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銀河帝国攻略戦④~コア連絡通路の死闘

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 スペースシップワールド。その音のない宇宙に通信信号が飛び交う。
 先のヘロドトスの戦いにおいて発見されたユーベルコード、ワープドライブ。それはこの世界の人々にとって希望の灯火であり、革命であった。
 ワールド内の宇宙船をワープさせることができるこの力があれば、バラバラになっていたコロニーを集結させることができる。そうなれば、数の力によって戦いを仕掛ける銀河帝国に対して対抗することができるようになるのだ。
 しかし、帝国もそれを黙って見守るわけはない。彼らは帝国大要塞『エンペラーズマインド』を以ってワープドライブの使い手であるミディアを、そしてそれに応じて参戦した艦隊を打ち砕こうとしているのであった。

「皆、集まってくれたかな? それじゃ、作戦概要を説明します!」
 どこかの宇宙船。一時的に拠点としたこの船で、学生服の少女白神・杏華が猟兵たちに声をかけていた。
「皆も知っての通り、今回の戦争では多くの宇宙船が解放軍として戦ってくれるんだ。けど、帝国軍は合流しようとしているその船のコアマシンを破壊しようとしている……」
 コアマシンを破壊されてしまうと、ミディアのワープドライブを設置することができなくなる。事実上、その船の参戦は不可能になるということだ。
「今回狙われている船は『ハンニバル号』。皆にはこの船にミディアさんと共にワープして、コアマシンを壊そうとするエージェントのオブリビオンを撃破。そして、ワープドライブを取り付けてきてもらいたいの」
 敵オブリビオンは『餓狼無道』というウイルスプログラム生命体だ。宇宙船の機械システムに侵入し、それを掌握。システムを通じて人々を洗脳するという能力を持つ。今回のコアマシンの破壊という任務にうってつけのオブリビオンと言えるだろう。

「このオブリビオンがコアマシンルームに入ると危険だから……戦うのはここだね」
 杏華はハンニバル号のマップを広げる。コアマシンルームに繋がる通路はただ一つだ。
 その通路は全面がガラス張りで、およそ成人男性五人分が横に並べる程度の広さ。特筆すべきはそのセキュリティシステムで、無許可に人が入り込むとレーザーを用いたトラップが作動するのだ。
 しかし、このレーザートラップはすでに餓狼無道の手に落ちている。猟兵たちを苦しめる敵の武器となってしまうだろう。
 その他、通路には合計五枚の隔壁が設置されているが、現在はこれも餓狼無道の手により開け放たれている。それ故、設置された障害物などは殆ど無いと言っていいだろう。
「レーザートラップは奥から手前に向けて迫ってくるものや、しばらくこちらを狙ったあとで足元を撃ち抜いてくるものがあるみたい。当たったら火傷じゃすまないから、くれぐれも当たらないように気をつけてね……!」
 よろしくお願いします、と頭を下げ、杏華は転送を開始した。


玄野久三郎
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 玄野久三郎と申します。オープニングをご覧いただきありがとうございます。
 ハリウッドゾンビ映画の第一作に出てきた感じのレーザートラップの通路での戦いとなります。
 また今回は戦争ということで、🔵が必要数に達し次第プレイングをお返しする場合が出てきます。戦争はまだ長いため、★の節約と思っていただければ幸いです……!
 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『餓狼無道』

POW   :    ライクアヒュドラ
自身の身体部位ひとつを【ドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    キリングイカロス
【高速演算による正確な未来予測】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【急所を撃ち抜くレーザー】で攻撃する。
WIZ   :    デウス・エクス・マキナ
見えない【遠隔操作型ナノマシン】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエクサ・カラーヌドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月見・リト
私の初戦闘が戦争だなんて...でも私は猟兵。決して怖気付きません!

プログラムでも、その攻撃は私の盾なら防ぐことが出来るはずです
私が味方の皆さんをお守りするのはもちろん、できるなら敵の隙も作ります!

