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千々に引き裂かれた喜びの記憶

#UDCアース #UDC-HUMAN

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●引き裂かれた日常
 幸せはいつだって簡単に壊されてしまう。
 あの一年はとても幸せだった。
 定年間近の優しい先生と、そこそこに気の合った仲間達。
 ほとんど子供の書いた遊びではあったけれど、緩い同好会で楽しく小説(のようなもの)を書いて遊んでいられた日々。
 プロを目指すとかそういうことは考えていなかった。ただ、物語を書いて楽しむのが好きだった。それで良かったんだ。その筈だったのに。
 ――それが終わったのは、先生が定年で引退して俺が二年に上がった時だった。

「こんな駄作を、世に残して良い訳ないだろう?」
 今日も今日とてあの教師からの罵声が響き渡る。
 何度も何度も書いては書いて、しつこく文法が違う、この時代背景にこんなものは合わない、動きの描写がおかしい、フィクションだからと甘えるな。中身のない物書きですらないタダのクズだ。書いては否定され貶される日々。
 それらの暴言にいい加減にしてくれと怒ったら怒ったで。
「んん? 元プロが! 有難く指導してやってんだ! 善意で!」
 ――結局はやっていけなかったんだろうが、と言っても聞きはしない。
 殆ど自分しかいない、たった一人の同好会の面倒を見てくれる善意の教師を、誰も疑う奴なんていないから。
「というわけで……廃棄けってぇぇい!」
 ――エレクトリカルパレードが自然と頭に聞こえてくる。
 シュレッダーの中に詰められていく紙屑と、千切れ千切れになった文字はまるで。

「なんで、どうして。う、うあ、あ、あああああああ!!!」
 ――楽しかった日々に、戻りたい。まっすぐに、無邪気に、物語を書いて遊んでいたかった。

 ……夕暮れに染まる空の下、その日、一つの怪物が産まれた。

●細切れにしてやりたいと彼女は思っている
「愛しているからこそ、自分の作品に自分が引導を渡す」
 陶芸家がこれを駄作と断じて、壺を叩き割る漫画で御約束の光景を本の中に示し、グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは冷たく語った。
 確かに自分の作品だからこそ、自分の手でという想いはあるのかもしれないが、と彼女は静かに語ってから。
「是非は兎も角として……それでも他人が勝手に作品を破壊してはいけない」
 ――いつものように語りを始めるオラトリオの銀灰色の瞳は、聊か冷たかった。

「さぁ語ろうか。舞台は人の悪意が狂気を導く魔境、UDCアース。君達には怪物と化した人間を救いに行って貰いたい」

 物書きを趣味に友人と同好会を作って遊んでいたある少年が、頼んでもいない悪意に満ちた教師の所為で追い詰められてしまった。
 友人は皆、筆を折り逃げ出したが彼だけは教師に睨まれて逃げられず、作品を作っては批判を超えた言いがかりに等しい批判と人格否定、挙句の果てに印刷した作品をシュレッダーで切り刻まれ、更に性質の悪いことに電子データすらも消去され、徹底的に追い詰め続けられたのだという。
 自分の楽しみを滅茶苦茶に破壊され続けた結果、人生に絶望した彼は自殺を図ろうとしたのだが、彼はそこでUDC怪物となってしまったのだという。
「状況としては丁度、彼がUDCへと転じた時となる。まだ誰も手に掛けていない。急げば間に合う……のだが」
 その変化に引き寄せられた、数多の怪物が廃ビルの中に集っている。
 血の滴る紙片のような姿の怪物たちの群れを示し、それを退けながら廃ビルを駆け登っていく形になると語った。

「然る後、彼を止めてあげて欲しい。無事に倒せれば元には戻れる」
 そう言って彼女はグリモアの輝きで、彼が転じてしまったUDC怪物を示した。
 見るだけで狂気を誘うような、断片的な文章の書かれた碑文の欠片めいた姿になってしまっているのは、ある種の因果というべきか。
 何はともあれ怪物と化したばかりなので、無事に倒せれば元に戻れると語る。
「それから当然のことだが、事情を踏まえて彼を慮る言葉を掛けるのもアリだ」
 月並みではあるがこのまま最悪の形で終わって良いのかとか、楽しかった思い出を思い返すように仕向けたり、人間として怪物に呑まれぬよう心を持ち直させてやれば、幾許かの弱体も望めるだろう。
 救われた後のこともあれば、猶更励ましなり何なりの声は有効だと彼女は語る。

「それから……今回の元凶となったパワハラ教師に制裁を加えて欲しい」
 道楽であった筈の同好会を乗っ取り、彼を苦しめた教師の姿をグリモアで示す。
 表向きは部として認められない同好会に、善意で指導・監督をしている良い教師と通っているのだが……。
「とんだ下衆野郎だ。経緯に同情の余地が無いわけではないが……」
 十代で小説家としてデビューしたは良いものの、所謂一発屋的な天才だったらしく、その後は鳴かず飛ばず。
 その後は国語の教師となったのだが、プロでやっていけなかった腹いせとして、かの同好会に八つ当たりに等しい指導の名を借りたパワハラ三昧。
「あれを野放しにしておけば、第二、第三の犠牲者が現れる」
 直接的に身体的・精神的に恐ろしい目に遭わせるも良し。或いは今までの悪事(パワハラ)を暴露して社会的に制裁を加えるも良し。
 兎にも角にも徹底的に二度とパワハラが出来ぬように叩いて欲しいと語った。
「殺しはNG、だがね。逆を言えば、まあ、そういうことだ」
 ――彼女の唇が妙に釣り上がって歪んでいたのは、気のせいではないかもしれない。

「やりきれないさ。恐ろしいのは本当は人間の方だとは言うものだが」
 一通りのことを語り終えたスフィーエは、重たく息を吐き出して今回の事件の、何とも言えないやりきれなさを語る。
「それでも、楽しかった彼の思い出を、あんな最悪な形で終わらせて良い訳もなしだ。どうか……彼の心を救ってあげて欲しい」
 彼がこれからどうするかは兎も角ね――少しだけ困ったような微笑みを浮かべたスフィーエは、羽根ペン型のグリモアを手に門を開くのだった。


裏山薬草
 どうも、裏山毒草です。違います薬草です。
 えー、最初に言っておきますし言わずもがな、ではありますが……このシナリオはフィクションです。実在の何やらとは関係ありません。
 もしかしてと思っても、素知らぬフリをして頂けると幸いです。

 今回はUDC-HUMANになってしまった少年を救い、人間の屑を制裁するシナリオとなっております。
 戦場となる場所は彼の通う学校から4駅ほど離れた外れの、人気のない廃ビル。
 時は夕暮れで、UDCを蹴散らしながら屋上に上がり、ボスとの決着をつけて頂きます。

●第一章『集団戦』
 待ち受けるUDC怪物の群れを倒しつつ、廃ビルを駆け登っていく集団戦です。
 基本的に攻撃力はそこそこでも脆いので、手軽に無双してしまいましょう。

●第二章『ボス戦』
 UDC-HUMANと化してしまった少年との戦いです。
 彼を励ましたりするか、内部にいる彼を巻き込まないような戦い方の工夫があればボーナスとなります。
 激励だけ、工夫だけでもボーナスになります。

●第三章『日常』
 人間の屑である、今回のパワハラ教師に制裁を加えるパートとなっております。
 基本的に再起不能となっても、幸いにも殆ど誰も困らないので容赦なく叩きのめしてやってください。
 ただし殺しはNGです。そうしたプレイングは却下かマスタリングの対象となります。

 最後に二人のプロフを簡単に載せます。参考までに。

●少年『保立・祐介(ほだて・ゆうすけ)』
 17歳。高校二年生。
 勉強も運動も平均点だが、子供の頃から物語を書くのが好きだった。
 だが後述の教師に目をつけられて以来、書いては切り刻まれる日々を送り、書くことを苦痛としてしまい絶望した。

●教師『水澤・清志(みずさわ・きよし)』
 36歳。高校国語教師。独身。
 十代でプロデビューはしたは良いものの、その後は恵まれなかった一発屋。
 今でもプロの世界に未練タラタラ。
 先代の顧問の定年を期に、目をつけていた同好会に乗り込み、指導と称した罵倒を行い憂さ晴らしをしている。
 表向きは善意で同好会の面倒を見ているとされて評判は悪くない。実体は御察し。

 プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 集団戦 『六一一『デビルズナンバーはくし』』

POW   :    悪魔の紙花(デビルペーパーフラワー)
自身の装備武器を無数の【白い紙製】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    悪魔の紙飛行機(デビルペーパープレーン)
【超スピードで飛ぶ紙飛行機】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    悪魔の白紙(デビルホワイトペーパー)
【紙吹雪】から【大量の白紙】を放ち、【相手の全身に張り付くこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御前・梨
いや〜、本当にあるんすねえ。学校での教師のパワハラって(学校に通った事のない男にとってはドラマやニュースでしか知らない現実味のない話)

そんなUDCに成る程追い詰めるなんてのは困りますっすねえ?なーにが気に入らないのか知りませんっすけど(とりあえず思う感想は一つ。――ま、何時も通りに斬ればいいだろう)


じゃ、行きますっすか。体力持つかな〜


敵を油断させる為に手ぶらで無用心な【演技】して、ビルを登っていくっす

敵が仕掛けてきたら攻撃を隠し持ってる暗記を投げて攻撃を反らす【投擲、瞬間思考力、早業、受け流し】



あ、体力回復すればいいっすね

指定UCで敵に噛み付くっす(変化させる部位は手)【エネルギー装填、略奪】



●読まずに食べた
 ひらり、ひらりと、ビルの外にも内にも兎にも角にも、何処であろうと問わずに舞う紙片の如き姿のUDCは、触れれば切れる刃の鋭さを持っていた。
 足を迂闊に踏み入れたが最後、常人ならば細切れにされても可笑しくはない場所へ、何処かへらへらとした様子の男が暢気に足を踏み入れた。
「いや~、本当にあるんすねえ。学校での教師のパワハラって」
 何処か現実味を感じられない、対岸の火事のようにその男、御前・梨(後方への再異動求むエージェント・f31839)は呟いた。
 生まれてこの方、学校に通ったこともない身の彼にとっては、知識としては知っていても実感として感じることはできない。
「お~、凄い凄い。紙って案外切れるもんっすねぇ」
 擦れ違う紙飛行機が刻んだ柱の傷の、何と滑らかなことか。
 ビルの中にひしめく白紙の怪物の放ったそれを、難なく“紙”一重にて躱しながら、彼はまた別の紙飛行機へと何かを投げ放った。
 歩きながら持ち上げた靴の踵より、仕込んでいた暗器を取り出し、何気ない様子で、されど狙いは何処までも正確に梨は紙片の怪物が放った紙飛行機を逸らし続けた。
「なーにが気に入らないのか知りませんっすけど」
 一体全体、人を訳の分からない怪物(UDC)へと変えてしまう程の圧迫など、どうして行ってしまうのか。それは何とも困ることだ――まあ、さりとて、梨のやることに変りはないのだが。
「はぁー、体力持つかな~コレ」
 もう幾度目になるか、放たれた紙飛行機を暗器で逸らし、その勢いで紙片の魔物をそのまま紙屑と変える作業も飽き飽きだ。
 ビルの床を、階段を歩いていく度にひっきりなしに襲う怪物と攻撃の対応に、多少の疲れも覚えてはきたが――
「あ、体力回復すればいいっすね」
 シンプルイズベスト。
 減った分はそのまま補えばいい――内に潜む邪神の、表現のし難き形状の頭部へと掌を変えると。
「――というわけで喰われて下さいっす。というか喰う」
 正直なところアレを喰らうのは如何なモノかとは思うが、背に腹は何とやらか。
 ひらりひらりと舞う紙片の怪物へと、躊躇いなくその“掌”を伸ばし――響き渡ったのは、文字通り紙を丸めた音と。
 文字通りに歯応えのない、されど何か歯間に挟まる様な不快な繊維質の千切れ崩れる音のみが響き。
 されども戻った体力を感じつつ、食事を済ませた手へと梨は問うた。
「どうっすか? え? ……そりゃそうっす」
 どれだけ強かろうとそれは紙でしかない――ましてや食用のそれでない以上、美味しいものではないのだから。
 内なる邪神の声に軽く返しては、また襲い来る紙をそれでも喰らいながら、彼は軽くビルを上がっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

川谷・茉莉
…高校生だと少し歳は行っているけど。
子供であることに変わりはない。
なら、私が助けなきゃ。

怪異召喚「首なしライダー」。
彼のバイクテクニックなら、階段だってバイクで登ってみせるわ。
目指すはあの廃ビルの屋上よ、お願いね。

バイクにタンデムしつつ、出てくる敵は聖剣「雨傘」を振り回して【斬撃波】を放って撃墜。
紙飛行機になって突っ込んでくる敵は、紫の鏡に反射させた光の【レーザー射撃】で撃ち落としましょう。

身勝手な大人の悪意に、彼を潰させなんてさせはしない。
急ぎましょう、ライダーさん。まだ間に合ううちに──



●空想に憧れた子供の守護者
 あの少年は如何ほどに辛く、苦しむほどに踏み躙られてきたのだろう。
 数多の紙片の怪物が飛び交うビルの外、屋上の物陰を見上げ、見た目十歳の童女に近い姿の妖怪は辛そうに眼を細めた。
 川谷・茉莉(n番目の花子さん・f32951)は入口に足を踏み入れると、ぽつりと呟くように決意を固めた。
「……助けなきゃ。子供には変わりないもの」
 助けるべき彼は十七歳――少々歳のいってはいるが、それでも彼女が守る対象であることに違いはなく。
 かつて“学校”の怪異であった存在は今、子供の守護者として幽世にいるのだから、その属性の下に行く。
 故に茉莉は怪異として名高き、首無しのバイク乗りと、彼が登場する大型のバイクを呼び出すと、その後部座席に同乗(タンデム)し。
「かっ飛ばして、スピードの向こう側へ――目指すはあの廃ビルの屋上よ、お願いね」
 ――ある筈のない首が心なしか強く頷いたような幻影も見えるほどに。
 エンジン音も轟き、走るバイクの車輪は力強く、階段をまるで足が生えているかのごとく力強く捉え駆け登っていく。
 身勝手な大人の悪意に何もかもを奪わせたりなんかしない、必ず救ってみせるから――凸凹した階段を上るバイクの振動も何のその。
 されどもその想いを阻むように、ビルの中にもひしめく白紙の魔物達は、容赦なくその鋭くも脆い身体を以て迫る。
 だが焦らず、茉莉は雨傘を取り出すと、その先端を静かに魔物達へと向けて――
「――あの子が振るった技は、どんな技かしら」
 物語を紡いできた少年もまた、その紡がれた物語の中の英傑に見立て、この傘のように何かを剣として繰り出してきたのだろうか。
 そうした英傑の物語を、楽しく描いていたのだろうか。
 宛ら流れ水のように滑らかに、そして時に逆手に持ち替えて万物を斬り裂くように――襲い来る白紙の魔物を彼女は三日月の如き衝撃の刃を走らせ斬り伏せていく。
 時に白紙の魔者達が、自らの身を鋭い紙飛行機に変え突撃を以て抗おうとしても、彼女は手鏡――鏡以外の全てが紫に妖しく輝く――を取り出し。
 一瞬に籠められた念に呼応し、鏡面より放たれた激しい光が、そのまま光線となって魔物を貫き、収束された光の高熱が紙片の身体をそのまま塵と化した。
 散り逝く灰と紙片舞い散る中、運転手の首無しの胴に腕を回しつつ、茉莉は言った。
「急ぎましょう、ライダーさん。まだ間に合ううちに──」
 怪物と化してそのまま討たれるしかない、最悪の結末になんてこの守護者がさせたりしない。
 首無しのバイク乗りは応えるようにスロットルをより強く回し、未来守る守護者を導いて往くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

