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ブレイブガード

#アリスラビリンス #戦後

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#アリスラビリンス
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#戦後


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●超オウガ戦士・王牙合体ブレイメン4
 ダラタタタターッ!
 ダラタタターッ!
 ダダダダダダダダ、パラタタタタンッ!
 見える、見えるか、あの影が!
 見える、見えるか、熱い魂が!
 今こそ合体、ブレイメン!
 ブレイオルグス・フォーメーション!!
「鶏!」
 コケーーッ!!
「犬!」
 ワンワワン!
「猫にロバ!」
 ニャヒー!!
 苦しみと孤独を切り裂いて、放て、穿て、ブレイ討ち!
 明日を照らす光となれ、ブレイブラスター!!
 合体、合体、合体、合体!
 超戦士――王牙合体ブ、レ、イ、メーーーン! フォーー!!!!
 ダラタタタターッ!
 ダラタタターッ!
 ダダダダダダダダ、パラタタタタンッ! タタンッ!

 ステンドグラスから色鮮やかな朝日の差し込む、お城の大広間。
 日課であるオープニングテーマの演奏を終えた二足歩行のヤギとオオカミのぬいぐるみ達は、楽器を構えた姿勢を崩す事無く真っ直ぐに前を見据えている。
 彼らの視線の先には、ロバが一頭。
 上に立つ犬。更にその背には猫が乗り、一番てっぺんで鶏が胸を張っていた。
「コケーーッ!!」
 コッコッコッ。
 視線が集まりきった所で高らかに響く鶏の鳴き声は、毎日繰り返される朝礼終了の合図だ。
 動物達――オウガ達が退場をするのを見送ってから、やれやれと楽器を下ろしたヤギとオオカミたちは顔を見合わせて。
「あ〜〜……毎日オープニングテーマを演奏するの、つらいよぉ……」
「わかるなあ……」
 同時に大きな大きな溜息を吐いた。

●砕け悪の王牙、究極戦士猟兵スクランブル
「お疲れ様っス〜、センセ!」
 ゆるい挨拶と共に頭を下げた小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は、顔を上げ。
「今日はちょっくらアリスラビリンスに出向いて、オウガに支配された国を救って来て貰いたいンスよ」
 猟兵たちの活躍によってオウガ・オリジンが討たれた事により、オウガ達が支配する国々はその支配体制に大きな揺らぎが生まれてきている。チャンスを逃さず、救う事が出来そうになった国々を救って欲しいのだと、彼女は言う。
「今回出向いて貰う国は、合体するオウガに支配されている国っス。……住人達は毎朝、過酷なオープニングテーマとエンディングテーマを歌う事を強要されているみたいっスよ」
 左右にゆるゆるとかぶりを振るいすゞは、沈痛な面持ち。
「しかしっス! 反骨精神旺盛な時計ウサギのセンセが国を支配しているオウガの部屋に、直接ウサギ穴を繋げる事に成功したンスよ!」
 それこそが大きな揺らぎ、支配への抵抗。
 ぐっと拳を握った彼女は、顔を上げ。
「センセにゃその穴からヒョーンと侵入して、オウガ――王牙合体ブレイメン4に奇襲をかけてブチ倒して来て欲しいっス!」
 そのまま握った拳をぴかりと瞬かせて、よろしくっスよ〜、なんて頭をもう一度下げた。


絲上ゆいこ
 いつもお世話になっております、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 今回はこういう感じです。
 よろしくお願いいたします!!!!

●受付期間
 マスターページにリンクのあるスレッドや、タグにてご案内致します。ご確認の程よろしくお願いいたします!

●不思議の国
 4体のオウガの合体した超オウガ戦士、ブレイメン4が支配しています。
 奪われて改造された城前の池は、真っ二つに割れて発射台になりますが、今回は使用されることはありません。

 現在、国民たちには超パワーでブレイメン4が戦いアリスの希望を奪うムービーの視聴が義務付けられ、朝にはオープニングテーマ、夕方にはエンディングテーマの演奏という過酷な圧政を強いられています。

●一章について
 城の一番上にあるブレイメン4の部屋へと直接奇襲をかけて、撃破をして頂きます。
 キャバリアが戦える程大きな部屋は、ブレイメン4の好きな様に改造が施されて、博士がいそうな秘密基地めいた雰囲気となっています。
 そこらにブレイメン4の追加装備などが沢山置いてありますが、奪ったり壊したりすると、嫌がります。

●国の住人
 時計ウサギや、楽団衣装の二足歩行のヤギやオオカミの姿をしたぬいぐるみの様な愉快な仲間が住んでいます。
 歌う事や楽器演奏を好み、悪い事をした者にはお腹を割いて中に石を詰める風習を持っているそうです。
 今は好きに歌う事が許されておらず、とても辛いよう。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしていまーす。ばばんばん。
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第1章 ボス戦 『王牙合体ブレイメン4』

POW   :    王牙剣ブレイ討ち
【手にした大剣(王牙剣)による必殺の一太刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ブレイオルグス・フォーメーション
【鶏オウガ、犬オウガ、猫オウガ、ロバオウガ】【の4体に分離し、それぞれ破壊音波、噛付き】【、爪で切り裂き、踏みつけによる連携攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ブレイブラスター
【胸部の発光部分】を向けた対象に、【そこから放射される破壊光線】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアリルティリア・アリルアノンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カフェラテ・ホーランド
オウガの所業を聴きつけやって参りました
わ・た・く・し・で・す・わ!

反撃の狼煙を上げる絶好の機会
お力添え致しますわ
参りましょう、ラピッド!

と、いうことで
キャバリアのラピッドを駆って参戦
真正面から突撃、などという無茶はしませんわ
わたくし、被食者ゆえに慎重派ですの

で・す・の・で
手始めにその辺の追加装備をぶっ壊して差し上げますわ!
ラピッドの両腕から砲弾を『一斉発射』
敵の気を引くのに、これで足りますかしら

オウガの攻撃は可能な限り回避
ラピッドの機動力に
わたくし自身の『野生の勘』を合わせ
機体の損傷は最低限に抑えたいですわね

反撃は敵の死角――空から降る【無限の人参】にて
さあ、骸の海かニチ●サにお帰りなさいな!


リンタロウ・ホネハミ
あー……ね
まあね、趣味じゃない歌を歌わされるってなかなかこう……やっすよね……
それにあれっすね……それが毎日、しかも2回って結構ツラいっすよね……
ハハ……
……今回モチベ沸かすのがすげぇ難しいっすねぇ!!!!

まあウダウダ言ってても敵を前にすりゃあやる気を出さざるを得ないんすけどね!
豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】を発動!
オウガ達の連携攻撃をスピードで振り切ってやるっす!
勿論それだけで全部避けれるとは限らねぇっすからね
避けれねぇのは適当に引っ掴んだ奴らの追加装備を盾にして凌ぐっす
それで奴らが動揺したならこれ幸いと呪骨剣でずんばらりっすよ!

はは、太刀を浴びせりゃ流石にテンション上がってくるっすね!



●オウガわくわく動物園
 ウサギ穴から飛び出した先では、大きなミーティングデスクの真ん中が四角にほんのり光り。その奥には何かの通信機器らしきものが講壇のような形で設えられ、壁には謎の武器のようなモノが沢山掛けられていた。
 そんな中でやや玩具っぽいデザインの鶏と犬と猫とロバが、思い思いに寛ぐ室内。
 それはUDCアースの日曜日の朝にテレビで見られそうな雰囲気の室内に、厩舎をブチこんだような光景だ。
 ――おーーおーおー、なぁるほど。こりゃ随分と……随分と……。
 大きなソファの背に身を隠したリンタロウ・ホネハミ(骨喰の傭兵・f00854)は銜えた骨を揺らして顎をさすって、眉間にきゅっと皺を寄せる。
 いや、あー……、ね。
 まあー……、あれっすね、うん。
 いやいや、ゴネてるワケじゃないっすよ。
 趣味じゃない歌を歌わされるって、まあ、なかなか、こう、……うん、やっすよね……? 解るっす、それも毎日2回って、そりゃあ、ねえ? 結構……、うん、結構ツラいっすよね。
 そんな圧政、うん……ハハ……、いやいや。圧政……。
「…………」
 リンタロウは細い瞳にピリリと緊張感を宿し。中指と人差し指で、寄ってしまった眉間のシワをぎゅっと伸ばす。
 いやまあねぇ、そりゃ悪い事もしてんでしょうけども。
 ……話を聞いてる限りじゃ、今回すげぇーー敵に対するモチベを沸かすのが難しくねぇっすか????
 なんでそんな、微妙に優しくて突っ込みづらい圧政を敷いているのか。
 しゃがんだままのリンタロウが胸裡で吠えた――刹那。
 彼の姿を隠していたソファが、強かに空へと跳ね飛ばされた。
「あら、あらあら! わるーいオウガは此方ですのね!」
 跳ね飛ばしたのは5メートルの高みから響く、愛らしい声。
「オウガの所業を聴きつけやって参りました、わ・た・く・し・で・す・わっっっ!!」
 それはサイキックで駆動するキャバリア……ラピッドを従えた小さなうさぎ、カフェラテ・ホーランド(賢い可愛いうさぎのプリンセス・f24520)である!
「さあラピッド、参りましょう!」
 巨体だというのに、その踏み込みは想像以上に軽やか。
 ラピッドのきりりと煌く眼光と両腕に備え付けられた銃口は、壁へと掛けられた武器――オウガの追加装甲へと向けられ。
「招かれざるオウガには退場願いますわっっっ!」
 鋭く一斉に解き放たれた砲弾が、オウガ達では無く飾り付けられている追加装甲をぶち抜き穿つ!
「ニャッ!?」「コケーーッ!!」「ガウッ」「ヒホ!?」
 くつろいでいた4体のオウガ達は、面を食らった様子。
 その身を跳ね上がらせて、突如現れた上に追加装甲を破壊しだしたカフェラテへと向かい、敵意も顕に勢いよく殺到する。
「――まぁ。ウダウダ言ってても……」
 隠れていたソファを奪われてしまったリンタロウは、細く長い息を吐いて肩を竦めて奥歯で骨を噛み砕く。
 そこに一瞬、彼の姿が残って見えたのはきっと残像なのだろう。
 瞬きすら許さぬ速度でカフェラテとオウガの間に潜り込んだリンタロウは、骨剣を盾代わりに前に差し出し。
 襲いかかる猫の爪を滑らせ、いなして。
「向かって来られりゃあ、やる気を出さざる得ないっすけどねッ!」
 追加装甲の残骸を踏んで浮かせると、踵で鋭く蹴り上げて。後ろから飛びかかってきていた、牙を剥き出す犬の口へとご馳走してやる。
「あらあら、まあまあ! うふふ、ありがとうございますわ!」
 庇われたカフェラテは、ラピッドの中で耳をふかふか揺らして笑い。
 ひょいんとバックステップを踏んだラピッドが、更に追加装甲を踏み潰す。
「コケーーーッ!!!」「ヒーーホーーッ!」
 壊された装甲は、彼らのお気に入りだったのだろう。
 鼓膜を破らんばかりに甲高い声をあげた鶏と、ロバが勢いよく駆け向かってきているがカフェラテは慌てない。
「あなた達が踏みつけてきたモノは、こんなものじゃ済まなくてよ!」
 カフェラテの声に呼応してラピッドが弾を放ち、オウガ達の駆ける床を穿ち刳り。
 一瞬足を止めたオウガの背後より、空を駆けるめちゃくちゃ硬い人参が雪崩を打って押し寄せる!
「ッ、らァッ!」
 人参のラッシュにオウガ達が動揺し、包囲が崩れた隙を逃す事無く。
 強く踏み込んだリンタロウが骨剣を振り抜くと、放射状に吹き飛ばされるオウガ達。
「ははっ、硬いっすねぇ!」
 腕を引いて骨剣を体に寄せたリンタロウは、小さく笑い。
 その細い細い瞳でオウガ達を睨めつけて、腰を落として構え直す。
「――ま、流石に太刀を浴びせりゃ、テンションも上がってきたっすよ!」
 彼に合わせる形でラピッドを構えさせたカフェラテは、ぴしっとオウガ達を指し示し。
「さあ、オウガ達! 骸の海か、ニチアサにお帰りなさいな!」
 指し示されたオウガ達は、顔を見合わせて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
なんてやかましい国かしら
なんなのそのなんとかテーマって
それにあっちこっちでガチャガチャピカピカ
わけがわからないったら、もう!

穴をジャンプで跳び出して
落ちる勢い、肉切り包丁重量攻撃叩き割る
そのままひらりと身を躱し
追加装備の上へと着地する
なんなのかしら、このオモチャ
そうわざと踏みつけて怒らせて
敵の攻撃誘ってみせる

その攻撃が敵のオモチャに当たるよう
わざと惹き付けながら逃げ足活かし
まぁ、こわい。怒ったのなら捕まえてご覧なさいと
お尻ペンペン逃げ回る

いくら破壊光線の命中率が高くても
巨人殺しなら躱せるはずだから
頭に血が(流れてるのかしら?)上るまで引っ掻き回し
目が回るまで引きずり回し
隙を見せたら食らい付く!


シャルロッテ・ヴェイロン
まぁね、今時アニメのロボで「変形・合体」なんてのは旧世紀の発想なのですよ。
今時はキャバリアみたいに「兵器」としての描写が主流なのです。というわけで――

ロールアウトされたばかりの「ホワイトラビット」を【操縦】して颯爽と登場しましょうか。
さらに【指定UC】でリアルロボット系のゲームキャラを召喚して【援護射撃】させつつ、【ダッシュ】からのシャイニングセイバーによる攻撃で【切断】といきましょうか。
あとは【ATTACK COMMAND(【破魔・属性攻撃】)】の【一斉発射】でとどめといきましょうか。

※アドリブ・連携歓迎



 ワンダバダヴァダヴァ。
 ワンダバダヴァダヴァ。
 何処からともなく流れ出す、勇ましきリズム。
 力を欲すか、――オウガ達よ!
 スピーカーから謎の声が響き渡ると同時に室内がプリズム色のキラメキに満たされて、小さく頷きあった4体のオウガ達は顔を見合わせたまま光に包まれた。
 ワンダバダヴァダヴァ。
 ワンダバダヴァダヴァ。
「コケーーーーッ!」
 輝いた鶏が大きく翼を広げると、その形を揺らがせながら空中で滞空する。
「ヒーーッ!」「わおーーん!」
 駆け込んできたロバが跳ねるポーズから不自然な動きで浮き上がり、空中で体を畳むと1対の足へとその姿を変えて。
 そこへ吸い込まれるように犬が飛び込んだかと思えば、光り輝く胸部へと変形した。
「にゃ、にゃ、にゃっ!」
 光り輝き合体する仲間達にコミカルな動きで爪を立てて登る猫は、肩へとたどり着いた途端にその体が光に満たされ、腕となり――。
 空中で滞空していた鶏が再び大きく鳴いて頭へと着地した、瞬間。
 室内に満たされていたキラメキが流動性を伴って、オウガへと流れ込む!
「空が呼ぶ、地が呼ぶ、俺が呼ぶ……!」
 手にした王牙剣を逆袈裟に振り上げてから、返す手で真っ直ぐに構え直した合体オウガは背の翼を広げ。
「誰が呼んだか、超戦士――王牙合体ブ、レ、イ、メーーーン! フォーー!」
 ジャジャーーーン!!
 キラメキが弾け飛ぶと同時にカッコいい音楽が響き、胸部と頭がびかりと輝いた。
「さあ、家を荒らす泥棒どもめ、容赦せん!」
 ぷうっと頬を膨らせたメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は、ぴょーんと跳ねる勢いに合わせて大きな肉切り包丁を振りかざし。
「もう、なんてやかましい国なのかしら。その妙な歌にガチャガチャピカピカ! わけがわからないったら、ないわ!」
 ぱかんと軽い音を立ててオウガが大切に飾っていた追加装備が、まるで卵みたいにぐしゃりと割れた。
「まぁ、ちょっと触っただけなのに……、このヘンテコなオモチャ、とっても壊れやすいのね」
「……ああッ! オマエ……ッ!」
 メアリーがブチ壊した追加装備をつま先でちょいちょいと蹴り上げて肩を竦めると、ブレイメンは彼女へと向かって一直線に地を蹴って。
「まぁ、こわい。さっきのアレ、あなたのオモチャだったのね」
 突っ込んでくる巨大な腕をいなして逆に手を叩きつけたメアリーは、馬跳びの要領で腕の上へと跳ね乗り移り。
「ねえ、あなた。あなたが光っている間なぜだかメアリもじっと見入ってしまって、動けなかったのは一体何なのかしら?」
 あんまり答えは期待していない口調で、メアリーはそのまま包丁を円を描くように振り回し。逆の腕で勢いを付けると、そのまま空中で一回転。
 ひらりと舞って地へと降り立ちながら、あっかんべーのおしりぺんぺん。
「――変形・合体シーンは、一般的に無敵時間が発生するものなのです」
 加速に火花を散らすブースター。
 そんなメアリーの疑問にお答えしたのは、クロムキャバリア――ホワイトラビットを駆るシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)の声であった。
 シャイニングセイバーの柄でブレイメンの顎をカチあげたホワイトラビットは、返す手でビーム刃を袈裟斬りに振り下ろし。
 蹈鞴を踏みながらも後ろ足を床へと叩き込んだブレイメンは、クレーターを生みながら構えた王牙剣でビーム刃を受け止める。
「……むてき、じかん?」
 何の話かわからない、と言った様子で、メアリーは瞳を瞬かせ。
「それに無理に攻撃をしても、ムービー中は喰らい判定が消滅している可能性もあります。ああいう変形は、最近じゃ珍しい演出だと思いますけれどねー」
 まるっきりゲームの話だけれども、今日はそういう国なので仕方が無いのだ。
 一歩引いてロボットを召喚するホワイトラビット越しのシャルロッテの表情は、メアリーには読み取れない。
「ねえ、あなた。それってメアリにもわかるおはなし?」
 もちろんメアリーにはゲームの話もロボットの話も解る訳も無く、小さく彼女は首を傾いで。
 小さく笑いが響いたホワイトラビットより響くシャルロッテの声は、少し弾んでいるもので。
「あー……、ちょっと解りにくい話をしちゃったかもなのです。――まぁ、今時アニメのロボで『変形・合体』なんてのは旧世紀の発想だと言う事ですよ」
「なぁに? なんだかわからないけれど、なんだか楽しそうにお話するのね! あなた、とってもずるいわ」
 メアリーはまたわざとらしく怒った振りをしてみせると、ついでに壁に掛かっている敵の装備を叩き割る。
「ふふふ、楽しいですよ。それではせっかくですから、あなたにも今どきの主流『兵器』としてのロボをご覧いただきましょう!」
 シャルロッテがコマンドを打ち込みながら、朗らかに宣言した。
 新しいゲームを始める前は、いつだって楽しみなもの。
 ねえ、ホワイトラビット。
 あなたは一体わたしに、どんな戦いを見せてくれるのでしょうか。
「談笑しながら、俺のエクセレントマキシマムアタッチメントを壊すなーーッッ!!」
 そこで。
 まあまあ置いてけぼりを食らっていたブレイメンが、胸部から鋭い破壊光線を真っ直ぐに放ち――。
「まぁ! メアリもせっかくなら楽しみたいもの、その今どきのしゅりゅう? 見せてもらおうかしら」
 ホワイトラビットは高速戦闘に特化してカスタムされたキャバリアだ。
 紙一重で放たれた光線をステップで避けたホワイトラビットの肩へと、ぴょんとメアリーは飛び乗って。
「攻撃した直後って、すこし隙ができるものよね」
「覚悟するんだな、オウガ!」
 ホワイトラビットの肩から飛び跳ねたメアリーは上半身をぐうっと反って、肉切り包丁を大きく振りかざし。
 シャルロッテに呼び出出されたゲームキャラのロボットとホワイトラビットが同時に地を踏み込んで、拳を振り上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