●行動
大盾を構え邪魔にならない程度に味方より敵へ接近
基本は【かばう】【盾受け】【オーラ防御】で味方や自分の防衛に努める

無理せず可能ならUCを使い、敵の攻撃や敵自体をシールドで弾きつつ隙を作らせ
その敵目掛けて盾を持つ左手を敵へまっすぐ伸ばし、その方向へ盾の内側から【カウンター】のパイルバンカーを放つ

「私が皆さんを守りますので!」
「のぇぇ! ま、まだ大丈夫なのですよー!」

※アドリブ改変歓迎


カナタ・アマガ
『ハンニバル号』はやらせないわ!!
相手がコンピューターウィルスっていうなら、ウチの出番ね!ホログラムのキーボードを展開して最初っから全開でいくわ。
【エレクトロレギオン】で機械兵を展開。空中を飛び回らせて撹乱【空中戦】。こっちの準備が整う【時間稼ぎ】をするわ。
電脳空間を展開する前に、相手の【ハッキング】対策をしておくわ。
UC【アタックコード・AWC】で一斉攻撃。
ウィルス程度でウチらをどうにか出来ると思った?
ほかの猟兵達が攻撃している時は、機械兵で【援護射撃】よ


クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎

「ハッキング用の無線通信用子機弾は作成済み、後は回避しつつ当てるだけですね」

【SPD】
準備:サーチドローンを展開
方針:技能で無線通信用子機弾(ネットワークに一方的に繋げる)を作成し、狙撃する。当てた直後から、サイバーゴーグルの空間投影キーボードをタイピングしてハッキング開始!
技能:(無線通信用子機弾作成)メカニック・武器改造。(UC狙撃)視力・スナイパー。(ハッキング)早業・ハッキング

(UC)
「これさえ当てることが出来れば、ウイルスプログラムをALL0(無)で書き換えられる」

(レーザートラップ)
「根性(POW)で回避します。無理ならサイボーグなので後で自己修復しましょうか」



 猟兵たちがテレポートしたのは、無機質な銀色の隔壁の目の前だった。背後にはコアマシンルームに続く最終ドアがある。
 天井、壁、床は全てガラス張りで、透明なガラスの向こうには蛍光灯のような短い光の線が等間隔に何個も設置されている。
 目の前の隔壁が勝手に開く。その先にある隔壁も、その先にある隔壁も。そのすべてが開いた時――そこに、一体のオブリビオンが立っていた。
「クケケケ……通せんぼかよ。皮肉なもんだなァ? こんだけ厳重なトラップに隔壁にと置いといて、役に立つのはてめぇらの通せんぼだけなんてなァ?」
 鰐のような頭を持つそのオブリビオン『餓狼無道』のシルエットにノイズが入り、下品な笑い声が響く。
「ハンニバル号はやらせないわ!」
 カナタ・アマガ(スペースノイドの電脳魔術士・f06745)は真正面から餓狼無道に言い放つと、周囲にホログラムのキーボードを展開した。
「ケケケ……電脳魔術師か」
 カナタはキーボードを叩き、周囲の空間に電脳空間を重ねていく。目的は、電脳空間における敵の位置をロックオンし、現実世界において追撃すること。X,Y,Z、正確な空間座標のロックが敵の逃げ場を奪う。
 その座標特定の時間稼ぎのため、同時に彼女は機械の兵を飛ばしていた。空を自由に飛び交うそれらが餓狼無道に銃を向ける。
「ケケ……クケケケケ……」
 だが、実際に機械兵が敵に向けて発砲することはなかった。彼らは空中で何かに衝突、或いは殴りつけられたかのように落とされていく。
「な、何……!?」
「クケケ……こんなオモチャみてぇな武器と端末でよォ。俺様を止められるかよ!」
 空を飛んでいた機械兵のうち一体が、苦しげに動いた後にカナタに振り返る。……そして彼女に銃を向け、発砲した。
「!?」
「のえぇい!」
 その弾丸を盾で弾いたのは月見・リト(盾巫女パイラー・f13776)だ。この戦いは彼女にとって初陣でも、味方を守るというその矜持は彼女の足をスムーズにカナタの前に運ばせた。
「私が皆さんを守りますので! 今のうちです!」
「今の機械兵の動き……どうやら、ナノマシンか何かで餓狼無道がコントロールを乗っ取るハッキングを行ったのでしょう」
 ゴーグル越しに状況を確認したのは、同じく電脳魔術師であるクネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)。
 電子機器を下手に出せば、敵に即座に操られかねない。索敵とロックオンのためのドローンを飛ばそうとしていた彼も、今はそれができないことを知っていた。
「じゃあ、どうしたら……?」
「これを見てください。ハッキング用の無線通信用子機弾です。これは事前に作成済み、後は回避しつつ当てるだけですね」
 彼が取り出したのは小さな弾丸だ。機械に撃ち込むことでその機械へのアクセスを可能とする特殊な弾丸であり、敵そのものにハッキングを行うことができる。
「これさえ当てることが出来れば、ウイルスプログラムをALL0で書き換えられる」
 だが無論、それは当たればの話だ。それが困難であることは、彼らも皆理解していた。

