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いずれ朽ちる定めとて

#UDCアース #感染型UDC

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#UDCアース
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●夜の繁華街にて
 深夜が近づいても繁華街に煌びやかな光は絶えず、光に群がる人々の波は絶えない。
 明日への活力を得ようとする者、ひと時の享楽に不安を拭おうとする者、虚ろな心を満たす何かを求め彷徨う者……様々な思いを秘め、人々はそこへ集う。夜に輝く光は希望に似た物なのかもしれない。だが光は闇を深くする。
 街灯やネオンで明るく照らされた表通りを一歩外れると、そこには静かな闇が広がっている。闇もまた人の心を惹き付ける。喧騒に疲れた青年が、ふらりと薄暗い路地に踏み込んだ。表通りの熱気も賑わいも嘘のように遠ざかる。青年は近くの電柱に寄り掛かると、ひんやりとした空気を胸いっぱいに吸い込み一息ついた。闇に目が慣れてくると、明滅を繰り返す仄暗い街灯に照らされた路地の奥の方まで朧気に見通すことができた。この一帯は表通りに面した店舗の居住部分のようだが、奥の方は少し古い町並みのようだ。空き家が多いのか、それとも時間帯によるものなのか、明かりの灯った家屋は見当たらない。それに不気味に静まり返っている。
「……なんだか怖いな……」
 静寂に耐え切れず、青年の口から独り言がこぼれる。
「……そろそろ戻るか……」
 そう呟き、寄り掛かっていた電柱から身を離した時だった。
『チリン』
 寂しげな鈴の音が聞こえてギョッとする。
『チリン……チリン……』
 鈴の音は路地のずっと奥から響いてきて、少しずつ近づいてくる。
『ゴクリ』
 自分の唾を飲み下す音が妙に大きく聞こえる。
『チリン……チリ……チリン』
 そう遠くない位置のチカチカと明滅を繰り返し、今にも消えそうな街灯の近くで鈴の音は止まった。恐怖心と好奇心、二つの感情の間で揺れ動く青年の足はその場に根を張ったかのように動かない。
 消えたと思った街灯がチカチカ点滅し、その下を照らし出した。
「……こ、子供……?」
 そこには真っ赤な着物を纏った、長い黒髪の少女が薄汚れた小箱を手に立っていた。少女が小さく首をかしげると、長く伸ばしたもみあげに結わえられた鈴が『チリン』と鳴った。
「お兄さん、迷子?」
「い、いや、人混みに疲れたから、ちょっと休もうと思ってね……」
「ふうん……。……静かな場所が好きなの?」
「嫌いじゃないかな」
 鈴の音の主が少女であり、いくつか言葉を交わしたことで青年にも幾らかの余裕がでてくる。日頃、同年代の友人と過ごすことが多い青年は、年下の少女と話すことに、ちょっとした新鮮さも感じていた。しかし、すぐに疑念が持ち上がってくる。日付が変わろうかという時間帯に、いくら街中とは言え少女がひとりで出歩いていること。そして、その服装の不自然さ。妙に古臭く、まるで時代劇から抜け出してきたような、非現実的な印象を受ける。だがそれよりも現実問題として、今のご時世に、こんな状況を誰かに見られたら変質者として警察に通報されかねない。穏便に済ませるには、速やかに家に帰らせることだ。と、胸中で頷くと少女に帰宅を促すことにした。
「ところで……こんな時間に子供が出歩いていたら、お母さんが心配するよ。もう帰りなよ」
「お母さん、いないから」
「え……わ、悪い……」
 意外な返答に言葉を失ってしまう。これはどうしたらよいのか……。『とりあえず交番に連れていくか? いや、しかし職質は避けられないか……』思案する青年の様子に、少女が微笑んだ。
「ふふ……お兄さん、優しいのね。気に入っちゃった……。私のモノになる?」
「え?」
 少女の発した言葉の意味が理解できず、まじまじとその顔を見つめる。
『ズル……ズルズル……』
 そこへ耳に妙な音が飛び込んでくる。何かを引きずるような音。
「なんだ……この音……」
『この子の後ろから聞こえて……?』青年はじっと少女の後ろの闇に目を凝らした。少女の後ろの闇から、ぬらりと姿を現したのは、亡者、或いは死神と形容すべき者だった。
「!!!」
 青年は言葉にならない声を上げ回れ右をすると、一目散に逃げだした。薄暗い路地裏の向こう、繁華街の光の中へと。

●グリモアベースにて
「UDCアースで厄介なことが起きるのが見えたのじゃ!」
 稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は、猟兵たちを前に話し出した。
「既に存在を知る者も多かろうが『感染型UDC』について説明しておくかの。……感染型UDCとはの、その姿を見た者、噂を広めた者、噂を知った者らすべての者の精神エネルギーを餌に配下を増殖させるのじゃ。つまり噂が広まれば広まる程、多くの餌を与えることになり、どんどん増えてゆく訳じゃな。ゆえに素早く討たねばならぬ相手なのじゃ!」
 つまり、今回の討伐対象はその『感染型UDC』という訳か――。
「うむ。そやつが、とある青年に接触したことが事の発端じゃ。出来得ることならば、接触の折に乗り込めればよかったのじゃが、そう都合よく予知できるものでもなくての……既に彼の青年が数人の友人達に話してしまい、感染型UDCの最初の配下の実体化は止められぬ。じゃが、この時こそ介入の好機じゃ!」
 このタイミングを逃せば被害が出ると……?
「その通りじゃ。……『噂』の精神エネルギーを餌にしたUDCどもが、件の青年の前に姿を現すのは夕刻10時頃、青年が勤め先から自宅へ帰る途中じゃ。ちなみにこの青年、感染型UDCと出会った以降は、暗い道を避けておるようじゃな。運悪く通行人もおるやもしれぬ。状況次第では無関係の者を巻き込まぬように配慮が必要になるやもしれぬな」
 そこまで話した桐葉は少し沈黙すると、ぽつりと呟いた。
「ふむ……まるで廃墟のような路地裏に、赤い着物の少女と亡者のような不気味な存在。その噂が広がりを見せ始めた今、青年の死によって噂に箔付けでもするつもりかのう……。いや、今は考えに耽る時ではないな。急がねばならぬ!」
 そして、予知の内容も含め、一通り話し終えた桐葉は転送の準備に取り掛かる。
「では、今より門を開くのじゃ!」
 桐葉は、グリモアに意識を集中し、空いた手で刀印を結ぶと中空に複雑な紋様を刻んでゆく。ほどなくして紋様は光を帯びて実体化し、別世界へ渡る門を形成する。UDCアースへの道は開かれた。
「UDCの討伐、よろしくお願いするのじゃ! 皆の無事の帰還を祈っておるからの!」
 深々と頭を下げる桐葉を背にして、猟兵たちは門をくぐった。


たまゆら
 お久しぶりです。たまゆらです。
 オープニングを見ていただき、ありがとうございます。
 この度お届けするのは、UDCアースで感染型UDCと戦うシナリオです。

●第一章 集団戦
 オープニングで感染型UDCと遭遇した青年が、噂の拡散により生み出された「精神エネルギー」によって増殖した感染型UDCの手下『廃墟渡り』の襲撃を受けます。
 猟兵たちが駆けつけることができるのは『廃墟渡り』が次々に姿を現し、青年を取り囲もうとする場面以降となります。
 青年の名前は、武藤・颯斗(むとう・はやと)21歳、大学生。勤め先(アルバイト先)はコンビニエンスストアです。
 自宅(アパート)とアルバイト先のコンビニはオープニングに出てきた繁華街を挟んだ位置にあります。繁華街から自宅への間は、薄暗い近道と、遠回りですが街灯が多く夜間帯でもちらほら人通りのある道があり、青年は感染型UDCとの遭遇後は後者を利用しています。

●第二章 冒険
 青年を救出できたなら、感染型UDCと遭遇した場所を聞き出すことができます。ですが、既に現地はUDCの影響により怪奇現象が発生、異界化してしまっており、感染型UDCの所在は不明です。何かしら策を講じて潜伏場所を突き止める必要があります。

●第三章 ボス戦
 潜伏場所を突き止めることができたならば、今回の事件の元凶である感染型UDCとの決戦です。会話が成立する相手ではありますが、戦闘の回避は不可能でしょう。

●お知らせ
 プレイングをお送りいただいたタイミングによっては、たまゆらのスケジュール、執筆速度等の都合により、お返ししてしまうことがあるかもしれません。ご了承頂けますよう、お願い申し上げます。
 その折は、お気持ちにお変わりがございませんでしたら、再度プレイングをお送りいただけると嬉しいです。
 ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『廃墟渡り』

POW   :    廃墟渡りは廃墟を作る
【廃物と残骸と遺物と過去の津波の様な奔流】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    廃墟渡りは廃墟に居る
戦場全体に、【居るだけで心身を苛み侵食する喪失の呪い】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ   :    廃墟渡りは廃墟を孕む
【内に体積しているこの世全ての過去と喪失】から、対象の【戻りたい、還りたい、回帰したい】という願いを叶える【死毒の瘴気】を創造する。[死毒の瘴気]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイグレー・ブルー
アドリブ歓迎
人と人との小さな繋がり…噂話がこういったUDCを強く確実な存在にしてしまうのですね

お護りする方の前に立ち微笑んで、皆様をお護りする騎士のようなものだとご挨拶
(よーし、がんばるであります!)

使用UCによる防御殻で颯人殿や巻き込まれそうな方を囲い、中で月虹蝶々を出し周りを瘴気から浄化し護っていてもらいます。皆様どうかその蝶々と一緒にいてくださいね……!
防御殻を切り離し、廃墟渡りと対峙いたします。髪が少し心許ないですね…これが後ろ髪を引かれるといった感じでしょうか。
槍を構えオーラ防御。わたくし、前に進むしか能がございませんので──参りますっ
ランスチャージで一気に払い退けるであります!