人の悪意が世界を滅ぼすか…笑えん話だ
元凶には相応の報いを与えるとして、まずは目の前の命だな

ナガクニとシガールQ1210を装備
廃ビル内部なら小回りが利く武器の方が良いだろう
道を遮る敵を撃ち抜き、切り裂き、駆け上っていく

やれやれ…そう簡単には通してくれないか
だが、こちらも時間が無くてね…無理にでも道を開けてもらおう

UCを発動
懐からデゼス・ポアを飛ばし、彼女から伸びる操り糸を四方に張り巡らす
階段内の狭い空間であれば、紙の花も本体も一気に切り刻めるだろう
装備した武器も使用して、敵の集団に切り込んでいこう

この数の多さは…それだけ、彼の絶望も深いと言う事か
…急がなければな、手遅れになる前に


ヘルガ・リープフラウ
歌と小説、形は違えども、わたくしも創作と芸術を生業とする身
自らの手で生み出したものが穢され引き裂かれる苦痛は痛いほど分かります
ましてそれが、友達や恩師との優しい思い出もろとも
歪んだ悪意に踏み躙られるなんて……

周囲に【鈴蘭の嵐】を展開し
敵の放った白紙攻撃にぶつけ相殺
そのまま限界突破した全速力の翼飛行(空中戦)で突破します

一刻も早く、かの少年のもとにたどり着くために
祈りと慰めの感情を胸に秘めて
待っていて
あなたの願い、あなたの希望、わたくしたちが必ず救うから



●走る、悔やんでしまう、その前に
 最早放置されて久しい旧式のビルの中を、女二人が駆け抜けていた。
 翼を広げて風の中を滑るように抜ける彼女の前を開くように、右手に短刀、左手に機関拳銃を持った女が先導する。
 けたたましく鳴り響いた拳銃の、時に竜鱗すらも貫くそれは、脆い紙片の身体をオーバーキル気味に千々に引き裂いた。
 血の滴る紙片の千切れたものが、千切られた勢いのままに後方にて翔る女に飛び込もうとも、その女は翼の意匠が刻まれた優美な剣で逸らす。
 過ぎ去っていく紙片を青い瞳で流し見て、乳白色の目立つ身をした女――ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、ふと呟いた。
「わたくしも創作と芸術を生業とする身。自らの手で生み出したものが穢され、引き裂かれる苦痛は痛いほど分かります」
 翔けながら胸を抑え、今回の一件で追い詰められてしまった少年の境遇に、痛いほどの理解を彼女は示す。
「ましてや恩師や友人との優しい思い出までもを、あんな歪んだ悪意で踏み躙られるなんて……!」
 かの元凶の行為が、文芸を愛し真剣に向き合うが故であっても、それはあまりにも行き過ぎてもいるし、何よりもそれはそんな高尚な理念からではない――狭量な心からの“悪意”なのだから。
「笑えん話だ……」
 先導する黒いスーツを纏った、ヘルガと対照美の艶やかな女、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は逆手に携えた短刀で、立ちはだかった白紙の魔物を盛大に斬り裂きながら吐き捨てた。
 人間の悪意が狂気を導き、その狂気が世界を蝕む毒を招く――つまり今を生きる人の悪意が、この世の時間を停滞させる。
 喜劇のつもりであるならば、何と出来の悪い脚本だろうか。
「元凶には相応の報いは与える。が……まずは目の前の命だな」
「急ぎましょう。まだ、絶対に間に合います」
「ああ」
 立ちはだかる紙片の魔者達を、文字通り千切っては投げ千切っては投げの奮戦を見せながら、彼女達は駆け抜ける。
 救える命を救う為に。
 ――されど、決意を以て行こうにも現実というのはそれほどは甘くは無く、紙片の魔は階段の入り口に密集していた。
「くっ!!」
「やれやれ……そう簡単には通してくれないか」
 立ちはだかる紙片の魔者達の量は、いい加減数えるのも嫌気がさしてくるほどだった。
 先行した猟兵達が幾許か減じてはいても、無限にも思える敵群へヘルガが呻き、キリカが溜息を交えた。
「だが、こちらも時間が無くてね……無理にでも道を開けてもらおう」
 回り道をする間もない、ならば強引に文字通り引き千切る――絶望の名を冠した人形がキリカの懐から勢いよく飛び出した。
「狂え、デゼス・ポア。死を与える歓喜と共に」
 錆色の刃を打ち鳴らした人形の嬉々なる声が響き、鋭い紙片の間を潜り抜けては紙を煽るかのように踊る。
 紙片という白の吹雪が中に、血の滴る鋭きをいなして踊る様は残酷な童話の一幕のようにも見える――そしてそれは決して空想でなく。
 人形の張り巡らせた糸の隙間なく、そして鋭きが蜘蛛の糸のように、されど捕らわれた紙片に待つは捕縛ではなく、文字通りに千々に引き裂かれていく末路。
 人形が踊り、巡る糸の引き裂く中でも、果敢にキリカ自身も短刀を手に紙片の魔物を切り刻んでいき、階段の道を開いていく。
 だがキリカの手で千々に破られた紙片は、穏当に彼女達を先へ行かせてはくれなかった。
 抗うように千切れた紙片が舞い、大量の花が吹雪くかのように紙片が彼女達の眼前を覆い尽す――まるで行く手を阻む壁のように立ちはだかる。
「――邪魔は、させません」
 だがそれでも、ヘルガは細剣を気高く掲げると、彼女の意志に呼応してそれは眩く輝き、白紙の紙片で作られた壁を照らすと。
 刹那、掲げられた細剣は光に溶け込みながら、同じ白でありながら清廉な印象を持った数多の一片の群へ――鈴蘭の花弁と変わり、白紙の紙片達へと一瞬で張り付いた。
 ともすれば目を凝らさねば見えぬ、白と白の抗いが白紙の壁を相殺し、魔者達の最後の抗いを強引に弾き飛ばす!!
「……どれだけ絶望していたのか」
 立ちはだかっていた白壁が散らされ、増援もない――今こそ駆け抜ける時と察しつつも、キリカは思った。
 あれだけの数の怪物を引き寄せてしまうほどに、彼は狂気に犯されてしまっていたのかと。
 鈴蘭の花に送られ逝く、千々に裂かれた紙片のように彼もまた、作品をああいう風に引き裂かれていたか――。
 そんな過ぎていく紙片をまた流し見送って、舞い戻った鈴蘭の花が戻った細剣を手に、ヘルガは僅かに下唇に淡く歯を沈ませた。
「どうして、そんなことが」
 ――出来るのだろう。分からないわけではないだろうに。
 ヘルガの背を柔らかくキリカが押す――夕日に赤味の差した、黒艶の瞳を、眉尻を僅かに下げて半分伏せながら。
 背を押すキリカにええ、とヘルガは頷くと、祈りと慰めの感情を胸に抱き、彼女は白い翼を大きく広げた。
(待っていて。あなたの願い、あなたの希望、わたくしたちが必ず救うから)
「……急ごう、手遅れになる前に」
 キリカが強く地を蹴り、ヘルガが力をいっぱいに振り絞り翼を一つ打ち――駆け抜ける二人の女の生み出す風は、物言わぬ紙片を散らしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「ぇー…屑教師殺しちゃいけないの?」
瑠璃「私達に殺すな、なんて無茶言うね。…まぁ、今は被害者の救出が優先だね」
緋瑪「そうだね。彼は早急に救出しないと!」

【破壊の姫君】で分身

二人で飛翔翼を展開してビルを飛行しつつ、怪物達を殲滅。
至近距離の敵は機巧大鎌の機巧による高速斬撃【推力移動、ダッシュ、切断】で一気に接近して大鎌のなぎ払いで壁ごと断ち切り、中遠距離の敵は焼夷式ボム【属性攻撃、範囲攻撃、爆撃、蹂躙】で敵本体及び紙吹雪を一気に焼き払ったり、通常の時限式ボムで吹き飛ばしたり、焔の魔術を付与したK100で撃ち落としながら進行。
廃ビルを崩壊させる勢いで一気呵成に進むよ!

瑠璃「助けてあげないとね」



●壊すつもりで
 目まぐるしく変わるビルの中の光景に、映るのは血を滴らせた刃の如き紙片の恐ろしき姿だった。
 このまま飛翔を続けてぶつかれば自滅の刃――されど、場を翔ける二人で一人の殺人姫達はそんな油断など無く。
 四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と、その半身の緋瑪はそれぞれに大鎌を構えると、紙片の魔物と擦れ違うと同時、壁すらも鋭利に斬り裂く勢いで、大鎌に仕込まれた炸薬を爆ぜさせ加速を与えると、その勢いで呆気なく紙片の魔物を斬り裂いていった。
 されども紙片の魔物が待ち受ける数は膨大、しかし殺人姫達にとって数が多くて脆い相手など絶好の餌に過ぎず――
「ねぇー……本当に屑教師殺しちゃいけないの?」
 グリモア猟兵の注意を思い返しては、軽く投げ放った焼夷手榴弾より立ち込めた業火で、散り散りの紙片を灰に帰しつつ緋瑪が不満の声を漏らした。
 かの事態を引き起こすことになった、人間の屑は殺してはいけないという言葉に、殺しをそのまま生業とする者には不満が隠せない。
 半身の言葉に理解を示しながらも苦笑しつつ、迫ってきた鋭い紙片の刃を大鎌の一閃で切断しつつ瑠璃は答えた。
「私達に殺すな、なんて無茶言うよね。……まぁ、今は被害者の救出が優先だね」
「そうだね。彼は早急に救出しないと!」
 元凶への制裁は後で幾らでも出来ることだし、それよりも先にするべきは彼を救うことだ。
 取り出した手榴弾を投げては、爆ぜる爆風と炎で紙片の魔物を文字通り吹き飛ばし、瑠璃は半身に向き直ると。
「行くよ、緋瑪」
「行こう、瑠璃!」
 緋瑪が頷き、彼女達は背に備えた魔導と機械の混成方式で成り立つ翼を鋭く広げ。
 屋上を目掛けて只管に飛翔し突き進んでいく――投げ放つ爆弾で立ちはだかる紙片を吹き飛ばし。
 炎の術式を乗せた大型拳銃の発砲で、打ち抜くと同時に紙片を焼き散らし。
 擦れ違い様に振るった大鎌で、ビルの脆い柱も斬る勢いで魔物達を散らしては。
「「さぁ、ビルごと破壊するつもりで進もう!」」
 ただし本当にさせたら味方も巻き込みかねないので、飽く迄その心算で。
 されど勢いはやはり本物、そしてそれは何処までも頼もしく、爆ぜる火薬の音は勇壮なパレードのように彼女達を突き進ませていく。
 その中で緋瑪はふと思いついたように、大型拳銃の発砲で紙片の魔物を爆ぜ散らしながら声を挙げた。
「あのままで終わらせたくないよね!」
「助けてあげないとね」
 仕掛けられた時限式の爆弾が、彼女達を後ろから追走せんと迫った紙片の魔物を吹き飛ばし。
 その爆風の勢いを受けながら、翼を広げた殺人姫達は何処までも一気呵成に突き進んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

阿久間・仁
ムカつくセンコーってどこのガッコにもいるよなァ。偉そうに指図してきたりしてよ。
……思い出したらイライラしてきたぜ。ストレス発散といくか!ヒャハハ!

くだらねェ紙飛行機なんかに俺を止められるかよ!ユーベルコード使って突き進むぜ!
触れたらソッコーで灰にしてやるから覚悟しろや!

だが悠長に紙屑どもの相手をしてやる気は無ェ。用事は屋上にあんだからよ、さっさと駆け上がるぜ。
邪魔する奴は火炎放射で燃やしてやるぜ!ヒャハハ!

【焼却、属性攻撃、ダッシュ】


豊水・晶
居ますよねぇ、こう言う人間。
私としては、その先生を心の底から軽蔑したいところです。が、オハナシすれば真っ当になってくれるかも?知れませんのでとりあえずお会いするところからですね。
ふふっ、どこまで堪えられますかね。(暗黒微笑)
もちろん、酷いことなんてしませんよ?優しくオハナシして、すこーし反省してもらうだけですから。安心してください。

裕介くんをなるべく早く助けるためにも道中の敵はUCでちゃちゃっとやっつけます。螺旋状にUCを発動させてその中心を通って一気に行きます。ついでに、道中のUDCには首置いてって貰いますね。

アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。



●首は置いたけど燃えてしまった
 廃ビルの中を共に駆ける紅白が其処に在った。
 何処か優美な白水晶の煌めきを思わせる、二振りの剣を手にしながら駆け抜ける竜神と、その身を燃え盛る業火と化し、赤々と攻撃性を露わに流星の如く駆け抜ける人間族の男が居た。
「居ますよねぇ、こう言う人間」
 その内の竜神の女――豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)はふと呟いた。
 そういう人間が今回の狂気を招いた人間の屑だとするならば――彼女の言葉に、傍らで駆けていた炎は、確かにと言わんばかりに頷く。
「ムカつくセンコーってどこのガッコにもいるよなァ」
 その身を炎と変えて、只管に駆けていく男、阿久間・仁(獄炎魔人・f24120)は学生時代のことを思い出していた。
「偉そうに指図してきたりしてよ。その癖テメェ自身は大したことねェのによ……思い出したらイライラしてきたぜ」
 思い出したくもない嫌なことはとっととぶつけてストレス発散するべきか。
 炎が揺らめき、その質量そのものを肥大させるのは、正に彼の苛立ちを示すか。
 熱気が見せる周囲の揺らめきに、どす黒い怒りが見える――放出された炎の熱気に、今にも襲い掛かろうとしていた紙片の魔物が情けも容赦もなく灰と化す。
 哀れに黒い灰となって散って逝った魔物を流し見、晶は仁の言葉に返す。
「私としては、その先生を心の底から軽蔑したいところです。が、オハナシすれば真っ当になってくれるかも?」
 逆に今回の事件の話を聞いて、あの教師を心から皮肉抜きで尊敬できるのならば、それこそ尊敬に値する。
 軽蔑というのは全くもって同意だが、話して分かる様なタマか――そのような旨を言おうとした仁だが、すぐに晶から伺える雰囲気からその【オハナシ】の内容を察すると、どこか楽しそうに炎を揺らめかせた。
「オハナシ、ねェ……」
「ええ。“オハナシ”です。優しくオハナシして、すこーし反省してもらうだけですから」
 するにもかくにも、会うのが先決。されどその前に行うべきは、一刻も早く救うべき祐介の元に辿り着くことだ。
 然れども、その後の制裁に関して思うのは――
「ふふっ、どこまで堪えられますかね」
 だから安心してくださいと――つり上がった唇に只ならぬものが見えるのは、決して錯覚でも何でもないだろう。底知れぬ絶対零度の如き笑みの冷たさを感じつつも、仁は自らの身を更に盛らせて炎を噴き上げた。
「なら悠長に相手なんかしてられねェな。さっさと駆け上がるぜ!」
「異論はありません。彼らには首置いてって貰いましょうか」
 傍らにいて、噴き上がる炎と駆け抜ける速度の上がった仁と張り合うかのように、晶も双剣を手に煌めかせ足を速めていくと。
 彼女達を一斉に取り囲まんと、ひらひらと舞う紙片の魔者達が殺到していくが――晶は双剣を一際強く輝かせた。
「愚か者は飲み込まれて砂となる」
 ――すれば、彼女と仁を中心に、見るも鮮やかな水晶の花が幾重にも咲き誇っていた。
 晶の手にあった水晶の双剣が輝ける水晶の花びらを化し、それは螺旋を描きながら只管にうねり、水晶の鋭きが紙片の身体を千々に引き裂き、散らしていく。
 優美な水の流れが晶と仁を通し、紙片の魔者達を寄せ付けないトンネルのように象られ、突き進む為の道を作り出す。
 砂と変わるよりも尚細かく、紙片の身体を更に容赦なく細かく刻むその中を、晶は御先にと言わんばかりに速く、もっと速くと脚を速めていき。
 追い抜かれた形の仁が顔を歪め、彼はその身の炎をより強かに噴き上げた。
「死にたくなかったら俺を止めてみな!」
 もっとも、止めた所で触れれば燃える――自らの命を削ることも厭わない、文字通りに命を燃やす姿で彼は最初から駆けていた。
 晶の作り出した水晶の煌めきを飲み込む勢いで、より強く、熱く――炎を盛らせ、紙片の魔者達が嗾けた紙吹雪を触れては焼き、触れては焼きと繰り返す。
 例え動きを止める力が紙吹雪に含まれようと、仁に触れれば焼かれて塵となり、迸る熱気は奇しくも晶に残滓を届かせることも許さず、紙吹雪を塵一つ残さずに焼き尽くしていく。
「ヒャハハハ! 邪魔する奴ァ灰にしてやるぜ! くだらねぇ紙飛行機なんかに俺を止められるかよ!!」
 水晶の螺旋が作り出したトンネルが途切れれば、また再度紙片の魔物達が彼らを襲うが、その時には既にまた晶は得物を再び水晶の花へと変え、白紙の身体を引き裂き突き進む為の道を作り出し。
 引き裂かれた身体が紙吹雪となって阻もうとしても、仁の放つ炎が届く前に焼き尽くす――優美な水晶の道を、荒々しい地獄の炎が整え突き進ませる。
 水晶の煌めきを炎の赤が色取る、幻想的であり刺激的な光景の中を、竜神と人間は強く強く突き進んでいく――
「あ、首は置いていってくださいねー」
 さりげなく、擦れ違い様に何処にあるかも分からない首を晶が切断しつつ、残った胴(?)の部分は仁が焼き尽くしていったりもしながら。
 無敵の進撃は、優美に鋭く、そして只管に熱く続いていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虹川・朝霞
教え導く役目の者が、まだ幼く保護されるべき者を傷つけるとは。悲しいことですね。
まして、それがUDC変異の根幹となるとは…。
でも、まだ間に合うから、俺はここにきたんですよ。