砂羽風・きよ
【暁】

うおお!やば、めちゃくちゃ格好いいじゃん!
俺もやってやるぜ!

ダラダダダダー
ダンダンパフパフ!
(自分の声で)

――変身!きよしロボ!!
綾華、肩に乗って操縦してくれ!

おうよ!俺に任せろ!って、分裂しやがった?!
ロボだから動き鈍いんだよ!
いてーいてー!

きよしじゃねーわ!
つか、分裂なんて出来るわけ…
おいおい、使えねーって言うなよ!

ロケットパンチか?出来ねーけど、モップなら出るぞ!
手首から房糸をどばば
格好悪いとか言うかよ!これだって立派な攻撃だぞ!

くそ、効かないだと?!
何かいいの落ちてねぇかな
…お、これとか使えそうじゃね?

落ちてた武器を腕にはめて
喰らえ!ロケットパーンチ!

ふっ、また強くなっちまったぜ


浮世・綾華
【暁】

肩に乗って操縦
まあいい
確かにこーゆーの、あいつらは好きそうだし隙を作れそうだ
行け、進め。きよしロボ

おわ、分裂した!
ちゃんとガードしろよきよし(カンカン蹴る
ロボなんだからこれくらい痛くねーだろ(カンカンカン

んー、そうだな…お前も分裂したら?
犬きよし、猫きよし、鶏きよし……できねーのかよ
使えねーな
じゃあロケットパンチは?ロケットパンチくらい出るだろ
モップ?汚なっ

しょうがねーな
この高さなら視界は良好だし、俺が攻撃を凌いでやる
鍵刀を複製してそれぞれにびゅんびゅん

なにそれ使えんの?
じゃあ今度こそ
ろけっときよしぱーんち
おお、いいじゃん
もっかいもっかい、はよはよ

確かにロボきよし
普段のお前よりは使えるな



 何処からともなく流れ出した勇ましきリズムと共に、光に包まれて合体をしたオウガ達。
 その名も――王牙合体ブレイメン4!
「うおおおおお、待ってくれ綾華! 見たか!? 見てたな!? 何だあれ、やば、めちゃくちゃ格好いいじゃん!!!!」
「うん、見てた見てた」
 拳をきつく握り込み瞳をぺっかぺかに輝かせた砂羽風・きよ(タコヤキカレー・f21482)は、心底興味のなさそうな視線を向ける浮世・綾華(千日紅・f01194)の服裾をぐいぐいと引いて。
「こうなったら仕方ねーな、俺も変身するぜ――きよしロボによ!!」
「え? 何? オマエまで変身すんの?」
「――変身ッッ!」
 綾華の困惑と言葉を置き去りに、きよは力強い宣言と共にビートを自ら口ずさみだす。
「ダンダラダラダラダダダダー、ダン、ダダンッ、パフ! パフ!」
 足で刻むリズムに合わせて、指先まで意識して格好良く振るわれる腕。
 顕れたきよの屋台はその形をざらりと崩して、逆再生動画のようにきよを飲み込み形が組み上げられて行く。
 瞳に灯る明かりは裸電球色。染み付いた出汁の香りに、屋台の旗が華々しく揺れる。
 見慣れた屋根色の頭に、大きな車輪が額へブロックのようにぱちりとハマれば――。
 腕を引いて、腰を落として、ステップ踏んで、しゅしゅっとワンツーパンチ!
「きよしロボッッ!!!」
「うわ出た、きよしロボ……」
 きよしじゃねーって言う割には、自分で毎回きよしロボって言い切ってるよな……きよしロボ。
 きよしロボを見上げて、綾華は眦を和らげて心の中だけで優しくつっこんであげている間に。
「よっし、綾華! 肩に乗って操縦してくれ!」
 パンチの踏み込みの勢いで頭を下げたきよしロボが、そのまま綾華を肩に迎えいれる。
 おとなしく掬い上げられながら肩へ腰掛けた綾華は、きよしロボの中に埋まっているきよの顔を見下ろし。
「その操縦、前も特に意味は無いって言ってなかった?」
「へへ。でも、なんか強くなった気はするだろ!」
「……そうか。まあいいケド……、たしかにあいつらの気は惹けたみたいだし」
「だろだろ!」
 言葉を交わした二人が視線を前へと戻すと、王牙剣を真一文字に構えてきよしロボを睨めつけるブレイメン。
「人のアジトで変身とは、ふてえ野郎だな!」
「きよしロボ、敵ロボがなんか言ってんぞ。行け、進め」
 これこそが綾華の操縦。
 ブレイメンを指差す綾華の言葉に合わせて、きよしロボはその身を前進させる!
「おう! 俺に任せろ!」
 がしゃこん、がしゃこん。
 大きな音を立てる足が、慎重に地を踏み込み――。
「……」
 綾華が瞳を細めて、向かい来るブレイメンときよを見比べる。
「……遅くない?」
「いやー、ロボだからな!! 多少は鈍くなるぜ!」
 きよの言葉に綾華が突っ込む隙も無く。
 一気に間合いを詰めたブレイメンが、きよしロボの目の前でばらりと4体に分かれ。
 大口を開いた犬が牙を立てて、鋭い爪の猫が袈裟斬りに爪痕をきよしロボへと刻む。
「うわっ、いてーいてーっ!!」
「え、きよし、ロボならちゃんとガードしろよ。ロボなんだからこのくらい痛くねーだろ」
 ガードにロボの腕を上げたきよしに、肩の上でロボを蹴って叱咤激励の鼓舞を贈る綾華。
「ちょっと待った、だれがきよしだ、きよしじゃねーし!」
 わあわあ騒ぎながらロバの強かな踏み込みをガードの上からまともに食らったきよしロボは、その勢いで地へと踵の形に轍を生み。
 きよしの抗議は聞こえなかった振りをした綾華が、何やら思いついた様子でこんこんとロボの肩を叩いた。
「なあなあ、きよし。お前も分裂したら?」
「おいおい、分裂なんて出来る訳ねーだろ!」
「使えねーな、きよしロボ」
「つ、使えねーって言うなよ! 格好いいだろきよしロボ!」
「じゃあロケットパンチは?」
「ロケットパンチ……、は、出来ねーけど、モップなら出るぞ!」
 超音波じみた鳴き声を漏らす鶏に向かって、腕を突き出したきよしロボの手首からボロンとこぼれ落ちるモップの房糸。
「うわ、汚っ」
「なんでだよ! これだって立派な攻撃だぞ!?」
 しかし何といっても言っても、手首の先からこぼれ落ちているのはモップの先だ。
 勿論鶏の声を止める効果なんて、ありはしないもので。
「くそ、効かない……だと?!」
「モップだしな。しょうがねーなー」
 やれやれと肩を上げた綾華は、鍵刀を手に。
 刃先でくるりと円を描けば、解けるように空中に連なった刀の数は九十九振り。
「きよしロボの必殺技が出るまで、俺が凌いでおいてやるよ」
 指揮をするように綾華がその切っ先を敵へと向けると、4体のオウガへと向かって刀が殺到する。
「……俺に任せろって、いっただろ!?」
 殺到した刃に敵が怯んだ瞬間にきよの目に入ったのは、床に積まれていた敵の追加装備。
 一度しゃがんで、そのナックルを拾い上げたきよしロボは――。
「おお、何、何?」
「喰らえッッ! きよしロボ――ロケットパーンチッッ!!」
 きよの気合の声と共に、突き上げられた拳。装着したナックルが光り輝く!
「コケーーッ!?」「ニャーーッ!!」
 そうして鶏と猫の間にブチかまされた、ロケットパンチ!
「おお、いいじゃん」
「ふっ、また強くなっちまったぜ」
 刀を操りながら瞳をぱちぱちと瞬かせた綾華に、きよはロボの中で髪をかきあげ。
「ねえねえ、きよし。もっかい、ロケットきよしパンチ、もっかいもっかい、はよはよ」
「ま、待て、待て! アレ拾いに行かなきゃもっかいはつかえねーから!」
「なんだよ、やっぱり使えねーな、きよしロボ」
「人の武器を盗ったら泥棒ッッ!!!!」
 二人が軽口を交わし合う間に、再び合体したブレイメンは一気に間合いを詰めて。
 王牙剣を上段から振り下ろして、きよしロボに向かい打ち!
「う、うおおおおっ!? 危なっ!?!?」
 慌ててガードを上げて、剣を防いだきよしロボに綾華は一つ頷き。
「……でも、確かに。ロボきよしは普段のお前よりは使えるかもネ」
「普段の俺も使えるけど!?!?!」
 わあっと、またきよは叫ぶのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリジ・グッドウィン
【特務一課】
GW『(今回のキャバリア名、アドリブで)』搭乗
出たな、雪丸鳳花(いつもの挨拶)
今回はどうしたいって?突拍子のない事やり出す前に「一応」聞いておく
一見まともなんだけどなァ。オレが着いていけないだけか?

追加ロボとか秘密兵器とかめんどくせぇし
周りの設備をRX-Aランブルビーストでの電撃爪で引っかいたりコード千切ったりどんどんぶっ壊していく
ほれマダラ、これなんかぶん回すのに丁度いいんじゃね

なあ…コイツ(サチコ)実は無茶振りされてんじゃねェか?
戦闘しねぇのかよ!仕方ねぇ。マダラ、盾頼むわ
アイツ等が惹きつけてる間にレーザーでブレイメン4に援護射撃。RSチックル・エビルでオウガの内一体を撃ち抜く


斑星・夜
【特務一課】

※灰風号搭乗

ねぇねぇキリジちゃん、雪丸ちゃん先輩!
うちにさー、等身大のうさぎのぬいぐるみがあってねぇ。
ここの住人に何かちょっと似てるから、放っておけないなって!

雪丸ちゃん先輩格好良い!
ひゅー!サチコちゃんの歯ギターだ!

オーケー、ありがとーキリジちゃん!
雪丸ちゃん先輩とサチコちゃんの音楽にノリながら、パワーアップされる前にあいつ倒しちゃおうぜい!

RXSシルバーワイヤーで強化パーツを釣りあげて、そのまま利用
グラウ・ブリッツの電撃を込めて、振り回して(範囲攻撃)敵を含めてあちこちぶっ壊すよ!

敵から味方への攻撃は『AEP可変式シールド・アリアンロッド』で庇って盾受けするよ!


雪丸・鳳花
【特務一課】

※サチコ搭乗

音楽は強制するべきものではない
夢や希望を与えるものだ
そうは思わないか、キリジくん、マダラくん(斑星さん)
ブレイメン4とは音楽性の違いで相容れない
対バンだ!
ボクらの音楽で住民を助けよう!

ということでゲリラライブだ!
来てくれ、サチコ!(キャバリア名)
キミの得意技、歯ギターを見せてやるんだ!
なに!?ギターを忘れた!?
ならば、この部屋のもので代用だ!
(ブレイメン4の追加装備を拾う)


説明しよう!
鳳花とサチコが歌って踊る事により、
【ハイカラさんは止まらない】が発動して、
なんかすごくピカピカ光るぞ!
意図せず目立って囮として機能するのだ!
あと、サチコは鳳花の無茶振りには慣れっこだ!



「うちにさー、等身大のうさぎのぬいぐるみがあってねぇ」
 ――時を遡る事、少し。
 これは3人がうさぎ穴へと飛び込む前の事。
「そのぬいぐるみが今から行く国の住人に、ちょっと似てる気がするんだよね」
 それでなんだか放っておけなくてさ、なんて。
 真っ白な手をひらひら揺らした斑星・夜(星灯・f31041)は、深いクマの刻まれた金の眦を和らげてゆるーく笑い。
「へぇ……、なるほどなァ」
 何にせよ、同僚のやる気がある事は良い事だ、と。
 鮮やかなマゼンダ色の髪を揺らしたキリジ・グッドウィン(proscenium alexis・f31149)は、夜の言葉に相槌一つ。
 ラー、ラララー、ラー♪
 そこへ高らかに響き渡った、ソプラノボイス。
 徐々に近づいてくるその歌声は夜にとっても、キリジにとっても非常に聞き覚えのある声だ。
「……出たな、雪丸鳳花」
「おっ、雪丸ちゃん先輩も来たんだ。おーい!」
 思わず瞳を半眼に細めたキリジがもはやお決まりになってしまったフルネームを呟くと、夜は両腕をぶんぶん振って。
 胸に手を当てて気分良さげに歌う赤髪の少年――、否。
 ボーイッシュな少女はくるりくるりと舞うように、二人の前で足を止めた。
「やあ! キリジくん、マダラくん!」
 顔を上げてぱっと華やかに笑んだ雪丸・鳳花(歩く独りミュージカル・f31181)は、夜に合わせて大きく手を上げて挨拶一つ。
「ボクは思うんだ、――音楽は強制するべきものではなく、夢や希望を与えるものだとね」
 それからぴかぴかと瞳を輝かせた彼女は、まあまあ唐突な切り口で言葉を紡ぎ出した。
「あー、一応聞いておいてやるがよ……」
 彼女の言葉は大体突拍子も無いものだと認識しているキリジは、やれやれと肩を竦める。
 今回の話の切り口こそまだまともな事を言っているようだが、これから一体何を言い出すつもりやらと、彼は自らのこめかみを指先でトン、と叩いて。
「で、……今回はどうしたいって?」
 『一応』、その先を促してやる。
「ハッハッハ! 話が早いね、キリジくん! そうだね、ボクらはブレイメン4とは音楽性の違いで相容れないだろう?」
「音楽性の違いとやらに、オレを巻き込むな」
「あっはっはっは! へーなるほど。 何、何、そんで、そんで?」
 あっ、これやっぱり突拍子もねェ話だな、って表情になるキリジ。
 笑いのツボに入った様子で、けらけらと笑って応じる夜。
「そう、対バンだ!」
 そんな二人の返事に対して大きく頷いた鳳花は、どこか芝居がかった動きで腕を振って。
「ボクらの音楽で、住民を助けようではないか!」
 胸を張って、自信満々の表情で言い切る鳳花に――。
「対バンかー!」
「対バン……?」
 二人は同じ言葉を口にしながら、正反対の反応をしたのであった。

