれていた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アディリシア・オールドマン
【オールドマン】
合同・追跡(追われ側)・敗北

ほう。番組か。面白そうだな。『わたしとアディ、二人で怖がらせればいいね』
そうだな、ダフネ。よし、ユイミンを誘ってやってみよう。

舞台となった場所で、私とダフネが入れ替わり立ち代わり、行く手を阻む殺人鬼として現れる筋書きだ。
この全身甲冑姿、そして二人ともそれぞれ斧を持って、盛大に脅かすとしよう。
さぁ、行くぞ。『オー!』

なぜここに兄上がいるんだ!?『わかんない、知らない、聞いてない!』
逃げるぞ!『異議なし!』


ぐわあああ!『ア、アディー! ギャン!』

~こうして、哀れな姉妹たちは恐ろしい魔法使いに始末されました~
(この後、帰ってから趣旨を説明して和解しました)


李・玉明
【オールドマン】
合同・追跡(追われ側)・敗北

ふっふっふー♪
あれじゃろ? いわゆる、ほらー映画じゃな!
アディ姐とダフ姐から、怖がって逃げればよいのじゃな!
妾は美しいからのぉ! 見る人がうっとりするような名演技を披露するのじゃー!

でも薄暗いのは本当に怖いのじゃ。
突然、にゅわって姐々たちが出てきたら、本気で悲鳴を上げそうで……。
にゅわっー!? カ、カル兄ー!?
なんでここに!? に、逃げ、あ、(捕縛される)

ひぇ、怒ってる……黙って猟兵になったから、怒ってるのじゃ……?
え? 違う? 真剣に仕事せず遊んでるから?
ち、違うのじゃ! これは大事な猟兵の仕事で、あっ!
アディ姐ー! ダフ姐ー! 逃げ、ああーっ!?


カルム・オールドマン
【オールドマン】
合同・追跡(追う側)・勝利

戦争が起こっていると聞いて、番組とやらの様子を見に来たのだが。
なんと、愚妹たちが遊んでいるではないか。
危険な猟兵に就いたと言うから、心配して探していたというのに。
……すまない、グリモア猟兵の君。自分も彼方へ飛ばしてもらえないだろうか?
ありがとう。

この愚か者共め。
戦時中と云うのに呑気に鬼ごっこか?
言い訳は後で聞く。説教は帰ってからだ。

まずはユイミンを確保して、水牢獄の中に放り込む。ちゃんと呼吸はさせる。
アディリシア、ダフネ。お前たちには遠慮はせん。
逃げる奴等に攻撃魔術をありったけ浴びせよう。奴等は頑丈だ、死にはしない。
水槍。水刃。水弾。水槌。

よし。帰るぞ



●兄妹たちの追いかけっこ(またの名を殺し合い)
「ふっふっふー♪ ほらー映画ごっこはたのしいのう!」
 薄暗く湿った空気の通路を、るんるんと明るく歩く李・玉明。
 思わずテンションが上がってしまったようだが、そこではっと我に返る。
「っとと、いけないいけない、これは一応殺し合いなんじゃったな……。
 妾の美しさで見る人をうっとりさせるよう、きちんと演技をせねばじゃ」
 そう、今回は玉明が追われる側である。
 こんな明るい笑顔で踊るように歩いていては、演技にならない。
 あくまでも盛り上げることを考えねば、意味がないのである。
 なので玉明は気を取り直すと、表情を怯えたものにし、きょろきょろ周りを見た。
 さすがは国民的スタアというべきか、一瞬で役に入り込めるのは見事である。
(……と、演技で怯えてみたものの……)
 そして玉明は……実は、割と本当に怖がっていた。
 周りは明かりが本当に最小限しかなく、足元もおぼつかない。
 暗闇とは根源的な恐怖であり、ホラーにはうってつけのガジェットだ。
 玉明は別に肝が太いわけではない。しかも今は、ひとりなのだ……。
「突然、にゅわって姐々たちが出てきたら、本気で悲鳴をあげてしまいそうじゃのう……というか、本当についてきておるんじゃろうか? 気配を感じ――ん?」
 そろそろと後ろを伺いつつ歩いていた玉明は、何かに気付いた。
「あ、あ――こ、これはまさか……にゅわっーーー!!!」
 玉明の絹を裂くような悲鳴が、暗闇に響き渡った……。

 一方、同じ頃。
「さて……そろそろ追うとしようか、ダフネ」
『ええ。このくらいの距離で追ったほうが恐怖感も増すでしょうしね』
 かつん、こつんと暗い道を歩く全身甲冑の女、アディリシア・オールドマン。
 彼女の会話ははたから見ると独り言めいているが、実際は違う。
 彼女の身体に宿るもうひとつの人格、『ダフネ』と会話しているのだ。
 もしかすると、その独り言めいたやりとりも、ある意味ではホラー感を増すかもしれない。
 ダフネの人格は、表に出ない限り周りにその声は聞こえないからである。
「しかし殺し合いを映す番組とはな……悪趣味だがこうしてやってみるとなかなかおもしろい」
『ユイミンは案外、本気で怯えていそうだけれどね?』
「それならば、盛り上げる手間が省けるだろう。もともとそういう筋書きだ」
 アディリシアと玉明が決めたのは、ようは殺人鬼と被害者の関係性である。
 いかにも「らしい」見た目をしたアディリシアが、ゆっくりと玉明を追い詰める。
 時折ダフネと入れ替わることで、ふたりでひとりの殺人鬼としてキャラ立てもするのだ。
 この薄暗い通路を全身鎧の怪人が追いかけてくるというのは、実にスリリング。
 玉明はスタアなので、怖がる演技や殺されたふりも問題ないという手はずである。
「……待てよ? どうせ追い詰めるなら、いっそ「ふたり」でやるか」
 そう言うとアディリシアは、『オルタナティブ・ダブル』を発動。
 影から滲み出るようにして、同じ姿をした眼光の色だけ違うダフネが出現する。
『なるほど、挟み撃ちで追い詰めたところを……ってことね?』
「ああ。最初は入れ替わり立ち代わり、行く手を阻んで徐々に追い詰めよう。
 そして最後に前後を塞いで、この斧を振り下ろす……ふふふ、楽しみだな」
『頑張りましょう。えいえいおー!』
 とまあ、こちらもこちらでノリノリでいた……の、だが。

「……あ、アディ姐、ダフ姐……」
「『!?』」
 ようやく見つけた玉明は、なぜか弱っていた。
 一体何が起きた? 予想外の状況に、アディリシアとダフネは慌てる。
「に、逃げるのじゃ、ふたりとも……こ、このままでは……」
 玉明は弱々しく震えながら手を伸ばす。そして、その背後……!
「……あ、兄上!?」
 そう、そこには彼女らの兄――カルム・オールドマンが立っていた。
「ずいぶんと楽しんでいたようだな、アディリシア、ダフネ」
 ふたりは理解する。カルムが玉明を捕まえて説教したのだ。
 その証拠にほら玉明の服が濡れてる。水牢に放り込まれたしるしだ!
「な、なぜ兄上がここに!?」
『わかんない、知らない、聞いてない!』
「に、逃げるのじゃ姐々……カ、カル兄はカンカンなのじゃ……!」
 玉明が涙目で言った。
「これは大事な猟兵の仕事じゃって説明したのに……!」
「その割にはノリノリだっただろう。完全に楽しんでいたのはわかっているぞ」
 カルムは聞く耳もたない。
「そして、お前たちには容赦しない。少々手荒に行くぞ!」
「……逃げよう!」
『賛成!!』
 アディリシアとダフネは咄嗟に駆け出す、が――そこへ襲いかかる水の槍、刃、弾丸、そして槌!
「『グワーッ!!』」
「ああーっ!」
 哀れな姉妹たちは、恐ろしい魔法使いの力で捕らえられてしまった。
 殺人鬼すらも恐怖させる魔法使い、なんという恐怖の存在……!
「よし、帰るぞ。まったくこの愚妹どもめ」
 ただの兄妹喧嘩じゃないのかっていう話は、このさい置いておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
1.単独・同時採用OK
2.決闘
3.お任せ・敗北可

悪趣味な催し考えるじゃねぇか。…けど、こういう催しが好きそうな猟兵も確かに居る。猟兵ってのは全員個性的、だからよ?

戦闘自体は普通に行うぜ。要するに番組を盛り上げりゃ良いんだろ?ハッ――盛り上げるなんざ俺の得意分野じゃねぇか
二丁銃は【クイックドロウ】と紫雷の【属性攻撃】で音と視覚的な派手さを演出。魔剣も黒銀の炎を纏わせるぜ。
【挑発】も込みだ。大袈裟な身振り手振りは客を喜ばせるパフォーマンス。そしてワザと隙を晒して――貫かれるぐらいまで演出しようか。
UCを使えば紙一重。倒れるフリ、けど倒れない。
さぁ、今、俺が死んだと思った奴は何人居た?(両手を広げ)


ゼイル・パックルード
1.単独、同時採用OK
2.決闘(乱闘でも可)
ex.敗北可

一応猟兵は殺さないように決めてるけど、今回みたいな場合はそこそこ本気でやっても仕方ないよな?

目についたやつに勝負を挑む、そいつが強ければそれで良し、弱ければどんどん次へ行けばいい。イイ感じのヤツが見つからなきゃ、オブリビオンのとこに行ってもいいな。

とはいえショーだし、映え?は多少気にしておいてやるか。炎は使わないで、純粋な剣技で行くとしよう。
みんな好きなのは、やっぱ殺陣というかチャンバラというか、剣がぶつかり合うのは好きだろう?

楽しければ死んでもかまわない、と昔だったら言っただろうが……今は色々あって死なないよう立ち回らせてもらうぜ。



●"悪趣味"な男たちの戦い
 殺し合いのショウ。なるほど、実に悪趣味な、吐き気を催すような仕業だ。
 ――だが。猟兵というのは千差万別、個性が服を着ているような連中である。
 人もそうでないものも混ざり合っているように、中には善も悪もいる。
 いや本来、人はそんな単純な二元論で割り振れるようなものではない。
 ……つまるところ、その悪趣味をこそ好むような輩も、いるという話である。

 そしてそんな"悪趣味"なふたりの男が、出くわしてしまった。
 出くわしたならば、殺し合う。これはそういうショウなのだから。

 黒銀の炎を纏う魔剣と、地獄の炎を宿した大太刀とがぶつかりあった。
 銀炎と獄炎のふたつの火花が散り、ふたりの男の相貌を暗闇に映し出す。
 きざな笑みを浮かべて魔剣を振るうのは、カイム・クローバー。
 にじむような静かな笑みを浮かべ炎を生み出すのは、ゼイル・パックルード。
 言うまでもなく、どちらもこの殺し合いを是としやってきた輩だ。
「――ハ!」
 カイムは笑い声をあげ、ぐっと力を籠めてゼイルを押し返そうとした。
 ゼイルは目を細め、柔術を思わせるなめらかな動きで力の流れを「いなす」。
 カイムは暖簾に腕押しとばかりに自分だけが前に踏み出したことに気付いた。
 相手が消えた? ――否、力を受け流したゼイルは側面を取っている!