さて、この紙の軍団をどうにかして突破しないと。
…あ、【幻霞】使用して行きましょうか。さすがに霞は攻撃できないでしょうし。
それに…ええ、幻覚作用で、お互いを敵と誤認させましょう。

俺にとって、まだまだ人の子は慈しむ者。
だからこそ、俺は全力を尽くそうと思うのです。かつて、この世界で知識を授けた竜神としても、ね。



●彼はそう在ろうとしてきたものだから
 事件のことを思えば思うほど、その胸の痛みは強く襲い掛かる。
 教え導くべき者の筈が、悪意を以て喜びを踏み躙り、幼く保護されるべき未来を潰してしまう――何と凄惨なことだろうか。
 ビルの中へと足を踏み入れた男の眼にも、酷い悲しみの色が伺えた。
「悲しいことですね……」
 虹川・朝霞(梅のくゆり・f30992)は、それが人を怪物へと変えてしまった現実にやり切れぬ思いを感じつつも。
「でも、まだ間に合うから、ここに来たんですよ」
 必ず間に合わせる。
 強い決意を胸に朝霞は一歩一歩、ビルの中を力強く歩む。
 あのまま怪物として消えていく定めにはさせないと、歩む彼であったが、そんな彼を阻むように白が視界を覆う。
 ひらひらと舞う紙片の怪物達――縁に滴る血は名刀もかくやの切味を伺わせる、凄まじい群れを成している光景を前に考えあぐねた。
「さて、これをどう突破するか……」
 この大量の数を真面に遣り合うには、少々手に余る。脆いと聞いてはいても、紙特有の嫌な鋭利からくる攻撃力は侮れない。とすれば。
「――惑うがいい」
 それは名の通りの如く、朝の梅に掛かる霞の美しき――薄紅梅色の霞へと朝霞はその身を転じさせ、白紙の壁を緩やかに染め上げた。
 如何に紙の身体が鋭かろうと、実体無き霞を断ち切ることは叶わず、大量の白紙の花吹雪が舞い散ろうとも逆に霞をふわり、ふわりと広げては、紙片の魔物達へと絡みつける羽目となり――そして。
 ――紙片の魔物達が、互いの身体を互いの身体を以て斬り裂き、無惨な文字通りの紙屑と変える光景が繰り広げられていた。
 本来同胞である筈の魔物を同胞と認識すること能わず、互いを侵入者と勘違いした魔物は魔物を傷つけあう。
 朝霞の魅せた幻覚は、紙片の魔物達の優位性を完全に此方の味方につけるように、同士討ちへと誘っていた。
「このまま同士討ちしててください。ではでは……」
 後は極力気付かれぬように、霞のままに通り過ぎていくのみ――ふわりと微かに梅薫るような薄紅梅の軌跡を残しつつ。
 朝霞は同士討ちの賑やかな音を流しては、怪物達の群れを潜り抜けると一つ息を吐いて。
 見上げた天井の、そのずっとずっと上にある屋上にて待ち受ける彼へと、決意を示すように呟いた。
「――あなたも慈しむ者に変わりはありません。だからこそ、全力を尽くします」
 かつてこの世界にて人に知識を与え導いてきた、竜神と呼ばれる存在としても。
 霞から元の姿に戻った朝霞は静かに拳を握り締めると、救うべき幼子の下へ駆け出していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

新山・陽
WIZ 物語とは少々畑が異なりますが、書類の諸問題ならばお任せください。私自身、人の思いよりも書類が勝る程には、情報と深く付き合っていると自負しておりますので。
 被害の方の深刻な無念は、手に取るようにわかります。
 加害の方は、私情に耽り弱者を標的にしたというだけでも、報いを受けるには充分でしょう。

 敵のUCに動きを封じられつつも、UC『圧潰の更紗』を発動し、暗号の布に巻きとって凍らせながら、雑巾を絞る要領で砕いていきます。

 長く情報を扱う組織に身を置いておりますと、かの行いは場末の私刑にしか思えません。追い詰められている彼を救い出せるよう、早く先へと進みましょう。



●書物の舞い飛ぶ乱れ何とやら
 現代的なビルの中をスタイリッシュに、スーツの残影も華麗に駆け抜ける女性というのは、それは一つの絵にもなろうか。
 行く手を阻む紙のひらり、ひらり、と舞う様はいつかどこかの、魔法学園の迷宮で見た悪夢にも似ている――と言えなくもないかもしれない。
(心中、痛いほどに御察しします。深刻なる無念、手に取るように……)
 新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)も畑は違えど文章に関する諸問題と深く付き合ってきた身だ。
 人の想いよりも書類が勝ると考えるほどには、情報という生き物と深く繋がってきたと自負もしていれば、態々に紙の書類に印刷されたものを散々に貶され、嘲笑と共に切り刻まれるのは如何ほどなものか。
 故に陽は足を速め一刻も早く駆け上がろうとしていくも、場に立ちはだかる紙片の魔物達はそれを許さず、彼女を阻むべく無数の紙吹雪を解き放ち――
「ッ……」
 来る日も来る日も殺到する書類に忙殺されることを想起さす、無数の紙吹雪に埋もれ黒が白に埋め尽くされる。
 伸ばした手も、少しでも前へ歩き出そうとする脚も微動だに出来ぬ、紙片の妨害に呑まれてしまった――が、それでいい。
 全ては計算通りなのだから。
「ひ、と、ひ、ね、り」
 彼女を中心としてうねる暗号の布が、陽に張り付いていた紙吹雪を巻き込みながら、それを放った魔物本体すらも飲み込んでいく。
 変幻自在に歪み神話生物の触手が如く、布が紙片を幾つも絡め取っては、極低温が紙へと霜を降ろし――刹那。
 雑巾を絞るかのようにそれを捩れば。
 極低温により下ろされた霜と、凍てついたことで固定され紙の持つ柔軟性を悪しき意味で削がれ、脆く崩れるだけとなったそれが、小気味いい音を立てながら打ち砕かれていく。
 ダイアモンドダストもかくやの煌めきが中、それを割って陽は布を振り払い氷塵を押し退けると。
「ふぅ……」
 砕け散る凍てついた紙々の氷塵が過ぎ去る、未だ肌寒い夕暮れの気候をより冷たく齎すような風の中、陽は息をゆっくりと吐いて。
 スーツに付着した、黒の中に目立つ白を手で払いのけながら、今回の事件を引き起こした悪意ある人間の屑を思い、彼女は一つ呟いた。
「長く情報を扱う組織に身を置いておりますが、かの行いは場末の私刑にしか思えません」
 私情に耽り弱者を良い様に標的とし嫐り続けたのならば――それは、それこそ然るべき報復を覚悟して貰うに相応しいだろう。
 その前に、一刻も早く今尚苦しみの最中にいる弱者を救うべく、陽は忙しなく廃ビルの中を駆けあがっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『碑文の断片』

POW   :    災の章
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
SPD   :    妖の章
【猟兵以外のあらゆる存在が醜悪な怪物】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    神の章
【召喚した邪神の一部が、動く物に連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は桑崎・恭介です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●空想が大好きな少年の嘆き
 子供の頃から色んな空想をするのが大好きだった。
 ドラゴンを格好よく倒す英雄、人知れず闇に潜む悪を倒すスパイ、お姫様を守る騎士とか。
 今思えば「メアリー・スー」なキャラを勝手に頭の中で作って、色んな作品の「もしも」とかも考えたりした。
 楽しかったな。
 だから自分でもそれなりに小説とか書いた。最初の作品はもう黒歴史にしたいぐらいだけど、まあ大事な思い出だ。
 投稿サイトにもあげたし、書籍化とかそういうのは全然無理だけど、少しでも見て面白かったって言ってくれたのは有難かった。
 文芸といえるほどでもないけど……だから高校に上がったら、少人数の同好会を見つけた時、これだ!って思ったね。

 あの頃は本当に楽しかった。
 定年間近だからって、わざわざ同好会でしかなかった面倒を見てくれた優しい先生。
 特撮ヒーロー物の小説が好きだったあいつと、悪役令嬢ものとか恋愛ものが大好きだった娘。
 他にもいたけど、まあとにかく楽しかった。そりゃ多少の指摘とかそういうのはあったけど、建設的ではあったし、良い所もいっぱい褒め合って、語らって楽しかった。
 ……先生が定年を迎え、あいつが来るまでは。

 元プロだか何だか知らないが、同好会は一気に変わった。
 作品を印刷させられては徹底的に罵倒され、残す価値はないと、勝手にシュレッダーにかけて切り刻む。
 人格否定なんて日常茶飯事、みんなは続々と筆を折って止めていった。
 だけどその方が良かったのかもしれない。
 執着しなけりゃ、こうはならなかったのかもしれないんだから。

 何だかんだで、多少は認められたかったなんて、思わなけりゃ良かった。
 書いても書いても、何だかんだで多少はあいつの意見を取り入れて書いても、あいつは只管否定する。
 罵倒して、人格否定して、印刷した作品をシュレッダーで切り刻む。そりゃもう嫌な笑顔でだ。
 残す価値のない駄作は切り刻んで当然……分かってるよ。プロになれる実力なんてないぐらい。
 だからって勝手にお前が切り刻んで良い訳じゃないだろう。
 だけど、諦めないで書いては持ち込んで、その度に罵倒されて斬り裂かれる。

 ……疲れるのも当たり前だよな。
 はは、そうだよ。認められなきゃ、やっていけなきゃ存在しちゃいけないんだ。
 書いて出した時点で、何を言われたって仕方ないって、あいつも言ってたもんな。はは。
 否定されたくないなら、最初から形にしなけりゃいい。作品も、何より自分自身も。
 作品は子供だ。
 産んでは否定されて刻まれるしかないなんて、可愛そうだ。もう産まない。でも俺も産むのは止められない。生きている限り。

 だ か ら お れ を け し て や る

●UDC-“HUMAN”
 廃ビルの中を潜り抜け、屋上に辿り着いた猟兵の眼を夕日の赤が鮮烈に刺激する。
 それなりに広い屋上には、砕かれた石碑のような姿の悍ましい怪物がその存在感を放っており、碑文に刻まれた文字の羅列は、その意味を理解した時点で狂気に呑まれる危険に満ちていた。
 文書を否定され斬り裂かれ続けた少年の転じた姿としては、何とも言えぬ姿ではあるが……いずれにせよ、このUDCを倒さないことには少年を救うことは出来ない。
 猟兵達は狂気に犯され怪物となってしまった人間を救うべく、戦意を固めるのだった。
御前・梨
ぜぇ…はぁ……や、やっと着いた。
あのUDC共、喰っても喰っても全然体力回復しねえじゃねえか(疲れからか、素の状態で悪態をつき屋上へと)

――と、いけねえ…いけない。(息を整え、何時もの姿、演技をしながら対面する)

貴方が保立さんっすね?ども〜御前って言います。いや〜今回は色々と災難だったすね? 気持ちは残念ながら俺、創作家じゃないし、肯定も否定もされた事ないんで分かんないすけど、でもドンマイっす

俺は貴方の文章好きですよ?いやね、貴方に会う前にデータ復元して読ませて貰ったんすよ。(無論嘘。演技だ)

というわけで、続き、良かったら書いてくれません?一ファンの為にも(不意討ち、切断、とっさの一撃)



●ライアーゲーム
「ぜぇ……はぁ……や、やっと着いた。あのUDC共、喰っても喰っても全然体力回復しねえじゃねえか」
 屋上に続く扉を一番槍として開けた梨は、明らかに息を乱れさせて肩を落とした。
 食えども食えども疲労が回復する以上に、全力疾走の代償を払わされた苛立ちは演技の仮面を一時外し、彼に悪態をつかせていた。
「――っと、いけね……いけない」
 咄嗟に言い直しながら、梨は待ち受ける碑文の怪物を目にすると、顔に微笑みを張りつけて取り込まれた少年へと声を掛けた。 
「貴方が保立さんっすね? ども~御前って言います。いや~今回は色々と災難だったすね? 気持ちは残念ながら、創作家じゃないんでわかんな……」
 否定されたことも肯定されたこともないので――そう告げようとした矢先だった。
「うわっと!!」
 碑文が妖しく輝き、ボロくなっていたフェンスの一部が一瞬で獰猛にして醜悪な怪物と化して、梨へとその牙を剥く。
 打ち下ろされる拳が舞い上げた礫の勢いと、凹んだ屋上の床に威力を察しつつも、紙一重でそれを躱しつつ梨は笑みを崩さずに言葉を更に投げかけた。
「まー、とにかくドンマイっす! 少なくとも俺、貴方の文章、好きっすよ?」
 繰り出され続ける超威力の攻撃を躱しながら放たれた言葉に、怪物を操っていた石碑が一瞬揺れ動く。
 それに対応するように、醜悪な怪物も動きを暫し止め、やや逡巡してから石碑は漸く“彼”の言葉を発した。
『……デー、ケ、Saレ』
「いやね、データ復元して読ませて貰ったんすよ」
 ――無論のことではあるが、それは嘘。息を吸って吐くかのように、一切の不自然さも躊躇いもない嘘。
 しかしそれ故に、それは決して疑われることはない。読まれては否定され、切り刻まれ尊厳を踏み躙られた少年にとって久しく聞いたことのなかった、肯定の言葉が餓えていた心に突き刺さり、そして染み渡っていった。
「というわけで、続き、良かったら書いてくれません? 一ファンの為にも」
『あ、Ah……アRiがトu……AりGaToウ!』
 咽び泣くかのように石碑の身体を更に震わせ続け、醜悪な怪物の攻撃を止めるや刹那――梨はすぐ様に暗器を石碑の身へと投げつけた。
「ほいっと……それじゃその隙突かせて貰いましたぜ?」
 一瞬怯んだUDCへと一瞬で距離を詰めてから、仕込み剣傘を打ち下ろす――と見せかけて、それを更に投げつけて。
 小気味よい音を立ててUDCの身体を更に揺さぶり、パラパラと石の身体を崩していき――
「本命はこっち。いや、これも……嘘なんすがね」
 立て続けに投げ放たれた暗器が碑文へと突き刺さると、哀しい狂気の文を紡いでいた石碑が一時勢いを止めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹川・朝霞
己を消してはなりませんよ。そは怪物、人に仇なすもの。
…あなたにその気がなくとも、人を殺せるものですから。