 ――そうして時は、現在へ至り。
 第三極東都市管理局戦術作戦部特務一課による、ゲリラ対バンライブの開催と相成った訳である。

「さあ、サチコ! 今こそキミの得意技、歯ギターを見せてやるんだッ!」
「ひゅー! 雪丸ちゃん先輩格好良い~~! 見せて、見せて~~、サチコちゃんの歯ギター!」
 サイキックキャバリアのサチコに乗り込んだ鳳花が、朗々とサチコへお願いをすると。その横のジャイアントキャバリア――灰風号の中で、夜がやんやと手を叩く。
「……いや、まずギターなんて持ってきてねェだろ?」
 一応突っ込んであげるキリジは、GW『ペネロープ』を駆って。
 他の猟兵達が敵を食い止めている内に少しでも敵のパワーアップを阻止すべく。遊んでいる二人を尻目にペネロープの爪に雷撃を宿すと、横薙ぎに腕を振るい。
 鋭い爪が壁を撫でた刹那、見る間に雷撃が爆ぜて敵の装備や部屋の家具がガラクタと化してゆく。
「あ! 本当だ、ギターが無い!?」
 鳳花は少し驚いた様な声を上げるが、既に代案はあるようで。
 無駄に自信に溢れた表情で笑うと、人差し指をぴっと立てた。
「――ならばサチコ! あっちのギターっぽいモノで歯ギターだッッ!」
 おはようからおやすみまで鳳花の暮らしを念で見つめるサチコは、鳳花の無茶振りなんて最早慣れっこだ。
 キャバリアの歯って何とか、歯ギターが得意技なんだとか。今更、鳳花の意味不明の指示にサチコは決して動揺したりしない。
 指示されるが侭に壁に掛かっていたメカメカしい巨大な戦斧を迷い無く手にしたサチコは、エアギターと共に熱いステップを踏み。
 ラー、ラー、ラララー♪
 鳳花もその足取りに合わせて高らかに歌い始めた、その瞬間。
 サチコがぴかりと輝きを放ち、その背に目映き後光を宿す。
 どこか尊さすら感じられる、美しき光景に――。
「さっきからうるせえ~~~~ッッ!!!!」
 他の猟兵にブッ飛ばされて転がってきたブレイメンが大剣を振り上げて、光って音が鳴るサチコを睨めつける。
 その威嚇にも動じる事無くサチコと鳳花は、尚も歌って、踊って、光って――。
「……なぁ。コイツ平然と対応してるみてェだけど、実は無茶振りされてんじゃねェか?」
 ペネロープはぶん回すのに丁度よさげな無闇にトゲトゲした盾を、灰風号に手渡しながら。その中のキリジが思わず口にしてしまった素朴な疑問。
「あはは、サチコちゃんが無茶振りされてるって? そんな事……、そんなこと……。まあ、あるかもだけど、対応できてるし大丈夫じゃないかな?」
 灰風号は手渡された巨大な盾にワイヤーに引っ掛けながら、夜が小さく肩を竦めた。
 無茶振りされて無いとは、とても夜には言い切れはしないもの。
 だってどうみたって無茶振りをされているもんねー。
 ラー、ララー♪
 ブレイメンより放たれるビーム、穿たれる刃。
 二人が言葉を交わす間も、サチコのダンスと鳳花の歌はとどまる事が無い。
 ――彼女がハイカラさんである以上、歌って踊って光っている間、鳳花とサチコはその防御を破られる事は決して無いが――。
 その事実にはっと気付いたキリジは、顔を上げて。
「……あッ! もしかしてコイツ、戦う気ねェな!? あーー……、仕方ねぇ。マダラ、前は頼むわ」
「オーケー、行こうか! キリジちゃん!」
 夜が楽しげに笑って応じると、括り付けた盾をまるでモーニングスターのように振り回した灰風号は、ペネロープの前へと大きく踏み込み。
「よーし、雪丸ちゃん先輩とサチコちゃんの音楽にノリながら、あいつを倒しちゃおうぜい!」
「オレはあの音楽にノる気はねェけど!?」
 それこそがきっと、キリジと鳳花の音楽性の違いなのだろう。
 なんだかんだで敵の気を惹きつけているサチコを一瞥すると、ペネロープは身を低くライフルを構えて。
「今度楽器を触ろうってこの前話したけれど、先に対バンしちゃったねぇ」
「本当にこういうのが対バンっていうのか?」
 軽口を叩き合う二人は、唇に笑みを宿したまま。
 鋭く盾を叩き込むと同時に、ライフルから放たれたレーザーが敵を撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

フリル・インレアン
ふええ、なんで私はこんな所に迷いこんでしまったのでしょう。
絶対役不足だと思います。
勝負にもならないんじゃないですか?
ふえぇ、でもアヒルさんもやる気満々ですし、どうしましょう?
とりあえず、あの剣には当たらないようにしましょう。
あれでは切断で済まないと思います。
とりあえず、サイコキネシスで剣を抑えてみましょう。
その隙にアヒルさんが攻撃ですよ。



 吹き飛ばされ、ねじ曲がったオモチャめいたデザインの武器。
 何処からともなく響いてくる、謎の戦闘挿入歌。
 肩を跳ねて駆けるフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、近付いてくる気配に大きな帽子の鍔を両手で抑えて。
「ふ、ふええええ……!?」
 なんとか距離を取ろうと床を蹴って大きく飛び跳ねると、勢いもそのまま床をごろごろと転がって行くフリル。
 その回転の最中に、数秒前まで彼女が居た場所を熱線が通り過ぎて、壁を爆ぜ飛ばす光景を目の当たりにした彼女は、ふるふると顔を揺すって。
「ど、どうして私は、こんな所に迷い込んでしまったのでしょう……!」
 なんとか立ち上がると、起こってしまった不幸に眉を寄せて嘆きの声を上げた。
 爆音、銃音、咆哮に、切り結ぶ刃の響き。
 猟兵達とオウガの衝突は、秘密基地めいたオウガ達の憩いの部屋を戦場へと変えている。
 そんな鉄火場に繋がるウサギ穴にうっかり飛び込んでしまったフリルは、困ったように眉根を寄せて。
「あんな大きなロボットさん、わたしでは勝負にもならないですよ……」
 しかし。
 そんな自信を完全に喪ってしまった彼女の周りを飛び回って突く、小さな影。
「ふえぇ……、アヒルさん……?」
 ガジェットのアヒルさんは臨戦態勢を解く事無く、彼女に戦うように促しているようだ。
「ふわぁ……、そうですか……。アヒルさんはやる気満々なのですね……」
 アヒルさんがやる気である限り、フリルだけ逃げ出す事は決して出来はしない。
 なんたってアヒルさんは、フリルの大切な相棒なのだから。
 細く息を吐いた彼女の緋瞳の奥に、覚悟の色が宿る。
「行きますよ、アヒルさん……!」
 そしてその視線に宿ったのは、覚悟だけでは無かった。
 フリルが力を籠めてブレイメンを見上げると、不可視のサイキックエナジーが敵の四肢へと絡みつき――。
「……!」
 瞬間。
 フリルのサイコキネシスに囚われたブレイメンは、その身を動かす事が出来なくなってしまう。
 ぎゅっと拳を握ったフリルは、敵を睨めつけたまま。
「お願いします!」
 猛然と空を駆けたアヒルさんが、ブレイメンへと体当たりをブチかまして――!
 同時にフリルは帽子を抑えこむと、敵に背を向けて駆け出した。
 そんな彼女の背を追いかけだしたアヒルさんは、つんつんと背を突いて。もう一度攻撃しようとねだるよう。
「ふえぇ……、ず、ずっとは止めていられませんから……!」
 あの大きな剣に当たったら、切れる、では無くて潰れてしまいそうだと。フリルはふるふると顔を降って。
 ヒット・アンド・アウェイを重ねるべく、今にも振り下ろされそうな大剣より距離を取るべく再び駆け出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドガー・ブライトマン
時計ウサギ君が用意してくれた穴を使おう
様子を把握するべく、部屋に入ったらまず物陰に隠れる
こういうのはタイミングが大事だから

へえ~、何かの研究室みたいな雰囲気だ
おや?この腕輪みたいな装置はなんだろう
何だいオスカー。パワーアップアイテムかも?
ふうん、そうなんだ
どうやって開くんだろう。力技かな?よいしょっ
何もしてないのに壊れた

遊んでる場合じゃないね、ブレイメン君の背を狙って奇襲だ
大きい相手に剣で挑むのは苦しいな
“Bの花茨”
そのへんに置いてある装備っぽいものも纏めて攻撃
ついでに光線で部屋の設備も壊してくれるよう
部屋の中を逃げ回る

あ、そうだブレイメン君
ゴメン、そのへんにあった腕輪みたいなやつ壊しちゃった


都槻・綾
ニャヒー
何この掛け声
…いけません
腹筋が鍛え抜かれてしまいます

ヒョーンと穴へ飛び込み
袖で口元を覆いつつも
小刻みに揺れる肩は隠し切れない

秘密基地へ興味津々
装備を拾い上げて矯めつ眇めつしては
使用方法に首を傾げたり

あ、
良いもの発見

簡易なコントロールバーとアンテナの付いた
四角い箱を手に取り
満面の笑顔

合体ロボが向かってきたら
はい、止まって~とばかり
アンテナを向けバーを押し上げ、ビビビ(効果音

ロボなら
此れで操作できる筈でしょ
出来ないの?
ポンコツですか

真偽や可否はともかく
一瞬でも騙されて足を止めてくれたなら重畳
隙を逃さず高速詠唱
蔦蔓の檻に閉じ込めてしまいましょ

「腹に石を詰めるぞ」なんて
幻聴が聞こえているかしら



 オープニングソングのボーカル無しアレンジが、緊張感を煽るように何処かから響いてくる。
「オウガ・ソーーーードッ!!」
 ブレイメンが振り下ろす剣筋に合わせて、ブレイメンの後方で爆音が巻き上がり。
 敵の攻撃に合わせて巻き起こる爆発と、猟兵達との交戦の結果であろう。
 その煽りを受けた壁や床には大きな罅や穴が刻まれ、幾つもの装備や大きなデスクが残骸と化している。
「……なるほどね」
 何かの研究所か、秘密基地みたいな部屋だなあ、なんて。
 物陰に隠れて様子を窺っていたエドガー・ブライトマン(“運命“・f21503)は顎に手を当てて一つ頷く。
 王子様として敵の前に現れるタイミングというのは、実にセンスが試されるものだ。
 エドガーがその大切なタイミングを見計らう事は王子様として当たり前の事であり、そして観察している中で彼は一つ重大な事に気づいてしまった。
 どうやらこの国では今、ブレイメンのカッコいいポーズや必殺技、ジャンプ一つに対したって、必要な音楽や、爆発等が起こるようになっている様なのだ。
 ――もしかするとまだ何処かで愉快な仲間がBGM担当兼エフェクト係として、この部屋のどこかで働かされているのかもしれないけれど。
 エドガーの偵察した限りでは、その姿を発見する事は出来なかった。
 いやあ、ウーン、羨ましいな。
 私も歩く度に格好良い音が出ないものだろうか。
 真剣な表情で一度視線を下げるエドガーは、そこでふと目についた腕輪のようなものに手を伸ばした。
「きっとブレイメン君の装備なんだろうけれど……、なんだろうね」
 腕輪と言ってもそれはブレイメンの大きさからすればの話で、エドガーからすれば馬車の車輪ほどの大きさだ。
「パワーアップアイテムかも、って? ふうん、……私が使ってもパワーアップできるかな」
 肩で小さく囀ったオスカーの声に、エドガーは瞬きを一つ、二つ。
 中程に入った線から、どうやら中が開けそうだと判断したエドガーは指先を押し込み――。
「よいしょっ」
 ばちんっ、散る火花。
「……おや? 何もしてないのに壊れてしまった」
 オスカーが驚いてくるくる飛び回る下で、エドガーは小さく首を傾いで。
 コンピューターが変な事になってしまったコンピューターに詳しくない人と同じセリフを吐いた。
「……ふ、」
 そんな彼の様子に思わず漏れてしまった、笑いの混じった吐息。
 エドガーがその気配に視線をあげると、同じく室内を隠れて偵察していた都槻・綾(絲遊・f01786)が肩を震わせていた。
「やあ、御機嫌よう。見ていたかい?」
「ええ、こんにちは。見ていましたよ」
「いやいや、照れてしまうね」
 笑みを宿した綾の言葉に、エドガーはカッコいいポーズでウィンク一つ。
 王子様の格好良いポーズの前では破壊行為なんて細やかな事なのだ。
 そんなエドガーに、今度は隠すこと無く綾はふくふくと笑って。
「それはそうと――、それは何だい?」
「ああ、これは……、先程そこで拾ったのですけれど――如何にも、でしょ?」
「そうだねえ、確かに試す価値はありそうだ」
 綾の手に握られている『それ』。
 コントロールレバーとアンテナの付いた、四角くて無骨な鉄の箱。
「今、何か装備を壊した音がしたよな!?」
 そこへ――、ジャシュッ。
 会話に割り込むように、駆けるカッコいい足音と共にブレイメンが二人へと視線を向けて。
「あっ」「おや」
 エドガーが目を丸くする横で、綾は早速コントローラーを試す機会が来たとぴっかぴかの笑顔。
「はい、止まって下さいな」
 彼は容赦なくアンテナを敵へと向けて、レバーとボタンを押し込んだ!
 ビビビッ!
 如何にも聞いていそうな効果音が響き渡り――。
『猫にロバ!』
「ニャヒーー!」
 何処かから響いた声に、ブレイメンの両腕と両足が応じてくれた。
 突然の事に思わず再び吹き出してしまった綾は袖で口を覆い隠すが、その揺れる肩は全く笑っている事が隠せてやしない。
「お、お前! それは……ッ! ブレイメンサウンドコントローラー!」
 大剣を真一文字に構えたブレイメンは、眼の光量を30カンデラ程上げて驚いた様子で吠えて。
「サウンドコントローラー……」
 思わず復唱してしまうエドガー。
「音だけしかコントロールできないのならば、このコントロールレバーは何かしら?」
「ボリュームボタンだ!」
 綾がカスタマーセンターにお尋ねする要領で尋ねると、大きく頷いて胸を張って応じるブレイメン。
「ボリュームボタン……」
「とんだポンコツアイテムじゃないですか」
 再び思わず復唱してしまうエドガー、綾は肩を竦めて。
「ポンコツ!? ブルーレイディスク初回限定盤の予約特典だぞ!? 興味あるだろ!?!?」
 本気で言っているのか、と驚いたようにブレイメンは胸の光を輝かせて。
「申し訳ないけれど……」
「そろそろ遊ぶのは、終わりにしようか」
 同時にエドガーと綾は地を蹴って左右へと跳ねると、数秒前まで二人の立っていた場所を熱線が焼き焦がす。
「――もう、貴方は籠の中」
 綾が人差し指を唇に寄せてからぱちりと指を鳴らすと、ブレイメンの体を這い、絡みつくように蔦蔓の焼印が蝕み。
「ああ、そうだ、ブレイメン君」
 地へと降り立ちステップを踏み。
 掌の中でとろけるようにバラの花弁となりゆくレイピアを構えたエドガーが、突然思い出した様子で声を上げた。
「そのへんにあった腕輪みたいなやつ壊しちゃったんだよね」
「ちょっ、お前……ッ!?」
「ゴメンね」
 エドガーのゆるーい謝罪に対する怒声は、バラの花弁に飲み込まれ――。
「あーーーっ、せめて最後はエンディングテーマをかけて……っ!」

 ――BGMは切り替わる事も無く、止まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『あなただけの明日』

POW   :    強い気持ちを持って、明日への希望を抱く

SPD   :    時の流れが自然と明日へ進めてくれるはず

WIZ   :    ひとつひとつ、気持ちの整理をつけることで明日へ進む

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ぼくたちの明日
「……あれ?」
「もしかして、ブレイメン4……倒れた?」
 ぴょこ。
 ヤギとオオカミのぬいぐるみ――の愉快な仲間が、天井から顔を覗かせた。
「あー、そうっすね。あんたらに圧政を敷いていた悪いヤツは、オレっち達が倒したっすよ」
「えっ!?」
「えー!? 自由ってやつ!?」
「「やったー!」」
 猟兵が質問に応じると、ぱあっと声のトーンを上げた二人は手を合わせ。
 その背後から、更に数人のヤギとオオカミ達がぽこぽこと顔を覗かせる。
「えー!! どうしよー!! 処す? 処す? とりあえず石集める!?」
「すごーい、たくさんつまりそう~!」
 きゃっきゃとブレイメン4の厳罰を語り合う者達。
「……えーどうしよ、明日から無職?」
「うーん、生まれてからずっとBGM係してたからなあ……」
 対象的に明日からの生活に不安を覚える者達。

