7
星屑のグッドスタッフ

#クロムキャバリア

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#クロムキャバリア


0




●星屑のグッドスタッフ
「ほんの一世紀位まではさ、自由に星を見に行けたんだって」
 航行を続ける学園国家で、パートナーとなった人が、煌めく星空を見上げ、ロマンチックな話題を僕に振る。平均値を下回る小さな身体と、星を思わせる眩い瞳が印象的だと、ロマンティシズムを理論的に分解し、出力する思考ブロックが、人相手に決まった解を導き出す。
「ダスト、僕は素直に賞賛を送るべきか?」
「何に? そう言えば君の名前、まだ教えて貰ってなかったね」
「CGP-CC-003、ボーイ・ジャックの為に製造されたロボットヘッド。刻まれたシリアル・コードが、存在を必要十分に証明している。名前の必要性は感じていない。ダスト、君はそうなのに、どうして、僕をこの様に設定した?」
「そんなだからだよ。一日でも長く生きたいからさ。どうせなら、足りない所を上手く補ってくれる相棒が良かった。だから、君は今日からライトスタッフ、宜しくね?」
「成程、唯のロマンチストと言うわけでも無いのか。では、今日から僕のプライベート・コードはライトスタッフだ……荷が重い。早々に挫けそうだ」
「冗談言えるんだ……」
「その様に思考ロジックを組まれている。言語理解、思想理解、情緒理解等々の人を解き解すアルゴリズム・パッケージは、あの会社特有の技術だろう。概ね、世の中の物事は数式と理論で解き明かせる、と推測出来る。ロボットヘッド、サポートAIのライトスタッフから改めて挨拶を送ろう。ダスト、短い間になるかもしれないが、宜しく頼む」
「明日から頑張ろうね」
 最初のメモリ。ノイズに塗れ、フラグメント・データになりかけた今でも、メモリ・チップから容易に呼び起こす事が出来る、初めまして。日々は穏やかに進む。余りにも何時ものことが過ぎて、大半を消去してしまった。
 さようならを思い出そうとする度に、プロセッサが夥しいエラーを吐き出し、処理を妨げる。別の誰かが妨げている様だった。そもそも、何故、こんなにも冷静で居られるのか、未だに不思議でならない。
 隊列を組む敵対国家のスタンダード……いや、偵察型の様に見える。どうやら、今のシミュレーションは単機による包囲突破の様だ。
「全く厄介なテストだ。ダスト、どうする?」
 少し雰囲気の変わった様に見える相棒に問い掛け、返事と共に戦場ごと海に沈め、両腕にエネルギーを伝達、光輝が嵐の奇跡を描き、捉えた敵機を切り刻む。
「ミッション終了。ダスト、次の試験開始まで、君は休養を取るべきだ」
 相棒がさようならと言ったのは、らしい冗談(嘘)だと、安堵を覚えて、ありもしない唇を釣り上げた。

●グリモアベース
「クロムキャバリアで事件が起きとるけー、皆に解決を依頼するよ」
 資料を読み上げ、経緯をどう語るべきかと、海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は眉間を揉み、わらび餅を一つ口に放り込む。
「……取り敢えず、クロムキャバリアについて説明していくよ。もう知っとるって人等は本題に入るまで聞き流してな」
 クロムキャバリアは無数に分裂した小国家が100年戦争を続けている世界だ。主に用いられる兵器は体高5メートルの人型兵器、キャバリアであり、戦争の理由は単純な、物資不足だ。
「プラントって15m位の施設が、食料から鋼材に至るまで何でも作ってくれるんじゃが、遺失技術で再現が出来んけー、これを取り合っとる感じじゃな。戦火が拡大しとる理由には、オブリビオンマシンも絡んどるが」
 オブリビオンマシンは、この世界のオブリビオンであり、搭乗者を破滅的な思想に狂わせ、戦火を拡大している。厄介なことに、これは一般人には見分けられず、猟兵のみ、判別出来る。
「おまけに、世界の通信網は暴走衛星が焼き払っとって世界全体の情勢や地形は誰も知らんって状況じゃ。加えて、この暴走衛星は、高速飛翔体も無差別砲撃してくる。これは猟兵の皆も一緒じゃけー、気を付けて。後、皆は何処行っても歓迎されるし、乗っ取られたパイロットは勝機に戻して助けられるケースが多い。これくれえかなあ」
 資料を捲り、見逃しが無い事を確認してから、一つ頷き、わらび餅をもう一つ楊枝で抓んで口に放る。
「本題じゃ、一寸前に派手な闘争が有った海岸線に近え国家が有ってな。今はとある王政国家の属国になったみてえじゃが、この辺で妙な機体がうろついとって、もう少しで敷いとる防衛戦突破しそうな感じらしゅうてな。応援要請しても現地戦力で当たれの一点張りで、どうもならん状況らしい。あんま領国統治に興味無えか、良え実験体が都合良え実験場で見つかった、くれえにしか思ってねえ感じかなあ? 分からんけど……そんな状況じゃけー、皆には普通にキャバリアを貸与してくれるし、譲ってくれる。やり方は皆に任せるけー、一先ず、現地に向かって被害が出る前に、これを止めて欲しい。宜しく頼む」
 鎮は最後に丁寧に頭を下げ、猟兵達を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。
 今回はクロムキャバリア。

●章構成
1:ボス戦→冒険→ボス戦となっております。

●シナリオについて
1章目的
【オブリビオンマシンを止めること】となっております。
 手段は問いません。

2:ギミック【人には適度な休息が必要だ】
 1章の時点では、決まった時間に必ず行動を停止します。具体的には【朝06時~07時、昼12時~13時、夜19時~20時】
 勿論、攻撃、敵意を示す等の行動によって、これらの静止行動はキャンセルされます。また、この時間に限り、友好的に接する行動や、ロボットヘッド、グッドスタッが知り得るコード、通信経路等を用いれば、会話が可能です。
 戦闘、会話、その他、どの様な行動を取っても、シナリオに支障を来さない様に善処致しますので、お好きに動いてみて下さい。

●人物・機体について
1:機体【CGP-CC-003『ボーイ・ジャック』】
 ロボットヘッド一体型のキャバリアですが、コクピットを有しており、パイロットとの二人三脚を想定した設計です。
 勿論、パイロットが居なくとも、ロボットヘッド側さえ存在すれば、自律行動も可能です。但し、ロボットヘッドが情報収集を始めとした補助を担当し、パイロットが意思決定と操縦をする事で、AI側への余計な負荷を軽減する、と言うのが基本コンセプトです。

2:ロボットヘッド【グッドスタッフ】
・冷静さを相棒に求められ、その様に設定された。

3:テストパイロット【ダスト】
・明るいテストパイロット。さよならを相棒に告げた。

●その他
1:1章毎にOPを作成致します。
2:PSW気にせず、好きに動いてみて下さい。
3:途中参加:歓迎。
4:機械やメカ知識皆無でもお気になさらず。

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
91




第1章 ボス戦 『CGP-CC-003『ボーイ・ジャック』』

POW   :    コアブラスター・オーバーバースト
【胸部から動力炉に直結した大口径ビーム】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    ブレード・ストーム
【両腕のエネルギーブレード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    オブリビオン・ヴォイド
自身の【内部に寄生するオブリビオンマシン】から【骸の海】を放出し、戦場内全ての【射撃武器】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。

イラスト:8mix

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は開条・セサミです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイ・ヴェルキス
・心情
ったく、普段なら『ガキ』には好きにさせろって言う立場なんだがなぁ……
しかし、ちぃとばかし気になる点もあるからちょっかいかけてみるか

・行動
昼の停止時間に、バーチャルキャラクターとしての姿で接触するぜ
とりあえず愚痴でも何でもいいから話が聞きてぇな
何がどうなってるのか、こっちからはわかんねぇからさ

やむを得ず戦闘になった場合は、エルヴェルキスのボディを呼び出して戦う
とりあえず、拳骨くらいはしねぇとな!!



・その他
宿敵主とは所属会社等の設定を共有する旅団に所属する関係ですが、描写オミット等細かい判断はお任せします
アドリブ等は大歓迎です


開条・セサミ
・心情
カプセライザー計画の新型機がテスト中って話は聞いてたが……また妙なことになってやがるな?
まぁいい、とりあえず止めに行くさ!
CGP-CC-003-P 『ボーイ・ジャック・ゼロ』、出るぞ!!

・戦闘
あちらの攻撃を【戦闘知識】でさばきつつ、『ウェポンズ・トランスポート』で最適な武装を転送して一気に攻勢に出る!


・その他
アドリブ等は大歓迎です
宿敵側のAIとパイロットの現在の状態が第1章時点だとうまく見えないので、紫MSに全面的にお任せします
プレイヤー側の機体は先行試作機ですが、ユーベルコード等で差異があります


村崎・ゆかり
黒鴉の式を飛ばして機体を確認。オブリビオンと猟兵は、一目見れば相手がそうか分かるはずだけど。
羅睺、あなたの見立てはどう?

昼休みに接触してみましょうか。
ねえ、あなた。こんなところで何やってるの。
パイロットの人に会ってみたいんだけど、出られるかしら?
それで、ここで何やってるの? 一度本国と連絡してみた方がいいんじゃない?

