大祓百鬼夜行⑫〜それはそれとして大根を食え!!~
●開戦、大祓百鬼夜行
「にゃーん!カクリヨファンタズムでせんそーだよう!おねがい、ようかいさんたちをたすけてにゃーん!」
エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)が急いだ様子で招集に応じた猟兵たちの元へやってきた。
――カクリヨファンタズムの妖怪からも忘れ去られし究極の妖怪、『大祓骸魂』。
UDCアースの大いなる邪神が一柱でもあるそれが蘇り、UDCアースの破壊を目論んでいるという。
カクリヨファンタズムはUDCアースと骸の海の狭間に位置する世界であり、UDCアースが滅びればカクリヨファンタズムも必然的に滅んでしまう。
二つの世界を護るには大祓骸魂を撃破するより他にないが、大祓骸魂は何者からも忘れられた存在であるが故に、猟兵であってすら姿を視認することができないというのは猟兵諸君も予兆に見た光景でご存知だろう。
……そして。
それを阻止する為、大祓骸魂を覚えていた一部の妖怪たちが猟兵たちの道を切り開く為、敢えて自ら骸魂をその身に取り込み、大祓骸魂の軍門に下り百鬼夜行を形成することで猟兵たちに大祓骸魂を認識させようとしていることも。
「せかいをまもれても、ようかいさんたちがいなくなっちゃうのはめーだよう!
でもね、ようかいさんたちのきもちもむげにしちゃめーなんだもんね。だから、ぼくたちはようかいさんたちがすぐにもどれるように、ぱぱーってせんそーをおわらせなきゃ!だからみんなにてつだってほしいにゃーん!」
カクリヨファンタズムの住民は個性的――個性的すぎて最早フリーダムの領域ではあったりはするが――だが気さくで人の良い妖怪たちばかりである。
猟兵たちは皆、彼らが自分たちにたくさん良くしてくれたことを覚えている。エインセルももちろんその一人である。
故に、彼らの気持ちに報いる為にもこの戦争は何としてでも勝たねばならない。
幸い、オブリビオンの成り立ちそのものは従来のカクリヨファンタズムのそれと変わらないおかげで骸魂を剥がせば元通りになるようだ。
「それでね、みんなには『よーかいだんち』ってところにいってきてほしいにゃーん」
エインセルが予知したのはカクリヨファンタズムの果てにある「妖怪団地」。
そこには昔から団地の地形を利用した「団地武装団」という集団が住んでいる。
二つの世界を救う為に彼らは自ら骸魂を取り込み、そこで猟兵たちが訪れるのを待っているという。
全力で戦い、自ら倒されることで大祓骸魂の力を弱めることで猟兵たちに貢献しようとしているそうだ。
故に、彼らの気持ちを汲み取り戦う為に迷路のように入り組んだ妖怪団地へ向かって欲しいそうだ。
……と、ここまでなら普通の戦争っぽい雰囲気だったのだが次のエインセルの一言で台無しになるのである。
「だんちぶそーだんのようかいさんたちね、いまだいこんになってあっちこっちにうまってるから、きをつけてほしいにゃーん」
ぽかーん。猟兵たちの口が開いた。
「なんかね、むくろだまをとりこんだらようかいさんたちがだいこんのオブリビオンになっちゃったの。そのせいかわかんにゃいけど、だんちもあっちこっちにだいこんがたっくさんはえてて、めいろのかべもほとんどだいこんでできてるんだ!」
何 故 大 根 ?
と思っただろうが残念ながらカクリヨファンタズムなので諦めるしかないとすぐに悟った猟兵もいればそうじゃない猟兵もいるだろう。
エインセルがその反応を見たらどうしたの?と首を傾げるだろうが、きっとまだ純真な子猫だからに他ならないので参考にしてはいけない。
「だいこんオブリビオンはじぶんたちをおいしくたべろー!ってかんじでこうげきしてくるんだって。
だから、だいこんオブリビオンがすごーい!っておもうぐらいのだいこんのおりょうりをつくったり、だいこんのおはなしをしたらそれだけでつよーいこうげきになるかもしれないねえ。
もちろん、ふつーにたたかってもだいじょうぶだから、みんなのやりかたでようかいさんたちにぶつかってほしいにゃーん!」
戦争になっても何だかんだカクリヨファンタズムはカクリヨファンタズムなのか……そう思わずにはいられない猟兵たちであったが、戦争が始まった以上はやるしかない。
いざ征かん、大祓百鬼夜行!
御巫咲絢
注意:このシナリオは戦争シナリオですが大分トンチキ気味です。
こんにちはこんばんはあるいはおはようございます、初めましての方は初めまして御巫咲絢です。
当シナリオのご閲覧誠にありがとうございます!御巫のシナリオが初の方はお手数ですがMSページを一度ご一読の上で改めて概要にお目通しをお願い致します。
5月だ!GWだ!戦争だ!!!始まりました大祓百鬼夜行、シナリオフレーム開いたら大根が目に飛び込んできたので一本お送りします。
大根を!!!食べろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!というノリです。
普段のカクリヨでの戦いと同じく、オブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」
●シナリオについて
当シナリオは「戦争シナリオ」です。一章で完結する特殊なシナリオとなっています。
このシナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。
●プレイングボーナス
迷宮のように改造された団地を利用して戦う。
またこのシナリオにつき、追加プレイングボーナスとして「敵がうなる程の大根知識、あるいは大根料理を披露する」を提示させて頂きます。
みんなの知ってる大根話を好きなだけ投げてください()。
●プレイング受付について
『5/3(月)8:31』から受付を開始し、締切は「クリアに必要な🔵の数に達するまで」とさせて頂きます。
最低でも6名様はご案内させて頂きますが、それ以降は不採用になる場合もありますので予めご了承の上プレイングをご投函頂きますようお願い致します。
それでは皆様のプレイングをお待ち致しております!