 ゼイルはそのままくるくると回転し、速度をつけた剣を滑らせた。
 狙いは、首だ。「ふり」を気にしているとは思えない即死の太刀である。
 しかし、カイムとて素人ではない。手首のスナップで魔剣の上下を入れ替えた。
 背負うようにして後ろに回し、再び刃と刃が打ち合う――かぁんと、金属音。
(少しはやるか)
 ゼイルは心のなかでひとりごち、その衝撃に逆らわずふわりと飛び退いた。
 ……彼は生粋の修羅であり、今でこそ多少は丸くなったが常に死地を求める。
 一時期は、殺し合いのスリルを味わえるなら死んでもいいと豪語していた男だ。
 丸くなった、というのは、彼が死地や死合を選ばなくなったことを意味しない。
 己の命を斟酌するようになっただけで、本質は何も変わっていないのだから。
 そのゼイルが「やる」と評するというのは、相当のことと言えよう。

「……やっぱり猟兵ってのは、個性的だよなぁ」
 ゼイルが飛び退いた隙に立ち上がったカイムは、魔剣を背中に戻した。
 代わりに手品めいて両手に現れたのは、ふたつでひとつの魔銃『オルトロス』。
 銃口にばちりと紫色の電光が帯電する。ゼイルは銃の狙いをよく注視した。
「こういう催しが好きそうな奴も居ると思っていたが、これほどとはね」
 カイムもまた、相対する男――ゼイルの力量に舌を巻いていた。
 殺意に躊躇がないのもそうだが、そもそもの立ち回りの土壌が段違いだ。
 幾度の――いや、幾百の修羅場をくぐり抜ければ、この境地に至るのか。
 緊張感は、往時の戦争における幹部級オブリビオンのそれに等しい。
 ……あるいは、以上か。条件が互角だからこそ、付け入る隙もまた絶無。
 何が起きてもおかしくない戦いというのは、極上であり同時に恐ろしくもある。
 カイムがそうした恐怖を笑いながら踊って越えられる男でなければ、
 そもそもこうして数合も撃ち合い、冗談を言う余裕もなかったはずだ。
 つまるところ男たちは、どちらもただならぬ使い手であった。
 そしてお互いに、相手の力量を測り、認め、その上で笑っていたのである。

「派手に動けそうなタイプなのはありがたいね」
 ゼイルは言った。
「目的としちゃ、映えってやつを気にしないといけないからな……」
「ハ。その点は心配いらねぇさ。便利屋Black Jackは手品も得意なんでね」
 剽げたカイムの物言いは、その実相手のペースをかき乱す言葉の魔術だ。
 ゼイルはそう簡単に、カイムの挑発には乗らない。彼は静かに燃える炎なれば。
「……なら、こっちは「こういう趣向」でいこうか」
 ゼイルは地獄の炎纏う刃を撫でる――すると、炎はすっと消えた。
「……ほぉ」
 今度はカイムが目を細める番だ。じわり、と空気が重みを増す。
 敵は、ブレイズキャリバーとしての異能を抑えた――それはつまり。
 ゼイルは純粋な剣技で「殺陣」をするということ、
 裏を返せば、炎(そんなもの)がなくても己を倒せるという意思表示!
「いいね。対称性ってのは大事らしいぜ」
 対してカイムはばちばちと紫雷を強め、わざとらしくガンスピンする。
 どちらが上、という話ではない。実際のところ獄炎の有無はハンデにもならない。
 ゼイルが異能だけに頼る猪武者ならばともかく、彼は生粋の剣士である。
 異能を抑えたならば、その分剣技は鋭さを増す。ようは割り振りの問題だ。
 カイムも同様……黒銀の炎も、紫雷も、手段のひとつでしかない。
 勝敗を分ける「強さ」とは、特定の何か一つに頼っただけの話ではないのだから。
 にらみ合う両者の間で、空気が濁り、凝り、ぐにゃりと曲がった。
 実時間は実に数秒。だがふたりにとっては数分以上に感じられる対峙。

 ――そして!
「もらったぜッ!」
 BLAMBLAMN!! カイムが仕掛けた! 2丁拳銃の弾丸がゼイルを狙う!
 位置は額と心臓。容赦ない照準にゼイルは目を見開く。
 縦に構えた刃で受けた瞬間、カイムは横っ飛びしながらさらにトリガを引く!
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! 嵐のような紫雷の弾丸がゼイルに浴びせられた。
 ゼイルは恐るべき速度で刃をふるい、全弾を撃墜。なんたる剣技!
(埒が明かないな。止めに行くか)
 ゼイルは最初、弾丸を切り払いながら近づくことを想定していた。
 しかしカイムの動きは機敏で、一つどころにとどまろうとはしない。
 しかもゼイルが駆け出そうとすると、必ず弾丸はその出掛かりを潰すのだ。
 かつての向こう見ずな己ならば、傷を厭わず突っ込んだだろうが……。
(痛し痒しだね、死なないように立ち回る、ってのも)
 アイロニーな笑みを浮かべて、ゼイルは意を決して駆け出した。
 身を伏せて弾丸の被弾箇所を最小限にし、致命的な位置への狙撃は切り払う。
 肩や腿を、雷を纏った弾丸がかすめ、肉を削ぎ落として灼く。だが止まらぬ!
「おいおい、こいつは――」
 カイムは軽口を叩きつつ、2丁拳銃をクロスさせて剣を止めようとした。
 だがゼイルの刃は、こじ開けるような斬撃でカイムの腕を斬り裂き、払う。
 強引にガードを開けられたところへ――心臓狙いの刺突が、放たれた。

「――……ハードすぎるぜ、え?」
「!」
 カイムの傷口から、黒銀の炎が迸った。
『狡猾なる見切り(トリック・スター)』。カウンターのユーベルコード。
「……なるほど、してやられた、ってとこかい」
 転がって炎を逃れたゼイルは、刃を構えて煮え立つように笑う。
 男たちの戦いは、まだ終わらぬ。超絶の殺し合いは。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メイスン・ドットハック
【SPD】【絆】
これはエィミーの実力を計るにはいい機会じゃのー
グリードオーシャンでの戦争でどれだけ力を上げたか、見物じゃのー!

剣鬼は審判しかさせないというくらいの、驚天動地のキャバリアバトル
KIYOMORIに搭乗し、オブリビオンマシン形態「清盛」に変形
ジェットウイングで高速機動を行いながら、肩からのミサイル・榴弾発射で爆撃
エィミーが接近してきたらレーザークローで切り刻み、ドラゴンテイルで弾き飛ばす
クライマックスになったらUC「帝竜を纏いし機竜よ、稲妻となれ」を発動してさらに加速をし、超高速斬撃を叩き込む

エィミー、限界を超えてみーのー! 遠慮はせんからのー!

勝敗:お任せ
妖怪はモブか観客みたいに


エィミー・ロストリンク
【POW】【絆】
わたしも羅針盤戦争で大分成長したんだよー!
メイスンお義姉ちゃんに勝てるかわからないけど、全力で勝負だー!

義姉に挑む驚天動地のキャバリアバトルを展開
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
UC「消失せし姫君の財宝、その報いを受けよ」を発動し、消費型メガリスに異常を転移させるオーラを機体に纏い、メガリスがなくなるまで損傷を無効化
足を止めてガトリングガンで迎撃したり、クロキバのアンカーで空中飛翔してバーニングナックルで殴りかかったりする

クライマックスではメガリス海嘯拳で大津波を発生させ清盛の機動力を落としつつ、灼熱の拳をカウンターで叩き込む

これが、わたしの、全力全開だーー!

勝敗:お任せ



●驚天動地のキャバリアバトル
 キャバリアとキャバリアの戦い。
 それはUDCアースでは、コミックやアニメーションの中だけの世界だ。
 だが、現実に此処にある。ふたりの姉妹の本気の戦いが!
「わたしも羅針盤戦争でだいぶ成長したんだよ、お義姉ちゃん!」
 エィミー・ロストリンクは愛機アカハガネを駆り、
 メイスン・ドットハックのKIYOMORIに戦いを挑む。
 ブースターを噴射して接近するアカハガネに対し、KIYOMORIはミサイルを発射。
 アカハガネは回避機動にすら入らない。メガリスへのダメージ肩代わりだ。
 被弾による損傷をすべてメガリスに押し付け、強引に突破するのが狙いか!
「てりゃー!!」
 アカハガネはオーラ効果であらゆる被弾ダメージを無効化し、懐に接近。
 バーニングナックルが赤熱すると、拳の周囲が陽炎をどよもして揺らめいた。
「僕の「清盛」に真っ正面から戦いを挑む度胸は褒めてあげるがのー、
 近づかれた程度でなんとかなるほど、清盛は甘くはないことを教えてやるのー!」
 ガシャン! と拳からせり出したレーザークローがナックルを受け止める。
 光熱とレーザー熱が斥力を発生させて拮抗し、バチバチとプラズマが散った。
「すっげー!」
「あんなの、太刀打ち出来るわけないや……!」
 乱闘現場に集められた妖怪たちは、二機の戦いに夢中になっていた。
 それほどまでに、義姉妹の戦いは全力で、そして派手派手しかったのである。

 メイスンは接近戦の継続を拒絶し、ジェットウィングで後方で大きく跳んだ。
 エィミーは間合いを詰め……ない。あえて足を止めてのガトリングガン斉射。
 清盛が撃ち出した迎撃ミサイルを撃墜し、さらに空のメイスンを狙い撃つ。
「そのまま撃ち落としてあげるよ、お義姉ちゃん!」
「そう簡単にはいかんのじゃのー」
 BRRRRTTTTTT!! 飛来する弾丸を、メイスンはドラゴンテイルで弾き落とした。
 その一瞬の隙を狙い、アカハガネがアンカーで飛翔。このための布石だったようだ。
 再び両機の間合いが縮まる――すると今度はメイスンが逆に加速!
「なっ!?」
「同じ構図に二度も追い込まれるわけにはいかんからのー!」
 ジェットウィングによる追加加速が竜の雷を生み、レーザークローを包んだ。
 アカハガネは咄嗟に直角に回避軌道を取るが――避けきれない!

 KRAAAAAASH!!
「ぐうっ!!」
 メガリスが受け持つことの出来るダメージ閾値を越え、アカハガネが損傷した。
 無理な機動の代償として、アカハガネは着地さえ出来ず地面を転がる。
「エィミー、限界を越えてみーのー! 遠慮はせんからのー!」
 再び清盛が加速する。今度こそ直撃すれば、アカハガネは再起不能だ。
「いいよ……だったら見せてあげる。これが、わたしの、全力全開だー!!」
 バーニングナックルが地面を叩くと、何もない地面から大津波が発生。
 巨大な津波は加速した清盛を飲み込み、ジェットウィングの機動力を奪う。
「メガリス海嘯拳……! こんな使い方をするとはのー」
 そして波を切り裂き、灼熱の拳が迫る。
「おりゃあああああっ!!」
 レーザークローと灼熱の拳が交錯し、そして――!