相手の攻撃が水系統になるならば、ある程度は干渉できるはず。弱めてしまいましょう。
そう、それ、制御難しくないですか?物語にある大魔法のように。

電子データでしたら、復元可能ですよ。こう見えても電脳魔術士なんですから、そういうのには強いんです。

攻撃は【霹靂】にて。あなたではない、その表にいるUDCのみを打ち、焼くもの。
ふふふ、あなたの考えた物語にもいませんでしたか?敵のみを攻撃できる術を持つものが。
そんな感じですよ、これは。

俺はかつて、この世界にいた竜神。あなたを、助けにきたんです。



●確かな記憶を
 一撃を確かに与えたといえど、UDCの勢いは未だに絶えず、まだ少年を救い出すには遠く。
 されど諦める者は集った猟兵に存在せず、次に現れた竜神は石碑に優しく告げた。
「先の方も仰ってましたが、電子データは復元可能ですよ。しかし己を消してはなりませんよ。そは怪物、人に仇なすもの」
 ――あなたにその気がなくとも、人を殺せるものですから。
 犠牲者が出ていない今、引き返させる為にと朝霞は真剣に石碑に眼を向けた。
「俺はかつて、この世界にいた竜神。あなたを、助けにきたんです」
『……』
 朝霞の言葉に石碑は何も答えることはなく、静かに夕日に照らされて佇んでいた。
 だが大人しくしていることはなく、災厄を齎す文章を浮かべると、石碑の魔物は朝霞を飲み込まんと水の大渦を放った。
 だが幸いにして朝霞は水を司っていた竜神――神通力を以て放たれた水の流れを逸らせば、石碑の文が明滅し。
『ウゥゥUuu……!』
 石碑が見せる唸りと振動と、それに連動し紡がれている筈の水の大渦が徐々に歪みを見せれば、朝霞は静かに言葉を紡いだ。
「そう、それ、制御が難しくありませんか? ……まるで、物語にある大魔法のように」
『!』
 朝霞の言葉に石碑の中の祐介少年はハッと目を見開き、石碑自体が打ち震えた。
 それと同時、集中を失った形の水のうねりは文字通り霧散する中、祐介少年は思い出す――莫大な威力の代償に、制御の難しい魔術を難なく制御する魔術師を。
 華々しい英雄の活躍を描き楽しんでいた頃の記憶が蘇り、石碑の放つ気配が弱まった。
「雷は炎となりて――」
 当然、その隙を見逃す朝霞ではなく――掲げられた黒々とした刃より空を引き裂く雷が走り、石碑の身を強く打ち据えた。
 激しい雷の衝撃が石の身を崩し、高熱はそのまま炎上し激しい業火で石碑を包み込む。
 ともすれば内部の少年が蒸し焼きになってしまうのではないか、と思われたが――
『いTa……Kuなi?』
 激しい衝撃と熱は分厚い石碑に包まれていても、それを貫き中の祐介を焼いていても可笑しくはなかった。
 だが祐介少年は一切の熱も痛みも感ずることなく、戸惑い続ける様子の彼に朝霞は柔らかく笑んで。
「ふふふ。あなたの物語にもありませんか? こうして敵のみを討つ技が」
『iた……居Taヨ……!』
 それこそ邪悪な敵に呑み込まれたヒロインを攻撃することなく、敵のみを浄化し討つ――数えきれないぐらいに描いた王道。
 思い起こせた喜びの記憶に震える石碑へと、朝霞は更に言葉を紡いだ。
「そんな感じの技ですよ。……自分でも、もっと描いてみたいでしょう?」
 だから潰えてはいけません――差し伸べられた声に、少しずつ囚われた少年が戻る手応えが感じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

この石碑は、まるで泣いているようにも見えるな
…心の奥底では、彼も助けを求めているんだろう

ナガクニを装備
UCを発動させナガクニの封印を解き、太刀の大きさにまで変化させる
周りの醜悪な怪物達を切り伏せながら、少年に語りかける

君が紡いだ物語を、君自身が否定してはダメだ
君の胸の中には、煌くようなヒーロー達の心躍る冒険譚がまだまだあるんだろう?
早く目覚めて、彼らの物語を綴ってあげるんだ

まずは少年の救出が優先だ
内部にいる彼を巻き込まないように、ナガクニを振るって怪物達を削り取るように戦っていく
碑文への攻撃は様子を見ながら行う

君が自分自身を消そうとも、私達が何度だって救い出す
さぁ、家に帰ろう



●この嘆きを終わりにする為に
 石碑に浮かぶ文章の輝きと、欠片を散らしながら震える様は本当に泣いているみたいではないか――到着したキリカが石碑の怪物を見た瞬間に思ったのはそんな感想だった。
 まず間違いなく、心の奥底では彼も助けを求めているのだろう――であれば、救う為に彼女は命を削ることも厭わない。
 故にキリカは短刀を抜き放つと、周囲の気温を下げる程に恐ろしく邪悪な気配を短刀より揺らめかせた。
「忌まわしき邪龍の牙よ、呪われたその力で目の前の獲物を討ち、存分に喰らうがいい……」
 短刀に封じられた、邪神となるまでに穢れた竜神の力が解き放たれゆく度に、命が吸い上げられ、それによって短刀であった刀身が太刀と呼ばれるほどにまで伸びていく。
 丁度折よく、激戦で舞い上げられた礫の幾つかが碑文の輝きに呼応し、見るに堪えない醜悪な怪物と化して、キリカへ飛び掛かるが。
「――フン」
 打ち下ろされる破壊力の凄まじき拳をしなやかに、木の葉舞うかのようにひらり、ひらりと躱していきながら。
 鹿島永国の太刀――鋸状の幾つもに尖った刃を一閃すれば、細かな刃が執拗に怪物の肌を、肉を捕えては引き裂いていく。
「なあ」
 攻撃は一本調子、見切り反撃を見舞うに容易きなれど、耐久力は本物か。
 されども着実に、走らせる刃の凄惨な傷口は穢れし竜の爪と言って過言でなく、丈夫な怪物を追い詰めていきながら、キリカは石碑の方へと目を向けて。
「君が紡いだ物語を、君自身が否定してはダメだ」
『……』
「君の胸の中には、煌くようなヒーロー達の心躍る冒険譚がまだまだあるんだろう?」
 諭すように問いかけるキリカの声に、囚われた少年は何も答えない。
 醜悪な怪物が諦めずキリカを引き裂こうとするたびに、大振りな攻撃を潜り抜け彼女は脚に刃を見舞い、体勢を崩させると、その隙に石碑へと距離を詰めて確かに語りかける。
「早く目覚めて、彼らの物語を綴ってあげるんだ」
『デMo馬Kaニ……サReタクNaい……』
 人間の発音を失っているように見えて、確かに届いたその声は紛れもなく彼がまだ人の心を失っていない証左。
「誰も馬鹿にしない」
 ――十二分に彼の思いは伝わってくる。
 書いては何度も馬鹿にされ、引き裂かれ続けた痛みを味わいたくなんてないと。
 誰が責められるものか、誰が馬鹿にさせるものか――太刀で強かに彼を捕える怪物のみを削り取りつつ、彼女は少年に優しく声を掛けた。
「君が自分自身を消そうとも、私達が何度だって救い出す。さぁ、家に帰ろう」
 削り取られヒビ入った石碑の中から届いた、感謝の声は間違いなく彼にキリカの言葉が確かに届き心を揺さぶったことを伝えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「好きなんでしょ?止められないんでしょ?なら諦めちゃダメだよ!」
瑠璃「自分の好きや作品を他人が否定する権利なんてない。貴方を理解してくれる仲間だって居てくれたんでしょ?負けないで」

UCで分身

UCの効果で祐介くん本体を傷つけず、彼を閉じ込めるUDCの概念のみを指定して攻撃。
敵の発生させる現象に併せて、瑠璃が魔術で反属性を付与【属性攻撃、高速詠唱】したボムで現象の抑制・相殺を行い吹き飛ばし、緋瑪がK100による銃撃で敵本体を狙って詠唱自体を妨害。
敵の攻撃を妨害しながらボムで敵の外殻(?)を削り、隙を見て機巧大鎌【推力移動】で取りつき、切り拓いて祐介くんを助けるよ

私達がって君の作品見たいしね



●帰らせる為に殺す
 禍々しい狂気に満ちた気配もなりを潜めていたように見えたが、突如として石碑の身体に浮かぶ文章が激しく輝いた。
『ヤメRo、シュReッダー、YaMEロォォッ!!』
 どうやら中身の祐介少年のトラウマがフラッシュバックし、憑依したUDCの持つ狂気と敵意が彼を強引に突き動かすか。
 災いを呼ぶ碑文が明滅し、業火の大竜巻が彼を中心とし屋上を炎が走っていった。
『MouイYaダ! イヤダ!』
 激しい熱の揺らめきが立ち込め、近づく者を拒絶するような――癒えぬ深き心の傷と怪物の狂気は只管に悪い方向へと彼を動かし、炎の竜巻が広がっていく。
 そこへ立ち向かうかのように、全く同じ姿と武装を持った少女二人が駆け出した。
「わたし達に殺せないモノは無い」
「全ては私達の殺意のままに」
 二人で一人の殺人姫、瑠璃と緋瑪はそれぞれ詠唱を紡ぎあげると、鍛え上げられた技に、誂えた武装の全てに特殊な魔力を通していった。
「「さぁ、私(わたし)達の殺戮を始めよう」」
 彼女達の身体に特別な輝きと魔力が満ち溢れ、立ち込める炎の竜巻へとまず瑠璃が一瞬で詠唱を紡ぎあげ、魔力を込めた爆弾を投げつけた。
 吸い込まれるように炎の大渦へ飛び込んだそれが爆ぜれば、込められた魔力が、凍結の魔力が爆ぜて広がり、炎の渦を凍てつかせ勢いを鎮めていく。
 それでも尚、碑文を身体に浮かべ術を紡ごうとするUDCへと、緋瑪は大型拳銃を撃ち込み、碑文が紡がれるのを強引に留める。
 無論、撃ち込まれた銃弾や、瑠璃の放った爆弾の余波は石碑の身のみを削り取ってはいるものの、中身の少年には傷一つ付けていない。
 最初に通した魔力によって、少年に憑いたUDCの概念のみを傷つけるようになっているが――それでも狂気は収まらず少年は叫ぶ。
『オReガ! OレGa消えキエキエ』
「好きなんでしょ? 止められないんでしょ? なら諦めちゃダメだよ!」
 自らの存在を否定し嘆きに打ち震える石碑と、呪詛めいた自虐の言葉を紡ごうとした祐介少年の口を、緋瑪の言葉が制した。
「自分の好きや作品を他人が否定する権利なんてない。貴方を理解してくれる仲間だって居てくれたんでしょ? 負けないで!」
「わたし達だって君の作品が見たいしね」
 絶え間なく銃弾を撃ち込み碑文による詠唱を中断させながら、投げ放った爆弾が今度は熱と衝撃を以てUDCという概念そのものを抉り、確かに少年の周囲から削り落としていき。
 瑠璃と緋瑪は爆撃に怯んだ石碑へと、取り出した鎌に仕込まれた炸薬を爆ぜさせ、その勢いで肉薄し。
「「さぁ、ここから出よう!」」
 交錯するように振り下ろされた大鎌の鋭きは、石の身体をバターのように滑らかに斬り裂いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿久間・仁
ケッ、真面目だなァおめェは。真面目過ぎて頭固くなってっからそんな石ころに変わっちまうんだろうな。

んじゃ一発お見舞いして目ェ覚まさせてやるとするか。
矢でも鉄砲でも津波でも竜巻でもなんでも持ってこいや!【気合い】と根性(という名の【激痛耐性】)で突破してユーベルコード叩き込んでやっからよォ!

何度否定されても仲間が辞めても書き続けた根性は認めてやるよ。けど死んだらそこでお仕舞ェよ。
こうすりゃ良かったああすりゃ良かった、そんなことは俺にも分からねェ。
けどあんな野郎のせいで死ぬこたァねェ。このままじゃ野郎に負けたみてェでムカつくだろ?
まだちょっとでも見返してやりてェって気持ちがあんなら、戻ってこい。



●魂の拳
「ケッ、真面目だなァおめェは」
 仁は金属バットを肩に担ぎ、未だUDCの悍ましく冒涜的な気配の消えぬままの姿へ言い放った。
 思うに真面目が過ぎて追い詰められ続けて固まってしまったのが、今の姿ではないか――狂気を誘う碑文には目もくれず、彼は金属バットをビシッと力強く突き出すと。
「矢でも鉄砲でも津波でも竜巻でもなんでも持ってこいや!」
 仁の叫ぶと同時、碑文に書かれた厄災を示す文章が輝き、そこまで言うのならばと言わんばかりに、仁を目掛けて雷の大津波が襲い掛かる。
 稲光のバチバチと弾ける轟音と、触れれば痛みでは到底済まされない脅威の大波へと、彼は躊躇いなく飛び込んだ。
「オルァァア!!」
 だが問題はない。気合と根性――痛みに耐える痩せ我慢ともいう――で突破してやろう。簡単なことだ。“出せばいい”のだから。
 文字通りの怒涛の雷が幾度となく身体を打ち据え、電圧と電熱が身を焼こうとも仁の歩みは止まることなく。
「何度否定されても、仲間が辞めても書き続けた根性は認めてやるよ。けど死んだらそこでお仕舞ェよ」
 体中から煙を上げる形になっても、決して揺らぐことなく堂々と雷の大津波を突破した仁は碑石の中の少年に声を掛けた。
『なRa、ドウSuれバYoカッタ!』
 嘆きの声が響く。
 書いては尊厳を辱められ、訴えたところで無駄――逃げ出そうにも自分は遅く目をつけられてしまったのならば。
 残されたものは筆を折るか、それでも止められなかったから耐え切れず自分を殺すしかなかった――そんな嘆きの声が響き、碑文の災いが鉄の大雨、それは宛ら矢や鉄砲の如く仁を阻むように注ぐ。
「どうすりゃ良かったかなんて分からねェよ」
 注ぐ鉄の鏃の如く鋭い雨に身を刻まれようと、金属バットで時に薙ぎ払いながら仁は進み、やや肩を竦めて言った。
 それは彼にも分からないし、何が最良の選択になったかは誰も分かる筈も無い――ただ言えるのは。仁は左拳をぐっと握り、鉄の雨を突破してUDCへと寄ると。
「けど、あんな野郎のせいで死ぬこたァねェ。このままじゃ負けたみてェでムカつくだろ?」
 握りしめた拳から炎が盛る。
 ここまで距離を詰めれば外すことは無い、反撃よりもその拳の方が確実に速い。一発いいのをお見舞いして目を覚まさせる、その為に。
「まだちょっとでも見返してやりてェって気持ちがあんなら、戻ってこい!」
 まずは何をするにも生きて戻ってから――叩きつけられた拳の熱く、そして重く鋭い一撃は怪物の身を砕き、走る痛みは少年の目を覚まさせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
自分自身の存在を否定するなら、あなたが過去に生み出した作品たちも、あなたが褒めた他者の作品も、同様に否定されることになりあの男に完全に負けたことになりますよ。