第1章 集団戦
『大根』
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POW : 良いから大根を食え
戦闘力のない、レベル×1体の【陽気な大根達】を召喚する。応援や助言、技能「【料理】」を使った支援をしてくれる。
SPD : 大根食ってれば問題ないって
【大根料理】を給仕している間、戦場にいる大根料理を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 大根とは以下略
自身が戦闘不能となる事で、【自分達を食べた】敵1体に大ダメージを与える。【大根の効能】を語ると更にダメージ増。
イラスト:塒ひぷの
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
大根、その学名はRaphanus sativus var. hortensis。カッコいいな?
とにかくそれはアブラナ科ダイコン属の越年草で春の七草の一つと言われる「すずしろ」でもある。
UDCアースにおいては主に日本、中国、ヨーロッパなど各地で主に肥大した根("大根"なだけに)の方を食べるし葉っぱもおいしい。種から油も取れる。
新鮮な大根の葉を細かく切って鰹節とじゃこを入れて醤油で和えた奴とかご飯にぴったりで最高だと思う人もいるだろう。
――で、まあ。そんな大根が団地の壁やらにあちこち生えてるんだからまあ大根の葉っぱでぼーぼーとしてんだろうと猟兵たちは思ったのだが甘かった。
……あの、根っこの部分が壁になってません??というか飛び出てません?
という感じに「葉っぱの隙間からは通らせねえよ??」と言いたげに大根のその白い部分――地域によっては表面真っ黒なものもあるらしいが余談である――大根の白い部分が突き抜けており。
「(ふっ、こうして自我を保っていられるのもいつまでだろうかね……)」
団地武装団の妖怪だった大根オブリビオンは逆に清々しいまでにわかりやすかった。
何せ壁になっている大根と比べて小さいし根っこの部分(つまり体)はしっかりと地中に埋まっているので。
「(だが自我を失えども、戦って大祓骸魂の力を削れりゃ万々歳だ……頼みましたぜ猟兵さん……!)」
ああ、おでんでくったくたに煮込まれた出汁たっぷりの大根が食べてえなあ――大根になった身でそんなことを思いながら、妖怪たちは猟兵の訪れを待っていた。
レナータ・バルダーヌ
まさかお料理対決を挑まれるとは……。
わたしがゴボウのオラトリオだと知ってのことでしょうか?
この勝負、同じ根菜として逃げるわけにはいきません!
テーマは「煮物」ですね。
【愉快なゴボウさんディナー!】で、謎のゴボウ生物の亜種『愉快なゴボウさん』たちの力も借り、鶏肉とゴボウで「鶏ごぼう」を作ります。
しかし折角の大根さんとの勝負、どうにか大根も使いたいところ。
醤油は薄めにして、大根おろしで味を絡めるのはどうでしょう?
勝っても負けても、美味しいお料理の後に言葉はひとつです。
ごちそうさまでした!
ところでゴボウさん、これが話に聞くハウス栽培ですか?
『こいつら顔は生っ白いが、温室育ちにあの料理の味は出せないぜ』
アルテミス・カンシオーネ
ワオ!思った以上に大根がたくさんデース!
大根料理と言えば日本に武者修行に行ったときを思い出しますネー…。
屋台のおでん、居酒屋のブリ大根、切り干し、サバ缶におろし大根とソイソースをぶち込んだのも美味しかったデスが…。
今日は新天地に挑戦デース!
まずは大根を指定UCの応用で素早くキャッチしてー…、皮をむいて適当な大きさにカットしたら私の手製タコスにぶち込みマース!
上からたっぷりのチリソースをかければ激ウマカクリヨタコスの完成デース!
ウーン、この食感と味はなかなかクセになりそうデース!次は千切りやおろしにしてトライしてみましょう!
まだまだタコスは沢山ありますヨー!あ、そこの猟兵さんもお一つどうデスか?
アイン・セラフィナイト
見渡す限りの大根畑!……じゃなくて大根団地!
うんうん、野菜収穫の場を与えてくれたグリモア猟兵さんに感謝だね!(スッ、と明らかに通常の包丁の持ち方とは別の構えで『マイ包丁』準備)
大根って沢山の種類あるんだよねUDCアースの日本じゃ白い物が一般的だけどそれに対してラディッシュみたいな赤いのも有名でさでも日本以外だと真っ黒いものと中まで赤いものとかもあるんだ最近じゃ品種改良でカラフルなゲーミング大根げふんげふんを生産してる農家もいるらしいんだよね凄いよね大根栄養素もさることながら調理次第で何にでもなれるまさに万能食材おでん煮物にぶり大根それに焼き魚におr(マイ包丁に『属性攻撃』の魔力を纏わせて特攻)
中小路・楓椛
アドリブ連携歓迎
WIZ
食べ物を粗末にすると「化けて出る」とは何処の世界の戒めだったでしょうか?