 それらは突如現れた。電柱の影、暗い路地、行き交う人の影から滲み出た闇は、徐々に輪郭を確かなものとし、薄汚れたボロを纏った亡者の形を成した。突然現れた異形の群れに気付いた人々は悲鳴を上げ逃げ惑う。
「なっ……あいつらは……」
 異形の存在――『廃墟渡り』を目にした青年、武藤・颯斗(むとう・はやと)は、否応がなしに先日の夜のことを鮮明に思い出す羽目になった。
「なんなんだ……俺を追ってきてるのか?!」
 颯斗は恐れで体を震わせながら後ずさった。全身から冷や汗が噴き出し、衣服がべっとりと体に纏わりつく。
 初めのうちは、虚ろな表情でゆらゆらと歩き回るだけだった廃墟渡りたちだったが、次第にフードの奥に隠された双眸に禍々しい光を宿し、口角をニヤリと歪ませた。各々手にした凶器を振りかざし、手近な人々に迫る。あわや虐殺劇の幕開けかと思われたその時、不意に柔らかな、それでいて凛とした声が辺りに響き渡った。
「皆さまをお護りする、わたくしだけの-プラネタリア-」
 ふわりと星空が舞い降りた。星空は廃墟渡り達の振り降ろした凶器を間一髪で受け止め、その場に居合わせた人々を包み込んだ。
「た、助かったのか?」
 腕をかざし顔を伏せていた颯斗が恐る恐る顔を上げると、目の前に白銀の槍と白い衣装が印象的な少女の背中があった。
 少女――アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿し・f20814)の星空のような美しい髪が、ユーベルコード【星雲のゆりかご】(ネビュラス・クレイドル)によって人々を護る盾となっていた。
「わたくしの名はアイグレー。皆様をお護りする騎士のようなものであります!」
 怯える人々を勇気づけ、廃墟渡りを引き付けるように、アイグレーは微笑を浮かべ優雅にカーテシーをする。と、アイグレーの周囲にひらひらと月虹の光を翅に映した蝶たちが姿を現した。
「月虹蝶々たち、皆様の護りをより強固にするであります!」
 アイグレーの意思を受け蝶々たちは、アイグレーの髪の防御殻に護られた人々に寄り添うように舞い、廃墟渡りたちが放つ瘴気を浄化する。
「皆様、どうかその蝶々と一緒にいてくださいね……!」
 廃墟渡りたちは、アイグレーの作り出した防御殻を破ろうと幾度となく武器を、或いは怪しげな魔術を放つが防御殻は微塵も揺るがない。防御殻を破ることは困難と理解した廃墟渡りたちは、それを作り出している大元を潰すべしと判断したらしい。アイグレーを見据えじわじわと距離を詰め始める。迫りくる廃墟渡りたちを眺めアイグレーは、ふと思った。『人と人との小さな繋がり……噂話がこういったUDCを強く確実な存在にしてしまうのですね』良い噂ならまだしも、悪い噂はきっと不幸しか生み出さない……。
「だからこそ、喰い止めなければなりませんね」
 攻撃に転じようとして、アイグレーは状況を確認する。人々を護っている防御殻は彼女の髪であるため当然アイグレーと繋がっており、このままでは機動力に難が出てしまう。アイグレーは意を決すと髪を切り離した。切り離しても、この戦いが決着するまでくらいならば、護りが甘くなることはないだろう。
「髪が少し心許ないですね……これが後ろ髪を引かれるといった感じでしょうか。ですがこれで、攻撃に専念できるというものです!」
 手にしたグレイブを軽やかに振り回すと、廃墟渡りたちに向けて穂先を構える。
「わたくし、前に進むしか能がございませんので――参りますっ!」
 アイグレーはその身に護身のオーラを纏うと、廃墟渡りの群れに向かって全力で疾走する。
「ランスチャージで一気に払いのけるであります!」
 アイグレーのグレイブ、Campanulaが廃墟渡りを貫く。砕けぬ意志と意を込めた、蛍袋が宿る透明なカルサイトの穂先に貫かれた廃墟渡りたちは、悲鳴も上げず次々に霧のように消え去る。
「す、すげぇ……」
 アイグレーの奮迅振りを目の当たりにして、颯斗が感嘆する。一方で、アイグレーは小首を傾げる。
「……少し拍子抜けではございますが、噂は噂ということでしょうか? それはそうと……まだまだ、たくさんいますね。よーし、がんばるであります!」
 廃墟渡りの一群をランスチャージの突撃で蹴散らしたアイグレーは、反転すると決意も新たに、新たに出現した群れに向かって突進を開始した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
情報を糧に増殖する感染型UDC、確かに頬っておいたら大惨事になるのは、目に見えてるよね

ここで喰い止めて
ボク達が……終わらせなくちゃ!

●POW
颯人くん伏せてっ!

開幕一番上空からUCの強化状態を解除する餃子弾の『弾幕』を『範囲攻撃』で『誘導弾&オーラ防御』込め

颯人くんを護る様に『乱れ撃ち』でばら蒔き割り込んで彼を護るよ

【ライスフラウア・バンテイジ】を『オーラ防御』込めて『念動力』で操り颯人くん護りつつ攻撃を『第六感』で『見切り』『盾受け&受け流し&カウンター』

掻い潜る廃墟渡りは【尻尾、健脚、シャオロン(麺棒モード)】で『属性攻撃(炎)』込めた『功夫&グラップル』で撃退を

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 いち早く駆け付けた一人の猟兵の奮闘により、颯斗をはじめ、人々に犠牲が出ることは阻止された。だが、廃墟渡りはあちこちの影、闇から次々と姿を現す。いまこうしている間にも噂は広がり、感染型UDCの配下を生み出すための精神エネルギーが増えているということだろうか。
 グリモア猟兵の開いた転送門をくぐり、あえて目的地上空にテレポートしたエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、眼下の状況に眉を曇らせた。
『情報を糧に増殖する感染型UDC……確かに放っておいたら大惨事になるのは、目に見えてるよね』
 いくら倒しても、次から次へと廃墟渡りが出現する状況が長引けば、人々の間に被害が出る可能性が出てくる。
「ここで喰い止めて、ボク達が……終わらせなくちゃ!」
 決意を固めると空を蹴り、降下速度を速める。降下しながらユーベルコード【餃牙調律拳・壊餃飯】(ギョウガチョウリツケン・カイギョウハン)による餃子弾の弾幕射出の準備態勢に入ったエミリロットの体を闘気が駆け巡り、緋色の髪をたなびかせ降下する彼女の姿は、さながら火球の如く夜空を貫く。
「このバケモノどもキリがないじゃないか! このままじゃ皆……」
 オロオロと狼狽える颯斗の虚を突き、数体の廃墟渡りが彼に襲い掛かろうとしている様子を視界に捉えたエミリロットは、降下しながら練り上げた気を突き出した掌底から一気に解き放った。
「颯斗くん伏せて!」
「な、なに?!」
 頭上から響き渡る声に、訳も分からぬまま咄嗟に身を伏せる颯斗。ユーベルコードにより、その姿を瓦礫の津波と化した廃墟渡りの奔流が颯斗を掠め、他の猟兵が施した防御の加護を引きはがすが、雨霰と降り注ぐ餃子弾に打ち砕かれ沈黙する。そこへ別の廃墟渡りが瓦礫の波となり押し寄せる。
「させないっ!」
 エミリロットは、放つ餃子弾に護りのオーラを籠め乱れ撃った。更に気による操作により彼を包み込むように滞空させる。そして廃墟渡りと颯斗の間に着地し割って入ると、髪を靡かせながら軽やかにターンを踏み、目にも留まらぬ速さで帯状の暗器【ライスフラウア・バンテイジ】を振りかざした。――一見、純白の包帯に見えるそれは、米粉の餃子の皮に気を通し包帯状にした彼女の武器の一つである。攻守一体の性能を秘めた帯は所有者の気により自在に操ることができるのだ――。
「ボクから離れないで!」
 颯斗に声をかけ、エミリロットはしっかりと地面を踏みしめる。颯斗は、がくがくと頷き彼女の足元に蹲った。
 次々に押し寄せる瓦礫の津波と化した廃墟渡りの奔流は、時に同胞を巻き込み同士討ちし、或いは取り込み巨大化しながら二人に迫る。エミリロットはライスフラウア・バンテイジを最大限防御壁として展開させると気を送り込み、強靭さを引き上げる。そして激突。
 エミリロットは巨大な廃墟渡りの津波を耐え凌ぎながら、護りの一助として滞空させていた餃子弾を一斉に相手に向かって放った。巨大化した廃墟渡りは良い的であり、全ての餃子弾が命中した。そして着弾と同時に敵の放つ技の特徴を、気によって読み取った。
「餃子の気に敵の性質をイメージさせて……繋ぎ取れ餡!超攻超耐調律餃子弾っ! 竜よ餃子破壊飯の如く砕け……壊餃飯っ!」
 廃墟渡りのユーベルコードの性能を見抜き長所を複写した強烈な一撃が緋炎竜となり放たれた。廃墟渡りとエミリロットの攻撃は拮抗し、力と力のぶつかり合いによる余波が一帯の空気をビリビリと震わせる。
「あああっ! 死にたくないっ! 頑張ってくれーっ!」
 背後で颯斗が絶叫する。
「餃子の拳は絶対に屈しないっ! はぁああああっ!」
 闘志と共に信念を拳に送り込む。緋炎竜がひと際紅く激しく燃え盛り、雷鳴の如き咆哮を上げた。じわりじわりと廃墟渡りを押し戻し……打ち破った。
 緋炎竜は、廃墟渡りを熱したナイフでバターを切るように切り裂いた。
「ふぅ……颯斗さん、大丈夫?」
「あ、ああ! 助かった! ありがとう!」
 颯斗は気遣うエミリロットの手をぎゅっと握り、心底安心したようにぺこぺこ頭を下げる。少し困ったような表情で彼を見つめていたエミリロットの表情が、さっと険しくなった。
「安心するのは、まだ早いよ」
 ずるり……と影から滲み出た新手の廃墟渡りが実体化し、ゆらゆらと歩き出す。
「ボクも全力で守るけれど、とにかく颯斗さんは自分の安全を第一にしてね」
 ライスフラウア・バンテイジに颯斗の守りを委ねると、エミリロットは敵に向かって駆けだす。戦場に餃心拳の嵐が巻き起ころうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラファエラ・エヴァンジェリスタ
たかが噂、されど噂
七十五日を待っていてはこの亡者共が世に溢れる訳か
…迷惑な

UC使用
我が騎士よ、あの美しくないものどもを我が視界から消しておくれ
ついでにその辺の民も護ること
自身は愛馬Tenebrarumに騎乗し、敵から距離を取る
あれらは汚らしいし、怖いので…
自身及び通行人等な保護対象にオーラ防御を展開
貴公らは運が良い…もう案ずることはない

還りたい…か、願ったことがないと言えば嘘になろうが、願い下げだな
…埃じみた空気を吸わせてくれるな
「黒孔雀」を煽げば多少退けられるだろうか
「黒薔薇忌」を振り鳴らしこちらも亡者どもを嗾け吸血させる
良い手を持たぬ
瘴気を吸い続ける前に倒してしまおう
…我が騎士よ、片付けよ


箒星・仄々
竪琴の旋律と共に登場です

拡がる音色が空間へ波紋を広げていくと共に
無機物が魔力へと変換していきます

三魔力のうねりを
颯斗さんを中心とした渦巻きのようにして
周囲の廃墟渡りさんを吹き飛ばします

そのまま魔力の渦を大きく広げて
颯斗さんを守る魔力の結界とします

私達がお助けします
ご安心を!