頑張りすぎですよ、もう。
疲れたのなら休息は必要です。

頑張り続けたことは賞賛に値します。しかし、頑張りどころを間違えてはいけませんよ。あなたは、まだ若く経験も少ない。今回の失敗をばねに広い視野を育ててください。そうすればまた、幸せな日々を送ることができますよ。
そのために、少し痛い思いをすることになりますが我慢してくださいね。
無事に助かったらお姉さんがイイコトしてあげます。
UC発動。浄化と破魔、神罰を重ねてUDCの部分のみを結晶化させます。



●水に流してしまいましょう
「このまま自分を“否定”することは、あなたが生み出した作品達も、あなたが褒めた他者の作品も、同様に否定することになります」
 人と怪物、狂気と正気のせめぎ合う、昼夜の境目の夕暮れ時――未だその身を侵し続け、狂気に揺れ動く石碑へと、晶は取り込まれた彼を救うべく言葉を投げかけた。
「そうなれば、本当にあの男に負けたことになるのですよ」
『ダKaラKoソ……MaッToウニ、カiテMiトメラレNaキャ』
 恐らくは彼にとっても、あの教師が正道で作品に良い評価、せめての建設的な評価を下すことは生涯ないだろう。あれにとってはそれが手段であり目的なのだから。
 それでも、一人の創作者として彼は筆で応えようとしたのかもしれないが――
「……頑張り過ぎですよ、もう」
 苦笑交じりで石碑の身をそっと撫で、晶は彼に語り掛ける。
 何処までも不器用で、ただただ真っ直ぐに傷ついた彼へと、張り詰めていた糸を解すかのように。
「ここまで頑張り続けたことは賞賛に値します。しかし、頑張りどころを間違えてはいけませんよ」
 大切な子を侮辱され幾度となく切り刻まれ――それはきっと我が身が裂かれるのと同じかそれ以上に辛いことだっただろう。
 しかしそれでもたった一人、立ち向かい続けた心は認めつつ、それでもと彼女は彼を諭す。
「あなたは、まだ若く経験も少ない。今回の失敗をばねに広い視野を育ててください。そうすればまた、幸せな日々を送ることができますよ」
『……』
 それこそ、幸福に恩師や友の傍で楽しい物語を紡いで笑い合えた、失われたと思われた日々を取り戻すことも――決して不可能ではないのだから。
 徐々に崩れる石碑より覗いた、少年の瞳を晶は真っ直ぐに覗くと。
「そのために、少し痛い思いをすることになりますが我慢してくださいね。無事に助かったらお姉さんがイイコトをしてあげます」
『イイKoト……』
「そう、イイコトです。……頑張れますか?」
 唇に立てた人差し指を当てて、悪戯っぽく笑う晶に戸惑ったように彼が言葉を発すれば。晶は敢て“頑張れ”と口にし――そして石碑の揺れが頷きを示す。
 それに応えるべく、晶は八大竜王の所持した逸話もある宝珠を取り出すと。
「神の水に射たれ、その者の犯した罪を浄めたまえ。さすればその者七宝となりて、天に誘わん」
 狙い討つは彼を包む名状し難き怪物のみ――宝珠より放たれた水神の罰さながらの、高圧水流が碑石を穿ち抜き。
 悍ましい碑石が凍り付くかのように結晶と化していき、怪物の身だけを削っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
彼を助けなきゃ
暴走する彼の狂気と自然現象をオーラ防御と激痛耐性、狂気耐性で耐えながら進む
恐れはしない
故郷では何度となく地獄を見てきたから

あなたの物語を聞かせて
わたくしはそれを歌に紡ぐから

『口伝』というものがあるの
まだ学問や読み書きが庶民に手の届かないものだった頃
人は童話や神話を「語り継ぐこと」で伝えてきた

物語が『子供』なら、今も生まれたいと願っているはず
何度引き裂かれても想像力は消えないわ
思い出して、楽しかった日々の想いを
決して笑ったり馬鹿にしたりしないわ

悲しみを慰めるように
悪に立ち向かう勇気を奮うように
躓いた時は手を差し伸べて
鼓舞し優しさを込め歌う

響かせましょう
新たな物語、『世界』の産声を



●喜びの歌は折れかけた筆を支える
 根深い心の傷と、逢魔が時に魅入られた魔の深度は堪らなく深いもので、何度となく光の下に引っ張り上げようとも、彼の身を侵す怪物は引き摺り落とそうとする。
『ウウウ、ァアアアア!!』
 戻りたい、戻れない、戻りたい、戻ってどうする――正気と狂気に揺らぐ彼の慟哭が響き、碑文の災厄を表す文章が輝いた。
「彼を、助けなきゃ」
 怪物を中心に放たれた腐食の乱気流が床やフェンスを崩し、瘴気の異様さを強く放つ――されど乳白色の天使ヘルガは腐食の暴風に躊躇いなく足を踏み出した。 
 ――地獄なら何度でも故郷で見た。希望に浮いてまた引っ張られと沈むのならば、何度でも引っ張りあげる。
 乱気流に乗る狂気の叫びと腐食の属性を、纏った障壁と、覚悟を決めて身を侵す痛みを耐え抜く強き意志を以て彼女は往く。嘆く石碑の傍へと。
「一つだけお願い。あなたのお話を聞かせて。どんな物語を紡いできたか。わたくしはそれを歌に紡ぐから」
 衣の爛れが目立つ姿になりながらも、辿り着いたヘルガは語る――かつて庶民に読み書きが届かぬ時代。
 童話や神話を語り継ぐ『口伝』という形で伝えてきた時代の話を。
「大丈夫、絶対に笑ったり馬鹿にしたりしない」
『アイTsuモ、サイShoハSoウイッタ』
 ――裏切られた悲しみ如何なるものか。冷たく奇々怪々な音声からは、癒えぬ傷を匂わせる。
 それでもヘルガは見つめ続ける。その微笑む顔の下に決して裏切らない決意を以て。
 やがては優しいサファイアの色に絆されたか、観念したように彼は呟いた。
『……スコシ、ナRa』
「ええ。『物語』があなたの子供なら、きっと今も産まれたがっている筈。……思い出して、楽しかった日々の想いを」
 何度引き裂かれ消されようと、親である彼の想像力は決して消えはしない。決して奪われなどはしない。
 だから今一度、まだ産まれたがっている子供を、世に送り出してあげて欲しいと――恩師と友と語らい、我が子を慈しみ合った日々を思い出して欲しいと、彼女の目が訴える。
『――……』
 そしてぽつぽつと語り出す彼の『物語』に合わせ、ヘルガは歌う。
 否定され続け刻まれた彼の心を優しく癒すように。彼の語る物語の、心からの悪がいない優しい世界の中に在るように。
 彼の語る陽気で紳士的な英雄の、強く優しい心を彼の勇気とするように。
 躓いてしまった彼に手を差し伸べるように、狂ってしまった心を癒し励ますように――響かせましょう、新たな物語、『世界』の産声を。
 産み出された『世界』の優しさは、歌い伝えるオラトリオの声に乗せて柔らかく広がっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新山・陽
 ご友人が筆を折られた事への憤り、味方のいない環境下での孤独、明日への恐れ。保立さんには様々ありましょう。ただ絶望をご自身に突き立て変じた意味は、愛する作品を傷付けるよりはという、根の優しさにあると思います。

 作品はどのような憂き目にあおうとも、貴方の自害を望みはしません。貴方の物語と貴方自身に笑いかけた方々も同様です。
 どうか戻っていらしてください。
 偏執的な否定などせず、貴方の痛みと声を聴くものが、かつての繋がりの中にも、ここにもいます。

 落ち着いて言葉をかけて、攻撃があれば避けずに気合で耐えようとします。
 貴方にとっての苦難の日々は、間もなく終わる。それだけは、お約束いたしますから。



●全て受ける、痛みも何もかも
 静かに夕暮れの中にそよぐ風の中、佇む碑文の怪物へ、屋上へと足を踏み入れたスーツ姿の女は、聞こえてきた物語と歌に拍手を送った。
 浮かぶ石碑へと彼女は、陽は静かに距離を詰めていくと、今はなりを潜めている怪物の中にいる彼へ、微笑みながら語りかけた。
「沢山の世界や物語を描いてこられたのですね」
 その出来不出来は兎も角として、それは尊くかけがえのない思い出だったのだろう――彼の語る物語への愛を感じつつ、陽は静かに、それでいて只管に優しく語りかける。
「それだけ愛しているからこそ、貴方は自死を選ぼうとした」
 ――愛しているからこそ、自分で壊す。グリモアベースでの語りにもあったそれを、彼は自分自身に向けてしまったのだろう。
 そしてそれは、彼の根にある優しさにあるから――それでも、彼は怪物に囚われたままの、奇怪な声で絞り出すように答えた。
『……ヤッパRiトメラReナi』
「それで良いのです。どのような憂き目に遭おうと、貴方の自害を望みはしません。貴方の物語と貴方自身に笑いかけた方々も同様です」
 その友人が筆を折り、何度も切り刻まれた悲しみの中、味方もいない中で、精神的な意味で明日をも知れぬ身であった保立少年の悲痛が、如何ほどのものであろうと。
 愛し子を傷つけたくない優しさで自ら命を絶とうとしても、止められなかった彼の思いに陽は微笑んで頷くと。
「どうか戻っていらしてください。偏執的な否定などせず、貴方の痛みと声を聴くものが、かつての繋がりの中にも、ここにもいます」
 陽より差し伸べられた手を、石碑の中に囚われた身で掴むことは叶わない。
 しかし動かぬ身なりに、彼は陽の手を取ろうとしたその時――
『ヨケ……!』
 されど彼の身に纏われた怪物自体の敵意、殺意は未だ滅ぶことなく。
 災厄を示す文章が輝き、氷の雨を降り注がせる――真面に当たれば痛いでは済まされない硬度と質量だが、勢いよく注ぐそれを陽は背中で受け止める。
「……大したことはありません。貴方の声が、その心が聞けるのならば」
 避けはしない。逃げはしない。ここに必ず悲しみを終わらせる者がいると、今一度改めて彼に示さなくてはならないから。だから陽は少年の不安を取り除くべく、言葉を更に紡ぎあげた。
「戻ってどうなるか不安かもしれませんが……貴方にとっての苦難の日々は間もなく終わる。それだけは、お約束いたしますから」
 ――必ず、彼を苦しめた元凶に然るべき報いを。
 引き締めた唇と研ぎ澄ました眼の訴えは、少年の心を確かに解き放ち、石碑の身がまた一つ崩れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
ほう――出遅れたが『貴様』が作者か。読む読まないの天秤前に『その貌』を覗かなければ面白くもない。重要なのは『自分』と『愉しんでくれる他人』だ。そもそも我々【文字で生きる】ものは度し難いのだ。只管に刻むだけでは勿体ないだろう――ああ、勿体ない。俺に辿らせてくれ、その正気
一部分では物足りない。欠片程度では食い足りない。発狂(ことば)を脳(しこう)から撒き散らして『貴様』を引き摺り出してやる。俺は悉くを否定する者だが、唯一、貴様のような存在は共(きょう)じて魅せよう
正気故に『邪神化』へと辿り着いたのだ。正気で無ければ、一心不乱で在れば我々は不滅と知るが好い。【あの頃に戻るのだよ】

処理(あと)は任せよ



●そうさ狂ってるさと堕天使は吐き捨てた
 ――夕暮れに現れた老紳士と称してやるには、その存在感と冒涜的な言葉にならない本質的な畏怖の感情は如何ともしがたく。
 遠きに聞こえる筈の電車の音すらも聞こえなくなるほどに、時が止まったかのような圧を感じさせながら。
 現れたロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)はやや崩れた石碑の身体と、其処から覗く『人間』の瞳を覗いた。
「ほう――出遅れたが『貴様』が作者か。読む読まないの天秤前に『その貌』を覗かなければ面白くもない」
 何処か値踏みするように――碑文を流し見ると、ロバートは隙間に覗く瞳と自らの瞳を合わせ。
「重要なのは『自分』と『愉しんでくれる他人』だ。そもそも我々【文字で生きる】ものは度し難いのだ」
 ――故に、只管に切り刻むだけのものなど。
 ロバートは額を抱え唇を歪め、嗤う――!
「勿体ない。俺に辿らせてくれ、その正気」
 一部分では物足りない。欠片程度では食い足りない――発狂(ことば)を脳(しこう)から撒き散らして『貴様』を引き摺り出してやる。
 解き放たれた『狂気』が正気という正気を徹底的に奪い、石碑の身体を揺さぶる。
「俺は悉くを否定する者だが、唯一、貴様のような存在は共(きょう)じて魅せよう」
 碑文が神の章を描き出し、呼びつけた邪神が向かおうと、叩き付けられる発狂(ことば)は容赦なく圧す。
 柵(しがらみ)は不要と知れ。
 自らを無と為す“正気”など貴様には要らない。要らない。
『Ahahaaahaaa!!』
 発狂の時間は時にして刹那にも等しい。
 されども一日千秋とはよく言ったもので、濃密と称しても尚足りぬ“気が触れて”も可笑しくない時間は過ぎていき。
 ごとり、ごとりと音を立て打ち震える石碑が徐々に剥離し、欠片が床に落ちては砕けていき。
 石の中に意志を強く示した貌が覗けば、ロバートは語る。
「正気故に『邪神化』へと辿り着いたのだ。正気で無ければ、一心不乱で在れば我々は不滅と知るが好い」
 ――斯様にして『狂って』しまうぐらいならば、あの楽しみの狂気の中にいれば良い。
「【あの頃に戻るのだよ】」
 それを正気というか狂気というか――無我夢中に文字を紡ぎ、創造し、想像を時に愉しむ者に委ね解釈の掛け違いをも愉しみ。
 それこそ【度し難い】悦びに脳を歪ませ快楽に浸り。
 狂おしい程に愛していた日々の、狂気に等しいあの頃の喜びを囚われた少年は今、確かに思い出し。
 何処か振り切れたように浮かんだ石碑の身体を床に落とし、内なる者の笑い声――物理的には聞こえないが――を聞き届けると、ロバートは告げた。
「処理(あと)は任せよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

川谷・茉莉
…堕ちても尚、何かを綴りたい気持ちは失くしていないのね。
それで良い、筆を折る必要などは無い。そして命を絶つ必要も無いの。
ただ、その絶望をここで断ってみせるわ。

怪異顕現「あの頃流行った必殺剣」。彼の歳からすると…7年くらい前に流行ったやつが良いかしら。
命中重視で、雨傘の周りに何本もの霊力で形作った剣を浮かべて。

――確か、技の名は――
――満開・白露村雨。唄いなさい。

かつて見たその技が【郷愁を誘う】ことで、楽しかった頃の気持ちに戻れれば良いのだけれど。
大丈夫、今度はその気持ち、引き裂かれることの無いように…私達が、何とかしてみせる。