「……捨て身のカウンターを仕掛けてくるとは、大したもんじゃのー」
 バチバチと損傷部からスパークを吹き出し、清盛が膝を突いた。
 一方アカハガネは、胸部から頭部にかけてをレーザークローで抉られている。
 結果はメイスンの勝利だ。しかし。
「あはは、負けちゃったかー……」
「次にやったらどうかは、わからんがのー」
 どうやら、義妹の成長を姉に示すことは、出来たようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】決闘・勝敗お任せ

ほォ~~~~!!面白れェ~~~~ことやってンなァ~~~~~~
オ?ン~~~だよエリシャ、オレとヤろうってか?イイねェ~~~~~
フォッヒャラヒャヒヒヒ!!!
じょォ~~~とォ~~~~じゃねェ~~~~~の

オイオイいきなり激しいねェ~~~~!!
だがその程度でオレが崩れると思ったら大間違いだぜ
ヒッヒャハ!よォ~~~~くわかってンじゃねェ~~~~か!

お前のその技だって
オレはよォ~~~~く知ってるよ
避けねェ。避けてやらねェ。
受け止めてやるよ、お前の全てを

お前を救えるのはこの世界でただ一人
オレだけだ。
誰にも譲らない
だったら──
これがオレの愛ってやつだ
そうだろ、エリシャ。


千桜・エリシャ
【甘くない】決闘・勝敗お任せ

ふふ、随分と愉快な催しですこと
願ってもない機会ですわ
こうしてあなたの御首がいただけるなんて
あら、当たり前でしょう?
それに私が負けるとでもお思い?
ふざけるのはその笑い声だけにしてくださいまし

墨染を抜き放ったなら
剣閃の雨を降らせましょう
あなたの光を侮るつもりはない
だから私はそれを上回るように斬り刻むだけよ
ふふ、この程度で崩れるあなたじゃないことは
もちろん、わかっていてよ
花嵐を目眩しに近付いたなら
勢いのまま押し倒して
首筋に刃を押し当てて

あなたの首を斬り落とせるのは私だけ
誰にも渡さない
だって、これが私の愛だもの
そうでしょう?

ねぇ、この程度じゃないでしょう
早く私を救ってみせて



●愛のカタチ
 ふたつの光が瞬いていた。
 ひとつは、ジン・エラーが全身から放つ救済の光。
 もうひとつは、千桜・エリシャが降らせる剣閃という名の光だ。
「フォッヒャラヒャヒヒヒ!! いきなり激しいねェ~~~~!!」
 ジンは避けない――そもそも墨染の斬撃は避けられるようには出来ていない。
 一撃で500を超える斬撃は、隙間なく組み立てられた迷宮と同義だ。
 避けようとすればするほど、蟻地獄のように獲物を苛む、嗜虐の剣だ。
 ……もっともジンが剣戟を避けないのは、そんな合理的判断からではない。
「だがよォ、その程度でオレが「崩れる」と思ったら大間違いだぜ」
 彼には自負がある。この光ある限り、何者にも屈しはしないと。
 救うのは己であり、与えるのは己であり、また奪うのも己であると。
 暴虐的なまでの傲慢さが、彼を"聖者"たらしめる。
 つまりは、エゴだ――自己を自己と証明するために、ジンは避けない。
 剣戟がジンの身体を骨ごと切り裂き、切断部から光が溢れて彼を癒やす。
 ジンをジン・エラーとして定義する……そして、彼は在る。
「そんなことは百も承知ですわ」
 ひょう、と墨染で風を切り、エリシャは微笑んだ。
「あなたの光を侮るつもりはない――ただ、それを上回るまで斬ればいい。
 その程度で崩れてもらっては、困りますのよ。私が楽しめないでしょう?」
「……フッ、ヒャハ、フヒャラハハハハッ!!」
 ジンは背骨が折れそうなほどに身体をのけぞらせて、笑った。
 ああ、いい女だ。
 本当に、吐き気がするほどおぞましくて、血と死の匂いを芬々とさせる。
 誰よりも自分勝手で、傲慢で、遊ぶように人を斬る――最高の、人でなしだ。
「いいぜ、盛り上がってきたじゃねェか。来いよエリシャ、抱きしめてやらぁ」
 ジンは、まるでダンスに誘うように、エリシャに手を伸ばした。
「あら、あなたにしてはいいセンスですこと――なら、踊りましょうか」
 エリシャは手を差し伸べるかわりに、墨染を構えた。
「私たちらしい、殺戮(あい)の舞いを」

 ――ふたつの光が、瞬いている。
 暴慢なる生者の光を、剣閃が裂いて割いて斬いて、そして赤い華が咲く。
「ウッヒャハハハ!! フヒヒラホハハッ!!」
 狂ったような笑み。身を斬り裂かれながらジンは笑っている。
 何がおかしくて笑うのか。女のかそけき努力をあざ笑っているのか。
 こうまでされて死ねない己を笑っているのか、それとも楽しくて笑うのか。
 理解できる者など、彼と彼女のほかには居ないだろう。
 エリシャも、同じように、うっとりと微笑みながら舞っていたから。

 光そのものと化したジンが、ぬうっと手を伸ばした。
 その腕を、指先から肩口まで剣閃が輪切りにして細切りにする。
 おびただしい赤い華が咲く。ジンは目眩ましとわかっていてそれも抱きしめた。
 エリシャは背後――墨染を大きく振りかぶり、目線は首に注がれている。

 ――あなたの首を切り落とせるのは私だけ。誰にも、渡さない。
(だってこれが、私の愛だもの)

 剣が振られた瞬間、ジンはぐるりとエリシャのほうを向いていた。
 首を刎ねるはずだった斬撃は、わずかに傾きを与えられ、鎖骨を割る。
 剣が途中で止まる。ジンは、己の肉体そのものを鞘として受け止めた。

「――お前を救えるのはこの世界でただひとり、オレだけだ」
 剣が肉を抉るのも気にせずに、ジンは両手で女を掻き抱いた。
「誰にも譲らない。だったら――」
 いとおしげに、こわばった両手がエリシャの首を握りしめる。
 喉輪を締められ、エリシャはげく、と苦しげに息を吐き、儚く笑った。
 万力のような力が頚椎を締め上げる。ジンの表情は、どこまでも優しい。
「これが、オレの愛ってやつだ――そうだろ。エリシャ」
 ええ、と。きっと女は言おうとした。
 締め上げられた喉から漏れたのは、笛のようにか細い吐息だけ。
 ジンは目を細め、強く、もっと強くに抱き絞めた。

 はやく、わたしをすくってみせて。

 きっと女はそう言おうとした。
 死人のように白く染まった指先から刀がこぼれ落ち、刃が地に突き立った。
 ふたりを包み込むように、狂える赤い華が咲き乱れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エコー・クラストフ
【BAD】追跡
追う側

【裁きの鐘が聞こえるか】でワープしながら追跡
無言で剣を引きずりながら、度々壁を斬りつけたりその辺の小道具を破壊したりして攻撃力と危険性をアピール
追跡自体は歩きだが、壁を破壊したりワープを駆使してちょくちょくハイドラの死角から登場して脅かす

最終的には他の妖怪を盾にしようとするハイドラを捕まえて剣で一突きする
最後まで無言、無表情でハイドラを捨てて、他の参加者を追跡し始める

…………。
まぁ、オバケ役に徹したからね。それ相応の撮れ高はあってもらわないと困るよ
それにしても、死なないとしても、痛点は避けて刺したにしても、ハイドラを刺すのは気に入らないなぁ
こういうのはこれっきりにしたいね


ハイドラ・モリアーティ
【BAD】追跡
追われる側

――クソ、クソッ!!
巫山戯んな何だよあの女ッ……
なァどこだよここ!!
全然スマホも繋がんないし
誰か――なァ助けてくれッ
出られないんだ!どこ歩いても、どっち行っても
俺、ずっと同じところを

あ、ッ゛
来た、来たんだよ、――逃げるぞ
鐘の音だよ!!聞こえねえのか、あいつが来たんだ
『処刑人』が来たッッ!!!
嫌だ、――嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ死にたくないッ!!
俺は帰るンだ、お前が死ねよッ
俺の代わりにお前が犠牲になってくれればいいンだよ、なぁ!!はっはは、はは
は――?
ッお、ィ、なン゛で
俺にッ゛、刺さってンの

【CRYONICS】
どう?撮れ高バッチリ?
んふふ、――すぐ治った
上手に刺してくれたかンね



●ジャスト・プレイング
「――クソ、クソッ!!」
 あちこちを血と泥で汚した女が、口汚く言葉を吐き散らして逃げている。
 端正な顔立ちは蒼白を越えて土気色で、二色の目はせわしなく蠢いていた。
 髪はほつれ、服もめちゃくちゃで、歯の根がカチカチと情けなく鳴っている。
「ふざけんな、ふざけんな……ッ、なんだよあの女、なんなんだよ!!」
 オッドアイの女は、答える者の居ない無意味な問いかけを続けた。
 いや、問いかけですらあるまい――混乱した者が喚いているだけのこと。
「そもそも何処だよここ、なァ、誰か教えてくれよ、畜生ッ!!
 スマホも全然繋がんないし――どこまで行っても……!!」
 混乱のあまりに女の足がもつれ、べしゃりと無様につんのめった。
 受け身を取ることすら出来ずにごろごろ転がり、立ち上がろうとして崩折れる。
 ぜひ、ぜひ、と擦り切れるような呼吸。肺が張り裂けそうに痛い。
「も……無理、走れ、ね……ッ」
 それでも突き動かされるように、女は立ち上がり、壁に手をついて歩く。
 よろめきながら足を引きずって、何かから逃れるように。

 ――ずずず、と。
「ッ、ひ」
 何かを引きずるような、ひっかくような、厭な音がした。
 耳をそばだてていないとわからないくらいのかすかな音に、女は過敏に反応する。
 二色の瞳が豆粒ぐらいまで小さくなった。女は限界まで目を見開く。
「来るな――来るな、来るな来るな来るなァアアアッ!!」
 パニック症状を起こした女は、泣き叫びながら歩き続けた。
 ずず、ずずずず……音が近づいてくる。そして……!

