大祓百鬼夜行⑨〜数多の月と一つの星
●輝きが多すぎても
カクリヨファンタズムの竹林は夜に輝くもの。
中に何もなくとも出鱈目に輝くその光景はお約束で、ある種の日常でもある。
大祓百鬼夜行に幽世が騒然とする中、その竹林は他の竹林と何ら変わらぬ輝いていた。
一つの竹の節がぱかりと弾ける。すると中から小柄な――姫と呼ぶに相応しい外見の少女が現れる。
次々に割れる輝く竹の節、同じく次々に現れる同じ姿の少女たち。彼女ら『かぐや姫』は生まれたばかりの小さな東方妖怪、けれど彼女らはすぐに悪しきものに操られてしまう。
『さあ星はあちらを示しています。猟兵を迎え撃つために参りましょう。かぐや姫』
元は牛の妖怪『くだん』、今は『天津甕星』の骸魂に憑かれ予言より強力な未来予知へと昇華したその力を振るう彼女は、この竹林を訪れる猟兵達を今か今かと待ちわびていた。
「予知を得た。カクリヨファンタズムの大祓百鬼夜行に纏わるモノだ」
龍神の一柱である水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は集まった猟兵達に厳かに告げる。
「今回向かって欲しいのは竹林……この世界の竹林は夜になると出鱈目に輝いているのだが、中身は多くの場合何もない。しかしこの竹林の輝く竹には節ごとにかぐや姫という小さな東方妖怪が百鬼夜行の影響か生じている。そしてオブリビオンはそのかぐや姫達を操り猟兵達を撃退しようとしてくるようじゃ」
宝珠のようなグリモアを多摘がくるりと回せば、竹林の風景が映し出される。
「転移地点はここで、かぐや姫達を操る骸魂『星読みの牛姫』はこちらになる。かぐや姫の生まれる竹林を突っ切らねば辿り着けず、移動中もかぐや姫達が襲い掛かってくるから下手をうてば辿り着く前に消耗し非常に不利な戦いを強いられよう。また、彼女らは生まれたばかりの東方妖怪で纏めて救いたいところ、どうにか皆にはかぐや姫の大群をやり過ごしつつ骸魂のみを撃破してきてほしい」
そして龍神が宝珠を撫でれば牛の角を生やした女の姿の骸魂の姿が浮かび上がる。
「この星読みの牛姫という名のオブリビオンについては元のくだんの予言能力に星の力を加え占星術、そして未来予知を行ってくる。身体能力自体はそこまでではないがやり辛い相手じゃ。手抜かりないよう、確実に倒し骸魂を追い払って元のくだんに戻してやってくれ」
説明を終えた龍神は宝珠型のグリモアを掲げ、猟兵達の転送準備を開始する。
宝珠の映し出した光景は夜闇に幻想的に輝く竹林、そして竹の節や影、葉から顔をのぞかせる無数のかぐや姫達――それらが映像から実像へと変わり、猟兵達は幽世の竹林へと降り立ったのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
月は沢山、星は一つ。
このシナリオは操られ襲い掛かってくる大量のかぐや姫達に対処しつつ、『星読みの牛姫』を討伐するシナリオとなります。
かぐや姫達は小柄ですが戦闘力は高く、かつ操られているので猟兵達に容赦なく攻撃してきます。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……かぐや姫の大群に対処する。
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それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『星読みの牛姫』
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POW : 輝星は瞬き、拳撃が翻り、過去を再現す
【流星に匹敵する速度と衝撃力を秘めた拳撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 星海は拓き、天上へ誘い、現在を侵略す
【追尾能力を備えた流星群】を降らせる事で、戦場全体が【宇宙空間】と同じ環境に変化する。[宇宙空間]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 星々は巡り、予言を結び、未来に固定す
【体内を巡る星々の動きを読み取る】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
イラスト:key-chang
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ルゥナ・ユシュトリーチナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
葬・祝
あら、生まれたばかりの妖ですか
かぐや姫、……あまり詳しくはありませんが、昔話でしたっけ?
あれって、妖だったんですねぇ
まあ、か弱い幼子をいじめるのは可哀想ですし、適度にお相手して差し上げましょう
【誘惑、おびき寄せ、精神攻撃】でかぐや姫たちを呼び寄せ、攻撃されるタイミングに合わせて【カウンター、呪詛、催眠術】で眠らせてしまいましょう
んふふ、優しいでしょう?
