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その剣は誰がために(作者 平岡祐樹)
#ダークセイヴァー
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「うむ、やはりあの街のワインはいつ飲んでも最高であるな」
グラスの中に入った血のように赤いワインをシャンデリアの光にかざし、壮年の男は長い犬歯を口の端から出して控えめに笑う。その向かいに座っていた小太りの男は神妙な面持ちで話し出した。
「そのワインだが……二度と手に入らなくなる可能性があったことを知っているか?」
「……どういうことだ」
唐突かつ不吉な話題に壮年の男の顔色が変わる。
「『ブリギット』の奴を知っているか?」
「ああ、あの辺境伯の女か。そいつがどうした?」
「あいつがその街を襲撃した」
小太りの男の発言に壮年の男は血相を変えてグラスを置き、立ち上がろうとする。その行動を小太りの男は両手で制した。
「落ち着け話は終わってないぞ。……その行いは猟兵の奴等に阻止され、奴も完全に消失させられた。ワインも作り手も無事だ。……一部の建物に損壊が出たらしいがな、そこは我々にとっては大した問題じゃあない」
「……猟兵の手、というのは不愉快な話ではあるが、まあ今回は感謝するとしよう。……しかしわざわざ済んだ話を出すほど世間話には困ってはないであろう?」
壮年の男は長い息を吐くと元通りに座り直し、話の先を促す。小太りの男は重々しく息を吐き、話を再開させた。
「ああ。問題なのは我々が作った不文律を破ろうとした者が現れた……という点だ」
美味しいワインを守るため、ヴァンパイア達は「わざと」そこへの進軍や重税を取り止め、あえて支配する者を決めない空白地帯にしている。それを正面から堂々と無視する者がいる可能性はこれまであり得ない話だったのだ。
「……同じことがまた起きるかもしれない、と?」
「その通りだ。そして現にやらかしそうな奴を少なくとも1人は知っている」
そうして小太りの男が投げた紙には玉座に腰掛ける男の姿が描かれていた。それを見た壮年の男は眉間に皺を寄せる。
「……確か、自分が持っていた国を再興する、とか宣っておったか」
「ああ、この街の存在を知ったら……自国の資金源にしようと出兵すると思わんか?」
壮年の男は小太りの男の懸念を「考え過ぎだ」と、笑い飛ばすことは出来なかった。
「それで、お前は此奴をどうしたいと」
「……其方の子飼いに昔我々の手を煩わせた、中々に高名だった騎士がついていると思い出してな」
「ああ」
言われて思い出したのか、壮年の男は視線を宙に一旦向けてから小太りの男へと戻す。
「そういえばそんなのもいたな。我の手によって目の前で守るべき主君や国民が一人一人惨たらしく殺される様を見て発狂し、獣のように成り果てた奴が。……ひょっとして?」
「お主にほんのちょっとばかしの傷をつけたのだろう? この程度の相手なら軽く捻れるのではないか?」
「痕すら残らない傷であったがな」
小太りの男の言い分に壮年の男は苦々しい笑みを浮かべながら首を傾げ、唸る。
「……だが確かにな。我が領に猟兵が入ってきた時の備えにしておきたかったが……このワインの行く末がかかっているとなれば仕方ない。向かわせてみるとするか」
「おお、その言葉を聞きたかった」
「ちなみに報酬は? 我の手を煩わせるのだ高くつくぞ」
「何を言っておる。その手元にあるワインよ」
小太りの男の言葉に壮年の男は自分の手にある、すでに半分ほど飲まれたワイングラスの中身に視線を向け、肩を落とした。
「……前払いか。通りで高評価の年のものを出してくると思ったわ、謀りおって貴様」
そして2人は互いに声をあげ、愉快そうに笑うのであった。
同族殺し。
オブリビオンにも関わらず、オブリビオンを狙い殺す、猟兵と似ているようで決して相容れない存在である。
「かつて守るべき都と共に深淵の闇に沈んだ聖騎士がオブリビオンとなって復活し、ヴァンパイアの手の者となって動いているそうです」
ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は厳しい表情を浮かべながら、ダークセイヴァーの地図に指し棒を擦らせていた。
「ただ、彼が向かっているのは人類砦でも闇の救済者の拠点でもなく……別のオブリビオンの城です」
問題のオブリビオンはかつてヴァンパイアによって滅ぼされた国の王で、自身の国の再興を目指して周辺地域で生き残っている人類を集めているという。
だが、どれだけ人類側の立場を自称していても蛙の子は蛙。オブリビオンはオブリビオン。
そのオブリビオンも自らの支配下に置いた人間達に「自分達が酷い目に遭っているのは悪目立ちしている闇の救済者や猟兵達のせいだ」と唆し、その活動に関わったと難癖をつけて無実の民を捕らえて拷問にかけたり、上位の存在への生贄に捧げたりとやりたい放題をしている。