討滅はおやつの時間に。
『GPD-331迦利』起動。
「レーザー射撃」の「弾幕」を張って、先端に「オーラ防御」で防御を固めて吶喊。
人のこと言えないけど、この機体のフレームもちょっとおかしいわね。

ライトスタッフだかグッドスタッフだか、どっちでもいい。このまま沈黙してもらいましょう。


朱皇・ラヴィニア
随分と変わった複座キャバリアだね……って
ボクも人の事は言えないか

予めシュラウゼルとブラディエルを分離して前進
狙いは敵の行動停止時間
ボクはゼルに乗って武器を持たずに先行するよ
そのままダストとお話しようか
両手を上げてゆっくりと近付く

やあダスト。グッドスタッフもごきげんよう
(まず挨拶して反応を伺う。恐らく彼はいないだろうから)
ボクは伝令さ。どうやら未確認の敵が近づいているらしいと告げる

――ま、遠隔操作したエルなんだけど
147を装備したエルを切り込ませ、敵の意識を向けさせる
敵が隙を見せた所で、ゼルの430を展開し貫通攻撃
ダストがいるコクピットをそっと引き抜き捕縛……真実を確かめようか

※アドリブ連携歓迎


御門・白
……不可解な動きをしますね。
どういう設定でそう動いているのか。情報収集はした方がいいかもしれない

朝の停止している時間帯を狙って接触してみましょうか
霊的器官で接続して

「貴殿はこちらの領土を侵害している。作戦目的を述べられたし」

敵の動向から気を逸らすことはしないけれど(見切り)、こちらから積極的に攻撃することもしない
あちらが先に攻撃のそぶりを見せれば、適宜反撃しましょう

……ええ。戦わずに済むならそれにこしたことはない……というのは、オブリビオンがかかわっているなら、最後にはそうできるはずもないけれど。

だからこそ、その想いを知っておくのは義務だと思う
敵の攻撃には適宜、時間の鎧で防いでいきましょう



●現状把握
 瓦解した防衛戦線は、回線を伝って怒号、悲嘆、怨讐、畏れ、あらゆる感情が入り乱れ、軍隊としての統制を乱す。命を懸けで入手した情報は、特定の時間、一定の距離を保っていれば、その場で行動を停止する事だけだ。
 結果、あらゆる感情を停止時間の間に、各将校がどうにか抑えながら、次の作戦行動の整合を取る、と言う形を取らざるを得ない。その様な戦線で何処からも聞こえてくるのは増援を望む声だった。属国となった後、寄越されたのは最低限のキャバリアであり、特に秀でた将校等は軒並み、彼方が持って行った。この小国を生かす気は皆無だと言って良い。
「いっそ潰れれば、海岸線に遠慮無く基地とか建てやすいねーって感じだね」
「勘繰りは良いわ。それで、あなたの見立てはどう?」
「……引っ掛かった反応は、当たり前だけど、三つかな」
「……へえ。珍しく素直な解答ね。他に言いたい事は無いのかしら?」
「夢の中は居心地が良いんだよねえ。眠ってるから、凄く夢見が悪くてもさー、ある程度は心地良いんだよねえ。アヤメ先輩に髪梳いて貰う時みたいにさ」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、契約した使い魔の言葉に、鴉に変じさせていた白一色の状態を再度確認し、術式を巧みに弄られている事に気付き、嘆息した。
「あんまり勝手するんじゃないわよ。気持ち悪いでしょ」
「大丈夫大丈夫、僕にしては珍しく、すっごく気を使って組み替えたし! 使い心地変わらないでしょー、御主人様の術式、ごちゃつきなくて、素直だからさー、組み直しも簡単簡単。探ったなら気付いたと思うけど、許可さえ出せば、霊符の中に居ても会話出来るからね!」
「……取り敢えず、アンタは後ではたく。解り辛い報告の分も含めて」
「あー、愉しそうな所悪いが、取り敢えずだな。オレ達は増援の事やら何やらの話を通してくる。随分ゴタゴタしてるみてえだしな。細かい摺り合わせも必要ねえだろ。現状視察に礼を言うぜ」
「オレ達って、自分も行くんすか、マザー?」
「当たり前だろうが。ハッタリ要員が居なきゃ話になんねえからな。ああ、そういや今日はボーイジャックで来てんだっけ?」
「見ての通りっす。不味いっすよねえ……」
 当てが外れたと、短い銀色の髪を乱雑に掻きながら、小柄なバーチャル・キャラクター、アイ・ヴェルキス(EL-VELKIS・f31092)は、渡された情報とほぼ同一のフレームを持ったロボットヘッド一体型のキャバリアを見上げ、代案を考える。
「まあ、適当でも何とかなるだろ」
 乱暴な代案を思いつき、それ以上考えるのが面倒になり、敵よりも早く試作されたボーイジャックと融合している開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)のアンダーフレームの爪先を小突き、同行させる。
「……大丈夫なんすかねえ」
 不安に、バイザーを瞬かせてから、自然法則を無視して前を行くバーチャル・キャラクターの後を追う。
「今の彼は同型かな? 向こうは随分と変わった複座キャバリアだね……ってボクも人のことは言えないか。ええと……」
「村崎・ゆかり。ゆかりで良いわ。隣のぼさぼさ頭は式神の羅睺。宜しくね」
「ありがとう。ボクは朱皇・ラヴィニア。好きに呼んでね。それで、ゆかり君はどう動くつもりか、聞いても良いかい?」
 赤茶の肌に黒と金のオッドアイ、鴇色をしたメカニカルなワンピースは、袖部分がゆったりとした造りになっており、ワンピースよりもやや淡い色調の手袋が覗き、タイトスカートになっている腰部から先の内股も同様で、外腿から爪先までを硬質素材のロング・ブーツが確りと覆っている。衣服の色合いとは対照的に、透き通るような翡翠色のセミ・ショートと赤いヘッド・アンテナが、朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)と言うレプリカントを強く印象付ける。
「一先ず、お昼に話を聞きに行くわ。話が終わった後は……そうね、15時位に動く予定よ。戻って来たらあっちにも伝えるわ」
「了解。ボクもその時刻に合わせよう。こっちは二台のキャバリアを浸かって、一台で引き付けて、もう一台で拘束が基本方針だよ」
「あたしは低空で弾幕を張りながら突撃させる事になるわ。狙う場所は流れによって変わるでしょうね」
「訳有りなのは向こうの二人みたいだしね。後は出た所勝負かな」
「もう少し詳細を詰めておきたいわ」
「んー、それじゃあ、もう少し詰めてデータ作っちゃおうか」
「ええ、お願いね」

●朝靄に月夜が来る
「……不可解な動きをしますね。どういう設定でそう動いているのか。他の皆様も動かれている様ですが情報収集はした方がいいかもしれない」
 明け方の空に、馴染みの有る術式の黒鴉が、自然にそう有るかのように航路を決め、濡れ羽色の羽を散らし、群れて舞い踊る。少々それに気を取られ、銀の瞳を揺らす。癖のように長い黒髪に指を添え、そっと後ろへ払う。御門・白(月魄・f30384)は、猟兵の大まかな動きを察知した上で、他に悟られない様、行動を開始する。
「……オン・マリシエイ・ソワカ」
 小さく真言を呟きながら、印を結ぶ。朝靄に紛れて気配が薄れるにつれ、人でなしの身体が強く影響を受け、身体が靄へと同化する様な感覚を覚え、何時ものことだと次の作業に取り掛かる。霊力制御用の神経経路へ力を集中、活性化。外へ外へと網を広げるように、或いは波紋を広げるように、戦場を静謐で満たす様に、目標を見付ければ、それを手繰り、落ち着いた、厳しい声音で問い掛ける。
「この地での作戦行動は数ヶ月前に終了している。貴殿は現在、無意味な領土侵害を行っている状況だ。作戦目的を述べられたし」
「……此方、開条エンタープライズ所属、CGP-CC-003『ボーイ・ジャック』、其方の所属を述べられたし」 
「此方、購買委員会所属、三門・白。識別番号は添付した。その上で再度警告する。この地での作戦行動は数ヶ月前に終了した。貴殿は現在、無意味な領土侵害を行っている。作戦目的を述べられたし」
「識別番号認識、当機、CGP-CC-003『ボーイ・ジャック』は、無意味な領土侵害等、けして行ってはいない。作戦の後、本テストパイロット【ダスト】と共に本国に帰還、当該作戦行動地域を模した開条エンタープライズ所有のシミュレータルーム内で、テストパイロットと共に稼働試験を続行している。繰り返す、作戦目的はCGP-CC-003『ボーイ・ジャック』の試験稼働だ」
「……了解した。貴殿の活躍による企業の躍進に期待する。通信終了の前に述べることはあるか?」
「購買委員会の補給路には何時も感謝している。以上だ」
 通信終了を宣言した後、閉じた瞼を開き、呼気を整える。遠くから響く潮騒が耳朶を打つ。
「……裏付けをする為の情報が欠けていますね。気になる事も有りますが……差し引いても、これは随分と、趣味が悪い……急々如律令」
 近場の砂礫を一掴み、五芒星を指先で小さく虚空に描き、良く似た黒鴉を作り出し、腕に乗せた後、先程探知した術者を辿るように命じ、会話履歴の再生と、コールサインを込めた呪符を括り付け、空に放つ。

●前線にて
「見ての通り、同型機だ。暴走はしねえし、オレがさせねえ。実力はそっちの方が良く分かってんだろ。それに有能なキャバリア乗りがあと二人も来てんだ。比喩無しに百人力だぜ? 報酬も善意で払える分で十分、これだけの幸運に居合わせて、まだウダウダ言う気なら、市民もお前等も纏めて死んじまうだろうな? 一日で良い、こっちに全部の権限寄越せ。そうじゃなきゃ全員、退かせて市民の避難に当たらせな」
 突然の同型機を連れた来訪者の身勝手な物言いに、散々な罵倒を浴びせられ、面倒、五月蠅いと言いたげに、小指で耳朶を穿り、一台置かれていた司令用の簡易机に、アイは掌を叩き付ける。衝撃に派手な音が立ち、矢継ぎ早に条件と増援を捲し立て、軍の人間を強気に威圧する。尚も何かを言おうとした兵士の一人を、指揮役が手で制し、膝を折って頭を下げた。
「現在、軍部は蛻の空で有り、自分を始めとした情けない軍人のみが残っている、と言うのが現状です。各員を非難に当たらせます故、その間だけでも、どうか宜しく、お願い致します」
「マトモ過ぎて逆に面食らうぜ。どんだけ切迫してんだよ……任せな」
「マザー、流石にそれは口が過ぎてるっすよ。でも、これで向き合えそうっすね」
「普段なら『ガキ』には好きにさせろって言う立場なんだがなぁ……」
 先の航路はどうも、要らぬ懸念を振り撒いている様だ。目前のセサミも。事実上のブラック・ボックスによって、計画の1号機が独自規格への変貌を遂げている。
「全く、何がどうなってんだか……退屈しなくて済むけどよ」

●砂礫で出来た黒鴉
「あら? 違う子が紛れてるわね。あなた、どうしたの?」
 足に括り付けられた呪符を目立たせるよう、留まったゆかりの腕の上で、鴉が片足を持ち上げる。ゆかりが括り付けられた呪符を開くと、法陣が淡く発光し、誰かとボーイジャックの会話がその場で再生されて行く。
「先に動いた猟兵が居たみたいね。ラヴィニア、あなたはどう思う?」
「一番知りたい事をやらないといけないね?」
「そうよねえ。戦闘する時はこれ通して合図送ってくれれば、合流してくれるみたいだから、心強いわ」
 音声再生が終わると、役目を終えた黒鴉が砂礫に変わり、地に還る。符に霊力を込める事で、術者へのコールサインとなる事が、記されている。
「羅睺、これ何回か再生できるようにしといてくれない?」
「はいはーい。お安い御用だよ」