幸い私は【料理】ができますのでこれまで辿った世界の根菜料理をアレンジして定番から珍奇なものまで一通り再現してみましょう――そこな大根のお方、お手伝いをお願いします。
本日の主役が戦闘不能になっている暇があってはいけません(【言いくるめ】)
薬効を期待するのであればあまり加熱しない方が良いのですが、煮物焼き物漬物といった皆様の知る定番料理も大根の魅力を語る上で外せません。
手間が掛かる餡掛け大根や剥き物(飾り切り)の鶴大根も良い機会ですし作ってみましょう。
準備は整いましたか?では、皆様大根を楽しみましょうか。
蒼・霓虹
虹龍の竜神である
わたし達からは縁起物
である大根に纏わる豆知識を
『意味合いは色々あれど
霓虹さんが事前に知り合いから【グルメ知識&情報収集】し作り持ち込んだ【料理】も踏まえて金運に対する縁起物の話を』
大根には人生を安定させる意味や効果があるとされ
人生安定の大切な物として
お金も含み
大根を食べる事で
安定収入が得られるとも
因みに【料理】した大根餃子
塩で揉んで水分を出した
大根の薄い輪切りを片栗粉まぶし
皮代わりにした餃子で
パリっとしませんが具の味が
皮にしっかり染みて
餃子感あって
にゅるっ!こりっ!と
食感も面白いんですし
勧めた後
弱体後UCで骸魂だけ
優しく剥がしましょう
[アドリブ絡み大歓迎]
[『』は彩虹の台詞]
阿瀬川・泰史
大根、いいですねぇ。煮てよし、焼いてよし、生でよし。特に大根おろしには胃腸の働きを助けるし、肝機能向上の効果があるから、酒のつまみに最適なんですよぉ。
ということで、大根おろしをつかったつまみ、いっちょ作ってやりますか。
【枯らし】で大根を手頃な大きさにカットして鬼おろしでおろしていきます。
まずはシンプルに甘酢和え。穀物酢、砂糖、塩と大根おろしを和えて作ります。
次にしらすおろし。大根おろしにしらすを乗せて刻んだ大葉と削り節を散らす。
最後にスープ。切ったニラを油で炒めて、それを大根おろしと醤油を入れた椀に入れて熱湯を注ぎ、生姜のすりおろしを添える。
「どうです? 色々出来ますよぉ」
アドリブ・連携歓迎
陽環・柳火
「大根はおでんがうめえよな。ただ、シャキシャキのサラダにしたりもいいし、バラ肉を巻いて大根のステーキみたいなのにしたのもいいな」
団地をぶっ壊していいならケルビンカードで弾幕をぶっ放すが、そーゆーのを避けたいなら護符装束を分解して作った護符に【破魔】の力を込めて一体一体に飛ばして攻撃。
それで飛び出してきたなら炎の【属性攻撃】【クイックドロウ】で居合い斬り
数が多いなら【全力魔法】の大火力で広範囲に斬撃を飛ばす感じで。
魔力切れを起こしたら、UCで魔力を回復しつつ自己強化。食べるのはにゃんジュールでもいいが、折角だから敵が出した大根料理でも食うか。大根妖怪の出した大根だ。屍肉みたいなもんだろ
待鳥・鎬
危険を顧みず、か
純粋な子が多いよね、カクリヨって
迷路の中も宝探し感覚で、第六感のままに大根捜索
遠距離からUCで熱を通して、骸魂が抜けたら治癒に切り替え
手荒でごめんよっ
……というか、壁は戻るのかな
纏めて焼いちゃった方が良い?
大根といえば、そう、優れた効能で知られるお野菜!
抗炎症鎮咳作用があって大根飴とかも有名だけど、生で頂けば消化酵素と抗菌作用で胃腸の強い味方なのでお刺身のつまとしても利用されますし、あ、でも冷えが気になる人は火を通した方が良いですね。ふろふき大根とか美味しい。そうそう、葉も立派な緑黄色野菜だけど浴湯料としても優秀で、体が温まって冷えによく効くんだよ!それから……
え、もう良い?
●大根団地の超長い一日
「ワオ!思った以上に大根がたくさんデース!」
「見渡す限りの大根畑!……じゃなくて大根団地……!」
団地を覆う圧倒的大根の数にアルテミス・カンシオーネ(ファイティングクイーン・アルテミス・f32212)とアイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)がほぼ同時に声を上げた。
見渡す限り大根、大根、大根。団地のアパートの中もコンクリートを突き抜けて大根が生えている始末。カオスなんてもんじゃねえな!
「大根はおでんがうめえよな。ただ、シャキシャキのサラダにしたりもいいし、バラ肉を巻いて大根のステーキみたいなのにしたのもいいな」
「いいですねぇ。煮てよし、焼いてよし、生でよし。特に大根おろしには胃腸の働きを助けるし、肝機能向上の効果があるから酒のつまみに最適なんですよぉ」
おっと、陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)と阿瀬川・泰史(酒と杯さえあればよし・f02245)による大根料理談義が早くも始まった!
「大根料理と言えば日本に武者修行に行った時を思い出しますネー……屋台のおでん、居酒屋のぶり大根、切り干し、サバ缶におろし大根とソイソースをぶち込んだのも美味しかったデス……」
アルテミスも加わって飯テロ談義は加速する。早くもみんな食事モードになりつつあるような気がするが、自分たちを食べろと言ってくるらしいので恐らくこの在り方は正しい。
そしてその話を聞きながらアインがうんうんと頷きながらマイ包丁を用意している――がその持ち方明らかに料理する為じゃないですね?狩るつもりですね??
「残念ですが早速料理というワケにはいきやせんぜ!!」
とそこへオブリビオンが飛び出してきた!
壁と化した太長い大根とは違ってぷっくりふくよかなチャーミング(?)な大根の姿をした彼らが団地武装団の妖怪だった者の現在の姿だろう。
「俺らも団地武装団と呼ばれた誇り高き妖怪!まずはこの見渡す限りの大根迷路団地の中に隠れた俺たち大根オブリビオンを根こそぎ探して、ついでに大根も刈ってもらいますぜ!
それから俺らを唸らせる大根料理を作って頂きやしょうか!!大根料理は俺たちも得意とするところですからねェ、そう簡単に味に唸りはしやせんよ!!」
きっちりルール作って説明する辺り礼儀正しい大根オブリビオンである。元の妖怪の意識が残っているのだろうか?
「まさかお料理対決を挑まれるとは……わたしがゴボウのオラトリオだと知ってのことでしょうか……?いいでしょう。この勝負、同じ根菜として逃げるワケにはいきません!」
その宣戦布告に真っ向から向かったのはレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)。本人が言う通りゴボウのオラトリオ、即ち彼女もまた根菜。
ゴボウと大根、科や属は違えど同じ根菜同士ならば己が誇りをかけてぶつかるのみ!