「使用人達は王の言葉を頑なに信じており、説得は無理無茶無謀の3点セットです。そのため普通に行くだけでは門前払いどころか苛烈な攻撃に遭うことでしょう。……そこで今その地に向かっている『同族殺し』を利用します」
厳重に警備された城を「同族殺し」に強襲してもらい、その混乱に乗じて警備役である使用人達を蹴散らし、王の元に雪崩れ込む。
そのため一時的に同族殺しと共闘の形を取ることになる。
「くれぐれも領主を倒すまで、同族殺しに戦闘を仕掛けるような真似はしないでください。今回の作戦は同族殺しの力無しで解決出来るような簡単な物ではありませんので」
そして王の首を取った後は……同族殺しの死に水を取ることになる。
彼の者の武具は既に朽ち、身体も光翼もすでに闇に蝕まれてなお、同族殺しは闇を掃うべく戦い続けている。
彼の行動原理はオブリビオンとなっても変わってはいない。……どれだけ闇を払ったとしても別の闇が勢力を拡大してしまうだけで。
狂ってしまった彼にそれを伝え、理解させることは難しい。
だからこそ悲しき騎士に引導を渡すのも必要なことなのだと、ルウは力説した。
「どれだけ戦っても求めるものは手に入らない彼の戦いに、私達が終止符を打ってあげましょう。……よろしくお願いします」
平岡祐樹
お疲れ様です、平岡です。未だ第四階層のお話ですが、引き続きよろしくお願いします。
今回は「同族殺し」の突撃に便乗してオブリビオンを討伐しつつ、その同族殺しにも介錯をする案件となっております。
第1章・第2章で「同族殺し」に戦闘を仕掛けた場合、必ず「苦戦」または「失敗」となりますのでご注意ください。
なお今案件は拙作「悪魔の棲む蔵」(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=7409)・「ワインのある食事は太陽の出ない1日」(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=29074)と関連性のある物となっております。(仮題で「#ワインシリーズ」とタグ付けしております)
とはいえ軽いフレーバー程度ですので、該当シナリオに参加してなくても、読んでなくても進行に問題はありません。お気軽にご参加下さいませ。
第1章 集団戦
『『シャーデンフロイデ』煽られた群衆』
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POW |
●うるせー!黙れ!お前を処刑すれば円満解決なんだ!
【体を掴んで処刑台へ引連れ拘束する群衆の腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【酷い目に遭っている鬱憤を込めた処刑の刃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
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SPD |
●抗う力のあるお主に!儂らの苦しみが分かるか!!!
【いつ戯れに殺されるか分からない死への恐怖】【吸血鬼に抗う力と勇気を持つ者への妬み嫉み】【自分達を死の危険に晒している対象への怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
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WIZ |
●みんな、あなたの独善的な偽善に迷惑しているのよ!
【反抗する者のせいで虐げられる、という主張】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
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👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 |
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
亞東・霧亥
同族殺しを導く必要がある。
【UC】
強力なオブリビオンともなれば、多少強い程度の毒では効果が無いかもしれない。
普段以上に繊細に研ぎ澄ます。
『毒使い』『早業』『薬品調合』で方向感覚を惑わす毒煙玉を作成。
毒煙だが濃霧にしか見えないから、敵対する事は無いと思いたい。
『道案内』をするために、時折姿を現し『残像』で手招きして『闇に紛れる』を繰り返す。
些細な音も命取りになりかねん。
『暗殺』を行う時の様に気配を殺し、付かず離れず『忍び足』で対象を監視し目的地を目指す。
目的地が見えてきたか?