「――お、おいあんた。大丈夫か?」
「…………」
 へたりこんだ女の前に現れたのは、いかにも気弱そうな妖怪だ。
 足を負傷している。察するに刀傷――オブリビオンによるものだろう。
「なあ、あんた妖怪じゃない……よな? 一体どうして――」
「助けてくれ」
「え?」
 妖怪は言葉を上書きされ、きょとんとした。
 女はがッと妖怪にすがりつき、まくしたてる。
「出られないんだよ。どこ歩いてもどっち行っても俺、ずっと同じところに居るんだ。なあ助けてくれよどこなんだよ此処はどこに逃げりゃいいんだよ!!」
「ま、待て! 落ち着いてくれ! 俺は――」
「あいつが、あいつが来るんだよ。あいつがッ!!」
 妖怪は女の言葉に本能的恐怖を感じ、振り払った。
「なんなんだよあんた……!」
 その時だ。がらがらと音を立てて、遠くにある壁の一部が崩れた。
 女は弾かれたようにそちらを見て、ぎゃあ、と耳障りな悲鳴を上げた。
「き、来た! あいつだ、あいつがやったんだ、絶対にそうだ!!」
「はあ? あれはただの老朽化で……」
「あ・い・つ・な・ん・だ!! あ、ああ、ああやって、俺、俺を脅かして――」

 ――ごおん、ごおん、ごおん。

「あ、ッ゛」
 潰れた蛙のような声。女は疲れ果てていたのが嘘みたいに立ち上がる。
 脳を潰された生き物の筋肉が、でたらめに痙攣するような自動的な動き。
「来た、来やがった、やっぱりだ――逃げるぞ」
「え?」
「鐘の音だよ!! 聞こえねえのか、あいつが来たんだ」
「あいつって――」
「処刑人だよ。処刑人が来たッッ!!」
 妖怪は困惑した。彼「は」、そんなモノに追いかけられてなどいない。
 足を負傷したのはオブリビオンのせいであり、そこから逃げ出してきたのである。
 女もそうなのかと思い声をかけたが、この反応は、あきらかに――。
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ死にたくないッ!!」
 女はぐしゃぐしゃと頭をかきむしり、我先にと駆け出す。
 何か、まずい。此処に居てはいけない。妖怪の本能が叫んでいた。
「ま、待――待ってくれよッ」
 ふたりは足をもつれさせながら、我先にと駆け続ける。
「なんなんだよ、教えてくれよ! 何が来るんだよ!?」
「俺は帰るンだ、帰るンだよ……そうだお前が死ねばいい」
「は?」
 どんっ! と、妖怪は突き飛ばされ、尻餅を突いた。
「ははは! そうだよ、俺の代わりにお前が犠牲になってくれればいいンだよ!」
「何を――」
「なぁ、そうだろ! ほら来るぞ、処刑人が来る! 耳をすましてみろよ!!」
 ――ずず、ずずずず……。
 何かを引きずるような、ひっかくような、嫌な音。
「はは、はっはは! 残念、残ァん念でしたァ!! はっははは!!」
「何を言って……」
「おしまいなのは、お前だよ。俺は助かる! はは、ひ、ひはははは――」

 ――ごおん、ごおん、ごおん――。

「……は?」
 鐘が止んだ。
 女は己の胸部から突き出しているものを見て、ぽかんとした。
 血に濡れた剣が、背中から胸部を貫いている。
「……お、ィ」
 女は妖怪を見た。妖怪は、声すらも失うほどに怯えていた。
 妖怪には見えていたからだ。誰が、剣を持っているのかが。
「なン゛、で」
 女がそこにいた――いや、人の形をした彫像か何かのようだった。
 表情と呼べるものも、感情と呼べるものも、そもそも顔に動きがなかった。
 デスマスクめいた相貌は、冷たく死に固まっていた。
 女は、柄を握っていた。オッドアイの女を貫いた剣の、柄を。
「俺、にッ゛、刺さってン、の――」
 剣が引き抜かれる。
 オッドアイの女は仰向けに倒れて、デスマスクめいた女を見上げた。
 口が金魚のようにぱくぱく動き、泡を吹き、血がしとどに溢れて水たまりを作る。
「…………」
 デスマスクめいた女は何も言わない。オッドアイの女が死ぬまで。
 やがてオッドアイの女の動きが止まると、デスマスクめいた女は妖怪を見た。
「ひ……ひィイイイッ!!」
「…………」
 ……女はやはり何も言わず、一切の情動を見せず、剣で地面をひっかきながら歩き去る。

 ――ごおん、ごおん、ごおん――。

 鐘が鳴り続ける。
 妖怪は気を失った。頭の中でガンガンと鐘の音が鳴り続けていた。

 ――ごおん、ごおん、ごおん――。

 処刑人は、次の獲物を求めて歩き続ける。

 しばらくして。
 死んでいたはずの女がむくりと起き上がり、ごきごきと身体を鳴らした。
「あー死んだ死んだ……ってあれ、こいつマジでノビてら。ったく」
 女は気絶したままの妖怪の襟首を掴むと、見つかりにくい物陰に放り込む。
 そこに戻ってきたのは……あの、デスマスクめいた処刑人だった。
「どう? 撮れ高バッチリ? これあれだよな、役者ならカメラで確認するとこだろ」
「……さあね。確認はしてないけど、オブリビオンが出てこないならそういうことだろ」
 デスマスクめいた女は、別人みたいに呆れ顔で肩をすくめた。
「そもそもお化け役に徹したんだ、それ相応の撮れ高はあってもらわないと困るよ」
「そりゃあなァ! 堂に入ってたぜ? エコーの処刑人! っはは」
 処刑人……エコー・クラストフは、はあと嘆息する。
「厭な手応えだったな。いくら必要だとはいえ……」
「んふふ、にしちゃ治りが早かったぜ? 上手に刺してくれたンじゃん」
「そりゃまあ、痛点を避けたし、ボクが仕損じるわけないだろ」
 女……ハイドラ・モリアーティの言葉に、エコーは頬を膨らませた。
「ボクが言ってるのは、気に入らないって話だよ。死なないとしてもさ……」
「そォ? 俺はエコーになら大歓迎だけどなァ」
「冗談でもやめてくれ。そんなことするぐらいなら次は適当な妖怪で代用する」
「それこそ俺は気に入らねェよ、やるなら俺をさ、な?」
「……ふん」
 ハイドラが独占欲を見せたことで、多少は気分がよくなったのか。
 エコーはむくれつつも、小言を言うのはやめた。
 そんな彼女の様子が可愛らしくて、ハイドラはにんまりと笑ってしまう。
「まあとにかく、こういうのはこれっきりだ。演技でもなんでも」
「俺としちゃ新鮮だったんだけどなァ、被害者役」
「それはそうかもだけど……とにかく妖怪に見つからないうちにさっさと行こう」
「ン。りょーかい」
 見事に殺戮のシーンを演じきった女たちは、闇に消えた。
 被害程度があるとすれば……多分、トラウマを負った妖怪の心ぐらいである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レトロ・ブラウン
【芋】
んー、演技とはイえ人を殺すっていウのはどうモ。
というワけで演技の達人、どろんバケラーのキルシさんにゴ助力願いまシた。

じゃア始めましょウか!【電磁妖怪乃走馬灯】で大きくナって、顔隠しテ、サスっぽい音楽かケて…

(死体(はっぱ製)を蹴っている)
ダメじゃあなイデすか…
(蹴っている)
ルールはちャンと、守ってくれナいと…
(蹴っている)
困るんでスよぉ…
(頭部を踏み潰す)

…見ましタね?
貴女も見タんですネ?
ダメじゃあなイですか…見チゃあ!

(画面が砂嵐に覆われる)

(インターネットでの番組の不正利用が多発しております。番組を許可なくインターネットなどを通じて配信することは禁じられておりますのでご注意ください)


キルシ・キュマライネン
【芋】
これはなんとも悪趣味な…具体的に言うとレンタルビデオ店の隅っこで埃被ってそうな企画ですの。
こんな企画はサクッと妨害コースですわ。騙す、いいえ化かして差し上げましょう。

葉っぱを撫でればあら不思議、架空の参加者が出来上がり。こちらをご共演していただいてるテレビウムのレトロさんに殺していただき…わたくしも盛り上げていきましょう。

聞覚えのあるBGMと構図で殺害現場を目撃してスッと逃げたり、叫んだり、会話イベントで「わたくし見てしまいました…」と小芝居も挿入しまして支配率低下を目論みますの。
わたくしも適当に殺された偽装をしまして離脱。その後舞台裏からサスペンスからホラーに変えてさしあげましょう。



●どこぞのテレビ局で深夜に放映していそうなやつ
「あわ、あわわわわ……」
 薄暗い廊下から、仄白いライトのついた部屋を覗き込むキルシ・キュマライネン。
 彼女は口に手を当てて、息を殺して震えていた。
「わ、わた、わたくし、見てしまいました……」
 一体、キルシは何を見てしまったというのだろうか?
 そしてなぜ、キルシはこんなに怯えているのか。
 その答えは、ライトに照らされた部屋のなかにある……。

『ダメじゃあなイデすか……』
 ドッ。ドスッ。ドンッ。
 もはや力なく、動くことも息をすることもない死体。
 床に仰向けに倒れた死体を、無機質に、無感情に蹴り続けるテレビウム。
 顔面は砂嵐で覆われ、ぬらりと伸びた長身は、猫背なせいで余計に不気味だ。
『ルールはちゃンと、守ってくれナいと……』
 ドッ。ドスッ。ドンッ。
 怪人めいたテレビウムは、ただただ死体を蹴り続けている。
 しかも、死体はひとつではない――部屋の中にはいくつもの死体が!
 それらは頭部や致命的な部位を抉られ、穴が開いていた。
 怪人の鋭利な爪先を見れば、誰がそうしたのかは一目瞭然である。
『困るんでスよぉ……』
 ドッ、ドスッ、ドン――グシャンッ!!

 ……怪人は、さんざ蹴り飛ばした死体の頭を、出し抜けに踏み潰した。
 脳漿が派手に飛び散り、ひび割れた床を怪人はぐりぐりと踏みしめる。
 狂人の凶気。怪人の砂嵐まみれの画面が、ライトに照らされ不気味に光っていた。

「あ、あ、なんてこと……」
 キルシは震えながら、その場から離れようとした。
 だが、その時。彼女が踏みしめた廊下の床板が、ぎしりと嫌な軋み音をあげる。
「――あ……っ!」

 怪人が、こちらを向いた。

「ひぃいいいっ!!」
 キルシは悲鳴を上げて踵を返し、急いで廊下を駆け出す。
 そして助けを呼ぼうと、別の部屋の扉を開け――愕然と、へたり込んだ。
「し……死んでる……!?」
 そう。別室に居た人々も、みな頭部や胸部を蹴り砕かれて死んでいたのである。
 ぎしり、ぎしりと……足音が、徐々に近づいてくる。
「!!」
 キルシは咄嗟に部屋に駆け込み、気付かれぬよう音を立てずに閉めた。
 そして壁に背中を預け、胸元に手を当てて必死に呼吸を整える。
 ぎしり、ぎしり、ぎしり……もったいぶるような足音が近づき……止まった。
「……通り過ぎ、た……?」
 安堵したキルシが、恐る恐るドアノブに手を伸ばした、その時……!