「そう言うと思いやしたぜ!真剣勝負といきやしょう!勝負なら怪我の一つや二つはつきもの、容赦なくやらせてもらいますよォ!!!」
そう言い残して大根オブリビオンは地面にすぽっと潜ってどこかに消えていく。
言葉には一切の迷いがなく、自らがどうなろうとも本懐の為に動くという意志が感じ取れた。
「危険を顧みず……純粋な子が多いですよね、カクリヨって」
待鳥・鎬(町の便利屋さん・f25865)が呟いた。その気持ちは他の猟兵たちもきっと同じだろう。
故に戦った上でおいしく頂いて、骸魂を剥がさなければいけない。
だが戦いも料理もどちらもこなすとなると全員が同じ行動に出るのはあまり良いとは言えないのではないか、そう思った中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)が口を開く。
「ところで……料理するとなると下拵えの準備も必要かと思うのですが」
「ああ、人数がいるとなるとその分料理しなきゃいけない数も増えますし……」
『大根を確保しにいく上で骸魂を剥がせそうなら剥がして一緒に食べてもらうのも良さそうですよね』
蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)とその相棒、猟機人・彩虹も同意する。
『でも戦う時も多少は料理を作っておいた方がいい気もしますね』
「なら私は大根確保側に向かいまショウカー!私の手製タコスならその場でぱぱっと仕上げられますからネー!」
「僕も収穫する側に回るね。これだけたくさんあるなら持って帰れる分もたくさんあるし……」
というワケで、収穫班と調理班に分かれていざ真剣勝負である。真剣勝負です。誰が何と言おうと。誰が何と言おうと!!
●
団地と銘打たれているが最早迷路としか言い様がない大根団地。
それを己が第六感のままに進んでいくのは鎬、宝物探しのような気分でさくさくと先へ進んでいく。
大根オブリビオンは壁になっている大根とは違い根元もしっかり土、あるいはコンクリートの中である。尚地面に埋まっているか壁に埋まっているかはどちらも、らしい。
ふとその第六感で気配を察知したのか、鎬はすぐとなりの壁に触れた。元々の団地の姿、その一部であるコンクリート壁から微かに振動が伝わってくる……鎬は直感的に理解した。
これは大根が顔を出す為に今せっせせっせと壁から出ようとしていると。ならばそれより前に戻せるのなら戻せるに越したことはない。
「杞柳、"星降る夜の思い出話を"――」
使い魔である有翼の蛇『杞柳』の翼が温かい光を放ち始め、壁の向こうへと熱が伝わり始める。
【光雨】による敵を灼く聖なる光の熱は鎬から半径88m以内に存在する全ての大根オブリビオンを浄化し、骸魂を剥がそうと試みたのだ。
「あちちっちちぢっぢっぢっぢっぢ!?!?」
壁の向こう側から聴こえる程の悲鳴が上がったかと思うと、何でか尻に火がついたかのように慌てて大根オブリビオンが何匹も駆けてきた。
視認したらしたで今度は光が生み出す熱ではなく光そのものが大根オブリビオンを灼き、骸魂が我慢ならなくなったのか口から飛び出て消えていき、元の妖怪に戻る。
その姿は 蕪 であった。
「(なる程、蕪から大根に……)手荒でごめんよっ」
「ああいえいえ、気になさねえでくだせえ。流石猟兵さんですぜ……あちち」
元の妖怪に戻れば【光雨】の光は敵を浄化に焚べる光から、杞柳の加護が込められた清浄なる光へと変わる。
壁から抜け出ようとしたところに熱が加わったのは確かなようだと、主に光が治療していく部分を見て鎬は悟った。
「……というか、元の妖怪に戻したはいいけど壁は戻るのかな?」
「ああ、そこは気にしなくて大丈夫っす。元々定期的に埋まる奴がいたんで……」
「いたんだ……」
元から壁に埋まって奇襲をしかけるとかはよくしていたらしいので、気にしなくていいらしい。
「いやあ、まさか蕪から大根になるなんて。大根うまいから良く食ってたんですけどそのせいですかね?」
「大根……大根と言えばそう、優れた効能で知られるお野菜だよね!」
「お、猟兵さんもご存知でしたか。そうそう、咳に良くって――」
「抗炎症鎮咳作用があって大根飴とかも有名だけど、生で頂けば消化酵素と抗菌作用で胃腸の強い味方なのでお刺身のつまとしても利用されますし、あ、でも冷えが気になる人は火を通した方が良いですね」
「そ、そうそう!ふろふき大根とかうまいっすよね!」
「ふろふき大根とかは本当においしい。そうそう、葉も立派な緑黄色野菜だけど浴湯料としても優秀で、体が温まって冷えによく効くんだよ!」
「」
「それから……」
「あ、も、もう大丈夫っす!十分わかりました!!」
「え、もう良い?」
流石闇医者、大根のもたらす健康面での恩恵を完璧に熟知している。
蕪妖怪が知識で出る幕はなかったようだ……
「ふっ、俺もまだまだ勉強が足りねえな……猟兵さん、後でまたちょっと色々聞いてもいいです?」
「私が知ってるのでよければ構いませんよ?」
この後蕪妖怪は鎬からめちゃくちゃ大根知識を教わった。
◆
「へへへ!こっから先は通さないぜ猟兵さん共よォ!!」
一方別方向から攻め入ったアルテミスと柳火を待っていたのはまた新たな大根オブリビオンの集団――と、その下僕であろう、ユーベルコードで召喚した陽気な大根。
数は軽く百は少なくとも超えているそのどれもが「ヘイヘイヘーイ!」とか言って何でか小躍りしている。陽気なだけにサンバを踊る大根だろうか。
「ワオ、随分大人数で歓迎してくれますネー!」
「こっから先を通りたければ俺たちを倒していくんだなあ!!