骨を折るに見合うだけの成果が得られると良いのだが。
王を名乗っているという問題の領主の屋敷の庭では痩せ細った畑で、労働者達が一心不乱に鍬を土に向けて振るっていた。
「『人は城、人は石垣、人は堀』とはいうが……これではろくに止められないだろう」
その姿を眺めていた亞東・霧亥(峻刻・f05789)はそんな感想を抱く。
厳重な警備かもしれないが、農作業で培われた筋力だけでは例え栄養状態が良好だったとしても吸血鬼やその配下の、戦うことに心血を注いできた者には敵わないだろう。
「おい、誰だあん……」
不意に声がかけられる。敏い者がいたかと振り返れば、すぐ目の前を筋張った腕が血を撒き散らしながら弧を描いた。
直後、出来たばかりの断面を押さえながら蹲った男が庭中に響き渡るほどの絶叫を上げる。その様を見下ろしていた黒ずんだ銀色の鎧に身を包んだ騎士は欠けた刃を横薙ぎにすることで、男の首を刎ねた。
「あれが『同族殺し』か」
だがその断末魔は他の者達に異変を知らせるには十分過ぎた。思い思いの農耕具を携え、招からざる客を追い払おうと使用人達は迫ったがいずれもすぐに剣の錆となって果てた。
あまりに一方的な殺戮劇、力の差は明らかだ。だがこの騒ぎだ、彼らに構い続ければ本命たる王に逃げられてしまうだろう。
霧亥は普段以上に神経を繊細に研ぎ澄まして調合した煙玉を投じた。
中から噴き出した煙が周囲に立ち込め、その視界を塞ぐ。その正体は立派な毒だが側からみればただの濃霧にしか見えないはず。敵対する事は無いと思いたい。
使用人達がむせるたびに騎士の剣が煌めく。些細な音も命取りになりかねない状況で霧亥は隠れていた屋根の上から飛び降りた。
その風圧で周囲の霧が晴れ、騎士と目が合う。霧亥は不敵な笑みを浮かべると挑発するように手招きし、霧の中に潜り込んだ。
そして金属が擦れ合う音が追ってくることを確認しながら付かず離れず忍び足で騎士を監視しつつ城の入口を目指す。もし見失ったら再び姿を見せれば良いだけの話だ。
「骨を折るに見合うだけの成果が得られると良いのだが」
そう呟いた霧亥は暗殺を行う時の様に気配を殺し、しきりに首を左右に動かす使用人達の間をすり抜けて行った。
大成功
🔵🔵🔵
ミラディ・エルシェ
虐げられた立場、それを盾にした防衛反応を非難する事は無いとも。
私は私の久しぶりな仕事を果たすだけさ。
『貴公には貴公の仕事があるのだろう?私も目的地は同じ様でね、便乗させて頂くよ。』
蜂の巣を突く役割は同族殺しに任せるよ。
私は彼が余計なダメージを受けないよう、敵集団を無力化していこうか。
天候操作で雨天にし、敵集団を中心に身体を濡らしておくよ。
仕掛けが済んだら雷に変じ、声高に主張を挙げた者に白影衝を。
突然狙い撃ちのように雷に撃たれたら、他の民衆の背筋も凍って強化も解除されるだろう?