魔力の渦から迸る炎と風の魔力が
闇を緋や翠に彩りながら
瘴気を吹き飛ばしたり焼却し
そのまま廃墟渡りさんをも滅します

姿も心根も歪まれだまま
この世に留まるのはさぞお辛いでしょう
海へお還しいたしましょう

終幕
廃墟渡りさんへ鎮魂の調べ

今回の体験は颯斗さんのトラウマになりそうです
噂の拡散を防ぐ為にも
記憶消去をUDC組織へ依頼します



 混迷を深める夜の路上を青鹿毛の馬が行く。馬上には黒のドレスを身に着けた淑女の姿があった。彼女の名はラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)と言う。
「たかが噂、されど噂。七十五日を待っていてはこの亡者共が世に溢れる訳か。……迷惑な」
 不運にもこの場に居合わせた人々と、それを護りながら戦う猟兵たちをラファエラは遠目に観察する。彼女は目元をヴェールで覆っており、その表情を窺い知ることはできないが、口調からは苛立ち、そして微かな怖れが感じられた。『あれらは汚らわしいし、怖い……』ラファエラは手綱を引き、愛馬Tenebrarumを廃墟渡りから遠ざかるように馬首を返すと、彼女の騎士に呼びかける。
「あぁ……我が騎士よ……」
 深い嘆きと共に零れたラファエラの言の葉は、ユーベルコード【深き淵への嘆息】(サスピリオルム)の引鉄となり、かつて彼女のために戦い、そして死した騎士の霊を現世へと呼び覚ます。局地的に現れた濃霧は、この世とあの世を繋ぐ道となる。馬の嘶きが響き渡り、霧の中から白馬に跨った白銀の鎧兜で身を固めた騎士が姿を現した。
『……』
 白銀の騎士は、ラファエラに無言で一礼すると、聖なる光を宿した槍を構える。
「我が忠実なる騎士団長パーシヴァル、あの美しくないものどもを我が視界から消しておくれ」
 主の命に再び頷き、パーシヴァルは廃墟渡りたちに槍を向ける。
「パーシヴァル、ついでにその辺の民も護ること、忘れずにな」
 主の念押しを背に受けながら白馬を駆けさせた騎士は、今まさに、民草に掴み掛らんとしていた廃墟渡りに向かって槍を投げつけた。槍は寸分たがわず敵の頭部を貫き壁に縫い付ける。
「我が騎士が如何に優れていようとも、多勢に無勢なのは変わらぬな。多少、手を煩わせずに済むように助力をしようか」
 ラファエラは、パーシヴァルが切り開いた道を進み、道すがら護るべき人々にオーラの護りを施してゆく。
「貴公らは運が良い……もう案ずることはない」
 漆黒の淑女がもたらす護りと、眩い光を宿した槍で、次々と廃墟渡りを討ち取る白銀の騎士の活躍に、劣勢を強いられていた戦況が徐々に好転し始めていた。
『♪戦場を征くは誇り高き漆黒の淑女と、寡黙にして勇敢なる白銀の騎士♪』
 突然、戦場に澄んだ竪琴の旋律に乗せて、朗々とした歌声が響き渡った。
「貴公は……?」
 首をめぐらし、歌の主を見つけたラファエラが問う。歌の主は高貴な衣装を身に着けた二足歩行の黒猫……ケットシーだ。
 ケットシー――箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はラファエラに恭しくお辞儀をすると名を告げた。
「私は箒星・仄々。共にUDCを討ち、人々を護りたく」
「私はラファエラ。よかろう、異存はない。共にこの汚らわしき存在たちを消すとしよう」
 お互いに頷きあうと、仄々は駆けだした。廃墟渡りを着実に仕留め、主の安全を確保しながら進むパーシヴァルを追い抜き、敵を巧みに躱し、襲われている人々から敵の注意をそらしつつ目指すのは、廃墟渡りの密度が高い、この騒ぎの発端であり中心と思われる場所だ。彼が奏でる竪琴の旋律は、走りながらでも乱れることはない。そして、その音色は、周囲の空間へ波紋を広げ無機物を彼の操る魔力へと変換してゆく。
「いました、颯斗さん……!」
 他の猟兵たちの守りが手薄になったのを見計らい、颯斗に敵が殺到しつつあった。
「させませんよ!」
 竪琴を掻き鳴らし、声を張り上げて歌う。仄々が周囲の無機物から変換した魔力が渦を成し、歌声に合わせてその姿を変貌させる。うねる火、風、水、3属性の魔力が、颯斗を中心に彼を護る壁として渦を巻き、周囲の廃墟渡りたちをことごとく吹き飛ばした。だが、廃墟渡りたちも大人しくやられはしない。一部の廃墟渡りたちは、唐突にガクンと脱力し天を仰いだかと思うと、大きく開いた口から、死毒の瘴気を吐き出した。この毒に侵された者は、強く無への回帰……すなわち自らの死を願うという。
「私たちが颯斗さんを、皆さんをお助けします! ご安心を!」
 さらに魔力を注ぎ、魔力の渦を大きく拡げてゆく。
「水は人々を護る盾と成し、風と火は敵を薙ぎ、焼き払う刃といたしましょう!」
 竪琴を激しく掻き鳴らし、周囲のありとありとあらゆる無機質を魔力に変換してゆく。
「貴公、無事だったか。先行したゆえ心配したぞ」
 追いついたラファエラが、仄々の姿を見つけ安堵の吐息を漏らした。パーシヴァルは馬首をめぐらし、二人を護る位置に静かに立ちはだかる。
「敵め、なかなかに面倒なことをしてくれる」
 周囲に立ち込めだした死毒の瘴気に、ラファエラは口元を歪めた。『還りたい……か、願ったことがないと言えば嘘になろうが、願い下げだな』迷いを断つように愛用の洋扇、黒孔雀を取り出すと、口元を覆う。
「……埃じみた空気を吸わせてくれるな」
 空いた手で手振り鈴、黒薔薇忌を掲げると振り鳴らし、澄んだ音色を響かせた。黒薔薇忌は鎮魂を騙る鈴。廃墟渡りを慰撫することはなく、ラファエラの元に忠実なる亡者たちを馳せ参じさせる。
「悔しいが、私は良い手を持たぬ。ならば、瘴気に侵される前にその元を絶つまでだ。征け、亡者ども!」
 ラファエラの号令と同時に、亡者たちが一斉に廃墟渡りに襲い掛かる。血を啜ろうと数体の亡者が敵に牙を立てるが、時を置かずのたうち回り、無へと返ってしまった。
「くっ……」
「ラファエラさん、ここは私に!」
 仄々は、ラファエラを庇う様に前に出ると、溜めに溜めた魔力を一気に魔力の渦に注ぎ込んだ。水の防壁はより強固になり人々を死毒の瘴気から護る。護りはラファエラにも漏れなくもたらされ、彼女を安堵させた。
「姿も心根も歪まれだまま、この世に留まるのはさぞお辛いでしょう。海へお還しいたしましょう」
 仄々のユーベルコード【トリニティー・シンフォニー】による魔力の渦から迸る火と風は、業火と狂風と化し、死毒の瘴気を焼き払い、吹き飛ばす。炎の嵐と化した魔力は、夜の闇を緋に翠に艶やかに彩りながら廃墟渡りたちを巻き込み焼き尽くしてゆく。
 しかし何体かの敵は耐え凌ぎ、また多少ペースが落ちたようには思われるが、散発的に新手が現れる。
 生き残りや新手を、パーシヴァルが次々に切り伏せてゆく。
「もう一息だと思うのですが……」
 敵の層の厚さは予想外だが、手ごたえは感じられた。戦場に到着した時を思えば、敵の増殖速度は確実に落ちている。それより今回の体験が、颯斗や、その他の巻き込まれた人々のトラウマにならないか心配だ。これ以上の噂の拡散の阻止。UDC組織に協力を依頼し、記憶消去も必要かもしれない――。
「しかし今するべきは、蓄えられた精神エネルギーを全て消費させ、廃墟渡りが現れなくすることですね」
「ああ、終わりが見えただけでも十分だ。先が見えぬと気が滅入るからな」
「そうですね。前向きに行きましょう。……彼らへの鎮魂の調べは、まだ先になりそうですね」
「……貴公は優しいのだな……。……我が騎士よ、片付けよ」
 ラファエラは、仄々にちらりと視線を送り呟くと、彼女の騎士に命令を下す。
 仄々は、呟きには答えず【トリニティー・シンフォニー】を人々の護りに集中させると、愛用の細剣カッツェンナーゲルを抜き放った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

冴島・類
※アドリブなど歓迎

都市伝説や怪談なんかの中に、UDCが絡むこともあると言いますが
実害が出てしまうのは止めないとですね

武藤さんや周囲の人へは、倒しますのでご安心をと告げ
己や他の猟兵さん達の声を聞いて、暫しのご辛抱を

人に近い廃墟渡りへ向けなぎ払い放ち、気を引き
相手の放つ術の毒が周囲の人へ届かぬよう
火の精くれあに結界での協力をお願い
すまないが、毒からの護りを任せられるかい?

己は鏡片を周囲に撒き
術以外の直接攻撃も、一般人へ狙いを定まらせぬよう視界を乱し
瓜江と共に隙を見極め踏み込み、斬り倒しに

過ぎた時の海に還るのは君たちだけだ
そんな手で引き摺り込もうとしても
今を生きる人を連れて行かせるわけにはいかない


緋薙・冬香
人の噂も七十五日っていうけど
こんな状態で75日もあったら
UDCアースが滅んじゃうわね

そうならないようにしっかりお仕事しましょうか

【血統覚醒】で戦闘力強化
まずは颯斗さんの安全を確保しないとね
というわけで上空から急降下踵落としを
【魅せる脚】で放ちつつ合流しましょ
「美女は空から降ってくる……なんてね?」
冗談がお気に召すかどうかはさておいて

そこからはダッシュ&スライディングの組み合わせで
とにかく素早く動いて標的を私に引き付ける
基本は後の先を取る作戦
私へ攻撃してくる廃墟渡りたちに
カウンター&なぎ払いの回し蹴りをぶち込んであげる!
「冬の香りがもたらすのは、貴方たちの旅の終わりよ」
1匹だって逃さないわ!