「クケケケ……そいつァ恐ろしいねぇ。シルバーバレットってか? まぁ……んなもんで狙う暇なんか与えねェがなァ!」
 餓狼無道は右手を掲げる。するとガラス張りの左右の壁の二箇所に光が集まるのがわかった。集まった光は点になり、そしてそれは線になる……壁から壁へ一直線に繋がった、レーザーのナイフが彼ら三人に迫った!
「そ、そうはさせませんっ!」
 リトは二人の前に出ると盾を構えた。その表面を薄くバリアが覆っている。青い光のレーザーナイフはバリアによって僅かに上方向に軌道をズラされて直進し、カナタとクネウスは難を逃れる――だが代償として、リトの盾の一部は切断されていた。
「のえぇぇ!?」
 切断面は赤く焼けて熱気を放つ。威力がいかほどのものか、その傷痕が証明していた。生身の肉体に当たれば間違いなく両断されるだろう。
「のえぇ……でも。ま、まだ大丈夫なのですよー!」
 盾はまだ構えられる。すべてがなくなってしまったわけではない。彼女は再び盾を構え、次のレーザーナイフが来る前にと突撃した。
 盾で防げないならば、攻撃されるより先に本体を叩くほかない。そう考え走るが、彼女が盾による攻撃可能距離に届くより前に、再び餓狼無道はレーザーナイフを起動した。
「クケケケ……諦めな」
 今度のナイフは横方向に二本。縦方向に三本の格子状のレーザーだ。或いは飛び込めば避けられるかもしれない。そうリトが考えた矢先、レーザーの軌道が急に変わる。
「元よりてめェらを生かすつもりなんざねェんだよ!」
 レーザーは軌道を変えつつ、増殖した。三本が六本に、六本が十二本に。リトの元に迫る最中にそのレーザーは賽の目状に変形し、もはや通り抜けたり回避することは不可能になっていた。
「の、のえぇ……」
 一歩下がったリトの横を、後ろから弾丸がすり抜けていった。それは餓狼無道を狙ったクネウスによる狙撃。
 無線通信用子機弾は回転しながらレーザーナイフの網の目の隙間を通り抜け、そして敵の眉間に突き刺さった。
「ガフッ!?」
「今だ!」
 カナタとクネウスは一斉にタイピングを開始した。電脳魔術師たちによる攻撃が餓狼無道に襲いかかる。存在の殻を破り、その内部を変革せしめんとする力がオブリビオンに流れ込んでいく。
「クク……グガガ……」
 彼の体にノイズが走る。そして、レーザーナイフの動きが止まり、やがて消えた。まず二人は敵による攻撃行動を止めさせたのだ。
「ガ……ふ……ざけるなァァ!!」
 直後、二人の電脳空間に多数のエラーウィンドウが現れた。餓狼無道による逆ハッキングである。接続されたその通信は一方通行ではない。負けじと、餓狼無道は二人の電脳空間を破壊しようと動き出したのだ。
 防御のために二人はキーボードを叩く。だが、タイピングという行為自体、ウイルスプログラムである餓狼無道からすれば全くの無駄であり遅延であった。ニューロン速度と同等で電脳空間に働きかけることができる電子の生命が相手では、いかに二人の猟兵といえど苦戦せざるを得ない。
「くっ、…速すぎるぞ!」
「クク、ククク……脳から直接打ち込めねぇとは無駄な動線だな!」
 餓狼無道のハッキング速度は止まらない。このままでは逆に掌握される……その刹那、カナタは敵の動きの乱れを発見した。
「のえぇぇ〜〜い!」
「なッ……クソ、邪魔するじゃねェぞテメェ!」
 現実空間において、リトが攻撃を再開したのだ。これには敵もハッキングに集中できず、目の前のリトに意識を向けざるを得なくなる。その分、ハッキングの速度は低下していく。
「クソが……さっさとテメェをぶち殺して再開だなァ!」
 餓狼無道の手が0と1のノイズに呑まれたかと思うと、龍の頭のような姿へと変化していた。それは蛇のようにのたうち、リトに食らいつこうとする。
 だが、これを彼女は盾で受け止めた。それだけではない。裏側がゴトリと動いたかと思うと、その盾の中心からパイルバンカーが飛び出したのだ!
「グガァ!?」
 意表を突いた一撃に彼の右手が破壊される。これにより決定的にハッキングの集中力を欠いたその瞬間、カナタとクネウスは『餓狼無道』というシステムに侵入し、その定義を書き換えていく。
「グオ……く……テメェら……勝手な真似を!」
 敵は頭を抱えのたうつ。電源を落とし、完全に停止させるまであと僅かだ。
 が、突如通信がロストする。それは餓狼無道によるネットワーク使用の断絶だった。彼はこれでハッキングをこれ以上受けることはないが、これ以上周辺の機器を操ることもできなくなった。
「この……クソどもが! いいぜ……直接俺様の手で嬲り殺してやりゃ済むことだ!」
 それでも、彼の敵意は収まらない。餓狼無道は再び牙を剥いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
わわっ、こんな所で戦うなんて大変だよっ!
何とかしてレーザーだけでも防がないと!