…まあ、濡れた路面に通電して感電しているだろうから、暴れたくても暴れられないかもしれないけれどもね。
遡ること2012年。銀誓館学園がゴーストとの戦いを終結を宣言し、それを裏付けるかのように世界結界も崩れ始めた。
しかし2016年頃から崩壊は鈍化し、2021年年に至っては再生まで確認され始めた。
当然その動きはOGの1人であるミラディ・エルシェ(エクレール・f36343)にとっても他人事ではなかった。
大学生活も終わりに近づき、次の進路の選択を否応にも強いられる時期に突然降って湧いた事態にミラディは一寸の躊躇もせずに戦線復帰を決めた。
その最初の舞台に選んだのは夜と闇に常に覆われ、傲慢な支配者たる吸血鬼と異端の神々が跋扈する世界。通称「ダークセイヴァー」。
その一角にある国……というよりも村に近いこの場所は、同族殺しの到来により蜂の巣を突いた騒ぎになっていた。
「貴公には貴公の仕事があるのだろう? 私も目的地は同じ様でね、便乗させて頂くよ」
霧の中に消えていく後ろ姿に語りかけたミラディが指を鳴らすとポツポツと雨が降り出した。
普段から曇り空故に、使用人達は天候の急な変化を一切不穏に感じることなく雨除けを用意することなくミラディの元に迫ってくる。
「お前か、猟兵とかいう輩は!」
「みんな、あなたの独善的な偽善に迷惑しているのよ!」
突然の罵倒にミラディは苦笑する。
虐げられ続けた立場、それを盾にした防衛反応を非難する事は無い。だが今回の仕事はそれを突破し、守ろうとしている物を壊すこと。
「私は私の久しぶりな仕事を果たすだけさ」
ミラディが白い閃光を放って消える。思わず目を瞑ってしまい、ミラディを見失った使用人達が辺りを忙しなく見回す中、その声は轟いた。
『その守護ごと…貫けェッ!!』
空気を斬り裂く音と共に落ちた雷が、特に声高に主張していた男の体を駆け巡る。そしてその素足から伝わった電流は路面に出来た水溜まりを経由し、すぐそばにいた者達にも伝播していった。
「突然狙い撃ちのように雷に撃たれたら、他の民衆の背筋も凍って強化も解除されるだろう?」
悲鳴を上げ続けた声帯が動かなくなったところで、ミラディは男の体から抜けて人の姿を形成し直す。周囲にいた生き残り達は恐怖からか体を一度震わせたが、すぐに得物を構え直して突っ込んできた。
「おや、まだまだ暴れ足りない奴らがいっぱいいるみたいだな? いいよ。今度は逃さないでやろう」
そう言い切ったミラディは再び雷と化すと突き出されたピッチフォークの中に自ら吸い込まれ、持ち手から持ち主の体へと伝っていった。
成功
🔵🔵🔴
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎
がらくたの おとむらい
骸の屍、葬るに相応しい
先制UC発動
闇毒風空属性
攻撃防御状態異常力に付与
残像迷彩闇に紛れる物を隠す
纏った闇に身を隠す
必ず同族殺しの死角に位置取る
残像フェイント忍び足
するすると接敵
射程に入り次第念動怪力衝撃波UC
フェイント二回攻撃を交えマヒ目潰し捕縛吹き飛ばし
割れた貨幣(すてぜに)が範囲ごと薙ぎ払う
がらがら じゃらじゃら
騒音、雑音
敵の攻撃を落ち着いて見切り
残像迷彩陽動フェイント忍び足
周囲の喧騒に紛れて躱す
窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃
ざわざわ ひびかない
がらんどうの残響にも値せず
さようなら
さようなら
御然らば
御然らば
「がらくたの、おとむらい。骸の屍、葬るに相応しい」
反逆者の血糊で錆びたギロチンの刃の上に6腕の少女———御堂・伽藍(がらんどう・f33020)が舞い降りる。
その過程で音は鳴らなかったものの、高所に突然現れたダークセイヴァーの庶民にはあり得ない豪華な服装に使用人達の視線は集中した。
「なんだあいつは! 我らの処刑台を足蹴にするなど言語道断!」
「なんて綺麗な服……許せない! 私達に見せつけて悦に入るつもりなんでしょう!」
『きって、むすぶ。わけて、まぜる。時の刃が切り分けし渾沌の魔力、転輪せり』
罵声を四方八方から浴びせかけられる中、大して傷ついた様子も見せずに淡々と印が結んだ伽藍の姿は闇に溶けるように消えていった。
「何だったんだ今のは……。ひょっとして囮か?」
まるで夢幻のように消えてしまったことに使用人達が困惑する中、羽が落ちたかのように刃から静かに降り立った伽藍はするすると土の上を歩いていく。
残像迷彩闇に紛れる物を隠す。
纏った闇に身を隠す。
そして眉間に皺を寄せて首を捻る使用人のそばに立つと、服の中に隠し持っていた貨幣をばら撒いた。
がらがら じゃらじゃら
騒音、雑音。