おっと、団地ごとぶっ壊すのは勘弁してくれよ、団地に住む連中の3.14159265358979323846264338327950288(以下略)割の妖怪たちが困っちまうぜ!」
「長ェよ何かの呪文かよ!!」
いいえ、円周率です。
団地諸共に攻撃して良いならケルビンカードで弾幕をぶっ放そうと思っていた柳火、釘を刺されたのでその思考はそっとしまっておくことにした。
それならそれで各個撃破をしていけば良いだけのことであるので、自らの護符装束を分解してその一枚一枚に【破魔】の力を込めて飛ばす。
大根オブリビオンたちはそれをスコップでいなす、地中に潜って凌ぐなどあらゆる方法で回避、そして負けじと抵抗!
護符の攻撃が飛んでくるとしても怖じけずスコップを振り上げる!
「上等だ、焼き大根にしてやるぜ!!」
それに反撃するように薙刀に炎を纏わせ振り抜く柳火!
薙刀とスコップの激突する音がけたたましく響く!腕力はほぼ同等といったところ、魔力を絡ませた差で柳火が若干押しているという戦況。
だが相手は団地武装"団"、集団戦はお手の物だ。
陽気な大根が料理を作りながら応援する中、他の大根が身動き取れぬと見て柳火に一斉に遅いかかろうとする――!
「はっ、そうくるのぐらいお見通しなんだよッ!!」
目の前で鍔迫り合いを繰り広げる大根の腹――腹どこ?とにかくその辺りを思い切り蹴って無理やり大根オブリビオンを引き剥がし、柳火は魔力を解放。
最高火力の斬撃が一気に大根オブリビオンの骸魂を焼き払い、妖怪たちの体から追い出していく!
攻撃を受けて戦闘不能になった大根オブリビオンは骸魂が剥がれてただの蕪妖怪へと戻り、その場できゅぅ……と気を失っている。
「数で攻めてもものともしない……っ!ならば手製料理でくたくたにしてやろうじゃねえか!!」
「ダイコーン!」
陽気な大根たちがものすごい勢いで大根を調理し始める。傍から見たらどう見てもただの共食いであるが気にしてはいけない。
出来上がったのは大根を甘辛い味噌で焼いたシンプルなモノだ。
「さあ、食うがいいぜ!!」
「ほう?せっかくだから食うか」
何の疑いもなく柳火はそれを受け取った。大根オブリビオンはニヤリと笑う。
それを食べた後に自分がやられる際に【大根とは以下略】を使えば大打撃を与えられる。つまり逆転ができる――と、期待していたのだが。
「お、こいつはうめえな。味噌がいい感じに利いてるぜ。いいエネルギーチャージができそうだ!」
何と、柳火のユーベルコード【屍塊転燃】による屍肉判定を通ってしまった!
大根妖怪の出した大根、つまり自らを食わせているようなものなので屍肉と変わらない為判定でOKをもらったようですね。
先程の全力の魔法で使い果たした魔力が回復され、柳火は万全の状態に再び戻ったのである。
「ありがとよ、おかげで魔力が無事回復したぜ!」
「そんなのアリか――――――!!!!?」
アリなんです。恨むなら己が身を某パンの顔のヒーローの如く差し出して食べさせた自身を恨むしかない大根オブリビオン。
この後めちゃくちゃ骸魂を剥がされた。
そしてその一方、第二リングの方では大根オブリビオンとアルテミスが睨み合っている。
「さあ!俺たちを美味しく料理できるかなァ!?」
「やってみせマショウ!今日は新天地に挑戦デース!」
アルテミスと大根オブリビオン、どちらも動かない!
互いに出方を伺っている様子だ、果たしてどちらが先に出――おおっとアルテミスが飛び出した!【アルテミスの首飾り(チョーカー・オブ・アルテミス)】が早くも炸裂ーッ!
陽気な大根を素早く手掴みだーッ!!アルテミス、その皮を容赦なくむいていく!そして適当な大きさにカットしていくッ!!
解説さんこの状況をどう見ますか!「新天地挑戦に相応しい革新的な料理を作ろうとしていますね!これは完成品に期待です!」
おおーっとォ!!ここでアルテミスが取り出したのは手製タコス!手製タコスだ!!
アルテミス、刻んだ大根を大胆にタコスにぶち込むッ!!そしてチリソースを取り出してタコスに盛大にぶっかけていくッッ!!!
「激ウマカクリヨタコスの完成デース!!」
「お、おおおおおおお!?!?」
完成―――――ッ!!アルテミスの新天地挑戦料理激ウマカクリヨタコスの完成ですッッ!!
アルテミス、早速それを一口頬張った!
新鮮な大根の噛みごたえ、含まれた水分がチリソースの辛味といい感じに噛み合い、まさに激ウマな味と心地よい食感口の中いっぱいに広がっていく!
「ウーン、この触感と味はなかなかクセになりそうデース!」
「な、何だって!?俺も一つもらっていいか!?」
「もちろんデース!私は次は千切りやおろしにしてトライしてみましょう!」
大根オブリビオンもアルテミスの激ウマカクリヨタコスに食いついた!おもむろに一口頬張り咀嚼、呑み込んだ後にまた一口、最早無心にがっついている!