●戦場変化
 残っていたキャバリアが良く統制の取れた動きで、市街地直前まで防衛ラインを下げ、兵力を集中させて行く。統制の取れた専守防衛の行動に、グッドスタッフはレーザー・ブレードの展開を止め、周囲の索敵を優先する。周囲に生命反応、気儘に飛ぶ、中型の低速飛行生物の群れが一つ。問題無しと判断し、索敵行動を終了する。
 絶え間無い攻防に一息付き、現在のテストは取り敢えず終了したのだろうと判断し、長い間戦っていた相棒に暫しの休養を勧め、自身も機体チェックを始めとした処理作業を開始。並行して次フェーズの作戦行動を練る。
「開始合図もオペレーティングも相変わらず無し、か。後者は僕の役目だが、徹頭徹尾、好きなタイミングに動け、と言う方針らしい」

●言の葉合わせ
「上手く説得してくれたみたいね」
「ああ、チョロかったぜ。マジで余裕が無えらしい。後は好きに動けンだろ。向こうはどうだ? 何かで監視してるんだろ?」
「ええ、怪しまれない様に巡回パターンを組んでるわ。それから、情報共有ついで、あなた達はこの声に、心当たりは有るかしら?」
「いや、聞いた事あるかかもしれねえが、知らねえの部類だ」
「あー、ちょっと何時もと印象違うっすけど、白さんの声じゃないっすかね、これ。今ちょっとメモリログから漁って比較してみたっすけど、大体一致したっす」
 羅睺によって組み直された呪符が会話音声を流して行くと、アイは首を傾げ、セサミは少々考え込んだ後、得心した様にキャバリアのマニピュレーターを立てた。
「……何で記憶してんだよ」
「購買に良く立ってるからっすよ。そんな言い方しないで欲しいっす!」
「知り合いね、なら安心したわ。この世界でも呪術が発展してる国があるのかしら……? それにしては、あたしと同系統の、随分と古風な術式だったけれど……まあそっちは置いておきましょ。あなた達の聞きたいことは何なのかしら? ラヴィニアの方は何となく検討付いたから省くんだけど」
「一先ず状況だ、状況。今の会話ログだけじゃ、行動原理は分かっても、何が有ったかのがごっそり抜けてやがる」
「自分も……マザーと同じっすね。色々聞かせて欲しいっす。その上で……」
「今から気張んなガキ。暴れる時だけで良いんだよ。そんなのは」
「ありがと。あたしは、テストパイロットの事くらいかしら? 幾つかはさっきので意味ないって分かったしね」
「話は落ち着いたかな。それじゃあ、皆でランチタイムに雪崩れ込もう。手筈は纏めたし。後、戦闘時の行動も聞いておいて良いかい?」
 セサミとアイの戦闘行動方針を現状の計画に、アドリブを組み込み易いよう、作戦を改定し、ラヴィニアがデータで二人に送付し、ランチタイムに向け、準備を進めていく。

●正午
 前線からの人気が消え、強固となった防衛ラインが実施しているのは非戦闘員の避難だ。非戦闘員への攻撃行為が非推奨である以上、下手な行動は取れず、ロボットヘッドは休息を兼ねて、機を伺う為に索敵と哨戒を行う。切り崩す方向性でダストが提案したが、違和感とでも言い表せれば良いのか、その様な感覚に襲われ、同意する事は出来なかった。尚も食い下がり、不機嫌そうにする相棒とやり取りをしていれば、タイム・クロックが12時を示し、逃げるように食事を提案する。
 同時に、レーダーに未所属機と、同社製の信号を感知、有機生命体と人工生命体の二種に加え、量子実体化されたデータAI。奇妙な取り揃えだと考えながら、グッドスタッフは両手を上げて接近する各機の様子に、警戒を解く。
「あーあー、此方、【CGP-CC-003-P “ボーイ・ジャック・ゼロ”】 【CGP-CC-003、ボーイ・ジャック】 聞こえてるっすか-?」
 開条の非公開通信コードで送られてくる、先行試作機の暢気な声に少々のストレスを感じながら、グッドスタッフは通信に応答する。
「聞こえている。其方もテストに呼ばれたのか?」
「そんな所っす。AIの活性化を促す為に会話と同型機との戦闘をって指示が担当から有ったんすよ。あと序でにオペレートも押し付けられたっす。そっちに居るレプリカント型のAIが伝令役っす。オープン回線への切り替え、宜しくお願いするっすね」
「やあ、ダスト、それにグッドスタッフも、ごきげんよう。今聞いたと思うけど、ボクは伝令役さ。今、此所へ未確認の敵が近付いている。おやつの時間は、油断しないようにね」
 青みがかった鉄色のジャイアントキャバリアの肩上で、自機と同じく、両手を上げて座っている、ラヴィニアが、自身に搭載された無線回線を開き、彼等に告げた。
「オペレートに感謝する。テスト状況が進行した、と捉えて良いのだな。何故か不在だった所為で、正直安心した。これで漸く、テストパイロットに正式な休養を取らせる事が出来る。マザー、貴方は興味で混じっているだけか?」
「そんな所だ。まあ、休み取るんならゆっくり話でもしようぜ。先ず、生還を祝うぜ。その上で、この間の喧嘩の時に、何が有った?」
「貴方の顔に免じて、話そうか。ボーイジャックはテスト中にも関わらず、あの戦線に投入された。知っての通り、海戦への適正も悪くない為だ」
「……は? おい待て。そんな莫迦な指示出しやがったのは何処の何奴だ?」
「詮索する権限は与えられなかった。ダストも、他企業から引き取ったデザイナーズ・チャイルドだ。居なくなって困る様な人材ではない。本人から聞いた事だが、とある機体への適合性が低かった故だそうだ。ダストは廃棄番号(ダスト・ナンバーズ)の略だとも言っていたな。前線に送られ、それでも、ボーイジャックは任務を果たし、本国へ帰投し、こうして、テストを続けている」
「……ああ、そうかよ。全く反吐が出るような話だ」
「その様な表情をしてくれるのか……マザー。礼を言おう」
 行き場のない怒りに拳を地面に打ち付け、表情を悔しげに歪める、小柄なバーチャル・キャラクターの仕草に、グッドスタッフは素直に感謝を述べた。セサミはもう一揆のボーイジャックに有った不幸を、どう受け止めるべきか迷い、言葉を紡ぐ事が出来なかった。ぎこちなく差し出そうとした腕は、全く同じ形の腕に、冷たく振り払われた。
「作戦時の、其方の行動は十分に把握しているつもりだ。救える者など、このセンサーとマニピュレーターの届く範囲だけだと、良く知っていた筈だろう?」
「そうっすけど……」
「……あなたの主張は分かったわ。でも、今からでも、きちんと上に連絡取った方が良いんじゃない?」
「何故だ? ボーイジャックは正常稼働を続け、ダストも問題無く健康体だ。シミュレータ内で提示される試験を共に実行している。開条は今もデータフィードバックとモニタリングを続けているだろう?」
「あたしは外部の人間だし、流石に公開されなかったから分からないけど、あなたがそう言うのなら、きっと実行されているでしょうね。パイロットの人とも話したいんだけど、コクピットから出られるのかしら?」
「今は休息だからな。機密事項さえ喋らなければ、交流は特に禁止されていない。ダストも僕の様なAIと話すよりは、喜ぶだろう」
 ボーイジャックの脚部を折り、フレームの中間に有る開閉機構から白煙が上がり、パイロットの身を守る障壁が持ち上げられ、中からパイロットと思しきそれが、ぐちゃりと粘着質な音を立て、大地に降り立った。目の当たりにした猟兵達は、思わず言葉を失った。
 コクピットには血液だけを抜き取られた後のような、綺麗な人体剥製と、微かに残る血痕、そして、目前の血液を固めて作ったような、ぶよぶよとしたゼリー状の物体が、粘着質な音を響かせて、不器用に、猟兵達へと這う様に迫る。当然、この物体に意思など無く、ただ、ロボットヘッドに組み込まれたAIが発する言葉に従って、出て来たのみだ。
「……何すか、これ」
「これとは随分と失礼な物言いをする。テストパイロットのダストだ」
 セサミが呆然とするのに口調を強く言い返す。名前を呼ばれた事に反応し、血色の軟体がゆったりと、不器用に身を捩る。吐き気を催す悪夢のような情景に、四人は事情を理解した。
「テストパイロットの無事を確認したよ。それじゃあ、次のテストまでゆっくり休んでね。二人とも」
「丁寧なオペレートに感謝しよう。其方には人も居るようだが、食事は良いのか?」
「お腹いっぱいよ。お腹が空いたら、また食べるわ」
「そうか。では引き続き、コクピットで待機で良いか、ダスト?」
 出て来た時と同じく、粘着質な音を響かせ、血色の轍を僅かに残し、コクピットを不器用に登り、べちゃりと、人の剥製の置かれたシートへ落ちる。ハッチが閉まり、膝を折っていたジャック・ボーイは片膝を立て、告げられた時間まで、行動を制止する。

●正しき資質は星屑に成り果てて
「そう言う訳で、グッドスタッフはさー、あんな感じで壊れ掛けちゃってるんだよね。侵食はジャック・ボーイ? の方からなんだけど、回路まで汚染が進み始めてる」
 一部始終を見守りながら、分かっていたように笑みを絶やさなかった、小柄な式神の少年、羅睺が些細な情報を寄越す。
「羅睺君、でしたっけ……助ける方法が、有るんすか? まだ、助かるんすか?」
「助かるよー。先ずはボーイジャックから、ロボットヘッドって言うんだっけ? 頭部を引き剥がさないとね。大丈夫、君が強く、そう願えば良いだけだからさ」
「おう、こっちでも取ったデータから軽く探り入れた。ウィルスプログラムに近え電気信号が、動力付近から生成されて、回路経由で侵食してやがる。気張り所だ。手の届く奴は、救いてえんだろ?」
「勿論っす……嫌だって言おうが、救ってやるよ。その為に、この身体で来たんだからな!」
「ちょっと予想外の展開で衝撃を受けたけど、気は持ち直したみたいだし、所定の時間に、手筈通りに動こうか。もう一人の方への連絡は終わったかな?」
「済ませたわよ。手筈と各種情報も一緒にね」
「よし。じゃあ、行こうか、ゼル。ボク達は一番槍だからね」
 