 花も木も枯れ果てて荒廃しきった、科学によって歪められた不思議の国。
 この国はもう、随分と長い間オウガに支配されていた。
 元はどんな国であったかも。
 国の名前さえも。
 住人達が忘れて忘れてしまう程、長く、長くオウガに支配されていた。

「……ねえ、ねえ、猟兵さん。助けてくれてありがとー」
 だからこそ。
「でも、もう少しだけ、助けてもらっていーい?」
 タンバリンを背負った一人のヤギは、おずおずと猟兵達の元へと歩み寄って首を傾いで。
「ボクらの国を、どうすればいいか一緒に考えてほしーんだあ」

「アリスが来ても、楽しい国!」
「アリスが見て、嬉しいお花もあるといいなあ」
「あの池危ないよねー」
「このお城、ぜんぶたてなおそーよー」
「どんな建物が必要かな」
「ミュージカルしたーい」
「とりあえずお茶しようよ、お菓子用意してー」
「ご飯のほうがよくない?」
「ちくわ」
「美味しいものが取れる山もつくろー!」
「もんぶらん?」
「どんな花を植えるの?」
「またオウガがきたらどうしよー……、やっぱり軍事施設が必要じゃない?」
「投石したーい」
「えー、あぶないのより、お菓子屋を投げるほうがいいよ」
「音楽が自由に弾けるところがいいなー」

 わいわい、がやがや。
 口々に思い思いの『自分たちの国』の理想を語り合う愉快な仲間達は、猟兵を見あげて。
「ねえ、猟兵さん! どうすればいーとおもう?」
 なんて、首を傾げた。
エドガー・ブライトマン
勿論、手伝ってあげる
迷える子羊…いや、今日はヤギか
迷える子ヤギたちを導くのも王子様の仕事のひとつさ

それぞれ理想があるみたいだけれど
『楽しく平和な国にしたい』のは共通しているんじゃない
それなら楽しいコトは全部やろう

手記から一枚白紙を破り、項目を書いてゆく
整理しやすいだろう
城の近くに花を植えて、池の周りには囲いを
ミュージカルができる舞台や、ご飯を食べられるような場所を作って…
山も………

キミたちってたくさんやることがあるねえ
(どれからやるか、今順番を決めようとすると喧嘩になってしまうかも)

よし、じゃあまずはお茶会にしよっか
キミたちが自由になった記念に
未来のことを考えるとき、一番必要なのは明るい気分さ


都槻・綾
夢が多ければ多い程
世界は眩く輝くのでしょう
だから
欲張りで良いの

菓子を摘まみながら
白紙に皆の希望を書き出していく
ところで此のチョコクッキー美味しい
え、其方のプリンも?
なんて
つい脱線するのも楽しい時間

道を舗装したり
草木花が存分に蔓延れるような整地も大切

やぁ、
名案が舞い降りました
防衛には焼き石を使いましょうよ
人差し指を立て
真顔で提案

ほら
冬には温石としても役立つし
酒に落とせば一瞬で熱燗の出来上がり!
あぁ
キンキンに冷やした石なら冷酒もきっと美味
名付けて石酒屋
豊潤で馥郁たる浪漫の香り…
いえ
酒場が欲しいだけだよね、なんてそんな  欲しいです

瞳を輝かせて語り合ううち
白紙だった地図はきっと
いつの間にか夢いっぱい



 どうすればいいかと申し出たぬいぐるみたちのまん丸い瞳が、こちらを真っ直ぐに見据えている。
 空の色をした瞳でその視線に応じたエドガーは柔らかく笑って、彼らに握手を求めるように、手を伸ばした。
 王子様は希望をもたらすものだ、そう望まれるものだ。
 ならば迷える子羊たちを導くのも、王族としての貴く正しい生き方のひとつ。務めのひとつなのだから。
 ……あっ。いや今日迷っているのはヤギ君たちだね。オオカミ君たちもいるけれど……。
 やり直させてくれる?
 コホン。
 そう――、迷える子ヤギたちを導くのも、王子様としての務めのひとつさ。
「勿論、手伝ってあげる」
 エドガーの返事に、ぬいぐるみたちはわっと沸き立って。
「わあ、ありがとう!」
「ねえ、ねえ、何からどうする?」
「要塞!」「お菓子屋さん!」「ちくわやさん」
「やはり国には特色が必要だよ」
「歌う?」
「温泉をほろー」
「待って、待って、猟兵さんがお話するよ」
「えー、今してないじゃないですか!」
「あくしゅ~」
「踊っちゃうか」
「わーっ」
 ぬいぐるみたちはそれぞれ自由に意志を伝えようと、口々にさんざめき。
 手を伸ばしたエドガーの体をよじ登ったり、踊ったり、向こうへと行ったり。
「フフ、随分やんちゃだね」
 賑々しいぬいぐるみ達の体当たりの対応に、エドガーは眉尻を少し下げて苦笑する。
 それでも彼らの沢山の理想や希望の一番根っこにあるものは、きっと共通している。
 それは『楽しくて平和な国にしたい』という一心。
 ならば実現可能な彼らの楽しいことは、全部してもらいたいけれど――。
 ……今すぐどれからするか順番を決めようとすると、喧嘩になってしまうかもしれないなあ。
 あまりに賑々しい様子にどうしたものかと、エドガーはぬいぐるみ達のアスレチックになりながら思案顔。
 そんな様子を目撃してしまった綾は、表情を緩めて思わず吹き出してしまった。
「やぁ、夢が多ければ多い程、世界は眩く輝くのでしょう?」
 くすくすと口元を隠して笑いながら、だから欲張りで良いの、なんて。
 かんばせを傾けた綾は、手にしたティカップをひらりと揺らし。
「ね、だからまずはお茶にしましょ?」
「しましょー」
 ――綾を取り囲むように歩むぬいぐるみも、その手にはそれぞれお菓子やカップ、ティポットを抱えている。
 どうやら綾が一番に取り掛かったのは、愉快な仲間たちとお茶の準備であったようで。
 視線をあげたエドガーも納得した様子でくすくすと笑うと、大きく頷いた。
「そうだね、キミたちが自由になった記念のお茶会にしよっか。――未来のことを考えるとき、一番必要なのは明るい気分だからね」
 美味しいものを食べれば、考えもきっとまとまるもの。
 こうして。
 国会としてのお茶会が、急遽開催される事と相成ったのであった。

 用意されたお茶の湯気が立ち上り、甘いお菓子にたっぷりのジャム、クリーム。薄いサンドイッチも沢山、沢山。
「ウーン、なるほどね」
 ひらひら揺れる羽根ペンの尾。
 手記から1頁――白紙をメモ用に用意したエドガーは椅子に腰掛け。
 ぬいぐるみの希望を聞き取っては、ひとつひとつを記録してその言葉を整理していた。
「ええ、道を舗装したり花や草木を植えるのならば、整地も大切ですね」
 エドガーの横に腰掛けた綾も、希望を書き出す紙と羽根ペンを手に。別のぬいぐるみの話を聞いては、さらさらとペンを走らせる。
 ついでにチョコクッキーを一口齧ると、うん、美味しい。
 こちらのサンドイッチもいただこうかしら。
「猟兵さんー、こっちのプリンもおいしいよー」
「あら、ありがとうございます」
 なんて、お話しているうちにじわじわ脱線してしまう事すら、楽しいこと。
 お茶を楽しみながら仕事をこなす綾の横で、エドガーは書き出された希望をひとつひとつ集計中。
「えーっと……、山を作って。花を植えて、池の周りに囲いを作って……、お城をランドマークになるように綺麗なお城に作り変えて、ミュージカルやコンサートの出来る舞台に、ご飯を食べられる食事処、温泉街にお土産屋さん、お菓子屋さんに、洋服屋さん、悪いことをした時に石を詰める所、遊園地……、大型ショッピングモール……」
 読み上げても読み上げてもキリの無い希望リストの量に、エドガーはぱちぱちと瞬きを一度、二度。
「キミたちって、たくさんやることがあるねえ」
「――やぁ、名案が舞い降りました」
 そこに。
 綾が人差し指をぴーんと立てて、不敵な表情で言葉をきりだした。
「ン?」
 首を傾いで彼を見やるエドガーと、その頭の上に居座ったオオカミのぬいぐるみ。
 綾は表情を崩すこと無く、人差し指を小さく揺らして。
「防衛には焼き石を使いましょうよ。……ほら、冬には温石としても役立つし、酒に落とせば一瞬で熱燗の出来上がり!」
「フムフム」
 エドガーは綾の顔を見る。
 綾は真剣な表情をしている。
「あぁ……、キンキンに冷やした石なら冷酒もきっと美味でしょうね。名付けて、そう。……名付けて石酒屋、なんて如何でしょう?」
「ンン、なるほど」
 エドガーは綾の顔を見る。
 綾は真剣な表情を崩してはいない。
「豊潤で馥郁たる浪漫の香り……、温泉といえばお酒。酒蔵を作るのも良いですねえ」
「フフ、わかったよ。ねえアヤ君、キミはお酒が飲みたいんだね」
 エドガーが綾の顔を覗き込んだまま指摘すると、尚も綾は目を逸すこと無く。
 真っ直ぐな視線で――。
「いえ、……そんな、酒場が欲しいなんて、そんな……」
「……」
 否。
 綾の視線はエドガーの青い瞳から、じわりじわりと逸らされて行き。
「……欲しいです」
「そうだろうねえ」
 頷いたエドガーの背を登っていたぬいぐるみたちが、ぽこぽこ頭の上から顔を出すと綾を見下ろした。
「猟兵さんの私利私欲ー?」
「まあ、よかろうですよー」
 その了承の言葉に、綾はとびきり悪戯げに笑って応じる。
「ああ、ありがとう、あなた達は優しいですねぇ」
 住人たちが良いのならば、良いのだろう。
 肩を竦めたエドガーは、ゆるーく笑って。
「とりあえず、予定地図に書き込んで良いって事かな?」
「いいですよ!」
 ――美味しいお酒を楽しむアリスだっているだろう。
 語り合い、紡がれる。
 希望と言う計画で埋まってゆく地図は、夢の地図のようにも見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
あーーーーめっっっっちゃ見たことある、あの石詰めるやつめっっっっちゃ見たことあるっす……
辺境とか行くと下手な傭兵よりおっかねぇ手口で袋叩きして身ぐるみ剥いで石詰めるたくましい村人いたりするんすよねぇ~~……
うん、とりあえずアリスが泣いて逃げ出すんで石詰める作業やめましょ????

ま、趣味じゃねぇ歌を歌わされてたってだけで歌自体は好きなんっしょ?
なら色んな歌を作って弾いて歌えば良いんじゃないっすかね
そのどれか1つでもアリスの琴線に触れれば良いんじゃないっすか?
オレっちも楽器をかじっちゃいるんで、知ってる曲とか教えますんで!
うん、だから悪者に石詰める歌作るのはまだいいんじゃないっすかね
ぇ!!!


メアリー・ベスレム
まぁ、困ったわ
メアリは誰かを殺すのは得意だけれど
何かを作るだなんてやった事ないもの

だけれどそうね
せっかくなら美味しいものが食べられる国がいいかしら
あまぁいケーキにジューシーお肉!
もちろん、オウガが贔屓にしているような
質の悪いお肉屋さんから仕入れては厭よ?

それより、メアリはそっちの方が気になるわ
石を詰めるの? お腹の中に?
ふぅん。と興味深げに息吐いて
一緒に石を集めたり、無遠慮に愉快な仲間たちの身体を触ったりしながら
(勝手にお腹を裂いたりなんてしないわ。ホントよ?)
あなた達みたいな身体でなきゃ
痛く苦しく死んでしまいそうね

その時ふと閃いた!
このアイディアは新しいユーベルコードに活かせるかもしれない!



 皆で理想の国の話をするために、お茶会をはじめたぬいぐるみたちに薦められるがまま。
 メアリーはジャムを落としたお茶を飲んで、あまーいクッキーを齧って。
「まぁ、まぁ、困ってしまったわ」
 ウサギの耳を模したフードをぴょんと跳ねさせたメアリーは、首を傾いだ。
 メアリーは誰かを狩ったり、殺したりするのはとっても得意だけれども。今までなにかを作るなんて、これっぽちもやった事が無いのだもの。
 それでも皆のながーいお話を聞いているだけだと、眠たくなってきてしまいそう。
 眠気を覚ますためにも、メアリも理想の国を想像してみようかしら。
「どんな国がいいかしら?」
 だってこの国ではアリスを歓迎してくれると言うのだもの。
 メアリはアリスで、アリスはメアリ。歓迎されるとしたら……。
 あまぁいお菓子に、ジューシーなお肉。
 ああ、もちろん。オウガが贔屓にしているような、質の悪いお肉屋さんから仕入れては厭よ?
「折角なら、美味しいものをたっぷり食べられる国がいいわよね」
 ぽつりとメアリーのこぼした言葉に、お茶菓子を運んでいたオオカミが耳をぴぴぴと揺り動かして。
「わかるなあー。ぼくもそうおもいます! ねねね、お菓子もっと必要ですー? 結構おいしいですよー」
 近づいてきたオオカミは手にしたシルバートレイをメアリーに差し出し、尻尾を振って。
「ふふ、ありがとう。頂くわ、ね」
 トレイの上からチョコレートチャンクスコーンを1つ拝借したメアリーは、ちょい、とオオカミの鼻上を突いてやってから、立ち上がった。
「でも、メアリは向こうの方が気になるわ」
「はーい、いってらっしゃーい」
 そんな自由な言動の彼女はオオカミは手をひらひら、見送るのであった。
 おしり、でてるなあ。

「らんらら、らー」
「うーん、それさあ、るーるるらーのほうが良くない?」
「もっと激しくビートを刻んだほうが良いと思うー」
 ぬいぐるみたちは和気あいあいとリズムを刻みながら――。
 かちゃ、かちゃ、かちゃ。積み上げられる石、詰められる石。
「あー……、あー…………」
 どう声をかけたものか。ぷらり、ぷらり、唇の端で揺れる骨。
 ぬいぐるみ達のにぎにぎしい様子を見ながら、リンタロウは優しい表情を浮かべていた。
 それは円滑に交渉を進める為の、処世術としての笑顔によく似ているだろうか。
 ――倒れた敵の腹に石を詰めるぬいぐるみの姿というのは、なかなかホラーな姿だ。
 あと、その悪者に石を詰める為の歌を作曲している所も、なかなか……。
 やられている相手がロボっぽいオウガで無ければ、相当なゴアシーンに見え……いや、ロボっぽいオウガじゃないやつもアレ、めっっっっっちゃ見たことある光景っすね。
 ――恨み骨髄に徹すとは、よくいったもの。人の恨みは想像以上にアグレッシブな方法で発露する事があるもので。辺境など極端な村社会の場合、下手なプロよりもおっかなくてえげつない手口が横行したりするものだ。
 そうそう。
 まさにあんな感じで身ぐるみを剥いだ後に吊るして腹に石を詰めちゃう、あまりにマッシブな行動をする村人とか、いるいる~。いるっすよねぇ~~。
 いや、いるいる~とか言って現実逃避してる場合じゃないっすけれど。
「ふぅん……、お腹に石を詰めているのね。七面鳥の丸焼きみたいだわ」
 そこに近づいてきたメアリーは興味深げに、石を一つ拾い上げ。
「猟兵さんもやってみますー?」
「そう、ね。まぁ、手伝った所で、美味しいチキンにはなりそうに無いけれど……」
 ――でも、これって。
 あなたたちみたいに、腸の代わりにふかふかの綿が詰まった体やロボットの身体じゃなきゃ、痛くて、苦しくて、死んでしまいそうだわ。
 なんてメアリーは石を渡してくれたぬいぐるみのヤギの頬を、むにむにと撫でくりまわして考えて。
「な、なにをーしますかーりょうへいさんー」
 むにむにしながら彼女はふと閃いてしまう。
 それは戦いに活かせるかもしれないアイディアで――。
「あー、あー。はい、はーい、あんたたち! とりあえずこんな光景を見るとアリスが泣いて逃げ出すんで、石を詰める作業やめましょ??? ね???」
 そこに。
 リンタロウがパンパンと手を叩いて、私刑行為の停止を申し出た。
「まぁ、メアリもアリスよ。でもメアリはこんな事で泣いたりしないわ」
「待って、待って待って、あんたがアリスである事は否定しないっすけれど、今はちょっとややこしくなるからお口チャックしててもらえるっすか!? 菓子もあげるっすから!!」
「甘いのじゃなきゃ嫌よ?」
「交渉成立っす!!」
「むぐ」
 先程分けてもらったロールケーキをメアリーの口に押し込んだリンタロウは、作業の手を止めたぬいぐるみたちをぐるりと見渡して。
「よーし。――あんたたちは趣味じゃねぇ歌を歌わされてたってだけで、歌自体は好きなんっしょ?」
 それは何も言わずとも作曲を初めていた所からも、きっと確かなのだろう。
 改めて彼がぬいぐるみ達へと問いかけると、楽器を手に彼らは首を傾いで。
「そうですねえ」
「はい」
「たぶんそう部分的にそう」
「うんうんー」
 ならば、と。
 眦を緩めたリンタロウが置きっぱなしになっていた小さなウクレレを拾い上げると、弦をひと弾き。
「アリスを歓迎するためにも、好きなように色んな歌を作って、弾いたり歌ったりすれば良いんじゃないっすかね?」
 指一本で弦を弾いてリズムを刻みながら、リンタロウはぬいぐるみたちのまんまるな瞳と真っ直ぐに視線を交わす。
 非道を働いたオウガの為に、全ての歌を嫌う必要は無い。
 強制されない歌を歌えば良いのだ。
「そのどれか一つでも、アリスの琴線に触れれば歓迎としては上々じゃないっすか? オレっちも楽器をかじっちゃいるんで、曲だって教えられるっすし」
「なるほどねー、好きなうたかあ」
「よーし」
 彼の言葉に同調したぬいぐるみたちは円陣を組んで、早速相談を始める。
 そう、彼らの歌いたい曲は――。
「…………うん、うん、だから悪者に石詰める歌作るのはまた今度でいいんじゃないっすかね
ぇ!!!??」
 彼らが話し合い出した歌に慌てたリンタロウが、待ったを掛けると――。
「ねえ、ねえ、あなた。メアリもそろそろお話しても良いかしら?」
「もうちょっと!!! もうちょっとまっててほしいっす!!!!」
 更にメアリまで尋ねてきたものだから。
 リンタロウは慌ててチョコレートを渡して、あらゆる所に待ったを掛けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリジ・グッドウィン
【特務一課】

提案か…
アリスを迎えた時の音楽とか投石する喜びだとか、石を詰めて処す時のとかバリエーションも豊かに音楽色々作って達者で暮らせばいいんじゃね?
想う事をやりたかった事はこれから存分にやりゃいい……チッ、こういうの平和的なアレは苦手なんだよなァ。なんとかしろマダラ!