「あ、そこの猟兵さんもお一つどうデスカ?」
「お、じゃあもらうわ」
全力魔法を放っては大根を喰らいを繰り返していた柳火、いくら食べてもお腹は空くのでアルテミスからありがたくカクリヨタコスを受け取って食べた。
もちろん、元は大根オブリビオンの出した大根なのでこれも【屍塊転燃】の屍肉判定を通り再び魔力が全快したのであった。
◆
一方またまた別地点。最早ここだけはただの大根畑と行っても過言ではないぐらいに大根が並んでいる。
「ここだけ本当に見渡す限りの大根畑……!」
最初訪れた時団地と言い直したアインだが、ここに限っては言い直す必要はない程に言い逃れができないただの大根畑である。団地なのに。
「うんうん……野菜収穫の場を与えてくれたグリモア猟兵さんに感謝だね!」
先程と同じようにマイ包丁を明らかに従来とは違う構えで握りしめる。
その構えはまさに獲物を狩る――否、大根を刈る為の構え。たくさんの大根を余すことなく調理する為に刈り取ろうという気迫がアインから溢れていた。
精霊術士なのに前衛的行動をするのかと言われるとそもそも精霊術士だからって前衛しないワケがないので問題ありませんね。
「きましたか。ここは我ら"団地武装団インテリ班"のテリトリーと知って」
唐突に声が響き渡ったかと思うと、アインの目の前に大根オブリビオンたち――何かみんなメガネかけてるか本持ってる――が出現。
「ここにきたということは、猟兵さんはご自身の大根知識にさぞご自信がお有りのようですね?ならばこの大量の我々大根を捌きながらその知識を口にすることも問題はないでしょう!」
「え、同時にする前提……???」
「さあ、見せてください猟兵さん。貴方の大根の知識!そして華麗な収穫捌きを!!私たちはそれを高みの見物をして見守っていましょう!!」
「いやあの、両方同時にやる前提なの??……うーん、やるしかないか……!」
アインは覚悟を固め、風の精霊シルフの力を借り受けるべく精霊術式を展開。
「"逆巻く波濤、拒絶の大界、翠嵐の谷に斜光が満ちる"―――!……よし!」
ユーベルコード【悪意を排せ、転変の祖よ(シルフ・リジェクト)】によりあらゆる攻撃を受け流す絶対防壁と化す風を纏うマイ包丁を手にアインは迷わず特攻した。
今回相手が攻撃してくるのかは怪しいのだが、空気抵抗等のあらゆる要素も風の力で受け流せてしまうとしたらどうなる?
知らんのか、ものすごい勢いで大根が刈り取られていくんだよ!!
「大根ってたくさんの種類あるんだよねUDCアースの日本じゃ白い物が一般的だけどそれに対してラディッシュみたいな赤いのも有名でさでも日本以外だと真っ黒いものと中まで赤いものとかもあるんだ最近じゃ品種改良でカラフルなゲーミング大根げふんげふんを生産してる農家もいるらしいんだよね凄いよね大根栄養素もさることながら調理次第で何にでもなれるまさに万能食材おでん煮物にぶり大根それに焼き魚におろし刺し身のつま切り干し大根に鮭大根も捨てがたいし豚汁やすき焼きに短冊切りにした大根は絶対に欠かせないし食べきれなかったら冷凍保存しておけば二週間から三週間は持つから切って保存しておくと食費節約になるし下味つけて冷凍したらこれも漬物やサラダに使えるし解凍してから煮物にすると味が染み込んで食感も柔らかくなるs」
「なんという早口ィ―――――ッ!!!!!」
息継ぎどこでしてるのかわからない程の高速詠唱じみたアインの大根知識が炸裂!刈り取られると共に大根オブリビオンは大ダメージ!!
因みに黒い大根は主にUDCアースのヨーロッパ地方ではポピュラーな大根らしくあちらでは大根はだいたい黒い方を指すらしいが、もちろんアインはそれも全部知っている。
早口で大根知識をまくしたてるとほぼ変わらぬ速度で唸りを上げる、絶対防風を纏ったマイ包丁!どこからともなく用意した籠に次々入っていく新鮮な大根!
インテリ班は大根の知識では負けぬと称するならば、アインを相手にするべきではなかっただろう。何故なら彼は全智の蒐集者、あらゆる知識を持つ精霊術士。
どんな些細な知識であっても、きっと彼は知っているだろうから。
「私たちの負けです……貴方は、完璧に大根を知り尽くしていた……!!」
「ありがとう……?(まだ知らないのも沢山あると思うんだけどな……)」
知識に終わりはない。知り尽くしていると断言するにはまだ修行が足りないなと思いながらもその称賛の言葉をありがたく受け取るアインであった。
◆
「というワケで、骸魂を剥がせた妖怪さんはこちらに保護してきました」
「大根も無事確保デース!壁になっていた大根を持って帰ってきマシタヨ!」
大量の大根と何人もの骸魂が剥がれた蕪妖怪たちを連れて、鎬、柳火、アルテミス、アインの採集班組が調理班が待つ広場へと戻ってきた。
籠に入った大量の大根に加え、アルテミスの発言通り彼女が壁になっていたハズのどでかい大根を軽々と持っている。
全員が流石に口をぽかんと開けた。普通の大根何本かに加えてこの壁になった大根となると。
「……多くない?」
「妖怪の皆さんも加えるとこれだけ量があった方がいいと思いマース!」
恐ろしいことに今いる蕪妖怪たち――軽く数十は超えているのだが――、まだ団地武装団のほんの一握りだという。
確かにそれだとどでかい大根一本は必要そうだと判断したのは間違いではないだろう。
「これだけ量があるなら、これまで辿った世界の根菜料理をアレンジして、定番から珍奇なものまで一通り再現してみましょう。
――そこな大根のお方、お手伝いをお願いします」
「ギクーッ!!」
楓椛が向けた視線の先には楠の木の木陰から様子を伺っていた大根が数人、いや数十人。多い!