●必殺の剣、今、怪物を討つ
 全ての戦いは佳境を迎えようとしており、怪物に囚われてしまった姫ならぬ少年は、確かな希望を取り戻しかけていた。
 しかし。
『ウゥゥゥウッ……アアAAAAAHHHH!!!』
 身に纏われた世界を破滅に導く怪物の意志はそれを許さず、残った狂気の全てを用い、全てを破壊せんと碑文を明滅させていた。
 されどその姿を見ていた茉莉は、黄色の帽子をやや目深にかぶり直すと、口元に淡く笑みを浮かべた。
「……安心したわ。失っていなかったのね。それで良い。筆を折る必要も、命を自ら絶つ必要もないのだから」
 絶望の内に叩き落されて尚、綴ることを止められなかった心。
 狂気を吐き出し、幾度となく与えられた声が齎した再起の希望が其処に在った。
 心配は要らない、彼は立ち直れる――とすれば、守護者として彼女は雨傘を引っ張り出すと。
「ただ、その“絶望”だけはここで断ってみせるわ」
 後は彼を包む絶望の、呪われた碑文を此処で倒すだけ。
 雨傘は幼き頃に誰もが手にした聖剣・魔剣・妖刀etc、繰り出す技はその剣が繰り出した憧れのあの技。
(彼の歳からすると七年前辺り……あの技が良いかしら)
 見た目とは裏腹に長く生きた時の記憶を辿り、彼の年代に流行ったあの技を再現する。
 ――確か、技の名は――
 雨傘の周囲に幾つもの、霊力で作り上げた剣を浮かべその切っ先が石碑の怪物へと突き付けられる。
 例え彼の好みでなかったとしても、間違いなく彼の年代丁度のあの技の名を。考え得る限り、その技を放った者の纏う空気感、所作、その全てを宿したかのように。
 見た目ではなく演技を以て茉莉は魅せる――!
「――満開・白露村雨。唄いなさい」
『……!』
 ――その光景は少年にとっては、酷く懐かしいものだった。
 少年と青年の境目にある彼が、それこそ本当に“少年”だった頃の――拙くも文を紡ぎ出し始めた頃に流行った漫画の再現。
 物語の終わりとしては、それは最高ではないか。
 格好いい夢物語のような技で、怪物になってしまった部分だけを討つ。
 ――嗚呼、これは、本当に、本当に、世界一慈(やさ)しい怪物退治ではないか。
 怪物の部分――見る者全てを狂気に導く碑文が断末魔のように乱れ、様々な色に発光し、そして。
「大丈夫、今度はその気持ち、引き裂かれることの無いように……私達が、何とかしてみせる」
 崩れた石碑の中から現れ、意識を失って倒れた――それはそれは、とても平凡な、何処にでもいる素朴な少年を小柄な身体で抱き止めて。
 子供の守護者は全てから解放され、満ち足りたような寝顔の彼の頭を優しく一つ撫でるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●何もかも半端な屑の歪み~教師の備忘録より抜粋~
 子供の頃から文章を書くのが大好きだった。
 ハッキリ言おう、俺は天才だった。作文コンクールでも大賞の常連だったし、文章書きとしてやっていきたいと、子供の頃から常々思っていた。
 そして何と俺は高校生の頃に書いた小説が、審査大賞に選ばれてプロデビューだ!
 周りの奴らも凄い、天才だと持て囃した。当たり前だ。俺は歴史に名を残せるはずだから。

 ……だが世間の奴らはその後の俺の作品にケチばかりつけやがる。
 デビュー作以来、俺の書いた小説は全然売れやしねえ。デビュー作だってまぐれ当たりだとか叩かれまくった。
 何が「流行の上辺だけ取り繕った寒い作品」だ。何が「胸糞悪い描写入れただけで深いと勘違いしてる」だ。何が「クドい期待外れの文章」だ。
 全然わかっちゃいねえ。こっちから願い下げだって言ったら、出版社の奴らはあっさり斬り捨てやがった。

 仕方ないから教職に就いて、長く経ったある日、あの同好会を見た時にピンと来たね。
 この高校には文芸部が無いから、俺が鍛えていずれは部として認めさせて、俺が鍛えた作家を送り出してやろうと。
 ……そう思ったけど、やっぱ駄目だな。
 楽しんで書いてるって馬鹿か? 馬鹿だろ。書くなら認められなきゃ意味ねえんだよ!
 へらへら低レベルで幼稚な文章、陳腐な設定……ああ思い出しただけで腹が立つ!

 だが俺も本来大作家の器だ。
 根気よく指導してやったってのに、ほとんどの奴が逃げ出しやがった。
 残ったのはアイツだ。保立祐介とかいうパッとしない、俺の大嫌いな陳腐なお子ちゃま小説(笑)を書いてる奴だ。
 何度も指導してやったってのに、てんで見込みがねえ。
 まあ根性だけは認めてやらんでもないが、とても俺と比べるまでも無い駄作も駄作だ。
 それでも根気よく指導してやった上に、執着を断ってやる為に処分までしてやってるんだ。俺は本当に良く出来た優しい先生だと褒めてやりたい。

 今日もあいつはどんな駄文を書いてくるのかね?
 さーて、あの甘ちゃんにプロの現実って奴をどう教えてやろうか。

●かつて悪魔は言った「お前こそが悪魔と」
 無事に祐介少年を救い出し、彼を捕えていたUDC怪物のみの撃破に成功した猟兵達。
 UDC関連の事象のみは職員によって記憶処理をされたが、彼を狂気に追いやった心の傷は深く、今すぐに何もかも全て元通りというのは難しいかもしれない。
 しかし彼を励まし続けた猟兵達の声は確かに彼に届いているし、実際に彼は救われている。然るべき環境さえ整えれば、彼が立ち直ることもそう遠くない未来だろう。

 ……さて、その然るべき環境を整える為には、彼を追い込んだ人間の屑である教師を叩きのめさなければならない。
 残念ながら真っ当な説得で改心する見込みは限りなく薄い以上、多少手荒な手段を用いてでも、彼を悪質なパワハラが出来ないようにさせる他ないだろう。
 彼が彼のまま教師でいる限り、第二、第三の祐介少年が出てしまう可能性は十二分にある。
 これ以上の悲劇を、狂気を産み出させない為に――猟兵達は人間の屑を制裁すべく行動を開始するのだった。
********************

4/28追記
多くのプレイングありがとうございます。
様々な手段での制裁がございましたので、少々リプレイの順番が変則的になっておりますので、ご了承ください。
また、その為に全体を通して見ると少々時系列の疑問など引っ掛かる点などもあると思いますが、私の力不足であるとお詫びいたします。
なのでもし時系列などで引っ掛かる点などございましたら、適宜脳内補完して頂けると幸いです。

********************
シャルロット・シフファート
自分のエゴで人を踏みにじるような奴に、筆を握る資格は無いわ。

交換留学生で今日から入部する文芸部の部員として潜入し、パワハラを行わせてそれを隠しカメラで動画を撮影して録画
ちなみに凛とした態度でパワハラを受け止めるわ

学園側と出版業界に私に関する事を処理した動画とパワハラに関する資料を提出し、免職と出版業界への出禁措置を図るわ
ついでに動画サイトにも資料や被害者への秘匿処理を行い投稿を

制裁が済んだら被害者への救済措置を

元文芸部の部員や定年退職した元顧問に働きかけて元の居場所の復元を
作品データも電脳魔術で全て復元して被害者の全てを取り戻させるわ



●失われたもの、取り戻す
 誰もいなくなった筈の同好会の部屋に、愉悦を隠しきれない歪んだ顔の教師の罵声と、それを毅然と受け止める金髪の少女が居た。
 交換留学生で日本の文芸に興味がある、ということで、早速書いてきた小説を水澤清志に見せた少女は、例外なく屑教師の悪質な批判の名を借りた罵倒を受けていた。
「お言葉ですが、承知の上で分かりやすくするために……」
「はい出た警察警察ー!」
 留学生を装い、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)は凛とした態度で屑教師のパワハラを受け止め、時には反論もしたが屑教師は一笑に伏した。
「という訳で、廃棄けってぇぇぇい!」
「ッ……!」
 悪趣味な人の作品に敬意を示さない罵倒に続く罵倒、明らかに茶化したエレクトリカルパレードを流しながらのシュレッダーによる廃棄処分。
 ――こんなエゴで人を踏み躙る人間に筆を持って良いのか。いや無い。
 刻まれていく小説のページを確りと、涙一つ漏らさずに強い眼差しで最後まで内心詫びながらシャルロットは見つめ。
 そんな彼女を嘲笑うかのように、屑教師は肩を竦めて。
「ま、今後は俺の指摘を活かして、精々良い作品作りなよ?」
「ありがとうございました……」
 粛々と内に煮えかえる腸を抑えながら、頭を下げて去っていくシャルロットの背を、鼻を鳴らして屑教師は見送った。

 ――だが屑教師は知らない。一連の行動が全て隠しカメラによって録画され、その全てが学校側や、かつて身を置いた文芸の世界に広められることを。
 動画サイトにも広くアップロードされ、然るべき制裁を与えたいと彼女が願えば――内容と罪が明らかである以上、願いは妥当、視聴者の数も万を超えた以上、その願いは叶って然るべきであり。
 そして後日、告発された内容によって、屑教師が身を置いた世界の全てから、居場所が徹底的に奪われることも、未だ屑教師は知らない。

 そして当のシャルロットは、電子の海からデータまでも削除された少年たちの作品をサルベージしていた。
 その際、去って行った少年の友人や、定年で去った元顧問にも連絡を行ってもいて。
「後は元通りになってくれれば、と思うけれど」
 連絡を入れた元顧問は現状を聞き、大いに同情し出来る限りの協力をするとまで言ってくれた。校外の活動という形でならば、元顧問も協力してくれるだろう。
 筆を折ってしまった友人達も、早くに離れていたことが幸いし、祐介少年程には傷は深くは無かったようだ。一人にしてしまったことを申し訳なく思うと言っており、場が整えば恐らくは新たな同好会が立ち上がるだろう。
 余談ではあるが後日、かの教師が文字通り破滅に陥り、打ち震えることを聞いた彼女は、以下の様に断じた。
「その破滅と呪怨は必然。なぜならば悪徳と悪食の提供者に栄光は訪れないのだから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹川・朝霞
さて、グリモア猟兵殿からの頼みもありますので。それを『竜神・阿賢賀水神』への願いとしましょうか。
あ、電子データ復元はサービスです。

夕方に。その教師のもとを訪れましょう。
こんにちは、教え導く者。あなたに、俺の書いた文章を見てもらいたくて。

異類婚姻譚。竜神と巫女の話。
ありきたりな設定と話。それは俺自身の物語そのもの。

(以下、口調『遥かなる水神』)
否定したな?神の過去、そのものを否定したな?
神罰つきでUC使用。幼子がかけられた言葉を、幻の雷とともに、そのままそちに。
ああ、幻とはいえ、余の竜としての姿が見えておるか。

陳腐とはな、言い換えれば長年愛されたものなのよ。人々の心を掴んで放さぬものなのよ。


川谷・茉莉
【化術】で学校の生徒に化け、放課後に件の教師へ接触。
彼が元プロ作家と聞いて、小説好きとして話をしに来た体。

彼の小説に対する理念とか、最近の流行への考え方、同時期デビューの人気作家についてとか好き勝手語らせた上で。

「つまり先生は人を楽しませることにかけては凡人未満ということですね」

独りよがり、他人を貶めることでしか己を高められない、およそ努力というものを知らない、現実を直視できない人間。

「そんな人間は、世界から消し去ってしまうべきよね?」

化術解除と共にUC発動、【恐怖を与える】強化。
【催眠術】で、彼自身がシュレッダーにかけられる幻覚を見せましょう。
小説を見るたび同じ幻覚を見る【呪詛】もセットで。



●戒め
「――……とまあ、俺が思うに、やっぱり俺の世界って奴を教えてやるものだと思っているね」
「なるほど、為になります。では、最近の流行はどう思います?」
 時は放課後、屑教師水澤は防音完備の生徒指導室を借りて、相談を持ち掛けてきた女生徒に機嫌よく演説らしきものを行っていた。
 何を隠そう、一見何の変哲もない容貌の女生徒は茉莉が化けている姿であり、元プロということに取り入って彼女は語りを引き出していた。
「陳腐だね。似たようなのばっかで面白みも何もない。タイトルも長いわ、文章も下手クソだわ……」
 ――嗚呼、本当に、人のことを言えない男。
 熱心に聞くフリを続けながら茉莉は心の中で吐き捨て、同期の他の作家はどうだと問いかける。
「ああ、俺の次点だった奴でしょ? まあこういうのも何だけど、読者のレベルが低いみたいだからね」
 ハッと両腕を広げた姿と、愉悦に満ち溢れた目はますますに苛立つ。
 腸の煮えくり返りそうな澱みを抑え、茉莉は笑顔に化けたままを崩さず。
「大変、為になるお話をありがとうございます。そんな先生に、実は……友人が小説を見て貰いたいと」
「失礼します」
「おっ?」
 扉を開けて入ってきたのは、真面目そうな青年だった。その手にはA4サイズの用紙を幾つか束ねたものを持っていた。
「居場所を伺ったところ、生徒の相談に乗ってると……あ、ご紹介に預かりました。彼女の友人です。あなたに、俺の書いた物語を読んで貰いたくて。あ、勿論、遠慮なく厳しく批判してください」
「はは。いいよ。そういう厳しいのを素直に受け入れる姿勢って、大事だよ」
「恐れ入ります」
 青年――朝霞の差し出した短編小説を屑教師は受け取ると、鼻歌交じりで表題のページを捲る。
 その顔が最初から他を見下すこと以外の感情が含まれていないことに気付くのは、難しい話では、当然ない。

 そして開かれた文章はこう語る――。

 それは紛れもなく、朝霞自身の経てきた物語。水の守り神に生贄として捧げられた巫女と、それに惚れ込んだ竜神の恋物語。
 ありきたりと人は言うかもしれない。予想の出来る物語と人は言うかもしれない。
 されど紛れもない【真実】の想いを綴ったその物語は、真っ当な感性を持つものであれば、紛れもなく何処かで心を打つだろう。
 陳腐? 安易? 否。
 人はそれを「安定」の感動と呼ぶものなのだから。

「……あのさあ」
「はい」
 全てを読み終えた屑教師は、溜息を交え敬意の欠片も無く、その文章をテーブルの上に放った。
「もっと勉強しなよ。何? この陳腐な内容。展開すぐ読めたわ。安易だしすぐ飽きるよ読者」
 ――そして屑教師は延々と語る。只管に、言いがかりに等しい、作品のコンセプトや背景も理解していない、自分の基準が全てと言わんばかりの、悪質な憂さ晴らしを。
 ――あの幼子はこんな罵倒に耐えていたというのか。
「……散々悪い事言っちゃったけどさ」
 溜息を吐き出す彼にも、多少は良い所を認める気はあるのだろうか。しかしそんな訳もなく、屑教師は顔を歪めると。
「もっと悪い所を言うわ」
 その“もっと悪い所”を散々に言った後は、もっと悪い所、もっと悪い所――只管に彼は胸糞悪く言いがかりに等しい罵倒を行う。
「――とまあ、よく読んで貰えると思ったって感じだね。残すわけにはいかないから、俺がシュレッダーに掛けて」
「……否定したな? 神の過去、そのものを否定したな?」
 嘲笑と共にそれを持った屑教師の前で、朝霞の姿が膨れ上がったような気がした。
「陳腐とはな、言い換えれば長年愛されたものなのよ。人々の心を掴んで放さぬものなのよ」
 肩を震わせ、静かな怒りに満ちた朝霞の瞳を見下し、だから下らないと斬り捨てようとした屑教師の言葉を、茉莉の声が制した。
「今までの話で良く分かりました。つまり先生は、人を楽しませることにかけては凡人未満ということですね」
「……あ?」
 ――見下すことでしか他者を評価できず、己を高められない。自らの努力も知らず、現実を見ない。都合の良い評価のみが彼の世界。