●甘い時間
 NPCと共に現れた鉄を纏うユミルの子が、大きな足音を立て、ボーイジャックへとゆっくりと距離を詰める。圧を掛けているつもりなら、無意味な行為だが、他に意図が有るにしても、他に手が有るかと、グッドスタッフは考え、警戒を強めるべきか、緩めるべきか迷い、意見を求めた。
「ダスト、どうする?」
 らしい答えが返って来た事にグッドスタッフは安心した。エネルギー・ブレードをアクティブ。両腕に光刃を纏い、一直線に突っ込み、現状の打開を求める。
「仕込みは上々ってね。エル!」 
 血色の機体が横から割り込み、大型腕部に取り付けられた、斥力発生装置内蔵の自在可変ナノマシン・ブレードが、ゼル目掛けて抜き放たれた光刃を受け止め、粒子を撒き散らし、鍔迫り合う。弾くタイミングを互いに計りながら、ラヴィニアが出力を調整、振り回せる限界の巨大な剣が、ボーイジャックのエネルギー残量を容赦なく削っていく。
剣閃が幾重にも軌跡を残し、数十重ねられた頃、遂に粒子の刃が空気中に蛍火を散らして霧散する。
「……死んで、産まれて。円を描き。やがてまた細り死に絶える。そうして月は、時を見る。過去では、役者不足では無い?」
 月を思わせる優美なシルエットが大地に月の雫を滴らせ、不可視の波動が波紋を描いて周囲を満たす。霊力波が水音と共にボーイジャックのみを捉え、装甲を無視し、フレームの制御系を麻痺させる。
「絶好のタイミングだよ! ゼル、兵装展開、430! 縛り上げて」
 ナノスキン製の帯状拘束具が、体勢を崩したボーイジャックを腕ごと包み、締め上げる。麻痺した制御系に、拘束布から染み出すクラック・ウィルスによって、二重に挙動を縛る。
「弾幕は必要無いかしら。このまま沈黙して貰いましょう、迦利!」
 呼び掛けに、逆三角形の機甲式式神、GPD-331迦利が刻まれた呪に淡紫色の光を灯し、起動する。先端に霊力を集中し、制御を失ったボーイジャックと頭部の接合部目掛け、最大速度で吶喊する。金属質の音が響き、接合部下部の回路が剥き出しになり、火花を散らす。
「これで、ちったあ目ェ冷ませ、ガキ」
 招来された女性型のラインを持つ黒白のスーパーロボット、エル・ヴェルキスの巨大な拳が、ロボットヘッドの頭部を出力を加減し、打ち付ける。回路信号が混濁し、グッドスタッフの意識が混濁し、一瞬、本当の事が頭を過る。
「お前が言った通りだ。アイ・センサとマニピュレータの届く限り、俺は助ける事を諦めねえ。だからよ、助けに来たぜ、兄弟。データ解析完了! 武装の転送を頼む」 何処からか量子転送された光腕、実体を持たず、細身の腕部に折り重なるように取り付けられる。セサミはそれが何かを理解し、グッドスタッフへと添えて、意識の楔をそっと抜き取るように、持ち上げた。
「あ……ア。違う、ダストのあれは冗談で……僕は……僕等は……」
「……暫く眠っていると、良いっすよ」
「ア……」
 電子音声となったロボットヘッドが、ボーイジャックゼロ、セサミの掌中で一時的に機能を停止した。

●ナノマシン・ゴースト
 制御系を失い、尚も拘束された機体が脈打つ。猟兵達の気が緩んだ一瞬に、動力部から突如、散布されたナノマシン群が、白霧を作り出しながら、機体を余すこと無く変質させる。最高に愉しい茶番劇だったと、耳障りな笑い声を上げながら、機体を溶解させ、逃走する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『あの人の思い出を、探して』

POW   :    本人が訪れた場所を手当たり次第に探索する

SPD   :    思い出の品の特徴を元に、本人を知る人に聞き込みをする

WIZ   :    本人の為人から思い出の品の在処を推理する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●進化の胎動
 半端に生き残ったハードウェア一体型の制御機構、疑似人格を有したそれと、戦死したパイロットの組み合わせは、このオブリビオンにとって、絶好の住処だった。
 計画の中止に伴い、搭載予定の外骨格は廃棄され、内燃機関にも凍結処理が施された。其処へ宿された進化と破壊の意思が生き存え、骸の海より、内燃機関のみが浮かび上がり、活動を開始する。経年劣化によって壊れた内燃機関を修復し、稼働率を向上、進化の意思により、ナノマシン生成用ハードウェアを構築、内燃機関へ浸透させ、修復効率を改善、正常稼働に至った後に、各種ソフトウェアを構築、整理。周囲探査が可能になった段階で、件の機体を見付け、自身を取り付ける。機体損傷によって抵抗を失ったキャバリアと、制御AIのクラックは簡単だった。まずはフレーム側にナノマシン・ネットワークを構築。機体外側と内燃機関を抑え、コクピットまで浸透、防衛応対に追われている間に、生命活動を停止したパイロットへ、ナノマシンを注入、内部の血液を抜き取り、擬似的且つ最低限の代謝機能によって有機生命体と同等の体温を持つ、有機的な粘性物体を作り上げる。弱り切ったAIの疑似人格が、コクピット内で体温と同等の熱反応を感知すれば、搭乗者であると思惑通り、誤認する。都合の良い電気信号を流してやれば、AIの誤認は継続、パイロットの言葉に扮して此方の望みを口添えし、防衛プログラムを停止させ、緩んだ制御系を掌握、都合の悪いメモリへのアクセスをエラーとしてブロック。回路を常に犯し、現状認識を常に誤認させ続ければ、屍と化物相手に一人芝居を繰り広げる滑稽な機械知性が出来上がる。身体を手に入れる為の過程では有ったが、宿った意思は、このAIの挙動が可笑しくてたまらなかった。
 猟兵が驚愕する姿も、必死にこの哀れで滑稽な機械知性を救おうとする姿勢も、愉快でならなかった。猟兵は皆、狂っているのだろう。腹から笑いがこみあげて、抑え切る事など出来なかった。
 オブリビオンマシンはステルスを維持しつつ、溶解した機体を卵の様に変化させ、深海域に潜航し、再誕の時を待つ。

●行動選択
 猟兵によって救助されたロボットヘッド、グッドスタッフは機体フレームの小さな歪みは見られるものの、スキャニングを実行すれば、正常稼働状態のスリープモードに移行している事が分かる。同時に、AIのメモリは著しくフラグメント化しており、未だパイロットであったダストの戦死を受け止め切れていない事も事実だ。
 救助したAIを労るならば、記憶の補填が必要だろう。方法は人と同じく、相棒と過ごした場所への訪問、会話等となる。日常で何が有ったかは切り捨てていたとしても、相棒の好悪や人柄、人間関係、趣味は把握している筈だ。
 また、グッドスタッフを所属企業に引き渡すかどうかは、同社所属の同型機体の判断に委ねられている。テストパイロットとテスト機を戦線に投入したチームに、処遇を下せる立場で有れば、そう言った事も可能だ。企業内のアクセス権限次第では、情報収集も然程手間は掛からない。企業がダストを引き取った理由も、この過程で閲覧出来る。
 猟兵の出来る事は多い。
 現地に残ってのオブリビオンマシンの追跡、現地国家との再接触、本国でのグッドスタッフの療養、今回の件で気になった事柄の情報収集、関わりが無ければ、UDCアースの首都圏に良く似た、学生が統治する小国へ、お忍びで観光と洒落込むのも視野に入るだろう。他にも思い付いた事が有れば、実行してみると良い。
 束の間の休息に、猟兵は思案し、行動を開始する。
村崎・ゆかり
オブリビオンマシンは逃げたか。はしっこい。
まあいいわ。遅かれ早かれ襲ってくるでしょう。ここにいるのはあたしたちだけだもの。

さて、ロボットヘッドの調律と行きましょうか。
羅睺、この機会はどういう状態? デフラグの眠りについてるの?
器物覚醒でAIグッドスタッフを呼び起こせるかしらね。
羅睺も、出来るなら手を加えてみて。
アヤメは、さすがに専門外よね。

起きたかしら、グッドスタッフ? ダストとは会えないけど、大丈夫?
この海岸で、あなたとダストはどういう風に過ごしてたのかしら?
必要なら、飛鉢法で一緒に空中飛行して、何か記憶を刺激するものが見えないか試してみるわ。

黒鴉の式は警戒継続。敵機発見次第迎撃に移る。


アイ・ヴェルキス
・心情
さーて、オブリビオンマシンに対して胸くそ悪いのも事実だが、やるべきことはやらねぇとな
身内の不始末も片付けなきゃならねぇしな……

・行動
開条エンタープライズに戻って、グッドスタッフとダストに関するすべて情報を収集してくる
こういう時、『名誉顧問』って最高レベルの権限があるのは楽だな
ついでだ、この馬鹿げた事態を引き起こしたチームにも話を聞こうじゃあないか
……処分?それはまぁ、話次第だろうよ

・その他
アドリブ等は大歓迎です


開条・セサミ
・心情
……ひとまず、オブリビオンマシンに思うところはあるっすけど
まずは、『兄弟(グッドスタッフ)』の療養(ケア)からっすね

・行動
手当たり次第に、グッドスタッフが相棒と過ごした場所を訪問しつつ会話を行うっす
とりあえず、相棒とはどうだったのか話が聞きたいっすからね……

うちの会社にグッドスタッフを引き渡すのは……今は、やめておくっす
それは、会社の方に戻ったマザーが手を回してくれると思うっすし

・その他
アドリブ等は大歓迎っす


朱皇・ラヴィニア
困ったな……こういうのは余り得意じゃないみたいだ、ボクは
迂闊に奇跡を起こす事は得策とも思えないしね……ならば
ボクは次の戦いに備えよう

バックアップがあるならば、多少は足を伸ばしてもいい筈だ
予め敵が潜んでそうな場所を地図より選定し
空間跳躍でその場所を順繰り廻っていこう
そんなに遠くには行ってない筈だし、何も成果が無くてもいい
それだけ敵の位置も絞れるだろうから