レーザートラップでガラス張りってことは、純粋に高収束率高エネルギーの光を照射する兵器ってことだよね。
だったら、乱反射させて散らしちゃえばかなり軽減できるはず!
ということで【エレメンタル・ファンタジア】発動!
氷の精霊さんと風の精霊さんの力を借りて、予めこの空間に猛吹雪を吹かせるよ。
氷は透明なのに雪が白いのは、光が乱反射して向こう側が見えないから。
だからガラス全面を雪で埋め尽くしてあげれば、レーザーなんか届かないよっ!

あとは精霊さんと一緒にみんなを応援するね!
……えっ、寒い?
えっと、あはは……ごめんなさいっ!


アウグスタ・ヴァイマール
ここが異世界、実際に訪れるのは初めてですわ
あれが敵の災魔……オブリビオンというのでしたかしら?
異世界であれ排除する事に変わりはありませんわね

なるほど敵の攻撃は光に、目に見えないほど小さな機械も操ってくるのですわね
ならば

アウグスト、ヨハネス、出番ですわよ

赤と黄色に光る人工精霊が生み出す魔法力を駆使して顕現する自然現象は超高温の火砕流
噴き出る黒煙は光を散らし、その高熱は小さな機械など簡単に機能不全にしてしまいますわ

火砕流で敵の攻撃の勢いを削いだ所で本命の攻撃を
【属性攻撃】【全力魔法】をのせた数m級の火山弾をお見舞いしますわ

この世界では失われて久しいという大自然の素晴らしさ、教えて差し上げますわね



「ガ……グゥッ……!」
 餓狼無道は頭を押さえ、透明の壁にもたれかかった。そして、破壊された右手をガラスに叩きつける。パリンと小さな音が鳴り、高圧の電流が彼の体を伝った。
「ハァー……ハァー……無線での接続ができねぇならよォ……直接触れて操りゃ良い訳だなァ!」
 通路の向こうの光が瞬いたと思うと、再び壁に光が集まっていく。レーザーナイフが生まれようとしていた。
「わわっ、またアレをやるつもり!? 何とかしてレーザーだけでも防がないと!」
 鉄をも簡単に切断するレーザーを防ぐのは簡単なことではない。だが、荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)はその為の索をすでに考え、実行に移していた。
「氷の精霊さん、風の精霊さん……お願いっ!」
 彼女が精霊に呼びかけると、チラリと光るものが落ちたのが見えた。それは一つではなく、二つ三つ、すぐに数えきれないほどの数になる。雪だ。この室内に、吹雪が吹き荒れていた。
「なッ……何だこれは……データ照合……情報なし……何の現象だ!?」
 餓狼無道は白く染まりゆく視界の中で混乱していた。ウイルスプログラムとしてスペースシップワールドで生み出された彼は、星の環境下で起こる自然現象のデータなど持ち合わせなかったのだ。
「氷は透明なのに雪が白いのは、光が乱反射して向こう側が見えないから。だからガラス全面を雪で埋め尽くしてあげれば、レーザーなんか届かないよっ!」
「雪……ユキ……氷の、粒だと!?」
 その雪がバタバタとガラスに張り付いていくと、確かに収束しかけていた光が散っていくのが見えた。通路の向こう側から集められてくる光が、張り付いた雪によってあらぬ方向に反射されているのだ。
 廊下内には、辛うじて雪の隙間から漏れる細いレーザー光も入り込んできていた。しかしそれは所詮細かな光。収束せず指向性も持たないバラバラな光は、もはやナイフほどの威力を発揮することはできなくなっている。
「馬鹿なァ!」