 ど こ に 存 在 す る 価 値 が あ る。

「そんな人間は、世界から消し去ってしまうべきよね?」
 ――茉莉の声が囁かれたその時、薄紅梅色の靄らしきものが部屋を覆いつくした。
 それと同時、屑教師の目に映っていた筈の、何の変哲もない女生徒は白ブラウスに赤いスカート、黄色帽子の目立つ“有名な怪異”によく似た少女へ。
 そして小説を持ち掛けてきた青年は――
「ひ、ひぃぃっ!? お、おまっ」
「――ほう、余が見えるか。竜としての姿が」
 それこそ彼の書いた異種婚姻譚の、竜そのもの――畏怖という言葉の意味を知らせるが如く、その威容は屑教師を怯えさせていた。
「幼子の掛けられた言葉、その苦しみ、思い知るが良い」
「わたし達は子供の守護者。貴方のような人間に、これ以上導かせてあげるわけにはいけない」
 奇しくも朝霞の生み出した霞が齎す幻覚と、茉莉の与える地獄の恐怖は奇跡的に噛み合っていた。
 幻覚は霞が補強し、恐怖は怪異の顕現がより深く痛烈に刻み込む。
 投げかけた言葉の鋭さをそのまま雷という鋭い苦痛として与えるのは、正に神罰――そして神罰の後に待つものは。
 怪異の顕現が為した応報の恐怖は、屑教師自体がシュレッダーに掛けられて切り刻まれる。
 そして切り刻まれて尚、神罰の雷が少年の痛みを代行するように紙片となってしまった身を幾度となく打ち据える。
 そして怪異はボロ屑と呼ぶにも惨めな幻覚の中、苦しむ屑教師の頭をそっと撫でる。無論労いの祝福ではない――これから先、如何な小説を見ようと、竜の神罰と怪異の拷問を見せつけられる消えぬ楔を打ち込んでいた。
 ここに子を慈しむ超常存在達は、教え導く筈であった屑に確かな裁きを下すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

無事に彼は助け出せたか…何よりだ
では、元凶にもお仕置きをしなければな

UCを発動
魔力を込めたエギーユ・アメティストによる一撃を喰らわせ、あの教師に今までの行いに対する強力な罪悪感を感じさせる
罪を罪と思わないというならその罪を自覚させればいい
それが、奴にとって一番の罰になるだろう

今の君は、善良で心優しい教師だ
だからこそ、思い出して懺悔しろ
愛すべき生徒を絶望の淵へと追い込んだ、己の所業をな

身体には傷一つは付けやしないし、精神が壊れないように加減もしよう
尤も、その心が磨り減るまで良心の呵責に苦しむだろうがな

彼がお前から受けた苦痛はそれ以上だ
…少しはまともな教師に変われるよう、祈ってるよ



●まだ罪がわかりませんか
 無事に彼を救うことが出来て良かったと、心の中からキリカは思う。
 だが彼を追い込んだ屑教師がのさばれば、第二の悲劇が起こる以上は。
(さて、元凶にも少々お仕置きをしてやらないとな……)
 念入りに調査を重ね、屑教師が人通りの少ない夜の道で一人になる時を見計らうと、潜んでいたキリカは彼に声を掛けた。
「失礼。実はアンケートに協力して頂きたくて……」
 キリカの申し出に鬱陶し気に無視する水澤だったが、あまりにもしつこい様子の彼女に根負けしたか。
「ああ……分かった分かった。答えりゃすぐ帰るからな」
 彼の返答にこちらへ、と奥の方の行き止まりへと案内すれば、水澤は心底鬱陶しそうに周囲を見回し。
「んで? アンケートって何を……」
「――問うのはお前の罪さ」
 振り向き、冷たく切れかけた街灯に照らされた黒い瞳が向けられると同時、屑教師の胸を一つの錐が打ち据えた。
「て、めえ……! あの同好会の差し金か!?」
「当たらずとも遠からず、かな。さて、気分はどうかな?」
 胸を抑えこんなことを考える余裕があったかと舌を巻いたキリカだが、鼻に息を通し言葉を紡ぐ。
「――お前達の罪は、お前を縛る枷となる……そのまま良心の呵責に苦しんでいるがいい。今の君は善良な教師だ。さあ、思い出して懺悔しろ」
 ――次の瞬間、水澤の脳裏に幾度となくリフレインするのは、彼自身が浴びせ続けてきた悪意。
 歯を食いしばりながら送り出した子を、幾度となく辱め挙句の果てにシュレッダーで刻み続けるという、悪辣な指導の名を借りた子供の残酷行為。
 その全てがキリカが打ち据えた錐の、蠍が毒を撃ち込むかのように水澤へと撃ち込んだ――良心の呵責が、彼を他ならぬ彼自身の罪で以て心を押し潰していく。
「うあ、うぁ、ああああああっ!」
 犯してきた指導者としてあるまじき、罵倒に続く罵倒と悪質な廃棄処分。
 罪を罪と思っていないからこそ、自らを正義で善と妄信してきた者が、良心の呵責というものを植え付けられたその時――浴びせ続けた苦痛が、自死を、そして怪物と化すほどのものであったならば、尚更に。
 されど苦痛のまま狂い廃人となるという、楽になる道は彼には訪れない。
 そうなるように敢ての“慈悲”をキリカは与えていたのだから。
 積み重ねてきた罪の重みに胸を書き毟り、自傷に走る姿の痛ましさは何とも言えないが――
「彼がお前から受けた苦痛はそれ以上だ。……少しはまともな教師に変われるよう、祈ってるよ」
 尤も教師を続けられるかどうかすら危ういかもしれないが――自らの罪に自らを傷つけ続ける道化となった男の姿を目で流し、キリカは場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
アドリブ絡み◎
せんせーには大人しく椅子にでも座ってもらって。(UCの花弁を操って拘束、お口も喋れないようにチャック)

うふふふ、自身の劣等感やプライドの為に他者を踏みにじり続けた者に対する罰とはどんなものが良いんでしょうね?貴方はどう思いますか?

正解は…因果応報、です。
さて、ここに本があります。少し前に流行ったもののようですが今は古本屋のセールで安く手に入りました。
少し読んでみたのですが、面白くなかったです。普通に。
だから、捨てちゃいましょうか。だって、「駄作は世に残してはいけない」そうですから。

UC一部の花弁で本をエレクトリカルパレード。
まだまだ、因果応報はありますよ。(にっこり)



●残すわけにはいかない
 或る休日のことだった。屑教師水澤が目を覚ました瞬間、周囲の状況も何も分からないまま、椅子に縛り付けられていた。
 動揺のまま目の前に立つ、笑顔を浮かべた妙齢の女がそれを行ったとすぐに察すると、彼は抗議の声を挙げようとしたが。
「はい、お口チャックですよー」
「むぐっ!?!」
 哀れや哀れ。屑教師の口は水晶の花弁――屑教師自身を縛るものと全く同じそれ――で出来た縄で轡をさせられる。
 ろくに喋ることも叶わぬまま、屑教師は必至に轡を噛み締め、妙齢の女を――晶を睨みつけるも。
「うふふふ、自身の劣等感やプライドの為に他者を踏みにじり続けた者に対する罰とはどんなものが良いんでしょうね? 貴方はどう思いますか?」
 彼女はそれを至って涼し気に、何処までもにこやかに笑顔を崩さぬまま、屑教師へと問いかけた。
「正解は……」
 未だ目を血走らせ、顔を真っ赤にする屑教師の前で晶は、彼の“誇り”を取り出した。
「因果応報、です!」
 じゃーん、という可愛らしい自慢が聞こえてきそうな仕草で、ハードカバーの分厚い本を――何を隠そう、屑教師の傲慢の根拠となってしまった、ある意味今回の元凶ともいえる創作物を見せつけて。
「古本屋で投げ売りされてましたねー。読んでみましたが……全然面白く無かったです。普通に。ホント、何で審査大賞だったんでしょうね?」
 よっぽど審査員の方に見る目が無かったか、あるいは相当なお金を積んだのでしょうか――首を傾げながら、これ見よがしにページを開き、書かれている文を眺めて考える。
 考えても、全く分からない。だけども。やることは決まっている。
「だから、捨てちゃいましょうか」
 大層に良い笑顔で告げられた言葉と、騒めいた水晶の花弁が持つ気配に何かを察した屑教師は口も利けぬまま、身動き一つも取れぬまま憤慨する。
「だって、『駄作は世に残してはいけない』そうですから。ね?」
 ――どこかしこからか、エレクトリカルパレードが響き渡る。
 渦巻く花弁の鋭きと、これから行われるであろう所業に、屑教師は目を血走らせ必死に藻掻く。ふざけるなと。
「おや? 少しでも雰囲気を明るく、ですよ。やってきたことでしょう?」
 ――うねる水晶の渦中に、躊躇いなく彼女はそれを放り込めば。
 声なき声に顔中から無様な体液を迸らせる屑教師へ、更に追い撃つように晶は笑顔で告げた。
「さて、まだまだ因果応報はありますよ」
 それはそれとして、悪に罰とするならば、健気たるあの子にも然るべき救いを。
 全てが終われば少年に約束通りの“イイコト”を行おうか――そんなことを考えながら、穏やかに微笑む晶と泡を吹いた屑教師の間を、【紙の】花弁が過ぎ去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「わたし達はやっぱり殺ししかできないからね♪」
瑠璃「私達が物語では体験できない死の感覚をオシエテアゲル」


緋瑪「稚拙でお粗末な文章しか書けない難癖屑教師を指導しに来たよ♪」
瑠璃「本当の死の感覚を教えてあげる。少しはマシな文が書けるんじゃないかな」

UCで対象を「精神」に指定。
肉体的には非殺傷故に絶対に「死ねなくなった」為、その精神に銃殺、刺殺、毒殺、絞殺、轢殺、爆殺…あらゆる死を何度も叩き込んであげる。
死の感覚は感じられるからしっかり味わうと良いよ

緋瑪「他人の気持ちを考えられない人間が他人の心に響く文なんて考えられるわけがないね」
瑠璃「他人の想いを踏み躙った報い、しっかり刻み付けると良い」



●臨死体験
 某日仕事終わりの夜――人間の屑こと、水澤清志がそれなりに悪くはない、独り住まいの集合住宅としては上等な部類に入る部屋に帰宅すると、聞き慣れない二つの声が重なった。
「「こんばんは。水澤先生」」
「……あ?」
 なんだお前ら――と言いそうになったが、即座にその言葉は飲み込む他なかった。
 何故ならば、水澤の目に映ったのは双子の死神というべきか。物騒極まりない大鎌の刃を挟みのように交錯させ、屑教師の首元に突き付けていたからだ。
「稚拙でお粗末な文章しか書けない難癖屑教師を指導しに来たよ♪」
「本当の死の感覚を教えてあげる。少しはマシな文が書けるんじゃないかな」
 ――さぁ、私(わたし)達の殺戮を始めよう。
 二人で一人の殺人姫、瑠璃と緋瑪は早速突き付けていた大鎌を挟み、水澤の首を刎ね飛ばす――と言っても、実際に跳ね飛ばしたわけではない。
 殺しの対象を肉体ではなく、精神に限定することで肉体的には一切の死を与えず、ただただ死の実感のみを強く彼に与える。
 首を一撃で刎ねられたという、“生易しい”殺害方法では勿論、殺しにかけては限りない腕を振るう瑠璃と緋瑪が済ませる筈もなく。
 ある時は大型拳銃を発砲し、手足から脳天、心臓と撃ち抜き。
 ある時は縄を取り出し首を締め上げ、苦痛の中に死に逝かせ。
 またある時は猛毒を以てもがき苦しみ抜いての死を。
 その全てが確かな苦しみとして叩きつけられ、死の実感は延々と続いていく。
 奇しくも防音を完備している部屋が幸か不幸か、彼の身に降りかかる惨劇に気付かれることなく殺人姫達の蹂躙が続く。
「他人の気持ちを考えられない人間が、他人の心に響く文なんて考えられるわけがないね」
「他人の想いを踏み躙った報い、しっかり刻み付けると良い」
 幾度となく死の実感に晒され、顔中から無様に体液を撒き散らしている屑教師を瑠璃と緋瑪は見下ろすと。
 彼女達は懐から取り出す――彼女達が得意とする爆弾を。言うまでもなく、その爆弾が明らかに本物であるが故に――それを、躊躇いも無く、彼女達は屑教師の身体に巻き付ける。時限式にセットしたそれの、カウントダウンの音もやや強く響かせて。
「わたし達はやっぱり殺ししかできないからね♪」
「私達が物語では体験できない死の感覚をオシエテアゲル」
 百聞は一見に如かず。百見は一触に如かず。
 教え込まれるのは、凡そ人間が考え得るありとあらゆる殺戮の“地獄”だった。
 かつてありとあらゆる苦しみを一万と繰り返し、そしてそれを一万繰り返す――後に残るのは何も無い、阿鼻地獄というにも生温い裁きが人間の屑の心を容赦なく切り刻む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿久間・仁
とりあえず人目に付かねェ場所に拉致っちまうか?廃倉庫とかよ。関係ねェ奴にお楽しみを邪魔されたくねェからな。

春になったっつーのに今日は冷えるな。焚き火でもすっか?よく燃えそうなモン手に入れたからよ。ケケケ。
舎弟に探させたてめェの本だ。古本屋のワゴンに投げ売りされてた上に買取価格0円だとよ。
いっそ燃やしちまった方が役に立つってな!ヒャハハ!

ガタガタ文句ぬかすようなら殴って黙らせる。似たような事散々やってきただろうが。
指導だァ?笑わせんな。てめェみてェなクズが教師やってるからグレたり自殺したりする奴がいんだろうが!……チッ、熱くなっちまった。
二度と同じ真似ができねェように徹底的にシメるから覚悟しろ。



●教育的指導(物理)
 帰宅途中にいきなり後頭部を殴られ気絶させられた水澤は、今や誰も寄りつかぬ廃倉庫の中へと連れ込まれていた。
 その連れ込んだ男は水澤にペットボトルから冷水を浴びせ、強引に目を覚まさせる。
「わぶっ、お、おまっ、何を」
「よーお、お目覚めかァ?」
 明らかに動揺した様子の水澤に、連れ込んだ男こと仁は執拗に冷水を浴びせ。
 空になったボトルを放ると、彼は水澤の傍に置いた木箱を椅子代わりに腰かけて、実に人の悪い笑みを浮かべた。
「ケケケ、何処だっていーだろ。それよりよォ、春だってのに夜は冷えるよなァ」
 仁は懐から或るものを取り出した。
 それに見覚えがあり過ぎる水澤は驚愕に目を見開く――というのも、仁の腕に明らかに煌々とした炎が揺らめいていたからだ。
 あれはまさか、と青ざめた顔をする水澤に対し、仁は尚も舌を出した嘲笑を交えて語る。
「焚火に丁度良いのがあるんだわ。舎弟に見つけて貰ったけどな、古本屋のワゴンセールで投げ売りされてたってよ。おまけに買取価格はゼロ!」
「お、俺の傑作が、ぜ、ゼロォ!?」
 これから行われようとしていることについてもだが、傑作と信じて疑わない自身の作品がまさかの古本屋の評価に、信じられないと言った様子で首を振り続ける。
 その様子に顔を歪めた仁は、揺らめく炎を小説へと近づけていき――
「おう。てことは、だ……こんなもん、残す価値は無いよなあ? いっそ燃やした方が役に立つってな。ヒャハハハハ!」
「価値はある! やめろ、やめろぉぉぉっ!」
 目の色を変えて仁に飛び掛かり、それを制そうとする水澤であったが。
「オルァッ!」
「へぶっ!?」
 眉間に真っ直ぐに鋭く突き刺さったストレートが顔面をへこませ、水澤の身体を数回転させて倒れ伏させた。
 そのまま横たわる水澤の頭を足で踏み付けにし、只管に身勝手な屑教師へと仁は叫ぶ。
「てめえも散々やってきただろうが!」
「俺は指導……」
 だがその反論も蹴りで強引に黙らせる。
 開かれた口に叩き込まれた衝撃が、前歯の幾つかを圧し折り、その苦痛で水澤は口を抑え悶え。
「あァ? 笑わせんな。てめェみてェなクズが教師やってるから! グレたり自殺したりする奴がいんだろうが!」
 水澤の言い分に尚更に苛立ちを覚えたか、仁は執拗に、何度も、何度も――悶える水澤の身体を足蹴にしていく。
「……チッ、熱くなっちまった。けどよ」
 叫んだ内容と語調を思い返し、やや不機嫌に仁は吐き捨てた。
 それから彼は最早碌な言葉も告げること敵わず、青痣や擦過傷を全身に作り上げた姿の水澤の前髪を掴み、引っ張り上げると。
「まだ夜は長ぇんだ。徹底的にシメてやる。覚悟しろ。してなくてもやるけどな」
 ――歪んだ笑みに浮かぶ何処までも獰猛な攻撃性と、それから襲い掛かる身体の苦痛は筆舌に尽くし難いものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御前・梨
う〜ん……罰っすか。何すればいいんすかねえ〜。…すのが駄目となると…う〜ん。(良くも悪くも始末しかしてこなかった男にとって罰、生かしたまま何か、というのはやったことがなかった。)

……ま〜とりあえず組織の力使ってみますかねえ。猟兵案件なら力貸してくれますよね〜?