その合間に牛姫には【念動力】で操った呪い道具の五寸釘や鉈、匕首を飛ばして、UCに加えて【神罰、呪詛、生命力吸収、恐怖を与える】を
幼子は護られて然るべき存在らしいですからねぇ
悪い子は、精々醜く腐り落ちてくださいな
ブラッドルファン・ディラィトゥオクア
なんやなんや、このチビっこいのがぎょうさん出とるやないか
コイツらホンマかぐや姫なん?群れ作るた聞いた事あらへん
イイトコ座敷童かころぽっくるとちゃいますのん?
もしかしたら竹林のコダマの群れかもしれへんなぁ
まぁでも行くて阻むやったら…しゃあないわいな
こういう時はアレの力使うんが良さそうや!
見てまうだけで石と化す呪い、蛇に睨まれた蛙やよろしく固まってておくれやす
かぐや姫の群れば止めおき、牛姫への道筋を作るで!
物量は如何ともし難いさかい、あんま時間は稼げんかもしらん
スラッシュ・ブルームに乗って突破を狙うで
あんま時間かけ過ぎてまうと色々詠まれてまうからナルタケ星読むイトマ与えんと押し切らせてもうらうわ!
疎忘・萃請
ぽかりと口をあけて、目の前の光景を見る
な、なんだこの大量の月の姫は
如何にカクリヨといえども流石にこれは……
なんにせよ、この小さき姫たちを相手どるのは得策ではない
どうにかいなして未来予知の妖怪を救わねばな
片手を挙げ、ざぁと風を感じる
さぁ隠れ鬼に興じよう
竹林を森へ塗り替えて
森はアタシの遊び場だ
木の葉に身を隠し、飛び移り、一粒の星を探そう
みぃつけた
樹上から奇襲のごとく飛び掛かり
明食鎖を牛姫にぶちあてる
お前は未来が見えるのか
このあとアタシはどうなる?お前はどうなる?
願わくば、この危機が去りて
互いに笑い合える日々が見えますよう
かぐや姫。
光る竹より生まれた身の丈三寸の小さく愛らしい少女が翁と媼に育てられ、そして貴公子や帝の求婚を受けながらも拒み、最後には月へと帰っていったという物語。
成程、三寸よりは大きいけれどもそれに近い大きさ、そして見目麗しい竹林を走る着物姿の子供はかぐや姫と呼ばれるのにふさわしい姿だ。
――問題はその数が一人ではなく数多くいるこの状況なのだけれども。
「……な、なんだこの大量の月の姫は」
転送されてきた猟兵達の一人、ぽかりと口を開けて小さな少女達があそぶ竹林の光景を眺めるのは疎忘・萃請(忘れ鬼・f24649)。
如何にカクリヨといえどもここまでくると最早コメディ、そんな状況に鬼たる彼女も戸惑ってしまう。
「なんやなんや、このチビっこいのがぎょうさん出とるやないか」
ブラッドルファン・ディラィトゥオクア(西洋妖怪のレトロウィザード・f28496)の珍しいものを見たような第一声。
「あら、生まれたばかりの妖ですか」
東方妖怪の葬・祝( ・f27942)ふむ、と銀の瞳を細め竹林とかぐや姫達を見やる。
「かぐや姫、……あまり詳しくはありませんが、昔話でしたっけ?」
あれって、妖だったんですねぇと本気か冗談が分からぬ調子で言う青年に、
「つかコイツらホンマかぐや姫なん? 群れ作るた聞いた事あらへん」
イイトコ座敷童かころぽっくるとちゃいますのん? と首をかしげるブラッドルファン。
しかし生まれたばかりのかぐや姫の特徴を問われても、小さく可愛らしいくらいしか挙がらないだろう。数さえ気にしなければ今の彼女らはぴったりだ。
そんな子供たちは意外と強大な戦闘能力を持ち、そしてこの竹林の先のオブリビオンに操られている。
「まあ、か弱い幼子をいじめるのは可哀想ですし」
適度にお相手して差し上げましょう、と東宝妖怪の青年は竹林へと飛び込んで、
「まぁでも行くて阻むやったら……しゃあないわいな」
魔法の箒に乗って西洋妖怪の女も竹林へと飛び込んでいく。
そしてぽつんと一人、萃請も思案する。
なんにせよ、この小さき姫たちを真っ向から相手取るのは得策ではない。個々の力も強く数も多い上、何より彼女達は普通の妖怪なのだから。
「どうにかいなして未来予知の妖怪を救わねばな」
そう言って萃請は片手を挙げ、狩衣のような袖から晒された腕で竹林に吹く風を感じる。
――さぁ隠れ鬼に興じよう。
忘れ去られた鬼の言葉は竹林の風景を塗り替えて、新たに竹と木の混ざり合った迷宮を構築する。
ここは――森は萃請の遊び場。