「な、何故俺たちにそれを言うんだい猟兵さん方!勝負を忘れたのかい!?」
「これだけの人数だと僕らだけじゃちょっと時間がかかりすぎてしまいますからねぇ。手伝ってくれるならありがたいですよぉ」
「私もゴボウさんたちを呼んで手伝いをお願いしますが、それでもこの量は相当ですし」
「人手がいてくれると、とても助かります」
「それに何より、本日の主役が戦闘不能になっている暇があってはいけません」
仮に手伝わなかった場合、調理班は楓椛、泰史、レナータと彼女が呼び出したゴボウたち数人(数体?)、霓虹。4人と数体。
それに対して食事をするのはこの団地にいる団地武装団がオブリビオンと化した大根たちと骸魂が剥がれた蕪妖怪たち、そして訪れた猟兵たちである。
そう!圧倒的に!!数が足りない!!!
「ぐぬ……確かに言われてみりゃあそうだ、こんだけの人数にたくさんの大根料理を少人数で振る舞うのは一日じゃ済まねえな……いいだろう!受けようじゃねえか!」
言いくるめは無事成功した。
●猟兵×妖怪○分クッキング~○には任意の数字をどうぞ~
何事もまずは下拵えから。例えどれだけの大根の量があろうとそれは例外ではない。
「よし。ぶった切りますよぉ」
まずはこの壁になっていたどでかい大根を泰史がユーベルコードの力を使ってぱぱっとカット。
包丁が当たればそれだけで他の大根と大差ないサイズにどさどさどさりと崩れて籠の中へ。
他の普通の大根と共に、大根オブリビオンたちと協力して水洗いと皮むきを済ませておく。
「それじゃあ大根おろしを使ったつまみ、いっちょ作ってやりますか」
手頃な大きさにカットした大根をマイ鬼おろしでおろす。
大根の上部を繊維に従って丁寧におろしたそれに穀物酢、砂糖、塩を和える。シンプルイズザベスト、甘酢和え。
次に小皿に盛った大根おろしにしらすを乗せ、刻み大葉と削り節を散らしてしらすおろしである。
さらに甘酢和えに醤油で下味をつけてレンジで軽く加熱してから粗熱を取ったしめじを和えて刻み海苔をかければきのこのおろし和えのできあがりだ。
早くも大根オブリビオンや蕪妖怪たちが溢れ出る唾を飲み始める!
「うおー、めちゃくちゃ酒飲みたくなってくるつまみだぜぇ……!」
「日本酒がたまらなく合うんですよねぇ」
今回は戦争の一環でかつ未成年もいるので酒はもちろん持ってきていないのだが、これが戦争でなければ酒を飲みながら語らうのも悪くないに違いない。
泰史はそれに加えてさらに一品作ることにした。
お椀に大根おろしと醤油を入れておき、そこに油で炒めた刻みニラを入れた後、熱湯を注いで生姜のすりおろしを添えれば野菜の出汁と風味が聞いたスープの完成である。
「どうです?色々できますよぉ」
「うひゃー!こいつぁ胃に優しそうなスープだ……!酒の〆に欲しくなる素晴らしい一品だぜ!!」
「わかります?それは嬉しいですねぇ、きっと一緒にいい酒が飲めますよぉ」
◆
「ずばり、テーマは「煮物」ですね。愉快なゴボウさんたちの力も借りて鶏肉とゴボウで鶏ごぼうを作りますよ!」
レナータのユーベルコード【愉快な(ワンダフル)ゴボウさんディナー!】が発動し、愉快なゴボウさんたちがやってきた!
「すげえっ、大根や蕪だけでなくゴボウの妖怪もいるのか!」
『おいおい、俺らは妖怪じゃないぜ?』
そう、この渋い声で喋る愉快なゴボウさんたちはあくまで謎のゴボウ生物であり妖怪ではない。ここ重要です、テストに出るかはわからないけど。
ゴボウ料理なら彼女とゴボウさんたちにお任せである。
鶏肉は皮と余分な油を取り除き一口大にカットして袋に入れ、すりおろしたにんにくと酒、それぞれ小さじ1を投入し下味を。
皮を向いた乱切りゴボウはラップをかけてレンジで加熱。その後肉は小麦粉をまぶして多めの油で焼き色をつけ、余分な油を拭き取ったらゴボウを投入。
醤油、みりん、砂糖を入れて炒り煮をしていくのだが……
「(せっかくの大根さんとの勝負、どうにか大根も使いたいところ……そうだ、醤油は薄めにして大根おろしで味を絡めるのは?)」
と思い立っておろした大根を加えて改めて炒り煮。愉快なゴボウさんと共に味見をすれば思った通りの味がしてレナータはご機嫌な表情を浮かべた。
後味さっぱり、鶏ごぼうおろしの完成である。
『大根おろしを入れて醤油を薄くすることで、味はしっかりとしつつも後味がしつこくない仕上がりってワケだな。素晴らしいじゃねぇか』
「ふふふ。ゴボウさんたちも手伝ってくれたおかげですよ!勝っても負けても、美味しいお料理の後に言葉はひとつ。お互いに良い料理を出し合ってぶつからないと!」
『全く、言う通りだな』
大根や蕪たちがおいしそうだなあと見ている中、レナータは鶏ごぼうおろしを皿に盛り付けて実食の時を待つ。
◆
「さて、良い機会ですし」
楓椛は包丁をしっかり握り、大根をまずは四角く切る。
幅がまばらだなと感じたら幅を合わせる為に削るように切ってから、包丁――形的にはというよりはデザインカッターのような姿をしている飾り切り専用のものだろう――で大根をとある動物へと変貌させた。
そう、鶴大根である。両の翼を広げた大根の鶴が何羽か皿の上に舞い降りるその姿に、見ている妖怪たち全員が息を呑む。
「すげえ、本当に鶴が舞い降りたみたいだ!!」
「回数を重ねてはいないのであまり自信はありませんでしたが、ご好評頂けたなら何より。