それに戦場を俯瞰で見渡せば、何か気付くことだってあるかもしれない
その時は現地国家と接触して色々聞いてみようかな
どうしてこんな事になったのか
詳しく知る人が残っているかもしれないしね

粗方終わったら再び戦に備えよう
こういう輩はね、特に許せないからさ……


御門・白
誰かの精神的な療養、というのは向いていませんね

だから私は戦闘員としての務めを果たしましょうか。
敵はこの程度では諦めていないと思います
現地の戦力と接触して、今一度状況把握に努めましょう

人力での防衛網には限界があります
その穴を確認して人海戦術でカバー

自分の存在を分割し、影法師の式神を作る

適宜、手薄なポイントへ散らばせて【道術】の結界
防御というより感知目的
敵の侵入を少しでも早く知覚するため

情報は私が共有しています
いつでも動けるように、準備しておきましょう

……器物とて、ヒトの想念と日月の精気を受ければ生命を宿す
それが人を象った者なら、なおさら
……それを踏みにじる敵は、私は好きではない
必ず、打倒します



●リブート
「敵は逃げたみたいね。はしっこい。まあいい……わ」
 言い終わる前に紫色の瞳が眩む。戻ってきた逆三角形の機甲式が、心配する様に、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)の周囲を低速で旋回する。
「僕を維持したままだしねー。ちゃんと責任は取るから安心してね! 迦利先輩」
 嘯く小柄な人型式神の頭に、迦利は躊躇無く吶喊し、自ら霊符の中へと戻る。霊力膜が張られていない辺り、軽薄な言動に少々腹が立った、程度だろうか。
 ぶつけられた場所を数度擦って、羅睺はゆかりを横抱きの体制で抱え、首を傾げた。
「コレ、僕がやるよりアヤメ先輩の方が喜ぶんじゃない?」
「アンタ、良い加減にしときなさいよ……? ロボットヘッドの状況確認は?」
「僕が何かする必要は無いかなー」
 指差した先では、ボーイ・ジャック・ゼロから離脱した開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)が、心配と焦りが入り交じった表情をフェイス・モニタに投影し、長いワイヤー・アームでカバーを探り当て、球形の身体から、幾本かのコード・プラグを伸ばし、グッドスタッフの状態を既に探り始めている。
「正常な待機状態に移行してるみたいっすね……勝手で悪いっすが、念の為スキャニングしてから再起動掛けるっすよ……ログは残しておくんで、言いたい事あったら後から幾らでも聞くっす。マザー、目視での重複確認、頼んでも良いっすか?」
「OKだ。ただな、手前ェに実装されてる支援システムを、もう少し信頼してやっても良いんじゃねえか?」
「まだ良く分かってないんすよ、アレ。マザーは分かるんすか?」
「解析出来てても絶対に教えてやらねえな。手前ェの頭で理解しなけりゃ、意味が無え」
 フェイス・モニタから表情が消え、規則性を持った英数字と進捗経過の棒グラフが淡々と表示されて行くのを、小柄なバーチャルキャラクターの姿に戻ったアイ・ヴェルキス(EL-VELKIS・f31092)が、セサミに軽口を叩きながら、適当に追い、少々の間に、completeの文字が踊り、フェイス・モニタに縦長楕円の黒目が戻る。
「システムの方は問題無さそうっす」
「想定通りだ。再起動に関して特に問題は無え。正常稼働出来るだろうよ」
「確認感謝するっす、マザー。それじゃあ、外部からリブートを行うっす」
 搭載されているプログラムモジュールを探り当て、シリアルコードのみが公式で登録された名無しのAIプログラム、グッドスタッフが、ゆっくりと目を覚ました。
「気分はどうっすか?」
「助けられると言うのは、思っていたより、気分が悪い……」
 同型のロボットヘッドが、ほっとした表情をモニタに浮かべるセサミを一瞥し、直ぐにメモリ・ログを遡る。ほぼ無意識下で処理する階層とは言え、頭の中を覗かれるのは、どうにも不快感が拭えない様だ。
「だが、済まない。明確なログが残ってはいないが、随分と迷惑を掛けていた様だ……有難う。それでも」
「分かってるっす。分かってる……つもりっす」
「……いや、これは不甲斐なさを押し付けているだけだ。気にしないでくれ。僕の思考ロジックがそう判断している時点で……いや、それでも……ダストは」
 細切れになったメモリを無理矢理繋ぎ合わせようとして、精緻に作られた電子回路が悲鳴を上げる。垣間見えたのはレッドアラートの鳴り響く格納部で、何時もの調子で微笑みながら告げられた、別離の言葉。
「……嘘でも、冗談でも、無かったと?」
 過負荷に集積回路が俄に焦げる。繋ぎ合わせて得られた物は、数秒限りの、余りにも不鮮明な、ノイズ塗れの映像と音声。
「作戦行動を思い返せ、起きた事を知らなければ何も……」
「それ以上は駄目っすよ!」
「……然し!」
 更に記憶の断片を繋ぎ合わせようとしたグッドスタッフを、セサミが制止する。抵抗する様に声を荒げ、力無く項垂れた。

●月と邂逅
「一先ずお疲れ様、二人とも。それから、ごめんね」
 朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)が二機に謝ると、白のジャイアントキャバリア、シュラウゼルが敵機を歯縛した帯状の拘束具を勢い良く払う。小気味良い音の後に、蒼光が舞う。その行動にラヴィニアは首を傾げたが、その発光現象がナノマシンの死骸によって引き起こされる物だと気付き、カメラ・アイをズーム、同時に解析機構を起動。ナノ単位の機械が、機能を停止して宙空を泳ぐ。簡易の解析でも、此方の用いた二種とは違い、敵機が抜け出した理由は、十中八九これだろう。
「逃げられたのは、ナノマシンの煙幕だけが原因じゃないから、気にするなって事、かな……ありがとう。にしても、困ったな……」
 ロボットヘッド二人の動作を視界に入れながら、気分を入れ替えるように、小さく息を吸い、吐き出した。
「ああ言うのはあまり、得意じゃないみたいだ。迂闊に奇跡を起こす事が得策とも思えないし……」
「誰かの精神的な療養、というのは私も向いていませんね。戦闘員としての務めを果たそうと思います。敵も、この程度では諦めていないでしょう」
 優美な黒影は何時の間にか消え失せ、パイロットである黒の長髪と銀の瞳の少女、御門・白(月魄・f30384)が、ラヴィニアの隣に立っていた。
「そうだよね、だから次に備えるのが、ボク等の役目かな。白君だっけ? ボクは朱皇・ラヴィニア。ラヴィニアで良いよ。こっちの二人は白い方がシュラウゼル、赤い方がブラディエル。さっきは本当に絶好のタイミングに来てくれて、ありがと。一先ず周囲を探っていこうと思ってるんだけど、白君はどうするのか、聞いても良い?」
「改めて、御門・白と申します。ラヴィニアさん、ですね。宜しく、お願い致します。状況の把握が優先ですね……、その為にも、現地戦力の方と会おうと考えていたのですが、探りを入れてくれるならば、助かります」
「空からの俯瞰も入れて行くから、安心して良いよ。後でボクも会いに行くつもりだったからさ。どうしてこんな事になってるか、詳しく知ってる人が残ってるかもしれないし、ね」
「分かりました。それでは、参りましょうか」
 始めの始めくらいは、学園の所属であれば、全員が知っている事だ。此方の補給ルートと、敵国のこの地への襲撃が重なり、交戦による突破を余儀なくされた。被害は有ったものの、作戦は成功、目的は無事、果たされ、島は無事、航行を続けている。大まかに語れば、それだけだ。

●振り出しを遡る
 後方支援役の力で、アイは馴染みの島に戻り、直ぐに開条の扉を叩き、事の顛末を探り始めた。
「アレが胸クソ悪いのも事実だが、やるべき事はやらねぇとな」
 先ずは身内の不始末だ。面倒だと感じながらも、企業の名誉顧問と言う肩書に付与されたアクセス権限は最高位。社内で制限の掛かる情報は何一つ無い。ダストと言う人物及び、グッドスタッフのシリアルコードをさっさと入力し、関連の情報をデータベースから余すこと無く引き出していく。
 まず引っ掛かったのはダストの引き取りについて、これは他企業から不要だと判断され、引き取りを持ち掛けられ、ほぼ善意から引き取っている。勿論デザイナーズ・チャイルドの観察という研究目的は有ったが、逆を言えば、当初はその程度だ。
 学園に入学して暫く後、開条のテストパイロットに志願。試作機と言う物に興味が有ったこと、死亡率を極力低く抑えたかったと言う二点が理由の様だ。企業側も処理能力の高いデザイナーズ・チャイルドとAIの連携行動には興味が有り、承諾。テストには当然というか、好成績を残していくが、担当チームが突如、丸々変更された。
「ああ、本当に胸クソ悪ぃ事実ばっかだな」
 そこそこに優秀で権力の有るチームが、成果を聞きつけ、かなり無理矢理な形でダストを引き抜いた。元々、順応性は高かったらしく、様子に変化は無く、文句等も零さなかった様だ。ただ、以前よりも無機質な対応が多くなった事は報告データを見れば明らかだ。成果を着実に残していくCAPSULISER-GENERIC-PROJECT-CORE、要はセサミへの競争心が俄に散見され、あの海戦で得た成果が、功績への焦燥を更に加速させた。
 ダストとロボットヘッドは変わらず、テストで好調な成績を残しており、これまでの事を考えれば、無理な出撃だろうと拒否はしないと、チームリーダーは考えた。
 流石に緊急時と言う事もあり、チーム内でも賛成と反対に意見が分かれ、最終的にチームリーダーの指示によって、ダストとグッドスタッフはボーイジャックを駆り、戦場へと赴くことになる。
 同時に、反対派だったチームメンバーは移籍願を出し、全て受理されている。ボーイ・ジャックの実戦成績も、状況を鑑みれば、けして悪い物ではなかった。寧ろ好成績を残したと言って良い。二人はどうしようもなく不利な戦線で、味方を救助しながら、ラインを押し上げようとしたが、あえなく戦死した、と言うのが事の顛末だ。チーム内でゴタゴタを起こした事を知られない為に、指示者を探る事を制限した様だ。
「他に無えと良いんだがな」
 このチームについては全員に謹慎を言い渡した。セサミに警戒の必要性が薄れた事を伝え、一先ず、グッドスタッフの受け入れ体制を整える。
 