雪丸鳳花ミュージカル万能説あるだろ。まあココなら最適解とかかもしれねェが
(マダラには音痴バレてるけど雪丸にはバレたくねぇ…なんか癪)
あー…これなら別にやってもいい。オイそこのタンバリン貸せ

シャン… シャ…?
こっちは一応やってんだよタンバリン!
そこの愉快な奴ら、付け焼刃でいいから教えろ
いよいよシュールな図になってきた気がするぜ


斑星・夜
【特務一課】

やったー自由だー!
……って、あはは。俺までつられちゃった
でも皆が嬉しそうで良かったねぇ

労働が楽しいのは大事だよね!モチベーション的にもさ
生まれてからずっと強いられていたから歌が苦痛なのかな
オッケーまかせてキリジちゃん!

ねぇ君達!歌も音楽も、すごく楽しいものなんだよ
よーし、その楽しさを思い出してもらうためにも!
皆と歌って踊って楽しい気持ちいっぱいの国にしよーぜ!

よーし!それじゃー俺、踊ろうかな!
愉快な仲間たちと手を繋いで、くるくる回ったり『怪力』で持ち上げたり
音楽に合わせて踊っちゃうよ!

わーいありがとー!
雪丸ちゃん先輩の歌もキリジちゃんのタンバリンも、ギャラクシーみたいに輝いてるよ!


雪丸・鳳花
【特務一課】

キミたちは自由だ!
もう何も縛るものも強いられる事もない!

しかし突然自由と言われても戸惑うのも無理はない
ならば!ボクらがひとつの道を示そう!

日常をミュージカルというスパイスで彩ろう!
歌い踊り、楽器を演奏してアリスを迎えよう!
こんな感じにね!マダラくん!キリジくん!準備はいいかい?
ミュージックスタート!
(スマホで何らかの音楽を流して歌ったり踊ってみせる)
ヘイ!キリジくん!もっとタンバリンを強く!
マダラくん!キミの怪力は宇宙一だ!

ボクはまだ学生の身分だが、いずれ歌や音楽、芝居を生業として世界に楽しいという気持ちを届け続けたい
キミたちには自分たちの手で楽しい国を作って欲しいんだ!



 お茶会を始める者たち。
 倒れたオウガに詰める石を集めだす者たち。
 そして――。
「自由だーーーっ」
 猟兵達によってもたらされた平和、そして自由を喜ぶぬいぐるみたち。
「そう、キミたちはもう自由だ。――もう何も縛るものも強いられる事もない!」
「やったーーっ、自由だーーっ」
 よく響く声音で胸に手を当てた鳳花が朗々と告げれば、ぬいぐるみたちにつられて思わず夜もバンザイして。
「アハハ、皆嬉しそうでよかったねぇ」
 つられた事に余り気にした様子も無く、そのままゆるーく笑った夜はゆるーい拍手を、ぱちぱちぱち。
「で、自由ってなにすればいーの?」
「難しいことをいいますねえ」
「自由ってやつだから、自由にすればいいんじゃないでしょうかー!?」
「えっ、自由ってどうすれば……?」
 それから喜び合っていたヤギとオオカミのぬいぐるみたちは、一通り喜びの声を上げ終えると顔を突き合わせて――、ある意味哲学的な事を猟兵に群がって口々に問い出した。
「あー……、そうだな、今までやれなかった事をやりゃいいじゃねぇか」
 何とも難しい質問に。
 問われたキリジは顎に指先を当てて、視線を明後日の方向に向けたまま。なんとか言葉を選んで紡ぎ出す。
「そう。お前ェらは音楽が得意なんだろ? なら、アリスを迎えた時の音楽やら、あー……、投石する喜びだとか、石を詰めて処す時だとか、……こう、色々音楽を作って達者で暮せばいいんじゃねェ?」
 ゆっくりと言葉を紡ぎ終えたキリジに、夜はうんうんと頷いてくすくす笑い。
「投石とか私刑にも、音楽をつけちゃうんだねえ」
「あー……、チッ。こういう平和的なアレを提案するのは苦手なんだよ。……おい、マダラ! お前はこういうの得意だろ! ヘラヘラ笑ってねェでなんとかしろ!」
「あ、俺? あははー、オッケー! まかせて、キリジちゃん」
 そのままキリジに丸投げされても、夜はゆるーい笑顔を浮かべたまま。
 キリジを見ていたぬいぐるみたちが、一斉に夜に視線を移す。
「うんとねー。君たちはこれまで、ずーっと強いられて同じ歌を演奏してたんだよね?」
「そうだよー」
「同じのいやになっちゃったなー」
「うん、うん、嫌なのに強いられるのは辛いよねえ」
 わかるよお、と。
 一匹のヤギを抱き上げた夜は、くるくると一緒に回って見せて。
「でもね。歌も音楽も、本当はすごく楽しいものなんだよ! キミたちは、演奏をするのは嫌じゃない?」
「それはねー、楽しい時もあるよー」
「歌も、歌も!」
「うん! ならさ、その楽しさをめいっぱい思い出してもらう為にも、さ!」
 夜は鳳花の顔を見やると、ばちーんと瞳を瞑って、開いて。アイコンタクト。
「ああ! キミたちは突然自由を与えられて戸惑う子羊……いいや、子ヤギ達!!」
 芝居がかった動きで、んばっと逆の腕を伸ばして宣言する鳳花は、謎のキラキラエフェクトを背負い。
「迷っているのならば、ボクらがひとつの道を示そう!!」
 彼女は晴れ晴れとした表情でぴかぴかと瞳に光を宿したまま、格好良いポーズ。
 それからよく通る声音で、言い切った。
「――ミュージカルをしよう! 歌い踊り、楽器を演奏して、アリスを迎える為のミュージカルだよ!」
「あァ?」
「よーし、皆と歌って踊って、楽しい気持ちでいーっぱいの国にしよーぜ!」
 鳳花が天に掌を突き上げて宣言すると、キリジが世界一嫌そうな声を漏らし、夜はヤギのぬいぐるみと一緒にぴょーいぴょい。
 夜の反応に気分良さげに大きく頷いた鳳花は、二人を順番に見やって――。
「マダラくん、キリジくん! ――準備はいいかい?」
「いえーい、それじゃー俺は踊ろうかな!」
「…………あァ?」
 夜の元気な返事と、全然準備が良くない声を出すキリジ。
「ミュージックスタート!」
 それでも鳳花は元気いっぱいに聞き流すと、彼女のスマホから元気な音楽が流れ出した。
「――ララー♪ ラー♪ ラー♪」
 常日頃より急に歌い出す習性のある鳳花ではあるが、今日この場ではその習性は最適解であったのかもしれない。
「ららーら、らー?」「楽器で音楽、あわせるかー」
「おー!」「らー、らー」
 背負っていた楽器を構えたぬいぐるみたちは、それぞれ音楽に合わせて楽器演奏をはじめたり、歌ったり。
 一気に場の雰囲気が華やいだように感じられた。
「良いね、良いよキミ達! ヘイ! ヘイ!」
 即興でもこれほどに合わせて来る愉快な仲間たちは、やはり楽器を――歌を愛しているのだろうと。笑みを深めた鳳花はきらきらしたエフェクトを弾けさせて、ハンドクラップでリズムを更に刻みだす。
「へいっ、へいっ!」「へいへーい」「きゃーっ、もっとたかくして!」
「あははっ、オッケー!」
 ぬいぐるみたちをお手玉のようにぽんぽんと投げてはキャッチして、くるりくるりと音楽に合わせて踊る夜。
「ハッハッハ! マダラくん、キミの怪力は宇宙一だね!」
「わーいありがとー! 雪丸ちゃん先輩の歌もギャラクシー級だよ!」
「ぎゃらくしー?」「パプー、プワプワー」
 楽しげな鳳花と夜に合わせて、ぬいぐるみも楽しげだ。
 しかし。
 フラッシュモブの如く前触れなく突如として始まったミュージカルに、キリジは瞳を細めて眉間にはきゅっと皺を寄せたまま。
 いいや、認めよう。
 その習性の効能自体は、抜群であったと。
「……なんっつーか……、雪丸鳳花ミュージカル万能説か……?」
「やあやあ、キリジくん! キミも共に歌おうじゃあないか!」
「…………」
 それでも鳳花の誘いには、むっと一瞬押し黙るキリジ。
 そう。
 彼には歌いたくとも、歌えない理由があるのだ。
 ――キリジは音痴なのだ。
 夜にはその事が既にバレているが、なんとなく癪で鳳花にはバレたく無い。
 なんとなく癪だから、仕方あるまい。
 やれやれと肩を大きく竦めたキリジは、タンバリンを背負って踊るヤギの首根っこを掴んで。
「やーん」
「あー……、オイ。タンバリン貸せ」
「マ! いいですよー」
「っつー訳で、これなら別にやってもいい」
 タンバリンを受け取ったキリジがヤギを開放してやると、身軽になったヤギは更に機敏な動きでステップを踏み。しゃん、と音を立てたキリジに、鳳花はサムズアップ。
「ナイスファイトだね、キリジくん!」
「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ」
 めちゃくちゃ癪そうにハイを4回で応じるたキリジは、タンバリンを精一杯音楽に合わせて叩いて、叩いて――。
 シャン、シャ…………シャッシャッン、シャッ……。
 ぎこちない音が音楽に混じり合う。
「キリジちゃん輝いてるよ~、ギャラクシーだよ~!」
「ヘイ、もっと強く叩けるだろう!?」
「うるせぇ! こっちは一応やってるだけなんだよ!」
 夜のゆるーい声援と鳳花の暑苦しい声掛けに、キリジはがあっと吠え。
「……おい、お前。付け焼刃でいいからこれの叩き方を――教えろ」
 そうして。
 もう一度先程のヤギを捕まえると、キリジは耳元でそうっと囁いた。
「ははーん。いいところをみせたいのですか?」
「ちげぇよ、お前達に音楽の楽しみを思い出させる為だよ」
「わかりました! おしえましょー! まずはお尻を振って……」
「……本気か?」
 しゃん、たん、しゃん、たん。
 ゆっくりではあるが、確実にリズムに乗れるようになってきたタンバリンの音色。
 踊るぬいぐるみ達に合わせて、響く旋律。
 鳳花は願う。
 ――労働は苦しいよりも、楽しい方が絶対に良い。
 ミュージカルを通じて楽しみを彼らが思い出してくれる事を。
 彼らが自分たちの手で楽しい国を作れる事を。
 ――これは彼女の夢。
 彼女が大人になった時には、歌や音楽そして芝居を生業として、世界に楽しいという気持ちを届け続ける為の、第一歩だと信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
あー、そういえば私、この世界に来る時はオウガを倒すことを重点してましたからねぇ…。ていうか、それ以外のことは頭に入れてませんでした(ぇ)。

とりあえず、猟書家の侵略もしつこく続いているようですし、ここの愉快な仲間の皆さんも自衛の手段を身に着けさせたほうがよさそうですね。
さっきのブレイメンの部屋に、使えそうな兵器とかありますかねぇ…(【失せ物探し】)。
――ああ、使い方がわからないってなら教えてあげてもいいですけど?(コンピュータの類があったなら【ハッキング】で情報を吸い出したり(【情報収集】)。

※アドリブ・連携歓迎


フリル・インレアン
ふええ、どうにか生き延びることができたみたいです。
それにしても、ここは広いホールですよね。
みなさん、演奏がお上手ですしダンスパーティを開いてみてはいかがでしょうか?
これまでみたいに決まった曲だけを演奏するのではなくて、自由に好きな曲を演奏して踊りたい人がダンスを楽しむといいと思います。



「どうすれば良い、か……ですか」
 ぬいぐるみたちに国の将来について問われたシャルロッテは顎先に指を寄せて、ううん、と思案顔で小さく唸ってしまう。
 ――今回。
 シャルロッテはオウガを倒す事ばかりを考えて、この世界へと降り立っていた。
 だからこそ、この国がどの様な場所であったのか、どの様な国であったのか、なんて。
 一つも考えてきて居なかったのだ。
 その状態で国の未来について提案を求められても、なんとも有用な事が言えるとは思えなかった。
「……とりあえず、そうですねぇ」
 しかし、それはこの『国』単位での話だ。
 この『世界単位』で考えれば、シャルロッテがとれる選択肢は自ずと増えてくるもので。
「未だオウガの襲撃や、猟書家の侵略もしつこく続いているようですから。皆さんには自衛の手段、――オウガと戦う方法を探して学んでいただきましょうか」
「じえーですか」
「石じゃだめなんだねえ」
「確かに、石じゃだめだったねえ」
 きっぱりと宣言したシャルロッテの言葉に顔を合わせて、ぬいぐるみたちは顔を見合わせて言葉を交わし合い。
 こっくり頷いたシャルロッテは、人差し指を立ててその疑問に答えるように小さく笑った。
「あのオウガ……、ブレイメンが根城にしていた部屋の兵器が使えそうなら、皆さんが使うのもアリでしょうね。一緒に見に行ってみます?」
「あー、あの部屋の兵器ねー、大きいけど平気かなあ」
「兵器だけに?」
「ふふふ!」
 シャルロッテの背を追って歩き出したぬいぐるみたちは、くだらない冗句を重ねて笑う。
 しかしそれは、数時間前までは禁止されていた私語。
 彼らにとって、自由の一歩でもあった。

 シャルロッテとぬいぐるみたちが部屋を覗き込むと、戦闘によって生み出された瓦礫がまず目に入ってきた。
 落ちているパーツの残骸、壁も床も傷だらけ。
 それでも部屋が壊れきった訳では無くまだまだ広い部屋のまんなかに、――青い帽子をかぶった少女が立っていた。
「……うーん、広いですねえ」
 キョトキョロと周りを見渡していたフリルは、シャルロッテとぬいぐるみが部屋へ入ってきたことに気づくと慌てて頭を下げて。
「あら、フリルさんも武器を拾いにきたのでしょうか?」
「ふえぇっ。い、いいえ……、愉快な仲間のみなさんが、今後どうすれば良いのか悩んでいるようだったようですから」
 大きな帽子のつばをきゅっと押さえたフリルは、少し恥ずかしげに瞳を狭めて小さな声で応じ。アヒルさんのガジェットがまるで応援しているように、その周りをくるくると回っている。
「ふむふむ?」
「このホールを今後ダンスパーティに使ってみるのはいかがでしょう、って、提案しようと思ったのですよ。それで、先に見に来たのです」
 シャルロッテが相槌を打つと、返事とアヒルさんに勇気を貰った様子で、フリルはこっくり頷いてから言葉を次いだ。
 ――これまで愉快な仲間たちは、オウガに強いられて曲を演奏し続けてきた。
 強いられる音楽は音『楽』に非ず。
 音を鳴らす苦痛の伴う仕事であったのだろうと、フリルは思う。
「だから、これまでみたいに決まった曲だけを演奏するのではなくて、自由に好きな曲を演奏して踊りたい人がダンスを楽しむ場所にできたら良いなあと、……思ったのです」
「なるほど、娯楽の提案ですね」
「ふええ、そ、そういう事だと、思います」
 シャルロッテがフリルの言葉を噛み砕いて答えると、帽子のつばで瞳を隠しながら、フリルは大きくなんども頷いた。
「おー、好きな曲?」
「好きな曲かあー、何があるかなー」
「まぁ、追々作曲したり、他の国から輸入してみるのも良いかもですねぇ」
 ぬいぐるみたちが首を傾ぐ横で、シャルロッテは使えそうな兵器を拾い上げるとぬいぐるみの頭に乗せてやり。
「そうですね、武器の使い方をお教えしようと思っていましたけれど、歌を教えてあげてもいいですよ」
「わあ……、歌を、ですか?」
 ぱちぱちと瞳を瞬かせるフリル。
「はい。ああ、でも武器の使い方も学んでもらいますよ?」
 なんて。
 不敵に微笑んで頷いたシャルロッテは、ノートパソコンに何かしら歌が入っていたでしょうか、とパソコンを叩き出した。
 ――襲撃や侵略に備えることも大切なことだが、心が死んでしまっては備えていたって心で負けてしまう。
 娯楽というのは心を護る防具でもある事を、シャルロッテはよーく知っているのだ。
 ……それはそうと、ゲームもしてくれますかねえ?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

砂羽風・きよ
【暁】

え、お前達の国をどうすればいいか?
そーだなぁ、綾華はどんな国がいい
花か華やかになりそうだな!