「都市伝説や怪談なんかの中に、UDCが絡むこともあると言いますが、まさしくその状況ですか」
 古風な装束を身に纏い、絡繰人形を従えた青年――冴島・類(公孫樹・f13398)が周囲を見渡し状況を確認する。
「そうねぇ。……けど、人の噂も七十五日っていうけど、こんな状態が75日もあったらUDCアースが滅んじゃうわね」
 風で乱れる漆黒の髪を片手で押さえ、スーツ姿の女性――緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が冗談めかした。しかし先行する4名の猟兵と廃墟渡りの激戦を捉える視線は真剣だ。見たところ一般市民に犠牲者は無い。また、猟兵たちの活躍もあり、形勢は味方優位に傾きつつあるようだが、まだ予断を許さない状況だ。
「さて、滅んじゃわないように、しっかりお仕事しましょうか」
「はい、実害が出てしまうのは止めないとですね」
 二人は示し合わせたかのように同時に走り出すと乱戦の場に飛び込んだ。
「皆さん、この魑魅魍魎は我々が倒しますのでご安心を」
 類は声を張り上げ人々を励ます。かなり離れた場所に重要人物である颯斗を見つけたが、彼の元へは冬香が向かう姿を見た。
『武藤さんは、緋薙さんに任せておけば、心配いらないですね』
 他の猟兵たちも奮戦しているとはいえ、廃墟渡りは至る所にある物影から次々に姿を現し気が抜けない。そうこうしている間にも、状況について行けず呆然とした表情で座り込んだサラリーマン風の中年男性の近くに敵が姿を現した。
「そちらには行かせませんよ」
 類は反射的に短刀【枯れ尾花】を抜き、なぎ払いを放った。その一撃は狙い通りに廃墟渡りの気を引いた。さらにその一体に呼応するように、数体の敵が類に敵意を向けた。彼を優先的に排除すべき存在と認識したのだろう。
『いい傾向ですね。皆僕を狙うといいよ』
 しかし彼に殺到はせず、その場でガクンと脱力すると、天を見上げ大口を開けた。そしてその口から放たれるのは人々を無――すなわち死に誘う【死毒の瘴気】。
「無差別にきますか……ならば。Clare(くれあ)」
 類は小さな友に呼びかけた。
『!』
 小さな友、火の精くれあは、待っていましたとばかりに、彼の隣にキラキラと火の粉を振りまき姿を現した。
「すまないが、毒からの護りを任せられるかい?」
 類の頼みに、くれあはこくこくと頷くと親指を立てて見せた。そして夜空を炎で染めながら舞い踊る。護るべき人々の周りを複雑に飛び回り、その軌跡は人々を毒から護る結界を結ぶ。
「次は牙を折らせていただきましょう。……『其の両目、拝借を』」
 類が言の葉を紡ぐと、彼を中心に百六枚の魔鏡の欠片が召喚された。ユーベルコード【閃輝鏡鳴】(センキキョウメイ)。その魔鏡の欠片は、類に敵意を向ける者の視覚の自由を奪い、映る姿の位置をずらす光を放つ。毒が効かぬならばと、人々に向かって振り上げられた廃墟渡りの凶器は、虚像に振り下ろされ、ことごとくアスファルトを打ち据えた。
「……行くよ、瓜江」
 類が、枯れ尾花を構えなおすと、彼の相棒、絡繰人形の瓜江も刀を抜き構える。
「……!」
 敵の群れの中に踏み入った二人は、敵の隙を的確に見極め、流れるような鮮やかな動きで切り倒してゆく。時に背を預け、虚を突いてきた敵の虚を突き返す。
「過ぎた時の海に還るのは君たちだけだ。そんな手で引き摺り込もうとしても、今を生きる人を連れて行かせるわけにはいかない」
 頭を抱え震える人に凶器を振り下ろそうとしていた廃墟渡りの背に、類は深々と枯れ尾花を突き立てた。

「この辺りの人たちの保護は冴島さんに任せておけば安心ね。颯斗さんは敵のボスに繋がる情報を握る重要人物、まずは彼の安全を確保しないとね」
 冬香は【血統覚醒】で身体能力を引き上げると、道路のアスファルトを蹴り家屋の屋根に飛び乗った。高所から颯斗の位置を再確認すると、家々の屋根を飛び移りながら彼の元へと直行する。
「もう、いい加減にしてくれ……。なんでこんなことに……」
 颯斗は半べそをかきながら、敵から身を隠すように地面を這っていた。だが、前をよく見ずにいたため、運悪く廃墟渡りの足に行き当たってしまった。見上げた颯斗の目に、ニタリと笑う口が映る。
「あ……あぁ……」
 青ざめガタガタと震える颯斗は蛇に睨まれた蛙だ。
「あらあら、いけないわね」
 颯斗の窮地を見た冬香は空高く跳躍すると、ユーベルコード【魅せる脚】(トウカ・ザ・アーツ)によって威力が跳ね上がった急降下踵落としを廃墟渡りの頭頂に叩き込んだ。
「っと、ごめんなさいね!」
 ゴシャッ!っと何とも言えない音を立て、頭を潰された敵が地面に這いつくばった。颯斗は潰れた廃墟渡りと冬香を交互に眺め、口をパクパクさせている。
「美女は空から降ってくる……なんてね?」
 モグラ女子の本領発揮と魅力的な微笑を浮かウインクを送ると、安心したのか颯斗は落ち着きを取り戻した。
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして。それよりあなたは安全な場所へ……って、この有様じゃそんな場所ないわね」
 周囲を見渡して冬香は肩を竦めた。しかし、六人の猟兵たちの活躍は目に見えて成果を上げおり、敵の殲滅も時間の問題と思われた。
「そうね、あなたはここから動かないで。動いたら、私が蹴っちゃうかもよ?」
「わ……わかりました!」
 颯斗は、傍らの冬香の踵落としで頭が潰された廃墟渡りにちらりと視線を走らせて、背筋をピンと伸ばした。
「よろしい!」
 冬香はニコッと笑ったかと思うと素早いダッシュとスライディングで戦場を駆けまわり、廃墟渡りたちの注意を引き付ける。
 あわや接触……という距離までダッシュで近づいたかと思えば、その股下をスライディングで潜る。時に跳躍し、群れる廃墟渡りたちの頭を足場に歩いて渡ったりと、敵を翻弄した。
 一帯の廃墟渡りたちを一手に引き付けた冬香は、パンパンと着衣の埃を払うと、敵に向かって手招きをする。
「さあ、いらっしゃいな!」
 感情など無いように見える廃墟渡りだが、ここまで虚仮にされると、さすがに何か思うところがあるのだろう、一斉に冬香に殺到した。だが、元来の身体能力に合わせ、血統覚醒により強化された彼女に敵の攻撃は届かない。真紅の瞳に覚醒した冬香の目は敵の動きを的確に読み取り、攻撃を躱す。体勢を崩した敵は冬香の勢いのついた回し蹴りを躱せず、周囲の廃墟渡りを巻き込み吹き飛んだ。徹底して後の先を取る冬香の周りに、敵の屍が積みあがってゆく。
「冬の香りがもたらすのは、貴方たちの旅の終わりよ! 一匹だって逃さないわ!!」
 最後の廃墟渡りが冬香のサマーソルトキックを顎に受け、派手に吹き飛び宙を舞う。頭部から着地した廃墟渡りは動かなくなり、やがて黒い霧となり風に流れ消えていった。同時に、あちこちに転がっていた廃墟渡りだったものが消えていった。

 他方で敵を殲滅した猟兵たちが、人々の救助を終え、颯斗の周りに集まってきた。
「ありがとう! おかげで助かったよ」
 元の静けさを取り戻した深夜の街並みに、颯斗もいつもの調子を取り戻したようだ。猟兵たちに礼を述べると、猟兵たちの問いかけに応えた。
「今回の騒ぎの元凶に心当たりはないかって? ……それなら、やっぱあれだろうな。深夜の商店街の路地裏であった赤い着物の女の子。あの子にあってから妙なことが起きるようになって……」
 猟兵たちは颯斗の証言により、現地の詳細な情報を得ることができた。だが、敵の手下を殲滅させた今、こちらの動きは確実に相手の知るところとなっているだろう。ならば、相手が完全に守りを固める前に攻めるべきだ。猟兵たちはその足で商店街にある、颯斗の示した地点へと向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『寂しいひとのいくところ』

POW   :    手当たり次第に足で調査

SPD   :    失踪者に似た境遇の子を探し見張ろう

WIZ   :    遺留物を元に手掛かりを辿る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍によりUDC『廃墟渡り』の大量増殖は喰い止められ、その引き金にされた青年、武藤颯斗の救出は成功した。これにより、感染型UDCの勢力拡大は、ひとたび封じることができた。
 彼の証言から最初の感染型UDCとの接触地点が明らかになり、猟兵たちは急ぎ現地に急行する。
 まだ人通りの多い繁華街のメインストリートから一歩、路地裏へ踏み込んだ猟兵たち。彼らを待ち受けていたのは、異様な光景だった。日没間際、影が淡く、闇が濃くなる黄昏の空間。道はうねうねと曲がりくねり先が見えず、端を覗けば底が見えぬ奈落が待ち受ける。点在する街並みは、古い時代のものと近代的なものが混ざり合い、懐かしいようでどこか違和感を感じさせた。だが、この異様な空間のどこかに、感染型UDCは必ず潜んでいるはずだ。
 猟兵たちは感染型UDCを見つけ出すべく、この異界に挑む。
箒星・仄々
世界を守るため
感染型さんを海へとお還りいただくため
何としても見つけ出しましょう

炎の魔力で蛍火
浮遊する灯に

UDCさんが生み出した異界ならば邪なる力が源のはず

竪琴を起動して奏で歌います
シンフォニアの歌と演奏が広げる音の波紋は
破魔の力を孕んでいて
空間に直接働きかけて
邪悪なる力を徐々に序に剥ぎ取り、吹き飛ばし
消しゴムで消すかのように
異界を元の姿へと戻していきます

そして闇や怨念がもっと濃いところが
世界を異界へと変えた起点のはず
感染型さんが潜むのはそこです!

空間に満ちる旋律が魔力の根源から力を引き出し
三魔力を為し
矢を象り
緋蒼翠の軌跡を描きながら
闇の中心へ殺到し
隠れている感染型さんを引きずり出します


アイグレー・ブルー
赤い着物の女の子ですか…怪談とかによくありそうな人物像であります。
ただ、私達が訪ねてそう簡単に出てきてくださるでしょうか?