さて……薬効を期待するのであればあまり加熱しない方が良いのですが、煮物焼き物漬物といった皆様の知る定番料理も、大根を語る上で外せません」
手間のかかる料理を作るのにも良い機会だと言って。
乱切りにした皮むき大根を水300ml、和風だし、酒、みりん、しょうゆ大さじ1を混ぜたものと一緒に鍋に入れ、中火で20分程煮込んだ後、大根を一旦取り出しておく。
そこにごま油で色が変わるまで炒めた豚ひき肉を入れてさらに中火で5分煮込む。水溶き片栗粉を加えてとろみがついたら取り出しておいた大根にかけて、先程の鶴大根を皿の端にそっと乗せれば大根のそぼろあんかけ、鶴大根を添えての完成だ。
「さて、これで一品できましたが当然これだけでは足りないでしょうし、まだまだ大根もありますし。
食べ物を粗末にすると「化けて出る」と、何処の世界かは忘れましたがそんな戒めもありますから」
皆でつつける鍋のようなものがあると理想でしょうか、そんなことを言って。
「そこな大根の方、お手伝い頂いても?」
「おう、鍋モノだな?任せろ!」
全員分が完成する頃にはすっかりくたくたに煮込まれて味も染み込んでいるだろう――大根の定番料理の一つ、おでんを大根妖怪と一緒に仕込み。
それが煮込まれる間に楓椛は各世界の大根料理を記憶の限り再現し続けたのであった。
◆
「では、虹龍の竜神であるわたしたちからは縁起物である大根に纏わる豆知識を」
『意味合いは色々あれど、霓虹さんが事前に知り合いから聞いて作り持ち込んだこの料理も踏まえて、金運に対する縁起物の話を』
霓虹はフライパンで自らの持ち込んだ料理が蒸し焼きされる音が響く中、この場にいる蕪妖怪と大根オブリビオンたちに語り始めた。
「大根には人生を安定させる意味や効果があるとされています」
「へぇ!そいつぁ初耳だ」
きっと初耳なのは彼らが忘れ去られたカクリヨの住人だから、そう語られていた話をたまたま忘れているだけかもしれない。
「人生安定の大切な物としてはお金も含み、大根を食べることで安定収入が得られるとも言われています」
「何てこった……ならますます大根を食わねえといけねえじゃねえか!」
「はい。――っと」
丁度火が通り切った頃だろうと火を止めて霓虹はフライパンをそっと開ける。
そこには餃子のようにひき肉とネギとにんにくとを混ぜた具を包んだ薄切り大根の姿があった。
これが霓虹が知人から教えてもらったという大根餃子である。作り方は簡単、塩で揉んで水分を出した薄い輪切りの大根に片栗粉をまぶし餃子の皮代わりにするだけ。
「おおおおおお!?何じゃこりゃ!!」
「大根を皮代わりにした餃子です。パリっとしませんが具の味が皮にしっかり染みて餃子感あって、にゅるっ!こりっ!と食感も面白いんです」
「何てこった、そんな大根の使い方があったなんて……!発想の天才か!?」
感服する大根オブリビオン。最早こんな面白い料理が作れる奴を倒そうとはとても思えないのかそれともこの大根餃子が食べたいのか。
少なくとも彼女の眼前にいる彼らは完全に戦意を喪失しているようだ。
「ああ、早く食いてえ!!」
「はい。是非、みなさんで一緒に頂きましょう」
そう優しく勧めながら、そっとユーベルコード【送り手の彩雲機「イリディセントコントレイル」】で呼び出した飛行機型彩雲で優しく骸魂を剥がして蕪に戻す霓虹であった。
◆
「ハーイ!タコスはまだまだありますヨー!」
「そういや途中でかいわれを見つけたから、大根と合わせてサラダにしてみたんだ」
「はちみつに大根を漬けたシロップにレモン汁と水を混ぜたドリンクも用意してみましたよ。よかったらどうぞ」
「大根ステーキだ!……シンプルに火通しただけとも言うが、味噌つけりゃ絶品なのは変わらねえだろ?」
アルテミス、アイン、鎬、柳火ら採集班の4人からも差し入れが入り、すっかり豪勢な大根ディナーが完成した。
「それでは、勝負の勝敗がどうあれども、食べる前に言葉は一つです!」
\いただきまーす!!/
レナータの合図で全員が手を合わせ、互いに作った大根料理に手をつける。
猟兵たちが大根や蕪たちの手を借りてあの手この手で作った大根料理、そのどれもが舌鼓を打たずにはいられない!
団地武装団の妖怪たちはみんなうまいうまいと、美味しさの前に語彙がすっかり抜け落ちていた。
まだ骸魂がひっついていた妖怪たちもその美味しさに骸魂が浄化され、すっかり元通りの蕪妖怪として大根料理を満喫している様子。
蕪が大根を食べるって共食いでは?という疑問もこの時だけは捨て置こう、腹が減っては何とやらである。
そして何より、世界を救う為に自ら生命を賭す妖怪たちへの感謝と労いにもなったのではないだろうか。そう少しばかり思うのだ。
「では、勝っても負けても美味しいお料理の後に言葉はひとつです」
\ごちそうさまでしたー!!/
ディナーが終わると、団地武装団の妖怪たちは満足げな顔で猟兵たちに感謝を告げた。
「助けてくれてありがとう」「頑張ってくれ、俺たちも頑張るから」――と。
その暖かな言葉を胸に、猟兵たちは団地を後にするだろう。戦争を終わらせ世界を救う決意と共に……
これにて愉快な大根団地武装団との戦いは終幕と相成ったのである。
◆
「……ところでゴボウさん。思ったんですけどこれが話に聞くハウス栽培ですか?」
『こいつら顔は生っ白いが、温室育ちにあの料理の味は出せないぜ』
「なる程……」
大成功
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