割れて価値が失われた貨幣は放射線状に放たれると巻き込んだ使用人達の目を潰し、ツボをついて体を痺れさせ、その重みで押し潰した。
あちこちから悲鳴が上がる中、深い霧と闇の中に光り輝いた貨幣は使用人達に「あそこにあの敵がいるかもしれない」という一縷の望みを見せる。
中でも髪も肌もボロボロだが、この中で一番若そうな女性が貨幣を勢いよく跳ね除け、弾かれるように起き上がり駆け寄ってきた。
「くそっ、私だってそんな服着てみたいのに! この、クソガキがぁ! 」
ざわざわ ひびかない
がらんどうの残響にも値せず。
呪詛と共に伸ばされた掴みかかる手を落ち着いて見切って避けた伽藍は念動力を込めた衝撃波で、空振って体勢を崩したばかりの女性を吹き飛ばす。
怒りと嫉妬で血走っていた目は城壁に全身を強く叩きつけられるとその光を失った。
さようなら
さようなら
御然らば
御然らば
どうか来世は好きな服が着られる、幸せな暮らしを送らんことを。
目を閉じて手を合わせた伽藍は同族殺しによって巻き起こる周囲の喧騒に紛れて、その場から今度こそ去っていった。
成功
🔵🔵🔴
ルーン・エルウィンド(サポート)
人狼の翔剣士 × マジックナイト、20歳の男です。
普段の口調は「丁寧(私、相手の名前、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、敵には「無感情…のはず(私、お前、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」です。
本人は気付きませんが、尻尾に感情がもろに反映されます。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ニケ・ブレジニィ(サポート)
技能を、フル活用します。
仲間を守りつつサポートし、敵を倒すという戦闘スタイルです。
また、このシナリオ内で戦闘不能になったオブリビオンの肉体と魂を、ユーベルコードの『桜の癒やし』で鎮め、転生できるように祈ります。
「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」
リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。
「うわっ、と」
振り回されたピッチフォークを尻尾をピンと伸ばしながら屈んで避けたルーン・エルウィンド(風の翔剣士・f10456)に使用人達の罵声が浴びせかけられる。
『みんな、あなたの独善的な偽善に迷惑しているのよ!』
「そうだそうだ! お前達が暴れるせいで、八つ当たりにこっちが襲われるんだ!」
「救ってるつもりで、本当はあんたらの自己満足だということに気づきなさい!」
確かに猟兵達の突撃によって彼らの訴える被害が起きているかもしれない。
だが、刺激したら暴発するかもしれないからと言って既に虐げられている物を放置するわけにも行かない。
「どっちに転んでも誰かが傷つくなら……」
頭頂部に生えた耳を垂らしながらルーンは透き通るような青い刀身を持つ刀を抜き払った。
「私は、少なくなる方を選びます」
その決意を具現化したかのように吹き荒れた風は周囲にあった毒の霧を巻き混みながら使用人達を薙ぎ払った。
壁に叩きつけられた使用人達はその衝撃で腕や肋の骨を折られながらも、痛みで顔を歪めつつも立ち上がってルーンに挑みかかる。
「この暮らしを、手放すわけにはいかねぇんだ! さっさとけぇれ、病人がぁ!」
彼らにとっては、この城に住む王の統治こそが最善かつ唯一の選択肢でしかない。故に彼が討たれても全てが終わってしまう。ならばここで死んでも大した違いはない、と考えてしまうのもしょうがないことなのだろう。
だが仕方がないと分かっていても、絶望に満ちた表情をした相手を手にかけるしかない現実がルーンの気持ちをすり減らしていることを、力無く垂れる尻尾が察させていた。
「くそぉ、このままじゃ王様の、俺達の村が……」
そんな戦闘の中で大きな切り傷を負い、血溜まりの中に沈んだ男は手元にあった乾いた土砂を握り潰していた。
動かなければいけないのは分かっている。だが血は傷口からあらかた出てしまっていた。
「……もう鎮まりたまえ」
苦しげに息をしながら前を睨みつける男の視界に見覚えのない白と薄い赤の花びらが落ちてくると同時に凛とした女性の声が辺りに響いた。
「確かに知らないうちに私達のせいで多大なご迷惑をおかけしたのでしょう。目の前の物しか見えないばかりに、それ以外の物を踏んづけて壊してしまったのでしょう」
その声を聞くたびに、馴染みのない香りを嗅ぐたびに、瞼が重くなっていく。
「その十字架はずっと背負っていきましょう。1人を救うために10人を犠牲にしてしまう、してしまったかもしれない、と常に疑問を持ち続けていきましょう」