 ――KRAAAAASH!!
「きゃあああああっ!?」
 ドア板が蹴り破られ、テレビウムめいた怪人の頭部が部屋の中を覗き込んだ!
『見ましタね?』
 怪人は無機質でノイズ混じりの声音で、キルシに言った。
『アナタも見タんですネ?』
「ち、ちが、わ、わたくしは……!!」
『ダメじゃあなイですか……見チャあ』
「や、やめ――」
『アナタも同じヨうにしナきゃイケないジャなイですカぁあアアア!!』
「キャ――――ッ!!」
 絹を裂くような悲鳴が響き、そしてカメラがパンしていく……。

「あー、これすごいでスねー。どろんバケラーって編集も出来るンでス?」
「いえ、これはメイドとしてのたしなみですわ、レトロ・ブラウンさん!」
 撮影を終えたふたりは、出来上がった映像を見てキャッキャしていた。
「そして最後に、ここにこのようなテロップを入れれば……」

『インターネットでの番組の不正利用が多発しております。
 番組を許可なくインターネットなどを通じて配信することは禁じられておりますのでご注意ください』

「はい、これで完成ですわ!」
「いやー頑張っタ甲斐がありマしタね。とこロでコレ――」
 レトロは首を傾げた。
「ホラーじゃなくなっテまセン?」
「違いますよレトロさん、A●だってホラーっぽいの出しておりますわ! アレと同じですの!」
「あー、なるホド、納得でス」
 目的がズレている気がしないでもないが、効果があったのは確かである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【兄妹】合同。歪な関係
決闘
場所、勝敗お任せ

(夢の中で一度だけ俺は弟を殺してる
お前を殺すのは
俺以外あり得ねェ
俺を殺すのも、お前だけ
殺されてヤらねェケド)

見てる奴らはりありてぃを求めてるンだと
”大嫌い”なテメェをぶちのめせるイイ機会だなァ
手なんざ抜いてみろ
盛り上がる前に番組終了だわ

【沸血の業火】使用
派手に紫電走らせ

俺がこの程度で止まるとでも?
お前にしては温いじゃねェの

互いの手の内は把握済
蔦は玄夜叉の炎で燃やし脱出
彼の刀を体重乗せて上から叩いて払う
速さで攻撃回避
彼の背後を取り脇腹狙い骨を折る
気絶の方向へ
心臓狙われたらカウンターはせず躊躇

(ち、本当に死なせちま…ッ
…あァ、知ってる
俺はお前を、殺せない)


杜鬼・カイト
【兄妹】
合同。決闘。勝敗お任せ

「ふり」だとしても、兄さまと壊し(ころし)合いなんて嫌だなぁ。
でも、オレがやらなかったら、兄さまはオレ以外の奴とするのかな。それはもっと嫌だ。オレ以外に壊される兄さまなんてみたくない。その逆も。だから
「壊し(ころし)あいましょうか、兄さま。言っておきますけど、オレ手加減できませんからね?」

UC【永遠の愛を誓え】で兄さまの動きを止める。
うまくいけばそのまま刀で斬るけど、回避されたらカウンターに備えて防御。

やっぱり兄さまは強い。
兄さまに壊されるなら本望です。
でも、本気できてくれないとダメですよ?
優しい兄さまと違って、オレはあんたのこと……壊せるんだから。



●こわれ、ゆがんだ、ふたつの器
 殺意は愛に似るのだという。
 相手を想い焦がれるのは、恋と同じ。
 好きの反対は嫌いではない、無関心だ――ならば嫌悪は好意と同種に在る。
 その表現の仕方が違うだけで、根本的な「執着」という意味では同じ。

 だから。
(お前を殺すのは、俺以外ありえねェ)
(オレ以外に壊(ころ)される兄さまなんて見たくない)

 杜鬼・クロウは、杜鬼・カイト以外に殺されるつもりはなかった。
 カイトも同じだ――壊されるなら、兄がよかった。それ以外は嫌だ。

 嫌い厭い疎んだはずのおとうとを。
 好み愛し慕ったはずのあにを。
 ふたりはともに、壊/殺すことを望んでいた。
 それ以外の結末を、拒絶していた。
 もしかするとふたりは――"ふたつ"はもう、とっくにこわれているのかもしれない。

「ねえ、兄さま」
 カイトは微笑んだ。消え入るような、透明の笑顔で。
「殺(こわ)しあいましょうか。オレ、手加減は出来ませんからね」
「ハ――ほざけよ。手なんざ抜いたら盛り上がる前に番組終了だ」
 クロウは笑う。野卑に、侮蔑的に、自罰的に。
「"大嫌い"なテメェをぶちのめせる、イイ機会だぜ。まったく」
「……オレは本当は、いやなんですよ」
 カイトが言った。
「"ふり"だとしても、兄さまと壊(ころ)しあいなんてしたくない」
「ア? いまさら――」
「でも。オレ以外に殺(こわ)される兄さまなんて、それはいやだ。
 兄さまが勝つとしても、オレ以外のやつと"する"と思っただけでいやなんです」
「……気色悪ィ。誰とヤろうが、俺の勝手だろうが」
「いやですよ、オレは」
 カイトが妖刀を鞘走らせて、鞘を捨てた。
 ……クロウもまた、魔剣を構える。ぎらりと、双刃が鈍く輝いた。

 しばしの静寂。

「来てくれないんですか、兄さま?」
「……」
 クロウは無言。間合いを詰めることもせず、じっと身構えている。
 カイトは目を細めて、そして、甘やかな声で言った。
「じゃあ、オレから行きますね」
「――!!」
 クロウは気付いた。すでに、蔦の束縛が両足を封じ込めていることに。
 カイトが地を蹴る――疾い。これほどまでの速度を弟は手に入れていたか。
「――俺が」
 ばち、ばちばち――クロウの全身を、紫電が覆う。
「この程度で、止まるとでも思ってンのかよッ!」
 紫電が蔦を焼き切り、クロウは自由を得た。その時にはカイトは一足一刀に。
 妖刀がひょうと風を斬る。クロウはかろうじて飛び退っていた。
 腹の薄皮一枚まで到達した刃。血の線が真一文字に走り、斬られた服の隙間からこぼれる。
 ぞっと背筋が冷えた。クロウが退いたぶん、カイトはさらに間合いを詰める。
「兄さま。殺せないなら、俺が壊しますよ」
 斬撃。再びの真一文字――玄夜叉が炎をあげて、上から振り下ろされた。
 十字の軌跡が同時にぶつかり、膂力の差でクロウがカイトの剣をねじ伏せる。
 妖刀の先端が土を掘った。クロウは跳ねるようにして剣を下から上へ。
 カイトは背中を弓なりに反らす。正中線をややずれた斬撃が腹から肩へ抜ける。
 至近距離での斬撃が幾重にも重なる。完璧に均一された歯車めいて。
(やっぱり兄さまは優しいな)
 火花を散らして刃と刃をぶつけながら、カイトは思った。
(でも、本気できてくれないとダメですよ? だって――)
 カイトが一歩踏み込んだ。クロウは回避しようとする――避けきれない!
「オレはあんたのこと、壊(ころ)せるんだから)
 クロウは首を刎ねられた己の姿を幻視した。幻影をなぞるように走る妖刀!
「……ッざけ、ンなッ!」
 クロウは片腕を掲げて剣を受け止め、強引にカイトの死角に回り込んだ。
 食い込んだ刃を弾くように振り捨て、同時に片膝をカイトの脇腹に他空きこむ。
 べきり、と肋が砕ける手応え。無事なほうの手で握りしめた石突でカイトの頭部を殴り飛ばす。
 こめかみから血を吹き出し、カイトが倒れた。クロウは息を吐いて仁王立ちする。

「――ほら、やっぱり兄さまはやさしい」
「!?」
 カイトがぐるんと顔をあげる。心臓狙いの刺突が斜めに滑る!
 クロウはカウンターを企図した。やるとすれば全力で兜割りするしかない。
 だが、そうすれば今度こそカイトは――。
(本当に、死なせちま――ッ)

「……ふふ」
 カイトは微笑んだ。口の端から血が一筋こぼれて、どさりと前のめりに倒れる。
 妖刀は心臓を貫くギリギリのところで、クロウが素手で掴んで止めていた。
 クロウは玄夜叉を捨てていた――空いた掌で、鎖骨を叩き折ったのである。
「……あァ、知ってるよ」
 痛みで気絶したカイトを抱きとめ、クロウは血まみれの掌から刀を投げ捨てた。
「俺は――お前を、殺せない」
 ふらついて尻餅をつく。弟の身体を、強く抱きとめた。
「……殺せやしねェさ。俺は」
 クロウの血まみれの手が、痛いほどにカイトを掻き抱いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ニル/f01811と
★逃走

圧倒的な恐怖の象徴から逃げる矮小な人間
それが俺ってわけだ
そうだな、こういう時は学生の格好する方がティーンへの受けも良い
ところどころ服が避けてた方が悲愴さも際立つだろう

時には走って、時には隠れる
強烈な視線を感じて悪寒が走ったような演技をして、視線を向ければギラっと輝く眼光
そこから必死こいて逃げる俺、脚をもつれさせるのもそれっぽいな

そしていよいよクライマックス
永い永い逃走の果て、体力が尽き果てこれ以上走れなくなる
そこで何とか隠れてやり過ごそうとするわけだ
遠ざかる息遣いと足音───撒いた、と安堵した瞬間
死が鼻先に迫っていたことを実感するのさ
ウワァァァァァァアアッ!ってな?