 餓狼無道は腕をガラスから引き抜くと、ひかるを睨みつけた。術者を排除すればこの雪も止まる。行動を起こそうとした直前、ひかるを守るように一人の少女が前に立つ。
「ここが異世界、実際に訪れるのは初めてですわ。そしてあれが敵の災魔……オブリビオンというのでしたかしら? 異世界であれ排除する事に変わりはありませんわね……へっくし!」
 アウグスタ・ヴァイマール(魔法学園のエリートお嬢様・f02614)である。吹き荒れる猛吹雪に彼女は思わずくしゃみし、肩を擦った。
「えっと、あはは……ごめんなさいっ! 寒い、よね……?」
「い、いいえ。この程度何てことはありませんわ。それに……今から、すぐ熱くなるのですから。アウグスト、ヨハネス、出番ですわよ」
 ひかるが自然に生まれた精霊に力を借りたのに対し、アウグスタが呼び出したのは人工精霊である。赤と黄色、火と地の魔力を受けた彼女は、それらの力によりある自然現象を新たにこの部屋に呼び起こした。
 地が揺れ、隆起する。そこから放たれるのは地獄のような黒煙と、赤い溶岩のような火砕流である。
「わぁ、すごい……!」
「データ照合……情報なし……チッ、使えねェ! 何だろうが構やしねェ、結局ただの高温物質だろうが!」
 餓狼無道は未だ室内に漂うナノマシンに指令を出した。自然現象を操る術者二人を始末せよと。……だがいつまで待っても、ナノマシン側からの通信がなく、動いている様子もない。
「まさか……」
 低温と高温を短時間で行き来したこと。雪に吹き荒らされ、一部が地面に雪とともに落ちたこと。吹き上げる黒煙によりナノマシン同士の連携や通信が阻害されたこと。
 これらが重なったことにより、すでにナノマシンは破壊されていたのだ。レーザーナイフ、ナノマシン、餓狼無道はすべての遠隔攻撃手段を失った。
「舐めんじゃねぇ……そんな程度で……!」
 それでも彼は左手を龍の頭に変化させ、フラフラと歩き出した。目指すは彼女らの命。腕を構え、進んでゆく。
「この世界では失われて久しいという大自然の素晴らしさ、教えて差し上げますわね」
 だが、アウグスタの攻撃は未だ終わっていなかった。隆起した地面から黒々とした岩が一瞬顔を覗かせたかと思うと、それが勢いの良い溶岩と共に噴き出してきたのだ。
「ウギャアアアアアアア!?」
 その高熱と質量は彼の腹部に穴を開ける。その体のシルエットがノイズまみれになり、血液のようにダラダラと0と1の数字が滴り落ちてくる。彼自身のデータが失われているのだ。
「馬鹿な……こりゃ一体……」
「火山弾ですわ。火口からよく出てくるもので、溶岩が冷えて固まったものです。ま、これは少し手を加えているけれど」
「データ、照合……情報、なし……お、俺様が……こんな、前時代の……現象なんぞに……ク……クソがァァァ!」
 一際大きく吠えたかと思うと、餓狼無道は消え去っていった。ひかるとアウグスタは一息吐き、それぞれの精霊が引き起こす自然現象を収めさせた。
 吹雪と、火山。星を失った世界の電脳空間に生み出された悪魔を葬ったのは、どちらも星の生む息吹によるものだった。

 一つの戦いは終わったが、大局は未だ動いている最中だ。
 この宇宙船はこれで戦争に参加する戦力となった。それは小さなようで大きな一歩となるだろう。
 無論、これで終わりではない。次の戦いが猟兵たちを待っているのだ。彼らは一旦、グリモアベースへと帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月06日
宿敵 『餓狼無道』 を撃破!


挿絵イラスト