見慣れた土の色がどんどん白く染まり、良い香りが自分の体を包み込む。これまで経験したことのない心地よさを感じながら、男の意識は途切れた。
その様を声の主であるニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)は沈痛な面持ちで見下ろしていた。
癒しの気を込めた花びらに包まれて眠ったにも限らず、男の体に刻まれた傷は塞がる気配がない。それどころか肉は臭いを発さずにどんどん溶けて骨だけになり始めていた。
王の下に降りたことでこうなっていたのか、王に声をかけられた時点ですでにそうだったのか、それは本人も知らなかっただろう。
「あなたの存在を忘れないように私は憶えておいてあげるから……」
今自分に出来ることはここで息絶えた人々がせめて来世は幸せな生活を送れるように祈ることだけ。
ニケは手を合わせながら風化していく骨を見送った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『賢王『ジョン』』
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POW |
●旭日昇天
自身の身長の2倍の【国造りの権能を持つ天空神】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
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SPD |
●捲土重来
【国や民、自身に敵意】を向けた対象に、【国そのものの重み】でダメージを与える。命中率が高い。
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WIZ |
●国士無双
対象のユーベルコードを防御すると、それを【民の分だけ保有して奪い】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
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👑11 |
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 |
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナハト・ダァト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……今宵はやけに外が騒がしいな」
手元にある書物をめくりながら呟かれた王の言葉に側近が脂汗をかきながら答える。
「申し訳ありません。本日は暴れているネズミが少し多いようで……」
「そうか。ならば良いが……それにしては時間がかかっているようだな」
言外の問いに側近の汗が滝のように噴き出る。
「た、確かにそうでございますね。……ちょっと様子を見て参ります!」
理由をつけて逃げるかのように小走りで王の間から退席しようとした側近は、普段は開かれない式典用の大扉ごと斜めに切り裂かれた。
玉座へと繋がる敷物に血が染み込む中、ボロボロになった聖騎士が崩れ落ちた扉を乗り越える。
「やけに大きなネズミであるなぁ、テヘロよ」
呆れた王の言葉に謝りの言葉を述べる前に、側近の顔は聖騎士によって踏み潰されていた。
王はため息を吐くと書物を音を立てて閉め、聖騎士と扉の影から恐る恐る覗き込む猟兵達を視界の正面に見据えた。
「其方ら。我が王宮を血で染めることがどれだけの大罪であるか分かっての行いか?」
王からの問いかけに誰かが答える前に聖騎士は抜き払っていた剣を構え直し、無言で突撃していった。
「……どうやら考えもしない馬鹿がいるようであるな。ならば、その身をもって知らしめてやるとしよう」
そう告げるとともに、反逆者に罰を与えるための巨人が玉座の影から立ち上がった。
ミラディ・エルシェ
大罪と言うけれど。
王命に拠らぬ血が流れる時は、革命や謀反の佳境時。
貴方を斃せば罪も消えようさ。
天候操作で外は吹き込む様な雷雨に。
屋内の金属質の物の配置も確認。
鼠か。死を運ぶ者に喩えてくれるとはね、恐縮だよ。
鼠らしく小細工も弄す。全て使わせて貰う!
UCで実体化と雷化を繰り返し、敵の攻撃は雷化ですり抜けながら、一撃離脱を心掛けよう。
国の重みも空の雷には関係あるまい?
既に、貴方への道は通っている。
金属と水、そして血をも利用した通電路。
そして…外の雷鳴をカモフラージュに、通電路を利用して瞬間転移し、踏み込むッ!!
雷速の4連撃を当てられるか否か。
光の速度の読み合い、瞬間思考でフェイントも織り交ぜ、制す!