まずは先生さんのお家に行って先生の取ってきた賞状証やら書いた小説等の小説関連の物を根こそぎ回収して貰うっす。

後は〜、……更に組織の力を借りて先生の取った賞歴を無かった事にしてもらいましょう〜。う〜ん、我ながらいいアイディアなんじゃないっすかね〜。

で、回収した賞状証や小説を〜学校の焼却炉にポイッとする動画を先生送りますかね〜。



●これも優しさと彼は言ったのだから
「う~ん……罰っすか……何すればいいんすかねえ? ……すのが駄目となると、う~ん……」
 梨は悩んでいた。制裁というならば強引・確実に未来を閉ざすことしかなかった男にとって、生かしたままというのは難しい。
 だが、とふと思いつく。あれが相手ならばきっとそういうのが良いだろうと、梨は携帯を取り出すと。
「とりあえず組織の力使ってみますかねえ~?」
 猟兵案件ならば快く力を貸してくれるだろう――これもまたUDC関連の被害を抑える為ならば猶更に。
 思いついた罰を実行させるべく、梨はUDC職員へ連絡を寄越した。

「ちくしょう、俺が何をしたっていうんだ……!」
 兎にも角にも散々な目に遭い、心身を喪失しかけた教師は夜遅く、自らの住むアパートに帰宅した。
 その顔に赤みが差し、足取りも覚束ない様子であるのは酒を深くし過ぎたものか。
 挙句の果てにかつて受賞した経歴すらも、どういう訳か抹消し、文豪(自称)水澤清志の軌跡は消えてしまっていた。
 自棄酒で多少は持ち直してはみたが、家に帰って安らぐ――間もなく、彼は明らかな違和感に気付き、部屋を見渡した。
「は? え……」
 無い。無い無い無い無い。何もかもない。
 天才作家である自分の残してきた賞の軌跡も、世に残すべき傑作と自負していた執筆してきた本も何もかも。
 戸惑っていた矢先、スマホの通知音が響く。
 憔悴した心のまま、送信元の確認なども頭から追いやってただただ、贈られてきた動画を彼は再生すると――。
『はいどうもー、水澤先生……で合ってますか~? いや~災難だったっすねえ?』
 そこに映るのは、細い目で陽気に笑う一人の青年。
 その青年が手に持っているのは間違いなく、自分の賞状や執筆してきた小説などなど……そして。
 あれはなんだ。
 彼の隣にある黒煤の目立つ中、煌々と橙色に揺らめくものは。
 この青年はなんだ、どうして自分の軌跡が何も無かったことにされているのか。
 そういった疑問と同時に湧き上がる、何故焼却炉が機能している? 何故その近くに自分の栄光がある?
『そういえば常々、認められないものに価値はない、とか? 名誉の為に廃棄とか、やってたっすね?』
 ――決まっている。笑う男の言葉が突き刺さる。投げかけてきた言葉が確かに教師の胸に帰る。幾ら叫んだとしても、近所迷惑と叫ぶ声が聞こえても、構わずに教師は叫ぶ。
 幾ら叫んだところで無駄なのだが。
 動画の中に映る男が賞状を、本を取る。開かれた焼却炉へ、それを近づけて。
『という訳で……廃棄けってぇぇい』
「あ、あああーーーーーっ!!!」
 ――この響き渡った悲鳴を意味する科白で、何が行われたかは敢て描写するまでもないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新山・陽
 行動変容プログラムのスタッフとして再スタートしていただきます。貴方の過去を知る、ハラスメント改善のプロ達に囲まれ、手始めにコトの重大性を詰められるとよろしいでしょう。

 有職など温情? いいえ、貴方がこれから歩む道は細い。

 現職に懲戒処分を下すのは勿論のこと、次は監視をつけ辞職を許さず、順応できなければ組織が引き取って扱う内容の【取引】をUDC組織と交わし、水澤が教育現場に戻らぬよう社会的制裁を下します。
 表社会から去る可能性のおぜん立ては、私のほんの気持ちです。
 まぁ、孟母三遷の教えでも信じましょうか。

 以後は道を踏み外さぬよう、くれぐれもお気をつけください。
 冷えた視線と声を投げかけます。



●塵は天上に在っても塵
「貴方には行動変容プログラムのスタッフとして再スタートして頂きます」
 いつかどこか、心と身体を苛まれ続けボロボロになっていた屑教師水澤は、とある事務所の一室で面談を受けていた。
 目の前<上座>に座るスーツ姿の、良くも悪くも【堅そう】な空気を纏った女性の、事務的な声にも水澤は何処か救いを見出したか。
「お、俺に、ま、まま、まだチャンス」
 幾ら手酷い目に遭おうとも、中々に最後のチャンスを――否、ある意味生き汚くなっているだけかもしれないが。
「有職など温情? いいえ、貴方がこれから歩む道は細い」
 絶望に目を見開いた水澤へと、陽は粛々と事務的に語る。
 まず間違いなく教職は懲戒処分となる――それは或る筋からの根回しもあるのだが――し、これから行く先の場所では監視を常に付けられる。
 順応が出来なければ秘密裏に契約を交わした【組織】へと引き取らせる――どちらにしろ、完全に自由を封殺された囚人に等しい状況に追いやられるのだと。
 これではほぼ監獄生活だ、と顔を青くする水澤に陽は淡々と告げる。
「貴方の過去を知るハラスメント改善のスタッフが、これからしっかりと、貴方が起こしたコトの重大性を教え込む<詰る>でしょう。……まあ、大分【教え込まれて】いるようですが」
 ちら、と心身共にボロボロの水澤へと無機質に陽は目を向ける。
 といっても、言い方が限りなく悪いが、飽く迄苦痛でそうさせられているだけ――彼が本心から反省している訳でない以上、せめて教育の現場へは、絶対に。
「な、なら少し、少しは、もう勘弁……」
 情状酌量の余地があるだろう、と縋りつくような目で下座から降り、遂には土下座まで始める水澤を、無感情に陽は言い放った。
「規則は規則です」
「そ、そんなぁ!!」
 見上げる目の非難交じりの涙に、陽は完全にゴミを見るかのような目で見下ろす。
 足元に縋りついて靴に口付けを落してこないだけ、まだマシなレベルだとも思いつつ。
(自分が何故踏み躙られないと思っているのか……まあ、後は、孟母三遷の教えでも信じましょうか)
 環境が変われば多少の更生もしようか。否。難しいかもしれない。
 憧れていたプロの作家に、そしてそれが叶わなければ教師になっても――性根が変わることなく、此度の悲劇を起こしたのだから。
「以後は道を踏み外さぬよう、くれぐれもお気をつけください。では……失礼します」
 只管に冷えた視線を送りながら立ち上がり、書類を手にし至って事務的に軽く頭を下げ。
 泣き喚く男にこれ以上の目をくれることもなく、陽は部屋を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
嗚呼――俺は冒涜(こちら)、否定(かなた)の方が好みなのだよ。一般人(よくみる)爺の演技(ふり)してすれ違い、奴に『ブージャム』を刺してやろう。痛くも痒くもない存在だが、それは悉く『消失』する
本来ならば存在(そのもの)を消失させる埒外だが、今回は『奴の気力のすべて』を削ぎ落して魅せよう。貴様の物語は終いだ。貴様の物語は最初から無かったのだ。膨張した頭部は皮肉(かわにく)と不愉快と知れ
重ねてTru'nembra、正気も狂気も『なく』只掻っ攫え。最終的には抜け殻だけが残るだろう。貴様は『俺が奪う』価値すらも蹴った、愈々頽廃に沈んで往け――逝く事も赦されぬ、ベイカーは如何去(な)った



●何人も語ることなし
 ――嗚呼、俺は冒涜(こちら)、否定(かなた)の方が好みなのだよ。

「……」
 時は一体いつなのか、それを認識することも億劫になっていた。
 生気を完全に失ってしまった水澤は人気も何も無い場所を、ただ彷徨っていた。
 夢も希望も(自業自得ではあるが)奪われ、未来をほぼ閉ざされた形の彼は、不注意からか一人の老紳士に当たってしまう。
「失礼」
「ああ……」
 老紳士――何を隠そうロバートであるが――の謝罪に、生気も何も無く濁った眼で覚束ない足取りを続け、元教師は彷徨い歩く。
 その身に突き刺さり、抜けぬ存在を、未だ知らずに。

 ――やがて、程なくして何かの崩れ落ちる音が遠くに聞こえる。彼に与えたものが全てを無と変えたか……老紳士ロバートはその方向へと目を向けると。
「貴様の物語は終いだ。貴様の物語は最初から無かったのだ。膨張した頭部は皮肉(かわにく)と不愉快と知れ」
 ロバートが水澤に擦れ違う――あまりに覚束ない足取りだった故にぶつかってしまったのは予想外だったが――と同時に、撃ち込んでいたのは消失の魔物。
 本来ならば存在そのものを消し去るそれに、ロバートが消失させたのは、水澤の【ありとあらゆる気力の全て】であった。
「重ねてTru'nembra、正気も狂気も『なく』只掻っ攫え――貴様は『俺が奪う』価値すらも蹴った、愈々頽廃に沈んで往け」
 ――気力の全てを奪う。地道に生きやり直す僅かながらの殊勝な望みも、既に完全に折れている他者を見下す他ない傲慢へも。
 そして如何に心折れ、自らの自死を選ぼうという原動力も、何もかも。
 死すらも許されない、地獄門に刻まれた或る一節が如く、全ての望みを最初から無かったものとされるように。
 許されたのは唯、最低限の生命の活動のみ。唯虚無感の中に生き、日銭を稼ぎ楽を見出すことなく、肉体の維持のみだけを行わせる無機質な日々が与えられる。
 歪みきった傲慢に任せて他者を踏み躙り、足の歩みを奪い続けた者に与える応報、何をするにも行動の全ては重く、唯々生命の活動を続けるだけでも大いなる苦痛に見舞われる。
 正しく生きた屍、かつての栄誉も歪み切った生の気力も何も無い、皮と肉だけの抜け殻が一つ残るのみ――老紳士<普遍的に良く見られる者>が暗く顔を歪めると。
「逝く事も赦されぬ、ベイカーは如何去(な)った」
 ここに全ての物語は閉じられた。否。最初から存在など許されなかった。
 文章を踏み躙り続けた者の哀れな、全ての可能性を閉ざされ全てを奪われ尽くされた“空虚”をそのまま空虚とするように――ロバートは静かに場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
ある意味哀れで滑稽な人ね
折角の原石も磨かなければ輝きを失うもの
「更なる高みを目指せ」とは自分自身に言い聞かせるもので
他人を見下し貶めるためのものではないのに

教職を続けるにしろ辞めさせるにしろ
「子供の目線に立って思いやる」心がなければ
この教師も教え子も救われないわ
ここはひとつ「育て直し」が必要かしら

人ごみに紛れ、背中に「時蜘蛛のメダル」をぺたり
大人なら当たり前に出来ることでも
子供には出来なくなることもある
それに子供にとって大人の叱責は
時に地獄の魔王のように恐ろしく響くもの

そのうちメダルが剥がれ、彼が元の姿に戻った時
人を踏み躙る行為の浅ましさを
差し伸べられた手の優しさを
忘れてなければ良いのだけれど



●時の修正
(ある意味滑稽で、哀れな人ね……)
 或る日、心身も完全に疲弊し当てもなく街を彷徨う水澤をさりげなく追いながら、ヘルガは今までの彼の所業と、現状を思う。
 嘗て至上の原石であったにも関わらず、磨くことを怠り朽ち果ててしまったことの哀れさを。
 そして研磨を自らではなく、望まぬ他者――尤も研磨というにはあまりにも乱暴で石を傷つけ貶めるものだったが――に押し付け、苦しめ続けてきた無情さを。
 そしてその結果がこの憐憫を誘う心身の消耗しきった状態が、因果応報といえば因果応報ではあるし、決して同情をしてはいけない人種ではあるのだが――
(あのままじゃあの人自身も、教え子も救われないまま終わってしまうわ)
 決意を一つ、人込みに紛れながらヘルガは当て所もなく彷徨う水澤に擦れ違うと。
 ――あやかしの糸を紡いで。古い時計は逆回り。月は西から東に巡る。さあ戻りましょう。穢れ無きあの頃に。
 ヘルガはその背に張りつける。表面に時蜘蛛の描かれたメダルを。
「……!?」
 やがて時を置くことなく、人込みの中に響くは成人男性がいきなり五歳児に――尚服のサイズ等も自動で修正されている――変わったことへの騒乱が起こり、当事者は恐慌にかられ一目散へ逃げ出していく。
 ヘルガの張りつけたメダルの力で、水澤は身体のみが五歳児相当の大きさと相応の身体能力まで引き下げられていた。
 騒ぎの起こった場所を振り返り、それを為したヘルガは呟く。
「思いやる心を分かってくれたら良いのだけれど」
 何を行おうにも五歳程度の子供に戻った身では、只管に苦労が絶えないだろう。
 知識などはそのままであっても、子供の身では体力も何もかもが違う上に、少々体格が良く、柄の悪い大人に絡まれれば――それは地獄の魔王にも等しい恐ろしさで映る。
 それこそ彼が、魔王として幼子を虐げていた時の恐怖を教え込ませるように。
 だが逆に、渡る世間に鬼はなしともいうように、手を差し伸べてくれる者もいるかもしれない。
 それこそ少年が世話になった元顧問や、此度に幾度となく励ましの言葉を投げかけた猟兵達のように。
 やがて張りつけたメダルが零れ、元の姿となった時に、水澤はどう思うだろうか――幼子となった身に降りかかった恐怖や、受けた厚意を忘れずに心から反省出来るだろうか。
 零れた落ちたメダルの裏か表か、未来はまるで分からない――が。
「どうか忘れないように」
 ――彼が其処までを思える身と心かまでも分からない。もしかしたら反省の見込みもないのかもしれない。
 ただそれでも、極々僅かであろうと心よりの分かって欲しいと乳白色の天使は祈るのであった。

●物語の最後に閉じられたページ
 かくしてUDC-HUMANを巡る事件に一つの決着がついた。
 追い詰められ続けた祐介少年は程なくして、失ったものも殆ど戻った以上、元の生活を取り戻すだろう。
 少し経てば、また元気に物語を友人や恩師と紡いでいる姿が見られるかもしれない。

 そして彼を追い詰め続けた水澤元教師は――果たしてどうなるのだろうか。
 彼の持つありとあらゆる尊厳は全て、因果応報ではあるが斬り裂かれ、肉体的にも精神的にも消耗しきっている。
 現状の地位も何もかもを奪われ、少なくとも文芸と教職の世界に、彼が身を置くことはないだろう。
 そして彼が、二度と筆を執ることは――ない。
 少なくとも水澤清志によって新たな狂気が齎されることも、そして彼自身が怪異となってしまうことも無い。

 応報といえば応報ではある末路だが、水澤清志が救われぬだけの業を重ねてきたのは確かなのだから。 
 せめて物語を紡ぐのが好きだった少年の未来と命が救われたことだけを喜び――ここに筆を下ろそう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月29日


挿絵イラスト