城?!作れねーだろ?!
って、綾華も一緒にやってくれるんじゃ
おいおい、俺ひとりで作るのかよ!めっちゃ時間掛かるわ!

飯なら任せろってちくわ?
魚のすり身があるから作れるかもしれんがそれでいいのか?!
臭くね臭くねー!オレンジのさっぱりな香りがするだろ?

川なんてめっちゃ掘らなきゃ湧き出なくねーか?!
間違えたわ!川じゃなくて温泉出ちまうな!

そりゃ面白そうだな!道具とかなら作れそうだぜ!
確かにちくわ何百本も作れそうだな!

おう!俺に任せろって綾華も手伝ってくれよ?!
こうなったらめちゃくちゃ楽しいところにしてやる!


浮世・綾華
【暁】

んー、花が綺麗な国がいいんじゃない
アリスが来た時に花がたくさん咲いてたら少しは心が晴れるかもだし

って、城?
そっか、だってよきよし
この子らだけで城建て直すのは大変そうだし、手伝ったらいいんじゃねえ?
大丈夫、きよしの腕前を信じてるぜ

まあ食べ物は必要だよなぁ
魚のすり身持ってんのか?
だからお前いっつもちょっと魚臭いのか
(臭くないケド、冗談で)

川って掘って出てくるもんなの?
間違えんな。温泉出るか?
掘らずとも川はあるんじゃねえ?
川で漁が出来るような機械?道具?
みたいなのって作れない?そーゆーの得意だろ
出来たらいつでもちくわ食えるし

頑張れ。仕事はまだまだいっぱいあるからな
俺は花畑でも耕そうっと



「そーだなぁ……、綾華はどんな国がいいと思う?」
 わいわい、がやがや。
 賑々しく言葉を重ねるヤギとオオカミのぬいぐるみ達を前に、きよは綾華をちらりと見て。
「んー、そうだな。花が綺麗な国なんていいんじゃない?」
 たくさん花が咲いてたらアリスが来た時に少しは心が晴れるかもだし、なんて。綾華は応じた。
「なるほどな。花が綺麗な国か、華やかになりそうだな!」
「そうですねえ。お花もいいですけれどー、でもねーでもね、まずはお城が壊れてるんですよー」
 きよの同意に重ねるように。
 二人の間からぴょっこりと顔を出して、お話を始めたのはオオカミのぬいぐるみだ。
「ほら、ほら、そのう。穴が空いたお城があるとー、やっぱり綺麗な国じゃなくないです?」
 猟兵を見上げるオオカミは、全てを語らず察して欲しい雰囲気。
「そっか。だってよ、きよし」
 そんなぬいぐるみにうんうんと頷いて相槌を打った綾華は、オオカミと同じようにきよの顔をじっと見据え。
「そっかー……、……?」
 綾華とオオカミの顔を順番に見たきよは、いまいちその意図を理解しかねる様子で瞬きを重ねている。
「この子らだけで城を建て直すのは大変そうだし、壊したのは俺らも加担してるしさ。手伝ったらいいんじゃねえ?」
 うんうんとまた頷いてみせた綾華が、オオカミの意図を噛み砕いて伝えると淡く微笑みを浮かべ。
「えっ、城!? つ、作れねーだろ……?」
 やっと理解したきよが肩を跳ねて目を丸くした所で、綾華は彼の二の腕にぽんと掌を添えた。
「大丈夫、きよしの腕前を信じてるぜ」
「俺ひとりで作るのかよ!? おいおいおい! めっちゃ時間掛かるわ!!」
 一際大きな声で言うきよ。
 そんなきよを綾華は深い慈愛の籠もった表情を浮かべて力強くスルーしつつしゃがみこみ、オオカミと視線の高さを合わせて――。
「ごめんね、きよしがうるさくて」
「うるさくないし、きよしじゃねーわ!!!」
 綾華がぬいぐるみに掛けた言葉に、きよはびしっと振り返り。
 更に先程よりボリュームの上がった声で、重ねて突っ込むのであった。
「なになにー? きよしがこの夜を?」
「しろー、たてるの?」
 その大きな声に目を――耳を惹かれたのか。
 わいわい、がやがや。
 ヤギやオオカミのぬいぐるみたちが、きよと綾華を囲う形で集い出す。
「うーん、でもでも。建て直すにしても、どんな形にしようかなあ」
「ちくわがたべたいな、ボク」
「ちくわでお城作ると、おいしそうだねえ」
 ぬいぐるみが3体も集まれば、かしましくなるのがこの国の特徴なのかもしれない。
 また口々に話し出したぬいぐるみ達に、きよはこめかみをとんとんと叩いて、難しい顔。
 衛生面、強度、賞味期限、おいしいにおい。
 クリアすべき問題は大量にあるだろうが、他の国ではお菓子の家なんてのも在るらしいし意外と大丈夫なのかもしれない。
 しかし、しかし。
「魚のすり身があるから作れるかもしれんが……、本当にそれでいいのか?!」
 それはランドマークとして。
 それは城として。
「……えっ、お前、魚のすり身持ち歩いてんのか? だからいっつもちょっと魚臭いの……?」
 本気度合いの確認をするきよの言葉に、悪戯笑顔を掌で覆い隠した綾華は冗句めかしてからかうように言葉を継ぎ。
「いやいやいやいや、臭くねー、臭くねー! オレンジのさっぱりな香りがするだろ?」
「いや、それはそれでしてないだろ」
 全力で否定してから香りアピール。
 髪の毛をかきあげるきよに、綾華は肩を竦めたままゆるゆると首を左右に振って。
 ほどほどに話が混乱しだしたところで、ヤギのぬいぐるみがきゅっと小首を傾げた。
「でもー猟兵さんと言えど、城が出来るほどのすり身は持って無くないです?」
「さかなー、川のやつ? 海のやつ?」
「うーん、かわの気分~」
「うみでもいい~」
 マイペースに言葉のドッジボールを再開するぬいぐるみたち。
 しかしその言葉の中に引っかかる部分を見いだしたきよは、思わず勢いよく振り向き――。
「川なんてめっちゃ掘らなきゃ、湧き出なくねーか?!」
「そもそも川って掘るもんなの?」
「あっっ、間違えた! 掘ってでてくるのは川じゃなくて温泉か!?」
「ただでさえ話があっちこっちに行ってんだから、間違えんなよ」
 きよの小ボケを拾ってあげたながらも綾華は地形を把握すべく、ぐるりと周りを見渡す。
 一番に目に入るのは壁に大きな罅の入った城。そして、その前に設置された割れるという大きな池。
 ――こんなに大きな池がある上に、この水は割れて何度でも排水されているとしたら。
「……この辺りには元々、川とか何かしらの水源があるんじゃねえの?」
 そもそもこの国のぬいぐるみたちがちくわや川、海なんて言うからには、魚をどこかで手に入れられる筈なのだ。
「あるあるー」
 綾華がキリリと訊ねた言葉には、ぬいぐるみたちもあっさり頷き。
「なら、きよしは川で漁が出来るような機械? ……道具? みたいなのって作れないか? そーゆーの得意だろ」
「ん! とりあえず食料を確保する道具か! そりゃ面白そうだな!」
 きよに振り向いた綾華のお願いに、きよは二つ返事でぐぐっと拳を握って見せた。
「出来たらこの子らも、いつでもちくわを食えるしな」
「ちくわなら何百本でも作れるようにするぜ! 俺に任せとけ!」
 気合充分のきよに、綾華は良かったと眦を緩め。
「うんうん、頑張れ。なんたって仕事はまだまだいっぱいあるからな。城作りとか」
「綾華は手伝わねーのかよ!?」
 そのままきよから視線をすーっと綾華は逸らし、ぐうっと伸びを一つ。
「よーし、俺は花畑でも耕そうかなー。さ、花の種を選びにいこうぜ」
「おー」
 そのままぬいぐるみ達と向こうへと歩んでゆく綾華。
「あ、綾華ー!?!?!」
 手を伸ばせど届かぬ彼の背。
 勢いだけで重労働の中でも更にウェイトの高い部分を丸投げされたきよは、しばし立ち尽くし――。
「…………」
 ぎゅっと拳を握って顔を上げて、ぬいぐるみ達に背を向けて仁王立ち。。
「――こうなったらめちゃくちゃ楽しいところにしてやる! いくぞ、お前たち!」
 男は背中で語るもの。
 巨大な声と背中で語ったきよに、ぬいぐるみたちはおおーっと声をあげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『アンメリー・フレンズ』

POW   :    アフィッシュ・ストラクチャー
対象の攻撃を軽減する【醜くいびつに膨れ上がった異様に巨大な姿】に変身しつつ、【異形化した手足や所持している道具等】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    ポートマント・ビーイング
【周囲の仲間と合体する、又は合体させられる】事で【禍々しく歪んだ恐ろしい姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    スライシー・フルード
自身に【影響を及ぼしたオウガに由来する悪しき力】をまとい、高速移動と【状態異常を引きこす毒液や汚染された血等】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●不愉快な仲間たち
 遠目からでもよく見える大きな城は茶色くどこか香ばしいかおり。
 城下に広がる庭園には、色鮮やかな花々が咲き乱れ。
 賑やかな音楽に合わせて踊り演奏する仲間たち。
「ようこそ、僕たちの国へ!」
 来国者を出迎えるぬいぐるみは、両手を広げて――。
「イーーッ!」
「イーーッ!」
「きゃーーーっ!!」
 焼石を投げた。
「あーーっ、アンメリー・フレンズーーっっ」
「そう言えばいたねーー、そんなのーーっっ」
 城、城下町、店に花畑。
 あらゆる場所から姿を現したアンメリー・フレンズたちは、鞭のように撓る腕を振るって、めちゃくちゃに石を投げながら逃げ惑うぬいぐるみを追い詰め行く。
「イーーッ!!」
 ――確かに、この国を支配していたオウガは討たれた。
 しかし。
 その配下であったアンメリー・フレンズたちは、王であったブレイメンが居なくなった今こそ、国を手中に収めるべく動き出したのであった!
「イーーッ!!!」
「えーん、変な鳴き声以外出さなくてこわいよーー!!」
 ――しかし、ぬいぐるみたち……愉快な仲間たちの希望は絶たれた訳では無い。
 まだこの国には、希望たる猟兵たちが滞在しているのだから!
 猟兵たちはオウガの襲撃に対する備えだって、この国の修繕に立ち会った際に提案していた筈だ。
 今こそ特色を生かしたご当地攻撃や、通常攻撃で国を救うのだ! 行け、猟兵ッ!!
斑星・夜
【特務一課】

何かちょっと夢に見そうなレベルで怖いの来たんだけど、あれすごいね?
ぬいぐるみ達怖がってるじゃない、ダメだよーそんな事したら!

『ワイヤーガン』で地形を利用して周囲に鋼線を張って敵の動きを邪魔するよ!
雪丸ちゃん先輩のミュージカル戦法格好良いな!
よーし、俺も【ブリッツ・シュラーク】で雷の鞭を作って、ぬいぐるみ達を狙っている敵を優先に攻撃
相手の体勢を崩して動きを止めてお手伝いだ!

動きを止めた敵を『ワイヤーガン』の鋼線でぐるぐる巻きに捕縛
しゃべると怖いので口は念入りに締めとくよ!

捕縛したら怪力で持ち上げて、ジャグリングみたいに空中へ投げてキャッチを繰り返しつつ
キリジちゃん、トドメよろしくー!


キリジ・グッドウィン
【特務一課】
さっきまでよりこっちの方がオレ向きというか…とりあえずぶっ潰せばいいんだろ?
っていうかこれ以上煩いの増やすな。突然騒ぎだすのは雪丸鳳花で充分だろ…誉めてねぇよ!

『ペネロープ』が出るまでもねぇ。挑発しつつもナイフで切り込み応戦
オイオイ綿だかそうじゃないモノがはみ出てるぜ?傷口抉って腹をかっ開き自衛の一環として石をぬいぐるみ自身に詰めさせる。ランダムで焼き石も付けとけ

理屈は知らねぇが雪丸鳳花のミュージカル戦法通用してるな、これが本当のワイヤーアクション…いや違うわ
マダラって怒らせたらいけない類いの人間だよなァ

使用UCはとどめに
空に向かって吹っ飛ばせば折角作った施設に被害も出にくいだろ


雪丸・鳳花
【特務一課】
キミたちは招かれざる客だ!
この国の希望と平和のためにお引き取り願おう!

ぬいぐるみに自分たちもやれば出来ると教える良い機会だ
行くぞ!キリジくん!マダラくん!
ぬいぐるみと一緒にこの国を守ろう
【第三極東都市の女】で無敵の剣を創造する
この剣はすごいぞ!なにせ皆の希望が詰まっている最強の剣だから!
マダラくんの鋼線や壁を足場にして、ボクは空中浮遊で撹乱だ
ヒットアンドウェイ!

敵の胸に石を詰めるのにおあつらえ向きな穴があるぞ!
蓋を切り裂いたら、こう歌うんだ!

石をつめよう〜
たくさんつめよう〜

ぬいぐるみたち!石を投げて!
これがミュージカル戦法だ!
今だ!キリジくん!トドメは任せたよ!キミならできる!