「鼠か。死を運ぶ者に喩えてくれるとはね、恐縮だよ」
強風によって流されてきた雨が床を濡らす中、ミラディは扉の残骸を勢いよく飛び越えて玉座の間へと踏み入る。
玉座の間に明らかに金属質の物はなく、鎧や杖がワンチャンあるかもしれないが、どちらも遠目で判断がつくほどの光沢はなかった。
「其方ら。我が王宮を血で染めることがどれだけの大罪であるか分かっての行いか?」
「大罪と言うけれど。王命に拠らぬ血が流れる時は、革命や謀反の佳境時。貴方を斃せば罪も消えよう」
騎士の持つ朽ち果てた剣が煌めき、そこから破魔の力を帯びた斬撃波が放たれる。
だが割って入ってきた巨人に当たる時にはもうその光は深淵の闇に飲まれて燻んでいた。
「……どうやら考えもしない馬鹿がいるようであるな。ならば、その身をもって知らしめてやるとしよう」
そう王が高らかに告げた瞬間、騎士は体をおかしな方向へへし曲げられながら床に這いつくばらされた。
それはミラディも同じで、骨や筋肉が軋むのを感じた瞬間に彼女は部屋から消え失せていた。
「……所詮口だけか。やはり命は惜しいとみえる」
長い顎髭をいじる王が見守る中、全身を始めた巨人が腕を大きく振りかぶる。
しかしその拳は騎士の体を潰す前に止まった。壁にはめ込まれたステンドグラスが照らされた瞬間に、雷と化したミラディが巨人の体を駆け巡ったのである。
人体と違い、不定形である雷にどれだけ重りを載せても何の支障も起きない。
さらに騎士が扉を斬り払ったおかげで玉座の間に吹き込んだ雨水や床に染み出した騎士や国民の血によって巨人までの通電路は完成されている。
「既に、貴方への道は通っている。国の重みも空の雷には関係あるまい?」
頭頂部から抜け出して人間体を取り戻したと同時に一太刀を浴びせかけ、体の異変を感じ取ったら雷化ですり抜けつつ痺れさせる。
光の速度の読み合い、瞬間思考でフェイントも織り交ぜた一撃離脱の繰り返しに巨人は何もさせてもらえない。
「鼠らしく小細工も弄す。全て使わせて貰う! On y va!!」
そして四度目の電流が走った瞬間に巨人の体は崩れ落ち、玉座の間に満ちていた圧が消え失せた。
すると腕や鎧がおかしな形状になっているにもかかわらず、騎士は何事も無かったかのように立ち上がった。
「やめろって言っても聞かないんだろうねあんたは」
流れ弾を喰らわないよう、騎士の背後で実体化したミラディは肩をすくめつつ、王の次の出方を窺うのであった。
成功
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陽殿蘇・燐(サポート)
バーチャルキャラクターの寵姫×国民的スタア?いいえ、これでも(元)ラスボスな悪女NPCよ。
基本は高性能スマホを利用して、配信しつつの行動になるわね。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用するし、多少の怪我は厭わず積極的に行動するの。これでもバーチャルキャラクターだもの。
悪女たるもの、その行為は健全な世界あってこそなのよ。だから他の猟兵に迷惑をかける行為はないわ。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしない。配信垢BANされちゃう。
あとはおまかせ。よきに計らいなさい(思い出した悪女ムーブ)
※
キマフュ出身なので、トンチキでも適応していきます。
「ふむ……我らが神の像をいとも簡単に砕くとは。だが所詮はそこらの石を固めて作り上げただけの虚像。其方らのような力一辺倒な蛮族には相性が悪すぎたか」
王は長い顎髭に指を通しながら首を傾げる。そこに悲壮の色は微塵も感じられない。
「しかし殺された民が無駄死にで終わらぬよう、ここで其方らの野望を潰えさせてみせよう」
その言葉に、陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)は思わず眉を顰めた。
遅れて駆けつけた分、燐は猟兵達や騎士による戦闘の痕を見てきた。だがそこに猟兵達や騎士によって殺された者達の死体は残されていなかった。後の処理を一切せずに城に踏み込んだはずなのに。
人骨が無造作に積み上げられた墓地とは呼べない代物もあったが、恐らくそれは真実を知らずに踏み込んで捕らえられ、神への生贄に捧げられた哀れな犠牲者の遺骨だったろう。