突如変化した環境に戸惑うかぐや姫たちをすり抜け、鬼は木の葉に身を隠しながら木から木へと飛び移り進んでいく。
仄光る竹と木の間、禍々しく輝く一粒の星を探すために。
竹林の変化を気にせず走る祝を小さなかぐや姫達がその身に似合わぬ猛烈な速度で追いかけていく。
着物を引きずる少女たちは無邪気な様子、けれども掴まればその無邪気と操られる身故の残酷が待ち構えているのかもしれない。
そんな危険な少女達に追われながら祝は普段と変わらぬ様子。祝の手招きに誘われ飛びかかってきた数十人の小さなかぐや姫、ちりんと鈴鳴らしながら祝はさっと身を躱す。
躱された少女は地面にべしゃりとうつぶせに飛び込む。そして突っ伏したまま、すやすや寝息を立てている。
意識が一瞬無防備になる攻撃の瞬間に祝がかけた催眠術、生まれたばかりの彼女達には覿面に効いているようだ。
「んふふ、優しいでしょう? 幼子は護られて然るべき存在らしいですからねぇ」
ちりん、ちりんと青年は竹林のあちこちにかぐや姫達を寝かせながら進んでいく。
一方、ブラッドルファンもかぐや姫たちに追われていた。
勢いで突破できないかと少しばかり考えたがどうにも数が多くしつこい。こんなに引き連れて元凶に辿り着いてしまえば戦場は大混乱になるだろう。
その前に対処しなければならないだろう。
「こういう時はアレの力使うんが良さそうや!」
箒からひらりと飛び降りながらその髪を蛇に変化させていく彼女、そして列なし向かってくるかぐや姫達に振り向いて彼女らを宝石の瞳の視界にとらえる。
「イキのええモンほどようけ固まってくれよるわ。美女の成れ果て、悍ましき醜悪たる魔物の呪い……受けてみい!」
宝石の如き瞳とメデューサの如き視線、それは数多の西洋妖怪の概念を内包する彼女のユーベルコードの一つ。
石化の邪視は敵対者の動きを縛るという効果を十分発揮する。勢いのまま転がるかぐや姫達は石化しているが、また後で呪いを解除すれば問題はないだろう。
ただかぐや姫の数はあまりに多く、全てを石化させるのは至難の業だろう
「……もしかしたら竹林のコダマの群れかもしれへんなぁ」
石化したちまっこい姫様達を見ながらそんな事を考えながら、物量で圧される前にブラッドルファンは再び箒にまたがりと加速していく。
ふよふよと浮かぶ角の女が竹林にいた。
体が宇宙の星々と混じったようなそれこそがかぐや姫たちを操るオブリビオン。その星見る牛姫の元に祝が最初に辿り着く。
オブリビオンと認識したと同時、彼は周囲に呪い道具の数々をばらまき念動力で牛姫に向けて発射する。
何かの血に酸化した五寸釘に鉈、匕首と触れるだけで呪われたり、傷ついてしまいそうなそれらを牛姫は予見していたかのように躱していく。
体内を巡る星々を読む、その行為により牛姫の行動の精度は非常に高まっている。
空中を舞う鉈と匕首を緩やかな所作で回避する牛姫が反撃に映ろうとしたその時、箒に乗ったブラッドルファンが飛び込んできた。
彼女も速度重視、牛姫と言葉を交わす事もなく箒に煌めく刃を強かに叩きつけようとした彼女の攻撃を牛姫は反射で回避する。
しかしブラッドルファンは翼で姿勢制御すると即座に追撃にかかる。
時間をかけてしまえばあれこれ詠まれてしまい不利になる事は明白。
「ナルタケ星読むイトマ与えんと押し切らせてもうらうわ!」
そしてブラッドルファンの石化の呪いが牛姫に向けられる。全力で抵抗され石化は阻害されたものの、そちらへの集中で僅かな隙が生じる。
牛姫の背に祝の五寸釘が一本突き刺さる。
傷自体は深くはない、けれど神罰の如き呪詛を込めたそれの本領はこれから。
「ふふ、もう手遅れですね」
ちりん、と鈴鳴らし薄ら笑む祝の言葉の真意を、直後牛姫は理解する。浅く小さい傷口が腐り落ちていく感覚と、強烈な飢餓感。
生命力そのものを奪われる感覚に牛姫は即座に五寸釘を抜くもその異常は止まらない。 幼子は守られて然るべき存在、けれどそれは"よい子"なれば。
「――悪い子は、精々醜く腐り落ちてくださいな」
感情の色は変わらず、変わらずふわりと笑う少年の瞳に牛姫は"おそろしい"という感情を抱いてしまう。
そしてさらに牛姫の不運は続く。
――みぃつけた。
木々の合間からじわりと響く声。森の人を食べてしまう鬼の声。