UC枕上の星間"化"学で【宵闇色のフクロウ】に変身。はばたいて暗視と偵察で捜索でありますっ(フクロウにしては大きいし念動力で普通に飛べそう?何のことでしょう?)

とはいえ相手も警戒していらっしゃるでしょうし、普通に探しても出てこないかもしれません
月虹蝶々を呼んで少しずつ場を浄化したら居づらくなってひょっこりお顔を出してくれるかもしれないです

他の猟兵さんがいましたら是非協力させてほしいでありますっ


エミリロット・エカルネージュ
ボク自身にUCを使って技能強化したら
颯人くんから『情報収集』し『学習力』で纏めた情報を元に現地に赴いて、感染型UDCの潜伏場所を探るんだけど

現地は異界化……認識を阻害する結界か何かだったりしちゃうかな?

異界化も状態異常の様な物だし
似たケースはコレで打ち破れたけど
一か八か試してみよう

『第六感』で『瞬間思考力』で潜伏場所に近い方向の異界化の結界を探る様に『見切り』今度はUCを込めた『覇気』の【棒餃功筒】の『砲撃』を異界化した結界の壁に(必要なら『範囲攻撃』で)撃って、異界化の状態異常を攻撃し

解除し結果の壁を破りつつ、突き進んで感染型UDCの潜伏場所への道を探り作ってこう

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 異界に踏み込んだ猟兵たちは、異様な光景に圧倒されつつも行動を開始した。
「世界を守るため、感染型UDCさんに海へとお還りいただくため、何としてもみつけだしましょう」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、黄昏の暗闇を払うべく炎の魔力を操り明かりを灯した。浮遊しながら仄々の行く先に従う明かりは、まるで蛍火のよう。
「赤い着物の女の子ですか……怪談とかによくありそうな人物像であります。ただ、私達が訪ねてそう簡単に出てきてくださるでしょうか?」
 颯斗の証言から得た情報にあった少女は、赤い着物を着ていたという。怪談に登場する妖は、よくよく記憶に焼き付くような強烈な個性を持つ気がする――仄々の灯した明かりで周囲を見渡しながら、アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿し・f20814)が発した言葉に、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)が答える。
「そうだね、すんなり出てきてくれたり、むしろ待ち受けていてくれた方が話は早いよね。でも、この状況、感染型UDCは簡単に出るつもりはないってことだよ、アイグレーちゃん」
「でありますか。女の子は、ここに隠れて何を企んでいるのでありましょうか……。考えていても何も分かりませんね。わたくし、偵察に出るであります!」
 アイグレーは、化術の効果を高めるとの触れ込みの飴、メタモル☆キャンディを取り出した。3種類ある内の一つを口に運ぶとユーベルコード【枕上の星間"化"学】(スペクトル・メタモルフォーゼ)を発動させた。
「広げて、伸ばして、縮めて、光って……。……じゃーん、変身でありますッ!」
 彼女が選んだのは『宵闇色のフクロウ』。フクロウとなり上空から異界内を捜索する作戦だ。ちなみに、彼女は念動力で普通に飛ぶことができるのだが、形から入ることも大切だ。……かなりビッグサイズのフクロウになってしまっているが……。
 兎に角、フクロウとなったアイグレーは、仲間たちの「気を付けて」という言葉を背に、翼をばっさばっさと羽ばたかせ、空へ舞い上がった。そして暗視能力を活かし辺り一帯を探索するが、この場所自体が怪しい空間であり、目視だけの捜索では感染型UDCを見つけ出すのは難しいようだ。
「やっぱり相手も警戒していらっしゃるのでしょうね。普通に探しても出てこないでありますね」
 辺りを一周して仲間たちの元に戻ってきたアイグレーは状況を共有する。
「異界化……認識を阻害する結界か何かだったりしちゃうかな?」
 エミリロットはつぶやいて、何やら考え込み対策を練り始めたようだ。一方、仄々はこの異界に踏み込んだ時から、周囲に邪な力が漂っているのを感じ取っていた。
「UDCさんが生み出した異界だからということでしょうか、異界を構成する魔力の中に邪悪な力が混ざっているのを感じます」
「邪悪な力……でありますか」
 それならば……と、アイグレーは閃きを実行することにした。
「蝶々さん、この場所を浄化してみるであります。場を浄化していけば居づらくなって、ひょっこりお顔をだしてくれるかもしれないです」
「アイグレーさん、では私も協力いたしましょう。力を合わせこの場所の浄化を」
 仄々は竪琴を構えると、曲を奏で歌い始めた。その旋律に合わせて、アイグレーの月虹蝶々が踊るように空を舞い、浄化の魔力を帯びた煌めく鱗粉を辺り一面に舞い散らせる。
 シンフォニアである仄々の歌と演奏が広げる音の波紋は、破魔の力を孕んでおり、空間に直接働きかけ邪悪なる力を徐々に削ぎ落としてゆく。
 仄々とアイグレー、二人の共演は、じわじわと確実にこの異界化した空間を浄化しつつあった。その中で仄々は感じ取っていた、感染型UDCのものと思しき、ひと際濃い闇と怨念を。「……これは、もしや……」仄々は音の波紋さらに広げ闇と怨念の出所を慎重に探り始めた。
 時は少し遡り、仄々とアイグレーが浄化を開始した直後、エミリロットは一つの答えを導き出していた。それは以前、似たようなケースがあり、それを打ち破った方法を試そうというものだ。
「異界化も『空間の状態異常』の様な物と考えられるからね。一か八か試してみよう」
 より効果的に成果を上げるには、まず対象の中心を捉えるべきだ。今の状況ならば、感染型UDCの潜伏場所により近い場所であろう。それを探り出すべく第六感と思考力を極限まで高める。結界――感染型UDCが身を隠すべく作り出したこの異界化空間を維持するには、少なからず術者の意識の流れがあるはず。それを見つけ出し、たどってゆけば……。
「見つけたよ!」
「見つけましたよ……!」
 仄々とエミリロット、二人が同時に声を上げた。
「え? 何を見つけたのであります? ……もしやUDCの女の子?」
 人型に戻っていたアイグレーが、きょろきょろと周囲を見渡すが、肉眼では二人が捉えているものを見ることはできなかった。
「見逃しはしません!」
 竪琴の旋律が魔力の根源から力を引き出す。仄々はその魔力でもってユーベルコード【トリニティ・ブラスト】を発動させ、500数本にも及ぶ、炎、水、風の矢を象り目標を定める。
 方やエミリロットは、ユーベルコード【霊芝餃薬勁法】(レイシギョウヤクケイホウ)を放つべく気を練り上げる。
「医食同源、食は薬なり……その言葉は餃心拳でも例外は無い、コレにはこう言う使い方も在るんだよ」
 本来この技は、霊力を籠めた『霊芝入り茸餃子の気の塊』を対象に与えることにより、肉体を傷つけることなく傷を癒し、状態異常を回復させる効能を持つ。この状態異常の回復の効果を、異界化の根源にぶつけることにより、異界化を解除し、感染型UDCを引きずり出そうということなのだ。
「さあ、ちょっと派手にいきますよ~!」
「破ぁあああっ!」
「二人とも、がんばるであります!」
 仄々の放った矢が、緋蒼翠、美しい輝きの軌跡を描きながら闇の中心へ殺到し、エミリロットの覇気を乗せた霊芝餃薬勁法は、特大棒餃子型ビームキャノン『棒餃功筒』に充填され、最も重症な場所を目掛けて放たれた。二つの光は重なり合い、眩い一筋光線となり、邪悪なる力が最も濃い場所を撃ち抜いた。
『ギシッ』
 耳障りな音を立てて、世界にひび割れが走った。それは瞬く間に一面に広がり、異界化した空間がガラスが砕けるように粉々に砕け散った。
「やったでありますっ!」
「……やるにはやりましたが、これは……」
「感染型UDCもなかなかやるね。結界の重ね掛けかぁ……」
 砕け散った景色の向こうに、代り映えのしない異界の街並みが現れた。異界化の根源を確かに打ち砕いたのだが、それは複数施された異界化結界の内の一つの核だったのだ。
「けど、この成果は次につながるであります! どんどん撃ち破ってゆけば、赤い服の女の子を必ず見つけ出せるはずです!」
 アイグレーが言うように、隠れ蓑を剥ぎ取ってゆけばいずれそこに潜む者を暴くことができるだろう。
「そうですね、感染型さんを追い詰める手段を見つけることができたのは大きな一歩です」
「よしっ! それじゃこの勢いでどんどん進もう!」
 三人は頷きあうと、次なる結界を破るべく異界化した街の探索を再開した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

冴島・類
おお。
これだけの空間が広がっていると、虱潰しというのも時間がかかるかな?

手分けした方が良いかもしれない
他の猟兵さん達が進む数が少ない空間を、あたってみようか
発見時や、見つけきれずとも手がかりがあれば
勿論戻って皆に共有するとして。

後は…武藤さんの接触時のことを考え
より、ひと気の少ないような、寂しい雰囲気を感じる方へ
自分の六感や暗がりは暗視も用いて見落としなきよう探し。
ついでに、写身を展開し、広範囲を写し見てみようか。

いのちを無くしたもの、過去に生きるものは
生者を取り込みたがることがある。
寂しいから、連れて行こうとするのだろうか。
こういう場所を歩いてると色々考えてしまうな。