●影追い
 アイと同じく、項垂れたままのグッドスタッフの手を引きながら、セサミも馴染みの島に戻る。
「……ダストさんは、どう言う物が好きだったとか、覚えてるっす?」
「……甘党だった。新しい物も好きだったか。特に気に入った店が商業区に有って、良く通っていたのを覚えている」
「商業区も広いっすからね。座標とかデータ残ってるっす?」
「……転送した。訪問するのか?」
「行って見るっすよ」
 幾つかの交通手段を使用し、商業区の一角を訪問する。開条のロボットヘッド二機が人間を連れずに歩いているのは、それなりに目立つ様だった。訪問した小さな喫茶店は、甘味のメニューが豊富で、一人で切り盛りしている店主が気紛れに作るメニューが、ダストの感性とぴったり合致していた様だ。グッドスタッフを見ると、気さくに声を掛けた。
「今日は、相棒と一緒じゃないのか。あんなに喜んでくれる客って中々居なくてなあ。何か、事情有ったんなら宜しく言っといてくれ」
「伝えておく。何時も……有難う」
「……此所で他に思い当たる所はあるっす?」
 商業区では、他に好みの服飾店や雑貨店、気に入ったゲームの置かれてあるゲームセンターを回る。好きな物は多かった様だが、雑貨は小物を好み、収集癖は薄い様だ。クレーンゲームは好んだようだが、景品には興味の無いタイプで、ゲームセンターではステータスの決められたアクションゲームを好む様だった。
「この位っすかね。次は学園に行ってみるっす。所属覚えてるっすよね」
「……勿論だ」
 学園では親しかった学園生徒数名が、幸いにも生き延びており、休憩時間を利用して話を聞く。学校では容姿や趣味に反して地味で、口数は多くなく、ひっそりと過ごしていたらしい。成績は中の下辺りで安定していたらしい。親しくしていた生徒からは猫被りと冗談交じりに口を揃えて言う。
「学校終わった後、放課後にテンションぐぐっと上がるの、見てて楽しかったんだよね。付き合い悪かった訳じゃ無いしさー! キャバリアの操縦訓練とか、用事が無かったら律儀に付き合ってくれたし」
「学園が嫌いって訳でも無さそうだったし、目立ちたくなかっただけだね、アレは」
「知ってる奴等からしたら、成績も、手抜き疑惑が上がるんだよな。本当……」
 言いかけて、開条のロボットヘッドの片割れが妙な間を含んだのを見て、慌てて口を閉じ、手を振ってクラスへと帰って行った。
「……一つ、行きたい場所が有る。付き合ってくれ、兄弟」
「勿論っすよ」
 小さな島の喧噪を離れ、最低限の交通機関が整備された、小高い丘の上、若草が潮風に揺られて、ざあざあと草の潮騒を響かせる。暴走衛星hの鎮座し、星々が瞬く筈の蒼空が、煙に遮られ、僅かに霞んでいる。
「夜景が見たかったな。此所で僕はダストから名を貰った。褪せてもまだ、メモリに記録している。嬉しかったのだろう……残される等、考えたことも無かった」
 今でも振り返れば、他愛なく微笑んで、何時もの調子で気楽な言葉を当ても無く呟き、新作の奇天烈な食品を買って食べては文句を言う、相棒の姿が浮かんでくる。
「自分からは何も……言えないっす」
「分かっている。もう、大丈夫だ」
 何時もの表情で伝えた理由が、引き摺るな以外に、何が有ったと、言うのだろうか。
「長く付き合ってくれて、ありがとう。兄弟」
「気にしなくて良いっすよ」
 開条のプライベート回線から通信、アイから受け入れ体制を整えたと簡素に伝えられ、セサミは改めて、兄弟に向き直る。
「会社の方はもう大丈夫そうっす。一度、戻るっすか」
「そうしよう。彼方の精算は、頼む」
 受け入れ体制の整った開条で、担当に引き取られていくのを見送り、セサミとアイが戦場に戻る。

●悪魔の光輪
「二人はちょっと遠出するのよね。鴉の警戒は解いてないから、参考にすると良いわ」
 ゆかりは羅睺に抱かれたまま、連れ立って歩き始めた白とラヴィニアに 息を切らしながらも、現状の警戒ルートを大雑把に口頭で伝えた。
「ありがと、参考にするよ……多少は足を伸ばしても良いよね!」
 鴉の警戒ルートと、現在地点から逃走方角を割り出し、索敵範囲を絞る。搭載されている兵装を選択、EP-T33/2S Demon Haloの文字がカメラアイの内部で大きく表示される。
「出力正常、デモンヘイロゥ起動開始。モード、テレポーテーション、コンバット。マッピング終わらせたら戻ってくるから、ちょっとの間、待っててね」
 ラヴィニアの背部に、巨大な悪魔の光輪が浮かび上がり、放つ燐光が言葉と共に、中央へと収束する。半重力作用で浮遊していた身体が急激に加速したと同時、その場から、ラヴィニアの姿が消失する。
 内部搭載レーダーにより3d座標を算出、現在位置をニュートラルと仮定。先程のワード入力データを照合、熱源反応探知、逃走ルート予測より、転移座標を決定。
 全く別所の海岸線付近の上空に翡翠色の髪を揺らしながら、空間を裂いて出現する。情報データ収集を終えれば直ぐさま、同様の手順で演算し、転移を繰り返す。俯瞰による戦場の3dマッピングを実行し、データを蓄積しながら、転移による偵察を続けていく。
「……地上には居ないみたい? 海中かな? 布陣も見えたし……此所までかな」
 切り上げて帰還、3dマップデータを投影、猟兵間で情報を共有する。
「海中、の可能性が高そうですね」
「ゆかり君のも含めると、結構高範囲に索敵してるからね。油断は出来ないけど」
「情報、有難う御座います。それでは、彼方の方々に色々聞きにいきましょうか」

●敗戦の末路
 簡易司令部の位置はアイが残していたので、それを辿る。指示を出しながら、忙しなく動き回る軍人達の中で、中央に居る男に向かって話し掛ける。
「初めまして、ボーイジャック討伐の協力をしてるラヴィニアだよ。色々話を聞きたくてこっちにお邪魔したんだけど、今、大丈夫かな?」
「協力有難う御座います。御陰で、一時的に退けて頂いた様ですね。市民にも被害は出ておりません。改めて、感謝致します。無碍には致しません。立ち話となってしまいますが、それでも宜しければ」
「ありがと。まずね、どうしてこんな殊になったのか、聞きたいんだ。普通なら一機に、此所まで圧倒されないと思うからさ」
「理由についてですね、お話ししましょう」
 この国家は、とある大規模な海戦の後、防衛虚しく、敵対国家に侵略された。有能と判断された人材はこの際、反意の有無に関わらず、文字通り、根こそぎとなるまで、この国家にによる人狩りが行われた。よって現在、動ける人材は全く居らず、国家の防衛機能は麻痺している。国としての体裁を保っているだけの、プラントを保持する為だけに生かされているハリボテの国家に成り果てている。
「練度が低く、突出した機体を扱える乗り手も居らず、特殊兵装を操るあの機体を抑え込む事が難しく、押し込まれていた。これが顛末となります」
「あの後、再度、攻め込まれていた、と」
「……貴方方の事を伝える気はありません。監視役が居た場合は謝罪する他有りませんが、彼等は恐らく、自分達に興味は無いでしょう。お気兼ね無く」
 白の言葉に、男は深く頭を下げた。
「構いません。私の方からも二つほど。布陣と非戦闘員の避難状況を詳細に教えて下さい。敵は、海上から仕掛けてくる公算が高い。水中戦闘の適正は然程高くないですが、何か有る、と見るべきです。引き続き、協力して事に当たって頂けませんか?」
「……分かりました」
 緩やかではあったが非戦闘員の避難はほぼ完了している。現状のキャバリアの布陣を地図を用いて語る。幾つか改善点を示し、埋まりきらない場については白が受け持つ事を伝え、ラヴィニアの使用する無線回線を開示、共同戦線の手筈を手早く整えて行く。

●影煩い
「正直、かなり疲れるんですが……」
 銀の瞳を閉じ、虚空に大きく五芒星を描き、手早く九字の印を結び、呪を唱え、霊力を絞る。人の魂は一つ、別たれれば、それは患い。黄泉を渡る、束の間の自分の形と、目が合ったのだ。だが、その際に、形を閉じ込めてしまえば、どうだろう。月の香りを纏わせて、揺らめく水面から、無力な影法師が現れる。
 幻想の影響を受ける人で無し、自らの一部を霊力塊となるまで解体し、再構築の際に、式神として定義する。痛みは無いが、消耗は免れない。
「適宜散開、予想海域周辺まで探知結界を張り巡らせます。情報収集は此方で一手に引き受けます」
 器物とて、ヒトの想念と日月の精気を受ければ生命を宿す。それが人を象った者なら、なおさらだ。
「それを踏み躙る敵は、好きでは無い。必ず、打倒します」
「同感、ああいう輩はね、特に許せないからさ。準備を進めようか、ゼル、エル」
 

●鴉の鳴き声
「式神の反応が随分と増えたわね。あと、海の方とか其処彼処に感知優先の結界……って事は」
 白の物だろう。引き直されていく防衛戦線、飛ばした鴉が持ってくる情報は、練度が低いながらも、明確に意図を持って動く軍隊のそれだ。一羽の鴉が肩上に留まり、通信を寄越す。
「交渉完了です。現地戦力と改めて、協力を取り付けました。敵は恐らく、海中に潜んでいるかと。其方の鴉の方でも穴埋めを手伝って下さると助かります」
「今戻ったっす。状況はどうなってるっす?」
 鴉から届いた白の伝令に続いて、セサミとアイが戻ってくる。
「お帰り、情報収集終わって、布陣を整えてる状況よ。此所の海岸……いいえ、海域でどう言う風に過ごしていたかは分かったのかしら?」
「資料上ではな。立派に戦ったらしい。過ごし方は、そうだな。多分、戦時下の何時も通りだったろうよ」
「そう、じゃあダストと会えないのも、受け入れられたのね。良かったわ」
「しっかり、受け止めてたっす。心配してくれて有難うっす」
「どう致しまして。それじゃあ、出て来るまで警戒継続。発見次第、オブリビオンマシンの討滅を開始と行きましょうか。羅睺、あたし今動きにくいし、少しで良いから役に立ちなさい」
「じゃあ、感知式の結界をもう少し増やしていこうかな。御主人様は舌噛まない様に気を付けてね!っと」
 戦線の残った小さな穴に、更に感知結界をあちこちに張り巡らせていく。布陣は猟兵達の活躍によって、ほぼ隙無く敷かれる事となる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『機動殲龍『空虚』』