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ヴィム/f01172と
★追跡

悪趣味な催しだけど
こういうのって得意分野だしな

私はヴィムを追いかける殺人鬼
【死者の毒泉】で呪詛の鎧を纏えば雰囲気出るだろ
オブリビオンとか妖怪とかと似たようなもんだ

生まれつきの無表情で
ゆっくり動いた方がそれらしいかな
周囲に視線を遣って、たまに竜の唸り声なんか漏らして
呼び起こした呪詛を周囲に散らしながら、ヴィムを探そう
……まあ打ち合わせ済みだし、どこにいるかなんて分かってるけど

一端通り過ぎるようなふりをしよう。こういうのって間が大事なんだろ
――見ィ付けた
呪詛の腕でヴィムの足を掴んだら、後ろから覗き込んで嗤ってやる
そのまま呪いの塊で包み込む
絶叫の演技は上手く頼むぜ、ヴィム



●ビーイング・シリー
「ハァ、ハァ、ハァ……!!」
 ヴィクティム・ウィンターミュートは、普段とまったく違う格好をしていた。
 いかにもティーンらしいラフでカジュアルな服装、そして焦った表情。
 戦場では常に冷静沈着、それでいてアイロニーを心がけるヴィクティムが、だ。
 常では絶対にありえないそれが、彼の演技のすさまじさを物語る。
 今回のヴィクティムの役目は、モンスターに追われる哀れな人間だ。
「畜生、畜生、畜生! なんだってこんなことに!!」
 グラインドハウス映画に出てくる愚かな犠牲者めいて、吐き捨てる。
 あちこちの服が裂け、傷口からは血が滲んでいた。
 ひたすらに走って逃げ続けるヴィクティム――それを追うのは。

「…………」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムもまた、別人めいて無表情だった。
 ただどちらかというと、彼の場合は「こちら」のほうが本来の顔である。
 普段のにこやかで高圧的な態度のほうが、彼にとっては演技に近い。
 とにかくその無表情で、ゆっくりと、もてあそぶようにヴィクティムを追う。
 魔王の如く歩くキラーの姿は、呪詛と怨嗟を凝り固めた鎧だ。
 まさしく凶兆。歩く死――ホラー映画の絶対的強者たる殺人鬼の衣装。
 ニルズへッグの演技も堂に入ったもので、喉から漏れる唸り声は特に「らしい」。
 人とは異なる竜の唸り声は、見ている者に本能的恐怖を呼び起こす。
 無感情でガラス玉めいた瞳も、人間的思考が一切読み取れないいい塩梅だ。
 恐怖とは抗いようのない絶望から生まれるもの。
 犠牲者を刈り取るキラーは、強大で、理不尽であればあるほどにいい。
 その点ニルズへッグは、まさしく天佑とも言えるほどに向いていたのである。

「頼む、頼む……気付かないで行ってくれ、頼む……ッ!」
 ヴィクティムは物陰に隠れ、脂汗を滲ませながら手を組んでいた。
 居もしない神にすがるぐらいしか、力なき愚か者には為すすべはない。
 そこへ、徐々に唸り声が近づいてくる……ヴィクティムは震え上がった。
 どくんどくんと心臓が早鐘を打つ。どうか落ち着いてくれと胸を抑える。
 ずしゃり、ずしゃりという足音。ヴィクティムは唾を飲み込むことさえ忘れた。
 一秒が一時間にも感じられるじっとりとした緊張が、画面に流れる。
 唸り声が最接近する……壁一枚を挟んだ向こうに、奴が『いる』。
 ヴィクティムは目を見開いて、カチカチ鳴る歯をぐっと噛み締めた。
 足音が止まり……唸り声もまた、消えた。呪詛の圧迫感もまた。
「……い、行った……のか?」
 ヴィクティムは汗を拭うことも忘れ、呆然と呟いた。
 緊張の糸が切れると、バケツを引っ被ったように汗が噴き出す。
 気の早い安堵が口元をひくつかせる。いかにも「ありがち」な仕草だ。
「行った、ん、だよな……はは、助か――」

 壁の向こうを見返したヴィクティムを、金色の瞳が見返した。

「――あ」
「見ィ付ケタ」
 ぐるぐると喉から唸り声が漏れる。喜色。そして人とは思えぬ声。
「う、う、うわぁああああああッ!!」
 ヴィクティムは喉から血を吐きそうなほどの声音で叫び、へたりこんだ。
 手足をバタバタさせて、ありもしない逃げ道を探してのたうち回る。
 壁を乗り越えてやってきた殺人鬼――否、怪物は、にたりと笑みを浮かべた。
 伸ばされたかぎ爪がむんずと足をつかみ、這いずろうとする彼を引きずり込む。
「い、いや、嫌だッ!! 助け、助けてくれ、頼む、誰かッ――」
 ずるずると引きずり込まれたヴィクティムの肩に、怪物は顎を乗せた。
「誰モ、助ケニハ来ナイ」
「――!!」
「だァれも」
 ヴィクティムは振り向いた。金色の瞳は嬉しそうに弧を描いた。
 呪いの塊が、哀れで愚かな犠牲者を抱擁し、包み込む。
「あ、あ――やめてくれ」
 闇が、ヴィクティムを飲み込む。
「やめてくれェエエエエエエエエッ!!!」
 悲鳴は、断末魔に変わった。

 ……それからしばらくあと。
「迫真の演技だったじゃないか、ヴィム?」
「どこかの誰かが見事な追い詰め方をしてくれたおかげだぜ?」
 そんなふうに軽口を叩きあい、男たちはくすくす笑った。
「ま、私にとっては得意分野だからな」
「ヒーローズアースで映画の企画でも募集してみたらどうだ? 大ヒット間違いなしだ」
「ヴィムがプロデュースしてくれるなら、考えてもいい」
「そりゃナンセンスだ。俺らには、スターよりもよっぽど大事なビズがある。そうだろ?」
 ヴィクティムの言葉に、ニルズへッグはいつも通りの表情で破顔した。
 彼らの迫真の演技は、オブリビオンの支配率を崩すのに大いに役に立ったことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
【鬼事】追跡・勝敗任意
傭兵さん/f01612と

レグルス?でしたっけ?
鬼ごっこしません?
そちらの得意なフィールドで構いませんよ。

▼方針
時間稼ぎ
UCで索敵・鳴宮の護衛

狙撃手の居所を知られたら終わりです。
式紙にロボさんを探させつつ、傭兵さんに逐次状況報告。
確実に撃てると判断するまで場所を変え続けてもらう。

こちらはオレンジさんの対処で手一杯だと思わせる必要がありますね。
防戦一方、森の《闇に紛れて》逃げる。手裏剣も外す。焦ったフリで姿を見せてもいいですね。

ま、ウソなんですけど。

殺されるなら大人しくやられますよ。獣の狩りはそういうものです。
コレは運動による発汗であり冷や汗ではありません。


鳴宮・匡
【鬼事】夕立/f14904と


向こうの弾数は無制限
追ってくるのはこのフィールドを一番よく知る奴
そういう話なら、逃げ切りよりは撃退を狙うべきだな

知覚を総動員して周囲の状況を把握する
地形を塗り替えられるとはいえ経時的に変化はしないだろう
「抜けられない」とわかっていれば相応に対応するまでだ

衣擦れの音は殺し、忍び足で闇に紛れる
草木や泥の匂いで索敵を欺瞞
近づいてくるロクの対応は向こうに任せ
こちらは隠密機動と索敵に集中
上空からの視点は夕立から伝わるだろう
それも援けにしてジャックの位置を捕捉

――位置さえわかれば、絶対に外さない
よく共に戦う“味方”の動きは
“視て覚える”俺にとっては、目を瞑っていても読めるものだ


ロク・ザイオン
【鬼事】
レグルス

得意なのでいいってさ
よかったな
あの二人なら生き延びるだろ

(「響徊」
【大声】の届く範囲を森に変え
【迷彩、地形利用】で【目立たない】よう潜伏
静かに彼らを【追跡】する
ここはおれの森
惑うものを見つけるのが森番の仕事だ)

それともおれについてくるかな
目も耳もいいし
…じゃ、ここからはすごく派手だ
おーば!

(松、杉、竹
燃えやすい木は幾らでもある
ジャックの熱線と森林火災の挟撃
閃光、炎、煙で迷わせ燻り出したら
己が【早業】で迎えに行く
燃える森の中でおれと乱闘だ
きっと生死は炎と煙に紛れるけど)

全力だよ。
だって、お芝居って、そうだろ?

火事と喧嘩は、何かの花が咲くんだろ
きっとすごく盛り上がるな


ジャガーノート・ジャック
【鬼事】
レグルス/勝敗任意

(ザザッ)
一度手腕を直に確かめてみたいとは嘗てから思っていた
いい機会だ、全力でレグルスらしく征こうか

ロクが具象した森に適応し各性能を向上、潜伏
その上で――本機の本領を披露する

「C.C.」>>"F.F."
射程長9.2km、一射約500発から成る自在軌道の光の洪水を複製し放つ
威力重視の合体熱線と数重視の無数の熱線を併せ
木々を燃やし隠れる場所も奪いつつ二人の経路を阻害するように矢継ぎ早に穿っていく(スナイパー×誘導弾×範囲攻撃×砲撃)

さて、匡と撃ち合いになるか
或いは矢来が奇襲するか
後は学習力と戦闘知識を用い最適な行動を取るのみ

――ああ、きっと派手な花になるだろう(ザザッ)



●09VS03
『――鬼ごっこしませんか?』
 きっかけは、矢来・夕立のその一言だった。
 番組にかこつけて、お互いに得意な"やり方"で相手を殺(たお)す。
 一対一ではなく、ツーマンセル同士でどちらが上かを決めようというわけだ。

「"得意なのでいいから"ってさ。自信、あるよな」
 ハンター――追う者となったロク・ザイオンが、相棒に言った。
「まあ、あのふたりなら生き延びるだろ。こっちが加減しなくても」
《――そうだな。何せ片割れはあの男。そしてもうひとりも、腕前は聞いている》
 ジャガーノート・ジャックは、ロクの言葉にこくりとうなずく。
《――本機も、一度手腕を直に確かめたいとは思っていた。かつてから》
「じゃあ、いい機会だ。……ジャック、高揚してる?」
《――君こそ、昂ぶっているようじゃないか。ロク》
 ジャックの言葉に、ロクはにんまりと、楽しそうな笑顔を浮かべた。
「だって、派手な喧嘩になりそうだ。楽しくないわけが、ない」
《――催しそのものは悪趣味だがな。だからこそ……》
「ああ。おれたちの流儀で、塗り替えてやろう」
 ふたりは視線を交わし、頷き合う。
「『レグルスらしく、全力で征こう』」
 そしてロクの遠吠えが『響』き『徊』い、この地に森を生み出した。

「合理的ですね、あのふたり」
 夕立は装備を確かめつつ呟いた。
「オレンジさんがフィールドを整え、ロボさんが狙撃するってところでしょう。
 隙も無駄もない。レグルス……でしたっけ? 名前を耳にするだけはあります」
「まあな。あいつらの練度は、今さら疑いようもないよ」
 一足先に装備のチェックを終えた鳴宮・匡が静かに立ち上がった。
「もっと言うと、このフィールドであいつらから逃げ切ることは出来ない」
「あなたの目があっても?」
「ああ。俺が知覚して反撃するより先に、あいつらはこっちを仕留めるな」
 卑下や謙遜ではない。匡は合理的かつ客観的に判断をしている。
 格上のオブリビオンを相手に猟兵たちが勝利できる最大の要因は、情報だ。
 こちらは敵の手管を知り、敵はこちらの戦術を知らない。
 その圧倒的アドバンテージがなければ、敗北してもおかしくない戦いはあった。
 今回の場合、まさしのそのアドバンテージが消失している。
 お互いに敵の手の内を知ることは、利点であり同時に弱点でもある。
 それを加味し、そして此方と彼方の戦闘スタイルを比較すれば、答えは明白。
 圧倒的有利なホームにおいて、匡ひとりでは追跡を逃れられない。
「だからオレが、傭兵さんを護衛すると」
「俺が提案しないでも、お前ならそのつもりであんな言い出し方したんだろ?」
「さあ、どうでしょう」
 案外、本当に気まぐれであんなことを言い出しかねないがこの少年だ。
「それはさておき、傭兵さんのプランしかないと思います。それが妥当ですから」
「逃げ切りが出来ないなら撃退するだけだ。時間稼ぎと索敵、任せていいよな」
「オレ、もしかして騙すのが得意な悪人だと思われてます?」
「そうじゃなきゃなんなんだよ」
 匡は嘆息し、耳を澄ませた――そして、何かに気付いたように彼方を見る。
「来たな。移動するぜ」
「わかりました」
 プロフェッショナルの本気の闘争が始まる。