 国中のそこかしこより這い出すように姿を現した不気味なぬいぐるみ――アンメリー・フレンズたちは徒党を組んで国中を練り歩き。彼等が敵だと見なした者が目に入った瞬間、歪な縞模様の四肢を大きく膨れ上がらせて襲いかかっていた。
 その動きからはおよそ戦略性といったモノは感じられず。
 自主的に国を支配しようというよりは、ただ偶然放たれて見るもの全てを破壊しようとしているようにも見えた。
「きゃあーーっ、ごかんべん~!」
 丸く黒い目を涙でべしゃべしゃにしながら走る一体のぬいぐるみが、ぺしゃりと蹴躓くと道を転がって行き。
「イーーッ!」
 ぬいぐるみの命乞いを聞き入れてやる義理も無いアンメリー・フレンズたちは、彼を囲むと長い舌でべろりと舌舐めずりをした。
「まって、まってっ、ぼくには家庭もペットもいますのでー!」
「イーッ」「イーーッ」
 さっと血の気を失ったぬいぐるみに向かってオウガの群れは、大きく振り上げた拳を幾度もモグラ叩きの槌の様に叩きこみ。何とかぬいぐるみが避けられている所を見ると、手加減して弄ばれているのであろう。
 そして、最後の仕上げだと言わんばかりにアンメリー・フレンズたちが大きく腕を振り上げて――。
 瞬間、鋭く肉を裂くような音にアンメリー・フレンズは、その場で身体をビクリと跳ねさせて硬直した。
「わーお、何、何? うわー、すごいね、ちょっと夢に見そうなレベルで怖くない?」
 それは夜の放った雷の鞭が、オウガたちを捕らえた音。
 更に敵が群がって来ないように、夜は雷の鞭を引き絞っている手とは逆の手でワイヤーガンを撃ち放ち。戦場を自分たちの都合の良い様に線を引く。
「でもダメだよー、そんな事したら! ぬいぐるみたちが怖がってるでしょー?」
 戦場を整えながら緩く笑う夜の横を、すり抜けて行く風。
 唇に凜とした笑みを宿して、鮮やかな足取りで駆ける鳳花は敵との間合いを一気に詰めて。
「招かれざる客、というヤツだね! キミたちにはこの国の希望と平和のためにお引き取り願うよ!」
 戦乙女の凛々しき声は、朗々と響く。
 彼女が大きく腕を振るうと、先程まで何も握られていなかった掌の中に細剣が顕現している。
 振るわれた形そのまま弧を描いた刃は、アンメリー・フレンズたちの腕を軽々と跳ね飛ばし。
「うげ、綿だかそうじゃねえのか、よくわかんねえモンがドボドボ出てんじゃねぇか」
 腰を抜かしたのかその場に転がったままだったぬいぐるみを、キリジは接近がてら拾い上げて小脇に抱え。気味の悪い体液のようなものに、辟易とした声を上げて。
「――ま、お前ら如きにゃ『ペネロープ』が出るまでもねぇよ」
 後、何か機体に変な液とか付きそうで嫌だし、なんて。
 両腕を刈り取られたアンメリー・フレンズを上げた足の反動だけでお行儀悪く蹴り倒すと、逆手に握り直したナイフで敵の腹を縦一文字に割いた。
 その状態からでも何とか逃れようとじたじたと暴れるアンメリー・フレンズの首元を、キリジは土足でしっかり踏んでやる事で押さえ込み。逃げまとう愉快な仲間たちに向けて声を上げた。
「おら、お前ら。好きに処しな。――お前らの国に手を出すと『こうなる』ってのを見せしめてやれよ」
「は-いっ」
「わーい、処す、処す~」
「ああ、焼石も付けといてやれ」
「おー」
 ――彼らには自衛する術を知って貰わねばならぬ。
 少数の強力で無いオウガならば、彼らだけだってその数で何とかできるようになるだろう。
 しかし今の彼等は立ち向かうという気概も無く。
 オウガ共が倒せるモノと言う事を知らぬままでは、猟兵が居なくなった後この国は成り立たなくなってしまうだろう。
 だからまずは、その為の第一歩。
 オウガ達に怯えるだけではなく、立ち向かって貰う事を伝えて行こう。
 ぎゅっと握った拳を、花開かせるように鳳花は開いて――。
「ウンウン、キミたちもやれば出来るさ! ボクは誰よりも知っているよ。さあ、蓋を切り裂いたら、こう歌うんだ!」
 石をつめよう~♪
 たくさんつめよう~♪
 入り切らないくらい、たっぷりつめよう~♪
 根拠のない自信と信頼に満ち溢れた、よく分からないけれど元気とパッションだけは感じられる歌声。
 鳳花はぬいぐるみが演奏してくれる荘厳なBGMを背に剣を掲げて見せると、夜の引いたワイヤー線を足場にして飛び跳ね。アンメリー・フレンズに向かって一気に駆け出した。
「――行こう、キリジくん、マダラくん! ぬいぐるみたちは石を投げて! 皆と一緒にこの国を守ろうじゃないか!」
 鳳花の言葉に合わせて、熱い戦闘ミュージックを吹き鳴らすぬいぐるみ。
 歌に合わせて一気に懐に潜り込んだ鳳花は、すぱりと敵を切り裂いて。
 めちゃくちゃに振り回される腕の懐に潜り込んで制動を掛けると、ひらりと曲芸のようにバックステップで敵から離れた。
「さあ! これで石を詰めるのに、おあつらえ向きな大穴が空いたぞ!」
 やあ、ボクは誰だと思う?
 ドン・キホーテ?
 いいや、いいや、雪丸鳳花だ!
 歌い、踊り、誇れ。
 平和への希望の詰まった最強の剣で蝶のように舞い蜂のように刺す、ヒット・アンド・アウェイ!
 これぞ、ミュージカル戦法!
「ラーララー♪」
 いつものように突然歌い出した鳳花に合わせて、ぬいぐるみは更に演奏をヒートアップする。
「雪丸鳳花のBGM係になってねェで、てめぇも戦えよ」
「やーん」
 鳳花の後ろで無防備に笛を吹きまくるぬいぐるみを狙って、肉薄してきていたオウガへと距離を詰めたキリジは、切り結びざまにぬいぐるみの頭を掴んでぽいっと投げ捨て。
 ころころーっと転がって行くぬいぐるみ。
「あははっ。いやいやー、怖がってないのは良いことだよ、でも戦ってくれたらもっと良いかな~」
 驀進してくる敵群に向かってワイヤーガンを撃ち放ちながら、夜はまた緩く笑った。
 敵を斬り伏せて駆け回る鳳花の後ろで笛を吹く胆力があるのならば、彼はきっとオウガに物怖じしない良い戦士になるだろう。
 ワイヤーの絡みついた敵の巨体を、ぎゅっとひいた夜は強い踏み込み。
 まるでハンマー投げのように、敵を絡め取ったワイヤーを遠心力のままに勢いよく振り上げて――。
「イーッ!?」
「にしたって突然騒ぎだすのは、雪丸鳳花で充分だろ。煩いのがただでさえ増えてるんだ、増やすなよ、煩いのを」
 夜の膂力によって空中に投げ飛ばされたアンメリー・フレンズは、目を白黒。
 ナイフを軽く投げ捨てたキリジは、ぎゅっと引き絞った弓のように上半身を撓らせて。
 膂力と反動を乗せた拳を、降り落ちてきた敵の土手っ腹に叩き込み。
「今だ!」
 空中でナイフをキャッチして再び愉快な仲間たちに声をあげると、ぬいぐるみ達はわあわあと倒れた敵に石を投げ込み出し。
「――ま、さっきまでよりこっちの方がオレ向きだよな。とりあえずぶっ潰せばいいんだろ?」
「あはは、そういう事だね。……じゃ、キリジちゃーん、もう一体行くよー!」
「……お前もお前で容赦ねぇよな」
 マダラって怒らせたらいけない類いの人間だよなァ、なんて。
 常人離れした怪力でワイヤーに引っ掛けた巨体を此方へとカッ飛ばしてくる夜に、キリジはやれやれと肩を竦めて。再び拳を握り込み――。
「あと、あのミュージカル戦法って何なんだ?」
 キリジはあまり意味や理由はわからないけれど、歌いながら戦う事で何となく戦果をあげている鳳花をちらりと見やりながら、拳を叩き込んだ。
「あははっ、雪丸ちゃん先輩のあの戦い方も、格好良いよね!」
 ばぢん、と大きな音を立てて雷の鞭で敵を打ち払った夜はまた笑って。
「何だい!? ボクを今賛美したかい!?」
 そこに鳳花がぴょーんと飛び込んで来たものだから。
「褒めてねえよ、黙って戦え」
「またまた、キリジちゃん照れちゃって~」
「マダラも黙って戦ってろ」
 キリジはまた、やれやれと肩を竦めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

シャルロッテ・ヴェイロン
いや、「イーッ!」って、何ですかねこの旧世紀の特撮ヒーローものに出てくる悪の組織の戦闘員めいた掛け声は(汗)。
――それはさておき、この国に関わったからには、責任取って守らないとですよ!

ホワイトラビットを【操縦】して出撃、まずは【指定UC】で強化(攻撃力重点)しましょう。
で、巨大化した敵の攻撃を【見切り、第六感・ダッシュ】も駆使して攪乱しつつ、隙を見てばらばらに【切断】してやりましょうか。
――ああ、愉快な仲間の皆さんにも【援護射撃】とかやらせましょうか――まあ無理させずに、状況が悪くなったら無理せず逃げるよう言っておきますね。

※アドリブ・連携歓迎



「きゃーーっ」
 突然の襲撃に、石を投げながら逃げまとうぬいぐるみたち。
「イーッ!」
 長さの合わぬ四肢をずるずると引きずって、不気味なぬいぐるみもどきはその身を沸騰させるように。膨れ上がらせながら、動くモノたちをギロリギロリと睥睨する。
「……何ですかね、その、古めかしい特撮ヒーローものに出てきそうな、悪の組織の戦闘員めいた掛け声は……?」
 そこら中から這い出してきたアンメリー・フレンズを目の当たりにしたシャルロッテは、肩を竦めてやれやれと瞳を細めて。
「まぁ何にせよ、……この国に少しでも関わった以上、その責任は最後まで果たさせてもらおうか」
 そうして――ホワイトラビットを撫でた彼女は、そのコックピットに身軽に飛び乗った。
「ぼくの前に姿を現したんだ、一匹たりとも逃がして貰えるとは思わない事だ」
 電脳ゴーグルを目線まで下ろしたシャルロッテの前に、電脳コンソールがいくつも現れ。照準をアンメリー・フレンズに合わせると、走らせたコードが敵の解析を開始する。
 ホワイトラビットが地を踏み込むと同時に、プログラムコードが自動生成され。シャルロッテが視線だけでインストールを選択すると、ホワイトラビットの装甲がカシャリと音を立てた。
 巨大化したアンメリー・フレンズが、ホワイトラビットに追いすがるように一斉に踏み込み。
 歪な鈍器と化したファンシーな色合いの腕や足が、ホワイトラビットに一気に振り下ろされた。
 しかし、そこにはもうホワイトラビットの姿は無い。
 アンメリー・フレンズが間合いを詰めると同時に飛び跳ねていたホワイトラビットは、空中で跳ねたままオウガを睨めつけて――。
「討ち滅ぼせ!」
「いくぞーっ」
 シャルロッテの声かけに合わせて、ぬいぐるみたちが一斉に手にした砲を放った。
 それはブレイメンの置き土産。
 この国を牛耳っていたオウガの装備であった巨大な砲だ。
 小さなぬいぐるみ達は巨大な砲に対して、何体も並んで力を合わせることでその発射をなんとか可能とした。
「付け焼き刃ではあるが、お前たちのボスの武器は良く効くだろう?」
 爆炎が漂う中に着地したホワイトラビットは、舞うように。
 ビームサーベルの軌道が弧を描いて、アンメリー・フレンズの首がさぱりと撫で斬りされて次々と地に落ちる。
 確認できる敵の数は、未だ多数。
 ぞろぞろと這い出す敵群に、シャルロッテはホワイトラビットの中で肩を上げて。
「あ、愉快な仲間のみなさーん。状況が悪くなったら、無理せずに逃げてくださいねー?」
 なんて、緩んだ口調でぬいぐるみ達に声を掛けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドガー・ブライトマン
これって所謂『招かれざる客』っていうヤツだね
ぬいぐるみ諸君も困っているみたいだし
ココは王子様の出番だろう

ごきげんよう、アンメリー君
私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ
キミたちの主はもう骸の海に帰っちゃったワケだし
この国はまだまだ忙しいんだ、たくさんやるコトがある
アンメリー君たちにも、お帰りいただこうかな

とりあえず狙いがぬいぐるみ君から私へ移るように
アンメリー君へ石を投げよう
ホラホラ、こっちだよ

アンメリー君が巨大化したってやるコトは変わらない
かれに向かって石を投げ続ければ
足元にたくさん石が集まるだろう。それが狙いさ

石が多ければ、きっと体勢が崩れるチャンスがある
好機と見れば《早業》で“Lの直感”



「ちかよらないでってばー!」
 袋小路の一番奥まで追い詰められてしまったヤギのぬいぐるみは、石を構えて精一杯の威嚇ポーズ。
 差し向かう相手は、口に収まらぬ程に長いぼってりとした二枚舌。
 腕を引きずりながらのたりのたりと不器用に歩く、左右の長さが噛み合わぬ四肢。
 異形を模したぬいぐるみのようなオウガ、アンメリー・フレンズだ。
「えーん、こないでー、本当になげますからね!?」
「イー」
 オウガはヤギの必死の警告にも、耳を貸すつもりは無いようで。一歩、一歩、ヤギへと迫り来る。
「やだーっ!」
 恐怖に耐えきれなくなったヤギが思わず、オウガへと石を投げつけた、瞬間。
 オウガの身体は沸騰しきった湯のようにぼこぼこと蠢めいて、大きく大きく膨れ上がりだし――。
「あーっ、ごめんなさいーっ、反抗的な態度をとりましたーっ」
 懇願するヤギに返事するように、空を翔けるツバメがピイと甲高い鳴き声を上げた。
「ごきげんよう、アンメリー君」
 同時に、オウガの頭へと叩き込まれる小石。
 石と声の飛んできた方向……袋小路の壁上を、アンメリー・フレンズは見上げて。
「お招きされていないパーティで暴れるなんて、あまりマナーがよろしくないようだね」
 ひらりと白いマントを靡かせて。袋小路の壁上から飛び降りてきたエドガーは、お辞儀を一つ。
 オウガは返事代わりに、鞭のように撓る腕を叩き込み。
 ヤギを庇う形でマントを広げて降り立ったエドガーは細剣を掲げて、刃の表面で滑らせるようにその軌道を逸らした。
「王子様……!?」
「そうだよ、私の名はエドガー、通りすがりの王子様さ」
 目を見開いたヤギの言葉に微笑んで頷いたエドガーは、彼を小脇に抱え。
 それからアンメリー・フレンズを見上げると、一応尋ねてみる事にした。
「ねえ、キミたちの主はもう骸の海に帰っちゃったワケだし、この国はまだまだ忙しいんだ。大人しくお帰り願えないかな?」
「イーーッ!」
 それは話を聞き入れた訳では無い、威嚇の声。アンメリー・フレンズは鋭く腕を薙ぎ払い。
「ああ、そうなるよね。ねえ、キミたち。少し動くからこぼれ落ちないように気を付けてね」
「はーい」「おー」「エドガー様~」
 マントの中には同じようにエドガーが救った、オオカミとヤギの先客が二体。
 肩や背に彼等がぎゅっと捕まっている事を感じながら。
 地を蹴ったエドガーは迫り来る腕を大きく飛び跳ねて避けると、そのまま巨大化した敵の股下へと敢えて潜り込んで、すり抜けて。袋小路から大きな道へと脱出する事に成功する。
 そこに――元々エドガーを追ってきていたのだろう。
「イッ!?」「イーッ!」
 袋小路の壁上から飛び出してきたアンメリー・フレンズと、エドガーと相対していたアンメリー・フレンズは、物理的に衝撃的な出会いを果たす事となった。
 上から落ちてくるオウガと下に立っていたオウガは、強かにぶつかり合い。
 その場でもみ合い、倒れ、勢いで壁まで崩れ落ち。
「アッ、ごめんね。町を壊してしまったね」
「有事ですからねー」「しゃーない」「そうねえ」
 エドガーは困ったように額を掻いてから、――それでも訪れた好機を捉えたならば、逃すつもりは無い。
「……それじゃ、アンメリー君たち」
 崩れた壁に足を取られた二体のアンメリー・フレンズへと、一気に肉薄したエドガーは細剣を構えて。
「折角訪問してくれたキミたちには申し訳ないけれど、骸の海にお帰りいただくよ」
 雷撃の如き鋭き連撃を、敵へとお見舞いした!

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
イー…いえ、全然良くないです

石酒屋を存分に堪能しようとしていましたのに
焼き石を作ったところでとんだ邪魔が
まだ冷え冷えの石を作っていないのですよ

――許せませんね、

平穏(とお楽しみ時間)を乱す輩は
苦悩を味わって散るべきです
お腹に詰め込んでしまいましょう
山ほどの石を

ねっ、と
オオカミさん達に微笑んで
凍てる宵の如き刀を携え
凛と紡ぐ詠唱の後、疾駆

擦れ違いざま抜刀
斬り薙ぐことが叶ったのなら、ほら――
綻びほつれた其の身をみるみる蝕む、蔦蔓の刻印

裂かれた腹へ
ぎゅうぎゅうに重い石を詰め込まれる悪夢でも
御覧なさいな
美味しいものの恨みは怖いのですよ

すっかり片付いた後は改めて
私利私欲…もとい、
素敵な酒を楽しみましょうね



 それは前触れも無く、突然の事であった。
 破砕音と共に崩れ落ちた壁の向こう側から、虚ろな瞳がコチラを覗きこんでいた。
 更に闖入者が桃色と水色のファニーな縞模様の腕を振るうと、作ったばかりの『設備』がへしゃげて転げる。
 相違う長さの四肢はまるで、動く度に藻掻いているようにも見えるだろうか。
 がしゃりがしゃりと音を立てて、幾つかの瓶がブチまけられ――。
 それは異形を模した、ぬいぐるみのオウガの襲撃。
「あっ……、アンメリー・フレンズ……!」
「イーッ!」
 綾の背に隠れたオオカミのぬいぐるみたちが呟くと、びたんと腕を振るってアンメリー・フレンズは返事をして。
「……いえ、全然良くないです」
 八寒地獄よりも冷たく、八大地獄よりも深い溜息。
 手にしていた酒瓶を丁寧に机へと置いた綾は、陶磁色の瞳でアンメリー・フレンズを見据えた。
 石酒屋の為にこしらえたばかりの、石を冷やす道具。
 石による熱燗を試す為に用意した、燗で頂くと美味しい酒。
 これから綾はお楽しみの時間――否、名産品の試作品の味見をする筈であったのだ。
 しかし、しかしだ。
 壊れてしまったモノは、元には戻りはしない。
 零れてしまった酒は、もう戻ってくる事は無いのだ。
「――ねえ」
 刀の柄に手を添えた綾は、壁を壊すことに腐心しているアンメリー・フレンズに、ひどく穏やな声音で語りかける。
「人々の平穏を奪い、乱す事は楽しいですか?」
 返事の代わりに、がらりとまた崩れ落ちた壁。
 綺麗に笑った綾は、真冬を宿した刃をすらりと覗かせ。
「私の楽しみを奪う事は、楽しいのでしょうね」
 ――許せません。
 口にしなくとも、陶磁の奥に宿った色が語っている。
 平穏を乱し、美味しいお酒を瓶ごと割るような輩は、――苦悩を味わって散るべきである、と。
「折角熱々の焼き石を作ったばかりです、悪い子にはお腹に山ほどの石を詰め込んでしまいましょう」
 ねっ。
 背の後ろに隠れたオオカミたちに微笑んだ綾は、壊した壁から室内に入ってきたアンメリー・フレンズへと向かって。
 駆けるでも無く自然な動きで一歩前へと歩むと、刃を鞘へと納めてしまった。
 ――それは見る事が叶わぬほど、速い斬撃であった。
「いっ……?」
 困惑の声を漏らしたアンメリー・フレンズのファニーな肌に刻まれたのは、刀傷では無く黒き蔦蔓模様。
 綾が瞳を閉じると蔦蔓は、アンメリー・フレンズの肌の上を這い萌えて。
「裂けた腹に、それほどに石を詰め込まれるのは苦しいでしょう」
 なんて、綾は嘯く。
 敵の身体にびっしりと伸び出した蔦蔓模様は、身体と精神を蝕む質量を伴わぬ桎梏だ。
 焼き印が身体を蝕むほどに、恐ろしい悪夢がアンメリー・フレンズの心を苛んでいる事だろう。
 しかしそれも、仕方の無い事だ。
「――美味しいものの恨みは、怖いものですからね」
 苦しい幻覚にじたじたと暴れるアンメリー・フレンズに、もう一度刀を奔らせた綾は踵を返して。
「さて、オオカミさんたち。……今度こそ、試作品を試しましょうか」
 次の楽しい時間に想いを――、私利私欲……否、国の名産品作りの手伝いの続きを申し出るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

砂羽風・きよ
【暁】

うわ、マジか!
また敵が来やがった!