「本気で人々を幸せにしたいと思っている変わり者であれば、少しは考えてあげたところでしたけど……」
燐は扇を開き、口元を隠す。その上から覗く青い瞳には王に対する侮蔑の感情が満ち満ちていた。
「死者に仮初の命を与えて自分の都合の良いように動かし、生者には無実の罪を着せて自己満足のために処刑する……そのような国にかける情など持ち合わせておりませんわ」
そう燐が告げると同時に、棒立ちになって震え出した騎士の鎧の隙間から深淵の闇が溢れ出す。その行為に燐は目を丸くし、泡を食った。
「ちょっと……ナイトモードにしないとちゃんと映らないじゃない!?」
燐は慌ててドローンを呼び戻し、設定を変える。その間にも石造りの城は闇に蝕まれ、どんどん朽ち果てていったが王の座る玉座だけはまるで特殊な空間かのごとく、闇が届くことはなかった。
成功
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亞東・霧亥
【UC】
何かにぶつかる等の衝撃を受けると破裂し、仕込んだトリモチが扇状に広がる仕掛け罠を、非常に精巧な食べられない草餅にして王座にぶちまける。
「121㎥内に積まれた草餅がいくつ出来るか?頑張って計算してくれ。」
俺には草餅の雪崩が起こる事しかわからない。
器用に草餅の雪崩を避けて『暗殺』を試みる。
相手に対して敵意も殺意も無い。
己の振るう刃に感情は一切乗せず日常生活の如く淡々と行う。
「大口を叩いた割にはなんと悠長なことか。殺された民が無駄死にで終わらぬよう、ここで其方らの野望を潰えさせてみせよう」
深淵の闇によって居城が朽ち果ててもなお、王は平然と頬杖をついて戦局を見守る。放った騎士自身をも蝕む猛毒めいた闇を前にし、猟兵達の攻勢は明らかに鈍っている。
口ではああ言ったが城も民も形は違えど時間があれば再び取り戻すことが出来るが、自らの命に代わりはきかない。ここは急いて事をするべきではない、と王は考えていた。
だがその視線はあまりに真っ直ぐ向けられ続けた。
「121㎥内に積まれた草餅がいくつ出来るか?頑張って計算してくれ。俺には草餅の雪崩が起こる事しかわからない」
雷と闇によって穴が開いた天井によじ登っていた霧亥がコツコツと流れ作業で拵えた緑色の丸餅が立方体の構えのまま降り注ぎ、王の脳天を捉える。
王に当たった物だけでなく、玉座や床に当たった物も落ちた衝撃で破裂した単純計算で20万個近い量の草餅は中に詰め込まれていたトリモチを扇状に広げて王を玉座に縫い付けた。
「ぬう……小癪な、真似を……!」
痛む頭を撫でることすら許されない王の体から闇が漏れ出し、トリモチを抉っていく。そして直後に炸裂した光を食らうと、粘り気のある物体は存在そのものを完全に消失させられた。
「なるほど、玉座に仕掛けがあったのではなく自らの体の中に溜め込んでいたのか」
騎士の闇も一緒に晴らされ、トリモチから解放された王が玉座から立ち上がったところで霧亥は静かに広間内に侵入する。
「何だったのだこの変な緑色の物体は……」
草餅を知らない様子の王は憤慨しながら広間全体に強烈な圧をかける。すると闇に飲まれず破裂してもなかった草餅が一斉に爆散して辺り一面にトリモチをばら撒いた。
「我を玉座に縛り付け、袋叩きにする算段だったのだろうが……甘いな。調子に乗ってばら撒いた結果二度と近づけぬほどに床を埋め尽くすことになろうとは……なんと皮肉なことか」
だが王の死角についた霧亥はつま先立ちで、トリモチとトリモチの間にある微かな隙間を渡っていた。
「こうなれば遠方から当たるどうかも確証のない斬撃や魔法の弾を飛ばしてくるしかないか。さあ次はどんな足掻きを見せてくれるか」
高らかに笑った王の右肩に手をかけた霧亥は左の肩に向けて手持ちの短剣を突き刺した。
そこに敵意も殺意も無い。己の振るう刃には感情を一切乗せず日常生活の如く淡々と行うのみ。
「足掻きというよりも強いて言うなら……単なる嫌がらせかな」
刺された勢いのまま王は玉座に座り直される。
刺す直前に霧亥が座面に添えた草餅が王の体重で炸裂し、まるで失禁したかのように履き物全体に広がった。
成功
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