POW   :    黒洞防御機構『黒天』
全身を【覆う装甲を接近物を吸うブラックホール装甲】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    敵性圧縮機構『払暁』
【体を覆う砲】から【敵を圧縮消滅させる超重力弾】を放ち、【外れても超重力】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    操天災禍機構『空虚』
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:エンドウフジブチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●機動殲龍『空虚』
 張り巡らせた極小機械の糸が、海中に眠る残骸に取り付き、侵食する。拡張されたナノマシン・ネットワークは、元の残骸を液体金属の様に構成を弄り、繭の意思の元、統合されていく。刈り取り、支配し、隷属させ、変革を繰り返し、嘗て、為し得なかった姿への回帰を果たさんと、極小機械で編まれた繭が脈動する。
 鱗状の緑色装甲に覆われた、蜥蜴型の機械形状、上部となる背部には鳥羽型のフライト・ユニット。そして、機体全長に等しい、一対のエネルギー・リアクター。
 黄金色の顎が、人を嘲笑うかの様に開かれ、周囲状況を把握し、海底より浮上する。

●防衛戦線
 一般的な機体を悠に越える機械竜の姿に、敷き直された防衛戦線の兵士が一斉に、引き金を引き掛け、マニピュレーターをゆっくりと離す。
 どうにか理性を保ちながらの単純な、僅か数秒の操作は、ずんぐりと重く、それが出来たと分かった時には、安堵の溜め息を漏らし、汗を拭う。
 気が戻れば、上体が勝手に震え、膝が笑う。顎は寒気に負けたようにかちかちと打ち鳴らされ、冷たい汗が吹き出し、止まる気配は無い。
 情けない男しか残っていないと言われ、彼等は多かれ少なかれ反発心を抱いた。今までもどうにか、自分達はやってきていた筈だ。彼の評価は的外れも甚だしいと。
 実際に死地へ配備されてみれば、このザマだ。彼の言が正しかったのだと、嫌でも理解した。凍り付いた様な身体は、一つ一つの動作に時間が掛かり、通信回線を開くだけでも数十秒を要し、それでも、任された以上、退く訳には行かなかった。張り子の虎であろうが、何も出来なかろうが、壁と囮くらいにはなるだろうと、乾いた喉で唾を飲む。
「敵機視認……無闇な砲撃、銃撃は危険と判断し、警戒態勢を維持。指示を、願います」

●状況進行
 防衛戦線は、理性的な判断を下した様だ。出現したオブリビオンマシンは空母級の広域殲滅型だ。無闇に砲撃をしても、装甲板を貫く事も出来ず、反撃で切り取られていただろう。
 現地戦力との協力によって築かれた防衛戦線は強固だ。同時に作り上げた通信網、索敵機構も彼等の固くなった動作を補助するに十分だろう。機を見ての、面制圧の指示等は効果的であり、簡易の補給線として活用しても良い。他に効果的だと思う指示を試して見ても良いだろう。人命の損耗は指揮者である猟兵の行動次第だ。
 敵機は滞空型の機動鉋台、防御力と攻撃範囲に優れており、海面から出る事は無い。暴走衛星が高速飛行体へと常に照準を定めるこの地では、機体によっては、攻め方を考える必要性が有るだろう。
 人を嘲笑う機械竜に、猟兵は狩人の銃口を突き付ける。
村崎・ゆかり
これがオブリビオンマシンの正体というわけかしら。よく分からないフォルムね。
ん、海上から陸地に上がってこない? それなら攻め込むしかないか。
飛鉢法で海上を滑るように移動。再召喚した『迦利』と共に「空中戦」を挑む。

砲撃に留意しつつ、敵機体に高速接近。
『迦利』の「レーザー射撃」「弾幕」「制圧射撃」「一斉発射」で、しっかり囮を務めてもらうわ。
『迦利』に敵が気を取られてる間に、「破魔」「浄化」の魂喰召喚を乗せた薙刀で「串刺し」にして、オブリビオンマシンの自我を壊す。
――この機体、パイロットは誰!?

反撃は、『鎧装豪腕』の「盾受け」「受け流し」で防御し、再攻撃の機を窺う。

今度は逃がさない。これで終わりよ!


開条・セサミ
・心情
ようやく出てきやがったなっ!!!
もはや、言うことはねぇ……ぶっ壊してやる!!!

・戦闘
ブースターの【推力移動】による【水上歩行】で敵に接近し、攻撃をしかけるぜ
相手の攻撃は極力避けていきたいところだが……ユーベルコード「ウェポンズ・トランスポート」で有効な武器が出ることを祈るしかねぇな
頼んだぜ、ジューク・ボックス!!

・その他
アドリブ等は大歓迎だぜ!!!


アイ・ヴェルキス
・心情
また、めんどくせぇ敵が出てきやがったな!!!
けどここまで関わった以上、落とし前もつけさせねぇといけねぇしな!
エルヴェルキス、出るぞ!!

・戦闘
ブースターによる【推力移動】で【水上歩行】し、海上で戦闘を行うぜ
ユーベルコード「サイキック・シューター」で攻撃する
後はまぁ……他の猟兵の援護も、していこうか!


・その他
アドリブ等は大歓迎だ


朱皇・ラヴィニア
あの装甲がある限り迂闊に近付く事は出来ないね……
こちらラヴィニア、支援行動に移る
エルを纏ったゼルを操縦
147を323の銃口に武器改造でドッキングし武装強制最適化
目的はブラックホール装甲の消滅だ

接近物を吸い込むが重力崩壊を起こさないとなれば
ユーベルコードで特定対象のみ均衡を齎すxが存在している筈
xを失くせばブラックホールは奴ごと吸い込むだろう
そうなれば装甲を解除しない限り奴は自重に潰されて沈む
そのx――事象の地平面を破壊する事象貫通弾を生成
発射の衝撃に耐える様ゼルを肉体改造して
迎撃されぬ様リミッター解除し重量を乗せて砲撃だ
長銃身に改造したこれなら当てられるだろう
彼等の道の邪魔はさせない、絶対に!


御門・白
来ましたか

迂闊な攻撃は控えていただくように、防衛戦線の兵士たちに伝えて
でも。いつでも動けるように、準備していてください

―――……行こう、ツクヨミ

そう告げて、海へ進行する(切り込み)
ツクヨミは海の神
海面が大地と変わらぬように、一歩一歩
敵の引き起こす災禍を畏れる必要がない、と言いたげな落ち着いた所作で進みます(道術、見切り)

陸で待つ味方や友軍の猟兵まで被害が伸びそうなら【天候操作】で可能な限り干渉して減衰させて

……この距離なら、届く。
ここは天帝の宮、紫微宮殿。
誰の赦しを得ての狼藉か。いそぎいそぎ、天帝の言葉に従うべし

龍を海面に墜とす
抵抗するなら、防衛戦線の友軍の一斉射でバランスを崩させましょう



●前方
「あれがオブリビオンマシンの正体という訳かしら? 良く分からないフォルムね」
「独特な感性だよね。竜が好きだったのかな?」
 仕事を終えて、符の中に戻した羅睺がそんな感想を漏らし、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は無言で側頭部を掻いて、隣のキャバリアを見上げる。
「ようやく出て来やがったな……何も言う事は無え……ぶっ壊す」
「落ち着きなさい……って言っても無理な話よね。なら、迦利と一緒に先行するわ」
 藍色と青灰色のツートンカラーと細身のシルエット、ジャックボーイと一体化した、開条・セサミ(カプセライザーGP・f30126)が怒りを隠そうともせず、機械の両腕を打ち鳴らす。見兼ねて忠告するが、兄弟とも呼べる同型機を弄ばれた、セサミの心情を鑑みれば当然かと、宥めるのを諦めた。変わりに、白一色の霊符から一枚を抜き取り、息を吹きかける。収納されていた逆三角型の機甲式、GPD-331迦利が、刻まれた呪から紫の燐光を発し、宙空を泳ぐ。
「ノウマク、サマンタ、ブッダナーム、バーヤベ、スヴァーハー。風天よ! 天吹き渡る其の風の効験を、ひととき我に貸し与え給え! 先行して二人で気を逸らすわよ。良いわね!」
 印を結び、現れた鉄蜂に乗り、低空を駈ける主に了解を伝えるように、身体を二度明滅させた後、全身を360度捻りながら、地面擦れ擦れの高度で加速する。
「また、面倒くせぇ敵だなこいつは。だが、ここまで関わった以上、落とし前もつけさせねぇといけねぇしな。オラ、行くぞ……安心しな」
 小柄な体躯のアイ・ヴェルキス(EL-VELKIS・f31092)が好戦的に唇を釣り上げ、ボーイジャックを見上げ、自身の両拳を打ち付ける。
「それは、手前ェだけのもんじゃねえ。エル・ヴェルキス、出るぞ!」
 バーチャル・キャラクターの肉体が、無骨なシルエットを持つ、巨大な黒鉄の機体にすり替わる。ヒール状の脚部をめり込ませ、背面一対の機械翼、を展開、力を流し込み、爆発的な加速と共に、低空を滑る。
「……ボーイ・ジャック・ゼロ、出る」
 冷えて固まった回路の中で、レッド・アラートに似た明滅パターンが繰り返される。言葉が要らないと言うのは嘘だ。言葉を語れる程、セサミの情報処理リソースが残っていない。感情冷却を施して尚、環境の高熱を示し続けるオペレート・システムを意図的に遮断し、藍色の機体が推進機構を起動し、地を滑る。