 狩人……つまりレグルスのプランはシンプルなものだ。
 森を得意とするロクが敵を追跡し、ふたりをあぶり出す。
 ジャックは先んじて潜伏し、『"F.F."(フラッシュ・フロッド)』を複製準備。
 位置を特定し次第、ジャックの火砲支援で敵側の逃走経路を奪い、位置を固定。
 やむを得ず応戦に入ったふたりを、ロクが接近戦で刈り取る。
 匡も夕立も、隠密の天才だ。平時であれば隠れたふたりを探し出せるかどうか。
 しかし、あいにくここはロクの領域。彼女の身体の一部と言ってもいい場所。
 ロクは早々に、ジャックを探査中と思しき夕立を見つけ出した。
「――みつけた」
 予想通り、匡は居ない。おそらくどこかに潜伏しているだろう。
 闇雲に撃ったところで出てきてくれるほど、あの男はアマチュアではない。
 ジャックは木々に同化し、複製待機状態のまま相棒の合図を待つ。

 対する夕立側。
 彼はロクに見つけられたことを気取り、それでも逃げはしなかった。
 夕立の仕事は時間稼ぎと匡の護衛――つまりは敵の目を惹きつけることにある。
 蝙蝠型の式神が森に放たれ、どこかにいるであろうジャックを探し求めた。
「確実に撃てると判断したら合図を送ります。それまでは動き続けてください」
 匡がどこに居るかは夕立も知らない。この通信も一方的なものだ。
 双方向の通信でいちいちやりとりするなど、ジャック相手には後手も後手。
 ハッキングは警戒して当然である。そもそもふたりには必要ない。
「さて……」
 夕立はどのように焦った"ふり"をするか思案し、わずかに顔を顰めた。
 煤けた匂いがする。森の木々が熱を孕んで燃えている証左だ。
「自分で生やして自分で燃やすとは、もしかしてエコテロリスト志望ですか?」
 お得意の軽口に応えて茂みから飛び出したのは、ロクの刃だった。

(――始まったな)
 夕立とロクの大立ち回りを、匡は高く茂った樹の枝上から監視していた。
 ロクの動きは大ぶりで、夕立の出方を見、こちらを誘き出す腹積もりなのは一目瞭然だ。
 ゆえに、匡はロクを相手にはしない。彼の狙いは最初からジャックである。
(お互いに、戦ってる姿は"視て"るんだ。条件はイーブン、だよな)
 草木や泥の匂いで痕跡を欺瞞し、かすかな物音も殺して木々を跳ぶ。
 眼下では、ロクの燃える刃を夕立がかろうじていなしていた。
 ……いや、そう見せていた。よくやるものだ、と匡は感心する。
(発見はほとんど同時になるかもしれないな。――でも、それなら問題ない)
 焦げ茶色の瞳がぼんやりと蒼を孕み、匡の顔から表情が消えた。
 銃口を向けた瞬間――木々のあわいから、同じように砂嵐が見返す!

 ――BRATATATATATAPZAPZAPZAPZAPZAP!!

(見つかった? いや、まだ完璧には特定されてないか)
 銃弾と光芒が、草むらを駆ける夕立とロクのすぐそばをかすめる。
 夕立はジャックの攻撃の角度から、これは炙り出しのための攻撃だと読み取った。
 思考から匡を除外し、首を狙って走ったロクの攻撃をギリギリで受け止める。
「容赦がないですね。これ、一応"ふり"のはずですが」
「全力だよ。だって、お芝居って、そうだろ?」
「オレは演劇の経験がないのでわかりません。常に自分に正直に生きてます」
 ガ、ガ、ガキンッ!! 金属が打ち合うたびに火花が咲き誇る。
 打ち合いのたびに刃の熱は草を木を燃やし、光芒がそれを急き立てた。
「今年の気象庁が発表した、二酸化炭素排出量。ご存知ですか」
「しらない」
 ロクが猿のごとく跳んだ。夕立は受けきれず、ざざざ! と地面を滑る。
 ロクは目を細める――動作に嘘がある。惹きつけるための演技か。
「……提案しておいてなんですが、オレはやっぱり降りることにしました」
「ウソつけ」
 ロクは無造作に、サイドスローで擲たれた苦無を斬り落とす。
「逃げるなら逃げてみろ。おれはどこまでも追いつく」
「試してみますか」
 夕立の姿が影に消えた。ロクは一瞬訝しみ、周囲を見渡す。
 そして直後、それ自体が夕立の狙いであったことに気づき唸った。
「ジャック! 夕立を見失った!!」
《――了解した》
 相棒は火砲支援をさらに増した。定石であればジャックは逃げるべきだ。
 これは完全なジャックの直感であり、いわば戦士の勘でもある。
 夕立の奇襲は、こちらには来ない。敵の頼みは匡の狙撃一点だと。

 そしてそれは、まさしく当たっていたのだ。
 潜伏してジャックの位置特定に専念しようとしていた夕立が、火砲によって強制的にあぶり出される!
「傭兵さん、プランBです。おおよその位置は割り出したので仕留めてください」
 蝙蝠たちが声を伝えた。匡は目標ポイントに銃口を定める。
「――逃さないぜ」
《――発見した》
 死神と鋼豹は、まったく同時に相手を狙撃した!

「……なるほど」
 夕立は一言だけ吐き出し、弾かれたように振り返る。
 雷花の剣が、背後から突き出されたロクの刃をぎゃりり、と弾いた。
「火事と喧嘩は、何かの花が咲くんだろ」
 ロクはまっすぐに夕立を見据えていた。もう見逃さないと目が伝えている。
 夕立は顔を顰めた。これは、苦手なタイプの"人間"だ。
「それ、誤用ですよ。実際は言われたことがないそうです」
「え」
「――ま、ウソですけど」
 斬撃。ロクは飛び退き、木を足場に蹴り渡り、頭上から夕立を奇襲。
 弾丸は止み、稲妻のような光が逃げ道を塞いでいる。つまりはそういうことだった。
「あとはお前だけだ」
 夕立のこめかみから一筋汗が流れた。冷や汗ではない、と彼は言うだろう。
 牙のような軌道で刃が走る。血が、びしゃりと飛沫をあげた。
 煙と炎がふたりを覆い隠す。だがその血がどちらのものであるかは、わかりきっていた。

《――やはり、敵に回したくないな。あの"目"は》
 そして、ジャック。
 彼の頭部すれすれ、鎖骨から肩にかけてが破損しスパークを起こしていた。
 報告された位置はわずかに、わずかにだがズレていたのだ。
 ジャックがズラした、というのが正しい。彼なりの経験から来る判断である。
 手応えはあった。狩人たちは、獲物を仕留めた。その代償も大きかったが。
《――ロク、無事か?》
「……おーば」
 通信超えの相棒の声はひどく憔悴している。深手を負ったのだろう。
 何かが違えば結果は逆転していた。再現(リプレイ)など不可能だ。
《――喜ぶとしよう。勝利と、彼らが本当の敵でなかったことを》
「……うん」
 勝利の美酒には酔えそうにない。あまりにも紙一重。

 ……そしてそれは、"殺された"側も同じ。
「オレのミスでしたね」
「いや……ジャックの学習能力が上だった、っていうべきだろうな」
 敗北の悔しさにのたうつほど、ふたりはアマチュアではない。
「ではそういうことにしましょう。オレは無実です」
「この状況でいつもの口叩けるそのタフネスに感心するよ……」
 匡は灼けた脇腹を抑え、野太い息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セラ・ネヴィーリオ
【くれいろ】合同/決闘/指定

殺す、なんて据わりが悪いけど
(夕暮れの眼が綺麗で、呑まれそう)
「…きみが望むなら」

殺せるよ
きみは、僕が。必ず
何時でも、何処だって
大丈ー夫!きっと独りになんてさせないから、ねっ!

…ま、言葉だけで変わるかっていうとねー
(僕らでもそれが叶わない、か)
それなら、ねえ
聴かせてよ
声を。祈りを。命を
頂戴よ、オーダーを

(拝領)
――うん。
赫灼たる末期の願い、セラ・ネヴィーリオが承ろう
冥河の渡賃、安くはないからね…!

【帰天抱擁】
手向け先、暮れの色。
僕のいちばん星。
ユキ・パンザマスト――

(ああ、とっくに)
(きみを惜しんでしまってた)

――のUC【八百椿】!
今殺すは、その呪いこそを!!


ユキ・パンザマスト
【くれいろ】合同/決闘/指定

さあさ、今一度問いましょう
(パフォーマンス、芝居口調
ショーの片隅にリアルな凄絶
金茶の瞳が紅と交錯)
セラ、
ユキ・パンザマストが殺せますか?

そうですね
なぁにも心配なんて、ない
ええ
(嬉しげに笑み
然し、挑発の眼)

されど、この魂
既に八百年の呪詛が喰らいまして
生半な意気では殺せませぬ
還し弔うが墓守ならば
セラ・ネヴィーリオ
八百年の彷徨い獣を在るべきへ

おや、値上がりとは
六文銭に色をつけねばですね

──セラ

(御手が呪を引き摺り出すが
甦り【八百椿】
斃れたふり、眉を下げて笑む)
そう、ですか
殺すではなく解呪を試んだとは
あなたらしい

(解呪が作用したかは
杳として知れず
されど兆しは、希望は確かに)



●ショーの片隅で
「――さあさ、今一度問いましょう」
 芝居がかった口調で、少女は小首をかしげた。
「セラ・ネヴィーリオ。あなたは、ユキ・パンザマストが殺せますか?」
「――……」
 夕暮れ色の瞳を見つめて、セラは息を呑んだ。
 その瞳があまりに綺麗で呑まれそうだから……そして、その口からあんなセリフが出たから。
 これは、ショウだ。つまりは演技で、ふりで、かりそめのもの。
 ただ、ユキの言葉は、"ほんとう"を求めていた。
 演技でも"ふり"でもない、心からの偽りなき真実。僕自身のこころを。
「殺す、なんて据わりが悪いけど――」
 セラはもう一度息を呑んで、吐いた。
「……きみが、望むなら。殺せるよ」