綾華やべーよ!
アイツらめちゃくちゃ顔こえー!
俺はイカれてねーわ!普通だわ!

つか、このままだとまた壊されちまうのか?!
折角ここまで作ったのによ!

くそ!こうなったらやってやる!
魚獲るように作った大きな網を敵に向かって投げる

うおりゃぁぁー!!こうみえて結構力強いんだぜ!
敵が引っ掛かったらそれを引っ張り

綾華、やっちまえ!
流石綾華!格好良いぜ!
ふはは、お前達もあのちくわの城の素材にしてやる!

い、いやいや、流石に冗談だけどな?!
って、おいおい!それじゃあ、俺が魚の仲間になっちまうじゃねーか!
不味そうとか言うなよ!旨いかもしれねーだろ?!

いや、ちくわにはならねーけど!


浮世・綾華
【暁】

確かにこいつらちょっとイカれた感じでこえーんだよな
おわ、しかもめちゃすごい姿になるじゃん…
いや、でもイカれっぷりでいったらきよしも大差ないな
謙遜すんなって

そーだよ
折角作ったもん壊されんのは嫌だろ?
怖がんな、頑張れ

そーなの?いつも非力なイメージが
ああ…センセと特訓した成果が出てきたのかしら

きよしの命令に従うようで癪なので掛け声がかかる前に動いている
数多の鍵刀を速さに対応できるよう配置し攻撃を弾き
隙が出来たタイミングで本体へ

ちくわは魚からじゃないとできなくない?
冗談ならもっと面白い冗談にして
「俺がちくわになる!」とか?
不味そうだから嫌だケドさ
なんだよ、つまんねーやつだな
じゃあちくわの中入れよ



「イー……ッ!」
「イーッ」
 口に収まらぬ二枚舌は、だらりと口の端からこぼれている。
 長く鞭のように撓る長い腕が、壁に触れれば壁を砕き。
 快・不快も読めぬうつろな瞳がぐりぐりと周りを見渡し、ぱちりと視線が合ってしまった瞬間。
 背負った鳥のようなモノ達が、ヂヂヂと囀った。
「きゃあっ!?」
 可愛らしい色合いのぬいぐるみ――のようなモノ。
 それは先程猟兵達が降したオウガ、ブレイメンが普段配下として利用していたオウガ。
「わあああ、アンメリー・フレンズ!?」
「うわ、まーた敵が来やがったのか!」
 一緒にちくわを焼いていたきよも目を丸くして、外を見渡して状況を確認する。
 うさぎ穴でも在るのだろう。敵はそこかしこから這い出して来ているが、狙いは城だけでは無さそうだ。
 ――何にせよ、すげー数だな。
 きよはぬいぐるみ達を守るべく、背や頭に乗せて、小脇に抱え。
「お前ら、行くぞ!」
 最後にモップを装備すると、ぬいぐるみまみれのきよはモップを振り回しながら城の外へと駆け出した。

「きゃーっ、来たーっ」
「えーん、ずっと見ないと思ったらーっ」
「ん、なんだありゃ」
 編んでいた花を散らしながら、右往左往するぬいぐるみ達。
 国中に現れたアンメリー・フレンズは、綾華の居る花壇にも溢れ出してきていた。
「う、お、お、お、おおお!!」
「イーーーッ!!」「イーッ!」
 そこに響き渡る、気迫のこもった声。
 背後から殴り倒したアンメリー・フレンズをモップの先に引っ掛けて、無理やり横へと受け流し。
 返すモップで逆方向から襲いかかってきた敵を薙ぎ払う。
 ――ぬいぐるみをめちゃくちゃ背負ったきよの声だ!
「あああああ、あやか!! 大丈夫か!? やべーよアイツら! 顔こえーし!」
 敵の包囲を無理やり割いて。
 綾華の元まで駆けてきたきよはぜいぜいと肩で息をしながら、抱えていたぬいぐるみ達を地に下ろすと綾華を見上げた。
「確かにこいつらちょっとイカれた感じでこえーな。つーか何だよきよし、わざわざ迎えに来たのか?」
「めちゃくちゃ一杯いたからな。折角作った城を壊されたくねぇし、それなら綾華と一緒の方が――、って、うわーーーっ!!」
 綾華の言葉にきよは大きく頷いてから顔を上げて、めちゃくちゃ大きな声で叫び。
「うるさ……って、おわ。こわっ」
 その視線の先を追った綾華も、思わず驚きの声を漏らした。
 アンメリー・フレンズ達が手を繋ぐと、その身体は解けて一つになり。歪な身体が、更に禍々しい異形へと変化して行く。
「めちゃすごい姿になるじゃん……」
「うっわ、うわー、えっ、こえー!?」
 二人は変身シーンを、呆然と眺めるばかり。
 なんたって変身シーンは、ヒーローと悪役双方の不可侵条約が結ばれているものですからね。
 それから。
 綾華は既に傷を拵えてきているきよと、敵を見比べてから、少し肩を竦めた。
「まあでも、イカれっぷりでいったらきよしも大差ないな」
「俺はイカれてねーわ! 普通だわ! なんでそんなこと言うんだよ!」
「うんうん、謙遜すんなって」
「してねーわ!!」
 唇に笑みを宿した綾華は、それよりと敵を見やって。
「折角作ったもん壊されんのも嫌だしな、頑張れよ、きよし」
「くそ! 仕方ねぇ、こうなったらやってやる!!」
 がんばれーっとぬいぐるみ達に応援されながら、きよは魚取りに使った投網を敵へと投げつけて。
「うおりゃぁああーーっっ!」
 きよは投網で敵を捕らえてぎゅっと引き絞り、その進軍を食い止める。
「おお、いつも非力なイメージがあるのに」
「……こうみえてっ! 結構力はっ、強いんだぜ!」
「そーなの? ああ……、センセと特訓したしネ」
「って、そんなことより――」
 きよしの師匠、カッパことトムを思い出しつつも。綾華は次に来るきよの言葉を予測して、座り込んだ体勢から動く事無く腕を上げた。
「綾華、やっちまえ!」
「言われなくとも」
 腕を真っ直ぐに下ろせば、すでに構えていた百を超える鍵刀がバラバラに宙を翔けて。
 巨大な腕も、吐き捨てられる体液も、届かせなければ攻撃とは成りえない。
 距離を詰めるのは、綾華では無く複製された鍵刀。
 鋭く飛ぶ刀は敵を貫き、振りかざされる腕の前へと飛び出しては攻撃を弾き。
「うおおっ、綾華! 格好良いぜ!」
 鍵刀の活躍に更に投網を投げ込みながら、きよは大はしゃぎ。
「ふはははは! お前達もあのちくわの城の素材にしてやる!」
「いや、ちくわは魚からじゃないとできなくない?」
「い、いやいや、流石に冗談だけどな?!」
 綾華のつっこみに、きよはふるふると首を振り。
「なるほど、冗談ならもっと面白い冗談にして? 『俺がちくわになる』とか」
 きよの文字通りの包囲網を抜けてきた敵の前へと、一気に距離を詰めて肉薄した綾華。
 鍵刀の刀身に手を添えて、敵が振り下ろした腕の軌道を滑らせて逸らす。
「ま、待て待て! それじゃあ、俺が魚の仲間になっちまうじゃねーか!」
「そうネ。でも、きよしのちくわって不味そうだな」
 刃を返して逆袈裟に払うと、ぬいぐるみの腕を刎ね飛ばし。
 大きくバックステップを綾華は踏んで。
「不味そうとか言うなよ! 旨いかもしれねーだろ?! いや、ちくわにはならねーけど! あときよしでもねーけど!!」
 腕を奪った敵へと、きよは叫びながら網を投げて敵の動きを封じる。
「なんだよ、つまんねーやつだな、じゃあちくわの中入れよ」
「なんでそんなに俺をちくわにしてぇの!?!?!」
 その隙を逃すこと無く、綾華は空中に浮く刀を殺到させて敵を討ち倒した。
 ――敵は数多。
 しかしオウガたちにこの国を、再び与えてやるつもりは二人にはひとつだって無い。
 二人はまた軽口を叩きながら、次に迫りくる敵を見据えて――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メアリー・ベスレム
変な鳴き声
こいつらがあのオウガの影響を受けているのなら
やっぱり光って唸って合体するのかしら?
だったらむてきじかんには気を付けないと

さぁ、生まれ変わったこの国のやり方で歓迎してあげる
とっても素敵なやり方を教えてもらったばかりだもの!
(※誰かが必死で止めようとしていた事は既に忘れている)

ざくざくお腹を切り裂いて
ごろごろ石を詰めましょう
お腹いっぱいになったなら
ちくちく縫ってできあがり!

暴れまわればまわる程
石は重たくなるばかり
高速移動なんてもうできない

ジャンプ踏みつけ軽やかに
逃げ足を活かして立ち回る
メアリを捕まえられるかしら?
毒と血には触れないように気を付けて
動けなくなった敵から首を刈る


フリル・インレアン
ふえ?あの愉快な仲間さん達はお友達ではないのですね。
わかりました、ぬいぐるみの魔法を使いましょう。
さすがにブレイメンさん相手では大きさが違いすぎて使えませんでしたが、あのオウガさん達が相手なら大丈夫です。
せっかくのダンスホール(予定地)です。
ダンスを踊るみたいに戦ってみましょう。



「イーーッ!!」
「まあ、変な鳴き声ね」
 襲いかかってきたアンメリー・フレンズの背をメアリーは馬跳びの要領で飛び越え、現状を頭の中で整理する。
 あのオウガの配下たちが、国中に溢れ出しているみたい。
 王様が倒された事に気づいて、暴れだしたのかしら。
 ひらりと揺れるフードを押さえて、逆の手には肉切り包丁。
 柄尻で頭を殴りつけるとアンメリー・フレンズは蹈鞴を踏んで。
 壁を蹴って身体をひねったメアリーは、体勢を崩した敵へとヒールを捻り込む。
 それにしたって、あのオウガの配下だというのなら、やっぱり光って唸って合体するのかもしれないわ。
 そういう時って、『いっぱんてきにむてきじかんがはっせいする』らしいから、気をつけないと。
 くるんと宙返りしてから地へと降り立ったメアリーは、唇に指を寄せて。
 完全に理解出来た訳では無いけれども、実際に経験した不思議なあの時間に思いを馳せる。
 ――刹那。
 メアリーを狙って、アンメリー・フレンズが屋根から落ちてきて――。
「!」
「ふえええぇっ!? すみませーん、避けて下さいぃ」
 そこへ。
 くるくる回りながら横から飛び込んできた巨大なうさぎのぬいぐるみ……と、それと手を繋いだまま振り回されるフリルが、振ってきたアンメリー・フレンズを撥ねてしまう。
「あっ」
 慌てたフリルが何を撥ねたのかと確認しようと、振り向くと――。
 華麗なステップを踏んだうさぎのぬいぐるみが、引き返して丁寧にアンメリー・フレンズを轢き直した。
 ついでにガジェットのアヒルさんが突撃をぶちかますと、フリルはふるふると首を揺すって。
「ふええ……、だ、ダンスを踊るみたいに戦いたいとは、たしかに言いましたけれど……」
 ――召喚されたぬいぐるみはフリルの動きをトレースしているはずなのに。敵とは言え、人身事故を起こしてしまったフリル。
 こんな予定では無かったのに。
 ままならない力強すぎるステップに彼女は、眉をひそめて困り顔。
「まあ、ありがとう」
「は、はい。どういたしまして」
 そんなフリルの内心の葛藤など知りはしないメアリーがお礼を告げると、フリルは今度は照れて顔を俯け。
「かわいいパートナーとダンスをしているのね」
「はい、ダンスホールで踊っていたのですけれど……」
 気がつけばうさぎのぬいぐるみはフリルの意に反して、ダンスホールを飛び出し。町中で大暴れをするアンメリー・フレンズを撥ねて、轢いて、ここまで来ていたもので。
 説明する言葉を選びきれず、フリルの語気は小さくしぼんで、ぱちんと消える。
「ふぅん。でも音楽で沢山のこの国には、それは良いやり方ね」
 ぱちぱちと瞬きを重ねたメアリーは、それから、うん、と頷き。踵を返して数多の敵たちを見据え、包丁を真っ直ぐに構えた。
「じゃあ、メアリもこの国のやり方で歓迎してあげないと」
 その甘やかに細めた瞳も、弧を描く唇も、とても楽しげ。
 さっきメアリは、とっても素敵なやり方を教えてもらったのよ。
 そうして、ぽーんと地を蹴って跳ねたメアリーは、アンメリー・フレンズたちの間を縫い駆ける。
 ♪ ざくざくお腹を、切り裂いて。
 左右に肉切り包丁を振り上げ、振り落とし。
 ♪ ごろごろ石を、詰めましょう!
 わあ、わあ。
 隠れていたヤギのぬいぐるみ達がたっぷりと石を持って、その傷口へと石を詰め込んでゆく。
「イーッ!?」
 ――今回は変身をしている訳では無いのだけれども、必殺技バンクにもこの国の名物『いっぱんてきにはっせいしたむてきじかん』は発生するもの、呆然と立ち尽くすアンメリー・フレンズたちは石を詰められるがまま。
 ♪ お腹いっぱいに、なったなら。
 たらふく石をお腹に詰められたアンメリー・フレンズの前に、次は糸を通した針を持ったオオカミのぬいぐるみ達が姿を現して。
 ♪ ちくちく縫って、できあがり!
 メアリーが腕をばっとあげるとオオカミたちは一様に、丁寧に傷口を縫いあげ退場して行く。
「ふふ、あなたたちの為のフルコース、たっぷり召し上がって貰えたようね」
 あっという間に、ずいぶんとお腹を大きくしたアンメリー・フレンズたち。
 メアリーは改めて肉切り包丁を手に、身を低く構えて――。
「お腹も満たされたなら、ダンスパーティの再開、ね」
「ふえぇ、まだ踊るのですね?」
「もちろん、メアリはまだダンスをしていないもの」
 うさぎのぬいぐるみにぐるぐる回されすぎて、三半規管がぐるぐるになりつつあるフリルは、ふええとまた呟いた。
 お尻の尾飾りをぴょいんと揺らしたメアリーは、フリルとは対照的に楽しげに笑って。
 力を加えられて手を離されたバネのように、高く高く跳ねて包丁を振り上げる。
 ――けれど、そうね。
 ダンスパーティの前には、いくら勧められたからって食べすぎには注意しなきゃいけないわ。
 あなたが怪物だとしたって、よ。
 だって。
 不思議の国のダンスパーティだもの。
 いつ怪物を食い殺す獣が現れるか、わからないじゃない。
「さぁ、メアリと一緒に踊りましょ!」
 この国が平和になるまで。
 この国から怪物が全ていなくなるまで。
 おわらないダンスパーティの、はじまりはじまり!
「ふえええ、あ、アヒルさんー、と、とめてくださいー」
 踊るようにアンメリー・フレンズの首を刈るメアリー。うさぎに振り回されて、アンメリー・フレンズを轢いて回るフリル。
 二人をまあるい瞳で見つめるアヒルさんはやれやれと首を振って、壁の花に徹するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月14日


挿絵イラスト