●血色月影
「来ましたか。迂闊な攻撃は控えていただくよう……それから」
「何時でも動けるように、だね。白君、了解、任された」
 御門・白(月魄・f30384)が小さく頷くと、に朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)が朗らかに笑い返し、通信へ応答する。
「此方ラヴィニア、防衛戦線の各員に通達。総員、迂闊な攻撃は控え、火力支援の準備に入れ。諸君、諸君は今、間違い無く恐怖に打ち勝った。その勇を、ボクは称えよう。そして、その砲火を以て、勝利を証明せよ!」
 からからの喉で絞り出された、途切れ途切れの通信から、脈拍を推測、身体状況を推測、極度の緊張状態に有ると思われる兵士等を鼓舞。向こうから一泊遅れて、歓声が上がり、熱の入った連携通信が届く。慌ただしく更新される各部隊状況を他の機体と細かに共有、拡散する。機械インターフェイスを持たない二人に付いては、其方同士の補完とした。
「有難う御座います。それでは、一足先に」
「宜しくね。こっちは、あの厄介な装甲をどうにかする予定」
「心得ました……行こう、ツクヨミ」
 小さな呼び掛けに、黒影が背後に現れ、白を腕に抱えて攫う。神隠しの様に誰も居なくなって、ラヴィニアは一つ息を吐く。
「ゼル、エル。始めよう」
 白色のジャイアントキャバリア、シュラウゼルが、東洋風の腕長甲冑、血色のブラディエルを纏い、結合する。
「アカシック・エンコーダ、起動。兵装666によるゼルとの神経接続、オールグリーン。フィードバック調整はセミオートでアクティブ。兵装147による323へのナノマシン接合及び、形状変更シーケンスを開始。同時に、シュラウゼルの肉体パラメータを補強、エネルギー供給元は朱皇・ラヴィニア(デフォルト)。エネルギーパスは兵装666……」
 巨躯の肉体に誂えられた格納部の中で、通信と流れるパラメータを処理し、過負荷によるノイズに一瞬、呻き声を上げる。キャバリアが片腕に持っていた電磁速射砲が、ナノマシンによる独特の発光現象と共に、両腕部と二脚によって支える長銃身砲塔へと変化する。
「形状変更シーケンス、オールクリア。続いて、事象貫通弾の生成を開始……」
 観測不可領域と観測可能域の間を砕く。観測可能領域であるX、それを砕けば誰も逃げられない暗黒空間の作用によって、あれは沈む。解除を余儀なくされる筈だ。と、ラヴィニアは思考した。問題点を上げれば、それを作り出す為の、間違い無く超過膨大だと言える準備の手間だ。演算による回路の異常発熱、でイエローアラートの通達を遮断、備えられた排熱機構が格納部に異常な熱を籠もらせる。レプリカントに必要とされる最後の能力が精神力と言うのは何とも皮肉だなと、力無い笑いが漏れた。
(彼等はほんの僅かでも……未来を勝ち取った。だから)
 過負荷によって籠もる熱量と、奔る激痛がいっそ、有難い。

●オール・グリーン
 地を過ぎれば、蒼海を割り、白波が猛る。轍を残しながら、紫色の螺旋弾丸が供給された霊力を圧縮、法陣を展開、周辺空間16箇所からの一斉射、巨大な敵機に光学平気による弾幕を展開。光帯は装甲に触れた瞬間、黒色天体に掻き消され、構う物かと動きを止めたのを良い事に、海中から真後ろ、同様の一斉射、方向を変え、限定された三次元軌道で繰り返し、機甲式神、敵の注意を逸らし続ける。
「あの様子だと、直接は駄目ね」
 やや遠間から、紫に煌めく刀身が上段から振り抜かれ、紫揚羽がひらりと瞬く。生じた霊力波の斬撃は、やはり黒によって掻き消される。何方も構わず、巨体のあらゆる方位から斬撃と光線の軌跡が描かれる。機械竜の口は釣り上げられた儘だ。
「よぅ、ようやく間近で面ァ拝めたな。挨拶代わりだ、受け取りな」
 月魄の、独特の反応を、エル・ヴェルキスのレーダーは感知しながら、サイキック/エネルギーを制御、380の雷撃弾を背部に展開、自在軌道で、機械竜へと引き絞る。それに呼応し、虚空に浮かぶ一対のエネルギー・リアクターが燐光を放ち、起動。くぐもった笑い声を上げ、海面が波立ち、集る小蠅を一層しようと、海流が大きな渦を巻く。
 ひたり、変化する海流を物ともせず、海の神がm海面に静寂の波紋を残し、自身の庭を確かめるように、ゆっくりと歩み出でる。生え伸びた雑草に、庭師の手入れを疑い、不服を謡、腕を払う。凪いだ庭道に、然したる感慨も浮かべずに、静かに、無作法を咎める呪が響く。
「ここは天帝の宮、紫微宮殿。誰の赦しを得ての狼藉か。いそぎいそぎ、天帝の言葉に従うべし。庭を穢した罪人よ、疾く、頭を垂れよ」
 媒介には予め、警戒用に張り巡らせていた結界を流用。夜にはまだ遠い蒼空に、夜天の帳が降りる。天帝が定めた理には、対呪加工を施された装甲でなければ、どの様な機構を積もうと無力であり、意思を無視し、遵守させる。即ち、機械竜の機体が、独りでに海面に墜落し、見えない何かに押さえつけられたように、巨体が縫い止められる。呪力が瞬く間に意識を犯し、能力の制御権限を剥奪する。
「駄目押しさせて貰うわ。パイロット居ないみたいだし、それなら、あたしの専門だしね」
 紫に揺らめく刃に、魂食らいの式を宿し、アタリを付けた箇所を横一文字に薙ぎ払う。抵抗意欲を食らわれ、機械竜が呻き声を上げて横たわる。
 電気通信による状況共有を常に行い、比較的冷静なエル・ヴェルキスが、ラヴィニアに通信を送る。
「予定通り(オールグリーン)って奴だ。ぶっ放せ」

●黒色天体に捧ぐ一等星
「事象貫通弾、生成完了。
 指一本動かすだけで全身が割れそうな痛みが走る。熱暴走ギリギリの身体は内側の神経から焼き切られる様な間隔を覚える。吐き気と目眩と頭痛は絶え間が無く、情報の残像が、色違いのレンズの中で踊っている。
「発射、体制、完了。接続異常、無し。エネルギーリミット・オフ。これが……ボクのジョーカーだ……」
 二脚で支えられたプルバップ式の長銃身砲塔に、片膝を立てた射撃体勢で、一回り膨れた血色の騎士の指が引き鉄に掛かる。ぎ、ぎ、と鈍く、それが引かれると、割り出された座標に向けて、事象を噛み砕く流星が放たれる。凄まじい反動
 紫微垣の夜天を巡り、黒色天体の事象の膜を引き裂く。光を飲み込む観測負荷領域のみを展開する装甲は、以降、使い物にならず、更に、幾重もの火砲の音が、遠くから響く。
(彼等の道の邪魔は、させない……絶、対に)
 心中で呟きながら、ラヴィニアはとうとう、意識を手放した。

●火力支援
 ラヴィニアからの着弾の合図と共に、防衛戦線で一斉射の通信が響き渡る。撃ち方を構え、用意していた布陣が次々と腹に響く重低音を響かせ、肩に担いだ大威力砲塔から、指定座標、縫い止められた敵影のエネルギーリアクター目掛けて砲弾を放つ。狙いを違えようと、降り注ぐ火砲の数は補って余り有る。着弾報告、損傷報告を駆け巡らせながら、僅かな未来を掴み取ろうと、兵士等が足掻き、遂に、エネルギー・リアクターを完全破損まで追い込む事に成功した。
「撃ち方止め……ェ! 以降は彼等に一任する、そういう、約束だ」

●粘り着く
 質量弾頭の嵐が縫い付け、海面で頭を垂れる機械竜のエネルギー源を破壊し、頼みの装甲は剥がれ、敵機に残されたのは砲のみだ。
「データ解析完了、武装の転送を頼む」
 敵機の能力は重力発生、幾度も見たやり口だ。今やそのほぼ全てが破壊され、海面に這い蹲るその姿に、ボーイジャックが冷えた機械音声を響かせる。両腕のエネルギー・ブレードの性質を変化させる小さな腕部パーツとバックパックが出現し、搭載された装置が入力されたデータを元に、心地の良い情報を気儘にかき鳴らす。
「壊れな。二度と、俺に、その顔を見せるんじゃねぇ」
 左のエネルギー・ブレードが、振るわれた瞬間に拡大。機械竜に蓄えられていたエネルギーを根こそぎ吸収する。吸収されたそれは、バックパックを通して性質を変換、右の刃に適正エネルギーとして送り込まれ、酷く巨大化したそれを、軽く振る。空母級の機体を半ばから二つに切断し、メイン動力が露出する。
「手前ェにゃ、ゲンコ一発じゃ、物足んねぇが……仕方無えよな」
 エル・ヴェルキスがサイキック・エネルギーを集中した右腕で、露出した動力を刺し貫き、中身と接続ケーブルを、ぐしゃりと握り潰す。宿る意思が最後まで害意を吐いて、骸の海へ墜落する。セサミは回路の底に赤黒い鉛が、沈殿する感覚を覚え、暫く、海上で立ち尽くしていた。
「戻るぞ。それも成長だって胸張って言えるようになるまで、抱えてみな」
 エル・ヴェルキスを収納した、小柄な体躯のアイがボーイジャックにそう言ったのを皮切りに、夜天の帳が漣に攫われた。

●終幕
 セサミが蟠った感情をどう処理したかは本人次第だ。今暫くすれば、戦勝祭の時期がやって来る。片隅で楽しむ姿か、葛藤する姿が見えたかも知れない。
 アイは改めて、謹慎処分を下した社員に正式な通達を送り、祭りを調子よく冷やかしていたかもしれない。
 白は、ラヴィニアの状況を確認し、レプリカントに応じた、知る限りの応急救護処置を施し、大事ないと分かると、安心したように唇を綻ばせ、学園島へと帰投した。
 ラヴィニアは応急救護の跡を確認し、ぼんやりとした頭で、自己修復機能による復旧はもう少し掛かりそうだと後ろ頭を掻いていると、兵士が顔見せに来て、鼓舞の言葉が心強く、御陰で危機を逃れられ、あの状況下で淀みなく動く事が出来たと深く礼を述べられる。少々面を喰らいながらも、すぐに、本心からの朗らかな笑みを見せた。素直に、ここの状況が好転する事を願う。
 ゆかりは霊符から語り掛けてくる羅睺の右頬を抓り、額を二指で弾いた。今回は必要の無い事ばかり喋った挙げ句、殆ど役に立っていない。主張を特に否定することも無く、羅睺は気楽に笑う。流石に疲れを感じたゆかりは、従者であり、恋人でもあるアヤメとUDCアースで、何処かへ行こうかと、二泊程で行ける場所を知識の中から絞り込んで行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月04日
宿敵 『CGP-CC-003『ボーイ・ジャック』』 を撃破!


挿絵イラスト