だとしても…だけれど



 夜も更けようかという時間帯にもかかわらず、繁華街にはまだ多くの人々の姿が見られた。
「武藤さんの話によるとここだね」
 武藤颯斗が感染型UDC――赤い着物姿の少女と遭遇した路地裏。冴島・類(公孫樹・f13398)は、人々のさざめきを後ろに聞きながら足を踏み入れた。
 一歩二歩……暗闇の中を慎重に進む。と、不意に周囲が明るくなった。明るくなったといっても、夕暮れ時程度の明るさだが、真っ暗闇からしたら十分な明るさだ。明暗差に目が慣れたところで、類は辺りに視線を走らせる。
 捻じれ、歪んだ道路や、今昔入り乱れた街並み、遥か彼方まで広がる黄昏に染まる空。
「おお。これだけの空間が広がっていると、虱潰しというのも時間がかかるかな?」
 思案する類の耳に、ふと、遠くからの戦闘音が届いた。そして間を置かず、この異界の放つ圧が少し緩むのを感じた。
「向こうは、他の猟兵さん達が既に動いているようだね。同じ方面を大勢で捜索するよりは、手分けした方が良いかもしれない。……僕たちはこちらの方の空間を、あたってみようか」
 類は影のように従う絡繰人形の瓜江に声を掛け、他の猟兵たちの気配と逆の方向へと歩を進める。首尾よくUDCの発見に至った時は勿論のこと、見つけきれずとも手がかりがあれば、戻り皆と情報を共有すれば探索の輪を狭めることができるだろう。
「後は……武藤さんが少女と接触した時のことを考えると……」
 颯斗が少女と遭遇したのは、人気がなく、寂しい雰囲気を感じる状況だったようだ。UDCがそうした環境を好むと考えるならば、彼女の潜む場所は……。類は自身の第六感に従い、より寂しさを感じる方へと捜索の手を広げることにした。
「此処に、現れ給へ」
 意識を集中し念じると、ヤドリガミである彼の本体――多くの人を慈しみ、その短き生を見送ってきた古き鏡――その写身が、ユーベルコード【空蝉写し】(ウツセミウツシ)の発動により、類の周囲に107枚に及ぶ鏡が現れる。
「暗闇も見落とすことなく、写し見てみようか」
 類の念を受けた鏡たちは宙を舞い、彼の目となり、ありとあらゆるものを見逃すまいと、その鏡面に写す。鏡たちからの映像と、自身の目で注意深く周囲を観察しながら歩く類は、進むにつれ辺りの景色が少しずつ変化してきたことに気付いた。近代的な建物はほとんど見当たらなくなり、類自身にも馴染みが深い、古風な建造物が大多数を占めている。その情景は彼の琴線に触れ、物思いへと誘う。
(いのちを無くしたもの、過去に生きるものは、生者を取り込みたがることがある。寂しいから、連れて行こうとするのだろうか)
「……だとしても……だけれど」
 何時しか類の先に立ち歩いていた瓜江が不意に足を止めた。その背に突き当たりそうになって我に返る類。
「どうしたんだい、瓜江……」
 瓜江の見つめる先、黄昏の空の光も吸い込まれ闇へと還る空間。異変を感じ、写身の鏡たちを向かわせるが、暗視能力をもってしてもその先は見通せない。
「邪念……そして寂しさ……。随分と濃く感じられる。かなり近い感じだね」
 進むべきか引くべきか。類は思案する。――この異界化した空間を構成する複数の結界の一つの核、若しくは綻びなのかもしれない。しかしそうではなく、当たりであったとしたら……一人、瓜江と共闘しても二人で、力のあるUDCと対峙するのは得策ではない――。
「……一度戻って皆と情報を共有することにしよう。行こう瓜江」
 最後に写身の鏡たちを広範囲に展開させると位置情報を把握し、類は他の猟兵たちと合流すべく踵を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋薙・冬香
颯斗さんは無事だったのね
よかったわ
情報も得られたし
ここからはこっちに任せて安心してね

さてさて
探偵さんの真似事は得意じゃないんだけど
頑張って見つけましょうか

赤い着物の少女……を直接狙うよりは
この風景の違和感に注視すべきね
この違和感を第六感のままに辿っていく
捜査の基本は足って誰かが言っていたし
しっかり歩き回って潰していくとしましょう

一応演技で一般人の振りでもしておきましょうか
こっちを獲物と思って釣れると嬉しいんだけど
そんなことはないかしらねー(苦笑)

見つけたら一気に距離を詰める
荒事はしたくないんだけど逃がすわけにはいかないの
跳ぶ方が早ければ【スカイステッパー】でいくわ



 ――カツン。
 妙齢の女性が、異界化した空間にハイヒールの踵を鳴らし歩を進めた。
「ここが赤い着物の少女、感染型UDCの潜む空間ってわけね。……颯斗さんの無事は確保したし、ここからは私たちに任せて安心してね」
 妙齢の女性――緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)は、そう呟くとパンッと手を打ち気合を入れなおす。
「さてさて、探偵さんの真似事は得意じゃないんだけど、頑張って見つけましょうか」
 先行して潜入した猟兵たち数名が、それぞれ散開して探索を開始しているらしい。冬香はその場に残された足跡や痕跡から、まだ仲間たちが向かっていない方角を割り出すと、そちらに向かって歩き出した。
(ん~……ダメ元で、一般人の振りでもしておこうかしら?)
 彼女は表と裏の生業柄、演技や芝居が得意なのだ。あわよくば、向こうから獲物を狩りに現れてくれればと考え、弱々しく怯える仕草をし始めたのだが……。
「そんな都合よくいくわけないわよねー」
 肩を竦め苦笑いすると自然体に戻る。
「赤い着物の少女……を直接狙うよりは……」
 そもそも身を隠すために作り出した空間であるのだから、先方から勇んで姿を見せる可能性は低く、所在を掴むことも困難だろう。であるならば……。
「さっきから気になってる、この風景の違和感に注視するべきね」
 同じような景色が続いているように見えて、その中に僅かな変化があることを、冬香の第六感は感じ取っていた。古今東西の街並みが混沌としてあったものが、ある方面だけ偏りが感じられる。
「捜査の基本は足って誰かが言ってたし、しっかり歩き回って潰していくとしましょうか」
 冬香は街並みの変化を己の第六感の命ずるままに辿り始めた。進むにつれて、判らぬほど細微だった景色や街並みの変化は、目に見えて統一され始めた。原風景とでもいうのであろうか、UDCアースの日本に住む者ならば、懐かしさを掻き立てられる風景だ。
「道も、いつの間にか、しっかりした道になっているわね」
 うねっていた道は、いつしか踏み出すたびに砂埃の舞いあがる田舎道になり、入り乱れた異様な街並みも、落ち着いた風情の村落といった様相を呈していた。
「……随分と、まともな風景になっちゃったわね」
 足を止めた冬香は、メガネの位置を指先で整えると、慎重に周囲の様子を観察する。朽ちかけた家屋、荒れ果てた田畑の真ん中を走る田舎道は、遥か先まで続いている。
「あら、道の先の家は随分立派ね。……ん?」
 何か動くものを視界の端に捉えた冬香は、正体を見定めようと目を凝らす。
「赤い……着物……」
 黄昏時を過ぎ、闇が滲みよる薄明りの中、冬香の目は、赤い着物の少女が、ひとり寂しげに鞠つき遊びをしている姿を捉えた。
「見つけたわよ、感染型UDC!」
 相手を逃がすまいという気持ちが先だち、反射的にユーベルコード【スカイステッパー】を発動させ、跳躍力を高めるや否や飛び出し、一気に間合いを詰める。
 相手がこちらの存在に気付いているかを見定めなかったことに気付いたのは、数度の空中ジャンプを繰り返し、少女の表情がわかる程の距離まで近づいた時で……。
 それまで悲し気な表情で鞠つきをしていた少女は、不意に動きを止めると冬香に振り向いた。そして――。
『ニヤリ』
 整った表情を崩し、凄惨な笑みを浮かべた。
「やばっ」
 その形相に、背筋が凍りつきそうな恐怖を感じた冬香は、咄嗟に後方へ複数回跳躍し、距離を取った。手下の増殖は阻止したが、感染型UDC自体の力を削いだわけではないのだ。仮にも複数のUDCを束ねる力を持ち、大掛かりな陰謀を画策するような相手に、一対一の勝負を挑むのは分が悪い。
「ねぇ、どこへ行くの? 私と遊びに来てくれたのでしょう?」
 赤い着物の少女が、遠ざかる冬香に呼びかける。
「遊ぶなら、大勢の方が楽しいでしょ!」
 言い返し、来た道を引き返す。と、向かう先に複数の人影が立ち塞がった。
「廃墟渡り……!?」
 冬香は身構え、薄闇に目を凝らす。だが、現れたのは敵ではなく、この異界化した空間の捜索を行っていた猟兵たちだった。情報共有の後、敵の潜伏先の目星をつけ、この場所に辿り着いたのだった。
「グッドタイミングよ!」
 歓声を上げる冬香に対し、形勢不利と判断したのか、赤い着物の少女は暗い表情を浮かべると、背後に建つ立派な古民家の中へと姿を消した。
「あそこが感染型UDCのアジトってわけね」
 言うなれば、感染型UDCにとって最後の砦だ。ゆえに死力を尽くして猟兵たちを迎え撃つだろう。
「いよいよ最後の決戦……万全を期さないとね」
 乱れた呼吸を整え、冬香は装備を念入りに確認するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『都市伝説』コトリバコ』

POW   :    カゴメ、カゴメ
全身を【囲む様に子供の霊を召喚、内部を安全領域】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    そして皆いなくなった
【コトリバコから敵対者を追尾する無数の小鳥】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    【常時発動型UC】子取りの箱
【自身から半径レベル三乗mの一般の女性、子】【供を対象に寿命を奪い衰弱させる状態異常を】【付与。また、奪った寿命でレベルを上げる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 感染型UDCである赤い着物の少女は、古民家内へと姿を消した。彼女の名は『コトリバコ』といい、血生臭い都市伝説持つ存在だ。その伝説が嘘なのか誠なのか分からないが、野放しにしておけない存在であることだけは確かだ。
 猟兵たちは決戦を挑むべく、コトリバコの後を追って家屋内へと突入する。内部は外観より明らかに広く、がらんとした何もない空間であった。だが、そこは彼女の領域であり、何が起きてもおかしくない。事実、くぐったはずの引き戸は消え、猟兵たちは中に閉じ込められたことに気付く。コトリバコも、この一戦で雌雄を決するつもりということか。
 最後の戦いの幕が開けようとしていた。
箒星・仄々
囚われの婦女子の方々の救出を第一に

命を奪わせてなるものですか
未来は命の重みなのですから

他猟兵様の攻撃の間に囚われの方々の元へ

もう大丈夫です!

指笛で波打つ影からランさん召喚

寿命を奪う状態異常を歌で治癒しながら
目旗魚の背に囚われの方々を乗せ
ランさんを後退させます

頼みましたよ!

人質にとられたり
戦いに巻き込まれるのを防ぐ目的です

感染型さんのUC射程外に出るのは難しいでしょうし
私の歌が届かない屋敷の外からも命を奪っている筈です

急ぎ決着をつけなければ

歌いながら間合いを詰め
破魔の力込めた刺突で
箱ごと感染型さんを貫きます

海でならきっと寂しくありませんよ
どうぞお還りください

終幕
鎮魂の調べ
寂しんぼさんへの子守唄


エミリロット・エカルネージュ
都市伝説だから感染型UDC
……と言う事になっちゃうのかな?
由来を考えたら、こんなの

直の事頬っておけないよね?
こんなのが拡大する前に

●POW
開幕、ギョウザライダー・エカルド
(真の姿)になって破壊するっ!