同時、牛姫の頭上の木から萃請が飛びかかる。
全長二尺八寸の分銅鎖『明食鎖』を振り回し、攻撃を受ける事を予見していたかのように躱そうとする牛姫に分銅をぶち当てる。
「……お前は未来が見えるのか。このあとアタシはどうなる? お前はどうなる?」
『見えます、見えますとも。私達の勝利で、貴女達は星の海に呑まれ敗北するのです』
問う彼女に星詠みの牛姫は背を向け竹林へと飛び込んで、猟兵達の眼前には入れ替わりに無数のかぐや姫達が立ちはだかり飛び掛かってくる。
襲撃されることを予見して呼び戻していたのか――いずれにせよこの場で仕留める事は叶わない。
催眠術で片っ端から落としていく祝と石化の視線で固めていくブラッドルファン。
そして牛姫に未来を問うた萃請は、小人のようなかぐや姫達をあくまで拘束する為に鎖分銅を構えて、
(「願わくば、この危機が去りて互いに笑い合える日々が見えますよう」)
そんな彼女の願いは、後続の猟兵達に委ねられる事となった。
大成功
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メイスン・ドットハック
【SPD】
かぐや姫の大群とか、竹取物語の情緒もないのー
じゃけど、それでも何とかするのが猟兵の力という奴じゃのー
キャバリア・KIYOMORIに搭乗して参戦
かぐや姫は殺さないようにスタングレネードの榴弾を大量発射して、動きを止める
レーザー砲ユニットは地面を抉るように破壊して、大地を巻き上げて接近させないようにする
相手が宇宙空間にしたら、UC「星の海を制覇せし船」を発動して、大型宇宙戦艦「暁」を召喚して、星読みの牛姫のみを集中攻撃する
KIYOMORIでも活動できるけどのー、これは宇宙戦艦じゃけー、余計に適応するぞー?
戦艦を呼び出したら浮遊させて、上陸しかぐや姫の攻撃から逃れる
自身も攻撃参加で集中砲火
フィロメーラ・アステール
「どちらが一番星に相応しいか勝負だな!」
おや、流れ星は勘定に入らない?
それでこんなに流星群を?
それじゃタダの流星とは違う所をお見せする!
【星界式瞬間加速法】を発動!
横向きに空中を蹴って、超スピード【残像】【ダッシュ】を実現する、宇宙生活のお役立ちスキル!
もちろんあたし自身も宇宙っ子!
地球生まれのかぐや姫じゃ宇宙は不慣れでしょ?
一般流れ星とまとめて振り切ってやる!
竹林を抜けるのが手間だけど、多少の衝突は【オーラ防御】バリアで平気だし、少し隙間がありゃ【スライディング】で抜けられるさ!
あとは【第六感】……いや超高速の世界は勘がモノを言うぞ?
うまく敵に迫れたら【全力魔法】を込めた【踏みつけ】キック!
それとほぼ同時刻。
「どちらが一番星に相応しいか勝負だな!」
敵は星見るオブリビオン。となれば流れ星のフェアリー、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が張り合わぬ筈もない。
きらきら輝く光跡を残しながら仄かに光る竹の隙間へと飛び込んでいった。
「かぐや姫の大群とか、竹取物語の情緒もないのー」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は竹林に見える酷く小さな少女たちを見て呟く。
けれどそんな彼女も二足歩行戦車型のキャバリア『KIYOMORI』に搭乗しており、別のベクトルで情緒からは遠いような気もする。
ちんまりとした見た目のかぐや姫だが戦闘能力は高いとのこと、数も莫大で正面から戦うにはかなり骨の折れる事だろう。
「じゃけど、それでも何とかするのが猟兵の力という奴じゃのー」
竹林に向けキャバリアの砲頭が向けられ、榴弾が発射される。
着弾したそれは爆音と閃光を周囲にまき散らすスタングレネード、かぐや姫達もその強烈な光には思わず頭を伏せて隠してしまい動きが停止する。
その隙に突破を図るキャバリア、だが別の場所からわらわらと現れたかぐや姫達が集まって、目立つキャバリアに向け不思議な月光色の光線を放たんとする。
しかし発射前にキャバリアより発射されたレーザーが彼女らの手前の地面を抉り牽制、巻き上げられた土煙が視界を封じる。