 ユキの口元に、嬉しそうな笑みが浮かんだ。
 ただ夕暮れ色の瞳は、挑発的にセラのことを見つめている。
「ユキが望むから、ですか?」
「独りになんてさせない」
 セラは食い気味に言う。
「きみは、僕が、必ず――何時でも、何処だって、どんな時にでも。
 僕は、きみを殺せる。セラ・ネヴィーリオは、ユキ・パンザマストを殺せるさ!」
 大きな声に、今度はユキが少しだけ目を見開いて。
 くすりと、笑みを深めて、少女は歌うように呟いた。
「そうですね。なぁにも心配なんて、ない。ええ――」
 瞼を閉じて、開く。……挑発の色が、瞳に蘇る。
「されど、この魂。すでに八百年の呪詛が喰らいまして……生半な意気では殺せませぬ」
「……そうだね。言葉だけでは、僕らは変わらない」
 セラは頷いた。ユキは、じっと彼の目を見て続ける。
「だから、ねえ。聴かせてよ」
 今度はユキが、言葉を途切れさせて声を聞いた。
「声を。祈りを――命(オーダー)を。僕に、頂戴よ」
 まるで歌劇のように、ふたりは想いを託し合う。
「還し弔うが墓守ならば、セラ・ネヴィーリオ」

 ――八百年の彷徨いし獣を、在るべき――へ。

 ……拝領の瞑目から、セラが目を開いた。そして、うん、と頷きひとつ。
「赫灼たる末期の願い、セラ・ネヴィーリオが承ろう」
 ユキは嬉しそうに目を細める。
「冥河の渡賃、安くはないからね……!」
「おや、値上がりとは。六文銭に色をつけねば、ですね」
 くすりといたずらっぽい笑声が転がって。

 ふたりは、偽りの衣を着たまま、こころとこころとぶつけあった。

 らせんを描いて舞い飛ぶ双鳥のように、ふたりは近づいては離れる。
 細い指先ふたつがついばむように重なって、かと思えば嵐となってぶつかりあう。
 離れ、ぶつかり、交錯し、また離れ……熾烈で苛烈な攻防がせめぎ合う。
 だってこれはショーなのだから。殺し、殺される戯れなれば。
 踊り、狂って、喰らい合うようにして爪を立て合い。
 けれどもその中に、ふたりは色を乗せる。想いという名の色を。
「――セラ」
 刻印が牙を剥いた。餓えという名の顎(あぎと)が地獄門めいて開かれた。
 セラは……退かない。杖を振るい、喰らわれるのを覚悟で一歩前へ。
 手向ける先は暮れの色。時を過ごしたいちばん星。
 罪人たちを「いずれ我らも」と、ともに見送った少女へと。
「ユキ・パンザマスト――」
 墓守として。
 拝領したものとして。
 ――終わりを。
 在るべき――を。
 もたらして、そして……。

 白光が編んだ優しい手が、ユキの身体を貫いていた。
 ただしそれが掴むのは、呪われ彷徨い喰らい尽くされた魂ではなく。

(僕は、とっくに――きみを惜しんでしまってた)

 ユキが目を見開いた。
「セラ」
「今殺すは、きみに非ず」
 墓守……いや、少年は言った。
「その呪いを。魂を喰らう八百年こそを。僕は――ッ!!」
 御手は"それ"を引きずり出し、掌に包み込んで握りしめた。

「……そう、ですか」
 斃されたふり。ショーの終わりは、それが幕切れ。
 眉を下げて笑む少女の表情は、死人のそれでなく。
「殺すではなく、解呪を試(えら)んだとは、あなたらしい――」
「…………」
 白光が解ける。呪いは、少なくともその力はいま、ユキを醒ました。
 だが、希望は掌(そこ)にある。少年は、少女は、それを感じた。
「僕は絶対に、きみを独りになんてさせないから」
 少年が零した言葉は、演技でも偽りでも、確認でもなく。
 己と少女に捧げる、誓いのことば。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四辻・鏡
翼(f15830)と

折角の強敵なんだ、サシで殺り合わなきゃ損ってもんだろ?
カッコいいとこ見せてやるから

なんて匕首の複製を片手に軽口を叩きながら向かうも、間合いの違いに苦戦
相手の動きを見切り、なんとか打ち合いに持ち込むも
斬馬刀の先、回避すれば背後の翼に攻撃が及んでしまうことに気付き
無理矢理受け止めようとしてバッサリと斬られ

あーあ、馬鹿やっちまった
やりかけのゲーム、まだあったんだけどなぁ…
翼…お前だけは、生きて帰れよ
と言い残し本体だけを残し消えて事切れたように見せ


攻撃の直前、翼の詠唱に合わせて刀身に相手を映し”見て”相手を捕らえ、回避する動きを封じ次の一撃へと繋げ

現実は創作より奇なりって言うし?


早乙女・翼
鏡(f15406)と

おゆう相手にタイマン挑むつもりだったけど
同じ事考えてる戦闘狂に先を越された、か
流石に1:2は対等とは言わないさね…幾ら向こうが強いと言っても

…は?
いや、何斬られてるさよ!?
俺の事気にしてる場合か? やられちゃ意味ねぇだろ!?
倒れた鏡の消えていく肉体を支え、抱きしめながら叫び

次は俺が相手だ、とゆらりと立ち上がり
その手に握るは鏡刀影姫―鏡自身である刀
名の通り、彼岸花を咲かせてやる
持ち堪えろよ鏡!
UC発動
大太刀の一撃は神雷纏った居合い下から斬り上げ受け止め
汝の狂気は如何なるや―!
鏡刀に呼びかけながら向こうの刀身毎纏めて相手をぶった斬る

演出とは言えやりすぎじゃね?と最後刀に語りかけ



●死殺興行
 男が、ふたり。鬼の前に立っていた。
「おやまア、色男が雁首揃えて来てくれるとは、嬉しいねえ」
 おゆうは粘つく血のようなねっとりとした笑みを浮かべ、囁いた。
「で、どうするンだい。あたしャふたりがかりでも構わんよ」
「――……いや」
 先に首を横に振ったのは早乙女・翼である。
「もともとタイマンを挑むつもりだったんだ。それは対等とは言わないさね。
 ……それに、同じこと考えてるやつが先を越したんだ。なら譲るべきだ」
「ヘ。珍しく潔いこと言うじゃんよ」
 対する四辻・鏡は、喜色満面の笑みを浮かべて翼を見やる。
「ま、そう残念な顔すんな。カッコいいとこ、見せてやるから」
「ほォ、そうかい。それで話が収まったってンなら、そうしようじゃアないか」
 おゆうのどろりと濁った殺気が、鏡だけに向けられる。
 翼は頭の中で、その背中に斬りかかる己の姿を思い描いた。
 ――凄絶なるおゆうの笑みと、血溜まりの幻視。
 もとよりそんなことをするつもりはないが、考えずにはいられないのが男の性。
 仮に不意を突いて挑んだとて、結果はろくなことになるまい。
 殺気がこちらに向いてないからと言って、それは隙ではないのだ。

「機会を譲ってやったんだ、損なうなよ」
「そりゃまた無用な心配だぜ。この程度よォ――」
 鏡は匕首の複製を片手に、軽口を叩いて不敵に笑う。
「さアて、始めようかいッ!!」
 だが。おゆうの剣気が無数の刃となって迸れば、たちまち笑みも消えた。
「剣士のくせして遠間かよ、チ――ッ!」
 匕首を逆手に構えて刃を弾き、鏡は走る。おゆうは目を見開いて凄んだ。
 いよいよその刃が届こうという刹那、斬馬刀がバツ字に割り込み鏡を弾く!
「っくそ!」
 攻守が逆転する。再び鏡は防戦一方を強いられ、退かざるを得なくなった。
 翼が顔をしかめる……間合いの違いゆえか、鏡の状況は悪い。
「そォらそらそらそらそら!! 撃ち合いたいならサービスしてやろうかァ!」
 加えておゆうの攻勢! 烈然たる剣が斬馬刀と交互に鏡を襲う。
 受け太刀一方の鏡――は、死中に活を見出し、匕首片手に飛び込んだ!
「いつまでも、調子に乗ってんじゃあ……ねえッ!!」
 ざくりと剣先がおゆうの脇腹を裂いた。おゆうは笑い、膝蹴りをみぞおちへ。
「ぐ……!」
 転がり退いた鏡に降り注ぐ刃の雨。彼は咄嗟に横に避けようとする。
(――!)
 そこで気付く。この軌道、避ければ刃は翼に届くことに!
(ハメやがったな、あのアマ……!)
 おゆうの笑みは嗜悦のそれ。鏡は……!

「……は?」
 驚愕の声を漏らしたのは翼だ。
 避けられるはずの剣を、鏡は受け止めた。
 無理な受け太刀は当然のように押し切られ、そして、彼は。
「いや、何斬られてるさよ!? 俺のこと気にしてる場合か!」
 ごろごろと足元に転がってきた鏡の身体を、反射的に抱えあげる。
「あーあ、バカやっちまった……」
「やられちゃ意味ねぇだろ!? 仕損じるなって、言――」
「……翼」
 鏡は微笑む。
「お前だけは生きて帰れよ」
「き……」
「……やりかけのゲーム、まだあったんだけどなぁ」
 その言葉を最期に。鏡の身体はかき消えて、からんと匕首が遺された。

「よかったねェ、次はあンたの番……」
「……ああ。次は俺が相手だ」
 鏡刀影姫を手に、翼はゆらりと立ち上がる。
「名の通り、彼岸花を咲かせてやる。――持ちこたえろよ、鏡」
「……!」
 そのすさまじい剣圧に、おゆうは気圧された。
 翼は猛然たる勢いで踏み込む。神の雷がばちばちと刃から迸った!
「なんだ、こいつ――ええいッ!!」
 おゆうには理解不能の剣気。それを本能的に警戒し、女は大太刀を振るった。
 だが――ガギン!! と、雷纏う剣が三途丸を受け止めたのである!
「なァッ!?」
「汝の狂気は如何なるや――!!」
 刃紋におゆうが映る。そのとき、おゆうは"視線"を感じた。
 畏れ。鏡と翼に対する畏怖が、おゆうの身体を縫い止める!
「あ、あたしが――あたしが! 怖がったっていうのか!?」
「終いだ、羅刹」
 底冷えするような翼の声。
「お前も、この悪趣味な催しも、まとめて――消え去れッ!!」
 断末魔が響き、それすらも神雷の轟音がかき消した。
 そして血濡れた残骸は、一刀両断され消し飛んだのである。

 ……残心を終えた翼は、一息つくと刀を見下ろした。
「演出とはいえ……やりすぎじゃね?」
 すると刀が震え、どこからともなく鏡の声。
『現実は創作より奇なりって言うし? 上手くいったろ、実際』
「まあそうだが……らしくねぇにもほどがあるさね」
『そりゃお互い様だろ。勝てたんだからいーじゃねぇか』
「……ったく」
 ここまですべて策通り。血濡れた三文芝居には相応の演技でもって報いるべし。
 ともあれこうして羅刹の魔は断たれ、狂ったショウは終わりを告げる。
 UDCアースの片隅で、映像を映し出していたプラウン管がぴしりと終わりを告げた。
 はたしてこの誰知らぬ殺戮劇、見届けた者はありやなしや――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月12日


挿絵イラスト