『オーラ防御&激痛耐性』で備えて
低空『空中戦&推力移動&ダッシュ』で駆け回り『第六感』で攻撃を『瞬間思考力&見切り』『残像&空中機動』で回避しながら

『集団戦術&団体行動』で
可能なら皆と連携して立ち回り
隙見てUCの餃子弾の『弾幕』御見舞いし

無敵状態と言う
強化状態を解除したら

『ダッシュ&ジャンプ』し『属性攻撃(炎)』込めた『グラップル&功夫』でギョウザライダーキックだよっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 コトリバコを追って屋内に突入する二人の猟兵たち。
「都市伝説だから感染型UDC……と言う事になっちゃうのかな? それに、コトリバコと言えば……」
 その内の一人、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、たまたま聞きかじっていたコトリバコの都市伝説を思い出していた。その由来や起きる事象を考えれば、放っては置けない存在である――と闘志を燃やす。
 一方、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、冷静に状況を分析する。彼は、コトリバコの由来や目的、その能力から、女性や子供たちが囚われているのではないかと推測していた。
「この場所も異空間、容易に所在は探れませんか」
 そもそも、倒すべきコトリバコの姿も、気配はすれど見当たらない。気配に向かって闇雲に攻撃を仕掛け、誤って救うべき人たちに被害が及んでは元も子もない。思案する仄々の前に、エミリロットが一歩進み出た。
「コトリバコ! もうキミに逃げ場はないよ。ここで決着を付けよう。――変身!」
 ポーズを決め真の姿を解放したエミリロットが、ギョウザライダー・エカルドに姿を変えた。その隣に歩み出た仄々は顔を上げ、コトリバコに語り掛ける。
「コトリバコさん、かくれんぼは終わりです。あなたは、この隠れ場所を作り出すために、かなり力を使ったはずです。何時までも、こうしているわけには行かないのではありませんか?」
「……。……ふふふ……私のお家にようこそ。遊びに来てくれて嬉しいわ……」
 しばしの沈黙の後、悲しく儚げな少女の声が響き渡り、何もなかった空間が、ぐるぐると渦を巻くように捻じれたかと思うと、建物の外観に相応しい、郷愁を誘う内装へと変貌を遂げた。いつの間にか猟兵たちは日に焼けた古い畳の敷き詰められた部屋に立っていた。四方は源氏襖に遮られ向こう側は見えない。だが、二人の正面の襖の奥から、次々に襖が開く音が近づいてくる。
「迎え撃つよ!」
「了解です」
 エミリロットと仄々は視線を交わし頷きあうと、身構える。そして最後の襖が開け放たれ、コトリバコがその姿を見せた。最初に動いたのはエミリロットだ。
「はぁっ!」
 身を低く構え突進し、低い位置から拳を放つ。だが、その一撃をコトリバコは外見からは想像できない程の身軽さで宙を舞い避けて見せた。何事もなかったかのように着地した少女の髪の鈴飾りが、チリン……と音を立てた。
「怖い、怖い……危ないじゃないの……」
 コトリバコは、くすくすと含み笑いをこぼし、攻撃が空振りし体勢を崩したエミリロットに襲い掛かった。血に染まった小箱を大切そうに左の小脇に抱えたまま、爪を鋭く伸ばした右手を突き出す。
「なかなかやるね。だけど……!」
 エミリロットは直感に任せ体を投げ出した。間一髪、直撃は避けられたものの、その爪は、闘志を奮い立たせ、オーラの護りを纏っていたにも拘らず、彼女の脇腹を掠め、浅く切り裂いた。
「くぅっ……!」
「ふーん……運がいいのね。でもここは私のお家。あなたは私に勝てないのよ?」
 つまらなさそうな表情を浮かべ、コトリバコは攻撃を再開する。手刀による鋭い突きと、なぎ払いが次々に繰り出される。はじめは防戦一方に追い込まれ、小さな傷を増やしつつあったエミリロットだったが、次第に形勢が変化し始めていた。彼女は攻防の中でコトリバコの動きの癖を見抜き、そこへ反撃を始めたのだ。攻撃を避け、次の動きに移るまでの僅かな隙を突き拳を叩き込む。コトリバコが身を引けば、隙を与えることなく肉薄し蹴りを放つ。いつの間にか攻防は逆転しつつあった。
「せいやっ!」
 コトリバコの攻撃を掻い潜ったエミリロットの一撃が、少女を捉え打ち据える。
「……っ!?」
 少女の表情が昏く歪んだ。
「あなた嫌いよ……近寄らないで……」
 エミリロットを暗い目で睨んだコトリバコは、後ずさりしながら歌を口ずさみ始めた。
「かごめかごめ……籠の中の鳥は……いついつ出やる……」
 歌詞が進むにつれて、コトリバコの周囲に様々な時代の衣服に身を包んだ子供たちの霊が現る。
「私のお友達たち、私を怖い人から守って……」
 彼らは彼女を取り囲み鉄壁の護りをもたらした。
「……ふふ……ふふふ……。あなたは私に手出しできないわ」
「やってみなくちゃ分からない! 喰らえっ、餃子弾!」
 小手調べとばかりに、エミリロットは拳に気を乗せ、餃牙調律拳・調律餃子弾を放った。鉄壁の護りを得る代わりに移動できないコトリバコは、成すすべもなく餃子弾を浴びることになったが、その護りは崩れることはない。
「……ふふふ……あはは……! だから、手出しできないって言ったのに」
 嘲笑するコトリバコに対し、エミリロットは不敵に笑い返す。
「それはどうかな?」
「……え?」
 まったく怯んだ様子を見せないエミリロットを、コトリバコが訝しむ。
「これが本命だよ!」
 重心を低く構え、練り上げた闘気を拳に集中させてゆく。闘気は炎となって拳に纏わり燃え盛る。
「……竜よ餃子破壊飯の如く砕け……壊餃飯っ!」
 力強く突き出した拳から緋炎を纏った竜が解き放たれ、コトリバコの護りを易々と穿った。
「性質を見抜き、破壊する……これが餃牙調律拳・壊餃飯(ギョウガチョウリツケン・カイギョウハン)だ!」

 一方、仄々はコトリバコとエミリロットが交戦し始めるのと同時に身を忍ばせ、囚われている人々の捜索を開始していた。仄々が危惧していたのは、コトリバコの本質的な力――ユーベルコード『子取りの箱』の存在だった。このユーベルコードは、広大な範囲の女性や子供たちの寿命を奪い衰弱させる呪いを振りまくと同時に、奪った寿命で己の能力を格段に引き上げるのだ。このユーベルコードを使用され、無辜の人々を犠牲にすることはできない。
『ですが、異空間に潜んでくれたおかげで助かりました。恐らく、異なる空間を超えては影響を及ぼさないはず。この場所のどこかに囚われている人々を見つけ出し、呪いの効果が及ばぬよう対策をすればいいはずです』
 コトリバコはエミリロットの苛烈な攻撃の対応に追われ、仄々にまで注意が及んでいないようだ。ならばこの状況を最大限活用すべし。仄々は静かに襖の一枚を開けると、素早く中に忍び込んだ。そして、聞き耳を立てる。集中し、広く遠く音を探る。集中力の高まりとともに、戦いの騒音は彼方に遠ざかり、代わりに人々の囁き声、衣擦れの音、呼吸の音……微かな音を拾い出す。
「見つけました――! 今、助けに参ります」
 仄々は、次々に襖を開け、囚われの人々の元へ疾走する。
「皆さん、もう大丈夫です!」
 開け放った襖の向こうに救うべき人々を見つけた仄々は、彼らを避難させるために相棒の助けを借りることにした。
 彼が指笛を吹き鳴らすと、彼の落とす影が波打ち、そこから『ランさん』が召喚された。
「ランさん、頼みましたよ!」
 ランさん――体長5メートルに及ぶ巨体のメカジキは、仄々の声に応えるように、ヒレをぴちぴちさせると、人々をその背に乗せて移動し始めた。
「安全な場所……この屋敷は中から出れない状況ですから、我々猟兵の目の届く範囲で、戦いに巻き込まれない場所が一番よいでしょう。――であれば、急ぎ戻り、エミリロットさんと合流、決着をつけなければ」
 仄々は、決意を固めると、ランさんには人々の安全第一に動くことを頼み、戦いの場へと急ぐのであった。