キャバリアによる大規模な攻撃、だけれどもそれはすべてかぐや姫を直には狙わない。そのような繊細な演算もメイスンの得意分野である。
――数々の兵器でかぐや姫達を無力化しつつ進むメイスン、けれど周囲の空気が突如変化する。
ふとキャバリアのカメラを空に向ければ彗星の如き炎の尾を残しながら竹林に突っ込んでくる流星、そしてそれによって竹林は宇宙空間へと塗り替えられてしまう。
それは牛姫の仕掛けたユーベルコード、流星群は猟兵達を目掛け次々に突っ込んでくる。
フェアリーの小柄な体ともっと目立つキャバリアの存在でかぐや姫の襲撃を最小限に抑えていたフィロメーラはそんな星々を竹の葉の隙間から見上げた。
「おや、流れ星は勘定に入らない?」
次々に降ってくる流星は、しかしどれも一番星ではない。一つの星以外が流星になれば、空に残ったそれが一番星とでもいうかのように次々に流れ星は降り注ぐ。
それがフィロメーラには面白くない。彼女も流星、だけれどもタダの流星ではないのだから。
スイッチを入れるようにフィロメーラはユーベルコードを起動。
「世界の果てまでかっ飛ばすぞー!」
無限の星の世界、そこで生活するのならば役立つ【星界式瞬間加速法】を発動し、彼女は真横に空中を蹴って一気に加速する。
空気を踏むように加速、加速、また加速。残像を残しながら竹林の迷宮を超速度ですり抜ける彼女は一味違う流れ星だ。
かぐや姫も月、すなわち宇宙の住人。同じく宇宙っ子としてシンパシーを感じつつ、けれど地球の竹で生まれたばかりの彼女らよりもフィロメーラはずっと宇宙空間の感覚に慣れている。
追いかけるかぐや姫と空よりフェアリーを狙い落ちてくる流星群。しかしその動きはあくまで直線的。
僅かな隙間を勘で見出しするりとすり抜けて、ばちばち当たる竹の葉や多少の無茶も輝くオーラに弾きながら竹林で速度も殆ど落とさず飛ぶフィロメーラ。
追いかける者に影すら踏ませぬ速度で彼女は全てを振り切り術の根源へと向かっていく。
そしてキャバリアを駆るメイスンは故郷によく似た感覚にも動じずユーベルコードを準備していた。
正直なところキャバリアでも十分活動できるが、よりこの空間に見合ったものが存在している。
降り注ぐ流星群がメイスンに命中する直前にユーベルコードが起動。すると彼女の頭上に大型宇宙戦艦が特殊召喚され、空より降り注いできた流星群を防ぐ傘となった。
「電脳魔術もここまでやれば立派な兵器よのー」
電脳魔術製のそれの名は暁、それに乗り込みつつメイスンは真上に浮上させていく。
流石のかぐや姫達も宇宙戦艦――宇宙空間に特に適応したそれを生身で追う事はできない。
そしてメイスンが悠々と竹林を見下ろし牛姫を探知、かぐや姫達に周囲を守らせながら竹林の一角に潜む牛姫の姿を捉える事に成功する。
本来はミサイルなどによる広域破壊も得意なこの戦艦だが、それではかぐや姫たちまで巻き込んでしまう。だから範囲の小さい火器で精密射撃を行おうとメイスンは演算していく。
と、そこに向かう一筋の流れ星も同時に確認。戦艦が牛姫に照準を合わせるそのわずかな間に流星のフェアリーは牛姫に向けて魔力を全開にしてドロップキックの体勢で突っ込んでいった。
牛姫もかぐや姫もその流れ星の接近を認識すらできていない――気づいた時には既に牛姫の腹部にキックがめり込んでいた。
そしてフェアリーと牛姫の体格差などないかのように、オブリビオンの体は竹の群れを数本へし折りながら吹っ飛んでいく。
その一撃でかぐや姫と牛姫は分断、メイスンはそのチャンスを逃さず牛姫に照準を絞り、夜明けの如き輝きの光線の群を解き放つ。
狙いを絞ったビーム機銃、加えてメイスン自身が制御するプラズマレーザー砲は牛姫の星々の空間の如き体を次々に貫き、耐えきれなくなった骸魂がするりと抜け出した。
そして牛姫の姿は元のくだんの妖怪の姿に戻り地に倒れ伏して、かぐや姫たちも正気を取り戻したように周囲をきょろきょろと見まわしていた。
――こうして悪しき凶星は猟兵達に吹き飛ばされ、幽世の妖怪とかぐや姫たちは無事救出された。
だがまだ戦いは終わらない。猟兵達は世界を救うため次なる戦場へと向かうのであった。
大成功
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