「酷い……許さない……。お前たち皆、殺してあげるから……!」
 エミリロットのユーベルコード餃牙調律拳・壊餃飯により護りを崩されたコトリバコが怨嗟の言葉を吐きながら、手にした血塗りの小箱を高々と掲げた。
「この『子取り箱』の恐怖を思い知らせてあげる……!」
 場の空気が変わったことを、居合わせた誰もが感じ取ったた。
「うぅ……っ」
「なんだか、苦しいよ……」
 ランさんの背に乗った人々が苦しみだし、仄々は怖れていたことが起き始めたことを悟った。
「いけない! 止めさせないと……」
 刺突剣を抜くと、襖を切り倒しながら戦いの場へと駆け付ける。
「はっ!」
 最後の襖を切り裂くと、そのままの勢いでコトリバコに斬りかかるが、まだ余力があるのか、身を翻し易々と仄々の斬撃を避けた。
「私を甘く見ないで……!」
 手にした『子取り箱』から禍々しい瘴気が立ち上り、人々の苦悶の声が大きくなる。
「でしたら……!」
 竪琴を取り出し奏でると、治癒の力をもたらす歌を高らかに歌い始めた。歌の力は、子取り箱の呪いを幾分か和らげ、人々は安堵の声を漏らした。
『長引かせられませんね』
 仄々は竪琴を手放すと、再び刺突剣を握る。しかし、歌声は竪琴がなくとも乱れることなく続いている。彼がエミリロットに視線を送ると、彼女もまた視線を送り返し、二人頷く。
「さぁ、行くよ!」
 エミリロットが跳躍し、コトリバコに掴み掛る勢いで間合いを詰める。
「そんなの当たらないわ……!」
 身を引き、エミリロットの手を掻い潜ったコトリバコは鼻で笑い、『子取り箱』に意識を集中させ始めた。
『この瞬間を待っていましたよ!』
 エミリロットの攻撃を避け、油断したコトリバコの眼前に破魔の白光を宿した刺突剣が迫る。コトリバコは、彼女の油断と死角を突いた仄々の奇襲攻撃に完全には対処しきれず、回避行動が遅れてしまった。仄々の刺突剣は『子取り箱』を掠め、その呪いの発動を中断させることに成功した。
「……っ! 私の、大切な! 私自身を……!」
 コトリバコの本体は、その手にした『子取り箱』である。本体を傷つけられたコトリバコは、怯えと共に怒りを増幅させたかに見える。だが、それは確実に彼女を追い詰めている証拠でもある。
 仄々とエミリロットは身構え直すと、油断なく敵の出方を窺うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スフィア・レディアード(サポート)
『皆さん、頑張りましょう!』
 ミレナリィドールの妖剣士×鎧装騎兵、21歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(私、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は元気で、楽しい祭りとかが好きな少女。
武器は剣と銃をメインに使う。
霊感が強く、霊を操って戦う事も出来る(ユーベルコード)
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 コトリバコの本体である『子取り箱』に傷を負わせたものの、同時に彼女を激昂させ、先に挑んだ猟兵たちは攻めあぐね、膠着状態に陥っていた。そこに颯爽と現れたのは、赤い髪と瞳が印象的な少女、スフィア・レディアード(魔封騎士・f15947)だった。
「お祭り会場はここなのね? さぁ、皆さん、頑張りましょう!」
 愛銃――霊魔葬送弾を構え、コトリバコにプラズマの弾丸を浴びせながら、スフィアは間合いを詰めて行く。対するコトリバコは、小柄な体躯を活かし機敏な動きで弾丸を避ける。だがスフィアは、その回避行動の隙を突いて肉薄し、封魔葬霊剣で斬りかかる。
「さっさと、やっつけられちゃいなさい!」
 間断なく撃ちかけられる弾丸と、隙を見ては斬りかかる猛攻の前に、コトリバコは次第に追い詰められてゆく。
「あぁ……うるさい!」
 なおも降り注ぐ無数の弾丸を前に、コトリバコは子取り箱を胸元に護るように抱き体を丸めると、その身に弾丸を受けた。弾丸を受けるたびに、呻き体を震わせる。
「観念したのかしら? ……って訳でもなさそうね」
 止めを刺すべく近づいていたスフィアは、不穏な気配を感じ、距離を取り身構えた。
「みんな……」
 ぼそり――と、コトリバコが呟き、スフィアは思わず聞き返した。
「え?」
 次の瞬間、コトリバコが箱を掲げ絶叫した。
「みんな……みんなみんな、いなくなれぇっ!」
 同時に、箱の中から無数の小鳥が放たれる。
「わわっ、なにこれ!」
 コトリバコのユーベルコード【そして皆いなくなった】により生み出された小鳥たちは、狂気に満ちた赤い眼光を宿し、その場に居合わせる全ての敵対者――猟兵たちに、鋭い嘴で、刃の如き翼で襲いかかった。
「このぉっ!」
 スフィアは銃で小鳥を撃ち落とそうと狙いをつけるが、小さい上に高速で移動し、なおかつ、狙いを定める間にも、絶え間なくほかの小鳥たちの襲撃を受けるため、身の危険を感じて早々に銃での迎撃を諦めた。ならばと、剣に手を伸ばすが、数と小さな的を相手にするには、やはり分が悪い。
「それなら、避ければいいのよ!」
 スフィアはユーベルコード【予知霊視】(ヨチレイシ)を発動させる。
「あなたたちの動きなんて、見抜いてあげる!」
 ユーベルコードにより、霊視能力が高まったスフィアの目は、コトリバコから与えられた小鳥たちの仮染めの魂をも、はっきりと捉えた。その魂が見せる動きから、小鳥の動きを読み取り、間近に迫りつつあった一羽の攻撃を造作もなく避けた。
「ふふっ! かかってきなさい!」
 目を閉じ、霊力の目で周囲を視れば、飛び回る小鳥たち全てのの動きが彼女の脳に伝えられる。
「……!!」
 急降下から嘴での一撃を加えようとする小鳥を、寸前で体を横にずらし避け、多方向から翼で切りつけようと飛来する小鳥たちは、直前で身を屈めやり過ごす。
「けど、なかなか反撃のタイミングが掴めないわね……。でも、コトリバコもかなり弱ってきてる感じね」
 スフィアの霊視には、コトリバコの魂が揺らぎつつあるのが視てとれた。
――猟兵は私ひとりじゃないし、この小鳥の攻撃を分散させて、隙を作ることができれば、誰かが――
「……もちろん、誰かが隙を作ってくれたら、絶対、見逃さないわよ」
 スフィアは、小鳥たちの攻撃を凌ぎながら隙を窺うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴島・類
手にしたあの箱が本体か
とはいえ、そう易々と近づかせてはくれぬだろうしな…
気をどれだけ引けるか、やってみましょうか

背負う箱より出した瓜江と共に駆け
フェイント、残像を交えた動きで箱から狙ってくる攻撃を引きつけ
可能な限り軌道を見切り、避ける
隙を狙いながら、彼女を薙ぎ払いで狙っているようにみせ
破魔の力を込めた刀に注意を引こう

…残念ながら、遊びに来たのではないんです
誰も、連れて行かれぬように
壊しに、来たんですから

彼女の気が完全に僕に向いたら、瓜江を後方に走らせて
小鳥の攻撃を前に、抱き止めるように力を受け止めて。
死角の位置から、その力を彼女へ跳ね返す

寂しいことりよ、おいでこちらへ
廻り、還って
おやすみなさい



 冴島・類(公孫樹・f13398)は、コトリバコと、彼女が箱から呼び出した小鳥の大群を前に戦況を見定めた。
――手にしたあの箱が本体か……――
 箱――彼女が大切そうに手にする『子取り箱』を破壊すれば勝敗は決する。
――とはいえ、そう易々と近づけてはくれぬだろうしな……――
 コトリバコを護るように飛び回り、近づく猟兵たちに襲い掛かる様子を見た彼は一つの策を導き出していた。
「気をどれだけ引けるか、やってみましょうか」
 類は、背負っていた箱を下ろすと、普段は人目を引かぬよう中に収めている、絡繰人形の瓜江を取り出した。
「行くよ、瓜江」
 類が駆けだすと、瓜江もまた外套をなびかせ彼に追従する。
「あなたは……人形師さん……? 遊んでくれるの……?」
 近づく類に気付いた少女は、疲れた様子で彼に問いかける。
「……残念ながら、遊びに来たのではないんです」
「そう……」
 類の返答に、少女は悲し気に俯く。と、彼女が手にする箱から数羽の小鳥たちが生み出され、類に敵意を向けた。コトリバコが彼を敵として認識したということだ。彼に向かって次々と小鳥たちが襲い掛かる。類は、フェイントや残像により、小鳥たちを巧みに惑わし引き付ける。できれば他の猟兵たちに向かっている小鳥たちも、全部とはいかなくても引き付けたいところだが……。
「僕は、誰も、連れて行かれぬように」
 類は刀を抜きコトリバコに斬り込む。だが、当てるのが目的ではない。攻撃を避けることに神経を集中させる。類のフェイントの斬撃は躱され、小鳥たちが体勢を崩したかに見える彼に攻撃を仕掛ける。しかし、その攻撃は類の想定していたものだ。小鳥たちの飛翔する軌道を見切り、最小限の動きで回避する。そして、小鳥たちの護りが手薄になった隙を突き、少女を破魔の霊力を乗せた刀で薙ぎ払うが、彼女は霊力の盾により刃を押し止める。類はさらに言葉を紡ぐ。
「君を、壊しに、来たんですから」
「……っ!!」
 類は大量の殺気を感じ、霊力の盾と破魔の刀の反発力を利用し跳び退った。先程まで彼がいた場所に、小鳥たちが群れを成して押し寄せてきたのは、一瞬の後のことだった。
「ゆるさない……ユルサナイ……私の……ワタシタチノ……クルシミ……解キ……癒エル……マデ……」
 ほとんどの小鳥たちを集結させたのだろう、コトリバコを取り囲むように大量の小鳥たちが飛び交う。
――この時を待っていたんだ。頼んだよ、瓜江……!――
 コトリバコの注意を引かないよう、目立つ動きをしないように指示されていた瓜江が、主の意を受け彼女の後方へと密やかに疾駆する。瓜江がコトリバコの死角に控えたことを見届けると、類は緊張を解き、少女の前に無防備に立った。
「……っ!!!」
 少女が声にならぬ声を上げ、黒い塊となった小鳥の群れが類を包み込む。
「寂しいことりよ、おいでこちらへ……」
 突かれ、斬られ、裂かれ……暴虐が繰り広げられる中、彼はそれらすべてを抱き止めるかのように両手を広げ、静かに佇んでいる。――類が小鳥たちに襲われる前に用いたのは【糸車】(イトグルマ)。完全な脱力状態でユーベルコードを受け、瓜江から排出する。しかし損じれば自身の身を滅ぼしかねない危険なユーベルコードなのだ。
 力を使い果たしたのか、小鳥たちは一羽また一羽と無に還ってゆく。静かな眼差しでコトリバコを見つめる類は、無傷の彼の姿に驚く彼女に、静かに語りかけた。
「廻り、還って……」
 コトリバコの背後に立つ瓜江が、主から伝わってきた力を宿し、身をわななかせる。そして、その力を放出すべく両掌をコトリバコに向け身構えた。
「……おやすみなさい」
 類が身を翻すと同時に、瓜生から放たれたコトリバコの力は、少女の背を貫き、その胸に抱かれていた子取り箱を粉砕した。
「……ぁ…」
 箱が砕ける瞬間、少女は何かを囁いたが、その声は誰の耳にも届くことはなかった。
「瓜生、おつかれさま」
 相棒に労いの言葉をかけていると、周囲の景色が塗料を撒いたかのように塗り替わってゆく。郷愁漂う屋敷は掻き消え、黄昏に染まった世界は夜の黒に塗り替えられる。気が付けば、ありふれたUDCアースの路地裏に立っていた。
「終わったね。それじゃ瓜生、箱に……」
『チリン』
 不意に鈴の音が聞こえ、類をはじめ、猟兵たちが動きを止めた。彼の青年、颯斗から聞いた、コトリバコとの馴れ初めを思い出す。
『チリン、チリン……』
 闇の中から、街灯の明かりの下へ、鈴を鳴らし躍り出たのは真っ白な猫。
「にゃーん」
 引き攣った表情の猟兵たちを見渡し一声鳴くと、チリチリと軽やかに鈴の音を響かせ、何処かへと走り去った。
「やれやれ、驚かせないでほしいね」
 瓜生を箱に収め、背に担ぐと類は立ち上がった。立ち去る他の猟兵たちに続き、ゆっくりと歩き出す。が、ふと立ち止まると、最後にもう一度、彼女に声を掛ける。
「……おやすみ……」
『ちりん……』
 何処か遠くで、優しい鈴の音が鳴り響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月18日


挿絵イラスト